約 48,537 件
https://w.atwiki.jp/ffdqbr3rd/pages/649.html
第294話:悪い夢のような/悪い夢のように 昨日から、怖気を奮うような光景を何度も目の当たりにしてきた。 理解を超えた情景など、見飽きたつもりだった。 だが、さすがに眼前で起きた出来事は。 今まで見てきたどんな事柄よりも、カインの精神力をごっそりと奪った。 ――今までとは別の意味で。 地面をこすりながらゆっくりと動く、馬車ごと乗れそうな大きさのカーペット。 砂埃にまみれてノロノロと進んでいく姿には哀愁さえ感じられる。 その上に乗っているのは、苔むした小さな山。 いや、良く見ると手足があるようだからこれは巨大な生き物なのか。 どちらにしてもシュールな光景であることには変わらない。 まず、なぜ絨毯が動くのかがわからない。 次に、こんな巨大な生物がここにいる理由がわからない。 仮にこの生物が参加者なのだとすれば、こんなものを参加させる魔女の意図がわからない。 それから、この生物が絨毯に乗る理由がわからない。――どう考えても歩くか走るかする方が早いだろうに。 どこから何を言えばいいのかわからず、自分が幻影を見ているのだと願って、カインは隣を見た。 しかし、やはりと言うべきか。フライヤも頭を抱えて首を振っている。 どうやらこれは幻や悪夢ではないらしい。だとすると現実か。 『地面を引き摺って移動する絨毯に乗る巨大生物』。ああ、魔女は一体何を考えているんだ? 二人が頭痛を感じている間に、巨大生物は木々を薙ぎ倒しながら山脈の向こうに姿を消した。 ……といっても、体の大部分が見えなくなっただけで、頭はしっかりと見えている。 多分旅の扉に入るまで、あの生物の『姿が見えなくなる』ことはないのだろう。 「世の中は広いモノじゃの……」 フライヤの呟きに、カインはうなずく。 うなずいただけで、コメントを返す気にはなれなかった。余計に疲れそうな気がしたからだ。 「全く……スミスが早く戻ってきてくれるといいんじゃが」 ため息をついて、フライヤは空を仰いだ。 スミスは今、旅の扉を探すために単身で上空を飛んでいる。 本当はスミスに乗って三人で移動できれば良かったのだが……「二人も乗せられない」と言われて断念した。 さりとて、一人だけ置いていくわけにはいかない。 カインはフライヤを見逃すつもりはなかったし、フライヤも――純粋な善意から――カインを一人にはしておきたくなかった。 結局、身軽なスミス一人が斥候に赴く形になったのだ。 「……そういえばスミスの奴、随分遅いな。もう一時間近く経つぞ?」 カインは苛立ち紛れに天空を仰ぐ。 すると、どこからともなく聞き慣れた翼の音が響いてきた。 「おお、戻ってきたようじゃな」 フライヤは空を見上げ、青い飛竜に声をかけた。 「大分時間がかかったようじゃが……どうじゃ?」 「バッチリさ!」 スミスは笑って応えた。 ――人間の言葉を喋れるということだけは、フライヤにも伝えておいた。 『言葉を話せるということを隠す必要などないだろうし、下手に隠して後でバレると厄介なことになりかねない』というカインの判断だ。 それ以前にスミスとしても、いちいちカインを通して会話をするのは面倒くさかった……という事情があるのだが、それはさておき。 「自分でもびっくりするぐらいに上手く行ったよ」 スミスはそう言って胸を張る。だが、フライヤは首を傾げた。 「うまく……行った?」 スミスはしまった、と言わんばかりに、慌てて口を塞ぐ。 「それはどうい……」 「スミス。お前、旅の扉を見つけてきたのではないのか?」 問い詰めようとするフライヤを遮り、カインが話し掛ける。 スミスは一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、ややあって、引きつったように笑った。 「ごめん、忘れてた」 「………」「………」「………」 ため息をつき、カインは踵を返す。 「行くか、フライヤ。全力で探せばなんとか時間内に見つかるだろう」 「そうじゃな」 フライヤも肩を落としながら地面を蹴った。 二人の竜騎士は跳躍を繰り返し、常人にはあるまじきスピードで斜面を駆け上っていく。 (そんなぁ、酷いよー! 僕だって遊んでたわけじゃないんだよ! 聞いてよカインー!) テレパシーで必死に呼び止めるが、カインの足は止まらない。 それどころかますます速度を上げている。焼け石に水どころか、火に油を注いでしまったらしい。 魔女の僕と名乗る魔竜も、こうなっては形無しである。 「待ってよ、僕が悪かったよー! カイン、フライヤー!」 スミスは情けない声で一声鳴くと、慌てて二人の後を追った。 「いい子ね、大人しくて」 レナは、そう言って飛竜の頭を撫でた。 ギルバートの埋葬を終えた彼女とエリアは、身を隠すために山脈へ行く事を提案した。 そして例の放送を聞き、そのまま旅の扉を探すために山の中をうろついていたのだが―― 先ほど二人は、信じられないものを見かけてしまったのだ。 『絨毯に乗って動く山』。 こんな言葉で説明したところで、殆どの人は「頭、大丈夫?」と言ってくるだろう。 だが、二人が見たものはそう表現するしかない代物だったのだ。 当然のごとくエリアは怯えてしまった。 腰の抜けかけた彼女を木陰に隠し、レナは一人で『動く山』の後を追った。 しかし、数百メートルも行かないうちに、地面の上で休んでいた飛竜を見かけ――今に至ったという次第である。 レナは飛竜が好きだった。 タイクーンの飛竜は家族同然だったし、クルルの飛竜とも仲は良い。 その二匹とはまた別の飛竜といえ、こんな異国の地で、絶滅寸前と言われている飛竜に巡り会えたことが嬉しかったのだ。 だから山を追いかけることも忘れて、青い飛竜を撫でている。 飛竜――スミスの方も、気持ちよさそうにノドを鳴らした。 その表情は恍惚の色に染まり、カインやフライヤのことなど忘れ去ってしまっているかのようだ。 ――だが、誤解しないでほしい。 この行動には理由があるのだ。 スミスにとって、カインに協力するよりも重要な理由が。 ……決して元人間の男として美しい女性には弱いとか、柔らかな胸が目の前にあって以下略とかそういうことではない。断じて。 (そろそろ頃合かな……) ひとしきり至福の一時を過ごしたスミスは、突然身体を震わせると、ゆっくりと顔を上げてレナを見つめた。 彼女の心の中はとうの昔に探り終わっている。 『仲間を殺されて、仇を逃がした』――スミスの持つ読心能力では、そこまでしかわからない。 だがそれとは別に、スミスは彼女の事を知っている。 殺された人物――ギルバート・クリス・フォン・ミューアを陥れた男と、彼は共に行動しているのだから。 (レナ……) 虚ろな視線を向けながら思念を送り込むと、レナは驚いたように身を竦ませた。 続けて、スミスは語りかける。 (僕だよ……レナ、忘れたの?) 声と違って、口調以外を真似する必要がないのが楽だ。 弱りきった途切れ途切れの思念で、曖昧なことを言っていれば、後は勝手に向こうが解釈する。 「……ギルバート?」 その問いかけに、スミスは茫洋とした表情を作り、機械じみた動きでうなずいてみせた。 焦点をわざと合わせず、しかし瞳だけはしっかりとレナに向ける。 (レナ。会いたかった。……ああ、寒いんだ、体が冷たくて、痛いんだ) レナの顔は面白いくらいに真っ青だ。 信じられない。けれど、信じたい。そんな色が露骨に表れている。 だから言ってやった。 (寒いんだ。胸が痛いんだ……心臓の辺りが冷たくて、痛いんだ) ギルバートはアーヴァインという男に刺殺された。スミスはカインからそう聞いている。 それも心臓を一突きという、中々に鮮やかな手並みだったらしい。 もちろん、カインだって死体を見たからこそ語れたわけで、知らなければ語れるはずもない。 殺された当人以外は。 つまり―― 「ギル……バート」 小道具に使えるということだ。 偽りを真実に見せかけるための。 「あなたなの? 本当に……」 レナはふらふらと後ずさりし、ぺたんと座り込んだ。 スミスは心の中で嘲笑する。 聞いてくるということは、信じているということだ。こんな臭い芝居を! (レナ……痛いよ。あいつに刺された傷が痛むんだ。 どうして僕の仇を取ってくれないの? レナ、レナぁ……) うろたえる少女を見下しながら、スミスは苦しみに嘆く亡霊の真似を続けた。 レナは震える声で答える。 「ギルバート……お願い、聞いて。 私は仇を討ちたかった。貴方の仇を取ってあげたかった。その気持ちは嘘じゃないの。 だけど、仇を討ったところで貴方は返ってこない。嘆く人が増えるだけだからって、ソロ君が……」 ソロ? 聞かない名前だ。いや、宿屋にいた連中の一人にそんな名前の奴がいたとか言っていたような気もするが。 ともかく、そいつが一枚噛んでいるのか――スミスは考えを巡らせるが、決して顔には出さない。 出さないまま、無防備になった心に探りを入れる。 そうして、ソロとレナの間に起きた出来事をわずかながら知った彼は――彼女にこう語りかけた。 (ひどいよ、レナ……どうしてあいつを逃がしたの? なんであいつと仲良くしてるの? ねぇ、レナ、痛いよぉ……僕の仇を取ってよ、この胸の痛みを消してよ……レナぁ) こう言ったところで、レナはソロとの約束を盾に拒むだろう。 スミスの予想通り、レナは首を横に振る。 「ダメよ。私や貴方が何と言ったって、ソロ君はあの男を……アーヴァインを庇おうとする。 傷つくのはソロ君だけで、きっとあの男は逃げ切ってしまうわ……」 わかっている。わかっているから、スミスは空々しくも問い掛ける。 (……アーヴァイン?) 「貴方を殺した男よ。茶髪の、背の高い……にやけた、最低の男」 憎悪もあらわに言い捨てるレナに、スミスは言った。 (違う) 「……え?」 (僕を刺したのは、緑髪の男だ) 一瞬の間。驚愕する事すら忘れて、レナは無表情に立ち竦んでいた。 スミスはさらに畳み掛ける。 (話していたんだ……君が言う、茶色の髪の男と。でも、急に胸が痛んで……後ろを向いたら…… ああ、笑っていたんだよ、あの男は。緑髪の男が、僕を見て笑っていたんだ。 真っ赤な剣を持って、笑ってた……ああ、痛いよ、痛いよ……レナぁ……レナ…… お願い……あいつを殺してよ……僕を、助けて。レナ、レナ……レ、ナ……) 最後はわざと弱々しく告げた。 それから、目をパチパチとしばたいて、夢から覚めたかのようにキョロキョロと辺りを見回してみせる。 「……ギルバート?」 虚ろにレナが呟いた。 残念ながら、演技はもう終わりだ。これ以上彼女に付き合う理由はない。 スミスは一声だけ鳴いて、翼をはためかせて舞い上がる。 「ギルバート! ギルバート!」 残されたレナは叫ぶ。叫び続ける。居もしない亡霊に向かって。 叫んで、叫んで、息が切れた頃、声を聞きつけたエリアが木々の向こうからふらふらと歩いてきた。 「レナさん、どうしたんですか!? レナさん……! ………!!」 遠くなっていく二人の声を背に、スミスは笑った。 レナは思惑通りにソロとかいう男を殺してくれるだろうか? アーヴァインという人間はまだ使い出がありそうだから殺さないで欲しいものだが。 まぁ、彼らを殺す事が出来なくとも別に構わない。 スミスの狙いは別にある。 自分は騙されていたのかもしれない。裏切られたのかもしれない―― そう思わせることが、真の狙い。 彼女の心を疑惑と不信で満たして、誰も信じられなくなるよう仕向ける。 そうして育った『不信』は、やがて周囲に伝染し、殺し合いを加速させていくだろう。 「おお、戻ってきたようじゃな」 ほくそ笑むスミスの耳に、フライヤの脳天気な声が届いた。 「時間がかかっていたようじゃが……どうじゃ?」 スミスは今一度邪悪に唇の端を歪め、それとは裏腹な明るい声で答えた。 「バッチリさ! 自分でもびっくりするぐらいに上手く行ったよ」 【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5) 第一行動方針:旅の扉を探す 第二行動方針:カインと仲間を探す】 【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 第一行動方針:フライヤについていき、攻撃の効かない原因を探る 最終行動方針:フライヤを裏切り、殺人者となり、ゲームに勝つ】 【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】 【現在位置:レーベ南西の山岳地帯】 【レナ 所持品:エクスカリバー 第一行動方針:不明/旅の扉を探す 基本行動方針:エリアを守る】 【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花 第一行動方針:サックスとギルダーを探す】 【現在位置:レーベ南西の山岳地帯(カイン達とは離れた場所)】
https://w.atwiki.jp/tarowa/pages/253.html
少女と獣 ◆U1w5FvVRgk 犬にじゃれられる乙女と、それを陶酔状態で写真に収める少女。 バトルロワイアルの会場と言えど、これほど珍妙な出会いを果たしたものは他に居ないだろう。 幸いにも乙女――真紅の一撃で少女――竜宮レナは正気に戻り、会話をするには至った。 元々聡明な二人故に一度落ち着いてしまえば理解は早い。 その後の情報交換はすんなりと行われた。若干の問題は発生したが。 「ねえ、レナ。貴方、ちゃんと聞いてるの?」 「うん、聞いてるよ~翠星石ちゃんに蒼星石ちゃんか。かぁいいんだろうなぁ~」 「…………」 一言で表そう。現在の竜宮レナの顔はだらしない。 真紅と出合った時に戻ったとも言える。 始めはまともだった。 自分は殺し合いをするつもりはなく、友達を探して脱出するのが目的だという事。 もし真紅も殺し合いに乗っていないなら協力してほしい事など、自分の意思を明確に伝えていた。 真紅としても目的はレナとさして変わらないので、同行を断る理由は無かった。 次は真紅が話し出したのだが、問題は真紅の姉妹の話になった際に起きる。 一人目、危険性の高い水銀燈の話をしたとき、レナはまだ真面目な顔付きだった。 二人目、仲間である翠星石の話をしたときは目が輝きだした。 三人目、翠星石の双子の妹である蒼星石の話になったときは頬が緩んでいた。 必要な事とはいえ、レナにその手の話をするのは不味かったようだ。 聞き終えた後は、すっかりまだ見ぬかぁいいものの虜と化してしまった。 レナの緩みきった顔を見れば、こんな時に不謹慎だと怒る者も居るだろうが、 真紅は溜め息を一つ吐くだけだった。 殺し合いの最中に能天気な顔を晒すレナに対しての呆れはある。 それでも、真紅はレナを侮りはしない。 根拠としては、異常事態に巻き込まれながら冷静である点が挙げられる。 真紅はアリスゲームを経験しているので、殺し合いにそれほど動揺は無かった。 何しろ数百年の間を姉妹同士で争ってきたのだから年期が違う。 だが、見たところレナはただの人間だ。 普通は殺し合いに参加などさせられれば、錯乱してもおかしくはない。 それなのにレナは冷静であるばかりか、自分の趣味について考える余裕まである。 少なくともこの点を真紅は評価していた。今のところはこれだけとも言えたが。 「はぅ~」 さすがにいつまでもこんな状態では困る。 つい先ほど、同様の状態となったレナを真紅は元に戻した。 ならば今度もそうするまでと、真紅は上体を右に捻る。 すると、ツインテールにしてある髪の片方が宙に揺れて、月明かりを反射した金髪が力強くしなる。 いくら至近距離とはいえ、真紅はこの髪で自身の倍以上の大きさがあるレナを一度ぶっ飛ばしている。 それと寸分違わない鋭い一撃が、無防備なレナの横っ面に打ち付けられた。 パァン、という小気味良い音が鳴った。 今度はレナの身が宙を舞うことはなく、首だけが真横に曲がった。 「はぅ!?」 「目は覚めた? それなら話の続きをしたいんだけど」 「う、うん。分かった」 ようやく正気に戻ったのか、レナは左頬を擦りながら頷く。 真紅はレナを見つめながら髪に触れている。 まただらしない顔になったら叩く、とアピールしているようにも見えた。 「といっても、後はそれほど話すことも無いから移動しましょう」 「うん……」 どことなくしょんぼりとした様子で、レナは傍らに突き立つ剣を持つ。 柄の部分に拳を保護する為の護拳がある、一般的にはサーベルに分類される剣だ。 柄は金色で、剣身は真紅のドレスと同じく真っ赤に染められている。 色合いだけなら悪趣味だが、どこか禍々しい威圧感が感じられた。 重厚な外見を見れば小柄な真紅はもちろん、平均的な成人男性ですら持てるかどうかの重量はあるだろう。 しかし、レナはそれを軽々と持ち上げていた。それも片手で。 真紅はレナをただの人間と判断した。 だが、あの剣を携えているところを目にすればその判断が揺らいでしまう。 「よくそんなものを平然と持てるわね」 「ちょっと重たいけど、いつも斧とか鉈を持ってるから平気だよ」 レナはあっさりと言うが、内容の方はあっさりと聞き逃せないものだ。 当然だ。レナのような女の子が、どうしたら常日頃から斧や鉈を持つ生活を送るのか。 少なくとも簡単に想像できるものではないだろう。 「どうして、いつも斧や鉈を持ってるの?」 「かぁいいものを探すのに使うんだ」 「意味が分からないのだわ。貴方の言うかぁいいものを探すのにどうして鉈が必要なの」 「掘り出す為には必要だよ。例えばゴミ捨て場とかから」 「そんなところに何があるというの。ただのゴミでしょ」 「そんなことないよ」 真紅の言葉を、レナは即座に否定した。 見れば、その顔付きは先ほどのふざけたものやしょんぼりしたものではなく、真剣なものとなっていた。 二人の青い瞳がじっと見詰め合う。 「一度壊れて捨てられても、必要としてくれる人が居たら、それはゴミなんかじゃないんだよ」 そういうレナに真紅は驚きに目を見開き、思わず右腕の付け根の辺りを押さえた。 以前、真紅は水銀燈との戦いで右腕をもぎ取られたことがある。 完璧な少女【アリス】を目指すローゼンメイデンにとってパーツの欠損は致命的だ。 壊れた人形などジャンクでしかない。それが真紅の認識だった。 当然ながら真紅は悲観に暮れたのだが、真紅のミーディアムである桜田ジュンは言った。 『僕はお前を何かが欠けた人形だなんて思ってない。 例え足り無いものがあったとしても、それは僕が埋めてみせる』と。 さっきのレナの発言は、真紅にその時のジュンを思い起こさせた。 「そう……そうね。レナ、貴方は正しいのだわ。そして、とても優しい」 「えへへ、そうかな? かな?」 照れ臭そうに笑うレナに、真紅は頷いた。 少なくとも、今のレナは好印象だった。 これなら同行しても問題ないと真紅も思う。 されど、問題はまだ残っていた。 「レナ。貴方は私に渡す物があるわ」 「え? 何かな?」 「とぼけないで。カメラよ」 真紅の要求に、レナの表情が固まった。 インスタントカメラ。 レナの支給品の一つであり、真紅の痴態が収められている品。 あんな写真を現像でもされたら、ローゼンメイデンのプライドは木っ端微塵になってしまう。 だから、何としても渡してもらいたかったが、 「やだ」 レナは一言で拒否を示した。 かぁいいもの命のレナに、譲渡を求めるのが無理である。 真紅から表情が抜け落ちた。 無表情となった顔は、夜の雰囲気と相まってかなり怖い。 「渡しなさい」 「やだ」 真紅が一歩迫ると、レナが一歩下がった。 「渡しなさい」 「やだ」 繰り返す、繰り返す、繰り返す。 「渡しなさい!」 「やだ!」 等々怒鳴り声にまで発展した。 女の機嫌は変わりやすいと言うとはいえ、先ほどまでの和やかな空気はどこにいったのか。 今や一触触発にまで行きそうだ。 ピシュン、ピシュン 二人の耳に聞きなれない音が届いたのはそんな時だった。 ■ ■ ■ 後藤は飢えていた。 それは食事としての意味もあったが、もう一つの意味もある。 戦闘だ。後藤は戦闘にも飢えていた。 戦いこそが自らの存在意義としている後藤にとって、食事と同様にとても重要なものだ。 先程のルイズはどうみても餌にしかならないので三木に任せたが、今では間違いだと思っていた。 支給品を使い思わぬ反撃をしてきたルイズは、後藤が戦ってもいい相手だった。 もし最後のロケットランチャーが胴体に直撃していれば、勝敗は逆転していたのだから。 もっとも、後藤が最初から戦っていれば出会い頭の一撃で仕留めていたかもしれないが。 そのルイズを食した後は街中を徘徊してみたものの、次の餌は一向に見つからない。 後藤は北に向かって歩いていたのだが、この選択が間違っていた。 もし後藤が西か南に進んでいれば、今頃は餌にありつけていた。 西なら斎藤一と泉こなた、南の遊園地ならストレイト・クーガーと柊かがみに遭遇していただろう。 その場を動かずに留まっていても、平賀才人がやってきていた。 これまでは人間など腐るほど居たために、捜索するのに慣れていないのもあるとはいえ運が無い。 そうこうしているうちに、後藤は街の北辺まで着いてしまった。 眼前には道路と草原が見える。 後藤は西を向き、次は東を向くと、頭を捻った。 (この街に何人の人間が滞在しているのかは知らないが、隠れたりしていたら面倒だな。 それなら、一度外に出てみるか) どちらかといえば、後藤は室内や森などの密集した地形での戦闘が得意だ。 広い場所での戦闘は三木の方が適している。 とはいえ、餌が見つからねばどのみち意味がない。 遮蔽物の無い場所なら餌を見つけるのも難しくはない。 後藤が僅かに屈むと、足の皮膚や肉が圧縮されて硬質化していく。 足先も二つに分かれてウサギの足のような形となった。 変形が終わると後藤はしゃがみ、足のバネの反動を使って駆け出した。 ピシュン、ピシュン、と独特の風切り音が辺りに響く。 見る見るうちに速度は上がっていくが、エリアE-10の中程で後藤は止まった。 いや、止まらざるを得なかった。 思いがけない肉体の不調によって。 (どういうことだ? 普段ならもっとスピードが出るはずだが) いつもの後藤なら、自動車と同等の速度は余裕で出せる。 しかし、今は精々が時速四十kmに届くがどうかがやっとだった。 これが後藤に科せられた制限である。 さすがに常時乗用車並みのスピードで動き回られるのは、他の参加者と差がありすぎると判断されたのだ。 (おかしいと言えば、こっちもか) 後藤は右腕を刃に変形させて、振るってみる。 高速の刃が鞭のようにしなり、空気を切り裂いた。 もし人間が立っていたなら、間違いなく真っ二つになっているだろう。 一見した限りでは問題ないようにみえるが、後藤は物足りない様子だ。 (やはり遅い。原因は不明だが、俺の体に何かが起こっているようだな) 攻撃速度の低下。後藤のもう一つの制限だ。 参加者の大半が普通の人間である以上、人間が認識できない速度で攻撃させるわけにはいかなかった。 確認を終えると、後藤は右手と足を元に戻した。 別に腕の速度が落ちても後藤は十分に戦えるが、足の速さが落ちているのはいただけない。 これでは餌を探すのが遅れるからだ。 パラサイトとて動けば腹が減る。 空腹のまま餌を見つけるまで走り続けるのは、後藤としても多少は堪える。 さて、どうするかと考え出して、ここで後藤はようやく気付いた。 東に数十メートル先から、こちらを唖然と見つめる二人の少女に。 片方は茶色の髪に、青と白の二色を基調としたセーラー服を着ている。 身長は百六十cmほどで、肉付きはそれほど悪くないが、まだまだ発展途上だろう。 右手には赤い剣を携えていた。 もう片方は艶やかな金髪に、真紅のゴシックロリータ風のワンピースを纏っている。 こちらは四十cmほどの大きさしかない。 二人を一見して、後藤が思ったことは失望と疑問の二つ。 失望の原因は、茶髪の少女程度の体型では食しても物足りない事に。 疑問の原因は、金髪の少女に全く食欲が湧かない事に。 (あっちの金髪は……まあいい、確かめればいいだけだ) 少女たちとの接触を決めた後藤は、少女たちに向けて歩き始めた。 全ては、金髪の少女が獲物として足りえるのか確認するために。 そして、もう一人の少女を食らうために。 ■ ■ ■ 「真紅ちゃん。あの人、何だろう?」 「判らないわ。でも、一つ訂正しなさい。あれはおそらく人ではないわ」 レナの怯えを含んだ声に、真紅ははっきりとした声で返した。 真紅としても、こちらに近づいてくる男が何者なのか検討が付かない。 道路を走って表れたかと思ったら、いきなり右腕を刃に変形させたのだ。 ここから見ても、その刃の鋭さは理解できた。 それが高速で振るわれたのを見たときは、寒気すら感じた。 真紅もアリスゲームを通して様々な時代を巡ってきたが、あんな生物は見たことがない。 外見だけなら間違いなく人。しかし、中身は人に在らず。 まさに得体の知れない存在だが、それでも真紅には分かることがあった。 あれが警戒対象であり、このまま近づかせてはいけないということだ。 真紅はデイパックを背から降ろすと、中から球状の物体を取り出した。 「止まりなさい!」 凛とした声が響き、男は歩みを止めた。 真紅としては本当に止まるとは思ってなかったので、少し意外だった。 男は真紅の声に動じた様子もなく、ただ真紅を見ている。 まるで観察でもするかのように見つめられ、真紅は不快感を感じた。 「レディをジロジロと見るなんて、失礼な男ね」 「お前は何だ?」 真紅の言葉に反応せず、男は不躾な質問をしてきた。 少なくとも、初対面の相手に掛ける言葉ではない。 真紅は益々不快感を募らせた。 レナは様子を窺うように両者を見比べている。 「相手に質問する前に、まず名乗るべきよ」 「そうか。俺は後藤と呼ばれている」 「そう。それじゃあ後藤。私が何だとはどういう意味かしら?」 「簡単なことだ。お前は人間なのか?」 後藤の言葉に、真紅は得心が行った。 確かに初めてローゼンメイデンを目にすれば、大抵の者は驚く。 それだけ真紅たちは精巧に出来ているということだ。 この男もその例だと思い、真紅はいつもどおりに名乗った。 「私はローゼンメイデン第五ドールの真紅。要するに人形よ」 「人形……人間の作った玩具か」 「っ! 取り消しなさい!!」 後藤の発言に、真紅は再び大声を出した。 ただし、今度は怒気が大量に込められていたが。 真紅たちローゼンメイデンは一様に高いプライドを持つ。 それは自分たちが特別な人形であるという自負と誇りを持つからだ。 その誇りを、後藤は無神経にも傷付けた。 「私は真紅。究極の少女アリスとなるためにお父様がお作りになったローゼンメイデン! 決して玩具なんかじゃないわ!」 「それがどうした。誰が作ろうが、どんな目的があろうが、人形は人間の玩具だ」 激昂する真紅に対し、後藤はどこまでも冷ややかだ。 まるで機械のように、答えや淀みに変化はない。 それが何にも勝る侮辱となり、真紅の怒りを増幅させていく。 「いい加減に」 「真紅ちゃん、ちょっと待って」 更に怒声を発しそうになった真紅に、背後のレナから静止の声が掛かる。 真紅は無言でレナを睨み付けた。止めるな、と目が語っていた。 そんな真紅に、レナは諭すように話す。 「レディはそんな大声を出さないんじゃないかな? かな?」 穏やかに告げるレナに、真紅は憮然とした表情となり顔を逸らした。 多少なりとも頭が冷えたのだろう。 その隙を突いて、レナは後藤に話しかけた。 表情は打って変わり真剣そのものだ。 「後藤さん。私も貴方の言葉に納得できません。言いたいこともある。 けど、その前に聞きたいことがあります」 「何だ」 「貴方は殺し合いをするんですか」 単刀直入だった。 質問というより、確認の意味合いが強い。 レナにしろ真紅にしろ、後藤は殺し合いに乗っていると確信していたのだから。 「俺に殺し合いをするつもりはない」 後藤は躊躇せずに即答した。 意外な返答にレナはもちろん、怒りを露にしていた真紅ですら驚く。 いや、後藤の話にはまだ続きがあるようだ。 「だが」 「だが?」 「腹は減っている」 空腹。生物としては当たり前の現象だが、後藤の言葉は何故か聞く者に悪寒を感じさせた。 女の感とでも言えばいいのか、レナはこれ以上話すのを躊躇する。 まるで禁忌を犯そうとしている心持ちだった。 一度、深く息を吸い込む。それである程度落ち着くと、意を決して言葉を口にした。 「後藤さんは……何を食べるんですか?」 「人間だ」 答えると同時に後藤の口が釣りあがり、レナをその場に硬直させた。 まるで肉食動物に出会った草食動物。 狩るものと狩られるものの立場が、ここに出来上がってしまう。 後藤の笑みは、同時に会話の終了と戦いの開始を宣告する合図となった。 後藤の右腕が伸び、一瞬で鎌の形に変化する。 刃はそのまま振り上げられ、レナに向かって振り下ろされた。 通常なら認識できない速度の攻撃だが、制限のおかげでレナは目の端で腕が振るわれるのを捉えた。 でも、そこまでだ。 初動が見えても、体はピクリとも動かなかった。 恐怖という原初の感情が、レナをその場に縛り付けていた。 サタンサーベルを盾とすればまだ助かったかもしれないが、もう遅い。 自分の命を刈り取る刃が迫るのを認識して――ドサリ、とレナの体は後ろに倒れた。 「何とか、間に合ったのだわ」 自分の胸元にしがみついた真紅の声を、レナは星空を眺めながら耳にした。 彼女が自分を押し倒したと理解して、そちらに目線を向けた。 見れば後藤が振り抜いた刃を引き戻し、自分たちに振り下ろそうとしている。 しかし、動きは真紅の方が早い。 後藤が追撃をする前に、右手に握っていた物を放り投げていた。 黒い玉が空中を、後藤に向かって一直線に飛んでいく。 爆弾。そんな単語が咄嗟に思い浮かんだ。 後藤もその可能性に気付いたのか右腕を振り下ろすのを中断し、すかさず左腕を胴体の前にかざす。 左腕は瞬時に薄く伸びて盾状となり、ほぼ同時に黒い玉が後藤の眼前で炸裂した。 ■ ■ ■ (煙幕か……) 後藤の周囲には大量の煙が立ちこめていた。 投げつけられた物体を見た瞬間、後藤の脳裏にはルイズに撃たれたロケットランチャーのイメージが浮かんだ。 もし爆発物で、内臓にダメージを受ければ致命傷になりかねない。 故に攻撃を中断して、左腕での防御を優先したのだ。 結果は杞憂に終わったが。 (この煙に乗じて攻めてくるつもりか? それなら・・・・・・嬉しいな) 後藤にしてみれば、戦う工夫は大歓迎だ。 一方的な殺戮よりもそちらの方が楽しめる。 だからといって、黙って攻撃されるつもりもない。 攻撃される前にこちらから近づくまでと、後藤は足を変形させて走りだした。 煙りさえ抜けてしまえば、居場所は特定できる。 更に後藤の脚力をもってすればこんな煙など―― 一分経過。まだ抜けない。 二分経過。徐々に煙が薄くなっていくがまだ抜けない。 さすがにおかしいと後藤も思い始める。 そして三分が経過して煙が消え去った時、後藤は目を見開く。 地面に無数の足跡が円上に付いていた。 そう、後藤は同じ場所をぐるぐると回っていたのだ。差し詰め自らの尾を追いかける犬のように。 これがあの煙の効果だと気づくがすでに遅い。 いくら四方に目を凝らしても、真紅たちの姿はない。 後藤は思い違いをしていた。煙幕は攻める為ではなく、逃げる為に使われたのだ。 戦う工夫をせず、逃げる工夫をした二人に後藤の顔が怒りに歪む。 とはいえ、思考の一部はまだ冷静だった。 いくらなんでも、僅か数分でパラサイトの視力から逃れる範囲に逃げたとは考え難い。 なら、二人はどこにいったのか? 地に居ないのなら、あとは一つしかない。 後藤は顔を上方に向けて、改めて四方を見渡す。 北、居ない。西、居ない。南、居ない。東、見つけた。 後藤から数百メートル先を二人は飛んでいた。しかも、ホウキに跨って。 ■ ■ ■ 「どうやら、気づかれたようだわ。レナ、急ぎなさい」 「ごめん。これ以上は無理みたい」 申し訳なさげなレナの声に耳を傾けながら、真紅は前方を見据える。 遠くからこちらに近づいてくる影があった。言うまでもなく後藤だ。 かなりの速さで走っているので、このままでは追いつかれることは請け合いだ。 現在、真紅たちはホウキに乗って飛んでいる。 字面だけなら突拍子もないものだが、事実だから仕方がない。 先ほど、真紅の支給品である煙幕弾を使用したあと、二人は一目散に逃走を図っていた。 どう足掻いても、彼我の実力差にはどうしようもないものがあるからだ。 とはいえ、数分しか効果のない煙幕弾が効いてる間に逃げきれるとも言い切れない。 真紅だけなら飛行すればいいが、それではレナを置いてきぼりにしてしまう。 そこでレナが取り出したのがこのホウキだった。 名称は単純明快に『空飛ぶホウキ』 どうみても眉唾物だが、最早このホウキにレナの命運を賭けるしかなかった。 前に操縦担当のレナが、後ろに見張り担当の真紅が背中合わせに座り、ホウキを発動させた。 結果は、この通り無事に機能している。 安心するには早いようだが。 ピシュン、ピシュン、ピシュン、ピシュン 「逃げるな!」 風切り音と共に後藤の怒声が轟く。 真紅たちとの距離はまだ離れているが、そこからでも顔を鬼のようにしているのが容易に想像できた。 背中で聞くレナはかなりの恐怖を感じているようだ。顔は強ばり、全身に力が入っている。 「レナ。貴方は前だけを見なさい。海まで行けば、さすがにあれも追ってこれないはずだわ」 「う、うん。分かった」 そんなレナを励ましてはいるものの、真紅もまた緊張していた。 海面に出ても、後藤が追ってこない保障はない。 付け加えて追う者と追われる者なら、精神的には追う者の方が有利だ。 しかも、追われる側は一度追いつかれたらそれまでなのだから尚更だろう。 両者の距離は段々と縮まっていく。 三分のハンデなど、後藤にすれば微々たるものらしい。 されど、真紅とて黙っていない。 両手を後藤に向けると、手の平から無数の薔薇の花弁が飛び出した。 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪が後藤に迫る。 しかし、後藤は盾状にした左手をかざすと、勢いを落とさず薔薇吹雪に突っ込んでいった。 真紅はその姿に呆気に取られるが、その後は愕然と息を飲んだ。 後藤は花弁が刺さっても、全く意に介していなかった。 肝心の頭部や腹部は左腕で守り、それ以外に刺さってもまるで利いていないかのように突き進んでいる。 自分の攻撃が足止めにすらならない事実に、真紅は歯噛みするしかなかった。 だとしても、花弁を放つのは止めない。 距離は縮まり続ける。 五十メートル、四十メートル、三十メートル、ここで真紅は潮の香りを感じた。 真下に目を移せば、夜と同じ暗い海が見えた。 「真紅ちゃん、海に出たよ!」 「そのまま進みなさい!」 二十メートル、十五メートル、放たれ続ける花弁に構わず、後藤が鎌状の右腕を降り被る。 本体に代わり、今度は薙ぎ払われた右腕と真紅たちの距離が縮まり始めた。 十メートル、放物線を描きながら迫る右腕に幾多の花弁が刺さり、薔薇色と肌色の斑模様としていくが、 勢いは衰えず、刃の部分に当たった花弁は全てが切られていく。 五メートル、真紅は花弁を打ち止め、薔薇色の障壁を展開した。 防ぎ切れるかは完全に賭けだった。 そして、後藤の右腕と真紅の障壁が衝突し、直後に真紅の視界は歪んだ。 ■ ■ ■ 「消えただと……」 目の前で起きた現象を、後藤はそのまま呟いた。 後藤の右手が薙いだ瞬間、ホウキで飛んでいたレナたちは忽然と姿を消してしまった。 海に落ちたり、超高速で飛び去ったわけではない。 文字どおり消失したとしか言いようがない、一瞬の出来事だった。 予想外の事態だが、後藤にも一つだけ判る。 自分の右腕は少女に届かなかったことだ。 慣れ親しんだ人間の肉を切り裂く感触を、後藤は味合わなかった。 忌々しげに一つ舌打ちをすると、踵を返して歩き出す。 刺さっていた花弁は、歩いている内に落ちていった。 後藤にしてみれば、レナたちが消えた理由などどうでもいい。 重要なのは、折角見つけた餌を取り逃がしたという事実だけだ。 戦闘を行ったこともあり、空腹感は更に増している。 これでまともな戦いをしていればまだマシだったが、相手が逃げるだけでは全くの無駄骨だ。 このままでは、ルイズを食べた分のエネルギーを消費しきるのも近いだろう。 早急に次の餌を探そうとして、後藤は自分が背負っているデイパックに気付いた。 自らの肉体を変化させて戦う後藤にとって、武器は必要ない。 故にデイパックの確認はしていなかったのだが、後藤はある事に気付いた。 これに人間が数日を生き抜くための品々が入っているのなら、食料もあるのではと。 パラサイトは基本的に寄生した生物しか餌としない。 これは寄生生物の本能であり、殆どのパラサイトはこの本能に従い行動する。 しかし、食そうと思えばそれ以外も口にできる。 基本的に満足感は得られず、空腹を紛らわせるだけだが。 それでも今の後藤には十分なので、ためらわずにデイパックの中を漁りだした。 最初に出てきたのは参加者の名前が記された名簿。 興味も無いのでさっさと戻そうとしたが、泉新一と田村玲子の名が後藤の目を留めた。 泉新一。 市役所での戦闘に関与し、後藤たちパラサイトに甚大な被害をもたらす一旦となった存在。 後藤が最優先に狙う獲物でもある。 この場に居るなら都合が良いので探し出して殺すだけだが、問題はもう一つの名前だ。 田村玲子。 後藤を作り出したパラサイトで、既に死亡したはずの存在。 珍しい名前でもないので同名の別人の可能性は高い。 だが、もしパラサイトの田村玲子だとしたら、彼女の生存は後藤にとって好ましい。 生みの親だからではない。後藤は彼女とも戦ってみたかったのだ。 パラサイト随一の頭脳を誇る玲子なら、自分を十分に満足させてくれると後藤は思っていた。 二つの獲物との戦いに思いを馳せながら、後藤はデイパック漁りを再開した。 今度は一個の寸胴鍋が出てくる。 ずっしりとした重みからは、何かが入っているのを確信させた。 蓋を取ってみると、中には後藤の目的である食料が入っていた。 大根、人参、厚揚げ、カリフラワー、タコなどがごった煮となっている煮物だ。 一見すれば美味しそうに見える――スープがピンク色の点さえ除けば。 古今東西を探しても、ピンク色の煮物など滅多にお目に掛けれないだろう。 普通は食べることを躊躇しそうだが、寄生生物である後藤に戸惑いはない。 食器は無いので素手で鍋に手を突っ込み、熱さを気にせず適当に具を掴む。 掴んだのはピンク色に色付いた大根。 ポタリ、ポタリ、と汁が滴るそれを口に運び、しばらく咀嚼すると飲み込んだ。 「……悪くないな」 食しても問題がないと確認すると、後藤は頭部を大口に変形させて、そこに煮物を流し込んでいく。 人間が丸呑みされるときと変わらず、鍋一杯の煮物はまたたく間に後藤の体内に消えていった。 全てを飲み込むと、後藤は用の無くなった鍋を放り投げる。 まだ物足りないのか、またデイパックを探ろうとした途端――唐突に南方が明るくなった。 そちらに目を移せば、闇夜を照らす炎と大量の煙が上がっている。 一見しただけで、何物かが爆発物を使ったと分かる。 人間なら恐れるか、興味を持つか、知り合いが巻き込まれていないか心配などするだろう。 生憎にも、ここに居るのはパラサイトである後藤。 爆発を見て興味を持ったことは、あそこになら餌になる人間が居るの一点のみ。 寄生生物は爆心地におもむく。 餌を求める種としての本能と、戦いを求める個としての本能に従って。 【一日目黎明/E-10 北部】 【後藤@寄生獣】 [装備]無し [支給品]支給品一式、不明支給品0~2(未確認) [状態]疲労(小)、空腹(中) [思考・行動] 1:爆心地に向かい、餌を探す 2:強い奴とは戦いたい 3:泉新一を殺す 4:田村玲子が本物なら戦ってみたい [備考] ※参戦時期は市役所戦後。 ※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。 ※E-10 北部に空の寸胴鍋が落ちています。 【支給品紹介】 【美和子スペシャル】 亀山薫の妻である亀山美和子が作った料理。 見た目は完全なゲテモノで味はかなり微妙らしい。 ■ ■ ■ 「どうなってるのかな?」 「分からないけど……とりあえずは、助かったようだわ」 助かったと言われても、レナはいまいち実感が湧かなかった。 ホウキに乗って逃げていたら、いきなり別の場所を飛んでいたのだから無理も無い。 先ほどまで眼前には海しかなかったのに、今は海の先に陸が見える。 Uターンした覚えもなく、もししていれば後藤に攻撃されているはずだ。 どうやって現在地に移動したのか、レナには検討が付かない。 「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」 「え? うん、分かった」 真紅の申し出は、レナにとってもありがたい。 当たり前の事だが、ホウキに乗って飛行した経験などレナには無い。 今は安定して飛んでいるものの、一歩間違えれば墜落する恐れがあるので気が気ではなかった。 突然とホウキが止まる可能性もある。 高度はそれほど高くなく、下は海なので落ちても即死はしないだろう。 だとしても、陸から遠い地点に落ちれば溺死は免れない。 このまま神経をすり減らしながら飛び続けるよりも、一度は陸に降りた方が賢明だ。 レナがホウキの柄を少しだけ下げると、空飛ぶホウキは緩やかに降下を始めた。 このままのペースで降り続ければ海に落ちず、無事に着陸できるだろう。 ようやく一息付けると、レナの心中に安堵感が広がる。 そんな時だ。 「レナ……立派なレディになりなさい」 「え?」 不意に聞こえてきた声に、レナは反射的に振り向いていた。 目に映ったのは、ホウキから滑り落ちようとしている真紅。 レナは心臓が一瞬だけ止まった気がした。 「真紅ちゃん!」 驚くと同時に右手を伸ばす。 操縦中に危険だが見捨てるわけにはいかない。 間に合えと願うが、無情にも真紅の体はホウキから落ちた。 それでも、伸ばされた手は間一髪真紅の左足を掴む。 冷や汗が噴き出しそうになるんかでレナはホッとして――軽い音が鳴った。 「あ……」 間の抜けた声がレナの口から漏れた。 呆然と眼前の光景を凝視する。それしかできなかった。 そんな彼女を尻目にホウキは粛々と己の役目を果たし、遂に持ち主を陸に辿り着かせる。 しかし、地面に足が着いた瞬間にレナはつんのめり、綺麗に半回転した。 地面に叩き付けられ、衝撃が背中を突き抜けても、彼女は反応を示さない。 数瞬後にはのっそりと起き上がるものの、まだぼうっとしている。 そのまま右手を目の前まで上げて、自分が握っている物を見た。 薔薇を模した飾りがあしらわれている靴、滑らかな白い肌と赤いワンピースが目に映り――腹部から先は無かった。 胸に飾られた緑色のリボンも、端正な顔も、艶やかな金髪も無くなっている。 当たり前だ。今しがた真紅の体は上下に分かれて、上半身は海中に消えてしまったのだから。 「う……ぁ……」 呻くような声が出て、次いで右手が震えだす。 確かに、確かにレナは落下した真紅を掴んでいた。 だが、次の瞬間には腹部が開いていき、あっさりと二つに分かれてしまったのだ。 半分の大きさになった真紅が暗い海に落ちていくのを、レナは見ざるを得なかった。 レナは聡明な少女だ。現職の刑事が感心するほど、その頭脳は切れる。 だから、後藤の最後の攻撃が真紅に届いていたのも何となく察しがついた。 だとしても、それがどうしたというのか。 助けたと思った相手がこのような姿になってしまった衝撃は、真紅の状態に気付けなかった後悔は、 「あ……あああ……ああああぁぁ」 彼女にとっては余りにも大きく、ただ嘆きと涙をこぼれさせるしかなかった。 【一日目黎明/E-1 中央部】 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]無し [所持品]支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK 空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン [状態] 健康、悲しみ [思考・行動] 基本思考 元の世界に帰る。 0:??? 1:圭一、魅音、詩音、沙都子、悟史と合流する。 2:翠星石と蒼星石も探す。 3:水銀燈、後藤を警戒。 [備考] ※真紅と情報交換をしました。 ※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。 【支給品紹介】 【煙幕弾】 魔界にて売られているアイテム。値段は600マッカ。 ゲームでは使えばボス以外の敵から確実に逃げられる。 このロワでは数分間煙幕を張り、その間は方向感覚を狂わせる効果があるとした。 【空飛ぶホウキ】 その名のとおり空を飛ぶホウキ。 効果はフライングボードと似ているが、こちらの方が高性能である。 ■ ■ ■ 「どうなってるのかな?」 「分からないけど……とりあえずは、助かったようね」 助かったと断定したのは、先程まであった後藤の威圧感が綺麗さっぱり消え去ったからだ。 安心したが次に自らの傷口を見て、真紅は諦観の混じった溜め息を吐いた。 自慢のワンピースは真一文字に切り裂かれ、体は半分以上が切られている。 風が吹くたびに傷口を通り抜けて冷えた。 展開した障壁が紙のように破られ、自分の体を刃が通過する感触は案外あっさりとしていた。 真っ二つにこそされなかったので即死こそしなかったが、どのみちこの傷では長くはないだろう。 不幸中の幸いは、レナまで届かなかったことか。 もし切られていれば、今頃は二人とも海の中だったろう。 もっとも、真紅はこれからそうなりそうだが。 「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」 「え? うん、分かった」 レナに陸に降下するように頼むが、真紅はそれまで耐えられそうもない。 目は霞が掛かり、頭はどこか眠たそうに上下している。 レナはまだ真紅の状態に気付いていない。 取り乱されても困るから、真紅も言わない。 高度が下がっていく中で、真紅はぼんやりと考えていた。 最後にレナに何か伝えたかったのだ。 付き合いは数時間にも満たない。 それでも彼女がとても優しい性格をしているのは知っている。 自分が停止すれば、レナがとても悲しむのを想像するのも容易い。 これからも殺し合いを生き抜かねばならないのに、あまり一人の死に捕らわれるのは好ましくない。 せめて、何か餞別の言葉を言いたかった。 瞬間的に真紅が思い浮かんだ言葉は一つしかなかった。 それは、かつてのミーディアムである少女と別れる際に送った言葉だ。 もう一度使うとは思っていなかったが、友人に送る物としてはこれが相応しいと真紅は思った。 「レナ……立派なレディになりなさい」 「え?」 そこで、真紅は自分の体が傾いていくのを感じた。 無念はいくらでもある。 まだ水銀燈に謝っていない。翠星石や蒼星石のことも心配だ。 自分を待っている者たちも居る。 何よりも、最愛の父とまだ再会していない。 それでも、真紅は襲い掛かる眠気にその身を任せた。 抗うだけの余力は残されていなかった。 最後に幻視したのは父の姿ではなく、いつも賑やかだった桜田家の日々。 最後に聞こえたのはレナの自分を呼ぶ声と、 パキリ! 自分の体が泣き分かれる軽い音だった。 薔薇乙女は少女に言葉を送り、海中に没した。 せめて、優しい少女が困難に立ち向かえるようにと願いを込めて。 ボディの半分は沈み、後に残るは残光のように輝く赤い宝石だけ。 【真紅@ローゼンメイデン 死亡】 ※真紅の上半身とデイパック(支給品一式、手鏡@現実)はE-1 西部の海中、 真紅のローザミスティカは海面を漂っています。 時系列順で読む Back 真実の果てに Next 仇敵 投下順で読む Back 真実の果てに Next 仇敵 025 二人の秘め事 竜宮レナ 077 命の価値 真紅 GAME OVER 008 私がトーキョーに送ってあげる 後藤 072 Ultimate thing(前編)
https://w.atwiki.jp/aaa333/pages/7061.html
ぅ? -- リリアン (2009-04-14 16 19 00) ? -- リリアン (2009-04-14 16 19 29) コメントよろしくお願いします。 -- レナ (2009-04-14 16 20 22) 上手いですねー。風船和みます(´∀`)ノ ピンクのうさふうせん欲しいなぁw -- なっしー (2009-04-14 16 21 05) あ~ぅ・・・・・(昨日>>通信でどの村におでかけする?・・・でレナsのかいてなかったの。 -- リリアン (2009-04-14 16 21 28) うーんなごましい絵だ!(そんな言葉は・・ 今創りました。上手いですね!風船は画力を引き出す最もな絵かな -- カントリー (2009-04-14 16 22 22) ももうさふうせん -- リリアン (2009-04-14 16 23 36) 私もリリアンさんの友達コード登録しないとだめみたいです^^ -- レナ (2009-04-14 16 25 53) 前、ほかの人ともできませんでした。あっちとうろくしてたのに・・・ -- リリアン (2009-04-14 16 28 10) たぶんワイファイがつながっていなかったんだと思います -- レナ (2009-04-14 16 33 25) 門開けたっていってました。なんか壊れているのかな? -- リリアン (2009-04-14 16 34 52) あたしゎwi-fiにつないでいます。 -- リリアン (2009-04-14 16 37 22) 壊れてはいないと思いますが・・・(-.-) -- レナ (2009-04-14 16 38 28) またいつかためしてみます? -- リリアン (2009-04-14 16 39 51) 他の人とはできるんです。 -- リリアン (2009-04-14 16 41 01) とりあえずは友達コードを教えてください^^ -- レナ (2009-04-14 16 42 01) こういう雰囲気になっていますが、コメントもよろしくお願いします -- レナ (2009-04-14 16 46 46) そろそろおちます^^ -- レナ (2009-04-14 16 58 07) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/265.html
罪滅しと、新たな罪と(中編) ◆0RbUzIT0To (非登録タグ) パロロワ ニコニコ動画バトルロワイアル 第百十四話⇔第百十五話 第百十五話⇔第百十六話 かっこ良すぎる外山 覚醒K1 「前原圭一、只今参上!! 博之さんは……ティアナさんはどこだ!?」 「妖精ポケモンピッピ、只今参上!! ……ってうわぁ! やっぱりオタチがいるよ……あわわわわ」 二人の戦士の内、一人は右手に鋸を持ち辺り一面を見渡しこの場にいる人間の顔を順々に見ていった。 そして、もう一人の戦士は博之の足元にいるヲタチに勝手にビビり一緒にいた男の影に隠れようとするが寸前で思いなおしたように対峙する。 一方、少女は突然現れた二人組に警戒の目を寄せ博之は再び状況がわからず不安そうにヲタチの影に隠れる。 だが、キバは二人にそれを止めるよう促して言う。 「安心して妹ちゃん、博之さん。 こいつは……少なくともこの男は俺達の敵じゃない……むしろ、今の状況じゃこれ以上ないくらい頼れる味方だ」 「ど、どういう事ぞ? っていうかその男、なんで俺やティアナの名前知ってんねん」 「俺や……って事はあんたが博之さんか、水銀燈から頼まれて加勢に参上したぜ! さぁ、襲ってきた奴らはどこだ!? もう逃げちまったのか!?」 博之の疑問に答えながら、手に持った鋸を構える圭一。周囲を見渡すものの敵らしき影は見当たらない。 最初は少女のすぐ近くにいる銃のようなものを腕につけた奴が襲撃者かと思ったが、こちらに攻撃をしてこないようだし恐らく違うだろう。 逃げたか、それとももう戦いは終わってしまったのだろうか。終わったのならばそれに越した事はないが、ティアナという人はどうしたのだろうか。 それらの疑問に答えるべく、キバは圭一の下に歩み寄り肩を掴む。 「落ち着け圭一、COOLになれ!」 「俺はいつでもKOOLだ! っていうか誰だお前?」 「俺はキバ……いいか、時間が無いから端的に話させて貰うぞ」 そう言い、キバは圭一に事の次第を最初から簡単に話していった。 自分とレナと外山との出会い、レナの行動の特徴、そしてこの塔で今さっきまで起こっていた事。 レナに関する全ての事柄と、レナに今襲い掛かっている最悪の病の話まで。 最初は胡散臭そうな目でキバを見ていた圭一も話を聞く内に次第にその目に真剣みを増してゆく。 そう、今のレナの症状……それはかつての。 「俺みたいじゃないか……!」 仲間を信じず、頼らず、何も信じようとせずに。 ただただ、周りを疑う事ばかりで酷い罵声や暴力を振るう。 それは正に、いつかの自分と全く同じ行動。 その病の名は、雛見沢症候群。 「雛見沢症候群……そうだ、この薬!」 デイパックの中に入っていた薬を手にしてキバに見せる。 雛見沢症候群治療薬、これを持って自分がこの場にこれたのは何かの運命なのだろうか。 「キバ、レナは今塔の中にいるんだな?」 「ああ……早く行かないと外山さんやティアナさんも危ない状況だ」 それを聞くと同時に、圭一は鋸を握る力を更に強めた。 そして、塔を見上げる。 この中に自分の仲間が……かつての自分のように、過ちを繰り返そうとしている。 それだけは、なんとしても止めなければならない。 もう二度と惨劇など繰り返してはならないし、その罪をレナにまで課す訳にはいかない。 それが例え運命だろうと。 「そうさ……運命は、打ち破れるんだからな!」 そうだ、運命は打ち破れる。 強い意志と団結の心があればどれだけ強固な運命だろうと、砕けるんだ。 「話はわかった、でもアイツを殺すのだけは待ってくれ。 アイツは俺の大事な仲間で、アイツは俺と同じように過ちを犯そうとしているんだ。 それが許されるような事じゃないのはわかってる……でも、俺にチャンスをくれ」 博之と少女はその言葉に突き動かされたかのように、首を縦に振る。 その様子を見、二人に感謝の意を伝えると圭一はすぐさま走り出した。 キバの話を聞いた限りではレナが塔の中に入って結構な時間が経過してしまっているらしい。 だとしたら、急がなくてはならない。 ピッピを引き連れ、塔の中へと続く扉を開いたその時。 「圭一、受け取れ!」 キバが圭一に向けて、何かを投げて寄越した。 反射的に振り返りそれを左手で受け取る。 既に表面はベこべこに凹んでいるものの、それは十分な武器となろうもの。 だが、キバがそれを寄越した意味は武器にしようとしてではない。 それが圭一にとって、特別なものであると知っているから渡したのだ。 「レナを頼むぞ、圭一!」 「ああ……任せとけキバ!」 そう言い、圭一は塔の中へと侵入していった。 キバから受け取った金属バットを高々と掲げながら、威風堂々と。 「すみません博之さん、勝手に渡しちゃって……」 「別にええよ、どうせ金属バットなんて使えんしの……」 元々は博之の持ち物だった金属バットを圭一に渡してしまった事を博之に謝るキバ。 だが、当の博之は全く意に介さずそれよりも、と頭を捻っている。 声だけで状況はよくわからなかったが、あの圭一という男がレナの仲間であるという事だけはわかった。 しかし、つい勢いで塔の中に行く事を許してしまったが本当にあれでよかったのだろうか。 よくよく考えてみれば、あの男にとっても危険極まりない状況だ。 「大丈夫です、アイツは奇跡を起こせる奴ですから」 「……奇跡?」 数ある輪廻の世界の記憶を受け継ぐという奇跡を起こした男。 そして、その果てに後悔と覚悟を決めた男。 だからこそ、全てを任せるに値する男。 「キバくん、私達も行こう?」 「えっ?」 「そうやの……奇跡なんてもんで、簡単にカタつけれたらええけど……そうもいかんやろ、多分」 少女は鋏を持って立ち上がり、博之もキバに捕まるようにして緩やかに立つ。 少女は圭一の言っていた言葉が気になっていた。 過ちを犯そうとしている、それは許される事ではないと言った。 でも、チャンスをくれとも言った。 自分は既に過ちを犯してしまった後だから、許す許される以前の問題。 だが、それでもチャンスがあるのかもしれない。 彼の、圭一の姿を見ればそれを見つける事が出来るかもしれない。 博之はキバの言っていた言葉が気になっていた。 奇跡。 奇跡とは、実に単純で陳腐な言葉だ。 そもそもそう簡単に奇跡なんてものが起きる訳がないし、起こせる訳もない。 だが、博之はその奇跡を起こしてきた人物を知っている。 実の兄――永井浩二。 数々の野球中継の時に般若心経を唱える事で逆転劇を巻き起こしてきたその人物。 いや、それだけではない。 言ってしまえば駄目人間なのにリスナーに愛され続け、乞食と化してもカリスマとして君臨するその様は奇跡に違いない。 だからこそ、博之は気になった。 彼の……圭一の見せる奇跡というものが、一体どういったものなのか。 「どうせずっとここおっても、あの女が勝ってもうたら終いやろ。 それよりも……俺は近くに行きたい思う」 「…………」 困ったのはキバだ。 目の見えない博之と幼い少女を連れて行くのはやはり危険すぎる。 だが、博之の言う言葉も理解出来るのは事実だ。 それに……確かに、奇跡なんて言葉で簡単に片付けられる程彼らは単純でないのかもしれない。 これが、今ここにいる現実がゲームではない以上、結末が同じになるとは限らないのだ。 だとしたら、圭一も危険になってしまう……。 「……わかりました」 苦渋の選択の末、キバは塔へ行く事を決断した。 博之に手を貸し、もう片方の手で少女の手を引き歩み出す。 博之があまり早く歩けない以上、到着するのは全てが終わってからになってしまうかもしれない。 だが、それでもじっとしている事なんて三人には出来なかった。 三人には三人なりの、目的があったのだから。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 塔の中の階段をレナは駆け足で上っていた。 がりがりがりがり、と喉を掻き毟りながら懸命に。 「待て……待つんだ同志レナ……!」 遥か後方からは外山の声が聞こえる、だが、その声も息も絶え絶えだ。 それを聞きながらレナは内心でにやりと笑みを浮かべる。 予想した通り、外山は追ってきた。 だが、その命は今にも消えゆくかもしれない風前の灯。 当然だ、溢れ出る出血で今生きている事さえ信じられないくらいなのだから。 もうしばらく時間を稼げば外山は死にゆく、そうすればようやく宇宙人を一人始末する事が出来る。 後は戻って博之達を殲滅すればいい、目が見えない男とただの子供ならすぐに殺せる。 キバが生きている事を知らず、レナは勝手な解釈をしながらも更に階段を上っていく。 するとそこに、一人の女の影を見た。 「!!」 「…………」 その女は動かない。 地に倒れ伏し、気絶をしているのか睡眠をしているのかわからないが動かない。 その女は博之と外山が必死に探していた女性、ティアナ=ランスター。 だが、レナが口にした言葉はそれを否定したかのような言葉だった。 「ドッペルゲンガーか!?」 横になって動かないティアナに向けて、そう叫ぶ。 よくよく見れば、幾ら薄暗いからといっても自分の姿と見間違うはずがない。 同じ髪の色をし、大体同じ年頃ではあるもののその纏っている服などはまるで違う。 だが、それでもレナはティアナを自分と見間違えた。 原因は、雛見沢症候群によって巻き起こされた幻覚作用。 「やっぱり宇宙人はいるんだ! 私そっくりの人間まで作り出している!! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやるああああああああああああああッ!!」 まるで自分とは違う人間をドッペルゲンガーと感じ、その正体を宇宙人の仕業と決め付ける。 自分の都合のいいように解釈をし、レナはその鉈を振りかぶった。 そう、相手は動かない人間。 落ち着いてやればすぐに叩ききれるはず……なのに。 「何ッ!?」 その鉈は宙を空振り、ティアナは虚空へと消え去った。 ……消え去った? いや、違う。 そこには元々、何も無かったのだ。 「やっぱり……あんたもこの殺し合いに乗ってるのね!」 声がした方を向くと、そこにはティアナの姿。 鉄パイプを構え、鋭い視線でレナを凝視している。 先ほど倒れこんでいたのはティアナが作り出した幻影であった。 眠っていた間に少しだけ回復した魔力で精製し、己の身の安全の為にその場に置いていたのである。 「塔の中にいきなり叫びながら入ってきて、おまけに階段を上る音まで大きいからすぐに起きたわ。 その鉈を離しなさい、そうでないと痛い目を見る事になるわよ!」 そう宣言するティアナに対し、しかしレナは何も答えられない。 レナの目には寝ていたはずの人間がいきなり瞬間移動をし、しかもこちらに向けて身構えているように見えたのだ。 更に、レナの目に写るティアナの姿は自分のものと全く同じ。 自分が自分に、鉄パイプを向けているのだ。 これが声の違う人間ならばレナもここまで混乱しなかったのかもしれない。 だが、ティアナの発する声の全ては、レナと異常なまでに似通っていた。 「う……あああああああああああああああっ!!」 「! やっぱり止める気は無いのね!」 何も考えられず、ただただ鉈を振り回してティアナへと近づいていく。 だが、ティアナはそれを楽々と避けて見せた。 レナの攻撃には既に全く理性が感じられない、子供が駄々をこねるように乱暴を働くようなものだ。 そのような単純で単調な攻撃ならば、例え接近戦が不得手ではあるもののしっかりとした訓練を受けているティアナにとって避ける事は容易い。 そうして、理性がないからこそ周囲に目をやる事が出来ず、攻撃した後の体は完全な無防備となる。 そのがら空きの体に、ティアナは鉄パイプを思い切り叩き込んだ。 「ぐあああっ!?」 「言ったでしょ、痛い目を見る事になるって!」 横腹を叩きのめされ、呻く。 だがその瞳はまだ諦めていない、全てを諦めていない瞳。 叩かれ、レナは徐々に冷静さを取り戻そうと務めていた。 がりがりがりと喉を掻き毟りながら、目の前にいる自分のドッペルゲンガーを見据える。 ドッペルゲンガーというのなら、自分と能力は同じなはず。 先ほどの瞬間移動みたいなものを考慮すると、宇宙人特有の能力も持っているのかもしれない。 そうだとすれば不利だ、不利に決まっている。 「くっ!」 「逃げた!? 待ちなさい!!」 そう結論づけると、レナは更に階段を上って行く。 ティアナの静止を声を聞かず、ただ淡々と、それでいて素早くだ。 一方のティアナも、レナを追う。 回復したとはいえ既に魔力は幻影を使ってしまったが為に空だ。 塩素ガスを含んだ体は決して健康とは言えないし、コンディションは最悪。 だが、それでも追わなければならない。 あのような人間を野放しにしていてはまた浩二のような犠牲者を出してしまうかもしれないからだ。 しかし、あまりそちらにも時間は裂けない。 博之や水銀燈達の事も気がかりで、早く行って守らなくてはならない。 「"敵は倒す"、"仲間を守る"、"両方"やんなくっちゃならないってのが機動六課の辛いところね。 でも、覚悟はいいわ……私にはそれが出来ている」 ぐっ、と鉄パイプを握る手に自然と力が入る。 そうだ、こんな所で自分は負ける訳にはいかないのだ、そう覚悟したはずだと自分に言い聞かせる。 そうしながら階段を上っていると、ふと背後から何者かの足音が聞こえてきた。 「誰!?」 「ぐ……き、君は……」 「あ、あんた……博之さんの、仲間? でも、その怪我……!」 振り返りその足音の正体を確認する。 そこにいたのは、先ほど見た禿頭の男性。 だが、その右腕は欠落し血がぼたぼたと地面に零れ落ちている。 顔色だって悪い、目も焦点が合っておらず立っているだけでも不思議なくらいだ。 「さっきの女にやられたんですか!?」 「う……む……」 やっぱりそうか、とティアナは内心後悔する。 起きた時は自分の危険を感じ取った為に、安全策として幻影を作り出して誘き寄せたのだが、 こんな事になるくらいならばそんな事をせず問答無用で階段を下りて戦えばよかった。 結局、自分は何も守れてなどいないではないか。 「とにかく、これ以上動かないでください! 本当にもう、動ける事が奇跡なくらいなんですから……安静にしないと!」 「いや……それは出来ん」 必死に外山を説得し、これ以上動かぬよう促すものの外山はそれを聞かない。 鋭い眼光でティアナを睨み、堅い意思を持ってしてなおもレナを追おうとする。 「私には責任がある……同志レナを、多数派にする訳にはいかぬという責任が……。 だからこそ、私はゆかねばならぬ……!」 そう言うと外山はティアナの手を払いのけ、更に上へと上っていった。 それを見てティアナも慌てて後を追う。 ティアナは一瞬、外山の姿を浩二に被せていた。 姿かたちも何もかもが違う、二人。 だが、それでも何故かその姿が被って見えたのだった。 それは、死地に向かおうとするその後姿のせいだったのか。 それとも、カリスマと謳われたものが持つ特有のオーラのせいだったのか。 今のティアナには何一つわからなかったが、とにかく後を追った。 屋上には風が吹きすさんでいた。 太陽は既に東から西へと落ちようとしており、そこに立つ少女を照らし出す。 「同志レナ……!」 屋上へと続く扉を開き、ティアナに肩を貸されたまま外山はその少女を見た。 右腕から血を流しながらも鉈を持ち、狂気の顔を浮かべたその少女を。 「なぁんだ、まだ死んでなかったんだ……。 しぶといなぁ、宇宙人っていうのはやっぱり根本的に体質が違うのかなァ?」 「…………」 肩を貸すティアナに礼を言った後外山は一人、前に出た。 ティアナは、それを見つめている。 この場に来るまでに外山と交わした一つだけの約束事。 それは、外山がしようとする事を一切邪魔立てしない、というもの。 それを聞いたからこそ、ティアナはただ外山の後姿を見つめている。 「同志レナ……」 「何かな? かな? その銃で私を撃つつもりかな? その前に私が頭を叩き割ってあげるけどね!!」 「ぐっ!」 その瞬間、レナは外山に向けて鉈を振り下ろす。 外山は、それを避けようとはしない。 ただあるがままに、当然のようにその鉈を受け入れ、左肩に鉈が食い込む。 「どうしたのかなぁ!? 避けるつもりが無いなんて、殺されにきたのかな!? じゃあお望みどおり殺してあげるよォッ! ……!?」 されるがまま、何も言わない外山に対してレナが吐き捨てるように言うが、突然違和感を感じて驚きの表情を浮かべる。 鉈が……動かない。 外山が、左肩に食い込んだ鉈を激しく握り、離さないのだ。 それは、外山がここに来るまでに思いついた苦肉の策。 己の肉を斬らせ、相手に攻撃の手段を与えなくさせるというもの。 だが、それは思いついてもそうそう楽に出来るものではない。 鉈を食い込ませるほどに肉を斬らせるというのは想像以上に激痛を与えるものだし、 それは既に右腕を失っている外山も知っているものなのだ。 その痛みを知っていながら、その策を行使した外山の覚悟は、恐らく相当なものなのだろう。 「これでようやく話が出来る……聞けェ! 同志レナ!!」 「ッ!?」 口から血の滲んだ唾を飛ばしながら、外山は叫ぶ。 それはまるで、二人が一番最初に出会ったあの時のように。 「私は言ったはずだ……このゲームをスクラップ&スクラップしてみせると! そして、君もそれに同意をしてくれたはずだ!!」 「うるさい、黙れ!! 貴様は嘘をついたんだ!! 私を騙して、殺すつもりだったんだ!!」 叫ぶ外山に、再びレナは罵声を浴びせる。 そうだ、嘘だったんだ、全ては。 このゲームを潰すといっていたことも、同志を集めるといっていたことも、何もかもが。 全て私を……竜宮レナを殺す為の方便。 口先だけが上手い人間の取った、愚かな手段だ。 「嘘!? 嘘と言ったな、同志レナ!! いいや、それは違うはずだ……何故なら君はあの時私に感銘してくれたじゃないか!! あの時の感情すら、君は嘘だと言い張るつもりか!?」 「ッ!」 そう……確かにレナはあの時、外山の言葉に感銘を受け、感動した。 この人になら全てを話してもいい、素直にそう思った。 だからこそ宇宙人の仕業だと、この殺し合いの根本の部分を教えたし頼りきろうと思った。 甘い人間だと思ったけれど、それと同時に人のいい人物だと思った。 素直に、尊敬できる人物だと……。 「私は……私は、今でも信じている!! あの少年の死体の横で誓った、我々の契りの事を!! このゲームを必ずスクラップ&スクラップしてみせると言った、君の事を!!」 「う……ああああ!!」 そうだ、確かに誓った。 皆を助ける為にこの殺し合いを必ず潰してみせると。 だから、そのためにも宇宙人を叩き潰すと、叩き割ると。 皆? 皆って一体、誰だろう? 外山さんの事か、キバさんの事か。 いや、違う……違う違う違う違う違う! 「君は今、混乱してしまっているだけなのだ! だから何もかもを破壊しようとし、すぐに人を宇宙人と言いたがる!! 考えても見ろ、何故我々が宇宙人なのだとしたら君一人を襲わなければならない!! こんな舞台を用意しなくてはならないのだ!!」 それは……そうだ、そんな事ありえないんだ。 私以外の、竜宮レナ以外の人間全てが宇宙人なんだとしたらこんな事をする必要がない。 でも、それは……違う、違う!! 「私は間違ってなんかいない! 外山さん達は……宇宙人なんだ!!」 外山の事を、再び敬称付けで呼んでいるという事にレナは気付かない。 その瞳の色は徐々にではあるが薄暗かったものから輝きを取り戻し始めていた。 だが、まだ足りない。 レナは未だに混乱の淵に陥り、何が正しくて何が間違っているのかの区別がついていない。 理性的に考えているつもりでも、全て感情論に任せてしまっている。 だからこそ、外山は紡がなければならない。 レナの間違ってしまった思考を、病んでいる病を、スクラップ&スクラップしてしまう言の葉を。 「いい加減にするんだ、同志レナ!! 己の間違いを認め、それを踏み越えて君は立たなければならない!! 君にはその力がある、意思がある! ただ、君はその方向性を間違えてしまっただけだ!! 過ちは正せばいい、それは楽な道ではないが……君なら出来る!! いや……君と、君の仲間がいれば!!」 「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」 ついに精神が限界まで来てしまったレナは、外山を蹴り飛ばし鉈を取り戻す。 違う、自分は決して間違っていない。 これは全てまやかしだ……嘘だ、嘘なんだ! 自分を騙そうとする宇宙人の陰謀なんだ、だから、すぐに外山を殺さなければならない。 殺せ、殺せ、殺せ! 鉈を振りかぶり、倒れこんだ外山めがけて振り下ろす瞬間、外山の口が動いた。 それは……いつの日か、自分がどこかで言った言葉。 その時の自分は、外山のように何一つ抵抗する事がなく……紡いだ言葉……。 大切な、仲間に対して……それは、言ったはずだ。 「私を……信じろ!!」 「ッ!?」 その言葉を聞いた瞬間、鉈を持つ手が動かなくなった。 振り返り見てみると、そこには先ほどまで外山の背後に立っていた女の姿。 ……違う、あの時見ていたのは確かに自分のドッペルゲンガーだったはずだ。 なのに今は……ぜんぜん違う、女の人の顔になっている。 「離せ……離せぇぇぇっ!」 「……よく見なさい、もう無駄よ」 暴れるレナに対して、ティアナは冷静に……だが、悲痛な表情でそう告げる。 そう、レナがしようとしていた事は無駄だった。 外山に向かって鉈を振り下ろす……つまり、外山を殺そうとするのは。 何故なら、外山は……。 「……もう絶命してるわ」 「!?」 外山は……仰向けになり、瞳を閉じていた。 口からは血が垂れており、それは肩や右腕も同じ。 鉈による攻撃を体に再三受け、それでも決して気絶せず倒れもせず。 ただひたすらに、少女を説得しようとした革命家。 弁舌に秀でた、ファシスト外山恒一は……もう二度と、その瞳を開ける事は無い。 「あ……」 「……あれだけの出血で、生きていた事の方が不思議でならないわ。 よっぽど、あんたを助けたかったんでしょう」 どこで何を間違ってしまったのだろう……。 ……間違い? 違う……私は間違ってなんか、いなかったはずだ。 そうだ、宇宙人は……宇宙人? 外山さんは、宇宙人だったのだろうか……。 宇宙人が、命を投げ捨てて説得を? いや、そもそも宇宙人って……。 「う……うあああああああああああ!!!」 「っ!?」 腕を掴むティアナを引き離し、暴れまわる。 レナは既に自分を取り戻しつつあった、自分の過ちを認めつつあった。 だが、それでも完全に認める訳にはいかない。 それは人間として、普通の行動。 自分が間違っていると認めるよりも、誰かが間違っていると認めた方が楽なのだ。 それが、人を殺した、殺していないなどという重い罪となればより一層。 「私は……私は……!!」 あべこべに腕を振り乱し、辺りを動き回る。 何が正しくて、何が間違っているのかわからない。 それに答えてくれる人物は、死んでしまった。いや、自分が殺してしまったのだ。 答えてくれる? 違う違う、あいつは宇宙人だから……だから……。 ぐらり……と視線が揺れる。 「えっ?」 「危ない!」 何もわからず、わかろうとせず、何も見ていなかったレナは自分の状況に気付いていなかった。 彼女は今、屋上の端で暴れていたのだ。 周囲を見ていれば、或いはその状況に気付いたかもしれない。 だが、無情にもレナの体は……屋上の外へと投げ出されようとしていた。 ティアナは、引き離された勢いで倒れこんでおり今からでは助けられない。 死ぬのだろうか……自分は、何を間違えたのか、知らないまま……。 レナの体が完全に空中に投げ出される寸前、一つの影が倒れこんだティアナの横を駆け抜けた。 「レナアアアアアアアアアアアアアッ!!」 その声には聞き覚えがあった。 そう、いつも学校で聞いているその声。 少しエッチで、お馬鹿さんで、だけど凄く勇敢でいつも仲間の事を考えている人。 自分が……自分が、大好きな人。 「圭……一……くん?」 そうだ……雛見沢の人間は、自分の周りの人間は皆宇宙人に支配されてしまったはずなんだ。 だから、この男も宇宙人だ、宇宙人なんだ。 そう思おうとするものの、レナの瞳には涙が浮かび上がってしまう。 何が正しいのか、何が間違っているのかはわからない。 でも……少なくとも、今この男は……前原圭一は、竜宮レナを救おうとしている。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」 圭一が、レナの腕を掴む。 しっかりと組んだその手は、絶対に離す事は無いという意思の表れか。 運命を打ち破ると誓った男はそのままレナを引き戻そうとし……そして……。 レナの代わりに、宙へと投げ出された。 レナは地面に足をついた瞬間、思わず反射的に踏ん張った。そして、勿論圭一もレナを引き戻そうとして踏ん張る。 両極から働く力が二人を回転させ、レナを地上に圭一を宙へと投げ出してしまった。 だが、それでいいとばかりに圭一は笑みを浮かべる。 その顔を見て……レナは、圭一に外山の影を被せた。同じだ……二人共、同じだ。 勿論、二人共が宇宙人なのだなどというつもりはない。 二人は人間で、勇敢で、人の為になら命だって投げ出そうとする……。 私の、仲間なんだと。 「圭一くん!!」 「圭一!!」 レナの隣から、何者かの声が聞こえた。 宙に投げ出された圭一は、すぐさまその手を離してしまう。 握っていてはレナまで巻き添えにして落ちてしまう。 だから……これでいいのだと、悟りきったような表情で。 だが、レナにとってはこれほど残酷な事はない。 ずっと違うと思っていた、宇宙人だと、敵だと思っていた人達が本当は全然違って。 自分が勘違いをしてしまったが為に、暴れまわってしまったが為に、その命を失ってしまう。 自分の為に……二人も仲間を殺してしまったのだ。 悲しみと絶望に暮れようとするレナ。 しかし、落下しながらも圭一はレナに一つの言葉を残すべく口を動かした。 ようやく会えた……かつての自分と同じように、間違いを犯してしまった仲間に対して。 一瞬だけの再会で残せる言葉は一つだけ。 だからこそ……大切な言葉を残す。 「俺は……お前を許すぞ、レナ!!」 ただそれだけを言い残し、圭一は塔から落下していった。 それだけが彼なりの……竜宮レナに対して出来る、罪滅しだった。 sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 時系列順 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 投下順 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 外山恒一 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 前原圭一 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 永井博之 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 竜宮レナ sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) 友人 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) キョンの妹 sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) ティアナ=ランスター sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編) sm115:罪滅しと、新たな罪と(前編) ピッピ sm115:罪滅しと、新たな罪と(後編)
https://w.atwiki.jp/576323/pages/37.html
第53話「セレナの本気! 激走メェークルレース!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ヤンチャム:下屋則子 ホルビー:赤﨑千夏 マーイーカ:三宅健太 サキ:生天目仁美 ナレーション:石塚運昇 第54話「カラマネロ対マーイーカ! 絆は世界を救う!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ホルビー:赤﨑千夏 マーイーカ:三宅健太 ライボルト:新田英人 カラマネロ:竹内栄治 カラマネロ:最上嗣生 ジュンサー:石松千恵美 ナレーション:石塚運昇 第55話「最弱のドラゴン!? ヌメラ登場!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヌメラ:赤﨑千夏 ヒノヤコマ:寺崎裕香 ハリマロン:生天目仁美 マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第56話「デデンネがんばる! ヌメラのために!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤﨑千夏 ヤンチャム:下屋則子 マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第57話「バニプッチ・パニック! ホワイトアウトはこおりごおり!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ゲコガシラ:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 バニプッチ:朝井彩加 フクジ:緒方賢一 ジョーイ:赤﨑千夏 店主:徳本英一郎 ナレーション:石塚運昇 第58話「ヒヨクジム戦! ゲコガシラVSゴーゴート!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ゲコガシラ:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ルチャブル:三木眞一郎 フォッコ:林原めぐみ フクジ:緒方賢一 ピエール:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第59話「サトシとセレナ初デート!? 誓いの樹とプレゼント!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤﨑千夏 マーイーカ:三宅健太 フクジ:緒方賢一 店員:徳本英一郎 ナレーション:石塚運昇 第60話「目指せカロスクイーン! セレナ、デビューです!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ヤシオ:佐久間レイ サナ:小堀友里絵 ピエール:三宅健太 係員:赤﨑千夏 ナレーション:石塚運昇 第61話「荒野の決闘! 戦えヌメラ!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 マーイーカ:三宅健太 ヌメラ:赤﨑千夏 バネブー:下屋則子 ブーピッグ:野川雅史 ナレーション 石塚運昇 第62話「サイエンスの未来を守れ! 電気の迷宮!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ゲコガシラ:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ホルビー:赤﨑千夏 ルクシオ:植竹香菜 マーイーカ:三宅健太 レントラー:斎藤寛仁 ボルト:最上嗣生 ナレーション:石塚運昇 第63話「迷い道は分かれ道!? ムサシとソーナンス!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤﨑千夏 マーイーカ:三宅健太 ホワイト:箭内仁 ベリー:榎本温子 シトロイド:興津和幸 ポケモンハンター:粟津貴嗣 ナレーション:石塚運昇 第64話「フォッコVSマフォクシー! 華麗なるパフォーマンスバトル!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 レントラー:斎藤寛仁 ヒノヤコマ:寺崎裕香 エル:井上麻里奈 ピエール:三宅健太 ジョーイ:赤﨑千夏 ナレーション:石塚運昇 第65話「カメール、ライチュウ登場! ヌメイルがんばる!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヌメイル:赤﨑千夏 ヒノヤコマ:寺崎裕香 マーイーカ:三宅健太 ティエルノ:勝杏里 ナレーション:石塚運昇 第66話「ミアレシティ捜査線! シトロイド対ブラック・シトロイド!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ヌメルゴン:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 エリキテル:慶長佑香 エレザード:田丸篤志 ベルモンド:津田健次郎 パンジー:遠藤綾 リモーネ:金光宣明 ジュンサー:石松千恵美 ナレーション:石塚運昇 第67話「ミアレジム戦! サトシVSシトロン!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ルチャブル:三木眞一郎 ヌメルゴン:うえだゆうじ テールナー:林原めぐみ ヤンチャ:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤﨑千夏 エレザード:田丸篤志 リモーネ:金光宣明 ナレーション:石塚運昇 第68話「狙われたメガシンカ! ガブリアスの絆!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ マーイーカ:三宅健太 プラターヌ:土田大 アラン:小野賢章 リモーネ:金光宣明 カルネ:折笠富美子 ジュンサー:石松千恵美 ソフィ:小橋知子 ナレーション:石塚運昇 第69話「湿地帯の戦い! ヌメルゴン対フラージェス!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ヌメラ:赤﨑千夏 マダツボミ:綿貫竜之介 カイロス:最上嗣生 ケンゾウ:相沢まさき ナレーション:石塚運昇 第70話「決着! ヌメルゴン虹の彼方に!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ヒノヤコマ:寺崎裕香 ホルビー:赤﨑千夏 マーイーカ:三宅健太 マダツボミ:綿貫竜之介 カイロス:最上嗣生 ケンゾウ:相沢まさき ナレーション:石塚運昇 第71話「運勢最悪? ユリーカ対ニャース!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤﨑千夏 レントラー:斎藤寛仁 マーイーカ:三宅健太 ゴロンダ:最上嗣生 ナレーション:石塚運昇 第72話「こわいイエのおもてなし!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 コール:金尾哲夫 ナレーション:石塚運昇 第73話「ファッションショーでバトルです!タツベイVSシュシュプ!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ゲコガシラ:うえだゆうじ ルチャブル:三木眞一郎 ヒノヤコマ:寺崎裕香 テールナー:林原めぐみ タツベイ:深谷悠 マーシュ:雪野五月 キリカ:高橋未奈美 カレン:上田麗奈 ニンフィア:赤崎千夏 シュシュプ:生天目仁美 ナレーション:石塚運昇 第74話「クノエジム戦!美しきフェアリーの罠!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ヒノヤコマ:寺崎裕香 ルチャブル:三木眞一郎 キモリ:うえだゆうじ マーシュ:雪野五月 キリカ:高橋未奈美 カレン:上田麗奈 ニンフィア:赤崎千夏 シュシュプ:生天目仁美 ナレーション:石塚運昇 第75話「ライバルバトル3本勝負!明日に向かって!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ソーナンス:うえだゆうじ ダイゴ:鈴村健一 ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏 レントラー:斎藤寛仁 マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第76話「風とタマゴとオンバット!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎、 ニャース:犬山イヌコ ゲコガシラ:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第77話「挑戦ポケモンスカイリレー!飛べ、オンバット!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ マーイーカ:三宅健太 オワゾー:坂東尚樹 オルニス:梅原裕一郎 ヒノヤコマ:寺崎裕香 ムックル:赤崎千夏 ムクバード:林大地 ムクホーク:最上嗣生 アナウンサー:石狩勇気 ナレーション:石塚運昇 第78話「ピカチュウはスター!?映画デビュー!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ルチャブル:三木眞一郎 テールナー:林原めぐみ フランク:高木渉 ジーン:下屋則子 マダムピカチュウ:伊東みやこ ナレーション:石塚運昇 第79話「激闘モンスターボール工場!ピカチュウVSニャース」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ、 ヒノヤコマ:寺崎裕香、ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 レントラー:斎藤寛仁 マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第80話「テールナーとヤンチャム!魅せろ炎のパフォーマンス」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ミルフィ:真堂圭 サキ:生天目仁美 モナーク:水谷優子 ティエルノ:勝杏里 サナ:小堀友里絵 トロバ:代永翼 プラターヌ:土田大 エル:井上麻里奈 ピエール:三宅健太 ヤンチャム:下屋則子 ニャオニクス♂:赤崎千夏 ナレーション:石塚運昇 第81話「時をかけるサトシ!ロトムの願い!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ヨルトン:小形満 ロトム:石川界人 マントル:三宅健太 ワルビアル:山本兼平 部下A:西山宏太朗 部下B:最上嗣生 審判:菊池幸利 ナレーション…石塚運昇 第82話「パンプジンフェスティバル!さよならバケッチャ?」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏 ヤンチャム:下屋則子 マーイーカ:三宅健太、パンプジン:伊東みやこ バケッチャ王子:山下大輝 パンプジンA:最上嗣生 ナレーション:石塚運昇 第83話「雪山をこえて!マンムーとユキノオー!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也、デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ、コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ オンバット:寺崎裕香 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏、マーイーカ:三宅健太 パンプジン:伊東みやこ マンムー:野瀬育二 ナレーション:石塚運昇 第84話「ハリマロン!はじめてのおつかい!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 ヒノヤコマ:寺崎裕香 ヤンチャム:下屋則子 ホルビー:赤崎千夏 レントラー:斎藤寛仁 マーイーカ:三宅健太 パンプジン:伊東みやこ ナレーション:石塚運昇 第85話「折れた小枝・折れた心!テールナーの強き思い!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ジョーイ:赤崎千夏 ジンゴロウ:糸博 エルレイド:神田みか コジロウの母:兵藤まこ ナレーション:石塚運昇 第86話「シャッターチャンスはファイヤー! 伝説を撮れ!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:伊瀬茉莉也 デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヒノヤコマ:寺崎裕香 ファイアロー:井之上潤 トロバ:代永翼 ファイヤー:各務立基 ナレーション…石塚運昇 第87話「ユリーカお世話です!甘えん坊のチゴラス!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ホルビー:赤崎千夏 オンバット:寺崎裕香 ファイアロー:井之上潤 パンプジン:伊東みやこ マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第88話「追憶のトレイン! シトロンとホルビー!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ホルビー:赤崎千夏 ナレーション:石塚運昇 第89話「イーブイはひとみしり!?お花畑でつかまえて!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎、 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ファイアロー:井之上潤 オンバット:寺崎裕香 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏 レントラー:斎藤寛仁 パンプジン:伊東みやこ マーイーカ:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第90話「タッグバトルは友情バトル!イーブイ初参戦!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 テールナー:林原めぐみ ヤンチャム:下屋則子 ゲコガシラ:うえだゆうじ ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏 サナ:小堀友里絵 フシギソウ:犬山イヌコ ティエルノ:勝杏里 ナレーション:石塚運昇 第91話「ハッピーダンスはクイズのあとで!?トライポカロン・ヒャッコク大会!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 ハリマロン:生天目仁美 ホルビー:赤崎千夏 パンプジン:伊東みやこ サナ:小堀友里絵 ティエルノ:勝杏里 ネネ:くまいもとこ ムチュール:寺崎裕香 ピエール:三宅健太 ナレーション:石塚運昇 第92話「カロスの危機!巨大日時計の戦い!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ヤンチャム:下屋則子 プラターヌ:土田大 ソフィ:小橋知子 コゼット:安野希世乃 ゴジカ:勝生真沙子 シェリル:冨岡美沙子 キャリー:潘めぐみ ナレーション:石塚運昇 第93話「ヒャッコクジムのダブルバトル!ゴジカの未来予知!!」 サトシ:松本梨香 ピカチュウ:大谷育江 セレナ:花澤香菜 シトロン:梶裕貴 ユリーカ:かないみか デデンネ:雨宮天 ムサシ:林原めぐみ コジロウ:三木眞一郎 ニャース:犬山イヌコ ソーナンス:うえだゆうじ ファイアロー:井之上潤 プラターヌ:土田大 ソフィ:小橋知子 コゼット:安野希世乃 ゴジカ:勝生真沙子 ニャオニクス♂:下屋則子、 シェリル:冨岡美沙子 キャリー:潘めぐみ ナレーション:石塚運昇
https://w.atwiki.jp/storytellermirror/pages/663.html
LUNAR -さんぽする学園- 15-142~143 142LUNARさんぽする学園sage2005/05/14(土) 14 38 06 ID mRzKp7Ko 【主人公紹介】 エリー:炎の魔法が得意な女の子。ノッポで影が薄い。たぶんメイン主人公。 レナ:回復魔法が得意な女の子。チビだけど存在感バリバリ。エリーと同い年。 【本編】 動く島イェンに建つイェン魔法学園。 彼等は移動する先々で魔法使いの素質あるものをスカウトしていました。 「勉強する」という概念が無いほどの田舎の農村の娘っ子、エリーとレナは 「3年間食事タダ」の売り文句に釣られてスカウトされていきます。 一週間後、イェン島に集まる少年少女達。ですが入学に際して行なわれた 性格診断テスト(魔法で作り出された無人のイェン島でサバイバル)のせいで 男子生徒と女子生徒の仲は最悪に。エリー達の活躍で女子優勢ですがw その後、レナの発案で楽そうな化粧魔法講座に入り、講座のケモノっ娘セニアと 仲良くなってパーティーを組みます。 そうこうする内に事件発生。悪魔城の主人メンフィス(魔族)により 優秀な男子生徒が次々さらわてゆきます。そこへセニアの幼馴染アズ(人間)が イェン島にやって来るのですが彼もまたさらわれてしまいます。 救出のためエリー達はアジトの洞窟へ。 「族長の娘、命の恩人、惹かれあう2人、親の決めた許婚、突然の拒絶」 勝手に盛り上がるセニア&アズは「あたしたち、結婚します」と言って故郷へ 帰っていってしまいました。メンフィスを逃がしたというのにです。 1年が過ぎ、新入生入学の季節。新入生ウィン(♂)に悪魔城の女主人バルア(魔族)が 接近してきます。そして性格診断テストを抜け出し学園を破壊して逃亡するウィンと 成り行きで追いかけるエリー&レナ。戦いになるもウィンにまったく歯が立たない2人。 そこへスカウトじいさんことグレンが駆けつけてウィンをKO、ウィンが暴れ出したのは 操られていたためであることを知ります。 「操られるなんて頼りない」「あたしが入学した時はもっとしっかりしてたわよ」 と蔑むレナの言葉尻を取ったグレンは呪いを掛けた術者を倒すため「しっかりした先輩」 と共に最近学園を騒がす魔族の城へワープします。 「いい歳して若い男の子を手込めにしようだなんて身の程知らずもいいとこね!」 かっ飛ばすレナ(とその他)は見事バルアを倒し呪いを解くことに成功します。 ですが、ウィンをあきらめたわけじゃないと捨て台詞を吐くバルアには逃げられます。 ウィンの時間魔法の才能を見抜いたグレンによりウィン(とおまけのエリー&レナ)は 学園長に預けられることになりました。 特待生になって学園長の指導を受ける3人。 といっても実際は学園内のトラブル解決に走り回る便利屋みたいなものでした。 どんなトラブルもまかせておけと胸を叩くレナの気風の良さに惚れるウィン。 「レナさんって素敵だなぁ」 でもレナはウィンみたいな自分に自身を持てないタイプが大嫌いでした。 未来を予知して危機を未然に回避する「時の番人」になればモテモテになるぞ というグレンの言葉を信じて特訓するウィン。 頑張っても頑張っても全然振り向いてもらえませんでしたが。 10年に1度イェンを訪れる青い竜。 天文魔法教師が実験のため捕らえたところをメンフィスに奪わます。 青竜の魔力を吸い尽くしたメンフィスにさしものグレンも敗れ去ってしまいますが 青竜の魔力が強すぎて自己崩壊しだしたメンフィスをエリー達は打ち破ります。 さらに、密かに回収した青竜の魔力とメンフィスの魂の力で移動要塞と化した 悪魔城でイェンに襲い掛かってきたバルアとの最終戦にも勝利するのでした。 そして卒業の日。 ワンランク上のヴェーン魔法学園からの誘いを受けたエリー&レナは 学園の皆の祝福を受け旅立ってゆくのでした。 ~おしまい~ 143LUNARさんぽする学園sage2005/05/14(土) 14 40 04 ID mRzKp7Ko 【おまけ/レナ&ウィン最後の会話】 「レナさん好きです! 大好きです! 世界中の誰よりも!!」 「・・・それで?」 「待ってて下さい、ヴェーンで! 立派な時の番人になって迎えに行きます! だからその時まで・・・僕を、僕のことを!」 「ウィン・・・いいわ、待っててあげる? でもヴェーンにイイ男がいたら分かんないわよ。フフッ」 「え、レナさん・・・」 「クスクス、冗談よ、待っててあげる! じゃあね? ウィン!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ おまけって、1レスに収まらなかっただけですけどねw それからスパロボOG2買ってきました。ちょっとやったら伏線だらけでワケワカメ でも頑張って今スレ中にはまとめるつもりなので予約しときますね。
https://w.atwiki.jp/shineoflife/pages/135.html
翔平「あいつ、年上だよな?」 エミ「2つね、でも幼馴染だから・・・」 ケイ「なんか悪い事したかな」 エミ「私から頼んだんだもん・・・あんた達は何も悪くない」 ミナト「さて・・・これで誤解も解けたんだ、しばらくこの民宿を借りるとしよう」 エミ「船なら私の使ってる買い出し船でよければ、それで行こうよ」 柴竜「お前、マジで俺らについて来れるのか?」 エミ「何とか頑張るよ」 翔平「よかったじゃんか」 ミナト「まぁな・・・よろしくエミ」 エミ「よろしくー」 柴竜「教えてくれよ・・・一年前の奇襲について」 エミ「別に特に教える様な事無いよ・・・結構大きい海賊船がいきなり襲って来たんだ」 エミ「この島あんま戦闘的じゃないからさ・・・大人はほとんど死亡か戦闘不能、生き残った人も手足が動かない人が多かったの」 エミ「だからこのままじゃ簡単に占拠されちゃうと思って、航海術の学校を作って知識を増やしたってわけ」 翔平「その理屈、俺にはあんま分かんねー」 エミ「まぁとにかく・・・今は土地の整備もだいぶ終わったし、私達も大砲やトラップについて学んで、多少戦えるようになった」 柴竜「どうだかな」 エミ「・・・何よ」 ミナト「どうした?」 柴竜「知っているのと出来るのは違う・・・俺はそう思うがな」 ケイ「・・・」 ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン ミナト「‼‼‼‼‼‼‼‼‼」 翔平「何事だ‼‼‼‼?」 エミ「今のは・・・北側の大砲の音・・・」 緊急連絡、一年前の海賊船と思われる物が接近中 柴竜「一年前・・・例の奇襲の話か」 ケイ「前回はどんな感じで海賊を追いだしたんだ?」 エミ「突然現れた星川っていう幻術士が・・・追い払ってくれたの」 翔平「へぇ・・・1人で?」 エミ「ええ、私達全員でも歯がたたなかったのに・・・」 柴竜「なるほど・・・じゃあ行くぞ」 ケイ「だな」 エミ「ちょっと待って‼‼‼‼どこに行くの‼‼‼‼‼‼」 ミナト「決まってんだろ・・・北の海賊船のトコだ」 翔平「ま、それしかねーな」 エミ「レナだって相当強いのよ・・・あんた達何人がかりで倒したのか知らないけど、彼女の強さは分かってるでしょ‼‼‼‼?」 柴竜「俺と1vs1でやった・・・これで俺らが強いって信じてくれるか?」 エミ「ウソ・・・」 ケイ「黙って見てな・・・少なくとも、名前も知らない男が1人で追い返せる海賊なら、俺らでも大丈夫だ」 翔平「一理あるな」 ミナト「ま、新たな仲間が出来た祝いだ・・・パーッと行こうぜ‼‼‼‼‼」 エミ「普通こういう時って・・・「何で俺らがいるタイミングで・・・」ってなるんじゃないの?」 柴竜「俺らは普通じゃねえからな・・・刀が血を吸いたいらしいぜ」 ケイ「うずうずして来た・・・先行っていいか?」 翔平「ダメだ、お前が独り占めするかもしれねえだろ」 エミ「・・・マジで普通じゃない・・・」 途中の道 レナ「何事‼‼‼‼?」 住民「まずいぞ、あん時の海賊だ‼‼‼」 レナ「く・・・次から次へと・・・」 パシッ レナ「‼‼‼‼」 翔平「待てよ」 レナ「今・・・忙しいんだけど」 翔平「重々承知してる、それでも止めてんだ」 レナ「・・・何?」 翔平「一年前・・・お前より強い大人なんてたくさんいたよな」 レナ「・・・まぁ・・・いたけど」 翔平「その大人が束になっても敵わなかったんだぞ・・・一年でそれ以上お前は強くなったとでも言う気か?」 レナ「いや・・・それは・・・」 翔平「交渉しようぜ」 レナ「・・・何?」 翔平「お前、俺の船に乗れよ」 レナ「それは・・・断ったでしょ‼‼‼‼‼」 翔平「条件として、SEASは既にこの島を管轄する事に決まった、これで安心できるだろ」 レナ「・・・勝手な・・・」 翔平「そうすれば、今回の奇襲も俺らがおさめるぞ」 レナ「・・・・・・・・・海賊に・・・島を預けろということか・・・」 翔平「そうだな、もし嫌なら行け、俺は手は出さない」 レナ「・・・・・・それでも・・・私は行く‼‼‼」 翔平「そうか、それは残念だ」 北の海岸 ミナト「あれか・・・でかいガレオン船だな」 柴竜「中にいるのは・・・少なく見て150人ってトコか」 エミ「本気・・・なの?」 ケイ「お、かわいい剣士ちゃん来たってことは・・・」 レナ「交渉は決裂だ・・・私がやる」 ミナト「関係無いだろ」 レナ「・・・は?」 柴竜「確かにあいつは手を出さないという話だろうが、俺たちは手を出すぞ」 エミ「こいつら相当狂ってるよ」 レナ「どういう・・・」 翔平「俺は手を出さないよ・・・約束だからな・・・でも「俺達」とは一言も言って無い」 ケイ「ってわけだ・・・まぁ俺ら三人でもまともに戦えば負けるよな」 柴竜「どうだか・・・さっさとやらせろ」 ケイ「じゃ・・・柴竜、甲板のこっちから見て右側にでかい斬撃入れてくれ」 エミ「何する気?」 ケイ「まあいいから、やれ」 柴竜「仕方ねえなぁ・・・偉大な空の王の爪は・・・全てを斬り裂く‼‼‼」 豪鷹爪‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 船員「な・・・何事だ‼‼‼‼?」 ミナト「誰も切れてねえぞ」 ケイ「今船員は状況を確認する為に右側へ寄ってる・・・ミナト、右側に横転させてくれ」 エミ「んなこと出来んの‼‼‼‼?」 ミナト「横転くらいなら・・・なんとかなるかな」 グラビティ・フィールド‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 翔平「おぉ・・・倒れたな」 レナ「何てメチャクチャな力だ・・・」 ミナト「ふぅ・・・ちょっと疲れたな」 ケイ「でも、おかげでだいぶ減ったぞ」 柴竜「さて・・・いよいよ戦闘だ」 船長「小癪なことをしてくれたもんだな・・・ガキ共‼‼‼‼‼」 ミナト「翔平とレナちゃんは手出すなよ」 翔平「あぁ、約束だからな」 エミ「私も戦闘出来ないんで見てまーす」 レナ「しかし・・・」 柴竜「翔平、頼んだぞ」 翔平「分かってるよ・・・どうしても行くなら・・・俺を倒して行け」 レナ「そんな事を言っている場合か‼‼‼‼‼?」 翔平「敵はざっと100人弱・・・あいつらなら余裕だろ」 エミ「その絶対的な自信はどこから・・・」 翔平「1人は次期ボス、もう1人は俺をしょぼいと言った男、もう1人は俺と同じ足技使いだ・・・問題ない」 レナ「最後のは問題ないと言ってもいいのだろうか・・・」 ミナト「・・・あの船主より左は俺が貰う」 柴竜「じゃ、俺は右だ」 ケイ「仕方ねえ、じゃあ俺は船の中の連中片して来るよ」 ミナト「とはいえ・・・一瞬だがな」 グラビティ・フィールド‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 船員「ぐ・・・あ・・・」 エミ「船員達が・・・上から押さえつけられてる感じ・・・」 ミナト「殺すほどの力はないんで・・・あとはこうしよう」 グラビティ・ノック‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ エミ「・・・?」 柴竜「マジかよ・・・全員伏せろ‼‼‼‼‼」 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ エミ「衝撃波が・・・広がってく・・・」 ミナト「重力の応用だ・・・ちょっとした衝撃でも、充分伝わる様に出来てる」
https://w.atwiki.jp/ffdqbr3rd/pages/647.html
第229話:レナの葛藤――勇者と魔王 騒ぎから数十分後。 ソロたちは、アーヴァインには当たり障りの無い事情を説明し、怪我を理由に兎に角今は休む事を勧めた。 アーヴァインも最初は戸惑っており、納得させるのに難儀するかと思われたが、 最後は明日色々と話すと説明したソロの言葉に首肯した。 その後ヘンリーとエリアはレナと見張りを交代し、ソロもまた起きたピサロと今起きた事の討議と打ち合わせを済ませた後、交代で眠りに就いている。 レナは見張りをしながらも、じっと今は眠っているアーヴァインを見ていた。 「……アーヴァインを殺すつもりか」 微かに耳朶を打つ音を響かせるのは、銀色の魔王であった。 レナはちらり、とピサロに視線を走らせる。 この、恐るべき力を持つ男。それでも、レナとてクリスタルの戦士だ。落ち着きを取り戻せば、 眼前にいるのが例え圧倒的な力を持つ魔王であったとしても、ただ震え上がるだけ、などはありえない。 「いえ……ギルバートさんの事は、悔しいですけど……ソロさんと、約束しましたし……」 「そうか……」 暫し、沈黙。 そしてレナには予想外な事に再び沈黙を破ったのは魔王の側だった。 「……その男は大分殺していたらしくてな。確かお前も仲間が死んだと言っていたな。ティナ……マリベル……心当たりはあるか?」 レナはふるふると髪を揺らす。咽が、こくんと鳴った。嫌な予感が背筋を走る。 もう、止めて欲しい。そう言いだしたいのに、言い出せない。レナにはピサロが、不吉を告げる死神に見える。 「重たい剣を持ったオジサン、とやらに……金髪の女の子――これは大分幼い娘だったようだが」 レナの顔色がはっきりと変わる。それを見て、ピサロは言葉を継いだ。 「長めの髪を後頭部で結い、額を出していたそうだ」 この男が、クルルを殺した――そう、考えただけで手は聖剣の柄へと伸びた。 可愛かったクルル。優しかったクルル。レナにとって、幼い少女は、誰より殺されるべきではない娘であった。 彼女の金髪が陽光に煌き、そのひまわりのような笑顔を見る事は最早永遠に叶わ無い。 どす黒い情念が心を満たすべく、レナの最も深き所から湧き出してくるのを感じる。 だが、レナ自身にそれを抑える術は無い――。 先ほどまで起きて見張りをしていたソロ、ヘンリー、エリアの三人はレナと交代し眠っている。 ビビとターニアは本来起きているべきなのだろうが、小さなその身に今日の出来事は余程応えたのか、やはり夢の中だ。 後は――。 「その男を、殺すか」 「……」 再度同じ事を訊くピサロに今度は沈黙したまま応えない。 そんな彼女から視線を外し、ピサロは浅い眠りに就いているソロを見遣った。 「……。そこで間抜けな面を晒している男はな」 そうして、静かに語りだした。彼にしては珍しくも、饒舌に。 「嘗て、自分を取り巻く世界の全てを魔族に目の前で奪われた。 育ての両親を、剣の師匠を、仲の良かった幼馴染の娘を」 「…そんな話、決して珍しいものじゃないわ」 ピサロが何を喋ろうとしているのか解らないレナは、途中で反発を見せる。 それだけ、レナにとってクルルを殺した仇が目の前にいる、という事は大きな事だった。 だが、ピサロはレナの反発にも、彼女の心境にも頓着せずに話を続ける。 「男は滅ぼされた故郷の村を後に旅に出て、仲間を得、神と出会った。竜神だ。 だが、そこで待ち受けていたのは男から本当の両親を奪ったのは神の側だったという事実だった。 ……竜神はそれらには直接触れず言った。この城からすぐに魔族の王の下へと向かい、ヤツを倒せと」 「……」 「だが、男はそうはしなかった。仲間達とともに、千年に一度咲く、奇跡を起こす花を手に入れ、 一人の娘を蘇らせた」 「それは…幼馴染の…?」 ピサロはゆっくりと、小さく首を振る。 「男と仲間達は、その娘と共に魔族の王の下へと向かった。 その魔族は元々人間を蔑んでいたが、本気で全ての人間を滅ぼそうと考えたのは、 美しいエルフの娘を、追い回し、泣かせ、富を得ようとする人間達から気紛れに助けたのがきっかけだった。 ……結果的に、その娘は部下の裏切りから人間どもに殺されてしまうのだが」 ふっ、と微かな自嘲の笑みが漏れる。 「魔族は怒り狂い、理性を捨て、秘宝による進化を経て真なる化物に至った。人間どもを須く冥府へと叩き落す為に。 ……だが蘇った娘の泪で意識を取り戻し、二度と戻れぬ筈の進化を逆行する――陳腐な話だ」 ピサロがソロを見詰める瞳の色は、レナには窺い知る事はできなかった。 それは、未だ不思議そうでもあり、憐憫の色が浮かんでいるようでもあり。全く別のものをも感じさせる。 「男は……ソロは、両親を奪った竜神を憎まなかっただけでなく、十数年を育ててくれた両親を始め、故郷の村をこの手で滅ぼした私をも救った。 ……。見ていて、苛々する程のお人よし……だが、だからこそ――剣の腕や魔法の腕も十分に相応しいものだが――勇者、と呼ばれるのだろう。 勿論この男とて敵対する魔物を大勢倒してきてはいるがな。戦うべき所を戦っておきながら、戦いに呑まれずにいる。強い男だ」 「ソロさんが…貴方を許せたのは…貴方が奪ったものが、ソロさんにとって大事なものじゃなかったのかもしれないじゃない…」 「自分が一番悲しんでいる、他人の悲しみは自分のそれと比べれば大した事がないというのか?貴様も命以外の全てを失ったというのか?」 「そんな事は…!ない、けど…そうとでも考えないと…信じられないわ…」 「信じろ。私はこんな事で嘘はつかん。勿論、この男にも葛藤はあったのだろうがな…」 話がずれたな、と呟き緩く頭を振る。 「……アーヴァインを殺すなら、ソロが起きる前にやる事だ。でなくば、私も邪魔をしなければならなくなる ソロが起きていれば、奴はアーヴァインを庇うだろう。こいつは、そういう男だ。だからと言って、お前を殺そうともしないだろうがな。 それで傷つき、死ぬ可能性があるとすれば、ソロだけだ。……ソロには借りがある。この男を死なせる訳にはいかん」 それはまた、ソロならばロザリーを決して殺しはすまいという打算だ、と考えて自分を納得させる。 決して、信頼などというものでは無い、と。 「アーヴァインは、例えここで死なずともいずれ酷い死に方をするであろう男だ。 殺した側が都合良く忘れたなどと言ったとて、殺された側の仲間がそれで簡単に済ませられる訳が無い。それは、貴様が良く解るだろう? ……だがな、小娘。アーヴァインを殺せば、貴様も碌な末路を辿れまい。……それが死の連鎖に囚われるという事だ」 人間を大勢殺し、その人間にロザリーを殺され、一度は己を失ったピサロの言葉がレナの心に直接響く。 レナはくっと下唇を噛み、小さく震えていた。じっとピサロを睨むように見ていたが、やがてソロへと視線を向ける。 「……それ以上に、ソロさんこそ長生きできないわ」 「その通りだ。だからこそ、この男には仲間が必要なのだろう。それは嘗て共に戦った者達と、そしてこれから出会う者たちと――」 ライアンの剛剣。ミネアの母性。そして、アリーナの存在。 そういえば、ソロがいつだったか今の自分がいるのはアリーナのお陰だと呟いていた事があった。 他の者のお陰じゃない、という訳ではないと慌てて言い繕っていた姿が印象的で覚えていたのか。 あのおよそ姫らしくないおてんば娘。あの娘が再び、ソロと出会えれば……。 「ピサロさんは……私に、どうしろと言うんですか……。 全てを忘れてへらへらと能天気に笑っていたあの男を許せと……!」 「それは無理な話だろう。私とて、人間への憎しみが無くなった訳では無い」 「ならば、尚更どうしろと――!」 「別に。私はアーヴァインが死のうと、貴様が死に囚われようと知った事では無い。仇討ちも否定しない。殺るなら、今殺れと言っているだけ……。 でなくば、本懐を遂げられなくなるのは小娘。貴様だと、な」 その割には、饒舌過ぎたとピサロ自身もそう思う。 それは恐らく……レナが、レナの髪の色が、ロザリーのそれに、彼女に少しだけ似ていたから――。 「……ソロはさっき私にこう言っていた。 『今、告げるべきなのかどうか解らないけど、だけどもし後に残して突然決断を迫られるような事になったら、レナはきっと辛いから。 だから、明日全て話そうと思う』 だが、それでは少々私には不都合なので先に伝えた。 ……ヤツならこう続けたかもしれないな。全てを伝えた上で仲間になって欲しい、と。貴様を救う為に。 だが私は、貴様がどうしようと、どうなろうと知った事では無い」 ピサロとレナの視線が絡む。 「まだ、全てを失った訳では無いのなら……その者達の顔を思い出してから、貴様が、泪を流さずに済む選択をするが良い」 それきり、ピサロは視線を外し、口を開かなかった。 レナは聖剣を引き寄せ抱き締めて、ピサロを見、アーヴァインを見、そしてソロを見た。 碧色の髪をした、鋭い眼光の青年。 レナは先ほど、夜営の準備をしていた頃の一幕を思い出した。 ソロは支給された本のあるページを見るや否や顔面を蒼白にしたかと思えば、揺れる瞳をピサロに向けた。だが、何も喋らずに。 此処でブライやトルネコの事を知るのはピサロだけだったから、なのだろうが、ピサロはそこで気の利いた台詞を言う事は無かった。 言う気がなかったのか、言う事ができなかったからなのか。 眼を伏せ胸の辺りを力任せに掴み、すぐ戻ると言い残して皆から離れるソロを心配し、レナはそっと遠くから見守る事にした。 一本の木に力任せにぶつけられる拳。ブライさん……トルネコさん……。そう、微かに聴こえてきた言葉。 彼の肩は震えていた。そして、哭いていた。 ソロの過去を想うと聖剣を持つ手が震えた。 悲しくて、悔しくて。 何を選択しても、レナは泪を流さずに済むとは思えなかった。 「姉さん……バッツ……私……私ぃ……」 堪えきれず嗚咽が漏れる。 それを、ピサロは聴こえないかのように見張りを続ける。 レナには、それが有りがたかった。 ソロの――直接話した上で、修羅の道に行かぬよう手を引いて救おうとしてくれたであろう勇者の優しさと。 ピサロの――ソロが眠っている内に話してしまう事で、自分に選択の機会を与えた厳父の優しさと。 その二つの熱い想いがレナの心で螺旋を描いていた。 【レナ 所持品:エクスカリバー 第一行動方針:夜明けまでにクルルの仇であるアーヴァインをどうするか(場合によっては一時的なものでも良いので)決断する 基本行動方針:エリアを守る】 【ヘンリー(睡眠中、6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 第一行動方針:不明 第二行動方針:デールを殺す】 【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ 第一行動方針:不明】 【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ 第一行動方針:不明 基本行動方針:ロザリーを捜す】 【ビビ(睡眠中 所持品:スパス 第一行動方針:不明 基本行動方針:仲間を探す】 【エリア(睡眠中 所持品:妖精の笛、占い後の花 第一行動方針:不明 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】 【ソロ(睡眠中 MP3/4程度) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ 第一行動方針:状況の把握 第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】 【アーヴァイン(HP1/3程度、一部記憶喪失(*バトロワ内での出来事(広間での説明含む)とセルフィに関する全ての記憶。睡眠中) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) 第一行動方針:状況の把握】 【現在位置:レーベ北西の茂み、海岸付近】
https://w.atwiki.jp/storyteller/pages/169.html
LUNAR -さんぽする学園- 15-142~143 142 LUNARさんぽする学園 sage 2005/05/14(土) 14 38 06 ID mRzKp7Ko 【主人公紹介】 エリー:炎の魔法が得意な女の子。ノッポで影が薄い。たぶんメイン主人公。 レナ:回復魔法が得意な女の子。チビだけど存在感バリバリ。エリーと同い年。 【本編】 動く島イェンに建つイェン魔法学園。 彼等は移動する先々で魔法使いの素質あるものをスカウトしていました。 「勉強する」という概念が無いほどの田舎の農村の娘っ子、エリーとレナは 「3年間食事タダ」の売り文句に釣られてスカウトされていきます。 一週間後、イェン島に集まる少年少女達。ですが入学に際して行なわれた 性格診断テスト(魔法で作り出された無人のイェン島でサバイバル)のせいで 男子生徒と女子生徒の仲は最悪に。エリー達の活躍で女子優勢ですがw その後、レナの発案で楽そうな化粧魔法講座に入り、講座のケモノっ娘セニアと 仲良くなってパーティーを組みます。 そうこうする内に事件発生。悪魔城の主人メンフィス(魔族)により 優秀な男子生徒が次々さらわてゆきます。そこへセニアの幼馴染アズ(人間)が イェン島にやって来るのですが彼もまたさらわれてしまいます。 救出のためエリー達はアジトの洞窟へ。 「族長の娘、命の恩人、惹かれあう2人、親の決めた許婚、突然の拒絶」 勝手に盛り上がるセニア&アズは「あたしたち、結婚します」と言って故郷へ 帰っていってしまいました。メンフィスを逃がしたというのにです。 1年が過ぎ、新入生入学の季節。新入生ウィン(♂)に悪魔城の女主人バルア(魔族)が 接近してきます。そして性格診断テストを抜け出し学園を破壊して逃亡するウィンと 成り行きで追いかけるエリー&レナ。戦いになるもウィンにまったく歯が立たない2人。 そこへスカウトじいさんことグレンが駆けつけてウィンをKO、ウィンが暴れ出したのは 操られていたためであることを知ります。 「操られるなんて頼りない」「あたしが入学した時はもっとしっかりしてたわよ」 と蔑むレナの言葉尻を取ったグレンは呪いを掛けた術者を倒すため「しっかりした先輩」 と共に最近学園を騒がす魔族の城へワープします。 「いい歳して若い男の子を手込めにしようだなんて身の程知らずもいいとこね!」 かっ飛ばすレナ(とその他)は見事バルアを倒し呪いを解くことに成功します。 ですが、ウィンをあきらめたわけじゃないと捨て台詞を吐くバルアには逃げられます。 ウィンの時間魔法の才能を見抜いたグレンによりウィン(とおまけのエリー&レナ)は 学園長に預けられることになりました。 特待生になって学園長の指導を受ける3人。 といっても実際は学園内のトラブル解決に走り回る便利屋みたいなものでした。 どんなトラブルもまかせておけと胸を叩くレナの気風の良さに惚れるウィン。 「レナさんって素敵だなぁ」 でもレナはウィンみたいな自分に自身を持てないタイプが大嫌いでした。 未来を予知して危機を未然に回避する「時の番人」になればモテモテになるぞ というグレンの言葉を信じて特訓するウィン。 頑張っても頑張っても全然振り向いてもらえませんでしたが。 10年に1度イェンを訪れる青い竜。 天文魔法教師が実験のため捕らえたところをメンフィスに奪わます。 青竜の魔力を吸い尽くしたメンフィスにさしものグレンも敗れ去ってしまいますが 青竜の魔力が強すぎて自己崩壊しだしたメンフィスをエリー達は打ち破ります。 さらに、密かに回収した青竜の魔力とメンフィスの魂の力で移動要塞と化した 悪魔城でイェンに襲い掛かってきたバルアとの最終戦にも勝利するのでした。 そして卒業の日。 ワンランク上のヴェーン魔法学園からの誘いを受けたエリー&レナは 学園の皆の祝福を受け旅立ってゆくのでした。 ~おしまい~ 143 LUNARさんぽする学園 sage 2005/05/14(土) 14 40 04 ID mRzKp7Ko 【おまけ/レナ&ウィン最後の会話】 「レナさん好きです! 大好きです! 世界中の誰よりも!!」 「・・・それで?」 「待ってて下さい、ヴェーンで! 立派な時の番人になって迎えに行きます! だからその時まで・・・僕を、僕のことを!」 「ウィン・・・いいわ、待っててあげる? でもヴェーンにイイ男がいたら分かんないわよ。フフッ」 「え、レナさん・・・」 「クスクス、冗談よ、待っててあげる! じゃあね? ウィン!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ おまけって、1レスに収まらなかっただけですけどねw それからスパロボOG2買ってきました。ちょっとやったら伏線だらけでワケワカメ でも頑張って今スレ中にはまとめるつもりなので予約しときますね。
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/252.html
少女と獣 ◆U1w5FvVRgk 犬にじゃれられる乙女と、それを陶酔状態で写真に収める少女。 バトルロワイアルの会場と言えど、これほど珍妙な出会いを果たしたものは他に居ないだろう。 幸いにも乙女――真紅の一撃で少女――竜宮レナは正気に戻り、会話をするには至った。 元々聡明な二人故に一度落ち着いてしまえば理解は早い。 その後の情報交換はすんなりと行われた。若干の問題は発生したが。 「ねえ、レナ。貴方、ちゃんと聞いてるの?」 「うん、聞いてるよ~翠星石ちゃんに蒼星石ちゃんか。かぁいいんだろうなぁ~」 「…………」 一言で表そう。現在の竜宮レナの顔はだらしない。 真紅と出合った時に戻ったとも言える。 始めはまともだった。 自分は殺し合いをするつもりはなく、友達を探して脱出するのが目的だという事。 もし真紅も殺し合いに乗っていないなら協力してほしい事など、自分の意思を明確に伝えていた。 真紅としても目的はレナとさして変わらないので、同行を断る理由は無かった。 次は真紅が話し出したのだが、問題は真紅の姉妹の話になった際に起きる。 一人目、危険性の高い水銀燈の話をしたとき、レナはまだ真面目な顔付きだった。 二人目、仲間である翠星石の話をしたときは目が輝きだした。 三人目、翠星石の双子の妹である蒼星石の話になったときは頬が緩んでいた。 必要な事とはいえ、レナにその手の話をするのは不味かったようだ。 聞き終えた後は、すっかりまだ見ぬかぁいいものの虜と化してしまった。 レナの緩みきった顔を見れば、こんな時に不謹慎だと怒る者も居るだろうが、 真紅は溜め息を一つ吐くだけだった。 殺し合いの最中に能天気な顔を晒すレナに対しての呆れはある。 それでも、真紅はレナを侮りはしない。 根拠としては、異常事態に巻き込まれながら冷静である点が挙げられる。 真紅はアリスゲームを経験しているので、殺し合いにそれほど動揺は無かった。 何しろ数百年の間を姉妹同士で争ってきたのだから年期が違う。 だが、見たところレナはただの人間だ。 普通は殺し合いに参加などさせられれば、錯乱してもおかしくはない。 それなのにレナは冷静であるばかりか、自分の趣味について考える余裕まである。 少なくともこの点を真紅は評価していた。今のところはこれだけとも言えたが。 「はぅ~」 さすがにいつまでもこんな状態では困る。 つい先ほど、同様の状態となったレナを真紅は元に戻した。 ならば今度もそうするまでと、真紅は上体を右に捻る。 すると、ツインテールにしてある髪の片方が宙に揺れて、月明かりを反射した金髪が力強くしなる。 いくら至近距離とはいえ、真紅はこの髪で自身の倍以上の大きさがあるレナを一度ぶっ飛ばしている。 それと寸分違わない鋭い一撃が、無防備なレナの横っ面に打ち付けられた。 パァン、という小気味良い音が鳴った。 今度はレナの身が宙を舞うことはなく、首だけが真横に曲がった。 「はぅ!?」 「目は覚めた? それなら話の続きをしたいんだけど」 「う、うん。分かった」 ようやく正気に戻ったのか、レナは左頬を擦りながら頷く。 真紅はレナを見つめながら髪に触れている。 まただらしない顔になったら叩く、とアピールしているようにも見えた。 「といっても、後はそれほど話すことも無いから移動しましょう」 「うん……」 どことなくしょんぼりとした様子で、レナは傍らに突き立つ剣を持つ。 柄の部分に拳を保護する為の護拳がある、一般的にはサーベルに分類される剣だ。 柄は金色で、剣身は真紅のドレスと同じく真っ赤に染められている。 色合いだけなら悪趣味だが、どこか禍々しい威圧感が感じられた。 重厚な外見を見れば小柄な真紅はもちろん、平均的な成人男性ですら持てるかどうかの重量はあるだろう。 しかし、レナはそれを軽々と持ち上げていた。それも片手で。 真紅はレナをただの人間と判断した。 だが、あの剣を携えているところを目にすればその判断が揺らいでしまう。 「よくそんなものを平然と持てるわね」 「ちょっと重たいけど、いつも斧とか鉈を持ってるから平気だよ」 レナはあっさりと言うが、内容の方はあっさりと聞き逃せないものだ。 当然だ。レナのような女の子が、どうしたら常日頃から斧や鉈を持つ生活を送るのか。 少なくとも簡単に想像できるものではないだろう。 「どうして、いつも斧や鉈を持ってるの?」 「かぁいいものを探すのに使うんだ」 「意味が分からないのだわ。貴方の言うかぁいいものを探すのにどうして鉈が必要なの」 「掘り出す為には必要だよ。例えばゴミ捨て場とかから」 「そんなところに何があるというの。ただのゴミでしょ」 「そんなことないよ」 真紅の言葉を、レナは即座に否定した。 見れば、その顔付きは先ほどのふざけたものやしょんぼりしたものではなく、真剣なものとなっていた。 二人の青い瞳がじっと見詰め合う。 「一度壊れて捨てられても、必要としてくれる人が居たら、それはゴミなんかじゃないんだよ」 そういうレナに真紅は驚きに目を見開き、思わず右腕の付け根の辺りを押さえた。 以前、真紅は水銀燈との戦いで右腕をもぎ取られたことがある。 完璧な少女【アリス】を目指すローゼンメイデンにとってパーツの欠損は致命的だ。 壊れた人形などジャンクでしかない。それが真紅の認識だった。 当然ながら真紅は悲観に暮れたのだが、真紅のミーディアムである桜田ジュンは言った。 『僕はお前を何かが欠けた人形だなんて思ってない。 例え足り無いものがあったとしても、それは僕が埋めてみせる』と。 さっきのレナの発言は、真紅にその時のジュンを思い起こさせた。 「そう……そうね。レナ、貴方は正しいのだわ。そして、とても優しい」 「えへへ、そうかな? かな?」 照れ臭そうに笑うレナに、真紅は頷いた。 少なくとも、今のレナは好印象だった。 これなら同行しても問題ないと真紅も思う。 されど、問題はまだ残っていた。 「レナ。貴方は私に渡す物があるわ」 「え? 何かな?」 「とぼけないで。カメラよ」 真紅の要求に、レナの表情が固まった。 インスタントカメラ。 レナの支給品の一つであり、真紅の痴態が収められている品。 あんな写真を現像でもされたら、ローゼンメイデンのプライドは木っ端微塵になってしまう。 だから、何としても渡してもらいたかったが、 「やだ」 レナは一言で拒否を示した。 かぁいいもの命のレナに、譲渡を求めるのが無理である。 真紅から表情が抜け落ちた。 無表情となった顔は、夜の雰囲気と相まってかなり怖い。 「渡しなさい」 「やだ」 真紅が一歩迫ると、レナが一歩下がった。 「渡しなさい」 「やだ」 繰り返す、繰り返す、繰り返す。 「渡しなさい!」 「やだ!」 等々怒鳴り声にまで発展した。 女の機嫌は変わりやすいと言うとはいえ、先ほどまでの和やかな空気はどこにいったのか。 今や一触触発にまで行きそうだ。 ピシュン、ピシュン 二人の耳に聞きなれない音が届いたのはそんな時だった。 ■ ■ ■ 後藤は飢えていた。 それは食事としての意味もあったが、もう一つの意味もある。 戦闘だ。後藤は戦闘にも飢えていた。 戦いこそが自らの存在意義としている後藤にとって、食事と同様にとても重要なものだ。 先程のルイズはどうみても餌にしかならないので三木に任せたが、今では間違いだと思っていた。 支給品を使い思わぬ反撃をしてきたルイズは、後藤が戦ってもいい相手だった。 もし最後のロケットランチャーが胴体に直撃していれば、勝敗は逆転していたのだから。 もっとも、後藤が最初から戦っていれば出会い頭の一撃で仕留めていたかもしれないが。 そのルイズを食した後は街中を徘徊してみたものの、次の餌は一向に見つからない。 後藤は北に向かって歩いていたのだが、この選択が間違っていた。 もし後藤が西か南に進んでいれば、今頃は餌にありつけていた。 西なら斎藤一と泉こなた、南の遊園地ならストレイト・クーガーと柊かがみに遭遇していただろう。 その場を動かずに留まっていても、平賀才人がやってきていた。 これまでは人間など腐るほど居たために、捜索するのに慣れていないのもあるとはいえ運が無い。 そうこうしているうちに、後藤は街の北辺まで着いてしまった。 眼前には道路と草原が見える。 後藤は西を向き、次は東を向くと、頭を捻った。 (この街に何人の人間が滞在しているのかは知らないが、隠れたりしていたら面倒だな。 それなら、一度外に出てみるか) どちらかといえば、後藤は室内や森などの密集した地形での戦闘が得意だ。 広い場所での戦闘は三木の方が適している。 とはいえ、餌が見つからねばどのみち意味がない。 遮蔽物の無い場所なら餌を見つけるのも難しくはない。 後藤が僅かに屈むと、足の皮膚や肉が圧縮されて硬質化していく。 足先も二つに分かれてウサギの足のような形となった。 変形が終わると後藤はしゃがみ、足のバネの反動を使って駆け出した。 ピシュン、ピシュン、と独特の風切り音が辺りに響く。 見る見るうちに速度は上がっていくが、エリアE-10の中程で後藤は止まった。 いや、止まらざるを得なかった。 思いがけない肉体の不調によって。 (どういうことだ? 普段ならもっとスピードが出るはずだが) いつもの後藤なら、自動車と同等の速度は余裕で出せる。 しかし、今は精々が時速四十kmに届くがどうかがやっとだった。 これが後藤に科せられた制限である。 さすがに常時乗用車並みのスピードで動き回られるのは、他の参加者と差がありすぎると判断されたのだ。 (おかしいと言えば、こっちもか) 後藤は右腕を刃に変形させて、振るってみる。 高速の刃が鞭のようにしなり、空気を切り裂いた。 もし人間が立っていたなら、間違いなく真っ二つになっているだろう。 一見した限りでは問題ないようにみえるが、後藤は物足りない様子だ。 (やはり遅い。原因は不明だが、俺の体に何かが起こっているようだな) 攻撃速度の低下。後藤のもう一つの制限だ。 参加者の大半が普通の人間である以上、人間が認識できない速度で攻撃させるわけにはいかなかった。 確認を終えると、後藤は右手と足を元に戻した。 別に腕の速度が落ちても後藤は十分に戦えるが、足の速さが落ちているのはいただけない。 これでは餌を探すのが遅れるからだ。 パラサイトとて動けば腹が減る。 空腹のまま餌を見つけるまで走り続けるのは、後藤としても多少は堪える。 さて、どうするかと考え出して、ここで後藤はようやく気付いた。 東に数十メートル先から、こちらを唖然と見つめる二人の少女に。 片方は茶色の髪に、青と白の二色を基調としたセーラー服を着ている。 身長は百六十cmほどで、肉付きはそれほど悪くないが、まだまだ発展途上だろう。 右手には赤い剣を携えていた。 もう片方は艶やかな金髪に、真紅のゴシックロリータ風のワンピースを纏っている。 こちらは四十cmほどの大きさしかない。 二人を一見して、後藤が思ったことは失望と疑問の二つ。 失望の原因は、茶髪の少女程度の体型では食しても物足りない事に。 疑問の原因は、金髪の少女に全く食欲が湧かない事に。 (あっちの金髪は……まあいい、確かめればいいだけだ) 少女たちとの接触を決めた後藤は、少女たちに向けて歩き始めた。 全ては、金髪の少女が獲物として足りえるのか確認するために。 そして、もう一人の少女を食らうために。 ■ ■ ■ 「真紅ちゃん。あの人、何だろう?」 「判らないわ。でも、一つ訂正しなさい。あれはおそらく人ではないわ」 レナの怯えを含んだ声に、真紅ははっきりとした声で返した。 真紅としても、こちらに近づいてくる男が何者なのか検討が付かない。 道路を走って表れたかと思ったら、いきなり右腕を刃に変形させたのだ。 ここから見ても、その刃の鋭さは理解できた。 それが高速で振るわれたのを見たときは、寒気すら感じた。 真紅もアリスゲームを通して様々な時代を巡ってきたが、あんな生物は見たことがない。 外見だけなら間違いなく人。しかし、中身は人に在らず。 まさに得体の知れない存在だが、それでも真紅には分かることがあった。 あれが警戒対象であり、このまま近づかせてはいけないということだ。 真紅はデイパックを背から降ろすと、中から球状の物体を取り出した。 「止まりなさい!」 凛とした声が響き、男は歩みを止めた。 真紅としては本当に止まるとは思ってなかったので、少し意外だった。 男は真紅の声に動じた様子もなく、ただ真紅を見ている。 まるで観察でもするかのように見つめられ、真紅は不快感を感じた。 「レディをジロジロと見るなんて、失礼な男ね」 「お前は何だ?」 真紅の言葉に反応せず、男は不躾な質問をしてきた。 少なくとも、初対面の相手に掛ける言葉ではない。 真紅は益々不快感を募らせた。 レナは様子を窺うように両者を見比べている。 「相手に質問する前に、まず名乗るべきよ」 「そうか。俺は後藤と呼ばれている」 「そう。それじゃあ後藤。私が何だとはどういう意味かしら?」 「簡単なことだ。お前は人間なのか?」 後藤の言葉に、真紅は得心が行った。 確かに初めてローゼンメイデンを目にすれば、大抵の者は驚く。 それだけ真紅たちは精巧に出来ているということだ。 この男もその例だと思い、真紅はいつもどおりに名乗った。 「私はローゼンメイデン第五ドールの真紅。要するに人形よ」 「人形……人間の作った玩具か」 「っ! 取り消しなさい!!」 後藤の発言に、真紅は再び大声を出した。 ただし、今度は怒気が大量に込められていたが。 真紅たちローゼンメイデンは一様に高いプライドを持つ。 それは自分たちが特別な人形であるという自負と誇りを持つからだ。 その誇りを、後藤は無神経にも傷付けた。 「私は真紅。究極の少女アリスとなるためにお父様がお作りになったローゼンメイデン! 決して玩具なんかじゃないわ!」 「それがどうした。誰が作ろうが、どんな目的があろうが、人形は人間の玩具だ」 激昂する真紅に対し、後藤はどこまでも冷ややかだ。 まるで機械のように、答えや淀みに変化はない。 それが何にも勝る侮辱となり、真紅の怒りを増幅させていく。 「いい加減に」 「真紅ちゃん、ちょっと待って」 更に怒声を発しそうになった真紅に、背後のレナから静止の声が掛かる。 真紅は無言でレナを睨み付けた。止めるな、と目が語っていた。 そんな真紅に、レナは諭すように話す。 「レディはそんな大声を出さないんじゃないかな? かな?」 穏やかに告げるレナに、真紅は憮然とした表情となり顔を逸らした。 多少なりとも頭が冷えたのだろう。 その隙を突いて、レナは後藤に話しかけた。 表情は打って変わり真剣そのものだ。 「後藤さん。私も貴方の言葉に納得できません。言いたいこともある。 けど、その前に聞きたいことがあります」 「何だ」 「貴方は殺し合いをするんですか」 単刀直入だった。 質問というより、確認の意味合いが強い。 レナにしろ真紅にしろ、後藤は殺し合いに乗っていると確信していたのだから。 「俺に殺し合いをするつもりはない」 後藤は躊躇せずに即答した。 意外な返答にレナはもちろん、怒りを露にしていた真紅ですら驚く。 いや、後藤の話にはまだ続きがあるようだ。 「だが」 「だが?」 「腹は減っている」 空腹。生物としては当たり前の現象だが、後藤の言葉は何故か聞く者に悪寒を感じさせた。 女の感とでも言えばいいのか、レナはこれ以上話すのを躊躇する。 まるで禁忌を犯そうとしている心持ちだった。 一度、深く息を吸い込む。それである程度落ち着くと、意を決して言葉を口にした。 「後藤さんは……何を食べるんですか?」 「人間だ」 答えると同時に後藤の口が釣りあがり、レナをその場に硬直させた。 まるで肉食動物に出会った草食動物。 狩るものと狩られるものの立場が、ここに出来上がってしまう。 後藤の笑みは、同時に会話の終了と戦いの開始を宣告する合図となった。 後藤の右腕が伸び、一瞬で鎌の形に変化する。 刃はそのまま振り上げられ、レナに向かって振り下ろされた。 通常なら認識できない速度の攻撃だが、制限のおかげでレナは目の端で腕が振るわれるのを捉えた。 でも、そこまでだ。 初動が見えても、体はピクリとも動かなかった。 恐怖という原初の感情が、レナをその場に縛り付けていた。 サタンサーベルを盾とすればまだ助かったかもしれないが、もう遅い。 自分の命を刈り取る刃が迫るのを認識して――ドサリ、とレナの体は後ろに倒れた。 「何とか、間に合ったのだわ」 自分の胸元にしがみついた真紅の声を、レナは星空を眺めながら耳にした。 彼女が自分を押し倒したと理解して、そちらに目線を向けた。 見れば後藤が振り抜いた刃を引き戻し、自分たちに振り下ろそうとしている。 しかし、動きは真紅の方が早い。 後藤が追撃をする前に、右手に握っていた物を放り投げていた。 黒い玉が空中を、後藤に向かって一直線に飛んでいく。 爆弾。そんな単語が咄嗟に思い浮かんだ。 後藤もその可能性に気付いたのか右腕を振り下ろすのを中断し、すかさず左腕を胴体の前にかざす。 左腕は瞬時に薄く伸びて盾状となり、ほぼ同時に黒い玉が後藤の眼前で炸裂した。 ■ ■ ■ (煙幕か……) 後藤の周囲には大量の煙が立ちこめていた。 投げつけられた物体を見た瞬間、後藤の脳裏にはルイズに撃たれたロケットランチャーのイメージが浮かんだ。 もし爆発物で、内臓にダメージを受ければ致命傷になりかねない。 故に攻撃を中断して、左腕での防御を優先したのだ。 結果は杞憂に終わったが。 (この煙に乗じて攻めてくるつもりか? それなら・・・・・・嬉しいな) 後藤にしてみれば、戦う工夫は大歓迎だ。 一方的な殺戮よりもそちらの方が楽しめる。 だからといって、黙って攻撃されるつもりもない。 攻撃される前にこちらから近づくまでと、後藤は足を変形させて走りだした。 煙りさえ抜けてしまえば、居場所は特定できる。 更に後藤の脚力をもってすればこんな煙など―― 一分経過。まだ抜けない。 二分経過。徐々に煙が薄くなっていくがまだ抜けない。 さすがにおかしいと後藤も思い始める。 そして三分が経過して煙が消え去った時、後藤は目を見開く。 地面に無数の足跡が円上に付いていた。 そう、後藤は同じ場所をぐるぐると回っていたのだ。差し詰め自らの尾を追いかける犬のように。 これがあの煙の効果だと気づくがすでに遅い。 いくら四方に目を凝らしても、真紅たちの姿はない。 後藤は思い違いをしていた。煙幕は攻める為ではなく、逃げる為に使われたのだ。 戦う工夫をせず、逃げる工夫をした二人に後藤の顔が怒りに歪む。 とはいえ、思考の一部はまだ冷静だった。 いくらなんでも、僅か数分でパラサイトの視力から逃れる範囲に逃げたとは考え難い。 なら、二人はどこにいったのか? 地に居ないのなら、あとは一つしかない。 後藤は顔を上方に向けて、改めて四方を見渡す。 北、居ない。西、居ない。南、居ない。東、見つけた。 後藤から数百メートル先を二人は飛んでいた。しかも、ホウキに跨って。 ■ ■ ■ 「どうやら、気づかれたようだわ。レナ、急ぎなさい」 「ごめん。これ以上は無理みたい」 申し訳なさげなレナの声に耳を傾けながら、真紅は前方を見据える。 遠くからこちらに近づいてくる影があった。言うまでもなく後藤だ。 かなりの速さで走っているので、このままでは追いつかれることは請け合いだ。 現在、真紅たちはホウキに乗って飛んでいる。 字面だけなら突拍子もないものだが、事実だから仕方がない。 先ほど、真紅の支給品である煙幕弾を使用したあと、二人は一目散に逃走を図っていた。 どう足掻いても、彼我の実力差にはどうしようもないものがあるからだ。 とはいえ、数分しか効果のない煙幕弾が効いてる間に逃げきれるとも言い切れない。 真紅だけなら飛行すればいいが、それではレナを置いてきぼりにしてしまう。 そこでレナが取り出したのがこのホウキだった。 名称は単純明快に『空飛ぶホウキ』 どうみても眉唾物だが、最早このホウキにレナの命運を賭けるしかなかった。 前に操縦担当のレナが、後ろに見張り担当の真紅が背中合わせに座り、ホウキを発動させた。 結果は、この通り無事に機能している。 安心するには早いようだが。 ピシュン、ピシュン、ピシュン、ピシュン 「逃げるな!」 風切り音と共に後藤の怒声が轟く。 真紅たちとの距離はまだ離れているが、そこからでも顔を鬼のようにしているのが容易に想像できた。 背中で聞くレナはかなりの恐怖を感じているようだ。顔は強ばり、全身に力が入っている。 「レナ。貴方は前だけを見なさい。海まで行けば、さすがにあれも追ってこれないはずだわ」 「う、うん。分かった」 そんなレナを励ましてはいるものの、真紅もまた緊張していた。 海面に出ても、後藤が追ってこない保障はない。 付け加えて追う者と追われる者なら、精神的には追う者の方が有利だ。 しかも、追われる側は一度追いつかれたらそれまでなのだから尚更だろう。 両者の距離は段々と縮まっていく。 三分のハンデなど、後藤にすれば微々たるものらしい。 されど、真紅とて黙っていない。 両手を後藤に向けると、手の平から無数の薔薇の花弁が飛び出した。 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪が後藤に迫る。 しかし、後藤は盾状にした左手をかざすと、勢いを落とさず薔薇吹雪に突っ込んでいった。 真紅はその姿に呆気に取られるが、その後は愕然と息を飲んだ。 後藤は花弁が刺さっても、全く意に介していなかった。 肝心の頭部や腹部は左腕で守り、それ以外に刺さってもまるで利いていないかのように突き進んでいる。 自分の攻撃が足止めにすらならない事実に、真紅は歯噛みするしかなかった。 だとしても、花弁を放つのは止めない。 距離は縮まり続ける。 五十メートル、四十メートル、三十メートル、ここで真紅は潮の香りを感じた。 真下に目を移せば、夜と同じ暗い海が見えた。 「真紅ちゃん、海に出たよ!」 「そのまま進みなさい!」 二十メートル、十五メートル、放たれ続ける花弁に構わず、後藤が鎌状の右腕を降り被る。 本体に代わり、今度は薙ぎ払われた右腕と真紅たちの距離が縮まり始めた。 十メートル、放物線を描きながら迫る右腕に幾多の花弁が刺さり、薔薇色と肌色の斑模様としていくが、 勢いは衰えず、刃の部分に当たった花弁は全てが切られていく。 五メートル、真紅は花弁を打ち止め、薔薇色の障壁を展開した。 防ぎ切れるかは完全に賭けだった。 そして、後藤の右腕と真紅の障壁が衝突し、直後に真紅の視界は歪んだ。 ■ ■ ■ 「消えただと……」 目の前で起きた現象を、後藤はそのまま呟いた。 後藤の右手が薙いだ瞬間、ホウキで飛んでいたレナたちは忽然と姿を消してしまった。 海に落ちたり、超高速で飛び去ったわけではない。 文字どおり消失したとしか言いようがない、一瞬の出来事だった。 予想外の事態だが、後藤にも一つだけ判る。 自分の右腕は少女に届かなかったことだ。 慣れ親しんだ人間の肉を切り裂く感触を、後藤は味合わなかった。 忌々しげに一つ舌打ちをすると、踵を返して歩き出す。 刺さっていた花弁は、歩いている内に落ちていった。 後藤にしてみれば、レナたちが消えた理由などどうでもいい。 重要なのは、折角見つけた餌を取り逃がしたという事実だけだ。 戦闘を行ったこともあり、空腹感は更に増している。 これでまともな戦いをしていればまだマシだったが、相手が逃げるだけでは全くの無駄骨だ。 このままでは、ルイズを食べた分のエネルギーを消費しきるのも近いだろう。 早急に次の餌を探そうとして、後藤は自分が背負っているデイパックに気付いた。 自らの肉体を変化させて戦う後藤にとって、武器は必要ない。 故にデイパックの確認はしていなかったのだが、後藤はある事に気付いた。 これに人間が数日を生き抜くための品々が入っているのなら、食料もあるのではと。 パラサイトは基本的に寄生した生物しか餌としない。 これは寄生生物の本能であり、殆どのパラサイトはこの本能に従い行動する。 しかし、食そうと思えばそれ以外も口にできる。 基本的に満足感は得られず、空腹を紛らわせるだけだが。 それでも今の後藤には十分なので、ためらわずにデイパックの中を漁りだした。 最初に出てきたのは参加者の名前が記された名簿。 興味も無いのでさっさと戻そうとしたが、泉新一と田村玲子の名が後藤の目を留めた。 泉新一。 市役所での戦闘に関与し、後藤たちパラサイトに甚大な被害をもたらす一旦となった存在。 後藤が最優先に狙う獲物でもある。 この場に居るなら都合が良いので探し出して殺すだけだが、問題はもう一つの名前だ。 田村玲子。 後藤を作り出したパラサイトで、既に死亡したはずの存在。 珍しい名前でもないので同名の別人の可能性は高い。 だが、もしパラサイトの田村玲子だとしたら、彼女の生存は後藤にとって好ましい。 生みの親だからではない。後藤は彼女とも戦ってみたかったのだ。 パラサイト随一の頭脳を誇る玲子なら、自分を十分に満足させてくれると後藤は思っていた。 二つの獲物との戦いに思いを馳せながら、後藤はデイパック漁りを再開した。 今度は一個の寸胴鍋が出てくる。 ずっしりとした重みからは、何かが入っているのを確信させた。 蓋を取ってみると、中には後藤の目的である食料が入っていた。 大根、人参、厚揚げ、カリフラワー、タコなどがごった煮となっている煮物だ。 一見すれば美味しそうに見える――スープがピンク色の点さえ除けば。 古今東西を探しても、ピンク色の煮物など滅多にお目に掛けれないだろう。 普通は食べることを躊躇しそうだが、寄生生物である後藤に戸惑いはない。 食器は無いので素手で鍋に手を突っ込み、熱さを気にせず適当に具を掴む。 掴んだのはピンク色に色付いた大根。 ポタリ、ポタリ、と汁が滴るそれを口に運び、しばらく咀嚼すると飲み込んだ。 「……悪くないな」 食しても問題がないと確認すると、後藤は頭部を大口に変形させて、そこに煮物を流し込んでいく。 人間が丸呑みされるときと変わらず、鍋一杯の煮物はまたたく間に後藤の体内に消えていった。 全てを飲み込むと、後藤は用の無くなった鍋を放り投げる。 まだ物足りないのか、またデイパックを探ろうとした途端――唐突に南方が明るくなった。 そちらに目を移せば、闇夜を照らす炎と大量の煙が上がっている。 一見しただけで、何物かが爆発物を使ったと分かる。 人間なら恐れるか、興味を持つか、知り合いが巻き込まれていないか心配などするだろう。 生憎にも、ここに居るのはパラサイトである後藤。 爆発を見て興味を持ったことは、あそこになら餌になる人間が居るの一点のみ。 寄生生物は爆心地におもむく。 餌を求める種としての本能と、戦いを求める個としての本能に従って。 【一日目黎明/E-10 北部】 【後藤@寄生獣】 [装備]無し [支給品]支給品一式、不明支給品0~2(未確認) [状態]疲労(小)、空腹(中) [思考・行動] 1:爆心地に向かい、餌を探す 2:強い奴とは戦いたい 3:泉新一を殺す 4:田村玲子が本物なら戦ってみたい [備考] ※参戦時期は市役所戦後。 ※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。 ※E-10 北部に空の寸胴鍋が落ちています。 【支給品紹介】 【美和子スペシャル】 亀山薫の妻である亀山美和子が作った料理。 見た目は完全なゲテモノで味はかなり微妙らしい。 ■ ■ ■ 「どうなってるのかな?」 「分からないけど……とりあえずは、助かったようだわ」 助かったと言われても、レナはいまいち実感が湧かなかった。 ホウキに乗って逃げていたら、いきなり別の場所を飛んでいたのだから無理も無い。 先ほどまで眼前には海しかなかったのに、今は海の先に陸が見える。 Uターンした覚えもなく、もししていれば後藤に攻撃されているはずだ。 どうやって現在地に移動したのか、レナには検討が付かない。 「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」 「え? うん、分かった」 真紅の申し出は、レナにとってもありがたい。 当たり前の事だが、ホウキに乗って飛行した経験などレナには無い。 今は安定して飛んでいるものの、一歩間違えれば墜落する恐れがあるので気が気ではなかった。 突然とホウキが止まる可能性もある。 高度はそれほど高くなく、下は海なので落ちても即死はしないだろう。 だとしても、陸から遠い地点に落ちれば溺死は免れない。 このまま神経をすり減らしながら飛び続けるよりも、一度は陸に降りた方が賢明だ。 レナがホウキの柄を少しだけ下げると、空飛ぶホウキは緩やかに降下を始めた。 このままのペースで降り続ければ海に落ちず、無事に着陸できるだろう。 ようやく一息付けると、レナの心中に安堵感が広がる。 そんな時だ。 「レナ……立派なレディになりなさい」 「え?」 不意に聞こえてきた声に、レナは反射的に振り向いていた。 目に映ったのは、ホウキから滑り落ちようとしている真紅。 レナは心臓が一瞬だけ止まった気がした。 「真紅ちゃん!」 驚くと同時に右手を伸ばす。 操縦中に危険だが見捨てるわけにはいかない。 間に合えと願うが、無情にも真紅の体はホウキから落ちた。 それでも、伸ばされた手は間一髪真紅の左足を掴む。 冷や汗が噴き出しそうになるんかでレナはホッとして――軽い音が鳴った。 「あ……」 間の抜けた声がレナの口から漏れた。 呆然と眼前の光景を凝視する。それしかできなかった。 そんな彼女を尻目にホウキは粛々と己の役目を果たし、遂に持ち主を陸に辿り着かせる。 しかし、地面に足が着いた瞬間にレナはつんのめり、綺麗に半回転した。 地面に叩き付けられ、衝撃が背中を突き抜けても、彼女は反応を示さない。 数瞬後にはのっそりと起き上がるものの、まだぼうっとしている。 そのまま右手を目の前まで上げて、自分が握っている物を見た。 薔薇を模した飾りがあしらわれている靴、滑らかな白い肌と赤いワンピースが目に映り――腹部から先は無かった。 胸に飾られた緑色のリボンも、端正な顔も、艶やかな金髪も無くなっている。 当たり前だ。今しがた真紅の体は上下に分かれて、上半身は海中に消えてしまったのだから。 「う……ぁ……」 呻くような声が出て、次いで右手が震えだす。 確かに、確かにレナは落下した真紅を掴んでいた。 だが、次の瞬間には腹部が開いていき、あっさりと二つに分かれてしまったのだ。 半分の大きさになった真紅が暗い海に落ちていくのを、レナは見ざるを得なかった。 レナは聡明な少女だ。現職の刑事が感心するほど、その頭脳は切れる。 だから、後藤の最後の攻撃が真紅に届いていたのも何となく察しがついた。 だとしても、それがどうしたというのか。 助けたと思った相手がこのような姿になってしまった衝撃は、真紅の状態に気付けなかった後悔は、 「あ……あああ……ああああぁぁ」 彼女にとっては余りにも大きく、ただ嘆きと涙をこぼれさせるしかなかった。 【一日目黎明/E-1 中央部】 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]無し [所持品]支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、サタンサーベル@仮面ライダーBLACK 空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン [状態] 健康、悲しみ [思考・行動] 基本思考 元の世界に帰る。 0:??? 1:圭一、魅音、詩音、沙都子、悟史と合流する。 2:翠星石と蒼星石も探す。 3:水銀燈、後藤を警戒。 [備考] ※真紅と情報交換をしました。 ※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。 【支給品紹介】 【煙幕弾】 魔界にて売られているアイテム。値段は600マッカ。 ゲームでは使えばボス以外の敵から確実に逃げられる。 このロワでは数分間煙幕を張り、その間は方向感覚を狂わせる効果があるとした。 【空飛ぶホウキ】 その名のとおり空を飛ぶホウキ。 効果はフライングボードと似ているが、こちらの方が高性能である。 ■ ■ ■ 「どうなってるのかな?」 「分からないけど……とりあえずは、助かったようね」 助かったと断定したのは、先程まであった後藤の威圧感が綺麗さっぱり消え去ったからだ。 安心したが次に自らの傷口を見て、真紅は諦観の混じった溜め息を吐いた。 自慢のワンピースは真一文字に切り裂かれ、体は半分以上が切られている。 風が吹くたびに傷口を通り抜けて冷えた。 展開した障壁が紙のように破られ、自分の体を刃が通過する感触は案外あっさりとしていた。 真っ二つにこそされなかったので即死こそしなかったが、どのみちこの傷では長くはないだろう。 不幸中の幸いは、レナまで届かなかったことか。 もし切られていれば、今頃は二人とも海の中だったろう。 もっとも、真紅はこれからそうなりそうだが。 「ねえ、レナ。大丈夫そうなら……陸に降りてくれない?」 「え? うん、分かった」 レナに陸に降下するように頼むが、真紅はそれまで耐えられそうもない。 目は霞が掛かり、頭はどこか眠たそうに上下している。 レナはまだ真紅の状態に気付いていない。 取り乱されても困るから、真紅も言わない。 高度が下がっていく中で、真紅はぼんやりと考えていた。 最後にレナに何か伝えたかったのだ。 付き合いは数時間にも満たない。 それでも彼女がとても優しい性格をしているのは知っている。 自分が停止すれば、レナがとても悲しむのを想像するのも容易い。 これからも殺し合いを生き抜かねばならないのに、あまり一人の死に捕らわれるのは好ましくない。 せめて、何か餞別の言葉を言いたかった。 瞬間的に真紅が思い浮かんだ言葉は一つしかなかった。 それは、かつてのミーディアムである少女と別れる際に送った言葉だ。 もう一度使うとは思っていなかったが、友人に送る物としてはこれが相応しいと真紅は思った。 「レナ……立派なレディになりなさい」 「え?」 そこで、真紅は自分の体が傾いていくのを感じた。 無念はいくらでもある。 まだ水銀燈に謝っていない。翠星石や蒼星石のことも心配だ。 自分を待っている者たちも居る。 何よりも、最愛の父とまだ再会していない。 それでも、真紅は襲い掛かる眠気にその身を任せた。 抗うだけの余力は残されていなかった。 最後に幻視したのは父の姿ではなく、いつも賑やかだった桜田家の日々。 最後に聞こえたのはレナの自分を呼ぶ声と、 パキリ! 自分の体が泣き分かれる軽い音だった。 薔薇乙女は少女に言葉を送り、海中に没した。 せめて、優しい少女が困難に立ち向かえるようにと願いを込めて。 ボディの半分は沈み、後に残るは残光のように輝く赤い宝石だけ。 【真紅@ローゼンメイデン 死亡】 ※真紅の上半身とデイパック(支給品一式、手鏡@現実)はE-1 西部の海中、 真紅のローザミスティカは海面を漂っています。 時系列順で読む Back 真実の果てに Next 仇敵 投下順で読む Back 真実の果てに Next 仇敵 025 二人の秘め事 竜宮レナ 077 命の価値 真紅 008 私がトーキョーに送ってあげる 後藤 072 Ultimate thing(前編)