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ディアナ 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 神 魔法 光 ★5 35 2021 874 2625 1062 1037 月光の使者 【全】光属性攻撃2.5倍+ダメージ限界値20%UP+【族】HP1.5倍 ★6 55 2829 918 3806 1221 1193 月灯りの狩猟 【全】光属性攻撃3倍+ダメージ限界値30%UP+【族】HP2倍 詳細 覚醒 70 月女神の聖剣 【全】光属性攻撃3.5倍+ダメージ限界値50%UP+【族】HP2倍+【個】光属性攻撃1.5倍
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第9話 超重神再び ゴッドグラヴィオンが超重剣を手に入れてから数ヶ月、ゼラバイアのミッドチルダ侵攻は止んでいた。 その間に地上本部では兼ねてより計画されていたものを実行に移しており、その計画はほとんど最終段階へと入っていた。 その計画とは数ヶ月前にレジアスが発表したグラヴィオンに変わる対ゼラバイアのロボット計画である。 計画によって作り出されたロボットは5機。現在はその作られた5機のテスト運転をしていた。 「なかなかいい動きだな」 「ああそうだね。素晴らしいよ、ウーノ」 「お褒めの言葉ありがとうございます。ドクター」 スカリエッティの助手であるウーノは頭を下げて褒め言葉を受け取る。 「ですが、あれはまだ完成はしておりません」 「わかってるよ。だがそれでもなかなかのものだよ。後はグラヴィオンの完全なデータがあれば完成だね」 「しかしお前達が選んだパイロットは本当に大丈夫なのか?」 「ええ、大丈夫ですよ。皆優秀なものです。それは中将、あなた自身もわかっているはずですよ」 レジアスがスカリエッティとウーノと話していると、テスト運転で飛んでいたロボット達が全機、3人の近くに降り立ち、 そのうちの隊長機と思われる機体から赤い髪で赤い服を着た小さな女の子がコックピットから降りる。 少女の見た目はリインより少し年上くらいだが生意気そうな顔をした少女がウーノのところに駆け寄る。 「なかなかのものだったわね」 「当たりめえだ。オメエら、あたし達を何のために呼んだんだ?」 その少女は見た目どおりな生意気な口でウーノに話す。 「もちろん、このグラントルーパーに乗ってもらうためだよ。ヴィータ」 「ふん、とりあえず少し休憩に入る。いいな」 「ああ、構わないよ」 ヴィータは機嫌が悪そうにその場を後にする。 ヴィータの態度にレジアスが少々怒りを顕わにしたようにスカリエッティとウーノに尋ねる。 「何故あんなのをパイロットにした?」 「それは彼女が優秀だからですよ」 「それに彼女には何か秘密があるみたいなんですよ」 「秘密だと?」 「ええ……。私達もよくわからない秘密が……」 その一方聖王教会では、ここ数ヶ月ゼラバイアの襲撃がないので穏やかな日常を過ごしていたというとそうでもない。 ゼラバイアがいつ現れるかわからないのでグランナイツは訓練は欠かしていない。しかしグランナイツの面々は今は訓練をしておらず、何をしているのかと言うと……。 「スバル~~」 「ごめんね、ティア」 怒って詰め寄るティアナに必死に謝るスバル。 「ごめんね、じゃないでしょ! 何であんたの事であたし達が巻き込まれなきゃいけないのよ!」 「ひい~~~~~~~~!! ごめんなひゃ~~~~~い」 「まあまあ、ティアナ」 「とりあえず落ち着いて……」 フェイトとなのはがスバルのほっぺを引っ張るティアナをなだめようとするがティアナはやめない。 「さすがに落ち着けませんよ! スバルのせいであたし達こんな格好してるんですよ!」 ティアナが言う「こんな格好」、それはスバルやティアナ、フェイトになのは、それにリインを含むグランナイツの面々全員が聖王教会のシスターの格好をしていたのだ。 (ドゥーエは戦闘以外はほとんどシスター服を着ているので、ドゥーエはカウントしない) ちなみに何でこんな事になったのかと言うと話は数時間ほど前に上る。 数時間前、スバルはシャーリー、アルト、ルキノととあるゲームをしていた。それは『ポーカー』と呼ばれるトランプを使うゲームで役が一番弱かった人が服を一枚ずつ脱ぐというルールの下でやっていたのだ。 ゲームはスバルの完敗であり、スバルは身包みを剥がされ、もう何も着てない状態で勝負を挑む際、もし自分が負けたら「グランナイツ全員がその日はずっとシスターの格好をする」と言ってしまい結果スバルは敗北しこうなったのだ。 そして今は訓練ではなく、いつも他のシスター職員が行っているシスター業務をしているのだ。 「そんなに怒る事じゃないよ」 「それにこの格好も慣れると結構着心地いいしね」 「はい、リインは気に入ったです!」 「ぼ、僕はさすがに……」 ユーノはフェレットの姿をしながらも、リインの遊び心のために少しだけシスターぽくされてしまったのだ。(ユーノは男です) 「まあ、確かにユーノはね……」 「でもなのはママもフェイトママも似合ってるよ」 「「ありがとう、ヴィヴィオ」」 「へへ」 ヴィヴィオはなのはとフェイトが自分とお揃いのシスター服を着て嬉しいのだ。 それから数十分後、ティアナはふと思ったことをクロノに尋ねる。 「ねえクロノさん」 「何だ?」 「ヴェロッサさんはどこに行ったのですか?」 「そう言えば、最近姿見てないね」 なのはやフェイト、スバルにリインにドゥーエもティアナの言葉を聞いてふと思い出す。 ヴェロッサは数週間前から姿を現しておらず、なのは達は何故いなくなったのかの理由を聞いていないのだ。 「ああ、彼なら……」 クロノがヴェロッサの事を思い出している同時刻、時空管理局の本局ではヴェロッサが護衛のシグナムとシャマルと共に色々な部署を回っていた。 「視察、ご苦労様です」 「はい、ありがとうございます」 局員がヴェロッサに敬礼をし、ヴェロッサも敬礼し返す。 「しかし、大変だったな。ザフィーラ」 「何、このくらい問題ない」 ザフィーラと呼ばれる犬、いや狼はシグナムの返事に答える。 「ザフィーラ、お疲れさま。でもヴェロッサさんもこの数週間で最近やってなかった視察をしてるのですもんね」 「それが時空管理局の査察官である僕の務めだよ」 そう、ヴェロッサ・アコースの時空管理局での職務とは査察官だったのだ。 ヴェロッサは数年前から査察官としての仕事をザフィーラや部下や同僚達に任せて、 自身はグラヴィオンのパイロットの教育に専念していたのだが、ここ数ヶ月ゼラバイアが出現しないのを見て、久々の査察官業務をしていたのだ。 しかし査察官としての視察だけがヴェロッサの目的ではない。もう一つ、いや本当の目的と言うべきものがあるのだ。 「しかし、何故ヴィータが未だに見つからないのでしょうか?」 真の目的、それはヴィータを見つける事だ。 「わからん。あいつが地上部隊に転属したという情報は掴んだのだが、それ以降がわからないんだ」 「ヴィータちゃんどうしてるのかしら……」 三人は今ヴィータがレジアスお抱えの特殊部隊に移ったことを知らない。三人が廊下を歩きながら考えていると突然ヴェロッサの方にクロノからの通信が入る! 「ロッサ、ゼラバイアがミッドチルダに現れた!!」 「何!?」 「嘘!?」 「そうか……」 シグナムとシャマルの驚きとまったく違い、ヴェロッサは至って冷静に対応する。 「クロノ、僕がミッドチルダに戻るまで、グランナイツの諸君の指揮を頼む」 「…わかった」 クロノは通信を切る。ヴェロッサはシグナムとシャマルを従えて走る。 「急いで戻るよ」 「「はい!」」 聖王教会では、スバル達がクロノの指示に従って各グランディーヴァに乗る。 「お前達、今度はその格好のままでやる気か?」 クロノが呆れたようにスバル達の格好を見てスバル達に聞く。 スバル達の姿は前の水着姿のようにバリアジャケットの姿ではなく、罰ゲームで着ていたシスター服のままであった。 「だって……」 「『今日一日はシスター服でいる』その罰ゲームは守らないとね………」 「と言うことで行きます!」 スバル達の勢いに負けてクロノはしぶしぶ発進許可を出す。 「仕方ない……。よし、グランナイツ全員発進だ!」 『了解!!!』 グランカイザー、Gアタッカー、Gストライカー、Gドリラー、Gシャドウは各発進口から飛んでいく。 ゼラバイアがやって来た都市では、久々のゼラバイアの出現により避難が遅れてしまい、逃げ遅れた人々が逃げ惑う。 その逃げ惑う人々に向かって、ゼラバイアは攻撃をしようとする。その時! 「おりゃーーーーーーーーーーーー!!」 グランカイザーに乗るスバルがゼラバイアに向かって飛び蹴りを喰らわす。 しかしゼラバイアは飛び蹴りをまともに喰らったと思いきや厚い装甲で身を固めてグランカイザーの蹴りのショックを和らげた。 グランカイザーはすぐに後ろに飛んで体勢を立て直す。 「さあ、早く逃げてください!」 スバルは逃げる人々を先導して避難所に人々を逃がす。逃がし終えるとスバルは先ほど蹴ったゼラバイアを見る。 「何か嫌な感じのゼラバイアだね……」 そのゼラバイアは最初に来たのと姿はあまり変わらないが違う所があるのは、そのゼラバイアの真ん中にはドクロのレリーフみたいなものが、 半分に分かれていて、ゼラバイアの左右にくっついているのだ。先ほどの装甲はそのドクロのレリーフを一つにして固めたようなものだ。 「明らかに印象が悪いわね…」 「敵の装甲は攻撃を拡散させて背後に逃がす結晶構造になっています」 「やはり単体では無理か……」 クロノがルキノの報告を聞いて複雑そうに悩む。 「よーし、じゃあだったら早速合神……」 「合神は無理よ」 スバルが合神をしようとするとドゥーエが無理と答える。 「え? 何でですか?」 「それはね……」 「ロッサがいないからだ」 ドゥーエが答えようとするとクロノが通信に割り込んで答える。 「それってどういうことですか?」 「グラヴィオンに合神するにはロッサの承認がいる。今まではロッサの承認を経てグラヴィオンに合神していたが、今はそのロッサが承認をしていない。だからダメなんだ……」 「だったら早く承認を……」 「ロッサと通信が出来ないのにか?」 「う……」 クロノの回答を聞いてグランナイツの面々は一瞬凍りついたように止まる。 確かにヴェロッサと連絡が取れない以上承認を得るのは難しい。 「だったら根性で補うんです!」 アルトのとんでもない発言にシャーリーが突っ込む。 「アルト、そんな非科学的な発言でスバル達を惑わせちゃダメでしょ!」 「は~い」 「でも根性がダメなら勇気ね」 「「へ?」」 シャーリーの言葉にアルトとルキノは一瞬きょとんとした。 「根性がダメなら勇気で補うのよ!」 「あのシャーリー…さん……」 「よく言うじゃない。最後に勝つのは勇気ある者だってね」 「その通りだね」 突然通信に割り込むものが現れた。その割り込んだ人間はヴェロッサだった。 「ヴェロッサさん、今どこに!?」 「今そっちに向かっているのさ。まあ、そんな事より合神だね」 ヴェロッサはグランフォートレスの艦橋の上につまり外に出ており、自身の持っていたケースを空け、杖を取り出す。 「さあ、目覚めよ超重神! 今こそ、邪悪を砕く牙となれ!」 ヴェロッサは杖を勢いよく振り回し、左手をVサインしながら自分の額に近づけ、杖を持つ右手を前に出し杖を前に突き出す。 「グランナイツの諸君、合神せよ!」 『了解!』 「よっしゃーーーーーーーーー! ファイナル! っじゃなくて………。エルゴ、フォーーーーーーーーーーーム!!」 スバルは思わず掛け声を間違えかけるがすぐにエルゴフォームと呼びなおし、グランカイザーからGフィールドが広がりグランディーヴァが集まっていく。 「超重合神!」 スバルは目の前のパネルを押す。そしてグランディーヴァはグランカイザーと合神し、数ヶ月ぶりにゴッドグラヴィオンが姿を現した。 「ゴッドグラヴィオン……、なのは……」 その様子を訓練場のモニターで見ていたヴィータは人知れずそうつぶやいた。 グラヴィオンは地面についたと同時に両足からアンカー出す。 「ティア、フェイトさん。ダブルグラヴィトンプレッシャーパンチいきます!」 「「OK!!」」 二人の了解と共にグラヴィオンの両腕が高速に回り始め、スバルは敵ゼラバイアにターゲットを絞る。 「ターゲットロックオン、ダブルプレッシャー…」 「「パーーーーーーーーンチ!!」」 ティアナとフェイトが掛け声をあわせ、二つの手がゼラバイアに向かって飛んで行き、ゼラバイアはそれを防ごうと身を固めるも、 二つのパンチを完全には防ぎきれず装甲にひびが入る。 「グラヴィトン、アーーーーーーーク!!」 スバルは間髪いれずにグラヴィトンアークを発射させ、ゼラバイアはボロボロになる。 「今だ!」 ヴェロッサはグランフォートレスの艦橋の中にある超重剣を呼び出す装置を展開させ、自身の持つ杖のクリスタルをとり、装置のくぼみにはめ込む。 グラヴィオンは戻ってきた両腕で空から降りてきた超重剣の柄を握り締め、そしてゼラバイアに向かって振り下ろす。 「超重、ざーーーーーーーーん!!」 ゼラバイアは超重剣により体を斜めに真っ二つに割れた。 「エルゴ、エーーーーーーーンド!!」 スバルの最後の言葉と同時にゼラバイアは爆散する。 すべてが終わり夜明けが来るとスバルはつぶやく。 「また戦いが始まったんですね」 「うん」 スバルのつぶやきになのはが答えた。 ミッドチルダとは違う別の異世界ではとある女性が一人でチェスをしながらつぶやいてた。 「美しいわね。あなたもそう思わない? はやて……」 はやてと呼ばれた女性はチェスをしている女性の元に近づき、答える。 「私もそう思うよ。カリム……」 「今こそあの世界にデュエルの時が……、ふふふ」 それからカリムとはやては不気味な笑いをしばらく続けているのだった。 前へ 目次へ 次へ
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「……やっぱ冷え立てが一番だ」 乾巧は自分の部屋で手打ちうどんをすすっていた、ずるずるずる・・・啜る音が部屋に響く。 一般的に言えば茹で立てが一番上手いのだろうが史上に残る猫舌である巧には未知の世界なのだ。 一口、また一口とすする度に笑顔になる巧。冷たい物を口にすると途端に上機嫌になる 「ん~~! 冷えたうどんもおいしーーい!」 「こらちょっとスバル! あんたちょっと食べ過ぎよ。」 「だっておいしいんだもん、ティアだってわたしがたくさん食べるの知ってるでしょ?」 「さっき食堂でご飯食べたばかりでしょうが」 一人旅が長かったため数多くのバイトをこなして来た巧なので出来ることは結構多い。 ちなみにある程度の料理ならできることは真理にも啓太郎にも伝えていない 理由は至極単純で……もしそのことを知らされたら頻繁に料理当番を任されると思ったのだ。 なんでわざわざ他人の分まで作らなきゃいけないんだ、めんどいんだよ。 第一自分は冷えているものしか食べられないため冷たい物以外を作るつもりは毛頭なかった。 もっともそれが「アイスピック事件」に発展するとは思っていなかったわけだが…… 「だって・・・つゆもおいしいし、ティアだって食べるペース速いじゃない」 「まあそれは……たしかにそうかもしれないけど」 「あーもううるせえな! なんでお前らまで食ってるんだよ! え!?」 テーブルを囲むように座っている巧とスバルとティアナがそれぞれ笊に乗っているうどんを食している。 うどんを食べている時にスバルが匂いを嗅ぎ付けたと思ったら自分の部屋に上がりこんできて…… 大量のうどんがあることを知ったことで友達まで誘ってきて食べているという。 満面の笑みを浮かべて食べているスバルと基本的には黙ってるが箸の進みがいつもより速いティアナ。 伊達に草加雅人に「おまえの料理は美味いから、すぐに飽きる」と口にしたわけではなかった。 「まぁまぁいいじゃん、それに助けてあげたんだから気にしない気にしない」 「……まったくスバルも物好きよね、こいつに何されたと思ってるのよ」 「だからそれは誤解だって、さっき説明したじゃん?」 「まぁあんたが言うならそうなんだろうけど……他の皆はそう思っていないみたいよ」 スバルが話を持ちかけた時はティアナはあっさりついてきたがそれは巧の本心を知るため。 ライトニングのキャロとエリオは確実に巧に対して怒りを募らせている。 あの後巧がなのは達に言い放った言葉を聞いた瞬間は血の気が引いた。 エリオとキャロはどういう事情があろうとまだ子供だ、親とも呼べる人間を大切にしている。 ……その親の大切な友達を悪く言われたとあれば怒るのも当然だが 特にエリオのほうは並々ならない感情が沸き上がっている……憎しみとも呼べるような これはなんか拙そうだと思ったティアナは理由を乾巧に問い質すべきだと思った。 こういうときはフォローしなければならない、スバルの時からもう身体に染み付いている。 自分は新人フォワードの中で一番年上だからなおさらだ。 「構わないぜ、俺は別にあいつらと仲良くなりたいわけじゃない」 「そうなの? ……あんたって本当にわかんないやつよね」 「でも悪い人じゃないことはわかるよ」 「まぁそれは……そうだけど」 初任務のレリック回収事件で彼の戦い方を見ていたら悪いとは一概に言えない。 危険すぎることを命を掛けてまでやり遂げようとしたその姿勢にだけは敬意を表している。 ……他にやりようはなかったのかと聞きたかったがその時は時間もなかった。 改めて巧に聞いてみたが「考えられるような状況か」と言われては黙らざるを得なかった。 「……少なくとも頭は悪いみたいね」 「あ、それは……そうだね」 「殴られたいのかおまえらは」 「それはそうとファイズ……乾巧、でいいんだっけ? ちょっと聞きたいんだけど」 「なんだよ」 「あんたなのはさんのこと嫌いでしょ」 「ああ、それがどうした?」 あっさりと口にする巧に答えを予感していながらも2人は唖然としていた。 普通嫌いかと尋ねられるとお茶を濁すような回答を出すのが普通ではないのか? 嫌いという気持ちがまるで当たり前であるかのような態度はいったい…… 「どうして?」 「なんとなくな」 「見え透いた嘘つくと為にならないわよ」 「なんでそう思うんだ?」 無愛想のままに巧にティアナは溜め息をつきながらだがわずかだが胸を張って答える 「あたしは幻術使い、騙すのが仕事よ? 単純そうなあんたの嘘くらい見抜けなくてどうすんの」 「……で? 単純過ぎる俺の嘘がわかってそんなに嬉しいか?」 「そういう話をしてるんじゃないんだけどね」 「あ、あのティア? 巧君もちょっと落ちついて……」 挑発を交えた言葉には引っ掛からない……あの2人に比べたら遥かに冷静だと巧は感じる。 少し空気が険悪になったと感じたスバルは話題を変えようとしたが そこに突然割り込んできた第三者の声がそれを許さない。 「それは私もちょっと聞きたかったんだよね」 「シャーリーさん……」 「申し訳ありません、盗み聞きをするつもりはなかったのですが」 「グリフィス準陸尉も、どうしてここへ?」 「マッハキャリバーの修理が終わったから探してたのよ、グリフィス君にも手伝って貰って」 いきなりの来客に姿勢を正して敬礼するスバルとティアナだが巧は食べるのをやめないどころか あろうことから麺をすすり続けながら横目で少し見た程度ですぐに視線を麺に戻し 「なんだ、眼鏡1号と2号かよ。言っとくけどこれはやらねえからな」 まるで『用が済んだらさっさとどっかにいけ』と言いたげなぞんざいな対応と態度で追い返そうとした。 今は取り込み中なのだからその反応はある意味自然なのかもしれないが言い方がまずい。 ついいつものように対応してしまっただけなのだがそれがシャーリーの怒りを少し買ってしまった 「……ファイズ君? それが自分のデバイスを修理してくれた人に対して言うことなのかなぁ?」 「何言ってんだ、元々おまえが模擬戦をやれって言ったのがきっかけだろ? 責任ぐらい自分で取れよ」 「な……! 何なのその態度!? あなたね、そんな態度じゃ女の子にももてないわよ!?」 「ああ!? ちょっと待て、関係ねえだろそれは!」 「き、騎士ファイズ・・・シャーリー、もうそれくらいにしたほうが」 見るに見かねたグリフィスが止めに入ろうとしたが2人の毒舌合戦はもう止められない。 ストラーダに加えマッハキャリバーとファイズメモリーの修理で疲れていたシャーリーもだが 先程まで文字通り命がなくなる寸前の戦いをしていた巧のストレスも爆発寸前だった。 「関係あるわよ! 何なのあなた、なのはさん達へのあの態度は?」 「あんな人で無しにはあれぐらいの態度でいいんだよ!」 「人で無し…あなたね! なのはさんのこと何も知らないくせに!」 「ああ知らねえな! でもわかるんだよ、ああいうやつが腹の中で何考えてるかぐらいはな!」 口調が激しくなっていくにつれシャーリーの目も座っていき巧の眉間には遠くでもわかるほど皺が寄る。 売り言葉に買い言葉、その繰り返しで部屋の空気が張り詰めていくことに 耐えられなくなったスバルが強引に巧を引き剥がして言い争いを中断させる。 「巧君、ちょっと待って! シャーリーさんも落ちついてください!」 「あ……ごめんねスバル、私は」 「おい、俺は最初から落ち着いてるぞ」 巧の言葉に再び言い返そうとしたシャーリーだが今度はグリフィスに止められてしまった。 シャーリーが一先ず深呼吸して心を落ち着かせ、改めて巧に詰め寄った。 今度はなぜ詳しい事情を聞く必要があるのか一通り話してからで 「ファイズ君? よく聞いて、あなたは今非常にまずい状況にいるのよ」 そして巧は正直あまり聞きたくもない他人の自慢話としか聞こえない話を聞かされることとなった。 管理局の戦技教導官にして『不屈のエース・オブ・エース』とも呼ばれる 若手トップエリート魔導師の一人である高町なのは一等空尉。 今はリミッターを付けてるとはいえ空戦S+ランクを誇る実力。 機動六課の戦技教官でありスバル・ナカジマの憧れの人で命の恩人、 優しくて面倒見がよくて上司からは信頼され後輩や同僚からは慕われている・・・ 「一応聞いておくけどそれ冗談なのか? 胡散臭過ぎて笑え……がっ!?」 思わず率直な感想を漏らしていた巧の背中をティアナが見様見真似のシューティングアーツで殴った。 巧が思わず罵声を浴びせようとしたがその前に念話での忠告で止められる。 〔スバルに殴られないだけマシと思いなさい、なのはさんはあの子の憧れなんだからね?〕 〔……ああ、知ってるよ。けどそれにしたってありえねえだろそんな話〕 〔有り得ない? 何がよ?〕 〔綺麗事ばっかり並べ立ててるが、そんな人間がいると本気で思ってんのか〕 〔少なくともこの機動六課にいる人達はそう信じてるわよ〕 〔…………〕 背中の変わりに頭が痛くなってきた、あの後結局逃げてなかったスバルに叩き起こされ 前に比べればたいしたことない傷を負いながら連れられて帰ってきた時に どうも周囲からの視線がさらにきつくなっていると思ったがそういうことか。 ……それほどまでに高町なのはの影響力は強いことがわかる、なぜだ? ただの戦技教官なのに。 「高町なのは戦技教官、フェイト・T・ハラオウン執務官、そして八神はやて部隊長……」 どうやらその理由はこの機動六課隊長陣の関係に直結していると巧はシャーリーからの説明で理解した。 要約すると10年前に高町とフェイトがある事件で知り合ってその後友達となり また別の事件で八神はやてと知り合い3人はそれ以来ずっと一緒にいた所謂幼なじみだというもの。 その後は3人揃って管理局に入り皆一線で活躍してきたそうで…… 10年来の親友が今ここで再び揃って夢を叶えようとしている、確かにいい話といえばいい話だ。 しかし・・・逆に考えればこの組織はその3人の思うがままということになるかもしれない。 高町なのはとフェイトに逆らったらそれは八神部隊長とやらにすぐ届いて…… 上に立つものが公私混同するとは思いたくはないがその相手が 相手が10年来の仲良し幼なじみともなると善悪の判断が冷静にできるかどうか怪しい。 現に園田真理はあの草加雅人を拒むことができなかったのだから。 (なんだよ、たったの19歳で部隊のトップって……いったいどんな反則技使いやがったんだ?) 有り得ないことだらけの世界に飛ばされたことを巧は思わず笑いたくなるほどに後悔した。 それ以前にまず年端もいかない子供を平然と働かせる管理局の常識から疑ってしまう。 どちらかといえばオルフェノクが平然と暮らしてる世界のほうがマシだとさえ感じる。 しかも不思議なことにその認識が間違っているとはどうしても思えない。 「ねえファイズ君、あなたいったい何が気に入らないの?」 「……気に入るわけないだろ、あんなことしやがって」 「あんなこと・・・?」 「………」 怒りを隠さない巧の表情に驚いたのはシャーリーだけではなく、スバルとティアナも唖然としていた。 特にスバルは先程巧の優しい表情を見ていただけにその表情に恐怖を感じる しかし巧の目からは憎しみは感じられない……ただ純粋に怒っていただけだと思う。 怖いけど……しかしその反面で彼の感情に人間っぽさを感じられて嬉しく思うのはいけないことだろうか? (もしかしたら、巧君もいろいろ悩みながら生きてるのかもしれないな……) 「あのねファイズ君、そんな言葉で納得・・・」 「する必要ねえだろ。もういいから帰れ」 「シャーリー、ちょっと待ってくれ」 スバルがそんなことを考えてる間にもシャーリーがしつこく聞き出そうとしていたが 突然に前に出てきたグリフィスの取った行動に動揺を隠せない巧。 巧だけでなくスバルやティアナは勿論、幼なじみのシャーリーですら驚いていた。 「グリフィス君……!?」 「騎士ファイズ、本当のことを教えてください。お願いします」 「・・・よせ、なんでそこまでする必要があるんだよ」 「あなたを憎みたくないからです」 騒動の原因となっている人間に向かって頭を下げている。その光景に面食らってた巧は かろうじて言葉を出すことしかできずにいた、いつもの言動はそこにはない。 ただ驚いている。誰かに頭を下げられた記憶がない巧にとっては異様だったのだ。 いつまで経っても頭を上げようとしないグリフィスに巧は観念するべきかどうか迷った。 向こうが諦めるまで粘ると言う手もあるがこういう実直なやつほど頑固な人間が大半である。 どうすればいいのかしばらく考えたが……やがて観念したのか巧が溜め息をつく。 「あーもうわかった、わかったから頭上げろ。頼むから上げてくれ、シャーリーが睨んでるんだよ」 「え? シャーリー?」 「違うって! 私は別にファイズ君を睨んでなんかいないって」 「冗談だよ……ったく、こうでもしねえと頭上げないだろうがロウランの奴は」 巧の言葉に釣られて頭を上げてしまうグリフィスを見てまた溜め息をつくが別に怒ってはいない ……むしろ悔しいと思う、熱い茶碗蒸しを食べたことでで口の熱さと共に罵詈雑言を吐き出しつづけ 真理の怒りを買いすべての料理を凍った状態で出されても謝らずにアイスピックで砕いて食べ続けた日々を。 あの気持ち悪い食感と戦い続け我慢したというのに我慢比べで負けてしまったことが悔しい。 しかし言い出してしまったことは仕方がない、とにかくグリフィスとシャーリーをベッドに座らせた。 「……で、俺は何を話せばいいんだよ」 「とにかく洗いざらい白状したら? 全部吐いちゃえばスッキリするかもよ」 「ちょっとティアそんな言い方……」 「それもそうだな、じゃあ何がいいんだ」 「やっぱりあなたがなのはさんを嫌ってる理由から」 またもや溜め息を付きながら『やっぱりおまえもそれか』といった感じの態度を見せる巧だが どうやら本当に観念しているらしく実にあっさりと話し始めた。 実際はもう隠すのもだんだん面倒くさくなっていたというのもあるだろうが。 しかし口を開いた巧の最初の言葉は、意外にもスバルとティアナへの質問だった。 「スバルに……ランスターだっけか? おまえらはこの前レリック回収任務の時あのヘリの中にいたんだろ」 「へ? うん、もちろん。それが初出撃で……先になのはさんが出撃して制空権を確保」 「実際はフェイト執務官やあんたが大半を倒しちゃってたみたいだけどね」 スバルとティアナも答えを返すのを見て肯く巧、グリフィスとシャーリーもそれは認めている。 しかし初遭遇の時はロングアーチ全員が何が起こっているのか理解していなかった。 現場にたまたま居合せた魔導師がガジェットと戦っているものだと考えたが 通信がまるで繋がらない事にようやく事の異常を知ったのだから。 まあそれは到着したライトニング1ごとフェイトと聖王教会からの連絡で味方だとわかったのだが。 「……それでだ、なんつったっけな? あの桃髪の子供と俺を怒鳴ってた素早しっこいガキ。」 「それっとエリオとキャロのこと?」 「俺がお前らと一緒にあのでかいのを倒す前に、そいつらが落ちていった時のことだよ」 「え? ……それが、あんたがなのはさんを嫌う理由?」 その言葉に頷く巧。ライトニング3と4、エリオとキャロのことがなのはを嫌う理由に繋がっている? ティアナの質問には答えず巧はさらにスバルに向かって詳しい事を聞き出していた。 隊舎に帰る途中に散々聞かされた高町なのはのことをもう一度だけ確認。 「おいスバル、あの高町がヘリの中でチビ2人になんて言ってたのかもう一度教えてくれ」 「え? あ、うん……わたしが覚えてる限りじゃたしか……」 『離れてても通信で繋がってる、一人じゃないからピンチの時は助け合えるし キャロの魔法は皆を護ってあげられる優しくて強い力なんだから』 「あー合ってる合ってる、確かにキャロに向かってそんなこと言ってたわね」 「けどそれがどうしてなのはさんを嫌う理由に……」 「あのチビ2人と竜が落ちていった時、あいつは言ったんだよ」 『発生源から離れればAMFは弱くなる、使えるよ……フルパフォーマンスの魔法が!』 スバルを逃がし大型ガジェットとの戦いで苦しめられていた時に見た光景が目に焼き付いている 放り投げられた男の子を追って飛び降りていった女の子を見た時は心が冷えた あそこで竜が巨大化して二人を乗せて飛んでたからいいようなものを…… 「何が助け合えるだよ、ふざけやがって……もし飛べなかったらどうする気だったんだあいつは」 「でもキャロがフリードの本当の姿を引き出すのをわかってたなら……?」 「先のことなんてわかるわけねえだろ!!」 「っ!?」 「しかもあいつ……あの2人が落ちていった時、笑ってやがった。嬉しそうにな!」 「巧君…」 「あの女は助けにもいかないで、敵がいなくなった空でただ笑ってやがった」 最後に「許せるかよ、これが……!」とだけ口にしてそれから後は押し黙ってしまった。 これらが『高町なのはを嫌う理由のすべて』だが巧の気持ちは伝わったのかどうかはわからない。 なのはの考えを巧が知ることのないように、きっと巧の気持ちを六課の人間が知ることはないだろう。 まったくの他人の言葉よりも『誰もが認める無敵のエース』が取った行動を信じるはずだ。 “死ぬ”ということが実際どういうことなのか、たぶんこの世界の魔導師たちにはわからない。 非殺傷設定などという馬鹿らしいものがあることから多少は理解していた。 災害で死ぬのならともかく誰かを殺そうとしたり殺されそうになるなんてことはきっと想像したこともない。 すべての希望を奪われて、闇の中で死んでいった……自分が殺した木場勇治。 そのギターの才能を妬まれ、他の学生たちから腕を切り裂かれた海堂直也。 そして巧も実際人としての生があんなことで終わってしまうなんて想像もしていなかった。 「……どうだ、これで満足か? 全部話したからもういいだろ」 この気持ちを誰かに理解されようなんて思っていない。中途半端に理解されるよりかは誤解されたほうがいい。 これでまた周りの人間は巧から離れ続けるだろう、それも構わない、もう慣れた。 最初から最後までずっと一人……それは今まで他人を避けてきたころと変わらない。 だから敵を倒してさっさとここから離れて元の世界に帰ること、それだけを優先させる。 呆気に取られた表情を見せるグリフィスと冷やかな目で見つめるだけのシャーリー 何かを深く考え込んでいるかのように視線を落とすティアナそして悲しそうな目で見つめるスバル。 そのすべての視線が突き刺さっても、今の巧には痛くも痒くもない。 かつて勇治が迷い込んだ光の見えない闇の中でも、巧は戦うことを止めるつもりはなかった。 前へ 目次へ 次へ
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第10話「聖剣の騎士Ⅰ」 ――四日目 AM5 15―― 機動六課に出撃要請が下ったのは、太陽が昇り切らないほどの早朝のことだった。 はやては執務室のデスクに腰掛けるなり、画面に要請の内容を表示させた。 ぼうっとした眼といい、頭の横で跳ねた髪の束といい、明らかに寝起きの出で立ちだ。 イスト・アベンシスの一件が発生したのが昨日の午後三時半。 すぐさま報告書を作成し、地上本部に容疑者暗殺の一部始終を報告。 同時に上層部に捜査体制の強化を具申。 更に捜査上で連携することになるであろう部隊への挨拶も行った。 そうして、一連の事務処理を済ませた頃には既に午後十一時を回っていた。 後は機動六課の残務を片付けて、就寝できたのは今日の午前一時過ぎ。 連日の激務も相成って、たった四時間の睡眠では疲労が抜け切らないでいる。 「もぅ、昨日の今日で任務なんて……」 疲労の色を隠すこともせず、はやては頬杖を突いた。 口では不満そうにしてはいるが、文字通りの『口だけ』だ。 頭の中では目の前の任務をどう完遂するかに思考が切り替わり始めていた。 要請書の送信元は地上本部からとなっている。 まだ眠気から脱しきっていない眼を擦りながら、簡潔な文面に眼を通す。 「第七管理世界、現地時間における午後十九時、レリック密売組織の拠点を摘発。 二個のレリックを確保し、次元間航路を介してミッドチルダに輸送を開始。 到着したレリックのミッドチルダ内における護送任務を機動六課に要請する……かぁ」 はやてはぎしりと椅子の背もたれに体重を掛けた。 実に真っ当な任務内容だ。 一見サーヴァントも聖杯も無関係この上ない。 「まぁ、こういうお仕事もやらんとね。今日の訓練はナシで待機させたほうがいいかな」 画面に表示されている文書の記述によると、レリックの到着時刻は午後四時頃。 訓練は中止か、早めに切り上げさせて任務に備えさせたいところだ。 特にスターズ分隊は昨日の戦闘の消耗が回復しきっていないかもしれない。 激しい戦闘になる危険性が充分考えられる以上、コンディションの調整は必須事項だった。 ――レリックの輸送任務において想定される敵は、通常は以下の二種類。 一つは、ロストロギアの密売や違法研究を望む次元犯罪組織。 一つは、レリックの発見現場で多く出現する、ガジェットドローンと呼ばれる戦闘機械。 これらだけで考えれば、今回戦闘になる可能性が高いのは後者だろう。 管理局の武装部隊が護送するロストロギアを強奪しようとする馬鹿はそういない。 あまりにも成功する望みが薄く、万に一つ成功しても簡単に足がついてしまう。 このように、人間であればある程度の行動予測は付くものだ。 逆に、行動を予想できない相手ほど厄介なものはないと言える。 まさにガジェットドローンがこれに当てはまった。 ガジェットドローンにはまだ未知数な点が多い。 精々が、他のロストロギアには目もくれず、レリックのみを狙うことが分かっているくらいだ。 無条件でレリックを狙う造りであるなら、リスクを度外視して襲撃してきてもおかしくない。 「中央区画を通らなあかんのが、地味に厳しいかなぁ」 リスクを考えない相手は戦う場所も選んではくれない。 襲撃の機会さえあれば容赦なく攻撃を仕掛けてくるだろう。 たとえそこが人々の往来する街中であったとしても、だ。 はやては困った様子で頭を掻いた。 「……悩んでいるのか?」 どこからか低い男の声がした。 部屋の中には、はやて以外の人間の姿はない。 しかしはやては驚く素振りも見せず、当たり前のように応対する。 「うん……。順当に行けば楽な任務やけど、もしもの場合が厄介なんよ」 陸上本部が見積もった護送計画案のファイルを開く。 表示されるマップを睨むはやての横に、一頭の狼が身を寄せた。 通常の狼よりも数割増しで大きな体躯のそれは、首をもたげてマップを覗き見ていた。 「確かに、襲撃を考えなければ気楽な任務だな」 男の声は紛れもなくこの狼が発していた。 はやては狼から画面が見やすいように、椅子を動かした。 「戦闘があると考えても、スターズとライトニングで何とかなるとは思うけど……。 シグナムは廃棄都市区画の現場調査に引っ張られてるから、七人体制かなぁ」 「地球の魔術師は計算に入れないのか」 狼は、魔導師ではなく魔術師という言葉を使った。 管理局では滅多に聞くことのないその単語は、当然のように、管理局の外の存在を指している。 「遠坂さん達?」 「彼らも名目上とはいえ、機動六課の隊員だろう」 はやては軽く腕を組んで天井を仰いだ。 確かに狼の――ザフィーラの言うことは正しい。 しかし、どうにも気が進まなかった。 「あの人達は聖杯の件をどうにかするために、なのはちゃんが無理言って連れてきてくれたんやろ? 関係ない任務までお願いするのはちょっと……」 「気が引ける、と。だがこの任務も完全に無関係というわけではない」 うぅん、とはやては唸った。 この任務、想定される敵は二つだけではない。 同じ人間に過ぎない次元犯罪者よりも。 単なる機械に過ぎないガジェットドローンよりも。 更に厄介で、戦うことを想像したくない相手。 ――サーヴァント。 次元犯罪者の手によって召喚された、超常の域に在る騎士。 聖杯を破壊された今、サーヴァントは存在の維持に莫大な魔力の供給源を必要としているはずだ。 例えば、ロストロギアのような。 はやては机に突っ伏すと、顔だけをザフィーラに向けた。 「でもなぁ。こっちの任務をやってるときに、別の場所にサーヴァントが出たらと思うとなぁ」 とにかく不確定要素が多すぎるのだ。 過去のデータも殆ど役に立たず、何が起こるのかも分からない。 模造聖杯の破壊以降、明確に敵サーヴァントを観測できたのは一度きりなのだから。 「……遠坂さん達と相談してみよ」 ここで悩んでいても埒が明かないと考えたのか。 はやては表示させていたディスプレイを閉じると、ザフィーラと共に執務室を後にした。 ――四日目 AM5 25―― 「ん……っ」 スバルはぐっと伸びをしながら、深く息を吐いた。 生地の薄い病院服が前身に密着する。 張りのある身体のラインが浮き上がるも、全く気にしていない様子だ。 「ゆっくり寝たら、だいぶ楽になってきたかなぁ」 上体を捻り、固まりかけていた背筋をほぐす。 表情も晴れやかで、昨日の戦闘のダメージも殆ど残っていないようだ。 スリッパに足を入れ、窓辺まで歩いていく。 そして、閉められていたカーテンを指で軽くずらした。 朝霧立ち込める、涼やかな朝の風景。 窓を開ければ心地よい風が吹き込むことだろう。 でもきっと、今の服装には冷たすぎる。 スバルは惜しそうに窓の外を眺めた。 その代わりとばかりに、両手でカーテンを一気に開く。 早朝の淡い陽光が病室を満たす。 窓一杯に大写しになった朝の情景は、昼間のそれとはまるで別物だった。 活気に溢れる昼下がりを油絵と喩えるならば、これは水彩画だ。 絵画として窓枠ごと切り出すことができるなら、最高のインテリアになるだろう。 仄かな暖かさを満身に浴びてから、スバルはベッドの方へ戻った。 自分が寝ていた床を通り過ぎ、ティアナが眠る隣のベッドの横で立ち止まる。 ティアナの目元は、ほんの少しだけ、赤くなっていた。 スバルは何も言わず、ティアナの額に掛かった前髪を指先で整えた。 「んん……」 もぞりと身を動かすティアナ。 足を伸ばした拍子にブランケットが大きく下へずれ、上体が露わになる。 「――あ」 スバルの視線が止まる。 微かに汗ばんだこめかみと、そこから続く白い首筋。 華奢さを一層際立たせる鎖骨に、襟元からほんの少しだけ覗く胸骨。 そして、病院服越しにもはっきりと分かる、なだらかな双丘。 仰向けでありながら、尚もはっきりと存在を主張し続けていた。 ――理由を問うならば、魔が差したというより他にない。 おもむろに、スバルは左右の膨らみをそれぞれの手で包み込んだ。 柔らかい感触の中に指が沈んでいく。 「……おおっ」 ティアナが目覚める気配はない。 ならば、悪戯心が加速するのは必然だった。 スバルは口元に悪童のような笑みを浮かべながら、膨らみを包む手を動かした。 四本の指で輪郭をさすりながら、親指と人差し指の間で形を変えさせる。 弾力と柔らかさが絶妙に混ざり合った感触が、スバルを更なる行為へと誘った。 眼を覚ましてしまうかもしれないという懸念を置き去りに、手の平一杯に揉みしだこうとする。 次の瞬間、スバルの額を鋭い手刀が打ち据えた。 「あいたっ!」 「スバル……何やってんのよ」 自分を見上げる憮然とした視線に、スバルは誤魔化すような笑いを返した。 ティアナは呆れ返りながら、両手を伸ばして相方の肩を押し返す。 「あら、お邪魔しちゃった?」 その手がぴたりと止まる。 ドアの方から聞こえた馴染みの薄い声。 スバルとティアナは、同じような動作で顔を声のした方へ向けた。 いつの間にか開いていた入り口から、赤いコートの女がこちらを眺めていた。 年齢は自分達より一回り上といったところだろうか。 波打つ黒髪をコートの背に自然に流した髪型の影響か、少々大人びて見える。 管理局の人間という雰囲気ではなく、かといって病院の関係者というわけでもなさそうだ。 彼女は面白いものを見たという感じの表情で、胸の前で組んでいた腕を緩めた。 「あのっ、これはっ」 取り繕うように離れるスバル。 まずいところを見られたという思いが二人の思考を埋め尽くす。 しかし彼女は、スバルがしていた行為を別段気にしていないようだった。 「えっと、あなたがスバルで、あなたがティアナ。合ってる?」 白い指先がスバルとティアナを交互に指す。 二人は顔を見合わせた。 どちらもが、突然の来客を知っているかと視線で尋ねあう。 その仕種が面白かったのか、女はくすりと笑みを溢した。 「士郎に頼まれて様子を見に来たけど、その様子なら大丈夫みたいね」 「シロウって……エミヤ三尉とお知り合いなんですか?」 次に声を上げたのはティアナだった。 まずいところを見られたという思いはあったが、それよりも聞こえた名前が気に掛かった。 思い返せば三日前。 なのはからエミヤシロウを紹介されたとき、ライトニングにも一人増員すると伝えられていた。 あれから何の音沙汰もなく、半ば忘れかけていたのだが、今になってその記憶が浮かび上がってきた。 ひょっとして、彼女はその増員なのではないのか。 ティアナはそう考えたのだが、尋ねようと二の句を次ごうとした直後、スバルが身を乗り出して割り込んでくる。 「シロウさんと知り合いってことは、なのはさんとも?」 言いかけた言葉を飲み込むティアナ。 横合いから割り込んできたスバルを横目で見やる。 発言を遮られたのは不本意だが、スバルの問いも気になる内容ではあった。 赤いコートの女は備え付けの椅子を引いて、おもむろに腰を下ろした。 「まぁね。半年くらい前になるかな。『私達の世界』で起きた事件で、ね」 女の語り口は、最低限の要点を押さえていながら、それでいて核心からは外れていた。 隠しておきたいことがあるようにも、単に詳しく語る必要がないと考えたようにも取れる。 決して不自然な受け答えではないのだが、ティアナはもっと踏み込んだ答えを期待していた。 例えば、その事件の詳細とか、 ――初対面なのに、何でも聞くのは失礼かな。 ティアナは詮索したがる心を抑えて、出会ったばかりの見舞い客に向き直った。 好奇心を押し退けた隙間に、ふと、小さな違和感が浮かび上がる。 隣に腰を下ろしているスバルという少女。 さっき『シロウさん』と発言していたような気がする。 先日までは、スバルが彼を呼ぶときは『エミヤさん』か『エミヤ三尉』だったと記憶していた。 大抵は前者だったと思われるが、それでも呼ぶときは姓だった。 ……まったく、人懐っこさはここまで筋金入りだったのか。 浮かんだ言葉は口には出さず、溜息だけを吐き出した。 と、不意にドアがノックされる。 「一等陸尉。八神二佐から連絡が入っています」 事務的な女性の声だ。 コートの女はスバルとティアナに子供っぽく目配せすると、椅子から立ち上がった。 「アイツ、結構無茶するから。迷惑掛けるようだったら遠慮なく言ってやればいいわよ」 言うこと聞くかは分からないけどね、と付け加えて、女は病室の扉を開けた。 「あのっ……」 立ち去ろうとする赤い背中をティアナは思わず呼び止めてしまった。 足を止め、振り向く彼女。 ティアナは一瞬考え、なるべく失礼にならないであろう問い掛けを口にする。 「お名前、聞かせて貰えませんか?」 女はきょとんとした表情になった。 数秒間をおいて、納得したように何度か小さく頷く。 まるで、自己紹介をしていなかったことを今更思い出したかのように。 「――遠坂凛。こっちでの肩書きは、ロングアーチの一等陸尉になってるわ」 ――四日目 AM8 07―― がらりと足元の瓦礫が崩れる。 ギンガ・ナカジマ陸曹は、眼前の光景に息を呑んだ。 「随分と大きな穴が空いたものね……」 ミッドチルダ北部に広がる廃棄都市区画。 その一角に陸士108部隊は展開していた。 先日まで、ここは廃棄以前の面影を色濃く残した区域だった。 それがどうだ。 穿たれた巨大な縦穴によって四車線の道路は完全に寸断され、断崖絶壁と化している。 周辺のビルも足場を失って倒壊し、大きく口を開けた穴に飲み込まれたようだ。 近辺を走っていたハイウェイまでも食い千切られたように欠けていた。 「地表で強烈な衝撃が発生して、老朽化していた道路とその基礎が連鎖的に崩壊。 そのまま地下道まで崩れ落ちたってところかな」 ギンガは穴の縁から五十メートルほど離れた地点で、現場の観察を続けた。 これだけ離れても、穴の大きさと比べれば至近距離にしか感じられない。 まるで巨人の拳が垂直に叩き込まれた跡のようだ。 「それにしても……」 ギンガはディスプレイを空中に出して、報告書を表示させた。 交戦部隊は古代遺物管理部機動六課スターズ分隊。 交戦対象は正体不明の騎士一名。 訓練中に遭遇し、攻撃を仕掛けられたため、応戦。 軽傷者三名、重症者、死者ゼロ名。 騎士は逃走したと見られる。 槍状の武器を二種装備するも、魔法行使の様子は確認できず。 地上本部のデータベースにも該当するデータは皆無。 撤収途中、次元犯罪者のイスト・アベンシスを発見し、身柄を確保。 所持しているとされるアームドデバイス・ブライトスローンは発見されず。 尋問中に何者かによって殺害されたため、本件との関係性は不明―― 「これが信じられないのよね」 報告書中の一文を指でなぞる。 ――魔法行使の様子は確認できず。 この大穴は、交戦対象の騎士が武装を投擲したことで起きた崩落が原因だと記述されている。 つまり、魔法を使うことなくこれだけの破壊を成しえる人物がいるということだ。 無論、予め強化魔法などを掛けていたことも考えられる。 武装に特別な仕掛けが施されていたのかもしれない。 それでも、これだけの脅威が野放しになっているというのは危険過ぎた。 「ナカジマ陸曹。部隊長より、地下道も調査範囲に含めろとの通達です」 「分かったわ。何人か集めて地下調査班を組んでおいて」 通達に来た一等陸士に指示を出し、ギンガはブリッツキャリバーの車輪を駆動させた。 大小の瓦礫を避けながら、歩くような速度で穴の縁まで移動する。 「着陸地点、決定。移動ルート算出……っと」 ナカジマ三佐が自分に地下調査を命令した理由は分かっている。 108部隊で唯一、この断崖を迅速かつ安全に降下する手段を持つからだ。 穴の縁からは先遣隊が使ったらしいロープが垂れているが、これでは少々心許ない。 ギンガの足元で藍色の魔法陣が回転する。 「ウィングロード、展開!」 《All right》 デバイスが呼応すると同時にギンガは虚空へと滑り出た。 間髪入れず帯状魔方陣が出現し、ギンガを支える足場を構成する。 それは縦穴の奥底へ滑るギンガを先導するように、なだらかな坂道を編み上げていく。 ものの数秒で穴の底まで辿り付き、車輪を軋ませ停止する。 「中から見ると……これは……」 ギンガは嘆息して空を見上げた。 空は円形に切り取られ、縦穴を塞ぐ蓋のようだ。 断層も露な壁面からは曲がった鉄骨やパイプの類が覗いている。 崩れ落ちたハイウェイとビルディングが無残に散らばり、風が吹くたびに粉塵が巻き上がる。 まるで、世界の終わりを切り出した箱庭のよう。 ギンガは、退廃的な名画を眺めているような、不思議な感覚を覚えていた。 「……いけない、しっかり調査しないと」 首を振って気を取り直す。 ここで犯人に繋がる情報を得なければ、捜査は一歩も進まない。 捜査が遅れるということは、その分だけ危険な存在を野放しにすることになってしまう。 特に今回は異常だ。 目的も正体も分からず、一方的に管理局の部隊へ攻撃を仕掛けてきたのだから。 次元犯罪者が、自分達を追跡する局員を攻撃をするのならまだ理解できる。 しかし今回のケースは違う。 機動六課は訓練中で任務には就いていなかったのだ。 つまり、攻撃は逃走のためといった手段ではなく、目的そのものである可能性がある。 管理局部隊への攻撃を目的とした武装組織―― 「あまり考えたくはないわね」 もちろんそうでない可能性も充分にある。 例えば、管理局に気付かれたくない取引をしていたところに六課が現れ、逃走の殿として交戦。 そういうことも考え得る。 だからこそ、捜査を進めなければならない。 これ程の"人災"を撒き散らす敵を止めるためにも。 ギンガは瓦礫の道をゆっくりと滑り始めた。 じきに後続の隊員達が降りてくるだろう。 それまでに多少は地下空間の状況を確認しておきたかった。 元は資材か何かを輸送する地下通路だったのだろう。 人間が通るには大き過ぎる空洞が前後に貫通している。 空洞の向こうで、赤い光が煌いた。 「――ッ!」 ギンガは反射的に、巨大なコンクリート片の後ろに身を隠した。 リボルバーナックルに覆われた拳を、胸の前で握り締める。 「誰だっ!」 身を隠したまま、空洞に向かって呼びかける。 ギンガの思考回路を数パターンの状況推定が駆け巡った。 最悪の場合、後続が来る前に片をつけるか、それとも後続を待ってから戦闘に―― しかし返ってきたのは、拍子抜けするほど危機感のない声だった。 「ああ、ごめん!」 「……はい?」 警戒を解くことなく、ギンガはコンクリート片の端から顔を出した。 いつでも身を引けるようにしながら、通路の奥に目を凝らす。 暗がりの中から、男が一人歩いてくる。 敵意のないことを表しているのか、両手は肩の高さまで上げられていた。 ギンガは毒気を抜かれたように、コンクリート片からから半身を覗かせた。 男はギンガにとって見覚えのある服を着ている。 ブラウン基調で纏められた機動六課の制服だった。 男が陽光の当たる場所で立ち止まる。 ギンガは男の姿を頭から靴の先まで観察した。 階級章は三等陸尉。 陸曹であるギンガよりも階級は上らしい。 頭髪は髪質の硬そうな赤毛で、顔つきには若干の幼さが残っている。 制服の前ボタンを全て外し白いシャツを露出させるという、士官とは思えないラフな格好だ。 その手には、細い鎖に繋がれた真紅の宝石がぶら下がっていた。 どうやら先ほどの赤い光は、太陽光がこれに反射したものだったらしい。 ギンガは安堵の溜息を吐いて、男に向き直った。 「なんだ……失礼しました、三尉。陸士108部隊所属、ギンガ・ナカジマ陸曹であります」 「こっちこそ驚かせてごめん。えっと、機動六課所属、衛宮士郎三尉、でいいのかな」 慣れていない様子で敬礼を返すエミヤシロウ。 待機状態のデバイスすら持っておらず、完全な丸腰だ。 「三尉、ここにはどのようなご用件で?」 ギンガは不審そうに尋ねた。 衛宮士郎という人物を疑っているのではない。 機動六課にそういう名前の人物が赴任した、ということは既に聞いている。 言葉の通り、奇妙に感じたのは『彼』が『今』ここにいるということだ。 いくら先日のこととはいえ、戦闘があった現場に赴こうというなら、せめて護衛くらいは要るだろう。 しかし目の前の人物は護身用の武器すら持っている様子がない。 それに、機動六課からはシグナム二尉が調査に合流する予定だが、彼が来るとは聞いていなかった。 エミヤシロウは、右の手に持った赤い宝石をギンガに見せた。 「大事なもの落としてたみたいでさ。これ探しに来たんだ」 丸みを帯びた三角形のそれは、銀色の細工と鎖に結ばれて、ペンダントとして加工されているようだ。 ギンガはエミヤシロウの所属を思い出した。 機動六課スターズ分隊。 ここで謎の騎士と戦ったのはこの部隊だ。 戦っている最中に落としたものを拾いに来たということか。 ギンガは微笑むように表情を緩めた。 見たところ、あれは男物のアクセサリーではない。 女性が首から提げることを考えて作られたデザインだ。 「申し付けて下されば捜索しましたよ」 「高町にもそう言われたんだけどさ。 俺の不注意で落としたのに、他の人に任せるのはなんだか悪くって」 高町、とは六課の高町一尉のことだろう。 何気ない一言だったが、ギンガはそれに微かな違和感を感じた。 空尉と陸尉の違いこそあれ、一尉と三尉では二階級も違う。 加えて、同じ分隊の分隊長と隊員という関係だ。 それを姓で呼び捨てにするなんて常識では考えられない。 問い質そうとギンガが口を開く。 「お言葉ですが、三尉――」 「そういえばシグナム副隊長はまだ来てないのか?」 ――あれ? 内心、ギンガは首を傾げた。 今度はシグナム二尉のことを役職を添えて呼んだ。 高町一尉のことは『高町隊長』なんて呼ばなかったのに。 「え、あ、シグナム二尉でしたら、調査本部の方に赴かれているかと……」 しどろもどろに答えるギンガ。 失礼な人だと一瞬でも思ってしまったことを気取られたくなかった。 「ギンガさーん。地下捜査班、集合しましたー」 そう遠くないところから幾つもの足音が聞こえてきた。 バリアジャケットを着用した十人ほどの隊員がウィングロードを駆け下りてくる。 ギンガは気を取り直して、隊員達に向けて指示を出した。 「各員、崩落現場を中心に調査を開始して。地下通路は後でいいから」 散開する隊員。 ギンガはエミヤシロウに向き直り――目を見開いた。 エミヤシロウの左手に煌く三つの白刃。 刀身が異様に細長く、赤い封蝋のような柄を指で挟む異様な構え。 その瞳には明確な攻撃の意志が灯っていた。 ギンガは間髪入れずリボルバーナックルにカートリッジをロードする。 ナックルスピナーが回転を始めるが速いか、一歩で距離を詰め、拳を繰り出す。 それとほぼ前後して、エミヤシロウも腕を振り抜き―― 「……っ!」 金属の砕ける音が響く。 全く同時に、二機のガジェットドローンが砕け散った。 一機は機体を捻じ切られ。 もう一機は三本の長剣に貫かれ、その存在を鉄屑に帰した。 「――大丈夫か」 エミヤシロウは、ギンガの肩越しに左腕を振り抜いたままで。 「そちらこそ――お怪我は」 ギンガは、エミヤシロウの脇腹の横に左腕を振り抜いたままで。 互いの健在を確認しあった。 隊員達は何が起こったのか分からず呆然としている。 ギンガのリボルバーシュートを受けたガジェットの残骸が墜落し、爆発した。 その衝撃に、ただでさえ不安定な瓦礫が大きく揺れる。 二人が足場にしている横倒しの巨大な瓦礫に亀裂が走った。 「きゃ……!」 「うわっ!」 瓦礫の亀裂が広がり、数十センチほど崩落する。 たったそれだけの崩壊でも、そこに立つ人間のバランスを奪うには充分だった。 仰向けに倒れたエミヤシロウの上に、ギンガが受身も取れずに倒れ込む。 背中と胸から同時に圧迫されて、エミヤシロウは苦しそうな声を漏らした。 「……すみません」 覆い被さった格好から、上体を起こすギンガ。 その視界の端に妙なものが写った。 「あ、あれ見てください」 言われて、エミヤシロウは横になったまま首だけを動かした。 瓦礫が動いたことで、今まで見えなかった箇所が露わになっている。 そこに一つ、異質なモノがあった。 「あれは――」 丸く細長い形状の金属塊。 色は金色、あるいは光沢のある黄色。 大地に突き刺さった槍の柄が、瓦礫の狭間から陽光を受けていた。 前 目次 次
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・前スレ 417氏:ロマーニャ人、使い魔:ドーベルマン、ユニット:Bf109G-2、武装:MG34×2、世間知らず 名称決定「ティツィアナ・リッピ中尉」/一九年九月異動を拝命、自家用飛行艇を操縦し、同年一〇月半ばに着任 上記の2人とは別の部隊より派遣されたロマーニャ公国空軍中尉。16歳であり中隊長勤務経験を有する。 裕福な商家の長女であり、どちらかといえば苦労知らず。しかし一企業を切り盛りする両親の背中を見て、 時には実務の補助にも携わっているため、金銭と物流の感覚は非常に鋭い。 彼女の実家のモットーは「あぶく銭に飛びつくな、長く堅実な経営で生き延びろ」であり、「何処で財布を開くべきか」はよく心得ている。 ウィッチとしての技量も悪くなく、カールスラントより輸入されたBf109-G2装備中隊の指揮を任される。 空戦でも若干猪突猛進の傾向はあるが、概ねチームワークは守る。育ちが良く尚且つ主計にも顔が利くために、原隊では重宝されていた。 またストライカーだけではなく、水上機の操縦資格も有しており、実家の社用飛行艇を用いてロマーニャ北部の前線へ、 緊急の物資輸送や傷病者の後送などを自ら行ったこともある。 但し欠点としては、自らの主計に顔の利く才能を活用し、部隊の装備を良好な状態に保っていたこと。 それ故に悪気無く苦労の多いウィッチ部隊を刺激する発言が少なくなく、一部の部隊と険悪な状態を作り出してしまった。 そんな折、扶桑皇国海軍が航空戦艦搭乗のウィッチを募ったことは、ロマーニャ空軍にとってはある意味で渡りに船であった。 MG34を2挺用い、一撃離脱を主軸とした近接戦闘に長けている。 固有魔法はこれといってないが、射撃の腕が良く、なおかつMG2挺の弾幕射撃は対小型ネウロイ相手に。 特にガンバード(大口径火砲を持ったウィッチ)が妙に多いこの部隊では、重宝されている。 なお、その商才に関しては早々に出雲隊長に高く評価され、土井環少尉(後に中尉)やクラーラ・バラノフ少尉と共に、 飛行隊の主計業務を一部担当。「日向」主計長清水少佐等を介して佐世保鎮守府相手の需品確保交渉にも、才能を発揮している。 「海上護衛戦」の段階では近接戦闘能力を変われ、ハンマーシュミット大尉率いる中隊の先任将校を勤めている。 なお、これは全くの余談ではあるが、ロマーニャから扶桑皇国への長い空の旅の課程で、 同国人であるクラリーチェ・アルベティーニ少尉自製の「特別な趣味のカートゥーン」にハマッてしまい、 しばしばその原稿を作成している姿が散見されるというが、この点の真偽は定かではない。
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【朝】 NO. タイトル 作者 登場人物 63 最初の朝餉 ◆wC9C3Zbq2k 園崎魅音、谷口、カービィ 64 人が動かないと書いて「働かない」と読む ◆lbhhgwAtQE ニート、富竹ジロウ、涼宮ハルヒ、ロールちゃん 65 貴女は奈落の花じゃない ◆CMd1jz6iP2 外山恒一、竜宮レナ、友人、マルク 66 十一色の誓い ◆0RbUzIT0To いさじ、柊つかさ、ストーム1、福山芳樹、YOKODUNA、スパイダーマン、天海春香、暗黒長門、アリス・マーガトロイド、矢部野彦麿、朝倉涼子 67 歪んでいます!おかしい!何かが!KASさんの! ◆OZbjG1JuJM 博麗霊夢、ヨッシー、KAS 68 「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(前編)「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(後編) ◆qwglOGQwIk 阿部高和、伊吹萃香、高町なのは、鈴仙・優曇華院・イナバ 69 行く先は ◆2VgTRcP6n6 キョンの妹、永井博之、水銀燈 70 Cry for me, cry for you ◆CMd1jz6iP2 柊かがみ、ゴマモン、ロックマン、武藤遊戯、エアーマン、ムスカ、琴姫 71 それぞれの誓い~英雄の条件~ ◆KJJLTUDBrA スパイダーマン、福山芳樹 72 蒼い鳥 ◆0RbUzIT0To 削除番長、永井けいこ、日吉若、高槻やよい 73 対象n ◆qwglOGQwIk 八意永琳 74 イチローのレーザービームでバトロワ会場滅亡 ◆LXe12sNRSs TASさん、イチロー 75 それぞれの誓い~天海突破~ ◆CMd1jz6iP2 スパイダーマン、いさじ、柊つかさ、天海春香 78 しかし何も起こらなかった ◆CMd1jz6iP2 海馬瀬人 79 ミナミヘミナミヘ ◆KJJLTUDBrA 古泉一樹、サトシ 87 メタル・ギア・ティアナ ◆KJJLTUDBrA 永井博之、水銀燈、ティアナ=ランスター、永井浩二 【午前】 NO. タイトル 作者 登場人物 76 勇気を受け継ぐ子供達へ ◆OZbjG1JuJM 柊かがみ、ゴマモン、菊地真、泉こなた、ピカチュウ、ピッピ、前原圭一 77 蝕 ◆wC9C3Zbq2k YOKODUNA、暗黒長門、朝倉涼子 80 私が弾幕を始めた理由 ◆Dx4H1/XR2o お覇王、霧雨魔理沙、オメガモン、双海亜美 81 テメーの敗因は・・・たった一つだぜ・・・富竹・・・ ◆IU4EWEf33I ニート、富竹ジロウ、涼宮ハルヒ、ロールちゃん 82 ウッドマン?が倒せない ◆0RbUzIT0To 外山恒一、友人、キョンの妹、フシギダネ、八意永琳、竜宮レナ 83 STORM ◆CMd1jz6iP2 矢部野彦麿、アリス・マーガトロイド、ストーム1 84 魔理沙は大変な「覇王翔吼拳」を盗まざるを得ない ◆CMd1jz6iP2 お覇王、霧雨魔理沙、クラモンA、クラモンB 85 解呪/Disenchant ◆qwglOGQwIk 日吉若、YOKODUNA 90 チープトリック ◆qwglOGQwIk エアーマン、ムスカ 92 才能の無駄遣い ◆0RbUzIT0To 博麗霊夢、ヨッシー、KAS、クラモンB 94 愛媛のジャンク/凡人打開配信(前編)愛媛のジャンク/凡人打開配信(後編) ◆0RbUzIT0To 古泉一樹、サトシ、永井博之、水銀燈、永井浩二、ティアナ=ランスター 【昼】 NO. タイトル 作者 登場人物 86 アイドルとして音程がぶれている ◆0RbUzIT0To いさじ、柊つかさ、天海春香、園崎魅音、谷口、カービィ 88 そして伝説の木の上で ◆CMd1jz6iP2 ニート、涼宮ハルヒ、ロールちゃん、富竹ジロウ、ロックマン、武藤遊戯 89 friend ◆2VgTRcP6n6 ピカチュウ、前原圭一、ピッピ、泉こなた、TASさん 91 ふたりはヤルキュア ◆CMd1jz6iP2 阿部高和、伊吹萃香 93 VS.動かない大森林(EASY) ◆OZbjG1JuJM 双海亜美、フシギダネ、オメガモン 95 ぼくんちのニコロワ(前編)ぼくんちのニコロワ(後編) ◆CMd1jz6iP2 博麗霊夢、ヨッシー、海馬瀬人、高槻やよい、KAS、TASさん、クラモンB 96 けだものとのそうぐう ◆lbhhgwAtQE 矢部野彦麿、アリス・マーガトロイド、マルク、ピエモン 97 Traumatize ◆qwglOGQwIk 柊かがみ、ゴマモン、阿部高和、伊吹萃香、菊地真、スパイダーマン、ストーム1 98 Neo Dark Ruler ◆7d53oKGJP2 クラモンA 99 世界最強の国技/球技 ◆0RbUzIT0To YOKODUNA、日吉若 100 奇跡の価値は(前編)奇跡の価値は(後編) ◆CMd1jz6iP2 外山恒一、永井博之、永井浩二、サトシ 101 悲しみの向こうへ ◆irB6rw04uk ティアナ=ランスター 102 両手に花 Flowers of the abyss ◆qwglOGQwIk 竜宮レナ、友人、キョンの妹、八意永琳、古泉一樹、外山恒一 103 とかちシスターズ ◆CMd1jz6iP2 双海亜美、フシギダネ 【第二回放送】 NO. タイトル 作者 登場人物 104 第二回定時放送 ◆qwglOGQwIk ピエモン
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衆議院 参議院 はやて派 40 21 ティアナ派 60 20 エーリカ派 10 5 坂本派 20 6 ベルン派 90 50 サーニャ派 40 22 無派閥 20 17
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第2話 魔法のある世界 剣崎達はティアナ達に連れられて、この世界のことを知る人物がいるという場所に向かっていく途中である。 「すみません。剣崎さん、飲み物持ってもらっちゃって。」 「いいっていいって。」 「ところで、この場所知っている人ってどんな人?」 橘がそう聞くとスバルが答えた。 「え~と、元々はこの世界に住んでたって聞いてます。今は任務があるからって私たちも来たんです。」 スバル達が会話しながら歩いていると、その人物がいるところに着いた。 「ここなのか?」 「はい」 剣崎達が着いた瞬間この世界の住人なのはとフェイトとはやてが剣崎達のところに来て 「あなた達がティアナが話してた人たち?」とフェイトが問いかけた。 「はい。そうですけど・・・。」「じゃあ、名前教えてくれるかな?」 「俺は剣崎一真だ。」「橘だ。」「・・・相川始だ。」「俺は上城睦月です。」 と剣崎達は自己紹介を終え、はやて達も紹介を終えこの世界のことを説明を始めた 「では説明します。ここはあなた達がいた世界とは違います。」とはやてが言う 「え?そんな・・・」「バカな・・」剣崎達はショックを隠せない。 「でも、ここは日本ですよね?」「はい。ここは日本の海鳴市。ティアナから報告があったんやけど、 あなた達が戦ってたのは一体なんです?もしかしたら私たちも協力しますんで。」 剣崎達は先ほど戦ったアンデット達のことそして、バトルファイトのことをはやて達に話した。 「もしかしたら、スカリエッティが関係してるかも・・・」 「スカルエッティ?誰だそいつ?」フェイトはスカルエティや今まで起きたことを剣崎達に話、そして 「よし、じゃあ俺たちの世界が危ないけどこっちも危ないから、俺は協力するよ。」と剣崎が言った。 「け、剣崎?」「剣崎さん?本気なんですか?」橘と睦月は協力には否定して、始は「俺は剣崎に 賛成してる。今の状況を考えてみろ。」それは始が珍しく橘と睦月に言って 「もしかしたら、 あなた達が追っている天王路って人もスカリエッティに協力している可能性があると思うんだけど」 フェイトがそういって「たしかに・・・今はここで争っている場合じゃない。」 橘がはやてに向かってこういった 「俺たちしばらくの間協力する。それでいいか?」橘が言って「本当ですか~?ありがとうございます。」 「だけど、そのまえに、任務があるんだけど協力してくれるかな?」となのはがいい。 「あなた達の力もみたいしね」フェイトもこういい。 「じゃあ、剣崎さんと始さんはスバルとティアナのところで、橘さんと睦月さんはエリオとキャロのところでいいですか?」 「「「「ああ」」」」 始と睦月は何かに気づいた 「なあ、いつから俺は相川さんから始さんになったんだ?」「俺もそう思った。」 「え?ああ、それはやね、え~と・・・」とはやては顔真っ赤になっていた。 「始さんてお兄さんって感じがするんよ~。うち兄弟いなかったから」 「そうか・・・悪いことをした」始は謝った瞬間 「はやてちゃん。クラールヴィントが対象をキャッチ」 「みんな。頼むよ」 「「「「はい」」」」と新人フォワード達がいい 「俺たちもやるぞ。」 「「ああ」」「はい」 剣崎達も戦闘の準備を始めた。 そして、任務が開始された。 「マッハキャリバー」 「クロスミラージュ」 「ストラーダ」 「ケリュケイオン」 「「「「SET UP」」」」 彼女たちが自分たちの相棒をの名前を呼んで。先ほどの服が代わった。 そして剣崎達は自分たちのバックルを出し 「「「「変身」」」」 剣崎、橘、睦月の前にカテゴリーAが描かれた光が現れ剣崎はブレイドに、 橘はギャレン、睦月はレンゲルに変身し、始はマンティスアンデットの力を借りカリスに変身した。 「これが、剣崎さんたちの力なんや・・・」そうはやてがいい。 ブレイドとギャレンはラウズアブゾ-バーにQとJを入れ。 「「アブソーブクイーン」」「「フュージョンジャック」」 ブレイドとギャレンはジャックフォームとなった。 そして、その相手が剣崎達にとっての初出撃となった。 「よし。今だ。」 「サンダー、スラッシュ」 「ドロップ、ファイアー」 「トルネード、ドリル」 「スクリュー、ブリザード」 「ライトニングスラッシュ」 「バーニングスマッシュ」 「スピニングアタック」 「ブリザードゲイル」 「ディバインバスタァァァァー」 「クロスファイアー・・・・シューーート」 「一閃必中・・・・はあああああああ」 「フリード、ブラストフレア、ファイア」 「対象からレリックを確認リィンお願いできる?」 「はいですぅ。」 剣崎達のお陰で任務が終わり剣崎達はなのは達が今住んでいる、ミッドチルダに移動した。 戻る 目次へ 次へ
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新たなる戦い! 思いは駆け巡る!! ◆LuuKRM2PEg 放送で呼ばれた十八人の名前を聞いて黒岩省吾が思ったのは、事態は思った以上に深刻だという事だけだった。 六十六人の中から出るだろう邪魔者となる参加者が減ったのは喜ばしいし、利用できる参加者が減ったのは残念でもある。あの意味不明な探偵が消えなかったのは予想外だったが、どうせ放っておいても勝手に死ぬから問題ない。 ただ、禁止エリアという場所にうっかり突入しないように気を付けて、一刻も早く利用できる手駒を探さなければならなかった。既に六分の一以上が死んでいるならば、あのテッカマンランスのような危険人物は大勢いる事になる。でなければ、こんなちっぽけな島で死人が多く出るわけがない。 あまり悠長に構えていては忌々しい加頭順達を倒せないし、何よりもその前に自分自身が死んでしまう。この異質に満ちた状況で、嫌でもそれを認めざるを得なかった。 「マミさん……えりかちゃん……それに、まどかちゃんにほむらちゃんも……!」 そして省吾の耳に、掠れるような少女の声が届く。 横目で振り向くと、放送前に出会った桃園ラブがその小さな身体を震わせていた。理由は先程の放送で、彼女の友人や守りたいと願った参加者達の名前が呼ばれたため。 やはり、人間は弱くて脆い生き物だと省吾は実感した。地球上には何十億もの人間がいるというのに、その中の一人や二人が死んだ程度で悲しみに溺れてしまう。やはりこんな連中に任せては地球が腐るだけだから、一刻も早くダークザイドが侵略しなければならない。 尤も、それを今ここで口にするつもりなどないが。 「桃園さん、大丈夫ですか?」 「……心配してくれてありがとうございます、黒岩さん。私なら、大丈夫ですから……」 蚊の鳴くような声で呟くラブの顔は酷く青ざめていて、目尻からは涙が滲み出ている。しかしそれでも笑顔を向けていたが、無理矢理に作った表情だと一目でわかった。 やはり、彼女もただ戦闘が強いだけで精神力は子どもでしかないのだろう。泣かれるよりは遥かにマシかもしれないが、これでは戦力として期待していいのかどうか甚だ疑問だ。 だが、今は贅沢など言っていられない。不満を零したところで新しい戦力が手に入る訳ではないからだ。 「歩けるかな?」 だから少しでも彼女を支える必要がある。もしもこのまま精神に不調を及ぼしたままでは、いざという時に全てが駄目になってしまう恐れがあるからだ。 念の為に訊ねながら手を差し伸べるが、ラブは慌てたように首を横に振る。 「へ、平気です! すみません、黒岩さんに心配かけて……」 「そうか、だが無理はしないでくれ。君にもしものことがあっては、ご両親に顔向けができないからね」 その言葉は建前でしかないが、僅かながらに本心も混ざっていた。 東京都知事となって東京国を独立させる為には、人殺しは当然のことこんな若い少女を見殺しにするのも極力避けなければならない。主催者達を上手く口封じできればその必要もないが、現状ではその手段がまるでなかった。 だから基本的に戦闘はラブに任せて、自分はそんな彼女の精神をケアすればいい。無論、使い道がなくなるならば見捨てるしかないが。 「心配してくれてありがとうございます……でも、私もあまり無理をするつもりはありません! 一人で勝手にそんなことをしたらみんなが悲しみますし、何よりもマミさんとも無理はしないって約束しましたから!」 しかしそんな思惑など露知らず、ラブは年相応の少女が浮かべるような眩い笑みを浮かべる。 やはり人間とは馬鹿で愚かな生命体だ。ちょっとでもいい顔をすればすぐに騙されてしまい、すぐに信頼を寄せる。特にこの年代の若い少女なんかは、社会の黒い部分を知らない場合が多いので、簡単に道を踏み間違えてしまうことが多い。プリキュアという戦士であるラブも、結局はその一人でしかないのだろう。 ここまで都合よく行くとなると、最初に目撃した二人組にも取り入るべきだったかもしれないが、今更もう遅い。これから向かう北の廃教会や村でまた出会えることを願うしかなかった。 「なるほど、ですが無理をしないでください。私も、私にできるかぎりのことをしますから」 「はい、ありがとうございます!」 「それじゃあ、急ぎましょうか。こうしている間にも、つぼみさん達だって頑張っているでしょうから」 そう言うと、頷いたラブの表情は少しずつ明るくなっていく。 悲しみは完全に拭い払えてはいないだろうが、今はこれでいい。こうすることで彼女は自分を信頼するだろうし、自分の為に動こうとする。人間社会に潜伏してきたおかげで、ラブのような単純極まりない人間はちょっとでも甘い言葉を向ければ、それだけで利用できると知った。 だからここでもシャンゼリオンやダークザイドを上回るであろう参加者達を懐柔し、脱出までの地盤を固めればいい。厄介な相手を潰させて、最後は全てを手に入れる。 そう思いながらラブと共に省吾は歩みを続けていた。しかし次の瞬間、凄まじい轟音を響かせながら目前の道が一気に爆発し、衝撃によって大量の粉塵が散らばった。しかも爆発は一度だけではなく、まるで爆撃が起こったかのように辺りが次々と吹き飛んでいく。 「何だ!?」 驚愕のあまりに省吾が振り向いてみると、ここから数メートル程離れた場所にダークザイドやドーパントのような青い怪物が立っていた。怪物の右腕はライフルのようになっていて、あれで狙撃してきたのだと判断する。 (あそこか……これはまた、遠いな) 現れた怪人を前に省吾は悩む。 相手は遠距離からの攻撃を仕掛けているのだから、仮にブラックアウトをして暗黒騎士ガウザーになったとしても立ち向かえるかどうかわからない。だが例えガウザーになったとしても接近する前に蜂の巣にされてしまうだろうし、何よりもこの手を血で染めるわけにもいかないし、リスクが大きすぎた。 しかしこのまま何もしなければ、それこそただの的になってしまうだけ。この場を切り抜ける為の行動を考えあぐねてしまう。 「チェンジ! プリキュア! ビート・アーップ!」 だがその数秒後、省吾の思考を吹き飛ばす程の快活な声が周囲に響き、太陽すらも凌駕しかねない輝きが発せられた。 思わず振り向いてみたら、そこに立っていたはずのラブは既に変身をしている。ボリュームが増したツインテールは金色に輝き、その身体には白とピンクを基調にしたやけに派手な衣服が纏われていた。 「ピンクのハートは愛あるしるし! もぎたてフレッシュ! キュアピーチ!」 両手を強く叩きながら名乗りを挙げた桃園ラブ……いや、キュアピーチは先程の悲しみが嘘のように表情に覇気が戻っている。 その力強い瞳をそのままに、ピーチは省吾に振り向いた。 「ここは私に任せて、黒岩さんは先に行ってください!」 「そうですか……でも、無理をしてはいけませんよ!」 「ありがとうございます!」 そう言いながらピーチは笑顔を見せたがそれは一瞬で、すぐに怪人がいる方角に向きながら走り出す。その脚力は凄まじく、ライフルから放たれる弾丸を次々に回避していた。 しかしそれに見惚れている暇なんてない。厄介な相手を引き受けてくれるというのならば、ここはピーチの言葉に甘えて一刻も早く離れるのが一番だ。こんな所でわざわざ消耗するのは、自分の役割ではない。 ここで彼女は怪物を倒してくれるならそれでいいし、相打ちになって終わるなら所詮はそこまでの小娘だっただけ。できるならあの怪物も手駒にさせられれば最高だが、最初から不意打ちを仕掛けてくる相手に交渉の余地などない。ならば、ピーチが潰してくれるのを祈るしかなかった。 (俺が全てを手に入れる為に頑張ることだな……プリキュア) 不敵に笑う省吾の耳に戦闘による轟音が響くが、彼は決して振り向かない。 その眼に映っているのは、全てを手に入れるまでの道のりだけ。終わりに辿り着くまでは決して止まるつもりはないし、途中でどれだけのものが犠牲になろうとも知ったことではない。 壮大なる野望を力にして、省吾はひたすら歩みを進めていた。 ◆ 大切なみんなや守りたかった人達がもういない。それは桃園ラブの心を締め付けるのに充分だったが、それでも倒れたりしなかった。 ここで泣いていたらまだ生きているみんなを助けられないし、何よりもマミさんと交わした約束を裏切ってしまう。彼女や、彼女の友達だった鹿目まどかや暁美ほむらの為にも絶対に戦いを止めて、残された人を救わなければならない。 だから今は頼りになる黒岩省吾を守る為、ラブはキュアピーチに変身して現れた青い怪物を目指して走り出していた。腕のライフル銃から放たれる弾丸の威力は凄まじく、辺りを容赦なく破壊している。幸いにも廃教会には届いていないが、このままではいつ巻き込まれてもおかしくない。 だから一刻も早くあの怪物を止めて、被害を抑えなければならなかった。テッカマンランスの時みたいなことはあってはいけない。その決意を胸に、右手で作った手刀を振るったピーチは弾丸を横に弾く。 真っ二つに割れたエネルギーは彼女の背後に吹き飛んでいき、そのまま轟音をたてながら爆発する。その衝撃によって大気は荒れ狂い、ツインテールが流されるが彼女は気に留めず、追い風の勢いも利用して走り続けていた。 一歩進む度に弾丸が襲い掛かるが、ピーチはひたすら一直線に進みながら両手で弾いていく。指に激痛が走るものの、だからといって彼女の勢いが緩むことはなかった。 やがて怪人の目前にまで迫ったピーチは怪人の左腕を両手で掴み、勢いよく持ち上げながら一回転して、そのまま投げ飛ばす。 男なのか女のか判断がつかない濁った悲鳴と共に吹き飛んでいく相手を眼で追うが、直後にその姿が唐突に見えなくなった。 「えっ、消えた!?」 何が怪人に起こったのかまるで理解できず、驚愕の表情を浮かべるピーチの動きは反射的に止まってしまう。思わず辺りを見渡すが、その途端に爆音が鼓膜を刺激して、彼女の身体に強い衝撃と熱が走った。 「キャアアアァァァァッ!」 悲鳴を発するピーチに倒れる暇すらも与えないとでも言うかのように、嵐のような勢いで次々と爆発が起こる。その威力自体はテッカマンランスが放ったレーザーに比べれば微々たるものだったが、それでも何度も受けるわけにはいかない。 爆発に耐えながらもピーチは走り出して周囲を探すと、あの青い怪人を一瞬で見つける。 すぐに彼女は疾走しながら拳を振るったが、当たろうとした瞬間に怪人の姿が消えてしまった。 「あ、あれ!?」 当然ながら驚く彼女の耳に、またしても轟音が響く。 背後から迫り来る殺気を感じて、彼女は咄嗟に横へ飛んだ。 そのまま振り向いた先では、いつの間にかあの青い怪人が四体にまで増えていたので、目を見開いてしまう。しかし驚愕の声を発する前に、またしてもすぐ近くで爆発が起こり、その衝撃がピーチに襲いかかった。 爆風によって吹き飛ばされるも瞬時に体勢を立て直しながら振り向いた先では、怪人がまた一体増えている。合計、五体の怪人がピーチの周りを囲んでいた。 「ぶ、分身の術!?」 「意外と頑丈だったわね……でも、これで終わりよ」 冷たく言い放ちながら、全く同じ姿の怪人達はライフル銃を一斉に向けてくる。 これだけの相手に同時攻撃をされては危ないし、かといって避けることも簡単ではない。一体一体を倒そうとしても時間がかかるし、何よりも攻撃した怪人が本物じゃなければ撃たれるだけ。 それにここで時間がかかっては、先につぼみ達を探しに行ってくれた省吾だって心配だった。 「いいえ、私はまだ終わるわけにはいかないの。例え、どれだけ辛いことがあったとしても!」 揺るぎない決意が込められた言葉と共に高く跳躍しながら、ピーチは両手に力を込める。眼下にいる怪人達が一斉に銃口を向けてくるが、彼女はそれに構わず十本の指でハートの形を作ると、眩い光が生まれて辺りを一気に照らした。 「くっ!」 「プリキュア! ラブ・サンシャインッ!」 怪人のライフル銃から数発のエネルギー弾が放たれるのと同時に、ピーチも手中に圧縮した光を開放する。桃色の輝きは轟音を鳴らしながら突き進み、そのままライフルの弾丸もろとも分身した怪人達を飲み込んだ。 複数の敵を一気に倒すなら、こうやって広い範囲に光線を発射する以外にない。そんなピーチの目論見が成功したとでも言うように、光の餌食となった怪人達は次々と消滅していき、一瞬で一体だけになる。 輝きが収まった頃にピーチは地面に着地して、よろめきながらも立ち上がる怪人を見据えた。向こうは未だに諦めていないのか、スコープのような瞳から放たれる敵意が突き刺さってくる。それに負けじとピーチも強い視線を向けながら、ゆっくりと構えを取った。 睨み合う両者の間で火花が飛び散って、一触即発という言葉が相応しい雰囲気が辺りに広がっていく。だがその刹那、拮抗した状況を打ち砕くかのように、突然周囲が薄暗くなった。 何事かと思ってピーチは上空を見上げると、そこにはどす黒い雨雲が広がっている。いきなり現れた雲を前にぽかんと口を開いた瞬間、轟音を鳴らしながら雲の中に閃光が迸って、勢いよく稲妻が落下してきた。 「うわああぁっ!」 思わずピーチは背後に飛んで落雷を避けるも、続くように何度も降り注いでくる。雷は凄まじい速度で襲い掛かるが、それでも彼女は必死に左右を飛んだ。 途中、その隙を狙ったかのように青い怪人が段々を放つが、ピーチは左手を横に振るって弾く。しかしその直後、彼女の全身を稲妻が貫いた。 凄まじい熱が襲いかかるが、それでもピーチは全身に力を込めて倒れないように耐える。犠牲にされた人達の苦しみや悲しみは、こんなものではないからだ。 自然現象による蹂躙が数秒ほど続いた後、立て続けに降ってくる稲妻は突然収まる。それと同時に謎の白い怪人が、すぐ近くにある森の中から現れた。 「ほう、この一撃に耐えるとは流石ですね」 「誰!?」 「私は貴女にも興味がありますが、後の楽しみにしておいた方がいいですね……それでは、御機嫌よう」 それだけを告げた瞬間、白い怪物は右腕を軽く横に振るう。すると頭上の暗雲から耳を劈くような轟音が響き、どこからか凄まじい暴風が吹きつけてきた。圧力すらも伴っている風を前にピーチは思わず腕で顔を覆いながら、吹き飛ばされないように両足で踏ん張る。 しかしそれから数秒経った後、肌に突き刺さってくる風がいきなり弱まった。思わず見上げてみると、あの怪人達は既にいなくなっている。辺りを見渡してみたが、誰の気配も感じられなかった。 「いない……もしかしてあいつら仲間だったの?」 当然ながら、ピーチの疑問に答える者は誰もいない。 不意打ちがあるかと彼女は思ったものの弾丸や雷が迫りくる気配はなく、この場での戦いは既に終わったと言うように穏やかな風が流れてきた。若干の冷たさが残った空気を浴びながらキュアピーチの変身を解くが、桃園ラブに安堵している暇などない。 省吾が先に向かった廃教会を目指して、すぐさま走り出す。元々教会までの距離はそこまで離れていなかったので、到着するのに時間はかからなかった。 「黒岩さん! 黒岩さん、いますかー!?」 所々が荒れ果てている教会の中を必死に探すが、誰もいない。 床と壁の至る所が焦げているだけでなく大きな穴も開いているので、この場で戦いがあったことが一目でわかった。しかも建物を支える柱には亀裂が何十本も走っていて、いつ崩れ落ちてもおかしくないように見える。そんな建物の状態に焦りを覚えたラブはドアを片っ端から開くが、やはり省吾の姿はなかった。 もしかしたら、ここにいては危ないと思って先に村まで行ったのかもしれない。そう思ったラブは急いで教会から出て、辺りを見渡す。もうこれ以上、誰も犠牲になって欲しくないと願いながら。 『地球人……いや蟻どもは皆、死ぬ事になるだろうな! ハッハッハッハッハッハ!』 そんな中蘇ってきたのは圧倒的な力を誇った鎧の男、テッカマンランスの言葉。 もしかしたらこうしている間にも、マミやえりか達のようにどこかで誰かが犠牲になっているかもしれない。放送で十八人もの人が呼ばれてしまったから、ランス以外にも戦いに乗っている奴はたくさんいる可能性があった。 放送ではあのノーザも呼ばれている。その悪意に苦しむ人が出てこなくなったかもしれないが、それでも胸の奥が痛くなった。 「それにしても、どうしてサラマンダー男爵がいるの……やっぱり、ブラックホールがまた復活したのかな……?」 そしてラブは先程の放送で、サラマンダー男爵が現れたことに疑問を抱いている。 かつてブラックホールは幸せになった彼の姿を利用して悪事を働いたことがあったけど、つぼみ達によって倒された。それなのに加頭順達と一緒にいるということは、またブラックホール達がサラマンダー男爵の姿を利用しているのかもしれない。 本物のサラマンダー男爵はもう心を入れ替えていて、オリヴィエという少年と一緒に暮らしているとつぼみ達は言っていた。だから、放送を行ったのは偽者だと信じたかった。 そうでなければつぼみ達の頑張りが無駄になるし、何よりも悲しすぎる。 「相羽ミユキさん……」 不意に、ラブはサラマンダー男爵が呼び上げた名前を呟く。 相羽ミユキ。戦いが始まってからの六時間で呼ばれてしまったその名前が、ラブは引っかかっていた。憧れるトリニティのリーダーである知念ミユキや、キュアハッピーに変身してバッドエンド王国と戦っているプリキュアの星空みゆきと同じ名前だったから。 顔も知らないし会ったこともない相手だけど、少なくとも悪い人とは思いたくない。本当なら守らなければならなかったのに、それができなかった。 ラブは知らない。この廃教会は、相羽ミユキが非情なる最後を遂げた場所であることを。彼女をここまで導いたのは運命の悪戯なのか、知る者はどこにもいなかった。 もうここにはいない省吾に追いつこうと思って廃教会から離れようとした瞬間、ラブは建物の影となっている地面が不自然に盛り上がっているのを見つける。 見ると、その付近には花が添えられていた。 「えっ……!?」 それを見てしまったラブは、ゆっくりと近づいていく。 まるで何かを埋めたかのようになっている地面を前に、彼女は思い出してしまった。ランスとの戦いの末、犠牲になってしまったマミの最後を。 触ってみるとやはり土は軟らかくなっていて、力を込めれば簡単に掘り起こせそうだった。つまり、まだそこまで時間が経っていない。 だが、ラブの手は途中で止まってしまう。誰がやったのかは知らないが、こうして手厚く埋葬してくれた。だから、これ以上掘り起こしてはやってくれた人の優しさを踏み躙ってしまうだけ。 「……ごめんなさい。私が弱いせいで、助けられなくて……ごめんなさい」 埋葬された人物に頭を下げて謝るラブの瞳から、大量の涙が零れ落ちる。 プリキュアの力がありながら、たった六時間で十八人もの犠牲を出すのを許してしまった。こんなこと、本当ならあってはいけないのに許してしまう。 それに残された人達の悲しみだって深いはずだった。例え殺し合いを止めて主催者を倒したとしても、犠牲になった人はもう戻ってこない。いなくなってしまった人達の場所には、もう誰もいないのだ。 悲しみに溺れている暇はないのはラブだって強く理解している。だけど、まだ十四歳という若さの少女が友の死を本当に乗り越えるなんて、簡単にできるわけがなかった。 それでも誰かがそばにいてくれれば少しは和らいだかもしれないが、ここには誰もいない。黒岩省吾は既にいないし、彼女を襲った怪物達も戻ってこない。 今の彼女は人々を守るキュアピーチという戦士ではなく、桃園ラブという一人の少女でしかなかった。そんな彼女が再び立ち直れるのはすぐなのか、それとも時間がかかってしまうのかはまだわからない。 今はただ、照井竜の眠る地で桃園ラブはひたすら涙を零し続けていた。 【1日目/朝】 【F-2 廃教会前】 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、精神的疲労(大)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意 [装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式×2、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、巴マミのランダム支給品1~2 基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。 0:あたしは………… 1:黒岩を一刻も早く探す。 2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。 3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。 4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。 5:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、巴マミ、放送で呼ばれた参加者達)への罪悪感。 6:ダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)には気をつける。 7:どうして、サラマンダー男爵が……? [備考] ※本編終了後からの参戦です。 ※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。 ※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。 ※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。 ※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。 ◆ 「……ここまで来れば、もう大丈夫か」 太陽が昇る中、たった一人で歩く黒岩省吾は一人で呟く。 彼は元々、廃教会でラブを待ってなどいなかった。あの建物はいつ崩れ落ちてもおかしくないほどボロボロになっていたから、留まっている理由などない。つぼみ達だって、そんな場所にいるとも思えなかった。 それに少しでも離れなければ、戦いの巻き添えになってしまう恐れだってある。あの青い怪人がどれくらいの実力を持つかは知らないが、図書館を簡単に吹き飛ばす相手とも戦えるプリキュアが使う技の巻き添えとなっては、ダークザイドといえども生きていられるかわからない。 故に省吾は村を目指して一人で走っていた。元々はダークザイドの中でも上位の実力を誇る暗黒騎士ガウザーなので、脚力も普通の人間を遥かに上回っているから、戦いに巻き込まれない場所まで離れるのは造作もない。 あの桃園ラブという少女がもし死んでしまったら、それはそれで仕方がない。確かに戦力が減るのは惜しいが、彼女一人に拘ったせいで死んでしまっては元も子もなかった。 今は村を目指して、新しい手駒を見つければいい。そう思いながら省吾は前を進んだ、その時だった。 「そこの方、少々待っていただけないでしょうか?」 「む?」 突然背後から聞こえてきた声によって、省吾は足を止めてしまう。 振り向いた先では、紳士服を身に纏った壮年の男とレオタード姿の少女が立っていた。男の方は物腰が柔らかそうだが、少女は警戒しているかのように目つきが鋭い。 「失礼ですが……どなたですか?」 「申し送れました、私の名前は井坂深紅郎と申します。私達はこの殺し合いを打ち破ろうと考えている者です」 「ほう……そうなのですか」 井坂深紅郎というその男は微笑んでくるが、省吾は決して警戒を怠らなかった。 その表情は一見すると本物の紳士が向けてくるように理知的な雰囲気を放っているが、東京都知事の眼力は瞳の奥に宿る物を見逃さなかった。 この男は、明らかに何かを隠している。殺し合いを打ち破ろうとしているのは本当かもしれないが、その手段を選ばない輩だ。何故なら、自分もそうなのだから。 「実は言うと私も、殺し合いを止める為に仲間を探しているのですよ。その為に、村へ向かおうと考えていたところです」 しかし、ここで下手に戦いを仕掛けても消耗するだけ。 もしもこの男が利用しようと考えているなら、精々そうさせてやればいい。こちらはその隙を付いて、深紅郎達を上手く利用してやればよかった。 「そうですか、それは心強いですね……彼女は私の助手である、ティアナ・ランスターと言います。ほらティアナ君、挨拶を」 「……よろしくお願いします」 「ランスターさんですか、こちらこそよろしくお願いします」 ティアナ・ランスターという少女が伸ばしてきた手を、省吾は握る。 その手からは確かな敵意が感じられた。恐らく彼女は自分どころか深紅郎のことも信頼していないかもしれない。最終的には捨て駒にしようとでも考えているのだろう。 だが、それならそれで結構だ。最後に勝つのは誰なのかを、思い知らせてやる必要がある。 そう思いながらティアナから手を離した省吾は深紅郎の方に振り向いた。 「さて、黒岩さんは村を目指しているのでしたね? 奇遇じゃないですか」 「だとすると、貴方達も村に?」 「ええ、ここで話をするのも難ですし、早く行きましょう……私の力で」 深紅郎は懐に手を伸ばして、白いUSBメモリを取りだす。 『W』のアルファベットが刻まれたそれは、省吾にとって見覚えのあるものだった。 「それは……!?」 『WEATHER』 省吾の疑問に答えるかのように、ガイアメモリから電子音声が発せられる。 深紅郎はそれを右耳の脇に突き刺すと、その全身から凄まじい暴風が発せられたので、省吾は思わず目を瞑ってしまう。吹き荒れる風の音が数秒ほど鼓膜を刺激した後、彼は眼を開く。 すると、先程まで深紅郎がいた場所にはあのドーパントを彷彿とさせるような白い怪物が立っていた。 「その姿……まさか、ドーパントだったのですか!?」 「私の本職は医師ですが、生体研究の一環としてガイアメモリの研究にも関わっておりました。無論、機械工学の知識や技術も持っておりますとも……私に必要なのは、共に戦ってくれる仲間ですね」 「ふむ……私はただの人間でしかないですが、構わないのでしょうか?」 本物の東京都知事であることを省吾は伏せる。 ラブの話から推測するに、この殺し合いには別世界の人間が何十人も集められた可能性がある。もしも目の前の二人が生きる世界の東京都知事が自分ではなかったら、怪しまれて協定を組むどころではなくなる恐れがあった。 無論、ダークザイドであることも明かすつもりもない。下手に情報を渡してはこちらが不利になるだけだからだ。 「いえ、構いませんよ……私だって無駄な犠牲は出したくないですから」 「そうですか、それは実に有り難いですね!」 「では、向かいましょうか。お二人とも、私の手に掴まってください」 白いドーパントとなった深紅郎の右手をティアナが握るのを見て、省吾は反対側の手を握る。すると、屈強な異形の肉体から突風が発せられてきて、三人は一瞬で宙を浮かび上がった。 その凄まじい現象に省吾の表情は驚愕に染まるが、次の瞬間には笑みへと変わる。ここまで便利な参加者と同行できるのは、彼にとっては実に有り難かった。 井坂深紅郎もティアナ・ランスターも内面が読めないが、考えてみればこういう人種の方が頭の中がお花畑である桃園ラブや涼村暁よりも、安心できるかもしれない。考えなしに他者を信頼、行動するような輩と一緒にいてはいずれ自分の火の粉が降ってきてしまう。 そうなる前に手を切れたのは正解かもしれない。無論、再び現れるのなら歓迎してやってもいいが。 (井坂深紅郎にティアナ・ランスター……お前達が俺を利用しようとするなら好きにしろ。だが最後に勝つのは、この俺だ!) 横にいる二人の手駒を見据えながら黒岩省吾は笑い続ける。その瞳の奥に、野心を燃料とした炎を燃え上がらせながら。 ◆ (できるならあのキュアピーチという少女も手駒としたかったですが……まあ、良しとしましょう) ウェザー・ドーパントに変身した井坂深紅郎は新たに手駒として引き入れた黒岩省吾を見て、思案を巡らせる。 加頭順の仲間と思われるサラマンダーという男の放送を終えてからどうするべきかと考えていた所、まずは廃教会を目指すことにした。暗闇の中で見た眩い光の正体を探すためにも、一番近い施設から目星を付けている。 照井竜や園咲冴子と言った利用できる者達が死んでしまったが、別に惜しむことはない。死んでしまってはそれまでだし、まだ生きている者達を探せばいいだけだ。 それよりも、問題はティアナの方だった。詳しい事情は知らないが、あの放送で彼女が倒そうとしていた高町なのはという人間が呼ばれたことで、酷く激情に駆られている。もしもキュアピーチとの戦いに横入りしなければ、殺されていた可能性もあった。 あの少女は外見の割に力があり、二対一で戦っても勝てるかどうかわからない。彼女のような参加者こそ利用したかったが、リスクが大きすぎたので断念せざるを得なかった。 『何で……何で、勝手に死ぬのよ!? 高町なのはも、フェイト・テスタロッサも、ユーノ・スクライアも!』 まるで狂犬のようになっていたティアナの表情を、ウェザー・ドーパントは忘れることができない。 この言葉から察するに、この三人はティアナにとって絶対に打ち破らなければならない相手だったのだろう。自分で例えるなら、園咲琉兵衛や加頭順達のように。 それが他者に奪われた悔しさは計り知れない。だからこそ、見守る価値があった。その感情の高まりが、謎のガイアメモリに何らかの影響を及ぼすかもしれないからだ。 『ティアナ君、ならば君がその高町なのは達を倒した参加者を倒せばいいのです……そうすれば、君は彼女達を超えたことになるのですから』 そう囁くと、ティアナはあっさりと納得してしまう。メモリの毒素による精神汚染の効果もあるのだろうが、ちょっとした言葉が目標を失って壊れそうな心を支えるのに役立つこともあった。 そうしてティアナを廃教会に向かっていた二人に嗾けて、今に至る。 もしもティアナが負けそうになった時に備えて、ウェザー・ドーパントは敢えて戦場に出ていない。元々リスクの高い行動は避けるつもりだったし、戦場に出る前に相手のデータを取る必要もあったからだ。 (黒岩省吾、私の培ってきた勘が告げていますよ……貴方がただの人間ではないことを。その皮の下に、どんな化け物が潜んでいるのか見てみたいですね) ピーチとトリガー・ドーパントの戦いの場から逃げ出す省吾の脚力は、明らかに普通の人間を遥かに上回っていた。これが意味することは黒岩省吾は人間ではない、ドーパントのような人の域を超えた力を持つ存在であること。 だから深紅郎はティアナを上手く説得して、彼と行動を共にするようにした。本当ならピーチが現れるのも待ちたかったが、流石にそれだと合流してからティアナが何をしでかすかわからないから、諦めるしかない。下手に一悶着を起こされてはたまったものではないので、切り捨てることも必要だった。 それに今は、もっと興味深い存在が隣にいる。この男の謎を知りつくすのも悪くはないかもしれなかった。 (貴方が何を考えていて、そして何を求めていようと私には関係ありません……どうせ、最後には貴方の全てが私のものになるのですから) 本当ならこの場で黒岩省吾の全てを知る為に解剖や人体実験をしたかったが、その欲望を抑える。 折角の手駒なのだから、利用できるだけ利用しなければ損なだけ。だから、省吾の全てを奪うのは主催者達を倒してからの楽しみにすればいい。 ウェザー・ドーパントという怪物の下で井坂深紅郎は笑っている。まるで、すぐ隣にいる黒岩省吾の如く瞳に野望と欲望を燃え上がらせながら。 己の欲望のまま生きる男達の間には、凄まじい火花が飛び散っている。しかしこれから戦いが起こるのか、それとも何事もないまま終わるのかはまだ誰にもわからなかった。 ◆ あの高町なのはが、フェイト・テスタロッサが、ユーノ・スクライアがたった六時間で死んでしまう。その事実がティアナ・ランスターの焦燥感は強くさせていた。 この島にはあの三人をこうも簡単に殺してしまうような相手が当たり前のようにいる。凄まじい速さで駆け抜けるあの青い戦士や、ウェザー・ドーパントに変身する井坂深紅郎や、攻撃を耐え続けたキュアピーチという少女がその例だ。全てを犠牲にしてでも強くなると決めたのに、それがまるで叶わない。 そんな相手を自分の手で倒せばなのは達を超えられると深紅郎は言ってくれたが、壁があまりにも高かった。だからこそ、深紅郎の力が必要だった。 恐らく、この黒岩省吾という男を引き入れたのは首輪のサンプルが目当てなのだろう。そうでなければ、こんなただの人間を仲間にするなんて有り得ないからだ。 本当ならこんな胡散臭い奴と一緒にいるのは嫌だったが、事情が事情なので仕方がない。それにトリガー・ドーパントとなって襲ったことが知られることも、余程下手を打たなければ有り得なかった。 だから今は少なくとも、省吾の目の前でトリガー・ドーパントになるのは極力避けなければいけない。あんな男でも今は手駒なのだから。 (キュアピーチと言ったわね……もしもあんたが再びあたしの前に現れるなら、好きにすればいいわ。そうなったら、あんたの目の前であんたが守りたかったこの男を殺してやるだけだから……) ウェザー・ドーパントの力を借りて空を飛ぶティアナは、ピーチへの怒りを燃やしていく。 残念だが、彼女が強いことは認めざるを得ない。だが同時に、なのは達のような救いようのないお人好しでもあるのだろう。もしもそんな彼女の前で守りたかった男を殺したら、どうなるのか……? きっと、絶望に沈んだ挙句に泣き喚くに違いない。 そんな顔を考えただけでも面白くなる。本当ならここで省吾を殺してやりたいが、その時まで楽しみは待っておかなければならない。そう考えるティアナを見てクロスミラージュは悲しげな言葉を漏らすが、それはウェザー・ドーパントが生み出す風のせいで耳に届くことはなかった。 時間の経過と共に、ティアナ・ランスターの中に宿る殺意は増幅していく。T-2ガイアメモリの中に内蔵された毒素によって。 彼女の精神は、ゆっくりとだが確実に壊れていた。 【1日目/朝】 【E-2 上空】 【備考】 ※現在三人とも、ウェザー・ドーパントの力で空を飛んでいます。 ※これから、北の村に向かおうとしています。 【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考] 基本:周囲を利用して加頭を倒す 0:井坂深紅郎、ティアナ・ランスターと共に村へ向かう 1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する 2:涼村暁との決着をつける 3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒 4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる 5:井坂とティアナが何を考えていようとも、最終的には自分が勝つ。 6:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。 [備考] ※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。 ※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました) ※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました ※井坂深紅郎とティアナ・ランスターは自分の事を利用しようとしていると推測しています。 【井坂深紅郎@仮面ライダーW】 [状態]:健康、腹三分 [装備]:ウェザーメモリ@仮面ライダーW [道具]:支給品一式(食料残2/3)、ランダム支給品1~3(本人確認済) [思考] 基本:殺し合いを打破して、主催者を打倒する。 0:ティアナや黒岩と行動し、トリガー・ドーパントを観察する 1:他の参加者に出会ったらティアナと共に戦う、ただしリスクの高い戦闘は避ける 2:首輪の解除方法を探す 3:手駒を見付ける 4:空腹に備えて、できるだけ多くの食料を確保したい。 5:黒岩省吾に興味。いずれその謎を解き明かしたい。 [備考] ※仮面ライダーW第34話終了後からの参戦です。 ※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています ※黒岩省吾は普通の人間ではないと推測しています。 【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:ガイアメモリによる精神汚染(中)、疲労(中)、魔力消費(中)、ダメージ(中)、断髪(スバルより短い)、下着未着用 、全身火傷 [装備]:ガイアメモリ(T2トリガー)、クロスミラージュ(左4/4、右4/4)@魔法少女リリカルなのは、小太刀のレオタード@らんま1/2 [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1(確認済)、機動六課制服@魔法少女リリカルなのは、下着 [思考] 基本:優勝する事で兄の魔法の強さを証明する。 1:井坂や黒岩と行動を共にし、他の参加者を倒す 2:引き際は見極める。 3:スバル達が説得してきても応じるつもりはない。 4:キュアピーチが再び現れるなら彼女の目の前で黒岩を殺したいが、今は我慢する。 [備考] ※参戦時期はSTS第8話終了直後(模擬戦で撃墜後)です。その為、ヴィヴィオ、アインハルトの事を知りません。 ※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています。 ※黒岩省吾を警戒していますが、あくまでも手駒を得る為に今は手を組もうと考えています。 時系列順で読む Back 第一回放送Next 救いの女 投下順で読む Back 第一回放送Next 救いの女 Back 野望のさらにその先へ 桃園ラブ Next ライバル!!誰?(前編) Back 野望のさらにその先へ 黒岩省吾 Next ライバル!!誰?(前編) Back 未知のメモリとその可能性 井坂深紅郎 Next ライバル!!誰?(前編) Back 未知のメモリとその可能性 ティアナ・ランスター Next ライバル!!誰?(前編)
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784通常の名無しさんの3倍2017/08/29(火) 18 25 25.57ID J6PgMNF50 785 779 では、最終話「黄金の秋」を見てみよう。 川釣りをしているのは夏っぽいし、ラストシーンは雪深い冬。さらに実際には一年以上の期間を追っていると思われる。しかしタイトルは秋なのだ。 キラ「つまりロランの季節はディアナ様が決めているんだ(ドヤッ)!」 シン「季節が『夏混み』『冬混み』だけのアンタが言うことかー!」 785通常の名無しさんの3倍2017/08/30(水) 00 57 02.72ID ehZVwXMz0 786 784 バサバサバサ… ディアナ「あら、立派なカラス」 ロラン「ほんとだ、大きいですね」 シャア「・・・どう見ても白鳥なのだが」 アムロ「・・・ロランの辞書に、『ディアナ様の否定』と言う文字は無い」 786通常の名無しさんの3倍2017/08/30(水) 17 17 18.58ID kwHQJ7YB0 787 785 ディアナ「ロラン、正直におっしゃい。あれは本当はカラスでしょ」 ロラン「…はい」 ディアナ「ロラン、わたくしが求めているのはイエスマンではありませんよ」 アムロ「…とまあ、ディアナ様の方が軌道修正してくれるのだが」 シャア「さすがはディアナ様ということか」 アムロ「これで『夏だから脱ぎましょう』なんて言わなければ…」 シャア「s グハアッ!何をするアムロ!」 アムロ「今お前『さすがはディアナ様』と言おうとしたよな」 シャア「甘いなアムロ。『さすディア』だグハアッ!」 アムロ「略すな!#」 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ ディアナ・ソレル ロラン・セアック