約 935,054 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/264.html
ゼロのパーティ-1 ゼロのパーティ-2 ゼロのパーティ-3 ゼロのパーティ-4 ゼロのパーティ-5 ゼロのパーティ-6 ゼロのパーティ-7 ゼロのパーティ-8 ゼロのパーティ-9 ゼロのパーティ-10 ゼロのパーティ-11 ゼロのパーティ-12 ゼロのパーティ-13 ゼロのパーティ-14 ゼロのパーティ-15 ゼロのパーティ-16 ゼロのパーティ-17 ゼロのパーティ-18 ゼロのパーティ-19 ゼロのパーティ-20 ゼロのパーティ-21 ゼロのパーティ-22 ゼロのパーティ-23
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/461.html
「どうぞごゆっくり…」 ミス・ロングビルこと土のフーケ、彼女が目の前に出された料理を見る。 特に変わったようには見えないが、これがここ最近、学園でも噂の魔法の料理なのだ! ゼロのルイズ。 落ちこぼれと評判の生徒がサモン・サーヴァントで平民を呼び出した。 これだけならただの笑い話である。 そして彼がコックとわかった時、これもただのコックならさらに良い笑い話になっただろう。 だがしかし!彼はただのコックではなかった! なんと彼の料理を食べた者は健康になり、その味は天上の美味とまで称されたのである! そして、長い長い予約待ちのすえ、ついに噂の料理を味わう時がきたのである! (さ~て、噂は何処まで本当なのかしら?) 料理を食べた彼女は己の身に起こったことにただただ驚愕した! そしてその凄まじい効果に! 長年悩まされた便秘が治り、最後のデザートの美肌効果を目の当たりにしたとき 彼女は盗賊としての仕事は休業し、この学園にとどまる事を決心したのだ! 「貴方は、貴方は本当に素晴らしい料理人です、トニオさん!」 「喜んでもらえて嬉しいです」 ゼロの料理人 完
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1058.html
ゼロの奇妙な白蛇 第一話 ゼロの奇妙な白蛇 第二話 ゼロの奇妙な白蛇 第三話 ゼロの奇妙な白蛇 第3.5話 ゼロの奇妙な白蛇 第四話 ゼロの奇妙な白蛇 第五話 ゼロの奇妙な白蛇 第六話 ゼロの奇妙な白蛇 第七話 ゼロの奇妙な白蛇 第八話 ゼロの奇妙な白蛇 第九話 ゼロの奇妙な白蛇 第十話 前編 ゼロの奇妙な白蛇 第十話 後編 ゼロの奇妙な白蛇 第十一話 ゼロの奇妙な白蛇 第11.4話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2168.html
「何よこれ」 その日ルイズが召喚したものは、小さな茨の冠だった。 「何が出てきたんだ?」「何も見えないぞ」「ネズミでも呼び出したんじゃないか?」 ルイズの後ろから、同級生達の声が聞こえてくる。 ゲートから召喚されたものが何なのか、見ようとしているのだろう。 ルイズは一歩前に出て、地面に置かれた茨の冠を手に取った。 よく見ると、中央に穴の開いた奇妙な鏡に茨が絡みつき、冠の様相を見せている。 なんだかよく分からないけれど、これは自分が召喚した使い魔らしい。 「ミス・ヴァリエール、どんな使い魔を召喚したのかね?」 どこまでがおでこなのか分からない教師、コルベールがルイズに近寄り、ルイズの手をのぞき込む。 「あの、これ…」 手の中にある茨の冠を見せると、コルベールは首をかしげた。 「これ?…はて、これとは、どれのことですか?」 「だから、この茨の冠みたいなものです」 「…?」 「…」 「…」 ほんの少しの間、重たい沈黙が流れたかと思うと、コルベールはぽんと手を叩いて他の生徒達に向き直った。 「えー、皆さん!そろそろ帰らねば、次の授業に遅れてしまいます、少々急ぎ足で戻るとしましょう!」 コルベールの声を聞いて、生徒達は空を飛んで、トリスティン魔法学院へと帰っていく。 ルイズを馬鹿にする言葉も少なくない、誰かは「とうとう頭がヘンになった」とまで言ってルイズを侮蔑し、飛び去っていった。 「ミス・ヴァリエール、召喚が失敗したからと言って意地を張ってはいけません、さあ、もう一度やり直しましょう」 「え…」 優しく語りかけるコルベールの笑顔が、ルイズにはとても残忍なものに見えた。 コルベール先生の指導の元、サモン・サーヴァントを何度もやり直したが、ルイズの前に使い魔を呼び出すゲートは現れなかった。 ルイズは何度も茨の冠のようなものを指さし、これが呼び出されているからゲートが開かないのだとコルベールに説明した。 だが、コルベールは気の毒そうにルイズを見ると、今日はもう疲れているのだから休みなさいと言って、魔法学院に帰るよう促した。 そこでルイズは気づく、この茨の冠はコルベール先生に見えていないのだと。 「先生!違います、本当に私、使い魔を呼び出したんです、この茨の冠みたいなものを、持ってください!」 ルイズはコルベールの手を取って、その上に茨の冠を載せる。 だがそれはコルベールの手を通り抜け、地面に落ちてしまった。 「…!」 呆然とするルイズを見たコルベールは、ルイズが意地を張り過ぎて混乱しているのだと考えた。 空を飛ぶことの出来ないルイズは、魔法学院に歩いて帰るしかない。 混乱状態の生徒から目を離す訳にはいかないので、コルベールはルイズと共に歩いて魔法学院へと戻ることにした。 ルイズは茨の冠を胸に抱き、部屋に戻ろうと歩いていた。 その途中キュルケとすれ違い、この茨の冠は他人には見ることが出来ないと、改めて認識することになった。 「あら、ヴァリエール、胸に何か抱いてどうしたの?」 「…”何か”って、ツェルプストーは、これが見えるの?」 「これって、どれのことかしら」 キュルケは、胸の前で交差させたルイズの腕をのぞき込む、だがそこには何もない。 胸すら無い。 「何にも持ってないじゃない、あんた大丈夫?」 「見えない…の?」 「?」 部屋に戻ったルイズは、茨の冠を手に持ち、考える。 これは一体なんだろう? 他の人には見ることも出来ないし、触れることもできない。 ルイズからは見ることができ、触れることもできる。 訳が分からなかった。 やたらにルイズのことを心配し、魔法学院まで付き添って歩いてくれたコルベール先生。 彼はきっと、サモン・サーヴァントに失敗たと思いこんでいるのだろう。 使い魔がいないメイジは二年に進級できない、つまり、明日の授業は皆と一緒に受けることもできず、一年生と一緒に授業を受けることになる。 けれども、自分は確かにこの茨の冠を召喚した。 誰にも認めて貰えない使い魔。 ルイズは笑った、だが、それは自虐的な笑いだった。 何年も何年も、魔法が成功しない、ゼロのルイズと蔑まれてきた結果が、誰にもその存在を認められない使い魔。 本当に自分にはお似合いだと、泣きながら笑った。 ルイズは茨の冠を手に取り、鏡の前に立つ。 これを被ったら、どんな格好になるだろう、花の冠ではなく茨の冠なんて、自分にはお似合いかもしれない… そう考えながら、ルイズは茨の冠を頭に乗せた。 『ハ ー ミ ッ ト ・ パ ー プ ル ! 』 ぱっ、と頭の中で何かの声が響く。 ルイズは咄嗟に部屋の中を見回したが、自分以外だれも居るはずがない。 だが、確かに聞こえたのだ、『ハーミット・パープル』と。 改めて鏡を見ると、頭に乗せたはずの茨の冠が消えていた。 これが後に『ゼロのルイズ』を『ゼロの茨』と名を変え、『虚無の茨』として恐れられる運命の第一歩だとは、本人ですら気づいていなかった。 続かない。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1155.html
ともだち~ ずっとともだち~♪ ギーシュは上機嫌だった。 ずっとともだちいな~い♪ 鼻歌まで歌ってゴキゲンである。彼は両手で何か大きな箱を抱えて 中庭を歩いていた。箱の中にはギッシリと、色んな形の小瓶が詰められて いる。小瓶――そう、香水である。「香水」の二つ名を持つ彼女、 モンモランシー・マルガリタ・中略・モンモランシに、彼はこの香水の山を プレゼントするつもりなのだ。こいつを決め台詞つきでプレゼントした 時の彼女の反応を考えると、ギーシュはニヤニヤが止まらなかった。率直に 形容すると、いわゆる「アホ面」というやつだ。そういうわけで、彼はこの後の 勝利を確信しながら、それはもう上機嫌でモンモランシーの元へと向かって いたわけである。すると後ろの方から彼を呼ぶ声が聞える。 「ギーシュ!あなた何を持っているの?」 この声は・・・!ギーシュは確信した。モンモランシーだ!少し予定と違うが まぁいい!コホン、と一つ咳払いをすると、 「ああ、まるでセイレーンの歌声のようなその声!君はモンモランシーだね! なんという偶然、いやこれは始祖ブリミルの与えたもうた奇跡!僕も今君に 会いに行こうと・・・」 優雅な仕草でギーシュが振り返ったそこには、 般若のような形相で仁王立ちするケティの姿があった。 「ギーシュさま・・・」 背後からゴゴゴゴゴゴという擬音を引き連れて、ケティは死神のような眼で ギーシュを睨む。 「やはり・・・・ミス・モンモランシーと・・・・・・」 「ケッ、ケケケケケケティ!!ちっちががちが違うんだよこれは!!これは 先生に頼まれて――」 バッチィィイィン!!! 「さよならギーシュさま・・・死ねッ!!!」 へなっぷすいませんと叫びながらフッ飛ぶギーシュに、ケティはもはや一瞥も くれず歩き去った。 見事なきりもみ回転でフッ飛んだギーシュは地面に倒れたまましばらく痛みを こらえていたが、ハッと香水のことを思い出して跳ね起きた。 「ああああ!!こっ、香水ッ!割れてないだろうなぁ~!?」 ギーシュは地面に跪き、急いで香水をかき集める。よかった、どれも割れては ないようだ。使い魔に手伝わせてガチャガチャと箱に放り込む。草や土が ついてるものもあるだろうが・・・モンモランシーなら適当に言い繕えば ごまかせるだろう。ギーシュはそう判断すると、香水を仕舞い終わった箱を 持ち上げて歩き出した。さっきの事は色んな意味で痛かったが、この傷は モンモランシーの笑顔で癒してもらおう・・・などと考えると、ギーシュの片側だけ 腫れた顔はまたニヤニヤと歪むのであった。しかし――、不幸とは往々にして 連鎖するものである。ニタニタと上の空で妄想にふけっていたギーシュは、 前から歩いてくる少女もまた考え事で前など見ていなかったことに気付かなかった。 そして。 ドンッ!! 「うわッ!?」 「きゃあッ!!」 二人はハデにぶつかり、ハデに吹っ飛んだ。 「いったたたたた・・・ き、君ッ!前はちゃんと見て・・・アッー!!!」 なんと不幸な偶然か、再びギーシュの手から落ちた香水の山は、2度目の 衝撃に耐えることは出来なかった。ギーシュと少女の周りに散乱した小瓶、 その実に3分の2が無残に砕け散ってしまっている。 「なッ・・・なッ・・・なんということだ・・・!大枚はたいて買ったモンモランシーの ための香水が!!」 絶望と怒りに打ち震えるギーシュ。 「君ッ!!」 それがないまぜになった感情をぶつけるべく、ギーシュはキッと少女を睨む。 「責任は取ってもらうぞッ!!ゼロのルイズッ!!」 ルイズは悄然とした表情で中庭を歩いていた。ギアッチョはただ訳も分からず 異世界へ送り込まれてきただけの平民ではない。唯一心を許せる仲間達を 皆殺しにされ、その上リーダーを一人残したまま自分まで殺されてしまったのだ。 もしもギアッチョが自分だったら、とルイズは考えた。唯一無二の親友である アンリエッタが、敬愛するワルドが、そして家族が皆殺しにされてしまったら。 そう考えると、今までギアッチョにされた仕打ちなんか全て忘れて、ギアッチョの 隣で泣きたくなる。ギアッチョの怒りは、悲しみは、痛いほど分かっている つもりだった。それなのに、自分はギアッチョにあんな酷い事をしてしまった。 どれだけ悔やんでももう遅い。自分とギアッチョの心には、きっともう修復なんて 不可能な溝が出来ている。――ギアッチョは厨房の平民達の屈折のない善意に 囲まれていた。自分じゃきっと一生かかっても素直になんかなれない。自分は あの輪の中には永遠に入れない。ルイズはそう確信していた。 ルイズは幼い頃から周囲にバカにされ続けてきた。例え口には出されなくても、 周囲の眼は「ゼロだ」「落ちこぼれだ」という意識を持ってルイズの心に突き刺さる。 幼いルイズが心無い他人達から身を守るには、虚勢という張子の盾を持つしか なかったのである。そしてその盾はもはやルイズの心と完全に一体化し、 ごく一部の親しい人間を除いて、ルイズはその心の深奥を誰かに吐露する 事など出来なくなってしまっていた。 ――あいつの居場所は・・・私の隣じゃ・・・ない ルイズはもう一度呟き、そして悲しい決意をした。やっぱりダメだ。元の世界に 戻るにしろ、ここに留まるにしろ、あいつは私の使い魔なんかでいるべきじゃ ない。あいつを元の世界に送り返す方法か・・・もしくは契約を解除する方法。 どっちを選ぶかはギアッチョ次第だが、とにかくどちらかを見つけなければ いけない。そんな事を考えながらルイズは図書室へと歩き出し――そして、 ギーシュと衝突した。 「責任ですって!?前を見てなかったのはあんたも一緒でしょ!!どっちか 一人でも前を見ていたらぶつかりなんてしないわ!」 「黙りたまえゼロのルイズ!僕達の周りを見ろッ!!僕が大金をはたいて 買った香水だぞッ!!責任を取るのはそっちだ!!」 ルイズはそこで初めて周囲に眼をやり、香水瓶だったものの惨状を知った。 「フンッ!どうせモンモランシーにあげるつもりだったんでしょう!!あんた みたいな趣味の悪い男にはお似合いのプレゼントね!!自分の不始末は 自分でぬぐいなさいよッ!!」 「言ったなゼロのルイズッ!!大体どうして君がまだここにいるんだ!? 魔法も使えないメイジが魔法学院にいるなんてお笑いだな!!君がとっとと ここを辞めていれば僕がここでぶつかることもなかったんだ!!土下座して 謝りたまえ!!そしてこいつを全部弁償しろッ!!そうすれば君がこの学院に 居続ける事を許してやろう!!」 「・・・なんですって・・・!!何も・・・何も知らないくせに・・・ッ!!許さないわ ギーシュッ!!決闘よッ!!!」 「ゼロのルイズが決闘だって!?アッハハハハハ!!いいだろう、女性に 手は上げない主義だが・・・受けて立とうじゃあないかッ!!僕が勝ったら 君は僕に土下座で謝った後にこいつを全て弁償し、その上でこの学院を 出て行けッ!!いいな!!」 「・・・上等じゃない・・・!!私が勝ったらもう二度と私を『ゼロ』だなんて 呼ばせないわッ!!ギーシュッ!!」 「いいだろう・・・フフフ・・・『君が勝ったら』ね!!こいつは傑作だ!! アッハハハハハハ・・・!!」 こいつは自分の勝利を微塵も疑っていない。ルイズは悔しさで涙が出そう だった。目頭が熱くなるのを必死で堪えていたその時、 バグシャアアッ!! 「あぁあぁああーーーーッ!!!ぶっ、無事だった香水をぉおお!!」 壊れることなく残っていた香水瓶を踏み潰しながら―― ギアッチョがそこに立っていた。 「・・・なッ・・・何してんのよッ・・・っく・・・ギアッチョ・・・!私を笑いに来たの なら・・・帰りなさいよ・・・!あんたには・・・うっく・・・関係ないでしょ・・・ッ!」 悔しくて情けなくて、ルイズはついに涙を堪え切れなかった。涙を見せまいと うつむきながら、ルイズは精一杯の強がりを言う。こいつには、ギアッチョに だけは、こんな場面を見られたくはなかった。きっとこいつは完全に幻滅した。 そう思うと、ルイズの涙はいよいよ量を増して溢れて来る。 だが―― 「いいや・・・関係あるね てめーはさっき言ったよなぁあぁ~~ 主の不始末は 使い魔の不始末だってよォォーー・・・!」 そこまで言うと、ギアッチョは色をなくした眼でギーシュを睨む。 「ルイズの不始末は・・・オレが引き受ける ギーシュとか言ったな・・・てめーの 決闘の相手はよォォーーー!!このオレだぜマンモーニッ!!!」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/562.html
一人の少女の挙動に、その場にいたすべての人間が注目していた。 その少女はルイズ。またの名を『ゼロのルイズ』。 この二つ名自体に相当の侮蔑の要素が入っていたが、口さがのないものはさらに別の名で呼んでいた。 『ヌ』で始まる4文字の名で・・・。 「気をつけなさい。爆発はいつもの規模とは限らないわ。もしかしたらこのあたりまで爆風が届くかもしれないわ」 赤い、火のような色の髪の毛をなびかせた少女、キュルケが級友たちに注意を促す。 その言葉に、ルイズを囲む人の輪が3歩ほど後退する。 「これから起こる出来事は・・・」 キュルケがしみじみと口をひらくが、その先は言葉にならなかった。 キュルケ(毎度のことだからずっと昔から知っている出来事・・・ そう・・・私は・・・ずっと知っていた・・・私はこいつの失敗魔法を入学したときから知っていた・・・このタバサも) タバサ(・・・・・・・・・・・・) キュルケ(予想していなかったことではない・・・入学したときからいつか別れることになる相手として・・・ 私たちクラスメイトは ルイズといつか別れることを知っていた・・・・・・) モンモン(関係がない・・・ヴァリエールの召喚失敗に・・・結果、退学を言い渡されることに・・・ 私の人生には関係がない・・・) ギーシュ(今・・・見えてるこの色は・・・ モンモランシーが「白」の下着を身に着けているということだ・・・キュルケは「黒」! モンモランシーは「白」 雨上がりの水溜りに はっきりと写って見えるぜ! おっきした下半身にさらに血が集まってくる 「前屈みのポーズ」で僕はいるッ!) クラスメイトたちの視線。 ある者はルイズとすごした一年間を懐かしみ、ある者は・・・ルイズには興味なさそうに本に視線を向け ある者は「かわいそうだけど、明日の朝には荷物をまとめて寮から追い出される運命なのね」ってかんじの視線を向けている。 そういった視線を感じ、ルイズの呼吸は自然と荒くなる。 ルイズ「し・・・始祖様ァ・・・私はあなた様の作り上げた系統魔法を練習してないわけじゃないですから~~ あなた様の作り上げた系統魔法が私にも使えると確信しているからこそ、使い魔召喚の儀式を行うんですゥゥゥ 香水のビンを拾ったら決闘が起こるってことと同じぐらい確信していますゥ・・・ そこのところわかってくださいねェェェ~~~」 「つべこべ言わんとさっさとやらんかァーーー!」 息を荒げながらうだうだと言うルイズの態度に、頭髪のさびしい教師が一喝する! ルイズ「神聖で美しく、そして、強力な使い魔様~~~ フェッ フェッ 私のことを馬鹿にするやつらをぶっ殺してやっておくんなさいましよ~~~~~」 ルイズは召喚の呪文を唱えると杖を一振りする! ドッグォーz_ン!! 案の定、ルイズが杖を振ると爆発が起きた。 その爆発は普段の爆発よりさらに大きく、十分な距離をとっていたつもりのクラスメイトたちが顔をしかめる。 そして、爆発の中心地ではもうもうと土煙が舞う。 キュルケをはじめ、ほぼすべてのクラスメイトたちが土煙が晴れるのを注視するッ! 案の定魔法は失敗して、煤にまみれたルイズが一人立っているのか・・・。いや案外変なものを呼び出すかもしれない。 まともな使い魔を召喚するという予想は圧倒的少数派で、必然的にオッズも高い! 頭髪のさびしい教師などは、頭皮に栄養を与える秘薬を買い込んでしまって今月はピンチなので、祈るように見ていた。 皆が土煙を注視する中、ただ一人! ギーシュ・ド・グラモンは別のものを見ていたッ! それはルイズの起こした爆風によってその位置を変えた水溜りッ! 位置が変われば、当然映し出すものも変わる! その水溜りには、いつも教室の隅で本を呼んでいる無口な少女のスカートが写っていた。 (タバサか・・・正直好みではないが、薔薇はすべての女性のスカートの中をのぞくもの・・・。 それにあの無口な少女がどんな下着を身に着けているのか、少し興味があるぞ!) その素敵な好奇心がギーシュに奇跡を見せたッ! そして、ギーシュが奇跡を見たのと同時に、土煙も晴れていた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・ 土煙が晴れ、そこにいたものは・・・ルイズ! 多くの生徒たちが予想したとおりそこにいたのはルイズただ一人! キュルケ「え!?」 タバサ「!?」 モンモン「え!?」 ギーシュ「!!!!!!」 予想通りであるはずのその光景に、クラスメイトたちは驚きの声を上げ、もしくは声にならない声を上げた! ギーシュただ一人だけは別の理由で絶句していたが・・・ 「召喚されたのは・・・私だったァーーー 今召喚の呪文を唱えたのにィ~~~」 そこにいた、いや、そこにあったのはルイズ! いや、ルイズだったもの!! 6つに切り分けられたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールッ!! 「な・・・なにィー ど・・・どうしてルイズがバラバラにッ! 私は一瞬たりとも土煙から目を離さなかったッ!」 キュルケは自分の目に写る光景が信じられないという風に声を荒げる! そしてギーシュも自分の目が信じられなかったッ! 「ババくさい肌色の下着だとか! 大胆な紐だとかじゃあだんじてねー どう見てもはいてないッ!」 肌の色と同化してるのでも、布の面積が小さいのでもないッ! 布の面積がゼロッ! ゼロのタバサッ! 自分の見たものが信じられず、思わずタバサの顔を凝視するギーシュ。 「はいてないッ!?」 マリコルヌはそんなギーシュの言葉を聞き逃さなかった。そしてそれは他の男子生徒にも広がる。 ドドドドドドドドドドドドドド 男子生徒一同、プラスコッパゲが、ギーシュの「はいてない」という言葉と、ギーシュの視線が向かう先を理解するッ! ドドドドドドドドドドドドドド タバサ「野郎・・・面白くなってきた・・・」 ルイズ・・・・・・死亡 キュルケ・・・・・・自分の部屋に戻って二時間眠った。目をさましてからしばらくしてルイズが死んだ事を思い出し・・・泣いた 男子生徒一同・・・・・・タバサのエアハンマー・オラオラをくらい再起不能 タバサ・・・・・・見られるかもしれないスリルがやめられない DIO様・・・・・・誰も相手してくれないから城に向かった トリステイン・・・・・・1年後、ハルケギニア中から死都と呼ばれることになる ゼロのタバサ 完!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/128.html
「ちょっと……何やってんのよ?」 「見て分からねーか」 「わたしが聞いてるのは主人を待たせて何やってんのってことよ!」 その言葉を完全にガン無視決め込み髪をブラシで整える。 プロシュートもイタリア人である。故に身だしなみには当然気を使う。 ちなみに兄貴『パッショーネ モテる男ランキング』の常に上位に君臨している(メローネ調べ) なお、最下位は5年連続してポルポがブッチ切りだ。(理由:包み込んでくれそうというより潰されそう 常に何か食ってる ・・・etc) それを終えたプロシュートがルイズの前に常人には若干関節に負担があるような立ち方で立つ ルイズの耳に ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ というような音が聞こえたような気がしたが関わると良いことが起こりそうにないので深く突っ込まない事にした。 食堂に向かいルイズが中に入る、だがプロシュートは入り口の前で止まっていた。 「どうしたのよ?」 「……オレはいい」 主従関係を教えるための朝食を用意していたルイズであったが本人が食べないというのでは意味がない。 「食べないのは勝手だけど後で欲しいって言っても知らないわよ」 何とか食堂に連れて行こうとする。 もっとも、ルイズが用意したプロシュートの朝食内容を見れば食堂内で即グレイトフル・デッド発動ということになり大惨事になっていただろうが。 「いいからさっさと行け……」 ルイズが食堂に入ったのを見届けるとプロシュートが壁に背を預け目を閉じる。勿論寝ているわけではない。 夢だ。あの夢が妙に気になっていた。 チームの仲間達の死体の目。あの姿と視線がフラッシュバックとして脳内に蘇りとてもじゃあないが朝食を摂る気にはなれなかった。 いや、それだけならまだいい。「ソルベ、ジェラード、ホルマジオ、イルーゾォ」ヤツらはボスを倒すと誓ったその日から覚悟はしていたし死んだ事も知っている。 だが「ペッシ、メローネ、ギアッチョ、リゾット」は別だ。ヤツらはまだ死んじゃあいない。何故ああもリアリティ溢れる夢を見たのか気に掛かっていた。 「メローネ、ギアッチョ、リゾット」に関しては腕が立つ連中だしあまり心配する事もないが気掛かりなのは弟分のペッシだ。 自分があの状況下から居なくなったという事は「老化の解除」即ち亀の中の連中の復活を意味する。 ペッシのビーチ・ボーイは1対1向けの能力だ、グレイトフル・デッドのように複数人を相手にするのには向いていない。 おまけにあの夢の中のペッシのやられ方はブチャラティのスティッキィ・フィンガースの攻撃にやられたものと同じだ。 その事が自然と彼に朝食を摂らせる気を失せさせていた。 (成長してりゃあいいがな…) 「……るのかい?」 声が聞こえプロシュートが目を開き周囲を見る。 そこには、ここの生徒と思われる男が少女を連れて立っていた 「聞こえているのかい?」 「何か用か?」 「まったく…聞こえているじゃないか、ミス・ヴァリエールが召喚した『平民』の使い魔だったね。道を開けてくれないか」 『平民』という部分を若干強調して男が話す。 だがプロシュートは壁に背を預け立っているので、人が通るスペースなど十二分にある。 「……通りたけりゃあ通りゃあいいじゃあねぇか」 「分からないかい?君は平民なんだから貴族に道を譲るのは当然じゃないか」 思わず蹴りを入れそうになるが、一応ルイズから騒ぎを起こすなと言われているため無言で道を開ける。 それを見た男が満足気な顔で少女を連れ食堂に入っていった。 もちろん、このままではプロシュート、いや暗殺チームとしての沽券に関わる。 男が食堂に入る前にグレイトフル・デッドで男の財布を抜き取っておいた。 数時間後騒ぎになるが犯人は誰か分からないままであった。(後のギーシュ財布盗難騒動である) 朝食を終えたルイズが授業を受けるべくプロシュートと共に教室に向かう。 この朝一の授業はサモン・サーヴァントの初めての授業。つまり皆が己の使い魔を披露する場も兼ねている。 その中にただプロシュートが立つ。ハッキリ言って浮いている、そりゃあもう浮いている。ジャンピン・ジャック・フラッシュを食らったかの如く浮いてる。 壁に背を預け腕を組みながら立つその姿はどう見てもヤクザです、本当に(ry ざわ……ざわ……ざわ…… ざわ……ざわ……ざわ…… 生徒がざわつき始めるがその内容は殆どプロシュートとルイズに対してのものだ。 その中に明らかにプロシュートに対して脅えているものが2~3名。初日のグレイトフル・デッドの広域老化攻撃に巻き込まれた連中だ。 話の内容から察するに他の生徒達からは「夢でも見てたんじゃあないか」とか「平民がそんな事できるわけない」とか言われているようで 本人達も気付けば特に異常は無いらしく夢あたりと思いたいらしいがやはり兄貴の平民にあるまじきプレッシャーが怖いらしい。 そんな中『ゼロのルイズ』という単語が聞こえる。プロシュートがルイズにそれがどういう意味か尋ねてみるが (アンタには関係ないでしょ!) という目で思いっきり睨み返される。 そうこうしているうちに授業が始まるがプロシュートには全く興味が無い事なのでほとんど話を聞いていない。 唯一、シュルヴルーズと呼ばれる教師が石を金属に変えた時はそれを見ていたようだが。 そして、ルイズが教師に呼ばれ前に出る。生徒達のざわめきがプロシュート達が教室に入ったものより大きく続々と生徒達が机の下などに退避する。 ルイズが詠唱を始め石に杖を向ける。だがプロシュートの背筋にゾクリと冷たい物が走る。 亀に直触りを仕掛けようとし、列車の天井にジッパーを付けたブチャラティが自分を攻撃しようとした時のように。 瞬時にグレイトフル・デッドを発現させ一気に教室の後ろまで下がる。机の下は生徒達とその使い魔で一杯で入る余裕は無い。 後ろに行きスタンドを構えさせた瞬間―――『爆発』が起こった。 色々な破片がプロシュートに飛んでくるが全てグレイトフル・デッドで迎撃する。精密動作がニガテとはいえこの程度の物を落とすのは訳はない。 机の下に隠れてたとはいえ爆風まで完全に遮断できず、生徒達が若干ススに汚れたまま這い出てくる。 一応自身を見るがスーツに傷や汚れは無い。オーダーメイドであり体に完全に馴染むものはこれ一着しか無い。汚れはともかく傷だけは御免だ。 スス塗れの生徒達からルイズに明らかに非難と侮蔑の視線と言葉が集まる。当のルイズは下を向き若干震えたようにしている。 だが、プロシュートが抱いた感想は生徒達の物とは違っていた。 (隠密行動や暗殺には向かねーが、大した威力じゃあねーか) あくまでギャング的な思考である。 授業終了後、殆どの全ての生徒が出て行った教室でルイズとは対照的な女とルイズが激しくガンを飛ばしまくっていた。もっともほとんどルイズが一方的にではあるが。 「また派手にやってくれたもんねぇゼロのルイズ」 「きょ、今日は少し調子が悪かっただけよ!」 「あら、今日じゃなくて何時もの間違いじゃない?」 など口論している、ところにプロシュートが割り込む。 「聞きてぇんだが『ゼロのルイズ』ってのはどういう意味だ?」 「あら…あなたがルイズの召喚したっていう平民ね。…結構シブくて良い男じゃない」 「フン…で、オレは『ゼロのルイズ』って意味を知りてぇんだが」 「だから、アンタには関係ないって――ひょっほあにふんほよ!(ちょっとなにすんのよ!)」 女がルイズの口を押さえてプロシュートの問いに答え始める。 「なるほどな、あの爆発は魔法に失敗した結果って事か」 「そう、今までの魔法が100%失敗してるから『ゼロ』って事よ」 「あらもう、こんな時間。先に行ってるからこれからも頑張んなさいよゼロのル・イ・ズ♪」 「~~~~~~~ッ!!」 からかうようにして言い放つ女に対し怒りが限界を突破して声にすらなっていない。ルイズ火山噴火一歩手前というところである。 ・・・ だが、次の瞬間プロシュートが取った行動は―――意外ッ!それは肘撃ちッ! バギィ! 教室に響く鈍い音 若干手加減されていたとはいえ現役ギャングの攻撃である。女は思いっきり床に倒れていった。 ルイズとその女、双方とも何が起こったのは分からないといったような表情だ。先ほどまでの喧騒が嘘の様に静かになっている。 「使い魔…それも…平民が!名誉あるツェルプストー家の…この『微熱のキュルケ』に何てことをッ…!!」 ルイズの方はまだ何が起こったのは理解できていない様子で倒れているキュルケを見たまま動けないでいる だが、プロシュートはそんな事に構いもせず倒れている女―キュルケに近寄り言い放つ。 「オレの世界ではなッ!侮辱するという行為は殺人すら許さていると言ったヤツが居るッ! いけすかねぇ豚野朗だったがそいつのその言葉だけは一理あったッ!今ッ!オメーはそういう事をこいつにやっているんだぜッ!」 プロシュートの迫力に何も言えなくなるキュルケ、そしてプロシュートが自分が『ゼロのルイズ』と呼ばれていた事に対してキュルケを殴った事に気付く。 (え…こいつが怒ってるのってわたしが『ゼロのルイズ』って呼ばれて、侮辱されたからって事…?) さらにヒートアップするプロシュートの説教。チーム内でもペッシ、メローネ、ギアッチョに対しての説教の多さは有名になっていたりする。 まぁメローネとギアッチョは大して聞いていないため実質ペッシだけであるが。 「行くぜルイズッ!」 ギャングとしての説教を終えルイズを呼び教室を去るプロシュート。呼ばれた方は初めて自分の名前が呼ばれた事もあってマトモな返事も出来ず付いていく。 そして一人教室に残されたキュルケ。何も言えなかった、何も言えるはずがなかった。 「平民が…!この『微熱のキュルケ』に…!許せない…!許せない…!」 そう呟く。だが次の言葉で何も言えなかった理由が判明する。 ・・・・・ 「……許せないぐらい『燃えてきたわッ!』」 微熱のキュルケ、その二つ名の本領が発揮された瞬間であった。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/430.html
++第四話 ゼロのルイズ②++ 「これは?」 「あんたの朝食よ」 床に置いてある皿を指差して、ルイズは言った。 皿の上にはいかにも固そうで、まずそうなパンが乗っている。 それと、おまけ程度に肉のかけらの浮いたスープ。それだけだ。 「椅子は?」 「あるわけないでしょ。あんたは床」 確かに自分は使い魔になると言った。でも、この仕打ちはあんまりじゃないだろうか。 花京院の中で葛藤が生まれる。ここまでされても許すのか、それとも怒るのか。 しかし、ルイズはさっさと花京院を無視し、食事の前の祈りを始めてしまった。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」 他の生徒たちの唱和も重なり、食堂に響き渡る。 怒るタイミングを逃してしまい、花京院は握り締めた拳を下ろした。 食事はお世辞にもおいしそうとは言いがたいが、あるだけましだ。もし、彼女に召喚されていなかったら食事にさえありつけなかったかもしれない。 それに比べたらましだろう。たぶん。 パンを一口かじってみたら、予想通り固かった。 明日からはなんとかしよう。絶対に。 花京院は静かに決意した。 朝食を終えると、生徒たちはそれぞれ教室へと移動する。 ルイズと花京院がやってきたのは大学の講義室のような教室だった。 二人が教室に入ると、生徒の視線が二人に集中する。 からかうような視線や好奇心むきだしの視線に、思わず花京院は反感を覚えた。 笑い声の木霊する教室を歩き、席につく。 「あんた、なに椅子に座ってんのよ」 ルイズが文句を言うが、さすがにここまでは譲れなかった。 鋭い視線をルイズに向け、花京院は言った。 「このぐらいは構わないだろう」 穏やかながらも、その言葉に含まれたものを感じ取ったのか、ルイズはもう何も言わなかった。 扉が開いて、教師が入ってきた。 紫色のローブに身を包み、帽子をかぶった中年の女性だ。ふっくらとしていて、優しい雰囲気を漂わせている。 「あの人も魔法使いなのかい?」 「当たり前でしょ」 呆れたようにルイズは言う。 花京院は教師に視線を向けたまま、密かにスタンドを出してみた。 彼のスタンド、『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』を床の下で移動させ、教室の中央の空間に出現させる。 もしも、スタンド使いならば何らかの反応があるはず。 そう思ってのことだったが、教室にいる生徒はぴくりとも動かなかった。どうやら本当にスタンドが見えていないらしい。 スタンド使いはいない。そう考えてもよさそうだ。 花京院は何食わぬ顔でスタンドを回収した。 何も気付かなかった教師はまん丸の瞳で教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 シュヴルーズはルイズの隣に座る花京院を見て、目を大きくした。 「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 とぼけたシュヴルーズの声に、教室に笑いが巻き起こった。 ルイズはうつむいている。 笑い声に満ちた教室で、誰かの声が響いた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 その時、ルイズは立ち上がった。 長い、ブロンドの髪を揺らして、鈴の音のような澄んだ声で怒鳴る。 「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが出て来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」 ルイズは声の主をにらみつけると、シュヴルーズに視線を移した。 「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱したわ」 「かぜっぴきだと? 俺は風上のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」 「あんたのガラガラ声は、まるで風邪でも引いてるみたいなのよ!」 マリコルヌは立ち上がり、ルイズを睨みつける。 教壇に立ったシュヴルーズは首を振って、小ぶりな杖を振った。 立ち上がった二人は糸の切れた人形のように、すとんと席に落ちた。 「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」 いさめるようなシュヴルーズの言葉に、ルイズは申し訳無さそうにうなだれる。 いつもの生意気な態度が嘘のような変わりようだった。 「お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけません。わかりましたか? 「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」 くすくすと教室から笑いがもれる。 シュヴルーズは厳しい顔で教室を見回し、杖を振った。 忍び笑いしていた生徒たちの口に、どこからか現れた赤土の粘土が張り付く。 「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」 教室は静かになった。 こほんと咳払いをすると、 「それでは授業を始めますよ」 そう前置きをして、シュヴルーズは説明し始めた。 魔法に興味のあった花京院は熱心に授業を聞いた。 わからないところはルイズに聞きながら、魔法についての知識を吸収していく。 魔法には『火』『水』『土』『風』という四つの基本的な属性がある。 その他に、失われた系統魔法の『虚無』があるが、今は使えるものがいない。 属性を組み合わせることによって、より強力な魔法が使える。 組み合わせられる属性の数によってメイジのレベルが決まるようだ。 そこまで聞いたところで、シュヴルーズの説明は終わった。 「それでは、実際にやってみてもらいましょう」 誰に当てようか生徒たちの顔を順々に眺めていたシュヴルーズはルイズと目があった。 シュヴルーズは柔らかい笑みを浮かべた。 「ミス・ヴァリエール。あなたにやってもらいましょうか」 生徒の視線がルイズに集まる。そのどれもが恐怖と心配の入り混じっていた。 いつまでも立ち上がらないルイズを花京院は不思議に思った。 「行ってきたらいいじゃないか。ご指名だろう?」 花京院も促すが、ルイズは困ったようにもじもじするだけだ。 シュヴルーズは再度呼びかけた。 「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか?」 「先生」 おずおずと手を上げたのはキュルケだった。 「なんです? ミス・ツェルプトー」 「やめといた方がいいと思いますけど……」 「どうしてですか?」 「危険です」 キュルケは、きっぱりと言った。 その言葉に、教室のほとんど全員が頷く。 ルイズのこめかみがぴくりと震えるのを花京院は見た。 「危険? どうしてですか?」 「先生はルイズを教えるの初めてですよね?」 「ええ。でも、彼女が努力家だということは聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。やってごらんなさい。失敗を恐れていては、何もできませんよ?」 「ルイズ。やめて」 キュルケが蒼白な顔で言った。 しかし、ルイズは立ち上がった。 「やります」 緊張した顔で、ルイズは教室の前へと歩いていった。 花京院はその様子を後ろから眺める。 「そう緊張しなくても大丈夫ですよ。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」 ルイズの隣でシュヴルーズは笑いかけた。 こくりと、小さな頭が上下に動く。 机の上に乗った小石を睨みつけ、ルイズは呪文を唱え始める。 その様子はいかにも魔法使いらしくて、花京院は少し感心した。 ルイズは呪文を唱え終えると、杖を振り下ろした。 ――その瞬間、机ごと小石は爆発した。 爆風をもろに受けたルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられた。 机の破片があちこちに飛んでいき、窓ガラスを割り、何人かの生徒に当たる。 爆発に驚いた使い魔たちが暴れだす。キュルケのサラマンダーが火を吐き、マンティコアが窓から飛び出していく。 外から大蛇が忍び込み、誰かのカラスを飲み込んだ。 教室の至るところから悲鳴が起こり、物の破壊音が響き渡る。 キュルケは立ち上がると、ルイズを指差した。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」 「俺のラッキーが! ラッキーが食われたー!」 花京院は呆然とその光景を眺めた。 黒板に叩きつけられたシュヴルーズは床に倒れたまま、ぴくぴくと痙攣している。 ルイズの顔はすすで真っ黒になり、制服もぼろぼろだった。 しかし、さすがというべきだろうか。ルイズは落ち着いていた。 顔についたすすをハンカチで拭い、淡々と感想をもらした。 「ちょっと失敗みたいね」 当然、他の生徒たちが反発した。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」 「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ!」 花京院はやっと、『ゼロのルイズ』の意味を悟った。 そして、これからの行く末に暗雲が立ち込めていくような、そんな気がした。 ゼロのルイズに、スタンド使いの自分。 どちらもこの世界では異端の存在のようだ。 そんな二人が、果たしてこのまま無事にいられるのだろうか。 花京院の不安は尽きることがなさそうだった。 To be continued→
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1156.html
「・・・ギ・・・ギアッチョ・・・?」 何がなんだか分からなかった。どうして?どうしてギアッチョが?私を 笑いに来たんじゃないの?それなら何故?私との違いを見せ付けるため? それともただ暴れたいだけ・・・? ルイズの頭には疑問符が次から次へと浮かんでいた。ギアッチョの真意が 分からない。それを確かめようと、ルイズは恐る恐るギアッチョの顔を 見上げようと―― グイッ!! 「!?」 ルイズが顔を上げようとした瞬間、ギアッチョの手によってルイズの頭は 下に押し戻された。 「・・・出たんだろ?ルイズ このガキとぶつかった時に・・・『鼻血』がよォォ そんなみっともねーツラをこいつらに披露してやるこたぁねーぜ」 いつの間にか3人の周りには人だかりが出来ていた。そしてルイズは ハッと思い出した。自分の顔が、涙でぐしゃぐしゃだったことを。 本気だ。ギアッチョは、本気で私の為に行動してくれている。 ルイズはようやく気付いた。 ――ギアッチョは・・・私の味方なんだ・・・ こんなことになっても・・・ ギアッチョは味方でいてくれるんだ・・・! 我知らず起こる肩の震えを、ルイズは止めることが出来なかった。彼女の 宝石のような瞳から、今度こそ堰を切って溢れてきた涙と同様に。 「それで?そこのゼロのルイズの代わりに、平民の使い魔が僕の相手を 務めるっていうのかい?」 ギーシュはニヤニヤと笑ってギアッチョを見ている。 「さっきハッキリそう言ったはずだが・・・聞えなかったってワケか? え?マンモーニ ミミズを狩るのに獅子を使うのはちと贅沢だが・・・ 今回だけの特別サービスってことにしてやるぜ」 最初はヘラヘラ笑いながら聞いていたギーシュだが、次第に自分が 完全に下にみられていることに気付くと烈火の如く怒りだした。 「だッ・・・!誰がママっ子だって!?平民の分際でッ!よくも貴族に そんな口が利けたもんだね!!一つだけ言っておくが・・・決闘で 死んだとしてもそれは合法だ!!手加減してやるつもりだったが・・・ 無事にゼロの元へ戻れると思わないことだねッ!!」 ギーシュは忘れていた。昨日、自分達を縮み上がらせた彼の殺気を。 そしてルイズの爆発を恐れて遠巻きにサモン・サーヴァントを見ていた 彼には、ギアッチョがルイズを殺しかけたあの場面はせいぜい 「混乱した平民がゼロのルイズを押し倒した」程度にしか見えなかった のである。 ギアッチョが色をなくしたままの眼でギーシュを睨む。 「ならこっちも一つ聞くがよォォ~~ てめー『覚悟』はしてるん だろうなァ~~?オレを殺すつもりで来るってことはよォォ 逆に殺される『覚悟』は出来てるっつーワケだよなァァァ」 しかしギーシュは鼻で笑って答える。 「フン!覚悟だって?そんなものする必要はないね 何故なら 僕が負けるなんてことは万が一にも有り得ないからだ」 ギーシュの大見得にギャラリーがどっと笑う。 「そうだそうだ!」 「平民相手に遠慮するこたねーぞギーシュ!」 「身分の差ってものを教育してやれ!」 こいつらは――、とギアッチョは考えた。 ――こいつらの殆どは・・・昨日のことなんか見てもねぇし 覚えてもいねぇようだなァ~~・・・ 「ま、どっちだろーと関係ねーがな」 相手が化け物であろうと歩き始めたばかりの赤ん坊であろうと、 ギアッチョの「覚悟」に変わりはない。「覚悟」とは相手に合わせて コロコロ変えるものではない!ギアッチョはそう理解していた。 「今から5分後・・・ヴェストリの広場で待っている 言うまでもない 事だが――君が逃げれば君もゼロのルイズ同様直ちにこの 学院から退去してもらうよ せいぜい震えながらやってくるんだね」 ギーシュはそう言い放つと、ニヤニヤ笑いのまま去っていった。 ギーシュが去ると、3人を取り巻いていたギャラリーもギーシュと 一緒に広場へ向かっていった。 「ルイズ もういいぜ 頭を上げな」 ギアッチョが声をかけると、ルイズはごしごしと顔をこすって 立ち上がった。 「・・・ギアッチョ・・・」 ギアッチョは首をコキコキと鳴らしながら尋ねる。 「ルイズよォォ~ なんとかの広場ってのはどっちだ?」 「え・・・ あ、あっちよ ・・・あの、ギアッチョ・・・・・私」 ルイズが何か言おうとするが、 「話は後回しだ 5分後だからな・・・別にあいつをいくら待たせよーが 心は痛まねぇが 逃げたと思われるのも癪だからよォォ」 ギアッチョはそれを制して歩き出す。――逆の方向へと。 「・・・ギアッチョ?広場はあっち・・・」 「ルイズ おめーは先に行ってな オレはよォォ~ ちょっと 用事があるもんでな・・・ 待ってろ すぐにそっちに行く」 そうルイズに告げて、ギアッチョはどこかへ歩いていく。 「分かった ・・・待ってる」 もはやルイズは、万が一にもギアッチョの逃亡を疑わなかった。 私の為に戦ってくれるギアッチョの為に、自分に出来ることを しよう。ルイズはそう決意した。ギアッチョが戻ってくるまで、 逃げず、怯えず、うろたえず、ヴェストリの広場で待っていよう。 ルイズはスッと顔を上げると、広場に向かって駆け出した。 目的地に向かって歩くギアッチョの後ろから、「待ちなさい!」 という声がかかった。 「わりーが・・・後にしな 今は少々忙しいんでな」 しかし声の主はかまわず叫ぶ。 「あなたルイズをどうする気ッ!?」 その言葉を聞いて、ギアッチョはピタリと足を止めた。 「どうするつもりたぁ失礼なことを言うじゃあねーか ええ?おい」 肩越しに後ろを振り返ると、そこにいたのはあの赤髪の少女、 キュルケだった。 キュルケはさっきの騒ぎを最初から見ていた。二人の争いが いい加減ヤバくなってきたら仲裁に入るつもりだったのだが、 彼女の先を越して二人を仲裁したのは――更に酷いことになったが―― 意外にもギアッチョだったわけである。ルイズ共々殺されかけたキュルケが それを不審に思わぬはずはなかった。 「召喚されてそうそうあの子を殺しかけたと思ったら今度は 手のひら返したように責任を取るですって?」 キュルケは信じられないという風に首を振ると、キッとギアッチョを ねめつける。 「答えなさいッ!あなたは何者!?そしてルイズに何をする気!?」 ギアッチョはしばらくキュルケを見ていたが、やがて口を開いた。 「確か・・・てめーの家とルイズの家は・・・宿敵同士だと聞いたが」 「・・・あなた学校で習わなかったの?質問を質問で返すんじゃあ ないわッ!」 キュルケの眼は「マジ」だった。ギアッチョは小さく舌打ちをすると、 「オレが何者なのか・・・話してやってもいいが それには少々時間が 足りねーー 二つ目の質問にだけ答えてやる」 そう言うとギアッチョはキュルケに向き直る。 「答えは『別に何も』、だ ただし・・・これだけは言っておくぜ 命の恩人が侮辱されてるのを・・・黙って見ているバカはいねえ!」 「――!!」 昨日ルイズを殺そうとした男が、そして今日人目もはばからず 食堂で大暴れした男が、果たして本気で言っているのだろうか? キュルケには判断が出来なかった。ただ―― 「・・・今はその言葉で納得しておいてあげるわ」 もう少し様子を見てもいいか、とキュルケは思った。 「・・・あ、待って!」 再び背を向けて去ろうとするギアッチョに、キュルケは何かを 思い出したように声をかけた。ギアッチョは振り向かないが、 話を聞く意思だけはあるようだ。 「・・・用心なさい ギーシュはあんなのでもうちの学年じゃ かなりの上位に入る腕前よ」 ギアッチョがやられてしまえば、ルイズの人生はおしまいだ。 魔法が使えないまま使い魔を殺されて退学だなんて、ルイズで なくとも自殺を考えるほど最低最悪の事態である。しかし キュルケの忠告を、ギアッチョは鼻で笑って受け流す。 「フン・・・あのマンモーニが強かろーが弱かろーがよォォー オレには関係のないことだぜ」 「あなたフザけてるの!?ギーシュはナメてかかって勝てる 相手じゃ・・・」 「『覚悟』はッ!!」 ギアッチョはいきなり声を張り上げる。その大声にキュルケは 思わず身構えた。 「・・・オレの『覚悟』は・・・相手を選んだりはしねえーーッ! 相手がドラゴンだろーがウジ虫だろーがよォォ~~ オレは同じ 『覚悟』を持って戦いに挑むッ!!」 それだけ言うと、ギアッチョは圧倒されているキュルケを置いて 歩いていった。 「なんなの・・・あいつ・・・ 『覚悟』・・・・・・?」 「大丈夫」 突然聞えた声にキュルケが隣を見ると、いつの間に来ていたのか そこには透き通るような青い髪をした少女、タバサがいた。 「大丈夫・・・って?」 「昨日の戦闘」 タバサは短く言葉を繋ぐ。 「まだまだ力を隠してた」 「嘘でしょ・・・」 タバサの言葉は信頼出来る。キュルケは今更ながらギアッチョに 立ち向かった昨日の自分を思い出し、ゾクリと身震いした。 当たりをつけて覗いてみた食堂で、ギアッチョは目当ての 人物――シエスタを発見した。 「・・・あ、ギアッチョさん!ミス・ヴァリエールはご無事でしたか?」 メイド服の少女は食器を片付けながらギアッチョに声をかける。 デザートの配膳中にギーシュと言い争うルイズを発見し、いち早く ギアッチョに知らせたのはこのシエスタだった。 「ああ なーんにも問題はねえぜ」 「そうでしたか」 よかった、と答えて食器の片付けを続けるシエスタに、 「それはともかくよォォ~~ 一つ報告することがあってな」 ギアッチョは本題を切り出した。 「報告・・・ですか?」 「ああ まぁ大した話じゃないんだがよォォ~~~ 決闘することになった」 「・・・決闘・・・?」 ギアッチョの言った決闘の意味を量り切れないらしく、シエスタは オウム返しに同じ言葉を口にする。 「ええと・・・決闘って 誰と・・・誰がですか?」 「ああ? 誰ってオレに決まってるじゃあねーか 相手はルイズに 絡んでた・・・あー・・・そうだ、ギーシュとかいうマンモーニだ」 ・・・・・・。 どこかで見たような一瞬の沈黙の後、 ガッシャアアアアアアン!! シエスタの手から滑り落ちた3枚の皿が音を立てて砕けた。 「な、ななな何をやってるんですかギアッチョさんッ!! き、貴族と決闘だなんて 殺されてしまいます!!」 状況を理解した途端パニックに陥るシエスタをギアッチョは 片手で制して、 「落ち着けよシエスタよォォォ~~~ 死ぬのはギーシュの野郎 だぜ・・・それは決定してる オレが言いてーのはその話じゃあ ねーんだ」 口では軽く言っているが・・・ギアッチョは決して決闘を甘く見て いるわけではない。経過がどうなろうと、必ず「ギーシュを殺す」 という結果を出す。ギアッチョはそう「覚悟」しているのだ。 「シエスタ 今からよォーー 厨房の奴らを全員連れて・・・なんだ、 ヴ・・・ヴェ・・・ヴェラ・・・違うな、ヴォ・・・ヴァ・・・ヴァンダム・・・」 「・・・ヴェストリの・・・広場ですか・・・?」 「多分そいつだ そこまで来ちゃあくれねーか?咎められるよーなら 責任は全部オレが持つ」 シエスタはこの人なりの冗談なのだろうかと思った。しかしギアッチョの 眼は、悲しいほどに本気であった。 「決闘にゃあオレが勝つ・・・そいつは間違いねーんだが 別の意味で お前らを失望させちまうかも知れねえ・・・ しかしオレとお前らが同じ『平民』だと言うのならよォ・・・ こいつを 見せねーわけにゃあいかねーんだ」 さっきと同様、シエスタはギアッチョの言葉の意味を量りかねて いるようだった。しかしギアッチョはそんなシエスタの心中を忖度せず、 「頼んだぜ」とだけ言って食堂を出て行く。シエスタは一瞬逡巡したが、 「ま、待ってください!!」 やはりここでギアッチョを見送るのは、自分が殺すも同然だと思った。 「今日はよく後ろから呼び止められる日だなァァ~~ え?おい 決闘するなってんなら聞かねぇぜ 何度も言うがよォォーー オレの勝利、それだけは決定してるんだ」 「ギアッチョ・・・さん・・・」 そう言い放つギアッチョに妙なスゴ味を感じたシエスタは、それ以上 何も言うことが出来なくなった。 「おっと・・・もう決闘が始まる オレは先に行くぜ」 言うがはやいか、今にも泣き出しそうな顔のシエスタに目もくれず、 ギアッチョは食堂を飛び出して行ってしまった。 ルイズはギーシュと対峙していた。 「フフフ・・・あと大体30秒だが・・・君の使い魔はどこにいるのかな? ゼロのルイズ君」 ギーシュが心底哀れそうな声で――勿論演技だが――ルイズに語りかける。 「君の使い魔・・・随分とキレるのが早いようだが 逃げ足も速いようだねぇ プッ・・・ハハハハハ」 ギーシュはニヤニヤと笑う。それを聞いたギャラリー達もドッと笑っている。 「ギアッチョは来るわ」 ルイズはギーシュの眼を睨んだまま、短くそれだけを返す。例えどれだけ 笑われようが、どれだけなじられようが――ギアッチョは自分に待っていろと 言ったのだ。ならば自分は彼を信じて待つだけだ。 ――そうよ・・・、これが今の私があいつに返せる唯一の敬意 ならばどんな 侮辱だろうと罵倒だろうと・・・全て受け切ってみせるわッ! ルイズは知らず知らずのうちに『覚悟』していた。ギアッチョが来るまで、何が あろうと崩れないという『覚悟』を! ギーシュはなおも続ける。 「1分経過だ!おいおいゼロのルイズ!!いつまで僕らを待たせるつもりだい? 僕らだって暇じゃあないんだ!ほらほら、怖がらないで杖を取ってかかってきなよ! あの平民はもう森の中まで逃げてるかもなあ!ひょっとしたらもう森をうろつく 魔物に食われてしまっているかも!」 ギーシュの発言にギャラリーはまた爆笑する。キュルケは歯噛みしながらそれを 見ていたが、ルイズの眼に何の迷いも浮かんでいないのを知って飛び出したい 気持ちを抑えた。 ――あれが、あの平民が言っていた『覚悟』というやつなの・・・? キュルケのそんな疑問に答えるかのように、 「ギアッチョは・・・来るわ・・・!」 ルイズはただそれだけを繰り返した。そして・・・、 「やれやれ・・・ちょっとしたロスがあってよォォ~~~ ちぃとばかし遅れちまった みてーだなァァァ」 ざわつくギャラリーを掻き分けて、ギアッチョが姿を現した。 一秒たりともギーシュから眼をそむけなかったルイズは、そこでようやく全身の 力を抜いた。 「どーやら・・・頑張ってたみてーじゃあねーか え?ルイズ 後はオレに任せて そこで見てな」 またも意外なギアッチョのねぎらいである。 「お、遅いわよバカッ!」 などと照れ隠しに文句を言いながら、ルイズは非常な達成感と安心感を感じていた。 するとそこへ、 「ミス・ヴァリエール!!」 シエスタを先頭にマルトー達厨房の料理人や給仕達が駆けつけてきた。 「えーと・・・あなたは確かシエスタ・・・ こんなに大勢引き連れてどうしてここに?」 「分かりません・・・さっきギアッチョさんが食堂にやってきて 決闘をするから 見に来て欲しいと・・・」 「そう・・・ ・・・まさかあいつ・・・」 ルイズは理解した。ギアッチョはシエスタやマルトー達と対等に向き合う為に、敢えて スタンドを見せることを決意したのだ。メイジだと――貴族だと思われる危険を冒して。 今、ギアッチョはそれほどまでに仲間というものに惹かれていた。 「ようやく来たようだねぇ面白頭君 てっきりもうアルビオンあたりまで逃げ出してる んじゃあないかと思っていたよ」 ギーシュは心底愉快そうに言った。アルビオンとやらがどこにあるかは勿論知らな かったが、その挑発のあまりの陳腐さにギアッチョはキレる気にもならなかった。 「逃げる?今逃げるっつったかァ~てめー?こいつは傑作だな!ええ?おい!」 わざわざギーシュがルイズに使った言葉でギアッチョは罵倒を返す。 「このギアッチョがてめー如きに逃げる必要なんざ全宇宙を探したって見つかり そうにねーもんだがよォォォーーー 見つかるのはせいぜいてめー相手の決闘を 『やめてやる』理由ぐれーだぜ ええ?オイッ!」 ギャラリーから失笑が漏れた。ギアッチョはそのまま続けてギーシュを挑発する。 「今ここでよォォ~~~ 土下座をしてルイズに謝ってから学院を出て行きな! そうすりゃあ『命までは』とらないでおいてやるぜマンモーニ!!ええ!? やってみろよおい!!ああ!?」 ギーシュがルイズに言ったことをちょっとグレードアップさせただけのその挑発に、 ギーシュの怒りはいともたやすく爆発してしまった。 「きき、貴様ぁああーーーーッ!!!もう命乞いをしたって許さないぞッ!! 今ッ!!決闘を開始するッ!!!泣いて詫びろ平民がァーーーーーッ!!!」 「ハッ!てめーが言ったことを言い返されただけで面白いよーにキレてくれる じゃあねーかマンモーニッ!!少なくともてめーの薄っぺらくて小汚ェ精神 よりゃあよォォーー このルイズのほうがよっぽど上等な魂を持ってるぜッ!!」 ギーシュが懐から乱暴に造花の薔薇を取り出すと同時に、ギアッチョの双眸が スッと色をなくし――2人の決闘が始まった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/424.html
彼は1度死んだ。 殺されるわけがない、そう思っていた。 自分を殺せる奴はいない、その気持ちが油断を生じさせたのか 実にあっけなく、彼は死んだ・・・・ 目を開くと青空が広がっていた。 「さすがゼロのルイズ!」「平民を呼び出すなんて!」「ありえないだろ常識的に考えて」 なんだ・・・俺は死んだんじゃないのか? 「ち、ちょっと失敗しただけよ!」 ここはどこだ・・・?こいつらは・・・? 「ミスタ・コルベール!儀式を「だめです」 おい、そこの女!ここはどこだ! 「なによ!あんたが勝手に出てきたんでしょ! ほんとにもぅ・・・あんた、名前は?」 何だこいつは?人にものを頼む態度か? まぁいい・・・俺の名は、メローネだ