約 2,158,179 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2031.html
「あの、大丈夫ですか?」 「…ほっといてよ」 育郎に一通りの殴る蹴るの暴行、さらには首を絞めようとしたり、最後には月に 向かって叫んでみたり、一通りヒートアップしたエレオノールであったが、酒が 抜けてきたのか、今ではすっかり部屋の片隅でうずくまる負け犬となっていた。 あるいは酒が回りすぎているのかもしれない。 「そう言われても…」 まさかエレオノールを部屋に鎮座させたまま寝るわけにもいかないので、正直 気は進まないが、とにかくエレオノールを説得というか、とりあえず話を 聞いてみる事にする育郎であった。 「あの、こんな事を聞くのは失礼だとは思うんですが…何故そんな頼みを?」 問いかけには答えず、しばし恨みがましい目で育郎をじっと見るエレオノール。 いっその事廊下で寝ようかと考え始めた時、エレオノールがやっと口を開き、 ボソリと一言呟いた。 「…結婚したいのよ」 エレオノールの言葉をゆっくりと頭の中で反芻し、まっさきに頭に浮かんだ事 以外に、他の意味はないかとじっくりと思考する。 無かった。 「あの、それと胸が何の関係が?それにそういう事はバーガンディさんに相談」 「婚約解消された」 非常に気まずい空気が流れる。 「す、すいません…ってちょっと待ってください!まさか胸のせいで婚約を? まさか!そんな事あるわけが」 実際そんな訳はないのだが、それで納得するのならこんな事にはなっていない。 「じゃあなんでよ?私の何が悪いって言うの!?」 主にその気性 「はぁ…何か特別な事情があったんじゃ?」 ありません 「…例えば?」 「え?いや…それはその…」 婚約解消の理由などと急に聞かれても、そうそう思いつけるものでもない。 「やっぱり…どうせ胸の無い女なんて結婚できないのよ」 「いえ、ですからそんな事はないですって」 「それに年も…17じゃなかった、27にもなって結婚してないなんて」 「それぐらい僕の国では珍しい事じゃないですよ」 「嘘ばっかり…」 ますます塞ぎこむエレオノールを放っておく訳にも行かず、なんとか慰めようと 声をかけるが、当のエレオノールは育郎に疑わしげな視線を向けたままだ。 「う、嘘じゃないですって。その…エレオノールさんは十分魅力的ですよ」 「…じゃあ、もし貴方が貴族だったとして、私が婚約を申し込んだら受ける?」 「え?」 「やっぱり…」 「いえいえ!喜んでお受けしますよ!」 「 嘘 だ !!! 」 「お父様!?」 「ルイズのお父さん!?」 突如部屋に飛び込んできたヴァリエール公爵に驚く二人。といっても、実際は 扉の前で聞き耳を立てて部屋に乱入するタイミングを図っていたのだが。 「じゃなかった…話は聞かせてもらったぞ! お前たちが愛し合っていることは良く分かった!」 「「は?」」 「本来なら平民なんぞに大事な娘をくれてやるなど言語道断だが」 「お父様!な、なにか勘違いなさってませんか!?」 エレオノールが慌てて誤解を解こうとするが、公爵はかまわず話を続ける。 というか最初から聞こうとしていない。 「そこまで決意が固いなら…お前たちの仲を認めよう!」 「お父様!そもそも『コレ』は平民ですよ!?」 「お前の心配はもっともだ…さすがにわしも平民と貴族の結婚など認めん…」 その言葉に誤解は解けていないようだが、ややこしい事態は避けられたと ほっと胸をなでおろすエレオノール。 「故に、まずこの男は平民でも貴族になれる国に行ってもらう!」 が、世の中そんなに甘くなかった。 「しばらく時間がかかるだろうが、彼が立派な貴族になれるその日まで、 待ってくれるな、エレオノールよ…」 「いえいえいえいえいえ!何を言ってるんですかお父様!? ほら、アンタからもなんか言いなさ…って何処見てるのよ?」 見れば育郎は明後日の方を向いているではないか。さらに文句を言おうと 口を開こうとした時、突然育郎はエレオノールを押し倒した。 「ああああああああああんた一体ななななななな何を! お父様のいう事を真に受けるにしたって、もうちょっと時と場所を! それに順序とかムードとかそういうのを大事にって何言ってるの私は!?」 「大丈夫ですか、お父さん!?」 「…は?」 エレオノールを無視して、育郎は何故か床に倒れている公爵にかけよる。 「お父様!?な、何が起こってるの!?」 急な展開から、さらにわけのわからない状態に陥ったエレオノールの声に答えた わけではないが、とりあえずの疑問の答えが足元から聞こえてきた。 「帰ってきたぞ相棒!」 「きゅい!」 視線を足元に移すと、先程エレオノールが窓から投げ捨てたデルフが転がって いるではないか。さらに窓のほうを見ると、ルイズの友人の使い魔の風竜が 窓に顔をつっこんでいる。 「お前、部屋にいれろと入ったが、投げる事はねえだろうが。 危うくこのきついねーちゃんにぶち当たるところだったぜ」 どうやら先程の育郎の行動は、エレオノールを守るための行動だったらしい。 礼の一つも言うべきかと思ったが、次の瞬間聞こえてきた言葉に、その考えは はるか彼方へとふっとんだ。 「にしても、このおっさんも真正面から飛んできたんだから、避けれなかった もんかねえ?見事なまでに顔面直撃だぞ?やっぱあれか?歳か?」 固まるエレオノールをよそに、公爵を見ていた育郎が安堵の声をあげる。 「…よかった、気を失ってるだけみたいだ」 「よかないわよ!」 「え?」 「あー…相棒、ひょっとしてしっぽり始めるところだったか?」 「しっぽり?」 「ちがーーーーう!!!」 「きゅい!」 「あ、あんたらねえ…」 「どうした、何があった!?おお、旦那様!」 「エレオノール様、これはいったい?」 騒ぎを聞きつけたというか、この部屋に近づくなと公爵に言われていたが、 いくらなんでもコレを見逃したらそれはそれで問題になるだろうと判断した 衛兵達が部屋になだれこんで来た。 いい加減疲れてきたエレオノールだったが、さすがに入ってきたのが衛兵だと 分かると、顔色が変わった。 このややこしい状況を解決する為には、当然の事ながら何故自分がこの部屋に いるのか話さなければいけなくなり、となると『胸でっかくしてもらいにきた』 なーんてのは、エレオノール的にはとんでもない恥なわけで。 もっとも、侍女が彼女の掃除中に豊胸グッズを一度ならず、何度も見つけたことにより、 彼女の胸の悩みなど、屋敷中の人間に知れわたっているのだが。 「あの、これは」 「だぁぁぁぁぁぁ!あんたはちょっと黙ってなさい!」 説明しようとする育郎の言葉をさえぎりながら、この事態を解決するべくその 類まれなる頭脳をフル回転させるエレオノール。 「ま、まさか貴様…」 「なに!貴様カトレア様を…変わり果てた姿にしただけでなく旦那様まで!」 「え、いやこれは」 こ、これよ! 「ちょ、ちょっとあんた!」 すばやくエレオノールが育郎に耳打ちする。 「な、なんですか?」 「後で私がちゃんと説明しとくから、ここはあの竜に乗って逃げなさい」 「え?でも」 「それにお父様が倒れてる間に逃げないと!あんた変な誤解されたままだし、 このままじゃ本当に別の国に送られかねないわよ! あんたルイズの使い魔なんでしょ?」 育郎は床に倒れる公爵を見て、先程のやり取りを思い出す。 「そ、それもそうですね…」 「じゃあほら!早く!そこに転がってるうるさい剣も忘れないで!」 「わ、わかりました。すいませんエレオノールさん…シルフィード!」 「きゅい?」 「ちょっと下がってて」 「あ、待て貴様!何処へ行く!」 窓を占領していたシルフィードが下がるのを確認した育郎が、すばやくデルフを 拾い上げ、目にもとまらぬ速さで外に飛び出す。 「な、早い!?」 「竜に乗って逃げたぞ!追え追え!」 騒ぐ衛兵をよそに、これで安心と一息つくエレオノール。 あとは適当に言い訳を考えて、お父様の誤解をとけばいいわ… とりあえず衛兵達に、育郎を追いかけるのを止めさせようとしたその時、視界の 片隅に、この場に一番いて欲しくない人の姿が映った。 「う…お、お母様…」 彼女の母親、ヴァリエール公爵夫人その人である。 「これは何の騒ぎですか!」 「お、奥様!」 やっとエレオノール的に騒ぎが沈静化したと安心したところであったが、 ヴァリエール家ヒエラルヒーの頂点に立つ母の登場により、再び事態が ややこしい事になりかねないと、嫌な汗が流れる。 しかも怒ってる! お母様が怒る時は大概ろくな事にならないってのに… 数々の嫌な記憶を思い出しながら、公爵を介抱する衛兵に近寄る母を見る。 「あなた…大丈夫なのですか?」 「あ、はい奥様。気絶しているだけのようです」 その言葉に公爵夫人はホッと一息つく…という事も無く、無表情にぺしぺしと 公爵の頬を叩く。 「ほら、何時まで寝てるんですか、それでもヴァリエール家の家長ですか」 「あ、あの、奥様?」 「そもそも公爵たるものが、こんな真夜中に…学生のころとは違うんですよ!」 最初はかるく叩いていた手に、どんどん力がこもっていく。 「う…あぁ…がう」 そろそろビンタから、ナックルと裏拳の往復に移ろうとしたその時、公爵がやっと うめき声を上げた。 「やっと起きましたか」 「…ち、違うんだカリーヌ…アマゾネスなんてあだ名をつけたのはグラモンで… アマゾネスを越えて既にバーバリアンの領域って言ったの俺だって? グラモンの野郎裏切りやがったな…いやちが」 「…起きなさい!」 「グフっ!な…何が…」 「あなた、それはこちらの台詞です。何があったのですか」 「む、むぅ…急に何かが顔に飛んできたような… しかしやたら頬がヒリヒリするのはなんだ? あと顔より腹が涙が出そうなほど痛いのだが…」 「倒れた時、どこかにぶつけたのでしょう」 いけしゃあしゃあと言い放つ公爵夫人のその言葉に、あえてツッコミを入れる ような命知らずは勿論この家にはいない。 「そもそも何故こんな部屋にいるのです? この部屋は…確かルイズの使い魔に用意した部屋のはずですが」 「むぅ…実はな、エレオノールとあの男」 「おおおおおおお母様!」 「…なんですか、エレオノール。そういえば貴女も何故この部屋に?」 「えーと…」 婚約云々の話が母の耳に入れば、それはそれで取り返しのつかない事態に陥り かねないと、つい反射的に話をさえぎったが、まだ適当な言い訳等考えていない。 「あー、カリーヌ実は」 「あの男に襲われそうになったんです!」 「「「………は?」」」 その場にいた衛兵全員が互いの顔を見やる。 いや、それはないだろう 命知らずにも程がある いや、でも見た目は… 2、3言葉を交わせば本性がわかるだろ? すごいMとか 東方は進んでるな… アイコンタクトでそんなやり取りを交わす衛兵をよそに、一人真面目にその 言葉を受け取った公爵夫人が、目を丸くしてエレオノールを見る。 「ど、どういう事ですか!?」 「え、いや…その…襲われたというか、迫ってきたというか… カトレアのことで話があると呼び出されて…こう、一目ぼれとかなんか」 「酷いのね!気持ちよく寝てたのに、いきなりその剣が降ってきたの!」 「ごめんね」 「い、イクローが悪いんじゃないのね…悪いのはあの女なのね!」 一方そのころ、自分がさらにややこしい立場に陥っているとは思いもよらない 育郎は、空の上でシルフィードのおしゃべりに付き合っていた。 「おめえ、あの姉ちゃんに俺をぶん上げたの、わざとじゃねえだろうな?」 「そ、そんなこと無いのね!手が滑ったのー!」 慌てて否定する様子が逆に怪しさ全開である。 「シルフィード…」 「きゅい…だって…お姉さまにもし何かあった時の為にって、眠いのを 我慢して遅くまでおきてたのに…」 「そうか、タバサが」 後でお礼を言わなきゃと呟く育郎の背中で、デルフがあることに気付く。 「…ってすっかり寝てたんじゃねえか、おめえ」 「ちょ、ちょっとウトウトしてただけなのね」 「いや、気持ちよく寝てたって言ってなかったか?」 「き、気のせいなのね!」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1014.html
第2章 中編 「……50Mプールぐらいあんじゃねぇか?ここ。」 トリステイン魔法学院の食堂は(ry …とにかく広くて豪華です。 この学院では、マントで学年分けしてるみたいだ……。 一年生は ”marrone”(伊:茶色の) 二年生は ”nero” (伊:黒い) 三年生は ”viola”(伊:紫色の) 一年生より、三年生の方が凄い魔法とか使えるのか? 食堂には生徒以外にも教師が朝食をとりに来ていた。 (教師か…。 それこそ”凄いヤツ”がいてもおかしくないな) キョロキョロと辺りを見渡していると、ルイズが講釈し始めた。 「どう? 凄いでしょ。」 「あぁ。とても豪華だし、人もいっぱいいるな。」 得意げにふふんと鼻を鳴らし、話を続けるルイズ。 「トリステイン魔法学院が教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 「魔法だけじゃない?」 「メイジはほぼ貴族なの。貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ」 食事も”貴族らしく”ってことらしい。 マナーは勿論、質と量も。 ほんとは、この食堂へは『平民』は一生入れないらしい。 それはそれは。とあいまいな返事を返しつつ、ルイズのため椅子を引く。 桃色がかったブロンド娘は気品良く、椅子に腰掛ける。 「隣に座っても?」 こちらもマナーとして一応御主人様にお伺いを立てる。 「残念でした。 あんたは…」 そこまで言って、ルイズは固まってしまった。 どうした? スタンド攻撃でもされたか? オラオラですか? 無駄無駄ですか? 「……」 「もしかして…」 「……」 「オレの分、準備していない?」 「…Yes!Yes!Yes!……(OH MY GOD!)……」 「………(ドジこいたーッ! 昨日厨房に言い忘れてた! とっておきの作戦があったのに!こいつはいかーん! チクショー!!)」 「……それはねぇよ。 ルイズ…」 「き、貴族でも、極々稀にミスはするものよ!」 「………」 今度は使い魔が黙る。何か訴えるかのような目つきでルイズを見つめる。 「……な、何よ?」 「―――ミスより」 「は?」 「ミスよりキスがいいな……」 「…なッ!!」 今度はルイズが赤くなる。それにして感情の起伏が激しい娘だ。 「御主人様より、『ごめんねのキス』を頂ければ幸いです…」 仰々しくお辞儀をして、ゆっくりと頭を上げる。 …ヤバイ。 肩を小刻みに震わせている。 キレるな。これ。 調子に乗るんじゃあない!とテーブルにあったフルーツを投げつけられる。 貴族のマナーは一体何処へ……。 「『食べ物を粗末にしちゃいけません!』って、危ないっ!」 至近距離である。いくら少女の力でも痛い。 特に落とさないように、掌で受けるから痺れる痺れる。 数個投げると、ルイズは椅子に座りなおし、そっぽをむいたまま告げる。 「……そ、それでも食べてなさい!」 「……キスは?」 今度は燭台を投げようとするルイズを見て諦めた。 …朝は『濃い目のエスプレッソに、砂糖をたっぷり入れたヤツ』って決めてんだがなぁ……。 怒るルイズから逃げるため、食堂の壁際まで逃げてきていた。 でもエスプレッソどころか、コーヒー自体あるかどうか……。 パスタやピッツァは? そもそもトマトはあんのか? …すげー不安だ。 朝食は軽めに済ませる性質(たち)のスクアーロは、フルーツと思わしきものに噛り付く。 リンゴだよな?… こっちは…どう見てもオレンジ……。 元の世界とほとんど似ているが、なんとなく違う気がするフルーツを味わう。 味は悪くない。というか美味い。……良かった。これで食事は期待できる。 この味が”美味い”という感覚ならば、料理も高水準だろう。 しかし、これはあくまでも貴族用だ。 使い魔でしかも平民(とされている)の自分の食事はどうだろう? 朝はともかく、昼食や夕食が貧しいものであったら……。 「かなりヤバイな…(自制が利くかどうか… きっと暴れるね…)」 交渉なり、実力行使なりで、どうにかしなくては……。 ルイズと交渉するか…? だめだろうな… きっと…。 窃盗・恐喝でもするか…? …それじゃ、ただのチンピラだ。 …最終手段だな…。 もっと、楽で確実で。できれば美味いものを…。 一年生の女子生徒が数人、こちらを”ちらちら”見ているのに気づく。 笑顔で手を振る。 あ… 貴族様だから、怒るか無視する? (あれ… 笑ってる… というか、喜んでる?) 以外にも邪険にするでもなく、キャッ!キャッ!とはしゃぎながら食堂を出て行った。 少しだけ気分が和んだ。 なるほど。どこの世界でも”乙女は乙女”なのか。 ついで(…といっては失礼だが)に、料理を運ぶメイド達にも手を振る。 一人一人、目が合った順に手を振る。 流石に仕事中であるし、目の前で貴族様の給仕をしているからか、表情や仕草に変化は無い。 そりゃそうだ。と割り切ろうと思った時、一人の黒髪のメイドが横を通る。 (この子には、最初の方で手を振ったな… 黒髪か… うん!”ディ・モールト”可愛い!) 通り過ぎると思った時、目の前で立ち止まり、感謝の意を述べきた。 「御心遣い、ありがとうございます。 貴方様も、お仕事頑張ってくださいね」 …マジで? この世界の女性は優しいなー。 …たとえ社交辞令だとしても。 コチラコソ、アリガトウ。キミモガンバテネ。 ……何故かカタコトでお礼を返す。 メイドは微笑を湛えたまま、礼をして厨房の方に下がっていく。 なるほど、貴族相手(オレは違うが)には笑顔と礼儀が基本てか? 感心しながら、メイドが下がっていった厨房の方をぼーっと見る。……厨房? ―――厨房関係者を味方につける? 余った食材なら、少しぐらい分けてくれるだろうし、さらに料理できるやつなら申し分ない。 良し。決定。後で厨房に行こう。 とりあえず、行けば何とかなるだろう! 気づくと、昨日は何も食べていなかったせいか、果物を残さず全て食べていた。 遠くにいる御主人様も、どうやら食事を終えたようだ。 さあ、御主人様の元へ馳せ参じますか―――。 「…意外と順応してるなぁ。オレ。」 自分の適応能力の異様な高さを感心しながら、うんと背伸びをした。 なんだかんだで、朝飯抜きにせず、 ちゃんと自分に果物を(投げつけて)与えたくれた (すこ~しだけ)優しい御主人様に (すこ~しだけ)感謝しながら ルイズの元へ歩き出す―――。 「…あんた、一年生とかメイドに『手』振ってたでしょ? 笑顔で。」 「え? あ、あれは…。 挨拶です。挨拶。」 「今日から三日間、ご飯抜き。」 「……飛びてー」 前言撤回! 全然優しくない! …早く食料事情を何とかしなければ……。 ―――今晩当たり襲いかかろうか? ……なんとも不穏当なことを考える鮫であった。 「The Story of the "Clash and Zero"」 第2章 ゼロのルイズッ! 中編終了 To Be Continued ==
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/812.html
「明日は虚無の曜日とか言って休みだってな。」 あれから数日がたったある日、ポルナレフが唐突に切り出した。 「そうね…て、なんであんた知ってんの?」 「ギーシュが言っていた。明日の虚無の曜日にモンモランシーとか言う小娘と街に行くとかな。」 (あれ?あいつ昨日ケティと仲良さ気に喋ってなかったっけ? さてはまた…) ルイズは昨日目撃したことを思いだし、ギーシュにまたあの不幸が起きないよう心の中で祈った。 「で、お前明日用事あるか?」 ルイズは少し考えて 「特に無かったと思うけど…」 と答えた。 「ちょうどいい。なら、明日その街に案内してくれ。」 「ハァ!?」 ルイズは素っ頓狂な声を上げた。 「何であんたの為にせっかくの休日を潰さなくちゃならないのよ!ギーシュ達に案内してもらいなさいよ!」 「男女の恋路を邪魔するのは無粋だ。」 ポルナレフが意外と真面目な事を言う。 「じゃあ今まで決闘してきた相手は?一人一人当たっていけば…」 「ギーシュ以外、誰も目を合わせようとすらせん。」 今度はちょっと淋しそうに言った。変に寂しがり屋らしい。 「…」 「だからお前しかいないんだ。頼む。」 ポルナレフが手を合わせて懇願した。 「…分かったわよ。しょうがないわね。」 ルイズがやれやれといった感じで言った。 「で、何しに行くの?買い物?」 「そうだ。」 ポルナレフが首を縦に振る。 「お金は?」 「ある。世話にはならん。」 「ふーん…」 何も知らないルイズは、どうせ厨房の手伝いかなんかで貰ったんだろうと思った。 その次の日の朝、学院から二人は馬に乗って出発した。 ポルナレフは馬に乗ったことは無いが、ラクダには乗ったことがある。 ラクダの方がよっぽどよく揺れる(らしい)のでポルナレフは馬に乗ってもさしたる苦痛は無かった。 「街まで馬で片道3時間だったか?」 ポルナレフはルイズの方を向いて尋ねた。 「ええそうよ。…てあんた何で知ってるの?」 「メイドのシエスタという娘に聞いた。まったく、シエスタはいい娘だ。 こんな俺にも何かと親切にしてくれる…まさに女性の鏡だな。きっと将来、良妻賢母になるだろう。夫になる奴はかなりの幸せ者だ。」 ルイズは、(ふーん…そんなメイドがいるのねぇ)と感心した。 「そうそう、平民同士だからかもしれんが、厨房の奴らは気のいい奴らばかりでな…」 ポルナレフはルイズに厨房の人々の事を話した。 平民とあまり交わったことの無いルイズにとってそれは新鮮な話だったが、あまり興味は無く、たまに相槌を打つだけで殆ど聞き流していた。 やがて二人は城下町に着いた 「…狭いな。本当にこれで大通りなのか?」 ポルナレフがトリステイン城下町きっての大通り、ブルドンネ街の人込みを歩きながらぼやいた。 「狭いかしら?人込みは否定出来ないけど、大通りってこれぐらいじゃない? それより、どこに行くのかいい加減教えなさいよ。」 ルイズが先を歩くポルナレフを追いかけながら言った。 「武器屋にな…」 「武器屋?」 「ああ。いつも決闘の時ナイフ使ってるだろ?あれは少し訳があって本来使ってはいけないものなんだ。 金が出来たからその代わりとなるような剣を買おうと思ってな。」 ポルナレフはルイズにそう言ったが、この時、半分しか理由を話してなかった。 本当の理由はチャリオッツを使うときにナイフより剣の方がリーチが長く連係が効く、と考えたからだ。 「それで場所は分かるの?」 「確かピエモンの秘薬屋とか言う店の近くにあるとかマルトーが言っていた。地図も有るんだが、まだ地理が分からなくてな… すまないがちょっと見てくれないか?」 ポルナレフはルイズにマルトーの描いた地図を渡して、先を歩くよう促した。 ルイズは異世界から来たとか言うポルナレフが一週間と少しで常識的な知識や金を手に入れていたのには 舌を巻いたが、まだ地理が分からないと聞いて少し優越感に浸った。 やがて店は見つかり、二人は羽扉を開けて中に入った。そしてポルナレフは店の奥から出て来た店主に話しかけた。 「レイピアを探しに来た。出来れば丈夫な物を頼む。」 ポルナレフはそう言うと袋を取り出した。先日オスマン達から巻き上げた金である。 「へぇ、分かりやした。で、あのお嬢さんは…」 店主が店内を見て回っているルイズをちらりとみる。マントの留め具に描かれている五芒星に気付いたらしい。 「私の主人だ。ただ連れ添いに来てもらっただけだ。」 そうポルナレフが言った 「そうでっか。そういえば最近下僕に剣を持たせる貴族が増えてやすね。自分から求めてくるのは珍しいけど。」 「ほう…そうなのか?」 「えぇ。何でも最近は貴族の宝物を狙ったメイジの盗賊が出るらしくて…」 「『土くれのフーケ』とやらか?」 「よくご存知で。その土くれに備えるためとかなんとか。おっと失礼。少しばかし見てきまさあ。」 しばらく待つと店主がやけに装飾が施されたレイピアを持って来た。 「しかし旦那、今時レイピアなんて使う人なんかいませんぜ。せいぜい貴族様の装飾品でさあ。」 「…」 成る程、確かに店内にレイピアは中々見当たらない。あってもどれもが華美な代物だらけだった。 実戦で使えるかどうか非常に怪しい物ばかりである。 「ちなみにそれは幾らだ?」 「へぇ2000エキューで。」 ポルナレフの所持金は500エキューしかない。明らかに足らなかったし、法外な値段だということも気付いた。 「ちなみに安いので幾らだ?」 ポルナレフが今度はかなり下手に出た。 「そうですなあ…そこの壁に立て掛けてあるので大体400エキューですな。」 店主が指差した先にはさほど装飾が華美でないレイピアが壁に立て掛けられていた。 見た所錆びてはいないし、そこそこ丈夫そうだ。 「それじゃあ、あれをくれ。」 ポルナレフは店主にそう言って袋の中から金貨を取り出して支払おうとした時、 「俺にさわんじゃねえ!貴族の娘っ子!」 いきなり店内でそんな声がした。ポルナレフが思わず振り返るとルイズが一本の剣を握っている。 「やい!デル公!お客さんにそんなこと言うんじゃねえ!」 店主が剣に向かって叫んだ。ポルナレフには何がなんだか分からなかった。 「ひょっとしてこれインテリジェンスソード?」 ルイズが驚いたように言った。 「何だ?その『インテリジェンスソード』というのは?」 「へぇ、魔法がかけられていて、意志を持って喋る剣のことでさぁ。」 「ほう…」 ポルナレフは多少興味を持ちルイズの方に歩いていくとその剣を手に取った。 こちらはさっきのレイピアと違い、刀身に錆が浮いている。喋るだけの駄剣か、と思っていると、 「…おでれーた。おめえ『使い手』か?」 剣が驚いた様に言った。 「『使い手』?」 「そうだ。どうだい?レイピア使うんならマンゴーシュはいるだろ?長すぎるし片刃でマンゴーシュには到底向かないが、俺を使わないか? お前さんならきっとマンゴーシュ、いや、むしろ変則的な二刀流として使いこなせる。」 「…成る程な。レイピアと大剣の変則的二刀流か…面白いかもな。」 「そうよ。だから俺を……」 「だが断る」 「ナニィ!?」 「すまないが意思を持つ剣というのにトラウマがあるんでな。しかも片刃というのが、な。」 そういうと剣を元の位置に戻した。 「ちょ、ちょっと待って!お願い話を聞いてね、ね!」 「…」 ポルナレフがうざそうに剣を見る。 「ほら、手足はないけど歌えるぜ!♪アア~オ~~~ンン~~トォ~~…」 「……」 ポルナレフがますますうざそうに見る。どうやら今度はインドでのトラウマを思い出したらしい。 それに気付いて、 「頼みます。買ってください。このデルフリンガー、一生のお願いです。トラウマだなんて言わないでね、ね?」 遂に剣は遜りはじめた。 その態度にポルナレフもさすがに哀れに思い、店主に聞いた。 「…このデルフリンガーとやらは幾らだ?」 「…100エキューでいいでさぁ。」 ポルナレフは袋から残りの金貨を全て出すと店主に渡した。 「じゃあ『あいつ』も頂こう。」 「何でそんな剣買ったの?装飾が殆どないレイピアと錆が浮いた口の悪いインテリジェンスソードなんてあまりにも趣味悪いわよ。」 店を出て大通りに戻ってからルイズが言った。 「人に趣味が悪いとか失礼だぜ、なあ相棒。」 鞘から少しだけ刀身が出ていたらしい。デルフリンガーが喋った。 「相棒と呼ぶな。」 パチンと完全に鞘に収め、(「あ、ちょ、待って…」) 「…まあ、レイピアは俺の最も得意な武器だ…ただこいつは余りにも哀れ過ぎてな…金にも余裕はあったし。」 と言って鞘に収めたデルフリンガーを見た。錆さえ落とせば使えるかと思ったが、マンゴーシュの代わりにはならないだろうしやっぱり無理だなと思い直した。 「ところで案内したんだからそれなりに御礼ぐらいはするんでしょうね?」 ルイズがずいっとポルナレフに詰め寄る。 「悪いが剣を買ったので持って来た金が無くなってな…まあ、普段から世話してやっているんだ。礼なんて別にいらんだろ。」 「な、ななな、何よそれ!私の休日潰してそれは無いんじゃない!?」 ルイズはポルナレフの『礼なんて無くて当然だろ』という態度に憤慨した。 「それじゃあ街で貴様の買い物でもしておくんだな。俺ももう少し町を見ておきたいしな。」 そう言うと、怒鳴るルイズを無視してポルナレフは通りを歩いて行った。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/969.html
(やっぱりやりすぎだったかしら…) ルイズは己の使い魔を見て考える。 食堂から出てきたあとから、ずっと元気がない『平民』 …パンナコッタ・フーゴのことを。 教室の床に座り込み、膝を抱えて譫言を呟いているばかり…。 あの食事は『主人』と『使い魔』の違いを理解させるために 用意させたのだが、それが予想以上に効いてしまっているようだった。 粗末な食事。当然不満がでてくるだろうが、そこに寛大な主人が 施しを分け与え、主従関係を強固なものにするという計画だったのだが…。 まさかあれを我慢できるだなんて誰が想像できるだろうか!? (何とかしないといけない!…のかな?) ルイズは少々複雑な感情を抱いた…。 『紫霞の使い魔』 第四話 【そいつの名は『ゼロ』】 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね」 中年の女教師 ミセス・シュヴルーズは教室を見回すと、満足そうに微笑んだ。 視線の先にはサラマンダー、バグベアー、スキュア、カラス、大ヘビ、フクロウ、 人食いリス、カタツムリの殻を背負った犬、レザーブーツを履いた猫、 耳が ケンカか なにかで 虫に喰われた葉のように 欠けている ネズミ 服が 趣味か なにかで 虫に喰われた葉のように 穴だらけの 人間。 ………人間? 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズがとぼけた声で言うと、教室は笑いの渦となった。 「ゼロのルイズ!召還できないからってその辺歩いてた露出狂連れてくるなよ!」 小太りの少年がガラガラ声を張り上げて嘲りの言葉を浴びせる。 「違うわ!きちんと召喚したもの!こいつが来ちゃっただけよ!」 ルイズが立ち上がり、『床のモノ』を指さして反論する。 当の本人は、 「ぼくのは違う…ぼくのはファッションなのに……」 別方面の中傷に対して傷つく。もはや怒る気力もないようだ。 「嘘つけ!『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?ゼロのルイズ!」 「なんですって!わたしを侮辱するの!?かぜっぴきのマルコルヌ!!」 「ぼくは風上のマルコルヌだ!かぜっぴきじゃないぞ!記憶力もゼロなのか!」 「あんたなんか『かぜっぴき』で充分よ!喋らないで!風邪が移るから!」 売り言葉に買い言葉…。二人とも段々ヒートアップしてきたようだ。 「ゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロ!!!」 「風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪!!!」 いつまでも続くかのように思われたケンカだが、所詮 人生は有限である。 フーゴがルイズのマントを(力なく)引っ張って、椅子に座らせ シュヴルーズがマルコルヌと一部の生徒に粘土を食べさせることで 子供じみた不毛な争いは終結した。 「どんな理由があろうとも、お友達の悪口をいってはなりません。 それでは授業を始めます」 「──このように、『土』系統の魔法は皆さんの生活に密接に関係して───」 (コイツ随分元気になってるじゃない…) 床にいる自分の使い魔を横目で見て、ルイズは思った。 そう、フーゴはさっきの落ち込んだ様子から一変していた。 こう見えても彼の最終学歴は『中学中退』。 大体必要なことは独学で勉強したが、やはりまだまだ学びたい年頃である! それが初めて聞く事柄なら尚更だ。 窮屈な空間ではあるが、聞いた授業の内容を手帳に書き記している。 最も、書いている文字(?)はルイズにはまったく読めないが…。 それよりも まず、彼に授業内容が理解できているのだろうか? (ま、どうせメモを取ったところで無駄だけどね~) そもそも、魔法が使えるのは貴族のみ。 『平民』であるコイツが勉強したところで できるわけ… そう考えていたルイズの顔が曇り、 不意にトラウマが甦ってきた… 手が止まる。思考が止まる。時が止まる。 {{わたしは?わたしはどうなの?わたしは…}} 息が詰まる。胸が詰まる。言葉が詰まる。 {{わたしにそんなことを言える資格が…?}} 「どうかしたんですか?」 『使い魔』に声をかけられ、時が動き出した。 「大丈夫よ。なんでもないわ」 気丈に振る舞うルイズだったが、その顔色は冴えない。 「本当ですか?何処か悪いのなら…」 「そこ!授業中の私語は慎みなさい!」 中年女教師からの叱責が飛ぶ! 「「す、すみません!」」 見事にハモった。 「そうですね…それだけの余裕があるのでしたら 貴女に この『石』を『錬金』してもらいましょう。ミス・ヴァリエール」 その瞬間!鼓膜が劈くようなブーイングの嵐が巻き起こった! 「先生!『ゼロのルイズ』にやらせるなんて危険です!」 「『ゼロのルイズ』にやらせたら『終わり』って恐怖だけがあるんだよーッ!」 「おまえならできるッ!やれーッ!やるんだーッ!ルイズゥ!」 青ざめた顔で応援するヤツもいるが口の中に何かが見えた。あれも使い魔か? ハッキリ言って、フーゴには皆が何を恐れているのか解らなかった。 わかるのは彼女のあだ名が『ゼロのルイズ』だということぐらい…。 しかし、『危険』というのは一体? ルイズは少しうつむいたが、立ち上がり叫んだ! 「やります!わたし やります!」 教室に響く リンとした声。そして 絶望と落胆の声…。 されど 彼女の決心は変わらず、緊張しながらも教室の前に進んでいった フーゴの目にはその姿がとても凛々しく思えた。 そうだ。せっかく『主人』が魔法を使うのだからぼくも見て── (何コレ…?) 立ち上がったフーゴとは対称的に生徒達は全員机の下に潜り込んでいた。 二重の意味で、授業を受ける姿勢ではない。異常である。 「そんなところで何してるんですか?」 とりあえず一番近くにいた生徒に聞いてみるが… 「いいからお前も伏せろ!危ないぞ!」 …『危ない』?? 「えっ?それはどういう意…」 とりあえず言われたままに しゃがむと…! ドッッグオオオォォォォォォンンンン ギャグマンガでしか見たことがなかったような大爆発! 屈んでいたフーゴの頭を爆風がよぎった! 木片が飛び!窓ガラスが割れ!使い魔たちが暴れ出す! 「なっ!『石』が…いきなり爆発したぞ!?」 突然起きた出来事に対応し切れてないフーゴ。 まさか!?『ゼロのルイズ』というのは…!? 話していた生徒が忌々しげに口を開いた…。 「近づくなよ……『ゼロのルイズ』が『魔法』を使うとき 何者も そばにいてはならない……」 立ちこめていた爆煙がはれ、中から煤だらけになったルイズが現れた。 服はビリビリ、机はボロボロ、教師はピクリとも動いていない…。 そんな悲惨な状況を見まわした彼女の一言。 「ちょっと失敗したみたいね」 コレだけの惨事を引き起こしておいてそれはないだろう…。 いつも魔法が失敗するから『ゼロのルイズ』。 フーゴは そのあだ名の意味をようやく理解した。 そして…朧気ではあるが、自分が彼女に『召喚』された理由も…。 周りのもの全てを巻き込み、破壊尽くしておきながら 自分自身『だけは』何事もなかったかのように君臨する。 その姿は… ───彼女の可愛らしさとは縁遠いはずなのだが─── 忌まわしいほど醜い『アイツ』と重なって映った。 フーゴは痛み出した頭を押さえ、静かに呟いた…。 「…なんてこった……!」 To Be Continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/889.html
使い魔は灰かぶり-1 使い魔は灰かぶり-2
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9388.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百二十八話「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その1)」 宇宙恐竜ゼットン ウラン怪獣ガボラ エリ巻き恐竜ジラース 登場 王立図書館の幽霊騒動の解決を頼まれたルイズと才人。しかし、ルイズが突如として意識不明の 状態に陥ってしまう。 それから一夜明けたにも関わらず、ルイズは一向に目覚めなかった。才人は図書館の控え室にて、 焦燥した様子でウロウロと歩き回る。 「くそッ、ルイズは一体どうしちまったんだ……。いきなり倒れて、目を覚まさないなんて」 「お姉さま、原因分からないの?」 「パムー……」 シルフィードとハネジローがベッドに寝かされたルイズを見下ろし、タバサに不安げに 目を向けた。しかしタバサは力なく首を振る。 「分からない」 知識が豊富なタバサでも、ルイズの昏睡の原因は不明であった。思いつく限りの処置を 取ったが、ルイズには全く効果がなかった。 ゼロが意見する。 『怪獣とか宇宙人とか、そういう類の気配はなかった。……だが、リシュの件もある。何か 未知の力がルイズに働いたのかもしれねぇ』 やがて、控え室の扉がノックされて一人の女性が入室してきた。 「失礼します」 「リーヴル!」 王立図書館の司書のリーヴルだ。朝になって出勤してきたようだ。 彼女はテーブルの上のガラQを置くと、才人たちに振り返って告げた。 「タバサさんの連絡で、おおまかな事情は伺ってます。その件で一つ、お話しが」 「ルイズのこと、何か知ってるのか!?」 才人の問い返しにうなずいたリーヴルは、自身の目でルイズの容態を確かめてから才人たちに 向き直った。 「間違いありません……。これは、『古き本』の仕業です」 「古き本?」 「お姉さま、知ってる?」 シルフィードにタバサは否定で答えた。リーヴルが説明を行う。 「この図書館には、数千年前の本が所蔵されています。内容は愚か、文字も読めません。 それら本を総称して『古き本』と呼んでいます」 「でも、その本とルイズに何の関係があるんだ?」 「『古き本』には、絶筆のものもあります。諸事情で、本が未完のままで終わってしまうことです。 そして絶筆された『古き本』には、最後まで完結したいという強い想いから、魔力を持つ例があります。 ルイズさんはそれら本に魔力を吸い取られ、本の中に心を奪われた。そう考えて問題はないでしょう」 タバサが驚きで目を見開く。 「本が魔力を持つなんて話、聞いたことがない」 「世間では全くといっていいほど知られていない話です。現に、同じ事例は記録にある上では、 千年前に一件のみです」 再度ルイズに目を向けるリーヴル。 「どうやらルイズさんは、かなり強大な魔力を持っているみたいですね。それを狙われて……」 「強大な魔力? そうか、“虚無”の力か……」 「キョム?」 つい口から出た才人が、ガラQに聞き返されて我に返った。 「ああ、いや、何でもない! それで、ルイズは治るのか!?」 リーヴルは真剣な面持ちになって返答した。 「手はあります。ですが、それを決断するのは私ではありません」 「ど、どういうことだ?」 「本が未完で終わっていることに未練を抱いているのなら、完結させればいいのです」 ですが、とつけ加えるリーヴル。 「『古き本』は作者以外のペンを受けつけません」 「何も書けないんじゃ、完結させられないだろ。どうすればいいんだよ!」 突っ込む才人に、リーヴルは冷静に返す。 「本の中に入るんです。代々王立図書館の司書を勤めている私の家系には、『古き本』の 魔力を利用してその本の世界に入り込む独自に開発した魔法があります。そうして本の 登場人物となって話を進行させ、完結させるのです」 「本の中に入るってサラッと言うけど、危なくないのね?」 シルフィードの疑問に首肯するリーヴル。 「危険です。本の中に入った者は、一時的に本の世界が現実となるので、その中で傷つけば 現実の傷として残ります。本の中で死ねば当然、命を落とします。故に滅多なことでは使う ことの許されていない、禁断の魔法なのです」 「……本を完結させるか死か、その二択って訳か……」 つぶやいた才人が決心を固めた表情で、リーヴルの顔を見つめた。 「一度に本の中に入れられるのは何人だ?」 「……私の力では、一人が限度です」 「一人か。それじゃあ決まりだな。俺がルイズを助け出す!」 タバサは心配の視線を才人に向けた。それに気づいた才人は一旦リーヴルから離れて、 タバサに説いた。 「大丈夫だ。俺はゼロと魂が一つになってるから、ゼロも一緒に本の中に入れるはずだ。 ゼロの力があれば、よほどのことがない限り命の危険なんてないよ。心配いらないさ!」 「……ん」 タバサは力になれないのがもどかしそうであったが、こんな場合に才人を止められないことは 知っているし、彼を信頼してもいる。素直にルイズのことを才人に託した。 「パムー」 話していたら、ハネジローがパタパタとテーブルの上に六冊の本を一冊ずつ運んできた。 タバサがリーヴルに伝える。 「これらが倒れてたルイズの側に落ちてた」 「この六冊が、ルイズさんの魔力を吸い取った『古き本』のようですね」 六冊を確かめたリーヴルが眉間に皺を寄せる。 「……厄介ですね。これらは『古き本』の中でも一番力の強いもの。砂漠で発見されてトリステインに 流通したもので、どこで書かれたものかも不明です」 「曰くつきって奴か。どういう内容なんだ? って、読めないのか……」 何気なく本の一冊を開いた才人が、唖然と固まった。 「いや、俺これ読めるぞ! 日本語……俺の国の文字で書かれてる!」 「そうなのね!?」 シルフィードたちの驚きの視線が才人に集まった。才人は他の五冊にもざっと目を通す。 「全部そうだ! しかも……全部ウルトラマンの本じゃねぇか!」 仰天する才人。六冊全部が、ウルトラ戦士の戦いを題材にした作品なのだ。これら六冊も、 自分のように日本からハルケギニアに迷い込んできたものなのだろう。それと日本人の自分が 出会うとは、何という巡り合わせか。 同時に才人は、若干険しい顔となる。 (となると、ゼロでも簡単にはいかないってことになるな。何せ、本の世界で待ってるのは 怪獣や宇宙人との戦いだ……) ウルトラ戦士の戦いが題材ということは当然、本の中で繰り広げられている世界でも怪獣、 宇宙人と戦うことは避けられない。ゼロの力ならばよほどのことは、と思っていたが、まさか こんなことになろうとは。 しかしそれならばなおさら自分たちが本の世界に行かなければならない。他の者では、 この六冊の物語を完結させるのはほぼ不可能であろう。改めて決心した才人は、最初に 中に入る本を選択する。 「……よし、これにしよう。最初には、『始まりのウルトラマン』の本が相応しいと思う」 「決まりましたか」 「早速やってくれ。準備はもう出来てる」 才人から本を受け取ったリーヴルが、本の世界に旅立つ前に忠告した。 「生死以外にもう一点、重要なことを。あまりに物語を改変してしまうと話が破綻し、その本の 世界は閉じてしまい完結できなくなります。要するに、最低でも本来の主役を立て、その人物に 物語を終わらせてもらう必要があります」 「俺が何もかも物語の中の問題を解決しちゃいけないってことだな。分かった」 ただ怪獣たちを倒すだけでなく、本の中のウルトラマンと共闘する必要があるようだ。 その条件を解決しなければならないとは負担が増加したように思えるが、きっと何とか なるだろう。同じ正義の心を持つウルトラ戦士なのだ。 もう一つ、タバサがリーヴルに問いかけた。 「最後に、これだけ聞かせて」 「何でしょうか?」 「……何故千年以上前の貴重な本が、一般の書架に置いてあったの?」 リーヴルは一瞬言いよどんだ。 「……私にも分かりません。ですが元は幽霊が騒動の発端。もしかしたら、『古き本』自体が 魔力を用いて人の目に留まるように動いたのかもしれません」 「……」 タバサは若干納得していなさそうだったが、それ以上の追及はしなかった。 そしてこれから本の中に入る才人に、仲間たちが応援の言葉を寄せる。 「俺も「一人」に数えられてるみてえだから、相棒と一緒に本の中にゃ入れねえ。けど俺が いなくてもしっかりやれよ! 娘っ子を頼んだぜ!」 「気をつけてなのね! 死んじゃ絶対に駄目なのね!」 「……頑張って」 「パムー!」 才人は彼らに笑顔で応える。 「ああ! 行ってくるぜ!」 リーヴルの前に立つと、彼女が才人に魔法を掛ける。才人の視界がぐるぐると回り、目の前の 光景が大きく変化していく……。 ‐甦れ!ウルトラマン‐ 「ピポポポポポ……」 荒野でにらみ合うウルトラマンとゼットン。ウルトラマンは八つ裂き光輪を投げつけて攻撃する。 「ヘアァッ!」 しかしゼットンは己の周囲にバリヤーを張り、八つ裂き光輪は粉々に砕け散ってしまう。 「ヘアァァッ!」 それを見たウルトラマンは肉弾戦に切り替えるが、ゼットンの水平チョップで返り討ちにされた。 「ウアァッ!」 地面を転がりながらも立ち上がったウルトラマンは、必殺のスペシウム光線を発射! 「シェアッ!」 だが直撃したスペシウム光線は、ゼットンに吸収されてしまう。 「ウアァッ!?」 ゼットンは更に吸収したエネルギーによって、腕から光波を発射。ウルトラマンの急所である カラータイマーに命中してしまう! ウルトラマンのカラータイマーが赤く点滅し出した。 「どうしたウルトラマン!?」 叫ぶムラマツ。ゼットンは容赦なく光波を撃ち続けてウルトラマンを追撃。 「やめろ! ゼットン!」 「危ないわッ!」 絶叫するイデと『フジ』。だが致命傷をもらったウルトラマンの身体がよろめき、前のめりに 倒れてしまった。 仰向けに横たわるウルトラマンを見下ろすゼットン。このままではウルトラマンの命が危ない! 「よし、ウルトラマンの仇討ちだ!」 ムラマツたち科特隊がゼットンに攻撃開始。しかしスーパーガンの光線はゼットンに全く 通用していない。 「よぉし! イデ隊員の、すごい兵器をお見舞いしてやる!」 するとイデがスーパーガンの銃口に新兵器スパーク8を接続。強化された光弾がうなりを 立てて飛び、ゼットンに直撃。 ゼットンは爆炎の中に呑まれ、粉々に吹っ飛んだのだった。 「やったぁッ!」 ――ゼットンは、イデ隊員の活躍で撃退された。しかし、常に勝利を誇ってきたウルトラマンは、 この戦いで遂に敗北を味わったのである。 衝撃の事件から一ヶ月が過ぎていた。強敵ゼットンに対する勝利で勢いづいた科学特捜隊は 向かうところ敵なしであったが、一方でウルトラマンはスランプに陥り、怪獣に黒星を重ねていた。 そんな中、日本各地で怪奇現象が続出。ハヤタは怪獣総攻撃の予兆を感じ取っていたが、 それはウルトラマンと一体である彼にしか感じられないもの。誰かに話すことは、自分が ウルトラマンであることを告白すること。ハヤタは悩んだ……。 しかし彼の決心を待たずして、怪獣軍団の尖兵が出現したのだ! 「ゲエエオオオオオオ!」 「ピギャ――――――!」 緑に覆われた山脈の間を、二体の怪獣が行進している。一体は這いつくばった姿勢、もう一体は 直立した姿勢だが、どちらも首の周りがエリで覆われているという共通点がある。四足歩行の方は エリが閉じていて首がその中に隠れていた。 ウラン怪獣ガボラとエリ巻き恐竜ジラースだ! その進行先には人間の町がある。怪獣たちが 町に到達したら大惨事だ! 「くっそー、怪獣どもめ! ここから先には行かせないぜ!」 「みんな、何としても食い止めるんだ!」 それに立ち向かうのは科特隊。アラシがスパイダーで射撃し、他の面々もムラマツの激励の 下にスーパーガンで応戦する。 「ゲエエオオオオオオ!」 「ピギャ――――――!」 しかし彼らの射撃は、ガボラとジラースにほとんど効果を上げていなかった。アラシが 大きく舌打ちする。 「くそぅ、一匹だけなら何とかなるが、二匹同時ってのは苦しいぜ……!」 「イデ隊員、スパーク8は使えないの!?」 『フジ』がイデに尋ねたが、イデは首を横に振った。 「スパーク8は一発限りしかないんだよ!」 「もうッ! 肝心な時に使えないわね!」 『フジ』の荒々しい言動に、イデはやや首をすくめた。 「フジ君、何だか気が強くなったんじゃないか? それに心なしか、背も縮んだような……」 「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、イデ! 戦いに集中しろ!」 アラシが叱りつけている一方で、ハヤタは懐の変身アイテム、ベーターカプセルに目を落としたが……。 「……駄目だ。今の俺では、ウルトラマンに変身しても怪獣に勝てない……」 「ハヤタ! 危ないぞッ!」 ハヤタが力なく首を振っていると、ムラマツが警告を飛ばした。 我に返って顔を上げたハヤタに、ジラースが光線を吐こうとしていた! 「ピギャ――――――!」 「うわぁぁぁッ!」 「ハヤターッ!!」 絶叫するアラシ。ハヤタのピンチ! その時、『フジ』が空の一画を指差して叫んだ。 「見て! あれ何かしら!」 空の彼方から、何かが流星のように降ってきている。思わずそれに目を奪われる科特隊。 「セェェェェェアッ!」 それは巨人だった! 空の彼方から脚を突き出して猛然と地上に迫り、ジラースに飛び蹴りを ぶちかました。 「ピギャ――――――!」 ジラースは巨人に蹴り飛ばされて、ハヤタは救われる。ガボラが驚いたように巨人に振り返った。 「な、何だあの巨人は……」 科特隊の面々も唖然として巨人を見上げた。青と赤のカラーリングの肉体で、頭部には 二つのトサカが生えている。目つきはかなり鋭いが、勇気と優しさが眼差しから見て取れた。 「ハァッ!」 ガボラに対して空手を思わせる構えを取った巨人の胸元には、丸い発光体が青々と輝いていた。 それを指差すイデ。 「胸にカラータイマーがついてるぞ!」 「じゃああの巨人は、ウルトラマンということか……!?」 ぽかんと口を開くムラマツ。しかし一番驚いているのはハヤタであった。 「俺以外の、ウルトラマン……!?」 ウルトラマン以外の『ウルトラマン』は、突っ込んできたガボラにこちらから向かっていく。 素早い蹴り上げがガボラの首に決まり、ガボラは押し返された。 「ゲエエオオオオオオ!」 ガボラは頭部を覆い隠すヒレを開いて、口から熱線を吐き出した。だがウルトラマンは 側転して回避。 「ピギャ――――――!」 「セアッ!」 そこに起き上がったジラースが背後から襲い掛かるが、ウルトラマンは機敏に反応して 裏拳を顔面に打ち込んで、振り返りざまの横拳でジラースを返り討ちにした。 怪獣二体を相手にしてむしろ優勢なウルトラマンの様子に、科特隊の目は思わず釘づけになっていた。 「強い……!」 「ええ、すごい強さですね、キャップ……!」 ムラマツとアラシは感心しているが、ハヤタは複雑な表情で自分以外のウルトラマンの 戦いぶりを見上げていた。 「テェェェイッ!」 ウルトラマンはガボラを飛び越えて背後に回り込み、その身体を鷲掴みにして真上に放り投げた。 「ゲエエオオオオオオ!」 「ハァァァァァッ!」 ウルトラマンはジャンプして空中でガボラをキャッチし、真っ逆さまに地面に叩きつける パイルドライバーを決めた。ガボラはこの一撃によって絶命し、地面の上に横たわる。 「ピギャ――――――!」 ガボラを倒したウルトラマンにジラースが突進していくが、ウルトラマンはそれをいなした上で、 エリマキに手を掛けて引き千切った。 「ピギャ――――――!?」 首に手を当てて、エリマキがなくなったことに慌てふためくジラース。ウルトラマンは 千切ったエリマキを投げ捨てると、トサカに手を伸ばして……何と取り外した! 「あれ取れるのか!?」 えぇッ! と驚くアラシとイデ。ウルトラマンは取り外したトサカを逆手に持ち、ジラースに 向かってまっすぐ走っていき……。 「セェアッ!」 喉元にトサカを走らせて切り裂いた。トサカは刃だったのだ。 ジラースは口の端からツゥッと血を垂らし、前のめりにばったりと倒れ込んだ。 「シェアッ!」 圧倒的な実力で立て続けに怪獣二体を撃破したウルトラマンは、両腕を天高く伸ばして 空に飛び上がり、どこかへと飛び去っていく。 科特隊は突然現れ、風のように去っていくもう一人のウルトラマンの後ろ姿を、呆然と 見送っていた。 ……ウルトラマンゼロから元の姿に戻った才人は、山の中腹からそんな科特隊の様子を 見下ろしていた。 『とりあえずは危機回避だな。こんなところでウルトラマンに死なれてたら、いきなりアウト だったぜ』 「ああ。それにしても、本の中とはいえ、あの最初の地球防衛隊、科学特捜隊の人たちと こうして出会うことになるなんてな……。夢みたいだよ」 そう、ここか本の世界。才人は『古き本』の一冊目、『甦れ!ウルトラマン』の中に入ったのだ。 そして本文が途切れていた箇所、科特隊の窮地を救ったのであった。 史実ではウルトラマンはゼットンに敗れた後、やってきたゾフィーとともに光の国に帰った のだが、この作品は「もしもウルトラマンが帰らず、地球に残っていたら」のifを書いたものの ようである。 感慨深げに科特隊のムラマツ、アラシ、イデを順番にながめた才人だが、『フジ』に目を 留めて微妙な笑みをこぼした。 「……けど、その中にルイズが混じってるのが、意識が現実に引き戻されるような感覚がするな」 『正直、あの制服ルイズに似合ってねぇよな』 そう、科特隊の紅一点、フジ隊員の姿は、ルイズのものに置き換わっているのだった。 それが、ここが現実の世界ではない何よりの証拠である。そして見た限り、ルイズは すっかり『フジ』の役回りになり切っているようで、周りも別人になっていることに 気づいていないようであった。 『まぁそれは置いといて、こっからこの本を完結させるために頑張らねぇとな。まずは、 本来のウルトラマンに奮起してもらわねぇと』 「ああ。俺たちが怪獣を全部やっつけるってのは駄目だって話だったしな」 ゼロと相談している才人がふと気配を感じ、顔を上げた。 「……そのご本人が、向こうからいらしたな」 才人の元に、ウルトラマンことハヤタが歩いてきたのだった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2262.html
2話 「……ナルホド。ツマリ私ハモウオ前ノ使イ魔ニナッテシマッタノカ」 「そうよ」 「……ソシテコノ左手ノ甲ノ文字ハソノ印カ」 「そうよ」 「仮ニ私ガコノ左手首ヲ切リ落トシタナラ、ドウナル?」 「どうもならないわよ。あんたが痛いだけ」 「デハ、私ガオ前ノ使イ魔ヲ辞メル方法ハ無イノカ?」 「無いわ。主人と使い魔との契約は使い魔が死ぬまで解除されないもの」 「…………」 ホワイトスネイクは静かに絶望した。 何の因果か知らないが、主人と切り離された上にこんな小娘に使われてしまうことが確定したのだ。 こんなことになるなら主人の死と同時に消滅していたほうがいくらかマシだった。 しかも今いる場所は、地球とは全く別の場所らしい。 その証拠に、窓から見える月は赤と青の二つ。 まるでおとぎ話の世界だ。 「……モウ一度確認シタイ。ココハドコダ?」 「あんたもしつこいわね。別の世界から来たとか変なことも言うし……。まあいいわ。 ここはハルゲキニアのトリステイン王国にある、トリステイン魔法学院よ」 「ソシテ使イ魔トハ何ダ?」 「主人を守るのは勿論、主人の目や耳になったり、主人のために秘薬の材料を探したりもするわ。 最後の一つを除けば、スタンドと同じである。 「でもあんたに見えてるものは私に見えないし、おまけに秘薬の材料なんか探せないみたいだし……」 「ソレハイイ。ソシテ私ガ使イ魔ヲ辞メルニハ……死ヌシカナイ。ソウダナ?」 「ええ、そうよ」 実にスガスガしいルイズの解答に、ホワイトスネイクは再び絶望した。 「何よ、その顔! わたしがご主人様だってことに文句でもあるの?」 「アル」 ぴきっ、とルイズのこめかみに筋が走る。 じょ、上等だわ、この使い魔。 この私が、このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがご主人様だってことに文句があるっていうの? お、面白いじゃないの。 「じゃ、じゃあ聞いてあげるわ。わわ、わたしのどこが、不満なのよ?」 まさしく「マジでキレる5秒前」のルイズ。 だがそれを知ってか知らずか、ホワイトスネイクは常識を語るかのように言った。 「適材適所、トイウ言葉ガアル。 優レタモノハ優レタ所ニ、劣ッタモノハ劣ッタ所ニ、トイウコトダ。 ソシテ……私ガ充テラレテモイイ場所ハタダ一ツ。ツマリ私ヲ使ッテイイ人間ハコノ宇宙デタッタ一人。 ダカラオ前ノヨーナ年端モ行イカナイ小娘ニ使ワレルコトガ一番ノ不満ダ」 「だ、誰よ、その『あんたを使っていい人間』ってのは?」 わなわなと震えながらルイズが言う。 「エンリコ・プッチ。 カツテ……ト言ウカ、ホンノ少シ前マデ私ヲ使ッテイタ人間ダ」 「エンリコ・プッチ? 誰よ、それ? それに『使っていた』ってどういうこと?」 「エンリコ・プッチハ聖職者デ優レタスタンド使イ。 『使ッテイタ』トイウノハ、単純ニ私ノ本体ダッタッテコトダ」 「『スタンド使い』? 『本体』? ……あんた、何言ってるの?」 「……ソウカ、マダマトモニ説明シテイナカッタナ」 そう言うと、ホワイトスネイクはふわりと空中に浮き上がった。 「私ガ『スタンド』ト呼バレル存在ダトイウコトハ話シタナ? 『スタンド』トハ精神ガ具現化サレタモノ。 ツマリ私ハエンリコ・プッチノ精神ガ具現化サレタモノダトイウコトダ。 『種族』トイウ括リハ私ニハアマリ合ッテイナイ訳ダナ ソレトコノ具現化ノ元ニナッテイル人間ヲ『スタンド本体』ト呼ブ。 サッキ言イッタ『スタンド使イ』トハスタンドヲ持ッテイル人間ノ総称ダ」 ホワイトスネイクはペラペラと説明する中、ルイズはぽかんとしてホワイトスネイクを見上げていた。 「スタンドニハ『ルール』ガアル。 能力、性能、性質、スタンド本体カラ離レラレル距離……スタンドハ様々ナ『ルール』ニ縛ラレテイル。 故ニ……オイ、聞イテルノカ?」 「……あんた、空飛べたの?」 「正確ニハ『浮ク』ダ。 コノ程度ノコトナラ大概ノスタンドハデキル。 ソレハイイトシテ、私ノ話ハ聞イテイタンダローナ?」 「き、聞いてたわよ! 要するに……っていうか、あんたの話を信じろっていう方が無理よ。 あんたの言ってることが本当なら、あんたは生き物ですらないことになるじゃない」 「ソノ解釈デ合ッテイル」 「それが信じられないってことよ。第一あんた、私と話せてるじゃない。 それにちゃんと痛がったりもするみたいだし……やっぱり『生き物じゃない』ってのは信じられないわ」 「今ハ分カラナクテモイイ。ソノウチ信ジルヨウニナル」 そう言ってホワイトスネイクはふわりと椅子に降りた。 「まあ……今はそういうことにしておいてあげるわ。 他のみんなには『エルフの眷属』だって言っておくから」 「『エルフ』?」 「亜人の一種よ。すごく強力な先住の魔法が使えるの。 それも優秀なメイジ何十人分にも匹敵するぐらいのね」 そこでルイズはいったん言葉を切る。 「それで、結局あんたが言いたいのは『私が優秀な主人じゃないから認めない』ってことでしょ!? 何で私の実力を見もしないうちからそんなこと言うのよ!」 「私ハコレデモ20年人間ヲ見テキテイル。 誰ガ優秀デ、誰ガ無能カハ、見レバ大体分カル。 ダカラオ前ガエンリコ・プッチニ及ブヨウナ器デハナイコトモ分カル」 ぶちん。 本日二度目、ルイズの中の決定的な何かが音を立てて切れた。 「なっ、何よさっきからプッチ、プッチ、って! そんなにそいつがよければそいつのところに行っちゃえばいいじゃない! 何で私のところに召喚されてきたのよ!」 「ソレハ無理ダ」 「何でよ!」 「エンリコ・プッチハ既ニ死ンダ」 「……えっ?」 「私ガコノ目デ確認シテイル」 予想もしなかった答えに、言葉を失うルイズ。 だがそんなルイズに構うこともなくホワイトスネイクは続ける。 「正直、何故自分ガ生キテイルノカ……ソレスラ私ニハ見当モ付カナイ。 ソシテ此処ハ分カラナイコトバカリダ。 何故スタンド本体ト切リ離サレテイル私ガ存在デキルノカ? 何故生キル目的モナイノニ私ハ生キテイルノカ?」 そこでホワイトスネイクはいったん言葉を切る。 「オ前、サッキ私ノ足ヲ踏ンヅケタヨナ?」 「え、ええ……」 「本来ナラ私ハスタンド攻撃デシカダメージヲ受ケルコトナド無インダ。 コレハ私ダケデハナイ。スタンド全テニ共通スルコトダ。 ツマリ……ヒョットシタラ私ハ、モハヤスタンドデスラナイノカモ知レン」 そう言ったきり、ホワイトスネイクは何か考え込むかのように押し黙ってしまった。 ルイズも言葉が見つからず、何も言えない。 ただはっきり分かったのは……ホワイトスネイクが「生き甲斐」をなくしているということ。 その生き甲斐だった人はもうすでに、しかも目の前で死んでしまっていて……。 ルイズにはもちろんそんな経験はない。 それどころか、自分の生きがいとなるようなことさえ見つけていない。 やっぱりこいつの言う通りで、自分はまだ小娘なのかもしれない。 でも―― 「それで……あんたはこれからどうするのよ?」 「自決デモシヨウカト考エテイル」 「ふーん……って、ええええええええええええ!?!?」 「無論本気ダ」 「ちょ、ちょっと! い、いくら生き甲斐がないからって、そんな、何も死ぬなんて!」 「オ前ハ知ラナイカラソンナコトガ言エルノダ。 生キ甲斐ヲ失ウコト、生キル目的ヲ失ウコトガ意味スル本当ノトコロヲナ」 「何よそれ! 全然納得できないわよ!」 「納得スル必要ハナイ。 オ前ノヨーナ小娘ニハ説明シタトコロデ分カラン事ダカラナ」 そう言って、ホワイトスネイクは退屈そうに天井に目を向けた。 ……ななな、なんなのよ、こいつは。 さっきからわたしのことを小娘、小娘って。 しかもなんなのこの態度? まるで私のことをご主人様だなんて思っちゃいないわ。 スタンドだか何だか知らないけど、たかが亜人の分際でいい気になってくれるじゃないの。 今に見てなさい。このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがあんた如きを使い魔にするぐらい当然のメイジだってことを……。 そこまで考えて、ルイズの思考が止まる。 じゃあ、それをどうやって証明するの? こいつに自分を、どうやって認めさせるの? その手段が今の自分には……あるの? ……「今の」? その単語に、ぐるぐると回り続けるだけだった思考が一気に一つにまとまった。そして定まった。 今後の自分の目標、そして目指すところ。 「ねえ、あんた。……賭けをしない?」 「賭ケ、ダト?」 「そう、賭けよ」 「内容ハ?」 ホワイトスネイクが乗ってきた。 その様子にルイズは内心でほくそ笑み、そして少し間をおいてからこう言った。 「1年でわたしが、あんたがご主人様と認められるだけのメイジになれるかどうか、よ」 ふふん、と胸を張るルイズ。 だが。 「真面目ニ聞コウトシタ私ガ馬鹿ダッタ」 そう言ってまたホワイトスネイクは天井に目をやった。 「ちょ、ちょっと! わたしは真面目に言ったのよ? わたしが立派なメイジになれればあんただって私の使い魔になるっていう立派な生き甲斐が出来るじゃないの! そ、それを、『真面目に聞こうとしたのが馬鹿だった』ですって!?」 「仮ニ1年間デ何モ進歩ガナカッタトシテモ……1年間ハ私ヲ使イ魔トシテソバニ置イテオケル。 ソレガオ前ノコノ賭ケニオケルメリットデアリ……強イテ言エバ勝ッテモ負ケテモオ前ハ得ヲスルヨーニナッテイル」 「なっ……」 あっさりと自分の考えを看破され、唖然とするルイズ。 「ソレニ何カ勘違イシテルナラ言ッテヤル。私ハオ前ノヨーナ小娘ニハ何モ期待シテイナイ。 ダカラオ前モ私ニ何カ期待ナンカシナイデサッサト新シイ使イ魔トヤラデモ呼ベバイイ」 「な、ななな、なんですってええええええ!!!」 度重なるホワイトスネイクの高慢な物言いに、ルイズの堪忍袋の緒が三度切れた。 「あ、あんたは! さっきから小娘小娘ってわたしをバカにして! せいぜいあの世でみてなさいよ! あんたがわたしの使い魔にならなかったことを後悔するぐらいのすごいメイジになってやるんだから!!」 「後悔ナドスルモノカ」 「ふん、そんなこと言ってられるのもせいぜい今のうちよ! 偉大なメイジになったわたしを見たあんたはあの世から飛んで戻ってきて、 泣きながら『わたしを使い魔にしてください』ってお願いするんだわ!」 「勝手ニ言ッテロ。私ハ好キニスル」 「逃げる気!?」 「……何ダト?」 「そうよ! あんたは怖いんだわ! わたしが立派なメイジになって、その私に見返されるのが怖いんだわ! この臆病者! 卑怯者! でも逃げるんだったら今のうちに尻尾巻いて逃げるがいいわ! わたしは一人前になった後、その後ろ姿を大声で笑ってやるんだから!」 プッツ~~~ン! 決定的な何かが、また切れた。 だがルイズのではない。 「……言ッテクレルナ、小娘」 ホワイトスネイクのだ。 ホワイトスネイクはそう呟くと、椅子から跳ね上がるようにして空中に上がり、 ルイズの目の前に見せつけるように急降下した。 ドヒュゥンッ! 「きゃあっ!」 「コノ私ガ、コノホワイトスネイクガ、オ前如キ小娘ニ泣キナガラ懇願スルダト? 逃ゲルダト? 面白イナ……コノ20年、私ニ向カッテココマデ言ウ奴ハソウハイナカッタゾ……」 「な、なななな何よ! 何する気よ!」 「オ前ノ賭ケニ乗ッテヤルンダ」 「……え?」 「期限ハ半年。 ソノ間私ハ、オ前ノ言ウ『使い魔』トシテオ前ヲ見極メテヤル。 ソシテオ前ガソノ半年ノ間ニ私ニ認メサセルダケノ者ニナッタナラ、オ前ノ勝チダ。 ダガナレナカッタナラ……」 「オ前ノ『記憶』ヲ貰ッテイクゾ」 地獄の底のような声でそう言うと、ホワイトスネイクは煙のように消えてしまった。 後に残されたのは、ぽかんとした顔のルイズだけ。 「……ひょっとして……うまくいったの?」 「記憶を貰っていく」ということの意味どころか、期限が半年に縮んだことも、まだ分かっていないルイズだった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/378.html
地面に放ったエメラルド・スプラッシュの威力を見て、こちらへ近づこうとしていた鎧の男は足を止めた。 先ほどまでこちらに敵意を向けていた奴らも、目を丸くしている。 ともかくこの行動で、スタンド使いが今、ここにいないのは確認できた。 才人を引っ張る時も、今、エメラルド・スプラッシュを撃った時も、誰も反応しなかったからだ。 ならば結論は一つ。 僕をここに送り込んだ奴は、別にいるッ! そうと決まれば、急いで本体を探さなくてはならない。 しかし…… 「なんだよっ、変な所につれてこられたと思ったら、いきなり宙に浮いたりっ! 訳わかんねぇよ!」 あまりにも非常識な光景に、才人が思いっきり愚痴をたれた。 才人は僕と違い、スタンド使い、いや一般人に襲われても、それをのける術が無い。 多少危険だが、真っ先に逃がすしかない。 僕はハイエロファントの触手を、城壁に引っかけ、もう片方の触手を才人に巻き付けた。 そしてそのまま、定滑車の要領で城壁まで才人を持ち上げる。 「うおっ! なんだよ、これは!」 「黙ってろ! 舌を噛むッ!」 全力で才人を城壁の通路まで押し上げる。あまり力の強くないハイエロファント・グリーンにとっては、殆どパワーに余裕がない。 今、攻撃されれば、僕に身を守る手段はないッ! しばしの間。 誰もこちらに攻撃してくる気配はない。それどころかほぼ皆が、僕の方には見向きもせず、才人の方を向いて驚いたような顔をしている。 「『フライ』ッ! しかも速い!」 「何で平民が魔法を使えるんだ!?」 「いや、その前に…… 誰か、あいつが杖を抜く所を見たか!?」 其奴等は、人が浮くということとは別の次元で驚いているようだった。 まさかスタンドの代わりに、違う概念があるとでもいうのだろうか? ともかく、今はここから離れるのが先決だ。 友好的にすまそうにも、僕らはここの奴らに、敵意をもたれすぎている! そのまま、才人を引き上げたハイエロファント・グリーンに捕まり、自分も城壁へと登る。 「この、火のラインメイジである僕が…… この僕が! 」 地面から立ち上がったマントをつけた奴らの一人が、こちらをにらむ。手には長めの棒ッきれらしきものが握られていた。 其奴は何かをブツブツとつぶやく。すると、杖の先に50cmはあろうかという火球が現れた。 「『フライ』中なら、さっきの妙な技もつかえまいッ! 平民風情がっ、思い知れ! 『フレイムボール』!!」 こちらに向かって火球が飛んできた。 僕は確信する。ここにはスタンドと違う、けれども似たような概念が存在するのだと。 速度は中々に速い。このままではかわしきれないだろう。 だが、このサイズなら…… 「かき消せるッ! 『エメラルド・スプラッシュ』ッ!」 僕の捕まっていた触手から、エメラルドの力のビジョンが放たれる。 そのビジョンは、僕を追ってくる火球をうち消し、そのままマントの男に襲いかかった。 「何で『フライ』中に呪文が使えるんだッ!」 マントの男はそういって、僕のエメラルドスプラッシュを全身に浴びる。男の身体は木の葉のように宙に舞い、地面へとたたきつけられた。 下の広場が、一気に騒がしくなった。今ならここから逃げ切れる! 「なぁ、お前、今のどうやったんだ?」 「後で教えます。兎に角、いまは早く……」 下を見る。周りは平らな土地であるが、所々に点在する木々に隠れながらいけば、何とか巻けるかも知れない。 そのとき、後ろから小柄な少女特有の、高い声が聞こえてきた。 「まちなさいっ!」 僕らは、とっさに振り向いて、声の主を確認する。 その声の主は、こちらへ着た時、才人の一番近くにいた、桃色がかったブロンド髪の少女だった。 しかし、僕の視線はすぐにその少女の周りへと向けられた。 マントをつけた奴らが、さっきの奴と同じように、こちらに杖を構えていたからだ。 「ちょっとあんた達、あたしの『使い魔』に何するのよッ!」 「うるさいッ! まだ『契約』もしてないだろうが! 第一、『メイジ』だろうが『使い魔』だろうが、平民風情に貴族が遅れを取るなんて、恥さらしも良い所だッ!」 マントをつけた奴らのリーダー格らしき男と、先ほどの少女がなにやら言い争っている。 耳を傾けてみると、使い魔やら、契約やら、メイジやら、全く聞いたことのない単語が、連呼されているのが聞こえた。 良く解らないが、とりあえず、只で返してくれるつもりは無いらしい。 僕はハイエロファントをもう一度ほどき、触手状態にする。そしてそれを城壁の一カ所、一カ所に引っかけ、蜘蛛の巣のように張り巡らした。 再び下を見る。いつの間にか少女の姿は消え、マントをつけた奴らが杖の先を光らせていた。人数こそ10人ほどいるが、さっきの奴より大分、光が小さい。 無駄だと悟りつつ、僕は一応の警告を入れた。 「既にこちらには、そちらを攻撃する用意が出来ているッ! 何もしなければ、こちらも手を出すつもりはないッ」 「今更ァ、後に引けるかァァァァアアアッ!」 杖の光が石、氷、風、火… 兎に角、様々なものに変化し、僕らめがけて飛んでくる。 相手に引く意思は全くないようだ。ならッ! 「伏せてろ、才人! 『エメラルド・スプラッシュ』 INッ! 『法王の結界』ッ!」 僕も全力で応じよう。 人型の時なら裁ききれない量だが、この状態なら問題ではないッ! 先ほどの何倍もの量で発射されるエメラルドの破壊のビジョンは、石も、氷も、風も、火も全てを巻き込んで、奴らに襲いかかる。 相手を殺さない程度に加減はしたが、それでもこの量、もし、まともに食らえば二週間はベットから立ち上がれまい。 土くれはめくれあがり、ものはピンボールのように跳ね、砕け散る。 ほぼ瞬時に、下の奴らは恐慌状態へと陥った。 「ハァ~…… ハァ、ハァ、ハァ…… 」 「お…… おい、大丈夫かよ?」 「心配入りません。少し、疲れただけです」 しかし、僕の精神力も限界に達している。 あと一回、『エメラルド・スプラッシュ』を撃てるかどうか…… 今、逃げ損なったら、次は無いッ! 「走ります。才人、ついてこれますか」 「ああ、何とか」 そのまま城壁の上部を駆け抜け、登った時と同じ要領で、城壁の外へと降り立った。 少し離れた位置に森があったのは、実に運がいい。 ひとまずここに身を隠して、それから本体を探し出して、叩く。 そうすれば…… 「やっぱり、こっちの方にきたわね」 「!?」 いつの間にかいなくなっていた桃色ブロンドの髪の少女が、僕らの目の前に立っていた。 「よくもさんざん逃げてくれたわね……」 そういって、少女は杖を取り出した。どうやらあの力を使うには、こういう棒が必要らしい。 距離は10m程。今はスタンドパワーが惜しい。なら、近づいて取り押さえるッ! 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。このものに祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を取ろうと手を伸ばす。 しかしその手は空を切った。少女の方から、こちらに近づいてきた所為だ。 僕の顔の近くに、少女の顔が寄る。甘いにおいがした。 「あんた、感謝しなさいよね」 少女はさらに顔を寄せてくる。 何を感謝しろというんだ! と心の中で毒づきながら、僕は少女から逃れるように、思いっきり上体をそらした。 ……少しそらしすぎた。体勢を崩した僕は、そのまま少女に巴投げをかけるようにしてこける。 「「え?」」 僕の後ろにいた才人は、そのまま少女と頭突きとも取れるような、盛大なキスをして、仲良く地面へと倒れ伏したのだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/357.html
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「『直』は…素早いんだぜ」 崩れ落ちるようにして倒れるフーケとは対照的に老人が徐々に若くなっていく。 「え…あ…プ、プロシュートだったの…?全然気が付かなかった…!」 偽装するために廃屋にあった服に着替え髪の編みこみも解いているがその老人は紛れもなくプロシュートだった。 「まさか自分自身をも自由に老化させる事ができるなんて…」 キュルケなぞ半分放心した様子でそれを見ている。 「こいつ…やはり袋の中身見てやがったな」 プロシュートが倒れているフーケから馬車で渡された袋を取り出したのだが見事に封が破られていた。 「…なにこれ?何かのマジックアイテム?」 袋の中の石のようなものを見てルイズが聞いてきた。 「ああ、そいつはその辺に落ちてた石ころだ」 「………はい?あの時確かに『老化防止薬』って言ったわよね?確かに言ったわよね?」 「言ったな」 「小屋に入る前に『グレイトフル・デッド』っていうんだっけ?あれ使った時わたし達誰も老化しなかったじゃない」 「オレの周りだけ直に老化させたからな」 ああ、つまりこいつは―― 「使い魔が主人を騙したって思っていいのかしらね…!」 小刻みにルイズが震えておりこれは間違いなくキレかかっている。 「中身見られるの分かってて対抗策渡すマヌケが居ると思うか?」 「…なに?それじゃあ最初からミス・ロングビルがフーケって分かってたの?」 「完全な確証は無かったが、大体はな」 「どうして分かったのよ」 「窃盗ってのはどれだけ早く現場から遠くに逃げるってのが成否を分けるもんだ それをしないでたかだか馬で四時間程度で辿り着けるような小屋を潜伏先にするって事自体怪しいからな。オレなら夜通してでもしてでも遠くに逃げる」 プロシュートは暗殺チームだがパッショーネには窃盗チームも存在する。 そいつらの手口と今回のケースを比べてみれば『土くれのフーケ』と呼ばれる程のプロが単純な窃盗目的でこんな事をするはずが無かった。 「それに、こいつの目だ。オメーらや他の貴族達みたいな目をしてなかったからな。どちらかというと…オレ達に近い」 フーケもプロであり、それを貴族連中からなら隠し通す自信もあっただろうが、己と同類項ともいえる世界を生きてきたプロシュートには通用しない。 「確証が無かったからしばらく泳がせたが案の定って事だ」 「…わたしに破壊の杖を使わせてゴーレムを倒させたのは?」 「オレが倒したらこいつが出てこねーだろ。近付かれるとヤバイってのは知ってたみたいだしな」 プッツン 「こ、こここの犬ーーーーーッ!!そ、そそそれってわたしを囮にしたって事じゃない!!」 「成長できたって事でよしとするって事で、こらえろ」 「ご主人様を囮にする使い魔がどこの世界にいるのよ!こ、ここの生ハムーーーーーーーッ!!!!」 もう、今にも杖を取り出し爆破しそうな勢いだがギアッチョをなだめさせる時のように諭す。 「ゴーレムを倒したのはオメーにその『覚悟』があったからなんだぜ? その『覚悟』がなけりゃあゴーレムだって倒せてないし、フーケだってここに転がってねーんだからな」 まだ、納得できてないのかフーケを見たりプロシュートを見たりしている。 ゴーレムを自分の手で倒してそれがフーケ捕縛に直接繋がったという達成感と使い魔に囮にされたという思いが激しく戦っているようだった。 「ま…マンモーニから少し成長できたってこった」 「仲良さそうにしてるとこ悪いんだけど…これどうするの?」 そうキュルケが指差す方向にあるものははもちろんカラッカラに干からびたフーケだ。 「…任務は捕縛だからな、殺すわけにもいかねーし…杖ヘシ折って縄で縛っとけばいいだろ」 「あー…いや、それもあるんだけど……戻るの?これ」 「老化した後、戻すかどうかってのはオレの自由だな」 安堵したかのようにため息を吐くキュルケだが、別にフーケの事が心配なのではなく自分が万が一これに巻き込まれた場合の事を想定しての事だ。 そうこうしているうちにいつの間にかタバサが干からびたフーケを縛っていた。 スゥー というような音がして縛られたフーケが元の姿に戻り始める。当然気を失っているため起きはしない。 「戻しちゃってもいいの?」 「捕獲すりゃあ別に老化させる必要もねーからな。スタンドパワーも無駄に使う事になる」 「…スタンドパワーってなによ?」 「使い手の精神力みてーなもんだ」 「よく分からないけどダーリンの不思議な力の源、つまりわたし達が魔法を使う事と同じって事でいいのかしらね」 「まぁそんなとこだ」 言いながらフーケを担ぎ馬車に戻るが、軽くするためにもう一度老化させた事は言うまでもない。 学院長室でオスマンが事の顛末を聞いていた。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……美人だったもので何の疑いもせず秘書に採用してしまった」 早い話、居酒屋で飲んでるとこにフーケが給仕をしておりそれにセクハラをしても怒られなかったので秘書に採用したという事である。 コルベールが 「死ねばいいのに!」 と呟やいた気がするがプロシュートを除く三人は聞こえないふりをする事にした。 その後も続くオスマンの弁明だが曰く「あれがフーケの手だった」だの「尻を撫でても怒らないから惚れてる?」だの正直弁明どころか墓穴を掘っている。 ――がコルベールもそれに同調してるあたり同じ手に引っかかったらしい。 三人がホワイトアルバムよりも冷たい視線を送っている事に気付きオスマンが咳払いをして話の流れを変えようとする。 「さ、さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ、『破壊の杖』を取り返してくれた」 プロシュートを除いた三人が誇らしげに礼をした。 「フーケは、城の衛士に引き渡した…が何かしきりに鏡を見せてくれと言ってたようじゃが、『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」 オスマンがその手で三人の頭を撫で話を続ける。 「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろうな」 タバサはスデにシュヴァリエの称号を持っているらしく精錬勲章になるという事だが三人の顔が一斉に綻んだ。 だが、ルイズが興味なさそーに突っ立っているプロシュートに気付いた。 「……オールド・オスマン。プロシュートには何も無いんですか?」 「残念ながら、彼は貴族ではない…がこの前の決闘の処置が宮廷よりきてな」 「本当ですか?」 「うむ…処刑は免れたようじゃが流け…嘘!嘘じゃ!ジジイの愉快なジョーク…って痛い、痛いから」 『流け…』と聞いた瞬間放心したように杖を落としたが嘘と聞いて杖をオスマンに向け殴りつけた。 「…で、どうなったんですか?」 「う、うむ、何とかなりそうじゃの」 貴族が平民に決闘を仕掛け敗れたという点がグラモン家の『生命を惜しむな、名を惜しめ』という家風に反する事と そしてこれが一番の事だが、マルトー経由で 『二股かけそれが発覚。八つ当たりにメイドに魔法を使おうとし、それを止められ決闘になった』 これが決定打になった。 ただでさえ、貴族が平民に敗れて殺されたという事が平民の間で噂になっているというのに 平民のメイドに八つ当たりしようとして止められた事が噂として流れればグラモン家としては甚だ不名誉な事であり 最悪、他の国の貴族からの嘲笑の的になってしまう。 その恐れが『決闘の事は無かった事にしてください』という事にさせていた。 それを聞いたルイズが心底安心したようにため息を吐いた、ルイズなりに心配はしていたようだ。 「破壊の杖も戻ってきた事じゃし予定どおり『フリッグの舞踏会』を執り行う 今日の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。着飾っておくようにな」 キュルケが顔を輝かせながら着替えるべく外にでていく。やはりこの手の行事は大好きなようだ。 「オレは爺さんに聞きたい事があるから先に行け」 「まだ、心は少年なんじゃがのぉ…」 「…身も心もさらに老化させてろうか?」 ルイズが心の中で(どこがだ!)と突っ込むが時に気にせず外に出る。 「さて…何を聞きたいのかね?」 「あの破壊の杖は確かにオレの世界のもんだ。パンツァーファウストっつーもんで魔法の杖とかじゃあねぇ」 「やはりドイツと言うのはお主の世界のものじゃったか」 「ああ、それと、パンツァーファウストを掴んだ時に その使い方までもが瞬時に理解できた。その時にオレの左手の文字みてーなのが光ったんだがこれが何か分かるか?」 左手に刻まれたルーンをオスマンに見せる。 「変わったルーンじゃの…コルベール君に調べさせておくからルーンを写させてくれんかの」 「そいつは構わねーが…この世界から元居た場所に戻れる方法はあるのか?」 「別の世界から召喚されたという事自体が無い事じゃからの…わしなりに調べてはみるが掴めんでも恨まんでくれ」 (まだ戻れそうにねーか…) リゾット達がボスの娘を奪取しボスを倒していれば問題は無いが自分が戻った時にチームが全滅などという事態になっていては洒落にもならない。 その焦りがプロシュートに珍しくため息を吐かせていた。 プロシュート兄貴―未だ帰還手段不明。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1038.html
春の麗らかな風景に爆発音が響いていた。 爆発音の発信源はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 彼女は他のクラスメート達や教師が見守る中、サモン・サーヴァントの儀式を行っていたが、爆発ばかり繰り返していた。 その数も既に20を裕に越えており、始めは冷やかしていたクラスメート達も、流石に飽き飽きしていた。 いつまでたっても成功しないのを見て、U字禿の教師コルベールは「次で成功しなかったら良くて留年、最悪の場合退学になりますぞ」とルイズに脅すように言った。 「五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ。」 ルイズはありったけの魔力をこめ、いつになく真剣な面持ちで唱えた。 しかし、ルイズの思いも虚しくまた杖を向けた先で爆発が起こった。 それを見た全員がまた失敗かと思った。が、もくもくと土煙が立ち込める中に爆発する前には無かったはずの『何か』があった。 ルイズはそれに気が付くとゆっくりと警戒しながらその何かに近づいていき、それを手にとってみた。 「これは…『矢』?」 爆発の跡にあったのは一本の古びた矢だった。鏃は金属でなく石で作られ刃の部分は鋭く出来ていたが、その装飾からして実戦で使うものではないようだ。 だが、彼女にとって生物でない物に用はない。サモン・サーヴァントは使い魔となる生物を呼び出す儀式。明らかに無機質な矢などお呼びでないのだ。 ルイズは溜め息をついた。爆発ばかり繰り返し、簡単なコモンマジックどころかまともに使い魔すら召喚出来ない『ゼロ』…自分の将来を憂え今すぐ泣き出したくなったその時、 サクサクと草原を誰かが歩く音がした。 クラスメートの誰かが自分を慰めに来たのか、それともコルベールが退学を宣告しに来たのか。ルイズはいずれにせよ振り向く気になれなかった。 だが、その音の正体がどちらとも違う事がクラスメートが次々にしゃべった事で明らかになった。 「おい、何か黒いのがいるぞ!」 「遂に成功したの!?やったじゃないルイズ!」 えっ!?と驚きルイズが振り向くと黒い人らしき「物」がこちらに背を向け歩いていた。 カウボーイハットの様な帽子を被り、肩にはドーナッツ形の飾りを幾つも付けている。 腰にはゆるゆるとしたベルト、更に乗馬用のブーツみたいな靴を履いている。 だがその姿はどこまでも漆黒であり、生物と非生物の間のような存在感を出していた。 ルイズは成功してこれを呼び出したのにこれに対し何とも言えない不気味さを感じた。 こいつは何かヤバイ気がする…契約をすべきなんだろうか… そう思った時、既に異変は始まっていた。 いきなり周りにいたクラスメート達が何の前触れも無くその場で倒れると眠りだしたのだ。彼らの使い魔達も、である。 その異常な光景にルイズは呆然としたが、ふと気付いた。自分の手からいつの間にか矢が地面に落ちていたのだ。 そして矢は斜面でもないのにその漆黒の『何か』の元まで転がって行った。漆黒の『何か』は立ち止まり矢を拾いあげると再び歩き出した。 「ちょ、ちょっと!これはあんたの…」 そこまで言うといきなり足に力が入らなくなり、ストンと地面に腰を落としてしまった。 「な…た…立てな……」 そして意識が朦朧とし、他のクラスメートやコルベール同様地面に横たわり、眠ってしまった。 それでも漆黒の『何か』…前の世界で『鎮魂歌』と呼ばれたそれは城の方へとゆっくり歩いて行った… シトシト… 気付いたら夕方になり小雨が降り出していた。 ルイズはいつの間にか自分が寝てしまった事を思い出し、起き上がろうとした。 しかし、地面に手を付けた瞬間グラリとした。なにかおかしい…身体が『重い』…いやサイズに『合わない』感じがする。 「何が起きたの」 自分の周りを取り囲んでいた中にいたはずのキュルケがいつの間にか近くにいた。 「分からない…いつの間にか寝ちゃって…」 ルイズが答える。視覚がまだぼんやりしていた。 「ルイズの使い魔のせい?」 キュルケが淡々とした感情の起伏の無いしゃべり方をしているのにルイズは違和感を覚えた。キュルケの普段のしゃべり方はこんなのじゃない… 「し、しし知らないわよ!私だって何がなんだか…」 「私?」 キュルケが首を傾げた。ルイズはますます違和感を覚え、尋ねてみた。 「あんた…本当にキュルケ?」 その問いにキュルケは首を横に振ることで答えた。 「冗談はよしてよ!あなた、どう見たって…」 そこではっとした。自分の背が明らかに延びていたのだ。手もよく見てみたら成人男性のような… もしかして!と思い、頭に手をやるとそこには無かった。自分のトレードマークとも言えるものが! 「無い!あたしの髪が無い!」 「元々」 キュルケが突っ込んだ時、「うぅ…」 また近くでうめき声が上がった。キュルケの隣で寝ていたタバサだった。 「何なのよ…いきなり眠くなって…」 タバサが起き上がってキュルケを見た。キュルケも起きたタバサを見た。 「「………」」 二人は五秒ほど沈黙した後、 「きゃああああああああ!」 タバサ、いやタバサの中のキュルケが絶叫した。キュルケの中のタバサも驚いて目を丸くしている。 だが、彼女達よりショックを受けた人達がいた。 ルイズは頭に髪が無いので気付いた。辺りを見渡すとすぐに見つけた。今にも起き上がろうとしている自分の身体を! その自分の身体も自分を見た。 「いやぁぁぁぁぁぁ!」 「うぉぉぉぉ何事ぉぉぉ!?」 両者共にキュルケより遥かに大きな声で絶叫した。 しばらくして心と状況の整理が出来た。 まず、どういう訳か分からないが、魂が入れ代わったということ。 しかもほとんどが使い魔と入れ代わったらしく、話しかけても全然通じなかった。例外は四人の他、ギーシュとマリコルヌだけであった。 次に、これは仮説だが、この現象はルイズが呼び出した使い魔が引き起こした物だということ。 そして最後に、得意魔法等は魂と一緒についてきた。 ということである。 「困りましたぞぉぉ」 ルイズの中のコルベールが頭を抱える。頭の上が豊かなことや若返ったのは嬉しいらしいが、そんなことを言っている場合では無い。 これがもしハルキゲニア中に広まったら大変な事になる。 しかしその元凶がどこに行ったのかも、どうやれば元に戻るかも分からなかった。 焦ってばかりで役に立たない教師を尻目にキュルケとタバサはいち早く動き出した。 「黒い人のようなのよ。捜して来て!」 キュルケはシルフィードと入れ代わったフレイムに命令した。 「きゅるきゅる」 フレイムは慣れない様子で飛び上がり、辺りを旋回しだした。 「森の中。」 タバサもシルフィードに探索するよう命じた。 「きゅい!」 シルフィードは森の中に入って行った。 10分ぐらいしてフレイムが本塔の近くでレクイエムを発見した。 キュルケはフレイムに足止めを頼みつつ、六人はレクイエムの元へと急いだ。(当然だが、マリコルヌと入れ代わったギーシュはおいてけぼりだった。) To Be Continued...