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トルステイン(3) 北欧神話に登場する人物。 関連: ケティル(2) (父) トルディス (妻) インゲムンド (息子)
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ソルステイン(5) ソルスティン(2)の別名。
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ソルステイン(3) 北欧神話ニャールのサガに登場する人物。 関連: ハル(4) (父) ヨーレイズ (母)
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トルステイン(5) 北欧神話グレティルのサガに登場する人物。 関連: ラングェイグ(3) (妹)
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トルステイン(2) 北欧神話に登場する豪農。
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ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳 ワッパステイ主席万歳
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前ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~ 右京の話と、別の世界から来た人間である証拠として提示した携帯電話の月が一つしかない写真を見た二人の反応は、対照的だった。 コルベールは、目を輝かせて写真に見入り、続いて携帯電話をよく見せてほしいと頼んできた。そして、携帯電話にディテクト・マジックをかけたり、いろいろな方向から見たり、 いろいろなボタンを押して出てきた他の写真や動画、音楽などに「おお、これは素晴らしい!」などと、しきりに感動していた。 一方のオスマン氏は、机に肘をついて手を合わせ、目を閉じていた。何か考えごとをしているようであった。やがて目を開くと、興奮冷めやらぬコルベールに声をかけた。 「コルベールくん。しばらく席を外してくれ」 てっきり異世界の話を聞けると思って、わくわくした様子で待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。 コルベールが出て行ったあと、オスマン氏は重々しくため息をついて、言葉を漏らした。 「これで二人目、か…」 「二人目? 僕以外にも、異世界からきた方がいるのですか?」 いささか興奮した右京をなだめると、オスマン氏はゆっくりと語りだした。 「今から三十年ほど前のことじゃ…森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そのとき、ひとりの男が私を救ってくれた。彼は、見たことのない武器を二本持っていた。 その一本でワイバーンを吹き飛ばすと、その場に倒れてしまった。見ると、ひどい怪我を負っておった。私は彼を学院に運び込み、手厚く看護した」 「その方は、今どこに?」 「残念ながら、看護の甲斐なく、亡くなってしまった。私は、彼が使った一本を遺体とともに墓に埋めて、もう一本を『破壊の杖』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。命の恩人の形見としてな…」 オスマン氏は、遠い目をして続けた。 「死ぬ間際、彼はベッドの上でうわ言のように繰り返しておったよ。『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と。そのときは、怪我で錯乱しているのかと思っておったが… 今にして思えば、彼は君と同様、本当に違う世界から来たのかもしれんな」 「その方がどのようなお姿をしていたか、憶えていらっしゃいますか?」 右京の言葉を受け、オスマン氏は紙を取り出し、記憶を思い起こしながら絵を描いていった。完成した絵を右京に見せる。 右京は、我が目を疑った。 そこに描かれていたのは、第二次世界大戦期のアメリカ陸軍と思われる服装をした男性だった。その手には、二本の筒らしきものを持っている。これが『破壊の杖』だろう。形状や時期的に考えると、おそらく対戦車砲の類だろうか。 いずれにせよ、これで一つのことが明らかになった。 「この絵の人物は、国籍と時代こそ違いますが、僕と同じ世界からやってきた人間です。間違いありません」 右京は断言した。 彼は、オスマン氏にこれまでにない確かな手応えを感じていた。キュルケの紹介は間違っていなかった。 あえてルイズと別れてオスマン氏に会ったのは無駄ではなかった。 オスマン氏はおそらく帰る方法を、少なくとも手がかりを持っているのではないか。 右京は、期待に胸を膨らませて、核心に入った。 「この方は、いったいどのようにしてこの世界へ来たのでしょうか? 僕のように、誰かがこの世界へ召喚したのでしょうか?」 右京の気持ちを察したのだろう、オスマン氏は再びため息をつき、申し訳なさそうに言った。 「わからん。ひどい怪我で、まともに話ができる状態ではなかったからのう。彼がどんな方法でこの世界へやってきたのかは、最後までわからなんだ」 「そうですか…」 声の調子こそ穏やかだったものの、さすがの右京も、オスマン氏の返答には落胆を隠しきれないようだった。色よい反応に期待を寄せていただけに、手がかりがあっという間に消えてしまったことへの失望もひとしおであったろう。 自分と同じ世界の人間が、何らかの方法でこのハルケギニアにやってきていたのだから、来た方法さえわかれば帰る方法も調べれば見つけられると思っていた。 だが、結局その米軍兵士は何も語ることなく世を去ってしまっていた。知る術は、いまや完全に失われてしまったのだ。 オスマン氏が何も知らないも同然の状態では、最初の質問で自分を疑わしい目で見ていたコルベールに聞いても無駄であろう。 「力になれんですまんの。魔法学院の学院長といっても所詮はこの程度。己の不見識を恥じるばかりじゃ…」 オスマン氏は力なく謝った。 「いいえ、とんでもございません。僕の話を信用していただけただけで十分です」 「ありがとう。君がどういう理屈でこの世界に来たのか、私のほうでも調べてみよう。だが、あまり期待はせんでくれよ」 「ありがとうございます」 「まぁ、見つからなかったとしても『住めば都』ということもある。なんなら、嫁さんも探してやろう」 右京は、その言葉には答えなかった。オスマン氏は場を明るくするつもりで言ったのだろうが、今の右京には笑うに笑えない冗談だった。 重い部屋の空気に、しくじりを悟ったオスマン氏が話題を変えようと目を動かすと、コルベールが持ってきたスケッチが目に入った。そして、さっきまで右京のルーンのことで話をしていたことを思い出した。 オスマン氏は、話すかどうか逡巡したが、どうせいつかは本人には話さなければならないことであるし、今までの言動からみるに、この男ならば冷静に受け止めるだろうと考え、話すことを決意した。 「君の左手のルーン…」 「ええ。これについてもぜひお聞きしたかったのです。コルベール先生がこれを『珍しい』とおっしゃっていたのが気になったので、僕なりにこのルーンがどういう意味を持っているのかを考えてみました」 「そうか…それで、君なりに考えて、何かわかったのかね?」 オスマン氏は、右京の言い方が気になって、尋ねた。 「はい。このルーンの字形は、ゲルマン共通ルーンのものとほぼ同じです。それを対応するラテン文字に変換すると、“Gandalf”――“ガンダルフ”と書かれていることまではわかりました」 右京は、懐からノートとペンを取り出すと、上に左手のルーン文字を、その下に対応させるようにラテン文字を書き、それをオスマン氏に見せた。 「なんと…! 君は、ルーンを読めるのか?」 オスマン氏は、魔法の知識など何もないはずの右京がルーンを読めるなどとは思いもしなかったので、驚愕した。 「ですが、僕が知っている“ガンダルフ”は、イギリスの作家J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』『指輪物語』に登場する魔法使いの基になった、北欧神話に登場する魔法を使う妖精の名前か、1970年代に人気を博したレザーブランドの名前くらいしかありません。 この世界での“ガンダルフ”には、どのような意味があるのでしょうか?」 オスマン氏は小さく唸った。 この男は、自分が考えていた以上に豊富な知識と、それらを的確に繋ぎ合わせる聡明さ、そして自身がおかれた異常な状況にも対処できる冷静さを持ち合わせているようだ。 見立ては正しかった。これならば『ガンダールヴ』のことを話しても問題はないだろう。 ややあって、オスマン氏は口を開いた。 「どうやら、君に隠し立てする意味はなさそうじゃな…。わかった、お教えしよう」 オスマン氏は静かに語り始めた。 「実は君が来る直前まで、わしはコルベールくんと君のルーンのことを話し合っておったのじゃ。君が考えているとおり、そのルーンは特別な使い魔のルーンじゃ」 「特別な使い魔…」 右京は、オスマン氏の言葉を繰り返しながらも口は挟まず、暗に続きを促した。 オスマン氏が、机から書物とコルベールのスケッチを出して続ける。 「これは、最も偉大なメイジである始祖ブリミルが使役した伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印じゃ。始祖ブリミルは強力な魔法を持っていたが、その力ゆえに、呪文を唱える時間が長かった。詠唱時間中のメイジは無力じゃ。 そこで、詠唱中に自らの体を守るために用いたのが『ガンダールヴ』なのじゃ」 「なるほど。主の呪文詠唱の時間を守ることに特化した使い魔だったのですね」 右京の言葉に、オスマン氏が頷く。 「そのとおりじゃ。『ガンダールヴ』の姿かたちの記述はないが、伝えられるところによれば、あらゆる武器を使いこなし、並のメイジでは歯が立たぬほどの力を持ち、千人の軍隊を一人で壊滅せしめたそうじゃ」 オスマン氏はそこで言葉を切り、息をついた。右京の様子を見る。 右京は、視線を下に落としていた。頭の中で手に入れた情報を整理しているようだ。 やがて、「一つ、よろしいでしょうか」と、右京が指を立てて質問を求めた。 「始祖ブリミルとは、どういった存在なのでしょうか?」 オスマン氏によると、始祖ブリミルは本名を「ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」といい、ハルケギニアでは神と並んで崇拝される伝説の偉人だという。ハルケギニアとは別の世界からやってきたともいわれ、失われた系統・虚無の魔法を扱い、 『ガンダールヴ』をはじめとする四人の使い魔を従えていた。 そして、死期が近づくと、その強大な力を三人の子どもと一人の弟子に、指輪と秘法という形で分け与えたとされる。現在ハルケギニアに存在する四つの国、トリステイン、アルビオン、ガリア、ロマリアそれぞれの王家は、始祖ブリミルの力を受け継いだ四人の子孫だという (ちなみに、ゲルマニアは複数の都市国家が集まってできた国なので、始祖ブリミルとの関係はない。そのため、ゲルマニア皇帝は他国の王よりも格下に見られている)。 右京は、始祖ブリミルは自分の世界でいうところの釈尊やイエス・キリスト、ムハンマドのような存在と理解した。 「このルーンに、そのような意味があったとは…。どうやら、僕の懸念は正しかったようですね」 「懸念?」 右京の独白の意味をはかりかねて、オスマン氏が問うた。 「はい。僕が一刻も早くあなたにお会いしたかった理由は、たとえ帰る方法がわかったとしても帰れなくなってしまうという懸念を抱いたからです」 「どういうことかね?」 右京は、指を三本立てた。 「きっかけは、僕とミス・ヴァリエールの周りで起きた三つの特別な出来事です」 オスマン氏に促されて、今度は右京が語り聞かせる立場になった。 右京が、左手の人差し指を立てた。眼鏡の奥の目が鋭く光った。 「一つ目は、先ほども言いましたが、昨日コルベール先生が僕のルーンを見て『珍しい』とおっしゃって、スケッチをしておられたことです。他の生徒さんの使い魔にはそのようなことはしておられなかったようなので、気になりました。 現に、僕に刻まれたルーンは、この世界では伝説とされる『ガンダールヴ』のものでした」 そこまで言ってから、右京はオスマン氏に質問を投げかけた。 「オスマン先生。突然の質問で申し訳ないのですが、学院としては、ミス・ヴァリエールにどのような評価をしておられたのですか?」 「ミス・ヴァリエール? ふむ…座学は優秀じゃが、実技は、代々優秀なメイジを輩出した公爵家の出であることを差し引いても、可すらつけがたいというか……こう言ってはなんじゃが、無能というか…」 オスマン氏は非常に言いにくそうにしながらも、ルイズに対する評価を正直に答えた。 「級友の方々も同じ評価を彼女に下し、“ゼロのルイズ”と呼んでいました。その理由は、基本的な魔法すら成功させられず、爆発を起こしてしまうから。そうですね?」 「うむ。そのとおりじゃ…」 「僕が見た限りでも、ミス・ヴァリエールは校舎へ帰るときに『フライ』を使わずに徒歩であったり、部屋の施錠も鍵を使っていたりと、爆発を恐れて積極的に魔法を使おうとはしませんでした。そして今朝は、『錬金』の魔法を使おうとして爆発を起こしました」 本人がいないとはいえ、主に対して身も蓋もない言い方をする使い魔に、オスマン氏は面食らった。 右京はここで、指を二本立てた。 「二つ目は、その『失敗』と見なされている爆発です」 「と、いうと?」 「メイジが魔法に失敗すると爆発するのであれば、ミス・ヴァリエールへの評価にも納得できますが、それなら学院内に爆発の跡があったり、被害を抑える措置がなされていてもよさそうなものです。 ですが、そのようなものは見当たりませんでした。普通はメイジが魔法に失敗した場合は、なんの現象も起こらないそうですねえ」 「……!」 「にもかかわらず、なぜかミス・ヴァリエールだけは魔法を使おうとすると爆発させてしまう。この二つの結果には無視できない大きな落差があります。彼女の爆発現象を単純に『失敗』といってしまうことに、僕は違和感を覚えました」 「むう…そう言われれば…」 右京の説明を聞いたオスマン氏は、目から鱗が落ちる思いだった。自分たちは、ルイズがまともにコモン・マジックすら扱えないという欠点しか見えていなかったが、考えてみればそういう見方も確かに成り立つ。 右京が指を三本立てた。話はいよいよ佳境に入るようだ。 「そして三つ目。その『失敗』ばかりのミス・ヴァリエールが使い魔召喚の儀式で、前例のない人間を召喚し、契約に成功したことです」 オスマン氏は、右京が言わんとするところがわかってきたようだった。右京に確認するように口を挟んだ。 「つまり、君はこう言いたいのじゃな? 君の左手に刻まれた『ガンダールヴ』のルーン、ミス・ヴァリエールが起こす爆発、そして前代未聞の人間である君の召喚と契約…これらはすべて繋がっていると…」 「はい。我々…というよりミス・ヴァリエールの周りで、これだけ特別な出来事が起こっているのは、偶然とは思えません」 右京が、オスマン氏の指摘に肯んじた。 「じゃが、仮にそうだとしても、メイジとしては決して有能とはいえぬ彼女と契約したただの平民にすぎない君が、なぜ『ガンダールヴ』になったのか。それがわからん。君はそこをどう考えておるのかね?」 問われた右京は、「これはあくまで僕の推測ですが」と前置きして、話し始めた。 「ミス・ヴァリエールの起こす爆発は、彼女の極めて特殊な魔法の才能の片鱗なのではないでしょうか」 「特殊な才能?」 「先ほどお話いただいた『ガンダールヴ』の伝説の中で、あなたは『千人の軍隊を一人で壊滅せしめた』と、『ガンダールヴ』に『一人』という単位をお使いになっていました。姿かたちの記述はないとのことですが、 仮に『ガンダールヴ』が人間だったとしたら…」 「…! まさか…」 オスマン氏の表情がこわばった。 さすがは魔法学院の学院長というべきか、右京の思わせぶりな説明から結論を察したようだった。しかし、その結論はオスマン氏にとっては信じがたいものだった。 そんなオスマン氏を意に介することなく、右京は話を続ける。 「『ガンダールヴ』が、失われた系統・虚無の魔法を扱った始祖ブリミルの使い魔であったこと、そして四系統の魔法を扱えないミス・ヴァリエールが、人間の僕を『ガンダールヴ』にしたこと。 それらを考え合わせたとき、僕の中にある可能性が浮かびました」 「き、君は…ミス・ヴァリエールが……」 オスマン氏の体が震えていた。その両目は、今にも飛び出さんばかりに見開かれている。 動揺のあまり喉は渇き、声はかすれ、言葉がうまく出てこなかった。 右京は、オスマン氏の目を見すえて言った。 「ミス・ヴァリエールは、始祖ブリミルと同じ、虚無の系統を扱うメイジなのではないか――僕は、そう考えています」 右京の結論は、オスマン氏も話を聞く中で行き着いてはいたが、口にするにはあまりにもおそれ多いものであった。だから、右京の口からそれを聞かされたとき、オスマン氏は改めて衝撃を受けることになった。 思わず天井を仰ぐ。深い嘆息が漏れる。 いつも飄々としたオスマン氏しか知らないミス・ロングビルが見ていたなら、さぞかし驚いたであろう。 オスマン氏はしばらく黙りこくっていたが、やがて顔を下ろすと、右京に「失礼」と声をかけ、『ディテクト・マジック』を使った。この魔法は、対象が持つ、あるいはかけられている魔力を探知することができる。 結果は……右京はなんの魔力も持っていない、普通の人間であった。 「やはり、ただの平民か…」オスマン氏が声を漏らした。 オスマン氏がこのような行動に出たのは、右京の説明が、途中までコルベールがオスマン氏に力説していたこととほぼ同じだったからであった。だが、碩学として知られるコルベールも、ルイズが始祖ブリミルと同じ虚無の魔法を扱えるのではないか、 ということまでは言及していなかった。 それに加えて、右京がルーンを読めるということがオスマン氏をして、右京はメイジなのではないかという疑念を抱かせたのだった。 「どうされました?」気遣わしげな顔をする右京に、オスマン氏は静かに語りかけた。 「懸念…と最初に言っておったな。それは、どういうことかね?」 「ミス・ヴァリエールが伝説の再来ではないか――その推測が浮かんだとき、もしそれが正しかった場合、我々がどうなるかを考えました」 「それで?」 「もし本当に始祖ブリミルの再来であったとしたら、それをいつまでも隠し通しておくことは不可能です。遠からず公になる日がくるでしょう。そうなれば、王室が放っておくはずはありません。 国内の政争や国家間の外交上の切り札として祭り上げられ、利用されることは容易に予測できます。 そこまで行くと、たとえ帰る方法が見つかったとしても、帰るどころではなくなってしまうでしょう。ですから、そうなる前に、帰る方法を確保しておきたかったのです」 「確かに…。虚無のメイジと『ガンダールヴ』などという格好のオモチャが、宮廷で暇を持て余しているボンクラ貴族どもの手に渡れば、またぞろ戦を引き起こそうとか、ろくでもないことを考えるじゃろうな。 そうなれば、君たちに自由はなくなる」 「大きな力を手に入れれば、それを使わずにはいられない。どの世界でも、人間のそのような弱さは、変わらないものなのかも知れませんねえ」 右京が、わずかに憂いを帯びた声で、オスマン氏に同意した。 「君、このことはまだ誰にも…?」 「はい。お話ししたのは、学院長先生だけです」 「それならよかった。余計な混乱を招かぬためにも、決して口外はせんでくれ。君の主、ミス・ヴァリエールにもじゃ」 「わかっております。そう言われる可能性もあると思いましたので、ミス・ヴァリエールには先に食堂へ行っていただいて、一人で参りました」 言うまでもなかったか。本当に頭のいい男だ。 オスマン氏は、目の前の紳士の、ベテラン教師すら及ばない恐るべき洞察力と推理力に舌を巻くとともに、細かいところまで予測して行動する聡明さに感心した。 「スギシタウキョウくん」オスマン氏は立ち上がると、右京の手を握った。 「突然この世界に連れてこられ、帰る方法もわからない。さぞ困惑しておることじゃろう。さっきも言ったが、私も学院長として、君が帰還できる方法を調べるつもりじゃ。その代わりといってはなんじゃが…」 右京は黙ってオスマン氏の話を聞いていた。その表情は、柔和な笑みをたたえていた。 「どうか君には使い魔として、ミス・ヴァリエールを助けてやってほしい。あの娘は公爵家の名を背負った責任感からくる重圧と、魔法をまともに扱えぬ屈辱と劣等感との板ばさみで苦しんでおる。だがこればかりは教師でもどうにもできぬ。 彼女には、君のように積極的に肯定してくれる、頼れる人間が必要なのじゃ。君は信頼に値する人間じゃ。勝手なことを言っておるのは承知の上じゃが、よろしく頼む…!」 オスマン氏は、握った手を放さぬまま、右京に頭を下げた。 「わかりました。微力ながら、ミス・ヴァリエールの使い魔として、主を守るために全力を尽くすことをお約束します」 右京は穏やかな、しかし力強い声で承諾した。 「ありがとう…。私はいつでも君の味方じゃ。『ガンダールヴ』よ」 オスマン氏は、コルベールにも事情を話し、右京が帰れる方法を探す協力をさせることを約束してくれた。コルベールならば、嬉々として快諾してくれるに違いない。 「ありがとうございます。非常に助かります」と右京が感謝を述べたとき、扉がノックされる音が響いた。 「わたしです、オールド・オスマン。まもなく午後の授業が始まります。三年生への特別講義の時間ですが…」 ミス・ロングビルだった。オスマン氏がはっとなった。 「おお、もうそんな時間か! 君と話しこんでいて、すっかり時間を忘れてしまっておった。すまんのう。昼食を食べそびれてしまったな」 「いえ、心配はご無用です。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。では、失礼いたします」 丁寧に礼を述べ、右京は学院長室を退室した。外でずっと待っていたらしいミス・ロングビルとコルベールにお詫びと礼を述べると、右京は学院長室を後にした。 帰る方法は結局わからなかったが、学院長の協力を取り付けたという意味では、右京にとって十分な収穫があった。それを思えば、空腹感など安いものだ。 そんなことを思いながら廊下を歩いている右京に、声をかけたものがあった。 「あら…? ウキョウさん?」 右京に話しかけたのは、メイドの格好をした素朴な感じの少女だった。カチューシャでまとめた黒髪がかわいらしい。 「おや、シエスタさんでしたか」 右京がシエスタ微笑んだ。どうやら二人は互いを見知っているようだ。 「どうかなさいました?」 「いえ、大したことではありません。話に花を咲かせて、昼食の時間に遅れてしまっただけです」 「まあ。それじゃ、お腹が空いてるんじゃありませんか?」 「お気になさらず。好奇心がうずくと他のことを忘れてしまうのが、僕の悪い癖で…」 そう言い残して去ろうとする右京を、シエスタが引き止めた。 「私についてきてください」 シエスタの申し出を無下に断るのも失礼だと考え、右京はおとなしくシエスタの後についていくことにした。 前ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~
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前ページ次ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~ トリステイン魔法学院の食堂は、その敷地内で一番背が高い、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中には、百人は優に座れるであろう長いテーブルが三つ並んでいる。二年生のルイズたちは、真ん中のテーブルだった。 左隣のテーブルには少し大人びた感じの紫色のマントをつけたメイジたちが、右隣には茶色のマントをつけたメイジたちが座っている。 一階の上にはロフトの中階があった。そこは教師メイジたちの席のようだ。 全員がまだそろっていないからか、皆話に花を咲かせていて騒がしかった。ルイズの周りでは、誰が誰の恋人なのかとか、メイジの盗賊が高名なメイジが作ったポーションを貴族から盗んだといった話をしていた。 右京はルイズの椅子を引いた。ルイズが腰掛けてから、彼は理解した様子で語った。 「なるほど。学院内のメイジは教師も生徒も全員、ここでお食事をなさるというわけですね。ミス・ヴァリエールのクラスが二年生ということから考えて、紫色のマントは三年生、茶色のマントは一年生でしょうか」 右京の頭脳は正常な活動を取り戻したようだ。 「それにしても、さすが貴族が召し上がる食事だけのことはありますねえ。内容も装飾もとても豪華です」 感嘆した右京が言ったとおり、テーブルの中心には大きな鳥のローストが鎮座ましましていた。ワインや鱒の形をしたパイも見える。飾りつけも、いくつもの蝋燭が立てられ、花が飾られ、フルーツが盛られた籠がのっていた。 右京の目を楽しませるにじゅうぶんな煌びやかさだった。 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 右京の様子に気づいたルイズが、得意げに指を立てて解説した。とび色の目がいたずらっぽく輝いている。 「メイジはほぼ全員が貴族なの。ここでは『貴族は魔法を持ってその精神となす』のモットーのもと、魔法と同時に貴族たるべき教育も受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないってわけ」 「『ほぼ全員が貴族』ということは、例外のメイジもいるのですか?」 「ほんと、細かいところに気がつくわね…。いろんな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、身をやつして傭兵になったり犯罪者になったりするの」 犯罪者と聞いた右京は、警察官として興味を抱いた。 「魔法を使う犯罪者とは厄介ですねえ。先ほども、魔法を使う盗賊がいるという話を聞きました」 「ああ、『土くれ』のフーケね。貴族だけを狙って、高価な品や高名なマジックアイテムを盗む泥棒よ。王室衛士隊の魔法衛士も手を焼いてるんですって」 「『土くれ』の二つ名はどういった由来でしょうか?」 「…悪いんだけど、もうすぐ朝食の時間だから、後にしてくれる?」 ルイズは、廊下でのキュルケの一件のせいで少し疲れていた。 話を終えようとした右京の目に、壁際にある精巧な小人の彫像が飛びこんできた。 「すみません、もう一つだけ。あの壁にある非常によくできた彫像は何でしょうか?」 「『アルヴィーズの像』よ。夜になると踊りだすの。この『アルヴィーズの食堂』の名前はあれからきてるのよ」 「なんと、踊るのですか? これは、今夜ぜひ見に行かなければなりませんねえ」 「しっ! 朝のお祈りが始まるわ。頭が高いわよ」 ルイズに注意され、右京はとりあえず空いている隣の椅子に座った。生徒たちが渋い顔を右京に向けた。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」 全員で祈りの声が唱和される。ルイズも目をつぶり、両手をあわせてそれに加わっている。祈りを終えると、一斉に皿に食事をとりはじめた。 右京がルイズに耳打ちした。いつの間にか手に皿とフォークを持っている。 「ミス・ヴァリエール。食堂に他の使い魔が見当たらないのですが、僕はよろしかったのですか?」 「使い魔は普通は外だけど、あんたは人間だから、わたしが特別に取り計らったの」 「それはまことにありがたいのですが、お気持ちだけ受け取っておきます。やはり使い魔の僕が今この場にいるのはよろしくないと思いますので、表で待たせていただきます」 「そう。あ、ちょっと待って。はい」 ルイズが右京の皿にレタスを3枚ほど置いた。 「よく気がついてくれるから、ご褒美」 ありがとうございますと言い残して、右京は退席した。 彼が持っている皿には、元々は申し訳程度に肉のかけらが浮いているスープと、見るからに硬そうなパン二切れという貧相なものだったが、 今しがたルイズがくれたレタスがそれに彩を添えていた。 この皿は、テーブルから取ってきたものではなく、床においてあったものだった。 人間とはいえ、貴族でも客人でもない使い魔という身分の者と同じ卓を囲むわけにはいかないから、床で食べさせるつもりだったのだろう。 失礼極まりないことであるが、今の右京にとってはそんなことはまったく瑣末な問題であった。なぜなら彼の心は、不愉快さを打ち消して余りあるほどの期待感と楽しみに満ちていたからだ。 右京は、ルイズに授業を見せてほしいと提案していた。彼女は最初は乗り気ではなかったが、説得して参加を承諾させた。 右京にとって、ハルケギニアや魔法は彼の好奇心を刺激してやまない魅力的なものであった。帰る方法は当然探すが、どうせならハルケギニアで少しでも多くのものに触れておきたいと考えていたのである。 その第一歩が授業参観だった。 自分の好奇心を満たすためには手段を選ばない。それが右京という男だった。 右京はわきあがる感情をこらえて、朝食に手を伸ばした。 「授業なんて、あんたが聞いても面白くないと思うけど?」 「そんなことはありませんよ。むしろ、どのような話が聞けるのか非常に楽しみです。なにしろ僕の中での魔法は、黒魔術などに代表される呪術的なものか、奇術、手品という意味でのものか、 あるいは妖術や仙道が使う仙術といったイメージしかありませんから。ああ、考えただけで感奮を禁じえませんねえ」 「…あんた、もしかして楽しんでる? あれだけ帰るって言ってたのに」 「もちろん帰りますよ。ですが、異世界に召喚されるのは得がたい体験ですからねえ」 声を弾ませて教室の扉を開ける右京に少し呆れながら、ルイズは教室に入った。 魔法学院の教室は、大学の講義室を石で造ったものと思えばいい。講義を行う教師のメイジが一番下の段に位置し、階段のように席が続いている。 二人が中に入っていくと、先に教室にいた生徒たちが一斉に振り向いた。くすくすと小さな笑いが起こる。 ふと目をやると、キュルケがいた。周りを取り囲んだ男子と談笑していたが、ルイズたちの姿を認めると、笑みを浮かべて小さく手を上げた。 ルイズは、クラスメイトたちの使い魔と自分のそれを比べ、改めて劣等感にさいなまれた。やっぱり連れてこなければよかったと思いながら隣を見ると、使い魔が消えていることに気がついた。 右京は幻獣を連れた生徒と話をしていた。バグベアをまじまじと見つめたり、スキュアやバシリスクを撫でたりしていた。そして、小さなノートを取り出しては一生懸命メモをしていた。 話しかけられた生徒の反応はしたり顔、訝しげな顔、困惑といろいろであった。細かいことを聞かれているのか、辟易している者もいた。 「ちょ、ちょっと! 何やってるのよ!」 暴走する使い魔の裾を掴んで、ルイズは自分の席へ無理やり連行した。教室中が笑いに包まれた。 ルイズは自分の隣の席に右京を座らせた。本来はメイジが座る席だが、また勝手に話しまわられてはたまらない。 「いくら“ゼロのルイズ”でも、使い魔の管理くらいちゃんとしなさいよ」 近くの席に座っていた、見事な巻き髪とそばかすを持った少女が、ルイズを嘲った。 ちなみに、彼女の使い魔はカエルだったので、右京に話しかけられてはいなかった。 「うるさい、『洪水』のモンモランシー」 「なんですって! わたしは『香水』よ! 『香水』のモンモランシー!」 モンモランシーがいきり立った。カエルも主と感情を共有しているのか、盛んに喉を鳴らしている。 「あんたにかまってる暇はないの! ウキョウ! いったい何をしてたのよ? あんたのせいで笑われたじゃない」 モンモランシーを黙らせて、ルイズは右京を小さな声で叱りつけた。 「申し訳ありません。本物の幻獣に触れられる機会などもう二度とないと思うと、矢も盾もたまらなくなってしまいまして。実に貴重な経験をさせていただきました」 右京が謝罪した。だが、満足げな表情からは反省している様子は感じられない。 「勝手なことしないでって言ったでしょ! 人の気も知らないで…!」 ルイズは拳を震わせた。 「…気になさる必要はないと思いますよ」 右京が、ルイズにだけ聞こえる声でつぶやいた。 「え?」 「たとえ今はどう思われていようと、あなたは他の人にはない才能を秘めている。僕はそう思えてなりません」 そう言って、右京はいつもの穏やかな笑顔をルイズに向けた。さっきまでの興奮した様子はどこにもなかった。 ルイズが意味を問おうとしたとき、扉が開いて先生が入ってきた。 中年の女性だった。紫色のローブに背の高い帽子という、いかにも魔法使いといった格好だ。ふくよかな頬が、優しい雰囲気を漂わせている。 女性は教室を見回すと、にっこりと微笑んで言った。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、さまざまな使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズが表情を曇らせて、俯いた。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズが、右京を見てとぼけた声で言うと、再び教室中がどっと笑いに包まれた。 「“ゼロのルイズ”!召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 ルイズがぎりっと歯を鳴らして立ち上がろうとする前に、隣の右京が立ち上がった。 「差し出がましいことを言うようですが、私がここにいるのは、他の方と同じくミス・ヴァリエールが召喚魔法に成功した結果です。その点においては、私も他の使い魔たちとなんら変わりはありません。 どうか先生におかれましては、我が主人が私のことで必要以上に好奇の目にさらされることがないよう配慮していただければ幸いに存じます」 右京の思わぬフォローに、教室がしんと静まり返った。ルイズも、彼の行動に驚いて怒りが解けてしまったので、おとなしく座り直した。 右京はシュヴルーズに一礼し、着席した。小声でルイズに囁く。 「学業第一です。口論になっては、大切な授業時間が少なくなってしまいますからね」 「ウキョウ…」 ルイズはお礼の言葉が出てこず、名前をつぶやくことしかできなかった。 勝手に動き回って迷惑をかけると思ったら、こういった心憎いフォローをしてくるのだから対応に困る。 「私の言い方が悪かったようですね。ミス・ヴァリエール、申し訳ありませんでした」 シュヴルーズが真摯な声でルイズに謝罪した。そして仕切り直すように明るい声で授業開始を宣言した。 「では、授業を始めましょう!」 そう言ってシュヴルーズが杖を振ると、机の上に小石がいくつか現れた。 「自己紹介が遅れましたが、私は今年度からこの学院に赴任しました、ミセス・シュヴルーズです。属性は『土』。二つ名は『赤土』のシュヴルーズ。これから一年、皆さんに『土』系統の魔法を講義します。 では早速ですが、一年次の復習です。魔法の四大系統はご存知ですね?」 シュヴルーズの質問に、金色の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た気障な少年が挙手し、立ち上がった。 「はい。『火』『水』『土』『風』の四つです。ああ、そしてなんたる奇遇! 僕の系統もミセスと同じ『土』! 二つ名を『青銅』のギーシュ・ド・グラモンと申します。お見知りおきを」 ギーシュは芝居がかった口調で流麗に答え、ポケットに入れていた薔薇をくわえてシュヴルーズに流し目を送ると、満足したように席に着いた。 シュヴルーズは、ギーシュに簡単に挨拶を返して、講義を続けた。 「今は失われた系統魔法である『虚無』を合わせて全部で五つの系統があることは、皆さんも知ってのとおりです。五つの系統の中でも、『土』は最も重要なポジションを占めていると私は考えます。 それは、私が『土』系統だからというわけではありませんよ。私の単なる身びいきではありません」 そのとき、「よろしいでしょうか?」という声とともに、挙手した者があった。教室がざわつく。ルイズも目を見張った。 「静かに。なんでしょう? ミス・ヴァリエールの使い魔さん」 指名された右京が立ち上がり、口を開いた。 「杉下右京と申します。『右京』で結構です。『属性』と『系統』には、どういった違いがあるのでしょうか?」 「なかなかいい質問ですね」シュヴルーズが笑みを浮かべた。 『属性』とは、メイジが生まれつき持つ力の傾向のことである。一方『系統』は、魔法自体が属する力の傾向のことをいう。 シュヴルーズの場合は、『土』系統の魔法を使うのに適した『土』属性の魔力を持っているということになる。ただし、実際にはどちらもほぼ同義語として扱われているため、違いを意識することはほとんどない。 「自分自身の属性を把握し、どの系統が適しているのかを知ることは、メイジにとってたいへん重要なことです。使い魔召喚は、そういった意味で大きな意義を持っているのです」 「なるほど。それで召喚儀式は神聖なものとされているわけですね。では、『火』『水』『土』『風』の四つの系統のそれぞれの役割は何でしょうか? 『フライ』や『ロック』といったコモン・マジックといわれるものも四系統に属するのでしょうか?」 教室がざわついた。平民の、しかも使い魔が生徒同様に授業に参加し、魔法について質問をしている異常事態が繰り広げられているのだから、当然といえば当然だった。 「ウキョウ! 座ってなさい!」 「構いませんよ、ミス・ヴァリエール」 右京の袖を引いて座らせようとするルイズを、シュヴルーズが止めた。 「使い魔とはいえ、ここまで積極的に授業に参加してくれる生徒がいるというのは、教師として非常に嬉しいことです。それではせっかくですから、魔法の基礎についても復習しましょう。基本は大事ですからね」 コモン・マジックは系統に関係なくメイジなら誰でも使える基本的な魔法である。鍵の開閉や明かりといった簡単な魔法のほか、「サモン・サーヴァント」「コントラクト・サーヴァント」もコモン・マジックの一種だという。 なお、四系統の魔法は魔法語(ルーン)の呪文を詠唱する必要があるが、コモン・マジックは一般的な口語(コモン)の詠唱によって発動する。 『火』系統は、生活の上でなくてはならない火を操る魔法である。また、戦闘に最も適した系統でもある。 『水』系統は、生命の生存に不可欠な水を操る魔法である。傷や病気の治療といった魔法はこの系統に属する。また、心に作用する魔法もこの系統である。 『風』系統は、風や空気を操る魔法である。他の系統と組み合わせて使うことでより力を発揮するので、最も汎用性が高い系統とされている。ちなみに『フライ』はこの系統に属するので、厳密にはコモン・マジックではない。 ここでシュヴルーズが、重々しく咳をした。 「そして、『土』系統は、万物の組成を司る重要な魔法です。この魔法がなければ、重要な金属を作り出すことも、加工することもできません。 大きな石を切り出して建物を建てることもできなければ、農作物の収穫にも手間取ることでしょう。このように『土』系統の魔法は、皆さんの生活に密接に関係しているのです」 右京は得心がいった。ハルケギニアでは、魔法が彼の世界での科学技術に相当するらしい。メイジが貴族として支配階級にいるのは、彼らが人間の文化的・文明的な社会生活を営むために欠かせないからだろう。 ノートに熱心に書き込む右京を、ルイズをはじめとする周りの生徒たちが奇異な目で見ていた。右京自身が「必要以上の好奇の目」にさらされていた。 「そこで今から皆さんには、『土』系統の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます。一年生のときにできるようになった人もいるでしょうが、先ほど言ったように基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致しましょう」 シュヴルーズは、石ころに向かって杖を振り上げた。そして短くルーンをつぶやくと、石ころが光りだした。光がおさまったとき、机には石ころはなく、代わりにピカピカ光る金属があった。 右京は目を見開き、「まさか…こんなこと…」と驚嘆の声を漏らした。それを聞いた生徒たちがくすくすと笑った。 隣にいるルイズが、恥ずかしそうに頭を抱えた。 「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」 キュルケが身を乗り出して、裏返った声をあげた。 「違います。これはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…」 もったいぶったようにまた咳をして、シュヴルーズは言った。 「『トライアングル』ですから」 「ミセス・シュヴルーズ!」 興奮した声が教室に響き渡った。やはり右京である。 「もういいから…」とルイズが力なくぼやいた。 「なんでしょうか、ウキョウ」 今度はどんな質問が来るのか楽しみだといった表情で、シュヴルーズは指名した。 「『スクウェア』や『トライアングル』というのは、メイジとしてのレベルを示しているのでしょうか?」 「正確に言えば、系統を足せる数を示しています。その数によってメイジのレベルが決まります」 シュヴルーズによれば、例えば『土』系統の魔法は単体でももちろん使えるが、『火』系統を足すことで新しい魔法になるのだという。 一系統しか使えないメイジは『ドット』メイジ、『火』+『土』のように二系統を足せる者は『ライン』メイジ、そしてシュヴルーズの『土』+『土』+『火』のように、三系統を足せる者は『トライアングル』メイジと呼ばれる。 そして、四系統を足せる『スクウェア』メイジが最高クラスのメイジである。ちなみに、同じ系統を足すとその系統の魔法がより強力になるということだ。 「なるほど。ではもう一つ」 質問を重ねる右京に、ルイズは「まだあるの!?」と心の中でつっこんだ。しかし、授業中であり、また右京がこの教室の中で誰よりも勉強熱心な生徒である以上、ルイズに彼を止められる理由はなにもなかった。 「先ほどの『錬金』の魔法では、卑金属を貴金属に変えることができるようですが、いわゆる霊薬、あるいは賢者の石と呼ばれるものを作ることもできるのでしょうか?」 教室は、水をうったような静けさだった。さすがのシュヴルーズも、聞きなれない言葉を次々出されて、目を白黒させていた。 ルイズはとうとう机に突っ伏してしまった。 始祖ブリミルよ。なぜわたしにだけこのような試練をお与えになるのですか。わたしにはこの使い魔を御する自信がありません。 「…そういった専門的なお話でしたら、授業の後か、図書館でお調べになったほうがいいと思います。いかがでしょう?」 「わかりました。どうもありがとうございます」 右京は、笑顔でシュヴルーズに謝辞を述べて、ようやく着席した。ルイズが、顔を真っ赤にさせて右京をねめつけた。 と、シュヴルーズがルイズの名を呼んだ。 「ミス・ヴァリエール」 「は、はい!」 「あなたは、本当にいい使い魔を召喚しましたね。努力家のあなたに影響されてか、とても勉強熱心です」 「あ、ありがとうございます…」 「そこで、『錬金』をあなたにやってもらいましょう」 シュヴルーズがそう言ったとき、教室が再び騒然となった。不穏な空気を、右京は敏感に感じ取った。 「先生! やめといたほうがいいと思いますけど…」 キュルケが、珍しく困ったような声で言った。 「どうしてですか?」 「危険です! ルイズがやるくらいならあたしが…」 キュルケの言葉に、教室の全員が頷いた。 「危険? 『錬金』の何が危険なのですか? ミス・ヴァリエール。失敗を恐れていては何もできませんよ。やってごらんなさい」 「やります!」 ルイズは、緊張と決意を張りつけた顔で立ち上がると、教壇へ歩いていった。 右京は何も言わず、様子を見守っていた。 「ルイズ、やめて!」 顔面蒼白になったキュルケの制止にも、ルイズは聞く耳を持たなかった。 恐怖にかられたクラスメイトたちが、一斉に机の下に潜った。まるで避難訓練でもしているようであった。 いや、一人だけ机に潜らない者がいた。タバサだった。彼女は分厚い本に目を通したまま、混乱する教室を出て行った。 「彼女は…」 右京がそれに気づかないはずはなかった。立ち上がり、タバサの後を追って教室を出る。 タバサは本を読みながら、自分の部屋に向かっていた。後ろから「ミス・タバサ」と声をかけられたが、無視した。 声の主が、タバサの前に立ちはだかった。 「ミス・タバサ、無礼をお許し下さい。ですが、まだ授業は終わってはいません。戻られたほうがよろしいのではありませんか?」 右京に前を塞がれて、タバサはようやく顔を上げた。能面のような無表情であった。 「もう終わる。教室にいると危険」 タバサは、感情も覇気もない声で言った。 「危険? ミス・ツェルプストーもそうおっしゃっていましたね。どういうことなのでしょうか? ミス・ヴァリエールと何か関係があるのですか?」 「すぐわかる」 そう言うと、タバサは再び本に目を落とし、右京の脇をすり抜けて歩いていってしまった。 右京は、今度は無理に引き止めなかった。タバサやキュルケが言っていた「危険」の意味を考えようとしたとき、後ろで爆発音が鳴り響いた。 驚いた右京が振り向くと、教室の扉から煙が漏れ出していた。 教室には火の気やガスはなかった。事故ではありえない。 だとするならば、可能性は一つ。 教室に仕掛けられた爆弾、あるいは爆発魔法が使われたテロだ。 表情を引き締め、右京は教室に走った。 「ミス・ヴァリエール!」 右京は扉を開けるや、主の名を叫んだ。 教室は、阿鼻叫喚の大騒ぎであった。キュルケのサラマンダーが、炎を口から吐いていた。マンティコアが飛び上がって窓ガラスを叩き割り、外に飛び出していった。 そこから大ヘビが入ってきて、誰かのカラスを飲み込んだ。 右京は、急いで教室中を見回した。使い魔たちはともかく、生徒たちは煤で汚れてはいたものの、怪我人はいなかった。 爆発は、教壇周辺で起こったようだ。黒板が歪み教壇は粉々になっていたが、生徒たちの机には被害はなかった。爆発の規模が小さかったのと、 生徒たちが机に隠れて避難していたのが幸いした。 右京は煙が上がっている教壇へ駆け下りていった。教壇にはシュヴルーズと、そしてルイズがいたはずだ。最悪の事態になっていてもおかしくはない。 「僕としたことが…!」右京は、自分がいながら、みすみすテロの被害者を出してしまったことに悔悟をかみしめた。 教壇に着いた右京は、まず倒れているシュヴルーズに気づいた。 緊迫した面持ちで、口と鼻の上に手をかざした。ほっと息をつく。シュヴルーズは気絶しているだけだった。 右京が続いてルイズに目を向けると、彼女は今まさに立ち上がっているところであった。 服が破れてボロボロになってしまっていたが、命に別状はないようだ。 右京は犠牲者が一人も出なかったことに安堵した。 「ミス・ヴァリエール! 大丈夫ですか? 教室は危険です。外に避難しましょう!」 ルイズに早口で伝えると、右京は気絶したままのシュヴルーズを背負い、生徒たちに呼びかけた。 「皆さん! 教室は危険です! 外へ避難して…」 「だから言ったのよ! ルイズにやらせるなって!」 右京の避難指示は、キュルケの叫びに遮られてしまった。 キュルケに続いて、他のクラスメイトたちも口々にルイズを非難しはじめた。だが避難するものはいない。 右京は戸惑いを覚えながらも、再び生徒たちに避難を促した。 「皆さん! 外に避難して下さい! 第二の爆発が起きる可能性があります! 早く避難して下さい!」 「ウキョウ! いいの、たいしたことないから…」 後ろから右京を制止したのは、ルイズだった。 「…どういうことですか?」 「今の爆発はルイズのせいなのよ、ウキョウ! “ゼロのルイズ”のね!」 キュルケが、吐き捨てるように言った。 「ちょっと失敗しただけよ」 顔についた煤をハンカチで拭き取りながら、淡々とした声でルイズは言った。 「何がちょっとだよ! “ゼロのルイズ”!」 「今まで成功の確率ゼロじゃないか!」 「“ゼロのルイズ”! お前のせいで俺のラッキーがヘビに食われたんだぞ! どうしてくれるんだよ!」 クラスメイトたちが猛然と反撃した。 右京は状況を理解した。教室の爆発はテロではなく、ルイズが魔法を失敗したことが原因であると。 タバサやキュルケが言っていた「危険」とはこのことだったのだ。生徒たちがいち早く机に隠れたのも、それを見越していたからだ。 タバサが授業が「終わる」といった理由もわかった。背負ったシュヴルーズを見る。これでは授業を続けることは不可能だ。 「とりあえず、ミセス・シュヴルーズを医務室に運びましょう」 「わたしが案内するわ」 生徒たちの罵倒を背に、ルイズとシュヴルーズを背負った右京は教室を出ていった。 前ページ次ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~
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stain 自作 「コーヒーや紅茶などが起因となる歯の着色汚れ」と 「染料や顔料をアルコールや油に溶いた木材の着色仕上げ剤」に 共通する単語は何でしょう? (2011年2月26日 フェスティバウ ) タグ:言葉 Quizwiki 索引 さ~と