約 870,587 件
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1068.html
というわけで、ようやくカインとクラウディアのお見合いである。このまま二人の掛け合いをずっと書いていても楽しそうではあるのだが、それではいつまでたっても話が前に進まないので、きりのいいところで。 「帝國」において皇帝より授けられる勲章の中で、最も高位のものとされるのが殊勲章である。この勲章は、総司令官として軍を率いて「帝國」の平和と安寧を害する敵と戦い、これに勝利したものにのみ授与されるものであった。通常は外国との戦争に勝利した時に叙勲されるのであるが、「内戦」終了後、皇兄アルトリウス元帥や大ガイユス将軍、ネロ将軍、シルディール将軍、マクシムス将軍らの上級殊勲章受勲をはじめとして、多数の皇帝軍軍人に対しても授与されている。 この殊勲章は皇宮にて皇帝自ら親授される唯一の勲章であり、その儀式の一つとして当該戦役に参加した将校下士卒らが「帝都」正門より皇宮まで行進する凱旋式が行われる。 カイン・オクセンシュルヌス・トゥルトニウス帝国公爵は、黒革の馬具と一門色の菫色に精霊銀糸の刺繍がなされた鞍下を装備した青毛の西方馬にまたがり、近衛軍団練兵場にて待機していた。その後方には、このたびの連合王国との戦争に参加した帝國軍や各一門の将校下士卒らが、礼装をまとって待機している。 幸いにして天気は雲ひとつない快晴で、風が多少強いくらいであった。 「オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公爵閣下、凱旋式開始の時刻となりました」 凱旋式の進行は、伝統的に近衛軍団の仕切りである。菫色の礼装に身をつつみ平頭の軍帽をかむったカイン卿は、その近衛軍団の士官からの報告にうなずくと、右手を上げて式典開始の合図を送った。それにあわせて喇叭手が朗々と「行進準備」を吹奏し、各隊が一斉に足踏みを始める。 凱旋式に参加する軍勢の先頭をゆくのは、近衛軍団の軍楽隊と先触れ係である。朗々たる美声でカイン卿の名前と功績を触れつつ、皇宮への道のりを先導してゆく。街路の両脇は「帝都」住民が埋め尽くし、彼らが進路上にあふれ出さないように近衛軍団の礼装の兵士が立ち並んでいた。そしてそれら住民達が英雄の登場を今か今かと待ちかまえる中、「帝都」正門にカイン卿を先頭にした軍勢が入門した。 城門の上からこれでもかといわんばかりに花びらがカイン卿らの上にふりまかれ、沿道の群集から歓呼の叫びがあびせられる。 先頭をゆくカイン卿のすぐ後ろを、右側に軍勢を実質的に指揮していたトルステンヌス・ゲミニウス将軍が、左側にカイン卿を終始補佐し続けていたナティシダウス・キンニアヌス候が続き、さらにその後ろをそれぞれの軍旗を掲げた帝國軍第12軍団、オクセンシュルヌス一門、ナティシダウス一門、セルウィトス一門、そして北方諸侯の指揮官幕僚達が続く。さらにその後ろを、この戦争に参加した部隊が軍旗を先頭に続いていった。 カイン卿らは、近衛軍団軍楽隊の演奏する重厚かつ勇壮な行進曲に導かれて「帝都」中央通りを行進し、群集の歓呼の声を背に、皇宮正門へと到着した。その門は、当時の皇帝ユリアヌスが現皇宮を建築させた際に、西方魔族との戦争に勝利した事を記念して建築させた凱旋門でもあり、乳白色の大理石を外装に使った見事な建造物であった。そのユリアヌス帝凱旋門の内側には、漆黒の機神「黒の龍神(ニグレド・ドラクデア・ウヌム)」が12機、右手に長斧(バルディッシュ)左手に方形盾を構えて二列に整列している。 今上皇帝の権力の象徴たるこの12機の漆黒の機神の間を進んだ先に、式典用のナイアデ・ヤデウス宮殿がある。その柱廊で構成された半円形の宮殿の外廊には、多数の元老院議員をはじめとする帝國諸侯らが座し、カイン卿の入場を待っていた。 「連合王国への勝利者、北海への路を開けし者、オクセンシュルヌス一門宗主、トゥルトニウス帝國公爵、カイン卿、御入場!!」 触れ係が朗々たる美声を広場に響き渡らせると同時にその空間を拍手が満たす。続いてユリアヌス帝凱旋門を通って入城してきた部隊が、栄誉礼が演奏される中、それぞれ列を作ってカイン卿の後ろに整列した。 「最高統帥者、市民の第一人者、国家の母、「帝國」皇帝、ケイロニウス一門宗主、ケルトリア皇家当主、リランディア陛下、御来臨!!」 広場から続く緋毛氈の絨毯の敷き詰められた階段の先に据えられた玉座の前に、今上皇帝リランディアが、貴色である赤紫色の地に神聖金の刺繍を施された帝衣をまとい、神聖金の月桂冠をかむって現れた。そして彼女に伴われて現れた副帝レイヒルフトが皇帝の右後ろに、皇太子カタリナが左後ろに立つ。それにあわせて宮殿外廊と広場にいる全ての人間が起立し最敬礼をした。カイン卿ら乗馬して広場に入場した者達も、そろって下馬し腰を折る。 「オクセンシュルヌス一門宗主、トゥルトニウス公爵、カイン卿、これへ」 リランディア帝の幼いがよく通る声が広場に響き渡り、皆が腰を伸ばす中、カイン卿は目の前の階段をゆっくりと登っていった。そして、今上帝の前に立つと直立不動の姿勢をとって腰を深く折って改めて最敬礼する。 「帝國暦1096年、第5の月、第7の日、汝オクセンシュルヌス一門宗主トゥルトニウス公爵カインは、其の頽勢挽回を期しダヴィガ河を渡りて侵攻しある連合王国軍を邀撃し、寡勢をもって之に痛打を与え心胆寒からせしめて撤退させしは、「帝國」の安寧に寄与すること極めて大にして其の武勲顕著なり、よってここに其の殊勲を顕彰せしむるものなり」 皇帝リランディアが、両手で掲げた賞状を良く通る声で読み上げた。 カイン卿は、リランディア帝の嘉賞が終わったところで腰を伸ばし、差し出された賞状を両手で受け取り、再度腰を深く折った。そして、再び腰を伸ばすと賞状を丸めて左脇に抱え、今上帝手ずから左肋に殊勲章の徽章を着けられるのを直立不動の姿勢で受けた。 徽章を着けたリランディア帝が一歩下がると、カイン卿は再度最敬礼し、階段の縁までゆっくり後ずさると、腰を伸ばして回れ右し、右手を上げた。 広場は再度万雷の拍手と兵士らの歓声に満たされ、軍楽隊が演奏する栄誉礼の中を、カイン卿はゆっくりと階段を降りてゆき愛馬の隣に立った。 そして皇帝リランディア、副帝レイヒルフト、皇太子カタリナの短い嘉賞の演説がなされ、広場は繰り返し拍手と万歳の声に満たされた。 続いて皇宮内で、この戦争に参加した者のうち受勲が決まった者に賞状と勲章が授けられた。殊勲章は皇帝自らに授けられる親授勲章であるが、それより下位の勲功章、戦功章、武功章は、代行者によって授与されることになる。それらの儀式が終了してから後、勲功章以上受勲者は、今上帝御臨席の宮中晩餐会に参加する事となる。 カイン卿は、副帝レイヒルフトの隣の席に座して晩餐会に参加することになっている。「帝國」における式典では、常に皇帝、皇后、副帝、皇太子が皇族代表として上座を占めるため、その次の席次に位置するカイン卿は、実質的にこの晩餐会の最上位にいるといってよい。そして彼の下座に席するいくらか年上の姫君がいた。身体の線を描き出している蒼い袖無しの首まで覆うドレスに、二の腕まである長手袋、そして精霊銀と魔晶石の額飾りという正装をまとった凛とした美しい女性である。 彼女は、カイン卿よりも相当に背が高く、そして軍人の様に姿勢が良い。露出している肩口や首筋は筋肉質でありながら、豊かな胸と引き締まった腰つきをしている。さらには銀縁の細長い眼鏡をかけている事もあって、かなり近寄りがたい雰囲気をまとわせていた。艶やかで豊かな黒髪をまとめて精霊銀の髪留めで留めているせいで見えるうなじは白く、それが大人の女性らしいあでやかしさをかもし出していた。 「カイン・オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公、クラウディア・セルウィトス・セルトリア姫、起立なされよ」 水晶の鈴の音の様な幼帝陛下の声にうながされ、カイン卿と、その隣の女性が席を立った。 「このめでたき日に、諸卿らにさらなる慶事を伝えられることを朕は嬉しく思う。朕は、朕の夫を仲人として、オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公と、セルウィトス・セルトリア姫の婚約がなったことをここに伝えたい」 皇帝リランディアの言葉に、晩餐会の出席している諸卿らから拍手が沸き起こる。それに一礼して応えたカイン卿とクラウディア姫は、互いの手と手をとりあった。 「この数年の「帝國」の西方は、静謐とはいいがたいものであったことは、朕も認めるものである。しかし、此度の戦勝によって西方に平和が訪れ、民の平安が保障されんことを朕は願うている。その証として、この両名の婚約を朕は認めるものである。あらためて卿らに「帝國」の静謐のための尽力を願いたい」 リランディア帝の言葉に、臨席している諸卿らの拍手は一層大きくなった。これまで「帝國」の対西方政策は、中原諸国を西方辺境候が相手をし、連合王国を北方辺境候が相手をするという形で二分化されていた。今現在は北方辺境候位を副帝レイヒルフトが兼任しているが、その対連合王国の第一線に立つオクセンシュルヌス一門と、対中原諸国の第一線に立つ西方辺境候家との間で婚儀が結ばれるということは、「帝國」が対西方問題の解決に本腰を入れるという事を意味する。 現在のペネロポセス海の不安定化、先年の対オスミナ戦争での敗北といった不安が取り沙汰される中、「帝國」の外交方針がしっかりと腰をすえたものになるのは、帝國諸侯にとってはまことに歓迎するべき状況であったのだ。 「「帝國」が戦争の惨禍より立ち直り、改めて繁栄を謳歌できるようになることを、朕は心より願うものである。「帝國」に主の恩寵が垂れられんことを願って乾杯をしたい。……、乾杯!」 「「「乾杯!!!」」」 リランディア帝の言葉に席を立った諸侯らが乾杯を唱和するのにあわせて、カイン卿もクラウディアも、グラスを掲げて乾杯の声を上げた。 カイン卿の殊勲章受勲よりいくらか時はさかのぼる。 副帝レイヒルフトの突然の来訪より数日経ったある日、凱旋式挙行の打ち合わせのために参内したカイン卿は、その打ち合わせが終わる早々に副帝自身より結婚相手の肖像画を紹介されていた。そこに描かれている女性は、背筋の伸びた彫りの深い容貌をした美しい女性であった。 「こちらの姫君は、どちらの家中の方でいらっしゃいますでしょうか?」 カイン卿の質問に、副帝レイヒルフトは、左手で杖をつき右手を自身の腰に回した姿で肖像画を見つめつつ答えた。 「セルウィトス・セルトリウス西方辺境候家のクラウディア姫です」 「クラウディア姫、でいらっしゃいますか?」 「はい」 レイヒルフトの返答に、カイン卿はそのまま肖像画を見ながらむっつりと押し黙ってしまった。 北方辺境諸侯であるカイン卿にとって、西方辺境候家とは、対連合王国問題について常に足を引っ張る面倒な相手でしかない。西方辺境は、彼らなりの理由があって中原諸国に干渉しているのであろうが、その結果として中原最大の大国である連合王国が、ゴーラ帝国と手を組んでは北方辺境にあれこれちょっかいを出してくるのであるから、その矢面に立たされるオクセンシュルヌス一門としてはたまったものではない。なにしろ北方辺境最大の敵は、あくまでゴーラ湾やフィンマルク湾を中心にすえた内海帝国であるゴーラ帝国であり、連合王国問題はできれば棚上げにしたい存在であるのだ。 かつて北方辺境候であったヤン・アドルファス・グスタファスがジュウキエフ市攻略のために軍を発したのも、対連合王国問題の解決以上に、対ゴーラ帝国問題を根本的に解決することを狙ったためである。畢竟「帝國」にとっての北方問題とは、北海交易路の安定化にあったと言っても過言ではなかった。 そんなカイン卿の考えを知ってか知らずか、レイヒルフトは言葉を続けた。 「中原諸国問題の解決の要諦は、連合王国との関係をいかにするかにかかっています」 「つまり、対中原諸国、対連合王国と分かれていた外交政策を一本化するということでしょうか?」 「はい。そして、対中原諸国問題は西方辺境候の所管です」 つまり、この婚姻によって対連合王国の第一線に立つオクセンシュルヌス一門を西方辺境候配下に移し、中原諸国問題の解決に当たらせるという事である。 そこに考えが至ったカイン卿は、無表情になると必死の思いで思考をめぐらせた。 中原諸国問題の解決に目処が立たない最大の理由は、彼らに干渉する大勢力が複数存在するからである。すなわち「帝國」をはじめとして、「神殿」、「関税同盟」、連合王国、そして西方魔族と、いくつもの勢力が合従連合して干渉しているのだ。 しかしこの数年で、「神殿」はトイトブルグへの干渉に失敗してかなりのところまでその勢力を無力化された。特にその権威が、地に落ちたにも等しいというのが大きい。「関税同盟」は、聖グアベロ皇国の権威の低下によってゼニア共和国が主導権を握りつつある。そしてかの共和国は、常に自国の利益を最優先にして外交姿勢を決める国でもある。西方魔族は、下手に動けば周辺諸国全てを敵に回しかねないという枷がある。なにしろ魔族が相手となれば、「神殿」系諸国は問答無用で団結して対処しようとするであろう。それほどに人族と魔族の間の溝は深い。つまり、関税同盟との関係をどうにかできれば、かなりの長期間にわたって中原諸国を安定化させられる可能性が高いということになる。 「幸いにして、今回の講和によって「帝國」は、ジュウキエフ市を経由して北海交易を拡大できる機会を得られました。「連合王国」は、これまで「帝國」がゴーラ帝国を経由していた分の交易を、自らの側に引き寄せようと考えたのでしょう」 「帝國」は、内陸国家でありながら、多数の河川を中核として緻密に水路を張り巡らせた活発な物流網を有する一大産業国家である。そしてその広大な国土と、多くの人口によって多くの物資を生産し、周辺諸国と活発に交易を行ってもいる。その「帝國」の生産品は、遠く西方の超大国「王冠盟邦」にすら輸出され、間で交易に携わる国々に多くの富をもたらしている。本来ならば連合王国は、ゴーラ帝国と北海交易の主導権を巡って争う仲であり、「帝國」との抗争などあくまで副次的なものであるはずであった。国境を接する大国同士が友好的関係を維持するのは極めて困難であるが、それでも連合王国と「帝國」との間には、ジュウキエフ市侵攻までは、そこまで深刻に敵対する理由は存在しなかったのだ。 「中原諸国問題解決の主導権を巡って、「帝國」と連合王国の間により深刻な対立が発生する可能性をどうお考えでしょうか? 陛下」 「中原諸国問題の抜本的解決は、「帝國」の手によっては不可能でしょう。宗教が違うという事は、それだけの困難をともないます。「帝國」に対し敵対的姿勢をとらないのであれば、中原諸国に対する覇権を一時的に連合王国に認めても構わないと考えています」 「……あくまで一時的に、ですか?」 「はい。「帝國」は中原の統一を認められません。彼らが分邦しつつ、しかし帝國に対し友好的である事が最も望ましい関係であると考えています」 カイン卿は、その言葉の意味を必死になって考えていた。 連合王国が中原諸国への干渉の主導権を得たとしても、「関税同盟」との覇権争いになるのは確実である。「神殿」の権威が低下した今、「関税同盟」で主導的立場にいるのは、ゼニア共和国と森族である。連合王国は、その名の通り複数の国家が同一の国王を頂いているだけの連合国家であり、当然それぞれの国によって利益は異なり、それ故にそれぞれの国の貴族が利害を調整するために「大議会」という等族議会を必要としている。そして「帝國」は、ジュウキエフ突出部を自ら放棄した結果、連合王国と協調できる余地を獲得したと言ってもよい。短期間ならば、連合王国と友好関係を築き上げて、対西方諸国同盟を結ぶことすら可能になるのではなかろうか。あくまで短期間ならば。 ならば、その時間で「帝國」は何をしようというのか。 「……「帝國」は、中原諸国問題を棚上げすることによって得られた時間で、ゴーラ帝国を処理するということでしょうか?」 中原諸国問題について連合王国と短期間の同盟を結ぶことができたとしても、それが「帝國」の利益に結びつかないとなれば、再度の敵対は避けられない。そして連合王国が「帝國」の利益になるように動くことは、誰にも保証できはしない。しかし、中原を巡って連合王国と「関税同盟」が対立すれば、その間は「帝國」が北方で自由に動ける余地が生まれる。 「はい。現時点での「帝國」の最優先課題は、対オスミナ敗戦によって低下したゴーラ湾沿岸諸国に対する影響力の回復にあります。そして「帝國」にとってそれは、抜本的解決を目指すものでなくてはなりません」 「……抜本的解決という事は、戦争を前提としたものになるのでしょうか?」 カイン卿は、あえて一歩踏み込んだ問いを発した。 その問いにレイヒルフトは、微笑みを浮かべて答えた。 「抜本的解決とは、常に軍事力の行使によってなされるものです」 「……了解いたしました、陛下」 「そして、中原諸国対応は西方辺境候の所管ですが、ゴーラ湾沿岸諸国対応は北方辺境候の所管です」 「はい、陛下」 「さて、そこで私から質問ですが、貴方は、次の北方辺境候に相応しいのはどなたと考えますか?」 レイヒルフトの問いに、カイン卿は一瞬めんくらった表情を浮かべ、それから急いで思考を回転させた。 元々が北方辺境候位は、アドルファス一門が継承してきたものである。しかしヤン・アドルファス・グスタファス候の決起によってアドルファス一門への信頼は地に落ちた。唯一泥のついていなかったカリナス・アドルファス・アレクシス候は、オスミナ侵攻失敗の責任をとって自決してしまった。つまりアドルファス一門からは、次の北方辺境候を出すことはもうできない。 かといって、北方諸侯に誰かそれに相応しい大貴族がいるかというと、それも考えざるを得ない。なにしろそれだけの格を持った貴族は、「内戦」によって死亡するか隠棲してしまっている。かといって中央から誰かを派遣するとしても、よほどの格を持った人物でもない限り北方諸侯が大人しく従うわけがない。 しかも、ゴーラ帝国との全面戦争も視野に入れての人事である。貴族としての格と、政治的、軍事的才能を併せ持った人物。 となると、カイン卿には一人しか思いつかない。 「……副帝陛下以外に、考えられません」 「なるほど」 レイヒルフトは、カイン卿のその答えにさらに微笑みを大きくした。 「貴方が、ゴーラ湾沿岸諸国問題の抜本的解決について、正しく判断し評価している事は理解しました」 「ありがとうございます、陛下」 「よって私は、貴方に北方辺境候に就任する事を要請します」 「……え?」 それは、カイン卿がまったく予想だにしていなかった内容であった。 カイン卿の戦争経験は、先日の対連合王国戦一回のみである。政治家としては、なんとか一門が分裂しないように取りまとめるので精一杯の若輩者である。まして他の同格の一門をその配下に納めて対外戦争を行うなど、夢想すらしたことはない。 「自分には、北方辺境諸侯を取りまとめるだけの格も、ゴーラ帝国との戦争で勝利できるだけの才能も、その後の関係修復を達成できる能力もありません。……自分は、まだ、ただの小僧に過ぎません」 悔しいが、それが事実である。カイン卿は、まだ十代の子供であり、連合王国との戦争も援軍に来た他一門諸侯の力添えがあって勝てたのであり、その後の講和条約締結の成功もひたすら借金した金で買ったものである。さらには、ただ一度の紛争でこれだけ心身を衰弱させたくらいには、身体が弱い。とてもではないが、北方の大国であるゴーラ帝国との全面戦争をも視野に入れた、ゴーラ湾沿岸諸国の「帝國」への服属を成功させられるとはとうてい思えない。 「なるほど。つまり、格と、才能と、能力があれば問題はないわけですね」 「……何を仰っているのか、自分には理解できません、陛下」 「問題の解決には、解決の障害を正しく認識し、それをいかに排除してゆくかが必要となります。そして貴方が北方辺境候としてその職務を遂行するために解決するべき問題は、今貴方自身が明らかにしました」 「ですが、格と、才能と、能力が無い僕に、何が残るというのですか!?」 「意思があります。正確には、問題を解決するために断固として意思を継続させる力が」 「……僕に、ですか?」 「はい」 レイヒルフトの言葉は、過大評価もよいところではないだろうか。カイン卿は、拳を握りしめそう心の中で自嘲した。 そんなカイン卿の様子を、レイヒルフトは微笑みながら見つめている。 「貴方は、連合王国との講和を、私が許容できる条件で成立させました。勝利とは、戦場でではなく、講和の交渉の中で確定されるものです。戦場での勝利とは、敵を講和の席につけるためのものでしかありません。そして貴方は、戦場での勝利を正しく利用し、「帝國」にとって必要な条件を獲得しました。これが私が貴方を評価する理由です」 「過大評価です。僕は追い詰められて、あがいただけです。同じ真似がゴーラ帝國を相手に通用するとは、到底思えません」 「貴族としての格は、この婚姻による西方辺境候と私の後見で得られるでしょう。軍事的才能は、それに相応しい軍人を貴方の指揮下に置きます。当然、必要な数の軍団も。政治的能力についても、その能力を持った者を送ります。あとは、貴方が断固とした意思をもってゴーラ湾沿岸諸国を「帝國」に服属させるだけです」 「帝國」の最高権力者にここまで言わせておいて、これで北方辺境候就任を断ることができようか。これ以上はただの逃げである。すでに逃げる機会は逸しているのだ。オクセンシュルヌス一門宗主となってしまった時点で、もう逃げるという選択肢は残されてはいない。 「判りました。やってみます」 覚悟を決めた表情で、カイン卿は、そう言葉少なに答えた。 その答えに満足したかのように、レイヒルフトは深く微笑んだ。 レイヒルフトとの会談後、セルウィトス・セルトリウス西方辺境候姫の肖像画とともに屋敷に戻ったカイン卿は、寝室にその肖像画を飾らせ寝台に横になって数日静養していた。薬湯と軽い食事を口にしつつ、適当に本を読み、時々クラウディア姫の肖像画を眺めつつ思索にふける。そんな毎日であった。 肖像画の彼女は、セルウィトス・セルトリウス家の家色である蒼色のドレスを身にまとい、わずかに微笑んでこちらを見つめている、後頭部でまとめて垂らされている黒髪と蒼い瞳が印象に残る美しい女性であった。だがカイン卿は、彼女が「暴刀」とあだ名され、三度の戦争で毎回赫々たる武勲を挙げている、帝國軍人として上級騎士の階級を持つ近衛騎士である事を知っていた。彼が調べさせた限りでは、副帝レイヒルフトの肝いりで開校した「学院」では、散々に暴れまわり随分と畏れられていたらしい。何しろ、ケイロニウス一門の方伯と決闘、それも子供の遊びではない本気の殺し合いをやらかし、出家したはずのアドルファス一門の御曹司を巻き込んでの大騒動を起こしておいて、放校処分にならなかったのが不思議なくらいの暴れ馬である。 正直なところを言うと、カイン卿は、女性が苦手であった。基本的に物事を考えてから話す性格をしている彼にとっては、その場の勢いでわっとまくしたてて人の話を聞かない相手とは相性が悪い。ついでに言うならば、彼の知っている女性とは、すぐに頭に血が上り、感情的にまくしたてる話の通じない存在か、ひたすら平頭して人の話を聞き流し、陰で何をしているか、口にしているか判らない存在である。相手のそういうところを想像してしまうだけで、なんというか付き合うのも億劫になってしまうのだ。 幼少時に両親と死別し、皇帝軍の占領下で親族に預けられて育てられた彼は、根本的に自信というべきものが薄かった。彼の自嘲癖は、その結果身についてしまったものである。 「でも、やらなきゃいけないんだ」 じっとクラウディア姫の肖像画を見つめつつ、そう自分に言い聞かせる。 別に夫婦として仲睦まじくある必要はない。この結婚は、あくまで「帝國」の北方政策を遂行するための駒に自分を箔付けするためのものである。家格ではるかに上の家の姫である。きっと相応にわがままであろうし、調べさせた通りならばセルウィトスらしく粗暴であろう。しかしそれも、北方辺境候としてやっていくために我慢しなくてはならない事柄の一つに過ぎない。どちらにせよオクセンシュルヌス一門は、このままでは没落してゆくしかないのだ。ならば宗主である自分は、乾坤一擲の大博打を打つしかないではないか。 「でも、セルウィトスの人間なんだ。やだなあ」 北方辺境候としての執務と、格上の家から嫁いでくる姫の相手と、これで身体がもつだろか。カイン卿の不安はつきなかった。 カイン卿の体調も随分と復調してきたある日、とうとうクラウディア姫とのお見合いの日が到来した。 オクセンシュルヌス一門宗主である彼と、西方辺境候姫である彼女とのお見合いである。当然のことながら、西方辺境候であるカシウス卿とも会談を持つ事になる。なにしろ対連合王国問題の引継ぎをしなくてはならず、その上でカイン卿の北方辺境候就任後についても、副帝レイヒルフトも交えて色々と打ち合わせをしなくてはならない。ダヴィガ河の水路利用権の問題や、シャブリウス丘陵一帯の水路利用権の問題、トゥルトニウス市からダヴィガ河へと通じさせた運河の水路利用権の問題、等々、西方辺境を北海交易路とより密接に関係させるための諸々の問題も話し合わねばならないのだ。 正直なところ、カイン卿にとっては、カシウス卿との会談こそ本番であって、その娘とのお見合いはついででしかなかった。 皇宮のオクセンシュルヌス一門の控えの間で横になって呼び出しを待っていた彼の元に、副帝レイヒルフトから、セルウィトス・セルトリウス家の二人が到着した旨使者が訪れる。あらためて執事に身なりを整えるのを手伝わせ、それに相応しい正装である事を確かめてから控えの間を出る。見合いの場所は、皇室の者が会談を持つのに使っている応接の間であった。この豪奢極まりない皇宮の中では、比較的質実な内装の部屋である。 その広間に先に到着していたカイン卿は、緊張で身をこわばらせながらも、なんとか表情にそれを出さないように努力していた。いくら若輩者であるとはいえ、相手に甘えるわけにはいかない。これから西方辺境候とは、対等の立場で「帝國」の対外政策を担う立場に立つ事になるのだ。そんな事ばかり考えていたから、副帝レイヒルフトに案内されてカシウス卿親子が広間に現れた時、不意をつかれてしまったのであろう。最初、レイヒルフトとカシウス卿に挟まれるようにして現れた女性が誰か、判らなかったのだ。 その少女は、カイン卿よりもずっと背が高かったが、色白で艶やかな黒髪を丁寧に結い上げていて、そして銀縁の細長い眼鏡をかけていた。乳白色のドレスは装飾も最低限で、そろそろ成熟し始めている少女の身体の線を綺麗に描き出している。傍目に見ていても少女が緊張でかちかちになってしまっているのは明らかで、まるで世慣れない深窓の姫君のように見えた。 「お待たせしました、オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公。セルウィトス・セルトリウス西方辺境候と、その御令嬢をお連れしました」 「お久しぶりです、セルウィトス・セルトリウス辺境候閣下。……初めまして、セルウィトス・セルトリウス家姫様。自分は、オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公カインと申します」 嘘だ、と、内心叫びつつ、カイン卿は、カシウス候に目下の者として一礼し、そしてクラウディア姫に対して貴婦人への礼をとった。 「貴公も壮健そうで何よりだ、オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公。まずは戦勝のお祝いを述べさせて頂きたい。当一門よりの兵がお役に立てたようでよかった。早速だが娘を紹介させて頂こう。私の娘のクラウディアだ。よろしく願いたい」 「は、初めまして。セルウィトス・セルトリウス家のクラウディアと申します。よろしくお見知りおきを」 挨拶を噛んだ、とは思いはしたものの、とりあえず驚きを表情に出さずに済んだカイン卿であった。 確かに自分よりもかなり背が高い。そこは同じく長身の父親に似たようである。だが、鼻梁の高く鷲のように鋭い眼光を発しているカシウス卿とは逆に、その眼鏡の下の蒼い瞳は、自分と目を合わせるのを恐がっている風にすら見えた。もっとも、目を合わせるのが恐いのは、自分も同じではあったが。 あらためて見れば、クラウディア姫は随分と美しい。緊張で身体がこわばっていても、背筋はきれいに伸び、立ち姿はなんとも麗しい。顔のつくりも十分以上に美しいといって間違いないもので、もう何年かしたら立派に美女と呼ばれるようになることは想像するに難くはない。 「簡単なものですが、会食の用意をしてあります。皆様、どうぞこちらへ」 副帝レイヒルフトは互いの挨拶が済んだところで、三人を別室へといざなった。 「……………」 「……………」 カイン卿は、非常に困っていた。具体的には、クラウディア姫と二人きりになって、何を話していいのかさっぱり判らないでいた。 そしてそれは彼女も同じ様子で、両手で扇子を握りしめて目を宙に泳がせている。 「「あ、あの」」 「……………」 「……………」 会食中も、クラウディア姫はほとんど喋らず、黙々と料理を食べているばかりであった。こういう時に場を会話で盛り上げるのは、ホストであるレイヒルフトの役割なのだが、彼は何を考えてか、政治向きの話ばかりカイン卿にふってくる。そしてカシウス候も、彼に政治の話ばかりしてきた。いや、確かに本日は副帝と現西方辺境候と未来の北方辺境候の三者で、「帝國」の対外政策について会談を持つ予定ではある。だがそれは、カイン卿とクラウディア姫のお見合いが済んでからの話のはずであった。そのお見合いの席で、肝心の将来の花嫁をのけものにして、男同士で政治の話ばかりするというのも、それはそれで彼女が可哀想ではないかと彼は思ったのだ。 そして、そんな彼の内心を見透かしたのか、しばらく二人きりで話を、とレイヒルフトとカシウス卿の二人は席を外してしまっている。 こういう時に、女性を楽しませるような話をできるようなカイン卿ではない。そもそもそれができるならば、女性を苦手だなどと思いはしない。 「姫からどうぞ」 「あ、いえ、公のお話を」 折角事前にクラウディア姫の事を調べさせたのに、それがまったく役に立っていない。戦闘に何よりも快楽を覚えるセルウィトスの一姫で決闘をして無敗、戦場では機神を駆って魔族のごとく暴れ回り、「暴刀」の二つ名をつけられた闘争本能で生きる存在。そのはずが、今目の前にいる少女は、歳下の少年を前にして、何を話したらよいのかすら判らない様子の、世慣れない姫君にしか見えない。 「……ええと。……姫の肖像画を頂きました」 「……はい」 「それで、実際にお会いして、絵よりもずっと魅力的な方で、驚きました」 「……………」 必死になって考えて、なんとかひねり出したカイン卿の言葉に、クラウディア姫はびっくりした表情を浮かべると、真っ赤になってうつむいてしまった。 これには、さすがに彼も困ったしまった。彼なりに女性を喜ばせる言葉を考えて、なけなしの勇気を振り絞って口にしたのに、真っ赤になって肩をすくめてうつむかれてしまっては、身の置きどころがない。 「……あ、あの」 「……ご冗談でしょう?」 「いえ! そんな事はありません! 本当に姫は美しくて、魅力的な方で!!」 消え入るような声で、そう返事をしてきたクラウディア姫に、カイン卿は思わず大声を出してしまった。それに驚いたのか、びくっと身体を震わせてさらに深くうつむいてしまった彼女に、彼はどう言葉をかけたらよいのか判らず、自分もうつむいてしまう。 「……わたしの噂は、公のお耳にも入っていらっしゃるのでしょう?」 「……はい」 「……「暴刀」」 「え?」 「わたしのあだ名です。……わたしは、頭に血が上りやすくて、すぐ決闘騒ぎを起こして」 本当に聞こえるか聞こえないかの小声で、うつむいたまま、とつとつと話し始める。その言葉にカイン卿は、顔をあげて黙って耳を傾けた。 「先ほどの陛下と父と公のお話も、つまり、わたしは、将来の「帝國」の外交政策の遂行のために必要な駒だ、という内容であったと理解しています」 カイン卿は、クラウディア姫の言葉に舌を巻いていた。先ほどの会食での話題から、自分の立ち居地というものを正確に把握できている。そう、彼女の言う通り、クラウディア姫は、カイン卿を北方辺境候として相応しい立場に置くための駒なのだ。そのための二人の結婚なのである。だが、それをあれだけの会話で理解できるとは、彼女も伊達に西方辺境候姫ではないということか。 「その、公は古人でいらっしゃいますし、わたしよりずっと魅力的な方が傍にいらっしゃっても当然で……」 「そんなこと、ありません!」 せっかく、姫を驚かせまいと気をつけていたのに、またも大声を出してしまう。ここにいるのは「暴刀」ではない。ただの世慣れない深窓の令嬢だ。 「姫は、ご自身がどれだけ魅力的か判っていらっしゃらない。それに、僕には、そんな女性はいません」 「え?」 「ええと、正直に言います。僕は女性が苦手なんです。貴女の噂だって知っています。でも、噂は当てにならないというのが今この場での僕の感想です。貴女の様な女性には、僕は初めてお会いしました。貴女は、美しいだけではなく、大変に頭も良くていらっしゃる」 「え? え? え?」 「女なんて、男の顔か、金か、権力にしか興味がないか、自分勝手な夢を押し付けてくるか、どちらかの存在だと思っていました。でも貴女は違う! 「帝國」の最高権力者を前にして、その言葉を理解し、自分の立場を把握し、その上で振舞うべきを心得ておられる。貴女ほどの貴婦人は、「帝國」広しといえどそうはいません」 カイン卿の熱のこもった言葉に、思わず顔を上げたクラウディア姫は、頭の先まで真っ赤になって、そして銀縁の眼鏡がずり落ちた様子で話に聞き入っていた。 そして、そこまで一気に喋ってから、カイン卿は我に返り、そして自分の口にした内容を反芻して思わず頭を抱えてしまいたくなった。なんという下手くそで自分勝手な言い草だろう、と穴があったら埋もれたい気分である。いくら女性が苦手だとはいえ、今の言葉は駄目にもほどがある。 だが、クラウディア姫は、眼鏡越しにじっとカイン卿を見つめつつ、恐る恐る口を開いた。 「……本当に、わたしは、魅力的ですか?」 「……はい。初めてお会いした時から、そう思っていました」 もうなるようになれ、とカイン卿は、半ば自棄になって答えた。今更何を口にしても、これ以上恥をかくこともないだろう。 「本当に?」 「本当です」 「……初めてです、その、他の一門の殿方にそう言って頂けるのは」 「まさか」 「わたしは、一応戦場往来のいくさ人で、機神を駆って十を超える敵を打ち倒し、何度決闘をしてきたか覚えていない身です。その、こんな女を魅力的だと言って下さる方は、セルウィトス以外にいるとは思ってもいませんでした」 「それは、貴女を見る男の目が節穴なだけです。……ええと、笑わないで聞いて下さいます?」 「はい」 クラウディア姫は、もう、真っ赤になってとろんとした目になってカイン卿を見つめているだけである。 そんな彼女の様子に、色々なものがふっきれた彼は、身を乗り出して話始めた。 「オクセンシュルヌス一門は、その名の通り元はゴーラ帝国を構成する国のひとつでした。そしてゴーラの伝承には、天上の神々は真に勇敢な戦士の元に、それに相応しい戦乙女を遣わして、その魂を天上へと引き上げるのだという話が伝わっています。僕は、そういう伝承を聞いて育ちました。貴女の魅力は、「帝國」の男どもには判らないのかもしれませんが、僕には判ります。貴女こそ、神々が遣わした戦乙女なんです、きっと」 そこまで聞いたとたん、クラウディア姫は、ぐらりと身体が傾き、そのまま椅子からずり落ちそうになった。 身を乗り出していたカイン卿は、あわてて彼女の身体を支えようと両手を突き出すが、生憎と二人の間のテーブルは幅広く、彼の手は彼女には届かなかった。 だがクラウディア姫も、しばらく前後左右に身体を揺らしていたが、なんとか落ち着きを取り戻すと背筋をすっくと伸ばして真剣な表情になった。 「わたしは、公の仰るような女ではありません。しかも、四人もの古人の恋人がいるふしだらな女です。それでも、わたしの事を戦乙女と呼んで下さるのでしょうか?」 「それを言うなら、僕はこの歳でまだ純潔を保っている甲斐性なしです。しかも、貴女よりも歳下で、家格も下で、身体も弱い、男としての魅力なんて何も無い身です。こんな僕ですが、それでも一緒に家庭を築いていって下さいますか?」 その瞬間、クラウディア姫は、爆発したように全身が真っ赤になり、目を回して机の上に突っ伏してしまった。 横倒しになった顔は、湯気が出そうなほど茹で上がっていて、そして陸に上がった魚のように口をぱくぱくと動かしている。 カイン卿といえば、自分が何を口にしたのかようやく気がついて、同じ様に真っ赤になって机に肘をついてうつむいてしまっていた。 二人ともしばらくそうやって身もだえしてから、なんとか落ち着きを取り戻して顔を起こした。 「クラウディア姫」 「はい」 「僕の事は、カインと呼んで下さい」 「……それでは、わたしの事も、名前だけで呼んで下さい」 「はい。……クラウディア」 「……はい、カイン様」 「ええと……」 「はい?」 「僕の事も呼び捨てで」 「はい。……カイン」 互いの名前を呼び合いつつ、二人はそのたびに真っ赤になって身もだえしていた。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/991.html
というわけでダリアとセレニアたんとの本格的な絡み。これから学年代表の仕事についてセレニアたんから色々教わることになると思う。その過程で既存キャラとの絡みが発生するとよいなあ、と、思っていたりする。 「学院」では昼食後の時間を課外活動の時間と定めている。つまり、学生が自主的に勉学や教養を身につけるための時間としているのである。そうした活動の中には、女性として身につけるべきとされている技能であるところの裁縫もあった。機織は、「帝國」でも農家のみならず多くの騎士家や貴族家においても女性のたしなみとして代々母から子へと教え伝えられているし、また裁縫は、女性ならばできて当然の心得とされていた。そうした背景がある以上「学院」の課外活動の中に手芸があるのは当然といえた。 「でもダリアって、裁縫下手だよなー」 「うるさいっ! こういうのは慣れが大切なんだよ」 「うわっ、さりげにお姫様発言。アルブロシアも言ってやれー 言ってやれー」 「……誰にでも、苦手なことはあるよ」 裁縫室の片隅でちまちまと針を繰っているはずのダリア達であったが、手を動かすのよりも口を動かすのが多くなるのは致し方なかった。当然のことながら、課外活動として手芸を選択している他の女生徒達は、そんな彼女らを遠巻きにしつつひそひそと噂話の種にしていた。 「でも、こうして布や糸を手に入れられたのも、ダリアさんのおかげですよ」 「……タダで物をやり取りするのは苦手なんです」 「やーい、照れてやんの」 「うるせぇ、お前は少し黙れ」 「口と一緒に手も動かしてるしー 慣れだってば、慣~れ~」 ダリア達二期生に混じって、ヒルダレイアも一緒に裁縫にいそしんでいる。四人は、肩掛けかばんや小物入れを作るために裁縫室にやってきていた。そして彼女らと一緒に幾人かの学生も一緒の作業台で糸を手繰っていた。 ダリアが「学院」に持ち込んだ図嚢は、またたく間に学生達の間に広まった。なにしろ重たい本や帳面、細々した筆記用具を持って歩くのにとても便利なのである。大陸の中でも例外的に物が豊富な「帝國」であっても、紙が高価であることにかわりはなかったし、当然本も帳面もそれなりに高価である。移動中に水溜りにでも落としてしまえば悲惨なことになる。 もっとも、だからといって学生全員が図嚢を入手できたわけではない。図嚢自体が軍人の装具である以上、装具の自弁を義務付けられている士官以上でもなければ家にあるわけがなく、当然それを実家から送ってもらえる子の数はおのずとかぎられてくる。また地方からわざわざ入学した生徒は、無心の手紙を送ってから物が届くまで相応の時間がかかるというものである。 となれば当然の結論として自分で作ってしまおうという結論にゆきつく。結果として手芸室は、図嚢や小物入れを自作しようという学生であふれることになった。そして、多くの学生が一斉に針を持つということは、材料である布も糸もあっという間に在庫が無くなるという結果をよぶことになる。 まず、手芸室で布と糸を分けてもらって図嚢を作ろうとしたルスカシアが、布も糸も無いと追い返された。次に彼女は、同室の先輩に手持ちの小遣いで布と糸を入手してもらえないかと相談し、難色を示された。西方辺境から遠路やってきた少女の手持ちは銅貨がわずかといったところであり、地方に比べて諸物価が高い帝都では、とても必要な量の布と糸を買える額ではなかったのである。 結果としてルスカシアは、泣く泣くダリアに相談する羽目になったのであった。 話を聞いたダリアは、まずヒルダレイアに声をかけた。図嚢を自作する気はあるか、と。当然の如く答えは肯定である。それからダリアとヒルダレイアは、幾人かの友人に声をかけ布と糸の共同購入をもちかけた。お金の無い子は、図嚢の製作という形で材料費を負担し、お金に余裕のある子は、余分に布と糸の代金を支払う、ということで。 「でも、ルスカシアはすごいよ。あっという間に型紙を起こして、かばんを一つ作って」 「いやー うち基本的に田舎だからさ。日用品は全部自作すんだってば」 「あら、では機織も?」 「はい。でっかい奴がありますよ、うち。これでも一応騎士家ですから、機織小屋とかあって。革はさすがに職人がなめしますけれど。農閑期には村の女衆が集まって機織すんです。機織唄をみんなで歌って。♪わたしゃ 田舎の機屋の娘 思い 思い一筋 恋の糸」 一週間と経たずに大量のキャンバス生地と綿糸を手に入れてきたダリアに、ルスカシアは感極まって抱きつき、キスの雨を降らせたものであった。ちなみに真っ赤になってあたふたするダリアを見て、ヒルダレイアとアルブロシアは、身体をくの字に曲げて笑いこけたものである。 「あ、その歌知らね。あとで聞かせろよ」 「おー ♪待てど帰らぬお方と知りつ 今日も 今日もくるくる 糸車」 「だから後でいいんだってばよ」 ダリアが四苦八苦しながらちまちまと針で指を刺しつつ図嚢を縫っている横で、ヒルダレイアはゆっくりとではあるが丁寧に縫い、アルブロシアは黙々と糸を手繰り、ルスカシアは手際よく仕上げてゆく。 布と糸が手に入ると、ルスカシアは早速ダリアの士官図嚢を採寸し、型紙を起こし、かばんを一つ縫い上げた。それを皆に見せて意見を聞き、注文があれば皆で相談し、ついで二個目の試作品を作って皆の承諾を得ると、一気に全てを作ることにしたのであった。 この時、裁縫室を借りられないか交渉があり、ルスカシアの起こした型紙と試作図嚢を譲る事で決着がついた。なにしろ裁縫室には作業台とアイロンがあり、これが使えると使えないとでは、製作の効率が全然違う。ちなみに布を裁断するための鋏も専用のものがそろえてあり、その切れ味にダリアやヒルダレイアが感心したものである。 型紙を元に布を裁断するのは、一番手馴れているルスカシアが一人でこなした。なにしろ貴重な布である。裁断ミスで布を駄目にしてはもったいないことこの上ない。それから皆でアイロンを使って布に折り目をつけ、それぞれの部品を各人が分担して縫ってゆく。基本的にルスカシアが作業の中心となり、他の少女らはその指示に従って針を使う。結果として、二日で仕上げの段階にまでたどりついた。 「よっしゃ、一番のり~ 一番槍はナティシダウス一門が一機衆ルスカシア・スカブラが付けるものなり~」 「応、美事也。コルネリウス・クルティヴァルシア家がダリアが見届けるものなりぃ」 「うはははっ!!」 にぱっと笑って、一番最初に縫い上げたルスカシアが、立ち上がって高々と図嚢をかかげると、ダリアが間髪いれずに合いの手を入れた。その呼吸に、周囲の娘らも一斉に手を止めて吹きだす。 「出来た」 「はい、出来ました」 続いて、次々と少女らが声をあげる。そして、最後にダリアが縫い終えると同時に、皆から一斉に拍手がわきおこる。それぞれが自分が縫い上げた図嚢を見せ合って喜びの声をあげていた。なにしろ皆で一緒に作り上げた作品である。お金を多く出した子も、皆途中から自分の図嚢を縫い上げるために参加していたのだ。 「それではお茶にしましょう」 ヒルダレイアの声に、皆は席を立つと、手際よく片付けを始めた。 自習室に移動すると、皆で作った図嚢を見せ合いながらお菓子をつまみつつお茶を飲む。なにしろ皆で一緒に作り上げた作品である。話の種はつきない。 そうやって話に花を咲かせているところに、黒い長髪をひるがえしたセレニアが近づいてきた。彼女の気配を察すると、それまで陽気に語り合っていた皆が一斉に口をつぐむ。 「ごきげんよう、皆様。立派な図嚢ね。手芸の子達も喜んでいてよ」 「ごきげんよう、セレニア先輩。うるさかったです?」 「そうね。気を配って下さればよくってよ」 別に厳しい表情をしているわけでもないのに、皆なんとはなく威圧感を感じて視線を互いに行き来させあっている。そんな中で、ダリアは悠々と席を立って一礼した。 「あと、ダリアさん、後で少しお時間を頂けるかしら」 「了解です」 「それでは後ほど」 わずかそれだけのやりとりではあったが、盛り上がっていた皆の気持ちに水をかけるには十分であった。 「ども。それで私にお話とは?」 「相変わらず口調が崩れていてよ。それはともかく、メインベルのことよ。派手にやりあったそうね」 「あぁ、そのような事もありましたか。すっかり忘れておりました」 その後、自然に集まりは解散のはこびとなり、ダリアは早速セレニアのところに赴いた。その席には、相変わらずクラウディアと二人の同室の二期生の古人が一緒に座っている。額に小さな角を生やした少女は、周囲に気配をとけこませ、我関せずという様子でおり、金髪の十をいくつか過ぎたくらいに見える少女は、無表情のままじっとダリアのことを見つめている。 「メインベルの話だと、随分と汚い言葉で脅したと聞いてよ」 「ちぃっとばかり、荒い言葉で啖呵切っただけです。まぁ、お姫様にはちょいと刺激が強すぎたようですが」 「つまり、今のような口調で彼女を制止したわけだ。まあ、女の子の使う言葉遣いではないね」 自然体で座っているクラウディアが、話の横から入ってくる。その口調からすると、ここでダリアを吊るし上げるつもりはないようではあるが、そうすると何故自分をこの場に呼び出したのか見当がつかない。 「立ったままというのも悪いね。よかったら一緒にお茶を飲もう。あと、向こうで見ている子達も呼んできてもらえるかな?」 クラウディアに言われて振り向くと、離れたところから心配そうにダリア達の様子をうかがっているヒルダレイアと、ルスカシアと、アルブロシアがいた。 「アルブロシア・ケイロニウス・アクィロニアさんね。初めまして。セレニア・シリヤスクス・セレニアです。こちらはクラウディア・セルウィトゥス・セルトリア。無名。フェイト。よろしくお願いするわ」 「初めまして。アルブロシア・ケイロニウス・アクィロニアです」 「無名」 「フェイトです」 互いに名乗り自己紹介を済ませる。ダリアは、二人の異邦人が一期生二人のソロルなのだろうな、と、そう見当をつけた。確かにこの二人の雰囲気では、並の少女ではソロルどころから同室でやっていくのすら辛いものがあろう。そういえばこの二人は、クラウディアとともに近衛騎士団で教練を受けている騎士見習いであったか。 「アルブロシアさん、先日は災難でしたね」 「いえ。……ダリア様に助けていただきました」 「そう。今日ダリアさん達に来ていただいたのは、メインベルについて一期生としての結論が出たことを知らせるためよ」 特に表情や口調で威圧してきているわけでもないのに、どうも皆の背筋を伸ばさせる迫力がセレニアにはある。もっともダリアは、さすがは一期生学生代表だよなぁ、などと内心どこ吹く風ではあったが。 「先日の騒動にかんがみ、メインベルがソロルを申し込む際には必ず誰か介添え人がつく事になりました。また、申し込みの前に、必ず介添え人が相手にメインベルと直接会うかどうか意向を確かめ、申し出の受け入れがあってから初めて相手と会って話をすることになります。二期生にはその様に伝えておいていたけるかしら。よろしくて?」 「了解いたしました。要は、メインベルと二期生を二人きりで会わせないようにする、ということですね?」 「ええ。そのように理解して頂いて問題なくってよ」 セレニアの言葉に、ダリア以外の三人は、あからさまにほっとした表情となった。何しろその場にいた二人と、後で話を聞かされたヒルダレイアからすれば、ダリアの対応は無頼のそれ同然に思えるものであったのだ。まがりなりにも教皇聖下直属のこの「学院」で、そんな真似をして叱られないはずがない。 「いやぁ、お小言の一つも頂戴するかとは思っていたんですが」 「メインベルから話を聞いた限りでは、貴女は彼女を脅迫してもいないし、暴力をふるってもいないわ。二期生代表に頭を下げさせておいて、それを無視するのを許したら、学生間の秩序が乱れるわ。さすがにそれは一期生代表として看過し得なくてよ」 「そういうもんすか?」 「ええ」 悠然とお茶を口にするセレニアに、ダリアは毒気を抜かれたような表情で後頭部を指でかいた。 ダリア自身も、あの場では通すべき筋を通したつもりがある。それをこの厳格な一期生代表に認められて、なんというか気が抜けてしまった。そんな彼女の様子を横目で見ていたクラウディアが、視線をアルブロシアに向け、口を開いた。 「アルブロシアさん」 「はい」 「君さえよければ、誰かソロルを紹介しようか? 確か、今部屋に一人だそうだよね。そろそろ自分でソロルを見つけられる子はまとまってしまってさ。独り身の子が増えてきているんだ」 「……あの」 「うん」 「少し考えさせていただけますでしょうか」 「判った。そのつもりになったらわたしのところに来てくれるかな。何人か紹介したい子がいるから」 「……ありがとうございます」 それ以上は押すことはなく、クラウディアは話を終わらせた。ダリアは、今この状況を色々と考え、そしていくつか推論を出した。となると、実際に口に出して確かめてみなくてはならない気になってくる。 「で、先輩。私が二期生代表として実力を認められて、で、学生代表としての仕事を覚えろ、と、そういうことでよろしくありますか?」 「……大したものね。今までの流れでその結論に至るのは。ええ、その通りよ。これからも頻繁に呼ぶことになるけれど、そのつもりでいて頂戴」 「了解です」 ダリアは、驚きの表情を浮かべているセレニアとクラウディアに向かって、両手を机について頭を下げた。周囲の皆も、ほう、といわんばかりの感心した表情で彼女のことを見つめている。 「本当に大したものだわ。ええ、よくってよ。とてもよくってよ」 何がセレニアの琴線に触れたのかよくは判らないが、これまでと一転して上機嫌になった先輩に、ダリアは、メインベル以上に面倒な相手に目をつけられたと内心で溜息をついていた。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/986.html
まさかの三日連続更新。というわけで、ダリアとルスカシアの出会い。次はアルボロシアとの出会いか。ここでメインベルに頼るのはよくないと思いつつ、でもケイロニウス一門の姫君(一応)のアルボロシアであるから、メインベルが絡むのは当然の事態ともいえるわけで。つまりはメインベルマジ万能、と。 教室に入ったダリアは、左肩から右腰に下げていた士官図嚢の吊革を肩から外し、中から教科書と帳面と鉄筆とインク壷を取り出し机の上に並べた。そして制服のポケットから手の平大の懐中時計を取り出し、授業開始五分前であるのを確認すると、時計をしまって姿勢を正して正面の黒板へと視線を向けた。 教室では、何人かの少女らがそれぞれ親しくなった者同士集まってたわいも無い話でさんざめいていたが、ダリアが入室してくると口を閉じて自分の席へと戻ってゆく。彼女ら二期生が入学してからすでに二週間が経っていたが、その間日々の細々とした雑事に追われつつも、徐々に「学院」での生活に慣れつつあった。 そうした少女らの間では、ダリアは本人の思惑と外れたところで「すごい人」という評価を獲得しつつあった。 まず上級生を相手にしてものおじしない。なにしろ同室の先輩どころか、一期生学年代表であるセレニアを相手にしてすら砕けた口調で話しているところを何度も目撃されている。さらには、皆が寄宿舎での生活に右も左も判らずあたふたしている中、まるで事前に何もかも判っていたかのように用具をそろえててきぱきと物事をこなしてゆく。洗濯のせの字も判らぬ貴族の令嬢が大半の中、兵隊歌謡を堂々と口ずさみながら手際よく洗い物をしている姿は、いやがおうでも目立つ。そして、何か行事があったとしても場所が判らず迷うということもなく、必ず五分前には所定の位置について待機している。美しい容姿をした彼女が姿勢を正してたたずんでいる姿は、他の少女らをしておのずから居ずまいを正させる威厳があった。 もっとも、ダリア本人の自己評価はそんな周囲の目とは全く違ったものであったが。彼女が同室のヒルダレイアやセレニアに対しても砕けた口調になるのは、貴族の令嬢としての丁寧な言葉に不慣れなせいである。ついつい兵隊的な、それも下士官兵卒の言い回しが口に出てしまうことを本人はそれなりに気にはしていた。雑事に慣れているように見えるのも、あくまで皇帝軍士官であった父親に兵隊的な意味での要領を教えられ、諸々用意をしてもらったおかげである。その教えの中に、移動する前には必ず地図で移動経路を確認し、必要な物を用意し、時間に余裕をもって行動するという「急いで待て」という軍隊の流儀があったせいであった。一々時計で時間を確認するのもそのせいである。 そんな彼女が入室してきたことでそれぞれの席へと戻ってゆく女生徒らの一人が、ダリアに近づいてきて声をかけた。 「ごきげんようダリア様」 「ごきげんよう。……ルスカシア様?」 「はい」 にこにこと微笑んでいるルスカシアは、茶色の癖っ毛を左右の側頭部でリボンでまとめている可愛らしい娘である。くりくりとよく回る薄紫色の瞳が愛嬌のある少女であった。 ダリアは、身体ごとルスカシアに向き直るとじっとその瞳を見つめ返した。 「そろそろ授業が始まりますよ」 「はい。それで、お使いの時計は、御父上のものでいらっしゃいますか?」 「ええ。でも、それが何か?」 いぶかしげに問い返したダリアに、ルスカシアは、くすりと笑って少しあごを引いて上目づかいになって答えた。 「いえ、砲兵用の時計をお使いになっていらっしゃいましたから」 「よく御覧になっていらっしゃいますね」 「だって、ダリア様は目立たれますもの」 それでは失礼します。 ルスカシアが自分の席に戻っていくのを、ダリアは視線だけで追い続けていた。 ダリアは、歌を歌うことが大好きである。だが彼女は現在の「帝國」における声楽の主流である教会音楽が好きではなかった。カタリナ教皇即位より聖楽にも新しい波が訪れており、旧来の旋律と旋律を重ねることで構築される対位法から、和音と和音を重ねる和声法による聖歌が多数作曲されるようになっていた。彼女も当然音楽教師からそうした技法についてしっかりとした教育を受けていたが、少女にとってそれらの音楽は技巧に走りすぎているように思えた。 彼女がもっぱら好んだのは、元兵士であった家の使用人が口ずさむ兵隊歌や詩吟の方であった。音階などあって無きがごとしの歌ではあるが、その小節を効かせた歌い方は少女の琴線に触れるものがあったのだ。 時々、無性に声が枯れるまで歌を歌いたくなることがあるダリアは、「学院」に入学してから人気の無い、つまりどれだけ声を上げて歌っても誰にも邪魔をされない場所を探してあちこち歩き回っていた。そして、彼女がようやく見つけたのが、冬場に使う道具をしまっておく倉庫の裏手の林であった。 放課後、荷物を部屋に置いてから人目につかぬようこっそりと林に移動したダリアは、周囲に人がいない事を確かめてからかかとで調子をとると声を上げて喉を馴らしてから、朗々と歌い始めた。 「肩を落とした 鉄の背中が続く どこまでも果てしなく続く」 ダリアが歌っているのは、機装甲乗り達が酒を飲むと歌い出す哀歌であった。 「穢れちまった 赤い雨が降り注ぐ 容赦なく俺達にそそぐ」 機装甲は、軍の決戦兵科としてもてはやされているが、戦場ではあらゆる火器に狙われる格好の的である。極論を言うならば、敵弾を引きつける囮役なのだ。 「肩をあえがせ 爛れた大地を ひたすら踏みしめる」 「「散り行く友に未練など、無いさ俺達は最低野郎」♪」 「誰!?」 「いやー いい声じゃん。すごいよ、本気で惚れそう」 「ルスカシア!?」 「そ。悪いね、お楽しみのところ邪魔して。いやー 我慢できなくなってさー」 気持ちよく歌っていたところを、突然背中から声を重ねられて驚いたダリアが振り向いた先には、同級生のルスカシアが照れくさそうに笑って立っていた。 ダリアは、かっと頭に血がのぼったが、怒鳴りつけそうになるのをぐっとこらえてルスカシアをねめつけた。確かにそこに居るのは、昼間話しかけてきた少女に相違ない。だが、身にまとっている雰囲気というべきものが全く違っていた。 「何か御用でしょうか、ルスカシア様」 「おぅおぅ、他人行儀だよー もっとざっくばらんにいこうぜー 同じ兵隊の子同士さー」 「うるせえっ! 人が気持ちよく歌ってんのを邪魔してんじゃねえよ!!」 「よしっ、キターッ」 しまった。ダリアは、ルスカシアの挑発にのって罵声を飛ばしてしまったことに気がついて、棒でも飲んだかのような表情になった。 そんな赤毛の少女に対して、茶髪の少女は、両手の拳を握って力いっぱい喜びを表現している。 「ああ、くそっ、だから何の用だよ。言えよ」 いい加減ヤケクソになったダリアは、ルスカシアを目を細めて睨みつけつつ、ドスの利いた声で質問を重ねた。 「いやさー こっちもいい加減お上品な猫をかぶんのに疲れてさー そうしたらあんたがもう兵隊臭ぷんぷんでさー こう、お近づきになりたいなー って」 「なんだよ、私もご同類ってか。生憎とこの通りの柔腕でね。兵隊になんてとってもらえないから」 「あたしだって似た様なもんだよー 兵隊の婿とらされてさー ちんまい領地を管理して残りの人生過ごすの」 「喰うに困らなくて良い人生だろ。三度三度のパンにありつけるのをありがたく思いな」 「判ってるって。あたしんちはナティシダウス一門の一機衆だからさ。御貸し機とそいつを維持するための領地を賜っているんだよ。でもさ、折角の人生なんだよ、面白おかしく生きてみたいじゃん」 丸い目をくりくりといたずらっ子めいた様子で動かすルスカシアに、ダリアは、両手を腰にあてて鼻を鳴らしてみせた。 「一門がケツ持ちしてくれて羨ましいね。うちなんざアントニウス候と一緒に決起したくちだから、今でも陰じゃ逆賊呼ばわりだよ。領主権限も無くして、今じゃただの大地主ってだけの名前だけ貴族さ。それでも土地屋敷だけは残ったけどね」 「侯爵様なら立派じゃんかー うちなんか、出征した兄貴は死んじゃったし、借金を山程こさえた貧乏騎士だぜー」 「不幸自慢なら聞かないし、傷の舐めあい仲間なら他を探しな。私は別にそんなの聞きたくないし、そんな仲間も欲しくはないよ」 「おぅおぅ格好いいなぁ! それでこそあたしが見込んだだけはあるぜ。そういうとこに本気で惚れそう」 握った拳をぶんぶんと上下させて、ルスカシアは、それはもう嬉しそうに笑った。その笑顔は、普段浮かべている媚の混じったものではなく、本気で嬉しそうであり、ダリアは、ほんの少しだけ、こいつはいい奴かも、と思ってしまった。 そんなダリアの心の動きを読んだのか、ルスカシアは、すすっと近づくと彼女の手をとってぶんぶんと振り回した。 「だからさ、仲良くしてくれると、本気で嬉しい。ダリアって呼んでいいよな、な!」 「一々馴れ馴れしくすんなってばよ」 「えー 駄目? いいじゃんかよー 友達になろうぜー」 「ち、仕方がないな。いいよ、好きに呼びな」 「おう!」 がっちりとダリアの両手を握ったルスカシアが、それはもう嬉しそうににかっと笑っているのを見て、仕方がないな、と、あきらめることに決めた。そもそもが、ここまで押しの強い相手は初めての出会いである。なんというか、そのまま流されてもいいか、みたいな気持ちも心のどこかにあった。 「あたしのこともルスカシアでいいから!」 こいつとのつきあいは、きっと長くなる。なんとなくダリアは、そう感じていた。
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/965.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >ひだまりスケッチ×☆☆☆>ひだまりスケッチ×☆☆☆ 第4話「4月15日 日当たり良好」】 ひだまりスケッチ×☆☆☆ 第4話「4月15日 日当たり良好」 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れるひだまりスケッチ×☆☆☆ 第4話「4月15日 日当たり良好」の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 MEGA このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画ひだまりスケッチ×☆☆☆ コメント(感想) 動画ひだまりスケッチ×☆☆☆ 第4話「4月15日 日当たり良好」に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/ryuunabe/pages/4034.html
スケッチブック 商品ページ L:スケッチブック = { t:名称 = スケッチブック(アイテム) t:要点 = 分厚い画用紙,大判,絵 t:周辺環境 = 机の上 t:評価 = なし t:特殊 = { *スケッチブックのアイテムカテゴリ = ,,携帯型アイテム。 *スケッチブックの位置づけ = ,,{文具,ショップアイテム}。 *スケッチブックの取り扱い = ,,ほほえみ書店。 *スケッチブックの販売価格 = ,,3マイル。 *スケッチブックの特殊能力 = ,,スケッチブックとして使用できる。 } t:→次のアイドレス = 絵の上達(イベント) }
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1062.html
将来クラウディアの嫁となる予定のカイン卿の登場の話。といいつつ、目立っているのは御大将であーる、の回。 「戦場で迷った時にはなぁッ! こうするのだぁッ!!」 硝煙が戦場をおおい全戦線で帝國軍と連合王国軍が入り乱れて戦っている中、ナティシダウス一門から派遣されてきた援軍を率いるキンナ・ナティシダウス・キンニアヌス候が叫んだ。 「一機衆どもよ、小生に続けぇえええッ!!」 搭乗する深緑色の重魔道機装甲の腰の大刀を抜き、刃を寝かせて肩にかつぐ。それにあわせて、キンナ卿につき従っている一機衆の機装甲らも各々得物をかまえた。 もはや戦場は総司令官があれこれ指示を下す段階を過ぎている。帝國軍の指揮を実際にとっているのは第十二軍団長のトルステンヌス・ゲミニウス将軍である。お飾りの総司令官にできる事は、均衡した今の戦況をこちら側へ崩し、味方の士気を上げることくらいしか残ってはいない。 紫色の機神に搭乗している彼は、キンナ卿の隣に愛槍を構えて立つと、叫んだ。 「後の指揮は、ゲミニウス将軍に任せます! 本陣予備隊はこれより右翼の敵を突破し、敵本陣に向けて突撃、指揮は僕がとります!」 紫色の機神から伝わる声は、まだ年端もゆかぬ少年のものである。その覚悟を決めた声色に、キンナ卿は上機嫌で叫ぶ。 「ハハッ! それでこそ仮初めとはいえ我らが頭領に相応しきお方! なれば先陣は我らナティシダウス一門が一機衆にお任せあれ!!」 「任せました! 全隊、前進!!」 少年の命令とともに、百を超える機装甲が隊伍を組み、一斉に前進を開始した。 「フハハハハッ! 絶好調であぁるッ!!」 刀というよりは、巨大な鉈のごとき大刀を振りかざして連合王国軍の機装甲戦列に切り込んだキンナ卿の高笑いが、戦場に轟き渡った。 「閣下のご容態は?」 帝國軍の最後の突撃によって右翼を崩された連合王国軍は、予備隊をもってその攻撃を防ぐと、軍をまとめて整然と退却した。そして、最後の予備まで戦線に投入した帝國軍には、それを追撃する余力は残っていなかった。戦場から敵が撤退した後、負傷者の収容や戦死者の埋葬、破損し放置された機卒機装甲火砲等の機材の回収などを行いつつ、再編成された騎兵集団を派遣して連合王国軍を追跡させるのが精一杯であったのだ。 その帝國軍の本陣の天幕に、軍を視察してきたキンナ卿が足早に入って来た。 「命に別状はありません。……身体はまだ動かせませんが」 「軍医、閣下がせめて乗馬くらいできるようにしろ。兵の士気に関わる」 彫りの深い眉の無い顔で目の隈が濃い彼は、その鍛え抜かれた肉体もあって周囲を威圧することおびただしい。額に脂汗を浮かべた軍医は、腰を折ってはいと答えると、寝台の上に横たわる少年の身体に向き直った。 少年は、あの突撃によって連合王国軍の左翼を突破し敵の本陣へ向かって突撃しているのを、予備隊によって迎撃され乱戦の中で負傷してしまったのだ。突破口を維持していたキンナ卿がナティシダウス一門の誇る一機衆を率いて駆けつけ、その予備隊を撃退したが、突撃の衝力は失われてしまっていて、それ以上の進撃は無理となっていた。だが、崩壊した左翼を次々と突破して駆けつける帝國軍によって、連合王国軍もそれ以上の反撃はできず、全軍を撤退させることになったのであった。 「……嗤って下さい。今日の戦いが引き分けに終わったのも、無様をさらした僕のせいです」 「笑いはしません。撤退したのは連合王国軍。追撃をできなかったのは残念ですが、我が軍も損害が大きすぎました。再編成に時間がかかります」 視線を向けた少年の自嘲じみた言葉を、キンナ卿はあっさりといなした。今は少年の愚痴に付き合っている時間はない。 「敵軍は、北西四哩の渡河点まで後退し、陣を張っております。監視のための斥候は放っておりますが、敵もすぐに戦える状態にはないようですな」 「……ナティシダウス・キンニアヌス候」 「なんでしょう?」 「僕達は、勝ったと主張できるのですね?」 「左様。我が軍は、敵の侵攻を撃退し、戦場にこうして残っておりますからな」 少年の面から自嘲めいた表情が消え、表情が消える。軍医が手当てのために身体に触れているにも関わらず、ぴくりとも表情を変えなかった少年が再度キンナ卿に視線を向けた時、その紫色の瞳にははっきりとした意志の光がともっていた。 「軍議を開きます。皆を集めて下さい」 「了解いたしました、総司令官閣下」 戦う意思を取り戻した少年に、キンナ卿はそれは嬉しそうに笑うと、きびすを返して天幕の外へと足早に出て行った。 「我々は戦場で勝ちました。次は、これを戦争の勝利へとつなげなくてはなりません」 帝國軍第十二軍団長トルステンヌス・ゲミニウス将軍をはじめとする各部隊の指揮官が天幕に集合したところで、少年は寝台の上からそう話を始めた。その場には、増援として参陣したナティシダウス一門からの部隊を率いるキンナ卿の他にも、オクセンシュルヌス一門や、その他北方諸侯の指揮官らが顔を連ねている。 少年は、全身を包帯で巻かれた姿であったが、しかしその表情に一切の迷いはなかった。 「我が軍の損害の報告は受けました。今の我が軍では、敵軍をダヴィガ河の西岸に撤退させる事は不可能でしょう。ですが今回の勝利があれば、敵国が戦争を続けさせる意思をくじくことはできます。そのためにも、我が軍は敵に対して積極的に戦う意思を持っていると思わせねばなりません」 少年のその言葉に、軍議の席についた皆は活発に議論を始める。総司令官が決心し、方針がはっきりすれば、後はいかにしてそれを実現させるかである。そしてそれは、長年戦場にあった者達にとっては慣れたものであった。すぐに軍の編成が決まり、部隊の展開が決まる。それを少年が承認したことで、その日の軍議は終わった。 「カイン・オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公」 「なんでしょう?」 「今日の戦いは御身の勝利。そして、此度の戦も御身の勝利で終わるでしょう。配下の者がいかに奮戦しようと、勝利も敗北も総司令官に任じられた者が得るもの。ゆめ、お忘れなきよう」 「謹言、感謝します。キンナ・ナティシダウス・キンニアヌス候」 軍議が終わって皆が天幕から出て行った後、一人残ったキンナ卿が、寝台の上に横たわるオクセンシュルヌス・トゥルトニウス公爵カインに向けてそう語った。その言葉にカイン卿は、痛む身体に顔をしかめながらも、会釈して礼を述べた。
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/820.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >ひだまりスケッチ×365>ひだまりスケッチ×365 第10話「6月8日 まーるニンジン」】 ひだまりスケッチ×365 第10話「6月8日 まーるニンジン」 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れるひだまりスケッチ×365 第10話「6月8日 まーるニンジン」の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 MEGA このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画ひだまりスケッチ×365 コメント(感想) 動画ひだまりスケッチ×365 第10話「6月8日 まーるニンジン」に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1074.html
カイン公とクラウディアの婚前旅行の回。のはずが、カイン公が北方辺境候に指名されるまでで終わってしまった。そして、相変わらず結婚できない女達のぶっちゃけ話に花が咲く、の回である。 クラウディアとカイン卿の婚約が凱旋式の晩餐会で発表されてから秋の収穫祭が終わるまでの間、独立近衛第901重機甲兵大隊第2中隊は輪番で出動待機態勢にあった。この間は、第766教育隊も、第767教育隊も、そして「黒の零事件」の結果開設された第768教育隊も、普段の訓練を中止して交代で駐屯地に詰めることになっていた。同じ第901大隊の第1中隊他の部隊が、皇宮での式典にかりだされて忙しいこともあって、第2中隊が不測の事態に備えねばならなくなっていたのである。 この待機中、第2中隊長の帝國公爵ナタリア・グラックス・バジリア上級騎士隊長は、いつにもまして不機嫌そうに見えた。本人はそうした感情を隠して任務に精励しているつもりらしいが、ふとしたはずみで見せるむっつりとした表情と羨望の眼差しが、全てを無駄にしている。 「引継ぎ事項は以上です。これより第2中隊長より駐屯地司令へ、指揮権を渡します」 「駐屯地司令より第2中隊長へ、指揮権を受け取りました。それでは下番していいですよ、お疲れ様でした」 「はい、後は頼みます」 秋の収穫祭の日の早朝、上番してきたプロヴィウシアに部隊の指揮権を委譲したナタリアは、当直勤務による寝不足だけではないすわった目をしていた。昨日は久しぶりの休日を秋祭りで遊ぶことでたっぷりと楽しみ、十分に睡眠をとってきたプロヴィウシアは、そんな彼女のことを苦笑して一声かけた。 「駄目ですよ、そんな顔してちゃ。明日はお休みなんですから、お祭りを楽しんできてくださいね」 「祭りで恋人同士がいちゃつくのを見せつけられて楽しめるとでも?」 「はいはい。帰って一眠りすれば少しは気分も明るくなりますよ。今日は宮中晩餐会なのでしょう? 笑顔、笑顔」 むうぅ、と両手で顔の筋肉をほぐしたナタリアは、結局目の下に隈をつくったまま、不機嫌そうな表情で屋敷へと戻っていった。グラックス一門宗主のバジルス公爵であるナタリアは、これから急いで着替えて身だしなみを整え、聖アウグスティヌス大聖堂での聖餐式に列席しなくてはならない。こういう公的な儀式に参加するのは、一門宗主の義務であり、公務を理由に休むわけにはゆかないのだ。 「クラウディアちゃんが婚約したからって、ナタリアちゃんが焦る必要はないのにねえ」 苦笑しつつ昨日の日報に目を通し始めたプロヴィウシアは、自分も独り身であることを棚に上げてそう呟いた。 カイン・オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公は、だるい身体を引きずって元老院の議事に参加していた。彼もまたオクセンシュルヌス一門宗主であり、故に元老院議員である以上、今上皇帝リランディアへの忠誠宣誓の場にいないわけにはいかない。この場に参列しないという事は今上皇帝に対する叛意ありとみなされ、場合によっては元老院最終勧告の対象にもなりかねない。事実ユリウス・アントニウス南方辺境候ら南方辺境諸侯は、リランディア帝即位後の元老院議会に参加しない事で忠誠宣誓を拒否し、反逆者として元老院最終勧告の対象となり討伐された。議会に参加できないほどの病を負うか老衰するかした宗主は、不参加するよりも家督を譲ることを選ぶほどにこの場にいる事の意味は重い。 元老院議事堂の最上席に今上皇帝リランディアが正装をして鎮座し、議事の進行を観覧している中、議長である副帝レイヒルフトが各種の議題を提議し、それに対してそれぞれの議員が壇上で演説を行っては決議が行われてゆく。さすがに勅臨議会の場で野次や乱闘が起こることもなく、粛々と議事は進行してゆく。そもそも今上程されている議題は、それぞれ関係する派閥同士で合意がなされた内容であり、争議の対象になるどころか反対される事すらほとんど希であるのだ。元老院議員は、三〇強の一門の代表数百と百を越える勅任議員で構成されている。そのすべてが壇上で意見を述べるような事になれば、いつになったら議決ができるのかすら判らなくなるであろう。 「ただ今の議題は賛成多数により可決されました。次の議題を上程します。アドルファス・グスタファス公爵」 帝國宰相であるオロフス・アドルファス・グスタファス公が、議長であるレイヒルフトの指名を受けて登壇する。緑灰色の家色のスーツを着た彼は、その重く冷たい瞳で議事堂内を一瞥した。 「ただ今指名を受けましたアドルファス・グスタファス議員です。本議員はこれより、新北方辺境候の指名を提議いたします。現在北方辺境は、先年のオスミナ王国との戦争の敗北により喚起されたゴーラ帝国の活発な働きかけによって、北部国境に脅威を受けております。現在北方辺境候位は、副帝陛下が兼任されておられますが、副帝陛下は「帝國」の政務全般を統括するべき立場におられ、北方辺境問題にのみ専念なされるわけにはゆかない状況にあります。よって、北方辺境問題の早期解決のため、新たに北方辺境候を指名するべきと考え、ここに議題を提議するものであります」 普段は全く感情というものを表に出さないオロフス卿であったが、元老院での演説ともなればそれに相応しい声色と調子で言葉を発することになる。彼の演説には、現在の北方辺境の置かれている状況についての苦汁が滲み、これ以上の北方問題の先送りは許されないという意思が込められていた。 議会はオロフスの提議した議題によってわずかにざわめき、そして数人の議員が発言の許可を得るべく手を挙げた。その中の一人、栗色の総髪のそろそろ初老の域に差し掛かっている容貌の貴族を議長は指名し、発言の許可を与えた。 「ポリトリコス・アストラハン公爵」 「ただ今指名を受けましたポリトリコス・アストラハン議員です。アドルファス・グスタファス公爵にお聞きしたい。北方辺境の置かれている状況が最早一刻の猶予もない状態にある事については同意いたします。今や北方辺境は、独力で現国境を防衛する事すらかなわない状態にあります。つきましては、新北方辺境候が解決するべき課題についてお尋ねしたい。畢竟、北方辺境の問題とは、いまだ「内戦」の結果受けた惨禍からの復興の途上にある事、そのために人民は餓えに苦しみ、農民は土地を棄てて都市へと流入し、職人は工房を放棄し他の地方へと散逸しつつあります。そして耕し手のいなくなった土地は、投機の対象となって耕す者とてなく売り買いされ、結果として荒地ばかりが増えてゆく有様です。このような状況を誰が解決できるのか、お答え頂きたい」 「アドルファス・グスタファス公爵」 「ただ今のポリトリコス・アストラハン公爵のご質問に対してお答えいたします。現在の北方辺境は、最早独力での復興は極めて困難といわざるを得ず、特に政府からの多大な支援を必要としております。故に新北方辺境候は、執政府と緊密に連携を取り、各地の帝國諸侯との関係の良好なる者をもってその任にあたって頂くことになります」 オロフス卿のその言葉に、議場は騒然となった。各辺境候は、それぞれ担当している国境を挟んだ向こう側の外国との関係の調整も念頭において、かなりの独立した権限が与えられている存在である。故にそれぞれの辺境地域で本来ならば対等の立場にいるはずの各一門に対して限定的ながらも指揮権を発する事が皇帝より許されているのである。 その辺境候が、中央政府と「緊密に連携を取り」という事は、事実上その独立した権限のほとんどを放棄するに等しい。 続いて数十人の議員が発言の許可を求めて手を挙げた。 「静粛に!! ユリウス・マクシムス公爵」 「ただ今指名を受けましたユリウス・マクシムス議員です。アドルファス・グスタファス公爵にお尋ねしたい。これまで北方辺境候は、アドルファス一門に属する諸侯をもってその任に当たって頂いておりました。ただ今の発言にありました「執政府と緊密に連携を取り」という言葉は、いかなる意味を持つものか。そこに辺境候として今上陛下より付与頂いている大権の一部なりとも返上する意味があるのか、またアドルファス一門以外より辺境候を迎え入れる意思があるのか、この二点についてお答え頂きたい」 「アドルファス・グスタファス公爵」 「ただ今のユリウス・マクシムス公爵のご質問についてお答えいたします。アドルファス一門といたしましては、先の北方辺境候がオスミナ王国との戦争に敗北した責任をとって自決した時点で、次の北方辺境候位をお受けする資格はなくなったと認識しております」 その言葉に、議場はさらに騒然となった。このままでは議事が進行しないと議長が、がんがんと槌を打って静粛を取り戻させる。 「そして、新辺境候がお預かりする大権につきましては、それはあらためて今上陛下と協議するべき事項であり、本議員からは具体的にお答えするべきではないと考えるものであります」 さすがに今上皇帝陛下の御前であるため、野次は飛ばなかったものの、多数の議員がそれぞれ勝手に発言をし始める。その中で、身じろぎもせず黙って議事の進行を見つめている集団がいた。 議長の静粛を求める声が繰り返され、議場が一旦落ち着いたところで、百を超える議院が発言を求めて挙手する。その中からこれまで沈黙を保っていた一団の一人を、議長であるレイヒルフトは指名した。 「エドキナ大公」 「ただ今指名を受けましたエドキナ議員でございます。本件につきましては、辺境候指名の権利は元老院にあると本議員は理解しております。つきましては、新北方辺境候指名のために、ただ今より半刻の猶予を動議として議長に提出させて頂きたく存じます」 「動議に賛成の議員は、起立願いたい。……賛成多数により、本動議は可決されました。議事の再開は半刻後となります。一時閉会」 議長のレイヒルフトの打つ槌音は、一斉に口を開いた元老院議員らの声によってかき消されてしまっていた。 「それで、結局のところ誰が誰を指名して、新北方辺境候になったんです?」 「それは当然、グスタファス公が指名したさ。そして新北方辺境候は、オクセンシュルヌス・トゥルトニウス公に決まったよ」 ここ数年では珍しく荒れた秋の収穫祭の元老院の議会が閉会した後、それでも執り行なわれた宮中晩餐会に出席してきたナタリアが、第901大隊の駐屯地にふらふらになって顔を出していた。当直士官室には、今日は泊り込みのプロヴィウシアと、丁度下番するところであったメトポロニアの二人がだべっていた。 本来ならば帰宅して明日に備えて寝るはずのメトポロニアであるが、さすがに同じ魔族を代表して元老院に登院したエドキナ大公の事が気になっていた様である。ナタリアの顔を見た瞬間、元老院の様子を聞き出しにかかった。 「ふうん、って、トゥルトニウス公って、クラウディアさんの婚約者でしょ!? え、つまり、完全に政略結婚じゃないですか。あ、もしかしてナタリアさん、次の北方辺境候が誰か知っていたんですか?」 「当然だろう? 私だって一応はグラックス一門の宗主だぞ。事前に根回しは受けているよ。まあ、あらためて紹介された時には、こんな線の細い子供に任せて大丈夫なのかと思ったがな」 「あら、そうなんですか? クラウディアちゃんがあんなに喜んでいるから、いかにもセルウィトス好みの、こう、がっちりした熱血漢かと思っていたんですけど」 一応は正装のドレス姿から軍服に着替えてきたナタリアが、ぐったりと疲れた様子でソファーに腰掛けている。そんな彼女に向かってプロヴィウシアとメトポロニアは、興味津々で質問を次々と重ねた。 「まあ、第一印象はそうでも、先の戦で連合王国を相手に勝って殊勲章を受勲し、その上でジュウキエフ突出部放棄を認めさせましたからね。考えてみれば、そのクラウディアより歳下でそれだけの事を成し遂げたんですから、大したものですよ。私に同じ事ができるかと問えば、まず無理でしょうし」 「なるほど。でもそうしますと、周囲を固める大人を誰にするか、で揉めそうですね。ほら、政治は人事が一番揉めますから」 「そうよねえ。押し出しが弱い、というのはこういう時に大変よねえ」 「それは大丈夫でしょう。まあ、今の時点では詳しくは言えませんが、トゥルトニウス公は実質、副帝陛下とセルトリウス辺境候の後見を受けているようなものですから。あのお二人の影がちらつくんです、並の貴族では、そうそう舐めた真似はできはしませんよ」 ブランデーを少し多目に入れた紅茶をすすりつつ、とろんとした目でナタリアはそう断言した。 「クラウディアさん、もうへにゃへにゃになって喜んでいるのに、前途多難ですよねえ。折角、上級騎士課程を歴代最年少で修了して、正式に小隊長に任命されたのに。いつ結婚できるのかしら?」 「ま、何年か先になるのは確実だな。トゥルトニウス公への引継ぎだって今年一杯はかかるだろうし、その間は北方辺境中を廻らないとならないからね」 「あ、ナタリアちゃん、喜んでいますね? 駄目ですよ、人の不幸を喜んだら」 「いやいや、それはありませんから」 と言いつつも、どこか嬉しそうな様子のナタリアである。 困った人ねえ、と、苦笑したプロヴィウシアに、困った様な笑みを浮かべたメトポロニアが口を開いた。 「でも、これで結婚したくてもできない人が三人ですか。本当に難儀な配置ですよね、ここ」 「……それは言わない約束なのにー」 「そうだそうだ。それを言ったら、君だって独り身で、結婚のあてもありはしないじゃないか」 どばーっと涙を流すプロヴィウシアに、すんごい恨めしげな目つきとなってメトポロニアをねめつけたナタリアの二人に総攻撃をくらって、彼女もたじたじとなってしまう。 「えー、一応私も結婚したいとは思っていますけど、でも、焦ってはいないですから」 「見た目だけ若くたって、男はそれだけじゃ寄ってこないのよー」 「寄ってきても、遊びだったり下心が透けて見えたり、ろくな奴がいないしな」 「そうそう、メトポロニアちゃんだって、そのうち「結婚したい」って言い出すに決まっているんだからー」 「うわっ、やめて下さい。私はちゃんといい人見つけて結婚しますから」 「ふっ、そう言っていられるのも今のうちさ」 学生や、新任騎士達がいないことをいい事に、彼女らのおしゃべりはさらに夜遅くまで続いた。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1002.html
なんというか、完全にその場の勢いで書き上げた代物である。とりあえず西方人と東方人の意識の違いとはこういうもの、ということで。 井戸端会議といえば日々の生活を支える女性らの交流の場であるが、当然のことながら「学院」の女生徒達の間にも存在する。元はお姫様育ちであっても、自ら掃除洗濯をさせられるとなれば、おのずとおしゃべりに花が咲くというものである。 「というわけで、先輩、セルウィトスっすよね?」 「何がというわけなのかは判らないけれども、セルウィトス一門の出身だよ」 「じゃ、肝練りやったんですか? 肝練り?」 「うん。道場の皆とね」 「肝練りキターッ!!」 ある日の晴れた空の下でたまった洗濯物を洗っている時に、たまたまクラウディアらとダリア達が一緒になった時のことである。毎度洗濯のためのお湯をもらうために列に並ぶのが面倒になったルスカシアが目ざとくセレニアを見つけ、だがこの一期生代表がそうした楽するために手を貸すことは絶対に無いと思い知らされているダリアが止めるのを振り切って彼女にお湯を分けてもらえないか頼んだのであった。回答は当然「否」なわけであるが、一緒にいたクラウディアのとりなしでカミナリを落とされるのだけは許してもらったルスカシアが、一緒に洗濯をしたいと言い出したのであった。 つまるところ、この人懐こいルスカシアにクラウディアが懐かれたわけであるが、皆で一緒に洗濯をする分には構わなかろうということで、お湯を貰ってきたダリア達もクラウディア達に合流したわけであった。 そして、西方はナティシダウス一門の一機衆出身のルスカシアが、同じく西方のセルウィトス一門宗家姫君のクラウディアと一緒になれば、話題はそれぞれの一門独自の風俗となるのも自然の流れである。 「何それは? 肝練り? 家畜の肝臓で肉団子でも作るの?」 「いや、さすがに違うよ。そうだね、あえていうなら度胸づけのための儀式かな」 「そう。それで具体的には何をするの?」 東方はアル・カルナイ王国との国境の街を仕切っているシリヤスクス・セレニウス家の姫君であるセレニアは、当然のことながら西方の諸一門の風習についてうといところがある。というより、それぞれの一門にはそれぞれに独特の風習があって、それを全て把握している者など物好きな学者くらいしかいはしない。 洗濯の手を止めて、嬉しそうに両手をぶんぶん振っているルスカシアの首根っこを押さえて大人しくさせたダリアが、クラウディアに話の続きをうながした。 「それで、肝練りって、どんな儀式なんですか? 道場の方たちと、ということは、結構危険な儀式なんでしょうけれど」 「まあ、危険といえば危険かな。うん、ただ実包を込めて火縄に火を付けた鉄砲を天井からぶら下げてね、皆でそれを囲んでぐるぐる回しながらお酒を飲むだけ」 「だけじゃないっしょ!? だけじゃッ!! それ危ないじゃないですか!! 事故ったら死にますって!!」 「そうでもないよ。銃口が自分を向くのは一瞬だし」 平然となんでもないように説明するクラウディアに、ダリアが目をむいて食ってかかった。確かに何時発砲するか判らない鉄砲の銃口を前にして酒を飲むなど、正気の沙汰ではない。 「まあ、銃口が向くのは一瞬なんだけれどもね、その瞬間に少しでも臆した様子を見せたら物笑いで恥になるんだ。だから、銃口が向こうが、実際に弾が出ようが、何事も無いように平然とお酒を飲めるようにならないとね」 「すげーっ!! やっぱ、セルウィトスすげーっ!!」 「おめーも何喜んでいやがんだよッ!!」 「えー? だってセルウィトスだよ? 中原の蛮族や西方魔族が恐れをなす戦のために生まれてきた一門衆だよ? 格好いいと思わね? な、な、アルブロシアもそう思うだろ?」 「……一門の価値観は、それぞれだから」 なんでそこで自分に話をふるかなあ、と、アルブロシアの迷惑そうな表情を無視して、ルスカシアが、それはもう嬉しそうに話を続ける。 「やっぱさ、こう、命捨て奸ってこそのセルウィトスなんだってばさー」 「個人的には、ナティシダウス一門の一機衆に言われても困るかな」 「えー? そうですかー?」 「「死人(しびと)の一機衆」といったら、うちにも知られているくらいだよ? 名も実も考えず、ただ御家の為に瞬時に命を投げ捨てるなんて、そっちの方がすごいと思うけれどもなあ。うちのいくさ人どもが命知らずなのも、それが名を上げ、実が成るからだし」 呆れ顔のクラウディアの言葉に、不満そうにぷぅっとほほを膨らませて上目づかいになったルスカシアに、ダリアがわけわからなさそうな表情になる。 「名誉も実入りも無しに死ぬって、なんだよそれ? 気でも違ってんのかよ」 「おう! 騎士たるもの、気狂いたれ、御家の狗たれ、ってのが一機衆の誇りだぜー 見返りなんて期待すんのは本物の忠心じゃねぇっての。すでに機装甲と領地を賜っているんだからさ、その御恩に報いてなんぼだろー」 「いやいやいや、それなんかおかしくね? 領地を任されててんだから、そいつをきちんと経営すんのが仕事じゃね?」 「ちげぇーって。領地ってのは、いくさ人を養うためのもんなんだって。騎士の理想は、純粋無雑のいくさ人に決まってるんだってばよー」 すでに話題についていけなくなっているセレニアが、まるで自分とは違う種族でも見るような目つきでルスカシアを見ている。さすがにそれはいけないだろう、と、見てとったクラウディアがフォローに入った。 「えーとさ、機装甲って、騎士を騎士たらしめる財産だよね?」 「ええ」 「でも、機装甲は、基本的には一品物で、作るのに物凄いお金がかかる。それに、機体があっても維持するだけでとってもお金がかかる。お金だけじゃない、人手も技術もいるよね」 「その通りね。だから工部の親方を抱えられるかどうかが、諸侯と騎士の分け目となってよ」 「うん。で、その機装甲を一門から借りていて、かつそれをいつでも戦場に出られるように維持するための領地と工部を預けられている騎士達が、一機衆なんだ。つまりさ、代々の権利として騎士でいるんじゃないんだ。一門が機装甲を預けるに足るいくさ人だと認めたから騎士なのが彼らなわけ。だから彼らは、「御恩」という言い方をするんだ。つまりさ、すでに戦働きの報酬は前払いされているんだ」 「……判ったような、判らないような」 さすが先輩、よく判ってくれてるー と、大喜びで両腕をぶんぶん振っているルスカシアを、ダリアが化け物でも見るかのような目で見つめる。とりあえず場の雰囲気を変えようとして、アルブロシアが話題をふった。 「そういえば、クラウディア様は、かつて戦場に出られたことがおありだとか」 「うん? まあ一回だけだから大したことはないんだけれどもね」 「……もしかして、手柄あげられていらっしゃったりします?」 「とりあえず三機喰ったけれど、まあ機神に乗ってだから、そんなに偉いわけじゃないよ」 「……初陣で三機、初陣で三機」 かつて教会軍で機装甲乗りとして戦場に出る直前までいったアルブロシアが、名状しがたきなにものかを見るような目でクラウディアを眺めつつぶつぶつと同じ言葉を繰り返している。そんな彼女の両肩を掴んでゆさぶって正気に戻しつつ、愛想笑いを浮かべてダリアが話の続きをうながした。 「それで、よく無事でしたッすね。ほら、初陣だと突出して討たれやすいから気をつけないと、って聞きますし」 「いやぁ。突出もなにも、渡河してきた敵の橋頭堡に殴りこんだだけだしね。さすがに二十を超える敵機に囲まれて死ぬかと思ったよ」 「……そん時、お味方は何機?」 「わたしを含めて四機。でも一機は敵陣に切り込んでいたから、その場には三機だったよ」 「……よく生きて帰ってこれましたね」 「うん。本当に今考えると運が良かったとしかいいようがないよ。さすがに二度はやりたくないなあ」 うんうん、と、一人納得したような風にうなずいているクラウディアを、皆は心底恐ろしい何かを眺めるかのような表情で見つめている。だが、そんな周囲の空気を無視して、ルスカシアがさらに話を振った。 「そーいえば、参陣前に「肝試し」とかやりました?」 「うん? 「肝試し」? ああ、やったよ」 もう完全に二人だけの世界を作っているクラウディアとルスカシアに、それでも話を聞くのが自分の義務なのだろう、という表情でダリアが問いかけた。 「それで、その「肝試し」って、なんです?」 絶対にろくでもない代物に違いない、と、言外ににじませつつ、そう問いかけたダリアに、クラウディアは気がついてか気がつかないでか、あっさりと答えた。 「うん、「肝試し」ってね、上役が信頼する部下を指名して、短筒で自分の頭の上に乗せた水筒を撃ち抜かせるんだ」 「……相変わらず壮絶ッすね」 「まあ、そうなのかな。でも、あくまで上官が部下に、お前達を信頼して命を預けているんだ、と、示すための儀式だからね。そりゃ危険なのは仕方が無いかな」 「で、ちなみに聞いてみるだけ聞いてみますが、先輩はどっちでした?」 「当然指名する側だったけれど?」 何を当たり前のことを聞くのかな? とでも言わんばかりに小首をかしげてクラウディアはダリアを見つめ返した。 「一門宗家の姫にして、次の宗主なんだよ。そりゃ、一門の皆を信頼していると示さないと。兄達もやったし、父もやったし、うちの名のある将は皆やっているよ」 「……それで、弾が外れて自分に当たったらどうなるんです?」 「死ぬだけだよ?」 「弾がそれてどっか飛んでいったら?」 「そりゃ、撃った者が上役に信頼にこたえられなかったんだ。その場でそっ首かき切って果てるのが作法だよ。こんな大恥はないもの」 それでこそセルウィトスの一姫だーっ と、頬を上気させ、瞳をうるませて、ルスカシアは大喜びし、セレニアも、ダリアも、アルブロシアも、ああ、この人は自分達とは別の世界に生きている人間なんだ、と、目をそらしてひきつった笑みを浮かべた。 皆のその微妙な雰囲気に、心底困ったような表情を浮かべたクラウディアは、眼鏡の位置を直して口を開いた。 「でも、私達西方の人間から見れば、東方の人間の方がよっぽど怖いよ。東方魔族と三百年も正面から戦い続けて一歩も引かなかったんだからさ」 「貴女達、命は投げ捨てるもの、みたいな西方人に言われると微妙な気持ちになるわ。我々は、ただ、存在全てを戦争を遂行するために集中させただけですもの」 「……そっちの方がよっぽど危険だと思う」 「何を言っているの。ただ、全ての人間に兵士となれるよう教育の機会を与え、全ての人間を戦功で公正に評価し、全ての人間を戦争に奉仕させるようにしただけのことよ。そんな難しいことではなくってよ」 一番人間性から遠い存在がここにいた。セレニアをのぞく全員が、そういう表情になって、さも当然そうにそう言い切ったシリヤスクスの重臣の娘を生暖かい目で見つめた。 その微妙な空気に心底傷ついた表情になって、セレニアは、そっぽを向いて呟いた。 「まるで人を戦争機械でも見るような目で見ないでちょうだい。傷つくわ」 でも戦争機械そのものだろう、というのが、今この瞬間に皆が一致した感想であった。
https://w.atwiki.jp/encodememo/pages/124.html
2010/03/26 05 50 15 ひだまりスケッチ×☆☆☆ 解像度 CRF値 フレームレート ソース解像度 放送局 1280x720 20 周期一定24fps/警告テロ60i HD TBS 話数 CPU fps 容量 備考 第01話 - - 240MB 提供録画ミス 第02話 i7 920 21.87 192MB 第03話 i7 920 21.52 187MB 第04話 i7 920 19.42 249MB 第05話 i7 920 20.01 223MB 第06話 i7 920 20.31 219MB 第07話 i7 920 21.77 228MB 第08話 i7 920 20.37 225MB 第09話 i7 920 20.52 223MB 第10話 i7 920 19.60 244MB 第11話 i7 920 20.38 218MB 第12話 i7 920 20.40 222MB 第01話 「2月27日~3月4日 真っ赤点/4月1日・3日 ようこそひだまり荘へ」 ログ 第02話 「4月6日~7日 イエスノー/7月19日 オリーブ」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35960 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 419 Avg QP 13.83 size 107423 PSNR Mean Y 49.93 U 51.35 V 51.62 Avg 50.35 Global 49.94 x264 [info] frame P 8475 Avg QP 17.40 size 10851 PSNR Mean Y 47.46 U 50.33 V 50.82 Avg 48.20 Global 47.38 x264 [info] frame B 27066 Avg QP 22.71 size 1516 PSNR Mean Y 47.29 U 50.52 V 51.05 Avg 48.11 Global 47.40 x264 [info] consecutive B-frames 2.4% 5.0% 5.7% 21.0% 24.8% 41.1% x264 [info] mb I I16..4 26.6% 27.1% 46.3% x264 [info] mb P I16..4 5.9% 0.0% 2.3% P16..4 30.9% 4.7% 4.3% 0.0% 0.0% skip 51.9% x264 [info] mb B I16..4 0.2% 0.0% 0.1% B16..8 11.4% 0.3% 0.4% direct 0.7% skip 86.8% L0 38.1% L1 59.0% BI 2.9% x264 [info] 8x8 transform intra 9.5% inter 39.0% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 36.3% 54.1% 44.7% inter 3.0% 7.0% 3.8% x264 [info] i16 v,h,dc,p 65% 22% 6% 7% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 20% 14% 18% 8% 8% 6% 7% 7% 11% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 20% 13% 23% 7% 8% 7% 6% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.4% x264 [info] ref P L0 75.2% 19.1% 4.2% 1.4% 0.1% x264 [info] ref B L0 89.2% 10.8% x264 [info] ref B L1 95.2% 4.8% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9940730 x264 [info] PSNR Mean Y 47.363 U 50.487 V 51.001 Avg 48.159 Global 47.421 kb/s 1186.75 encoded 35960 frames, 21.87 fps, 1186.75 kb/s 第03話 「4月8日~9日 決断/12月10日 カップ小さいですから」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35961 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 404 Avg QP 13.83 size 105147 PSNR Mean Y 50.08 U 51.45 V 51.52 Avg 50.46 Global 50.03 x264 [info] frame P 8269 Avg QP 17.15 size 10814 PSNR Mean Y 47.77 U 50.63 V 50.75 Avg 48.49 Global 47.72 x264 [info] frame B 27288 Avg QP 22.88 size 1513 PSNR Mean Y 47.41 U 50.59 V 50.74 Avg 48.18 Global 47.42 x264 [info] consecutive B-frames 1.8% 3.5% 6.9% 24.0% 23.1% 40.7% x264 [info] mb I I16..4 26.0% 27.5% 46.5% x264 [info] mb P I16..4 6.0% 0.0% 2.3% P16..4 31.4% 5.0% 4.3% 0.0% 0.0% skip 51.0% x264 [info] mb B I16..4 0.2% 0.0% 0.1% B16..8 11.9% 0.3% 0.4% direct 0.8% skip 86.2% L0 39.2% L1 57.8% BI 3.0% x264 [info] 8x8 transform intra 9.4% inter 39.1% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 36.7% 56.4% 46.3% inter 3.2% 7.0% 3.8% x264 [info] i16 v,h,dc,p 64% 21% 6% 9% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 22% 15% 17% 8% 8% 6% 7% 7% 11% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 20% 13% 23% 7% 8% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.2% x264 [info] ref P L0 76.2% 19.5% 3.6% 0.7% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.6% 10.4% x264 [info] ref B L1 94.8% 5.2% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9938280 x264 [info] PSNR Mean Y 47.521 U 50.610 V 50.749 Avg 48.279 Global 47.511 kb/s 1154.77 encoded 35961 frames, 21.52 fps, 1154.77 kb/s 第04話 「4月15日 日当たり良好」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35959 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 425 Avg QP 14.29 size 113489 PSNR Mean Y 49.42 U 51.02 V 51.07 Avg 49.86 Global 49.45 x264 [info] frame P 8366 Avg QP 17.99 size 14927 PSNR Mean Y 46.50 U 49.63 V 49.79 Avg 47.27 Global 46.58 x264 [info] frame B 27168 Avg QP 21.49 size 2377 PSNR Mean Y 46.10 U 49.48 V 49.58 Avg 46.91 Global 46.27 x264 [info] consecutive B-frames 1.6% 4.1% 6.1% 29.7% 20.6% 37.9% x264 [info] mb I I16..4 23.6% 29.9% 46.6% x264 [info] mb P I16..4 6.8% 0.0% 3.0% P16..4 41.8% 6.0% 6.4% 0.0% 0.0% skip 36.0% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 16.6% 0.5% 0.6% direct 0.9% skip 80.8% L0 37.6% L1 59.6% BI 2.7% x264 [info] 8x8 transform intra 9.2% inter 44.1% x264 [info] direct mvs spatial 99.9% temporal 0.1% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 39.4% 58.4% 46.8% inter 5.0% 10.0% 5.7% x264 [info] i16 v,h,dc,p 56% 23% 6% 14% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 18% 14% 16% 9% 9% 7% 8% 7% 12% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 13% 22% 8% 8% 7% 7% 7% 9% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.6% x264 [info] ref P L0 76.3% 19.2% 3.7% 0.8% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.6% 10.4% x264 [info] ref B L1 94.9% 5.1% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9921465 x264 [info] PSNR Mean Y 46.228 U 49.535 V 49.649 Avg 47.031 Global 46.368 kb/s 1584.87 encoded 35959 frames, 19.42 fps, 1584.87 kb/s 第05話 「4月20日 オンナノコのきもち/1月31日 まっすぐな言葉」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35959 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 427 Avg QP 13.98 size 100844 PSNR Mean Y 49.95 U 51.48 V 51.51 Avg 50.37 Global 49.82 x264 [info] frame P 8415 Avg QP 17.64 size 12888 PSNR Mean Y 47.30 U 50.52 V 50.64 Avg 48.06 Global 47.29 x264 [info] frame B 27117 Avg QP 22.33 size 2188 PSNR Mean Y 46.94 U 50.39 V 50.51 Avg 47.76 Global 46.97 x264 [info] consecutive B-frames 1.9% 4.6% 6.1% 24.5% 25.2% 37.6% x264 [info] mb I I16..4 24.7% 31.1% 44.2% x264 [info] mb P I16..4 7.6% 0.0% 3.2% P16..4 34.8% 5.8% 5.2% 0.0% 0.0% skip 43.5% x264 [info] mb B I16..4 0.4% 0.0% 0.2% B16..8 15.1% 0.5% 0.6% direct 1.0% skip 82.2% L0 39.5% L1 57.3% BI 3.2% x264 [info] 8x8 transform intra 8.9% inter 44.3% x264 [info] direct mvs spatial 99.9% temporal 0.1% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 35.4% 53.6% 42.4% inter 4.2% 8.5% 4.3% x264 [info] i16 v,h,dc,p 57% 24% 6% 13% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 21% 13% 16% 9% 8% 7% 8% 8% 11% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 18% 13% 25% 7% 8% 7% 6% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 2.0% x264 [info] ref P L0 74.4% 19.6% 4.9% 1.0% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.5% 10.5% x264 [info] ref B L1 94.7% 5.3% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9932179 x264 [info] PSNR Mean Y 47.062 U 50.435 V 50.548 Avg 47.860 Global 47.065 kb/s 1405.80 encoded 35959 frames, 20.01 fps, 1405.80 kb/s 第06話 「10月15日 空の高さも木立の影も/4月26日~27日 恋愛上級者」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35960 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 441 Avg QP 14.05 size 111161 PSNR Mean Y 49.86 U 51.31 V 51.29 Avg 50.25 Global 49.84 x264 [info] frame P 8071 Avg QP 17.62 size 12805 PSNR Mean Y 47.25 U 50.16 V 50.01 Avg 47.94 Global 47.16 x264 [info] frame B 27448 Avg QP 21.91 size 1979 PSNR Mean Y 46.88 U 49.98 V 49.86 Avg 47.62 Global 46.86 x264 [info] consecutive B-frames 1.7% 3.2% 5.7% 23.9% 19.8% 45.7% x264 [info] mb I I16..4 24.4% 27.5% 48.1% x264 [info] mb P I16..4 6.6% 0.0% 3.0% P16..4 36.2% 5.2% 5.2% 0.0% 0.0% skip 43.8% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 13.7% 0.4% 0.5% direct 0.9% skip 84.0% L0 39.7% L1 57.6% BI 2.7% x264 [info] 8x8 transform intra 9.1% inter 43.1% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 38.3% 58.7% 47.8% inter 3.7% 8.5% 4.6% x264 [info] i16 v,h,dc,p 62% 19% 6% 13% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 20% 15% 15% 8% 8% 7% 8% 7% 12% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 13% 22% 7% 9% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.4% x264 [info] ref P L0 75.6% 19.6% 4.0% 0.7% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.4% 10.6% x264 [info] ref B L1 94.9% 5.1% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9933616 x264 [info] PSNR Mean Y 46.997 U 50.037 V 49.914 Avg 47.724 Global 46.954 kb/s 1378.17 encoded 35960 frames, 20.31 fps, 1378.17 kb/s 第07話 「5月3日~4日 7等分の日」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35962 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 365 Avg QP 14.18 size 123537 PSNR Mean Y 49.57 U 51.59 V 51.77 Avg 50.13 Global 49.74 x264 [info] frame P 8831 Avg QP 17.48 size 12494 PSNR Mean Y 46.84 U 50.46 V 50.73 Avg 47.72 Global 47.10 x264 [info] frame B 26766 Avg QP 20.95 size 2272 PSNR Mean Y 46.39 U 50.31 V 50.56 Avg 47.33 Global 46.53 x264 [info] consecutive B-frames 3.1% 5.1% 5.8% 24.1% 25.1% 36.7% x264 [info] mb I I16..4 20.2% 32.1% 47.7% x264 [info] mb P I16..4 6.2% 0.0% 2.5% P16..4 33.1% 4.9% 4.2% 0.0% 0.0% skip 49.1% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 11.8% 0.5% 0.6% direct 1.7% skip 85.0% L0 37.3% L1 57.7% BI 5.0% x264 [info] 8x8 transform intra 9.3% inter 42.5% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 38.9% 59.5% 48.9% inter 4.2% 8.8% 4.5% x264 [info] i16 v,h,dc,p 58% 25% 6% 11% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 21% 19% 18% 7% 7% 5% 6% 6% 10% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 14% 20% 7% 8% 8% 7% 8% 9% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.3% x264 [info] ref P L0 77.3% 17.4% 4.2% 1.1% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.2% 10.8% x264 [info] ref B L1 94.7% 5.3% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9939150 x264 [info] PSNR Mean Y 46.536 U 50.364 V 50.616 Avg 47.452 Global 46.690 kb/s 1441.63 encoded 35962 frames, 21.77 fps, 1441.63 kb/s 第08話 「5月13日~14日 ゆのクラブ/9月26日~27日 やっぱりナスが好き」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35960 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 392 Avg QP 14.09 size 108981 PSNR Mean Y 49.69 U 51.25 V 51.26 Avg 50.12 Global 49.72 x264 [info] frame P 8435 Avg QP 17.70 size 12786 PSNR Mean Y 46.99 U 50.03 V 50.14 Avg 47.75 Global 47.07 x264 [info] frame B 27133 Avg QP 22.40 size 2290 PSNR Mean Y 46.65 U 49.96 V 50.07 Avg 47.45 Global 46.73 x264 [info] consecutive B-frames 1.7% 3.8% 5.5% 34.6% 17.3% 37.0% x264 [info] mb I I16..4 23.8% 29.6% 46.6% x264 [info] mb P I16..4 6.1% 0.0% 2.8% P16..4 36.2% 5.4% 5.3% 0.0% 0.0% skip 44.1% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 14.7% 0.5% 0.6% direct 1.0% skip 82.7% L0 37.9% L1 59.0% BI 3.0% x264 [info] 8x8 transform intra 9.0% inter 42.9% x264 [info] direct mvs spatial 99.9% temporal 0.1% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 39.3% 57.4% 46.0% inter 4.2% 8.5% 4.6% x264 [info] i16 v,h,dc,p 55% 24% 6% 14% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 13% 16% 9% 9% 7% 8% 8% 12% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 14% 22% 7% 9% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.2% x264 [info] ref P L0 75.2% 19.8% 4.0% 1.0% 0.0% x264 [info] ref B L0 87.9% 12.1% x264 [info] ref B L1 94.2% 5.8% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9930716 x264 [info] PSNR Mean Y 46.760 U 49.991 V 50.097 Avg 47.552 Global 46.832 kb/s 1418.13 encoded 35960 frames, 20.37 fps, 1418.13 kb/s 第09話 「11月22日 三年生と一年生/5月21日 泣く女」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35960 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 474 Avg QP 13.93 size 104030 PSNR Mean Y 49.81 U 51.37 V 51.47 Avg 50.25 Global 49.87 x264 [info] frame P 8637 Avg QP 17.56 size 12009 PSNR Mean Y 47.39 U 50.39 V 50.50 Avg 48.13 Global 47.32 x264 [info] frame B 26849 Avg QP 22.57 size 2165 PSNR Mean Y 47.12 U 50.32 V 50.32 Avg 47.89 Global 47.05 x264 [info] consecutive B-frames 2.2% 4.7% 8.3% 24.5% 24.3% 36.0% x264 [info] mb I I16..4 26.8% 27.6% 45.6% x264 [info] mb P I16..4 7.0% 0.0% 2.9% P16..4 31.9% 4.7% 4.5% 0.0% 0.0% skip 49.1% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 12.2% 0.5% 0.6% direct 0.9% skip 85.4% L0 37.7% L1 59.3% BI 3.1% x264 [info] 8x8 transform intra 8.9% inter 44.0% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 37.8% 55.2% 44.8% inter 3.7% 8.1% 4.2% x264 [info] i16 v,h,dc,p 54% 27% 6% 13% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 16% 16% 8% 8% 6% 8% 7% 11% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 14% 22% 7% 9% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.5% x264 [info] ref P L0 77.4% 17.0% 4.5% 1.0% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.7% 10.3% x264 [info] ref B L1 94.8% 5.2% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9936433 x264 [info] PSNR Mean Y 47.218 U 50.349 V 50.380 Avg 47.981 Global 47.139 kb/s 1407.82 encoded 35960 frames, 20.52 fps, 1407.82 kb/s 第10話 「5月28日~6月2日 ひだまりパレット」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35959 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 486 Avg QP 14.04 size 98147 PSNR Mean Y 49.74 U 51.37 V 51.36 Avg 50.18 Global 49.76 x264 [info] frame P 8579 Avg QP 17.81 size 14018 PSNR Mean Y 46.96 U 50.17 V 50.01 Avg 47.72 Global 46.97 x264 [info] frame B 26894 Avg QP 21.87 size 2418 PSNR Mean Y 46.66 U 50.08 V 49.96 Avg 47.46 Global 46.69 x264 [info] consecutive B-frames 1.8% 4.2% 6.8% 33.2% 20.4% 33.5% x264 [info] mb I I16..4 25.0% 28.9% 46.2% x264 [info] mb P I16..4 7.2% 0.0% 3.5% P16..4 36.9% 5.8% 5.7% 0.0% 0.0% skip 40.9% x264 [info] mb B I16..4 0.4% 0.0% 0.2% B16..8 15.2% 0.5% 0.6% direct 1.1% skip 82.1% L0 38.0% L1 59.1% BI 2.9% x264 [info] 8x8 transform intra 9.0% inter 42.4% x264 [info] direct mvs spatial 99.9% temporal 0.1% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 38.7% 56.8% 45.4% inter 4.4% 9.2% 4.7% x264 [info] i16 v,h,dc,p 60% 20% 7% 14% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 18% 14% 16% 9% 9% 7% 8% 8% 12% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 13% 23% 8% 9% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.8% x264 [info] ref P L0 75.6% 19.0% 4.6% 0.8% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.0% 11.0% x264 [info] ref B L1 94.8% 5.2% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9929194 x264 [info] PSNR Mean Y 46.772 U 50.120 V 49.990 Avg 47.561 Global 46.786 kb/s 1553.41 encoded 35959 frames, 19.60 fps, 1553.41 kb/s 第11話 「6月5日 マッチ棒の謎/2月16日 48.5cm」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35960 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 484 Avg QP 13.99 size 108551 PSNR Mean Y 49.77 U 51.22 V 51.33 Avg 50.19 Global 49.82 x264 [info] frame P 8536 Avg QP 17.45 size 11600 PSNR Mean Y 47.36 U 50.28 V 50.36 Avg 48.09 Global 47.36 x264 [info] frame B 26940 Avg QP 22.24 size 1988 PSNR Mean Y 47.05 U 50.22 V 50.27 Avg 47.82 Global 47.07 x264 [info] consecutive B-frames 1.7% 4.2% 6.4% 34.1% 19.1% 34.4% x264 [info] mb I I16..4 23.9% 30.4% 45.7% x264 [info] mb P I16..4 6.6% 0.0% 2.8% P16..4 35.3% 4.8% 4.8% 0.0% 0.0% skip 45.7% x264 [info] mb B I16..4 0.3% 0.0% 0.2% B16..8 14.1% 0.4% 0.5% direct 0.9% skip 83.6% L0 37.1% L1 59.9% BI 2.9% x264 [info] 8x8 transform intra 10.4% inter 44.7% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 39.0% 57.5% 47.0% inter 3.8% 8.5% 4.6% x264 [info] i16 v,h,dc,p 61% 20% 6% 13% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 18% 16% 16% 8% 8% 7% 8% 7% 11% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 19% 13% 23% 7% 8% 7% 7% 7% 8% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.4% x264 [info] ref P L0 76.9% 18.7% 3.6% 0.9% 0.0% x264 [info] ref B L0 88.9% 11.1% x264 [info] ref B L1 94.3% 5.7% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9933421 x264 [info] PSNR Mean Y 47.157 U 50.251 V 50.306 Avg 47.917 Global 47.168 kb/s 1367.58 encoded 35960 frames, 20.38 fps, 1367.58 kb/s 第12話 「7月12日 みつぼし×リコピン」 avs [info] 1280x720 @ 29.97 fps (35243 frames) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.2 x264 [info] profile High, level 4.1 mp4 [info] initial delay 2002 (scale 30000) x264 [info] frame I 467 Avg QP 14.18 size 120473 PSNR Mean Y 49.41 U 50.97 V 51.03 Avg 49.85 Global 49.53 x264 [info] frame P 8069 Avg QP 17.64 size 12815 PSNR Mean Y 46.79 U 49.79 V 49.77 Avg 47.54 Global 46.89 x264 [info] frame B 26707 Avg QP 22.53 size 1868 PSNR Mean Y 46.53 U 49.80 V 49.77 Avg 47.33 Global 46.69 x264 [info] consecutive B-frames 1.9% 3.7% 5.4% 24.6% 24.1% 40.4% x264 [info] mb I I16..4 22.8% 29.6% 47.6% x264 [info] mb P I16..4 5.9% 0.0% 2.6% P16..4 36.9% 5.3% 5.3% 0.0% 0.0% skip 44.1% x264 [info] mb B I16..4 0.2% 0.0% 0.2% B16..8 13.2% 0.4% 0.5% direct 0.8% skip 84.7% L0 37.0% L1 60.1% BI 2.9% x264 [info] 8x8 transform intra 11.0% inter 43.8% x264 [info] direct mvs spatial 100.0% temporal 0.0% x264 [info] coded y,uvDC,uvAC intra 42.4% 61.0% 50.2% inter 4.0% 8.7% 4.7% x264 [info] i16 v,h,dc,p 56% 22% 7% 15% x264 [info] i8 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 17% 15% 17% 8% 9% 7% 8% 7% 12% x264 [info] i4 v,h,dc,ddl,ddr,vr,hd,vl,hu 18% 14% 21% 7% 9% 8% 7% 7% 9% x264 [info] Weighted P-Frames Y 1.4% x264 [info] ref P L0 78.5% 16.9% 3.8% 0.8% 0.0% x264 [info] ref B L0 89.7% 10.3% x264 [info] ref B L1 94.7% 5.3% x264 [info] SSIM Mean Y 0.9930261 x264 [info] PSNR Mean Y 46.629 U 49.810 V 49.783 Avg 47.408 Global 46.761 kb/s 1425.70 encoded 35243 frames, 20.40 fps, 1425.70 kb/s