約 4,271,240 件
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/1195.html
今日も今日とてはやては企む。成功する当てのない作戦をひたすら企む。 なぜならそれが、目の前の現実(始末書)から逃れる唯一の方法だからだ。 だが、この日は少しだけ様子が違っていた。 八神家極秘会議場 はやて「ふっふっふ」 リインⅠ「どうかしたのだろうか、我等が主は」 リインⅡ「ああ、今日はあの日だからですよ、ずばり!」 シャマル「女の子の日ね」 はやて「ちゃうわい! 乙女の夢が実を結ぶ約束の日『バレンタインデー』や!」 ヴィータ「つっこみはえーな、おい」 シグナム「・・・二十歳前で乙女?」 はやて「・・・(ギロッ)」 シグナム「ゴホンッ・・・それで今年はどのようなチョコを送るのですか?」 はやて「よっくぞ聞いてくれたな、シグナム。なんと今年は・・・」 シャマル(シン君、いきて) リインⅠ(シン、いきろ) シグナム(シン、しぬな) はやて「あえて普通に送る!」 ヴォルケンズ「「「「 やっぱり・・・えええぇぇぇぇっ! 」」」」 ヴィータ「シャマル、担架だ!」 シャマル「しっかりはやてちゃん! 今ヘリを呼ぶから・・・」 リインⅠ「これは、闇の書の復活の兆しか!」 リインⅡ「やはり、チョコの中に何か仕込まれていると考えるべきでは!」 シグナム「いや、意表をついて包装紙か箱に仕掛けがあるのかもしれん!」 はやて「なんやその反応は! 私が普通にチョコ渡すんがそんなにおかしいんか!」 ヴィータ「でも、どうして普通に渡すんだ? 他の連中はきっととんでもない ・・・パフォーマンスをするだろうに」 シグナム(パフォーマンスか、物は言いようだな) はやて「そこなんよ、ヴィータ」 リインⅠ「そこ・・・とは?」 はやて「毎年奇抜な渡され方をされ続けとるシンは、きっと心身ともに疲れてるはずや。 今年もまた痛い目にあうんやないかってな」 シグナム(その痛い目の原因がご自分にあると気付いているのだろうか) シャマル(奇抜な渡し方って自覚はあったのね) はやて「そこで、私だけが普通にわたしてみい。『はやて部隊長だけが普通にくれるなんて。やっぱり、俺の嫁ははやてしかない! 結婚してくれ、Myハニー』もちろんやMyダーリン!! となるはずや! いや、きっとそうなる!」 リインⅠ(キャロ達も普通に渡すのでは、と突っ込んだ方がいいのだろうか) リインⅡ(はやてちゃん、シリアス欠乏症にかかって・・・) はやて「そうと決まればさっそく実行! いくで皆!」 シグナム「いえ、もう我々は渡しました」 はやて「・・・え?」 リインⅠ「みんなでお昼を食べる機会があったのでそのときに」 シャマル「シン君、結構貰ってたみたいよ。嬉しそうな困ったような顔してたわ」 リインⅡ「お返しが重い、ってぼやいてましたね」 はやて「そ、そんな話聞いてないで!」 ヴィータ「隊長組みは、午前中ずっと聖王教会に行ってたからな」 シャマル「あと、ティアナも渡せてないはずよ。顔を真っ赤にしてもじもじしてたもの」 はやて「くっくっく、威勢がいいわりに案外だらしないなティア。ま、それが小娘の限界やろ。 さぁ、夜天の王の栄光への出陣や!」 だが、偶然とは恐ろしいもので、他の三人も全く同じことを考えていたりするのだった。 リインⅡ「ちなみに、一昨年は裸にリボン巻いて全身チョコまみれで部屋に待機、 去年は自分を寸分たがわず再現した等身大チョコを送ってますね。 いずれも他の隊長たちと全年齢の壁に阻まれてますけど」 リインⅠ「そんなことをしていたとは・・・」 シグナム「・・・言うなリインフォース。恋は盲目なのだ」 ヴィータ「人として捨て去っちゃいけないモンまで見失ってる気がするけどな」 執務官室 そこでは、変に着飾りもせず、普段どおりの格好をしたフェイトがキャロやエリオと 作戦会議にいそしんでいた。 フェイト「だ、大丈夫かな。普通に渡したりして」 エリオ「大丈夫ですよ。自信を持ってください」 キャロ「フェイトさんは普通にしてればとっても美人なんですから、 恥ずかしがらずにどうどうと渡せばいいんです」 フェイト「そ、そうだよね。うん、頑張ってくる」 エリオ「はい、いってらっしゃい。フェイトさん」 キャロ「頑張って渡してくるんですよ~」 フェイト「や、やっぱり二人とも付いて来て・・・」 キャロ「甘えないでください! 恋愛は孤独な戦争ですよ!」 フェイト「は、はい! ごめんなさい!」 エリオ(こ、怖いよキャロ・・・) キャロ「渡すまで帰ってきちゃ駄目ですからね!」 フェイト「そ、そんな・・・」 キャロ「とっとと行く!」 フェイト「とっとと行きます!」 エリオ「・・・・(シンさん、グッドラックです)」 その後、ルーテシアとキャロに挟まれ、自らが人生最大の恐怖を味わうことになろうとは この時のエリオは思いもしなかった。 ヴィヴィオの部屋 おろした髪をヴィヴィオに櫛でといて貰っているなのは。 こちらも聖戦直前とは思えないほど穏やかな雰囲気に包まれている。 なのは「ねぇ、ヴィヴィオ。こんなの変じゃないかな」 ヴィヴィオ「全然変じゃないよ。とってもよく似合ってる」 なのは「でも、こんなに普通じゃ・・・」 ヴィヴィオ「あま~い! チョコは普通に渡すのが一番なの」 なのは「う~ん」 ヴィヴィオ「もう、いくじがないぞ」 なのは「・・・ふふ、そうだね。じゃあ、ママ頑張ってくるからヴィヴィオはお留守番お願いね」 ヴィヴィオ「はいは~い、いってらっしゃ~い」 シンの自室 貰ったチョコを食べきったシンは、自室のベットに横たわっていた。 脈は微弱で、顔色もよろしくない。 理由はごく単純だ。一発目でシャマル先生を引いた。それだけだ。 それだけで、七転八倒のあげく生と死を垣間見たシンは、半ば今日という日を生きて乗り切ることを諦めていた。 シン「あと残っているのは・・・隊長たちだけか。とうとう俺も年貢の納め時だな」 デス子「書きますか、遺書」 シン「シャマル先生のチョコ食べた時のが残ってるだろ」 パル子「そのシャマル先生宛の遺書は書き直す必要があるかと。最後だと思って料理に関する恨み言を書きまくっていますから」 シン「・・・確かにな。あれ? 悪い、封筒買ってくる。すぐ戻るから先にバリケード作っててくれ」 デス子「・・・今のって死亡フラグじゃ」 パル子「言ったってどうにもなりませんよ。どの道、入院ルートは確定してるんですから 物言わぬ姿で帰ってこないことを祈っていましょう」 時に、死ぬことよりも死ねないことのほうが何倍も辛いことがある。 彼にとっての、バレンタインという名の悪夢が明確にそれを証明していた。 廊下 ティア「シ、シン。ちょっといい」 シン「うわ! って、なんだティアナか(ティアナなら、まだ大丈夫だな)」 ティア「今、時間ある、かな?」 シン「ああ、どうかしたのか?」 ティア「そのね。その、特に意味があるわけじゃないんだけど、さ」 シン(やばい、元が可愛いだけに) ティア「ほ、ほら、今日ってバレンタインじゃない。だから、一応お世話になってるあんたに」 シン(こうまで普通だと) ティアナ「・・・チョコ、持ってきたから・・・」 シン「う、うん(萌えるんだよ、ちくしょう! 上目遣いは勘弁してくれ!)」 ティア「あんたのことだからたくさん貰ってるでしょうし、いらなかったら・・・」 シン「そんなことない! 俺は・・・」 なのは「シン、ちょっとい・・・あ」 ティア「あ・・・」 シン「・・・・・・(グッバイ、俺の短かった平穏よ)」 なのは「お、お邪魔だったかな?(いけない、いけない。反射的にレイジングハートを構えてた。 今日は普通の女の子でいかないと)」 ティア「(クロスミラージュ・・・はまずいわね。ここは一旦引いておくか)いえ、今終わったところですから。 あとでね、シン」 シン「・・・え、うん(何事もなくティアナが引いていった? なのはさんは何もしないし、これは夢か?)」 なのは「・・・」 シン 「・・・(撃たない・・・のか?)」 なのは「・・・えっと、私、まだチョコレート渡してなかったから・・・」 シン 「は、はい。ありがとうございます(何かあったのか? そりゃ、撃たれたいわけじゃないけど)」 なのは「それで、その・・・。今度の日曜開いてるかな」 シン 「シフト通りなら空いてるはずですけど?」 なのは「よかった。じゃあ、一緒に遊園地でもどうかな」 シン「いいですね。ヴィヴィオも喜びますよ」 なのは「ううん、そうじゃなくて・・・」 シン「・・・はい?」 なのは「二人っきりでって、駄目・・・かな?」 シン「それって、デー・・・」 フェイト「シ~ン、どこ~。あ、なのは」 なのは「フェイトちゃん?」 シン「・・・・・・(どうして、こんなときに・・・)」 フェイト「よ、よかった~。はい、これは私の分のチョコレート」 なのは「(・・・我慢、我慢)」ぎりぎり シン「あ、ありがとうございます。おいしそうですね(今、嫌な音が聞こえたような)」 フェイト「ちゃんと型にはめて作ったんだよ。で、よかったら・・・」 シン「・・・?」 フェイト「今日だけでいいから、シンの部屋に止めてくれないかな」 シン・なのは「な、なんだってーーーー!」 フェイト「違うの! おかしな意味じゃなくて、キャロとエリオに追い出されちゃって (厳密に言うとそれも少し違うんだけど)」 シン「それじゃあ仕方な・・・くはないでしょう!」 なのは「あの二人を吹っ飛ばしたら部屋が開くよね」 シン「よかった、いつものなのはさんだ。って、物騒なこと言わないでください!」 はやて「シ~ン、あなたの恋の奴隷が会いにきたで~!」 シン「ああ、そうでした。この人タイミングが最悪なんでした。ちくしょう、どうにでもなれ!」 フェイト「・・・」 なのは「・・・」 はやて「・・・ダーリン、これはどういうことや」 シン「それは、今俺が一番神様に聞きたい質問です」 はやて「・・・はぁ。まぁ、ええやろ。4○でも」 シン「待てええええぃぃ! 一番言っちゃいけない事を、一番言っちゃいけない人が言うなああああぁぁ!」 なのは「はやてちゃん、今なんて」 フェイト「まずいよ、はやて。ここは全年齢なんだよ」 はやて「ふ~、なのはちゃん、フェイトちゃん。今日はバレンタインなんやで。 チョコを渡すついでに軽く○Pするくらい許されてしかるべきや」 シン「どんな理屈だよそれ! っていうか、前半と言ってる事違うだろ、あんた! 普通に渡すんじゃなかったのか!」 はやて「これだけ盛り上がって普通に渡すなんて」 なのは「逆にありえないよね」 フェイト「さ、始めようか、シン」 ティアナ「準備は出来てるわね、私達は出来てる」 シン「どうして息ぴったりなんだよ。それと、さも当然の様に戻ってきて混ざるなティアナ! だいたい、ここ廊下だから! 往来だから!」 はやて「それが逆に燃えるんやないか!」 シン「変態だこの人!」 なのは「大丈夫、危○日だから」 フェイト「大丈夫、最後まで逃がさないから」 ティアナ「大丈夫、婚姻届貰ってるから」 シン「訂正、変態だこの人たち!!」 はやて「旅立ちの時や、シン。共に大人の階段を駆け上るのは今やで」 シン「いいから、いらないから! まだ俺子供でいいです!」 なのは「ふふふ、顔を真っ赤にして。可愛い・・・」 シン「何故ヤンデレ風!? 命が危なくなってきてる!? いつものことだけど」 フェイト「子供はどんな名前がいいかな。シンは女の子がいい? それとも男の子?」 シン「そうだな。どうせなら両方が・・・って、まだ皮算用どころか狸すら知らない段階だよ!」 ティアナ「今です、隊長! 早く服を!」 シン「幻術まで使って背後から羽交い絞めするな! あんた達もじりじり近寄ってくるなぁ!」 その後、どうにかこうにか逃げ出したシンは、自室に篭城。 実に三日を費やした交渉の末、隊長たちをデート数回の条件で押さえ込んだという。 ちなみに、その間の食事のいっさいは貰ったチョコレートのみでまかなっていたそうな・・・。 デス子「マスター、ひもじいです・・・」 シン「黙ってチョコを食え。答えは聞いてない」 パル子「主様、一回でいいからと外から打診が・・・」 シン「無視しろ! 絶対に譲るな! 相手はテロリストだと思え!」 ヴァイス「出て来いってシン。隊長たちだって ルールくらい分かってるよ。 なんでもかんでも疑うのはよくないぜ シン、話し合おうじゃないか。この際、男同士で女は 抜きでさ」 デス子「ヴァイス陸曹もああ言ってますけど」 シン 「デス子、たて読みは暗号の初歩だ。パル子、気にせず交渉を頼む」 パル子「了解です」 シンが先手を取ってチョコを渡すようになったのは、その年のバレンタインからだったという。 終わり?
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1511.html
199 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 06 27.90 ID uEyRKF9v (3/14) 2月14日に生まれた人間の気持ちが分かるだろうか。 幼少に、普段ねだっても買ってもらえないオモチャを勝ち取るチャンスを、 日本の製菓会社の陰謀でチョコ一つに減価交換される子供の気持ちが分かるだろうか。 誕生日というイベントに恋愛行事が重なるせいで集まりの悪い誕生日会を、 それでも気を利かせてくれるたった数人の親友のために開くことを強いられ、 チョコを塗られた、苺の載らないケーキを目の前で切られる幼子の姿が、思い描けるだろうか。 あまつさえ、子供の憧れの一つであるパティシエまでが世間の風に流され、 気付かぬまま生クリームの『ハッピーバスデー ○○くん』を『ハッピーバレンタイン』と書き間違えた挙句、 己の手でロウソクを立てるべく目の前で箱を開けた時に見せ付けられた、 取り返しのつかない、作り直させるに間に合わず、返金騒動で誕生日ムードを壊すこともできない絶望。 被害者として恋愛資本主義の市場原理をまざまざと見せ付けられ、 友達が祝ってくれようにもバレンタイン独特の空気の中で奇妙な距離感に晒され、 女子からは『あげるならチョコ』という雰囲気のせいでかえって気軽にプレゼントをしてもらえず、 延々と青春における恋愛イベントを一つ潰され続けた男の気持ちが、果たしてそうでない他人に理解できるだろうか。 否。 否、否、否である。決して誰にも分かるまい。分かってはならぬ。この憎悪は己のみのものだ。 真に果たすべき想いを、誓いを誰かに任せ、共有することなどあってはならぬ。この願いは己だけのものなのだ。 バレンタインデーを破壊せねばならぬ。 勝てるとは思っていない。 宿泊学習、夏休み、修学旅行、文化祭、体育祭、クリスマス、冬休み、正月、ホワイトデー。 いずれも男子1人の手には余ろう。 これまで数々の益荒男が挑んで勝てなかったものの一つに、よもやこの細腕では敵うまい。 しかし恥辱にも堪えられぬ。ならば行動あるのみであろう。 もはや子供でもなくなり、されど「そういう展開」を狙っていると思われて学友、 特に女子に誕生日を告げられぬまま終わる、などという日々には我慢がならぬ。 齢20を超えて今更有難味もないが、たとえ年に一度の誕生日、 数少ない祝い事を呪いに変えてでも一矢報いねば気が済まぬ。 200 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 07 41.85 ID uEyRKF9v (4/14) バレンタインデーを破壊せねばならぬのだ。 全国で行われる無数の睦言、行事そのものや概念の打倒には至らずとも結構。 そんなことは自明である。 故にバレンタインデーなるのこの甘々しい、いや苦々しく毒々しい「空気」さえ打破できればよい。 無辜の人間を無闇に傷付けようとは思わぬ。 しかしリア充ではなく、リア充が醸し出し、 また奴らを包み込んで2人きりの世界を作り出すピンク色のオーラに亀裂は入れねばなるまい。 具体的には傷害で刑事罰をいただくような行為には腰が引ける。 何ぞ珍事でも起こして耳目を集め、一方この身は軽やかに現場から撤退できる手が好ましい。 本来はバレンタイン反対と、渋谷だの原宿だのでデモ行進でも行えれば最適だ。 だがあのような輩と一緒にされるのは不本意である。 あの手の輩に、バレンタインデーやクリスマスが誕生日の人間がどれだけおろうか。 誕生日がイベントと重なったが故にあるべき青春から遠ざけられた者が、一体何人いるだろうか。 これはバレンタインに青春の機会を得られなかった者の嫉妬ではない。 バレンタインに青春の機会を奪われた人間の復讐なのである。 行き場のない怒りを、理不尽への憎悪を、溜め込んだ果てにぶち撒ける慰めなのだ。 復讐とは感情だ。 故に正当性などない。 だが、感情であるが故に、それは己の中で明確にしておかねばならぬ。 得られなかったから他者の物を壊すのではなく、奪われて戻らぬから、 壊しても失うだけと知りつつ、報復のためにその全てを壊すのだ。 奪われたのは己一人、故に独りで遂げねばならぬ。 復讐は独り、己のために己だけで。 その決意さえあれば、いつかは堤を壊す蟻の一噛みとなろう。 201 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 08 49.03 ID uEyRKF9v (5/14) さあ、バレンタインを壊そう。 何にもならぬ復讐を己のために遂げよう。 学徒としては身近だがこの時期の大学のキャンパスなどはテストを終えて無人であるし、 ともすれば罪のない学生の入試会場になっていたりもするから避けるとして。 場所はどこがよいだろうか。 この一家に一台以上の消火器とド○キで買ったバラエティグッズや花火があれば、 適度にカップルの雰囲気を壊す騒ぎを起こしつつそうそう官警の世話にはなるまい。 犠牲なくして潔しとは思わぬが、ほとぼりの冷めた頃に自主でもすれば多少の温情は得られよう。 もう何も恐くない。 さて。 先ずはどこからどのように始めるか────────。 む。妹が帰った。 202 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 09 41.30 ID uEyRKF9v (6/14) 「たっだいまぁ。う゛~、やっぱり外は寒いね。また降ってきたよ」 例年にない冷え込みで積もった、純白の冬景色を背に。 両の手に膨らんだビニール袋を掴み、首都圏の郊外、我が城たるアパートの廊下に立つ妹を招きいれる。 歩むに従って赤く色気付いたコートの肩から薄く雪塊がはたはたと落ち、長く腰まで伸ばした妹のポニーが尾を振った。 「ん」 買い物の予定は了解していたので鍵は開けてあったが、予想通り手が塞がっていたため、 足音が聞こえ次第ケータイを鳴らされるより早く出迎えた。 差し出される荷物を淀みなく受け取る。 妹は手透きになると腰を屈め、自由を得た手にブーツの紐を掴むと、しゅるしゅると解き始めた。 やり終えてチェック柄のマフラーを引くと、背に預けられていたポニーテールの尾っぽが乗り場から柔らかく落下し、 雪のように真白いうなじがコートの赤にはっと浮かぶ。 膝丈のコートの裾からは黒いスカートが色を見せ、つい付け根を追いそうになる視線を切るのに苦労した。 預かった袋を手に冷蔵庫へ、山と買い込まれた食材を上から切り崩して収納していく。 計算の上に購入された品々は組み合わさると無駄なく中古で買った家電のスペースを埋め、 ほうと息を吐くと、背後で引き戸の開く音がした。 「んふふ~。おーにーいーちゃ~ん♪」 振り返るより早くホールドされる。 何とか首を巡らすと、御歳20になる妹は背面から通した両腕で私を拘束し、 兄の背、というよりも首筋に鼻先を埋めていた。 組まれた両手は私の胸の真ん中で合わさっており、ブーツなど履かずとも十分な上背に恵まれたことを語っている。 私も首都圏にあっては平均的な身長の持ち主に過ぎないが、 女子(おなご)の身で数センチしか違わぬのは疑いなく『高い』と言えよう。 言うに及ばず出るところも出ており、着替えたらしい白のセーターの上から、肉厚な柔らかさが私の背を打つ。 心臓の高鳴りが胸にある妹の両手に握られ、逃げ場に惑う衝動が口から不意に抜けた。 聞こえたか聞こえないか、気味悪く上ずった声が呼気と踊る。 203 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 10 48.21 ID uEyRKF9v (7/14) 「こら」 「なぁに?」 我ながら臆病なほど声を引き締めても、妹は動じない。 童子か思春期の女子のような無警戒さで応じて、甘く無邪気に身を擦ってくる。 声音に不似合いなほど高い背丈と相まり、かえって危険なまでの幼さが覗いていた。 「何のつもりだ」 「ん~? んっふっふー」 問うて、未だ閉めていない冷蔵庫に並ぶ食材達を前に、幾許かの時間を待つ。 漏れてくる冷気が室内でシンと指先を刺すまでになって、満足した妹がようやく背を離した。 「お誕生日おめでとう。お兄ちゃん」 その誕生日に食べる料理の材料をしっかりと仕舞って、妹に向き直る。 両手を腰の後ろで組み、緩く背を曲げた妹は、快活な笑みと上目遣いでそう応じた。 「それは今朝にも言ったろう」 「いいの。お祝い事なんだから何度言っても」 「祝うような歳でもないのだが・・・・・・・」 「細かいこと気にしないのっ。 私にとっては、また一年お兄ちゃんと過ごせた記念なんだから。素直に祝われる祝われる!」 そう言って、意味もなくぎゅうと背中を押されてしまう。 我が妹ながら全くもって敵わない。 「ほらほら、後は私が準備するから。お兄ちゃんはテーブル出して、座って待ってて」 理屈に合わぬとなれば無理を通したもの勝ちだ。 押しやられるまま室内をぐるりと回り、自室の前へと運ばれてしまう。 後は己が部屋で待つばかりと、プライバシーの守り手たる引き戸を閉めようとして。 204 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 11 41.46 ID uEyRKF9v (8/14) 「んん?」 はたと、妹の視線が部屋の一点で止まった。 部屋の隅に鎮座ましますのは我が決戦兵器である消火器やバラエティグッズの数々であり、 なるほど、妹でなくとも男一人の座敷に見るには不審なこと疑いない。 私にとっては崇高なる聖戦のための頼もしいあれやこれやなのだが、 妹もまたバレンタイン生まれではない以上、志を同じくするには能(あた)わないのだ。 しまった、という思いが浮かぶ。 妹が出ているうちに一戦して帰って来るつもりが、深い思索に陥るうちに気を逃した。 予想より早い妹の帰宅も相まり、思考に耽っていたこともあって、 片付けることもなく色取り取りの品々が散在している。 「それ、自分で買ってきたの?」 「う、む。まあな」 「もー。別に誕生日を盛り上げたいなら、言ってくれれば私が何肌でも脱ぐのに」 幸いにも明かりを消しておいた室内、妹の目は最も色鮮やかな仮面だのマスカラだのの所で止まっていた。 しかし。 「・・・・・・ふぅ」 「んー?」 それに安堵してみれば、不意の吐息に反応した妹の視線はぴたりと私の瞳を見据えており。 違和感をたたえた双眸がキョロキョロと兄と室内とを行き来すると。 「・・・・・・・あの消火器、玄関にあったやつだよね。何で、わざわざ外して置いてあるの?」 「隣に花火があるだろう? お前と2人、誕生日くらいは童心に帰って興じるのも悪くないかと思ってな。 冬に花火というのもそれはそれで趣があろう」 「アパートじゃ敷地内で勝手に火は使えないよね。それに花火の消化に消火器はないと思うの」 これだけは用意しておいた言い訳も空気に虚しく、正面から両断される。 205 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 12 43.15 ID uEyRKF9v (9/14) 「今年もなの?」 脈絡を飛ばした妹の声は問いというより呟きのようで。 「っもー!」 癇癪を起こした妹に正面から当身をもらい、一応のところ抱きとめながら2人、畳の上に転がる。 時間差で腹と背に加えられた衝撃にむせれば、きゅっと軽妙な身のこなしで腰の上に回った妹の拳が、 マウントでぽかぽかと私を責め立てた。 「今年こそは最後まで兄妹水入らずで過ごすって決めたでしょー!? 今日は『お兄ちゃんの誕生日』なんだから、バレンタインなんて気にしなくていいのー!」 馬乗りの姿勢から繰り出される連撃に重さはなく、ただ心中のほどを手数で示すのに合わせ、妹のポニーが左右に高々と嘶く。 普段は丸くふっくらとした目や頬がきゅっと吊り、しかし鋭いというには及ばず、 怒っても稚気のある表情が駄々っ子のようにくしゃりとしていた。 「本当に、毎年毎年毎年っ! どうしてずっと家にいてくれないの!? そんなに自分の誕生日が嫌? 家族水入らずの時間を捨ててまで騒ぎを起こしたい!?」 柔らかく兄の胸を叩きながら、地団駄を踏むようにどすどすと腰を跳ねさせる。 後に管理人や住民に怒られるやもしれぬが、優先して考えることにも非ず。 今は兄にさえ理由の分からぬこの兄好きな妹を八方いや千手尽くしてでも宥めるべきで、 お互い歳を取ってから家族を泣かせるというのは、幼少の喧嘩より胸が痛い。 206 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 13 33.50 ID uEyRKF9v (10/14) 「うー・・・・・・! う゛ーーー!」 ましてやこの妹、大学にも通う成人にしてついに涙など浮かべる始末。 我ながら甘いと思うこともあるが、兄離れどうこうよりこんなにも情緒不安定な者が家族にいては、 そうそう目が離せないのもむべなるかな。 我が家のサイフ事情もあって高校大学と近い場所に通って物件は同居し、 妹の監視の下では聖戦を発起すること上手く叶わず、 また万一官警の世話になった場合の反応を思って本気になれぬのも道理である。 聖バレンタインと製菓会社、世のリア充どもめらは、妹に感謝せねばなるまい。 兄離れできず、背丈に反して奇妙に子供っぽく、家族ながら随分と奇矯な妹ではあるが、 贔屓目に見てよくできた妹だ。 世が世なら、いやさ今生にして邪悪なる兄の手から世のヴァレンタィインに生きる者共を守護する聖女である。 「分かった、分かった。分かったから離れんか、妹よ」 「うー・・・・・・」 もう少し普通の子女らしく育って欲しかった気分もあるが、それはそれで寂しいか。 家族、というよりも兄思いな妹というのも昨今は希少であろう。 ましてや兄の贔屓目で見て抜群に可愛い妹である。 意外に級友から頭一つ抜き出た身長を気にしていることを兄は知っているが、世の男共の、 『背の高い女に美少女はいない。いるのはキレイ系の美女だけ。背のある可愛い系とかキツい』などという言葉を聞くにつけ、 まことに見る目がないと嘆くことしきり。背も肝っ玉も小さいこと。 「妹よ、兄が悪かった。またぞろバレンタインの蟲が騒いでな。 女性(にょしょう)とバレンタインに縁のないこと20と数年、 男の性として矮小なプライドを切り離せぬ未熟を恥じ、またしかと詫びる所存である」 話を聞くために動きを止めた妹の腰から半身を抜き、畳に平身低頭して詫びを入れる。 何をそこまでと己で思わぬでもないが、女子に、ましてや家族に泣かれては男が悪い。 身から出た錆なのも確かなことであって、我が身では他の所作を思いつかぬ。 208 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 15 18.38 ID uEyRKF9v (11/14) 「出るのは止めだ。今年も誕生日はお前と2人で過ごす。 今日は寒いからな。誕生日、と兄の願いを聞き入れてくれるなら、料理は鍋がよい。 家族仲良く身を寄せ合ってつつこうではないか。今年もあるのなら、お前からのプレゼントも楽しみにしている」 「むぅ。それは、勿論お兄ちゃんへのプレゼントも容易してるけど」 怒気を潜めた声に面を上げる。 下より見遣る妹の顔はまだ不満げであり。 「けど、プレゼントだけじゃないもん。バレンタインのチョコレートだって作ったもん。 女の子とバレンタインに縁がないって言うけど、お兄ちゃんには私がいるもん! 毎年プレゼントもチョコレートも上げてるもん!」 難解なるかな乙女心。あるいは妹の空よ。 兄としては顔を伏せたうちに苦笑を噛み、はてと異性の胸裏を探るしかない。 「うむ、確かに。お前も乙女であった。すまんな」 「お兄ちゃんのバ~カ!」 この歳、背にして『あかんべえ』がよく似合う。 まこと可愛げの極み。 「・・・・・・チョコレート、ちゃんと食べてくれる? 今年も頑張って作ったの」 「ああ」 「本当に? お兄ちゃんのバレンタイン嫌いは知ってるけど、『バレンタインデーの』プレゼント、 無理して食べようとしてない?」 「兄がよかろうというのだ、妹よ。 実は兄が世のカップル共が放つ甘い空気が嫌いなだけであって、甘いもの自体は嫌いではない」 「うん、知ってる」 「然様か」 何故か相手の方にはにかまれた。 妹は常の快活なそれよりも、甘く笑って腰を上げる。 209 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 16 12.95 ID uEyRKF9v (12/14) 「じゃあ、ちゃっちゃと作っちゃうから。・・・・・・消火器は戻しておいてね?」 「承知した」 部屋の隅で沈黙する赤色の鈍器を尻目に、しかと肯く。 「本当、お兄ちゃんてばこっちに出てからはろくに帰省もしないし、お母さんたちも心配してるんだから」 「誕生日くらいは私と、家族2人きりで過ごさないと」 「お兄ちゃんて外出も多いし、自炊もしないから、たまには私が作って食べさせなきゃいけないんだからね?」 それは兄としてお前の無防備さに距離を測りかねているからなのだが、 あえて告げるほどのことでもなし。 兄としては寂しい限りだが、いずれ妹にも相応しい良人が現れよう。 あるいは兄の手で見つけてやらねばならぬかもしれぬ。 「本当、これじゃ何のためにルームシェアしてるのか分からなくなっちゃうよ」 「許せ」 「とーぜん!」 可憐ばかりが花にも非ず、さりとて無闇に手折るに非ず。 兄としては複雑だが、それも含めて自慢の妹。 「それじゃあお兄ちゃん、後でね!」 襖が閉まる。 切れてゆく妹の背を見送って、戸で完全に遮られてから、私は深く息を吐いた。 210 :ハッピーバレンタイン・バースデイ ◆lnx8.6adM2 [sage] :2012/02/14(火) 23 17 34.57 ID uEyRKF9v (13/14) ────────襖が閉まる。 「可哀想なお兄ちゃん」 閉じた戸を背に、彼女はゆるく独りごちた。 「本当は、私がお兄ちゃんに近付く女を片っ端から排除してただけなんだけどね。てへぺろ(・ω )」 セリフの雰囲気に似合わぬ笑み、兄には決して見せない表情を浮かべてするすると歩む。 さして広くもない室内で数歩の距離を詰めて、彼女は保冷のための家電を開いた。 「ぁん」 漏れ出す冷気に熱の浮いた吐息を当て、ごそごそと中をまさぐると奥からラッピングされた小箱を取り出す。 「お兄ちゃん。それじゃあ、今年も2人きりで」 冷えてゆく手で包装を頬に当てながら、 「ハッピーバレンタイン・バースデイ」 彼女は、静かに冷たく笑っていた。
https://w.atwiki.jp/tomopih/pages/675.html
人物・経歴・略歴 フレッド・バレンタイン(Fred Lee Valentine) テネシーA&I州大-オリオールズ-セネタース-オリオールズ-阪神 1935年1月19日右投両打186cm89kg 年度別成績・通算成績 シーズン打撃成績 年度 所属 試合 打席 打数 得点 安打 二塁 三塁 本塁 塁打 打点 勝点 盗塁 盗刺 犠打 犠飛 四球(故) 死球 三振 併殺 打率 長率 1970 阪神 123 495 439 40 108 22 2 11 167 46 - 3 5 6 3 41(3) 6 76 5 .246 .380 通算 1年 123 495 439 40 108 22 2 11 167 46 - 3 5 6 3 41(3) 6 76 5 .246 .380 守備成績・各種成績 シーズン守備成績 年度 総失策数 守備位置別出場数 1970 3 外122 通算(1年) 3 外122 タイトル・表彰 資料情報 外部リンク ウィキペディア その他
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2508.html
―もう、私は……あなたの隣に居る事が出来ない。 話す事も、会える事すら出来ない。 それに……自分の子供にも、触れる事、抱き締める事、会話する事も、何も出来ない けど、私には些細な事だけど、出来る事があるの…… それは……『見守る事』、『祈る事』 私はあなた達を、遠くからも、近くからも、見守ります あなた達の幸せを、祈ります みんなが……いつまでも……笑って……居られます様に……―― 『いつでも、いつまでも』 今日は、年に一度のバレンタインデー 街中が色めき、人々は賑やかになっている 好きな相手の為に、お手製や市販で買ったチョコを贈り、そして、この日を機会に告白する者 仲の良い友達に、日頃のお礼を込めてチョコを贈る者 その他にも、会社や企業などの、上司や先輩のご機嫌取りの為にチョコを贈る者と、人それぞれの人間模様が、描かれている 最近では、『本命チョコ』『友チョコ』『義理チョコ』以外にも、男性が好きな女性の為に贈る『逆チョコ』が存在している この日に、何組のカップルが生まれたのかわからないけど、いつまでも幸せであって欲しいと、私は願う 幸せを願う事は出来るけど、やっぱり私は、大好きなあの人に会いたい 直接会って、真心を形にして贈りたい 私はもう、この世には居ない人間だけど、直接、言葉に愛を込めて伝えたい でもそれは、我が侭かもしれない 我が侭かもしれないけど、それでも、あなたに……会いたい…… (そう君、私は……) 神様……少しだけ……少しだけ、奇跡を…… 泉家宅 そこには自室で、執筆作業を勤しんでいる泉そうじろうの姿があった 「一区切りがついた所だし、少し休憩するかな」 作業机にペンを置き、大きく背伸びをしながら、壁に飾られたカレンダーに目線を移した 「今日は、バレンタインデーだったな」 カレンダーの所まで移動し、まじまじと物思いに見詰める 「そういえば昨日の夜、ゆーちゃん1人で、チョコ作りに励んでたな…… 渡す相手は誰だろうか?一生懸命に作っていたし…… それに比べてこなたは、チョコを作らずに、ずっと部屋に籠もっていたな。 こなたは好きな人とか居ないだろうか……恋愛とか特に疎そうだからな」 (でも万が一、こなたに好きな人が居て、もし、その人と付き合う事になったら、父親として嬉しいような、寂しいような、なんか複雑だなぁ (例え、こなたがどんな相手と付き合おうがこなたを信じ、後ろから支えながら応援するのが、父親の使命と責任だからな。 ……てもやっぱり、父親の元から離れて行ってしまうのが ……) 「やっぱ、寂しいよなぁ~」 なんか煮え切らない状況に居るそうじろうだった すると、そうじろうの背後から、呆れたかのように見詰めている半透明の人影が現れた (まったく、何を言ってるのかしらね……そう君は) その声の主は、泉かなた。 昔、病気で亡くなってしまったそうじろうの妻だ (久しぶりに家に帰えってみたら、まだ子離れが出来てない様ね……先が思いやられるわ) かなたは所謂、幽霊の姿でこの家に戻れたらしい (いい加減に子供から離れないと、駄目ですよっ) 幾ら注意するも、そうじろうの耳には届かない (………) 当然、かなたの姿も見える事も出来ない (ごめんね、そう君……自分の子供に、何もしてやれないまま先に逝くなんて…… 本当に……ごめんね……) (出来れば、そう君とこなたと一緒に生きて居たかった。 笑って居たかった。この家で過ごして居たかった……) (だけど、もう、これは叶わぬ願い……。 もう2度、会う事が……出来ない……) (こなたに、母親が居ない淋しい思いをさせてごめんね…… そう君にも、辛い思いをさせてごめんね……。 本当に、そう君とこなたの傍に居たかった……居たかったのに……ごめんね、ごめんね、本当にごめんな……) 気づけばかなたの瞳から、涙が流れていた 堪えても堪える事が出来ない、大粒の滴がそのまま流れていた すると…… 「なぁ、かなた……」 (えっ……) 突然、かなたは自分の名前を呼ばれた事に驚いている だが、そうじろうは、かなたの声は聞こえていない そのまま話を続ける 「あの頃、かなたは本当に幸せだったかな…… 自分がまだ、駆け出しの小説家だったから、色々とかなたに迷惑を掛けていたよな 安くてボロいアパートの貧乏な生活に、体の弱いかなたに沢山の負担を掛かせてしまったしな…… あの時自分にもう少し才能があれば、かなたに楽をさせておけば、もう少し元気で居られたのにな…… 本当に……ごめんな……かなた……」 (違うっ!そう君の所為じゃないっ!そう君は何も悪くないのっ 悪いのは、私の方なの だから、自分を責めないで…… 私が体弱くなければ、病気にならなければ、こんな事にはならなかった) 「かなた……」 (……) 「でも、かなたは、そんな俺の隣にずっと居てくれたな。 オタクで駄目な俺でも、嫌な顔も一つせずに支えてくれたよな…… 本当に感謝しているよ……」 (そう、君……) そうじろうは自室から離れ、一階の居間に有るかなたの仏壇の前まで移動した 後を付いて来たかなたは、再度、そうじろうの背中を見詰める 「かなた、お前に感謝してもしきれないよ……」 線香を刺し、火を点ける 「かなたのお陰で、ここまで頑張れる事が出来た。 かなたがこなたを残してくれたから、俺はこうやって生き続ける事が出来た。 もし、こなたが居なかったら、俺は多分、かなたの跡を追っていた……」 (そう君……) 「だから俺は、亡くなったかなたの為にも、こなたの為にも、生きて、頑張って、幸せにしてみせるっ! かなたの分まで、絶対に幸せにしてみせるっ! だから……天国から……俺達を見守ってくれ……かなた……」 (そう君……ありがとう…… 私はいつまでも2人を応援するよ…… いつまでも笑って居られる様に、お祈りするよ…… だから、そう君、いつまでも元気で……)「んっ」 (えっ) 「なんか後ろから声が聞こえ……!っ」 そうじろうは後ろを振り向き、驚愕する 「えっ、まさか、かなた、かなたなのか?……」 「えっ、そう君、声が聞こえるの?」 「声が聞こえるだけじゃなくて、姿まで見えるぞ。かなた」 「本当に……見えるの? 声も聞こえるの?」「ああ、体の方は若干半透明だけど、きちんと見えるし、声もちゃんと聞こえるぞ」 「そう君、私に触れる事が出来る?」 そうじろうはかなたの体まで手を伸ばしたが、触れる事が出来ずに、そのまますり抜けた 「どうやら、触れる事は出来ないようだな」 「そっか、少し残念だね」 「まぁ、良いじゃないか。こうやって会える事が出来たんだしな。 贅沢は言えないな」 「そうね。普通ならもう会う事は出来ないからね」 「かなた……」 「なあに、そう君」 「会いたかった……」 「私も……」 「……」 「……」 「あぁっ、もうっ!」 「どうしたの?そう君」 「せっかくの再会なのに、抱き締める事が出来ないっ! こんなに近くに居るのに、触れる事が出来ないなんて、やっぱり歯痒くて嫌だっ!」 「そう君……」 「すまんな、かなた。かなたばっかりに辛い思いをさせて……」 「違うよ、そう君。私こそ辛い思いさせて……ごめんね」 「いや、謝るのは俺の方だ」 「いいえ、謝るのは私の方なのっ!」 「だから、俺が……」 「だから、私が……」 「……」「……」 「ぷっ」「ふふふっ」 「あはははははっ」 「ふふふふふふっ」 「なんか俺達、似た者同士だなっ」 「そうね。確かに似た者同士よねっ」 「いやぁ~、久し振りに一緒に笑ったな」 「本当に久し振りね」 「本当に懐かしいな。2人で過ごせる時間は」 「本当に懐かしいわね、そう君」 当時を懐かしむ様に、思い返すそうじろうとかなた 「あのね、そう君……」 「何だ、かなた」 「こうやって再会出来たのって、やっぱり、神様のお陰かな?」 「う~ん、俺にはよく判らんが、多分そうだと思うぞ」 「神様が特別に実現させたのね。後でお礼しなくちゃ」 「なあ、かなた。後どのくらいまで、ここに居れるんだ?」 「判らない、多分、今日だけだと思う……」 「そうか……」 そうじろうは少し残念そうに、かなたを見詰める 「そう君……」 「んっ、なんだ、かなた」 「私はそう君達のお話が聞きたい。最近の出来事とか、何でも良いから……」 「俺達の話か……判ったっ。じゃあ、何から話そうかな……」 そうじろうは今までの出来事を話した 高校に進学したこなたに早速友達が出来た事、従姉妹の成実ゆいの妹、小早川ゆたかが居候して来た事、こなたが大学受験を合格した事などの話が絶え間なく続いた そして、時間は夕刻 「あっ、もうこんな時間か」 「あら、結構長い時間話してたのね」 「そろそろ、こなたが帰って来る時間かな?」 「そうね……」 「こなたが帰って来たら、きっと、驚くと思うぞ」 「そうね……」 「どうした、かなた」 「えっ……」 「こなたに会えるのに、嬉しく無いのか?」 「いいえ、会えるのは嬉しいけど……こなたは私の事、どう思ってるのかなって」 「かなた……」 「こなたには随分、淋しい思いをさせたから……」 「なあ、かなた」 「はい……」 「もう、そんな事言わないでくれ」 「そう君…」 「こなたはこう見えて、結構強い所があるんだぞ。だから、心配するな」 「……」 「こなたはお前に似て、優しいからな。 一度も俺の事責めたり、憎んだりしなかった。自分自身にだって、恨んだりしてなかったぞ だからな、かなた……何も心配しなくて良い。笑顔でこなたを迎えれば良いんだ。 だから…もう、そんな顔しないでくれ」 「そう君……ありがとう……」 「かなたの分まで、俺が愛情を注いで育てたからな。……けど、少し……育て方を間違えてしまった所が……」 「そうね……。こなたも同じ様に、オタクに染まっちゃって…… 前に少し覗きに行った時は、ビックリしたわ」 かなたはジト目で、そうじろうを見詰める 「ウウッ、スミマセンデシタ」 「せめてゆたかちゃんだけは、オタクに染めさせないでね」 「ハイ、キヲツケマス」 少し呆れたかの様に、溜め息をつくかなただった 「それにしてもこなたとゆーちゃん、帰って来るの遅いな」 「そうね、どこか寄り道してるのかしら……」 すると 「「ただいまー」」 玄関が開く音と共に、2人の声が聞こえた 「おっ、ようやく帰って来たか」 「噂をすればなんとやら、ね」 「そうだ、かなた。ちょっと良いか?」 「なあに、そう君」 「台所で隠れてくれないか」 「えっ、なんで?」 「いや、こなたとゆーちゃんを驚かせようと思ってな」 「まったく、そう君たら…判りました。隠れときますね」 「サンキュー、かなた。じゃあ、行ってくる」 そうじろうは玄関の方へ向かった (そう君って本当に、子供っぽい所があるんだから) そう思いながらも、台所に移動するかなた 「ただいま、お父さん」 「ただいま、おじさん」 「おう、おかえり。こなたにゆーちゃん。少し遅かったな、何してたんだ?」 「えへへー、内緒」 「私も内緒です」 「え~、何だよー。教えてくれたって良いじゃないかー、お父さんだけ内緒か~」 「まぁ、その内話すよ。その内ね」 「う~む、まあ、良いか」 「あっ、そうだ。お父さんにこれ、あげるね」 鞄から、包装された小さな箱を取り出し、そうじろうに差し出した 「何だ、これは」 「チョコだよ。帰りの途中に買ってきた」 「おっ、俺にかっ?」 「そうだよ、受け取って」 「おじさん、私からも受け取ってくれますか?」 「ゆーちゃんからもっ!」 「はいっ」 「今、私達とっても幸せな気分なんだ。 だからお父さんにも幸せをお裾分け」 「ああ、ありがとうな。2人共」 そうじろうは、2人からチョコを受け取り、大事そうに抱えた 「あはは」「えへへ」 「そうだ、こなた。お前にスペシャルゲストが来ているぞ」 「スペシャルゲストぉ?」 「そうだ、ちょっと台所に行ってくれないか?あそこで待たせてるから」 「う~ん、判ったよ。台所ね」 そう言い、台所に移動した 「おじさん」 「なんだ、ゆーちゃん」 「スペシャルゲストって、誰なんですか?」 「それは見てからのお楽しみだよ」 「?」 「一体誰だろうな、スペシャルゲストって。私の知っている人かな?」 こなたが台所まで辿り着いたその時 「おかえり、こなた」 「………!」 言葉を失った 「おかあ……さん……?」 「久し振りね……こなた……」 「本当に、お母さん、なの?」 「そうよ、こなた。こっちに来て」 まだ放心状態のこなたは、かなたの元に近付いた 「ごめんね、本当は抱き締めたいけど、私は幽霊のままだから、こなたに触れる事が出来ないの…… 本当に、ごめんね」 「良いよ、別に。こうやってお母さんに再会出来たから……。……」 「そう君にも同じ事、言われたわ」 「お母さん……」 「どうしたの、こなた」 「私…… 私……」 「我慢しなくても良いわよ」 「~~~~~。おかぁさ~~~ん」 こなたは泣きながら、かなたに抱き締めようと飛び出した 「あっ、駄目よっ。すり抜けてしまうから、あぶなっ………えっ……」 触れた 抱きしめた こなたはかなたに、抱きしめる事が出来た 「嘘……そう君には、触れる事すら出来なかったのに……」 「どうだ、こなた。驚いたか……えっ」 そうじろうは、台所に近づき、その光景を見て驚愕する 「どうしたんですか、おじさ………!!」 後ろから続いて来たゆたかも、こなたとかなたが抱き締め合っている姿を見て、言葉を失う 「嘘っ、俺には触れる事すら出来なかったのに、なんでこなたを抱き締める事が出来たんだ?」 「私にも判らないわ。けど、多分これも……奇跡、だと思う……」 まだかなたの腕の中で泣いているこなたの頭を、優しく撫でる 「奇跡か……。良かったな、こなた」 「こなたお姉ちゃん……おめでとう」 「ぐすっ、えへへ。ゆーちゃんにみっともない姿を見せちゃったね」 「そんな事無いよっ、こなたお姉ちゃん」 「そうよ、こなた。恥ずかしい事では無いわ」 「うん、ありがとう。お母さん」 「はじめまして、ゆたかちゃん」 「あっ、はい。はじめまして、かなたおばさん」 「ゆたかちゃんもこっちにいらっしゃい…」 「えっ、良いんですか?」 「良いよっ、ゆーちゃん。こっちにおいで」 「うん、判った。こなたお姉ちゃん……」 ゆたか2人の元に近付き、かなたに寄り添う 「ふふふっ、えいっ」 「わっ」「ひゃっ」 かなたは、2人をいっぺんに抱き締めた 「なんか、可愛い娘が増えたみたいで、お母さんは嬉しいわ」 「「えへへへへ」」 2人は照れくさそうに笑う 「ねぇ、お母さん。いつまでここに居られるの?」 「そうね……多分、今日だけだと思うわ」 「そっか……」 少し残念そうにうなだれる 「でも、まだ時間があるから、目一杯甘えて良いわよ」 「うん、そうだね。そうだよねっ、お母さん」 こなたは嬉しそうに、かなたに引っ付いた 「わ~い、おかあさ~ん」 「ウフフ、この子ったら」 「こなたお姉ちゃん、すっごく嬉しそう」 「そうだな」 2人はその光景を微笑ましく見ていた 「そうだっ」 「どうしたの?こなた、突然大声を挙げて」 「今日の晩ご飯は、私が作るねぇ」 「あっ、私も手伝います!」 「じゃあ、私も手伝うね」 「あっ、駄目だよ、お母さん。座って待ってて」 「えっ、でも……」 「良いから良いから、お父さんと話してて」 「そっそう、じゃっ、お言葉に甘えましょうかな」 「うんっ、よし、ゆーちゃん、とびっきり美味しい物を作ろう!」 「はい、こなたお姉ちゃん」 こなたとゆたかはキッチンに向かい、冷蔵庫から食材を取り出し、料理を始めた 「こなたとゆたかちゃん、張り切ってるわね」 「そうだな、かなたが戻って来たのが、よっぽど嬉しいんだな」 そうじろうは、かなたに近付き 「どうやら、俺にも触れる事が出来るみたいだな」 頭を撫でる 「そう君……」 「どうした、かなた」 「久しぶりにそう君に触れられて、凄く嬉しい」 「俺もだよ。かなた」 お互い寄り添うように抱き締め合う 「ようやく抱き締めれたね」 「そうだな」 見つめ合い 「そう君……」「かなた……」 そして、そのままキス……しようとするが 「んふふー♪」 「「!!」」 こなたはニヤニヤしながら、2人を見ている 隣に居るゆたかも、顔を朱くしながら、もじもじと恥ずかしそうに見ている そうじろうとかなたは『バッ』と離れ 「こっ、こなた、余所見してたら危ないぞ」 「そっ、そうよ。ちゃんとお料理しなくちゃ駄目よ」 「ハーイ」ニヤニヤ「はっ、はい」ドキドキ 「かなた、恥ずかしい所見られちゃったな」 「そう、だね」 「こなたの料理は旨いぞ。最近また上達してきたし、楽しみにした方が良いぞ」 「そうね、楽しみね」 こなたとゆたかが作った料理は、それは豪華な仕上がりだった 4人でテーブルを囲みながら、一家団欒に食事を楽しめた 食事の後に、こなた・かなた・ゆたか3人で一緒に風呂に入り、その後、居間にて再び4人に集まり、会話は弾み、夜遅くまで談笑は続いた 限界が近付いたのかゆたかは先に部屋に戻り、眠りについた こうして親子だけの会話は深夜まで続き、そうじろうの部屋で3人で『川の字』に眠った 翌朝、そうじろうは先に起き、辺りを見渡したが、こなたの寝ている姿はあってもかなたの姿は無かった 物音をたてずに自室から出て、部屋中を回ったが、どこにも かなたの姿は無かった 「そうか……もう、戻っていったか……」 そうじろうは台所に移動し、冷蔵庫から牛乳を取り出し、グラスに注いでいると 「んっ、これはなんだ?」 テーブルの上に手紙が置いてるのを発見した 「手紙……かなたからか……」 手紙を取り、読み出した 『そう君へ、 久し振りにそう君とこなたに会えて、本当に嬉しかった。 ゆたかちゃんにも会えて、私は最高に幸せな気持ちです ……本当はね、もっと一緒に居たかった 出来ればもう少し、こんな日が続いて欲しいと思ったけど、もうそれは多分出来ない事かも知れない だから私は、みんなを天国から見守ります みんながいつまでも、無事に笑って過ごせる様、幸せで居てくれる様、心から祈ります そして、最後に……私は今もずっと、そう君の事を、心から愛してます 私から『とびっきりの愛』を、あなたに…… かなた』 「ありがとうな……かなた」 手紙を綺麗に畳み、ズボンのポケットにしまい込んだ ――なあ、かなた……昨日は本当にありがとうな…… お前のお陰で、こなまもゆーちゃんも、より一層賑やかになったよ だからお前も、天国でいつまでも元気で笑って居てくれ 俺も心から、かなたの事を愛してるよ……―― グラスに注いだ牛乳を飲み干し、シンク台の上に置いた 「よしっ、今日も頑張るかっ」 今日からまた、いつもの日常が戻ったが、かなたが居た時の明るい生活は、いつまでも続くのだった 終わり コメントフォーム 名前 コメント 下から八行目『こなた』が『こなま』になってる。Σ(・□・;) 良いとこなのに -- ユウ (2010-04-15 03 19 51) いい話だなぁ〜 -- 空我 (2010-02-16 23 38 55)
https://w.atwiki.jp/dangerousew/pages/201.html
この物語を、あの夏の日の赤い君に捧げる。 渋谷〇二一四「バレンタインデー」――、あの夏の日から百年後に至るまで 渋谷〇二一四「バレンタインデー」――、あの夏の日から百年後に至るまで姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンAAその2 姫代学園〇二〇七「スカイフィッシュの日」その4B『図書館にて』 秋葉原でも新宿でも(中略)姫代学園でもない場所〇二〇八「日露戦争開戦日」 東京タワー〇二一二「バレンタインデー・イヴ・イヴ」その4 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンB 「夢」 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その2 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その1 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その3 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その5 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンD “夢” 渋谷氷川神社〇二一三「バレンタインデー・イヴ」その● 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンZ 『夢』 渋谷〇二一三「バレンタインデー・イヴ」その4 渋谷〇二一四「バレンタインデー」 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンAAその2 私の名前は「山乃端一人」、「キーラ・カラス」の隣に立つ一人。 とは言え、ふたりでいることにあまりにも慣れきっていて、はたしてこんなフレーズで私たちのことを語り続けていいものか悩んでいる今日この頃だったりするの。だって、今日は立たずに座り、一人という名前の私はこれつまり、一人で座っているのだから。 春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬は疾風怒濤? 季節の定義は多々あれどー、ここは気象庁にお任せしちゃってと。 そちらによると三月はもう春、その前ならギリギリまで冬だったり。 二月は通り過ぎて、三月という春をお迎えした私たちだ。え、ハッピーエンドを先にお迎えしていいのかって? まぁ、そんな話は置いといて。 ここで、私は何をしているんだろうという疑問を、私は私に差し込もう。つまりは自問自答というやつなのですよ。 クエスチョン、赤、白、緑、三色のどれでしょう? どれもです。つまりは菱餅を睨みながら、雛あられを口に運ぶ私だったり。 姫代学園で恒例の雛祭りは卒業式に先立つところ、実に盛大に行われてた。女の子のお祭りは女の園では実に華やかであってほしい、そういう有形無形のお願いがここで結晶したということだと思ってほしい。のだそうです。 と、まぁ、花より団子な私もいるわけだけど。 後輩たちの手前、市販品でお茶を濁すのは屈辱かもしれない(一応私はグルメを自負しているのだ)。 とまれ、雛祭りの主役である等身大雛人形の威光の前では人間様はひれ伏すほかないわけだ。 ホールの中央に据えられた巨大な五段飾りには十五名のフルメンバーが座してる。じっとして動かない彼女たちが人形か人間かはご想像にお任せするとして(姫代は男子禁制!)、さすがに演奏している五人囃子は本物だと信じたい。 目の前では俳句和歌同好会主催の百人一首散らし取りが繰り広げられてる。 切った張ったの大立ち回り、一句読み上げられるたびに札に代わって人間数十人が空中に乱れ飛ぶありさまを見てくと伝統って何だっけ? って気持ちになるの。ああ、もうこの世界には疑問だらけ。 なにせ、この一ヶ月間、何が起こったのかといっても結局神の視点を持ち得ない、ただの魔人である私にとっては断片的な事実の羅列でしか語ることはできないのだから。……それに、ところどころ抜けてるし。 結局、キーラは最初の更新以降はwikiとやらを見せてくれることはなかったんだよね。 もっとも、一度頭に入れた以上はもう見る必要なんてないんだけど。 『ダンゲロスSS エーデルワイス』と銘打たれた、あの一連の催しは三回の戦いを切り抜ければ山乃端一人的には生還が保証されると私はそう理解していた。とは言え、そういう考え方自体が落とし穴だってことに、後になってから気づくんだよねえ、これが。 とりまわかりやすいところを言っとけば、トップページに表示されている上位世界でのスケジュールとやらが指し示すところ二回戦(二話目)以降の情報は入ってこなかったんですよね。 なんだったら、今時点の二〇二二年三月三日でようやく二回戦(二話目)の情報が閲覧できて、最後の戦いである転校生戦なんてのはまったく事前情報なしの遭遇戦を戦わされた羽目になったわけで。ま、それが普通なんだけど。 ちなみにある種の神の視点ともいえる、上位世界(暫定)の情報を魔人能力でもなく見ることができる理由を聞くと。 キーラいわく「世界の輪郭を見てしまったからよ」、らしい。 キーラがどこかおかしくなってしまったのは、それ以来だとか。 もっとも、私はキーラがおかしくなった後からの、ただひとりの友人だから違いなんてわかんないんだけど。 あの女は年中おかしいです。ファニーか、ストレンジか、その他の用法かはご想像にお任せするとして―。 それにきっと、この世界を滅ぼすことができる数少ない魔人のひとりにキーラ・カラスが数えられていることと無関係ではない。私はそう思うよ。あ、これはシークレットなのだけど、気付いてる人は気づいてるんだろうなあ。 そうだね、世界を滅ぼせることすなわち、魔人ならこの世界をそっくりそのまま認識できることを意味してる。 転校生が無限の攻撃力、無限の防御力を通常の魔人とは違ったロジックに由来して発揮することと同じで。 私みたいな一般魔人とは違った、埒外の魔人の可能性をキーラは秘めているのかもしれない。 そう、キーラが然るべきとこからこの世界を見れば……。 なーんてね。ま、そんなこと私にとってはどうでもいいことなんだよね。 というわけで、最初にアレは何だったんだろうという振り返りながらこの物語を綴らせていただくわ。 もっとも、私の独白なり手記なりが、仮にwikiなりなんなりに反映されたとして、それが私の望んだ通りに成り立つなんてきっとあり得ないのかも。引いたり足したり欠けたり割ったり? なーんてね、あはは。 姫代学園〇二〇七「スカイフィッシュの日」その4B『図書館にて』 まずは時を二十四日間ほど巻き戻したうえで現状を確認してみることにするね。 それから朝になってブルマニアンさんこと正不亭さんを購買部から警察署に向けて送り返した後、急ぎ学園を去ろうとする私たちだった、だったのだけど。ここでキーラが手をポンと叩く。 そして、のたもうたの。 「あ、そういえば借りていた本を返すのを忘れていたわ。わりとたくさんあるから大変ね」 「はぁ、図書館に寄ってくの? まぁ、時間に余裕はあるし。で、何冊くらい」 「ざっと十二グロスくらい」 はい、ここで単位についておさらいです。 グロスという単位は十二ダース、つまりは一四四冊のことですね。それに輪をかけること十二。 しめて一七二八冊なりー、って……多いよッ! 「冗談に決まってるわ。さ、一人、部屋の真ん中に寄って」 なんだか、これを言ってみたかったと言いたげなのか、キーラは満足そうな顔だ。 それでいてかしこまった佇まいが美しいのだからいい加減に器用な女だと思う。 ため息ひとつ、それで済めばよかったのに。 一呼吸を挟むとバサバサっと、居室のどこかが崩れる音が聞こえた。 嫌な予感がしてそちらに目を向けるとキーラが壁紙を剥がしていた。なぜ、壁紙を剥がすとそんな音がするのかという疑問は次の瞬間に解かれることになる。 「さて、面倒だから……ファイア!」 ところで、キーラの魔人能力『サリュート-451』は紙の本を念じただけで燃やす能力だ。 サリュートとは「礼砲」や「花火」を意味するロシア語であり、言葉の意味としてはイタリア語の乾杯の挨拶であるSalute!(サルーテ)と共通したりする。451とは、おなじみ紙の燃える温度、つまりこの魔人能力の名前には彼女なりのおしゃれ心が丹念に詰め込まれていたりするのだ。こういうところはかわいいと思う。 と、言うわけで一斉に燃え上がった壁紙はなんだか綺麗だった。照らし出される横顔。 そうか、昨日キーラが壁紙に般若心経を書き込んでいたのは急に功徳を積もうという発心に目覚めたのではなく、邪魔な壁紙を本のページに見立てることで一気に排除するため。 ……もちろん炎は刹那のうちに消されるのだけれど。 バタバタと何十、何百、何千と本が定位置を外れて崩れ落ちてく。二重三重では数えきれない、音の何十重奏かな? よって私は、それまで部屋の容積を圧迫していたのか、一斉に崩れ落ちると一回り広くなった寮の自室を見回すのだ。 そして私は――、今の今まで気づきもしなかった己の不明を恥じるとともに、なかば本に埋もれつつあるキーラの頭をげしっとはたくのだった。 「サプライズ」 してやったりとほくそ笑むキーラに笑顔を返す。だけどそれもつかのま、私はため息を噛み殺すの。 ● ● ● 数時間後。 この場所は、姫代学園大図書館は、昼休みの喧噪からは、無縁だ。なぜだかカウンターに置かれていた、東京タワーの何千分の一かのスケールモデルが目についた。続いて日付表示のキューブカウンター。これも図書館の顔、だと私は勝手に思ってる。 さすがに返却に使うブックポストに収まる量ではなかったので、カウンターを挟んで図書委員さんと顔を合わせ正規の手続きを取ることになる。 「ごきげんよう。可憐塚さん。図書委員長は、三国屋さんはいらっしゃる?」 「ごきげんよう。お姉さま方、委員長でしたら『奥』にいらっしゃいますわ。ただいまお呼びいたしますのでおかけになってお待ちくださいませ。にしても、大荷物でいらっしゃいましたね……、うふふ」 ささやく声、いや、ささめく声といった方がもっと適当な表現かなあ。 かそけき声、はかなき声というには力強い。もっと、秘めやかで密やかな響きを彼女の声は秘めていたのだから。 蔵書数三億冊(※キーラ談)を誇る姫代学園大図書館には白皙の美少女がいる。 可憐塚みらい――、夜が似合う子だった。陽の光の下も歩けなくはないのだけど、木漏れ日も許さないほど空を追いきった深緑の森と苔むした石畳の城下が似合い過ぎている、そんな女の子だった。 そんな可憐塚さん、校内には一年時にしてファンクラブ(※ここでいうファンとはきっとファナティック(狂信的)の略)まである人気者だそうで……。隣にいるキーラと私を合算することで美貌を拮抗、中和しなければきっと嫉妬か信奉の心に吞み込まれて志半ばで斃れてしまっただろう。持つべきものは友と美貌である。 ● 「にしてもたくさんの本でしたね」 「三国屋委員長、可憐塚さん、矢達さん……、それにたくさんの図書委員の方々、ありがとうございました」 「いえいえ、刺激になりましたわ。うふふ……」 流石に申し訳ないと思ったのか、深々と頭を下げるキーラの姿勢は堂に入ったものだった。一拍遅れて私も続く、 いや。別に疲れてないよ? 私も魔人だ。人並み外れた腕力くらいはある。 さすがに部屋いっぱいの本を持ち込むのは気は引けたし、大変だった、って心の中では思ったよ。 だけど手伝っていただいた方々の手前心の中に収めたよ。 と、いうわけで。数人の図書委員にご迷惑をおかけしながらも我々はお昼休みも終わらぬうちに返却を完遂したのだった! 最新鋭の自動返却仕分け機は、運び込む端から返却、仕分け、配架の処置を行ってくれる。 うん、ベルトコンベアが愛おしく思えてきたのは人生でも初めてでしたね。最近はなんだかんだケチは付くものの、さすがは技術立国ニッポンだと感心感動、ですよ。やったー。 ちなみに三国屋委員長は、とんがり帽子に黒マントのステロタイプな魔女の格好をしている変人だ。 この図書館の主にふさわしい……と、キーラは高く評価しているんだけど、その意見はどうだろう? なんでもキーラが図書館から大量に借り受けた本の中には三国屋委員長の私物も混じっていて、怪しい魔導書を燻して従属させるんだとかなんだとかな、頼まれごとをしたらしいんだけどそれについて長々と語るのは本題ではないのでやめよう。 ここからが本題だ。 通常、図書館は期限、冊数共に制限が設けられている。多くの場合、二週間、五冊とかね。 ところがここ姫代では一定額の保証金を納めればそれら一般生徒の制限を取っぱらえるという裏メニューが存在する。 「あれだけのページ数の引き換えがたったの三万ページでは、この重みも軽々しいとは思わない? 一人」 そう。一億円は通常一万ページで約一〇キログラム、つまりは、その三倍ならそういうことだったりする。 約三億円はやはり惜しい、ということでこの切羽詰まった状況下であっても取りに行くしかないということなのだ。 図書館の『奥』、厳重な金庫を開いたその先に待っていたのがたったの三〇キログラムでは、キーラでなくてもお金に対するありがたみが薄れてしまいそうだ。ポンと渡されて、片手で受け止められる腕力を考えると、やはり私は普通人ではありえないのだなと再認識する。 「カラスさん、図書館を銀行代わりにするとは豪胆なお人ですこと。金利は付きませんよ?」 ということで、こんなことを言われた。 あからさまに目線をそらすキーラの仕草が、すべてを物語っているがいずれにしてもこの場でできることの過半は済ませた。 私たちは無課税の三億円を手に入れた、それが結果である。三億円はここ日本にいてキーラがすぐ動かせる、事実上の全財産である。キーラは学生三年間でこれだけの財を築き上げた。それが多いのか、少ないのかは、人によっては意見が異なるのだろうけれど。 ちなみに、ここが姫代学園である以前に図書館であることから現れる可能性のある敵「死遊戯之助殺兵衛」については警察に通報しており、既に別の場所で逮捕拘留済みだ。現れる場所の決まっている犯罪者ほどに脆いものはない。 だから私たちはこうして悠長にしてるの。 あ、そうだ。いや、もう一件ほど聞かなければいけない情報が、三国屋委員長にはあったんだよね、ね、キーラ? 「鮫氷(さめすが)しゃちってご存じですか?」 ここ姫代学園には関わってはいけない噂、怪談、七不思議、そして真相――転校生が幾人(いくたり)も存在する、ということを私たちは知っている。そして私たちはそのうちのひとつ、冥界からの魔物こと「鮫氷しゃち」について、少しだけ関わることに決めてしまった。 秋葉原でも新宿でも(中略)姫代学園でもない場所〇二〇八「日露戦争開戦日」 と、いうわけで私たちはまず戦いが起こらない場所にまで来ている。 具体的には――、秋葉原でも渋谷でも新宿でも池袋でもスカイツリーでも東京タワーでも宿泊施設でも動物園でも遊園地でもショッピングモールでも公園でもビル街でも神社でも水族館でも中華街でも廃工場でも飲食店でもトンネルでも立体駐車場でもスタジアムでも図書館でも橋でも山でも列車でも墓地でも姫代学園でもない場所だ。 ただ、問題はある。 それはたとえば。いや、それはこの場所を所有するご本人の困惑から感じ取っていただければ話が早いだろう。 「いや、カラスさん……、今更だけどなんで俺の家に来てんのさ……?」 「それは仕方ないと思うわ。だって――、秋葉原でも渋谷でも新宿でも池袋でもスカイツリーでも東京タワーでも宿泊施設でも動物園でも遊園地でもショッピングモールでも公園でもビル街でも神社でも水族館でも中華街でも廃工場でも飲食店でもトンネルでも立体駐車場でもスタジアムでも図書館でも橋でも山でも列車でも墓地でも姫代学園でもない場所が『鍵掛錠(かいかけ・じょう)』あなたの自宅しかなかったんだもの」 よく一呼吸も入れずに言えたなこの女。 補足すると、都内にありながら半径五〇〇メートル以内にたった今羅列された施設がない、別にキーラが迷惑をかけても問題ないと判断した人がこの目の前で困惑した顔で座っている銀色マッシュルーム頭の小柄な少年だということにほかならない。 私たちは、151cmを自称するこの少年が実は150cmに届いていないことを――知っている。つまりは、私たちの方が背が高い。 私たちは、43kgを自称するこの少年が実は43kgより軽いことを知っている。つまりは、いや、この話はやめよう。 「少年、冬休みにあの秘境『群馬』に冒険旅行に出かけた時、たまたま知り合ったわたしたちは『クヌルプ』だか、『シュプール』という名前のペンションに泊まり、その地下に隠されていたダンジョンに『ブックソムリエ』と『罠師』でパーティーを組んで見事攻略しましたよね? その縁だと思ってわたしたちを泊めてください」 「『しあわせの箱』はありましたか……?」 鍵掛くんのツッコミも弱々しい。 ほら、これが日本を代表する名優『三船敏郎』さんからいただいたサインなんですよ、とお宝を見せびらかすキーラだったが、正直元ネタを知らない人、たとえば私には何が何やらわからないと思う。あ、黒澤映画だと『七人の侍』と『蜘蛛巣城』が特に好きです。 「まぁ、冗談はさておき。少年、きみがわたしたちのことを自室にまで招き入れた時点で私たちはきみの腹の中に入っているのですよ。狼さんの腹を切り開くためのハサミは持っていませんから。あとは煮るなり焼くなり好きにしたまえ。あ、タタキはだめだよ?」 キーラは珍しくふざけた調子でひらひらと手のひらを見せる、つまりはじゃんけんのパーだ。 石には強いけど、ハサミには弱いという主張のつもりらしい。というか、チャイムを鳴らすなり、即座に玄関先にまで上がり込んだキーラの図々しさは、相互の信頼関係あってのものと信じたいところだ。まぁ、私はキーラに付き合うしかないわけなんだけどね。 「はぁ……、いいっすよ。もう、俺は廊下で寝袋で寝るんでご両人はベッドを使ってくださいよ」 いい加減匙を投げたというべきか、ひらひらと手を振る鍵掛くんなのであった。 もっとも、私たちはこの小柄な少年が罠のスペシャリストで、武装集団を殲滅できるだけの力量があることをすでに知っている。 別に戦闘向けではない私たちなんて、一歩不用意に進んだが最後、おにぎりの罠を踏んだあげくにおにぎりにされて彼に食べられてしまう……だなんて、ありえない妄想があふれ出すのだけど、まぁ、こんなこと考えてる時点で私はリラックスしてるんだろう、たぶん。 ● 「卒業旅行に、クリスマスの前(・・・・・・・)から全国各地を一人と一緒に回っていたの。最後はうっかり『新潟』に行く寸前で東京に逃げ帰ったのですけどね。で、なんでも都内で群発的に『山乃端一人』が襲われる事件が起こっているというではないですか? それで『山乃端一人』という世話焼き系クラスメートがいるあなたも騒動に巻き込まれているのではないかと思って、訪ねたわけなのです」 私という『山乃端一人』が思うのだけれど、正直に言えばなにもかも不自然な流れでの説明だと思う。そもそもさっきの「秋葉原でも(中略)姫代学園でもない場所」というくだりは必要だったのだろうか……。ただ、wikiうんぬんの話を垂れ流すと妄言だと思われる危険があったことも確かね。 いずれにせよ、キーラと鍵掛くんの出会いからして余人からすれば意味不明なものだと思うし、鍵掛くんは強引な説明にいぶかしみつつも納得したみたいだ。うん、決まりだね。この手の少年は悪人には強いんだけど、なぜか女の子には後れを取るタイプだ、たぶん。偏見だけど。 「うーん……、俺も、ここ二ヶ月くらい?は平和(・・・・・・・・・・・・)してましたし、いいっすよ」 了承の声を聞くや、キーラはまるで、チョコレートケーキから切り分けるかのように札束のブロックを彼にいくつか投げ渡した。 ギブ&テイク、バレンタインデーには日数が足りないんだけどぎぶみーチョコレートというには素気がないなあと思ったのは、ナイショなのだけど。 でも。でも、だ。 なんだかんだで私たちは浮かれていたのだろう。その言葉が絶対に聞き流してはいけない類のものだと知るのは、いつだって終わってからだったの。 ● ● と、いうわけで私たちは戦いが起こるかもしれない場所にまで来ている。 事前に、戦場と戦う相手が一回分わかっていると言うことは確実に勝てる戦いを一回はできるということだ。 渋谷――東郷神社、戦史上で特筆すべき戦いを演じた英雄を祀る場所であり、ふたつの戦いが起こるかもしれない場所に私たちは立っていた。 銅板葺き屋根の本殿は、時に洗われたのか緑青に彩られていた。ついでに、じっ……と眺めていくとZ旗の描き方を覚えてしまいそうになるわ。 ほどよく古びたその様は、悠久の時の果てだなんてロマンチシズムは似合わずに、どこかずっしりとして現代と地続きの趣を感じさせるの。 生前、東郷元帥は自身の神格化を望んでいなかったというけれど、この国と民意は彼の意志を酌まなかった。 だけど、私が見るものはそれだけではなくって。 玉砂利の上を歩く白無垢の花嫁、それに向けて一点の影と紅を指す野点傘、それに象徴される花嫁行列を見ていく。 すると、この場所が都心の渋谷に生まれたことに感謝の念を差し上げたくなってしまった。日本海海戦の英雄、東郷平八郎は戦勝の御利益を授けるはもちろん、生前に家庭円満であったことからこういった神前式を催す場としても有名みたい。 故国をロシアに蹂躙された歴史を持つキーラは熱心に祈っていた。 目を閉じ、手を合わせるその所作に、まぶたの奥の奥のその先に神前を血で汚す申し訳なさが、混じっているのかはわからない。 確実に勝つために連れてきた鍵掛くんは、キーラと微妙な距離を取りながらダッフルコートのボタンを噛み合わせていた。 今年の冬は、まだまだ続くと、そう思っていた。 ● そして、何者にも出会えないまま、無為に時は過ぎていくことになる。 ちなみに、私たちの護衛に当たるはずだった魔人警察官「すーぱーブルマニアンさん十七歳」こと正不亭光さんは、ほかに喫緊の危機が迫っている「山乃端一人」がいるとかで姫代学園に逆戻り、今度は正規のルートで某山乃端一人の護衛に当たっているのだとか。 東京中に同姓同名の「山乃端一人」がいるとこういうこともあるし、上の意向に振り回される公務員ってのは実に大変だと思う。 まぁ、私たちの場合は自衛手段があるとみなされたのが痛手だったのかもしれないけど……。 ● ● ● ● ● 東京タワー〇二一二「バレンタインデー・イヴ・イヴ」その4 東京タワー。 紅白に色分けされたカラーリングもまぶしい、いわずと知れた東京のランドマークにして高層三三三メートルの電波塔である。 去年のクリスマス前に神話的ドラゴンにジャックされたスカイツリーに負けず劣らずと、寿司怪人(何だろう、それ……?)の襲撃に遭って多数の被害者を出したのも束の間、翌日にはさっそく営業を再開していた。 だなんてことは、まったくなく。 黄色と黒で色分けされた「KEEP OUT」のバリケードテープでくっきり境界分けされた外側から、私たちはそれでも東京タワーというものの、影響下に収まろうと必死で背伸びをしていた。 なぜ私たちがこんなことをしているかと言えば、理由はあった。 結果を言ってしまえば、理想的な会敵だなんて机上の空論だった。 そもそも敵と戦場と日時が揃ってやってくる保証はなくて、待ち構えるのは元より巡り合うことだって至難の業だったからだ。 結局、誰とも出会えなかった私たちは二月十二日夜のwikiで山乃端一人を守るものとその敵、そして戦場を知ることになる。 知った後に駆けつけてみても全くの手遅れで、私たちは東京タワーの周囲を乱舞する寿司の群れを呆然と見守ることになるのだった。 ライトアップされず、夜空に上塗りされた東京タワーの輪郭はとても寂しく思えてならなかったの。 おぼろげに浮き上がるその姿は、打ち上げ花火のあと、空中に面影を示し続ける煙にきっと似ていたから。 「帰りましょうか」 「そもそも、向こうから場当たり的にやってくる通り魔をこちらから迎え撃とうとしたのが間違いだったのかもね」 夜を歩く私たちの睦まじさを見て、少し遠慮をしたのか鍵掛くんは少し距離を取ってくれた。 彼も、東京観光に付き合わされてかわいそうね、という通り一遍の慰めを苦笑で受け止める彼は、なかなかに苦労をする。 ――。これは結果論に過ぎない。後悔をしても意味はない。 だけど私は。ここにいた私は。他ならない私は戯言も弱々しくなってしまう現状に甘んじてはいかなかったんだ! それは夜だった。 キィキィという鳴き声、かすかな羽ばたきの音、蝙蝠のことを夜の化身といっても許されるだろう。 だけどそれは一羽と一頭のはざかいにいる場合の、彼女にだけ許される表現で、、、、、、、、、、、、、 時速二〇〇キロを越える彼女お手製の蝙蝠の群れは、さしずめ黒い嵐だった。猛烈な勢いで通り過ぎていく、それから私を逃がそうとキーラはドンと私を突き飛ばす。よろけて、たたらを踏むキーラの傍らに白皙の少女が立った。 「可憐塚さん!?」 「吸血鬼……!?」 結果論に代わって結論を言おう。 黒から白へ、星亡き夜空に似通った黒髪を背負う少女は命を奪うことに長けていた。首筋から噴き出す鮮血は刻一刻と、キーラの命を名残に変えていって、そして私は。何も言えなくなって。誰も何も言わない。 種明かしをすると私たちは勘違いをしていたんだ。 東京に着いてから一度の戦いも経験していない私たちと、既にクリスマス前にスカイツリーでの戦いを終えていた鍵掛くん。 二者の認識には差があった。 そして私たちは鍵掛くんにとっての二回目の戦いに巻き込まれた。 それは、この時点は元より冬の間に三度の戦いを終えていなければならない私たちにとっては知る術のない事実である。 だから。私が、山乃端一人がぎゅっと、目を閉じて、開くと。 キーラ・カラスは死んでいた。 純白のドレスに身を包みながらも、その身から出た鮮血に身を躍らせて死んだのだ。 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンB 私の名前は「山乃端一人」、誰かさんの隣に立っていた一人。 とは言え、ふたりでいることにあまりにも慣れきっていて、はたしてこんなフレーズで私たちのことを語り続けていいものか悩んでいる今日この頃だったりするの。だって、今日は立たずに座り、一人という名前の私はこれつまり、一人で座っているのだから。 果たして、死というのは物語を区切る上で問題になるのかな? 半ばまどろみが支配する私は私の中で、可憐塚さんにこの頬を預けていた。イグサの香りも豊かなゴザを足蹴にしながら、ぐんと足を延ばす。 これが夢ならよかったと、私はずっと、なにかを思い出しそうとしていた。けれど、それがなにをあわやというところで掴めずに空ぶってしまう。 こんな思いを、そんな話は置いておいていいのかという疑問は今も走り続ける。だけど。 私は、私は。ここで、私は何をしているんだろうという疑問を、私は私に差し込もう。つまりは自問自答というやつだった。 だけど私は、紅白に色分けされた、プディングと白酒を見て一色足りないと、なぜだか思った。 ああそうだ。姫代学園恒例の雛祭りは卒業式に先立つところ、実に盛大に行われてたらしい。女の子のお祭りは女の園では実に華やかであってほしい、そういう有形無形のお願いがここで結晶したということだと思ってほしい。のだそうです。 花より団子な、らしい私は白酒で乾杯をする。 誰かさんの血から作られたブラッドプディングはひどくしょっぱかった。 涙の味なんて知らないのに、そう思ってしまったのはなぜだろうか。こちらの味はわかってしまっても、お酒の味なんてまったくわからないよ。 互いに頬を、かんばせを朱に染めるなんてことは全くなくて。 私はとうとう何者にも支えられたくはないのだと、両の手のひら、足の甲を空を目指して投げ出した。 なにもわからずに、何が疑問かすらもわからずに、私は駄々をこねるこどもになりたかった。 お囃子が聞こえる。 ひんやりとした手のひらの感触が伝わる。 どたんばたんとしてきっと常の私ならはしゃいでいたんだろう。 そして、私はまぶたを閉じた。 ここに至る物語が語られることはきっとないだろう。 ● ● ● さて、ここで質問です。 まぶたを開きますか? 閉じますか? + ... 「夢」 これはいわゆる正史ではない。 いったいどこからどこまでが間違っているかは、明らかにはされないのだろうけど。 だって、私が持ち帰ったのは別のものだったから。 《百年前の夏のあの日に、赤い君をください》 宛先は――、今は伏す。 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その2 「あなたは、わたしの王ではありませんから」 と、キーラ・カラスは言った。 「そうか、儂もそなたの王ではないからの」 アヴァ・シャルラッハロートはそう答えた。 こうして、私が立ち会っている以上、二対一という構図こそ生まれてしまう。 だけど、東欧のマイナーな国の貴族令嬢と日本の一般市民な小娘二人と、かの世界で偉大なる足跡を残した巨人とでは、合算しても後者の方に比重が向くだろう。巨人と言っても、質量ってわけじゃないよ。 なぜならこの二者は、互いが互いを見るならばまったく違った歴史を辿った平行世界の住人なのだから。 空想冒険小説『ガリヴァー旅行記』の前半、小人の国「リリパット」や巨人の国「ブロブディンナグ」の物語を頭に入れれば大体の感覚は伝わってくると思うよ、とキーラは言った。そしてキーラの言葉を、私は口では否定しながら心の中で転がして重きをなすことにするのだった。 もちろん極小サイズの英傑と、私にとっての“令嬢”は、もとより釣り合うものではないのだけど。 ここで冒頭の言葉を説明するためにも、ほんの少し、数分だけ前に遡ることにする。 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その1 「ところで一人は『コミックぽんぽこ』という漫画雑誌を知っていますか?」 「いや、知ってるけど。開口一番、何の話なの? キーラ、ここに私を連れてきた意味があるの?」 「いいえ? ここに来たのはわたしの趣味ですよ。なにを隠そうその雑誌の特別審査員を仰せつかったので、その佳作受賞者の保護者の方とここで打ち合わせをしようと思いまして」 姫代学園を離れたはいいものの、うだうだと策を練っていても意味はない。結局運命相手には正面から受けて立てという正直ヤケクソ気味な結論に達した私は無理やりキーラを説き伏せた。すべては夢のお告げだとでも思ってほしい! 何なら物証だってあるよ。 と、まぁ、それはそうと。それでも何かを企んでいるらしきキーラに乞われるままに明治神宮の外苑、食事処も兼ねたテラスにやってきていた。 ちなみに、『コミックぽんぽこ』とは大手出版社「小生館」が十五年前から力を入れ出した児童~少女向け漫画雑誌で、門外漢からは出版不況もささやかれている昨今で新興ながらも月五〇万部を発刊している注目の的(電子・紙合算)のだとか。 「にしても、佳作受賞者に格別の厚遇ってのは少々やりすぎだと思うわ、キーラ。それほど思い入れのある作品だったの?」 「今回は大賞、準大賞は選出されずに準入選が最高でしたから。佳作でも重々というのがひとつ。わたし自身も賛成票を投じたのがひとつ。そして最後に『アヴァ・シャルラッハロート』、敬称はなんとお付けしましょうか? 陛下? いいえ、違いますね。なぜなら――」 キーラの目線の指し示す先を追いかけてみると、そこには貴人がいた。ちいさなちいさな貴人が。 ドレープの利いた巻きスカートの中には優れた脚線美を包むキュロット、女性かと錯覚しそうになるほどに細いウエスト、ふくらんだ袖など、それは現代と比べるとやや古風とされるイギリス・ヴィクトリア朝時代の貴婦人に酷似したドレスだった。 そして、冒頭のやり取りに話は戻る。 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その3 とはいったものの、結局、貴族の矜持というのは互いに相互認証のもとで成り立つのかもしれない。 たとえば、それが本来概念上の存在である国家が同じく承認を積み重ねることで国際的な立ち位置の強弱を決めるように。 身長数センチの小人たちが覇権を争う世界であって、そこを二分するうちの一陣営の覇者を相手取ったがために、キーラは己の生まれ持った矜持から逃れることはできなかった、らしい。必要以上にへりくだるつもりはないものの、表面上だけでも敬意を欠かすつもりはないようだった。 「では陛下。当日の警備についてお話ができれば」 「うむ、当日は儂が誇る一万の……」 “彼”は千々に千切れた甘酒のジュレを優美な仕草ですすりながら、臣下の皆さんと一緒に大仰な仕草でテーブルクロスの上を独壇場へと変えていく。 あ、そういえば行きがけの表参道で酒樽がずらずらと並んでいたのは、この神宮で祀る明治天皇の好まれたワインに由来するのだそうで。 このジュレもそういったものに由来するのかなあ、とか心の中で思う私だった。 タバコ……じゃなくて本しか吸わないキーラもきっと二〇歳になったら、私と一緒にお酒を嗜む日もくるんじゃないかな、とそう思った。 いや、今はアヴァ・シャルラッハロートについての語りに話を戻そう。 彼を指し示す表現を選び抜くとして、白銀の夜叉というには高貴さがぬぐえない。もちろん、くるみ割り人形の行進といってしまうには滑稽さがあまりにも足りなかった。 あえて足りないものを言ってしまえば、それは現実感だろうか。 さしずめ舞台劇だった。ごく近しいのに、劇場のB席で遠目で見るしかなくて掴み切れないもどかしさ。 意外とミーハーな私としては、ぶっちゃけ、めっちゃ惜しい。 アヴァ・シャルラッハロート“陛下“は、性別学上男性なのだけど身長数センチの肌は、非常にきめ細やか、すべらかだった。 はっきり言うと、私はかんばせと一挙手一投足の観測に必死であって、当事者同士で進行している業界人(?)同士の話はよく頭に入ってこなかった。 細工というものはきっと小さければ小さいほど、精緻でうつくしいものなのだ。 とまれ、気になるところは気になるのだけど。 「ところで、陛下。陛下の傍らに侍る『やまのは一人』は『山入端』と書くのですか?」 あ、これは私も気になった。wikiという媒体を介しての、なかば反則気味な指摘だけど。「きんとと」という愛称がつけられた陛下と漫画家志望の彼女との間の日常は、「山乃端」ではなくて「山入端」で統一されていた。 恥ずかしながら私も自分の名字を「山之端」って間違えて書いてしまったことが多々あるので人のことは言えないけど、単なる誤字ではなくて作為を疑うには十分で、少し気になっていた。 実はキーラは、このことを指して。 『アインス』という異世界の勇者を実質的に前世として持つ、陛下にとっての『山乃端一人』が有象無象の、東京都内に少なく見積もって五万人はいる「山乃端一人」といっしょにされることを無意識であれ、忌避する感情が働いたのでは? と仮説を立てている。 ついでに言えば、アヴァ・シャルラッハロートという個人と公人については。 一酔狂人としては大変好感が持てても、ひとりの君主としてはあんまり好ましくなく思えると語っていた。 帰還を前提にしているとはいえ、やはり国を放り出した君主には思うところがあるのだろう。それを踏まえての『あなたは、わたしの王ではありませんから』発言だろう。キーラの国には貴族はいるけど、もう王様はいない。 もちろん、これらの発言を直接相手にぶつけることはしなかった。 あちら側の諜報網を考えれば、拾われていても驚きはないのだけれど、ただ互いに口に出さないのも矜持、プライドだと思うから。 ……ただし、向こう方の反応については、たった今ここで語ることはしない。いずれにしてもあまりにも些事だから。 ただ、「キーラ・カラス」は山乃端二人から私「山乃端一人」をかばった、結論としてはそれで十分だろう。 明治神宮〇二一一「建国記念の日」その5 だから。私が、山乃端一人がぎゅっと、目を閉じて、開くと。 キーラ・カラスは死んでいた。 純白のドレスに身を包みながらも、その身から出た鮮血に身を躍らせて死んだのだ。 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンD 私の名前は「山乃端一人」、キーラ・カラスの隣に立っていた一人。 とは言え、ふたりでいることにあまりにも慣れきっていて、はたしてこんなフレーズで私たちのことを語り続けていいものか悩んでいる今日この頃だったりするの。だって、今日は立たずに座り、一人という名前の私はこれつまり、一人で座っているのだから。 こと、ここに至ればなぜ私がここにいるのか疑問になってくる今日この頃だ。 春夏秋冬、ひととせ、商売繁盛、あきない……、もうなんでもいいや。 どうやら、ハッピーエンドさんは私と別の場所でよろしくやっていくらしい。 絶望というには生ぬるく、死を選ぶには希望に満ちていて。 ただ、私に存在しないのはキーラ・カラスという名前の素敵な隣人だけ。 私はあと何年生きるのだろう? 向こう百年以上は生きてやると啖呵を切った私だけど、それはキーラが隣にいてこそ。あああああ。 うつぶせになりながら、地べたの上で不格好な魚のようにもがいている私を見て後輩諸妹はどう思うだろうか。 キーラから無税で相続した三億円を枕に、窒息するなんて馬鹿な死にざまだと思うんでしょうね。 お金さえあれば面白おかしく過ごせるなんて自明の理だけど、それがすべてじゃないんです。 ああ、酔狂だなって私は笑うだろうな。ただ、それをやるのはキーラの役回りでしかありえないのだろうけど。 キーラがやっても私がやっても奇行は奇行以外のなにものでもない。三〇キログラムの紙の束をまとめた私は、いたたまれずにその場を去った。 今、ここにいる私が私のまま続いているということは惰性のまま私は私を生きるしかないらしい。 どうやら、今回も失敗したんだなって思いながら私はぎゅっと目をつむる。 さて、ここでふたたび質問です。 まぶたを開きますか? 閉じますか? + ... “夢” まぶたを開くと、ここは夢なんだなって心の底から実感した。 だって、つねっても目が覚めないもの。そう、私は夢の中を歩く、歩ける。私は夢の中で持ち帰った記憶か宝物を自分のものにできる。 これが私、キーラ・カラスの隣に立っていた「山乃端一人」の魔人能力「夢みる宝石」だ。名付け親はキーラ。「バクのなみだ」と悩んだらしいけど、正直なんのことやら。 私は、私の道を行く。死んだらなにか破滅的なことが起こる魔人になんてなってやらない。 キーラが死んでしまった後になっては、どうしても捨て鉢な気持ちであることをきっと否定なんてできないんだろうけど、それでも私は歩く。 私は、歩く。ひどく現実感のない、継ぎ目なく真っ白けな回廊を私は歩く。夢の中を、歩き続ける。ひどく重い体を、きっと心で引きずりながら。 だからなのか振り回されてシェイクされるんじゃないか、って空想が一瞬頭をよぎるの、私が歩くトンネルに似た空間は、どこかゆるやかにカーブしていて円筒のチューブに似た印象だ。もしかしたら少し傾斜しているかもしれない。 足下からして光り輝いていて、視界には困らない。振り返るということを今は忘れて、ほのかな光を目指すことにした。そこを通り抜けるとパッと空間が開けた。桜だ。視界の八割をさえぎるのは、桜の花びらだった。 太陽ではなく、その光を照らし返す桜そのものが光を放つことがあるのだとしたら、きっとこんな色だと思った。 あわい光は、見返してみても目がくらむなんて事はなくていくらでも見入ってしまう。 桜の花びらに埋まってしまう足首をかき分けながら、純白の新雪に似た光景を私という異物で侵すのが申し訳なく思ってしまう。 だけど、私は花びらをまき散らす渦中、張本人を見つけ出す。負けてはいられなかった。 光渦巻くような、桜の雨の中を今度は、目を閉じずに突き進む。 「ん、ここに来るのは二、三度目ですね。ええと……、あなたは『山乃端一人』でお間違いなく?」 その左腕を、桜の巨木に溶け込ませた綺麗な女性がいた。彼女は眠たげなまなこをこすりながら、片腕を拘束された不自由な姿勢のままで私に問いかける。きっと、飽きもせずに、それを知っていて聞き直すのだろう。 私は同じ言葉を答えたんだと思う。もちろん確かめるすべはある。今までに来た私は何と答えたのか問い返せばいいんだ。 だけど、どうでもいい。女性にとっては二度目か、三度目であっても今、ここを生きる私にとってはたった一度の逢瀬だ。 私にとっては、同じことだ。両の手のうち片方は塞がっているのだから。ここまで引きずってきた私の半身は何も答えてくれない、それが答えなの。 「私はさる貴人の夢の床を守るよう仰せつかったもの」 サクラの精に似た、彼女は事情を告げた。だけど詳しい話についてはここでは省く。 ただ、なんでも“彼女”は探偵らしい。もっと言えば、鍵掛くんの雇い主が情報を得た毛色は彼女の一派とつながっているらしく――、とここで彼女は人差し指を鼻に当てた。これ以上、はしゃぐと殿方にもご婦人方にも嫌われてしまうらしい。 結論を言えば。 四辻には、渋谷という『街』からつながる運命の交差点のうち、一ヶ所はどうしても通せない。 だから。現在という名の冬のあの日か。 未来という名の秋のあの日、そして過去という名の夏のあの日へと。 どうしても一ヶ所を選べと、そう彼女は言った。だけど私のやることは決まっている。 そうして、私は一〇〇年前の夏のあの日に、正確に言えば一〇一年前の夏のあの日を選んで、足を進めるのだった。 これもいわゆる正史ではない。 いったいどこからどこまでが間違っているかは、明示はされないのだろうけど。 ただし夢の中身は真実と、その先の未来を保証するのだと、私は私を信じている。 《百年前の夏のあの日に、赤い君をください》 血に汚れた袖先の、手のひらの中を開いて、震える手先で描かれたメッセージのことを確かめる。 宛先は――、今回も伏す。だけどそろそろわかってきた気がした。知ってる、これって狂気だ。だけどキーラ・カラスを生かすにはこれしか知らない。 それしか知らない私は、これしか考えられなかった私は、きっと頭が悪いのだろう。だけど、死んだ後もキーラにすがるしかなかった。 渋谷氷川神社〇二一三「バレンタインデー・イヴ」その● だから。私が、山乃端一人がぎゅっと、目を閉じて、開くと。 キーラ・カラスは死んでいた。 純白のドレスに身を包みながらも、その身から出た鮮血に身を躍らせて死んだのだ。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 二十六滴の血のしずくが流れる時間を数えましたね? 姫代学園中央ホール〇三〇三「雛祭り」パターンZ それはもういいの。 いったい何度、キーラが死んだかは結局わからない。 だけど、それが美しいというだけで二十六回と私は勝手に決めつける。 どっちなの? と言いたいけど、結局私はどうでもいいのかもしれない。山乃端一人にとってのキーラ・カラスの「死」は結局一回っきりだ。 さて、ここで質問なんでしょ? まぶたを閉じるしかないよね(クリックして夢の中に旅立つ)、それ以外に選択肢ってある? 血だまりに突っ伏すキーラの亡骸の傍らに立つと私は腰を落とした。体が汚れることを微塵も厭わずに、その手を握りしめて夢の中へとダイブする。 一体、何度繰り返してきたかわからないけれど、これはきっと私が私である限りは絶対にやりたいことなんだとそう信じた。 + ... 『夢』 まぶたを開くと、ここは夢なんだなって心の底から実感した。 だって、つねっても目が覚めないもの。そう、私は夢の中を歩く、歩ける。私は夢の中で持ち帰った記憶か宝物を自分のものにできる。 これが私、キーラ・カラスの隣に立っていた「山乃端一人」の魔人能力「夢みる宝石」だ。名付け親はキーラ。「銀の手」を持ち帰って寄付したことでアイルランド政府から表彰を受けたことは、今はするべき時ではないんでしょうね。 桜の彼女に向かって決まり切ったやり取りを繰り返す。きっと、彼女はわかった上で聞いてくるんだ。聞いたらすべてを教えてくれるのかもしれない。 ん。ところで「夢みる宝石」という能力は、それほど融通がつくものではなくて、今までに有用なものを持ち帰ったことは数あるほどしかない。 だけど、持ち込む分には体に身に着けているもの、触れているものという括りなら制約はなかったりする。 なので、桜の下ではなくて桜の上に横たわる彼女にとっては、血にまみれたドレス姿の少女の亡骸を引きずる私「山乃端一人」を見てどう思うのだろう。ドレス姿の少女は、キーラ・カラスは物言わぬ亡骸となって、一九二一年に無縁仏として埋葬される。 信頼のおける筋に依頼したためか、それとも一〇一年後ではすべてが風化して久しかったためか、二〇二二年に消息を辿ることはできない。 死人に口なし。もちろん、生前のキーラがこの事態を想像し、青写真を描いていたなんてことはありえないだろう。 一〇一年前の夏のあの日を生きた青年「俣野好太郎(またの・こうたろう)」に乞われるままに、私は一〇一年前の渋谷にあるという彼のアトリエ――、現実に向けてキーラ・カラスの亡骸を投げ込み続けている。最初に、記憶に代わって彼のメッセージを持ち帰り続けてから、ずっと。 ほんの少しずつ異なった平行世界の果てで、キーラ・カラスは変わらず私をかばって死に続ける。 そして、私は、「キーラ・カラス」の隣に立つ「山乃端一人」はどうしても物言わないキーラのことを愛することはできなかった。 だから、欲しがる人間がいたらいくらでも投げ出してしまえた。そんな私は、私のことをおかしいと思う、たぶん狂ってるんだろうと思う。 そして私は、俣野好太郎のことをちゃんと知っているわけではない。 二科展に入選した当時気鋭の画家で、死病と恐れられた結核にむしばまれて命を落とした。 彼の写真を見たら、肋骨が浮いた、儚げな男の人という印象を受けた。それだけだ。別に鬼気迫るさまはなかった。 芥川龍之介の『地獄変』に登場する絵仏師「良秀」のような、姿かたちだったら、私は納得できて救いになったのかもしれないけれど。 安っぽい「IF(もしも)」と、捨て鉢な心に従って、私は遺体遺棄を繰り返す。 もしかしたら、俣野なら生前そっくりそのままな「キーラ・カラス」の肖像を仕上げて、実質的に生き返らせてくれるんじゃないかという根拠の薄い望みもあった。だから、百年後に公開してほしいという要望を、彼に突き付けた。 奇しくも一〇一年後、一〇一番目の作られるはずのなかった唯一の人物画。 キーラ・カラスという女の姿に惚れたのか、それともその亡骸に惚れたのか。 もし俣野の動機が後者だったら、終わりだけど、いずれにしても二十五人か、それ以上の俣野好太郎は私の望みを果たせなかったことになる。 若くして死んだキーラ・カラスの肖像画が公開されるミステリーなんて私が気付かないわけがなかったから。 あまりにも薄っぺらい動機と、共感するには弱すぎる根拠と衝動、それが誰であっても真相に辿り着くことを難しくしているのだから何とも皮肉なことだと私は思うわ。 これもいわゆる正史ではあってはならない。 いったいどこからどこまでが間違っているかについては、すべてだと万人が言えるのだろうけど。 ただし夢の中身は真実と、その先の未来を保証するのだと、私は私を信じてる。 《百年前の夏のあの日に、赤い君をください》 血に汚れた袖先の、手のひらの中を開いて、震える手先で描かれたメッセージのことを確かめる。 宛先は――、俣野好太郎から。こうして二十六人の私はその手を血に汚しながら冷たい手を引き続けていた。 だから、二十六人目の私は、キーラ・カラスという『君』の姿を渡しながら『私』の名を名乗り続けていた罰を受ける。 そして、二十七人目の私は無垢な(何も知らないままで)その日を迎えることができたのかもしれないけれど、いずれの私も、もちろんそのことを知る術はもちろん、知る由すらなかった。 渋谷〇二一三「バレンタインデー・イヴ」その4 だけど。私が、山乃端一人がぎゅっと、目を閉じずに、開き続けると。 キーラ・カラスは死ななかった。 純白のドレスに身を包みながらも、その身から出た炎に身を躍らせながら獰猛に笑ってた。 敵の名前は「作品No.101 あの夏の日の赤い君」。 どういうわけか、キーラの姿をした生きている肖像画に私たちは襲われる羽目になったのだけれど。 もちろんというか、なぜかというべきか、モデルとなったキーラを忠実に再現したなら当然というべきか、胸はなかった。 迎え撃つ側としては、鍵掛くんとアヴァ・シャルラッハロート陛下。 それに加えてウスッペラ―ドさんという、なんかペラペラしてる謎の怪人の方を助っ人に加えたものだから。 正直、勝てない方がどうかしてた。それに、本と言いつつ、意味が書き込まれた紙相手なら実質なんでも燃やせるキーラが相手なら最初の不意打ちさえ防いでしまえば勝負は決まったも同然だったと思うよ。 だけど。 悲鳴を上げながら消えていく肖像画を見ると、どうしても目をそむけたくなってしまった。 だけど、なぜか見届けたい気分になって、どうしてだか泣いてしまう私だ。その時は、煙が目に染みたと言い訳をするんだ。 どうしても、本当の理由はわからなかったんだけどね。 ええと。 木綿のハンカチーフをそっと差し出してくれたウスッペラ―ドさんがなんだか、らしくなくって少し微笑んでしまったのはナイショだね。 渋谷〇二一四「バレンタインデー」 わたしの名前は「キーラ・カラス」。 山乃端一人の手を握れば、いつだって握り返してもらえる方のキーラ・カラスよ。 もっとも、わたしはわたしであって二人以上はいらないんだけど。その辺、昨日のニセモノの存在はどうしても看過できないんだけど、どうしても女の勘がこれ以上深入りするなと言ってくるの。 「ペーラペラペラ!! アッツいねー、ご両人!!」 バレンタインデーにわたしと一人はチョコレートに代えてラブレターの交換をするのだが、そこにやってきたのがこのペラッペラの怪人である。 さすがは悪役、どこでかぎつけたやらわかりやすく邪道という名の王道冷やかしムーブをしてくれますね。 ハチ公前から道玄坂を通って、軽く小走りになったところでやっぱり撒けるような相手ではなかったらしい。 「こんにちは、ウスッペラ―ドさん、どうですかここはひとつサインでも?」 と、いうわけで去年の夏休みに鍵掛くんといっしょに狩った「かまいたち」の毛を、最近原料不足で悩んでいるとかで困っていた筆の都「KUMANO」に贈って加工してしてもらった最高級の魔法の筆(末端価格:三百万円)を片手に、今度はじりじりとにじり寄る。 ちなみに、この魔法の筆だが、もちろん化粧筆にもなるので鍵掛くんの近くの席にいるカノジョに贈ってみては? と提案しているところだったりするのです。ちなみに、鍵掛くんは末端価格ってヤベーブツみたいないい方しないでくださいよ! というツッコミはしたものの、受け取るは受け取ってくれたりする、やったー。 まぁ、それはそれとして。 ウスッペラ―ドさんは、全面的にはなんだか、黒い怪人だけど世の中には白い塗料だってあるので問題はない。 ウスッペラ―ドさんは悪役としてちびっこファンにサインをする機会はあるけれど、ならこちらから攻める分にはどうだろう? というわけで、その日はなぜだか、軽いじゃれ合いじみた鬼ごっこがほんの少しだけだけど、続くの。ふふっ。 ……いいえ。正直に言うわ。彼の気遣いはありがたかった。 この一週間、どこか、苦い気持ちを言葉にならないままで置き去りにしていた。 なぜか、一人に申し訳なくて、自分を壊さなければいけないという破滅的な願望に従ってわたしはここから最後の二週間に臨むことになる。
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/52.html
329 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 22 52 37 ID xty4+YZf なんか電波が来たから2レス使う バレンタインデーin希望ヶ峰学園 舞園「やっぱり皆さんも男子みんなの分のチョコレートも作るんですね」 朝日奈「そりゃあねー。あたしとか本命チョコあげる男子もいないし」 舞園「あれ?でも、その一つだけ大きいチョコは?」 朝日奈「これはさくらちゃんにあげる分だよ!」 さくら「朝日奈よ、我は女だが」 朝日奈「わかってるよ!今は友チョコって言って、友達にもチョコをあげたりするんだよ」 さくら「そうか、では、我も朝日奈への友チョコを用意しておこう」 朝日奈「うん!ありがとね、さくらちゃん!」 舞園「そういえば、本命といえば腐川さんも…」 朝日奈「あいつはみんなの分とか作らないで十神のだけでしょ。いったいどんなチョコ…」 腐川「ハァ…ハァ…最後に、私のアレを入れれば、これで完成するわ。ふっ、うふふふ…」 舞園「ダメー!」 朝日奈「ちょっと!変なもの入れちゃ駄目だよ!さくらちゃん、抑えて!」 さくら「腐川よ、それはまずい」 腐川「きゃ、な、何するのよ!離しなさいよ…!まずくなんかないわ、これは私の……」 舞園「キャー!キャー!」 腐川「キャーキャーうるさいのよ…!」 霧切「…不二咲さん、その大きいチョコレートは大和田くんにあげるのかしら」 千尋「え、どうしてわかったの?…じゃなくて違うよ!こ、これはね」 霧切「だってそのチョコレート、ツルハシの形をしているじゃない」 千尋「あ…あの、大和田くんには、いつもいろいろお話を聞いてもらってるから…そのお礼で…」 霧切「そう、それなら大和田くん、喜ぶと思うわ」 千尋「そうかな?えへへ、良かった」 セレス「そういう霧切さんも一つだけ特別そうなチョコがありますが…苗木くんのでしょうか」 霧切「…どうして、私が苗木くんに?あげる理由がないわね。これは…学園長へ渡すものよ」 セレス「本当にそうでしょうか、ふふふ…」 舞園「それなら、私が苗木くんにチョコレートをあげても構わないですよね」 霧切「舞園さん…ええ、別に私に断る必要なんかないわ。貴方の自由だもの」 舞園「そうですか、それならそうしますね」 千尋「…なんか、霧切さんと舞園さん、恐いよ…セレスさんのそれって…」 セレス「ええ、餃子ですわ……チョコレートのね!」 妹様「…なぁに?お姉ちゃん。さっきからアタシのチョコばっかりジロジロ見てさぁ」 むくろ「…怪しい物を入れないかと思って」 妹様「ぷぷぷ、失礼だよ、お姉ちゃん。いくらアタシが『超高校級の絶望』だからって、 こんなことでバラしたりなんかしないし」 むくろ「それならいいけど…盾子、いつもの企んでる目をしているから」 妹様「ぷぷぷ…それは遠からずってところかなぁ。とりあえす、このチョコレートは普通に作ってるつもりだけどぉ?」 むくろ「それなら、いい…」 妹様「チョコはね、普通だよ…ぷぷぷ」 330 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 22 53 45 ID xty4+YZf 霧切「……」 舞園「…やっぱりそのチョコ、苗木くんにあげるものだったんですね」 霧切「舞園さん…!貴方いったい…」 舞園「エスパーですから、私」 霧切「……」 舞園「冗談ですよ。ずっとそこに隠れててもしょうがないじゃないですか。 私もまだ渡していません。せーので一緒に渡しませんか?」 霧切「…そうね、そうしましょう。それなら、せーので」 妹様「苗木ー!チョコあげるねー!」 苗木「うわ、江ノ島さん、ありがとう。義理でも嬉しいよ」 妹様「何言ってんの、もちろん本命に決まってんじゃん!」 苗木「え?…ええー!」 妹様「ほらほら、ウブな苗木のためにアタシがいろいろ教えてあげるよ?じゃ、まずはアタシの口でチョコ食べさせてあげよっか」 苗木「だ、駄目だよ、江ノ島さん!僕には心に決めた人が…!」 妹様「ぷぷぷ…じゃなくて、何マジになっちゃってんの。冗談に決まってんじゃん。苗木ってホントにウブだよねー。アハハ」 苗木「え?え?」 霧切「…このチョコはお父…学園長にあげるものだったわ」 舞園「…私も桑田くんが欲しがってたから、彼にあげます」 苗木「あれ?舞園さんに霧切さん…?ねぇ、放課後待っててっていったい…え?二人とも、どこに行くのー!」 妹様(ぷぷぷ、みんなが絶望してアタシだけが幸せ…ああ、この幸せをもっとみんなに分けてあげなきゃ…) 翌日、普通に二人と仲直りしてチョコを貰ってる苗木を見て、舌打ちをする妹様がいました。 妹様「マジありえねーし…」 むくろ「今年も誰にも渡せなかった…もぐもぐ」 338 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/15(水) 00 44 40 ID MhP6GCPR 「はぁ…なんで…なんでだよ!なんで苗木のヤツがあんなうらやま空間の中心にいんだよ!」 「きっと、苗木っちのモテ期は今なんだべ…。ま、そう腐んなくても義理でも女子からチョコ貰えるだけ恵まれてんべ」 「フッ、相変わらずくだらん事で悩んでいようだな。まったくうらやましい限りだ…」 「ちくしょー!この生涯的リア充が!こっち来んじゃねえよ!」 「馬鹿、声を出すな…!俺は皮肉じゃなく本気で言っているんだ…! 「へ?十神っち…そりゃ、どういう事だべ?」 「お前達は「命」に関わらないと言っているんだ…!」 「あら?あらららら!この香しい香りは…ダーリン、見・つ・け・た、だっちゃ! ゲラゲラゲラ!」 「くそッ!もう追いつかれた…!」タッタッタ… 「………わぁ、うらやましくねぇ」 「あぁなった腐川っちは誰にも止めらんやねーべ…」 「あ、そだ…山田。アイツさ、多分仲間だからさ、誘ってラーメンでも食い行こーぜ」 「おっ、賛成、賛成!男はやっぱラーメンだべ!」 340 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/15(水) 00 47 57 ID MhP6GCPR 332 「まぁ…セレスティア・ルーデンベルグ殿からは貰えないのは確かですな。 でも、安広多恵子殿から貰えますが何か?」 「「(声にならない叫び)」」 343 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/15(水) 01 23 24 ID 4khGDRjx 340 爆発しろw しかし、苗木以外の全員が超高校級の有名人なんだから、学外からかなり送られてきそうだよな。 桑田、十神はもちろん、葉隠も占いのお得意様がかなりいるだろうし、山田だって女オタのファンが沢山いるはず。 山田「三次元に興味はありませんが、毎年この季節になるとチョコレート食べ放題なのは正直嬉しいですね、はい(キリッ)」 セレス「うわー、超ぶっ殺してーですわー」 大神「セレスよ、全身から殺気がただもれているぞ」 セレス「あら、いけませんわ。わたくしとしたことが!見苦しいところをお見せしてしまいました」 朝比奈「確かに、なんか腹立つ感じは否めないけどね。あの山田がチョコの山築いてるとか‥。いや、逆に見直すべきなのかな?」 セレス「ところで朝比奈さん?」 朝比奈「ん?なに?」 セレス「山田さんを殺害する予定とかありません?今ならわたくし無償でお手伝い致しますが?」 朝比奈「えーと‥、セレスちゃんてさ、山田のこと好きなの?」 セレス「まさか!とんでもありません!わたくしが山田君に抱いている特別な感情は、殺意だけですわ(ニコリ)」 朝比奈「あー、うん、そうだよね」 大神「朝比奈よ、放っておけ。人は己の感情を完全に把握できる訳ではないのだから」 346 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/15(水) 02 08 52 ID tdiUZ3xX 343 苗木「桑田くんは凄いよ。僕なんて貰ったの、みんなからの義理と妹からのだけなんだ」 苗木の手にそれぞれ霧切、舞園、不二咲、朝日奈、大神、セレス、江ノ島、戦刃、妹からのチョコがある。 ・明らかに自分が貰ったのより大きいサイズの舞園と霧切のチョコ ・朝日奈と大神の合作で「苗木、いつもいろいろ手伝ってくれてありがとね&感謝している」というメッセージカード付きのチョコ(自分のにはない) ・自分と同じサイズだけど、「大和田くんのことでいつも話を聞いてくれてありがとう」と書いてある不二咲からのチョコ ・コインチョコだけど、そもそも自分は貰ってないセレスからのチョコ ・やけに気合入っている江ノ島のチョコ(舞霧への当て付けのため)と誰も貰っていない戦刃のチョコ ・「お兄ちゃん、寂しいからたまには帰ってきてね」と書いてある妹からのチョコ 桑田「…チョコってのはなぁ、どれだけ貰ったかじゃねーんだよ…誰から貰ったってのが大事なんだよ!」 葉隠「両手にチョコ抱えて、どうして泣いてるんだべ?嬉し泣きか?」
https://w.atwiki.jp/dvdsite37/pages/137.html
甘いチョコレートの香りが漂う2月14日は、大勢のファンを有するスターたちもチョコレートやプレゼントで満面の笑みを浮かべる日だ。韓流スターの世界各地のファンたちも“私のスター”の特別なバレンタインデーのために様々な方法で心を表現する。“韓流の男神”イ・ミンホのファン、プレゼントはもちろん善行も 中国で億単位のファンを持っている俳優イ・ミンホはバレンタインデーのプレゼントの規模も巨大だ。世界各地にファンダム(特定ファンの集まり)を持っている超大型の韓流スターであるだけに、バレンタインデーの頃になるとチョコレートを含む数多くのプレゼントがイ・ミンホ宛に送られてくる。 イ・ミンホの所属事務所の関係者はTVレポートとの取材に対し「毎年、少ない時は数十で多い時は数百のバレンタインデーのプレゼントが届く」とし「チョコレートのようなプレゼントもあり、国籍を問わず寄付やボランティア活動の証明書を送るファンもいる」と伝えた。プレゼントではない善行でスターを愛する心を伝える新しい文化もできているようだ。DVD販売 今年も2月14日のバレンタインデーの前から韓国はもちろん中国、台湾、ベトナム、日本、アメリカ、香港、インドネシアや南米の国々のファンがイ・ミンホに送った心が続々と韓国に届いた。キム・スヒョン、誕生日&バレンタインデーのプレゼントにケータリングまで…気を配ったプレゼント キム・スヒョンのバレンタインデーはもう少し特別だ。二日後である16日がキム・スヒョンの誕生日であるためだ。2月になるとバレンタインデーや誕生日を祝う数百、数千のプレゼントがキム・スヒョン宛に送られる。キム・スヒョンの所属事務所の関係者はTVレポートとの取材に対し「韓国、日本、中国他中華圏、タイ、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアからプレゼントが届く。キム・スヒョンが韓国ドラマDVD『星から来たあなた』のプロモーション活動を行った国を中心に、長い時間多くの海外のファンが引き続き応援してくれている」と伝えた。 キム・スヒョンの他に周りの人々まで配慮するファンの優しさも印象的だ。キム・スヒョンへのプレゼントはもちろん、ボランティア活動や寄付の証明書、撮影現場のスタッフまで配慮したプレゼントなど、思いやりと心を込めたプレゼントが届いている。映画の撮影で忙しいキム・スヒョンのためにバレンタインデーや誕生日に合わせてケータリングのプレゼントを計画するファンも多いという。チョコレートをあげたい“ユ・ジョン先輩”ことパク・ヘジン 「チーズ・イン・ザ・トラップ」のパク・ヘジンも今年のバレンタインデーにチョコレートをあげたい大学の先輩として人気急上昇中だ。バレンタインデーに彼氏にしたいスターとして浮上したパク・ヘジンも、今年多くのチョコレートをもらった。 バレンタインデーを二日後に控えた12日、ソウル淑明(スクミョン)女子大学で行われた「チーズ・イン・ザ・トラップ DVD」のフリーハグイベントでもパク・ヘジンにチョコレートを手渡そうとする少女ファンの熱気が熱かった。 パク・ヘジンの所属事務所の関係者はTVレポートの取材に対し「多くのファンがプレゼントを用意してきて、現場の関係者を通じてファンの心を届けた」とフリーハグイベントの雰囲気を伝えた。さらに関係者は「ただあまりにも多くのファンが集まって、安全上の理由からすべてのプレゼントを受け取ることができなかった。申し訳ない」と付け加えた。
https://w.atwiki.jp/dvdlivedoor/pages/127.html
甘いチョコレートの香りが漂う2月14日は、大勢のファンを有するスターたちもチョコレートやプレゼントで満面の笑みを浮かべる日だ。韓流スターの世界各地のファンたちも“私のスター”の特別なバレンタインデーのために様々な方法で心を表現する。“韓流の男神”イ・ミンホのファン、プレゼントはもちろん善行も 中国で億単位のファンを持っている俳優イ・ミンホはバレンタインデーのプレゼントの規模も巨大だ。世界各地にファンダム(特定ファンの集まり)を持っている超大型の韓流スターであるだけに、バレンタインデーの頃になるとチョコレートを含む数多くのプレゼントがイ・ミンホ宛に送られてくる。 イ・ミンホの所属事務所の関係者はTVレポートとの取材に対し「毎年、少ない時は数十で多い時は数百のバレンタインデーのプレゼントが届く」とし「チョコレートのようなプレゼントもあり、国籍を問わず寄付やボランティア活動の証明書を送るファンもいる」と伝えた。プレゼントではない善行でスターを愛する心を伝える新しい文化もできているようだ。DVD販売 今年も2月14日のバレンタインデーの前から韓国はもちろん中国、台湾、ベトナム、日本、アメリカ、香港、インドネシアや南米の国々のファンがイ・ミンホに送った心が続々と韓国に届いた。キム・スヒョン、誕生日&バレンタインデーのプレゼントにケータリングまで…気を配ったプレゼント キム・スヒョンのバレンタインデーはもう少し特別だ。二日後である16日がキム・スヒョンの誕生日であるためだ。2月になるとバレンタインデーや誕生日を祝う数百、数千のプレゼントがキム・スヒョン宛に送られる。キム・スヒョンの所属事務所の関係者はTVレポートとの取材に対し「韓国、日本、中国他中華圏、タイ、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアからプレゼントが届く。キム・スヒョンが韓国ドラマDVD『星から来たあなた』のプロモーション活動を行った国を中心に、長い時間多くの海外のファンが引き続き応援してくれている」と伝えた。 キム・スヒョンの他に周りの人々まで配慮するファンの優しさも印象的だ。キム・スヒョンへのプレゼントはもちろん、ボランティア活動や寄付の証明書、撮影現場のスタッフまで配慮したプレゼントなど、思いやりと心を込めたプレゼントが届いている。映画の撮影で忙しいキム・スヒョンのためにバレンタインデーや誕生日に合わせてケータリングのプレゼントを計画するファンも多いという。チョコレートをあげたい“ユ・ジョン先輩”ことパク・ヘジン 「チーズ・イン・ザ・トラップ」のパク・ヘジンも今年のバレンタインデーにチョコレートをあげたい大学の先輩として人気急上昇中だ。バレンタインデーに彼氏にしたいスターとして浮上したパク・ヘジンも、今年多くのチョコレートをもらった。 バレンタインデーを二日後に控えた12日、ソウル淑明(スクミョン)女子大学で行われた「チーズ・イン・ザ・トラップ DVD」のフリーハグイベントでもパク・ヘジンにチョコレートを手渡そうとする少女ファンの熱気が熱かった。 パク・ヘジンの所属事務所の関係者はTVレポートの取材に対し「多くのファンがプレゼントを用意してきて、現場の関係者を通じてファンの心を届けた」とフリーハグイベントの雰囲気を伝えた。さらに関係者は「ただあまりにも多くのファンが集まって、安全上の理由からすべてのプレゼントを受け取ることができなかった。申し訳ない」と付け加えた。
https://w.atwiki.jp/aidorsufood/pages/114.html
バレンタイン商品 クリスマスと並ぶ恋の祭典、バレンタイン。 ハニーキッチンでは、様々な用途に合わせた手作りチョコレートをご用意させて頂きました。 愛する人へ、大切な友達へ、お世話になっている人たちへ。 それぞれの「ありがとう」を表現するために、バレンタインにチョコレートを作ってみませんか? 商品一覧 手作りバレンタインチョコ 手作り友チョコ 手作り義理チョコ(てづくりぎりちょこ) 手作りバレンタインチョコ 愛する人への手作りチョコレート。 こちらからご自由にお好きな特殊を追加することができます。 L:[[手作りバレンタインチョコ]] = { t:名称 = 手作りバレンタインチョコ(アイテム) t:要点 = チョコレート,マーブル台,愛情をこめた笑顔 t:周辺環境 = テンパリングしている自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作りバレンタインチョコのアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作りバレンタインチョコの位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作りバレンタインチョコの取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作りバレンタインチョコの販売価格 = ,,,1マイル。 *手作りバレンタインチョコの使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作りバレンタインチョコの効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人からの愛情を感じることが出来る。 *手作りバレンタインチョコの効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 } t:→次のアイドレス = 愛する人の幸せを願う(イベント) } 基本調理難易度 4 基本価格 1 ※特殊を追加した場合、難易度と価格は上昇します。ご注意ください。 戻る 手作り友チョコ 友情の証の手作りチョコレート。 こちらからご自由にお好きな特殊を追加することができます。 L:[[手作り友チョコ]] = { t:名称 = 手作り友チョコ(アイテム) t:要点 = チョコレート,ホイップ,2人で作りたい想い t:周辺環境 = デコレーションをしている自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り友チョコのアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り友チョコの位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り友チョコの取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り友チョコの販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り友チョコの使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り友チョコの効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人からの友情を感じることが出来る。 *手作り友チョコの効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り友チョコの効果3 = ,,,このアイテムは女性PCから女性PCにしか贈ることが出きない。 } t:→次のアイドレス = 友情を誓う(イベント) } 基本調理難易度 4 基本価格 1 ※特殊を追加した場合、難易度と価格は上昇します。ご注意ください。 戻る 手作り義理チョコ(てづくりぎりちょこ) お世話になっている人への手作りチョコレート。バレンタインの特別商品です。 こちらからご自由にお好きな特殊を追加することができます。 L:[[手作り義理チョコ]] = { t:名称 = 手作り義理チョコ(アイテム) t:要点 = チョコレート,いろんなラッピング,小さな箱 t:周辺環境 = チョコを刻んでいる自分 t:評価 = なし t:特殊 = { *手作り義理チョコのアイテムカテゴリ = ,,,携帯型アイテム。 *手作り義理チョコの位置づけ = ,,,{消費型アイテム,食物,料理品,ショップアイテム}。 *手作り義理チョコの取り扱い = ,,,ハニーキッチン。 *手作り義理チョコの販売価格 = ,,,1マイル。 *手作り義理チョコの使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 *手作り義理チョコの効果1 = ,,,このアイテムを受け取った人は、贈った人の感謝の気持ちを感じることが出来る。 *手作り義理チョコの効果2 = ,,,このアイテムをバレンタインシーズン以外に贈ると、なんとなく虚しい気持ちになる。 *手作り義理チョコの効果3 = ,,,このアイテムは設定国民用として作成することが出来る。その場合最大1000個まで1セットとして作成できるが、NW時間で2週間(リアル時間で1日)を作成に当てなければならい。 } t:→次のアイドレス = 感謝の輪(イベント) } 基本調理難易度 4 基本価格 1 ※特殊を追加した場合、難易度と価格は上昇します。ご注意ください。 戻る
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/1766.html
213 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 13 01 43 ID ??? ばれんたいんでーなんて風習など日本には存在していないッ 214 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 13 07 55 ID ??? そもそも欧米ではバレンタインデーとは 男女問わず愛する人(親愛含む)に感謝の意を表して プレゼントを渡す日なんだがなあ 215 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 13 41 49 ID ??? マユ「お兄ちゃんに今年もチョコレートあげるね!」 ステラ「ステラ、今年もシンにチョコつくる」 シン「マユ、ステラ……!!」 ルナマリア「べ、別にシンにチョコあげる予定なんてないんだからね! 勘違いしないでよね!」 メイリン「お姉ちゃん、言っててむなしくない?」 217 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 13 51 10 ID ??? ビーチャ「そんなにうれしいか?そんなにうれしいのか?」 モンド「うれしそうに自慢しやがって、たかがチョコレートを」 ジュドー「おい、ふ、二人ともどうしたんだよ」 ビーチャ「死ね」 ジュドー「へ」 モンド「死ね」 ジュドー「お、お二人さん?」 プル「ジュドー!私も手作りチョコレートあげる~」 「………」 ビーチャ&モンド「「鼻血を出して死ねぇええ!!!!!!!!!」」 ジュドー「ぽ~にょぽ~にょぽにょ魚の子~」 ウッソ「ジュドー兄さんが精神崩壊したぞ!!」 カミーユ「ジュドーしっかりしろ!スパロボに出られないからって黒歴史入りしたわけじゃないぞ!!」 219 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 15 03 11 ID ??? 208 グラハム「ご好意は何よりありがたいが…残念なことに私は太り易い体質でね。 フラッグ・ファイターとしてダイエットの真っ最中なのだよ。 君の気持ちは有難く頂戴させていただくが、それは受け取るわけにはいかない。 出来れば誘惑しないでもらえるかな?」Wink! こんな感じか?w 221 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 15 39 56 ID ??? 217 お前らエルやラサラから貰ってるだろうが ってトーレスが言ってた 222 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 15 47 32 ID ??? 221 お前は結構イケメンなんだからもらえるだろ。 ってシーサーが言ってた。 226 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/02/07(土) 18 43 07 ID ??? 217 エル「そっか。 ビーチャに死なれちゃ寝覚めが悪いしぃ。 今年はチョコ、ナシだね」ウンウン ビーチャ「え…」 ラサラ「あの… 私も今年はがんばってみようって… でも、モンドさんは…プルちゃんの、チョコが、良かったん、ですね」タタッ モンド「ええっ! ご、誤解ですラサラさーーーーん!!」 リィナ「もう! 仲良くしないなら、チョコあげないんだから!」プンプン! ルー「あっはっは、いやぁ、揉めてるねぇ」 イーノ「笑ってていいの? ルー」 ルー「まー、こういうのがらしいんじゃないの? ってことでぇ、こないだバイト先で教えてもらった店のなんだけど。 ほら! あんたたちも騒いでないでこっち来なさい! あたし達だけで食べちゃうわよ!」