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数百年も昔の話である。当時は飛行機などはなく、海で隔てられた国と国とを行き来するのに船が使われていた。 船旅には時間がかかる。特に、当時の主要な二つの国の間を移動するのには、かなりの長い期間が必要だった。 時間がかかればその分コストとリスクが付いて回るため、船乗りや商人たちは考えた。なんとかこれを短縮できないか。 ある時、研究によって逆廻りの航路を利用すれば大幅にその移動時間を短縮できるということが分かった。 その二つの国も、逆廻りで旅を成功させたものに莫大な賞金を出すとしたため、多くの船乗りがこれに挑戦した。 しかし、当然その航路に関する情報はなく、出発した船のほとんどがすぐに帰港するか、そのまま行方知れずになった。 やがて挑戦する船乗りは誰もいなくなり、この航路は数十年もの間封印されていたのだった。 ある時、新進気鋭の若い船長がこの逆廻り航路のことを知り、僅かな船員を連れてこれに挑戦することとなった。 このことは大きなニュースになったが、世間の目は達成できるはずなどないと冷ややかなものだった。 しかし、若者の船は同じ時期に出発した順廻り航路の船が向こうへ到着する前に、交易品を積み込んで戻ってきた。 挑戦は大成功を収めたのだ。若者は一躍英雄となった。彼は莫大な賞金を受け取り、世間では成功を讃える歌が流行した。 彼が言うには、今回の挑戦が成功したのにはあるピンク色の生き物の存在が大きかったらしい。 船は出発してから陸伝いに補給を続けて進んだが、それも数週間で途切れてしまい、海を突っ切ることになったらしい。 とはいえそこで陸地が途切れることは知られていたので、それからは予定通りひたすら伝え聞いた方角へ進んだそうだ。 彼は食糧の確保に細心の注意を払っていたが、なんと最後に立ち寄った港町で仕入れた缶詰には、木屑が詰められていた。 戻るのにも十分な食糧は残っておらず、彼には進むしかなかった。船員は栄養失調に罹り、病に臥せるものもでてきた。 もはやここまでかと思った時、目の前に陸地が見えた。目的地に到着したのかと思ったがそうではないらしい。 どうやら無人島のようだ。上陸してみると、そこは温暖で様々な果物がたわわに実る天国のような島だったという。 しかし何より船員たちの興味を惹いたのは、今まで見たこともないピンク色で丸々と太った奇妙な動物だった。 身の丈およそ1m。人間に対する警戒心は持っていないようで、人間か近づいても気にせず木の実を貪っていたという。 理由は不明だが、この生き物はタブンネと名付けられた。天敵がいないからだろうか、タブンネは簡単に捕まえられたそうだ。 試しに捕まえた一匹を殺し、その肉を食べてみると、上等な牛肉にも勝る舌が蕩けるほど素晴らしい味だったらしい。 そのため若者はこの生き物を集めて絞め、保存がきくよう干し肉を作った。同時にここで水と果物を補給したそうだ。 更に、長い船旅の間、獣欲を発散するために何匹かのメスのタブンネを捕えて積み込んだそうだ。これが正解だった。 タブンネは縛って床に転がしておくたけで、全く抵抗できずに涙を流して弱々しい鳴き声を上げることしかできなかったそうだ。 また、それらは生命力が強く、果物の皮や芯を与えるだけで生き続け、果物が腐りだしてからはその腐った果実も貪るように食べた。 これによって、乗組員たちは本来の目的に加え、向こうにたどり着くまで新鮮なタブンネの肉を口にすることができたという。 彼の成功を知った両国は、これまでの航路を使った交易を取りやめて逆廻り航路を利用するようになった。 航海中の補給にはこの島が利用された。当然タブンネは狙われるようになり、次々に殺されていった。 タブンネは傷ついた仲間を見つけると、助けようと集まってくるそうだ。特にメスが傷つくとこの行動は顕著になるらしい。 そのためメスのタブンネを見つけて棍棒で頭を叩き割って放置しておけば、効率よくタブンネを集められるということだ。 こうして捕えられたタブンネは加工されたり縛られたりして船に積み込まれ、船乗りの蛋白源や欲望の捌け口になるのだった。 また、のろまなタブンネを殺すことが船乗りにとっての娯楽になった。一日で何百匹ものタブンネを仕留めたという記録も残っている。 タブンネが狩りつくされるのにそう時間はかからなかった。最後に目撃されたのは今から200年も前のことである。 ひと組のつがいが数個の卵を温めていたところを見つけたので、卵を奪い取って残らず踏みつぶし、親を絞め殺したというものだ。 これ以降の目撃情報はない。島中にいたタブンネは、最初に人間に発見されてから僅か数十年で絶滅したと考えられている。 タブンネがいなくなってからもこの島の重要性は変わらず、多くの船乗りがこの島で水や食料を補給していた。 そして次第に人が住みつき、作物を作るようになる。以降この島は補給基地として大いに発展していくのだった。 しかし、飛行機械の発達に伴ってついにはその役割を失い、今はリゾート地としてバカンスには多くの観光客を集めている。 補給基地として栄えていた時代に、当時の人間が建てたタブンネの立派な銅像は、現在でもしっかりと海岸に佇んでいる。 だが今となっては訪れる観光客のほぼすべてがその由来を知らない。 養殖させれば良かったのに。なんか勿体無い。 -- (ヒビキ) 2012-05-23 12 14 01 10スレ目の616でこの島の生き残りが云々ってのがありますよ、オチとして703を読むのを推奨します(616はあえて読まん方がいいかも) -- (名無しさん) 2012-05-23 12 47 40 続き、616の方はこのSSの作者に成りすました愛誤が書いたものですがね(703は不明) -- (名無しさん) 2012-05-23 12 49 07 このSSにおいての、タブンネちゃんの傷ついた仲間を助けようとする習性はネタに使えるな -- (名無しさん) 2012-05-25 22 44 45 今までこのSSの元ネタがドードーだと思ってたけど、調べたらオオウミガラスだったぜ -- (名無しさん) 2012-06-06 19 00 34 名前 コメント すべてのコメントを見る
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イッシュのポケモンセンターでは多くのタブンネたちがナースとして働いています。 彼らは決して器用ではありませんが、いやしのはどうを使ってケガを治療したり、 触覚で患者の気持ちを理解したりすることで、できる限りのことをしています。 それに、ピンク色の柔らかい体とふわふわの白い尻尾、いつも浮かべている優しい笑顔は、 ポケモンセンターにやって来る人たちを明るい気持ちにさせてくれます。 イッシュ地方のポケモンセンターにとって、タブンネは必要不可欠な存在なのです。 しかし、タブンネたちはいつまでもポケモンセンターで働くことはできません。 どんなポケモンだって、生きている以上は歳をとります。 ポケモンセンターで働くタブンネたちも例外ではありません。 歳をとると、素早い動きができなくなったり、考える力が弱くなったりしてしまいます。 あまり器用でないタブンネたちがそうなった場合、治療中にミスをしてしまうかもしれません。 万が一にも事故が起こってしまったら、ポケモンセンターの信用にも関わってきます。 しかし、人間やほかのポケモンのために働いてくれたタブンネたちを放り出すのは、 タブンネたちにとってあまりにもかわいそうなことです。 そこで、イッシュの各地にある施設が建てられました。 それが、タブンネたちの老後のお世話をする「タブンネ療養センター」です。 ここには、ポケモンセンターで働いていたタブンネたちはもちろん、人間の家でペットとして 暮らしているうちに、歳をとってお世話することが難しくなったタブンネたちも入ることができます。 人間とともに暮らし、歳をとったタブンネたちの多くがここで余生を過ごすのです。 どういった場所なのかを見ていきましょう。 ここはある療養施設です。 施設の床にはふかふかのマットが敷かれています。 これなら、タブンネたちが転んでもケガをすることはありませんし、柔らかいマットの上でリラックスし、 タブンネたちはゆったりと過ごすことができるのです。 目の前にいるのは、今日この施設にやってきたばかりのタブンネたちです マットの上に寝そべってタブンネ同士でにこにこ笑いながら何かおしゃべりをしています。 ご飯の時間になると、タブンネたちにご飯が運ばれてきます。 このご飯を持ってくるのは、まだ若くて元気いっぱいのタブンネたちです。 ポケモンセンター以外にもこうした場所でタブンネたちは働いています。 ちなみに、今日のごはんはオボンの実をすりつぶしてペースト状にしたものです。 これなら、歯が弱くなっているタブンネたちでもおいしいオボンの実を食べることができますね。 ご飯を食べるタブンネたちはとても嬉しそうで、幸せな自分たちの姿にタブンネたちは喜びを感じるのです。 ……このときはまだ。 それから1週間後。 タブンネたちの様子は大きく変わっていました。 マットに寝転がったり、壁に寄り掛かったりしたままで、ぼんやりと過ごしています。 ご飯が運ばれてきても、もそもそと機械的に口の中に運ぶだけで、そこには何の感情もありません。 1週間前はみんなで楽しそうにしていたのに、いったい何があったのでしょうか。 実はこの施設、怪我を防止するためのマットが敷かれている以外は何もないのです。 テレビも、おもちゃも、そして窓さえも。 何の刺激もなく、外の景色を見ることもできず、漫然と日々を過ごすことでタブンネたちは、 だんだんと活力と感情を失っていきます。 ただ食べて、ただ眠る。 この施設に来たタブンネたちにできることは、それだけしかありません。 もちろん、こうするのには理由があります。 タブンネたちが大人しくしている方が世話をしやすいのです。 ご飯や排泄のお世話をするのは、器用とはいえないタブンネたちです。 彼らの負担を少しでも減らすために、あえて、この方法がとられているのです。 ここは別の街にある療養施設です。 この施設には、病気や怪我をしている高齢のタブンネたちがやって来ます。 ここにやって来たタブンネたちはベッドの上で過ごしながら、病気や怪我が回復するのを待つのです。 先ほどの施設とはちがい、この施設の中にはタブンネたちの声が満ちています。 ただし、その声は明るいものではありません。 苦しみ、恨み、悪態。 その声は今の自分の境遇を呪うものばかりです。 タブンネのための療養施設なのに、どうして、このようなことになっているのでしょう。 たしかに、この施設はタブンネたちの病気や怪我が回復するのを待つ施設です。 ただし、ほんとうに待つだけなのです。 根本的な治療は一切行われず、そのため、タブンネたちの体が良くなることはありません。 いつまで続くかもわからない苦しみの中で、タブンネたちは老後を過ごすのです。 1匹のタブンネが激しくせき込み始めました。 のどの血管が切れてしまったのか、飛び出す唾液は赤く染まっています。 すると、部屋のドアが開き、数匹の若いタブンネたちが入ってきました。 この施設で働いているタブンネたちです。 タブンネたちはベッドの周りに集まると、両手をかざし「いやしのはどう」を放ちます。 すると、あれほど激しかったタブンネのせきはピタッと止まります。 しかし、ベッドの上のタブンネには感謝の気持ちなどありません。 若いタブンネたちに向かって涙を流しながら訴えます。 やっと死ねると思ったのに、と。 実はこの施設、根本的な治療は行いませんが、できる限りタブンネたちを死なせないようにしています。 そうした方がお金になりますし、何より、タブンネを預けた人たちがそう願ったからです。 自分たちと暮らしてきたタブンネを少しでも長生きさせてあげたい。 かつて家族だった人間の優しい願いがタブンネたちを苦しめているのです。 今回は2つの施設を見ましたが、こうした施設はイッシュ各地に存在しています。 中には、タブンネたちを実験動物として扱うところや、ほかのポケモンの経験値稼ぎに使っている施設もあります。 今回見てきた2つの施設は、まだ良い方なのです。 人間とともに暮らすタブンネ。 その最期は、必ずしも幸せであるとは限らないのです。 (おわり)
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はじめに ネタの引き出しに役に立てればと思い作成いたしました(管理人より 2014/12/14)。 公式のタブンネ 図鑑情報 種族名 タブンネ 全国図鑑No. 531 タイプ ノーマル 身長(公式の図鑑) 1.1M 体重(公式の図鑑) 31.0Kg 性別比 ♂:♀=1:1 たまごグループ ようせい 特性1 いやしのこころ 特性2 さいせいりょく 隠れ特性 ぶきよう いやしのこころ…自分以外の味方の状態異常がターンごとに1/3の確率で治る さいせいりょく…戦闘から引っ込むとHPが最大の1/3回復する ぶきよう…持っている道具の効果を受けない 技:なげつけるを使用できない 進化系列 タブンネ→メガタブンネ(メガシンカ) メガタブンネ時はタイプがノーマル・フェアリーになり、特性は「いやしのこころ」固定になる。 種族値 種族値 HP A B C D S 備考 タブンネ 103 60 86 60 86 50 メガタブンネ 103 60 126 80 126 50 持ち物「タブンネナイト」固定 出現場所 第5世代 BW 全地域の草むら(揺れる草むら) 最低レベルはLv2(1番道路) 最高レベルはLv55(ジャイアントホール) BW2 19番道路を覗く全地域の草むら(揺れる草むら) 最低レベルはLv2(20番道路) 最高レベルはLv64(BW2・ヤグルマの森) 第6世代 X・Y 6番道路(黒い影)・フレンドサファリ(ノーマル) 6番道路の出現レベルはLv10前後 フレンドサファリはLv30固定・夢特性出現あり ΩRαS マボロシの場所(島・森など) サーチ無しの出現レベルはLv38前後 第7世代 SM 出現しない(ポケバンク経由のみ) USUM ウルトラスペースゼロ(緑ホール) Lv60固定。マップ到達時に色違い判定が決まる。 第8世代 剣盾 カンムリ雪原全域のポケモンの巣、固定シンボルと通常の野生で出現する。 公式での扱い 第5世代 初登場。単ノーマルのいわゆる「かわいい枠」なだけのはずなのだが、いろいろな付加価値が付いていた。 ゲーム内 揺れる草むらからのみ出現するポケモン。後述のトレーナー以外は使用せず、基本的に狙わないと会えないポケモンである。 倒すと大量に経験値が貰えるポケモンである。ラッキー系列には劣るが、これらはBWでは野生で出現しない。 NPCの発言の中には「たっくさん 経験値が もらえるの! なんだか 優しい ポケモンよね!」と言われており、攻略本でも「タブンネを倒して経験値をたくさん手に入れよう」と書いてある。 BWではクリア後のライモンドームの中でLv65のタブンネ1匹を繰り出すドクターとナースがおり、このタブンネに対して条件を整えれば、親が自分のポケモンで合っても10万もの経験値を得る事が出来る。これは前作(第4世代)の「ギャラボム」の効率の10倍ほどの効率があった。 各メディアなど アニメの中ではポケモンセンターでジョーイさんと共に働くポケモンである。 現実のポケモンセンターでも、マスコットポケモンの一つとして配信されていた(バースデータブンネ)。 第6世代 過去世代のいわゆる「かわいい枠」らのポケモンの多くがフェアリータイプを会得するなか、タブンネには付かなかった。 かわりにΩRαSにて、第5世代出身ポケモンの中で唯一のメガシンカを獲得し、メガシンカ形態でフェアリータイプが付加された。 ゲーム内(XY) XYでは野生出現の地域が大きく下がり、レベルも低下したため稼ぎには利用できなくなった。 「経験値を多く貰えるポケモン」の枠としては変わっていないのか、バトルシャトーで戦えるふりそでがタブンネのみを2,3匹繰り出してくる。基本レベルは35(2匹)と45(3匹) ゲーム内(ΩRαS) 日替わりやすれちがい通信によって現れる「マボロシの場所」のみに出現する。出現する島はいくつかあるが、どれも孤島である。 メガシンカのための「タブンネナイト」の入手は、バトルリゾートのハンサムの2回目の会話からとなる(ΩRαS) 各メディアなど XYでは全く触れられていない。 ΩRαSでは、新たにメガシンカするポケモンの1体として挙げられる。 第7世代 SMでは出現せず、USUMのウルトラホールでのみ出現する。 「仲間呼び」や自然の厳しさを感じられる図鑑説明など、美味しいネタが豊富だっただけに残念である。 ゲーム内 SMでは出現せず、タブンネナイトも配信でしか入手できなかった。 USUMでもウルトラホール内でのみ出現する固定シンボルなので仲間呼びはなく、出現そのものがランダムなので稼ぎには使えない。 なお、ラッキーのほうはUSUMにて仲間呼びが可能かつ高レベルで出現するので、引き続きキャラは立っている。 第8世代 DLC冠の雪原にて解禁。 メガシンカが廃止されたためメガタブンネもなくなっているが、 バトルレギュレーションマークの実装により、7世代以前のタブンネもランクマッチで使用することが出来る。 ゲーム内 当初はデータに存在しないリストラ枠だったが、DLC冠の雪原で解禁された。出現Lvは60代前半。 今作はフィールド上でのポケモンとの遭遇がシンボルエンカウント式となっているため、ポケモンごとに特徴のある動きを見ることが出来る。 フィールドにいるのタブンネはプレイヤーを見つけると一目散に逃げだすという特徴があり、このタイプのポケモンは時間が経つと消えてしまうというもの。 逃げ足は遅いので簡単に追いつくことが出来るのだが、遅い足で必死にトコトコと逃げる姿はとても可愛らしく、タブ虐住民でなくともニヤニヤできること間違いない神演出である。 公式からの明言こそ無いものの、「タブンネが人間達によって刻まれた恐怖」とも取れなくもない演出は解禁当時に少し話題になった。 ポケモンの巣でも登場し、カンムリ雪原全域の細い光(赤色)で低確率で見つけることが出来る。☆は3~5。 巣からのマックスレイドバトルで倒すとけいけんアメをたくさん貰えるので、レイド周回による稼ぎであればマックスこうせきが入手できる分鎧の孤島のハピナスの上位互換の稼ぎ場となっている。 ただし、実際は同じ量のアイテムを狙いつつ低確率でドリームボールを入手できるデリバードを周回した方が良いため、自然発生した巣穴を処理する際にタブンネが出てきたらラッキー…という程度の地位になっている。
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マランネ タブンネに類似した亀頭のような形状をしたポケモン? 元ネタ→マはマジキチのマ
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「これでよし、と」 あるトレーナーが自宅で自分のポケモンたちにアクセサリをつけ終える 着飾りの終えたポケモン達はどこか嬉しそうだ 白をベースとした人に近い姿をしたポケモン、サーナイトはその隣にいる薄紫色をした愛らしいポケモン、エーフィをぎゅっと抱き寄せる 二匹とも通常のサーナイトやエーフィに比べ毛並みや体つきもよく、トレーナーの日ごろの努力が垣間見れる エーフィは体をくねらせサーナイトから解放されると、鏡の前で愛嬌のあるポーズを取り出した 実はこの二匹は今日ライモンのミュージカルに出場する予定なのだ 幾度か出場経験があるサーナイトは初めてで緊張しているエーフィを見て微笑んでいる トレーナーはCギアを見て時間を確認する、そろそろ時間のようだ サーナイトとエーフィに声をかけ、トレーナー達は家を後にした ライモンの外れに住んでいるトレーナーは草むらをいくつか通らないとライモンへはいけない 草むらに入る前に入念にスプレーをかけて野生のポケモンに出会わないようにし、草むらを通っていく そんなトレーナーを遠くから不思議そうに見ているポケモンが居た そのポケモンはガサガサと草むらを揺らし、トレーナーの方に近づく そしてトレーナーと目が合わさった、ピンク色の寸胴体系のポケモン、タブンネだ タブンネはトレーナーを見るとにへらっっと緊張感のない笑みを浮かべ挨拶をする ──こんにちは!はじめまして── 野生ポケモンと極力関わり合いになりたくないトレーナーはサーナイトとエーフィを連れタブンネを無視し、正面突破を試みた 迂回するとスプレーが足りなくなるからだ、いちいち時間をかけてる暇はないと判断したトレーナーとポケモン達はタブンネの横を素通りしようとした しかしそううまくいかなかったようだ、タブンネは後ろから気配を隠すつもりもなく鳴きながら付いてくる さらに無視すると、タブンネ今度はトレーナーのズボンの裾をひっぱった ──ねぇねぇトレーナーさん、私と遊びましょ── どこまでも警戒心の薄く、なれなれしいタブンネにトレーナーは苛立ちを感じ始めていた エーフィとサーナイトはそのトレーナーの様子を不安げに見つめている 見つめられているのをわかったトレーナーは心配をかけまいと無理に笑顔を作り、また歩き始めた タブンネは自分に気づいていないのでは、と思いトレーナーに突進を繰り出した 背後から肉の塊の突進を受けてトレーナーは思わず前のめりに倒れる 自分のポケモンがミュージカルにでるのだからと多少着飾った服が泥まみれだ エーフィとサーナイトはトレーナーに近づき気遣う トレーナーは何とか大丈夫と言ったようにサーナイトに手を借りて立ち上がった タブンネは遊んでいるつもりだったのだろう、トレーナー達に先ほどの気の抜けた笑顔を向ける 緊張感のかけらもなくこちらに歩み寄ってくるタブンネにトレーナーはもちろんのことエーフィもサーナイトも怒りが爆発寸前だった サーナイトはトレーナーにいやしのはどうをし、傷口を治した後泥を払う エーフィは怒りで我を忘れてタブンネに攻撃を開始した まず手始めにエーフィは念力による球体を作りだし、そしてそれをタブンネにぶつけた 精度の高いサイコショックはタブンネに決して悪くないダメージを与える 腹部にサイコショックを喰らったタブンネはその場に跪き、腹部を抑え苦しみ始めた ──お腹痛いよ、どうしてこんなことするの‥‥?── タブンネは涙目になりながらエーフィに訴える エーフィは聞く耳持たずと言った風に今度は瞑想を始めた その姿を見たタブンネは腹部を抑えながらも立ち上がり、そしてノロノロと逃げ始めた まるでナットレイのような遅さで逃げるタブンネ、そんなタブンネにエーフィが一瞬で追いつくのは明らかだった 瞑想を終えたエーフィは軽快な身のこなしでタブンネの前に入り込み、タブンネを睨みつける 急に脇からエーフィが現れタブンネはその場にへたり込む エーフィはそのまま再び先ほどより少し大きくなった念力の球体をタブンネに放った サイコショックはタブンネの鳩尾に当たり、破裂する タブンネはトレーナーとサーナイトが居る方へ大きく吹き飛ばされた 鳩尾を強打されたのと背面を強く地面に打ち付けたのとでタブンネは胃液のようなものを吐きだす そして薄らと目をあけるとそこには怒髪天を衝く程に怒っているトレーナーと 瞑想で極限まで精神を研ぎ澄ませたサーナイトが居た その姿を見てタブンネは歯をガチガチと鳴らし、恐怖する 胃液まみれの口元を拭くこともなく、トレーナーとサーナイトの方に向き直り命乞いを始めた その顔を恐怖一色に染め上げてタブンネは助かりたい一心でミィミィと鳴き続ける ──ごめんなさい!ごめんなさい!命だけは助けてください!!── サーナイトはその言葉を理解し、そしてトレーナーに伝える、シンクロによる意思疎通はエスパータイプの十八番である トレーナーはその旨を理解すると、サーナイトに命は奪うな、と指示し、そしてそれをあのタブンネに伝えるように言った サーナイトはタブンネにそういう風にテレパシーを送ると、タブンネは先ほどとは一変歓喜の表情に変わった ──ありがとうございます!ありがとうございます!── タブンネは涙や鼻水を垂れ流しながら鳴き続ける、その姿はあまりにも醜悪だった サーナイトはタブンネに微笑みかけると手を宙にかざし、力を一点に集中させ始めた 膨大な力の塊はその周囲に突風を巻き起こす 異常を察知した周囲のポケモン達はすぐさま尻尾を巻いて離れていった タブンネは一瞬あぜんとしたが、すぐさま理解した 感じ取ったのだ、トレーナーとサーナイトのこれ以上ない悪意を 涙を流し鼻水を垂らしながらタブンネは近づいてくる力の塊を見つめる その顔はやはり、絶望に歪んでいた 力の塊が当たったタブンネはまず最初に全身をミンチにされた 大きな力はタブンネの肉という肉をズタズタに引き裂き、吹き飛ばす 全身の肉が吹き飛ぶのはものの数秒だったが、タブンネにとっては何時間にも長く感じられていた 次いで行われたのは内臓の機能を最低限残したまま傷つけることだ 内臓自体に痛覚はないが、心臓や肝臓、胃などありとあらゆる内臓が傷つけられ、そのたびにタブンネは苦しんだ もはやその時点では叫び声をあげることすらできなかった 力の塊が終息するとタブンネだった肉塊はその場にどちゃりと崩れ落ちた 何より恐ろしいのは気道は確保され、心臓や肺等の臓器と血管はその形を保ち、活動をやめていないのに対し 全身の肉はズタズタに刻まれ目は抉られ嗅覚聴覚はもはやその形を保っていなかったことだ 全てを外界から隔離されたタブンネは、そのまま餓死するまでの長い時間をここで、過ごすことしかできなかった 自慢の再生力も細胞そのものを死滅させられているので意味をなしていなかった 「ごめんなエーフィ、サーナイト」 トレーナーは満足したのか、サーナイトとエーフィに謝罪の言葉を発し、その場を後にする 時間もかかり、何よりこのような格好では参加できないと判断したトレーナーは今日のミュージカルの出場を断念するようだ エーフィは頭を振る、気にするなと言っているようだ トレーナー達は本意ではなかったが、しかしそれでも幸せそうに帰路についた ──暗いよ‥‥何も見えないよ‥‥助けて‥‥助けて‥‥── その場には、ただただ誰にでもなく助けを求めるだけの哀れな肉塊だけが残った
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超古代にイッシュ地方の近辺で栄えていた文明 そこではタブンネが神聖なポケモンとして崇められていた 酋長の宮殿では多くのタブンネが飼育されており 彼らは生まれた時から大量の木の実と暖かい寝床を与えられ、何不自由なく生活していた 4年に一度、太陽が最も大きくなる時、 タブンネ達は色とりどりの花や織物やトンボ玉で身を飾り、 一人一基ずつ屈強な男が担ぐ神輿に乗って酋長や大勢の巫女と共に王宮を後にする 一行が向かったのは大きな火山にある洞窟 一番奥は崖のようになっていて、火山の火口につながっている 酋長が合図をすると、タブンネ達は神輿から降ろされた 熱いのが嫌らしく「ミッミッ!」とふくれている 次に酋長が何か指示をすると、 屈強な男たちは神輿の下部に取り付けられていた直径1メートル半ほどの大きな輪を取り外した 花やヴォーグルの羽で飾られている直径一メートル半ほどの中に十字の板が入った大きな輪だ それに男たちは十字の板に革紐で輪一つにつき一匹ずつタブンネ達を磔にした 「ミミィ!ミミィ!」とさっきよりも激しく抗議するタブンネ達 それを気にせず酋長は手を上げ、数人の14.5歳ほどの若い巫女たちに合図をする 巫女たちはタブンネに近づき、石のナイフを手に持った 酋長が呪文のようなものを唱え始める、それに輪唱する大勢の巫女たち 若い巫女たちは呪文が始まると、タブンネの腹に石のナイフを突き立て、一気に腹を裂く 「ミァァァァァーー!!!」と絶叫するタブンネ達、それをかき消すように酋長の呪文もさらに強い声になる 腹を裂き、糞や未消化の食べ物が一杯詰まった腸を取り出すと、 そこに香辛料として使われていた辛い木の実や酸っぱい木の実が目いっぱい詰め込まれた そして仕上げにデンチュラの糸で腹を縫い合わせる タブンネは相当苦しいらしく涙を流しながら口を大きく開けでガクガク震えている 今まで可愛がってくれた酋長に「何でこんな事するの?私は可愛くて偉いタブンネちゃんだよ」 というような目線を送るも酋長達はトランス状態で気付くはずもない そしてリングにロープを結びつけ、洞窟の天井にセットされた大きな滑車に繋げられる そしてタブンネをゆっくり、ゆっくりと火口へと下ろしていく だんだん火口に近づくにつれ、熱さが増しているのか「ミフィ!ミーッ!ミーッ!!ミーッ!ミ゙ュィィィィィィィイイ!」と悲鳴が変わっていく タブンネの身体が炎に包まれると、酋長と男たちは「ウオオオオオオーーッ!!」と雄叫びを上げる それを唖然とした表情で見届けるタブンネ達。もちろん、次はこいつらの番なのだ 超古代文明におけるこの火山は「神の口」タブンネは「神の食料」。最高の状態で神様に届けなくてはならぬのだ この日は古代都市の一般市民や農民も、育てていたタブンネを同じような方法で調理し、神に感謝をささげた後頂くのであった
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ジョウト地方のくらやみのほらあなに、一匹のタブンネがいた 本来ならこんな場所に居るはずもないポケモンだ 真っ暗で辺りは何も見えない、タブンネは隅の方でビクビクと怯えながらしゃがみこんでいた 遠くでズバットが羽ばたく音が響き渡り、タブンネは身を強張らせる ──怖いよ、怖いよ、助けてご主人様── タブンネは涙をぐっと堪えながらいつか迎えが来ると信じていた しかし、その迎えが来ることは一生ない、このタブンネは捨てられたのだ そんなこととは露ほども知らず、タブンネはじっとその場で迎えを待ち続けた そしてそれから2日立った、水分補給には事欠かなかったが、食料はなくタブンネは飢えで苦しんでいた 二日前より少しやせ細ったタブンネは壁に寄りかかり、目を瞑る ──ご主人様、早く来ないかな── タブンネは眠りにつこうとすると薄らと光が近づいてきた そしてその光はだんだんとタブンネの方へ近づいてくる タブンネは目を覚まし、その光源を見つめる ずっと暗闇の中でいたので目が少し痛んだがそれでもその光源とその隣にいる人物を視認することができた 何度か見たことがある黄色いポケモン、サンダース そしてタブンネが愛して止まなかったタブンネの"元"トレーナーだった タブンネは歓喜しながら急いでトレーナーに駆け寄った トレーナーは近くまできたタブンネを見て驚いたようにこう続けた 「なんだ、お前まだ生きてたのか」 その言葉がどういう意味を持つのか、タブンネには理解できなかった ヘラヘラと緊張感のない笑顔を浮かべトレーナーに撫でられるのを待っている その姿に嫌気がさしたトレーナーはサンダースに攻撃を指示した サンダースは指示通りタブンネに10万ボルトを放つ 洞窟内に電気が勢い良くはじける音が響いた タブンネは10万ボルトをくらい叫び声をあげ、片膝を付く 何が起こったのか理解できていない様子で、呆然とした表情でトレーナーの方を見つめた ──なんで‥‥どうして‥‥?── タブンネはひきつった笑顔を浮かべて鳴き始めた その姿にトレーナーは苛立ちを覚えて、再びサンダースに10万ボルトをするよう命令した 力強い電流がタブンネを痛めつける、タブンネは再び電撃をくらいその場に仰向けに倒れた もともとのレベル差もあったが、それ以前に珍しいからという理由で捕獲されただけのタブンネと 交配を重ねて強い個体を戦闘のために育てたサンダースとでは力の差は歴然だった トレーナーは倒れたタブンネの顔に痰を吐きかける その瞬間タブンネは大声で泣き始めた、タブンネのけたたましい鳴き声が洞窟内に反響する トレーナーは最後の最後までタブンネに対して敵意を向けながら来た道を戻り始めた それに気付いたタブンネは起き上がり、追いかけようとする しかしタブンネは体に力が入らず、そのままうつ伏せの状態で倒れこんでしまった 両手を伸ばし、泣き叫び、かつてのご主人様に助けを求めるが、トレーナーはその場を去った後だった より大きな声で泣き叫ぼうとした瞬間背後から突風が吹いてきた あまりの風の強さにタブンネは回転しながら吹き飛ぶ、突風が吹いてきた方には興奮状態のクロバットが居た クロバットは翼を大きく羽ばたかせ鋭い眼光でタブンネを睨みつける タブンネは危ないと直感で理解したが、先ほど受けたダメージもあり動けずにいた 神速とも呼べるその速さでクロバットはタブンネに近づき、怪しい光を浴びせた 淡い球体上の光がタブンネの周りを彷徨い、タブンネの目の前で弾ける その瞬間タブンネの中で記憶がフラッシュバックした かつてイッシュ地方で捕まえられて、可愛がられたこと 何度か戦闘に出されたが負けて、戦闘に出るのを嫌がったこと ご主人様に蹴られて殴られてサンドバッグにされたこと ジョウト地方についてからは碌に相手にもされず避けられたこと 見捨てられ、洞窟の奥深くに捨てられたこと ご主人様のサンダースに攻撃されて、そのまま見捨てられたこと ──違う!こんなの嘘だよ、こんなことされてない── タブンネは混乱によって生じた記憶と本当の記憶がない交ぜになってわからなくなっていた 目を瞑り耳をふさぎながら頭を左右に思いっきり振り続けるタブンネ その姿は自分の記憶すべてを否定しているようだった しかしそんなことをしていてもタブンネの頭の中では記憶がフラッシュバックしていく そしていよいよ脳がそのストレスに耐えきれなくなり、タブンネの精神は崩壊した タブンネは一際大きな叫び声をあげ、目を見開き血涙を垂れ流す そしてヘラヘラと笑いながらその場に崩れ落ちた 満足したクロバットは再び羽ばたきながら眠り始めた 羽音を立てずにまるで忍者のようにスッと消えるクロバット くらやみのほらあなに、再び静寂が戻った
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ここ、1番道路は比較的野生のポケモンが根付きやすい土地とされている 草花や木の実などが豊富で、近くには広く大きい水場がある その水場に一匹のタブンネが居る、どうやらオレンの実を採った後喉をうるおすためにここに来たようだ タブンネは水を両手で一掬いし、口の中に流し込む 音を立てて飲み込んだ後タブンネは口元を拭き、その場を後にしようとした その瞬間、何かが水面から上がるような音がタブンネの背後から聞こえてきた タブンネが後ろを振り向くと、そこには一人のトレーナーと、青い体が印象的なポケモン、シャワーズが居た なみのりを終えた後なのだろう、体を振り体に付いた水滴を飛ばしている タブンネは自分が見たことのないポケモンに興味津津だ 先ほど手に入れたオレンの実を差し出し、挨拶をする ──はじめまして、あなたはだあれ?── トレーナーとシャワーズは一瞬困惑する、その様子を見てタブンネも少し困惑しているようだ しかしトレーナーはすぐさまシャワーズに命令を行った シャワーズはすぐに構えに入って、口から熱湯を勢いよく噴出した 熱湯がタブンネに振りかかる、熱湯が顔面に直撃したタブンネはその場で悶絶した タブンネは顔を抑えて、地面でのたうち回る、その隙にシャワーズはタブンネが落としたオレンの実を食べ始めた シャワーズがオレンの実を食べ終えた頃にはタブンネも落ち着いていた 火傷し、より一層醜くなった顔でシャワーズとトレーナーを見つめるタブンネ ──どうして、どうしてこんなことするの── タブンネは涙ながらにそう鳴いた、しかしそれがトレーナーの耳に届くことはなかった トレーナーが合図をすると再びシャワーズは臨戦態勢に入る その姿に恐れを抱いたタブンネはその場にへたり込んでしまった 逃げることは不可能、そう判断したタブンネは媚びたような鳴き声でミィミィと鳴き始めた どうやら見逃してくれるよう懇願しているようだ、タブンネは涙を流し縋りつくように鳴き続ける それに苛立ちを覚えたトレーナーはシャワーズに再び熱湯をするように命令した 先ほどと同じように口から熱湯を噴き出すシャワーズ、今度はタブンネの体全体に当たった 体中に火傷を負って再びもがき苦しむタブンネ、その姿はあまりにも無様だった シャワーズは地面に倒れているタブンネの頭を踏みつける タブンネはただ弱く鳴くことしかできなかった ──痛いよ、体が痛いよ── トレーナーはシャワーズをどけると、タブンネの頭を乱暴に掴んだ ズルズル、とタブンネを引き摺り、水辺まで近づけるとしゃがんでタブンネの顔を水につけた タブンネは息ができず苦しむ、体をじたばたとさせて必死で水から顔を出そうとする しかし力強く頭抑えられて、更に弱っている状態のタブンネにはどうすることもできなかった タブンネの抵抗は次第に弱くなっていく、その瞬間トレーナーはタブンネの顔を水から引き揚げた 苦しそうに肩で息をするタブンネをトレーナーは再び水につけた タブンネは先ほどよりさらに大きな動きで暴れる、しかしその分ばてるのも早かったようだ 全くと言っていいほど動かなくなったタブンネを見てトレーナーは頭から手を離し立ち上がり、その場を後にした タブンネは一瞬気を失ったがすぐさま意識を取り戻し水面から顔をあげる 体にたまった水を吐きだし、肩で息をする ──助かった‥‥助かったよ‥‥── タブンネは涙を流しギュッと自分の体を抱きしめた タブンネは恐怖心と安堵で体の震えが止まらなかった しばらくし、体の震えが止まったタブンネは傷をいやす為に住みかに戻ろうとする そして振り返ったその瞬間水流をまとった尻尾がタブンネを直撃した 胴体にモロに喰らって遠方へと吹き飛ばされるタブンネ そこには先ほどのシャワーズが、その少し遠くにはトレーナーが居た 実はトレーナーはその場を離れたわけではなかったのだ 水面に叩きつけられ、溺れるタブンネをトレーナーは指さして笑う そして一頻り笑った後トレーナーはシャワーズと共にその場を後にした タブンネは散々もがいた甲斐もなく、水の中へと沈んでいった ──なんだか、眠くなってきたな── 水の中で緩やかに死を迎えるタブンネ、その横をヒンバスが何匹か通り過ぎる ──次に生れてくる時は、水ポケモンがいいな── 自由に泳ぐヒンバスの群れを見て、タブンネは目を瞑った そんなタブンネに巨大な何かが近付く 巨大な何かはタブンネに近づくとその足に噛みつき、そして水面へと勢いよく上がっていく 急に勢いよく引っ張られたタブンネは再び意識を取り戻した 水面から美しいポケモン、ミロカロスが飛び上がる ミロカロスはキラキラと光を反射する水滴をまとい、その姿はまるで人魚のようだった ミロカロスは水に潜るのと同時に先ほど捕まえたタブンネを水面に勢いよく叩きつける おおよそコンクリートに叩きつけられたのと同じくらいの衝撃をタブンネは喰らう 背面を叩きつけられ背骨や頭蓋骨が砕け、タブンネは水に浮きながら絶命した ミロカロスは異物が気に入らなかったのであろう、その姿に若干の不満を残しつつも再び水中へと潜った そこにはおおよそ水ポケモンとは無縁な、タブンネの水死体が残っただけだった
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氷雪が吹き荒れる街、キッサキシティ、そこに一人の中年のベテラントレーナーが訪れた 三十路を過ぎ、どこか味の出ているコートを羽織ったそのトレーナーはやせ細った畑で頭を抱えている農民を見つけた 男は農民に近寄り、そして何か困っているのかを訪ねた 農民はこの街では最近農作物が盗まれる被害が多発していることを話した シンオウの土地でもキッサキシティは近くの街から圧倒的に離れていて尚且つ周りは一面銀世界だ 週に何度か船で物資が届けられるが、それを含めても作物がないと困る と農民は矢継ぎ早に説明した トレーナーは顎に手を当て物思いに拭ける そもそもの話、氷雪地帯に木の実や野菜を好むポケモンが根付くはずがないのだ ニューラ等は肉を喰らうのに対しユキカブリなどはその辺の雑草を雪ごと食べる なのにどうして被害がでるのか‥‥ 「この問題、私に解決させてもらえないだろうか」 興味がわいたトレーナーは農民たちに対し、そう言い放った その日の晩、トレーナーは農民たちの畑の周りに自分のポケモンを配置させる ちょうどその日はあられが吹き荒れていて、雪がくれの特性を持つ二匹にはちょうどよかった あられの中で身をひそめる2匹のポケモン、その姿は夜なのもあってか視認することは不可能だった その時だった、農民の畑にいくつかの影が現れた この地方ではめったに見ることはないピンク色の寸胴体系のポケモン、タブンネだ 複数のタブンネ達は農作物を手当たりしだいに千切りとり、そしてその場を後にする 一匹のポケモンがふわりとした挙動でそのタブンネ達を追いかけていった もう一匹のポケモンはポケモンセンターで待機してあるトレーナーを呼びに行く ポケモンセンターのドアが開く、すると吹雪いている夜の暗闇から水色のポケモン、グレイシアが現れた トレーナーはグレイシアの姿を確認するとすぐさまコートを羽織り、そしてポケモンセンターを後にした トレーナーが先ほどの畑に行くとそこにはふわりと怪しげに舞う白いポケモン、ユキメノコが居た ユキメノコは先ほどのように身をひそめておらず、トレーナーでも容易に視認することができた トレーナーはユキメノコの傍に立ち寄るとユキメノコは先ほどタブンネ達の巣へとトレーナーを案内した キッサキシティをでて、場所は217番道路、トレーナーは切り立った崖に巣穴のようなものを確認する このような場所に近づくことはないし、近づかなければ見つけることもできなかっただろう 巣穴の入り口はあまり大きくなく、さらに入り組んでいるのでどうやら人間は入れそうにもなさそうだ そう判断したトレーナーはグレイシアとユキメノコに巣穴の中のタブンネ達を全滅させるように命令した まず最初にグレイシア、そしてそれに続いてユキメノコが巣穴へと侵入した グレイシアとユキメノコが入り組んだ巣穴を進んでいくと広まった場所へと出た そこには数匹のタブンネ達が身を寄せ合い、盗んだ作物で空腹を満たしていた グレイシアが現れたことによりその場に居るタブンネ達は酷く困惑し始めた ──みんな落ち着け、ここは俺が引き受ける── うち一匹のタブンネがグレイシアを撃退しようと戦闘態勢に入る 体を構えて、グレイシアに突進するがそれよりも早くグレイシアはあられをおこした 巣穴の中に小さな雲が現れ、辺りにあられが吹き荒れる 突進を行ったタブンネはいつの間にかグレイシアを見失い、その場で無様にこけてしまった タブンネはすぐに体を起き上がらせ辺りを見渡す しかしどこを見渡しても周りはあられが吹き荒れるだけだった あられにより少しずつ消耗していくタブンネは焦りが生じたのか辺り構わず突進をしはじめた 一方でグレイシアはと言うと奥の方に隠れているタブンネの残党共の目の前に居た あられの中で喜劇を演じるタブンネを余所にグレイシアはタブンネ達を見下す 子供が2匹に成体が3匹、どうやらこのタブンネ達は親子のようだ グレイシアは一匹の子供に対してれいとうビームを放つ れいとうビームを喰らった子タブンネはその場で氷漬けにされ、動かなくなった 氷漬けにされたタブンネを見て一同が叫び出し、絶望した グレイシアは再び口に冷気をため、れいとうビームを放とうとする すると一匹のタブンネがグレイシアの前に立ちはだかり、家族を守ろうとした ガクガクと体を震えさせ怯えているタブンネに対し、グレイシアは足元に冷気のビームを放った 胴に対して短すぎる足がすべて冷却される 身動きが取れなくなったタブンネを余所にグレイシアは後のタブンネ達に目をつけた ──お願いします、子供達は助けてあげてください── 足を氷漬けにされた母タブンネはその場でグレイシアに懇願する しかしグレイシアがそれを聞きいれることはなかった、残りのタブンネに対して吹雪を放ち、一斉に凍らせる 吹雪を終えた後には趣味の悪い氷漬けのオブジェが完成していた 生き残ったタブンネはその場に崩れ落ち、泣き叫んだ その直後あられが晴れて中からボロボロになったタブンネが現れる タブンネは辺りを見渡し、そして趣味の悪いオブジェと崩れ落ちる伴侶 悪魔のような笑みを浮かべてオブジェを尻尾でなでるグレイシアを発見した タブンネは呆然とし、その場から一歩一歩ゆっくりと歩ゆみ寄る ──どうして‥‥どうしてこんなことに‥‥── タブンネは誰に言うわけでもなくつぶやいた グレイシアはその場を後にする、その後再びただ立ち尽くすタブンネの夫妻を霰が覆った 霰が吹き荒れる中からすっと母タブンネは何者かに抱きつかれる ユキメノコだ、ユキメノコは母タブンネをマイナス50度の冷気で凍らせ、消えていく その姿を見た父タブンネは必至に追いかける、しかし追いつくことはなかった 伴侶をさらわれ子は失われ、父タブンネは失意に満ち崩れ落ちた その瞬間、小さい、本当に小さい鼓動をタブンネは聞き捕らえた 一番最初に凍らされた子タブンネはまだ生きていたのだ 氷漬けの子タブンネを抱き、そして氷を溶かそうとする しかし抱きついただけで溶ける氷でもなく、その小さな命はその生命を終えようとしていた そうはさせない、と決意に燃える目で氷を削っていく、しかしそれでは間に合わない 最終手段としてタブンネは氷漬けになった子タブンネを地面に思いっきり叩きつけた バキンという音が鳴り、氷が砕けちる それと同時に凍っていた子タブンネも砕け、その幼い命は実の父によって奪われた 最後の最後まで彼は哀れな喜劇役者だった 巣穴からグレイシアと手ぶらのユキメノコがでてくるとトレーナーは巣穴を大きな岩でふさぐ そしてグレイシアとユキメノコに吹雪を撃たせて、それを固定した これでもう二度とやつらはでてくることはないだろう そう思ったトレーナーは217番道路を後にした 結論から言うと、タブンネ達はどうやらイッシュ地方出身のトレーナーに捨てられたようだ 極寒の地で彷徨っているとそこにちょうどいい住みかがあり、そこに根付いたと思われる 理由がわかって満足したトレーナーはキッサキシティから船に乗り、ファイトエリアへと向かった 街を覆い尽くす雪雲の上には、太陽が輝いていた