約 2,184,035 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6934.html
前ページ次ページ世界最強コンビハルケギニアに立つ 「ミス・ヴァリエールが召喚したのは『ガンダールヴ』です! これが大事じゃなくてなんなんですか!オールド・オスマン!」 同時刻、トリスティン魔法学院学院長室。 そこではオールド・オスマンと呼ばれた仙人のような見た目の老人が、顔を真っ赤にしたコルベールから何事か力説されていた。 春の召喚の儀式でルイズが平民を二人も――それも片方は瀕死だった――召喚してしまったらしい。 そのうち片方と契約する運びになったわけだが、 その際に浮かび上がったルーンが始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』のものと酷似している、ということだった。 オスマンはそのルーン文字のスケッチをじっと眺めていた。 「ふむ、確かによく似ておる」 その形状は確かに『ガンダールヴ』のルーンとよく似ているように思えた。 しかし――とオスマンは続ける。 「それだけでそう決め付けるのは早計じゃろう」 『ガンダールヴ』は六千年前に始祖ブリミルに使役されていた使い魔であり、いかんせん情報が少なすぎる。 伝えられているルーンの形状とて正確かどうかわからないのだ。 判断するのはもう少し材料が揃ってからでも遅くはないだろう。オスマンはそう心中で結論付けた。 そのとき、学院長室のドアがノックされた。 「誰じゃ?」 「私です、オールド・オスマン」 扉の向こうからオスマンの秘書であるミス・ロングビルの声がした。 「なんじゃ?」 「実は・・…」 ロングビル曰く、ヴェストリ広場で決闘をしている生徒がいるということだった。 しかもそれを止めようにも生徒たちに阻まれ、教師は近付くこともできないらしい。 仕方が無いので決闘を止めるために秘宝である『眠りの鐘』を使用させてほしい、というわけである。 オスマンはがっくりと肩を落としため息を吐いた。 禁止されている決闘を行おうとしている生徒たちにも困ったものだが、 それ以上に「現場に近づけないから秘宝を使わせてほしい」と言ってのける教師陣が情けないことこの上ない。 たかが子供の喧嘩を止めるために秘宝を使ってられるか、それくらい自分たちで止めろと言いたかった。 「はぁ……で、誰が暴れておるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンとこの馬鹿息子か」 ギーシュの父は色の道ではかなりの剛の者である。 そしてその才能は見事に息子にも受け継がれており、ギーシュも父同様、下手するとそれ以上の女好きであった。 おおかた決闘の原因は女の取り合いだろう、アホらしいことこの上ない。 「で、相手は誰じゃ?」 「それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です」 オスマンとコルベールは顔を見合わせた。 噂をすれば何とやら、である。 「ふむ、『眠りの鐘』はいざとなったら私が使用するのでもう少し様子を見るよう伝えなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく音が聞こえた。 オスマンはコルベールと頷き合うと、壁にかかった大きな鏡に向かい杖を振るう。 鏡が映し出したのは生徒で埋め尽くされるヴェストリ広場、そして大男が金属製のゴーレムを吹き飛ばした瞬間であった。 広場に集まった生徒たちはその光景を呆然と眺めていた。 如何なる力が加えられたというのか、金属から造り出された重量のあるはずのゴーレムの身体が大地から切り離され、 そのまま地面スレスレを滑るように飛んでいた。 ゴシャ、という鈍い音とともにワルキューレが地面に叩きつけられる。だがそれでも止まらない。 おそらくは衝撃で壊れたのだろう、いくつかのパーツがワルキューレの身体から外れ、周囲に撒き散らされた。 地面との衝突で勢いが幾分削り取られ、その軌跡は緩やかな放物線へと変化する。 そこでようやく予想進路にいた生徒たちはこのままでは自分たちの方に突っ込んでくることを理解した。 理解しても彼らは動くことができない、金属製の人型ゴーレムが飛んでくるなどという光景はあまりに彼らにとって現実味がなさすぎた。 そんな生徒たちの眼前、距離にして約1メイルにワルキューレは着弾し、ようやくその動きを止めた。 尚、その瞬間に飛び出した部品を顔面に食らい、最前列にいた小太りの少年が気絶したことを付け加えておく。 「おいボー。てめぇ吹っ飛ばすならもう少し加減するか方向考えろ」 「すまん、気をつける」 誰かがそんなことを言った。 おそらくこの広場で今現在まともに脳が働いているのは、今言葉を発した二人だけだろう。 その他の者たちは皆、ワルキューレを吹き飛ばした人物か『数秒前までワルキューレだった金属のカタマリ』を呆然と見つめていた。 金属塊は所々パーツが欠落し、残っているパーツも盛大に歪み、背中であったと思しき場所は何箇所も陥没している。 これだけの破壊に晒されて形が残っているかどうかはまた別の話だが、これが生身の人間だったら見事な惨殺死体である。 皆、頭が混乱していた。 一体何をどうしたら素手でこんな破壊の力を行使できるのか、まったく理解出来なかった。 「言い忘れたが小僧、魔法を使っても何しても構わんが私が勝ったら一発殴らせろ」 何か、死刑宣告に近い言葉が発されたような気がした。 ギーシュ・ド・グラモンもまた、その思考が微妙に凍り付いている者の一人である。 何か言わなくてはならないし、何か行動を起こさないとならない状況のような気はするものの、なにもできない。 ただ、一つだけ確かなことがあった。 貴族が平民に劣る、そんなことは断じて認められないということ。 それは小さな貴族である彼なりの矜持だった。 「す、少しはやるようじゃないか」 精神力を総動員して言葉を紡ぎ出す。 若干負け惜しみのように聞こえるがそんな細かいことを気にしている余裕はない。 杖を振るい、六体のゴーレムを作り出す。 これが自分の出し得る最大兵力であると考えると、ギーシュはとてつもなく不安になった。 素手でゴーレムを吹き飛ばしておいて涼しい顔をしている人間らしき何か相手に、果たしてこれで足りるのだろうか。 だが彼に選択肢はないに等しかった。 自分から挑んだ決闘で相手を畏れて許しを請うなどという無様な真似は、彼にはとてもできないことだったから。 「行けぇ!ワルキューレ!」 畏れを振りはらわんと、力の限り叫ぶ。 六体のワルキューレがボーを取り囲み、踊りかかった。 「ふんッ!」 それに応えるかのようにボーが跳躍する。その先には一体のワルキューレ。 空中で二発、『ジャブです』といわんばかりの速度で右足の蹴りが放たれる。 再び金属のひしゃげる音が響き、顔面と胸を陥没させたワルキューレがそのまま後ろへと倒れこんだ。 着地と同時、ボーの姿が掻き消える。 そして、何か硬いものと硬いものがぶつかり合う音。 見れば、二体目のワルキューレが地面に叩きつけられていた。 ギーシュは目の前で何が起こっているのかまるで理解が出来なかった。 三体目が吹き飛ぶ。 攻撃も防御もまったく間に合わない、そもそもボーの姿を目で捉えることすら出来ないのだ。 ボーは感触を確かめるように動き回り、ワルキューレに打撃を加えていく。 三発ほど拳を突き入れた辺りで四体目のワルキューレが宙を舞った。 動きの切れは本調子とは言い難く、せいぜい6・7割程度でしかない。 それでも昨日瀕死の重傷を負っていたことを考えると及第点は与えられるだろう。 この世界の医療技術、すなわち魔法には頭が下がる思いであった。 あのままだとおそらく自分は死んでいただろうとボーは考えている。 持ち前の精神力でなんとか意識を繋ぎ止めてはいたものの、何かが自分の身体から抜け出していこうとしていた実感はあった。 アレがおそらく魂とか命とか、そういったものなのだろう。 そんなことを考えながらも動きは止めず、五体目の背後に回りこみ全力の蹴りを後頭部に見舞う。 ワルキューレはその場で縦に一回転し、大地に突っ伏した。 「うぬおおおおおおおおお!!」 一度その場に立ち止まり、吼える。 そして最後のワルキューレに向かい、大地を全力で蹴った。 距離は一瞬で詰まり、ボーは腕を振りかぶった。 「分身烈風拳ッ!!」 叫びとともに放たれた技はあまりにも異質だった。 ワルキューレを取り囲み動き回る『四人の』ボー・ブランシェ。 一瞬だけ存在した彼らがほとんど同時に放った拳がワルキューレにめり込む。 グシャ、という鈍い音。 合計で四発の拳をそれぞれ別の方向から食らったワルキューレは、その場にゆっくりと崩れ落ちた。 「これで終わりか?小僧」 挑発するでもなく、勝ち誇るでもなく、ただ確認するような声音。 逆にそれによって敗北という事実を突きつけられ、ギーシュはその場にへなへなと座り込んだ。 「ま、参った」 彼にはもう戦意などという物は無い。 ボーはその様子に満足したのか、ゆっくりとギーシュの方へ歩みを進める。 ギーシュはただそれを呆然と見ていた。 最初は平民と侮った。 メイジである自分が負けるはずは無いと信じていた。 結果、いとも容易く敗北した。 どうしようもない力の差、そしてどうやっても勝てないという現実。 「ひ、一つだけ聞いてもいいかな」 「何だ?」 眼前には大男。 ギーシュが見たこともない鍛え抜かれた、大きな体躯。 冷静になれば何故こんな強そうな男に喧嘩を売ったのだろう、という後悔がこみ上げてくる。 「君は……スクウェアクラスの風メイジかい?」 それはここにいる者たちほぼ全ての抱いた疑問だった。 ボーの動きは『偏在』を多用したものであると仮定すれば辻褄は合う。 だが、そうであると断言するには彼の動きはあまりにも異質だった。 あれだけ『偏在』を出したり消したりするのは精神力の無駄であるし、なにより彼の杖も詠唱した姿も誰も見ていない。 それにメイジであるなら、拳など使わずとも魔法でワルキューレを破壊すればいいだけの話だ。 拳でゴーレムを破壊できるほどに肉体を鍛え上げたスクウェアクラスのメイジなど、誰も見たことも聞いたことも無い。 そもそもゴーレムを素手で破壊する人間というのがありえないのだが。 「スクウェアだかNINTENDOだか知らんが、私はメイジなどではない。お前たちの言うところの平民だ」 「では最後のアレは?あれが『偏在』でないなら何だと言うんだい?」 「分身の術だ」 誰もその言葉の意味を理解することが出来なかった。 「日本の忍者に憧れ、特訓の末編み出した必殺技だ。どうだ、かっこいいだろう」 ボーが誇らしげに胸を張り、さわやかな――いや暑苦しい笑みを浮かべる。 聞いたことが無い単語が先ほどから乱舞しているものの、その『ブンシンノジュツ』というものがすごい技だということは誰もが理解できた。 かっこいいとも思いはするのだが、何故かこのボーという男の前でそれを認めるのは憚られた。 「さて、では約束どおり一発殴るぞ。目を瞑って歯を食いしばれ」 その一言にギャラリーが息を呑む。ギーシュもまた死を覚悟した。 ワルキューレを破壊するような拳で殴られたら死ぬに決まっている。 これまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。 出来るならもう少し生きたい、泣かせてしまったレディたちに謝りたい。 だがそれはもう無理だろう、そんな諦めを心に抱きながらギーシュは目を閉じた。 「ああ、すまないが僕が死んだらブゴッ!」 遺言を口にしている最中に拳骨が脳天に直撃し、ギーシュは思いっきり舌を噛んだ。 「いいい今しゃべってる途中だったじゃないか!」 「む、悪い。目を閉じたから準備が出来たものだと」 「僕だって最期に言い残すことくらいあるよ!……ってあれ?生きてる?」 頭を押さえながらキーシュはきょろきょろと辺りを見回す。 目の前には身を屈めたボー。 そこはやはりヴェストリ広場であり、ギャラリーがこちらを唖然とsして見ている。 次に自分の身体を確認するが、やはり何も変わらなかった。 「……小僧、まさか私が殺すつもりで殴るとでも思っていたのか?」 「ち、違ったのかい?」 「当たり前だ!!」 ボーが吼える。 どうやら本当に殺すつもりは無かったらしい。 「私は女子供を手にかける趣味は無い。それに最初に躾だと言っただろうが」 「も、申し訳ない」 憮然とした表情でボーがギーシュを見ている。 ギャラリーから苦笑が漏れた。どうやらボーへの恐怖が今のやり取りで若干和らいだようである。 ギーシュもまた、目の前の男への恐怖心が少しだけ和らいだのを感じていた。 「いいか小僧、これに懲りたら二度と不貞は働かんことだ。それと自分の失敗を他人のせいにするな」 気を取り直し、ボーが言葉を紡ぐ。 しっかりとギーシュの目を見つめ、まるで教師や父親のような口調で。 「わかったか?」 「は、はい」 「よし」 ギーシュの返答に満足したのか、ボーは大仰に頷く。 そしてギーシュの頭をポンと一度叩くと、ゆっくりと立ち上がった。 「わかったのなら先程貴様が泣かせた二人には謝っておけよ」 そう言い残し去っていく大きな背中を、ギーシュはしばらくの間ぼんやりと眺めていた。 前ページ次ページ世界最強コンビハルケギニアに立つ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2797.html
時は過ぎ、昼休み。生徒の大半は、昼食をとっている。 オニクスに昼食は要らなかった。ほぼ無尽蔵のエネルギーを誇る彼に、食事の補給など必要なかった。 ルイズはまたしても敗北した気分で、昼食を食っていた。これでは昼食抜きの意味がない。 オニクスは食堂の壁にもたれかかり、ぼんやりと時の経過を待っていた。 戦うために生み出された自分に平常時に出来ることなど何一つなく、食事時などは特に暇だ。戦争がしたいわけではないが、彼は退屈だった。 それに彼女の近くにいても、また口喧嘩になるだけだろう。彼はそう判断して、この食堂の隅にいるのだった。 「…」 人間で言えば目をつむり、半ば眠っている状態だ。 だが、聴覚はきちんと働いている。 その聴覚が、あるとき、ひとつの音を捉えた。 「…!」 何かが砕ける音。直後に食堂は少し静まり返り、大きな声が響く。オニクスはシステムを平常モードに移行させ、音の方角を見つめた。 どうやら、何か揉め事が起こっているらしい。オニクスは視界にそれを捉える。メイドが一人、椅子にふんぞり返る男が一人。 ギーシュ・ド・グラモン。 オニクスは彼を何度か見かけていた。きざったらしい奴、と思っていたが、どうやらそのとばっちりを受けたようだ。 顔に奇麗な紅葉がついている。 「す、すみません!」 オニクスの目にまず飛び込んできたのは、メイド服の少女が、ギーシュに平謝りしている光景だった。 オニクスは近くにいた男子生徒に声をかけた。 「何事だ」 「えと、あのギーシュがさ、かくかくしかじか」 オニクスは全容を理解した。そして、その喧噪の方向へと足を進めた。 あのメイドには、ひとつ貸しがある。 「弱いものいじめはそこそこにしておけ」 ギーシュとシエスタの騒動の一部始終を見ていたルイズは驚いた。あの何でも無関心そうで無愛想な自分の使い魔が、なんとシエスタの助け舟に入ったではないか。 ルイズは興味がわいたので、それをもう少し見ていることにした。 「自分の過失で他人を責めるな」 「何を言っている、僕はこのメイドのせいで、二人もの女性のプライドを傷つけてしまったんだぞ」 「ハイリスクな行動を起こすならば周到にしろということだ。軽い気持ちでバクチをするな」 「バクチだと!?これは正しい行いだ、僕は多くの人を幸せに」 「出来ていないなら意味は無い」 「ゴーレムだか人造人間だがPTだか知らないが、そこまで僕を侮辱して済むと思うなよ」 「こないだの戦闘を見てまだその口が叩けるか、いい度胸をしている」 確かに以前のギーシュなら、尻尾を巻いて逃げ出していただろう。だが今のギーシュは違う。何だか知らないが絶好調だ。 ギーシュは負ける気がしなかった。 「決闘だ!ゼロの使い魔!」 「…愚かしい。だが、『痛まなければわからない』というアレもあるしな、ここは少し懲らしめてやろう」 「ふん、馬鹿め。ヴェストリの広場で待っている」 オニクスを尻目に去っていくギーシュ。 これを聞いていてもたってもいられないのは、ルイズとシエスタであった。 「オニクスさん!」 「…すまない、洗濯の借りを返すだけのつもりだたが、面倒なことになった」 シエスタがオニクスになかば懇願のように言った。 「私が謝ってきますから、ど、どうか決闘は」 「俺は負けない。俺は戦うために作られた。それで負けるはずが無い」 「でも、貴族の魔法を相手にしたらどんなに強い人だってやられちゃいます!」 「…心配は無用だ。俺が死んで悲しむものなどいない。俺は負けても勝っても、どうにもなりはしないさ」 「約一名悲しむわよっ!」 そこへ後ろから、大怪獣のような形相でルイズが歩いてくる。彼女は声を荒げてオニクスに言った。だがオニクスはさらりと受け流す。 「心配してくれるのか、嬉しいものだな」 「心配じゃないわよ!負けたらアタシが大恥かくでしょっ!」 「おおかたそんな所だろうとは思っていたが…」 「わかってるなら言うな!」 「それより、心配なら要らんぞ。俺は負けない、すくなくとも赤子の手をひねるくらい簡単だ」 「ひねりすぎもどうかとおもうけど…?」 「ああいう奴は、3回転ぐらいひねってやらないとわからない」 きっとオニクスに表情が出せたなら、彼は、笑っていただろう。だが、一方でオニクスは、悪い予感を感じていた。 (--------あの小僧、何かに『憑かれている』のか) だが、オニクスは悪い予感を頭から振り払い、集中する。憑き物が憑いているなら、振り払ってやるまでだ。 ヴェストリの広場。そこには多くの観衆が集まっていた。ルイズの使い魔と絶好調のギーシュ、どちらが勝つかで賭けが始まっている始末だ。 そして観衆の輪の中にたっているのは、ギーシュ、ただ1人。 「遅いぞ、ルイズの使い魔は」 そう。オニクスが来ない。十分が経過した今なおオニクスは来ない。 「捨てたのか、勝負を…!」 否、来ていた。 ギーシュの頭上、遥か上空。 彼は正々堂々戦う気など、はじめから無い。 「…面倒ごとは一発でけりをつけるに限る」 オニクスは右腕を天に掲げ、そこにエネルギーが集中していく、掌にたまったエネルギーはみるみる巨大なエネルギーの弾になり、一撃必中の「矢」となる。 そしてオニクスはセンサーのすべてを動員し、地上のギーシュを捉えた。 罠は無い 風は無い 弾道上に障害物なし 護衛もいない ガラ空きだ 「矢の鉄槌(リュストゥング・ファイル)」 一句、詠唱。腕を振り下ろし、金色の弾丸を叩き下ろすようにオニクスは地上に放った。 地上では、ルイズとギーシュがもめていた。 「キミの使い魔がちっとも来ないじゃないか!」 「アタシに文句言わないでよ!」 「部下の不始末は上司の責任だろう!」 「いつからアタシは上司になったのよ!ていうかあんたがふっかけた喧嘩でしょ、あんたが責任持ちなさい!」 「なんだと、ゼロのくせに!」 「言ったわね!!」 ルイズはすぐに懐から杖を抜き出し、ギーシュに向けて構える。ギーシュは平然と構えているが、周囲の生徒は「爆発」を恐れ、退避を始めている。 ルイズは詠唱を続けていたが、不意に、ルイズは詠唱をやめてしまった。ギーシュは気になってルイズに尋ねた、 「おい、どうしたんだ」 「……ギーシュ」 「え」 「上」 「あ」 上を見上げるギーシュ。 光の弾丸が雲を裂いて、ギーシュの元に一直線に飛来するのが、見えた。ギーシュは固まる。直撃コース、常識的に考えれば間に合わない。 光の弾丸は速度を緩めず、ギーシュの頭上に。 着弾。 ぽかんとしているルイズの隣に、音もなくオニクスが降り立った。ルイズは目の前に出来たクレーターを見つめ、放心している。周囲の観衆も同様に放心したようにクレーターを見つめ、動けないでいる。 「おお、当たった」 一方でオニクスはのんきそうに、そのクレーターを見つめている。ルイズは我に返ってオニクスに言った。 「あ、あれ、あんたの仕業でしょ!」 「いかにも」 「不意打ちってちょっと…」 「いいか、ルイズ」 オニクスがクレーターから眼を離さずに、ルイズに語りかける。 「お前はこの攻撃を卑怯と思ったわけだな?」 「あ、あたりまえでしょ」 「それは『真剣勝負』を前提にしてるからだ」 「それこそ当たり前じゃない!」 「大人になったらそんな言い訳は通用しないんだ、ルイズ」 「え?」 「いつまでも自分の前提で相手が動いてくれるとは限らない。おれはその厳しい大人の常識を、身を以て教えてやったのさ」 「………それにしたって、やりすぎよ」 「全くだ」 その会話に割り込む、男の声。ルイズとオニクスは、そして周囲の人間は驚愕した。その声の主は、 ギーシュ・ド・グラモン。 先ほど光弾を喰らいクレーターの爆心地にいなければならないはずの人物は、キズひとつなくクレーターから姿を現した。 「…うそでしょ」 ルイズの耳から、またひとつ何か抜けた。心はもう抜けたので、きっと魂だろう。 「…手加減したとはいえ…無傷だと!?」 「危ない所だったよ、まさか不意打ちとはね」 「大人の世界の辛口常識て奴さ」 「子供と女性にはやさしくしたまえ…紳士ならね」 ギーシュは手に持った造花の杖を構え直す。ルイズは一歩下がり、観衆の輪の中に、一人と一機が取り残された。喧噪は止み、空気は一変する。 両者の殺気が空気を張りつめさせ、どちらが仕掛けるか、どちらがやられるのか、そういう「修羅場」の空気が、ヴェストリの広場に充満する。 もはや会話すらためらわれるこの状況、先手を打ったのは---------- 破砕音。 オニクスは後ろを向いていた。その首元には剣が突きつけられている。 オニクスの視線の先には、人波を割って登場したと思われる黒い鎧を纏った戦乙女が、胸から「切っ先が無い剣の片割れ」をはやして、剣をオニクスに突きつけている。 切っ先はそれているが、反応が遅ければ、背後からの一撃は免れなかっただろう。 「…その場の状況は利用する。戦闘の基本だな」 「やはり、君に不意打ちは効かないか」 ギーシュは微笑みを浮かべている。既にその周囲には、七騎のワルキューレが待機している。 その姿は前ギーシュが使っていたワルキューレとは異なり、漆黒の刺々しい鎧を纏い、武器も禍々しい外見へと変化している。 「かかってきたまえ、ゼロの使い魔っ!」 「のぞむ所だ、ナルシスト野郎!」 剣の片割れをオニクスは引き抜くと、素早く右手の盾に格納された切っ先と合体させる。剣は完成し、光を纏ったソードへと変化する。オニクスはスラスターを吹かし、一直線に突撃した。 対するギーシュはワルキューレを突撃させ、それに応ずる。先頭の剣を持ったワルキューレの攻撃をオニクスは素早く打ち払い、跳躍。 二体目のワルキューレを踏み台に、さらに天高く飛んだ。そして大上段に構えた剣を、ギーシュに向かって打ち下ろす。 だがギーシュは素早くバックステップし、身代わりに一体ワルキューレを生成すると、それを盾に後退した。剣は一撃でワルキューレを裂く。 オニクスは素早くギーシュ本体からの攻撃を警戒し、空中へと飛んだ。 (有効な戦術だ) ギーシュはそれを冷静に観察する。護衛に一騎のワルキューレを従え、彼は遠くからそれを見つめていた。 (確かにワルキューレは、空を飛べない。そしてそちらは空中から攻撃が可能) だがギーシュは、笑っていた。 (確かに有効だ、「今までの僕」ならば!) 空中に飛翔したオニクスを追うように、六騎のワルキューレは背中から翼を生やし、飛翔した。 オニクスとワルキューレは、空中で熾烈な剣戟を繰り広げる。剣は火花を散らし、迫り来るワルキューレを足蹴にし、オニクスは空を舞った。 だが、斬り捨てようとワルキューレは補充され、7VS1の図式が覆ることはない。 熾烈な空中戦は、続く。 一騎のワルキューレがランスで突撃を仕掛けてきた。オニクスは蹴りで穂先を逸らし、ソードでワルキューレを串刺しにすると、さらに後方から迫り来るワルキューレに剣を払った。 剣からすっぽ抜けたワルキューレが、突撃してきたワルキューレと激突する。 オニクスは内心驚いていた。 小僧、ここまでやろうとは。 だが、この強さは既に「強力」を通り越して「異様」ですらある。 (クソ、やはりあれはただの魔術師なんかじゃない) オニクスの悪い予感は、既に確信に変わっていた。 (しかも、あの無尽蔵の魔力…まさか) さらにその確信は、新たなる予感を生み出す。 (『神』か!?) 次 回 予 告 変容する青銅の魔術師 そして事態は急展開を迎える それこそ悪魔の悪戯のように 悪夢は広場で幕を開ける 次回「玄武」 その者、神の御使いか。あるいは。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1049.html
ヴェストリの広場は、本年度で最も盛り上がっていた。 日中にもあまり日が射さない、所謂こっそり決闘をするならここ!的スポットなのだが、今ここには、これでもかと言わんばかりに人だかりが出来上がっている。 何時の間にやら階段状の臨時席が、学院長のオールド・オスマンの命令で設置されお祭り騒ぎ状態である。 広場中央近くでは、1番最初に来て待っていたら人が膨大に集まってきて『ちょ、ちょちょちょっ、き、ききき、聞いてないわよ』と動揺しているルイズと、審判だか立会人だかをする気満々のギトー先生が立っていた。 ヴェストリ広場へと向っていたギーシュは激しく動揺していた。あんなに人が集まってるとか聞いてない。 と言うか昨日からやたらと教師生徒問わずに『ギーシュさん』とやたらと尊敬した眼差しで見られる訳で。 ここまで来る前にも廊下で、駆け足で追い抜いて行ったオールド・オスマンに『場所を暖めて置くから任せておくのじゃ『ギーシュさん』!!』とか言われるし。 「学院長が何で僕を“さん”付けでキラキラした眼差しで見るんだい?」と疑問に思ったぐらいだ。なおコルベール先生は、何がどうなってるのやらといった表情だった。 食堂の側を通った時には、 「貴族は好かねえが、あんただけは別だ『ギーシュさん』!!」 とコック長のマルト―とかいう親父に声援を送られた。 メイド数名が、 「「「ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!」」」 とコールしてくれたのは満更ではなかったので、薔薇を咥え手を振って答えておいた。 マリコルヌは天に向って吼えていた。少数の仲間が、その周りを取り囲むようにスクラムを組んでいる。 「ぼく等は女と甘々学院生活を送る奴を許さないーッ!!ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」 「「「許さない!許さない!許さない!オォーッ!!」」」 「ぼくをマゾ呼ばわりしたあいつを許さないーッ!!」 「「「許さない!許さない!許さない!オォーッ!!」」」 「女の子とお話したいかーっ!!」 「「「したい!したい!すごくしたい!」」」 「けど無理だったか!」 「「「無理でした!無理でした!無理でした!」」」 「よかろう、では決闘だッ!! いくぞ諸君ッ!!」 いかにもダークサイドなオーラを噴出しながら、一団は統制の取れた足音を響かせヴェストリ広場へと向った。 広場ではギトー先生が熱く語っていた。 「諸君っ!最強の系統は何か知っているかね?そう、それは『風』だ。 しかし『風』に薙ぎ払われず!吹飛ばされない!真に最強の存在がある!『虚無』?そんな、あるかも判らない伝説の話しをしているのではない。 それは『ギーシュさん』だ!『ギーシュさん』の『愛』!『愛』の『ギーシュさん』こそが、今私達の目の前に存在する生きる伝説!」 そこで1番良い席に陣取っていたオールド・オスマン(隣はミス・ロングビルの為に空けてあるようだ)が立ち上がり、両の手を高々と掲げ声を上げる。 「『ギーシュさん』!!」 ギトーが答えるように続ける。 「『ギーシュさん』!!」 そして巻き起こる『ギーシュさん』コール。 「「「ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!」」」 「「「ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!」」」 誰かが、ぼそぼそ零れるような声でコールに対してもらした。 「ギーシュの野郎ちやほやされやがって」 「全くだ、ギーシュも随分と偉くなったものだな」 「『ギーシュさん』を愚弄するのかてめえ」 「『さん』を付けろよこのデコスケェー!」 「てめー『さん』を付けないとは『ギーシュさん』に対する冒涜か」 それを見たオールド・オスマンが割って入る。 「ほっほっほ、穏便に穏便に。今『さん』を付けなかった二人こっちへきなさい。なぁに退学とか物騒なことは言わんよ」 二人の男子生徒がトボトボと、オールド・オスマンの前へと出る。 「くぉのバカチンがァ!!『ギーシュさん』を冒涜する奴は私が卒業前に修正してやるわァー!!」 オールド・オスマンは、かァ―とか気合を入れながら思いっきりグーで殴りつけた。 その側でその光景を見たコルベールは脂汗をだらだら流しながら必死にそれを拭った。 ルイズもそれを見て思いっきり脂汗を流した。 「な、ななな、なんかおかしいわよ?」 「この世界の決闘ってのは、随分と大袈裟な物なんだな」 「そんな事無いわよ。基本的に決闘は禁止されてるのよ?」 「ご主人さまは、まだいいぜ。おれはこの決闘に参加するんだ けどワクワクしてきたぜェー。ずバァ―っと斬ってやる、あのギーシュって野郎の肉を骨をずバァーっと」 「ば、バカ。止めなさいよ。ダメよダメ」 「けど決闘だぜ?」 「ダメったらダメ」 「いんや、おれはやるね。決闘は殺し合いだ、血が噴き肉が散り骨が砕けるぐらい当然。 幾ら止めても俺は殺し合いの道具だ。殺るったら殺―――――」 「だ・か・ら・!殺るなって言ってるでしょうがッ!!」 緊張を怒りが越え、ルイズはアヌビス神を広場の地面にびたァーんと叩きつける。 「言う事聞けと、何度も何度も何度も何度も言ってるでしょうが!ええっ? 殺す前にあんたが砕ける?粉々に砕けて、その後スープと一緒に煮込まれたい?」 叩き付けたアヌビス神を踏み付けて、ぐりぐりぐりぐりとしながらなじる。 そんな時声援が一段と盛り上がった。 『ギーシュさん』コールが響き、人込みを割ってギーシュが広場に到着する。 ギーシュ・ド・グラモン。アピール力と声援への咄嗟の適応力だけに関しては稀代の才能を持つ彼は、造花の薔薇の杖を咥え現れた。 「やぁ~、やぁ~」 彼が手を振ると薔薇の花びらが彼方此方から撒かれ、薔薇の香りが広場を覆い尽くす。 オールド・オスマンなどは血圧上がりすぎて大丈夫かよ、とばかりの勢いで立ち上がり、唾を飛ばしながら『ギーシュさん』コールを繰り返している。 その手には何時の間にやら準備した、薔薇の造花を持ってぶんぶんと振っている。 ギーシュ登場と同時に、『ギーシュさん』と書かれた垂れ幕が『風』と『火』の塔から垂らされ風にたなびいている。 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 突然突風が吹きぬけ、広場に舞う薔薇の花びらを吹飛ばす。 「ふぉぉぉぉぉぉぉ、許さん!許さんぞギーシュゥーッ!!」 杖を振りかざすマリコルヌとその一団が、自らが起こした魔法の風でマントをたなびかせ、ギーシュとは広場の反対側から現れた。 「マゾコルヌ如きが『ギーシュさん』を侮辱するのか!」 「『ギーシュさん』には『さん』を付けろよこのマゾコメがッ!!」 観衆から投げかけられた言葉に、マリコルヌが地獄の底から搾り出したが如く声を上げる。 「黙れぇぇぇ!!どいつもこいつも幸せそうな顔をしやがってぇぇぇぇぇ!!!! もてぬ者達はぼくと共に来い!!勇気を出した立て、生まれいでて今日この日まで清い身体で生き抜きし猛者達よォォォォォー!!!!」 興奮したマリコルヌの吐息が『フシュゥー』と威圧感ある音を立てる。 「魂の雄叫びを上げろ! もてねええええええええっ!!!!」 広場の彼方此方から小さく声が上がる。 「も、もてねえー」 「もてねー」 「お前らァァァァー!!もっと怨嗟の声を上げろ!小さい、小さすぎる!ぼくに合わせろ!!」 マリコルヌが、ばっと両手を上げる。 「も て ね え !!!!」 会場からも強い声が上がる。 「「「もてねえええええー!!」」」 何時の間にかコルベールも立ち上がって、一緒になって叫んでいる。頬を伝うのはひと筋の……涙? 「そうだお前ら。魂を開放しろ、ぼくらは正しい!ぼくらのこの哀しみこそ、伝説の『虚無』!!」 風の中現れたマリコルヌ。今、彼を“かぜっぴき”等と呼ぶ者は一人もいない。 「今の彼はトライアングルクラス以上」 面白そうと言うキュルケに、無理矢理つれてこられたタバサが、席に座り本に目を落としたままぼそっと言う。 「嘘でしょ?そんなワケ無いわ」 お腹を抱えてケラケラと笑うキュルケに、タバサが一言付け加える。 「勝てるかどうか判らない」 「あんたが?」 ゴクリと生唾を飲みこむキュルケに、タバサはこくりと頷いてかえした。 「じゃ、後は任せたわ」 ルイズはアヌビス神を広場の中央近くに放置して、そそくさと退散した。正直関係者だと思われたくなかった。 ギーシュが広場の中央近くへとゆっくりと歩む。 マリコルヌも右手をばっと横に振り、取巻きを控えさせ広場中央へと歩む。 ギトーがその様子をうかがい、生唾をごくりと飲み込む。マリコルヌがギーシュを睨み付け、ギーシュその迫力に思わず視線を逸らす。 「試合前のにらみ合いはマリコルヌの勝ちだ!」 「違う、あれは『ギーシュさん』の愛の技、視線流しだ!」 試合前の盛り上がりも限界に近く、あの様子では客席でも乱闘が起こるか、と考えギトーは腕を振り下ろし、 「始めたまえ!」 決闘開始の合図を送る。 「ワルキューレっ!!」 ギーシュが薔薇の造花の杖を振ると花びらが舞い、一体の青銅のゴーレムが姿を現す。 「そんな児戯が、今のぼくに通用すると思うなよォォォォォッー!!」 だがマリコルヌが杖を一閃すると『ウインド・ブレイク』の烈風が巻き起こり、その青銅のゴーレムは吹飛ばされ、塔にぶつかり粉々に粉砕される。 「漲る、漲るよ!怒りの血が滾って、ぼくを強くする。血は力なりィー!!」 その時客席から、黄色い声が飛ぶ。 「ギーシュ、頑張ってー!」 モンモランシーだ。先手で推されたギーシュを心配した彼女が、声援を送る。 「大丈夫だよ、愛しい僕のモンモランシー」 ニヤケ顔でそれに応えるギーシュ。 「ふ・ざ・け・る・なァー!!」 その光景を見たマリコルヌが激昂する。 タバサがその様子を、読書を中断し本からチラッと視線を上げて伺い、簡潔に一言。 「スクウェアクラス……以上?」 「わ、わわわわっ、ワ、ワルキューレッ!!」 その怒声に驚いたギーシュが、慌てて六体のワルキューレを錬金する。 マリコルヌの杖が一瞬動くと、六人のマリコルヌが姿を現す。 「何とっ、信じられんっ、ろ、六体の偏在だと!?き、きき、聞いた事も無い!!」 それを見たギトーが、顔を青ざめ驚きの声を上げる。客席がどよめく。 その中でもオールド・オスマンが『負けるな『ギーシュさん』!』とか叫んでたりする。 「もてぬ者の哀しみを知れェェーッ!ギィーシュッ!!小手先の数で勝てると思うなよォォォォォ!!」 「コォォォー…フシュォァー…コォォォー…フシュォァー…」 本体のマリコルヌが、広場の中央近くで転がるアヌビス神へゆっくり歩み寄り、拾い上げる。不気味な呼吸音を立てながら。 「よっしゃぁー、やっと出番だ」 手にされた、その途端にアヌビス神の刀身が怪しく煌く。 「ギーシュゥゥゥ、お前には消えてもら……――――」 マリコルヌが声を不自然なタイミングで途切れさせ、かくんと固まる。 それと共に偏在が揺らぎ、その姿が掻き消える。 「うわー空気読めないわね、あの犬剣」 隠れる様にして決闘を伺うルイズがぼそっともらす。決闘の内容は気になるようだ。 「ライン……それ以下になった弱い」 「どういう事?」 「…怨念を放ってた彼が眠りに付いた。アヌビス神が彼と入れ替わった」 キュルケの問いに答えたタバサは、もう興味は無いといった風に本を食い入るように読み始めた。 「よ、良く判らないけど……チャンス、覚悟したまえ!いけぇー、ワルキューレ!」 ギーシュが叫ぶと、ランスを構えた一体のワルキューレが、マリコルヌへと突撃する。 充分な距離を加速したその一撃は、質量による破壊力を存分に発揮し鋭く貫かんとする。 ガッ、キィーン 瞬間澄んだ音がする。 アヌビス神でランスの一撃を受けた腕が大きく弾かれ、それに引かれる様にしてマリコルヌが吹き飛び、地面を転がる。 「その攻撃憶えたぞッ!!」 ギーシュはマリコルヌの口が小さく動いた気がした。 だが気にせず第一のワルキューレを突撃させた後、続けて走らせマリコルヌが転がったのを見、跳躍させていた両手剣を持ったワルキューレに上空から追撃させる。 「憶え、ぶっ」 何か言おうとしたマリコルヌが、受けたアヌビス神ごと充分に自重をかけた斬撃に、押し切られ潰される。 「何をするつもりかわからないけれど、こういう時は先手必勝、動かれる前に潰させてもらうよ」 ギーシュが薔薇の杖を振ると、二体のワルキューレが持つ武器が巨大なハンマーに変貌する。 ハンマーを抱えた二体のワルキューレは、両手剣で地面に押し付けられるマリコルヌの元へと駆けつけ、それと入れ替わり交互に激しくハンマーを振り下ろす。 「大振りとなり隙が増えるハンマー攻撃を、隙無く行う為に二体用意か、流石『ギーシュさん』じゃ。意外とちゃんと考えておる」 オールド・オスマンが、目を細め髭を撫でながら『ギーシュさん』を連呼する。 次々と別の武器を持ったワルキューレによる連続攻撃、それによる短期決戦。それが良かった。それがアヌビス神には相性が悪かった。 さながら餅つき大会の勢いで、びったんびったんハンマーが振り下ろされる。普通なら殺してしまう攻撃だが、先程のありえない六体の偏在にびびっているギーシュは容赦無く攻め立てる。 今攻撃をしかけているのは、二体とも同じ装備のワルキューレ。そして繰り返される同じ攻撃。 それが良くない。 「フハハハハ、その攻撃既に憶えているぞッ!!」 何時の間にやら、ハンマーが大地ごと強打するような音が消え、キンキンと金属で弾かれるような音がする。 広場にいる者達は信じられない光景を目にした。 二本のハンマーによる連続質量攻撃を、弾く様に捌くその剣。この攻撃以前にもランスと両手剣の質量を乗せた攻撃を受けている筈。だが刃毀れ一つせずに、妖しく煌くその剣に魅入られるように目を奪われる。 元がボロだけど。 ランスと両手剣を持ったワルキューレも加わり、四方から攻撃を加えんとする。 「その攻撃も、もう憶えているッ!」 あっさりとそれらの攻撃を、剣を弾き飛ばし、ランスを踏みつけ、大振りのハンマーをランスを踏みつけた反動で、『フライ』でも使ったのかと言わんばかりの勢いで跳躍し飛び越えた。 中空でくるっと身を翻すと、両手剣を持ったワルキューレへと斬撃を加える。 ワルキューレは両手剣を構え、その一撃を受けんとする。だが、アヌビス神は両手剣を透過し、ワルキューレを袈裟懸に斬り付ける。 既にワルキューレを構成する青銅の硬度を覚えた斬撃は、まるで“ケーキを切り分けるナイフ”の如くあっさりとワルキューレを真っ二つにした。 「けっ、やはりこんな物斬っても、つまらん」 ルイズとの連日の一方的なやり取りで薄れていた何かがアヌビス神の中で膨れ上がる。 「これで充分だ」 言うと目の前に転がる、人よりも巨大な、ワルキューレが持つ両手剣を片手であっさりと持ち上げる。 どよめきが起こる。マリコルヌにあんな腕力が有ったのかと。 その時……。 アヌビス神に刻まれたルーン文字が輝きを放った。 その光景を見たコルベールが興奮し、食い入るように身を乗り出す。 「オールド・オスマン!あの印間違いなく!」 「『ギーシュさん』!『ギーシュさん』!『ギーシュさん』!……っと、ん?お、おぉっあれは確かに」 オールド・オスマンもそれを見て確認した後、己の隣の空席を見て、空間を微妙な手付きでさわさわと撫でながら不満げに『じゃがミス・ロングビルが来ぬ事は、もっと大事じゃ』と呟いた。 コルベールはそれを見て、何言ってんだこの人はと思ったが、個人的には、確かにミス・ロングビルが居ないのは残念だなとも思った。『あのガキでは出ない色気が』とかうっかり口走ったらオールド・オスマンに握手を求められた。 「何だこれは?」 アヌビス神は驚いた。何かが違う。今、己の身の中で何かが起こっている。スタンドの力の増大を感じる。 何よりも馴染む。マリコルヌの身体も、そして手にする青銅の両手剣も、全てが一体となった感覚だ。 片手で、マリコルヌの身体の大きさと比べると、青銅の固まりの様な剣をひゅんっと振りぬき、ハンマーを構えるワルキューレのうち一体へとぶつける。 剣も、ワルキューレも粉々に砕け散る。 アヌビス神は興奮し、吼えた。 一方その頃、ミス・ロングビルは、宝物庫の入り口へと入り込んでいた。 「真性のバカじゃないかしら。揃って広場に集まって、残った連中は自分達で眠らせて」 日々繰り返されるセクハラを何事も無かったようにあしらい耐えて、笑いながらも時々 『そこまでやったら本当に洒落なってないわよ。泣きそう』 とか思いながらチャンスを伺っていたのが、正直馬鹿らしくなってくる。 淡々と対応しているように見えても、心が折れそうな日だってたまに有る訳で。あ、少し極端に思い出し考えてたらちょっと本当に涙が出てきたりして。 ともあれ堂々と、じっくり昼間から調査するチャンスが訪れたのだ。この機会を逃す訳にはいかない。袖で少し顔を拭って向き直る。 「錠前はアンロックの魔法でもダメ……と。扉の固定化も随分と強力ね。スクウェアクラスのメイジの仕事かしら。私の錬金を受け付けないわ」 コンコンと扉や壁を叩きながら、ゆっくりと考える。大丈夫、時間は充分過ぎるくらいにあるのだから。 目の前で青銅が粉々に砕けたのを見て、アヌビス神は興奮していた。 巻き添えを食った他二体のワルキューレも全身にひび割れを起こし動きを止めている。 絶・好・調・!!とか思っていたら突然力が抜けてきた。ルーンも輝きを潜める。同時になにか違和感を感じると思ったら、青銅の両手剣を持っていた腕の骨が折れていた。 増幅されていた力が抜けた為に衝撃に耐えられなかった様だ。 「な、なんのっ。三体破壊されても。そちらもそうなっては、勝ち目は無いだろうっ!」 ギーシュは一体のワルキューレで身を守り磐石の体勢を取りつつ、もう一体のワルキューレを嗾ける。 「だがもう、そのワルキューレは憶えているッ!」 言葉と共にワルキューレが振る剣を簡単に弾き飛ばす。そして体勢を崩したワルキューレの懐へと入り込み、剣を持たぬ腕に取り付く。 「このワルキューレ貰った!」 マリコルヌの身体を操り、己自身をワルキューレの手に突き刺す。 それと同時に力が抜け、マリコルヌは吹っ飛ばされ、地面を転がる。 「は!?ってぇー何だこ、ぶぶぶぶぶぶぶぶ」 マリコルヌは意識を取戻したと思ったら、いきなり地面を転がっていた。 「あ…ありのまま今起こった事を話すよ! 『怒りで身体に力が漲って絶好調ー!と思ったら地面を転がっていた』 な…、何を言ってるのかわからないとは思うけど ぼくも、何が起こったのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… もてねえーとか、いちゃいちゃしてえーとか そんなチャチなものじゃ断じてない 最も恐ろしいものの片鱗を味わったよ」 そのまま観客席の目の前まで吹っ飛ばされ横たわり、ゆっくりとぶつぶつ言いながら首を持ち上げ様とする。 「とか、そんな感じ?って いてええええええっ、 腕がっ、腕が折れ……」 マリコルヌはそこで気を失った。 一体のワルキューレが、ギーシュの制御を離れ動き出す。 「なっ!?あ、あれ?どうしたワルキューレ」 「貰ったと言っただろうがッ! これほどに上手く行くとは思わなかったがな」 アヌビス神はギーシュを守る最後のワルキューレを殴り飛ばす。不意を衝かれた最後のワルキューレは吹っ飛ばされ動きを止める。 ゆっくりとワルキューレの手に刺さった己を抜き取り、その体に対してあまりに小さい己を構える。そして斬ってやるとばかりに、腕を高く高く振り上げる。 ギーシュが恐怖に固まる。腰を抜かし、座り込み、後ろへと逃げるように後退る。そしてあまりの恐怖に尿を漏らしてしまう。 「久々の、肉だ、骨だ、血だっ!」 興奮しきったアヌビス神がギーシュに向って振り下ろされる。 「わ、わぁぁぁぁっ」 ギーシュは、泣き叫びながら両腕で己を庇う様に、そう両の手で。両の手には何も“持たず”に。 ルイズは『やめなさい!』と叫んで、割り込もうとして様子がおかしい事に気付いた。 「あ、あれ?」 アヌビス神が素っ頓狂な声を上げる。 アヌビス神を握っていたワルキューレが、がらがらと崩れる。 恐怖のあまり杖を手放し、負けを思ったギーシュの魔法が解けたのだ。 「……へ?」 アヌビス神が地面に転がる。 「……??」 ギーシュが周りをキョロキョロと見回す。 「コホン」 わざとらしく咳をして立ち上がり、腰をパンパンと叩いて土を払う。 「へ、へへへへへ」 転がるアヌビス神がわざとらしく笑う。 ギトーが片手を振り上げ一声上げる。 「ギーシュさん!!」 スタンディングオベーションが巻き起こる。 そして同時に『ギーシュさん』コールが巻き起こる。 ギーシュはお漏らし後に気付かないまま、両の手を振りそのコールに笑顔で答える。 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」「ギーシュさん!!」 皆良い笑顔だ、運ばれるマリコルヌと頭を抱えているルイズ以外。 珍しく少し表情を変えたタバサが、ちょっとだけ良い物見たよ的表情で、三回だけ拍手した。 あ、キュルケはタバサの行動含めて苦笑いでした。 ギーシュは名誉を手にした! だがお漏らしの不名誉は消えなかった。 むしろ広まって定着した。 その晩ギーシュは一人、部屋で泣いた。 マリコルヌは、ずっと痛みと急展開への混乱で魘された。 ギトー先生は、また酒を飲みながら『もう風とか糞くらえ、愛は凄いんです』と五月蝿かった。 To Be Con――――――――― その晩アヌビス神はお仕置きされた。 「や、やっぱりゲシゲシですかァー?」 「ええ、その通りよ」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「なに斬ろうとしてんのよっ!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「なァに、脳が間抜けな負け方してんのよっ!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「刀だから脳はありませェーん」 「なに口答えしてんのよっ!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「イヤァー」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ 「もうしませェーん」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ To Be Continued 6< 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1327.html
ワルキューレの振り下ろした槍は、ブラック・サバスの後頭部に勢いよくヒットした。 その結果、そのままブラック・サバスは地面とディープキスをする破目になった。 それを見たギーシュはフンッと鼻を鳴らす。すると再びワルキューレが槍を高々と掲げた。 もう4,5発ぐらい喰らわせないと気がすまない。 ドゴォ!ドガ!ボゴォ!メメタァ!ドスゥ!!! 「君がッ!謝るまで!殴るのをやめない!」 徹底的に叩きのめしてやる!それも正々堂々とな! 一応女であるルイズを傷つけるのは、女性に優しいギーシュの評判をさげることになる。 だが、この使い魔なら!殺すつもりはないが、派手にやらせてもらう! それに決闘でなら、例え死んでも文句はあるまい!もし死んじゃっても、もう一度呼び出せばいい訳だしね! 『ゼロ』のルイズでも一度は召喚できたんだ!もう一度召喚するぐらいできるだろ! このまま!!槍の先端を!こいつの!目の中につっこんで!振りぬく! ブラック・サバスが宙を舞い、そして仰向けに倒れる。 「サバス!!」 ルイズはさらに槍を振り下ろさんとしているワルキューレに杖を向ける。 自分の考えが甘かった。なんでブラック・サバスが強いなんて思ったんだろう? ルイズを押さえつけたあのパワーも、きっと自分の勘違いだったんだ。 初めて成功した魔法の結果があいつだったから、きっと特別な力があるって思いたかったんだ。 『ゼロ』の私を押さえつけた私の使い魔は、『ゼロ』よりもほんの少しマシだっただけなんだ。 今さらになって後悔の念が心の中を支配しそうになる。 …………違う!今はそんなことしている場合じゃない!助けないと!私の使い魔を! 自分の魔法は絶対に失敗するかわりに爆発を起こす。効くかは分からないが、助けるにはこれしかない。 しかし、それを阻止するかのように、もう一体のワルキューレがルイズの前に立ちふさがった。 最初にブラック・サバスに突撃してきた奴だ。 ルイズは狙っていたコースを塞がれ、魔法を出すことができない。 「どきなさいよ!」 焦りながらルイズは、ブラック・サバスがまだ無事か確認する。そこで使い魔の様子が変わっていることに気づく。 ブラック・サバスは仰向けに倒れたままで、ルイズを指差し、じっとこちらを見ているのだ。 回りから見たらそれこそ、ルイズに助けを求めている姿にしか見えなかっただろう。 だが、ルイズは頭の中に響く声を聞いた。 それは、使い魔と主は意識を共有しているとか、信頼関係が生まれたとか、そんな大げさなことではなかった。 だが、確かにブラック・サバスはルイズにこう言っていたのだ。 (チャンスをやろう!お前には選ぶべき道がある!) 「とどめだ!ワルキューレ!」 ギーシュが機嫌の良さそうな声で命令を下す。 ルイズは叫んだ。呪文を唱えるように力強い意志を持って。 「ギーシュをやっつけて!!」 観客席で顔を赤らめていたシエスタは、派手な音でブラック・サバスが殴られるのを見て我に返り。 さらに数発槍が振り下ろされたのを見ると、思わず顔を背けた。 あの使い魔は殺される!そんな恐ろしい考えが浮かぶ。 そのとき叫びを聞いた。それは断末魔の叫びではなく、ルイズの命令だった。まだミス・ヴァリエールは諦めていない! だが次の瞬間、今までとは質の違う軽い音が聞こえる。きっと槍で貫かれたにちがいない。 ……恐怖で顔を背けたまま数秒たつが、どうも様子がおかしい。 自分の周りにいるメイジたちがざわめいている。何が起きたのだろうか。 恐る恐る戦いの場へ視線を向ける。 「え……?」 シエスタは絶句するしかなかった。 自分が顔を背けた数秒の間に何が起きたのか? ワルキューレの槍は黒づくめの使い魔にではなく、地面に突き刺さっていた。 さっきまでその場所にひれ伏していたブラック・サバスが消えている。 横にいるキュルケをみると、彼女も何が起きたか把握していないようだ。 タバサはじっとギーシュの方を見つめている。そのとき。 「うわあああああああああああ!!?」 断末魔の叫びのようなその声は、ブラック・サバスではなくギーシュのものだった。 慌てて、シエスタもギーシュの方を見てみる。それは彼女の理解の範疇を超えるものだった。 消えたブラック・サバスがいつの間にかギーシュの横に現れ、そのゴツゴツした両手を彼に向けている。 「つかんだ」 そのセリフはさっきと全く同じものだったが、今度はやけに凄みがあるように感じた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………… ブラック・サバスはギーシュの隣に立ち、両手を彼に向けて伸ばしている。 しかしそれらは決してギーシュには触れられてはいない。 宙ぶらりんのその両手は、しかし、何かを力強く捕らえているかのように固定されていた。 いや………確かに何かをつかんでいる………それは白くボンヤリと闇の中で存在している。 一方のギーシュはピクリとも動かずに、ただ悲鳴をあげているだけだ。 ブラック・サバスの方を見ようともせずに、最後にワルキューレに命令を下した時と同じポーズのまま固まっている。 変化した点といえば、その顔が恐怖で歪んでいることだけだ。 「うわあああああああ!離せ!くそ!」 慌てふためく声を上げながら、硬直しているというギーシュの異様さに、しだいに回りのメイジたちは薄気味悪さを覚え始めていた。 『ゼロ』のルイズの使い魔が「何か」をしているのは間違いなかった。 しかしその「何か」が分からない。 ギーシュはなぜ急に動かなくなったのか?何に怯えているのか?あの使い魔がつかんでいる「ボンヤリとしたもの」は何か? 「な、何をしているんでしょうか?」 シエスタがキュルケに尋ねる。しかしその質問に答えたのはタバサだった。 「分からない。だけど魔法ではない」 めずらしく即答したのは、タバサも興味が湧いているからだ。 「あの…白いのは?」 「それも分からない」 「もしかして幽霊かしら」 キュルケのその言葉にタバサがビクッと震えた。 ルイズはブラック・サバスとギーシュを見て、戦況が一転したことを理解した。 ワルキューレはすべて動きを止めている。これではゴーレムではなく、ただの銅像だ。 あれだけ派手に殴られてたはずなのに、ブラック・サバスには外傷が無いようだ。 仰向けに倒れていたところから、ギーシュの隣……いや影の前までの瞬間移動。 …それだけ早く動けるなら、相手の攻撃を避けるなりなんなりしなさいよね。心配して損したわ。 改めて、今の状況を確認してみる。 そこでやっと、ブラック・サバスがつかんでいる「白いもの」がギーシュの形をしていることに気づいた。 ブラックサバスはギーシュの影から、「ボンヤリと白く光るギーシュ」を引っ張り出してつかんでいる。 まるで夢でも見ているかのような気分だ。だが、ルイズは心当たりがあった。 (あれが……私が今までやられていたことか) 気づいたらブラックサバスの目と鼻の先で捕らえられている感覚。今日の朝も昨日のサモン・サーヴァントのときも。 ブラック・サバスは、ルイズの影から幽体離脱のように魂?いや精神?だけ引っ張り出していたのだろう。 まぁ詳しくは分からない。とにかく今はすることはひとつだ。 このままあいつが抑えてる間にすべてのワルキューレを破壊する。 もちろん、このままギーシュの杖を取り上げて勝ちにするほうが楽だろう。 だがあのプライドの高い男に、この後シエスタに謝罪をさせるにはそれなりの勝ち方じゃないといけない。 それにせっかくだから、回りの観客にも見せ付けておきたい。もう勝ったも同然だし。 しかし、その甘い考えを打ち砕くかのように、ギーシュの叫びが響く。 「ワルキューーーーーレ!!!!」 ギーシュの叫びと共に、沈黙していた7体のワルキューレが活動を再開する。 その動きは滅茶苦茶だった。……本当に滅茶苦茶だった。 しっちゃかめっちゃかに槍で空を斬ったり、ワルキューレ同士でぶつかり合ったりしている。 「ちょ、ちょっと!ギーシュ!」 「うおおおおおおおおおおおおおお!」 ルイズにワルキューレが突っ込んでくる。当たると間違いなく、致命傷になりそうな速度だ。ルイズは杖を強く握った。 「ファイヤーボール!」 炎は出ずにワルキューレの上半身で、爆発が起きる。 さらに追撃しようと身構えるが……その必要はなかった。ワルキューレの上半身は粉々に砕け散っていた。 「やった……!」 予想外の戦果に思わずガッツポーズをしてしまう。そのとき。 「ファイヤーボール!」 聞き覚えのある声のした方を見ると、キュルケの前でワルキューレが上半身をドロドロに溶かして倒れている。 「キュルケ!余計な事しないで!」 「私は私の身を守っただけよ。余計な事させたくないなら、そういう風に戦いなさい。ホ~ラ、来るわよ」 「言われなくても分かってるわよ!」 ルイズは再び杖を強く握り、ワルキューレを睨む。こうなったら意地でも全部倒してやる! そんな決意を固めるルイズを、キュルケは微笑を浮かべながら見つめていた。 ………そしてそんな二人を、この人たち実は仲いいのかしら。なんて思いながらシエスタは見つめていた。 「な、なんだぁ!それはぁ!」 いきなり、今までで一番大きいギーシュの悲鳴が上がる。 見るとブラックサバスが大きな口を開いている。 (安心しなさい。ギーシュ。そいつは噛み付きはしないわよ) ルイズは笑いながら杖を構える。 だがブラックサバスはルイズの予想外の行動にでた。 口から何かを吐き出したのだ。 ギーシュは何が起きているのか理解できずにいた。 「つかんだ!」という声のとおり、ギーシュはこの不気味な使い魔に拘束されている。全く動くことができない。 自分の肩を掴むその両手からは恐ろしいほどのパワーを感じる。とにかく指一本動かすことができない。 ワルキューレに命令するも、これもやはり思いどうりに動かすことができなかった。 というか、今ワルキューレがどこでどう動いているかが理解できない。 見て確認したいのに、使い魔の仮面のような顔から視線をそらす事ができないのだ。 急に使い魔が大きな口を開ける。その中を見てさらに驚いてしまう。 歯や舌という生物として必要なものが無いかわりに、「何か」がある! そしてそう思った次の瞬間ソレがこちらに向かって飛び出してきたのだ! 「!!」 とっさに目を閉じ衝撃に耐えようとする。しかし何も起きない。後ろから「ドガッ」という衝撃音が聞こえる。 恐る恐る目を開ける。まだ口は開かれたままだ。その中は何もない暗闇。 思わず目をそらそうと横を向く。すると視界の端に誰かの足が見える。 助けに来てくれた!もはや決闘のことなど忘れギーシュは安堵する。 しかしその誰かの足はピクリとも動かない。 (誰なんだ!助けてくれ!は!声がでない!) ギーシュは無理矢理首を捻り、ギリギリまで黒目を動かし自分の後ろにいる人物を確認しようとする。 (ん?あれ?なんだおかしいぞ?後ろのやつ倒れてる!?しかも顔から血を流して!? はっ!!なるほど!!うわははははははははははははははははは倒れてるのは僕でしたぁー!!) ギーシュは自分の後ろに、頭から血を流し下着に囲まれて倒れている自分を発見した。 ルイズはブラックサバスの口から何か箱のようなものが飛び出すのを見た。 自分のいる位置からではそれが何かは分からなかったが、それは発光体ギーシュの頭を通過した。 そして、その後ろでフリーズしていたギーシュ(本体)の頭に向かって飛んでいき、当たって跳ねた。 そこから先に起きたことは、ルイズにはスローモーションのように。 血を出しながらゆっくりと倒れていくギーシュ(本体)、宙を舞う箱、その箱の中から出てくる無数の白いモノ。 上手いこと風に乗った一枚がヒラヒラと自分の足元に舞い降りてきたとき、それが何かを理解した。 それはパンツだった。 (はぁ???) なんでパンツ?誰のパンツ?…………あれ?このパンツどこかで見た覚えが…………。 今はワルキューレを倒すべき時なのに、気になる……。こまかいことが気になると夜もねむれねえ質なのよ私。 朝、ブラック・サバスにカゴごと洗濯物を渡した。ブラック・サバスはそれを口の中に入れてどこかへ行ってしまった。 それ以来姿を見ていなかった。そして今あいつは口からカゴを吐き出した。 なぜか?そういえばさっきブラック・サバスにギーシュをやっつけろって命令した。これは攻撃手段のつもりだったのかもしれない。 実際今、ギーシュ(本体)は倒れている。さっき血を流していたようにも見えた。軽傷だろうが。 それよりも、鬼の形相をしながら下着に囲まれて倒れていることで、傷つく尊厳の方が重症のような気がする。 観客の方を見てみる。キュルケがパンツを持ち、こっちを見て笑っている。……コッチミンナ。アア、ヤジウマタチノホウマデトンデイッタノネ。 いろいろ考えた結果。 ……………………もしかしてこれは私のパンツですかーッ!? YES!YES!YES!OH MY GOD! 「……………………バカァー!!!!」 その日一番の破壊をもたらす爆発がブラックサバスとギーシュを飲み込んだ。 ギーシュ・ド・グラモン→再起不能 ブラック・サバス→消滅 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5250.html
なるほど、確かにこの世で最も神聖で美しいといえるだろう。 とても強力そうという印象もある。 私のイメージとは違ったが、「この世で最も神聖で美しい、強力な使い魔」という条件には叶っている。 だけど……だけど! なんで私が召喚した使い魔がただの『剣』なのよ~~~~~!? 「おい、ルイズが剣を召喚したぞ!」 「召喚? どうせ街で買ったのを埋めてただけじゃないのか」 「ははは、なるほど。そういう事か」 あいつら~~……! よし顔は覚えた。 あとで爆破ね。 まあ、いくら私でも前もってこんな剣を前もって手に入れるなんて無理だけど。 先ほども言ったが、私が唱えた呪文のイメージに、この剣はピッタリと当てはまるのだ。 柄に埋め込まれた幾つもの美しい宝石、巨大な刀身、細やかな細工。 そして何よりも、なんとこの剣、全体が黄金色に輝いているのだ。 黄金で作られた大剣。 いくらヴァリエールがトリステイン随一の大貴族でも、こんなもの買ったら家の財産にも影響が出るだろう。 試しに持ち上げてみたが、その見た目に反比例して羽のように軽い。 うん、素人の私にもはっきりとわかるほどのすごい剣だわ。 我が家に飾っても遜色ないくらい。 でも使い魔なのよね…… 「ミス・ヴァリエール、落ち込んでいてもなんにもなりませんぞ。その……納得はいかないでしょうが……早くコントラクト・サーヴァントの方を」 え!? コルベール先生……確かに私はこれを召喚しました。 でも剣ですよ? なんだって剣なんかにキスしなきゃいけないんですか!? 私のファーストキスが剣だなんて……そんなのあんまりじゃないですか! ……でもまあ、相手が変顔の平民とかじゃない分、幾らかマシよね。 これならキスの内には入らないだろうし。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」 丁度鍔の中央にある大きな宝石に口付けすることにした。 ルーンが出るかどうか少々不安だったが、鍔の裏側に当たる部分にちゃんとルーンが現れた。 こんな所に出るなんてちょっと意外だわ。 コルベール先生が珍しいルーンだとか言ってスケッチした所で召喚の儀式は無事終了。 私以外のみんなはレビテーションを使って使い魔と一緒に空中へと浮かび上がり各々の部屋へと帰って行く。 「お前は歩いて来いよ、ゼロのルイズ」 「ゼロな上に剣持って歩くなんてさ、貴族としてもどうなんだか」 何人かが似たような捨て台詞を私に吐きかけながら去って行った。 こんの、言わせておけば~~! それもこれもぜ~んぶこんなのが召喚されたせいだ。 コレのせいで私はーーーー!! 勢い任せにその剣を思いっきり振りかぶった後、そばにあった岩に叩きつけた。 ズガーーーーーン! すると驚いた事に、その岩が真っ二つに割れたのだ。 「え!?」 ちょっとちょっと! やっぱりコレってすごい剣なんじゃない! でも…… 「はぁ~」 それでもやっぱりただの剣よね。 せめて犬とかなら格好も……いや何か犬はいやだ。 それに、貴族が杖じゃなくて剣で戦うなんてのもまずい。 貴族とは杖を持って魔法で戦うものだ。 それが剣だなんて……姉さまにばれたらまたなんて言われるか…… やっぱりこれも失敗だったのかな? 秘薬も取ってこれないし、守るって言っても私は剣なんて持ったことないし…… ああもう! 結局剣なんて役立たずじゃない! ……あれ? この宝石こんなに濁ってたっけ? まあ、どうでもいい事ね。 はぁ~あぁ~…… また失敗。 居残りで部屋の片付けなんてこれが初めてってわけじゃないけど、それでもやっぱし嫌なものは嫌よね。 それよりもマリコルヌの奴…… 『おいおい、いくらゼロだからってヴァリエールの財力を利用してまで見栄を張りたいのかよ』 あんの風っぴき豚があああぁぁぁぁぁぁぁ!! そんなの出来ないって事ぐらいあんたもわかってるでしょうが! ああもう全く! それもこれもみーーーーんなあんたのせいよ!! ……って私剣に向かってしゃべってる!? 傍から見たらかなり危ないわよねコレ…… もうコレを召喚してからロクな事がないわ。 やっぱ失敗だった――あれ? なんか昨日よりもさらに宝石が黒くなってるような…… とにかく、今はそんなことよりも片付けよ片付け。 早くしないとお昼も食べ損ねちゃう。 朝起きれなった分は昼にちゃんと食べとかないと。 「キミが不用意にビンを拾ったせいで二人のレディが傷ついてしまった。この責任はどうやって取るつもりだい?」 ギーシュの奴、元は全部あんたが浮気したせいでしょうが! ここは一つ、同じ貴族としてガツンと言わねばなるまい。 そうでなくても、平民を守るのは貴族の役目よね。 「ちょっとギーシュ、メイドに八つ当たりなんてみっともないわよ」 「ん? ああ、ゼロのルイズか。キミには関係のない事だ。下がっていたまえ」 「そうはいかないわ。貴族としてあるまじき行為を見過ごすなんて、ヴァリエールの恥さらしよ」 「どうやら状況をよくわかってないみたいだね。いいかい、彼女がこの香水を拾ったときにボクはあえて無視したんだ。それなのに彼女がしつこくボクに言い寄ったせいでこんなことになってしまった。 ちょっとぐらい機転を利かせてくれてもいい所だろう?」 こいつはどうやら平民全てが自分の思い道理にならないと気がすまないらしい。 「バッカじゃないの? 自分で撒いた種を自分で処理出来ずに他人のせいにするなんて、あんたみたいなのがいるからトリステインの貴族は落ちぶれてるなんていわれるのよ」 「この……言わせておけば!」 あ、ギーシュの顔が赤くなった。 でも私は正しい事を言ってるんだし、何も悪くないわよね 「ちょっとは自分で何とかしてみたら? 平民のせいにでもしなきゃなんにも出来ないようなのは貴族でもなんでもないわ。ただのバカよ」 「いくらキミが女の子とはいえ、ボクに対する数々の暴言、もはや聞き逃すわけにはいかないな」 「当然よ。私は間違った事は言ってないんだから、聞き逃されでもしたらたまんないわ」 「その発言、後悔させてあげるよ。 決闘だ! 場所はヴェストリの広場だ」 「あら、いいの? 貴族同士の決闘は禁止されてるはずよ」 「怖気づいて逃げるつもりかい? それならそうとちゃんと言えばいいじゃないか」 「いいえ違うわ、勝つのは私だってわかってるから譲歩してあげてるのよ。今あなたがあのメイドに謝れば決闘なんてしなくても済むでしょう? そうすればあなたも負けずに済むじゃない」 「くっ! いいだろう。その思い上がった口をボクが決闘の場で塞いであげよう!」 フン、思い上がってるのはどっちなのかしらね。 今の私にはこの使い魔の剣がある。 確かにメイジが剣で戦うなんてちょっとカッコ悪いけど、それでも四の五の言ってる状況じゃない。 この岩をも割る剣があれば、ギーシュのゴーレムなんて目じゃないわ! キンッ キンッ あれ? あれ? 「はっはっは、どうしたんだいルイズ。さっきまでの威勢はどうしたのかな? その剣は見かけ倒しかい?」 うそ! どうして!? 私があの時振るった時には確かに岩を割ったのに、このワルキューレのゴーレムには傷一つ付けることも出来ない。 何で!? どうして!? 「えーーーーーい!」 キンッ キンッ キンッ やっぱり。 何度斬りつけても、ギーシュの戦乙女を模したゴーレム、ワルキューレは無傷なままだ。 「ふっ。それじゃあ、そろそろボクも反撃させてもらうよ!」 と、今まで不動のままだったワルキューレが動き出し、私に向かって殴りかかってきた。 とっさに私は剣で防御する。 「キャッ!」 そのまま剣ごと2メイルほど吹き飛ばされた私は地面に顔をこすり付けながら無様な格好で倒れてしまった。 どうして? コレはすごい剣のはずなのに…… あれ? 剣がない! 先ほどまで握っていたはずの剣がどこにもないのだ。 さっき吹き飛ばされたときに落としちゃったんだ! 周囲を見回してもどこも落ちてはいない。 が、視線を上に向けた時にそれは見つかった。 なんと、ギーシュのワルキューレが持ち上げていたのだ。 「か……返し――うっ!」 立ち上がろうとした時、足に激痛が走った。 よく見ると右足首が赤く腫れあがっている。 どうやら捻挫したみたいね。 でも、今はそんな事は関係ないわ! 「返して……それを……それを返しなさい!」 「ふふ、こんなナマクラ剣に何の価値があるんだい? そら」 と、ギーシュのワルキューレはゴミでも捨てるように剣を投げ捨てた。 確かにどういうわけか今はギーシュのワルキューレに傷を付けることも出来ず、約に立つとは思えない。 生き物でも、ただの平民ですらない。 でも、でも! それでも、16年間生きてきて、私が初めて成功した魔法の証なのよ。 私はゆっくりと立ち上がり、剣に近づいていく。 捻挫した右足がすごく痛いけど、それよりも私の使い魔の方が大切だ。 そうよ、これは……こいつは私の使い魔。 私が召喚した、私だけの使い魔。 「こいつだけは……こいつだけは誰にも譲れないのよおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 再び剣を掴もうとした時、足の痛みで蹲ってしまい、柄ではなく、誤って鍔に埋め込まれた宝石台を掴んでしまった。 だがその時、ガチャリと音を立ててその宝石台が反転した。 するとなんと、剣の刃が二つに割れ、鍔が左右に大きく伸びて…… いや、違う。 剣の刃は二つに割れて足の形になり、鍔の両側からは拳が現れて腕となった。 そして、柄の部分が引き下がり、その中には兜を被ったかのような顔が存在した。 「ズバァァァァァァァァァン!」 大きな咆哮を上げて、そいつは大地に立った。 人ではない。 むしろ、ギーシュのワルキューレと同じゴーレムと同種の物。 だが大きな違いは、ギーシュが操っているだけのワルキューレと違い、こちらにははっきりとした『意思』を感じる。 そう、生きているのだ。 よく見ると、ちょうど左手に当たる部分にルーンが刻まれている。 「ルイズの剣が……ルイズの剣がゴーレムになったぞ!」 「なんだあれは!? あんな金ぴかのゴーレム今まで見たことないぞ!」 「ズルしてたんじゃなかったのかよ!」 これが……これが私の使い魔の本当の姿? 黄金の剣じゃなくて、黄金のゴーレム…… 失敗じゃあ……なかったの? 「あなたが……私の使い魔なの?」 私はそいつに向かって問いかけるように確かめる。 「ズン、ズン」 と、そいつはそう言って体を上下に揺らした。 イエスって事でいいのかしら? 「本当に私の使い魔なのよね?」 「ズンズン」 「私のいう事はなんでも聞いてくれるのよね?」 「ズン、ズン」 「じゃあお願い、私と一緒に戦って!」 「ズバァァァァァァァァァン!」 そいつはワルキューレに立ち向かい、構えを取った。 「ふ……ふん! そんなコケ脅しがボクのワルキューレに通用するものか! 行け、ワルキューレ」 先に仕掛けたのはギーシュだった。 ワルキューレはそいつとの距離を一気に詰めて拳を繰り出す。 だが、 「ズバァァァン!」 そいつもまたワルキューレに合わせるように拳を突き出し、二つのゴーレムの拳が激突した。 ドガァァァァァァァァァン! 爆発音と共に、ギーシュのゴーレムは粉々に砕かれた。 すごい! ギーシュのワルキューレを一撃で倒しちゃうなんて。 そいつは私に振り向いて 「ズンズン」 と、さっきと同じ様に体を上下させた。 「すごいのね、あんた。名前は……ズバーンでいいのかしら?」 「ズン、ズン」 いいらしい。 ズバーン、私の使い魔の名前。 私が召喚した、私だけの使い魔。 黄金のゴーレム、ズバーン。 「もしかしたら私って天才なのかも――」 「ありえない……」 私が悦に浸ろうとした瞬間、ギーシュのうめき声が聞こえた。 「ありえない……ボクのワルキューレが…… ルイズの使い魔なんかに……ゼロのルイズの使い魔なんかに……ゼロのルイズなんかに……ゼロなんかに……ゼロなんかに! ゼロなんかに!! ゼロなんかに!!!」 狂ったように叫んだギーシュはバラを振り回し、飛び散った花びらが六体のワルキューレへと変化した。 さっきのワルキューレは素手だったが、今度のは剣や槍など、各々の武装を身に付けている。 「ゼロなんかにこのギーシュ・ド・グラモンが負けるはずがあるかあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 ギーシュの金切り声が響き、六体のワルキューレは私に向かって一直線に走り出した。 ちょっと! 嘘でしょ!? 逃げようにも足を挫いている私はすぐには動けない。 私はあまりの恐ろしさに目を瞑った。 いやだ、こんな所で死にたくない! ガキンガキンガキーン! 余りにも唐突に鳴り響いた金属音に驚いて、私は目を開けた。 「ズ……ズバーン!」 「ズンズン」 目の前にはズバーンの緑色に光る目があった。 ズバーンが身を挺して私を助けてくれたのだ 「ズバァァァァァン!」 ズバーンが振り向くと同時に、六体のワルキューレを振り払い、ワルキューレはギーシュのすぐそばまで吹き飛ばされる。 「このガラクタがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 再度、ギーシュの雄叫びと共にワルキューレは立ち上がり、ズバーンに向けて突進する。 まずい。 確かにズバーンは強い。 それはさっき確認したばかりだ。 だけど、六対一でもズバーンは勝てるのだろうか? あんな武器を持ったワルキューレに素手のズバーンでは……いや。 それでも、ズバーンなら絶対に勝てる! ほら、あれだけの攻撃を受けてもズバーンは全くの無傷じゃない。 それに、さっき私は自分の事を天才だと本気で思った。 人生で初めてだった。 心の底からそう思えた。 ズバーンを召喚できた自分はすごいメイジに必ずなれると。 だから私はズバーンを信じる。 私が呼び出したズバーンの力を。 ズバーンを呼び出した私の力を。 六体が何よ! 武器が何よ! ズバーンは、私のズバーンは絶対に負けないんだから! 「ズバーン、あいつらを倒して!!」 「ズバァァァァァァァァァン!」 そうよ、私の使い魔はこの世で最も神聖で美しい、強力な使い魔なんだから! 「ズン」 と、ズバーンは再び構えを取り六対のワルキューレを迎え撃つ。 その瞬間、ズバーンの胸の宝石が強く光り輝き、そして、 「ズバズバズバズバズバァァァァァァァァァン!!」 ズバーンの放つ連続の飛び蹴りが、光の軌跡を描いて六対のワルキューレに打ち込まれた。 ドゴオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!! ズバーンの攻撃を食らったワルキューレ達は、一体残らず、跡形もなく爆破四散してしまった。 「ズバン」 ズバーンは私の方を向いてガッツポーズのような格好をした。 『やったよ!』と、私にそう言ってるような気がした。 「そ……そんな……ボクのワルキューレが…………」 ギーシュはガクリと膝を落として、持っていた薔薇が手から滑り落ちた。 「ルイズの使い魔がギーシュに勝ったぞ!」 「おい、これはギーシュとルイズの決闘じゃなかったのか?」 「でもルイズの使い魔だし、それに剣だし」 「いや、あれはどう見てもゴーレムだろ?」 「とにかくギーシュの負けだ!」 集まっていた他の生徒達が騒ぎ始める。 まあいいわ。 とにかく、これでギーシュを懲らしめる事が出来たんだから。 それに、ズバーンの事もわかったんだしね。 とりあえずズバーンに労いの言葉でも―― 「痛っ!」 そうだった、私、捻挫してたんだった。 改めて冷静になると、さっきまで忘れていたのが嘘のように痛い。 これじゃあ医務室まで自力で行くのも―― 「ズバァァァン」 「キャッ! ちょっとズバーン!?」 私がいきなりこんな変な声を上げたのも無理はない。 そりゃ自分の使い魔にお姫様抱っこをされればびっくりするのも当然でしょう。 「ズバーン、いきなり何するのよ! いや、別に悪いわけじゃないけど……今度からはちゃんと一声かけなさい!」 「ズンズン」 返事と同時にズバーンの胸の宝石がキラリと輝いた。 あ、やっぱり。 宝石がさっきまでとは比べ物にならないくらいに綺麗になってる。 黒くなってるように見えたのは気のせいじゃなかったんだ。 どうしてだろう? 何かまずい事を言ったから不機嫌になってたとか…… あ、そうか。 私、ただの剣だと思って役立たずとか失敗とか言っちゃってたからな。 それでどんどん黒くなっていったとか? 「その……ズバーン。役立たずとか失敗とか、色々言ったり八つ当たりしたりしてゴメンね」 「ズン、ズン」 キラリ やっぱりそうだ! そうか、私がズバーンと仲良くなれば自然とズバーンも強くなるんだわ 宝石が黒かった時にはズバーンに色々悪い事しちゃってたからワルキューレも切れなかったのね。 そうなんだ。 じゃあ、これからズバーンともっと仲良くなれば、ズバーンはもっと強くなるのかしら? でも、今は足の方が先決ね。 「ズバーン、とりあえず私をこのまま医務室に運んでちょうだい」 「ズンズン」 ズバーンは歩き出したが、それは医務室がある塔とは反対の方向だった。 「ちょっと! 医務室はあっちよ」 「バァァン……」 ああ、シュンとしちゃった。 なるほど、これから色々教えていかなきゃいけないわけね。 これは先が思いやられそうだわ…… だけど、 強くて、優しくて、素直で、頼もしい、私の最高の使い魔。 私だけの、この世で唯一無二のパートナー。 「ねえズバーン」 「バン?」 「これからもよろしくね」 「ズバァァァァァァァァァン!」 一方その頃 「う″う″……」 カタカタ、カタカタ 「おいデル公、なに震えてるんだよ」 「いや、なんか悪寒が走ってよ……」 「はぁ? 剣のテメーに悪寒なんてあんのか?」 「いや、悪寒つーかよ、何か俺の価値っつーか……存在意義っつーか…… そういうのひっくるめて全部消えちまったような……そんな変な予感がしたんだよ」 「何言ってんだ。価値も何も、テメーみてえなボロ剣を買う奴なんざいるわけねえだろ!」 「ひでぇ……そこまで言わなくても……」 「ちょっ!泣くんじゃねえよ!こんなのいつもの事だろ!」 「違え……違えんだよ……そーじゃねーんだよ……うう……うぅ~……」 「はぁ、ったく。今日のデル公はどうしちまったんだか……」 終 轟轟戦隊ボウケンジャーより、大剣人ズバーン召喚 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2291.html
八話 前衛に二振りの剣を構えるワルキューレ、そして後衛に剣と盾を装備したニ体のワルキューレを置くルイズ。 対するホワイトスネイクはゆるりと構える。 時刻はすでに午前二時を回った。 部屋を照らすのは薄明るい魔法灯だけ。 部屋の壁には5つの影がゆらゆらと踊り、しかし空気は張り詰めている。 さながら嵐の前の静けさのように、ルイズとホワイトスネイクは静かに対峙していた。 直後、ルイズの操るニ刀のワルキューレがホワイトスネイクに斬りかかる。 ホワイトスネイクは素早く一歩引くことで回避する。 ワルキューレはその後を追わない。 後衛のワルキューレニ体が即座に切り込める位置ならば、 昼間ホワイトスネイクが見せたあの「体術」も使えないだろうが、 そうでなければ一瞬で無力化される。 いくらホワイトスネイクが丸腰で、いくらワルキューレが剣二振りで武装していようと、 ホワイトスネイクの体術は侮れない。 「……踏みこんでこないの?」 ルイズが緊張した声で言う。 「踏ミ込メバニノ太刀デ串刺シ、ダロウ? 見エ透イテルゾ、ルイズ」 あっさりと策を看破され、思わずルイズは唇をかんだ。 前述したように、後衛に二体のポーンを配置したのはホワイトスネイクの隊術を封じるためだが、 ルイズが考えた投げ技封じの策は、実際には二段構えだった。 そのために前衛のワルキューレにふた振りの剣を持たせているのだ。 目の前にいるワルキューレの得物が一振りだけだったなら投げ技も十分可能だったろうが、 この二刀のワルキューレの初太刀をいなして踏みこんでも、ニの太刀で串刺しにされるのがオチだろう。 そういう策だった。 だがそんなことぐらいホワイトスネイクだって分かっていた。 だから踏み込まなかったのだ。 「ツイデニ言ウナラ……後ロノ『ポーン』ニ体ハ私ニプレッシャーヲカケルタメニ置イテルダケダナ? ソノ人形ドモヲ全部同時ニ操レル自信ガナイカラッテ、セコイ真似ナンカシテ。 ミミッチイナ、ルイズ……ソンナノデ私ヲ殺セルノカ? イヤ……『勝つ』、ダッタカ?」 後方に控えるニ体のワルキューレの意義まで看破された。 思わずルイズは動揺する。 こいつ、なんてヤツなの? こんなヤツに……わたしが勝てるの? 「一瞬考エタナ」 「え?」 思わずルイズがそう聞き返したとき、すでにホワイトスネイクは二刀のワルキューレとの間合いを詰めていた。 慌ててルイズがワルキューレを動かしたとき、すでにホワイトスネイクはルイズの目の前にいた。 そしてルイズがそれを理解したとき、すでにホワイトスネイクは貫手を引き絞っていた。 その狙いは、ルイズの額。 「ソノ差ガ命取リダ」 ドシュゥッ! 空気を切り裂き、ホワイトスネイクの貫手が迫る。 思わず目をぎゅっとつむるルイズ。 悲鳴は上げなかった。 いや、上げるヒマさえなかった。 ただ、貫手が自分の頭を砕き、貫くのを待つだけだった。 だが、その瞬間はいつまでたっても訪れなかった。 ルイズが恐る恐る目を開けると、ホワイトスネイクの貫手は、ルイズの額の紙一重手前で止まっていた。 ホワイトスネイクは、最初からルイズを殺す気などなかったのだ。 「……どういう、つもりよ」 震える声でルイズが言う。 「私ハルイズニ『立チ向カウ感覚』ヲ手ニ入レテ欲シカッタノダヨ」 「ど、どういう意味よ!」 「ドートイウコトハ無イ。 私ニ対シテ使イ魔ダ何ダト威張リクサッテイル小娘ガ、 肝心ノソノ使イ魔相手ニビビッテルンジャア話ニナランカラナ」 「な、何ですって!?」 「ソウ、ソレダ」 「へ?」 「ルイズハ一見気ガ強ク勇敢ナヨーニ見エルガ、ソノ実タダ強ガッテイルニ過ギナイ。 犬ガ吠エテルノト同ジナンダ。 本気デ立チ向カウ気ナンカ無イクセニ、チッポケナ自分ヲ満足サセルタメニナ」 ホワイトスネイクの言葉はあまりにも残酷だった。 遠慮のカケラさえもない言い草だった。 だが……ルイズは言い返せなかった。 事実として、自分は昼間の決闘でのホワイトスネイクを「怖い」と思った。 そればかりではない。 ホワイトスネイクがやられそうだと思った時には目も背けた。 いつもは「貴族らしく」とか考えてるくせに、実際の自分はちっとも貴族らしくないのだ。 ついさっきだってそうだ。 ホワイトスネイクが自分に貫手を打ちこむ瞬間、目をつむった。 勝つとか倒すとか大言壮語ばっかり吐いたくせに、結局自分は自分が大事だった。 貴族らしさなんて、どこにもなかった。 それが分かってしまった。 だから、言い返せなかった。 「トハ言エ……サッキハ『勝ツツモリ』ハアッタヨーダカラナ。昼間ニ比ベレバ立派ナ進歩ダ。 ソレニ免ジテ……ソーダナ……」 ホワイトスネイクはそう言うと、ルイズの額から一枚のDISCを抜き取った。 それと同時に、ワルキューレが大きな音を立てて地面に倒れこむ。 抜き取ったDISCはギーシュの魔法の才能だった。 そして、さらに腕から一枚のDISCを抜き取った。 「ギーシュ・ド・グラモンノ魔法ノ才能、ソシテ記憶ノDISCダ。コレヲオ前ニクレテヤル」 「え? そ、それって!」 「サッキ言ッテタヤツダ。 コイツヲギーシュノ額ニ差シ込ンデヤレバ、スグニ目ヲ覚マスダロウ。 サッサト奴ノトコロニイッテ、元ニ戻シテヤルンダナ」 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 「何ダ?」 「あ、あんた一体、どういうつもりよ! 自分のことを悪党みたいに言ったくせにこんなことして、あんた一体何が目的なの!?」 「目的……カ。ソーダナ……」 ホワイトスネイクは考え込むように顎に手を当てる。 「トリアエズハオ前ニ成長シテモラウコトダナ」 「何よそれ! っていうか何であんたが私のことを気にしてんのよ!」 「スルニ決マッテイル。私ハルイズカラスタンドパワーヲ貰ワナケレバ生キテイケナイノダカラナ。 私ハ『精一杯努力したけど結局立派なメイジになれなかったルイズ』カラ記憶ヲ奪ッテヤルノヲ 当分ノ生キ甲斐ニスルカラ、ソレマデハ生キ続ケナキャアナラナイ」 「結局……自分のため、ってこと?」 「当タリ前ダ。何故ナラ私ハ、」 そこで言葉を切ってルイズの顔に覗き込むようにして自分の顔を近づけると、 「悪党、ダカラナ」 そう言って、ホワイトスネイクは音もなく消えた。 ホワイトスネイクが持っていたギーシュの二枚のDISCが軽い音をたてて床に落ちたのと、 「ミス・ヴァリエール、起きていますか?」 軽いノックとともにミス・ロングビルの声がルイズの部屋の中に投げかけられたのはほぼ同時だった。 「起きていますか、ミス・ヴァリエール? オールド・オスマンがお呼びです」 再びロングビルの声が響く。 だがルイズはそれに答えない。 「……入りますよ」 そう一言言ってロングビルがドアを開ける。 「どうしました、ミス・ヴァリエール? オールド・オスマンがあなたをお呼びです。聞こえていたでしょう?」 「……今から、行きます」 ロングビルの問いにルイズはただ短く答えた。 それをロングビルは少し不審に思ったが、何も詮索せずに「ついてきてください」とだけ言って部屋を出た。 ルイズはその後に続いた。 爪が手のひらに食い込むほど、拳を握り締めて。 こぼれおちそうになる涙を、必死で目の中に留めて。 何もできなかった。 何も言い返せなかった。 「勝つ」だなんて大きいことを言っておいて、結局何もできずに負けただけ。 勝ち取って得るはずだったギーシュの記憶も才能も、 金持ちが乞食に残飯を恵んでやるかのような形で「与えられた」だけ。 結局自分は口ばっかりで、臆病で、無力で、「ゼロ」だった。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 勝負の上でも、そして精神の上でも、生まれて初めて完全に敗北した夜であった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6477.html
(笑) -- 名無しさん (2009-02-08 07 44 05) ラスボスだった使い魔の中のギーシュはわりと活躍してますね。無限パンチ打っちゃってるし、書いといて何だがワルキューレがブレンに見えるなあ。 -- mame (2009-02-08 07 45 18) ありがとうございます。後姿のユーゼスがいい味を出してますな。……そう言えば、何気にこの絵板でワルキューレやヴェルダンデを書いた方って少ないような……。 -- ラスボスの中身 (2009-02-08 10 01 45) ワルキューレがスタンドに見えた -- 名無しさん (2009-02-08 10 49 32) 後ろのあれは……ゴン太くん!? -- : (2009-02-08 12 00 37) モグラじゃね? -- 名無しさん (2009-02-08 15 56 23) ワルキューレで色々試しているのも私だ。 -- 名無しさん (2009-02-08 15 58 26) ああ、モグラ!なっとくしたよ -- 名無しさん (2009-02-08 16 01 59) これを書いたのも私ではない。 -- 名無しさん (2009-02-19 18 19 46) 99パーセント失敗すると分かっていてぎーしゅ -- 名無しさん (2009-02-21 19 20 35) ↑誤投スマン。「99パーセント失敗すると分かっていてギーシュに無限パンチさせたのも私だ」 -- 名無しさん (2009-02-21 19 23 35) 鬼畜外道な方法でキュルケとタバサを殺しかけたのも私だ。 -- 名無しさん (2009-02-23 09 39 09) てかこのギーシュ何気に強いしw -- 名無しさん (2009-02-23 17 36 26) 殺しかけた後蘇生させたのも私だ。 -- 名無しさん (2009-02-23 17 38 09) モグラがゴン太くんに見える件 -- 名無しさん (2009-03-11 20 39 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3778.html
前ページ次ページゼロの魔獣 鋼の巨人と青銅の乙女の交錯に、大気は振るえ、大地が鳴動する。 ゴーレムの自慢の左手が螺旋を描き、ワルキューレの胸甲に突き刺さる。 不快な金属音が轟き渡り、真昼の如き火花を散らし、乙女の胸元を大きく抉り取っていく。 「一気に押し切っちまいなッ!! ゴーレム!!」 「気高く可憐に投げ返せ! ワルキューレッ!!」 主の激励を受け、乙女の瞳が燃え上がる。 腰を落とし、大股を開いて踏みとどまると、無骨な両手でドリルを掴む。 回転は掌中で激しくもがき、生じた摩擦でワルキューレの手が赤々と燃える。 全身を使って暴れる螺旋を押さえ込み、体を反らしてドリルごと巨体を持ち上げると、一息に真横へ放り投げた。 「ハッ!! やるじゃないか! ボウヤ」 大きく投げ飛ばされながら、ゴーレムが右手で大地を突く。その手首が高速で一回点し、たちどころに体勢を立て直す。 脚部ローラーの回転で慣性を殺しつつ、地面を削りながら巨体が静止する。 辺りに静寂が戻り、二体の巨像は再び向かい合った。 「2人は桟橋だ ここは僕の乙女に任せて 早く向かってやりたまえ」 「フザけんじゃあねえッ!! ここで尻尾を巻いて逃げろってか!?」 「バカな事言ってんじゃないわよ ダーリン」 緩やかに着地したシルフィードの上から、キュルケが2人の会話に割って入る。 「ダーリンの子供っぽいところも大好きだけど アンタが行かないで 誰があのこまっしゃくれを守ってやんのよ」 「ぐっ・・・」 「無粋」 後から降りてきたタバサが、慎一を斬って捨てる。 チッ、 慎一が大きく舌打ちする。 ガキどもに説教を受けるとは思ってもいなかった。 「・・・お前ら 死ぬんじゃねえぞ」 そう言い残し、慎一は上空へと飛び去った。 パチ、パチ、パチ、と、 フーケが満足そうに拍手を打つ。 「見事な啖呵だ 気に入ったよ! ドットクラスで巨体を動かす創意工夫も 素直に称賛しておこう ―だが 青銅のボインちゃんの方は とっくに限界なんじゃないのかい!?」 フーケの言うとおりであった たった一度の突撃で、ワルキューレの装甲は大きく穿たれ、両手の金属もくたびれていた。 加えて、ギーシュ自身の消耗も激しい。 通常の7体分の巨体を動かすことは、絶えず7体の乙女を連動させる事と同義であった。 後数回同じことを繰り返せば、ワルキューレは巨大なスクラップと化すであろう。 「だが 容赦はしないよ! 曲りなりにも この『土くれ』のフーケの前に立ちはだかろうってんだ とっておきのダメ押しってヤツを見せてやる!!」 フーケが指を鳴らす。 それに合わせ、貫手の形をとっていた右手が回転を始め、先端が徐々に先鋭化していく。 右肘から先が大きく膨れ上がり、巨大な円錐状の物体へと変貌を遂げる。 回転が止まると、そこには新たなドリルが出現していた。 「今度は2本同時だッ!! どう受ける!? ボインちゃん!!」 ギーシュが冷や汗を流す。 両者の間には決定的な馬力の差があった。 仮に片方を受け止める事が出来たとしても、残りの一本が乙女の純潔を貫くであろう・・・。 「大丈夫」 タバサが囁く。 「みっつの心が ひとつになれば・・・」 「遺言は決まったかい? 坊ちゃん 嬢ちゃん!!」 ギーシュは無言で杖を振るう。 ワルキューレが大きく左足を振り上げ、四股を踏む。 大地が大きく揺れる。 「ゴーレムにはゴーレム 攻撃には攻撃 回転にはッ! 回転だァッ!!」 ワルキューレが大きく左足を踏み出し、右肩をぐるんぐるんと回し始める。 最初は緩やかだった回転が、遠心力の助けを借りて、次第に大きな旋風となる。 「奥の手はグルグルパンチかァッ!! そのセンスはァ嫌いじゃあないよ!!」 「・・・確かに慎一の言う通りね 弱い奴ほどまどろっこしい講釈をしたがる」 キュルケの一言に、フーケの顔がピクリと歪む。 タバサが高らかと宣言する。 「最後にひとつ教えてあげるわ 『土くれ』 2本目のドリルを出す暇に私たちを押し潰しておけば あなたの勝ちだった」 「・・・面白い!!」 フーケが深緑の瞳をグルグルと回転させながら、顔面の筋肉だけで無理やり笑う。 「見せて貰おうかッ!! 乙女の最終兵器ってヤツをねええええぇぇぇェェ!!!!」 フーケが叫ぶと同時に、ゴーレムが大きく腰を落とす。 計8本のローラーが勇ましく回転し、鋼鉄の巨体が爆走を始める。 乙女の純情を汚さんと、両手の螺旋が唸りを上げる。 それに合わせてワルキューレも動く。 7体の乙女が一挙に連動し、ホームに投げ込む強肩外野手のような動きで大きく踏み込む。 同時に詠唱が完成し、3人がピシリと杖を振るう。 最初に発動したのはギーシュの『錬金』 大きく振りかぶった乙女の右腕、その肘先が変形を始め、小さなワルキューレが出現する。 肘部のジョイントを失った小さき勇者は、遠心力で一直線に投げ出されていく。 次にキュルケの魔法が発動。 飛び出した乙女のスカートから、激しい炎が吹き上がり、 爆発的な推進力となって、その身をぐんぐん加速させる。 最後にタバサの魔法が発動。 疾風の障壁がワルキューレの周囲に展開し、前方の見えない空気の壁を切り裂いていく・・・。 火と風の女神の加護を受け、勇ましき乙女が音速を超える・・・!! 「なッ!? ロケットパ・・」 「「「いっけえええええぇぇぇぇッ!!!!」」」 高速と音速のクロスカウンターである。 互いの強度差は、最早意味を成さなかった。 痛烈な爆音が轟き渡り、衝撃波が周囲を根こそぎ吹き飛ばす。 原型を留めぬ青銅の塊が、ゴーレムのドテッ腹をブチ抜いた。 ―敵の巨体が静止したのを確認すると、大きな乙女がゆっくりと背を向けた。 やや、間をおいて・・・ ド ワ オ オ ! ! という爆発音とともに、風穴の開いたゴーレムの巨体が四散した・・・。 前ページ次ページゼロの魔獣
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7353.html
ルイズは困惑していた 春の進級試験、使い魔召喚の儀式にて 周囲や彼女自身の予想を裏切って、彼女は意外なほどあっさりと召喚を成功させた そしてルイズは困惑していた 目の前の召喚された使い魔となる生物を見て ソレに不満があったわけではない、目の前に居るそれは召喚の成功の証 自分の魔法の初めての成功の証であり、ルイズの心は未だ踊りだしたいくらいの歓喜に震えている しかし・・・ルイズは不満こそ無いものの、不安に支配されかけていた それは小さかった 自分の膝の高さくらいの小さな人型、そしてとても華奢に思える細さだった そしてその顔は一言で言うならば・・・そう、『虚無』だ その眼は空洞だった、覗くと吸い込まれてしまいそうな暗闇を秘めた空洞 一切の光も意思も見られない空洞・・・まさしく『虚無』と言い表すに相応しい眼だった だが何より不安を感じていたのは『コントラクトサーヴァント』の成否だった 契約を成功させる自信はある 自分は召喚を成功させたのだ、今の自分に契約を失敗することなどありえない そう・・・口付けを交わせればの話だが 使い魔候補の生物は小さくて華奢な人型で、虚無と呼ぶ他無い暗闇そのものの眼をして 全身から縦横無尽に針が生えていたのである それから暫くして、教え子の初めての成功に喜び、彼女を賞賛しようか これから待ち受ける試練に向けて激励しようか、悩んで複雑な表情を浮かべた引率教師コルベールに促され ルイズは目を閉じ、ひょっとこのように口を限界まで前に押し出し、意を決して契約に挑んだ 「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」 青空の下、少女の悲鳴が木霊した 見た目貧弱な使い魔といえ、”ゼロのルイズ”とバカにされ続けた少女が初めて成功させた魔法 陰ながら誰より彼女を認めていたキュルケやコルベールは言うに及ばず 日頃から彼女をバカにしていた級友たちですら、この勇気ある行為に踏み切ったルイズを心の底から賞賛したという その使い魔は小柄な身体から察せられる通り、機敏に動いた 主であるルイズの目を放した隙に、あちこちに出歩いて学院のあちこちで目撃情報が寄せられる 慣れれば可愛らしくもあり、妙に愛嬌のあるそれは密かに学院中で人気を集めていた 「・・・あんた何やってんの」 食堂で足元に現れた食後のデザートを乗せたトレイに向かって話しかける その姿はトレイに隠れてまるで見えないが、ルイズにはすぐ分かった これが自分の使い魔だと 指も無い手だったが、意外と器用だった 針が指代わりになっているのだろうか、などと考えたりするが、観察してもよく分からないので深く考えないことにした 「申し訳ありません、ミス・ヴァリエール、私も止めたのですが・・・」 メイドのシエスタだ、この使い魔に時々水を与えてくれる姿を目にする 使い魔も随分と懐いてるようだし、この使い魔の身体じゃ迂闊に触れて止めようともできなかったろうことを考えると 使い魔がデザートの配膳してるくらい別に構わないと思った、自発的に行っているのも本当だろうし 「いいわよ、別に。 好きにやらせてあげて、でも呼んだらすぐに来なさいよ?」 使い魔はクルリとその場で一回転して返事をして、そのままデザート配膳に戻った それから程なくして、モンモランシーともう一人の少女の怒号と酒瓶の割れるような音が二発響き 何事かと思って見に行けば 逆ギレしたギーシュが使い魔にイチャモン付けていた 要約すると ギーシュがモンモランシーから貰った香水の瓶を落とした→使い魔がそれを拾ってギーシュに返そうとしたがシカトされた →それを見たケティ(下級生)がギーシュの浮気を知りギーシュをワイン瓶で殴打→モンモランシーもまた同じく →「君が香水の瓶なんて拾うからこうなったんだよ」と使い魔に責任転嫁するギーシュ →すっとぼけた様な表情を浮かべ沈黙したままの使い魔になんかムカムカしてきてついに決闘騒ぎに どうやら先に受けたケティとモンモランシーの酒瓶攻撃で酔ったらしい、大人気なくも使い魔相手に決闘を申し込んだギーシュは既に半分正気では無かった そんな奴の相手をすることは無いと思い主として当然使い魔を連れ帰ろうとした 「ほら行くわよ、あんな奴の戯言に付き合うことなんてないわ・・・ってちょっとアンタ」 使い魔はヴェストリの広場に向かうギーシュ(と彼に肩を貸す友人たち)の後を追おうとしていた 「アンタご主人様の言うこと聞いてないの!? あんな酔いどれに一々付き合うことなんて無いんだからとっとと帰るわよ!!」 しかし使い魔は首を縦に振らなかった(見た目からして首が回ったりするようには見えなかったが) 『売られた喧嘩は買うもんだ』と言わんばかりに何やら好戦的なオーラを漂わせていた 本来なら腕ずくでも止めるべきだったが、それは出来なかった、何せ針だらけだったから・・・・・・ 後でシエスタから聞かされたことだが、ギーシュは使い魔に対する八つ当たりの中で”ゼロのルイズ”と何度と無く私を中傷していたらしい (ひょっとして使い魔のあのオーラは、私の為に怒ってくれてたのかな・・・?)と思うと少し嬉しくもあった ヴェストリの広場はギーシュに対するブーイングで割れんばかりだった 二股がバレて逆ギレしたギーシュがルイズの愛くるしい使い魔を虐待して鬱憤晴らしをしようとしていると聞いた女子生徒が押し寄せたのだった そんな中でギーシュはすっかり酔いも覚めて正気に戻り見え張ってポーズ決めているものの 内心では数分前の自分をワルキューレでボコボコにしたい気分だった しかし一度宣言した手前、もう後には退けない、泣き出したいのを堪えてワルキューレを一体呼び出す (少し軽く小突いて適当に切り上げよう、ごめんね使い魔君・・・) 明らかに非力な目の前のルイズの使い魔にギーシュは心の中で懺悔する しかしもう遅い、彼はこの後更に激しく懺悔を繰り返すことになる ギーシュはドットクラスといえゴーレムを作り操る手腕はそれなりにあった 対する相手は”ゼロのルイズ”の使い魔、勝敗は誰の目にも見えて明らかかと思われていたが・・・ ギーシュのワルキューレはルイズの使い魔に全く有効な一撃を与えるに至らなかった ルイズの使い魔は機敏に動き回り、ワルキューレの攻撃をかわしていた そのスピードはあまりに速く、逆に緩慢に動くような残像を見せてギーシュを翻弄した ワルキューレを体当たりさせようとすれば避けられて、徐々にだが精神力を消耗するギーシュは次第にまた苛立ちを募らせていった しかも集まったギャラリー(女子生徒)はルイズの使い魔の思わぬ活躍(避けてるだけだが)に歓声を上げている それが更にギーシュの苛立ちを増してゆき、冷静さを失わせていた (くそっ・・・こうなったら複数のワルキューレで取り囲んでボコボコにしてやる!!) さっきまで懺悔してたものがいつの間にかこうである しかしギーシュを責められたものでもない、確かに散々翻弄されまくって目の前の使い魔のとぼけたような顔はなんかムカつく ギーシュの手にした薔薇の造花・・・彼の杖の花びらが舞い散り、地面に落ちて更に6体のワルキューレが錬製されてルイズの使い魔を取り囲んだ しかしルイズの使い魔は7体のワルキューレの包囲網を小さな身体で掻い潜り、回避し続けていた 一見すると防戦一方のこの戦いだったが、駆けつけた彼の主であるルイズ、屋根の上から観戦していたキュルケとタバサを初めギャラリーの中の何人かも気付いていた 回避行動ばかり続けるルイズの使い魔が、その合間合間に【何かを束ねている】ことに・・・ 「ハァ・・・ハァ・・・くそッ!!」 息切れし、悪態をつくギーシュが攻撃の手を休めた時、ルイズの使い魔の虚無の闇を秘めた様な眼が光ったように錯覚した 次の瞬間、ワルキューレの一体がヒビ割れて崩れ落ちる 誰もが呆然とした、ほとんど何の前触れも無く、否、無数の風を切る音が聞こえた次の瞬間ワルキューレがバラバラに砕け散ったのだ 「え、何?何が起きたの・・・?」 「ギーシュのワルキューレがいきなり砕けたぞ!?」 「ルイズの使い魔がなんかしたのか?」 「まさか・・・」 突然のことにギャラリーも驚きを隠せない 対峙するギーシュは自分の精神力が尽きたのかとさえ思ったが、他の6体は正常 ルイズの使い魔に何が出来るとも思えない、周囲の女子生徒の放った風魔法かと思ったが 風を切る音は確かに目の前で発生したもの、となると信じられないがルイズの使い魔が何かしたものと思っていい ここにきてギーシュは”ゼロのルイズ”の使い魔と侮ることをやめ慎重に距離を取り、周囲に4体のワルキューレで壁を作り 残る2体で攻撃を再開した しかし相変わらずワルキューレによる体当たりは回避されるばかり それでもギーシュは目を凝らしてルイズの使い魔が回避の合間に何をしているのかを見極めようとした そして気付いたのだ (あいつ・・・【何かを束ねている】・・・? 抜いてる・・・? 自分の針を・・・・・・???束ねて・・・・・・!?) ルイズの使い魔は束ねた千本の針を飛ばし、ワルキューレの全身に突き立て粉砕した その恐るべき破壊力の正体を知りながら、妙にギーシュは冷静に疑問を浮かべていた (あんなに抜いて束ねてるのに見た目は変わらないなんて・・・凄いスピードで生えてるのか?) そんなことを考えてるうちに攻撃にまわしたもう1体も破壊された またも自分の身体から針を抜き束ね始めたルイズの使い魔の姿に正気に戻されたギーシュは慌てて命令する 「ワ、ワルキューレッ!奴を止めろッ!!」 2体を再び攻撃に転じさせ、残る一体を自分の護衛に残す しかし相変わらずの回避、回避、回避、回避、回避・・・・・・・・・・・・? (・・・長過ぎるんじゃね?) いくらなんでも長過ぎる、さっきまでのことを考えればもう10回分は撃たれていそうなもの・・・ そう考えた瞬間、攻撃に回したワルキューレが砕け散った、間を置かずにもう一体も砕け散る 残像を残しながらルイズの使い魔が近づいてきて最後のワルキューレの目前に迫った 風を切る音と共に最後のワルキューレが砕け散る 今までと違う攻撃発動のタイミングと回数にギーシュは気付いた (こ、こいつ・・・) ルイズの使い魔が束ねたモノをギーシュに向ける (【仕事量を10倍に】・・・・・・ッ!?) 風を切る音が聞こえる (つまり僕には7回分の・・・・・・ッ?!) 小さくて細い合計七千本の針がギーシュの年若い柔肌に突き立てられる 「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」 ヴェストリの広場にギーシュの悲鳴が響いた 仰向けに倒れたギーシュの断末魔の表情の判別は困難を極めた 何せルイズの使い魔以上の密度で縦横無尽に針が突き立っていたからだ(それでも眼球など急所は外されていた) ざわざわとどよめきが巻き起こる 「うわ・・・悲惨だ・・・」 「おーい!道を空けろーー!!水の秘薬の準備だーーー!!」 「この決闘はルイズの使い魔の勝ちーーー!!」 誰かのこの叫びにルイズの使い魔のファンになった女子生徒の歓声が巻き起こり ルイズもまた心配をかけた自分の使い魔を叱りつけようと思いながらも 使い魔の無事に安堵し、我を忘れて駆け寄った ルイズの使い魔もまた、本来ひ弱な自分が振り絞った勇気で得た勝利に喜び 愛しいご主人様の姿を見つけて【抱きついた】 「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!!!!!!!」 ヴェストリの広場にルイズの悲鳴も轟いた 『使い魔のハリセンボン』 ファイナルファンタジーⅥよりサボテンダー召喚
https://w.atwiki.jp/398san/pages/131.html
アテム 《クリビー》 《クリブー》 《死の床からの目覚め》 《魔法大学》 《ブラック・イリュージョン》 《リダクション・バリアー》 《黒魔族復活の棺》 《ティマイオスの眼》 《アミュレット・ドラゴン》 《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》 城之内 克也 《黒竜の聖騎士》 《黒竜降臨》 《ロード・オブ・ザ・レッド》 《レッドアイズ・トランスマイグレーション》 《蒼炎の剣士》 《ランドスターの騎士》 《ランドスターの格闘士》 《ランドスターの銃士》 《集結!ランドスター戦隊》 《ランドスター・ショット》 獏良 了 《死霊公爵》 《ディアバウンド・カーネル》 《ディアバウンド》 《死霊の盾》 御伽 龍児 《ゴッドオーガス》 インセクター羽蛾 《フェロモンワスプ》 《装甲百足-アーマー・センチフィード》 ダイナソー竜崎 《ジュラシックハート》 海馬 乃亜 《地鎮祭》 ペンギン・ナイトメア(大瀧修三) 《ペンギン・ソード》 《鉄壁氷山-ディフェンド・アイスバーグ》 ペガサス 《飛行エレファント》 マハード 《幻想の魔術師》 ラフェール 《バックアップ・ガードナー》 《ガーディアン・エアトス》 《女神の聖剣-エアトス》 《ガーディアン・デスサイス》 《死神の大鎌-デスサイス》 《ガーディアン・シールド》 《魂狩りのデスエンド》 アメルダ 《KC1クレイトン》 《魔空要塞 ジグラート》 《魔空合身》 《歴戦の戦車部隊》 《ソルジャー・リボルト》 ジーク 《ワルキューレ・アルテスト》 《ワルキューレ・ツヴァイト》 《ワルキューレ・ドリッド》 《ワルキューレ・ブリュンヒルデ》 《フォーチュンチャリオット》 《天魔の翼》 《時の女神の悪戯》 《白鳥の乙女》 《霊剣-ノートゥング》 《ヴォータンの裁き》 《ローゲの焔》 ジョン・クロード・マグナム 《くの一ソルジャー アヤメ》 マスク・ザ・ロック 《古の巨人》 ステップ・ジョニー 《ヘヴィメタル・キング》