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リリカル・ニコラス 第三話 「聖王教会」 「へえ…中々ええやんか、コレ」 ウルフウッドは袖を通した服の襟元を正しながらそう呟く。 入院患者用のパジャマから着替えたそれは、彼が前いた世界で着ていた物とほとんど同じ黒いスーツだった。 ただし以前ウルフウッドが着用していた物よりも数段上等な生地で仕立てられている上物である。 彼はしばし袖を通した感触に満足げな顔で襟や裾を何度か正す。 そんなところにドア越しに澄んだ女性の声がかけられた。 「ウルフウッドさん、着替えは終わりましたか?」 「ああ、もう終わったで~」 ウルフウッドのその返事を受けて軽くドアが開けられ、そこから輝く金髪をなびかせた頭が現れる。 少しだけ子供っぽい仕草で顔をちょこんと出してウルフウッドの姿を確認するのは、彼を助けた恩人である聖王教会騎士カリム・グラシアだった。 こちらを伺うカリムの顔を横目で確認すると、ウルフウッドは正した襟元を見せて着替えが済んだ事をアピールする。 そして彼は壁に立て掛けてあった巨大な十字架、白い布切れに包まれた長年の相棒を担いだ。 「ほんなら行こか」 その言葉と共に、彼はこの数ヶ月間生活していた病室を後にした。 △ 「うっひゃ~、ホンマに緑があるんやなぁ、それにぎょうさん人もおる」 ウルフウッドは初めて目にする管理世界の姿に、目を丸くしてそう感嘆の言葉を漏らした。 退院した彼がカリムに連れられて向かったのは聖王教会本部、管理外世界からの遭難者である彼はカリムを後見人として教会で保護される事になったのだ。 いままで砂と荒野に覆われた乾いた世界しか知らなかったウルフウッドにとってミッドチルダのような世界は新鮮だった。 初めて目にする世界を物珍しそうに眺める彼の姿はひどく童心を感じさせるもので、カリムは思わず苦笑する。 「そんなに珍しいですか?」 「当ったり前や、この前まで荒野だらけのとこで生活しとったんやで? こんな場所向こうじゃそう見られへんかったわ」 「それは大変な世界ですね。でも、ここではこれが普通ですよ」 「うはぁ……早速カルチャーショックや」 未知の世界の常識にウルフウッドは感嘆して空を見上げた。昼間でもうっすらと目視できる二つの月がまた一段とここが異世界である事を伝えている。 教会本部の正面玄関を潜り、広大な敷地を持つ教会内部に足を踏み入れた二人を最初に出迎えたのは見慣れた修道女だった。 「おかえりなさいませ騎士カリム。そしてようこそウルフウッドさん」 「ええ、ただいまシャッハ」 「おう、まあ今日から世話になるで」 シャッハに案内されてウルフウッドが通されたのはカリムの執務室。 広いその部屋には彼女一人が使うには大きすぎるほどの豪奢な机が鎮座し、その両隣を本が敷き詰められた大きな本棚が並んでいる。 正に組織の重役が使うための部屋である、ウルフウッドは初めて目にする上等な部屋の調度にため息を漏らした。 「はぁ~、随分豪華なもんやなぁ。カリムってもしかしてお偉いさんなんか?」 「ええ、騎士カリムはこれでも教会代表者のお一人なんですよ」 ウルフウッドの質問にシャッハがお茶の用意をしながら答える。 彼は少し感心したような顔をするが、当のカリムは恥ずかしそうに顔を赤らめた。 「ちょ! シャッハ、そんな風に言ったら私が教会の重鎮みたいじゃない…」 「でも教会代表者の一角である事は事実でしょう?」 「そんな……私なんて、まだただの小娘よ」 「なんやぁ? 謙遜かいな。えらい貞淑なんやな~、なんか意外や」 からかうようなウルフウッドの言葉にカリムは顔をさらに真っ赤にして彼に詰め寄る。 こんな風に異性から弄られる事などほとんどなかった彼女にとって、ウルフウッドのからかい半分の冗談は乙女心を簡単に揺さぶってしまう。 「ウ、ウルフウッドさん!? それはもしかしなくても失礼じゃないですか!? ま、まるで私が少しも淑やかじゃないみたいじゃないですか!」 「ああ~、ただの冗談やがな。あんまり怒っとるとシワ増えるで?」 「シ、シワなんてありません!!」 とうとうカリムは少しばかり涙目になってウルフウッドの襟元を掴みガクガクと揺らし始める。 ウルフウッドは冗談を言われて面白いくらい反応する彼女の様子に意地悪そうに苦笑。 そんな二人のやりとりを見ていたシャッハが、そろそろ良い塩梅とばかりに助け舟を出した。 「ウルフウッドさん、あまり騎士カリムを苛めないでください」 「“苛める”って人聞きの悪い、ただの軽い冗談やって。ほれカリム、少し落ち着きや」 「むう…」 「なら良いのですが。それでは立ち話もなんですからとりあえずお座りください」 「ああ、すまへんな」 顔を赤くして胸倉に掴みかかっていたカリムを宥めつつ、ウルフウッドは部屋の隅にパニッシャーを立てかけると、シャッハが引いた椅子に腰掛ける。 いい加減に機嫌を直したカリムも、シャッハが引いた椅子に腰を下ろし彼の正面に座る。 いつの間に用意したのか、シャッハがすかさず二人の前にカップを置いて紅茶を注いで差し出す、温かい湯気を立てて美味しそうな香りが部屋に満ちた。 カリムは“ありがとう”と小さく礼を言ってカップを傾けて少しだけ喉を潤す。 そしてカップを下ろすと共に息を整えてウルフウッドに視線を向けた。 「それでは、ウルフウッドさんの今後のお話をさせて頂きますね」 「ああ、頼むわ。っていうか、ワイはその辺の詳しい話よう分からんのやけどな」 カップに注がれた紅茶を品も何もあったものでない、といった感じに音を立てて飲みながらウルフウッドはそう漏らす。 この世界に来てしばらく経つ彼だが、そのほとんどは入院生活だった。 ミッドチルダや次元世界の言語や社会機構に対する軽いレクチャーを受けてある程度の常識は覚えてはいるが、自分がどのような処遇となるかはチンプンカンプンだった。 元いた星で受けた重傷の治療に見ず知らずの惑星の常識や言語を覚えるだけでも精一杯だったのだ、それは無理も無いことだろう。 「別にこれと言って難しい話はありませんよ。私が後見人となります、今日からはこの教会を自分の家だと思って生活してください」 「そうか……ありがとうな。こないな行き倒れがホンマ迷惑かけて」 先ほどまでカリムをからかっていた雰囲気を一変させて、ウルフウッドはすまなそうな顔で礼を言う。 何かとカリムに冗談を言う彼も、何も頼る者のない世界で救われた恩義には思うところがあるようだ。 彼らしくないしおらしい態度に、カリムは慌てて口を開いた。 「い、いえ! そんなにかしこまらないでください。寄る辺無い人を放ってなんておけません、私は当然の事をしたまでですから」 「そか……なんや、そんな事言っとったらホンマに教会のお偉いさんやな」 カリムの言葉にウルフウッドはまた冗談めいた返事で返した。 そんな態度に彼女は少しだけへそを曲げたように眉を歪める。 「むう…茶化さないでください」 「ああ~、そないな顔すなや。ただのジョークやがな」 「もう…」 ウルフウッドの苦笑にカリムもつられてカリムも思わず表情を綻ばせた。 △ 「よっこらせっと」 担いでいた十字架を壁に立てかけ、ウルフウッドは部屋の電灯のスイッチを入れた。 しばしの明滅の後に点いた電灯の光が部屋に満ちれば、随分とホコリ臭い部屋の全貌が現れる。 人が住まなくなってある程度経っているらしい部屋には最低限の家財道具以外にはなにもない。 ウルフウッドに宛がわれたその部屋は教会の中にある居住区画にある宿舎の一室、本来は修道士や司祭が使う為の部屋である。 「ふい~、ちょいと疲れたわ」 ウルフウッドは緊張感に欠ける声を漏らしながら備え付けのベッドに倒れこむ、少々ホコリが舞うが気にはしない。 退院の手続きや教会やこの宿舎に関する注意事項を説明されたりと色々と忙しい事が続いて、病み上がりの彼に少しばかり疲労を刻んでいた。 あとはゆっくり寝て休むだけだ、一応部屋に寝巻き用に着替えが用意されていたがそれに着替えることさえ面倒だ。 ウルフウッドはホコリ臭いベッドの上でも構わずそのまま睡眠の欲求に忠実に目蓋を閉じようとする。 だが、そこで睡眠とはまた違うもう一つの欲求が生まれた。 「そういえば、もう随分と吸っとらんな…」 タバコが吸いたい、それも無性に。 本来彼は結構なヘビースモーカーである、だが入院生活では病院の売店で買おうにも金が無く、カリムやシャッハに頼んでも彼女達は非喫煙者だった。 懐を探っても、無論の事だがタバコの感触はない。 数ヶ月間おあずけを喰らったヘビースモーカーの喫煙衝動は、自由の身となって抑えがたい程に強くなっていた。 「よし、買ってくるか」 ウルフウッドは気だるい気分を気合で捻じ伏せ、喫煙の願望の赴くままに立ち上がる。 事前に受けた説明で近所にスーパーや日用雑貨を取り扱う店がある事は知っている、金銭面の問題も既にクリア済みだ。 カリムから“もし必要な物があったらこれで買ってください”と幾らか渡されている。 ただ、何から何まで面倒を見られて金まで工面されるのは少しだけ彼の自尊心を傷つけていた。 「ああ~、しっかし……寝食世話されて、金まで貰っとるって……なんやヒモみたいやがな…」 ウルフウッドは少しぼやきながら立ち上がると、ボリボリと頭を掻きながら部屋を後にする。 魔人と恐れられたGUNG-HO-GUNS、ミカエルの眼の選りすぐりの殺し屋がヒモ同然の生活をする。 まるで悪い冗談みたいな話だ。 彼は部屋を後にすると、あらかじめ教えられていた教会の裏口に向かう。 裏口からの出入りに関して教会関係者用のカードキーを渡されているし、監視カメラや警備の人間にも彼のことは伝えられているらしいので障害は特にない。 頭に軽く叩き込んだ地図に従いウルフウッドは迷わず裏口へと向かう。 ちなみに“外出の際には一言声を掛けろ”とも言われていたが、面倒なのでこの際却下する。 そして突如、ウルフウッドは長年に渡ってその身に刻み込んだ鋭敏な戦闘感覚に訴えかけるものを感じた。 『なんや? これは……視線?』 “誰かに見られている”単なる思い込みではなく確実であるという確証を持ってウルフウッドはそう感じた。 どうも部屋を出たあたりから首筋に疼きを感じていたが、それが確信に変わる。 半生の多くを鉛弾が飛び交い血の海が広がる修羅場に置いた彼には、常識や理性の外にある本能の部分で敵を感じる野生的な勘が備わっていた。 その勘が告げる、誰かの視線を、自分を監視する者の意思を。 『誰や? 警備の人間か? いや、それはありえへん。それならわざわざコソコソ監視する必要はあらへん。なら誰が何の目的でワイを監視しとる?』 自分を見つめる謎の視線に思いを巡らせる。 だがこの世界にまだ疎い彼に推理可能な疑問ではない、あまりに未知の部分が多すぎる。 『まあ考えてもしゃあない、直接会って吐かせれば良いだけの話や』 考えるが先か動くが先か、ウルフウッドはその場で突然駆け出した。 病み上がりとは思えぬ俊足、監視者の目も当然追ってくるが、いかんせん突然のダッシュにペースを狂わされたのか瞬く間にまかれてしまう。 監視者の目をいくらか離したウルフウッドはそのまま感じた気配の所へと駆けていく。 まるで野生の狼が嗅覚を頼りに獲物を追うが如く、正確に迅速に距離を詰める。 そして発見したのは緑色の長髪が特徴的な白いスーツの青年。 骨の髄まで染み込んだ殺し屋の習性を最大限に生かして死角を突き足音を殺して近づく。相手はこちらの接近に気付かず無防備な背中を晒している。 そして手を伸ばせばすぐに相手に手が届くような距離まで近づくと、ウルフウッドは気迫を込めた、だが静かな声を発した。 「そこまでや」 ウルフウッドの言葉に青年は驚愕で身体をビクリと震わせる。 それはまるで大型の肉食獣の咆哮に貧弱な草食獣がたじろぐ様に、彼は振り返ることはおろか手を動かす事もできない。 背後から浴びせられるウルフウッドの気迫はそれほどまでに凄絶だった。 殺気だけで動けなくなる、そんな相手が存在する事を彼は生まれて初めて知る。 だが青年は気迫で身動きを封じられながらもウルフウッドに向かって口を開いた。 「一体……何を根拠にここへ? 足がつくようなモノは何もなかった筈ですが…」 青年がウルフウッドを監視するのに使っていたのは“無限の猟犬”と呼ばれる希少技能により魔力で形成した不可視の犬。 魔力はおろか物理的なセンサー類も簡単に察知する事はできない筈だ。 だがこの男、ニコラス・D・ウルフウッドは魔法も何も使わず自分を見つけ出した。 普通ならば考えられぬ事態である。 ウルフウッドは青年の問いに逡巡も淀みもなく、アッサリと答えた。 「そうやな、あえて言うなら勘や」 そう言い切るウルフウッドの言葉に青年は言葉を失った。 およそ戦いの場で対峙して、最も厄介なのはこの手あい。戦略・戦術の一切を捻じ伏せ、ただ闘争の神に愛されているが如くにじり寄る悪鬼。 そう形容してもおかしくはない程にウルフウッドの索敵は悪魔染みていた。 “下手な真似をすればただでは済まない”その認識に青年の背には自然と冷たい汗が流れる。 青年は耐え難い緊張が場を支配し、まるで白刃を喉元に突き付けられるような錯覚すら感じた。 そして静寂は唐突に破られる。 「あっ! ウルフウッドさん何してるんですかこんな所で!?」 空気を読まない黒衣の法衣を纏った金髪の美女が、不機嫌そうな顔でウルフウッドの下に駆けてくる。 彼女はウルフウッドに詰め寄ると、ビシっと指を彼の顔に突き付けた。 「もしかして一人で勝手に外出しようとしてましたね!? “一言声を掛けてください”って言ったじゃないですか!」 「ちょ、カリム…お前空気読めや……これ割り込める空気ちゃうやろ」 「いいえ、割り込ませてもらいます! そもそもあなたは私の言う事をもっとちゃんと…あら? ロッサじゃない? どうしたのこんな所で?」 カリムはプンスカ怒りながらウルフウッドに詰め寄りしっかりお説教をしようとするが、そばにいた義弟の存在にようやく気付いた。 「ああ…カリム……助かったよ」 「なんや、カリムこいつと知り合いなんか?」 「知り合いも何も、私の弟ですよ」 「ええっと…ヴェロッサ・アコースです……どうかよろしく」 緑色の長髪と白いスーツの青年は、ウルフウッドから発せられる気迫が消えてようやくそう自己紹介をする。 彼の名はヴェロッサ・アコース、カリムの義理の弟である管理局の査察官だ。 彼のその顔は魔人とまで呼ばれたGUNG-HOの気にあてられて幾らか蒼白に染まっていた。 「あら? そういえばなんであなたがここにいるのロッサ?」 何故か青い顔をして冷や汗を流している弟の様子を特に気にする風でもなく、カリムは尋ねた。 彼が教会に寄るという話は聞いていなかった、いつもは来る時に一言声をかけるのが普通なだけに当たり前の疑問ではある。 「いやね、カリムが後見人になったっていう身元不明の漂流者さんを一目見ようと…」 「…仕事をサボって遊びに来たと?」 「そうそう、サボって……って! シャッハ!?」 いつの間にか背後を取っていたのは聖王教会一の武闘派シスターことシャッハ・ヌエラ。 そして何故か満面の笑みでトンファー型双剣デバイス、ヴィンデルシャフトを構えていたりする。 「あ、あの…シャッハさん? 何故にそんなモノを持ってらっしゃるんで?」 「それはですね、仕事サボってやって来た査察官にオシオキする為ですよ♪」 シャッハは天使の如き笑みと共にその細い身体から先ほどウルフウッドが発していた気迫に勝るとも劣らぬ強烈な怒りのオーラが噴出してヴェロッサににじり寄る。 「ちょ! シャッハ落ち着いて…これには深い事情が…」 「問答無用!!!」 そして始まる折檻という名の拷問、この日から一週間ヴェロッサが全身打撲の激痛に耐える事となるが、それはまた別のお話。 閑話休題。 ウルフウッドはシャッハの意外な一面に目を丸くする。 「おお…シャッハって意外と容赦ないんやなぁ」 「まあ、彼女はロッサの教育係でしたから。じゃなかった! ウルフウッドさん、あなたのお説教も終わってませんよ!?」 「ちょ……勘弁したってぇな。タバコ買いに行こうとしただけやがな」 「言い訳はいけません!」 こっちもこっちで、プンスカと不機嫌そうに詰め寄ってお説教タイムを始めるカリム。 どうやらこのままでは今日中にタバコを買いに行くのは無理そうだ、そう思いながらウルフウッドはその胸中でヤレヤレと深く溜息を吐く。 ニコラス・D・ウルフウッドが聖王教会で迎えた初めての夜はなんとも騒がしいものになった。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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リリカル・ニコラス 第五話 「金の閃光とやさぐれ牧師」 ある晴れた日の午後、眩く輝く太陽の下、聖王教会の敷地の一角で洗濯物を干している最中だったウルフウッドとエリオは顔をつき合わせていた。 エリオの顔はやや朱に染まり、恥じらいの色を滲ませている。対するウルフウッドはニヤニヤと面白そうに笑みを浮かべていた。 「ところでエリオ“こいつ”を見てみぃ、どう思う?」 「凄く……大きいです」 「せやろ、でも“コレ”でかいだけやないんねんで?」 ウルフウッドは手にしたモノをエリオの顔に近づける、少年は気恥ずかしさの為にさらに顔を赤くした。 年のわりに早熟な少年は、その知性で“そういう物”をみだりに見る事が恥ずかしい事だと認識しているのだ。 だが対するウルフウッドはその反応を面白がって余計に少年にソレを見せ付ける。 「ふふ、見てみぃこの色」 「ちょ……ニコ兄恥ずかしいよ」 「何言うとんねん、お前かて男ならこういう“モノ”に興味くらいあるやろ」 「で、でも……」 頬を赤らめるエリオに手にした“モノ”を近づけるウルフウッド、その光景はどこかいやらしい。 いや、断っておくが別に二人はウホな事をしている訳ではない。 ウルフウッドが手にしたモノ、それは…… パンツである。 そう、それはパンツ、いわゆる人が股間に装着する下着類の通称、そして女性が用いる物は別名パンティーとも言う。 ウルフウッドが手にしたそれは実に大きく、そこに納まる尻肉が実に豊かである事を如実に語っている。 そして色ときたら、それこそ汚れを知らぬ乙女の柔肌の如き純白だった。 「いやぁ、このでかさ、こりゃ穿いとるのは相当なデカ尻やな。しかも色が白や! 色気ないにも程があるで~」 「ニコ兄……そんな、人のパ、パンツで遊ぶの良くないって」 「ああ、気にするな気にするな。どうせ孤児院のオバハンとかのや」 ウルフウッドはそう言いながら手にしたパンツに指を引っ掛けてクルクル回した。 彼のそんな様子を、エリオは恥ずかしそうな呆れたような顔で眺めている。 そんな時だった、何か生暖かい風が吹いたのは。 ウルフウッドは一瞬で背に冷や汗をかく。 まるで、かつての世界で出合った異形の怪物ナイブズの気迫や殺気を浴びたような悪寒を感じたのだ。 さながら修羅か羅刹か、少なくとも人に在らざる魔性の気配である。 背中に感じる気迫に、恐る恐る振り向けばそこには笑顔のカリム・グラシアが立っていた。 「ウルフウッドさん、誰が“色気のないデカ尻のオバハン”ですって?」 「へ? いや、その……」 カリムは満面の笑みだった、それこそ世の男が見れば誰しも魅了されるような女神の微笑み。 だがこめかみに浮かんだヒクヒクしている血管、背後から滲み出ている怒りのどす黒いオーラ、プルプル震える握り締められた拳。その全てが彼女が怒りの絶頂にいる事を示していた。 この尋常ならざるカリムの姿にウルフウッドの思考はすぐさま正解を導き出す。 「ああ……もしかして、コレお前のなんか?」 「ええ♪」 顔に貼り付けた満面の笑み崩さず、カリムは一歩ずつウルフウッドへと近づいていく。 無論その拳は硬く握り締められ、ゴキゴキと美女にはあるまじき豪快な音を鳴らしていた。 「ちょ! ま、待てや、落ち着いて話を……へぶあっ!」 弁明の暇もなく、素晴らしい角度と速度で入るカリムの左ストレート。 ウルフウッドの顔に女の細腕で繰り出されたパンチとは思えぬ程深く拳がめり込み、哀れにも醜く歪む。 もし彼女が男に生まれていたら、拳闘の世界に革新をもたらしたことは確実である。 そして、その強力な拳打の威力にウルフウッドの長身が吹っ飛ぶ。 だが事はそれだけに終わらず、カリムはさながら戦い慣れた格闘家の如く彼の身体の上にその豊満な美尻を乗せて跨った。 「問答無用、あなたが泣くまで殴るの止めません!」 「あべしぃっ!」 メメタァ! と拳がめり込む音と共にマウントポジションのカリムの拳が無慈悲にもウルフウッドへと降り注ぐ。 無論、彼に抵抗の術などなくただひたすら美女の拳を顔面で味わうより他は無い。 後はもうお決まりのコンボ地獄だった。 数分後…… 「やるやないけ、くれたるわ合格点……でもまだまだやで……泣き虫リヴィオ……駆け上れ……これからも」 「ニコ兄~! 逝っちゃダメだよ、そっち逝ったら帰ってこれないって!」 散々喰らったカリムの鉄拳で、ウルフウッドはどこか懐かしい世界に逝って弟分に言い残していた。 そんな彼を必至にエリオがこっち側に引き止めようと身体を揺すっている。 流石にやりすぎたかと、カリムは少し申し訳無さそうな顔でそれを見ていた。 「えっと……ちょっとやりすぎちゃったかしら?」 「そうですね、せめて30発目くらいで止めておけば良かったかもしれません」 近接戦闘に特化した近代ベルカ式魔法の使い手であるシャッハは、その鍛え抜かれた動体視力でカリムのパンチを指折りながらカウントした。 「うう……だ、だってしょうがないじゃない……ウルフウッドさんが私のパ、パンツを……」 「ええ、まさかあの方が騎士カリムの下着をいやらしく淫蕩な目で視姦した上にその魔手で弄び、まるで極上の料理にするが如く咀嚼し味を堪能するなんて」 シャッハはわざとらしくかぶりを振って、ある事ない事ありえない話を、さも真実であるかの如く語る。 彼女のこの言葉に今まで死人のように倒れていたウルフウッドが蘇生を果たした。 「んな事してへんがな!」 「あら、もう起きられたんですか?」 「おかげさんで……あやうく、どっか懐かしい場所に逝きかけたで……」 ウルフウッドは殴られた顔をさすりながら、先ほどまで見ていた懐かしい涅槃の光景や弟分の顔に複雑な表情をする。 これにカリムはすまなそうに俯いて頭を下げた。 「あ、えっと……すいません……」 「いや、まあええねんけどな。ってか、なんやねん、お前らなんか用があって来たんか? まさかワイをボコりにきた訳とちゃうやろ」 「ああ! そうでした、実はお願いがあって来たんです」 ウルフウッドの言葉に、カリムは何か思い出したのかポムと手を叩いて声を上げた。 「お願い?」 「ええ、実はロッサがもうすぐこちらに来るのですが、なんでも今日は荷物が多いらしいので迎えに行って欲しいんです。私とシャッハはこれから少し仕事があるので、ウルフウッドさんがお暇ならお願いしたいんですが」 カリムはそう言うと、手にしたメモ用紙をウルフウッドに手渡す。 そこには待ち合わせ場所と思わしき場所の地図が記されていた。 「ん、別にええで。車とかあったら借りてええか?」 「あれ? ウルフウッドさん運転できるんですか?」 「これでも自信はあるねんで~、任しとき」 ウルフウッドは自信満々といった様子でそう言うと、胸板をトンと小さく叩く。 そしてシャッハから車のキーを受け取るとエリオに残りの洗濯物を頼んで歩いていった。 エリオは彼にいってらっしゃいと笑顔で見送る。しかし、彼の背中が消えたところで少年はふと、ある事実に気付いた。 「あれ? そういえば……」 「ん? どうしたんですかエリオ君」 「騎士カリム、ニコ兄って車の免許持ってたんですか?」 「ええっと……あれ?」 十分後、交通法規とか社会常識を超越した運転技術と速度でミッドチルダの道路を暴走祭りする一台の乗用車がテレビ速報で流れた。 そしてその乗用車は見事に警察の追跡を振り切って失踪し、同時にウルフウッドがヘトヘトになったヴェロッサを連れて帰ってきた。 彼の“なんか知らんけどポリに追いかけられたで、まあ全力で振り切ったったけどな♪”という言葉にカリムの鉄拳が再び唸りを上げたのは言うまでも無い。 △ 「ああ、しっかし車運転するのに免許とか必要なんやなぁ」 ウルフウッドは思わずそう漏らした。 彼が以前に住んでいた世界、乾いた荒野の惑星ノーマンズランドでは未だに車両運転に対する免許所持義務というものが浸透してはいない。 そもそも、交通法規が必要になるような道路なんて結構な大都市でもなければないのだから無理も無い事だ。 何より、幼少時より暗殺結社で訓練していたウルフウッドが教習所などと言う場所に通う暇などある訳もなく、彼の運転技術はミカエルの眼で師に叩き込まれたものだ。 しかしいくら運転できるからと言っても、無免許のままでは運転など許可されない。ましてや交通法規を無視して爆走するならなおさらだ。 故に今ウルフウッドはここへ通わなければならない…… 「でも……だからってこれはちと辛いで……」 そんな事を漏らすウルフウッドの周囲には彼より遥かに若い(少なくとも外見年齢が)な少年少女の姿がちらほら。 ここは何を隠そうミッドの交通法規を学び運転技術を修得する為の場所、自動車免許教習所である。 しかし正直な話、平均年齢16~20歳くらいの少年少女の中に外見年齢30代は超えているオッサンが混じっているのはかなり辛いものがあった。 ニコラス・D・ウルフウッド、周囲から浮きまくりである。 回りとのギャップに少しばかり驚きつつ、ちらりと隣りを見ればそこには金髪の美少女の姿があった。 年の頃は十代半ばだろう、きっと大きくなったら多くの男を魅了して止まない美女になるのは確実だ。 (綺麗なもんやなぁ、こりゃ将来有望やで) しばし少女を横目に眺めていると、同時に時計が目に入る。もうじき講義の始まる時間だった。 するとウルフウッドの隣りに座った少女は何故かソワソワと慌て始める。 なにやらカバンを引っくり返したり、ペンケースの中を引っ掻き回していた。 どうやらペンか何かをなくした様だ。 (なんやそそっかしい子やな……ってか、足元に落ちてんのがソレとちゃうんか?) ウルフウッドが視線を下に移せば、そこには少女の物らしきボールペンが一つ落ちていた。 きっと彼女はこれを探して慌てふためいているのだろう。 正直もう少し少女がアタフタする所を眺めていたかったが、流石にいつまでも放置しているのは可哀想と思い、ウルフウッドは床の上に落ちたペンを拾い上げた。 「ホレ、落としたのコレとちゃうか?」 「はにゃ!?」 少女の白く柔らかそうな頬を、横合いからプニっとペンの尻で突っつく。 思わず素っ頓狂な声を上げて驚く少女はまるで小猫のようで大変可愛らしいものだった。 振り返った少女はウルフウッドの持ったソレを見るなり、その赤い眼を丸くする。 「あ! コレ私の……」 「下に落ちとったで」 「あ、ありがとうございます」 「いやいや、まあ気にせんでええって」 頭を下げて礼を言う少女にウルフウッドが軽く返すと、そこで教室に講師の先生が訪れた。 講義が始まり、自然とそこで会話は中断されてしまう。 少女との関係はそこで終わると思ったが、講義が終わった時に今度は彼女の方から彼に声をかけてきた。 「あ、あの……」 「ん? なんや?」 「その……さっきはありがとうございました」 「ああ、んな事やったら気にせんでええって」 本当に小さな事だったというのに礼儀正しく感謝の言葉を述べる少女に感心しつつ、ウルフウッドは間近で見るその容姿の美しさと若さに改めて感服した。 彼のその眼差しに、少女は不思議そうに首を傾げる。 「あの何か?」 「いやぁ、それにしても若いなぁっと思ってな。そないな年で車とか乗るんか?」 「はい、仕事の時にも役に立ちますし」 「仕事!? その年で仕事しとるんか?」 少女の言葉にウルフウッドは驚きを隠せずに思わず大きな声で驚愕を露にした。 就業年齢がかつて自分のいた世界とはかなり差があるとは聞いていたが、実際に目にすればやはり驚きを感じずにはいられない。 「ええ、一応管理局の執務官なんですよ」 「はぁ~、大したもんやなぁ」 管理局といえば、カリムも席を置いているというこの世界の警察のようなモノらしい。 そして執務官という名前から察するに事件の捜査などをする仕事だろう。 少女の温和そうな外見からは想像もできない役職に、ウルフウッドは心底驚嘆した。 彼がそんな顔をしていると、ふと少女がなにか思い出したかのように口を開く。 「あ! そういえば自己紹介がまだでしたね、私はフェイト・T・ハラオウンって言います」 「おお、こりゃ語丁寧に。ワイはニコラス・D・ウルフウッドっちゅうもんや、よろしゅうな」 軽く握手を交わし、こうして二人は互いの自己紹介を終えた。 △ 「ほんじゃまぁ、ちゃっちゃと洗うか」 「うん」 「はぁ~い」 「りょうかいで~す」 時刻は昼時、孤児院の子供達が胃袋を満杯にして昼食を終えて後に残った大量の食器類をエリオを含む数人の子供とウルフウッドは流し台で洗い始めた。 子供の人数が多い分食器の量も半端ではないが、こうして何人かで協力すれば実にスムーズに運ぶものだ。 山のように積まれていた食器も、瞬く間に汚れを洗い落とされて綺麗になっていく。 子供達と彼らの兄貴分との共同作業、自然とその最中には他愛ない会話が生まれる。 最初に口を開いたのは孤児院の子供の中でも特にウルフウッドに懐いているエリオだった。 「ねえニコ兄、免許の方はどう? 順調?」 「ああ、もう実技はばっちりや。元々運転はしとったしな」 「そうなんだ、じゃあもうすぐ買い物も楽になるね」 「おお、教習所で知り合った子ももうすぐ取るみたいやしなぁ」 「へぇ、どんな人?」 「ああ、金髪の綺麗な子で……」 ウルフウッドがそう言葉を繋ごうとした時だった。 彼の後ろに誰かの気配が近づいてくる感覚がすると同時に、人の足音がする。 ウルフウッドはドアノブを回す音と、床を軋ませる間隔、そして気配で相手を特定すると背中越しに声をかけた。 「おう、シャッハかいな」 「よく分かりましたね、後ろに目でもついてるんですか?」 「勘や勘、それでなんぞ用でもあるんか?」 ウルフウッドは手にした食器を片しながら、首だけくるりと振り返る。 そこには案の定彼が予測した通りの人物、シャッハ・ヌエラの姿があった。 だがそこにいたのは彼女だけではない。そこにはつい最近ウルフウッドと良く顔を合わせるようになった一人の少女がいた。 管理局執務官の黒い制服に身を包み、その漆黒に似合う輝く艶やかな金髪とルビーのような赤い瞳の美少女。 その美しい紅色の眼とウルフウッドの視線が中空で交錯し、二人はキョトンとした顔になる。 ウルフウッドの隣にいたエリオは少女の顔を見るや、驚きと共に彼女の名を自然と漏らした。 「あ! フェイトさん」 「ええ、実はこちらのテスタロッサ執務官という方がエリオ君の面会にいらっしゃったので、ここまで案内したんですが……って、お二人ともどうなさったんですか?」 意味深に視線を交わして何ともいえないと言った表情になっていた二人の様子に、シャッハは首を傾げて尋ねる。 「いや、まあなんちゅうか……なあ?」 「はは……奇遇ですね」 ウルフウッドとフェイトは、互いに顔を見合わせて苦笑する。 二人の浮かべた表情の意味を図りかね、シャッハとエリオは不思議そうに首をかしげていた。 本来ある筈であった運命とある筈の無かった運命が交錯し、さながら神の悪戯か、ここにまたこうして奇妙な出会いを紡ぎだした。 続く。 オマケのカリムさん。 聖王教会本部の広大な敷地の中、にカリム・グラシアが日々を過ごす彼女の家は存在する。 そして時刻は深夜、普段は明かりの消えている筈の彼女の私室にはまだ煌々と蛍光灯の光が灯っていた。 部屋の主であるカリムが夜分遅くまでナニをしているかと思えば、彼女はパソコンの画面を食い入るように眺めていた。 「ヤダ……こ、こんな破廉恥な……」 頬を羞恥で染め上げて、顔を手で隠しながら金髪の美女はパソコンの画面をおっかなびっくり見つめている。 いや! 別にいやらしい画像を見ていたとかそんな理由ではない、念のために。 彼女が見ているのはとある女性もの衣服のショップホームページである。 ちなみに項目は下着。 それも“アダルト”や“色気”や“男を刺激”などと謳い文句の書かれた、とても聖職者の見るモノとは思えない感じだった。 「こ、これならもう“オバハン”だの“色気がない”だの言われないわよ……ね?」 恥ずかしそうに頬を染めながら、カリムは誰にでもなく一人そう呟いた。 その後、彼女が“購入ボタン”をクリックしたかどうかは神のみぞ知るところである。 前へ 目次へ 次へ
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リリカル・ニコラス 第二話「パニッシャー」 青い空と輝く白い雲の下に男はいた。 彼は入院患者が着るようなパジャマを着ており、全身のあちこちに包帯を巻かれている。 傍らに置かれた松葉杖と相まって、大怪我をしたらしいと容易く連想させる。 彼はボンヤリとした表情で、どこか心を吸い込むような青い空をただ静かに眺めていた。 男の名はニコラス・D・ウルフウッド。 かつてまったく別の世界で超異常殺人能力集団GUNG-HO-GUNSとして、ミカエルの眼の殺し屋として、そして人間台風と呼ばれた優しいガンマンの朋友として生きた男である。 ウルフウッドは呆けたような顔で青空を見上げながら、ふと口を開いた。 「ああ、調子狂うで…相変わらずの青さや…」 青空を仰ぎながら火の消えた吸いかけのしけったタバコを咥えてウルフウッドはそう呟いた。 場所は聖王教会に属する病院の屋上、空はどこまでも青く雲は白く輝いている。その光景に、彼はかつての世界で最後に見た空を否応無く思い出した。 「しっかし、どこの世界でも空は青いんやなぁ。しかも“魔法の世界”て……悪い冗談も良いとこやで……実際…」 ウルフウッドはこの世界の人間ではない。 彼が生まれ育ったのは暴力そして銃がものを言う世界。プラントに縋り、乾いた砂の上で生きることを強いられた惑星“ノーマンズランド”。 だが彼は今ここにいる、魔法というものが存在する秩序のある世界、ミッドチルダに。 最初は信じられなかった。 なにせ昨日まで緑も水も無く、手に銃を取り鉛弾の雨を掻い潜るような世界にいたというのに、いきなり平和と秩序のある世界に飛ばされたのだ。 その上“魔法”なんてメルヘンなものまである、彼にとっては悪い冗談以外の何物でもなかった。 「しっかし……なんでワイはこんな場所におんねんやろな…」 何故こんな所に飛ばされたか、詳しい理屈や理由など彼に知る由など無かった。 まあ、検討くらいはついていたが。 「やっぱアレか、トンガリやナイブズの力の影響なんか? ったく…面倒な奴っちゃで、ホンマ…」 あの地での最後の記憶は定かではないが、恐らくこの次元間移動は自立型プラントであるヴァッシュ・ザ・スタンピードやナイブズの影響であると簡単に推測は出来た。 彼らの力以外にこんな天変地異のような現象は起こりえない。 ウルフウッドはもう一度深く溜息を吐いて空を見上げる、脳裏に駆けるのは元いた世界に残してきた友と弟分の二人。 (トンガリ…リヴィオ……すまんわ、しばらくそっちに戻れそうもあらへん…) ナイブズやレガート達を相手に、きっと壮絶な戦いの中へと向かったであろう仲間を思ってウルフウッドは沈痛な面持ちで瞑目。 傷ついた身体に頼る当ても無い漂流者である彼に今できることはそれくらいだった。 そうしていると、突然ドアを開けて誰かが屋上にやって来た。振り返るまでもなく彼にはそれが誰か理解できる。 毎日顔を合わせていれば嫌でも気配を覚えるというものだ。 「あ! ウルフウッドさん、またここにいたんですか?」 「お前も飽きずにようこんな男に会いにくるなぁ、カリム」 ウルフウッドは、口に咥えたシケモクをピコピコと動かしながら自分を見舞いに来た金髪の美女に向かって呆れたような声をかけた。 彼女はミッドチルダに流れ着き、満身創痍で虫の息だったウルフウッドを助けた命の恩人、聖王教会騎士であるカリム・グラシア。 カリムはウルフウッドを助けてからというもの彼の容態を気にかけて、時間を見ては見舞いに来ていた。二人は今ではもうすっかり顔馴染みである。 ウルフウッドは火のないタバコを口先で揺らしながら、馴染みの顔に軽く会釈した。 そして、カリムはウルフウッドの口の先に咥えられたそれを見るとツカツカと彼に近づいて、むすっとした表情を見せると彼の咥えた煙草を手で奪う。 「病院で喫煙なんて以ての外です!」 整った眉をほんの少し歪めてそう言う彼女の言葉に、ウルフウッドは思わず昔似たような言葉を言われた事を思い出した。 「火ィは点けてないねんけどな」 ウルフウッドは苦笑しながらそう答える。彼のその様子にカリムはまた一段と表情を険しくした。 「もう! 全然反省してませんね? 一応ケガ人なんですから少しは自分の身体の事を考えてください!!」 「ああ…まあ、そう怒るなや……」 ズイと顔を近づけて注意するカリムの気迫に押されてウルフウッドは顔を引きつらせて二・三歩引いた。普段は大人しい印象のあるカリムだが怒るとそれなりに恐い。 そんなウルフウッドとカリムのやりとりに付き添って来ていた尼僧は思わず苦笑した。 「まったく……また騎士カリムに怒られているんですか、ウルフウッドさん?」 「おう、シャッハかいな。ちょい助けてくれや? 恐い姉ちゃんに捕まっとんねん」 ウルフウッドに声をかけたのは、カリムの秘書である聖王教会のシスター、シャッハ。彼は丁度良いところに来たシャッハに、助け舟を求めて手を振る。 そんなウルフウッドの言葉に、カリムは顔を真っ赤にして詰め寄った。まあうら若い美女が“恐い姉ちゃん”呼ばわりされては無理も無い。 「ちょ! 誰が“恐い”ですか!?」 「そんな息巻くなや、それが恐いっちゅうねん」 「またそんな事を言って! そもそもあなたがですね!」 カリムは澄んだ声を荒げてウルフウッドの胸倉を掴むと、彼の身体をガクンガクンと揺さぶった。 彼女の乙女心は大層傷ついているようで、ケガ人のウルフウッドが相手だと言うのに手加減を忘れている。 「イタタっ! ちょ! 傷開く!! シャッハ、助けてくれや~!!」 大いに身体を揺さぶられたウルフウッドは、揺れる度に疼く全身に刻まれた傷の痛みに涙目になってシャッハに助けを求めた。 彼女はヤレヤレと言った風情で苦笑いし、お手上げのポーズを取る。 「お手上げです、あなたの発言にも問題ありますから」 「そう言わんといてえな、いい加減にワイが逝ってまうわ…」 「ヤレヤレですね……騎士カリム、そろそろ本題に移っては?」 シャッハの言葉にカリムはようやく我に返り、ウルフウッドを締め上げていた手を離すと、オホンと小さく咳をして気を取り直した。 「そ、そうですね…」 「ったく、あやうく教会の女に殺されるとこやったで…」 「そんな事を言うから騎士カリムが怒るんですよ?」 「ああ、ハイハイ……分かったわ、今度から気ィつける。 で、ワイになんか用なんか? さっき“本題”がどうこう言うてたやろ?」 そのウルフウッドの言葉にシャッハとカリムは顔を見合わせる。それはまるで、今までの騒がしくも和やかだった雰囲気に少し影が落ちたようだった。 「その……ここではしにくい話ですにで、病室で良いですか?」 「ああ、別に構へんで。ほんなら行こか」 カリムにそう促され、ウルフウッドは松葉杖を付きながら屋上の階段入り口へと向かった。 △ つんと鼻を突く消毒液の匂いにある程度人が寝起きしている事を感じさせるすえた体臭が混じり、ウルフウッドの入院している病室に独特の匂いを漂わせていた。 まず部屋に一番最初に入ったシャッハが窓を開けて、清涼とした空気を病室に迎える。 少しばかり淀んだ空気が入れ替えられ、たちまち外から爽やかさが入り込む。涼やかで気持ちの良い風を感じつつウルフウッドもまた病室へと足を踏み入れた。 だがその風のもたらす気持ちの良さは一瞬で霧散した、部屋の中に鎮座するある“モノ”の為に。 「これ……どないしたんや?」 目を怪訝に細め、思わずトーンが一つ下がった声でウルフウッドはそう尋ねた。 それを見れば嫌でも血と硝煙の匂いにまみれた殺しの記憶が蘇る、口中には図らずもかつて嫌と言うほど味わった血の味が蘇る。 病室の中央、運ぶ為に使われた台車の上に鎮座する半壊した十字架。 それはかつて彼の手により鉄火を振るった最強の個人兵装。名を“パニッシャー”処刑人の名を冠せられた十字架型重火器。 そして銃はもう一丁、彼の愛用していた拳銃も十字架型の兵器の横に鎮座していた。 この二つの武器はそれこそ己が手足と感じられるほどに長い時をウルフウッドと共に死と破壊を行使してきた得物である。 自然、ウルフウッドの心には複雑なものが宿り表情はひどく曇った。 彼のその様子にカリムもまた表情を強張らせながらも言葉を繋げる。 「あなたが倒れていた場所で見つけました。拳銃はあなたの服に…」 「そうなんか…」 「では、そろそろお聞きしてもよろしいですか? あなたの事を…」 一命を取り留めてからというもの、今の今までウルフウッドは自分の身の上をほとんど話してはいない。 彼の負った傷の深さもあって、身体に負担をかけぬ為にも事情の説明は先送りにされていた。 今まではただの漂流者の民間人であったが、容態が落ち着きコレが見つかってはそうも言ってはいられない。 この世界ではこんな物騒な代物はご法度も良いところだった。 そうして“ナニから話そうか”とウルフウッドが思案して少しばかり黙っていると、カリムがおもむろに口を開いた。 「あなたを手術した医師が驚いていました……その…あなたの身体の傷と…施された数々の施術に…」 カリムは俯き途切れ途切れになりながらそう言った、シャッハもまた顔を伏せて複雑そうな表情になる。 ウルフウッドの身体を治療した医師は彼の身体に刻まれたあまりに凄惨な傷とまともな人間ならばありえない改造処置に言葉を失った。 肉体に無数に撃ち込まれた数十発の銃弾、常人なら数度死んで有り余るほどに投与された代謝促進剤。 管理世界なら、いや、正常な精神を持つ人間ならばあのような処置を人にしはしない。 カリムのその言葉に、自分がどういう存在であるか既にある程度知られたと察したウルフウッドは自分と言う存在の本性を告白し始めた。 「そうやなぁ…ほんなら、まぁ……ワイが孤児院入ったあたりから話そか…」 身寄りの無い、何も持たないどこにでもいる孤児だった。 そして彼は辺境の孤児院に受け入れられた、そこは楽園だった。ドブ泥にまみれずとも、奪わず逃げ回らず生きられる世界。 それがある日終わった。 「ミカエルの眼?」 「ああ……殺し屋の…寄りあいみたいなもんや…」 教会からの誘いと言う隠れ蓑で引き入れられた殺人集団、暗殺結社“死天使(ミカエル)の眼”。 そこであらゆる殺しの手管を血と肉と心に深く深く刻まれ……幼く脆弱な子供から洗練された殺人者へと変えられた。 そして更なる戦闘存在へと昇華させる為に行われた改造処置。 治癒機能・骨格強度・筋力の増強・感覚神経の鋭敏化、戦う為の殺す為の性能を追求され身体を異形へと変えられた。 「代謝機能の強制促進のせいで年をとるのも早い……昔の知り合いに会っても、ワイやと気付くかどうか…」 カリムは絶句した。 いちおうは管理局に籍を置く彼女ではあるが、直に犯罪や血生臭い事象に対峙した経験は皆無である。 そんな彼女に彼の話す半生はあまりに壮絶が過ぎた。 カリムは言葉を失いながら自身の軽率な行為を恥じた。 ウルフウッドの瞳は忘れる事など叶わぬ古傷を抉られて、形容し難い悲しみに満ちていた。 殺人・苦痛・絶望・悲哀、そして濃密な血と硝煙の匂い。それら全ての過去と言う名の鎖が肉体と同化し、彼を縛り付けている。 そこに触れれば鮮血を滴らせ、骨や筋まで剥ぎ取っていく程に…… それは他人が安易に穿り返して良いモノではない、だが自分はそこに軽率にも触れてしまった。 深い後悔の念と罪悪感がカリムの胸中を駆けた。 「すいません……そのようなお話を無理矢理聞いてしまって…」 「ええって。別に気にしてなんかあらへん」 「でも…」 「だから、ええって。どうせその内話さなあかん事やったろ? そないな事いちいち気にすんなや」 カリムの哀しそうな表情にウルフウッドは僅かに悲しみの滲んだ笑顔でそう言うと、彼女の頭をそっと撫でた。 それは、病人と見舞い客との絵にしては妙な光景だった。 「そんでワイはどうなんねや? もしかしてお縄になったりせえへんのか?」 「そんな事ありませんよ。というか…どうしてそうなるんですか?」 「いや、この辺りはああいう物騒なモン持っとるんはご法度なんやろ? ワイめっちゃ違法やん」 「いいえ、そもそも管理外世界に対しては過度の干渉はしないのが常識ですから。そんな心配は無用です。でもそれらの武器はちょっと…」 カリムはそう言いながら巨大な十字架型の重火器と拳銃に目を移す。 ウルフウッドの身柄が法的に罰せられる事は無い、だが彼の持つ最強の個人兵装は別だ。 質量兵器、つまるところ通常火器全般が法的に禁止されている昨今、この馬鹿げた得物はあまりに違法な存在だった。 「そうか…まあ、しゃあないやろな……」 ウルフウッドは苦笑しながら長年愛用した鋼鉄の十字架を軽く手で叩いた。 中身に大量の弾薬を仕込み、多重硬質金属装甲で覆われた十字架銃は鈍い金属音の残響を響かせる。 そして、何故か彼の顔にはどこか寂しげなモノが張り付いていた。 「……」 「ウルフウッドさん、どうなさったんですか?」 「いや……おかしな話なんやけどなぁ…コイツはもう二度と見たぁないって思っとったんや、正味の話。でもな、おかしなもんで…いざ別れるとなると少し寂しいなんて思うとる…」 師に手渡され、殺人と破壊に従事した禍々しい鋼鉄の十字架。 疎ましく思いながらも、土壇場ではいつも信頼してきた戦場の相棒だった。 ウルフウッドはこの歪な兵器に、どこか自分の半生と歩んだ生き方を重ね合わせてしまう。 「まあ…この生き方もワイの人生の一部や……ただ恥るんは…間違ってんのかもしれへんな」 「ウルフウッドさん……」 「でもまあ、ご法度のシロモンやったら仕方あらへんわな。まあスクラップにでもなんでもしたってや」 ウルフウッドはそう言いながら苦笑した。 カリムは思う。 これは単なる武器だ、破壊以外にもたらすものなどありはしない違法な武器、それは変わらない事実だ。 だが、ウルフウッドにとっては違う。この鋼十字には彼のその半生が刻み込まれている。 これ以上彼から奪って良いのか? 理不尽に蹂躙された半生を送り、見ず知らずの場所に飛ばされて、誰も頼る者のいない彼からさらに奪って良いのか? カリムは一瞬そう思案すると、一つの結論を導き出した。 「ウルフウッドさん、もし良ければこれをあなたにお返しします」 「はぁ!? いや、それ無理やろ?」 「この武器の存在を知っているのは私とシャッハだけですから。口外しなければ大丈夫です」 カリムはそう言いながらシャッハに視線を向ける。 その瞳に込められた意思を感じたのか、シャッハは即座に反論するのを諦めた。 管理局員として、法に従う者としては間違った考えかもしれなかったが、カリムの想いにもまた間違ってはいないと感じたから。 「そうですね、使わなければただの大きな十字架ですし」 「と、言う訳です」 了承の意思を込めたシャッハの返事に、カリムはちょっと悪戯っぽくウインクして微笑んだ。 「そうか。堪忍なぁ、迷惑かけるわ」 ウルフウッドは二人に心からの感謝を込めて礼を言う。 忌まわしい記憶かもしれないが、自分の分身とも言うべきこの長大な武器を捨てずに済んだ事が嬉しかった。 「でも流石にこのまま運ぶんは無理やろ。なんか包む布とかあらへんか? 前はそうして運んどったんやけど」 「それでしたら病院からシーツでも借りましょう」 「あんがとなシャッハ、あと縛るんでベルトとかもくれや……ん?」 「どうしました?」 十字架と拳銃を懐かしげに眺めていたウルフウッドがある事実に気付いた。 彼の記憶、あの砂の星で演じた死闘、最後の戦いの中で自分の装備はまだあった筈だった。 「なあ、ワイの荷物ってこんだけやったんか?」 「え? ええ、確かそれだけでしたよ。何か足りないのですか?」 「ああ、まあな…」 (確か拳銃がもう一丁と薬があと一回分はあった筈やけど……もしかして向こうに置いて来たんか?) 自分が持っていた装備には他にも45口径の愛用の拳銃がもう一丁と回復用代謝促進剤があった筈なのだが、それは影も形も無かったらしい。 あるとしたらやはり故郷に残してきたのだろう。 (置いて来たんやったら有効に使って欲しいわ……無駄にせなよトンガリ、リヴィオ) 遥か彼方、まったく別に次元の星で、ウルフウッドの胸に去来したその願いは叶う事となる。 ダブルファングの二つ名を持つ弟分はウルフウッドへの義理と矜持を貫き通し、彼の残した装備の助けを借りて最強と呼ばれた13番(ロストナンバー)を倒したのだ。 それは、今の彼には知る由も無いことだった。 続く。 アナザーワールド 砂の惑星ノーマンズランド、最後の七都市オクトヴァーンでその男は武器の整備をしていた。 愛用の二丁銃“ダブルファング”にかつての兄貴分が残した拳銃を。 すると、唐突に彼は鼻にむず痒いような感覚を覚えた。 「ヘックション!!!!」 「おいおい、凄いくしゃみだな? 大丈夫か?」 「いえ! 大丈夫ですよヴァッシュさん」 「誰か噂でもしてんのかねぇ」 「ええ、案外ウルフウッドさんかもしれませんね……」 「ああ、ありえるな。あいつならどこかで生きてて、存外そういう事言ってるかもしれない」 「そうですね」 この星に住む人間の命運を賭けたナイブズとの戦いまであと僅か、ダブルファングことリヴィオはウルフウッドの残した得物を手に、彼への思いを馳せた。 (見ててくれよニコ兄、あんたの分も俺はこの星の人を救うよ) 前へ 目次へ 次へ
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→参照 →参照 出典:トライガン 関西弁で話す牧師、 巨大十字架を模した武器はマシンガンやバズーカーになる。 ミサミサスレでは主に3時スレの撤退を10レス分だけ支援してくれる人。 しかし3時スレは終了予想時刻がしばしば延びて、 Meによる中間終了時間予想にげんなりする所を見つけられている。 赤い車と対極にあるのだがあまり知られてはいない。 キャラがキャラなので死亡遊戯での成功は誰もが褒めざるを得ない。 通称:ウル兄、ニコ兄、牧師、神父。
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リリカル・ニコラス テロ牧師の聖夜 「ああ、そういや明日はクリスマスやったな」 夕食用のジャガイモの皮をむきながら、ウルフウッドはふと口から漏らした。 誰に言うでもなく、ただ思い出した事象が自然と口から零れた、そんな呟き。 だが彼の隣りにはそんな呟きを聞き届ける者が一人佇んでいた。 「ニコ兄、クリスマスって何?」 逆立った赤毛の少年、エリオ・モンディアルは皮むきを手伝いつつ首を傾げて彼に疑問符を投げかける。 ウルフウッドは隣にいた少年にふと目をやると、一度脳裏に情報を整理した。 「ああ、クリスマスっちゅうのは、ああ、なんつうか……ホーム(地球)の、なんちゅうか、祝いの日みたいなもんや」 「お祝い?」 「おお、12月24日にもみの木飾ったり料理を食ったりプレゼントを用意したり、それと赤い服を着たサンタとかな、まあ色々や」 「サンタ?」 「クリスマスにはそういう人が赤い服を着てプレゼントを配るんや」 「へえ」 その言葉を聞き、内容を胸中で反芻しながらエリオは視線を時計に移した。 時刻はもうじき18時に差し掛かるという頃合、まだ“彼女”に会うには少しは余裕があるだろう。 (騎士カリム……お時間あれば良いけど) △ 12月24日クリスマス当日、買い物から孤児院へと帰ってきたウルフウッドは目を丸くした。 「なんや……これ?」 異様・異質・異常、そう形容して余りある光景がそこには広がっていた。 まず壁やら床にきったない絵が描いてある、明らかに子供のラクガキ。 ラクガキの中にはこれまた汚い字で“メリークリスマス”と書いてある。 そして部屋やら廊下やらのあちこちには盆栽や鉢植えが置かれてた、それもただの木ではない。 色とりどりのモールや飾りを付けられて派手な姿へと変わっている。 しかし正直、松の盆栽にカラーモールはあまりにカオスだった。 その光景に唖然としていると、唐突に銃声にも似た乾いた音が鳴り響いた。 「「「「メリークリスマス!」」」」 乾いた響き、クラッカーの音と共に紙の破片と小さな飾りが飛び散る。 そして、それぞれに赤い服を着た子供達と見慣れた騎士やシスターが現れた。 「お前ら……何しとるんや?」 「もう、何言ってるんですか? 今日はクリスマスという日らしいじゃないですか。エリオ君に聞いたんです」 「と、言うわけで色々と即興でパーティーの容易をしたんです」 サンタ風、を意識したのだろうか、赤い衣装に身を包んだシャッハとカリムが彼の前に立つ。 少しスカートの丈が短めな為か、カリムは恥ずかしそうにモジモジと裾に手をやり頬を赤らめている。 だがウルフウッドの目を引いたのは二人が手にした包みだった。 「それ、もしかしてプレゼントか?」 「ええ、ウルフウッドさんがお気に召すかどうかは分かりませんが」 「色々考えて容易したんですよ?」 魅力的ともいえる笑みを宿した二人の美女はそう言うと、ズイと彼の前に歩み寄り手にした包みを差し出した。 「さあさあ、では受け取ってください」 「おお、あんがとさん……でもなぁ……」 「“でも”、なんですか?」 「クリスマスは子供にプレゼント上げる日ぃやねんで?」 二つの包みを手に受け取りながら、ウルフウッドは苦笑してそう漏らした。 「そ、そうなんですか?」 「おう、まあな」 「子供達へのプレゼントですか……では“騎士カリムのスカートめくり権”というのはどうでしょう?」 意地悪そうな笑みを浮かべ、明らかに冗談と分かるトンチキな事を吐くシャッハ。 だが当のカリム本人は冗談やからかいに不慣れなのか天然なのか、彼女の言葉を本気にして慌てふためいた。 「ちょ! シャッハ!? ス、スカートめくり!?」 「おう、それ面白そうやな」 「でしょう? どうせ白パンですし」 「そうやな、色気ないしな」 「な、な、な、なにを言ってるんですか! 今は危ないんです!」 カリムがそう言った時だった、三人の会話を聞いていた近くの子供がそっと、それこそ隠密の如く忍び寄る。 そして意を決したかと思えば、その幼き魔手を翻した。 「騎士カリムのスカートめくり権も~らい♪」 「きゃぁっ!」 疾風迅雷のように素早く、そして淀みなく、少年の手はカリムのサンタ風衣装のスカートの裾を盛大にめくり上げた。 そしてその中にあったのは……なんとも言えぬ極楽絵図だった。 実に触り心地の良さそうなむっちりとした太股は白く美しい柔肌を誇り、その上の下腹部はきゅっと締まってヘソのラインを艶めかしく引き立てる。 そしてなにより目を引いたのは、彼女の穿いた下着。 白い肌をより一層美しく引き立てる漆黒のソレは、各所をレース地で仕立てられており酷く扇情的。 さらには部分部分が透けており、雄の獣欲を否応なくそそり立てるような素晴らしい逸品だった。 スカートが舞う一瞬、その一刹那が惜しく感じられるような時間だった。 ちなみに、ウルフウッドはその光景を鍛え抜かれた動体視力できっちりと脳裏に刻み付けていた。 「あ……ああ……」 先日意を決してネット通販したセクシーパンツを白日の下に晒され、カリムは呆然とそんな絶望染みた声を漏らす。 めくった犯人の子供はしきりに“騎士カリムのパンツまっくろ~♪”等と陽気にはしゃいでいる、無邪気な子供とは恐ろしいものだ…… だが子供は良い、なにせそこまでやらしくない。 問題は成熟した男、それも親しい人に見られた事だ。 「……み、見ましたね?」 「ちょ、待てや落ち着け、今のは不可抗力やろ!?」 「……でも見ましたね?」 「そりゃまあ、確かにお前のエロパンツ見たのは事実やけど、へぶああ!!」 「いやぁっ! ウルフウッドさんのエッチ~!!」 ウルフウッドの弁明虚しく、カリム・グラシアの見事としか形容できないアッパーカットは的確な角度と強烈な力で炸裂した。 凄まじい力で脳髄を揺さぶられ、薄れ行く意識の中ウルフウッドは最後に見た絶景を脳裏で反芻した。 △ 「いつつ、しっかしカリムのやつ……ほんと良いパンチしとるなぁ、アレは十分プロで食ってけるで」 ベランダの欄干に身体を預け、口に咥えた煙草に火を灯しながらウルフウッドはそう一人呟いた。 最初こそカリムの強烈なアッパーカットで出鼻を挫かれたが、その後はとりあえず落ち着きを取り戻して子供らと共に楽しいパーティーと相成った。 たくさんの料理を囲み皆で楽しく食事を取り、一緒に騒いで遊んでたっぷりとクリスマスを満喫した。 もみの木も七面鳥もなかったが、そんな事は問題では無い。【子供達が楽しく過ごせた】それが一番重要だった。 その一点においては、この模造・急造クリスマスもホーム本家のモノに負けはしないだろう。 子供達が遊びつかれて眠りの世界に落ちたのを見計らい、ウルフウッドはこうして一人一服しに外へ出たのだ。 冬の寒空の下で一人煙草の紫煙を燻らせるというのは骨身に染みるが、子供達にあまりニコチンの害を与えるのも問題なので仕方が無いと言える。 「ふうぅ……正直、本数減らした方がええのかもしれへんなぁ」 「ならいっそ禁煙したらどうですか?」 唐突に声がかけられる。 その方向に顔を向ければ、そこには先ほど自分を殴り飛ばした金髪の美女が佇んでいた。 ウルフウッドは特に驚くでもなく、よう、と軽く手を上げて会釈する。 「その……先ほどはすいませんでした……思い切り殴ってしまって……」 「ええって、別に。まあええモン見せてもらったしな」 軽くからかいを入れるウルフウッドに、カリムは頬をほのかに朱に染めて“それは忘れてください”と聞こえるかどうかの小声で呟いた。 「それで、今日はどうでした? 即席の模造で、随分と不恰好だったかもしれませんが……」 「十分楽しめたわ、子供らも喜んどったしな。でも、流石に盆栽をツリーに見立てるのは斬新過ぎ通り越して不気味やで」 「……」 「なんやその沈黙は?」 「いえ、その……」 「アレ、お前か?」 「……はい」 「そか……」 ちょっと気まずい沈黙が流れる、ウルフウッドはただ黙って新しい煙草に火を点けた。 その空気に耐えられなかったのか、カリムは思い出したかのように声をかける。 「そ、そういえばプレゼントはもう開けましたか?」 「ああ、そういやまだやったな」 「なら今開けてはどうでしょう」 「せやな」 カリムに急かされ、ウルフウッドは包み紙を開けてプレゼントの中身を確認する。 中から現れたのは一つの瓶だった。 「ほぉ、酒か」 「ええ、ベルカ産の赤ワイン。お口に合えば良いのですが」 「ほなら早速」 「って、今開けるんですか?」 「そんなん、もったいぶる事ないやろ?」 そう言いつつウルフウッドはコルクを歯で抜き去り、早速一口喉に流し込んだ。 芳醇な恵みの赤が口内を満たし、次いで喉をゴクリと鳴らして流れ込む。 瓶を口から放すと共に、ウルフウッドは満悦とした顔をした。 「なるほど、こらぁ良い酒やな」 「まったく……それならせめてグラスに注いで飲んでください」 行儀悪い彼の飲み方に、カリムは頬を膨らませて不満そうな顔をする。 対するウルフウッドは“固いこと言うなや”と軽く返しつつ、また一口美酒を口にした。 そして何口か飲むと、彼はおもむろに手の瓶をカリムに差し出した。 「せや、お前もどうや? せっかくの良い酒も一人で飲むのは味気ないわ」 「へ? で、でも……その……」 「ほれ、グイっと行けや」 瓶を手渡され、カリムは狼狽した。 今まで彼がラッパ飲みしていた瓶、それに口付ける……すなわち“間接キス”である。 産まれてこの方、恋のこの字も知らなかった乙女には少しばかり刺激的だった。 ちなみに、初対面時に彼への蘇生措置で人工呼吸したのはノーカンだ、あれキス違う。 そんな事を考えていると、ウルフウッドの言葉が彼女を急かした。 「なにしとるんや? さっさと飲みや」 「いえ……その、あの」 「ええから、ええから、ワイも十分楽しんだんやからお前も飲めや」 「では……頂きます」 ウルフウッドのように豪快ではなく、慎ましく瓶を傾けて唇をそっと口付けると、カリムもそのワインの赤で喉を潤した。 薫り高い味わいが口の中から鼻腔を駆け巡り、喉を流れる。 最初口付けた時と同じくそっと唇を離すと、カリムは美酒の余韻にほうと一つ切なげな息を吐いた。 「本当に、美味しいですね」 「せやろ? これを独り占めにすんのはちと罰当たりやで」 「それじゃあ、今夜は二人だけで飲み明かしますか」 いつもの慈母の如き優しげなモノではなく、まるで悪戯を企む童女のような笑みを浮かべてカリムは少し下を出して笑った。 ウルフウッドもまた、そんな彼女にいつも以上の優しさを込めて悪戯っぽい笑みを返す。 そんなこんなで、今日もまた教会の夜は楽しくも平和に過ぎていった。 終幕。 オマケ 「あれ? 騎士カリムとウルフウッドさんはどこに行ったんでしょう?」 子供達が寝静まり孤児院を静寂が支配し始めた頃、パーティーの後片付けをしながらシャッハはふと呟いた。 時刻もそろそろいい時間になっている、もう自室に帰ったのかと考えるのが妥当だろう。 そしてそんな時だった、ウルフウッドがその場に転がりこんできたのは。 「シャ、シャッハ~! 助けてくれ!!」 「どうしたんですか、突然」 「いや、カリムのやつ、酒飲んだら……」 「ウルフウッドさぁん」 シャッハに縋りつくウルフウッドに、さながら淫婦の如く甘美に蕩けた声が投げかけられた。 振り向けば、そこに一匹の雌が立っていた。 軽くウェーブのかかった艶やかな金色の髪を揺らし、雌は口元からだらしなく唾液を一筋垂らしていた。 それは決して下品や不精には見えず、さながら淫らさをより一層深くする化粧。 彼女は纏った服の随所を肌蹴させ、その豊満な胸元を曝け出して堪らない色香を放ち酷く男を誘っている。 淡く朱に染まった白い肌からは果実のような甘い香りが漂い、もはや同じ人である事すら怪しい程だ。 正に雄を堕落させる為に生まれた小悪魔か、そんな女だった。 「もしかして、騎士カリムにお酒を飲ましたんですか?」 「ああ」 「あの人、飲みすぎると突然ああなるんですよ」 「ホンマかいな?」 「ええ、あのワイン結構強いですから」 「それは分かったから、なんとかしてくれや」 「いえ、私は片づけがありますので」 「もう~、ウルフッドさぁん。シャッハとばっかり遊んでないで、もっと私と飲みましょうよぉ♪」 「ちょ! 抱きつくな! 胸を押し付けるな! おいシャッハ助けや!!!」 しなだれかかるように抱きつき、服を肌蹴させた肢体を絡ませてくるカリムに襲われながらウルフウッドは助けを求めて叫んだ。 だがその叫び虚しく、シャッハは顔を背けてその場を後にした。 「ではお楽しみを。ああ、あまり床を汚さないでくださいね?」 「何で汚すねん!?」 「いえ、“ナニ”とか」 「アホな下ネタ言わんと助けやぁ!!」 「ウルフッドさぁん、もっと飲みましょう♪」 「ちょ、だからくっつくなオンドレ!」 こうしてウルフウッドは酒乱騎士に絡まれ、抱き疲れつつ朝を迎えた。 めでたしめでたくもなし。 チャンチャン。 Strikers May Cry氏目次へ
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【ニコラス語録】 以下、追加お願いします だが断る! 自重せよ! ニコラスミルク どう見てもゲーム系ラジオです。本当にありがとうございました。 幼女=処女 凛たん=ねぎたん 恋愛対象は女性です やおい穴って何ですか? やおい穴はあなたの心の中にあります gthm(ガチホモ)乙! gtbr(ガチボレ)リスナーお疲れちゃん ほーぷって知ってますか? ほーぷ剥く、剥け 幼女って知ってますか? 空中都市ですよ! イケメンキタコレ シオンっ! みんな違ってみんないい by金子みすゞ ほーぷはマイほーぷです 泣いてませんよ? 扱(こ)き下(お)ろす=しごきおろす ぐぅぐぅ
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リリカル・ニコラス 第七話「再開」 「ザジ……ザ・ビースト」 まるで内臓から搾り出すような、そんな声でウルフウッドは呻いた。 自分の目の前に立つ女……否、人間の女の形をしたモノの姿に思考が驚愕に染まる。 長い金髪、褐色の肌、タンクトップのシャツにジーンズを纏った肢体は、かつて見た時より成長したのかより凹凸を増していた。 それは人ならざるもの、GUNG-HO-GUNSが一人、ザジ・ザ・ビーストの“端末”。 何故、どうしてこの者がここにいるのか。 疑問を感じると同時にウルフウッドの五体から殺気が迸る。 異常殺人能力者集団、GUNG-HO-GUNSの一人を前にしたのだ、ならばここから始まるのは闘争の宴しかあるまい。 ウルフウッドの肉体から発せられる壮絶な気迫、それにちりちりと空気が焼けるような錯覚すら感じる。 あわやこの場で戦いが始まるかと思われた刹那、ザジ・ザ・ビーストは笑みを浮かべた。 柔らかな、少しの殺気も敵意も孕まぬ微笑で。 そして次いで手を上げる、まるで降参の合図のように。 「おっと、落ち着いて欲しいな。いきなりズドンはごめんこうむりたいね」 本当に敵対する意思は無いのか、ザジの気配には微塵の殺気も感じられなかった。 その様により困惑するウルフウッド。 そしてそれをさらに煽るように、背後から声が掛かった。 先ほどまで懺悔を聞いていた相手、長身にややこけた頬の男が懺悔室から出て二人に向かって口を開いたのだ。 「おい、突然どうした? ザジの知り合いなのか?」 意外な者からの意外な言葉、これにいよいよウルフウッドの混迷は極まる。 「なん、やと? おんどれ、こいつの知り合いなんか?」 △ 鮮やかな、燃えるような茜色の夕焼け空を見ながら赤毛の少年は歩いていた。 目指すのは兄貴分の、あのでたらめなやさぐれ牧師のいる礼拝堂。 そろそろ彼が引き受けた告解を聞く時間も終わる頃合だ、迎えに行って一緒に帰ろうと少年は足早に目的地へと向かう。 射し込む西日の眩さに目を細めていると、そこで少年の目に一つの影が映った。 視線を向ければ、教会敷地内の片隅に一人の少女が立っていた。 背丈から年の頃は自分と同じくらいだろうと推察できる。 時節はそう寒くないのにフードを深く被っているのが目に付く。 いや、それだけでなく一人で夕暮れのこんな場所に年端も行かぬ少女がいる事が気がかりだった。 エリオはそこで足を止め、思慮を巡らせる。 ウルフウッドを迎えに行くのは後でも大丈夫だろう。 しかしこの少女が何かしらの問題、道に迷っているとか、何か困っていたら大変だ。 そう判断し、エリオは彼女に声をかける事を決意する。 一歩ずつ近づくにつれて心臓の鼓動が僅かに高鳴るのを感じつつ、少年は少女に第一声を発した。 「あ、あの……」 瞬間、少女が振り返る。 同時に、羽織っていたフードが風に舞って素顔が露になった。 紫色の艶やかな髪を揺らした、赤い、見る者に魅入られる事を強制する妖しい程に美しい瞳の少女。 その眼差しに見つめられ、瞬時にエリオの鼓動が爆発的な勢いで跳ねた。 頬が熱くなっていくのを感じる、きっと今の自分の顔は真っ赤になっているだろう。 カリムやフェイトにシャッハ、エリオの周りの女性は皆美人ばかりだ、でも目の前の少女の美貌は少々違う。 前者が眩い太陽のような、見る者の心を温かくさせる美しさならば……この少女はさながら月、。どこか冷たく、されど美しく魅入られる。 エリオは思わず息を飲み、言葉をなくした。 そんな少年の様子に、少女は無表情のまま不思議そうに首を傾げる。 それはまるで子犬かなにかがするようでもあり、美貌と相まって実に愛らしい。 可愛い少女の様に、数秒間呆けていたエリオは意識を取り戻し、慌てて言葉を紡いだ。 「い、いや! その……こんなところでどうしたのかな? って、さ……」 舌が上手く回らぬ中、少年は少女に問うた。 対する少女の反応は無、エリオの言葉に何も返さず、ただ沈黙を守る。 眉一つ動かさず唇も真一文字に結んで動かぬその様に、少年は懸念を抱いた。 もしかして言葉が通じていないのだろうか? と。 この少女が自分の知らないどこか別次元の世界や国から来たのならば、その可能性は決し低くはない。 そうだったならばどうしようか、エリオは焦る。 だが次の瞬間、その心配は少女の発した言葉に霧散した。 「……礼拝堂」 「え? 今なんて?」 「……礼拝堂、っていうところ……探してる」 礼拝堂、先ほどまで自分が目指していた場所だ、分からない訳がない。 少年は問う。 「礼拝堂に行きたいの?」 コクン、と、少女は首を縦に振って肯いた。 紫の髪がフワリと舞って甘い香りを漂わせ、エリオの胸の鼓動をさらに早める。 高鳴る心臓の音を感じつつ、少年は少女に尋ねた。 「あ、あのさ、実は僕も礼拝堂に行くところなんだ」 「……本当?」 「う、うん。だからさ、その、もし良かったら一緒に来ない?」 一拍の沈黙。 少女は先ほどと同じ無表情のまま、しばしの間思案する。 そして、結論が出たのかコクリと肯き言葉を紡いだ。 「……じゃあ、行く」 「そう、じゃあ一緒に行こう……えっと」 少女の名を言おうとして気付く、そういえばまだお互いの名前なんて知らなかった。 言い淀む少年の様に、少女は彼の内心を察したのか、ポツリと言葉を漏らした。 「……ルーテシア」 「え?」 「……ルーテシア・アルピーノ……わたしのなまえ」 「そ、そう、アルピーノさん、ね……僕はエリオ、エリオ・モンディアルって言うんだ。よろしくね」 言うや、エリオはルーテシアと名乗った少女の手をそっと握る。 触れた少女の手は柔らかく、そして少しひんやりしていて気持ちよかった。 瞬間、自分の手を握られたルーテシアはきょとんとして目を丸くする。 同じ年頃の、それも異性に触れられるのは彼女にとって初めての事だった。 自分より少し硬くて、そして温かい手の感触。 どういう訳か少女の頬は僅かに紅潮し、鮮やかな朱色に染まる。 そんな彼女の変化を知らず、エリオはそっと手を引いた。 「ほら、こっちだよ」 「……うん」 ゆっくりと、後ろの少女の歩幅に合わせて少年は歩き出した。 △ 程なくして、二人は目的地に到着した。 厳かな雰囲気を感じさせる神聖な施設、礼拝堂。 礼拝堂の大きな正面の戸の前を見れば、そこには既に先客がいた。 艶やかな金髪を揺らし、たおやかに熟れた肢体を黒い教会法衣に包んだ美女。教会騎士カリム・グラシアである。 近づくこちらの足音に気付いたのか、ふわりと輝く金髪を揺らしてカリムが振り向く。 見知った少年の姿に、美女の顔には柔らかな微笑が浮かんだ。 「あらエリオ君、ごきげんよう」 「あ、はい、騎士カリムごきげんよう」 彼女の笑顔と挨拶に自分も同じものを返し、エリオは軽く一礼する。 と、そこでカリムが不思議そうに首を傾げ、尋ねた。 「ん? そっちの子はどなたかしら?」 「え? ああ、この子は、その……」 自分の少し後ろで立っていた少女、先ほど出会った物静かな女の子、ルーテシアの事を問われた。 彼女の事を何と答えれば良いのか、エリオは僅かに考える。 しかし、少年が返事を言うより先に目の前の女性は含みのある微笑と共にとんでもない事を口走った。 「もしかしてエリオ君のガールフレンド?」 「ガ、ガガ、ガールフレンドッッ!? ち、違いますよ!」 「本当に?」 「本当です!」 どこかからかうようなカリムの笑みと言葉に、エリオは顔を真っ赤に染めて否定の言葉を吐く。 まだまだ青い少年にとって、ガールフレンドなどという甘酸っぱい言葉は果てしなく羞恥心を煽るものだった。 頬を染めて恥ずかしそうな顔をするエリオを、カリムは実に楽しそうな微笑を浮かべている。 どうにもこの生真面目な少年を弄くるのは楽しいらしい。 ただ、エリオの後ろにチョコンと立っていた少女は言葉の意味が良く分からないのか、無表情のままに首を傾げて頭上にクエスチョンマークを掲げる。 そしてエリオの服をちょいちょいと引っ張って、彼に尋ねた。 「……ガールフレンドってなに?」 「え? い、いや、それは、その……」 なんと答えるべきか分からず、少年は頬を朱色に染めてオロオロと慌てる。 と、そこでひょいと顔を覗かせてカリムが口を出した。 「ガールフレンドっていうのはね、男の子と仲の良い女の子の」 「ストップ! ストーップ! 勝手に変な事吹き込まないでください!」 「あらあら? 照れちゃった?」 カリムはどこか悪戯っぽい微笑みを浮かべ、エリオをからかうように言う。 対する少年は羞恥心を煽られ、赤い顔をさらに朱色に染めた。 そして、なんとか流れを変えようと彼は言葉を紡ぐ。 「と、ともかく! 騎士カリムもニコ兄に会いに来たんですよね? 早く入りましょう」 やや強引に言い切るや、エリオはカリムの横をそそくさと歩き、礼拝堂の大きなドアを開けた。 長年使い古された蝶番が、ぎぃ、と軋みを上げてゆっくりと動く。 木製の扉が開いた先には、その場の三者が求めていた相手が揃っていた。 ずらりと並ぶ長椅子と祭壇を持つ礼拝堂、壁際に設置された懺悔室の前に三人の男女がいた。 黒髪に黒スーツの男、この日の懺悔を聴取するべき司祭の代理人。 その男に懺悔を吐いた長身のベルカ騎士。 そして、浅黒い肌に金髪を持つ美女が一人。 「ゼスト、ザジ」 ポツリと、まず普通なら聞き逃してしまいそうな声量で少女、ルーテシアは騎士と美女の名を口にする。 彼女の声に、まず振り向いたのはザジと呼ばれた女性だった。 「ああ、ルー。迎えに来てくれたのかい?」 問いに、少女は小さく頷いて了承の答えを返す。 そのやり取りの傍らで、エリオとカリムもまた自分たちの目的の相手に声をかけた。 ただし、こちらは前者とかなり違う雰囲気で。 「ちょ! ウルフッドさん!」 「ニ、ニコ兄! なに壊してるの!?」 怒りを露に詰め寄る二人。 無理もない。 礼拝堂の床の上には、先ほどウルフウッドが勢い良く蹴飛ばした懺悔室のドアがあったのだから。 問い詰められたウルフウッドは咄嗟に釈明を述べる。 「い、いや落ち着け、これには深い訳が」 「どういう深い訳があったら懺悔室のドアをブチ破るんですか!」 烈火の如く怒ったカリムが顔を怒気で頬を淡く上気させて詰め寄り、ビシっと指を突きつけた。 かつては超異常殺人能力者集団、GUNG-HO-GUNSの一員としてチャペルの二つ名を冠したウルフウッドであるが、どうにもこの女性には頭が上がらない。 ご立腹のカリムに彼は必至に言い訳を並べるが、しかし彼女の怒りは一向に納まることなく、あれやこれやと彼を叱りつけた。 まるで生徒を叱る先生のようで、なんとも微笑ましい光景。 この情景に、ふと笑い声が礼拝堂に響いた。 声の主は褐色の肌の美女、ザジ・ザ・ビーストだった。 「はは、まったく、あのチャペルが形無しとはね。聖王教会の女性はおっかない」 愉快そうにくつくつと笑うザジの言葉に、カリムは自分がみっともない様を見せていると気付いて顔を真っ赤に染めた。 ウルフウッドから一歩身を引くと、彼女は話題を逸らそうと見慣れぬ褐色の女性に話しかける。 「あ、えっと……ウルフウッドさんのお知り合いですか?」 「ん? ああ、まあそんなところだよ。ね?」 「あ? いや、まあ確かにそうやけど……」 ザジ・ザ・ビーストは屈託のない笑顔でウルフウッドに問うた。 求めているのは自分の言葉への了承で、そこには微塵の悪意も感じない。 これに彼はいよいよ混乱する。 相手の意図がまったく読めないのだ。 かつての同胞、同じくGUNG-HO-GUNSに身を置いた異形の者。 それが笑顔で敵意も悪意も殺意もなく、目の前にいる。 確かにザジ・ザ・ビーストという存在は人間に対して明確な敵意を抱く存在ではなかった。 しかし、今目の前にいる彼女は、否、“彼ら”は何かが違う。 以前はあの笑顔の下に、どこか得体の知れない気配を感じたものだ。 ザジ・ザ・ビースト、純然たる“人外”。彼らは人ではない。 惑星ノーマンズランドに移民船によって人間が降り立つ遥か以前から住んでいた、ワムズと呼ばれる蟲系生物の一群である。 高度な知性を持った彼らは人間を端末と称して支配し、利用する。 目の前にいるこの美しい女性は、正しくそうして蟲の走狗と成り果てた人ならざるものなのだ。 それが、今はどうだろうか。 まるで威圧感の欠片もない、本当にただの人間のようだった。 そんな事を思う彼の気持ちなど知る由もなく、傍らのカリムが口を開く。 「あ、でしたらご一緒に孤児院の方に行きませんか? 今丁度、お茶の用意がしてあるんです」 彼女が発したのは、何てことのない善意からの誘いだった。 だが、ウルフウッドからすれば悪魔を我が家に誘い入れるに等しい。 しかし、即座に否定の言葉が出ず、彼が自分の意思を告げるより先に正面の美女が言う。 「ええ、喜んで。良いよねルー?」 了承の意を求めての問い。 問われた少女もまた了承を求めるようにゼストに視線を向け、首を傾げる。 彼が頷けば、ルーテシアもこくんと小さく頷いた。 「うん、良いよ」 △ 「ねえねえ、おなまえなんていうの?」 「おうちどこ?」 「どこからきたの?」 「きょうからここにすむの?」 「エリオのおともだち?」 「クッキーたべる?」 「おちゃおいしいよ?」 それは、疑問符を連ねた言葉の嵐だった。 投げ掛けたの孤児院の子供たちで、投げ掛けられたのは紫の長髪を揺らした少女、ルーテシア。 先ほどカリムらに案内されてここに来た彼女は居間に案内され、そこにある大きなテーブルに腰掛けた。 紅茶とクッキーが差し出されたのと、孤児院の子供たちが雪崩れ込むのは同時だった。 年も背丈もバラバラの女の子男の子がいっぱい現れたかと思えば、もう次の瞬間には質問の言葉が溢れた。 初めて見るルーテシアに興味津々の子供たちは、目をキラキラと輝かせて彼女に詰め寄る。 今まで同年代の子供とほとんど接した事のないルーテシアは目をパチクリとさせて唖然とした。 なんて言えば良いか分からず、いつもの無表情でちらりと縋るような視線をゼストに向けた。 テーブルに腰掛けて紅茶を傾けていたゼスとは少女の視線に、ただ静かな微笑を見せるだけだ。 熱気を孕んで自分を取り囲む子供達に、どうしようか、と眉だけを困ったように下げる。 と、そこに助け舟が入った。 「はいはい! 皆があんまりいっぺんに喋るから困っちゃってるじゃないか」 少年が言葉と共に子供たちの間に割って入ってきた。 それは、先ほどルーテシアを礼拝堂に案内してくれた赤毛の少年、エリオだった。 エリオの言葉に、子供らは渋々といった面持ちで、はーい、と答える。 まだ小さいながらも、どうやら彼はリーダーシップを持っているらしい。 質問の嵐から難を逃れたルーテシアは傍にいたエリオの袖を引っ張って、これ以上言葉の洪水に飲まれないように彼の後ろに隠れた。 いきなり女の子に抱き縋られた少年は顔を真っ赤にして慌てる。 が、少女はそんな事などお構いなしで身体を引っ付けた。 まだ凹凸など欠片もない、成熟も知らないなだらかな乙女の肢体の感触。 そして甘やかな髪の香りが一層少年の羞恥心を煽った。 顔を赤くする少年と、無表情に彼に擦り寄る少女。 微笑ましい様に、それを見ていたカリムやシャッハ、そしてゼストは微笑を浮かべた。 部屋の中から、いつの間にかウルフウッドとザジがいなくなった事を知らず。 △ 木材の軋む音がする。 孤児院の二階スペースの廊下を、二つの人影が歩いていた。 褐色の肌に金髪の美女、ザジ・ザ・ビーストと、黒のスーツを纏った男、ニコラス・D・ウルフウッドだ。 先を歩くウルフウッドと、彼の後を追うザジ。 両者の間には一定の間隔で距離があり、警戒の色が透けて見える。 ウルフウッドは見えぬからと言って決して油断する事無く、間断なき注意を向けていた。 そして、二人は程なくして一つのドアの前に立つ。 そこには表札が掛かっており、一つの名が記されている。 Nicholas・D・Wolfwood 、と。 ウルフウッドは自室のドアを開くと、後ろのザジに視線で入るよう促す。 「それじゃあ、お邪魔するよ」 まるで警戒心のない声で告げ、彼女は悠々とウルフウッドの自室に入る。 入室するや、物珍しそうに部屋の中をグルリと見渡すザジ。 だがゆっくり見つめる時間はなく、次の瞬間には彼女の身体が揺れた。 動作は倒れる動きであり、その肢体は部屋に置かれたベッドの上に倒れこんだ。 後ろから勢い良く突き倒したウルフウッドが原因で、彼はそのままザジを押し倒し、圧し掛かる。 後ろから両腕を捻り上げられ、組み伏せられる女体。 突然の痛みに彼女の表情が苦しげに歪む。 「い、いきなり酷いなぁ……こんな事を」 して良いのかい? と続けようとした。 が、それより早く後ろの男が告げる。 静かに、だが確かに耳に届く声で。 「黙れ」 まるで地獄の底から響くような声だった。 美女の身体がその気迫に強張り、汗に濡れる。 背後から浴びせられる殺気が生物的な本能の部分で、ザジの肉体を圧倒しているのだ。 ウルフウッドは自分の言葉で彼女が押し黙るとその肩を掴み、転がした。 金の髪が揺れ、ベッドのスプリングが軋み、美女の肉体が仰向けにされる。 そして、その顎先に冷たい鋼鉄が触れた。 それは拳銃。 黒色の鋼で作り上げられた兵器、ウルフウッドがかつての故郷で何度となく人命を屠った得物。 暗いその銃口が今、ザジ・ザ・ビーストの顔に突きつけられた。 「凄いね、いつの間にそれを抜いたのかな?」 「まだそないな事が言えるちゅうのは、随分余裕やな」 どこかふざけたような言葉への返礼は、セイフティを外す動きと殺気を孕んだ視線だった。 だがそれでもザジ・ザ・ビーストの表情には変わりなく、静かに微笑を浮かべて言葉を連ねる。 「いや、別に余裕がある訳じゃないさ。単に冷静なだけだよ。君はこんな場所でそう簡単に人を殺せる人間じゃないだろ?」 「相手が“人間”やったらな」 「はは、厳しい事を言うね」 茶化すような言葉にウルフウッドは語気を強め、牙を剥いて吼えた。 「冗談抜かすな! 正直に目的を言えや!」 向けられる銃口と殺気に冷や汗を流しつつ、それでもなおザジは表情を崩さず、 「目的、ね。別に君に害意を成す気はないんだけど……そうだな、じゃあ、少し“お話”でもしようか。君が消えた後の世界の話だ」 静かに語り始めた。 それはウルフウッドがいなくなった後の、ノーマンズランドの物語だ。 プラントを吸収し続け、人知を超えた力を得たナイブズ。 最後の七大都市オクトヴァーンを最終拠点として集った人類。 ヴァッシュ・ザ・スタンピードと共に戦うリヴィオ。 そして、ナイブズの力を得ようと叛意を剥きだしたザジ・ザ・ビースト。 ナイブズとザジとの戦いは、後者の敗北により締めくくられた。 彼女とワムズの長が斃された事によって。 「ちょい待て、お前あのナイブズを殺ろうとしたんか? それに、長が斃された、て」 「言葉通りの意味だよチャペル、まあ落ち着いて続きを聞きなよ」 告げられた言葉に疑問符を浮かべるウルフウッドを制し、ザジは説明を続ける。 「我々は彼を、ナイブズを危険だと判断してね、蟲で脳を支配して力をそのまま頂こうと思った訳さ。だから叛意を剥いた、たったそれだけの事だよ」 言いながら彼女は、でも、と零して自分の服に手をかける。 タンクトップの裾をめくり上げれば引き締まった下腹部が覗き、そして一つの傷が現れた。 大きな傷だった。 左右水平に刻まれた傷は、それこそ腰をクルリと一回りして付けられている。 「少々彼らを甘く見すぎたみたいでね、手痛い敗北を喫したよ。私はブルーサマーズに身体を真っ二つにされて、長はナイブズの攻撃で消し飛んだ」 その言葉に、ウルフウッドの思考にまた疑問符が生まれた。 ザジの言う言葉が真実ならば、何故彼女は存在しているのか。と。 肉体を両断されたのでさえ生きているのが不思議な程の重症だろうし、何よりワムズの長の死というのが最大の問題だ。 彼らという種族は、詳しい事は分からないが種族の中心となる長の存在があってこそ知識や意識を維持できるのではないか。 ならばその長が亡くなった今、どうして目の前のザジ・ザ・ビーストはこうして以前と同じ意識を持っているのか。 幾つもの疑問が湧きあがり、渦巻く。 が、ウルフウッドがそれらを口にし、問うより先に眼前の美女は言う。 「まあ、本来なら私もそこで長もろとも死ぬ筈だったのだけれどね。ルーのお陰で九死に一生を得たよ」 「ルーて、ルーテシア言うてたあのちっこい嬢ちゃんの事か?」 「ああ、彼女は召還師なのさ」 召喚師、それは魔導師の一種である。 異界より生命体を呼び出し、己の僕として使役するのがその本領。 ウルフウッドもこの世界に来てから、魔導師に関する書物でその事は知っていた。 「つまりお前を召喚獣、いやこの場合は召喚蟲か。そういう具合で呼び出した言うんか?」 「ご明察。どういう訳か、彼女の召喚蟲である私は長はいなくとも以前と同じ知識と知性を失わないで済んでいるんだ。 そして真っ二つになった身体は彼女らの知り合いの“ドクター”に治療してもらってね、今はこの通り五体満足さ」 腹部の傷を撫でつつ、微笑を浮かべて言うザジ。 その表情にも言葉にも虚飾はなく、ウルフウッドの眼から見ても虚偽があるとは思えなかった。 「じゃあ、お前は本当にもうガンホーとは関係あらへん言うんやな」 「まあね。今の私の主はナイブズでも長でもなく、ルーだから」 言葉と共に彼女が見せる笑みは、毒気がないどころかとても愛らしかった。 以前はその一見無邪気な笑みの下に、底知れない人外の気配を感じたものだが。 これがルーテシアという少女の僕となった影響なのか、そこまではウルフウッドにも分からない。 だが、確かにザジ・ザ・ビーストはもう敵でないという事実を彼は認める。 「そうか、ならおんどれの言う事信じたるわ」 「分かってくれて何よりだね。じゃあそのおっかない物を早くどけて欲しいんだけど」 そう言い、彼女は眼前の銃口を指でつつく。 ザジの請いに、ああ、と返事を返しつつウルフウッドは銃を懐に仕舞った。 「これで和解できたかな?」 「お前が変な気を起こさへんならな」 「酷いなぁ、私がそんなに信用できない?」 「今のところは半信半疑や」 口元に苦笑を浮かべ、二人はそう言葉を交わした。 なんとも奇妙な気分だった。 かつての世界では同じくGUNG-HO-GUNSの一員としてナイブズに仕え、そして敵として相対した。 そんな相手とこうして違う世界で巡り会い、鉛の弾でなく言葉を交わすという。 まるで冗談みたいな話だ。 あの砂の星にいた頃は想像もできなかった。 もしここにあの能天気な平和主義者がいれば、戦いもなくかつての敵と平和な場所に生きられる事を喜んだ事だろう。 ふと、彼はそんな事を思った。 そしてそんな時だった、外からばたばたと足音が聞こえてきたのは。 「ニコ兄ー、ここにいるの?」 「ウルフウッドさん、探したんです……よ」 現れたのはエリオとカリム、そしてルーテシアらであった。 ドアを開けた瞬間、カリムは言葉を失い固まる。エリオもまた眼を丸くして硬直していた。 どうしたんやこいつら? とウルフウッドは疑念を抱く。 が、そこで彼は気付いた、今の自分の状態に。 ――彼は現在、ベッドの上でザジを思い切り押し倒していた。 おまけに彼女は服をめくってその引き締まった美しい下腹部をこれでもかと見せ付けている。 なんというか……どこからどう見ても情事の最中としか言い様がない。 ウルフウッドは即座に立ち上がるや、否定の言葉を吐く。 「ちょ、ちょい待て! 違うで? 別にやましい事なんてしてへんで!?」 大慌てで釈明するウルフウッド、だがそんな彼にカリムは笑顔で固まった顔のまま氷のように冷たい視線を向ける。 説明すればするだけなんだか怪しいのだろう。 しかもそこに追撃が入る。 ルーテシアが首を傾げ、無垢な瞳で不思議そうに問うた。 「ザジなにしてるの?」 「この場でいきなり押し倒されて無理矢理ベッドに」 「おいこら! 変な事言うなや!!」 「単に事実を言っただけだけど?」 「それがいかんちゅうねんッ!」 声を荒げるウルフウッド、もう涙目である。 そんな彼の様にルーテシアはまた首を傾げ、傍らのゼストに、じゃあおしたおしてなにするの? と聞いていた。 ゼストは顔をしかめて静かに、お前にはまだ早い、と返している。 エリオは何となく意味が分かるのか顔を真っ赤にしていた。 そして、一人カリムは微笑を浮かべていた――額に血管を浮き上がらせて。 「ウルフウッドさん……」 「あ?」 名を呼ばれ、ウルフウッドが振り返る。 すると彼の視線に高速で動くものが映った。 それはカリムが繰り出すロシアンフックの一撃であった。 「このスケベェェェェエエ!!!」 強烈な打撃に、ウルフウッドの体躯が盛大に吹っ飛んだ。 今日も世界は平和だった。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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2関西弁のような言葉を喋る巡回牧師。
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次回カズマ(1戦目) 基本情報 ニコラス(1戦目) トレーナー ニコラス・D・ウルフウッド 指揮:C(相当) 育成:不明 統率:不明 能力:未実装 固有:未実装 バックアップ:未実装 ポケモン シノン:Lv11/【草/岩】 バトル概要 イタチPT 指揮:D 育成:B 統率:C 能力:未実装 固有:未実装 バックアップ:未実装 ポケモン ライーサ:Lv11/【飛】 バトルログ イタチ先発:ライーサ ニコラス先発:シノン 生徒たちの実演としてバトル 1T:シノン→×ライーサ イタチ敗北 (ふむふむ…) ライーサ、大丈夫か? ごめんなさい、まけちゃった… バトル詳細 3386から
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<ニコラスラジオの歴史> ここではニコラスラジオを歴史を振り返ってみるページです ◆1 ゲーム漫画アニメ映画音楽ラジオ(仮) 5/1 3 32 10/46/11 ゲーム話 ◆2 DJニコラスの(仮)ラジオ~第2回~ 5/3 3 11 4/17/4 ゲーム話 ◆3 DJニコラスの正直オイヨイヨ~ラジオ(仮)【第三回】 5/9 4 00 5/38/7 泣いた・感動した作品話 ◆4 DJニコラスの正直オイヨイヨ~ラジオ(仮)【第4回】 5/11 3 02 6/17/7 ゲーム話 ◆5 DJニコラスの正直オイヨイヨ~ラジオ(仮)【第5回】 5/13 1 42 2/6/3 (【ニコラス】さっきラジオしたけど誰も聞いてくれなかったから一人カラオケする:4 37 9/36/11) このとき、えーおーあいさん初登場&凸 ◆6 DJニコラスのどこまでも足掻いてやる!ラジオ【第6回】 5/18 4 40 3/33/9 ゲーム話 初恋話 アクエリオン歌う ◆7 DJニコラスの正直××ラジオ【第7回】 5/19 2 19 2/15/4 (DJニコラスのスカイプラジオ【第7回】 0 43 6/10/6) (DJニコラスのスカイプテストラジオ【第7回】 0 55 3/10/7) スカイプについて教えてもらう ◆8 DJニコラスのねとらじ【ゲーム・アニメ】 5/21 2 31 40/120/57 (DJニコラスのねとらじ【ゲーム・アニメ】 0 33 39/54/47 (DJニコラスのねとらじ【ゲーム・アニメ】 4 15 31/91/49 このとき、jasminさん初登場 ジャンルにリリカルw アニメ、漫画の話 ◆9 DJニコラスのねとらじ(ニコらじ)【ゲーム・アニメ・スカイプ】 5/24 6 38 7/38/10 (DJニコラスのねとらじ(ニコらじ)【スカイプ放送してますよ】×10) アニメOP話 ドナドナ初凸 ◆10 【鳴り響け!】DJニコラスのにこらじ【僕のメロス!!】 5/26 2 45 6/14/11 ゲーム話 ◆11 DJニコラスのラジオ【ニコラジ】 5/27 5 25 10/58/12 ゲーム話 「ニコラスの匂いがしたから来たよ?」 ◆12 ニコラス★リサイタル【ニコラジ特別号】 5/28 5 34 8/42/12 アニソン歌いまくりw ◆13 DJニコラスのマッタリRadio【ニコ★ラジ】 5/31 4 35 10/26/12 えーおーあいさんから告白 ニコラスの正体はウ・ドゥ ◆14 DJニコラスのマッタリRadio(ゲーム・アニメ) 6/2 2 35 7/18/10 五目大会 ◆15 DJニコラスのマッタリRadio 6/3 6 05 7/37/11 このとき、礼が初登場 ゲーム音楽話 BLOOD+ ◆16 DJニコラスのマッタリRadio 6/5 4 45 9/56/13 FF話 むてきんぐさん登場 ◆17 DJニコラスのマッタリRadio 6/8 4 46 10/47/15 ゲーム話 ◆18 こちら「DJニコラス」のマッタリRadio 6/11 7 14 6/50/13 結婚ドッキリ ◆19 「DJニコラス」のマッタリRadio 6/14 2 31 8/28/16 この辺りからBLっぽく? 女性リスナーはいない発言 ◆20 「DJニコラス」のマッタリRadio【祝20回記念放送です】 6/16 4 26 13/28/13 (「DJニコラス」のマッタリRadio【祝20回記念放送です】×2) 「DJニコラス」のマッタリRadio【祝20回記念放送~第二部】 6/17 6 01 7/17/12 「DJニコラス」のマッタリRadio【祝20回記念放送~第三部(最終章)】 7 07 10/37/15 合計17時間放送 スカイプゲストさん数名とトーク ゲーム音楽・クランプ作品話 ◆21 「DJニコラス」のまだまだマッタリRadio 6/22 3 41 9/28/12 アビス実況 ニコラスの妹はアニス ◆22 「DJニコラス」のまだまだマッタリRadio 6/23 3 12 9/10/10 格ゲー話 ◆23 「DJニコラス」のまだまだマッタリRadio 6/25 4 36 8/22/15 萌えについて勉強 ◆24 「DJニコラス」のまだまだマッタリRadio 6/27 2 34 7/23/13 アキバ話 「ニコラス、痛みは私を満たしてくれますか? 」初書き込み ジョジョ話 ◆25 「DJニコラス」の今日もマッタリRadio 6/29 5 03 13/46/21 「みんな違ってみんないい」ニコラス発言 「ホントに3枚で後ろ頼む ニコラス 」初書き込み 腐男子・女子話 Eyes On Me熱唱 この回でニコラジが大きく変化した・・・ ◆26 DJニコラスのマッタリRadioで逢いましょう 7/5 4 44 8/28/12 (DJニコラスのマッタリRadioで逢いましょう×3) BL話 ぼくのぴこ(ピコラス誕生?) ◆27 DJニコラスのマッタリRadioで逢いましょう 7/8 5 23 16/50/21 ゲーム会社話 BL話 「確かなのは、ここには カクゲーマーとRPGゲーマーとガチホモと 俺のような腐女子が数人居るという事だ。」 このとき、34ですさん初登場 ジブリ話 ◆28 DJニコラスのまた~り放送局にようこそ! 7/14 3 16 16/34/21 BL・ガチホモ話 ◆29 DJニコラスのSOS放送局にようこそ! 7/21 3 03 26/44/32 「ニコラスがイチオシの○○超人の放送聞いたよー」 BL話 漫画話 ◆30 DJニコラスのほんわか放送局にようこそ!(番外編) 7/23 4 16 11/33/15 ニコラス★リサイタル2 ◆31 ニコラスの気楽に頑張るラジオ 7/28 0 34 6/9/6 DJニコラスのSOS放送局にようこそ! 7/28 2 38 13/37/19 「3枚でたのむニコラス」定着 イニD話 ◆32 DJニコラスのSOS放送局にようこそ! 7/30 0 35 24/35/25 家族乱入で途中終了続きは8/2(8/2 4 32 20/50/25) 漫画、アニメの実写化の話 ひぐらしのなく頃にの話 ◆33 DJニコラスのSOS探偵局にようこそ! 8/5 2 38 14/40/24 漫画、アニメ話 新3大萌え声DJ ◆34 DJニコラス少年のSOS探偵局事件簿 8/9 3 12 17/40/22 ネタがなくアニソン歌う ◆35 DJニコラスのG・A・M・Eラジオ探偵局【久しぶり】 8/30 2 58 10/19/12 (DJニコラスのG・A・M・Eラジオ探偵局【久しぶり】 1 12 10/21/13 3週間ぶりのラジオ MP3プレーヤー話 PS3、PSP話 ◆36 DJニコラスのSOS探偵局にようこそっ! 9/2 2 26 7/23/13 ゲーム話 ◆37 元祖!DJニコラスのまったりラジオ放送局っ!! 9/7 6/20/9 SIMPLE2000話 エヴァ話→「エヴァ2実況しようかニコラス」 ◆38 元祖!DJニコラスのまったりラジオ放送局っ!!~秋アニメと新作ゲーム~ 9/14 2 22 10/25/15 ゲーム話 初社会見学→「むこうの放送にアルカされてるって書いてきたお( ^ω^)」 ◆39 元祖!DJニコラスのまったりラジオ放送局っ!! 9/16 2 08 7/14/10 リスナー置いてけぼり放送 ◆40 返事がない。ただのゲーム×アニメ×漫画系雑談ラジオのようだ。【DJニコラス】 9/21 3 29 20/44/25 ねとらじ3大萌え声 ほーぷラジオに社会見学 ほーぷ、シゲルさん初登場 シゲルさんに色々と教わる シゲルさん「相方います」→ニコラス「羨ましいな」→「ニコラスガチホモ確定?」 この回でまた大きくニコラジが変わった ◆41 返事がない。ただのゲームアニメ雑談ラジオのようだ。DJニコラス 9/24 1 33 25/37/28 (返事がない。ただのゲームアニメ雑談ラジオのようだ。DJニコラス 9/24 1 20 22/37/28 BLOOD+とAIRの話 ほーぷ初凸 ◆42 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 9/30 6 28 21/51/23 アシスタントのコスモス登場(この回以降登場なし) このとき、楓初登場 リスナー同士で恋が芽生える 「ハルヒの次は神様家族」 「スースー言う」→このとき、初めて自覚する まだ女性リスナーは0人だと勘違いしている ◆43 ニコラジのある生活、プライスレス!(ゲーム・アニメ系)DJニコラス 10/2 2 01 16/19/19 スペシャルウィーク1日目 妹の話 ◆44 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/3 2 04 16/33/20 スペシャルウィーク2日目 アニメ話「神様家族ブームがまだやってこない件について」 ◆45 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/4 2 48 18/36/22 スペシャルウィーク3日目 PSP版エヴァ2実況 ◆46 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/5 2 48 14/28/18 スペシャルウィーク4日目 「27~29歳ぐらいの頃に消え入るロウソクの火が燃え上がるような性欲の高まりがあるよ」 「ツーカー」の意味を知る ◆47 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/6 2 02 18/28/18 スペシャルウィーク最終日 FF話 ◆48 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/7 3 47 17/37/20 50回記念放送の企画話 好きなゲーム、漫画話 ◆49 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)49回目DJニコラス 10/8 2 30 15/23/17 50回記念放送へ向けて マサルさん話 ◆50 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)祝50回!DJニコラス 10/9 第一部 02 05~07 10 平均23 第二部 13 58~20 02 平均24 フリーズ祭り(20回以上) 色々な方が凸してくれた(小安さん、ソルさん、ホリーズさんほか) ニコラジに初めて女性の凸者が ◆51 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/12 2 54 24/42/29 50回放送の反省会 フリーズの改善策 シゲルさん初凸(ほーぷと一緒に) ニコラスがシゲルさんの地方妻に? ◆52 返事がない。だたの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/14 2 16 21/25/21 19/21/19 20/22/20 28/32/32 女狐 久々にえーおーあいさん凸 5分刻みにフリーズ ハッテン場の話 34ですさん、大学合格 ◆53 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/17 2 18 31/51/35 放送方法を”winamp”から”判太ぷれいやん”に変える フリーズ祭りが都市伝説化 えーおーあいさん、ほーぷと3人で夢の対談(しかし、長短時間で終了) 「ジェイルブレイカー」→クソゲー ハッテン場の話(お寺の本堂など) ◆54 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/19 1 51 19/34/28 いつの間にかニコラスの妹がDカップということに 格ゲー話(昇竜拳の出し方) ◆55 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム系でおk?)DJニコラス 10/21 3 12 17/47/20 ゲーム音楽話(クロノトリガー) ホラーゲーム話 ニコラスのwiki完成 炎多留 ◆56 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 10/24 2 46 13/30/21 ほーぷ(彼氏の件で一言)、シゲルさんが凸 本妻vs地方妻 ◆57 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。DJニコラス 10/28 3 35 15/33/21 60回記念放送について考える ゲーム実況のテスト 幼女を処女と読み間違える…orz フェラ=フェラーリ SOS団大喜利 ◆58 深夜のラジオ放送局 DJニコラス 10/31 4 05 14/54/22 「夜にニコラスイチオシのところてん超人が放送していたお( ^ω^) 挨拶しておいたお、いやがられたお」・・・orz 蒼の3号さん初登場 えーおーあいさん、ワリオさんが凸 ワンダーモモーイ、桃井はるこさん カオスでフリーダム放送 ◆58.5 ニコラスらじお 11/1 2 21 13/28/17 映画「サイレン」話 心理テスト→ニコラスは鬼畜攻め レモンティじゃなくて聖水 バター犬 ◆59 返事がない。ただの雑談ラジオのようだ。(ゲーム×アニメ系)DJニコラス 11/2 4 21 19/50/25 映画「サイレン」話 ホラーゲーム話 「ガチ○○リスナーよりも、オタの方が100万倍まし」 →今、ニコラスは全リスナーを敵に回した AIR話 鬱アニメ話 ◆60 DJニコラスの祝放送半周年&60回!リスナーさん、ガチ○○さん、BLに感謝ラジオ 11/3 6 04 36/78/51 第一部放送 様々な方が凸して歌ってくださった ところてん超人さんが初凸