約 4,268,726 件
https://w.atwiki.jp/silentspear/pages/6.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/208.html
鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑨ 前へ 戻る 次へ 515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01 52 03.45 ID ZBLQCw1f0 始めに気付いたのは、一夏だった。 「お前は!エム……ッ!!」 もう白式の展開は間に合いそうもない。このまま生身で、あの高出力BTライフルの直撃を受けたら……。考えるより先に、体が動いた。この場で最優先すべき事は、セシリアを、セシリアだけでも安全な所に……一夏はセシリアの体を抱きしめ、跳ぶ。どこまで避けられるか判らない。でも、セシリアに傷一つ負わせてたまるものか。 すぐ後ろで、施設の屋上に着弾の気配と熱量、そして衝撃がセシリアを庇った体を駆け巡った。 ―――― 「……っ!何だ、今の衝撃は!」 千冬は、本来己がそう問う権利はないイギリスのIS機関オペレーターに向かってそう問いかける。緊急事態に国籍など関係ない。オペレーターは手早くキーボードを叩き、襲撃者の特定を急ぐが……その襲撃者は、すぐに特定できた。サイレント・ゼフィルス。 「しゅ……襲撃です!襲撃者は……これは! BT試作二号機! サイレント・ゼフィルスです!!」 「対空監視はなにをやっていた!出せる機体は!?」 現れたのは過去にIS学園への強襲を敢行した亡国企業に強奪されたイギリスの第三世代ISだった。千冬はギリと歯を食いしばりながら、セシリアの姿を求めて走り出す。このタイミング、胸騒ぎがする。目的は恐らく……。 ―――― 「へえ、アレを避けるんだ?やるじゃないかついうっかり殺しそうになっちゃったよ……避けてくれて助かった」 上空に浮いたままの青いISから聞こえる言葉は、嘲笑の気配を含む。蝶を想わせるそのシルエットに一夏は見覚えがあった、いや、忘れるものか。一夏は瓦礫を大量に背中で受けて跪いたまま、亡国企業のエムとその機体を睨む。頭をどこか打ったのだろうか、額に伝う血が鼻元を通って滴っていた。 「っへ、そう簡単に、やられてたまるかよ……っ」 「い、一夏さん!!血が!!血が!!」 一夏の額を伝う出血は結構多くて、覆い被さられた格好のセシリアの頬に、ぬるりとしたそれが落ち、セシリアはこの世の終わりを見たような、まさに顔面蒼白の様子でヒステリックに叫ぶ。そんな顔、セシリアには似合わない。 (……ま、少しヒステリックに叫んでるのは結構似合うけど……そんな、心配そうな、不安そうな顔……似合ってたまるか) 516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01 54 11.96 ID ZBLQCw1f0 「大丈夫だって、こんな怪我、怪我のうちに入らない……から」 一夏はふらつく足で、そんな様子見せてはいけない人の前だからこそ確りと立ち。上空のサイレント・ゼフィルスを睨み付けながら腕のブレスレットを突き出し、そこにもう片方の手を添え、そしてセシリアにシニカルな笑みを向けた。セシリアはそれを、その表情に一瞬見蕩れたけれど、その覚悟を見れば、それ以上は何も言わない。大丈夫だと彼が言うなら、それは大丈夫。 真剣な眼をして、そっと一夏に寄り添いながらサイレント・ゼフィルスを睨みつけ、左半身を前に踵をそろえ、俯き気味に左手の親指で頬についた一夏の血をグイと拭ってから、その手をイヤカフスへと添える。 (セシリアに……あんな顔させやがって……!) (一夏さんに……よくも怪我を!) 「セシリアッ!!」 「承知しましてよ!一夏さん!!」 二人の待機形態のISが、白と蒼の輝きを其々に放つ。 「―― 来 い ! 白 式 ! ―― 応 え ろ !! 雪 羅 ッ !!」 「―― 共に舞いますわよ! ブ ル ー ・ テ ィ ア ー ズ !!」 二人の体が光に包まれ、その光が消えた後に、互いに白の機体と青の機体に身を包んだ二人が其処にいた。神々しき白の翼に禍々しさすら宿す第4世代多目的武装腕【雪羅】を装備した、世界で唯一の男性IS操縦者、織斑一夏専用機、白式・雪羅と、実験機故の線の細さ、芸術品のような繊細なデザインと、美しい蒼が映える、イギリス代表候補性、セシリア・オルコット専用機、ブルー・ティアーズ。 しかし……今日のブルー・ティアーズの姿はそれまでとは大きく違っていた。 517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 01 56 07.51 ID ZBLQCw1f0 「ぃい!? セシリア!?なんだその機体……まさかセカンド・シフト【第二形態移行】したのか!?」 一夏が、セシリアとその愛機の姿に驚きの声を上げる。特徴のあるシールドバインダーは更に大型化され、装着されたブルー・ティアーズ(ビット)のマウント数がバインダー上下に一基づつ増えている。単純なスタピライザーユニットだったリア・アーマーにもビットのマウントが増設され、一見するとプロペラントにも見える腰のミサイルビットはそのままに、そのさらに外側に大型のスラスターユニットが装備され、いつかのストライク・ガンナーパッケージを連想させるスカート状に増設されたウェストアーマーにも左右一基づつビットが装備されていた。頭部ハイパーセンサーもストライク・ガンナーのブリリアント・クリアランスのバイザーに形状が近くなっており、総合強化が図られているのが一目でわかった。 「残念ながらセカンド・シフト【第二形態移行】ではありませんわ……鈴さんの甲龍に装備された崩山の総合強化パッケージというコンセプトを参考にしたブルー・ティアーズのBT強化パッケージ、クイーンズ・グレイス(Q.G.)と申しますの、いかがですか?一夏さん♪」 一夏の前でセシリアは、まるで新しい洋服を恋人の前でお披露目するかのようにくるりとステップを踏むように一回転しつつ、腰部の強化スラスターを吹かし、一気に上空へと上がってゆく。腰部のスラスター・ユニットはかなり稼働範囲が広く作られており、フレキシブル・スラスター・ユニット【テンペスト】と名付けられている。ざっと見ただけで四基だったBTビットが一気に十二基に増え、全体重量は見るからに肥大化しているが、その重量を本来のスラスターと、両腰に増設された【テンペスト】により無理矢理相殺している。むしろ上昇速度は、従来のブルー・ティアーズを遥かに凌ぐ出力でその体を空へと舞わせた。 (…………) スカート状になった腰アーマーの隙間からISスーツに包まれたセシリアの腰がちらりと見えると、なんだかいつもの状態よりもとても、視線を引き付ける。こんな時に不謹慎かもしれないが、一夏はいつかのテスト勉強のとき、誘惑に負けて覗いた今は青いスーツに包まれる白く形のいいそのヒップラインを思い出していた。一瞬惚けた一夏は、軽く視線を逸らしてから深呼吸をする。もう自分のものにはならないだろうその体。あのときああしていれば、こうしていれば、そんな後悔は浮かぶけれど、酷く気分は晴れ晴れとしていた。 「やっぱり……いい女だよな、セシリアは……。 ……俺みたいな男でも、傍に居てもいいって言うなら……俺は例え一方通行でも構わない。……俺は、俺はセシリアの傍で、セシリアを見つめ続ける……」 セシリアを見送りながら、自分に暴行しようとしかけた男にさえ傍にいて良いと言ってくれたその言葉を、そう言って寄り添ってきたセシリアの瞳を思い返し。決意を胸に右の手に雪片を出現させながら一夏もまた、セシリアを追って上空へと上がって行った。 518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02 03 00.73 ID ZBLQCw1f0 長く伸びたいくつものビットが作り出す末広がりのシルエットは、ゴテゴテの重武装にも拘らず豪奢なドレスのようなデザイン性を保ち、セシリア・オルコットを彩っている。が。明らかに歪な、強引なコンセプトの強化だった。それは、本来搭載される筈の無かった装備を無理矢理調整したという事を如実に表している。 「イギリスの代表候補生……なるほど、その大きすぎるスラスター……。その装備は私の追加パッケージだな……? まさか旧型に装備して持ちだしてくるなんて、いよいよ英国もヤキが回ったか」 上空で待機したままセシリアを迎えたエムの指摘通り、これはイギリスのIS開発機関の苦肉の策だった。揶揄めいた嘲笑の態を崩さないエムに、バイザー越しの鋭い視線をセシリアは投げ続ける。 「あなた用?世迷言を!……その機体、サイレント・ゼフィルスは我が国イギリスのものですわ!……そして……このクイーンズ・グレイスは私とブルー・ティアーズの為に調整されたオートクチュールでしてよ!」 セシリアが虚勢を張る。オートクチュール等では無い、実際にエムの言う通りなのだから。しかし、そんなことは関係ない。揺るがぬ誇りと自信が、虚勢を現実にしてくれる。 「フン……何がクイーンだ、全身火器のハリネズミが……」 大型のシールドバインダーに連結された左右4つづつのビットを切り離しながら、セシリアはさらに上昇する。 「……面白い……抵抗するがいい……抵抗してもしなくても……泣きながら命乞いさせてやる……さぁ、たっぷりともがけ」 本来、サイレント・ゼフィルスに装備される筈だったBT兵装強化パッケージ。その強奪の為に再びイギリスの空に現れたエムは、バイザー状のヘッドアーマーの隙間からのぞく口元を酷薄な笑みに歪め、手にしたライフルの先端にブレードを展開して瞬時加速【イグニッション・ブースト】を行い、一気にセシリアとの間合いを詰めようとする。 そこへ、白い影が割り込んできた。銃剣を雪片で受けながら、一夏はエムの突撃を許さない。IS学園で学び、いくつもの戦いの中を進んで来た一夏の経験が、セシリアとブルー・ティアーズ.Q.G.の欠点を理解させる。近付かせちゃいけない。 Q.G.装備は【テンペスト】による高推力と高機動の両立を成しえている。ともすれれば無敵とも言えるそのコンセプトはそもそも機体重量が重いという欠点を無理矢理解消させる為の副次的要素に過ぎない。確かに推力は高く、そのスラスターをフレキシブルに稼働する事で尋常ではない機動を見せる、しかしその重さ故に生まれる慣性は、逆噴射による静止行動にさえ極めて低い運動性として現れるはずだ。高機動と一口に言っても、それにも種類はある。ここまでくるともはやジェットエンジンを積んだ航空機に近いかもしれない。高速移動しながらの高機動戦闘こそがQ.G.の舞台であり、高機動高運動性を求められる近接格闘戦闘は今まで以上に苦手になったと考えていいはずだ。 ―――― だったら、やる事は一つだろう? 「やらせるかよ!俺がいるんだぜ!!」 519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02 07 45.68 ID ZBLQCw1f0 白式はほぼ完全に格闘戦に特化されていると言って良い。運動性云々の話だけではなく、武装の面で。雪羅になって荷電粒子砲の使用は可能になったがあんなものは牽制の役にしか立たないと言ってもいい。実際学園で模擬を行う時はあんなもの身内にさえまともに当たった事が無い。だったらいっそ、出力を絞ったシールドといつも通り雪片での近接戦闘のほうがまだマシというだけだが。 「っは!お姫様気取りのハリネズミが調子に乗ってると思ったら、今度は偽者がナイト気取りか……学芸会か?」 エムが、セシリアを護るように立ちはだかる一夏に嘲笑を浴びせかけながら、ビットを切り離す。数基をセシリアへの攻撃に、数基は自身の周囲に展開する。 エムは知らなかった事だが、以前セシリアのクラスのライバルは、ブルー・ティアーズを女王の騎士と呼んで、自らとその黒い機体を黒騎士と呼んだ。ならば今日、この戦場において女王の青騎士団よりも傍で女王を護るその勇者は、白い機体になぞらえて"白騎士"とでも呼ぶべきだろうか。奇しくも伝説の名、奇しくもそれは白式の真実の名。 「ナイト気取りでもなんでもいいぜ。白騎士参上、なんつってな!」 それを聞き、エムの表情から余裕が消える。沸き上がるのは、憎悪、憤怒、嫉妬。殺すなと言われている?構うものか、必ず殺してやる。姉の名はこのようなつまらない女を護る為に立つような男が名乗って良いわけが無い。 「お前……白騎士を……白騎士を名乗っていいのは……ねえさんだけだぞ……? もういい、ここで死ね!!」 激昂したエムが一旦銃剣を引き、もう片方の手でナイフを出しては、次々と投げつけながらながら後退し、セシリアへと狙いを変える。ナイフは牽制、払い除けていては、セシリアへの攻撃を実行させてしまう。そう判断した一夏は防御もせず、一夏は体でそれを受け、シールドエネルギーが削られるが、そのまま一気に間合いを詰め、エムに斬りかかる。 「なにッ こ……こいつ!?」 「やらせねぇって、言っただろうが!」 咄嗟に近接ブレードでその剣を受け、凌げば、流れる動きで二撃目、三撃目が迫る。一夏の武器は近接ブレード一つだった、実際に一夏はそれを扱う事の方が得意だったし、千冬も言っていた、一つの事を極めるほうが向いていると。逆に言えば、それならば、どのようなエースにももはや引けは取らない。四合目に鍔競り合いとなり、一夏は額から口元まで流れてきた己の血をぺろりと嘗める。 520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02 14 22.56 ID ZBLQCw1f0 「一夏さん!!援護いたしますわ!!」 運動性の低いISは基本存在しない。勿論サイレント・ゼフィルスも高い運動性を備えているのだが、どうしても動いた時に慣性が多少は働く。よってIS同士の射撃戦闘はその慣性制御の瞬間をいかに撃ち抜くかがキモとなり、当然それをさせない為に常に移動を繰り返しての戦闘が基本となる。ただしそれは通常の相手ならばの話。相手は、BT偏向制御射撃【フレキシブル】を使いこなす相手、フレキシブルの真の恐ろしさは、エネルギーの直接制御により、慣性法則を無視した偏向制御を瞬間的に行える事。つまりこの慣性制御の瞬間を確実に撃ち抜く事が出来るという即応性にある。 先程切り離した八基のビットが其々エムに照準を合わせ、レーザーを放つ。その内のどれがフレキシブル射撃なのか判らない以上確実に防ぐと判断したエムは、シールドビットをばら撒きつつ、四基のレーザービットをフレキシブルで射撃しレーザー同士をぶつける事で相殺し、それで足らない手数は一本に一基のシールドビットを意図的にぶつける事でそれを防ぐ。 同じ精神制御マニューバー同士であれば、相殺はわけもない。しかしこれではワリにあわない、そもそもまだあのハリネズミは全部のビットを切り離してさえいない。そもそも、まさか八本全てがフレキシブルで射撃されていた事に、エムは驚きを隠せない。 「同時八基の完全精神制御……!? これを才能で片付けろとでも言うのか!化け物め!!」 たかが候補生という認識をエムは改める。早くその間合いに飛び込み、この化け物を仕留めなければ。レーザービットを飛ばしてセシリアを追わせるが、圧倒的な推力と機動性にビットが間合いを保って牽制を続けることさえままならない。そうこうしているうちに今度は一夏が切りこんできて、制御のままならなくなったレーザービットが撃墜された事を認識する。直撃は受けていないし、シールドの残量は十分にある、しかし、こちらも全く有効打を与えていない……それどころか (完全に押されている!?こんな、たかが代表候補生と偽者の学生コンビなんかに……!) エムの表情からは完全に余裕が消えていた。別に侮ったわけではないつもりだった、常に戦いにおいては冷静、冷徹、確実に作戦をこなす為の一つの機械のように、正確に敵を撃つ。それだけだ。しかし……俄かには信じられない。 (このままでは……私が落とされる……?) ≪撤退しなさい、エム≫ ≪なん……だと……私はまだ……≫ ≪エム、わかって。 ま だ あなたを失うわけにはいかないの≫ スコールからの一方的な通信が切れる、撤退だ、悔しいが、仕方が無い。……仕方が無い筈なのに、内心安堵の溜息が出る事が悔しくて唇を噛む。勝てない、このままでは勝ち目はない、それを心が認めていた。 521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02 17 53.52 ID ZBLQCw1f0 エムの誤算は二つある。最もエムにとって予想外だったのは、セシリア・オルコットの急成長。その成長の切欠が、自身がイギリスの専用機を奪って使用している事にあるのだから、侮っていたと言えば侮っていたとも言える。セシリア・オルコットの前にこの機体で現れるのならば、覚悟をしておくべきであった。市街地での追撃戦の際に、自機の稼働限界も省みずに追い縋り、機体を破壊されながらもBT偏向制御射撃【フレキシブル】で一矢を報いたのは他ならぬセシリアだったのだから。 そして二つ目は、相手コンビの本質を見極め損ねた。例えば織斑一夏の変化、初めて、本気で好きになった女性を護る。俺の女に手を出させない。今の一夏は揺るがぬ男の矜持を以って立っている。本人的には自分の女というわけでもでもないかもしれないが、実際の所、二人は完全に両想いであり、やってる事は恋人同士のそれ、しかも姉公認。ただの即席コンビどころか、心から信頼したもの同士だった事。 「くっ……くそ……!! ―― 動くな、動けばあの建物を吹き飛ばす!」 スターブレイカーを真っ直ぐと先程屋上を破壊した施設に向ける。今度は威嚇などでは無い、最大出力の一撃を撃ち込むとそう宣言した。スコールによってISを使っての殺人だけは禁止されている以上実行はできない、もはや作戦の続行は不可能と判断したエムは撤退の時間稼ぎのために人質をとる戦術をとった。なりふりなど構っていられない。 (屈辱だ…………ッッッッッ!!このような真似をしなければ撤退も見込めないのか私は!!!) あの圧倒的な推力を見る限り、ブルー・ティアーズ.Q.G.相手にサイレント・ゼフィルス単機の撤退が成功するとは思えない。むしろ、人質をとったところで逃げ切れる保証さえ無いのだから。エムは内心の焦りを酷薄な笑みを浮かべる事で隠しながら、二人の応答を待つ。 522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/11(月) 02 18 31.61 ID ZBLQCw1f0 ≪……一夏さん≫ ≪判ってる……ここは学園じゃない、障壁があるにしたってさっきの様子じゃ施設は……≫ プライベートチャネルで短く言葉を交わす。セシリアにとってここは自身の未来に等しい施設、一夏にとっても、それは同様だ。セシリアは自力でもオルコットの家を維持し続ける手腕があると千冬がベタ褒めしているのを聞いた事はあったけれど、国家の庇護無しとなればその責務は今の比では無い。 BTの研究機関であるこの施設を失いブルー・ティアーズがその価値を失ったなら、国家による庇護を失ったセシリアは学校を辞めてしまうだろう。IS学園の特例条項がその身柄を護ってくれるラウラやシャルロットとは違い、セシリアが背負うものは自分自身の事ではない。その肩に掛かっているのはオルコット家全体なのだから。 そして今この施設には、千冬がいた。あの人を人間扱いすることは間違ってる。日ごろ一夏はそう思っていないわけではない。間違いなく化け物の部類で超人で、鬼で悪魔で神で邪神。素手でIS用の刀を振り回し、金属バット一本で専用機を秒殺する、自称Great Teacher Orimura. (それでも……たった一人の、俺の肉親) それはセシリアも同じ気持ちで。厳しくも優しい人、女性としての憧れの対象。柔らかな笑顔で家族を見守り、無償の愛を捧ぐ人。いつかあんな風に強くなりたい。憧れのお姉様、と言っても少しだけ、クラスメイトのそれとは意味が違う。憧れの……お義姉さま。 (家族を……見放せるわけありませんわ……) 人質に取られて、敵を逃がしたとあっては千冬は怒るだろうか。ちらりと一夏がセシリアの方を向くと、丁度セシリアも一夏の方を向いている所だった。何も言わなくても、プライベートチャネルを使ったわけでもないのに、不思議とその意思が伝わってくる。 ―――― 一緒に怒られよう。 二人の心は一つだった。 幾度か前後にスラスターを吹かせながら空中での待機状態を作るセシリアと、エムからいったん離れ、雪片を納める一夏を見て、エムは満足げに唇の端を上げ、そして……欲を出した。 540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/12(火) 02 28 53.18 ID ZsGqx1fD0 「いい子だ……動くなよ?」 口の端を大きく歪め、エムは銃口の先を一夏に向ける。それを見て、セシリアが構えるけれど、その機先をエムの言葉が制す。 「動くな、聞こえなかったか化物……ビットもだ、戻せ……」 「……ッ!!!」 セシリアの顔に悔しさが浮かぶ、それを横目で見ると、エムの心には言いようのない満足感が満ち足りる。ああ、満足だ、とても満足だ。浮遊していた八基のビットがブルー・ティアーズ.Q.G.のシールドバインダーに戻ってゆく。エムには信じられない、こんな甘い小娘が、八基ものビットを同時に操り、その光条さえ支配下に置いたということが、信じられない……冗談にも程がある。 「セシ……なんとかと言ったな……確か……オルコットの当主だったな」 エムが独白のように呟きを漏らす。それは問いかけのように、セシリアの耳に届いた。しかし、それにセシリアは答えない。そんな事よりも、この状況について考えることが先だ。 一旦間合いを離した一夏は、剣を収めている。瞬時加速を行えば如何様にも詰められる間合いだけれど、果たして、その隙をエムが与えてくれるかは疑わしいし、武装の再展開が間に合うか……。かといって、ビットは切り離しのタイムラグが生じる。更にセシリアはメイン武器であるQ.G.装備にで採用されたチャージ可能型高出力BTレーザーライフル【スター・ゲイザーVer.1.2】をいまだ展開していなかったのも大きい。流石に普段の近接ブレード展開ほどの時間はかからないにせよ【テンペスト】の大推力任せに重量計算無視に搭載された大型ライフルは若干展開に時間がかかる。 「……答えろ、セシナントカ・オルコット」 「…………セシリア・オルコットですわ……何を答えろと仰いますの?Q.G.パッケージを寄越せとでも仰いますなら差し上げますわ。ですが、先程も申し上げましたがこの装備は既にブルー・ティアーズに最適化、再調整されておりますの……どうしても、と仰るのならば……今は武器を引いていただけるのでしたら……わたくしの、オルコットの名にかけて武装を解除して頂けるならば、をご用意しましてよ」 名を間違えられた事に現実へと帰ると、セシリアは口惜しげに名乗りを返しながら、エムがそんな交渉を呑む訳が無いだろうし、セシリアもこの装備を譲る気など無かったし、譲りたくも無い。このクイーンズ・グレイスがエムの手に渡れば、恐らくはもはやセシリアには本当の意味で手に負えなくなる……Q.G.パッケージは、イギリスの汚名返上を賭けた装備、それは英国にとっての誇り、自身にとっての誇り。エムは当初、この装備を奪いに来た筈だ。回答を求められた問いは判らないけれど……セシリアの勘が、それを聞くべきではないと告げるから、誇りよりも大事なものが、敵の手中にあるから……誇りさえも、交渉の道具にする。 「ふん、今更そんなビットだらけの欠陥機などいらん……」 そう、覚悟を一蹴されてセシリアの美しい顔が歪む、それを見ることができただけでもエムはこの卑劣な選択に価値を感じた。実際の話、このような大量に搭載されたビットは過剰としか言いようが無い。現在見た限りではあるけれど、八基ものレーザービットを同時使用することに価値が全く見出せない。それを全てBT偏向制御射撃する等出来て堪るものか。この女はその異常性に気付いているのだろうか、いや、気付いてはいまい。セシリアからは、大嫌いな人種のにおいがする。白人が嫌いなわけでもない、勿論好きでもない。ライミーが嫌いなわけではない、勿論好きでもない。 ("持つ"者の臭いだ、恵まれた者、託された者、願われる者、好かれる者、望まれる者、才能ある者、愛される者、富を持つ者、地位ある者、この女は持つ側の人間だ) 嫉妬、この世の不公平を具現化したような存在を前に、エムの心が逆立つ。そして、寄り添っていた二人の姿を思い出すと、エムの口元は今までにない愉悦に歪んだ。 「なぁに、簡単なことだ……。 織 斑 一 夏 を 、 お 前 が 殺 せ 。 さもなくば……撃つ」 その言葉に、金髪の少女の顔から血の気が見る見る引いていく、その顔だ、その顔が見たかった。絶望に彩られたその顔が、何よりエムの逆立った心を安らがせていた。 542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/12(火) 05 30 00.49 ID ZsGqx1fD0 その言葉が、セシリアの心を抉る様が、一夏の眼にも良く判る。腕部アーマーの内で拳はその動きをトレースした白式の拳の外装に傷がつくほどに強く握り締められていた。一夏はあまり、人を嫌いになる性質ではない。歳相応の粋がった言葉遣いもするし、喧嘩をしないわけでもない。怒る事だってある。それでも、今湧き上がる感情は、それとは比較にならなかった。 「……ってめえ……」 「なんだい?織斑一夏……喜べ、恋人の手で死なせてやると言っているんだ」 エムが嬉しそうに笑みながら、とんだ勘違いの言葉を吐く。恋人なものか、恋人なんて言うのはセシリアに対する侮辱だ。セシリアには殺されたっておかしくない、しかしそれは、セシリアの意思で行われるならばの話。そしてセシリアはそのような選択をする女ではない。それを深く、深く実感したのはついさっきの事だったけれど……。あんな目に合わせた相手を自然に許せる優しく誇り高い女だ。 その誇りを踏み躙ろうとしているヤツがいる。 「絶対に……ゆるさねぇ……ッ」 「……フン、お前に何ができる……これから殺される貴様に。 さあ……セシリア?」 「……くっ」 エムは促すようにセシリアに声をかけながら、スターブレイカーの銃口を建物に向ける。逆らえば撃つ。その意思を受けて、苦渋の表情で一夏を見つめるセシリアが、その右手にチャージ可能型高出力BTレーザーライフル【スター・ゲイザーVer.1.2】を出現させる。それは、もはやレーザーライフルではなかった、一瞬エムも目を見張り、一夏は吹きそうになる。スターライトMk-IIIもかなり大きかったが、円筒型から全体をスマートな直方体型に変更されて更に大型化しているせいか、まるで角材、ライフルというよりはもはやバズーカ、大砲だった。 「一夏さん…………」 セシリアは今にも泣き出しそうな顔で一夏を見つめながら、その銃口を一夏へと向ける。BT強化パッケージ、やり過ぎだろう。状況は状況だけれど、一夏はそう思わずにはいられなかった。砲身の奥、チャンバー部から先端に伸びるスリットがゆっくりと光を強めてゆく。一瞬で楽になれるだろうか、セシリアの真剣な眼差しを見つめ返しながら、一夏は…… 「……あぁ、いいぜ……セシリアがそう決めたんなら」 「……ごめんなさい……ごめんなさい一夏さん……」 「……謝るなよ、セシリア……セシリアは笑ってんのが一番だって」 二人の会話が、処刑する者とされる者の癖にイラつく甘さで、最高の気分に水を差されたエムは見ちゃいられないと舌を打つ。その瞬間、セシリア手によってトリガーが引かれ、砲身さえ内側から破壊しながら、眩い光が一条、ロンドンの空を真っ直ぐに引き裂いた。 548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02 11 24.20 ID bCtYOwM/0 セシリアの放ったレーザーは発射の直前にエムのほうに向けられて放たれた。千冬がいて、自身の生命線でもある施設を無視し、エムが施設への凶行に出る前に決着をつける。放出される膨大な熱量に耐えられずに暴発を起こして手元で爆発する試作ライフルは全くの計算外だった。身内ともいうべき英国のIS研究機関を悪く言いたくはないが、BT兵器オンリーのド実験機兵装で他国の第三世代より良い成績を残せ、実験データを残せと言ってみたり、いつの間にか強化パッケージをサイレント・ゼフィルスの分しか作っていなかったり、いざブルーティアーズにそれを搭載しようとなれば、重さを出力で相殺する突貫工事仕様だったりと本当に常々いい仕事をしてくれる。嫌いではないが、手元で爆発するメインウエポンは流石に無い。半分ほどシールドエネルギーを持っていかれながら、駆動系の異常がないことを確認し、セシリアはQ.G.のテンペストスラスターを全開に開いた。 エムの敗因は二人に時間を与えたことだ。プライベートチャネルを用いた通信等いらない。この状況ならばどう動くかを想像する。兼ねてより織斑千冬が授業中に幾度も教え子達に言って来た事が、二人のタイミングにラグを発生させなかったセシリアの射撃という名前の自爆とほぼ同時に一夏は雪羅のシールドを発動しながら、エムへと間合いを詰める。 セシリアの謝罪の意味を、その真剣な視線から理解した一夏は、すぐさまそのタイミングを計算していた。尤もこの状況の場合それは簡単だ、人質を取りながらもセシリアに火器の使用を許可したエムが浅慮か間抜けか余裕なのかは知らない。或いは一夏という存在が彼女に冷静な判断をさせなかったのかもしれない。それはともかく、仕掛けるならば射撃の瞬間しかありえない。セシリアならばどのタイミングでトリガーを引くか、 そのタイミングはほぼ完璧だったと言えた。爆風に包まれるセシリアは当然心配だったけれど、どう見ても銃の暴発による誘爆だった。ISの武装にはそういった場合の安全装置が通常は搭載されており、まず大事には至らない。筈だ。 「……貴様ら、人質を見殺しにするつもりか!!」 砲身を破壊しながら伸びる光の渦を小刻みな瞬間加速で回避しながら、エムは残っているビットを全て分離しながら、ライフルの銃口を施設へと向ける。 「撃ってみろよ!そのかわり……撃って逃げられると思うなよ?」 凄味をきかせた一夏の言葉はゆっくりとしたものだったけれど、その動きは早い。エムのマニューバをサイレント・ゼフィルスのスラスターの明滅から読み取り、迎撃に展開されるビットから放たれるBT偏向制御射撃の雨の中を小刻みな瞬間加速で避けながらぐんぐんと間合いを詰める。避けきれないBTエネルギーは雪羅で展開した対エネルギー兵器最強の盾、零落白夜のバリアシールドで叩き落とす。 「これで……終わりだ!エム!!」 一夏の全身全霊の怒りを具現化したように雪片弐型が変形し、巨大なビームブレードを形作る。 「――なァめるなァァァッ!!!!」 エムは常から他者を見下した態度を隠しもせず、敵であれ味方であれ、冷静な、冷酷な戦士としての態度を貫いてきた。シャルロットとも全く違う完全な実力に裏打ちされた上から目線。そのエムが、訪れた危機に絶叫にも似た雄叫びを上げて、スターブレイカーを実弾モードに切り替え、後方への瞬間加速という離れ業をやってのけながら乱射した。 549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02 14 55.68 ID bCtYOwM/0 三人の戦いを基地の外、高層ビルの屋上から自身のISのセンサーを使い"視て"いた女性が、小さく笑いその戦いから背中を向ける。 「だから退けって言ったのに……仕方のない子ね」 550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02 15 39.68 ID bCtYOwM/0 「うおおおおおおおおッ!!」「ッらああああああああああああ!!!!」 二人の咆哮がイギリスの空へ響く。セシリアを庇った負傷が響き、一夏は精彩を欠く動きを、強引な突貫で補う。零落白夜のシールドはエネルギー武器には無敵の盾だが、実弾兵器には途端に無力となる。雄々しき咆哮を上げながらも、みるみるうちに一夏はシールドを削られて行くが、執念の一撃が、エムの左肩ユニットを真っ二つに切り裂いた。 「ぐっ……ぅ!よくもッ」 苦渋の表情浮かべつつも、体勢を整えたエムは、シールドビットを一夏にぶつけんばかりの勢いで放出する。破れかぶれにしか見えないが。 「こんなもので!!!」 一夏の剣がシールドビットを切り裂いた。 「!?」 次の瞬間一夏の体が至近距離で起こった爆発の衝撃に弾き飛ばされる。口の中を切っただろうか、濃い鉄の味が口内を満たす。失敗した、相手はエムなのだ、一筋縄でいくわけがない。 (ばらまいたシールドは……防御でも苦し紛れでもなくこのためかよ……ッ) 精神感応機雷とでも言うべきのシールドビットが一夏にトドメを刺すために迫るけれど。その主は次の瞬間そこにはいなかった。サイレント・ゼフィルスが高速接近する敵機への警告を発した次の瞬間。近接センサーが認識できる範囲の外から、推力全開の巡航から瞬間加速を使い一気に飛び込んできたブルーティアーズの巨大な爪に掴まれながらエムは音を遥かに超えた速度域に浚われ、呑み込まれていた。 551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02 17 07.30 ID bCtYOwM/0 ―――― ブルー・ティアーズ.Q.G.の大型シールドバインダーは、上側に一つ、下側に三つのビットを搭載している。他のビットより若干よく見ると大きい左右八基のビットは実は単純なレーザービットではなかった。BT固定試験型と銘打たれたそれは、レーザーの指向性を操作できる偏向制御を応用し、レーザーを纏うことができるように小型の砲口が複数装備されているタイプで、言うなれば」、レーザーソードビットという装備だった。試験型と武装のインフォメーションに表示されているのを見ると、つい先程の自爆兵器を思い出すが、この装備の原点はセシリアだった。 以前にセシリアがビットで殴り付けるという戦法をとった情報を聞き、BT兵器新武装開発局の腕っこきエンジニア達が嬉々として即座に制作を始めたという。シールドバインダーに搭載したままブレードを出す事が出来るようにし、ビットマウントに可動域を設定したのも彼らだ。両腕とは別に特大のクローを装備しているかの状態の為、説明を受けてもセシリアはそんなゲテモノのような真似、と使いたくはなかったが。使ってみると思った以上にこのQ.G.装備の加速性にマッチしているのがちょっと癪に障る。 「――っ…………!! き、貴様ァァァァァ!!!」 レーザーブレードの爪に対し間一髪、ギリギリで銃剣を使い受け、致命傷を避けたエムだったが、の壁に叩きつけられて過剰なGを受け続けるサイレント・ゼフィルスのアーマーが限界を示すように火花を散らし始める。 「贖いなさい!あなたはわたくしの、オルコット家に銃を向けた!!!」 あっという間にロンドンの街が遠のいてゆく、都市部を離れたテンペストのスラスター口を稼働させ、エムを森林に叩きつけるように放り出しながら、セシリアは全身の十二基の騎士達を解放する。 「お往きなさい!!わたくしセシリア・オルコットの名の許に! ナイツ・オブ・ザ・ラウンド≪円卓の騎士≫!!」 少し、ラウラの病気が伝染ったかもしれない。しかし、これは高揚した精神には少し気持ちがいい。十二基のビットが空を舞い、十基が発する光条は、すべてが非同期射撃、全てが偏向制御のホーミングレーザー。キンと耳鳴りがするほどに意識を集約させ、追撃のレーザーソードビット二基がエムを切り裂いた。 「この……ば、化け物が!!!うぁぁあああああああああっ!!!!!!」 地表近くまで音速域から投げ出されたエムは満足な回避運動も取れないままに光の乱舞に全身を撃ち抜き、切り裂かれ、サイレント・ゼフィルスを強制解除させられて意識の紐を断たれた。そのおかげか、音速のまま地上に叩きつけられることは免れ、それでも十分すぎるほどの勢いではあったが、木々の中へPICによる慣性制御の保護を受けながら落ちて行った。 552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/13(水) 02 17 48.23 ID bCtYOwM/0 ====RESULT==== ○セシリア・オルコット [35分08秒・円卓の騎士] ×エム 「さあ、回収させてもらいますわ、サイレント・ゼフィルスを……」 559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 21 17 04.56 ID obN4rc4/0 ≪セシリア!セシリア!大丈夫か!?≫ コア・ネットワークを介して、一夏の声が聞こえる。未だ緊迫している様子をその声色から察すると、戦いを終え戻って来た騎士たちをマウントしながらセシリアは大きく深呼吸をして声を整え、安心させるよう、努めて穏やかな声を返す。 ≪大丈夫、終わりましたわ。一夏さんは施設の方にエムさんの収容を準備するよう伝えて頂けますか≫ ≪落としたのか……!?やったなセシリア!すげえよ!≫ 弾む一夏の声が嬉しくて、祖国の誇りを自らの手で守った事が嬉しくて、コア・ネットワークなら日本の鈴にも届くだろうかなんて思ってしまって。でも、それは今夜実家に帰ってからゆっくりと部屋の電話からしようと思いなおすと、森へと落ちたエムを回収しようと、スラスターの出力を調整しながらゆっくりと降りて行く。 「なかなか取り回しに難のあるパッケージですけれど……慣れれば低速域での近接戦闘もカバーできそうですわね」 その使いこなすのがまず難しいのが問題だけれど、と苦笑いを浮かべながら森の上に差し掛かったセシリアの右スラスターが突如飛来した光弾に撃ち抜かれ、機能を停止する。 「……えっ!?」 エムの落ちた方角とは別の方向。森の中からの狙撃かと身構えようとするが、テンペストの片方だけを失った状態ではバランスの維持さえ容易では無い。このまま足の切れた凧のように回りながら落ちてしまう前に、もう片方の出力も切れば、PICは辛うじて働いているものの重量過多により徐々にではあるけど落下してゆく。 ≪頑張った所悪いけれど、エムもサイレント・ゼフィルスも失うわけにはいかないのよ≫ 突如耳に入ったプライベートチャネルにセシリアはぞくりと背筋を震わせた。敵がまだいる。先程の攻撃はその何者かが行ったのであろう事は想像に難くない。ほぼ自然落下状態のセシリアは格好の的の筈だ、センサーの感知範囲を広げると、驚くほどあっさりその存在は感知できた。スーツ姿の女性が悠然と倒れたエムの元に向かっている。ISは展開していないが間違いなくISを所有しているだろう、それも、国家代表クラスの使い手と軍用機の 即座に十二の騎士を切り離し、その存在を囲むように展開させるが、一定の距離までその人物に近付いた瞬間からビットが次々と落とされてゆく。精神感応兵器である以上、セシリアが認識できない攻撃は回避できない。このままでは全て落とされると判断したセシリアがビットを引き上げる時、残ったビットはたったの二つだった。 ≪腕を上げたのね、ふふ、サイレント・ゼフィルスよりも"あなた"を真っ先に奪うべきだったかしら≫ 余裕の言葉が圧倒的な実力差を感じさせて、セシリアは恐怖を感じた。仕留めようとこの女が本気で思えば、その瞬間に命を落とすであろう事をじっとりと纏わりつくような視線から感じる。生殺与奪を握られている。プライベートチャネルで一夏に救いを求める事さえ、この女を刺激するかもしれないと思うと躊躇われた。 ≪うふふ、可愛い子……心配しなくても、あなたをどうこうするつもりはないわ。今日のところは≫ ≪…………ッ≫ 560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 21 18 00.14 ID obN4rc4/0 ≪ねえ、セシリア・オルコット。国も、過去も、背負うものも、全てを捨てて、楽になってみたいと思わない?あなたはしたいように生きる事が出来る、何も強制されず、何の不満も抱かず……あなたは自分でも判っているのでしょう?どうせこのまま候補生をやっていても、BT兵器実用化に向けた実験台として使われ続け、あなたの成果 だ け が、より実戦に即した経験を積んだ国家代表と共に世界の舞台へ羽ばたく……あなたという存在はその為の踏み台って≫ 女の言葉は、まるで、一人枕を濡らした日々を見ていたかのようで。より実戦向きな武装を許されていれば取らなかった不覚の日々。このQ.G.装備さえ、きっと一夏には歯が立たずに敗れるだろう。箒を削り切ることはできないかもしれない。鈴には近づかれてしまえばクイックな挙動に翻弄されるだろう、シャルロットは対策をすぐに立ててくるだろう、ラウラは本来有利なはずの状況でありながら、以前からの通算ではまだ負け越して漸くイーブン程度だろう。簪とはまだ対戦した事はないが、マルチ・ロックオンシステムでビットを狙う事が出来る打鉄弐式の性能はカタログスペックしか知らないが相性は悪そうだ。 確かに、偏向制御はモノにしたが、ブルー・ティアーズはまだセカンド・シフトできていないし、ワンオフ・アビリティだって発動できていない。じきに二年になり、一般生徒も実力を着けてくる頃だ。場合によっては、武装に極端な偏りがあるブルー・ティアーズは負ける可能性すらある。しかし、それでいいとされる屈辱、セシリアはBT兵器のデータ収集こそがIS学園入学の第一目的であり、本国は勝敗よりもそれを重視する。データを収集して、足らないところを報告したからとブルー・ティアーズにフィードバックされることは殆どなく、その代りに自分以外の誰かのためにサイレント・ゼフィルスが作られた。 不満を感じないわけがない。 ――― でも。 ≪……ふふっ。 気に障ったならごめんなさい。もし亡国企業に就職したくなったなら、いらっしゃい。いつでも歓迎するわ……また会いましょう、セシリア・オルコット≫ ―――― でも。 「…………ッ」 重量過多で動けなくなりながら、森の中、セシリアは何の言葉も返せぬまま、抵抗もできないまま、女が立ち去るのを黙って見ているしかできなかった。 一時間後、一夏から連絡を受けた機関の職員がISを解除してロンドンに向けて一人歩くセシリアを発見してかけた言葉は、彼女への労いの言葉よりもエムとサイレント・ゼフィルスを撃墜しながらまんまと取り返されてしまった事に対する叱責だった。 561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 22 39 44.06 ID obN4rc4/0 ======================================================================== 番外 IS解説 ■ブルー・ティアーズ クイーンズ・グレイス [ BT-01.qg ] 中国の「甲龍」に搭載された機能増幅パッケージ「崩山」のコンセプトを参考に、「サイレント・ゼフィルス」の為に用意されていたBT兵装の機能増強パッケージを「ブルー・ティアーズ」に搭載する為に再調整したパッケージ。 「女王の寛容」という名に反した超重装パッケージで、豪奢なドレスを思わせる外見と裏腹の、BTビットが十二基に増設されたほぼ全身火器という重火力が特徴。従来の四基から一気に三倍ものBTビットの搭載は、そのマウントユニットを含めた全体的な機体重量の肥大化に繋がり、実弾兵装を積まないが故の軽さというブルー・ティアーズの長所を完全に殺すものだった。そこで打開策として搭載されたのが大推力で重量を強引に相殺する腰部大型フレキシブル・スラスター・ユニット「テンペスト」である。 武装面では、試作型チャージ式BTレーザーライフル「スター・ゲイザーVer.1.2」を装備しており。出力最重視のチャージレーザーは余りの長大さに保持の為のショルダーアーマーと一体化され、取り回しが極めて悪いと言う欠点を抱えている上に、フルチャージした場合には砲身が一射で融解するという問題点がある。欠陥品?とんでもない、ただの試作型です。 更に増設されたBTビットのうち、大型化したシールドバインダーに搭載されているビットはBTエネルギーの固定展開が可能なモデルを採用しており、従来のオールレンジでの射撃戦闘は勿論のこと、ソード・ビットとしてのオールレンジ近接戦闘や、直接マウントしたままシールドスパイクのように使用する事も出来る。 唯一の実弾兵器であるミサイルは弾頭にBTエネルギーを含み、精神感応で手動誘導させるという仕様。 高機動+高火力を実現し、欠点らしい欠点のないように見える同パッケージだが、機体重量は極めて重くなっており、特に慣性制御にモロにその影響が現れており、致命的な迄に繊細な挙動が行い難くなっている。その為、これまで以上に極端に近接戦闘を苦手とする。更に装甲面の強化が薄く、ブルー・ティアーズでの問題点でもあった構造の精密さから来る特有の打たれ弱さはそのままであり、むしろ制御系統の増加によりこれまで以上に総合的な耐久力は減少していると考えられ、前述の突撃攻撃はあまり使用できないと考えていい。特にテンペストへの被弾はそのまま即移動不可能へと繋がる。 武装 チャージ式レーザーライフル「スター・ゲイザーVer.1.2」 × 1 ブルー・ティアーズ(BT固定展開可能多機能モデル) × 8 ブルー・ティアーズ(BT) × 4 ブルー・ティアーズ(BT弾頭搭載型ミサイル) × 2 一夏「えー、一号機と強奪された二号機の決戦ときたらフルバーニアンだろJK!!」 弾「わーいフルバーニアンだー、っておいいい!一夏ァ!これもうフルバーニアンどころじゃねーぞ!?」 一夏「こまけえこたいいんだよ、決戦仕様なんだから。セシリアがステイメンの代わりにちょこんと載ったデンチョロビウムの予定だったんだからマシになったろ」 弾「マシ……なのか?」 ======================================================================== 563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 22 44 44.09 ID obN4rc4/0 ―――――― オルコット邸へと向かうロールスロイスの車内で、一夏、千冬とセシリア、チェルシーの四人は、横向き向かい合わせの座席で長い無言の気まずい時間を過ごしていた。 「…………」 見るからに、セシリアはその瞳に涙をいっぱいに溜めており、押し黙っていた。一夏と二人で施設への襲撃を退け、世界中のIS機関が成し得なかった、サイレント・ゼフィルスの撃墜を成しえたセシリアを迎えたのは、Q.G.装備の肝であるテンペストを破壊され、撃墜したにも拘らず逃げられた事と、亡国企業への内通の容疑をかけられるという追求だった。それを聞いた一夏は勿論講義したけれど、いかなる国家にも所属していない一夏に向けられたのは講義への反論でも同意でもなく、英国への帰化の薦めと白式を調査したいという一方的な要求だった。 「……セシリアの国を悪く何か言いたくはねーけど……くそ、なんなんだよ……あいつら……こんなの……こんなのあんまりじゃねぇか」 「…………黙れ、織斑」 「千冬姉!千冬姉はこれが正しいと思うのかよ!……これじゃ……これじゃあ……セシリアは、あんなに何の為に苦しんで、悩んで……泣いてきたんだ……やりきれねぇよ!」 (……? ………一夏さん……どうして見ていたかのように知っておられるんですの……?) ふと、一夏の言葉に違和感は感じるけれど、突っ込む気力は今はなくて、セシリアは少しだけ姉弟に視線は向けるけれど、言葉は発さずに二人の会話を聞く。 「黙れと言っている!…………一夏。お前の言葉が正しかろうと、それが専用機を与えられた者の責務だ……お前はそれを言ってはいけない人間だ。……それ以上、セシリアを責めるな、それを言って苦しいのはお前でもイギリスの機関でもない、セシリアだ」 「お二人とも、お嬢様の為にありがとうございます……」 千冬が声を荒げて語る言葉は、どうしようもないほど正論で、だからって納得なんかできなくて千冬に抗議をしようとした機先にチェルシーに礼を告げられると、一夏はそれ以上千冬に反論を続けることもできず、丁度正面になるセシリアを、眉尻を下げて見つめる。 565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 23 09 47.19 ID obN4rc4/0 「…………セシリア」 「…………ごめんなさいチェルシー。一夏さん、千冬さん……仕方ありませんわ!今回はわたくしが失敗してしまったのが原因ですもの……施設の方にも、千冬先生にもお怪我が無くて何よりですわ。それに、わたくしの勝ちは勝ちですもの」 漸く顔を上げたセシリアの表情は至極穏やかで、目尻に堪った涙を指でそっと拭いながら柔らかく笑う。今回の事件での怪我人は約一名。一夏が、縫うほどではないにせよ頭に怪我をして、今は包帯を巻いている。髪を剃られるのは拒否したせいか、バンダナかヘアバンドのように巻かれた包帯が痛々しいけれど。 「……ぷっ」 「セシリア!?」 「……っくく」 「千冬姉!?」 セシリアが、一夏を見て小さく噴出し、続けて千冬が喉を鳴らして笑う。痛々しいほどに似合っていない。 「……お前、別に患部周りを少し剃るくらいいいだろう、小さな頃はスポーツ刈りにしてやったこともあったじゃないか」 「あれって千冬姉がバリカンの切れ味を実感したいって無理やりやったように記憶してるんだけど!?いいんだよ、もう血も止まってるし、剃るほどの怪我じゃないから包帯だって念の為巻いてるだけだし」 「んん?聞こえんなァ……またやって欲しいって?」 566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/14(木) 23 10 55.01 ID obN4rc4/0 やがて車が止まり、運転手が外を回り、ドアを開けると、まずはセシリアの専属メイドであるチェルシーがするりと慣れた仕草で社外へと歩み出て、一夏と千冬を促す。彼女に手を借りて車から降りると、すっかり暮れた空の下、まるで博物館か資料館を思わせる佇まいの屋敷を見上げ、一夏は目を見張り、周囲を見回すと玄関らしき大きな扉から車まで、数人の使用人が並び頭を垂れていて、びくりと身じろいだ。 「……ぅぉ……」 「何がうお、だ馬鹿者、しゃんとせんか」 スパン、と千冬の手が一夏の頭を叩く。傷口に響き、存外の痛さが走って蹲る一夏を、最後にチェルシーの手を借りながら下車したセシリアが見つけ、心配そうな声を上げた。 「い、一夏さん!?大丈夫ですかっ?」 「あ……ああ……」 一夏とセシリアの時間が始まりそうになったが、それは居並ぶ使用人たちの中で初老の男性が一歩前に出て恭しく頭を垂れる声で中断された。 「お帰りなさいませ、セシリアお嬢様」 「「お帰りなさいませ」」 男性の挨拶を合図に一糸乱れぬ仕草と揃った声が続き、館の主を迎える。セシリアは蹲った一夏の傍らで名残惜しそうにしながらも先ずは背筋を伸ばし。 「ただいま戻りましたわ。お変わりはなくって?」 その言葉を合図に、使用人たちが怪我人の手当てと、荷物の運び込みに迅速に動き始める。おそらく、仕事の関係者なのであろうスーツ姿の女性等がセシリアを囲み、手にしている資料を次々とセシリアに差し出す。一夏に肩を貸そうとするメイドの一人を千冬は片手で制し、弟の首根っこを掴んで立たせる。 「ち、千冬姉、俺怪我人なんだけど……」 「一夏さん、千冬さん」 仕事の関係者を片手で制しながら、セシリアが二人に向けて笑いかけているところだった。恐らくはここで一旦別れて、彼女は溜まっている仕事を片付けにいくのだろう。少しだけ残念そうな顔をしているのが分かって、その残念そうな気持ちが、一夏に少し伝染する。 「わたくしは一旦失礼いたしますわね。お部屋をご用意させていただきました。チェルシー、二人をお通ししなさい。何かございましたら、遠慮なくお申し付けください。ごゆっくり、お寛ぎくださいまし」 堂に入った仕草でお辞儀をひとつ、一夏に寂しさが伝染したことが嬉しくて、その声は先程まで落ち込んでいたことを感じさせないほどに弾んでいた。 568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/15(金) 00 03 55.60 ID fLADhKDz0 ――― 「それでは織斑様、何かございましたら、お声をおかけください」 恭しく頭を垂れ、部屋を出て行こうとするチェルシーの肩を、がっしと千冬が掴む。 「待て」 「……は、はあ?如何なさいましたか?」 部屋は上等の調度品が揃えられ、寮の部屋よりぜんぜん広かった、が、先程一夏が案内された部屋に比べれば随分と質素だ。そもそも先程一夏の部屋は本当に客間なのか、いろいろ聞きたいことはあるが。 「この部屋割りを決めたのは誰だ?」 「出発前にお嬢様から指示をいただきました」 浮かれきったセシリアの顔が思い浮かぶ、一夏を放り込んだ部屋は恐らくはセシリアの自室。昨日の今日でもう仕掛けるつもりかと痛い頭に軽く手を添え、深く深く溜息を吐く。確かに昨夜の仕掛け人は自分だったがそう連日は過剰だろうとなぜ気付けないのか、これが若さか、単純にセシリアがバカなのか。 「……チェルシー君、と言ったか。キミはこれでいいと思うのかね?」 「……その……寮では別々の部屋でしょうし、たまには急接近などもお嬢様がアドバンテージを握るには必要かと思いまして……織斑様、織斑先生様と致しましては、教職と言う立場を今宵はどうか……」 申し訳なさそうな顔をしながらも、チェルシーは主人のため、二つ年下の可愛い妹のような、幼馴染のため、元ブリュンヒルデにも一歩も引かずに、今夜は見逃せと、そう告げる。 「……チェルシー君…………昨夜もスイートまでとって二人きりにさせたのだ、暴走しそうだったので、私が止めたがな…………間違いしか起こらん、今のままでは」 「…………」 無言でチェルシーは千冬に深々と頭を下げ、どこかからか取り出したトランシーバーを使い、他の使用人に連絡しているようだ。 そして、通信を終え…… 「織斑様、スイートの料金は、当家がお支払いいたします。それで、一夏様は別の部屋でよろしいでしょうか」 「いや、ここに放り込んでくれ」 「かしこまりました」 その頃、一刻も早く部屋に戻るために仕事に全力を尽くしているであろうセシリアは、自身の目論見が崩れたことを知らない。『昨夜は清楚系で行ったからいけなかったんですわ!ここはやはり、せくすぃー&エロスで攻めますわ!』なんて妄想を膨らませていた。 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/sirenkouryaku/
引越ししました↓ http //wikiwiki.jp/siren/?FrontPage SIRENWIKIへようこそ SIREN(サイレン)はホラーゲーム/映画として大人気。 SIREN2も発売されました。 このWikiは攻略を目的としたWikiです。 雑談などは受け付けておりません。 新規ページ作成も許可はしていません。 ですが、情報収集などには、ご協力お願い致します。 情報提出まで
https://w.atwiki.jp/samarqand1800/pages/23.html
概要 サイレンススズカ・カガン、通称スズカガン。 ウマムスタンの現国家元首を務める十代目のカガンであり、このスレの主人公。 3人のスズカ族の中で最も天然ボケ。(93−104) 夫(婿入り)に幼馴染の主席補佐官、娘にグローリーサンデーとサイレンスサンデーがいる。 実は、軍用車など機能美を追求したデザインが好き。(24-54) 主な身分 第十代目カガン 国家統合党総裁 + 就任以前の主な歩み 元オリンピックレース中距離部門(芝2400m)の選手で三大会連続金メダルを獲得 アハルテケ学園中等部時代、自警団『アハルテケ・マローダー』を設立。内務省の支援を受けて国内の不良グループを撲滅・吸収する ウマルカンド大学、大学院をそれぞれ1年短縮して卒業・修了し修士号を得る その後、産業エネルギー省の技術官僚としてウマシアとの共同プロジェクトでそこそこの成績を残す 2022年、世界最年少の国家元首として十代目カガンに就任 作中の動向 作中人物との関係 コマンドスズカ ラスカルの従姉妹で、共和国遺産管理調査局(カガン機関)の筆頭人物。 世界の核心に関わる者として、何かと頼りにしている。 ラスカルスズカ コマンドの従姉妹。アハルテケ・マローダーの初期メンバー時代からの仲。 主席大統領補佐官 公私ともに自らを支えてくれる幼馴染で右腕で夫(婿入り)。 スズカ族とは別の有力部族の傍流出身で、スズカガンの母方の遠い親戚。 お転婆超人である彼女の行動についていけるだけの逸般人一般人。 3スレ目で結婚に至ったが、あまりにもクソボケであったためスズカガン側の家族との共謀でドッキリお見合いを仕掛けられた。 グローリーサンデー 第一子。 容姿、レース適性(大逃げマイル)、走り方、領域の性質、マルチな才能、底なしの奈落(初期のスズカガンは真っ黒な目玉になることがあった) といったように、極めて多くの点でスズカガンの生き写しである。 しかし高貴な知性を持つ馬シャマルキタルファが自分や次女を認めたのに対して彼女には敵対心を露わにしたり、 限られた交友関係しかなかった自身に対して子供たちは普通に友人に恵まれるなど、 全く同じと言うわけでもないようである。 サイレンスサンデー 第二子。 長女とは逆に、自らとはあまりに似ていない姿であり、家族の誰とも違う毛色に本人も悩んでいる。 しかしシャマルキタルファがこの母子を認めたあたり、本質的なものが似ているのかもしれない。 キタサンブラック γ世界と基準世界が融合した世界線変動後に出現した次席大統領補佐官。 当初違和感を感じていたスズカガンであったが、いつしか元からいたかのように感じるようになってしまった。 夫の後輩にしてアハルテケ・マローダー初期メンバーの一人であり、付き合いは長いようだ。
https://w.atwiki.jp/psy_ren/pages/34.html
天樹院シャオ(てんじゅいん しゃお) エルモア・ウッドで暮らす子供の一人。年齢の割に落ち着いた性格の少年で、子供達の中では最も頭脳に優れる。 自身の能力によって家族との間で不和が生じ、天樹院エルモアに引き取られているが詳細は不明。 PSI能力は、「風導八卦白蛇」や「心羅万招」等のトランス系。 バースト・ストリーム考案者の一人で、エルモアからも信頼を置かれている。 また、密かにマリーに好意を寄せている描写があるが、奥手なせいか積極的なアプローチはしていないようだ。 完全に余談ではあるが、作中でハルヒコの電磁 n(ショッカー)による空中放電を素手で叩き落した経験を持つ彼だが、 大気中を伝わる電気の速度はなんとマッハ440もの速度を誇り、これは秒速にして149km、時速にして538500km以上の速度にも及ぶ。 こんなものを放たれてから動き、あまつさえ素手で払っているということは幼少期の彼と同等の実力を持つカイルやそれ以上の実力者たちは これ以上の戦闘速度を持っているということになるのだが…。 サイレン世界のシャオ 宣戦の儀の映像では、他のチルドレンと共に戦い、命を落としたが、天樹院エルモアの死を回避したサイレン世界では生存しており、4thゲームにて、成長した姿で登場。 シャイナと互角以上に渡り合う程の実力を見せる。 子供時代から使っていた読心能力に加えて、アンチ・サイキック能力「陰陽心羅」をも使用可能になった。 少年時代に「オレ」と「僕」を行き来していた一人称は「僕」で定着しており、自分達より年下であろうアゲハ達に対しても敬語を用いている。 マリーへの想いを抱き続けているも、やはり未だに告げられないでいるらしい。 大抵の事では動じない性格は健在だが、不意にヴァンにマリーの話を持ち出されて慌てる姿も見せている。 5thゲームにてW.I.S.Eが天樹の根に侵攻した際はヴィーゴやジュナスと交戦する。
https://w.atwiki.jp/psy_ren/pages/349.html
脳獣(ブレインビースト) ネオ天草こと碓氷直属の戦闘部隊でありサイキッカーたちで構成されている。 正式名称は「ネオ天草特化戦闘部隊」。 確認されている構成員は友親、西条、戸呂臣の3名。 自分らの中に眠るPSIの力を引き出し、サイレン世界での生き方を教え導いた碓氷に対して忠誠を誓い尊崇しており、 アゲハが彼を小馬鹿にした際は「不遜だ」と憤怒している。 この時脳獣一行は碓氷の命により夢喰島探索隊として派遣されていたようで、アゲハらに襲い掛かった際にも夢喰島の情報を聞き出そうとしていた。 忠実な手駒として動いている彼らも碓氷からの評価は「並のサイキッカー」でしかない。 が、それでも島原の外に出て行動できることから、野に蔓延る量産型禁人種に遅れをとることはない程度の実力を持ち合わせていると推測できる。 「直属」と称しているだけあって、身分や規律に厳しいであろう島原内でもそれなりの地位にあったらしく、 最期はメンバーの一人である友親がジュナスの侵攻に対して島原城内を防衛、戦死したと思われる描写があった。 太河や億号がこの部隊に所属しているかは不明。 【関連語句】 ネオ天草
https://w.atwiki.jp/silentspear/pages/15.html
戦闘ルール 戦闘ルール 戦闘開始 戦闘の流れ 隊列 戦闘処理基本的な戦闘手順手順1 (命中判定とダメージ判定) 手順2 (防御計算) 手順3 (被害処理) 戦闘開始 PCPTが集団を発見した瞬間に戦闘が発生します。 基本的にマスターがそれを決定します。 戦闘の流れ 各キャラクターは1ターンごとに一回行動を行います。 全てのキャラクターの行動が終了したらターン終了です。 ゲーム内時間で1ターンは10秒とします。 隊列 戦闘開始時プレイヤーは前列か後列を選びます。 前列は前列のキャラクターにしか攻撃ができません。 後列は前列にも後列にも攻撃ができます。 最低でも一人のキャラクターが前列にいないとキャラクターは後列に存在できません。 戦闘処理 基本的にプレイヤー側PTが先行です。 プレイヤーは命中判定とダメージ判定を先に行います。 その後、生き残った敵キャラクターはプレイヤーに対して命中判定とダメージ判定を行い反撃します。 基本的な戦闘手順 手順1 (命中判定とダメージ判定) 武器にはそれぞれ、命中判定とダメージ判定を所有しています。 それぞれの判定には1d10を使います。 まず、プレイヤーは命中判定をします、命中判定とは武器の命中よりも低い数値を出す事で成功します。 ダメージ判定では武器が指定する数値を元に判定します。 例:片手斧の場合は命中が7 攻撃力が1d10+5 この場合は命中判定で7以下を出せば命中します、 ダメージ判定で6が出た場合、(6+5)=11点のダメージを相手に与える事ができます。 手順2 (防御計算) 攻撃が命中し、ダメージを受けた場合には、そのキャラクターの防御分ダメージを減らす事ができます。 もし、防御4のキャラクターが11のダメージを受けた場合はダメージから4を差し引き 残った7をダメージとして扱います。 手順3 (被害処理) 実際にHPを減らします。この時HPが0以下になった場合、キャラクターは戦闘不能となります。 HPが-10以上になった場合、そのキャラクターは死亡します。
https://w.atwiki.jp/silentspear/pages/2.html
スターター トップページキャラクターメイク 装備品一覧 戦闘ルール メニュー ここを編集
https://w.atwiki.jp/psdic/pages/173.html
作品 PSⅡ カテゴリ ショット 片手・両手武器 両手武器 攻撃力 20 対象 単体 値段 920メセタ 売値 460メセタ アンヌ?専用の両手武器。攻撃対象を一定確率で麻痺させる。 ネイ・ファースト?戦限定だが、ダメージの振れ幅が20~170程度になるバグがある。
https://w.atwiki.jp/sirenindex2/pages/57.html
――――気が付くと、上条当麻は其処にいた。 地獄のように紅く、天国のように朱い、異界の中に。 上条「此処は……」 足元には、どこまでも続く草原。 所々に点在する三角錐形の岩のような物体を除けば、視界を遮るものは見当たらない。 三百六十度、どの方向を見渡しても、地平線まで見通せる。 頭上には、曇天の空。 赤く染まった雲が、今にも落ちてきそうなくらい、不穏な模様を描いて浮かんでいた。 上条「……ああ、そうか。そういうコト、か」 何かを納得し飲み下すように、頷きながらひとりごちる。 彼は、思い出す。 此処が何処なのか。どうして自分が、此処にいるのか。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 自分が何をしたのか。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 自分は此処で、何をすべきなのか。 そして。 上条「――――また、会えたな。インデックス」 目の前に凝然と佇立する、少女を見る。 少女と、その胸に抱えられた、『首』を、見る。 禁書「――――」 彼女もまた、虚ろな瞳のまま、上条を見返す。 『首』もまた、無機質な瞳で、上条を見つめる。 上条「今度こそ、絶対に、救けてやるから」 改めて、その覚悟を口にする。 すると不思議に、上条の全身に力が漲った気がした。 錯覚に過ぎないと解っていても、上条にはそれが有難く思えた。 上条当麻は、この少女を、この世界を、救わなければならないのだ。 例え何があろうとも。 そう、その為に、彼は―――― 禁書「――――ォ、ォ」 その時初めて、ひたすらに沈黙を保っていた禁書目録の口が、厳かに開かれた。 禁書「――――ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――」 それは、始まりを告げる音。 サイレンのような、咆哮。 その音は、世界を揺らすように。 少女の口から。 少女が、その両手に抱えた、『首』の造形物から。 鳴り響く。啼き喚く。 上条当麻は、右手を握る。 上条「来いよ、禁書目録(インデックス)。 お前も、『呪い』も、この世界も、そのサイレンも。 こんなふざけた幻想、全てまとめて――――」 神浄討魔は、右手を握る。 上条「――――俺のこの手で、ぶち殺してやる――――!!」 終了条件1:『禁書目録』を倒す 禁書目録は咆哮する。 その小さな口から、この世全ての呪怨を吐き出すように。 上条「インデェェェェェェェェェェェェェェェェェェックスゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!」 己を鼓舞するかのように雄叫びを上げて、上条は走り出す。 立ち尽くす禁書目録の下へ。 狙いは、禁書目録が胸に抱えた、『首』。 理由は無い。理由は無いが、上条はそれが、その『首』こそが、真に打破すべきモノである事を直感していた。 全てを壊す為の、要の楔。 それが恐らく、あの首だ。 一体、それが何であるのか、どのような魔術的意味を持つのか、何も分からない。 だが。 上条(どんなモノだろうが関係無ぇ――――俺の右手で、ぶち壊す!!) 上条は走る。 しかしそれを、禁書目録が拒絶する。 禁書「ォォォォォオオオオオオオオオオオォォォォゥゥゥゥゥゥォォォォォオオウウウウウゥゥ」 鳴り続けるサイレンの音に、僅かな変化が起きた。 歌のトーンを変えるように、禁書目録の声がうねる。 魔術――――それも恐らくこの異界でのみ通用する、異形の魔術、だったのだろう。 駆ける上条の足元の地面が、突如塔のように隆起して、上条の身体を貫こうと襲い掛かる。 上条「ッッ!!」 無論、その攻撃は『幻想殺し』が掻き消す。 突き上げる土の塔に右手が触れた瞬間、塔は弾けるように崩れ去った。 上条の脚は止まらない。 更に、禁書目録へと迫っていく。 禁書「ゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウゥゥォォォォォオォウウウウゥゥゥゥォォォオオオオオ」 サイレンの音は更に調子を変えて、異界の摂理を歪めていく。 空間がガラスのような音を立てて歪み、罅割れる。 しかしその歪みも罅割れも、『幻想殺し』は全て打ち殺す。 音を立てて壊れていく異界を背景に、上条は走る。 その脚を止める事は、出来ない。 もうあと数歩で、禁書目録に手が届く距離だ。 禁書「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」 一際大きなサイレンと共に、禁書目録の目がカッと見開かれる。 空間の歪みは、最高潮に達している。 今にも、異界そのものが崩れて無くなってしまいそうな程に。 禁書「ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 禁書目録は、己の全てを、世界の全てを絞り出すように、吠えた。 その呪いは形を成し――――禁断の魔術へと、昇華する。 バキィン、と鋭い音がして、彼女の目の前の空間に、巨大な亀裂が現れた。 上条「――――っ!!!」 その亀裂に、上条は見覚えがない。 『今の上条』にとって、それは初めて目にする魔術である。 しかし、上条の身体が、そこに刻まれた本能が、その亀裂に、強大な危険を感じ取っていた。 上条(亀裂の中に、『何か』いる……!!) 裂けた空間の向こう側。自分たちの知る世界でも、異形の住まう異界でもない、何処か。 その向こうに座す、想像及ぶべくもない、『何か』が、上条を、見ていた。 瞬間。 巨大な光の柱が、亀裂の中から放たれた。 上条「ッッ!!!??」 上条は咄嗟に右手を突き出し、その光を打ち消そうとする。 だが。 上条「打ち……消せない……っ!?」 光の柱と『幻想殺し』は、互いに拮抗したまま、動かない。 柱の勢いに押され、上条の足が初めて止まった。 『堕辰の殺息(ドラゴンブレス)』。 呪を帯びた竜の咆哮。 全てを殺し、全てを壊す、禍つ魂の波。 上条「ぐ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」 目一杯に右手を押し込むが、光の柱には打ち勝てそうにも無い。 同時に、上条の体力にも限界が見え始めていた。 ギリギリと、波が右手へめり込んでいく。 それでも、上条当麻は諦めない。 上条「この、程度で」 光の向こう側。 そこからでは見えない少女の姿を、頭に描く。 いつも隣にいた彼女の顔を。 虚ろな目をした彼女の顔を。 とても大切な、彼女の顔を。 上条「絶望してられねーんだよオオオオオオオオォォォォォッッ!!!」 バチィィッ!!と、火花が散るような音。 上条は、迫る光の柱を『かわして』、柱の右側面へと躍り出た。 上条の右側、十数センチスレスレを、抑えを失くした光の柱が貫いていく。 『堕辰の殺息』と『幻想殺し』が拮抗しているというのなら、少なくとも『幻想殺し』をかざす間は、直接光を受ける事は無い。 押し飛ばされそうな圧力を耐えつつ、あえて『横』へと移動する事で射線を外したのだ。 だが勿論、こんなものは、ただ一瞬攻撃を凌いだだけに過ぎない。 狙いが外れていることを知った禁書目録は、間髪置かずに、光柱を真横に薙ぎ払おうとするが…… 上条「遅いッ!!」 そこで再び、『幻想殺し』に阻まれる。 斜め前方に突き出された右手が、しかと光柱の攻撃を防いでいた。 そして同時に、上条は光柱から離れ、禁書目録へと近付くように、斜方に走る。 一度逃れても、再び照準を合わされれば、結局は同じ事の繰り返し。 故に、禁書目録が照準を定められぬように、横軸への動きを入れつつ、近付く。 しかし、身体全体で回避する上条とは違い、『堕辰の殺息』は禁書目録の顔向きだけで照準を合わせる事ができる。 ほんの数秒もあれば、再び正面に捉えられることは間違いない。 だが、その数秒の猶予を、上条は与えない。 元より、『堕辰の殺息』が放たれた時点で、歩数にして二、三歩ほどの距離しかなかったのだ。 ――――既に上条の拳は、禁書目録へ届く位置にある。 上条「――――これで、終わるんだな」 力を込めて、大きく一歩、踏み込む。 禁書目録の懐へ。 上条は覚えていない、いつかの時と同じように。 そして、その右手に、ありったけの力を込めて。 『首』を、殴り飛ばした。 首は大きく宙を舞い、そのまま空中で弾け散った。 まるで空気を入れ過ぎた風船のようだ、と益体も無い事を上条は思う。 サイレンの咆哮は止み、世界の綻びが少しずつ修復されていく。 禁書目録は、目を見開いたまま、身動き一つしない。 上条「――――」 上条の膝が、ゆっくりと地に付いた。 力は出し切った。全てやり切った。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ これで、自分のした事は無駄ではなかった――――そう、言えるだろうか。 そんなことを考えながら、禁書目録を見る。 呆然と、ただその場に立ち尽くす、少女の顔。 それが、突然。 ギョロリ、と。 ・ ・ ・ ・ 禁書目録の目が、裏返った。 上条「え――――?」 禁書「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」 上条の驚きは、いつのまにか再び現出した『堕辰の殺息』に塗り潰される。 再び歪み始める世界。再び鳴り響くサイレン。 気付けば、目の前には既に、光の波が迫っていて。 もう、遅い。 ――――上条当麻は、その右手だけを残して、跡形も無く消滅した。 終了条件1達成(エピソードクリア)