約 2,293,302 件
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スメルティオス ケルトに伝わる神。 戦争の神。
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マイティレッグ 【編集】 キャラ キャミィ グレード D 入手先 バトル報酬フレンドガチャ スピリット量 80 攻撃 350 スキル詳細 ダメージを与える リーダー効果 なし
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ペルティロープ アーサー王伝説に登場する人物。
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サマヴァルティ ヤマの別名。 「公平に裁く者」の意。
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ヴォロガセス3世パルティア????~147統率:B 武力:C 政治:D 知力:B 文化:C 魅力:D--------------------------------------------------------------------------------第31代パルティア国王。パルティアの東部で王位を宣言し、西部を支配したオスロエス1世と争った。支配下のアトロパテネ王国のアラン人の侵入を受けて対応に苦慮した。 ヴォロガセス4世パルティア????~191統率:B 武力:B 政治:C 知力:C 文化:C 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第35代パルティア国王。ミトラダテス3世の子。長らく東西に分裂統治されていたパルティアを単独統治した。アルメニア問題によってローマと争い、一時は首都クテシフォンまで陥落した。ローマ皇帝にコンモドゥスが就くと再び先端を開き、自らアルメニア王となった。 オスロエス1世パルティア????~129統率:C 武力:C 政治:C 知力:C 文化:C 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第32代パルティア国王。ヴォノネス2世の子で、ヴォロガセス2世とパコルス2世の弟。パルティア西部を支配下に置き、ヴォロガセス3世と争った。アルメニア問題でローマと対立し、アルメニア、バビロニア、首都クテシフォンなどを失うが、王位は保持できた。 オスロエス2世パルティア????~190統率:C 武力:D 政治:C 知力:C 文化:D 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第36代パルティア国王。メディア地方で反乱を起こしてパルティア王を名乗った。 パコルス2世パルティア????~105統率:A 武力:B 政治:A 知力:C 文化:C 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第29代パルティア国王。ヴォノネス2世の子で、ヴォロガセス1世の弟。兄によってアトロパテネ王に封じられていたが、アラン人の侵入で王位を失う。その後、ヴォロガセス2世、アルタバヌス3世と王位を争った。 パルタマスパテスパルティア????~116統率:D 武力:C 政治:C 知力:C 文化:C 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第33代パルティア国王。オスロエス1世の子。ローマの人質となっており、ローマのパルティア遠征のトラヤヌスに同行した。バビロニアや首都クテシフォンを陥落させたトラヤヌスに国王に就けられたが、父オスロエス1世の反対で追放され、ローマの従属王国オスロエネの王に就けられた。 ミトラダテス4世パルティア????~140統率:C 武力:C 政治:C 知力:C 文化:C 魅力:C--------------------------------------------------------------------------------第34代パルティア国王。ヴォノネス2世の子で、ヴォロガセス1世、パコルス2世、オスロエス1世の弟。ローマの傀儡パルタマステパスを認めず、兄オスエロス1世の後を襲って国王となる。ローマとの戦いに明け暮れ、コマンゲネ攻撃中に戦死する。
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マルティニアン キリスト教の守護聖人。 2/13の聖人。
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その一瞬を、言葉にする事は難しい。 波打ち、初夏の光を透かして煌く、紅炎色の髪(ファイヤー・レッド・ブロンド)。 舞台舞踏(バレエ)のロマンティック・チュチュめいて翻る紅薔薇(ローズ・レッド)のドレス。 しなやかに伸びた脚は、雪豹を思わせる。 無骨な男の顎を爪先で捕え、間断なく無慈悲な踵落としを、頭頂へと叩き込んだとは信じられぬ程。 一連の動作は、余りにも人の目を惹き付けて止まず、目にした者の心に、鮮やかな紅い魔女の美貌を刻み付けるに十分だった。 偽りの言葉と動作で、相手を惑乱し、意識の間隙をついた奇襲。 名誉や誇りを掲げる騎士物語でなら、決して描かれぬ様な、卑怯の誹りを免れぬ行いを働き、それでも『少年』は、フランディア・ローズレッドは美しかった。 意地の悪い笑顔さえ、どこか愛敬を持って、見る者に受け入れられる。 「……何と、まぁ」 蝕紫色(イクリプス・ヴァイオレット)の目を丸くして、今見た光景を疑う様に、銀月色(ムーンライト・シルバー)の髪を有する吸血鬼(ヴァンパイア)の少女、ソルティレージュ・アン・アトガルド・エトナシアは呟いていた。 「わーお。えっげつなー。フラっち。あんた、性格悪いって云われない?」 アエマ・ゼットンが、茶化す様に問う。 フランの事を、顔を合わせたばかりどころか、録に自己紹介も終えていないのに、既に勝手な渾名を付けて呼んでいた。 「良く云われますね。事実ですし、仕方ありません。お世辞にも僕は、真っ直ぐな性格をしているとは云えませんから。『我々は、生まれながらにして狼だ。男など、誰も信じてはいけない』」 フランが、苦笑を浮かべて云った。 「『流氷階段』(カスケイド)。エリオット・ベヒシュタインの一節ですわね。あれは良い作品でした」 ソルティレージュが、フランの引用した古典小説の題名を応える。 フランが、嬉しそうに微笑んだ。 「ですが」 前置きをして、双りの少女を振り向き、“ぱちり”とウインクをする。 「成果はあるでしょう? 物語の騎士の様に、正々堂々とは行かぬが世の常です。ならば、卑怯者との誹りを受けて、それで、護れる者が在るかも知れない」 異端の魔女たる身には、掲げるべき誇りは無く、護るべき名誉も無い。 泥に塗れる己の背後に、無垢なる花の清らなるを護れるならば、厭う理由は存在しないと、フランは告げた。 それこそが、自分にとっての名誉であり、誇りであると、騎士の様に微笑む。 「僕は護り屋。護衛者です。誰かの生命を、心を、名誉を護る楯ならばこそ、我が身、我が心、我が名誉が傷付くは厭わない」 そして、と。 一味の仲間を倒され、身構える盗掘団四天王の、残り三名へと向き直る。 「我が〝想楯〟の称号に掛けて。日々の暮らしの、安らかなるを願う誰かの為に。僕は今、虹の都が治安を守護する楯となろう」 紅い魔女の静かな宣誓に、言葉に秘められた力に気圧された様に、男たちが知らず、僅かに背後へと下がる。 痩せ細った、魔術師らしき男が、総身を竦ませる武威(プレッシャー)に抗して、或いは必死で逃れようとするかの様に、声を張り上げた。 「――殺れぇッ!」 声に触発されて、男たちが、弾かれた様に駆け出す。 筋骨隆々とした男、盗掘団随一の豪力の持ち主、カーム・ライノセラス。 鋭い目を持つ男、盗掘団随一の射手、インテンス・パラキート。 痩せ細った魔術師の男は、盗掘団随一の魔術師、ワイズ・リザード。 襲い掛かってくる男達を迎え撃つべく、フラン達もまた身構える。 「来ましたわよ。先刻、フランさんが意識を刈り取った男が、ダーティ・スクーロルと名乗っていた剣士ですわね。残りは、三人」 「自警団の人たちも疲れ切ってるみたいだし。んー、やっぱ装備の差がでかかったかー。これ見よがしに魔法器物(マジック・アイテム)で固めてるもんなぁ。じゃ、私は、あっちの弓兵さんを相手にしましょ」 アエマが、“にひひっ”と、悪戯な笑みを浮かべた。 ソルティレージュも否やはなく、向かってくる男の一人を見据える。 「ならば私は、エレガントに力比べと参りましょうか」 「うん。偶に思うけどさ。ソルっち。エレガントの意味を明後日の方向に履き違えてるよね。ってか、優雅に力比べしようって、すっげぇ字面だと思うんだけどどうよ? あと、相変わらず魔術師の発想じゃねー」 「ふふ。そこは吸血鬼としての発想と云う事で、見逃してくださいませ。それからエレガントは、私の心情の問題ですわ。フランさんは、如何でしょうか?」 「否やは在りませんよ。魔道の業の競い合いならば、僕としても望む処。では」 「ええ、それでは」 奇しくも、フランとソルティレージュの声が唱和する。 「貴女の道に、鴉と黒猫の啼き声が在ります様に」 「貴男の夜に、紅う月の恩寵が在ります様に」 フランが口ずさんだものは、魔女に伝わる厄除けの呪い。 ソルティレージュが口ずさんだものは、夜の国に伝わる厄除けの呪いだった。 “くすり”と、双り、微笑みを交わす。 「かくして、お耽美なお双り様の中に在っては、あちきは、すっげー浮いている存在なのでした。ったく。双りともなってねーぜ。郷に入っては郷に従え。厄除けの詩なら、これ以外にないっしょ。ここは魔女の山でも、夜の国でもなくて、アルコ・イリスだぜぃ?」 そうしてアエマは、七虹都市に旧くから伝わる、祈願の詩を紡ぎ出す。 曰く―― 「貴方の空を、掛かる虹が照らします様に」 紡がれた詩を合図に、魔女たちは、それぞれの敵へと相対した。 ◆ 「我が得物は貴様か、少女よ! 『隠者の猟虎』四天王筆頭、インテンス・パラキートが、飛鳥さえ射抜き堕とす弓の業を、味わって見るが良い!」 魔法の弦が張られた長弓を誇り、男が告げる。 アエマは、不敵な笑みを絶やさぬままに、応えた。 「やー。そいつは凄いね。けどさ。あんたの弓は、喩えば、暗い、真っ黒な風も射抜けるのかい?」 ――“びょう” 不意に、一陣の『影』が、突風の様に吹く。 「むぅっ……!?」 否、それは闇を孕んで吹き荒ぶ、黒く、影に似た風だった。 アエマを中心に渦巻く黒風が、対峙する双りの髪を、服をはためかせる。 魔道の心得がある者が見れば、アエマを取り巻く様にして、正体を無くし躍り狂う、闇と風の精霊の姿を幻視するだろう。 魔の森の民(ダーク・エルフ)が受け継ぐ、黒の魔力を用いて精霊を狂わせ、従える、『精霊魔術』からの派生系統。 『黒霊魔術』が顕現させた神秘だ。 男が、慌てて長弓に番えた矢を放つ。 魔法の弦より放たれた矢は、狙い過たずアエマの急所へと飛んだ。 忽ちの内に、黒い風に巻かれて、力尽きた飛鳥の様に地に落ちる。 「残念でしたー。俺様ちゃんの属性は、見ての通り……なのかなー? ま、とにかく『風』だよ。幾らおっちゃんが、風に乗って、飛ぶ鳥を撃ち堕とせる腕前でもさ。そもそも風を狂わせる私には届かないんだな、これが」 矢除けの黒風を、幾重にも防壁として纏いながら、当然の事の様に、愕然としている男に向かって、アエマは告げた。 男が、幾本もの矢を撃ち放つが、総ては等しく、同じ末路を辿る。 爆塵の鏃も、氷河の鏃も、得物に届かぬ以上、効力を発揮する事は無い。 「こんな……こんな事が……ッ!」 不条理だと、男が叫んだ。 「ならば、これで!」 怒りに染まった顔で、一本の矢を取り出す。 鏃から迸る魔力は、先刻までの魔法矢とは一線を画していた。 矢の正体を悟ったアエマが、表情を変える。 「……げっ。雷華の矢の、それも一級品じゃん。なんで一介の盗掘屋が、そんなもん持ってるのさっ!?」 「これぞ我が切り札よ! 放たれた瞬間、稲妻の閃きと化す鏃を、風で捕えられるか?」 「んなの、無理に決まってんじゃん。風の矢除けで、雷が防げるかっつーの」 「ならば、勝負あったな。この間合いでは、私は狙いを外さぬ。貴様が何か策を講じるより先に、我が雷は、その躰を穿つぞ。貴様は最早、遅きに失したのだ」 勝利を確信して宣言する男を前に、アエマが笑う。 「うん。そーだね。その矢を撃てたら、おっちゃんの勝ちだよ。撃てたら、ね」 「何を――」 「遅きに失したかー。確かにね。あたしを前にした時に、有無を言わさずそれを使ってたら、結果は違ってたのに。やー、さっきはフラっちの事を性格悪いって云ったけどさ。うちの魔術も大概、陰険なんだわ」 「あ……?」 “ぽたり”……“ぽたり” 逆巻く風音の中、滴る水音に、男が足元を見ると、血の雫が落ちていた。 血は、男の鼻腔から流れ出している。 「これは……何故、私が……貴様、何を……!」 男の視界が、唐突に“ぐにゃり”と歪む。 平衡感覚を失い、寒気に襲われ、躰に力が入らない。 指先が振るえ、弓を番える事さえ億劫に感じた。 「あたしが狂わせた風は、黒に染まりて、病を運ぶ」 アエマは、男を“ひた”と見据えながら、静かに呟いた。 「風は幾重にも私を護り、運ばれた病が、触れた者の命を奪う――ま、判りやすく云うとね。あたしは射手(アーチャー)封じの、疫病使い。バッド・ステータス&ペナルティ付与なんだな、これが。いやらしー戦い方っしょ? おっちゃん。もう、そうなったら暫らくは、まともに動けないよ。降参してくれたら、今なら、アエマちゃんの手厚ーい看病がついてくるけど?」 「巫山戯……るな……! この私が……四天王筆頭が、貴様の様な小娘にぃぃぃ……ッ!」 怒りと屈辱を綯い交ぜとして、アエマを睨み付ける男。 アエマは、務めて明るく、何時もの調子で、男へと決別の言葉を告げる。 「あ、そう。じゃー、仕方ないね。目が覚めたら、ベッドの上で反省しなよ。ああ、それと。歳とか見た目で、相手を侮るのは止めときな。世の中、そんなもんで動いちゃいない。歳月も修練も関係なくさ。『才能』って奴は、何もかもを台無しにして、一纏めに持っていくんだから。おっちゃんの『狙い撃つ才能』は、あたしの『病に侵す才能』を上回れなかった。まー、納得出来ないだろうし、無体な話だって思うけど。でも、そう云うもんだよね。世界は、そう云う風に出来ていて。そう云う容なんだから。何をしたって、その通りにしか廻らないんだよ」 「ぐっ……私は、まだ……敗れては……弓の業を、十余年磨き続けて……鳥さえ射抜ける様になった、私が……! 友を……救い出すまでは……!」 朦朧としているのだろう。 支離滅裂な言葉を吐き出す男。 歯を食い縛り、懸命に矢を番えようとする男の前で、アエマは、どこか悲しそうに云った。 胡桃茶色(ウォーナット・ブラウン)の瞳に去来するのは、『才能』を、逃れ得ず、覆せぬ『自分の容』を知る者の悲哀だ。 『誰も彼もが、才能の奴隷に過ぎない。その支配は、如何なる運命よりも苛烈で残酷だ。無慈悲なる神の如くに』 それは高名な劇作家、カルデニオ・シンドベルトが、自らの作品の中で書いた一節。 先刻、フランがアルテミシアとの会話に於いて、引用した台詞でもある。 「うん、やっぱおっちゃんは、私やソルっちと同じ才能を持ってるね。同じ容だよ。もう届いてるかどうかは知らないけれど。その在り様を、言葉にしたらどうなるか教えて上げるよ。おっちゃんの才能はさ、『大切なものを手に入れることが出来ない才能』。本当、報われないよね、お互いに」 自嘲めいて、アエマは云う。 『才能』とは、己の容だ。 それを開花させる事は、必ずしも幸福を約束しない。 無慈悲で、報われない容であるとしても、自らの容が、そうと定められているのならば、向き合うしか無い。 アエマが、『幸せになれない才能』と云う容を、持って産まれた様に。 『辛くても明るく振舞う才能』と云う容の通りにしか、生きていけない様に。 最後の力を振り絞り、矢を番える男の前で、荒れ狂っていた風の唸りが止む。 黒き疫病の風は、アエマの左腕に纏わり付き、圧縮され、その肌の色を、黒ずんだ褐色へと染め上げた。 爪は、妖しい黒瑪瑙の輝きを放っている。 アエマは、黒き病の腕で、男へと触れた。 風が運ぶ病が、男の躰を侵し、今度こそ意識を、一時の奈落へと刈り取る。 「あ、げっ……あ……っ……!」 「『疫風蝕む熱病の腕』――眠りなよ。なぁに。大切なものが手に入らないとしても。それでも、どーにかこーにか、やっていけるのが人生だ。おっちゃんの容は、あたしやソルっちより、大分マシだしにゃー」 “どさり”と、地に倒れ付す男を見下ろし、アエマは、勝利を掲げる言葉を紡ぐ。 「我が勝利――黒き風と共に」 ◆ ソルティレージュが対峙するは、筋骨隆々とした男。 男は、向かってくる少女の姿を認めると、露骨に嘲りの笑みを浮かべる。 「ふんはぁー! お前の様な細腕で、この『隠者の猟虎』四天王筆頭、カーム・ライノセラスの豪力に太刀打ち出来るものか!」 「では、試して見ますか? ――破ッ!」 「ぬぅん!」 両者が、同時に拳撃を繰り出す。 巨躯から、愚直に振り下ろす一撃と、打ち上げる様に、直線に放たれる一撃。 重く、鈍い音と共にぶつかり合う。 「くぅッ!?」 「何とッ!?」 驚愕の声を上げたのは、同時だった。 吸血鬼の真祖であるソルティレージュは、人間はおろか、下手な巨人族にも匹敵するだけの膂力を有している。 男は、吸血鬼の一撃を、受け流す事さえせず、真っ向から受け切った。 男にしても、よもや自らの一撃が、少女の細腕と互角とは予想しなかったのだろう。 信じられぬ者を見る様な目で、ソルティレージュを“まざまざ”と見る。 「まさか俺の拳を……そうか。口元に覗く牙。貴様、吸血鬼か!」 「ええ、その通りですわ。私と拮抗する膂力の持ち主が、よもや人の中に居るだなんて。驚嘆に値します」 「ふはは! 鍛え上げた肉体は、肉と骨を成長させる! 俺の拳は、既に剣も矢も越えた。躰は、鋼の鎧よりも強靭に、如何な攻撃をも防ぎきるぞ!」 「無駄に暑苦しい殿方です事。しかし、成る程。『強靭な肉体を鍛え上げる才能』の保有者ですか。努々、侮る事は出来ませんわね。その力、既に鬼族(オーガ)のそれにも匹敵しましょう」 「吸血鬼と力比べをするのは初めてだ。しかし、俺が勝つ! 俺の修練が、吸血鬼を凌駕する事を証明してやろう。ずぇい!」 “ごうっ”と、唸りを上げて繰り出される拳。 暴風めいた連弾を、ソルティレージュは時に受け止め、時に躰を霧へと変える事で避けていく。 「痛ぅ……! これは、なかなか……腕が痺れますわね」 「はーはっはっ! どうした。防戦一方では無いか! その程度か吸血鬼!」 繰り出す拳の向こうに、大口を開けて、笑う男。 愚直な拳は、男がこれまで積み重ね、鍛え上げてきた暴力の容だ。 ソルティレージュは、背後へと飛び下がり、距離を開ける。 痺れた腕を、二度、三度と振って感覚を確かめた。 「全く。何と云う真っ直ぐな暴力でしょう。『修練を積み重ねる才能』の元に、鍛え上げられた力。少し、羨ましくも在りますね。『努力が報われない才能』を有する、私からすれば」 “くすり”と微笑み、ソルティレージュは、男の姿を真っ直ぐに見た。 努力する事と、努力しない事。 努力出来る事と、努力出来ない事。 努力が報われる事と、努力が報われない事。 徒労に終わる事も、無為に終わる事も。 それらも総て、才能と云う、自己の容によって縛られる。 どれだけ羨み、渇望して、苦悩しても、自分の在り様からは逃れられない。 自分の容は、変えられない。 目の前の男が、努力によって、当たり前の様に成し遂げる事。 それを、ソルティレージュは、努力によって、当たり前の様に成し遂げられない。 そう云う容に産まれ付いて、そう云う在り様だと定められて、そう云う風にして、世界は廻っていくのだから。 「言っても、詮無い事では在りますけれどね。私は、私ですし。その通りにしか生きていけないのですから――」 真理であり、摂理であり、条理であると受け止めて、ソルティレージュは、静かに構えた。 才能は、絶対だ。 才能を覆すには、それ以上の才能を持って打倒するしか無い。 つまりは―― 「貴方の才能は、あくまでも人間と云う枠組みの中で、肉体を鍛え上げる才能。つまり、その枠組みを超越したものには、貴方は対処できない」 静かに、呼吸を繰り返す。 蝕紫色の瞳が、男の姿を捉えた。 「では、お見せ致しましょう。肉と骨と、関節と血の流れ。心の動き。人体の戒めの全きを超越する、我が血族の権能。自在霧散化特性に立脚した、人外なる鬼の闘技法を。毒蛇の舞踏を」 宣言と同時。 “すっ”と、流れる様な所作で、ソルティレージュが、右脚を踏み出す。 踏み出した脚が、靴底で、前方の地面を踏み締める瞬間。 身に纏う衣装ごと、脚が、霧へと転じて消失する。 肉の躰が、二足歩行で、前方へと歩みを進める為には、畢竟、重心を向かいたい方向へと傾ける必要がある。 その状態で、本来、地を踏み締め、傾く躰を支える筈の脚が消えればどうなるか。 地に惹かれる様に、力尽きた鳥が堕ちる様に、ソルティレージュの躰は流れ、前方へと倒れ込む。 倒れる躰の動きに逆らわず、路面へと接吻をしそうになる寸前。 雲間に閃く稲光の如く、憐れな獲物へと飛び掛る、毒蛇の疾駆が顕現する。 前方へと倒れこむ動き。 万物が、星の中心へと引かれて堕ちる摂理そのままに、発生した力を、一端は霧へと転じた脚が、再び実体化し、水平な地面を斜めにでは無く、『垂直』に、『直角』に蹴り付けると云う、およそ人体には不可能な所業をやってのけた。 その結果が、どうなるか。 本来、肉の脚は歩行の際、発生した前方へと進む為の駆動力を、幾らかは無駄に使っている。 これは、前に進む為には、地面に対して、必ず、脚を斜めにして蹴り付けなければならないと云う、肉体が有する当たり前の制限故に発生するもの。 地面を垂直に蹴りつければ、肉体は垂直方向へと跳躍するが道理だ。 しかし、ソルティレージュの血族が有する権能。 肉体を霧に転じる事が出来る吸血鬼の中にあってさえ、自由に、自身の肉体の霧散化を操作出来ると云う権能は、肉と骨の消失はおろか、肉体の容を残したまま、内部の関節のみを消去させると云う荒業さえ、容易くやってのける。 肉体を有し、その容に縛られる生物の枠組みを、容易く超越する魔物の容。 『前進』する為に、『垂直』、『直角』に『水平』な地面を蹴り付けて、発生した力の一切を無駄に拡散させる事無く、ソルティレージュは走った。 走るのでは無く、奔るのでは無く、正しく疾る。 地を這う毒蛇の様に、銀の髪を尾と引いて、霧を纏う吸血鬼の少女が、駆け抜けて、翔け抜けた。 縮地法。 遥か東方の大陸においては、武道の奥義として知られる歩法の亜種を、ソルティレージュは、自らの肉体特性に拠って強引に成し遂げる。 「な……あっ……ッ!?」 男が、理解を超えた吸血鬼の挙動に、迎撃の拳を慌てて繰り出すも、総ては遅きに失する。 「『地を翔け疾る毒蛇の強襲』――貴方は最早、狩られる獲物。我が毒蛇の顎門を持って、喰らい尽くす」 「くっ……だが、俺の肉体は鋼よりも硬い……ッ!」 男の叫びに、ソルティレージュの口元に刻まれる、笑みの容。 “にぃ”と、亀裂の様な唇から、毒蛇の如き鋭い牙が覗く。 ソルティレージュは、自身の腕を、番えられた矢の様に背後へと引き絞った。 そして、再び、自身の肉体を霧に変える。 見える変化では無く、見えざる変化。 即ち、肉体の外部では無く、肉体の内部。 頭蓋の中、脳の内部に編まれた神経の網目の一部を、自らの意志で消滅させた。 限界を超えた挙動の反動が、自身の肉体を壊さぬ様、無意識が設けている制御機構を、無理矢理に解除する。 生物は本来、その肉体の機能を、三割にも満たぬ状態でしか発揮出来ない。 しかし、自在霧散化特性は、云うなれば、肉体のあらゆる機能や制限を、自らの意志を持って解除できる鍵だ。 無意識を統括する脳内機関を霧へと転じて、その働きを無効化すれば。 畢竟、普段は抑制された肉体機能の総て、封印された、残り七割の力を、掛け値無しの全力を持って操る事が出来る。 人間を遥かに越えた性能を有する、吸血鬼の肉体性能の、完全解放。 それから繰り出される、単純な破壊力は、人間如きの鋼の肉体に、毒蛇の牙を突き立てるに、十分に過ぎる。 ソルティレージュの放つ一撃が、衝撃と共に、男の躰を貫いた。 「ぎっ……あ……が、ぁ……っ!」 「『戒め解かれし暴虐の毒蛇』――これを使うと、とても疲れる上に、私自身への反動も大きいのですけれど。貴男は、相応しい相手でした。道を違えなければ、一角の猛者として、名を馳せていたでしょうに。残念ですわ」 崩れ落ちる男を見下ろし、ソルティレージュは、勝利を掲げる言葉を紡ぐ。 「我が勝利――いと貴き月と共に」
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テュブルティス ギリシャ神話に登場する女性。 一説にエウアンドロス(2)の母。
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ミストルティン SR HP 778 オプション 水属性キャラクターが装備時、自身の防御力アップ