約 1,875,311 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/658.html
人間がこの世に存在するのは金持ちになるためではなく、幸福になるためである byスタンダール ドアを開けるとそこにいたのはワルドだった。 「おはよう。使い魔くん」 「おはようございます」 「おはようございます」 五月蠅いぞギーシュ。会話に入ってくるな。 しかし朝からどうしたというんだ?朝食にはまだ早いだろう? 「ええと、ギーシュくん。少しの間ご退出願えるかな」 「は、はい」 ギーシュは戸惑いながらも出て行く。 「きみは伝説の使い魔『ガンダールヴ』なのだろう?」 そしてギーシュが完全にいなくなったことを確認すると、ワルドは突然そう切り出した。 「は?」 心臓がバクバクする。誤魔化せれた、誤魔化せれたよな!?なにも顔には出してないよな!? うまく惚けた振りできたよな!? なんで知ってんだよ!?ありえねー!ふざけんなよ!? 「……その、あれだ。フーケの一件で、僕はきみに興味を抱いたのだ。そしたら伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうじゃないか」 ワルドは何か誤魔化す様な感じで首を傾げながら言う。反応からしてどうやらこちらの変化には気づいてないようだ。 よかった、いつも無表情でいて。……よし、落ち着いた。もう大丈夫。 私が『ガンダールヴ』だということを知っているのはオスマン、ならびにオスマンと一緒に調べた(らしい)コルベールだけだのはずだ。 知っているはずがない。それに『ガンダールヴ』は伝説なのだ。オスマンはそれを勿論知っている。コルベールもだ。 伝説が復活したとなれば色々騒ぎになるはずだ。その騒ぎを恐れてオスマンとコルベールは秘匿しているはずなのだから喋るわけがない。 さすがに色仕掛けだとかそんなもんで喋るものでもないだろう。 ルーンを見られたという可能性もあるがいつも手袋をしてるし、洗濯等の水周りぐらいでしか外さない。 それにルイズにすらルーンを見せてないしな。 おかしい、そして怪しい。 「『ガンダールヴ』ですか?それは一体?」 誤魔化すことにしよう。そしてワルドの様子をさぐる。 「いや『ガンダールヴ』だよ。まあいい。僕は歴史と、兵(つわもの)に興味があってね。フーケを尋問したときに、きみに興味を抱き、王立図書館できみのことを 調べたのさ。その結果、『ガンダールヴ』にたどり着いた」 確定だ。こいつは怪しいんじゃない、怪しすぎる。敵である可能性もでかい。 何でその王立図書館で俺のことが調べられるんだ?どうしてそこで『ガンダールヴ』が出てくる?敵かもしれないという可能性は暴論じゃないはずだ。 敵じゃなくても何か隠してるのは間違いない。 「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 おいまさか…… 「……それのことですか」 そう言ってワルドの腰に刺さっている杖を指し示す。 「これのことさ」 ワルドは薄く笑いながら杖を引き抜く。もしかしたら試合中の事故とか言って私のことを殺すつもりなのかもしれない。 「断ります」 「へ?」 ワルドは目を丸く見開き呆けた表情をする。断れるとは思って無かったのだろう。滑稽だな。 しかしすぐに正気に戻る。 「ちょ、ちょっと待ってくれ。お互いの力量が測れるいい機会だと思わないかい?お互いの実力がわかれば戦闘においても作戦が立てやすくなる」 しつこいな。そんなにしてまで私を殺したいのか? 「心配しなくてもあなたの実力は大体予測がついてます」 「へ?」 「おそらく『風』のスクウェアメイジで接近戦でも強いであろうということ。それと戦いなれしているであろうということ。それだけわかれば十分です」 体つきがいいからな、鍛えているのだろう。だから接近戦も出来るはずだ。もしかしたらそこに魔法を織り交ぜてくるのかもしれない。 『風』だと判断したのはギーシュの使い魔への攻撃とギーシュに迫る矢を防いだ時に『風』属性の魔法を使っていたからだ。 とっさに何かする場合、自分が得意とする属性が出るものだと思っている。それに魔法が使える奴は自分の得意な属性を贔屓したがるようだしな。 なんにせよ、ワルドの呆けた顔は滑稽だった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9096.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第二十九話「宇宙人連合の罠」 三面怪人ダダ 三面異次元人ギギ 登場 「んんー……ふああーあ」 倒れている春奈を発見し、魔法学院へ連れ帰った翌朝。才人は目を覚まして、ワラの寝床から 身を起こした。 「朝か……。久しぶりのワラの布団は、どうも体が痛いなぁ……」 起床した才人が肩をゴキゴキ鳴らす。最近はルイズのベッドに同伴させてもらっていたが、 春奈をかくまうことにした以上、そうは行かなくなった。急遽ルイズの部屋にもう一つベッドを 入れたのだが、具合の悪い春奈が一つ占領した上、他の女性のいる中でルイズと一緒に寝るのが 忍びなかったので、自主的にワラの寝床に戻ったのだった。 「言ってても仕方ないか……。おーい、ルイズ、春奈。朝だぞー」 立ち上がった才人は、ベッドの上のルイズと春奈に声を掛ける。だが、春奈の方の様子が おかしいのに気づいて、顔を覗き込んだ。 「はぁ……はぁ……」 「春奈!? どうしたんだ!」 春奈の顔色が悪く、息を切らしていた。額に触れると、熱く感じた。 「風邪か!?」 「うッ……お水……」 「あ、ああ、分かった……」 コップに水を注いで飲ませてあげる才人。その間に、ルイズが目を覚まして身体を起こした。 「何? ハルナ、どうしたの?」 「どうも、具合がもっと悪くなってるみたいなんだ。まさか、ルイズの爆発が素人には良くなかったんじゃ……」 「ちょっと! わたしのせいだって言いたいの!?」 一瞬激昂したルイズだが、我に返ると指示を出す。 「とにかく、シエスタを呼んできて。彼女に看護をお願いしましょう」 「あ、あぁ」 才人がすぐにシエスタを呼んでくると、春奈は三人に謝罪する。 「……平賀くん……。ルイズさん、シエスタさん……。ごめんなさい」 「ちょ、ちょっと何謝ってるのよ! しっかりしなさいよ」 「なんだか体がだるくて、力が入らなくって……」 「分かったから、もう話すな」 才人たちが話している間に、ゼロが春奈の容態を診断した。 『どうも、まだ環境の変化に馴染めなくて熱を出したみたいだな。しばらく安静にしてたら 良くなるだろ』 春奈の世話はシエスタに任せることにして、才人とルイズはゼロを密かに話し合う。 『それより問題は、春奈がこんな状態の時に、宇宙人連合の刺客が来ないかってことだ』 「えッ!? 宇宙人が学院に乗り込んでくるかもしれないってこと!?」 『その可能性は十分考えられる。俺たちが春奈をこの場所にかくまってるってことは簡単に 予測がつくだろうし、侵略者ってのはあれくらいで諦める連中じゃない。今日にも、春奈を 奪いに乗り込んでくる恐れがある』 外宇宙からの敵が、学院に侵入する……。それを想像して、才人もルイズも固唾を呑んだ。 『しばらくは学院の中にいても、油断せずに過ごすべきだろう。いいな?』 「あ、あぁ……」 「分かったわ……」 ゼロの警告にうなずく才人とルイズ。と、ルイズが時刻を確認して声を上げた。 「いけない、そろそろ授業に行かないといけない時間だわ」 朝からドタバタしていたので、未だ寝巻き姿である自分に気づいて、急いで支度をする。 着替え終わって、才人とともに本塔に向かう頃には、ギリギリな時間になってしまった。 ルイズと才人が授業へ向かい出した時より少し前の時間帯。魔法学院の本塔には、多くの生徒が 集まっていた。 「おお、モンモランシー! 麗しのモンモランシー! 待っておくれよ!」 ギーシュもその中の一人。今はツカツカと廊下を早足で進むモンモランシーの背中に懸命に 追いすがっている。 「もう知らないッ! ホント馬鹿ッ!」 モンモランシーはギーシュに対しておかんむりで、立ち止まって振り返ろうともせずに歩き続ける。 実はギーシュが下級生を口説いている場面に偶然鉢合わせて、それで嫉妬を爆発させたのだ。といっても、 ルイズじゃないんだから現実に爆発は起こしていない。 「君は誤解をしているんだよ、モンモランシー! ぼくの心の中の一番は君だけなんだよ!」 「わたしがどう誤解してるっていうのよ! ちゃんと聞いたんだからね、口説き文句! それに一番はわたしでも、どうせ二番や三番がいるんでしょう!」 「えッ、えぇっと、それはだね……」 肝心なところで言いよどむので、モンモランシーは呆れ果ててギーシュを置いて行こうとする。 「ま、待ってくれ! 本当に君を愛してるんだ、モンモランシー! 愛してる! 愛してる! ああ、愛してるとも!」 ひたすら「愛してる」を繰り返し唱えるギーシュ。語彙が少ないからだが、モンモランシーは 何度も言われると、悪い気にはならなくなってくる。ギーシュも単純だが、モンモランシーも 案外単純だった。 「……そうね。先日はこっちもやりすぎちゃったし、本当に反省するというんなら、許して あげないことも……」 惚れ薬の一件を省みて、少しは寛大さも見せておこうかとギーシュへ振り返るモンモランシー。 だが、その視線はギーシュではなく、もっと後ろへ引きつけられた。 廊下の奥で、白黒の縞模様の体色をした、能面のような顔つきの怪人がくねくねと怪しい踊りを 踊っているのだ。 「!?」 「モンモランシー? どうかしたのかい?」 目をゴシゴシとこすって見直すと、怪人の姿は忽然と消えていた。幻覚だったのかしら、 疲れてるのかしら……? と自身を疑うモンモランシー。 「ああ、ごめんなさい。何でもないわ。それより何の話だったかしら……」 ギーシュに向き直ると、今度はギーシュの目が自分の背後に釘づけになっていた。それで 後ろを振り向くと、先ほどの怪人が、今度は自分の後方で踊っていた。 「!?」 二人で目をこすると、怪人の姿はまたなくなっていた。 「……す、すまないね。何だかぼく、疲れてるみたいだよ……。一瞬幻覚が見えたんだ……」 「あ、あら、奇遇ね。わたしも何だかおかしなものが見えた気がするわ……」 「君もかい、モンモランシー? それはいけないね。今日は大事を取って、二人で授業を 休むことにするかい?」 渇いた笑い声を上げる二人。そこに、横からモノクロの怪人がぬっと顔を出した。 「ダ―――ダ―――――!」 「……きゃあああああああああああああああッ!?」 途端に絶叫する二人。それでもギーシュは咄嗟にモンモランシーをかばって、杖を抜く。 「ば、化け物! モンモランシーには指一本触れさせないぞ! このギーシュ・ド・グラモンが 相手だ――!」 「ダ―――ダ―――――」 怪人は両手持ちの大型光線銃をどこからともなく取り出すと、ギーシュが呪文を唱える前に 光線を浴びせた。それにより、ギーシュの姿が忽然と消えてしまう。 「ギーシュ!? いやああああああ!」 恐怖に駆られたモンモランシーが走って逃げ出し、階段へ向かう。だが角を曲がった時、 前方から顔の違う白黒の怪人が音もなく現れた。 「ダ―――ダ―――――」 「きゃあああッ!?」 階段を下りるのをやめ、廊下の奥へと逃げていく。だがその先からも、極端に目の小さい、 また違う顔の怪人が現れる。 「ダ―――ダ―――――!」 「いやあああああッ!!」 急停止したモンモランシーに、怪人がギーシュにやったように光線を浴びせた。それで モンモランシーも消え失せてしまった。 「あ……あ……!」 「も、モンモランシーが……!」 その様子を、ちょうど階段を上がってきたモンモランシーたちの同級生のマリコルヌと レイナールが目撃していた。怪人がそちらへ振り向くと、二人は悲鳴を上げて階段を引き返していく。 「うわああああああ! 化け物がモンモランシーを消しちゃったぁ!」 「早く逃げるぞマリコルヌッ!」 怪人とは距離が離れていたので、二人は怪人に追いつかれない。 「ギギギギギギギ!」 だが階段を駆け下りる途中で、進行方向に同じ白黒の縞模様だが、身体つきの異なる別の 怪人が立ちはだかった。青いバツ字型の一つ目をしている。 「うぎゃああああああ! こっちにも!?」 慌てて振り返ると、背後にも、同じ種類で黄色の二つ目と、赤い逆三角形の一つ目の怪人が、 目にも留まらぬ高速の動きで回り込んでマリコルヌたちを囲い込んだ。 「うわああああッ! に、逃げられないッ!」 「ギギッ!」 パニックに陥ったマリコルヌとレイナールに、青い目の怪人が片手持ちの小型光線銃を向け、 レーザーを放った。それを浴びたマリコルヌたちも消え去る。 「ギーッギッギッギッギッギッ!」 三人の怪人は肩を上下に揺らして笑うと、滑るような移動で階段から消え去った。 「ダ―――ダ―――――……!」 追いついてきた最初の顔の怪人も、それを目にして、姿が少しずつ薄れていき、完全に 消えていなくなった。 「……おや? 今日は随分と出席率が悪いですね」 先生のコルベールが教室に入った時には、ルイズと才人も入れて、半数未満の生徒しか 席に着いていなかった。コルベールはすぐにそのことを訝しむ。 「私の授業があまり人気がないのは自覚してますが、ここまで集まりが悪いとは。風邪でも 流行ってるのでしょうか? ミス・ヴァリエール」 「いえ、みんな昨日まで元気にしてたはずですが……」 「何か、朝から学院内が閑散としてましたよ。移動中に、ここで働いてる人も見かけませんでしたし……」 コルベールの質問に、ルイズと才人が答えた。部屋を出てから教室に着くまで、生徒はおろか、 メイドや使用人の平民も全く見かけなかった。それで二人とも、不気味なものを感じていた。 「それは妙ですね……。仕方ありません。授業は中止して、私は校舎を見てきます……」 表情を険しくしたコルベールが踵を返そうとした時、キュルケとタバサの二人が息を切らしながら 教室に飛び込んできた。 「ミスタ・コルベール! 大変です! 学院に侵入者です!」 「な、何ですと!?」 キュルケの報告に、コルベール以下全員が驚愕した。 「見たことのない亜人……恐らく、ウチュウ人が学院の人間を消して回ってるんです! 確かにこの目で見ました!」 「わたしたちは、どうにか逃げてきた……」 と言ったタバサが、目の色を変えてコルベールへ叫んだ。 「危ないッ!」 「ダ―――ダ―――――!」 いつの間にか、教室内に白黒の怪人が忍び込んでいた。タバサの警告のお陰で、コルベールは 横に倒れ込むことで光線をかわすことが出来た。 『あいつは、怪人ダダ!』 一気に教室中が大狂乱になる中、才人の中のゼロが叫んだ。 「うわあああああああ! 逃げろぉー!」 「ギーギギギギギ!」 ほとんどの生徒はキュルケたちのいる側と反対の扉から逃げていこうとしたが、その行く手に 三人の怪人が出現し、レーザーで皆消し去ってしまった。 『異次元人ギギまで! 宇宙人連合の刺客が、もう来やがったか!』 「み、みんなぁッ! おのれ!」 温厚なコルベールが憤怒の表情を見せて杖を取り出したが、そこに怪人ダダが光線銃を向け直す。 「先生、危なーいッ!」 叫ぶ才人。コルベールが向き直った時には、ダダは引き金を引いていた。 ……と、思いきや、その姿勢のままスウッと消えていった。それに合わせて、ギギの三人も 一瞬でいなくなる。 「……あれ? どうしたのかしら?」 「助かった……のかしら?」 怪人たちの不可解な行動に首を傾げるルイズたちだが、すぐに気を取り直して、消された 生徒たちの身を案ずる。 「みんなは! 私の生徒たちはどこへ行ってしまったんだ!?」 「どこにも行ってない。よく見て」 コルベールが血相を抱えると、タバサが生徒たちの消えた箇所にしゃがんで、床を指し示した。 「えッ? どういうこと?」 コルベールやルイズたちが集まって注目すると……とんでもないものを目にした。 「うッ、うわぁー!? 何だこれぇ!」 「ルイズたちがでかい! ……いや、俺たちが小さくなってるのか!?」 「コルベール先生! 助けてー!」 「なッ、何これ!? みんながちっさくなってるわ!?」 生徒たちは全員、豆粒ほどの大きさになって狼狽していた。ルイズたちも目を見張る。 その中で才人は、通信端末からダダとギギの情報を引き出す。 「さっきの光線は、物を小さくする効果があるんだ。さっきの奴ら、学院の人間を小さくして 捕まえてるんだろう」 「状況からして、既に学院のほとんどが捕虜になってる。無事なのは、多分わたしたちくらい」 「むむむ……何ということだ! 早く皆を助けなければ!」 コルベールが使命感に燃えていると、キュルケが一つ問題点を挙げる。 「しかしミスタ・コルベール。どうやって小さくされた人間を元に戻すおつもりですか? そんな魔法、アタシは聞いたこともありませんよ」 「むう……確かにそこが問題だ。何かしらの解除薬が効くとも思えん……」 ハルケギニアの魔法は様々な効果を発揮するが、先住魔法を含めても、物を縮小する魔法なんてものは 存在しない。しかも、ダダとギギの光線銃は魔法ですらないのだ。コルベールたちだけでは、 小さくされてしまった者たちを元に戻すのは無理だろう。ルイズの『ディスペル』も効かないはずだ。 そこでルイズが意見する。 「とにかく、あの宇宙人たちをどうにかして倒すのが最善だと思います。あれほど容易く 人間を小さくできるのなら、万が一の時のために元に戻す方法を用意してるはずですし、 それを吐かせてみるのは如何でしょう」 「あら、たまにはいいこと言うじゃない、ルイズ」 「ひと言余計よ、キュルケ」 キュルケをじっと睨み返したルイズ。コルベールはルイズの意見に賛同する。 「うむ、それしか方法がないな。よし、敵はまだ学院のどこかに潜んでるはずだ。私が探して 皆を元に戻させるから、君たちは避難したまえ。オールド・オスマンは無事かもしれないから、 彼の下へ向かうのがいいだろう」 ルイズたちを逃がそうとするコルベールだが、キュルケは反対した。 「あら、学院に土足で踏み込んだ敵を前に、コソコソしてるだなんて貴族の矜持に反しますわ。 アタシたちも戦いますとも」 「そ、それはいかん……。生徒を危険に晒す訳には……」 「今の状況だと、安全な場所なんてない。むしろ、ひとかたまりになって警戒し合う方が安全」 タバサに言いくるめられて、コルベールはそれ以上言い返せなかった。 「……仕方ない。それでは、みんなで敵を探すとしよう。ただし、くれぐれも無茶はしないこと。 いいね?」 「約束しますわ」 キュルケが非常に気のない返事をした。その一方で、ルイズと才人はゼロと密かに話し合う。 「ゼロ、あの宇宙人たちは、やっぱり……」 『春奈を奪いに放たれた刺客だろうな。直接乗り込んでくるとは、大胆不敵な連中だぜ』 人間を縮小する能力は、捕獲に最適。ダダとギギの目的は、春奈に違いない。彼女が今 無事でいるかは分からないが、早くダダたちを倒した方がいいだろう。 「何の目的があるかは知らないが、執拗に春奈を狙うなんて、許せねえぜ。宇宙人連合なんて、 俺たちでとっちめてやろうぜ、ゼロ」 怒りを浮かべて戦意を燃やす才人の横顔を一瞥して、ルイズは一瞬だけむっとなった。 それからルイズたち生き残りの五人は、物音を立てないように慎重に行動しながら、学院内の 捜索を始めた。タバサの言った通り、既にほとんどの人間がダダたちの餌食になったようで、 どこへ行っても塔内は不気味な静寂に包まれており、人影は存在しなかった。 だが捜索を続けていると、ようやく空き教室の一つから、物音と何者かの気配がした。 コルベールの誘導で、廊下から教室内をそっと覗き込む。 教室の中には果たして、探し求めたダダとギギ三人の姿があった。ダダが自前の光線銃を 机の上に置いて必死にいじっているのを、ギギたちが呆れた様子でながめている。 青い目のギギが、胸に取りつけた小型翻訳機を通してダダに告げる。 『全く、貴様のせいで時間を無駄にした。我らギギ軍人の論理的で完璧な作戦行動の邪魔をした 罪は重いぞ』 するとダダが振り返って、苛立ちまぎれに言い返した。 『さっきからゴチャゴチャとうるさいダダ! しゃべってる暇があるんなら、修理を手伝うダダ! 今回はダダ本部の後援がないから、ミクロ化機はこれ一丁しかないんダダ!』 しかしギギはその訴えを無視して、ぐちぐちとダダをなじる。 『大体、そんな大雑把で不完全な機械を使っているから故障など起こすのだ。これだから 文明の遅れた種族は困る。頭を下げて頼めば、我らの精密で完璧なミクロ化機を 貸してやってもいいのだぞ』 『ダダの星の科学力を愚弄するダダ!? そっちの使ってるのこそ、どうせちょっとしたことで 壊れる欠陥品に決まってるダダ!』 『何! 我らギギの傑作をけなすことは誰であろうと許さんぞ!』 話の内容を聞く限り、先ほどはダダの光線銃が途中で故障したから、やむなく退散したようだ。 ギャアギャア口論するダダとギギをながめて、ルイズが呆れ返る。 「何あれ。あんな連中に学院はやられちゃったの?」 「侵略者なんて、あんなもんだろ。利害関係だけの協力体制だから、仲は悪いんだ」 ダダとギギから目を離すと、彼らの近くの机の上に、水槽のような半透明のケースが置いてあることに 気づいた。そしてその中に、ギーシュやモンモランシーを始め、シュヴルーズら教師に、マルトーら平民らが、 貴賎関係なく閉じ込められていた。どうにかして脱出しようとしていたり、絶望してうなだれていたりする 姿が見える。 「あそこにみんなが! 確かに、もう学院のほとんどが捕まっちゃってるみたい」 「ううむ、許せん! どうにか隙を見て奪い返せないものか……」 キュルケとコルベールが話している脇で、才人はその中に春奈の姿がないかやきもきする。 それを察して、ルイズはますます眉間に皺を寄せた。 ルイズたちが隙を窺っていると、ダダとギギの傍らにある、持ち込んだのであろう小型テレビのような 装置の画面に明かりが点いて、マグマ星人の顔が映った。 「サイト、あいつ、この間の……!」 「やっぱり、宇宙人連合の差し金か……!」 ダダとギギたちがモニターに振り返ると、マグマ星人が口を開く。 『何を遊んでやがる。ダダ274号にギギXY07、並びに08、09。早く任務を遂行しろ』 と命令されると、ダダはこう返答する。 『もう施設内のほとんどの人間は小さくして捕まえてやったダダ。任務完了まで後少しダダ』 『だが肝心の標的を捕まえれてないだろうが。どれだけ人間を捕まえようと、肝心の標的を 捕らえられなかったら意味がねぇんだぞ。お前らがそうしてる間に、逃げられたらどうする』 『それは……』 言いよどむダダを、ギギが鼻で笑う。 『無計画に作戦を進めるからだ。やはり我らギギの頭脳を活かして、施設を余すところなく調べ上げ、 緻密で完璧な計画を立ててから行動するべきだったのだ』 『そんな悠長なことしてたら、日が暮れるダダ! 作戦はダダ時間222以内に完了するべきダダ!』 『ええい! だからお前らで争ってんじゃねぇ!』 すぐに口論になるダダとギギに怒鳴るマグマ星人。だがここで、教室の扉の方へ目をやって 警告を飛ばす。 『むッ! 外に誰かいるぞ! 警戒しろ!』 「まずい、気づかれたわ!」 慌てて退却しようとするルイズたちだったが、既にギギが動いていた。 『貴様はここで捕虜を見張っていろ。我々が一網打尽にする。行くぞ!』 「ギギッ!」 ギギ三人がテレポートして、廊下のルイズたちの前後に出現、取り囲んだ。 「しまった! 囲まれてしまった!」 「だったら、強行突破しかないわね!」 キュルケが好戦的に言うと、五人は銘々の獲物を取り出し、光線銃を向けてくるギギたちを睨み返した。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9445.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百五十四話「闇が来る」 炎魔人キリエル人 炎魔戦士キリエロイド 超古代尖兵怪獣ゾイガー 登場 ブリミルたちの村の上空に浮かび、その不気味さで村の人々を脅かしているキリエル人の ゆらめく姿を、才人は奥歯を噛み締めながらにらみつけた。 「やっぱり……あいつか……!」 この時代からしたら遠い未来だが、才人にとってはほんの二日、三日前の出来事。ロマリアで いきなり襲いかかってきた怪人そのものである。まさか六千年前の時点で既にハルケギニアにいて、 こうしてブリミルたちを脅かしていたとは。 キリエル人はおびえている村の人間全員に向けて、高圧的に言い放ち続ける。 『この世界はもうじき闇によって滅びる。貴様ら愚かで無力な人間を救うことが出来るのは、 我々キリエル人だけである! 今すぐに我々にひざまずいてしもべにあることを誓うのだ! さすれば救いの道は開かれる!』 その言い分に、外にいる村の住人は皆一様に困惑する。 「そんな勝手なことをいきなり言われても……」 「俺たちはあんたのことを何も知らないんだぞ! それでしもべになれだなんて無茶な……!」 尻込みしている人間たちに、キリエル人は苛立ったように怒鳴り散らした。 『黙れ! 貴様ら下等な人間に選択の余地はない。貴様らに与えられた道は、キリエル人を 崇め忠実なる下僕となることだけだ!』 一方的に言いつけるキリエル人に強く反論する者たちが現れる。誰であろう、ブリミルと サーシャだ。 「そんな勝手な要求は呑めない! ぼくたちにはぼくたちの信仰があり、生活がある。いきなり 出てきたあなたの言いなりになるなんてことは御免だ!」 「わたしはこの村の者じゃないけど、一つだけ言ってやることがあるわ。あんた何様なのよ! 礼儀ってものの意味を調べてから出直してきなさい!」 二人の発言に、キリエル人はますます不興を募らせているようであった。 『愚か者どもが! 己らの矜持の方が、命より大事だとでも言うのか! キリエル人の救いを 受けなければ、お前たちはこの世界とともに滅亡するのだ!』 その言葉にもブリミルが言い返す。 「ぼくたちはその滅びとかいうのを阻止するために頑張ってるんだ! それに光の戦士たちも 力を貸してくれている。世界を滅ぼさせたりはしないぞ!」 光の戦士、という単語に、キリエル人の怒りのボルテージはマックスになったようだった。 『よりによってウルトラマンを頼りにしようなどとは……愚行の極致! あまりに罪深い! もはやその罪は、我が聖なる炎でないと清められぬぞぉッ!』 喚きながら、キリエル人は火炎を飛ばして村のテントを焼き始めた! 「きゃあああああああッ!?」 一気に巻き起こる悲鳴。メイジたちは慌てて水の魔法で消火に掛かるが、火災の勢いは 凄まじく、またキリエル人が次々に火を放つので手が足りない。 「やめろ! 暴力に訴えるんだったらこっちも……!」 キリエル人へ杖を向けるブリミルだが、すぐに小さくうめく。 「くッ、呪文詠唱が間に合うか……!」 「あの高さじゃさすがに剣が届かないわ! 誰か、弓持ってない!?」 サーシャが弓を求めるが、それが届けられる前にブリミルたちの先頭に立つ者があった。 「いい加減にしろよ! このエセ救世主、いや救世主気取りの大馬鹿野郎!」 もちろん才人だ。 『何だと……!?』 正面から罵倒されたキリエル人はすぐに顔色が変わる。 「お、おいきみ! 危ないぞ!?」 「いや待った! 彼なら恐らくは……!」 メイジの一人が泡を食って才人を止めようとしたが、ブリミルが神妙な面持ちで制止した。 「守る相手に暴力を振るって言うことを聞かすなんて馬鹿もいいところだ! お前の本性は 神でも何でもない、ただの底抜けのわがまま野郎じゃねぇか! 自分の振る舞いが物語ってるぜ!」 才人の遠慮のない非難の言葉に、キリエル人は怒りの矛先を全て彼に向けた。 『おのれ、キリエル人に向かって何たる口の利き方……地獄の炎で焼かれて己の罪を思い知れッ!』 才人へと灼熱の火炎を猛然と放ってくるキリエル人! だが才人はスパークレンスを掲げて、その光で火炎を打ち払った! 『その光はッ!? そういうことか……!』 一瞬驚愕したキリエル人だが、すぐに察してこれまで以上の怒気を纏う。 『ウルトラマン! 全ては貴様らのせいだ……! 貴様らの存在が愚かな人間どもを惑わせるのだ! おこがましいと思わんのか!』 「ほざけ! お前がどう思おうが知ったことじゃねぇ! 俺がすることはただ一つ……お前の 暴力からこの人たちを守ることだけだッ!」 言い切って、才人はスパークレンスを高々とかざした。すると先端の翼型の意匠が左右に開き、 まばゆい閃光が発せられる! 「ヂャッ!」 光とともに、才人の身体はたちまち巨躯なるウルトラマンティガへと変身する。 「おおッ!?」 「あれはまさしく、光の戦士……! あの少年がッ!」 メイジたちの間でどよめきが起こった。一方のキリエル人は、ティガになった才人を激しく ねめつける。 『よかろう。見せてやろう、キリエル人の力を! キリエル人の怒りの姿をッ!』 キリエル人の足元の地面が突如ひび割れ、マグマの噴出のように火炎が噴き上がると、 それとともにキリエル人の姿が変化。ティガと同等の体格の怪巨人へと変化した! 「キリィッ!」 現代のハルケギニアで戦ったのと同じキリエロイド。しかし顔はあの時の笑い顔とは違い、 泣き顔のように見える。 「タァーッ!」 「キリッ!」 すぐにティガとキリエロイドの決闘が開始される。ティガの先制の拳をキリエロイドが 腕を差し込んで止め、ボディにパンチを入れる。 「ウッ!」 「キリッ! キリィッ!」 ひるんだティガにキリエロイドの猛攻が仕掛けられる。スピーディーな回し蹴りの連発からの 側転キックという、流れるような連続攻撃にティガは身を守るので手一杯になる。 キリエロイドの軽やかな身のこなしから来る絶え間ない攻めには反撃の余地がない。しかし 才人も既にキリエロイドと戦って、その動きが分かっているはずだ。それに目の前の相手からは、 以前ほどの力は感じられない。 では何故苦戦しているのか。 『くッ……やっぱり身体を思うように動かせねぇ……!』 それはもちろん、ティガの肉体に慣れていないからである。もう長いことゼロとして戦って 来たので、その身体能力に慣れ切った分、違うウルトラマンのスペックに逆に対応できていないのだ。 「キリィーッ!」 「ウワァァァッ!」 キリエロイドの火炎弾が直撃し、大きく吹っ飛ばされるティガ。このまま押し切られてしまうのか? 『くッ、くそぉッ……!』 よろめきながら身を起こすティガ。その時に、その耳にブリミルたちの応援の声が届く。 「がんばれ! 立ち上がってくれサイトくん!」 「しゃんとしなさい! 光の戦士はその程度じゃへこたれないはずよ! わたしたち何度も 見てるもの!」 『ブリミルさんたち……!』 わぁわぁと声を張り上げて応援してくれるブリミルたちに、ティガは目を向ける。 「ぼくは信じてるよ! 光の戦士は何も言わないが……とても優しく、勇敢な人たちだとね! きみたちこそが、この世界を救ってくれる勇者だ! ぼくたちも戦う、だから負けないでくれ!」 『……!』 ブリミルの激励の言葉に、才人の心が沸き上がる。 「キリィィィッ!」 一方でキリエロイドは苛立ちを募らせたかのように、ブリミルたちへと火炎を飛ばして攻撃する! 「うわぁぁぁッ!」 ブリミルたちの窮地! ……しかし、火炎は途中でさえぎられて、彼らには届かなかった。 「ハッ!」 瞬時にスカイタイプに変身したティガが超スピードで回り込んで、その身で火炎を打ち払ったからだ! 「おぉッ! 光の戦士が、守ってくれた!」 「サイトくん……!」 「やるじゃないの」 ブリミルたちが歓喜し、サーシャはティガの背中に苦笑を向ける。 「タァーッ!」 今度はティガの反撃の番だった。スカイタイプのスピードを活かしたラッシュを仕掛け、 キリエロイドを押していく。キリエロイドも迎え撃つものの、徐々にティガの動きのキレが 増していき、少しずつ防御が追いつかなくなっていく。 「キッ、キリィ!?」 ティガの動きがどんどん良くなっていくことにキリエロイドは困惑していた。 才人はブリミルたちの応援によって心が震え、かつ戦いながらティガの身体能力に順応 しているのだ。戦いながら成長している! こうなったからには、最早完全にティガの流れである。 「タァッ!」 「キリィッ!」 ティガのハイキックがキリエロイドを蹴り飛ばす。そして距離を開けたところで、カラー タイマーに添えた腕を伸ばして青い光線をキリエロイドの頭上に放った。 「ハッ!」 光線が弾け、白い煙のようなものがキリエロイドの全身に降りかかる。するとキリエロイドが たちまちにして頭の天辺から足のつま先に至るまで凍りついていく! 「キリ……!?」 ウルトラ戦士には珍しい冷却攻撃、ティガフリーザーだ! キリエロイドは全身氷漬けに なってしまい、一歩も身動きが取れなくなった。 「フッ!」 今こそが絶好のチャンス。マルチタイプに戻ったティガは胸の前で交差した両腕を左右に 大きく開いて、同時にエネルギーを最大にチャージ。そして腕をL字に組んで必殺の攻撃を 繰り出す! 「タァッ!」 ティガの最大の必殺技、ゼペリオン光線が炸裂! キリエロイドは一瞬にして粉々に砕け 散って消滅したのだった。 「おおおおおおおッ! 勝ったぁッ!」 「やったぞぉーッ!」 ティガの逆転勝利に村の人々は一斉に歓声を発した。ブリミルとサーシャも満足げにうなずく。 ……しかしキリエロイドが砕け散っても、キリエル人が完全に消滅した訳ではなかった。 ほとんどのエネルギーが飛び散りながらもどうにか生き長らえ、生命の保存のために人知れず 異次元に逃れていく。 『おのれ……よくもやってくれたな……! この恨みは決して忘れん……。たとえ何千年 経とうとも、再び相まみえたその時には、より強めた怒りの姿によって復讐をしてくれる……!!』 恨み節を残して、キリエル人はこの世界から退散していった。 「フッ……」 そんなことは知らずに、ティガは変身を解いて才人に戻ろうとしたのだが……不意に嫌な 気配を感じ取って後ろに振り返った。 「フッ?」 そして驚愕する。視線を向けた先の背景が……徐々に真っ黒い闇に塗り潰されていくのだ! 決して夜の闇ではない。もっと恐ろしい……生存本能が非常に危険なものだとの警告をガンガン 鳴らす。 「な、何だあれは!?」 ブリミルたちも闇に気がつき、恐れおののく。彼らもまた、迫る闇が大変危険なものだと いうことを直感で理解していた。 「ハッ!?」 ティガ=才人は、キリエル人の「闇によって滅びる」という発言を思い返した。 『まさか……もう来るってのか!?』 ――現代のハルケギニア。教皇の即位記念式典が行われるアクイレイアはガリアとロマリアの 国境付近に存在する。アクイレイアからわずか北方十リーグのところには、火竜山脈を南北に 突き破る街道があり、そこに国境線が敷かれている。 その名も虎街道(ティグレス・グランド・ルート)。直線で十数リーグもの長さになる、 ロマリア東部からガリアへ通ずる唯一の街道だ。左右を切り立った崖に挟まれていて昼でも 薄暗い土地であるため、昔は人食い虎や山賊などの被害が相次いだ記録が残っている。 それ故の物々しい通称だが、整備が進んで安全が確保された今では常に商人や旅人が行き交う、 ハルケギニアの主街道の一つに数えられている。 だが、そんな虎街道のガリア側の関所では、ある揉め事が発生していた。 「通れねぇ? お役人さん、どういう了見だい?」 ロマリアの祝祭ももう目前だというのに、関所の門が固く閉ざされ、誰一人としてロマリアへと 通行できないでいるのである。式典に参加するためここまで旅をしてきた者たちは当然ながら困惑し、 一様に関所を管理する役人に説明を求める。 だが、役人からの回答はたった一つだけ。 「通れぬものは通れぬのだ。追って沙汰があるまで、待っておれ」 当然そんな答えにならない答えでは納得がいかない。商人の一人は殺気立ちながら詰め寄った。 「おい、待ってくれよ! 明日の晩までにこの荷をロマリアまで運ばないと、大損こいちまう! それともなんだ、あんたが代わりに荷の代金を払ってくれるとでもいうのか?」 「バカを申すな!」 一喝する役人だが、街道の利用者たちからは次々に不満の声が噴出した。 「教皇聖下の即位三周年記念式典が終わってしまうだよ! この日をわたしがどれだけ楽しみに していたのか、あんたたちに分かるもんかえ!」 「サルディーニャに嫁いだ娘が病気なんだよ」 役人はそれを抑えつけようととうとう杖を構えた。 「わたしだって知らん! お上からは、街道の通行を禁止せよ、との命令以外、何も受けて おらんのだ! いつになったらこの封鎖が解かれるのか、わたしの方が知りたいくらいだ!」 全く以て要領を得ない役人の言葉に、集まった人々が顔を見合わせる。 その時、一人の騎士が役人の元に駆け込んできた。 「急報! 急報!」 「どうなされた?」 「リュティスより未確認の……!」 馬から降りるのももどかしく、手綱を放り投げたままでの息せき切った報告であったのだが…… それよりも早く、その未確認の「何か」は、空の彼方より虎街道上空を横切っていった。 「ピアァ――――ッ!」 それは、巨大な鳥だったのか? それとも竜だったのか? あまりに速すぎて街道の人間の 目では全く見えなかった。分かったのは二つだけ。フネなどでは断じてないこと、そして…… 何体も街道上空を通過して、ロマリア方面へと飛んでいったことだ。 「な、何だ? 今のは……」 「リュティスから来たって? あんなものすごい速さの、何かが……」 事態がまるで呑み込めずに、利用者たちは先ほどまでの喧騒が一転して呆然としていた。 だが……彼らの背筋を、急にひどく寒いものが駆け抜ける。 「な、何だ……? この感じは……」 「何か、すごく嫌な感じが……」 唖然と空を見上げたままの人間たちの目に飛び込んできたのは……飛行物体の進行ルート上を たどるように、ロマリアへと移動する――と言うべきなのだろうか――「暗闇」としか言いようの ないものであった。 「ひやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」 この場にいた人間は全員、恐怖の絶叫を発して腰を抜かしたり、その場にうずくまって がたがた震えたり、必死に物陰に身を潜めるようにして息を殺したりと恐怖に駆られた 反応を示した。――彼らの本能が、あの「闇」が、人食い虎などとは比べものにならないほど 危険で恐ろしい、おぞましいものだと感じ取ったのだ。 その「闇」は、関所の人間にはまるで無関心かのようにそのまま通り過ぎていった。「闇」が 完全に去って、人間たちの恐怖心はようやく消えたのである。 役人は未だ冷や汗まみれの顔でつぶやいた。 「一体、何が始まるというんだ……」 そのひと言が発せられたのと――ロマリア領空を警護するロマリア艦隊が、先に超高速で 飛んでいった飛行物体の集団――超古代の怪獣ゾイガーの群れに壊滅させられたのはほぼ同時であった。 そしてゾイガーの露払いが済んだのを見計らうように、「暗闇」は確実にアクイレイアへと 近づいていったのである……。 「プオオォォォォ――――――――!!」 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2059.html
13話 ガラガラと音を立てて馬車が走る。 乗っているのはルイズ、ギーシュ、モンモランシーの3人。 ちなみにホワイトスネイクも発現状態でこの場にいたが、 浮いているので「乗っている」ことにはならない。 「それにしても……ミス・ロングビル。何で貴方が御者なんかやってるんです? 学院に仕えてる平民の誰かにやらせればよかったじゃないですか」 モンモランシーが手綱を握るロングビルに声をかける。 「いえ……いいのです。私は貴族の名をなくした者ですから」 「え? でも、ミス・ロングビルはオールド・オスマンの秘書なんじゃ……」 「あの方は貴族と平民の区別に拘らない方なのです」 「トイウ事ハオ前ノ他ニモ下仕エ以外デ学院ニ勤務スル者ガイルノカ?」 突然ホワイトスネイクが会話に割って入った。 「いえ、そういうわけでは……」 「デハオ前ダケガオスマンニ取リ立テラレタ、トイウ事カ?」 「……私が知る限りでは」 「ト、ナルト平民トハソンナニ無能揃イナノカ? ソンナ筈ハアルマイ。 有能デアル事ニ加エテオ前ハ恐ラクオスマンニ何カヲ持チカケタナ?」 「ちょっと、ホワイトスネイク! あんた失礼よ!」 ホワイトスネイクの追求にルイズが声を上げる。 この場で「ロングビル=フーケ」あるいは「ロングビルがフーケの配下」の可能性を疑うのが ホワイトスネイクだけである以上、仕方の無いことではある。 「その通りだ使い魔君。ミス・ロングビルはレディーなんだからそういう態度はだね」 ギーシュもルイズに賛同して声を上げたが、 「「あんた(オ前)は黙ってなさい(黙ッテロ)」」 ルイズとホワイトスネイクのダブルパンチで黙らされた。 「ね、ねえモンモランシー。あの態度は、ちょっと無いんじゃないかな?」 「あんた、ミス・ロングビルに手を出したらただじゃおかないから」 「ひ、ひどい……」 そしてモンモランシーに出した助け舟も艦砲射撃一発で沈められ、目に涙を浮かべながらギーシュは黙り込んだ。 「持ちかけたとは……一体何を? 根も葉もない疑いをかけられては、私も黙っていかねますが」 「ソウダナ、例エバ……」 「色仕掛ケ、トカ」 ぶすっ 「ッ!! ツ、杖デ目ヲッ! 一体ドーイウ教育ヲ受ケタラソーイウコトガ平気デ出来ルンダッ!?」 「それはこっちのセリフよこのバカ蛇ッ! どーいう生活環境にいたらあんな失礼極まりないことがいえるのよ!! ああもう、本当にすみません! うちのバカがこんなので……」 「い、いえ……」 ルイズの剣幕に思わずたじろぐロングビル。 だが彼女がたじろいだ理由はもう一つあったのだが……それは今ここでは言うまい。 「まったく……それにしても、何であんたが志願したのよ、ルイズ。 大体あんた、魔法使えないじゃない」 「魔法が使える使えないは関係ないわ。 土くれのフーケを放っておくのは、貴族として恥ずべきことよ」 「……あんた、プライドだけは一流よね。 そのプライドのおかげで、わたしまでついて行くことになっちゃったし」 「あんたがくっついてったのはギーシュでしょ」 「ち、違うわよ! わたしはただ、ギーシュが心配だから……」 「そーいうのが『くっついてく』って言うんじゃない」 きゃあきゃあと言い合いをするルイズとモンモランシー。 と、そこへ。 「モンモランシー! やっぱり君は僕のことが」 「「あんたは黙ってなさい」」 「しゅん……」 またも会話にしゃしゃり出たギーシュだったが、 ルイズとモンモランシーによる言葉のクロスボンバーであえなくダウンした。 そんなギーシュを見てホワイトスネイクが一言、 「修行ガ足ランナ」 「え? って言うか君、ちょっと前に召喚されたばっかりだろ!?」 そんなことをしているうちに、馬車が止まった。 まだ昼間だというのに、周囲は生い茂った木々のせいで光が届かず、薄暗い。 「ここから先は徒歩で行きましょう。 そろそろフーケの隠れ家が近いので、馬車では音で気づかれます」 皆がロングビルの提案に従い(ホワイトスネイクも何も言わなかった)、歩いて森の中を進む。 歩いているうちに、やがて開けた場所に出た。 この場所だけは木も少なく、光が注いでいるかのように明るかった。 そして……古びた小屋が、一つあった。 「あれがフーケの隠れ家です……身を隠してください。 フーケがまだ、中にいるかも……」 手ごろな位置にあった木に身を隠しながらロングビルが言う。 ルイズたちもそれに従い、慌てて近くの木に隠れた。 「……ホワイトスネイク。あの中、見てこれる?」 「距離ニシテ約30メイル。ルイズガ小屋カラ視認デキル位置マデ移動スル必要ガアルナ」 「つまりわたしも危険、ってことね……」 「ソノ通リダ。私ハアマリ推奨シナイ。ソレヨリ……」 そう言ってホワイトスネイクはあたりを見回すと、突然腕からDISCを「二枚」取り出した。 初めて見るロングビルが唖然としている中(ギーシュとモンモランシーは授業で一度見ている)、 ホワイトスネイクはそのうちの一枚をおもむろに上空へと投げた。 「……あんた、今何したの?」 「見テイレバ分カル」 ホワイトスネイクがルイズにつれない返事を返した直後のこと。 突然、一羽の鳥が上空からすいーっと小屋に近づいて窓の縁に着地すると中を覗き、 それからすぐに飛び立って真っ直ぐにホワイトスネイクの方へ飛び、その掌の上にちょんと乗った。 一同が呆気に取られてみている間、ホワイトスネイクは鳥の頭部に指を突き刺すと、 すぐにそこから一枚のDISCを取り出した。 そしてそのDISCを今度は自分の額に差しこみ、しばらくしてから、 「アノ小屋ニハ誰モイナイヨウダ」 そう言い切った。 ルイズがそれに対して何か言おうとしたが、 「ルイズモコレヲ見ルトイイ」 そう言ったホワイトスネイクから差し出されたDISCを 得体の知れないものに触るようにおずおずと受け取ると、 さっきホワイトスネイクがやったように、そろ~っと自分の額に差し込んだ。 その瞬間、ただ日の光を反射しているだけだったDISCに、映像が映り始める。 最初は空中の映像、それが一気に急降下して木で出来た何かに、いや、どこかの小屋に着地した。 それに連続して小屋の中の映像が始まる。 小屋の中には、誰もいなかった。 ルイズがそう感じた瞬間、映像の視点は180度反転して再び空中を飛んだ。 直後、映像にはルイズと、ギーシュ、モンモランシー、ロングビルが小さく映し出され、 それがどんどん大きくなったと思った瞬間、 視点が「何も無いように見える」場所に着地し、そこで映像は終わった。 「ホワイトスネイク、これって……」 「先程ノ鳥ノ記憶ダ」 「記憶って……ちょっと! それってやられた相手は死んじゃうんじゃないの!?」 「問題ナイ。生命活動ニ支障ガ出ナイ程度ノ、部分的ナ記憶ダ」 「……本当でしょうね?」 「本当ダ」 「ちょっとルイズ。それ、わたしにも見せてくれない?」 そういうモンモランシーにルイズがDISCを渡すと、 モンモランシーはルイズがやったように自分の額にDISCを差し込んだ。 そして、しばらくしてからDISCを抜き取ってルイズに返した。 その表情には驚きの色が強く現れていて、そして何も言わなかった。 「……私も拝見します」 その様子を見てロングビルもDISCを受け取ると、同様にDISCを差しこんだ。 この時、ホワイトスネイクは小屋のほうをじっと見つめていて、ロングビルには目もくれていなかった。 そしてDISCを抜き取ったロングビルはやはり同様に驚いた様子で、DISCをルイズに渡した。 だがその表情には恐怖を感じさせる、引きつった「何か」が感じられた。 ホワイトスネイクの目はロングビルの方には向けられていなかった。 だが彼が持つDISC――腕から抜き取りながらも、結局投げなかったもう一枚のDISCには、 ロングビルの表情が反射で映し出されていた。 そしてホワイトスネイクは……それを見ていた。 「僕にも見せて欲しいんだけど」 「「「あんたは(オ前ハ)見なくていいのよ(見ナクテイイ)」」」 ルイズ、ホワイトスネイク、モンモランシーからの集中砲火でギーシュは何も言えずにうずくまった。 「ミス・ヴァリエールの使い魔の……ホワイトスネイクさん、でしたか? 貴方が、今やった事は……」 「最初ニヤッタノハ『命令』。 生物ニ対シテ拒絶不可能ノ行動命令ヲ下ス事ダ。 ソシテ鳥カラ抜キ取ッタノハ『記憶』。 私ハドンナ記憶デモ、ドンナ後ロメタイ記憶デアッタトシテモ…… ソレガ『ロングビルノ記憶』ダッタトシテモ……必ズ形ニシテ抜キ取レル」 ホワイトスネイクの言葉に、思わずロングビルは一歩下がった。 「い、一体……何がいいたいのですか?」 ごくり、と生唾を飲み込んでロングビルが言う。 「私ガ今一番見タイ記憶ハ……ロングビル、オ前ノ記憶ダ。 アノ小屋ノ中ニハ誰モイナイ。 ナラバフーケハドコニイル? 獲物ヲ待ツ蛇ノヨーニ我々ヲドコカカラ見テイルノカ……アルイハ」 「あ、あの! さっきのホワイトスネイクさんが取った鳥の記憶の風景に、箱のような物が映っていました! もしかしたら、それが破壊の杖かも!」 唐突に話題を変えようと試みるロングビル。 しかし。 「ソウ思ウナラ自分デ取ッテ来ルベキダ。 小屋ソノモノニ何カブービートラップガ仕掛ケラレテイタラ…… ソレガルイズヲ傷ツケタリシタラ大変ダカラナ」 まるで人事のように言うホワイトスネイク。 言うまでもなく、小屋の中に「箱のようなもの」が映っていた事はホワイトスネイクも確認している。 だが…… 「ソシテ逆ニ聞キタイ。 ソモソモ、何故ソノ「箱のような物」ヲ破壊ノ杖ダト判断スル?」 「う………」 「名ノアル盗賊ガ折角手ニ入レタブツヲ置キ去リニスル事コソ考エ難イノニナ……何故ソンナ事ヲ言ウ?」 「それは……その……」 しどろもどろになるロングビル。 その様子を見て、さすがにルイズやモンモランシーもロングビルに一抹の疑いを持ち始めた。 ギーシュには、ホワイトスネイクが一方的にロングビルを言葉責めにして、 ロングビルがそれに困っているようにしか見えなかったが。 「ソレニ、ダ。ロングビル。 オ前ノ言動ニハ一ツノ意思ヲ感ジル。 ココマデ誘導シタノニモ……ソレ以前ニ、最初ニフーケノ居場所ガ分カッタト言ッタ時カラ」 「わ、分かりました! 私、今から小屋に向かいますので、後方支援をお願いします!」 ホワイトスネイクの言葉を途中で遮り、ロングビルは駆け足で小屋へと向かった。 一方、ホワイトスネイクは自分の言葉を遮られたことには意も介さない様子でその後姿を眺めながら、 「ギーシュ、モンモランシー。 オ前達ニ何ガ出来ルカヲ把握シテオキタイ。 ソレト使イ魔ノ情報モ、ダ」 「いいけど……何で今なの?」 「ロングビルガ小屋ニ入ッタ後……恐ラク直グニフーケノ攻撃ガ始マル。 フーケハ罠ヲ張ッテイルハズダカラナ」 「……分かったわ」 モンモランシーが緊張した面持ちで答える。 「私は水のライン。 20メイル先ぐらいまでなら水で攻撃できるわ」 「威力ハ?」 「まともに当たれば骨ぐらいは折れる威力よ」 「分カッタ。デハ使イ魔ハ?」 「カエルのロビンよ」 カエル、と聞いた瞬間、ホワイトスネイクの体が微妙に震えた。 「ロビン自体にはあんたみたいに戦闘力はないわ。 せいぜい感覚の共有で私をサポートするぐらい……って、どうしたのよ?」 「…………何デモナイ」 猛毒のカエルが雨あられの如く頭上に降り注いだ記憶が一瞬フラッシュバックし、 すごくイヤな気分になったホワイトスネイクであった。 「……デハ次ハギーシュダ。 オ前ノ魔法ハ既ニ見テイルカライイ。 使イ魔ノ情報ヲモラオウカ」 使い魔、と聞いて精神的にやつれていたギーシュが輝かんばかりの笑顔になった。 「僕の使い魔の事を聞いてくれたのかい!? いやあ、嬉しいなあ! 僕の愛しのヴェルダンデの事が気になるなんて、君もいい趣味してるじゃないか!」 「戦力ニナルカドウカガ知リタイダケダ。サッサト言エ」 「まあまあ、そんなに急かさないでくれたまえ。 僕のヴェルダンデはジャイアントモール。 地中を水の中の魚みたいにすいすい動けるんだ!」 「……ツマリモグラカ?」 「ちょっと待ちたまえ。僕のヴェルダンデはただのモグラなんかじゃあないんだ。 モグラよりもずっと強くて、ずっと賢くて、ずっと愛おしい、それが僕のヴェルダンデさ!」 「トリアエズモグラノ類デアル事ハ分カッタカラモウイイ」 そう言ってホワイトスネイクが会話を切った瞬間だった。 みしり、と大地そのものが軋んだ。 瞬間、ホワイトスネイクは小屋に目を向ける。 目を向けた先にいたのは、全長30メイルはあろうかという巨大ゴーレム――フーケのゴーレムだった。 そのゴーレムは拳を大きく振り挙げると、 子供が砂の城を崩すより容易く、小屋を根こそぎ吹き飛ばした。 人型の何かが、小屋の残骸と共に森の中に吹き飛ばされるのがホワイトスネイクにも見えた。 そしてそれは、ルイズにも、モンモランシーにも、ギーシュにも見えた。 「い、今のって!」 モンモランシーが思わず声を上げ、ギーシュは口をぱくぱくさせる。 そして一方、ルイズは呆然として、声を上げる事すらできなかった。 自分もロングビルを疑っていた。 ホワイトスネイクがロングビルを責めるのにつられて、わたしも! そのために、今、ミス・ロングビルが―― 「落チ着ケ、ルイズ」 自責の念に駆られるルイズの前にホワイトスネイクが立つ。 ただしルイズにはその背が向けられており、ホワイトスネイクは真っ直ぐにゴーレムを見据えていた。 「今見エタノハ何ダ? 見エタノハ『人型の何か』ダ。 アノ程度ナラギーシュダッテ作レル」 「………」 沸騰しそうになる頭をどうにか平静な状況に持っていき、やっとのことでルイズが口を開く。 「……その、根拠は?」 ホワイトスネイクは暫し考えた後、 「私ヲ信ジロ」 確かにそういった。 自分を、信じろですって? ルイズは、自分の耳を疑いたくなった。 ここに来る前にあんだけのことをしといて、それでどの口がそんなことを言えるの? こいつ、本当にそれでわたしが納得すると思ってるの? そんな思いが脳裏を次々と掠める。 だが、自分の心を過ぎる感情の中に一つ、しかし決して見逃せない感情が、一つあった。 ――自分が信じないで、誰がアイツを信じるの?―― その感情に咄嗟に反駁しようとした。 したが……できない。 自分が信じなければアイツはどうなるの? 誰もがアイツを危険視して、誰にも近寄られないで、それでも一人で、わたしを守ろうとするに決まってる。 そんなのは、絶対にダメだ。 あの夜――アイツと3つの約束をした夜、誰にも言わないで自分の心にだけ誓った事。 ホワイトスネイクを自分の使い魔にしてみせる、という誓い。 今ここでアイツを信じなかったなら、もう二度と自分はアイツを信じられなくなる。 そんなのは、絶対にダメだ。 だから―― 「信じるわ」 自分でも驚くほど、その言葉はすらりと出てきた。 そしてその言葉は、ホワイトスネイクにも僅かながら衝撃を与えた。 それは、背中越しに、ルイズにも確かに伝わった。 「了解、ダ」 ホワイトスネイクはやはり背中越しに、ルイズにそう返した。 しかしその口端には、微かに笑みが浮かんでいた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/950.html
「「・・・」」 (平賀 才人…名前的に日本人っぽいが…俺が死んだ所じゃなくて日本にあの鏡出やがったのか…?) 何だかえらい気まずい沈黙が空間を満たした…がまぁ…気を取り直してっと… 「才人か…悪いが俺の質問に答えてくれないか?」 「はい・・・俺もまだ質問したいけど…先どうぞ」 「お前…どこの国にいた?」 「?俺は日本にいたけど、ここはトリスティンって言ってたけどヨーロッパのどの辺に? ってか何で俺こんな所にいるんだ?あんたが俺をここに連れてきたのか?ってかあの鏡なんだよ!?」 「あ~落ち着け落ち着け、一辺に質問すんな…俺も行き成りでまだわけわからねぇんだよ・・・」 …つってもこの状況じゃ落ち着け言ってもムリだな… と思ったら何かまだまだ言いたそうな顔していたが黙って深呼吸をし周りを見渡し状況を確認していた。 こいつ見た目よりも大物か…?いや…ただ抜けてるだけか…? 「あんた達…私を無視するんじゃなぁああああいぃいいいいい!!」 行き成りの怒声は、俺の真後ろにまで来てたさっきのピンク色の髪のガキ(面倒だから以後ピンク)だった。 …忘れてた…かなり本気で怒っている。まぁ行き成り自分が増えたと思ったらまた爆発するわ、召喚されるのは あいつ等から言えば平民だわ、挙句の果てには自分を無視して平民同士で話あっている…そりゃ怒るか… このピンクどうするか・・・と才人の方を見ると、才人が?って顔で惚けている。 それを見た時俺はすっくと立ち上がり茶を振舞う時の笑顔で才人に近づき…肩を掴み立ち上がらせた。 「?あの何するんすか?」 「ん?それはな…こうするんだよ!!」 ・・・才人の頭を掴み、俺の真後ろにいるピンクに向かって…キスをさせた・・・ 「『ザ・ワールド!!』そして時は止まる…」ん?何か幻聴が・・・ 「「・・・」」 「そして時は動き出す…」・・・お前だれだ? 「な・・・なにするだぁあああああ!!!」 「ヤッダバァアアアアア」 ほぅ…ミゾオチに幻の左で宙を舞うか・・・中々の威力だな…ってこっちにも殴りかかってきた! とりあえずガキの腕力だから掴んでおけばいいか… 「は…離しなさいよ!貴族にそんな無礼するなんてどんだけ田舎者よ!!」 「いててて…何をするんだってのはこっちのセリフだ!! ってかあんた!何で俺に行き成りこいつとキスさせるんだよ!」 「ん?それか、その理由わ…」 「ぐあ!ぐぁあああああ!あっちぃぃいいい!!」 行き成り左腕を押さえて叫び出したがまぁ、いいか 「あぁ、そうなるのか何でもあいつ等が言うには契約?かなそれだと思うが、どうなんだ?」 くるぅ~りと目の前で悶絶してる才人を無視してピンクに向かって言った。 「あ・・・あんたの思っている通り『使い魔のルーン』を刻んでいるだけよ」 「刻むな!俺の体に何しやがった!」 む?思ったよりも早く復活したなこいつと関心していると、ハゲた中年のおっさんがこっちきやがった。 「ふむ…まさか『サモン・サーヴァント』で平民をなおかつ二人も呼ぶとは異例だが… それよりもミス・ヴァリエールが二人に見えた気するが…風のスクウェアクラスの魔法かな? 杖が無いのに発動とはおかしいが…先住魔法…君はエルフ…か…? …説明する気ないか…それならばこちらで勝手に調べさせてもらう。そしてミス・ヴァリエール 一応契約した少年の方を使い魔としなさい。そして彼のルーンも見せてもらうよ」 才人の左腕の甲には何だか分からない文字が書かれてあったが、なるほどあれがルーンって奴か 「珍しいルーンだな」 おい・・・それだけかよ 「いったい…なんなんだあんたら!」 それには俺も同感だなって…何で俺の方を向く。まぁ、他の奴等の視線が俺に集中してるから無理も無いか。 「…俺はただの通りすがりだ。行き成りここに連れてかれて俺も困っているんだ。」 連れて来られる前は死人だった事は理解させるまで話すのが面倒だから簡単に説明した。 「とりあえずお前が使い魔になったって事で俺は帰らせてもらう」 「え?俺も一緒に帰してくれよ!」 「契約したんだから諦めろと言いたい所だが…仕方ないな…ついてこい、遅れても俺は待たんぞ それじゃもう一度ムーディブルース!」 その声を合図にまた出現したコピールイズが出るやいなや…周りの生徒達は 「またあれが来るぞぉおおおおお」「作者面倒だからってコピールイズ何度もするなぁぁああ!」 「ずっとルイズのターンかよぉおお!」「マルコリシールドォオ!!貴方の尊い犠牲は忘れないわ…5分ぐらい」 と非難轟々で即座に地面に穴開ける者も居れば、自分の使い魔に乗りダッシュで逃げ惑う者もいた… かなり阿鼻叫喚な図でそんな中気の毒にもさっきの爆発を見ていない才人には???と思うしか出来なかった… 「おい、ぼけっと突っ立てるとあぶねぇぞ」 「?何で?ってか何で皆あんな必死に逃げてるんだ?」 「これ」と俺はコピールイズを指差して地面に伏せた。 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン 「ヤッダバァアアアアア」 さっきと同じセリフかよ…才人…芸が無い哀れな奴…だが俺は待たないと言った… 今度こそあの鏡に飛び込み場所が違うとは言え、元の世界に戻りそしてブチャラティを助けねば… …他の場所に出現し、手がかりも無しにあいつ等に追いつける可能性は0に近いが… それでも可能性があるならば、俺は戻らねばならない! そう決意し、爆風がまだ吹き荒れている中アバッキオは中心にある銀鏡目掛けて飛び込んだ…が… そこには…何も…無かった・・・ 「な…何故だ!何故銀鏡が無いんだ!俺は確かにリプレイしたはずだぞ!!」 「契約」 横から感情が篭らないまるで人形のように平坦な声がした。 「契約?」 契約はさっき才人がしたはず…それと何の関係があるんだ?と声の方向に振り向くと12歳ぐらい? の青髪のガキがいた。その横の赤髪の女は人盾をポイッと捨てている。 「あなたはさっきそこの彼とルイズを契約させた。召喚儀式は使い魔が居ると発動しない。」 「…つまり才人が死なないと…召喚は出来ないって事…か・・・?」 「そう」 …俺の後ろにのびているこいつが死ぬ事…か…今こいつを殺してしまえば、 すぐ戻れプチャラティに追いつく事が出来るかもしれない…俺は以前警官だった時に 正当防衛で殺人犯を射殺した事はある…しかしこいつは何の罪も無いただのガキだ… しかも俺が道連れにしてしまった…ブチャラティそしてこの罪の無い才人…どちらを優先させるべきかと 心が揺れ動き葛藤していると後ろからの爆発により…俺の意識は飛んだ…。 「あ・・・あたしを無視するんじゃなぁああああぃいいいい!」 「ちょ…ちょっとルイズ!やりすぎよ!気絶してるじゃないの!!」 「あたしが召喚した使い魔なのよ!あたしのやり方で罰を与えるわ!!」 「…罰与えるのはイイけど…ルイズ…あなたどうやって学院まで戻る気?」 「・・・あ・・・」 爆風でのびている少年と…ルイズがたった今爆発を直接ぶつけた大人…ロクに魔法が使えないルイズには 運ぶ手段が無かった…さすがに哀れと思ったのかタバサがシルフィードに試し乗りさせてみたいと言い のびている二人とルイズ キュルケ フレイムを載せて学院に運んでくれた… …帰っている途中でフレイムが火山に住んでるクセに高所恐怖症らしく恐慌状態に陥り シルフィードに危うく火を吹きかけそうになり周りが慌てて止めたが、才人の髪が一部アフロになったらしい… マリコルヌ またもや爆風避けの盾に…うわ言で「マッ…マルコリシールドって…僕の名前は マ…リコ…ル・・・ヌ・・・」と言っていたらしい。 重傷 再起可能 To Be Continued →...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/146.html
わたしは今、馬車に乗っている。ミス・ロビンクルが御者を務め、キュルケと タバサ、プロシュートの四人で荷台に乗っている。 「フーケってのは何者なんだ?」 プロシュートは知らないらしい、今から捕まえにいく『土くれのフーケ』の説明をする。 「通称、土くれのフーケ。マジックアイテムが好きな盗賊よ。フーケは深夜に こっそり忍び込んだり、白昼堂々ゴーレムと現れたり。神出鬼没、男か女かも 分からない。ただ、盗んだ後にフーケのサインがしてあるだけ」 「名前から察するに土系統のメイジか?」 「そうね、少なくともトライアングルクラスのメイジね」 「これは、罠の気がする」 プロシュートが聞き捨てならないことを言い出した 「気?気がするですって、何で?」 「俺の勘だ」 「勘ですって?」 馬鹿馬鹿しい、わたしは何を期待したというんだろ 「悪くないんじゃないの、女の勘とか言うし」 キュルケ、こいつは男よ 「勘、馬鹿には出来ない」 タバサも同意らしい、滅多に開かない口を利いた 「今まで、捕まらなかったフーケの情報が何で今回入手できたんだ? それは、目撃されたのでは無く、ワザと見つかったと考えるべきだ」 「ダーリン、冴えてる」 プロシュートの仮説にキュルケが目を輝かせ、タバサがコクコク頷いている 「確認しとくぜルイズ、フーケは生け捕りにして破壊の杖をゲットすりゃいいんだな」 一々物騒なのよね、この使い魔は 「ミス・ロングビル、後どれくらいで着くんだ?」 「もっ、もうすぐですわ」 プロシュートに声を掛けられたミス・ロビンクルはうっすらと汗を掻いていた 「どうした、暑いのか?」 「ええ、なんだかこの辺りは蒸しますし」 ミス・ロングビル・・・なんだか怖がっているように見えるのは気のせいだろうか?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/644.html
第一話 うわっ面 -Surface- 第二話 異世界 -The different world-
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9234.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第七十話「アルビオン氷河期」 隕石小珍獣ミーニン 冷凍怪獣マーゴドン 凍結怪獣ガンダー 宇宙海獣レイキュバス 冷凍怪獣シーグラ 登場 「……はい。こちらもひどい吹雪でございます、陛下」 ウエストウッド村からそう離れていない地点。ガンダーとマーゴドンの二大冷凍怪獣の引き起こす 猛吹雪によって大地は雪に埋まり、元がどんな地形だったのかは皆目見当がつかない。 その雪原の上に、ローブで全身を包んだ女が雪と風に煽られながらたたずんでいた。かつてアルビオンに 潜入していた謎の女、シェフィールドである。 彼女は傍目から見たら、独り言を唱えているように見える。だが実際は違う。テレパシーとも 言うべき能力によって、ある人物と連絡を取り合っているのだ。 「ガーゴイルを用いたとしても、前に進むだけでも困難な状態です。真に申し訳ありませんが、 仰せつかった“始祖の祈祷書”の回収の任、開始できそうにありません……」 本当に心底罪悪感を抱えている様子で、シェフィールドは謝罪した。 彼女はルイズの持つ“始祖の祈祷書”を強奪する目的で再びアルビオンに現れたのだ。 しかし、行動に出ようと考えていた今日この日に、折悪しく怪獣による異常気象が発生した。 そのためにルイズを見失い、任務遂行が不可能な状態に陥ったのだった。 シェフィールドの脳内に、連絡相手の声が響く。 『それは真に残念であるな。しかし、そんな巡り合わせの悪い日もある。よい、我がミューズよ。 祈祷書の奪取は打ち切り、我が元へ帰ってくるのだ』 「い、いえ。この吹雪がやんでから、改めて虚無の担い手を捜索することは出来ます。陛下がひと言 お命じ下されば、このわたくしめが、必ずや成し遂げてご覧にいれます」 『いや、余の気分が変わったのだ。単に“秘宝”と“指輪”を集めて眺めるより、“虚無”対“虚無”の 対局を指すことにした。その方が面白そうだ。故に必要はない。それに何より……そんな寒い場所に長々と 立たせて、お前が風邪を引いたりしたら心苦しい』 相手の最後の方の言葉を聞いて、シェフィールドは顔を輝かせた。容貌に似つかわしくない、 恋をする少女の顔だった。 「あ、ありがたきお言葉です! ではすぐにあなたさまの御許に馳せ参じます……ジョゼフさま!」 シェフィールドは懐から小さな人形を取り出し、それを足元に放った。 人形は一瞬にして羽を生やした大型の魔法人形ガーゴイルに変化し、シェフィールドは その背にまたがった。シェフィールドを乗せたガーゴイルは飛び上がり、風に逆らいこの場から 飛び去っていった。 知らず知らずの内にシェフィールドに狙われていたルイズであったが、彼女は現在、行方不明の 才人を捜す旅を行っていた。自責の念から一度は自殺も考えたが、ゼロたちとの生活の中で命の 大切さを知った彼女は、自らの命を絶やすその行為が大罪であることを悟り、前を向いて生きることを 遂に発起したのだ。 そう、まだ確実に死んだとは言い切れない才人の行方を捜し出すことを決めたのだ。そのために、 自分を心配してわざわざ様子を見に来たシエスタをお供にして、馬車の旅に出た。 が、しかし、ウエストウッド村に近づいたところで、怪獣たちの猛吹雪に襲われてしまった。 馬は凍死してしまい、ルイズとシエスタは雪の真っ只中に立ち往生するという最悪の状況に 見舞われているのだった。 「うぅ、さ、寒いわ……」 ガチガチと歯を鳴らすルイズ。ありったけの防寒具を着込んでいるが、それが役に立たないほど 気温が低下しているのだ。 顔が青ざめるルイズを、シエスタが励ます。 「ミス・ヴァリエール、しっかりして下さい! 眠ってはいけません。雪の中で眠ったら 命はありません!」 「う、うん……。シエスタ、あなた体力あるのね……」 「田舎育ちですから。このぐらい、なんてことありませんわ」 と言うシエスタだが、実際にはこれは強がりであった。本当は彼女も苦しい。しかしルイズを 激励するために、平気なように振る舞っているのだった。 「この幌馬車、雪の中に埋まりかけてます。このままでは生き埋めですわ。まずは脱出しましょう」 「ええ……」 荷物を持っていく余力はない。二人は着の身着のままで馬車から外へと抜け出した。その直後に、 馬車は幌に積もった雪の重みで押し潰された。 「危ないところでしたね。でも、ここからどうすればいいか……」 さすがに困惑するシエスタ。自分たちの発った町から、もう大分距離があるところに来ているので、 そこに引き返すというのは難しすぎる。この吹雪の中では、方向が分からなくなって遭難することも 十分にあり得る。 一方でルイズは、自分たちの目の前にある森の入り口を見やった。ウエストウッドの森だ。 「確か、この森の中に村が一つあるって話を町で聞かなかったかしら?」 「え? ええ……何でも、身寄りを亡くした子供たちが寄り集まって暮らしてる小さな村があるとかないとか。 でも、人の行き来が滅多になくてほとんど忘れられたところみたいですが……」 「そういう場所にいるんだったら、今の今まで行方不明のままでもおかしくないわね。いえ、それより 今は人のいる場所へ行きましょう。このままじゃ、二人とも凍え死んでしまうわ」 「そうですね……。本当に村があることに賭けましょう!」 ルイズとシエスタは、自分たちが生き残るために森の中へと歩を進めた。 「ガオオオオオオオオ!」 「プップロオオオオオオ!」 マーゴドンとガンダー、二体の怪獣の姿が、才人たちの目にしっかりと飛び込んだ。吹雪の中で 暴風のうなりにも負けないほどの咆哮を上げる怪獣たちの様子は、まるでこちらを挑発しているかのようだった。 怪獣たちの威容を目の当たりにして、子供たちはミーニンやティファニアにしがみついて 大いに震え上がる。ティファニアは彼らを落ち着かせるのに必死だ。 「あいつらの仕業だったんだな……!」 一方で、グレンと才人はガンダーたちを強くにらみつける。この吹雪は自然の天候ではない。 奴らをどうにかしない限りは、自分たちはもちろん、ハルケギニア中の人々が助からないだろう。 しかも、ガンダーはこちらに歩み寄ってきているようであった。ウエストウッド村を踏み潰すつもりか! 「このまんまじゃやべぇぜ! 俺が怪獣を遠ざける!」 そう叫んで家から飛び出していこうとするグレンに、ティファニアが驚愕した。 「そ、そんなの危険すぎます! こんな猛吹雪の中、無謀ですよ!」 事情を知らない者から見れば、グレンの行動はそう見えるだろう。しかし彼の本当の姿は、 熱く燃えたぎる炎の戦士なのだ! 「任せてくれって! みんなはどうにか自分たちの身を守っててくれよ!」 「グレン! 俺も……!」 才人が名乗り出ようとしたが、グレンに手で制された。 「お前はここの嬢ちゃんと子供たちを守ってやってくれ」 でも、と言いかけた才人だが、続きを口に出せなかった。ウルトラマンゼロになれない 今の自分に、巨大怪獣と戦える訳がない。 戸惑っている間に、グレンは素早く玄関から飛び出ていった。 雪原に飛び出すと、グレンは早速変身を行う! 「うおおおぉぉぉぉぉッ! ファイヤァァァァァ―――――――ッ!」 燃え盛る炎の勢いで一気に巨大化し、グレンファイヤーへと変貌した! 赤き戦士が 立ちはだかったことで、ガンダーは足を止めて警戒する。 『とぁッ!』 『むんッ! ジャンファイト!』 更にはミラーナイト、ジャンボットも駆けつけ、グレンファイヤーの左右に並び立った。 『お前たちも来たのか!』 『この一大事、何もしない訳にはいきませんよ』 『今変身の出来ないサイトたちには、指一本とて手出しはさせん!』 頼れる二人の仲間の登場でグレンファイヤーの心はますます燃え上がった。 『こんな寒々しい景色、ぶっ飛ばしてやるぜ! ファイヤァァァ―――――――!』 手の平から火炎放射を飛ばすグレンファイヤー。吹雪と極低温にも負けない灼熱の炎は、 ガンダーをひるませマーゴドンをたじろがせる。 『よぉし、行くぜぇぇぇぇぇぇッ!』 敵をひるませたことで、グレンファイヤーは一気に畳みかけようと駆け出した! 雪原を踏み越え、 ガンダーに猛ラッシュを食らわせようと迫る。 だが途中で、足下の雪から赤い巨大なハサミが飛び出してきた! 『うおわぁぁぁぁッ!?』 『グレン!?』 『グレンファイヤー!』 足をはさまれて前のめりに倒れるグレンファイヤー。ミラーナイトとジャンボットは動揺する。 「グイイイイイイイイ!」 雪の中からハサミがせり出してくる。その正体は、左右で大きさの不揃いなハサミを生やした、 角ばった甲羅を持つカニとエビを足したような甲殻類型怪獣……! かつてウルトラマンダイナをギリギリまで追い詰めた恐るべき宇宙海獣、レイキュバスだ! 『くっ、こんな奴までいやがったのか!』 グレンファイヤーは足を掴むハサミを振り払うが、起き上がったところにレイキュバスが 冷凍ガスを浴びせてくる。 『ぐわあああぁぁぁぁッ!』 その攻撃に悶え苦しむグレンファイヤー。レイキュバスの冷凍ガスはウルトラ戦士の巨体も 一瞬で凍りつかせるほどの恐ろしい威力がある。たとえ炎の戦士のグレンファイヤーといえども、 ただでは済まない! 『グレンファイヤーが危ない!』 ミラーナイトが援護攻撃をしようとしたが、そこに吹雪の間から飛び出してきた、上顎から 太い牙を剥き出しにした恐竜型怪獣が襲いかかってきた。 「ギャァァァアアア!」 『むッ! はぁッ!』 反射的に喉にチョップを叩き込んで返り討ちにするミラーナイト。だが恐竜型怪獣はミラーナイトの 周囲から更に三体も現れ、口から冷凍ガスを吐き出して攻撃してくる! 「ギャァァァアアア!」 『なッ! こんなに怪獣が……うあぁぁッ!』 三方向からの攻撃にどうにも出来ずに、ミラーナイトの身体が凍りついていく。 この怪獣たちの名はシーグラ! シーグラもまた冷凍怪獣である! 『グレンファイヤー! ミラーナイト! 今助け……!』 「プップロオオオオオオ!」 劣勢に立たされる二人を救援しようとするジャンボットにも、ガンダーが襲いかかる。 宙を滑空しながらドリル状の爪でジャンボットの肩を切り裂く! 『ぐわッ! くぅッ、思うように動けん……!』 ジャンボットたちの劣勢は、数の差だけが理由ではない。極低温の猛吹雪の中という、 相手に圧倒的有利な環境でその力を十全に発揮することが出来ないからだ。 『まずは吹雪をどうにかしなければ……!』 ジャンボットは高性能センサーを働かせて、事態打開のためのデータを収集した。 その結果、吹雪の中心がマーゴドンであることが判明。マーゴドンを叩けば、状況は好転するに違いない! 『よし! ジャンミサイル発射ッ!』 そうと分かったジャンボットの行動は早かった。ミサイルを一斉に飛ばし、マーゴドンへと炸裂させる! その爆発と熱でマーゴドンにダメージを与えるはず……。 「ガオオオオオオオオ!」 しかしミサイルの爆発はマーゴドンの身体に吸い込まれていき、火花は瞬く間に消え去ってしまった! 『な、何だと!?』 マーゴドンの冷凍能力は数々の怪獣の中でも頂点に君臨するレベル。あらゆるエネルギーは 絶対零度の肉体に吸収され、ゼロにされてしまうのだ! マーゴドンに爆撃は効かない! 『くッ、どうすれば……ぐわぁぁぁッ!』 「プップロオオオオオオ!」 ジャンボットが逆転の一手を考えつく前に、ガンダーが冷凍ブレスを食らわせた上に張り倒した。 横転したジャンボットは回路が凍りついて、立てなくなってしまった! ゼロのいないウルティメイトフォースゼロは、冷凍怪獣軍団の前に絶体絶命の窮地に追いやられた! 「み、みんなが危ない……!」 三人のピンチを、才人も目の当たりにしていた。焦燥を覚える才人だが、彼らを助ける方法は 何も思い浮かばない。何せ、頼みの綱のゼロは未だに覚醒していないのだ。 (くそぉッ……! どんなに訓練したって、人間の身じゃいざという時に何の役にも立たない……! やっぱり、俺に出来ることなんて何もないのか……!?) 激しい無力感に打ちのめされ、目の前が真っ暗になりそうな才人。 だが、ふと倒れているジャンボットの姿が目に入る。 その時、才人に電流が走った! (そ、そうだ! これが上手く行けば……!) 才人の脳内に、逆転の手段が浮かび上がったのだ! しかしそれを実行するのには、大変な危険がある。果たして自分に、その危険を突破する 力があるのか……。ほとんど無謀な行為なのだ……。 悩んでいたら、後ろの子供たちとティファニアの声が耳に入った。 「テファお姉ちゃん……眠い……」 「ね、寝ちゃ駄目よ! 気をしっかり持って! お願いだからッ!」 子供たちの体力は限界のようだ。 それを知った時、才人は決心した! (力があるのかとか、危険がどうとか、そんなことじゃない! あの子たちの命が消えかかってる! それを救わなくちゃいけない! そうしなきゃ、俺は本当に駄目な人間になる!) 瞳に光を灯し、デルフリンガーを背負ってマントを勢いよく羽織った! (俺は男だ! 人間だ! どんな敵が立ちはだかろうと――勇気を胸に、立ち向かってみせるッ!) 玄関の扉に手をかける才人に、ティファニアが慌てて呼びかけた。 「サイト、何をするの!?」 「行ってくる。今みんなを救うことが出来るのは、俺しかいないんだ」 「む、無理よ! 死にに行くようなものだわ! お願い、やめて!」 必死に制止するティファニア。だが才人の心は、もう変わらないのだ。 「無理なことなんてない! 俺は、諦めない! 不可能を可能にするッ!」 そして一気呵成に吹雪の中へ飛び出していった! 「サイトぉぉぉぉぉ―――――――――――!」 ティファニアの絶叫を背にして、才人は吹雪に逆らい駆けていく。暴風は彼を枝きれのように 吹き飛ばそうと襲い来るが、才人の身体は前へ前へと進んでいく。 (こんな逆風の中で、身体が動く……! グレンに鍛えてもらったからだ! グレン、ありがとう!) 己の肉体が逆風に負けないことを、グレンファイヤーの課した特訓の成果だと才人は考えた。 しかしそれだけが理由ではない。 今の才人の心の中に、雪と氷に負けない熱い勇気と使命感が燃えているからだ! 「くッ……けれど、さすがに目を開けてるのは難しいな……!」 足は動いても、目に雪が入ってくるのは防ぎ難い。才人が視界の確保に苦しんでいると、 背にしているデルフリンガーが呼びかけた。 「相棒、俺がジャンボットまでの方角を指示してやらあ。俺には目ン玉がないからな、雪は関係ねえのよ」 「そうか! ありがとう、デルフ!」 「こんくらいのこと、礼を言われるまでもねえぜ」 デルフリンガーのお陰で、方向を見失うことはない。才人は感謝するとともに、デルフリンガーが 一緒にいてくれることでもっと勇気をたぎらせた。 (俺は一人じゃない……! 一人じゃないなら、何だってやれる気分だ!) だが、雪中を突き進む才人にガンダーが容赦なく襲いかかってきた! 「プップロオオオオオオ!」 「相棒危ねえ! 伏せろッ!」 デルフリンガーの指示でその場に身をかがめる才人。ガンダーがその上スレスレを通り過ぎていく。 『サイト!?』 『くそッ、あの野郎サイトを……!』 ミラーナイトとグレンファイヤーは、才人が外に出ていることに驚き、彼を狙うガンダーをにらみつけた。 しかしレイキュバス、シーグラの猛攻をしのぐのに手いっぱいで、彼を助けに行くことは出来ない。 「プップロオオオオオオ!」 着地したガンダーはなおも才人をつけ狙う。 巨大怪獣に狙われ、追われる恐怖。それは生身の人間には耐えられないほどの、大きすぎる恐怖だ。 心臓が張り裂けてもおかしくないような。 しかし才人は立ち止まらない! 「相棒、走り続けろ! ジャンボットのとこまでたどりつけりゃあ勝ちだ!」 「言われるまでもないぜ!」 才人の勇気は、巨大な恐怖を打ち払うほどに強くなっているのだ! そして才人は走る。執拗に追ってくるガンダーが振り下ろす爪を、吐き出す冷凍ブレスをギリギリの ところでかわし続けながら。一歩間違ったら即あの世行きの、あまりにも危ない橋。その上を駆け抜けていく。 苦しくない訳がない。無理のある回避行動を取りながら前に進むので、脚はパンパン、筋繊維は悲鳴を上げる。 心臓は物理的に破れそうだ。だがその苦しみを、腹にくくった思い一つで抑えつける。 「負けるか……! 人間はッ! お前たちなんかに負けなぁぁぁぁいッ!」 そうして気がついた時には――横たわったジャンボットの顔が目前にあった! 才人は即座にジャンボットに呼びかける。 「ジャンボット! 意識はあるか!?」 『サ、サイトか……!? よくここまで……』 「俺をお前のコックピットに入れてくれ! その力を……俺に貸してくれッ!」 才人の言葉が届き、ジャンボットになけなしの力が宿った。 『力を借りるのは、私の方だッ!』 転送光線が才人を包み、次の瞬間には才人の身体はジャンボットのコックピット内にあった。 「プップロオオオオオオ!」 ガンダーは才人を内部に収めたジャンボットへ詰め寄り、鋭い爪を振り上げる。このままでは、 ジャンボットはズタズタに引き裂かれておしまいだ! しかしその直前、コックピットの中央に立った才人がファイティングポーズを取り、力いっぱいに叫んだ! 「ジャァァァンッ! ファァァァァァァァァイトッ!!」 ガンダーの爪が振り下ろされる! ……その顔面に、ジャンボットの鉄拳がめり込んだ! 「プップロオオオオオオ!」 仰向けに傾き、雪の上に倒れ込むガンダー。それとは反対に、鋼鉄のボディと『心』を持った武人は身を起こした! 『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』 システム再起動。回路は瞬時に正常に戻り、黄色い眼に光が灯る! 「行こう、ジャンボット! みんなを救いにッ!!」 冷凍怪獣にも消すことの出来ない勇気の炎を内にしたジャンボットが、雄々しき機体を立ち上がらせたのだ! 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2457.html
前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 ルイズと康一は二人の男性と向かい合い、ソファーに腰を下ろした。 一人は先ほどの中年男性、コルベール。そしてもう一人の老人をコルベールは学院長のオールド・オスマン氏と説明した。 一言で言うと、『まるで魔法使いみたい』な容姿である。深緑のローブ、傍らには長い樫の杖を置いている。 白い顎鬚を長く垂らし、それをいじりながら康一のことを興味深そうに見ている。 一見何も考えてなさそうな顔をしているが、康一はその目の奥に深い知性の光を見た気がした。 まるで、ジョセフ・ジョースターさんのようだ。 「ふむふむ、君がその平民の使い魔かね。・・・なるほど、いい面構えをしているのぉ。」 その一言に、康一の隣に座っているルイズは露骨に『そうかしら。チビだし、彫りも浅くてハンサムとはいえないと思うけれど・・・』という顔をした。康一と目があって、またぷいっと横を向く。 オスマンはほっほっほと笑って、康一に尋ねた。 「それで君はどこから来たのかね?」 「日本です。いや、えっと、鏡に飲まれたときはイタリアのネアポリスにいたんですけど・・・。」 「日本、イタリア、ネアポリス・・・と。それはどのへんにある国なのかね?」 「どのへん・・・ですか。えーっと、日本はユーラシア大陸の東側にある国で、イタリアは逆にユーラシア大陸の西側、ヨーロッパの中にある国です。ネアポリスはイタリアの都市の名前で・・・」 康一は懸命に世界地図を思い浮かべた。 「ふーむ・・・コルベット君。」 「コルベールです、オールド・オスマン。」コルベールが訂正する。 「おお、そうそう。コルベール君じゃったの。今彼が言った国の名前を一つでも知っているかね?」 オスマンは尋ねた。 コルベールは困ったように首を横に振った。 「いや、全く聞いたこともありませんね。ハルケギニアの外の話でしょうか。エルフの住まう、サハラよりも更に東方の国のことなら、我々が知らないこともあるかもしれませんが・・・」 「(サハラ砂漠なら知っているぞ!)」と康一は言おうとした。 しかし、日本とイタリアは、まさしくサハラ砂漠を挟んで東と西である。二人の話とは大分食い違いそうなので、康一は黙っておくことにした。 オスマンはコルベールと話を続けている。 「そうか。わしも長く生きておるが、そんな国の名前は聞いたことがない。彼の話は本当だと思うかね。ゴルバット君。」 「コルベールです。オールド・オスマン。彼の言っていることが本当かどうかはわかりません。」 コルベールは少し言いよどんだ。 「ただ・・・私は先ほど彼の不思議な力を体験しました。いきなり自分の体が重くなったような・・・」 「ほう。重くなった、とな。見たところメイジでもなさそうなこの少年がそんなことができるとも思えんが・・・ちょっと君。えーっと、なんという名前じゃね?」 「康一です。広瀬康一。」 「そうか。ではミスタ・コーイチ。その不思議な力を、わしにも見せてくれるとうれしいのじゃが・・・」 「嫌です。」康一はむげも無く断った。 「なぜじゃね?」 「ぼくはここにそんな話をしに来たんじゃないからですよ。この状況を説明してくれるっていうからここにきたんですよ!説明しないならぼくを早くもといた所に返してください!」 いい加減我慢も限界に近づいていた康一は立ち上がって叫んだ。 康一はまだこれがスタンド攻撃であることを微塵も疑っていなかった。 「まぁまぁ。ミスタ・コーイチ。そうかっかなさるな。聞きたいことがあるならいくらでも説明するからまずは座りなさい。」 康一は不満そうにしながらもしぶしぶ腰を降ろした。オスマンは手を組んで身を乗り出した。 「興味深いことだが、どうやら君は我々のことをよく知らないらしい。ここがどこだか分かっているのかね?」 「知りませんよ!さっきもいいましたけど、いきなり鏡のようなものに吸い込まれて、気がついたらあの草原にいたんです!」 「ここはトリステインの魔法学院じゃよ。聞いたことはないかね?」 「ま、魔法学院?」 さっきからちょくちょく言ってるけど、魔法ってなんだ。もしかしてドラクエとかFFとかで出てくる魔法のことじゃないだろうなー。 康一はからかわれているのかと不安になった。 「魔法って・・・なんです?」 「魔法も知らないなんてどんなところから来たのよ!」ルイズが信じられないものを見るように言った。 「ミス・ヴァリエール?」 コルベールが静かにするよう促すと、ルイズは黙り込んだ。 「おほん。魔法というのはじゃね・・・こういうもののことじゃよ。」 オスマンはそういうと懐からコインを一枚取り出した。 杖を手に口の中でむにゃむにゃと呪文を唱えると、それまで机の上に置かれていたコインがふわりと浮かびあがった。 「う、浮いてる!?」 康一は驚いた。部屋を見回してもスタンドの姿は影も形も見えない。 もしかして・・・馬鹿げているとは思うが、本当に魔法とやらが存在するのだろうか。さっきみんなが飛んでいたのも魔法の力? 康一はめまいを感じた。 「これは『レビテーション』という魔法じゃ。そして先ほど君は『サモン・サーヴァント』という魔法でここに召還されたようじゃの。」 「さっきも言ってましたね。『使い魔』がどうとか・・・」 「うむ。『サモン・サーヴァント』は使い魔を召還するものじゃ。使い魔とはメイジの・・・そうじゃな。助手のような仕事をする。」 オスマンはこれがわしの使い魔、モートソグニルじゃ。といってハツカネズミを見せてくれた。 「普通はこのように人間以外の動物や幻獣が呼び出されるものじゃが、今回はどうしてか人間である君が呼び出されてしまったようじゃの。」 「じゃあ、これはなんです?そこの女の子に・・・えーっと、『キス』されたらこんなのが刻まれちゃったんですけど。」 康一はルイズのほうをチラッと見ながら、左手に刻まれた印を見せた。 「き、キスじゃないわよ!契約よ契約!誰があんたなんかとキスしたりするもんですか!」 ルイズは康一以上に顔を真っ赤にした。 オスマンはまぁまぁと二人を宥めた。 「メイジは使い魔を召還すると、『コントラクト・サーヴァント』で使い魔と主従の契約をするのじゃよ。それは通常口付けによって行われるんじゃ。それはその証のようなものじゃの。」 「いやですよ!なんでぼくがこんな我が侭な子のペットみたいなことをしなくちゃいけないんだっ!」 康一は声を荒げた。 由花子と出合った頃別荘に閉じ込められたときのことを思い出した。 あの時も石鹸を食べさせられそうになったり、電気椅子に座らせられそうになったりと人間扱いされなかったが、今度は正真正銘のペットにされてしまうという! 「うむ、君のいうことはもっともじゃ。わしとしても君を帰してあげたいのはやまやまなんじゃよ。」 じゃが・・・とオスマンは背もたれに身を預けた。 「じゃが、あいにく我々は君のいた国がどこにあるのかすら分からんのじゃよ。」 「そんな・・・」康一はがっくりと肩を落とした。 「こっちに呼び出したのなら、送り返す呪文はないんですか?」 「うーむ、通常は使い魔になることを同意しているものが召還されるから、送り返す魔法なんてものはないんじゃよ・・・」 つまりぼくはその『サモン・サーヴァント』ってやつで、魔法の国なんていうゲームの世界みたいなところに、使い魔にするために連れたわけだ。 しかも帰る方法はないという!康一は頭を抱えた。 「そこでじゃね。どうじゃろう。しばらくこちらで使い魔としてやっていく気はないかね?」 「はぁ!?」康一は顔をあげた。 「使い魔召還の儀式はメイジとして生きていくうえでは避けて通れないものでの。そこのミス・ヴァリエールが2年生に進学するためには今、君という使い魔がどうしても必要なのじゃよ。」 ルイズは顔を俯かせた。 そんなこと知るもんか!と叫ぼうとした康一をオスマンは押しとどめた。 「それに想像してみなさい。見ず知らずの世界で、行くあても先立つものもないんじゃろう?食べるものはどうするかね?屋根がない生活はつらいぞい?替えの服はもっているかね?」 「ぐっ・・・」康一は反論しようとしたが、できなかった。確かに自分はこのわけのわからない世界で身分を保証するものはなにもないのだ。 「少なくとも使い魔として生活するならばミス・ヴァリエールのメイジとしてのプライドにかけて衣食住は保障される。ミスタ・コーイチの故郷のことはわしも興味があるし、調べてみよう。」 オスマンはウインクをして見せた。 「どうじゃ。それまで使い魔として生活してみんか。ミス・ヴァリエールは進学でき、ミスタは住む場所を得る。ギブ テイクというやつじゃの。」 オールド・オスマンは右手と左手でそれぞれ二人を指差した。 指差されたルイズと康一はお互いに顔を見合わせた。 結局その後も言葉巧みに説得され、康一はしばらく使い魔として暮らしていくことを同意させられてしまった。 なんだか上手く乗せられたような気がしないでもないが、実際他にどうしようもないのだからしかたがない。 ルイズは先に部屋を出ている。これから康一が住む場所に案内してくれるらしい。康一も彼女の後を追おうと立ち上がった。 「最後に一つだけいいかの?」オスマンが康一に声をかけた。 「なんです?」 「帰る前に、その『重くする魔法』を使ってみてはくれんかね?わしも魔法を見せた。これもギブ テイク、じゃよ。」とにっこり笑ってまだ浮いたままのコインを指差した。 康一は溜息をついた。断ろうかとも思ったが、確かめたいこともあった。 「ACT3。」 『YES!MASTER!』 康一が呼ぶと、突然テーブルの上に白い人影が浮かび上がり、オスマンとコルベールは思わず仰け反った。 康一はその様子を見て確信した。 「(やはり・・・見えている・・・)」 「こ、これがその『ゴーレム』とやらかね?」 「ゴーレムじゃなくて、『スタンド』ですけれどね。ACT3!そのコインを重くしろ!」 『S.H.I.T!』 ACT3が空中のコインを両手で触る。 すると、ズン!!という音を立ててコインが黒檀のテーブルにめりこんだ。 「おおおお・・・」オスマンとコルベールは立ち上がった。 「私はさっきこうなっていたのですね!」 コイン一枚でこの重さだ。自分が受けていた圧力を思うとぞっとした。 「うむ、半信半疑じゃったが、まさか本当にこんなことが・・・『スタンド』とは、いったいなんなのじゃね?マジックアイテムの類かと思うのじゃが・・・」オスマンは問いかけた。 「え~っと、ギブ テイク、ですよね?」康一は尋ねた。スタンドはもう消えている。 「うむ、それがどうかしたかの?」 「じゃあこれより先は、帰る方法が分かってからってことで。」 康一はにっこりと笑った。くるりと背を向ける。 オスマンは驚いたような顔をして、それから額を叩いて笑った。 「ほっほっほっほ!こりゃ一本とられたの!」 「それじゃ、失礼しま~っす。」康一は扉から頭を下げるとバタンと扉を閉めた。 外に出ると、ルイズが遅いじゃない!といいたげな目で康一を待っていた。そして、「こっちよ。」と歩き出していく。 康一は「(ひょっとしてぼくはとんでもない約束をしちゃったんじゃないだろうなぁー)」と先行きにどんよりとした不安を感じながらツカツカと揺れる、自分よりも小さな桃色頭についていった。 康一が出て行った後、コルベールはテーブルに埋まったコインに手を伸ばした。 完全にめりこんでしまっているが、もう重くはなっていないようだ。爪を立ててようやく引き起こし、つまみあげた。 「大したものですね。ハンマーで叩いてもこうはなりませんよ。」 コルベールは、裏返したり弾ませたりしてみたが、やはりただのコインだ。 オールドオスマンはその様子を横目で見ながら言った。 「実はの。今そのコインが重くなっている間、わしはレビテーションをかけ続けていたんじゃよ。力を測ろうと思っての。」 「そ、そうだったのですか!?それで、どうでした?」コルベールは目を輝かせて聞いた。 オスマンはただ首を振った。 「全力で持ち上げようとしたが、ピクリともせなんだ。底が知れんよ。」と背もたれに体をあずける。 コルベールは青くなった。あの大賢者と称えられたオールド・オスマンでもその力を測りかねるというのか。 「あの少年、何者なのでしょうか。『スタンド』とはいったい・・・」 自分達はひょっとして、生徒に得体のしれない「なにか」を押し付けたのではないだろうか。 オスマンはゆっくりと立ち上がると窓を開け、中庭を見下ろした。明るい太陽の光が差し込み、コルベールは目を細めた。 「『スタンド』とはなにか、彼がどこから来たのか。それはわしにもわからん。」 オスマンは何か遠くを見ているような目をして語った。 「じゃがのコンバートくん。あの少年は非常に澄んだ目をしておった。やさしく純粋で・・・まっすぐな目じゃった。ミス・ヴァリエールにとって害になることはあるまい、とわしは思うのぉ。」 そして振り向いて笑う。 「それどころか彼を召還したことは、彼女にとって・・・いや、もしかすると我々にとっても望外の幸運なのかもしれんぞ?」 コルベールは、そうだといいですけど・・・。と溜息をついた。 そして、私の名前はコルベールです。とだけ付け加えた。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1112.html
小屋の外から叫び声がする。ルイズたちの声だ。 小屋の窓越しに全長30メイルにも達しようとするゴーレムの姿が見えた。 「何だとッ?!」 「僕はミス・ロングビルが『杖を振る』のを確認してないぞ?」 「フーケはロングビルじゃなかったのか?」 「と、とにかく『破壊の杖』はこれです! 早く脱出しましょう!」 ミス・ロングビルはそういいながら『M72ロケットランチャー』を手に取り、外に出て行ってしまった。 「あ、ああ!」 「そうしよう!」 出て来たとたん、土のゴーレムは三人を執拗に攻撃しだす。 「ロハン!皆を連れて学院に逃げろ! こいつは俺が足止めする!」 「分かった!行くぞ!ロングビル! この状況じゃどこにフーケがいるか分からん!」 「は、はい!」 (さっき『薪に似せた杖』を投げるフリをして振った… まだ、『私がフーケである事実』はまだバレてないようね… それに『露伴』と『ブチャラティ』を引き離した! 危なかったけど計画通り!) 露伴はロングビルと共にタバサ達と合流した。 「あれすごく強いわロハン! 私の炎も、タバサの竜巻も効かないわ!」 「退却」 「ああ、そうしよう。『破壊の杖』はロングビルがGetした」 「ルイズは?」 「あ、あれ?…」 「!あそこ」 ルイズはブチャラティのすぐ後ろにいた。 つまり、ゴーレムのすぐそばである。 巨大なゴーレムの顔に小さな土煙が上がる。 どうやらルイズの魔法のようだ。 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「アリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!」 「拙いな…!俺の『スタンド』との相性は最悪だ…」 ブチャラティはそうつぶやいた。 先程から、ゴーレムの両足を 『スティッキィ・フィンガーズ』全力で細切れにしているが、土でできた『ゴーレム』は『切断』していく端から再生していく… 「『足止め』する分にはいいんだが…」 ふと、目の端に仲間の姿が映る。 「何ッ!」 ロハンとミス・ロングビルは無事にキュルケたちに合流できたようだ。 問題は、ルイズだ。こちらに走ってくる! 杖を振りかざしながらもこちらに走ってくるのをやめないッ! 「こいつと戦うつもりなのかッ!」 間一髪。 ブチャラティはルイズとゴーレムの間にわが身を入れることができた。 「お前もロハンたちと逃げろ!」 「いやよ!こいつを倒せば、誰も私のことを『ゼロのルイズ』と呼ばないでしょ!」 「何を言っている!いまはそんな場合じゃない!」 スティッキィ・フィンガーズでゴーレムの攻撃を解体しながらしゃべったため、ブチャラティに、少しずつ、だが確実に飛石のダメージがたまっていく… 「だって、ヒック。悔しくて…私…」 「くッ…マズイ… ここはルイズだけでも逃がさなくては…」 「ブチャラティ!!ルイズを頼む!」 「こいつを受け取れ!」 露伴が何かを投げた。 「飛んで飛んで飛んで飛んで…♪」 「回って回って…♪」 「落ち~るぅぅ~~♪」 そのまま露伴が叫ぶ。 「君のそのルーンは武器を持ち、主人を守る意思を持ったときに、又は、心を振るわせたときにその真価を発揮する!」 「おそらく『スタンド』もパワーアップするはずだ!」 今度こそ露伴達は走り去ってゆく。 ブチャラティは『デルフリンガー』を拾った。 右手で握ると、『ローマで体験した精神入れ替わり直後の感覚』にいた感覚だ。 (あの時は、『スタンド』の能力がパワーアップしていた…) (こらならいけるッ!!) 後ろに隠れているルイズに左手を差し出す。 「分かった。俺一人では正攻法でこいつを倒すのは困難だ。 ルイズ。力を貸してくれ。『二人で』あのゴーレムを倒そう」 「…分かったわ!」 ルイズは、差し出されたブチャラティの手を握る。 ブチャラティのルーンが光り輝いていく… そして二人が叫ぶ。 『『スティッキィ・フィンガーズ!!』』 『『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!!』』 あれほど修復を繰り返していたゴーレムがあっという間に崩れていく… ルイズは実感していた。 (私一人では『ゼロ』だけど、「使い魔」いえ、『仲間』と一緒なら何でもできる!) (今ならそんな気がするわ!) バ―――――z______ン! 『『アりーヴェ・デルチ!!』』 あと、十歩。 そこに行けば、乗ってきた荷車に到達できる。 学院に「救援」を要請できる… 「そこに止まりなさいロハン!それにミス・ツェルプストー!」 声の先には、タバサの喉元に杖を突きつけたミス・ロングビルがいた。 不意に当身でも食らわせられたのか、タバサは気を失っているようだ。 あと、五歩。 だが、立ち止まらざるを得ない。 「まずミス・ツェルプストー。あなたは杖を捨ててもらいます」 「…あなたが『土くれのフーケ』だったのね…」 キュルケは杖を草むらに放り投げた。 「そしてロハン。あなたはこの『破壊の杖』の使用方法を教えなさい。 あなた、『宝物庫』でこの使い方を知っているような話し方をしていたでしょ?」 「僕が話すと思っているのかい?」 「ええ、『この子の命』と引き換えならね…」 「……分かった。『諦めた』。話そう」 「ロハン!…」 「いいか、よく聞け。 まず、リアカバーを引き出して、インナーチューブをスライドさせる。 照尺を立てた後、照準を合わせてトリガーを引くんだ。 最大射程距離は1000メートル。10メートル以内は信管が作動しないからな。 ついでに言っておくが、後方45度、25mにはバックブラストが行くから注意が必要だ。どうだ、簡単だろ?」 「?」 「?何言ってるの?」 ミス・ロングビル、もとい、『土くれのフーケ』は戸惑っているようだ。 「この子の命が惜しくないの?私に分かるように説明しなさい!」 「分かった。まず、そこの、そう。それがリアカバーだ。 それを引き出して…」 露伴が指で指し示しながらフーケに近づいた。 「待って!それ以上近づくんじゃあねーわよ!」 フーケの杖を持つ手に力がこもる。 「分かった。もう近づかない。 すでに一歩『射程内』にはいったからな…」 「?」 『ヘブンズ・ドアー』! 『タバサ達を攻撃することはできない』! 「う、動けない!」 突然、フーケが身動き一つできなくなる。 「もう大丈夫だ。キュルケ。こいつを縄でぐるぐる巻きにしてやれ」 気絶したタバサをお姫様抱っこしながら、露伴が言う。すでに勝利したような表情だ。 「は、はい!」 キュルケはフーケの杖を取り上げ、用意していたロープで縛り上げた。 「何したのよ!答えなさい!」 「僕が『諦めた』といったのは『ブチャラティに僕の能力を隠し通す事』だ」 「あの男、ゴーレムと戦っている最中にも周囲に気を配っている… 本当に戦闘経験豊富なやつだな…」