約 454,631 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/221.html
風呂場に獣、動揺す 作者:eqoQTMsf そもそもリンディ、レティは上下の下着のみ、シグナムは全く持って落ち着いて着替えていたのだ。 慌てふためく自分が、三人より速く着替えられるべくもなし。 ――ユーノ・スクライア、失態である。 兎も角。 風呂には入らなくてはならないのだ。 意を決して、の割りに、ちまちまと着替えを済ませ――この服どうしようと思い至った。 子供だから誰も気にしないのだが、ユーノ本人は非常に気にする。 もし仮に、万が一、億が一、はやてやフェイトや……なのはがきたら? ――この世の終わり以外の何物でもないじゃないか! 負の思考は止まることなく、あれやこれやと考えられる最悪の事態ばかり思いついてた。 「私の所に放り込んでおけ。……それとサッさと入ったらどうなんだ、風邪でも引く気か」 不毛な考察はシグナムの一言で終わりを告げた。 「え、いいんです……か」 「構わん、なにを考えているかは大体わかるしな。……で、何で目を逸らすのだ」 無理もない。もう風呂に入ろうとしていたシグナムの身体を覆っているのはタオル一枚だけなのだから。 解けた髪や、むき出しの足や、鎖骨。 タオルの下の隠しきれない艶かしい体は――ませガキには刺激が強かった。 「そっちの理由は解りませんか……。ていうか、何で入らないんですか」 「それはだって、お前のためだろう」 疑問の声がユーノの口から出る前に、更衣室に新たな人物が入ってきた。 「あら? シグナムに……ユーノくんじゃない」 「きゃーーーーーーーー!!」 「だから、お前がきゃー言うなっ」 シャマルだった。 「あっ、男性浴場は清掃中だったわよね、そっか、そっかー」 相手がシャマルだったから、というよりシグナムと一緒だったので、 ユーノが女性更衣室にいる説明は、スムーズに済んだ。同時にシグナムが待ってくれた理由にも得心した。 あらぬ誤解――具体的には覗き――を避けるためだ。 「まぁ、そういうわけだ」 「あの、ゴメンナサイ……」 「いいの、いいのぉ。むしろシグナムにはGJをあげるわ♪」 「え?」 シャマルの笑顔が光輝いていた。どこの超人であろうか。 「うふふ、ユーノくーん? 後でお背中流してあげますからね~」 ユーノが、数えるのもバカらしくなるくらいに、また赤面していたが、他の二人は意に介さず言葉を続けた。 「どうでもいいから、もう入るぞ?」 と、溜息交じりのシグナム。 「そうね、本当に風邪引いちゃうわよ?」 と、優しげなシャマル。 「……はい」 と、沈鬱なユーノ。何故なら。 中にはリンディとレティも居る。絶対、絶対にからかわれて、弄ばれる。 決して虎子を得られぬ虎穴に今、入ろうとしていた。 憂鬱だ。変な意味ではなく、恥ずかしいから。 「いくぞ、ユーノ」 「はーい」 ――そんなわけだから。 シグナムがいつもより不機嫌だったり、ユノユノと言わなかったことに気が付かなかったユーノだった。 21スレ SS シグナム シャマル ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/182.html
バケツをひっくり返したような雨が降っている。技術がいくら進歩したところで、自 然の気まぐれはそうそう易くは汲みとれないということらしい。大外れの天気予報を思 い返し、ユーノ・スクライアはそう結論付けた。 クラナガン外れの公園の東屋に雨宿りをしたユーノは、ため息を一つつく。街に出ら れるだけの休みをとってみれば、急な雨とは運が悪い。まだ書庫で見つかっていない本 を古本屋で見つけ、喜び勇んで買ってみたのだが。 「……駄目か」 ぐしょぐしょに濡れたカバンの中からは、びっしょりと雨を染み込ませた本。インク の色が白い紙を汚し、もはや読めなくなったそれを見て、更にユーノはため息を一つ。 急速に沈んでいく自分の心を自覚して、今更の後悔がユーノの心をよぎった。皆の言 う事も最もだ。こんなことなら、妙に遠慮をせずに誰かオフの人を探して、誘う位はす べきだった。 なのはならば、元気に振舞ってこちらを気遣ってくれるだろう。フェイトは困った顔 でオロオロとするのだろうか。はやては姦しく、愚痴を言ってくるかもしれない。くす りと笑ったユーノは、ぶんぶんと頭を振って長い髪にまとわりついた水を払った。 誰かが傍に居てくれるだけで、こんなにも心が和む。独りは、寂しいのだ。どうにも 自分はその辺りの想像力が欠如しているらしい。詮無い想像を打ち消し、さてどうする かと今後を考え始めた現実的思考を、 「すいませーん!雨宿りご一緒……しても…」 雨音に阻まれることなく通った大きな声が中断させた。 「―――ユーノせんせー!」 「……スバルさん?」 脱いだシャツを搾り、水を出す。これで多少はましになった。シャツを着て、濡れた スバルを視界に移さないように上を向く。だが、視界には映らない何者かの視線をユー ノは感じ――― 「って、何で見てるのさ……」 「あ、あはは、せんせー、身体キレイだなーと思ったら、なんか、つい…」 先に搾っておいた上着で身体を拭いていたスバルは、罰が悪そうに笑った。 雨が降り続く中、東屋の下でユーノとスバルは腰を落ち着けていた。勢いも少し落ち 着いたとはいえ、しばらくは止みそうにない。誤魔化すように頭をわしわしと拭くスバ ルに、ユーノは尋ねる。 「スバルさんも、オフ?」 「ぶ――――っ!」 腕を交差してバツを作られた。結局ユーノの視界には入っていないが。 「仕事?」 「じゃなくて!さん付け禁止ですっ!書庫研修といい、こないだの模擬戦といい、ずっ と気になってました。私、気軽に呼び捨てにしてくれる方が好きなんです!」 怒った声から気安い声へ。ころころと声音を変えながら天真爛漫に言うスバルに、ユ ーノは微笑ましいものを感じた。裏表のない、本当に見たままの女の子なのだろう。 「――スバルは、今日はオフなのかい?」 努めて気軽な口調のユーノの言葉に、スバルは嬉しそうに答える。 「はいっ!ティアやギン姉達も誘いたかったんですけど、みんな仕事入ってるみたいで、 私も訓練とかしようかとも思ったんですけど、やっぱり休みは遊ばないと嘘ですよね!で、 ゲーセン巡りとか美味しいスイーツ巡りとかやってたらいきなり雨で参ったなーって思っ てたんですけど―――」 マシンガンのようにまくしたてる。怒ったときや呑んだときのはやてに通じるものが あるが、彼女はあれで普段は聞き上手タイプである。エイミィさんとも少し違うな、知 り合いで一番近いのはシャーリーのノリだろうか。 「でも、まさかこんなとこでせんせーに会えるなんて思ってませんでした!嬉しいで す!」 「嬉しい、の?」 「?はい!」 つい聞き返してしまったが、スバルはさして気にした風もなく、言葉を返した。 「一人で遊んでると、やっぱりさびしくなっちゃいますもん。せんせー、一緒にこの 不幸を分かち合いましょう!」 「あはは」 降り続く雨の中、和やかな空気が生まれる。不思議な子だ、とユーノは思った。 先の六課前線部隊の書庫研修において、ユーノは初めてスバルたちと対面すること になった。それから幾度かの関わりを持って以降、このスバルには特に懐かれている。 六課設立当時から、彼女の個人データは他のスタッフ共々完全に記憶していた。情報 管轄のトップとして、万一のために個々人の背景すら正確に把握している。個人情報 を知られているなど無礼どころの話ではないので誰にも口にしていない事実ではある が。 百聞は一見にしかず。ともすれば森羅万象一切総てを知ることができるような錯覚 に陥る様な立場にある身にとって、常に念頭においてある言葉だが、こういうときに は本当に自覚させられる。情報の支配者だの無限の賢人だのと大仰な呼ばれ方をしよ うが、実際に関わってみなければ人の本質は判り様がないものだ。 「お父さんがもう帰ってますから、一応連絡入れときました。迎えに来てくれるって」 こうも無防備に人の懐に入り込める。頼るのにも頼られるのにも躊躇いが無い。信 用を得るには段階が必要が信条のユーノにはおよそ理解出来るものではないが、同時 にこういう純粋さを――― 「スバル」 「はい?」 「シャツがちょっと」 「ありゃ」 全力で上を向いているのでユーノには見えないが、上着をタオル替わりに使ってい る今のスバルは薄手のTシャツとショートパンツ一枚。雨に濡れたシャツは、きっちり と下着のシルエットを浮かび上がらせているに相違なく、反応を見るにそっちの無防 備さもなのは達以上であるらしい。 十年来の経験に裏打ちされたユーノの反応速度は尋常ではなく、拭いている当のスバ ルの頭のジャケットを見るや即座に上を向き、スバルの肢体のラインを感知野に認識 させずにおく事に成功させていた。かの「温泉ショック」がユーノ・スクライアに与 えた「如何に女性に恥をかかせる事無く場を凌ぐかスキル」の結実であるといえよう。 「……むー」 なにやら不満そうに唸るスバルにユーノが不審なものを感じたと同時に、ユーノの 顔に腕が回された気配が過ぎた。 「えいっ!」 「わ、わわ!っと、えぇっ?」 頭を拭かれている。先ほどスバルがそうしていたように、ジャケットをタオルさな がらにして、わしわしと拭かれている。 「ちょ、何を……」 かき回された頭が正面を向いてしまうと、そこにはスバルの顔があった。戸惑い顔 と不機嫌顔が、互いの息がふれあう距離で向かい合う。 「せっかくキレイな髪なのに、濡らしたまんまじゃ痛んじゃいますよ!?だいたい、さ っきからなんで上向いてたんですか!」 まだ気づいていなかったらしい。 「いやそうじゃなくてシャツの」 「おとなしくしてて下さいっ!」 「はい」 こういう状況では、未だに強く出られない所が情けないとユーノは思う。されるが ままに髪を拭かれながら、極力身体に視線を移さないようにユーノはスバルの顔を見 る。不意に、不機嫌な顔が沈み出した。動いていたスバルの手が止まる。 「……やっぱりせんせーは、うるさい女の子って嫌いですか」 ずきりと、胸が突かれる音が聞こえた。同時にユーノは、何の進歩もない自分を恥 じる。 「無理矢理、合わせてくれてるのかなーって、その……」 ここには自分とスバルしかいない。それなのに自分から視線をそらして壁を作ってど うするというのか。……まあだからとて身体の方に視線をやるわけにもいくまいが。 ぽふ、と、まだ水気の残るスバルの頭に手を置く。スバルが顔を上げた。 「――ごめん、不安にさせたかな」 「あっ……いえ」 慎重に言葉を切り出すと、抑えたような声が返ってきた。予想は当たっていたらし い。人の心が判らないならば、不安になるものだ。不安を取り除くには、状況を知ら せることが肝要。安心は信用から生まれる。信用を得るには、段階が必要。自分なり のやり方で、ユーノはスバルに向き合った。 「僕はね、小さい頃から大人のコミュニティ――社会の中で生活することが多かった んだ。だからどうにも遠慮ぐせがついちゃって、必要以上に気を遣ってしまうみたい だ」 スバルが話を聞いている。頭を撫でられながら、不安な表情が少しずつ和らいでい く。 「遠慮、ですか」 「そう。だからこそ、同年代の友達…なのは達との時間は、戸惑う事が多かった。気 のおけない空気って言うのかな、そういうのになじめずに、距離を置いてしまう事も 少なくなかった。けど同時に、そういうのもいいなって思う気持ちも強かったんだ。 自分の心を見せて、相手に理解してもらおうって、実は凄い事だから」 スバルの頭をぽんとひとつ、優しく叩く。 「スバルみたいな子は、僕は好きだよ」 雨が次第に勢いをなくしていく。スバルは動かない。……対応を間違えただろうか。 そう思ったユーノの頭が突然わしわしと掻き回される。 「―――はいっ、終わりですっ!」 顔を朱に染めたスバルが、ジャケットを片手にずいと立ち上がる。少なくとも、不安 が残っているようにも怒っているようにも見えない。時折幼馴染達が見せる挙動に似て いるが、これはどういう反応だろう。 「―――やっぱり、今日せんせーに会えて良かったです」 顔の朱色はそのままに、スバルが切り出した。聞こえてきたのは、車のエンジン音。 「今度会った時は、もっとせんせーの事、教えてくれますか?」 柔らかく微笑むスバルに、ユーノは一瞬見蕩れた。こんな出会いがあって、こんな触 れ合いがある。会えて良かったのはユーノも同じだ。スバル・ナカジマという女の子を、 少しだけ理解できた。忙しない日々の中でそんな時間を持てた事が、とても尊く感じる。 「僕は、いつでも無限書庫にいるよ」 今日という日が、良きターニングポイントになる事を。 「ちょっと忙しいから、時間が出来たら」 ユーノ・スクライアは願った。 「会いに来てくれると、嬉しいな」 「……で、そのまま帰ってきちゃったの?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「うん!」 帰宅してからこっち、ご機嫌右肩上がりの愛すべき妹に、ギンガ・ナカジマは問い掛 けた。シャワーを浴びた後のスバルは、偶然会ったユーノとの雨宿りの時間を延々と姉 に語って聞かせていた。せんせーの身体はキレイだった、せんせーはこんな感じで優し くて云々。 なのはの師として以前から興味があったことは知っていたが、実際に知り合ってから のスバルがユーノに抱く好感度は鰻登りの一途をたどっている。その辺はギンガも妹の 事は言えないのだが。 実際会う事があれば、帰宅した後こうして喜色満面に逐一報告をするのが常となって いる。 「でねでね、時間が出来たら書庫に会いに来てくれると嬉しいって、えへへーえぎゅむ っ!」 尻尾が付いていればぶんぶん振り回しているに違いないスバルの脳天気面を、ギンガ は両手でむぎゅと挟んだ。 「…………なんで…」 「ギュん、ぬぇ…?」 恐らくはいつものようにギン姉と呼び掛けたのだろう妹に、姉は絶望の叫びを叩きつ けた。 「なんで、うちにお誘いしないのよぉ~~~~~っ!」 春を迎え始めた娘達の声を聞きながら、ゲンヤ・ナカジマが台所で一人出涸らした茶 を啜っている。 「クイントよぉ……娘ってなぁ、親なんざ置いてけぼりででかくなっちまうもんだなぁ ……」 男親の悲哀を滲ませ、ゲンヤは亡き妻の遺影に語りかけた。 SS スバル・ナカジマ ユーノ×スバル ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1662.html
デジモン・ザ・リリカルS Fsideofspirit 第二話 「炎の闘士」 何処までも続く荒野の中をユーノとエリオは走っていた。ユーノは余裕綽々だがエリオは既に息が上がっていた。 「ハァハァ、ユーノさん速いです」 「何言ってるんだこんなの普通じゃないか!」 息を切らしながらも、エリオはユーノに言う。ユーノはどこぞのスポ根漫画のごとくエリオを特訓しながらも旅を続けていたのだ。 その理由は、一時間前のことである。 エリオにユーノはスピリットについて説明したのだ。 スピリットとは、古代デジタルワールドを救った十体のデジモンの力そのものでそれぞれ2種類あるのだ。ユーノの力はいわば、古代十闘士の力を借りているというものである。 「何故、僕らがこの力を使わないといけないか。それは今、デジタルワールド、いや全世界が崩壊の危機にさらされているからだ」 「じゃあ、ユーノさんはその為に…」 「そんな大層な理由じゃないんだ…。ただ、大切な、とても大切な人を守りたかっただけさ…。エリオは、何の為に戦ってるんだ?同じだろ。ただ、大切な人達を守りたい。それだけだろ」 「あ、そうか、そうですね」 「大切な人や皆に笑っていてほしい。だからこそ僕は戦うんだ」 ユーノの話を聞いてエリオは考え込んだ後、何かを決心した様子でユーノに頼み込んだ。 「ユーノさん!」 「何、改まって」 「お願いします!僕を強くしてください!」 「何の為に?」 「皆の笑顔を守りたいそれだけです」 「分かった。けど、特訓はキツイよ?なんたって師匠直伝だからね覚悟してね?」 「はい!頑張ります。」 そして今にいたる。 今のエリオの身体はとてつもなく重い。疲れたからではなく、本当に重いのだ。エリオの両手両足には五キロのアンカーが付けられ、背中には十キロのマントを纏っているのだから。 「ユ、ユーノさん?お、重いです」 「何言ってるんだ。この程度で!これでも、僕の四分の一以下なんだからね!」 ちなみにユーノもエリオと同じで両手両足にアンカーを付けたりしているが、両手両足のアンカーは二十五キロ、背中のマントは百キロで、約二百キロを軽々と装着し、まるで、付けてないかの様に振る舞っている。 「そんなことより、ほら見えて来たぞ。アレが『炎の街』だ」 ユーノが指差した先にあったのは目的地であり、火のスピリットの眠る場所、『炎の街』であった。そこには、デジモン達が平和そうに暮らしていた。特に一際目立っているのは大きな駅であった。その駅は『炎のターミナル』と言い、各地を走る、トレイルモンの駅の一つである。 「早く、スピリットが安置されている場所に行かなきゃな。そこまでダッシュだ!」 「ほ、本気ですか?」 「本気」 「ハァ…」 エリオは諦めた。これ以上言っても無駄だからだ。 「これは、酷い…」 「そんな…」 外から見ると平和そうに見えていたのだが、実際、街に入って見るとそこらじゅうの建物があるものは崩れ、あるものは燃え盛っていた。 「あんたら、人間だね。旅人かい?」 「わ、あなたは?」 ユーノ達が荒れ果てた街の様子を観察していると、後ろから声が響いた。そこには、ゴツゴツした岩のようなデジモンが居たのである。 「スマン、スマン。久しぶりに人間にあったもんでつい。わしゃあこの街を仕切っとった、インセキモンと申します。以後、お見知りお気を」 「あ、どうも。僕は、ユーノ・スクライアと言います。で、こちらにいるのが一緒に旅をしているエリオです」 「エリオ・モンディアルです!ヨロシクお願いします!」 「悪いことは言わん。早く、ここから逃げたなさい」 「待ってください、インセキモンさん、何が起こったんですか?」 「説明が必要じゃのう。あれは、三日前のことじゃった。近くの岩山に住み着いとる、ケルベロモンが突然、街を襲ったんじゃ!何でも『力を試すんだ』と言ったらしい」 「それで、こんなに街が荒れてるんですね」 「その通りじゃ…」 「街の人達はどうしたんですか?」 「皆、避難したよ。ここにおるのはわしだけじゃ」 「何で、ずっとここに居るんですか?」 「ワシには此処しか無いんじゃよ。」 「それも終わるんだなぁ!」 インセキモンが話していると、その場に声が響いた。ユーノが声が聞こえた場所を見ると三つの首を持つ黒きデジモンがいた。 「ケルベロモン、まだ壊し足りんのか!」 「まだだ、まだ焼き足りねぇんだよぉ!」 「外道が…」 「何だ、文句でもあんのか。俺は強くなったんだ!強さこそ全てだ!」 「強くなった?笑わせるんじゃない!貴様は弱い、心も覚悟も意志も弱いんだ!」 「そうかよ、まあいい。俺は忙しいんでな。いけ、野郎共!」 そう言ったケルベロモンの周りには大量のクワガーモンがいた。 「じゃあな!」 「待て!クッ、まずはこいつらか!二人共下がってて!スピリットエボリューション」 その声と共にユーノはヴォルフモンとなりクワガーモンの大群へと挑んでいった。ヴォルフモンはとてつもない強さでクワガーモンを蹴散らしていくが何せ数が数だ。時間がかかる。その間にケルベロモンは、口から火を放ち、次々と建物を燃やし尽くした。 「燃えろ、燃えろ、燃え尽きろぉ!」 「止めろ、止めてくれ!」 ケルベロモンが街を燃やし尽くす中、エリオは己の無力を痛感した。 「僕は、何も出来ない。無力なんだ…」 「そうだ、無力だぁ!」 「でも、でも、目の前の命を全てを救いたいんだぁ!」 叫ぶエリオの心には、不屈の炎が燃え盛っていた。それに呼応するかの様に、エリオのディースキャナが真紅の光を放った。 その瞬間、エリオの周りを灼熱の業火が包んだ。 「この…、ウオォ、あちぃ!」 ケルベロモンは攻撃しようとするが自らの身体が逆に焼けてしまった。エリオの目の前には赤き鎧、「火のスピリット」が現れ、エリオへと吸い込まれていった。そして、エリオは決意と共に叫ぶ! 「スピリットエボリューション」 刹那、エリオの身体は赤き炎に包まれ、その身に、古代十闘士『エンシェントグレイモン』の力を宿す、火の戦士が誕生する。 『アグニモン』 アグニモンは地面に降り立つとケルベロモンを指差し宣言した。 「お前は、僕に勝つことは出来ない」 「ふざけんなぁ!くらえ、ヘルファイアー!」 ケルベロモンはアグニモンに向けて、地獄の業火を放つがアグニモンは片手で受け止めると、 「こんな炎は炎とも呼ぶに値しない」 そう言って一瞬で消しとばした。 「くそぉ!ふざけんなぁ!」 ケルベロモンが勢いよく飛びかかって来たが、アグニモンは回し蹴りで遠くに蹴り飛ばした。 「こちらからいくぞ、サラマンライダァーキック!」 ケルベロモンが突っ込んだ壁に向けて、ダッシュ。すると、炎の龍となってケルベロモンを更に吹き飛ばした。 「このまま…、やられてたまるか」 「これで、終りだ!サラマンダァーブレェェイクゥ!」 アグニモンはそう言うと回転しながら炎のキックをケルベロモンへと叩き込んだ。 「グギャアァ!」 そう言い残し、ケルベロモンはデジコードへと姿を変えた。そして、そのデジコードにディースキャナをあて、元の姿に戻ったエリオは言葉を呟きながらスキャンした。 「汚れた悪の魂を、このデジヴァイスが浄化する!」 ケルベロモンの浄化を終え、ユーノの元に走ると、ユーノは案の定最後の二体と対峙していた。 「ユーノさん!」 「来るな!これで終わらせる。」 すると、その右手には獅子の形にエネルギーが集まっていた。 「師匠直伝、獣王拳!!」 「ギャアァァ!」 右手から放たれた獅子の形をしたオーラは、二体のクワガーモンをあっという間に消し去った。 「ユーノさん!」 「大丈夫、何ともないよ」 「ありがとうございます。おかげで街が助かりました。お詫びと言っては何ですがしばらく泊まりなさい」 「いいんですか?」 「えぇ、どうぞ。丁度あの娘も帰って来たみたいですし」 「あの娘?」 ユーノとエリオが首をかしげると辺りに声が響いた。 「お~い、インセキモンのおじいちゃ~ん、戻りましたぁ!」 長老の視線の先にはショートカットの似合う一人の女性がいた。ユーノはそれを見た瞬間、スッコケた。 「おぉ、無事に戻ったか、エイミィ!」 「え、エイミィ(さん)!」 次回 デジモン・ザ・リリカルS Fsideofspirit 第三話 「乙女旋風」 お楽しみに! 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/576.html
なのはとユーノの二人は管理局の近くにまで来ていた。 「ユーノ君ありがとう…。後一秒でも遅れてたら私…。」 「礼には及ばないよ…。とりあえずこれから無限書庫に行こう…。あそこなら そう簡単には見付からないと思うし…それに…あの悪魔将軍に関する事柄が 書かれた文献を探そうと思うんだ。ああ言う相手は力押しで勝てる程甘くは無い。 だから悪魔将軍が何者であるのか…何か弱点は無いのか調べる事が必要だと思う。」 「私も手伝うよ。」 管理局の内部も人っ子一人いない無人の状態になっており、エネルギーの供給も 完全にストップさせられていた。それ故にそれまでは自動ドアだった場所も 手動で開けなければならず、部屋から部屋の移動には苦労させられた。 なのははミッドチルダの中でも特に優秀な部類に入る戦闘魔導師だが、 元来運動オンチな方だった為に力仕事は不向きであるし、ユーノも学者タイプでそこまで 力のあるタイプじゃない。それだけにエネルギー供給が止まってロックされた 自動ドアを手動で開けるのは相当にキツイ物だった。 管理局の食料庫に残っていた食料を掻き集めた後、二人はようやく無限書庫へ到着した。 ありとあらゆる世界の書物が集まるこの無限書庫で悪魔将軍に関しての記述の書かれた文献を探す。 今二人に出来る事はこれしか無かった。ちなみに事前に食料庫から食料を掻き集めて来たのは それがかなりの長期戦になるかもしれないと考えた為である。 「とにかくこの中から悪魔将軍について記述された文献を探すんだ。 あれだけの力を持った者が今の今まで評判にならなかったはずが無い。 きっと何処かにあれについて記録された文献があるはずなんだ…。」 「うん。でも…ここには何度も来た事あったけど…本当に広いねここ…。」 無限書庫は無限と付くだけあって相当に広い。何しろ無限書庫で長い事働いているユーノさえ たまに遭難し掛ける程である。しかし、今はそんな遭難の事など恐れていられる様な状況では無かった。 とにかく無限書庫の中から悪魔将軍について記述された文献を探す。これしか無かった。 二人はそれぞれ二手に分かれて悪魔将軍について記述された文献の探索を開始した。 ユーノは無限書庫で長い事司書長を勤めるだけあって、超人的なスピードで 各書を把握していく。こういう状況ではユーノの独壇場だった。 なのはもユーノの様に素早く読んで行く事は出来ないが、それでも一冊一冊調べて行った。 しかしそれでもやはり広大な無限書庫の中から悪魔将軍について記述された文献だけを 探し出すと言うのは相当な労力が必要とされた。ユーノはその手の仕事に慣れているから 良いとしても…理数系は得意でも文系はそこまで得意でないなのはには相当な重労働だった。 もう目が痛くて痛くてたまらない…そして気が付くとなのははすやすや眠りに付いてしまっていた。 それから…無限書庫での探索が開始されてからもう数日が経過していた。 そんだけ時間が経てば誰だって腹が減るワケで、やはり食料を用意しておいて良かったと 言わんばかりになのはは缶詰を開けて食事中だった。 「はぁ…やっぱりこんな時でもお腹は空くものなんだね…おちおち食事をしてる場合じゃないのに…。」 なのはは自己矛盾を抱えながら食事をしていたのだが、そこでユーノからの思念通話が来ていた。 「なのは! 見付かった! 多分悪魔将軍について記述されてると思える文献を見付けた!」 「え!? 本当!? 直ぐ行く!」 なのはは缶詰を持ったままユーノのいる場所へ直行した。 「宇宙超人名鑑?」 ユーノに渡された余りにも胡散臭そうなタイトルの本になのはは呆れてしまいそうになったが、 ユーノは真剣だった事に気付き、すぐに自分も真面目な顔に戻った。 「これは超人と呼ばれる特殊な種族に関して記された本なんだ。ちなみにこの本は 何巻にも及ぶ物なんだけど…その中の悪魔超人編と書かれた物に悪魔将軍に関する記述があった。」 「ユーノ君、そもそも超人って何なの?」 「超人だよ。」 「ユーノ君…少し頭冷やそっか…なんて言ってる場合じゃないよね。」 真顔で答えになってるのか怪しい即答してくるユーノに対し、なのはは一瞬殺意が沸いたが、 とにかく今はそんな事をやっている状況では無いわけで、真面目にユーノの話を聞く事にした。 「この本における超人の定義とは人を遥かに凌駕した人型生命体全般を指しているらしい。 それに一口に超人と言っても色々なタイプがあって、外見上は人間となんら変わらない者も いれば、いわゆる獣人タイプの超人、無機物が人型を取った無機物型超人、etcetc… 本当にこんな生物が生物学上にあり得るのか疑問に思えてくるくらい不思議な連中なんだよ。」 「と…とりあえず変な人達って事は分かったよ…。で…悪魔超人って言うのは…?」 「この本によると悪魔超人は悪魔に魂を売った超人及び魔界出身の超人の事を指している。」 「悪魔で超人…って事は…やっぱり普通の悪魔を超えてたりするのかな?」 「そこまでは分からないけど…超人と付くくらいだからそうだろうね…。」 とりあえず超人に関する事柄はある程度理解した所で二人は本題へ入った。 「悪魔将軍。この宇宙超人名鑑悪魔超人編によると、魔界を統べる大魔王サタンが 物質世界…つまりこの世で活動する為に姿を変えた者で、かつ全悪魔超人を束ねる 存在でもあったらしい。また、別名【恐怖の将】とも呼ばれ、過去に様々な 次元世界を配下の悪魔超人達と共に荒らし回り、神話にも語られている世界もあると言うんだ。」 「そ…そんなに恐ろしい存在なの?」 「まがりなりにも魔界を支配しているんだしね…。それと、悪魔将軍は本来身体を持たず、 自分の配下となる超人と融合する事で自分の身体としていたらしい。」 「だからフェイトちゃんやはやてちゃん達が…将軍の新しい身体に…?」 「…。」 悪魔将軍に取り込まれてしまったフェイト達の事を思い出した途端に二人は 気まずくなり、黙り込んでしまった。それから10秒くらいの沈黙の後、 ユーノが恐る恐る口を開いた。 「なのは…絶望してしまうかもしれないけど…聞いてくれるかな?」 「何? ユーノ君…。」 「もし仮になのはと僕で悪魔将軍を倒す事が出来たとする…。 でも…将軍に取り込まれた人達が元に戻るかどうかはまだ保障が出来ないんだ。 いや…もしかしたら将軍に取り込まれてしまった時点でもう…。」 「!!」 なのはは真っ青になった。 「と…言う事は…ミッドチルダはゴーストタウンのまま…?」 もし本当にユーノの推測通り、悪魔将軍に取り込まれた者達がもう助からないと言うのなら… なのはとユーノの二人がミッドチルダに残された最後の男女と言う事になる。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/305.html
ユーノ×オーリスというよりは、ユーノ×レジアス+オーリスって感じだけど pA65icAi 「失礼します。頼まれていた資料をお持ちしました」 「ああスクライア司書長。申し訳ないな、忙しい所をわざわざ来てもらって」 「いえ、これも仕事ですから」 そう言ってユーノは微笑む。つられてレジアス中将の顔にも笑顔が浮かんだ。 ユーノの元にレジアスからの資料請求が来たのはつい数日前の事であった。 その際に、レジアスから話したいことがあるので資料を直接持ってきてはもらえないか、と頼まれたのだ。 高官に提出する資料は極秘扱いのものも多く、 直接の受け渡しを要請される事も多かったため、ユーノはそれを了承した。 そして資料が完成したのでやってきた、という訳なのである。 「それで中将、僕に話とは?」 そう問うユーノにレジアスは真剣な顔になって言った。 「それはもちろんこの間話した件だ。どうだろう、考えてみてくれたかね?」 「あの件、ですか……。」 そう言ってユーノは目を伏せた。暫く室内を静寂が支配したが、やがてユーノはゆっくりと口を開いた。 「……折角の申し出ですが、断らせて頂きます。中将には、本当に申し訳ないのですが……」 その答えを聞いたレジアスは、深い溜息をつくと、椅子に体を深く沈めさせた。 「そう、か。……まぁ君ならそう言うとは思っていたのだが、な。しかし、本当に残念だ」 レジアスがユーノに話した事。それは、地上本部の特別情報管制官への就任要請であった。 海に比べて人材も装備も劣る地上において、 レジアスはせめて、情報だけでも充実させておきたかったのである。 そして目をつけたのがユーノであった。彼は局員待遇の民間協力者であったが、 その功績は下手な将官クラスよりも大きい、とレジアスは考えていた。 そして、今の無限書庫に対する扱いも不当で低すぎる、と常々思っていたのである。 そのため、レジアスは直々に無限書庫に赴き、ユーノを説得したのである。 もちろん無限書庫司書長は続けてもらうが、その代わりに無限書庫への人員を大幅に増やすし、 司書達への待遇も向上させると。その熱意を受け、ユーノも考えてみる、とは言ったのであるが……。 「やっぱり僕は……立場的に気楽な、今の方が性に合っているようでして……」 そう言ってユーノは微笑む。だが、レジアスは苦笑しながら言った。 「何を言うか、私には分かっているぞ? 特別情報管制官になったら、大切な幼馴染達のフォローをしにくくなる……。 それが本音なのだろう? スクライア司書長。」 そう言われたユーノは思わず苦笑し頭を掻いた。 「参りましたね、やっぱり中将には敵いませんね。……確かにその通りです。 まぁ、今の六課では僕の力なんて必要無いかもしれませんけれど、 それでも、フォローしてあげたいんです」 はにかみながら言うユーノを見上げて、レジアスは苦笑した。 「全く君という男は……。不器用過ぎるな、相変わらず。もっと上手く立ち回れば良いだろうに。 君ならばそれくらい簡単に出来るだろう?」 「出来るか出来ないかではなく、そういう性分なんですよ。それに、それはお互い様でしょう、中将?」 そう言うユーノに、レジアスは思わず声を出して笑った。 「はっはっはっ! いや全くだな。私達は似た者同士なのかもしれないな。 まぁとりあえず、無限書庫への人員の増員と司書の待遇向上はやらせてもらうとしようか」 そのレジアスの言葉に、ユーノは驚いて言った。 「中将! 僕はさっきの申し出を断ったんですよ!?」 「それは関係ない。元々私がやりたかった事だ。 君が話を受けるにしろ受けないにしろ、これはやるつもりだったのだよ」 穏やかな笑みを浮かべてそう言うレジアスに、ユーノは深々と頭を下げた。 「ありがとうございます、中将。司書の皆も喜びますよ!」 それに笑みを浮かべながらうんうんと頷いていたレジアスであったが、顔を引き締めると言った。 「だがスクライア司書長、これだけは忘れないでいてくれ。 優れた能力を持つ者は、それを行使する責任を持つ。 そしてスクライア司書長、君は無限書庫司書長をやっているだけではその責任を果たしているとは言えない。 君はもっと、『上』に行くべき人間だ。民間協力者だろうが関係なく、な。 ……少なくとも私はそう思っている、という事を、な」 その言葉に、ユーノはゆっくりと頷いた。 「分かりました。貴方の期待に添えられるとは言えませんが、今のお言葉は忘れません。……絶対に」 そう言うユーノにレジアスは頷きを一つ返すと、破顔した。 「さて、固い話はここまでだ。スクライア司書長、昼食はまだかね? 良ければ一緒に……」 そう言いかけたレジアスの言葉を、落ち着いた女性の声が遮った。 「……申し訳ありませんが中将、この後も予定が入っております。昼食をとるのはもう少し先です」 事務的にそう告げたのは、レジアスの娘であり秘書でもある。オーリス・ゲイズであった。 娘のその物言いに、レジアスは苦笑しながら言った。 「おいオーリス、少しくらい良いだろう。お前だってスクライア司書長と昼食をとるのを……」 「お言葉ですが中将、中将の本日のスケジュールはつまっております。 スクライア司書長との昼食は、またの機会に」 オーリスの言葉に、レジアスは苦笑しる。そしてユーノに向き直ると言った。 「済まないなスクライア司書長。本当は君ともっと話をしたかったのだが……」 「いえ、お気になさらないで下さい。中将はご多忙の身ですからね。 貴方やオーリスさんと昼食をとれないのは残念ですけれど、またの機会に」 それでは、と言ってユーノはレジアスの部屋を後にした。 それから暫く経つと、オーリスが体を小刻みに震わせ始めた。 それをやれやれといった様子で見ながらレジアスは言った。 「……もう大丈夫だよ、オーリス。我慢する事はないよ」 それを聞いたオーリスの顔が、くしゃり、と歪んだ。 その目から大粒の涙が零れだし、彼女は大声で泣き喚きながらレジアスに縋り付いた。 「ふぇぇぇぇ───────んッッッ!! おどうざまぁ──────ッッッ!! わだし、またやっちゃいました──────ッッッ!!」 そう泣き叫ぶオーリスを抱きしめて頭をなでながらレジアスは言った。 「おお可愛いオーリス。大丈夫だよ、スクライア司書長はあんな事でお前を嫌いになったりしないよ」 「でもぉ、でもぉ……!!」 「大丈夫だよ、スクライア司書長だって言っていたじゃないか、 お前と私と昼食をとれないのは残念だって。またの機会にって。」 そう言ってやると、オーリスは鼻をずずっと啜り上げると眼鏡を外し、ハンカチで目元を拭き始めた。 その様子をレジアスは慈愛に満ちた表情で見つめていた。 オーリスは、基本的にはとても落ち着いていて仕事も出来る有能な女性なのだが、 好意を持った男性に厳しく接してしまうという癖を持っていた。 それは好意と羞恥心の裏返しなのだが、 それが相手に伝わる事などあるはずもなく、恋人が出来たことなどなかった。 そしてその反動で、幼児退行というか、子供っぽい部分が噴出してしまうのである。 レジアスは娘をとても愛しており、信頼もしていたが、唯一この部分のみが気がかりであった。 娘のこういう難しい性格を受け止めてくれる男性など、そうは多くは無いと思っていたからである。 だが、彼は見つけた。娘のそんな性格も、優しく包み込んでくれそうな人を。 一見頼り無さそうであるが、しかし彼ほど頼りになる男はそうはいない、そういう人物を。 無限書庫司書長、ユーノ・スクライア。 彼ならば文句はない。いやむしろ、彼が自分の息子になってくれたらこれ以上の喜びは無い。 オーリスも初めて出会ったときに一目惚れして以来彼にぞっこんであるし、こちら側には何の問題も無い。 今すぐ結婚してくれても良いくらいだと、レジアスはそう考えていた。 だが問題はユーノの方である。 彼自身もそういう恋愛関係には極めて疎そうであるのも問題だが、何より周りに居る女性たちが強力過ぎる。 レジアスも自分の娘の女性としての魅力は大いに認めている。 親の贔屓目もあるだろうが、 ああ見えて料理洗濯など家事全般をそつなくこなすし、何より尽くすタイプである。 だが、ライバル達も強力だ。 無限書庫には休みの度に、彼の幼馴染やら生徒やらがわらわらと押しかけているようである。 実はユーノを特別情報管制官にしようとした理由の一割くらいは 彼とオーリスの距離を縮めてやろうという親バカ……もとい親心であったのである。 だがそれも断られてしまった。かくなる上は……。 「……オーリス。スケジュールの確認をしたいのだが、いいかね?」 父のその言葉に、すぐに秘書としての顔に戻ったオーリスは答える。 「はい、何でしょう中将?」 「実は重大な話し合いをしなければならないのを思い出してな。 どこか、丸一日空けられる日はないか?」 「丸一日、ですか……。」 そう呟いて携帯端末を操作していたオーリスは、やがてレジアスに向き直った。 「大分先になりますが……何とかなりそうな日があります。それで中将、その話し合いとは?」 そう問うオーリスに、レジアスはいたずらっぽい顔をして言った。 「ふふ、その話し合いか。 そう、とても大事な話し合いだな、何といっても、お前とスクライア司書長のお見合いなのだから、な」 その言葉に、オーリスは目を大きく見開いた。そんな娘の様子を楽しげに眺めながらレジアスは言った。 「……不服かね? お前が乗り気じゃないのなら、やめておくが……」 そう言いかけたレジアスの言葉を、オーリスの言葉が遮る。 「……必ず空けます。空けてみせます。中将も余計な仕事はお入れにならないようお願いします……!」 力強い言葉に少し驚いたレジアスが見上げると、そこには凄まじく気合の入ったオーリスがいた。 目にはまるで超新星の如き力強い輝きが宿り、 携帯端末を持った手には、力を入れすぎで青筋が浮かんでいる。 その娘の様子を満足気に眺めると、レジアスは心の中で呟いた。 (さて、特別情報管制官の話は蹴られてしまったが、こちらはそうはいかんぞスクライア司書長。 ふふ、君の驚く顔が目に浮かぶようだよ……!) この後、ユーノとオーリスのお見合いが行なわれるのであるが、 それを野獣の如き第六感で察知した様々な人達がお見合い会場に乱入したため 会場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのであるが、それはまた別のお話。 32スレ SS オーリス オーリス・ゲイズ ユーノ・スクライア レジアス・ゲイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/21.html
181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 21 42 18 ID G3IVA0ek どうやら奴隷という言葉は色々と問題があるようなので言い方を変えてみましょう、執務官には申し訳ないけど。 奴隷→騎士、ご主人様→お姫様(王子様)と言い換えれば何ら問題はないでしょう。 そうすれば教導官は仕える主に恋する騎士、執務官は仕える主に忠義を尽くす騎士、捜査官は主にいたずらするのが大好きな騎士。 それにユーノ先生ならお姫様でも王子様でもどちらでもいけますし、騎士達もちゃんと愛でてくれるでしょう。 でもそうするとユーノ先生と対をなす王子様(お姫様)は……誰なんでしょう? 183 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 22 38 16 ID 4ygTk9uO 王子様なユーノもいいが、俺はやっぱり無限書庫で検索魔法を駆使してる、司書長をやってるユーノがいいなぁ。 184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 22 40 48 ID KHE2SWi5 この流れで何と無く思いついたネタ。 「ごめんなユーノ君。こんな夜分遅くに仕事させてしもうて」 「別に気にし無くても。明日からしばらく休暇だからね、今日中に仕上げたかったんだ」 「でもなぁ、いっつも無理を通してもろうとるし……せや、ユーノ君して欲しいことあらへん? なんでも、ちゅー訳にはいかへんけど、大概の事はやったるで」 「うーん……それじゃあ、伽を頼もうかな?」 (えーーーーーっ!!?!??!!!? 伽って、あの、その、やっぱり、夜伽の事なん!? こんなムードもへったくれもあらへん中でするんか!? というかここは司書長室やん、はっ、もしかしなくてもオフィスラブ? ユーノ君って初心そうに見えて、実はマニアックな趣味なん!!?) 「ん? どうしたのさ、はやて」 (心の準備がまだできてないし、そもそも仕事にかまけとったせいでそっち方面の知識全然あらへんし……ユーノ君が女の子やったら悦ばせる自信はあるんやけど………… いや、でも、しかし、これはもしかしなくてもチャンスなんちゃう? 今やったらユーノ君自信の意志で抱いて貰える訳で……みんなには悪いけど、ここは……) 「おーい、はーやーてー」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆーの君! その、わたし、初めてやから……///」 「なんでそんなに緊張してるかな? やっぱり、夜遅くに男と二人きりだから?」 「そりゃ緊張しないほうが……って、ユーノ君、伽ってどういう意味なん?」 「ああ、古い言葉みたいだからわからなかったのか。寝る前の話し相手になる、って意味だよ。お伽話も、元々は寝物語って意味だったみたいだし」 「あ、あははははは………そういうオチかい……まあ、それやったらお安いごようや」 「うん、ありがとう」 「じゃあ、どんな話がええ?」 「そうだね……」 ……… …… … おかしい、当初はあわてふためくなのはさんを妄想してたのに、何故か不憫長に……ちょっくら頭冷やされに逝ってきます。ノシ 60スレ はやて 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/294.html
風呂場に獣、動揺す(30スレ時) /9qgeTcB さて――。 ユーノ・スクライアは、シグナムに、言いたいことと、聞きたいことが山ほどあった。 例えば、リンディ・ハラオウンや、シャマルや、レティ・ロウランに、彼が蹂躙され―― という程ではないが、嫌というほど、弄ばれたのは間違いない。 その原因を作ったのは、無理矢理、ユーノを連れ込んだシグナムである。 確かに、嫌なものはイヤだ、と強く出れなかったユーノにも落ち度はあろうが、 そうは言っても、年端もいかぬ少年には、かの女性陣から逃げることなどできないだろう。 ――正直に言えば、良い思いもしてないわけではないし。 かといって、それでシグナムから、ユーノがあれやこれやと文句を言われるのは、変な話であろう。 と、ここまでがユーノがシグナムに言いたいことである。 そして、ユーノがシグナムに聞きたいことは、何故『ユノユノ』と呼んでくれなくなったか、である。 リンディとシャマルから解放してくれた時には、自分の事を『ユノユノ』と呼んでくれたが、 この風呂場において、それ一度きりだ。 何故だろうか。 シグナムが自分のことを『ユノユノ』と呼ぶのが、ユーノの中では当たり前になっていたから、 如何にも座りが悪い――だけであろうか。 とまれ、懊悩するより、行動に出たほうが良い。案ずるより産むが易し、だ。 ユーノはシグナムに話しかけようとして――彼女から話しかけられた。 「まぁ、なんだ」 「は?はい」 「……悪かったな」 「え、と……え?」 意外にも、ユーノが、今回のシグナムの一連の咎めるよりも先に、彼女から謝罪の言葉が出た。 「無理矢理連れ込んでおいて、散々な目に遭っていたというのに、お前を非難したり……本当にスマン」 ユーノは、何だか拍子ぬけして、同時に嬉しくて、言いたいことは、一つだけになった。 「その……良いですよ、謝ってくれれば。僕にだって責任はあるし」 言いたい事をいったユーノに、シグナムは憮然として表情で答える。 「……そんなことを言うな。子供らしくない言葉だ」 「コドモコドモってからかったのは貴方でしょ?」 苦笑いとともに、彼だけが彼女に言える言葉を続けた。――シグシグ、と。 それを聞いた彼女は――ごくごく自然に、微笑んだ。 「……確かにな」 「そうですよ、いやだなぁ、物忘れが酷い」 「まぁなぁ。大概長く生きていれば、自分に不都合なことも忘れるさ」 「……ほんの数分前でしょ」 「そうだったか?イカンな、物忘れが激しい」 そうして――二人の笑い声が、風呂場に響いた。 「ところで、聞きたいことがあるんですけど」 「なんだ、ユノユノ」 「それ、なんでリンディさん達の前では、僕のことユノユノって言わなかったんですか?」 ふむ、と腕を組んでシグナムは黙考し、むぅ、と呟いてから答えた。 「何故だろうな」 「僕が知るわけないでしょ」 「それはそうだがな。……何というかな」 シグナムは、片手で湯を掬いあげ、指先から零れ落ちるそれらを見つめて云った。 「嫌だったんだよ。私だけだろう、お前を『ユノユノ』と呼んでいるは」 「そうですね」 「お前を『ユノユノ』と呼んでいるのが……シャマルにでも解ったら、絶対言うぞ。 四六時中、ユノユノ、ユノユノと」 「ありそうですね」 二人とも、件の人物が、『ユノユノ』と言っているところを想像して、吹き出した。 「……そういうのが嫌なんだ。私だけだろう、お前を子供扱いしていいのは」 「でも、何時までも子供扱いされるのも、嫌ですよ」 だって――と、悪戯小僧の表情でユーノは続ける。 「またこうして無理矢理お風呂に連れ込まれそうだし」 聞いたシグナムは――それはそれは気まずそうに苦笑いをした。 「言うな」 「言いますよ。全くもう」 大げさにユーノが肩を竦めた。 「なぁ、ユノユノ」 「なんです、シグシグさん」 二人とも、実に自然体で受け答えをしていた。弛緩しきっているとも言える。 「さっきのシャマル達の話だがな」 「……どの辺りでしょう」 「お前と今後も風呂に入るという話だ」 「そ、それが何です」 続けられた言葉を喋るシグナムの表情には、からかいの類など、微塵も無かった。 「私は構わないぞ、お前がお前であるなら、な」 「ちょ、ちょっと!また変な」 ユーノの言葉は、シグナムの穏やかな口調に遮られた。 「人は変わる、物事は移りゆく。高町が言っていたな。……いつか、お前も『大人』になるだろう。 その時はもう、今のお前とは、まるで別人になっているかもしれない」 それでも――と、シグナムの口調は、弟の心配をする姉のようであり、子を信じる母のようであり――。 「お前はお前で居て欲しい。 主はやてを救ってくれた、掛替えのない輩の一人……我ら守護騎士が、不滅の友情を誓った一人なのだ。 だから、私がずっと、大切な存在と思える人間で居てほしい」 「シグナムさん……」 シグナムは、ばしゃり、とユーノに水をかけた。 「シグシグだろう」 ユーノは少しも怒りもせず、微笑んだ。 「はい。シグシグさん」 「お前が私の大切な存在で居てくれるなら――何時でも背中くらい流してやろう」 「……その時は」 「うん?」 「ちゃんと僕が変な目に遭わないようにしてくださいよ?」 ――こうして、また二人の笑い声が風呂場に響いた。 ※ 更衣室。 そこには、リンディ、シャマル、レティが、風呂場の二人を肴に談笑していた。 「上手く仲直りできるといいわね、あの二人」 と、リンディが微笑ましげに喋ると、レティが呆れた口調で返した。 「原因が言う言葉ではないわね」 「最大の加害者に言われたくないわよ」 リンディは苦笑いで答える。 「でも……これってもしかすると」 シャマルが顔は不安げ、口調は楽しげに話しかけた。 「なのはちゃんにライバル出現!ですねぇ~」 「そうねぇ、中々強力じゃないかしら?」 「太刀打ちできないかもしれないわね」 ケラケラ笑う三人に、問いかける者が居た。 「そんなに強いんですか?」 「そりゃーも……う……?」 問いかけたのは――話題の中心、高町なのは、その人だった。 「あ、リンディ母さん。もう上がられてしまったのですか?」 のみならず――フェイト・T・ハラオウン。 「おー、なんやシャマルとレティ提督も一緒やったんか。残念やなぁ、一緒に入りたかったのに」 さらに、八神はやて。 「ま、今度でいいんじゃねーの?シグナムも誘ってさ」 「そーそー、また入る約束した方が良いってもんさ」 そして、ヴィータとアルフが――。 ※ ――ユーノくん!シグナムぅ!! 突然のシャマルからの念話に、ユーノ、シグナム共に、物凄く驚いた。 ――な、なんだシャマル。驚くじゃないか。 ――そ、それどころじゃないの! ――あの、何でしょうか? そして、事情を告げられて、シグナムはサーッと血の気が引いて――。 ユーノはぞるり、と血の気が引いた。 ※ 次回で完結です。 中禅寺「この世には、良い事尽くめのショタなど無いのだよ――」 30スレ SS シグナム ユノシグ ユーノ×シグナム ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/181.html
バケツをひっくり返したような雨が降っている。技術がいくら進歩したところで、自 然の気まぐれはそうそう易くは汲みとれないということらしい。大外れの天気予報を思 い返し、ユーノ・スクライアはそう結論付けた。 クラナガン外れの公園の東屋に雨宿りをしたユーノは、ため息を一つつく。街に出ら れるだけの休みをとってみれば、急な雨とは運が悪い。まだ書庫で見つかっていない本 を古本屋で見つけ、喜び勇んで買ってみたのだが。 「……駄目か」 ぐしょぐしょに濡れたカバンの中からは、びっしょりと雨を染み込ませた本。インク の色が白い紙を汚し、もはや読めなくなったそれを見て、更にユーノはため息を一つ。 急速に沈んでいく自分の心を自覚して、今更の後悔がユーノの心をよぎった。皆の言 う事も最もだ。こんなことなら、妙に遠慮をせずに誰かオフの人を探して、誘う位はす べきだった。 なのはならば、元気に振舞ってこちらを気遣ってくれるだろう。フェイトは困った顔 でオロオロとするのだろうか。はやては姦しく、愚痴を言ってくるかもしれない。くす りと笑ったユーノは、ぶんぶんと頭を振って長い髪にまとわりついた水を払った。 誰かが傍に居てくれるだけで、こんなにも心が和む。独りは、寂しいのだ。どうにも 自分はその辺りの想像力が欠如しているらしい。詮無い想像を打ち消し、さてどうする かと今後を考え始めた現実的思考を、 「すいませーん!雨宿りご一緒……しても…」 雨音に阻まれることなく通った大きな声が中断させた。 「―――ユーノせんせー!」 「……スバルさん?」 SS スバル・ナカジマ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/282.html
遊乃堂奇譚三話? 急転直下風味 ntGnwZYQ ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』。 いつも静かな古書店も今夜は店じまいをしており、店の中はひっそりとしていた。 ユーノが住居にしている二階のダイニングでアリサとアインスがアルフの前で正座をさせられていた。 「だいたいあんた達、何考えているんだよ!」 正座させた二人の前に仁王立ちして怒鳴るアルフ。 「たぶん、アルフが考えているような事よ!」 淡いピンクのエプロンを着けたまま正座をしているアリサがアルフを挑戦的な目でにらみ返した。 「何、といわれましても……」 真っ白なエプロンをつけたアインスはアルフが何を怒っているのかわからず当惑した表情で俯いていた。 ――てことはあ~んなことやこ~んなことをユーノとやろうとしてたってこと?! 『あたしだってまだしたことないのにさ!』とアルフはなんとなく向かっ腹が立ってきた。 ――どうせ、そ~んなことするとか考えているんでしょうアルフは! アンタになんか負けないんだから! ――はたしてお二人はどんなことをお考えになっていらっしゃるのでしょうか? 理解不能です。 「でもね、アインスはあたしにつきあってくれただけよ! 彼女は関係ないわ!」 アリサが隣に正座させられているアインスをかばうような発言をする。 ――だってユーノが聞いてるのに誤解されたらかわいそうだものって……あれ? ――それじゃあたしが単なる悪者みたいにユーノに聞こえるじゃないのって、あれ? 「あのさアルフ、お説教もいいけどさ、その前に二人に着替えさせて欲しいんだけど」 彼女らのそんなことをしている同じ部屋に両方の鼻の穴にティッシュをつめているユーノがいた。 そして正座させられているアリサとアインスの二人はエプロン姿でそれ以外にはアリサは白いニーソックス、 アインスは黒いガーターとストッキングしか身につけてはいなかった。 可愛い悲鳴を上げて思わずユーノの視線を避けて丸くなるアリサ。 逆に可愛いおしりが彼に対して丸見えになる。 ――なんであそこで二人のエプロンがめくれるかなぁ。 ユーノは先ほど、“無限書庫"で無重力の中、天地逆で浮遊している状態で遭遇した彼女らの姿を思い出して、 また赤面した上に出血しそうになった。 ちなみに最初の鼻血はアリサの膝蹴りが顔面にクリーンヒットしたのが原因である。 一瞬目にした髪と同じ金色の薄い小さな草原のことは彼だけの秘密。 気付かれたら鼻血だけでは済まないだろうから。 「……まあ、そりゃそうだね。いつまでもその格好のままじゃユーノには目の毒だね」 「二人が着替えたら晩ご飯にしないか?」 「しゃーない。ユーノがいいならそれでいいよ。聞いたろ、二人とも早く着替えてきなよ」 着替えるために隣の部屋へと消えるアリサとアインス。 「ありがとう、アルフ」 感謝するユーノに苦笑しながらアルフは夕飯をテーブルへ並べるためにキッチンへと戻っていった。 ダイニングで夕食を始める4人。 いつもはこんなときよくしゃべるアリサも今はばつが悪いらしく、 ユーノをちら見ながらうつむき加減に黙々と食べる。 アリサの差し入れのロールキャベツも暖め直していつの間にかテーブルの上に乗っていたが。 「アルフ、そういえばさっき検索を手伝ってくれっていってた話だけど……」 「ああ、そうだった、晩ご飯の後にすぐにでも始めるかい?」 「いや、もう手伝わなくていいよ」 「なんだ、まさかフェイトのこと手伝わないつもり?」 「いや、もうほぼ調べ終わったから」 「へ?! なんだ、もうわかったのかい?」 「あそこの情報量はもしかしたら今は時空管理局にあるオリジナルの“無限書庫"に匹敵するかも知れないな」 「本当かい?」 『実のところ、どっちの書庫も全容はつかめてないんだけどさ』とユーノは笑った。 「とりあえず今晩まとめて有効な検索結果を書籍の形に圧縮するから、 明日にでもフェイトに届けてくれないかな」 「自分で届けたらどうだい? その方がフェイトもきっと喜ぶよ」 「まださすがにね、クロノ達の手前あまり本局の中をうろつきたくないのさ」 「そんなもんかね~」 やっぱユーノは朴念仁なんだね、とアルフはクスリと笑った。 「フェイト先輩、それなんですか? とってもうれしそうに見えますけど……プレゼントとか?」 その翌日、ティアナはフェイトがとてもうれしそうに見つめている茶色い革製の分厚い書物に気がついた。 「あ、うん、これ、とっても大切な物なんだ」 フェイトはそういって少し照れくさそうに、でもとてもうれしそうに笑った。 ――だってユーノから私への贈り物なんだから。すごくうれしいに決まっているよ。 26スレ SS アリサ・バニングス アルフ ティアナ・ランスター フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ユーノ・スクライア リインフォース・アインス
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1876.html
大食い地獄 なんでこんなことに――とユーノ・スクライアは絶望的な量のオムライスを見て思った。 皿は大皿料理のそれであり、どう見ても一人前の皿ではない。 その上にはこれでもか、トマトケチャップで真っ赤に染まったチキンライスが小山のように盛られ、黄色い卵の薄焼きがそれを覆い尽くしている。 真紅の血のようなケチャップがぶちゅう、という音ともにかけられていく。 ハート型。 なんのつもりだ。 ケチャップをかけた張本人――クロノ・ハラオウンがにやりと笑った。 「どうしたんだい、ユーノ。やはりフェレットで少食の君じゃあ荷が重い――」 だん、と机を叩いてクロノを睨みつける。誰がフェレットだ――。 「いや――食べられるね。そういう君こそ残すなよ」 「勿論だ、執務官をなめるな」 見ればクロノの前にも尋常ならざる量のオムライスがある。 男どもの見苦しい大食い勝負の、始まりであった。 『いただきます』 双方、スプーンを手に取る。 地獄開始。遠くでアホウ鳥が鳴いていた。 発端は、実にくだらないことであった。周りが奇特な女性ばかりで困り果てている野郎二人。友情が芽生えぬ筈が無い。 そういうわけで二人で雑談をしていたのであるが――ある一人の少女の話になったとたん空気ががらりと変わった。 少女の名は高町なのは。この野郎二人が――ユーノとクロノが絶賛片思い中な女の子である。 それまで和やかだった雑談が、剣呑な空気に変わる。 「――ほう。それじゃあ君は自分のほうが深い付き合いだっていうのかい」 クロノの顔がしめられた。 ユーノが何を当たり前のことを、という調子で言った。 「当然さ。僕がなのはに魔法を教えたわけだし――」 ふ、とクロノが笑った。 「僕はこの前一緒に珈琲を飲んだよ」 なに。 ピキリ、とユーノが固まった。 「それも30分ほどね。他愛の無い雑談だったけれど――」 指をきざったらしくクロノが3本立てた。 「30分だ。ユーノ――君の負けだ」 ぎり、と歯を鳴らしユーノが立ち上がった。 「いや……まだだ」 「何がだ――勝負は明らかじゃないか」 そのとき――高町なのは本人がサロンルームに入ってきた。 「あ、二人とも、なんの話しを――」 『なのはッ!!』 「うわ!ど、どうしたの?」 ユーノがこほん、と咳をして言った。 「いや――ちょっとクロノと勝負をしようと思ってね――。何で勝負するのがいいと思う?」 うーん、となのはが考え込む。 「お……」 『お?』 「大食いとか……」 ぱあん、と野郎二人の手が叩かれる。 『それだ!!』 異口同音に言った。案外仲が良いのかも、この二人、となのはは思った。 食堂に向かってクロノとユーノが駆けて行った。 食堂のおばちゃんも野郎二人の馬鹿さ加減に乗り気になり――冒頭に戻る。 そして――。 数十分後。そこには腹を押さえて倒れ臥したユーノとクロノの姿があった。 「う……」 「もう…食べられない……」 なのはが呆れた様子で言った。 「えーと、何がしたかったの……?二人とも」 な、なのは…そりゃないよ……と二人は心中で呟いた。 全ては、高町なのは撃墜の、数日前のことである。 穏やかな時間は――永久に失われようとしていた。 番外編完 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ