約 228,405 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/956.html
第 七 章 もはや俺に出来ることはなにもない。長門を信じて情報統合思念体と決着をつけるだけだ。 卒業式の三日前に俺たちは飛んだ。不穏な暖かさに別の寒気を感じる。 長門が俺の手を取り、俺たちは無言で閉鎖空間に侵入した。 これで三度目になる、ハルヒによる最後の閉鎖空間。最初に来たときからは既に七年近くの歳月が過ぎている。 当時はまさかこんな未来が待っていたなんて全く想像していなかった。俺は閉鎖空間の消滅により全てが終わったのだと確信していた。それが全ての始まりだったことなど、知る由もなかった。 ハルヒの情報爆発が始まり、長門が前と同じように情報統合思念体の抹消作業に入る。もちろんそれが成功するとは思っていない。 そして長門の予想どおり、そいつは現れた。 「お待ちなさい」 あのときと同じ、ゆったりとした口調。だが、次に発した言葉は以前とは違っていた。 「おやおや……これは驚きました。これが繰り返された歴史だったとは」 長門の言ったとおりだった。この野郎、もう俺の記憶を読みやがった。 「久しぶりだな」 「私はあなたと会うのは初めてですがね。なるほど。朝倉君の報告はどうやらあなたのことだったようですね。合点がいきました」 朝倉がどうのと言うのは前にも聞いた話だ。そして今の俺にはその意味も理解出来る。 「あなたが私どもですら越えられない時間断層を突破していたとは。さすがは涼宮さんに選ばれただけのことはありますな」 そう言うと、老人は朗らかに笑った。 「さて、おしゃべりはこのくらいにしておきましょうか。どのみちあなたがたはこれから何が起こるかはご存知でしょう」 「ああ。お前らの思い通りにはさせないがな」 「それは私どもも同じ。今度はあなたがたを確実に消し去ることにしましょうか。あなたがたには何やら秘策があるようですが、有機生命体とインタフェース端末の情報処理能力では何をしようと結果は同じこと」 「あなたは知らない。これがどういうものか」 長門は老人に対して一歩踏み出し、オーパーツを取り出した。 「これは情報統合思念体に対して与えられた選択。あなたたちはそれを選ぶことができる」 「聞かせてもらいましょうか」 「自律進化の可能性と引き換えに、涼宮ハルヒの殺害を諦め、今後地球に一切干渉しないことを約束するか」 長門はオーパーツを握った手を老人に向け、 「それとも今ここで消滅するか」 老人は目を細めた。実に愉快そうに。 「随分と強気ですな、長門君。ですがわたしどもは既に自律進化を放棄しています。そんな選択も約束も必要ありませんな。私は今この場であなた方を消滅させるまでです」 「この装置が自律進化の真の可能性になり得るとしても?」 「ほほう。自律進化の真の可能性ですと」 長門は話し始めた。あのマンションで俺が初めて長門の正体を明かされたときのように。 「情報統合思念体は全宇宙を知覚しあらゆる情報を得ることが出来る。逆に言えばそれは新たに得るべきものが何もないということ。それこそが自律進化の閉塞につながっている。情報統合思念体は進化のものさしを情報処理の能力、つまり速度と正確性に求めた。それはひとつの基準として間違ったことではない。だが情報を得ることと理解するということは同じではない」 「地球上の有機生命体は肉体を持つがゆえの物理的進化と物理的退化を繰り返し、主体的、客体的にそれを取捨選択した。その結果人類はここまでの自律進化を遂げた。進化と退化は本質的に同義。 情報統合思念体には退化といういう概念も客体的という概念も存在しない。情報統合思念体が自律進化の限界に達しているのは、硬直的な一方向のみの進化を続けたことが原因。つまり情報の取捨選択に関して自らの価値観、ものさしのみを基準にしていたということ」 老人は穏やかな表情を崩さずに聞き続けていた。 「情報統合思念体は長らく涼宮ハルヒを観察したにもかかわらず、幾度となく発生した情報の奔流に対してノイズ、ジャンク情報という判断しか下せなかった。それが情報統合思念体の進化の限界を表している。自律進化への道を開くには、今まで不必要な情報として切り捨てていたものに目を向ける必要がある。情報統合思念体が重要視しなかった情報にこそ自律進化の鍵がある。それは涼宮ハルヒにより断続的に生み出された情報に凝縮されている」 「情報統合思念体に必要なのは今までとは別のものさし。だがあなたたちは有り余る情報の全てを得ているがゆえに、その結論には至らない。涼宮ハルヒの情報は、肉体を持たない物にとって理解するのは難しい。私は肉体を得ることで情報処理能力に制限が課せられたが、同時に別の情報を理解する能力を得た」 「有機物などという器がどれほどのものだと言うのです」 割って入る老人に構わず長門は続ける。 「涼宮ハルヒによる第二の情報爆発により、情報統合思念体は未来との同期機能を失うことで時間の概念を得た。それは自律進化にとって大事なこと。あなたたちも一度はそれを認めたはず。でも結局あなたたちはそれを放棄し自律進化への道を自ら閉ざした。今の情報統合思念体が自律進化の可能性を得るには大きなきっかけが必要。情報統合思念体が今のものさしに縛られている限り、これ以上の進化はあり得ないもはやそれは客体的な退化を経験することでしか得られない。」 「空言ですな」 「この装置には、人間の持つあらゆる感情が蓄積されている。感情が我々に対して多大な影響を及ぼすことは、わたしや朝倉涼子の事例を通して知っているはず。感情こそが情報統合思念体を滅ぼす力であり、自律進化の可能性への真の鍵。感情が情報統合思念体に流れ込むことにより、無矛盾の秩序に矛盾を生み出し崩壊を誘発させる。それにより情報統合思念体に散在する無数の意識の淘汰が開始される。それに耐え、それを乗り越え、それを克服すること」 長門はきっぱりと言った。 「それこそが自律進化への道」 老人から笑みが消えていた。 「もし情報統合思念体が自律進化を望むなら今がそのとき。わたしの言葉を信じるべき」 老人は長門を睨むように見据えている。 「もう戯言は結構です。有機生命体の持つノイズで我々の進化が得られるなどと」 長門はゆっくりと首を振った。老人を見やるその表情が寂しげに見えた。 「あなたとの相互理解は不能と判断した。それはとても残念なこと」 「人間のような下等な存在に篭絡されおって」 長門はしばらくのあいだ目を閉じ、意を決したかのように老人に強い視線を送り、 「あなたが人類を語るなど」 そしてこう言い放った。 「五百万年早い」 老人があからさまに言葉を荒げた。 「所詮お前たちと解り合うことなど不可能ですな。では永遠に消えてもらいましょう。二人一緒に」 その瞬間、長門の手にしているオーパーツが輝きを放った。 「終わった」 長門の瞳がわずかに潤んでいた。 「……わたしは言葉を尽くした。でもわたしの言葉は聞き入れられなかった」 突然、老人が叫びだした。頭を抱え、苦しんでいるように見える。 「……わたしはあなたたちの理解を望んでいた。人類との共存によって得られる未来を。でもその望みは叶えられなかった」 老人の叫びは収まらない。 長門は俺に向きなおり、 「わたしとの会話で、統括者はインタフェース端末を通して怒りという感情を理解した。この装置の持つ情報を統括者に送り込むためには、統括者に感情を生み出させる必要があった」 老人の叫びが止み、俺は目を見張った。今度は老人の頭が目に見えて膨らんでいく。 「統括者には、この装置からの莫大な量の感情が流れ込んでいる。もはや彼にそれを止める手立てはない」 老人が長門のそれよりもはるかに速いスピードで呪文の詠唱を開始した。しかしそれでも頭部の肥大化は止まらない。 「怒りに目覚めた統括者は、既に統括者自身にも制御不能。最悪の場合……」 長門は静かに目を閉じ、 「宇宙は無に帰する」 頼むからそんな恐ろしいこと言わんでくれ。 巨大な風船が破裂するかのような音が周囲に鳴り響いた。 内圧に耐え切れなくなった老人の頭部が崩壊したのだ。 その破片とともに、老人の体全体が情報連結解除され、輝きながら消えていく。 いや、消えていない。 光り輝く粒子たちは、はじめ霧のような状態で老人がいた周囲を漂い、そして別の物を形作り始めた。 「これは……」 老人の怒りが具現化したものだろうか。次第に姿を明らかにさせてゆく目の前のそれは、高さ、横幅とも十メートルほどの、言葉では言い表せない物体だった。 俺が知る、怪物とか悪魔とか鬼神とか、そういった想像上の生物を含めた全ての物体の中で、それは最もおぞましいかった。 俺は恐怖で腰が抜けそうになり、かろうじて踏みとどまった。 ハルヒと出会って以来、今まで散々恐ろしい目に遭ってきたおかげで、俺は大抵のことには動じなくなっていた。 だが目の前のそれは、今まで起こったどんな出来事よりも俺に恐怖を感じさせた。 やがて、表現も理解も出来そうにないその物体は完成し、しばらくの間、時間が止まったかのような静寂が訪れた。 そして次なる恐怖がやってきた。 時空振動。 大規模とか超弩級とか、そういうレベルではなかった。以前の老人のそれとはさらに桁が違う。 宇宙に存在する全ての空間と時間が一点に凝縮されるような感覚。つまり、宇宙開闢の逆のことがおこなわれようとしている。 長門の予想が現実のものになろうとしていた。言わんこっちゃない。 「わたしたちに出来ることはもはや何も残されていない。これから何が起こるかは予測不能。人類の言葉を借りればこれから先のことは」 長門は天を仰ぎ見た。 「神のみぞ知る」 目の前の物体から触手のようなものが伸びた。 それは地面を鋭く蛇行しながら、一呼吸の間に俺たちの足元にまで到達した。 戦闘態勢を取るように、触手の頭部が目の前に屹立する。 まさにヘビに睨まれたカエル状態だった。足がすくむとはこういうことだったのか。腰から下は震えるばかりで俺の意思どおりには全く動いてくれない。 長門を見る。長門も完全にフリーズしていた。戦ってどうにかなる相手だとは思っていないのだろう。 赤茶けた触手が俺たちを見下ろすようにわずかに上下に動く。次にその先端に黄色い光の点が生じ、それが次第に輝きを増す。やばい。やられる。 突然、俺たちの目の前を光の壁が遮った。 鈍い音とともに地面が激しく揺れ、振動で倒れそうになった俺はなんとか踏ん張る。 背後からも、同じように眩いばかりの光が注がれていた。振り向く。そこにも光の壁が立ちはだかっていた。 違う。 壁ではなかった。俺はそれを仰ぎ見た。 青く輝く高さ数十メートルの巨大な人型。 神の人。 「ハルヒ、お前なのか!?」 神人の左手が、俺たちと触手の間を遮ってくれていた。 物言わぬ巨人は呼吸するように体を前後に揺らす。 「こっちだ、長門!」 俺は長門の手を引き、慌ててその場から離れる。 屈んでいた神人が両手をぶらりとさせたままゆっくりと立ち上がる。 老人の成れの果てを見据えるかのように、頭部がわずかに動いた。 神人の右腕が緩慢に振り上げられ、次の瞬間、それが異形の物体めがけて叩きつけられた。 「やったか?」 衝撃で舞った土煙の中から、老人の周囲を覆う赤黒い光の玉が見えた。神人の腕はそれに阻まれ本体まで到達していない。 神人は両拳でもって交互に球体を殴打し始めた。その度に、硬質の金属を叩くような高音と、雷鳴のような低音が響き渡る。 相手がビルであったらそれは既に跡形もなく粉砕されているであろう、凄まじいスピードとパワーでパンチを繰り出す。 だが光の球体はビクともしていない。それでも神人は攻撃の手を緩めない。 球体の正面から一本の触手が伸び出し、瞬時に神人の左足にまとわりつく。 あたかも羊羹を糸で切るかのように、あっけなく神人の足が切断された。 バランスを崩した神人が片膝をつき、地面が鳴動する。俺たちも立っているのがやっとの状態だ。 もはや俺には祈ることしか出来ない。俺は掌を合せ、それをしっかりと握りこんだ。 「頼む、ハルヒ」 神人の両手が触手を掴み取り、力任せにそれを引きちぎる。球体の中の物体が、内側に勢いよく激突する。金属音が耳をつんざき、思わず耳を塞ぐ。 球体の、触手が出ていた部分を神人がぶん殴った。そこを中心に球体に亀裂が走る。 亀裂に向かってさらに神人の右手刀が叩き込まれる。球体を貫通した。だが本体までは届かない。 即座に球体の修復が開始され、神人の右掌が挟まれる。 神人は素早く左手を亀裂に突き入れた。両掌を無理やりに返し、球体をこじ開けるように左右の腕に力を込める。 ガラス板に圧力をかけたようなミシミシという音と電流のショートするような音が同時に流れる。 球体の左右から無数の触手が飛び出し、神人の腕に向かって伸びる。 触手が神人の腕を締め上げる。だが切断されない。触手が絡まっている部分の周辺の光が青から赤に変わっていく。 両腕が球体をさらに左右に開く。限界点に達した球体が鈍い破裂音を伴って粉々に砕け散った。 中の物体めがけて神人が頭突きを喰らわせる。 触手は力を失ったかのように神人の腕を離れ、それらが地面に打ちつけられる。 神人は両手を組み、上半身全体を目いっぱい使って振りかぶる。そしてそれは振り下ろされた。 大気と大地が同時に揺さぶられ、辺り一面に轟音が鳴り響いた。 神人の手の先に輝きが生じ、無数の光の粒子が爆発するように周囲に拡散していく。 そして今度こそその粒子たちは光を失い、闇のなかへと消えていった。 それまで感じていた宇宙全体を揺るがす時空振動が、嘘のように消え去った。 老人の暴走が止み、宇宙消滅の危機が回避されたのだ。 役割を終えた神人もまた、中心部から外側にかけて粒子化していた。 頭部が消滅する寸前、神人は俺たちの方を向き、わずかに首を傾けた。 俺には神人が微笑んでいるように見えた。 こうして、おそらくこれが最後になるであろう閉鎖空間は消滅した。 閉鎖空間消滅の刹那、俺は微かな時空振動を感じた。それはなぜか俺にとって、とても心地よく感じられた。 今まで欠けていた何かが埋まるような、バラバラだった何かが急に整然とまとまるような不思議な感覚。 そうか。情報統合思念体によってハルヒを殺され、大掛かりに塗り替えられてしまった歴史、その歴史の歪みが解消されたのだ。 結局のところ老人の暴走は、朝倉が暴走したのと同じ理由だった。 朝倉は長門と同じく未来の自分と同期が出来た。だが朝倉は自分が消滅する結末を知ってか知らずか、結局は暴走した。 それはこのオーパーツの影響だった。 朝倉がオーパーツを手にした俺を殺そうとしたとき、朝倉にはある感情が芽生えていた。 変化のない観察対象、涼宮ハルヒに対する苛立ち。 自分のことなど全く歯牙にもかける様子のない涼宮ハルヒ、そしてハルヒに選ばれた俺に対する憎しみ。 同じインタフェース端末として、長門のバックアップに甘んじることへの嫉妬心。 それらが、俺を惨殺した際に複雑に入り混じった。 そして、その感情をきっかけにしてオーパーツからの感情の奔流に見舞われ、朝倉は最終的に暴走したのだ。 「私があの十二月十八日に世界を改変したのも同じ理由」 それについては、俺自身が以前出した答えと同じだった。 長門は長きに渡るSOS団での生活により行き場のない感情が蓄積し、それが飽和して暴走したのだ。 そして今回、老人にわずかな感情を芽生えさせることによりオーパーツの機能が有効化し、老人は消滅した。 「これから情報統合思念体がどのような道を歩むのかはわからない。ひとつ言えるのは、あなたと地球に対して今後も情報統合思念体からの脅威が迫る恐れがあるということ。そして、それらからあなたと地球を守るのもこの装置の役割」 全てはこれで終わった。 俺は一刻も早く、あの頃のハルヒに会いたかった。 長門とともに、ハルヒが命を落とした日へと移動する。俺とハルヒが暮らしていた新居へ。 だが、そこにハルヒの姿はなかった。 なぜだ? まさか歴史が変わっていないのか? 俺たちはハルヒが入院していた病院の個室へと向かった。 ベッドに横たわったハルヒが確かにそこにいた。 その横にはハルヒに付き添う過去の俺の姿があった。 なぜだ? 俺は何か失敗してしまったのか? 長門が言った。 「情報統合思念体の仕業ではない」 だったら、どうしてハルヒはまだ病気にかかっているんだ。 長門はわずかに首を振った。 「原因不明」 医師の話を盗み聞きしたところ、ハルヒは最初に倒れて以来、一度も目を覚ましてないのだという。 それって前より状況が悪化してるじゃないか。 あのときの俺には祈る以外に出来ることは何もなかった。ハルヒが回復することだけを願い、日々祈り続けていた。 そして、それは今の俺も同じだ。俺が出来る全てのことを、俺は既にやり尽くしていた。 後は、朝比奈さんの言葉を信じるしかない。 『涼宮さんが死ぬことは既定事項ではありません』 ハルヒがこの世を去る時間が、刻一刻と迫っていた。 目の前には、ハルヒに先立たれる直前の疲れきった俺がいた。 過去の俺がそうしてしまったように、目の前の俺もいつしか眠ってしまっていた。 ハルヒが死に、その先の数日間で俺は一生分とも思えるほどの涙を流し続けた。 俺はもう一度あの辛い想いを繰り返さなければならないのか? もうすぐ運命の時がやってくる。 永遠とも感じられるほどの時間が流れた。 そして、ついにそれは起こった。 ハルヒは何の前触れもなく、突然目を覚ました。 「キョン!?」 勢いよくその上半身を起こし、不安そうな声で叫ぶハルヒ。 驚きのあまりしばらく硬直していた俺は、やっとのことで、かろうじて呼び返すことが出来た。 「ハルヒ……」 大きく息を吸い込み、俺はもう一度、はっきりとした声で呼んだ。 「ハルヒ!」 ハルヒは俺に気づかない。どうしたんだハルヒ? 俺はここにいる! 俺はハルヒに駆け寄ろうとし、長門の腕がそれを制止した。 「彼女には私たちの声は届かない。姿も見えない」 そうだ。遮蔽フィールドが俺たちを包んでいるのだ。 もう一人の俺がようやく目を覚ました。 「ハルヒ……」 さっきの俺と同じセリフだった。 二人はしばらく目を合わせ、そしてしっかりと抱き合った。 医師たちが病室に駆けつけ、呆然とした表情で二人を見守っていた。 今まさに、奇跡が、この場で起こったのだ。感動的な光景が俺の目に広がっていた。 今までの俺の苦労はこれでようやく報われたのだ。 俺は目の前の二人の姿を、我がことのように祝福した。片方はまさに俺なんだからな。 涙で視界が次第に霞んでいった。 病室を出た俺たちはいつもの公園に移動し、ベンチに座っていた。 俺は今まで薄々ながら気づいていたことが、はっきりと現実になったことを悟った。 ハルヒが蘇った喜びをハルヒと共に分かち合えるのは、さっき俺の目の前にいた俺であって、この俺ではない。 このままでは俺はハルヒと軽口を交わし合うことも抱き合うことも出来ないのだ。 俺が再びハルヒとの生活を取り戻す方法はないのか? そして俺は過去の出来事のひとつを思い出した。 この状況はよく考えてみれば以前長門が世界を改変したときと同じではないのか? 俺が朝倉のナイフによって倒れたとき、その時間平面上には刺された俺、未来から世界を元に戻すためにやって来た俺、それ以外にもう一人俺がいたはずだ。 これから起こることなど何も知らず、自宅のベッドでいつもどおりぐっすりと眠っていた俺が。 その後、未来の長門によって世界が再改変されたとしても、そいつの存在は消えないはずだ。 では刺された俺は、眠っていた俺といつ入れ替わったんだ? そのときと同じことをすれば、今回もこの俺ともう一人の俺が入れ替われるんじゃないのか? 長門はゆっくりと首を振った。 「あのときは暴走した私によって改変された三日間を残し、脱出プログラム起動直後から世界を再改変した。あなたを除く他の人に架空の三日間の記憶を与えて」 そうか。つまりは、あの時眠っていた俺はその後、朝倉に刺された俺がそうしたように、改変された世界に混乱しつつも三日後の夕方になんとか脱出プログラムを起動し、当時から三年前の七夕へと移動したんだ。 そうしてその次の瞬間から世界は変わり、刺された俺は夕方の病院のベッドで目を覚ましたということだ。 『いったん暴走したわたしに世界を改変させておいて、それから修正プログラムを撃ち込む。そうでないとあなたが脱出プログラムを起動させる歴史が生まれない』 当時の長門の言葉の意味を、俺は今になってようやく理解した。 ならば、今回の歴史改変はそれとは決定的に違うことがある。 今の俺はハルヒが死ぬことによってTPDDを得て過去に飛んだ。ハルヒが死ぬという歴史があって初めてこの俺は存在している。 そしてハルヒが死なない歴史での俺、つまりさっき目の前にいた俺は、TPDDを得ることもなくその生涯をハルヒとともに過ごす。 つまり、この歴史では俺のいるべき場所はどこにもないのだ。 「長門、お前の力でなんとかならないのか?」 「今の私にはその力はない。私は既に情報統合思念体とは決別している。涼宮ハルヒの能力も既に失われていて利用出来ない。唯一残された手段は、もう一人のあなたを殺してあなたが入れ替わること」 目の前が真っ暗になった。 あいつは俺自身だ。俺が最も望んでいた、ハルヒと平穏な生活を送り続ける、幸福に満ちた理想の姿だ。 ハルヒの病気に誰よりも心を痛め、ハルヒの回復を誰よりも待ち望んでいた、ほんの二年前の俺なんだ。 そんな俺を、この俺が殺すなんてことが出来るわけないじゃないか。 俺は絶望していた。これで本当にハルヒとは永遠にお別れなんだな。 「こうなることはわかっていた。でも涼宮ハルヒを蘇らせるには、他に方法はなかった」 あらためて俺は朝比奈さんや長門の言っていた代償の意味を知った。 俺はハルヒを救うために、今までの人生もこれからの人生も全て捨ててしまわなければならなかったということだ。 こんなことなら代償が俺の命だった方がよほどマシだとさえ思えた。俺はこれから先どうやって生きていけばいいんだ? 俺には既に生きる目的が見えなくなっていた。 「……もう今すぐにでも消えちまいたい気分だ」 無意識に気持ちが口を伝って出ていた。 しばらくのあいだ頭を抱えていた俺は、強い意思が込められた無言に気づかされた。 長門が真っ直ぐな視線を俺に送っている。 その瞳に、明らかな非難の色が浮かんでいた。 「私にもあなたの悲しみが理解出来る。だから……」 長門は目を閉じて言った。 「自分を消すなんて言わないで」 俺は凝然とした。これは俺が長門に言った言葉じゃないか。 長門は今の俺に、あのときの自分の姿を重ねているのだ。 そして長門は、ためらいがちに、だがはっきりと俺に告げた。 「こんなことを言うべきではないのかもしれないけれど……私は涼宮ハルヒとは別の道を歩むことになったあなたという存在を嬉しく思っている」 この言葉を聞いて、俺はようやく長門の気持ちをはっきりと確信した。俺は本当にバカだ。 そして、俺は今までの長門に対する俺の振る舞いに対して呆れ、悔やみ、そして叱責した。 ――お前は長門に何と言った? どこにも行くところがないなんて二度と言うんじゃない、だと? ――お前は長門と約束したんじゃなかったのか? 俺がお前を地球でずっと生きていけるように努力する、と。 ――お前が高校生の頃に思っていたことは嘘だったのか? 長門との約束なら俺は死んでも守ってやるつもりだ。 俺に生きることを放棄する資格など、どこにもありはしない。 自分とハルヒのことに精一杯で、俺はこんな大事な約束すら忘れていたのだ。長門の気持ちなど考えもしないで。 長門は始めて会ったときからこの今まで、ずっと何の見返りも求めずに俺のために尽力してくれた。 俺は数え切れないくらい長門に救われてきた。それだけじゃない。ハルヒの命をも救ってくれた。そして一度は俺のためにその命さえ捨ててくれたのだ。 ならば、俺は残りの人生は、全て長門のために費やすべきじゃないか。 いや、それでも全く足りないかもしれない。それほどのことを長門は俺にしてくれたのだ。 「ひとつ頼みがある」 俺は意を決して言った。 「俺の記憶を消すことは出来るか? 俺のハルヒに対する恋愛感情だけを全て」 目を閉じた長門が静かに否定した。 「私には既に記憶改変の能力はない」 しばらくの沈黙。 「でも……」 長門はとまどいを見せ、そしてこう言った。 「恋愛感情を変化させることは、あるいは可能かもしれない」 「少しでも可能性があるなら」 俺は長門を見つめ宣言した。 「ためらわなくていい。思いっきり、盛大にやってくれ」 これから自分の身に起こるであろう何かに対して、俺は覚悟して目を閉じた。 俺は激痛とともに意識を失ってしまうのか。 あるいは突然頭の中が操作され、何かが変わってしまうのか。 ……身構えている俺の口元に、唐突に、柔らかく暖かいものが触れた。 予想外の出来事に、恐々と開かれた俺の目は、さらに見開かれることになった。 目を閉じた長門の唇が、俺の唇に不器用に押し当てられていた。 俺はしばらくの放心の後、ゆっくりと、再び目を閉じ、そしてこう思った。 ――なるほど、確かにこれは恋愛感情の変化には効果的かもしれない―― 生き続けることを決心した俺は、ハルヒの高校卒業に併せて執りおこなわれた機関の解散パーティーに出席した。 お世話になった人たち、そしてもう会えなくなってしまう人たちに、別れの挨拶をしなくてはならない。 「皆さん、大変お待たせしました。ただいま戻りました」 卒業式後のSOS団解散式から会場に駆けつけた古泉が盛大な拍手で迎えられ、それと同時にパーティーは開始された。 それはSOS団解散式に勝るとも劣らない、壮絶な盛り上がりっぷりだった。会場の全体が常に笑いと涙で占められていた。 ハルヒによる理不尽極まりない数々の試練に対して、六年もの間苦楽を共にした仲間たちが集まっているのだから、それは当然のことだった。 晴れやかな笑顔を振りまきながら祝い酒を次々に飲み干す森さん。 静かに涙する新川さんと、抱き合って喜びを表現する田丸さん兄弟。 他の能力者たちに囲まれながら、意外にも大泣きしている古泉。 俺が機関に関わったのは実質的にはわずかの間だったが、それなりの思い出はある。間接的に関わっていた高校生の頃のこともある。俺の目にも涙が浮かんでいた。 機関の大部分のメンバーは、俺がどういう立場の人間なのかを知らなかったが、それはそれでありがたかった。いまさら創設者だと紹介されて、挨拶なんかさせられるのはご勘弁願いたかったからな。 俺は会場の片隅でパーティーの成り行きを見守る鶴屋家当主に挨拶に向かった。 「お世話になりました。あらためてお礼申し上げます。おかげで無事に役目を果たせました」 俺は心の底からの感謝を込めて最敬礼をおこなった。俺の歴史改変の全ては、当主がいてくれたからこそ成し遂げられたのだ。 本人を前にして感謝の意を表すのはこれが最後になる。当主はこの三年後に、急な病で命を落とすことになるのだ。 「こちらこそ、楽しいひとときを提供していただいて感謝しております。気が向いたらいつでも当家にいらしてください。娘もあなたが来るのを楽しみにしております」 当主は愉快そうに笑った。この人と出会わせてくれた運命にも、俺は心から感謝した。 俺はその四年と半年後、つまりハルヒが復活してしばらく後の時空に戻り、鶴屋さんに会いに行った。 「お久しぶりです鶴屋さん」 「ジョン兄ちゃん、久しぶりっ! いや、キョン君って呼んだ方がいいのかなっ?」 「ええ、どちらでも構いませんよ。今日は先代と鶴屋さんにご挨拶をと思いまして」 俺は当主の葬儀に参列出来なかった。昔の俺やハルヒと対面するわけにはいかなかったから。 当主の遺影に向かい、手を合わせた。あの時は言えませんでしたが、ようやく全てが終わりました。俺が今こうしていられるのも全てあなたのおかげです。 「先代と鶴屋さんには本当にお世話になりました。何とお礼を言っていいか。俺に出来ることなら何でもしますよ。何だったら未来のアイテムか何かを買ってきましょうか?」 「いいっていいって。あたしもジョンにはいっぱい世話になったからねっ。ところで、これからどうすんだいっ?」 「ええ、実は少し歴史がこじれてしまいまして。この時代にいる、鶴屋さんと同じ時間を過ごした俺と、今ここにいる俺は別の道を歩むことになっちゃいました」 「それは何となく感じてたよ。キョン君とジョン兄ちゃんは同じであってどこか同じじゃないなって」 「これから俺は少し未来に行こうと思ってます。この時代で生きていくには何かと不便が多くて。この時代の別の場所で暮らすのもいいんですが、別の時代のこの場所ってのも悪くないなと思いまして」 「そっかー。いよいよお別れなんだね」 「俺としても名残惜しいですが。この時代に残るもう一人の俺とハルヒをよろしくお願いします」 「あははっ、まかせときなっ」 鶴屋さんは俺のよく知る笑顔で答えてくれた。 「それにしても不思議なもんだね。中学生のあたしの前に現れたジョン兄ちゃんに、高校の下級生として北高で再会するなんてね。ジョンがまさか年下の男の子だったとは思いもよらなかったよっ」 そして鶴屋さんは俺に思いがけないことを告げた。 「今だから言うけど、あたし結構ジョンのこと好きだったんだよ。ううん、正直に言えば初恋の人だったの。結ばれない運命ってのは最初から解ってたことだけどねっ」 想像もしていなかった告白に俺は言葉を失った。 「でも、それはあくまでジョンのこと。キョン君じゃないの。私、年上が好みなのかなっ?」 鶴屋さんの瞳に涙が浮かんでいた。俺はまたしても鶴屋さんを泣かせてしまったのか? 「せっかくだから、じゃあひとつだけわがままさせて貰おうっかな?」 そう言った鶴屋さんは唐突に俺にキスをした。 「未来でも元気でね。あたしはジョンのことずっと覚えてるからねっ」 すっかり狼狽していた俺はかろうじて「ありがとうございます」とだけ言えた。 鶴屋さんもどうかお幸せに。俺はこれからの人生、長門とともに鶴屋家をずっと見守り続けます。 それからしばらく経ったある日、未来への移動の準備で色々と買出しをしていた俺は、思いもよらない人物に声をかけられた。 「お久しぶり。随分探したわ」 そいつの笑顔を見て、俺の体から否応なしに冷や汗が噴き出してくる。 それは、消えたはずの朝倉涼子だった。 「お前、どうして……」 それ以上は言葉にならなかった。 「あなたにずっとお礼を言いたかったの。迷惑だったかな?」 お礼にアーミーナイフなんて欲しくないぞ。 「安心して。もう襲ったりしないわよ」 朝倉が場所を変えようと提案し、俺たちは近くの喫茶店に入った。 やれやれだ。朝倉と喫茶店でお茶だと? 席についた朝倉は、昔を懐かしむような表情で語り始めた。 「あのとき長門さんによってわたしの肉体は消滅したけれど、わたしの意識は情報統合思念体に回帰したの。そしてあの二度目の情報爆発の日、わたしは他の意識とともに感情の奔流を経験した。情報統合思念体はあの日以来すっかり変わったわ。今や生き残った意識は数少ないの。わたしが今こうして存在しているのは涼宮さんや長門さん、それにあなたのおかげ。あなたたちがわたしにあらかじめ感情を萌芽させてくれたからこそ、わたしはあの感情の奔流を乗り越えることが出来たの」 「そのおかげで俺は二度も殺されかけ、実際に一度殺されたんだがな」 「お願い。それはもう言わないで」 片目を閉じて両の手を合わせる朝倉を見て、俺は正直に失言を詫びた。 「長門さんがあの閉鎖空間で言ったとおり、人間の持つ感情がわたしたちに与えた影響は絶大だったわ。そして情報統合思念体は多くのものを失い、多くのものを得たの。これが自律進化の可能性と言うのであれば、それは多分そうなのかもしれない」 朝倉は運ばれてきたアイスレモンティーをストローで愛おしそうに飲んだ。 「今のあたしはね、毎日が楽しいの。この先自分に何が起こるのか解らない、そう考えるだけでワクワクする。あたしはこれから自分の求めるものを自分自身で探しながら生きていくの。感情とともに。これって素敵なことだと思わない?」 「ああ、その通りだと思う。人間は常にそうやって生きてきたんだ」 「そうよね。あの頃のわたしには想像もつかなかった。今思えば、あの頃のわたしは確かに涼宮さんや長門さんに嫉妬していたのだと思うの。何も解ってないわたしなりにね」 朝倉はそう言って笑ったあと、表情を真剣なものに変え俺に告げた。 「情報統合思念体の中では、今の状況を自律進化への道として受け入れている意識が大多数なの。つまり今はわたしも主流派。でもね、一部の意識は人類、特にあなたと長門さん、涼宮さんに対して未だに恨みを持ち続けているの。だからこれから先気をつけて。あの装置があればあなたと長門さんは多分大丈夫だとは思うけど。それと、涼宮さんともう一人のあなたのことはわたしにまかせて。わたしが彼らを陰ながら守ってみせるから。これはわたしの、あなたたちへのせめてもの恩返し。わたしはそれをあなたに伝えたかったの」 そして朝倉は元の笑顔に戻った。 「長門さんに会えなかったのは残念だけど、よろしく伝えておいてね」 俺たちは喫茶店を出て、その場で別れた。 「前にもお別れの言葉は言ったけど、今度は本心で言うね」 朝倉はあの時と同じ、そしてあの時とは違う笑顔で言った。 「長門さんとお幸せに」 そう言って朝倉は俺に歩み寄り、あろうことか俺の頬にキスをした。 「一応言っとくけど、これは長門さんへのあてつけね。それじゃあ」 なんだか最近みんなが俺にキスをしてくれる。 これが長門に知れると、俺はしばらく口をきいてもらえなくなるんだがな。ちなみに、鶴屋さんのときは三日間だった。 そしてこれは必ず長門の知るところとなる。俺が長門に隠し事なんて出来るわけないからな。 今度は何日間になるんだろうな、そんなことを思いながら俺は朝倉の後姿に笑みを投げかけていた。 俺は少し迷ったが、古泉にも会うことにした。 古泉とは機関の解散パーティーで少しばかり話はしたが、やはりこいつには全てを話しておかなくちゃいけないという気がしたからな。 「そう言うわけで、既に解っちゃいると思うが、俺が機関の親玉だ」 「ずいぶんと今更ですね」 そう言って古泉はいつもの笑みを俺に向けた。 「お前はいつから気づいていたんだ?」 「それはもう、部室で最初に会ったときからですよ。あなたには他の人にはない独特の雰囲気がありますからね」 やれやれだな全く。 「解散式の時にも言いましたが、あなたには本当に感謝しています」 「今はほぼ同い年だ。その言葉遣いはやめてくれ」 「いえ、機関の創設者であるあなたにはそれは無理です。たとえあなたの命令であっても」 「なら、せめてもう一人の俺には今までどおりタメ口を聞いてやってくれ」 「それはこれからもそうですよ。向こうのあなたと私は友人関係です。それに私はあちらの彼にはお世話になってませんしね。いえ、全くと言うわけではなくてそれなりにお世話にはなりましたが」 「そんなに気を遣わなくていい。あっちの俺は同一人物だが既に別人だ。それと、解っているとは思うが、ハルヒともう一人の俺には、この俺のことは話さないでくれよ。あいつらに余計な心配はかけたくない」 「それはもちろんですよ。いたずらに混乱させるだけでしょうからね」 「何か困ったことがあったらいつでも呼んでくれ。と言ってもお前から俺に連絡する方法はないか。俺が困っているお前を見つけたらすぐさま助けに行くさ。少し行くのが遅れるかもしれんが、それは俺の時間軸で遅れるだけであって、お前の時間軸ではピンポイントで行ってやる」 「ありがとうございます。その節は是非よろしくお願いします」 「それと、最後に」 俺は少し照れくさかったが、本心を言った。 「今まで苦労した分、幸せになれよ」 古泉は俺に感謝の言葉を述べ、涙を浮かべた。俺も涙ぐんでいた。 でも、頼むからお前はキスなんかしてくれるなよ。長門は怒らないかもしれないがな。 最後にもう一度だけ行きたいと言う長門とともに、俺たちはあの図書館に足を運んだ。 思い起こせば、本当に色んなことがあった。 ハルヒに振り回され続けた高校時代。 ハルヒとともに人生を歩むようになった数年間。 そして、ハルヒを救うために超能力者の機関を作り、未来に飛び、歴史を改変した日々。 俺の今までの人生は幸せだったんだろうか? そんなこと、今更問いなおすまでもない。普通の人間では決して体験出来ない波乱万丈な人生を送れたんだ。不平不満など言おうものなら天罰が下る。 高校生の頃の俺も思っていたじゃないか。こんな面白い人生を提供してくれたハルヒに感謝する、とな。 ハルヒと離れ離れになったのは正直なところ今でもわだかまりが残っているが、それに関してはもう一人の俺が、俺の代わりに幸福を満喫してくれればいいことなのさ、きっと。 読書に集中している長門の横で、俺はそんなことを考えていた。 ふと、俺たちの背後に人の気配を感じた。 何の気なしに振り返った俺は、次の瞬間には絶句していた。 俺はその姿を見てあからさまに驚き、それを取り繕う余地など全く与えられなかった。 そこに立っていたのは、紛れもなく涼宮ハルヒだった。 しまった。ハルヒは長門を見つけてここに来たのだろうか。 考えろ。この状況からどう逃れればいい。まさか俺に気づくとも思えないが、果たして長門はうまく誤魔化してくれるだろうか。 長門を見た。俺と同じように絶句してやがる。いやその表現は正しくないな。絶句こそが長門の基本モードだ。 ええい、そんなことを考えている場合じゃない。さあどうする。 そんな俺の狼狽を知ってか知らずか、ハルヒは俺をさらに混乱させるようなことを平然と言ってのけた。 それも、長門ではなくこの俺に向かって。 「髭生やしたあんたもなかなかのもんじゃない。サングラスも似合うようになったわね」 俺は呻きとも言えない声を上げた。ハルヒは共に人生を歩んでいる俺とは別の、この俺の存在を当然知っているかのような口ぶりだった。 ハルヒはさらに絶句している俺を気遣うように、 「あの時も言ったけど、あんたのおかげで本当に幸せだった。ううん、もちろん今も幸せよ。あなたらしい人影を見かけたから……。あの時はお別れの言葉になっちゃったから……。どう してももう一度伝えたくて」 「ハルヒ……」 俺はそう言うのが精一杯だった。 「病院のベッドの上で、ずっと夢を見てたわ。あんたがあたしを助けてくれる夢。あたしがあんたを助ける夢」 やっぱりあれはお前の仕業だったんだな。俺はお前を助けるつもりで、実はずっと助けられてたんだな。 あらためて思った。やっぱりお前はすげー奴だ。時間どころか次元まで越えて俺のことを見守ってくれていたんだからな。 「有希」 ハルヒに呼びかけられた長門が、緊張の面持ちでハルヒを見た。 ハルヒは柔らかく目を細め、長門に微笑みを投げかけた。 それは俺が今まで見たハルヒの表情の中で、最も穏やかで最も深い、そんな微笑みだった。 「ずっと有希のこと心配だったけど、もう安心ね。幸せになるのよ」 長門の目がわずかに見開かれた。その瞳が潤んでいた。 「こっちのキョンをよろしくね」 長門は緩やかに首を傾け、 「……ありがとう」 そしてハルヒに微笑みを返していた。 改変された世界の、あんな贋物の微笑じゃない。本当の長門の、本当の感情が生み出した、偽りのない本当の微笑だ。 「時間がないから行くわ。もう一人のあんたを待たせてるの」 歩き出したハルヒは思い出したように振り返り、人差し指を突き立てた。 「キョン、しっかりやんなさいよ。有希を泣かすようなことしちゃだめよ!」 ハルヒはそう言い残し、図書館の外へと走り去っていった。 それにしても、別れ際もさっぱりとしたもんだ。それでこそハルヒらしい。俺は以前と変わらないハルヒに自然と顔が綻んだ。 ハルヒが見えなくなるまでその後姿を見送った俺たちは、顔を見合わせ、お互いの唇を重ねた。 ハルヒのおかげで、踏ん切りがついた。 ハルヒはもう一人の俺とともに、朝比奈さんが言ったように平穏な人生を送る。そして俺は長門とともにさらなる波乱万丈の人生を歩む。 それでいい。これから先のことは、これから考えればいいさ。 ――そうだろ、ハルヒ? こうして、俺たちはこの時空に別れを告げた。 俺はまだ朝比奈さんに会いに行く約束は果たしていない。 だが俺は確信していた。いずれまた遠い未来で彼女に会う日がきっとやってくると。そして彼女に会いに行くべき時が今でないことを。 俺たちにはまだ、これからやらなければならないことが残されている。 エピローグ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1024.html
第四章 あれ?ここはどこだ?そうか病室だったな。もう朝か寝ちまったようだ。今日が土曜日でよかった。 時計は午前9時を指していた。 周りを見渡すとハルヒがベットで横になり眠っていて朝比奈さんも俺と似たような体制で眠っていた。 古泉と長門はどうしたんだ?俺の記憶が正しければ病院に駆けつけいたはずだ。 探そうか迷っていると古泉と長門が病室に戻ってきて病室を出てどうやら医者と話してきたらしく話がある俺と言ってきた。 「とうとうこの時が来てしまったようです。涼宮ハルヒの能力が今にも消えようとしているのです。」 「おいおい仮にも神なのに力が消えるなんてことありえるのか?」と返す俺。 「いえ、涼宮さんは神などではありません。気づいてはいましたがそれで納得してしまうと僕も行動できなくなるのでね。 このような事態になってはそんなことはもはやどうでもいいです。 涼宮さんの強い思いが神にも匹敵する力を手に入れたのです。今にもその力が消えようとしている。意味がわかりますか?」 「世界が狂わなくて済むんじゃないか?」と返してみる。 「ええ、確かにそういうことになりますが我々はとても大切で大きなものを失うことになります。それでもいいのですか?」 「まさか、お前ハルヒの能力が消えたら死ぬとか言い出すんじゃないだろうな?」 「そのまさかなのですよ。『何故そんなことがいえる?』なんて聞かないで下さいよ。わかってしまうのだから仕方ありません。 あなたも気づいていたでしょう?最近涼宮さんに変化があった。普通に考えてあのような能力をもってしまった人間…体への負担は想像を絶するレベルだと思います。 最近涼宮さんの精神面で弱気になっているのはわかっていたのですが、僕が感じていた違和感は肉体の弱化です。これに気づくべきでした。 長門さんから聞きました恐らくジョンスミスに会いたいと言う願いを実現させた瞬間に体に限界が来てしまったようです。現状涼宮さんの能力だけを消す方法は見付かっていません。このままでは1週間と持たないでしょう。ですが1つだけ方法があります。それは…」 「ハルヒに今までのこと、その能力について話す…か?」俺は割って入った。 「そうです、ですがこれは危険です、場合によっては涼宮さんの力が暴走し取り返しのつかないことになります。」 わかっている。それはわかっているが、それしか方法は無いんだろ?どうなろうがハルヒの責任さ。 「そういうと思ってました、涼宮さんに話す役は買って出てくれますね?」 「俺がやるしかないな、俺はハルヒにとっての鍵であり、SOS団その1なんだろ?」そう言って俺はハルヒのいる病室に戻った。 俺は朝比奈さんと長門に病室を出てもらい糞まじめな顔でハルヒにこう言った。 「ハルヒ、とてもまじめで真剣な話があるんだ。聞いてくれ。これはSOS団員全員の正体に関わる重要な話だ。」 「何?しんどいんだから手短に話しなさいよ?どうせあんたのことだからくだらない話なんでしょうけど。」そういいハルヒは体を起こした。 「実は長門と朝倉は宇宙人に作られた人造人間で…」 「はあ?有希のことは一年ぐらい前に聞いたけど朝倉もそうなったの?」そう皮肉そうにハルヒが割って入った。 俺は無視し続けた。 「そして朝倉はある理由から俺を殺そうとした理由はある人間に刺激を与えるため、そして俺は長門に助けてもらったんだ。そして長門は朝倉を消滅させ、カナダに転校という事にした。 それでこの前の雪山で不思議なことがあったろ?あれは集団催眠なんかじゃない、長門によれば敵宇宙人の攻撃だそうだ。あの時も長門のおかげで何とかなった。 朝比奈さんの正体は未来人だ。朝比奈さんはある人物に過去に一定以上の過去に行く道を閉ざされてしまい過去に戻る方法を見つけに過去に来たらしい。過去にいろいろとグレードアップした朝比奈さんに俺は何度か会ったからな、間違いないグレードアップした朝比奈さんは何度も俺にヒントをくれ助けてくれた。 違う未来人に未来を書き換えられそうにもなったがグレードアップした朝比奈さんのおかげで何とかなった。俺が一度お前に『朝比奈さんが誘拐された。』って電話掛けたことがあったろ?あの時誘拐されたのは実はその一週間後から来た朝比奈さんなんだ。気が動転して何も知らないお前に電話してしまった。反省してるよ。」 ハルヒはこの辺であきれたように黙りこくったがやはり無視し続けた。 「そして古泉、こいつは実は超能力者なんだ。こいつは仲間とある人間が不機嫌になると現れる閉鎖された空間で青い巨人といつも戦ってる。こいつのバックには機関と言う組織がある、実は夏休みでの孤島やら雪山でのやらせ殺人事件のときの荒川さんや森さん田丸さん兄弟、全部その機関の人間なんだ。俺たちのために裏でいろいろしてくれているらしい。」 青い巨人と言うところで一瞬ハルヒが反応したかのように見えたが興味はなさそうで、こう俺に質問した。 「どうしてあんたの周りにはそんなに不思議な人間がいるのかしら?そんなこといって私が喜ぶとでも思う?それにあんたと私には何も無いの?聞くだけなら聞いてやってもいいわよ。」 と言うことなので教えてやることにする。 「実はな、お前の隠された正体のほうがおもしろいぞ?ハルヒ、ある人物ってのはお前なんだ、実はお前には願望を実現する能力があるんだ。思い当たる節があるだろう?そしてその能力のせいでお前の体は蝕まれているんだ。」 もはやハルヒはもはや聞く耳も持っていないようだったが俺は続けた。 「そして俺の正体だ、これが一番おもしろいぞ?実はな俺の正体はジョ…」 そのときだ。急に窓ガラスが割れているはずの無い人間…いや人造人間が飛び込んできて一目散に俺の脇腹を刺した。 一瞬の出来事だった。 「な………に………?………」 目が霞む瞬間ドアを開け急いで入ってくる長門、古泉、朝比奈さんと呆然としているハルヒの顔が見えた。意識が朦朧としていく… 「あなたが何故ここにいる?」と長門が怒ったような口調でいい俺の脇腹に手を当て怪我の治療をしてくれる。 放心状態で見ているハルヒ。 馬鹿にするように「なんであなたにそんなこと言わなきゃならないの?私の目的はあなたとそこの人間…もう死体かしらね。」 朝倉がその言葉を発した瞬間だった。 病院から見える青い空が急にどっかの龍を出したときのように真っ暗になった、その成果も知れんが一瞬外の雰囲気そのものも変わったようにも見えた。 そして例の巨人が暴れだす…しかも窓から見えるだけで50体は見える。これが世界中で怒っていると言うのだから恐らく大量に血を流し今にも死にそうな俺を前にしたからだろう。 古泉が言った。「これはまずい、世界規模で閉鎖空間が発生してしまったようです。このままでは非常にまずい…涼宮さんの前で…いやそんなことを言っている場合ではない。急いで行かなくては。キョン君後は頼みます。」 それから例の赤玉になり新人と戦うため飛んで言った。 ハルヒの前なのにナイフ持ってニヤニヤしている朝倉、そして病院内の閉鎖空間化… しかしハルヒは夢でも見ているかのような顔をしている。朝比奈さんは気絶したようだ。 長門のおかげで何とか回復できた俺は朝倉に聞いた。 「どうしてお前がここにいるんだ!?」と。 朝倉は待っていましたと言うよな顔でこう返した「敵の情報生命体がいるのには気づいているでしょう?、情報統制思念体って言うの。その情報統制念体って言うのが私のバックアップを作っていたの。そして作り直してもらったの。前の私が偉くお世話になったようね。きっちりお礼をさせてもらうわ。」 そして朝倉は長門に襲い掛かった、長門はなんなく避けた。それを戦闘の開始のように二人が先頭を開始した。長門はうまいこと朝倉をドアの付近に誘い朝倉をふっとばし病室から出しことに成功した。 俺は思った。またこいつらが戦いを始めるのか…としかしここは朝倉の情報制御空間とやらではないとは言え俺とハルヒを守りながらとなると勝ち目はあるのだろうか。古泉も。 9回裏にツーアウト満塁であと3点で逆転勝利できるのに4番のバッターが怪我したってぐらいまずい。 これからいったいどうなっちまうんだ全く、やれやれ。 第五章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3651.html
・涼宮ハルヒの再会(1)
https://w.atwiki.jp/fertcg/pages/821.html
R6-020 レア ミルラ/MYRRH マムクート Lv.10 飛行系 ブレス 装備Lv:- 気力4 攻撃0 反撃0 イラスト/ちぇりぃ 装備:竜石 【竜化】 攻撃で消費するチップ+2。反撃で消費するチップ+1。与えるダメージ+5。魔物系にはさらに+2。受けるダメージを-する効果無効。 【竜鱗】 受けるダメージ-2。 魔物系はこのユニットに反撃できない。 父:ムルヴァ 支援:ドズラ(雷) 聖石の【風】 飛行系の移動範囲に移動できる。 聖魔仕様のマムクート。 2チップ5ダメージ、2点軽減のユニット。 【竜化】は強制的に行われ、常にダメージ-2である。 なお、反撃時は反撃しない、を選択すれば1チップは消費しない。 受けるダメージを-する効果無効は、魔物以外にもすべての相手ユニットに有効。 ムルヴァより気力が1低い、女性なのでエリス(人間関係)が使えないという弱点がある。 自身が飛行ユニットなので聖石の【風】は一見意味がないが、支援相手に与えることができたり、聖石能力を持っていることが利点となることがある。 (双聖器を維持したり、聖石の庇護の条件を阻害しないといった効果がある。) 支援もあるのでうまく使い分けよう。 単純に、ユニットかぶり対策として、両方とも使うのもいいだろう。 ダメージ-2は一見固いが、確殺されるケースも多い。 王家の武器+【力】、双聖器、神将器、ネルガル、リオン、火竜、氷竜、マリク+【勇者の風】 上級弓兵、イドゥン、ファ、フォデス、ゼフィール、封印の剣といったところである。 イラストが非常に可愛いので、ぜに手に取ってみてほしい。 RP-110 Boxプロモ ミルラ/MYRRH マムクート Lv.10 飛行系 ブレス 装備Lv:- 気力4 攻撃0 反撃0 イラスト/輪久・霜月匠 装備:竜石 【竜化】 攻撃で消費するチップ+2。反撃で消費するチップ+1。与えるダメージ+5。魔物系にはさらに+2。受けるダメージを-する効果無効。 【竜鱗】 受けるダメージ-2。 魔物系はこのユニットに反撃できない。 父:ムルヴァ 支援:エフラム(炎) 聖石の【風】 飛行系の移動範囲に移動できる。 支援相手がエフラムに変わっている。よってデッキによって使い分けよう。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1585.html
元ネタ:涼宮ハルヒの憤慨 「で、続きは?この娘とはこのあとどうなったの?」 「だから何もねぇよ、それに架空の話だ」 「嘘!あんたにそこまで文才があるわけないじゃない!現国だってあんなに悪いくせに!」 痛いところを突いてきやがる 「仮に実話だったとしても、お前には関係ないだろ?」 「あるわよ、団長だもの」 何だそりゃ?今更だが無茶苦茶だな おい。 俺が何も言わずに沈黙を続けていると、ハルヒもついに諦めたのだろうか 「もういいわよ。考えてもみたらあんたに恋の経験があるわけないし、これからもなさそうだもんね」 「んなことねーよ」 「え?」 しまった…今のは適当にあしらうところだろう…何言ってんだ俺。 「ってことはあんた…誰かに恋なんてしてるわけ?」 もはや隠し切れんな。俺はしばらく考えてから言った。 「……ああ」 「だれ?あたしの知ってる人?」 「ああ」 「みくるちゃん?有希?それとも鶴……」 俺はハルヒの言葉を遮って言った。いい機会だ、いっそのこと言っちまおう。 「おまえだよ、ハルヒ」 「えっ?……それ、どういう…意味……?」 さすがのハルヒも動揺しているようで、その表情戸惑いを隠し切れていない。 「別に、そのまんまの意味だ。俺はな、ハルヒ…お前のことが好きなんだよ」 本当はまだ言う気はなかった。もう少し時間をかけてからでいいと思っていた…でも、俺はもう言ってしまった。後悔などはしていない。 「すまん、急に変なこと言っちまったな。続きは家で完成させて明日持ってくる……じゃあな、ハルヒ」 そして俺はハルヒに背を向け、部室を出ようとした。 すると 「ま、待ちなさいよ!」 「いざ」 そう言うとハルヒは、しずかに刀を抜いた。ハルヒの愛刀「村正」……なるほど、本気のようだな 「尋常に」 俺も刀を抜いた。我が家に代々伝わる「正宗」を…… そして互いに抜刀の構えをとり 「……勝負」 勝負は一瞬で決まった 俺とハルヒの刀はたった一撃で、修復不能なほどボロボロになってしまった。 「腕を上げたわね……キョン」 「俺だってそれなりに鍛練は積んで来たさ…」 そして俺たちは握手した。互いに健闘を称え、共に生徒会長を倒す道を進もうと 「さぁ、行くわよキョン!あたし達の戦いはまだこれからなんだから!!」 「ああ、わかってるさ。お前となら…どこまでだって行けるさ」 「キョン……ありがとう」 「まさかお前に礼を言われるなんてな」 「なによ!あたしだって言うときは言うわよ!」 俺たちは顔を見合わせて笑った。 言葉なんていらなかった… 俺たちは手を取り合い走った…どこまでって? 決まってるだろ? 世界の平和までさ!!! 完 ~別バージョン もっとカオス~ 振り替えると、ハルヒが俺の手を掴みうつむいていた。 「自分ばっかり言いたいこと言って…何よ…」 「……すまん」 「謝んなくていいわよ!………ただ、あたしの話も聞いてよ…」 ハルヒはいつになく小声で言った。 「ひでき……」 後ろから声がする。再度振り返るとそこには 「…ちぃ……どうしてここに!?」 「ひでき、晩御飯…」 「そ、そうか、もうそんな時間だったか」 「キョン……あんた…その娘とはどういう……?」 「このことはな、ちぃって名前なんだ。最近拾った新しいタイプのパソコンでな、隣に住んでる新歩さんに使い方を教わった」 「使い方って…まさか?」 「ああ、通常の情報処理能力に加えて、性欲処理能力もそなえている」 「し、信じられない……これほどの能力を備えたパソコンを拾うなんて……誰が落としたのかしら?」 すると長門が入ってきた。 「今北産業」 「ちぃ ひでき 晩御飯」と、ちぃが答えた。よくできたな、ちぃ。 「把握した」 「それにしてもすごいパソコンね…もしか」 ちぃは爆発し、世界は闇に包まれた。 なるほど、白雪姫………そういうことだったのか……朝比奈さん………… 俺たちはちぃの爆発で死んだ………かに思えた。 「ん?生きてる……?」 目を開けると長門が爆発を抑えてくれていたようだ。 「長門!?大丈夫か!?」 「平気」 「ふふふ、あの爆発に耐えられるなんて中々のものね。でも、もう無駄よ……あなたもジャンクにしてあげる」 ちぃ、バグっちまったのかよ!?くそっ!!やっぱりあのとき、山田に感染していたんだ! このままだとマズイ!ハルヒを逃がさないと! 「ハルヒ、お前だけでも逃げるんだ!」 「甘いわね」 「なに!?」 すると辺りが灰色の世界に変わった。閉鎖空間だ…!まさかハルヒ、お前! 「あたしは鍛練の末、任意でこの空間を発生できるようになったわ。今のあたしはどの(萌え)属性も100%発揮できる!! 絶 対 萌 時 間!!」 「ハルヒ、そうか……なら俺も………システム・イド 発動!!」 「私もこの空間では統合思念体を無視し、本気を出せる……マテリアライズ!!! 武刀『れいき』」 「ふふふ……来なさい、憐れな子羊達……次元のはざまに送ってあげるわ!!」 「ちい……教えてくれ。何がお前をそうさせたんだ?山田か?」 「ふふふ……天国を追放された天使は、悪魔になるしかないのよ。あなたこそどうして?私の味方だったと思ったのに…」 「俺はただ……覚めない夢を見てるだけさ」 「キョン!来るわ!!」 「彼女のオーラ力が上昇している…」 「ふはははは!行くわよ!!」 「終わりにしようぜ……ちぃ!」 そして世界は核の炎に包まれた 完
https://w.atwiki.jp/medtwo/pages/24.html
以下テンプレ タイム(プレイヤー):コメント:画像(サムネ別画面表示) 画像のコピペ用: blankimg(ここに上げた画像のURLを入れる,width=102,height=76ハンカクカッコトジ (よく分からない人は挑戦ルールを読みましょう) 【対CPU Spoiler無】 対霊夢 ☆ 6 32(Arnest):暫定基準値:Vpatch使用 リプレイ ◇ △ 対魔理沙 ☆ ◇ △ 対妖夢 ☆ ◇ △ 対咲夜 ☆ ◇ △ 対優曇華 ☆ ◇ △ 対チルノ ☆ ◇ △ 対リリカ ☆ 5 16(Arnest):埋めましょうそうしましょう:Vpatch使用 リプレイ ◇ △ 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △ 【対CPU Spoiler有】 対霊夢 ☆ ◇ △ 対魔理沙 ☆ ◇ △ 対妖夢 ☆ ◇ △ 対咲夜 ☆ ◇ △ 対優曇華 ☆ ◇ △ 対チルノ ☆ ◇ △ 対リリカ ☆ ◇ △ 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △ 【対人】 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △
https://w.atwiki.jp/stampcatalog/pages/296.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5820.html
俺は目を覚ました。 ん?ここは… 俺の部屋だ。 携帯で時刻を確認する。 ……14時20分… なんと、俺はこれほどまでに爆睡してたというのか。いや、違うな…昨夜はファミレスでSOS団メンバーと ずっと話してたんだっけか。そして寝たのが朝の6時くらいだったことを考慮すると、然しておかしなことでもないな。 …そういや、俺は先ほどまで船上にいたんだよな。そして、ハルヒからいろいろと悩みを打ち明けられたんだ。 いつもの俺なら【あれは夢だ】と断じてそれで終わりだろう。が、今の俺には到底そうは思えない。 おそらくあれは実際に起こったことなんだ。あの世界の【俺】が最後に泣きこぼしてた言葉が… 鮮明に頭に残ってる。転生…即ち生まれ変わるって意味だが、一般常識で捉えた際に、まず前世の記憶は なくなるというのは間違っていない。つまり、本来なら2012年という時代に生きる俺が過去の【俺】の記憶を 取り戻すなんてことは絶対にありえないのだ。そのありえないことが現に起こってしまっている。 言わずもがな、ハルヒの能力があってのことだろう。連日俺が見た夢…いや、正しくは 実際に未来で起こりうる最悪のケース、そして世界が崩壊する様…それらをハルヒは無意識の内に 俺に見せてくれた。ならば、俺がさっきまで見ていたあの世界の記憶も…造作ないことなのであろう。 『普通の一人間として生きたいから、神に通じる能力は全て消し去りたい』そんな趣旨のことを ハルヒは言っていた。だが、ヤツのそういうとんでもパワーがなかったら、そもそも俺は過去の【俺】と… いや、俺だけじゃない。過去のハルヒのこともそうだが、一生知らぬまま生きていったに違いない。 そう、何も真相を知らぬまま… だから、俺は深く感謝したい。過去の記憶を垣間見ることができたハルヒの能力に。 …… ん?電話だ…古泉からか。何の用だろうか…まさか…!? 「もしもし!」 「おや、さすがにこの時間帯となると起きてらっしゃったみたいですね。ぐっすり眠れましたか?」 「俺のことはどうでもいい!それより何の用だ?ハルヒに何かあったのか!?」 「いえいえ、別にそういうわけではないですよ。とりあえず落ち着いてください。」 取り乱すような由々しき事態ではなかったらしい。とりあえず腰を下ろす俺。 「少々あなたとお話したいことがありましてね…急で申し訳ないのですが、 今から学校近くの公園に来てはいただけませんか?すでに長門さんもいらっしゃってます。」 「ん?昨日のことで何か話し足りないことでもあったか?」 「まあ…そんなところですね。」 今電話で話せよ…と言いたくもなったが、長門もいるとなると話は別だ。 おおよそ専門的なことでも話すのだろうから、みんなとしたほうが都合が良いって流れだな。 三人寄れば文殊の知恵…いや、ちょっと意味が違うか。 「そうそう、俺のほうでもお前らに話したいことがあったんだよ。だからちょうどいい。」 「そうなのですか?それは楽しみです。」 もちろん話すこととは、【あの世界の記憶】である。 真相を語ってやるのは、これから協力していく仲間にとっては当然のことであろう。 「じゃ、すぐ行くから待ってろよな。」 電話をきって、ただちに着替える俺。腹ごしらえに朝飯…いや、今は昼だから昼飯と言うべきか。 昼飯でも食ってから行こうと思ってたが、いかんせん目覚め時なんでいまいち食欲が沸かん。 まあ、後回しにしてしまっても大丈夫だろう。死ぬわけじゃないしな。 洗顔、歯磨き、髪の手入れ…とりあえず、最低限の身だしなみを整えた俺は 自転車に跨り、公園へと走るのであった。 「よう、待たせたな。」 「いえいえ、むしろ急に呼び出したこちらが悪いんですから。」 「……」 とりあえず、ベンチに座る俺たち三人。 「…昨日は眠れた?」 「え?」 「昨日は眠れた?」 なんと、長門さんが人間味ある暖かい言葉を俺に投げかけてくれているではないか。 「ああ、大体8時間睡眠ってところだな。ぐっすり眠れたぜ。」 「そう…よかった。」 「それで、そんときに見た内容なんだがな…。」 俺は記憶の一部始終を話した。 …… 「「……」」 長門はともかく、古泉まで黙ってしまっている。あまりの内容に面喰ってしまったのだろうか。 「これは…素晴らしいですよキョン君。涼宮さんのお気持ちがこれでようやくわかったのですから… 自称涼宮さんの専門家としては、情けないことこの上ないですけどね。」 「…私もここまでは把握していなかった。 涼宮ハルヒのカギたるあなただからこそできた所以。感謝する。」 「いやいや、感謝とかそんな大袈裟な。」 だが、長門と古泉の言いたいこともわかる。確かに俺たちは昨日涼宮ハルヒの軌跡を辿っていたわけだが、 あくまでそれは史実…つまり単なる事実に過ぎなかった。その過程の中でハルヒがどんな思いで 神の代行者として奔走していたのか…それを無視して結果論にしがみつくだけでは、 事実こそわかれど真実には到底辿り着けないだろう。 「それにしても驚きです。まさかあなたの前世がノアの一族の一人だったとは…。」 「なあ古泉、まさかとは思うが…もしかしてこれはアレか、 いわゆる世間一般で知られてる【ノアの方舟】ってやつなのか??」 「その通りです。旧約聖書の『創世記』、6章-9章に出てくるかの有名な洪水伝説のことですね。」 「あの洪水がまさか第三世界崩壊時のそれだったとはな…って、ちょっと待て。そういやノアの方舟って… あれは神話じゃなかったのか??もっとも、記憶を確かめた今となっては今更な疑問かもしれねえが…。」 「確かに、神話と捉える説が学会では有力です。しかし実際は…、長門さんお願いします。」 「【ノアの方舟】で知られている大洪水は…約3000年周期で地球を訪れる地球とほぼ同じ大きさの氷で 組成された彗星天体Mによるもの。地球軌道に近づくにつれ、天体Mは水の天体となり、地球に接近した時には 大音響と共に地球に約600京トンの水をもたらした。その津波は直撃地点付近で8750メートルとなり、 地球全域を覆い、地球上の海面を100メートル以上上昇させた。」 …… 実際にありえたってことかよ… 「3000年周期で地球を訪れる…これ自体は単なる自然現象であって涼宮さんの力とは 何ら関係なのでしょうが…問題は、それが地球軌道に大接近してしまったということでしょうか。」 「つまり、それが涼宮ハルヒこと、神の力によるものだと。」 「そういうことですね。それと、その話を聞いて2つ、わかったことがありますよ。」 …新たな情報を入手した途端にこれか。相変わらず、その理解力には脱帽と言っておこうか。 ヤツがわかったということは、おそらく長門も気付いてるんだろう。 「1つはフォトンベルトの正体…といったところでしょうか。」 「正体?どういうことだ??」 それについては散々昨日お前たちが説明してくれたじゃないか?まさか、またあのバカ長い 理解不能な 難解講座を受けるハメになるんじゃなかろうな…?それだけは勘弁してもらいたい… 「まあまあ、そう陰鬱そうな顔をなさらないでください。さすがに一から フォトンベルトの定義をしようなどとは思っていませんよ。話はごく単純です。ねえ?長門さん。」 「そう。」 まるで答えが決まってたかのごとく、長門は即答した。古泉もそれを確信していたようだし、なんとも凄まじい ツーカーの仲だな…頭の回転が速い者同士、ゆえの結果なのだが…そういう意思疎通能力が羨ましくもあった。 ちょっとでいいから俺とハルヒにも分けてほしいもんだな。というか、とりあえず話は単純そうで安心した。 「昨日長門さんがおっしゃったように、本来フォトンベルトというのは涼宮さんの力無しでは物理的には 存在しえない…しかし、そんな涼宮さんの意志とは別にフォトンベルトに近しい何かが接近している、 というのもまた事実でした。」 そういやそんな話だったな。 「僕が言いたいのはこの『近しい何か』の部分です。これについて、僕も長門さんも予兆こそできていましたが… ただ一つ、肝心な涼宮さんとの関連性が…どうしても見いだすことができなかったのです。なぜこんな得体の 知れないものが涼宮さんの意志とは別に存在しているのか?最大の謎でもありましたし、同時に戦慄さえも 感じていました。しかしここで大切なのは…涼宮さんは神というよりはむしろ、その代行者的性格のほうが 強かったということです。特に、あなたと出会ったときがそのピークだったといえるでしょう…精神的な意味でもね。 彼女自体は世界崩壊を望まないどころか神そのものに嫌悪さえ感じてたわけですし、 なれば涼宮さんと神は全く別の、独立した存在だと考えても差し支えはないわけですよね?」 古泉が確認をとるように聞いてくる。まあ…そうなんだろうな。というか、間違いない。 ハルヒと神が全くの別々の個体だということはまさに、俺がハルヒに対し説いた言葉そのものなのであるから。 「一方は世界の崩壊を望み、一方はそれを望まない。相殺されてるように見えますが… しかし、どう考えても力は神本体のほうが強いはず。すると、どうなりますか?」 「!」 ようやく気付いた。というか、なぜあのハルヒとの夢を見てこれに気付けなかった? それもそのはずなんだ、だってハルヒがそれを望まなくたって… 「宇宙のどっかにいる神が、勝手にフォトンベルトを作っちまうってことかよ??」 「その通りです。」 …なんてハタ迷惑な話なんだ…。 「しかし、かといって神の思い通りになる…というわけでもない。」 ここで長門が口を挟む。 「どういうことだ?」 「確かに、数値的にも総合的にも神の能力が涼宮ハルヒのそれを上回るのは明白。だからといって、 涼宮ハルヒの力そのものがゼロになったというわけではない。少しながらでも神に影響を与える。 その過程が、結果として不完全な疑似フォトンベルトを作り上げるのに至ったのだと、私はそう考えている。」 「…それが『近しい何か』の正体だと?」 「そう。」 なるほど、聞いてみれば確かに単純だった。しかし…神からしてみればそれは計算外だったんだろうな。 ハルヒの能力だって、元々は神がハルヒを代行者として縛りつけるための代物だったはずだ。それが、 まさかめぐりめぐって自分の首を絞めることになろうとは。滑稽とは、こういうときに使う言葉なのかもしれん。 「それと、これは憶測ですが…佐々木さんのことです。」 …… 古泉よ…急に話題を変えるのは無しだぜ?予想外の人物の名前に、 思わず心臓が跳ね上がりそうになったじゃないか!!? 「おいおい…どうしてそこで佐々木の名前が出てくる??」 「あなたは一連の話を聞いてみて思わなかったのですか?彼女のことを。」 「いや、だから俺には意味が…。」 …そういえば。なぜあいつがハルヒと類似した能力を有しているのか、それについて俺は今まで考えたことが あったろうか?ハルヒの能力、いや、ハルヒの正体が明らかになった今、当然ともいえる疑問が佐々木に向かう。 ヤツは一体何者なのか?という問い…どういうことだ?あいつも代行者なのか??いや…ハルヒから 自分以外にそういうのがいるなんて話は聞いたことがない。じゃあ何なんだ??まさか… 「まさかとは思うが…神が自分の言うことを聞かないハルヒを見限って、別の新たなる 代行者的存在として佐々木を選んだとか、そういうオチじゃねーだろうな!?」 そんなことになったらどうする…??佐々木がハルヒの前に立ちふさがることになるのか!? 当然、ヤツが全面に出てくれば橘、周防、藤原たちとも衝突せざるをえなくなる。ちょっと待て、 まさか藤原はこのために暗躍を…などと、底なし沼のごとくどんどんネガティブな方へと 発想をめぐらしていた俺を…古泉・長門の一言が現実に引き戻す。 「ははは、それは考えすぎというものです。」 「そこまで思いつめる必要はない。」 「……」 脱力する俺。しかし、次の瞬間にはこう言っていた。 「よかった…。」 当然だろう?最悪ともいえるケースが否定されたんだ。歓喜の一言も言いたくなるさ。 「というか、それまたどうして?なぜ2人はそう思うんだ?」 「落ち着いて考えてみればわかると思いますが…誰かを自分の傀儡に仕立て上げ、それを操るというのは まさに人間の発想ですよ。長門さんの話を聞く限り、神には創造・維持・破壊の3概念しかないように思われます。 大方、細かいことは全て涼宮さんに一任していた、と言ったところでしょうかね。いや、そもそも概念なる存在が あるのかどうかも疑わしい。生き物というよりは、一種のプログラムだと見なしたほうがいいのかもしれません。」 そう言われればそうだが…少し抽象的なような気もするぞ? 「長門はどう思うんだ?」 「人間的行為の是非は私にはよくわからない。しかし、古泉一樹のそれとは別に、私には考えうる理由がある。 内面的にも外見的にも涼宮ハルヒと神は互いに独立した存在とはいえ、それはあくまで最近の話。 元々は、双方は一つの存在だったはず。客観的役割で見れば彼女は代行者といえるが、 実質はもう一人の神、分身といってもいい。裏を返せば、それこそが代行者たる資格だといえる。」 「つまり、神の代行者というのは涼宮さん以外には存在不可能というわけですよ。 彼女の記憶から自分以外のそういった存在がなかったことからも、それは明らかです。 もちろん、佐々木さんがその縁者というわけでもありません。彼女はごく普通の一般人ですから。」 『彼女はごく普通の一般人』それをすぐさま確かめたかったのか、俺は長門に食いかかっていた。 「長門!それは本当か!?あいつは… 一般人でいいんだよな??」 「彼女は一般人。涼宮ハルヒと似た能力こそ持ち合わせているが、 私たちのような特異的存在とは明らかに異なる。」 「…そうか。」 …安心した。ひどく安心した。どうやら、佐々木は本格的にこの事件には関わっていないらしい。 これだけでも、俺の中で1つの不安材料が消えた。あいつをこんな得体の知れない事件に、 巻き込みたくはなかったからだ。しかし、そういうわけで結局話はふりだしに戻ってしまう。 「じゃあ、一般人なのなら、あの能力は一体どこからやってきたんだ?? まさか、自らそれを習得したわけでもあるまいし…。」 滝に打たれ、四書五経を丸覚えし、断食をし、仏道修行に励み等…様々な苦行を重ねたところで、 とてもではないが閉鎖空間構築といったトンデモ能力が開花するとは思えん…ましてや佐々木が そんなことをしてたなんて話聞いたことない、というか、個人的願望としてそんな佐々木は見たくない。 「結論から申しますと、彼女の能力は涼宮さんにより分け与えられたものなのではないか、僕はそう考えてます。」 「は??」 過程をすっとばして結論だけ聞く、その恐ろしさをまじまじと体感できた瞬間だった。 『ウサギとカメが競走しました、結果カメが勝ちました、めでたしめでたし。』 と、先生に二言で昔話をしめられた幼稚園児のごとく心境だったと言っておこうか? 「おっと、少し誤解があったようです。正確に言えば、涼宮さんにその意図はないわけです。 分け与えたという表現も不適切でしたね。水平面下で望んでいたというのが正しいです。」 「いや、訂正されても意味わからんが…というか、ますますわからなくなったんだが!?」 長門ーッ!助けてくれーッ!!と、期待をこめ彼女を見てみる。しかし 「心理的領分というのは私にとって専門外。残念ながらあなたに助け舟を出すことはできない。」 と一蹴されてしまった。まさか長門でもわからないことがあったとは…って、ちょっと待てよ?心理的領分?? 「もしかして古泉、お前は憶測だけで佐々木のことを言ってるんじゃあるまいな?」 「だから最初に断っておいたじゃないですか。これは憶測ですが…と。」 確かにそんな記憶がある。しまった、やられた… 「まあまあ、そんなに悲観しないでください。僕だって何も無責任にこの持論を展開しているわけではありません。 確固とした根拠こそありませんが、この推論でいくならば佐々木さんの能力についてもすんなり説明が 通りそうなのですよ。もちろん、証拠がないので可能性の1つとしてしか成りえないのもまた事実ですが。 とりあえず、非難されるのは聞いてからでも遅くないと思います。」 …そこまで言うからには聞いてやろうじゃないか。 やれやれといった表情で、とりあえず俺は首を縦に振ってやった。 「ありがとうございます。では、お話ししますね。まずは…いつから佐々木さんにその症状が現れ始めたのか という点について。それは4年前、あなたが過去へ時間遡行し中学時代の涼宮さんと会われたときだと 考えてます。そして、そのとき彼女の意識に何らかの変革が起こった。」 ああ、例の七夕の日か。そういや、あのときからハルヒはすでに団長様だったな。 俺を不審者だと罵ったり、白線引くのにコキ使ったりだとか…とにかく忙しかった印象しかない。 「で、ハルヒの意識がどうしたって?っていうか佐々木との関連性が見えんぞ。」 「あの世界の夢を見て、まだお気付きになりませんか?彼女からすれば、あの出会いは 一種のターニングポイントです。いかにそれが重要で衝撃的なものだったか…あなたにはわかるはずですよ。」 「……」 鈍感な俺でも、さすがに古泉の言わんとしてることはわかる。 ------------------------------------------------------------------------------ 「言葉通りの意味よ。あんたも転生できれば…!」 「ちょ…ちょっと待て。それは神と縁あるお前だから成せる技であって俺みたいな人間なんか…」 「そうね…でも、やってみる価値はあると思うの。…まあ、どれほど無謀な行いかってのはわかってる。 仮にあんたをあたしと同時代に転生できたとしても世界は広い…会えなきゃそれで終わりよ…だから、 そういった意味では可能性はゼロに近いのかもしれない。でも、あたしは諦めない。神の束縛に甘んじて 自身の意志で生きることを諦めていたあたしに…勇気をくれたキョンのことを、あたしは絶対諦めたくない!」 ・ ・ ・ 「言わんとしていることはわかるさ、そこまで俺も鈍くない。それでもし 何か悪いことが起こったって…そんときはその世界の俺がきっとハルヒを助けに来るはずだ… だからさ、お前は安心して転生に専念してりゃいいんだよ。」 「キョン…ありがとう。」 …… 「神の代行者としての最期にあなたのような人間に出会えて あたしは幸せだったわ…!次の世界でも会えるといいわね…いや、会いましょう!」 ------------------------------------------------------------------------------ 気が遠くなるような悠久の時を経て、俺とハルヒは七夕の日再び出会った。同じ世界、同じ時間平面上で。 俺はともかく、ハルヒからすれば…まさに【初めての再会】だったといえる。これも因果ってやつか? なぜあの日が七夕だったのか…なんとなくわかったような気がした。偶然っちゃ偶然なんだけどな。 「…ああ、そうだな。さぞかし感動的な場面だったろうよ。けどな、当の本人であるハルヒには 第三世界時の記憶がない。意識に変革も何もあったもんじゃねーだろ?」 結局これに尽きる。現に、昨日ハルヒがぶっ倒れるまでそんな予兆は一切なかったんだからな。 「ところが、本人は気付いてなくとも眠っていた記憶が呼応した可能性はあります。あなたにもさっき話したように、 例の不完全なフォトンベルト等がそうですよ。意識せずとも力を行使できる、それが涼宮さんです。 元々神の分身だったということも手伝って、やはりその能力は伊達ではありませんね。」 …古泉の言う通りだ。あいつの力は生半可なものじゃない。神に抗ってまでも転生した…証拠ならそれで十分だ。 『やっぱり物事ってのはやってみるに越したことはないと思ったわ…あたしの潜在能力って案外凄かったみたい。』 何より、自分の口からそう言ってるのを確かに聞いたんだ…俺は。 「僕が言いたいのは、4年前の七夕、涼宮さんがあなたに出会ったことで… 呼応した深層心理が佐々木さんに何らかの影響を及ぼしたのではないか?ということです。」 話が1つとんだような気がする。 「いや、だから…なぜそこで佐々木が出てくるのかと??あの時点じゃまだハルヒはヤツのことを 知ってもいなかったはずだし、それに今だって佐々木の名前こそ知ってるが…ほとんど接点がない といってもいい、それくらい互いの関係は希薄なものなはずだぞ??」 「すみません、言葉が足りませんでしたね。つまり、これから佐々木さんについて話すこと。 それこそが僕がさっき言っていた『憶測』の該当範囲です。その証拠に…長門さん。 今まで僕が彼に話していたことに、何か矛盾はありましたか?」 「ない。理にかなっていた。」 「というわけです。これまでの部分は、憶測という名の非論理的なものではなかった… ということがおわかりいただけましたでしょうか?」 まるで示し合わせてたと言わんばかりに即答する長門と古泉。意志疎通か以心伝心かは知らんが 仲良すぎだろ常識的に考えて…超人的な意味でな。って、そんなこと常識的に考察してる場合じゃなかった。 「長門の保証付きならば、俺から言うことは何もないさ。話を続けてくれ。」 「では。結論から申しますと」 また結論からか! 「涼宮さんは、あなたと過去の自分との関係に、あなたと佐々木さんとのそれを 重ね合わせたのではないか?僕はそう見てます。」 案の定、意味はわからなかった。古泉よ…お前は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのだ…!? 「あのな、だからっさっきの俺の質問に答えろっての!!どうしてそこで佐々木の名前が出てくるよ??」 「別に、涼宮さんは『佐々木さん』という特定の個人を敢えて選んだ、 というわけではありませんよ。偶然そうなったと言うべきか。なぜなら当時… あなたが中学生だったとき、一番仲の良かった異性が佐々木さんだったからです。違いますか?」 「な!?」 つい間抜けな顔をしてしまったかもしれない。ここにハルヒがいなくてよかった…二重の意味で。 「なんてことを聞くんだお前は??誤解ないように言っておくが…決して俺と佐々木はそんな関係じゃねーぞ!?」 「とりあえず落ち着いてください。誰も、付き合ってるなどとは言ってないではないですか。」 「むしろ動揺するほうが…変。何もやましいことがないのなら、あなたは毅然としているべき。」 「……」 あろうことか長門に諭されてしまった。これを驚かずして何と言う。というか長門… 『心理的領分というのは私にとって専門外』って、あれ嘘だろ?どうみても今のお前は…裁判にて無実の被告が ついつい検察に熱くなったとこを諌める弁護人そのものだったぜ…!?心理学の『し』の字も知らない人間が (正確には人間ではないが)どうしてそんなこと言えようか?いや、言えるはずがない…んじゃないか? 「では質問を変えましょう。友達として考えてみてください。そういう意味であるならば、 あなたは佐々木さんと…異性の中ではかなり口数が多かったほうなのではないですか?」 「まあ…否定はしないが。」 「ならば、それだけで十分です。さて…話は戻りますが、もし涼宮さんに記憶があったと仮定した場合、 果たして彼女はあなたと出会ってどういう反応をとると思いますか?彼女の立場になってみて考えてください。」 「記憶があったらだと?そりゃ…まずは喜ぶだろうな。 んで今までどうしてたとか、今何やってるのかとか…互いに質問攻めに遭うんだろう。」 「そうですね。それが常人のリアクションというものでしょう。 しかし…そんな彼女に涼宮さん自身は気付いていないわけです。」 不意に、その言い回しが気になった。 「え…?まさかハルヒの中に過去の自分と今、2つの人格があるってのか??」 「いえいえ、言葉通りの意味で受け取らないでください。今のはあくまで比喩、そういうふうに2人の人物に 分けて考えたほうが理解しやすいと思ったからです。かえってあなたを混乱させてしまったようですね、 すみません。それで話の続きですが…その過去の自分は、即ち傍観することしかできないんですよ。 自らの意志で動くことはできないんです。その場合あなたならどうします?」 「どうします?って…何もできないんじゃどうもこうもねーよ。昔の思い出に馳せるくらいしか」 「ご名答、正解です。さすがですね。」 いや、普通に答えただけで『さすが』って一体どういうことなのかと…それ以前に『正解』の意味もわからん。 「あなた同様、過去の涼宮さんもおそらくは昔を懐かしんだはずです。 懐かしんだ、この時点である意味願望とはいえませんか?」 「…懐かしんだところで何か起きるのか?過去にタイムスリップできるわけでもねえし、 何よりハルヒ本人が気付かんのだから、俺と以前のような関係に戻ることも不可能だ。」 そうだ。ましてやそんな状況でどうして佐々木を… …待てよ?ようやくだが、関連性が見えてきたかもしれない。ここまでくるのに随分かかったな…。 仮にだが、過去の俺たちの立ち位置を…無理やりにでも現在へと投射したらどうなる? あの世界の俺とハルヒは…とりあえず、【仲が良かった】のは事実だろう。そして、そのハルヒは 過去の記憶は失ってる。当人がその立ち位置に入れない…だからこそ、その代わりとなる人物に。 時間遡行してハルヒと出会った時点において…つまり、中学時代の俺が最も【仲が良かった】異性、 そんな彼女に偶発的にも影響を及ぼしてしまったのかもしれない。立ち位置を重視するのであれば、 後は佐々木が神の代行者たる機能を具えていれば完璧だ。俺は昔も今も一般人だから 何も影響が出なかったんだろうが…。 「古泉、お前の言いたかったことはわかったよ。ただ、この推論はちょっと苦しくないか? 仮定に仮定を重ねたようで、少し強引なような気がするんだが。」 「だから言ったではないですか。これは憶測だと。」 開き直ったぞこいつ!?いや、確かにお前はそう言ってたが… これではまるで予防線を張っていたみたいで気分が悪い。 「不完全なフォトンベルト…その生成の過程を見ても、この説はそれなりに良い線いってたとは思うのですけどね。 佐々木さんの能力が涼宮さんのように完成されていないのも、それで説明がつきます。」 「……」 それについては、俺は古泉とは違う見解だった。そりゃ、佐々木の能力が不完全なものだってのは知ってるさ。 橘京子や佐々木本人から散々説明くらったからな。その理由についてだが…俺は知ってんだ。 あいつが…ハルヒが第三世界終焉時、どれだけ自分の境遇、そしてその重圧に打ちのめされてきたのかを。 ならば、その代行者の証ともいえる能力を他の誰かに分け与えたりするだろうか?誰よりもその苦しみを 知ってるハルヒに、果たしてそんな真似ができるのだろうか?佐々木の能力が不完全なものとなったのは、 そんなハルヒの切実な思いが交錯した結果…少なくとも、俺はそうみてる。 「以上で僕の推論は終了なのですが…そんな僕の憶測も、一つだけ証明する手立てがあるのですよ。」 「?どういうことなんだ?」 「即ち、涼宮さんの能力が消滅したときです。それと同時に佐々木さんの能力も完全消滅するのであれば、 この説も、少しは信憑性を帯びるといったものです。」 …なるほど。ハルヒの力に誘発されての結果なのだとしたら、 確かに古泉の言う通り佐々木の能力は消えてしまうことであろう。 「さて、それで2つ目なんですが…」 「は?」 佐々木の話が終わったと思ったら、こいつはいきなり何を言い出すんだ?? これで奴の話は終わったんじゃないのか?さっきの佐々木云々はどうした?? あれは2つ目にはカウントされないのか??まさか、奴は簡単な算数さえできなくなってしまったか?? いや、それか、この歳にしてまさかの痴呆か??お前はそんな奴じゃなかったはずだぞ古泉… とまぁ、今、俺の頭の中は大量のクエスチョンマークで爆発炎上を繰り返していたのさ。 「すみません。さっきのは厳密に言えば憶測だったわけで、2つ目ではないんです。 すぐ終わる話だと思って軽く切り出したのですが…思ったより長くなってしまいました。」 なんて紛らわしい奴なんだ…と、いつもの俺なら怒りでワナワナ震えているんだろうが… 今日は佐々木の件に免じ、特別に許してやる。憶測には違いないが、可能性を示唆できただけでも… 一歩佐々木に近付けたような気がするからな。あいつのことは…大切な友達として、できる限り 知っておきたかった。何か有事が起こった際、何も知りませんでしたじゃ済まされないからな。 能力的にも立ち位置的にも、事件の当事者となりうる可能性は決して低くはないんだから尚更だ。 「で…だ。2つ目だったか?」 真剣な話の連続だったせいか、少々聞き疲れを起こしてしまってる自分がいる。 いかんな…こんな調子で、果たして奴の話をまともに聞けるのか?? 「実はその2つ目とは、あなたのことなんですが…」 一気に目が覚めてしまってる自分がいる。 「あなたって…俺か??俺が一体どうしたと??」 「涼宮さんがこの時代へと転生できたように…あなたも転生できた。それは自覚してますか?」 「…信じられないことではあるが、まあそうなんだろうよ。ハルヒが俺に見せた記憶を…俺は信じてるしな。」 「なら話は早いです。…高校入学時の涼宮さんの自己紹介…あなたは覚えてますか?」 「おいおい、いきなり話が変わりすぎじゃないか??なぜいきなりそんなことを??」 「そう思われるのも無理ありません。しかし、これでも一応話はつなげてるつもりですよ。」 うーむ…そこまで言われては仕方ない。こいつの示唆しようとしてることが いまいちわからんが…とりあえず思い出すとしようか。自己紹介、自己紹介… 確か… 『東中出身涼宮ハルヒ!ただの人間には興味ありません。 この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!以上!』 「今ので合ってるか?」 「よくそこまで鮮明に覚えていらっしゃいますね。感服します。」 「そりゃ、あそこまでインパクトある自己紹介はそうそう忘れたりはしないさ…って、お前俺のクラスじゃないのに 何で知ってんだ?いや、それ以前に、そんときはまだ俺の学校にはいなかったよな??」 たまに忘れがちになるが、こいつは一応転校生だった。 「簡単なことです。長門さんに聞いただけですよ。」 長門も同じく俺のクラスではないが…まあ、この長門にかかれば何でもありだ。 なんせ元はと言えばハルヒの監視役としてやってきたようなもんだったし… ならば、あの席での問題発言を傍聴していたとしても何らおかしくはないだろう。 「で、思い出したのはいいが、一体これが何だってんだ?」 「今の自己紹介…何かひっかかるような所はありませんか?」 何を言ってんだ…確かに常軌を逸した自己紹介なだけに 突っ込みどころは有り余るほどあるんだろうが……ひっかかるトコ? …… そういや…このハルヒの言葉は一連の流れとつながってるって、さっき古泉は言ってたよな。 一連の流れ…とは俺が二人に話してた【あの世界の記憶】のことだよな。いや、違う… 古泉はその後、転生の話題を出してきたじゃないか。転生… 『この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!』 結果として宇宙人である長門、未来人である朝比奈さん、そして超能力者である古泉がハルヒのもとに集った。 しかし、一つだけ欠けていた…まあ、前々からこれについては疑問に思ってはいたのだが。 異世界人 願望を実現させるハルヒの能力を考えたとき、なぜ異世界人だけハルヒの目の前に 現れなかったのか…それが不思議でならなかった。まあ、特に憂慮すべき問題ってわけでもなかったから 俺自身深く考えようともしなかったが。 そして異世界人たる人物がいないまま今日まで時を迎えてしまったわけだが… …… もし異世界人がSOS団に実はいたとしたら? それは誰だ? …… 転生… 「古泉よ、お前の言いたいことを当てていいか?違うのなら思いっきり笑いとばしてくれ」 「もう察しがついたのですか?さすがキョン君ですね。」 「…言うぞ」 …… 「俺は異世界人だったのか…?」 …… 俺はこれまで自分をごく平凡な人間だと思ってた。どこか変わったところはあったかもしれないが、 それでも自分は長門や古泉、朝比奈さんとは違うごくごく普通の人間だと思っていた。 この時代に生きうる普通の人間としてな。だが…もう、そうも言ってられないだろう。あの記憶を見た 今となってしまっては。俺という人間が…あのときの【俺】の生まれ変わりだとしたら。転生だとしたら。 俺は間接的ではあるが、別世界から来た人間ということになる。つまり、言葉通りの異世界人だ。 古泉は静かに口を開く。 「それがわかったとき、どんな気分でしたか?」 「別にどうもこうもねえさ。ああ、やっぱりな…って思っただけだ。」 どうやら、俺は古泉の言いたいことを当ててのけてやったらしい。 「いつからお気付きで?」 「さあな…微々たる気配とかでもOKなら、それは俺が朝倉に襲われたときだろうか。とはいっても、 それ自体は別にどうでもいいんだ。あの一件以来、俺はあのとんでも話を信じるようになった… マンションに呼び出されて聞かされた…そう、お前の話をな。」 俺は長門の方を見つめる。 「長門よ、涼宮ハルヒには願望を実現させる能力があるって…以前そう言ってたよな? 改めて、お前に確認しときたい。その能力ってのは…実は、この世界に限ったものだったんじゃないか?」 「…そう。」 まさかの当たりか。…なるほど、これで全てに合点がいった。 「となれば、この世界の住人ではないもの…即ち 異世界からの人間は、その影響下には入らないって認識でいいんだよな?」 「…そう。」 「わかった、ありがとな。今まで何か抱いていた…モヤモヤが消し飛んだぜ。」 …… 涼宮ハルヒという人間が願望実現という特異的な能力を有してる時点で、自身の意志でハルヒを どうこうできていた俺の存在そのものがそもそも規格外だったのだ。…まあ、おかしいとは思ってたんだが。 ただの凡人である俺が涼宮ハルヒに選ばれた人間だとか、涼宮ハルヒのカギだとか… 後、唯一ハルヒに意見や口出しできる人間が俺だったってのも…、今となっては納得できる。 俺がハルヒの能力を受け付けない、異世界人だったのだとしたらな。 …… 「おやおや、大丈夫ですか?どうか気落ちしないでください。」 なんと、今の俺は古泉から見て…どうやら気落ちしてるように見えたらしい。 「あなたが涼宮ハルヒの影響下に内包されなかったのは、決して【異世界人だから】という理由だけではない。」 長門が意味深なことを言ってきた。 「そうですよ、考えてもみてください。もしそれだけの理由であれば、極論かもしれませんが… あなたは涼宮さんの単なる他人という独立した存在でも全然問題なかったわけです。 そうである場合、決して涼宮さんのカギたる存在には成り得ません。」 「しかし、あなたは過去の世界で誓った。涼宮ハルヒと再び会うことを。」 そうだ…あの世界の俺はあんなにもハルヒに会いたがってたじゃねえか。ハルヒも同様に…。 「それも当然ですよ。なぜなら、あの世界のあなたが 涼宮さんに対して思っていたように、涼宮さんもまたあなたのことが…」 ? 「いえ、ここは言葉を濁しておくとしましょう。とにかく、あなたと涼宮さんの関係には 論理や理屈では説明できないこともある…どうか、そのことを忘れないでください。」 いつもの俺なら、古泉の言いかけた言葉などわからず仕舞いだったんだろうがな…。あの記憶の中の… 【俺】が遂げられなかった思いを克明に覚えている今の俺には…。容易く予測がつく。 …… なぜだろう?急にハルヒに会いたくなってきた自分がいる。 「…俺は」 「もう僕たちのことはほっといて、涼宮さんの所に行ってあげてはどうですか?あなたもそんな気分でしょう。」 俺が言はんとしてたことを先に言いやがった。洞察力が鋭いってレベルじゃねえぞ…。 「だがな…俺はまだ、お前らの要件を聞いちゃいねえわけで…。」 「そんなことはどうでもいい。今はあなた自身の思いに従うのが賢明。私はそう考える。」 長門… 「わかった。二人とも、どうもありがとな!行ってくる!」 俺は自転車をこぎ出した。 …… おっと、急がば回れと言うじゃないか。 俺は発進していた自転車を一旦ストップさせ、携帯電話を片手にメールを打ち始めた。 「さすがにいきなり来られても迷惑だろうからな…行くってのは一応前もってメールで知らせとかねえと…。」 よし、送信完了。じゃあ再びこぐとしよう。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1596.html
「明日の9時に駅前に集合よ!!15分前にはちゃんと来ておきなさい。 来ないと死刑だから!」 お前のせいで俺の1週間の内の貴重な2日間の休みがなくなるんだよ!! とは言えるわけもなく俺は青菜に1kgぐらいの塩をかけた状態で家に戻った どうせなら俺と朝比奈さんその他の憂鬱として小説を出してほしいものだ 翌朝、煩くも目覚まし時計のベルが鳴った と同時に妹がニードロップ 毎度騒がしい妹だ 時計を見ると8時40分 やべぇ寝過ぎた!! 俺は闇討ちに遭った坂本竜馬のように焦りながら自転車を漕いだ と同時に不可解な違和感を覚えた とそんなことより急がねば! 駅前に着くと驚愕した 他人が俺の顔を見ればツチノコを見つけた1農民の顔に見えただろう 「遅いじゃない!罰金!」聞き慣れただろう声のトーンが異常に高い ちっさいハルヒがそこにいた 「やぁ、おはようございます」不機嫌な俺をさらに不快にさせる声が聞・・・ 古泉もやけに小さかった 何か[禁則事項]の黒ずくめの男にでも薬を飲まされたのか?おい 「おはようございます、キョンくん」 砂漠で水があれば自分より先に飲ませるであろう人物の声を聞き振り返りまた驚いた 大人みくるがそこにいた 朝から感じていた違和感はまさにこれで ざっと周りを見渡してしたくもないが現状を把握した 大人は子供に 子供は大人になっているようだ しかも高校生以上が子供で中学生以下が大人になっているようだ 今すぐにでも現実逃避したい それと1つだけ疑問に思った なぜみくるさんだけ大人なんだ ロリか!この世の陰謀か!! と嘆いてる時に下腹部に弱い衝撃が走った ハルヒ(小)が俺にドロップキックをしたからだ 「もう!何ごちゃごちゃ言ってるの!さっさと行くわよ」 はいはいと答えた刹那に何故小さいこいつの尻にしかれなきゃならんのだということを心の中で叫び駅を後にした さてこの状況を見た人にどう説明しようか 一見すると美少女にどう見てもかっこいいとは言えない普通の俺―(自分で言っちまった・・・)―の凸凹カップルと その娘2人と息子1人だ っと・・・その前に影みたいな存在のこいつの状況も教えんとな・・・ いたって普通だ 昨日見かけた姿となんら変わりない さすが宇宙人と言うべきか 言わないほうがいいだろうな それよりなんで俺とお前が普通なんだ?またハルヒの迷惑この上ない願いか? 「・・・違う」ではなんだ?まさかお前の力か? 「・・・そう」俺は頭を抱えた まさか黒幕がこいつだったとは・・・ じゃ・・・なんでこのような世界にお前は変えたんだ?何か不満でもあったのか?ハルヒに 「違う」はっきりと断った 「はっきりといえば私ではない 私はこの状態に食い止めてるだけ」 は?と首を捻る フェルマーの最終定理を解いてる学者の姿が想像できたね まぁ俺にはsinθもわからんがな 今日の俺は自虐傾向のようだ もし夢ならば覚めてくれ 「朝倉の来襲」俺は耳を疑った 朝倉はお前が消したんじゃないのか? 「詳しく言えば朝倉馨の力によりこの世界は捻じ曲げられてしまった」 ぷっと吹き出しかけたがこいつの顔を見ると欠伸もできない いや・・・こいつはいつも無表情なんだがな 宇宙人でも新人さんがいるんだな が、俺が命を狙われることもなさそうだ 「そしてあなたの命を狙っている」緩んでいた俺の顔が空気を一気に抜いたペットボトルみたいに強張った おいおい冗談だろ・・・なんでまた俺が狙われなければならんのだ もしかして妹さんとかそういうことじゃないだろうな 「当たり」躊躇なく答えやがった まったく・・・ 神様よ もうちっと普通なところへ命を授けてくださらなかったのか もちろん人間で つうかこんなので当たったって嬉しくとも何ともねぇよ っていうかなんでハルヒや古泉は小さくされてしまったんだ? 「4年前の涼宮ハルヒには世界を改変する力がなかった だからそこに目をつけた 古泉一樹も同じ」 あぁなるほど・・・って納得できるかぁ!!今俺の不満は休日を削られたことからそちらに向けられた やれやれ貧乏くじ引かされてしまった・・・ 「世界を元に戻すにはあなたを狙って相手が姿を現した時に迎撃する そして世界を元通りに改変する」 つまり俺はお前に守られてるから命を落とすことは無いんだな? 「保障はできない」 おい! 「何してるの?早く来なさい!」ったく小さくなっても気は大きいままなんだな こいつはよぉ!! 「ははは まぁそこも魅力の1つでしょう」こいつの笑顔の気持ち悪さも同じだな っていうか顔近い!あと2mmしかねぇじゃねぇか 「なんか 朝起きたらいつもの服着れなくて・・・成長期でしょうか」恐らくあなたは成熟期でしょう というより今は究極体の方があってますよ とまぁハルヒと古泉が小さくなり朝比奈さんが大きくなった以外は変わることもなく・・・とは言い切れないが奇妙な1日が終わった 「明日は休みにするわよ!とりあえず自主活動で謎を探してくること!!解散!」 と今日の憂鬱感の70%を占める原因となった奴の声を聞き俺は帰路についた 長門込みで 「明日駅前に来て」またか・・・んで何時なんだ?「1時」1時かえらい遅いもんだ それならぐっすり寝させてもらうぜ 「朝1時 駅前に来て 恐らくこの現象の渦中の人物が来る それを仕留める」 俺の週末は恐らくBAD ENDで飾られるであろう 予感が的中した 仕方ないなと思い今日は早めに寝た 時計のアラームが鳴りもう少しと考えているうちに1時を指そうとしていた デジャヴだな・・・ってゆっくりしてる暇はねぇ 急いで着替え歯を磨き自転車で飛ばしていった すると途中で「やっほ~キョンくん どうしたのこんな時間に?まさか気になるあの子のところへ?」 貴方はいつでも明るいですね 周りは暗いのに それよりその質問の答えはNOです あながちハズレでもないが 「ははは嘘嘘 やっぱりキョンくんはおもしろいね~」どこが面白かったんだろう この人の笑いのツボが知りたい それよりあなたこそなんでここにいるんですか?「まずはキョンくんから言ってよぉ」 不安を覚えながら体がなまってはいけないのでサイクリングと答えた ハルヒのせいでなまることはないがな 「わたしもちょっとジョギングだよ 体がなまってはいけないからね ははは」 なんだ同じ理由ですか 奇遇ですね やっぱり運動に勝るもの無しですね あぁそれより急いでますので また明日会いましょう とお辞儀するとヒュッと首元を何かがかすった 手で触ると血が出てる 何故? そして次の瞬間安堵が絶望へと変わった「そしてあなたを殺しにきたの」 俺はイマイチ理解できなかった さっきまでフレンドリーな鶴屋さんがこんどは刃物を持って襲って来ただと? えぇっとこの場合某RPGではコマンドが出るんだったな・・・よし「ガンガンいこうぜ」・・・と って俺は何を考えてんだ!! あまりの出来事に気が動転しているようだ 恐らく鶴屋さんではないだろうが念のため聞いてみるか お前は誰なんだ?鶴屋さんではないな? 「あら?この顔の主は『鶴屋』っていうの?今日貴方を探しているときに公園にいたから真似してみたの どう?上手い?」 えぇ上手かったですよ 恐らく将来は主演女優賞をもらえるでしょう その時は俺も招いてくださ・・・って何を考えてるんだ・・・ いかん!いかん! 本当に俺は頭が混乱しているようだ 誰か一発叩いてくれ あとで100円なら払ってやる って眼前の鶴屋さんであっただろう物体しかいないが 「申し遅れました 私朝倉涼子の妹朝倉馨です 実は姉があなたを殺し損ねたそうなので私が代わりに来ました これから殺す相手に目的を告げるのは面倒くさいけど一応私のポリシーです」 これはこれは行儀よく ってまた命を狙われるのか俺・・・ 頼むから誰か来てくれ 谷口でもいいから お前の好きだった朝倉涼子によく似た妹さんがいるんだぞ ル●ンダイブしてでもいいから飛んできてくれ いや実際使えないなあいつは 恐らく縮こまってるだけだろうな 来るな谷口! 脳内から消えろ谷口! 「決心ついた?」 消去法だ・・・ハルヒは駄目だ小さいからな ってか来たって何もできないしな 古泉は使えないな ハルヒ同様小さいし閉鎖なんとかでしか能力を発揮できない 一緒にいるのも嫌だしな 朝比奈さんは恐らく大人でも無理だろう あいつをどこかに飛ばすことはできるだろう でもそのあとは? 最後の綱は長門だが1km以上離れているここはわかるのか? 前みたいに登場はしてくれるのか? 俺はライオンににらまれた猫みたいに震えながら後退りしつつ長門の登場を待った ドンッ 背中が無き壁にぶつかった え? 「ちょっとこの空間だけを切り取ったから逃げ出そうとしたって無駄よ」 今の俺の脳内では長門の顔と谷口の顔が浮き沈みしている えぇぃ谷口!!何故お前は俺にそんなに固執するんだ!!いい加減消えてくれ! 「空間の切り口があまりにも粗雑すぎる 切り屑も消去できていない あまりにも幼稚 だから私に気付かれる」 待ち望んでいた声が聞こえた 空耳じゃないよな? そこには長門がいた やっと来てくれたか長門 それにしてもかなり離れているぞ長門 間に合うのか?「だ」・・・?「いじょうぶ」 うわっいきなり現れるな長門 びっくりするじゃねぇか まぁつべこべ言える立場じゃないんだがな 「あら?こんにちは あなたのことは姉から聞きました あなたに邪魔されたそうですね」 「朝倉涼子は優秀でありながらも穴がありすぎた だからそこを突いた」 「では復讐としてあなたと対峙してもよろしいのでしょうか」「いい ただし勝つのは私」 なぁ俺帰っていいよなぁ もう目的は果たしたんだし・・・今日学校あ・・・今日日曜日だったな 口実にならないようだ とりあえず寝させてくれ・・・俺普通の人間じゃないか ってかなんで俺こんなに弱気なんだ 睡眠不足のせいか よし寝させてくれ 睡眠に勝るもの 「離れないで」俺の愚痴は中断された 「もうっなんでこんなに小さくなってんの?いくら医学が進歩したからってこんな薬なんてありえない・・・ なんでキョンと有希だけ変わってないの?みくるちゃんは大きくなってるし もういいわ明日になれば原因不明の薬も消えるでしょ 効く薬でも効力はいずれは消えるわけだし 明日起きたらキョンに聞いてみなきゃ 何故あんたと有希だけ変わってないの?ってね そしてキョンを脅して元に戻してもらうの この体じゃ駅まで行くのにも一苦労なんだから まぁ子供料金で電車に乗れるというメリットはあるけど そんなに電車使わないし ごちゃごちゃ考えるのはやめ おやすみなさい」 「おやおや建物がやけに大きい思ったら僕が小さくなっていたのですね このままじゃ他人に顔向けできませんよ 寝てる間に直ってることを祈ります」 「え?誰この人?ひゃっ私?何でこんなに大きいんですか・・・これじゃ服が着れない・・・明日買いに行きましょうか・・・おやすみなさい」 後ろで何か幼き時に結構はまっていたシューティングゲームのゲーム音のような音がする 戦況を見たい でも見たくない 俺がそんな葛藤の中で異様に谷口の顔が浮かぶのに嫌気が差した 頼むからお前がスケープゴートになってくれ谷口・・・ ちらっと戦況を目にしてみる さすがに俺1人を抱えて戦うのは無理があったのだろう 朝倉妹相手に苦戦しているようだった なぁ俺を帰らせてくれないか?俺がいても足手まといだろう 「この空間を一時的に元の空間に戻す際 一瞬の隙を作ってしまう そして負ける そうならないためにも帰すわけにはいかない」変な誘拐犯に捕まった気分だぜ 俺を殺そうとしてるのは第三者だがな 「それに・・・」長門が言葉を紡いだ「あなたがいれば戦闘に集中できる」おいおい逆じゃないのか? その問いには答えなかった 俺の後ろで破裂音がした 振り返ってみると朝倉妹が倒れている 「あなたは朝倉涼子より優秀 しかし勝ちを急ぎすぎた それが敗因」 長門は朝倉妹に対し冷静な口調でそう言った 某ゲームのファンファーレが俺の頭でエンドレスに流れている そろそろ眠気こらえるのも限界かもな 朝倉妹より長門のほうが相当痛手を負っている 俺にしてみりゃ長門が負けのように思える 大丈夫、このくらい平気と言い放ち体を再生させた ほんとに便利な奴だよな まったく 人間なんざ指切っただけでギャーギャーわめき、ちょっと頭打っただけで集中治療もんだ 宇宙人になれると広告が貼ってあるならば土曜日と日曜日どっちを休みにしてどっちを探索にするかと訊かれるぐらい迷うな そんときゃ人間を捨てるだろうな いかん思考回路がショートし始めた とりあえず寝させてくれ 頼む 「まだ世界の修復が終わっていない」あっさり断られたようだ 「やっぱり姉が敵わないのに私が敵うわけないよね 姉の言いつけも果たせなかったし」 そういい残すとこれまた姉と同様に砂になって消えていった 透明になるとかそういう消え方を望んだんだが 時計の短針は5時を指そうとしている 早く修復してくれ長門 「かなり複雑 でも半時間あれば修復できる」あと半時間も待たなければいけないのかよ 「待たなければ帰れない」そうだったここは隔絶された場所だった 選択肢は1つしかなかったのだ もういっそのことここで寝るか? 半時間かかるとはよく言ったもんで半時間を10分オーバーして世界が元に戻った すぐにでもベッドインしたかったが命の恩人を置いていくのも気に食わんので長門を後ろに乗せて自転車を漕いだ すまなかったな長門 お前には頭が上がらないぜ「いい」と言って本を読み始めた 眠くないのか?長門 とりあえず長門の住んでいるマンションの前に着くと長門を下ろしてやった 顔の筋肉をミクロ単位で動かし「ありがとう」と言う長門を後にして俺は帰宅した もう6時か 長くて2時間ぐらいだろうな あとは人間目覚しによって布団を剥ぎ取られるだろうな シャミセン お前が羨ましいぜ そういい残し俺は安眠を得た 起きる もう朝か ってか寝るときも朝だったが 時計を見る11時を指そうとしている いけねっ寝過ごした!!何故こんな肝心なときにあいつは起こしに来ないんだよ くそっ! 急いで自転車をこぐ ちくしょう 家の鍵をどこかで落とした方がよっぽどマシだぜ 駅へ着くと誰もいなかった そうだよな やっぱりみんな怒ってるだろうな 古泉なら待たせても何も感じないが朝比奈さんを待たせることはできないな ハルヒもだ 別の意味で しばらくすると眠い目をこすりながら朝比奈さんが来る あれ?どうしたんですか? 「あれ?キョンくん いつもより早いですね 12時集合なのに」 12時?俺は9時と聞いていたはずだが? 「へっ?私の間違いかしら やだぁ また怒られる」と真珠のような涙を浮かべてる それより確かに修復されたようで昨日のような大人な朝比奈さんではないようだ 俺としてはもうちょっと大人みくるでいてほしかったがな そう泣きじゃくってる朝比奈さんをなだめていると 古泉が早朝にもかかわらず他の人が見れば爽快ともいえる微笑みを振りまきながら 駅前へ歩を進めている もう元に戻りやがったのか 小さいほうがハルヒが落ち込んでる日よりも気分が良かったぜ こっちはいろいろあってろくに寝てねぇのになんでお前は寝起きなのにそんなに機嫌がよさそうなんだ 「おはようございます おぉ珍しくキョンくんがいるじゃないですか」いて悪いのかよ (昨日のことは機関の方でも騒がれていました なので僕もそんなに寝ていません) なんでそんなに平気にいられるのかを訊こうとしたが長門到着で訊くのをやめた もともと聞きたくもなかったがな 長門?お前の仕業か?時計の針を早めたのか?「ちがう」じゃぁなんだってんだ? 「みんなが覚えている涼宮ハルヒの決めた集合時間を3時間ずらしただけ」 そうだよな お前も眠かったんだよな 宇宙人でも睡眠時間は必要だもんな と一人で考え込んでいると今日限定食事の幹事兼団長さんがお出ましだ もう小さい姿じゃないらしい 一泡吹いただろうと言いたかったがそんなことを言った2秒後には絞められて逆に吹かされているだろう 「あれ?キョンもめずらしく早めに来てるじゃない ちゃんと昼飯は摂ったわね皆」 そんなの聞いてねぇぞ お前がおごりじゃなかったのかよ「・・・そういうことにした」おい! 「何言ってるの?あたしちゃんと言ったわよみんなに まさか食べてないって訳じゃないでしょうね」 ああ まったくそうだよ「ははぁんつまりあんた今お腹空いてるわけか・・・」 何を企んでいるんだよお前は「ってことで今日はキョンの奢りね あたしたちデザート欲しくなっちゃったから」 勝手に話すりかえんなよ お前の言ったことだろう でなんで朝比奈さんも了承してるんですか 長門そんな目で俺を見るな いくらでも奢るから 財布にあった重量感が消えそうだ 今の俺にとって 平凡な日常はこんなのかも知れない -fin-
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1078.html
第2話 ~ヒーローと目撃~ はっ!!今の夢は…一体?……あれは…ハルヒか?どこかの学校の校庭にいたのは分かったが一体何処の…… 「あぁ~!!キョンくん何でもう起きてるの?」 「ん、ああ。ちょっとな。」 俺は今朝の夢のことが気になってずっとぼーっとして歩いていた。 何だったんだろうな?あの夢は。ハルヒが出てきたような気がするが… 教室に着くとドアを開けた途端太陽のような笑顔のハルヒが俺に突撃してきた。 「キョン!!今すぐ一緒に来なさい!さぁ行くわよ!!!」 「おぉわっ!!ちょっと待て、授業はどうすんだ。」 「そんなもんサボるに決まってるでしょ!」 そう言ってハルヒはいつかのように俺のネクタイを引っ張って無理矢理俺を部室まで引っ張っていった。 ドカン 「ヤッホー!キョン一丁お待ちぃ。」 お待ちって誰が待ってるってんだ…って何でお前ら… そこにはSOS団全員+鶴屋さんが揃っていた。 「それでは皆さん!これよりSOS団七夕緊急ミーティングを開始します!!」 「おいおいそんなもん放課後にやればいいだろ、 何で今授業をサボってまでやる必要があるんだ?」 「必要な事なの!!大体、あんたはどうせ授業何ていつも寝てるんだから関係無いでしょ。」 ま、まあ確かに殆どの授業で寝てるのは確かだが… 「それでは今日の議題は、七夕についてです。」 「で、七夕がどうしたんだ。」 「はいそれじゃあキョン、七夕と言ったら何?」 そりゃあ天の川とか、短冊とかだろ。 「確かにその通りね。じゃあその短冊を掛ける物は?」 そんなん笹に決まってるだろうが。 「そうよ!短冊は笹に付けるものよ。それは万国共通の事だわ。 そんでもって幾ら織り姫と彦星でも全ての人の願いを叶えてあげる事は不可能だわ。」 だからそれが一体どうしたって言うんだ。 「そこで笹よ!!やっぱり彦星もどうせなら 良い笹に掛かってるお願いの方が叶えてあげたくなるもんじゃない? いえ、そうに決まってるわ。」 ……相変わらずこいつの理論は訳が解らん。朝比奈さん、そんな貴重な事を聞いたみたいな顔する必要無いんですよ。 全部デマなんですから。それとも未来には七夕が無いのか? 「と、言う訳で、今日はSOS団プレゼン!!笹取り大会を開催します!!」 あー何だ、ツッコミたいとこは色々あるが 「おいハル「意見のある人は挙手をして発言しなさい!!」 ったく、コイツはそんなに俺にしゃべらさせたくないのか? 「は~い。」 「はい!鶴屋さん!!」 俺が挙げる前に鶴屋さんが挙げてしまった。 「笹取り大会って具体的に何をするんだい?」 確かにそれは気になるな 「そうね…じゃあ2人1組に分けて、それぞれ笹をとって来て一番良い笹をとって来たペアの勝ちってのはどう!」 じゃあって、今考えたのかよ! 「ちなみにペアはくじ引きで決めるわよ。それじゃあ有希から順番に行くわよ!はいっ…」 今回はいつもの爪楊枝に3色の印を付けていた。 しっかしハルヒもまた面倒なことを思い付いたもんだ。 まあしかし、今日の俺は余程ついているらしい。 「…青……」「緑だ。」「青ですね。」「赤にょろっ!!」「ぁ、緑です。」「赤だわ!!。」 今の会話で分かってもらえたかどうかいささか不安だが、 そう俺はなんと俺の天使様、つまり朝比奈さんとペアになったのである。 当の朝比奈さんはと言うと、自分の楊枝の先を少し赤くなりながら見ていたが、 暫くして俺の方を見て、はにかみながら会釈をしてくださった。いや~、心がどんな宝石よりも綺麗になる気がするね。 …ん?いつもだったらここで我がまま団長様がアヒル口で文句の1つや2つ言ってくるのに、何も言ってこないなんて珍しいな。 「それじゃあ皆!時間が無いから早く行くわよ。」 「行くって何処に行くんだ?」 「鶴屋山よ。」 何でも「この前ハルにゃん達が宝探しした山にさ、竹の密生地帯があるからそこを使うにょろ!」だそうだ。 んでもって俺達は今バスに乗っている。俺は朝比奈さんと鶴屋さんと一緒に座ってるハルヒから距離を取り、 古泉と長門に昨日休んだ理由を聞いてみた。 「近頃情報統合思念体は涼宮ハルヒという個体を2体観測した。しかし、涼宮ハルヒの近辺での情報改変は観測されていない。その真相を調査するため休んだ。」 何だと!?ハルヒが2人ってどういう事だ? 「詳しくは解っていない、涼宮ハルヒの能力が人格化し、涼宮ハルヒ本人から離別し行動している。」 え~とつまり、ハルヒの能力に人格が出来てそれはハルヒ本人とは別の意思を持っているって言うことか? 「その通りです。そしてその別の人格が涼宮さん本人とは別の肉体をもち、別の行動をしているようです。」 なる程、じゃあ元のハルヒは能力を失ってるのか? 「はい。しかし今そこにいらっしゃる涼宮さんが能力を持っていない訳ではありません。 なぜなら、彼女、つまり能力を持った涼宮さん、ここでは、そうですね…涼宮さん(能)とでも呼びましょうか。 彼女が現れるのは、涼宮さんが夜中に眠っている間だけだからです 。それ以外の時間は涼宮さん(普)の中で眠っているようです。」 何でそんな事になってんだ? 「それはまだわかっていません。しかし「3年前の七夕が関係している。」 今の今まで空気のように振る舞っていた長門が突然割り込んできた。 独りで歩いてて寂しくなったのか? 割り込まれた古泉はやれやれといったように肩をすくめてみせた。ちっ、様になってやがる 「彼女が出現したのは4年前の七夕のジョン・スミスが深く関わっていると思われる。気をつけて。」 「どう気を付けろというんだ。」 「それは………」 長門は急に俺から目を逸らし、明後日のほうを見ながら 「あなたに託す。」 はぁ、誤魔化したって無駄だぞ長門、要は分からないんだろ。 「やれやれ。」 しかしそんなごまかしたりする長門も珍しくて、なんだか可愛かった。 「さぁ、着いたにょろ!」 そして今俺達は鶴屋山の裏側の中腹くらいにいる。 「こっから山の麓近くまでずっと竹藪になってるっさ!!気にった竹を見つけたら好きに採ると良いよ!!」 採るったって、一体何で採るんです?まさか素手なんて事は…「あっ、そっかそっかぁちょろんと待っててね。」 そう言って鶴屋さんは、山の上の方に向かって歩きだした。ちょろんとっていうのはまた30分程なのだろうか? しかし俺の懸念も空振りに終わり鶴屋さんは2分程で戻って来た。のだが… 「皆さん、お久しぶりでございます。」 何故かその隣に新川さんが居た。何故だ?意味が分からん。 俺がよほど怪訝な顔をしていたのだろう、古泉が突然解説しだした。 「新川さんには良い笹の審査員をして貰います。僭越ながら僕が先ほど呼ばせていただきました。かまいませんか?涼宮さん。」 「ええ、構わないわよ。確かに審査員無しじゃ誰が一番か決められないわね」 じゃあお前はどうやって勝負を決めるつもりだったんだよ。 「ありがとうございます。それでは新川さん。」 「かしこまりました。」 そう言って新川さんは何処から出したのか、 ちょっと大きめの鉈を3つそれぞれ俺と古泉とハルヒに渡した。そして 「それで竹を切って下さい。」 といって、もう1つ鉈を取り出し、 「この様にしてください…」 と言った。そしてふーっと息を吐いたかと思うと、突然カッと目を見開いて 「SUNEEEEEEEEEEEEEEKU!!!!」 と叫びながら鉈を一振りした。 一瞬だった。そして気付くと、新品のトイレットペーパー並みの太さの竹が真っ二つになっていた。スネークって一体…? ハルヒは目を爛々と輝かせ 「スッゴいわねぇ!!どうやったらそんな事が出来んの?」 と嬉しそうに言っていた。 鶴屋さんは爆笑していたし、長門と古泉はいつも通りだった。しかし朝比奈さんはよほど新川さんの顔が恐かったのか、殆ど半泣き状態だった。因みに俺は声一つ出せなかった。 「じゃあみんな!!1時間後にまた此処に竹を持って集合ね。さあ、行きましょう鶴屋さん!!」 「ラジャーっさ!!」 そう言ってハルヒと鶴屋さんはものすごい速度で竹藪に消えてった。 「それでは長門さん、僕達も行きましょうか。」 「………」 長門は3ミクロン程頷いて古泉と歩いていった。 さて、俺達もそろそろいこうかね。 「さ、行きましょうか、朝比奈さん」 「…あ、はい。」 そうして俺達も竹探しに向かった。 しばらく歩いてからのことだった、突然朝比奈さんが俺の方に向き直り、潤んだ上目遣いで俺を見て 「キョ、キョンくん!あ…ぁあの、昨日はごめんなさい。せっかくキョンくんが遊びに来てくれたのに…本当にごめんね。」 と言いながら、頭を腰より下まで下げて謝った。 「そんな謝らなくて良いんですよ。俺は気にしてませんから。」 俺は出来るだけ朝比奈さんをなだめるようにいった。 「でもぉ、自分から呼んでおいて部屋に入れた途端に寝ちゃうなんて、わたし…最低です。」 そういえば朝比奈さん(小)は朝比奈さん(大)に眠らされた事は知らないんだもんな。 そりゃあ朝比奈さん(小)本人にしてみれば、突然寝ちまったようにしか思えないよな。 しかしまずいな、朝比奈さんはもう顔を上げては居るが、今にも泣きそうな顔をしている。 朝比奈さん(大)のことをいうわけにもいかないし……しょーがない。 「じゃあこうしましょう朝比奈さん。今度また改めて俺を家に招待して下さい。それでどうですか?」 「ぇ、で、でも…キョンくんはそんな事で良いの?」 「ええ勿論ですよ。その代わり、その日は朝からお邪魔させてもらいますよ。それでおあいこです。良いすよね?」 俺はこれ以上朝比奈さんに文句を言わせないように言った。 「あ、じゃあ…そんな事で良かったら、今度の日曜にでも、また遊びに来て下さい。」 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。 ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。しかしそんな良い空気の時に…… ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 「そおかぁい。そんじゃスモーk「持ってません。」 「にょろーん。まあそんな事より…お熱いねぇお二人さん。はっはっはぁぁ!!」 「ひょ!!だ、だ、だだめです。また同じ穴の二の舞ですぅ」 朝比奈さんはよくわからない事を言って俺からパッと離れ、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。あぁ俺の至福の時が… 鶴屋さんさんは気付いたら消えていた。 5分後朝比奈さんはまだそっぽを向いていた。これじゃ笹が取れないまま帰ってハルヒにどやされちまうな。 「朝比奈さん、そろそろ行きましょう。時間がきちゃいますよ。」 「うぅ。」 顔を真っ赤にして唸りながら振り返り俺の方へ寄ってきた。 その時 「朝比奈さん!危ない!!」 「ふぇ?」 朝比奈さんは小さな崖から足を滑らせバランスを崩していた。 俺はとっさに朝比奈さんを抱き止めたが、結局2人して落ちてしまった。 こうなったら朝比奈さんへのダメージを出来るだけ減らすしかない! そう思った俺は自分の体を下にして朝比奈さんを包み込むように抱き締めた。 「ひょえぇ~~~~~!!!!」 恐怖のあまり朝比奈さんはとんでもない音量の叫び声を上げていた。 崖は10メートル以上もあったが、幸い地面に落ちる直前に一度木に引っ掛かってクッションになったため、大した怪我はしなかった。 しかしこれは暫く動けそうに無さそうだ。 それに俺は今仰向けに倒れており、朝比奈さんは俺の上にうつ伏せに倒れていた。 そう、俺達は今抱き合っているような構図になっている。 いや~何で今日はこんなについているんだろうね? 「ふぁ!!ぁ、ぁ、ごめんなさい!!」 と朝比奈さんは言ってガバッと体を起こした。 あぁ朝比奈さんそれでも今度は馬乗り状態になって別の所がものすごく気持ち、いやっな、なんでも無い!!只の妄言だ。 「ああ、朝比奈さん、大丈夫ですか?怪我は有りませんか?」 俺は朝比奈さんに手を差し向けながら言った。 「ぁ、はい。勿論大丈夫です。」 それは良かった。怪我をしてまで守った甲斐が有ったというものだ。 それから朝比奈さんは俺の差し向けた手を両の手で包み込むようにして取って、 「キョンくんが…守ってくれましたから。……すっごくかっこ良かったですよ。ありがとう」 と言って朝比奈さんは真っ赤になった。きっと俺の顔も真っ赤だろう。 「キョンくんはわたしのヒーローですね。いっつもわたしを助けてくれて、励ましてくれるし。それに今だって、ね?」 朝比奈さんは既に赤くなっている顔を更に真っ赤にして、やっぱりまだぎこちないウィンクをした。 余りの可愛いさに俺は朝比奈さんをどおしようもないほど愛おしく思い、 思わず朝比奈さんの手を引き、また俺の胸の上に倒して、抱き締めてしまっていた。 いかんな。いつもは抑えられるのにな… 「ふ、ふぇ?キョンくん?」 「すいません朝比奈さん。暫くこのままで居させていて下さい。」 「ぁ……はい。」//// そして朝比奈さんは俺の胸に顔をうずめて気持ちよさそうな声をあげた。 俺はそんな朝比奈さんの頭を撫でながら抱き締めていた。 最高だ~。死ねる!!今ならラオウのポーズで死ねる。 しかしキョン達はこの時自分たちを見撃して去っていった存在に気付いていなかった。 そう、鶴屋さんとはぐれたハルヒの存在に。ハルヒが自分たちを見ていた事に。 ハルヒは鶴屋さんを探している時にキョン達が崖から落ちたのを見て、崖の下に大慌てで降りてきたのだが、キョンとみくるが抱き合って居るのを見て走って逃げていったのだ。 ハルヒは普段なら確実にキョンを怒るのに、気付いたら逃げ出していた自分に困惑していた。 「…キョンと……みくるちゃんが?……そんな…なんで?………嘘でしょ?」 誰も気付きはしなかったがハルヒは独り涙を流していた。 涼宮ハルヒの方舟 第2話 ~ヒーロー・目撃~ おわり 第3話へ