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「ベルフェリオンは心の力です。最初から気で負けたら、何も出来ませんよ?」 彼女の放つ言葉に対し、意図を掴みきれない総一。構わず続ける。 「―――今までどんな想いで、戦ってきたんですか?」 思い出し、考えて―――はっとした。 一回目も、二回目も、自分に力が必要だった。力が欲しかった。 あったのは、切望という名の意志。手に入れた力は、守るという意志をもって。 「どうすりゃいいんだ。守る必要もねえってのに」 「簡単ですよ、たとえば……」 思考を巡らし、途切れた言葉。唇に指をあて、んー、と考えて数秒。 「一発ぶん殴る」 答えは、あまりに単純明快。 桜華絢爛ベルフェリオン 第四話「鍛える冬」 「そしたら、フランベルジュがこう、地面からズドドーンって!」 写真を手にして騒ぎ立てる春緋。 机の前に広げながら、自身が立ち会った事件を存分に語っている。 ちょっとした人だかりができ、周囲が皆春緋に注目している中。 「ところで、こいつ大丈夫なのか?」 「放っておけ。別の問題だ」 事情を知る誠二は、いつも通り冷静に言葉を投げる。 一番の被害者、かつ一番の重要人物である天城総一は、 「…………」 爆睡。 うんともすんともくーとも言わない。完全なるダウン状態。 もう何をしても起きなそうな状態。怪我を見るだけだと危険な状態に思えるが……。 「……大丈夫、なのか?」 「多分な」 流石に誠二も無責任な言葉しか出てこない。 そもそも、何故こんなに総一はダウンしているのか。 ことの始まりは数日前、涼の法律相談事務所に初めて出向いたときだった。 「特訓だ」 たたまれている扇子が、びし、と総一に突きつけられる。 初めて来たと思いきや、パールを加えた四人が並ばされ、この状況である。 「え、あー……何の?」 突然の言葉に理解が追いつかない。総一の額から冷や汗ひとつ。 それが扇子で叩かれ、振り払われる。 「何の、じゃない。これからこちらである程度守るとは言ったが、 大半の事態は君が解決する必要がある。デバイスがあるなら尚のこと」 「相手がJDAだからな。今後君自体がJDAとの戦いを強いられることになるのは 容易に想像できる、だからこそ君自体が強くなることは決して無駄にはならないさ」 涼の言葉に補足するように、俊暁が言葉を並べる。 相手は秘密結社。 アニメや特撮の世界が現実の状況になってしまった彼にとって、その脅威は底が見えない。 「特に君は、デバイスを使用しない状況において一般人でしかない。 いつJDAが襲撃してきても、ある程度戦えるようにならないと困る」 なんかとんでもなく嫌な予感がした。 「というわけで、君はまずこのメニューをこなしてもらうことにする」 渡されたメニュー。 それは……おおよそ一般人向けとは思えないような恐ろしい量のものだった。 「これができて合格だ。最初は半分程度、そこから少しずつ慣らしてもらう」 「あ、あのー」 死ねと? 通常体育の三倍のトレーニング量。 赤くて角がついた紙だったらわかりやすかったのだが――― ああ、赤いだけならト○んざムもありだと関心はするがどこもおかしくはないな。 無論、そんなことを思う余裕は総一になかった。 「忘れてません? 俺、先日撃たれたんスけど」 そう。事件の時四肢を撃たれ、挙句の果てに胸あたりがガラスでぐさりと来ていた。 その状態でこれはひどい。まったくひどい。 「大丈夫ですよ?」 流石に困り果てていた総一の心境は、あっけなくパールの一言で打ち砕かれる。 「言い忘れてましたけど、契約したことで自然治癒力は上がってますから、 撃たれた傷くらいならそろそろ大丈夫です。痛みは別ですが」 「痛みは残るんかい。無茶な」 よりひどい。何故か事実がより厳しい方向に進んでいる気がする……。 「痛みを受けた状態で動くことも時には必要になる。いい機会だ」 「…………あのー?」 「4万」 ぐさっ。 その一言だけで完全に固められてしまった。 金銭都合をさっぴかれると、自分だけが困るわけではない。 冷や汗かきながら、はい、と答えるしかなくなる総一。 受難は続くよどこまでも。君は生き延びることができるか。 (……まあ、何から何まで全部秘匿問題なんだが) 勿論、総一がルーム機材を使ったランニング途中で倒れたところも秘匿問題である。 その後も文字通り叩き起こされ、なんとか1日程度を豪快に使ってノルマ達成まで駆け抜けた。 本当に大丈夫なのか? 総一を見る目にも、つい同情や心配が先に来てしまう。 そんな折、ふと教室のドアが開く。 「おはよう、皆……」 その場の全員が、入ってきた彼にリアクションをした。 具体的に言えば、一斉に引いた。 声には聞き覚えがあるのだが、顔が誰こいつ状態だった。 火傷でもしたような荒れようが、顔の半分足らずを覆っている包帯の下から覗いている。 「井上……なのか?」 こくり、と頷く。 しかし誰もが困惑し、一瞬静まり返った教室。 ある程度察して声をかけることができたのは、誠二だけだった。 「……ぁー?」 少し経ち、ひそひそと皆が騒ぎ出したところで、ようやく目を覚ました総一。 非常に眠そうな状態ながら、視線は井上に向いていそうだった。 「あ、おはよう、天城君」 状況の不運。 現在、総一は疲労が溜まりに溜まっている上に寝起きで、非常に頭が鈍かった。 それ故か、気付けば目の前で包帯をしている、弱気そうな男子クラスメイトの姿を、 正確に結びつけることが出来なかった。 「……誰?」 直後、彼の首筋に春緋の脛あたりが突き刺さり、再び総一は意識を失うことになった。 教師が来る前になんとか目が覚めたのは不幸中の幸いか。 「え、俺そんなこと言ってた?」 本人がその事実を聞かされたのは、ちょうど昼食の時だった。 「言ってた。まあ、その後の授業まで殆ど寝てたあんたは覚えてないと思うけど」 まったく、と呟きながらメンチカツパンを頬張る春緋。 「あとで謝っておけ。擁護のしようはあるとはいえ、タイミングが悪すぎた」 誠二の言葉に、そうする、と返しながら、総一は自分の失態に後悔する。 彼の頭には、ここまで疲れる原因が悪いなどといった思考は皆無。 ……それでも身体の不調には逆らえないようで、小さくあくびがひとつ。 「それで大丈夫なのか? 天城」 「んあ?」 レタスサンドを頬張ったところで、きょとんとする。 今日は何かあっただろうか……? 記憶を辿ると、あった。 「ああ……あれね」 「とりあえず、今日は化学の話だろ? 今後何か役に立つかもしれないから、疲れてるとは思うがしっかり聞いとけ」 「へいへい」 誠二に適当に生返事を重ねながら、とりあえずレタスサンドを流し込んだ。 その後。 学業も終わり、事務所に顔を出す総一の表情はうかない。 目の前の予定表……今日は実戦形式の特訓。 身体を酷使してきた数日間の上にこれである。いい加減、彼の体力は限界に達してきていた。 「今日の特訓形式が何なのか、覚えているな」 眼前に立つ涼の姿が、心なしか大きく見える。 「……ツヴァイドリル、ドライフォートの2機を相手にひたすら攻撃を避け、 片方でもいいから一撃を叩き込む特訓。腕を光らせてはいけない、でしたよね」 あの現象、奇跡的にアフロを撃破した現象。 意図的に引き起こしたものではなかったが、使うのは危険が伴うため、今回は封印となった。 そして、使ったところで大惨事にならないわけがない。 なにせ今回の機体は、涼が所持している2機なのだから。 「パイロット誰なんスかあれ」 「ない。自律起動ができるのが特長だ」 なるほど、と納得する。 3機のフォーメーションで出撃したとき、いつも涼以外の声が聞こえないのだが、 最初からパイロットなしであれば納得である。 「というか、一家に一機程度の人型ロボットを3機か……」 「さすがに常勝の逆転弁護士は格が違ったわ」 「そーなのですかー」 「てめーら他人事か、ええコラ!?」 誠二と春緋はいいのだが、当事者のパールの反応にはさすがにキレた。 しかし、彼らの言うこと自体は間違っていない。 ベルフェリオンなどは例外として、普通はこういう人型ロボットは一家に一機が基本。 それを一人で三機揃えている涼は、やはり彼らから見れば高みにいる存在であった。 車やバイクなどと同様に、維持費から動力までそろえなければならない。 到底一人で払えるようなものではないのだが。 「……やっぱ業務用?」 「いや、『訳あり』の方が近いな」 見つめる視線―――それは、事務所前に降り立った赤と青の二機に向けてではない。 総一は思う。彼女が、広瀬涼の見つめる先には何があるのか―――。 紅の機体。大きく突き出した一対の巨大バックパックを持つ華奢な機体。 その突撃は重く鋭く、構えたドリルが大地を抉る。 蒼の機体。せり出した肩、両脇のキャノン砲を携えるがっちりとした機体。 その砲撃は光の速さ、開いた両肩からミサイルが奔る。 紅の機体はツヴァイドリル、蒼の機体はドライフォート。 場として選ばれた戦場解放区―――人型ロボットを動かしてもいいと許可が出ている場所――― 未だ瓦礫や廃ビルなどの残るそこに立つのは、両機とも、涼の『逆転』に幾度となく貢献してきた機体。 特訓とはいえ、目の前に立つ威容に気圧されるのは当然ともいえた。 「あの『再世事変』を乗り越えた機体、か……」 一発でも当てる。その条件は果てしなく遠く、険しい―――。 「それじゃ無理ですよ、マスター」 思考は、言葉に遮られる。 いきなり何を言うか、こいつは……意気までも削がれ、どうしてもパールを見る目がジト目になる。 彼女は視線に気付くと、逆に呆れたように総一を指差し。 「ベルフェリオンは心の力です。最初から気で負けたら、何も出来ませんよ?」 彼女の放つ言葉に対し、意図を掴みきれない総一。構わず続ける。 「―――今までどんな想いで、戦ってきたんですか?」 思い出し、考えて―――はっとした。 一回目も、二回目も、自分に力が必要だった。力が欲しかった。 あったのは、切望という名の意志。手に入れた力は、守るという意志をもって。 「どうすりゃいいんだ。守る必要もねえってのに」 「簡単ですよ、たとえば……」 思考を巡らし、途切れた言葉。唇に指をあて、んー、と考えて数秒。 「一発ぶん殴る」 答えは、あまりに単純明快。 「あー、OK。要するに、何か目的を持って強く思えってことな」 「だいたいそんな感じです」 そう。彼が願うことなら、全てが現実になるだろう。 ひとつ大きく息を吐き、吸い。眼前の二機に指を突きつけ。 「俺の『一発』は相当痛いぜ、覚えてろよ!」 力強く宣言、覚悟は決まった。 左手を前に突き出す。それに重なるのは、隣に立つパールの右手。 重なったそれを、互いに組み。 「「―――デバイス・オン!」」 響く口訣―――瞬間、世界は切り開かれた。 背後の空間に現れる巨大な姿。 拳を力強く握る、描かれた姿が実体を伴い。 足が大地を踏みしめる、蒼と白の巨体が無から有と変わり。 見開かれた視界は広く、輝く瞳は己が物。 其れは名もなきベルフェリオン。願望の結実、ベルフェリオン。 総一は実感する。今この瞬間、自身の存在は巨体と共有した。 言葉もなく、眼前の二機が左右に分かれ機動を開始する。 「パール、今お前何ができる?」 短く、問いかける。この状況では、あらゆる手段を行使する必要がある。 彼女の力も、可能な限り借りたいところ。 「何ができるって?」 「たとえばレーダー代わりとか」 「レーダー? 何ですかそれ?」 だが、総一は見誤っていた。 いくら自分の知っていることを例に出しても、パールが知っている可能性はあまり高くない。 それを後悔した時、既にベルフェリオンは宙空を舞っていた。 「だああああ!?」 足元で爆発。 容易に背後をとったドライフォートが、肩からミサイルを放っただけの話。 それだけでも、今の総一を翻弄するには十分だった。 「あわ、わ……って、マスター前、前!」 「んあ……って、のあああああ!?」 思わず横に転がる。 直前までいた場所は、駆け抜ける紅に大きく抉られた。 「……そうだ、あいつ可変か」 肩の巨大な装甲にその身を隠し、流線状の装甲の前面に二機のドリルを掲げた機体。 そのバックパック後部、その大きさに似合った巨大な推進力を生み出すブースターで 突撃をかけられていた……直撃すれば、ひとたまりもなかっただろう。 此処で総一は、ひとつの事実に気付く。 「待て。パール、お前敵の位置とかわかるのか?」 「はい、あんまり遠くは無理ですが」 喜ばしい事態。 レーダーという言葉は通じなかったが、奇しくもそれに近いことは彼女に任せることができる。 「OK、二機の位置関係ちゃんと感じてくれよ?」 『感じてって何かやらしい響きしません? 我々の位置関係いやらしい!』 「こんなときにお前さあ!?」 『あ、後ろからミサイル来ますよ』 口論―――というか一方的なツッコミだが、それもそこそこに真横に飛びのきながら起き上がる。 だが、ミサイルの追尾機能を舐めてはいけなかった。 「来るヌギャー!?」 ちゃんと誘導を見切らないとこういうことになる。 「……本当に大丈夫なのか、あれは」 間抜けな光景に、頭を抱える誠二。 戦場解放区を見渡せることで評判の、高層ビルの喫茶店に三人は移動していた。 端末を利用することで、各所死角に目を通すこともできる。 戦場解放区には、こういった細かなチェックができる施設が存在するのが お決まり、ないしは店のウリとなっている。 「まだあれだけのリアクションができるなら、大丈夫でしょ」 呆れる春緋の前には、あぢゃぢゃぢゃ、と背中を摩っていたら またもツヴァイドリルの餌食になりかけたベルフェリオンの姿。 情けないことこの上ない。 「広瀬さん、一体何故ここまで……?」 現状ワンサイドゲームと化しているこの特訓……にしては、違和感がある。 何より、特訓だというのに目的が不明瞭だった。 通して見れば、いくら守られているからといっても、総一に負荷がかかりすぎているのも気になる。 「理由か?」 頷く誠二に、視線を特訓に向けながら涼は口を開く。 「私は、天城総一がどういう人間かをまだ知らない」 「どういう人間か、ですか……?」 「自分で見ないと、見落としがあるかもしれないからな。 天城総一という人間が、膨大な困難にどう立ち向かい、対処するか。 私はそれを知りたい。今後の彼のことを考えるのは、それからだ」 だからこそ、これまでの総一への課題は大変で、苦しく。 彼に『逆転』の資質があるか、それが涼の知りたいところだった。 (天城総一……この状況にどう向き合い、行動する?) トレーニングメニューを課した時は、苦悶の声が漏れたりしながらも、 少なくとも涼の前では一言も、弱音、愚痴などなく意地で全てやり通した。 ベルフェリオンを見る眼が鋭くなる。果たして彼は、求める素質を備えているだろうか……。 ちなみに、彼女は人に戦いを教えるのが初めてだったと4人が知るのは少し後になる。 「あァもー畜生! 何だこの固め戦法はよ!?」 戦況は一方的だった。 周囲を旋回しながら死角を正確に突き、射撃武器で総一の動きを止めるドライフォート。 足が止まるところを狙い、ドリルを掲げながら突撃を仕掛けるツヴァイドリル。 これだけの攻撃を捌き、分単位で粘れているのは、 彼の反応がそのままベルフェリオンの動きになるからか。 反応からロボットを操作し動かすまで、機体に慣れていない前提であれば 本来はある程度のラグがかかるものだが、ベルフェリオンにはそれがない。 一心同体、彼とベルフェリオンが感覚を共有しているという最大のアドバンテージはそこにある。 レーダー機器皆無という不安はパールにより解消されたが、 彼は最大のアドバンテージについて特に意識はなかった。 ……学校では元々、ロボット操作技術の授業でそれなり以上の成績を収めているからだろうか。 『斜め右後方!』 「ったよ!」 引きつけて、避ける。ミサイルの基本的な避け方のタイミングは、既に掴み始めていた。 問題はそこに、キャノン砲による追撃が加わることだろうか。 ―――しかし此処で、キャノン砲の狙いが初めて逸れ、態勢を整える余裕ができた。 「よし、此処で……!」 しっかり避ける? 一瞬思いついたその思考は、即時却下される。 意外にもドライフォートまで機動力が高く、ここで回避されても再び攻められるだけだ。 対してベルフェリオンにはブースターなどあるわけもなく、この差は致命的。 回避ができない……ならば。地にしっかりと足をつけ、見定めるはツヴァイドリル。 『ちょ、マスター! 当たりますよ!?』 言葉に返す余裕もなかった。 両手を前に向ける……突撃をかけるツヴァイドリルを前に。 唸るドリルの回転は、周囲に音を響かせる。 まさか。パールの予感は、次の瞬間――― 「ふん、ぬああああああああ!!」 現実となった。 高速で回転するドリルに対し、総一のとった行動は、「受け止める」。 殴る行動ができるほどに硬い五指を持っていたベルフェリオンだからこそ、出来た行動。 当然、掌全体に加わる力は尋常でなく、推進力と削られる痛みは直接彼に負担として帰ってくる。 だが、それで終わることはない。 「ぬぐぐぐ……がああああ!?」 容赦なく浴びせられる光。 バックパックの武器はドリルだけではなかった。 至近距離でベルフェリオンに放たれたレーザー光もまた、ツヴァイドリルの武器。 灼熱も加わり、受け止めることはもはや叶わない。 だとしても――― 一秒と立たず、ベルフェリオンを振り切り空中へと舞い戻るドライフォート。 大きく浮き、振り落とされるベルフェリオン。 空中で変形を解き、滞空状態に入る……。 「終わりだな」 涼が一言、漏らす。 青天状態になり、ぴくりとも動かなくなったベルフェリオン。 それを囲んでいた二機も、地上へと降り立ち、静止する。 「なんて無茶したのよ……」 うわー……と、思わず口に手を当てて春緋。 先の行動に驚き半分、呆れ半分といったところだった。 そして、ベルフェリオンは片手を天に掲げる。 「本当に『やる』とは……流石に思わなかったぞ」 誠二の呟きと同時に、それは掲げた片手をぐっと握った。 確かに、ツヴァイドリルの攻撃をまともに受け、ベルフェリオンの、総一の受けたダメージは多大なもの。 だが、目的はただ『一撃』。 宙に浮く直前、彼の膝は確かにツヴァイドリルを捉えていた。 その後を覚悟で、総一は一か八か、そのチャンスに賭けていた。 「あだだ……傷口直射ビームとかマジねーわ」 後になれば、こうして言葉を漏らしたりもする。 しかし、決めてしまえば意志は硬かった。 『まったく、無茶にも程がありますよ』 パールでさえ呆れる程に、無茶な方法ではあった。 だが事実、彼は目的を達した。それについて、咎める事はできない。 「諦めれ。俺がマスターになったんだから、とことんつきあってもらうぜ」 身体中が痛む、ベルフェリオンを維持するのもつらい。 維持を解くと、青天のままの総一をパールが覗き込む形になった。 「マスター、大丈夫ですかー?」 「次回も見てくれないと、俺の身体はボロボロだ」 「何を見るんですか。とうとう頭まで壊れ」「てねーよ」 言葉を交わしていると、二人に向けて指が降りてくる。 ドライフォートだった。ツヴァイドリルとともに二人のもとに寄り、手を差し伸べている。 それはまるで、一撃を入れた二人を認めたかのようで。 「ありがとうございますー。まったく、マスターだけですよ、しゃんとしてないの」 「るせー」 軽口を叩きあいながら、パールに引かれドライフォートの掌に乗る総一。 あまりに疲れたのか、そのまま後を任せて意識を手放す。 ―――ほら、できるじゃないか。最初から諦めるからできないんだ 何か、懐かしい言葉が聞こえたような気がした。 5話予告 パール「マスター、マスター」 総一「どしたー?」 パール「学校って楽しいですか?」 総一「お前の感性まだわからんからなんとも」 パール「へぇーへぇーへぇーへぇー」 総一「出るなよ? 絶対出るなよ!?」 春緋「はいはいフラグフラグ」 総一「おい、やめろ馬鹿 早くもこの次回予告は終了ですね」 ダンカン「ならば我がJDAらしく頂いていく! ベルフェリオンの反応を探り街に出た我々が見たものとは―――(殴打)ひでぶ!?」 総一「返せバーロー! 次回、桜華絢爛ベルフェリオン『遭遇! ジャンヌダルク』 (殴打)あべし!?」 ダンカン「貴様!」 総一「やンのか!?」 涼「 う る さ い 」 総一・ダンカン「すいまえんでした;」 桜華絢爛ベルフェリオン・SSに戻る next back
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【検索用 いんふぇりおりてぃー 登録タグ VOCALOID john(作り手) い 初音ミク 曲 曲あ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:john 作曲:john 編曲:john 絵:john 唄:初音ミク 曲紹介 inferiority. 曲名:『インフェリオリティー』 john氏のデビュー作 歌詞 (動画、作者ツイートより書き出し) 大衆娯楽やセンチメンタルで 異論を廃して安住の心を まるでさ劣化の猿真似みたいだ 沸き立つ熱気も何処吹く風で 最終的には強者の雄叫び 中身が無いのに醜い代物 恥じらう嫉妬もお笑い種です 腹立つ決起も踊れや踊れ 曲がったステンレスみたいな 想い抱いて泣いてしまおうか 忘れないわ 貴方の劣等感も偶然も カナリア泣いた夜でさえ 消える涙 真夏の疾走感で喰らっちゃって 石楠花 一輪捨てちまえるなら 多大な迷惑失礼しました 今後は暫く大人しくします それでは別れのお歌をどうぞ 私を呼んでもそこにはいません 狭い大海で弱者を虐めて とても有意義な気持ちでしょうね こちらは貴方を許さぬようにと あぁ 疲れた… 馬鹿だな くだらねぇ理想だ 分かっておくれ 泣いてしまった 忘れないわ 貴方の劣等感も偶然も カナリア泣いた夜でさえ 消える涙 真夏の疾走感で喰らっちゃって 石楠花 一輪捨てちまえ 忘れないわ 貴方の劣等感も偶然も カナリア泣いた夜でさえ 消える涙 真夏の疾走感で喰らっちゃって 石楠花 一輪捨てちまえるなら コメント 大好き -- あ (2020-02-29 09 38 35) めっちゃすこるわこんなん -- めっちゃすこる (2020-07-05 17 11 48) 石楠花の花言葉は「威厳」「荘厳」「危険」...関係あるかな。 -- Percy (2020-08-26 17 59 05) 初めからこれはズルい…すこ -- すこです (2021-07-07 08 02 47) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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ホンダ シビックフェリオ SiR (EG) '93 Image Credit 画像を引用した場合、引用元を表記。 メーカー ホンダ 英名 Honda Civic Ferio SiR (EG) '93 年式 1993 エンジン B16A タイプ ノーマルカーセダン カテゴリー N200 PP(初期値) XXXX 総排気量 1,595cc 最高出力 170PS/7,800rpm 最大トルク 16.0kg/7,300rpm パワーウエイトレシオ XX.XXkg/PS 駆動形式 FF 吸気形式 NA 全長 4,395mm 全幅 1,695mm 全高 1,375mm 車両重量 1,130kg 重量バランス 60対40 トランスミッション 5速 ダート走行 可能 登場 グランツーリスモグランツーリスモ2 備考 カローラセダンの対抗車種として開発された、シビックベースのセダン 概要 ホンダ シビック フェリオは、1991年9月に登場した5代目シビックセダングレードで、通称「スポーツシビック」である。歴代モデルで最もスポーティさが強調された。また、1993年から1995年まで全日本ツーリング選手権にも参戦していた。 1995年に6代目へとバトンタッチされた。 解説 解説を書いてください! 登場シリーズ グランツーリスモ グランツーリスモ2 コメント どなたか、加筆をお願いします。 -- (名無しさん) 2024-01-27 13 29 55 ↑ごめん、間違えた。 -- (名無しさん) 2024-01-27 13 30 38 ↑↑少し加筆しました。 -- (名無しさん) 2024-01-31 18 40 37 名前 コメント すべてのコメントを見る (Log=ホンダ シビックフェリオ SiR-II (EG) '93/コメントログ)
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メンバーリストです。 君主名 役職 アルフレイン 盟主 フェリオス フェイロン 盟主補佐 竜我 ぶ~ちょん 松永久秀 チュモン ヒイロ taroaki 手酌王子 gucciredds 風車 なつみん ガイエル 碧海 RSIN モッコス 関省 ka ウォズニアッキ G型プロトタイプ skyring syao えみ 久保田翔 mayu るてるて 元同盟員
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脳裏に浮かぶは真紅の記憶。 燃え盛る周囲に逃げ場はなく、膝元には一人の少女。 自分も、彼女も動くことは出来ない。 必死に叫んで、気付いてもらおうとして、誰もいなくて。 熱くて、煙くて、息苦しくて。 この炎の中、飛び込むような勇気もない。助けも、ない。 ただ弱っていく少女を必死に抱え、叫んでも叫んでも、 その声は周囲の音にかき消されていく。 ああ、こんなにも無力だったのか。 視界が、真っ赤に染まる。 桜華絢爛ベルフェリオン 第六話「踏み出す一歩 炸裂!爆牙天襲脚」 冬の夜風が、冷たく頬を刺す。 日が落ちて、空は暗く。 それでもエルヴィンの街並みは、永久に眠らないとも思わせるほどに煌々と光り輝く。 「……何や、いつの間にこないなとこに」 大通りの喧騒から一人外れ、短髪を立たせた男は路地裏に居た。 「純のことばっか考えとるからちゃうか、全く」 自分で自分を嘲笑う。 ―――思い出すのは先日の、息子の部屋から見つかった日記。 そこに書かれていたのは、彼自身の状況を嘲笑うかのような周囲の反応。 辛い気持ちを、記すことで日記の中に閉じ込めていた。 「哂われるのは、ワイでええっつーのになぁ……」 息子の気持ちを知った。 自分が一所懸命に働いて、稼いで、妻と一緒に育てた息子。 その息子が心まで傷ついていくのを、知ることしかできない自分こそ、嘲笑の対象になるべきだ。 「……金さえあれば」 息子は、エルヴィンでは治せないと聞いた。 ならば治せるところに行くしかない、そうなると金も時間もかかりすぎてしまう。 自分と妻が頑張って切り詰めても……捨てたとしても、すぐに治すにはまだ全然届かない。 どれほどの時間、息子は苦しまなければならないのだろう? 「ワイが……」 息子に、何かできたら――― 闇に覆われる周囲に、一筋の光が刺した。 「で、盛大に負けてきたと」 「仰る通りです」 事態の一部始終を聞き、大きく息をつく。 事務所に寄ると俊暁から連絡を受け、実際の光景がこれである。 背中に湿布が装備され、いつも以上にぐったりとしている総一。 気のせいか若干満足しているように見える春緋。 いつも通りの仏頂面なはずなのに、どこかいらついているように見える誠二。 そして、それらあらゆる状況を気にせず茶菓子をぱりぽりと頬張るパール。 「仮眠してえ」 俊暁の苦労も簡単に伺える。 むしろ、こんな面子で苦労しないはずがない。いたら凄い。尊敬する。崇める。 「警察がだらしないな」 それでも緩まない言葉がぐさりと刺さる。 「あぁん? 最近だらしねぇな?」 「だー、かー、らががががが」 起き上がりながらパールに注意しようとし、無理な動きをしたのか痛みが先行し倒れる総一。 そこまでツッコミをしようというその精神は見上げたものである。 「パールちゃんが総一を選ぶのも頷けるわ」 一人合点する春緋。無論、ツッコミ的な意味でではある。 言い返す気力も失せている総一はぐたりとソファーにうつ伏せ。 「……仕方ない。2時間休みを取ろう、その後食事だ」 「「おーう」」 疲労の溜まりきった二人は、直後ぱたりと倒れそれきり動かなくなる。 寝付くのが早すぎというか、息合いすぎというか。 「すごいシンクロ率ね」 「400%でどろりでしたっけ。怖くてワンセグ見られないですねー」 春緋のネタに食いつけるパールもパールというか。 ツッコミ役たる総一がダウン状態なため、完全にボケ放置である。 「……広瀬さん、少し話いいですか?」 そんな状況の中で、手が空いたと思われる涼に相談を持ちかけるのは誠二。 話し込んでいる今、あの二人を止める制止役すらいない。 よってこうなった。 「俊暁さんに総一をチューニング!」 「シンクロ召喚! 飛翔せよスター○スト・ドラゴン!」 「「いぇーい♪」」 ハイタッチ。どうしてこうなった。 どこまで飛躍しているんだ。 「……それは専門外だ。後で俊暁にでも頼んでくれ」 「分かりました」 全く雰囲気の分かれる事務所で、真面目な一角が話し終わったようだ。 「ただ、雰囲気を掴むというのなら私からも提案はある。そこにもな」 この提案の余波が全く違うところに出るとは、当人は理解していなかった。 見出しには大きく写真。 一面を飾ったのは突如として現れたロボットの話。 内容に目を通すたびに、持ち手がふるふると震えるのも無理はない。 「汚いなさすがマスゴミきたない」 「はい、おしまい!」 無理に新聞を総一からひったくる春緋。 「今途中だ!」 「そのまま破きそうだったしー」 苛立つ総一に、ぶーと返す春緋。 「お前ら、流石に恥ずかしいぞ」 冷ややかな言葉で釘を刺す誠二。 「変わらないねえ、君ら」 「変わらないのはいいんだが……」 多少疲労のとれた俊暁と、呆れ果てる涼。 「此処で騒ぎ立てるな。他の客に迷惑だ」 彼らの目の前に出されたのは熱されたプレート。 その上に形よく乗っているのは、当店自慢のハンバーグ。 此処は近場でも有名なファミレス。 そこにあの広瀬涼がいて、大勢の仲間がいるとなると――― 「うるせえなリリーぶつけるぞ」 「お前表に出ろ」 「社会的に抹殺してやろうか」 「お前のナニのサイズ公開してやろうか」 同業者がいたよ。 「待て最後いつ知った!?」 周囲から言葉のフルボッコを受ける総一。それでもツッコミを忘れないのは彼らしいというか。 「……広瀬さんって有名人なんだなと今更ながら実感が」 「後悔しても遅い」 それでなくとも、周囲の視線を集めている近くで騒がれると……。 「それにしても、世間にはベルふぇひほ」 「それ以上喋るなお前」 慌ててパールの口をふさぐ総一。これ以上喋られるとやばいところだった。 紙面の中ではベルフェリオンの文字はなく、単に「謎のロボット」と呼称されていた。 写真はとられていたとはいえ、名前までバラされるのはまずいと判断していたのか。 ちなみに、紙面内容は「プロドライバーのダンカン氏、謎のロボットの襲撃を受ける」だった。 どうやら表向きには、あの白アフロはプロドライバー、 つまり街での戦闘を仕事とするパイロットとされているようだ。 病院への襲撃がなかったことにされたことで、メディアにベルフェリオンが晒されたのは今回が初。 それが、ダンカンに一方的な襲撃を仕掛けた謎の犯人が、 これまた謎のロボットの介入で撃退された、という内容である。 つまり謎の犯人は総一、介入してきた謎のロボットは風のベルフェリオン。 「……あれはないわ」 当事者からしてみればたまったものではない。 「気持ちは分かるがお前も喋るな」 流石に彼の社会的惨状には同情を感じる。 だが誠二の釘は止まらない。周囲の状況が状況だから仕方ない。 「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ」 「ポイズン」 「これまで知ってンのかよ!?」 明らかに知らなそうな話題にまでついてきたパールに、流石に戦慄を覚えた総一。 「パールちゃんの知識は私が教えた」 「黙れナイムネ」 「どう見たってあるわよ! ブラ必要なくらい!」 「この面子の中じゃ下の下だろ」 「だからそれは他が!」 がるるるるるる、うがががががが。もはや背後に竜虎が見えそうな勢いだ。 「……冷めるぞ」 「「いただきまーす!」」 涼の一言が入った途端すごい変わりよう。現金すぎるところは似たもの同士だった。 「にしても、息の合いよう凄いですね」 「付き合ったりでもしてるのか?」 「「「それはない」」」 俊暁の何気ない一言に、涼と当事者二人から情け容赦ない即時ツッコミが飛ぶ。 「Q:そりゃまたどーして」 「A:こいつと恋愛感情なんて生まれると思うか?」 俊暁は思う。きっかけ次第なんじゃね? と。 当事者の総一が言うこの言葉は照れ隠しだろうか、それとも。 「A:息の合うような間柄は恋愛関係というより親友とかの線が強い」 俊暁は思う。突っ込みどころの薄い強力な返し方だ、と。 広瀬涼の人を見る目はやっぱり強い。 「A:天城総一の秘密を知っている! 好きなひとはほ」 「やめー!? やめやめやめやめ、やめ!! スッパされて出されたらどーすんのさ!?」 俊暁は思う。春緋に頭が上がらないのは頷けるわ、と。 正直こういうのは性質が悪いから困る。 「でもまだ君はスッパされないから」 「スッパって何ですか? ネイキッドになって何が悪いですか?」 「シ○ゴー!? シ○ゴー!?」 だからそのネタどこから……もういいです。 「ごちそうさまでしたー」 和やか……和やかだろうか? ここでは和やかとしておく。 そんな雰囲気の食事が終わり、この世に生まれた幸福感を噛み締める。 食事とはそういうものである。どんな世の中になってどんな未来に時が進んでも、 これは絶対普遍、人間の求める欲望である。 それが満たされたのだから、幸せにならない筈がない。 ……だが、その幸せは長くは続かないことになる。 「今日は好きなものを頼むがよいぞ。我が持とう」 「ありがとうございま……す……」 目の前には白いアフロ。そして仮面集団。 会計を済ませ出口に向かうところで、運悪く遭遇してしまった。 「「あああああああああ!?」」 状況の不運としか言いようがない。彼らも彼らで仕事の合間だったのだ。 「てめー引き上げたんじゃなかったんかい!?」 「何を言う我もまだ仕事の途中なのだ簡単に戻れるわけがなかろうなのだ!?」 出会い頭にあーだこーだの口論が始まる。 その光景にかたやカメラを取り出し、かたや固まりながらリアクションに困り、 かたや玩具コーナーに目を奪われべったりないつも通りの面々の後ろで。 「広瀬」 アイコンタクトを交わす二人の年長組。 瞬間。 「はい、動くんじゃねーぞ。職質途中で抜け出してただで済むとは思ってないよな?」 まさに一瞬。 気付けば、目にも留まらぬ速さでアフロや仮面集団の背後に回った涼。 そして、警察手帳を片手に銃を構える俊暁。 此処はファミレスの入り口、それも都合上二階にあり、 階段のすぐ横にはまた同等以上の建物があるため、出入り口に続く階段を挟んでしまえば相手は動けない。 意思疎通から退路遮断まで、数瞬でこなしてしまうところはさすがというか。 「すげー息合いすぎ」 眼前で見た総一は、その一言しか呟くができなかった。 シャッター音が響く中、一部が狼狽する仮面集団の中で白アフロは冷静だった。 「一瞬で我の背後を取るとは……噂には聞いていたが、驚きだ」 「随分と余裕だな、プロドライバーのダンカン」 相手が広瀬涼にも関わらず、この冷静さ。 先程までド素人の高校生と言い争っていた相手とは思えない。 「はーい、ぴーすぴーす」 「邪魔だお前!」 「スクープの邪魔だ、どいたどいた!」 そんな空気を容赦なくブレイクするパールを、 むんずと掴み一礼の後にずーるずーると引きずる総一。お勤めご苦労様です。 「さっきマスコミいたって分かってたろ。何故にどーしてそういうアホい真似を!」 「写真って写るものなんじゃないですか?」 「文脈が掴めないから黙れ」 「はにゃ!?」 ぐい、とパールを持ち上げほっぺたむにゅー。 だが体勢のせいか、片手で持ち上げると腕が彼女の多少は豊かな膨らみを持ち上げることになってしまう。 もにゅ。 「へ、HENTAI! マスターの変態!?」 「公衆の面前でそういう単語を使うなああああああ!?」 異質な空気の漂う中で、マスコミに混じってシャッターを切る 春緋の混ぜるな自然っぷりが何とも。 「……ちょっと待て」 「んあ?」 顔に引っかき傷ができそうになっていたところで、誠二の声に顔を上げる。 誠二は、ただ一点を指差していた。 「あれは、何だ?」 彼の眼前にあるそれは、白いロボットを囲っている、光の鎖。 「いきなしかい!」 彼は言わざるを得なかった。 何かを拾ったと思ったら突然襲われ、このザマだ。 手に入れた瞬間、ある程度のルールは理解した……だからといって、 その直後に襲われるとまでは誰が予想できようか。 「ワイが何をした!? おのれらただじゃ済まさんぞ!?」 いくら足掻こうが、この光の牢獄から何のリスクもなく逃げ出せる手段はない。 「……このままサツ待つっちゅーのもなあ」 彼は考える。この先、目的を満たす方法を。 ただ今は、光の牢獄の中で。 その光景は、店内の殆どの目についていた。 「好機!」 煙に巻くならば今しかないとばかりに、ダンカンが涼に向き直り、拳を放つ。 それを軽々しく涼は受け止め、がら空きになったところに拳を――― 「ち、広瀬!」 銃声。 誰もが振り向いた先に、既に俊暁以外の人間はいなかった。 「あいつら……! 来い!」 呼ばれたことで漸く、それまで固まっていた四人は動き出す。 階段の下には、倒れ伏している涼と、いくつかの血痕。 「藍澤さんは広瀬を診て、高見君は連絡! 天城君は待機! 追ってくる!」 三人に発言を許さず言うや否や、駆け降りて集団を追いかける俊暁。 ……彼がその場から抜けてから、三人が動くまでに数秒を要した。 「広瀬さん!? 大丈夫スか!?」 明らかに落ち着きのない総一、狼狽するもその声に返事は帰ってこない。 「連絡、といっても……」 普段冷静な誠二でさえ戸惑う中。 こういう時は女性の方が肝が据わるというのか、春緋は特に焦った様子もなく、 一階のコンビニの照明を頼りに外傷と意識を確認していた。 「大丈夫、涼さん? ……目立った傷はないわね」 服の上から確認できるものはなかった。この血痕は……? 「マスター、誠二さーん、春緋さーん」 その声に階段の上を見ると、パールが棒状の何かを振り回していた。 「もしかして……来て、パールちゃん!」 駆け下りるパール、その手元には警棒っぽい何か。 もしやと思った春緋は、それをパールからひったくり――― 「あべべべべべべべ!?」 総一にぶつけてみた。被害者二人目の出来上がり。 「電磁警棒ね。さっきの銃で撃たれて落ちたのかしら。 となると、多分集団で電撃喰らったのね……どうしよう」 「おまえなー」 冷静になるのはいいが、気にして欲しかった総一。 呆れ果てながらなんとか立ち上がろうとした時。 「痛づうっ!?」 抓られた。 振り返ってみると、腕を思い切り抓っていたのは涼。 「……待て。静かに」 意味があって抓っているわけではない。この状況で抓るのは何故総一だったのか。 何かしら伝えたい、伝えられることのアピールだったとしたら? 制止したのは誠二。その直感が当たっていたのか、微かに声が聞こえる。 「今、ろくに動けない……高見君は先に俊暁の応援、警察を呼んで。救急車はまだいい。 春緋ちゃんはここに、何かあったら指示は出すから」 指示の邪魔になると判断したのか、誠二は言葉を聞くや否や少し離れ、携帯を開く。 「……俺は?」 一人だけ、ぽつねんと立っている総一。 彼だけ何の指示も受けていない。アフロもロボ持ち出さなければ意味がない。 万一に備えろってことであれば納得がいくのだが……。 やることがない、それ自体が天城総一という人間にとっての苦痛。 そんな思考の巡る中、 「……あ」 唐突に、声が上がる。 「あれ、ベルフェリオンです!」 パールの一言で、周囲が固まった。 状況を考え、彼女を引き寄せ。 「人前で暴露すな。で、マジなのか?」 「はい。あれは確か光のベルフェリオンです」 なんという。デバイス同士惹かれあうとでもいうのだろうか? 目の前に居るのはベルフェリオン、となれば…… 自分を嵌めるためだけにこんな手の込んだ罠など作らない。 そして、JDAの疑いがあるアフロは目的のために動いていた。 「―――ああ」 瞬間、月が隠れる。空を見上げる。納得がいった。 そこにはひとつの影があった。 まるでUFOキャッチャーの景品の視点になったようだ。 巨大なアームを携えた飛行物体が、頭上を浮いている。 簡易型輸送ユニット、ハング・キャリアー。 そう。あのベルフェリオンもまた、別の形で狙われているのだと納得した。 「総一、あんた行って」 時間がない。確かに、呼ばれるのは納得がいく。 「……一人で、か?」 「今は一人でしょ。いいから!」 目標を見上げる。 不安はある。どうやってこれを突破する? そもそも、護衛がいないのがおかしい。集中砲火されたら? それらを一人でできるのだろうか……? 「むにゅー」 思考は途切れた。 両頬がパールに思いっきり引っ張られたせいだ。 とりあえず拳骨。思いっきり痛がり涙目のパール。 「……落ち着きましたか?」 呆然。意外な言葉だった。 パールにかけられる言葉とは思っていなかったせいで、一瞬思考が飛ぶ。 「だってマスター、すっごく怖い顔で」 そこで漸く気付いた。ああ、俺はこいつにまでいらん心配かけさせたのか、と。 軽くパールの頭に手を置いて、撫でる。 「やるか」 とりあえず思い切りぶつかって、やるならその後だ。 それに何度も言うが状況も時間もまずい。 意を決した総一は、差し出されたパールの手を取る。 そして、静かに唱えるその言葉。 ―――デバイス・オン 空に浮かぶ巨大な影。 速度が減速してきているということは、真上からこの檻を確保するというのだろうか。 「どこがどうして、こうなったんやろな……」 自分はただ、強く願っただけ。 人が気持ちを持つだけで罪になるのであれば、それはどんなに残酷なことか。 この状況は仕方ないとし、次の展開をただひたすら待つ――― 『ふんぬ!』 そんな思考に邪魔が入った。 「な、何や!?」 光の巨人を取り囲む檻は、球体状の六つの機械からエネルギーの檻を展開して完成する正八面体。 その一つに取りついて、必死にどうこうしようとしている機体が居た。 「一人で何しくさっとんのや!? 何か取られたくない奴でもおるんか!? それとも、お前もこいつが欲しいんか!?」 おそらく自分と同じような状況の人間だろう。 あれがベルフェリオンというのは、すぐに分かった。だからこその言葉。 願いを叶えるためには、真なるデバイスが6必要。 同じデバイス所持者同士が協力し合うなど、考えられない。 『いきなりその言い草はねーだろ! 人が折角出してやろうってのに……あぐ!?』 防衛機構が発動。エネルギーを纏われ、苦悶が漏れる。 言い返す言葉は途切れ、手が離れそうになる……離す気はなかった。 「どんな裏があるっつーとんのや! 何のためにそこまで!? 交換条件なら事後でも呑まんぞ!?」 意味が分からなかった。 ベルフェリオンが、他のベルフェリオンを助ける? デバイスを争奪する相手と聞いて、始めに会った所持者はこんな大馬鹿野郎。 信じられない、到底信じられない。 「教えて……やるよ!」 それでも離さず力を込めるベルフェリオン―――罅が生まれる。 「俺の、勝手でしか、ねええええええ!!」 弾ける。 檻を支える球体が破壊され、エネルギー障壁が一瞬揺らぐ。 「今のうちに……って、おおう!?」 だが、彼らの目の前に障壁が消えたのは一瞬だった。 正四面体を展開する4つの球体、残り一つが外のベルフェリオンに向かう。 「勝手って何や!? そもそもお前一体何の分際でこんな……うお!?」 檻が浮き始める。空から降りてくるアーム。時間がない。 「やば……んな、くそ!」 躊躇せず、浮遊する檻に飛びつき―――弾かれる。 「うあ、がああああああ!?」 落下したところで、エネルギーを纏った球体が背部に体当たりを仕掛け、大きく吹き飛ぶ。 体制が不十分ながらも、よろめきつつも、それでもまだ立つ。 「馬鹿かお前は!」 「……ああ」 立ち直った瞬間、即座に答えが返ってきた。 自認である。 「弾かれる、なら―――!」 既に地上からは少しずつ浮き始め、飛びつくのもこれが最後になるだろう。 もう迷っていられない。 檻に向けて再び飛びつき……一回は弾かれたそれも、二回目は違った。 『え、ちょ、マスター!? それ、止められてるんじゃ!?』 銀色に光る左腕が、障壁に食い込んでいたのだ。 「お前……」 「もう喋るな、出れ!」 これで終わるつもりはなかった。もう片方の腕も、強引に障壁に突き込み。 「ぅぐががが……」 自身の腕で自身が焼かれる。構うものか。 左腕が光って、右腕が光らない道理はない。遂に両腕が眩く光り、障壁に隙間ができる。 「がふっ……おおおお……!」 球体が追いつき、背面からベルフェリオンに激突。 それが、上方に彼を押し上げる力になったのかは分からない。 「―――らああああああ!!」 遂に、破られた。 光を破った腕から弾けた爆光は、球体のみに吸い込まれ、飲み込み、消失。 直前に光のベルフェリオンが逃れられたおかげで、結果オーライにはなった。 「手の感覚がねえ」 代償は大きい。 こじ開けるために酷使した挙句、拒絶の光を暴走させた結果がこれである。 総一は今更になって自覚した。俺の両腕はボロボロだ。いや、冗談でなく。 実際もとの状態と比べるともはや見る影もないほどに荒れ果て、 あちらこちら大きく罅まで入っている。 『……私、言ったんですけどねえ。使いすぎ注意って』 「今言うか」 確かに言っていたが、やってる途中で何か言うとかやり方はあったはずだ。 『だって止まらないでしょう?』 「勿論」 即答。 それこそが天城総一の道理。一度やると決めたことは絶対にやり遂げる。 「……何やお前ら、本気でただワイを助けに来ただけかいな」 呆れるほかない。助けた人間にすら呆れられる。 勿論、後悔はしていない。 「俺の勝手だっつったろ」 はっきりと言い捨てる、その一言が何よりの証。 「全く……」 この状況をどうしようかと、上を見上げたとき。 「で、あれ何や」 空から降り注ぐのは、多数の球体。 「何なのよ、これ」 その光景を、ただ眺めることしか出来なかった少女がひとり。 何もハング・キャリアーは、無防備で来たわけではない。 攻防に移送と、汎用性の高い球体状の装置を多数搭載していた。 四つ爪のアームを支えている、本体側から吐き出された球体が二機に降り注ぎ……周囲に電撃が舞う。 「……出そう」 不安にかられる春緋に声がかかる。 だが、その声の主は未だ起き上がれすらしない涼。 「広瀬、さん……? 今そこまで広瀬さんが動けるはず……」 そして、彼女の声もか細く、まだ動けるとはいいがたい。 「……私以外が、動けばいい」 「あ……!」 そう、彼女には手段がある。この状況を破る手段が。 「右腕……時計、こちらに……」 顎で示す。かろうじて、できるのはその程度であり。 察した春緋は、涼の右腕を口元に近づける。 状況を破る手段。無闇に使うものではないが―――仕方ない。 「ウェイクアップ……ツヴァイ、ドライ」 状況は最悪。 動くこともできず、ただ飛び散る電撃を受け続けることしかできない。 意識がはっきりとしない。今、光のベルフェリオンはどうなっているのだろう。 『マスター! しっかりしてくださいマスター!?』 声が、聞こえる。 それだけが、今の天城総一の意識を繋ぎ止める。 思考も乱され、何を思い出したらいいかわからない。走馬灯すら巡らない。 格好悪いったらありゃしない。……こんなやられ方は、嫌だな。 せめてもう一度、もう一度やり直すことができたら違っていたかもしれない。 『マスター、大丈夫ですか!? 今のうちに!』 ……考えているうちに、電撃が止んだようだ。しかし、今のうちに? 「……ぁー」 周囲に光のベルフェリオンはいない。どさまぎに消えたのだろうか。 視線は上を向いて―――流れる球体。 暗闇の空、不休の街の明かりに照らされて、その蒼き巨体はあった。 「ドライ、フォート……か」 まともに動けるのがドライフォートだけと判断しているのか、 球体は総一を無視し、ドライフォートのみを追いかけている。 今なら、動ける。 周囲を舞う球体の無視具合に好機と感じ、身体を――― 起こせない。 起こしたところで、今の俺に何が出来る? 脳裏に浮かぶは真紅の記憶。 燃え盛る周囲に逃げ場はなく、膝元には一人の少女。 自分も、彼女も動くことは出来ない。 必死に叫んで、気付いてもらおうとして、誰もいなくて。 熱くて、煙くて、息苦しくて。 この炎の中、飛び込むような勇気もない。助けも、ない。 ただ弱っていく少女を必死に抱え、叫んでも叫んでも、 その声は周囲の音にかき消されていく。 ああ、こんなにも無力だったのか。 視界が、真っ赤に染まる。 「―――っ、でえええええ!?」 飛び起きた。 思い切り頬をつねられたような感覚。 『人の話聞いてくださいよ馬鹿マスター!』 「何が!?」 『ぼーっとしてたら無駄になっちゃうじゃないですか! 折角広瀬さんが出してくれてるんですよ、あの2機!』 ああ、そうか。 言われて気付く。俺は折角の想いを無駄にするところだったんだ、と。 「……だからって、どうすんだよ」 それでも、どうしようもない。 「どうすりゃ、あれに届くんだよ」 飛べない、撃てない、届かない。 あのUFOキャッチャーのような機体に、届くはずがない。 今の俺に、価値はない。 『……じゃあ問題です。化学Ⅰの教科書、この前やった水素のページはどこだったでしょう?』 「しまいにゃキレるぜ俺」 絶望的な状況は苛立ちを呼ぶ。 だから、気付くことはあまりない。 『分かりますか? 水素の性質、酸素と化合してどっかーん!』 「だから今更どうだってンだよ!? それで何とかできるってのか!? 大体手段がねーっつったのはテメェだろーが!」 気付かなかったのは、彼女もそこまで空気を読まないことはないということ。 『ありますよ?』 即答。 『確かに武器はなかったですけど、行使できるものが何もないとは言ってません。 ベルフェリオンは、願望を叶える「がんぼうき」。 マスターが強く心に描けば、その願望は叶うんですよ!』 ……そうだ。 自分の言葉を思い出す。確かに、攻撃手段を『武器』に固執していた。 彼女の言葉を噛み締める。今まで願うたびに、力はこの手に宿っていた。 この理解が、間違っているならそれだけだ。 「『とべる』、かな」 無様でも、よかった。 腕が使えない。無理矢理身体を起こし、立ち上がる。 『天城総一が願うのであれば、叶えるのが私です』 やりたかった。 見据える道路。都合のいいことに、空の脅威とは一直線。 走り出す。駆け抜ける。二度と追いつけないくらいに、球体が襲ってきても振り切れるほどに。 十分な加速がついた。今ならいける、やれる。一人じゃないから。 空気が、変わる。 「せぇ、らああああああ!!」 ―――あの頃のようなことには、なりたくない! 爆音が街に響く。 踏みしめた片足の裏で、その力を受け止めて。 気付けば、夜の街が視界に広がる。 そして……確かに、輸送機の上を取った! 迷わない。そのまま足を、踵をを直上から振り下ろす。 大きく凹む装甲。まだだ、まだ終わらない! 「弾けろ!!」 散った火花が、さらなる爆発を引き起こす。 大きく吹き飛び、映った視界には――― 推力を失ったのか、煙を吹きながら落下するハング・キャリアーの姿があった。 ―――ほら、できるじゃないか。最初から諦めるからできないんだ 「全く、その通りだよ……父さん」 落ちていく。 もう一片の力も残っていない。本当に、出し切った。 輝く夜空の星が澄み渡っている。空に向かった視線が、その瞬きを捉えて。 全てがスローモーションに流れる。気持ちいいほどに透き通る思考。 何を成せたのだろう。何をするのだろう。 腕の痛みなど思考の外に追いやられ、今だけはこの瞬間が全て。 ただ一つ、思ったことは。 こんなにも夜空が綺麗だと思ったのは、何年ぶりだろうか。 ―――気付けば、何かの上にいた。 「……ああ、いたな、そういや」 ツヴァイドリル。 ハング・キャリアーを散々翻弄してきたのは、一機だけではなかった。 ずっと視界の外にいたもう一機に拾われて、これは失礼だろうな、と思いながら、 ただ揺られて降下する。 『どうでしたか、マスター?』 「ああ……とんでもねー力だよ」 パールでさえこれなのだから、他のベルフェリオンではどんなチート能力が飛び出すのだろうか。 今は考えても仕方がない。そして、彼はもう一つ想っていた。 こいつと一緒なら、負ける気がしない、とも。 「ぎゃぼ―――っ!?」 訂正。負ける時は負ける。 「私は使うなと言ったはずだ」 受けたダメージなど回復したかのように振舞う涼。 騒動の翌日、手術を受けた後の総一に待っていたのは、実際に車田飛びするほどの平手であった。 「うわあ……マスター、大丈夫ですか?」 「痛いなんて話じゃねえ」 「大丈夫ですよ。二、三日したら治りますから」 「傷口開いてそうなんだが」 倒れた総一の腕に巻かれているのは包帯。そして、その包帯から縦に血の線が滲み出す。 昨日限界を超えて能力を酷使したため、腕がところどころ肉まで裂け、 皮膚も酷い荒れようだった。 一応指は動かせなくもないが……。 「……総一も総一だが、大量の電撃を受けてこれは規格外過ぎるな」 「ですよねー。さすがに広瀬さんは格が違ったわ」 まるで他人事のように眺めながら感想を漏らす誠二と春緋。 というか他人毎である。 「でもマスター、よかったですね。今日明日と土日で」 腕が使えないということは授業も受けられない。 今の総一にとってこれはありがたかった。 「授業にまでかかると後が大変だからな……」 「ああもう、しっかりしなさいよ」 今のままだと立つのもままならない。 春緋が肩を貸してくれたおかげで、なんとか立ち上がる。 「そうならないように、二日間きっちり休んでおけ。私も予定外に疲れたし、休業だ」 見るだけなら疲れたようには見えないのだが、それは彼女が凄いだけなのだろう。 とにかく、休みが与えられたのだ。有効に使うほかないだろう。 ……久しぶりに、やれることやっとくか。 休みの使い方を考えている時に、ふと何かを想ったのか、涼が横で立ち止まる。 「無茶はしすぎていたが、よくやった」 予想外の言葉。 思わず振り向いた総一に、向けられたのは微笑み。 「すまなかったな、大変なことをさせて。 私のできる限り一人にはさせないから、無茶はしないでくれ」 ふいに、言葉を漏らす。 「無茶が無茶でならなくなるように、強くなりたい」 それは天城総一が、昨日という一日の中で感じて、願うこと。 ベルフェリオンは、「がんぼうき」。 彼がそれを叶えられるかどうかは、まだ誰にもわからない。 桜華絢爛ベルフェリオン・SSに戻る next back
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それは碧に身を包んだ巨人。 それは空を制し、空にたたずむ巨人。 ―――まさしく、正体不明。敵か味方かも分からない。 ただ一つ、言える事があった。 『……ベルフェリオン』 パールの呟き。 見上げる空に立ち尽くす、それは『風』を司る。 桜華絢爛ベルフェリオン 第五話「遭遇! ジャンヌダルク」 ツヴァイドリル、ドライフォートを持ち出した特訓から数日後。 4人の目の前のテーブルに示されたのは、大会のポスター。 此処エルヴィンでは、定期的にこういったロボット大会が開かれている。 なにも裁判や事件だけが戦闘の場だけではない。 娯楽である以上、エンターテイメントである以上、こういった場は人気イベントのひとつとなっている。 そして――― 「一週間後、私はこの大会に出ることになった」 張り出されたのはトーナメント形式の大会『ロボカップ』。 個人戦・チーム戦それぞれ『エキシビジョン』ということで優勝者と涼が戦うことになる。 「でけー」 今の総一には、間抜けっぽいがこの一言ぐらいしかひねり出すことはできない。 こうして目の前にいる彼女に雇われるということは、 状況が状況だったとはいえ、三人からしてみればありえないといっても過言ではないことだった。 実際涼の下についている身からは……いまだに現実味がない。 「はいはーい。広瀬さん、カメラ持ってってもいいですかっ?」 だが一人、春緋は順応していた。 元々野次馬的性質を持つ春緋は、涼のもとに着いてから精力的に働いてはいたものの、 どうしてもカメラだけは手放せなくなってしまったようだ。 デジカメとデジタルビデオを同時に扱う程度造作もない。 「撮影は禁止されてないからな……好きにするといい」 「わっふぃ!」 喜ぶ春緋、対して総一の表情はあまり喜ばしくないといった感じだった。 「質問、いいですか」 そして、いつもなら一歩退いた関わり方をする誠二は珍しく興味を示していた。 ん、と頷く涼に、自分から話を振ってくる。 「この大会、どの企業が参戦するか、しそうかとかは分かりますか?」 「一応、これはしそうだって目星は多少つくな」 大会―――それは企業が自分の宣伝を大々的にすることができる場。 華々しく活躍を残した機体、そしてパーツは放送される番組で宣伝され、 人気商品となるのである。 「ああ、お前んとこ工場勤務だったっけ」 総一は思い当たる。誠二の父はエルヴィンのとある工場で働いていた、という記憶。 その言葉に頷いて、二人は再び話し込む。 正直、あまり会社のことを知らない総一には今ついていくことはできない。 「マスター、マスター」 声の方を向くと、 むに。 そこには指があった。向くと頬が指に押されるような位置に指を置かれていたのだった。 「……パール?」 子供みたいな悪戯に引っかかった自分が許せなかったのか、パールの頬をぐにーと両側ひっぱってやる。 「いひゃいいひゃい」 解放されると、頬を抑えながら涙目のパール。子供か、と本気で呆れる。 「で、マスター」 「まともな質問じゃねェと聞かねーぜ」 「まともですよーっ。どうして弁護士の涼さんがえきしびじょんってのをするんですかってことですよ」 そういえば、パールは常識というものを知らなかった。 やれやれ、と溜息をつきながら、仕方なく総一は説明することにした。 「じゃあまず大前提からな。広瀬さんは『無敗』の『弁護士』なんだよ。 そして、結果的にエルヴィンという都市のバランスを守る一員になってるんだ」 「バランス、ですか?」 首を傾げるパール。構わず続ける。 「そう。住民側を守る立場の人な。で、ここの管理してる側はある程度の問題は裁くが、 判断が微妙だったりする場合にはロボット同士『戦闘』して決めるわけだ。 その問題を起こしている側が、個人より強い集団である『企業』だから、 企業が強いままだとやりたい放題になっちまう」 戦闘に裁判の結果が左右されるこの街では、住民を守る側が弱くては、 様々な意味で強い力を持っている企業が住民に対して異様に強くなってしまう。 そうまでになると、当然苦しくなるのは住民である。 しかし、此処に居るのは無敗の弁護士。 彼女は住民を護る側にいる人物の一人であり、不当な扱いから住民を護ることができる。 彼女が強いということは、結果的に住民側を護る力が強いということ。 「だから、俺ら住民を守ってくれる中で一番強いって言われてる涼さんは その力を企業たちにも、世間にも示す必要があるんだよ。 それで、こういう大会にもゲストで出演したりするわけ」 勿論、エンターテイメント性を欠くため大会の本編には参加できず、 彼女自身の都合のため、あまり積極的に参加というまでにはいかないが。 幸い、彼女の戦いの本質は『逆転』であり、 相手がそれなり以上に強ければ見所のない戦いは基本的に起こりえない。 言うならば、キングのデュエルはエンターテイメントでなければならないといったところか。 「そーなのかー」 「お前本当に分かってンのか?」 返事があまりに呑気すぎる。分かれよ、と力強く言いたくなったがここは堪える。 そうこうしているうちに、誠二と涼の話が終わったようだ。 「……さて、大会の間君達にやってもらいたいことは追って説明する。 少なくとも、参加はしないにしろ当日は君達も一緒に来てもらうことになるということは覚えてくれ」 「大会……ねえ」 ふー、と大きく息を吐いて呟く総一。ぐったりと机の上に突っ伏して。 「まあ、参加自体は俺達には遠い話だな」 「そうよねー。エル高といってもまだ授業って段階だし」 一人ぐったりしている総一の近くに誠二が来て、前の席の春緋が後ろを向いて。 特訓が始まってから、これがいつもの光景と化していた。 「でも、私としちゃ特等席、おまけに観戦費かからないでいっぱい撮れるだけで問題なし!」 「売るなよ?」 ちゃっかり通り越してちょっと邪な顔になっている春緋に釘を刺そうとする総一。 しかし、彼がそんなことを言おうとしたところで 「バラ撒くわよ?」 「すいまえんでした;」 ほらこんなもん。結局彼が春緋を御することは相当難しいのである。 「……ぁー?」 そんな彼の視界。一瞬、視線が包帯の少年とあう。 先日、最悪のタイミングで最悪の答えを返してしまったクラスメイト……井上純(いのうえ じゅん)。 総一の視線を感じたのか、何かに怯えるように純は顔を背け、歩いていってしまう。 (あー、謝らねェとな……) そう。あれから総一は、結局謝るタイミングを見失ってしまった。 「ハルさんハルさん、バラ撒くって何をですか?」 「ああ、それはねー……」 聞こえるのはひそひそ話くらい。 パールに何か吹き込む春緋、呆れる誠二―――って、パール? 「……は?」 「ひふっへほー?」 そこには確かにパールが居た。 「お前何で常識皆無な癖にそんなネタばっか拾ってんだってかお前ここ学校だろ出てくんなひっこんでろー!?」 あまりにわかりやすく苛立ちながら、廊下を歩く一人の男、アフロ。 その筋肉質で、あまりにも脳筋的な見た目をしているその男、アフロ。 この白アフロ―――ダンカンである。 彼は屈辱に震えていた。 どこの馬の骨とも知れぬ、突然現れた巨人に敗北を喫した。 それゆえに、彼のプライドは大きく揺らいでいた。 「やあ、負け犬さん」 突如として。そんな言葉とともに、背後から現れる少年とも少女ともつかない人間。 ダンカンが即座に放った回し蹴りは空を切り、 「いきなりご挨拶じゃないか、脳筋白アフロさん」 「黙っとれフォース! このダンカン、今非常に機嫌が悪い!」 血走った眼が、フォースと呼ばれたそれを見据える。 「あれあれ、いいのかなー? 僕は君と違って、総統の直下にいる研究員なんだけど?」 「たかが研究員、実働部隊の隊長たる我に現場判断の口出しが出来ると思ってかぁ?」 フォースの挑発に易々と乗ってしまう、それほどに今のダンカンは苛立っていた。 当然である。苛立たないわけがない。 「まあ、何も武器持ってないベルフェリオンに負けちゃ格好つかないよね」 「な、なにを貴様……」 図星を突かれたダンカンが言葉を浴びせる前に、目の前に出された携帯レーダーっぽい何か。 「この街にもう一つあるのが分かったから、これでデバイス探してこいってさ。 これ、総統からの命令だよ?」 そう口走ると、次の瞬間フォースの姿は見えなくなっていた。 「……どうにもアレは好かん」 前回の失敗のときはこっぴどく絞られ、関係者追撃を断念せざるを得なくなってしまった。 だが、いつか絶対にあの巨人にはリベンジを果たす。でなければ、我のプライドが許さない! 新たに意気込みを入れ、とりあえずはその下積みとして現状の任務を遂行することを優先した。 フォースという者はいけすかないが……。 エルヴィン第一総合高校。縮めてエル高。 ここはエルヴィンの中で最も巨大な高校である。 入りやすく学費も安い、設備も上々、特に現環境では「就職に役立つ」と人気の ロボット関連学科が充実しているということで、高校自体の人気は高い。 総一、春緋、誠二の三人は全員この高校に進み、クラスが同じである。 ……セキュリティは割と厳しく、当然部外者が勝手に入っていけないのであり。 「……何かと思ったら、そういうことね」 学校からの通報を受け、駆けつけた俊暁は頭を抱えることになった。 一応授業が終わった後だったので、総一が平謝りする羽目になってしまった。 「すみませんでした」 「いや、流石に俺も想定外だったよ……で、何で出てきたんだ?」 二人からの視線を受け、普通なら少しはそれらしい素振りを見せてもおかしくはなかった。 「暇で窮屈でした」 だが、この女はきっぱりと一言で切り捨ててしまった。 全く悪びれてない。 ……だめだこいつ、早くなんとかしないと。 「こいつどうしようトシ兄」 「トシ兄ってなんだトシ兄って」 「じゃあとっしゃん」 「普通に呼べ!」 「なんだっけかー、えー……俊彦?」 天城総一、実は他人の名前を覚えるのは苦手である。 「どうしようっつったってなあ……とりあえず涼にもかけあってみるよ。 折角だから今日は乗ってくか? 車で来てるし」 「あ、どもです」 歩きでは大変、かといって交通手段を使うのもしんどい。 総一がこの話題を受け入れないわけがなかった。 「じゃあ私助手席で」 とりあえずパールはほっぺたひっぱっておく。うにゅー。 「全く、あやつめ我々を使いッぱしりにしおって……!」 携帯電話とさほど変わらないサイズのレーダーを見ながら歩いている白アフロ。 ぶつかる? 心配はない。周辺の連れ以外は全員彼を不審人物と見ていて、避けているからだ。 「……ときにミュー、何故我々は避けられているのだ?」 「さあ……? 分かりません」 周辺の連れもこれまた変な格好だった。 黒づくめの服装の上に、一人残らず仮面をつけているのだから。 一人連れの中で背丈が低い、少女の声をした人物がミューと呼ばれ、答えを返す。 「おかしい。我の何処にも不審はない、パーフェクトなはずなのだが」 首を傾げる白アフロ。 半裸でもなく、ちゃんと上着は着ている。何故避けられているのか、彼には理解できなかった。 「黒尽くめの仮面集団とかどう考えても不審人物だろ……常識的に考えて……」 そこを通りかかった俊暁の車は信号待ち状態だった。 彼らは運が悪かったとしか言いようがない。 むしろ、リベンジを誓った相手とかち合ったことは幸運といえるのだろうか? しかし、そんなことなど総一は知る由もなく。 「どうします? あれ」 呆れながらも聞く総一、返す言葉は――― 「職質だなこりゃ」 ですよねー。 シャッター音が車内で鳴り響く中、適当なところに車を止める俊暁。 「ハル、いいかげんやめい」 「ぇー」 むー、と膨れる春緋をよそに、俊暁が車を立つ。 「何やってるんでしょうね?」 「俺が知るか」 「お前ら静かにしろ、状況が読めない」 誠二の言葉に、さすがに総一も黙らざるを得なくなった。 一人その光景を見つめているパールは、んー? と首をかしげている。 職務質問に向かった俊暁、数秒後警察手帳を出した瞬間にアフロは逃げた。 「……どうするんだ、あれ?」 「面白そっ!」 「ちょ、おいハル!?」 総一が制止する間もなく、飛び出していく春緋。 「しゃーね、車頼む! 来いパール!」 「はいさーっ」 後を追うように総一が、そしてパールが飛び出す。 「……あのなあ」 行くに行けない誠二は、車の中で待ちぼうけになってしまった。 「ぜぇ、ぜぇ……もう、逃げられないぜ?」 追うこと数分。なんとか路地裏までアフロを追い込み、銃を構える。 仲間に連絡し、応援を頼み、それでも捕まえきれずだった。 息を切らしながら、これまでのしぶとさに心中で敬意を表しながらも。 「おとなしく、同行……願おうか」 「それもいいが……古人の言葉に、頭上注意というものがあってな?」 追い詰められながらも、余裕の表情で上を指す白アフロ。 つられて上を見た俊暁の上には、巨大な足があった。 「ゲゲェー!? あのときの白アフロ!?」 いつぞやの巨大な姿。見るものを圧倒させるそのアフロの存在感。 「マスター、白アフロってことは職務質問のあの人……」 「ありうるな。ってか、トシ兄どうしたんだ!?」 追いかけている途中で全員を見失い、その光景に呆れまくっていた総一は、 そこではっと我に返り焦る。勝手に携帯に連絡とかすると邪魔だろうし…… 「ったく、とりあえず」 ここにいても仕方ない、まずは待たせている誠二のところに戻るか。 そんな思考で踵を返し、もと来た道を戻る――― 「ぬがっ!?」 「きゃん!?」 横から来た人に衝突を喰らってしまう。 痛い、特に痛いのは胸の傷ダイレクトに突き刺さった何か。 「大丈夫ですかマスター。仮面ぶちあたると痛いですねマスター」 「黙ってろお前」 しかしその言葉で気付く。 背格好は他より小さいが、黒のコートに黒の帽子、そして何より仮面。 ―――あの黒尽くめの中にいた人間の一人であると。 白アフロが関わっていた以上、この黒尽くめもジャンヌダルク? 身構えて警戒をしようとする総一、しかし黒尽くめはそれより早く――― 「す、すみませんっ」 平謝りで一礼。 「あ、ああ」 あまりにも予想外な行動に、呆然と返事をすることしかできず。 「……あんな女もいるんだな」 声質と感触で女だと断定した総一は、数秒呆れた末にこんな言葉しか出せなかった。 「それなんてギャルゲ?」 だからそういう知識ばかりどっから拾ってきた! 突っ込みを入れようとする総一の耳に届いたのは、自分の携帯の着メロだった。 開いてみると、その連絡先は俊暁。あちらから連絡してくれたのならば都合がいい。 「もしもしトシ兄!? そっちどうなってんスか!?」 『トシ兄違う! さっきの白アフロがあれのパイロットだ、 悪いけどこのまま抑えてくれないか! 今すぐ来れるのは君しかいないんだ! 俺の機体、この前ので壊れちまったしな……とにかく頼む!』 「えちょ」 切れた。あまりに一方的過ぎて、反論のしようがなかった。 確かに言い分は正しいし、まあわかるのだが。 「……いけってことかよ」 「信用なりませんか?」 「違う。またあいつかってことだよ」 仕方ない、諦めた。今自分がやるべきことは一つ、奴を止めること。 半ば強引にパールの手を取り、前に突き出す。 「女の子のエスケープがなってませんよ?」 「エスコートだ、しかも意味合いが違う。―――やるぜ」 ―――デバイス、オン! 眼前に見据えるは一機、他には見当たらない! 「先手必勝ってな!」 速攻で飛び蹴りを叩き込もうとする総一。 しかし、それが不意の一撃になるほど甘くはなかった。 「……って、マジか!?」 それどころか、その一撃を『受け止める』行為が、総一の出鼻をくじくこととなった。 『弾を感知すると書いて弾(ダン)・感(カン)! 屈辱を味わわされた貴様の気配なんぞ、 とうに覚えたわあああああ!!』 「それ単にダンカン言いたいだけじゃねーかあああああああ!?」 大きく投げ飛ばされ、建物に突き当たって止まる。 「ってて……つー……!?」 それで止まるダンカンではない。 動けない隙に距離を詰めたダンカンが目の前にいた。 『もらいやァァァ!!』 「ち、くしょ……っ!」 ―――迫る拳、バンカーはすでに準備完了していた。 腕で受け止めようとして、思い出す。 『しっかり自分でベルフェリオンを動かせるようになるまで、その腕は絶対に光らせるな』 涼の言葉。 最初は聞くつもりがなかったものの、その言葉で使用を一瞬でも躊躇った。 気の迷いが状況を悪転させてしまう。 「―――、が、は」 突き刺さるのはバンカー。一撃が重く鋭く、ベルフェリオンを穿つ。 貫通こそしなかったものの、重い一撃はその身体を傷つけ。 何より、総一へのダメージが大きく響いていた。 「マスター! しっかりしてください!」 「つっても……!」 実際、一点集中で重い一撃を与えるタイプのバンカーは大きくダメージが残る武器であり。 喰らった機体がまともに動くことはまず少ない。 ダメージが自分に跳ね返ってくるベルフェリオンであればなおさらである。 『好機、貰い受ける!』 気付けば、二撃目がすぐ傍に。 「なろ!」 咄嗟に、総一は思い切り『肩を押す』。 ―――人型ロボットといえど、想定はしていなかったことだったが。 間接の都合上、肩を前に動かせなくなったダンカンの攻撃は大きく勢いをそがれた。 そのままバランスが崩れたダンカンは、情けなくも後ろにバランスを崩す。 追撃ができるほどの体勢は整っていない……何とか、両者起き上がる。 「構造が人間とあんま変わらいのが救いだな……」 確かどっかの番組かなんかでやっていたのを思い出した。 しかし、ここまでの段階で総一は致命的な欠点を感じていた。 バンカーによる重い一撃を備え、格闘攻撃を受け流し反撃ができるほどの 能力を持っているダンカンの機体。 対してベルフェリオンは、下手を打たなければまだ攻撃を凌ぐことはできる。 しかし、あの光る腕がなければ効果的な一撃を与えることは出来ない。 「他に何かないのかよ、何か……!」 再び始まったダンカンの猛攻を、避け、流し、かすり、考える。 このまま反撃に移れる余裕などない。 やれるとしたら、不意を打った強大な一撃のみ――― そして。 あらゆる考えが錯綜する総一の横から、巨大な『壁』が吹き飛んできた。 それは碧(みどり)に身を包んだ巨人。 それは空を制し、空にたたずむ巨人。 ―――まさしく、正体不明。敵か味方かも分からない。 ただ一つ、言える事があった。 『……ベルフェリオン』 パールの呟き。 見上げる空に立ち尽くす、それは『風』を司る。 『ぬぐぐ……貴様何奴!』 風という壁に殴りつけられたのは、総一だけでない。ダンカンも同様だ。 怒り心頭といった様子で、投げかける言葉も荒い。 『本来の目的を忘れるな。お前は何のために此処に来た?』 返す言葉、ベルフェリオンからの言葉は電子音声だった。 「できんのかよ、あれ」 『さあ?』 ベルフェリオンで電子音声? 徹底的に正体を隠すつもりなのだろうか。 だが、そんなことを呑気に考えている空気ではない。 ベルフェリオンが総一を向く。咄嗟に身構える総一。 『……お前では私に勝てない』 たった一言。 直後、吹き荒れる風を感じた総一の視線は、雲ひとつない冬晴れの空に飛ぶ。 出そうとした言葉は潰され、高く宙を舞った総一のベルフェリオンはそのまま落ちる。 『捜索作業は一時中断だ、引き上げろ』 風のように現れた碧のベルフェリオンは、言葉通り風のように、消えるように去っていった。 『くぅーっ……とんだ邪魔が入りおったわ』 白アフロがブースターをふかし離脱するのを、総一は止める気になれなかった。 背中が痛い? 動くと街が壊れる? 否。 「なんだ……あいつ」 あれが、ベルフェリオン。 あれが、自身の敵。 あれが、戦う相手。 たった一撃で、全てを思い知らされてしまった。 天城総一は、あんな強さの敵と命の奪い合いをしなければならないのだと。 「はぁー……ん」 大きく伸びをしながら、カメラを首から下げて歩く春緋。 見えてきた車には、一足先に総一が乗り込むところだった。 直後。 「―――ってぇ!?」 「ってぇ、じゃない! お前らまで勝手にふらついてどうするんだ!」 「ありゃハルがどっか……」 「どうせ携帯とかあるし、終わったら連絡入れるとかあるだろ! 馬鹿か!」 珍しく誠二の怒り声が聞こえる。 そういえば、総一とパールがあの状況で私を追いかけてきたら、 誠二一人が車の中だったっけ、と春緋は一人納得する。 「やっぱ誠二も人の子なのねー」 そして、春緋もまたその輪の中に戻っていく。 ―――一瞬曇った表情を、笑顔に戻して。 桜華絢爛ベルフェリオン・SSに戻る next back
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目の前には、蹂躙される「正義の味方」。 ただひたすらに、手も出せずに撃たれ、今にも倒れそうで。 一人立っているその手は、悪鬼に届くことは無い。 「ドチクショウが……!」 現実は非情である。 力を持っていなければ、どんな正論も無力である。 力があれば。誰もが思うであろう、もしもの世界。 そんなもので、現実を変えることはできない。 「あなたは、何を望むのですか?」 願望を現実に変える。 その力は、怒りを以て悪鬼を砕く、希望の力。 桜華絢爛ベルフェリオン 第二話「デバイス・オン! 立てよ名も無きベルフェリオン!」 一面が白で覆われた部屋。光射す窓から覗く空の青さ。 目覚めた総一は、見知らぬベッドに寝かされていた。 「ここは……?」 起き上がろうとして、駆ける痛みに呻き声。 巻かれた包帯に、おぼろげながら記憶が戻ってくる。 「そっか……俺……」 生きていたのか。 利き手の左腕が無事だったのが幸い。 右腕も左足も撃たれた記憶はあり、胸の辺りの傷にも身に覚えがある。 「ここまでやられて、よく生きてたモンだよ、全く」 カプセルに倒れこみ、その衝撃で破れた切っ先が胸の辺りに突き刺さり―――少女に手を伸ばした。 記憶はそこまで。奇跡に近いこの状況に、安堵のため息が洩れる。 「って、落ち着いてる場合か!」 痛みをこらえ、なんとか起き上がる。 当然、他の人たちも自分同様に捕らえられていた。その中には、春緋や誠二も――― 「ここだ。寝てるかもしれないから極力静かに……」 ぴしゅ、と開いたドア。 そこには、見知らぬ男に連れられて、今思い浮かべていた二人が居た。 「あ……」 「ハル……誠二……?」 一瞬の沈黙。 「―――総一ぃ!!」 その間を破ったのは、感極まって抱きつく春緋だった。 言葉はろくに出ず、ただ彼の存在を確かめるように、胸に顔を埋めながら泣きじゃくる。 「えぅ、ひぐ……っ、よかった、死んじゃうかって……」 「あががががががががががが今死ぬすぐ死ぬ骨まで砕ける!?」 彼の胸の上方に傷があることにも気付かずに。 困り果てて誠二の方を見ると、彼は総一に対してため息をつきながら首を振って返し。 結局落ち着くまで痛みと耐え抜くことになってしまった。 「……それで、話進めていいかい?」 その言葉に、未だすすりながらの春緋、包帯に覆われた傷跡を抑え荒く息をつきながらの総一、呆れてため息をつきながらの誠二。 三者三様の頷きが返ってきた。 「天城君には言ってなかったな。俺は角川俊暁、巡査長だ」 俊暁と名乗った男は警察手帳を見せる。どうやら本物のようだ。 「先日の拉致事件、そこで君だけは他の被害者から、離れたところで深手を負って発見された。 大体の事件の流れは二人からも聞いたから、二人と別れてからどうしたのか教えてくれないか?」 「離れたところって……建物の中じゃなく?」 「ああ。建物の外で発見された」 記憶と食い違う。 しかし、いくら思い返しても、部屋で銃撃を受け倒れた前後の記憶までしかない。 仕方なく総一は、なるべく伝わるように話した。 「……つまり、記憶はその部屋で銃撃を受けて途切れたと。その部屋は覚えてないんだね?」 「はい。ところで、その部屋で青い長髪の女の子を見ませんでしたか?」 記憶を辿ると、見つけた少女は青の長髪だった覚えがした。 「他の身体的特徴は?」 「あー……すません、覚えてません」 必死だったためか、それ以外の特徴はよく思い出せなかった。 その直後、特徴ではなかったが、少女が一糸纏わぬ姿だったということを思い出し、 もし鮮明に覚えていたら色々と困っていたろうな、と頭を痛める総一が居た。 「そうか。わかった、今後の捜査で見かけたら声をかけてみるよ。 まずそのカプセルが見つかって、君が倒れこんだって確証が見つかってからになるけど」 面倒なことになったな、とため息をつきながら、ふと視線を窓に移す――― 飛び込んできたのは、巨大な銃弾だった。 コクピットの中で、放った銃弾が病院に突き刺さるのを確認した。 これで目標の撃滅を確認できれば、それだけで今回の任務は終わる。簡単な話だ……。 発射体勢から、再び姿を隠そうとする機体にアラートが走る。 「此処のルールを知っていて、やったのか?」 それは信じられない光景だった。 発射したまま水平を保っていたとはいえ、レールガンの上に人間が立っていた。 「病院近辺は非戦闘区域。許可を受けた機体以外は、持ち出すことを許されない」 聞く必要もない、レールガンを振り払う。 人間は直前に飛び上がり、地上から見て……考えるまでもない、その高さから落ちるのは即死確定。 しかし、それなら何故危険な行為に走ったのだろうか? 答えは簡単だった。 「wake up―――」 突如地を割り顕れる、白と紅の巨体。それが人間を拾い上げる。 既に手段は整っていた、その上であの行動―――簡単なこと。 「FLAMBERGE」 今の行為は、単なる警告だった。 「何これ!? 事件が転じて超☆ラッキー! フランベルジュの『戦闘』なんてそうそう見られないわよ!」 ファインダーの先では、問答無用で所属不明のBMMを殴りつけ、光の剣で裂く機体の姿。 フランベルジュ―――エルヴィン内でもひときわ有名な、黎明期の機体。 多くが謎に包まれているワンオフ機で、伝わっているのは基本武装と所持者くらいだという。 「……待て。フランベルジュがわざわざ顔を出すってことは、相当な大事じゃねーのかよ?」 相変わらずの野次馬気質に、傷口を抑えながら頭を抱えて総一の一言。 しかし、肝心の春緋は残念ながらまったく聞こうとせず、 『ブラスターファング!』 「わっほぅ!」 これである。 フランベルジュの繰り出す腕部付属の有線武器を飛ばしての攻撃に沸いている彼女を相手に、 まともに話が通用するわけもなかった。 しかしその攻撃は正確にBMMを捉え、砕いていく。 「お前が心配するまでもなく、終わりそうだな、天城」 「まったくだ」 杞憂だったか、とため息。現に、フランベルジュは正当な『戦闘』では負け知らずなのだ。 その強さは本物であり、BMMで相手になるわけでもなかった。 『ファング……バイト!!』 エネルギーを纏い、一機に拳を叩きつける。そのエネルギーは後方まで貫通し、 ステルスで隠れていたであろう敵すらも砕いた。 未だ無敗の巨人。剣の線を、秩序を乱す者を決して許さない。 その力こそ、剣の線の護り手(ソードラインガードナー)フランベルジュ。 「しかし、何故にフランベルジュがこんなとこに?」 総一の疑問ももっとも。 そんな有名人がこのような場所にいるのは、偶然だと考えるのが一番早いだろうが……。 「俺が呼んだ。警察の方もあの事件で5機破壊されたりで大変だから応援が欲しかったんだよ」 「うっそ、呼べる立場!?」 「すっげー。そんな人とは全然思えなかった」 あのねえ……と、二人の反応に頭を抱える俊暁。 確かに誰から見ても普通の警官なのだが、その事実だけでそこまで驚くのもどうか。 「失礼だ、二人とも」 あきれ果てた誠二も意に介さず、総一の視線は避難している人に向いていた。 「……呼べる立場だから俺らのとこに居るのかと思った。 普通ああやって避難手伝ったりするのが警察の仕事かと」 「俺は君らについてやるのが仕事なの!」 こんな手のかかる奴らのお守り、好き好んでしたくねえよ。 角川俊暁、心の中で盛大なため息。 「……お?」 避難の光景を眺めていた総一に、ふと青髪ポニーテールの少女が目に映る。 服は……着ていた。見るところはそこじゃない。 少女から眼が離せない。 しかし、特徴をよく覚えていなかった総一には、それが一度会った少女かどうか断定はできなかった。 「……あいつか?」 逃すより行動。まず行動する、それが天城総一だった。 「総一? どうした?」 「話の女だよ! いるかもしんねェ、探してくる!」 「おい、ちょ……」 追いかけようとする誠二を手で制止する俊暁。 彼を見ると、俊暁は顎で指し示す。 そこでようやく、誠二は気付いた。何か大きなものが空に浮かんでいるのに。 「……何だあれは?」 「さあ? 飛行ロボットか何かじゃない?」 「待て。さすがにそこまで呼べるのか? ここですら常時飛行はレアロボだろ?」 多様な意見を飛ばしつつ、上空に浮かぶものに眼を向ける二人。 「警察もあんなもの所持してないし、広瀬も持ってきてないはずだ」 「ってことは―――」 直後、その上空から電気を纏った投網のようなものが広がり落ちてきた。 ……病院をまるごと覆うように。 『ダ―――ンッ、カァ―――ン!』 奇声を放ちながら降り立つ奇妙なロボット。 その外見は頭のアフロ。まずアフロ。白アフロ。 腕部、膝部にパイルを装備したその姿でもっとも印象に残るのは、だがアフロ。 『おおっと残念ながら防がれてしまった感』 余裕綽綽と言わんばかりに見下ろすその先には。 『く……ぅ……っ』 対抗手段がないと悟り、自分に絡ませることで病院への被害を防いだフランベルジュ。 『まあ、対抗手段がなくば当然とはいえるが。 というわけで……これ以上邪魔をするというならば、お引取り願おうか?』 ガコン、と両腕の長大なパイルが引かれる。 これを何度も打ち込まれたら、さすがのフランベルジュも大打撃は免れない……。 『弾が貫くと書いて弾(ダン)・貫(カン)! 思う存分、打ち込んだらぁぁぁ!!』 天城総一は、その光景を見上げていた。 結局少女を見失い、避難が進んでいるのか誰も居ない街角で、その光景は鮮明に写る。 一撃、二撃。小気味よいとまでいえるパイルの連打……。 「な、何だよ……これ……!」 目の前には、蹂躙される「正義の味方」。 ただひたすらに、手も出せずに撃たれ、今にも倒れそうで。 一人立っているその手は、悪鬼に届くことは無い。 「ドチクショウが……!」 現実は非情である。 力を持っていなければ、どんな正論も無力である。 力があれば。誰もが思うであろう、もしもの世界。 そんなもので、現実を変えることはできない。 「あなたは、何を望むのですか?」 願望を現実に変える。 その力は、怒りを以て悪鬼を砕く、希望の力。 「俺ァな、友達が苦しむのは見たくねェんだよ。誰かが近くで困ってると何かしたくなるんだよ」 フランベルジュが倒れれば、当然奴らの牙は自分に。他の被害者達に。 何より、春緋に、誠二に。 「他人だからって放っておけるか! 自分だけよけりゃいいっつーなら、 困ってる他人にどうにもできない自分がいいたァ思えねえよ!」 言葉の出所はわからない。 ただ、言葉が届けば、その先には何かがあるとまで、呑気な思考も感じていた自分が客観的に見える。 「今ここで手が届かなかったら自分が許せない! 何もできなかった無力な自分が!」 少年は叫ぶ。あてもない、誰も居ないはずのこの空間で。 「ならば力を与えましょう。運命の枷を与えましょう。求める力を与えましょう!」 吹き荒れる風、少年の目の前で溢れる光。 少年は直感した、理解した。 「お前……か……っ」 目の前の少女は、少年を此処まで導いた少女は、あの時自身を導いた少女と同じなんだと。 「我はベルフェリオン第七素体。盟約を」 言葉に導かれる。それ以上の説明は不要。 頭に焼きついていく方法に従い、もはや自分の意志が消えうせ、 何かに操られているかのように、自然と身体が動く。 唇が彼女と重なる。何かが刻まれていく、心の中でそう感じた。 ―――動く。 身体の自由を感じた総一は、迷わず彼女の右手に自身の左手を絡め、前に突き出す。 自身の望みが叶うなら、力がこの手で震えるならば。 「「―――デバイス・オン」」 そして、二人の声は重なる。 『あまり気は進まないが、これもお仕事ですってなぁ~!』 連打、連打。厚い装甲が一点集中により穿たれ、突破口を開かれはじめる。 こうなれば、もはや装甲としての意味は薄い。 『そろそろ終わりにしてやろう!』 両腕のパイルが同時に引かれる。 今日は日が悪いな……フランベルジュの『呻き』を感じ、操縦者は一人つぶやく。 本来ならば、ここに割って入るパターンに自身はいるのだが。 『ちぇいやああああああ!!』 さて、どうするか。この状況でどう逆転するか。 その思考は――― 目の前で沸いた腕に、止められた。 『ぶべっ!?』 勢いをそがれ、盛大に青天するアフロ。 浮いていた腕は、前に進むとともに実体を顕す。 握る拳、大地を踏みしめる足は蒼き姿。 そこには、他の兵器と同等の姿をもった巨人が居た。 「ちょっと、何あれ!? 聞いてないんだけど!?」 「警官さん、あれも呼んだのか?」 いや、と首を振る俊暁。フランベルジュとアフロの間に割り入ったのは謎の機体。 マッシブな形状のそれは、アフロの前に立ちふさがっている。 「あんなロボット、俺も見たことないぞ。というかあれ、ロボットなのか……?」 あっけにとられる二人、ひたすらシャッターを切る春緋。 『おのれ何者―――む、もしやそれはベルフェリオン!?』 『はいはーい♪』 『って、いきなり誰よ!? さっきと性格変わりすぎじゃね!?』 あ、総一だ。 付き合いの長い春緋と誠二の二人には、声だけですぐ分かった。 『誰って、これが素ですよ? あ、名前言ってませんでしたね。 私はパール、ベルフェリオンのデバイスです』 『その説明でわかると思うかああああああ!!』 こんな状況でも、全力で自分の性質を存分に発揮している。 「……もしかすると、あれって」 指さして示しながら問う俊暁に、静かに頷く二人。 そういうことか……光景を目の当たりにしながら、一人納得する俊暁。 今立ち尽くすその機体は、いつか見た悪魔。 あれこそ、ベルフェリオンという姿なのだと。 「で、どうすりゃいいんだ」 視線は大きく。アフロも、そしてフランベルジュも人並みに見える。 『とりあえず、全力であれをボコ殴りにしちゃってください』 「おうよ―――って、武器は?」 殴りにかかる直前、ふと気付く。相手はパイル装備、こちらは素手で戦うというのだろうか? 「銃は?」『ありません』 「剣」『ないですよ』 ……ない? 「弓! 斧! 槍! ハンマー! ヨーヨー!」 『マスターにそんな玩具は必要ないです』 なにもなかった。 お前、武器のひとつもなきゃ何にもできねーだろうが……! 心の中でつぶやくも、状況が変わるわけでもなく。 『だから前回みたく、殴り勝てばいいんですよ』 「馬っ鹿、それができりゃ……」 『貴様……なめとんのか?』 気付けば、アフロが既に立ち直り、拳を向けていた。 「う、のおおおおおお!?」 反射的。やられると思ったその瞬間、全力で思い切り拳を握り締め―――。 『べごがぁ!?』 殴りぬいた。相手より先に。 そしてその威力とくると、頭部がその拳に思い切りへこまされ、無残な状態に。 なんだ、俺ってけっこうやれそう? 『うぉのれええええ!!』 その油断を打ち砕いたのは、腕から飛んできたパイルだった。 「ぃ……ってぇぇぇ!? あだだだだだ!?」 悶絶。 突き刺さったそのパイルから、本人に直接響く痛み。 『あ、言い忘れてましたけど。今のマスターはベルフェリオンと感覚を共有しています。 ベルフェリオンが痛いならマスターも痛いってことですね』 先に言え。そう言おうとした総一の眼前に、 『隙を見せたのが命取りだ!』 パイルを引き出したアフロが迫っていた。 「な、な、どああああああ!?」 これ以上喰らったらまずい。あんなパイルを喰らえばひとたまりもない。 せめてパイルさえなければ、まだ何とかなるのに……! ベルフェリオンは『がんぼうき』。望みを叶える『がんぼうき』。 『―――な』 「マジ、かよ」 その時、起こった現象は。果たして、彼が願った以上のものだった。 アフロの機体が放った拳は、ベルフェリオンに届くことなく。 総一が突き出したその掌の先から、そのまま消えてしまっていた。 「隙を見せたのが命取りだ!」 立ち直ったのは、総一が速かった。振りかざしたその拳を、全力で――― 「自分で言ってちゃ、世話ねェよなぁぁぁ!!」 打ち付ける。 『ぬお、おあああああ!?』 自慢のアフロを含め、銀色に光る拳が、頭部を削りぬいた。 その状態のまま、胴体に思い切り膝を打ち込む。高く吹き飛んだその機体は。 『貴、様……このままでは済まさんぞおおおおお!!』 脱出装置が吹き飛ぶ、直後に爆散。 周囲を見渡す……レーダーがついていないのがもどかしいが、とりあえず他には何も見えない。 「終わり、か?」 あわただしくなる周囲、ふと病院の前を見ると。 シャッターを切りまくる春緋、呆然と立ち尽くす誠二、なにやら連絡をとっている俊暁。 「……戻るか。話は後だ、ちゃんとついてこいよ?」 『はい、マスター』 短く声を立て、戻ろうとする――― 「待て。マスターって何だ?」 『マスターはマスターですよ、私のご主人様です』 凍りつく。 その後状況が落ち着き、再び話を整理するまで時間を要することとなった。 少年は力を手にした。この事実が、世界にどう響くか……それは、誰にもわからない。 3話予告 総一「ふう、死ぬかと思ったぜ」 春緋「それ定例にしないでよ?」 総一「わーってる。多分最後だ」 誠二「とりあえず状況は落ち着いたな」 パール「これから何するんですか?」 総一「尋問」 パール「ほえ?」 総一「てめーの事全部話して貰うぜ」 パール「ま、マスターのけだものっ!?」 総一「どういう思考でそうなる!?」 春緋「え・ろ・す! え・ろ・す!」 総一「DA☆MA☆RE」 誠二「…………。 次回、桜華絢爛ベルフェリオン『騒動、その後で』 お前ら、次回予告くらいちゃんとしろ」 総一・春緋「「こいつが!」」パール「マスターが!」 誠二「……はぁ」 桜華絢爛ベルフェリオン・SSに戻る next back
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XEXEX / ゼクセクス コナミ 1991年 AC 横スクロールSTG 謎の生命体「フリント」をR-TYPEの「フォース」の用に脱着して戦うのが戦闘のかなめ 「イレーネ姫」のステージ間デモはフェリオスと並ぶ名作 「私自らが出ます!」はこのゲームが元ネタ 移植 沙羅曼蛇 ポータブルPSPに収録されている 関連 がんばれゴエモン2~奇天烈将軍マッギネス~?? 実況おしゃべりパロディウス オトメディウス グラディウスシリーズ
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東京都 新宿区 住所東京都新宿区高田馬場4-8-8 最寄駅JR山手線、西武新宿線高田馬場駅早稲田口、東京メトロ東西線高田馬場駅(T03)1番出口 1プレイ 100円 設置タイトルB1Fキング&バルーン フェリオス 2FアフターバーナーII(アップライト) サンダーセプターII ムーンクレスタ サスケVSコマンダー ゼビウス ギャプラス 営業時間10 00 - 24 00 駐車場なし 地図Yahoo!地図 マピオン BingMaps GoogleMaps 備考2020/11/23プレオープン→2020/11/29グランドオープン 最終更新日2020/12/11 18 02 59
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