約 2,223,751 件
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/2440.html
【TOP】【←prev】【MEGA DRIVE】【next→】 SORCERIAN タイトル SORCERIAN ソーサリアン 機種 メガドライブ 型番 G-4504 ジャンル アクションRPG 発売元 セガ・エンタープライゼス 発売日 1990-2-24 価格 7000円(税別) 【TOP】【←prev】【SUPER CD-ROM²】【next→】 SORCERIAN タイトル SORCERIAN ソーサリアン 機種 SUPER CD-ROM² 型番 JCCD1005 ジャンル アクションRPG 発売元 ビクター音楽産業 発売日 1992-7-17 価格 7800円(税別) 【TOP】【←prev】【Dreamcast】【next→】 SORCERIAN 七星魔法の使徒 タイトル SORCERIAN 七星魔法の使徒 ソーサリアン 機種 ドリームキャスト 型番 T-9103M ジャンル RPG 発売元 ビクターインタラクティブソフトウエア 発売日 2000-4-27 価格 5800円(税別) タイトル SORCERIAN 七星魔法の使徒 初回限定版 機種 ドリームキャスト 型番 T-9102M ジャンル RPG 発売元 ビクターインタラクティブソフトウエア 発売日 2000-4-27 価格 6800円(税別) ソーサリアン 関連 MD SORCERIAN SCD-R SORCERIAN DC SORCERIAN 七星魔法の使徒 駿河屋で購入 メガドライブ PCエンジン SUPER CD-ROM² ドリームキャスト
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/38.html
ソーサリアン 機種:PC88, PC98, X1t,IBMPC, MSX, MD, PCECD, DC, PC, NS 作曲者:古代祐三,石川三恵子,永田英哉,竹林令子,阿部隆人(ロマンシアシナリオの流用元作曲) MIDI Conversion(IBM PC):Rob Atesalp、Ken Allen 編曲者(MSX):Mr.Liquor Tsun、KOH's RAY-NET 作曲者(MD):久保田浩、上保徳彦 編曲者(PCECD):川井憲次、奈雲美徳、藤原保 編曲者(PC):Falcom Sound Team jdk(松岡博文,白川篤史,園田隼人,松村弘和,石橋渡) ソーサリアン・ユーティリティ作曲者:石川三恵子 ソーサリアン・追加シナリオ1作曲者:石川三恵子 戦国ソーサリアン作曲者:石川三恵子 ピラミッドソーサリアン作曲者:石川三恵子 宇宙からの訪問者作曲者:北原幸憩,高橋大昌 ギルガメッシュ・ソーサリアン作曲者:JACK ! zero,HARITANI セレクテッド・ソーサリアン作曲者:高橋大昌、西澤洋、石川三恵子 ソーサリアン・フォーエバー作曲者:Falcom Sound Team jdk(石川三恵子,白川篤史,松岡博文,新井智) 発売元:日本ファルコム、セガ(MD)、ビクター音楽産業(PCECD) 発売年:1987年 概要 古代祐三氏の代表作にして、ファルコム黎明期の傑作。 「イース」シリーズのような優れたリメイク、続編に恵まれていないため新規層への浸透は今一つだが、 古参ファンの間では非常に評価の高いタイトルである。 追加シナリオなどの拡張キットが多数発売されており、本稿ではその全ての楽曲を取り上げる。 ただし、『ソーサリアン・フォーエバー』はWindows対応の独立タイトルとして発売されたものであり拡張キットではない。 メガドライブ版はシナリオが全てがセガオリジナルのためファルコムから元データを貰いセガのスタッフにより作曲されたものである。 (メガドライブ版の収録曲についてはソーサリアン(MD)を参照) ちなみに、フォーエバーの各シナリオはおまけシナリオとしてWINリメイク版でもプレイできる。 後にソーサリアンの世界観を元にしたMMORPG『ソーサリアンオンライン』が発売された。(ファルコムは開発に関与していない)。 作曲陣は古代氏の他にファルコムの石川氏、ベーマガのライターである永田氏、後にクインテットでシナリオライターを務める竹林氏で構成。 なおオリジナルシナリオの個々の楽曲についての公式なクレジットはなく、古代氏も自分の書いた曲がどれか忘れたと語っているため作曲者は推測である。 収録曲 曲名 作・編曲者 補足 順位 ソーサリアン オープニング 古代祐三 オープニング オープニング258位第2回オープニング196位 城「ここで逢えるね」 石川三恵子? メニュー画面 第1回ファルコム64位第2回ファルコム55位第3回マイナーレトロ64位町曲57位 町「ペンタウァI」 古代祐三? ペンタウァの町 町「ペンタウァII」 古代祐三? ペンタウァの町 BEAUTIFUL DAY 石川三恵子 PC98版追加曲シナリオクリア トラベラーズ・イン 古代祐三? 冒険結果発表 SIGH AND TEAR 石川三恵子 PC98版追加曲シナリオ失敗 キング・ドラゴン 古代祐三? キング・ドラゴン戦 エンディングI 古代祐三? スタッフロール 第1回47位第1回ファルコム17位第2回ファルコム183位マイナーレトロ28位エンディング59位歴代222位 エンディングII 石川三恵子 エンディング エンディング183位 消えた王様の杖 ダンジョン 古代祐三? 第11回603位第1回ファルコム15位第2回ファルコム58位マイナーレトロ67位第3回マイナーレトロ5位掘り出し130位横スクロール55位ダンジョン127位一面63位1980年代98位 消えた王様の杖 ヒドラ 古代祐三? パソコンゲーム214位 消えた王様の杖 生還 古代祐三? 第2回ファルコム164位 失われたタリスマン 森 古代祐三? 失われたタリスマン 地下ダンジョン 古代祐三? 失われたタリスマン 神官デヒテル 石川三恵子? 失われたタリスマン サンド・マリボー 石川三恵子? ルシフェルの水門 地下ダンジョン 古代祐三? ルシフェルの水門 クラーケン 古代祐三? ルシフェルの水門 ブラッディー・リバー 竹林令子? 第1回ファルコム45位第2回ファルコム115位第3回マイナーレトロ15位横スクロール56位パソコンゲーム142位ダンジョン431位 呪われたオアシス 砂漠 古代祐三? 第1回ファルコム74位パソコンゲーム147位 呪われたオアシス 砂の城 古代祐三? 第4回704位第1回ファルコム19位第2回ファルコム38位第2回マイナーレトロ159位第3回マイナーレトロ48位横スクロール136位パソコンゲーム66位ダンジョン364位1980年代191位 呪われたオアシスルワンとゴールドドラゴン 古代祐三? 盗賊たちの塔 塔 古代祐三? 盗賊たちの塔 地底 古代祐三 盗賊たちの塔 屋上 古代祐三? 盗賊たちの塔 メジャー・デーモン 石川三恵子? 盗賊たちの塔 シャドー・ドラゴン 石川三恵子? 盗賊たちの塔 封印 竹林令子? 暗き沼の魔法使い 暗き沼 古代祐三? 暗き沼の魔法使い レッド・ドラゴン 古代祐三? ロマンシア ロマンシア王国 阿部隆人 ロマンシアからの流用曲 ロマンシア ロマンシア城 阿部隆人 ロマンシアからの流用曲 ロマンシア アゾルバ王国 阿部隆人 ロマンシアからの流用曲 ロマンシア ヴァイデス 古代祐三? ロマンシア エンディングテーマ 阿部隆人 ロマンシアからの流用曲 紅玉の謎 森 古代祐三? 紅玉の謎 モス・ジャイアント(PC88) 永田英哉? PC98版より以前に使用 紅玉の謎 モス・ジャイアント(PC98) 石川三恵子 PC98版以後に使用 紅玉の謎 平和な森 石川三恵子?永田英哉? 暗黒の魔道士 ダンジョン 古代祐三? パソコンゲーム230位 暗黒の魔道士 ダンジョンII 古代祐三? 暗黒の魔道士 ゲディス 古代祐三? 暗黒の魔道士 ブルー・ドラゴン 古代祐三 ゲーム未収録45位(Super Arrange Version) 呪われたクイーンマリー号 船内 古代祐三? 第1回ファルコム22位第2回ファルコム91位第3回マイナーレトロ46位 呪われたクイーンマリー号 上陸後 古代祐三?石川三恵子? 第3回マイナーレトロ98位 呪われたクイーンマリー号アーク・デーモン 石川三恵子? 天の神々たち 村 古代祐三? 天の神々たち コンバット・シーン 古代祐三? 天の神々たち 天上界 古代祐三? 天の神々たち 竪琴 古代祐三? 天の神々たち エビル=シャーマン 石川三恵子? マイナーレトロ100位 氷の洞窟 洞窟I 古代祐三? マイナーレトロ77位冬・雪・氷42位ダンジョン327位 氷の洞窟 洞窟II 古代祐三? 冬・雪・氷135位 氷の洞窟 エキム 古代祐三? メデューサの首 森 古代祐三? メデューサの首 村 古代祐三? メデューサの首 メデューサ 古代祐三? 囚われた魔法使い 地下要塞 古代祐三? 囚われた魔法使いファイヤー・エレメント 石川三恵子? 不老長寿の水 生きている洞窟 古代祐三? 不老長寿の水 動く心臓 古代祐三? 不老長寿の水 ダブル=デビルス 古代祐三? 生きている洞窟~キングドラゴン Falcom Sound Team jdk WIN版オープニング ソーサリアン・ユーティリティ THE CHOICE IS YOURS 石川三恵子 タイトル画面 HAPPY ! HAPPY ! 石川三恵子 すごろく はじめまして 石川三恵子 お便りコーナー 僕はゲーマーだ! 石川三恵子 クイズ ソーサリアン・追加シナリオ1 CONGRATULATION ! 石川三恵子 シナリオクリア 魔性の島 魔性の島 石川三恵子 魔性の島 ロック・デーモン 石川三恵子 いけにえの神殿 ローラを救え 石川三恵子 いけにえの神殿 ミノタウロス 石川三恵子 いけにえの神殿 エル・ジーナ 石川三恵子 悪魔に魅いられた花 悪魔に魅いられた花 石川三恵子 悪魔に魅いられた花 ゴーレム 石川三恵子 嗚呼、ジョセフィーヌは今何処 いとしのジョセフィーヌ 石川三恵子 嗚呼、ジョセフィーヌは今何処 アース・ウオーム 石川三恵子 アマゾンの剣 ヴァネルバ 石川三恵子 アマゾンの剣 ジョアンナ 石川三恵子 戦国ソーサリアン 勝利 石川三恵子 シナリオクリア 帰還 石川三恵子 エンディング 武田信玄の章 異教の地 石川三恵子 武田信玄の章 阿修羅 石川三恵子 織田信長の章 雪の五条大橋 石川三恵子 和風86位第2回ファルコム131位冬・雪・氷61位 織田信長の章 風神 雷神 石川三恵子 豊臣秀吉の章 哀愁の天守閣 石川三恵子 豊臣秀吉の章 ぬえ 石川三恵子 真田幸村の章 忍者屋敷 石川三恵子 真田幸村の章 天狗 石川三恵子 第3回マイナーレトロ53位 徳川家康の章 江戸を斬る 石川三恵子 和風348位 徳川家康の章 邪鬼 石川三恵子 ラストバトル348位 ピラミッドソーサリアン Sanders Island 石川三恵子 マップ画面 Click ! Click ! 石川三恵子 シナリオクリア Good-luck ! Good-by ! 石川三恵子 エンディング 血ぬられた王家の秘宝 Bloody-diamond 石川三恵子 血ぬられた王家の秘宝 Tutankhamen 石川三恵子 魔の下僕ガッシュの陰謀 Forest of Lafaune 石川三恵子 魔の下僕ガッシュの陰謀 Before Gash 石川三恵子 魔の下僕ガッシュの陰謀 Gash 石川三恵子 心を失った姫君 Cherish-doll 石川三恵子 心を失った姫君 Gaddlegun 石川三恵子 嘆きの神殿 Grievously Shrine 石川三恵子 嘆きの神殿 Juggler 石川三恵子 魔王ギルバレスの迷宮 Labyrinth of Gilbares 石川三恵子 魔王ギルバレスの迷宮 Foreboding 石川三恵子 魔王ギルバレスの迷宮 Gilbares 石川三恵子 宇宙からの訪問者 魔法のアイテム屋WIZ 高橋大昌 ソーサリアン特別コーナー 愛と悲しみのバンパイア 城 北原幸憩 愛と悲しみのバンパイア アークデーモン 高橋大昌 愛と悲しみのバンパイア ファイヤーゴーレム 高橋大昌 愛と悲しみのバンパイア ジャレス 北原幸憩 愛と悲しみのバンパイア シナリオクリア 北原幸憩 海は広いな 海 北原幸憩 海は広いな デロルキンチャク 北原幸憩 海は広いな&未知なるもの シナリオクリア 北原幸憩 食虫植物の森 森 北原幸憩 食虫植物の森 ベララ 北原幸憩 食虫植物の森 シナリオクリア 北原幸憩 未知なる者へ 地上 北原幸憩 未知なる者へ 宇宙 高橋大昌 未知なる者へ 女の子 北原幸憩 未知なる者へ ナマコルド 北原幸憩 未使用曲1 北原幸憩 未使用曲2 北原幸憩 セレクテッドソーサリアン5それゆけ!ドトーのトライアスロンで「競技スタート」として実装 ギルガメッシュ・ソーサリアン The Brave JACK ! zero エンディング 双頭の魔犬 時計塔 HARITANI 双頭の魔犬 3億分の1の神話 JACK ! zero 二漕のナルキッソス Be your only one JACK ! zero 二漕のナルキッソス Cul-de-sac JACK ! zero 二漕のナルキッソス Death Game JACK ! zero 白夜に消えた村人 Teardrops JACK ! zero 白夜に消えた村人 Lad Green JACK ! zero 復讐の黒き勇者 DEMON'S FACTORY JACK ! zero 復讐の黒き勇者 Final Target JACK ! zero 復讐の黒き勇者 Gonna be a Winner ! JACK ! zero 呪われた国ペンタウァの悲劇 夜明け前 JACK ! zero 呪われた国ペンタウァの悲劇 Revengeful Warrior JACK ! zero 未使用曲 呪われた泉 JACK ! zero 未使用曲 未使用曲 Millas Annora JACK ! zero 未使用曲 セレクテッド・ソーサリアン メインテーマ 高橋大昌 メニュー画面 ソーサリアンファンクラブ 西澤 洋 ソーサリアンファンクラブ カラミティードラゴン 高橋大昌 カラミティードラゴン戦 スタッフクレジット 石川三恵子 スタッフロール 美しき花嫁 ディオンヌ村 西澤 洋 美しき花嫁 山賊 西澤 洋 美しき花嫁 ケイン 西澤 洋 美しき花嫁 シナリオクリア 高橋大昌 銀の灯が消えた街 オルソード 高橋大昌 銀の灯が消えた街 湖底の都市遺跡 西澤 洋 銀の灯が消えた街 ゴルディアン 高橋大昌 銀の灯が消えた街 シナリオクリア 高橋大昌 パンドラの箱 神々の村 西澤 洋 パンドラの箱 神殿 高橋大昌 パンドラの箱 パンドラ 高橋大昌 パンドラの箱 シナリオクリア 西澤 洋 灼熱のワナ 南の村 西澤 洋 灼熱のワナ 火山 高橋大昌 灼熱のワナ マグマボイアルド 高橋大昌 灼熱のワナ 失われた守り神 西澤 洋 灼熱のワナ シナリオクリア 西澤 洋 呪われた遺跡 吟遊詩人バーバラおばさん 西澤 洋 呪われた遺跡 村 西澤 洋 呪われた遺跡 遺跡 西澤 洋 呪われた遺跡 マンティピート 高橋大昌 呪われた遺跡 イスマリア王妃 高橋大昌 呪われた遺跡 シナリオクリア 西澤 洋 時の神殿 リラ城 西澤 洋 時の神殿 神殿 西澤 洋 時の神殿 サーペット 高橋大昌 時の神殿 ポジティル 高橋大昌 時の神殿 ネガティル 西澤 洋 時の神殿 神殿・2000年前 西澤 洋 時の神殿 不老不死の儀式 西澤 洋 時の神殿 再来の時 西澤 洋 時の神殿 ネガティルII 高橋大昌 時の神殿 蘇る記憶 西澤 洋 時の神殿 キラーボーン 高橋大昌 時の神殿 ポジティルの復活 高橋大昌 時の神殿 バーランの復活 西澤 洋 時の神殿 シナリオクリア 西澤 洋 闇に消えた女神 太陽の神殿 高橋大昌 闇に消えた女神 太陽の女神 西澤 洋 闇に消えた女神 地下牢 高橋大昌 闇に消えた女神 ミューズの琴 高橋大昌 闇に消えた女神 闇の王ファルカス 西澤 洋 闇に消えた女神 シナリオクリア 西澤 洋 妖夢幻伝説 エマリア国 高橋大昌 妖夢幻伝説 摩天楼 西澤 洋 妖夢幻伝説 ドラゴン島 西澤 洋 妖夢幻伝説 パズス 西澤 洋 妖夢幻伝説 シナリオクリア 西澤 洋 封印 刑務所 西澤 洋 封印 遺跡 西澤 洋 封印 タウラー&ワーウルフ 高橋大昌 封印 リークディオン 高橋大昌 封印 シナリオクリア 西澤 洋 それゆけ!ドトーのトライアスロン エールの交換 高橋大昌 それゆけ!ドトーのトライアスロン 競技スタート 北原幸憩 宇宙からの訪問者の未使用曲 それゆけ!ドトーのトライアスロン ユイターのソーサリアンクイズ 高橋大昌 それゆけ!ドトーのトライアスロン 産婆のサンバ 西澤 洋 それゆけ!ドトーのトライアスロン ファイヤーエレメント 西澤 洋 それゆけ!ドトーのトライアスロン 表彰式 西澤 洋 ソーサリアン・フォーエバー シナリオクリア Falcom Sound Team jdk シナリオクリア キングドラゴン Falcom Sound Team jdk キングドラゴン戦 ある魔術師の失敗 鉱山の地底湖 Falcom Sound Team jdk ある魔術師の失敗 アースエレメンタル Falcom Sound Team jdk 真夜中に鐘は鳴る ランドル村 Falcom Sound Team jdk 真夜中に鐘は鳴る 教会 Falcom Sound Team jdk 真夜中に鐘は鳴る ザキュレイア Falcom Sound Team jdk 真夜中に鐘は鳴る 魔術士ゲラン Falcom Sound Team jdk ドワーフの置土産 ドワーフの迷宮 Falcom Sound Team jdk ドワーフの置土産 ラビリンス・ドラゴン Falcom Sound Team jdk 妖精の大樹を救え 妖精たちの村 Falcom Sound Team jdk 妖精の大樹を救え 巨大樹木内部 Falcom Sound Team jdk 妖精の大樹を救え センティピード Falcom Sound Team jdk 招かざる来訪者 怪しげな島 Falcom Sound Team jdk 招かざる来訪者 アーク・デーモン Falcom Sound Team jdk サウンドトラック ミュージックフロムソーサリアン ソーサリアン・スーパーアレンジバージョンIII(戦国・ピラミッドソーサリアンの全曲収録) SORCERIAN COMPLETE(Windows10対応版) 紹介PV ソーサリアン for X1(1987)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7698.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 三六六 マザリーニの後を追おうと席を立つと、エレオノールは驚きと非難の眼差しで君を見る。 「ちょっと、あなた! 枢機卿猊下のお言葉を聞いていなかったの!? 座りなさい!」 エレオノールの言葉に構わず、君は枢機卿に声をかける。 アルビオンの使者と会見するその場に、自分も立ち合わせてはくれぬか、と。 マザリーニは君を値踏みするようにじっと見据えるが、やがて小さくうなずき 「よかろう、来たまえ。遥かなる異国の者の眼には、我らには見えぬ物が映るやもしれん」と言うと、 戸口をくぐる。 部屋の中にいる全員の注目を浴びながら、君はマザリーニについて部屋を出ていく。 マザリーニは廊下を大股に歩む。 三歩ほど後についた君のほうを振り返ろうともせず、前を見たまま 「『神聖アルビオン共和国』からの使者が来たのは、これで二度めだ」と言う。 「彼らが最初に来たのは、今日の正午過ぎのことだった。カステルモール卿の報せを受けて騒然としていた宮殿内に、どこからともなく現れたのだ。 その者たちはクロムウェルから遣わされた使者を名乗り、私との会見を要求した――拒絶すれば、リュティスで起きたような好ましからぬことが、 ここでも再現されるであろう、と。使者のひとりは、アルビオン貴族議会議員のサー・ジョンストン。内乱の前に何をやっていたかは知らんが、 クロムウェルに媚びへつらって出世した愚物だとひと目でわかる、つまらん奴だ」 君たちが来る前に何があったかを語るマザリーニは、平静をよそおってはいるが、内心の怒りといらだちを隠しきれずにいる。 「もうひとりは、奇妙な風貌の異国の男。男は、カーカバード国の軍団を率いるカルトゥーム将軍と名乗った」 ふたたびカーカバードの名を耳にして、君の考えは混乱する。 クロムウェルは七大蛇だけでは飽き足らず、あの無法地帯の荒くれどもや怪物の群れを、何百人もまとめて召喚したとでもいうのだろうか? それにしても、『カーカバード国の軍団』というのは奇妙な響きだ。 闇の大地カーカバードはあまりに無秩序なため、いまだかつて誰の支配も受けたことがない――統治されておらぬということは、 軍が存在せぬことを意味する。 かの大魔法使いでさえ、マンパン砦とその周辺の支配者にすぎない。 だからこそ、大魔法使いはカーカバードの王――ゆくゆくは世界の王――となるために、持ち主に指導力と叡智を与える秘宝≪諸王の冠≫を、 アナランドから盗んだのだ。三二八へ。 三二八 「会見の場で何が話されたかを、委細もらさず語る必要もなかろう」 マザリーニの話は続く。 「クロムウェルの言葉を伝えるのは、もっぱらジョンストンの役目だった。カルトゥームとやらは口を開こうともせず、 にやにやと不気味な笑みを浮かべるばかりだ。 ジョンストンは、昨晩ヴェルサルテイル宮殿を襲った惨劇の事は聞き及んでいるだろうか、と尋ねてきた。 私がうなずくと、奴めは得意になって、今回の件がどういったからくりなのかを説明した。 奴の言葉によれば、『神聖皇帝』――神をも恐れぬ肩書きだ!――クロムウェルは≪虚無≫の力によって、『ロバ・アル・カリイエ』のさらに向こう、 さいはての未知の国であるカーカバードとアルビオンをつなぐ≪門≫を作り出し、かの地の王と同盟を結ぶことによって、 百万の援軍を得たというのだ」 ≪門≫という言葉を聞き、君の混乱に拍車がかかる。 ハルケギニアの各地をつなぐ魔法の≪門≫といえば、オスマンの旧友リビングストン男爵が研究していたものが思い出される。 しかし、男爵が作り出した≪門≫はすぐに消えてしまう不完全なものだった。 また、どういうわけかハルケギニアとカーカバードをつないでしまうという、やっかいな代物だったようだ。 君が遭遇したスナタ猫やバドゥ甲虫、ジブジブなど、多くのカーカバードの生き物たちがその≪門≫をくぐって、 ハルケギニアに迷い込んでしまったと考えられる。 リビングストン男爵は死に、≪門≫の研究は途絶えたはずだが、クロムウェルはなんらかの方法で男爵の研究の成果を手に入れたのだろうか? 「そして、今度はリュティスに≪門≫を出現させ、そこから軍を送り込み、ヴェルサルテイル宮殿を壊滅させた。 攻撃の主力はカーカバード軍の先遣隊であり、彼らはクロムウェルの命令にしたがって、アルビオンを侵略した≪無能王≫に応報の罰を下した、 とジョンストンは言った」 マザリーニの言葉に、君は目を丸くする。 クロムウェルは二つの世界をつなぐ≪門≫だけではなく、男爵が望んでいた本来の形の≪門≫をも作り出したということになる。 君は、≪レコン・キスタ≫の首魁の底知れぬ魔力に驚嘆し、恐怖すら覚える。 彼が≪虚無≫の系統の使い手だという噂も、まんざら嘘ではないのかもしれない。 「使者たちがこの王宮内に突如現れたのも、そうやって≪門≫を使ったからだ。敵はいつでも望む時に、望むだけの兵力で、 このトリスタニアに攻め入ることができる。 ≪門≫という未知の魔法兵器の前には、城壁も魔法衛士隊も役に立たない。楽に勝てるはずだった≪レコン・キスタ≫討伐の戦が、 まさかこのような形勢になろうとは……」 そう言って、マザリーニは肩を落とす。 話を聞いた君は、かつてニューカッスルの城でルイズが口にした、≪門≫についての言葉を思い出す。 「使い方しだいでは戦争のやり方を変える恐ろしい武器にもなるわ」 「敵の城のなかに直接、暗殺者を送り込めるのよ。大きな≪門≫を作れば、軍隊をまるごと送ることだって……」 あの時の君は、ルイズの柔軟な発想に関心こそしたが、彼女の危惧するような事態はありえぬ事だと思っていた。 しかし、それは現実となった。 これこそが、風大蛇の言っていた『百万の軍勢でも千フィートの城壁でも防げぬ、まったく新しい武器』に違いない。九九へ。 九九 マザリーニは足を止め、部屋を出てから初めて君のほうへと振り返る。 鋭い目つきで君をじっと見つめながら、 「君が遥かな異国からやって来たメイジだということは、知っている」と告げる。 君はぎょっとしてしらを切ろうとするが、マザリーニには通用しない。 「パリー卿から聞いたのだ。君はウェールズ皇太子殿下と知り合って、殿下にみずからの身の上を明かしたそうだな ――≪四大系統≫とも≪先住≫ともまったく異なった、遠い異国の奇妙な魔法の使い手だと。 クロムウェルの邪悪なたくらみを知った皇太子殿下は、君の助力を得ようと、腹心のパリー卿を遣わしたのだ。 異国の知恵と魔法で、あの≪門≫をどうにかできるのではないかと、一縷の望みを託して」 そこまで言って、君の答えを待つ。 君は枢機卿に詫び、自分にとっても≪門≫はまったく未知の魔法であり、打つ手がないと説明する。 君の言葉にいつわりがないことを確信したマザリーニは、小さく溜息を漏らすと、再び歩みだす。 「とにかく、その眼で実際に≪門≫を見てみたまえ。何か得られることがあるかもしれん。クロムウェルが我らにのませようとしている、 悪辣な条件については、のちほど話そう……さあ、ここだ」 マザリーニは中庭へと通じる戸口をくぐり、君もそれに続く。 戸口の向こうの光景は、心騒がせられるものだ。 そこは広々とした中庭で、日没から間もない薄暗がりのなか、宮殿の衛兵や従僕たちが集まり、人垣を作っている。 彼らが遠巻きに見守っているのは、不気味な六人連れと、その背後にある物――うっすらと銀色に輝く、平べったい半円形の何かだ。 表面を覆った光がちらちらと揺れるさまは、池の水面(みなも)が持ち上がり、壁を作っているかのように見える。 それは高さ二十五フィート、幅二十フィートにも達する巨大なものであり、その大きさと形は、何かを連想させる……そう、まるで城門だ。 あれこそが、クロムウェルの起死回生の兵器である≪門≫に違いない! ≪門≫と六人連れがよく見える場所へと進み出るか(三八四へ)、それとも、姿をさらさぬよう周囲を取り巻く人々にまぎれ込むか(三四六へ)? 三四六 君は人垣に混ざると、目を凝らし、耳を澄ませる。 ≪門≫の正面に立つのは、不安げな表情できょろきょろと周囲を見回す中年男だ。 きらびやかな服装とマントを見るに、彼がアルビオンからの正使なのだろう。 マザリーニの話に出てきたサー・ジョンストンその人なのではないかと、君は見当をつける。 彼の隣に立つのは、がっしりとした体格の初老の男だが、顔つきも服装も異国風であり、ハルケギニアの人間には見えない。 ごわごわした黒髪と髭に覆われた顔は浅黒く、笑みの形に歪んだ口元からは、黄ばみ黒ずんだ歯が覗いている。 さっきの貴族がジョンストンだとすれば、この男はカルトゥーム将軍だろうか? 他の四人は護衛のようだが、よく見れば、異国人どころか人間ですらない。 背の低いほうのふたりは黒エルフだ――つり上がった眼ととがった耳、灰色の肌を見れば間違えようがない。 革鎧に身を固め、腰に三日月刀を差した彼らは、互いにひそひそと耳打ちを交わしている。 残りのふたりは、六フィートをゆうに越す巨体を鋼の鎧で包んだ、ごつごつした見た目の人間もどきの怪物、トロールだ。 ハルケギニアの同名の怪物にくらべればずっと小さいが、粗暴で残虐なことではひけをとらない。 トロールたちは周囲のざわめきを気にした様子もなく、石像のようにじっと立っている。 欲望のままに動く、トロールの一般的な性質を考えれば驚くべきことであり、彼らは、本格的な兵隊としての教練を受けているのかもしれない。 トロールのひとりは細長い麻袋を肩にかついでいるが、中には何か生き物が入っているらしく、時おりもがくような動きを見せる。 マザリーニは護衛の『亜人』たちを見てもおびえず、アルビオンからの使者の前に堂々と進み出る。 「サー・ジョンストン! これはいったい、何のおつもりか!? 回答の期限まで七日あると申されたばかりではないか!」 マザリーニの口からほとばしったのは、怒りの声だ。 サー・ジョンストンと呼ばれた男は、その剣幕にひるみつつも、作り笑いを浮かべる。 「いやいや、我らは捕虜の引渡しに来ただけですぞ、枢機卿猊下。神聖皇帝陛下の慈悲と寛大さを知らしめるために来たのです」 ジョンストンは猫なで声を出す。 「しかし、これを見られれば、トリステイン宮廷の総意はまとまり、回答もすみやかかつ賢明なものとなりましょう……」 口調こそへりくだっているが、内心の嘲笑と侮蔑は明らかだ。 「さて、互いに多忙の身ゆえ、用件は手早く済ませてしまいましょうぞ。ド・ポワチエ将軍をお渡しいたしましょう。さあ、カルトゥーム殿!」 ジョンストンに声をかけられた黒髭の男は、麻袋をかついだトロールのほうを振り返ると、 「降ろせ!」と胴間声を張り上げる。 トロールは一声うなると麻袋を乱暴に投げ出し、口を縛った紐を力まかせに引きちぎる。 袋の中から何かが這い出してくる……五五八へ。 五五八 麻袋から出てきたのは、立派な髭をたくわえた中年の男――だったもの、だ。 その顔は青ざめ、眼はうつろ、服も皮膚もいたる所が切り刻まれ、乾いた血がこびりついている。 首はなかば断ち切られており、彼がもはや生きてはおらぬのは明らかだ。 それにもかかわらず、男はゆっくりと立ち上がる。 周囲を取り巻く衛兵や従僕たちの間から、押し殺した悲鳴が上がる。 「あ、あれはド・ポワチエ将軍閣下だ」 君の隣に立つ衛兵が、おびえた声を出す。 君はその名を聞いて、動く死体が何者かを知る――トリステインがアルビオンに送り込んだ軍団の司令官だ。 「では、アルビオン遠征軍は敗れたのか? それに、将軍はなぜ動けるんだ? どう見ても死んでいるのに……おお、始祖よ!」 衛兵は恐怖に震えるが、君は落ち着き払っている。 ≪旧世界≫の危険な地域では、生ける屍のゾンビーやぎくしゃくと動く骸骨男に出くわすのも、そう珍しいことではない。 邪悪な黒魔術によってよみがえったこれらの怪物は、己の意思を持たぬ最も下等な≪不死≫であり、衛兵や奴隷として主人に仕えるのだ。 だが、このハルケギニアでは事情が違う。 ゾンビーと化した将軍を目にしてマザリーニは絶句し、杖を取り落とす。 死者を操る妖術は、この世界の魔法使いたちにとっては常識をくつがえす驚異なのだ。 「神聖皇帝陛下の偉大なる≪虚無≫の御業をもってすれば、トリステインの軍勢が不法に居座るシティ・オブ・サウスゴータに≪門≫を開くなど、 たやすい事」 酒に酔ったかのようにふらつくゾンビーをちらちらと不安げに見やりながら、ジョンストンが口を開く。 「本来は生け捕りにする予定だったのですが、カルトゥーム将軍の兵たちが血気に逸りましてな……」 ジョンストンは引きつった笑みを浮かべる。 「ガリア軍も敗走し、アルビオンにおける戦の勝敗は明らか。枢機卿、我らの要求への回答は、急がれたほうが賢明ですぞ。 遅れれば、司令官を失って右往左往しておるトリステインの兵どもが皆、このような『捕虜』にならぬとも限りませんからな。 ≪虚無≫の力で死してなお魂を縛りつけられ、始祖の御許へ旅立てぬというのは、たいへんな苦痛でしょうな」 そう言ってジョンストンが笑うと、カルトゥームもくぐもった笑いを漏らす。 「死者をはずかしめるなど……冒涜……恥知らずな脅しを……!」 マザリーニは言い返そうとするが、怒りと驚きのあまり、まともに口をきけずにいる。 君はこのままなりゆきを見守るか(三三九へ)、それとも進み出て、ゾンビーなど恐れることはないと声を上げるか(二九八へ)? 術を使うこともできる。 YAP・六一一へ ZIC・七八八へ DIM・六三八へ TEL・七五七へ MAG・六八六へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7830.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二四四 ホーキンスは眉根を寄せる。 怪訝そうな目つきで君を見るが、やがて 「奇妙なことに、クロムウェルも、カルトゥームらカーカバードから来た指揮官たちも、その者の名を口にはしなかった。 もちろん姿を見た事もない。もっとも、カーカバードの王がアルビオンに来ているという話は聞いていないのだが」と言う。 君はがっくりと肩を落とす。 敵の首領の名を聞けば、カーカバードから来たと自称する、謎めいた連中の正体を推察する助けになるのではと考えたが、 そううまくはいかぬようだ。 「そういえば、クロムウェルは同盟者のことを単にカーカバードの王と呼んでいたが、あの蛮族どもは別の呼び方をしていた。 一度だけ聞いた事がある」 ホーキンスは言う。 「『大魔王様』。奴らは自分たちの主君の事を、そう呼んでいた」と。 「ふざけた称号だと思うかもしれないが、当を得た呼び名だとわたしは考える。カーカバードの奴らの所業を見れば、 その頂点に立つのは人ならざる存在――地獄の悪魔の王か何かなのではないかと、思わせられるからだ」 君はホーキンスに礼を述べ、話の腰を折ってすまなかった、本題に戻ってくれと言う。 結局のところ、謎は深まるばかりだ。 カーカバードはもちろん≪旧世界≫全域の歴史をひもといたところで、『大魔王』を名乗る悪党など見つかりはせぬだろう。 マンパンには『大魔法使い』が君臨しているが、かの者は王を名乗れるほどの権力は持っておらぬ――少なくとも、当面のところは。 魔の都カレーを統治する貴人たちにしても、王を気どるには力不足だ。 『大魔王』とはいったい何者なのだろう? 君が考えに没頭している間にもホーキンスの話は進む。二九へ。 二九 「≪門≫を消し去り、クロムウェルとカーカバードの脅威からハルケギニアを守る方法は、ただ一つだけ……」 ホーキンスは重い口調で言う。 「……少人数の決死隊をロンディニウム塔に潜入させ、装置を破壊するのです」 テーブルを囲んだ一同の間に、沈黙が訪れる。 重苦しい静けさを破って最初に口を開いたのは、カステルモールだ。 「失礼ですが、将軍。本当に他に方法はないのですか? たとえば、艦隊で砲撃を加えて、その装置を塔もろとも粉砕してしまえば……」 「ロンディニウム塔は、おそろしく堅固な造りと聞いておる。砲弾ごときではびくともするまい」 オスマンが口を挟む。 「おまけに、≪門≫を使った奇襲でアルビオン遠征軍は大混乱との話じゃが、空軍も例には漏れぬじゃろう。まともな艦隊が組めるかどうか」 オスマンの言葉に、ホーキンスもうなずく。 「仮に艦隊を編成できたところで、塔に近づくことは難しいでしょう。なぜなら、アルビオン空軍のほぼ全戦力が、 ダートマスやスカパフローといったロンディニウム以西の港に集められ、王都とロンディニウム塔に近づく敵に睨みをきかせているのですから」 「精強を謳われたアルビオン空軍が連合軍の上陸を迎え撃とうともせず、何の動きも見せなかったのは、そういうことだったのですか! 何より大事な拠点である塔を守るため、戦力を温存していたとは」 カステルモールがうなる。 「クロムウェルは最初から、まともに戦をするつもりなどなかったのですね。≪門≫さえあれば、負けることはないのですから」 「なればこそ、≪門≫は消し去らねばならん」 マザリーニが口を開く。 「それも、ごく少数の者たちの、速やかで隠密な行動によってだ。彼らはアルビオンにおもむき、せめぎ合う敵味方数万の軍勢の間をすり抜け、 ロンディニウム塔に忍び込み、装置を破壊する――たやすい事ではないが、なし遂げねばならぬのだ」 「して、その『彼ら』の人選はいかがなさるおつもりで? 戦い慣れた勇敢なメイジのほとんどは今や雲の上 ――アルビオンに出征しておりますぞ。よもや、現地で志願者を募るつもりではありますまいな?」 オスマンの言葉に答える者は誰もいない。 君はテーブルを囲んだ人々の顔をちらちらと見やる。 彼らは全員、目を下に落としたまま押し黙っており、その表情からは深い苦悩がうかがえる。 エレオノールはいらだたしげに眉をひそめ、パリーは物思いに沈んでいるかのようにまぶたを閉じている。 カステルモールとホーキンスの眼には、恐れが見える――このふたりは、敵の暴虐と脅威をまのあたりにしているのだ。 彼ら以上に恐れおののき、絶望の色を隠せずにいるのはアンリエッタ王女だ。 祖国と自身の前途が絶たれたも同然となった今、その胸中はいかばかりだろう。 最後に、隣に座るルイズを見る。 拳の形に握った両手を膝の上に置き、口をぎゅっと引き結んで、アンリエッタの方をじっと見つめている。 大きく息を吸い込み吐き出す動作を、何度か繰り返す。 気になった君が声をかけようとしたとたん、彼女は勢いよく立ち上がり、声を上げる。 「わたしが行きます」と。二〇九へ。 二〇九 君を含め、その場に居る全員が驚きの表情でルイズを見る。 「いや、ラ・ヴァリエール嬢。祖国を思うその気持ちは嬉しいが、この任務は……」 戸惑い顔のマザリーニが言い終わらぬうちに、エレオノールが声を張り上げる。 「何を考えているの、ルイズ! これは遊びじゃないのよ? トリステインの、いいえ、世界の命運が懸かった、とてつもなく危険な任務なのよ! 王国の危急の時に何かをしたいという気持ちはわかるけど、あなたにいったい何ができるというの!」 エレオノールの剣幕にひるんだルイズは、もごもごと口ごもる。 「でも、ねえさま。わたしは……」 「早く座りなさい、ルイズ。誰かをロンディニウム塔へ向かわせねばならないのは確かだけど、それは少なくとも、あなたじゃないわ」 「わたしは……今のわたしは……」 ふたりのやりとりを見るに、この姉妹の上下関係は明らかだ。 ルイズは昔から、母親に似て厳格で妥協を許さぬ性格の姉に、頭が上がらなかったに違いない。 アンリエッタ王女やマザリーニをはじめとした重臣たちの目を気にした様子もなく、エレオノールは非難の声を高めていく。 「まったく、この子ったら戦場をなんだと思っているの。魔法の使えない≪ゼロのルイズ≫が行ったところで、むざむざ死にに行くようなものよ」 ≪ゼロ≫の一言に、ルイズはびくりと体を震わせる。 きっと顔を上げエレオノールを睨むと 「わたしはもう、≪ゼロ≫じゃない!」と叫ぶ。 妹からの思わぬ反撃を受けたエレオノールは、驚きに言葉を失う。四三五へ。 四三五 「わたしは……わたしは、自分の系統に目覚めたわ」 ルイズは懸命に声をしぼり出す。 「わたしには力がある――他の誰にも使えない、わたしだけの力が。これさえあれば、≪門≫を作り出す装置だってきっと……!」 「ルイズ、あなた何を言っているの?」 エレオノールが眉をひそめる。 「ねえさま、実はわたし……」 「いけません、ルイズ・フランソワーズ!」 ルイズの言葉をさえぎり、ぱっと立ち上がったのはアンリエッタだ。 「あのことは忘れると、二度と使いはしないと、わたくしに誓ったではありませんか!」 悲痛な声で訴える王女に向かって、ルイズは 「誓いを破ったことをお許しください、姫さま」と言って頭を下げる。 「でも、わたしは祖国と姫さまのお役に立ちたいのです。長いあいだ≪ゼロ≫だったわたしが今になって力をさずかったのは、 これをもって祖国を救えという神のおぼしめしなのではないでしょうか。トリステイン存亡の時である今、持てる力を隠し続けることは、 裏切りも同然の行いだと思うのです」 熱心に語るルイズに気おされたアンリエッタは、弱々しい口調で言う。 「でも、ルイズ。≪担い手≫であることを明らかにしてしまったら、この先、あなたの人生は平穏とはほど遠いものになってしまうのですよ?」と。 「どうも話が見えんのじゃが」 オスマンがひそひそ声で話しかけてくる。 「≪担い手≫とはいったい? ミス・ヴァリエールは何の系統に目覚めたのかね? もしや、君の故郷の魔法を会得したのではあるまいな?」 君は何も答えないが、心の中では頭を抱えている――『ご主人様』のうかつな言動に。 会ったばかりで信用できるかどうかわからぬ、重臣たちや外国の者たちを前にして、≪虚無≫の秘密を明かそうとしているのだから! 「≪門≫を消し去らないままではどのみち、平穏な暮らしなどありえません。クロムウェルの奴隷としての、 恥辱に満ちた一生が待っているだけです」 ルイズはそう言い切る。 「しかし、ルイズ。なにもあなたが、アルビオンの戦場に向かうことは……」 「いいえ、姫さま。わたしがやるのが、いちばん確実なのです。その装置を壊すためには、警戒厳重な塔に潜入しなければならないのでしょう? でも、わたしなら塔に踏み入ることなく、任務を果たせるはずです――わたしの≪虚無≫の力をもってすれば!」 ルイズはあっさりと秘密を明かした。 君は強情で後先を考えぬ彼女の行動にあきれるが、同時に喜びも感じている。 ルイズは誰よりも責任感が強い。 自分にしかできない事があると思ったなら、危険をかえりみず無鉄砲に動き出すのだ。 彼女が任務に名乗りを上げたのは、自分のことを≪ゼロ≫と呼ぶ者たちを見返してやろうという、名誉への渇望ゆえか ――いや、それだけではない。 両親から受け継いだ貴族としての義務感と高潔さ、そして、姉のカトレアと同じようにすべての生けるものを慈しむ心が、 ルイズを突き動かしているのだ。 彼女は、祖国アナランドを救う任務を買って出た自分とどこか似ている、と君は思う。 どこへ行くのであろうと、この誇り高き『ご主人様』を守ってやらねばと決意する。三五四へ。 三五四 「なんと、≪虚無≫とな!?」 「そんな、まさか! 嘘でしょう?」 ルイズの口から出た≪虚無≫のひとことに真っ先に反応したのは、オスマンとエレオノールだ。 他の者たちは言葉の意味をすぐには理解できず、ただ呆然とするばかりだ。 「本当に≪虚無≫なのかね? いったいいつから……」 「ルイズ、どういうことなの!? 説明しなさい!」 オスマンとエレオノールは口々に質問を浴びせるが、ルイズが答えるより早く 「ふたりとも、静粛に!」と声が響く。 我に返ったマザリーニが、場を収めるべく叫んだのだ。 マザリーニは威厳を正し、ルイズにゆっくりと呼びかける。 「さて、ラ・ヴァリエール嬢。事情を説明してもらえるかね?」と。 ルイズはうなずくと、語りだす。 ≪水のルビー≫を指に嵌めて≪始祖の祈祷書≫に目を通すと、黄変した頁に古代語が浮かび上がったこと。 ≪始祖の祈祷書≫に記された呪文を読み上げると、周囲が光に包まれ、タルブの村を襲った怪物が消し飛んだこと。 そして、ルイズとアンリエッタ王女のあいだで、≪虚無≫に関する事柄を秘密とする約束が取り交わされたこと。 ルイズがこれらの説明を終えると、マザリーニは礼を述べ、着席をうながす。 「アルビオンの軍艦から投下された正体不明の怪物がタルブの村を襲撃し、最後には謎めいた光を発して消滅した、という事件の報告は受けていた」 マザリーニは言う。 「まさかラ・ヴァリエール嬢がその現場に居合わせ、伝説の≪虚無≫の魔法を操って、怪物を倒していたとは……にわかには信じがたい話だが、 どうやら本当のようだな。虚栄心から出た作り話にしてはあまりに途方もないし、従者である君も、その様子を目撃しているのだろう?」 最後の言葉は、君に向けられたものだ。 君がうなずき、女神リブラに誓って真実だと答えると、枢機卿はわずかに眉をひそめる――相手はブリミルを信奉する聖職者なのだから、 『始祖に誓って』と言うべきだった。 マザリーニは君のうかつな言葉を追求しようとはせず、白い髭をなでながらつぶやく。 「始祖が操ったという伝説の魔法の力を得たとなれば……勝てるやもしれん」と。一七四へ。 一七四 「装置を破壊するために、ロンディニウム塔へと潜入する必要はなくなった。離れた場所から≪虚無≫の魔法で吹き飛ばせばよいのだから」 そう語るマザリーニの目には、希望の光が輝いている。 テーブルを囲んだ者たちは一様に半信半疑の表情を浮かべ、ちらちらとルイズのほうを見ているが、 それでも先刻までの重苦しさはいくらかやわらいでいる。 「しかし、ロンディニウム塔へと向かうだけでも、その道のりは困難なものとなりましょう」 ホーキンスが言う。 「カーカバードのけだものどもはアルビオンを席巻し、見つけたものは何であれ奪い、殺そうとします。 ≪門≫による奇襲を受けた連合軍は混乱のきわみにあり、頼りにはなりますまい。誰か優秀な護衛を、 ラ・ヴァリエール嬢につけなければなりません。それも、できるだけ少人数で」 マザリーニはうなずく。 「人数を多くすればそれだけ、敵に見つかるおそれが増すからな。せいぜい四・五人といったところか。しかし、 先ほどオールド・オスマンのお言葉にあった通り、戦いに馴れたメイジのほとんどは戦場にいる。遠方から呼び寄せる時間はない。 そうなると、宮殿の衛士から選ぶか……」 そこまで言ったところで、マザリーニは何かを思いついたような顔つきになる。 「オールド・オスマン。学院の教師には≪トライアングル≫のメイジが揃っていると聞き及んでおりますが、いかがですかな?」 オスマンは困ったような表情を浮かべ 「恥ずかしながら、学院の教師の大半は荒事に不慣れでしてな。何千人もの軍団のうちのひとりとして戦場へ赴くならともかく、 ほんの数人で敵中まっただ中に乗り込めるほど、肝の据わった者はおりませんのじゃ――この私を含めて」と言う。 温和で争いごとを好まぬコルベールはともかく、いつも自分が得意とする≪風≫の系統こそ最強と吹聴していたギトーも、 あまり頼りにはならぬらしい。 「君ももちろん、ラ・ヴァリエール嬢とともにアルビオンへ向かうのだろうな?」 マザリーニの問いに、君はそのつもりだと答える。 「お待ちください、猊下。人数が限られているというのに、この平民を加えるのですか?」 そう言って傲然と君を見つめるのは、ホーキンス将軍だ。 彼は、君が魔法使いだとは知らぬのだ。 カステルモールも将軍に同調し、 「この任務に必要なのは、優れたメイジです。平民など連れていったところで、足手まといになるだけでしょう。 起死回生の計画を失敗させるおつもりですか」と言う。 君はどうする? 君が魔法使いであることを知っている者が説明してくれるのを待つか(四四一へ)? ホーキンスとカステルモールに挑戦的な言葉を浴びせるか(三五〇へ)? それとも術を使うか? GAK・七四六へ SUS・七七二へ FAL・六八五へ TOG・七六〇へ GOD・六二〇へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7919.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 四四一 「そのお方はただの平民ではございません」 何も言わぬ君に助け舟を出したのは、ウェールズ皇太子の老侍従パリーだ。 「二月ほど前、ニューカッスルの城で国王陛下が暗殺されたおり、卑劣な≪レコン・キスタ≫の殺し屋の魔手は、皇太子殿下にも伸びました。 しかし、その邪悪な企てを身を呈して喰い止めた者がいました。そう、そのお方です。皇太子殿下のお命を救った、 テューダー王家の大恩人に対するゆえなき非礼は、お控え願いたい」 パリーが強い調子で言うと、ホーキンスとカステルモールは頭を下げて黙り込むが、ふたりの表情からは、いまだ納得がいかぬ様子がうかがえる。 次に、オスマンが口を開く。 「それに、彼はここにおる誰よりも、カーカバードとかの国に住まう者どもの事を知っておる」 老魔法使いがそう言うと、ルイズとパリーを除いた一同は驚きの表情を浮かべる。 「とは言っても、カーカバードを自ら訪れた事があるわけではなく、悪党どもの悪い噂が君の故郷まではるばる伝わっておるだけ ……確かそういう話じゃったな、のう?」 とっさにオスマンに話を合わせ、その通りだと言う。 彼は君のためを思って嘘をついたのだろう。 君がカーカバードと深い関わりを持つことを知られては、人々の無用な疑いを招くかもしれぬと考えたのだ。 君が魔法使いである事を明らかにしようとせぬのも、同じような配慮があってのことに違いない。三五〇へ。 三五〇 「アルビオンへ向かうのは、≪虚無≫の担い手たるラ・ヴァリエール嬢とその従者、そして二・三名の護衛となる」 マザリーニは重々しく語る。 「護衛の者たちは、適当と思われる者を選んでおこう。一行は、遅くとも明日の日没までには出発せねばならん。 それ以上の遅延は許されない。七日の期限の間に≪門≫の脅威を取り除かねば、トリステインは破滅の瀬戸際に立たされることとなるだろう」 そう言って嘆息し、 「会議はこれにて終了とする」と告げる。 十人近くいた出席者たちの多くは退出し――そのほとんどの者が、ルイズに疑いと不安の入り混じった一瞥を与えてから出て行った―― いまだに部屋に残っているのは、君とルイズ、オスマン学院長、パリー、そしてアンリエッタ王女だけだ。 ルイズは気まずそうな表情を浮かべつつ、椅子に座ったままうつむいているアンリエッタに近づく。 「姫さま……」 王女はルイズの呼びかけに応えず、その顔を上げようともしない。 「どうかお許しください。わたしは……わたしは、ああせずにはいられなかったのです。たとえ誓いを破った不忠者となじられようとも、 自分が信じるもの、愛するもののために≪虚無≫を使わなければ、この先ずっと後悔することになると思ったのです」 「不忠者だなんて、そんな!」 そう言ってアンリエッタは顔を上げるが、泉のように澄んだ青い瞳には、涙を湛えている。 「ルイズ、あなたは今までもこれからも、わたくしの最愛のお友達……だからこそ、あなたを危険にはさらしたくなかったのです。 ≪虚無≫の秘密をずっと守り続け、野蛮な戦場になど近づいてほしくはなかったのに……ああ、それなのにあなたは!」 そう言うと立ち上がり、ルイズを抱きしめる。 「……本当によいのですか? 祖国とわたくしたちのために、我が身を犠牲にするというのですか、ルイズ?」 涙まじりの問いかけに、ルイズはきっぱりと答える。 「はい、姫さま。今こそ、力ある者の務めを、貴族としての責務を果たすべき時だと……わたしはそう考えます。それに、 わたしは『犠牲』にはなりません。必ず任務を果たし、変わらぬ姿を姫さまのお目におかけします」と。 君はルイズの堂々とした態度を目にして、『ご主人様』はこの数ヶ月でずいぶん変わったものだ、と感慨を抱く――後先を考えぬ無謀なところは、 出会ったときそのままだが。五三九へ。 五三九 ルイズとアンリエッタの会話に耳をそば立てていた君に、近づく者がある。 「ウェールズ殿下より伝言がございます」 そう言って進み出てきたのは、パリーだ。 「殿下はこう申されました。『私は君の勧めに従って落ち延び、なりふり構わずあがいてきたが力及ばず、クロムウェルを止められなかった。 奴はアルビオンだけでなく、この世界のすべてを死と恐怖で支配しようとしている。友よ、どうかもう一度だけ、 君の持つ異国の叡智と未知なる魔法で、私を助けてほしい』と」 君は老貴族にねぎらいの言葉をかけ、先刻マザリーニが言ったとおり、明日にはアルビオンへ向かうと告げる。 伝言の悲壮な調子からすると、ウェールズはリュティスが襲撃を受ける前から≪門≫の脅威を知っていたらしい。 そのことをパリーに尋ねると、 「クロムウェルはカーカバードの軍が増えるにつれて、内乱で活躍した側近や将軍たちを冷遇していったと聞いております。 どうやら彼は、王党派であると貴族派であるとを問わず、どの貴族も最初から信用していなかったようなのです。 そのため、王党派にくみする内通者は数を増し、我々は多くの情報を得ることができました。≪門≫に関する情報も、 そうやって手に入れたのです」という答えが返ってくる。 君は次に、何より気がかりだったことを訊く――ウェールズは無事か、また、王党派はなぜ連合軍に合流しようとしなかったのか、と。 「殿下はご無事です」 パリーは微笑む。 「少々お疲れのご様子ではありましたが、心身ともに壮健であらせられます。あなたがたがニューカッスルを発った直後から ≪レコン・キスタ≫の攻撃は本格的なものになり、我々王党派は城を捨てました。その日以来、少人数に分かれて森に潜み、 抵抗を続けております。蛮族や亜人など、カーカバードからの兵は日を追うごとに増えており、敵はその有り余る兵力をもって、 我らを狩り出そうとしていますが、愚鈍なけだものどもを相手に後れをとるような殿下ではございません。それと、 二つめのご質問についてですが……」 そこで少し、困ったような表情を浮かべる。 「我々はガリア軍の前に姿を現し、彼らにアルビオン王位の正統たる継承者、ウェールズ殿下の保護を求めるつもりでした。しかし、 ほかならぬ殿下ご自身が、それに反対なさったのです――ガリアは信用できない、合流するのならトリステイン軍のほうが良い、と。 殿下がなぜそのようなお考えにいたられたのか、このわたくしめには分かりかねます。殿下も理由を明かそうとはいたしませんでした。 ともかく、そういった事情があったために我々は≪レコン・キスタ≫、カーカバード、ガリアの三者の目を避けながら、這うようにゆっくりと、 トリステイン軍の占領する地域へと移動していったのです。その途中で、≪門≫を使った恐るべき計画の情報を得ました。 わたくしは、警告のための特使としてトリステインへと遣わされたのですが……間に合いませんでした」 ウェールズはなぜ、ガリア軍から逃げ隠れていたのだろう? 「ガリアを中心とした連合軍がアルビオンに上陸し、各地で快進撃を重ねているとの報せを受けたときは、救われたと思ったものです。 それがまさか、このようなことになろうとは」 パリーは悲痛な表情を浮かべる。 君は、自分たちにまかせておけばよいと言って、彼を安心させようとする。 ルイズの≪虚無≫の力をもってすれば、≪門≫などすぐに片付けられると。五九へ。 五九 君とルイズ、オスマンの三人を乗せた馬車は、学院へと向かう。 馬の足並みは行きとはうってかわって緩やかなものであり、揺れも気にはならない。 馬車の内側は、奇妙な静けさに充ちている。 ルイズはうつむいて何かを考え込んでいる。 オスマンは沈思黙考しているのか、それとも眠っているだけか、目を閉じて黙り込み、動きを見せない。 最初に沈黙を破ったのは君だ。 隣に座るルイズに尋ねる――姫君は何と言っていたのか、と。 「姫さまは任務の成功を祈ってくださったわ」 ルイズは顔を上げて答える。 「明日は、ラ・ロシェールの港までわたしたちを見送りに来てくださるそうよ。もちろんお忍びでだけど、なんにしても身に余る光栄だわ」 ルイズの口調は明るいが、わざとそう振舞っているように見える。 君たちは明日の深夜、空飛ぶ船に乗ってアルビオンへ向かうこととなった。 竜やグリフォンといった翼をもつ怪物のほうが船より速いのだが、天高く漂うアルビオンまで飛び続けるのは、怪物だけではなく 乗り手の体力をも奪うため、今回は見送られた。 任務を成功させるためには、すべてが万全の状態で『白の国』に降り立たねばならぬのだ。 「あと、姫さまはこうもおっしゃっていたわ。『あなたの代わりに、わたくしが≪虚無≫の担い手だったらよかったのに。 もしそうなら、わたくし自身でウェールズさまをお助けさしあげることができたのに』って。……姫さま、おかわいそう。 この厄介ごとが全部片付いて平和が戻ったら、姫さまとウェールズ殿下は、またお会いできるようになるわよね?」 君は曖昧にうなずく。 今のルイズの言葉は不用意なものだ――アンリエッタとウェールズの関係は、君たちを含めごく一部の者たちしか知らぬ秘密なのだから。 君たちの向かいの席に座ったオスマンは、相変わらず動かず、何の反応も見せない。 二つの王国の王子と王女が互いに愛しあっていることを知っているのか、そのような事ではいちいち騒がぬのか、 それともただ眠っているだけか。 今度はルイズが話しかけてくる。 「姫さまはわたしを許してくださったけど、ねえさまは……エレオノールねえさまは、わたしに何も言わずに部屋を出ていっちゃった」 そう語るルイズの表情は、寂しげなものだ。 「いつものねえさまなら、かんかんになるはずなのに。≪虚無≫に目覚めたのを隠していたこと、危険な任務に勝手に志願したことで、 さんざん叱られると思ったのに。わたし、愛想を尽かされちゃったのかしら?」 「そのようなことはあるまい」 だしぬけに響いた一言に驚き、君とルイズはぱっと声の主のほうを振り向く。 見れば、いつのまにか目を開けていたオスマンが、屈託ない笑みを浮かべている。 「姉上は、あの場に居た誰よりも君のことを心配しておったぞ、ミス・ヴァリエール」とオスマンは言う。 「で、でも、オールド・オスマン……」 「部屋を出て行く時の表情を見れば見当がつくわい。可愛い妹のことが心配で心配でたまらぬが、その思いを面と向かって伝えられるほど 素直にはなれん――どこかの誰かさんとそっくりじゃな」 そう言われると、ルイズは顔を赤くしてうろたえる。 「な、何のことですか! からかわないでください!」 「とにかく、姉上のことは心配いらぬじゃろう。事を成し遂げて帰ってきてから、たっぷり叱られることになるかもしれんがな」 「はい……」 ルイズは安堵したような笑みを浮かべる。一八三へ。 一八三 オスマンは話題を変える。 「この歳まで生きておると、世の中に目新しいこと、驚かされるようなことは何ひとつなくなってしまう……そう思っておったが」 そう言って嘆息を漏らす。 「今日の会議では驚かされてばかりじゃったな。グラン・トロワの炎上、≪門≫の脅威、カーカバードからの侵攻。なかでも一番の驚きは、 ミス・ヴァリエールが≪虚無≫の使い手だったことじゃ」 オスマンはじっとルイズを見つめる。 その視線に恐縮したルイズはぺこりと頭を下げ、 「あの、オールド・オスマン……今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」と詫びる。 「顔を上げなさい、ミス・ヴァリエール」 オスマンはやさしい声で言う。 「≪虚無≫は伝説の系統じゃ。事があまりに重大すぎるがゆえに、家族にさえ隠しておったのじゃろう? そのことを責めようとは思わんよ。 むしろ、責められるべきは我ら教師たちじゃ。君が魔法を使えぬ理由を深く考えようともせず、放ったらかしにし、生徒の才能を見過ごしておった。 まったく、教育者にあるまじき怠慢じゃ。どうか許してほしい、ミス・ヴァリエール」 今度はオスマンが頭を下げる。 「お、オールド・オスマン、そんな! 謝ることはありません!」 ルイズは慌てる。 「わたしの系統が≪虚無≫だなんて、気づけというほうが無理です! 誰にもそんなことはできなかったでしょう。 だって、≪虚無≫に関しては何の伝承も残されていなかったのですから」 君も口を差し挟み、ルイズの言葉に付け加える。 悪いのは、≪虚無≫の担い手を見分けるすべを後世に残さなかった、間抜けな始祖ブリミルだ、と。 「あ、あんたねえ! 何てこと言うの! 不信心にもほどがあるわよ!」 「これこれ。間違っても王宮の重臣たちの前では、そのような事は言わんでくれよ」 ふたりはそれぞれの言い方で君をたしなめる。 話をしているうちに馬車は学院に着き、君たちはオスマンと別れ、寄宿舎へと戻る。 とうに消灯の時間は過ぎており、ルイズは、明日に備えてすみやかに床に就くべきだと主張する。 たしかに彼女の言うとおりだ。 壮麗だが居心地の悪い王宮で、長い会議につきあわされたため、今の君はへとへとに疲れている。 だが、眠る前に何かルイズに話しかけてみようかという考えも浮かぶ。 うかつに≪虚無≫について明らかにしたことを非難し、注意をうながすか(一五三へ)? 危険な任務へと向かうにあたっての覚悟を問いただすか(二八三へ)? それとも、余計な話はせず眠ることにするか(二〇四へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2623.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 三 ルイズは君を≪使い魔≫として召喚したことから話しはじめ、その≪使い魔≫が実は、ハルケギニアとは異なった世界の人間だったのだと語る。 普通ならば一笑に付すような内容だろうが、ウェールズは話に夢中になり、ときどき短い質問を挟みながら耳を傾ける。 君は祖国のために一刻も早くカーカバードに戻らねばならぬ立場にあり、ルイズとオスマン学院長も君の送還のために尽力していることを知ると 、ウェールズは深く同情の意を示す。 オスマンに、彼の旧友リビングストン男爵が≪門≫を作り出す魔法を研究していることを教えてもらった君たちは、 男爵の協力を得るためこのアルビオンの地までやってきたのだが、目的の人物の死を知らされたいま、旅は不本意な結末に終わろうとしているのだと言って、 ルイズは話を締めくくる。 「人間が使い魔というだけでも珍しいが、それが夜空にかかる月の数さえ違う遥かな異国の、重大な任を帯びたメイジ殿だとはな。 近頃はさても奇妙なことの多いことよ」とウェールズは言う。 「男爵のことは残念だが、もはやどうしようもない」 ウェールズは続ける。 「男爵が我が方に参陣するためニューカッスルの城に来たのは一月ほど前のことだったが、私はその頃、軍艦の指揮をとっていたので、 彼に直接会ったことはない。後に聞いた話では、男爵はほんの数名の従者だけを引き連れた、尾羽打ち枯らした風情だったという。 彼はあらためて国王陛下に対する忠誠と、すべてを奪った貴族派に対する復讐を誓ったのだが、三日ほど後の小競り合いで生け捕りにされてしまったそうだ。 彼はその日のうちに殺され、城壁から吊るされて晒された。首から名を示す札を提げたその遺体は、焼かれ、切り刻まれ、 誰との見分けもつかぬひどい有様だったという」 ウェールズは君が絶望に沈んでいるのを見て取り、すまないと頭を下げる。 「我らアルビオン王家の無為無策が、この醜い内乱を、かかる惨事を招いたのだ。リビングストン男爵も、朝に君たちと出会ったゴーツウッド村の人々も、 内乱勃発以来の数え切れぬほどの死者も、すべては我らの無能がゆえに死んでいった。そして今度は、使い魔殿を帰還させる望みの綱まで 断ち切ってしまったのだ」と悲痛な表情でウェールズは言う。 君は、まだ望みはあるかもしれぬとウェールズに言い、リビングストン男爵の遺品かなにかは残っておらぬかと尋ねる。 ≪門≫を作り出す魔法に関する覚え書きでもあれば、しめたものだ。 「ニューカッスルの城に、親類縁者のない戦死者の遺品を収めた倉庫がある」 ウェールズは言う。 「収められた品々はたいした量ではないはずだから、探せば簡単に見つかるだろう。ちょうど私たちもあの城に帰還し、陛下に状況の報告をするところだったのだ。一緒に来てもらえるかな?」 ウェールズの言葉に一縷の希望を見出した君は、すぐさま同意する。 「ま、また私を無視して話を進めてー!」 ルイズが抗議の声をあげるが、彼女もこの申し出に反対する理由はない。 話を終えた君たちはギーシュと十人ほどの兵士を連れ、岩屋を出てニューカッスルの城へと向かうことにする。八へ。 八 鬱蒼とした森の中を東へと歩いていくうち徐々に木立ちはまばらになり、やがて君たちは小高い丘の上に立つ。 そこからはおぼろげだが、高い尖塔を備えた城の影が見える。 「あれがニューカッスルの城だ。我ら王党派が維持している城砦のなかでは最大のものだよ」城を指差してウェールズは言う。 「この辺りは反乱軍の支配地域ゆえ、敵中を突破して門から堂々と入城することはかなわぬが、この近くに我らしか知らぬ秘密の抜け道がある。案内しよう」 ニューカッスルの城へと続く秘密の抜け道は、岩地の崖に巧妙に隠されている。 大岩のひとつの前に立ったウェールズがなにごとか呪文めいた言葉をつぶやくと、岩は内開きの扉のように動き、洞窟の入り口が現れる。 ウェールズが先頭に立って洞窟の中に脚を踏み入れ、護衛の兵士たち、ルイズとギーシュが後に続く。 最後に洞窟に踏み込もうとした君がなにげなく背後を振り返ってみると、視界の端を小さな赤い蛇が横切り、そのまま岩陰に姿を消す。 以前にどこかで見たような気もするが、いまひとつ判然としない。扉を閉じるのを待つように言って、蛇を追いかけるか(九六へ)? かまわず先を急ぐか(一〇八へ)? 九六 蛇の後を追おうとするが、すでに赤い姿はどこにも見えなくなっている。 「なにしてんの、早く来なさいよ!」とルイズに言われ、 君は急いで洞窟の入り口へと引き返す。 すぐに岩が閉じられるが、その直前に小さな赤い蛇が素早く洞窟の中へと這いこんだことには、誰も気づかない。一〇八へ。 一〇八 君たちは暗闇の中、数本の松明の明かりを頼りに単調な一本道を進む。 声が大きく反響するため、誰も口をきこうとしない。 坂道や曲がり角を除けば通路の途中にはなにもなく、時間の感覚が怪しげなものになりつつある。 そろそろ夕暮れどきだろうと君が考えたそのとき、前方に光が見えてくる。 先頭を進んでいたウェールズは振り返ると 「ニューカッスルへようこそ。諸君、ここが我らの秘密の船着き場だ」と君たちに言う。 そこは地下に設けられた広大な空間であり、舷側からいくつもの大砲を突き出した軍艦を含む数隻の空飛ぶ船が、 太いもやい綱で岩壁に係留されており、その周囲で船員や水兵が忙しげに動き回っている。 洞窟を煌々と照らす光の源は炎ではなく、白く発光する奇妙な苔の一種だ。 「殿下、ご無事にお戻りでなによりです」 杖をついた長身の老貴族がウェールズを出迎えに現れる。 「城中に変わりはございません……いや、トリステインよりの大使を名乗る貴族の方がおひとり、先ほどお着きです。 なにやら殿下への密書を言付かって参ったとか。して、そちらのお方たちは?」 老貴族が怪訝な表情をする。 戦場から、小奇麗な服装の貴族らしき少年少女と、剣を吊るした平民の旅人を連れて戻ってきたのだから、妙に思うのも無理はない。 「この者たちは私の客人だ。戦死したリビングストン男爵に縁(ゆかり)の者だそうだ」 ウェールズがルイズとギーシュを紹介(例によって君の紹介は省かれる)すると、老貴族はかしこまって、皇太子の侍従をつとめるパリーだと名乗る。 ウェールズはトリステインからの大使と会見すると言って君たちと別れたので、君たち三人はパリーの案内で城の倉庫へと向かうことにする。 目的はリビングストン男爵の遺品だ。 君たちは倉庫として使われている埃っぽい半地下の一室で、がらくたの山を掻き分ける。 錆付いた剣、折れた杖、もとは美しかったであろう虫食いだらけのタペストリー……がらくたの大半は、戦死者の遺品ですらない。 数十分後、「あったぁ!」とルイズが叫びをあげる。 「見て、見て! 男爵の日記よ!」 嬉々とした声でそう言いながら、革装丁の本を開く。 「その本にトリステインの命運を左右する、重大な記述があるのかい?」 ギーシュも興味津々といった面持ちで日記をのぞきこむ。 この世界の文字が理解できぬ君は、日記の内容を読み上げてくれとルイズに頼む。 日記の内容は≪門≫を作り出す魔法に関する事柄ばかりで、世間の出来事、家族や領地経営に関する記述はいっさい存在しない。 男爵はその人生のすべてをかけて、まったく新しい魔法を生み出そうとしていたのだろう。 しかし落胆したことに、その日記には≪門≫を作り出す具体的な方法についてはまったく触れられていない! どの日付の内容を読んでも、現れた≪門≫があっというまに消失してしまうことについての泣き言や、研究資金の不足に対する愚痴が書き連ねられているだけなのだ。 ただ、屋敷が反乱軍の焼打ちにあう直前の頁には奇妙な記述が見られる。 男爵はなんとも異様かつ鮮明な夢を見たらしく、その内容が詳細に記されているのだ。 背中が曲がり脚はひどいがにまた、大きさの合わぬ薄汚れた服に身を包み、ざんばら髪を振り乱した不気味な男が男爵の前に現れ、こう言った。 『隔てる壁に何度も穴を開けたのはきさまか』 わけがわからず呆然とする男爵に、男は言葉を続ける。 『ああ、最初から穴を開けるつもりではなかったのだな? 偶然とはいえ、神ならぬ身でこれだけのことをしでかすとはたいしたものだ。 それに、きさまのおかげで私は新たな遊び場所を見出せたのだから、礼をしなければならぬな』と。 男は狂人めいたぎらぎらと光る眼で男爵を睨むとにっと笑い 『礼として、ひとつ予言を下しておこう。きさまの研究は成功する。それは、この世界を一変させるだろう。しかし、きさまが栄光を得ることはない。 それどころか、死するまで悔やみ続けることになるだろう』と言うと、 男はそのまま煙のように消えうせた。 君もルイズもギーシュも、夢の示す事柄が理解できずに首をひねる。 いまだハルケギニアの各所をつなぐ≪門≫など存在せぬうえ、『死するまで悔や』むもなにも、男爵はこの夢の数日後に殺されているではないか! とりあえず日記を持ってこの部屋を出ていくことにするが、行きがけの駄賃として部屋の隅で見つけた、糊の入った小瓶と砂の入った袋を持っていってもよい。一三〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7829.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 七五七 体力点一を失う。 布製の縁なし帽は持っているか? なければこの術は効かず、君はあきらめてジョンストンの話に集中することに決める。三三九へ。 縁なし帽を持っているなら、頭にかぶって術を使え。 君は、カルトゥームと呼ばれた黒髭の男に注意を向ける。 男はマザリーニをはじめとした周囲の人々の態度を、奇妙なものだととらえていることがわかる。 たいして珍しくもないゾンビーを見て恐れおののくさまは、滑稽でさえあると考えている――やはりド・ポワチエ将軍の死体は黒魔術で動いており、 ≪虚無≫の力がどうこうというジョンストンの言葉は嘘なのだ。 また、男はジョンストンのまわりくどいやり方にうんざりしている。 彼としては、できるなら、≪門≫の向こうに控えた軍団をこの場になだれ込ませて一息に決着をつけてしまいたいのだが、 そうもいかぬ事情がある。 昨夜の戦いで失った兵があまりに多かった――カステルモールとその仲間たちは獅子奮迅の働きを見せたのだろう――ため、 強引な攻撃はしばらく控えねばならぬのだ。 しかし、七日も経てば充分な数の増援がやって来る手筈となっている。 それまでにトリステイン宮廷が要求を受け入れていればよし、さもなくば…… そこまで思考を読み取ったところで、術の効果は消える。一八八へ。 一八八 話を終えたジョンストンは最後に一言、 「これにて失礼いたしますぞ枢機卿猊下、それにド・ポワチエ将軍も!」と言い残すと踵を返し、 逃げるような足取りで≪門≫へと飛び込む。 ジョンストンの姿が鏡のように滑らかな≪門≫の中へと消えると、周囲の人々のあいだから驚愕のざわめきが巻き起こる。 残された五人もその後を追って姿を消し、全員の姿を飲み込んだ≪門≫もまた、一瞬の閃光とともに跡形もなく消えうせる。 後に残されたのは君とマザリーニ枢機卿、宮殿勤めの者たち、そして立ちつくす一体のゾンビーだ。 力なくうなだれているマザリーニに声をかけると、彼は顔を上げ、 「ド・ポワチエ将軍が……どうすればいい? このようなおぞましい所業が、始祖の使った≪虚無≫の力によるものだとは信じられん。 君は何か知っているのか?」と混乱した様子を見せる。 君は説明する。 これはゾンビーという≪不死≫であり、ありふれた妖術の産物にすぎない――ジョンストンの言葉はでたらめだ、と。 「君は連中のやり口を知っているようだな。カーカバード国の輩のことを」 いくらか落ち着きを取り戻したマザリーニは、もの問いたげな目で君を見つめる。 「しかし、詳しい話は後だ。今は、この魔法を解かねばならん。どうすれば、彼の魂は救われるのだ?」 君は、特別なやり方は必要としない、ただゾンビーの肉体を破壊すればよいだけだ、と答える。 剣で斬るなり魔法で焼くなりすれば、屍を操る術の効果は失われるのだ。 それを聞いたマザリーニは杖を拾い上げ、ド・ポワチエ将軍のゾンビーに近づくが、ためらいの色を隠せずにいる。 痛みを感じぬ死体にすぎぬとはいえ、見知った相手の体を傷つけるのには抵抗があるのだろう。 それに、枢機卿という高位の聖職に就いている彼は、こういった荒っぽい行いには不慣れに違いない。 替わろうかと申し出ると、マザリーニはかぶりを振る。 「いや、これは誰かに任せるわけにはいかん。将軍がこのような姿に変わり果てた責任は、この私にある。私が彼を、アルビオンへと 送り出したのだから。それに、始祖に魂の救済を祈るのは、聖職者たる者の務めだ」 そう言うと杖を構え、祈りの言葉をつぶやく。 「始祖よ。願わくばこの哀れな者の魂に、安らぎを与えたまえ。この者の魂が天上への道に迷わぬよう、導きたまえ…… 」 次に呪文の詠唱がはじまると、杖は青い光に包まれる。 ド・ポワチエ将軍はあいかわらずうつろな表情で、ぼうっと立ち尽くしたままだ。 何の命令も与えられておらぬゾンビーができる事といえば、その場で朽ち果てることだけなのだから。 「……許してくれ、将軍」 マザリーニは悲痛な面持ちで、杖を突き出す。三七八へ。 三七八 ゾンビーの始末をつけたマザリーニと君は、会議に使っていた部屋へと戻るが、その途中で枢機卿が口を開く。 「ジョンストンの口から出た条件は、過酷なものだった」 そう語る声は、苦悩と嫌悪に充ちている。 「一つ、トリステイン王国は二度と神聖アルビオン共和国を攻撃せぬと誓約をなすこと。一つ、その保証として、太后陛下と姫殿下の身柄を 差し出すこと。一つ、アルビオン遠征軍に対してすみやかなる戦闘の停止を命じ、また、遠征軍はすべての杖と武器、竜や馬などの騎獣、 そして艦船をアルビオン軍に引き渡すこと……」 マザリーニの顔が、怒りにゆがむ。 「なんという厚顔無恥な要求を!」と吐き捨てるように言う。 「条件を呑めば、トリステインはたちまちアルビオンの属領となってしまうだろう。すべての王家を打ち滅ぼしハルケギニアを一つにすることこそが、 彼ら≪レコン・キスタ≫の目的なのだから。太后陛下と姫殿下を人質として差し出すなど、言語道断だ」と言う。 君は、それでは徹底抗戦するつもりなのか、と尋ねる。 マザリーニはうなずく。 「仮に私がクロムウェルの要求を受け入れたところで、国内の諸侯は誰ひとり従うまい。彼らは王国を売った逆賊『鳥の骨』を殺し、 太后陛下たちの身柄を奪い返そうとすることだろう。トリステインに反抗の意図ありと知ったクロムウェルは、≪門≫を開き、 そこからアルビオンとカーカバードの大軍勢が現れる。敵はトリスタニアを、いや、王国全土を火の海に変える。それならば、 闘うほうがまだましだ……望みが皆無というわけではない」 望みといっても、敵に≪門≫がある限り絶対に勝ち目はない、と君は言う――風大蛇が言っていたとおり、城壁も軍勢もまったく無意味なものと なってしまうのだから。 「そう、≪門≫こそが我らにとっての最大の脅威だ。つまり、あの魔法兵器さえどうにかしてしまえば、まだ打つ手はあるということだ」 マザリーニの言葉に驚いた君は、黙り込む。 彼は、≪門≫がどのようにして作り出されているのかを知っているのだろうか? 四一三へ。 四一三 会議室に戻った君とマザリーニを迎える人々の面持ちは、前にもまして陰鬱なものだ。 エレオノールの口から事情を聞かされたのだろう、ルイズの表情は硬くこわばり、オスマンの眉間には深々とした皺が刻まれている。 エレオノールの険しい視線が突き刺さるなか、君は何気ない風をよそおって席につく。 ルイズが眉をひそめる。 「あんたねえ、あんまり勝手なことしないでよ。あとで姉さまに叱られるのは、わたしなんだから」 君はルイズに軽く詫び、収穫は乏しい、と言う。 クロムウェルが手を結んだ相手が、本当にカーカバードの者たちかどうかはわからぬが、≪タイタン≫からの来訪者であることは間違いない、 と伝える。 また、≪門≫は見たこともない物であり、ハルケギニアはもちろん、≪タイタン≫においても未知の魔法の産物に違いないと言う。 「≪タイタン≫って確か、あんたのもと居た世界よね。月が一つしかないっていう。敵の要求については聞いた?」 君がうなずき、ひどい話だと漏らすと、ルイズは力なくうつむく。 「いったい、トリステインはどうなっちゃうの?」と口ごもる。 「要求を受け入れれば姫殿下たちは連れ去られ、王国は滅びる。拒めば敵がやって来て、カステルモール卿がお話ししていたようなことが…… みんな……死んじゃうかもしれないなんて……」 なかばひとりごちるようにそう言うルイズの顔は、真っ青だ――部屋の片隅で暗い表情を浮かべるアンリエッタ王女と同じように。 「……シティオブサウスゴータの司令部が≪門≫を使った奇襲を受け、司令官のド・ポワチエ将軍は……戦死をとげた。 遠征軍は混乱に見舞われている。ガリア軍が同様の攻撃を受けたかは不明だが、どちらにせよリュティスを襲った惨事の報せが届けば、 士気は砕かれ、連合軍は崩壊するだろう。クロムウェルの操る魔法兵器の恐ろしさと、その威力を楯にした傲慢な要求については、 ここにいる皆が理解した事と思う」 議長役を務めるマザリーニが、その痩身から声をしぼり出す。 「クロムウェルの卑劣な恫喝に屈して、太后陛下と姫殿下を差し出し、さらにはトリステインそのものを明け渡すなど論外だ」 その言葉に、アンリエッタは身じろぎする。 「かと言って、兵をかき集めて抵抗しようにも、王国軍の大半はアルビオン大陸に居る。いや、十万の増援を得たところで、 ≪門≫の前には無力だ。リュティスの惨劇が繰り返されるだけとなろう」 今度はカステルモールがびくりと肩を震わせる。 「ラ・ヴァリエール嬢。王立魔法研究所の研究員として、≪門≫について何か思うところはないかね?」 マザリーニに水を向けられ、エレオノールは答える。 「これは、我々の常識をはるかに超えた出来事です」と。 「敵の兵器はおそらく、≪サモン・サーヴァント≫の魔法で現れる≪召喚の門≫をもとに作り出されたのでしょう。 しかし、≪サモン・サーヴァント≫のような≪コモン・マジック≫を改良したり、発展させて新しい魔法を作ったなどという話は、 聞いた事もありません。どの系統にも属さない≪コモン・マジック≫の仕組みが謎に包まれているのは確かですが、 始祖ブリミル降臨より六千年、誰もそれを解き明かそうとはしませんでした。使い魔をもたないメイジが ≪サモン・サーヴァント≫の呪文を唱えると≪召喚の門≫が現れるのは、朝になれば陽が昇るのと同じくらい当然のことでしたから」と答える。 君は内心で悪態をつく――王立魔法研究所とは、たいそうな名前のわりに役に立たぬ所なのだな、と。 「じゃが、≪コモン・マジック≫を研究したメイジが、ひとりもおらぬというわけではなかった」 そう言ったのはオスマン学院長だ。 「我が旧友、アルビオンの貴族リビングストン男爵は、≪サモン・サーヴァント≫を応用して世界中をつなぐ≪門≫を作り出す魔法を、 研究しておった。実際に≪門≫は彼の前に現れたが、すぐに消えてしまう不安定なものだったそうじゃ」 「おお、≪門≫について何かをご存じなのですか? さすがはオールド・オスマン。お呼び立てしたかいがあったというものです」 マザリーニの歓喜と賞賛の言葉をさえぎり、オスマンは言う。 「ぬか喜びさせるようですまんのですが、私の知っていることはそれだけですぞ、枢機卿。男爵は研究の詳しい内容を誰にも伝えぬまま、 ≪レコン・キスタ≫に殺されたそうじゃ」 オスマンは横目で君とルイズををちらりと見る。 「それが、クロムウェルの作り出した≪門≫と関係があるのかどうかさえ、わからぬままです。恥ずかしながらこの件に関しては、 私は何のお役に立てそうにもありませんわい」 そう言うと、オスマンは深く溜息をつく。五二二へ。 五二二 マザリーニは重々しく語る。 「これではっきりとした――我らには、敵と同じような≪門≫を作り出すのも、≪門≫の出現を阻むのも、不可能な事が。そのような魔法は、 トリステイン最高の賢人にも、王立魔法研究所にも、理解の埒外にあるのだ」 それを聞いたエレオノールは、 「しかし、枢機卿猊下。一介の地方貴族にできた事です。『アカデミー』が総力を傾ければ、≪門≫について何かを解明することも……」と、 口を挟む。 「もはや手遅れだ、ラ・ヴァリエール嬢。我らに残された時間は、あと七日しかない。それまでに手を打たねばならん」 マザリーニは意を決した口調で言う。 「ことここにいたって我らのとるべき行動は、守りを固め、座して敵を待つことではない。逆に奴らの懐に飛び込んで、 ≪門≫をこの世から消し去ることだ――永遠に!」 アルビオンから来たホーキンス将軍を除いた全員が、驚きのあまり言葉を失い、信じられぬといった表情を枢機卿に向ける。 最初に我を取り戻したのはオスマンだ。 「どうすれば≪門≫を消せるのかをご存じのようですな、枢機卿」 マザリーニはうなずく。 「ホーキンス将軍は、多くの重要な情報と、わずかな望みをもたらしてくれた。実質的にアルビオン陸軍を束ねていた将軍は、 クロムウェルの秘密兵器についても多くの事を知っているのだ。将軍、続きを話していただけますかな。≪門≫について知っていることを、 何もかも」 「承知いたしました」 ホーキンスが立ち上がる。 彼は背が高く、軍団を率いるにふさわしい威厳をもつ男だ。 「おおせの通りにいたしましょう。お集まりの諸卿の中には、アルビオン王家に対する裏切り者であるこのわたしを、 信用に値せぬ輩とみなしておられるお方もおいででしょう」 ホーキンスはパリーを、ついでルイズをちらりと見る。 「しかし、わたしがこれから話す事は始祖に誓って真実です。今は遺恨を忘れて、わたしの話に耳を傾けてくださるようお願いします」 「手についた王族の血も乾かぬうちに、新しい主人さえ裏切るとは。はたして、始祖への誓いも信用してよいものやら」 重臣のひとりが小声で皮肉を漏らす。 その目には疑いと軽蔑の色が浮かんでいる。 「慎みたまえ、今はそのような事を言っている場合ではない!」 咎めるマザリーニに向かって、ホーキンスが言う。 「いや、卿の言うとおりです。わたしは裏切りに裏切りを重ねた卑劣な男です。王家を見捨てた罰はいかようにも受けましょう。 しかし、今だけはわたしを信用していただきたい」と。 そして、穏やかだが決然とした目つきで、その場にいる全員の顔を見回す。 「今はクロムウェルを止めることが先決です。このままでは大陸の諸国はことごとく彼の手に落ち、 アルビオンは喰らい尽されてしまうことでしょう――カーカバードのけだものどもに。クロムウェルは同盟関係を保つために必要な措置などと言って、 カーカバード兵の蛮行を野放しにしているのです。こうしている間にも、奴らは奪い、焼き、犯し、殺していることでしょう……我が祖国、 アルビオンの民を!」 怒りと悲しみに声を荒げるホーキンスを前に、先ほどの重臣は気まずそうに顔をそむける。 ホーキンスは、ただでさえ内乱で疲弊しきったアルビオンの民が、さらなる暴虐にさらされるのを見るに耐えず、トリステインに降ったのだろう。 君はこの白髪白髭の武将を信用することに決める。五四五へ。 五四五 「結論から申せば、≪門≫は奇妙な装置によって作り出されています」 ホーキンスは、いかにも軍人らしい簡潔な言い回しで語る。 「装置は『ロンディニウム塔』の最上階に設置されていますが、≪門≫そのものは城壁の外側にあります」 『ロンディニウム塔』とはなんだろう? 君は隣に座るルイズに小声で尋ねる。 「アルビオンの王都ロンディニウムの郊外にある要塞よ。高貴な身分の囚人を幽閉する監獄として、悪名高い場所だわ」 彼女は眉をひそめる。 「そして、世界一堅固な砦としても知られておる」 君とルイズのひそひそ話に割り込んできたのは、オスマンだ。 「設計こそ古いが、城壁は高く分厚いうえに、定期的に強力な≪固定化≫をかけられておるため、≪錬金≫もゴーレムの拳も通用せん。 むろん、塔本体も同様の処置を受けておる。完成して以来八百年余、ひとりの脱獄も許しておらんとの噂がある――おそらく真実じゃろうて。 囚われの貴人を取り返そうと、数千の軍勢が攻め寄せた事もあったが、彼らは門を破ることさえかなわなんだ。まったく、人でも物でも、 何かを守り隠すには最高の場所じゃな」と言う。 君たちが話している間にも、ホーキンスの説明は続いている。 「……装置によって作られた≪門≫は、リュティスやこの宮殿に現れたものだけではありません。≪門≫はもう一つ存在し、 それは常に開かれています。醜く残虐な蛮族と亜人の軍勢は、そこから続々と吐き出されているのです。そう、その≪門≫は呪わしいことに、 アルビオンとカーカバードをつないでいるのです」 「時間が経てば経つほど、敵は強大になっていくということですか……『グラン・トロワ』を陥れたあの大軍でさえ、ほんの先触れにすぎぬと?」 カステルモールの言葉に、ホーキンスはうなずく。 「わたしが陣を抜け出してトリステイン軍に降ったのは四日前ですが、その時点でアルビオンにやって来たカーカバードの兵は……」 そこまで言ったところで苦しげな表情を浮かべ、口ごもる。 「将軍?」 重臣のひとりの気遣わしげな呼びかけに応えて、ホーキンスはうめくように言葉を続ける。 「……およそ五万」と。 テーブルを囲んだ人々の間からどよめきが漏れる。 君は首をかしげる。 無秩序なカーカバードでは、五万どころか五百の兵を集めることさえ、容易ではない。 ≪旧世界≫のもっと文明的な王国でも、数万もの軍勢をかき集めるのは不可能に近い難事だ。 クロムウェルの同盟者たちは、本当にカーカバードから来たのだろうか? 君の頭の中で数々の疑問が膨れ上がり、もはや黙って話を聞いてはいられなくなる。 何か一つだけでも疑問が氷解すれば、この気持ちも落ち着くだろうと考え、手を挙げる。 「連合軍との戦いやリュティス襲撃で損害を出したとはいえ、奴らは容易に補充を……何かね?」 思わぬ動きを見せた君を見て、ホーキンスはいぶかしげな表情をし、エレオノールはあきれたようにかぶりを振る。 「な、なにしてんの! 貴族の話の邪魔をするなんて、無礼にもほどがあるわよ!」 ルイズの非難にも構わず、君は将軍に向かって、質問があると言う。 ホーキンスは探るような目つきで君を見据えたのち、 「では、一つだけ。手短に頼むぞ」と答える。 何を訊く? カーカバード国の王の名前を尋ねるか(二四四へ)? 門を作る装置についてもっと知りたいか(四五六へ)? それとも、七大蛇について知っていることはないかと尋ねるか(五へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8842.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 三三〇 どの武器を使う? 短剣・四四六へ 手斧(ちょうな)・五五三へ チャクラム・三九六へ デルフリンガー・四五三へ 上記のいずれでもないなら、武器を手に黒エルフと闘え(四九三へ)。 四五三 鞘から抜き放たれたデルフリンガーは、 「おお、やっと俺の出番かね。待ちくたびれたぜ」と嬉しそうな声を上げる。 君は魔剣の柄を逆手に握り、肩の高さまで持ち上げる。 「相棒? 何するつもり……」 デルフリンガーに最後まで言わせず、渾身の力で黒エルフめがけて投げつける。 運だめしをせよ。 吉と出たら四四へ。 凶と出たら四六七へ。 四四 君の手を離れたデルフリンガーは、狙いあやまたず黒エルフの胸板に命中する。 体を貫かれた黒エルフはもんどりうって倒れる――即死だ。 残ったふたりの黒エルフの片方が、攻撃の矛先をカリンから君へと転じる。 術を使う暇はなく、デルフリンガー以外の武器を使って闘うしかない。 黒エルフ 技術点・八 体力点・六 勝ったなら三九三へ。 三九三 君は最初に倒した黒エルフの死体から、デルフリンガーを引き抜き、カリンのほうに目をやる。 黒エルフが矢継ぎ早に繰り出す短剣をたくみにかわすカリンだが、形勢はよくない。 彼女が手にしている武器は、細身の剣に似ているがあくまで刃をもたぬ杖であり、当たっても相手の革鎧にはじかれてしまうのだ。 加勢に向かおうとしたその時、黒エルフが短い悲鳴を上げて顔を押さえる――カリンの杖に眼を突かれたのだ。 その隙をのがさず、君は背後からの一太刀で黒エルフを斬り伏せる。 闘いが終わったのを見て、ルイズとキュルケが駆け寄ってくる。 「かあさま……じゃなくてカリン殿、大丈夫ですか!?」 「心配いりません、ルイズ」 そう答えるカリンの視線は、地に横たわる黒エルフたちに向けられている。 「なぜ、わたくしたちの魔法は発動しなかったのでしょう? この亜人たちには、何かそういった能力が備わっているのですか?」 問いかけられた君は、そんな事はないはずだと答える。 キュルケが試しに軽く杖を振るが、やはり何も起こりはしない。 「それじゃあ、何か魔法を妨害するようなマジック・アイテムでも持ってるのかしら?」 ルイズの言葉を聞いた君は、黒エルフたちの死体のかたわらにしゃがみ込み、彼らの懐を調べるが、すぐにその手を止めることになる ――地鳴りめいたただならぬ音と揺れを感じたのだ。 振り返った君の眼に映ったのは、こちらに向かって押し寄せてくる大群衆だ。 人々はロサイスの市民や港で働く荷役夫、連合軍の兵士たちであり、いずれも恐怖に目を見開き、先を争って町から逃げ出そうとしている。 たちまち周囲は人であふれ返り、君はルイズたちの姿を見失ってしまう。 君は殺到する人の波にもみくしゃにされ、群集に押されるままに北門をくぐり、町の外へと出る。 周囲を見回してルイズたちの姿を探すが、町から逃げ出した人々はあまりに多く、その数はどんどん増えていく。 「ジョン! ジョンはいないのか!」 「母さん、どこにいるの?」 「中隊長! 誰か、ルフェーヴル中隊長を見なかったか?」 はぐれた家族や仲間を探す者たちが、めいめい声を張り上げる。 君も負けじとルイズたちの名を叫ぶが、応える者はいない。 そうしている間にも、門からは続々と人があふれ出す。 その中にオークどもがまぎれていないのは、幸いと言ってよいだろう。 とにかく、ルイズたちを――最悪の場合はルイズだけでも――探し出して合流しなければならない。 手当たりしだいに探して回るか(四〇八へ)、それとも術を使うか? SUN・六四五へ KID・七〇〇へ ZAP・七二九へ FAR・七六八へ PIN・六七四へ 六四五 体力点一を失う。 太陽石を持っているか? なければ術は使えず、ルイズを探して歩き回ることになる(四〇八へ)。 太陽石を持っているなら、術をかけて頭上高く掲げよ。 朝とはいえ薄暗い空の下、君の作り出すまばゆい輝きは大いに人目を引く。 しばらく待つうちに、君の名を呼ぶ声を聞きつける。 ルイズの無事な姿を目にした君は、ほっと胸を撫で下ろす。 キュルケも一緒だ――彼女は人波のなか、ルイズの手をしっかりつかんで放さずにいたらしい。 しかし、カリンはどこに居るのだろうか? 三六二へ。 三六二 「母さまはどこ?」 ルイズが尋ねるが、君は、わからないと答える。 キュルケが、不安げな表情で門のほうに視線を向ける。 ロサイスの北門からあふれ出す人の流れはほとんど途絶え、今は、十数人の兵士たちが武器を手にして見張りに立ち、敵の追撃を警戒しているところだ。 「まさか、まだ中に残って……?」 キュルケのつぶやきを聞いたルイズは、はじかれたように門に駆け寄るが、兵士たちの指揮をとっていた将校が、それを見咎める。 「おい、近づくんじゃない! いつ奴らが来るか、わからんのだぞ!」 ルイズは門の内側に向かって 「母さま!」と叫び、 さらには、兵士たちの間をくぐり抜けて町の中に戻ろうとする。 「やめろ、正気か!?」 将校が腕をつかんでルイズを引き止め、君とキュルケもそれに加わる。 ルイズの瞳に涙が浮かぶ。 「放して、お願い! 中にまだ、母さまが! 母さまが!」 「無理よルイズ! 死んじゃうわ!」 「母さまー!」 悲痛な声が響きわたる。五五五へ。 五五五 涙ぐむルイズに励ましの言葉をかけながら、君は十分ほど待つ。 だが、門からは人間もオークも誰ひとり現れない。 城壁の向こうからは、太鼓と角笛の荒々しい響きが聞こえてくる。 城壁に沿って西門に向かいカリンを探してみるか(五二〇へ)、もう少し待ってみるか(四四四へ)、それともあきらめて先へ進むか(四三一へ)? 五二〇 三十分ほど壁に沿って歩き西門のそばまで来るが、そこも北門同様、町から逃げ出した人々でごった返している。 君たちは大声でカリンの名を叫び、人々に尋ねてまわるが、無駄に終わる。 得られたものといえば、無関係ないくつかの噂話だけだ。 「ふたり連れの若い女が町を離れ、シティオブサウスゴータへと向かう街道を北上していった」 「逃げ遅れた者たちは堅固な赤煉瓦(あかれんが)造りの司令部に立てこもり、包囲されながらも敵を撃退し続けているらしい」 「船着き場は敵の襲撃を受け、多くの船が焼き払われた。船で逃げようとした者の多くは、死ぬか捕らえられるかしたようだ」 最後の噂は君たちにとって不吉なものだ。 「お姫様は大丈夫かしら。『ロリアン』号の出港が、間に合っていればいいんだけど」 キュルケが眉根を寄せる。 「姫さまはきっと無事よ……母さまも。ふたりとも、こんな所で死んじゃうはずがないわ。そんなのありえない。絶対に」 ルイズは言う――自分自身を納得させるかのように。 「だから、もう行かなきゃ。トリスタニアが攻撃を受けるまで、あと五日しかないわ。それまでにわたしたちが≪門≫を破壊しないと、 ここまで来たのが無駄になっちゃう」 ルイズは潤んだ目を袖でぬぐう。 「ルイズ……本当にいいの?」 「ええ。わたしはもう平気よ。さあ、いつまでもぼやぼやしていられないわ」 ルイズは街道に立ち、北へ向かって足を踏み出す。四八五へ。 四八五 「ルイズ、ちょっと待って!」 「な、なによ。調子狂うわね」 憮然とした表情のルイズに、キュルケは言う。 「ロンディニウム塔まで三百リーグもあるのよ。まさか、歩いて行くつもり?」と。 君は三百リーグがどれほどの距離かを、ざっと計算する――このハルケギニアの地で使われているリーグという単位は、 君の故郷のそれとは別物なのだ。 ハルケギニアにおける三百リーグは二百マイル以上に相当し、徒歩だと六日前後はかかる距離だ。 「本当は、ロサイスで馬を調達する予定だったのよね」 キュルケが肩をすくめる。 「馬を連れてロサイスから逃げ出した人なんて……」 ぱっと振り返り、城壁の周りに集まった人々をざっと眺めて、 「……都合よく居るわけもない、か」と続ける。 「とにかく、進むしかないわ」 ルイズは意を決したように告げる。 「途中で馬に乗った人たちに会ったら、譲ってもらいましょう。わたしたちは勅命で動いているんだから、なんとかなるはずよ」 「そう都合よくいくかしらね? ここじゃ王室の権威も通じないと思うけど」 キュルケの言葉に、君もうなずく。五三二へ。 五三二 道を北へと歩き続けていた君たちは、街道の向こうに動きを認めてはたと立ち止まる。 距離が縮まると、相手がそれぞれ馬にまたがった、三人の男たちだとわかる。 彼らは飾りのついた帽子や兜をかぶり、派手な胴着を身にまとっている。 「レディの頼みを断れない立派な騎士様には見えないわね。傭兵みたい」 キュルケが意味ありげに囁く。 「とにかく、馬を貸してもらわないと」 ルイズが緊張した面持ちで、大きく息を吸う。 「手段は問わず、かしら?」 キュルケが胸元に差し込んだ杖に手をやると、ルイズは慌てて 「だめよ! 味方を傷つけるわけにはいかないわ!」と制止する。 「貴族のお嬢さんがたが、こんな所で何をしているんだ?」 騎馬の男たちの隊長格が尋ねてくる。 ルイズは、シティオブサウスゴータに向かうので馬を譲ってほしい、相応の礼はすると持ちかけるが、彼らはその言葉を鼻で笑う。 「二日前に奇襲を受けて司令官のド・ポワチエ将軍が行方不明になって以来、シティオブサウスゴータは大混乱のさなかにある。そんな所へ出向こうとは、 あんたらも見た目によらずとんだ命知らずだな」 男の目が細められる。 「あの町だけじゃない。このアルビオンにいる諸国連合軍の部隊は、どこもひどいありさまだ。士気も軍規もありゃしない。 部下を置き去りにして逃げ出す将校、追い剥ぎや山賊に鞍替えする兵隊、それに、払われることのない給料のかわりとして、 上官の持ち物を頂いていく不届き者だっている」 君は、男の言葉に込められた皮肉に気づく――彼らの乗る馬もその馬具もかなり上等であり、乗り手とは不釣合いなものだ。 盗人に身を落とした傭兵たちだが、君たちを襲うつもりはなさそうだ。 魔法を操る貴族を正面から相手取るのは、危険が大きいと考えているのだろう。 「そんな物騒な状況だから、馬を手放すわけにはいかねえんだ。悪いが他をあたってくれ」 男は話を終えて立ち去ろうとしている。 その場を動かず、黙って連中を見送るか(四六一へ)? それとも武器を取るか(二九四へ)? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4277.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二四四 君は食堂の裏手にある調理場を訪れる。 焼ける肉や湯気を立てるスープの、よい匂いが立ちこめている。 白い筒型の帽子をかぶり白衣をまとった料理人らの手によって、夕食の下ごしらえが進められているところだが、今はまだそれほど忙しくはないようだ。 調理場の片隅の椅子に腰掛けて、手の空いている何人かの料理人たちと談笑していた太った中年の男――料理長のマルトー――が君に気づき、人懐っこい笑顔を見せる。 「おお、どうした? 今日はなんの用だい? あんたなら、たとえ用がなくても大歓迎だがね。このあいだ聞かせてもらった、『ロガーンとトロール』は傑作だったぜ」 君は、とある珍しい果物を探しているのだとマルトーに告げ、ブリム苺の特徴を説明する。 ブリム苺は奇妙な果物で、普通は人間も動物も食べようとはしない――鼻をつくひどい匂いがするためだ。 だが天然の良薬であり、早めに口にすれば、悪性の流行り病すら抑える効き目がある。 君の説明にマルトーは首を傾げる。 「俺はハルケギニアで採れる果物なら、そこらの野苺から東方原産の珍種まで知りつくしているつもりだが、そんなものは聞いたことがねえなあ」 マルトーはブリム苺のことを周囲の料理人や給仕たちにも訊いてくれるが、皆そろってかぶりを振るばかりだ。 君はマルトーに礼を述べると、調理場を出ようとするが、そこで奉公人の少女、シエスタと鉢合わせる。 「まあ、ミス・ヴァリエールの使い魔さん! お久しぶりです、もうお帰りですか?」 少女はそう言って微笑みかける。 「ちょうどいい。シエスタ、ブリム苺ってのを知らねえか?」 マルトーが、君のかわりにシエスタに問いかけてくれる。 ブリム苺の特徴を聞いてすぐ、シエスタがはっとした表情で君を見る。 「それってもしかして、ブリュヌベリーのことですか?」 思わぬ答えに驚いた君は興奮し、彼女の両肩をつかむと、詳しい話を聞かせてくれと大声を出す。 「い、痛いです……お話ししますから……」 シエスタの弱々しい声を聞いて慌てて手を離し、自らの行いを詫びる。 シエスタは驚きさめやらぬ表情で言う。 「いえ、お気になさらないでください。……ええと、ブリュヌベリーはわたしの故郷、タルブの村のそばの草原に生っているんです。薬になるので、 うちの家ではしぼり汁を瓶に詰めて常に何本か保存しているんですよ。 わたしも子供のころ母に飲まされたことがあるんですが、ものすごい匂いと味でした。≪水≫の魔法で作られた薬ほどじゃないけど効き目は確かで、わたしも一晩で熱が下がっちゃいました。 ……でも、できれば二度と飲みたくないですけど」と。 話を聞く限り、ブリム苺とブリュヌベリーは同一のものと見てまず間違いなさそうだ。 君が、代金は払うのでそのブリュヌベリーの汁をいくつか譲ってはもらえぬかと尋ねると、シエスタは笑顔で 「はい、それじゃあ家に手紙を送りますね。ちょうど、そろそろ仕送りを出そうと思っていたところなんです」と答えるが、 それでは遅すぎる。 タルブまで直接薬を取りに行きたいので、簡単な紹介状を書いてはもらえぬかと言うと、シエスタは怪訝な表情をする。 「そんな……往復の旅費を使えば、もっといい薬が買えますよ? なにもわざわざ出向かなくても」 君は、とにかくその薬が急いで必要なのだと言う。 シエスタはしばらく考え込むが、やがて意を決したように 「それなら、わたしもお供します!」と叫ぶ。 「うちの家族はお人よしばかりですけど、いきなりよその人がやって来たら警戒して、薬を出し渋るかもしれません。たとえわたしの紹介状を見せても、信用してもらえるとは限らないし。 だから、わたしが直接、使い魔さんを家族と村のみんなに紹介します」 シエスタの言うことには一理あるが、彼女には彼女の仕事があるはずだ。 そのことを尋ねると、シエスタは 「大丈夫です。使い魔さんのお手伝いのためなら、いつでもお休みをいただけます。そうでしょ、マルトーさん?」と、 興味津々で君たちの話を聞いていた料理長に呼びかける。 マルトーは笑顔でうなずく。 「おう、行ってこいシエスタ。そこの旦那のお役に立ってきな」 シエスタはそばかす混じりの顔をほのかに紅潮させる。 「もう! いやですわマルトーさん、旦那様だなんて。あの、それで……出発はいつですか?」 シエスタの問いに、おそらく明朝になるだろうと答えると、調理場をあとにし図書館へと向かう。 このことを、早くルイズとタバサに伝えねば。一三九へ。 一三九 シエスタの故郷であるタルブの村の近辺にはブリム苺らしき植物が自生しており、彼女の家ではそのしぼり汁が薬として用いられている――君が調理場で得た情報を知らされたタバサは、 「明朝、門前で。シルフィードに乗って行く」と言ってすっくと立ち上がると、 そのまま図書室を出て行く。 本心では今すぐにでも出発し、難病に苦しむ家族を救うかもしれぬ薬を手に入れたいところだろうが、同行する君とシエスタのことを、彼女なりに気遣ってくれたのだろう。 平原が、森が、川が、丘が、眼下を過ぎ去ってゆく。 君たちは今、シルフィードの背に運ばれ、タルブへと向かっているのだ。 こうやって竜の背にまたがるのは二度めであり、慣れのおかげで墜落の恐怖も前回より薄れてはいるが、それでも気は抜けない。 同乗者のうちふたりと一匹――ルイズとシエスタ、そしてキュルケの≪使い魔≫である火狐――は魔法が使えぬため、うっかり転落すれば命はないのだから。 タバサの≪使い魔≫シルフィードの背中はそれほど広いわけではなく、少女ばかりとはいえ、人間が五人に獣が一匹も乗れば、もはや脚を伸ばす余地もない。 一行の中で最も大柄な人間である君は、少女たちの邪魔にならぬよう小さく縮こまっている。 本来タルブへ向かうべき顔ぶれは、シルフィードの主人であるタバサ、ブリム苺を知る君と、タルブの家族に君たちを紹介してくれるシエスタの三人だけで充分なはずなのだが、 どいうわけかルイズとキュルケまでついて来たのだ(キュルケは火狐まで連れている)。 ふたりに理由を問いただしたところ、キュルケは 「だって、おもしろそうじゃない。この前のあなたたちの旅には同行できなかったけど、今度の機会はのがさないわよ」と嫣然とした笑みを浮かべ、いっぽうルイズは 「使い魔が主人の眼の届かないところで変なことしないように、監視につくだけよ」とふてくされた口調で言う。 ふたりとも、学院の授業を無断で欠席することについては、なんら気のとがめるところはないらしい。 もっとも、順調にゆけば夕方にはタルブに到着するはずなので、村に一泊するだけですぐに戻ることができる――ルイズたちの欠席とシエスタの休暇は二日だけで終わるだろう。 背中にかかる重みをものともせず、シルフィードは力強くはばたく。 空飛ぶ竜の背に乗るなどという生まれて初めての経験に、最初は悲鳴を上げて騒いでいたシエスタだが、すぐに慣れたようで 「すごい……街道を見てください、荷馬車でいっぱいですよ!」などと、 眼下に広がる光景を楽しむ余裕さえ生まれている。 彼女の言葉にしたがっておそるおそる視線を下げた君は、ラ・ロシェールへと向かう街道に多くの馬車があるのを見出す。 その車列は隊商にしては規模が大きすぎる。 「戦の準備ね。あと三週間もすれば、アルビオン解放の軍がラ・ロシェールから飛び立つから」 ルイズが君のほうを向いてそう言うと、キュルケも 「ラ・ロシェールは、アルビオンに最も近くて最も大きな港だからね。今はトリステインとゲルマニアを中心とした、諸国連合艦隊の根拠地になってるはずよ」と説明する。 街道を進む何台もの馬車は、軍隊のための食糧や武器、そのほか雑多な物資を運んでいるのだろう。 アルビオンへの出征の日が近づけば、徒歩(かち)で行進する数千の兵がこれに加わるはずだ。 「戦……ですか」 シエスタが気落ちしたように呟く。 「始まったら、貴族の皆様だけではなく、平民の兵隊もいっぱい死んでしまうんですよね。それに、アルビオンの人たちも。本当に必要なんですか? まだ、アルビオンがトリステインに攻め込んできたわけでもないのに」 「当然でしょ! ≪レコン・キスタ≫の恥知らずな謀反人たちは、始祖の末裔たる王様を殺めて、今もウェールズ皇太子殿下や民衆を苦しめているのよ。 これはアルビオンを解放する、大儀ある戦いよ!」 ルイズに一喝されてシエスタは押し黙り、竜の背の上を気まずい空気が流れる。 「そんなに心配しなくても大丈夫よ」 キュルケが明るい声でシエスタに話しかける。 「連合軍の兵力は圧倒的、内乱でくたびれたアルビオン一国じゃどうにもならないわ。決着はあっさりついて、すぐに平和が戻ってくるわよ」 「それでも……わたしは戦はいやです。ミス・ツェルプストーは、その……失礼ですが、なんだか楽しそうですね」 「我がツェルプストー家はゲルマニア屈指の武門、戦で成り上がってきた家系。ツェルプストーに生まれたからには、たとえ女子供でも、戦いの炎を 恐れたり嫌ったりするわけにはいかないのよ……本心はどうあれ、ね」 「はあ、貴族の皆様も大変なんですね」 そんなやりとりを聞きながら、君はもう一度街道を見下ろす。 ラ・ロシェールに近づくにつれ、荷馬車の数は増えている。 君の故郷である≪旧世界≫は荒っぽい土地柄とはいえ、≪諸王の冠≫の貸与を軸として発足したフェンフリー同盟よって秩序がもたらされていたため (王冠を大魔法使いに盗まれたアナランドの恥は大変なものだ!)、本格的な戦は絶えてひさしい。 遥か空の彼方の『白の国』では、数万の軍勢同士が正面から衝突する、君には想像もつかぬ規模の大戦(おおいくさ)が始まろうとしているのだ。二〇へ。 二〇 陽が傾きだしたころ、ルイズが前方を指さして叫ぶ。 「見て! ラ・ロシェールの桟橋よ!」と。 その言葉に従って眼を凝らすと、彼方の山の上に小さく枯れ木が見える。 それはこの距離から見れば一インチにも満たぬ高さだが、実際は丘ほどもある、信じがたい高さの大木なのだ。 十日ほど前に見てきたばかりだが、何度見ても圧倒される巨大さだ。 さらに近づくにつれ、四方八方に張りだされた大木の枝に、いくつもの白い花めいたものがついているのを見出す――実際はそれは花ではなく、空飛ぶ船の帆だ。 これだけ離れていては区別がつかぬが、そのほとんどが戦のためにかき集められた軍艦と輸送船なのだろう。 無言でラ・ロシェールの桟橋を見つめていた君たちだが、意外な人物の意外な一声を耳にする。 「北西から風竜が二匹」 声を発したのは、道中ずっと沈黙を保っていたタバサだ。 彼女が杖の先で指し示したほうに眼をやると、二匹の翼をもつ生き物がこちらに向かって飛んでくるところだ。 相当な速さで空を翔けているようで、その姿はみるみるうちに大きくなる。 「こんな人里近いところを野生の竜が飛んでいるはずもないし、竜騎士かしら」とルイズが言うと、 キュルケは落ち着き払った口調で 「今、背中が光ったわ。鎧を着た人間を乗せてるわね。でも、こっちになんの用があるのかしら?」と疑問を口にする。 悠然とした貴族の少女たちとは対照的に、シエスタだけは 「だ、大丈夫ですよね? なにもしてきませんよね? わ、わたしたち、なにも悪いことしてませんものね!?」と、 おどおどした様子を見せる。 そのまま相手が近づいてくるのを待つか(三〇六へ)、タバサに逃げるよう指示を出すか(二一四へ)? 三〇六 近づいてくるにつれ、二匹の竜とその乗り手たちの姿がはっきりと見えるようになる。 青い鱗をもつ竜――風竜と呼ばれる、飛ぶことに優れた種らしい――はシルフィードに似ているが、ずっと大柄でがっしりした体格のため、ごつごつした印象を与える。 その背中にまたがり手綱をつかむのは、鎖帷子と青いマントをまとった騎士だ。 腰にはワルドが使っていたものと同種の、刺突剣に似た誂(あつら)えの杖を差している。 ふたりともサレット兜をかぶっているので、面貌であらわになっているのは口元だけだ。 二騎の竜騎兵は、君たちの乗ったシルフィードの左右に並ぶと、そのまま速度を合わせて飛ぶ。 右側の竜に乗る騎士が片手を挙げ、掌を下に向けると腕を上下に振る。 地面に下りろという指示のようだ。 「な、なにもしてないのに……すぐに解放してもらえますよね!?」 シエスタがおびえた声を出す。 「心配ないわ、こっちは≪トライアングル≫がふたりにダーリンも居るし。闘えばまず勝てるから」 「え、ええっ!?」 キュルケの冗談を真に受け、頓狂な声を上げる。 シルフィードは広々とした草原に舞い降り、竜騎兵の片方がそれに続く。 もう一騎の竜騎兵は君たちの頭上を旋回し、周囲を警戒している。 シルフィードから降り立った君たち五人と一匹に、騎士が近づいてくる。 「我々はラ・ロシェール鎮守府(ちんじゅふ)防空隊だ」 威丈高に騎士は言うが、その声は若々しい少年のものだ。 おそらく、ルイズやキュルケと同年代だろう。 「その格好は、魔法学院の生徒と下僕か? ラ・ロシェールにいったいなんの用だ? あそこは今、諸国連合艦隊の根拠地だ。怪しい奴らを近づけるなとの命令が出ている。 きさまたちの姓名と目的を話してもらおうか」 騎士のぶっきらぼうな詰問に、ルイズの表情がみるみる険しくなる。 ルイズは怒鳴ろうと口を開くが、キュルケのほうが先に動く。 「ゲルマニア貴族、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。彼女がミス・タバサで、こっちがミス・ヴァリエール。 行き先はラ・ロシェールじゃなくて、その先のタルブ。これでいいかしら?」 そう言って、騎士に流し目を送る。 「ゲルマニアのフォン・ツェルプストーにヴァリエール……まさか、ラ・ヴァリエール公爵の?」 「三女よ。そちらも名乗っていただけるかしら、騎士さま?」 ヴァリエールの名を聞いて騎士が動揺したのを見て、ルイズは余裕を取り戻す。 若き騎士は慌てて兜を脱ぐと一礼し、 「失礼いたしました、トリステイン空軍竜騎士、ルネ・フォンクと申します。空からラ・ロシェールに近づくものは、すべて誰何するように言い渡されておりまして……」と弁解する。 あらわになった顔を見てみれば、小太りで人のよさそうな少年だ。 キュルケは微笑む。 「気にしないで、あなたは立派に任務を果たしているだけなんだから。それにしても、ずいぶん厳重な警戒ね。アルビオンが先手を打って出てくることなんて、まずないでしょうに」 「我々が恐れているのは艦隊より間諜です。船に火を放たれたりして、闘いの前に損害を出すことは避けたいですからね。アルビオンは三日前にハルケギニアの諸国と完全に断交して貿易商を追放、 港を封鎖したため、今では商船の一隻もやってきませんが。 封鎖は徹底したもので、噂によると一羽の伝書鳩でさえ撃ち落されてしまうとか……」 思わぬところでキュルケのような美人と出会って気が緩んだのか、ルネという名の少年騎士は聞かれていないことまでぺらぺらと喋り続ける。 「クロムウェルはなにを考えているのかしら」 ルネと別れ、ふたたびタルブへと向かうべく飛び上がったシルフィードの上で、ルイズは思案にふける。 「いくらアルビオンが過去に一度も侵略を受けたことのない難攻不落の大陸だからって、ハルケギニアのすべての国を敵にまわしちゃったらおしまいよ。 最強と言われてる艦隊と竜騎兵だって、内乱で数が減ったはずだし、なにより食糧が不足しているはずだわ。 それなのに、外交も貿易もやめて浮遊大陸に閉じこもるなんて。こっちがなにもしなくても、日干しになっちゃうわ」 そう言って溜息をつく。 「アルビオン全体を巻き添えに死ぬつもりかしらね」 キュルケのなにげないひとことに、ルイズが息を呑む。 「まさか、そんな……」 「そもそも、ハルケギニアを一つにまとめてエルフから聖地を奪回しようという考えが、正気の沙汰じゃないのよ。狂った王様……じゃなくて、クロムウェルの肩書きは議長だか総司令官だっけ? とにかく、頭のおかしい人間が支配する国ってのは悲惨よね。まともなことをしたら罰せられるんだから」 その言葉を聞いて、タバサがちらりと君たちのほうを見るが、すぐに正面に向き直る。 夕陽が山の稜線にかかろうとするころ、草原と森の境目に築かれた集落が見えてくる。 「タルブの村です! まさか、竜に乗って帰ってくることになるなんて! 父さんたち、腰を抜かさないといいけど」 喜色満面のシエスタが叫ぶ。一九三へ。 一九三 奉公に出た村娘が、三人の貴族の令嬢とともに竜に乗って村に帰って来たので、普段は静かであろうタルブの夕べは大変な騒ぎとなる。 広場には人だかりができ、村人たちは遠巻きに貴族の少女らの一挙一動を見守っている。 村人の大半は、貴族といえば尊大な官吏か医者くらいしか見たことがないらしく、ルイズたちを覗き見ては 「見てごらん、なんてお綺麗な。まるで妖精だよ」 「シエスタの奴、すごい方たちとお知り合いになったもんだな」などとささやきあっている。 ひどく恐縮した村長がルイズたちをもてなす一方、君とシエスタは用を済ませるべく彼女の生家へと向かう。 シエスタが生まれ育った家は、二階建ての大きな農家だ。 彼女の家族――いかにも農夫といった風情のがっしりした体格の父親、おとなしいが芯の強そうな母親、そして七人の弟や妹たち――が、驚きと喜びの入り混じった表情でシエスタを出迎える。 彼らは、シエスタのすぐ後ろに立つ君の存在に気づいて疑わしげな視線を浴びせてくるが、シエスタが 「わたしが奉公先でお世話になってる人よ。ずっと遠くの国から来た商人さんなんだって」と紹介すると、 たちまち相好を崩す。 君はシエスタの家族に挨拶して名を名乗り、自分たちはブリム苺(またはブリュヌベリー)の汁を買い取りに来たのだと告げる。 「ああ、あのひどい匂いのする薬か? ワインと一緒に何本か置いてあるはずだ。おい、あるだけ持ってきてくれ」 シエスタの父は少年のひとりに指示を出す。 「ちょっと待ってな。それにしても、あんなものが欲しくて学院から文字通り飛んで来るなんて、あんたらももの好きだね。貴族さまの気まぐれか?」と言うシエスタの父に君は、 その薬の原料となる果物はこの辺りでしか見つからぬ、大変珍しいものなのだと説明する。 「そういえば、じいさんが来るまでそんなものは誰も知らなかったって話を聞いたことがあるな……」 シエスタの父がひとりごちる。 ほどなく、シエスタの弟である少年が四本の瓶を抱えて戻ってくる。 君は断りを入れると、水薬の瓶のコルク栓を抜き、匂いを嗅ぐ。 臭い! この強烈な匂いは、間違いなくブリム苺のものだ! 君はブリム苺の汁が入った瓶を、三本買い取ることにする。 タバサの家族のために一本、ルイズの姉のために一本、自分用に一本――最後の一本は、もしもの時のために、この家に残しておいたほうがよいだろう。 思わぬ臨時収入(代金の金貨は、出発前にルイズとタバサが君に渡してくれた)を得て頬の緩みを隠し切れぬシエスタの父だが、急になにかを思い出したような顔をすると、 「……あれが読めるかも」と呟いて部屋を出てゆく。 数分後に戻ってきたシエスタの父は 「あんた、ずっと遠くの国から来たんだってな。もしかして、これが読めるんじゃないか? 私の祖父が書いたものなんだが、 『ハルケギニアの外の世界からの旅人が村を訪れたら、これを見せてみるように』って遺言を遺したんだ」と言って、 二つの羊皮紙の巻物を君に見せる。 片方の巻物を拡げてまじまじと見つめる。 見たこともない複雑な象形文字がびっしりと書き込まれているが、まったく解読できない。 通常、文章というものは左から右へ書かれるものだが、この未知の言語は行間の空白を見るに、上から下へと書き込まれているようだ。 ≪旧世界≫はもちろん、おそらくハルケギニア大陸にも、このような言語を操る文化は存在せぬだろう。 これを記したというシエスタの曾祖父は、ハルケギニアとはなにもかもが異なる遠い異国からやってきた旅人だったらしい。 途方にくれた君は、もう一方の巻物を手にとり――短い叫び声を上げる。 シエスタとその父がぎょっとした表情で君を見て、いったいどうしたのかと声をかけてくるが、君はなにも答えようとしない。 息は乱れ、額に汗の玉が浮かび、羊皮紙をつかむ指が小刻みに震える。 子供が書いたように稚拙な字だが、この巻物は西部アランシア語で記されている――≪タイタン≫の言語だ! 九〇へ。 九〇 君はシエスタたちの問いかけにも答えず、夢中で羊皮紙を読み進める。 大海の彼方に存在するアランシアの言語に堪能なわけではないが、それは根本的には≪旧世界≫と似通ったものであるため、 (≪旧世界≫、アランシア、クールの三大陸が、かつては一つの大陸であったことの証拠だといわれている)どうにか内容が理解できる。 書き手であるシエスタの曾祖父が、簡単な単語ばかり使い、諺や婉曲な言い回しをほとんど用いておらぬことも、君の理解の助けになる。 先に読んだ象形文字こそ、シエスタの曾祖父の母国語なのだろう。 彼は西アランシア語を、大人になってから不完全なかたちで習得したに違いない。 この文章を記したのは、ハチマン国の都コン・イチで生まれたササキ・タケオという人物だ。 彼はハチマンの貴族階級にあったようだが、身に覚えのない不名誉な罪をなすりつけられたため、海の向こうへの逃亡を強いられることとなった。 長く危険に満ちた航海のすえにアランシア西岸のブラックサンドにたどりついたササキは、そこで冒険者としての新たな生活を始める。 怪物と罠に満ちた廃墟や洞窟を探索し、隊商の護衛につき、邪悪な貴族の用心棒になったことさえあると記されている。 そうして十年ほどが経ったある日、ササキは巨大な地下迷宮の奥で罠にかかり、気がつくと別の迷宮のなかに倒れていた。 彼は次々に襲い来る怪物どもを退け、どうにか迷宮を抜け出したが、食糧を失い、剣は折れ、満身創痍のありさまだった。 夜空にかかる二つの月に驚いたササキだったが、とにかく人里を求めて足を進め、四日めになってようやくたどりついたのが、このタルブの村なのだ。 ササキは行き倒れの自分を助けてくれた女と結ばれ、そこで子を生した。 羊皮紙の最後にはこう記されている。 「我はこのタルブを安住の地となしたが、これを読む汝は、意せずしてこのハルケギニアの地に流れ着いた者やもしれぬ。汝もし野蛮なるアランシアに戻ることを望まば、東の洞穴を探るべし。 ≪門≫は洞穴の奥底に在り。我はその≪門≫をくぐりし者なり。されど心せよ、そこは幾多の妖怪変化が徘徊する死の穴ゆえ」と。 読み終えて、君はササキ――シエスタの曾祖父の書き遺した手記の内容を吟味する。 ハチマンやコン・イチという地名は聞いたこともないが、おそらく地図にも載っておらぬような辺境の隔絶した地域か、小さな島国なのだろう。 ブラックサンドは『盗賊都市』の別名をもつ危険な港町であり、遠く離れた≪旧世界≫においてもその悪名は知られている。 それよりなにより、手記の最後の記述が君の心をとらえて放さない。 このタルブの村のすぐそば(怪我人の足で四日かかるのなら、歩いて二日といったところだろう)に、≪タイタン≫へと通じる≪門≫があるとは! 危険を冒してでも、洞窟を調べてみる価値はあるだろうと君は考える。 アランシアから≪旧世界≫へと向かう船が半年に一隻しかなく、二ヶ月の航海に耐えねばならぬとしても、そして、王冠の奪回はもはや手遅れだとしても、 君は祖国のためにカーカバードに戻らねばならぬのだから。 君はシエスタとその父のほうに向き直り、羊皮紙の内容について話す。 父娘は、君とササキが同郷の生まれ(実際は、世界の反対側といってよいほど離れた場所に違いないのだが)だと聞いて、驚きを隠せない。 「じいさんは、自分は月が一つしかない国から来たってよく言ってたが……まさか、同じ国からの旅人がシエスタと知り合うなんてな」 シエスタの父はしみじみと感慨深げに言い、シエスタはうるんだ瞳で君を見つめ、 「うわあ、すごいです、運命的ですね!」と話しかけてくる。 彼女の態度に妙なものを感じ取った君は話題を変えることにし、ほかにササキの遺品はないのかと尋ねる。 「たしか、その巻物と一緒にしまいこんでいたはずだ。もっとも、役に立たないがらくたばかりだが」 シエスタの父はそう言うとふたたび部屋を離れ、ぼろ布に包んだ雑多な品々を持ってくる。 彼がテーブルの上に並べたのは、確かにがらくたにしか見えぬ物ばかりだが、そのうちのいくつかが君の興味を惹く。 君は、このなかのどれか一つを貰ってもよい。 刀身が鍔元から折れた剣・一六〇へ 十字型の鉄片・七四へ 木彫りの神像・二五へ 鎖篭手・二七一へ どれも必要ないと思ったなら、三二九へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2184.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 一八九 ルイズとギーシュはあまり気乗りせぬ様子だが、君の意見に強硬に反対する理由もないため、やがてふたりとも同意する。 確かに、ごろつき同然の傭兵どもと同じ船に乗り合わせるのは危険かもしれぬが、おとなしく目立たぬようにしていれば厄介ごとは避けられるだろうし、 なにより船賃の安さは魅力的だ。 『ウィップアーウィル』号に乗船すると決めた君たちは、急いで朝食をとり(体力点一を得る)、荷物をまとめて桟橋へと向かう。 数百段はある長い階段をのぼり終えた君は、信じられぬものを目にする。 山のような大樹が天をついてそびえ立ち、葉のつかぬ枝を四方八方に伸ばしているのだ。 「あれが桟橋よ。ほら、枝に船が泊まっているでしょ?」 ルイズは、唖然とする君に説明する。 彼女の指差す先を見ると確かに、舷側から翼が突き出した帆船らしきものが、いくつも枝にぶら下がっている。 多くの人々が行き交う道を進み、大樹の根元に開けられた門をくぐってその内側に入ると、そこは巨塔を思わせる広大な空間だ。 見上げると、壁いっぱいに木製の階段や、広々とした踊り場、荷の積み降ろしに使う起重機などが設けられている。 どうやらここは、枯れた大樹の幹をくり抜いて、空飛ぶ船の発着する施設へと作り変えた場所らしい。 木が相手では≪土≫系統の魔法も役に立たぬはずだが、人力だけで大樹をこれほどの施設に作り変えたのだろうか? きしむ階段を何段ものぼった君たちは、大樹の幹の内外を隔てる戸口のひとつを通り抜け、『ウィップアーウィル』号の停泊している幅広い枝の上に立つ。 枝は上側が平坦になるように削られ、頑丈な手摺が設けられているため危険はないが、ラ・ロシェールを一望できるその高さに、君は息を呑む。 「高い場所は苦手かい?これから向かう先は、さらにずっと高いところにあるんだよ」と薄笑いを浮かべて言うギーシュに、 見くびるなと言い返した君は、酒の臭いをぷんぷんさせた船員に船賃を渡すと、甲板へと続く階段を上る。三八へ。 三八 風を切る船体も、張り詰めた帆も薄汚れた『ウィップアーウィル』号だが、船内はさらにひどい有様だ。 君たちが座りこんでいる船倉は、そこかしこに酒の空き瓶や腐った食料などのごみが散らばり、異様な臭いがたちこめている。 与えられた『座席』がこの船倉では、船賃の安さにも納得がいくというものだ! この『ウィップアーウィル』号の乗客は君たちだけではなく、すでに大勢の先客――戦乱のアルビオンでひと稼ぎしようともくろむ傭兵ども――が居て、 船倉のあちらこちらに腰を下ろしたり寝転がったりして、やかましく騒いでいる。 彼らの話すことといえば「貴族派につけば略奪も強姦も思いのままだ」といった、およそ聞くに堪えぬものばかりだ。 ラ・ロシェールを出港して一時間も経たぬうちに、ルイズとギーシュは、船倉内から消えぬひどい臭いと傭兵どもの下卑た笑い声に耐え切れず、弱音を吐きはじめる。 「やっぱり、他の船にしておけばよかったかも……」 ルイズが眉をひそめて、君にささやく。 「ぼくはちょっと甲板に上がって、新鮮な空気を吸ってくるよ」 心なしか青ざめた顔のギーシュがそう言って立ち上がると、ルイズも慌てて一緒に行くと言うので、君も腰を上げる。 旅用のマントに身を包み頭巾を目深にかぶったルイズはともかく、黒いマントに飾りつきのシャツをまとい、胸ポケットに薔薇を挿したギーシュの姿は 否応なしに目立ち、傭兵どもの冷やかしを浴びる。 「お手洗いですかい、貴族の坊ちゃん!」 「見ろよ、女連れだぜ! いいご身分だ」 からかいの言葉に反応せず歩を進めるギーシュだが、その端正な顔は怒りに赤く染まっている。 君は、なにか言い返したくてたまらぬ様子のルイズに、無視するよう耳打ちするが、この判断は誤っていたようだ。 自分たちが嘲笑した貴族が、魔法も脅しの言葉も使わぬことで、傭兵どもはいよいよ調子に乗る。 浴びせられる嘲りにギーシュもルイズも肩を震わせるが、やがて甲板へと通じる階段にたどりつく。 ギーシュが踏み板に片足をかけたところで、傭兵のひとりが足をひっかけてきて、彼を転倒させたので、船倉のなかは爆笑に包まれる。 「おいおい、ちゃんと前を見ろよ貧乏貴族の小僧が! 痛ぇだろうが」 足をひっかけた傭兵は謝るどころか、ギーシュをさかんに罵る。 「き、きさま……いい加減にしろよ……」 歯を喰いしばり、相手の眼をじっと睨みつけながら、ギーシュが唸るような声で言う。 「餓鬼が! 仲間の靴を汚しておいて、詫びの一言もなしか? さっさと頭を下げて、それから靴を舐めて綺麗にしてもらおうか」 別の傭兵がにやにや笑いながら、腰に差した剣の柄に手をやる。 「あ、あ、謝るのはそっちでしょう! 今すぐギーシュに謝罪しなさい!」 ルイズが声を震わせて叫ぶが、周囲をとり囲んだ傭兵どもは笑うばかりだ。 通常、貴族の操る魔法は平民にとって圧倒的な脅威なのだが、この状況では話は別だ。 彼らは、いかにも未熟そうな少年少女を圧倒的な数で取り囲んでいるのだから、負ける要素などどこにもない。 呪文を唱える前に、背後からの一撃が片をつけてしまうだろう。 「なあ、やっちまおうぜ。できの悪い親のかわりに、俺たちがこの餓鬼どもを躾けてやろう!」 「半殺しにして、身ぐるみ剥いじまおうや」 何人かの傭兵は、剣を抜き放ち、石弓に矢をつがえる。 「や、やってみろ下郎ども! 後悔するぞ!」 「誇り高いトリステイン貴族は、そんな脅しなんかで怖がったりしないんだからっ!」 ギーシュは胸ポケットから薔薇を抜き、ルイズも小さな杖を構える。 もはや事態は最悪だが、君の行動しだいではなんとか収拾がつくかもしれない。 君は、ルイズたちを殴りつけてでも謝らせるか(八七へ)? 武器を抜いて身構えるか(一四へ)? それとも、術を用いるか(一四七へ)? 一四七 どの術を使う? HOW・三三七へ FOF・四九六へ ZAP・四〇八へ DUD・三八一へ GAK・四七四へ 四七四 体力点一を失う。 黒い仮面の持ち合わせはあるか? なければこの術は使えない。 武器をとって一四へ。 仮面を持っているなら、顔にあてがって術を使え。 君たちをからかっていた連中が、急におびえて縮こまる! 何事かと覗き込んだ他の傭兵どもも、君の顔を見るや否や恐怖に支配され、悲鳴を上げて逃げ出す。 この術は勇気のある者にはあまり効果がないのだが、どうやら、ここに居るのは臆病者ばかりのようだ。 なにが起きたのかと当惑するルイズとギーシュを、先に甲板まで上がらせ、君は仮面をかぶったままゆっくりと階段を上る。五四へ。 五四 甲板に上がった君たちは、めいめい胸を撫で下ろし、冷たく新鮮な空気を吸い込む。 緊張の糸が切れたギーシュは、へなへなとへたり込んでしまう。 「こ、怖かった……」 「だ、だらしないわねギ、ギーシュ! 男の子なんだから、しゃきっとしなさい、しゃきっと!」 まだ震えのやまぬふたりをそっとしておき、君は今しがた上ってきたばかりの開口部をじっと見張るが、誰も姿を現さない。 術の効果がなくなっても、臆病者ぞろいの傭兵どもには、君たちを追いかけて甲板まで上ってくる勇気はないようだ。 吹きさらしの甲板上に座り込み、毛布にくるまって寒さをしのぐルイズとギーシュ、そしてそのふたりを護衛する君の三人は、はたから見れば異様な連中だ。 通りかかる船員はいずれも怪訝そうな眼で君たちを見るが、幸い、邪魔なので船倉に戻れと言う者は居ない。 『ウィップアーウィル』号はそのまま何事もなくアルビオンへ向かって何時間も飛び続ける。 眼下に広がるのは白い雲海だ。 「アルビオンだ! アルビオンが見えたぞ!」 見張りの叫びを耳にした君が舳先(へさき)の方向に視線を転じると、雲の切れ目から黒い塊が垣間見える。 やがて、その黒い塊が意味のある形を取り出す。 それは鋸刃を思わせる連峰の稜線であり、麓には緑の森が広がっている。 話には聞いていたが、こうやって実物を眼にしていてもいまだ信じられぬ眺めだ。 雲と霧に包まれた大陸が、空中に浮かんでいるのだから! このような光景を眼にした≪タイタン≫の住人は、七大蛇を除けば、おそらく君が最初だろう。 生涯忘れ得ぬであろう光景を前にぽかんと立ち尽くす君に、 「驚いた? あれが『白の国』アルビオンよ。わたしも来るのは久しぶり」と、 ルイズが話しかける。 彼女は浮遊する大陸の特性や、アルビオン王国の成り立ちについて君に説明するが、君は別のことを考えているため生返事を返すばかりだ。 あれこそが、水大蛇の言っていた『我らの拠点』『いと高き地』に違いない。 冥府より蘇った怪物どもは、あの戦乱の地でいったいなにを企んでいるのだろうか? 王国を二分する内乱に、なんらかの形でかかわっているのだろうか? そして、君をカーカバードへ送り返す方法を知っているかもしれぬ、リビングストン男爵は無事なのだろうか? 君の頭の中は疑問だらけだが、ひとつだけ確かなことがある。 リビングストン男爵を探してアルビオンをさまよう旅が、危険きわまりないものになることは間違いない。二〇九へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ