約 234,128 件
https://w.atwiki.jp/una-storia/pages/58.html
◆◆レース◆◆ 眠い。 ◆◆攻め◆◆ 眠い。 ◆◆防衛◆◆ 眠い。
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/7748.html
あさパラS あさパラS 2023年4月~23年6月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2023年4月1日 0’30”…Joshin
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/11742.html
あさパラS あさパラS 2024年1月~24年3月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2024年1月6日2024年1月13日 0’30”…Joshin
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/9481.html
あさパラS あさパラS 2023年7月~23年9月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2023年8月26日 0’30”…Joshin、Kowa、東洋水産
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/5630.html
あさパラS あさパラS 2022年7月~22年9月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2022年7月2日2022年8月6日 0’30”…Joshin 2022年8月27日 0’30”…Joshin、Kowa
https://w.atwiki.jp/hirireorikyara/pages/273.html
「――――うぇえい」 妙な声。 正気を少しでも保っていれば、奏でられぬような声。 だが牧歌的な字面とは裏腹に、その場にいる全ての生命がそれを死神の子守唄と認識した。 殺戮のみをただ機械的に実行する被験体の性能は、あまりにも高すぎる。 凪ぎ払う標識の刃。 確かに、交通標識は鋭利ではない。 もし仮に武器として使えるものが現れても、精々鈍器として使うのが限界だったろう。 両腕で二本の標識を持った怪人は、その定説を打ち破る。 彼が振るう標識の暴虐は、まさしく刃だった。 その証拠に、余波を受けた電柱は呆気なく倒され、無惨な姿を晒している。 人体で受ければどうなるかは――想像に難くない。 常人なら一本持ち上げるだけでも困難な物を、軽々と双刃として扱う異常なまでのパワー。 人の心を殺戮へと転換させられたことで、一切の感傷は捨て去った。 残っていたとしても、殺戮の上で不要だと判断されればそれで終わる。 彼の意思も願いも関係なしに、狂戦士00号は破壊の限りを尽くすのだ。 「チッ」 銀丘は体操選手もかくやという身のこなしで、00号の攻撃を避ける。 掠り傷なんて概念には、もう期待さえしない。 一寸の傷でさえ終焉に繋がると、そこまで深い危惧を抱いていた方が良い。 ――いのちだいじに。 それが、現在の銀丘白影の行動方針の全てだった。 確かに、あんな化け物を殺せるに越したことはない。 が、彼は既にその先のことまで見通していた。 仮にここで自分が爆弾を使い果たしてこいつを倒したとしよう。 だがその後はどうする? もう一方の化け物を捌かなければならないのだぞ? あれを殺すには、爆弾が必要だろう? もはや、これは被験体00号の猛攻から如何にして逃げ切るかの戦いと化していた。 得物が得物なだけあって、流石に刀でも一撃といくかは分からない。 銀丘はそもそも詐欺師で、別に剣の達人ということはないのだから。 暗殺には向いているかもしれないが、正面切っての打ち合いはちと厳しい。 「こ、の、野郎…………ッ!!」 01号はといえば、銀丘とは違い、ただ避け続けるだけで終わる気はなかった。 この怪物を倒すことを、前向きに考えていた。 硬化の能力があるとはいえ、あの標識を連続で受ければ不味い。 刀よりも質量で勝る標識なら、肉は斬れずとも骨が砕ける可能性がある。 そうなってしまえば打つ手は一気に消える。 肉体を守りながら、どうやって化け物を倒すか。 それはあまりにも意地悪で、苛立ちさえ覚えさせる難題だった。 ただ一つの幸運は、00号が葉月たちに手を出す気配がないこと。 彼女たちを襲っていれば、背後の二人に袋叩きにされるだろうことを00号は理解していた。 浅倉に続けて葉月まで殺されるのは御免だが、このままでは悪戯に体力ばかり消えていく。 (……どうするか。せめて一発打ち込めたら、結構変わるんだけどな……) 腹か顔面に、一発をぶち込む。 そうして無理矢理作った隙にラッシュを叩き込んで、勢いのまま終わらせる。 その為には、この怪物が痺れを切らす瞬間が必要だった。 痺れを切らして片方に執心したところを、どちらかが一気に仕留める。 苦戦しているのは銀丘もまた同じなのだ、彼とて邪魔をすることはない筈。 「――――」 しばん、しばんっ! と空気が悲鳴をあげる。 標識が交差され、まるで何かの合図のように一気に振るわれた。 目標はどちらか。 どっちが狙い目か明らかになるよりも早く、01号は拳を握って駆け出していた。 「――――あ、あぁ」 00号は淀んだ視線でそれをちらと見やり、飛び込んでくる01号へと標識を薙ぐ。 首は外れたけれど、このまま当たれば胴体両断は免れない筈。 拳を握って飛び込んでくる01号の左腕へと標識は吸い込まれていく。 ぶち、ぶちと筋肉が千切れ、血管のパイプがマカロニのように刻まれ。 四肢の一つが遂には肉より離れ、心の臓まで止まらずに刃は突き進み、程なく全てを終わらせる。 ――筈だった。 「馬鹿が! あんまり手前の力を過信してんじゃねえぞッ!!」 標識は01号の腕を切り裂くどころか、その皮膚の一枚を裂くことさえも叶わなかった。 00号はこれまでに、こんな現象を見たことがない。 そのパワーをもってして、一撃で破壊できぬ物質などそうそう無いからだ。 しかし彼は狼狽しない。 耐える物があるのなら、耐えきれなくなるまで打ち続けるだけのこと――――。 00号は再び標識を振りかぶる。 今度は首だ。 あれだけの硬度といえど、首ならば外側からの衝撃で内部を破壊できる。 彼にそんな自我は存在していないかもしれないが、ならば本能的にそんな選択をしたのだろう。 「ハッ! かかったな、間抜けッ!!」 ――が、その選択は悪手だった。 当然の選択とはいえ、決して良手といえるものではなかった。 首を狙うとなれば、それは腕で防御ができる範囲に自然と収まってしまう。 例えば、ビニール傘で首を殴られそうになったら。 しかも、十分に腕を出すだけの時間があったら。 ――それなら、傘を掴むだろう。 「――――!?」 00号の振るいし破壊の権化は、01号の手によってしっかりと掴み取られていた。 握り締められ、動かそうにも握力の束縛を破るのは直ぐにはいかない。 「捕まえたぜ!」 仕方ないからもう片方の標識で、今度は先程と同じく胴体を狙うことにする。 01号へのダメージが決して零ではないことは、誰にでも理解できたろう。 くどいようだが、標識は本来武器に区分するなら鈍器に入るだろうそれだ。 鈍器とは――その鈍さゆえに、表面に傷を作らず内側を破壊する。 01号への攻撃を延々繰り返せば、もしくは打ち所を間違えなければ、殺すことは十分に可能。 それも、被験体00号の悪魔じみた腕力をもってすれば、更に容易になる。 「…………う、ぉ」 渾身の一撃を放つ掛け声とは思えない、気の抜けた声。 音だけを聞けば、それは寝起きの第一声のようですらあった。 とてもじゃないが、人間を軽々切り裂くような一撃の掛け声には聞こえない。 風を切る音が迫る。 まるで、遊園地の絶叫マシンに乗っている気分だった。 一歩間違えればここで死ぬ。 そんな生物として当然の恐怖が、冷たさとなって01号の背中を這い回る。 標識を掴んでいた手を離した。 自由になったもう片方も宙へと振りかぶられ、第二次波となって降り注がんとする。 一発受ければ、どうしても僅かな肉体の揺らぎが起きる。 零ではない衝撃と苦痛が、わずかとはいえ確かなズレを生じさせる。 そのズレを、ズレの大きさ以上に僅かな時間で修正するのは、01号には無理だった。 だから、諦める。 揺らぎに打ち勝とうとする努力そのものを諦める。 「……そりゃあ、そうだよ」 揺らぎに勝てないのならば。 揺らぎなど起こさせてやらなきゃいい。 苦痛が苦しければ。 苦痛そのものを最初から受けなければ解決だ。 衝撃なんて考えるまでもない。 空気程度の衝撃だけなら、硬化を使うまでもなく防げる。 ましてや、硬化を使ったならそれはそよ風と比較してなお、劣る――――! 「死にかけるくらいのリスクがなきゃ、栄光なんて獲れねえ」 あと二秒もすれば、西瓜割りのごとく鮮やかさで自分の頭は砕け散る。 だからその前に、迫る標識へと01号は自ら身を投げた。 肉体を全開まで硬化させて、自分へ引導を渡すかもしれない凶器から目を離さずに。 降り注ぐ一撃へと、そっと手を寄せそれを掴む。 握り締めては意味がない。 そんな隙を作りでもすれば、そこを突かれて御仕舞いだ。 01号はもう頭で考えずに、ごく自然な直感頼みの勢いに任せて標識の威力を優しく受け流した。 ――成功だった。 狂戦士の一撃を必殺の間合いで無効化し、逆に相手の間合いを侵せるチャンスがやって来た。 二次波が辿り着くにはまだ猶予がある。 その前に、奴の懐へと入ってしまえば全ては無問題――! 「…………!」 00号は殺戮の思考に任せて、打ち込まんとしていた標識を止める。 まるで杭を打ち付けるように、今度は刺突武器として01号を目掛けた。 それが届くよりも早く、01号の拳は既に突き進み始めていた。 どちらが早いかなど、もはや考えるまでもなく明らかだ。 「おぁぁぁあああああ!! ブッ飛べぇえええええええええッッッ!!!!」 ドゴォォォオオオ――――と。 そんな擬音が聞こえて来そうな程、見事にその一撃は決まった。 00号の硬い身体をも衝撃は打ち抜き、彼の肋骨を何本か確実に破砕させた。 そして何よりも、この逃げるだけだった戦況に大きな変化が生まれていた。 00号は衝撃に耐えかね、01号の台詞通りに吹き飛んだのだ。 それは短い距離だったかもしれない。 それでも、被験体00号という怪物の『絶対性』はそこで少なからず損なわれた。 ただそれだけで――大きな大きな、進歩だった。 「は、見たか……!」 01号はしてやったり、と笑う。 爽快感があった。 自分は他人を殴ることに快感を覚えるような変態ではない筈だが、それでも気持ちが良かった。 越えられないかと思ったほど絶望的だった壁を、この手でぶち抜いたのだから。 男なら――燃えないわけがない。 「…………ぐ、うぇぁ」 00号はその口から血を流す。 腹部に強烈な一撃を受けたせいか、内部のどこかが傷付いたのかもしれない。 しかし、彼を止めるにはまだまだ足りなかった。 もし今の一撃を受けたのが銀丘白影だったなら、彼は文字通り腹部を穿たれていただろう。 全開硬化の一撃は、それに足る破壊力を内包している。 00号は被験体だ。 肉体の強度も人間なんかとは比べ物にすらならない。 だから耐えきった。 人体の限界をオーバーする威力の一発を、人体の限界をオーバーした防御力で辛くも凌ぎ切ったのだ。 「…………う、ぉぉお…………」 唸り声が響く。 殺意がそこにあった。 標識の片方は取り落としたようだが、もう片方は掴んだままだった。 得物は片方を失い。 腹を巨大なハンマー同然の拳で殴られ。 地面に打ち付けられてなお――狂戦士は立つ。 「――――――――ぉおおあああああ!!!」 それは咆哮。 殺戮を目指す怪物の、殺意をありったけ注ぎ込んだ咆哮。 ビリビリと大気が震える。 終わりが近づいていると、誰もが感じた。 誰が死んでどちらが負けるにしろ、終わりは来る。 「……良くやった」 ――だが、しかし。 勝機を前にして沈黙するは、真の世渡り上手に非ず。 「……よう、お出ましか。詐欺師」 「ああ。逃げようかとも思ったが、勝ち戦の可能性が高まったからな。勝算は五分だ」 01号の疲労とダメージを、銀丘は見抜いているようだった。 最初の標識の一撃は、実のところ未だに鈍い痛みとして01号に残留している。 常人ならのたうち回るほどの、痛み。 このまま戦いを続ければ、間違いなくボロが出るだろう。 それを理解した上で、詐欺師は自分が単独で戦うことを選んだのだ。 「五分かよ。なら、もう五分でてめえが死ぬってことか」 銀丘白影は他人の為に戦わない。 いつだって自分本意、徹底した自己中。 そんな彼に、被験体01号の健闘を労うなどといった優しさがあるわけがなかった。 ならば何故、彼は重い腰を挙げたのか。 その理由は簡単だ。 簡単すぎて、思わず拍子抜けしてしまうほどに。 「何を間違えている。私は銀丘白影(さぎし)だぞ」 ニヤリと笑って、詐欺師は自分を親指で指す。 一見すればナルシストにも見える動作を、彼のような男が行う光景はひどくシュールである。 「――零を百にし、百を零にする。そのくらい出来ずして、どうして詐欺師が勤まる」 自信に満ちた笑みで、悪徳の詐欺師は断言した。 自分の手札(カード)は数多くある。 手負いの獅子一匹仕留めるのなら、不可能ではない筈だ。 挑む価値のあるギャンブルなら――やってみるのも悪くない。 ◇ ◆ 「――――――――!!!!」 単語として成立せぬ叫びを吐き出す狂戦士を、憐れむように銀丘は一瞥する。 一度土がついてみれば憐れなものだな、と感慨さえ覚えるようにして呟いた。 その隙を理解してかせずか、とにかく00号は標識片手に銀丘へと疾駆する。 生涯で見てきた強者の中でも、これはとびっきりの危険物だ。 そして同時に、最も憐憫を覚えさせる相手だった。 手は鈍らない。 下らない感傷に流されるほど、銀丘の手は綺麗ではないのだ。 同田貫正國を構えて、肉薄する狂戦士の攻撃を軽くいなす。 慎重すぎるくらい丁寧に回避し、一筋の血液さえも流さない。 「死ね。消え失せろ」 血液を流さずに、出現させた爆弾を00号へ向けて放つ。 01号の硬化をも超えて火傷させたところを見るに、威力としては十分。 臆測の範疇ではあるものの、当たれば相当な決め手になる筈――だが。 「――!」 「…………ほう」 被験体00号は、迫る生命の危機を関知してか、ここで防御行動に出た。 道路標識の円状になっている箇所を用いて、迫る爆弾を迎撃したのだ。 吹き飛んだ爆弾は明後日の方向で炸裂し、完全な無駄弾に終わる。 悠長に構えている暇はない。その隙さえ、奴の前では死線と同義である。 「――ずぁぁッ!!」 相変わらず意味のない声を発しながら、今度はこれ迄と違い重い蹴りが繰り出される。 彼はその足で一人の獣人を殺害している。 脚力は充分――銀丘をノックアウトするには、事足りる……! 「……鬱陶しい」 紙一重でそれをかわしながら、銀丘は忌々しげに口漏らした。 そんな様子を見せてはいるものの、今のは完全に危なかった。 当たれば骨の数本は一度に持っていかれただろう。 肉弾戦とは思ったより面倒臭いものだな――銀丘はしみじみと実感していた。 だが、それでも前触れのなき狙撃に比べれば脅威でも何でもない。 「もう一度言う。失せろ」 今度はこちらも手を変えて斬撃。 しぃん、しぃんと数度の小気味いい音が鳴り、00号の肌に紅い軌跡が描かれていく。 僅かな血こそ滲ませたが、致命傷には至らない。 標識の刺突にタイミングを合わせて後退、次は本命の爆弾を用いる。 「そうだろうな。お前はどうせそうやって回避してくるのだろう――予想通りだ」 またも、標識でのホームランが決まった。 一度目なら驚きもすれど、二度三度となればそれは呆れに変わる。 そして銀丘白影なら、二度同じ行動を見せれば攻略法を明かすにも等しい。 刀を構えた銀丘が、00号の間合いへと躊躇なく踏み込み、一閃する。 「――……!」 「ほう。やはり硬いな――だが、僅かでもダメージは通るか。良し」 腕のスイング。 避けるのに然程苦はないが、背後の『奴』がここで飛び込んでくるのは予想通り。 だから避ける必要はない。 そして案の定、被験体00号の一撃は――01号のドロップキックにより阻害される。 あの性格だ。 勝利の色が際立てば、それを後押ししようとしてくることは読めていた。 「よう。待っていたぞ化け物」 「良いか、勘違いすんなよ。こいつを倒したら――次はお前だからな」 「殺ってみろ。お前を殺すのはこれに比べればずっと容易だろうさ」 結局、銀丘白影の独壇場が繰り広げられていた時間はものの一分にも満たぬ間でしかなかった。 最初から01号が乱入する展開を想定していた為、逆に01号が非情だったなら不味かったといえる。 それでも、勝ちへと導いていた自信はあるが。 自分の敗けを一切想定しない、銀丘はそういう人間だ。 「オラァッ!」 硬化を施した拳が、00号の標識と真っ向から激突する。 瞬間走る鈍痛。先程受けたダメージもまだ完全に消えてはいない。 だが、戦えと言われるなら戦うまでだ。 硬化拳が衝突した標識の部分はひしゃげ、全体のバランスを大きく損ねさせた。 無論、想定外の衝撃を受けた00号もまた体勢を崩さざるを得なくなる。 「燃え尽きろ」 そこに間髪入れず放られる爆弾。 炸裂したそれはしっかりと00号へと爆炎の洗礼を浴びせ、彼のうめき声さえ聞いた。 黒煙から立ち上がった00号の姿は、しっかりと爆炎の影響を受けていた。 右腕の一部が火傷により黒ずみ、腹部にまで火傷が及んでいる。 致命傷ではないにしろ、今後の行動へ影響を与える一手になったのは間違いない。 「ヴ、ぅうううう…………!!」 本当に怪物かと思うような呻き声をあげながら、00号は憎悪を宿した視線で二人を睨み付ける。 直後、00号は銀丘と01号が危惧していた一手を何の躊躇いもなく放った。 その前に、自身の得物である標識を真ん中から素手でへし折って、二つに分解させた。 ぶおん、と凄まじい音を立てて二つの鉄塊が放り投げられる。 その速度は野球選手顔負けのそれで、当然今までの攻撃とは大違い。 それに対して二人は、苦々しげな表情を浮かべながら各々の対処を下す。 01号は、真っ向から避けるのは困難と判断して肉体の硬化に頼る。 限界まで硬化してもダメージは免れないが、下手を打って死ぬよりはマシだ。 迫る鉄塊を目を反らさずに凝視し、思い切り腹筋に力を籠めて迎え撃つ……! 「う、ぐぁッ……!」 腹を金属バットで撲られる以上の衝撃。 流石に今のは、内臓にダメージがいったかもしれない。 せめて骨折覚悟で片手にすればよかったと、01号は苦々しげに悔いる。 だが、行動に支障が出るだけのダメージは免れた。 結果オーライだ。 銀丘はといえば、いつもの通りに爆弾を使用してそれを落とす。 残量も僅かになってきているし、あまり無駄撃ちは出来ぬというのにな――彼もまた、表情は苦い。 何より面倒なのが、あの鬼神にまだまだ余裕がありそうなことだった。 こうなれば、最悪爆弾全消費も覚悟しなければならないだろう。 ちらりと見れば、01号の方はもう既に満身創痍といったご様子。 ラハティで十分に仕留めきれると判断する。 ――良いぞ。見えてきた……"勝利"ってやつが。 何度経験しても、この感覚はどんな快楽よりも美味いと言わざるを得ない。 (……が。標識が無くたってあれは化け物だ) 交通標識を素手でへし折るような腕力に、あれだけの速度で物を投擲する技能。 まさしく理性を犠牲にすることで埒外の力を手に入れた狂戦士と呼ぶに相応しい存在。 ただの一撃だろうと貰えばそれで御仕舞い。 01号のように硬い肉体を持っていればまだしも、人間の範疇に収まっている自分にはどうにもできない。 一撃で骨は砕かれ、肉は千切れる。 これまでの人生で積み重ねてきた貯蓄も何もかもが白紙に還る。 天国のようなこの現世から、地獄のような文字通り地獄へと叩き落とされる。 それだけの悪行を犯してきたのだし当然だ。 だが。 「それは御免被る」 刀を持ったまま、らしくもない突貫をかける。 そろそろ終わらせなければ、疲労が後に響きかねない。 そうなれば、この殺し合いから生き延びるという目的が果たせなくなってしまう。 死にたくない。弱さではなく、強さとしてその言葉を使う。 「――――!!」 「やはり恐ろしい威力だ。だが、足りんよ」 降り下ろされた踵落としが、地面へと大きな皹を入れる。 銀丘の衣服の端を掠めはしたものの、素肌を一枚も切り裂けてはいない。 大技の後の隙を突くのは、こういう圧倒的な強敵と戦う時には今も昔も常套手段だ。 銀丘は刀を真っ直ぐに構え、降り下ろされた後に無防備を晒す右足へと思い切り斬りつけた。 深く入った。 脚力を奪うまでには至らなかったが、紅き血が傷口から滲み出していた。 「お前の攻撃は足りない。強さではない。速さでもない。――技術だけが、あまりに欠けている」 00号はその意味を理解しようともせずに、凶悪無比なる肉体を凶器として乱舞する。 銀丘は避けない。避ける必要がない。何故なら、彼との間に距離があるからだ。 予期していれば、寸前でかわすまで時間を作ることが出来る。 剛腕が振るわれる――まだだ。 丸太のような足が繰り出される――まだまだ。 肘が降り下ろされる――"ここ"だ。 刀の一閃で、肘の肉をわずかとはいえ切り裂いていく。 呻く様子を見せた00号の追撃を予期して体を動かしつつ、ディパックへと手を突っ込む。 ――それは、魔物。 近代兵器は数あれど、破壊力でなら間違いなくトップクラスに位置するだろう一品。 対戦車ライフル・ラハティ。 重量50kgを持ち上げるのは骨が折れるが、短時間ならば支障はない。 腕が振り抜かれたその一瞬を狙い、照準を合わせる。 勝利は既に目の前。 「――ふ」 だが、銀丘白影はそこで油断も慢心もしなかった。 00号がここに来て初めて見せたのは、その巨躯を生かしてのタックルだったのだ。 勝利を前に気を抜いていたなら、銀丘はここで全身を粉砕骨折していただろう。 これまで見せていなかっただけで、最初から銀丘はその行動を危惧していた。 予備動作も少なく、それでいながら爆発的な破壊をもたらす一撃を。 危惧した上で避け――しかし、ここで誤算が発生する。 00号はタックルという大技の代償として、嫌でも隙を作ってしまう筈だった。 その隙にこそ、万を持して一撃必殺のラハティを撃ち込む予定だった。 なのに、00号は持ち前の怪力でブレーキをかけたのだ。 そしてそこからの、回転をかけた竜巻のごとき回し蹴り。 不味い――! 銀丘はここで、初めて死の気配を間近に感じた。 死ぬかもしれないと、弱気な感情すら抱いた。 「――――ぜぇい、やぁあああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!」 ――抱いただけだったが。 周りを見失って銀丘の抹殺に燃えていた00号では、気付けなかったろう。 被験体01号とは違う、不躾な乱入者の接近に。 銀丘は回し蹴りに向けて、最早数が少なくなった爆弾を投げつけようと考えた。 だが、ただぶつけただけではこの勢いを殺すのには足りない。 そこで彼は、爆弾を攻撃だけではなく軌道を反らすのに利用する。 炸裂――00号の足が黒く焼け焦げ、振り回されていたそれは大きく空中へと反れた。 だがそれだけで終わる筈がない。 不躾極まる乱入者(ヒーロー)は、駄目押しとばかりの鉄拳を00号の背中に斜めに打ち込んだのだ。 バランスを大きく損ねた00号。 この体勢からどうやって防御ができようか。 「いい加減に眠れ、怪物」 00号はそれでも目の前の敵を殲滅するべくバランスを取り直す。 しかしあまりにも遅い。 漸くちゃんと直立した時には、既に魔物はそこで待っていた。 最期まで彼は抵抗を止めずに、剛腕を魔物――ラハティへと伸ばす。 「――――お、ぉおお――――!!!!」 無情にも、その時銀丘白影は引き金を弾いていた。 銃口から吹き荒れる暴虐は轟音となって市街地を駆け巡る。 まさしく魔物と呼ぶべき威力の弾丸は、忍び寄る剛腕を呆気なく突き抜けていく。 さすれば、その後どうなるかは想像に難くない。 運命に翻弄された狂戦士の胸の中央に、弾丸は吸い込まれる。 何が起きたとしても回避不可能な死が、そこにはあった。 「さらばだ、狂戦士(バーサーカー)」 余韻も何もあったものではなく、極めて無粋に弾丸は00号の胸板を貫いた。 それだけに止まらず凶弾は彼の強靭なる肉体さえも破砕させ、その胴体をミンチ同然レベルまで破壊する。 破壊が吹き荒れた後にも――被験体00号がもう一度立ち上がることは、無かった。 【被験体00号@新・需要無しロワ 死亡】 ◇ ◇ 終わった。 被験体00号の肉体は、損傷がひどく胴体は原型さえも止めてはいない。 あれだけの猛攻にも耐え続けた巨漢が、目の前でぐちゃぐちゃになって果てていた。 達成感のようなものはない。 それどころか、状況は更なる混迷化を余儀なくされる。 「……やったか」 漫画やアニメなら、これは絶対に『やってない』フラグとなるだろう台詞だが、現実は覆らない。 00号は死んだのだ。対戦車銃の銃撃を受けて、この世から退去した。 とはいえ、01号もどうにかして倒さなければならない。 爆弾の残りも精々数発が限界だろうし、戦うならばラハティに頼ることになるだろう。 00号より強度は上だろうが、痛覚があるのは既に確認済み。 対戦車銃ともなれば、一撃を耐えたとしても激痛のあまり気絶するのはまず免れない。 つまり、残る問題は―― 「はいはい、そこまでだ。アンタらには、今から全ての争いをストップして貰うぜ」 この、不躾な乱入者である。 拳一発で00号のバランスを崩させたのを見るに、実力はそこそこ高いと見える。 素性の知れないこの少年が、見たところ最も面倒そうな相手だった。 疲労困憊の01号に、非戦闘要因の赤髪の女たち。 加藤清正も万全だったなら不味い相手だったろうが、手負いの現状では敵ではない。 「……なんだ、お前は? 何の権利があってそんなことを宣う?」 「俺は佐原裕二。ヒーローだからな。ヒーローの言うことには従うのがルールだろ」 ……ふむ。何を言っているのかまるで分からないのは、私だけなのだろうか? 銀丘白影は、こういった会話の通じないタイプの相手が苦手である。 言葉を遣う者の天敵とでも呼ぶべき、あまりに直線的な善人。 普段なら一蹴してのけるところだが、当の銀丘も01号程は無いにしろ疲労している。 ここから再びの乱戦に持ち込まれるのは、何としても避けたいところだった。 「俺やあっちの女――葉月達はそもそも殺し合いに乗っちゃいない。 ある人間からそこの男が危険だと聞いて、やって来て戦っていたらこの有り様だ」 01号が口を挟む。 どうにも、彼が自分に喧嘩を売ってきたのは勘違いっぽくもあった。 須藤の知り合いと見える、銃弾で息耐えた一人の少年。 彼を自分が殺したと、勘違いされていたようなのだ。 その勘違いが、01号の怒りの炎を燃え上がらせ、結局戦うことになった。 勘違いが解けた原因は、銀丘がいつまでも銃器を使わなかったこと、だろう。 ようやく使ったラハティも、あれだけの威力。 少年を殺したのが銀丘だったなら、どんな手段を使ったにしろあんなに綺麗な死体にはまずならないのだから。 「ま、俺は構わないぜ。……正直、かなり休みてえところだしな」 ――やはり。01号の様子を見るに、もう無理して戦う理由はないといった様子だ。 00号の投擲をモロに受けていたのだし、あのくらいの疲労は仕方がないところだろう。 まだ銀丘が危険人物であるという烙印は消えていないようだったが。 「で、アンタはどうなんだ」 どうなんだ、と問われても。 果たしてこの少年は、自分が絶対的な不利にいることを把握しているのだろうか。 こちらは引き金一つ引けば、如何なる防御も貫通する対戦車用の一撃がぶっ放せる。 痛みを感じる間もなく、全身が吹き飛んで即死だ。 しかし彼の目は一切恐れというものを感じていないようで、臆することなく銀丘に不敵な微笑みを向ける。 「私も急いでコイツらを殺さねばならない理由もないことだしな。良いだろう、応じても構わん」 食えねえ野郎だ、と01号が吐き捨てる。 知ったことか、喰われないに越したことはないだろう――銀丘は微笑う。 答えながらも、何をするかはしっかり考えておく。 面倒な質問については嘘を吐く。 全て本音で答える必要などどこにもないのだから――――と。 「……うん、そうだよね」 その声を、佐原裕二は誰のものか分からなかった。 被験体01号も、分からなかった。 一番近くで聞いていた稲垣葉月は、特に何の感情も抱くことはなかった。 つまり、その意味合いを真に理解していたのは銀丘白影ただ一人だった。 銀丘の示した反応は――驚愕。 彼は敵も味方も関係なしに、逃げろ、と叫ぶ。 彼らしからぬ、動揺だった。 「そうだよね、うにゃー。人間って生き物は、『そういうもの』なんだよね……っ!!」 少女の瞳は、虚ろだった。 それは紛れもなく、絶望を知った者の目だった。 彼女が友と呼んだ触手が、彼女の感情に呼応するようにうねうねと蠢く。 スライムのようなそれは、水色の光沢を放っていて美しい。 しかし次の瞬間、被験体00号の『残骸』へと触手は飛び込んでいく――。 「離れろッ! 全員、喰われたくなければなッ!!」 銀丘白影は、璃神妹花という存在をかなりの脅威として捉えていた。 何故かといえば、彼女は幼いからだ。 幼いのにその身体に莫大な力を宿し、おまけにそれに引っ張られている。 それでいて人生の辛さをやけに知っており、幼さと年不相応の強さの板挟みが起きているのだ。 だから――彼女は、いつ牙を剥くかまるで分からない。 その力は、未知。 散らばっている00号の欠片が、少しずつ小さくなっていく。 それが触手により吸収されているのは、誰の目から見ても明白だった。 やがて彼の残骸が全て喰われると、妹花は虚ろな瞳のまま淡白に呟く。 子供らしく、食後の挨拶を。 「ごちそうさまでした。……そしていただきます」 触手・『うにゃー』が次に牙を剥くのは、01号。 勿論、誰を狙うかにはちゃんと理由がある。 彼女はずっと、目の前で行われる乱戦を見てきたのだ。 公平に見て、とある決断を打ち出した。 失望と絶望の果てに得た、一つの答えを。 彼女の瞳には狂気があった。 感情が臨界点を突破したからか、糞尿でその下着をぐしゃぐしゃにして、それでもなお気にも留めない。 (っ、速……!?) 銃弾などには及ばないにしろ、その速度は十分な速さだ。 01号は腕を十字に組んで一撃をガードするが、やはりずっしりとした衝撃が腕に走る。 ダメージは無いが痛覚を随分と痛め付けてくれる。 続いてやってくるのは二、三本目の触手。 これらを一気に受ければ、ダメージは然程無くともこちらの痛覚が破砕する可能性があった。 なので彼は――右に飛び退く。 「うにゃー! 全員、食べちゃえっ!!」 少女の声の後に、触手の進行方向は二つに別れた。 片方は被験体01号に向かっていき、もう片方は銀丘白影へと向かっていく。 二つとも威力は折り紙つき、油断していれば殺られる可能性は相当高いだろう。 だが、防御の術を持つ01号はまだしも、術を持たない銀丘にとってこの攻撃は実に不味いものだった。 狩られる――生物として本能的な危険を察知すると、銀丘はぐっ、と小さく呻きながら辛うじて避ける。 「あはっ! お疲れムードかな、銀丘おじちゃん?」 「ぐ、ぅ――この、クソガキが……!」 爆弾の数はそろそろ底を突く。 だが致し方あるまい。 ラハティでならこの触手もろとも璃神妹花の華奢な身体を撃ち抜けるだろうが、それは出来ない。 何分、その隙を相手が見せてくれないのだ。 この『うにゃー』と呼ばれる触手は、少女の意識とは関係なしに対象を追尾しているように見える。 だからこそ、幼さ特有の隙が全くない。 これでは、必殺の一撃を放っても瞬間的に叩き潰される。 「ッ……調子に乗るな、ガキが」 ぽい。 そんな間の抜けた音がしそうな動きで爆弾が放られ、空中で炸裂する。 残りは一発。それを使うのは、出来るなら避けたい。 残弾ゼロの状態を極力作りたくない、というのが本音だからだ。 しかし、状況は銀丘白影でさえも予想だにしないものへと変貌を遂げる。 「……!?」 爆風が晴れると、そこからは焦げ痕一つ付かないままの『うにゃー』が飛び出してきた。 咄嗟に身体を反らすも、薙払いの一本が銀丘の体へと直撃する。 骨は折れなかったと思うが、衝撃に地面を転がらざるを得なくなった。 がはっ、と息を吐き出す。 能力が効かない――――そんな性質までは、予期していなかった。 まさかの事態。こんな場でのまさかは、詰みにも等しいことを銀丘は知っている。 (悔しいが……幕、か……) 迫ってくる触手を眺める。 もはやこうなればどんな策も無意味。 サイキックは通じないし、今さら対戦車銃を撃ち込もうにも隙が足りない。 その隙があれば、あれは自分を三度は食い殺せるのだから。 (まぁ、人無の餓鬼の期待を裏切ってやれたんだ……一応、満足ってことにしてやるか) 最期まで笑みを崩さずに、銀丘は迫る『うにゃー』を見つめる。 死に際に人間は、目の前の光景をスローモーションで捉えることがあると聞いたことがあるが、本当だったとは。 時間にすれば数秒にも満たない時間が、十数秒にも感じられる。 ゆっくりと触手が迫ってきて、そうやって緩やかに生涯を終えるのだ。 悔しくはある。 生涯最後が敗北で終わるなど、銀丘白影としてはとてもじゃないが満足な結果ではない。 ふ、と笑ったまま銀丘は目を閉じ――ようとして、眉をひそめた。 「……む?」 止まっている。 これはスローモーションなんじゃなくて、時が止まっているのか。 いや、有り得ない。 時が止まっているのだとすれば、どうして自分はこうして発声できている。 時間の停止した空間で動けば大変なことになると、どこかの科学雑誌で読んだ。 ならば、もしかしてこれは。 「……ふむ、どうやら今日の私はついているらしいな」 よっと、なんて親父臭い声を出して立ち上がると、砂ぼこりを払う。 衣服が汚れてしまった。 さて、何があったのかは知らないが一矢を報いてやるとするか――そう思った時に、彼は見た。 そこで彼は後々の展開を脳内で計算し、その結果としてまず攻撃を今は止めようという結論に達した。 今対戦車銃を使えば、間違いなく二人の参加者を同時に殺せる。 殺せるのだが、その後で確実に全員を敵に回す。 そういうムードだった。 しかも自分は結構な疲労を抱えている。 身体も少し痛い。 爆弾が欠けている。 等々考慮して、銀丘はとりあえず目立つのは控えることにした。 加藤清正は、璃神妹花の小さな身体を抱いて彼女を止めていた。 「……もう、止めるのじゃ」 清正の身体からは、所々血液が滲んでいる。 早い内に適切な処置を施さなければ、最悪手遅れになるかもしれない傷だった。 あの身体では、いくら加藤清正といえどまともに動けるかは分からない。 戦うなんて――もってのほかだ。 なのに彼は毅然とその場に立ち、少女の身体をすっぽりと腕の中に収めていた。 「…………なんで? なんで、おじちゃんが止めるの?」 清正の突然の行動に、明らかな戸惑いの色を滲ませて妹花が応える。 他の人物に向ける感情と、清正に向ける感情は些か違いがあるようだった。 もし同じことを被験体01号が、銀丘白影が、佐原裕二がしたなら、すぐに触手の餌食だったろう。 この場に残っている生者の中で、彼だけが邪気なき邪から特別視を受けていた。 「清正おじちゃん、そんなに傷付いてるのに。みんなが戦いばかりしてるせいで、こんなになっちゃったんでしょ?」 違う、とは誰も言えなかった。 実のところ清正を傷付けたのはこの場の誰かではなく、既にここにはいない者たちだ。 だが、今それを言ったところで気休めにもなりはしないのは見えている。 それだけ少女の失望は深く、盲目だった。 「あそこのお兄ちゃんだって、みんなに殺されたんでしょ? なんで? なんで、あんなに仲良しだったみんなが殺し合いをしちゃうの? そんな人たちなんて――――」 浅倉翔。勇敢にも親友を助けて、命を散らした少年。 最期の行いだけは、変哲もない日常とあまりにかけ離れたものになった。 しかし、彼の死は璃神妹花の誤解を深める一つの理由にもなった。 彼の死と、清正の受けた傷を見て。 幼き少女は人間に絶望し、そこから答えを出したのだ。 「――――みんな、死んじゃえばいい」 彼女は悲しかった。 自分が何も知らないことも、そして自分が仲間だと思っていた人達がこんなに醜かったことも。 優しくしてくれた飯島遥光はどこへ行ったのだろうか。 ――もしかして、彼女もどこかで殺されているのか。 始まりは勘違いだった。 けれども、彼女はそこでこれが自分の勘違いである、なんて灯台もと暗しな答えには辿り着けなかった。 そんな当たり前に至るほど、彼女はまともな人生を送ってはこなかったのだ。 他人をそう簡単に信頼してはいけない。 疑わしくは喰らってしまえ。 それが彼女の、正義だった。 「否ッ!」 が、清正は一瞬たりとも迷うことなくそれを間違いだと断じた。 妹花の語る全てを、たったそれだけの台詞で切り裂いた。 微塵の震えもない毅然とした、まさしく大人の立ち振舞いがそこにはあった。 「良いか。人は誰もが、間違うものなのだ。こんな状況では尚更のこと。確かに銀丘殿は信用ならぬ男だが、彼には彼なりの考えがあるのかもしれん。少なくとも儂には、ここに根っからの救いようのない『屑』がいるようには見えぬ。――妹花殿。間違っている全てを殺すなんて考えは、ここに置いて行け」 加藤清正の言葉は、あまりにも重かった。 彼が満身創痍の身体だからではない。 彼が老人であるから、同情のようなものが生まれているわけでもない。 この場で誰よりも人生経験が長い清正。 ならば自然と――最も、その言葉は重く強い言葉になる。 「……違うよっ! 間違ってるのはだめなの、あっちゃだめなのっ!」 妹花は瞳からぼろぼろ涙を流して、清正に反論する。 それはとても、人喰いの触手を飼う途方もない存在には見えなかった。 そこにあったのは、怒られて癇癪を起こす少女の姿。 自分が正しいことを疑いたくなくて駄々をこねる、子供の姿だった。 「だって、まいかは間違って生まれたからおとーさん達に閉じ込められた! 間違ってたから、誰もまいかを受け入れてくれなかった! 受け入れてくれたのは、間違ってるうにゃーだけだったんだ!!」 彼女が子供であれど、自覚はしていた。 自分は――間違いなのだと。 化け物を抱えて生まれてきた忌み子とずっと呼ばれてきたのだから、自覚をしないわけがない。 自覚しながら、間違っているなりの生き方をしてきた。 けれど、それはバトルロワイアルで大きく変えられた。 気絶から目を覚まして、目の前に広がっていた惨状を見て、妹花は思ったのだ。 "――間違っているものは、全部消えなきゃならないんだ"と。 「だからまいかは、間違ってるものを全部なくす! 銀丘おじちゃんも、みんなみーんな、うにゃーに食べて貰って綺麗にするんだ! それで、最期には――」 「馬鹿者っ!!」 ばしん、と軽い音がした。 力の入ったものではなかったが、確かな痛みがあった。 清正が、自分の頬を平手で打ったのだ。 「それで自分を殺して、間違いを全部なかったことにするつもりか。 ……甘いぞ、甘すぎる! それは人生を甘く見ている者の考え方だ! そんな理由で、誰かを殺すのは断じて『間違っている』ッ!!」 「間違ってるなんて、分かってる! そうだよ、誰よりもまいかとうにゃーが間違ってるんだ! 間違ってるなら、間違ってるなりに出来ることをしたかった! 甘くなんてないっ!!」 少女の叫びは、あまりにも哀しげだった。 見ている者達でさえも、彼女へ敵意を抱き続けるのは不可能だった。 彼女の周囲に蠢く触手が、どれほど彼女の人生を狂わせたのか。 ――どうしてまだランドセルを背負っているような歳の娘が、こんな決断を強いられたのか。 そう、これは誰も悪くない。 悪いものがあるとすれば――それはこの世界そのものだ。 「もう、いいよ――」 妹花はふらふらとした足取りで、清正から後退る。 無邪気な少女の顔は、泣き顔に変わっていた。 「――清正おじちゃんなんて!」 すっと、右手をあげる。 すると、銀丘の近くで止まっていた『うにゃー』がするすると妹花の元へ帰ってきた。 誰かが悲鳴をあげた。 これから何があるのかを、誰もが悟った。 「死んじゃえば、いいんだぁぁああああ――――――――っっっ!!!!」 ――触手が迫る。 主の命で、対象を抹殺せんと迫る。 銀丘白影は潮時かと一人呟いた。 被験体01号は、走りだそうとした。 稲垣葉月は、悲鳴をあげた。 ――そして、加藤清正は直立不動だった。 ◆ ◆ ぬらぬらと、スライムは紅き液体に濡れていた。 人喰いの触手であるにも関わらず、それは一向に食事を始めようとはしない。 何故か。元々、『うにゃー』は固有の意思を持っていない。 璃神妹花の無意識と通じている、生物ですらない異常能力(サイキック)だ。 「ぇ、え、うそ……」 だから、妹花の無意識が攻撃を指示でもしない限りは『うにゃー』は動かない。 そして、今『うにゃー』が食事を始めないのは。 「…………がはっ」 加藤清正が、一切の抵抗をせずにその胴体を貫かれたからだった。 打ち所も何もない。胴体を、太い触手が貫通して、大量の鮮血を迸らせている。 誰がどう見ても長く保たない致命傷であるのは明らか。 内臓も破壊されているだろうし、背骨も一部は粉砕されているだろう。 即死をしなかったのが幸運といえるような、惨状。 それは、妹花の心を凍らせるに足る光景だった。 「お、じ――ちゃん?」 嘘だ。 嘘だ。嘘だ。 嘘だ。嘘だ。嘘だ。 清正おじちゃんがこんなに簡単に。 ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。 妹花の当惑も尤もだが、清正が動かなかったのは怪我のせいではなかった。 仮に万全の体調だったとしても、加藤清正という漢は攻撃を避けないことを選んだだろう。 老体を犠牲にし、生命を投げ棄ててでも、この道を選んだ筈だ。 そうすることでなら、届くと思ったから。 この幼く哀しい少女の心を――打てると思ったから。 「ふ、ふふ……どうし、た? 後悔している、……か?」 清正は微笑む。 弾痕を上から潰されるような傷を負いながら、清正は笑った。 幽鬼のような足取りで歩き、妹花の頭を撫でる。 「その心を、忘れるな。――振り返らずに、まっすぐ帰れ。儂のことなど、気にせずとも……良い」 「お、おじちゃん? どうして? どうして、こんなことするの?」 清正は自分の最期が、もう数秒後に迫っていることを察していた。 だからこそ、遺せる言葉をやけに冴えた頭で吟味する。 ああ、思い付いた。 二言遺せと言われたなら、これだけでいい。 どこかにいる『彼』には、もう今更語ることなどないのだから。 「妹花殿――おぬしの考えは間違っているが、おぬし自体は何も間違ってなどいない。前を向いて生きろ」 彼女は何も悪くない。 人を殺してこんな表情(かお)をする少女が、生きていて悪い筈がない。 世界の誰が彼女を疎んでも、それだけは確かな答えなのだから。 「そして、銀丘殿、ここにいる全ての者達よ――」 視界が霞む。 頼む、待ってくれ。 せめてこれだけは、言わせてくれ。 「――儂の言っていることは、間違っているか?」 答えは聞いていない。 答えが返ってきたとしても、それを聞く耳はもう機能していない。 ぐらりとその肉体が揺らぎ、地面へと崩れ落ちる。 最期に見たのは、やけに美しい真昼の半月―― 【加藤清正@DOLバトルロワイアル4th 死亡】 「――う、ぁあああああああああああああああああああああ――!!!!」 少女の慟哭が、響いていた。 それは一つの間違いの終着点。 それはシンデレラの終わり。 それは、新たなる世界の始まりの唄。 ――少女の慟哭。 ――詐欺師の俯瞰。 ――ああ、これは仇返しの終わり。 時系列順で読む Back:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 Next:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 投下順で読む Back:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 Next:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 加藤清正 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 璃神妹花 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 須藤凛 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 銀丘白影 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 丹羽雄二 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 天王寺深雪 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 狭山雪子 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 被検体01号 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 稲垣葉月 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 被検体00号 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 佐原裕二 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 神谷茜 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』 076:パラべラム・アライヴ『神様ゲーム』 阿見音弘之 076:パラべラム・アライヴ『目を覚ませ、セツナトリップ』
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/4442.html
あさパラS あさパラS 2022年1月~22年3月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2022年1月8日 0’30”…Joshin 2022年3月5日 0’30”…Joshin、セキスイハイム近畿 2022年3月12日 0’30”…セキスイハイム近畿、Joshin
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/13427.html
あさパラS あさパラS 2024年4月~24年6月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー 2024年4月6日 0’30”…Joshin
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/6323.html
あさパラS あさパラS 2022年10月~22年12月 @ytv読売テレビ + ... 共通事項 放送時間…土曜09 25~10 30 全社絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー Joshin 2022年10月1日 0’30”…Joshin 2022年12月24日 0’30”…Joshin、LION
https://w.atwiki.jp/souku/pages/1473.html
《遅延》《公開済》※日程変更※SCP000863 シナリオガイド 公式掲示板 イコンVS働くクルマ! 激化するチーマーとの抗争! 担当マスター 冷泉みのり 主たる舞台 シャンバラ大荒野 ジャンル バトル 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2010-10-10 2010-10-12 2010-10-16 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2010-10-27 2010-11-04 2010-11-08 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) イコンでチーマーと戦う + ... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 何でもいいからイコンに乗りたい ▼キャラクターの目的 イコンでチーマーと戦う ▼キャラクターの動機 センター街をパラ実生の物にしてやる! ▼キャラクターの手段 タイプはモヒカンで鉄骨を武器にします。 敵にタンクローリーがいたらそれを襲撃して火の海にしようと思います。 働くクルマでパラ実生と戦う + ... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 重機に乗るチャンスを逃さない ▼キャラクターの目的 働くクルマでパラ実生と戦う ▼キャラクターの動機 パラ実生の就職先って工事関係多そうだから ▼キャラクターの手段 働くクルマの方が強そうなので、パラ実を裏切ってチーマーになります。 乗るクルマはショベルカー。 イコンを掬い上げて、倒したところを踏み潰します。 太平洋の孤島に向かう + ... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 敵の陰謀を探りたい ▼キャラクターの目的 太平洋の孤島に向かう ▼キャラクターの動機 四天王たちを救わないとこの先の戦いに勝てないと思う。 ▼キャラクターの手段 とりあえず四天王救出を優先するが、敵の目的も探っておきます。 その他補足等 [部分編集] 【タグ:SCP シャンバラ大荒野 バトル 冷泉みのり 遅延公開済】