約 1,037 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/635.html
前へ / トップへ / 次へ 老人が落下していく。 残月と戦っていた中年男が、必死に落下する老人を追う。 信じられぬ高さまで飛び、その身体を受け止めた。 「ぐはぁ!」 受け止めた老人が、口から血を吐く。 「う……効いたわぃ。さすがは、バビル2世……」 「しっかりしろ!傷は浅い!」 草木を撒き散らし、煙を立てて着陸する男。グッとロプロスを見上げる。 「やはりあれはロプロスか!」 「間違いない……。我々の要注意観察対象No.1900701。すなわちバビル2世の忠実なるしもべ…」 地面に降ろされた老人がよろよろと立ち上がる。 「だが、われわれの力ならば、あの攻撃も避けることはできたろう。なのになぜ!?」 まともに食らったのだ、と問いかける男。老人は目を閉じ、顔を伏せた。 「わからぬ。なぜか、身体がまったく動かなかったのだ。そう、この少年を攻撃してはならぬと、本能が告げたような…」 「本能だと?」 バカらしい、と鼻で笑う中年男。 「我々は人造人間だぞ?我々に本能などあるものか。あるとすれば、それは『宇宙にとって危険な文明を排除せよ』というプログラムにすぎん!」 「じゃが、すくなくともわしの身体はバビル2世と戦うことを拒否した…。」 老人が、ロプロスを見上げた。 「マーズが狂ったようにわしの身体にもなにかバグが発生したのかもしれん。」 中年の男は、ロプロスを見上げながら、老人の言葉を黙って聞いていた。 ポセイドンの巨体が、地響きを立てて着地した。 「うわあ!」 「なんだ、このゴーレムは!?」 突如現れたポセイドンにより、アルビオンの兵隊は一時的にパニックに陥った。 「おちつけ!いくら巨大と言ってもしょせんゴーレム!魔法で倒せぬわけがない!」 士官らしいメイジが杖を振り上げ、兵を静める。 「わしが手本を見せてやる!マジック・ミサイル!」 魔法の矢がポセイドンの膝や足首めがけて放たれた。ゴーレムはその巨体ゆえ、下半身を攻撃されると非常にもろい。すこしヒビが入っただけでも 自重で傷を広げ、亀裂となり、ついには自壊する。 何十個もの花火を同時に打ち上げたような爆裂音が炸裂する。 「どうだ!」 土煙が上がり、ポセイドンの姿が視界から掻き消える。次の瞬間―― 「う、うわー!」 どうん、とマジックアローを放ったメイジが踏み潰された。まったく効いていない。 「くそ!同時にかかれ!」 叫び声と同時に、わっとメイジたちが杖を振り下ろした。魔術の塊が、尾を引いてポセイドンへ襲来していく。 ばん、ぼん、ばん。ポセイドンにぶつかり、魔法が炸裂する。しかしまったく効果なく、ポセイドンは平然と進んでいく。 ポセイドンが前にならえをするように、腕を持ち上げた。 タタタタタタタン、という連射音と共に終結していたメイジたちの身体がミンチになった。 顔の上半分が消えたもの、上半身が吹っ飛んだもの、身体がバラバラになったもの。それが吹っ飛んでアルビオン軍に降りかかる。 「うわあ、ミンチよりひでえや!」 血肉の雨が降りかかり、パニックに陥るアルビオン兵。そこにさらに追撃が。 5本の指先から、青白い光の矢が放たれた。 レーザー光線だ。 音もなく、身体を切断されて人間が転がっていく。逃げ惑うアルビオンを踏み潰しながら、着陸している強襲揚陸艦へ進んでいく ポセイドン。ポセイドンが着地してわずか1分足らずの間に、アルビオンは兵の2割を失っていた。 「いいぞ、ポセイドン!」 バビル2世が操縦かんを引いて、機体を上空に持ち上げる。 ロプロスの顔横をかすめ、機体がどんどん昇っていく。 「ロプロス、右だ!」 空中に待機していたアルビオン空軍の戦艦が、突如現れた化け物のような鳥めがけ、狂ったように砲弾を放ちはじめた。 ロプロスがまともにその砲弾を受ける。が、ミサイルでもびくともしないロプロスの装甲には、蚊が刺したほども効き目がない。 「ロプロス、敵の大砲を狙うんだ!」 命令に応えて、ロプロスのくちばしが大きく開かれた。 口からロケット弾が連続発射され、戦艦の大砲に襲い掛かった。 一瞬で戦艦が炎に包まれ、火薬に引火し大爆発を起こす。反応する間もなく、空で藻屑となって消えた。 残る艦船から次々と何かが飛び出してきた。竜騎士だ。 「おのれ!いくら化け物といえどもたかが一匹!全員でかく乱しつつ攻撃すれば……っ」 竜騎士が、隊列を組んで、一斉にロプロスへ襲い掛かった。 三方向に分かれ、上下正面からロプロスの首を狙う作戦だ。 きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃン。 耳には聞こえぬが、身体を震わす音。 叫び声をあげる間もなく、竜騎士が竜ともども風に飛ばされる砂細工のように消え去った。 超音波攻撃。その威力は分子を直接振動させ、あらゆる物体をバラバラにしてしまうのだ。 まともに浴びなくても、周囲にいるだけで、気が狂いそうになってしまう。次々と竜騎士と竜が気絶し、草原めがけ落ちていく。 「こ、こっちに来たぞ!」 竜騎士が発進した艦の中で、比較的突出していた戦艦めがけ、ロプロスが体当たりを食らわせた。ロプロスの全長は並みの戦艦以上である。 おまけに装甲と速度は圧倒的。木片と鉄くずになって消えた。 ルイズはバビル2世の後ろで『敵に回したくないわね…』と考えていた。 「報告します!バビル2世です!バビル2世が現れました!」 血相を変えて飛び込んできた士官が、そう告げた途端、司令部の空気が張り詰めた。 「敵は北23度から飛来。ポセイドンとロプロスの攻撃で、すでに戦艦2、メイジを含む600以上の兵が死傷!被害はなおも拡大中!」 「映像をモニターに!」 上座に座っていた男、ヨミが指令を下す。 ただちにモニターに暴れまわるポセイドンとロプロスの姿が映される。 「間違いない。3つのしもべだ。」 ギリ……と奥歯を噛み鳴らすヨミ。 「よし、V2計画の最終段階を始動させる。V2ドラゴンを切り離せ。そしてサンダーのコントロールをオンにして、改めて人工知能に命令を行え。」 「はっ。」 戦艦レキシントンに吊り下げられた怪物を縛る結界が、ゆっくりと外された。 「いいぞ、ロプロス!ヨミの野望を食い止めるんだ!ポセイドンも負けるな!」 すでに戦艦6を落とし、アルビオンの降下部隊3000のうち半数以上が何らかの理由で戦闘不能と化していた。 司令官であったサー・ジョンストンからしてわれ先に逃げ出し、軍の統制は明後日に逃げ出していた。 そこへ襲い掛かったのがトリステインの兵2000である。 甲冑をならし、剣で頭を叩き潰し、魔法で吹き飛ばす。怒号を上げながら、敵を蹴散らすポセイドンを追いかける。 「みなのもの!あれは我らに勝利をもたらさんと、始祖が遣わした戦の神に違いない!空飛ぶ鳥は、伝説の鳥、クィーン・フェニックスであろう!この 戦、我らの勝ちぞ!」 マザリーニが兵を叱咤激励しながら、杖をふるって指揮を執る。兵は目を血走らせて、すでに敗残寸前となったアルビオン兵に襲いかかる。マグマの ような奔流にアルビオン兵は飲み込まれ、のたうち、悶え苦しむ。 「枢機卿……始祖の遣わした使者とはまことですか?わたしは聞いたことがありませんが」 そっと尋ねるアンリエッタに、マザリーニがいたずらっぽく笑った。 「真っ赤な嘘ですよ。しかし、今は誰もが判断力を失っておる。こういうときはこんな神話のほうが帰って現実味があるもの。使えるものはなんでも使 う。政治と戦の基本ですぞ。覚えておきなさい、殿下。」 アンリエッタが頷く。枢機卿のいう通りだ。今は、考えるのは後回しである。戦争に勝つことだけを考えればいい。 「ですが、まだ敵には旗艦レキシントンが…」 不安げに呟くアンリエッタ。それを制止するマザリーニ。 「殿下。不安を顔に出してはいけませぬ。今は勝利を確信し、悠然とすべきときです。」 そのとき、ラ・ロシェールの方向から、巨大な戦艦が姿を現した。 快進撃を続けてきたトリステインの兵の足がピッタリと止まり、慌てて退避し始める。なぜならば、戦艦にいくつも光が現れたからだ。 タルブ草原でいくつも爆発が起こる。逃げるのが間に合わずに、何十人も兵が吹っ飛ぶ。 「あれは!」 「ロイヤル・ソヴリンだ!」残月が叫ぶ。 衝撃波でズタズタにされた傷はすでに治り始めているではないか。おそるべきバビル2世の血である。 「アルビオン空軍の切り札…。叛乱の始まりの船…。」 苦々しげに呟く残月。その顔は残月ではなく、亡国の皇太子、ウェールズ以外のなにものでもなかった。 「ロプロス!」 バビル2世の命令で、ロプロスがレキシントン目がけ飛んで行く。 ロプロスはすれ違いざまに口からロケット弾を吐き、レキシントンを炎上させる。 「そうだ、その調子だ、ロプロス!」 無人の野を行くように、縦横無尽に暴れまわるロプロスにガッツポーズをするバビル2世。 「あ……あのねぇ……」 「ぐえっ!」 バビル2世の喉を、後ろから杖が押さえ込んだ。 「さっきから……なんて動きしてるのよ……」 真っ青な顔で、ルイズがバビル2世を締め上げる。それは発射5秒前、というか、貴族でなくても女性にしては致命的な…つまり口からのリバース寸前の 顔だ。 「く、苦しい……。わ、わかった、わかった」 ルイズが杖を外す。ゲホゲホと咳き込むバビル2世。 「あのねぇ、わたしが乗ってるってこと忘れてない!?」 「ああ、忘れてた。」 ガツン、と杖が頭へ振り下ろされた。 「す、すまない。今度から気をつけるよ…」 目から火花を散らして、頭を押さえるバビル2世。 「もっと丁寧に操りなさいよ!」と頬を膨らせるルイズ。 「むちゃを言わないでくれ」と言い掛けたバビル2世の目に、異様な光景が映りこんだ。 レキシントンめがけ突撃したロプロスの周りを、無数の飛行物体が囲んでいるのだ。 「なによ、あれ?」 ルイズも気づく。見るとそれはまるでドラゴンのような、怪鳥のような、真っ黒なロボットであった。 「ふふふ。V2号よ、おまえたちの力を見せてやれ。」 ヨミが不敵に笑う。 十数体のドラゴンが、一斉にロプロスに襲い掛かった。体当たりをまともにうけて、さすがのロプロスも吹っ飛ぶ。 「ああ、ロプロス!」 そのまま大地にしたたかに身体を激突させた。よろよろと、ロプロスが身体を起こそうとしている。 そこへ、超高熱線が襲い掛かった。ロプロスの周囲があっという間に炎に包まれた。 「まさか、これは…」 バビル2世はこれと同じような兵器を覚えていた。そうだ、間違いない。宇宙ビールスによりパワーアップしたヨミが3つのしもべに対抗すべく作り出した 怪鳥ロボットだ。 「ヨミめ。さてはあのロボットを量産化したな。」 ロプロスの装甲は、今は効き目がないように見えるが、このままくらい続ければどうなるかわからない。バビル2世は慌てて、 「逃げろ、ロプロス!」 ロプロスが大空高く飛び上がった。V2号は熱線を放ちつつ、ロプロスを追いかける。 そして近づいては体当たり。離れては熱線を繰り返して、執拗にロプロスを痛めつける。 「ふはははは。バビル2世よ。さすがのきさまもなにもできまい。」 モニターに映し出されたゼロ戦を見ながらヨミが勝ち誇る。 「そこで3つのしもべがなすすべなく敗れるさまを見ているがいい。3つのしもべを破壊した後で、きさまの命は奪ってやろう。」 視線を別のモニターに移すと、そこにはポセイドンの姿が… 「ちょっと、あれ!下、下!」 なにかに気づいたルイズがバビル2世の肩を揺さぶりながら叫ぶ。言われて視線を下げたバビル2世は叫び声を上げた。 「ああ!?」 いつのまにかポセイドンはギリシャ神話の兵士のような姿をしたロボットに取り囲まれていた。 ロボットはポセイドンより少し小さいが、これだけ数がいればその程度の大きさは問題ではないだろう。 「ポセイドン、レーザーだ!」 慌てて命令をするが、敵ロボットはレーザー光線を弾き返すではないか。 「くそ!ヨミのやつ、こんなものまで作っていたのか。」 ロボットはポセイドンに取り付き、組み伏せようとする。両腕を押さえ込み、胴体や頭を殴りつける。 「いくらポセイドンとロプロスが頑丈だといっても、これではいつか破壊されてしまう。」 ポセイドンが攻撃に抗い、ロボットを投げ飛ばす。だがすぐに別のロボットがとりついてくる。 「くそ。これじゃあきりがない。」 地上と空をせわしく見比べながらバビル2世が叫ぶ。 「ロプロス!ポセイドン!一体一体でいいから倒していくんだ!」 ポセイドンが腕を振りほどき、目の前のロボットに手刀を叩き込んだ。 ロプロスが高熱線を浴びながら、カウンターで敵の頭部へ体当たりをした。 破壊した瞬間、V2号は両者とも大爆発を起こした。 「げぇっ!」 ロプロスが切りもみしながら落下していく。ポセイドンが爆発で吹っ飛び、地面にたたきつけられた。 「くっ。ヨミめ、破壊されると爆発するようにしているのか!これじゃあうかつに破壊できない!」 忌々しげにバビル2世が言う。 「おまけにあの動きは人工知能が搭載されているのだな。たとえレキシントンを沈めても、しもべを破壊するまで動きつづけるのだろう。」 空を覆い尽くすようなレキシントンを睨みつける。それはまるで空に浮かぶ島のようであった。アルビオンが大陸ならば、これはその人工島なのだ。不沈 空母なのだ。 「ふむ。やはり3つのしもべはしぶといな。」 いくら攻撃をうけてもまいったそぶりのないしもべに感心したように頷くヨミ。 「どうでしょう、ヨミさま。ここはひとつしもべでバビル2世を攻撃しては……」 ワルドが車椅子の上から提案をした。背後にはあいかわらずフーケが控えている。 「ふふふ。わしも今それを考えていた。よし、ドラゴンの攻撃目標をゼロ戦に変更しろ。ロプロスよ、小僧を倒せ!」 「むむ?」 とつぜんロプロスへの攻撃をやめ、こちらにドラゴンが向かってくる。ロプロスが一瞬空中で固まり、遅れてこちらへ向かってくる。 「あの動きは……まさか」 ロプロスと、V2号の編隊が一斉にバビル2世めがけ攻撃をしてきた。 「やはり、ヨミがそこにいるな!ロプロス!」 ヨミに操られたと判断したバビル2世が、あわててロプロスに支持を下す。 ふたたびロプロスの体が硬直し、方向転換する。 「小僧め、気がついたか。だが、それならばこっちには策がある。ポセイドン!」 ロボットに囲まれながら必死の抵抗をしていたポセイドンの動きが止まる。 「トリステインの連中を攻撃しろ!」 地上でロボットの軍団が組みつくのをやめ、ポセイドンを解放した。 「む。まさか!?」 ポセイドンが指先を森に向けた。 「ポセイドン!」 あわててポセイドンに指示をする。ポセイドンが腕を下ろした。 「ロプロス!」 ヨミが叫ぶ。 ロプロスがバビル2世に襲い掛かる。それを必死の旋回でかわすバビル2世。 「くそっ、ヨミめ。ぼくがあやつるしもべを絞らせない気だな。」 V2号から放たれた高熱線を必殺竜鳥飛びで避ける。 「そして集中力を乱し、その隙を狙ってしとめるつもりか。」 ブルーインパルスのような動きでV2号の体当たりをかわす。 「……そういえばルイズは?」 普通の人間なら気を失うような動きの中で考える。 「もっと丁寧に操りなさいよ!」と怒っていたルイズを。気絶でもしたのだろうか。 だが後ろを振り返ることはできない。振り返っている暇はない。 ゼロ戦がいまのところ落ちずに済んでいるのは奇跡でしかない。普通の人間ならばとっくの昔に消し炭になっているはずだ。 その奇跡を起こしているのは何なのか。バビル2世は、自分の左手で光るルーンに気づいていない。気づく余裕がなかった。 「ちょっと、ごめん!」 突然、後ろで透き通るような声が響いた。ルイズの声だ。 「ルイズ、気絶していなかったのか!?」 「してないわよ。うっさいわね。」 ごそごそと座席の後ろから、隙間をくぐって前に出てくる。 「うわっ。あ、危ないぞ。」 ルイズは器用に前へ移動して、バビル2世の前に座った。その手には水のルビーが嵌められ、しっかりと始祖の祈祷書が握られている。 「ちょっと、これをあの戦艦に近づけられる?」 その言葉を聞き、しばらく黙っていたバビル2世が口を開く。 「エクスプロージョン、か。」 一瞬目を丸くしたルイズが、こくりと頷いた。 「そういやあんた心が読めるんだったわね。わかるでしょ。」 「だがあの戦艦を落として、こいつらが動きを止めるかどうかわからない。それにその魔法の威力も不明じゃないか。」 「大丈夫よ!」 ルイズが叫んだ。 「こういうときは、最後に一発逆転の必殺技が出るものなのよ!」 「そうだろうか?」 「そういうものよ!」 根拠のない自信を主張するルイズ。ルイズの頭の中は伝説で一杯だ。伝説の魔法。伝説の虚無。伝説のブリミル…。 その威力を疑う余地はないのだ。 「たしかに、今はほかに方法はない。それに賭けてみよう。」 覚悟を決めるバビル2世。そして機首をレキシントンに向けた。 「ロプロス!おまえはポセイドンを捕まえて、向こうに行け!」 ゼロ戦を追うそぶりを見せていたロプロスが急ブレーキをかけ、あわててポセイドンへ向かった。 そしてポセイドンを捕まえて、遠くへ逃げるように飛んでいく。 「バビル2世め。とうとうしもべによる攻撃を諦めたな。」 逃げ出したロプロスとポセイドンを見て満足そうに微笑むヨミ。 「よし、ドラゴンとサンダーの攻撃目標をゼロ戦に変更しろ!全精力をかけてバビル2世をやっつけるのだ!」 拳を握り締め、叫んだ。 「バビル2世さえ倒せば恐れるものはない!わしが世界に号令するときがやってくるのだ!」 掴みかかるサンダーの腕を避ける。 風石の力により浮遊したサンダー軍団が加わって、バビル2世を追いかける。 それを必死にかわすゼロ戦。ドラゴンは速度が速すぎたおかげでレシプロのゼロ戦を捕まえるには至らなかった。 だが、サンダーの速度はゼロ戦とほぼ同レベル。むしろやっかいな相手といえた。 ギリギリの操縦をするバビル2世の後ろで、ルイズは詠唱を行っていた。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ 普通なら舌をかみそうなものだ。かまなくても振り落とされかねないのだ。たいしたものだと舌を巻く。 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド レキシントンを盾にして、V2号から逃げるゼロ戦。だが、レキシントンからは散弾砲が雨霰とあびせられる。 「精神動力だ!」 散弾が全て明後日の方向へ飛んでいく。だが散弾は次から次へと襲い掛かってくる。使いすぎればどうなるかわからないのだ。 ベオーズス・ユル・スヴェエル・カノ・オシュラ 精神動力をフルに使った結果、なんとか散弾の嵐の中を抜け切った。だが、その先にはドラゴンが炎を吐き出さんと待ち構えている。 慌てて操縦かんを倒すバビル2世。ゼロ戦が唸りをあげて横滑りしていく。 ジュラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…… 長い詠唱の後、ついに呪文が完成した。 その瞬間、ルイズは己の呪文を理解していた。 あらゆる人間を、ものを、巻き込む強力な呪文を。 選択は二つ。殺すか、殺されるか。破壊すべきは何か―――。 ルイズは、己の衝動に従い、宙の一点めがけ、杖を振り下ろした。 「なんだ……あの光は……」 樊瑞はよろよろと身体を起こす。背中には血が滲んでいるが、それを服で縛って無理矢理止血している。 「まるで……太陽ではないか。」 現れたそれを見て、樊瑞は呟く。 なにかとてつもなく神聖なものを見た気がして、気がつくと樊瑞は再び、地面に跪いていた。 「むう。これは……!?」 残月が叫んだ。突如現れたそれは、ロイヤル・ソヴリンをつつみ込んでいくのだ。 「核……いや、だが、違う……」 ショウタロウが全てを焼き尽くすという、広島と長崎に落ちた恐怖の名を呟く。 「……きれい」 狂気に満ちた瞳で、シエスタは笑った。怖いよ、君。 アニエスは、それを見ながら思い出していた。 「あなたにはしばらく後、祝いの日を迎えんとするとき、転機が訪れるでしょう。南へと向かうことになるはずです。南の地で、光を見るときに、恐れ退く ことがなければ、あなたの悲願を叶える道は開けるでしょう。」 孔明と名乗った男は、たしかにそう言った。 祝いの日……結婚式。 南……タルブ草原。 その予言はことごとく的中していた。 そして、その最後のキーワードが目の前に現れたのだ。 「ダングルテール……」 ギリッと唇をかみ締め、呟く。その顔には、喜びとも怒りとも取れる表情が浮かんでいた。 アンリエッタは信じられない光景を目の当たりにした。突如現れた竜、巨人、そして戦艦レキシントンが光の玉に包まれていく。 上空に突如現れた光の球。まるで太陽のようなそれは、膨れ上がって敵を飲み込んでいく。 ユニコーンがおびえ、首を振る。 「大丈夫よ、大丈夫…」 ドレスを握り締め、呟く。それはユニコーンを落ち着けるためではなく、自分に言い聞かせたような…そんな声であった。 「ぬぅ!」 「あ、あれは……」 ラ・ロシェールに向かう山中。ここまで逃げてきていた二人が同時に唸る。 「見たか。」 「うむ。」 中年は咥えていたものを地面に落とし、足で踏みにじる。出ていた煙が消える。 「間違いない。あれは全エネルギー停止現象……。」 「アンチ・シズマ・フィールドの光……。」 「なぜあのようなものが……。」 うぬぬ、と老人が光の球を睨みつける。 男たちの表情は、光ではなく闇を見たように――冷たく険しいものであった。 前へ / トップへ / 次へ
https://w.atwiki.jp/niconicomugen/pages/760.html
「みんなバカだ!」 「あんな男に騙されて!」 アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』の登場人物、枢木スザク(くるるぎ-)に対する蔑称。 ウナギとキュウリをあえた酢の物の事ではない。これ食ってもいいかな? 上述した「ニーサン」ネタに使われるスザクの元画像はアニメ1期25話のクライマックスで見せた、 彼のアクロバティックなアクションの1シーンが元ネタ。 大きく脚を開きこのまま横回転にキックをする技で、「陽昇流誠壱式旋風脚(ひのぼりりゅうまこといちしきせんぷうきゃく)」(通称「くるくるキック」)という正式名称まである。 物語1期序盤において、主人公ルルーシュは少ない戦力でテロ行為を成功させようと健気に頑張るのだが、 その度にスザクが最新鋭機で現れて作戦をブチ壊していくという展開が続いた。 ロボットもの主人公の定型パターンである「チート臭い新技術が投入された一点物の試作機に乗った天才ちゃん」が、 敵に回ったらどれ程ヤバいかを全力で体現する役目を与えられたキャラと言える。 ルルーシュ曰く「戦術が戦略を上回るなど!!(驚)」*1。 目的を阻む強大な敵が現れる事は物語としてごく普通の展開だが、判官贔屓と言うべきかルルーシュに感情移入した視聴者からは、 「スザクがウザい」(または「ウザいスザク」)⇒「ウザク」と呼ばれ叩かれる事になる。 話が進むにつれ味方側の戦力も増強されていき、彼の無双っぷりも多少マシになってゆくのだが、 それでも普段の偽善者っぽい言動を嫌う者は多く、この罵倒は延々と続けられ、割と定着するまでに至った。 その言動のせいで上司に「その矛盾はいつか君を殺すよ」と指摘されたり、2期では下の画像のようにぶっ飛ばされたりもしている。 「すまなかった!」 「何言ってんだい!! やっていいことと! 悪いことがあるだろう! いい人気取って、簡単におしまい!? 治まらないんだよ!! 紅月カレンを安く見るな!!!」 「フンッ…抵抗しないところが、ホント腹立つ」 + 一応、言っておくと 尤もスザクは、作中で主人公と敵対するという、ある意味損な立場な上に行動に迷う事こそ多かったものの、 高潔な理想を持ちそれを実現するために、敢えて日本人としての誇りも何もかも捨てて、 ブリタニア軍の「軽火器以外の武器の所持」すら認められていない捨て駒部隊に入隊、 ブリタニアを「中から変えていく」事を目指した志の高い人物である。 無論その生き方が、あらゆる方面から後ろ指を差されるであろう覚悟をした上でのもの。 実際『コードギアス』という作品では、「力で変えようとするルルーシュ」「法に則って変えようとするスザク」の、 どちらも「正しくもあり、間違ってもいる」という描かれ方をされており、 決してルルーシュが正しくスザクが間違っているとも、その逆にも結論付けられた事は無い。 むしろ「主人公の敵か味方か」で視聴者からの印象が大きく変わるこのアニメにおいて、 彼はその煽りを最も強く受けたキャラの一人と言えるかも知れない。 とは言え、彼の言う法とは「力こそ正義」が国是の侵略者が決めたもののため、説得力が薄いのが問題。*2、 それを中から変えるために敢えて軍に入ったとはいえ説得力の薄さはどうにもならず (結局、ナイトオブラウンズと言う将軍以上の地位を得ても変える事ができず*3、ルルーシュ即位後の盛大な茶番に付き合うしかなかった)、 叩かれる要因になった感は否めない……というか人によっては言動(所謂きれいごと)と相まって更に薄くなったと感じるかも。 言い過ぎな気もするが、「勝てば官軍」とは良く言ったものである。 + その他細かい設定 現在のような性格に至る理由は幾つかある。 その際たるものとして日本とブリタニアが戦時中、徹底抗戦を主張していた当時の総理大臣であった父ゲンブを刺殺 (ここら辺の親子の確執、スザクが父を刺殺に至った経緯は、小説版や漫画版等で色々解釈されているが、 大抵ゲンブは本当は保身のために日本を売る気満々でしたという流れになっている)。 幼いスザク本人としてはこれで「平和的に戦争が回避できる」と思っての行動だったが、 その後どういう惨状になったかは説明するまでも無い(ただし、スザクがゲンブを殺していなかったらもっと酷い事態になっていた)。 その結果、「間違ったやり方で得た結果に意味はない」という考えに至り、結果より過程を重んじるようになる。 そして様々な偶然や要因が重なり、新型KMF・ランスロットのパイロットとなる。 ルルーシュとは彼が人質として日本に送られてきた頃からの親友。 ひょんな事から知り合ったブリタニア皇女の一人であるユーフェミアの計らいで編入したスザクは、 身分を偽って入学したルルーシュと7年ぶりに再会を果たす。 最初は「ゼロ」と「白兜(ランスロット)のパイロット」というお互いの素性を知らなかったため、 学園ではお互いに友人同士として接していたが、戦いの中でまずルルーシュがスザクの事情を知った。 そして、平和的に日本人の人権を確立しようとしていたユーフェミアに対してギアスが誤作動、大惨事を招く事になる。 彼女の騎士に任命され、彼女の理念に共感していたスザクは直後に真相を知らされる。 ルルーシュはやむなく彼女を殺害し汚名を着せざるを得なかったのだが、この事件が彼らの決定的な対立を生み出した。 故に、2期になってからも対立を続けていたが、ある戦いをきっかけにしてお互いに1つの答えを出す…。 彼らが選んだ結末は、ルルーシュの項目のネタバレを参照。 なお、このスザク、至近距離からの自動追尾式マシンガンの斉射を壁を走って回避しつつ蹴り壊したり、 同じく至近距離から撃たれた拳銃弾を難なく躱し、急接近して次を撃つ前に拳銃を叩き落すという、 化け物じみた身体能力を持っている。そのため、ルルーシュから「体力バカ」「反射神経バカ」と揶揄されたりしている 更に終盤では、ルルーシュにギアスでかけられた「生きろ」という命令を逆利用し、 わざと命の危機に陥る事で限界以上の力を引き出し、「未来予知」のギアスを持つ強敵を、 「予知されようと反応できないスピードで攻撃する」という力技で瞬殺している。 彼が主人公のスピンオフ漫画である『反攻のスザク』ではKMFが存在せず、代わりに強化スーツ「ランスロット」を着て戦うという設定になっている。 ファンやスタッフからは通称「ランスロット仮面」と呼ばれ、『R2』本編にも学園祭の着ぐるみとして客演した事もある。 そしてこの項目にも掲載されている彼のコラ用画像だが、 これがまた中々シュールなものであり、一目見たインパクトは計り知れない。 勿論ニコニコ動画では爆発的な人気を博し、MUGENキャラ化したのはその流れを汲んでの事だと思われる。 + 外部出演 ロボット作品のクロスオーバーゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズには、『第2次スーパーロボット大戦Z 破界篇』で初参戦。 OPデモでは当然のように他作品のスーパーロボット達と共闘しているが、『破界篇』の時点では数回のスポット参戦止まり。 再世篇ではやっぱりOPデモで登場し、終盤で正式参戦する(ifルートの方が使える期間は遥かに長い)。 なお、ifルートだとナイトオブゼロが斜め上過ぎるキャラに命名される。 さらに続編である『第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇』にも参戦が発表……というか、案の定PV第一弾でルルーシュを差し置いてギアス代表になっていた。 『第3次Z』では気力130以上で発動する「ギアスの呪縛」を、エースボーナスを獲得する事でマップ開始から常時発動状態になる(底力Lv9+攻撃力1.1倍)。 …『第2次Z再世篇』のエースボーナスと同様の効果なのだが、その際ネットラジオ内で「一番使えないエースボーナス」と杉田智和氏からぶった切られている (ボーナス未修得でもマップ開始時に熱気バサラの「熱血+突撃ラブハート」で十分発動できるため)。 後の(なお下記の『OE』よりも後に出た)『X』でもこのエースボーナスは変わらないどころか、 スザク自身が自前で気力を上げる手段を手に入れたため、ある意味さらに微妙な事になったと言えなくもない。 余談ながらこの件で言い杉田言いすぎたからなのかは定かではないが、 「だったら気力が上がったらええんやろ」とばかりに同氏が担当するスパロボオリジナルキャラの『第2次OG』でのエースボーナスが、 「HPが30%を切ると気迫(気力大幅アップの精神コマンド)がかかる」という発動させようにも条件が面倒臭いものにされてしまった (単純に攻撃を食らえば良さそうに見えるが、担当機がHP回復や分身持ちであるため)。 後に発売された『スーパーロボット大戦OperationExtend』では敵対した後正式加入。 ……しかしその敵対する時にも固有スキル「ギアスの呪い」を持っており (攻撃・命中上昇、敵の攻撃を完全回避、敵の命中率が高いほど発動率上昇)、 同作は精神コマンド「必中」の大幅な弱体化とギアスの呪いの発動条件からスザクに回避される事が多発し、 普通に敵としてウザいから再びウザク呼ばわりされる事も… (必中が命中率の底上げをする効果になっているため必中を使うと逆に発動率を上げてしまう)。 ちなみに今回はR1終了直後にルルーシュやスザクたちコードギアス組が別世界に飛ばされてきたという設定のため、 あくまでゼロやカレンとは一時休戦という形で加入する、3章で加入するため使用可能な期間は再世篇よりも遥かに長くなっている。 ソーシャルゲーム『スーパーロボット大戦Card Chronicle』にも概ね似たような扱いで登場……するのだが、 本作ではブリタニアの日本侵略が関東周辺に留まり、自軍が現在進行形の侵略を迎え撃つ形になっているため、 ブリタニアに与しているスザクが実質的に擁護しようのない売国奴になってしまうという少々笑えない状況になっている。 『スーパーロボット大戦30』では『復活のルルーシュ』設定で参戦。条件を満たすと外伝に登場したアルビオンゼロで早期加入するという隠し要素もある。 エースボーナスが「初期気力増加(その結果出撃直後から「ギアスの呪い」状態になる)+回避力アップ」に変更され、 『Z』シリーズや『X』の要素を残しつつ他のスキルの発動もサポートできる有用なボーナスになった。 同作では「ギアスの呪縛」と通常の「底力」が重複するようになっている事に加えてデフォルトで「極」を所持し、 乗機にはバリアも備わっているため、習得させるスキル次第ではほぼ不死身と化す。これで攻撃面でも無双が出来たら完全にバランスブレイカーである ちなみに前述した杉田氏の持ちキャラの一人もDLCで追加参戦するのだが、 こちらは条件こそ緩和されたもののエースボーナスは『第2次OG』から据え置きであった。もう許してやれよ MUGENにおけるウザク 夫氏によって製作されたキャラが存在。何故スザクやランスロットではなくこの形で作ったのかは氏のみぞ知る かつてはフリーチケットシアターにキャラデータが置かれていたが、閉鎖後はyahoo!ボックスへ公開の場を移している。 一番上の画像のスザクがその独特なポーズを微動だにせず維持したまま縦回転や横回転などの攻撃をするというとんでもないキャラ。 性能は(製作者の頭が狂ってる的な意味で)狂キャラのテンプレ。 選択されてしまったが最期、超威力の多段攻撃や強力なアーマーを始めに 理不尽な大きさ・理不尽な挙動・理不尽な強さと、病院行きを勧めたい惨状が繰り広げられる。 「ウザいは褒め言葉」とは言うがこのウザさは正直尋常ではない。 ウザクUZEEEEEEEEEEEEEEE!!! なお、いくら内心ウザいと思っても「ウザク」というのは明らかすぎる蔑称であり、ファンには当然不愉快な言葉である。 皆が皆スザクがウザくてしょうがないわけでもないので、実際のスザクに対して用いるのはあまりお勧めできない。 空気を読む能力、これ大事。分かったら空気読め! しかしながら、このMUGENキャラに対して「ウザク」の名を用いる事には何の問題も無い。正式名称ですから! ちなみに、声は『FINAL FANTASY VII』のクラウド・ストライフや『ロックマンX8』以降のエックス、 『ジョジョの奇妙な冒険・黄金の風』のブローノ・ブチャラティ*4、『金色のガッシュベル!!』の高嶺清麿、 『NAMCOxCAPCOM』のレッドアリーマー・ジョーカー、『魁!!クロマティ高校』の神山高志、『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』の一文字號、 平成版『サイボーグ009』の009・島村ジョー等、MUGENにいるキャラだけでも多数の役を演じている櫻井孝宏氏。 そして、柊・竹・梅氏が(一体、何を血迷ったのか)AIとボイスパッチを製作。J.J氏のサイトで代理公開中。 しかし、音源はブチャラティとエックス(『X8』)の台詞のみで、スザクの台詞は一つも使われていない。CV櫻井と言った所か? ボイスパッチ付きのウザクの戦闘例(3 00~) 出オチ注意(0 20~) 以下に主にウザクが発するセリフを挙げる。 「覚悟はいいか?俺はできてる」 (※初戦のイントロ時の台詞。音源はブチャラティ) 「俺がこうして立っている限り…望みはある! 」 (※二戦目以降のイントロ時の台詞だが、これはエックスの台詞である) など、ウザいという褒め言葉が送られる動作に反して無駄に格好良い声で無駄に格好良い発言をするので、ウザさに磨きがかかっている。 サイズを見やすい大きさに調整し、火力も五分の一に調整されているが、相変わらず性能は凶悪で、 AIが入ったために自爆する確率も減った。 アーケードやサバイバルモードでウザクと対峙してしまったプレイヤーは絶望を通り越して笑うしかない。 また、火力が抑えられたせいか、相手の体力次第ではその自爆技(即死攻撃ではない)が命中しても仕留め切れずに自滅する事もある。 プレイヤー操作(7 53~、自滅は9 05~) 「ふざけるな! 」 KO時の台詞だが、これもエックスの台詞である。 彼の断末魔を聞いた者は口を揃えて「お前がふざけるなwww」と叫ぶ。 相手が悪かった場合は「今回ばかりは同意」と同情する声や「気持ちは分かるがお前もどっこいどっこいだ」と突っ込みが入る。 また、喋れるようになった事で一部のキャラクターには特殊イントロまで用意されている。 「貴様の狂った野望を、ここで終わらせる! 」 ブリタニア皇帝と同じ声の人用の特殊イントロ時の台詞だが、これもエックスの台詞。 元がエックスの台詞なのでシグマやVAVA、ゲイトに対しても言います。あとハイマックス(CV 若本)。 なお、残念ながらブリタニア皇帝は消滅直前時のサイコクラッシャーくらいしか戦闘描写がないためか未だMUGEN入りしていない。 「ゼロ!無事だったんだな! 」 対ゼロ、及び同名の別人達用の特殊イントロ時の台詞だが、 これも元がエックスの台詞なので、本来はこっちのゼロに(ry 更にはこのゼロにまで対応しており、相手側もキレてゲジマユになる特殊イントロが備わっている。*5 しかし、ウザクにボイスパッチを使わないとルイズ側の対応が不自然になる事から、最新版では特殊イントロの記名からルイズの名前が削除されている。 ちなみにこの台詞を言わせたいがためにボイスパッチを作った事がAIの説明書で明かされている。 この他、へちょ氏のエックスにもボイスパッチを作っているが、 中の人ネタや 某イレギュラーなMADシリーズ のネタは使用されていないまともな内容となっている(追加する予定はあるらしい)。 専用ステージ? 出場大会 + 一覧 シングル 即死当身なしトーナメント デススター2nd未満トーナメント 最強女王決定トーナメント 早擊勝負!!LIFE只有1的死鬥大會 電波的な彼女彼氏他のトーナメント 【狂100人 VS 神1Pカラー50人】神々への挑戦トーナメントII 強以上上限無しトーナメント【強~神クラス】 極・地獄門リーグ 「お前ら、真面目にやれ!」シングルランセレ大会 タッグ 神一歩手前ランセレタッグトーナメント 遊撃祭 狂+神キャラタッグトーナメント 第2回遊撃祭 タタリフェスティバルッ!! 春の狂キャラタッグ大会 チーム 凶悪キャラダブルストーナメント 自爆しても狂・神大会~並強の逆襲~ その他 大体ランセレ 博麗霊夢争奪戦 全員集合ランセレパーティバトル 霊夢争奪戦第二幕 大乱闘!強以上際限無しトーナメント【強~神クラス】 マシロ ミスト軍vs深淵蛟&CC蛟軍 メジャー&マイナーごちゃまぜ狂キャラ大会 本気ナイト基準狂キャラ広ランクランセレ祭 狂クラス 激闘以上殺戮未満 シングル大会 【狂中位・下位】 バランス崩壊!弱者に虐殺・強者に罰を!大会 自爆しても狂・神大会 ROUND3 北斗四兄弟前後!!世紀末!!最狂チームトーナメント 更新停止中 神々とキャッキャウフフトーナメント(仮)【凶悪】 ギリギリ格ゲー?チームトーナメント【本気エルクゥクラス】 狂下位前後ランセレバトロワ大会 大乱戦!!強以上極限0トーナメント【強~神クラス】 削除済み 僕の夢は魔物使いトーナメント 上限ルガール2nd12P シングルNo.1決定戦 出演ストーリー 咲夜の奇妙な冒険(会話のみ) 仮面ライダーMIOMEGA プレイヤー操作 ブリジットと遊撃の旅( part169 ) *1 戦略は戦術より大局的なものを指す。 詳しく説明すると、本隊と足止め部隊が出撃して、足止め部隊が白兜相手に全滅(白兜の戦術的勝利)しても その隙に本隊が目的を達成すれば、ルルーシュにとっては戦略的勝利のはずが、 足止め部隊をどころか本隊まで白兜一機に全滅させられたので戦略も糞も無ぇよ!みたいな事。 なお、白兜とは別に迎撃部隊を用意されて失敗したのなら、単に「戦略で負けた」だけである。 *2 たとえば皇帝となったルルーシュを最終話で暴君呼ばわりした皇女コーネリアは、 序盤の人質立て篭り事件では(「テロリストに譲歩しないのは国際常識」とは言え) 最初から人質ごと皆殺しにするつもりだった(彼女には人質になるような間抜け(無能)を助けようとする思考は無い)。 しかし人質の中に最愛の妹ユーフェミアが居るとの報告を受け中止。 その隙をルルーシュに突かれて黒の騎士団を正義の味方としてデビューさせる機会を与える事になってしまった。 *3 一応、ナイトオブラウンズの一員となったスザクは、 「ラウンズ最高位のナイトオブワンになれば植民地をまるまる一つ拝領されるので、その際に日本を希望、 ナイトオブワンの名の下で日本人の地位向上をさせる」 と言う計画を持っていた。 ……でもそれって、「日本人はスザクの財産だから他のブリタニア人には手を出させない」と言うだけで、 とても地位向上とは言えないんじゃ?それにスザクが失脚どころか老衰で死んでも元の木阿弥である (ナイトオブラウンズは出自は問わない(ついでに性格も問わない)実力主義だからこそ「名誉ブリタニア人」のスザクでも就任できたが、 逆に言えばスザクに子が生まれてもナイトオブワンどころかラウンズになれるかも怪しい。 そして、ラウンズでなければスザクは名誉ブリタニア人と言う名の二級(1.5級?)市民である)。 なお、名誉ブリタニア人とは「ブリタニア人の中でも名誉ある人物」と言う意味ではない。 「被差別民族だが功績(スザクの場合は(表向き)父親が無血降伏した事)により特例でブリタニア人と同等とみなす」であり、 悪く言うと「ブリタニア人扱いしてやるからありがたく(名誉に)思え」と言う事。 余談だが、ラウンズにはナンバーが振られているもののナイトオブワンを除き、元ネタに従い上下関係は無いそうな (「円卓の騎士」の「円卓」とは、上座下座が存在しない円卓を囲む者は皆平等と言う意味である)。 *4 ブチャラティも「組織のやり方に疑問を抱き、中から変えていこうと覚悟する」という点ではスザクと共通しているのだが、 作中序盤でジョルノに「いい人」と言われており、後に共闘もするため、 スザクとは逆に偽善者呼ばわりや吐き気を催す邪悪として扱われる事は皆無。 そもそもブチャラティは善人ぶっては居ないため、敢えて言えば「偽悪」の方が近い。 *5 櫻井氏は『ゼロの使い魔』にてギーシュ・ド・グラモン役として出演しているが、 作中でギーシュがルイズをゼロと呼んだ事は一度も無いので、中の人繋がりではなくゼロ繋がりのネタだろう。 このボイスパッチと特殊イントロの影響か、大会やストーリー動画でルイズが出てくると、前記の台詞を使ったコメントをよく見かける。 なお、初期のルイズに対する「ゼロ」呼ばわりは公式で蔑称扱い(「魔法の才能ゼロ」と言う意味)だったが、 後に「虚無(ゼロ)の魔法」の使い手としての称号になったので、後期では蔑称ではない。 取り敢えず空気は読んで使う事。
https://w.atwiki.jp/kinotakelegend/pages/194.html
3/2 集計班編 496 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 31 23.32 ID g4rBid/do [50/67] 2013 3/2池袋オフ会。参加メンバー:参謀、抹茶、791、椿、埼玉、斑虎、集計班それは、サイゼリヤで15:00~19:00まで行われた第一次オフ会、そして本来の集合場所であるカプリチョーザによって19:00~23:00までおこなわれた第二次オフ会、総勢7名、二回から成る伝説のオフ会である。※WARNING※このオフ会レポは、一参加者である集計班の所感によるところが大きく、また途中箇所では、ある個人に対して言葉がきつい箇所が散見できる。また、一部描写や参加者が発した言葉等が脚色されている箇所も点在する。しかし、あくまでこのレポは事実を基につくられたもので且つ、個人を誹謗中傷することを目的としたものではないことをご理解いただけたい。今回貼るのはサイゼリヤで行われた第一次オフ会レポ。第二次オフ会レポはまた後日に。ではでは。 499 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 34 36.50 ID g4rBid/do [51/67] 書き方のせつめい : 日付、時間、場所、題目、2行目以下感想・3/2 15:30 サイゼリヤ 「伝説の集まり」17時集合のはずなのに、なぜかもうすでに三人集結していた。な、なにを言っているかわからね(ry・3/2 15:00 池袋 サンシャイン60通り 「選ばれし暇人たち」なぜ集合時間の2時間前にもうすでに3人も集合しているのか。元はといえば、個人の用事が済み、下見がてら池袋に2時間近く早く来たら同じような輩がもう二人いたのです。それだけの話だ。みんな暇なんだn(ryまず私は暇人その1の791さんと合流することになりました。なぜか全身の出で立ちが真っ黒という私がマツキヨの前で791さんと合流。ネタバレすると、その300m先に暇人その2の椿さんがいます。791さんと一緒に椿さんとの合流地点まで歩いている際、空を見上げた791さんは寂しそうにポツリと呟きました。「ああ…今日は晴れてるね」”もしオフ会当日に雨が降ったら抹茶は外で土下座しなくちゃね!”後から聞いた話ですが、チャットのPMを使って、791さんは抹茶にこのような言質を取っていたそうです。嬉々とした表情でキーを打ち込む791さんが目に浮かびます。思えば、この時から”黒”791の片鱗はみせていたのです。今思えば複雑な気分です。そしてカプリチョーザの下見に来ていた暇人その2の椿さんとも無事合流。そして3人の暇人は、近くのファミレスで時間を潰そうかという話になります。 501 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 36 27.21 ID g4rBid/do [52/67] ・3/2 15:50 サイゼリヤ 「3(暇)人集まれば文殊の知恵」まず3人席に腰掛けますが、後々の人数増加で、席は事あるごとに移動することになります。3人はドリンクバーのみを注文。居座る気満々のオーラを発したまま、私たちのオフ会はスタートしました。椿さんは少し話してみて、理知的なお方だとわかりました。会議所のイメージ通りです。そして変態でした。会議所のイメージ通りです。椿さんはおもむろに携帯を取り出すと、いろいろな地を周った際の列車や駅名などを見せてくれました。まず鉄ちゃんその1です。その際、椿さんは抹茶のすみかである新山口にも訪れたと誇らしげに言います。「抹茶さんのいる近くまでいったんですよ。(新山口の写真)ほら!ここ、なんもないですね!」悪気のない笑顔で語る椿さん。写真には本当になにもありませんでした。 504 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 38 51.15 ID g4rBid/do [53/67] ・3/2 16:10 サイゼリヤ 「ツバキ節」”ツバキ節”は止まりません。やはり私の目にくるいはなかった。彼はダークホース変態でした。「今日はいちおうこれだけ持ってきたんですけど…」ごそごそとカバンの中を漁る椿さん。おそらくネタをいろいろ仕込んでいたに違いありません。そうとしか思えない。椿さんはバッグの中からエネループ×16をテーブルに広げます。しかも、一本ずつ色が違う。「こいつは(良い意味で)とびきりやべえ奴だ…」791さんと顔を見合わせます。どうやら毎年発売されているエネループ限定色をすべて買い集めているらしいのです。それを丁寧にケースに入れて持ち歩いているのです。さながらクレヨンセットでした。「まだ家に8本あるんですよ!全部で24本なんです!」目を輝かせた彼はそこを繰り返し強調していました。強調する箇所が違うのではないか。私はふと感じた邪念を振り切り、ドリンクバーの海へと流れていきます。 506 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 40 58.33 ID g4rBid/do [54/67] ・3/2 16:20 サイゼリヤ 「振り返ればヤツがケツ振ってる」「参謀がくる!」791さんや椿さんの巧みなスレリサーチによって(ちなみにその時私は自分の携帯の充電の心配をしていました)そういった報告がされます。ちなみに参謀レポによると、参謀はその時乗り鉄根性をみなぎらせ、西武線に乗ろうとしていた最中だとか。西武線に乗りなさいよ。そして参謀以外にも続々と寄せられる皆さんの動向。その時、★88の 639に引きこもりトリオ筆頭の¢くんが各人の動向をまとめた情報を掲載。3人で、引きこもっている¢くんに対して感謝の念を伝え合います。思えば大戦も4年、¢くんともネット越しですが長い付き合いです。¢くんのなにげない優しさに思わず涙がでかかるものであります。思い出されるこの4年…ルール変更、DB、成りすまし、卑猥なおこないの数々…一瞬で涙がひきました。ありがとう¢くん。 509 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 42 05.05 ID g4rBid/do [55/67] ・3/2 16:40 サイゼリヤ 「危険が危ない!」先程からどうでもいいこと(失礼)ばかりに文章を割いていますが、我々は参謀到着まではどのような状態化にあったのか。3人席にいた私たちですが、参謀到着にともない791さんの大人の交渉によって4人席へと移らせてもらうことになりました。マジ791さんぱねえっす。私は所謂”自分語り”できるほど富んだ人生を送っていなかったので、ちゃんと皆さんと話せるか心配でした。しかしそこは椿さんと791さん。椿さんの興味をそそる語りに、絶妙な合いの手を入れる791さん。私も一緒に合いの手を入れる。おおよそこのような推移だったと思います。話題は椿さんの鉄道談義、謎のエネループクレヨン事件、大戦の今昔話題、様々でした。なぜ、ここをダイジェストでお送りしているかというと、覚えていないからです。私は極度の緊張状態にあったからです。しかたないね。 510 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 44 17.04 ID g4rBid/do [56/67] ・3/2 16:45 サイゼリヤ 「本丸あらわる」第一回オフ会時に参謀とアドレス交換をしていた私は、参謀と連絡を取り合います。紆余曲折ありながらも参謀と合流。登山家みたいなリュックと、腰には綾鷹を携えて、参謀はアウトドアマンそのものでした。参謀はうれしそうな顔で語り出します。語った内容は、参謀レポにあるとおりですが、とりあえず参謀の声がでかい。参謀の声がよくひびく。参謀、あなたは気がついていたでしょうか。参謀のすぐ右隣に座る子連れのおっさんが参謀の声の大きさに驚いて、こちらにチラチラ視線をおくっていたのを。参謀のスベらない話に爆笑する一方で、私は内心ヒヤヒヤしていました。・3/2 16:50 サイゼリヤ 「これが最初のディープインパクトォ!」参謀はすごいモミアゲでした。いや、2年前も参謀とは会っていますから、私はそこまでの衝撃はなかったのですが、お二人はすごく驚かれたようで、特に791さんは「参謀のモミアゲすごっ!モミアゲすごっ!」参謀の顔を見てひたすらすごっ!って言い続けていたと思います。それほどまでにインパクトがある参謀の風貌。思えばいま私の周りに集まっている面子はどの方もみんな”濃い”のです。椿さんは前述のとおり”濃い”、791さんは、本人が語るところによるとオフ会は初めてじゃあないようで、このような集まりは慣れているようでした。それだけでなく後々語ることになりますが、裏の顔もこの時はまだ見え隠れしている時で”濃い”。そして参謀はとりあえずモミアゲが”濃い”。たとえるならば、全員が覇王色全開の場面に、ひとりヘルメッポが迷い込んだようなものです。マジ消し炭になって死ぬんじゃないかと心配でしたが、その時救いのメッセージがスレに書き込まれます。 512 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 46 17.04 ID g4rBid/do [57/67] ・3/2 17:10 サイゼリヤ 「同じ鴎のよしみで」斑虎さんがサイゼリヤに合流するというのです。斑虎さんとは同じ野球の贔屓球団を応援していることもあって、私が勝手に妙な親近感を覚えていたのです。さっそく迎えに行く準備。その私の隣で「俺が目印だ」と言わんばかりに(実際に言ってました)、参謀も颯爽と準備。二人で店を出ます。ハツラツとしながら階段を登り始める参謀。参「よっしゃ!上(地上;サイゼリヤは地下)で待とう!半袖で待てばわかるやろ!」集「そうですね」斑「あ、参謀だ」この間、僅か数秒の出来事である。実際は斑虎さんと参謀が階段ですれ違い、一瞬全員が固まって、斑虎さんが小声で、しかし確信を持って、参謀に話しかけたという経緯だった気がします。ともかく斑虎さん、無事合流。斑虎さんは私の思っていた以上にコミュ能力が高く、なぜか私が戸惑いました。たとえるなら、すごい強打者を獲得したと思ったら、ある日突然、神のお告げを聞いたと会見を開き契約金だけもらって国に帰ってしまった時のような、そんな絶望感を味わいました。 515 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 48 08.11 ID g4rBid/do [58/67] ・3/2 17:00 サイゼリヤ 「メキシコ伝統のお酒ではございません」話が前後してしまいますが、私は参謀から”関西の洗礼”をうけました。所謂ドリンクバードッキリ。皆さんも一度は体験されたでしょうか。私は参謀から白く透き通った液体を渡されました。お?白鶴まるか?くっそつまらない小言を呟きながら飲む私。謎の白い液体の正体とは!?(迫真参謀「シューさん、その水、うまいか?」集計「まずい!もう一杯!」次の瞬間、参謀の鋭いツッコミによって私の左肩はクラッシュ。参謀「そこは”水ですね”やろッ!」バシーン!!そういえば、そんなネタがあったな。知らずに違うネタで返しちゃったぜ。参謀「今日はみんなとは友だちモードやから絶対に敬語は使わへん。ツッコミも普通にやるでー」その時の私は、本場のツッコミをくらい嬉し半分、帰る頃までに私の肩は無くなるんじゃないかという恐怖半分でした。 519 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 50 35.85 ID g4rBid/do [59/67] ・3/2 17:20 サイゼリヤ 「抹茶を囲む会(※抹茶抜き)」斑虎さんは諸般の事情で、オフ会の直前までスレを見られなかったそうです。突然オフ会の存在を知りさあ大変。そして「俺も行くッ!」と、駆けつけたらしいのです。なんという行動力の高さ。絶望した。そのため、斑虎さんはこのオフ会の目的を知らないようで、「抹茶に聞いてみればいいよ」という誰かのアシストによって斑虎さんは抹茶の本性を後で知ることになります。絶望の味は残しておけばおくほど味が濃くなるものだぜ…そして、抹茶抜きで、抹茶の話題になります。「抹茶くんは本当になあ…」すべてを語らずともこの一言で全員が納得してしまいます。参謀「抹茶は落ちるところまで落ちる感じや。底がないんや」椿「抹茶さんをスカウターで計測するとマイナスにふれる」抹茶はまだ3段階変身を残しているという話になり、暗黒面の帝王だという話にもなりました。抹茶くんだけでお話続くんだから、これはすごいことだよ。この時、すでに座席は7人用の机に移っています。お隣はJK集団。こちらが真面目な顔して「参謀がさあ~」とか「抹茶てやっぱりあのバッグなのかな」とか話していた姿はさも奇妙に見えたことでしょう。あと、良識度の話もこの辺りでチラリと出た気がします。抹茶の良識はめちゃくちゃだ。あんな抹茶も、791さんが来る前までは良識枠だったんだよと語ります。791さんだけが良識の星だね、とその時私は791さんに語った気がしますが、後から思い返すとそれは間違いでしたね。ごめんなさい(テヘペロ 527 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 53 10.89 ID g4rBid/do [60/67] ・3/2 17:50 池袋駅東口 「嘘じゃないさ ウブじゃないさ 春の抹茶はひだまりー」抹茶くんの”駅から離れると迷子になる”というか弱い救難信号をキャッチ。参謀と私とでピックアップしようという話になります。その際、埼玉さんも池袋に到着していたのでまとめて会おう!という話になります。男前参謀、自分自身が目印になるべく半袖を決意。この時、池袋6℃。池袋駅への道中、迷子の抹茶のピックアップ方法を参謀と話し合います。参謀を肩車で乗せて二人でトーテムポールみたいにしたらどうか、参謀がボラード(道路と歩道の間にある杭みたいなアレ)の上をつたって抹茶へ近づいていったらいいんじゃないか、いや、でももし抹茶が同じようにボラードの上をキャッツみたいにつたって歩いてきたらどうするんだ、ぶつかっちゃうだろ。そんなバカなやり取りを、わりと私は熱心に話し込みながら池袋駅へと到着。ここから10分近くかけて、溢れんばかりの人混みの中から抹茶、埼玉さんを探すことになります。集「参謀、とりあえずそこで仁王立ちしていてくれ」半袖魔神を西武百貨店の入り口の前に立たせて、周りでゆのバッグを持っている人をひたすら探す私。途中、ちらちらと振り返ると、あら不思議。この人混みの中、参謀を一発で判別できる。参謀マジ優秀。結局見つからずに参謀と再度合流。参謀「そろそろ本気で寒くなってきた、風邪引いてもしらんぞ」集計「へぇ」気にせずに捜索を続けます。風邪ひいたら全部抹茶のせいにすればいいんだよ。たしかそんなことを参謀と言い合った気がします。なんでもおしつけることができる抹茶くんマジ優秀。抹茶君とはそれから程なくして合流。嬉しそうに携えたゆのバッグを見せてくれた彼を見て、なぜか安心してしまいました。 530 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 55 03.26 ID g4rBid/do [61/67] ・3/2 18:00 池袋駅東口 「作戦名:「さんぼうにまかせろ」+「たてにさせろ」」それから埼玉さん探しが意外に難航。ゆのバッグを上に掲げてタオルみたいに振り回せば見つけやすく成るんじゃないかという案もありましたが、抹茶が拒否。チッ「救急車の前で待つ!」と書き込んだ5秒後に救急車が発進するなど、いくつか衝撃的な出来事もありながら、無事埼玉さんと合流。埼玉さん、男前でした。そして語尾にたまはつけていませんでした。残念たま。4人でサイゼリヤへ戻る途中では、auショップのお兄さんと参謀でこんなやり取りも。店員「(我々のグループを見つけ、一番目立つ参謀に)そこのお兄さん、iphoneどうですか!」参謀「わいもう持ってるねん!(自分の腰の携帯を指さし)XX(機種名)やん!」店員「それはどうも!今後も大切に使ってね!」我々はその流れるようにスムーズなやり取りに感心するとともに、今後なにかあったら全部参謀を盾にしてやり過ごそうという決意を新たにします。マジ参謀優秀。 533 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 57 07.18 ID g4rBid/do [62/67] ・3/2 18:20 サイゼリヤ 「抹茶「倍プッシュだ…!」」抹茶くんが上座という名の下座に座り(抹茶レポ参照)、ついに暇人7人が集結。かつてこれほどの規模のオフ会があっただろうか、いやない(断言)抹茶くんの全身武装、ここ最近の振る舞いから、ある程度は覚悟していただろう斑虎さんも、そこで初めて抹茶くん東京入りの真実を知ります。抹茶くんの口から語られる衝撃の真実。抹茶くんウキウキの語りで、7人もいるテーブルはさながらVTRあけのアンビリーバボーのスタジオのように水を打ったように静まり返り、あとには数人の乾いた笑いと少しわざとらしい驚愕の声があがるばかり。抹茶君の孤立無援っぷりがいよいよ鮮明になります。抹茶「あ!上着もひだまりカラー(?)にしてくるの忘れた!忘れてたよ!」791「もういい…もう…休めっ…!休めっ…!抹茶っ…!」791さんの説得むなしく、その後、抹茶はますます爛々と目を光らせていくことになります。 538 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 22 59 54.47 ID g4rBid/do [63/67] ・3/2 18:40 サイゼリヤ 「Sorry,this site is Japanese only...」それからいろいろなことを話した気がしますが、正直あまり覚えていないのです。極度の緊張状態に(ryとりあえず印象に残っている会話は「参謀の日記帳」です。一時、パー速スレは過疎に過疎り、参謀が「今日はXX日、今日は~の日です」というさながら時報のようなアナウンスを最後にその日の書き込みが途絶えるといったことがしばしばありました。その頃のことを思い出し、苦い顔で参謀は述懐します。「あれな、書いていたのはいつも通学中の電車を待っているときやねん。自転車で駅向かって、駅で友達と急行待ってる時に携帯で”今日は家電の日”とか調べてそれを書いてたん」一時は参謀のブログになっていた本スレ。その参謀の頑張りを誰も見ていなかったのか…?いや、見ていた。少なくともこの二人は。抹茶&集計「いやあ、参謀毎日がんばってるなあと思ってみてました」参謀「なんかコメントしいや!」顔を見合わせる畜生二人。抹茶「いや、毎日朝(決まって8:30に書き込まれていた)、参謀の書き込みを見て、”う~ん!(ノビをする)今日も爽やかな1日が始まる!(PC閉じる)”てやってたの」参謀「しばくぞ!」参謀の書き込みで爽やかな1日を送れていた私たち。コメントを書く努力は怠たりましたが、決して参謀の努力を忘れることは怠らない。私たち集計班と抹茶は参謀を全力で応援します!今の話で深イイレバーがもらえること間違いなし! 542 名前:きのこ軍 集計班 曹長†[sage] 投稿日:2013/03/10(日) 23 04 10.83 ID g4rBid/do [64/67] ・3/2 19 00 サイゼリヤ 「第一部EDテーマ:抹茶は萌えているか」そして時間はあっという間に19時。移動のお時間です。斑虎ちゃんは残金不足のために、このサイゼリヤオフ会でおさらば。今度はまた球場で僕と握手しよう!そして私たちは第二次オフ会の開催地となるカプリチョーザへと歩を進めることになります。死の行軍。それは我々を夢のような時間へと招待する手招きなのか、それとも空けてはいけないパンドラの箱を迷いなく空ける悪魔の誘いか。第二次オフ会の開始は刻一刻と迫っているのでした…(NHK風)第一部 終了第二部へとつづく
https://w.atwiki.jp/zero0901/pages/157.html
22 32 (GM) SW2.0キャンペーン“黒と白の黙示録” 22 32 (GM) 第1章『節制なる帝都の深奥から』第7回 22 32 (GM) 22 32 (GM) 22 32 (GM) 22 32 (GM) 22 32 (GM) ★帝国歴31X年8月2日、昼過ぎ。“自由への翼”亭 22 32 (GM) 22 32 (GM) 22 33 (GM) 昼食タイムが終わり、全員くつろいでいる所ですね 22 33 (GM) 22 33 (アメリア) まったり 22 33 (シル) のんびりー 22 33 (GM) 鍋パスタを空にしたアネモネは超ご満悦です(笑) 22 33 (アネモネ) なんとアネモネの前には空の鍋が! 22 33 (GM) なんということでしょう! 22 33 (シル) ほんと、よく食べることで… 22 34 (GM) リーファ「すごいですぅ、大食い大会で優勝できるレベルですよぉ」何故か感動して拍手してる(笑)>アネモネ 22 34 (レイナ) レイナはお腹一杯になってシエスタモード 22 35 (アネモネ) 「ご馳走様でした」(至極丁寧なご馳走様 22 36 (GM) 今の所待機の状態が続いていますが、変化が訪れるのは夕方近く(おやつどき)の事です>ALL 22 36 (レオン) うむー 22 36 (デニッシュ) また地震か? 22 36 (シル) かといって、何することも今の所ねぇ 22 36 (GM) リーファ「今日のおやつは手作りクッキーとフェンディル産の紅茶ですよぉ」配って回ってる>ALL 22 37 (GM) この店、おやつ出ます(笑) 22 37 (レオン) おおう 22 37 (シル) 何というサービス満点 22 37 (イオナ) 待機するならおやつ時まで少し体を動かしておきます 22 37 (アネモネ) 「よろしいですよぉ!流石です」 22 37 (GM) では、イオナが店の外で身体を動かしていると 22 38 (GM) 駆け足で駆け込んできたマークさんを発見しますよ 22 38 (デニッシュ) お? 22 38 (シル) あらま? 22 38 (GM) マーク「……はぁ、はぁ」息切らしてる(笑) 22 39 (デニッシュ) 「…誰だ?」 22 40 (イオナ) 「あれ、マークさん?急に駆け込んできましたが何か進展があったのですか?」切り上げて店に入る 22 40 (アネモネ) 優雅に茶をしばいてる 22 40 (アメリア) しばくw 22 40 (GM) マーク「……リ、リーファさん。み、水を……」慌ててリーファが持ってきた水をがぶ飲みし「ふぅ、すいません。皇城からここまで走ってきたもので」>イオナ 22 40 (シル) あまりいい情報じゃなさそうだなぁ… 22 41 (レオン) 「おや、緊急事態ですかな?」 22 41 (アメリア) それは息が上がっても仕方ないねー<皇城から 22 41 (アネモネ) 飲みかけの茶ならくれてやろう 22 41 (GM) マーク「お話しいただいた件を報告した所、上がすぐに皆さんと面会を希望したいそうです」>イオナ、ALL 22 42 (レオン) おおー 22 42 (アネモネ) やったー 22 42 (シル) それはありがたい 22 42 (デニッシュ) 話が早くて助かる 22 42 (アメリア) おー 話が一気に進む雰囲気 22 42 (イオナ) おお 22 42 (アネモネ) 「まあ!其れは本当ですか。さっすがルキスラ!話が早い」 22 43 (アネモネ) おてて合わせて喜ぶ 22 43 (GM) マーク「参謀長閣下が直々に対応されるとのことでした。皆様、急ぎ皇城へお越しください」>イオナ、ALL 22 43 (シル) 「うん、わかったよっ」 22 43 (アメリア) 参謀長というとあの人か 22 43 (イオナ) 「分かりました。早急に対応いただきありがとうございます」 22 44 (レイナ) 「はーい……」名残惜し気に包まっていた毛布を仕舞いつつ 22 44 (デニッシュ) 「……おう」 22 44 (GM) マーク「私はこの後、任務に戻ります。皇城まで行けば、後は向こうの兵が案内してくれますので」敬礼し、また走り出した!(笑)>ALL 22 45 (アネモネ) 「武装はしていったほうがいいですか?あら行ってしまわれました」 22 45 (シル) 大変だね… 22 45 (アメリア) 「ということは哨戒(空散歩)は後回しですね」 ちょっと残念 22 45 (シル) 「まぁ、それの許可とれる人と会えるんだから、ね?」 22 45 (レオン) 「さて急ぎましょうか」 22 46 (GM) さてさて、そんな訳で。皇城にお召しとなりました。正攻法で正解だったね! よかった!! 22 46 (アメリア) よかった! 22 46 (デニッシュ) よかったよかった 22 47 (デニッシュ) 遺跡に特攻とかしなくて本当によかった 22 47 (アネモネ) 普段着でいいのかな?それとも装備整えたほうがいい?<GM 22 47 (GM) それはお任せしますよー<恰好 22 47 (GM) 特に他の行動がなければ、全員で皇城に移動となりますが。よろしいでしょうか?>ALL 22 47 (レオン) はーい 22 47 (レイナ) はいー 22 47 (アメリア) あーい 22 47 (デニッシュ) いいですよ 22 47 (アネモネ) 兵士さんに聞いてみよう今すぐ行くなら装備整える前に行ったほうがいいだろうし 22 47 (シル) はーい 22 48 (GM) マーク、もう行っちゃった(笑) 22 48 (アメリア) 中間管理職は忙しい 22 48 (シル) ほんと、大変だねぇ…(しみじみ) 22 48 (GM) シカタナイネ 22 48 (アネモネ) じゃあそのまま行くか 22 49 (GM) ひとまずそのまま、かな? 22 49 (GM) では、進めますよー 22 49 (シル) はーい 22 49 (アネモネ) はい 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 49 (GM) 22 50 (GM) ★夕方。皇城内、軍宿舎会議室 22 50 (GM) 22 50 (GM) 22 50 (GM) 皆さんは皇城の敷地内にある軍の宿舎へ通され 22 51 (GM) 中にある会議室へと案内されました 22 51 (GM) テーブルには、帝都の地図が広げられていて駒の様なものが配置されており 22 52 (GM) 中央の上座にいる髭の生えた男性がテキパキと周囲の兵たちに指示を下しています 22 53 (GM) マクファーレン参謀長「いらしたようだな」皆さんを見て、指示の手を止めます>ALL 22 53 (GM) 22 53 (アネモネ) 賢者様の背後に控えます 22 53 (シル) 「はい、お招きありがとうございます」ぺこりと 22 53 (デニッシュ) 「(参謀長っていえば、やっぱりこいつだよな…)」不機嫌そうな顔で 22 53 (GM) 何人かは面識があるのでわかりますが、中央の上座にいるのはゲイリー=マクファーレン参謀長です 22 54 (GM) “変幻の参謀”という二つ名のもとに、ルキスラで活躍する皇帝の腹心ですね 22 54 (アメリア) あだ名はヒゲイリー 22 55 (レオン) 「お忙しい中、お招きありがとうございます。参謀長」 22 55 (GM) マクファーレン参謀長「報告は部下より聞いている。同時期に冒険者ギルドからも連絡があってね。どうやら事態は余り良くない様だね?」>レオン、ALL 22 56 (アメリア) 「‥‥」場違い感が否めないので大人しくしている 22 58 (レオン) 「私が”視た”光景にならないよう努力しております。が、」 22 58 (GM) マクファーレン参謀長「ひとまず帝都内の軍と冒険者を効率を考えて各地に配置し終えたので、ひとまず話にあった動乱が起きてもすぐに対応できるように手を打ったのだが?」>ALL 22 58 (アネモネ) 後ろの方で私は一本のサボテンとひっそりしてる 22 59 (シル) なぜサボテン… 22 59 (アメリア) 参謀長仕事早いなぁ 22 59 (レイナ) 眠たげに、後ろにいます 22 59 (デニッシュ) 有能だな 22 59 (GM) 駒の様子を見る限り、街の外と遺跡区の監視に重点を置きながら。一応各地に冒険者を配置していざという時の避難誘導や護衛態勢を整えている様子>ALL 23 00 (シル) すごいなぁ… 23 00 (アメリア) これは哨戒要らないかもなぁ 23 00 (シル) 外は、任せていいかもね? 23 01 (レオン) 「私達の言を信じていただきありがとうございます。」 23 01 (デニッシュ) いけ好かないルキスラ貴族の筆頭だが、有能だから困る… 23 01 (イオナ) 外は大丈夫そうかな 23 01 (シル) でにっしゅさーん。前みたいなことしないでよー? 23 01 (GM) マクファーレン参謀長「で、解決する為の策について。貴殿は既にお持ちなのかな?」>レオン 23 01 (デニッシュ) あれは互いの認識のズレから起きた誤解だよ?>シル 23 02 (シル) なら、大丈夫かな 23 02 (レオン) 「それを得るために面会を希望いたしました。」 23 03 (GM) マクファーレン「ふむ、我々の手の内にその解決策がある。と?」>レオン 23 04 (レオン) 「遺跡区内の”王城”のありか、それを調べさせていただきたいのです。」 23 04 (GM) 2d 23 04 (GM) GM -> 2d = [2,1] = 3 23 04 (アネモネ) 出目三! 23 04 (デニッシュ) 変転するかな? 23 04 (アメリア) つまり機密を教えてください!っていうね 23 05 (アネモネ) 一ゾロせん限り知って入るでしょ多分 23 05 (アメリア) ゲイリー氏はルーンフォークだからねぇ 23 05 (イオナ) ゲイリーはルンフォ 23 05 (デニッシュ) ルンフォだったか 23 05 (シル) あ、そうなの? 23 05 (アメリア) 因みにヒゲは付け髭 23 05 (GM) マクファーレン「……“王城”か」周囲の兵士を見回し「では、場所を移そうか。此方へ来給え」>レオン、ALL 23 06 (GM) 23 06 (GM) 23 06 (GM) 23 06 (GM) 23 06 (GM) 参謀長は会議室から君達を連れて、自身の執務室へと移動します 23 06 (シル) 「はい」と付いて行きます 23 06 (アメリア) 知ってるらしい 情報が正しいことにも驚きだわー 23 06 (デニッシュ) 黙って付いて行きます 23 06 (イオナ) 「わかりました」ついていきます 23 06 (レオン) 移動しますー 23 07 (アメリア) 同じく黙ってついて行くよ 23 07 (レイナ) ついていきますー 23 07 (GM) 執務室の警備兵に『誰も近づけるな』と指示しつつ、参謀長は皆さんと部屋に入ります 23 07 (アネモネ) 何なら見張りに立ってましょうか? 23 07 (GM) マクファーレン「その話、誰から聞いたのかね?」>レオン 23 08 (アメリア) パンイチの博徒からです とは言えないよなぁ 23 08 (レオン) 「さる情報筋からでは納得いきませんね?」 23 08 (シル) ここは、真実いう方がいいかなぁ… 23 08 (デニッシュ) 言った方が面倒がないと思うよ 23 09 (アメリア) 信じてもらえるかは別としてね 23 09 (アネモネ) それな 23 09 (GM) マクファーレン「……“王城”の存在は、陛下の一族とごく一部の軍高官しか知らない機密事項だ。まさかそれも『夢見』で見た訳ではあるまいに」>レオン 23 09 (アネモネ) まあでも、ゼンラーマンが知られてる可能性もあるから 23 09 (デニッシュ) 参謀長なら信じるというか、納得しそうな気がする 23 10 (シル) ここは、名前出したほうが、どっちに転んでも進展はしそうだね 23 10 (アメリア) こちらが嘘をつかなければ大丈夫だとは思う 23 11 (アメリア) 嘘を言っても見抜かれるのが目に見えてるしね! 23 11 (イオナ) 名前出したほうが良いよなあ 23 11 (レオン) 「そうですね……。アルスという冒険者です。ただ本名かどうかも分かりませんが。」 23 12 (GM) マクファーレン「アルス……聞かない名だな。元軍関係者か何かだろうか??」考えつつ 23 13 (デニッシュ) そこは知らなかったか 23 13 (GM) マクファーレン「ひとまずその者が何者かは、此方の手の者で調べさせよう」<アルス 23 14 (シル) どんどん謎の人になっていく、アルスさん 23 14 (アメリア) 謎のパンツ野郎 23 15 (イオナ) パンイチのトリックスター 23 15 (GM) マクファーレン「ともあれ、“王城”については私もある程度のことまでしか知らない。何せ帝都解放後には封印されてしまって出入りはしていないのだから」>レオン 23 15 (レオン) 「封印……。」 23 16 (シル) 「何かを、封じ込めてるってこと??」 23 16 (レオン) これも情報通りか 23 16 (GM) マクファーレン「封じ込めている。というより中に入れないようにした。というべきだな」>シル 23 17 (シル) 「ふむふむ…。なるほど…」 23 17 (アメリア) わざわざ入れないようにしたのかぁ 23 19 (レオン) 「これも聞いた話ですが、その”王城”に地震を発生させる装置がある可能性が。」 23 20 (GM) マクファーレン「地震……あり得なくはない話だ」 23 20 (アメリア) わざわざ封印した理由もそれが関係しているのかも? 23 20 (GM) マクファーレン「大破局によって地上から人族が地下遺跡の一部に追い込まれてしまった後、初代皇帝率いる解放軍は“王城”で抵抗を続けながら、蛮族たちへの反抗を試みるべく様々な魔動機を創ったそうだ」 23 22 (シル) 「色んな?その中に、地震装置があるかもってことなのかな?」 23 22 (GM) マクファーレン「かもしれない、というだけだな。具体的な魔動機の内容について知るのは、今では陛下お一人だけだ」 23 22 (レオン) 「なるほど。しかしこれほど大きな地震を起こせるものは無いはずとも言っていたのですよ。」 23 23 (GM) マクファーレン「ふむ……だとすると、今回の地震は単純に副産物である可能性があるな」 23 23 (イオナ) 「副産物…ですか?」 23 24 (GM) マクファーレン「本来の目的は別のもので、たまたまそれによって地震が偶発的に引き起こされた。ということだ」 23 24 (アネモネ) 転移装置とか或いは攻撃系魔動機の動作の副産物って事かな? 23 24 (デニッシュ) 「…あれが『ついで』だってのか?」 23 25 (アネモネ) 例えば…地下から地上に通路を掘ってる副産物とかね 23 25 (シル) あー… 23 25 (GM) マクファーレン「魔動機についてお詳しい陛下であれば、詳しく聞けるやもしれん」 23 25 (レオン) 蛮王復活の儀式の副産物だったり? 23 26 (デニッシュ) 「その『ついで』で、俺の店は…」ワナワナ… 23 26 (イオナ) 装置自体の改造の線はないかな 23 26 (レオン) ふむ?あれ?これ面会ルート? 23 26 (シル) もしかして?? 23 26 (アネモネ) そうそう、何であれ本来の目的が地震じゃないから縦揺れだけ其れも重大な被害が出ない揺れしか起きてないって事かも 23 27 (シル) あの規模の震度なら、もっと被害出てもおかしくはないもんね 23 27 (GM) マクファーレン「……だが、陛下は現在帝都にはいない。重要な会合で他国へと出立なされている」困った顔で 23 28 (シル) …へ? 23 28 (レオン) おう? 23 28 (アメリア) 居ないの!? 23 28 (レオン) おこれはいい。 23 28 (アネモネ) やっぱり直接行くって確かめるしかないな 23 28 (レオン) 何時帰ってくるかでタイムリミットが分かる。 23 29 (シル) なるほど… 23 29 (アネモネ) 皇帝はこの帝都でアタックされる訳だからね 23 29 (GM) マクファーレン「緊急の案件でね。それに伴って陛下の肝煎りで進めていた新型飛行船の進発式も、やむなく配下に任せてしまわれた程だ」 23 30 (レオン) 「……大事なことなので聞きたいのですが、陛下は何時お帰りに?」 23 30 (アネモネ) 何だろう?剣聖王でも急死したのかな? 23 31 (アメリア) ちょっくら世界救ってる最中なのかも 23 31 (GM) マクファーレン「会合が始まって一週間近くになるが、あと数日中には帝都に帰還されるだろう」>レオン 23 31 (デニッシュ) フットワークの軽い皇帝だな 23 32 (シル) 数日かぁ… 23 32 (レオン) 「ありがとうございます。そうですか。数日中……」 23 32 (イオナ) 数日。。。 23 32 (デニッシュ) リミットがはっきりせんな 23 33 (アネモネ) 数日は余裕あるとみよう 23 33 (GM) マクファーレン「帰還される際には、事前に連絡が来るはずだが」 23 33 (アネモネ) 流石に明日明後日では無いはず 23 33 (デニッシュ) とりあえず、今日明日ってことはなさそう 23 33 (シル) うん、それはないと思う 23 33 (アネモネ) もう、予言の内容伝えても良いかもね 23 33 (シル) そですね 23 33 (アネモネ) で参謀と連絡取り合えるようにしてもらう 23 33 (アネモネ) ピアスとかで 23 34 (アネモネ) その上で私たちが遺跡に潜って攻略できるように頼むのがいいかな? 23 35 (シル) あと、調べものもさせて―って伝えるものいるよね? 23 35 (レオン) まぁ情報として最低限欲しいのは”王城”の位置よ 23 36 (イオナ) 出来れば封印から直接王城に突入したいですけど、高望みかな 23 37 (シル) いや、イオナさんの言う感じが、一番したいパターンだけど… 23 39 (シル) んー、王城の場所や、封印の解き方とか、その辺を聞く、もしくは、調べることできるかなぁ… 23 39 (GM) マクファーレン「さて、どうするべきか……其方の要望は?」>レオン、ALL 23 40 (レオン) 「私達は最低でも”王城”の位置を知りたいのです。」 23 41 (GM) マクファーレン「位置、か」頷く「であれば、遺された資料でそれは確認できるな」 23 42 (レオン) 「では資料の閲覧の許可をいただけますか?」 23 43 (GM) マクファーレン「構わん。が、わかるのは位置だけであって。そこまでは遺跡区から直接行くしか術はない」 23 44 (シル) 位置だけ、か… 23 45 (アネモネ) では調査開始かな? 23 45 (デニッシュ) 位置がわかるだけでも大きな情報だけどね 23 45 (レオン) 其処までの安全なルートは分からないと 23 45 (イオナ) 資料調べたら封印に関することもあるかもしれないし、まずは調査からかな 23 45 (レオン) あと、封印とか 23 46 (シル) そだね。いろいろ調べてみて、かな 23 46 (GM) マクファーレン「資料については、軍の書庫の禁忌目録に秘蔵してある。だがこれも限定的なもので、詳細は陛下のみが把握されていることに変わりはない」 23 46 (デニッシュ) まずは調べないことにはわからないか 23 47 (シル) 限定的でも、調べられるのはありがたい 23 48 (イオナ) 封印を解くお願いはしないでOK? 23 48 (レオン) 「では、よろしくお願いいたします。」 23 49 (デニッシュ) するだけやってみる? 23 49 (レオン) 封印は無理じゃない? 23 49 (シル) んー、陛下だけな気もするね、知ってそうなの 23 50 (イオナ) 確かに…許可を取るにもユリウス帝じゃないと権限なさそう 23 51 (シル) ダメもと聞くだけ聞く? 23 51 (GM) マクファーレン「では、別室に用意させる。そこで待っていてくれ給え」>ALL 23 52 (アメリア) まあ聞くのはタダだしねー 23 52 (レオン) レイナさんだけが頼りだ>文献判定 23 52 (レイナ) はいー 23 53 (シル) 「マクファーレンさんは、その封印について何か知ってる?」>マクファーレンさん 23 53 (デニッシュ) セージが一人しかいないっては厳しいね… 23 54 (アネモネ) 追加経験点で取るしかない 23 54 (GM) マクファーレン「常人に破られることはまずないと聞いているが、具体的な内容までは……」そもそも立ち入ったこともないので知らないらしい>シル 23 54 (シル) 「そっかぁ…。うん、ありがとっ」 23 55 (デニッシュ) まあ…そうだよね 23 55 (シル) でも、知らないということを知るのも大事だよね 23 55 (イオナ) それが確認出来たのは良かったかと 23 55 (GM) マクファーレン「機密事項とはいえ、“王城”の存在自体既に語られなくなって久しいものだ。私自身も禁忌目録にすべて目を通していないんでね」 23 57 (GM) 他に聞きたいことがなければ、別室へと案内されることになりますが>ALL 23 57 (シル) わたしは特にないかな 23 57 (アネモネ) 私は無いですかね 23 57 (イオナ) わたしも特に無いです 23 57 (アメリア) 大丈夫 23 57 (レオン) 同じくー 23 57 (レイナ) 特にないですー 23 57 (デニッシュ) 無いなあ 23 58 (GM) では参謀長との会談は終わり、近衛兵によって別室へと案内されます>ALL 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 58 (GM) ★日没前後。軍宿舎の客室 23 58 (GM) 23 58 (GM) 23 59 (GM) 皆さんが案内されてからしばらくした後、近衛兵たちが20冊程度の本と羊皮紙の束を持ってきます 00 00 (GM) 近衛兵「大破局前後の遺跡に関する資料と、禁忌目録に収められていたものをまとめてお持ちしました」 00 01 (GM) どれも三百年以上経過しているので、紙質は相当悪い 00 01 (GM) 00 01 (レオン) 「ありがとうございます」 00 01 (シル) うわぁ、取扱注意だ… 00 01 (レオン) 編纂しないと。 00 02 (GM) 近衛兵「参謀長の命で、立ち合いを命じられています」二人ほど部屋の入り口で仁王立ちして、皆さんを監視(笑)>ALL 00 02 (レイナ) 「……ありがとー」毛布に包まって本を読む準備万端 00 02 (イオナ) 慎重に取り扱わないと 00 02 (シル) まさかの眠りモードで解読と… 00 02 (デニッシュ) 羊皮紙って300年以上経っても大丈夫なもんなのかな?触ったら崩れそう… 00 03 (GM) 資料を確認する方は、冒険者器用が別途必要になります 00 03 (アネモネ) 革だから保存環境によっては紙より丈夫だよ 00 03 (GM) 大失敗すると、破損する可能性が(笑) 00 03 (レオン) 洋紙皮は保管状態よければ保つよ 00 03 (デニッシュ) 判定が必要なレベルか(笑) 00 04 (GM) まぁ、要はピンチェックです 00 04 (アメリア) あぁ怖い ピンチェック怖い 00 04 (GM) それ以外に文献判定が必要です 00 04 (シル) めっちゃ怖い… 00 04 (GM) 全員で振ると破損のリスクは高まりますのでご注意を 00 05 (デニッシュ) どうせ文献判定なんて成功せんだろうし、触らないでおこう… 00 05 (イオナ) ですな>全員で振る 00 05 (シル) ふふふ…。セージなどないっ(きりっ) 00 05 (アメリア) 文献判定の基準値ないから!(えっへん 00 05 (レイナ) では、資料を確認していきますね~ 00 05 (レオン) ……時間かかるなー 00 06 (GM) という訳で、文献判定したい方は冒険者器用と一緒にロールどうぞ>ALL 00 06 (デニッシュ) アルケミストでできるっちゃできるけど…1LVだからn 00 06 (アネモネ) 全員スカウト何だよなぁ 00 06 (イオナ) アルケミ1+知力B1…うん 00 06 (シル) 知力Bはあるから、今度何かとろっと… 00 06 (レイナ) 2d6+13 資料確認 冒険者+器用 00 06 (GM) レイナ -> 2d6+13 = [1,4]+13 = 18 00 07 (レオン) 調べたら賢星できるし…… 00 07 (GM) 破損なし 00 07 (GM) 続いて文献判定― 00 07 (レイナ) 2d6+14 文献判定 00 07 (GM) レイナ -> 2d6+14 = [2,2]+14 = 18 00 07 (シル) うーん、ここはほしい気がする… 00 08 (アネモネ) ダイス目が30%以下を叩いた 00 08 (レイナ) 失敗してそうなら変転かな 00 08 (デニッシュ) 変転の切りどころかな? 00 08 (アネモネ) 転変してゴリティカルだと25か 00 08 (イオナ) 切りどころかと 00 08 (シル) だね 00 08 (アネモネ) あ、いや11レベルだから26か 00 09 (レイナ) では、変転で。出目5.5の種族特徴強化で+2 00 09 (デニッシュ) つまり6ゾロ 00 10 (アネモネ) 転変の効果は達成値に+2だからクリティカルは発生しないですよ 00 10 (GM) はーい。では判定結果として、“王城”は遺跡区の中心にある魔動機時代の巨大な建造物の奥底にあると分かります 00 10 (レイナ) 伝えながら読み進めていきます 00 11 (GM) 建造物には三重の層があり、一層は蛮族迎撃用の罠や仕掛けが施された空間 00 12 (GM) 二層目が兵士や人々の居住区画 00 12 (GM) そして三層目が“王城”に当たる様です 00 14 (GM) “王城”とは所謂仇名であり、実際は初代皇帝であるアレウスを中心とした魔動機術に長けた者たちの研究施設です 00 14 (GM) アレウスは蛮族との闘い以外の殆どの時間をここで過ごしていたことから、“王城”という仇名が付いたとされています 00 14 (アネモネ) 「三重構造…成る程クリーム餡饅の原理ですね!」 00 14 (シル) 「く、くりーむ饅頭…。な、なぜに…」 00 15 (アネモネ) 「我々の歯を最初に向かい打つフカフカの生地、そしてクリームを引き立てる漉し餡、最後にどっと構える濃厚クリーム…ムムム強敵です」 00 16 (レオン) ふむふむ、そういえばうちのPTマギテック居たっけ? 00 17 (シル) いないはずだねー 00 17 (アメリア) 居ないね 00 17 (イオナ) 居ないですね 00 17 (アネモネ) 居ないです 00 17 (アネモネ) 済まない、シューターなのにマギテじゃなくて済まない… 00 17 (GM) ここでは、各地から持ち込まれた魔動機を改造して対蛮族との戦線を優位にすべく様々な研究がなされたとか<“王城” 00 17 (GM) ですが具体的な内容については触れられてはいません 00 18 (GM) それと達成値が高かったので、別途の情報として 00 19 (GM) 封印は建造物全体に施されているようです 00 19 (GM) つまり一層目に入る事すらできない様にした模様 00 20 (デニッシュ) それって、どうやっても入れないんじゃ… 00 20 (レイナ) ますます厄介そうだぁ 00 20 (GM) そして、最後 00 20 (GM) まったく関係のない本が一冊混じっていて。今日の献立100種という内容のレシピ本がありました 00 21 (GM) すべて魔動機文明語で書かれています 00 21 (アメリア) 暗号くさいなぁw 00 21 (シル) …うわー 00 21 (イオナ) うわあ… 00 21 (レイナ) あむ… 00 21 (デニッシュ) レシピ本!? 00 21 (アメリア) 読める人は、アルケミスト持ちだけか‥‥ 00 21 (アネモネ) 鋼錬かよw 00 21 (GM) 以上、レイナが解読した文献判定結果でした>ALL 00 22 (シル) レシピ本、すっごく気になるなぁ… 00 22 (イオナ) 地味ーに気になる 00 22 (アネモネ) 料理本に宝物鑑定いsて価値を調べてみるとか 00 22 (デニッシュ) 気になる 00 22 (レイナ) 「ん。以上。……これも読んでみる?」レシピ本を指さしつつ 00 23 (シル) 「うん、何でこんなところに入ってるのか気になるしね」 00 23 (アネモネ) 本当に暗号を残すための本とかなら雑な作りじゃなくて作りがしっかりしてるかも 00 23 (レイナ) 「……ん」レシピ本の方も読んでみます~ 00 23 (GM) はーい 00 23 (レイナ) こっちも冒険者+器用から、ですかね 00 23 (GM) ですね 00 24 (レイナ) は~い 00 24 (レイナ) 2d6+13 レシピ本 冒険者+器用 00 24 (GM) レイナ -> 2d6+13 = [5,3]+13 = 21 00 25 (GM) はいはい無事に壊さずに読めます 00 25 (レイナ) 2d6+14 文献判定 00 25 (GM) レイナ -> 2d6+14 = [4,1]+14 = 19 00 26 (レイナ) 出目がふるわぬ… 00 26 (GM) 読んでみると、何の変哲もないレシピ本です 00 26 (アネモネ) つまり本来のレシピ本とかと比べて違和感があるかどうかの宝物鑑定判定…可能でしょうか?<GM 00 26 (アメリア) そういえば占瞳の知恵を助ける効果はまだあるんだっけ? 00 26 (GM) ですがそこかしこに別の書き込みがされています。ブリ大根のブリに○してあって『地下じゃ取れねぇし!』とか、豚肉と山菜炒めの山菜の一部に『ねーよこんなん!!』とか書かれてある 00 26 (アネモネ) 笑えるw 00 26 (イオナ) ウハハ 00 26 (シル) 突っ込みレシピ本 00 27 (レオン) 筆跡鑑定かな? 00 27 (アネモネ) アルスだろ!なあアルスなんだろ 00 27 (GM) 間違いなくレシピ本(笑)<判定必要なく 00 28 (デニッシュ) え?マジで? 00 28 (レイナ) 「……いっぱい、書いてる。……美味しそう」 00 28 (アネモネ) 情報はこれぐらいか、一応結果を報告してレシピ本だけ渡しとく? 00 28 (デニッシュ) なぜこれが禁忌目録に? 00 28 (レオン) 筆跡写して、ギルド持ってこう 00 29 (シル) うつさせてくれるかな? 00 29 (GM) レシピのことごとくに何らかの書き込みはされています。『代わりに魔動機の油使ったら腹壊した、殺す』とか。そんなん書かれてあるよ(笑) 00 29 (アネモネ) 書き込みが当時の王のもで品位を損なうからとかじゃね?(禁書 00 29 (アメリア) 使うなよw 00 29 (イオナ) ひでえw 00 29 (デニッシュ) 食料事情が深刻だなあ 00 30 (シル) とりあえず、レシピ本みせて、書き写させてくれるか聞く? 00 30 (レオン) うん。 00 30 (アネモネ) そうですね、あと他の内容もメモっときます? 00 30 (シル) あ、メモりたい 00 30 (レイナ) ですねー 00 30 (シル) レシピ本って、結構分厚いです?>GM 00 31 (アネモネ) 百選だからそりゃそれなりでしょ 00 31 (GM) 結構分厚いよ、150ページ 00 32 (レオン) ん?占えばいいか? 00 32 (GM) その殆どのページに書き込みが為されてある 00 32 (デニッシュ) 書き写すにはかなり時間かかりそうだなあ 00 32 (アメリア) んー 暗号じゃないのかなぁ‥‥? 00 32 (アネモネ) 7人居れば一人20ページちょいよ(ただしレシピだけなら 00 32 (GM) レイナは思った。毎日料理してないと、こんな書き込みできない(笑) 00 33 (レオン) 賢星で書き込みの主がアルスかどうか?占っていい>ALL 00 33 (レオン) そして出来ますか?>GM 00 33 (シル) あ、それ面白そう 00 33 (レイナ) 「書き込みいっぱい。律儀。……料理好き?」 00 34 (GM) 情報が足りないね 00 34 (GM) なので今はできない<賢星 00 34 (レオン) そっかー 00 34 (デニッシュ) あんまし今のアルスとイメージが重ならない気がする 00 34 (アメリア) 「さすがに魔動機用の油を使うのはチャレンジ精神が暴走しているとしか‥‥」 00 35 (シル) 「お料理番だったのかな、これ書いた人」 00 36 (GM) 書き込みの中には野菜メニューなのに『あー肉食いて―』とか書かれてあったり(笑) 00 37 (シル) 切実だ…。 00 37 (デニッシュ) 本当に、なんでこれが禁忌目録に入ってるのかね? 00 37 (シル) 立ち合いの人に、これ見せて、もって帰っていいか聞く? 00 37 (アネモネ) 正直、本当に書き込みがお偉いさんぐらいしか思い当たらない 00 38 (GM) 一応実用的なのは、材料に代替えが多々書き加えられていたことだね。ただ『25区の雑草』とか『天井のコケ』とか訳わからん材料ばっかだけど(笑) 00 38 (アメリア) 雑ぅw 00 39 (デニッシュ) 禁忌となるからには、他者の目に触れさせたくない情報が入ってるはずなんだが… 00 39 (レオン) 持って帰るのは無理じゃないかな? 00 39 (イオナ) 王族の知られてはいけない一面的な意味での禁書か 00 39 (レオン) 当時の風俗を知る為の重要資料 00 40 (シル) あー、たしかに… 00 40 (アメリア) 王城の資料と一緒に保管されていたということは 00 40 (アネモネ) 当時には既にブリ大根があった 00 40 (シル) そこかっ!? 00 40 (アネモネ) 重要資料ですね 00 40 (アメリア) やっぱり関わりがあると考えるのが自然? 00 41 (GM) 以上です(笑)>レイナ、ALL 00 41 (アネモネ) 一応ゲイリーに見せても良いと思うよ 00 41 (シル) ですね。呼んでもらって、これ見せよっか 00 41 (アネモネ) なんか料理のレシピ本があったんだけどーって 00 42 (GM) さて、一通り確認が終わりましたが。どうします?>ALL 00 43 (アネモネ) 内容のメモ取って退散かな、ゲイリーに一応報告するけど 00 43 (GM) はーい 00 43 (レオン) ギルド行って筆跡鑑定だー 00 43 (GM) メモは取って良いそうです。事前に参謀長承諾済み 00 43 (シル) あ、それは助かるー 00 43 (アネモネ) やったぜ 00 43 (GM) レシピ本はどうします?(笑) 00 43 (レオン) 依頼書に名前くらいはあるはずー 00 44 (シル) マクファーレンさんにこんなのあったよーって返す? 00 44 (アネモネ) メモされてる字を数個写すぐらいで良いんじゃね? 00 44 (レオン) とりあえず参謀長閣下に相談か? 00 44 (アネモネ) 特にアとかルとかスに繋がる文字を 00 44 (アメリア) 持ち出せるならそうしたいけど 多分無理だよね 00 45 (イオナ) ゲイリーに報告と相談ですな 00 45 (シル) うん、無理だと思うけど、だめもと聞いちゃおう 00 45 (アネモネ) 一応報告と相談はしよう 00 45 (レイナ) 異議なしですー 00 45 (シル) 了解でっす 00 45 (デニッシュ) 書き込みの中に、王城内部のことを知る手がかりがあったりするのかなあ 00 45 (GM) では 00 46 (アメリア) 魔法の品でないなら、未来のアメリアが直せるゾ 00 46 (アメリア) 壊れても 00 46 (GM) どなたかまとめて宣言だけお願いします>ALL 00 47 (アメリア) あ、未来じゃないや 現在のアメリアさんでも直せるw 00 47 (レオン) レシピ本の書き込みを写して、”王城”の位置と構造をメモる?>ALL 00 48 (シル) ですね。そして、わかった情報をゲイリーさんへ報告ってところ、かな? 00 48 (デニッシュ) そんなところかな 00 48 (アメリア) 書き込みは出来るだけ筆跡を真似ないとね 00 49 (レオン) では 00 49 (アネモネ) レシピ本のメモを書体から写して、王城の構造をメモし、ゲイリーに報告してレシピ本の持ち込みが可能か聞くかな 00 49 (レオン) ではそれで行きましょう。 00 49 (シル) おっけーです 00 50 (アネモネ) 宣言よろしく 00 50 (イオナ) OKです 00 50 (アメリア) あいあい 00 51 (レオン) レシピ本のメモを書体から写す。”王城”の構造をメモ。それらを参謀長閣下に報告。レシピ本の取り扱いについて相談で>GM 00 51 (GM) はーい 00 52 (GM) メモを書体から移すのは、冒険者器用度か紋章学器用度で判定 00 52 (GM) 構造については地図作成判定要 00 53 (GM) レシピ本の取り扱いについては次回の頭で行います 00 53 (アネモネ) メモは任せろ! 00 53 (レオン) 任せた! 00 53 (レイナ) お任せします~ 00 53 (シル) 地図作製なら、わたし行こうか? 00 53 (GM) 今回は判定だけ先にどーぞ>ALL 00 53 (アネモネ) すみませんメモする場合の所要時間はどれぐらいになりますか?<GM 00 53 (イオナ) お任せします 00 54 (GM) 何を写すかによりますよ。全部筆跡すら真似るのなら一日がかりですが(笑) 00 54 (アメリア) 突っ込み書き込みだけかな? 00 54 (シル) それがいいかな 00 55 (アネモネ) アとかルとかスが書いてある単語のを抜粋して4個ぐらいならどうでしょう? 00 55 (アネモネ) 単語4個ぐらいなら何秒でしょうか<GM 00 55 (GM) 突っ込み書き全部なら4時間、単語抜粋は10分 00 55 (アメリア) あー 名前に使ってる文字か 00 56 (アネモネ) 予め単語を抜粋してても10分かかります?<GM 00 56 (GM) なら40秒 00 56 (アネモネ) おk 00 56 (アネモネ) MP12なら使うべきだな 00 56 (シル) ですね 00 56 (アネモネ) 抜粋に判定は必要です<GM 00 57 (アネモネ) ですか? 00 57 (GM) 文献判定済みなので、レイラが教えてくれます 00 57 (GM) あくまで19の達成値の中でですが 00 58 (アネモネ) おkなら40秒分全部デーモンフィンガー使って達成値を上げます 00 58 (デニッシュ) 問題は、現在のアルスが魔動機文明語で自分の名前をどこかに書いているか、だね 00 58 (GM) はーい 00 59 (アネモネ) まあ、書いてある事がなくても4単語も拾えば、大体いけるでしょきっと 00 59 (レオン) 魔動機文明語、交易共通語の元になってるから大丈夫だと思いたい 00 59 (アネモネ) デーモンフィンガー4回自身のMPから使用 41/53 01 00 (アネモネ) 2d+19 筆跡メモ写し4単語 01 00 (GM) アネモネ -> 2d+19 = [5,1]+19 = 25 01 00 (GM) はーいほぼ完璧にコピーできました 01 00 (シル) それじゃ、地図作製、いきますねー>GM 01 00 (GM) 地図作成どうぞ 01 00 (シル) 2d6+15 地図作製 01 00 (GM) シル -> 2d6+15 = [5,5]+15 = 25 01 01 (GM) こちらもほぼ完璧に地下遺跡の配置を書き込めました 01 01 (アネモネ) 「ふーどうですか?ばっちしでしょう?」(ドヤ顔でブイブイ!してる 01 01 (シル) 「ふぅ、こんな感じかな?」 01 01 (GM) 01 01 (GM) 01 01 (GM) 01 01 (GM) 01 01 (GM) 文献の抜粋や写しが終わった後 01 02 (GM) マクファーレンが近衛兵の報告で別室へと来ます 01 02 (GM) マクファーレン「確認を終えたと……」 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 01 02 (GM) 以上 01 03 (GM) 次回へと続きます。お疲れ様でした 01 03 (シル) お疲れ様でしたー 01 03 (アメリア) お疲れ様でした 01 03 (レオン) お疲れ様でしたー 01 03 (イオナ) お疲れ様でした 01 03 (レイナ) お疲れ様でした~ 01 06 (アネモネ) お疲れ様です 01 06 (レイナ) お疲れ様でした~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7918.html
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「申し上げます!先程ニューカッスル城に再び翼人が舞い降りました!」 ニューカッスル城郭を睥睨する巨大戦列艦『レキシントン』号の指揮所に 伝令が飛び込んだ。プープデッキ(船尾楼甲板)にある指揮所は、旗艦設備を 有する『レキシントン』号だけあって並のフネの数倍の広さを誇る。 伝令に真っ先に反応したのは、艦長のサー・ホレイショ・ネルソンだった。 「また翼人か……王党派は先住魔法にすがるつもりかね?」 そう言ってネルソンはそのでっぷりとした腹を揺らす。ネルソンは もとより貴族派に心酔しているわけではない。ただ単に上官が貴族派に 寝返り、それに従って彼も『レコン・キスタ』の三色旗の下で戦うことに なったに過ぎない。レキシントンの戦いにおいて本国艦隊の巡洋艦の 艦長だった彼は、その戦略と勇気をもって空を駆け抜け、今の地位に 上り詰めたのだ。 「さてね。司令官どのを起こすかい?ぼくは夜明けのニューカッスルに 流星のように舞い降りた翼人を見てから嫌な予感が消えないんだ」 そう言ったのは、ネルソンの副官を務めるサー・ヘンリ・ボーウッド。 彼もネルソンと同じ艦隊に所属する巡洋艦の艦長だったが、同じような 経緯でここに立っている。巡洋艦艦長時代に敵艦を2隻撃破する功績を 立てており、この『革命戦争』(『レコン・キスタ』側のこの叛乱の呼び名) 終結後の『レキシントン』号改装の際に艤装主任に命じられることが 内定している。ちなみに艦隊司令長官であるサー・ジョンストンは、 その聞き覚えのない音を立てる流星――つまり舞い降りたふがく――を 見て寝込んでしまっていた。 ネルソンやボーウッドの感覚、いや一般的なハルケギニアにおいて 翼人はエルフと並んで先住魔法の使い手とされている。だが、この圧倒的な 劣勢で、たった二人の翼人の力で何ができるというのか……そう考えたとき、 二人の考えを打ち消す声がした。 「……あれはそんなものじゃないわ。ルーデルよ♪」 「そうそう。フガクに続いてルーデルまで……楽しいことになりそうだね♪」 それは指揮所に舞い降りた二人の銀の翼。片翼の鉄の翼と風車がついた 奇妙な冠のようなものをかぶり、藤色の長い髪をその脇で結んで背中に なにやら背負っている――というところまでは同じなのだが、それ以外は すべて対照的な双子の少女。左手をすっぽりと覆う銃を持ち、右脚に 太ももまで覆う白銀の脚甲、左脚に同じ丈の黒いオーバーニーソックスを 履き、黒を基調とした、腹部を隠さない水兵服にワインレッドのスカートを はいた少女と、対照的に右手をすっぽりと覆う銃を持ち、左脚に太もも まで覆う白銀の脚甲、右脚に同じ丈の藤色のオーバーニーソックスを履き、 白を基調とした、こちらはワンピースの水兵服に似た格好の少女。 目の前に現れたこの二人を、ネルソンもボーウッドも生理的に受け付けられずに いた。二人とも、元の世界では『双胴の悪魔』、『悪魔の双子』と 呼ばれていた、その少女の姿からあふれ出す昏い狂気を感じていたのかも しれない。 「……きみたちはいったい誰かね?」 ネルソンの問いかけに、双子が答える。 「ボクはP-38ライトニングのクラレンス。こっちは妹のアリス。 アンタたちのボスに頼まれて手伝いに来たのさ♪」 「そうそう。行きがけにフガクに銃撃して……しばらく待っていたら 変なフネがあのお城の中に入っていくところも見ちゃったわね。くすくす♪」 「何!?まさか、きみたちは……」 アリスの言葉に反応したのはボーウッド。アルビオン空軍でも一部の 士官しか知らず、今まで見つけられずにいたニューカッスル秘密港の 入り口を見つけたというのか……。それに、この二人はあの翼人について 何かを知っているようだと、ボーウッドは嫌悪感を表に出さないように 気をつけながら二人からさらに情報を引き出そうとする。 「あー無理無理。アンタたちじゃ止めた方が身のため。死にたいなら 止めないけどね♪」 「そうね姉さん。レーダーも装備してないこんなぼろ船、雲に隠れた 岩に当たって粉々ね。くすくす♪」 いちいち癇に障る……ネルソンはそう思いつつも、とにかく双子が 今の装備と人員では無理だと言っていることは理解した。 「ところで、きみたちはあの翼人……『フガク』と『ルーデル』だったか? その二人を知っているようだが、いったいどの程度の戦力になるのかね?」 ネルソンの言葉に奇妙な薄ら笑いを浮かべる双子。そして…… 「死にたくなかったら今すぐしっぽ巻いて逃げることだね。くすくす♪」 「そうね姉さん。でも、そうなっちゃうとおもしろくないわね。くすくす♪」 「ば、バカにしているのかね?きみたちは!」 思わず声を荒げるボーウッド。その目の前にクラレンスの左手の銃が 突きつけられる。その顔は愉悦に歪んでいる。 「ボクたちは別にアンタたちがどうなろうと知ったことじゃないんだよ。 ただボクたちを起こしたシェフィールドがアンタたちのボスを手伝って やれって言うから、仕方なく顔を出したに過ぎないんだ。アンタたちを 無視してあんな城ぶっ潰してもいいんだよ?くすくす♪」 「そうね姉さん。むしろそっちの方が簡単。フガクが動き出すとやっかい だもの。ルーデルもだけど。くすくす♪」 「わ、わかった。貴重な情報を提供してくれたことに感謝する。とにかく、 きみたちは我々の指揮下に入る、ということでいいのかね?」 「ボクたちの前に立たなければね。くすくす♪」 「そうね姉さん。お話くらいは聞いてあげてもいいわね。戯言はごめん だけど。くすくす♪」 「わかった。部屋を用意しよう。艦長、それで?」 「あ、ああ。かまわない。司令官どのにはあとでぼくから話をしておくよ」 そうして従兵に案内されて艦内に消えた双子。その後ろ姿が消えてから、 二人は深く溜息をついた。 そうしたやりとりを知らぬニューカッスル城にも夜の帳が降りて―― パーティは城のホールで行われていた。上座に簡易の玉座が置かれ、 その玉座にはアルビオンの王、年老いたジェームズ一世が腰掛け、 集まった貴族や臣下を目を細めて見守っていた。 最後の晩餐――そう呼ぶのがふさわしいのに、誰の顔にも悲壮感は かけらもない。明日の総攻撃で自分たちは滅びるというのに、ずいぶんと 華やかなパーティ。王党派の貴族たちはまるで園遊会のように着飾り、 テーブルの上にはこの日のために取っておかれた様々なごちそうが 並べられている。 ふがくとルーデルは、大急ぎで正装して参加したルイズやギーシュと 離れて会場の隅に立ち、この華やかなパーティを見つめていた。 「みんな覚悟を決めているのね」 ふがくがそう言うと、ルーデルは頷きながら言った。 「そうねえ。終わりだと思っているからこそ、あんな風に明るく 振る舞えるのよ。 でも私好みの女の子が少ないのが、お姉さんちょっと残念」 その言葉にふがくががっくりと肩を落とす。そうしているうちに、 会場にウェールズ皇太子が現れる。貴婦人たちの間から歓声がとんだ。 若く凛々しい王子は、どこでも人気があるもの。彼は玉座に近づくと、 父王に何かを耳打ちする。 ジェームズ一世は、すっくと立ち上がろうとして――かなりの老齢で あることがたたり、よろけて倒れそうになった。ホールのあちこちから 屈託のない失笑が漏れる。 「陛下!お倒れになるのはまだ早いですぞ!」 「そうですとも!せめて明日まではお立ちになってもらわねば我々が困る!」 ジェームズ一世はそんな軽口に気分を害した風もなく、にかっと 人懐こい笑みを浮かべる。 「あいやおのおのがた。座っていてちと、足が痺れただけじゃ」 ウェールズ皇太子が父王に寄り添うようにして立ち、その体を支える。 王がこほんと軽く咳をすると、ホールの貴族、貴婦人たちが一斉に直立した。 ふがく、ルーデルもこれに倣う。 「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。 いよいよ明日、このニューカッスル城郭に立てこもった我ら王軍に、 叛乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が行われる。この無能な王に、諸君らは よく従い、よく戦ってくれた」 そこで老王は言葉を切り、ホールを見渡す。多くの貴族に裏切られ、 敗走を続けた自分に、最後まで従ってくれた忠臣たちの顔をまぶたの裡に 焼き付けるかのように。そして、ホールの隅に立つふがくとルーデルの 姿を見ると、意を決したように言葉を続ける。 「だが、偉大なる始祖はまだ我々をお見捨てにはならなかった。 トリステインより大使殿を運んだフガク殿、そして義によって我らに 力を貸してくれることを約束してくれたルーデル殿の二人の鋼の乙女が 明日の戦いの参加してくれることとなった!」 『ハガネノオトメ』?なんだそれは?――ざわめきに包まれるホール。 老王はそこに力強く言葉を発した。 「朕はかつて、あの忌まわしきレキシントンの戦いにおいて孤立し、 しかる後に無傷で皆と合流したことは覚えておろう。あの絶望的な戦場に おいて、朕を助けたものこそ、鋼の乙女と自らを呼びしもの。たった 一人で数千の兵を相手に引けを取らぬ鋼の乙女が二人も助力してくれると あらば、朕はここに一つの決断をしたことを伝えよう」 ホールのざわめきが大きくなる。ふがくも、ルーデルも、老王の一挙 一動に注目していた。 「明日、我らは叛乱軍の追撃を断ち、しかる後に、この忌まわしき大陸を 離れ、トリステインへ亡命する!」 ざわめきは最高潮となった。老いたる王はそれを手をかざして抑える。 「これは栄光ある敗北であり、そして、やがてつかみ取る勝利への第一歩と なるのだ! 我らは始祖より続く王家、そして朕に仕える真のアルビオン貴族を 絶やさぬため、この地を離れる。しかし、いつの日か、そう、いつの日か 必ず、この地へ還ってくることを約束する!」 一人の貴族が、大声で王に告げる。 「では陛下。その殿、是非ともこの私に命じられますよう」 「あいや待たれよ。いかにマールバラ公といえどもこの名誉は譲れませぬぞ!」 その勇ましい言葉に次々と名乗りを上げる貴族たち。老王は目頭を ぬぐい、ばかものどもめ……、と短くつぶやくと、杖を掲げた。 「よかろう!しからば、この王に続くがよい!しかし、決して死ぬことは 許さぬぞ! さて、諸君!今宵は遠路はるばるいらしたトリステインからの大使も 同席されている。重なりし月は、始祖からの祝福の調べである!よく、 飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」 ホールは喧噪に包まれる。こんなときにやってきたトリステインからの 客が珍しいらしく、王党派の貴族たちが、代わる代わるルイズたちの元へと やってきた。貴族たちはルイズとギーシュのみならずふがくとルーデルにも 明るく料理を勧め、酒を勧め、冗談を言ってきた。 「大使殿!このワインを試されなされ!お国のものより上等と思いますぞ!」 「なに!いかん!そのようなものをお出ししたのでは、アルビオンの恥と 申すもの!このハチミツが塗られた鳥を食してごらんなさい!うまくて、 頬が落ちますぞ!」 「まあ、どう見ても人間そっくりね!ささ、このタフィーを召し上がれ。 お国のキャラメルと違い、アルビオンの長き伝統の味がしますわよ」 そして皆最後に必ず『アルビオン万歳!』と高らかに宣言して去って いくのだ。それは消えゆく祖国への愛着の念か。それがこの上なく悲しく、 しかもそれが自分の言葉に端を発していると知っているルイズは、顔を 振ると、この場の雰囲気に耐えきれず、外に出て行ってしまった。ふがくは ギーシュを促してその後を追わせる。ルーデルがその美貌と胸にぶら下げた 多くの勲章を貴族たちから賞賛されている(ルーデル本人は男と話すのを いやがってはいたが)のを見て、溜息をつくとその輪から離れた。 ふがくがそんな風にしているのを見て、座の真ん中で歓談していた ウェールズ皇太子が近寄ってくる。 「ふがく……この発音で良かったかな?東方の発音は難しくてね。 ラ・ヴァリエール嬢から訂正を求められたよ」 ウェールズ皇太子はそう言うと、笑った。 「明日の戦い、あなたたちの出る幕はないでしょうね。私たちだけで すべてが終わる」 ふがくは疲れた声で言う。 「だろうね。パーティが始まる直前、父王にきみたちのことを話したとき、 そう思ったよ」 ふがくはウェールズ皇太子とまっすぐ向き合うと、尋ねる。 「失礼ですが……国王陛下を助けた、という鋼の乙女は?」 「やはり気になるかな?」 ふがくが首肯すると、ウェールズ皇太子はゆっくりと話し始める。 「私も詳しいことは知らない。だが、2年前、『レコン・キスタ』が蜂起して 最初の戦いとなったレキシントンの戦いで、王立陸軍を指揮していた 父王が突然の近衛部隊の裏切りで孤立するという最悪の事態が発生した とき……離反した軍の包囲から脱して何とか集結した生き残りが少し 離れた丘の上で花火が上がったの見た。王軍がその丘に到着すると、 そこには無傷の父王がしっかりと大地を踏みしめ丘の向こう側を 見つめていた、ということだ。 今まで父王はそれを『始祖の加護』だとしか言わなかったが、きみたちの ことを聞いてようやく真実を話してくれた、ということさ」 「名前は聞かなかったのですか?国王陛下は」 「それが、こう答えたそうだ。 ――ボクは、本来ここにはいないはずの鋼の乙女。陛下は、ご自身で 危機を脱せられたのです―― その姿は、父王が言うには大輪の薔薇を模したヘアバンドと萌えるような 若草色のエプロンドレスを着た乙女、だったそうだ。戦場を駆けるためか スカートの裾を詰め、駿馬の速度で走る鉄のブーツを履き、鉄の背嚢を 背負い、左手をすっぽりと覆う丸い鉄の盾と、そこに取り付けられた 戦列艦の主砲以上の威力を持つ銃をもって、父王を抱えて戦場を単騎で 突破したそうだ。なるほど、父王が『始祖の加護』と言うのも分からなくも ない」 それを聞いてふがくはそれが戦車型の鋼の乙女だと理解した。だが、 エプロンドレス――メイド服を着る鋼の乙女はイギリス軍。ふがくが 知る中でイギリス軍の戦車型鋼の乙女でメイド服を着ている者は記憶に なかった。 (歩兵戦車マチルダIIのマチルダは胸元が大きく開いたドレスだし……誰?) そう考えるふがくに、ウェールズ皇太子から紅い羅紗の小箱を手渡される。 ふがくがそれを開けると、そこには切れた鎖が修理された金の額飾りが 入っていた。 「きみに返さなければならないものだからね。 修理を頼んだ我が軍のメイジが驚いていたよ。それほど高純度な黄金は 見たことがない、とね。『錬金』でつないだため元の黄金より質は落ちるが、 許してほしい」 「いえ……それよりも良かったのですか? 私が聞いた話では、黄金の『錬金』はスクウェアメイジでも難しいと」 戦の前に無駄な疲弊を招いたのではないか――そう言いたげなふがくに、 ウェールズ皇太子は笑ってみせる。 「案じてくれているのか。私たちを。きみは優しいな。きみのような 優しい心を持ったガーゴイルを制作したメイジも、さぞ心優しい人物 だったのだな」 ウェールズ皇太子は、そう言うと、遠くを見るような目で語り始めた。 「我々の敵である貴族派『レコン・キスタ』は、ハルケギニアを統一 しようとしている。『聖地』を取り戻すという、理想を掲げてな。 理想を掲げるのはよい。しかし、あやつらはそのために流されるで あろう民草の血のことを考えぬ。荒廃するであろう国土のことを考えぬ」 「だから、せめて勇気と名誉の片鱗を見せつけるために、全滅するまで 戦うつもりだった?」 「そのとおりだ。ハルケギニアの王家は、決して弱敵ではないことを 示さねばならぬ。やつらがそれで『統一』と『聖地の回復』などという 野望を捨てるとは思えぬが、それでも我らは勇気を示さねばならなかった」 「『高貴なる者の義務』、ということですね」 そうだ、とウェールズ皇太子が頷くと、ふがくはそれに言葉をつなげる。 「……私が本来なすべきことは、祖国に仇なす敵を滅ぼし、天皇陛下と 臣民を安んじること。 将兵は、それこそこちらでいうところの平民の一兵卒から貴族どころか 皇族まで、祖国を守るために戦い、多くの血が流されました。だから 私は、絶対に戦うべきではなかった敵国を破壊し、勝利するために 生み出されたのです。国家予算に匹敵する開発費と資材を投じて」 それだけのものが一人の貴族の子女の使い魔として存在していることの 意味が分からぬウェールズ皇太子ではない。始祖の奇跡であり、 トリステイン王国では魔法学院において学生の進級条件としてある意味 軽々しく行われている『サモン・サーヴァント』の罪深さを見たような 気がしていた。 「きみは、帰りたいかい?」 ふがくは無言で首肯した。 「私も今の話を聞いて、きみはここにいるべきではないと思った。 ……しかし、私もきみたちを元の国に返す魔法は聞いたことがない。 すまない」 「お顔を上げて下さい。殿下。私は兵器。そのようなことをするべきでは ありません。 それよりも、明日の戦いの後をお考え下さい」 「……そうだな。 我々が亡命すれば、トリステインは……アンリエッタは、戦いの矢面に 立たされる。彼女は可憐な花のようだ。できることなら、彼女の悲しむ 顔は見たくない。 本来なら、私は本当にここで勇敢に戦い、そして勇敢に死ぬべきなん だろうがね……」 ウェールズ皇太子の顔には苦悩の影が浮かぶ。ルイズに押し通された 結果、ふがくとルーデルが叛乱軍を退ければ亡命すると約束してしまった。 ふがくもそれは間違いだと思っている。ルーデルが協力すると言わなければ、 ルイズの頭を冷やさせることができたかもしれない。しかし、それらは すべて結果論だ。 「だが、それよりも私は心配していることがある。 きみたちが五万の叛乱軍を退けたとき……ラ・ヴァリエール嬢はその 現実に耐えられるのだろうか、とね。きみたちの戦いとは、そういう ものではないのかな?」 ウェールズ皇太子はそう言ってふがくをまっすぐ見つめた。彼は戦略 爆撃を知らない。そのような概念はまだハルケギニアには芽生えていない からだ。それは同時に戦略爆撃が持つ非情な側面を知らないと言うことに なる。しかし、ウェールズ皇太子のその言葉は、ふがくに明日起こるで あろう現実を予想しきっていると理解させた。 「……ルイズ……いえ、ご主人様には、自身の言葉が呼び寄せた結果を 理解してもらいます。たぶん、『こんなはずじゃなかった』と、言うと 思います……けれど……」 「『こんなはずじゃなかった』、か……。世界は、いつだってこんなはず じゃなかったことばかりだよ。それが現実だ。 だが、王族であれ、貴族であれ、一度口にしたことの責任は果たさ なければならない。それが義務だ。逃れることのできぬ、最後まで 課せられる義務なのだ」 毅然と言い切るウェールズ皇太子。その直後、その表情が唐突に陰った。 「……明日の戦いは、きっと歴史に残るだろうね。私たちが死ぬにせよ、 生き残るにせよ。きっと……」 それだけ言うと、ウェールズ皇太子は再びパーティの座に戻っていく。 その顔には、先程の陰りは見えない。残されたふがくは、懐から デルフリンガーを取り出し、ホールの立派な窓から夜空を見上げる。 「ぷはあ。もうあれっきりお蔵入りかと思ったぜ。相棒の懐は広くて 暗くて暖かいからな。物騒なものも多いし」 久しぶりに話せるのがうれしいのか、鍔をカタカタと鳴らしてしゃべり 始めるデルフ。ふがくはそれをそっと壁に立てかけた。そして、自分も 翼を痛めない程度に壁により掛かる。 「……話し相手になってくれない?デルフ」 「んあ?どした?相棒?」 「………………」 満天の星空。そこには重なった双月が冷たくふがくを見下ろしていた。 前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3964.html
前ページ次ページゼロと魔砲使い 「はい、どなたですか?」 なのはがノックに答えると、返ってきたのは女性の声だった。 「あたしよ、キュルケ。あ、でも、本命はタバサだから、悪いけど閉め出さないでね、ルイズ」 ルイズは一瞬叫びそうになっていたが、それを聞いて何とか押さえ込んだ。 視線でなのはに扉を開けるようお願いする。彼女も無言のまま頷くと、静かに扉を開いた。 扉の向こうには、思ったより多くの人がいた。 キュルケとタバサは予想通り。それに加えてもう一人。 金髪美形の優男、ギーシュも二人と一緒にいた。 「で、なんの用?」 一行を迎え入れた室内で、ルイズは不機嫌そうに問い掛けた。 ちなみに不機嫌なのは、全員の視線が自分ではなく、使い魔の方に向いているからだ。 用事のほうも何となく予想が付いた。 そして、それを切り出したのも、予想通りタバサだった。 彼女らしい、単刀直入な一言。 「弟子に、してほしい」 坦々とした口調とは裏腹なまでに、その瞳には炎が燃えさかっていた。 ギーシュが意外そうな顔でタバサを見ている。ルイズもだ。 そして申し込まれたなのはは。 「ご主人様、どうしますか? ちなみに私は、許可が出たら考慮してはみますけど」 些細なことであるが、そしてささやかであるが、ルイズの心に喜びの炎がともる。 ああ、この使い魔は。変わらず私を立ててくれる。 そしてルイズは答える。 「まあ、あたしに異存はないわ。なのはもいいみたいだし、気持ちも判るわ。あれを見せられちゃねぇ」 タバサも、こくりと頷く。下を向いた顔に、ほんのかすかな笑みが浮かんでいたのに気がついたのは、残念ながらキュルケだけであった。 一連のやり取りを見て、なのはも彼女を受け入れることにした。 「んじゃ、とりあえずは受けてあげる。ひょっとしてギーシュ君も弟子入り希望?」 「は、はい! 今日一日で、僕は明らかに昨日までの僕とは一線を画した強さを手に入れたと思います! 出来うるなら……僕は、もっと強くなりたい!」 顔を真っ赤にしながら勢い込むギーシュ。そこには普段のすかした少年の姿はない。 (あーあー、二人とも、なんか熱血しちゃって。ちょっと意外ね) ルイズは、そんな二人の様子に、人の持つ複雑さを一つ知ったような気がした。 「じゃ、ちょっといいかな」 ルイズの部屋が豪華であっても、学生寮は学生寮。さすがに五人分もの椅子はない。しかたがないので弟子二人+1はカーペットの上に直に座らせられる羽目になった。もっとも不満そうなのはキュルケだけであるが。 上座に立ったなのはは、弟子入り希望の二人に向かって語りはじめた。 「弟子入りするのはいいんだけど、あらかじめ言っておくわ。 まず、今の私が使っている魔法は覚えるのはたぶん無理。逆にあたしが系統魔法を教えるのもたぶん無理よ。そこは理解しているよね」 頷くタバサとギーシュ。 「その上で改めて問います。私に弟子入りして、なにを覚えたいの?」 「フライを維持しつつ他の魔法を使う方法」 タバサは間髪を入れずに答える。 「僕は、ワルキューレをより強くするための方法です」 少し遅れてギーシュも答えた。 二人の答えに、なのはは力強く頷く。 「うん、それなら教えられると思うけど……ご主人様」 確認するようになのははルイズに問い掛ける。 「ここでは飛行魔法と他の魔法の併用が出来ないんですか?」 「ほとんど不可能に近いわ」 これまた打てば響くように即答えが返ってきた。 「あらルイズ、魔法使えないのによく判ったわね」 キュルケにしっかり突っ込まれていたが。 「なによキュルケ、私だって勉強はしてるのよ! これ、座学で習ってるじゃない!」 「まあそれはそれとして」 怒るルイズの気をそらすように、キュルケはなのはのほうに向かって言う。 「判りやすく言えば、右手で数式を解きながら左手で呪文の書き取りをしているようなものですわ。不可能ではありませんけど、このハルケギニア中を探しても、可能なのは十指に満たないでしょうね」 「あ、そういう理由なの。なら、たぶん教えられると思う。それ、私たちには基礎の基礎だから」 さすがに全員の注目がなのはに集まった。その瞳が一様に『基礎の基礎』という点に向いている。 「マルチタスク、っていってね」 なのははそう答えるとちょっと遠い目をした。 「同時に複数のことを思考する技術があるの。ミッド式の魔導士にとっては、これほとんど必須の技能だから、出来ない人がいないくらい。私も九才の頃には出来てたよ」 「うわ、さすがにそれは想像もしてなかった」 ルイズもびっくりしてなのはの方を見る。 「特に空戦……空で戦うタイプの魔導士は、これが出来ないとそもそもお話にならないし。ただ、ちょっと問題があるのよね」 「問題?」 タバサが真剣に聞いてくる。 「ええ。マルチタスクの訓練は、念話が通じないと効率がかなり悪くなっちゃうから」 「念話?」 聞き慣れない言葉に、タバサがなのはのほうを注視する。 「ミッド式ではこっちのコモンスペルくらい平易なものなんだけど、ま、要は声じゃなくて心で会話することよ」 ルイズ以外の顔に驚きの声が上がる。そもそもそんな発想すらしたことがなかった。 「ちょっと試してみるね」 なのはは目の前の三人に念話を送ってみる。しかし、反応があった人物はいない。 (駄目みたいね) 愚痴をルイズに向けてみると、 (なんかそうみたい。ひょっとしたら私たちの念話って、主人と使い魔を結ぶ線があるから使えるのかしら) こちらはちゃんと繋がるようだ。 なのははルイズの意見にも一理あるような気がした。かといって念話が繋がらないのは先にも述べたとおり不便である。 一応念話によらないマルチタスクの訓練法もあるのだが、なのははそもそもレイジングハートとの間に念話が通じていたため、それを使用しない訓練となると思いつかなかった。 とりあえずなのはは、念話を通じさせるためにいろいろと対処法を考えた。 資質を持たない一般人にはまるで通じない。だがここにいる者は全員魔法が使える。資質0とは考えにくい。 だとするとたいてい問題になるのは出力と距離である。事実上この問題は一体化していて、違いが問題になるのは『繋がるが聞き取りにくい』と言った場合程度である。 そこでなのはは一番簡単な解決方法を試してみた。 「ちょっとごめんね」 といいつつ、なのははタバサの手を握る。なにをするのか、と思ったタバサは、いきなり未知の衝撃を受けることになった。 (これで通じないとちょっとまずいなあ) 「な、なに、いまの」 珍しく、本当に珍しく、タバサが感情の交じっているうろたえ声を上げていた。 端から見ているキュルケとギーシュには何が何だかさっぱりである。 そして混乱するタバサの脳裏に、さらなる声が響く。 (落ち着いて。今のは私が話しかけている声。言いたいことを思い浮かべて、頭の中で話してみて) (……こう?) (うん、そんな感じ。零距離なら一応は繋がるみたいね。となるとやっぱり魔力がらみか) (……不思議。言葉を使わないで意識を通じ合えるなんて) (あ、誤解しないでね。これはただ声を使わずに会話しているだけよ。嘘だってつけるし。それ以上の深い繋がりは、また別のものだから) (了解) ほんの短い間に、いくつもの言葉が交わされた。タバサも最初の混乱から立ち直ると、いつものペースに戻っていく。念話においても、言葉に感情のこもらない、平坦なしゃべり方になっていく。 それを感じ取ったなのはは、そこで手を離した。 「ふう、何とか会話そのものは出来るみたいね。最低限は何とかなりそう」 一方、タバサのほうではキュルケとギーシュが興味深げにしていた。 タバサはものは試し、と、キュルケの手を握って念話を送ってみる。が、なにも起こらない。 「駄目」 そう短くつぶやくと、なのはに向かって言う。 「ナノハ、私からキュルケには送れなかった。試してみて」 いわれてなのははキュルケの手を取って念話を送ってみる。 「あら、ミス・ナノハ……きゃっ!」 その後の展開はタバサと同様だった。二人とも念話の感覚を理解した上で試してみるが、やはり繋がらない。 もののついでにギーシュも試してみたが、やはり同様であった。 「結論からすると」 何故かルイズがまとめるかのように場を仕切る。 「ナノハとの間には念話が通るけど、私たち同士では不可能。私とナノハは離れていても繋がるけど、他の人とは接触しないと繋がらない、っていう事ね」 「そうなりますね、確かに。後できちんと記録を取って調べてみましょう」 「残念」 タバサは言葉通り残念そうにしていた。キュルケは、 「あら、せっかくキスしながら愛の言葉をささやいてもらえるかと思ったのに、ナノハとだけじゃそうも行かないわね」 などと何か問題のありそうな発言をしている。 ちなみにギーシュは赤くなり、ルイズが切れかかって杖に手を伸ばしたのを慌ててなのはが止める羽目になった。 「ちょっと、ツェルプストー! なによその問題発言」 「あらルイズ、愛している人と一体化しながら愛の言葉をささやいてもらえるなんて、幸せ冥利に尽きないこと?」 「ちょ」 「まあご主人様、落ち着いてください。恥ずかしくとも不謹慎と言えるほどじゃないです」 何とかなのはの押さえで、ルイズは正気に戻った。 「でもそうすると、こちらの人達には、念話の資質無いみたいですね」 なのははちょっと困った顔で言う。接触すれば使えるから、トレーニング自体は出来るが、そもそもマルチタスクの訓練は、恒常的に行うからこそ効果の出るものである。 そもそも念話が必要になるのも、日常生活と平行する形で訓練をするためであり、またそれこそが最高に近い訓練法でもある。ある意味二四時間練習しているようなものになるからだ。 現になのはも学業と仮想訓練の併用でこれを完全なものにしたのだ。 「あたしとは問題ないのにね」 ルイズもちょっと不思議そうに言う。 「そうよルイズ、あなた魔法てんで駄目なのになんで?」 キュルケも突っ込むが、今度はルイズもさらりと流す。 「だとするとやっぱり、使い魔とのラインかしら」 「あり得ますね……試してみますか?」 その提言で、一同は部屋を出ることとなった。 使い魔達のたまり場から少し離れたところで、キュルケ達は己の使い魔を呼んだ。 フレイムとヴェルダンデはやや大きい程度の動物であるが、シルフィードはかなりの大きさである。 「うわ、おっきい」 それがなのはの感想であった。夜なので細かいディティールが見えないのも大きかった。 そしてなのはが説明する。 「皆さん、使い魔との間には、ある程度感覚が繋がっていますよね」 頷く三人。 「ですので、これから使い魔の方のほうに念話を送ってみます」 そういってまずなのはは、フレイムに手を触れる。一瞬警戒したようだったが、すぐにおとなしくなった。キュルケがおとなしくしているように命じたようだ。 (まずは、あなたに。こんばんは、フレイムさん) なのはが念話を送る。すると。 (『……よろしく、主の友』) 明確な言葉ではない、しかし充分に意味の理解できる不思議な『言葉』が返ってきた。 なのはは驚いてキュルケの方を見る。 「ねえキュルケさん、あなた、フレイムさんとの間で会話できるの?」 問われたキュルケは不思議そうな顔をしている。 「いいえ、フレイムは私の命令は理解しているけど、言葉は交わせないわ」 「だとすると……」 再びなのははフレイムに触れ、改めて念話を送る。 (フレイムさん、お願い。まず、私の送る念話を主人に伝えてみてくれる? 続いて、あなたの意志を同じように主人に送ってみてほしいの。出来る?) (『……主の望みは我が望み。また、交わすべき言葉なぞ無いが』) (挨拶で充分よ。望むことはなくても、それだけでたぶん主さんはものすごく喜ぶわ) (『主が喜ぶのなら』) (じゃ、今からね。キュルケ、聞こえてる?) 次の瞬間、キュルケの身がびくりと震えた。 (嘘、聞こえたわ、ナノハ) (うん、返信もOK。これならやりやすくなりそう) (まさか使い魔にこういう使い方があったとはね。驚きだわ) (ふふ、驚くのはそれだけじゃないわよ) (『改めてよろしく、主様』) (へっ!) 今度は完全にうろたえはじめたキュルケ。タバサもギーシュもルイズも、なにが起こったのかさっぱりだ。 「どうしたの、キュルケ」 代表する形で聞いたルイズに、キュルケは何故か感極まったような喜悦を浮かべながら、ルイズに抱きついた。 「ちょ、キュルケ!」 「話せたのよ! フレイムと!」 「「え~っ!」」 驚くルイズとギーシュ。タバサは珍しいことに何故か冷や汗を浮かべている。 だが三人はそんなことに気がついた様子もなく驚きを共有している。 「ねねキュルケそれって」 「そうなのルイズ実はフレイムってしゃべれたのよ」 「嘘なんでサラマンダーが人語を解するのよ」 「たぶん使い魔になったからでしょそれよりちゃんと言葉が交わせるなんて想像もしてなかったわ!」 「なら僕のヴェルダンデとも会話できるのかなナノハさん是非次は僕のヴェルダンデで試してみてください」 ギーシュまで交えてのものすごいマシンガントークだ。息を継いでいる様子が全くない。 そのまま会話は続いていたが、三人とも見事に酸欠になってこけた。 「興奮しすぎ」 ただ一人冷静だったタバサのツッコミに、みんなが顔を赤くしていた。 続いてはギーシュの熱烈な『要望』により、ヴェルダンデで試してみる。 結果は同じで、やはりナノハとヴェルダンデ、そしてヴェルダンデとギーシュの間にも念話が成立した。ナノハとヴェルダンデの間では接触していないと通じなかったが、ヴェルダンデとギーシュの間は、キュルケとフレイムのように、距離を隔てていても繋がった。 ちなみにフレイムやヴェルダンデも、こういう事が可能だとは思っていなかったようだ。 また、二人ともそもそも、知性そのものは人の命令を理解できるほどになっていても、人間が無意識下に蓄えている膨大な知識……いわゆる言語や常識といったデータベースが存在していないため、そもそも会話をするという発想そのものが存在していなかったのだ。 使い魔が人間の命令を理解できるのは、命令と共にそれに付随している付帯条件なども主側から送られていたのであろう。 だが、特にギーシュの様子を見ていると、ヴェルダンデが主人との間に日常会話を成立させることが可能になるのは、そう遠くないかも知れない。 赤子も最初は言葉を話せないのだ。 さて、となると残りはタバサとシルフィードのペアである。だが、実はタバサ、表面的にはともかく、内心は焦りまくっていた。 そう、実はシルフィードはただの竜ではない。素で人間に匹敵する知性と、会話を可能とするだけの知識及び理解力を持つ『韻竜』である。 それはまあいい。このままだとここにいる人達に彼女の正体がばれそうな気もするが、幸いここにいる全員、口は堅い、とタバサは思っている。 自分の欲のために友を裏切るような恥知らずはいない。 だが問題なのは……。 そして数分後。 なのはの念話を受け、そしてそれをタバサと繋げることを理解したシルフィードは欣喜雀躍した。 「タバサ、水臭いわよ。でもこの子がただの風竜じゃなくて風韻竜だったなんて、さすがと言うかなんというかね」 「まさかそんなすごいものが実在してたなんて」 「く、悔しくなんかないもん! あたしの使い魔はもっとすごいんだから!」 「落ち着いてくださいご主人様」 ……案の定シルフィードの正体は一同にばれまくっていた。無理もない。念話が通じたとたん、まだその切り替えがうまくいかないシルフィードが、 「すごいのね! これなら私、お姉様と思う存分おしゃべりできるのね! 人前でしゃべると怒られるけど、これならばれないのね、きゅいきゅい!」 と、ご丁寧に肉声のほうでぶちかましてしまったのだから。 タバサは頭を抱えたが後の祭りである。仕方なくみんなに、 「秘密」 ただ一言そういっただけであるが、何故か全員(なのはまで)そのとたん米搗きバッタよろしく頭を上下していたのがいかなる理由かは、彼女の名誉のために秘密にしておこう。 ……なお、後の話になるが、タバサはマルチタスクを誰よりも速く習得し、そしてなのはに匹敵するまでに使いこなせるようなる。 理由? 考えるまでもあるまい。 「まあ、とりあえずこれならみんなにマルチタスクを教えるのは何とかなるわ。私が使い魔さん達のたまり場で、彼らに接触して教えればいいから」 なのははいろいろあって混乱する場を、何とかまとめ上げた。 「マルチタスクさえ覚えられれば、みんなの生活を維持したまま、いろいろな練習が出来るようになると思うわ。ギーシュ君なんかは、ワルキューレの操作演習とかなら仮想で出来るようになるし」 「それは楽しみです」 ギーシュの目には期待が満ちあふれていた。 「で、みんなにお願いしたいんだけど」 「何かしら。私は別に弟子入りする気はないけど、たいていのことなら引き受けるわよ」 キュルケは情熱的な瞳をフレイムに向けつつ答える。 ルイズが少し不機嫌そうな表情になったが、あえてそれは無視してなのはは答えた。 「マルチタスクくらいは教えてもいいわ。たぶんあなたのためになると思うし。でね」 そこでなのはは息を整える。 「これはご主人様のためでもあるんだけど……一度みんなが魔法を使っているところを見せてほしいの。出来るだけたくさんのバリエーションで、強さも手抜きから全力全開まで。そして、ここが一番大事なんだけど」 そこでいったん言葉を切り、全員の注目を集める。 「失敗したところが見たいの。爆発しない、普通のメイジが失敗するところを」 その一言で三人は理解した。もちろん答えは。 「いいわよ」 「了解」 「わかりました」 全員そろっての肯定であった。 その日はこれで終わりとなるが、最後にタバサが言った。 「ナノハ、何度か念話して感じたんだけど」 「? 何かしら」 「この感覚、コモンスペルに出来るかも知れない」 「そうなの? 出来たらいいわね。協力できることはするわ」 残念ながら、彼女の努力が実るのは、もう少し後のことであった。 何かと騒がしい一日が終わり、タバサが自室に戻ると、いつの間にか机の上に書状が置いてあった。 少し嫌な気分になり、それを手に取る。普段なら気にもしないが、今回はおそらく召喚状だろうと思ったからだ。 タバサが風竜を召喚したのはとうに知れているだろう。だとすればまず間違いなく見せに来いという指令が来るはずだ、と、タバサは思っていた。ついでに周辺の揉め事を解決して来いといわれるかも知れない。 だが、意外なことに書かれていた内容はまったく別のことであった。 そしてそれを読み進めたタバサに、苦悶の表情が浮かぶ。 指令書は、こう命じていた。 『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの召喚せし人間の使い魔に接触し、能力・使用魔法・性格その他について可能な限り詳細に報告せよ』 しかも、その後の署名はイザベラのでも北花壇騎士団のそれでもなく、紛れもない国王印が記されていた。すなわち、この指令は国王直々の命令と言うことになる。 「なんで、彼女が……」 ガリアの諜報員は、当然今日の決闘も報告済みのはずだ。だが、わざわざ自分に命令してまで彼女を調べようとするのはいささか不自然だ。合理的に考えるのなら、彼女の存在はガリア王にとって看過できないほど重大なもの、ということになる。 そして彼がわざわざ非合理な命令を出すことはない。ということは。 彼女は思わず震えた。報告はしないとまずいだろう。こんな手を打つ以上、自分も見張られているのは間違いない。だが、これは。 彼女はそこに光を見た思いがした。それが愚かな虫を誘う蝋燭の炎なのか、それとも長き迷宮の出口なのかはまだわからない。 だが、その光は間違いなく自分の運命を破壊する。それだけは確信できた。 前ページ次ページゼロと魔砲使い
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6056.html
前ページ次ページ鋼の使い魔 風石船の港があるラ・ロシェールの町から、南西に20リーグの場所。 山岳丘陵とそれを囲む深い森に覆われているラ・ロシェール領の一角上空に、白百合の軍旗をはためかせる船団が滞空していた。 トリステイン王国の空軍艦隊である。旗艦は2等戦列艦『メルカトール』号以下フリゲート艦を含めた30隻で構成された艦隊は、 神聖アルビオン共和国からやってくる艦隊と、それに搭乗するアンリエッタの婚儀に出席する国賓を迎える為にトリステインの時刻0900より上空に待機していた。 『メルカトール』号の艦橋では艦長フェヴィスと艦隊司令長官ラ・ラメー伯が正装で眼前の空を見据えていた。 ラ・ラメーは艦橋に掛けられた時計を睨んだ。 「彼奴等は遅いな。艦長」 事前通告では1000には両艦隊合流、アルビオン側からの祝辞文書、及びそれに伴うトリステイン側からの返辞文書の交換など、 外交上のやり取りをする手はずになっているのだが、現在時刻は1020。精強とされるアルビオン空軍にしては、と、この遅刻は不愉快を誘った。 「事前通告によれば、向こうは『ロイヤル・ソヴリン』を旗艦に艦隊を組んでいるとのこと。巨艦を主軸にしているならば足も遅いでしょう」 「ふん。王家を殺した犬共め。犬なりに格好をつけるつもりらしいな」 ラ・ラメーは神聖アルビオン共和国に対する軽蔑の心を包み隠さない。路地裏で乞食に這い付かれたように鬱陶しげであった。 実のところ、トリステイン側の貴族、特に王宮に入り込み政治の一部を担う者達の中で、アルビオン側から降って沸いた『不可侵条約』打診をどのように見ていたのか。 彼らは『内乱に疲れた貴族派はトリステインとの戦いを恐れているのだ』『ゲルマニアと手を組んだトリステインと戦う事を避けている』等と解釈していた。 無論、凡そ全てのトリステイン貴族がそう思っていたわけではなく、ゲルマニアとの軍事協約を取り付けたマザリ―ニなどは、 かの国から秘かにとある集団をトリステインに呼び寄せていた……。 ともかく、トリステインの中枢にあって体勢を占めたのは「王家を蔑ろにしたアルビオン貴族め、恐れるに足らず。吾らは始祖より賜りし王家を担ぐ者なり」 という自負であった。 もっともキュルケの言葉を借りるなら、その傲慢と自負がトリステインを小国にしているのだが。 『メルカトール』号艦橋に、見張り台より導管を伝って声が入った。 「11時の方向に艦影多数!」 北に向けられた艦首より北西の空から三層に組まれた艦隊が、やがて姿を現した。 艦隊陣形は勇ましくも紡錘陣だ。一際巨大な艦影がその中央に陣取っている。 「あれが『ロイヤル・ソヴリン』か…。実に巨きいな」 ラ・ラメーは艦橋の窓から、アルビオンの旗艦をまじまじと見た。 「過去の一等戦列艦と比べても格別の巨艦ですな。随伴の艦艇が小さく見えます」 「連中も下品極まるな。めでたい祝いの時にあのような船でやってくるなど…」 やがてアルビオン艦隊は相対距離300メイルで停止した。大マストの上で信号士が杖を振ってこちらに平文で信号を送ってくる。 『貴艦隊ノ歓迎ヲ謝ス アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』艦長』 「艦長名義の発信とは嘗められたものだな…。忌々しい」 ラ・ラメーは自分が虚仮にされたと見てぎりりを歯を噛んだ。同時に、決して重厚とは言えない自分の艦隊を振り返り、忸怩の思いに駆られる。 「…返答は如何しますか」 「…まぁ、良い。返信は『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス トリステイン艦隊司令長官』。以上だ」 脇に起立していた副官が書き取られた返信文を復唱し、『メルカトール』号の大マストの信号士へと送られる。 返信が行われた後、アルビオン艦隊側から轟音が飛び込んできた。 礼砲である。空砲によって艦隊歓迎に対する感謝を表すものだ。 『レキシントン』の礼砲は全砲『81』門全てを使った空砲であり、その衝撃はトリステイン艦隊を振るわせた。 「…こちらの礼砲は幾つになさいますか」 艦長はラ・ラメーに聞く。相手の礼砲に対し、こちらも答えなければならない。 王家またはそれに順ずる最高位の貴族及びそれらの名代に対しては、11発の空砲を行うのが慣例だ。以下、相手の位が下がるほどに空砲の数は減らされる。 「…7発でよかろう」 因みに7発は、最上位から2段下がる者に対する答砲になる。位で言えば、「一軍の大将」に対するものである。 ラ・ラメーなりの皮肉であり、意地でもあった。 『レキシントン』号艦橋にて、ヘンリー・ボーウッドは左舷に展開しているトリステイン艦隊を見た。 等間隔で響く空砲を静かに聴いていたのであったが、脇にいる今回の『親善訪問』司令官であるジョンストンは、対照的にそわそわとして落ち着きなく上座に座っていた。 「艦長、あまり距離を詰めすぎるな。…君らはいい。揚陸に向け待機している兵達は空に慣れない。不用意だと士気が下がる」 本音では自分が怖いのだろう、とボーウッドは脳裏で唾を吐くが、そんなことはおくびにも出さないだけの礼儀は身についていた。平坦な口調で答える。 「サー。しかしながら、相手側に警戒されないためにも、また、こちらの砲を有効に機能させるためにも、ある程度の距離を殺さないといけません」 「そ、そうか…まぁ、いい。そろそろ準備に掛かりたまえ」 司令官とはいえ、ジョンストンは戦の素人だ。ボーウッドは実務指揮に関しては彼から一任されている。 「左舷砲戦準備、『火竜弾』装填。『ホバート』号の係留ロープを切断せよ」 『ホバート』とは艦隊陣形の左端、ちょうどトリステイン艦隊の正面に近いところで陣形に参加している艦である。艦齢も古く、装備も旧式の老朽艦だった。 今現在『ホバート』号に人員は乗っていない。…いや、ラ・ロシェールに入るまでは乗っていた。だが、人員は途中で他の艦に乗せられ、代わりに多量の火薬を詰め、 ここまでは他の艦にロープで引っ張られる形で運ばれてきていた。遠景からは無人艦であると悟られないように巧妙に偽装して…。 「左舷砲戦準備完了。1番から15番までいけます」 砲撃長から導管で報告が来る。この間、トリステイン側の礼砲が4度、轟いた。 そして、トリステイン艦隊6度目の空砲が空に響く。 「アルビオン艦隊に異変!左翼の艦艇で火災発生の模様!」 『メルカトール』の艦橋に見張り台からの報告が届く。 トリステイン艦隊の正面に位置し、アルビオン艦隊の左翼に当たる艦の一つから煙が上がっているのだ。 「む。事故か…?」 いぶかしむラ・ラメーであったが、艦艇で事故はつきものである。さして留意もしなかった。 だがアルビオンの艦隊は、艦の火災を鎮火する素振りを見せない。火災に見舞われた船はどんどんと煙を上げ続けている。 そしてついにその船――『ホバート』号は、爆発炎上した。炎を蜥蜴の舌のように伸ばして船は高度を保てず降下していった。 「な、何事だ?!なぜアルビオンは救助に向かわない?」 傍観していたラ・ラメー以下、艦橋は騒然となった。 艦長フェヴィスも呆然としていたが、直後信号士から届いた文書を見て、さらに唖然とした。 「皆、落ち着いてくれ!アルビオン側から信号が届いた」 その声に艦橋の騒ぎが静かになる 『『レキシントン』号艦長ヨリ トリステイン艦隊旗艦 『ホバート』号ヲ撃沈セシ、貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明サレタシ』 「砲撃だと?!向こうの事故じゃないか!」 息巻くラ・ラメーは信号士まで直通の導管を開く。 「アルビオン旗艦に返信だ!『本艦ノ射撃ハ答砲ナリ 実弾ニアラズ』」 しかし、ラ・ラメーの命令が行き届く前に、アルビオン側から再度の通信が入った。 『只今ノ貴艦ノ射撃ハ空砲ニアラズ 我ハ貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス』 「ふざけるな!言いがかりだ!」 だが、ラ・ラメーの声は虚しく、『レキシントン』からの砲撃で掻き消えた。 砲撃が着弾し、『メルカトール』が揺れた。 「送れ!『砲撃ヲ中止セヨ 本艦ニ交戦ノ意思アラズ』!」 しがみつくように導管に吐き出されるラ・ラメーの言葉にアルビオン側はそれに答える事無く、砲撃が続く。 「艦長!被弾箇所から激しい火災が発生しています!」 「消火が間に合いません!」 船体の各部から悲鳴のような報告が届く。 そんな最中、再度の着弾を受ける『メルカトール』。今度は艦橋に近い場所に被弾し、艦橋全体が大きく揺れた。 (ちぃっ!このままでは船が沈む!それにアルビオン側の有無を言わせぬ砲撃…手際が良すぎるではないか!) フェヴィスはここに至って、アルビオン側が始めから婚礼の賓客としてではなく、戦闘を意図してここにやってきたのだと理解した。 「司令!応戦しないとやられますぞ!」 「だが艦長、このままでは国際問題に発展するぞ!それだけは避け」 ラメーの言葉はそこで途切れた。艦橋にアルビオンの砲撃が当たったからである。 着弾の衝撃にフェヴィスは壁に叩きつけられた。 致命傷を免れたフェヴィスは意識が途切れるのを必死に繋ぎ止めてどうにか立ち上がった。ほんの一瞬の出来事だった。 だのに艦橋は通常の砲撃ならありえないほどの大火災に陥っていた。 振り向けば、ラ・ラメーは足首から上が消し飛んで靴先だけを艦橋に残していた。 血の吹き出る頭を抑えて、彼は艦全域に向けて導管を開けた。 「艦隊司令長官戦死!これより旗艦艦長の私が艦隊指揮を執る!各部は被害状況報告!各砲座は砲撃準備!陣形両翼は前進、中央は後退する!全艦全速を出せ!」 『レキシントン』艦橋では、ボーウッドが坦々と艦隊に指示をしていた。 「左翼は後退、右翼は前進し敵の左翼を抑えろ。中央は10時方向に火力を集中させて敵の右翼を潰す」 (前弓陣から反弓陣に変え、こちらを包囲したいのだろうが、残念ながら層が薄すぎる…) 前弓陣とは弓の反りのように陣形を作り、反りの部分を前面にした布陣である。反弓陣は逆に、反りを後方にした布陣だ。 本来なら紡錘陣形を迎えるのに適する反弓陣だが、なにせアルビオンと比較すると、トリステインの艦隊はどうしても船の数で劣る。 包囲するにも艦隊の層が薄すぎるのだった。 加えて今回、アルビオン側の旗艦『レキシントン』には改修艤装時に積み込んだ新兵器『火竜弾』がある。 『火竜弾』は、固定化を施した空洞の青銅球に、特殊な配合をした液体を詰めた砲弾である。砲弾は着弾と同時に爆ぜ、 発射時に熱せられた青銅球の破片と液体が触れると猛烈に燃焼し、着弾部を焼き尽くす。また、この燃焼する液体はある程度の粘り気を含み、 着弾の衝撃で爆ぜる時により広い範囲の着弾部破壊が期待できるのだ。 「いやぁ、おみごと、おみごと」 指揮に没頭していたボーウッドの背筋が凍る。背後には深く帽子を被ったワルドが立っていた。 「実に見事な戦闘ですなぁ。トリステインの艦隊がまるで的のようだ」 実に剣呑としているワルド。ボーウッドは前を見直す。 ボーウッドはふと、自分が死体に埋もれているような錯覚を覚えた。聞こえる声に、くちなわが這うような冷たい腐臭を思い出させる。 (なにを馬鹿な…ここは既に戦場だ。気を保て、ヘンリー) 「既に勝敗は決した。後は子爵、君の仕事だ」 ボーウッドの言うとおり、艦隊戦はほぼ終わりを迎えつつあった。 トリステイン艦隊規艦『メルカトール』号は山のような火災を上げて降下、爆沈し、残る艦隊も指揮系統を失ってバラバラの運動を始めていた。 ボーウッドは信号士を介して隷下の艦隊に向けて号令する。 「本艦は揚陸部隊の火力支援を行うためにこの空域を離脱する。艦隊指揮を『デ・ダナン』号に一時移す。各艦は残存する敵艦を掃討せよ。 しかる後、合流地点『カイ』に集結されたし」 そして『レキシントン』は動き出す。揚陸を目的に作られた5級戦列(フリゲート)艦を率いて、ラ・ロシェールを離れようとした。 「歴史に名を残しますな。艦長」 からからと嗤うワルドに、表情を殺したボーウッドが答える。 「なに、ただの戦争が始まっただけさ」 『タルブ戦役・序―開戦―』 魔法学院から馬車に揺られて王宮に参上したルイズ。その鞄には始祖の祈祷書、指には『水のルビー』が秘かに輝いていた。 通された大きな部屋には、既にトリステインの各所より婚礼に祝辞を述べ、歓迎に来た貴族達が集まっていた。学院で顔を見たことのある若者も、何人かいる。 今はサロンで集まっているだけの時間で、正式な参上は夕方からとなるため、来ている者は皆、(格式を意識した上でだが)砕けた風情であった。 おそらく来ているであろう父、ラ・ヴァリエール公爵を探していると、背後から耳を引っ張られる。 「何をきょろきょろとしているのかしら?」 「あいたたたたっ!…ぁ、姉様」 引かれる耳痛さに振り向けばエレオノールが見慣れた澄まし顔で立っていた。その格好は普段よりも上品に抑えられたもので、 そこはやはりどうにもルイズとは世間の見られ方が違うのを意識させる。 「お父様から貴方を迎えに行くように言われたのよ。ついて来なさい」 エレオノールに連れられて大広間を後にし、広い通廊を行く。歩きながら姉の挙動が微妙に落ち着かないのにルイズは気付いた。 「姉様?」 「…きょ、今日は、ギュスターヴ殿、いらっしゃらないのね」 「ぇ?うん。こういう場所に連れてくるわけにも行かないし」 「そ、それもそうね…はぁ」 どこか落胆しているようなエレオノールだった。 開祖が王室の庶子であるラ・ヴァリエール家は、他の貴族に比べても別格の扱いをうけて王宮の中で一角を使うことを許されていた。 今そこで、ヴァリエール公は来客を受けている。相手は宰相マザリーニ枢機卿である。 「細君はご出席にならないと聞きましたが」 丸帽を被った僧侶姿のマザリーニが普段と変わらぬ風情で聞く。 「本来ならば罷りならぬことですが、カトレアの具合が優れず。領地を空けるわけにも行きませんので。ご容赦を」 一通の書状をマザリーニに渡しつつ、ヴァリエール公は謝した。 カトレアとはヴァリエール公の娘の一人。ルイズの姉、エレオノールの妹に当たる。慈愛に溢れた令嬢として社交の世界では知られているが、 生来の病気を抱えているため、領地から出ることは稀であった。 部屋のドアが叩かれ、エレオノールとルイズが入ってきた。 「ルイズを連れてきましたわ。お父様」 「む、そうか。…では枢機卿。後ほど」 一礼してマザリーニは部屋を出て行く。 「お父様。ご健勝とお見受けします」 礼をするルイズ。一瞥してヴァリエール公は頷いた。 「春の帰省以来だなルイズや。お前も仔細無き様で、父は嬉しいぞ」 目を細めて笑うヴァリエール公。三姉妹で年の離れた末子のルイズを、ヴァリエール公は最も大事に思っていた。 「この度、お前は殿下ご婚儀における巫女に選んで頂いた。代々の領主にも胸を張れる大役だ。万難を排して勤め上げるのだぞ」 「はいっ。不肖、ルイズ・フランソワーズは、巫女役を拝命されてから今日まで、殿下のご婚礼を祝福するための祝詞に推敲を重ねてまいりました。 必ずや、お父様や歴代領主、拝聴される各位に恥じない勤めを果たして見せますわ」 ぐっと拳を握ってルイズは宣言した。ここに嘘偽りはない。 ゼロと呼ばれ、魔法のまともに使えぬ私でも、殿下とトリステインのため、貴族として謗られない仕事が果たせるのだ。 その一念が今のルイズの脳裏を埋め尽くしているのであった。 「うむ。その心意気や良し。…とはいえ、それまで時間はある。今は力を抜いて休むのだぞ。まずは夕刻7時よりの諸侯による祝賀まで、ここに居ておくれ。 エレオノール。お前はルイズの支度の手伝いをしてやっておくれ」 「わかりましたわ」 「私は少し、諸侯に挨拶をしてくる。…領地にいることが長いからな、こういう時でもないと顔を見ない輩も多い…」 そう言ってヴァリエール公は部屋を抜けていった。 威厳を保ちつつも暖かな父の言葉を受けて呆然とするルイズに、エレオノールはむにっと頬をつねり上げる。 「あうぅっ?!」 「まったく、何ぼうっとしてるのよ。…本当はね、あんたが巫女役に選ばれなければ私がお父様と列席するはずだったのよ」 「ぇ、そうだったの…?」 聞かされて、姉の役を奪ってしまったような罪悪感を感じる。 「ま、いいわ。社交の場に出るの、それほど好きじゃないし。たまには妹に晴れの舞台をあげるのも年長の勤めってやつよ」 「姉さま…」 「ほら、ぼさっとしてないの。うちの針子呼んでるから、あんたの今夜の衣装を決めるわよ」 感心するルイズを部屋の奥へ引っ張っていく。奥にはヴァリエール家専属の針子師が何人も待ちうけているのだった。 王宮の【大サロン】にて、ヴァリエール公が諸侯と情報交換をしていると、壮年の官吏が通廊から飛び込み、、サロンに来るや否や文書を読み上げ始めた。 「この場にお集まりのトリステイン諸侯の皆様方。マリアンヌ女王陛下の名において、大会議室へ移動して頂きたい方々がおられますので、 僭越ながら読み上げさせていただきます」 ざわり、とサロンがどよめいた。官吏は権力者達から集まる視線に強張りながらも文書を注視した。 「王国軍元帥・グラモン卿、高等法務院長官・リッシュモン卿、拝爵三位・ラ・ヴァリエール公……」 づらづらと官吏は10人強に昇る貴族の名前を挙げていく。その悉くはトリステインの中枢を治める大官僚か、国内有数の地位を持つ大貴族だった。 そのことにさらにサロン中はどよめいた。せっかくの祝いの席のはずなのに、実に物々しいではないか。 「…以上の各位につきましては、至急大会議室に来るようにとマリアンヌ陛下並びに宰相閣下のご命令にございます」 それだけ言うと官吏は額に汗を浮かべつつ、深々と諸侯に頭を下げてサロンを出て行った。 「はて、陛下は何の御用か?」 ヴァリエール公に近寄ってきたのは元帥杖を下賜されて長いグラモン卿だった。 「…ともかくも、陛下の御命令であるなら至急に向かうべきでしょうな」 眉をひそめながらもヴァリエール公は足早にサロンを出てゆく。グラモン卿もそれに続いた。 マリアンヌの召集とはいえ、誰もが一目散に集まるわけではない。サロンにいたため格好が崩れ過ぎている者は急いで当てられた部屋や屋敷に帰り、 身支度をせねばならなかった。 もっとも、グラモン卿とヴァリエール公はサロンに出向いた格好のまま大会議室へと向かっていた。彼らはトリステイン貴族の中でも上位に当たる者達だ。 「…公爵、此度の招集は本当にマリアンヌ様のご意思と思うかね」 長い通廊を行く男二人の言葉は、硬い。 「恐らく宰相殿が陛下の御名を借りたのだろう。それくらいは辺境にいても存じてますぞ」 通廊を横切るとそこは大会議室の入り口。両開きの絢爛なる扉が開けられている。 当然の事ながら、まだ会議室には誰も参上していなかった。最上段にも陛下がおられず、変わりに最上段の玉座から一段下がる卓に、 静かに文書を読んでいる枢機卿が座っていた。 「マザリーニ殿!此度の召集は如何なるものか!」 グラモン卿が卓のマザリーニに駆け寄る。 「これはグラモン卿。お早い参上ですな。…ひとまずこれをお読みになられよ。先ほど来たばかりの伝書ですぞ」 平時と何等変わらぬ風情のマザリーニはグラモン卿に手の紙束を渡す。渡されたグラモン卿も黙ってそれに目を通した。 目を通しながら、グラモン卿の顔が赤くなり、次に青くなった。紙束を握る手が締まっていき紙に皺が寄っていく。 「鳥の骨!これは一体どういうことだ?!」 読み終わると同時に憤怒に駆られたグラモン卿は我知らず市井に流布するマザリーニの渾名を口にした。 一方マザリーニは淡々と答える。彼にとって渾名陰口の類など耳朶にも掛からないのだ。ゆえに宰相でありながらおおっぴらに渾名が呼ばれる。 「見てのとおりです。神聖アルビオン共和国側が我が方の艦隊を壊滅させ、トリステイン国土内を我が物顔でうろついているのですよ」 「のんきに構えている場合か!」 かっかと噴火するグラモン卿。そこにヴァリエール公が寄り口を開いた。 「聞いていたアルビオン側との不可侵条約交渉は時間稼ぎであったということですな」 「おのれ!国家間の条約をなんだと思って居るのだ連中は!ラメーもラメーだ!なぜ踏み留まらず壊走しよった!」 「『メルカトール』は真っ先に狙われて撃沈したとあります。こちらが歓迎に専念して警戒をしていなかったのがそもそもの原因でしょう」 ぎりり、と老体のグラモン卿は怒りに身体をブルブルと震わせている。 対してヴァリエール公は沈着に、理性を湛えた瞳でマザリーニを見た。 「…して、現況はいかがな様子で」 「一部はラ・ロシェール南西に進路を取り、もう一部は北西へ向かったという。後者の行き先は不明だが前者は恐らく、タルブ盆地の占領が目的だろう。 あそこを取れば王都まで障害になるものが無い」 マザリーニもまた冷静だった。アルビオンが何を欲しているのか粒さに観察していたのである。 そうこうしているうちにぞろぞろと召集された諸侯が会議室へ参上し始め、大会議室は俄に騒がしくなり始める。 「…さて、両人。問題の解決はこれからの閣議にて決めなければなりませぬ。陛下の参上まで、しばし、お待ちを」 枢機卿の目に炯とする光があった。 前ページ次ページ鋼の使い魔
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3913.html
【仮説4】その2 「長門皇女(ながとのひめみこ)」 Illustration どこここ 人名など: 神功皇太后(じんぐうこうたいごう) 気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと) 大鷦鷯(おおさざき) 応神天皇(おうじんてんのう) 仲姫皇后(なかつひめ) 磐之媛(いわのひめ) 去来穂別(いざほわけ) 莵道(うじのわき) 莵道稚郎子(うじのわきいらつこ) 八田(やた) 大隅宮(おおすみのみや) 住吉宮(すみのえのみや) 宇治宮(うじのみや) 高津宮(たかつのみや) それから二週間ほど、鶴屋さんちで世話になった。怪しまれない程度にさりげなく聞いてまわったところ、俺と朝比奈さんには自宅の館があるらしい。場所はオオスミノミヤとか言っていた。 鶴屋さんが忙しいときや留守中は、俺と朝比奈さんが来客の相手をすることもあった。聞くところによると、鶴屋さんはこのへんの女王様みたいなものらしかった。お役人が毎日目通りを求めてやってきて、水路とか道路工事の相談を持ち込んでいた。 どれくらいの広さの領土なのかは分からなかったが、外国から使いがやってきていろいろと貢物を差し出すくらいの偉い人らしい。日本語を喋っているのだからここが日本の領土なのは確かだが、どのへんに位置するのかは分からない。近所の町内地図みたいなものは見せられたが分からなかった。列島地図らしいものは持っていないようだ。 長門を含む四人の行方はまだ分からなかった。あれだけ目立つ格好をしていればすぐにでも捕獲されそうなもんだが。あるいは向こうから探しにきてもおかしくない。 ずっとここで待っていてもしょうがないので、俺たちは自宅とやらに行ってみることにした。まだよいではないかと言う鶴屋さんに何度も頭を下げて暇乞いをした。旦那と息子に先立たれてからというもの、独り暮らしは退屈なのらしい。孫をかわいがる気持ちが分かるな。 「いろいろとお世話になりました。このお礼はいずれ」 「うむ、気にするな。いつでも参れ」 鶴屋さんは腕時計をはめた手をふりふり、門の外まで見送ってくれた。 俺たちの自宅から迎えに来たという大勢の従者と、それに続く二つの御輿という大げさな行列で、ゆるゆると道を歩いて進んだ。時期的に見て今は十月半ばくらいだと思うのだが、まだ暖かい風が吹いていた。心地よい揺れのせいか、朝比奈さんは御輿のへりにつかまってうとうとと居眠りをしていた。街道を練り歩いた大名行列ではないが、なんとものどかである。葦の生えた草っ原に続く細い道を一日かけて進んだ。行く手の両脇に海が見えてきたあたりで、目的のお屋敷らしきものが見えた。 造りは鶴屋さんちと似ていたが、敷地内の家の数が向こうより多い。堀はないが塀はちゃんとしているようだ。 「ナカツヒメ様、オオサザキ様、ご到着、ご到着」 前を行く従者が歌うように叫ぶと、門が開いて家臣らしき人々がぞろぞろと出てきた。うわ、俺たちってこんなにたくさん召使がいたのか。 召使らしい女の人が数人並んで、おかえりなさいませと言った。 「はじめて来るのにおかえりなさいって、俺たちってここに住んでるってことでいいんですよね」 「そうだと思うけど、なぜかしら。会ったことは一度もないのに」 俺だけ先に、離れた館に案内されて中に入った。朝比奈さんは正面のいちばん大きな館に連れて行かれたようだ。ひとりで大丈夫だろうか。 部屋の中は鶴屋さんちとあまり変わらず、俺用の寝床らしいところは布で仕切ってあった。ここで寝るわけだな。竹簡といって、竹を細く切って作った巻物のようなものが並べてあった。何が書いてあるのかと紐を解いてみたが、漢字がぎっしり並んでるだけでわけ分からん。ところどころに米やら粟やら穀類の文字があるところをみると、どうやら農作物の作り方をまとめた文章らしいんだが、かなの当て字なのか中国語なのかそれ以上は難しくて読めない。ひらがなとカタカナが使われるのはもっと後っぽいな。 そりゃそうと紙に書かれたもんがほとんどない。和紙みたいなごわごわした厚い紙があったが、丁寧に綴じてあった。紙がないってことは、トイレでかなり苦労するぞ。忘れてた、トイレはどこだ。 「すいません、トイレはどこでしょうか」 「はい?トイレとはなんでございましょうかミコ様」 「ええと、便所、カワヤ、いや雪隠、ええい御不浄」 日暮れ前、ここでもやっぱり早めの晩飯らしく食堂に呼ばれた。夜になってだいぶ冷え込んできたので俺は寝床で布団にくるまっていたかったのだが、それでは皆が心配するというので引っ張り出された。飯はみんなで食うほうがうまいというのは古来も同じなんだな。最近じゃ家族がいても独りでぼそぼそと食ってるやつが多いようだが。 家族は意外に多いようだ。朝比奈さんのまわりに召使らしき人が群れていた。俺の身内らしい人が食堂に飛び込んできた。 「いやっほーうぃ、館のご主人。帰りを待ちわびていたわよ。あんまり遅いんでこのままあたしが屋敷を乗っ取っちゃおうかと思ったくらいよ」 全員がそっちを見た。古代中華風な衣装をまとい、酒の入ったとっくりを抱えた女がいた。なんてかっこしてんだと言おうとしたが、俺もそれなりの格好をしてるわけでなんとも突っ込めない。 「ハルヒ!?こんなとこでなにしてんだ?」 「ちょっとキョン!なんであんたがここにいるのよ」 「す、涼宮さん」 「みくるちゃん、なにしてんのここで」 そばにいた家臣のひとりが怪訝な顔をして聞いた。 「ミコ様、いかがなさいましたか」 「い、いやいやなんでもない。二人とも昔の知り合いなんだ」 朝比奈さんが上座に、ハルヒが俺の向かい側に座った。なにか言いたそうにジロジロと俺を見ている。 一同が揃ったようだが、誰も食べ始めない。中国みたいに鐘がゴワンゴワン鳴るとかないのかな。皆が静まり返ってなにかを待っているところで、痺れを切らした侍女らしい人が朝比奈さんにごにょごにょ耳打ちしていた。 「ええっ、ノリト?わたしがノリトを唱えるの?」 「はい、いつも唱えておいででございますが……」 「みくるちゃん、ご飯食べる前に神様に感謝するアレよ」 「ええっ、そんなのやったことないわ」 「むかし部活でやったでしょ」 そういやそんなこともあったな、って、あれは祝詞じゃなくて読経だろうが。 「しょうがなわね、ちょっと、これ読み上げなさい」 ハルヒが懐から南京玉簾のようなカンペを取り出した。竹簡のカンペってどういう時代錯誤ですか。 「か、かけまくもかしこき~いざなぎのおほかみぃぃ~」 これが数分続いて、そろそろ飯も冷めそうな頃やっと一同手を打ってから食べ始めた。俺たちの時代でもやってる、小学校で給食を食べる前に手を合わせるアレはここから来てるのかもな。 手づかみで食うのはスナック菓子っぽくてラフでいいんだが、いちいち手を洗わないといけないのがどうももどかしい。 「すいません、箸はないでしょうか」 「ええっ、箸と申しますと折箸のことでございますか」 「箸があるんですね。貸してもらえますか」 「なににお使いなのでしょうか」 「ええと、これを食べるのに使いたいんですが」 「それはなりませんミコ様。箸をお使いいただけるのはオオキミだけです」 オオキミってのが誰か知らんが箸の使用権を独占するなんて偉そうだな。そんな慣わしがあったとは。生活習慣が違うとどうも調子狂う。 「わたしも箸を使いたんですけど……」 朝比奈さんが拝むようにして言った。やっぱそうですよね。 「箸は神事で使うものでございますゆえ……。でもお妃様が望まれるのでしたら」 侍女がまわりを見回した。ここで箸を使ったところで、とがめだてする人はいるまい。いったい日本人はいつ頃から箸を使い始めたんだろう。 「じゃあ妃であるわたしが決めます。皆さん、今後食事で箸を使うことを許します」 一同がおおっと驚いた。さすがは朝比奈さんである。神様に仕える巫女さんが許可するんだから間違いはない。 箸が用意されたが、俺がふだん使ってる箸とはほど遠く、箸の片方がくっついたピンセットみたいな形をしている。パン屋でパンを挟むあれ、なんつったっけ。あんな形だ。 「これ、箸なの?」 「折箸にござります」 なるほど。俺は割り箸を割るようにしてパキリと箸を折った。それを見て侍女が真っ青になった。 「ミ、ミコ様、ああ……」 え、割っちゃいけないんですかこれ。 「キョン、ここじゃ箸は神聖にして不可侵の象徴たる存在なのよ。割るとか裂けるとかいう表現は禁句なのよ」 もっともらしいことを言うハルヒは、玄米ご飯をぎゅっぎゅっと固めておにぎりにして食っていた。器用なやつだな。俺はしょうがないので新しい箸に交換してもらってピンセットで挟みながら食うはめになった。後で竹を削って自作しよう。箸の歴史を書き換えてしまいそうだが、それくらいかまうものか。 皆がガヤガヤと酒を酌み交わしはじめたころ、ハルヒがちょっと来なさいと言って俺の襟を掴んでずるずると引いていった。朝比奈さんが心配してついてきた。 「キョン、これってどういうことよ、説明しなさい」 「どういうことと言われても」 「タイムマシンの実験中に事故でタイムスリップしたんだと思うわ」朝比奈さんがフォローした。 「で、ここはいつの時代で、どこなの」 「俺もずっとそれを調べてたんだが、まだ分からん」 「もう、役に立たないわね」 こういうとき古泉なら歴史の知識を披露したんだろうけど。 「お前はここの屋敷にはどうやって来たんだ?」 「海で溺れてて助けられたのよ」 「まじか。それで大丈夫だったのか」 「大丈夫だったからこうやってあんたと話してるんじゃないの」 「ここじゃどういう立場なんだ?」 「どうやら誰かのお妃らしいわ。旦那は死んじゃったらしいけど」 死んだという話を聞いて、俺は鶴屋さんを思い出した。旦那を亡くして息子も亡くしたとか言ってた。 「死んだってのはお前の旦那だったのか」 「知らないわよ。顔も見たことないのに」 「待てよ、ハルヒが奥さんってことは、じゃあ朝比奈さんはどうなるんだ?ここの主人は朝比奈さんじゃないのか」 俺は召使のところへ行ってこっそり聞いた。 「あの、つかぬことを伺いますが」 「なんでございましょうミコ様」 「この二人の関係ってどういうものなんでしょうか」 「どうと申されますと」 「この館の主はこっちのナカツヒメですよね」 「さようでございます」 「じゃあこっちは誰?」 「イワノヒメ様はお妃さまにございます」 「妃が二人もいるんですか?」 「はい、さようにござります」 一夫多妻なのか。こんな美人を二人も嫁にするなんて幸せなやつだ、早死にして当然だ。 「旦那って人はどういう人だったんですか」 「ホムタワケ様でございますか。お父上のことをお忘れになられたのでございますか?」 俺の親父だったのかよ。まあ当然そうなるわな。 「二人とも、同じ男の嫁さんらしいぜ。にしても朝比奈さんのほうが位が上なのはなんでだ」 「みくるちゃんのほうが見た目がいいからでしょ。第一夫人ってやつよ」 ハルヒは腕を組んでフンと鼻を鳴らした。 「そ、そんなことないわ……。涼宮さん、怒らないで」 「まったく、二人も後家さんにしやがって。幸せなのか不幸なのか」 「そんなことはどうでもいいのよ。だから、さっきからなんであんたがここにいるのかって聞いてるでしょ」 「俺は朝比奈さんの息子だからな。御曹子ってこった」 「な、あんた!いつからみくるちゃんの子供になったのよ」 うわ、ハルヒ、やめ、ネクタイがないからって冠のあご紐締めるな。ということはあれ、俺の母上の恋敵がハルヒってことになんのか。なんてややこしいんだ。 宴は館の主人とその周辺がいないまま賑やいでいた。 「そうえば古泉と長門を見なかったか。あとハカセくんも」 「見てないわ」 「どこかにいるとは思うんだが。あいつらの顔を見ないと心配だ」 「タイムスリップってことは、あたしたち元の時代に帰れないの?」 朝比奈さんのTPDDさえ元に戻れば帰れるんだが、ハルヒにそれをどう説明するか。 「帰れるかどうか分からん。今のところは」 「そんな、なんとかしなさいよ。あたしの生活は二十一世紀にあるのに」 なんとかといわれてもなぁ、俺にはどうにもできん。長門ならなんとかしてくれるだろうけど。 「ともかくまあ、あいつらを探し出すことが先だな。タイムマシンの構造は長門とハカセくんしか知らないし」 「そうね……」 納得したらしくハルヒはうなずいた。 翌朝、鳥の声で目が覚めた。俺は固い寝床の上で背伸びをしてから顔をぱしぱしと叩き、この夢のような生活が覚めていないことを実感として確かめた。なんと清々しい目覚めであることよの。 部屋の外に出るといそいそと働く家臣たちが目に入った。この時代の人たちの朝は早い。日が暮れたらなにもできないからかもしれんが。俺は手ぬぐいを持って井戸に行った。当然水道なんかあるはずはない。 木の桶に水を汲み、冷たい水で顔を洗っていると頭にボンとボールのようなものが当たって後ろを振り返った。 「あはははっ、避けなさいよキョン」 頭の後ろに目がついてるとでも思ってんのか。ボールだと思ったのは柿だった。 ハルヒのそばには子供が三人走り回っていた。こいつは怒られそうだというふうに俺を見ている。俺は柿を拾って子供に投げ返した。 「いい?ちゃんと打つのよ」 「承知しました母上」 「は、母上って、そいつらお前の子供か」 「そうよ」 「よくまあ三人もぼこぼこ生んだもんだ」 「失礼ね、あたしが生んだわけじゃ、ないっ、わよ」 ハルヒが本気で柿の実を投げてきた。俺は受け取って布でごしごしこすってかじりついた。 「うわっ、これ渋柿じゃないか!ぺぺぺっ」 「腹壊すわよ」 ハルヒと子供たちがケラケラと笑った。子供ってことはええと、俺の義理の弟になんのか。まじっすか、妹だけでも手を焼いてたってのにちっこい弟が三人もか。 「育てるのたいへんそうだな」 「そりゃもう腕白の盛りだもの。喧嘩したり泣きわめいたりたいへんだわよ」 やれやれ、俺が親でなくてよかった。 「ほらっ、イザホワケ!いくわよ」 ハルヒが柿を投げて、七五三みたいな衣装を着た子が太い棍棒をぶんぶん振り回していた。野球やってんのか、そんなことをしたら日本の野球史が変わっちまうぞ。どこかの永世監督が存在しなくなったりしねえか。縄文時代か弥生時代か知らんが、古代人はおとなしく蹴鞠でもやってたらどうだ。 「ようし、見本を見せてやるからちょっとお兄さんにかしてみろ」 「はい兄上」 兄上ときたか、いい響きだな。俺はかつてのSOS団所有のバット並みにデコボコした棍棒を受け取って構えた。ハルヒは本気らしく、かつて上ヶ原パイレーツを下したときのような超剛速球で攻めてきた。俺は思い切り棍棒を振ってジャストミート、したと思ったのだが、ボールだった柿が真っ二つに割れて塀の向こうに分かれて飛んでいった。 「ホームラン!!」 俺はガッツポーズをしてみせたが、何のことか分からないようだった。 「お前ら、勝ったときはこう、親指を立てるんだぞ」 「は、はいっ」 お子様たちは不器用に親指を立てた。なに教えてんだろね俺は。 そんなこんなで日が暮れる、まったりした生活だった。それから気温がぐっと下がり、俺たちは一冬をこの館で過ごした。長門が見つかるまでは慌ててもしょうがないので、とりえあずオオサザキという人物がやっていたという仕事をこなすことにした。俺の仕事には助役というか秘書というか先生みたいな人がいたので、まず文字の読み方を習い、それから各地から寄せられる書簡に目を通し、意味を教えてもらいながら返事を書いた。この時代に来てまさかデスクワークをさせられるはめになろうとは思ってもいなかったが。 暖かくなった頃、鶴屋さんから書簡が届いた。話したいことがあるので会いに来てほしいとのことだった。たぶん退屈で寂しいから酒でも飲みに来いというのだろう。 俺はもう御輿に乗ってまったり歩くのはいいかげん退屈なので、馬に乗って行ってみようかと乗馬を教えてもらった。衛兵の長で剣術を教えている武人だというガタイのいい男が、体を預けて馬と一体になれと教えてくれた。トナカイの気持ちは分かるつもりだったんだが、馬がなかなか強情なやつで、何度か落馬して踏まれて腹が立ったので馬の尻をぶん殴り、馬と気持ちがひとつになったところでやっと乗れるようになった。俺は道案内に従者をひとりだけ連れて屋敷を出た。馬は意外に揺れて、さらに車高が高くて最初は少し怖かった。馬の車高ってのも変だが。 小一時間で鶴屋さんのお屋敷についた。そういえばこのお屋敷には船つき場があるが、船で来てもよかったわけだな。 「おーぅ、よう来たオオサザキ」 鶴屋さんは門のところで待っていた。 「オキナガ様、先日はお世話になりました」 「よきかな、よきかな。まあ中へ入れ」 馬を屋敷の人に預けて部屋に入った。 「ほかでもない、タイシのことであるが。長いこと病に伏せておっての」 「タイシって誰でしたっけ」 「忘れたか、弟君のウジノワキイラツコではないか」 俺に弟がいたとは。それにしても覚えづらい名前だ。流行ってるのか。 「たった今思い出しました、ウジノワキ君ね」 「余の代わりにあれを見舞ってやってはくれんかの」 「お見舞いですか、参りましょう。どこに住んでましたっけ」 「ウジノミヤである。船で渡るがよい」 なるほど、地名がそのまま名前になってるらしい。 従者を十人ばかり連れて、土産物を持ってウジノミヤというところを目指した。小船で館の前から海まで出て、そこで漁船くらいの大きさの船に乗り換えた。 船はしばらく荒れた海を進み、両岸が迫ってきたところを見ると河口に入ったようだ。ウジノミヤは川を遡ったところにあるということだった。途中には橋も堤防もなく、だだっ広い平地が延々と続いていた。まだ肌寒い季節だが川岸のところどころに黄色い花がぽつぽつ咲いていて、実にのどかである。 川を遡っていくと少しずつ気温が下がってくるのが分かった。鶴屋さんちより標高が高いのかもしれない。平野だった風景に、だんだんと濃い緑の森が増えてきた。 川を遡ること二日目、やや京都風のこじゃれた建物が川岸に建っているのが見えた。こっちの屋敷の造りは上品というか俳句のひとつでもひねりたくなるような景観だった。柱が赤く塗ってあり、草葺屋根ではなく杉の木の皮でできてる感じの屋根だった。中国の宮廷風なのかもしれない。 「これは兄上、遠いところをようこそおいでくだされました」 ウジノワキらしい若い野郎が出てきた。顔色がよくないが、感じがなんとなく国木田っぽいな。目ぱっちり系のおぼっちゃまみたいな。 「いやいや。おばあちゃんに頼まれてな。具合はどうよ」 「皆目よろしくはありませんが、兄上のお顔を拝見できるとあって今日はこのとおり床から出ることができております」 ウジノワキとやらは青白い顔をいっそう青くして、小さな咳をこほこほをしつつ口元を抑えた。 「あんまり無理するなよ。おばあちゃんから土産を預かってきたから、栄養のあるもん食って養生しろ」 「かたじけのう存じます。おばあさまにお礼を言っていたとお伝えください」 ウジノワキは椅子から立ち上がって外に出ようとした。侍者が抑えようとしたのだが、たまには日に当たりたいと言い縁側に座った。 俺はウジノワキの隣に座り、出された白湯をすすった。青白い顔で風に吹かれると倒れてしまいそうなくらいふらふらしていたのだが、その瞳だけは妙に澄んでいて、遠くのなにかを見つめていた。 「兄上……」 「なんだ」 「折り入ってお願いがございます」 「俺にできることならかなえてやりたいが、言ってみろ」 ウジノワキは少し黙り、ふぅとひと息吸って、また吐いてから言った。 「わたくしはもう長くありますまい」 「なにを言う、まだまだこれからじゃないか。すぐによくなるさ」 なんてのは病人に対する建前なんだが。こんなことを言うくらいしか俺には能がない。 「わたくしは存じております。己に与えられた命を心してまっとうすること、それが生ける者の務めであると」 「……」 「わたくしの亡き後を兄上に継いでいただきたいのです」 俺はなんとも言えなかった。突然天から降ってきたようにこの時代に舞い降り、見も知らない人たちに世話になり、今度は家を継げとおっしゃる。 「まあそう悲観するな」 「いいえ。自分の余命は自分がよく知っておりますゆえ。兄上以外にこのアマツヒツギを譲れる者がおりませぬ」 アマツヒツギが何だかよく知らないが、こいつが大切にしている何かなのだろう。じっと見つめるそいつの瞳に、俺は気圧されるようにうなずいた。 「分かった、分かったから。ともかく今は養生してくれ」 「ありがたきしあわせ」 俺はウジノワキの肩にもう一枚布をかけてやった。すまんな、俺には医学の知識がないから、お前がどんな病気なのかもどうやって治療するのかも分からん。文明の進んだ二十一世紀に生きてても、俺はあまり人の役に立つことをしてない気がする。 「もうひとつ気がかりなことが」 「なんだ。なんでも聞いてやるぞ」 こうなりゃもう岩を砕けと言われようが川の水を飲み干せと頼まれようがやってやる。 「ヤタノヒメミコのことでありますが、あれのことが気がかりで」 「ヒメ?女か」 「わたくしの実の妹でございます。覚えておいででしょう、稚児のおり、よう三人でたわむれました」 「あ、ああそうだった」 妹と聞いて俺は未来に残してきた実の妹を思い出した。 「アマツヒツギに就かれましたならば、あれを妃のひとりにでもしていただけますまいか」 「な、なんですと」 俺はぬるくなった白湯を噴いた。 「あれは兄上をよく好いております。日ごろは無口なあれが、よく兄上の話をするのです」 「いくらなんでも妹を嫁さんにはできんぞ」 「なぜでございますか。もうお妃はいらぬと申されますか」 「いや、俺には妹属性はないから」 「属性とはなんでございましょうか」 気にするな、ただの妄言だ。 「あれの母親、ワニノミヤヌシヤカを亡くしましてからはほとんど人前に出ることもなく、ひっそりとヤマノミヤにて暮らしております。あれがあのまま独りで一生を終えると考えると、とても残してはゆけませぬ」 「え、妹ってナカツヒメの娘じゃないのか」 「いえ、母はナカツヒメ様ではなくワニノミヤヌシヤカにございます。わたくしと兄上は異母兄弟でございますゆえ」 なるほど、そういうことか。一夫多妻な上に、母親が違えば結婚もありなのか。 「やっと理解した。だがな、いきなり縁談の話をされてもな、」 「なにとぞ妃に」 これは困った。俺がこの時代で結婚なんかしたら長門はどうなる。歴史を書き換えるとかそういう話じゃない、俺には長門しかおらん。 「しかし、なんで俺なんだ。旦那候補はほかにもいるだろうに」 「なんと申しますか……兄上は昔から妙なおなごが好きですから……」 な、この時代でもそれかよ。ウジノワキが両手をついてなにとぞと何度も頼むので俺は無下に断ることができず、あいわかったと返事をした。 家と継げと言われ、こともあろうに妹を嫁にしろとせっつかれ、俺は宴もそこそこに鶴屋さんちにとって帰した。はやいとこ俺の時代に帰らないとなぁ。こんなところに長居したら子供作って帰れなくなりそうだ。のどかで魅力的な時代ではあるが。 「ウジノワキに会ってきました」 「おぉ、大儀であったな。いかがであった」 「だいぶ顔色が悪いようですね」 「そうか。余も案じておる」 「アマツヒツギを継いでくれと言われました」 「そうか、そうであろう。お主をウジノワキイラツコのところへやったのはほかでもない、それが頼みだったからである」 「それから妹を嫁にもらってくれと泣きつかれましたよ」 「あはははっ、さようか。そりゃ果報者というよりほかないのう」 「いきなり縁談ですからね、困りました」 「でも、まんざらでもないのであろう?」 「どうでしょうね」 どこにいるのか分からないけど俺には付き合ってる人がいます、とは言えなかった。 「オオサザキ」 「なんでしょうおばあさま」 「今すぐにとは言わぬ。タイシの件、考えておくれ。世継ぎがおらぬと余も落ち着いて眠れぬのでな」 「ウジノワキさんは元気になりますよきっと」 「さよう、もちろんである。さようならばよいのだが……」 そう言ってうつむいた鶴屋さんは悲しそうな表情だった。 鶴屋さんにも頼まれてしまったアマツヒツギってなんだろう。ウジノワキ氏の代わりに家を継げってことなのだろうか、妹を嫁にしろってことは。じゃあオオサザキとかいう俺の家系はどうなるんだろ。 共通の父親を持つ、血が半分しか繋がっていないという弟と妹のことは気持ちのどこかで気にはなっていたのだが、当面の俺のやるべきことは長門と古泉を探し出すことだった。あいつらを連れてどうしても未来へ帰らないといけない。社長でもないのになんだかひとりで責任を感じていた。長門も古泉も朝比奈さんも、ハルヒを観察するとか守るとか発生した異空間なんかの後始末に追われるだけで、自ら運命を切り開くという態度を見せない。できるだけなにごともなく過ごそうとしている三人を見ていると、じゃあ俺が全員を先導していくしかないじゃないか、みたいな妙な任務意識があった。 俺のほうでも方々に人をやってそれらしい人物を探してもらってはいたのだが、返ってくるのはなしのつぶてばかりだった。ハルヒにも朝比奈さんにも古泉風に肩をすくめてみせるしかなかった。 仕事を手伝ってくれと頼まれて、俺はしばらく鶴屋さんの屋敷に留まった。仕事といっても今までやってたオオサザキなる人物のデスクワークと変わらなかったが。 それから一ヶ月ほど経ち、鶴屋さんの支配する領土をくまなく探ったが、ひょんなことから古泉と再会することになった。 「ミコ様、捧げものが参りました」 「ああ、カシワデに渡しといて」 カシワデってのは厨房のことだ。たまに家臣や庶民からプレゼントが来る。たいていは地元で獲れた魚や肉なんかだが。 「それが、生きているのでございます」 「猪かなにかか?」 「いえ、大きな鳥でございます」 「鶏とか鴨?」 「もっと猛々しい、強き鳥にございます」 なんだろうかと見に行ってみると、竹で編まれた籠の中でバタバタやっているのは鷲か鷹のようだった。海が近いからトビかもしれんな。猛禽類独特の鋭い目で俺を睨んだ。 「かっこいいが、これを食うわけにはいかんな」 「養われてはいかがでしょう」 そうはいっても、飼い方知らんしなあ。昔セキセイインコを飼ったことがあるが、度重なるエサの補給忘れに嫌気がさしたらしく家出してしまったもんな。妹がキョンくんのせいだといつまでも怒ってたっけ。 「聞けば、鳥に詳しい百済出身の御仁がいるとのことでございます」 「ほう。じゃあそいつを雇おう。ぜひ呼んでくれ」 「かしこまりましてございます」 五日くらいして、その御仁とやらがやってきた。謁見の庭で膝をついてかがんでいた。こういうのはどうも拝まれてるみたいで苦手なんだがな。 「オオサザキノミコ様におかれましてはご安泰をお祈り申し上げる次第にございます」 「うむ。まあ顔を上げてくれ」 「は」 そこでようやくそいつの顔を見ることができたのだが、 「あ……」 「え……」 二人とも固まったまま動かなかった。そいつの目がみるみる潤んでいく。 「あれれ古泉か、こんなところにいたのかよ」 「これはおなつかしう、」 と言いよどんだ古泉は髭を生やし、たぶん百済では流行っているらしい派手な色の服を着て、黒い冠を被って両手を袖の下で合わせている。そのまま京劇で劉備玄徳を演じてもよさそうな格好だ。 「お会いしとうございました、ミコ様。酒の君と申します」 「今は酒の君って名前なのか」 「さようにござりまする」 「ああ。呼んだのはほかでもない、この鳥だがな」 「クチでございますね。鷹狩りに使われるものです」 「献じられたんだがどう扱えばいいか分からんのだ。食うわけにもいかんし」 「わたくしが飼いならしてみましょう。動物には好かれますゆえ」 「じゃあお前を鳥甘部《とりかいべ》の長に任じるとしよう」 「謹んで拝領いたします」 「そりゃそうと古泉」 「何でございましょう」 「髭が似合ってるぞ」 謁見の庭では庶民が偉い人に近づくことはできないので、酒を用意させて俺の部屋に通した。そばで見ると古泉は褐色に日焼けして腕っ節が太く、なんだかちょっと見ないうちにたくましくなっていた。 「よく生きてたなぁおい」 「あなたこそ、よくご無事で」 「それにしても、なんでそんなかっこしてんだ」 「ずっと百済にいたんですよ。あ、百済っていうのは僕たちの時代の朝鮮半島ですが」 そんなこた知ってる、歴史の授業で出たもんな。 「そこで王族の奥さんに気に入られて暮らしてたんですが、その旦那っていう日本人の武将にスカウトされましてね。で、逆輸入されたわけです」 「いつごろこの時代に来たんだ?」 「半年くらい前でしょうか。大陸は面白かったですよ。僕は武将のひとりとして戦場を駆け巡っていました」 なるほど、それでその格好なのか。俺は鎧に身を包んで剣を振り回す古泉を想像して、ちょっとうらやましくなった。 「鶴屋さん似のおばあちゃんには会われましたか」 「ああ、会った。今も世話になってる。ここはどういう時代なんだ?」 「ご存知なかったんですか?古墳時代ですよ。西暦でいうと三百年から四百年くらいですか」 「俺の知ってる日本史とだいぶ違う気がするんだが」 「それは日本書紀とか古事記の文献がだいぶ後になって書かれたからでしょう。この頃の地名や人物名は実際とかなり違っているはずです」 「ここはどこなんだ?」 「ここは確か、住吉宮ですね。当時の政府があったところです。大和朝廷の前身でしょうか」 なるほど。古泉の解説でこの世界がなんとなく現実味を帯びてきた。 「じゃあ鶴屋さんはその女王様?」 「そうです。彼女は確か神功皇太后のはずです」 な、なんだってー!!俺の頭の上にΩマークが四つほど並んだ。 「気長足姫尊が当時の本名で、皇后の称号で呼ばれるようになったのはずっと後のことだと記憶しています」 「なんてこった、皇族にタメ口利いてしまったじゃないか」 「よろしいんじゃないですか。この方は庶民的だったようですから」 「じゃ、じゃあ俺は誰なんだ」 今まで他人を装って召使をこきつかった手前、聞くのも怖いが。 「あなたは大鷦鷯皇子、後の仁徳天皇になる人です」 と、とんでもない話だ。こんなことなら某国営放送の歴史が動く番組でも見ておくんだった。 これは困った。タイムスリップしただけならまだしも、日本の歴史の根底ともいえるこの古墳時代にしかも皇族のはしくれとして舞い降りたなんて、俺が政治を動かすようになっちまったら未来はどうなるんだ。いや待て、はしくれなんかじゃない、その中心人物じゃないか。 「まあ、歴史というのは流れていくものですから。一人で動かそうとしても動くものではありませんよ。流れに身を任せてみてはいかがでしょうか」 などと古泉は、悟りきったのか脳天気なのか分からないことを言っている。お前はまあはしくれだからいいだろうけど、もしかしたら韓国の歴史を書き換えちまったんじゃないのか。 「それはないと思います。いちおうアジアの歴史は教養としてありますから、それをなぞる以外のことはしていません」 教養がなくて悪かったな。 「ちょっと待て、じゃあ朝比奈さんとハルヒは」 「お二方は無事なんでしょうか」 「ああ。元気でやってるとも。朝比奈さんは俺の母親、ハルヒは俺の親父の愛人みたいもんになっちまってる」 「応神天皇のお妃様ですか。愛人とは言いえて妙ですね」 古泉はカラカラと笑った。 「ということは朝比奈さんは仲姫皇后ですか。涼宮さんは、ここでの名前はなんと言っていましたか」 「名前はええと、なんつったっけ。忘れた。親父はすでに死んじまったらしい。ここから北のほうに行ったところに俺たちの屋敷があって、そこに住んでる」 「なるほど、大隈宮ですね」 「長門だけがどこを探してもいないんだ」 「変ですね。長門さんならいちばんに探しに来そうなものですが」 「もしかしたら長門だけ二十一世紀に残ってるんじゃないだろうか」 「それも大いにあり得ます。思うに、今回の事故は僕の能力が原因です。実験で使った時空の泡の力場と反発したのかもしれません」 「それはともかく、どうやって帰るかだが」 「朝比奈さんの例のTPDDで帰れないんでしょうか」 「それがタイムスリップしたときに壊れちまったらしい」 「それは困りましたね。助けを呼ぶ方法はないんですか」 「今のところはないと思う。長門だけが頼みの綱だ」 「なんとか帰る方法を見つけないといけませんね」 二人はしばらく黙り込んだ。 「腹違いの弟で国木田に似てるウジノワキってやつに会ったんだが。これが具合悪そうでな。自分が死んだら後を頼むと言われた」 「莵道稚郎子皇子さんですか。太子を引き受けてくれというのでしょう。歴史ではそうなっていますね」 「アマツヒツギって何だ?」 「つまり天皇のまつりごと、政治活動のことです」 「俺にそれをやれってのか」 「あなたの今の立場なら、当然です」 「鶴屋さんにもそれを頼まれたんだが。困ったぞ……」 「鶴屋さんもお歳を召してますし、あなたがやらなければ、たぶんこの時代の天皇の血筋が絶えてしまうことになります。日本史の既定事項が壊れてしまいますよ」 「お前がやってくれるわけにはいかんだろうか」 「僕がですか?残念ですが、あなたはすでにその名で知られているので、あなたがやるほかはありません」 「あ、思い出した。ハルヒの名前、イワノヒメとか言ったぞ」 「ほんとですか、磐之媛命は僕の姉にあたる人ですよ。後の磐之媛皇后様、つまりあなたの奥さんになる人ですね。なんの因果でこうなったのか知りませんが、これも既定事項ですね、プッ」 この一大事を他人事だと思って笑ってやがる。古泉よ、お前もか。 次期天皇である太子の位を引き受けるかどうかはともかく、俺は朝比奈さんに手紙を書いた。古泉が見つかったのでそのうち会いに来てくれ、と竹の書簡に書いて直接届けてもらった。もちろん郵便などという便利なサービスはない。 数日して朝比奈さんから返ってきた手紙には、見つかってよかった、こっちでもちょっと大変なことになってるの、と書いてあった。 「古泉、ちょっと困ったことになった」 「なんでしょう陛下」 「その呼び方やめ」 「なんでしょう殿下」 「それもやめっちゅうに」 「失礼。何が起きましたか」 「ハルヒに言い寄ってる男がいるらしい」 「妃といっても後家さんですからね。涼宮さんのあの美貌、引く手あまたなんじゃないでしょうか。月夜の晩、帳の向こうからじっと見つめる熱い視線がひとつ、ふたつ、と」 お前はいつからハーレクインの作家になったんだ。 「ハルヒには三人の息子がいるんだ」 「そうだったんですか。いつ生まれたんでしょう」 「いや、正確には磐之媛の子供だが。ハルヒが生んだわけじゃないらしい」 「なるほど養子ですか」 「そいつらを育てるのもなにかとたいへんだから、父親が必要だろうと買って出た奇特なやつがいるらしいんだ」 「この時代、女性は男を選べませんからね。結婚してくれと言われたら予約がなければたいていは通ってしまいます」 「そ、そうなのか」 「ましてや妃など、自分の意志などは関係ありません」 「なんて社会だ」 「それが封建社会というものです」 古泉が澄ました顔で言うのが癪に障る。 「なんとかならないのか」 「なんとかとは?」 「ハルヒだ。あいつがこの時代で結婚なんかしちまったら俺たちの時代はどうなる」 「さあて、どうなるんでしょうか。それは涼宮さんが決めることですよ」 「意外に冷たいのな、お前」 「僕がどう言ったところでなにかが変わるわけではないでしょう。涼宮さんが誰かに惚れたら、それを止める術はありません」 俺は想像した。ハルヒが三人の息子をかかえて、見も知らない旦那とこの時代のしきたりにのっとって暮らしている姿を。皇族ってのはいろいろと生活の作法が厳しいと聞く。そんな囲いの中でハルヒがやっていけるのかどうか。ハルヒがこの時代の趨勢に飲まれて消えてしまってもいいのか。いやいかん、それはだめだ。俺は頭を振った。 「いいや。俺たちは二十一世紀に帰らなければならん。俺には全員を連れて帰る責任がある」 「突然頼もしいですね。ではどうなさるおつもりで」 「ちょっと鶴屋さんと話してくる」 キョンは単純な男であった。冠も被らずのそのそと館の中に入っていった。たちまち部屋の前にいた衛兵に抑えられた。 「頼もう、頼もう」 「なんだい大鷦鷯、騒がしい」 「折り入ってお話があります」 「さようか。皆、ちょいと外しておくれ」 「太子の件ですが」 「おおぅ、引き受けてくれる気になったかの」 「ひとつだけ条件があります」 「申してみよ」 「磐之媛皇女を妃に欲しいんですが」 「磐之媛か。しかしあれはお主の父親の妃であろう」 「今は違います」 「まあそれはそうであるのだが……。本人はどう申しておるのじゃ」 「男が言い寄って来ているらしいです」 「わはははっ。なんとまあ、お主の横恋慕か」 「子供が三人もいては独り身はたいへんかと」 「うむ。余もそれを懸念しておった。どこぞに身を寄せられる男がおればなと」 「俺が面倒見ますよ」 「さようか。大鷦鷯、ちょっと凛々しくなったの。余もあれを次の皇后に推したいと思うておる。本人に尋ねてみるがよい」 「ありがとうございます」 俺と古泉はその日のうちに馬を走らせて自宅の屋敷に向かった。大隅宮と言っていたのは土地の名前ではなくて天皇の屋号みたいなものらしい。鶴屋さんが住んでいる住吉宮、弟がいる宇治宮もたぶんそうだろう。 「キョンく~ん、古泉く~ん」 庭で二人が手を振っていた。俺の護衛だとかいって豪勢な鎧に身を包み、剣を腰に下げて様になった古泉の乗馬姿はかなりうらやましかった。こいつはこのかっこうで戦場を駆け巡っていたんだよな。 「これはこれは仲姫様、姉上、ごきげん麗しうございます」 古泉は馬から下りて袖を合わせて礼をした。 「姉上?あたし古泉くんのお姉さんなの?」 「歴史上、そうです」 「そうだったんだ。あたしずっと弟が欲しかったのよねぇ」 ハルヒがニヤニヤ笑っている。もしかして今回のこれ、お前の仕業なのか。 「古泉くん、鎧姿かっこいいわ」 「ほんと、国を守る武人って感じね」 「お褒めいただきありがとうございます」 どうでもいいだろそんなこたぁ。長門がいたら男は見た目じゃないと言うに決まってるさ。とほほ。 「ハルヒ、お前に言い寄ってるおっさんのことだが」 「あら、会ったの?なかなかかっこいい人よ」 「結婚するつもりなのか?」 「あたしが?まさか。暇だから遊んでるだけよ」 「今のお前は後家さんだから、そのうち誰かに引き取られてしまうぞ」 「あたしはそんなことしないわよ」 うーん、どうも事の深刻さが分かってないようだ。 「俺は太子になろうと思うんだが」 「太子って聖徳太子みたいな?」 「太子ってのは次の王様とか次の天皇になる予定の人のことだ」 朝比奈さんとハルヒが「へっ?」という顔をした。目が点になっている。古泉、お前の出番だ、NHK歴史番組風に解説してやれ。 「な、なんであんたが仁徳天皇なのよ!」 なんでと言われても、降って落ちたところがそういう運命の人だったんだからしかたあるまい。 「ハルヒ、お前をこの時代で結婚させるわけにはいかない。だから俺の妃になってくれ」 「ほんとに……あたしでいいの?」 な、なんだその幼馴染が結婚を申し込まれて照れ隠しに下を向いてもじもじしてるような仕草は。 「だから、これは芝居みたいなもんなんだ。俺はお前を二十一世紀に連れて帰らないといけない。それに俺には長門がいるの知ってるだろ」 「知ってるけど……。あんた、ちょっとくらいムードってもんを理解しなさいよね!」 ハルヒはドスドスと足音を立ててどこかへ行ってしまった。 「あなたの無粋さにも困ったものですね」 「そうね」 古泉と朝比奈さんが苦笑していた。分かっているさ。相手がハルヒだからこんな風なんだ。 ハルヒが子供を連れて戻ってきた。 「あたしはいいわ。この子達に父親になってほしいか直接聞いてみなさいよね」 ううっ。これは俺に対する大きな挑戦だ。 やあキミタチ、俺と暮らさないか。違うな。やあ子供たち、お父さんが欲しくないか?なんかしっくりこない。やあみんな、パパだよ。違う、絶対チッガーウ。 「なにブツブツ言ってんのよ。さっさとキメちゃいなさい」 「なあキミタチ。お前たちの父親は俺にとっても父親で、いわば俺とお前たちは兄弟なんだ。知ってるよな?」 「存じております、兄上」 「俺が母上と結婚して父親がわりになるのはどう思う?」 三人は黙り込んでいた。長男の去来穂別皇子が手を上げて言った。 「兄上、わたしは父上が恋しいです」 「そうだよな。親父はいいやつだった」かどうかは知らんが。 「俺は父親にはなれないかもしれない。けどな、」 俺は腰に手を当ててみんなを見回して言った。 「一緒に野球をできるぞ」 三人はうなずいた。俺はハルヒを見た。野球を持ち出すなんてずるいわよ、といいたげだったが、男の子というのはそういうもんだ。俺はガッツポーズをしてみせた。子供たちもぐっと親指を立てた。 俺はハルヒと子供たちを引き取ることになったことを二人に話した。 「ハルヒを妃にすることになったが、まあ芝居を演じてるみたいなもんだからな」 「おめでとうございます。ゆくゆくは涼宮さんが皇后様に、朝比奈さんが皇太后様になられるということですね」 「そうなるんですか?知らなかった」 「朝比奈さん、これも日本史の既定事項ですよ」 朝比奈さんは自分の専門用語を使われてポッと頬を染めていた。 翌日、俺はひとりで鶴屋さんの住む住吉宮を目指した。もう数日泊まってからにすればと三人に止められたのだが、なんとなく待てなかった。ほかにやることもないしな。 「オキナガ様、オキナガ様」 「な、なんじゃ大鷦鷯か。戻ったのか」 鶴屋さんは玉座でうとうとといねむりをしていて、口から垂れていたよだれをずずっと拭いた。 「太子の件、承りたいと思います」 「おお、さようか。引き受けてくれるか」 「ですが、なにぶん未経験ですからおばあさまに助けていただかないと」 「もちろんである。余も家臣もアマツヒツギを支えるにやぶさかでない。だがお主がやる気になってくれたというだけでもう余は満足じゃ」 鶴屋さんはヨヨヨと袖で目元を拭ってみせた。 「お、おばあさま、まだ喜ぶのは早いかと」 「そうじゃの。磐之媛との婚礼の儀を取りはからうこととする。忙しくなるぞい」 いくら鶴屋さんの取り計らいとはいえ、太子の莵道氏が病状おもわしくない手前もあって、俺とハルヒの婚礼の儀は親族だけでしめやかに行われた。 翌週の晴れた日に屋敷の庭に祭壇と客席を並べ、客が揃ったところではじめられた。ハルヒが屋敷の中から付き添われて出てきた。てっきり十二単みたいなのを着せられて出てくるのかと思ったが、そういうのはまだなくて、大陸から取り寄せた仙女の羽衣みたいな儀式用の衣装を着せられていた。髪を頭の上で二つ丸く結ってしずしずと現れた。十二単は平安時代だったか。 神式の結婚式みたいにふぁーんとか和太鼓が演奏を始めるのかと思ったが、そういうのもなかった。笛も鐘もなく、巫女衣装を着た朝比奈さんが長々と祝詞を唱え、鶴屋さんや家臣が祝辞を述べて終わった。その後に饗宴の儀とかいうのがはじまり、そこでやっとみんなが酒を飲み始める。 「太子、ご成婚おめでとうございます」 「俺はまだ太子じゃない」 「もう事実上太子じゃないですか」 「安易過ぎるぞ。莵道さんの家臣が聞いたら、いらん噂が立つだろ」 「そうですね、失礼しました。事が決まるまではなにも口に出さない、それが政治ですね」 鶴屋さんが杯を持ってにじりよってきた。 「これ、大鷦鷯。そちももっと呑まぬか。祝いごとじゃ」 「あ、ありがとうございます」 今日は潰れるまで飲まされそうだ。 「ほれ、イワにゃんも呑め」 「いただきます」 軽く口紅を差してうつむいたハルヒは、ちょっと色っぽかった。 「おうおう、イワにゃんはいい呑みっぷりよ。ほれ、もっとやれ」 ハルヒはでかい皿に注がれた酒をゴクゴクと飲み干した。あとでぶっ倒れなきゃいいが。 どの客もたいがいに酔いが回ってそのまま眠り込んだりしはじめたところで、宴はお開きになった。最後まで正気のまま座っていた二人は顔を見合わせた。 「ハルヒ」 「なによ」 「似合ってるぞ」 「そういうことはもっと早く言いなさい」 朝比奈さんもうんうんとうなずいていた。俺の心の底のどこかで、これが長門だったらと呟く声が聞こえたが。 それからしばらくして、俺が太子を引き受けると聞いて安心したのか、莵道氏の訃報が届いた。俺は喪服を持って宇治宮を尋ねた。古泉の説明では、宇治宮というのは俺の時代でいう京都にあるのらしい。 最初に行ったときには気が付かなかったが、俺が知っている地形とは違い、屋敷から宇治宮にはまっすぐ陸路を行けなくて、その方角には湾になった浅瀬の海がある。俺が住んでいる大隈宮も鶴屋さんちの住吉宮も、馬で行くときは一旦南に下るしか道がなく、遠回りしなければならなかった。海から船で川をさかのぼったほうが早いらしい。 莵道氏に太子を継いでくれと言われたことは俺の努力次第でなんとかならないこともないが、その上に妹を頼むとすがられたのには参った。この時代は政治に結婚はつきものだからな。身内の中から支配階級につながりを持たせようとするのは、宮廷政治にはいつの時代にもあったと日本史で習った。藤原氏やら平家がいい例だ。でもあのときの莵道氏を見ていると、純粋に妹の幸せを願って頼んだようにも見える。根回しをするような男ではない気がするが、あるいは俺の人がよすぎるのか。国木田似の病弱な彼の顔が思い出されて不憫だった。 俺は船の中で喪服に着替え、川岸の桟橋に着いて船を下りた。客室を借りてもよかったのだが、さっさと済ませてさっさと帰ることにした。妹君の屋敷は隣に構えてあった。すでに弔問客がひしめいている。 館の客間らしきところに通され、莵道氏の妹が入ってきた。俺は体を腰のところで曲げて軽く手を握ったまま床について、社交上の挨拶をした。 「大鷦鷯です。この度のご不幸、お悔やみ申し上げます」 この妹君はめったに人前に出ないが、色白でかなりの美人だという噂だ。俺が上座に座っているとうつむいたまましゃなりしゃなりと手をついて伏せた。 「……ヤタノワキイラツメ。悼み入る」 顔をゆっくりと上げたそれは、長門だった。 「な、長門。こんなところにいたのか」 「……」 「ずっと探してたぞ」 「……わたしも、待っていた」 いつかのような再会のシーンに抱きしめたい衝動に駆られて長門の肩を引き寄せたが、弔問客の手前だ。嫁入り前の娘にそんなことまねをするわけにもいかず、慌てて手を離した。公式の挨拶はこれくらいにして、俺は個室に長門を呼んだ。 「この時代にはいつごろ来たんだ?」 「……約半年前」 「古泉もそのあたりだと言ってた。何が起ったんだ?」 「……閉鎖空間のゆらぎエネルギーが古泉一樹の能力に反応し、次元拡張装置がオーバーロードした」 よく分からんが、漏電みたいなものか。 「どうやって帰る?」 「……今のところ手段がない」 「前みたいに喜緑さんに助けてもらうことはできないのか」 「……それはできない。この時間線には喜緑江美里は存在しない」 「存在しないって、なんでだ?」 長門はなぜか、言ってしまってハッとしているようだった。それから理由を説明しようと口を開いたが、途中でやめて黙り込んだ。なんだか長門らしくない。 「……」 「喜緑さんがいないってことなら、まあ無理には頼めないよな」 長門は何も言わなかった。 「朝比奈さんとハルヒ、古泉には会ったんだが。ハカセくんがいない」 「……彼はこの時間平面にはいない」 「俺たちの時代に残ってるのか」 「……そう。彼は影響を受けていない」 そうか。ならよかった。俺たちと違ってあいつだけは一般市民だからな、できれば巻き込みたくない。 「そういや朝比奈さんのTPDDが壊れちまったらしいんだが、修理すれば戻れるんじゃないか」 「それは無理。TPDDは意識内の概念で構成されている」 「長門にもお手上げか。困ったな」 しばらく考えたが、長門に手の打ちようがないんなら俺がいくらがんばっても無駄だよな。 「ともかくこの時代を生き抜くことを考えよう。お前がいてくれて安心したよ」 「……そう」 「お前のことを莵道さんに頼まれた。いい兄貴だよな」 「……」 俺はつとめて明るく振ったのだが、長門は妙に悲しそうだった。 「すまん。仮の身分とはいえお前の兄だったな。あまり親しくはなかったが、純朴でいいやつだった」 「……気にしなくていい」 「喪が明けたらうちに来い。みんなで一緒に暮らそう」 「……分かった」 長門を見ていると、なんとなく独りにしてはいけないという気持ちが沸いて起る。妃にしてくれと言われたときに会ってやればよかったと少し反省した。 「実は太子になることになってな」 「……知っている」 「怒らないで欲しいんだが、ハルヒを妃にするはめになったんだ」 「……怒ることはない。立場上、当然のこと」 「ハルヒに悪い虫が付きそうだったんでな。それに子供が三人もいたんでほっとけなかったんだ」 なんだかすごくいい訳じみてるのは気のせいじゃないだろう。慌てて行動してしまって少なからず後悔しているところだ。 「……子供に父親は必要。あなたが適当だと思う」 「そうか。分かってくれて嬉しいよ」 「……これも、既定事項」 や、やっぱりそうなんですか。ここで俺がしくじったら歴史が狂ってしまうんだろうか。 「莵道氏と約束したとおり、お前も妃にしたいんだが受けてくれるか」 「……」 長門は俺の手を握ってコクリとうなずいた。 葬儀はつつましく執り行われた。俺と長門を引き合わせてくれた莵道稚郎子皇子に別れを告げた。若くして生涯を閉じた、この人のなごりが京都宇治川に残っているのを俺が知るのは、だいぶ後になってからだ。 「あたしは絶対に嫌だからね!」 ハルヒは頑として譲らなかった。ハルヒが怒っているのも無理はない。ハルヒのことを気に入っている男がいるというので俺が半分やきもちを焼くような形でハルヒを横取りし、その挙句俺は長門まで妃にしたいと言い出したのだ。 莵道稚郎子皇子の葬儀が終わって、だいたい三ヵ月の喪の期間が過ぎてからのことだ。それまで俺は鶴屋さんちでまつりごとにかまけていたのだが、即位する前にハルヒに言っておいたほうがいいだろうと考えた。 「お前を皇后の位にしたいと思うんだが」 「ええっ、ほんとに?あたしが皇后様になんの?」 ハルヒは例の、口を半月にした笑顔で言った。もしかして女王様願望があったのか。 「ただし、長門も妃にしたい」 「な、なんで有希を妃にしないといけないのよ」 「莵道さんが死ぬ前に、是非にと頼まれたんだよ。遺言みたいなもんだ」 「いそいそと京都に出かけてたのはそういうわけだったのね」 できるだけ穏便に口実を作って抜け出していたつもりだったのだが、長門に会いに行ってたのを知られてたらしい。 「俺と長門が付き合ってるのは知ってるだろう」 「知ってるけど……でも」 「お前を皇后にするのは芝居みたいなものなんだ。日本の歴史を壊さないためにだな」 「だったら最初から有希と結婚しなさいよ。二股かけられるなんて、あたし我慢ならないわ」 「俺もそう思ったんだが、この時代のしきたりじゃそうもいかないらしいんだ。ハルヒを気に入って次の皇后に推したのは鶴屋さんだから、そっちを立てないといかん。つまり政治だな」 「そんなのいやよ。あんたとならこの時代で一生を終えてもいいなと思ってたのに……。あんた、あたしと有希のどっちが大事なの!?」 そんな究極の選択みたいにいわれてもなぁ。 「どっちも大事だな」 「もう!あたし絶対にならないから!」 長門のほうが大事だ、とか言ってしまうとまたハルヒが切れそうなので曖昧にごまかしてしまったのだが、ハルヒはドダダダと足音を立てて走っていってしまった。いや待て、俺とならここで一生を終えてもいいとか言ったか。そんなことになったら困るぞ。俺は全員を連れて二十一世紀に帰らねばならん。ハルヒもだ。 「大鷦鷯にも困ったもんだのぅ。前から女の気持ちに鈍いとは思っておったが」 鶴屋さんが八重歯を覗かせながらケラケラと笑った。俺には「キョンくんにも困ったもんだねぇ」と聞こえていた。 「はあ。痛み入ります」 「実のところイワにゃんがここに参ってな、愚痴っておった」 「あいつ愚痴を言いにここに来たんですか」 「まあ、あれの気持ちも分からんでもない。元はといえばお主が無理をいうて妃として召したのだからのう」 「しかしあのままほっとくわけにもいきませんでしたし」 「お主が焦る気持ちも分かる。しかしの、イワにゃんも宿敵が現れて戦々恐々としておるんさ。女の世界というのはそういうものさね」 そうだったんですか。俺の知らない怖い世界だ。 「あれが言うには、もし大鷦鷯にめとられなければ自由に恋もできたであろうにと、誰にいうともなく嘆いておった。余も多少なり責任を感じておるところよ」 なんというか、ハルヒがそんな風に感じていたとは。自分の軽率さが少しショックだった。 「八田皇女とどっちが大事かと問い詰められました」 「そこはのう、嘘でもよいからイワにゃんのほうが大事だと言うんさ。女ってのは大事にされると嬉しいもんさね」 そうなんですか。さすが年の功というか、噂には聞いてますが鶴屋さんもいろいろと苦労なさってるようで。 「まあ今のところは磐之媛をおだてて、頃合を見て八田皇女を召しいれればよろし」 「そのようにします。おありがとうござい」 「歌の一首でも贈るがよろし、花一輪を添えてな」 歌?俺にラブレターを贈れとおっしゃるんですか。歌っていうか俺の時代でいう和歌だよな。古文は昔から苦手だったのに。しょうがないので古泉に頼んで手伝ってもらった。 「酒の君、ちょっといいか」 「なんでしょう殿下」 「ハルヒに和歌を贈りたいんだが」 「これはまた風流ですね。して、どのような歌を」 「ハルヒを皇后にするという話をしたらブチ切れてな。なだめたい」 「皇后様に?それでなぜご機嫌を損なわれたのでしょう」 「そのついでに長門を妃にしたいと言ったんだが」 「きっと二股をかけられたと思われたのでしょうね」 古泉はあははと笑った。なんでそう女心を読むのがうまいんだ。 「鶴屋さんから歌を贈れと言われてな。なんとかなだめる歌をたのむ」 「それは殿下ご自身の気持ちが重要かと」 「うーん。俺の古文の成績はずっと一とか二だったからな」 「殿下。この時代ですよ、歌のひとつやふたつは詠じることができないと文化人として軽んじられてしまいます」 「分かった。書くから手伝え」 「まず、皇后となられる磐之媛様のお立場はどうお考えなのでしょうか」 「ここではハルヒが主役だな」 「つまり、磐之媛様が主役で八田様が脇役ということでしょうか。二人が一緒にいても磐之媛様が色あせてしまうことはない、と」 「そうだな。それをなにかに例えてみると……なにがいいだろう」 「そうですね。百済の武人はいつも、主力の武器と予備の武器を用意しています。弓は必ず二本持っています。予備の弓を儲弦《うさゆづる》と申しますね」 そんな国語の授業っぽいやりとりをしつつ、以下の歌ができた。 貴人の立つる言立て 儲弦絶ゆ間 継がむに並べてもがも 「俺は偉い人だから一度しか言わんぞ。主力の弓が切れたときのための予備の弓だが、あくまで予備として用意しておくだけだ。つまり長門はあくまで脇役で、ハルヒが主役であることに異存はないぞ」というような歌だ。庭に植えられている姫百合を数本包んでもらって、ご苦労だが早馬で届けてもらった。 この歌、俺にしちゃあ“たいへんよくできました”のスタンプをもらってもいいくらいの出来のはずなんだが、かえってハルヒを怒らせたらしい。翌日ハルヒから手紙が返ってきた。 衣こそ二重も良き 小夜床を並べむ君は畏きろかも 「予備があっていいのは服くらいなもんよ。女二人と寝るつもりなのあんたは!何考えてんのよ変態!」と、いうことらしい。この時代の俺たちはただ芝居を演じてるだけだから、まかり間違っても二人と寝るなんてことはありえんだろ。まったく、風流なのか妄想たくましいのか分からんやつだ。この歌を古泉に見せると困ったものですねと笑っていた。 どうもこの時代に来てハルヒは長門を嫌っているようだ。喪が明けた頃に長門があいさつに来たのだが、ハルヒは会っても目を合わせようともしない。それもそのはず、この時代の衣装に身を包んだ長門はもう惚れ惚れするくらいの美しさで、家臣一同、野郎の視線を釘付けにしたほどだ。部活で巫女コスプレをさせなかったのが悔やまれる。ずっと短かった髪も、この時代に来てさらりとした長い髪になっている。 しかも教養があっておっとりとした皇女らしい品格があり、臣下にファンも多いと聞く。それに長門の血筋は先代天皇に最も近く、いわば正統だ。ハルヒは自分を差し置いてそういう設定になってるのが気に入らないらしい。 ハルヒがあんまり怒るので、長門のことはもう持ち出せなかった。ともかく皇后に就いてもらうまでは黙っていよう。こういうときはとにかくなだめるに限る。鶴屋さんが説得してくれたのが功を奏したのか、ハルヒはとうとう折れて皇后の位に就いてくれることになった。 しばらくして、俺の即位の礼とハルヒの立皇后の礼が行われた。即位の礼といっても、中身がいろいろと複雑で儀式がいくつか重なっている。朝廷が内輪でやる儀式に、家臣にお披露目をする儀式、さらに国民にお披露目をする儀式まである。祝賀会はその後だ。 なにせ俺にはまったく経験のないことで、宣誓を唱えるにも挨拶をするにもカンペを用意してもらわねばならなかった。このカンペがまた難しい漢字の羅列で、たぶん万葉仮名とかいうんだと思うが、読めなくて困った。早くひらがなを開発してくれ。 国中から祝いの使いが訪れ、外国からも使節団がやって来て、俺とハルヒはいちいち面会に出ねばならなかった。そこで言うべきセリフも決まっていて徹夜で覚えさせられた。国事に詳しい古泉にはディレクター役としていろいろと助けてもらった。 皇位に就いてから俺は高津宮という屋敷を構えた。朝比奈さんのいる大隈宮のすぐそばだ。屋敷の場所をここに決めたのは、ここからだとすぐ船を出して宇治宮に行けるという隠れた理由もあった。 しばらくの間、ハルヒはおとなしく育児に専念していた。これはこれでけっこう楽しんでいたようで、寺子屋みたいな塾を開いたり、家臣の子供を集めて中国そろばんを教えたりしていた。 「ハルヒ、漢字はともかくだな、ひらがなとカタカナはまだ教えないほうがいいぞ」 「なに言ってんの、ひらがなは日本人のココロよ」 などとのたまい、俺たち四人が歴史改変しやしないかとオロオロ心配しているのもどこ吹く風だった。 「サッカーを教えるのはまだ早すぎるだろう。日本に伝わったのは千五百年後だぞ」 「これは蹴鞠よ蹴鞠。麿と蹴鞠をしませう」 ハルヒさん、蹴鞠は奈良時代におじゃる。 「あんたは歴史0点!蹴鞠は紀元前三百年くらいからやってんのよ」 「そうだったのか、知らなかった」 「といっても中国でだけどね」 子供たちは丁寧に巻かれた手鞠がボロボロになるまで蹴って遊んだ。稚児衣装の袖を振り回しながらゴールを叫ぶ様子を見ていると、サッカーが国技になってワールドカップ優勝も夢じゃない気がしてきた。がんばれニッポン。 ほのぼのした宮廷の日々が続いたが、けして長門のことを忘れていたわけではない。俺はなにかと理由をつけて宇治宮まで遠出した。長門もあんな遠いところに住んでないでこっちに来ればいいのに、と思ったんだが、ハルヒを刺激しないほうがいいというので俺もまめに遠い道のりを通った。宇治宮を去るとき、長門が桟橋にぽつりとたたずんで、寂しそうにこっちを見ているのが正直つらかった。 だがまあ、俺としてはこの二人の物理的な距離を楽しんでいないわけでもない。 「キョンくん、なにを書いてるの?」 「あ、朝比奈さん、なんでもありませんよぉ。きっと気のせいです」 「ちょっと見せて」 「いえいえ、なんでもありません。ただの落書きです」 「嘘っぽいですぅ」 うわっだめです、そんなに密着されては。仮にも俺たちは親子なんですから。 「あら、歌を詠んでいたの?そうならそうと言えばいいのに」 「とても人様に見せられるシロモノではないので」 俺は苦笑いをした。こないだハルヒに歌を贈ったところ酷評されて返ってきたので、少しでも腕を磨こうという俺のささやかなる向上心から柄にもないことをやっているのだ。 「枕詞とかぜんぜん覚えてなくて。学生の頃に古文の成績は教科一覧の中で最低でしたから」 「あんまり深く考えなくていいと思うわ。この時代の和歌は日記みたいなものだし、物語とか手紙を情緒を込めて書くときに歌にすることもあるわ。メモ書きみたいな感じ」 そうだったんですか。じゃあ俺たちの時代でちょっとメールを書いてるような感じですかね。 「そうそう、ギャル文字でちょっとメールする感じね」 朝比奈さんは笑って俺が書いた歌を読んだ。 「あら、あらら。これは、ごめんなさい勝手に見ちゃって」 「いえいえ、朝比奈さんならいいんですよ。ハルヒなんかに見られた日にゃ死ぬまでネタにされそうで」 俺が書いていたのは長門のことを詠んだ歌だった。清楚な女の子が宇治の片田舎でひっそりと暮らしているのがいとおしい、とかそういう意味のことを詠んだ。 「素朴でいい感じね」 いやぁ、ははは。朝比奈さんに誉められると歌人にでもなれそうな気がしますが。 「よかったらこれ、わたしにくださいな」 「え、これをですか?」 「ええ。いいかしら」 「こんな素人の歌でよければいくらでもさしあげますよ」 「ありがとう。長門さんにも見せてあげたいわ」 そ、それは勘弁してください。あいつにこんな駄作を読まれたりしたら凹んでしまいます。 そんなある日、鶴屋さんに呼ばれた。 「大鷦鷯、八田皇女のことであるが、あまり待たせるのもよくない。約束は約束」 「ええ。でも磐之媛がなんというか」 「そこでな、磐之媛にはちょいと使いを言いつけたい」 「どんな用事でしょうか」 「近いうちに豊明《とよのあかり》という宴を催すのであるが、そのときに使うミツナカシワという木の葉を使う」 「ミツナカシワですか。玉ぐしみたいなものですか」 「まあ似たようなものだ。それを採ってくるのは皇后が最もふさわしい」 そんなしきたりは聞いたことがないが、鶴屋さんがたった今作ったのに違いない。 「そのミツナカシワはどこに行けばあるんですか」 「熊野岬というところにある」 「熊野岬というと……ええと」 「船で伊勢に渡る中途にある、熊野灘にあると聞く」 和歌山の最南端くらいか、けっこう遠いな。 「その間に既成事実を作ってしまえば磐之媛も無下に拒めまい」 「磐之媛がいない間に八田皇女を妃に迎えようって魂胆ですね、ひひひ」 「さようじゃ、きひひ」 鶴屋、お主もワルよのう、と突っ込んでしまいそうな策略であるが、ハルヒの目をかすめでもしないといつまでたっても長門を迎えることはできまい。 俺はハルヒに宛ててうやうやしくミコトノリを送った。ミコトノリってのは天皇が出す命令書みたいなものだ。ハルヒは子供を連れて、ぶつぶつ言いながら船で熊野岬を目指した。 その隙に俺は、古泉に頼んで長門を迎えに行ってもらうことにした。 「長門を妃にしようと思うんだが、迎えに行ってもらえないか」 「それはおめでたい。ですが、涼宮さんが荒れませんか」 「多少は荒れるかもしれんが、あいつもそろそろ大人になっていい頃だ。だいたい長門と付き合うきっかけになったのもあいつだし」 「そうですね。あなたなら涼宮さんをなだめられるでしょう」 「長門の兄貴に遺言で頼まれたってのもあるしな。まあこれは俺の希望でもあるんだが」 「さっそく行ってまいります」 「気をつけてな、お忍びで頼む」 「かしこまりました」 古泉はすべて心得ているというように片目をつぶった。 この間に俺は、敷地内に長門のための館をもう一軒建てるとしよう。さすがにハルヒと同じ館の中じゃ火花が散る毎日だ。S極とS極は近づけないに限る。 一週間くらいして長門のご一行が到着した。家財道具も一式持ってきたようだ。宇治宮には長門の妹というやつが後を継いで住むことにしたらしい。 俺が出迎えようとすると、長門の取り巻きはそそくさと部屋の中に引きこもった。ああそうか、新郎は式の前には花嫁に会ってはいけないんだよな。 翌日、よく晴れた九月のとある吉日。陽が西に傾いたころ、俺と長門の婚礼の儀が庭で執り行われた。屋敷の庭にはいくつものかがり火が焚かれていて、パチパチと燃える音に混じってコオロギやらスズムシの声が静かに聞こえている。 司会の巫女さんを朝比奈さんに頼んだ。俺が神事用の礼服を着て祭壇の前でじっと待っていると、客室から長門が降りてきた。式場の両側に並んだ家臣と客人からオオッという歓声が沸いた。おしろいをつけていなくとも透き通るような白い肌に、長い中国貴族風の衣を身にまとい、銀細工の髪飾りをつけている。目の覚めるような真紅の衣装がひときわ映えていた。 ごくごくゆっくりと、付き人と共に庭に敷かれた布の上を歩いてきた。この時代のしきたりらしく、祭壇のまわりを、俺が右から、長門は左から、ぐるりと回って真中で出会った。イザナギノミコトとイザナミノミコトに由来するらしい。 「長門」 「……なに」 「きれいだぞ」 「……ありがとう」 婚礼の祝詞を述べる朝比奈さんの目が少しうるんでいる。祝詞はカンペなしで、ちゃんと暗記したらしい。二十一世紀ならここでキスのひとつでもするといいのだろうが、これはまあイニシエの儀式、我慢するとしよう。 神式というから杯を交わす三々九度というのがあるのかと思っていたのだが、この時代にはまだないようだ。古泉の解説だと神前結婚の様式が決まったのは明治以降らしい。 朝比奈さんが玉ぐしを振って祝福し、全員が祭壇に向かって礼をした。チャチャッと拍手をして婚礼の儀は終わった。 「キョンくん、長門さん、おめでとう」 「ありがとうございます」 「お二人さん、おめでとうございます」 「……」 長門はコクリとうなずいて、古泉から大きな花束を受け取った。 「大鷦鷯、八田、めでたきかな」 「おばあさま、ありがとうございます」 「して、お主。磐之媛と八田のどっちを好いておる」鶴屋さんはこそこそと耳元で囁いた。 「そりゃ八田ですよ」 「憎いのう。よう、ご両人」 鶴屋さんはわははっと大声で笑った。今宵も酒がうまいようである。披露宴というか酒の席は館の中の広間で行われた。長門と二人で上座に座らせられ、ただニコニコして客人が食ったり飲んだりするのを眺めていた。ここにハルヒがいてくれたら、とふと思った。口には出さなかったが、たぶんみんなもそう思っていたに違いない。 既定事項にのっとった芝居とはいえ、俺は新婚気分をまったりと過ごした。古泉に案内させて鷹狩に出かけたり、鶴屋さんを連れて生駒山に登ったり、船を出して瀬戸内海を回遊したりと、長門を連れてあちこち遊びに出かけた。 屋敷の敷地に遠くが見渡せる高台を作り、陽が傾くと長門とそこに登ってじっと夕日を眺めていた。 「最近よく考えるんだが」 「……なに」 「このまま、二人でこの時代で過ごしてもいいかもしれんな」 「……そう」 もちろんそんなわけにはいかないんだろうが、長門は少しだけ微笑んでいた。俺は長門を抱き寄せて髪に頬ずりし、長門は目を閉じた。俺の生きていた時代とは違う、このゆっくりと流れる時間が好きだった。 人名など: 神功皇太后(じんぐうこうたいごう) 気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと) 大鷦鷯(おおさざき) 応神天皇(おうじんてんのう) 仲姫皇后(なかつひめ) 磐之媛(いわのひめ) 去来穂別(いざほわけ) 莵道(うじのわき) 莵道稚郎子(うじのわきいらつこ) 八田(やた) 大隅宮(おおすみのみや) 住吉宮(すみのえのみや) 宇治宮(うじのみや) 高津宮(たかつのみや) 【仮説4】その3へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8460.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 悪魔 意味……悪意・悪循環からの目覚め タバサと陽介の主従はガリアの首都リュティスを訪れていた。 シュヴァリエ・ド・ノールパルテル その理由は北 花 壇 騎 士としての任務を北花壇騎士団団長であるイザベラから受けるためだ。 ガリア王国の王女でもあるイザベラが住まう宮殿プチ・トロワに入る前にタバサは以前したように使い魔を外で待たせようとした。 だがタバサなりの使い魔への気遣いは陽介が来るようにとのイザベラからの指示のために断念することになった。 タバサはイザベラのいつものいびりが陽介に向かうのではと心配した。 しかし陽介はタバサに「心配すんなよ」と言って彼女を待合室に残し、イザベラのいる謁見室に向かっていった。 メイドに連れられて陽介は大きな扉をくぐった。 扉が大きいだけあって部屋もなかなかの大きさで、天井も高い。 扉の直線状にイザベラはいた。RPGで王様のいるところのように階段状に高くなったところでずいぶんと高そうな椅子に鷹揚に腰かけている。 「久しぶりじゃない、ヨースケ」 「そーですね」 王族相手にどんな敬語を使ったらいいのかわからないが、とりあえず以前喋った時と同じノリで喋っておく。 特にイザベラがそれで気を害した様子もないのでこの調子でいいのだろう。 「これに今回の詳細が書かれているわ」 イザベラはポケットから一つの手紙を出した。 ポケット付きとか案外実用性の高いドレスだな。と陽介は思った。 陽介がどうでもいいことを考えているとき、使用人が陽介に手渡すべくイザベラから手紙を受けとろうとするが、 彼女はわずらわしそうに手をふってそれを制した。 「ヨースケ、あなたが直接取りに来なさい」 使用人たちの間にどよめきが走ったのを陽介は感じた。別に声にだして呻いたわけでもないが、 動揺が走ったのは確かだ。イザベラが何か妙なことをしたのかと思ったが、陽介には思い当たらない。 彼らの様子をいぶかしげに思いながら陽介は玉座の階段を上がって行く。 そしてイザベラと同じ高さの段に立った。 使用人たちが息を飲んだようだが何に彼らがそれほど気を張り詰めているのか陽介にはやはり分からない。 21世紀の日本育ちの高校生である陽介には知るはずもないことだが、 平民が玉座において王族と同じ高さに立つなど許されるはずもなく、 まして今イザベラは座っているため、陽介は見下ろす格好になっている。 使用人たちは全員陽助が不敬罪になるのではと肝をひやしているのであった。 しかし当人たちはどこ吹く風と言った様子である。 陽介はともかくハルケギニアでも指折りの高貴な血を持つイザベラは王族に要求される煩雑な作法を熟知しているというのに。 イザベラがその高貴な振る舞いを実践できているかどうか疑問もなくもないが、 しかし自分への礼儀を徹底させることに関しては熱心なイザベラの光景は使用人たちの目に奇異なものと映っていた。 「わたしはあいつを妬んでる。認めるよ」 イザベラは小さな声で言った。陽介にだけ聞こえるように。 「だからわたしはあいつに死ぬような任務を押し付けるのさ」 イザベラは陽介をきっと睨む。 陽介は目をそらさない。 「んなことしたって何の解決にもなんねーと思うぜ」 陽介は言葉を選ぶように額を押さえてから呟いた。 「やっぱ、話あったほうがいいんじゃないか。一人じゃ二人の関係は変わらねえと思うんだよ」 じっと見つめていたイザベラはくくくと笑った。 「あんたは王女さまにタメ口かい?」 陽介は慌てて訂正する。 「え……、っと自分はそう思うと思います!」 さらにイザベラは笑う。 テンパったためにへんな敬語しかでなかった。 陽介は言いなおそうとするが、彼女は笑いながら「いいよ別に」と言ってそれを制する。 笑い終わったあと、イザベラから表情が消えた。 「もう遅いんだよ。それに今回の任務は本当に危険だ。話し合う前に死んじまうさ」 陽介はイザベラの目を見て言った、強い意思を込めて。 「死なねえよ。タバサを死なせたりなんかさせねえ。 もちろん俺も死ぬ気はねえ。……だからきっと遅すぎるなんてことはないと思うぜ」 言い終わるなり陽介はイザベラに背を向けて退出する扉へと歩んでいった。 出て行く前に陽介はイザベラを見たが、顔を下げていたため表情は窺い知ることは出来なかった。 世界七大美味だという極楽鳥の卵を取ってくる。それが今回、騎士タバサに課せられた任務だった。 鳥の卵を取ってくるというだけでは簡単そうであるが、もちろん簡単ならばタバサに仕事は回ってこない。 極楽鳥は年二度卵を産む。今の季節はたしかに産卵時期のひとつなのだが、本来はこの時期に卵を取ることはない。 というのは極楽鳥は火竜山脈という6000メイル級の山が並ぶ山脈で卵を産むのだが、この時期は火竜山に子育てのために火竜も集まってくるからなのだ。 なので、火竜たちの居ない時期を狙って卵を取りに行くのが普通であり、そうでない時に卵を取りに行く者は自殺志願者としか思われない。 そして今、タバサと陽介はまさしくその危険な時に火竜山脈を登っていた。もちろんタバサも陽介も死ぬ気などさらさらない。 他人がその様子を見れば、そう思わないとしても。 「あっちい……」 陽介はゲンナリしたようにこぼした。 登山で体を動かしたからというのもあるが、事実として火竜山脈は暑いのだ。 通常、山というものは登れば登るほど気温は下がっていく。 そして一定以上の高さを持つ山は頂に雪がつもっているものだが、火竜山脈は6000メイルの高さがあるにも関わらず一片の雪も認めることはできない。そ れは山のいたるところで溶岩流が噴出しているためだ。 そのため、山は高温に保たれ、その上降雨は全て水蒸気となるため火竜山脈は蒸し風呂同然だった。 陽介は腰に学ランを巻きつけていた。 だが巻いている分だけそこが熱を持ち、学ランを捨てたい衝動にかられる。 「この湯気にもうんざりだわ……。 俺って湯気にあんまり良いイメージないんだよな。なんか完二の思い出すっつーか」 「でも、わたしたちを隠してくれる」 陽介の言ったことの後半を無視しながらタバサは言った。 そのいつも変わらない涼しい口ぶりに陽介は感心する。 タバサの体も陽介と同様に多量の汗をかいているから暑いわけではないのであろう。 泥で汚れ、汗で前髪は額にへばり付いていた。白いシャツは汗で体に密着し体のラインを顕にしている……。 そこまで考えて、俺は思考を振り払うように頭を振る。 なんでこんな小さい子の体をじっと見てるんだ!アホか!変態か! 実際は17歳の陽介に対して15歳のタバサがそこまで幼いと言えないのだが、陽介はタバサを外観から12、13歳くらいだと考えているのであった。 そんな陽介の苦悩などお構いなしにタバサは登っていくので、陽介も余計な思考を振り払いついていく。 登っている途中、瑠璃色に光る鳥の羽が二人の視界を過ぎて行った。 「お、あれがそうじゃねーのか?」 「そう」 タバサはこくりと頷き、おおよそ極楽鳥が産卵する高さまで来たので卵を捜索すると陽介に言った。 また、極楽鳥が産卵する場所ということは火竜が生息するので気をつけるようにとも。 陽介は火竜に気をつけ小声で了承の意を伝えた。 それから20分ほど黙々とふたりは極楽鳥の卵を探した。 しかし、わかりやすいところには産まないのか卵は見つからない。極楽鳥が飛ぶ姿は時々見かけるのだが。 陽介がめげずにタバサに言われた通り岩の間を探っていると、二つの瑠璃色の卵を発見した。 ずいぶんと大きく、鶏の卵の十倍はあるんじゃないかと思われる。 「おい、タバサ。それっぽいの見つけたぜ」 陽介が小声でタバサを呼んだ。ちゃんと聞こえたらしくタバサが走り寄って来る。 その姿を確認して、陽介は岩の切れ間に手を伸ばした。届かない。 ならばと陽介は体をねじ込み、両手を伸ばす。 卵に手が届いた。なんとか片手ずつに大きな卵を持って、穴を抜け出そうする。しかし…… 「あれ……?やべ、抜っけねえ!」 上半身全てを岩の切れ目に入れてしまったために体が引っかかりぬけなくなってしまった。 あせって腰の位置をずらしてなんとか脱出しようとするが抜けない。 鳥がなにやら甲高い声で鳴いているが、気にも留めなかった。今は穴から抜け出すことが全てにおいて最優先だ。 陽介が極楽鳥の卵を発見したらしいので、タバサは陽介に近づいた。 陽介は上半身まですっぽりと岩の切れ間に体を入れて卵を取ろうとしていた。 これで任務も完了かと気を抜きかけたとき、タバサは空で極楽鳥がさえずっている意味に気付いた。 タバサが振り返ると、靄の中に大きな影がある。 それはタバサがエルフと並んで戦いたくない魔獣、竜だ。 しかもタバサの前に姿を現したそれは通常の火竜よりも大きく、十八メイルはあろうかという個体である。 頭には雄にあるトサカがなく、鱗の色は雄よりも色濃く燃え滾る炎のようだ。老成した雌である。 火竜は一鳴きした。極楽鳥の鳴き声に似ていたが、それは事実とは逆であろう。 極楽鳥は火竜を呼ぶためにその真似をしているのである。だが声質は似ていても声量はまるで違う。 空気が震える。それが伝染したかのようにタバサも身震いした。 その圧倒的過ぎる姿。人間がどれほど修練しようと勝てない存在それが彼女の前に存在した。 背後で陽介が「うわっ、なんの声だ!?」と騒いでいるのが聞こえる。くぐもった声なので未だに穴の中なのだあろう さらに火竜は天を仰いで咆哮した。そしてどうやらそのまま火を吹こうとしているようだ。 口から火炎が溢れる。そのわずかな火炎でも、周りの空気は揺らめく。信じられない熱量だった。 タバサに戦慄が走る。逃げ出したくなる。しかし、一度背後を振り返ってから、タバサは地面に足を突き立てた。一歩も引かないつもりである。 なぜなら彼女の後ろには彼女の使い魔が居るのだ。 自分は魔法使いだ。使い魔を見捨てることなど出来ない。 タバサは強く決意し、呪文を唱える。 「ラグーズ・イス・イーサ・ウォータル……」 ジャベリン タバサの杖の先に、太く、大きな“氷の槍”が膨れ上がる。 火竜は目の前の口を大きく開き、岩をも溶かすブレスを吐いた。 同時にタバサもジャベリンを解き放つ。 炎の息吹と氷の槍が空中で激しくぶつかった。 氷の槍が、巨大な熱量で溶けていく。 炎の息吹が、その冷気で燃え尽きていく。 激しい水蒸気が立ち上る。 時間にすれば一瞬の出来事だ。 氷と炎が生み出した霧が晴れる。 火竜も魔法使いも攻撃を放つ前の姿のままで佇んでいる。 タバサはじっと火竜を睨みつけていた。その視線は射るようだが、実際は先ほどの槍でもう精神力は空っぽになり彼女には魔法は撃てない。 もはや彼女に自衛の手段は何もなく、今残っているものは魔法使いとしての矜持とさきほどまで自身の持ちうる最高の氷槍を持っていたときの残滓である。 火竜はしばらくうなり続けていたが、それから再び首を天に向けた。再び炎の息吹を放つつもりだ。 タバサは絶望に包まれる。ついぞさっきまでの戦う者の表情はない。 それは彼女が“雪風”と呼ばれるようになってから、最も感情的な表情的なものだったかもしれない。 彼女にはもう目の前の巨大な存在に対抗することはできない。 それが火を噴けば自分の命は簡単にかき消えてしまうだろう。 タバサの口が小さく動いた。彼女が何を言おうとしたのかは彼女自身にもわからない。 その時、背後から陽介の叫びが聞こえて回転する円形の刃が火竜へと飛んだ。 そしてそれは天にのばされた火竜の首に接触し、切断した。 タバサは呆然とする。 何が起きたというのか? 切断されてかろうじて乗っかっていた切断された上部が切断面からズレて地面に落ちたときも 目の前で何が起きているか分からなかった。 「大丈夫か!タバサ!」 背後からかけられた声でタバサは後ろを振り向いた。 そこには彼女の使い魔、花村陽介が佇んでいた。両手に瑠璃色の卵を持って。 自分の使い魔が助けてくれたということにタバサはようやく気がついた。 タバサは地面にぺたりと座りこむ。 「大丈夫か!おい?」 陽介がもう一度尋ねてくる。タバサは力なくこくりと頷いた。 いつもの寡黙ではない。言いたいことがあるはずなのに声が出ないのだ。 「よかった……」 陽介がほっとしたように言った。 そのとき再び大きな足音が聞こえてきた。先ほどの火竜の鳴き声を聞いたからか三匹の火竜が現れる。 「んな!増援かよ!?」 陽介が驚いたように言うが、タバサは無感動だった。 現れた3匹は先ほどの雌火竜に比べてこぶりとはいえ、一匹の火竜より脅威に違いないというのにタバサの心は波打たなかった。 恐怖感が鈍くなっているのは、一匹でもかなわない恐ろしい火竜が三匹も現れたせいなのか、 それとも隣に立っている使い魔のせいなのか、タバサにはわからない。 現れた3匹の火竜は明らかに動揺していたようだった。おそらく強力な火竜は仲間の死体を見ることに慣れていなかったためであろう。 だが敵を前にしての逡巡はあまりにも無用心であり、そのツケは高い代償であがなわれた。 「頼むぜ、ペルソナ!」 陽介の背にペルソナ、スサノオが現れた。 スサノオは力を貯め、そして体の回りを回る刃を天に放つと同時に力を放出した。 三匹の火竜は嵐よりも激しい風の渦に襲われる。疾風の刃で体を切り刻まれ、 その体を地面に叩きつけて激しい音を立てながら地面に倒れ伏した。 タバサはただただその光景を見ているばかり。 「よしっ、終わりィ!」 タバサは座り込りこんだまま使い魔を見た。 今は黒い上着を脱いで白い服になっている以外はまるでいつもの様子だ。 とても魔法使いが死力を持ってしても倒せない火竜を4体もほふった人には見えない。 陽介はタバサに話しかけようとして、何かに気付いたらしく、卵を地面においてから改めて言った。 「ほらっ、立てっか」 ぼうっとしているタバサに陽介は手を伸ばした。 タバサはその手を取った。 イザベラは薄着でベッドの上で横になりながら、小さいころの思い出をよみがえらせていた。 自分は小さいころかあの従妹が嫌いだった。 いや、陽介が行ったようにコンプレックスを抱いていたというほうが正しいだろうか。 彼女は自分よりも小さいというのに魔法がうまかったために嫉妬した。 また、もしかすると彼女はいつも両親と楽しげにしていたことにも嫉妬していたのかもしれない。 彼女はあのころは良く笑う少女であった。 自分には母はおらず、父は自分と遊んでくれることなどなく顔を合わせること少なかった。 それを寂しいと思ったことがないわけではないが、そういうものだと割り切っていた。 しかし本当は自分の従妹のように親と楽しそうに話す姿に憧れていたのだろうか。 わからない、理由はわからないが実際自分は従妹に嫉妬していて 彼女の父が死んだ時も母の気が父の手で狂わされたときもかわいそうだとは思わなかった。 彼女に冷たい仕打ちをし続けた。しかしその結果はどうであろう? ただただ虚しさが積っただけだ。一度でも満足できたことなどない。 やり直すべきなどであろうか。遅すぎることなんてないと思うなどと陽介は言ったが、遅すぎるとしか思えない。 そもそも今回の任務は危険すぎる。いくら腕利きの彼女とはいえ帰ってこれるとは……。 思考にふけっている時、イザベラの寝室に使用人が入ってきて彼女の予想を裏切ることを告げた。 「シャルロットさまが参りました」 イザベラは呼び方を人形七号に訂正させることもせずに、使用人の言葉を吟味した。 それからイザベラの言葉をじっと待つ使用人に彼女を使い魔と共に謁見の間に通すように命じた。 陽介とタバサは極楽鳥の卵を渡すべくプチトロワを再び訪れた。 今回はイザベラの命令で二人で謁見の間に来ていた。 「ふうん、本当に生きて帰って来るとはねえ……」 尊大に腰かけたままイザベラは言った。 それからイザベラは黙りこくった。何度か口を開こうとするが、思いなおしたように口を閉じる。 それを見て、用はないと判断した卵を渡したタバサはさっさと退出しようとする。 「あ、おい」 と陽介が呼び止めようとするが、構わずに去ろうとする。 本当は宮廷の適当な者に卵を渡して帰るつもりだったのだ。 それがなぜかイザベラは直接陽介と共に渡しに来るように命じたから来ただけだ。 タバサはこの従妹を嫌っているわけではない。だが、特に騎士になってからというもの、下らない嫌がらせをされ続けていた。 だから彼女が面倒な用事を思いつくのを待つつもりはなかった。 しかし退出しようとするタバサはイザベラは呼び止められた。 「ま、待ちな、用はまだ済んじゃいないよ!」 その声が若干上ずっていることが気にかかりながらタバサは踵を返して戻った。 用はあるといいながら、イザベラはタバサが待つとなると再び何か言おうとして、それを打ち消してを繰り返した。 その作業が何度目かに及んで、ようやくイザベラは喋り始めた。 「卵を二つ取ってきたんだよね?」 いつもの尊大さが感じられない質問に、タバサはいつものようにこくりと頷く。 「実はその依頼主はどっかの大貴族でね、大金払って北花壇騎士団に依頼してきたのさ」 イザベラは早口に言う。 「でだ。極楽鳥の卵は一つ渡せばそれで済むんだ。だから一つ3人で食べちまわないかい?」 イザベラは言い切ったという表情を浮かべている。 一方タバサは表情には出さなかったが、眉をひそめる思いだった。いったい何を考えているのだろう。 しかし、陽介の反応は気楽なものだ。 「えっ、いいのか?あれってめちゃくちゃ高級なシロモノなんだろ?」 「あ、ああ、構わないよ」 イザベラはなぜかホッとした様子だった。 「ラッキー!じゃあご相伴に預かろうぜ、タバサ」 自分の使い魔に勧められ、タバサはうなずいた。もともと彼女にはイザベラの申し出を断る権利などないのだ。 それから三人は部屋を変えて、長机についた。 上座にはイザベラ。そして彼女を挟むようにタバサと陽介が座っている。 極楽鳥の卵が調理されている間、会話はなかった。 タバサはいつもどおり寡黙で、イザベラはそわそわとしていただけで何も喋らない。 陽介が「3人で食うにはこの机長すぎね?俺たち端しか使ってないし」と言っても二人とも何も答えてくれなかった。 そんな時間もほんのしばらくで、シェフの手によって料理された極楽鳥の卵が運ばれて来た。 「お、来た来た……ってゆで卵?」 陽介は自分の前に置かれた料理を見て、きょとんとして言った。 こんな豪華な宮殿で調理されるというのだからどのような調理がされるのかと思っていたら、庶民的に調理されていたのだから当然だろう。 「いい食材はね、シンプルな料理法が一番おいしいのよ」 とイザベラが言った。 なるほど、ゆで卵というシンプルな調理法にも関わらず、それからはゆで卵とは思えないほどいい香りがしていた。 「たしかにこんなデカイゆで卵ってだけでたまんねえな、ちょっと」 陽介はさきほどとは打って変わって目の前の卵を楽しみそうに眺める。 マンが肉ではないがそれに近いものがあると陽介は思った。 「それじゃあ、お食べなさい。ヨースケ、シャルロット」 久しぶりに従妹の名前を呼んだイザベラはタバサをちらりと見た。タバサは特に変わった様子もなく、ゆで卵を口に運んでいた。 イザベラは小さく溜め息を吐くと二人に遅れて三等分させた極楽鳥のゆで卵を食べた。 それから沈黙が流れる。 タバサはいつもどおりのポーカーフェイスだが、イザベラと陽介は似たような表情を浮かべている。それは困惑とか戸惑いとかいったものだ。 陽介は遠慮がちに喋り始めた。 「さすが世界七大珍味っつーの?庶民的な俺の舌には合わないつーか……」 「珍味じゃなくて美味よ。あと、わたしの舌にも合わないわね」 イザベラが陽介の言葉を訂正しつつも同調した。 そしてタバサがはっきりと言い捨てた。 「まずい」 イザベラと陽介は大きく笑った。 結局、極楽鳥の卵は火竜のいない時期に取ってきたものだけが味が良く、 タバサの手に入れた卵は食用に適したものではなかった。 しかし、イザベラにとってこの食事は忘れられないものとなる。 悪循環は終わる。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/oboegakiwiki/pages/17.html
epsファイルの端が欠ける epsファイルをエディタで開き、上部のバウンディングボックスを書き換える。 %%BoundingBox 50 45 415 302 上は、左下座標(50,45)~右上座標(415,302)を切り取るという意味。 bmpなどの画像ファイルがpdf化すると消える ①画像をとりあえずpngに変換 ②susie plug-in(ifpng.spi)をdvioutの存在するディレクトリに置く ③\usepackage[dvipdfm]{graphicx}を記述 \includegraphics*[width=102mm,height=88mm]{test.png} のように貼り付けましょう。dvioutだと出なかったりするし、いろいろ不完全かも。