約 440,010 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/421.html
「あれ? なんだこれ?」 彼、かぜっぴきで有名なマルコメ味噌ことマリコルヌは、黒い布の塊を拾い上げ首をかしげた。 最近ちょっぴりお腹が出てきたかな、とメタボが気になりだして始めた早朝ランニング。 その栄えある第一日目に、それと遭遇した。 見ると、ちょうど洗濯物を持った人影が建物の影に消えるところだった。 「あの…」 声をかけようとしたが気づかれないまま影は消える。 あの後姿は確か、ルイズが呼び出した使い魔じゃなかったっけ? 記憶を紐解きながら、とりあえず黒い塊を広げることにした。 「こ、これはっっ!!」 広げられ、彼の目の前に真の姿を顕したそれは、 黒のニーソックスだった。 「はあはあはあ」 気がつけば、彼は全速力で自分の部屋に駆け込み、ドアに鍵を掛け窓も硬く閉じていた。 薄暗い密室の中、荒い息だけが聞こえる。 そして、その右手に硬く握り締められているのは、一足のニーソックス。 「まて」 頭を振る。 「まてまてまてまてまて」 さらに激しく頭を振る。 「いったい何をしているんだ、俺は!?」 これではただの変態じゃないかと、なんとか正気を取りもどす。 「そ、そうだよ、こんな物さっさとルイズに返しちゃえばいいんだ」 震える声で、ニーソックスを見る。 とたんにある映像がフラッシュバックされる。 毎度ゼロと呼んではいるが、憎からず思っている少女。 そのカモシカのような足を包んでいた物の、その片割れ。 ……嗅げ…… 「えっ」 思わず辺りを見回す。 もちろん、誰もいない。 ……嗅げ…嗅げ…… その声は、何度も何度も聞こえてくる。 まるで、彼の良心を捨てさせる悪魔のささやきのように。 甘く、甘美に。 ……嗅げ…嗅げ…嗅ぐんだっっ!!…… もう、彼は理解していた。 これは、自分の内なる声なのだ。 そう、すべては運命。 誰も運命からは逃れられない、と。 ゆっくりと、本当にゆっくりと自分の鼻と口にそれを当てると、 一気に吸い込んだ。 「ふうおおおおつつつっっっ!!!」 それは獣の叫びか魂の叫びか。 シャツを自ら破り、上半身裸になった。 太りすぎの胸が揺れ、ほほを伝うは一筋の涙。 ここハルケギニアの地に、新たなソックスハンターが誕生した瞬間だった。 ~ゼロのぽややん外伝~ソックスハンター異聞録 爆誕! ソックスレジェンド!! 完
https://w.atwiki.jp/dh_kh/
いらっしゃいまし~ぃ【ゼロの起点】へようこそ!!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/260.html
『鏡』を抜けるとそこは……土煙に満たされていた。 「何処だ…ていうか何が起こっている?」かつての主の姿で魔界の王は呟いた。 土煙がおさまると目の前には悲哀を含んだ表情で呆然としている少女、 そしてその背後には爆発寸前といった表情の少年少女達と壮年の男が一人。 一瞬の後その場は爆笑に包まれた。 実に不快な話である。 自分という存在を必要としている『世界』からの呼びかけに応えて その世界に降り立った魔界の王に何たる仕打ちか、と。 爆笑が収まると目の前の少女が意を決して近づいてくる。 おそらくは彼女こそが我の召喚者であろうと推測できる。 故にこそ跪き「我を召喚したのは汝か。」と問う。 しかし目の前の少女はこちらの言葉を理解してないかの様に言葉を詰まらせ そして呪文らしき言葉を紡ぐ。唯一理解できたのは少女の名前と思われる 『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』のみ。 そして少女はおもむろに近づき我に対して接吻をする。 唇に魔力の収束が見て取れたのでそれこそが儀式の要だと解っていたので 身動ぎする事無くこれを受けた。そして左手に激痛を感じ見れば何かの紋章が刻まれていた。 [牛に焼印を押すようなものか。ならば我はこの少女の所有物と言う事か]そんな事を考えていると 少女が「私の言葉が理解できる?」と聞いてきたので我は即座に「我を召喚したのは汝か」と再度問う。 「…そうよ。私の名前は」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、で良かったか?我が主よ。」 「!…あなたの」 「我が名はウルムナフ・ヴォルテ・ヒューガ。親しい者達からは『ウル』と呼ばれている。 我は汝の剣となり盾となり、汝の齢尽きるまで汝を守り通そう。」 少々時代錯誤な物言いとはいえ、自分的には『うむ、100点』とか考えていると、 「いーから早くこっち来なさい、恥ずかしい。それから私の事は『御主人様』と呼びなさい。」 ふと周りを見れば他の少年達は、空を飛んで何処かへと移動している。 対するに我が『御主人様』は徒歩で移動している。そこで思わず「飛ばないのか?御主!ッ」 脛を蹴られた。どうやら禁句だったようだ。その場で脛を押さえて悶絶していると 「早く来なさいッ!ウル!」と叱られた。 前途多難な幕開けであった。 next ゼロの破壊神3
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/262.html
傍らの豪奢なベッドに眠る主・ルイズを見て、 「なんという寝相だ。」そう呟いてある可能性に気付いた。 『天凱凰との戦いにおいて我自身の体から魔力があふれ出していたか!?』 となると勘の鋭い者やほぼ全ての使い魔たちにも悪影響を与えたかもしれない。 「とりあえず見なかったことにしよう、うむ」果たしてそれで済む事だろうか。 ちなみにルイズがどんな寝相をしていたかというと『クェックェッ』という台詞が似合いそうな、そんな寝相である。 「今からもう一度眠ったら二人まとめて遅刻という事態になりそうだな。」 彼は寝る前に出された洗濯物を抱えて寮付きのメイドとやらを探し始めた。 空がやっと白み始めた頃、ほとんどの『貴族』共はまだ惰眠を貪っているだろうから この時間に人の気配が多く集まっている場所に行けば話が早かろう、という事で食堂脇の調理室へ向かう。 すると別の通路から誰か近づいて来る気配がするのでとりあえず立ち止まってみると 予想通りメイドらしい衣服の少女に出会った。 「もし、一つ尋ねたいのだが。」「あら、あなたは…」 「ルイズという名の貴族に呼び出された人間だ。名前は『ウル』」 「私はシエスタです。それで尋ねたい事ってなんですか?」 「この衣類の洗濯を任せられる者を探しているのだが」 「ああ、それでしたら私がやっておきます。」 「面倒をかける様で済まない。」 「いえ、これも仕事のうちですから。」 顔を良く見ると、やはり疲労の色が微かに見える。頭を抱えたくなった。 「あの…どうかされましたか?」 「い、いや何でも無い。失礼する。」 そして朝。 ルイズを起こそうとするも「やだー、もうちょっと」とか「今日は休むー」とかごねるので 殺意を含む視線で強制的に起こし適当に選んだ衣服を渡して 「さぁさぁ、早く着替えて髪を整えて朝食を済ませて授業に出るッ!」と急かした。 髪を整え終わった段階で、何かを企んでいたらしくルイズが頭を抱えていたのだが無視。 食堂で「あんたの食事はこれよ」と床に置かれたりしたが、視線を上に向けなくてもいいので 素直に状況を受け入れる。 教室へ行くまでの間に「教室には使い魔専用の場所があるからそこに行きなさい」と言われて いざ教室へ入ると原因が解っているだけに逃げるわけにもいかず。 とりあえず使い魔専用の場所とやらに腰を落ち着ける。 next ゼロの破壊神5
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3676.html
前ページ次ページゼロの魔獣 「―それは違います 今回の事件の責任は ミセス・シュヴールズひとりに押し付けて済むものではないのです。」 宝物庫。 その巨大な風穴の開いた一室では、真理阿の独演会が行われていた。 話は三十分ほど前に遡る。 城下町からの帰り、偶然にも『破壊の杖』盗難事件の目撃者となった四人は 一夜明けた後、現場検証のために宝物庫へと呼び出された。 ところが、議論が責任問題へとすり替わり、当直のシュヴールズが槍玉に挙げられる事態に至ったため 真理阿は彼女の弁護を始めたのである。 「みなさんの中に 一度たりとも当直に手を抜いたことがないと 自信を持って言える人はいますか? 賊が進入する可能性を想定し 警鐘を鳴らしていた人はいましたか? ―事件は起こるべくして起こりました・・・ 今この時になって ミセス・シュヴールズひとりを責める それは 人として恥ずべきことです・・・」 それは、まさに名演説と呼ぶにふさわしいものだった。 難物と評判の教師・ギトーまでもが、真理阿の言葉にうなだれ、己の未熟さに深く瞑目している。 渦中のシュヴールズは、まるで聖女を崇めるかのような瞳で真理阿を仰ぎ見る。 コルベールはその日の日記に「あれを聞いて泣かぬ者は人に非ず」と、記した。 ルイズは泣かなかった。 この演説に感動できるのは、真実を知らぬ者だけである。 目の前の頼れる使い魔は、口先では人間愛を説きながら、その実、責任の所在をうやむやにしようとしていた。 「・・・とにかく 恐るべきは怪盗フーケです! 宝物庫の外壁が物理攻撃に弱い事を調べ上げ、 事前に爆薬を仕掛けるなんて・・・」 ―訂正しよう。 真理阿は責任の所在をうやむやにはせず、全てフーケに押し付けた。 主を守るためなら、悪魔に魂すら売りかねない女であった。 「マリア殿 よくぞ申して下された たしかに今回の事件の責任は わしらひとりひとりにある」 オールド・オスマンの真理阿に接する態度は、まるで古い王族を迎え入れるかのようであった。 真理阿の演説の元、皆の心が一丸となり、卑劣な盗賊・フーケの打倒に燃えていた。 「・・・あのぉ」 ロングビルは、その場のテンションの高さに取り残されていた。 「おお! ミス・ロングビル 今までどちらに」 「はい 周辺に聞き込みを行っていましたところ フーケのアジトについて 有力な情報を掴む事が出来ました」 「なんと! フーケのアジトを!! ならば 早速じゃが捜索隊を編成して・・・」 「私に!! 私に!! 私にやらせて下さい!!」 オスマンの言葉を待たず、ルイズが叫ぶ。 責任を問われなかった事がかえって罪の意識を重くし、志願せずにはいられなかった。 真理阿もこの事態は避けられないと考えていたのであろう、 ルイズの方を向いて、無言で頷いた。 ついでキュルケが、そしてタバサが名乗りを挙げる。 「まっ ヴァリエールはともかく 真理阿の顔に傷でもついたら大変だからね」 軽口を叩くキュルケだが、その瞳は、どこか熱っぽく潤んでいた。 「心配」 タバサの面構えは、仕えるべき主を見出した、もののふのそれであった。 「しかし 良いのですか学長? ミス・ロングビルに先導させるとはいえ、まだ未熟な生徒たちに・・・」 コルベールの不安そうな問いかけに、オスマンが答える。 「大丈夫! それでもマリアなら マリアなら きっと何とかしてくれる・・・!」 「おお!! そうか!」 「確かに・・・ 確かにマリア殿なら・・・!」 「ああ! マリア 我らの女神!!」 「マリア様 バンザーイ!」 こうして、根拠のない賞賛が惜しみなく送られる中、一向は旅立つ事となった・・・。 前ページ次ページゼロの魔獣
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5917.html
前ページ/ゼロの使い/次ページ 一瞬で自室に到着した彼女はまさに開いた口が塞がらなかった。 「さて、ここなら落ち着いて話も出来よう。まずはここがどういう世界で、お前が何者かを聞かせてくれ。」 唐突に出た使い魔の言葉を聞き、ようやく彼女は我に返った。 普段なら「使い魔の分際で~」となる所だが、せっかく呼び出した虎の子の超強力メイジ。 せいぜい機嫌を損ねまいと、彼女は「通常より」丁寧に返事した。 「この世界はハルケギニア。そしてここはトリステイン国の魔法学院よ。」 「ほう・・・やはりここは異世界であったか・・・」 「私はルイズ・h・・・」 「なるほど、ルイズか。」 「ちょっと!最後まで聞きなさいよ!!」 「長くなりそうなのでな。で、何の用で私を呼び出した。」 「むぅ・・・使い魔とするためよ。主人と感覚を共有したり、秘薬の材料を探したり、主人を守ったりするの存在よ。」 「そうか。で、契約の期間は?」 「使い間か主が死ぬ時まで。」 「つまり永久にお前の手足となるわけだな。」 「そういう事になるわね。他に質問は?」 「いや、今はそれ以外に聞きたい事は無い。」 「じゃあ、今度は私が質問する番ね。まずは・・・」 「私の名はメディルの使い。長ければメディルで結構。肉弾戦はともかく、知能や魔術ならばその辺の者には劣らぬ。」 「そ・・・そう・・・それはそうと、あんたさっき異世界って・・・」 「そうだ。信じられぬだろうが、私は異世界から来た。」 メディルが先ほどから妙に大人しいのには理由があった。 一つは彼らの間で取り決められている掟だった。 それは「魔法により召還された場合、いかなる場合であっても召還者の命令は絶対である」というものだった。 たとえば「どうくつまじん」という同胞が彼の者より明らかに格下の存在に従っていたのはこの掟のためである。 これが只の掟ならば、従う必要は無かったのだが、彼が崇拝してやまないかつての主君の作った物であれば話は別だ。 もう一つは今すべきことがないからだ。 本来なら、生き残った以上すぐにでも彼の主君を蘇らせたい所だが、その方法は1つしかなく、この世界はおろか、あちらの世界でも不可能な方法だった。 忠誠を忘れたわけではないが、いつまでも死人(?)に義理立てしてても仕方がない。 彼は忠義には篤かったが、不可能なことはあっさりと切り捨てるタイプだった。 「何か証拠があるの?」 「これでどうだ?」 メディルが杖を振るうと、床に魔法陣が現れ、そこに青いゼリー状の生物が出現した。 「私の世界のスライムという生き物だ。この世界にはいないであろう?」 「ええ・・・こんなの初めて。」 もう一度メディルが杖を振るうと、スライムとか言う生き物は霧のように消えていった。 「あ・・・」 「心配するな。元の場所へ戻しただけだ。」 「そう。あ・・・そうそう。」 「何だ?」 「これ・・・洗濯しといてくれる?」そう言ってルイズは自分が今しがた身に着けていた物をメディルに投げてよこした。 「・・・よかろう。」 「そう。じゃ、お休み。」 そう言い残して、メディルの新しい主は驚くべき速さで眠りについた。 メディルは大渦を起こす呪文・メイルストロムを最小限の規模で発動させ、そこへ衣類を放り込んだ。 かつては魔王配下最強の呪文の使い手として名を馳せた自分が、今では人間の小娘ごときの使い魔として洗濯までやらされるとは・・・ つくづく皮肉なものだな・・・彼は心の中でそう愚痴った。 次回へ続く 前ページ/ゼロの使い/次ページ
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/145.html
ゼロの使い魔からの支給品 デルフリンガー 北岡秀一に支給 平賀才人の相棒である150cmほどの長剣。 主な能力に魔法の吸収、触れた者の力量を測るなどがある。 本来は錆びを自由に落とせるのだが、ロワに参戦した時期にはまだ思い出していない。 ルイズの杖 水銀燈に支給 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使う杖。 破壊の杖 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに支給 正式名称M72 LAW。 アメリカ製の携帯式対戦車ロケットランチャー。 黄金の剣 シャナに支給 150cmほどの大剣。 鉄をも一刀両断するという触れ込みだが、実はかなり脆い。 エロ凡パンチ・75年4月号 山田奈緒子に支給 どうみてもただのエロ本です。本当にありがとうございました。 実はアニメ版にしか出てないのだが、気にするほどのことではない。 惚れ薬 高良みゆきに支給 水のメイジであるモンモランシーが調合した薬。 飲んでから最初に見た異性に熱烈な好意を抱くようになる。 解除には水の精霊の秘薬が必要で、効果が続いている間の記憶は残る。 秘薬に順ずるものでも解除出来るかもしれない。 タバサの杖 カズマに支給 タバサが使用する木製の杖。 かなり大きいので鈍器としても使用可能。 眠りの鐘 銭形警部に支給 この鐘を鳴らすことで、周辺にいる人間を浅い眠りの誘う。 ただし一度使ったら、二時間は使うことができない。
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/476.html
autolink() ZM/W03-T01 ZM/W03-012 カード名:“ゼロの使い魔”サイト カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2500 ソウル:1 特徴:《使い魔》?・《武器》? 【自】あなたが「集中」を使った時、その効果でクライマックスが控え室に置かれたなら、そのターン中、このカードのパワーを+3000。 TD:こちとら、ゼロのルイズの使い魔だっての! C:くそっ、無駄にヒラヒラしてて洗いにくいったら… レアリティ:TD C illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 一度の集中で5500+集中補正までパワーが上昇するので、レベル1以上と相打ちが狙えるようなら使うのも手。 ティファニア・ウエストウッドやゼロのルイズなどのパワーを上げるものと組めば、レベル3を打ち取ることも不可能ではない。 とはいえ、無理に集中を使用して終盤にストックが足りなくなる事態は避けたいところ。 D.Cのカードに多いデッキトップ確認・デッキトップコントロールと併せて集中を使用するデッキや、 ディスガイア以降増えてきたレスト不要の集中持ちと併せて使用すれば、バニラよりも活躍できる機会は多くなるだろう。 ・関連ページ 「サイト」?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4193.html
前ページ次ページゼロのエルクゥ 昨夜と同じく厨房で朝食を終えて教室に入ると、教室中の視線が一斉にこちらを向いた。 昨日と同じような、あまり良い意味のこめられた視線ではなかった。くすくすという忍び笑いも漏れ聞こえてくる。 無視して足を進めるルイズ。耕一もそれに続いた。 教室の中には、先程のキュルケもいる。その隣には、ルイズとは違う意味でキュルケとは対照的な、透き通るような蒼い髪をした小柄なメガネ少女が本を広げていた。 「貴族だの魔法だのっつっても、教室ってのは変わらないもんだなぁ……」 甲高いおしゃべりの喧騒に、高校時代を思い出す。 暫しそんな風に懐かしい気分に浸っていると、ガラリとドアが開き、明らかに生徒ではない人物が教室に入ってきた。同時に、お喋りがピタリと止む。 ゆったりした紫色のローブとマントを身に纏い、同色の、これぞ魔女、とでもいうようなトンガリ帽子を被った、恰幅のいい中年女性だ。 女性はゆっくりした足取りで教壇に昇ると、ぺこりと一礼した。 「皆さん、おはようございます。私の名前はシュヴルーズ。二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。これから一年、皆さんに『土』の魔法を講義致します」 シュヴルーズは穏やかな口調で述べると、満足げな微笑みを浮かべながら、教室を見渡した。 「春の使い魔召喚の儀式は、皆さん大成功だったようですね。このシュヴルーズ、こうして春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 その視線が、ある一点で止まる。 「おや、ミス・ヴァリエールはとても変わった使い魔を召喚したものですね」 シュヴルーズは、耕一とルイズを見て、とぼけた声をあげた。 その声には、何か含む所は微塵もなく、文字通りの意味しか込められていなかったが、元から含むところを持っていた人間には、十分な刺激らしかった。 「ゼロのルイズ! 『サモン・サーヴァント』の魔法を使えないからって、その辺歩いてた平民連れてくる事はないだろ!」 肩にフクロウを載せた小太りの男子がからかいの声を上げると、途端に教室中が笑いに包まれた。 ルイズは肩を震わせて俯いてしまう。唇を噛み締め、耐えるように。 「そうだそうだ! どんな魔法を唱えても失敗しちまう、魔法成功確率ゼロのルイズ!」 「ゼロにはお似合いの使い魔だよな!」 ―――なるほど。あのあだ名はそういう意味か。 ルイズが全身を震わせ始めた時、耕一はさっと、甲を前に向けて左手をかざした。 「あー。とりあえずこの通り、『コントラクト・サーヴァント』とやらは成功しているんだから、成功確率はゼロじゃないんじゃないかな?」 その言葉に、しーん、と教室が静まり返った。 「それに、俺自身も、変な鏡みたいなのに無理矢理吸い込まれてこんな知らないところに飛ばされてきたもんでね。『サモン・サーヴァント』というのも成功してるんじゃないかな。そこの君、どう思う? 成功確率はゼロだと思うかい?」 最初にからかった小太りの男子を指差すと、あわあわと見るからに焦り始める。 その様子を見て、太っちょ男子の隣に座っていた金髪の少年が、胸に差していたバラの切り花をキザったらしく手に持った。 「フン。平民に簡単に言い包められてどうするんだいマリコルヌ。口裏を合わせれば、そんなのどうとでも説明がつくじゃないか。その使い魔のルーンだって、絵の具で書いたのかもしれないだろう?」 バラを手繰りながら、そんな事を言う。 これでもかというぐらいにドレープの付いた飾りシャツの胸元から素肌が見えているこのバラ少年、ちょっと、いやかなり、悪趣味と言わざるを得ない。 「お、おお。さすがギーシュ! そうだな! そうに違いない!」 沈静していた勢いが再び戻るのを見て、やれやれ、と一つ嘆息。 教壇のシュヴルーズに目を向けると、ちょうど彼女が、手に持った二の腕ほどの長さの杖を振り、何がしかの呪文を唱えたところだった。 「もがっ!? もご、もごーっ!」 次の瞬間には、太っちょ男子と悪趣味男子、それに一緒になって笑ったり囃し立てたりしていた生徒の口に、土で出来たフタがかっぽりと嵌っていた。 「お友達をそんな風に言うものじゃありません。今笑った人たちも同罪です。そのままで授業を受けなさい」 見た目はコメディだが、一瞬で、何も無いところに、複数の土塊を出現させる、という現象に、耕一はかなり驚いていた。 ……口だけだからあれで済んでるけど、アレにいきなり目とか鼻とか塞がれたら、かなりやばくないか? 魔法というもののデタラメさに、耕一は少し肝が冷えたのだった。 「さて、ミス・ヴァリエール、魔法の四大系統はご存知ですね?」 「は、はい。『火』『水』『土』『風』の4つです」 「はい、ありがとうございます。以上の4つに、今は失われた系統、『虚無』をあわせて5つの魔法系統が存在する事は、皆さんもご存知の通りです」 四大属性+特殊系統が一つってホントにRPGの属性みたいだな、と耕一はにべもない事を考えた。 「その5つの系統の中で、『土』は、最も重要な位置を占めると私は考えます。まあ、『赤土』の二つ名の通り、私が『土』属性のメイジだからという身びいきは否定しきれませんが」 そう薄く笑う仕草は、上品なおばさまそのものだった。嫌味じゃないセレブってヤツだ。 「『土』は、万物の組成を司る、重要な属性です。様々な金属の製造や加工、家屋などの建築には欠かせない魔法であり、農作物の育成や収穫などにも大きな役目を果たしています。『土』系統の魔法は、皆さんの生活に密接に関係しているのです」 シュヴルーズがさっと杖を振り一句唱えると、机の上に小さな小石が3つほど現れた。 「今日は、『土』系統魔法の基本である『錬金』の魔法を覚えてもらいます。『土』属性の人達は、もう既に覚えている人も多いかもしれませんが、基本は重要です。そういう人も、もう一度おさらいをするように」 もう一度杖を振り、今度は少し長めの呪文を唱える。 すると、小さな小石がぱあっと光を放った。それが収まった時には、その石は、キラキラとした金の光沢を持っていた。 「ごご、ゴールドですか!? ミズ・シュヴルーズ!?」 キュルケが、目の色を変えて立ち上がった。 「いいえ。これは真鍮です」 シュヴルーズが答えると、なぁーんだ、と、つまらなそうに腰を下ろす。 清々しいぐらいの現金っぷりだった。 「『錬金』の魔法は、このように、一つの物質を別の物質に変えてしまう魔法です」 ―――それが基本の魔法という時点でとんでもないなあ。 さっきの口を塞いだ土もこれで作ったのだろうか。と、耕一は未知の知識に好奇心を膨らませていた。 「『錬金』という名前にもなっているように、金を作り出す事を目的として生まれたこの魔法で最も困難なのが金の製造です。可能なのは、『土』のスクウェア・メイジだけです。私はただの、トライアングルですから」 謙遜の言葉でありながら、その底には確固とした自信が垣間見えた。 スクウェア(四角形)、トライアングル(三角形)、という名前からして、レベル4とかレベル3とか、そういう意味だろうか。 「それでは、誰かにやってみてもらいましょう。そうですね、ミス・ツェルプストー。どうでしょう?」 新たな小石を出して、シュヴルーズがキュルケを指名した。 「私ですか?」 「ええ。ゴールドに興味があるようでしたので。魔法の力は意志の力。それを成したいと願い、想像する力を創造する力に変える。それが『錬金』です」 「わかりました。やってみますわ」 キュルケは席を立ち、ぷるんぷるんと胸を揺らしながら教壇まで降りていく。 ……明らかに、男子の視線がそれに集まった。この世界でも、女性の魅力の価値観というものはあまり変わらないようである。 「いや、俺は楓ちゃん一筋だからね」 「またあんたは……誰かと話してるの? あの、シグナル、ってやつで?」 「そういうわけでもないんだけど……こう、総論と各論の齟齬というか」 「意味わかんないわよ……」 ルイズにバカな説明をしている内に、教壇では今まさに、キュルケが杖を振りかぶるところだった。 「ゴールドなんて贅沢は言わないから、せめて何か宝石っ!」 実にわかりやすい呪文と共に杖を振り下ろす。 小石が光を放ち、収まり、そこにあったのは……。 「……何これ?」 鮮やかな黄色の小石であった。 「これは硫黄ですね」 「硫黄? 火の秘薬の硫黄? これが?」 「はい。使い魔を見るに、ミス・ツェルプストーは『火』の属性。イメージが抽象的なもののようでしたから、それにちなんだものが出来上がったのでしょう」 「うーん、宝石は無理だったかぁ」 「キチンと何の宝石を作るかをイメージしさえすれば、きっと出来るようになりますよ。ではもう一人、やってもらいましょうか」 再び新たな小石を出し、ぐるりとシュヴルーズが周囲を見渡して……自分の使い魔と何やらひそひそ話しているルイズを見咎めた。 「それでは、ミス・ヴァリエール。前に出てやってみてください」 そう言った瞬間、ざわ・・・と教室中がざわめいた。 「あの、先生。危険ですから、やめておいたほうがいいですわ」 「危険? どういう事です?」 教壇の側にいたキュルケがキッパリと言うと、教室の中のただ二人以外の全員が、然りと頷いた。 ちなみに、一人は耕一。もう一人は、キュルケの隣にいた、教科書を広げる振りをしながら別の本を裏で読んでいる蒼い髪の少女だった。 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。あまり実技の成績が良くない事は存じていますが、座学に関しては学年首席であると、非常な努力家である事も存じております。さあ、ミス・ヴァリエール、気にせずにやってごらんなさい。数多くの失敗から、成功は生まれるものです」 「いや、あまり、どころじゃ」 「……やります」 キュルケが言葉を続けようとしたところで、ルイズはまっすぐに立ち上がった。 そのまま有無を言わせずに教壇に降りていく。キュルケは諦めたように首を振ると、自分の席に戻って机の下に隠れた。 「……何やってんだろう」 見ると、周囲の生徒全員が、まるで避難訓練か何かのように物陰に隠れ始めていた。 あの蒼い髪の少女まで、机の下に潜っている。 「さあ、ミス・ヴァリエール、作りたい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 「はい」 こくりと頷いて、ルイズは目を閉じ、杖を掲げた。 事態が進むに連れて、教室中が戦々恐々としだす。 「ルイズの使い魔さん あなたも隠れていた方が良いわよ」 「へ?」 一体なんなんだ、暴発でもするのか、と首をひねっていた耕一に、キュルケが声をかけた。 「なあ、わけがわからないんだが……一体何がどうなってんだ?」 「爆発」 「え?」 机の下でも本を広げていた蒼髪少女がぼそりと呟いた瞬間、ルイズが裂帛の気合と共に杖を振り下ろした。 「『錬金』!」 刹那、小石がシュヴルーズやキュルケの呪文とは明らかに違う勢いで光り始め、それは見る間に視界を覆っていき――― 「ッ!!」 ずがーん、と、盛大に爆発した。 猛烈な光と煙が視界をゼロにする。耕一は、運良く最初の光の時点で目を覆っていたので大事なく済んだ。 「げほっ! げほっ! こ、こういう事か……っ!」 まさか、本当に暴発だとは。 光と煙が晴れた時、目の前にあったのは、惨状、の一言だった。 小石が乗っていた教壇は教室の端まで吹き飛んでいた。ルイズとシュヴルーズは爆発を直接くらったのか、ススだらけで倒れてぴくぴくと痙攣している。 すりばち上に配置された机もところどころが吹き飛び、その下に隠れていた生徒を瓦礫にまみれさせていた。 「…………」 使い魔召喚の儀式から初の授業という事で、大きすぎるもの以外は連れてこられていた使い魔達がぎゃあぎゃあと暴れているのを横目に、ゆっくりとルイズが立ち上がる。 無残な格好だった。魔法で保護されているという制服がボロボロになっている。ブラウスの破れ目から健康的な色をした肩やお腹が露出し、スカートは下着を隠しきれない程に傷ついていた。 ルイズはけほっとススの混じった咳をし、どこからか真っ白で清潔そうなハンカチを取り出すと、顔についたススを拭き取りながら、口を開いた。 「……ちょっと失敗したようね」 口を塞いでいた赤土がいつの間にか取れている生徒達が一斉に文句を言い始めるのを尻目に、耕一は、楓とよく見ていた吉本新喜劇を思い出したのだった。 前ページ次ページゼロのエルクゥ
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/166.html
前ページ次ページゼロの剣士 #1 自分の部屋、自分のベッドを目の前にして、少女は肩を震わせていた。 薄桃色の長い髪は肩の動きと共に波打ち、 怒りとも悲しみともつかぬ感情の揺れが、涙となって瞳に溜まる。 少女の名はルイズ・フランソワ―ズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 『ゼロ』といういささか不名誉な二つ名を持つメイジだったが、彼女は今日、ある魔法を成功させた。 サモン・サーヴァント――使い魔召喚の儀である。 そのおかげで昨夜、少々不安に思いながらも用意した使い魔用の寝床も無駄にせずに済むはずだった。 今頃は大好きな姉に向けて、どんな使い魔を召喚したか、喜々として手紙を書いているはずだった。 しかし――藁で作ったその寝床には今、彼女の夢想した美しくも強力な使い魔など存在せず、 代わりにボロボロに傷ついた1人の男が彼女自身のベッドで横たわっていた。 「一体、この状況はなんなのよ……?」 ルイズは本日何十回目かの自問を再び繰り返し、また頭を抱える。 彼女がサモン・サーヴァントで呼び出したのは1人の男。 それもボロボロに傷ついて瀕死になった、ただの平民だった。 召喚される使い魔は主の力量を示唆すると言われるが、これは彼女にとってあまりに残酷な現実。 コルベールは、この男は身なりから見て傭兵かもしれないなどと言っていたが、それがなんだというのか? 傭兵と言えど、平民がメイジに勝つなどありえない。 実際キュルケなど、「このヤケドは火のメイジにやられたのかもね~」などとやけに誇らしげにのたまって……。 「どうして? どうして私だけ……」 泣き言を言っても、どこからも返事は帰ってこなかった。 治療をしたとはいえ、この男はまだ立派な重傷人。 しばらくは寝たきりのままだろう。 明日、新しい使い魔で溢れる教室に1人で入っていくのかと思うと ルイズはひどくみじめな気持になって、溜まっていた涙が遂にぽろりと落ちた。 最初の涙がこぼれると、あとはもうと止めようもない。 少女はただ声を押し殺し、まるで吐くような格好で泣きじゃくった。 結局その日、ルイズは新しい使い魔と一言も声を交わすことなく、最悪の気分のまま眠りを迎えた。 #2 ――翌朝 「ここは、どこだ……?」 目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。 魔剣戦士ヒュンケル、ハルケギニアに来て初の覚醒である。 痛みを堪えて身を起こし、辺りを見回すと、明け方の微かな光の中で、淡いピンクの色が目を引いた。 目をこらすと、床に誰かが横たわっているのだと分かる。 「マァム? ……いや、人違いか」 床に敷かれた藁の上で、見知らぬ少女が寝息を立てていた。 状況から見て、どうやらこの少女が看病をしてくれたらしい。 少女は回復呪文の使い手なのか、致命的だったはずの傷も、かなりの部分が治っていた。 いや、実際には未だ常人には耐えがたい大怪我なのだが、この男にとっては「まあ動けるかな」程度には回復していた。 おそらくヒュンケルが眠っていたベッドも、本来は少女のものに違いない。 「感謝しなくてはならないのだろうな」 目を伏せてつぶやくと、ヒュンケルは少女をそっと抱えあげ、ベッドの上に運んだ。 少女は少し身じろぎしたが、すぐにまた寝息を立て始める。 起こして事情を聞くことも考えたが、ヒュンケルは魔王軍の軍団長をしていた男である。 普通の少女が関わりを持ってためになるような人間では決してないという自覚が彼にはあった。 もしかするとヒュンケルは、少女の親や、友人の仇でさえあるかもしれないのだ。 すぐに立ち去った方が無難だろう。 ヒュンケルは壁に立てかけてあった魔剣を見つけると、それを手に取り、部屋から出て行こうとした。 しかし―― 「ここは、パプニカではない……?」 窓からふと見えた光景が、ヒュンケルをたじろがせた。 最初は民家だと思っていたこの部屋だったが、実際は草原にそびえる小城の一室。 ヒュンケルがダイと死闘を繰り広げた場所はパプニカの地底魔城だったが、 パプニカの主たる拠点はヒュンケル自身がのきなみ潰してしまっていた。 こんなに目立つ城を魔王軍の諜報部隊が見逃しているはずもないし、なによりも―― 「月が、二つ……!?」 霞みはじめた空に浮かぶは双月。 やはり自分は死んでいて、黄泉の国にいるのかと疑うほど現実味のない光景だった。 「やはり、この子を起こした方がいいか……。 ……む、あれは?」 ヒュンケルの目が窓の下、薄暗がりの中を動く影を捉える。 服装から見て、どうやらこの城のメイドのようだ。 ヒュンケルはもう一度かたわらで眠る少女を見据えると、静かに部屋から出て行った。 前ページ次ページゼロの剣士