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『結晶の華(フリージングフラワーズ)』 葉仙氷華 「初めまして、かな?私はこの神野支部の責任者の『結晶の華(フリージングフラワーズ)』葉仙氷華と申します。まぁ、キミたちの上司って立場になるからこれからよろしくお願いしますね?」 「あぁ……。〈魔力波と電子の親和性について〉ね。あの資料はこの部屋じゃなくてあっちの大書庫にあるY5の本棚の上から6番目の棚の左端の方にあったはずだからそっちに行ってみたらどうかな?」 「これでも魔道師だからね。あまり舐めないでくれるかな?そこの魔法使い、いや?利己主義なお猿さんら?(黒笑)」 「アイス・グレイス・ラス・フリズ・フリージング」「さぁ。永遠に解けない氷の中で反省しなさい?あぁ、安心してくれたまえ。キミの知り合いには根回ししているし、実践者だから死なないだろう?それにちゃんと私がコールドスリープ状態にするからきちんと反省するように。数年経って反省したら出してあげよう。それでは、おやすみ」 魔道師(メイガス)――第6階梯司書 大法典神野支部責任者 年齢不明 表の顔 神野市立図書館司書 大法典の中でも数少ない魔道師ーー第6階梯の魔法使い。 普段は大法典神野支部にて神野支部の管理・運営や神野市内で発生した魔法災厄の禁書の種類の特定、表の顔として神野市立図書館の司書としての仕事をしている。 彼女は元訪問者であり、魔法の才能がものすごく高いため学院の司書過程を飛び級で卒業し、短期間で第4階級まで上り詰めた。しかし、それからは嫌がらせを受けたのか、それとも結婚した影響なのか、それから永い間第4階梯のまま過ごしていた。 魔法使い同士の夫婦からは珍しく娘3人と息子1人がいて、全員早々に第3階級まで上り詰め、それぞれ活躍している。 最近、自分が普段いる支部にて逸材の異端者を掘り出したことから階級が上がり、元々勤勉で魔法災厄にも直接対応していたのと数々の新しい魔法論文、それを実現できるほどの魔法的素質があるためいつの間にか魔導師の階級まで上がってしまっている。彼女自身も魔法災厄に積極的に対処しており、神野支部の組織自体の評価も高いせいもあって大法典内での彼女の発言力が上がっている。 実際に十数人の魔法使いが同時に魔法を使うことによって展開される封印儀式、【編纂】を様々な条件を満たす必要があるが、一人で展開・維持出来る程の実力を持っている 魔道師の位まで上り詰めているせいか、他の下位の魔法使いに比べて忙しく、たまに神野支部から姿を消すことも。その場合は、副責任者や司書の娘たちに神野支部の管理や運営を任している。 今現在の目下の悩みは、息子が親離れをしてくれず、家族以外の魔法使いの話をきちんと聞いてくれていないこと。 身長は一般女性よりも少し高く、細身である。 2011年に〈大破壊〉が発生した際、禁書回収に奔走していた。
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<~ヽ、 / \ ,.' , ===`、 今年はお菓子もらえるかな(^^ゞ <__( ^。^)y-.。o○ / ,∞ヘ ___l~l_く__/u|__,ゝ // / | ヽ \ \ ./ / /| | |\ ヽ ヽ l l /∩ | | |∩ \| | i l  ̄| ̄ △  ̄| ̄ | | ヽ,| l~~l_l ̄ ̄l_|~~| l / ヽ, ヽ / l/ ゝ、ゝ_l ̄l_/ ノ `ー─── '"´ /ゝ /⌒/" 、⌒ヽ | ∩ ;;; ∩ ;| /ー- 、 ヽ ,, 、WWW;//==ヽ i /,~'''- ( ^。^)/. |/ / .. つO "''-;,,i ,,/ ヽ "''---''''/"''~ ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,, .';;;;;;;;;;;;;;;;;;;'' < ヽ | \ ∠ニニニ`_、 ( ^。^) / ハ ヽ / OO (つ= / ノ ノ(^。^) ― キャピ-☆ `~~'~ \ ∠ ̄\ / ノ~'ヽ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (,,( ^。^) < 未来が見えます。 ( ノつ(☆) | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. | 来年のドルは150円になっているでしょう(^^ゞ ノ_______人 \___________________ ∠ ̄\ / ノ~'ヽ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (,,( ^。^) < 未来が見えます。 ( ノつ(^。^) | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. | 来年のドルは150円になっているでしょう(^^ゞ ノ_______人 \___________________ / \. . . . . . . . . . . . . . . . ... / \. . . . . . . . . . . . . . . .. / \. . . . . . . . . . . . . . . / \. . . . . . . . . . . . .. / -――  ̄ . . . . . . . . . . . . . / / _ ____.. . . . . . . . . . . . . / /, " . \ . . . . . . . . . .. / // \. . . . . . . . . ! /// ∩ ∩ \ . . . .. ¦/, くl | | \ . ; { く ー─-、_ ○ .. i ノノ > \ \ .. ... / /´. . / 7ニ三ミヽ ! ... .. _;< . . . . / /. . . . . . . . . `\ \`_フ ,ィ彡⌒´ . .\ . . . / /. . . . . . . . . . . .. . ヽ、 r‐冖´. . . . . . . . . . . . . .ヽ . .. / /. . . . . . . . . . . . . . . . . . >不、 . . . . . . . . . . . . . . . .丶 . / /. . . . . . . . . . . . . . . . . 厶 Yヽ. . . . . . . . . . . . . . . . . ..i
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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い ほぼ一日中グリフォンを走らせていたこともあり、ルイズ達は陽が沈みきった頃合に港町ラ・ローシェルに辿り着くことができた。 幻獣を世話できる貴族御用達の宿で手続きを済ませると、三人はアルビオン行きの船を都合するべく『桟橋』へと向かう。 『桟橋』の窓口でワルドがその旨を伝えると、返ってきた答えはこうだった。 「……船が出せないだと?」 ワルドが眼を細めてそう言うと、いかにも事務職らしい、細表の男は僅かに怯えた表情を見せた。 「は、はい。少々事情がありまして」 「スヴェルの夜だというのだろう? その分の料金は上乗せする。言い値でも構わん。今すぐ出せるフネを手配してくれ」 凄むようにデスクを指で叩き、ワルドが促した。 しかし男は首を左右に振ると、申し訳なさそうに口を開いた。 「いえ、それとは別に事情がありまして。とにかく、来週……次の虚無の曜日にならないとどのフネも出せません。……というか、」 出さないでしょう、と彼は萎縮交じりに漏らした。 「ちょっと、どういう事なのよ。来週までフネが出ないなんていくらなんでもおかしいわ」 隣に控えていたルイズが身を乗り出して男に詰め寄ると、同じ貴族とはいえ女の子を相手にしたためかいくらか緊張を和らげた男が頭をかきながら答える。 「……『凶鳥(フレスヴェルグ)』が出るんです」 「『凶鳥』?」 ルイズはワルドを見上げるが、彼はルイズに眼をやると肩を竦めて見せる。どうやら知らないらしい。 改めて彼女が男に向き直ると、彼は嘆息しながら語り始めた。 ――約三ヶ月ほど前から、アルビオンを行き来するフネが消息を絶つという事件が相次いで発生した。 そしてその一週間ほど後から、そのフネの航路上にある山野やトリステイン沿岸で消息不明のフネの残骸や積荷などが発見されだしたのだ。 乱気流などが起きるような天候の変化はなかったし、フネを酷使して整備が不十分だったという事もない。 事故が起こる要因はほぼ存在せず――何よりもそれが起こる件数が多すぎる。 つまりは、アルビオンに向かう……あるいはアルビオンから来るフネを狙って襲撃する『何か』が存在しているのだ。 「それが『凶鳥』とやらか。空賊の類か?」 ワルドが顎に手を添えて呟くと、受付の男は力なく首を振って否定する。 「おそらくないでしょう。その、不謹慎な言い方になりますが、陸の盗賊と違って海賊や空賊は『紳士的』ですから」 空や海ではその乗るフネが沈めばその乗員が助かる可能性は限りなく低くなる。 そんな場所で生きる『船乗り』の矜持とでもいうのだろうか、海賊や空賊は他のフネを襲撃し略奪はしても沈めることはほとんどないのだ。 かつてトリステイン・ガリア間の航路を荒らし船舶を沈めていた悪逆極まった海賊が、別の派閥の海賊達によって沈められるという事例すら存在している。 ゆえに通常では、航海中に賊の類に襲われた場合はよほど防衛に自信がない限りは、大人しく捕まってしまった方が命を守る観点で言えば陸上のそれよりも安全なのだ。 「そもそも、ソイツは略奪だとか要求だとかは一切ないらしいですよ」 空の上で行なわれる凶行ゆえに生存者はほとんどいないが、奇跡的に生き残ったメイジの話によるとソレは唐突に現れてただ一方的にフネを襲撃し、そして一方的に蹂躙したのだという。 混乱した状況ゆえにソレが具体的にどのようなモノであるのかも杳として知れない。 ただ、生き残ったメイジが沈んでいくフネの中から、不可思議な光の尾を曳いて飛び去るソレの姿を見ていたそうだ。 ゆえに付いた字名が『凶鳥(フレスヴェルグ)』なのである。 「……飛び去る?」 奇妙な言い回しにルイズが首を捻ると、男は小さく首を振って肩を竦めて見せる。 「らしいです。もっとも、そのメイジは精神的にかなりキてたそうで……いくらメイジとはいえ地上数千メイルに身一つで放り出されたんですから無理もないですが」 「確かにぞっとしないな……」 「アルビオンで反乱起こしてる貴族派……レコン何とか言う奴等の新兵器なんじゃないかって噂ですけど。 どっちのフネもお構いなしらしいですから、手の打ちようがありません」 「……どちらも? それは貴族派にも物を流しているという事か?」 ワルドが眼を光らせて言うと、男はあっと呻いて顔を青ざめさせた。 無言で睨みつけるワルドに男はせわしなく視線を彷徨わせたが、やがて開き直ったように上擦った声を上げた。 「と、とにかく! 他の港はともかくここのフネは週一で船隊を組んで動かすことにしてるんですよ! 軍が護衛をよこしてくれりゃあそんな事せずにすむんですけどね!」 なかば逆切れのように男がワルドに向かって叫ぶと、所属はともかく軍に身を置く彼は忌々しげに舌打ちするだけで男から眼を切った。 「どうしよう……来週まで待ってたら間に合わないわ」 つい先日週が明けたばかりなので、次の虚無の曜日はあと四日ほどもある。 それまで足止めされていては柊達に追いつくどころか王党派自体が戦争に敗れなくなってしまいかねない。 ルイズが不安げに漏らすと、それまで脇に控えていたエリスがおずおずと声を上げた。 「あ、あの……私達が乗ってきたグリフォンではアルビオンに行けないんですか?」 エリス個人としては足止めされるのはむしろ願ったりといった所なのであるが、三人の総意としてアルビオンに行くことが決まっているのでとりあえず案を出してみる。 それを聞いたルイズは期待交じりにワルドに視線を向けたが、彼は軽く肩をすくめて首を振った。 「グリフォンでは無理だな。アルビオンから降下するのならともかく、あの高度まで上る事ができるのは竜種ぐらいだろう」 ルイズは落胆も露に肩を落とす。 ワルドはそんな彼女を宥めるように彼女の肩に手を置くと、二人の少女に向かって言った。 「二人は先に宿に戻っていてくれ。一日中飛び続けて疲れているだろうし、食事もまだ取っていないからね」 「……ワルド?」 「停泊しているフネの方に直接かけあってみるよ。ここで息巻いていても話にならない」 「え。いや、しかしそれは……」 話を聞いていた受付の男は僅かに尻込みしながら呻いたが、ワルドは彼を睨みつけた後これ見よがしに腰に差した杖に軽く手を置いてみせる。 顔面を青くして凍りついた男に、彼は低い声で漏らした。 「あいにく我々は物見遊山でアルビオンに渡る訳ではないのだ。さっさと案内してもらおう」 ※ ※ ※ その後ルイズとエリスはワルドに押し切られる形で『桟橋』を後にすることになった。 宿に戻って食事を取り、二人は部屋へと上がる。 ワルドの計らいで二人は相部屋だったが、状況や経緯もあいまって二人はほとんど会話をしなかった。 エリスはソファに座り込んでただじっと床を見続け、ルイズは窓際の椅子から町並みをじっと見続けていた。 お互いに顔をあわせることはほとんどなかった。 ただ、互いに互いを気にはしているようで時折ちらちらと相手の様子を疑い、稀に視線が合ってしまい慌てて目をそらすという気まずい空気が充満していた。 一種の拷問にも近い時間がどれほど流れたのだろうか、その空気に耐えられなくなったのかルイズが大きく嘆息してエリスに声をかけた。 「……まだアルビオンに行くの、反対なの?」 エリスははっとしてルイズを見やり、僅かに視線を彷徨わせた後ぽつりと返す。 「正直に言えば、反対です。私達が追いかけなくても柊先輩ならちゃんと任務を果たしてくれますから……」 それを聞くとルイズは端正な眉を軽く持ち上げ、やや表情を硬くする。 「……わたしは、貴女ほどヒイラギに信頼を寄せている訳じゃないの。そりゃあ確かに、フーケのゴーレムを倒したりして強いっていうのは認めるけど。 でもこの国の将来を左右するほどの任務をアイツ一人に任せる事なんてできないわ」 「けど、王女様――王女殿下は、柊先輩に任せるっていってたじゃないですか」 「う」 ルイズは言葉を詰まらせてしまった。 エリスの言う通り、王女たるアンリエッタの判断がそうであるならその臣下たるルイズが異を挟むことなどできようはずがない。 彼女にそうするよういったフール=ムールも王家と浅からぬ仲にあり常人を越える存在である事はわかっている。 論議をこねるとルイズの方に分がなくなってしまうのだ。 ルイズは苛立たしげに眉根を寄せどうにか反論しようとするが、上手い言葉を見繕えず口をぱくぱくと動かすことしかできなかった。 じっとこちらを見つめてくるエリスの視線から逃げるように明後日の方向を見やり、ぐっと唇を噛んで――ルイズは諦めた。 「……水のルビー」 「え?」 「姫様がヒイラギに渡した指輪。貴女も見たでしょ?」 「はい。それは見ましたけど……?」 なぜ今になってそれが出てきたのか分からずエリスは首を捻ってしまった。 ルイズは眼をそらしたまま唇を尖らせて言葉を続ける。 「あの指輪が、わたしが虚無の系統に目覚めるために必要なの……多分」 あれが出てこないまま王女の委任、という事になっていればルイズも憤懣やる方ないまでも同行するのを諦めていたかもしれない。 しかし、普通に生活を送っていればまず接触する機会がないだろうそれを眼前に出されてしまった事で引く事ができなくなってしまったのだ。 その情報源が奇しくもアンリエッタが訪れる発端となったフール=ムールなのだから、なおさらその信憑性が高まってしまった。 これが彼女の言の通りの『巡り合わせ』なのだ、絶対に逃すわけにはいかない。 「な……だったら何でそう言ってくれなかったんですか!?」 ルイズの言葉を聞いたエリスは思わず立ち上がり、彼女に一歩詰め寄った。 するとルイズは気圧されたように身を反らし、エリスに眼をあわせないままばつが悪そうに漏らす。 「だ、だって、これはわたしの問題だし……」 今までずっと一人でそうやってきたのだ。 他人に頼るのは彼女の矜持が許さなかったし、そもそも『ゼロ』と呼ばれ嘲られてきた彼女にはそんな風に頼れる相手など実家にいる姉以外に誰もいなかった。 「それならなおさらあの時言ってた方がよかったじゃないですか! それなら柊先輩だって反対しませんでしたよ!?」 「そ、そんなのわかんないわよ!」 「わかります! そういう事情があるんなら柊先輩だって、私だって反対はしません!」 「えっ」 物凄い剣幕で迫るエリスが放った言葉に、ルイズは思わず呆気に取られた声を出した。 眼を丸めたルイズを見て少し落ち着きを取り戻したのか、エリスは大きく息を吐いてルイズの手を取った。 「ワルドさんの言ってた貴族の誇りとかは正直まだよくわかりませんけど……ルイズさんが魔法を使えるようになりたいっていうのは先輩も私もちゃんとわかってます。 だから……反対なんてする訳ないじゃないですか」 「……」 ルイズは言葉に詰まってしまった。 詰まったのは喉に言葉が引っかかっただけではなく、胸の奥にも言葉にできない何かが詰まってしまったからだ。 真摯に見つめてくるエリスの眼がなんだか妙に直視しにくい。 そういう視線を向けられた事があるのは、実家にいる姉のカトレアに見つめられた時ぐらいだ。 彼女にそうされた時は大抵無性に抱きつきたくなってしまうのだが、同年代のエリスにそうするのは流石に恥ずかしかった。 ルイズは困ったように眉根を寄せて視線をさまよわせ、逃げるように眼を反らした後口を尖らせた。 そして努めて平静を装って声を絞り出す。 「ま、まあ、何も言わなかったことについては謝ってあげるわ。でも、あんた達に言ったところで何かわかるとも思えなかったし……」 「それは……確かにそうですけど」 ハルケギニアの事をろくに知らない柊やエリスがそれを打ち明けられても満足に応えられることはないだろう。 実際に水のルビーがでてくるなどという事態を想定する事などできるはずもない。 お互いになんだか気まずくなって沈黙が漂ってしまった。 そんな空気を誤魔化すようにエリスは口を開いた。 「と、とにかく、そういう事情があったんなら私はもう反対しません。ルイズさんにとってもチャンスなんですから」 「エリス……」 ようやく同意が得られてルイズの顔に少しだけ喜色が浮かんだ。 そんな彼女に向かって、エリスは手を差し出した。 「ですから、とりあえず柊先輩に連絡を取りましょう」 「え?」 差し出された手が没収した0-Phoneを要求している事に気付いてルイズは反射的に懐に手を伸ばした。 しかしそれはエリスに0-Phoneを渡すためではなく―― 「そ、それはイヤ」 「えぇ!?」 ルイズは後ずさってエリスから距離を取り、身を隠すように背を丸めた。 「なんでですか!? 事情を話せば柊先輩は反対しないって言ったじゃないですか!」 「い、今更アイツにおもねって合流したいとか言うの!? イヤよそんなの、恥ずかしい!!」 「は、恥ずかしいとかそんなんじゃなくて! 黙って追いかけるよりも連絡取って合流した方が早いし安全ですし!」 「そんな事しなくたってワルドも一緒にいるし、目的地も同じなんだし、大丈夫よ!」 「合流した方がもっと大丈夫ですよ!」 「ダメ! 絶対いやーっ!!」 子供のような駄々に焦れてエリスが詰め寄ると、ルイズは猫のように逃げ出しそうとする。 反射的にエリスは手を伸ばしてルイズの纏うマントの端を掴み、お互いに引っ張られる格好になってもつれるようにベッドに倒れ込んだ。 「ルイズさんが話せないなら私が話しますから! 0-Phone返してくださいっ!」 「いやだったら――ひゃん!? どこ触ってんのよぉ!!」 「ご、ごめんなさ……きゃあっ!?」 二人して奇妙な悲鳴を上げながらベッドの上で押し合い圧し合いを繰り返す。 そんな風にしていると不意にやや強い調子でドアが叩かれた。 絡み合ったルイズとエリスは飛び上がらんばかりに身体を強張らせると慌てて身体を離しドアに眼を向けた。 少しだけの静寂の後、ドアの向こうからワルドの声が聞こえた。 「……すまない。少しいいかな」 「は、はいっ!」 エリスがわたわたとベッドを降りてドアを開けると、帽子を目深に被ったワルドが所在なさげに立ち尽くしていた。 「一応ノックはしていたのだが……取り込み中だったかな」 「い、いえ、大丈夫です……!」 二人は頬を赤く染め、慌てて乱れた服や髪を整え始めた。 頃合を見計らうとワルドは気を取り直すように深呼吸し、話を切り出した。 「フネの件は話がついたよ。少々荒っぽくなってしまったが」 「あ、荒っぽくってまさか……」 「流石に刃傷沙汰を起こすことはないよ。ただまあ、恫喝と言われれば反論の余地はないがね」 不安そうに見つめるルイズとエリスに彼は肩を竦めて苦笑を漏らした。 安堵の表情を浮かべた二人にワルドは続ける。 「とにかく、フネの手配はできた。明日の夜明けと共に出航するから、今の内に休んでおいた方がいい。向こうに着いたらゆっくり休める保障がないからな」 「……わかったわ」 頷いたルイズにワルドは満足気に一つ頷くと、次いでエリスに眼を向けた。 そして彼は帽子を脱いで胸に当てると、恭しい態度で彼女に言う。 「ミス・シホウ」 「は、はい」 「すまないが、少々御主人を借りてもよろしいかな?」 「……えっ?」 「ワ、ワルド?」 「婚約者との十年ぶりの再会を祝う暇もなかったからね。少しゆっくりと話をしたいんだ」 「えっ、と。わ、私は構いませんけど……」 僅かに頬を染めてエリスがルイズを振り向くと、彼女はエリスに更に輪をかけたように顔を紅潮させ視線をあちこちに彷徨わせた。 そういう流れだとルイズがそう考えるのも無理はないし、実際エリスもそう考えてルイズとワルドを交互に見やる。 するとワルドは闊達とした笑いを上げて大仰に手を広げてみせた。 「ちょっと話をするだけさ。式も挙げないうちに手を出して君の御両親に殺されたくはないからね」 「わ、わかったわ」 砕けた調子で言うワルドに、ルイズは少し恥じ入ったようにそう言うとエリスに眼を向けた。 「それじゃ、エリス……」 「は、はい。行ってらっしゃい」 二人の事なのでエリスがどうこうする権利もなく、彼女は半ば呆気に取られたように返すしかなかった。 ワルドは礼に則った態度でエリスの手を取り甲に口付けると、しきりに髪を撫でつけながら歩いてきたルイズを促して部屋を後にした。 エリスは二人が退出した後も、閉じられたドアをしばしぼんやりと見つめ続けていた。 ※ ※ ※ ワルドの部屋に通されたルイズは、窓際のテーブルにある椅子に腰掛けて夜空を眺めていた。 スヴェルの夜が近い事もあり半分ほど重なり合った双月をぼんやりと見つめていると、コトリと軽い音が響く。 顔を巡らせると対面に座したワルドがテーブルに置いたグラスにワインを注いでいた。 月明かりに照らされているからだろうか、彼の落ち着いた仕草は普段接する同級生や教師、柊にもない『大人』を感じさせてルイズは思わず頬を染めて俯いてしまう。 落ち着かない気持ちで膝元の手を見つめた後、改めてワルドに眼を向けた。 するとワルドは嬉しそうに眼を細めてグラスを手に取り、ルイズも彼につられるようにグラスを手にする。 「二人に」 夜の静寂にグラスを重ねた音が沁み入るように響く。 普段なれた動作であるはずなのに、ルイズは少しだけぎこちなくワインで唇を濡らした。 正直味はまったく分からなかった。 「本当に久しぶりだね、ルイズ」 「……そうね。十年ぶり……くらいかしら」 「こうやって落ち着いて話ができたのはそれくらいだね。会っただけなら、僕が二十歳になった時が最後だったか」 「お父様から正式に管理を継いだ時だったわね」 ワルド家の爵位と領地は先代が戦死してすぐに彼が継ぐ事になったのだが、その当時ワルドはまだ若年で爵位はともかく領地の管理を一人で担いきる事は難しかった。 そこでルイズの父親であるヴァリエール公が後見となる事で彼に代わって領地の管理を行なっていたのだ。 そういった意味では彼が正式に『ワルド子爵』となったのは二十歳の時といえたが、これは事情を鑑みてもトリステインでは少々遅いくらいなのである。 「衛士隊に入ってひたすらに軍務をこなしていたからね。後見時代は勿論あれからも結局管理はジャン爺に任せっぱなしさ。 名目こそ僕のものであっても、実質的には彼こそがワルド子爵と言っても過言じゃない」 おどけたように、そして少し自嘲気味にそう言ってワルドは肩を竦めた。 思わず苦笑を漏らしてしまったルイズにワルドも同じように苦笑い、そして彼は瞑目して己が胸に手を添える。 「……だが、そのおかげで僕は今こうしてグリフォン隊隊長という地位を手に入れることができた。家格に拠ってではなく、僕自身の力に拠って。 そう誇れるくらいのことはしてきたつもりだ」 「……貴方は立派だわ」 ルイズは揺ぎ無く語る彼の姿が眩しくて、知らず顔を俯けてしまった。 目の前にいるワルドにしろ、深く語りはしないものの柊やエリスにしろ、揺ぎ無く言葉を紡げる者達は自分の中に確固たる何かを築き上げているのだろう。 だが、ルイズにはそれがなかった。 誇り高くあろうとしていても、それによって何かを成し遂げた事は一度もない。 まるで鳥の卵のようだ。殻だけが固くて、中身は酷く弱くて脆い。 それを理解できないならまだ救いがあったかもしれないが、彼女はそれを理解できていた。 だからこそ一層そういう人達に対して劣等感を抱いてしまう。 ルイズは手にしたグラスを口に付け、出かかったうらやみの言葉と一緒にワインを飲み干した。 一気に飲み込んだアルコールのせいか、体に火が付いたような熱さを感じた。 それを見届けてワルドが口を開く。 「立派ではないさ。何しろ子爵としての義務も婚約者としての責任も全て放り出した結果なのだからね」 「……やめて」 ルイズは眉を歪めて吐き出した。 親の口約束でしかない婚約者を持ち出した事ではなく、そんな台詞を言ってしまえる彼が少し不快だった。 話しかけられるほどに、何の落ち度もない彼を不快に思う自分が惨めになってくる。 だからだろうか、ルイズは少し胡乱気な仕草で頭を揺らすと漏らすように呟いた。 「……わたしは、貴方につりあうような人間じゃないわ。貴方も知ってるでしょう? わたしが昔どんな子だったのか。今どんな子なのかも、聞いた事があるんじゃないの?」 「……」 ルイズの言葉にワルドは僅かに眉を寄せて黙り込み、そんな彼を見てルイズは自嘲じみた息を漏らした。 魔法が使えない『ゼロ』のルイズ。 そんな噂が全く外に漏れないなどという事はありえない。 人の口に戸は立てられないというのは貴族の子弟が通う魔法学院でも例外ではなく――否、それゆえにむしろ広まるのは確実といってもいい。 なぜならとかく貴族と言うものは往々にして醜聞を好むものだから。 ましてそれが名門中の名門と言われるヴァリエール家のモノならば尚更、表向きにはともかく眼の届かない場所ではそれなりに広まっているだろう。 無論実家にもそれは伝わっているだろうが、なまじ事実であるだけに騒ぎ立ててもヴァリエール家自身の品格を損なうだけだ。 「……他者を貶めて悦に入る連中のことなど、気にすることはないさ」 黙りこんでしまったルイズに、ワルドは静かに声をかけた。 彼は真っ直ぐにルイズを見据えたまま、更に言葉を続ける。 「そんな噂を耳にしたことは確かにある。君が姉君達と比べられてデキが悪いと言われてたことも、知っている。 そんな時いつも中庭の池にある小舟でいじけていた事もね」 「……」 その頃の事を思い出して、ルイズは僅かに羞恥を覚えて頬を染めた。 幼い頃、ワルドの言うように姉二人と比べられては逃げ出して拗ねていた。 そんな時に決まって迎えに来てくれたのは、すぐ上の姉であるカトレアと目の前にいるワルドだった。 カトレアは自分も魔法に目覚めたのは貴女ぐらいの時だったと優しく慰めてくれた。 ワルドも優しく、しかし力強く自分の手を取って共に屋敷に戻り、親に取り成してくれた。 家族であるカトレア以外に自分を励ましてくれた唯一の青年だったワルドに、少なからず憧れと好意を抱いていたのは確かだった。 ――あの頃の記憶と同じように、目の前にいるワルドがルイズに手を差し伸ばした。 「だが、僕はあの頃からずっと感じていた。君には他人にはないモノを持っている、と。 そして君と再会した今、その予感が正しかった事……そして僕のやってきた事が間違いではないと確信した」 「え……貴方がやってきたことって……?」 「もちろん、君に相応しい男になることさ。いずれ偉大なメイジになるだろう君と共にいられるようになるために。 ――そう、例えるなら始祖ブリミルとその傍にあったガンダールヴのように」 「……!」 思わずルイズは眼を見開き、身体を強張らせてしまった。 そんな彼女の様子を単に驚きと受け取ったのか、ワルドは僅かに首を傾げて口を開く。 「知らないかい? かつて始祖ブリミルが用いたと言う伝説の使い魔の事を」 「え、ええと、それは知ってるわ。いきなりそんな大きな話を持ち出されて驚いただけ……」 内心の動揺を必死に抑えながら、しかし完全には隠すことができずルイズは少し上擦った声でそう答えた。 自分が実際にその虚無の担い手である……かもしれない事をワルドが気付いているという事はないだろうが、唐突にその話を出されて驚いたのは事実だ。 ワルドはそんなルイズの心境に気付いた風もなく、彼女を真摯に見つめたまま語りかけた。 「僕は使い魔にはなれないが、君を共にあり君を守りたいという想いは本当だよ。そのために僕はこうして力を手に入れたのだから。 君が未熟だというなら、僕が守りそして導こう。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが在るに相応しい場所へ」 「……ワルド」 ルイズの胸の奥がジンと熱くなり、その熱が身体を巡るような感触がした。 彼は今まで一度としてルイズから眼を離す事なく、そして差し出した手を引くことはなかった。 自分を見据える視線もその言葉も力強さも偽りなく純粋なものだった。 かつての憧憬と尊敬がそのまま具現したかのような彼の姿に、喜びのような感情が湧き上がる。 ルイズはどこか熱に浮かされたようにおずおずと手を伸ばし、そして差し出された彼の手に添えた。 軽く握り返してきたその手はやはり力強く、頼もしい。 僅かに手を曳かれて彼女の身体が前に傾いだ。 なんとはなしに浮かんだ予感に彼女はほんの僅かに眉を寄せ、しかし瞳を潤ませてワルドを呆と待ち受ける。 月明かりに照らされた二つの影がゆっくりと近づき―― 「……!」 ルイズははっと眼を見開き、同時にワルドから手を離し慌ててその場から後ずさった。 彼女は椅子を蹴倒したことにも気付かず、驚きに眼を丸くしたワルドをしばし見やってから、顔を真っ赤に染めて呻く。 「あ、ご、ごめんなさい。けど、その、やっぱり、久しぶりに会ったばかりだから、まだ早いんじゃないかって……!」 どこか呆気にとられている風のワルドに見つめられてルイズは更に取り乱し、手をばたばたと動かした。 「早いと言えば明日も早いし、エリスも待ってるから、その、えと……だから……!」 混乱して上手く言葉を出せずに右往左往する彼女の姿を見て、ワルドは苦笑を漏らした。 「……そうだね。再会してその日に、ではいくらなんでも早すぎたかもしれないな。無粋な事をしてしまった」 彼は席から立つとゆっくりとルイズに歩み寄った。 僅かに身を強張らせた彼女に、しかしワルドは優しく彼女のピンクブロンドの頭を撫で付けると宥めるように言う。 「だが僕の気持ちは正真正銘本物だよ。だから、君も考えてくれると嬉しい。この任務を終えたら、もう一度聞こう。今度はちゃんとした形式の言葉でね」 「……」 その言葉がどういう意味であるかを理解したルイズの顔が再び朱に染まった。 彼女は逃げるように彼の元から離れると、そのまま入口の方に駆けていく。 淑女らしからぬ品のない動きだったが、今の彼女はそんな事を気にしていられる心境ではなかった。 「おやすみ、ルイズ」 「お、おやすみなさい、ワルド」 部屋を出る間際に投げかけられた声に反射的にそう言うのが精一杯だった。 ルイズはワルドの顔を見ることさえできずに部屋を後にした。 ルイズが去り一人になった部屋の中でワルドはしばし彼女が出て行った扉をじっと見つめていた。 そして彼はふっと息を吐くと踵を返し、今まで二人が座っていたテーブルに歩を進める。 置きっぱなしになっていた自分のグラスを手に取り一気にそれを飲み干すと、次いで彼はルイズが空けたグラスに眼を移した。 「……まだ早い、か」 そんな呟きは彼以外に届くことはなく、窓から落ちる月明かりと共に消えていった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「アルビオンか……」 空に向かって昇り始めた朝日を全身で受けながら、柊は切り立った崖の端に立っていた。 眼下に広がっているのは霧のように立ち込めた雲と、その隙間に垣間見える青色。 この崖の底は存在しない。 あるのは今彼の天上を覆っているのと同じ空であり、そこから更に数千メートル下にある海面が底と言えば底なのだろう。 浮遊大陸アルビオン。 ファンタジー世界ここに極まれりといったそれを実際眼にしそこにたっている事に、柊は少なからずの感動と興奮を覚えていた。 「凄えな――」 嘆息交じりに柊はそう呟き、 「――シルフィードは」 振り返って少し離れた場所にぶっ倒れているシルフィードを見やった。 結局あれからシルフィードは何かに取り憑かれたように空を走り続け、ついには柊達の駆る箒の後塵を拝する事なくアルビオンまで到達したのだ。 ……もっともそれは柊の方が一旦性能の差を見せ付けて溜飲を下げたので、あえて抜こうともしなかっただけなのだが。 ともかく箒との勝負に勝利を収めたシルフィードではあったが、その代償は大きかった。 一時も速度を緩める事なくアルビオンまでの距離・高度を一気に飛んできたため疲労の困憊具合が著しく、柊が遠目から見てもそれとわかるくらい激しく身体が上下している。 ひゅうひゅうと掠れた呼吸音まで聞こえる始末だ。 「スピードの向こう側にあるゼロの領域を垣間見たのね、きゅいぎゅっ……ダメ、吐きそう……」 「……馬鹿」 息も絶え絶えに小さく漏らすシルフィードに、すぐ傍に腰を下ろしていたタバサは嘆息しつつもどこか嬉しそうに言って頭を軽く撫でる。 くすぐったそうに眼を細めて主人の労りを受けるシルフィードの下に、柊がゆっくりと歩み寄ってきた。 「大丈夫か?」 「……!」 するとシルフィードは途端に牙を向き出し、威嚇するように尻尾を振り回して柊を睨みつけた。 そして彼女は小さく唸りを上げた後、柊に向かって言った。 「……あんたなんかにお姉様は渡さないのね」 「いや、取りゃしねえって……」 嘆息交じりに柊は返したが、シルフィードはそれでも収まりがつかないらしく翼を手足のようにばさばさとバタつかせて叫んだ。 「あんな棒っきれよりシルフィードの方がずっと速いんだから! お姉様の使い魔はシルフィードなのね! お姉様が乗っていいのはシルフィードだけなんだから!!」 「わかったわかった、俺が悪かったよ……!」 頭をかきながら柊がそう言うと、シルフィードは満足気にふんと鼻を鳴らして再び身体を大地に横たえた。 そんな彼女を見ながら、柊がぽつりと漏らす。 「なあシルフィード、一つだけ言っていいか?」 「きゅい?」 「……お前、喋れたのな」 「……………………あっ」 シルフィードがはっとして呻いた。 沈黙がしばし場を支配し、ややあってシルフィードは厳かに口を開いた。 「……あ、あっしはお姉様に作られたガーゴイルなのでやんす」 「なんで三下口調になるんだよっ!?」 柊が思わず突っ込んだが、次の瞬間シルフィードから視線を反らしてうっと息をのんで黙り込んだ。 それにつられてシルフィードもそちらに眼を向ける。 そこには、 「……」 恐ろしいまでの無表情でシルフィードを睨みつけるタバサがいた。 「ヒぃっ、ひぃ!? あ、お、お姉様っ、これは違うのね! やむにやまれぬ事情というか、言っておかなきゃいけないというか!! とにかくそんな感じで……!!」 「……」 「お、落ち着いてお姉様!! あっしの話を聞いて欲しいでやんすのね!!!」 「混ざってる混ざってる、三下口調が混ざってる!」 柊の突っ込みも聞こえないらしくシルフィードはガタガタと震えながらタバサに擦り寄った。 タバサはそんなシルフィードを今までにないほどの完璧な無表情で見据えた後、杖を手にゆらりと立ち上がる。 シルフィードの顔が恐怖に染まった。 ※ ※ ※ きゅおぉーーーーーーーーん…… シルフィードの悲痛な叫びを背後に受けながら柊とタバサは箒でアルビオンの上空を走っていた。 「いいのか、置いてきて……」 「構わない。回復すれば勝手に来るだろうから」 タバサはシルフィードに何もしなかった。何もせずに完全放置して柊を促し出発したのだ。 シルフィードはタバサにかなりご執心のようだったので恐らく一番キツい仕打ちだともいえよう。 主がそうするといった以上柊としてはそれ以上何も言えなかった。 ともかく、柊達はそうして哀れな風竜を置き去りにしてその場を離れ、辿り着いた現在地を知るために近隣の村なり町なりを探し始めた。 「……シルフィードが喋れること、他の人には言わないで欲しい」 眼下に広がる山野を眺めていると、タバサが柊に向かって声をかけた。 「喋る竜は珍しいのか?」 使い魔になった犬やら猫やらは人語を解し一部は喋れるようになるらしいという事は柊も知っている。 アルビオンに行くまでと違いさほど速度を必要としないため、今は柊の後ろに同乗しているタバサは小さく頷いてから言葉を続ける。 「絶滅した、とされているくらいに珍しい。だから、知られれば面倒な事になる」 「なるほどな。わかったよ」 「ありがとう」 ぽつりと呟いた彼女に軽く頷いて答えると、柊は改めて周囲を見渡した。 この場所はアルビオンの完全に端であり、流石に空に浮かぶ断崖絶壁の周辺で生活を営む村落などはないようで見渡す限り緑ばかりだ。 内陸に入ってしまった後で岸壁沿いに行けば港に辿り着いただろうことに気付き、柊は小さく舌打ちした。 「引き返すか……」 箒なら引き返して改めて岸壁沿いに向かうのもそう手間ではない。 するとタバサが背中を軽く叩いて遠目に見える大きな山を指差した。 「あの山沿いに北に向かって。そうしたらおそらく北西に向かう街道にあたる。後は道なりに進めば主街道に合流する」 「わかるのか?」 「地図でしか見たことないけど、多分合ってる。かなり南の方に着いてる……と思う」 「了解」 言って柊は機首を回して少し速度を上げると、タバサの指示通りの進路へと向かう。 やがて彼女の言った通りの街道を遠くに見つけると、なるべくそちらに寄らないようにして道に沿うように箒を走らせる。 人がさほどいない山野ならばともかく街道ではそれなりに人が通るため、自分達の立場を考えるとあまり人目につかない方がいい。 まして飛んでいるのが竜などといった騎獣ではなく箒ならなおさらだ。 更にもう少し進んで今までのそれより更に広い主街道が確認できる場所まで行くと、柊は一旦箒を止めて上空で浮遊したままタバサを振り返った。 声をかけるまでもなく柊の意図を察したタバサが遠目の主街道をなぞるように指を動かす。 「西に行くと工廠の港町ロサイス。北に行けばシティ・オブ・サウスゴータ。そこから北東に首都のロンディニウムがあって、ニューカッスルはその更に北」 「てことはこのまま真っ直ぐ北に行けばニューカッスルには行けるか……?」 アンリエッタから依頼を受けた際に、王党派は現在ニューカッスルに追い詰められているという情報を得ている。 だが、この世界の情報伝達とその誤差がどの程度あるのか定かではない。 戦地を移しているのかもしれないし――あるいは既に敗北し戦争が終結してしまっている可能性もゼロではないだろう。 ならばまずやるべきは現地での情報収集だ。 「……そのシティ・オブ・サウスゴータ辺りか?」 戦地直近のニューカッスルと王都だけに現状ではレコン・キスタの本拠地となっているだろうロンディニウムは色々調べ回るにはかなり危険度が高い。 適度に離れているシティ・オブ・サウスゴータならばいくらか動きやすいはずだ。 柊が尋ねるとタバサはさほど間をおくでもなく「妥当」と頷いた。 やはり彼女はルイズやキュルケと毛色が違って『現場』向きであるらしく、柊としても非常にやりやすい。 二人を乗せた箒は光の尾を引いてアルビオンの空を北に駆けていった。 ※ ※ ※ 「もうだめだっ!!」 陽が中天を過ぎた頃、サウスゴータの中央広場にある噴水を臨むベンチに座り込んで柊は頭を抱えた。 数時間前にこの街に辿り着いた二人は、街の手前で箒から降りると別々の入り口から街へ入り手分けして情報収集をすることにしたのである。 そして柊が得た情報は要約すると二つ。 戦況はレコン・キスタ――国内では貴族派と呼ばれている――が圧倒的に優勢なこと。 王党派はニューカッスルに追い詰められていること。 ……つまり、学院でアンリエッタから得た情報以外は何もわからなかった。 「やっぱシティアドベンチャーにはシーフ職なりエクスプローラー職が必須だったか………」 などと意味不明な事をぶつぶつ呟きながら地面を見つめていると、ふとそこに影が差した。 見上げればそこにタバサが立っていた。 眠たいのか呆れているのか半眼で見つめてくる彼女に、柊はおずおずと尋ねる。 「ど、どうだった?」 「……それなりに」 タバサが言うと柊は歓喜の表情を浮かべて立ち上がり彼女の諸手を取ってぶんぶんと振り回した。 「よくやった! 助かった、ありがとう! お前がいてくれてよかった、マジで!」 「……」 今度こそ呆れた表情を浮かべたタバサは小さく嘆息すると、彼の隣に腰を下ろして得てきた情報を話し始めた。 話が進むにつれようやく柊も本来の表情を取り戻し、彼女が報告を終えると少しの間沈黙してから呟いた。 「……それはおかしいな」 「おかしい」 柊の呟きにタバサも首肯する。 仕入れた情報によると王党派は一週間ほど前にニューカッスルの外れ、大陸の端にある城にまで追い詰められたという事だ。 一週間も持ちこたえているのだから存外に王党派が食い下がっている――と言いたいところなのだが。 情報を仕入れていくほどに明らかにこの状況はおかしい事がわかったのだ。 追い詰められた王党派の戦力は現在恐らく五百は上回らないだろうという話だ。 一方追い詰めている側のレコン・キスタ――貴族派は反乱を起こして以来国の内外から無節操に戦力を取り入れ、今では三万とも四万とも言われている。 ……もはや趨勢を語るのが馬鹿々々しいほどの戦力差だ。 極端な話突撃命令を下しさえすれば、後は指揮官が寝ていても勝利が転がってくるレベルの話である。 にも関わらず依然として王党派は今だ残存しており戦況が膠着している。 「万単位の軍隊なんて維持するだけでも馬鹿にならねえってのにな……」 タバサが話を聞いた傭兵達などは何もしないで食い扶持が稼げると深く考えもせずに喜んでいたそうだが、生憎彼女と柊にとっては喜べる状況ではない。 「……つまり、そんな馬鹿にならない事をやってでも王党派を残しておく意味がある、ということ」 彼女の言葉を否定する材料がないため柊は嘆息を返す他になかった。 自分達が今ここにいる理由を鑑みればその意味は簡単に行き当たってしまうからだ。 このアルビオンでの勝利はもはや覆ることはない。ゆえに彼等の視線はその先――対トリステインを見据えているのだろう。 ゲルマニアとの同盟を阻止するために必要とされる、アンリエッタの手紙。 ものがものだけに王党派を攻め落としてその残骸から探し出すのは極めて不確かで効率が悪い。 よってあえて攻めることをせず、潜入なり何なりをやってどうにか入手しようと策を練っているといった所だろうか。 「そうなるとこっちとしても急がないといけねえんだけど……」 こちらには入手そのものに関してはアドバンテージがあるとはいえ、向こうは既に状況を構築して約一週間が経過している。 できる限り急いで王党派に接触するべきなのだろうが、柊が調べた限り彼等の尻尾すら見出すことができなかった。 期待交じりにタバサをちらりと見たが、やはりというべきか彼女も首を左右に振った。 「……陣中突破しかねえか」 ある意味依頼を受けた時点でほぼ唯一の方法ではあるのだが、正直情報を仕入れた今では更に気が進まない手法だ。 箒の機動性があれば戦陣を抜くことも追っ手を振り切ることもさほど難しい事ではない。 問題はそれによって自分達――外部の者が王党派に接触したことがレコン・キスタに知れてしまうという点である。 この状況でそんな事態が起こればその接触の意味は悟るに十分だろうし、そうなると下手をすれば敵の攻勢を招く恐れすらあるのだ。 「夜になって?」 「いや、飛ぶ時の魔力光は隠せねえから逆にバレる。もうちょっと経って夕陽に紛れて行くのが一番いいだろ。まあ遅かれ早かれってレベルだけどな……」 嘆息交じりに言って柊はベンチから立ち上がり噴水で軽く手を洗った後、タバサを振り返った。 見やれば彼女はベンチに座ったまま、僅かに表情を硬くしてじっと柊を見やっている。 ――いや、正確には柊を見ているのではない。 柊の後ろにある噴水、その更に向こうにある露天の雑踏を見据えていた。 「どうした?」 「……」 柊が尋ねるとタバサは音もなく立ち上がり、その露天通りの方へと歩き出した。 付いて来い、とでも言う風に袖を引かれて柊も彼女の後に続く。 この大陸で起きている戦争ももはや終結に近いというだけに街の露天はさほど重たい空気はなく多くの街人達が賑わっていた。 中には傭兵然とした者達やフードを被り素性を隠している者も少なくない。 どうやらタバサはそんな素性の知れない何者かの後を追っているようだった。 尾行を始めて間もなくタバサが追っている相手がほぼ特定できた。 フードを目深に被って顔を隠し、ローブを着込んでいる人間。 その動きや所作からして、おそらく女。 先を行く彼女は向こうから歩いてきたガタイのいい傭兵と肩がぶつかり、僅かによろめく。 ぶつかった事にも気付かずに歩いていくその傭兵に、彼女は振り返りざまに睨みつけて小さく舌打ちした。 「……!」 その時に僅かに覗いた女の顔を垣間見て、柊はタバサが彼女を追っていた理由を理解した。 その女は眼鏡をかけていた。振り返るときにちらりと、翡翠色の髪が覗いた。 改めてみれば、確かにその動作には見覚えがある。 と、女は不意に脇道にそれて路地裏の方に入っていった。 「バレた」 「だな」 言って二人は頷きあい、歩を速めて路地裏へと足を踏み入れた。 路地裏の常というべきか、表の喧騒が別世界のように静まり返ったその道の奥。 待ち受けるように女がそこに立っていた。 彼女はかけていた眼鏡を外すと、猛禽のような鋭い視線を柊達に向け―― 「あ?」 少し間の抜けた声を出した。 次いで彼女は見るからに動揺を露にし、信じられないものを見るような表情で口をぱくぱくさせた。 「な、なんでお前がここに……!」 「それはこっちの台詞だ。なんであんたがここにいるんだよ、ロングビル先生……いや、フーケって言った方がいいのか?」 深く息を吐きながら言った柊に、彼女――フーケは忌々しそうに顔を歪めた。 ※ ※ ※ 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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【名前】 ショッカー科学者 【読み方】 しょっかーかがくしゃ 【登場作品】 仮面ライダー仮面ライダーディケイドオーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー 【所属】 ショッカー(仮面ライダー)大ショッカー(ディケイド) 【分類】 改造人間? 【登場世界】 アマゾンの世界 【詳細】 ショッカーの科学者。 広義では死神博士なども含まれるが、ここでは狭義の「ショッカー骨戦闘員の色違い」について取り扱う。 【仮面ライダー】 死神博士などの科学者の改造手術をサポートする戦闘員。 雑誌によって「科学者戦闘員」と記載される事もある。 【仮面ライダーディケイド】 「アマゾンの世界」に登場。 岡村マサヒコをナマコ怪人に改造しようとする。 【オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー】 歴史が変わった事で仮面ライダー1号と仮面ライダー2号を洗脳するが、ある科学者によって洗脳を解かれてしまう。
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トルネコ2(PS版のみ) PS版のトルネコ2でのみ使用できる。 矢を扱えないはずの【魔法使い】で、矢を放つことができるという裏技。 やり方は簡単で、 保存の壺に矢を入れる 壺の中の矢を選択すると、「撃つ」のコマンドが表示される これを選択すれば他の職業と同じように矢を放つことができる。 HPを消費せずに遠距離攻撃をしたり、【ひきよせの矢】や【毒の矢】を利用したりと、 魔法使いで【魔のダンジョン】以外のダンジョンに挑む際には結構使える裏技だったのだが、 当然ながらGBA版では削除されてしまった。 なお、この裏技を使うと普段は見られない「魔法使いが矢を放つ」動作を見ることができる。 また、戦士は巻物を読むことができないが、不可視状態の【パルプンテの巻物】を使おうとすると、 「戦士が巻物を読む」動作を見ることができたりもする。
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あなたも魔法使いになれる?? A01「俺さ……子供の頃、魔法使いになりたい! とか言ってたじゃん」 B01「ああ、言ってたな。 画用紙に書いた星のマークを割り箸に貼り付けて『しゅーくりーむぱわー☆めーいくあっ」 A02「そこまで覚えてなくていいんだ。その先を聞いてくれ。実はな……魔法使いになる方法があったんだ」 B02「あ、もしもし、A(エイ)くんのお宅ですか? ちょっとA君、今ウチで具合が悪くなっちゃったみたいで……迎えに来てもらえます?」 A03「熱もない、頭がおかしくなったわけでもない! とりあえず聞いてくれないか?」 B03「魔法使いになれる方法をか?」 A04「ああ……俺もはじめは伊達酔狂だと疑わなかった……なにせ、情報元が2ちゃんだからな……」 B04「お前……兄ちゃんて、年いくつ?」 A05「兄ちゃんじゃねえよ! 2ちゃんだよ! 2ちゃんねる! インターネット掲示板!」 B05「ああ、最近よくニュースとかでやってるやつ? 犯罪予告とかの」 A06「……印象最悪感をバッチリ感じるんだが聞いてくれ。 そこにな……書いてあったんだよ、魔法使いになる方法が!」 B06「そうか……本当だとしたら凄いが……信憑性はどうなんだ? その、にー・ちゃんねるって?」 A07「なんか中国系のサイトみたいだなその伸ばし方…… まあ、2ちゃんねるの管理人自体、『嘘を嘘と見抜けないと』って言ってるんだけどな」 B07「じゃあ嘘じゃん」 A08「断言するなよ! 話終わっちゃうから! で、だ。その魔法使いになる方法、結構いろんな人が言ってるんだよ だから、ちょっと俺も信じてみようかなと。ま、半信半疑ではあるけどな」 B08「ふーん。で? どんな方法なんだ?」 A09「ああ……聞いて驚くな。なんでも……三十路まで、童貞を貫くこと、らしい……」 B09「ふーん、そうか。清い体でいろと」 A10「……この点に関してはボケツッコミはなしなんだな」 B10「いや、俺のばあちゃん、クリスチャンだからさ。よく聞いたよ、そういう話」 A11「えっ、マジで!? なに、魔法の話とかあるの? 聖書って?」 B11「汝、清く生まれたままの童貞であれ……だったかな。 徳の高い行為らしいぞ、ばあちゃんによると。魔法使えるかどうかまでは知らんが」 A12「お前んちのばあちゃんすげえな……しかし、これで信憑性が増したわけだ」 B12「だけど、難しいんじゃないか? その方法」 A13「えっ、なんで? 俺、生まれてこのかた彼女なんてできたことないんだけど」 B13「それを誇らしげにいうのもどうかと思うがな…… お前さ、受験志望、進学校にしたじゃん? 将来は商事会社のサラリーマン志望だったよな?」 A14「ああ……だから?」 B14「だからさ、日本で三十まで独身だと、出世に響くぞ?」 A15「……マジ?」 B15「マジマジ。ばあちゃんから聞いたもん」 A16「お前のばあちゃんホント凄いな! でも、俺、三十路になっても多分相手なんていねえって」 B16「馬鹿だな、『見合い』っていう手段があるんだぜ? ”部長”様にはよ……」 A17「急に部長って何だ?」 B17「A君、きみィ、二十代後半にもなって、結婚していないのはいただけないねえ…… あまり高望みをするようじゃ、いつまでたっても一人前になれんぞっ!」 A18「部長!?」 B18「てなわけで、会社社会じゃ未だ、結婚してない男は半人前扱いなんだそうだ、ばあちゃんによると」 A19「ばあちゃん何やってた人なんだよ。でも……たしかに、ドラマとかでそういうシーン見るよなあ……」 B19「そこでだ、A君」 A20「また部長!?」 B20「取引先の娘さんなんだが……どうかね? いやいや、会ってみるだけでいいんだ!」 A21「で、ドラマとかでは会ってみるだけでは済まないよな、そういう場合……」 B21「なんだって、断る気か!? 会うだけでいいといっているだろう! それとも君、アレなのか? インポなのか? フォモなのか!?」 A22「お前ノリノリだな! というか、ひどいだろ部長! パワハラ!?」 B22「甘いな……これは、俺のばあちゃんの昔の同僚の息子、鈴本さん29歳独身が実際に投げかけられた言葉だ……」 A23「鈴本さんかわいそうだよ! 今 お前によって暴露されて!」 B23「A、これが現実なんだ。やめとけよ、魔法使いなんて…… お前は順風満帆な出世人生を、こんなことで終わらす気なのか?」 A24「いや、まだ俺の出世決まったわけじゃないし……」 B24「謙遜すんじゃねえよ! KO志望の癖に! それともKOの二文字はノックアウトと読めとでも言うのか!? この将来のKOボーイが!」 A25「ちょっと嬉しいなその罵り方! ありがとよ! しかし……やっぱり、魔法使いなんて早々なれるもんじゃないんだな…… とりあえず、先立つ将来のほうが大事だし、俺、あきらめるよ……」 B25「いや、まだ道はある」 A26「え? マジ?」 B26「ああ……魔法学校からの入学通知書を待つんだ」 A27「ねーよ!」 お題:受験・魔法使い・先立つ
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二人の空気は静かに道を歩いていた。 もっとも、何をしゃべっても本人達ぐらいしか聴こえないだろうが。 「ん?」 桃色の羽織を着た男は少し前にいた二人の女性にきづいた。 二人とも髪は赤く、こちらと同じで何もしゃべらず歩いていた。 違う点といえばあそこ周辺の雰囲気がヤバイぐらいである。 「マスター、あれは・・・」 「ああ、おそらく聖杯戦争の参加者だろう。」 空気王は考える。 おそらくあちらのサーヴァントはセイバーやランサーなどの接近戦タイプではない確立が高い。 なぜならよっぽどの事でもない限りあんな雰囲気にならないからだ。 セイバーやランサーは騎士が多い。 騎士とは己の主に尽くす者を指す。例外はあるだろうが開始早々あんな雰囲気にはならないだろう。 次にバーサーカーもあり得ない、というか普通に見て狂化してない。 となるとあとはアーチャーのような遠距離戦タイプかキャスターのような直接戦闘を不得意とするタイプだ。 そして向こうは自分達に気づいていない。 つまりチャンスである。 「よし、撃ってみよう。支給品の拳銃で撃ってくれ。」 「了解しました!」 大声で返事をしているが問題ない。 向こうはこちらに気づかないのだから。 自分達の存在なんか誰も気づくわけがなのだから。 私達は空気なのだから。 桃色の落語家は拳銃に手を添えて・・・ 「・・・」 どちらもあれから一度もしゃべっていない。雰囲気は最悪である。心臓が弱い人は近くにいるだけで死ぬかもしれない。 二人は姉妹である。しかし仲は最悪である。 家の相続に関するときにトラブルがおき、それが元で今では殺し合う仲になっている。 はたから見れば、この聖杯戦争で真っ先に脱落するように見えるだろう。 サーヴァントとしてはキャスターのうえに、見ての通りの仲である。 『!』 ただし 「そこ。」 「出ろ。」 戦闘中に関しては、その限りではなくなるが。 緊急事態の時、人は性格が変わる。 ある者は怯え、ある者は発狂する。 しかし、何回も修羅場を越えてきた者は違う。 己の私情を捨て、どんな事をしてもその事態を乗り越えようとする。 そしてこの二人はよく殺しあっている。つまり、互いの戦い方や能力を熟知している。 皮肉にもそれはこの戦いのうえで強力な武器になる。 「ぐあ!?」 桃色の羽織を着た男は引き金をう引けづに青子の攻撃を受け吹き飛ぶ。 「大丈夫か!」 空気王は急いで吹き飛んだ自分のサーヴァントに駆け寄った。 「意識はないが生きてはいるな・・・。」 男は気絶していただけだった。おそらく地面で頭を打っただけだろう。 しかし 「何故こちらの居場所に気づいたのだ・・・。」 幾度の戦いを超えてきた者は気配に敏感になる。 この二人も例外ではなかった。 ましてや、殺気など気づかないわけも無い。 空気王の完璧なミスだった。 「・・・逃げたか。」 青子がそう呟き、橙子は出した自分の人形を戻す。 それから二人は何もしゃべらない。ただいまさっきのように歩くだけである。 青の魔法使いと橙の人形師を何が待つのか。それは誰にもわからない。 【午前6時00分/日本】 【蒼崎橙子@空の境界】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】支給品一式、人形の入ったホイポイカプセル、人形創りの道具、煙草(この二つは支給品ではありません。) 【思考】 基本: 主催者を殺し、その後に青子を殺す(それまでは取り合えず協力し合う) 1:・・・ 2:式や幹也たちも一応探す(ただしあくまでついで)。 【蒼崎青子@月姫】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】支給品一式 、その他不明 【思考】 基本: 主催者を殺し、その後に橙子を殺す(それまでは取り合えず協力し合う) 1:・・・ ※サーヴァントです(クラス:キャスター)。しかし橙子の令呪は効きません(意地)。 「・・・行ったか。」 空気王は安心して胸を下ろす。 彼等は逃げたのではなくそこにいただけである。 彼等の能力ならばそれだけでも問題は無い。誰も気づかないのだから。 「しばらくは様子見だな。とりあえず、近くの民家で休もう。」 空気王は自分のサーヴァントをかかえ、近くの民家に入った。 【同時刻/日本のとある民家】 【笑点のピンク@現実】 【状態】気絶、頭部にダメージ 【装備】無し 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:カオスロワ、聖杯戦争で活躍して空気脱却 2:私に気付いてください…… 3:あのピンク髪の少女を探す ※サーヴァントです(クラス:アサシン) ※元々の影の薄さとアサシンの技能が合わさって、大抵のものは存在を感じることができないようです。 【空気王@テイルズオブデスティニー】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:笑点のピンクを従えカオスロワ、聖杯戦争で活躍して空気脱却 2:しばらく戦わずに情報を集める。 3:何、気にすることはない
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泣いて欲しくなかった そう思ったのが、恐らくはキッカケだった 泣いている声がして、目がさめた 泣き喚いている声では、ない 静かに、静かに、声を押し殺して泣いている それでも、気付いてしまった むくり、上半身を起こす 傍らにおいていたヌイグルミを引き寄せていると、姉が、こちらが起き上がった事に、気付いた 「ぁ……ご、御免なさい。起こした…?」 「いや、大丈夫だ…それより、セシリア。どうして泣いてるんだ?」 理由は、何となく察していた だが、間違っていたら嫌だから、尋ねる 「……っだ、大丈夫、な、何でも、ないから」 ぐしぐしと涙をぬぐい、姉はそう言ってきた ……嘘つき ヘタクソな、嘘 「当てようか?何故、泣いてたのか」 「………っ」 姉が、耳をふさいだ 聞きたくないとでも言うように それでも、構わず告げる 「俺が死ぬ、って言われたからだろ」 「……ち、違う」 いやいや、と否定するように、姉が首を左右に振る その理由がわからずに、続ける 「…ここまで生きられたのが、奇跡、もう、いつ死んでもおかしくない。俺は、そう言う状態だから」 「ちが、う。違う、違うの…」 「セシリア」 姉の頬に、手を伸ばす 触れた頬は、温かく、濡れている よく見れば、目が腫れているようだった……どれだけ、泣き続けたのだろうか 「いいよ。もう、泣かなくとも。死ぬのは嫌だけど、そうなるのなら、仕方ないし」 「っいや、嫌!!そんな事を言わないで!!」 ぼろ、と 再び……姉の目から、涙がこぼれ出し始めた ぎゅう、とこちらの体を抱きしめてくる 「…セシリア?」 「嫌、嫌、お願い、そんな事言わないで…………………が、死ぬなんて、嫌。私を一人にしないで…」 「父さんと母さんがいるだろ。セシリアには、俺と違って友達だってたくさんいる。一人になんてならないぞ」 「でも!……でも、弟は、あなたしかいないの。あなたは、この世でたった一人の、私の双子の弟なの」 泣きながら、姉は訴え続ける こちらを抱きしめてくる体は、小さく震えていた 嫌だ、と 「…何で」 姉が、我侭を言っている 「どうして……俺が、我慢したのに。セシリアが、我侭言うんだよ」 姉が、我侭を言っているところなんて…初めて、見たような気がした 「だって、だって……嫌、嫌………どうして、こうなっちゃうの?私達、双子なのに。一緒に生まれたのに。どうして、あなただけ……」 姉に、泣いて欲しくなかった もうこれ以上、泣いて欲しくなかった なのに…自分は、一度泣き止んだ姉を、また泣かせてしまった ……自分が、魔法使いだったら、良いのに 涙を止める魔法を使えたら、良かったのに 姉は、いくつか簡単な魔法が使える 物語を読むことで、神々の世界を夢見る魔法を 友達を生み出す魔法だって使える ヌイグルミをつくり、それをこちらの友達に、と与えてくれた ヌイグルミ…いや、違う このクヌートは、自分にとって、生まれて初めての友達だ ……最後に、星を降らせる魔法 星に触れたい、手に入れたいと我侭を言った自分の為に、星を作り上げて降らせてくれた …姉は魔法使いなのだ 自分にとって、姉は自分の為に魔法を使ってくれる、最高の魔法使い その、姉の為に 自分も、魔法を使えたら せめて、この涙を止める魔法だけでも、使えたら…… だが、自分には魔法は仕えない 自分は、魔法使いではないから だから、泣き続ける姉の涙を止める事ができずに ただ、鳴き続ける姉を、見ていることしか出来なかった ……結局 姉は、両親に部屋から連れ出されてしまった その間も、姉はずっと泣いたままだった 「…クヌート、どうして、俺は魔法使いじゃないんだろうな。セシリアとは、双子なのに」 クヌートを手にもち、尋ねる ゆらゆらと、クヌートの長い耳が揺れた 【うきゅきゅきゅきゅ。女の子は、皆、魔法使いなのさ。女の子は誰だって、魔法を使える才能があるんだよ】 クヌートは、姉が、自分の友達に、とくれたのだ だから、喋れる だが、自分にとっては友達だが、両親達や他の人間共にとって、クヌートはただのヌイグルミでしかない だから、自分の前や、姉がいる時だけしか、喋れない そう言う事になっている 「男には、魔法が使えないのか?」 【うきゅー!そんな事はないよ。男の人だって、魔法を使えるさ。だって、ルーンを見つけ出したのは、オーディン様なんだよ?オーディン様が使えたなら、男の人だって魔法を使えるさ!】 「じゃあ、俺も、魔法が使えるようになるのか?」 【できるさ!強く願えば、願い続ければ。必ず、魔法を使えるようになる。強く強く願い続ければ、必ず魔法使いになれるよ!】 ゆらゆら、耳が揺れるたび、クヌートは愉快に喋る …本当は、わかっている 耳が揺れるのは、自分が、クヌートを揺らしているから 喋っている? 違う そんなの、ただの妄想だ わかっている わかっている、けれど 「…願えば」 強く願えば クヌートは、自分の友人 必ず、動ける 必ず、喋れる そう、願い続ければ もしかしたら…… 「………っ」 けほ、と小さく咳き込む 口元に当てた手が……赤く、染まった このままだと、クヌートが汚れてしまう 悪いとは思いつつ、その白い体をベッドの上に放り投げた げほげほ、げほげほと……咳が、止まらない その度、自分は血を吐き出し、あちこち血で汚してしまう 「……あぁ、くそ……」 死ぬのか 自分は、このまま死ぬのか 嫌だ 自分が死んだら、セシリアが泣く セシリアに泣いて欲しくない それに 自分は、結局…このベッドから降りたことなど、ほとんどないじゃないか この部屋から出た事だって、ほとんどない この家から出た事なんて…一度もない そんなの、嫌だ 籠の中の鳥と、一緒じゃないか それは、嫌だ 自分は、もっと自由になりたい 窓からいつも眺めていたあの鳥達のように、自由に、自由に、外へと出たい どこまでも、自由に飛んでいきたい このまま死ぬなんて、絶対に嫌だ!!! 「……魔法……」 自分が、魔法を使う事が、できれば 姉が語ってくれた物語に登場する、神々のように、魔法を使う事ができれば 自分は、きっと、死なずにすむ こんな、すぐに病気になってばかりの体じゃない もっと丈夫な体になって、強くなって見せる 魔法が使いたい 魔法が欲しい 魔法使いになりたい!! たとえ それによって、人間ではなくなるとしても 自分は、魔法が遣いたい 自由になりたい セシリアを泣かせたくない!! 「……クヌー、ト」 自分が投げ出したヌイグルミに、声をかける クヌートは、動かない クヌートは、ヌイグルミでしかないから 「…今から、魔法を使う」 血を吐き出しながら、言葉を紡ぎだす そんな事は無理だ わかっている わかっているが…最後の足掻きのように、口に出す 「お前は、今からヌイグルミではない……いや、以前から、ヌイグルミでは、なかった」 魔法を 魔法を、使おう 自分は、魔法使いだ そう、強く願う この命の、最後の灯火を使ってでも 強く、強く願う 「…お前は、クヌート。俺の使い魔であり、友人。セシリアがくれた、俺の友人だ!!」 がはっ、と 言葉を吐き出すと同時に、大量に吐血した 苦しい 体が、熱い 火あぶりにでもされているような錯覚を覚える 「………うきゅー」 どこからか 声が、聞こえた 「うきゅぅ?……辛い?苦しい?……大丈夫?」 そっと 何かが、触れる それは、ヌイグルミの手 「………え」 じっと こちらを見つめる、目 クヌートが 立ち上がり、こちらに……触れてきている 「うきゅ??」 かくん、とクヌートが首をかしげた 長い耳が、揺れる 「うきゅきゅきゅ?どうしたの?どうして、びっくりしてるの?……魔法を使って、僕を起こしてくれたのは、君なのに」 姉に似た、でもどこか違う声 姉がクヌートを演じていた時に使っていた、意図的に少し高くした声で、クヌートは喋る 「おめでとう!!魔法使いになれたんだね!初めて魔法を使えたお祝いをしなくちゃ!!」 クヌートの言葉で、気付く ………あぁ、もう、自分は人間ではなくなったのだ、と この時、自分は気付いた 自分は、魔法に飲み込まれて………魔法使いになったのだ、と fin 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
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《伝説の英雄 女魔法使い (銀)》 キャラクターカード コスト4/青/CP5000/RANK2 【魔法使い】 ボーナスアイコン RANK+1 [コネクトアタック(8)] このカードがコネクトアタックをした場合、 カードを2枚引く。 まおゆう魔王勇者で登場する青色・【魔法使い】を持つ女魔法使い(銀)。 コネクトアタック8と、コネクトアタックした場合、カードを2枚引くテキストを持つ。 2013年08月22日付の今日の1枚として公開された。 関連項目 女魔法使い (銀) 収録 まおゆう魔王勇者 01-021 R