約 244,183 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/4217.html
タナ~ 【タア~】【タカ~】【タサ~】【タタ~】【タナ~】【タハ~】【タマ~】【タヤ~】【タラ~】【タワ~】 【タナ~】【タニ~】【タヌ~】【タネ~】【タノ~】 ダナ ダナー タナークムポク タナートス タナーベク タナイス ダナイス ダナイス(2) ダナイス(3) ダナイデス ダナヴァ ダナヴァス ダナエ ダナエ(2) ダナエー ダナエー(2) タナオア ダナオシー ダナオス ダナオス(2) ダナオス(3) タナカイナリノオオカミ タナカオオミコ タナカカワチノスケ タナカカンシチロウ タナカノカミ タナガヒメ タナカミョウジン タナカヤストシ タナク タナクィル タナクゥイル タナグラ タナグラ(2) タナグラー タナグラー(2) タナクラヒコ ダナシリ タナッゴゾウ タナトゥス タナトス タナバタ タナバタガミ タナバタツメ タナバタノカミ タナバタヒメ ダナパティ タナババ タナバンバア タナベノフヒトハクソン タナヤ タナラ タナロス ダナン ダナンジャヤ ダナンジャヤ(2) ダナンジャヤ(3) ダナンド タナンバァ
https://w.atwiki.jp/orichararpg/pages/111.html
作者:しののめ 全身図 攻撃力:○ / 防御力:○ / 速さ:○ / ラック:○ / 賢さ:○ / 魔力:○ 「うきゃーー!お前らまたきたぴょん!?ぜっったいヒュプノスのことだいすきだぴょん!!?」 プロフィール [部分編集] 名前 ヒュプノス(♂・19歳) 種族 悪魔 出身 砂漠の街ラムル=クァルブ 武器 魔法 属性 なし 特技 泳ぐこと。潜水。 長所 裏表がなく明るい。誰とでも良くしゃべる。 短所 物事の重大さ深刻さといったものがわからない。空気読めない。 口調 一人称 ヒュプノス、たまに俺。 二人称 お前、適当すぎるあだ名。 三人称 いつもしている呼び方。 敬語 ○ 特徴 語尾に「~だぴょん」「~ちゃ」などがついたりともかく変。ものすごいマシンガントーク。 補足 オリキャラRPGキャラへ15の質問 回答 生い立ち [部分編集] 砂漠の街で完璧な魔法生命体をつくる研究をしていた魔法使いに造られた人造悪魔。同時に造られたタナトスとは双子。 「タナトス」「ヒュプノス」と言う名前は魔法使いが異界の死神の名前をとってつけたもの。魔法使いはそれから「ニュクス」と名乗る。 しばらくタナトスと共に魔法使いの下で育てられるが、五歳のとき魔法使いがタナトスを『出来損ない』とみなして兵器として売ってしまう。魔法使いが欲しかったのはいくら強くても属性で限られた魔力ではなかったため。その後ヒュプノス一人だけが育てられる。 十歳の時、違法な魔法の使用がばれて魔法使いが捕まる。 一旦は逃げおおせたものの軍隊に追われ、追い詰められる。その際共に逃げていたヒュプノスは制御もままならないまま魔法を使い、巻き込まれた魔法使いは行方不明に。 一人になったヒュプノスは湖に住む魔物に拾われ、そのまま育てられることになる。 特徴 [部分編集] タナトスとはよく似ているが色が全然違う。 湖で育ったため泳ぎが得意。よく湖の魔物達で遊んでいる。 タナトスについては、魔法使いが散々出来損ない扱いしていたのを見ていたため、当たり前のようにそうなんだと思っている。 しかしそこにさげすみのような悪い感情はまるでない。刷り込みのように「俺のほうが強いんだぴょん」とか思っている。 魔法使いのことは「お父さん」と呼んでたまに話に出すが、やはりそれもそれ相応の感情の伴わないもので、好きとも嫌いとも思っていないよう。どっか行っちゃったけどまあいいか、くらい。 今はラムル=クァルブ西の湖に、育て親である魔物の長「ミナソコ」と共に住んでいる。 『成功例』として苦労や挫折を知らないで生きてきたうえ魔法使いの教育も人として不完全なものだったため、 ミナソコはまともに育てたが、人の気持ちのわからないで酷いこともそれとは知らずに平気で言う。 このまま湖にいても世間知らずの常識はずれは治らないだろうからとミナソコは人間社会で生きることを望んでいるが、ヒュプノス本人はそんな育て親の気持ちもわかっていない。 ついでに語彙力がなく馬鹿。計算は両手の指で出来る範囲内しか無理。 イベント [部分編集] イベント「成功例と失敗作」 タナトスを仲間にしてパーティーに入れた状態で湖に行くと発生。 14年ぶりの再会に、ヒュプノスはタナトスに矢継ぎ早に質問を投げかけはじめる。タナトスはものすごくいやそうにいちいち答える。 この質問と答えで兄弟の大体の生い立ちがわかる。質問五つ目の質問以降から「制止する」という選択肢が出る。 制止してもしなくても最終的にはヒュプノスが、タナトスに向かい「ところでお前、まだ出来損なってるぴょん??」と心底不思議そうに聞く。 そこで突然タナトスが怒って、「俺は出来損ないなんかじゃないっ!」とヒュプノスに攻撃する。びっくりしたヒュプノスがやり返してくるので、強制的に戦闘に。 一定のダメージを与えると勝手に戦闘が終わり、巨大魚ミナソコが出てきてヒュプノスをとめ、謝らせる。 怒られて悪かったと思ったのか、ヒュプノスがお詫びに「水底の砂時計」をくれる。何の効力もないアイテム。 その後立ち尽くしているタナトスに「・・・行こうか」または「大丈夫?」と声をかけるといずれにしても「・・・うん。ごめんねありがと」と答えて街の宿へ戻る。 その後タナトスを連れて湖に行くと短い会話イベントが発生。タナトスは何か吹っ切れたよう。 どうでもいい内容で、結局喧嘩に終わるが、戦闘にはならない。 イベント「おさかなぴちぴち釣りだぴょん。」 イベント「成功例と失敗作」を終えたあと湖にいるヒュプノスに話しかけると発生。 「釣りするぴょん?」と聞かれるので「する」と答えると釣りができる。 釣った魚は回復アイテム(薬草程度)として使えるほか、ラムル=クァルブでは結構いい値で売れる。 たまに魔物が釣れ強制的に戦闘になるが、そう強くもなく倒すとかなりの確率で「太古の水」(体力全回復)が手に入る。 一度釣りをすると二回目以降は水辺の所定の位置に立つだけでいつでもできるようになる。 関連キャラ [部分編集] 交流について [部分編集] よろしくお願いします!願わくば誰かに連れ出して欲しいな、と思っております; S056 サブキャラ 作者:しののめ 名前_仮名:ひゅぷのす 名前:ヒュプノス 種族:悪魔
https://w.atwiki.jp/3rdsaba/pages/28.html
レンジャーオリジナル武器使用者感想 マギシュレック ガイストボーゲン 支援型弓 マギシュレック エルヴンボウ女帝スカラバ(5%) 名前 コメント すべてのコメントを見る 攻撃型弓 ガイストボーゲン 苦悩の欠片 10個タナトスの苦悩(100%) 悲しみの欠片 10個タナトスの悲しみ(100%) 憎悪の欠片 10個タナトスの憎悪(100%) 絶望の欠片 10個タナトスの絶望(100%) オルレアンの手袋 1個ボウガーディアン(0.5%) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/sound_horizon/pages/14.html
Θανατοζの読み方はタナトス タナトスはギリシャ神話における死そのものである 【考察】 Θανατοζが母上と呼び続けているのは運命の女神であるΜοιραであろう。 運命の前で万人に平等であるのはΘανατοζだけつまりは死のみであるということ 母を貴柱と呼んでいるのはただ単に神を数えるときの単位が柱だからだとおもわれる。 不運ナ姫君 迎ェニ往コゥ 血濡レタ花嫁 迎ェニ往コゥ ここの不運な姫君=血塗られた花嫁が成り立つと思う おそらくこれはアルテミシアのことを指す シヲ抱ク瞳 彼はΘノ器{われのもの} 母ヲ殺メル夜 迎ェニ往コゥ 双ツハヒトツ 死を抱く瞳=紫を抱く瞳 つまりエレウセウスの事である。 エレウセレスがタナトスの現実世界における器 これは死と嘆きと風の都 -Ιλιον-の奴隷時代に人に見えない影を見れたという表記からも感じ取れる。 また死せる英雄達の戦い -Ηρωμαχια-で母親であるカサドラ?を殺している、最後の双つというのがタナトスとエレウセレスのことなのか、エレウセレスとアルテミシアのことなのか… 【登場人物】 Θανατοζ{タナトス}(歌、声:Revo) 【リンク】 【歌詞】 時を運ぶ縦糸...命を灯す横糸... 其を統べる紡ぎ手...其の理を運命と呼ぶならば…… Μοιρα{ミラ} Θανατοζ――{タナトス} 其レハ冥府ノ支配者ニシテ亡者達ノ王 地上ノ者達ガ【死神】ト呼ビ畏レテイル存在 そう、我こそは死だ… 彼女モ同ジヨゥニ 愛シテル 彼氏ト同ジヨゥニ 愛シテル 王者モ奴隷モ 聖者モ娼婦モ 等シク愛デヨゥ 生者{アナタ}モ同ジヨゥニ 愛シテル 死者{ワレラ}ト同ジヨゥニ 愛シテル 老人モ若者モ 詩人モ勇者モ 等シク散ラソゥ 母上{マザー}...貴柱{アナタ}ガ命ヲ運ビ続ケルノナラバ Θ{タナトス}ハ―― 生キトシ生ケル全テヲ 殺メ続ケルコトデ 奪ィ続ケヨゥ 『冥府ヘヨゥコソ!』 貴方ハ逝ッタ 唯 逝ッタノダ 貴方ハ逝ッタ 唯 逝ッタノダ 訳モ解ラズ 遣ッテ来テ 運命ニ弄バレ 貴方ハ逝ッタ 唯 逝ッタノダ 不運ナ姫君 迎ェニ往コゥ 血濡レタ花嫁 迎ェニ往コゥ シヲ抱ク瞳 彼はΘノ器{われのもの} 母ヲ殺メル夜 迎ェニ往コゥ 双ツハヒトツ 【黙したまま死を告げる冥王の瞳】 アナタ方モィズレ 知ルダロゥ コノ世界ニ 平等ナド ナィノダト Θ{カレ}以外 無慈悲ナ 女神ガ統べる コノ世界ニ 平等ナド ナィノダト Θ{カレ}以外 遅カレ 早カレ 避ケラレヌ 別離 ソゥ...Θ{かれ}コソガ死{タナトス}ダ 母上{マザー}...貴柱{アナタ}ガ命ヲ運ビ続ケ 怯ェル仔等ニ痛ミオ与ェ続ケルノナラバ Θ{タナトス}ハ―― 生キトシ生ケル全テヲ 殺メ続ケルコトデ 救ィ続ケヨゥ
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/997.html
冥府の底のそのまた底―――其処は冥王の間。彼は一人、玉座に佇む。 銀の髪に、紫の瞳。携えしは一対の双剣。 かつて<紫眼の狼>と呼ばれた男―――エレフ。 その肉体はもはや冥王の器と化し、精神は闇深く眠りについた。 今の彼は冥王タナトス。それ以上でもそれ以下でもそれ以外の何物でもない。 彼はただ心静かに、座して待っている。その退屈など、彼には欠片ほどにも苦痛ではない。 彼は生まれ堕ちたその時から、ずっと待ち続けていたのだから。 何故、自分は存在しているのか。自分は、何をすべきなのか。 その答えを問い続け、待ち続けていたのだから。 そして今、彼はその問いに己なりの解を見出していた。 タナトスは顔を伏せ、一人呟く。 「母上(ミラ)…貴柱ガ命ヲ運ビ、仔等ニ残酷ナ運命ト痛ミヲ与ェルノナラバ―――我ハ其ノ命ヲ奪ィ続ケ、殺メル事 デ救ィ続ケヨゥ」 「問に惑い」「解を違え」「累の海に堕つる」 「愛を求め」「生を奪い」「灰が宙に舞う」 突如響いた声―――タナトスが顔を上げると、そこにいたのは白いドレスを纏う六人の美しき娘達。長いブロンドの 髪が、冥府の闇の中でも煌くほどに麗しい。だが、彼女達がただの娘であるならば、こんな所にいるはずがない。 「第六の地平<運命>」「其の語り手は誰ぞ」「語り手は我等」 「第六の地平<神話>」「其の謡い手は誰ぞ」「謡い手は我等」 『―――我等<詩女神六姉妹(ハルモニアス)>』 詩女神六姉妹―――それは人間達を見守り、その営みを詩として語り継ぎ、謡う事を使命とする女神。 時には人間達の前に自ら姿を現し、天上の鐘の如きその歌声を披露すると伝えられる六柱神。 創世神が一柱・詩女神(ハルモニア)の直系、高貴なる歌姫。 六柱の女神は恭しく片膝を着き、タナトスに頭を垂れる。 「貴柱(あなた)こそは冥王タナトス」「偉大なる冥府の支配者」「死を司る慈悲深き父」 「我等は未だ若き柱」「されど、何卒」「我等の声に、耳を傾けて頂きたく」 タナトスは鼻を鳴らし、彼らしからぬぞんざいな態度で玉座に踏ん反り返る。 「…ヤァ、久シブリダネ。百年クラィ振リカナ?我ハ貴柱達ヲ歓迎スルヨ、ユックリシティッテネ!」 言葉だけなら親しげだが、その口調と表情は棘だらけだ。不機嫌を隠そうともしていない。六姉妹にしても、和やか な会話など端から期待してはいないだろう。 「其レデ?何ヲシニ来タノカナ、六姉妹ヨ。貴柱達ノ使命ハ人間達ノ物語ヲ謡ィ、語リ継グ事―――冥府ヘ用事ナド ナィダロ?」 「貴柱の企みが」「露見していないなどとは」「貴柱も思ってはいないでしょう」 「己が使命を忘れ」「母なる者に抗い」「人間達に介入するなど、赦されません」 「使命…忘レテナドィナィ。怯ェル子等ニ死ヲ以テ救ィトスル。其レガ我ノ使命ダ」 タナトスの答えに、六姉妹は全く同時に、全く同じ仕草で首を横に振った。 「母なる者が与えた」「人間の天命を無視し」「自らの手で命を奪う」 「貴柱の其れは」「愛ではない」「唯の自己満足です」 ハッ、とタナトスは嘲笑する。同時に今まで抑えていた自らの気配を解放し、六姉妹を威圧する。まるで寝そべって いた大蛇が鎌首を持ち上げたような剣呑な空気が、室内を満たした。 「我ノ半分ノ半分ノ其ノ更ニ半分モ生キティナィ小娘共ガ、大口ヲ叩ィテクレルネ。其レデ?我ニドゥシロト?」 六姉妹はタナトスの威嚇に怯えることなく答えた。 「その人間を解放し」「今まで通りに」「冥府の支配者として生きるのです」 「そうでなくば」「我等とて」「黙っているわけにはいきません」 クックック、とタナトスは肩を震わせて笑う―――その目は全く笑っていなかったが。 「ソゥ来ルトハ思ッティタンダ。我ノヤッティル事ハ神々ノ定メタ掟ニ反シテ―――否、ソンナ話ジャナィカ。足蹴ニ シタ上デ唾ヲ吐キ捨テティルモ同然ダモノネ。刺客ガ送ラレルノモ必然ニシテ当然…シカシ、貴柱達ガ来ルトハ 思ワナカッタ。モットマシニ闘ェルヨゥナ奴ハィナカッタノカィ?来ルノナラ、雷神辺リダト予想シティタガ」 「貴柱も知っておいでの筈」「雷神は邪神との闘いの折」「片腕を失い」 「今は残された腕で」「邪神を封印しています」「故に、動くことはできません」 「ァァ、ソゥダッタネ…デハ炎ノ悪魔ナンテドゥダィ?彼ナラバ我ヲ殺セルカモシレナィヨ。貴柱達ニスレバ共倒レナラ 厄介者ガ同時ニ消ェテ願ッタリ叶ッタリ。悪ィ目ガ出テモ片方ハ確実ニ死ヌ」 「バカなことを」「如何に奴めが貴柱に匹敵する力を持とうと」「あれは、神と人に仇為す存在」 「その力を借りるなど」「それこそ禁忌」「冗談でも口にしないで頂きたい」 「嫌ワレ者ダネェ、彼モ…デハヤハリ、貴柱達ガ我ト闘ゥノカィ?悪ィケレド、詩女神六姉妹ガ武闘派ダナンテ噂ハ マルデ聞ィタ事ガナィヨ―――其レニ、モゥスグ此処ニハ来客ガァルンダ。衣服ガ乱レテシマゥヨゥナ事ハナルベク ナラバシタクナィンダケドネ」 「あくまでも」「自らの非を認めないと仰るのなら」「致し方ありません」 「我等が手で」「貴柱には、御隠れ頂く」「御覚悟を」 ゆらり、とタナトスが立ち上がった。 「ヨカロゥ…小娘共。冥王ノ力、其ノ目ニ焼キ付ケルガ良ィ」 言うが早いか、先頭に立っていた六姉妹の長女がタナトスに肉薄する。予想を上回るその速度に、タナトスは反応 が遅れた。その一瞬の隙を突いて、長女が右手を天に翳す。 「第九の地平―――マーベラス・スーパーディメンション!」 膨れ上がった魔力が超重力と化し、タナトスに容赦なく叩きつけられた。常人ならば一瞬で粉々になるほどの圧力 に耐え切れず、たまらずタナトスも膝を折る。 「下がってください、お姉様…彼の四肢を潰します」 瞬時に飛び退く。同時に発動される、神々の秘術。 「歪んだ乙女―――バロック・メイデン!」 無数の十字架がタナトスの頭上に顕現し、一気呵成に落下する。先の宣言通りに手足の骨―――どころか全身の 骨が砕け、完全に身動きを封じられた。 「私達もいくわよ!」 「はい!」 三女と四女がタナトスを挟んで向き合い、相反する魔術を織り成す。 「煉獄の魔女―――クリムゾン・オルドローズ!」 「白き幻影―――ホワイト・イリュージョン!」 刹那で全てを灰に帰す業火と、万物を否定する絶対零度。真逆の力が混ざり合い、更なる破壊の渦がタナトスを 呑み込んだ。 続くは、五女。 「雷神の右腕―――トール・ハンマー!」 虚空より産み出された、雷光を纏う巨大な右腕―――破壊そのものを目的としたその一撃は、一欠け程の遠慮も 躊躇も慈悲もなく、タナトスへと振り下ろされた。 「さあて…姉ちゃん達が目立った所で、最後はあたいが行かせてもらうよ」 末の妹が懐から取り出したのは、黒光りする金属で造られた、重厚感溢れる物体だ。長方形の箱に握りを付けた ような奇妙なそれは、この時代の人間が見ても何に使用するのか理解できないだろう―――だが。 例えば未来から来たような人間―――遊戯や城之内、それに海馬―――なら、一目で分かる。 「あたいの鉄砲が火を噴くよぉ―――ライト・オブ・スターダスト!」 その銃口から放たれるのは、勿論単なる火薬のはずがない。神の加護が込められたその弾丸の破壊力は、一発 一発がミサイルにも匹敵する。そんな物騒な代物を、彼女はタナトスに向けて全弾ブチ込んだ。 冥府の天井をぶち抜く勢いで吹き上がるキノコ雲。六姉妹はそれを、静かに見つめる。 「油断してはいけません」「解っています」「タナトスの神気は」 「未だ健在」「恐らくはすぐにでも」「立ち上がってくるでしょう」 その言葉を証明するかのように、爆炎と砂塵の向こうから彼は悠々とこちらに向かって歩いてくる。あれほど散々 に痛め付けられたというのに、まるで意に介していない。吹き飛んだ肉も粉々に砕けた骨も、既に再生されている。 「フゥ…意外ニヤルジャナィカ。今ノ攻撃ヲ、ソゥダネ…一万回繰リ返セバ、流石ニ我モ死ヌカモシレナィネ」 「いいでしょう」「ならば」「一万回でも」 「一億回でも」「無限でも」「繰り返すまで」 「其レハゴメンダ。悪ィガ、ソンナニ永クハ付キ合ェナィ―――此処ハ、貴柱達ニ退ィテモラォゥ」 「ありえません」「我等は、貴柱と刺し違える覚悟で」「此処へと参りました」 「貴柱が何をしようと」「決して」「我等の意志を挫くことはできません」 「否―――ソンナ生意気ナ口モ、直ニ利ケナクナル」 女神達が反論を試みようとしたその時だった。 破滅的なまでの鼓動が、全てを一瞬にして支配する。時間さえも凍りつくような、絶対感。 それは、未だ姿を見せていない。感じるのはただの気配。 ただ、それだけで。人智を超越した力を誇る六姉妹は、身動きすら封じられた。 「え…」「これは」「まさか」 「そんな」「嘘です」「ありえない」 「嘘ジャナィ…<黒キ唯一神>ハ、我ガ手ニ」 <それ>は、いつの間にかタナトスの手に納まっていた。古ぼけた、一冊の書物。黒い表紙が印象的だが、それ 以外に特筆するようなことは何もない。 だが、それを目の当たりにした六姉妹は顔を雪よりも白くして叫んだ。 「<滅亡と再生の年代記>!」「<黒の歴史>!」「<冒涜者の聖典>!」 「<世界の道標>!」「<全てを識る者>!」「<終焉の魔獣>!」 タナトスは、嗤った。 「サァ、ヒヨッ仔共メ。真ノ神々ノ闘ィヲ教ェテアゲヨゥジャナィカ」 「―――!」「何ということ…!」「この場は…!」 「退くしか…!」「ありません…!」「くっ…!」 現れた時と同じく、六姉妹は全てが幻だったかのように消え去った。後に残るはタナトスと、そして彼の手にした 黒い表紙の書物。 「クス…今回ダケハ、去ル者ハ逃ガシテァゲヨゥ」 パチンと指を鳴らすと、先の戦闘で荒れ放題の部屋が、一瞬にして元通りに修復された。タナトスは再び玉座 に身体を委ねて、目を閉じた。 「シカシ…コゥナルト、他ノ神々モヤッテ来ルカナ。我ヲ殺シニ…」 それならそれでいいと、タナトスは自嘲した。どうせ自分は、神々の嫌われ者ではぐれ者だった。 全てを敵に回した所で―――何を今さら。 「友…仲間…要ラナィヨ、ソンナモノ」 不意に、もうじきやって来るであろう人間達のことを思った。 「嗚呼…ダケド」 決して断ち切れぬ絆で結ばれた、友情と結束を胸に生きる彼等を。 「ァンナ友達ガ我ニモィタナラ…素敵ダロゥネ」 ―――それは、偽りなく。冥王タナトスの本音だった。
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1232.html
「……なんのことだ?」 「とぼけるな!俺のこの勝利は、お前の手のひらの上のものだ!あの時――列車事故直後――煙がたちこめる中に お前がいたとき、お前はレーダーも使わず、俺に撃たれるのをわざわざ待った!いいや、そもそも真剣に戦う気が あるのなら、あんな場所に留まったりはしない!」 マコトはシートからたち上がり 、金網に駆け寄って、ありったけの呪詛でタナトスを罵る。 「お前は最初からまともに勝負する気は無かったんだ。チートを使って自ら弱体化したりして……! そんな状況で勝っても、俺の復讐は達成されない。対等な立場で戦って勝たなきゃ、 俺はお前たちとまるっきり同じだ!悪の中でも『最悪』なお前たちと……」 「ほぅ」 「俺が負けたら、お前たちの勝ちだし、俺が勝ったら、お前たちは俺の復讐を台無しにしてやったのだから、 やはりお前たちの勝ちだ。ふざけるな!こんな勝負……」 そこまで言って、マコトはタナトスの肩が震えているのに気がついた。 最初は怒りのためだとマコトは思ったが、タナトスの声が聞こえて、違うとわかった。 ――奴は笑っている。 「はははははははははははははは!」 突然、タナトスが立ち上がり、両腕を広げ、天を仰ぎ、高笑い。 「ははははは!いや、まったく――私の見込み通りだった!」 彼は言った。 「君が最後まで気づかなかったらどうしようかと!もしあそこまでやって、君が気づかなかったら、 私は君を撃たなければならなかった!実を言うと、この程度、私にはピンチでもなんでもないのさ!」 タナトスは狂喜して腕を振り回す。仮面の奥の妖しい光がますます強くなっている。 「くく、く、私はひとつ君に訊きたいのだが――」 タナトスは金網に近づく。二人は再び金網を挟んで向かいあう。 「君は、なぜ生きている?」 タナトスはマコトの目をのぞきこんでいた。意外にもそこに威圧的な光は無く、 代わりに澄んだ川の水のような、純粋なものが見えた。 「決まってるだろ……」 ――不思議なことに、このとき自身が何と答えたか、マコトはどうしても思い出せないのだった。ただ、 その言葉はほとんど反射のように自然と出たものであったことだけは覚えている。 それを聞くとタナトスは一瞬不快そうなそぶりをみせたが、すぐに思い直したようで、腕を組み、小さく言った。 「……それが答えか。なるほど。」 「いったい何なんだ。」 「いや、なに。タルタロスもこれで終わりかとね。」 「……え?」 また、意外な言葉。 観客たちもわけがわからないようで、今度は徐々に騒がしくなってきていた。 「いい機会だ。少しゲームを中断し、昔ばなしをしようか。」 タナトスはマコトから視線を外し、観客たちを見渡した。 「私は、先代の『コラージュ』だった。」 ざわめく観衆。 「私の能力をもってすれば、そこまでの地位にのぼりつめるのはさして難しくはなかった。 そのころの私はまだ現状に満足していて、まさかタナトスを名乗ろうなどとは考えもしなかった。」 そのタナトスの語りを別室で静かに聴いていたコラージュは、じゃあ、自分を作ったのはタナトスだったのかと驚く。 「私の心境を変えたのは、あるひとつの疑問を抱いたからだ。それこそが、『人は、なぜ生きるのか』。」 タナトスはまたマコトを見た。 「人類が文化というものを身につけてから、数多の知識人に提起された無数の命題よりも、 これ以上に解答困難なものはあるまい。だが私は難問ほど燃えるたちでね。どうにかできないものか、 考えたのだ。……そして、このタルタロスというシステムを利用することを思いついた。」 仮面の奥で、彼は微笑む。 「ここに集まるプレイヤーたちは、自分の命も、相手の命もなんとも思っちゃいない正真正銘のクズばかりだ。 君が最初に戦ったナカジマくんも、その次に戦ったケルベロスも。正々堂々と戦うつもりはもちろん無いし目的は誰も同じ『カネ』だ。」 マコトはなぜか動悸が激しくなってきているのを感じていた。 「だが、君は違った、アマギくん。」 彼の語り口はきわめて優しい。 「君は対等な立場で戦うことを好み、その目的もカネなどというくだらないものでなく、 また自分の命を投げ出しているわけでもない。私は君のような健全な精神の持ち主が自ら命を賭けるに値する目的こそ、 『人が生きる目的』だと考えた。……そう、タルタロスは君を待っていたんだ。」 「なに……?」 「さっきの戦いは、今この瞬間にも君があの美しい心を失っていないか、それを確かめるテストだったんだ。 君は目前の勝利や、醜悪な外見に惑わされなかった。そして、タルタロスは今その役割を終えた!」 そしてタナトスは再びシートに近づき、マコトを一瞥した。 「君の回答は斬新なものでなく、使い古された陳腐なものではあるが、むしろだからこそより答えにふさわしいのかもしれない。 なかなか哲学的だが、その実至極単純なことをひと言で言い表しているのも気に入った。 ……席に戻りたまえ。お礼に、君に勝利をプレゼントしよう。」 「なに?」 「タルタロスにもはや存在価値はない。幕引きのときだ。」 タナトスの静かな言葉を理解して、また観客たちは騒がしくなる。 「それは……死ぬつもりか、タナトス。」 マコトの言葉に彼はゆっくりと首を振った。 「もちろんそんなつもりもない。」 そうして彼は自らの顔を覆い隠す鉄仮面を指す。 「この場にいる人間は誰も私の正体を知らない、そうだろう?」 そう言った直後―― 「――でもそれは逆に、誰もあなたがタナトス本人であることを証明できないということでもあるわよね?」 ――冷たい針のような声がタナトスを刺した。 辺りは再び静まり、タナトスとマコトはその声がした方に顔を向けた。 二人のいる檻の外側、タナトスに近いところに一人の女性が立っていた。背の高く、顔立ちも整った女性だ。 黒い革のジャケットに、黒い長髪、サングラスで顔を隠し、シルバーアクセサリーをジャラジャラと身につけた様は どこからどうみても街の女ギャングで、容易に近づき難い雰囲気を醸し出している。 もし彼女が沈黙したままだったなら、マコトは彼女がアヤカ・コンドウであることには気づかないままだっただろう。 タナトスは顔を彼女に向け、威圧的に見下ろした。 「君は――」 「考えてみればおかしな話よ。」 アヤカはさらに声を張り上げる。 「幾度となく戦って、それでも一度たりとも敗北しないなんて、他のスポーツなら八百長を疑われて当然じゃない? いくら実力差があるとしても、あなたに挑んでくるのは、それなりの自信がある人たちがほとんどなのに。」 また会場が静まりかえる。さっきまでとはまた別種の不穏な空気が漂いはじめていた。 「もしかしたらあなたは、相手のチートデータに何か細工をしていたのかもね。換言すれば、あなたは――」 とどめの一撃。 「――『サイクロプス』なんじゃない?」 彼女の言葉は完全に世界を凍らせた。あれほど熱狂的だった観客たちは皆困惑した表情でタナトスと、 金網を挟んで彼に相対する謎の女性を交互に見ていた。 この状況を正確に理解していたのはそのふたり以外にはマコトだけだった。 マコトは今タナトスのそばでビニールをかぶせられ、鎖で繋がれている彼女こそがサイクロプスだと知っているので、 アヤカの意図はすぐに解った。 マコトはタナトスを見る。彼は一見いつもの落ち着きはらった様子だが、どことなく焦っているようにも見えた。 「……そうだ、その通りだ!」 声をあげるマコト。 「お前が本当にタナトス本人なのか、証明してみせろ!」 「しかし、そうはいっても、手段が無い。」 「あら、あるじゃない、簡単なのが」 アヤカは冷たく言い放つ。 「その仮面をとればいいだけよ。」 もう何度目かはわからないが、また会場がざわつきはじめる。 タナトスは首を振った。 「たとえこの仮面をはずしても、君たちは私の素顔を知らない。無意味だ。」 「そうだな。たしかにアンタの素顔は知らないが――」 マコトはにやりとした。 「――サイクロプスの素顔なら、俺が知っている。アンタが八百長疑惑を晴らすにはそれで充分なんじゃないか!?」 「その必要がないことは君もよく知っているはずだ。」 そうして彼はそばのイナバを顎でしゃくって示す。しかしマコトは肩をすくめた。 「さぁ?なんのことかぜんっぜんわかんねーな。」 タナトスは黙り込んだ。静かになった彼とは対照的に会場は再び熱を帯びてきていて、 彼らがあげるかけ声はいつのまにか「OFF MASK!!」のコールに統一されていた。 マコトとコンドウはタナトスを睨みつけていたが、やがて彼が諦めたようなそぶりをするのを認めた。 「……いいだろう。外してやろう。」 また、会場が大きく揺れる。 タナトスはゆっくりと腕を上げ、後頭部にまわすと―― ――いきなり袖口から小型の拳銃を飛び出させ、発砲したのだった。 ……その様子を観客席から眺める、ひとりの人物がいた。その人物は目深に被った帽子とコートのフードで顔を隠し、 眼鏡の奥から冷めた目でマコトたちの様子をうかがっている。 どうやら男性らしいその人物は銃声にも動じず、冷静に現状を分析すると、 指先で懐のナイフの柄を撫でた…… 火薬の臭いが鼻につく。マコトは何が起こったのか理解できなかった。 マコトは金網の向こうにタナトスともうひとり女性を見ていた。 小柄な、子供のような、活力に溢れた、素敵なヒト―― だが彼女は今、死神の足下に崩れ落ち、胸から鮮やかな血をダラダラと流して―― ――マコトは絶叫した! 金網に突進し、指でめちゃくちゃに音を鳴らし、わけのわからないことをわめきちらす。 そんな彼をひややかにタナトスは見つめ、まだ煙の出ている銃をその死体のそばに落とした。 「……どうした、彼女のことはどうでもいいんじゃなかったのか。」 嘲るように彼は言う。 「殺してやる!殺してやるぞ!クソ!殺してやる!殺してやる!!」 「いいだろう!さぁ、私を殺してみろ!」 その言葉とともに、ついにタナトスは仮面を外した。 ――同時に、世界から音が消えた。 今まで、何度も周りが静かになることはあった。だが、これほどまでに静まりかえったことはなかった。 しばらくして、マコトはその静寂が現実のものではなく、自身の内からくるものであることに気付いた。 気づくと同時に、色彩と騒音の洪水が頭蓋骨の内側で暴れ回った。 タナトスの素顔を目にした衝撃のあまりいつの間にか床にへたり込んでいた自分を発見し、 とうとうマコトは金網のむこうの現実を受け入れるしかないと理解し、同時に胃の中からこみ上げてきた熱いものを 目の前にまき散らす。 全身から冷や汗を流して、マコトはタナトスを睨みつけた。 「……そろそろ大丈夫かな?アマギくん。」 ボイスチェンジャーを通していない声はしっかりと筋が通っていて、その快活な人格にふさわしいものだった。 生命力に溢れた顔立ちは死神のイメージからかけ離れていて、仮面の奥に輝いていたあの金の双眸が無ければとても 連想されることはないだろう。 マコトはその瞳をしっかと睨み返して、絞りだすように、叫んだ。 「なんで……あなたがっ!!」 死神は――ミコト・イナバは微笑んだ。 マコトはしかしそれでも頭のどこかで現状を否定しようとしていた。 あれがイナバさんのはずがない。 あれがイナバさんなら、あれのそばで倒れているのはいったい誰なんだ。 そうだ、それにタナトスとイナバさんでは全然体格が違う。 きっと見間違いだ、イナバさん―― 目をとじ、ゆっくりと開けると、イナバはタナトスのマントを脱ぎ捨てていた。マントの切れ目から見えたその内側は、 カーボン製のフレームで体格を大きく見せられるような仕掛けが施されていた。 ふらつきながらも金網に手をついて立ち上がり、今度は倒れている方のイナバに目を向けると、 ちょうどタナトスが彼女の首の鎖を外し、頭に被せられていたビニール袋をはぎとるところだった。 顕わになったのは、少女の顔だった。 「……誰だ、その人……」 思わずこぼれたその言葉を聞きつけて、イナバはこちらをふりむく。 マコトはタナトスを――否、イナバを見た。 彼女は身体にフィットした黒い近未来的なデザインのスーツを着て、冷酷な光をたたえた瞳で温かく微笑んでいる。 その中身と外身のぞっとするほどの温度差にマコトは嫌悪感をおぼえた。 「この子はね、こう見えてすごく悪い子なんだ。学校ではいじめっ子たちのリーダーで、男の子をひとり不登校に追い込んでいるし、 知り合いの大学生といけないことだって何度もしてる。趣味は万引きだし、小学生にしてなんとタバコもお酒もやっているんだ。 ケンカして両親を包丁で刺してもいるし、弟が事故で亡くなったときも葬儀の席でずっと笑っていた――」 「……そうなのか。」 「――なんてことは全部ウソ。名前も顔もしらない、キミと別れたあの晩にたまたまその辺を歩いてた子だよ。」 おどけて肩をすくめる彼女の笑顔は、以前にあの部屋で見たものと同じだった。 「『誘拐はなるべく関係・連絡・トラブルを無くす。』基本だから、誘拐するときは参考にしてね。」 彼女は軽い調子でそう言うと、足下の死体を、汚いものでも振り払うように小さく蹴って、 今度はアヤカ・コンドウを見た。 「……これで満足?アヤカ・コンドウさん。」 「彼の反応を見るに、やはり、サイクロプスだったようね。」 観客たちは成り行きを見守ることにしたようだ。すっかりおとなしくなっていることにマコトは気づく。 「ご名答。それにしても、私がサイクロプスだとなぜ判ったの?あなたには本名も性別も教えなかったのに。」 「幸運よ。確証はなかった。」 「嘘つき。」 「あなたもね。」 だが実際アヤカ・コンドウの推論はある幸運に支えられたものだった。 アヤカ・コンドウはゲーム開始からこの会場にいた。そこで彼女はタナトスが人質に少女を連れてきたのを見て、 こう思ったのだった。 (マコト・アマギに姉や妹はいないし、まさか母でもないだろう。親しいクラスメイトは全員男だし、 恋人もいないのは調査済みだ。あれは誰だ? まさか……サイクロプスか? サイクロプスが女? ということは、まさか) と、ちょうどその時彼女に声をかけてきた人物がいた。その人物は帽子とフードで顔を隠した、 眼鏡をした人物で、アヤカに協力していた。その人物は、以前にあの人質とマコトが一緒に歩いているのを見たと、 まだその時は知り合って間もないようだったと言った。 (その日は、私がサイクロプスに依頼をした直後……!) アヤカはタナトスが少なくとも女性であるということは知っていたので――これにもまた理由はあるが、 今は関係がない――そうしていよいよ『タナトス=サイクロプス』の疑念を強め、タイミングを見計らって行動を起こしたのだった。 「でもわからないわね。」 アヤカは髪をかきあげる。 「まさかあなたは本当に八百長を? あなたは悪党だけど、そんなことはしないと思っていたわ。」 「こんなこと言っても信じないだろうけれど」 応えるイナバ。 「私はチートデータにそういった仕掛けを施したことは無いよ。誓ってもいい。」 「誰が信じると? 」 「そうだね、たとえば――」 困ったように少しだけ首を傾げる。 「アマギくん、とか?」 視線に射抜かれてマコトは緊張した。イナバはなおも優しく微笑んでいる。 「君も、私がこの地位を守るためにそんなことをするようなヒトに見える?」 訊かれてマコトは首をふる。 「アンタが本当にイナバさんなら、卑怯なことは嫌いなはずだ。」 「その言い方、気になるな。」 「アンタは……本当にイナバさんなのか。」 マコトはそう言った。きっとその場のほかの人間にはとても間抜けな質問に聞こえただろう。 だがそれでもマコトには、あの家で見たミコト・イナバと、今目の前のミコト・イナバが同一人物だとは信じられなかった。 「あんたがタナトスだなんて、おかしい。納得いかねーよ。」 「おもしろいことを言うね。」 彼女は目を細める。アヤカもマコトを懐疑的な目で見た。 こぶしを握る。手汗がひどい。 「イナバさん、もしあなたが最初からタナトスだったなら、なんで俺たちに協力したんだ。」 そう、その通りだ。マコトはキムラとの戦いを思い出していた。 あのとき、ゲーム機器が故障したのはサイクロプスのせいだが、そのときにはすでにサイクロプスとアヤカとの協力関係はできていたのだから、 タナトスの立場としては、タルタロスの脅威となるマコトは消しておきたかったはずだ。しかしサイクロプスはマコトを助けた。 その他にも、サイクロプスがマコトとアヤカにした協力の度合いを考えると、タナトスはまるでタルタロスの首を締めているように感じられる。 だからマコトは納得いかなかった。 「おかしいじゃないか……そんなこと」 「ああ、そのこと?」 ミコトは指を2本立てる。 「理由はふたつ。まずひとつめはもう言った。」 マコトが理解できないようなのを見て、ミコトは続ける。 「『人はなぜ生きるのか』、という命題の答えを、君なら出してくれると思ったからだよ。そのためには、 きみが『安全に、しかし真剣に死と向き合い続ける』ことが必要だと考えたんだ。難産のほうが、よりそれっぽいからね。」 マコトは奥歯を噛み締めた。 「そしてふたつめ。それはこの計画を知ってから判断したんだけれど……」 ミコトは前髪を整える。その所作は可愛らしい少女そのもので、いよいよ死神のイメージからかけ離れている。 「この計画はつまるところ、『タルタロスで私を倒す』ということが肝心要、一番重要なところなんだよ。 ここが失敗すれば残念なことになってしまう。たぶん、これは立案者の思惑が多分にあると思うのだけれど、 くわしくはいいや。それが理由だよ、つまり」 言いながらミコトはマコトに歩み寄る。金網を挟んだマコトの身体のわずか数センチ前で立ち止まり、 金の瞳を見開いてマコトをのぞき込み、言い放った。 「君なんかが私に勝てるわけないじゃん」 また彼女が微笑む――マコトは目の前でその表情を見て、ようやくその柔らかな口元に隠された真意を理解した。 あの笑顔は互いの友好のためとか、周囲の雰囲気を良くするためとか、そんな目的で形作られたものじゃない。 大人が節度を保たずはしゃぐ子供を見て自然に笑みがこぼれるように、猫同士がじゃれ合うのを見てそれを不快に思わず愛おしく感じるように、 『自分とは次元が違う』と感じているから、だから出る微笑みなのだ。 良く言えば『強者の余裕の表れ』、悪く言えば『己以外の全てを同列とは思っていない』顔だ。 コイツははじめから、俺たちのことをこれっぽっちも気にしてはいない! マコトは激昂し、ミコトを殴りつける、が当然金網に阻まれる。耳障りな金属音が弾ける。 残響音が消えないうちにマコトは声を荒げて言った。 「てめぇ!俺と勝負しろ!」 「いいよ。」 あっけらかんと応える。 アヤカはマコトを一瞥し、それからなぜかまた静かに人ごみに紛れて消えた。 「もう一度対等な条件でだ!叩きのめしてやる!」 「それはかまわないけれど、今このゲームをリセットはできないよ?」 「なに……?」 ミコトは困ったようなしぐさをする。微塵も焦燥を感じないその様子が今のマコトにはなによりも腹立たしい。 「当然だよ、今リセットしたら君に賭けていたお客様が可哀想だし、1度スタートしたイベントを中止するのは開催側にしても結構痛手なんだよ。」 マコトの神経はますます逆撫でされて、そのためにまた拳に力が入ったが、思いなおして、冷静になることにした。 「じゃあ、どうすればアンタと対等に戦えるんだ。」 するとミコトはにっこり笑って 「そのためのカギはもう持っているよ、『オルフェウス』」 はっとした。 「だけど、ソレを使うのは……!」 「嫌?」 「ソレを使うと、俺はお前たちと一緒に……」 「わからないかな、使った時点で君の勝ちなんだよ? もし君が負けても、私は信頼を失ったままなんだ。 勝っても負けても、タナトスはタルタロスから消えざるを得なくなる。」 言われてみればその通りだ。 「だから、使いなよ……チートを。」 マコトはうつむいた。 たしかに、チートデータ『オルフェウスの竪琴』が入ったICカードは今持っているし、 それを使えばマコトの望むような条件で戦えるだろう。 だが、チートだ。 チートは、ずるだ。 不正に不正で応えたら、いよいよ自分はタルタロスに敵対する資格が無くなる。完全な悪になる。 悪。 人殺しである自分がこんなことを考えるのもおかしいのかもしれないが、やはり、悪は嫌だ。 悪。 しかし待て、コンドウさんに従って、悪の権化であるタルタロスを倒すのは本当に悪ではないのか? 悪。 彼女の目的はタナトスへの復讐だ。きっとそれはタナトスの殺害で達成されるんだろう。 それに加担するのは悪じゃないのか? 悪。 そもそも『悪じゃない』ってなんだ?悪じゃないなら正義なのか? 『タルタロスに関わった時点で全員が悪い』というタナトスの言葉を自分は肯定していなかったか? 悪? 悪……。 悪! なーんだ、そうか。 マコトは顔を上げ、ポケットからカードをとりだし掲げた。 そうだ。そもそも最初から善悪とか、そんなものにこだわる方が間違っていたんだ。 世の中は人を傷つけるもので溢れている。ナイフでも、銃でも、言葉でも、態度でも、 そういったあらゆる『傷つけるための力』は本来、みんなまとめて悪なんだ。世界は悪に満ちている。 それが『正しい』として認められるためには……。 「勝負だ。」 勝てばいいんだ。 お互いに、自らが納得するために必要な手を出しつくし、それでも負けたら悪なんだ。 正義は勝たなければいけないんだ。勝たなければ正義じゃないんだ。 こんな簡単なこと、俺はなにを悩んでいたんだろう。 イナバはまたにっこり笑い、手でグラウンド・ゼロのシートへとマコトを促す。 マコトはぎっと彼女を睨みつけたまま、席に戻った。 画面はさっきの膠着状態のまま止まっている。 「オイ!」 叫んだのはマコト。 「なにをしてんだ口だけ男……、盛り上げろ!」 その言葉で実況席の口だけ男は我にかえり、慌ててマイクをつかんだ。 「あ、あー!あー!YO!マイクチェック、チェック、チェック!すまねぇオーディエンス、意識が月までぶっ飛んでたぜ!」 口だけ男が実況を再開するのと同時にまた観客席はざわつきはじめる。 「なんつーかいろいろと衝撃の事実の連続でオレら置いてきぼり! タナトスとオルフェウスとあの謎の女に何があったか知らねーが、俺たちの関心はそんなとこにはねーんだぜ!?」 応える観客。 「そう、つまり!」 会場が沸騰する! 「熱いバトルと!熱い血だあああああ!」 あっという間にまた最高潮!会場は観客たちの雄叫びでびりびりと震えた。 「なにやら計り知れない因縁によってこのふたりは戦わなきゃいけねーようだ! オルフェウスとタナトス、ギリシャ神話じゃタナトスの勝ちだが、果たしてリアルじゃどうなることか! まさかまさかのラウンド2!前代未聞のラウンド2!空前絶後のラウンド2!」 レバーを握る。 「レディイイイイイイイ、ゴウ!!」
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/161.html
autolink() P3/S01-003 カード名:ファルロス カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1000 ソウル:1 特徴:《死》? 【自】絆/「主人公&タナトス」[①](このカードがプレイされて舞台に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは自分の控え室の「主人公&タナトス」を1枚選び、手札に戻す) 僕は、いつだって君の傍に居るよ・・・ レアリティ:R illust.- 絆効果で1コストを支払うことにより、控え室にある主人公&タナトスを回収できるカード。 その後のコンボとして、主人公&オルフェウスと繋げるために是非ともデッキに入れておきたいカードである。 それ以外にも、純粋に主人公&タナトスを回収したいときに使われるであろう。 ただし、戦闘能力は低いのでデッキに多く積みすぎるのは事故の原因でレベル0の時に自分の場が悲惨なことになるだろう・・・ ・関連カード カード名 レベル/コスト パワー/ソウル 色 備考 主人公&タナトス 2/2 8000/2 黄 絆対象
https://w.atwiki.jp/blazer_novel/pages/137.html
部屋の中央に立つ人物をイデアは睨んだ。 青と白のローブ。足元まで伸びた、ウェーブのかかった金髪。 整った顔立ち。青い瞳。 柔和な微笑を浮かべ、両手を広げたその人物―マスターの姿を取った、『デウス・エクス・マキナ』―の身体は、僅かに淡い光に包まれている。 人目でそれが、ホログラムの虚像であるとイデアには分かった。 否、ここに来る前から分かっていたのだ。 「一つ聞きたい。何故わざわざ、この時のために用意した端末を、自我のコピーに譲り渡した?」 マスターは、その微笑を崩す事無く答える。 『それが、一つ計算外だった事だよ。どうやら私自身が思っていたより、肉体と人格というのは結びつきが強い様だ』 そこまで言うと目を瞑り、『何分、こういう事をしたのは初めてだからね』と言い添える。 イデアの方も強張った表情を変えず、尚も言葉を紡ぐ。 「貴方を停止させたら、あの端末はどうなる?」 『…そんな分かり切った事を聞くのか。もう、君の時間も少ないというのに』 「答えろ」 有無を言わさぬイデアの物言いに、マスターは再度、今度は諦めたような表情で目を瞑ると、答えを告げる。 『あの端末は、この星の中枢にある私の本体と密接な繋がりを持っている。エデンを介する事で私と繋がり、地球でも活動が可能だ。だが…私の本体が停止すれば…生き長らえる事はできない』 マスターの答えを聞いて、イデアは溜め息を吐いた。 「やっぱりそうか。でも、どうしても知りたかった」 『優しいね、君は』 マスターのその言葉に対し、イデアはしばらく無言でその場に立ち尽くしたまま、目を瞑っていた。 だが、やがて眼を開けた彼は、凄まじい憎悪を含んだ眼で、今度こそマスターを睨んだ。 『良く頑張った…誇っていい。故に、安らかに死を受け入れるがいい』 地面に片膝を着いて動かぬクロウの脳内に向けて、タナトスはそう言葉を響かせる。 ハッとして顔を上げるクロウ。その顔面に向けて、タナトスは無慈悲に剣を振り下ろした。 だが、クロウの両の掌が、その刃が届く寸前に受け止めていた。 『な、に…?』 俗に言われる、真剣白刃取り。それをクロウは行っていた。 その動作は、数秒前にタナトスが分析したクロウの状態からは考えられぬものであり。 それ故に、刃を取られた事への驚愕で、タナトスに一瞬の隙ができていた。 そしてその隙を突いて、そのままクロウは受け止めた刃を横に振る。 『…!!?』 タナトスはその動きを予想できず、体勢を崩して剣と一緒に地面を転がった。 そして立ち上がった彼の目前へと、猛然とクロウは迫る。 『何故だ…何故動ける…!!?』 驚愕の声を響かせるタナトスに対し、先程刀を取り落としていたクロウは、その代わりに。 全力を込めて、右の拳をタナトスの顔面――銀色の仮面に叩きつけた。 仮面にヒビが入り、タナトスの身体が数歩、後ずさりする。 己の顔を押さえ、タナトスは再びクロウの頭に声を響かせた。 『どういう事だ…汝に、こんな力など残ってはいない筈…!!』 クロウは地面に横たわっていた刀を拾い上げると、動揺するタナトスを見据えた。 「(…何、で…お前が…?)」 左腕の操作盤のボタンを押した直後、クロウは目の前の光景に混乱していた。 自分の前に立ち、剣を振り下ろすタナトス。だが、その剣は振り下ろされている筈なのに、自分の顔面に接触するより前の位置で、静止している。 身体の感覚はあったが、先程ままで動かせた筈の両手や両足を動かす事ができない。 動けない。 目の前もタナトスも動かない。 そして。 『説明はまぁ…必要だろうね』 タナトスの背後に、ノアがいた。 それを認識した瞬間に、周囲にあった草原や、海や、空や、そしてタナトスが消え。 クロウの眼前には、真っ白な空間の中央に立つ、ノアだけが存在していた。 『ミラージュ君。これは君が、自らに薬品を投与したその瞬間に再生されるようにセットしておいた、幻だ』 タナトスの背後にいるノアがそう説明する。 クロウは絶句していた。三つ目の薬品にこんな仕掛けが施されていたとは。 だが、何故この薬品にだけ?そんな疑問を抱いたクロウに対し、目の前の幻のノアは、再度口を開く。 『当ててあげよう。何でこの薬品にだけこんな仕掛けが施されているのか。そう思ったね?』 相変わらずだ。自分の考えを見透かしているかのような物言い。 あまりにも相変わらず過ぎて、それが今のクロウには逆に安心感を与えていた。 喋れないが、クロウは頭の中で、いつものように答えを返す。 「(もったいぶるな。とっとと答えを聞かせろ)」 『いいとも。説明してあげよう。まず今の状況からだ』 クロウの言葉にまるで合わせたかのようにノアが答えを返す。 両手を白衣のポケットに突っ込み、胸を張ってそこに立っているノアは、酷く楽しそうだ。 『まず、今君の脳内に色々と薬品を注射し、体感時間を極限まで広げている。つまり時は止まっちゃいないが、今の君にはまるで時が止まった様に見えている事だろう』 当たり前のように酷い内容の話を口にするノアに、クロウは頭の中で苦笑しつつ、これまで何度言ったか分からない言葉を投げる。 「(何度言えば分かる。俺をモルモットにするな)」 まるでクロウがそう言うのを待っていたかのように、目の前にいる幻のノアは、その笑みを更に深くした。 『ちなみに、今君の脳に注射した薬品のお陰で、君の視界に私の姿をした幻を出現させる事ができているわけだ。さて、ここからが本題だが…』 次にどんな言葉が出てくるのか。クロウは緊張と共に待った。 『これから、君の肉体を改造する』 きっとロクでもない事を言い出すんだろうと思っていたが、予想通りだった。 そんなクロウの気分をきっと察しているのだろう。至極楽しそうにノアは続ける。 『どうやってそんな事をするのか。今度はそう思ったね?一つ教えてあげよう。そのアーマーは君を守る代物であると同時に、自動的に稼動する…手術室でもあるのだよ』 更にロクでもない言葉が出てきて、クロウは怒りや呆れを通り越して、笑い出しそうになった。 『最初に君に話した通り、今君が自らに投与しようとしたのは感覚を鋭敏化させる代物だ。だが…視覚や聴覚、触覚や嗅覚が突然何百倍もの感覚で感じられるようになったとして、果たして普通の人間は耐えられるだろうか?』 「(…なるほど、確かに…苦しみで戦闘どころじゃなくなるな…!)」 ノアの指摘に、クロウは素直に感心する。 これまで漠然と『感覚が鋭くなる』だけのモノだと思っていたが、確かに言われてみればそうだ。突然感覚が鋭くなったとしたら、常人ならその感覚についてこれず、動けなくなってしまうだろう。 『だから、これから君の身体を、その感覚についてこられるようにする。具体的に言えば、身体中の神経を強制的に強化させるんだ』 その説明に、クロウは身震いした。前置きのお陰で『改造』の必要性が分かっただけに、避けられぬものだと分かったからかもしれない。 『改造された後の君は、常人の数百倍も鋭い感覚で行動できるようになるだろう。面倒だから詳細な説明は省くがね』 クロウは覚悟した。ノアがこんな事を言うという事は、デメリットは酷いものなのだろうと予想ができたからだ。 そして、その予想は間違っていなかった。 『ただし、一分だけだ。それが過ぎれば君は常人に戻る。急激に改造された神経が再び元に戻るわけだ。恐らくどれほど健康な状態でも、その後24時間は感覚がまともに働かなくなるだろう』 そこで一旦言葉を切ると、ノアは静かに言った。 『これから、その改造を行うかどうか君に問う。君は頭の中で答えを言いたまえ。イエスと言えば、その時点で改造が開始される。ノーと言えば、私が消えて終わり。また次の機会に使いたまえ。次はこの私は出てこないがね』 ノアが言葉を切る。今のクロウには、先程のノアの注意を考慮するほどの余裕は無かった。何せ今、タナトスに剣を振り下ろされそうなところなのだ。 身体の改造だろうがなんだろうが、今使わなければ死ぬのだ。 クロウは頭の中でイエスと答えようとした。 だが、その時ノアが言葉を紡いだ。 『言っておくが、くれぐれも傷だらけの状態で使おうなどとは思わんことだ。痛覚も数倍にまで高まる。まぁショック死はしないように考慮・調整はしているし、栄養剤も投与するから、少なくとも薬品の効いている一分間は行動に支障は出ないだろう。それよりも…』 一瞬言い淀んだ後、ノアは言った。 『神経が疲弊している状態でこの薬品と改造を受けようものなら、一分後、君は廃人となるだろう。身体中の感覚がその場で消える。何も感じられなくなる』 そこまで言って、ノアは溜め息を吐いた。 『さて、これで最後だ』 言葉を切り、ノアは真面目な顔で、言った。 『ミラージュ君。使うかね?』 「(…ああ…!!)」 答えを聞いたノアは、意外にもその表情を曇らせていた。 『分かった。これから改造を開始する。だがその前に一つ聞きたい』 真面目な顔で言葉を紡ぐノアに、クロウは頭の中で疑問符を浮かべる。 十分な間を置いてから、ノアは言った。 『恐らくこの薬品、効果を聞いた時点で君は易々と使用には踏み切らん筈だ。恐らく…一番最後になるだろう。そして…その時、君は無事では居はすまい』 先程の話とは裏腹に、今の状況を的確に見抜かれている。クロウは、息を呑んだ。 『それほど自分を犠牲にして、君は自らの望むものを、手に入れられるのかね?君は…何の為に戦ってる?』 ノアの質問に、クロウは体感時間で数十秒ほど沈黙した。 だがやがて彼は、静かに答えを頭の中で紡ぐ。決意と覚悟をもって。 「(ノア…これは、俺自身の…けじめだ。俺自身の過去との)」 一拍間を置いて、クロウは更に言葉を重ねる。一言一言、己の心に刻み付けるように。 「(何が待っていようと…この戦いで持てる力の全てを出せなければ、俺は…犠牲になった者達に、顔向けできないんだ…!!)」 『…この先に待つのが死であっても、かね』 そう問うノアの眼には、呆れの色さえも見て取れた。 そしてそんなノアに、クロウは静かに、怒りをぶつけた。 「(勘違いするな。命を賭けるとは言ったさ。だが…命を捨てるとは、言ってない…!!)」 それを聞いたノアの表情に、一気に笑みが宿る。 『いいだろう。やはり君は、最高の実験台だ!!』 「(…最後までそれか。いいさ…実験台、望む所だ!!)」 そして、ノアはその笑みを残し、消えた。 同時に周囲の景色が戻り、目の前に迫った刃の動きが段々と戻り始める。 クロウがそれを意識するよりも早く、彼の身体が反応し、刃を受け止めていた。 そして――その動きを行ったことで、クロウは既に自分の身体の改造が完了していた事を悟った。 『どういう事だ…汝に、こんな力など残ってはいない筈…!!』 後ずさりしながら、タナトスはそんな言葉をクロウの頭に響かせる。銀色の仮面から覗く目は、驚愕の色でクロウを捉えている。 クロウは、そんなタナトスを見据えた。 痛覚と疲労感は先程までの比では無い。今にも倒れそうだ。だがそれ以上に、鋭敏になった視覚と聴覚に、クロウは驚愕していた。 周囲の状況が分かる。地面に生える草の一枚一枚の揺らめきが。擦れ合う音が。風の音が。 そして、目の前の男の状態が。 だが、時間が無い事もクロウには分かっていた。 故に、彼は地面を蹴り、仕掛けると同時に声を張り上げた。 「貴様は…それでいいのか!ロード!!」 それまでとは圧倒的に早く、クロウは刀の届く範囲にまでタナトスに接近すると、その瞬間に抜刀する。 ようやく動揺の収まったタナトスは辛うじて剣で防御するも、その動きはぎこちない。 対してクロウは、防御されても尚、切り返した刃を薙ぎ払った。そうしながら、先程の言葉の続きを紡ぐ。 「『そんな奴』に利用されて終わるためだけに、貴様は生きてきたと言うのか。そんな結末のために、何人もの人間を犠牲にしてきたというのか…!」 切り返してきたクロウの刃を、大きく跳躍する事で避けると同時に、大きくクロウの頭上を飛び越えながら、タナトスはその剣をクロウの頭へ向けて降る。 だがクロウも即座に刀を上げ、それを防御すると同時に、後方へと跳び退っていた。 着地し、タナトスはヒビの入った仮面の奥からクロウを見据え、声を響かせる。 『無駄だ。ロックマン・ロードの意思など、もうどこにも…』 そうしながら足を踏み出そうとしたタナトスは、驚愕した。 『…何?』 踏み出そうとする足が、震えている。 気がつけば、刀を握る腕も震えていた。自らの意思に反して。 それは、これまで数え切れないほどの人間を『意図』で操ったタナトスにとって、信じられない事だった。 『…無駄な話はやめろ、ロックマン・ミラージュ…早々に、消え去るがいい…!!』 余裕の無くなりつつある声を響かせて、タナトスは一気に間合いを詰め、剣を振る。 クロウも数歩後退しながら間合いを調整し、タナトスの動きに合わせて刀を振った。 甲高い音と共に刃がぶつかり合い、一度離れる。だが両者共に刀と剣を返し、二撃目の刃を交差させる。 一撃目よりも威力を増した二撃目。それでも均衡は破れず、再び刃は離れた。 三撃目は話が違っていた。今度はクロウもタナトスも更に半歩間合いを詰め、クロウは上段から、タナトスは下段から十分に力を溜めた一撃を撃ち放つ。 だが、これも両者の力は拮抗していた。 間合いが詰められていたため、刃は離れず、状況は鍔迫り合いの体となる。 ギリギリと刃が擦れ合わされながら、クロウは先程の言葉の続きを紡いだ。 「…お前が何をしたかったのか、俺には分からない。だが、一つだけ分かる事がある。お前は、『支配』される事に我慢ならなかったんだ。だからヘブンを裏切った」 そこまで言うと、クロウはその状態から――力を抜いた。 そして同時に膝を折り、身体を大きく沈み込ませる。 『っ!!?ちぃっ…!!』 力を入れ続けていたタナトスは体勢を崩し、前方へと身を乗り出した。 身体を沈みこませると同時にタナトスの右側へと移動したクロウはそれを見送りつつ、尚も言葉を紡ぐ。 「それなのに、今のお前は…身も心もそんな奴に支配されて、本当にいいのか…!?」 言いながら先程のタナトスのように、クロウは体勢を崩した状態のタナトスの背中へと刃を繰り出す。 辛うじてそれを察知したタナトスが、振り向き様に剣でそれを防御し数歩後退するも、クロウは更に足を踏み出した。 「このまま、お前を支配する者の思い通りになったまま、俺を殺して本当に満足すると言うのか!!?」 更に飛び込むように地面を蹴り、上段からクロウは刀を振り下ろす。 『貴、様ぁ…!!』 タナトスは更に数歩後退しつつクロウの刀を剣で防御するも、その動き、そして声には焦りが出始めていた。 思わぬクロウの反撃と、思うようにならぬ自身の――否、ロックマン・ロードの身体への苛立ち。 そして、そんな状況に動揺する自身の心。 ――思えば、イデアに自身の身体を滅された時。あれがミスの始まりではなかったか。 計画の障害となるノアの排除。あの時の課題はそれだった。 自身の創造する物語に必要不可欠な二人の登場人物である、ロックマン・ミラージュとロックマン・ロード。それを表舞台に立たせた時点で、ノアという者の利用価値は無くなっていた。 そしてあの時点でノアを消す事ができたのは自分だけであり、実際ゼゼを利用する事で、それは自分の計画通りに果たせる筈だった。 ノアの死体からイデアが出現した事だけが計算外だった。 イデアの登場と、ノアが死の間際に創造した銃弾により、自らの肉体を滅ぼされ、タナトスは追い詰められた。 そんな状況が、更なる判断ミスを生んだのかもしれない。 ロックマン・ロードの肉体をタナトス自身が操り、自分自身を物語の登場人物とした事が。 だが、それにタナトスは、遂に気付けなかった。 更に刀を振り下ろすクロウ。それを再び剣で防御するタナトス。 同時にタナトスはクロウの一撃の威力を利用して、大きく後方へと跳躍、着地する。 そして立ち上がると、彼は刀から左手を離し、横に大きく振った。 『調子に乗るのもここまでだ…愚かな、粛清官よ!!』 タナトスのその言葉と同時に、無数の『神々の意図』が、クロウへと殺到していく。 それは、もはや最終幕としての体裁すらも投げ捨てるという、タナトスの余裕の消失を意味していた。 殺到する無数の糸。それを見据え、クロウは冷静に考え、そして自分から糸の真っ只中へと、踏み込んだ。 先程、ヘブンズゲートの内部では全く抵抗できなかった。だが今の自分になら、これを掻い潜れる筈だ。 全く確証は無かったが、何故か今のクロウは、自然とそう思う事ができた。 「(焦るな…鋭敏化された感覚をフルに活用しろ…集中、する…)」 視界いっぱいに糸が殺到してくる。クロウはまず地面を蹴り、身体を倒して横に回転する事によって、僅かな隙間を掻い潜った。 更に殺到する糸はもっと強く地面を蹴り、糸の一つを刀で引っ張る事によって強引に隙間を開いて掻い潜る。 だがこれで終わりでは無い。更に前方から殺到する糸と、既に掻い潜った糸が背後から迫ってくるのをクロウは感じた。 そして感じると同時に、左手の操作盤を素早く操作し、アーマーの足部分に装備された重力制御装置を起動。大きく跳躍する。 そして空中ではねる様に動きながら、時に身体を捻り、時に刀で強引に、クロウは糸を掻い潜り、遂にタナトスの元まで辿り着こうとしていた。 『っ…小癪なぁ…!!』 ようやく着地し、間近に迫ったタナトスへと突撃するクロウ。 対してタナトスは、再度全ての糸を結集させ、クロウの周囲に檻を作るように結界を作っていた。 『人一人掻い潜れる余地など無いぞ…!!』 「っ…!!」 周囲から、檻を狭めるようにして糸が迫ってくる。ナイフを取り出している時間も無い。 その瞬間、クロウは決断した。 僅かな糸の隙間へと、刀を勢い良く投げつけた。 『何っ…!!?』 一直線に迫る刀。それを慌てて、タナトスは剣を大きく振って弾き飛ばす。 それが、彼の最後のミスだった。 ようやくタナトスは視界にクロウがいないことに気付く。 刀を投げつけると同時に、クロウは全力で地面を蹴り、更に重力操作を行う事で、檻として展開された糸の唯一の脱出口へ向かっていた。 ――即ち、頭上へと。 周囲こそ隙間無く覆っていた糸だったが、急速に狭めるには上にまで網を張るのは邪魔だったのだろう。 故に、クロウの頭上には人一人分通れる隙間が存在していた。 そしてクロウは、遂にその隙間へと身体を通す事に成功する。 無数の糸による檻。それを越えて、重力操作を切り、剣を振ったばかりの、隙だらけのタナトスの元へと身を躍らせる。 「…ロード!!」 『!!?』 その瞬間、クロウは全力をもって、再度拳を銀色の仮面に叩き付けた。 仮面が粉々となり、タナトスが大きく吹っ飛ばされる。 クロウは、そのタナトス――ロックマン・ロードに向かい、静かに最後の言葉を告げた。 「支配されて終わるのか…お前が決めろ…!!」 『無駄だと、言った筈だ…!!』 吹っ飛ばされ、倒れたタナトスは、それでも尚も立ち上がる。 その顔は、右目がリーバードの瞳である事以外は、確かにロックマン・ロードのものだった。 数秒遅れて、クロウの拳が直撃した額から、血が流れる。 それも意に介さず、タナトスは足を踏み出そうとした。 だが、ロックマン・ロードの身体は――その場に片膝をついていた。 『ロックマン・ロード…!何のつもりだ…!?』 「さて、な…気が変わった、とでも言おうか…!!」 低い声で、ロードが自らの口から言葉を発する。 タナトスの意思に反するのは相当の労力を要するのだろう。その声は苦しげだ。 「このまま、貴様に…俺の身体を、好きに…させておく、気に…ならなく、なった…それだけだ!!」 そう言った瞬間、ロードは右手の指を、右目の中に突っ込んだ。 血が飛び、地面の草を塗らしていく。 『止めろ!何をしているのか分かっているのか!!?』 「マザー・ディエスは、毅然と目の前の死に、向き合った…!!」 三本の指を右の眼窩に突き入れ、その右のリーバードの瞳を掴んだロードは、絞り出すような声で言葉を紡ぐ。 『汝は、今自分が何故生きているのか、分かっているのか!?』 「ノアは、自らの死と引き換えにして、貴様の身体をこの世から滅した…!!」 そう語るロードの口元に、笑みが浮かぶ。 「だが、貴様はどうだ?俺の身体を奪い取ってまで、生き長らえたいか。神を気取り、数え切れぬほどの人間を操り…その結果が今の貴様の、その姿か」 『我を拒絶するというのか!?そんな事になれば、汝は、死体に逆戻りだぞ!!?』 「滑稽だよ。古き…神々!!!」 ロードは、自らの右目を抉り出した。 『やめろ…やめろ、やめろやめろヤメロヤメロオオオオオォォォォォ!!!』 狂ったように、その場にいる者達の頭の中にだけ、絶叫が響き渡る。 だが。 ロードが先程まで自らの右目であったモノを握り潰した瞬間に、その声はプツリと、酷く呆気なく途切れたのだった。 「クッ…ククッ…クハハハハハハハ!!!」 右目から血を流しながら、ロードが笑う。 呆然とその光景を眺めていたクロウだったが、その口からは自然と目の前の男の名が出てきていた。 「ロード…」 「ケフェウスも」 そんなクロウの言葉を断ち切るように、ロードが声を張り上げる。 「マザー・ディエスも!ノアも!そしてタナトスも!『死』からは逃れられなかった!!」 そこまで一息に言うと、ゆっくりと深呼吸してから、ロードは静かに言った。 「結局、神などどこにもいない…いたのは、神を気取る愚か者だけだったという事だ…!」 そこまで言うと、ロードは。 血を吐いた。 膝をつき、口元を拭った手を眺めるロード。その顔に浮かんでいたのは、苛立ちだった。 「何だ、こんなものか…俺、は…」 その言葉を言い終わらないうちに、ロードのアーマーの各所から、血が噴出する。 クロウには、ロードの身体の至る所から、タナトスが用いていた『糸』が抜けていくのが見えた。 タナトスが死んだのだ。恐らくロードの命を繋ぎとめていた、身体中に張り巡らされた『糸』が、制御を失って自らの意思で動き出したのだろう。 先程タナトス自身が言っていた。自分を殺せば、ロードは死体に逆戻りするだけだと。 「ロード…」 クロウは、ロードに近づこうとした。 その途端、身体が急激に重くなり、クロウも膝をついた。 「!?ガハァッ!!!」 反射的に口元を覆った指の隙間から、大量の吐血が流れて地面の草を塗らす。 見れば、アーマーの各所からも、多量の血が流れ出していた。 額から脂汗を流し、クロウは歯噛みする。薬の効果が切れたのだ。 先程までクリアになっていた視覚や聴覚、触覚も、もう何も感じない。その代わり、身体中を激痛が走り抜ける。 薬が切れると同時に、これまでの戦いで負った傷も一気に開いたのだろう。 疲労感に至っては、身体の重さが何倍にも感じるほどだ。 「(こ、れで…終わりなのか)」 一度改造され、そして薬の切れた今の身体がどうなっているのか、クロウ自身にも分からない。ノアの言った通りなら、全身の感覚が消えてなくなっても不思議では無い事は確かだ、と彼は思った。 今のロードと、同じように。 霞む視界で、かろうじてロードの方を見る。 ロードも、その場でもがいていた。動かぬ身体を動かそうと。 そんな彼の姿に、クロウは若干の安心を覚えていた。 「(いや…十分だ。ロードに、自分の意思を取り戻させる事ができたんだから…)」 視界が、更に霞んでいく。聴覚など、周囲の音が酷く小さく聞こえる始末だ。触覚に至っては何も感じる事ができない。 そのまま、クロウはその場に倒れ伏した。 終編へ 新たなる日々へ・目次
https://w.atwiki.jp/morizaru/pages/261.html
竹原慎二 本名 生年月日 血液型 出身地 デビュー年 デビュー作 HP 単行本 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 出版社 発売日 発行日 サイズ 巻数 備考 タナトス タナトス THANATOS むしけらの拳 小学館 ヤングサンデーコミックス 既刊3巻 画:落合裕介 ※発売日・発行日は第1巻のもの 連載 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 連載開始 連載終了 備考 タナトス タナトス THANATOS むしけらの拳 週刊ヤングサンデー 小学館 連載中 画:落合裕介 読切 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 開始 終了 備考 ※開始・終了は複数回の場合
https://w.atwiki.jp/morizaru/pages/260.html
落合裕介 本名 生年月日 血液型 出身地 デビュー年 デビュー作 HP 単行本 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 出版社 発売日 発行日 サイズ 巻数 備考 タナトス タナトス THANATOS むしけらの拳 小学館 ヤングサンデーコミックス 既刊3巻 原案:竹原慎二 ※発売日・発行日は第1巻のもの 連載 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 連載開始 連載終了 備考 タナトス タナトス THANATOS むしけらの拳 週刊ヤングサンデー 小学館 連載中 原案:竹原慎二 読切 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 開始 終了 備考 ※開始・終了は複数回の場合