約 2,051,614 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5554.html
前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第三話 ルイズたちは昼食をとるため、再び食堂へとやってきた。 「いい? ちゃんと席に座らせてあげるし、料理を食べてもいい。だから、朝みたいなことはしないでよね! 絶対よ!」 「分かればいい」 浅倉は満足げに答える。 ルイズたちは席に着くと、さっそく料理を食べ始めた。 貴族を名乗るだけあって、皆上品な仕草で料理を口に運んでいく。 ……浅倉以外は。 「ちょっと! もう少しゆっくり食べなさいよ! 恥ずかしいでしょうが!!」 ルイズが小声で浅倉に話しかけるが、浅倉は意に介さない。 しばらくすると目の前に料理がなくなり、浅倉は近くにある料理を引き寄せようと、フォークを突き立てる。 が、右に刺そうとすれば左に、左に刺そうとすれば右に、といった具合に料理が動き、当たらない。 その料理を掴んでいる手を見て、浅倉は顔をあげた。 「あげない」 青い髪の少女、タバサがそこにいた。 浅倉は一瞬睨み付けたが、他の料理を探そうとすぐに視線を逸らす。 召喚された時、不意打ちをくらった相手だとはまだ気づいていない。 浅倉が次に食べる料理を選んでいる。 食堂に平手打ちの音が響き渡ったのは、まさにその時であった。 事の発端は、黒髪の給仕、シエスタが拾った香水であった。 香水を落とし主であるギーシュの元へ届けに行くと、なぜかその落とし主は自分の物ではないと言い張る。 お互いに意見が食い違う中、ある男子生徒が香水を見て叫んだ。 「これはモンモランシーの香水じゃないか!」 「ということは、ギーシュはモンモランシーと付き合っているのかい!?」 数人の男子生徒がギーシュに詰め寄る。 ギーシュがその場を収拾しようと躍起になっていた時、栗色の髪の、茶色いマントを着た少女がギーシュの元へ近づいてきた。 「ギーシュさん……本当ですか? 本当に裏切ったんですか?」 目から涙をボロボロとこぼしながら、少女は言った。 「だっ、違う! ケティ、これにはワケが……」 ギーシュが弁明しようとしたところで、ぱちんという平手打ちの音が食堂全体に響き渡る。 ケティと呼ばれた少女は、そのままどこかへ走り去ってしまった。 その場にいたほとんどの者は、唖然としてその光景を見ていた。 浅倉の麺料理をすする音だけが、あたりに響く。 しかし、悲劇はこれだけでは終わらない。 「ギーシュ! よりによって一年生に手を出すなんて!!」 縦ロールにした金色の髪を揺らしながら、モンモランシーがギーシュの前に躍り出た。 誰がみても分かるぐらい、その顔が怒りで満ちている。 「モ、モンモランシー! 聞いてくれ! 僕は……」 「うるさい! 私は今、無性に腹がたってるの!!」 そういうと、給仕の手から香水を強引に奪い取り、ギーシュにむけてぶちまけた。 冷ややかな目でギーシュを一瞥し、食堂を去っていく。 残されたギーシュは呆然としていたが、しばらくすると、その半泣きの表情を一変させ、怒りをあらわにしながら言った。 「君のせいだ! 君が気を効かせていれば、こんなことにならずに済んだんだぞ!」 ギーシュの怒鳴り声に、シエスタはひたすら頭を下げ、謝り続ける。 「そもそも君が……んげっ!」 突然、ギーシュの体が後ろに引っ張られた。 ギーシュの襟を何者かが掴んでいる。 「邪魔だ。どけ」 浅倉がギーシュの耳元でそう言うと、ギーシュの体をそのまま後ろに引き倒した。 ギーシュは思わず尻もちをつく。 浅倉は、いきなりの出来事に目を丸くしているシエスタの方を向き、言った。 「おい、スープはもうないのか?」 「え? あ、あります。すぐにお持ちを……」 「ちょっと待ちたまえ!」 ギーシュが話を遮る。浅倉が面倒くさそうに振り向いた。 「君は確か、あのルイズが喚んだ平民だったな! ゼロのルイズは使い魔の躾すら……って、話を聞きたまえ!!」 再びシエスタの方を向こうとした浅倉に、ギーシュは怒鳴った。 浅倉はギーシュを指差し、嘲笑うように答える。 「そこにいた、お前が悪い」 「貴様っ!! ……どうやら貴族を怒らせたらどんな目に遭うか、知りたいらしいな! よろしい、ならば決闘だっ!!」 ギーシュが浅倉に向けて、言い放った。 シエスタが顔を真っ青にして、心配そうに浅倉の顔を見たが、当の本人は笑っていた。 「ほう、やるのか? ……丁度いい。いくらかイライラしてきたところだ」 ヴェストリの広場で待っている。 そう言うと、ギーシュは足早に食堂を後にした。 その後、ルイズが入れ替わるようにして浅倉に近づいてきた。 見るからに慌てている。 「ち、ちょっと! なに勝手に取り決めてんのよ! いくらあんたが乱暴でも、メイジ相手じゃ……」 「役立たずは黙っていろ。それより、スープはまだか?」 呆然とやりとりを見ていたシエスタは、思わずびくりと飛び上がった。 「は、はい。いまお待ちします!」 そう言って、厨房の方へと入っていった。 その後ろ姿を見ていた浅倉が、思い出したようにルイズに言った。 「そうだ。なにか鏡を持ってないか?」 「え、鏡? 手鏡なら確か部屋に……」 「それでいい。持ってこい」 「なっ!? ご主人様に向かって命令なんて、何様……」 「それと、その広場とやらはどこだ?」 「少しは人の話を聞きなさいよ! 場所? 教えてあげないわよ。使い魔をむざむざやられにいかせるなんてできないわ!」 そう言われて、こいつはもう用なしと判断した浅倉は、他の生徒から聞き出そうと歩き出した。 ――いっそ、このままやられて死んじゃえばいいのに…… そんな邪な考えを、半分本気で考えるルイズであった。 昼の騒動からしばらくののち。 「ヴェストリの広場」と呼ばれる場所で、二人の男を囲むようにたくさんの人だかりができていた。 一人は名だたる名門貴族、一人はただの粗暴な平民。 そんな圧倒的な状況下で、観衆は勝負の行方よりも、平民がどのような負け様を披露するのかに興味を示していた。 観衆をかき分け、ルイズが浅倉に近づく。 「はい、これ。後でちゃんと返しなさいよ! 壊したらただじゃおかないんだから!!」 「いいだろう」 浅倉が手鏡を受け取る。 その様子を見て、ギーシュは言った。 「それが君の武器というわけかい? ずいぶんと舐められたものだね」 浅倉からの返事はない。 「……まあいい。それより、僕の二つ名は『青銅』。青銅の……」 「御託はいい。とっとと始めろ」 「くっ……」 自分勝手なやつだ。そう思いながら、薔薇の杖を振る。 杖から落ちた花びらが宙に舞うと、青銅でできた人形が現れた。 浅倉はそれを見て、不気味に微笑みながら呟く。 「ほう。なかなか面白いな」 そして、預かったばかりの手鏡を、軽く地面に放り投げた。 「あ、あんた! いきなりなんてことを……!」 ルイズの声に構わず、浅倉はポケットから紫色の箱を取り出した。 金色の、蛇のような紋章が中央に描かれている。 それを地面の手鏡に向かってかざすと、驚くべきことに機械でできた銀色のベルトのようなものがどこからか現れ、浅倉の腰に装着される。 観衆が驚きの声をあげた。 そんな周囲には目もくれず、浅倉は右手の甲を鏡に向け、左からゆっくりと、半弧を描くようにして胸の前あたりに持ってくる。 そして手のひらを返すと、勢いよく前後させ、叫んだ。 「変身!」 一連の動作が終わると、左手に持っていた紫の箱を、先ほど現れたベルトのようなものの真ん中にある、大きなくぼみに素早く差し込む。 すると、高い音が鳴り響き、ガラスの割れるような音とともに浅倉の姿が一瞬で変化した。 つり上がった線が数本描かれた仮面に、蛇の意匠が見られる紫色の装甲。 毒を連想させるその色は、装着者の危険な性格を表しているかのようだ。 浅倉――仮面ライダー王蛇――は、ため息とともに首を回し、手を払った。 「な、何なのよ、アレ……」 ルイズやギーシュも含め、まわりにいた人々は一体何が起こったのか分からず、唖然としていた。 王蛇は、蛇の頭がついた紫色の杖をどこからともなく取り出すと、その頭の一部分を縦にスライドさせる。 続けて、先ほどベルトに押し込んだ箱から一枚のカードを引き出すと、杖のスライドさせた部分に差し込み、元の位置に押し戻す。 すると、その杖から声が聞こえた。 『SWORD VENT』 直後、手鏡から金色の物体が飛び出し、王蛇の手に収まる。 まるで蛇の尾のような、螺旋状のラインが施された金色の刀身に、紫色の持ち手。 微妙に反れたその太い刃は、斬るよりも叩くといった使い方が適していそうだ。 ベノサーベルといわれるその剣を、王蛇は逆手に持ち、目の前に構える。 「どうした? やらないのか?」 その言葉に、混乱していたギーシュの意識が呼び戻される。 半ばけしかけられるようにして、突撃の指示を出した。 「い、行け! ワルキューレ!」 ワルキューレが駆け出すと同時に、王蛇も大きく手を広げ、地を蹴った。 惨劇が、幕を開けた。 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
https://w.atwiki.jp/c-atelier/pages/1301.html
登場 Recipe 109 続きが見たい物語2 備考 |] レシピNo.791 トランシーバ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄[属性:無]┏──────────┓ 《材料》∥ ∥ ・ 通信のクリスタル x 0.5∥ ∥ ・ (金属) x 1.0∥ ∥ ・ マイナスねじ x 2.0∥ ∥ ・∥ ! ∥ 《器具》∥ [ ] ∥ ・ 鍛冶道具∥ ∥ ・ 歯車印の機械工具箱┗──────────┛【効果】 遠方のトランシーバを持っている人物と通信可能【価値】 6000マニー─────────────────────────────────遺跡から出土された古代文明の通信機と思しき機械を模倣したもの。─────────────────────────────────『No.340 暴打フォン』等他の通信機器に比べて構造が簡単。─────────────────────────────────比較的安く手に入る。─────────────────────────────────しかし機能は通信のみ、聞き取りにくく、持ち運びがやや不便というデメリットも───────────────────────────────── → 使用参考書: 『世界の通信 旧機種カタログ』
https://w.atwiki.jp/mh3g_gunlance/pages/46.html
名称 攻撃力 砲撃 属性 斬れ味斬れ味+1 会心 スロット ロスカアヴァランシ 552 通常4 氷500 lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll -5% O-- 氷山を切り出したかのような、冷気を放つ銃槍。凍てつく穂先は触れた獲物を氷像と化す。 特徴 ボルボロス亜種素材から作られる氷属性ガンランス。 強化前のロスカトルメンタから矛先と盾に鋭い氷の棘が装着される。 作成時期の割には微妙な斬れ味ゲージだが、平均的な攻撃力と高めの属性値は悪くない。またスロットも1つ付いている。 一級品には一歩及ばないが、相手を選べば問題なく使える。ただ斬れ味レベル+1や心眼等でのカバーがほぼ必須である。 また今作の氷属性ガンランスはこれとウルクスラヴィーネしかないため必然的にこれ一択となる。 これで紫ゲージか長い白ゲージがあれば文句なしだったのだが…(今回氷ガンランスは不遇である) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/359.html
前ページ次ページゼロのミーディアム 曲がり角からの突然の怒声にびっくりし、尻餅をついてしまったメイド 「あいたたた…」 そう言いながら彼女はお尻をさすっている 「ふん…少々気が立ってて気づかなかったわ。悪かったわね…」 水銀燈はぶっきらぼうにメイドに言い放ちそっぽを向く 本当に反省してるのかと言いたくなる、限り無く不躾な謝罪の言葉と態度これでも彼女は己の非を認めているのだが… しかしメイドは「ひっ…」と怯えるような声を出し大慌てでその場に立ち上がり 「も、申し訳ありません!貴族の方の前でとんだお見苦しい失態を!」 と深々と頭を何度も下げながら謝罪し始めた 彼女は別段謝るようなことをしていないのにだ。むしろ被害者とさえ言える 「はぁ?貴族ぅ?何を言ってるのよ貴女?」 「え?だってそんなに綺麗なお召し物を… …そう言えば人にしては小さいような…」 恐る恐る頭を上げ水銀燈を見て言うメイド。日本人を思わせる黒髪をカチューシャでまとめたどこか素朴だが健気な感じするの少女だ 「悪かったわね…そりゃ小さいわよ。人形だもの…」 水銀燈は向き直り不機嫌に呟く 「人形…?あ、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になられたと噂の…」 「なんで知ってるのよ」 「いえ…先程お食事中だった貴族の方々のお話しが耳に入りまして…あの、本当にお人形さん…なんですか?」 物珍しそうに水銀燈を眺めながらメイドは言う 「何よぉ!そんなに動く人形が珍しいのかしらぁ!」 先程のイラつきがまだおさまっていないらしい。水銀燈は特に気に障る事でもないのに声を荒げる あと、貴女はとても珍しい人形ですと何度言えば… 「ご、ごめんなさい! …でも何故そんなにお怒りになられてるんですか?」 例え相手が失礼な態度をとろうとも不平も言わず身を案じる。この少女、メイドの鏡だ 「…貴女には関係無い」 またそっぽを向き遠くを見つめ水銀燈は言った (そうよ…こんな娘に構ってる暇は無いわ…早くなにか食べ物探さなきゃ) 全国の水銀党員を幻滅させそうな情けない思考。だか彼女を責めないでほしい。彼女だって生きるのに必死なのだ え、何?それがいいって? ともかく、このメイドに事情でも話せば助けてくれるかもしれない。だが薔薇乙女たる者、見ず知らずの少女に物乞いをする等というはしたない真似をする訳にもいかない ここでお腹の一つでも鳴れば空気を読んだメイドが食事でも手配してくれるのだろうが 人形たる彼女は様々な事情でお腹が鳴ることは決して無いのだ 「でも何かお困りのようですし…」 それでもメイドは食い下がる。この少女、困った人はほっとけないといった性分なのかもしれない だがそんな気遣いもイライラ頂点の水銀燈には逆効果だったらしい 「うるさいわねぇっ!こっちはお昼ご飯ぬかされてこの永遠の空きっ腹をどうやって満たそうかと必死なのよぉ! あんまり邪魔するとジャンクにするわよ!ジャンクにぃ!!」 あ、キレた。おまけに言ってることは最悪にカッコ悪い上に八つ当たり。この人形、乳酸菌足りてない だがメイドの方は特に気にすることもなく 「ああ、お腹がすいてるんですね。それではこちらへ…」 と言うと食堂裏のほうに歩き出した 少々癪だが後をついて行く水銀燈 「私、シエスタといいます」 「…水銀燈よぉ」 「変わったお名前ですね」 何か言いたげな水銀燈であったが、このメイド…シエスタが今の自分の助けになるであろう事を察し、黙ってついて行くことにした ここはトリステイン魔法学院の全ての「食」を生み出す食堂裏。つまりは厨房のことだ 水銀燈がシエスタに連れてこられた場所である シエスタは水銀燈を片隅に置かれた椅子に座らせ 「ちょっと待ってて下さいね」 と言うと小走りで厨房の奥に消えていった 少しばかり時間も経ち戻ってきたシエスタの手には温かいシチューの入ったお皿 「…何よこれ」 それが何かは水銀燈も気づいてるはずだが 「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューです」 「これを食べさせ…これを私に食べろと?」 これを食べさせてくれるの?と言いかけたのだがこの期に及んでまだ憎まれ口を叩く 人間に舐められる訳にはいかないとでも思ってるのだろうか? だがシエスタは尚も気にしていない 「ええ、よろしければ」 考えてみればシエスタは若くともこの学院でワガママな貴族達の世話をしているメイドだ。それらの傲慢な輩に比べれば水銀燈の憎まれ口など可愛い物なのだろう 何しろ貴族に口答えや無礼等を働けばお返しは口ではなく危険な魔法で返ってくることもありえるのだから 「…まあいいわぁ、いただいてあげる」 水銀燈は相も変わらず不機嫌を装う。内心は嬉しさでいっぱいの癖に… そしてスプーンでシチューを一口分すくって口に運ぶ 「(美味しい…)」 思わず顔をほころばせるがシエスタが見ているのに気づき慌てて顔を不機嫌に戻す。そしてもう一口 「本当にお人形さんでもお食事なさるんですね」 感心するように呟くシエスタだが一心不乱にシチューを口に運ぶ水銀燈の耳には聞こえていなかった。そしてその皿はあっと言う間に空っぽになった 「いかがでしたか?」 とのシエスタの問いに 「…悪くはなかったわね」 むすっとした顔で答えた水銀燈だが… 本当は十分に満足していた。思わず顔をほころばせた様やすぐに空になった皿がそれを物語っている それでも水銀燈はむっとした顔を崩さない。 だが…彼女は気づいていないがバレバレだった 何故なら彼女、不機嫌な顔をしながらもそのシンボルたる背の黒翼。それが「私、ご機嫌です!」と言わんばかりにパタパタしている ええ、それはもう大好きな飼い主に頭を撫でられ、嬉しがって振られる子犬の尻尾のようにパタパタと 不機嫌な表情とは裏腹に嬉しそうにパタパタしている翼の対比に思わずシエスタも笑みが漏れる 「よかった!お代わりもありますよ?」 「…あ、余ってるのなら貰ってあげてもよくてよ!」 この人形本当に素直でない 心の中では(やったわぁ!)と歓喜の叫びでも上げてることだろう そして二皿目も夢中になって食べ始める水銀燈を見てシエスタは 「(ああ…これって)」 「…今貴女、野生のカラスを手懐けるのってこんな感じなのかな?って思ったでしょ」 「(うっ!鋭い!)」 と、水銀燈に胸の内を看破され冷や汗をかいたりした 「ご馳走になったわね…」 「はい、お粗末様でした」 食事も終わり水銀燈も満足したようだ。頃合いを見計らってシエスタは水銀燈に聞いた 「ご飯いただけなかったんですか?」 「ちょっとゼロのルイズってからかったら、髪を真っ赤に染めんばかりに怒っちやったのよぉ。それで食事抜き」 「まあ!貴族にそんなこといったら大変ですわ!水銀燈さん!」 「本当にちょっとからかっただけよぉ。…まあ少しやりすぎた気もしないでもないけど… あと、水銀燈さんだなんてかしこまらなくてもいいわぁ。別に貴族じゃないんだし」 満腹になって少しはシエスタに気を許したらしい。彼女にしては珍しい譲歩だ 「でしたら銀さんとお呼びして…」 「なんですかぁ~?だからかしこまらなくてもいいっつってんだろうがコノヤロー。私に万屋でも開けってかぁ~?」 「はい?」 「…失言だったわ、忘れなさい… 後、私のことは呼び捨てで結構よぉ」 「でも…」 「つ、つべこべ言わないの!私がいいと言ってるのだから別に良いのよぉ!」 不機嫌そう…と言うより困ったような、少し照れた表情で水銀燈は言った 「はい、わかりましたわ。水銀燈」 シエスタも水銀燈が少しだけでも自分に感謝してくれていることを感じ、嬉しそうに頷いた 「さて…お腹も満たされたし食後に軽く運動がしたくなったわねぇ …貴女、何か私ができそうなことあるかしら?」 水銀燈はわざとらしく、言い訳がましく口を開いた 「はい?」 シエスタの方は意味が分からないように聞き返す 「つ、つまりよ…私が貴女の助けになってあげれるか、みたい、な…」 水銀燈の声はだんだん小さくなり口をもごもごさせる。顔は恥ずかしそうに俯かせながら 「えーと、つまりお手伝いをしてくれるってことでしょうか?」 「そ、そういうことよ!感謝なさい!私が人間の手伝いをするなんて…じゃなくて勘違いしないでよね!私はただ体を動かしたいだけで…」 パニックになってるのか水銀燈の言っていることはむちゃくちゃだった 素直に「昼食をご馳走してくれたお礼に何か手伝ってあげるわぁ」とでも言えばいい物を 目を回しながら必死に言い立てる水銀燈に微笑みながらシエスタは水銀燈にお手伝いをお願いした 「では、デザートを運ぶのを手伝ってもらえますか?」 「問題無いわぁ、このローゼンメイデンの第一ドール。水銀燈の力をもってすれば造作もないことよ」 よくわからないがすごい自信だ。ただデザートを配るだけなのに… ところ変わってトリステイン魔法学院内の図書館。ここはその中でも教師のみが閲覧を許された通称「フェニアのライブラリー」 薄暗いその一区画に灯る星の光のような小さな灯り、そしてそれを反射し恒星のごとく輝く灯り…否、それは人の頭だった この禿しい…間違えた、激しい光をU字ハゲに反射させ書を読みながらぶつぶつ言っている男性教師こそ 何を隠そう、先日のサモン・サーヴァントの担任教師にして『炎蛇』の二つ名をもつ火のメイジ。ミスタ・コルベールであった 彼はルイズの呼び出した使い魔の少女の事について昨夜からこの図書館にこもり調べ物をしていたのだ まずは人形やゴーレム、ガーゴイルに関する資料。無論、自動人形に関することを調べるためだ。しかし結果は得るものは何もなく どの書物も最後は「自動人形なんて無理無理、そんな訳だから諦めろ」と言う結論で終わってしまう 「(…だめだこりゃ)」 後ろ髪ひかれる思いで(ひかれるほどフサフサじゃないだろーが。なんて死んでも言えない)自動人形の調査は断念したが彼にはもう一つ気になることがあった それは彼女の「左手」に現れた不思議なルーン 珍しいルーンだった。彼は幾度かコントラクト・サーヴァントにも立ち会ったが奉職して二十年、あんなルーンは見たことが無い 最初は一般区画で調べていたもののそこではコルベールの求めた答えは見つからなかった 「フェニアのライブラリー」で浮遊魔法により最上段の本まで目を通し、 ひたすら目当てのルーンを探る。片手には彼女に現れたルーンのスケッチ。もう片方には次々と入れ替わる書物の数々 限り無く不毛な作業だが彼の努力は見事報われることとなった 今コルベールの手元にある本は始祖ブリミルの従者となりし使い魔達を記した物 その中の1ページを目にし思わずあっ!と声をだし驚き、魔法の集中を乱し床に落下しそうになるが慌てて立て直す そしてその書を抱えるとある場所にすっ飛んでいった コルベールの行き先はこの学院内で最も強大かつ博識であろう人物の居場所 学院最高権力者の部屋、すなわち学院長室であった 学院長室は本塔最上階にある。その部屋の中央、重厚なつくりのセコイアのテーブルと椅子に座っておられるお方こそ… 「わしがトリステイン魔法学院学院長オールド・オスマンである!!」 自己紹介ありがとうございます学院長 「どうかなさいましたか?オールド・オスマン」 そう言ったのは彼の秘書であるミス・ロングビル 「いや、特に意味は無いわい。少々退屈でのう…」 オスマン氏は椅子から立ち上がり理知的な凛々しい表情でロングビルに近づく 彼の顔に刻まれ皺は大樹の年輪のごとく彼の過ごしてきたであろう歴史を物語る 百歳、いや三百歳とすら言われるオスマン氏の年齢。それを知るのは彼のみ…いや本人すら知らないのかもしれない 「オールド・オスマン」 「なんじゃね?ミス…」 「暇だからと言って私のお尻を撫でるのはおやめ下さい」 人事のように羊皮紙に走るペンを眺めロングビルは言った オスマン氏は口を半開きにするとよちよち歩き始める 「わしの毎朝はケロッグコーンクリスピー。自転車通学がしたいんじゃが…」 「都合が悪くなるとボケたふりするのもやめてください」 そのようなやりとりをしているなかドアを蹴破らんと言わんばかりに勢いよく入室してくる人影 「オールド・オスマン!」 「なんじゃね?騒々しい」 荒い息をはきつつ飛び込んで来たのはコルベール。そのまま大慌てで報告を始める 「たたたた、大変です!」 「落ち着きたまえ、大変なことなどあるものか。全ては小事じゃよ」 「ここ、これをご覧ください!」 「んん?なんじゃ、『始祖ブリミルの使い魔達』?こんな古い文献なと漁りおって。ミスタ……えーと、ミスタ…ミスタ…なんだっけ?」 「コルベールですッ!お忘れですか!?」 「おお、悪いのう。そんな名前じゃったな。そう怒りなさんな、血圧あがるぞ?乳酸菌とっとるかのぅ?」 「ともかく!これを!」コルベールの渡したものは水銀燈に現れたルーンのスケッチと本のとあるページ それを見た瞬間オスマンの氏ののほほんとした表情は一変。キラリと目を光らせそれが細くなると、険しい色となる 「…ミス・ロングビル、席を外しなさい」 ミス・ロングビルは席を立ちドアの前まで行くと一礼した後部屋を退室する それを見届けたオスマン氏重々しく口を開いた 「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」 そのころ、そんな重々しい事態に学院長室がなっているとも知らず 水銀燈とシエスタはデザートのケーキを配っていた 水銀燈がはさみでケーキをつまみ一人ずつ配っていく様子を物珍しく見ている貴族達 「なんだか見せ物にされてるようで気に入らないわね…」 手伝いという立場上、小声で不平をつぶやく水銀燈 「みんな水銀燈に見とれているんですよ。ほら、まるでおかわいい人形さんみたいで…ってお人形でしたね」 「か、かわいいなんて言われても何もでないわよ!」 突っ込むのはそこですか 話ながらも作業は順調に進んだ しかしその時奥の一角から冷やかすような声が 「なあ、ギーシュ!お前、今誰と付き合っているんだよ!」 「誰が恋人なんだ?ギーシュ?」 ギーシュと呼ばれたメイジはすっと唇の前に指を立て 「付き合う?よしてくれ、僕にそのような特定の女性はいないのだよ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 と真顔でこっ恥ずかしいセリフを返す ナルシストにしてフェミニスト見てて不愉快になる典型だ。おまけに自分を薔薇に例える等… 文字通り薔薇乙女の名を冠する水銀燈には聞き捨てならぬことだが… (あんなのと関わり合いになるのも嫌ね…)と考えここは無視することにした その時ギーシュのポケットから何かが落ちる。ガラスでできた小瓶、中には紫色の液体が揺れている (関わり合いになりたくないって思った矢先に…まったく…) 誰も気づいた様子が無い。気にくわない人間だがそのまま知らんぷりするのも誇り高き薔薇乙女の名折れ。水銀燈は一つ大きなため息をついて言った 「貴方、ポケットから何か落ちたわよぉ」 しかしギーシュは振り向かない、天然か故意かはわかりかねる 水銀燈ははさみをシエスタに預け小瓶を拾いギーシュに差し出す 「落とし物だと言ってるのよキザ男」 ギーシュはけだるそうに水銀燈と小瓶を見ると少しだけ動揺した様子を見せたがすぐに立ち直り言った 「何を言っているのかわからないね?これは僕のじゃない」 だがギーシュの友人達はそれが何か知っていたらしい 「おおっ!この香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか!?」 「そうだ!その鮮やかな紫色はまさしくモンモランシーが自分のためだけに調合してる物! ってことはお前が付き合ってるのはモンモランシーか!」 「残念ながら違うね、彼女の名誉のために言っておこう…」 ギーシュが何か言いかける前に彼の前に茶色いマントの少女が歩いてきた 「ギーシュ様…やはりミス・モンモランシーと……」 そしてボロボロと鳴き始める 「待ちたまえケティ、彼らは誤解しているんだよ僕の心に居るのは…」 バチン!という乾いた音と共にギーシュの言葉は…ケティと呼ばれた少女の平手打ちで遮られた 「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証!さようなら!」 彼はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる だが、彼の不幸はこれでは終わらない 続いて歩いてきたのは巻き髪の見事な少女。なんとなく自分の姉妹の末っ子を思い出す水銀燈だが 彼女は…モンモランシーはあいにく雛苺ほど無邪気な性格では無かった モンモランシーはいかめしい顔つきでギーシュの前にやってきた 「モンモランシー!違う、彼女とはただ一緒にラ・ロシェールの森まで遠乗りしただけで…」 一見冷静な態度だが今度は動揺を隠しきれていない。冷や汗が一筋だが頬に垂れる 「やっぱりあの一年生に手をだしていたのね…」 「お、お願いだよ洪水…ゲフンゲフン!香水のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔をそのような憤怒の形相で変形させないでくれよ!僕まで悲しくなるじゃないか!」 ギーシュの動揺はさらに広がっているらしい。言っている事の一部が嫌に不自然だ だが当のモンモランシーはまったく聞く耳持たずといった感じでテーブルねワインのビンをつかみドボトボとギーシュの頭上から注ぐ そして 「嘘つき!」 と怒鳴って去っていった 沈黙が流れる中ギーシュはハンカチで顔を拭くと 「あのレディ達は薔薇の存在を理解していないようだ」 と呆れるような言った 水銀燈は(自業自得ね、一生やってなさい…)と心の中でつぶやき作業に戻ろとした矢先 「待ちたまえ」 と彼女の背にギーシュの声がかかる 「何かしらぁ?」 「君が軽率に香水の瓶なんか拾うから二人のレディの名誉に傷が付いた。どうしてくれるのかね?」 なんと言うキザ男…一言聞いただけで呆れてしまった…この男間違い無く水銀燈に責任転嫁するつもりだ 「自業自得と言う言葉をご存知かしらぁキザ男さん…いえ、フラレ虫さぁん?二股かけてる貴方が悪いのよ」 あまりにも正当な物言い、そしてフラレ虫という単語にギーシュの友人達もどっと笑う 「その通りだフラレ虫!お前が悪い!」 ギーシュの顔にさっと赤みがさす 「いいかい?メイド君…えーと君はメイドでいいのか?とにかく!僕は君に話しかけられた時知らないふりをした。話を合わせる機転ぐらいあってもよいだろう?」 「くっだらなぁい、例えこの場を凌げたとしても二股だなんてどうせすぐにばれちゃうことに気づかないなんて本当におめでたいわね あと貴方、胸に刺さってる薔薇がぜんっぜん似合って無いわよ」 これには周りの貴族も大笑い。ぽかんと口を開け唖然としているギーシュをよそに水銀燈は話を続ける 「それに貴方が薔薇ですって?とんだお笑いだわ!」 「な、なんだと!」 ふん…と鼻を鳴らし真面目な表情で語りだす水銀燈 「…覚えておきなさい。薔薇はその身に鋭い棘を持ち他の者を寄せ付けようとしない孤高の花よ それでも何故、人は薔薇に手を触れようとするのか?答は簡単。例え棘が刺さろうとも惹かれるほどの魅力が薔薇にはあるからよ」 「何が言いたい…!」 「本当に貴方が薔薇のような気高さを持つならば彼女達は貴方を離れたりはしない。彼女達は貴方の二股と言う名の棘に…愛想を尽かし去っていった。つまりは貴方の魅力は薔薇に遠く及ばないと言う事ね」 「!!」 ギーシュの胸にグサリと刺さる水銀燈の言葉 「…もっとも、それ以前に薔薇のごとき気高き者は二股だなんで最低な真似はしないでしょうけどねぇ?そんな棘持つこと事態が問題なのよ」 水銀燈は不適に笑みを浮かべ言い放つ 「メイド風情が…!平民風情がよくもそんな知った口を!」 ギーシュの怒りが頂点に達したようだ 「残念だけど私はメイドでも平民でもない」 「…黒いドレスに翼、人間より一回り小さい体…そうか、君がヴァリエールの呼び出した人形の使い魔だな…!」 「あら、ご存知だったのかしらぁ?光栄ねぇ!」 「こんな屈辱は初めてだよ…君は貴族に対する礼をしらないようだね…」 「お生憎様。少なくとも貴方みたいな貴族に対する礼は持ち合わせてないわねぇ」 「よかろう調度いい腹ごなしだ。君に礼儀を刻んでやろう、決闘だ!」 文字通り体に直接刻みつけるつもりなのだろう だが水銀燈は踵を返しオロオロしながらも事態を見守っていたシエスタの方へ歩いていく そして顔だけ向き直り言い捨てた 「結構よ。今言ってた事を聞いてなかったのかしらぁ。貴方に対する礼など持ち合わせてないし、持ち合わせる予定も無い」 「ふん、逃げるのか?」 「そんな安い挑発にのるのはお馬鹿さんだけよ お人形遊びがしたいなら自分で買って一人寂しくお部屋で遊ぶのね」 口での戦いは水銀燈が一枚上手のようだ ギーシュは後ろで色々とわめいているようだが 水銀燈は歯牙にもかけず背を向け遠ざかっていく だが… 「流石は出来損ないのゼロのルイズの使い魔だね!これだけ侮辱されて何も思わないとは!飼い主と同じの出来損ないだ!」 何気に言い放ったギーシュの一言 (出来損ないですって…!) これを聞き水銀燈はうつむいてギーシュの方に向き直ると冷めたような声で言った 「気が変わったわ…」 「…!」 突然の心変わりにギーシュも不自然に思う 「その決闘、受けて立つわよ」 「何…?」 水銀燈から発せられる重圧。そして… 「遊んであげると言ってるのよ」 水銀燈のうつむいた顔があげられた。その瞳に灯るは憎しみと言う名の光 表情にあらわれているのは彼女がこの地に降り立ち初めて見せる感情、すなわち…『怒り』である 次回、薔薇を名乗るドールとメイジの決戦…! 前ページ次ページゼロのミーディアム
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2692.html
前ページ次ページZERONATORオーガン 第三話「約束のオーガンランサー」 爆発騒ぎのせいで授業は中止となり、生徒たちとその使い魔たちは教室を出ていた。 オーガンが代わりの教卓を取りに行ったので、教室にはルイズとシュヴルーズの二人だけが残っていた。 壊れた教卓を屋外へ放り出した直後、ルイズはうなだれていた。 「どうして…、サモン・サーヴァントは一回で成功したのに…、爆発しなかったのに…、オーガンを召喚できたのに」 そんなルイズを、シュヴルーズは見守る事しか出来なかった。 そこへ、新しい教卓を抱えたオーガンが戻ってきた。 「教卓を持ってきました。……御主人様」 ルイズに声をかけようとしたオーガンは、途中でシュヴルーズに止められた。 「ミス・シュヴルーズ、何を!?」 「もう少しそっとしてあげなさいな」 二分ほどして、ルイズはオーガンたちのほうを向いた。 目の周りが少しはれていた。 「どうしてかな…、昨日は成功したのに…、今日もうまくいくと思ったのに…」 オーガンは、ルイズをそっと抱きしめた。 「オーガン!?」 「御主人様、こうすれば、泣いている顔を見られる心配はありません」 ルイズは抱きしめられた状態で泣いた。 シュヴルーズはその光景を見て、そっと教室を後にした。 ルイズが泣き止んだのは、それから数分後であった。 時間は過ぎて、お昼時。 オーガンは再び人間の姿に化け(オーガンは人間に化けないと飲み食いが出来ない)、厨房で昼食にありついていた。 (メイジが魔法を失敗するところは何度も見たが、主のように爆発が起きた事は無かった。こんな時、フレッシュ・オスマンがいてくれたら…) マルトー親方の料理に舌鼓を打ちつつも、悩むオーガンであった。 そんなオーガンの悩みをよそに、シエスタがオーガンに話しかけた。 「オーガンさん、お味はどうですか?」 「今朝同様とても美味しいよ。中でも「テンドン」は格別だ。親方さんの腕には感服するよ」 人間に化ける能力を習得してから、色々なものを食べてきたオーガンだったが、あいにく「天丼」にはお目にかかっていなかった。 「あらら…」 「まいったなぁ…」 オーガンの正直な感想に、シエスタとマルトー親方は困ったような笑顔を見せた。 「? シエスタに…、親方さん?」 「その、実はな、お前さんに出したメシの中で、テンドンだけは半分以上シエスタに手伝ってもらったんだ」 マルトー親方のその一言で、オーガンは見事に固まった。 「おーい、どうしたー!」 しかし、マルトー親方の必死の呼びかけですぐに正気に戻った。 「はっ!」 「おお、元に戻ったかぁ!」 「すまない、必要以上に驚いてしまった」 「まぁ、気にするな」 「それにしても、親方さんの腕でも難しいものなのか、テンドンは…」 「難しいどうこう以前だな。ダルフ村の名物料理の中でも、作り方が特殊なことで有名な「ドンブリモノ」の代表格でな、まだコツを掴みきれていないんだ。特に「ベイハン」と「コロモ」は未だに一人じゃろくなモノが作れねぇし。自信失くすぜ…」 普通に落ち込むマルトー親方に、オーガンもシエスタもどう声をかけていいのか分からなかった。 「えーっと、ごちそうさまでした。そうだ、親方さん、シエスタ、何か手伝う事は無いか?」 オーガンのその言葉が、場に流れる気まずい空気から退散するためのものだと瞬時に理解したシエスタは即答した。 「それでは、デザート運びを手伝ってください」 マルトー親方と他の面子を残し、オーガンとシエスタはデザート配りのためにアルヴィーズの食堂へと向かった(逃げたとも言う)。 その途中、シエスタは今朝から気になっていた事を口にした。 「オーガンさんって、ずいぶん変なジャケットを着ているんですね」 「変なジャケット? これが?」 自分が着ている「ボマージャケット」の襟を指差すオーガンに、シエスタはきっぱりと答えた。 「そうですよ」 「どこが?」 「ポケットがいっぱい付いているところが、です」 ちなみに、(人間に化けている)オーガンの服装は執事服にボマージャケットという、まさかの組み合わせである。 そんな会話を終わらせ、二人は食堂の中に入り、デザートを配り始めた。 地味にテキパキと配っているシエスタとは対照的に、踊るように軽やかなステップで手早く配るオーガンの姿は、生徒たちの視線を釘付けにした。 その光景を、ルイズとキュルケは呆然と見ていた。 そんな光景を他所に、デザートを食べ終えたギーシュ・ド・グラモンは友人たちと談笑していた。 「ギーシュ、いったい誰と付き合っているんだ?」 「そうだそうだ、教えろよ」 「おいおい、そんなことできるわけ無いだろ。第一、僕は大勢の女性を楽しませる薔薇だ。故に、特定する事は出来ないなぁ」 友人たちの質問をのらりくらりとかわすギーシュ。 そんな彼のポケットから紫色の液体が入った小瓶が落ちたが、当のギーシュ本人はそのことに気付いているのに、気付いていないフリをした。 さらに、その一部始終を見てしまったシエスタは小瓶を拾ってギーシュに声をかけた。 「あの、落としましたよ」 聞こえないフリをするギーシュだったが、友人たちの言葉であっさり無駄なあがきに終わった。 「その紫色の液体、モンモランシーの特製香水じゃないか」 「本当だ。ということは、ギーシュ、お前モンモランシーと…」 はやし立てる友人たち、あせるギーシュ。 そして一人の少女が近づいてきた。 どこで調達したのか、堅そうな棒切れを手に持っていた。 「やぁ……ケティ…」 ギーシュの呼びかけにも答えず、ケティ・ド・ロッタは棒切れをギーシュ目掛けて振り下ろした。 「さよなら」 ケティがそういって去った頃には、ギーシュは顔面をアザだらけにして倒れていた。 何とか立ち上がった直後、今度はモンモランシーがギーシュに近づいた。 何故か両手にメリケンサックを装着して。 「や、やぁ、麗しのモンモランシー…」 「ギーシュ、今の子はだぁれ?」 そう言い終った直後には、ギーシュの鳩尾に鉄拳を叩き込み始めたモンモランシーであった。 数十発の鉄拳を叩き込まれたギーシュは、再び倒れた。 「この……浮気者ォッ!!」 そう叫んだ直後に、倒れているギーシュの顔面を蹴ったモンモランシーはそのまま食堂を後にした。 数分後、気合で起き上がったギーシュは、自分を心配そうに見るシエスタに食って掛かった。 「き、君は…ゴホッ、自分が何をしたのか分かっているのかい!? 君のせいで二人のレディの名誉が傷ついたじゃないか! ……ゴホゴホッ!」 どう見ても八つ当たりである。 シエスタの方は思わず涙目になっている。 「も、申し訳ありません!」 「謝ったぐらいで……、な!?」 シエスタを庇うように、オーガンは彼女とギーシュの間に割って入った。 「やめたまえ。君のしていることは完全な八つ当たりだ」 「何だと!」 「事実を言ったまでだ。見っとも無い真似をする暇があるなら、さっきの二人に謝るべきだ」 「君は貴族への礼儀がなっていない様だな…」 「礼儀どうこうは関係ないだろう」 「うるさい! 決闘だ! 決闘を申し込む!」 もはや半狂乱状態のギーシュの絶叫にオーガンは即答した。 「いいだろう」 「では場所を変えよう。ついてきたまえ!」 トリステイン魔法学院、学院長、オールド・オスマンはボーっとしていた。 秘書のミス・ロングビルは公用で外出中である。 「暇じゃのう…。あいつらが生きておった頃は毎日が騒がしくてよかったがのう…。オーガンを向こう側に戻してから散り散りになって、一人ずつあの世に逝ってしもうて…。いまや『バンビーナ団』で生きておるのはわし一人。ハァ…」 昔を懐かしむオスマンだったが、急に学院長室のドアが開けられたことで現実に引き戻された。 「失礼します、オールド・オスマン!」 「コルベールか、ノックしてから入らんかい。まったく、人が昔を思い出している時に…」 「昔を懐かしんでいる場合ではありません。これを見てください!」 そういってコルベールが出した、二冊の本に目を通したオスマンは即座にこういった。 「何じゃ、『バンビーナ団戦記』と『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。これがどうかしたのか?」 このページを見てください。 そういってコルベールは二冊の本をめくり、あるページを見せた。 それは、それぞれ「ショコルナの使い魔」と「始祖の使い魔のルーン」のページであった。 「昨日ミス・ヴァリエールが召喚したゴーレムのような生物と、彼のルーンの事が気になったので調べてみたのです。まずはバンビーナ団戦記のこの記述を見てください」 それには、ショコルナの使い魔の特徴が記されていた。 ゴーレムのような外観と体躯、内部に蠢く肉の塊、そして「オーガン」という名前。 「この本の表紙や押絵のそれとはかなり姿が違いましたが、それ以外は殆どこの本の書かれている特徴と一致し、名前まで同じです。この事を踏まえると、ミス・ヴァリエールの使い魔は「デトネイター・オーガン」としか考えられません」 コルベールの説明を聞くうちに、オスマンの表情は見る間に変わっていった。 「それと、始祖ブリミルの使い魔たちのこの記述も見てください」 そういって、コルベールはあるルーンの模様を指さした。 「これは、ガンダールヴのルーンではないか」 「そうです。彼のルーンの模様は、ガンダールヴのそれと見事に一致していました」 「何と…」 そんなやり取りの途中で、激しくドアがノックされた。 「入れ」 「失礼します!」 オスマンがそう言った直後、年配の教師が慌てて入ってきた。 「何じゃ、騒々しい」 「実は…」 年配の教師は、食堂で起きた騒動と、これから起きる決闘のことをオスマンに説明し、「眠りの鐘」の使用許可を求めた。 「バカバカしい、ほっとけ」 その一言で一蹴し、オスマンは鏡に向かって杖をふった。 それと同時に、鏡にヴェストリア広場の様子が映し出された。 「見物といくかの」 一方、ヴェストリア広場。 「諸君、決闘だ!」 ギーシュの声に、周囲が歓声を上げる。 当のギーシュの眼前には、他の生徒に両脇をガッチリと固められたオーガンがいた。 そして、両脇を固めた生徒が手を離し、後退すると同時に決闘が始まった。 「僕の二つ名は「青銅」だ。それ故、僕はこれで戦わせてもらう」 そう言いながら、ギーシュは薔薇の花を模した杖から花びらを一枚とって、錬成魔法をかけて青銅のゴーレムに変貌させた。 「行け、ワルキューレ!」 オーガンは、ワルキューレの攻撃をのらりくらりとかわしながらギーシュを直接攻撃するチャンスを窺っていた。 しかし、ギーシュはそれに気付いたようだ。 「隙を見て僕自身を攻撃するつもりか。させるか!」 その言葉と同時に、ギーシュは六枚の花びらをとって、全てワルキューレに変貌させた。 一気に激しくなった攻撃を避けるのが精一杯で、オーガンは攻勢に出れなくなった。 そんな光景を見ていたルイズは思わず怒鳴った。 「何やってんの! 元の姿に戻ればすぐにカタがつくでしょ!!」 その指摘を受けたオーガンは、すぐに元の姿に戻る事にした。 薄い影がオーガンの周りに集まって重なり、消えるのと同時にオーガンは元の―ゴーレムの如き―姿に戻った。 「なっ、何だとおぉぉっ!?」 ギーシュの絶叫に続いて、周囲の生徒たちも叫んだ。 『ゼロのルイズの使い魔だったのぉっ!?』 そんな周囲の状況などどこ吹く風らしく、オーガンは気にせずにオーガンランサーを取り出した。 ワルキューレの内の一体を切り刻むオーガンの姿を見たギーシュは、恐れおののくのと同時にあることを思い出した。 「ゴーレムの如き姿、オーガンという名前、そして…剣のような双頭槍……。まさか、『バンビーナ団』のデトネイター・オーガン!??」 ギーシュの言葉を聞いた周囲は更に騒然となる。 そしてオーガンはギーシュの疑問に答えた。 「君の言うとおり、私はかつて『バンビーナ団』のデトネイター・オーガンだった」 「だった? どういう意味だ?」 「既に私はデトネイター・オーガンにしてデトネイター・オーガンにあらず。君や他の生徒たちが「ゼロのルイズ」と呼ぶ少女の使い魔。故に、わが主に付けられたあだ名への怒りからこう名乗らせてもらう」 オーガンはランサーを前に突き出し、叫んだ。 「私はゼロネイター・・・、ゼロネイター・オーガン!!」 その直後、残りのワルキューレたちも瞬く間に切り刻まれた。 「ひいいぃぃっ!!!」 オーガンのあまりの強さに恐怖したギーシュは、「参った」と言おうとしたが、言う前に杖を取り上げられてしまった。 「負けた…」 あまりの早業ぶりに、ギーシュはそう言うしかなかった。 「当たり前じゃ、おぬし如きがかなう相手ではないワイ」 「オ、オールド・オスマン!」 いつの間にかオスマンがそこにいたので、周りのどよめきが激しくなった。 「ホッホッホ、まさか、また会えるとは思わなかったぞい」 オーガンを見ながら、オスマンは言葉を続けた。 「コルベールの言ったとおりじゃの。ショコルナと死に別れ、おぬしを元いた世界に返してからニ百と数十年。本当にお互い変わり果ててしまったモンじゃ」 目の前にいるオスマンが何者かである事をオーガンはすぐに気付いた。 その声、その眼の色、あの時と変わらない声を聞き、その瞳を見たから。 「オスマン……、フレッシュ・オスマン!!」 「ホッホッホッホ。ブリミルに感謝すべきか」 オスマンはそう言いながら、嬉し泣きしていた。 前ページ次ページZERONATORオーガン
https://w.atwiki.jp/getsukoo/pages/28.html
白金によって創造された自動人形。フランシーヌの髪の毛を持ち、唯一生命の水を体液としている。そのため、もっとも高貴な人形と見なされているが感情を持たず、絶望した白金に首を絞められて捨てられる。その後は造物主たる金を探すべく最古の四人を率いて真夜中のサーカスを結成。世界中を回りゾナハ病を散布するがそれでも笑うことは出来なかった。 疲れ果てたフランシーヌ人形は偽フランシーヌ人形を作り、自身は真夜中のサーカスから才賀正二の元へ旅立つ。黒賀村にて才賀アンジェリーナのエレオノール出産に立ち会う中で人間的感情を抱くようになり、ディーン・メーストルの策略によって放たれた自動人形の軍勢からエレオノールを守り、井戸に転落する。エレオノールの体内にあった柔らかい石によって井戸水が生命の水へと変化、身体を溶かしていく中、必死にエレオノールをあやし、最後に微笑んで生命の水に溶けていった。 黒賀村を襲った自動人形がフランシーヌ人形への忠誠を示さないのはディーンによって創造されたからである。 フランシーヌ人形は正二によって運動機能を人間以下にしてもらったが、それでも自動人形の群れからは逃げ通すことが出来た。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/126879.html
フランシス(7) 連合王国貴族のロッテスリーの準男爵の系譜に登場する人物。 関連: サージョンロッテスリー (サー・ジョン・ロッテスリー、父) フランシスグレイ (フランシス・グレイ、母) ハイアムベンディッシュ (ハイアム・ベンディッシュ、夫)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2138.html
サイトはうめき声を上げながら起き上がると、今いるのが病室であることを確認した。 目をこすると段々意識がはっきりしてきた。 ここまで運んでくれたのは誰だろう。 「よう、目が覚めたみてえだな」 「え、ヘイズ?」 予想外の声に驚く。 自分を看病してくれたのはヘイズだろうか。ならお礼を言わねば。 「ありがとう、ヘイズ。ヘイズなんだろ? 俺を看病してくれたの」 それにヘイズは苦虫を潰したような顔になって、 「いや、看病したのはシエスタとルイズだ。感謝しとけよ。お前の高い薬代は全部ルイズのポケットマネーなんだからな。オレはお前の容態が落ち着いてからこってり絞られる役だったよ」 「それはそれはひどい有様でしたよ。私はヘイズがあれ以上の悲鳴をあげるところを聞いたことがありません」 ハリーが混ぜっ返した。 こんなに強そうなヘイズに、そこまでの悲鳴を上げさせるとは一体…… そういえば、そのルイズはどこだろう。サイトが辺りをぐるりと見回すが、病室にはサイトとヘイズしかいない。 「話したいことがあって、あいつらには席を外してもらった。単刀直入に言う。お前もこの世界の住人じゃねえな?」 「も? ……ってことはヘイズもなのか?」 「そうだ。オレはアメリカ大陸でちょいと調査中に、事故で鏡みたいなものに吸い込まれた」 「嘘はいけませんよヘイズ。あれは誰が見ても自分から入ったのが正しいかと。ところでサイト様はどのようにして?」 俺、この世界で様付けで呼ばれたのって始めてかも、と感動に打ち震えながらサイトは答えた。 「俺の場合は、東京の秋葉原を歩いてたら、鏡みたいなのがあって、それに入って気づいたらこの世界だった」 「なるほど……鏡がキーだったようだな。……ところで、秋葉原って言ったな。それってシティ・東京跡地近辺のプラントの名前か?」 「東京跡地!? 何言ってるんだよ! 東京は潰れてなんかいねえぞ! そりゃ東京大空襲で焼かれたけど、ちゃんと今では大都会が築かれてる!」 「随分古い出来事が出てきたな。何世紀前の話だよ」 「何世紀って……まだ百年も経ってないじゃないか」 そこまで言って、二人ははたと気づく。 「「違う時代から来てる?」」 異口同音に言って、顔を見合わせる。 それから二人は情報を交換し合った。 ヘイズの世界はサイトのいた世界にはないはずの、遮光性の雲で覆われ、極寒のせかいになっていること。 サイトの世界にシティだのプラントだのは存在していない。そしてヘイズの世界には六つのシティが存在している。 ヘイズの世界には情報制御技術という学問があり、ヘイズはその力を行使する魔法士という存在であること。 それほど差異があるのに、二人の世界のおおまかな地名や歴史は同じ。 つまりそれは二人が同じ世界の、異なる時代から来ていることを如実に示していた。 決闘に勝ってからというもの、微妙に周囲のサイトを見る目が変化した。 相変わらずルイズはげしげし蹴ってくるものの、以前と比べて怒声に違う感情が混じっているような…… そして一番変わったものといえば、 「きたな『我らの銃』!」 そう呼んで歓迎するのは、コック長のマルトー親父。 彼は魔法学院のコック長の癖に、貴族もメイジも毛嫌いしている。 そんな彼は、シエスタを助ける為に成り行き上とはいえ貴族と決闘をし、そしてまさに満身創痍になってまで倒したサイトを『我らの銃』などと呼び、ほとんど王様みたいな待遇で接してくれるのだった。 「お、もう怪我の具合もよくなったみてえだな」 一足先に席に着いているヘイズはもうすっかり、厨房の仕込み手伝いが板についているらしい。 決闘騒ぎで銃を貸してもらったこともあり、すっかりヘイズとは打ち解けている。 同じかまで飯を食った仲、というわけでもないがすでに一種の連帯感が生まれていた。 そんなこんなで厨房はサイトのオアシス的存在なのだった。 もはやサイト専用席と化した席――ちなみに隣はヘイズ専用席――に腰掛けると、シエスタが即座にパンとシチューを持ってきてくれる。 「うまい! いつも食ってる汁だけスープとは比べ物にならない」 「そりゃそうだ、そいつは普段貴族に食わせてるシチューだからな」 「「マジか! あいつらこんな美味いもの毎日食ってやがるのか!」」 サイトとヘイズの声がハモった。 二人の言葉に、マルトー親父は得意げに胸を張る。 「おおよ! それなのに、あいつらときたら、なに、確かに魔法はできるだろう。土から鍋を作れる。炎の弾は出せる。 しまいにはドラゴンにだって乗る。だが、こうやって、絶妙な味の料理をこさえるのも立派な魔法だろうが!」 サイトとヘイズは同時に頷く。 「「確かにそのとおりだ」」 「いい奴だな! お前ら本当にいい奴だ!」 ヘイズも立場上はメイジなのだが、平民な上に厨房の者にはすでに魔法がろくに使えないことがばれているため、マルトー親父に嫌われていない。 鍋を新調したいんだ、と言えば、「買いに行くから、金を渡してくれ」とのたまう。 一気に皮むきをしてくれと言えば、「よっしゃ任せろ」と本当に凄い勢いで皮を包丁で剥いた。 火力が欲しいんだと言えば、「薪を取ってくる」と言い残して薪を取りに行く。 極めつけに、お前さんメイジじゃないのかと言うと、「俺は普通の魔法が使えねえんだよ」と来た。 そんなやりとりがあって、魔法が使えないメイジなのに、それを気にした風もなく気さくでよく手伝ってくれるいい人、という認識が厨房内で出来上がっていた。 その後、マルトーが二人に抱きつこうとして、コックやメイドに止められたり、 ほぼ同時にシチューを食べつくした二人が、同時におかわりを言ってシエスタを苦笑させたりしたのは、また別の話。 タバサはその日、量の自室にこもって、朝からずっと書物に向かっていた。 うるさい騒動もなく――というかサイレントをかけているのだが――、面倒な仕事もない。 虚無の曜日ということで、自分の世界に好きなだけ浸れるこのひとときを、タバサは確かに満喫していた。 読んでいるのは、ヘイズの船にあった伝説集。 子供の頃はイーヴァルディの勇者の本を読んでいたタバサにとって、ヘイズの世界の物語というものには少し興味があった。 しかし肝心の文字が読めない。どうすればいい? とヘイズに訊ねると、数日のうちにトリステイン語・英語の翻訳機能を持った眼鏡を作ってくれた。 「自分もこの世界の文字が読めないのは不便だしな」、と言っていたけれど、 後からハリーに「徹夜をしてまでタバサ様のためにつくったのですよ。手伝いに重労働をさせられた私はいい迷惑です」と言っていた。 始めて見るハリーの姿にどきりとしたけれど、「そう」とだけ呟いた。 ヘイズは使い魔だから、ハリーに聞かなくても何をしているか見えるから知っていたのだけれど、それは秘密にしておいた。 なんとなく嬉しかった。 心の中の雪風をほんの少しかき消してくれた気がして、それを言ってしまうとこのうれしさも消えてしまう気がしたから。 ヘイズには小さな声で「ありがとう」とだけ言った。 タバサはなぜか自分の意思とは関係なく、すぐに駆け出してしまったので、返事はまだ聞いていない。 タバサにとって他人とは彼女の世界への無粋な闖入者であり、それは数少ない例外であってもよほどのことがない限り、うっとうしいものだった。 とはいえいつまでもそれが続くとは限らないのが現実である。 急に扉が開いたかと思うと、どたどたと――聞こえないが――侵入者がやってきた。 そしてタバサから本を取り上げると、肩をつかんでがっくんがっくん、と揺らす。 誰かと思い顔を上げると、友人のキュルケだった。 なにやら凄い勢いでしゃべっているのを見て取り、しかたなくサイレントを解除。 解除したと同時に、堰を切ったように、大声が室内に響き渡る。 「タバサ! あなたの使い魔、たしか船持ってたでしょ! あれを貸して欲しいの!」 「虚無の曜日」 それだけ言って、キュルケから本を取り返そうとするが、 「あのルイズがダーリンといっしょに買い物に行ったのよ! きっと何かプレゼントをして気を引こうっていう魂胆よ。 ツェルプストーの女として、あのヴァリエールの女には負けてられない! ね? だから船を貸して」 と懇願するものだから、タバサはふうとため息一つ。 他ならぬ友人の頼みだ。数少ない例外の一人を無下にするつもりはない。 タバサはゆっくりと立ち上がり、もうひとりの例外の元へ向かった。 Hunter Pigeonの操縦室は今や一種のたまり場となっていた。 キュルケとタバサが来ると、なぜかギーシュとモンモランシーがいて、ヘイズのとなりには三本線で描かれた顔が浮いている。 いろいろな有象無象を無視して、キュルケが用件を伝えると、 「そりゃ、無理だ」 とりつくしまもなく、一言でばっさりと切り捨てるヘイズ。 「な、なんで? こんなに立派な船なのにどうして飛ばないの? まさか風石が切れてるからとか?」 「こいつは風石なんて使わねえよ。ただ演算機関……じゃねえメイン動力の調子が悪くてな。調整が終わるまでは飛べねえ」 必死に嘆願するキュルケに、「船は飛べません」という動かざる現状を伝えた。 「しっかし、こうなれば本格的になんとかしねえとな……」 「ヘイズ。演算機関の調整は急務となんども申し上げたはずですが」 「ああ。……明日から取り掛かる」 「それに近い言葉は今まで何度も聞きました」 その光景を眺めていたギーシュがぽつりと呟く。 「随分と息の合った使い魔なのだね、君たちは」 その発言にキュルケが、今気づいたという風に、 「そういえば、なんであんたたちここにいるのよ。あんたたちヘイズになんの用件があるのよ?」 と訊ねると、ヘイズは仏頂面で、 「ギーシュはオレに、サイトの力を見抜いた戦術眼がどうたらこうたら。モンモランシーは浮気を繰り返す元彼がどうたらこうたら。オレの船はお悩み相談の駆け込み寺じゃねえぞ」 と文句たらたらにぼやくが、 「こう言っていますが、ヘイズは頼まれると断れない性格でして。今もギーシュ様にもモンモランシー様にも親身に相談していたところでございます」 などとハリーがいうものだから、ヘイズはくちをへのじにして黙り込んでしまった。 「ふーん。なるほどねえ」 などと話を聞いたキュルケは顔をにやけさせる。 それを見て苦虫を噛み潰したような顔になったヘイズは、 「聞いたぞ。お前サイトを自分の部屋に連れ込んだそうじゃねえか」 と無理やり話題をそらせようとする。 「な!? 君はそんな大胆なことをしているのかね!? 僕でさえ、まだモンモランシを自分の部屋に招き入れたことはないというのに!」 まだって何だ、まだって! と言いながらモンモランシーに鳩尾に拳をめりこまされ崩れ落ちるギーシュ。 「なあに? もしかしてヘイズはサイトに嫉妬してるのかしら?」 「いや、部屋の中からいつ出られるか分からないサイトよりも、ほぼ確実にここにいるオレのほうが呼びやすいんじゃないかと思ったんだが」 「あら。私は誰かの一番は取らないことにしてるの。特にタバサの大事にしている使い魔とかね」 それを聞いたタバサの顔が少し緩んだ気がするのはヘイズの気のせいだろうか。 「それにしても君たちはどうしてそんなに仲がいいのだね? 始業式があってすぐに、決闘騒ぎがあったと聞くが」 ようやく、苦悶のうめきを乗り越えたギーシュが、疑問を口にした。 「あ、それは私も聞きたいわね」 「ほう、そいつは気になるな」 「私もぜひ聞いてみたいものです」 と次々に同意の声が上がる。 キュルケはタバサのほうを見て、 「タバサも言っていいって言ってるから、教えるわね。あたしたちがどうやって、今のようになったか」 そして訥々とキュルケは、語り始めた。
https://w.atwiki.jp/retroadventure/pages/48.html
トランシルバニア 1983年発売 (スタークラフト/ペンギン・ソフトウェア) ストーリー トランシルバニアの王女サブリナ姫は、吸血鬼ドラキュラ伯爵の求婚に自ら「仮死の毒」を飲んで永遠の眠りについた。 ところが「仮死の毒」は「魔法の水薬」がないと生き返らないばかりか、薬を飲んで1年が経ったら効力を失って本当に死んでしまうのだ。 姫の命も今夜限り、サブリナ姫を救えるのは貴方だけです。 コウモリが飛び交い、狼男がつきまとう、このトランシルバニアの深い森の中で、あなたの勇気は襲いかかる恐怖の連続にはたして耐えられるでしょうか・・・。 操作方法 コマンド入力式(日本語) コマンドには回数制限、所持品には制限数がある。 作品解説 原作の "Transylvania" は、Penguin Software から、1982年に発売された 。 マイコンBASICマガジン 1984年10月号(SUPER SOFT MAGAZINE)に掲載。 チャレンジ!!パソコンアドベンチャー・ゲーム 第一巻に収録。 関連項目 外部リンク 関連項目 ザ・クエスト リングクエスト トランシルバニアⅡ 照魔鏡の伝説 外部リンク 作品レビュー Kirry's Annex(懐かしのADV) 攻略サイト 懐かしいアドベンチャーゲームをやろうよ! --- 攻略テキストあり
https://w.atwiki.jp/dokuometsubou/pages/75.html
┗╋━━━━━━━━━━ ┃Name:フランシス・ドレイク【人間】┏╋━━━━━━━━━━ 生命値(Lc). : □/3 ◇/1 心魂値(Mc) : □×/5 傾向. :【嵐を越える者】┏ ┳ ┳ ┳ ┓┃ 魅力:?? 人望:?? 情報:?? 話術:?? ┃┗ ┻ ┻ ┻ ┛┏ ┳ ┳ ┳ ┓┃ 近接:?? 射撃:05 智謀:03 魔導:06 ┃┗ ┻ ┻ ┻ ┛▽ Trend ▽━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【嵐を越える者】 [酔狂者] [探求心] [姉御肌]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 困難への超越者。だが己は気づかない、自身も嵐である事を。自身の戦闘不能がシーン中一人目の戦闘不能の場合、外付け生命値+1。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━▽ Skill ▽━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【多角空間視野】 P [【射撃】+10%] [障害物ペナルティをある程度無視できる]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 障害物による跳弾、風による影響、あらゆる状況に適応した射撃が可能である。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【狩猟者の嬲り】 P [【射撃】] [判定成功時:20%] [ダメージ分/3点全ステータスダウン(切捨)] [シーン一回]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 相手を嬲る狩猟者の銃撃。射撃判定成功後、確率で相手の全ステータスをシーン中一回下げる。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【魔導障壁】 N Mc-4 [魔導6以上] [障壁:5] [戦闘開始時]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 自身を守る障壁を出現させる。魔導が強力と呼ばれる所以の防壁。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【我が身に加護を】 N Mc-3 [【魔導】] [被ダメージ-1(最低値:1)] [全判定+8%] [確定成功] [重複不可]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - その身に加護を宿す魔導。成功失敗に関わらずダメージを減少させるエンチャント。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【翼よ折れ、地に落ちよ】 N Mc-2 [魔導4以上] [【魔導】] [同行者可] [確定成功] [相手の次R全判定-30%]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 相手の能力を引き下げ、弱め、貶める魔導。次のRの間、相手の行動を全て制限する。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━▽ Item ▽━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【亜銃:キャリバー】 射撃 [片手武器] [基本火力:2] [攻撃回数:2] [判定+10%] [最大心魂値-1:3発]- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 魔力を消費して銃弾を放つ特殊な量産型魔導具。所有者の最大Mcを常時-1し、戦闘開始時に常に弾丸補充。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━