約 454,635 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3236.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 窓から顔を半分だけ出したタバサは、階下をぐるり見渡した。 下にはたいまつがいくつか。 特に襲撃者が集まっている様子はない。 よく見ると襲撃者達の装備はまちまちだ。統一性という者に欠けている。 つまり、彼らは傭兵なのだろう。たまに山賊になるかも知れないが。 それのほとんどが正面に集まっているようだ。 「あれやって」 「あれ?」 タバサの最小限の説明がギーシュにはわからない。 わかるのは少し遅れて来たキュルケの方だ。 「あんたのワルキューレよ。人数が減ってるのがわかったら囮にならないでしょう」 「あ、ああ。そう言うことか。まかせたまえ」 ギーシュが杖を振ると、舞い落ちるのは赤い花びら2つ。 床に落ちた2枚は、わずかの間に2体の青銅像になった。 「これで本当にあの二人の代わりになるのかい?」 作っては見た物のいささか不安だ。 青銅の乙女はどう見てもワルドとルイズの二人には見えない。 「暗いから」 そう言ったタバサは小さい体を窓の外に飛ばす。 「そう言うこと。あ、ワルキューレはちょっと遅れてから下ろしなさいよ」 続くキュルケも窓の外に身を躍らせる。 小さく呟いたレビテーションの呪文が効果を現すと、キュルケは地面に激突するようなこともなくふわりと地面に降り立つ。 その後はギーシュ、最後に2体のワルキューレが壁を砕いて飛び降りた。 タバサとキュルケは間をおかずに再びレビテーション。 ワルキューレは金属音を立てずに、地面に降りた。 フーケに雇われた傭兵達が、壁を破って降りてきた5人に気づかないわけはない。 近くの傭兵達は5人組に燃えるたいまつをかざす。 「いたぞ!学院の貴族どもだ」 「なに?」 「捕まえろ!!」 怒号が飛び交い、傭兵達は5人組に殺到する。 「ひ、ひぃいいいいいいっ」 ギーシュ達は走り出した。 囮なのだから宿屋からなるべく離れなければならない。 任務としてはごくごく正しいものだ。 だが、ギーシュはそんな役割なんか忘れて全力疾走をしていた。 貴族としての誇りも、平民は貴族の相手にならないという常識もすでに吹き飛んでいる。 「ば、ばれた方がよかったぁあああああ」 傭兵達は殺気立った目をギーシュ達に向けている。 さらには、たいまつにあぶられ、顔をしかめている。 それが炎に照らされてゆらゆらと揺れているのだ。 理屈なんか超えて怖い。 一回、怖いといったくらいじゃ足りない。 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い これくらい怖い。 「いたぞ!」 「追え!」 「逃がすな!」 追いつかれては終わりだ。そんな予感がひしひしとする。 「来るなぁああああああああああああああああああ」 ギーシュは必死に走る。 そして叫ぶ。 その叫びがより多くの傭兵達を引きつけていた。 同じ頃、ワルドはユーノを肩に乗せたルイズを抱いて、ギーシュ達と反対側の窓から飛び降りていた。 「うまくいったようだな。あの三人、思った以上によくやる」 時間差で降りた窓の下に傭兵は誰もいない。 ギーシュ達を追って行ってしまったのだ。 「今の内に桟橋まで行こう」 「ええ」 ほとんどの傭兵の目がギーシュ達に集まっている。 逃げるなら今の内だ。 ワルドはルイズを下ろし、小さな手を引いて走る。 だが、引きつけられたのはほとんどだ。 全ての目ではない。 「こっちにもいたぞーーー!」 目端の利く者というのはどこにでもいる。 ギーシュ達を追っている傭兵に比べれば遙かに少ない数であるが、幾人かの傭兵がルイズ達を見つけ、後を追ってくる。 「そううまくはいかないか」 ワルドは足を速めようとしてやめた。 ルイズでは訓練された魔法衛士隊の足についてこれるわけがない。 ワルドは少しずつ差を詰めつつある傭兵達を見ると、腰に差した杖に手を伸ばした。 ユーノが走るルイズの肩から飛び降りる。 壁際の闇の中を走り、路地に飛び込んだ。 (ユーノ!?) ルイズはユーノを止めようとした。 だが、その暇もなくワルドに手を引かれ走り続けるしかなかった。 傭兵達とルイズの距離はさらに縮まる。 明らかにルイズより傭兵達の方が速い。 まもなく追いつかれてしまう。 「そろそろ迎え撃つしかないようだな」 ワルドは足を止め、ルイズを背中に隠した。 剣のこしらえをした杖を迫る傭兵に向けて構える。 「ワルド……」 「大丈夫。僕は魔法衛士隊の隊長だ。武器を持っているとはいえ、たかが平民。あのくらい蹴散らしてやるよ」 ワルドはルーンを唱える。 風が杖の先に集まりつつあった。 そのとき傭兵達は驚きの声を上げ、足を止めた。 それは、ワルドの魔法がもたらした結果ではなかった。 空から降りてきた少年を見た傭兵達は、もちろんわずかに逡巡を見せた。 だが、それもすぐに無くなる。 少年はマントを着けている。 つまりメイジだ。 メイジが空を飛ぶのは当たり前だからだ。 それより、わざわざ剣の間合いに入ってきた愚かさを笑う。 この距離ならば魔法より剣の方が速い。 ためらうことなく邪魔な少年に刃を振り下ろす。 そして、剣は傭兵の手を離れた。 地面に剣が落ち、金属が石畳を叩く音が響く。 ユーノが斬りつけてきた傭兵の剣をデルフリンガーで跳ね上げたのだ。 ユーノは傭兵達の前に立ちはだかり、両手を広げ、精一杯の声で叫んだ。 「ここから先は行かないでください!」 とても人を脅せるような声色ではないが、傭兵達は足を止める。 そして、ある者は剣を構えなおし、ある者は剣を弓に変え、その目標をユーノに移した。 「君は!ユーノ君か?」 「はい」 背中にいるワルドに答えてもユーノは後ろを見ない。 デルフリンガーが教えてくれていた「絶対に目を離すな」と。 「ワルドさん。ルイズを任せていいですか?」 「無論だ。ルイズは僕の婚約者だ。言われるまでもない」 「お願いします!」 ワルドは構えた剣を腰に戻す。そして、ルイズの手を引いた。 「ワルド、本気?ユーノは……!」 「わかっているよ。彼が普通の子供ならこんな事はしない。だが、彼はそんな者じゃない。わかるだろ?それに君には任務がある」 「でも……」 ルイズはユーノを見た。それからワルドを見て、もう一度ユーノを見る。 どうすればいいのかわからなかった。 ここでユーノを守ればいいのか。それともワルドの言うとおりに、任務のために走ればいいのか。 どちらを選べばいいか、全然わからない。 「ルイズ!早く行って」 その一言がルイズの決心を決めた。 たいまつの炎に照らされ、背中を見せるユーノがどんな顔をしているのかルイズにはわからない。 けれど今まで一緒にジュエルシードを集めてきたユーノなら、この危険もどうにかできると思えた。 「ユーノ、危なくなったら……わかっているわね」 「うん。前と一緒だね」 ルイズは走った。 ユーノに背を向け、ワルドの手を握り、桟橋に向かってひたすら走った。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/309.html
自然の中で 作者:+LSusK05 目を閉じれば耳に入るのは渓流の音、木々の囁き、鳥の歌。鼻に届くのは緑の匂い。 澄んだ空気が満ちた空間で意識は一点に向ける。 ほんの僅かな兆候すら見逃さぬように手元に集中し、反応を待つ。 「釣れないねー……」 そんな中で隣からの声。目を開けてそちらを見ると、麦わら帽子を被った1人の少女。 自分と同じ岩場に腰掛け、釣り竿を流れに垂らす愛娘の姿がある。 「ユーノパパー、お魚さん、いないのかな?」 「そんなことはないよ」 困ったような顔で問いかけてくるヴィヴィオに、ユーノは優しく応えた。 「じゃあ、いなくなっちゃったのかな? ユーノパパがぜんぶ、釣っちゃった?」 「そこまで釣ってはいないんだけどなぁ……」 再度の問いに、ユーノは苦笑1つ。ここへ竿を垂らしてからユーノが釣り上げた魚は2匹のみ。 これで打ち止めということはないだろう。 「ヴィヴィオ、竿を上げてごらん」 「あい」 こちらの声に従って、ヴィヴィオは竿を上げた。 竿から伸びた糸の先には、Jの字をした小さな金属だけがある。 「エサ、ない……」 「それじゃあ、釣れないね。貸してごらん」 ユーノはヴィヴィオの釣り針をたぐり寄せると、側に置いてある小さな木箱を開けた。 そこに入っているのは、小さな虫。それを手に取り、釣り針に付ける。 さすがのヴィヴィオも、まだこういった虫を手で触る度胸はなかった。 「はい、いいよ」 「ありがとう、ユーノパパ」 えいっとヴィヴィオは竿を振り、釣り針を川面へ投げ入れた。 その目はじっと竿先へと注がれている。今度こそ、と気合い十分だ。 連れてきて良かったな、とユーノは思う。 そもそものきっかけは、ちょっとした昔話だった。 ユーノとなのは、ヴィヴィオと揃った食事の席で、海鳴時代の話をしていた時のこと。 友人の家族達と一緒に小旅行をした時の話をすると、 ヴィヴィオは目を輝かせて色々と質問を投げかけてきた。 山へ行った時のこと、海へ行った時のこと等々、 その全てがヴィヴィオには新鮮で興味をそそられるものだったらしい。 考えてみれば当然で、ヴィヴィオの活動範囲は狭い。 ミッドチルダ首都クラナガン、旧機動六課の隊舎周辺、 そして今通っている魔法学院周辺、と限られてしまうのだ。 これはよくない、とユーノは思った。 割と緑が多いクラナガンだが、それでも「自然」が多い、と言えるほどでもない。 郊外へ出れば話は別だが。 放浪の一族の出としては、娘にもっと見聞を深めてもらいたいと思った。 直接目にし、肌で触れてこそ分かる物は多いのだ。 だからユーノはちょっとした旅行を企画した。 数泊のキャンプ――せっかくだから自然と触れ合える機会をヴィヴィオに与えようと思ったのだ。 幸いヴィヴィオは好奇心の旺盛な子だ。提案に大喜びで飛び付き、なのはもまた賛成してくれた。 しかしここで1つ問題が。 ユーノ自身は出身のこともあって本格的な野外泊―― 必要最低限の道具のみを持っていく――にしようと思ったのだが、 さすがにサバイバルのレベルは今のヴィヴィオにはきついのではないかとなのはが反論。 本格志向のスクライアと、段階を踏むべきだとの母。 あーでもないこーでもないと熱い議論と肉体言語(夜的な意味で)を交わし、 結局第1回野外教育は設備の整ったログハウス付のキャンプ場、という形に落ち着いたのである。 始まってみるとユーノの独壇場とも言えた。 キャンプ場周辺は「作られた自然」ではなく、 人の手がほとんど加わっていなかったのだ――場所選びの際にこれだけは、 と思い、ユーノがなのはを誘導したのだが。 結果は大成功。 ヴィヴィオは遊びながらもしっかり学習――動植物の知識や道具の使い方等を吸収していったのだった。 「ユーノくーん。ヴィヴィオー」 背後からの声に振り向くと、なのはがこちらへと歩いてきていた。 白いワンピースと、ヴィヴィオとお揃いの麦わら帽子を被ったなのは。 設備があるキャンプ場だからこその恰好だ。 「お弁当持ってきたよ。そろそろご飯にしない?」 バスケットを持ち上げながら言うなのは。 そんな時間か、とユーノは時計に目をやった。ちょうどお昼時。いいタイミングだ。 「ヴィヴィオ、お弁当だよー」 「ちょっと待ってー」 なのはの言葉に、しかしヴィヴィオは振り向くことなく竿先を見つめている。 首を傾げたなのはがこちらを見る。 「ユーノ君、ヴィヴィオ、どうしたの?」 「実はまだ、1匹も釣ってないんだ。今度こそ、って意気込んでてね」 「にゃはは。晩ご飯のおかず、釣り上げてみせるって燃えてたもんね」 優しげな笑顔をなのははヴィヴィオの背に向けた。 「ヴィヴィオ、ここに来てすごく元気だもんね。何もかもが珍しいみたい」 「うん。普通ならあまり縁のないことではあるからね、こういう機会は」 「そりゃあ、釣り竿から手作りだもんね。糸と針は既製品だけど、普通の家じゃまずないよ」 「本当なら針と糸も何とかしてみたかったんだけどね」 自然が豊富といえどもないものはないのだ。 糸や針の代わりにできる植物は、この近辺には生えていなかった。 「スクライアの娘なら、できて当然?」 「そこまで言うつもりはないけど、こういう知識や経験はあって困るものじゃないよ」 いつどこでどんな経験が活きるか分からないのだ。 だったらヴィヴィオには多くの選択肢を与えてやりたいと思う。それがユーノの考えであり、 「将来のためにも、ね。ユーノ先生、ヴィヴィオをよろしくね」 なのはの考えでもあった。 「あ……!」 その時、ヴィヴィオが声を上げた。 見ると緊張した面持ちで竿先を睨むようにする娘の姿。視線を移すと竿先が小刻みに振れている。 「ヴィヴィオ、さっき言ったこと、覚えてる?」 小声で問うと、表情を変えぬままヴィヴィオは頷いた。 ぴん、と張りつめた空気が広がっていく。そして―― 「やっ!」 気合いの声と共に、ヴィヴィオは釣り竿を引いた。 ばしゃんっ! 水面で跳ねるものがあった。それは1匹の川魚。 「大きい……!」 なのはがそれを見て声を上げる。言葉どおり、それはかなりの大物だった。 少なくとも、ユーノが釣り上げた2匹よりは大きい。 「う、うう……っ!」 暴れる釣り竿を必死でヴィヴィオは抑え込んでいるが厳しそうだった。 これがもう少し小さな魚なら問題なかったのだろうが、こいつは今のヴィヴィオには強敵だと分かる。 ここは手を貸そうとユーノは自分の竿を引き上げて、ヴィヴィオの竿へと手を伸ばし―― 「なのは……?」 それをなのはに止められた。 こちらの手を掴んだまま、なのははもう一方の手を握り締めてヴィヴィオの奮闘を見守っている。 あくまで最後まで、ヴィヴィオにやらせようとしているらしい。 少なくとも、ヴィヴィオから手伝ってと言われない限りは。 ユーノは頷いて今も川魚と戦う娘を見つめる。 ヴィヴィオは竿を保持したままゆっくりと立ち上がった。ゆっくりと数度深呼吸し、 「ええいっ!」 一気に竿を持ち上げた。勢い余ってヴィヴィオは後ろへ倒れ、麦わら帽子が宙を舞う。 しかし魚は確かに川から陸へと引き揚げられた。 ヴィヴィオを飛び越えた魚が落ち、バタバタと岩の上で暴れる。 「ヴィヴィオ、よく頑張った!」 「すごい! すごいよヴィヴィオ!」 賞賛の言葉を贈りながら、ユーノはなのはと共に手を差し出す。 状況が飲み込めないのか、しばらくヴィヴィオは目を瞬かせていたが、 「やったーっ!」 倒れたままで両腕を天へ突き上げ、そのままこちらの手を取った。 「ユーノパパ、なのはママ! ヴィヴィオやったよ!」 「うん。見てごらんヴィヴィオ。僕が釣ったのより大きいよ」 糸をたぐって川魚を針から外し、差し出す。立ち上がったヴィヴィオは恐る恐るそれを受け取り、 「ばんごはんげっとーっ!」 誇らしげに掲げた。そんな娘の頭に、なのはは落ちた麦わら帽子をかぶせてやりながら言った。 「よかったね、ヴィヴィオ」 「うん!」 満面の笑みを浮かべるヴィヴィオを見ながら、 ユーノは自分が釣った川魚を入れた容器と釣り竿をを持ち上げる。 「よし、ちょうどいいからお昼にしようか。それが終わったら、今度はなのはママが先生かな?」 「え? うん、そうだね……ねぇ、ヴィヴィオ。 ヴィヴィオが釣ったお魚さん、今晩のおかずにするけど、どうする? ちょっと難しいかもしれないけど自分でお料理してみる?」 「うんっ、やるーっ!」 魚を持ったまま、ヴィヴィオは駆けていく。心はもう料理へと向いているようだ。 「ヴィヴィオ!? お弁当はこっち――もうっ! そんなに浮かれてると怪我するよーっ!」 バスケットを持って、なのはがそれを追いかけていく。 そんな二人の背を見ながら、ユーノは一度大きく頷くと、ヴィヴィオの竿を拾って2人を追うのだった。 29スレ SS なのは ユノなの ユーノ・スクライア ヴィヴィオ 高町なのは
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/160.html
総受け野郎なんて呼ばせないッ(罠でした。) 作者: ID sj7FOMk1 15-897から派生 きぃぃ、と鍵の掛かっていない部屋に入る。 予想通りに少しインク臭い部屋と原稿やら資料(何故か大半が紙媒体)で散らかっている。 手元のポケットライトを頼りに手当たり次第に探していく。 (こういう時に検索魔法が使えたら便利だけどな……流石に条件がわかんないから仕方ないよね) もしかしたら適当な隠語を条件にすれば見つかるかもしれないが、無意識に選択を拒否する。……認めたら男として最後だし、元々は言葉攻めは苦手だから。 内心でユーノらしくない愚痴をつきながらも捜索を続ける。 古典的だけど本棚の裏か、机の裏の隠し板の中とか……とりあえず目標をベッドの下に。する。 手探りで布団の上をなぞったりして探してみるが…… もみもみ、もぞもぞ……もみもみ。 (……でも、変だな?羽毛布団ってこんなに指に心地よい弾力などしていたっけ?) 疑問が浮かびつつも探る手を強めてみる。 うん、やっぱり柔らかい。しかもホットミルクのように人肌しかも何処かで触ったことのあるような、ないような……いやいやなのはとアリサの中間くらいの大きさか、あれ? 「そんなわけないよね、まさかね……あははは、ひゃううぅぅぅ!!!」 脳裏に走るイメージ、同時に首筋に感じる冷たい雫と同時にバランスを崩してベットに倒れこむ。 今度は顔全体にかかるハリのある弾力と感触……急に部屋に灯りがつく。 「うおっ、まぶし!! でも一体何が……あっああああああ!!!!」 ユーノは目の前の光景を疑いたくなる。もうお分かりだろうけど…… 「ああんもう、もっと続けてもよかったのに……ワイルドなユーノ君も素敵やけどな」 ……裸Yシャツ装備のはやてを押し倒していました、ありがとうございます。 「は、はやて?今日はクラナガンの方で泊り込みのお仕事じゃなかったの?」 「それがな――捜査協力の直前に犯人つかまったもんやから急に暇になったんや」 黒下着の上に裸ワイシャツ(しかもユーノのお下がり。微妙に染み付き)のまま、ユーノの顎を手に取るはやて。 完璧に嵌められた、という絶望感がユーノにいやおう泣く襲い掛かってくる。さらに…… 「もう、ユーノ君ったら、そんなに欲情していたなら最初に言ってくれればよかったのに!」 「まったくだな。男ならば色欲はもって当然……待て、ヴィータ抜けがけは許さんぞ」 「きこえねーです~あたしは先約があるからいいんだよ」 手足は瞬時にバインドで固められ3人に乗っかられてマウントを取られる始末。 ちなみにシグナムはバスタオル一枚の格好で後ろから、たゆんたゆんな凶器で拘束。 シャマルはやけに豪華なレースのネグリジェで囁き。 ヴィータは白ハイレグに振る装備のバニーガールという始末。 「ねぇ、ユーノ君。女の人の部屋に無断で入るのは夜這いのときだけやで?」 「主の言うとおりだ。敵の手中に収まった不埒者の末路をとくと学習させてやる」 「おめーら、何で顔がにやけてるんだよ……別にいいじゃねぇかよ、痛くしなくてもよ」 「甘いなヴィータ~そんなら、恨みっこ無しでみんなではんぶんこしようか?」 「僕はものじゃな―――い!!!!っていうか、やめてやめてズボンに手は不味いって!擦るのNG!剥くのはダウトだからね!ちょっやめ―――!!」 もはや草木さえも起こしかねない肉林の開幕。 ちなみに……この一連の模様は何故かユーノのポケットに入っていたレイジングハートそっくりな紅い宝玉により監視かつ放映(しかもデバイスで見れるワンセグ機能付き) 公開●●●●を目撃した悪魔一堂が、八神家ぶんなぐり艦隊で殴りこむまで……もう間も無く。 15スレ SS はやて シグナム シャマル ユーノ ヴィータ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/280.html
電波北よー\(^o^)/ sihxPTz4 「ユーノくーん!」 「ヴィヴィオ?どうしたのかな?なのはに付いて来たの?」 「んーん!今日はお願いがあるのー!」 「僕に?」 「うん!……これっ!」 「『にっきちょう 3ねんせい たかまちなのは』……これって」 「あのねー」 なんでも、なのはが海鳴の自宅にヴィヴィオを連れていって、 なのは自身が使っていた部屋で寝泊まりしたという。とっても楽しかったそうだ。 アリサやすずかにも会ったらしい。 何かどんどん脇道にそれていくヴィヴィオの話を微笑ましく聞き続ける。 「それでねそれでね!アリサおばちゃんとすずかお姉ちゃんがね! 『なのはの秘密を教えてあげる』って!んでこの本をくれたの!」 何でアリサはおばちゃんですずかはお姉ちゃんなんだ?……何か寒気がするから考えるのはよそう。 「そっか……ヴィヴィオは日本語読めないからね」 「みっどとべるかは読めるもん!」 「ははは……でも、なのははさすがに無理だろうけどさ、フェイトやはやては読めるよ? 無限書庫まで独りで来るの大変じゃなかったかい?」 「アリサおばちゃんとすずかお姉ちゃんが『必ずユーノに見せろ』って」 「二人が……?なんでだろ?」 なんでわざわざ自分なのか……疑問に思うが「はやくはやくー」とヴィヴィオに急かされる。 「じゃあ読んであげるね……『〇月×日……』」 ジュエルシードのこと、フェイトとの戦い、はやてとの出会い、夜天の書について…… たくさん思い出が詰まった『にっきちょう』。 心なしか、自分のことが一杯書いてあったのはちょっと嬉しかった。 その『にっきちょう』も、とうとう最後のページ。 「つぎでお話終わっちゃうの?」 目を輝かせて聞いていたヴィヴィオは、本当に残念そうだった。 「残念だけど、ね。……こほん…… 『今日は、ユーノくんと、おわかれする日でした。 昨日からとてもかなしくて、なみだがとまらなくて、だいじな日なのにずっとねむたかったです。……』」 ああ、そうだったっけ。必死で僕に気付かれないようとしてたなのはのくしゃくしゃな顔を思い出した。 普段とは全然違う様子に、不謹慎だけどドキリと心臓が鳴ったのを覚えている。 「『……ユーノくんは、これからむげんしょこというところでおしごとをするんだ、と言っていました。 もっと一しょにいたかったけれど、かならず会いに来るよ、 とユーノくんが言ってくれたから、がんばろうと思います。……」 ちょうどその時だった。ユーノの耳に書庫の扉が開く音が聞こえたのは。 「『……もっと大きくなって、かわいくなったら、ゆ』」 「ダメええええええええええええっ!!!?」 「うわぁっ!?」 「きゃあ!……なのママ!?」 フェイトもかくや、という速度の暴走なのはさん機関車は、 そのままひったくりさながらユーノの手から『にっきちょう』を奪取し、 10メール近くの制動距離を経てようやく止まった。 「はぁっ……は……ぁっ……ヴィヴィ……オ……これ……誰からっ……?」 「あ、アリサおばちゃんと、すずかお姉ちゃん……」 「はぁ……はぁ……あの二人め……後で頭を……冷やしてあげないと……」 海鳴にいるであるう幼馴染みの身を案じつつ、ユーノは最後のページの言葉の意味をかみ締めていた。 「なんだ……意外に簡単だったんだ……ははは」 「ユーノくん?」 「ユーノ君……ごめ……久し振りに全力全開で走ったから……へとへと……」 「……うん、転送魔法か車で送ってあげるよ」 「……ありがとう」 にっこり笑う彼女の顔は、出会った時からいつも変わらず魅力的だった。 心臓を鷲掴みにされるような感じがした。 ヴィヴィオが「おくるまが良い!!」ということで、時間はかかるけど車で送ることになった。 言い出した張本人は、後部座席でもう寝てしまっているけど。助手席に乗るなのははまだ不服そうだ。 「……もう……アリサちゃんもすずかちゃんも……後で必ず」 「ははは……まぁ抑えて抑えて……」 「ぶー……なんでお母さんもよりによって二人にアレ見せるかなぁ……」 どうやら原因は桃子さんのようだ。 「……なのは?」 「ん?」 「……もう遅いかい?それともまだ……間に合う、かな?」 「何?」 多分、これを言ったら彼女は真っ赤になるだろう。それが今から楽しみで仕方が無い。 今までは僕の一方通行かと思っていたけれど…… 何のことは無い、最初から『ありえない』と思っていた、最高の形に、僕が気付こうとしなかっただけだ。 これなら多分……いや絶対に、うまくいく。 なのはの『にっきちょう』の、最後のページ。普段の倍は書いていたその最後の一言。 『ユーノくんの……』 ――1年後、栗色の髪と、澄んだ翠の瞳を持ったきょうだいが、ヴィヴィオにできましたとさ。 おしまい。 20スレ SS なのは ユノなの ユーノxなのは ユーノ・スクライア ヴィヴィオ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/315.html
遊乃堂奇譚九話特別編?「迷宮のユーノ」今度がその2かな Bl+g0puO ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店の入り口に今日は一枚の張り紙が貼られていた。 『急な用事により暫くお休みを頂きます。 遊乃堂』 その張り紙を読んだアリサ・バニングスはその怒りのはけ口を親友のすずかへと代えて、 彼女を近所の喫茶店へ呼び出し、すずか相手にパフェを肴にさんざっぱらユーノの悪口を言いつのっていた。 「急にお休みして何日も店を空けるなんて、 経営者としての自覚ないんじゃないかしら、あの馬鹿フェレットは! 黙って店を閉めたらお客さんが困るでしょうに。……だいたいアタシに黙ってってどういう了見よ!」 売上がほとんどないあの店で休みになって困るのはお客ではなくてユーノの“身内”だけかも知れないが。 「“何日も”って、その張り紙は今日見たばっかりだと思うんだけど……」 すずかの言葉はパフェと貪るアリサには届いていないようだ。 ――たしか、こないだ夕飯食べに二人で押しかけた時にアルフさんがそのこと言ってたんだけどな。 彼女は目の前で二つめのパフェに手をつける親友をちょっとだけ生暖かい目で見守っていた。 ――そのときのアリサはユーノさんばっかり見てたから憶えていないのかもしれないけれど。 その頃、悪口の主たる“馬鹿フェレット”は従業員達と従業員候補(?)1名と共に地下迷宮を歩いていた。 「あ~、じれったいね! 壁ぶち抜いて突っ切っちまった方が速くないかい」 アルフはくねくねと曲がる迷路にしびれを切らしてきていた。 「だいたいどこへ向かうかわかってるのかい? それにこの迷路自体がものすごく強力な防御魔法の固まりだ。 なのはのゼロ距離でのエクセリオンバスタークラスじゃないと壁1枚でも貫通しないんじゃないかな」 「じゃあ、壁の薄いところを探してから私のザンバーフォームで……」 「ザンバーフォームを展開するにはここじゃあ狭すぎないかい? それに貫通できるかどうか」 「じゃあ、サンダーフォールのつるべ打ちで……」 「フェイトぉ、こんな室内の狭いとこでそれじゃ、うまくいったら、まるでピカチュ○だよ~。 で、失敗してアタシ達の頭に当たって全員アフロとかは勘弁だよ」 『いや、それピカチュ○じゃないから。単なるギャグアニメとかだよ』と心の中で突っ込みを入れるユーノ。 「ここからはしばらく一本道みたいだね」 しばらくいくと彼らの目の前に狭いが手元の明かりで見える限りずっと一本道に見える通路が現れた。 「これだと飽きてくるよぉ」 アルフ達が何分か歩けども歩けども彼らの視界が届く限りはずっと一本道だった。 「アルフ、ぶつくさ言わない」 「だって……」 『ゴリッ』アルフが手をついた辺りの石のブロックがスイッチのようにくぼんだ。 「あれ?」 それを合図とするかのように通路の前後から響く地響き。 「ユーノ、ごめん……、アタシ、なんかやらかしたみたいだね……」 ユーノが目をこらすと丁度通路と同じ大きさの石の車輪が迫ってくるのが見えた。振り向くと後方からも……。 「別にいいけど……、印をつけ損なった僕が悪いんだし。……しかしまったくベタなものを」 ユーノとアルフがバインドで動きを止めようとするが強力な防御魔法の前に減速させることしかできない。 「やっぱり、私がザンバーフォームで……」 「しかし壁の薄いところを調べている時間はなさそうだし、 それにこの狭い通路じゃ、難しいんじゃないかな」 「でも」 「お待ちください。撃ち抜くのでしたら、私の方が適任かと」 言い争いになりそうな二人を制してからアインスは手近な壁に手のひらを当てた。 「お下がりください。壁に対してゼロ距離でのエクセリオンバスターを使います」 「それって“あのとき”のなのはの……」 何故アインスが“エクセリオンバスター”を使えるのかにユーノは思い当たった。 「はい、“記憶”にありましたので」 「大丈夫なのかい?」 「ほぼ完璧にコピーは出来ているはずです。力も十分にあります。そして高町なのはの力を信じてください」 「いや、そうじゃなくて……。わかったよ、でも……」 ユーノは彼の声に驚いて振り向いたアインスの目を真剣なまなざしで見つめた。 「僕は今目の前にいる、リインフォース・アインス、君を信じるよ」 「ハイ、我が主、ユーノ・スクライア」 ――必ず壁を貫通させて、主ユーノと、その想い人お二人をこの身にかえてもお助けしてみせます! 間近に迫る石の車輪達をバインドで減速させつつエクセリオンバスターの衝撃から身を守るためバリアをはる3人。 「全力全開、エクセリオンバスター、参ります!」 ……なおも続くけど今はここまで。 35スレ SS アリサ・バニングス アルフ フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ユーノ・スクライア リインフォース・アインス 月村すずか
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/64.html
「すずかさんルート→月村家」 作者:15-498 家族水入らずに邪魔するのも悪いかな、と考えたが行く宛ても無かったので適当に―― rァ・海鳴駅前商店街 ・海鳴市内 ・クラナガン で幸せそうなカップルをぼんやりと観察していると―――ぽんぽんと肩を叩かれた。 「久しぶり!ユーノ君……だよね?」 「あ――うん。こちらこそ久しぶり。すずか」 「誰かと待ち合わせしてるの?なのはちゃん……とか?」 お邪魔になっちゃいそうだから退散しちゃったほうがいいかなとすずかはおずおずと訊ねてくる。 「あー、いや。今年はちょっと色々あって、別行動なんだ」 あはは、と寂しげに笑う。 するとすずかはキョトンとして、驚いたように目を見開く。 「……え、もしかしてもしかすると、一人?」 「う、まあ、ありていに言えば……そう、なります」 「あはは、なあんだ、心配して損しちゃった」 「うう、そういうすずかはどうなんだよ」 ユーノががっくりと肩を落としながら恨めしげな目で反撃する一方、すずかは手を合わせて暖かい笑みを漏らした。 「さっきまでは予定がなかったかな。こんな日にも研究で忙しいのは理系学生の悲しいところだよね。でも……」 「でも?わっ」 すずかはえいっとユーノの腕に飛びつき、彼女にしては珍しく、からかうような悪戯っぽい目で楽しげに見上げてくる。 「もう決めた。家にお持ち帰りして寂しい寂しいユーノ君を慰めてあげる」 「え、そ、それは」 「寂しい独り者の私たちでもクリスマスを満喫して罰は当たらないでしょ?」 それとも私じゃ不足かなと一転して不安げな様子になるすずかを見て、 ユーノはかなわないなあと思いながら、ゆっくりと月村家へ歩を進めるのであった。 15スレ SS すずか ユノすず ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/19.html
10スレ 10-240 ナンバーズ的概念における『兄弟』 11スレ 178-182 予算がほしいか、欲しければ己が全能を持ってその力(根拠)を示せ 13スレ 13-203 アルフルート電波 16スレ 121-188 令和にまさかの6番目 18スレ 18-903 クビ司書長の設定 21スレ 21-804セクハラ司書長と不遇部隊長の愉快な日常 23スレ 20-32妄想野郎司書チーム 24スレ 556-568何時代でも家焼くな 25スレ 300-311魔道+書物=斬魔大聖が鉄板だった 30スレ 30-53幼女ギンガドリル 30-126ユーノTSネタ 31スレ 31-305第一次戦闘機人突撃合戦 39スレ 39-416生モノでも格好良かったと思う 40スレ 40-252最初に摂取したカワカミン成分(個人的に) 43スレ 43-441勇気も無い弱い女()からの精一杯のアプローチ 50スレ 50-149 メタルギアフェレット1 60スレ 60-99 還暦 - にっぷし 60-138 空の境界ネタ 60-184 ユーノは王様 60-232 無限書庫に作業用BGMが流れていたら 60-481 ユーノ先生 60-514 無限書庫 ~輝く季節へ~ 60-669 ジュエルシードのエピソード捏造 60-941 ピコピコ天使だよユーノ君 61スレ 61-76 なのはが撃墜時に… 61-94 三日の掟 61-151 後にはくすんだ翡翠色の宝石が一つ *死ネタ注意 61-190 スーパーキャロタイム 61-219 光の巨大フェレット 61-234 ユーノの正体 61-241 スーパーキャロタイム再び 61-389 司書長の膝をめぐるたたかい 70スレ 70-127 検索(さが)すのは僕のスタンドだ! 89スレ 89-447 掟破りのユーノ×フェイト(試作版) 146スレ 146-441司書長と彼女のゲーム戦争 149スレ 149-733 スプリ〇ン・ユノヴァース
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/179.html
作者:◆kd.2f.1cKc 「スバルがいけないんだよ!」 「今度という今度は、なのはさんの横暴を許すわけにはいかないっ!」 深い青の閃光と桜色の閃光が、交錯し、正面から激突する。 『Devine』 『Buster』 レイジングハートが、マッハキャリバーが術式を発動させる。 レイジングハートの先端から、リボルバーナックルの手甲から、強烈な魔力弾が放たれた。 乱射される砲撃魔法の流れ弾が、ドカドカと着弾し、ミッドチルダ市街の地形を変えていく。 この近辺は、管理局の武装隊関連の施設がある場所だったが、廃棄区画ではない。 だが、2人はそんなことは構わないという様子で闘いを続けている。 ────そう、物理的破壊を伴うリミッター無しの全力全開、マジバトルだ。 2色の魔力弾がもつれ合って、地上本部の訓練施設が使用するオフィスビルに直撃。 「どうして、こんな事になったんだろう……」 崩壊するビルの屋上から投げ出されながら、2人の闘いの原因はそんなことを呟いていた。 事の始まりは、1月半ほどさかのぼる。 「防御魔法と、飛行魔法を教えて欲しい?」 無限書庫司書長、ユーノ・スクライアの元に、スバル・ナカジマが現われたのは、そんな理由だった。 「はい! スクライア司書長は防御魔法のエキスパートだと聞いておりますので」 「そんな、6課の面々に言われるほどじゃないよ」 昼食時に押しかけてきたスバルに、ユーノは不快と言うわけではなく苦笑して、そう謙遜した。 「それに、飛行魔法って……6課の隊長たちだって、飛べるだろう?」 「その、自分たちはフィーリングで覚えたので、上手く教えられない、とか言うんです」 スバルの答えに、ユーノはああそうか、と納得した。 「呼吸するように飛んでるもんね、なのはたち……」 なのはとはやては己の技術として覚えるのではなく、いきなりデバイスに“飛ばせて貰った”のが最初だし、 ヴォルケンリッターに至ってはそれ以前、プログラムされた段階で高い飛行戦闘能力を与えられているだろう。 唯一、自己学習したのはフェイトだけだが、早い段階で覚えさせられたのだとしたら、 就学前の年齢の記憶なんかほとんど無いだろうし、 その時期の記憶はアリシアの記憶をオーバーライトされてしまっている可能性も高い。 加えて、魔導師の高等飛行技術とは、飛びながら別の魔法を操ることが前提だ。 飛行魔法そのものをいちいち意識しているようでは、役に立たないのである。 なるほどこれでは、改めて他人に教えろ、などというのは不可能である。 「でも、スバルは陸でしょ? わざわざ飛行魔法なんか使わなくても」 小首を傾げるような仕種をしつつ、言ってから、ユーノは手に持っていたチーズバーガーにかじりつき、 咀嚼する。 「機動6課、あと3週間で解散になるのは、ご存知ですよね?」 「まぁ、そりゃあね」 スバルの言葉に、頷く。 「私、その後、陸の災害救助部隊を希望してるんです。 けど、そうなると、多少なりとも飛行技術を持っていた方が、有利でしょう? なのはさんのように、1人でも多くの人を助けられるようになりたいんです」 「なるほどね」 ユーノは、納得が行った、というように、頷いた。 「それに……」 「ん?」 「あ、いえ!」 言いかけて、スバルは慌てたように、自分の言葉を遮った。 「何でもありません!」 ばたばたと両手を振って、スバルは誤魔化した。 「まあ良いけど……」 ユーノは、そう言って苦笑する。 「それと、防御魔法ですが、出来れば範囲形のを使えるようになりたいんです。 それと、出来れば結界も」 気を取り直して、スバルは右手の指を振る仕種をしながら、言った。 「それも救助活動の一助になるもんね」 「はい」 ユーノの言葉に、スバルは明るい表情で即答する。 「でもそう言うのは、シャマルさんも得意じゃなかった?」 「シャマル先生は、古代ベルカ式ですから。 一応、教えては貰ったんですけど、展開に時間がかかりすぎて……」 スバルは少し俯きがちになって、困惑気に言う。 「あ、そうか」 近代ベルカ式は、ミッドチルダ式にエミュレーターを被せてベルカ式を再現するものだ。 シューティングアーツに使うような瞬発魔法なら構わないが、 範囲系の魔法の展開には処理がかかりすぎる。 スバル自身、なのはのディバイン・バスターをコピーするなど、ミッドチルダ式への適正もあるのだから、 屋上屋を重ねるような真似をするより、ミッドチルダ式の結界魔法を展開した方が早いだろう。 「まぁ、いいか。JS事件の後始末の煽りで、逆にここはあまり忙しくないしね」 ユーノは、苦笑気味に言った。 次元航行艦隊がロストロギア収集や次元環境観測に活発に活動していると、 その資料や過去の記録の捜索・参照要求がひっきりなしに来る。 だが、管理局全体がJS事件の後始末に追われている為、 皮肉なことに、無限書庫はむしろ普段より舞い込む作業が少なかった。 ユーノなど、自分のことをいまだにフェレットもどき呼ばわりする、 バリアジャケットと同じくらい腹も黒いんじゃないかと思う某提督と、 3時間おきに顔をあわせる事が無くなって、どれだけ楽になった事か。 ……閑話休題。 「それじゃあ」 スバルが、ぱっ、と顔を明るくする。 「うん、僕で出来る範囲でよかったらね、空き時間に少しずつ、になっちゃうけど」 そう言って、ユーノは手を差し出した。スバルはそれを、両手でぎゅっ、と握る。 「よろしくお願いします!」 「こちらこそ、よろしく」 力強く言うスバルに、ユーノは返事する。握手。 「いてて……」 握手が離れると、ユーノは紅くなった右手を振った。 「あ、ご、ごめんなさい!」 スバルは、慌てて言い、心配そうにユーノを覗き込む。 「あ、うん、大丈夫だよ」 ユーノは左手で右手を擦りつつ、苦笑気味に優しく笑って、そう言った。
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/114.html
「フェレットモード発情期-なのはさんの場合」 作者:D KDq6qWU9 早朝のお風呂場で木霊する二つの声。流石に昨晩の激しい情事の匂いをヴィヴィオには嗅がせたくないの。 「ごめん、なのは。いつもの事とはいえ、また……」 「それ以上言うと本当に怒るから駄目だよ。私も望んで遣っている事だし気にしちゃだ~め」 昨日の夜の荒々しく私を求めた彼とは大違いの声。もう呆れるくらいに数を重ねた筈なのに、何時までも終わった後はユーノ君は始めての時のように体を気遣ってくるの。 付き合い始めて発覚したユーノ君の秘密―――――フェレットモード時の発情期が人間になってもフィードバックされる。 先天的に変身魔法が使える人に置きやすい現象を私が知ったのはユーノ君との三度目のデートの時に私の目の前で発症した時。 最初はすごく驚いてユーノ君も押し倒した事を攻めたけど、今ではそれを出汁にして本日は両手で二人で楽しんでいるの。 最近ではヴィヴィオが『おとうとかいもうとがほしい~』なんておねだりしてくるから余計に――――背中から抱きしめられると感じる何時もとは違う暖かさ。 「……ゆーのくんのえっち。まだ足りないの?」 「うっ……でもなのはには言われてくないよ。なのはだって同じでしょう!昨日何回出したと……」 「女の子にだって色々あるんだよ、もう!」 体制を変えて向かい合うとすごく真っ赤になって俯くユーノ君の姿。 ――――病気の人に対して不謹慎なんだけど、熱に浮かされたユーノ君の顔はすごくそそられる。 ちょっと女の子っぽい顔なのに、欲求はすごく男の人のそれ。そのアンバランスさに加えて普段はあまり自分の欲求とかを前に出さないから、余計に受け止めたくなっちゃうの 「いいよ。我慢なんかしなくていいからね。もうユーノ君ので染めちゃっていいんだよ……」 言葉はキスで塞がれて、降り注ぐシャワーの音が余計な雑音を消してくれる。 ……ヴィヴィオが起きるまでの時間までお風呂場でもしっぽりとすごしたのでした、まる 12スレ SS なのは ユノなの ユーノ
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/155.html
答えが、まったくわからない(後編) ◆LuuKRM2PEg 戦場からそこまで距離が離れていなかったおかげか、町に到着するのにそこまでの時間はかからない。市街地の何処を目的地にしているかなんて考えてないし、怪人から少しでも離れる為に走るしかなかった。 この腕の中で眠り続けている左翔太郎はまだ目覚めないが、考えてみればその方が都合はいい。もしもこんな時に彼が起きたりしたら、それはそれで面倒だ。 ただ、ユーノの事をどう伝えればいいか。新たなる悩みが生まれた杏子の前に、突如としてフェイトが回り込んできた。 「杏子」 「何だよ、フェイト!?」 「私はユーノを連れてくるから、あなたは先に行って」 「はぁ!?」 フェイトの言葉は、先程のユーノのように信じられる内容ではなかった。 「あんた、何考えてるんだよ!?」 「やっぱり、これからの事を考えると三人よりも四人の方がいいかもしれないから……それに杏子だって、くたばったりしたら許さないって言ってたでしょ」 「あれは……咄嗟に出た言葉って言うか……とにかく、今更戻ったところでどうなるんだ!」 「大丈夫、逃げたりしないから心配しないで」 「そういう問題じゃねえ! フェイトは母親の為に殺し合いに乗ったんじゃなかったのかよ! ここでお前が死んだりしたら、あんたの母親はどうなるんだ!?」 「……ごめんなさい。でも、やっぱりユーノがいた方が杏子も私も助かるかもしれないから」 「てめぇ……何だよそれ、答えになってねえだろ! ユーノみたいに正義の味方を気取って死ぬつもりか!?」 「そうじゃない! そういう訳じゃないよ……私でも、よくわからない……!」 「じゃあ、何で……!?」 「……とにかく、私は行くから。ありがとう、杏子」 悲しげな表情を浮かべるフェイトは、納得のいく答えを返さないまま背を向ける。それに怒りを覚えて杏子は怒鳴ろうとするが、フェイトは一瞬で空の彼方へと飛び去ってしまった。 杏子は止めようと思ったが、そのスピードによって少女の姿はすぐに見えなくなってしまう。例え翔太郎を放置して追おうとしても追いつけるわけがないし、何よりそんな事をしては今度こそ怪人に殺されるだけだ。 「何だよ、どいつもこいつも……ああいいよ! それなら勝手にしろ!」 そう叫びながら、杏子はフェイトから背を向けて再び走り出す。どうせフェイトを追ったとしても何にもならないし、わざわざ殺されるリスクを犯す気はないからだ。 生きる為ならそれが正しいのはわかってるし、今はこの選択を取るしかない。だけど、どういう訳か怪人から逃げ出した時から心の中に変なモヤモヤが溜まっていく。自分から選んだ判断なのに、まるでスッキリしなかった。 (何で、何であたしは……この兄ちゃんを切り捨てないんだ? 何で、あいつらはあたしに『ありがとう』なんて言ったんだ? 何で、あたしの気持ちは晴れないんだ? 優勝するって決めたんだろ? なのに、何で……!?) その答えを杏子は渇望するが、当然の事ながら得られない。 どうしてみんな、そこまでして誰かの為に動こうとするのか? 他人の都合を考えないで何かをあげようとしても、その分の不幸が広がってしまうだけなのに。 何一つの疑問も晴れないまま、杏子は力任せに走り続けていた。今の彼女は何処を目指しているかなんて全く考えていない。ただ、佐倉杏子は答えが知りたかった。 どうして、フェイト・テスタロッサとユーノ・スクライアの二人を見捨てる事で、こんなに胸が苦しくなってしまうのかを。 ◆ (やっぱり、駄目だ……どう考えても逃げられない。みんな、ごめん……) 二人にはああ言ったけど、正直な話この状況を一人だけで打破する方法なんてまるで思いつかなかった。フェイトのようなスピードはないし、Wや杏子のように強力な攻撃技を持っていない。あくまでもバインドや治癒のような補助魔法がメインだから、前衛に立つべきではなかった。 ユーノ・スクライアはそれを強く理解している。四人でも勝てなかったのに、たった一人で立ち向かってもただ殺される未来しかない。しかしそれでも、ここで自分が囮にならなければみんなを守る事なんて出来なかった。 こんな意味の分からない殺し合いを打ち破ってみんなを守ってくれるであろう翔太郎達こそが、生きなければいけない。彼らならばなのは達の力になってくれると信じているから。 「オオオオオオォォォォッ!」 そして、ユーノの前で怪人は咆吼と共に三重の拘束を打ち破った。化け物じみた怪力を前にユーノは戦慄するが、今更怖がっていても仕方がない。 「その小さな身体で、たった一人俺に立ち向かうとは……見事だ」 称賛するような言葉だが、誰かを傷つけるような相手から言われても全く嬉しくなかった。それどころか、嫌悪感すら湧き上がる。 しかしユーノはそれを振り払って、今は一秒でも多く時間稼ぎをしなければならないと自分に言い聞かせた。三人の姿はもう見えなくなっているが、少しでも遠ざけなければならない。 心の中で意気込むユーノの前で怪人は拳を振り上げながら、獲物を猛獣の如く凄まじき勢いで突貫してきた。それを前にユーノは生存本能が一気に働いたのか、反射的に腕を前に突き出していく。 「ラウンド……シールドッ!」 そして、残り少ない魔力を搾り取りながら息も絶え絶えに詠唱した。彼の目前に眩い輝きを放つバリアが展開されて、怪人の拳と激突する。 轟音と共に腕が強く痺れるが、まだラウンドシールドは破られていない。だが、怪人はそれをお構いなしに反対側の拳をぶつけてくる。元々防御力に一番優れた魔法だが、相手の怪力はそれだけでは防げない程に凄まじかった。 案の定、怪人の拳はユーノのラウンドシールドを硝子のように甲高い音を鳴らしながら、あっさりと砕く。しかしそれで勢いが止まるわけが無く、そのまま一瞬でユーノの右腕全てを容赦なく潰していった。 「――ッ!」 灼熱で地肌を直接炙られるような激痛と共に大量の血が流れ出し、ユーノは声にならない悲鳴をあげる。並のグロンギすらも一撃で殺せてもおかしくない拳は、ただの人間でしかも少年である彼には耐えられる攻撃ではない。 そのままユーノから流れ出る血飛沫は地面に容赦なく散らばり、体温を奪い取っていく。一瞬で地面に倒れるが、それでも彼は意識を保っていた。 例え少年であっても魔導師として数多もの戦いを乗り越えてきた結果、強い精神力を得られるようになっている。尤も、皮肉にもそれが彼を余計に苦しめる事になっているのだが、既に痛みの感覚すら無くなっていた。 (ごめん、みんなを悲しませるような事になっちゃって……でも、お願いだからどうか生きて。僕は、みんなを信じているから) 自分はもうすぐ死ぬ。極寒の地に放り込まれたかのように寒気が全身を蹂躙する中、ユーノはそう思うようになった。 しかし彼の胸中を満たしているのは死への恐怖ではなく、残された仲間達の事。もしも自分が死んだ事を知ったら、みんな悲しむだろうか。フェイトも、杏子も、翔太郎も、そしてなのはも。 (フェイト、お願いだからどうかみんなの力になって……君なら出来るはずだから) この地で最初に再会したかけがえのない友人の一人であるフェイトは、翠屋の事を知らないと言っただけでなく、バリアジャケットの形状やカードリッジシステムの搭載されていないバルディッシュを持っているなど、不審な点がいくつもあった。 もしかしたら主催者によって記憶操作をされている。または偽者なのではないかと戦いの最中で疑ってしまう。現に戦闘スタイルなど、自分の知るフェイトのそれとは全く違っていた。 だけど、自分が囮になると知った時の表情は、決して真似や演技なんかで出来る訳がない。それに彼女は戦いの最中で、怪人の攻撃から自分を庇っている。その時の姿は、自分がよく知るフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと同じ。 だから、何か理由があるはずだった。本当なら直接聞いて、フェイトに何かがあったのなら一緒に解決したかったが、もう叶いそうにない。ユーノに出来るのはフェイトの無事を祈り、元に戻ってくれるのを信じるしかなかった。 無念を感じる一方で意識がどんどん薄くなっていき、視界がどんどん闇に覆われていく。それでも何とかして抗おうとユーノは全身に力を込めた……その時だった。 「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 闇の中より少女の叫び声が発せられ、金属同士が衝突するような甲高い音が響く。ユーノがそれを察した瞬間、身体が一気に浮かび上がるのを感じた。 天国からのお迎えが来たのか? 誰かに抱えられる感触によって一瞬だけそう思うも、薄れゆく視界の中でぼんやりと映る少女の姿を見て、即座に否定する。 「フェ、フェイト……?」 そこには、つい先程この身を犠牲にさせる覚悟で逃がしたフェイトがいた。心配そうな表情で見つめてくる彼女は夢や幻かと思ったが、ツインテールから放たれる金色の輝きは異様なまでに現実味を放っている。 つまり、ここにいるフェイトは偽者なんかではない。正真正銘、本物のフェイト・テスタロッサだった。 ◆ 愛する母の為ならどんなに苦しい事でもやってみせるし、この手がどれだけ汚れようとも躊躇う訳にはいかない。その為なら利用できるものは何だって利用するし、どれだけの犠牲が出ようが止まっていられなかった。 それはわかっていたはずなのに、フェイト・テスタロッサはその心にいつだって痛みを感じている。誰かを騙している度に後ろめたさを感じていて、時には涙も流していた。 そして今も、自分達を助ける為にその身を犠牲にしたユーノを抱えて怪人の元から離れながら、フェイトは声を荒げている。 「ユーノ……しっかりして、ユーノ!」 自分よりも少し大きな身体を揺する度に、腕を無くした右肩から流れ出る血の勢いは激しくなっていた。ユーノの身体は時間と共にどんどん冷たくなっていくが、回復魔法を会得していないフェイトにはどうする事も出来ない。 ユーノの運命は、ただ死を待つだけ。優勝を目指すならば、杏子の言うようにそんな相手など早く切り捨てなければいけないのに、今のフェイトにはそれが出来なかった。 「フェ、イト……なんで……?」 「どうして! ねえ、どうして!? どうしてユーノは私達を逃がす為に、そこまでしてくれたの!?」 「どうしてって……決まってるじゃないか」 青白くなった唇から発せられる息は震えているが、それでもユーノはにっこりと笑っている。 「君は、僕を助けてくれたからだよ……」 「えっ!?」 「君はあいつの攻撃から、僕を庇ってくれた……それも一度だけじゃなく、何度も……だから僕は君を信じる事が出来た」 一言紡がれる度に、フェイトは心が締め付けられていくような感覚に襲われた。 確かに怪人の攻撃からユーノを助けたが、その真相はあくまでも今後の戦力を失いたくなかっただけ。しかしユーノはそれだけで、自分を信頼していた。 しかし自分はその好意を冷酷に裏切ろうとしている。それによってどんな罵りでも受ける覚悟を決めていたはずなのに、心が痛んだ。 「……たった、それだけで?」 「ごめん、君に何があったのかをわかってあげられないだけじゃなくて、わざわざこんな危険な所に戻らせて……だから、一刻も早く……逃げ、て」 「それよりもユーノは……このままじゃ、ユーノは……!」 「ありが、とう……心配して、くれて……やっぱり、君を信じて……本当に、よかった……!」 最後にそう言い残して、ユーノ・スクライアの瞳は完全に閉じてしまう。その顔に、心の底から安堵したような笑顔を保ったまま。 「ユーノ……? ユーノ、ユーノ、ユーノッ!?」 フェイトはひたすら呼びかけるが、ユーノがその声に答える事は無い。何故なら、彼の命はもう燃え尽きてしまったのだから。 ユーノの死を前にして、フェイトの瞳から涙がポロポロと零れ落ちていく。そのまま泣き喚きそうになったが、直後に彼女の耳は足音を捉えた。思わず振り向いた先では、あの怪人が凄まじい威圧感と殺気を放ちながら、近づいてくるのが見える。 「見つけたぞ……」 「まだ、あなたがいたんだったね……」 怪人から感じられるオーラが肌に突き刺さるが、それに怯まずフェイトは涙を拭ってバルディッシュを構えた。 「ごめんなさい、ユーノ……私はあなた達の事を騙してた。母さんの為に、この殺し合いに乗った……でも、今だけはあなたの願いを叶える為に……杏子と翔太郎さんの二人を守る為に戦うよ。償いになんて、なるわけないけど」 無意識の内にフェイトはそう呟くようになる。 プレシアの為、殺し合いに乗る気持ちは変えるつもりはない。やっぱり、何があっても母の笑顔を取り戻す為に戦わなければならないのだから。だけど、今だけはユーノの為に戦いたいと思っている。 勝ち目なんてあるわけないのは、フェイト自身理解している。これからやろうとしている戦いは無謀の言葉で収まるものではない。そもそもどうして逃げずにこんな事をしていて、ユーノの死に涙を流したのかは彼女自身わかっていない。 それでも、どういう訳か迷いや躊躇いはなかった。それにどうせ今から逃げ出そうとしても、あの怪人ならば動く前に仕留めることだって簡単に出来るはず。ならば、勝つ以外に道はない。 (母さん、リニス、アルフ、杏子、翔太郎さん、ユーノ……みんな、お願いだから力を貸して!) この世界に連れてこられる前に大切と願っていた人達と、殺し合いの中で出会った仲間達の顔を思い浮かべながらフェイトは疾走する。相手も相当戦って消耗しているだろうから、もしかしたら勝機があるかもしれないと信じて。 結局の所、彼女もユーノと同類だった。いくら非常に徹すると決めていても、その心の奥底には優しさが残っている。だからこそ、誰かの為に戦うことが出来た。 それに、本来の未来に生きる彼女は贖罪として多くの命を助けている。無論、ここにいるフェイトにそれを知る由などないが。 彼女は全ての力を振り絞ってバルディッシュを横薙ぎに振るって、魔法で輝く刃を怪人の傷口にぶつけていく。だが、結末はあまりにも無常で、金属音が空しく響くだけだったが、それでもフェイトは諦めずに必死にバルディッシュを押し込もうとした。 「見事だったぞ、リントの戦士」 そんな中、聞こえてきた怪人の言葉。 次の瞬間には怪人の拳はフェイトの腹部をあっさりと貫いていた。しかしすぐさま引き抜かれた事で、今度は噴水のように鮮血が飛び散っていく。彼女はスピードを特化しているが、その分杏子に比べて防御力は落ちている。 そのまま力無く倒れていくフェイトは、この光景にデジャブを覚えていた。数時間前、フォトンランサーファランクスシフトを放つ為の時間稼ぎとして杏子は自分自身を囮にしている。あの時の彼女は、こんな痛みを感じていたのかとフェイトはぼんやりと考えた。 しかしそれももう関係ない。何故なら、すぐにユーノの後を追うのだから。 (……ごめんなさい) 思わずフェイトは心の中で謝罪したが、それが誰に向けられた物なのかはわからない。 最愛の母プレシア・テスタロッサなのか、色々な事を教えてくれたリニスやアルフなのか、こんな自分を信じて力を貸してくれた佐倉杏子や左翔太郎なのか、最後の願いを裏切ったユーノ・スクライアなのか。 それとも、特定の誰かではなく全員に向けられたのか。その答えを知っているのは、フェイト・テスタロッサただ一人だけだった。 ◆ 未だに炎が燃え上がっている【I―7】エリアで繰り広げられた激闘の勝者となった怪人、ゴ・ガドル・バは無言で佇んでいた。 彼は決してこの勝利に酔いしれていない。最初の戦いで自分を打ち破った少女の一人を倒したが、それに浮かれていてはあのズ・ゴオマ・グと何も変わらなかった。何よりも自身の雪辱を与えたもう一人の少女、佐倉杏子はまだ生きている。 戦いの最中に逃げ出すようなゴオマと同じ軟弱者だが、それでも倒すべき相手である事に変わりはない。また現れたならば、今度こそこの手で打ち破れば良いだけだ。 「この俺を前に一歩も退かなかったとは……誇りに思うが良い、リントの戦士達よ」 そしてガドルは、たった今倒した少年と少女に目を向ける。 その身体はあまりにも小さかったが、放たれる気迫は一流の戦士と呼んでも過言ではなかった。恐らく、並のグロンギであれば歯が立たなかったかもしれない。故にガドルはそんな二人を称えた。 辺りに散らばった全ての支給品を回収して、最後にフェイトという少女の相棒だったバルディッシュに目を向ける。しかし次の瞬間、刀身はピキピキと音を鳴らしながら亀裂を走らせていき、そのまま欠片となって崩れ落ちていった。恐らく、主人と同じ世界に旅立ったのだろうとガドルは考える。 (ゲゲルはまだまだ続くな……) しかしいつまでも敗者にばかり拘るわけにもいかない。もうこの世界にいない以上、次なる強者を捜すしかなかった。 杏子達はこの先にある街に逃げている。そこならば、あの二人以外にも新たなる強者がいるかもしれない。もしかしたら、あのン・ダグバ・ゼバすらも訪れている可能性だってあった。 それならば、いつまでもこんな場所にいるわけにはいかないと思って、破壊のカリスマの名を背負うゴ・ガドル・バは歩き続ける。自身が最強のグロンギとして、君臨する為にも。 【1日目/早朝】 【I-7 草原】 【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 [状態]:疲労(中)、全身にダメージ(大)(回復中) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式×2、ガドルのランダム支給品1~3(本人確認済み、グリーフシードはない) 、フェイトのランダム支給品1~3、ユーノのランダム支給品1~2個 、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2 [思考] 基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する 0:市街地に向かい、強者を探す。 1:クウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。 2:強者との戦いで自分の力を高める。 ※死亡後からの参戦です ※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。 ※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします) 【備考】 ※バルディッシュ@魔法少女リリカルなのはシリーズは破壊されました。 ◆ ようやく昇り始めた朝日によって名も知らぬ街に光が照らされ、それに伴って電灯の輝きが消えていく。朝になれば見滝原のように人通りが盛んになるのかもしれないが、それにしては生活の気配が一切感じられず、ゴーストタウンのようだった。 しかし佐倉杏子にとってそんな異質さなど、まるでどうでもよかった。少しでも遠くに行きたいと思いながら無茶苦茶に走っていたので、ここがどのエリアなのか全くわからない。今更地図を確認した所で、具体的な場所がわかるとも思えなかった。 彼女は地べたに座って、体を休めていた。いくら魔法少女として凄まじい体力を誇っていたとしても、戦いの直後にデイバッグ二つと男一人を抱えながら全力疾走したのでは、流石に疲れてしまう。 とにかく今は体を休めて今後の事を考えたかったが……どうするべきなのかまるで考えが纏まらない。 「ちくしょう……何で、何であいつらは……!」 頭の中に溜まるモヤモヤを晴らすために拳を地面に叩き付けるが、無意味な痛みを感じるだけで何も解決しなかった。 あれから大分時間が経ったのに、フェイト・テスタロッサもユーノ・スクライアも一向に現れる気配がない。それが意味するのは、あの怪人に二人が殺されてしまった。 合流場所を決めてないから二人が姿を見せていないと一瞬だけ考えたが、それはあまりにも楽観的な解釈だった。 「何でだよ、何でなんだよ……何で、何で、何で!?」 杏子は感情任せに叫び続けるが、空しく木霊するだけだった。 「何で……何であんたらは勝手に死ぬんだよ!? そんなの、あたしが許さないって言ったよな!? 何でなんだよ!? 何で、あんたらが死んで……あたしなんかが生きてるんだよ!? 教えろよ!」 その問いに対する答えを何よりも見つけたかったが、当然の事ながら疑問は晴れずに葛藤が続く。 好き勝手にやって優勝を目指し、その為ならば何でも利用するつもりだった。だが実際はフェイトとユーノを見捨てた事でこんなにも苦しくなり、今が絶好のチャンスであるにも関わらずして左翔太郎の命を奪えない。 フェイトとユーノが殺されたのは、勝てるわけがないのに特攻した彼らの責任だ。そんな馬鹿な奴らの事はとっとと忘れて先に進まなければならないのに、忘れることができない。 それに、命を捨てて自分達を逃がしてくれた彼らを侮辱する事が杏子にはできなかった。 (みんな、誰かの為に戦ったんだよな……フェイトもユーノもこの兄ちゃんも。でも、それに引き替えあたしは何だ? あたしは、あたしだけの為にしか戦ってないよな……?) 詳しいことは知らないが、フェイトは母親の為に殺し合いに乗った。翔太郎とユーノは、この殺し合いに巻き込まれたみんなを救う為に戦っている。手段こそは正反対だが、三人とも誰かの為に一生懸命戦っていたのは同じだった。 でも自分は彼らと違って、自分の為だけにしかこの力を使っていない。昔は彼らのように意気込んでいたが、今はこの有様だ。 (もしかしたら、あたしもあの胡散臭いおっさんと同じ……いやそれ以下なのかも。ハハッ、笑えねえな……まあこれも自業自得なのかな) どうして今更こんな事を考えてしまうようになったのかもわからないし、本当は何がしたいのかもまるでわからない。 全身から全ての力を失ってしまったかのように、脱力感に支配された杏子はただぼんやりと考えるしかできなかった。 ただ今は休むしかない。左翔太郎も目覚めないし誰の気配も感じられない以上、佐倉杏子にはこうしているしかなかった。 【1日目/早朝】 【H-8 市街地】 【左翔太郎@仮面ライダーW】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、気絶中 [装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中) [道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1~3個(本人確認済み) [思考] 基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する 0:…………(気絶中)。 1:この怪人(ガドル)を倒す。 2:まずはこの三人を守りながら、市街地に向かう 3:仲間を集める 4:出来るなら杏子を救いたい [備考] ※参戦時期はTV本編終了後です ※他世界の情報についてある程度知りました。 (何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます) ※魔法少女についての情報を知りました。 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、脱力感、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情 [装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:???????????? 0:???????????? 1:自分の感情と行動が理解できない。 2:翔太郎に対して……? [備考] ※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です。 ※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。 ※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません。 ※ユーノ・スクライアのフィジカルヒールによって身体に開いた穴が塞がれました。(ただし、それによってソウルジェムの濁りは治っていません) ※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。 【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】 【残り52人】 時系列順で読む Back 答えが、まったくわからない(前編)Next 血染めのライダーパンチ 投下順で読む Back 答えが、まったくわからない(前編)Next 血染めのライダーパンチ Back 答えが、まったくわからない(前編) 左翔太郎 Next 優しさを思い出して Back 答えが、まったくわからない(前編) ユーノ・スクライア GAME OVER Back 答えが、まったくわからない(前編) 佐倉杏子 Next 優しさを思い出して Back 答えが、まったくわからない(前編) フェイト・テスタロッサ GAME OVER Back 答えが、まったくわからない(前編) ゴ・ガドル・バ Next Gの咆哮/破壊の呼び声