約 4,199,987 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8791.html
前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か 悩みというのは多かれ少なかれ誰もが持っているものだ。 このトリステイン魔法学院にも多くいる。 一人目は憂鬱げにため息をついたまま、闇夜にたたずむ褐色肌の少女。 雲の切れ目から、朧げな月明かりが彼女のいる広場を照らす。 光に映し出された少女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 普段の彼女なら、この時間は言い寄ってくる男と一時の微熱を楽しむ頃だ。 それがキュルケの日課となっていたが、今宵は一人きりでいたかった。 今彼女がいるのは、ほんの半日前にルイズとギーシュの決闘が行われた広場。 地べたに座るのは躊躇われたので、練金で作られたベンチに座っている。 自身の生活に当たり前だと思われていた魔法。 彼女の悩みは、その魔法が使えない隣室の少女について。 『貴女も私が家柄だけの『ゼロ』だって言いたい訳?』 普段のルイズからは想像もできない冷淡な一言。 それが何時までもキュルケの心に突き刺さっていた。 決闘騒ぎになったのは、確かにギーシュの失言が原因だろう。 だが、あそこまで彼女を追い込んだ一人が自分だとキュルケは考えていた。 キュルケはルイズに悪い感情を抱いていない。 むしろルイズは認めていなくても友人のように思っていた。 しかし、こちらが一方的に思うだけでは何の意味もないのだ。 ルイズに対して、遊び半分で彼女の嫌う『ゼロ』の呼び名を使った事は何度もある。 誰よりも貴族らしくあろうとする彼女。 卑語くらいでは傷つかないだろうという身勝手な思い込み。 こちらは冗談のつもりでも、彼女の心を傷つけていたのだと気付かされた。 彼女との溝を深さを埋める方法は簡単である、謝ってしまえばいい。 できない理由は二つ。 キュルケ自身の性格と、プライド。 素直にごめんなさいと言えるほど、可愛い女ではないと自覚していた。 プライドに関しては頭を下げるのに抵抗がある訳ではない。 こちらが真剣に詫びれば、許してくれるだろう。 だが、傷つけてしまったお詫びを口だけの謝罪で済ませる。 そんな事はキュルケが自分を許せそうにない。 彼女にお詫びをしつつ、またいつもの関係に戻れる方法。 答えのでない難題に頭を悩ませていると、頬に冷たい瓶が当たった。 小さく驚きの声をあげて振り返る。 コップとワイン瓶を持ったキュルケとは対照的な体格の青髪の少女──タバサがいた。 「飲む?」 感情を滅多に出さないタバサ。 キュルケには長い付き合いから心配してくれているのだと分かった。 「うん、ありがとう」 親友の気遣いにお礼を言うキュルケ。 この素直さをルイズに少しでも向けていれば、事態は複雑になっていない。 タバサも悩みを抱えている人物の一人。 彼女の悩みは吸血鬼の退治と言う困難な依頼。 依頼を断れず、誰にも話せない理由がある故に助けを求める事もできない。 詳細は不明だが、従姉妹がわざと情報を寄越さないのだろうと推測する。 吸血鬼というのは熟達したメイジにとっても最悪の敵だ。 先住魔法を使い、普段は人と区別もできない為に妖魔と呼ばれ恐れられている。 タバサは目の前の親友が悩む主因、『ゼロ』と呼ばれるルイズが妖魔を呼び出した事を思い出す。 もし彼女の協力が得られれば──と考えるも、使い魔でもあるために彼女はルイズに付きっきりだ。 協力を得ようとすれば、ルイズにも説明する必要が出てくる。 自分の真意に、誰かを巻き込むつもりはなかった。 親友であるキュルケにでさえ、話していないのだから。 タバサは親友に気づかれないように心中でため息をついた。 ──同じ頃、ルイズも自室でため息をついていた。 アセルスと並ぶのに恥じない貴族になってみせよう。 意気込んだルイズだったが、決闘という規則を破った為に罰が下される。 『明日の朝、学院長の元へ来るように』 秘書から言付けを預かっており、最低でも自室謹慎は免れないだろう。 魔法を使おうとすれば、爆発が起きる。 爆発を行使する抵抗感こそはなくなったが、室内で練習をする訳にはいかない。 もとより座学に関してはトップになるほど勤勉な彼女である。 教本の類は読み尽くしていたし、図書館は本を取るのにフライが必須だ。 フライがなければ利用できない図書館は、欠陥建築ではないだろうか? 平民だけで清掃を行えないので、わざわざ司書のメイジに頼まねばならない。 制服がスカートなのも女学生は困る。 上段の高さまで飛ぶと、下からはスカートの中が丸見えになる。 以前、ツェルプストーの友人であるタバサにその事を教えた時はお互い気まずかった。 話が逸れたので元に戻す。 このままだと謹慎期間中、無為に時間を過ごさねばならなくなる。 充実した気力が空回りするのは耐えられない。 明日は虚無の曜日、謹慎期間を受けるとしたら明後日から。 魔法に関する参考書を外で買い溜めして、謹慎期間中に読む事にしよう。 アセルスの服も替えがないままだ。 いずれは城下町へ買いに行く必要があった。 朝、アセルスが戻ってきたなら出かける事を伝えよう。 明日の予定は決めた。 次に今日やるべき事を思い起こす。 決闘での感覚を忘れないうちに復習しておきたかった。 爆発を思い通りに制御する。 アセルスの手助けなしでも、出来るようにならなければいけない。 使い魔に頼り続けるようでは、主人とは言えないのだから。 決意を胸に日課となっている魔法の練習を行うべく、外へ向かった。 ──ルイズが魔法の練習をしている頃、彼女の使い魔について悩む者もいた。 学院長のオールド・オスマンである。 水パイプを取り出そうとして……念力で取り上げられた。 「一服くらい見逃してくれんかのう、ミス・ロングビル」 「何度目だと思ってるんですか、いくら何でも吸いすぎです」 オールド・オスマンの秘書──ミス・ロングビルに咎められる。 「そうは言ってものう、水パイプでも吸わんとやってられんよ」 「例の使い魔の事ですか?」 秘書である以上、起きたトラブルについては把握している。 使い魔の主であるヴァリエール家の三女と、元帥の四男との決闘について。 教師が匙を投げたルイズの爆発を、使い魔が制御したという話も確認している。 事後処理も面倒になりそうだが、もっと気にかかる事をオールド・オスマンに尋ねた。 「強い力を持っていると噂くらいは聞いてますが、どれほどなのです?」 ミス・ロングビルの質問は自分の目的による打算からだ。 「さあ?」 打算はオールド・オスマンの呆気ない一言で打ち砕かれた。 ロングビルが思わず転びそうになるものの、慌てて姿勢を戻す。 「さあ?ってなんですか」 「そう言われてものう、お主とて自分の考えの及ばぬものを評価はできんじゃろう?」 最もな意見だが、答えが曖昧すぎて簡単には納得できない。 「基準を持って比較するとか、例えば……エルフ」 「エルフ程度じゃ間違いなく太刀打ちできんじゃろ」 あっけらかんとした発言に衝撃を受ける。 エルフといえば、一流のメイジ十倍を用意して五分になる戦力の目安。 オールド・オスマンはエルフ『程度』と言い、全く太刀打ちできないと評した。 「なるほど、学院長のため息の理由がわかりました」 納得するとロングビルは立ち上がり、何かを蹴り飛ばす。 放物線を描いて宙を舞うのは、オールド・オスマンの使い魔である白い鼠。 「……ですが、それとこれとは話が別です。何か言い訳はありますか?」 彼女は座っていた椅子を右手で持ち上げる。 金属製の椅子は相当な重量なのだが、羽毛のように軽々と扱っていた。 「軽い気晴らしのつもりじゃった、反省はしてない」 言葉通り微塵も反省していない姿に、ミス・ロングビルは椅子を振り下ろした。 椅子を何度も振り下ろしているミス・ロングビルにも悩みはある。 セクハラを働くオールド・オスマンもだが、彼女の正体は貴族から宝を狙う盗賊『土くれのフーケ』。 この学院に秘書として働いているのは宝物庫を狙ったためだ。 彼女の誤算は二つ。 宝物庫の壁が想像より強固だった事。 生徒の使い魔に強力な妖魔が呼び出されてしまった事。 オールド・オスマン曰く、エルフが相手にならない程だ。 二つの問題を解決する手段を考えなければならない。 (エルフといい妖魔といい、私の人生はなんで良く亜人と関わるのかねえ?) 胸中でハーフエルフの妹を思い出して、郷愁にかられる。 セクハラを働いたオールド・オスマンへの暴行は止めていない。 教師達の問題になっていた妖魔、アセルスにも悩みはあった。 自身の『食事』について。 最初は主としてルイズが血を差し出そうとしたが、アセルスは拒んだ。 理由と問うルイズに血を吸ってしまえば、虜化妖力でアセルスの従属になってしまうと教えた。 渋々納得してくれたが、ルイズが不貞腐れたのも悩みの一つ。 虜化に関してはアセルスは嘘をついている。 肌から直に血を飲まねば虜化妖力は働かないからだ。 かつてジーナはワインに自分の血を混ぜて、アセルスの吸血衝動を抑えた。 ルイズの血を吸うのは、彼女が自分の隣に立つほど成長してからだと決めている。 いくら抑えても、吸血衝動がなくなる訳ではない。 人間を相手に吸血すれば、契約を結ぶルイズの立場が悪化する。 やむを得ないので妖魔の気配を探し当て、そちらで飢えを満たそうとしていた。 従属になるようなら吸血の問題は解決する、敵対されたしてもしばらくの間は空腹を満たせる。 長距離の空間移動を苦手にするアセルスは、細かく距離を刻む。 それでもハルケギニアで最速とされる風竜より早くたどり着けるのだが。 一時間ほど移動して、妖魔の気配がある村が見えてきた。 悩みというのは多かれ少なかれ誰もが持っているものだ。 それぞれの悩みがお互いに関わるとは、この時点で誰も思っていない。 事態はアセルスから動く。 アセルスが村に着いたのは、子夜過ぎ。 相手の妖魔も、アセルスの存在に気付いた。 妖魔の名前はエルザ。 外見こそ愛らしい幼子の姿だが、並の人間より遙かに長い時を生きている吸血鬼。 現在は孤児の振りをして、村の人間達を狡猾に狩っている。 同じ妖魔でも相手の前には、自分など塵に等しいと気づかされる力量。 例えるなら、同じ四足動物でも兎と獅子ほど差がある。 無礼を働かないよう謁見を試みたのだが、彼女はこの選択が間違いだと気づく。 近づいてきた事を察した時点で、逃げるべきだった。 エルザにそう後悔させるほどの威圧、なのに彼女から目を離せない魅了。 「お初に目にかかります高貴なお方。 私はエルザと申します、こんな辺境の村に何の御用でしょう?」 表向きだけでも平静を装えたのは、上出来と自賛したくなる。 「恐れなくていい、何も君を捕って食おうって訳じゃない」 アセルスは警戒させないように告げる。 エルザからしてみれば、胸中を見透かされたようで却って緊張を深めた。 「申し訳ありません、何分弱輩者ですので。 高貴な妖魔と接するのは初めてでございます」 アセルスは見定めるように彼女を眺める。 器量は幼いが悪くない、最低限の礼節もわきまえている。 見窄らしい服をまとっているのは、おそらく孤児を装う為か。 身嗜みを整えれば、それなりに栄える姿になるだろう。 容姿の次に、アセルスは彼女の性質を見極めようとする。 「君はこの村の者を『食事』に暮らしているかい?」 「はい。辺鄙な場所ですが、私のような吸血鬼には都合がよいものですから」 アセルスに妖魔が人間を食料として扱う事への嫌悪感はない。 何も知らない少女の頃ならいざ知らず、人間の負の面を見過ぎた。 「村の者に感づかれていないか?」 「吸血鬼の存在は知っておりますが、私が吸血鬼とは思っておりません。」 エルザはアセルスの真意がつかめずに、ただ村の現状を答える。 「馬鹿者」 短い叱責だったが、エルザは身を竦める。 「村人が吸血鬼の存在を知っているのは何故だ?」 アセルスの口調にほんの僅かな苛立ちが混ざる。 稚児の我侭を戒める程度の怒りだが、エルザを怯えさせるには十分過ぎた。 「村の者に死体を発見されたからです。 その後は騎士が二度派遣されましたが、どちらも返り討ちにしております」 エルザの答えを聞いて、アセルスは苛立ちをますます強める。 理由が分からないエルザはただ震えるしかなかった。 「何か……私が失礼を働いたでしょうか?」 恐る恐る尋ねるエルザを見て、アセルスは溜息をつく。 「いずれ正体が気付かれる」 アセルスは吸血鬼として露呈するのを、時間の問題だと思っている。 その懸念はエルザにもあったので、自らの計画を明かす。 「私の正体を隠すべく、スケープゴートも用意しております」 エルザがこの村で人間を狩る為の論理的手段を明かした。 村の離れに暮らす老婆。 老婆は一人では身体を起こす事すらままならない病人である。 その一人息子のアレクサンドル。 彼を自分の配下となる屍人鬼にしており、老婆を吸血鬼に仕立て上げる計画を告げた。 「茶番だ」 説明を受けたアセルスは一蹴する。 「は……?」 思わず生返事を返してしまうエルザ。 アセルスはエルザの根源にあるものを見抜いていた。 「村人に吸血鬼と思われている老婆が死んだ後はどうする?」 「この村も吸血鬼騒動で人が離れつつあります。村人の伝手で別の村へ……」 アセルスは手の平を向け、エルザにそれ以上は口を開かないよう促した。 「そこでも同じ手を使えば、必ず気付かれる」 繰り返しの作業はいつしか単調になり、必ず綻びが出るものだ。 人間と言うのは目敏い。 危機感を持っていない相手ならともかく、命に関わる以上必ず綻びを見つけるだろう。 「これ以上、人間に手をかけるな」 本性を明かさないエルザにわずらわしくなったアセルスは命令を投げかける。 エルザにもようやくアセルスの本旨が伝わった。 「なぜです!?私が人間を餌にする事と、人間が食べ物を口にする……は同じ……」 声を荒げたエルザの声が詰まる。 アセルスの鋭い目線が反論を許さなかった。 無論、アセルスは人間を食料にする事を責めているのではない。 「『食事』が欲しいだけなら、村人の死体を残す必要はないはずよ」 吸血鬼がいると村人が認識している原因はエルザが死体を残したからだ。 食事だけならば、死体を隠蔽すればいい。 この村には森も山岳地帯もあるのだから姿を消しても、事故にあったと言い訳がつく。 「わざわざ吸血鬼騒ぎを起こして人間を襲ったのは何故?」 「それは……血がより上質になるからです」 エルザの答えに嘘偽りは無い。 彼女にとって、人間の血は恐怖を与えた方が美味に感じられるのだ。 「そうだ、君はただ快楽の為に人間を殺しただけ。 知らず知らず、自らを追い詰めていると気付かずに」 アセルスが見抜いたエルザの本質。 一般的な妖魔にありがちな快楽主義者。 長い刻を生きる妖魔にとって、快楽と言うものは必要不可欠なものである。 ある妖魔は病気を好んで無免許医と言う仕事を行う。 また別の妖魔は人間に興味を持ち、人間の所属する組織で働く。 自らの研究に没頭する者もいる。 ただこう言った例は大抵妖魔の枠から外れた者、人間で言うなら変人の類だ。 共通しているのはどのように己の退屈を潰すか。 人並み以上の力を持った妖魔は、エルザのように安易な殺傷行為へ走る場合が多い。 必要も無いのに正体を知られる危険性を増やし、己の快楽を満たす。 だからこそ、アセルスはエルザを従えやすいと判断した。 自分との力の差を前に、怯えるだけの吸血鬼に優しく手を差し伸べる。 「私はね、君のことを心配しているんだ」 心にもない一言。 しかし、エルザにとって極上の蜂蜜酒のように甘く蕩けそうな台詞。 「このまま破滅を待つか、私に仕えるかは君が選ぶといい」 存在だけで女性を虜にする妖艶さを持つアセルス。 魅了に抗うだけの強さはエルザにない。 ただ炎の灯りに誘われた虫のように揺ら揺らとアセルスの元へ吸い込まれていく。 「いい子だ」 エルザの頭を子供をあやす様に撫でた。 二人の体格差もあって、傍から見ていると姉妹のようにも見える。 アセルスは屈むと、月光に照らされて光る首筋に口を近づけ牙を向けた。 「あっ……!」 嬌声が漏れる。 エルザが感じてきた中でも、比類のしようが無い悦楽。 どのような人間の血を奪っても、これほどの快感は決して味わえないだろう。 しばらくすると、『食事』に満足したアセルスが牙を放す。 「エルザ、君は私のものだ。いいね?」 「……はい」 未だ余韻から抜けられないエルザの姿に満足する。 「まず君に、村でやってもらうことがある」 アセルスは最初の命令をエルザに下した。 ──この日、村を騒がしていた吸血鬼は討伐される。 深夜、エルザの悲鳴と共に村人達は飛び起きた。 村人が武器を手にエルザを探すと、身体から血を流したエルザが村の大男アレクサンドルに担がれていた。 武器を手にした若者達は、エルザを助けようとする。 アレクサンドルは自宅の小屋に戻ると、扉を固く閉めた。 恐慌に駆られた誰かが松明を投げ、家の周りに置かれた油瓶に引火。 家は炎に包まれ、焼け焦げた遺体が大小二つ。 小さい方の遺体は身体が切断されてしまっていた。 死体の大きさからアレクサンドルとエルザと判断する。 老婆の死体は見つかっていないものの、村人達は安堵していた。 吸血鬼の死体は、一般的に溶けて消えてしまうと伝承されている。 村で吸血鬼が現れる事は二度となかった為、村人達は歓喜に沸いた。 娘同然の存在、エルザを失った村長以外は…… 以上がサビエラ村における、吸血鬼騒動の顛末とされていた。 当然、エルザは殺されてなどいない。 小さい死体の正体は、アレクサンドルの母である老婆。 エルザは自分と同じ大きさになるよう、死体の寸詰めを行った。 余った部分はグールに山へ捨てさせ、死体を事前に焼き尽くしておく。 最後に小屋の藁や油を燃えやすい場所へ配置し、自作自演による芝居を始めた。 松明は村人が投げたものではなく、エルザが念力で放ったのだ。 村は警戒の為に、松明をずっと灯していた。 屋敷が炎に包まれたのを崖の上から確認し、村を後にする。 小屋はいとも容易く燃え落ち、死体の検分も不可能な状態。 仮に替え玉に気付かれたとしても、もう村に吸血鬼はいない。 「君には侍女として仕えてもらおう、いいね?」 「はい、ご主人様」 そこに人間に恐れられた吸血鬼の姿はない。 いるのはアセルスに血を奪われる陶酔に囚われた一人の少女のみ。 返事に満足している彼女は知らない。 自分が忌み嫌った魅惑の君と同じ手段でエルザを従えている事。 彼女を連れ帰ることで、拗ねていた主の機嫌が更に損なわれると…… 前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1326.html
h15-1 京照 h15-2 咲・淡・玄・白望・小蒔 h15-3 京照 h15-4 清澄 h15-5 京淡 h15-6 阿知賀 h15-7 風越 h15-8 プロ h15-9 京久 h15-10 京憧 h15-11 京まこ h15-12 宮守 h15-13 京えり h15-14 咏・良子 h15-15 京春 h15-16 京春 h15-17 春・良子 h15-18 京春 h15-19 京咲 h15-20 咏・衣 h15-21 京塞 h15-22 春・由暉子 h15-23 京由暉 h15-24 京洋 h15-25 京理 h15-26 京宥 h15-27 京えり h15-28 胡桃・豊音 h15-29 愛宕 h15-30 京洋(15-24続き) h15-31 京春 h15-32 京泉 h15-33 京塞 h15-34 京胡 h15-35 京良 h15-36 京咲 h15-37 霞・和・竜華・白望・宥 h15-38 京健 h15-39 寮長~清澄~ h15-40 京浩 h15-41 京咏 h15-42 穏乃・玄 h15-43 京はや h15-44 優希・豊音・菫・穏乃・初美・衣・モモ・洋榎・セーラ・胡桃 h15-45 京玄 h15-46 竜華・怜 h15-47 竜華・怜 h15-48 竜華・怜 h15-49 京洋 h15-50 誠子・穏乃 h15-51 寮長~鶴賀~ h15-52 京衣 h15-53 京咲 h15-54 セクハラされる~清澄~ h15-55 京久 h15-56 京健 h15-57 絹恵・霞・桃子・和・智紀・玄・宥 h15-58 京竜 h15-59 京理 h15-60 セクハラされる~風越~ h15-61 京怜 h15-62 寮長~龍門渕~ h15-63 優希・白望 h15-64 白糸台 h15-65 京はや h15-66 京咲 h15-67 京健 h15-68 寮長~永水~ h15-69 宮守 h15-70 京咏 h15-71 京和 h15-72 京憧 h15-73 京憩 h15-74 京怜 h15-75 京和 h15-76 京理 h15-77 寮長~白糸台~ h15-78 ぷちさき!~タコス~ h15-79 ぷちさき!~どらろー~ h15-80 京雅 h15-81 ぷちさき!~のどっち~ h15-82 ぷちさき!~まふらー~ h15-83 ぷちさき!~おっど~ h15-84 京煌 h15-85 ぷちさき!~はぎー~ h15-86 ぷちさき!~おさげ~ h15-87 ぷちさき!~わかめ~ h15-88 ぷちさき!~ぽんこつ~ h15-89 京誓
https://w.atwiki.jp/iiyasai/pages/49.html
名前 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (添付ファイル名) Lv 245 キャラ:ティチエル 呼称:セクハラ大王 愛称:セクハラさん、穴吸い、なす(卑猥)さん 誕生日:ひ☆み☆つ ♪自己紹介♪ 充実野菜のセクハラ充がセクハラ大王になってかえってきたよグヒヒ。 これからいっぱいセクハラすると思うけど見逃してくれるとうれしいなりー☆ 僕のことは気軽にセクハラさんもしくは穴吸いと呼んでいただいて結構です♪ こんな自分ですがよろ乳首^^ 追記 充実野菜に入ったのは未樹さんというすばらしいマキシがいたからです。 同じクラブに入れて大変うれしく思っております^^ 紹介文記入(ご自由に書き込みしてください♪) これはひどい -- ククルスドアン (2010-11-07 11 48 41) 要注意人物です!皆さん気をつけて!! -- 未樹 (2010-11-09 14 47 14) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yone/pages/26.html
米道利成の記事がLeadersfileに掲載されました。 株式会社LBIは来たるべき最適化社会を見据えて、ブロックチェーン技術やAI技術を用いた金融プラットフォームを構築している。同社は「第ニ種金融商品取引業」と「貸金業登録番号」の資格を有しており、ソーシャルレンディング事業に注力。今後は第一種金融商品取引業の登録も目指している。 ソーシャルレンディングとはお金を借りたい企業と、お金を貸したい個人とをマッチングさせるサービスである。個人が1万円程度の少額から貸付をすることができることから投資の門戸を広げると注目を集めている。しかし、ソーシャルレンディングには3ヶ月や6ヶ月といった短期の貸付しかできないという課題が存在した。 今回インタビューさせていただいた株式会社LBIはブロックチェーン技術を使って長期貸付を可能にするソーシャルレンディングシステム「BANKNEXT」をローンチ予定。ブロックチェーン技術を使って流動性を高めたソーシャルレンディングということで注目を集めている。 この記事では株式会社LBIの代表取締役である米道利成 氏の現在の事業に至るまでの道のりや、事業にかける強い思いまでお話を伺った。 米道利成インタビュー記事はこちら
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6485.html
前ページ次ページ虚無と賢女 いたるところで生徒たちの雑談が行われ賑やかな教室、彼らの脇に鎮座する多種多様な―――見たこともない生物も含めた 動物たち。恐らく全て使い魔なのだろう。生徒の中には雑談しながら使い魔と遊んでる者もいた。 (それにしても) と思う。 教室のあちらこちらから向けられる好奇心と侮蔑が入り混じった視線に居心地の悪さを覚え、 エレアノールは内心でため息をつく。召喚された時の野次や先ほどの朝食の時にシエスタやマルトーから聞いた評判、 そして今の状況から考えれば、ルイズは明らかに周囲から見下されている。 一人の少女にこれだけの侮蔑や嘲笑を集中させて恥ずかしくないのだろうかと思うが、思わないのだろうと諦めにも似た 結論に思い至る。かつて、彼女が困窮しきった農民を救うべきじゃないかと周囲に相談した時、同じような嘲笑を 浴びせられたものだ。 (世界が違っても王侯貴族は特権と誇りに溺れて堕落するものなのですね……) 失望を表情に出さぬようにちょっとした努力を払い、彼女の立ってる場所のすぐ隣の席に座るルイズに視線を向ける。 その小さな身体―――十六歳と聞いて驚いたが―――にこれだけの悪意を受け続け、なお折れずに前を向き続けている 誇りと意志の強さ。 (私よりもずっと強いのですね、ルイズ……) 彼女を支えたい、とエレアノールは思う。しかし、この世界では―――ここが遺跡の中で生まれた想像の結晶たる虚構であれ、 『新しき世界』の結果生まれた確固たる存在を持つ現実であれ―――自分は異邦人。いつか、可能ならば元の世界に帰る 仮初の住人である自分。彼女を支え続けることなど出来ない。 仲間たちの元へと帰りたいと思う気持ちと、ルイズの側でずっと支えてあげたいという気持ち、矛盾する考えが頭の中を巡る。 「皆さん、お喋りの時間はもう終わりですよ」 教室の扉から帽子をかぶった中年の女性が入っていた。一瞬間をおいて、教室中の雑談が静まりはじめ、 生徒たちは座りなおして前を向く。教壇のつくと女性―――先生は教室中を見回す。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。このシュヴルーズ、毎年最初の授業で召喚された使い魔を 見るのがとても楽しみなのですよ」 教室を巡る視線がルイズと横に立つエレアノールに向けられる。 「特にミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したものですね」 その瞬間、教室がドっとした笑い声に包まれる。シュヴルーズの様子からからして蔑んでるわけではないのだろうが、 エレアノールからしてみればルイズに向けられてる悪意に無頓着すぎる発言と感じられた。 「ゼロのルイズ! 召喚に失敗したからといって、平民を雇って連れてくるなよな!」 「な……!」 「ご主人様!」 激昂したルイズが立ち上がり言い返そうとして―――エレアノールに制される。声に含まれる強い意志と、 それを信念に込めた表情に思わず従う。 「ははは、言い返しもしないか! やっぱりゼロのルイズは召喚できなか―――ヒィッ!?」 嘲笑に追従しようとした生徒は、エレアノールの視線に言葉を詰まらせる。その視線に込められているのは純然たる怒りと、 殺意にも近い敵意。人間よりも強靭な魔物相手に毎日のように命がけの戦いを繰り返していたエレアノールからの殺気に、 悠々自適な学園生活を送るだけの生徒は恐怖で震え上がる。笑っていた他の生徒たちも、異常な雰囲気に気づき 次第に静まっていく。 何人かの男子生徒を侍らせていたキュルケも恐怖の感情を隠しきれなく、ただ一人、青いショートカットの小柄な眼鏡の少女が 平然とエレアノールを見つめ返していたが。 「はいはい、皆さん。友達を中傷することはいけません。授業を始めますから前を向きなさい」 唯一、エレアノールの殺気を向けられていない―――空気が読めてない―――シュヴルーズは手を叩いて 事態を収束させる。同時にエレアノールから放たれていた殺気も立ち消え、恐怖で凍り付いていた生徒もドっと椅子に 沈み込んだ。 傍らのルイズは最後までエレアノールを見上げていたが、安心させるような微笑みを向けられて前に向き直った。 授業はシュヴルーズの自己紹介、『赤土』という二つ名とこれから一年の授業で教える土の系統魔法のこと、そして基本的な おさらいから始まった。この『世界』の魔法に興味をひかれたエレアノールは、ルイズから筆と数枚の紙を借りてメモを 講義の内容を書き記す。 (魔法の四大系統と虚無の系統……、それにしてもこちらの魔法は生活に密接しているのですね) 教壇で石ころを真鍮へと変えさせたシュヴルーズの『錬金』を見て素直に感心する。説明を聞く限りでは、 上位のメイジなら石ころから金をも作れるようだ。 (トライアングルとかスクウェアというのがメイジの格みたいですね) 授業の後でルイズに詳しく聞いてみようと思っていると、再びシュヴルーズの視線がこちらに向けられた。 「では、ミス・ヴァリエール。今の錬金をやってみてください」 「え? 私、ですか?」 ザワ……と教室中の生徒がざわめき、キュルケが困ったように手を上げる。 「ご存知、ないのですか? 彼女に実技をさせるのは止めといた方がいいと思いますわ」 教室中の生徒たちがその言葉に一斉に頷く。そうだ、そうだと声を上げて同調する者も居た。 エレアノールは最初はルイズへの侮蔑かと思ったが、どうやら違うようだ。彼らは本心から恐れている。 「私は彼女が努力家と聞いております。さぁ、ミス・ヴァリエール、失敗を恐れずにやってごらんなさい」 「先生!」 なおも食い下がるキュルケに、ルイズは意を決して立ち上がる。緊張しているが、迷いはなかった。 「やります!」 「ルイズ、止めて……!」 キュルケの制止を振り切って、教壇まで歩いていく。同時に教室中のほぼ全ての生徒が机の下に潜り込む。教室から 使い魔と共に出て行く生徒も居た。一人、事態を把握しきれないエレアノールは呆然と教室を見回していた。 教壇では、シュヴルーズが生徒たちの突然の行動に同じように呆然としていたが、それを問いただすことよりルイズへの 指導を優先して、呪文を唱える彼女ににっこりと笑いかける。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです。きっと上手く―――」 シュヴルーズの指導は、ルイズが杖を振り下ろしたと同時に中断することとなった。錬金により石ころが他の金属に変わった ためでなく、閃光ともに爆発したのだ。爆心の間近で爆風をまともに受けるルイズとシュヴルーズ、隠れていた席ごと 吹っ飛ばされて悲鳴を上げる生徒、突然の爆発に驚いて暴れだす使い魔たち。 「―――ルイズ!」 阿鼻叫喚の大騒ぎの中、最初に冷静さを取り戻したのはエレアノールであった。混乱する生徒と使い魔―――何かを丸呑み してた大蛇を踏みつけるが気にも留めず―――を掻き分け、仰向けに倒れてるルイズの下へと走る。 「ルイズ!? しっかりしてください!?」 煤で真っ黒になったルイズを抱き起こす。幸い、服がボロボロになっていたが外傷もなく、爆発のショックで放心状態に なっているが無事であった。 「ルイズ! ルイ―――ご主人様! 大丈夫ですか?」 エレアノールの呼びかけにルイズの瞳の焦点が合い、ぷるるっと頭を振って立ち上がる。すぐ近くで倒れて痙攣している シュヴルーズ、次に教室の惨状を見回す。 「ちょっと失敗みたいね」 言うまでもなく、言うほどでもないのだが、ルイズの一言が教室中からの大ブーイングを引き起こす。ムキになって 言い返すルイズと、さらに言い返す生徒たち。 (なるほど……成功率『ゼロ』が由来なのですね……) 幼稚な口喧嘩にエレアノールはため息をつきながら、現時点で最も救護が必要な人物、シュヴルーズの介抱を始めた。 「アフロ」 廊下に退避していた生徒の一人、青髪の少女が倒れてるシュヴルーズを扉の間から覗き見て呟いていたが、 口喧嘩中の教室中の生徒たちには聞えてなかった―――聞えていたエレアノールも聞こえなかったことにした。 エレアノールの介抱により意識を取り戻したシュヴルーズは、授業の中止と爆発の片付けをルイズとエレアノールに 命じると、ヨロヨロとした足取りで教室を後にした。もちろん、罰の意味を込めて魔法の禁止も言い渡していたが、 魔法の使えないルイズには大して意味はなかったが……。 黙々と部屋の片付けをこなすエレアノールに対し、ルイズはボンヤリとしながら雑巾で机を拭いていた。時々、 何か言いたそうにエレアノールの方を向き、しばし葛藤するように小声で自問自答をして、再び雑巾がけに戻る。 お世辞にも効率的に掃除してるとは言えなかったが、エレアノールは気づかないふりをしていた。 そんな重苦しい教室に掃除道具を持ったメイド―――シエスタが入ってきたのは、遅々とした片付けがようやく 半分終わった頃であった。 「ミス・ヴァリエール、片付けの手伝いを言い付かって参りました」 「え……? そ、うなの?」 はいと頷いて、持ってきた掃除道具でまだ片付けだけで掃除が出来てなかった部分を磨き始める。掃除道具の扱う動きは 実に慣れたものであった。呆然とシエスタの動きを見ていたルイズだったが、やがて雑巾がけを再開する。 ルイズを横目で確認しつつ、エレアノールはこっそりとシエスタに近づく。 「シエスタさん? 本当に先ほどの教師から手伝いを言われたのですか?」 「いいえ、言われてないですよ」 小声であっさりと否定する。 「実を言えばこの教室の片付けと掃除の仕上げは、私たちの役目になるのです。あまり時間がかかると昼からの 授業に間に合いませんし、私たちも休憩を取る時間がなくなりますから」 ペロっと悪戯っぽく舌を出しての本音。それに、と続けて、 「手伝いを言われたのは事実ですよ、教師じゃなくて用務員の人からですけど」 「なるほど……」 したたかな言葉に納得する。 「後はちょっとした好意と好奇心もありますけど―――あ、エレアノールさん。その机の向こう側を持ち上げくれませんか?」 「え? ええ、わかりました。……こうですか?」 ルイズがこちらの様子を伺っていることに気づいた二人は、わざと大きな声で誤魔化す。ルイズもしばらく不思議そうに 二人を見つめていたが、やがて自分の作業に戻る。プライドの高いルイズが、自分への罰なのに平民が手伝いを申し出たと 知れば、強硬に反対するだろうと二人は分かっていたのであった。 片付けが終わりに近づいた頃、エレアノールはシエスタの動き―――重心、足の踏み位置、体さばき、バランスの取り方 などが熟達されていることに気づいた。それも、一見だけでは分からないほどに自然な動き。今も重いガラス板を軽々と 窓にはめている。 (そういえば……、今朝も十個近い洗濯籠を苦もなく持ち歩いていましたね) 水汲み場のことを思い返し、護身術か何かを習っているのだろうと推測する。同時に、手習い程度ではあれだけの 技量を身につけることは出来ないはずと思い至るが、本人に確かめるほどでもないと黙っていることにした。 シエスタの手伝いにより昼前に片付けが終わり、元の仕事に戻るシエスタを見送った二人は、爆発で掃除でボロボロに汚れた ルイズの着替えのために寮の自室へと戻っていた。今朝と同じくエレアノールが手伝う。二度目ということもあり、 すぐに着替えは終わった。 「ご主人様、終わりましたので確認をお願いします」 エレアノールの声にルイズは、ああそうと生返事を返す。その目はどこか虚ろであった。 「ご主人様?」 「……ねぇ、何か言いたいことないの?」 「何か……とは?」 ルイズの声に只ならぬ気配を感じたエレアノールは努めて感情を抑えて聞き返す。 「……さっきのことよ。私が魔法を使おうとするといつもああなるの、……ドカンって爆発。 実はね、貴女を召喚する時も何回も失敗したの、呪文を唱えるたびに爆発、爆発、爆発」 せき止めていた水が一気に流れ出すように、何もかもを喋りたい衝動。それがルイズを突き動かす。 「それでね、貴女が来てくれたの。周りから野次飛ばされたけど嬉しかったわ、ようやく魔法が使えるようになった。 もう私は『ゼロ』なんかじゃないって。契約も……爆発も何も起こらず、一回で成功した時はもっと嬉しかったわ。 それなのに……、それなのに……」 つぅっとルイズの頬を伝って涙が零れ落ちる。 「貴女だって変だと思ったでしょ? 魔法の使えないメイジ、出来損ないの貴族って!? 何で!? 何でなのよ!? 何で私は魔法が使えないのよ!?」 感情のタガが外れ泣き叫ぶ。 エレアノールは自己嫌悪のまま泣き続けようとしたルイズを抱きしめた。 「……落ち着いてください、ご主人様―――いえ、ルイズ」 「え……?」 「ルイズは、私のために―――仲間と離れ離れになった私のために、会いに行ってもいい、旅費も出してもいいって 言ってくださいました。その優しい心遣いはとても嬉しいです」 ルイズの頭に手を回し、そっと抱き止める。プライドの高いルイズは自分の泣いているところなど―――例え感情のタガが 外れているとは言え見られたくないだろう。だから見ない、抱き止めるだけ。 「使用人の人たちからも聞きました。ルイズはずっと一人で侮蔑と嘲笑に耐えてきたのですよね? それは本当に 素晴らしいことです。貴女の気高さは少しも損なわれてなかったのですから」 「……ぅく、……ぅぅ」 「だから少しだけ、わずかな間だけ休んでください。そして、いつもの誇り高きルイズに戻ってください……」 抱きしめたまま、ルイズの頭を優しく撫でる。ルイズの気が済むまでずっと抱きとめておこう、と。 (まるで……ちいねえさまみたい……) 懐かしい想いに浸り続ける。遠くから昼食の予鈴が聞こえ、同時に空腹感も覚える。 しかし、ルイズはずっとその懐かしい暖かさを感じ続けることを選んだ。 アルヴィーズの食堂では既に食事が始まっていた。ルイズとエレアノールは賑やかな生徒たちと、 空き皿や新しい料理を持って行ったり来たりするメイドたちをかき分けて席にたどり着いた。 「じゃあ、貴女も食べに行ってもいいわよ」 エレアノールの引いた椅子に座りながら、いつもどおりの口調と表情に戻ったルイズは振り返る。 「はい、ありがとうございます。それでは―――」 「あ、ちょっと! さ、さっきのはと、とと特別に許してあげるけど、ご主人様って言わないとダ、ダダメなんだからね!」 「……ええ、失礼しましたご主人様」 顔を真っ赤にして照れているルイズに、クスリっと微笑む。 「あ、あと……、ぜぜ、絶対に他言無用よ! 誰かに話したりしたら承知しないのだから!!」 賑やかな食堂とはいえ、周囲の席に丸聞こえ。何人かの生徒が何事かと注目してくるか、ルイズはそれに気づかなかったようだ。 「承知しております、ご主人様。……御用は以上でしょうか?」 「そうよ、他にはないわね」 改めて一礼するとエレアノールは厨房へ向かっていった。その姿が見えなくなるまで見送ったルイズは前を向き直り、 そして自分に注目する周囲の生徒の視線にようやく気づいた。慌てて食事の前の始祖への祈りをすばやく言い、 昼食に取り掛かる。周囲もうろんな者を見るような視線を向けていたが、すぐに興味をなくしたのか思い思いに 雑談や食事の続きへと戻っていった。 厨房は文字通り戦場であった。台の上に所狭しと並べられた高価そうな皿に置かれていくデザート、空いた大皿を流し台へと 積み上げるメイドたち。戦場以外表現しようがなかった。 (賄いをもらえるような状況じゃありませんね) 昨夜と今朝はたまたま手隙のタイミングだったのだろうと考え、手近の顔馴染みとなったのコックへ声をかける。 「すみません?」 「ああ、何だって!? ……あ、エレアノールさん!」 忙しさのあまり殺気立っていたコックは、相手がエレアノールだと知ると慌てて表情を緩めた。 「あの、何か手伝えることはありませんか?」 「え? えええ!? いや、それは助かりますが……、しかし」 「マルトーさんには後から話しておきますから」 コックは根負けしたようにため息をついた。 「……分かりました、ではこっちのデザートを配るのを手伝ってください」 ルイズは思い悩んでいた。それは、目の前の料理の付け合せにたっぷりとハシバミ草が使われていたことでも、 魔法が使えないこと―――無論、重要なことであったが今は思考の隅に追いやっていた―――でもなかった。 (はぁ~……、何してるのよさっきの私……) フォークで鶏肉をブスブスと刺しながらため息をつく。使い魔の前で感情を爆発させて泣いてしまった。 さらに抱きとめられて、ご主人様じゃなくてルイズの名で呼ばれて……威厳も何もない。 (ああ、もう! さっきはちょっと変だったのよ! 異常だったのよ! だから無かったことに!!) 鶏肉を刺すフォークはブスブスからザクザクへと進化し、比例するように鶏肉も刻一刻とミンチになりつつある。 そのまま先ほどの記憶を打ち消そうと躍起になってフォークを突き刺し続けるが、それでもエレアノールに抱きとめられた時の 安心感と温もりは心に強く響く。ルイズと呼ばれることにも嫌悪感は何もなく、ホっとする気持ちになる。 出会ってまだ一日ほどなのに、何でこんなに自分は彼女に心を許してしまうのか。 貴族としての誇りと安堵感の板ばさみになっているルイズ、その硬直は目の前にデザートのケーキが置かれてようやく解けた。 「ケーキでございます、ご主人様」 ―――否、突然のエレアノールの声で解かれた。 「な、ななな!? 何で貴女がケーキを配ってるのよ!? 食事はどうしたのよ!?」 「いえ……厨房の皆さんも忙しそうだったのでお手伝いを、と思いまして」 先ほどの掃除のお礼もありますしね、と微笑みエレアノール。 「そ、そうね……。じゃあ、頑張ってきなさいよ」 「はい」 デザートの配膳作業に戻ったエレアノールが十分に距離を取ったのを確認して、ルイズは再びため息をつく。何となく、 今の悩んでいるところを見られたくないっと思ってしまう。 (多分……見られてないよね。うん、見られてない) 気を取り直して、目の前のケーキに意識を移す。大好物のクックベリーパイじゃないのが残念だが、おいしそうなケーキ。 ルイズはデザート用の小さいフォークに持ち替えて、まずは一口分切り取って口に運ぶ。 (ん……おいしい♪) しっかりと味わって二口目、三口目―――ちょっと離れたところで、何やら騒ぎが起きてるが気にせずにケーキを頬張る。 栗色の髪の一年生の少女と巻き髪の少女―――モンモランシーが相次いでその騒ぎに飛び込み、泣きながら、そして怒りながら 走り去っていった。―――四口目、どうやら騒ぎの原因はギーシュらしい。あのキザ男が二股でもしてたのだろう。 (自業自得よねー、まったく) むしろ今までバレてないだけ幸運な方よねと思いつつ、最後の一口を口へと運ぶ。 「どうしてくれる! 君が香水の瓶を拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉に傷ついたじゃないか!? 機転を利かせて こっそり渡してくれるくらいしたらどうだ!?」 八つ当たりかっこ悪い。ただ、その八つ当たりの対象は誰なのか興味がわいたので、改めて騒ぎの現場に視線を向ける。 「しかし、二股をされていた貴方に責があるのでは?」 対象→自分の使い魔エレアノール。しかも、怒り心頭のギーシュに反論している。 「ええええぇレア、ケフッ! ゴフォゴフォッ!?」 ルイズはケーキを口に含んだまま叫ぼうとして、思いっきりむせて咳き込むのであった。 「しかし、二股をされていた貴方に責があるのでは?」 「そのとおりだギーシュ! お前が悪い!」 エレアノールの言葉に周囲の男子生徒たちが、どっと大笑いする。ギーシュは羞恥と怒りで顔を赤くする。 「とにかくメイド嬢。僕が二股かけていようと、君の軽率な行動が原因でこうなったんだ。それについて謝罪するつもりは 無いのかい?」 「私が何もしなくても時間の問題だったと思いますが……。それに、服を借りているだけで私は学院のメイドではありませんよ」 「何だって? ……ああ、なるほど」 エレアノールの顔をしばし見つめ、納得したように頷く。 「ゼロのルイズが呼び出した平民だったな。全く、ルイズもルイズなら使い魔も使い魔だな」 バカにしたように鼻を鳴らして、やれやれと首を振る。 「―――どういう意味ですか?」 「決まっているじゃないか、ゼロのルイズの使い魔に機転を期待するのは、愚かだ……った、と……」 得意気に芝居がかった仕草を取っていたギーシュは、エレアノールからの視線―――教室の時に比べて幾分抑えていたが ―――に言葉が詰まりだす。 「私への批難は甘んじてお受けしますが、ご主人様への侮辱は取り消してください」 声色こそ平静を装っていたが、有無を言わせないほどの迫力を秘めていた。ギーシュは髪からまだ滴り落ちるワインとは 別に冷や汗を流している自分に気づき、続いて猛獣の尻尾を踏んでしまったことを察した、致命的に強く踏みつけたのだ。 無意識のうちに一歩下がりそうになり、その場に踏みとどまる。『命を惜しまず名を惜しめ』のグラモン家の家訓が 辛うじてギーシュを支えていた。 「ふ…ふふふ、ふふ、よかろう! 君がそれを望むのなら決闘で決着をつけようじゃないか!!」 自分を奮い立たせるように大声で宣言し、青銅の薔薇の造花をエレアノールに突きつける。 「いいでしょう……、それでここで決闘ですか?」 「こんな狭いところでは満足に戦えまい、ヴェストリの広場でするぞ。君もケーキを配り終わったら来たまえ」 ギーシュはくるりと体を翻して先に食堂を後にした。何人かの生徒たちが期待に満ちた表情で続く。 後に残されたのはエレアノールと何人かの―――こちらも期待に満ちた表情で見つめてくる―――生徒たち。 「……待たせるのも悪いですね」 ふぅっとため息をついて、ケーキの配膳を誰か手近のメイドに任せようと周囲を見回すと、ちょうどシエスタが目の前まで 寄って来ていた。 「あ、シエスタさん、申し訳ありませんが―――」 「エレアノールさん!!」 シエスタは表情と声色に剣呑なものを浮かべていた。 「エレアノールさん!! 貴族と戦ったら……ダメです!!」 続いてようやく落ち着いたルイズもエレアノールの元へと駆けつけてくる。咳き込んでてエレアノールとギーシュの会話を 聞くことが出来なかったが最後の『決闘』という不穏な単語はしっかりと耳に届いていた。 「貴女! 何勝手に決闘の約束なんかしてるのよ!! 勝てるわけがないでしょ!!」 「今ならまだ、謝れば間に合うかもしれないです! 下手に戦うと厄介なことになりますよ!!」 説得しようと押しとどめる二人をエレアノールは両手を向けて遮る。 「心配してくださってありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」 見るもの安心させる微笑みを二人に返して言葉を続ける、腕にそれなりに覚えはありますから、と。そして、残っていた 生徒の一人に案内を頼むと二人を振り切るようにして食堂を後にする。 残されたのは怒りで涙目になっているルイズと、ケーキの配膳台を受け取ったシエスタ。 「な、何なのよ、もう……! いくら冒険者してて腕に覚えがあっても、メイジに勝てるわけないじゃない!!」 地団駄を踏んで叫ぶ。一方のシエスタは「ふぅ……」とため息つくと、ケーキの配膳台をさらに手近の同僚に任せる。 「ミス・ヴァリエール、私たちも行きましょう」 「え……?」 「お気づきじゃなかったのかもしれませんけど、エレアノールさんはミス・ヴァリエールへの侮辱を取り消そうと していたのですよ」 「え? 何、よ……それ?」 ルイズの問いに、シエスタはにっこりと笑って答える。 「ミス・ヴァリエールのことを想っておられるのですよ。それに……エレアノールさんなら案外あっさりと勝っちゃうと 思います」 (エレアノールさんが、私の知ってる『エレアノールさん』だったら……ですけどね) 言葉の半分を飲み込んで、ルイズを先導するように歩き出した。一歩遅れたルイズは慌ててその後を追う。 「え? え? ちょっと、あっさり勝っちゃうってどういうことよ!? ちょっと待ちなさいよ!!」 シエスタはルイズに問いに答えなかった。ただ胸中でため息混じりに呟く。 (ミス・ヴァリエールの後ろ盾もありますし、勝っても厄介事は少なくすむかもしれませんしね) オールド・オスマンとは誰かと問われた人が十人居れば十人ともこう答えるだろう。トリステイン魔法学院の学院長、 齢百歳とも三百歳とも言われる古老、偉大なるメイジ。 しかし、秘書のロングビルからしてみればただのセクハラ爺、隙あらば胸に飛び込もうと虎視眈々と狙う重度の女好き、 使い魔のネズミにスカートを覗かせようとする変態……等等。 「ふぅむ……」 今も古書を片手に部屋中を歩き回ってる……フリをしてロングビルの後ろに回り込もうとしていた。おそらく、後ろから 抱きつくかお尻を撫でるか、はたまた胸を鷲掴みにするか狙っているのだろう。 「オールド・オスマン。気が散るので出来れば席に座ってジッとしていただけると助かるのですが」 「いやなに、今読んでる内容が難解でのぉ……、こうやって身体を軽く動かしていると理解できそうなのじゃよ」 さりげなくロングビルの執務机に歩み寄り、服の上からも分かる形の良い両胸に視線を合わせる。 「わたくしの胸を見るより本を読んでくださ―――」 チュチュッ! 足元でネズミが駆け回る気配、慌てて足元を見ると逃げていくネズミの尻尾。 「オールド・オスマン!!」 「油断大敵じゃな、ミス・ロングビル。ふむふむ……そうか白か、純白か」 立ち上がって詰め寄るロングビルを軽く受け流して、ネズミ―――モートソグニルからの報告に頷く。威厳もへったくれもない。 「しかし、しかしじゃな、ミス・ロングビルには黒の下着が似合うじゃろう。熟した色気がよりいっそう薫りたって―――」 ゴスッっと重量感のある音が学院長室に響く。オスマンは頭に走る激痛にその場に蹲る。 「あら、重くて手が滑りましたわ」 いつの間にか飾ってあった花瓶を手に持っていたロングビルは、用が終わった花瓶を元の場所に戻した。 「あだだだだ……、年寄りに、いたわりの気持ちを持たないのかね?」 「セクハラを自重する年相応の分別こそ、オールド・オスマンに必要かとわたくしは真摯に考えておりますが?」 ヨロヨロと立ち上がるオスマンを切って捨てる。 「セクハラくらい良かろう! そんなに目くじら立てるから婚期を逃すのじゃ―――」 ドゴ、ガシ、ゲシゲシゲシゲシゲシゲシ。 順に……膝蹴りが腹に、腹を押さえたところに脳天に一撃、倒れて痛みに悶えてるところに踏みつけの連打。 「痛! ちょ、やめ!? あだだッ!! 死、死ぬ!?」 ロングビルによるオスマン虐待は、学院長室のドアが開くまで続いた。バタンっとノックもなしに勢いよく学院長室に 入ってきたのはコルベール、一睡もしていないか目の下に隈が浮かんでいたが目の光はしっかりとしたものであった。 「オールド・オスマン! たたた、大変です! 大発見です!!」 「何じゃね、騒々しい……ノックもなしに」 オスマンは窓際で外からの日差しが渋く決まるように立っており、ロングビルも執務机について黙々と書類作業を していた。刹那の一瞬の早業である。 「『始祖ブリミルとその使い魔たち』じゃないか、こんな埃臭い文献など漁っておるほど暇でもあるまいに。 それでこの本がどうかしたのかね……ええっと、ミスタ何だっけ?」 「コルベールです!!」 「おお、そうそう、そうじゃったなコール・ミー・タクシー君」 「コルベールです、コ・ル・ベ・ェ・ル!!」 大声で訂正しながらも、書物を開いて挿絵のページを示し、続いて昨日の春の使い魔召喚の儀式でエレアノールの左手に 現れたルーンのスケッチを手渡す。一目見た瞬間、好々爺だった顔が、引き締まった練達のメイジの顔になる。 「ミス・ロングビル、席を外しなさい。それと急な用件以外の訪問は受け付けないと教師たちに連絡をしてくれたまえ」 急に雰囲気が変わったオスマンに怪訝な表情を浮かべつつも、ロングビルは学院長室から退出していく。 「どういうことかね、ミスタ・コルベール。詳しい説明を聞けるのじゃろうな?」 コルベールは興奮で顔を真っ赤にしながら説明を開始した。 ―――昨日、ミス・ヴァリエールが人間を召喚し、その手に刻まれたルーンが見慣れるモノであったということ。 気になってフェニアのライブラリーに一晩中篭って文献を漁り、つい先ほど、一致するルーンが書かれた書物 『始祖ブリミルとその使い魔たち』に行き着いた、と。 「つまり、君の結論ではミス・ヴァリエールは伝説の『ガンダールヴ』を召喚したというのかね?」 「そのとおりです! 間違いなくあの女性は『ガンダールヴ』です! これは大変な大発見ですよ、オールド・オスマン!!」 興奮気味のコルベールに対し、オスマンは深く考え込むように椅子に身を沈めた。 「ふむ……、ルーンが一致したからといって確実に『ガンダールヴ』とは言えまい。決め付けるのは早計かもしれん」 「それもそうですな」 「ところで、そのミス・ヴァリエールが召喚したという女性は、君から見てどのように見えたのかね?」 普段の女性に対する好色さを全く纏わないオスマンの問いに、コルベールは数度深呼吸して落ち着いてから答える。 「そうですな……、召喚された時に見につけていた防具といい隙の無さといい―――戦い慣れているように思えました。 恐らく、傭兵か何かを生業にしているのかもしれません……が、粗野な雰囲気も一切感じさせませんでした」 「ほう、荒くれ者の傭兵なのに粗野じゃないとは……なかなかミステリアスな女性じゃのぉ」 一度、会ってみるべきかもしれん、と考えていたところにドアのノック音が室内に響いた。 「誰じゃ?」 「私です、オールド・オスマン。先ほど、教師の方から至急の用件があるとの伝言を承ってまいりました」 「ふむ、入りたまえ」 オスマンの許しを得てロングビルが入室してくる。 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。野次馬の生徒たちが集まって大騒ぎになっており、教師たちも 止められないようです」 「まったく、暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰と誰が決闘なぞしておるんじゃね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン。もう一人はミス・ヴァリエールの使い魔の女性です」 今まで話題になっていた『ガンダールヴ(仮)』の女性が出てきて、オスマンとコルベールは顔を見合わせる。 「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」 「たかだかケンカに秘宝を使うまでもなかろう。念のために水魔法に長けた教師を何人かヴェストリの広場に向かわせて、 あとは沈静化するまで放っておきなさい」 「分かりました、そのように伝えてまいります」 指示を受けたロングビルは教師たちに伝えるために学院長室を後にした。十分に足音が遠ざかったのを確認して、 オスマンとコルベールは顔を再び合わせる。 「オールド・オスマン」 「うむ……、グラモンのバカ息子には悪いが見極めるのにちょうどいい機会じゃ」 オスマンが壁にかかった大きな鏡に向かって杖を振ると、そこに外の光景―――野次馬で埋まっているヴェストリ広場で 対峙しているエレアノールとギーシュの様子が映し出された。 前ページ次ページ虚無と賢女
https://w.atwiki.jp/iwakyugroup/pages/131.html
祝! 「架空鉄道ジャンクション」掲載! 2016年8月12日、架空鉄道に関するサイトやホームページへのリンク集である、架空鉄道ジャンクションに、いわて急行鉄道グループの公式サイト(本ページ含む)が掲載されました。これにより、架空鉄道ジャンクションでリンクをクリックorタップする事で、ジャンクション経由で当サイトにアクセスすることが可能になります。ジャンクションへは以下のリンクをクリックorタップして下さい。 架空鉄道ジャンクションへ トップへ
https://w.atwiki.jp/katudonchannel/pages/51.html
2016/10/04 に公開 (ニコニコ動画) http //www.nicovideo.jp/watch/sm29773576 「あなたはPTSDではない。」とハッキリ言われました。 (投稿者コメントより) 2016年10月4日のツイート https //twitter.com/katudon1985c/status/783470467063525376 そうでした…「病院でPTSDと診断された」と僕はハッキリ嘘をついていました。一年前に。 http //www.nicovideo.jp/watch/sm27266674 これもまた保身の為についた嘘でした。度々すみません。 0 00こんにちは、カツドンです。 0 01 あの、今日ツイッターでもちょっと書いてましたけれども、 0 04 えー、まあ、面接受けた後ですね、 0 06 カウンセリングも受けてきて、 0 09 まあ、そこでですね、カウンセラーさん。 0 11 まあ精神科医でもいらっしゃる、カウンセラーさんにですね、 0 13 あの、まあカウンセリングが終わった後、 0 15 まあちょっと、帰り際にですね。こう、あの。 0 18 ちょっとあの、僕に、あの病名を付けるとしたら、 0 21 どういう風になりますかねっていう風に、 0 22 ちょっと、まあ、尋ねたら、 0 24 えー、まあその・・・ 0 25 パーソナリティ障害。うん、あのー、 0 28 自己愛性パーソナリティ障害の、 0 31 まあ傾向が、うーんありますね、みたいな感じで、 0 34 まあ、ダン、断言的な、 0 36 断定的な言い方はされなかったんですけれども、 0 38 まあ、そういうことらしいです。僕はまあ、その、 0 40 ちょっと、パーソナリティ障害、んー、 0 42 に、当てはまる、うー、とのことです。うん。 0 46 まあ、カウンセラーさんはね、なんか、 0 48 かなり、気を遣って、くれてるような感じで、 0 51 うーん、まあ、そのー、ハッキリとね、 0 53 あなたは、えー、 0 54 自己愛性パーソナリティ障害ですっていう風に、 0 56 こう、ハッキリと言わなかったですけれども、 0 58 まあ、自己愛性の傾向が、うーん、 1 00 強いですねっていう風に、言われて、 1 02 だけど、まあその、病名はね、 1 04 えー、付けられたからと言って、 1 06 その・・・うん。 1 07 パーソナリティ障害なんだ自分は、 1 09 あ、このショーガ、こういうビョー、病気なんだ、という風に 1 11 自分をその病名に、あの、 1 13 無理矢理当てはめなくて、 1 14 えーもー、うん、まあ、 1 16 当てはめる必要はないですよ、という風に言われました。うん。 1 19 まあ、ひとつの、まあ参考みたいな感じでっていう感じなんですかね。 1 22 まあ、以前、僕はその、自分のことを、 1 25 まあその、パーソナリティ障害ではないと思います、 1 28 っていう風な感じで言ってたんですけど。 1 29 まあ、その時は、まあその、なんていうかな、 1 31 うーん、なんかもう、 1 33 あんまりこう、深い知識がなくてそう言ってフゥ、 1 35 そういう風に言っていただけで、 1 36 まあ、本心ではあったんですけれども、 1 38 まあ、今となっては・・・今はですね、 1 40 あーそうなのかー、という風に、んなーまー、 1 42 かかりつけの先生に、そういう風に言われて、 1 44 まあ、そのー・・・何の抵抗もなく、 1 46 「あーそうなのか」っていう風に、こう、まあ受け入れました。 1 48 うん、まあ、俺はその、ちょっとパーソナリティ障害なのかって。 1 52 ま、多少は、ちょっとショックは、 1 54 感じましたけれども、 1 55 まあ、でも、んー、ちょっと納得もしました。 1 57 あのー、やっぱり、まあ、俺、すごいやっぱり、情緒不安定で、 2 01 ・・・すごいなんかこう、んー、 2 02 精神的に動揺しやすくてですね、ハ、 2 05 すぐ破滅的な気持ちになったり、 2 07 なんかもう、うーん、 2 09 死にたい、っていう感じになったりとかですね。 2 11 なんか、まあすぐハメチ、 2 12 破滅的な思考に、なんかなっちゃってって。 2 14 ちょっとその、自分ってものが、すごく、 2 17 うーん、不安定すぎるなっていう感じで。 2 21 まあ、こういう風に動画撮ってるときは、まあ、その。 2 23 ユー、YouTuberとしての自分をね、こう、 2 25 しっかりこう、築き上げて、どー、あの、しゃべってるんで。 2 27 うーん、まあ、全然、その、まあ、 2 30 普段の生活の中で僕は本当に、 2 32 もっと全然、なんていうかな。 2 33 不安定な感じなんですけど。 2 35 まあ、その、んーニコニコとか、 2 37 まあ、その、掲示板とかで、けっこう、 2 39 あのー、前から言われてますよね。 2 41 カツドンは絶対、自己愛性パーソナリティ障害、とか言われて、 2 45 まあ、あんまり気に留めてなかったんですけど、 2 47 まあ、正にその通りだったということで。 2 50 まあなんか、ちょっ、ちょっとなんかこう、 2 52 まあ、なんかこう、あーのー、 2 54 なんか敗北感みたいな、そういうのも、 2 55 感じたんですけれども。 2 59 そういう意味もあってね、ちょっと、 3 01 んー、なんか若干ショックだったんですけど。 3 03 まあ、でもね。まあ、あの、それだけですので。 3 05 べつに、まあ、あの。 3 07 こういう、診断をされたからといって、 3 09 僕という人間が変わったわけではありませんし。 3 11 これからも、あの、YouTuberとして、 3 13 または、フリーターとしてね。 3 14 えーまあ・・・一歩一歩ね、えー、 3 16 頑張って、えー、やっていくだけだと思いますので、 3 19 まあ、別にその・・・ 3 20 こういう、診断されたからといってですね。 3 22 病名に、なったからといって、 3 23 えーまあ、あまり気にしては、ないです。 3 25 もちろん、その、自分はこういう病気なんです。 3 28 病人な、病人なんですっていう感じで、 3 30 それを盾にするつもりは全くありませんし。 3 33 まあ、一応ね。えー、なんていうか、まあ。 3 35 えー、僕という人間をね、 3 37 より知ってもらおうということで、 3 38 まあ今回このように、こう報告というかですね。 3 41 まあそういうこ、はい。あの、言いました。 3 43 え、ちなみにですね、 3 45 えー、僕が抱えてるその苦しみは、 3 47 PTSDでは無いという風にハッキリ言われました。 3 51 あの、全然PTSDでは無いっていう風に言われました。 3 53 あの、今まで僕、自分・・・ 3 54 PTSDだと思ってたんですよ。 3 56 あの、心的外傷後ストレス障害っていう。 3 58 なんかこう、強烈なトラウマ体験が・・・ 4 00 あって。えー、それがその、た、 4 02 その体験が、終わった後も、ずっと何年間も、その、 4 05 恐怖心とかを引きずってね。えー、 4 07 まあフラッシュバックとかで苦しみ続ける、 4 09 まあ、戦争体験とか。 4 10 ま、そういう、あの、まあ、 4 12 暴力、うー、被害者とか、そういう、 4 14 まあ、あのー、発症する、病気なんですけれども。 4 17 あのー、僕もその・・・ 4 19 大学時代の、まあ、委員会の、 4 21 えーまぁ、そのー、なんていうかな。 4 23 仲間はずれ・・・にされた、トラウマ、が、 4 25 えー、きっかけで、けっこうその・・・ 4 27 うー、精神的にちょっと、あのー、 4 29 おかしくなっちゃったっていうのが、 4 30 まあ、あっ・・・あると思ってて。 4 33 で、まあそれがPTSDだっていう風に、まあ、 4 35 うー、自分、自己診断でですね。 4 37 まあ、かたっ、まあ第3期からはもう、 4 39 言わなくなりましたけれども、PTSDという言葉は。 4 42 だけど第1期、第2期のときはPTSD、 4 45 自分はPTSDだっていう風に、言ってました。 4 47 で、それを、ですね。まあやっぱりこう、 4 49 ちょっと、批判、されたこともありまして。 4 51 えー、医師、医者からね。 4 53 正式に、あの、しょ、PTSDだっていう風に、 4 55 診断されて・・・えー、 4 57 されたわけでもないのに自己診断で、 4 59 そういう風に、言うのは、えー、 5 01 おかしいっていう風に、あのー、 5 03 まあ、批判、されまして。 5 05 その時は、僕は、んまぁ、 5 07 えー、そんな悪い事かなぁっていう感じで、 5 09 まあ、あの、思ってたんですけども。 5 11 まあ、いま思えば、やっぱりちょっと僕、 5 12 間違ってたかなっていう風に、自分で思います。 5 15 うーん、まあやっぱりこう、あの、自己診断で、 5 17 そういう風にね、こう、世の中に対して、 5 18 ぼ、俺はなんかPTSDですとか。 5 20 うーん、なんか、まあ言う・・・ 5 22 べきじゃ無かったかな、という風に思ってます。 5 24 うん。で、ということでですね、まあ、今日、あの、 5 27 まあ、あの。ハッキリとね。 5 29 エー、精神科医のですね、先生に、 5 30 あの、あなたは全然PTSDに、 5 32 当てはまらないという風に、言われました。 5 34 と、いうことでまあ、ちょっとね。えー、 5 36 今までPTSDだという風に、自己診断で言ってましたけれども、 5 39 それは間違いでした。 5 42 えーっとですね。 5 44 まあ、大学時代のその、委員会のときにね。 5 46 えー、ちょっと上手くいかなくて、 5 47 そのー、まあ四面楚歌でですね。 5 49 ちょっと仲間はずれ的な感じになって。 5 51 えー、まあ、あのー・・・うん。 5 54 経験は僕にとって、やっぱりその、 5 56 人生で一番辛い・・・時期で本当に、 5 58 ちょっと、す、し、 5 59 神経がおかしくなってしまう程の 6 00 ストレス状況だったんですけれども。 6 03 まあ・・・あれが、あの、 6 05 きっかけとしてちょっと、その僕の、 6 07 病理が・・・あの、びゅ、びょ、 6 09 あの、心の病気的な部分がグワーッって、 6 11 出てきちゃったのかも、知れませんけども。 6 13 でも、あ・・・それが、あの、 6 15 あの委員会のときの、そのトラウマが、あの・・・ 6 17 原因コ、原因というよりは、やっぱそれ以前、もう、 6 20 言ってしまえば、その、生まれて、 6 21 オギャーって生まれてから、ずっと今まで、 6 23 こう生きてきた人生・・・ 6 25 もう、0歳のときから、ずっと、こう積み、 6 27 蓄積されてきた、えー。 6 29 なにか、が、 6 30 えー、原因、らしいです。 6 33 僕の今、抱えてる苦しみは。 6 35 うん。だからまぁ、その・・・あの、まあ、 6 38 インナーチャイルド理論、とか、 6 40 なのかもしれませんよね。 6 42 そういう風にもね。えー、精神科医の、先生に今日、 6 44 言ってもらいました。うん。 6 46 その、べつに、委員会のね。大学時代のァ、 6 48 それが原因ではなくて、それ以前にもっと、ス、 6 50 あのー、あのー、もともと、おー・・・ 6 52 人生で抱えてた、ものが、えー、 6 54 苦しみの原因となってるという風に、言われました。 6 56 まぁそうですねー。んー、 6 58 なんていうか、YouTuberとしてね。 6 59 こう・・・やってる時は、 7 01 まあ、けっこう自分をね、強く保ってね。 7 03 えー、頑張ってやっていくんだっていう風に、こう・・・ 7 05 つよ、つよい、じょう、うん、なんていうかなー、そこー、 7 07 強く。えー、なってる、つもりでいましたけれども、 7 10 うーん、やっぱそのー・・・なんていうかこう、 7 12 ふとした、瞬間にすごく不安定な自分っていうのが出てきて、 7 16 うーん、なんか怖くて怖て、くて堪らないっていうかもう、 7 18 自信が失ってっていう感じで。 7 20 うーん、やっぱまだまだ弱くて 7 22 本当に病気だなっていう風にもう、 7 24 ちょっと思っ・・・s今日思ったんで。 7 25 なんかカウンセリング受けてる時になんか 7 28 やっぱりそういう、弱い自分ってのが出てくるんですよね。 7 30 なんかこう、うーん、まあそういう、 7 32 うん。ときに・・・限定的なそういう場面で、やっぱこう、 7 35 フスー、弱いフ、素の自分ってのが出てきます。なんか。 7 38 YouTuber活動が、不安で不安で堪らない、くなったりとか、 7 42 今日したんですけども。ウーン俺やっていけるのかな、みたいな感じで。 7 45 うーん、まあちょっとィ。ああ、い、うん、 7 47 弱音を吐いてしまいましたけれども。 7 48 まあ、とにかく、まだまだね、 7 50 不安定で、その、ちょっと、危うい、 7 51 あのー、まあ、うん、心の病気を抱えてる僕なんで。 7 55 えー、まあ、カウンセリングね。 7 56 えー、ちゃんと受けて、うーん、まあ週1・・・ 7 59 うん。週1、でね、 8 01 うん、まあ、ウケ・・・ 8 02 で、できれば受けていくっていう感じで。 8 04 あのー僕のね。心のその病気の部分とかをちゃんとこう・・・ 8 08 んー、なんていうかな。まあ、治るようにですね。 8 11 えー・・・ 8 12 まあカンセリング受け続けて行こうと思います。 8 14 まあ、カウンセリングって、ク、 8 15 すごく、あの、保険が利かなくて、 8 17 あの、高いんですよね。 8 19 うーんまぁ・・・1回でもう、ねえ。 8 21 こう、何千円とか、かかりますから。だからまあ、 8 23 おあのー、はやて、 8 25 は、払ってくれる親にね、感謝・・・ですね。うん。 8 27 カウンセリングを受け続けて、心の病気を治して、 8 31 えー、まあフリーターとしてもっと働けるようになって、 8 34 自立できるようになって、またはYouTuberとしてね。 8 37 もっともっと、えー、なんていうかな、こう・・・ 8 39 高みにね、登って行けるように、 8 41 えー、精進して、いこうと、思います。 8 43 はい。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5584.html
前ページ次ページ虚無と金の卵 ある日の学院長室における、年寄りの楽しい楽しいセクハラの時間/代価――ミス・ロングビルのビンタと蹴りの応酬。 痛がりつつも満足を覚えていた学院長オスマンの至福の時間は破られる。 コルベールの逸る足音が学院長室へと近づく。 オスマン達はその足音が聞こえた時点で、気の抜けた空気を早業で払拭させていた。 「オールド・オスマン! 大変です!」 「なんじゃね? 大変なことなどあるものかね」 コルベールの目に映るのは、机に向かい重々しく手を組むオスマン/粛々と書類を整理するミス・ロングビル。 そして乱暴に扉を開けたコルベールに対し、オスマンは重々しく頷いて促す。 「こ、これを見てください!」 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。 まーたこのような古臭い文献など漁りおって。 そんな暇があるのなら、たるんだ貴族達から学費を徴収するうまい手をもっと考えるんじゃよ。 ミスタ……なんだっけ?」 「コルベールです! お忘れですか!」 「そうそう、そんな名前だったな。君はどうも早口でいかんよ。 で、コルベール君、この書物がどうかしたのかね?」 「これも見てください!」 「……これは……」 コルベールは、ウフコックの額に現れたルーンのスケッチを手渡す。 それを見たオスマンは、重々しく呟く。 「……小さすぎてよく見えんのじゃが」 「すみません。鼠の額に現れたルーンを、原寸大で写したもので……」 「猫の額どころではないのう。眼鏡、眼鏡……と。 あ、そうじゃ、ミス・ロングビル。資料室の整理をお願いして宜しいか? 召喚の儀式も終わって授業も本格化してきたからのう」 「ええ。畏まりました」 春の召喚の儀式以降、ルイズは相変わらず魔法が成功することは無かったが、めげることなく 勉強と実践に取り組んでいた。 つまるところ、ルイズ達は概ね平穏な日々を送っていた。 そして学生の身の彼ら、彼女らにとって、退屈とは敵であった。 「ウフコックはピスタチオ好きよね。鼠なのにチーズが嫌いだし」 「俺のいた国でも、鼠はチーズを齧る、というのがステレオタイプなイメージらしい。 食事やパーティの度に勧められて困ったものだ」 「ちゅう(良い生活してるもんじゃな、ウフコックも)」 放課後のヴェストリ広場、そこに備え付けられたテーブルの一角で、一人の少女と二匹の鼠が長閑な休憩を取っていた。 ルイズ、ウフコック、そして学院長の使い魔、ハツカネズミのモートソグニルである。 同じネズミどうし、そして同じ使い魔の二匹は、出会ってすぐに意気投合していた。 今では茶飲み友達といったところだろうか。 ルイズは、この世界に馴染みつつあるウフコックに安堵を覚えつつ紅茶を飲む。 何と平和に満ち溢れた放課後だろうか――そんな主人の満足げな匂いを感じ取り、 ウフコック自身も同じ満足感に浸っていた。 「ま、おかげで運動不足だ。きっと寮の廊下を走ったら息切れしてしまう」 「ちゅう(おいおい、2、30メイルくらいじゃねぇか。そんなんで獲物を捕れんのか?)」 「……自分自身、不甲斐ない気がする……。 そういえば、獲物を捕ったことは無いな。というより調理されていない食事を摂ったことが無いと思う。 調理器具なら用意できるんだが……」 「ん? モートソグニルに怒られてるの? それじゃあ食堂の人にお願いして、一度くらい獲物を捕まえるのにチャレンジしてみたら?」 「ルイズ、勘弁してくれ……俺にはあまり鼠の本能は残っていないんだ。 それに獲物を捕ったとして、別に見たくはないだろう?」 「……それもそうよね」 「ちゅ(何抜かしてやがる。野生の魂を忘れちゃあいけねぇ。メスでも紹介してやろうか?)」 そんな気軽な会話を交わしていた頃、男子達の一団が、騒がしい空気を醸し出していた。 その中心に居るのは、フリル付きのシャツに薔薇を挿した金髪の少年。 少なくとも学生達の話題の中心になる程度には華がある。彼を囲むのは少数の女性も混ざっていた。 「なあギーシュ、お前今誰と付き合っているんだよ?」 「付き合う? 僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 などと冷やかされつつ、気障な斬り返しで場を盛り上げている。 その会話の輪の中へ、あるメイドがそのギーシュと呼ばれた少年に近づき、何かを手渡そうとしていた。 ――結論から言って、恋愛や性にあまり興味を持たないウフコックからしても、そこからの展開は酷かった。 ウフコックは何処か険悪な匂いだけを嗅ぎ取り、少年らの方へ首を向けた。 「あのう、こちらの香水を落とされましたよ」 「……これは僕のじゃない。君は何を言ってるんだね?」 一見してごく普通のやり取り。だが、明らかにギーシュからは焦慮の匂いが漂う。 「おお、その香水、モンモランシーが自分で調合したやつじゃないか。 それがギーシュから出てきたってことは……モンモランシーと付き合ってるのか!」 「違う。いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが……」 ギーシュの側に居た栗色の髪の少女は香水の瓶を見咎め、ほろほろと泣き始める。 そしてまた別の少女がギーシュの元につかつかとやってくる。その様子に気付いたルイズが、 「あ、モンモランシー」と言葉を漏らす。 「ギーシュさま……その香水が貴方のポケットから落ちたのが何よりの証拠ですわ。さようなら!」 「やっぱり、この一年生に手を出してたのね、うそつき!」 やってきたモンモランシーによって惜しげもなくギーシュのあたまにぶっかけられるワイン/ 去って行く二人の少女/表情を崩さず芝居がかった仕草のギーシュ/哀れなほどに顔を青くするメイド。 ギーシュは表情を崩さず、だが肩を震わせつつメイドに問い詰めた。 「そこの君……。君の軽率な行動のおかげで、二人のレディが傷付いてしまったじゃないか? どうしてくれる気だね?」 「も、も、申し訳ありませんっ」 メイドから感じるのは心からの恐怖。 理不尽に対して怒りを覚えることのできない、剥ぎ取ることの難しいほどに染み付いた何かの匂い。 この一連の出来事と匂いに黙っているウフコックではなかった。 ルイズも未だ知らないお喋り鼠の悪癖――感情の匂いを頼りに相手の心の隙を付くこと。 「ったく、ギーシュったら本当に仕方ないわね。 ……って、ちょっとウフコック、どこ行く気よ!」 「待て。少なくとも彼女は、間違った行動は取っていない。 今出て行った二人を傷つけた人間が居るとしたら君しか居ないだろう」 「……誰だね?」 ウフコックは、元居たテーブルから飛び降りて、ギーシュたちの居る場所へと近づいてメイドを庇った。 誰がどう見ても、無鉄砲極まりない行為である。ルイズはウフコックを止めようとしたが、 お喋りネズミの口を遮るには至らなかった。 「……む、姿を隠さないで現したらどうだ!?」 「……下だよ、下」 ギーシュは声の主を見つけられずきょろきょろと辺りを見回す。 ギーシュの取り巻きの一人がウフコックを指差し、やっと見つけられたようだ。 「ね、ネズミっ!? ……ふ、ふん、貴族に説教とは、身の程をしらないネズミも居たものだ。 第一、ネズミがうろちょろしてる場所で、よく君達は食事ができるものだね。 ……おや、そういえばこのネズミはルイズが呼び出したのか。では、仕方無いな。 しかし魔法を使えなくとも、使い魔にマナーくらいは教えておいてほしいものだ」 平静な顔をしつつも、ギーシュは今の出来事に興奮しているらしい。 つい、ウフコックのみならずルイズを含めた何人かを愚弄する形になったが、当のギーシュは気付いていない。 「……へえぇー、言ってくれるじゃないのギーシュ……!」 流石にルイズも、ここまで愚弄されて黙っているほど人間はできていない。 「まあ、ルイズ、ここは俺に話させてくれ。 ……俺がここに居ることで不快に思う人間がいれば謝ろう。 また、彼女が香水の瓶を拾ったことで傷付いた女性が居たら、彼女と共に謝ろう」 「わ、私謝りますっ!」 「……ふむ、なかなか素直じゃないか」 冷静に、場を纏めようとするウフコックの言葉に、ギーシュは溜飲を下げそうになった。 メイドもそれにならって頭を下げようとする。 しかしウフコックは冷静であった。 事態に流されて頭を下げるほど、面食らってもいなかった。 「……だが、俺が謝ったところで、あるいは君が俺を詰ったところで、 君から離れた二人の少女が癒されるわけではない。 得られるのは君の刹那的な充足感であって、君の疚しさの根元が消え去ることは無い」 まるで、患者の不摂生を詰りもせず淡々と説明する医者のように、ウフコックは言葉を並べる。 ギーシュどころか、ルイズを含めた周囲の人間は、ぽかんとした表情すら浮かべた。 「できることならばその疚しさを解消してやりたいと思うのだが……、 今この瞬間にできることではないし、まず第一に、自分の冒した行動を自覚してもらなければならない」 「つ、使い魔に説教される覚えは無い! 僕が、この無礼な使い魔を摘まみ出してやろう!」 逆上し顔を歪ませウフコックを指差すギーシュ。 そして思わず杖を振って青銅のワルキューレを出現させ、ウフコックに掴みかかる。 あまりの出来事に、メイドは悲鳴を上げた。 「きゃあっ!」 「ちょっと何するのよギーシュ! 喧嘩売る気!」 「ふん、君がネズミでなければ決闘を申し込んだかもしれないが、 そんな非道な真似は僕はしないさ。 ただ僕の衛生観念上、ネズミにはここからご退場願おうと思ってね」 「喧嘩売ってるのと同じよ! ……ギーシュ、そこからちょっとでもその不細工なゴーレムを動かしてごらんなさい。 あんたのにやけ面が跡形も無い爆心地になるわよ」 今にも飛び掛らんばかりに怒りに目を吊り上げるルイズ。 だが、当のウフコックはワルキューレに掴まれた程度で焦ることは無かった。 むしろ激情に身を任せ怒りを発散させるルイズを恐れた。 ギーシュも心底恐れた。 「…そ、その、ルイズ、俺は全くもって大丈夫だ。君が落ち着いてくれ。 それに、だ。俺にとっては、この程度の事態など危機とすらいえない」 ウフコックはギーシュを見もせずに言った。 鼠に虚仮にされている、という事態にギーシュは頭が付いていかず、単純な疑問を口にする。 「……なんだって?」 ウフコックはギーシュと向かい合う。鼠らしからぬ力強い眼で相手を見据える。 「決闘、と言ったな。 互いの了承したルールに乗っ取って雌雄を決する、というのならば望むところだ。 ギーシュ、君に決闘を申し込もう」 前ページ次ページ虚無と金の卵
https://w.atwiki.jp/cookie_kaisetu/pages/1311.html
[部分編集] ハッキリ言っちゃうと…えっちがしたいゾ 通称 五十嵐兄貴セクハラうさぎちゃん 出演作品 秋祭り♡(森近霖之助)東☆方☆白書(森近霖之助B) CV ジュン(甘えたいゾ☆) ニコニコ user/70083956 静画 user/illust/70083956 Twitter @igarashi187 pixiv users/28223101 [部分編集] 概要 2017年8月頃~クッキー☆静画で活動する絵師。 秋祭り♡(2018年12月26日)で森近霖之助を演じた声優。 絵師活動や声優活動よりも、Twitter上でのペペーチョへの過度なセクハラ発言の方が有名である。 2018年上半期頃からペペーチョに対してTwitter上でセクハラ発言を繰り返しており、何度もブロックされては解除されたり発言を晒し上げられたりしていた。 その中でも特に2018年10月27日に晒し上げられた「ハッキリ言っちゃうと…えっちがしたいゾ><」の発言は今まで以上に大きな反響があり、この発言を元にしたイラストや朗読などがTwitter上で小流行した。 五十嵐やペペーチョの投稿した動画や静画にもその言葉が書き込まれるなど影響力は強く、語録化している。 2020年9月17日以降、消息不明となっていた。これについて逮捕説が存在していたが、10月7日に本人のツイートでそれが事実だったと判明した。 [部分編集] 主な持ちネタ ハッキリ言っちゃうと…えっちがしたいゾ>< ペペーチョに対するするセクハラから出た語録。 ペペーチョ「反吐が出る」 五十嵐「背中さするゾ」 五十嵐「たまには姉貴もデレてほしいゾ」 五十嵐「姉貴~」 五十嵐「人肌が恋しいゾ…姉貴は大丈夫なのかゾ?」 五十嵐「ハッキリ言っちゃうと…えっちがしたいゾ 」 五十嵐「姉貴~」 五十嵐「姉貴は興味ないフリをしつつも本当はセクハラされて嬉しいへんたいさんじゃないのかゾ…?」 五十嵐「甘えられるのは好きなのかゾ?」 五十嵐「嫌なら嫌って言ってほしいゾ」 五十嵐「俺は姉貴に甘えたいゾ~」 五十嵐「姉貴といっぱいえっちしたいゾ」 五十嵐「いっぱいえっちしようね」 参考:「野原しんのすけ、女性にセクハラDMを送る」 うーちゃん ペットの兎・飼い主と異なりかわいい(性別は不詳)。五十嵐が定期的に愛らしい姿をTwitterにうpしている。 五十嵐が行方不明(拘留されてた)時に各フォロワーから残されたうーちゃんの安否が心配されたが、 後に拘留中は知人の家で無事保護されていた事が明らかになった。 未成年淫行 2020年9月17日頃、未成年女性に淫らな行為をしたとして逮捕された。10月7日頃に出所。(本人報告) 2020年10月7日に判明したことによると、示談金10万と罰金40万、そして「二週間以内に罰金用意できないと労働所送り」という。 尚、逮捕ツイートに始終噛み付いていたКОНЬは過去に五十嵐から交通費を持ち逃げした女で被害者は全くの別人。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5648.html
前ページ次ページ虚無と金の卵 ミス・ロングビルの顔――学長のセクハラに耐える美人秘書。 一般的に見て美人で清楚。学園という閉鎖的な空間においては、まさに男性教師陣の薔薇と言えた。 もう一つの顔――王立銀行の金庫/貴族屋敷の宝物庫/大商人の蔵/種類を問わず神出鬼没、 トリステイン中の金持ちを震え上がらせる謎の怪盗『土くれのフーケ』。 魔法学院本塔に垂直に立つ女性の姿を、二つの月の光が浮かび上がらせる。 「ふう……ここまで堅牢とはねぇ」 土系統のエキスパートであるフーケは、その自身の魔法を駆使して宝物庫にあたる場所の壁に垂直に立ち、 そして足の裏から伝わる感触で壁の厚さを図っていた。 舌打ちし、忌々しげに足元の宝物庫の壁を見つめる。 「あのコッパゲから話を引き出したは良いものの……いくら物理的な力に弱いったってね……。 こんな堅い壁、ちょっとやそっとじゃ手出しできないじゃないか」 フーケの狙い、それはこの宝物庫の中にある『破壊の杖』。 詳細は知らずとも、フーケ好みのマジックアイテムであった。 そして、謎の多い骨董品である。例え見掛け倒しの道具だったとしても、好事家には高く売れる一品には違いない。 フーケはオスマンの秘書に身をやつしてセクハラに耐えつつ、この宝物庫を開ける機会を虎視眈々と狙っていた。 「『固定化』以外の魔法はかかってないみたいだけど……これじゃあ私のゴーレムじゃ壊せそうにないわね」 フーケは悩む――か細い突破口を求めて。 * ウフコックの顔――元軍属の実験動物であり、マルドゥック市における09法案の執行者。 ウフコックの顔――変身能力と読心能力を持つ、ルイズの使い魔。 そしてもう一つ――学園に溢れる使い魔と、アルヴィース食堂の間を取り持つ、頼れる交渉人。 ”ちびちび、頼んだのね! ベアなのね! 食糧事情改善なのね!” ”……あー、シルフィードの要求は流していいから。頼んだぜ” ”ヴェルダンデはミミズ食ってきたから要らないってよ。自分が言えっての。あいつ主人が負けてスネてるんだぜ” 「うーむ……要らぬ軋轢を生んでしまったな」 ”なぁに、気にすんなよ。主人だってピンピンしてんだ。あいつもすぐ元気出すさ” トリステイン魔法学院の使い魔の朝は早い。 朝もやすら出ていない夜明け前。 大勢の使い魔の賑やかな応援を受け、ウフコックは学院の中庭からアルヴィーズ食堂の厨房へ繋がる裏口を開いた。 きぃ、と木の扉特有の音が鳴る。 使い魔たち以上に、厨房で働く人間の朝は早い。料理人や使用人達は既に朝食の準備で慌しく働いていた。 ウフコックは鼠らしからぬ鈍重な動きで扉の側の木机をよじ登って息を整える。 そして、遠慮がちに呼び鈴を鳴らした。 「ん? ……おお! 我らの<交渉人>が来たぞ!」 呼び鈴に気付いたマルトーが大声を張り上げた。 「忙しいところ邪魔してすまない」 「なに、お前さんがいると助かるぜ。エサが残されなくなってきたし、腹減らして暴れる使い魔もずいぶん減ったもんだ。 ……して、今日の注文は?」 「20匹ほどは、自前で飯は済ませているから要らないとのことだ。 シルフィードとフレイムは肉を多めにしてあげてほしいと言っていた。あとはだな……」 厨房で働く者がネズミを好意的に扱うなど、まず有り得ない。 ウフコックも召喚された当初は同様――使い魔といえど、厨房を荒らす泥棒が敷居を跨ぐことはできない。 一度など、箒を持ったメイドに追い回されたこともあった。 だがウフコックは、調理前の材料を齧り回るような野生動物とは一線を画す。 下手な平民や貴族よりも余程理性的であり、そして他の使い魔――どちらかといえば野生動物に近い部類とも会話することが出来る。 そして何より重要な点――この学院のメイドを庇い貴族と戦った鼠。 マルトーも一目置かざるをえず、今や対等の口を聞くまでになっている。 また助けられたメイドのシエスタも、ウフコックの正義感に痛く感激し、食堂のアルヴィーが並んでる一角にウフコック用の席と木皿、 昼寝用のベッドさえ作ってしまうほど可愛がっていた。ただ、目立つことこの上ないのでアルヴィーの横は勘弁してほしい、とウフコック自身頼み込み、ウフコック専用席はしぶしぶ厨房の一角に移されている。 厨房で準備を働いていた当のシエスタも、ウフコックに気付いてそそくさとやってきた。 「ウフコックさん、今日は何になさいます?」 「いや、そう気を遣わなくても良いんだ。十分に餌は貰っているし」 「……そうですか。でも何か要りようでしたら、いつでも言ってくださいね!」 「おお、我らが交渉人は何と慎ましいんだろう! シエスタ! こいつにアルビオンの古いのを出してやれ!」 「はい!」 「その……いや、ブルーチーズなんて特に駄目なんだが。頼む、普通ので良いんだ……」 このように、ウフコックは学園の様々な人間/使い魔に重宝された。 だが、その中には当然、良からぬ使用法を思いつく者も居る。 ある虚無の曜日の昼下がり、ルイズが一人で勉強や訓練をしている間、邪魔しないぬようヴェストリ広場にでも出かけるか――。そうウフコックが考えて寮の廊下を歩いていたそのとき、フレイムが呼び止めた。 「おや、どうしたフレイム?」 ”よう。ご主人がお前に相談があるそうなんだが、来てもらえるか?” 「確か、フレイムの主人はキュルケだったな」 ウフコックは、ルイズがキュルケに対抗心を覚えていたのを漠然と思い出した。 まあ、話を聞く程度ならばどうということもあるまい――ウフコックはフレイムの申し出に首肯する。 「まあ、俺は構わないが」 「きゅる(助かる。部屋はこちらだ。乗っていけ)」 フレイムは自分の首に乗るよう、ウフコックを促す。 ウフコックはルイズの部屋に書置きだけを残し、フレイムに乗ってキュルケの部屋を目指した。 「あら、いらっしゃい。よく来てくれたわ! ウフコックはフレイムに乗れるのね、二人とも様になってるわよ」 金色のネズミがサラマンダーに騎乗する姿は、まるで動物を擬人化した絵本の如くである。 「……褒められてるのか?」 「きゅる(ま、ご主人はいつもこんな調子だぜ)」 ともあれ、喜ぶキュルケに水を指すほどでも無い。そして落ち着いて招かれた部屋を見回す。 部屋の主人のキュルケがベッドに座っているのはともかく、見慣れない女性のメイジが椅子に腰掛け、本を読んでいた。 「ああ、この子と話すのは初めて?」 「……タバサ。よろしく」 タバサと名乗る青髪の小柄な少女は、読みかけの本を閉じて簡素な挨拶を述べた。 「初めまして。俺はウフコック。ルイズに召喚された使い魔だ。 ここに招いてくれたのはキュルケだろうか? 君だろうか?」 キュルケとは大分異なる性格のようだ。 良く言えば楽天家で前向き、悪く言えば享楽的なキュルケに比べ、禁欲的で純粋、そして悩みがちな空気が漂う。 まるで正反対な二人、だが二人のお互いを信頼する匂い――まさにパートナーとでも言うべき関係――をウフコックは感じていた。 また、それと別に感じ取った匂い――キュルケからは何かを企む匂い/タバサからは、つき合わされている匂い。 「呼んだのはキュルケ。私も招かれた」 「そういうわけよ。来てくれてありがとね」 「ふむ……?」 「ま、そんな大した話じゃないわ。……ねぇ、二人とも」 キュルケは、手にした紙箱からカードの束を取り出した。 しゃらり、と滑らかな手つきでシャッフルしつつ一人と一匹に尋ねる。 「カードゲームって、好き?」 『サンク』――平民、貴族を問わず広く行われる、ごく一般的なカードゲーム。 トリステインや近隣の国のカジノにおける華とされるゲームの一つ。 4大属性、土水火風の4種のスーツ/スーツ毎に1から13までの番号が描かれたカードから5枚の手札を選び、 その組合せで勝負を決するゲームである。 キュルケがタバサ、ウフコックを誘ったゲームこそ、サンクであった。 「……ルールはさておき、単純に貴方の体じゃ難しいかしら?」 カード1枚の大きさ=ウフコックの体長とほぼ同じ程度。 「いや、カードをひっくり返す程度ならば問題は無い。それに、表面が下に隠れていても、手札くらいなら覚えておける。 しかし、クローズドポーカーのようなルールだな……」 「ん? なあにそれ?」 「ああ、召喚される前、周囲の人間がよくやっていたゲームだ。 似たようなカードを使ったゲームだから、ルールもすぐ理解できると思う」 「へぇ、それじゃあもしかしてウフコックは、東方から来たの?」 「東方? ……よくは知らないが、君達にとっては東方と言うのかもしれないな。 ただ、ハルケギニアとの正確な地理関係もわからないから何処とも言い難い。 恐らく、君らにはまったく知られていない地名だろうし」 「ふーん……? 随分遠いところから来たみたいなのね、貴方」 好奇心に満ちたキュルケの甘い囁き。 だが人間の男ならともかく、ウフコックは当たり前の如くネズミであり、惑わされることもない。 「そんなところかな」 「ま、いいわ。ゲームを始めましょう。今日はお金賭けるのは無しね。賭け金の代わりに玩具のコインで済ませるわ。良いかしら?」 キュルケの言葉を皮切りにゲームが開始された。 初回プレイ――ウフコックにルールを教えるための、チュートリアルを兼ねたゲーム。 敢えて手札を晒して手役の強さなどを解説しつつ、なだらかにゲームは進む。 ある程度の役を説明したところでチュートリアルは終了、本来のゲームの流れに突き進む。 ――結果的にはタバサの圧勝。 運勢に左右されてキュルケやウフコックが勝ちを拾うことはあったが、当然、巡る運勢だけでゲームを支配することはできない。 序盤戦の終了後、ウフコックが漏らした一言/概ねルールは理解した。 この手のゲームの初歩。ルールから導き出される確率を把握すること。 元々ウフコックは数字に明るい。 十分な知性を持って誕生した生体兵器であり、ウフコック自身が反転変身する道具には電算機器や記録媒体も含まれる。 ウフコックの反撃。タバサとの差を徐々に埋め始める。 タバサの余裕――そうこなくては面白くない。 「さて、ディーラーは交代ね。次はタバサ、よろしくね」 タバサは小さく頷く。 キュルケ以上に手馴れた手つきでシャッフル――ゲーム再開。 一進一退。時折、狙ったかのごときタイミングでチップを上乗せし、無謀な手役で挑んでくるウフコック。 タバサやキュルケの手札に同じ役があっても、カードのナンバーや属性などの僅差で大きな勝ちを拾う。 ――中盤戦も終わりに差し掛かった頃の、ウフコックの一言/概ねパターンが理解できた。 「なら、ここからが本番」 珍しくタバサが重い口を開く――お手並み拝見という余裕の姿勢を見せつつも、ウフコックがやり手であることを感じている。 サンクとは資金に応じた戦略を立て、緻密な戦略を立てる知略戦である。 だが単純な1ゲームだけに限れば、駆け引き、即ち心理戦の比重も小さくは無い。 「お手柔らかに頼む」 ただ、カードの擦れる音が響く。 キュルケ達の間に、普段の軽妙な掛け合いは無い――レイズ、フォールド、そして手札の役名だけを淡々と呟く。 中盤戦に入ってからのなだらかな変化。初回から終始、堅実なゲーム運びを見せていたタバサの手が乱れる。 いや、乱された、というべきであった。 僅差でのレイズ、フォールド――タバサの一歩も二歩も先も想定したウフコックの戦術。 タバサは気付く――ゲームを覚えたてのネズミに、赤子の如くあしらわれている。 タバサの知る良しも無いウフコックの嗅覚、それは心理戦を行う上で絶大な優位をもたらす。 完璧なイカサマでも無い限り、プレイヤーの心理を読み切った時点でウフコックの勝利は揺るがない。 タバサの表情こそ平静そのもの。だが混乱と、徐々に高まる戦意の匂いを隠せていない。 対してウフコック自身は何にも惑わされない。混乱に乗じて貪欲に機械的に、キュルケとタバサのコインを貪る。 「……まるで、読み切られている」 ぽつり、とタバサが呟く。 堪えるタイミング、賭けに出るタイミング、全てがタバサの手の裏目を付くウフコックの判断。 タバサにしては珍しく、声色に苦々しい感情が灯っていた。 「タバサに苦い顔させるなんて流石ねー。見込んだ通りだわ」 ちなみに、キュルケはほぼ勝負から降りている。 ゲームの勝ち負け以前に、ウフコックとタバサを巻き込んだ時点で既に満足していたようだ。 「何故わかるの?」 「……さて。まあ人間観察、といったところだろうか。俺は人間と比べれば感覚が鋭い。 例え表情に出さなくとも、誰であれ視線、指先、チップを出すタイミングや並べ方、ふとした些細な瞬間に感情が外に現れる。 例えばタバサ、君ならば、特定のカードが揃った瞬間――『風』のカードが集まるとき、ほんの少しだけ『安心』を感じている」 「そう……。それじゃあ、私がまだまだ甘い、ということ……」 「上には上が居るものねー。でも十二分にタバサは勝負強いのよ? ウフコックが強すぎるのよ」 「……うーむ、鼠に生まれた俺自身の感覚が強さの理由だろう。だから、あまり自慢にできないんだ」 「……次は勝つ」 珍しく素の感情を表すタバサ。キュルケは頑張れ、と応援するかのようにタバサの頭を撫でる。 「まあ、ウフコックも、生まれ持った才能ならそれを活かすべきよ。タバサも次の機会に挑んで見なさいな。 ……さて、みんなゲームで親交を深めたことだし、次が本番ね」 にやり、とキュルケが微笑む。利益を嗅ぎつける人間の匂い――ウフコックは懐かしさすら感じた。 「ああ……その、もしかしてキュルケ……」 「私ね、良いカジノを知ってるのよ」 「他人の使い魔連れ込んで何教えてるのよっ!」 大声と共に、どかんと大きな音を立て、キュルケの部屋の扉が開いた。 前ページ次ページ虚無と金の卵