約 454,632 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/265.html
Non-derelict LgkSJuGP 国賓や諸外国からの来賓、高級官僚も宿泊する高級ホテル、インターオーシャニックホテルクラナガン。 そこに一つの影が飛び込んでいった。それはスーツ姿のギンガ・ナカジマだった。 群青の髪はアップに纏め上げられ、スレンダーな体躯と相俟って、 彼女は17歳とは思えぬ大人らしさを振りまいていた。 ようやくギンガは荘厳な扉を潜り抜けて、薄暗い、しかし暖色の照明に彩られたラウンジに踏み込んだ。 切れ切れの荒い息を抑え、腕時計を確認してから、 早く行こうと顔を上げると、そのまま口を空けて茫然と凍りついた。 ギンガは屹然と空を凌ぐ吹き抜けの天井と広濶な空間に一瞬にして圧倒されていたのだった。 冷静になってから気付いたホテルの巨大さはギンガを驚愕させ、重い心をさらに重くさせた。 磨き抜かれた黒大理石の床が天井の煌びやかな照明を写す閑雅なロビーには、 しかし数多くの老若男女が屯し、談笑していた。 そしてその全てが典麗な様子だった。その中には著名人の顔もちらほら見えた気がした。 ――やっぱり私、場違い? ただっ広い未知の空間に一人佇むギンガにすれば、それは宇宙に投げ出されたような孤独と不安だった。 しかし、ギンガがあわあわと一人で立ち尽くしていると、 黒いスーツをぴっしりと着込んだ壮年の男性に声を掛けられた。 「ギンガ・ナカジマ様ですね?」 人の良さそうな顔で問いかけてきたのは、熟練を思わせるホテルマンだった。 「え、は、はい。そうですけど……」 おどおどして答えると、 「ユーノ・スクライア様からお連れするようにと承っております」 と言われ、ギンガはただ従順した。 最初はホテルマンの後ろを付いて歩いていただけで一杯一杯だったが、 メインバー『ウォモウニヴェルサーレ』に近づくにつれて、 段々と柔らかさを増すライトジャズのピアノがギンガの耳を誘い、心に余裕を孕ませた。 茶色の絨毯が優しく反発して踏み出す足を前に押しやった。間接照明に仰視された柱が静かに伺侯していた。 通路の脇々にはイタリアルネッサンス調の調度品や上品で重厚な木目調の円卓に、 肘掛け付きのシックな椅子が数脚。 それが何百組も整然と配置されている様子は、ホテルロビーの豪壮さとはまた違った趣があって圧巻だった。 しかし店内を支配する重厚感は、押し潰すようではなく、 落ち着いた雰囲気をもって包み込むようにギンガを迎えていた。 未だ嘗て体験したことが無い光景に、ギンガはきょろきょろと目線を泳がせてしまった。 目に入ったのは仕立てのよいスーツや高級そうなドレスに身を包んだ紳士淑女だけだった。 居た堪れなさがぐっと増した。失敗だった。見なければよかったと後悔した。 俯いて悔恨に耽っていると、急にホテルマンが立ち止まってぶつかりそうになった。 浮遊する思いから醒めて、驚き慌てて顔を上げる。 「あちらでございます」 捜していた茶色と金髪の頭が見えた。二人は円卓を囲んで談笑していた。 そして、椅子が一つ空いていた。 ホテルマンは「ではごゆっくり。失礼します」とだけ残して悠然と立ち去っていった。 チップとかは払わなくてよかったのかしら、と暫く立ち止まって考えたが、 はっと我に返ってすぐ二人のもとへ駆け寄ろうとした。 が、走り出すのはしたないと思い止どまって、淑やかに早足になるだけにした。 自分のがさつさが情けなくなって縮こまった。 しかし、悄然とした顔では失礼だと思い、気を取り直した。 最後に冷静になって、今までずっと慌てていた自分の度胸のなさを恥ずかしく思った。 「遅れてごめんなさい」 ようやく見慣れたはやての顔を見つけて、自然と安堵の溜息が漏れ出した。 はやてはグラスを円卓に置いて顔を上げた。 少ししか減っていない様子のカルーア・ミルクが刻限に遅れたギンガの心を慰めた。 到着したギンガに、はやての隣りに座る金髪の青年が組んだ足を戻して立ち上がろうとすると、 「ギンガ、よう来たな。ほら、ここに座り」 はやてがそれを左手で押し止どめて、右手で空席を引いた。 「え、でも」 「ええからええから」 ギンガがちらりと金髪の青年を見ると、中腰で止められていた彼は苦笑して席についた。 ギンガもそれに従った。 「ほい。こちらが、件のユーノ君」 「どうも、はじめまして」 はやては指を揃えて青年を指し示した。ユーノはにこりと笑って会釈した。 「で、ユーノ君。こちらが、ナンバーズ更生プログラムに参加してたギンガ」 「はじめまして」 できるだけにこやかに微笑み返した。 「えー、今日はユーノ君からギンガに頼みがあるそうで……」 はやてがユーノを横目で見上げると、次いでユーノは、自分の胸に掌を当てて自己紹介をし始めた。 「改めまして、ユーノ・スクライアです。 本日はお忙しい中、わざわざ御足労いただきまして、誠にありがとうございます」 ――彼が、無限書庫司書長のユーノ・スクライアさん。 公式には民間人扱いとはいえ実際は高官同然であるユーノを前に、ギンガは少し気持ちを引き締めた。 「これはご丁寧にどうも。ギンガ・ナカジマです。最近妹のスバルがお世話になってるそうで……」 「いえ、そんなことは。僕の好きでやってることですから」 最近スバルがユーノに師事しだしたと聞いたときは驚いたものだった。 忙しい業務を片手間にスバルの望みに応じてくれるユーノへ、感謝の念を込めながらギンガは言った。 「スクライア司書長のお噂は、はやてやスバルからかねがね伺っております。 常々お会いしたいと思っていました。なんでも、優しくて頼れる、素敵な方だと」 「ギンガ、ちょ、ちょっと、恥かしいやん!」 ね、とギンガが目配せすると、珍しくはやては狼狽して素っ頓狂な声をあげた。 「へぇ、それは嬉しいですね。僕もスバルさんから、格好よくて自慢のお姉さんだと」 意地の悪い嗤いが浮かんだ目ではやてを見遣ってから、ユーノが熱心な調子で言い始める。 「格好、いい……ですか」 ギンガはくすぐったそうに、しかし少し恥ずかし気にはにかんだ。 「ああ、すみません。格好いい、は失礼でしたかね。 しかし、とても凛々しくしっかりしてそうなご様子で、スバルさんに本当によく似ていらっしゃる。 実際にギンガさんにお会いして、スバルさんが自慢されるのもなるほどと納得するばかりです」 そんなことはないです、と笑うギンガに、ユーノも紳士然と処世して笑顔を崩さない。 一向に前に進まない二人の応酬に、ついにはやては呆れた顔で口を挟んだ。 「こらこら、チミたち。お見合いやないんやから。二人とも私にはタメ口なのに。 いや、ギンガには私が頼んだんやけどな。 ユーノ君もいちいち言葉が堅い。 ギンガも、まぁ、今はオフなんやから、こんなのにわざわざ敬語使わんでもええんやで」 「こんなの、って酷いな、はやて。でも確かに、あまり堅いのは僕も苦手ですしね。無理にとは言いませんが」 「でも、スクライア司書長とは階級も歳も離れてますし……」 促すユーノに、ギンガはいじらしくたじろいだ。 「なにゆーとるんや。ユーノ君はこのはやてちゃんのパートナーやで。そんなん気にするたまやない」 「初対面の方を前に誤解を招く表現は慎んでくれるかな。 しかし、君と同類みたいに括られると何故か大変不愉快だ」 「どつくで?」 くすくすという忍び笑いが小さく耳に響き、はやてとユーノは口を噤んで視線を戻した。 「あ、すみません。あは、はやてと仲がいいんですね。 ふふ、いきなり呼ばれたときは驚きましたけど、いい人そうで安心しました」 楽しげに戯れ合う二人の様子を愛おしむような温かい笑みが、徐々にギンガの表情を満たしていった。 言うに事欠いて、ユーノは渋面を作って見せ、はやてと複雑な顔を見合わせた。 ギンガはそれを見て再び笑った。 「年上ですし、まだお会いして日が浅いので、敬語はこれから努力するということでお願いします。 だからもう、私に敬語は結構ですよ。その、ユーノさんに敬語を使われちゃうと恐縮しちゃいますから」 快活に笑うギンガに、ようやくユーノは強張った表情筋を崩した。 「我が儘を聞いてくれてありがとう。よろしくおねがいするよ、ギンガさん。 ああ、いや。しかし、すっかり肩が凝ったよ」 それまでの顔が不器用な笑みに見えるほど柔らかい笑みを湛えて、 ユーノはギンガと顔を見合わせて笑いあった。 しかし、二人の間でははやてが眉を顰めて膨れた面をしていた。たまりにたまったという気配だった。 「肩が凝った?ふん、肩肘張って格好付けようとするからやで。これだから男って奴は、ああ、汚い汚い。 それになんや、この対応の違いは。 いつも飲む時は私の行きつけのこじんまりした店でしめやかに飲んでたのに。 ギンガも来るし今日はユーノ君の行きつけにしようかー、ってなんやこれは、高級官僚の接待か。 ええ加減にせえよ? 私はこんな豪勢なホテルバーなんか連れて行ってもらった覚えはないで。 しかも司書長の権力まで濫用しよって」 「え、そうなの?」 顔を顰めて投げやりに愚痴るはやてに、先のホテルマンの対応を思い出しながらギンガがきょとんと聞き返す。 「ちょ、ここは仕事用だし、 司書長としての要談だからこの位の対応は当然だ、とか執拗に言い張ったのははやてじゃないか! 僕は気後れさせちゃうかもしれないからって反対したのに、 そもそも、折角だからここで飲んでみたいって君が強引に……」 ユーノはさらに抗弁しようとしたが、いっそう大きくなったくすくすという笑い声に気付いてしまったら、押し黙るほかはなかった。 20スレ SS ギンガ・ナカジマ ユーノ・スクライア 八神はやて
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/290.html
遊乃堂奇譚八話?「冬の遊園地 その前」 hbx5FDrO ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店はやはり今朝も穏やかでゆったりと時が流れていた。 開店前の遊乃堂の扉の前に佇む一人の少女。 彼女、ギンガ・ナカジマは、 その目の前にある古本屋の古い木の扉がまるで鋼鉄で出来た開かずの門のように感じられ、 しばしの間、呆然とその場に立ちつくしていた。 ……あるとき管理局でスバルに紹介された物静かで優しい“先生”。 その人が彼、ユーノ司書長“ユーノさん”だった。 以前からスバルに“先生”についてはいろいろと聞かされていたからどんな人かはだいたい知っていた。 ことあるごとにスバルがとっても楽しそうに、そして目を輝かせて話していた人のことだから。 だから初めてあったときも前から知っていたような、とても親しい人のような気がしていた。 そしていつの間にか私もユーノさんのことをいつも考えるようになっていた。 でも、私にはスバルのように純粋に彼を慕う一途な気持ちもなくて―― スバルは私が母さんからボロボロになるまでしてようやく覚えたシューティングアーツを私から、 しかも私よりも短い期間で身につけてしまった、一見不器用そうに見えるけど天才的な才能の持ち主。 なのはさんのような彼との間に感じられるような時によって培われた見えない絆もなくて―― なのはさんはかつてユーノさんといっしょに大事件を解決した時空管理局の有名な“エースオブエース”。 フェイトさんのような美しさも彼に対する絶対的な信頼感もなくて―― そしてフェイトさんもなのはさんと同じ、ユーノさんと幼なじみで超がつくエリート級の執務官。 そんな普通でない彼女らに支えられて、彼女らを支えている、そんな彼らの姿が素敵でうらやましかった。 だから何もない、普通の私は遠くから彼と彼女達を見ていられればそれでよかった。 “スバルという名の元気のいい少女の姉”として彼とはほどほどの距離にいられればそれでよかった。 ……それでよかったはずなのに。 けれどユーノさんが時空管理局からいなくなったときにぽっかりと胸に大きな穴が開いてしまったような そんな悲しくてとても落ち着かない気持ちにおそわれてしまった。 何か複雑な事情があって今まで親しかったはずの彼女らは誰もユーノさんには会いに行けないようだった。 なのはさんですら会いに行かない。 あれだけ親しげにしていたのに。それとも遠くにいても大丈夫だということなのだろうか? フェイトさんもしばらくは躊躇していて 今でも何かに遠慮して隠れるようにごくたまに会いに行ってるらしい。 スバルはちょっと事情が違うようで仕事が忙しいから『すぐにはいけないよ』と電話口で泣いていた。 『お姉ちゃん、だからお願い……』 スバルの“お願い”に後押しされて、私はユーノさんの元へ訪ねることに決めた。 私はなのはさん達と違って、何かに監視されてはいないらしい。 私がなのはさん達の代わりになれるとは思えないけど、支えられるかどうかなんてわからないけど。 こうして、私は時折この店に顔を出すようになった。 ここでアインスに出会って、アリサさんやすずかさんに出会って、そしてみんなと友達になれた。 ユーノさんとも以前より近しい存在になれたような気がした。 でも、ここではアインス達とアルフがユーノさんを支えていた。 『今度は私が彼を支える』そんな私の考えは傲慢だったのかも知れない。 そうだ、そうに違いない。 何もない普通の私に何かが出来るなんてそんなことあるわけはない。 でも、私に出来ることなんてそんなにあるわけじゃない。だって何もない私なんだから。 だからこそ自分に出来ることをするだけだ。 たとえ彼にとって“スバルという名の元気のいい少女の姉”という存在でしかなかったとしても。 アインスやアリサ達の友達でちょっと明るい少女でしかなかったとしても。 私、ギンガ・ナカジマはユーノ・スクライアのことがとても好きなのだから。 それでいいじゃない。私は今、私にできることをするだけだ。 それに今、私は前よりもユーノさんの近くにいられてとても幸せなのだから。 ギンガは一つ大きく深呼吸をしてからそのとてつもなく重く思えた扉を勢いよく開けて叫んだ。 「ユーノさん、アインス、遊びに行くわよ!」 そうして素早く二人の姿を探し出したギンガは二人の腕をガッシリとつかんだ。 何かがギンガの元から逃げ出してしまうのを恐れているかのように。 30スレ SS アルフ ギンガ・ナカジマ ユーノ・スクライア リインフォース・アインス
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/300.html
甘い生活? 1レスもの oEM244di 「……おとーたま、まだ帰ってこない?」 リインフォース・アインス・スクライアがキッチンで洗い物をしていた時、 入り口に小さな熊のぬいぐるみを抱えた愛娘が眠そうな眼をして顔を覗かせた。 「お父様はもうすぐ帰ってきますよ、ベクトラ。だからあなたはいい子にしてベッドにお入りなさい」 「すぐ、帰って来ゆ?」 アインスは手を拭いて、そのユーノに似た面立ちの少女へ歩み寄りそっと抱きしめる。 「ええ。でもそんな格好でお部屋の外にいて夜更かしをしているとお風邪を引いてしまいますよ。 そうしたらお父様も悲しみます。だから、ね」 「おとーたまが悲しいと“べくとや”も悲しいから寝ゆ」 ベクトラは小さなあくびをするとアインスの肩にもたれて目を閉じた。 「あらあら」 アインスはとても寝付きの良い娘に苦笑するとそのままベクトラを抱え上げてベクトラの部屋へと運んでいった。 アインスはまだ、少女には大きすぎるベッドに彼女を寝かせると、熊の模様が描かれたかけ布団を肩までかけて、ベクトラの銀髪のかかったおでこをかきあげて軽くキスをした。 『良い夢をご覧なさい、ベクトラ』とつぶやいて灯りを消し、アインスはベクトラの部屋を後にした。 ――私は今、幸せです、ユーノ。 彼女は子供部屋の前でしみじみと幸せをかみしめていた。 ――ただの管制人格のはずだった私が人として貴方と一緒になれ、そして貴方との間に子供まで授かり……。 ふと、彼女は我が家へ近づいてくるある気配に気がついて玄関へと走る。 がちゃりと音を立てて開く玄関。その先に立っていたのは軽く息を弾ませたユーノだった。 「お帰りなさいませ、ユーノ」 「ただいま、アインス。また、気配わかっちゃった?」 「はい、あなたですから当然です」 そういってユーノの肩に手をかけて軽くキスをするアインス。 こつんと額同士を当てて微笑むユーノとアインス。 「ところでベクトラは? ちゃんと寝てる?」 「はい、先程までお父様を待っていましたが、夜更かししていたらお父様が悲しみますよといったらすぐに」 「そうか……、ところで、晩ご飯は? それともお風呂が先でいいのかな?」 「どちらも準備出来ておりますのでお好きな方で構いません」 「あ、それなら、アインス、君がいいんだけど? ダメ?」 「あなた? バカ……」 アインスはそういってから瞳を閉じた。 次に目を開いたアインスの目の前に広がっていたのは常夜灯の淡い光に照らされたいつもの遊乃堂2階の彼女の 部屋の天井だった。 ……夢? そうですね。あのような光景、夢でしかあり得ません。 私のような存在が主ユーノの伴侶として家庭を築くなどとは。 ましてや我が主と子までなすなどという到底あり得ません。 せめて眠りの中でだけでも幸せな夢を……? いいえ、この生活が今の私にとっての一番の幸せ。主ユーノのおそばにいられる毎日、それこそが。 ではどうしてこのような夢を見てしまったのでしょうか? ……わかりません。 とにかく、明日も朝早くからたくさんのお仕事が待っています、主ユーノのおそばで。 だからもう、今晩は寝てしまいましょう。 そしたらまた、あのような私には分不相応な夢を見ることが出来るのでしょうか? 私のような存在でも……。 そうして再び眠りへと落ちていった彼女がまた、幸せな夢を見られたかどうかは彼女しか知らない。 そして…… ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店はやはり今朝も穏やかでゆったりと時が流れていた。 そして今朝もリインフォース・アインスはいつもの黒を基調としたメイド服を着て遊乃堂に出て、本の整理や、 掃除……そんな仕事を黙々とこなしていく。今ここに、ユーノのそばにいられる幸せをかみしめて…… 遊乃堂奇譚番外編「甘い生活?」了 39スレ SS ユーノ×アインス ユーノ・スクライア リインフォース・アインス
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/189.html
夏祭りの夜に 後編 作者:91-375 「ごめんフェイト、やっぱりここからじゃ追いつけそうにない」 『仕方ないよ、ユーノ。 こっちも人の流れに捕まっちゃったし、またさっきまでと同じように屋台を回っていよう?』 「そうだね。先になのはやはやてのグループと会える可能性もあるし」 『でもどうせならまた先にユーノに会えるといいかな』 「うん。……うん?」 『それじゃ、また後でね』 フェイトと念話で話してみたが、やはり再度の合流は難しいようだった。 子供達は残念がったが、ここでまたユーノ、スバルとフェイト、エリオ、キャロは別れることになった。 「うう……ごめんなさい、ユーノさん」 「いや、気にしないで。まだ時間はあるんだからさ」 自分の不注意が原因とあって、落ち込むスバル。エリオとキャロもこんな調子なのだろうか。 ユーノはスバルを励ましながら、フェイトが言っていたのはこういうことかと一人納得していた。 「まぁ焦って合流しようとしてもどうしようもないんだし、屋台巡りに戻ろうか」 「はぁ……」 「あ、あれなんてどう?」 ユーノが指差した先には、一際人だかりの出来た屋台が一つ。 たまに何やら鐘の音と、人々の歓声が聞こえてくる。 近づいてみると、屋台の様子が人の頭越しにだが見えてきた。 屋台には大小様々な景品が並べられて、それら全てに紐がつながっている。 そしてその先端を全てまとめて、店の主が持って客に引かせている。 「ユーノさん、あれ何のお店ですか?」 「これは千本引きといって……まぁくじ引きだね。 あの紐の束から1本を引っ張って、つながってた商品をもらえるんだ」 「へ~……あ、今あそこの女の子、何か大きいの引きましたよ!」 「ほんとだ、結構豪華そう……だけど男の子向きの玩具だね、あれ」 紐を引かれてぶら下がっていたところを取り外されたのは、DXジエンドライバー。 デバイスとも似た多彩な音声ギミックが売りだが、 実は4種類がループするだけの悲しき仮面ファイヤージエンド変身グッズである。 変身時の『ジ・エーーーーンッ』くらいは言って欲しいものである、本当に。 大当たりを知らせる鐘の鳴る中、小さな女の子は微妙な表情で両親のもとへと歩いていった。 「あはは、くじ引きですからね~……ユーノさん、あたし達もやってみましょう!」 「うん」 曲がりくねった列の最後尾に、スバルはユーノの手を引いて何とか入り込む。 景品をよく見てみると、大きなぬいぐるみから大当たりらしいゲーム機まで、様々な物が並べられている。 「せっかくだからやっぱり良い物狙いたいよね。ナカジマさんはどんなのがいい?」 「うーん。さっきのボールは無くしちゃったから、何か後に残るものがいいですねー」 「お菓子の詰め合わせもあるみたいだよ?」 「そ、それはそれですっごく魅力的ですけど! 食べてばっかりじゃないです!」 そうこうしているうちに、順番が来たようだ。 まずはスバルが紐の束と向かい合う。 「う~~ん……これだぁ!」 一つを選び、気合の声と共に思い切り紐を引っ張った。 「すごく軽い感触でした……」 「まぁ、運の問題だからねぇ」 スバルの全力で引いた紐につられて宙を舞ったのは、コンビニで普通に売っているガムの3本セットだった。 「じゃあ次は僕だね」 「頑張ってくださいね~……ハズレっぽいの、まだ結構ありますけど」 「大丈夫! こう見えてもいろんな遺跡で罠や天災やロストロギアに当たってきたから!」 「おお~っ!! ……それって運が良いことになるのかな?」 今度はユーノが腕まくりしつつ、紐の束に手を伸ばす。 そしてしばらく迷ってから1本を選び出し、一気に引っ張った。 「これだ! って、軽い!?」 勢い良く引っ張った割にはこちらも肩透かしだったようで。 紐の先を目で追うと、小さな袋がぷらぷらと揺れていた。案の定というか鐘は鳴らなかった。 「うーん……まぁこんなもんかな」 「何だったんですか?」 店の前を離れてから、二人で袋を開けてみる。 「これは……髪飾りかな?」 「あ、可愛いです」 出てきたのは紅いガラス細工のヘアアクセサリーだった。 お世辞にも高価な物ではないだろうが、悪いデザインでもない。 「……ナカジマさん、着けてみる?」 「へ!?」 「男の僕が着けるものじゃなさそうだし……何か形に残る物も欲しいって言ってたじゃない?」 「でもあたし髪短いですし……ユーノさんが当てたものだし」 「そうかな? 髪の色綺麗だし、似合いそうだと思うけど」 「えぇっ!?」 「あ、ラムネ売ってる! ちょっと待ってて、飲み物買ってくるから」 問答の途中、結局髪飾りをスバルの手に残したまま、ユーノはすぐ近くの屋台にラムネを買いに行った。 ぽかんと口を開けてその後姿を見送りながら、スバルは先ほどのユーノの言葉を反芻する。 ユーノの性格なら、ああいった場合お世辞でも何でも似合うとは言うのだろうが、 特別何か意識した様子でもなかった。 だとすればそれは、偽りの無い本心かもしれないということで。 「……なんだろ、ちょっとドキドキしてる」 また早くなった鼓動は、ユーノの姿を見たままだと収まりそうになくて、手にした髪飾りに視線を落とす。 「着けられなくはない、かな」 なんとなく髪を引っ張ってみて……髪の先に視線を動かして、気付いた。 スバルの視線の先、少し離れたところにいる子供連れの女性。そのバッグに手を入れて、何かを抜き取ろうとしている黒いシャツの男がいた。 世界は違えど、こういう人間はどこにでもいる。 スバルの目が、慣れない感情に戸惑う少女から時空管理局の魔導師のそれへと切り替わった。 「待ちなさい!!」 近づく前に声に出したのは迂闊だったかもしれない。 男は慌てて財布を抜き取り、スバルの方に女性を突き飛ばすと、人ごみの中へと逃げていく。 「キャッ!」 「大丈夫ですか!?」 こういう場でのスリの常習犯なのか、人ごみの中での移動が妙に速い。 女性が倒れないように支えたスバルは、即座に男までの距離を測り、ちらりと店に並んでいるユーノを見る。 「……あたし、取り返してきます! あそこの金髪の人にそう伝えててください!」 ユーノに事情を話していては間に合わない。 そう判断したスバルは、女性にそれだけ言うとスリの後を追い始めた。 ※ 花火の打ち上げ時刻が近づいているためか、夏祭り会場の混雑はピークを迎えていた。 スリはどんどん神社の奥の方へと逃げていくが、スバルも負けじと追いすがる。 (この人ごみで、下手に泥棒がいるなんて叫んだらパニックになる……!) 人の波を掻きわけ追いかけ続けていると、やがてスリは屋台の隙間に何食わぬ顔で入っていった。 人目につかないところに逃げたつもりなのだろうが、これは逆にチャンスだ。 スバルの身体能力なら、人ごみでさえなければスリの一人くらい簡単に捕まえられる。 スリの通った隙間をくぐり、会場から離れていくと、うって変わって照明も無く、木の茂った静かな場所に出た。 どうやら、このまま神社の裏山へとつながっているらしい。 「足音が……こっち!」 少し引き離されたが、スバルの聴覚ならば玉砂利の音が木の枝を踏む音に変わり、 遠ざかっていくのを聞き分けることが出来た。 「マッハキャリバーは……」 手にしたポーチの中にいる相棒の起動を一瞬考えたが、思い直す。 一応観光目的で訪れた管理外世界でも、非常事態ならば魔法の使用は認められる。 が、これはそこまで大げさな話ではないかもしれない。 下手に騒ぎを起こして、責任者の八神部隊長に面倒をかけるのもどうかと思う。 「ううん、いいよ。大丈夫!」 セットアップするのかと問う相棒にそう答え、スバルは小さくなっていく足音に向かって全力で駆け出した。 相手は魔導師でもない一般人なのだ。マッハキャリバー無しでも、スピードで負けるスバルではない。 もう完全に裏山に入り込んだのだろう、古い木の葉の積もった道無き斜面を一気に駆け上り、追い詰めていく。 「はぁ、はぁ、クソッ!!」 「おとなしく止まって、盗った物を返しなさい!!」 「はぁ、がっ、何なんだこのガキ……!」 「捕まえた!!」 「うわぁぁっ!?」 いかにも悪人然としたその男は走り疲れて息を乱し、足を止めつつあった。 そしてついにスバルの手が男の襟首を掴む。すると、つい力が入りすぎたのか。 片手ですんなりと持ち上げられた男は、その勢いでくるりと一回転して背中から地面に叩きつけられた。 マッハキャリバーのスピードで同じことをしていたら、大怪我をさせていたかもしれない。 内心焦りながら、スバルは少し力を緩めた。 ともあれ、スリの現行犯に必要以上に手心を加える道理もない。 スバルは一息ついて、倒れた男の頭上に仁王立ちする。 「ゲホッ! ゴホッ……!」 「もう逃げられませんよ!」 「クソ、分かった分かった……」 男は観念したのか頭を抑えて起き上がると、先ほどの女性の物と、さらにいくつかの財布を取り出した。 これでとりあえずは一件落着だ。 (……っと、一応なのはさんか部隊長に連絡した方がいいかな?) この世界の治安維持組織に引き渡すにしても、ここでの身元がはっきりした人間に任せた方が確実だろう。 ひとまずはやてへの念話を試みながら、男が差し出す財布を受け取ろうとした、その時だった。 地面に響くような爆発音と共に、生い茂った木々の隙間から色とりどりの光が漏れる。 打ち上げ花火大会が始まったのだ。 (あれがハナビ……! 始まっちゃった!?) この時間までには皆と合流しているはずだったのに、すっかり時間をとられてしまった。 自分がいないことを心配するなのはやフェイト、そしてユーノの顔がスバルの頭をよぎる。 まだ拘束もしていない犯罪者の前で、それは完全な油断だった。 「舐めんじゃねえクソガキが!」 「!?」 「ケッ……! チンピラぐらい女一人でもどうにか出来ると思ったかぁ!?」 財布を投げつけられ、さらにスバルの右手はがっしりと掴まれていた。 そしてそのまま襟首を掴まれ、一本背負いに投げ飛ばされる。 普段ならばただ投げられるスバルではなかったが、今の服装が災いした。 足から着地して即反撃に転じるつもりが、着地と同時に下駄の鼻緒が外れたのだ。 浴衣に合わせてはやてが選んだ下駄の強度は、当然ながらマッハキャリバーとは程遠く、 ここまで走って来た事でかなり痛んでいたらしい。 斜面という地形も悪く、スバルは着いた足から態勢を崩してそのまま地面を転がる。 「く……!」 「はぁ、はぁ……残念だったなぁ? 警察にでも任せてりゃ良かったもんを、ガキがでしゃばるからこうなるんだよ」 形勢逆転したと見たのか、男は嘲るように吐き捨てながら、スバルを放置して散った財布を拾い集める。 すぐに立ち上がって追いかけようとするが、 頭を打った衝撃に花火の大きな音も手伝って、思うようにいかない。 「ま、待てっ!」 「花火が始まっちゃあ、こんなとこには誰も来れねぇし気付かねぇ! あばよ!」 完全に自分がペースを握っているつもりらしく、男はスバルに捨て台詞を残し、走り去る。 マッハキャリバーを使えば、そんな口はあと一秒だってきかせないのだが。 暗がりに遠ざかっていく男の後姿を見て、しばらく逡巡すると、スバルはポーチに手を伸ばした。 しかし、その時。 「ま、あの混雑だ……人間の大きさじゃ確かに来られなかっただろうね」 スバルとスリの男以外、誰もいないはずの暗い林に声が響いた。 「あ……」 「な、何が言いてえんだこのガキ!?」 「いやその子じゃなくて、こっち」 スバルの声と勘違いして男は怒鳴るが、続いた声は男のすぐ耳元から聞こえてきた。 「な、何だ!?」 「だから、こっちだってば」 スバルに背を向けないまま、男はキョロキョロと辺りを見回しながら後ずさる。 魔法を使わないスバルなら投げ飛ばせる程度の腕っ節と、それに見合わぬこの小心が、 この男が捕まらずに社会に潜めている理由だろうか。 さすがに気味が悪くなってきたらしく、男の頬を冷や汗が伝う。 そして、ついに目が合った。 自分の肩に乗っていた、緑の目の獣と。 「ひっ……!?」 「そう怖がらなくても……僕はあなたを裁く権利なんて持っちゃいない」 緑の目の獣……その正体は、日の光の下で見ればそれはもう愛らしいフェレットなのだが。 暗い神社の裏山で淡々と人の言葉を発するそれは、男にとっては化け物以外の何物でもなかった。 「う、うわぁぁっ!!?」 「バインドで痕を残したら、 こっちの警察の人が不審がるだろうし……管理外世界の生物を傷付けるべきじゃないし」 男はなんとか化け物を引き剥がそうともがいたが、フェレットはすばしっこく男の手をかわす。 それでいて常に男の体に張り付き、恐怖を与え続けている。 「でもまぁ、この世界の犯罪者をこの世界の警察が裁く…… その手伝いくらいならしても悪いってことは無いだろうし」 「ひぃぃっ!?」 「何より、あなたがその子やいろんな人にした事……そしてこれからもするであろう事は…… 僕としても、見過ごせないかな」 半狂乱になって転げまわる男の体の上で、フェレットは器用に地面の下敷きにならないよう動き回る。 そして、その体は徐々に淡い緑に輝きだした。 「だから、こういうのはどうだろう?」 遠くの花火よりもさらに明るく発光した獣は、やがてそのまま人ほどの大きさに膨れ上がり、 一人の青年へと変化した。 金色の長い髪に、中性的な顔立ち。普段は穏やかであろうその眼は、 今だけは鋭く、そして冷ややかに男を見下ろしている。 青年が右手で印を切る様な動作をすると、仰向けに倒れた男の真上に突然光の壁が現れた。 両手をついても、ビクともしない。 慌てて地面に手を触れると、そこにも土とは違う感触。 混乱しながら、自分が訳の分からない力でサンドイッチのように挟まれたことだけを理解した。 男はその名を知る由もないが、2枚の光の円盾、ラウンドシールドは、やがてゆっくりと互いの距離を縮めていく。 ギリギリと。ギシギシと。そして…… 「ぎあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」 ※ 「っと、これだけ脅かせばまぁ……大丈夫かな?」 ユーノはそう軽く呟き、恐怖で完全に気絶してしまった男を解放した。 ほど良い力加減で男を拘束していただけのラウンドシールドも、翠の魔力光となって霧散する。 男に怪我をさせていないか確認していると、いつのまにか立ち上がったスバルがすぐ隣にいた。 「大丈夫だった? ナカジマさん」 「はい、怪我とかは全然……浴衣は汚れちゃいましたけど」 「あ、下駄も壊れちゃったみたいだね……」 「ハナビも、もう始まっちゃいました……」 こうしてみると、ひどい有様だった。 今頃皆で合流していたはずが、自分が先走ったことでユーノも巻き込んで、花火もよく見えない裏山にいる。 スバルが頭を垂れていると、ユーノはそっとその前に身をかがめた。 「……ユーノさん?」 「下駄……これくらいなら、直せるかも。ちょっとそこの木にもたれてて」 祭りの会場にいた時となんら変わらない優しい笑顔でそう言って、ユーノはスバルの下駄の破損部を見始めた。 本当は、ユーノも自分よりなのは達と一緒にいたかっただろうに。 スバル自身、ティアナや仲間達と離れてしまった時はあんなに気持ちが沈んだことを思うと、 途端に申し訳なく思えてきた。 「ごめんなさい、あたし……」 「僕はさ」 スバルの言葉を遮るように、ユーノが言う。 「僕は、ずっと君に会いたかった」 「え……」 トクン、と胸の奥で何かが弾んだ。 「え? あ、あの、あの、ユーノさん!?」 「エリオくんやキャロちゃんや、ランスターさんともね」 「は……ははは、そ、そうですか」 よく分からないが、ひどく肩透かしなことを言われた気分だった。 スバルの様子には気付いた風も無く、ユーノは続ける。 「なのはからさ。君たちの事をずっと聞かされてたから」 機動六課が出来てからの約一年、なのははユーノに会う度に、嬉しそうに近況を語った。 その中で印象深かったのは、やはり彼女らが育てていた4人の新人達のことだった。 「君たちの話をする時のなのはは、本当にイキイキしてたよ。 嬉しいことを話す時は笑いながら、辛い事の時は泣きそうになりながらさ」 「なのはさんが……」 「そうして聞いてるうちに、僕まですっかり感情移入しちゃって。 勝手な話かもしれないけど、なのはが育てた……いや、なのはと一緒に歩んできた君達のことが、 他人とは思えなくなっちゃって」 機会があればいつか会ってみたい。そう思いながら1年以上が過ぎた。 だから今回の海鳴行きは、ユーノにとっても願ってもないことだったのだ。 「エリオくんもキャロちゃんも、話してみると本当にいい子だったし。 ランスターさんとはまだ話せてないけど……最初に見たときよりずっといい顔になってた」 鼻緒の固定が終わって、ユーノはゆっくりと立ち上がる。 「それに、困ってる人を見てすぐに行動に移せる君は……技術や経歴なんて関係なく、 僕が知ってるなのはにすごく近いと思ったよ」 「あ……」 見上げる位置に来たユーノの顔から、スバルは目が離せなかった。 (さっきと同じ……ドキドキして、止まらない) この気持ちを整理する方法をスバルは知らない。 原因がユーノにあることは、ユーノの優しさが心を乱していることは、なんとなく分かっているのだが。 しかし、まだまだ続く花火の音で麻痺した頭で、なんとか思いついたことを一つ実行してみる。 「ユーノさん……あたし、姉がいるんです!」 突然のスバルの言葉に、ユーノは首をかしげる。 「それと、最近妹達がいっぱい増えたんです。姉か妹か微妙な子も何人かいるけど、多分妹です!」 「う、うん?」 「だからですね、あの……姓だと、ややこしいと思うので……」 「あ……」 「……名前を、呼んでください」 最後の方はようやく搾り出すようにして、何とか言い切った。 ユーノは一瞬虚を突かれたような顔をして、そして優しく微笑みを返す。 「分かったよ、スバル」 スバル。 その名がユーノの口から出た瞬間、スバルの身体を先程よりも強い衝撃が駆け巡った。 心を落ち着けるどころか、逆効果だ。ユーノの声で一瞬頭がいっぱいになってしまった。 「あ、ああああ、そ、そうだユーノさん、そろそろなのはさんたちと合流しないと! きっと心配してますよ!」 「え? うん」 そうなると今度は急に気恥ずかしくなってきて。 無理矢理普段の能天気な自分をトレースして、スバルはなんとかその場を誤魔化そうと試みる。 「ゲタ直してくれてありがとうございます! そ、それじゃ行きましょう!!」 と、スバルが歩き始めようとした時、スルッと衣擦れの音がした。 「へ?」 「あ、帯…………!?」 スバルの正面にいたユーノが、急に狼狽する。 スバルはその様子をじっと見て、辺りを見回し、何気なく下を見て、ようやく事態に気付いた。 「……!?」 解けて地面に落ちた帯。そして肌蹴た浴衣の隙間からのぞく白い素肌。 それまで締め付けられていた胸に押し上げられた浴衣はひどく頼りなく、 かろうじて先端が隠せているかどうか。 おそらく、これまでの捕り物ですでに着崩れていたのだろう。 それが寄りかかっていた木に引っかかって、こんなことになったらしい。 「あ……ぁ」 みるみる顔を真っ赤に染めていくスバル。無理もない、浴衣の下は…… さらに悪いことに、混乱しているスバルがもう一歩足を進めると。 浴衣の方も木の枝に引っかかっていたらしく、スバルの身体からするりと離れていった。 「き……」 「み、見てない! 見てないから!」 「キャアァァーーーーーーーーーーーーーー!!!」 「なぁにやってんだテメーはぁぁーーーーー!!?」 スバルの渾身の悲鳴と、どこからとも無く飛んできてユーノの頭に直撃したラケーテンハンマー。 そして花火大会の最後の1発の音は、全く同時だった。 ※ ユーノが目を覚ましたのは、翌日の朝だった。 朝から精一杯鳴く蝉の声に、ここが海鳴であることを悟る。 まだズキズキする頭を抑えて豪奢なベッドから上体を起こすと、 その脇には不自然に明るい笑顔の主従が座っていた。 「い、いやー、悪かったな。いきなり吹っ飛ばして」 「でもあの光景見たらヴィータやなくてもああするわな~。うん、しゃーないって」 「……」 ヴィータとはやての様子を見て、なんとなく状況を理解する。 「ここ……確かアリサの家だよね? 皆で泊めてもらうことになってたの?」 「なのはちゃん達やフェイトちゃん達は自分の家に帰ったけどな。 ただ昨日はいろいろゴタゴタしたから、ユーノくんもこっちに運んだんよ」 「ああ……ありがとう、悪かったね。 アリサにも挨拶しないと」 結局、スリの警察への引渡しも、持ち主が分かる財布の返却も、気絶したユーノの回収も。 いち早く駆けつけたはやて達のグループがやってくれたらしい。 スバルがスリを捕まえた直後。 一瞬だけスバルの念話を受けたはやては、即座にシャマルにスバルの居所を探索させた。 そして迷わず封時結界を張って、ヴィータと共にスバルのもとへ向かっていたのだった。 観光で訪れた管理外世界での過度な魔法の使用は、後々厳重注意される。 まだまだ管理局内で昇進し、 人脈を固めなければならないはやてとしては小さな傷も残すべきではないだろうに。 だがそれははやてにとって、可愛い部下の安全とは比べるべくもない事なのだ。 「まぁそういうわけで、行ってみたらユーノくんとスバルがまさかあんなことになっとるやなんてな~」 「マジにどういう経緯でアレだったんだよ。 答えによっちゃもう一発行くぞ?」 「じ、事故だよ! 大体……」 ヴィータに反論しながら、ユーノははやてをじろりと睨む。 「はやてでしょ? スバルの浴衣、あんな風に着せたの」 「あははは……いやー、ウソは言ってへんよ?」 『浴衣着るときは下着付けたらあかんねんでー』 確かに本来の着方ではあるのだが、今時そう言われてそのまま実行する女の子などいないだろう。 躊躇するティアナ達に、いかにもそれが普通とばかりに着せるはやての姿が、ユーノの脳裏に浮かんだ。 それを真に受けたスバルの姿も。 「よくまぁ懲りずに……僕とフェイトに初めて浴衣着せた時にもそんなこと言って、 大変なことになったじゃないか!?」 「そういやそういうことも……へへっ」 「悲劇は繰り返すんやね~」 「笑い事じゃないよ!? 絶対嫌われたってスバルに!」 「あー、それに関しちゃ心配いらねーと思うぞ?」 ヴィータがそう言って指差した先は、開きっぱなしのドア。 どういう意味か分からず、ユーノは目を凝らす。 そして気付いた。ドアの向こうからチラチラとはみ出している、短い青い髪の束。 それはつい昨日見た覚えのある髪飾りで括られていた。 「昨日まで“ナカジマ一等陸士”やったんが“スバル”やって。 なんか知らんうちに、えらい仲良くなったみたいやん?」 「……まぁ、ね」 楽しくて仕方ない様子でニヤリと笑うはやてに、ユーノも息をつきながら答える。 「ところでな? 昨日はあんなんやったから、リベンジっちゅうことで。 今日もお祭りやっとるから、今度こそ皆で行こか、って話が出とるんやけど?」 言われて、ユーノは思案する。元々休みは2日間とってあることだし…… 昨日はすぐに別れてしまったエリオやキャロ、それにまだ会っていないティアナと話す時間も作りたい。 そして、ドアの奥からそろりと顔を出してきたあの少女。 彼女と一緒にちゃんと花火を見てみたい……そう思った。 だからユーノはふらりと立ち上がると、ドアの方へと歩いていく。 スバルは一瞬ドアの向こうでギクリと飛び上がったようだが、そっと姿を現した。 「……スバル」 「ユーノさん……」 「えっと……昨日はなんかごめんね、いろいろ。それで……良かったらさ」 スバルは少し赤みの差した顔で、しかし目を逸らすことなくユーノの言葉をじっと待つ。 なんだか少し大人びて見えるのは、昨日とは違う浴衣と髪型のせいだけだろうか? 少女の変化に少し心が揺れるのを感じながら、ユーノは言った。 「また一緒に、お祭りに行こうか」 「……はい!!」 よく晴れた真夏の朝。天真爛漫な笑顔は、何かの始まりを予感させていた。 〈了〉 91スレ SS はやて スバル・ナカジマ ユースバ ユーノ・スクライア ラッキースケベ ヴィータ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/115.html
「ルーテシアの花冠」 作者:ID 44fJlxbC 本文 青々と茂る草原に響く少年と少女の声。 赤毛の少年と、桃色の髪の少女、そして紫の髪の少女が目指す場所を見つけて走って行く。 「エリオ! キャロ! 転ばないように気をつけてね!」 後ろからかけられた女性の声も半分聞き流すほどにはしゃぐ三人を見て、フェイト・T・ハラオウンは「仕方ないなぁ」と言った風に苦笑する。 吹き抜ける風になびく金髪に、栗色の髪が並んでいる。 その傍らには、二人の娘である小さな女の子。 「エリオおにいちゃんも、キャロおねえちゃんも嬉しそう」 「うん、本当に」 「そうだね、ずっと逢いたかっただろうし」 なのはとフェイトとヴィヴィオの前で久方ぶりの再会を存分に楽しむ3人の子供達。 エリオ・モンデュアル、キャロ・ル・ルシエ、そしてルーテシア・アルピーノ。 JS事件で出会い、そして今は心を通わせた少年少女。 無人の管理世界らしい、豊かな自然の中で彼等の姿は良く栄える。 「……こうして見てるだけなら、良い世界なんだけどね」 荷物を持って、二人の間にいた青年がポツリを呟いた。 なのはもフェイトも、青年のユーノ・スクライアの言葉に思うところがあるのだろう。少しばかり憂いを浮かべる。 「保護観察が終われば、他の管理世界にも住めるようになるんだけど……」 「はやく、何とかしてあげたいよね」 「うん」 母親と、従者がいるとは言え他に誰もいない世界に子供を閉じこめるというのは彼等としても納得できない。 だが、処罰は上が決めることであり彼等がそれを左右する事は出来ない。 せめて、こんな風に職権を乱用して視察という名目で、子供達を連れてくるぐらいだ。 いや……今は、煩わしい事を考えるのは止めよう。 あの子達のこの一時の為に自分たちは此所まで来たのだから。 木陰になのはとフェイトとユーノは腰を下ろす。 ヴィヴィオは、さの三人に混じって遊んでいた。 ここにはクラナガンには無い、瑞々しさに溢れている。それがヴィヴィオには珍しく、そして気心の知れた兄や姉と一緒である事が嬉しいのだろう。 少しだけ、ルーテシアは戸惑っていたようだが、今ではそれも忘れて年相応の子供らしい表情をしていた。 しばらく、そうして子供達を見守っていたフェイトだったが、ふと大きな欠伸を漏らす。 「フェイト、眠いの?」 「ん……最近、少し眠りが浅くて」 「なら、休んでなよ。子供達は僕らが見てるから」 ここで、いつものフェイトならば意地を張るだろうが、木々から漏れる暖かい日差しがそれを許さなかった。 耐え難い睡魔に、フェイトはあっさりと白旗を挙げる。 「うん、それじゃぁ。少し寝させてもらうね」 「うん、お休みフェイト」 ユーノがそう言うと、フェイトはユーノの肩に頭を預けて静かに寝息を立て始めた。 無防備なフェイトの寝顔に、ユーノは優しい笑みを浮かべて見守る。 そして、フェイトの反対側に居たなのはも、彼女の顔を覗き込んだ。 「フェイトちゃん、寝ちゃったの?」 「うん。よっぽど疲れてたみたい」 「……そっか」 すると、なのははフェイトがそうしているように、ユーノにそっと寄り添った。 「なのは?」 「私も、少し寝ようかな」 「……ん、判った」 なのははユーノの腕に、自分の腕を絡ませるとゆっくりと目を閉じる。 自分の全てを、ユーノに預けきって安心したように。 まるで、草原で戯れる子供達と変わらないような顔で、なのはは微睡みを迎え入れていった。 それから、どれほど時間が経っただろうか。 ユーノが見守る先で、何かをしていた子供達がこちらに走ってくる。 「パパ! ママ!」 走るたびに揺れる柔らかなブロンドに花の冠を載せているヴィヴィオ。 その後ろに居るエリオとキャロとルーテシア。 「ヴィヴィオ? ―――うわっと」 まっすぐに、自分に飛び込んできた愛娘。 だが、ユーノの両脇で眠る二人の母は余程疲れているのだろうか、それでも目を覚ます気配が無い。 「ママ、寝ちゃったの?」 「うん。ママは疲れているから、静かにしてあげてね? ヴィヴィオ」 「うん!」 そう言うと、ヴィヴィオは手に持っていた花の冠をユーノの頭に載せる。 「えへへ、パパあげるね!」 「お花の冠かい? 上手に出来たじゃないか」 「キャロおねえちゃんとエリオおにいちゃんとルーテシアおねえちゃんに手伝って貰ったの!」 「手伝っただなんて……殆ど、キャロとルーが創ったものですから」 挑戦しては見たが、結局花を散らすだけに終わってしまったのだろう、エリオが照れくさそうに言う。 「キャロもルーテシアも器用なんだね」 「前に、フェイトさんに教えて貰ったんです」 「わたしは、キャロの言うとおりにやっただけ」 子供達の服には幾つもの花びらが付いていた。 色とりどりの花で着飾った彼等を見て、ユーノは思わず顔を綻ばせる。 ヴィヴィオは、眠っているなのはとフェイトにも冠を載せた。 「ママ、喜んでくれるかな?」 「皆で造ったんだから、絶対に喜んでくれるよ」 ユーノはヴィヴィオの頭を撫でる。 気持ちよさそうに目を細めるヴィヴィオ。 その様子をみて、笑い逢うエリオ、キャロ、ルーテシア。 風が、穏やかな風がそんな彼等を包み込むように過ぎ去って行く。 その日、日が沈むまで、そして日が沈んでからも彼等の笑顔が絶えることはなかった。 風が、穏やかな風がそんな彼等を包み込むように過ぎ去って行く。 太陽から月に、空の象徴が変わる狭間に吹く風。 それが、彼女たちを揺り起こす。 「……ん」 「……ふぁ」 「あ、起きた?」 「ママ、おはよう!」 日が陰り初めて、ようやく目を覚ました二人。 隣にいた青年と、目の前の子供達の姿を認めて寝ぼけ眼ながらもにっこりと笑う。 「おはよう、みんな」 ふと、お互いに目を向けお互いに眠る前とは違うモノを見つけた。 「なのは、それ」 「フェイトちゃんも」 顔を見合わせてから、ニコニコと笑うヴィヴィオと照れているようなエリオ、キャロ、ルーテシアの方を見る。 「もしかして、皆が?」 「うん! そうだよ! パパにもあげたの!」 言われてユーノを見れば、確かに彼にも冠があった。 流れようなハニーブロンドに、その花が余りにも華やかすぎて二人は思わず吹き出してしまう。 すると、ユーノが不思議そうな顔をして訪ねる。 「どうしたの? 二人とも」 「だって、ユーノ君すっごく似合ってるんだもん」 「綺麗過ぎて、ちょっと妬けちゃうかな」 それが、まるで女性のように見えるのだと言われているようで。そして二人が正にそのつもりで言っているのだと判ってユーノは渋面する。 この年になって、声変わりもなく女性に見られることは密かなコンプレックスだったりするのだが。 なのはとフェイトは、少し意地悪そうに子供達の方を向く。 「ねぇ、皆もそう思うよね?」 「うん! パパ、綺麗だよ?」 なんのためらいも無く、無邪気に言うヴィヴィオ。 すると、子供三人もお互いに顔を見合わせ、躊躇いがちに口を開く。 「えっと……はい」 「ユーノさん、お花がすごい似合ってます」 「……女の人にしか見えない」 最後の、ルーテシアのあんまりと言えばあんまりな言葉にユーノはがっくりと項垂れてしまった。 「る、ルー……」 「ルーちゃん、それは……」 「パパ、どうしたの?」 エリオとキャロはルーテシアのストレートな物言いに何か言いたげにし、ヴィヴィオはその意味を理解せず。 なのはとフェイトは思わず苦笑する。 そんな時、彼等に近づく人影があった。 誰、と確認するまでもない。ルーテシアの「母」メガーヌである。 「みなさん、夕食ができたのだけれど。食べていきませんか?」 「え、良いんですか?」 「ええ、今日はルーテシアのお相手もしていただきましたし。大したおもてなしはできませんが」 皆が、どうするかと思案しているとルーテシアがエリオとキャロの服の袖を掴んだ。 言葉こそ発しないが、その姿が夕食を共にしたいという事を雄弁に語っている。 それを受けて、二人がなのはとフェイトの方を遠慮がちに見る。 「……それじゃぁ、お言葉に甘えちゃおうか」 「うん、そうだね」 二人の言葉に、エリオとキャロとルーテシアはパッと顔を輝かせる。 「それでは、家においでください」 「はーい」 子供達は、大人達に先んじて草原を歩いて行く。 なのはとフェイトも立ち上がり、未だにちょっとだけ拗ねているユーノに手をさしのべた。 「ふふっ、ごめんねユーノ君」 「……良いんだ、どうせこの年になっても声変わりしてないし、男なのに髪を伸ばしてるし」 「そんな事、気にしなくて良いのに」 「そうだよ、だって」 「うん、だって」 「私たちは、貴方がどれだけ素敵な男性-ヒト-なのか識ってるんだから」 全く同時に、ユニゾンで響いた二人の声。 ユーノはそれに驚いたような、照れくさいようなそんな表情と共に顔を紅くする。 そうして、二人の手を取って立ち上がった。 彼等の視線の先で、ルーテシアがおずおずとメガーヌに花冠を差し出す姿が見える。 どこにでもある、当たり前の姿。 花の冠を戴いた大人達。 花の服に包まれた子供達。 手を取り合って、家に帰る彼等を一番星がいつまでも見守っていた。 12スレ SS なのは エリオ キャロ フェイト メガーヌ ユーノ ルーテシア
https://w.atwiki.jp/kitaken/pages/35.html
FOD@武道館公演後に購入したという。 「ユーちゃん」という名前をつけていた。 ファンクラブイベントで「花子とユーちゃん、どちらをより愛していますか?」 と聞かれ「愚かな質問と言えるでしょう」と返答した。 因みに、北島はマニュアル車がお好みらしい。
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/330.html
チンクの無限書庫動乱記2話 作者:SgPKSOv5H6 チンクの無限書庫動乱記2話 ユーノの前回のダメ人間発言により、お先真っ暗な感じに陥ったチンク。 しかし彼女は諦めるわけにはいかなかった、てかここで諦めたらいろんな大事な物が無くなる気がする。 そしてそれは恐らく真実だろう、何せ相手はユーノ・スクライア、すこし、いやかなり壊れた人間だ。 そして回りの司書達も壊れている、現在も・・・ 「意義あり、彼女は司書たちみなの物であり司書長一人の物ではありません!」 「どうしてだい?僕がいなければ彼女を引っ張ってこれなかったんだよ?」 「しかし彼女は無限書庫に配属されたのであって決して司書長のものとして配属されたわけではありません」 「同じような事だよ、僕がいなければ彼女はここにいなかった、それにここでの仕事は僕が決めるからね」 なおも議論が捻じ曲がった方向に議論が白熱していく!もはや無限書庫にまっとうな人間がいないのだろうか? 彼女はただただ議論を聞いているだけしかできなかった、 ユーノのバインドははっきり言って解除不能なレベルのもので身動きできない、 かといってあの会話に入る気はさらさらない、手か入ると何気にやばそう。 そんなしょうも無い事を考えていたとき・・・ 「でしたら彼女に決めてもらいましょう」 「ああ、いいさ」 といってチンクの方を向くユーノと司書A、途中の話をまったく聞いていなかったのついていけない… 「すまないですが、何の事です?」 やはり丁寧な口調で疑問をぶつけるチンク。 その事に不満なユーノと司書A、しかし説明しないと先に勧めないと判断。 「いや、チンクはどっちがいいのかなぁと」 「何がどちらなのです」 「僕の物か、それとも司書達全員のものか」 結構人間として間違っているような事をほざく司書長、もうあの純粋な頃に戻れないのであろうか? 聞いてきた事が頭に染みわたってきたチンク、意味を理解するにつれだんだん怒りが込み上げてくる。 顔が怒りでだんだん赤くなり肩がプルプル震えてきている、その様子を見て二人は思った。 (やべ、かわいい、もっといじりたい) と思った矢先、噴火した。 「ふざけるなー!ヒトを物扱いするな!大体私はここに司書として配属されたのであって玩具じゃない!」 そういって叫ぶチンク、まぁ、まっとうな人間の反応である、 このままではそろそろ業務に影響が出ると判断した惜しいなと思いながら 司書長は司書A普通の業務に戻るよう目配せする。 司書長の意向にに気付き、軽く礼をして退出する司書A、心惜しいのも彼も同じである。 なおこの間ユーノは仕事の作業をとめてない、とんだ化け物である。 「わかったよチンク、そろそろ真面目な話をしよう」 そう言って真顔に戻るユーノ、チンクは安堵した、ようやくこのイカレタ状況から開放されるのだ。 「それじゃあ、もう一度業務内容の確認から使用か」 そう言って真面目に話すユーノ、 この後説明を受けて少し仕事をして何とかやっていけると思ったチンク。 しかし彼女はこの後更なる受難を受ける羽目になるのは別のお話 ・・・ 38スレ SS チンク ユーノ・スクライア 電波
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/13.html
たくさんの宿題と小さな一歩 作者:にっぷし 高町ヴィヴィオが通うSt.ヒルデ魔法学院にも、長期休暇は存在する。 たくさんの休日とたくさんの宿題を与えられたヴィヴィオは、嬉しさ半分戸惑い半分で帰宅した。 最近では珍しく先に帰宅して待っていたなのはが、それを出迎える。 「おかえりー、ヴィヴィオ」 「ただいまー。宿題たくさんでたよー……」 オッドアイのお子様は、ハァ、と妙に大人びたため息をつく。 渡された宿題は、簡単な計算ドリルや絵日記など、大人から見れば可愛らしいものばかり。 けれどもそれは、ヴィヴィオにとって、背中に大きな石を背負わされたような重圧だった。 あまりにたくさんありすぎて、どれから手をつけていいのかもわからない。 「毎日少しずつやれば終わるから、ちゃんと頑張るんだよ」 「はーい」 宿題は、まるで太陽を隠す雲のようだ。 長期休暇という素敵な花畑も、少しばかり魅力を減らしてしまう。 珍しく間延びした返事をするヴィヴィオに、なのはは子供の頃を思い出してクスクスと笑うのだった。 魔法少女リリカルなのはStrikerS ユーノスレ用SS 「たくさんの宿題と小さな一歩」 「――それで、ヴィヴィオ、宿題頑張ってる?」 長期休暇が、最初の10日を過ぎた頃。 娘に少し遅れて休暇が始まったなのはは、一緒に朝食を食べながらヴィヴィオに尋ねる。 それを聞いてビクッと身体を強張らせた娘の様子に、母親が気付かないはずがなかった。 「……ヴィヴィオ~?」 「ううう……ごめんなさい。絵日記しか頑張れてないです……」 ここで嘘を付いたらすごくすごく怒られる。 それを良く知っているヴィヴィオは、叱られるのに怯えながらも正直に告白した。 キャラメルミルクの入ったマグカップを両手で持ちながら、フルフル震える愛娘。 その様子に怒るに怒れないなのはは、「甘いなあ」と思いながら通信を開いた。 「ユーノくん、もう起きてる?」 『顔洗ったとこだよ。どうしたの、なのは』 連絡先は、今なら自宅にいるはずの幼馴染の青年ユーノ・スクライア。 同じタイミングで休暇を取り、ヴィヴィオと三人で出かける予定だった相手に事情を説明する。 『――ヴィヴィオの宿題を見たい?』 「うん。だからお出かけは午後からに変更していいかな?」 『構わないよ。どれくらい時間かかりそう?』 トントン拍子で進む話に、ヴィヴィオの顔がサーッと青くなっていく。 今日は朝からママと一緒に過ごせるお休みの初日なのだ。その予定が狂うのは辛すぎる。 自分が悪いとわかっていても、どうしてもゴネずにはいられなかった。 「えー!! せっかく三人でお出かけなのにヤダー! 宿題明日やるからー!」 「ダメだよ。ちゃんと宿題しなかったヴィヴィオが悪い。見ててあげるから、頑張ろうね」 駄々をこねるヴィヴィオにぴしゃりと言い放ち、笑顔で言うなのは。 涙目で脚をぱたぱたさせるヴィヴィオを横目に、ユーノとの通信を続ける。 『もう起きちゃったし、そっちで待ってて良いかな。ボクもヴィヴィオの勉強も見てあげたいし』 「うん。ありがとうユーノくん。お昼は家になっちゃうけど、美味しいの作るからね」 そしてヴィヴィオの手の届かない大人の領域で、話が纏まってしまう。 宿題はやっぱり嫌いだ。自分が悪いとわかっていても、ヴィヴィオは思わずにいられなかった。 呼び鈴を鳴らす音に、なのはが栗色のサイドテールをなびかせてパタパタと玄関に向かう。 扉の向こうにいたのは予想通り、長い金色の髪を緑のリボンで結わえた青年だった。 「いらっしゃい、ユーノくん」 「お邪魔します、なのは」 笑顔で迎え入れる幼馴染の女性に、ユーノも明るい笑顔で返す。 一緒に廊下を歩きながら、ユーノは読書魔法に興味を示し始めた女の子の様子を尋ねた。 「ヴィヴィオの様子はどう? 頑張ってる?」 「うん。やれば出来る子だからね。一度に宿題出されちゃって、どうしたらいいかわからなくなってたみたい」 「なるほどね。ボクも一度に検索依頼が押し寄せたときはそんな気分になるよ。呆然としちゃうっていうか」 自らの体験と重ねて肩を竦めるユーノに、なのはがクスクスと笑う。 不意に視線が重なった二人は、一瞬視線を動かせなくなったあと、微笑みあってリビングへ向かった。 そこには、低いリビングテーブルに宿題を散りばめて、ペンを握り締めているヴィヴィオの姿。 ソファーに座ると高さが合わないようで、カーペットにクッションを置いてその上に座っている。 宿題の配信をデータではなく紙媒体を使用しているのは、伝統ある魔法学院らしいこだわりだった。 文字をきちんと書いて覚える練習にもなるだろう。 「お邪魔します。頑張ってるみたいだね、ヴィヴィオ」 「ユーノさん……うー、ゴメンなさい。ヴィヴィオのせいで予定が変わっちゃって……」 ユーノの挨拶に顔を上げるが、目が合うなり、しゅんとうな垂れてしまうヴィヴィオ。 自分の髪よりやや色濃い金髪をした少女の頭を、ユーノはよしよしと撫でてやった。 「大丈夫だよ。気にしないで。わからなかったら、なのはとボクが教えるから、しっかりね」 「うにゅ……はい……」 ヴィヴィオは申し訳なさで一杯のようだったが、ユーノは気にしてはいなかった。 小さな子が一生懸命に努力している姿は、眺めているだけで心を満たしてくれる。 幼馴染の女性が引き取った娘に対して、ユーノはいつしか父性めいたものを感じていた。 カーペットに腰掛けて宿題の一つをパラパラめくっていると、なのはが胸を張って口を開く。 「ママが子供の頃は頑張って宿題を早めに終わらせて、それからゆっくり遊んだんだよ?」 えっへん、という感じで胸を張るなのは。 毎日コツコツやるというやり方のさらに一段階上の方法を聞かされて、ヴィヴィオが愕然とする。 「そ、そんな方法があったなんて……ヴィヴィオびっくりだよ……なのはママすごすぎるよ……!!」 たくさんの宿題を一網打尽にやっつけるなんて力強い考えは、ヴィヴィオには浮かばなかった。 敵を一度にやっつけられるすごい魔法を使う母親らしい考えと実行力に、尊敬の念を新たにするヴィヴィオ。 キラキラした眼差しを受けて微笑むなのはの姿を見ながら、ユーノは昔のことをチラリと思い出していた。 ☆ ☆ ☆ 若き天才魔導師として多くの人に目をかけられ、入局早々引っぱりだこになる高町なのは。 彼女の夏休みは決まって、管理局サイドの人々と、海鳴市に住む友人や両親で綱引きが行われていた。 将来を嘱望された魔導師を育てたいという面々と、大切な親友や家族と共に過ごしたいという面々。 二つの陣営の水面下の綱引きは、たくさんの予定となってなのはに押し寄せる。 なのははなのはで、周囲からの期待や寂しさを感じると、求めに応じずにはいられない。 周囲の期待に応えて成長し、友人が感じている寂しさを埋めて楽しむため、スケジュールは過密なものになった。 そしてそれらの無茶は決まって、残ってしまった夏休みの宿題という形で押し寄せていた。 セミの声も弱くなってきた夏休み終盤になると、恒例となったなのはの情けない声が響く。 「うえ~ん、宿題終わらないよ~!! アリサちゃ~ん、すずかちゃ~ん!!」 天才魔導師としての貫禄など微塵もない様子で、助けを求める声をあげるなのは。 監視しているアリサと見守っているすずかは、情けない姿を晒す親友の姿に苦笑を交わらせた。 「仕事と両立してるとはいえ、自業自得でしょ。はやてもフェイトもちゃんと終わらせてるわよ」 「なのはちゃん、頑張ってね。あんまり無理しちゃダメだよ?」 優しいけれど甘くはない友人たちは、宿題を丸ごと写させるという逃げは打たせない。 自由研究などどうしても達成が困難な部分は手伝ったが、設問が並ぶドリルなどは本人にさせていた。 「あーんっ、だってたくさんありすぎて、どれからやるか迷って……フェイトちゃ~ん、はやてちゃ~ん」 さすがに理数系は得手があり、スラスラと問題を解いていく。 だが得意だからこそ後回しにしたツケが祟って、延々と続く計算の連続に手も頭も疲れていた。 シャーペンを持つ左手が疲れてしまい、プラプラと振って強張りを解こうと努力する。 泣きつく声におろおろと反応したのはフェイトだった。 「えっと……なのは、間に合わないなら、答え写させてあげようか?」 「アカンて。ここはしっかりせな、なのはちゃんのためにならんよ?」 フェイトが伸ばそうとした救いの手を、はやてがピシッと取り押さえる。 八神家の主と夜天の主をしているお嬢さんは、締めるところをキチッと締める性格をしていた。 うんうんと肯くアリサ。それでもフェイトは、苦笑して見守るすずか同様、なのはの弁護側に回る。 「でも、なのはの場合はご両親がミッドのこと知らないし、私たちくらい理解と協力をして貰うのが難しいから……」 「う、まあ、それはそうなんやけど……私もかなりシャマルたちに時間作って貰ったしなぁ……」 フェイトの言葉に、うーむ、と考えこんでしまうはやて。 そんな二人の様子を見て、なのはは申し訳なさそうに苦笑して口を開いた。 「ありがと。頑張るから大丈夫だよ。……アリサちゃん、現代文のわからないとこ教えてくれる?」 「いいけど、物理は終わったみたいだけど、数学はまだ残ってるじゃない」 「うん。でもこっちは時間かければなんとかなりそうだから。わからなくて詰まりそうな方を済ませたいの」 「なるほどね。オッケー」 なのはのすぐ側に座りなおすアリサと、休めていた手を動かし始めるなのは。 残された三人は紅茶を飲みながら、努力する親友の姿を見守るのだった。 ――そしてその夜。 なのはの部屋の窓の小さな隙間から、一匹の小動物がするりと入りこむ。 「こんばんは。頑張ってるみたいだね、なのは」 「ユーノくんっ、あうう、毎年ゴメンね~っ」 フェレット姿で現れた幼馴染の少年に、なのはは申し訳なさそうに言う。 親友たちと別れた夜更けこそが本番だった。眠気と戦いながら宿題をこなさなければならない。 そんな孤独な戦いを勝ち抜く自信がないなのはは決まって、ユーノに助っ人をお願いしていた。 勉強机にヒョイっと飛び乗ったユーノは、髪を下ろして勉強に臨んでいるなのはを見上げる。 小さく出された指先をチロチロと舐めると、なのはは安心したようなため息をついた。 勉強を再開したなのはを見て、ユーノは外されて置いてあるレイジングハートに額をコツンと付ける。 なのはの許す範囲で昼間の出来事を教えてもらうと、頑張って手伝うことを心に誓った。 そして始まる、長い長い静かな夜の戦い。その最中、何度目かの眠気に、頭をフラフラとさせるなのは。 ユーノはなのはの腕を伝って肩に乗り、眠気覚ましのための小さな魔法を発動させる。 (なのは、起きて) 念話で言いながら、ふーっとアイスブレスを耳の穴に送り込むと、なのはの身体がビクンと跳ねた。 「ひゃっ……! ううう、耳は反則だよぅ、ユーノくん……」 (でも、少しは目が覚めたでしょ?) 首筋も冷やしてあげたユーノは、小さな口先で耳たぶにキスをして、とととっと机の上に戻っていく。 むー、と唇を尖らせたなのはは、寝ぼけて引いてしまった線を消しゴムで消して、課題を再開した。 「ううう……終わんないよ……終わんないよ……」 (大丈夫。頑張ろうなのは。ボクも手伝う。わからないところは教えるから。ね?) 「うん……ありがと、ユーノくん……」 途中、何度も諦めかけるなのはを励まし、時にはわかり易く解説をして助けるユーノ。 外が明るくなるまで続いた果てのないような戦いは、課題の終了をもって幕を引くことができた。 変身魔法を解除したユーノは、机に突っ伏して眠るなのはの身体に毛布をかける。 そして再びフェレットに戻ると、レイジングハートに短く挨拶をして、窓の隙間から出ていった。 ☆ ☆ ☆ なのはが中学を卒業するまでの間、繰り返されていた光景。 それを思い出したユーノは、娘の前で堂々と胸を張るなのはを見てクスクスと笑ってしまう。 そんな様子にきょとんとしたなのはだったが、次の瞬間ユーノが何を思い出したのか悟って顔を赤くした。 耳まで赤くなったなのはは、ヴィヴィオの視界の外、テーブルの下で咎めるようにユーノの腕をつねる。 ぎゅーっとつねられたユーノは、痛みに片目を閉じながらなのはに念話を送った。 (イタタ……痛いよなのは) (知らないっ……ユーノくんのイジワル) 拗ねたように言うなのはのつねる手を、ユーノはもう一方の手で触れて外させる。 カーペットの上に下ろされたなのはの手は、小指の先がユーノのそれと重なった。 偶然の出来事に二人の手が微かに反応するが、どちらも黙ってそのままにする。 曖昧な沈黙を感じながらヴィヴィオに視線を向けると、勉強に励む小さな姿が昔のなのはと重なった。 (……懐かしいね) (……うん) 過去を懐かしめるほど、近くにお互いを感じながら、それぞれの道を歩いてきた二人。 ヴィヴィオという存在が現れたことで、少しずつ変わってきたお互いの心。 息をひそめるようにして二人がそれを静かに感じていると、ヴィヴィオが元気な声を上げる。 「できたー! できたよ、ママ、ユーノさん!」 「どれどれ~ちゃんとできてるかな~?」 「頑張ったね、ヴィヴィオ」 自然に指先を離した二人は、今日のノルマを終えたヴィヴィオの隣に左右から寄り添った。 誇らしげに笑顔を浮かべるオッドアイの少女を二人で撫でながら、三人一緒に解答欄の埋まった宿題を見る。 ヴィヴィオの頑張りを仲良く褒めていると、不意にユーノとなのはの肩が触れ合った。 反射的に振り向いた二人は間近で相手の瞳を見て――その奥に揺らめく一つの確信を感じ取る。 ――もう、自分たちがその境界を越えられることを、なのはもユーノもわかっていた。 幼馴染、大切な友達、親友――そういったものと、境界を隔てた向こう側に進めるということを。 そして、その境界を越える方法も二人は知っていた。知っていたから、二人は片手をヴィヴィオの顔に乗せ―― 「ふえ?」 そうして、目隠しされたヴィヴィオがきょとんと顔を上げる後ろで、二人はそっと唇を重ねた。 カーペットについた指先を絡めてのファーストキスは、頭が真っ白になりそうなほど気持ち良いものだった。 60スレ SS なのは にっぷし ユーノxなのは ヴィヴィオ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/168.html
秋眠中天を覚えず 夏が終わり秋となる。 茹だる様な暑さは鳴りを潜め、これからは身を切るような寒さの季節だ。 しかし、今は夏と冬の狭間であり、冬よりも夏に近い。 秋の日差しを、風が心地よく和らげてくれる。 そんな中、大樹の下で一人の青年と一人の使い魔がまどろんでいた。 「春眠暁を覚えず」という言葉があるが、彼らにとっては「秋眠中天を覚えず」と言ったところなのだろう。 青年の手は、自分の膝上で眠る紅い使い魔の背中に置かれており、眠る寸前まで彼女の背を撫で居ていたのがみてとれる。 ふと、軽快な足音が芝生を踏む音がする。 そんな音で二人が目覚めるはずも無く、二人に変化をもたらす事はなかったが音の主は違う。 「ほぇ、ユーノくんだー」 「アルフも一緒とは……珍しいな」 青年……ユーノ・スクライアによく似た金髪の少女・ヴィヴィオと、使い魔アルフと対をなすかのように蒼い毛並みを持つ守護獣ザフィーラ。 たまたま知り合い二人を見つけ、彼らは興味深そうに近づく。 「ユーノくーん?」 ヴィヴィオが呼びかけるが、ユーノは目を覚ます気配が無い。 指先で頬をつっついてみても反応無し。 「むぅー」 今日のヴィヴィオはツいてない。 友達と遊びに出かけようとしても、皆なにかしらの用事があると言われてしまった。 家にいるのも退屈だから、とザフィーラに無理を言って付いてきてもらったものの、ヴィヴィオも何か当があるわけでは無い。 何気なしに公園に来てみれば、そこには見知ったユーノの姿。 更にアルフまでいて、4人なら色々遊べたのにと頬を膨らませる。 それでも、無理に起こそうとしないのは、せめてもの良心か。 ザフィーラはそんなヴィヴィオの様子に苦笑し、ユーノの傍らに寝そべる。 「ザフィーラ?」 「ヴィヴィオ、良い天気だ。こういう日の昼寝というのも悪くないぞ」 「……うん!」 お昼寝はヴィヴィオも大好きだ。予定はすべて狂ってしまったのだから、皆と一緒にお昼寝するのも悪くない。 ザフィーラが律儀に空けておいた間に滑り込み、ヴィヴィオはユーノの腕に自分の腕を絡ませる。 いつもママ達に取られてしまうポジションを自分が占領できたとだけあってご満悦である。 「ふにゃ、おやすみなさーい」 一方からはふわふわ、もう一方からはもふもふ。 なんて素晴らしいパラダイス。ここは安眠快眠を約束された理想郷にちがいない。 程なくして、ヴィヴィオはすやすやと寝息を立てることとなった。 ザフィーラはそんなヴィヴィオの姿を見守っていたが、自分にも眠気が忍び寄っている事に気が付く。 守護獣としての本能から睡魔と戦おうとするが、幸せそうに眠る3人をみていると戦意が急速にしなびていくのがわかった。 「まぁ……大丈夫だろう」 自分とアルフがいるのだから、何かあれば即座に起きて対処できるだろう。その程度の自信はある。 そう割り切ると、ふぁと大きな欠伸をしてザフィーラもその場で眠りこけてしまった。 さて、それからどれほど経っただろうか? 風にのって何やら騒がしい声が響いてくる。 「だーかーらさぁ、なんでこれから寒くなるのにアイスなんだよ」 「アイスはどんな季節でも美味しいんです! 特に炬燵に入りながら食べるアイスは贅沢すぎてウマウマなのですよ」 「……なんでわざわざ熱くなってまでアイス喰わなきゃいけねーんだよ。寒い日は肉まんだろ」 「アギトは炬燵アイスの幸福さをしらないからそんな事がいえるです!」 空中を喧々囂々の大騒ぎをしながら飛んでいるのは、リィン2とアギトの八神家チビっこコンビである。 どうもお互いの好みで言い争っているようであり、そこに妥協点は全く見当たらない。 平行線の議論とは不毛なモノである。しかもお互いがお互いに理解しようとする意志がないのならば尚更に。 「むっきー! もう我慢ならないのです。この前、恭也さんから教えてもらった必殺技をおみまいするのです!」 「上等だよ、やってみな」 「覚悟するですよ! ヒューペルボリア……」 「んあ? なんだありゃ」 「ゼロドライヴ! って、アギト! どこいくですか!」 去年の暮れに高町恭也から教わった最高にカッチョイイ技があえなく空振りに終わり、リィンはますます地団駄を踏む。 相方と言えば、そんなリィンの漫才をまるっきり無視して、目についた奇妙な光景の元に向かう。 「なにやってんだ? コイツら」 半分興味本位で、半分呆れたようにアギトは間抜け面を晒して眠るユーノの鼻先に軽く蹴りを入れた。 鼻の頭がちょっとへこむ程度の威力だが、それでもユーノは目を覚まさない。 余程疲れているのか、それとも見かけどおりの腑抜けなのかは解らないが、そのだらしない様にアギトはため息を吐く。 「あー、ダメですよアギト。ユーノさんにそんな事したら」 「ふん、いいだろ別に」 もとより、過去の経験から学者という職種は好かないアギトである。 それだけではない、最近はどうもルーテシアがこの男になついているようで、それが更に面白くない。 自分の好きな相手が、自分の嫌いな相手と仲が良いという単純な嫉妬である事はアギトも自覚しているのだが、それを飲み込む程の器量はまだ無かった。 「はぁ~それにしても皆さんよくねてるです」 「気が緩みすぎだろ、ザフィーラに……アルフっつたか? こいつらまで寝こけてるなんてよ」 赤と蒼の狼達を一瞥し、アギトはバカにしたように鼻を鳴らす。 自分達がもし敵だったら、今頃は全滅だ。ミッド式で生み出されたアルフはどうでも良いが、同じベルカの同胞としてザフィーラの醜態にはなんとも悲しい。 「そんなにカッカッする事ないですよ、ユーノさんの傍はとっても落ち着くです」 そう言って、リィンはユーノの右肩に腰を下ろす。 「アギトもどうですか?」 「は?」 「ユーノさんの肩は座り心地いいですよ?」 「……ばっかじゃねぇの?」 勝手に人の肩に座った上、自分にも座れというリィンの物言いにアギトは本気で馬鹿にしたような視線を送る。 当然、リィンは不満そうに頬を膨らませるがいつものようにつっかかってこない。 「ならいーです、アギトは一人でふわふわ浮いてるといいです」 顔をふいっと背け、リィンは体をユーノに預ける。 そうして聞こえてきたのは、これまた心地よさそうな寝息。 「おい、バッテンチビ?」 アギトの呼びかけにも応えない。どうやら本気で眠ってしまったらしい。 「……ちぇ」 起きていれば起きていたで小うるさいが、寝てしまえば寝てしまえばなんとも暇を持て余してしまう。 アギトとて、特にする事もないからリィンとぶらぶらしていただけのなのだ。 「……」 ちらり、とユーノを見やり、そして何も言わずにリィンとは反対の肩に座る。 特に別段、アギトのマイスターたるシグナムの肩と何も変わらない。たしかに、ザフィーラやヴィータやシャマルやはやての様な違和感は無いが、それだけの事だ。 「なんでこんな奴がいいんだ?」 アギトから見ればちっとも魅力的に見えない。だというのに、多くの人間がこの貧相な学者を慕う。 うんうんと悩み続けていたアギトだったが、普段使わない頭を使ったせいか妙に眠くなってきた。 「ぁふ……」 大きな欠伸をしながら、体を後ろの大樹に預ける。 「……別にバッテンチビの言うとおりって訳じゃねーからな。いまさら寝るとこさがすのめんどいだけだ」 誰に言うわけでもなく、ただなんとなく言い訳をしてからアギトは目をつむる。 そうして、彼女もまたそこで休息を取る一人となった。 九七管理外世界の言葉に、「二度ある事は三度ある」という言葉がある。 物事は繰り返されるという事を、的確に表した言葉なのだが、はたしてこの場合もまさにそのとおりであった。 今度の客人は守護獣でも幼子でもユニゾンデバイスでもない。 いや、ある意味で幼子と言うべきだろうか? 小さな羽根を羽ばたかせて飛ぶ竜の子供フリードリッヒである。 いつもならば主キャロ・ル・ルシエと共にいる彼が何故一匹だけでここにいるのか? それはジェントルメンを自負する彼の気遣いである。 久しぶりに遊びに来たルーテシア・アルピーノとの淑女同士の会話を邪魔するほどに野暮では無い。 だから決して、竜の勘がなにやら不穏な修羅場の気配を感じとったからでは無いのだ。そもそも、エリオ・モンデュアルがあの場に居るからと言って必ずしも修羅場になるとは限らない。 フリードは自身をジェントルメンであると同時に、主も素晴らしい淑女であると信じている。 さて、そんな今ここでは無い話は置いておいて、やはりというかなんというか、フリードも木陰で眠る一団を見つけた。 「きゅく?」 首をかしげ、一声鳴いてみる。 どうにも気持ちよさそうに眠っている面々を前に、フリードはそのまま素通りしようとした。ジェントルメンたるもの、他者の安眠を妨害してはならない。 ただ、フリードの瞳に運悪くユーノの見事なブロンドが映ってしまった。 鮮やかなハニーブロンドを前に、フリードの動きがぴたりと止まる。 じっ、とその金色の頂を見つめ、フリードは周囲に誰もいないことを確認し、そして白い羽根を羽ばたかせ、ユーノの頭上にゆっくりと乗っかる。 「きゅくー♪」 思っていた通りだ! なんて柔らかく心地よい毛並みなのだろう! フリードリッヒはジェントルメンである。彼自身、そうであろうと心がけている。 だがいかにジェントルメンであろうとも、いやジェントルメンだからこその密やかな楽しみがあるのだ。 その内の一つが、こうして他人の頭に乗る事だった。 もちろん、それが失礼な行為である事は重々承知しているのだが、この魅力に勝てたためしがない。 嗚呼、それにしても素晴らしいブロンドなのだろう。まるで太陽の光をたっぷりと浴びた干し草を束ねたようだ。 主であるキャロ・ル・ルシエには及ばないが、フリードが今まで試した中でも最高だった。 ちなみに、エリオ・モンデュアルのはあの固い髪の毛がちくちくしてまことに座りづらい。 「きゅあ~~」 暖かな寝床と暖かな日差し、ここまで揃っておいて眠くならない生物がいかなる次元世界に存在するというのだろうか? 主達のお茶会が終わるまで、フリードはそこで一眠りするのを決めるまで、さほどの時間は掛からなかった。 さて、フリードリッヒがお昼寝集団に加わった事でこの話は終わりだろうか? いやいや、そうではない。因があれば果がある。 何か物事が起これば、その結果は必ずついて回るのだ。 キャロ・ル・ルシエの召喚竜たるフリードリッヒが居なくなったという因が引き起こす果は、彼を心配した主達による捜索だった。 「フリード、どこー?」 「おーい、フリード!」 「フリードー」 フリード居ない事に彼らが気づいたのは、キャロの作ったクッキーとルーテシアが作ったパイのどちらが美味しいかという極めて朗らかで笑顔を交えた勝負(判定役エリオ)の後だった。 ちなみに、その勝負は若干の抗議とお互いの対抗心を散らした微笑ましいやりとりがあったものの、審判役は引き分けの判定を下して決着がついている。 「フリード、どこに行っちゃったのかなぁ……」 「念話は通じないの?」 「街中だと、念話が使えないんだ」 クラナガンの街中では、念話を犯罪に用いられないように念話はすべて遮断されるようになっている。 これはビルや舗装などに念話を乱す特殊な鉱石を混ぜ込む事によっての妨害であり、それらを無視できる様な特殊な念話は管理局の監視網に引っかかってしまうのだ。 管理局の御用となってしまうのはやはりマズい。そんな事になったら、フリードを探す時間がなくなってしまう。 どうしたものか、と途方に暮れつつエリオが周囲を見渡してみると、何かが視界の片隅に引っかかる。 「あ、キャロ、あれ」 「え?」 キャロとルーテシアがエリオの指さす方を向くと、そこには大樹の下になにやらひと塊りになっているものがいる。 そして、その中の一つにいるのは間違いなくフリードだった。 「フリード!」 三人は急いで大樹に走ってゆく。 ユーノに寄り添って眠るザフィーラ・ヴィヴィオ・アギト・リィン・アルフ、そしてフリード。 幸せそうなその顔を見ると、必死になって探していたのがバカバカしくなるほどに力が抜けてしまった。 「もうっ、フリードったら」 「あはは、でも無事でよかったよ」 なにはともあれ、これで一件落着だ。 そこで、二人は自分たちとは違う場所に視線を向けているルーテシアに気づく。 「ルー?」 「どうしたの? ルーちゃん」 「アギトが、私達とはやてさんの家以外でこんな風に寝てるの初めてみた」 言われてみてみると、肩に座り体ごとユーノに預けて眠るアギトの姿がある。 エリオとキャロはアギトとの付き合いが殆ど無い、だからアギトの事などほとんど知らない。 だが、ルーテシアの様子を見るに、アギトのこういう姿は本当に珍しいのだろう。 「ねぇ、私たちも一緒に寝よ?」 「え?」 「へ?」 エリオとキャロが理解をする前に、ルーテシアは平然とユーノに寄り添う。 ヴィヴィオの反対側に陣取った彼女は、すこし悪戯っぽく微笑みユーノの腕に自分の腕を絡ませて目を閉じてしまった。 とりのこされた二人はお互いの顔を見合わせる。 たしかに、さんざん歩きまわって疲れてしまった。少しぐらい休憩してもいいかもしれない。 と、そんな風に二人はこの時、全く同じ事を考えていた。 勝手に枕にしてしても、ユーノさんなら怒らないだろうという安心感もある。 それをお互いに確認しあうように笑うと、キャロはアルフとは反対側の膝に、そしてエリオは同じ大樹に背を預ける。 流石にもうこれ以上ユーノには寄り添えないし、なによりエリオとしてはユーノに寄り添うというのは少し気恥ずかしい。 キャロとルーテシアは、しっかりとユーノから暖を得られて中々にご満悦のようだ。 そんな二人を横目でみつつ、エリオは苦笑する。 少女達に囲まれるユーノが羨ましいのか、それともユーノに自由に甘えられる少女達が羨ましいのか。どちらなのかは解らないが、羨ましいのには違いない。 心躍る冒険譚や色々な事を教えてくれるユーノはエリオにとっても良い兄貴分なのだから。 けれども、ユーノに頼る事はあっても甘える事はしない。それはエリオの騎士としての矜持だ。 「笑われるかな?」 「? なにが?」 「ううん、なんでもないよ。おやすみ、キャロ、ルー」 「うん、おやすみなさい」 「おやすみ」 気持ちのいい風に揺られ、三人は瞳を閉じる。 三人そろえばいろいろあるが、やはりこうした時間は得難い。 ――おやすみなさい、兄さん―― だれにも聞こえないような、小さな声で呟くその言葉。そこにはエリオの本当の気持ちが詰まっていた。 風がだいぶ冷たくなってきた。 その感触でユーノの眠りは引き上げられたが、直接彼が目を覚ます要因となったのは、なにやら先ほどからねちっこく自分のほほを突く感触だった。 半分だけ目を開くと、そこには三人の幼馴染の姿。 後ろに映る空は青から紫に変化しつつ在り、自分がよほど眠りこけていたのかが理解できる。 「お、ようやっと目がさめたな」 「ふふっ、おはようユーノくん」 「ふぅあ……うん、おは……」 くすくすと笑う幼馴染達に「おはよう」と言いかけてユーノは動きを止める。 なにやら体中が重い。何かと思って辺りを見てみると、いつの間にやら自分を中心に子供達が集まって眠っているではないか。 「えぇ!? い、いつのまに?」 両腕をヴィヴィオとルーテシアにがっしり組まれ、両足はアルフとキャロが占拠している。 よく見えないが、どうも肩にはユニゾンデバイス二人組がいるようだし、頭の上にもなにやらいるようだ。 それを見て、なのは・フェイト・はやては堪え切れなかったと言わんばかりに笑い出す。 笑われるユーノとしてみれば、いったい何がどうしてこうなったのかさっぱり解らない。 「そんなに笑わないでよ」 「ふふふふ、ごめんね」 「でも、あんまりにも似合ってて」 「リィンは兎も角、アギトも中々やるもんやなぁ、こういう羨ましいシチュエーションとは」 「私は別に羨ましくないよ?」 「? なんでや」 「だって、毎晩ユーノくんと一緒にねてるもん」 「あ、それ言ったら私だってそうだよ、なのは」 「……く、くっそー! なんでや、なんで私だけ住んどる家が別なんや! ユーノくん、ウチに来ぃへんか? いまならオプションでおっぱい魔人とおねーさんとロリっ娘三人がついてくるで!」 「ダメダメダメ! ユーノくんは私とフェイトちゃんと一緒に住んでるの! はやてちゃんと言えどもこれは譲れないの!」 「そうだよ。それに、まっさきに家を決めちゃったのははやてでしょ?」 「うわーん! 理不尽やー!」 秋空の下で、喧々囂々いつもの大騒ぎを始めた彼女たちに嘆息しつつ、ユーノは子供達を起こしにかかる。 ずっと眠っていたせいで、一緒にいたのだという実感は無いが、それでも子供たちが自分に安息を見出してくれたのは嬉しい。 今度また天気が良ければ、ここでもう一度昼寝でもしてみようかな。 そんな風にユーノはこんな時間の再来を望む。 しかし、それが叶えられることはなかった。 何故ならば、今度は大樹の元では無く、暖かい炬燵が舞台となるのだから。 以上 電波をくれた61スレの397氏と398氏に感謝。 アクセス数: counter; 62スレ なのは はやて アギト アルフ キャロ ザフィーラ フェイト リィンII ルーテシア ヴィヴィオ 複数CP
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/283.html
一瞬……だけど閃光のように……! 作者:にっぷし 時空管理局は本局内にあるでっかい図書館、無限書庫。 次元世界の星々よりも多い書物が収まった小さな宇宙は今日も今日とて大忙しだ。 けれども、誰より仕事をこなす青年が、いついかなる時も仕事に励んでいるとは限らない。 都合四徹をこなした我等が司書長ユーノ=スクライアは、司書長室で仮眠を取っていた。 ソファーで眠るその身体に、紅葉のような小さな魔の手が迫っているとも知らずに―― 司書長室の扉が僅かに開き、小さな影がスルリと入り込む。 音もなく扉が閉ざされると、小さな影は口に手を当ててきししと笑った。 暗い部屋に揺れるのは頭の左右で束ねられた小さな髪の房たち。 輝いているのは翠緑と真紅のオッドアイ。 「ふふふ、ママたちにはわるいけど、ユーノさんはヴィヴィオがもらっちゃうよ」 ミッドチルダを震撼させた『ゆりかご事件』から幾らかの時が過ぎていて。 聖王のクローンでありエースオブエースの養子となった高町ヴィヴィオは、実に頼もしく成長していた。 今日もいつもの送り迎えな一日――それも十分素敵なんだけど――で終わるはずの彼女の放課後は、 手元に偶然転がり込んできた幸運によってやたらとワクワクしたものに変化していた。 目標は唯一つ。『大好きなユーノさんに大胆なアプローチをして恋人になる!』以外にない。 もちろん子供の頭なので想像には限界があり、 1.ユーノさんに近づく →2.?? なんかする。 →3.ラブラブ♪ という重要な部分に穴が開いたプランなのだが、そこには切り札がある。 『聖王モード』を使用すれば、頭は子供のままだけど、身体だけなら大人になれるはずなのだ! そして、姿が大人になりさえすれば、後はヴィヴィオが知っている必要はない。 優しくてとっても賢い大人のユーノさんが、いろいろなんかしてくれるに違いないのだから!! 「すごいよ……ヴィヴィオすごいよ……! このさくせん、ママもビックリだよ……!!」 ヴィヴィオはこのプランを閃いた瞬間、自分の才能が恐ろしくなった。 なんという策士。別領域からの刃。足りない知識を相手を利用して補うという着想に背筋が震えた。 いや、落ち着け。クールになれ。高町ヴィヴィオ。いや、ヴィヴィオ・T・スクライア……!! この作戦が達成された暁には、あの暖かい手も、優しい微笑みも、自分だけのものになる。 もっとたくさん膝の上に座らせてくれたり、抱き上げてくれたり、肩車してくれるに違いない。 それからそれから、お花畑で追いかけっこをしたりあれやこれやでとにかくキャッキャウフフなのだ! 「というわけで……」 そろりそろりとソファーに近づくと、そこから聞こえるのは規則的な寝息。 その安らいだ旋律に邪魔しちゃ悪いかなとちらりと思ったが、もう止められない。 「かくごしてね、ユーノさん。ヴィヴィオのオトナのみりょくでめろめろにしちゃうんだから!」 クスクスとほくそ笑んでから――ヴィヴィオは精神を集中して『聖王モード』を発動させた!! キュバアッ! と激しい光が広がり、お見せできないのが残念なシーンを経て、一気に収縮する。 「ん……誰……?」 眩しい光に瞼の奥を刺激された我等が司書長ユーノ=スクライアがのっそりと状態を起こすとそこには!! サイドテールにして戦闘機人風のデザインのバリアジャケットを纏った小さいまんまのヴィヴィオがいた。 「あれー!? なんでー!?」 小さなまんまの自分の姿に、くるくる身体を捻って自分を観察して困惑するヴィヴィオ。 変身シーンを見ていないユーノにとっては、初めから奇抜な姿をしたヴィヴィオがおろおろしているだけだ。 (良くわかんないけど、可愛いなぁ) ソファーに座ったユーノは、ヴィヴィオをひょいと持ち上げて膝の上に乗せる。 「ふえーーん!! うれしいけどちがうの~~~~~!!」 大好きなユーノさんのぬくもりに包まれながら、ヴィヴィオはじたばたと脚を振っていましたとさ。 26スレ SS にっぷし ユーノ×ヴィヴィオ ユーノ・スクライア ヴィヴィオ