約 3,624,554 件
https://w.atwiki.jp/marurowa/pages/293.html
ジャイアントキリング(後編)◆SqzC8ZECfY 銃を携えて駆けつけたウルフウッドが見たものは、完全に崩壊したビルの残骸だった。 大きな地響きが発生し、慌てて現場へと向かったのだが、巨大な破壊の爪痕が残るだけで誰の姿を見つけることも出来なかった。 声を上げて何度か呼びかけてみた。 すると、もうもうと立ち込める粉塵の中から、おぼつかない足取りで出てくる人影が一つ。 「おまえ……」 「あー……あれ? お前どうしてここにいるんだ?」 麦わら帽子を被った少年は血まみれだった。 右腕が妙な形になっていることを問い詰めると、ゴム人間だから大丈夫だとこともなげに返された。 だがそれを差し引いても、全身にガラスが突き刺さった出血は無視できるものではない。 「くそ、病院いくで。オラつかまれ!」 「いていて、大丈夫だって! アイツはやっつけたし、あ、そういえばお前、あの女の子はどうしたんだ?」 「危険だから置いてきた。これから合流や。それよりおんどれの身体、ちったあ自分で心配しろや」 随分と派手にやったものだ。 呆れながらビルの残骸を眺める。 あのトンガリに匹敵するデタラメーズがそこらじゅうにいるんかい、と心の中で呟く。 「ま、とりあえず手ぇ組めや、麦わら。このままバラバラで動いてても埒があかん。仲間探すにも手がかりは多いほうがええやろ」 「そっか。お前助けに来てくれたのか。いい奴だな!」 ルフィはにひひ、と笑う。 それを見てウルフウッドは複雑な気分になった。 梨花にもついさっき、お人よしだのなんだのと言われてきたばかりだ。 どいつもこいつも、あの大馬鹿トンガリみたいなことを次々と……。 「ん、どうした溜息なんかついて」 「やかましい。ハァ……」 「あ、梨花」 「何ィ!?」 噂をすれば影。 置いてきたはずの少女が、息を切らせながらやってきた。 ウルフウッドは思わず怒鳴る。 「お前、何やっとんじゃボケェ! おとなしく隠れとけって言っといたやろが!」 「だ、だってあなたたちがいる方角ですごい音がして……ビルの陰に隠れながら移動してきたし……」 「まーまーピコピコ怒るなよ、はっはっは。梨花は心配して来てくれたんだろ?」 「こっちの心配が増えるっちゅうねん、まったく……」 何度目か分からない大きな溜息をつく。 気付くと梨花がこちらを見上げていた。 「……心配、してくれたのですか?」 なんや。 なんや、いったい。 ほんまにまったく。 「ああ。……だから面倒かけるなや」 なぜか思わずやたらとぶっきらぼうな返事になってしまった。 それなのに、梨花は嬉しそうに笑う。 そして横でルフィも笑っている。 「にっひっひ!」 「……なんや、麦わら」 「いやーお前ら楽しそうだな!」 「やかましい、とっとと歩け」 ビル街に面する通りを三人で歩く。 笑う彼らを眺めながら、こんなのも正直、悪くない――とウルフウッドはそう思う。 だがこれでいいのか、とも。 人殺しだろうと何だろうと救いが欲しい。 そう思っている自分がいることは分かっている。 だが、それを享受することを自分自身が許せない。 結局、自分で自分を板ばさみに追い込んでいる。 救えんな――と心中で自嘲しながら、もう一度大きく溜息をついた。 ――頭上で爆発音が轟いたのは、その時だった。 もう一発。 さらに爆発。 見上げた頭上のビルから黒煙。 そして青い空から、キラキラと輝く何かがこちらに降り注いでくる。 一瞬だけ、爆発したビルに視線をうつす。 大きなガラス張りの壁面が特徴的なビルだった。 ウルフウッドは降り注いでくる何かが、そのガラスだと理解した。 三回の爆発はそれぞれ三フロアの窓ガラスを砕き、その分の破片が今ここに降り注ごうとしている。 ビルの爆発事故などで、まず警戒すべき二次災害は窓ガラスの飛散による被害だ。 ただのガラス片が、高さの分の重力加速度を得て、上空から降り注ぐ高速の刃と化す。 それは人間の肉を容易く切り裂き、骨まで届く威力を持つだろう。 それが道路いっぱいに広がって降り注いでくる。 いくらウルフッドが超常の身体能力を持ち銃弾さえ容易に避けれるとも、頭上から降る「雨」は かわしきれない―――― ウルフウッドは自分の中の冷徹な兵士の部分でそれを理解してしまった。 ◇ ◇ ◇ ルフィの一撃によってビルが崩壊した時、すでにバラライカは隣のビルに移っていた。 通り抜けフープを使って非常階段まで最短距離で到達。 ここら一帯のビルは事前に把握していた。 もちろんビルからビルへ飛び移るための逃走経路も。 たった数メートル飛ぶだけだ。 落ちれば命はないだけで、成功すれば何も問題はない。 バラライカは旧ソ連のアフガン空挺部隊『遊撃隊(ヴィトソニスキ)』の出であり、これよりもハードな降下作戦の経験はいくらでもある。 四階のビルから向こうの三階の非常階段へジャンプ。 着地する際、わずかに体勢を崩して背中を打ったが、とりあえず成功。 そこから壁を通り抜けてビルの内部に入り込んだところで、ルフィの一撃による大破壊が起こった。 「――猛獣どころではなかったな。怪獣の類だったか」 あのビルには、他に手榴弾とガラスを仕掛けた罠が全部であと4つあった。 バラライカは後で回収しようと思っていたが、こうなっては無意味だ。 支給品の手榴弾が全部で10個。あと五つ使えるなら充分と思い直す。 バラライカは探知機をチェック。 ルフィの他に反応を発見する。 廊下から窓のある部屋へ飛び込み、そこから外を見る。 先程、逃げていった仲間が戻ってきていた。 どうすべきか。 彼らの行動を予測してみる。 ルフィは重傷。 ならば病院に向かうだろうか。 仲間が冷徹な人間で、重傷のルフィを見捨ててとどめを刺す可能性も考えられるが、それならバラライカに損はない。 見捨てないというケースを想定すれば、病院へ向かうルートは南へ延びるこの道路。 把握してある周辺のビルの構造を脳内で照らし合わせ、バラライカはあるトラップを思いつく。 敵が予想通りのルートを取るなら、これは必殺の一手となる。 だがそれでも更に問題となるのは時間だ。 彼らを先回りして罠を仕掛けることが出来なければ、どうにもならない。 バラライカは一瞬も躊躇うことなく、目的のビルに向けて移動を開始する。 そのビルの道路側はガラス張り。 窓の内側は各階に広いオフィスがあり、壁で仕切られていないので弾と手間がはぶける。 使用するのは、のび太に支給された三つの支給品――真紅の防弾コートとブーツのセット、そしてメイド服に仕込まれていた手榴弾の他に、最後の一つ。 説明書きに書かれた品の名称は、ロベルタのスーツケース――かつてロアナプラを混乱の極みに陥れた、あの殺戮メイドの得物だ。 おそらくこれらを支給されたのび太少年は、その正体に気付かなかったのだろう。 または説明書きなどを確認する暇がなかったか。 そういう意味では同情に値する。 一見、ただのスーツケース。 だが、こいつに内蔵されたロケットランチャーでビルの内側から窓ガラスを吹き飛ばせば、その直下にガラスのシャワーが降り注ぐことになる。 確実にしとめるためにも下の階のガラスも使いたいところだ。 通り抜けフープで床に穴を開けて移動すれば、スムーズに連続爆破が可能だろう。 あとは動くだけだ。 バラライカの眼が、今また狩人のそれに切り替わった。 ◇ ◇ ◇ ニコラスが梨花を抱きかかえて走り出す。 ルフィの手を掴んで怒鳴る。 「走れ、麦わら!!」 必死な顔をして叫んでいる。 ルフィや梨花のことを助けようと懸命になっている。 ――ああ。やっぱりこいつ、いい奴だ。 ルフィはそんなことを考えながら、ニコラスに肩を担がれていた。 ウルフウッドの能力なら何も問題なく逃げられるだろう。 だが今はルフィと梨花を抱えているのだ。 このままでは上から来るあれをまともに浴びてしまう。 自分がもう一働きする必要がある。 体中痛いがそういってる場合じゃない。 エルルゥみたいなことには絶対にさせない。 「ニコラス! 俺に任せろ!」 梨花を抱えたニコラスを、左手を伸ばして巻き取る。 強く地面を蹴った。 ゴムの脚が縮んで、そして伸びてルフィたちの身体を前に飛ばす。 グン、と加速する感覚。 もう一回。繰り返す。 キラキラ光る雨の切れ目が見えた。 あと、一歩――。 「あれ――」 なぜだ。 力が抜ける。 血が出すぎたからか? 飯食ってないからか? ちょっと待て。 ちょっと待てよ。 ここでダウンしたら、梨花やニコラスもやられちまうじゃないか。 また守れないのかよ。 俺はシャンクスみたいになるんだ。 シャンクスに認められるような、でっかい海賊になるんだ。 シャンクスみたいなすげえ奴が、左腕を犠牲にして助けてくれたことを後悔なんてさせないような――海賊王になるんだ! 仲間も守れないような奴じゃ駄目なんだ! ちょっと待て。 ――――ちょっと待てよ!! ◇ ◇ ◇ ガラスの雨が眼前に迫っていた。 そのとき不意に、自分と梨花をを掴んだルフィの腕によって、強い力で身体を振り回される感覚。 梨花が振り落とされぬように、ウルフウッドは無意識のうちに彼女を強く抱きかかえていた。 いったい何だ、と思う間もなく。 強烈な慣性を身体に浴びながら、ルフィが視界から遠ざかっていく。 違う、動いているのは自分だ。 遠ざかる麦わら帽を被った血まみれの少年。 その上にガラスが降り注ぐ。 そこに強烈な衝撃がウルフウッドを襲った。 「きゃっ!!」 地面に着地したウルフウッドは一つか細い少女の声が腕の中から発せられた。 それを聞いて、自分が抱きかかえている梨花のことを思い出し、かばうように抱きかかえる。 ウルフウッドは身体を起こして現状を確かめようとする。 「…………あ」 アスファルトを埋め尽くすガラスの破片があった。 その真っ只中に倒れ付す、赤い何かがあった。 「ああ――」 真っ赤な液体が周囲に広がっていた。 数十センチもある大きなガラスが何本も、何本も、深々と突き刺さっていた。 ――何故や。 ――何故いつもこうなんや。 自分ではどうにもならなかった。 そんなことは分かっている。 だが、それでもルフィを助けられなかった自分を責めずにはおれない。 少なくとも自分たちがいなければ、ルフィだけなら助かっていたかもしれない。 「ニコラス、上!!!!」 梨花の悲鳴のような声によって、自らを責める心象世界からウルフウッドは現実に帰還した。 ウルフウッドの腕から開放された少女の指差す先を見た。 その結果――ニコラス・D・ウルフウッドの絶望はさらに深い奈落へと叩き落される。 「何故や……」 見上げたビルの三階の窓際にそいつは立っていた。 ルフィが倒したと言っていた筈の、顔の半分が焼き潰された金髪の女だ。 だが先刻見たときとは衣装が変わっている。 「何でおんどれなんぞがそれを着とるんや……」 見間違えようもない真紅の外套。 何度もぶつかった、だが何度も共に死線を越えた『アイツ』のものだ。 人殺しが大嫌いな甘ちゃんで、いつまでも割り切れずにグダグダ抜かす。 そのためなら自分の身がいくら傷つこうが気にも留めない阿呆としかいえないような底抜けの平和主義者。 だが今それを着ている女の眼は、兵士の眼。 自分と同じ、人殺しを平然とこなす狗の眼だ。 そいつは無表情なまま、梨花に銃を構えた。 「――このクソッタレがああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 再度、梨花を抱え地面を蹴り瞬時に移動し撃鉄を起こし、銃を構える。 梨花のいた場所に弾丸が食い込み、アスファルトから火花が発生した。 三階の女に向けて二発放つ。 その狙いは正確で、弾丸は女の肩の辺りを掠める。 女は窓から離れ、ウルフウッドからは見えなくなった。 ――追うか。 そう考えた瞬間に、その腕の中にかき抱いた少女の体温が戦闘用の思考を阻害した。 そしてルフィの遺体を見やる。 もはやぴくりとも動かない。 また失うのか。 ジワリと冷たい水のように、怖れの心がウルフウッドの中に入り込んでくる。 人生は絶え間なく連続した問題集だ。 揃って複雑、選択肢は酷薄、加えて制限時間まである。 一番最低なのは何も選ばないことだ。 オロオロしている間に全てオジャン。 何も掴み取ることが出来ない。 だから――、 ――選ばなアカンねや! ◇ ◇ ◇ 「逃げたか……」 バラライカはビルの一室で探知機をチェックし、残りの二人の動きを確認する。 ここからではすでに追うことは難しい。 三人まとめて仕留めることはできなかったが、過ぎたことは引きずるべきではない。 それにあの男の射撃は、不安定な体勢からでも正確無比だった。 更にバラライカが必中を持って放った弾丸だったが男はその弾丸を超えるが如く勢いで少女を庇い避けた、その人間ではあり得ない身体能力。 そして、連れていた少女を庇い、機と見るや、素早い退却。 この殺し合いのさなかで、少女を見捨てない――つまり戦場の狂気に流されない強い意志。 そしてあの射撃の技術と身体能力、退却で見せた冷静な判断。 手ごわい―――― バラライカは心の中でほくそ笑んだ。 これこそが彼女の望み。 自らに相応しい敵、相応しい戦場を自らの意思で選び取り、その身果てるまで地獄の釜の中で踊り続けることこそ本懐なのだ。 あのような男をむしろ待ち望んでいたといっていい。 「それで……貴様は何の用だ」 「おや……気付いていましたか。流石ですねぇ」 背後の廊下、薄暗い空間に向けたバラライカの言葉に、一人の男が返事をした。 オールバックの白髪を後ろでまとめた黒いスーツの男。 ねっとりとした声に蛇の様な眼光。 「貴女の戦いぶり、遠くから見せていただきました。いや、素晴らしい!」 大仰に手を広げ、こちらを褒め称える言葉を並べ立てる。 だがそれが上っ面だけのことだとバラライカはすでに気付いていた。 瞬時に男に向けて発砲。 頭と心臓に一発ずつの正確な射撃。 だが、その弾丸は不可視の壁に弾かれるようにして飛び散った。 「おやおや、暴力はいけませんねぇ。まずは話だけでも聞いていただけませんか」 「貴様からはKGB野郎(チェーガー)と同じ匂いがする。自分の利益の為に平気で人の足を引っ張る糞野郎の腐った内臓の匂いがな」 「勇ましいのは結構ですがねぇ、アルター使いにの私に通用しますか。」 「……アルターだと?」 バラライカが問い返したことを、話を聞いてもらえる了承の意ととったか、白髪の男は不気味な笑みを張り付かせたまま言葉を続ける。 「そう。私の名前は無常矜侍。アルター使いです」 「……用件があるのならば、さっさとしろ」 この男にはとりあえず戦うつもりはない。 そして銃弾が通じないというのは、つまりルフィやあのチンピラと同じ類。 負けると言うつもりは毛頭ないが、ここですぐ真正面からやりあうのは得策ではない。 面倒を回避できるなら、話とやらを聞くのも選択肢のうちだろう。 「12 00に、劇場に大勢の人間が集まります」 「何?」 「彼らは殺し合いをせず、ここから脱出する術を探しているのだそうですよ。今のところは具体的な策は何もないようですがね」 「……くだらん。ならばそんなものは絵空事だ」 バラライカには元よりそんな考えに興味はない。 求めるのは唯一つ。戦争だけだ。 「貴女ならそういうだろうと思いましたよ。ええ、そういう眼をしています。何かに猛烈に飢(かつ)えている眼をねぇ」 「話はそれだけか?」 「いえいえ、もうひとつ。彼らは腕に包帯を巻いて、その下に○印を刻んで仲間の印としているようです。 それを利用して内部に入り込むのも良いでしょう。メンバーはレッド、ライダー、レナ、チョッパー、グラハムの五人」 「チョッパー?」 確かルフィが言っていた仲間の名前だ。 治してもらうといっていたからには医者だろうか。 「おや、知り合いですか? とにかく彼らは二手に分かれてその後、新たな仲間を集めてから劇場に集合します。 この情報を得て、どうするかは貴女の自由ですよ。ああ、それとこれは私からの贈り物です」 二メートルを超える黒の長弓と説明書らしき紙片を置いて、無常と名乗る男はバラライカに背を向けた。 もはや用は済んだと言わんばかりに真っ直ぐ廊下を歩き、正面のエレベーターのボタンを押す。 「それは月の光を利用する武器だそうですよ。普通の銃よりも強力なようですが、夜しか使えないらしいので注意してくださいねぇ」 「……何が目的だ」 バラライカの問いに、無常はすぐには答えない。 エレベーターが開き、そこに乗り込んだ。 最後にこちらに向き直り、やはり蛇の様な笑みとともに一言。 「――教えてあげません」 ドアが閉じて、バラライカはまた独りになった。 【モンキー・D・ルフィ@ワンピース 死亡】 【D-4 あるビルの中 1日目 午前】 【バラライカ@BLACK LAGOON】 [状態]:腹部に中程度のダメージ、身体全体に火傷(小)、頬に二つの傷 [装備]:ヴァッシュの衣装@トライガンマキシマム、デザートイーグル(6/8、予備弾×16) AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、 シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON [道具]:デイパック(支給品一式×3)、デイパック2(支給品一式×1/食料一食分消費)、下着類、AMTオートマグ(0/7)、 不死の酒(空瓶)、探知機、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、通り抜けフープ、 ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾100%、徹甲弾残弾10)、手榴弾×5、 ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐、月天弓@終わりのクロニクル [思考・状況] 0:どうするか……。 1:戦争(バトルロワイアル)を生き抜き、勝利する。 2:ウルフウッド(名前は知りません)を警戒。 ※のび太から、ギラーミンのことや未来のこと、ドラえもんについてなどを聞き出しました。 ※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚に『モヒカン男と麦藁帽子の男に気を付けろ byストレイト・クーガー』とメモ書きされています。 ※デイパックを二つ持っています。 ※D-4中央部一帯にあるビルの構造を熟知しています。 ※元の服は下着を除いてビルに捨てました。 ※無常から得た情報を受けて、どう動くかは次の方に任せます。 ※チョッパーを医者だと推測。 ※○印と包帯の情報を知りました。 【無常矜持@スクライド(アニメ版)】 【装備】:ハンドガン@現実 予備段数×24 【所持品】:基本支給品一式×2、不明支給品0~2個(確認済み)フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL 、 黒電伝虫と受話器なしの電伝虫のセット@ONE PIECE 【状態】:健康 【思考・行動】 1:殺し合いで優勝する 2:○印の情報を利用する。 3:カズマ、クーガー、あすかの始末 4:レッドや同行者たちとはまた会いたい 【備考】 ※何処へ向かうかは次の書き手さんにお任せします。 ※○印と包帯の情報を知りました。 ※レナ・チョッパー・グラハム・ライダー(イスカンダルのみ)の名前は知りましたが顔は知りません。 【D-4 路上 1日目 午前】 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:健康 (少々の不安はあるが前向きに)、ウルフウッドと逃走中 [装備]:なし [道具]:支給品一式、王の財宝(の鍵剣)、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム [思考・状況] 1:ニコラスと行動 2:必ず生き残る。 3:圭一達を見つける。 4:安全な場所に行きたい。 ※王の財宝の使い方(発動のさせ方)を分かっていません。(説明書もありません) ※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。 ※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。 ※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。 ※スタープラチナに適正を持っています。僅かな時間ですが時止めも可能です。 ※スタープラチナを使えないことに気付きました。落としたことには気付いてません。 ※ルフィと情報交換しました。 ※どこに向かうかは次の方にお任せします。 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】 [状態]:混乱。強い怒りと悲しみ。梨花と逃走中 [装備]: [道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ) デザートイーグル50AE(6/8 予備弾32) SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON [思考・状況] 1:ここから逃げる 2:古手梨花を守る 3:ヴァッシュとの合流、リヴィオとの接触 4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。 5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー ※ルフィと情報交換しました。 ※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。 ※どこに向かうかは次の方にお任せします。 【ヴァッシュの衣装@トライガンマキシマム】 のび太に支給された。 ヴァッシュ・ザ・スタンピード仕様の赤いコート、黒いブーツと一体化したアンダースーツのセット。 機銃の掃射を受けても全て防ぎきる防弾性を持つロストテクノロジーの集合体。 ブーツの底には特殊な金属が仕込まれており、砲弾を蹴り上げても平気なほど丈夫。 【ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON】 のび太に支給された。 足元まで裾がのびたスカート、長袖、エプロン付き。 オールドタイプのメイド服だが、スカートの中に手榴弾が仕込んである。 ちなみに白いタイツとガーターベルトも付いている。 【手榴弾】 支給されたメイド服から取り外したもの。 いわゆるパイナップル。全部で10個。 【ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON】 のび太に支給された。 殺戮メイド、ロベルタが使用するスーツケース。 と見せかけて、内部には榴弾砲、徹甲弾、マシンガンなどの武器が内蔵されている。 【ガムテープ】 バラライカの現地調達品。 【ビニール紐】 バラライカの現地調達品。 【包丁】 バラライカの現地調達品。 【月天弓@終わりのクロニクル】 イエローもしくは無常に支給された。 2nd-Gの概念兵器。月の力をエネルギーとするため、夜しか使えない。 また、月の光が当たらない森などでは威力が半減する。 攻撃時は弓の代わりに月光をレーザーのように撃ちだす。弦を長時間引き絞ることで溜め撃ちも可能。 時系列順で読む Back ジャイアントキリング(前編) Next 殺人連鎖 -a chain of murders-(前編) 投下順で読む Back ジャイアントキリング(前編) Next 殺人連鎖 -a chain of murders-(前編) Back Next ジャイアントキリング(前編) バラライカ 図書館戦争 ジャイアントキリング(前編) モンキー・D・ルフィ 死亡 ジャイアントキリング(前編) ニコラス・D・ウルフウッド 護ること、殺すこと ジャイアントキリング(前編) 古手梨花 護ること、殺すこと ジャイアントキリング(前編) 無常矜侍 忍び寄る悪意
https://w.atwiki.jp/magamorg/pages/1802.html
超人の精霊ジャイアント・ヘヴン アンコモン 光/自然 コスト7 パワー11500 ジャイアント/エンジェル・コマンド ■マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。 ■W・ブレイカー (F)開眼したバルベジアすら、迂闊に手が出せない。 作者:まじまん ただの多色ファッティですが、見事に《インフェルノ・サイン》に引っ掛かってます。3色は重いですけど。 収録 騎門編 第四弾 決戦伝(レジェンド・オブ・スーパーエンド) 評価
https://w.atwiki.jp/sentai-soubi/pages/3124.html
【名前】 ジャイアントムーンブレイク 【読み方】 じゃいあんとむーんぶれいく 【登場作品】 劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王 【使用者】 仮面ライダーキバ 飛翔態 【詳細】 仮面ライダーキバ飛翔態の必殺技。 キバ飛翔態の秘める力にて、巨大戦力のキャッスルドランと一体化。 一体化することで、巨大なエンペラーフォームとなって、凄まじいキックを標的へ放つ。 以後は仮面ライダーキバは巨大化を解除している。
https://w.atwiki.jp/pawa_touch2013/pages/4.html
ens*読売ジャイアンツ +ノーマル 内海 杉内 ホールトン 宮國 菅野 高木京 マシソン 高木康 福田 山口 西村 澤村 小山 田原 公文 江柄子 香月 アコスタ 實松 阿部 坂本 村田 藤村 寺内 ロペス 高橋由 石井 ボウカー 亀井 長野 松本哲 谷 矢野 鈴木 加藤 大累 古城 脇谷 大田 加治前 +シルバー ホールトン 宮國 菅野 高木京 マシソン 高木康 福田 西村 實松 藤村 寺内 ロペス 高橋由 石井 ボウカー 亀井 松本哲 谷 矢野 鈴木 +ゴールド 山口 澤村 村田 長野 +プラチナ 内海 杉内 阿部 坂本 ノーマル 投手 ホールトン 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 2.45 148km/h D B 変化球 Hスライダー Dカーブ チェンジアップ 3 1 4 特殊能力 勝ち運 宮國 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.86 149km/h E B 変化球 スライダー スローカーブ フォーク 3 1 1 特殊能力 対左打者× 菅野 右投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 0.00 157km/h D B 変化球 カットボール スローカーブ Vスライダー 3 1 2 特殊能力 対左打者○ 高木康 左投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.44 147km/h D C 変化球 シュート スローカーブ カットボール 1 3 2 特殊能力 四球男 福田 右投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.51 152km/h G C 変化球 Hスライダー フォーク 3 3 特殊能力 ピンチ× 対左打者○ 四球男 澤村 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 2.86 155km/h F A 変化球 スライダー カーブ フォーク 3 1 3 特殊能力 打たれ弱い ピンチ○ 安定× 一発 四球男 小山 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.87 150km/h F B 変化球 Dカーブ フォーク 2 3 特殊能力 公文 左投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 0.00 152km/h G C 変化球 フォーク カーブ スライダー 1 1 2 特殊能力 江柄子 右投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 2.45 147km/h G B 変化球 カットボール Vスライダー シュート 1 2 1 特殊能力 香月 右投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 5.18 146km/h D C 変化球 カットボール チェンジアップ Hシュート 2 1 2 特殊能力 ピンチ× 対左打者× ランナー× アコスタ 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 0.00 158km/h G C 変化球 チェンジアップ 3 特殊能力 ピンチ× 四球男 野手 實松 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 F C E C E 3 捕 特殊能力 三振 意外性 阿部 右投左打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 C A F C C 4 捕 一 特殊能力 ケガ× 固め打ち アベレージヒッター パワーヒッター キャッチャー○ 満塁男 初球○ 威圧感 ハイボールヒッター 坂本 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 C B C C C 3 遊 特殊能力 ケガ○ 対左投手○ 盗塁○ 逆境○ 固め打ち サヨナラ男 村田 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 E B E C D 4 三 特殊能力 ケガ× 送球○ 安定× 三振 藤村 右投左打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 E F A E D 1 二 遊 特殊能力 チャンス× 盗塁× バント○ 内野安打 満塁男 寺内 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 E E C C D 2 二 三 遊 特殊能力 チャンス× バント○ 三振 初球○ シルバー 投手 宮國 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.86 150km/h D B 変化球 スライダー スローカーブ フォーク 5 1 1 特殊能力 対左打者× 菅野 右投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 0.00 158km/h C A 変化球 カットボール スローカーブ Vスライダー 4 1 2 特殊能力 対左打者○ ゴールド 投手 山口 左投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 0.84 154km/h B B 変化球 スライダー チェンジアップ シュート 5 5 4 特殊能力 対左打者○ 回復○ 安定○ 逃げ玉 キレ○ 奪三振 澤村 右投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 2.86 157km/h D A 変化球 スライダー カーブ フォーク 4 2 4 特殊能力 打たれ弱い ピンチ○ 安定× 一発 四球男 野手 村田 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 D A D B B 4 三 特殊能力 ケガ× 送球○ 安定× 三振 長野 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 B A A A B 3 外 特殊能力 送球○ 安定○ ヘッドスライディング 広角打法 満塁男 プラチナ 投手 内海 左投オーバー 防御率 球速 コントロール スタミナ 1.98 150km/h A A 変化球 スライダー フォーク スクリュー シュート 3 3 3 3 特殊能力 打たれ強い ピンチ○ 対左打者○ 安定 杉内 左投スリーク 防御率 球速 コントロール スタミナ 2.04 149km/h B A 変化球 スライダー スラーブ チェンジアップ 5 2 6 特殊能力 対左打者○ 安定○ キレ○ 奪三振 野手 阿部 右投左打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 S S E A A 4 捕 一 特殊能力 ケガ× 固め打ち アベレージヒッター パワーヒッター キャッチャー○ 満塁男 初級○ 威圧感 ハイボールヒッター 坂本 右投右打 ミート パワー 走力 肩力 守力 弾道 守備位置 A A S A A 3 遊 特殊能力 ケガ○ 対左打者○ 盗塁○ 逆境 固め打ち サヨナラ男
https://w.atwiki.jp/suproy/pages/285.html
閃光(前編) 「思ったより時間がかかってしまったな……」 チーフは一人呟いた。 水中用のOSに書き換え、水中を渡り、またOSを一人書き換えて。 どうにか補給ポイントまでたどり着いたのはいいが、時刻はすでに24時を越えていた。 リョウトを追うにしても、他の脱出計画者と合流するにしても、あまりにも痛い時間の遅れといえるだろう。 しかも、1時間ばかり前に輝いた、あの光。 チーフとしては、実際経験したことはないが、戦術兵器などの資料集で垣間見たことがある。 核 その威力は、たやすく町を焼き、何十万もの人間を焼き尽くす。 旧世紀、まだ冷戦と呼ばれるものが存在していたころ、アメリカという国は、携帯兵器として歩兵用のアトミック・バズーカを造り、 ソ連と呼ばれる国は、核地雷を造ったという話がある。 無差別な爆発ではなく、前述のような戦術兵器として調整してあることを、チーフは祈ることしか出来ない。 そして、願わくばそれで命が失われていないことを。 テムジン747Jの体をなめるように動き回っていた工具型の小型ロボットが、少しずつ減っていく。 おそらくは、補給が完了したということだろう。 「よし、各部チェック……オールグリーン。問題ないな」 テムジンの弾薬や、エネルギーが完全に満タンになっていた。 これで、まだしばらくは持つな。 そう思い、補給ポイントから離れようとしたと時、突然夜空の暗い光さえさえぎられた。 「――機影かッ!?」 とっさの経験から、爆発するような勢いでブースターを噴射し、距離をとる。 静かに補給ポイントに降りて来る巨体。それは――― ――ジャイアント・ロボ。 しかし、前にチーフが見たときとは、まるで違う。 下半身を抉り取られ、上半身だけで動くその姿は、全体のモチーフと組み合わさって、まるで包帯死体〈マミー〉のようだ。 ジャイアントロボの腕が、補給ポイントのスイッチを押すと、四角い箱から小さいロボットがミサイルのように撃ち出される。 わらわらと工具型のロボットがジャイアントロボに群がり始めた。 その様も、腐乱した死体に群がる蝿のような奇怪な想像を掻き立てるだけだ。 もしや、先程の核と何か関係があるのだろうか。だとしたら、何があって、何故こうなったかが想像がつかない。 その肩に、チーフはカメラを向け二段階拡大。 そこには、リョウトがいた。ただし、チーフの向きからでは、彼の表情は見ることは出来ない。 この距離なら、チーフに気付かないわけがないはずだが……? 確かリョウトという名前だったな、ということを思い出し、 「リョウト……といったな。何がいったいあったのか、話してもらえないだろうか?」 その声で気付いたのか、リョウトがゆっくりと振り返った。 「……――ッ!!」 無意識のうちにチーフはテムジン747Jを一歩下がらせていた。 撃て、と。 迷わずその場で撃てとチーフの経験と直感が言っていた。 昆虫のように無機質で、無感動で、無貌な瞳。人が死ぬことにすらさざ波一つ心にを立てないような瞳。 しかし、熱病にうなされたような腐爛した瞳。何かに執着し、それ以外何も見ようとせず、濁りきった瞳。 典型的な、狂気に犯された人間の――いや目的のためなら人間すらやめかねない狂った生物の瞳。 剣鉄也のように、ただ、目的のため燃えるように輝く瞳とは違う。 この瞳は……もっと恐ろしく、もっと危険なものだ。 コレは危険だ。 今すぐにでも、「外科的に摘出」しろ。今なら撃てる。 コレを放置すれば、どれほどの被害が出るかは予測がつかない。 トリガーにこめる力が気付けば、かなりのものになっていた。それこそ、もう少し力を込めれば、そのまま弾が打ち出されるほどに。 だが。 同時にチーフの理性が叫んでいた。 撃つな、と。 そもそも、ジャイアントロボがボロボロになってはいるが、だからといって何かやったという確証はない。 第一、彼がこうなったのも、自分がリオという少女を守れなかったことも原因の一つなのだ。 そのリョウトを、まさかとめるために来た自分が撃つと? そんなことは、あってならない。 だが。 しかし。 かといって。 一つ前の思考を打ち消す言葉が、グルグルと頭の中を回る。 (どうする……!?俺は、どうすればいい……!?) (どうしようかな………) リョウトは、ジャイアントロボの肩から、テムジン747Jを凍った瞳で眺めていた。 ここであまり時間をとりたくないな、とは思ったが、かといって下手に動けば、むこうを触発してしまうかもしれない。 こんなくだらないことで、頭を使いたくないな。 僕は、今すぐリュウセイを殺しにいかなきゃならないのに。 あの状況、セレーナは死亡しており、ジョシュアも動ける状態じゃなかった。 それに、最後に聞こえた天上天下……とか言う声。あんなことを言うのは、彼しかいない。 リュウセイが、僕のリオを吹き飛ばした。そう、熱かったろうに、痛かったろうに、それを……それを……。 リョウトが乱暴に自分の頭をかきむしる。 殺したい。殺したい。殺したい。よくもリオを! ああ、またイライラしてきた。 頭をかきむしる指に、さらに力が入る。その力はあまりにも強く、頭皮を破り、血が流れ始めた。しかし、それでもリョウトは 掻くことをやめない。爪と肉の隙間に血と肉が入り込む。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリ 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリガリガリ 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ そうだ。 だから、僕は行かなくちゃ。こんなところで、悩んでる暇なんてないんだ。 ちょうどよく、補給も終わったみたいだ。これなら、殺せる。リュウセイを、殺せる。 「ロボ……いけ」 もう、リョウトの瞳には、チーフなどという路傍の石ころは写っていない。写っているのは、リュウセイと、その先に待つ剣鉄也のみ。 上半身のみとなったジャイアントロボが、空へと飛ぶ。 しかし、一発のソードウェーブが、ジャイアントロボのすぐ側に打ち込まれた。 「とまれ。そして、何があったのか……話してもらう」 チーフとしては、あくまで警告、それ以上の意味はない足止めの一撃。 しかし、ただの路傍の石に、邪魔をされたリョウトの気持ちはいかようであったか。 「ロボ」 自分がつまずいた石を蹴り飛ばすような、生きていないただのモノを見る瞳で。 「全弾打ち続けろ」 補給ポイントに上に載るジャイアントロボから、雨のような数の兵器が撒き散らされた。 機体のあちこちをやられた状況で無理に核を撃ったため、GP-02サイサリスは、大の字になって地面に倒れていた。 ブースターの利かせ方も甘く、吹っ飛んだせいだ。 「うぅ……」 リュウセイがコクピットでうめく。 酷く体が痛い。しかも、視界は、定まらないくらい揺れていた。しかも、ガンガン大音量で、音が聞こえてくる。 「―――リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!」 訂正。音ではなく、声のようだ。 「その声……エルマかよ?無事だったんだな」 「リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!リュウセイさん!……って起きましたか!?」 どうやら、リュウセイが起きるまでひたすら叫んでいたようだ。 だがリュウセイも起きたはいいが、まだ意識がはっきりしておらず、クラリと来て、コンソールにもたれるような形になった。 「ちょっと!リュウセイさんこそ大丈夫なんですか!?」 「ああ、俺は大丈夫だ。それよりセレーナ達は…………」 「……………」 答えは、無言。しかし、それは何よりも雄弁に現実を伝えていた。 リュウセイの首輪が爆発しない時点で、ジョシュアは確定。 また、リュウセイが気絶している間に、エルマが自分の主の状態を確認してないはずがない。 それに、生きているならば、この場に顔を出しているだろう。 ―――2人は、もうすでに死んでいる。 「俺は……みんなを守ろうと思って……なのに、なんてザマだ!」 力いっぱいコンソールをリュウセイが叩く。 「リュウセイさんのせいじゃないです。そもそも、セレーナさんを離れた自分のほうこそ、何で……」 うつむくエルマが、搾り出すように呟いた。 最悪の沈黙が、その場に厚いカーテンのごとく被さる。 いったいその時間はどれほどだっただろうか。少しだったかもしれない。何十分だったかもしない。 しかし、その静寂を切り裂いて、爆音が遠くから聞こえてきた。 1人と1機はそろってそちらを振り向く。―――夜空が真っ赤に染まっていた。 僅かな地鳴りもある。 「この爆発音、ミサイルの連射間隔……間違いなくさっきの、ジャイアントロボです!」 「あいつ、また誰かを……!」 体の痛みを無視し、GP-02サイサリスを起き上がらせる。しかし、それまで。 自分の体の重みに耐えかねたように、GP-02サイサリスが膝を突く。 もともと、かなりボロボロで、戦闘機動は無理といわれており、電撃で電子機器もやられていた。 その状態で、冷却系もブースターも満足にきかせず核を撃ったのだ。機体にガタがきたところで何の不思議もない。 だが、理屈では分かっていても、頭では納得できようはずがない。 「頼む、GP-02サイサリス、起きろ、起きてくれ!俺はまだ、やらなきゃならないんだ!」 それでも調整系を弄り回し、立たせて一歩を踏み出させる。 さらに一歩。さらに一歩。 あまりにも遅い。 僅かな凹凸に引っかかって、GP-02サイサリスが転倒した。 「なんで、なんでなんだよ……俺には、見ていることしか出来ないってい言うのかよ!」 「リュウセイさん……」 遠くビルの隙間から閃光が漏れ続ける。 GP-02サイサリスの下半身は完全に機能を停止し、残った両腕が地面を書くばかり。 その姿は、まさにリュウセイの状態をそのまま写していた。 必死にもがくが、何も変わらない。自分は何も出来ない。ただ、無力だ。 「もう、アヤの時のような思いはしたくねぇ……俺は、いかなきゃなんねぇんだ……」 這いずって、GP-02サイサリスが進む。 進んだところでそこにたどり着けるのか、とか たどり着いたところで何が出来るとか、とか そんなことは関係ない。ただ、前へ。リュウセイの全身の細胞が、進めと指令を出した。 彼の魂が叫んでいた。 現実がどうとか関係ない。とにかく、進め! 「リュウセイさん……もうなにをしても……やめてください」 エルマが悲壮な声で言った。 エルマの目からは、現実を受け入れられず、ただ足掻くかわいそうな少年――そんな風に見えただろう。 だが、それは違う。 リュウセイのそれは、セレーナにも通じる、戦士の意地と魂から湧き出す、意思による行動だ。 傍目から見たら、みっともないだけかもしれない。だけど、絶対にあきらめない。 無様と嘲笑わられても、愚かだと憐憫の目を向けられても、愚鈍だと蔑まれても、何度倒れても、必ず起き上がる。 百回倒されたら、百回起き上がる。千回倒されたら、千回起き上がる。 千回砕かれれば、千回よみがえる。決して誰にも壊すことの出来ない、人の魂。 ―――人、それを『鋼の魂』という。 そして、『鋼の魂』は『奇跡』をよぶ。 これだけ、広範囲に撒き散らされ砕かれた瓦礫の中。 GP-02サイサリスが触れた、一本の腕。 慌ててそれを掘り返す。 「おい……これ………」 まだ戦う力を持ち新たな戦士を待つ、セレーナが遺した物。人の意思を、力へと変える奇跡の機体。 それは……ARX-7 アーバレストだった。 「待て、こちらに戦う意思はない!とまれ!」 チーフが声を張り上げるが、一向にミサイルの雨がやむ気配がない。 まぁ、当然といえば、当然だろう。 猟師が鳥がさえずったからといって撃つのをやめることはない。 リョウトからすれば、その程度だからだ。 (馬鹿な人だ) 蔑むわけでもなく、嘲笑うわけでもなく、ただ冷静にリョウトはそう思った。 リョウトは、一言もチーフと口を利いていない。 もちろん、リョウトからすれば、チーフと話すことなど何もないというのは大きな理由の一つだが、もう一つある。 ―――徹底的にこちらから情報を提供してはいけない。 リョウトは、激しくイラついてはいたが、心の一部がある意味『死んだ』状態の彼は、 冷静に虫でも観察するような目でチーフを分析し、そう判断した。 相手は、自分を攻撃していいかどうか、決めかねている。 自分が最後にあった段階では、チーフは、こっちを撃っていいいような『悪』か否か決める決定的な要素がない。 そして、今のジャイアントロボの状態を見れば、何かがあったかは明らかだが、詳細は分からない。 つまり、自分が、攻撃を受けマシンを壊され過剰に防衛している被害者か、能動的に攻撃している加害者か分からないから こそ攻撃を控えているわけだ。何か取っ掛かりとなる言葉を与えて、攻撃を本格的に加えられては今のジャイアントロボでは厳しい。 なにしろ、状況から考えるに、あの剣鉄也を撤退させたであろう人物だ。 パイロットの物腰、見事にミサイルをかわし続ける技量と運動性、そのポテンシャルは、どう考えても非常に機体、パイロット共に高い。 (本当に、馬鹿な人だ) 仮に、今の仮定が正しいとしたら、やる気になればジャイアントロボなど一蹴することが出来るだろう。 それなのに、自分の正義を貫く上での犠牲を出すことを認められない。 正義を、ヒューマニズムとか、命は大事とかつまらないことのせいで正義を貫き通すことが出来ない。 だいたい、これだけ攻撃されているんだから、察して攻撃してもいいだろうに。 もし、万が一を間違えたらと思って自分の身を危険において。くだらないことにこだわって。 結局、自分がいい人でいたんだろう。 正義を貫いて、人から後ろ指を指されることを恐れて。 ―――まぁ、いいさ。 自分は違う。 正義のためなら、リオのかたきを撃つためなら、絶対に迷わない。 どんなことをしてでも達成してみせる。 「撃て!撃ち続けろロボ!」 そうだ、僕には、掲げるべきものがある。こんなところで手間取ってる暇はないんだ。 大型ミサイルランチャー、小型ミサイル多連ランチャー、80mmスポンソン砲にロケットバズーカ。 さまざまな兵器が補給ポイントから次々と補給され、途切れることなく打ち出され続けている。 ロボには複雑な動作も必要ない。ただ、「撃て」と命じるだけだ。 無限vs人の集中力の持続時間。 どちらが勝つかは、見て明らかだろう。 だが、あまり時間を食うのも考えものだ。撤退ルートをつぶすよう撃ち続けているためチーフから逃げられることはないが、 その間にリュウセイに逃げられる恐れはある。 そうなれば、また探しなおす必要がある。なんとなく、どこにいるか今のリョウトは把握することは出来たが、 かといって手間が増えるのはあまりよろしくない。 どうしたものかと周りを見回し、 「あ、れ……は……」 視界が、一瞬怒りで赤く染まった気がした。 怒りで思考力が根こそぎ奪われ、正常な判断を失ったリョウトが叫んだ。 「ロボォォッ!全弾アレにブチ込めェェェ!」 リョウトの目に映ったのは、R-ウィング。もとある世界でリュウセイの乗っていた戦闘機だった。 いつの間にかフォルカもいなくなり、一人フラフラと僅かな予感を頼りにR-ウィングは飛び続けていた。 どうしようもなく、リュウに会いたい。 そうしないと、自分は―――自分は、自分を保つことすら出来ないかもしれない。 深く、自分の殻にこもり続け、浅い呼吸でうなされるように顔を下げていた。そのため、 「え?」 ひたすら意識を内に閉ざし、リュウに会うために飛び続けていたマイは、一瞬反応が遅れた。 現実に浮き上がった意識いっぱいに映し出されるのは、大小さまざまな銃弾。 「よけろォーッ!!」 黄色、白、青の何処か戦闘機のような美しさをもった細身のロボットがマイの乗ったR-ウィングを突き飛ばした。 さっきまで、R-ウィングがいた――そして今は突き飛ばしたロボットがいる場所に、大きく爆発が広がった。 爆発に巻き込まれたロボットは、厚い煙と、炎でさえぎられてみることが出来ない。 確かに心配だし気にはなるが、こちらもそうはいっていられない。さらに追い駆けてくる多くのミサイルたち。 (駄目だ、このままでは……) いくら機動力があっても、全方位から迫るミサイルをとめることは出来ない。 ミサイルの隙間を縫うように飛びはするが、僅か僅かな減速の間に、確実に近づいてくる。 いくつかのミサイルがR-ウィングを捕らえるその直前、R-1に変形し、念動フィールドを形成する。 そこへ襲い掛かるミサイルの群れ。続けざまに多くのミサイルがR-1にぶつかり、念動フィールドとR-1をゆるがせる。 いくらマイの強念で生み出された念動フィールドいえど、それは鉄壁ではない。 マイの精神の消耗と共に、確実に薄くなっていく。 ギリギリの限界を見極めて、横っ飛びし、転がり続ける。すぐ真横で、爆発爆発爆発。 転げる勢いを使って、R-1を立ち上がらせ、メインカメラを急いで確認する。 「行けェェ!ロボォォォ!!」 大型のロボットがまっすぐこちらに突っ込んでくる。 「へんけ―――」 変形し、上に逃げようとしたさなか。視界の端、自分の後ろにいる影が見えた。 先程、自分をかばったロボットだ。右腕を失い、地に伏しぐったりしている。 だめだ、今自分がここを離れては、後ろのロボットは、粉砕される。 誰が乗っているかはわからない。だが、かばってもらった以上見捨てるというのは……! (だが、私では……どうしたら……!?) ジャイアントロボはこちらに迫る。 (どうする……どうする!?) さらに、ジャイアントロボは迫る。 (どうすれば……!?) ―――私に任せておけ。 マイの思考に、僅かに不純物が混じる。しかも、滴るような悪意のこもった毒の意思。 ジャイアントロボの腕がR-1に力強く振り落とされ――― 「下衆が」 ないでとまった。R-1の数メートル上で、何か同じくらいの力で押し返されているように震えている。 マイとは、比べ物にならないほどにならないほどに強固な念動フィールド。 しかし、生み出しているのは、先程と同じR-1だ。なら、いったいこの少女はいったい……? 「お前のような半端な念動力者が、サイコドライバーの私に敵うと持っているのか?」 その声には、とても10代半ばの少女とは思えないような嘲りの響きがこめられていた。 R-1の右腕に、緑色の光が集まる。それを、無造作にR-1は振り上げた。 体格差を跳ね返し、ジャイアントロボが後ろに吹っ飛ぶ。 ざっと見て、マイの3倍の念動力。 その隙を見逃さず、『彼女』は更なる念をR-1に込める。 R-1の横幅より広い巨大な剣が収束した。 「T-RINKブレード……いや、『天上天下念動破砕剣』とでもいってやろうか?」 弓のように体をしならせ、天上天下念動破砕剣を、リョウトを殺すべく放とうとするが、 「あ、ぐ………あ、頭が、違う、わたしは、こんなこと、うるさい、私の言うとおり……」 まるで、2人の人間『彼女』とマイが話し合っているように、マイがうわごとを呟く。 R-1がまとっていた威圧感が消え、収束した剣もまた解けて消えた。 たたらを踏むようにR-1がよろめく。 「こ、の声……レビ・トーラー」 さしものリョウトも驚きの声をあげた。あの戦争の最強の敵にして、敵の大首領。 先程見せた念動力といって、まちがいない。それほどの大物がこの場に居合わせようとは。 こいつは、危険だ。 自分のことは棚に上げて、リョウトは思った。 コイツほどの存在が、よりにもよって念動力を増幅するあの、R-1に乗っている。どれほど危険極まりないことか。 あの、リュウセイ=ダテが乗っていたR-1に。 「こいつは、殺しておかなきゃ……あの戦争で死んだ人たちのためにも」 ジャイアントロボが、無防備な姿をさらすR-1にこぶしを振り上げる。 「お前がいなかったら、DC戦争すら起こらなかったんだ……死ネェェェ!!」 もはや、支離滅裂である。 そもそも、彼が怒っていたのは、自分からリオを奪ったことで、至りの矛先は鉄也とリュウセイだけのはずだ。 潜在的にはあったかもしれないが決して、彼の巻き込まれた戦争に関してはない。 狂っている。 この言葉がこれほど似合う人間も、この世界には少ないだろう。 生きていようが、死んでいようが、リオの存在は、彼にとってイカリの役割を果たしていた。 だからこそどれだけ狂っても、リオがいたからこそ、それが基軸となってそこまで壊れることはなかった。 だが、それが外れた彼に、分別などあるはずがない。 ただ、『怒っている』と『狂っている』が状態として、こびりついている。 それに付属する『理由』や『信念』はもうすっぽりと抜け落ちた。 感情だけが心に固定され、その思うままに動く。 もう一度言おう。 狂っている。 だが。 その彼でも、怒りを向けるものへの優先順位というものは残っていたようだ。 場に、乾いた音が響く。 機械が砕ける破砕音ではない。 乾いた……まるで銃でも撃ったかのような音。 ピタリとジャイアントロボの動きが止まる。リョウトが錆付いた機械のような動きで振り向いた。 「やらせねぇ……これ以上やらせてたまるかよ!」 夜の空気を引き裂いて、澄んだ空気に足音が響く。 童話のヒーローのように、白亜の神像が姿を見せた。 「リュゥゥゥゥセエエエェェェ!!」 リョウトが方向転換しまっすぐアーバレストへと接近する。 「三人とも!征くぜ!」 「モーションマネージャ・設定終了……はい!」 〈ラージャ。バイラテラル角の設定1.チャーリー1の書き換え完了。しかしこの設定では本機の85%が限界〉 「そんなもん、勇気で補えば……」 「勇気で補えば?」 「100%だ!」 〈教育メッセージ。勇気で、本機の性能が上昇するのでしょうか?〉 「もちろんだ!3人力を合わせりゃ、120%、140%の力だって出せるぜ!」 〈本機に、そのような仕様は確認されておりません。ナンセンスです。……しかし、嫌いではありません〉 「そんなこと言ってる場合ですか!敵、きます!」 「おっしゃあ!MM(モーションマネージャ)3番!」 「はい!MM3番って……えぇ?」 疑問の声をあげながらも、エルマがMM3を起動させる。 次の瞬間、アーバレストは、安定しきった重心移動で、最速のスピードで前に走り出した。 「うあああァ!!」 ジャイアントロボが、無差別飽和のミサイルを吐き出す。 「ミサイル着弾地点演算。メインモニタに表示します!」 「オッケェーッ!俺だって、伊達や偶然で生き残ってたわけじゃないって教えてやる!」 エルマの演算に従い、ミサイル着弾点を避けるようにさらに走る。 その動きは、滑らかでよどみがない。まるで、猛禽類や猫化の猛獣が獲物に襲い掛かるような動きで距離を詰める。 「行けロボォォ!!」 左右から抉り込むようにパンチが振り落とされる。 「MM1番、続いて、MM2番起動!」 ギリギリまで拳をひきつけ、アーバレストがスケート選手のように横に回転しながら、第三世代ASの特有の高いジャンプを見せる。 「コイツを、思いっきり蹴り飛ばすイメージ……T-Rinkナックルと同じ……いっけぇ!」 頭に、ジャイアントロボを思い切り蹴り飛ばすイメージを浮かべる。そのイメージと共に浮かぶ、2人の顔……ジョシュア、セレーナ。 こいつを倒せなきゃ、またあんなことが繰り返される。そんなこと、絶対認められねぇ! 「アーバレスト!お前に魂があるんなら、答えろ!」 回転した体から足を突き出し、後ろのエンジンをつける。 アーバレストの肩が展開され、美しいオーロラのようなものが回転もあってアーバレストを包み込む。 英単語を口に出して覚えるように、口に出すことでイメージを強く増幅する。最後に脳裏に浮かべるのは、イングラムの撃ったあの一撃。 「稲妻……流星蹴りィッ!」 10tばかりのアーバレストが蹴ったとは思えない音があたりに響き渡る。 よもや、10mもない機体が、ジャイアントロボを大きく吹き飛ばしたなど、誰が信じられようか。 〈このような戦術は、想定されていません。ラムダドライバが発動しなかった場合、足のマッスルパッケージの7割が……〉 「うまくいったんだ!気にするなって!」 〈了解しました。〉 リュウセイが今、ラムダドライバを起動させられたのはリュウセイが似たような兵器を使っていたのも大きいが、 それよりも重要だったのは、アルの変化。 オムニスフィアを通じ、裏側の法則を引き出すアーバレストやヴェノム、ベヘモスたち。 これらとアーバレストは決定的な違いがある。兵器として、一定の水準を引き出すことを目標としたヴェノムたち。 対して、アーバレストは違う。 できるだけ搭乗者に近付くように。 搭乗者の心理や感情を把握し、シンクロできるように。 それによってオムニスフィアからの連鎖反応を高め、より効率よく増幅し、様々なことができるように。 本来、バニの死を知ったところから真の意味で覚醒したオリジナルのアルと違い、このアーバレストのアルは、最初から常に 『教育メッセージ』を取得してきた。ほぼずっとコクピットにいたセレーナの感情などを浴び続けていた。 だからこそ、セレーナを気遣う様子を見せた。 苦悩、悲哀、希望、悩み……そういったものをライブで受け続けたアルは、『人間的』に成長する。 そして、セレーナの撃ったラムダドライバのデータも、彼女の『死』についても。 本来、変更不可なパイロットの変更も、ユーゼスの無理なプログラミングでさせられているが、それはアルのリセットは 意味していない。人間は、身近な人の死を受け成長するというが、このAIはいったいどうだろうか。 さらに現在、接続されているエルマからも、生の経験の数々を吸い上げていた。 アルは今までの経験を持ってリュウセイとシンクロし、成長し続けている。 それも、凄い勢いで。 「次だ!ボクサーを出してくれ!」 「分かりました!」 〈ラージャ〉 起き上がりながらもミサイルを吐き出すジャイアントロボに、追走しながら散弾銃を撃つ。 しかし、今度はラムダドライバがこめられてないためか、装甲一枚抜くこともできない。 「緊急回避!」 ミサイルの着弾予測にいたアーバレストを、エルマが強制的に横っ飛びさせた。 さらに、アルがジャックナイフ機動で、アーバレストを起こす。 「す、すまねぇ2人とも」 〈「サポートは任せてください〉」 思わず二人の息が合う。 今のアーバレストは、三身一体で動いていた。バイラテラル角を1に設定し、リュウセイが極力戦いやすいようにする。 エルマが、モーションマネージャを独自に1~15番まで設定し、体の回線をアルに接続、フレキシブルに使用する。 自動照準モードも同様だ。本来、自動照準モードもMMの機動も、いざ戦闘になったら大して役に立たないが、 エルマがその場その場において微妙な調整をかけている以上、これ以上ないほどの武器となっていた。 今のリュウセイが受け持っているのは、火気のトリガーと、とっさの機動と、MMでカヴァーできない部分。 もっとも、折れた左腕をあまり動かさないようにするため、 武器は持ちっぱなしになっているが。(だから、リュウセイは蹴りを選択した) エルマは、MMと、自動照準モードの適切な調整、切り替え。 アルが本来アームスレイブの持つ機能と、リュウセイの補佐。 リュウセイの言葉どおり、3人の力をあわせることにより、100%以上の力をアーバレストは見せていた。 もともと、SRXに乗っていたリュウセイは、操縦系の分割に抵抗がない。さらに、この分割でアルが一個の存在として扱われ、 成長を促進させられているというのも大きい。 「撃て、撃てェ!」 ジャイアントロボの重火器が一斉に発射される。 しかし、アーバレストには当たらない。それどころか、ジャイアントロボに正確に近づいていく。 「セレーナも……ジョシュアも……いいやつだったんだ……」 〈アラート!〉 ステップを踏み、唸りを上げてさらに接近する。 「それを!お前に何をやったって言うんだよ!!」 バズーカの連射の間隔を正確にカウントしていたエルマにあわせ、対戦車ダガーがきらめいた。 狙い済ましたようにバズーカの中に吸い込まれ、中の火薬に引火。大爆発を起こす。 「こ、んな……おかしい、こんなはず……ロボ、いったん補給だ!」 リュウセイの気迫に、リョウトがさがる。 おかしい。リュウセイにこれほどの技量があるはずかない。 彼の知っているリュウセイは確かにマシンに対し天性の素質というものがあった。 だが、ここまで研ぎ澄まされたような戦い方をする人間ではなかったはずだ。 無駄が多くて、突撃屋で、感情的で…… なまじ、性格が自分の知るものと同じだけに、得体の知れない感覚が背中を這った。 「アル!エルマ、もう一発いくぞ!MM3番、MM1番、続いて2番!」 まっすぐ、スピードを上げ、ジャイアントロボの背中にアーバレストが飛ぶ。 もう一度、完璧な角度で、回転蹴りが炸裂する。 ここにいるのは、リョウトの知るリュウセイではない。 未来を含む3度の大戦乱を乗り越え、一度は仲間の死すら乗り越え、霊帝を砕いた偉大な勇者の一人。 真の成長した戦士なのだ。 吹き飛ばされ、補給ポイントにジャイアントロボがぶつかった。 「う、ぐ、ぐぅ……」 頭を強くぶつけ、ただでせさえ血だらけのリョウトの頭が、さらに赤くなる。 補給ポイントに手をつき、ジャイアントロボが起き上がる。同時に、補給ポイントから工具ロボがあふれ、また弾薬を補給する。 「これで終わりだ!」 アーバレストが手の電気銃をリョウトへ向ける。 そのとき、ジャイアントロボの目が薄く輝いた。 「ッやべぇ!」 先程と打って変わって風をまとい早い突きがアーバレストへ打ち込まれた。 「MM4を起動します!」 エルマの声と、アーバレストが下がるのは、同じだった。 ジャイアントロボに仕込まれている、オートガード機能が発動したのだ。 ジャイアントロボは、片腕でリョウトを庇いつつ、またもミサイルを狂ったように撒き散らした。 アーバレストが回避に専念し、意識が僅かにジャイアントロボから離れる。 ジャイアントロボが、それほど高度なAIを備えているかは分からない。 だが、その時ジャイアントロボは、その隙を狙いアーバレストへこぶしを打ち込もうとした。 「駄目です!緊急回避間に合いません!」 「ラムダドライバを……」 使おうとしたが、その集中も、追いつかない。もはやこれまで……! 「リュウを……やらせはしない!」 横から、一つの影が割り込み、ジャイアントロボの腕にしがみ付いた。 さっきまで、ひたすら某立ちしていたR-1だ。 「その声、マイなのか!?」 その声に答えるより早く、ジャイアントロボが横に手を振った。 通常の50倍を超えたパワーを受け、R-1は、木屑か何かのように吹き飛ばされ、R-1はビルに激突し、また動かなくなった。 だが、それによってできた隙をリュウセイは見逃さない。 アーバレストがジャイアントロボの腕に渡り、肩へと走り出す。 反対の手がアーバレストをつかもうと伸びる。 「やらせん!」 ジャイアントロボの腕がはじけとんだ。 遠く離れたところから、見たことのない機体が腕を伸ばし、武器を手に取りこちらにかざしていた。 ついに、目の前にリョウトの姿が明らかになる。 このまま、12,7mmチェーンガンで吹き飛ばすことができた。いや、むしろそれがもっとも容易で、簡潔な選択肢だった。 (でも、それじゃダメだろ……みんな) 憎しみを、憎しみで返してはいけない。そんなことをしても、皆悲しむだろう。だから、このまま殺してはいけないのだ。 アーバレストが手のひらをリョウトに向ける。 そして、ついに戦いの終わりを告げる、爆音に比べればささやかな音が鳴った。 閃光(後編)へ
https://w.atwiki.jp/marurowa/pages/292.html
ジャイアントキリング(前編)◆SqzC8ZECfY ――ああもう! ……なんでかしら……なんでこんなにいらつくのかしら。 E-5にある市街地のビルのひとつ、一階が喫茶店になっている建物で、梨花はウルフウッドとともに休息をとっていた。 ひとまずの食事を終え、カウンターにある椅子に腰掛けて、床に届かない脚をぶらぶらさせながら、梨花は難しい顔でガラス戸の外を眺めている。 「ほれ……コーヒーや。ミルクと砂糖もあるで」 「あ……うん、ありがとう」 カウンター越しに、まるで客に出すようにしてコーヒーを渡す、梨花の同行者。 この青年の名前はニコラス・D・ウルフウッド。 差し出されたコーヒーを一瞥して次に彼の顔を見上げる。 「……どした。毒は入っとらんで」 「あ、うん、そういうことじゃないの……いただきます」 「おう」 砂糖とコーヒーを混ぜて、出されたコーヒーを一口飲んだ。 コーヒーメーカーで淹れた安物だが、砂糖とクリームの甘さが今の疲れた心と身体にはありがたかった。 「あ、おいしい……」 「おう、そりゃ良かった」 「うん……ありがとうニコラス……って、そうじゃないっ!」 ばん! とカウンターに手をついて上目遣いに彼を睨んだ。 相変わらずとぼけた態度。だがそれはうわべだけだと分かっている。 梨花は伊達に百年近くも子供をやってきたわけではない。 子供の無力というものをその分だけ思い知ってきた。 力がないなら媚でも何でも売って他人を利用する。 自慢できることでもないが、人の顔色を伺うのには慣れている梨花だった。 出会って僅かな時間だが、彼の本質というものをぼんやりと理解することくらいはできるようになっていた。 「ニコラス。あなた、あの麦わらの子が心配なんでしょう」 「…………なんや、いきなり」 「だって、あなたお人よしだもの」 「んな……」 ウルフウッドの眉尻がぴくりと跳ね上がった。 ずい、とカウンターに身を乗り出して梨花は顔を近づけ、さらに言葉を続ける。 「私なんかをこうやって連れてるのが証拠よ。あなたは悪人にはなれないもの」 結果として、その言葉は逆鱗に触れるのと同意だった。 驚愕の表情、そして様々なものがない交ぜになったような、例えようもない感情の渦を宿す双眸が梨花を睨みつけた。 どきり、と心臓が高鳴る。 だが、その表情も一瞬のこと。 所詮は子供のいうことと流したのか、ウルフウッドは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。 梨花が大人だったらまた別の反応が返ってきていただろう。 襟首を掴まれて殴られてもおかしくない。 「はいはい、分かった分かった。で、『信頼してる』とかいったクセに、嬢ちゃんほっぽりだしてワイに戻れっちゅうんか」 「む……」 「それに麦わらの。アイツが決着つける言うとるんや。ワイらがどうこう言う筋やない」 さっきのは失言だった。 ちょっと迂闊に踏み込みすぎたかも――と心の中で多少反省。 会って間もないというのに、相手のことが妙に分かってしまう。 どこか自分と似ているような気がする。 なんだか他人のような気がしないと、そんな風に思って気安くしすぎたかもしれない。 気を取り直し、梨花は椅子から飛び降りてウルフウッドに向き直る。 「それでも、よ。このまま二人でいつまでも逃げてるわけにはいかないじゃない」 放送で呼ばれた15人の死者。 次に自分たちの仲間が呼ばれないという保証はない。 そして禁止エリアはこのままいけばどんどん狭くなる一方だ。 最後には地図上の全てが埋め尽くされ、最後の一人になるまで殺しあうしかなくなる。 それまでにどうにかしなければならない。 多少のリスクを無視してでも、何か策を講じるか、せめてもっと情報が欲しかった。 今は何も手がかりすらないが、それでも殺し合いという選択肢は選ばない。 古手梨花は、もう運命がいかに強大な障害を用意しようと、抗うことを止めたりはしないと決めたのだ。 「まぁなあ……」 「そうよ。そして当然、私も一緒に行くから」 「……は?」 「何よ。今のニコラスより、むしろ私のほうが役に立つわよ。ほらこうやって時を……」 その小さな胸を得意げに張って、そして先ほど時を止めた感覚をまたここで再現しようとして…………できなかった。 「……………………あれ?」 どうした、というウルフウッドの訝しげな声に応える余裕もなく、梨花はもう一度、もう一度と力の行使を試みる。 どうにかしようとぱたぱたと手を振ったりする様は見ている者にとっては無駄に和むが、それですむほど暢気な状況でもない。 「なんでよ、なんで出ないの?」 「なんや、やっぱさっきはまぐれ――」 「うるさい」 梨花は自分の無力を百年間も思い知らされてきた。 最後に自分が殺されることで過去へとループする無間地獄。 何度も運命に立ち向かい、そのたびに自分の無力を思い知り、巨大な見えざる力に叩き潰され続けてきた。 自分が子供でなければ、もっと力があれば未来を変えることが出来たのに――と数え切れないほどの悔し涙を流し続けてきた。 そんな梨花が、ついに手に入れることができた力をどれほど喜んだか。 これで皆を守れる。 もう足手まといになんかならない。 皆が繰り返される運命に弄ばれるのを黙って見ているしかない――そんなのはもうお仕舞い。 そう思っていた。 「……おい」 「もう一回……!」 「もうええから」 「うるさいッ!」 なんで。 なんでいつもこうなのか。 やっと手に入れたと思ったら、するりとそこから逃げていく。 「泣くなや」 「泣いてない!」 視界がにじむのを止められない。 気を抜けば、まぶたから熱いしずくが零れ落ちそうになる。 無様で足手まといの子供。 眼前の彼は自分のことをそう思っているのだろう。 それがさらに恥ずかしさと悔しさを増加させる。 梨花は今まで自分がもっと強いと思っていた。 だけどそれは過酷な現実に押し潰されないように感情を凍りつかせていただけだ。 割り切ったふりをして、それでも割り切れなくて――そんな自分の感情自体に永い間、気付くことができなかった。 全てを受け止め、それでも諦めることを知らず前に進み続けた前原圭一は、どれほど偉大だったろう。 それに比べて今の自分はなんて情けないんだろう。 そんな梨花の頭を不器用に、だが優しくなでる大きな手。 「……」 梨花はされるがままにうつむく。 眼下のテーブルに置かれている冷めたコーヒーに涙のしずくが落ちた。 「お前はここでおとなしく隠れとけ。後であいつも連れて戻ってくるさかい」 「え……」 カウンターのテーブルに、ごとりと音を立てて一丁の拳銃が置かれた。 確か、濡れていて使えない銃だったはずだ。 ウルフウッドはそれを惚れ惚れするような素早い動作で分解していく。 そしてバラバラになったパーツを店に備え付けてあったペーパーナプキンで拭き、水気を丁寧に取る。 それが終わったら再び組みなおす。 元通りになった銃――50AEデザートイーグル。 「それ……使えるの?」 「ああ、よく見りゃ弾の炸薬自体は防水加工されとる。あとはバレルの中さえ拭いてやりゃあ……と、こう言ってもわからんか。 とにかくこいつは使えるようにしたったってことや」 「じゃあもっと早くそうすればよかったじゃない!」 「んな暇なかったやろうが……」 確かに。 出会ったばかりのときはこちらもウルフウッドが銃を持っていたとなれば警戒していただろう。 さらに襲撃からこっち、ろくに休憩する暇もなかったのは確かだ。 「こっちのショットガンは紙製の薬莢に水が染みてるから無理やな……ま、ええわ。 んじゃ、行って来るわ。おとなしくまっとれよ」 「ニコラス……」 銃を手に持ち、ウルフウッドは梨花に背を向けた。 そのまま、真っ直ぐ店の出口へと向かう。 「考えてみりゃあ、確かにこのまま二人で逃げてたところでどうしようもないしな……。 情報集めるにも、さっきみたいな奴に襲い掛かられた時のためにも、頭数はもっとおったほうがええ」 そんなことわざわざ言う必要なんてないのに。 まるで梨花にさっき指摘されたことにたいしての言い訳のようで、内心で少しおかしかった。 「私は一緒に行くのは……駄目かしらね」 「当たり前やボケ。今から行くのは危険度100%の鉄火場やぞ。 力が使えないんなら、どう考えたってここに隠れてたほうがええやろが」 「そう……なんだけど」 「なんや、梨花は夜中一人でトイレに行けんクチかい」 からかうような口調。 一瞬ムキになって返そうとして堪え、梨花は猫を被ったときの口調で言い返す。 「みぃ、狼さんが来るかもしれないので怖いのです」 「あー……すまん。すぐ戻ってくるさかい、堪忍な?」 苦笑いとともに頭を撫でられた。 梨花は返事の代わりに、にぱー☆と笑う。 それを見てウルフウッドも笑った。 そして、行ってくる、と言い残し、戸を開けて外へと走り出していく。 それを見送りながら梨花は思った。 ――そうだ。 笑ってやろう。 殺し合いを強いられたって、泣いてなんてやるものか。 言いなりになんてなってやるものか。 ギラーミンに教えてやる。 私たちにかかれば、運命だって金魚すくいの網みたいに破ることができるんだってことを。 お前なんか必ず皆で力を合わせて打ち破ってやると。 ◇ ◇ ◇ 五階建ての狭い雑居ビルは、ぼんやりとした曖昧な闇を入り口の奥に覗かせていた。 麦藁帽子を被った少年が、草履を履いた足を床に叩きつけるような強い足取りで中に踏み込んだ。 足音が内部の壁に反響し、鈍い残響音があたりに伝わる。 俺はここにいるぞと叫ぶように。 「出て来い!!」 少年は声をあげ、さらに奥へと進む。 すると床に女物のパンプスが一揃え落ちていた。 あの傷の女がはいていた物だろうか。 履物まではよく覚えていないが、確かそうだったような気がする。 軽くつま先で蹴ってみるが、カツンと床に音を立てて転がるだけ。 あの女はどこにいるのかを考える。 ちょうどその時だった。 上の階からガラスが割れるような音。 「上か!」 すぐそばにあった階段を駆け上がる。 ゴムの脚をぐんと伸ばし、二段、三段と飛ばして一気に上を目指す。 階段の幅は二メートル程。 左回りで、階と階の間に踊り場があり、そこで折り返して上へと続く。 あっという間に二階へ到達する。 ここにいるのか、それとも上か。 ガラスが割れる音はもっと上から聞こえたような気がする。 その時、さらにもう一度。 上の階から再びガラスが割れる音が聞こえる。 それを聞いたルフィは、反射的とも言える動作で上へと続く階段に踏み込んで飛ぶ。 踊り場までほぼ一足。 壁を蹴って身体を翻し、さらに三階へと僅か数歩で飛び上がる。 明らかに誘っている。 だが何であろうと真っ向から打ち砕くと、ルフィは覚悟を決めていた。 三階。 ここまで各階の構造はほぼ一緒だった。 真っ直ぐ廊下が伸びて、正面、左右に部屋への入り口がある。 二階で聞いた音はかなり近かった。 ここにいる可能性は大きいと判断して、ルフィは各部屋へ続く廊下の前で一旦、ストップする。 無人。 そして無音だ。 その時、背後から影が伸び、ゆらりと動く。 そこは四階へと続く階段で、踊り場は大きなガラス窓になっている。 そこから入り込む陽光が三階のルフィにちょうどかかる位置だった。 僅かな風切り音がルフィの後頭部をめがけ、一直線に突撃。 ルフィは影を見切り、それに反応する。 右の手元にあった階段の手すりに手を掛け、そこを中心にしてくるりと身体を右方向に反転させながら背後からの攻撃をかわした。 次の攻撃に備え、半身を手すりに隠したまま、上を見上げる。 かくして敵はそこにいた。 顔の右半分が焼き潰された金髪の女。 だがその格好は先刻までとは様変わりしていた。 黒いジャケットに揃えたタイトスカートとパンプスは影も形もない。 がっちりとした黒いブーツ。 脚のラインに密着した、やはり黒のアンダースーツ。 その上から羽織った、深い切れ込みの入ったコートの色は――――、 「すげー紅いな!」 ど――――――――ん。 「…………さて、また会ったわね。ルフィ君」 「ああ。お前をぶっ飛ばす!」 半身で腰を落とし、ルフィはいつもの戦闘態勢をとる。 見上げた視線の先に敵。 右手に大きめの妙なナイフを握った金髪の女が、踊り場に立ってルフィを見下ろしている。 ちまちました小細工は流儀じゃない――真っ向から叩き潰す! 「ゴムゴムの――銃(ピストル)!!」 振りかぶった右拳を弾き出すように放った一撃は、階段の上に立つ敵の顔面目掛けて一直線に襲い掛かる。 技の名どおりの弾丸と化した拳は尋常なスピードではない。 鍛え上げた自らの技に絶対の自信をこめて撃った攻撃だ。 その技を相手は――――横に倒れこむようにしてかわす! 「……ッッ!?」 拳は後方の窓ガラスを枠ごと砕き、派手な音が響き渡る。 だがそれはもはやどうでもいいこと。 相手は倒れこむ体勢から強引に横の壁を蹴りつけて身体を起こすと、その右手の白刃が間髪入れずに動く。 その狙いは、かわされて伸びきってしまったその右腕だ。 それに気付いてルフィは、空いた左手で右腕を強引に引き戻そうとする。 下から上へ振りかぶる直線的な銀弧との、刹那の交差。 バチン、と音を立ててルフィの元へ戻ってきたその腕。 つう、とうっすら赤いラインが浮かぶ。 本能が危険信号を最大音量で告げだした。 ドクン、と自分の鼓動。 灼熱の激痛と噴水のような出血が右腕から生まれたのは、それと同時だった。 「――――ぐ、ぁぁあああああああああああああ!!」 ナイフの一撃は正確に、腕の甲の裏側にある太い血管の部分を抉り斬っていた。 手で押さえても血が止まる様子はない。 敵の追撃。 鋭い包丁の投擲をかろうじてよける。 刃がコンクリートの床にぶつかって高い金属音が発生した。 体勢を立て直して上を見上げれば、手すりによって遮られた踊り場の影へ入り込もうとする人影がある。 上への階段を登って逃げようとする気か。 「――待て!!」 痛みをこらえ、ルフィはそれを追撃する。 階段を駆け上がるのではなく、跳ね上がる。 あっという間に踊り場まで駆け上がり――、 「あれ?」 そこには誰もいない。 踊り場には、窓から入り込む陽光に照らされて、散らばった窓ガラスの破片が床でキラキラと輝く。 四階へ続く階段を見上げても誰もいない。 視界から見失ったのは、敵が踊り場から動いてからルフィが飛び上がってくるまでの、たった一瞬だけのはずだった。 そこでルフィは不自然な点に気付く。 三階からは陰になって見えない、四階へ続く階段と踊り場の接点。 その床の角にガラスの破片が積み上げられていた。 先程の一撃で割れた、ここの窓ガラスとは明らかに違う質のもの。 ならばこれはあらかじめ仕掛けられていた。 直感とも言うべき感覚でルフィはトラップと理解したが、すべて遅すぎた。 積み上げられたガラス片が炸裂して、それをまともに浴びる。 「がっ…………!」 悲鳴は爆裂音にかき消された。 踊り場の窓ガラスが今度は完全に外へと飛び散る。 轟音――そして煙もそこを通って、猛烈な勢いで吹き出した。 爆風の勢いで転がりながら、踊り場の壁に強く打ち付けられ、常人ならばとっくに死んでいておかしくない衝撃だった。 だがそれでもルフィは戦う意思を捨てない。 一瞬、意識が飛んだが、まだ大丈夫だ。 まだ負けてない。 ルフィには、俺は勝てる――という強固な自信がある。 それは根拠のない妄言ではない。 この麦藁帽を憧れの男から受け取った日から、積み重ね続けた鍛錬がそれを確固たるものとして支えている。 大きな野望を成し遂げるのに必要なだけの代償を払い、そしてそれを積み重ね、強さを得て、前に進み続けてきたのだ。 だからこそ、まだ身体も動く。 立ち上がれ。 さあ――――、 「……あれ」 なんだか手足がキラキラと輝いている。 これはなんだろうと思って、よく見ると透明で光る小さな何かが手足にびっしりとくっついていた。 ぷつり、ぷつりとそこから真紅のビーズのような丸いものが生えてきた。 「なんだこれ……」 その丸いものはある程度の大きさにまでなると、その形を崩して液体となり、下方へと垂れていく。 これは自分の血だ――――ルフィの理解が追いついた。 血の珠は続々と大きくなり、球体の形を保てなくなり、そして弾けて垂れていく。 このキラキラしたものは無数のガラスの破片。 それが手足に刺さって、その結果として流血している。 「が――」 遅れて襲い掛かる激痛の感覚。 「――があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 絶叫。 ◇ ◇ ◇ 青い空が白くぼやけるほどの陽光だった。 ビルの屋上は、水はけのために敷き詰められた砂利を囲むようにして、落下防止の金網が張り巡らされていた。 砂利を踏みしめて、歩く。 屋上から階下へ続く階段を背に悠然と。 金網まで辿り着いて何の気なしに眼下のビル街を眺めていた。 探知機でターゲットの動きを確認する。 ――そろそろか。 おもむろに背後にある屋上の入り口へ銃を向けた。 発砲――金属のドアが鼓膜を突くような甲高い音を立てる。 その音が鳴った次の瞬間、探知機の中の光点が移動を開始した。 こちらに向かってくる――誘導は成功した。 そう、これは誘導だ。 標的がこのビルに突入したのを探知機で確認。 そしてビルの窓ガラスを一定間隔で割る音で、その方向におびき寄せる。 姿を見せるのはリスクが要ったが、これも計算のうちだ。 釣りと同じで、餌がなければ獲物は食いつかない。 仕留めきれずにいるうちに、向こうが諦めて退却してもらっては困る。 もう少しでこちらに届くと、そう思わせることが肝要だ。 かくして愚かな獲物は罠に嵌る。 直接相対したときも、リスクを軽減するための策は用意していた。 スカートとパンプスを履き替え、この服装に変えたことがまず一つ。 これはかなり大きい。 タイトスカートの裾は僅かに脚を開くだけで突っ張り、ヒールの付いた靴では全力疾走もままならない。 ましてや近接格闘など「ありえない」。 並みの相手なら、それでも撃退できる自信はあるが、ここの敵はどれもそのレベルを易々と超えていた。 そして気絶した直後に目覚めた駅から離脱し、ようやく着替える余裕ができたというわけだ。 着てみると見かけよりも軽い。 防弾機能もあるらしいが、そうとは思えないほどに身体の動きを阻害しない。 これならば己のスキルの全てを存分に振るうことができる。 ゆえにターゲット――ルフィの初弾もかわす事が出来た。 狭い階段という、攻撃の軌道が限定される空間――地の利。 攻撃の前に右腕を振りかぶるという分かりやすい予備動作――相手のミス。 一度対戦して、ある程度手の内は分かっている――敵の情報。 いかにその攻撃が速く強力であろうとも、こちらはすでに完璧に予測できていたのだ。 だからギリギリで回避し、カウンターを叩き込むことが出来た。 まともにぶつかれば到底不可能。 だが入念な準備を経て狙い済ました一撃。 作戦開始前のプランからすれば予想外の戦果を挙げた。 だが予定に変更はなし。油断なく作戦を最後まで遂行せねばならない。 ここからが本番だ。 怪我を押して追ってくるルフィに対して、事前に仕込んでいたトラップをここで発動させる。 踊り場の影に積み上げてあった窓ガラスの破片の山。 そこに仕込んだ手榴弾は、のび太の支給品から調達したものだった。 ビルの中で調達したガムテープで床に固定し、同じく現地調達したビニール紐を手榴弾のピンに結んであった。 それを引っ張り、すると手榴弾のピンが抜ける。 自分は通り抜けフープで壁を抜けて退避。 後には踊り場に到達したルフィだけが残り――――そこで手榴弾が爆発する。 爆発によって巻き上げられたガラスの破片が、高速で飛び散る無数の刃となって、至近距離からルフィに突き刺さる。 壁越しに聞いた絶叫は、確かな戦果の証明だった。 「――うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 そこで突如、雄たけびが思考を中断させた。 屋上のドアが猛烈な勢いで殴り飛ばされ、吹き飛び、床を転がった。 その向こう。 血を床に滴らせながら、それでもよろめくようなそぶりすら見せず、確固たる足取り。 瞳には怒りに満ちた炎が宿る。 まさに手負いの猛獣だ。 対する自分――バラライカは狩人。 まともにやり合えば、その牙でズタズタに引き裂かれるだろう。 「あら……ゴム人間て、そんなことも出来るのね」 場違いなほどに平静な声で感嘆する。 見ればバラライカによって大きく切り裂かれた右腕には『結び目』ができていた。 腕そのものを結んで止血など、ルフィにしかできない芸当だろう。 「うるせえ!! もう逃げられないぞ、覚悟しろ!!」 空気が凍るほどの迫力があった。 だがバラライカは動じない。 その声には一片の恐怖すら含まれていない。 「あらそう。でもね、あなたもうおしまいなのよ」 勝利の確信。 全身に細かいガラスの破片が突き刺さっている。 加えて大量の出血。 この殺し合いに名医が参加してなおかつ生存しており、そして病院に充分な施設と輸血があれば治療は可能だろう。 だが、そんな可能性は限りなく低い。 放って置けば自然と死にいたる。 そう、不死者でもなければ。 「俺は死なねえよ。こんな怪我だって飯食って寝て、チョッパーに治してもらえば簡単だ!」 「へえ、そのチョッパーってアナタのお仲間? お医者なのかしら? じゃあ治療されると面倒だし、殺しておかないといけないわね」 「はっ、しまった!!」 ご――――――――――ん。 「まあ、いいや。ここでお前をぶっ飛ばせば問題ないだろ」 そういってルフィはぐるぐると左腕を回す。 そう、それならば問題はないだろう。 それが出来ればの話――――だが。 「もう一度言うわ。あなたもうおしまいなのよ」 床に通り抜けフープを置いてそこに飛び込む。 ただそれだけ。 それだけでバラライカの姿は陰も形もなくなる。 「な」 あっけにとられるルフィの呆けたような声が、空虚な響きを大気に残す。 それももはやバラライカにはどうでもいいこと。 獲物の怪我を直に見て、これ以上の戦闘は無意味と判断。 相手に敗北を思い知らせるべく、自らの勝利を告げて、そして去る。 「じゃあね――」 最後の別れの言葉。 それもビル風に掻き消える。 ◇ ◇ ◇ 「…………!!」 まずい。 ルフィは考える。 チョッパーのことを教えてしまったこともそうだが、それだけではない。 あの女を逃がせば、きっとまたエルルゥのような犠牲者が出る。 仲間を失って悲しむ誰かが生まれる。 自分が取り逃がしたせいで。 ルフィは何よりも仲間を大切にする男だ。 それは幼少の頃の思い出に起因するところが大きい。 ――どんな理由があろうと!! ――俺は友達を傷つける奴は許さない!!!! ある男がそういったからだ。 そしてそれに心底憧れた。 あんな風に自分もなりたいと思った。 そしてそんな男に友達と呼ばれたことが何より嬉しかった。 「仲間も守れなくて、仇も取れなくて、何が船長だ……!」 だからルフィは折れない。 友達と言ってくれたあの男に恥じないように。 あの男に認められるような偉大な海賊になるために。 そしてその信念に命を懸けることをルフィは躊躇わない。 ゆえに退かない。 自分の怪我など後回しだ。 「おりゃあぁ――――――――――!!!!」 ゴム人間のバネを利用して高く飛び上がった。 屋上のさらに十メートルほど上空。 「ギア……………………3ッッ!!」 大きく息を吸い、ルフィの胴が風船のように大きく膨らんだ。 ゴムの身体ゆえに吸い込めばいくらでも大きくなる。 そして残った左腕の親指を口にくわえ、溜め込んだ息吹を親指から左腕の骨に吹き込む。 すると腕が巨大化する。 骨もゴムだから空気を入れれば巨大化する道理だ。 その大きさは10メートルをゆうに超える。 それを全力で叩きつければどうなるか。 「この建物ごと叩き潰してやるっ!! ゴムゴムのォォォォ~~~~~~~~~~~~~~!!!!」 振りかざした左拳の影が、ビル全体を覆った。 それほどまでに巨大。 ゆえに強力無比。 バランスを犠牲にしてでも破壊力に特化させた、ルフィ自身の最大威力。 「――――――――巨人の銃(ギガントピストル)!!!!!!!!」 時系列順で読む Back 救いと因果と Next ジャイアントキリング(後編) 投下順で読む Back 呼び水 Next ジャイアントキリング(後編) Back Next 救いと因果と バラライカ ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と モンキー・D・ルフィ ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と ニコラス・D・ウルフウッド ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と 古手梨花 ジャイアントキリング(後編) どす黒い穴のその向こう側へ 無常矜侍 ジャイアントキリング(後編)
https://w.atwiki.jp/multiple/pages/193.html
ジャイアントキリング(前編)◆SqzC8ZECfY ――ああもう! ……なんでかしら……なんでこんなにいらつくのかしら。 E-5にある市街地のビルのひとつ、一階が喫茶店になっている建物で、梨花はウルフウッドとともに休息をとっていた。 ひとまずの食事を終え、カウンターにある椅子に腰掛けて、床に届かない脚をぶらぶらさせながら、梨花は難しい顔でガラス戸の外を眺めている。 「ほれ……コーヒーや。ミルクと砂糖もあるで」 「あ……うん、ありがとう」 カウンター越しに、まるで客に出すようにしてコーヒーを渡す、梨花の同行者。 この青年の名前はニコラス・D・ウルフウッド。 差し出されたコーヒーを一瞥して次に彼の顔を見上げる。 「……どした。毒は入っとらんで」 「あ、うん、そういうことじゃないの……いただきます」 「おう」 砂糖とコーヒーを混ぜて、出されたコーヒーを一口飲んだ。 コーヒーメーカーで淹れた安物だが、砂糖とクリームの甘さが今の疲れた心と身体にはありがたかった。 「あ、おいしい……」 「おう、そりゃ良かった」 「うん……ありがとうニコラス……って、そうじゃないっ!」 ばん! とカウンターに手をついて上目遣いに彼を睨んだ。 相変わらずとぼけた態度。だがそれはうわべだけだと分かっている。 梨花は伊達に百年近くも子供をやってきたわけではない。 子供の無力というものをその分だけ思い知ってきた。 力がないなら媚でも何でも売って他人を利用する。 自慢できることでもないが、人の顔色を伺うのには慣れている梨花だった。 出会って僅かな時間だが、彼の本質というものをぼんやりと理解することくらいはできるようになっていた。 「ニコラス。あなた、あの麦わらの子が心配なんでしょう」 「…………なんや、いきなり」 「だって、あなたお人よしだもの」 「んな……」 ウルフウッドの眉尻がぴくりと跳ね上がった。 ずい、とカウンターに身を乗り出して梨花は顔を近づけ、さらに言葉を続ける。 「私なんかをこうやって連れてるのが証拠よ。あなたは悪人にはなれないもの」 結果として、その言葉は逆鱗に触れるのと同意だった。 驚愕の表情、そして様々なものがない交ぜになったような、例えようもない感情の渦を宿す双眸が梨花を睨みつけた。 どきり、と心臓が高鳴る。 だが、その表情も一瞬のこと。 所詮は子供のいうことと流したのか、ウルフウッドは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。 梨花が大人だったらまた別の反応が返ってきていただろう。 襟首を掴まれて殴られてもおかしくない。 「はいはい、分かった分かった。で、『信頼してる』とかいったクセに、嬢ちゃんほっぽりだしてワイに戻れっちゅうんか」 「む……」 「それに麦わらの。アイツが決着つける言うとるんや。ワイらがどうこう言う筋やない」 さっきのは失言だった。 ちょっと迂闊に踏み込みすぎたかも――と心の中で多少反省。 会って間もないというのに、相手のことが妙に分かってしまう。 どこか自分と似ているような気がする。 なんだか他人のような気がしないと、そんな風に思って気安くしすぎたかもしれない。 気を取り直し、梨花は椅子から飛び降りてウルフウッドに向き直る。 「それでも、よ。このまま二人でいつまでも逃げてるわけにはいかないじゃない」 放送で呼ばれた15人の死者。 次に自分たちの仲間が呼ばれないという保証はない。 そして禁止エリアはこのままいけばどんどん狭くなる一方だ。 最後には地図上の全てが埋め尽くされ、最後の一人になるまで殺しあうしかなくなる。 それまでにどうにかしなければならない。 多少のリスクを無視してでも、何か策を講じるか、せめてもっと情報が欲しかった。 今は何も手がかりすらないが、それでも殺し合いという選択肢は選ばない。 古手梨花は、もう運命がいかに強大な障害を用意しようと、抗うことを止めたりはしないと決めたのだ。 「まぁなあ……」 「そうよ。そして当然、私も一緒に行くから」 「……は?」 「何よ。今のニコラスより、むしろ私のほうが役に立つわよ。ほらこうやって時を……」 その小さな胸を得意げに張って、そして先ほど時を止めた感覚をまたここで再現しようとして…………できなかった。 「……………………あれ?」 どうした、というウルフウッドの訝しげな声に応える余裕もなく、梨花はもう一度、もう一度と力の行使を試みる。 どうにかしようとぱたぱたと手を振ったりする様は見ている者にとっては無駄に和むが、それですむほど暢気な状況でもない。 「なんでよ、なんで出ないの?」 「なんや、やっぱさっきはまぐれ――」 「うるさい」 梨花は自分の無力を百年間も思い知らされてきた。 最後に自分が殺されることで過去へとループする無間地獄。 何度も運命に立ち向かい、そのたびに自分の無力を思い知り、巨大な見えざる力に叩き潰され続けてきた。 自分が子供でなければ、もっと力があれば未来を変えることが出来たのに――と数え切れないほどの悔し涙を流し続けてきた。 そんな梨花が、ついに手に入れることができた力をどれほど喜んだか。 これで皆を守れる。 もう足手まといになんかならない。 皆が繰り返される運命に弄ばれるのを黙って見ているしかない――そんなのはもうお仕舞い。 そう思っていた。 「……おい」 「もう一回……!」 「もうええから」 「うるさいッ!」 なんで。 なんでいつもこうなのか。 やっと手に入れたと思ったら、するりとそこから逃げていく。 「泣くなや」 「泣いてない!」 視界がにじむのを止められない。 気を抜けば、まぶたから熱いしずくが零れ落ちそうになる。 無様で足手まといの子供。 眼前の彼は自分のことをそう思っているのだろう。 それがさらに恥ずかしさと悔しさを増加させる。 梨花は今まで自分がもっと強いと思っていた。 だけどそれは過酷な現実に押し潰されないように感情を凍りつかせていただけだ。 割り切ったふりをして、それでも割り切れなくて――そんな自分の感情自体に永い間、気付くことができなかった。 全てを受け止め、それでも諦めることを知らず前に進み続けた前原圭一は、どれほど偉大だったろう。 それに比べて今の自分はなんて情けないんだろう。 そんな梨花の頭を不器用に、だが優しくなでる大きな手。 「……」 梨花はされるがままにうつむく。 眼下のテーブルに置かれている冷めたコーヒーに涙のしずくが落ちた。 「お前はここでおとなしく隠れとけ。後であいつも連れて戻ってくるさかい」 「え……」 カウンターのテーブルに、ごとりと音を立てて一丁の拳銃が置かれた。 確か、濡れていて使えない銃だったはずだ。 ウルフウッドはそれを惚れ惚れするような素早い動作で分解していく。 そしてバラバラになったパーツを店に備え付けてあったペーパーナプキンで拭き、水気を丁寧に取る。 それが終わったら再び組みなおす。 元通りになった銃――50AEデザートイーグル。 「それ……使えるの?」 「ああ、よく見りゃ弾の炸薬自体は防水加工されとる。あとはバレルの中さえ拭いてやりゃあ……と、こう言ってもわからんか。 とにかくこいつは使えるようにしたったってことや」 「じゃあもっと早くそうすればよかったじゃない!」 「んな暇なかったやろうが……」 確かに。 出会ったばかりのときはこちらもウルフウッドが銃を持っていたとなれば警戒していただろう。 さらに襲撃からこっち、ろくに休憩する暇もなかったのは確かだ。 「こっちのショットガンは紙製の薬莢に水が染みてるから無理やな……ま、ええわ。 んじゃ、行って来るわ。おとなしくまっとれよ」 「ニコラス……」 銃を手に持ち、ウルフウッドは梨花に背を向けた。 そのまま、真っ直ぐ店の出口へと向かう。 「考えてみりゃあ、確かにこのまま二人で逃げてたところでどうしようもないしな……。 情報集めるにも、さっきみたいな奴に襲い掛かられた時のためにも、頭数はもっとおったほうがええ」 そんなことわざわざ言う必要なんてないのに。 まるで梨花にさっき指摘されたことにたいしての言い訳のようで、内心で少しおかしかった。 「私は一緒に行くのは……駄目かしらね」 「当たり前やボケ。今から行くのは危険度100%の鉄火場やぞ。 力が使えないんなら、どう考えたってここに隠れてたほうがええやろが」 「そう……なんだけど」 「なんや、梨花は夜中一人でトイレに行けんクチかい」 からかうような口調。 一瞬ムキになって返そうとして堪え、梨花は猫を被ったときの口調で言い返す。 「みぃ、狼さんが来るかもしれないので怖いのです」 「あー……すまん。すぐ戻ってくるさかい、堪忍な?」 苦笑いとともに頭を撫でられた。 梨花は返事の代わりに、にぱー☆と笑う。 それを見てウルフウッドも笑った。 そして、行ってくる、と言い残し、戸を開けて外へと走り出していく。 それを見送りながら梨花は思った。 ――そうだ。 笑ってやろう。 殺し合いを強いられたって、泣いてなんてやるものか。 言いなりになんてなってやるものか。 ギラーミンに教えてやる。 私たちにかかれば、運命だって金魚すくいの網みたいに破ることができるんだってことを。 お前なんか必ず皆で力を合わせて打ち破ってやると。 ◇ ◇ ◇ 五階建ての狭い雑居ビルは、ぼんやりとした曖昧な闇を入り口の奥に覗かせていた。 麦藁帽子を被った少年が、草履を履いた足を床に叩きつけるような強い足取りで中に踏み込んだ。 足音が内部の壁に反響し、鈍い残響音があたりに伝わる。 俺はここにいるぞと叫ぶように。 「出て来い!!」 少年は声をあげ、さらに奥へと進む。 すると床に女物のパンプスが一揃え落ちていた。 あの傷の女がはいていた物だろうか。 履物まではよく覚えていないが、確かそうだったような気がする。 軽くつま先で蹴ってみるが、カツンと床に音を立てて転がるだけ。 あの女はどこにいるのかを考える。 ちょうどその時だった。 上の階からガラスが割れるような音。 「上か!」 すぐそばにあった階段を駆け上がる。 ゴムの脚をぐんと伸ばし、二段、三段と飛ばして一気に上を目指す。 階段の幅は二メートル程。 左回りで、階と階の間に踊り場があり、そこで折り返して上へと続く。 あっという間に二階へ到達する。 ここにいるのか、それとも上か。 ガラスが割れる音はもっと上から聞こえたような気がする。 その時、さらにもう一度。 上の階から再びガラスが割れる音が聞こえる。 それを聞いたルフィは、反射的とも言える動作で上へと続く階段に踏み込んで飛ぶ。 踊り場までほぼ一足。 壁を蹴って身体を翻し、さらに三階へと僅か数歩で飛び上がる。 明らかに誘っている。 だが何であろうと真っ向から打ち砕くと、ルフィは覚悟を決めていた。 三階。 ここまで各階の構造はほぼ一緒だった。 真っ直ぐ廊下が伸びて、正面、左右に部屋への入り口がある。 二階で聞いた音はかなり近かった。 ここにいる可能性は大きいと判断して、ルフィは各部屋へ続く廊下の前で一旦、ストップする。 無人。 そして無音だ。 その時、背後から影が伸び、ゆらりと動く。 そこは四階へと続く階段で、踊り場は大きなガラス窓になっている。 そこから入り込む陽光が三階のルフィにちょうどかかる位置だった。 僅かな風切り音がルフィの後頭部をめがけ、一直線に突撃。 ルフィは影を見切り、それに反応する。 右の手元にあった階段の手すりに手を掛け、そこを中心にしてくるりと身体を右方向に反転させながら背後からの攻撃をかわした。 次の攻撃に備え、半身を手すりに隠したまま、上を見上げる。 かくして敵はそこにいた。 顔の右半分が焼き潰された金髪の女。 だがその格好は先刻までとは様変わりしていた。 黒いジャケットに揃えたタイトスカートとパンプスは影も形もない。 がっちりとした黒いブーツ。 脚のラインに密着した、やはり黒のアンダースーツ。 その上から羽織った、深い切れ込みの入ったコートの色は――――、 「すげー紅いな!」 ど――――――――ん。 「…………さて、また会ったわね。ルフィ君」 「ああ。お前をぶっ飛ばす!」 半身で腰を落とし、ルフィはいつもの戦闘態勢をとる。 見上げた視線の先に敵。 右手に大きめの妙なナイフを握った金髪の女が、踊り場に立ってルフィを見下ろしている。 ちまちました小細工は流儀じゃない――真っ向から叩き潰す! 「ゴムゴムの――銃(ピストル)!!」 振りかぶった右拳を弾き出すように放った一撃は、階段の上に立つ敵の顔面目掛けて一直線に襲い掛かる。 技の名どおりの弾丸と化した拳は尋常なスピードではない。 鍛え上げた自らの技に絶対の自信をこめて撃った攻撃だ。 その技を相手は――――横に倒れこむようにしてかわす! 「……ッッ!?」 拳は後方の窓ガラスを枠ごと砕き、派手な音が響き渡る。 だがそれはもはやどうでもいいこと。 相手は倒れこむ体勢から強引に横の壁を蹴りつけて身体を起こすと、その右手の白刃が間髪入れずに動く。 その狙いは、かわされて伸びきってしまったその右腕だ。 それに気付いてルフィは、空いた左手で右腕を強引に引き戻そうとする。 下から上へ振りかぶる直線的な銀弧との、刹那の交差。 バチン、と音を立ててルフィの元へ戻ってきたその腕。 つう、とうっすら赤いラインが浮かぶ。 本能が危険信号を最大音量で告げだした。 ドクン、と自分の鼓動。 灼熱の激痛と噴水のような出血が右腕から生まれたのは、それと同時だった。 「――――ぐ、ぁぁあああああああああああああ!!」 ナイフの一撃は正確に、腕の甲の裏側にある太い血管の部分を抉り斬っていた。 手で押さえても血が止まる様子はない。 敵の追撃。 鋭い包丁の投擲をかろうじてよける。 刃がコンクリートの床にぶつかって高い金属音が発生した。 体勢を立て直して上を見上げれば、手すりによって遮られた踊り場の影へ入り込もうとする人影がある。 上への階段を登って逃げようとする気か。 「――待て!!」 痛みをこらえ、ルフィはそれを追撃する。 階段を駆け上がるのではなく、跳ね上がる。 あっという間に踊り場まで駆け上がり――、 「あれ?」 そこには誰もいない。 踊り場には、窓から入り込む陽光に照らされて、散らばった窓ガラスの破片が床でキラキラと輝く。 四階へ続く階段を見上げても誰もいない。 視界から見失ったのは、敵が踊り場から動いてからルフィが飛び上がってくるまでの、たった一瞬だけのはずだった。 そこでルフィは不自然な点に気付く。 三階からは陰になって見えない、四階へ続く階段と踊り場の接点。 その床の角にガラスの破片が積み上げられていた。 先程の一撃で割れた、ここの窓ガラスとは明らかに違う質のもの。 ならばこれはあらかじめ仕掛けられていた。 直感とも言うべき感覚でルフィはトラップと理解したが、すべて遅すぎた。 積み上げられたガラス片が炸裂して、それをまともに浴びる。 「がっ…………!」 悲鳴は爆裂音にかき消された。 踊り場の窓ガラスが今度は完全に外へと飛び散る。 轟音――そして煙もそこを通って、猛烈な勢いで吹き出した。 爆風の勢いで転がりながら、踊り場の壁に強く打ち付けられ、常人ならばとっくに死んでいておかしくない衝撃だった。 だがそれでもルフィは戦う意思を捨てない。 一瞬、意識が飛んだが、まだ大丈夫だ。 まだ負けてない。 ルフィには、俺は勝てる――という強固な自信がある。 それは根拠のない妄言ではない。 この麦藁帽を憧れの男から受け取った日から、積み重ね続けた鍛錬がそれを確固たるものとして支えている。 大きな野望を成し遂げるのに必要なだけの代償を払い、そしてそれを積み重ね、強さを得て、前に進み続けてきたのだ。 だからこそ、まだ身体も動く。 立ち上がれ。 さあ――――、 「……あれ」 なんだか手足がキラキラと輝いている。 これはなんだろうと思って、よく見ると透明で光る小さな何かが手足にびっしりとくっついていた。 ぷつり、ぷつりとそこから真紅のビーズのような丸いものが生えてきた。 「なんだこれ……」 その丸いものはある程度の大きさにまでなると、その形を崩して液体となり、下方へと垂れていく。 これは自分の血だ――――ルフィの理解が追いついた。 血の珠は続々と大きくなり、球体の形を保てなくなり、そして弾けて垂れていく。 このキラキラしたものは無数のガラスの破片。 それが手足に刺さって、その結果として流血している。 「が――」 遅れて襲い掛かる激痛の感覚。 「――があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 絶叫。 ◇ ◇ ◇ 青い空が白くぼやけるほどの陽光だった。 ビルの屋上は、水はけのために敷き詰められた砂利を囲むようにして、落下防止の金網が張り巡らされていた。 砂利を踏みしめて、歩く。 屋上から階下へ続く階段を背に悠然と。 金網まで辿り着いて何の気なしに眼下のビル街を眺めていた。 探知機でターゲットの動きを確認する。 ――そろそろか。 おもむろに背後にある屋上の入り口へ銃を向けた。 発砲――金属のドアが鼓膜を突くような甲高い音を立てる。 その音が鳴った次の瞬間、探知機の中の光点が移動を開始した。 こちらに向かってくる――誘導は成功した。 そう、これは誘導だ。 標的がこのビルに突入したのを探知機で確認。 そしてビルの窓ガラスを一定間隔で割る音で、その方向におびき寄せる。 姿を見せるのはリスクが要ったが、これも計算のうちだ。 釣りと同じで、餌がなければ獲物は食いつかない。 仕留めきれずにいるうちに、向こうが諦めて退却してもらっては困る。 もう少しでこちらに届くと、そう思わせることが肝要だ。 かくして愚かな獲物は罠に嵌る。 直接相対したときも、リスクを軽減するための策は用意していた。 スカートとパンプスを履き替え、この服装に変えたことがまず一つ。 これはかなり大きい。 タイトスカートの裾は僅かに脚を開くだけで突っ張り、ヒールの付いた靴では全力疾走もままならない。 ましてや近接格闘など「ありえない」。 並みの相手なら、それでも撃退できる自信はあるが、ここの敵はどれもそのレベルを易々と超えていた。 そして気絶した直後に目覚めた駅から離脱し、ようやく着替える余裕ができたというわけだ。 着てみると見かけよりも軽い。 防弾機能もあるらしいが、そうとは思えないほどに身体の動きを阻害しない。 これならば己のスキルの全てを存分に振るうことができる。 ゆえにターゲット――ルフィの初弾もかわす事が出来た。 狭い階段という、攻撃の軌道が限定される空間――地の利。 攻撃の前に右腕を振りかぶるという分かりやすい予備動作――相手のミス。 一度対戦して、ある程度手の内は分かっている――敵の情報。 いかにその攻撃が速く強力であろうとも、こちらはすでに完璧に予測できていたのだ。 だからギリギリで回避し、カウンターを叩き込むことが出来た。 まともにぶつかれば到底不可能。 だが入念な準備を経て狙い済ました一撃。 作戦開始前のプランからすれば予想外の戦果を挙げた。 だが予定に変更はなし。油断なく作戦を最後まで遂行せねばならない。 ここからが本番だ。 怪我を押して追ってくるルフィに対して、事前に仕込んでいたトラップをここで発動させる。 踊り場の影に積み上げてあった窓ガラスの破片の山。 そこに仕込んだ手榴弾は、のび太の支給品から調達したものだった。 ビルの中で調達したガムテープで床に固定し、同じく現地調達したビニール紐を手榴弾のピンに結んであった。 それを引っ張り、すると手榴弾のピンが抜ける。 自分は通り抜けフープで壁を抜けて退避。 後には踊り場に到達したルフィだけが残り――――そこで手榴弾が爆発する。 爆発によって巻き上げられたガラスの破片が、高速で飛び散る無数の刃となって、至近距離からルフィに突き刺さる。 壁越しに聞いた絶叫は、確かな戦果の証明だった。 「――うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 そこで突如、雄たけびが思考を中断させた。 屋上のドアが猛烈な勢いで殴り飛ばされ、吹き飛び、床を転がった。 その向こう。 血を床に滴らせながら、それでもよろめくようなそぶりすら見せず、確固たる足取り。 瞳には怒りに満ちた炎が宿る。 まさに手負いの猛獣だ。 対する自分――バラライカは狩人。 まともにやり合えば、その牙でズタズタに引き裂かれるだろう。 「あら……ゴム人間て、そんなことも出来るのね」 場違いなほどに平静な声で感嘆する。 見ればバラライカによって大きく切り裂かれた右腕には『結び目』ができていた。 腕そのものを結んで止血など、ルフィにしかできない芸当だろう。 「うるせえ!! もう逃げられないぞ、覚悟しろ!!」 空気が凍るほどの迫力があった。 だがバラライカは動じない。 その声には一片の恐怖すら含まれていない。 「あらそう。でもね、あなたもうおしまいなのよ」 勝利の確信。 全身に細かいガラスの破片が突き刺さっている。 加えて大量の出血。 この殺し合いに名医が参加してなおかつ生存しており、そして病院に充分な施設と輸血があれば治療は可能だろう。 だが、そんな可能性は限りなく低い。 放って置けば自然と死にいたる。 そう、不死者でもなければ。 「俺は死なねえよ。こんな怪我だって飯食って寝て、チョッパーに治してもらえば簡単だ!」 「へえ、そのチョッパーってアナタのお仲間? お医者なのかしら? じゃあ治療されると面倒だし、殺しておかないといけないわね」 「はっ、しまった!!」 ご――――――――――ん。 「まあ、いいや。ここでお前をぶっ飛ばせば問題ないだろ」 そういってルフィはぐるぐると左腕を回す。 そう、それならば問題はないだろう。 それが出来ればの話――――だが。 「もう一度言うわ。あなたもうおしまいなのよ」 床に通り抜けフープを置いてそこに飛び込む。 ただそれだけ。 それだけでバラライカの姿は陰も形もなくなる。 「な」 あっけにとられるルフィの呆けたような声が、空虚な響きを大気に残す。 それももはやバラライカにはどうでもいいこと。 獲物の怪我を直に見て、これ以上の戦闘は無意味と判断。 相手に敗北を思い知らせるべく、自らの勝利を告げて、そして去る。 「じゃあね――」 最後の別れの言葉。 それもビル風に掻き消える。 ◇ ◇ ◇ 「…………!!」 まずい。 ルフィは考える。 チョッパーのことを教えてしまったこともそうだが、それだけではない。 あの女を逃がせば、きっとまたエルルゥのような犠牲者が出る。 仲間を失って悲しむ誰かが生まれる。 自分が取り逃がしたせいで。 ルフィは何よりも仲間を大切にする男だ。 それは幼少の頃の思い出に起因するところが大きい。 ――どんな理由があろうと!! ――俺は友達を傷つける奴は許さない!!!! ある男がそういったからだ。 そしてそれに心底憧れた。 あんな風に自分もなりたいと思った。 そしてそんな男に友達と呼ばれたことが何より嬉しかった。 「仲間も守れなくて、仇も取れなくて、何が船長だ……!」 だからルフィは折れない。 友達と言ってくれたあの男に恥じないように。 あの男に認められるような偉大な海賊になるために。 そしてその信念に命を懸けることをルフィは躊躇わない。 ゆえに退かない。 自分の怪我など後回しだ。 「おりゃあぁ――――――――――!!!!」 ゴム人間のバネを利用して高く飛び上がった。 屋上のさらに十メートルほど上空。 「ギア……………………3ッッ!!」 大きく息を吸い、ルフィの胴が風船のように大きく膨らんだ。 ゴムの身体ゆえに吸い込めばいくらでも大きくなる。 そして残った左腕の親指を口にくわえ、溜め込んだ息吹を親指から左腕の骨に吹き込む。 すると腕が巨大化する。 骨もゴムだから空気を入れれば巨大化する道理だ。 その大きさは10メートルをゆうに超える。 それを全力で叩きつければどうなるか。 「この建物ごと叩き潰してやるっ!! ゴムゴムのォォォォ~~~~~~~~~~~~~~!!!!」 振りかざした左拳の影が、ビル全体を覆った。 それほどまでに巨大。 ゆえに強力無比。 バランスを犠牲にしてでも破壊力に特化させた、ルフィ自身の最大威力。 「――――――――巨人の銃(ギガントピストル)!!!!!!!!」 時系列順で読む Back 救いと因果と Next ジャイアントキリング(後編) 投下順で読む Back 呼び水 Next ジャイアントキリング(後編) Back Next 救いと因果と バラライカ ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と モンキー・D・ルフィ ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と ニコラス・D・ウルフウッド ジャイアントキリング(後編) 救いと因果と 古手梨花 ジャイアントキリング(後編) どす黒い穴のその向こう側へ 無常矜侍 ジャイアントキリング(後編)
https://w.atwiki.jp/senjounokizunaii/pages/417.html
概要 ジャイアント・バズを両手に装備することで火力と爆風が向上 チャージを行うことでさらなる高火力を出すことが可能 数値情報 武器名 LV コスト 威力 弾数 リロード時間 射程 ダウン値よろけ:ダウン 交換 【射】ジャイアント・バズ×2A LV1 +100 36チャージ 48 4/2発 8秒チャージ 2秒 360m 70/1発2:4発 Ⓡ30枚Ⓟ20000枚 LV2 +150 40チャージ 54 lv1×5 LV3 +200 45チャージ 60 lv1×10 装備可能機体 格闘型 近距離型 射撃型 ケンプファー 砲撃型 本武器の初期装備機体 格闘型 近距離型 射撃型 砲撃型 備考 チャージ式の実弾武装。 チャージ時間は2秒。 チャージを行うことで威力が向上し、武装レベル3では120ものダメージを叩き出す。 また、ジャイアントバズを2発同時に発射していることもあり、爆風範囲も非常に広い。 その反面弾数が4発(2トリガー)しかなく、リロード時間も8秒と長め。 必中させるのは当然のこと、敵の固まっている場所に撃ち下ろすなどして複数機を巻き込めるように命中させたい。 23/3/2にはリロードとチャージ時間が短縮、23/9/13アップデートでは弾数が4発へ増加した。 度重なる上方修正により以前よりは扱いやすくなってはいるが、依然として手数の少なさと弾速の遅さは解決されておらず、更なる上方修正が待たれる。 過去のアップデート 23/3/2アップデートにて チャージ時間を2.5➝2秒へ短縮 リロード時間を10➝8秒へ短縮 23/9/13アップデートにて コストを60➝100へ変更 弾数を2➝4へ増加
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/20149.html
ジャイアント・タコーン(OCG) 効果モンスター 星8/地属性/植物族/攻1000/守2500 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。 このカードを手札から守備表示で特殊召喚し、 その相手モンスターの攻撃対象をこのカードに移し替えてダメージ計算を行う。 (2):「[[ジャイアント・タコーン]]」以外の自分フィールドの植物族モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターとこのカードの攻撃力は、その2体の元々の攻撃力を合計した数値になる。 地属性 最上級モンスター 植物族 植物族補助 能力強化 自己強化 同名カード ジャイアント・タコーン 関連カード コーンなバカな
https://w.atwiki.jp/suproy/pages/284.html
「思ったより時間がかかってしまったな……」 チーフは一人呟いた。 水中用のOSに書き換え、水中を渡り、またOSを一人書き換えて。 どうにか補給ポイントまでたどり着いたのはいいが、時刻はすでに24時を越えていた。 リョウトを追うにしても、他の脱出計画者と合流するにしても、あまりにも痛い時間の遅れといえるだろう。 しかも、1時間ばかり前に輝いた、あの光。 チーフとしては、実際経験したことはないが、戦術兵器などの資料集で垣間見たことがある。 核 その威力は、たやすく町を焼き、何十万もの人間を焼き尽くす。 旧世紀、まだ冷戦と呼ばれるものが存在していたころ、アメリカという国は、携帯兵器として歩兵用のアトミック・バズーカを造り、 ソ連と呼ばれる国は、核地雷を造ったという話がある。 無差別な爆発ではなく、前述のような戦術兵器として調整してあることを、チーフは祈ることしか出来ない。 そして、願わくばそれで命が失われていないことを。 テムジン747Jの体をなめるように動き回っていた工具型の小型ロボットが、少しずつ減っていく。 おそらくは、補給が完了したということだろう。 「よし、各部チェック……オールグリーン。問題ないな」 テムジンの弾薬や、エネルギーが完全に満タンになっていた。 これで、まだしばらくは持つな。 そう思い、補給ポイントから離れようとしたと時、突然夜空の暗い光さえさえぎられた。 「――機影かッ!?」 とっさの経験から、爆発するような勢いでブースターを噴射し、距離をとる。 静かに補給ポイントに降りて来る巨体。それは――― ――ジャイアント・ロボ。 しかし、前にチーフが見たときとは、まるで違う。 下半身を抉り取られ、上半身だけで動くその姿は、全体のモチーフと組み合わさって、まるで包帯死体〈マミー〉のようだ。 ジャイアントロボの腕が、補給ポイントのスイッチを押すと、四角い箱から小さいロボットがミサイルのように撃ち出される。 わらわらと工具型のロボットがジャイアントロボに群がり始めた。 その様も、腐乱した死体に群がる蝿のような奇怪な想像を掻き立てるだけだ。 もしや、先程の核と何か関係があるのだろうか。だとしたら、何があって、何故こうなったかが想像がつかない。 その肩に、チーフはカメラを向け二段階拡大。 そこには、リョウトがいた。ただし、チーフの向きからでは、彼の表情は見ることは出来ない。 この距離なら、チーフに気付かないわけがないはずだが……? 確かリョウトという名前だったな、ということを思い出し、 「リョウト……といったな。何がいったいあったのか、話してもらえないだろうか?」 その声で気付いたのか、リョウトがゆっくりと振り返った。 「……――ッ!!」 無意識のうちにチーフはテムジン747Jを一歩下がらせていた。 撃て、と。 迷わずその場で撃てとチーフの経験と直感が言っていた。 昆虫のように無機質で、無感動で、無貌な瞳。人が死ぬことにすらさざ波一つ心にを立てないような瞳。 しかし、熱病にうなされたような腐爛した瞳。何かに執着し、それ以外何も見ようとせず、濁りきった瞳。 典型的な、狂気に犯された人間の――いや目的のためなら人間すらやめかねない狂った生物の瞳。 剣鉄也のように、ただ、目的のため燃えるように輝く瞳とは違う。 この瞳は……もっと恐ろしく、もっと危険なものだ。 コレは危険だ。 今すぐにでも、「外科的に摘出」しろ。今なら撃てる。 コレを放置すれば、どれほどの被害が出るかは予測がつかない。 トリガーにこめる力が気付けば、かなりのものになっていた。それこそ、もう少し力を込めれば、そのまま弾が打ち出されるほどに。 だが。 同時にチーフの理性が叫んでいた。 撃つな、と。 そもそも、ジャイアントロボがボロボロになってはいるが、だからといって何かやったという確証はない。 第一、彼がこうなったのも、自分がリオという少女を守れなかったことも原因の一つなのだ。 そのリョウトを、まさかとめるために来た自分が撃つと? そんなことは、あってならない。 だが。 しかし。 かといって。 一つ前の思考を打ち消す言葉が、グルグルと頭の中を回る。 (どうする……!?俺は、どうすればいい……!?) (どうしようかな………) リョウトは、ジャイアントロボの肩から、テムジン747Jを凍った瞳で眺めていた。 ここであまり時間をとりたくないな、とは思ったが、かといって下手に動けば、むこうを触発してしまうかもしれない。 こんなくだらないことで、頭を使いたくないな。 僕は、今すぐリュウセイを殺しにいかなきゃならないのに。 あの状況、セレーナは死亡しており、ジョシュアも動ける状態じゃなかった。 それに、最後に聞こえた天上天下……とか言う声。あんなことを言うのは、彼しかいない。 リュウセイが、僕のリオを吹き飛ばした。そう、熱かったろうに、痛かったろうに、それを……それを……。 リョウトが乱暴に自分の頭をかきむしる。 殺したい。殺したい。殺したい。よくもリオを! ああ、またイライラしてきた。 頭をかきむしる指に、さらに力が入る。その力はあまりにも強く、頭皮を破り、血が流れ始めた。しかし、それでもリョウトは 掻くことをやめない。爪と肉の隙間に血と肉が入り込む。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリ 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリガリガリ 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ そうだ。 だから、僕は行かなくちゃ。こんなところで、悩んでる暇なんてないんだ。 ちょうどよく、補給も終わったみたいだ。これなら、殺せる。リュウセイを、殺せる。 「ロボ……いけ」 もう、リョウトの瞳には、チーフなどという路傍の石ころは写っていない。写っているのは、リュウセイと、その先に待つ剣鉄也のみ。 上半身のみとなったジャイアントロボが、空へと飛ぶ。 しかし、一発のソードウェーブが、ジャイアントロボのすぐ側に打ち込まれた。 「とまれ。そして、何があったのか……話してもらう」 チーフとしては、あくまで警告、それ以上の意味はない足止めの一撃。 しかし、ただの路傍の石に、邪魔をされたリョウトの気持ちはいかようであったか。 「ロボ」 自分がつまずいた石を蹴り飛ばすような、生きていないただのモノを見る瞳で。 「全弾打ち続けろ」 補給ポイントに上に載るジャイアントロボから、雨のような数の兵器が撒き散らされた。 機体のあちこちをやられた状況で無理に核を撃ったため、GP-02サイサリスは、大の字になって地面に倒れていた。 ブースターの利かせ方も甘く、吹っ飛んだせいだ。 「うぅ……」 リュウセイがコクピットでうめく。 酷く体が痛い。しかも、視界は、定まらないくらい揺れていた。しかも、ガンガン大音量で、音が聞こえてくる。 「―――リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!」 訂正。音ではなく、声のようだ。 「その声……エルマかよ?無事だったんだな」 「リュウセイさん!生きてたら返事をしてください!リュウセイさん!……って起きましたか!?」 どうやら、リュウセイが起きるまでひたすら叫んでいたようだ。 だがリュウセイも起きたはいいが、まだ意識がはっきりしておらず、クラリと来て、コンソールにもたれるような形になった。 「ちょっと!リュウセイさんこそ大丈夫なんですか!?」 「ああ、俺は大丈夫だ。それよりセレーナ達は…………」 「……………」 答えは、無言。しかし、それは何よりも雄弁に現実を伝えていた。 リュウセイの首輪が爆発しない時点で、ジョシュアは確定。 また、リュウセイが気絶している間に、エルマが自分の主の状態を確認してないはずがない。 それに、生きているならば、この場に顔を出しているだろう。 ―――2人は、もうすでに死んでいる。 「俺は……みんなを守ろうと思って……なのに、なんてザマだ!」 力いっぱいコンソールをリュウセイが叩く。 「リュウセイさんのせいじゃないです。そもそも、セレーナさんを離れた自分のほうこそ、何で……」 うつむくエルマが、搾り出すように呟いた。 最悪の沈黙が、その場に厚いカーテンのごとく被さる。 いったいその時間はどれほどだっただろうか。少しだったかもしれない。何十分だったかもしない。 しかし、その静寂を切り裂いて、爆音が遠くから聞こえてきた。 1人と1機はそろってそちらを振り向く。―――夜空が真っ赤に染まっていた。 僅かな地鳴りもある。 「この爆発音、ミサイルの連射間隔……間違いなくさっきの、ジャイアントロボです!」 「あいつ、また誰かを……!」 体の痛みを無視し、GP-02サイサリスを起き上がらせる。しかし、それまで。 自分の体の重みに耐えかねたように、GP-02サイサリスが膝を突く。 もともと、かなりボロボロで、戦闘機動は無理といわれており、電撃で電子機器もやられていた。 その状態で、冷却系もブースターも満足にきかせず核を撃ったのだ。機体にガタがきたところで何の不思議もない。 だが、理屈では分かっていても、頭では納得できようはずがない。 「頼む、GP-02サイサリス、起きろ、起きてくれ!俺はまだ、やらなきゃならないんだ!」 それでも調整系を弄り回し、立たせて一歩を踏み出させる。 さらに一歩。さらに一歩。 あまりにも遅い。 僅かな凹凸に引っかかって、GP-02サイサリスが転倒した。 「なんで、なんでなんだよ……俺には、見ていることしか出来ないってい言うのかよ!」 「リュウセイさん……」 遠くビルの隙間から閃光が漏れ続ける。 GP-02サイサリスの下半身は完全に機能を停止し、残った両腕が地面を書くばかり。 その姿は、まさにリュウセイの状態をそのまま写していた。 必死にもがくが、何も変わらない。自分は何も出来ない。ただ、無力だ。 「もう、アヤの時のような思いはしたくねぇ……俺は、いかなきゃなんねぇんだ……」 這いずって、GP-02サイサリスが進む。 進んだところでそこにたどり着けるのか、とか たどり着いたところで何が出来るとか、とか そんなことは関係ない。ただ、前へ。リュウセイの全身の細胞が、進めと指令を出した。 彼の魂が叫んでいた。 現実がどうとか関係ない。とにかく、進め! 「リュウセイさん……もうなにをしても……やめてください」 エルマが悲壮な声で言った。 エルマの目からは、現実を受け入れられず、ただ足掻くかわいそうな少年――そんな風に見えただろう。 だが、それは違う。 リュウセイのそれは、セレーナにも通じる、戦士の意地と魂から湧き出す、意思による行動だ。 傍目から見たら、みっともないだけかもしれない。だけど、絶対にあきらめない。 無様と嘲笑わられても、愚かだと憐憫の目を向けられても、愚鈍だと蔑まれても、何度倒れても、必ず起き上がる。 百回倒されたら、百回起き上がる。千回倒されたら、千回起き上がる。 千回砕かれれば、千回よみがえる。決して誰にも壊すことの出来ない、人の魂。 ―――人、それを『鋼の魂』という。 そして、『鋼の魂』は『奇跡』をよぶ。 これだけ、広範囲に撒き散らされ砕かれた瓦礫の中。 GP-02サイサリスが触れた、一本の腕。 慌ててそれを掘り返す。 「おい……これ………」 まだ戦う力を持ち新たな戦士を待つ、セレーナが遺した物。人の意思を、力へと変える奇跡の機体。 それは……ARX-7 アーバレストだった。 「待て、こちらに戦う意思はない!とまれ!」 チーフが声を張り上げるが、一向にミサイルの雨がやむ気配がない。 まぁ、当然といえば、当然だろう。 猟師が鳥がさえずったからといって撃つのをやめることはない。 リョウトからすれば、その程度だからだ。 (馬鹿な人だ) 蔑むわけでもなく、嘲笑うわけでもなく、ただ冷静にリョウトはそう思った。 リョウトは、一言もチーフと口を利いていない。 もちろん、リョウトからすれば、チーフと話すことなど何もないというのは大きな理由の一つだが、もう一つある。 ―――徹底的にこちらから情報を提供してはいけない。 リョウトは、激しくイラついてはいたが、心の一部がある意味『死んだ』状態の彼は、 冷静に虫でも観察するような目でチーフを分析し、そう判断した。 相手は、自分を攻撃していいかどうか、決めかねている。 自分が最後にあった段階では、チーフは、こっちを撃っていいいような『悪』か否か決める決定的な要素がない。 そして、今のジャイアントロボの状態を見れば、何かがあったかは明らかだが、詳細は分からない。 つまり、自分が、攻撃を受けマシンを壊され過剰に防衛している被害者か、能動的に攻撃している加害者か分からないから こそ攻撃を控えているわけだ。何か取っ掛かりとなる言葉を与えて、攻撃を本格的に加えられては今のジャイアントロボでは厳しい。 なにしろ、状況から考えるに、あの剣鉄也を撤退させたであろう人物だ。 パイロットの物腰、見事にミサイルをかわし続ける技量と運動性、そのポテンシャルは、どう考えても非常に機体、パイロット共に高い。 (本当に、馬鹿な人だ) 仮に、今の仮定が正しいとしたら、やる気になればジャイアントロボなど一蹴することが出来るだろう。 それなのに、自分の正義を貫く上での犠牲を出すことを認められない。 正義を、ヒューマニズムとか、命は大事とかつまらないことのせいで正義を貫き通すことが出来ない。 だいたい、これだけ攻撃されているんだから、察して攻撃してもいいだろうに。 もし、万が一を間違えたらと思って自分の身を危険において。くだらないことにこだわって。 結局、自分がいい人でいたんだろう。 正義を貫いて、人から後ろ指を指されることを恐れて。 ―――まぁ、いいさ。 自分は違う。 正義のためなら、リオのかたきを撃つためなら、絶対に迷わない。 どんなことをしてでも達成してみせる。 「撃て!撃ち続けろロボ!」 そうだ、僕には、掲げるべきものがある。こんなところで手間取ってる暇はないんだ。 大型ミサイルランチャー、小型ミサイル多連ランチャー、80mmスポンソン砲にロケットバズーカ。 さまざまな兵器が補給ポイントから次々と補給され、途切れることなく打ち出され続けている。 ロボには複雑な動作も必要ない。ただ、「撃て」と命じるだけだ。 無限vs人の集中力の持続時間。 どちらが勝つかは、見て明らかだろう。 だが、あまり時間を食うのも考えものだ。撤退ルートをつぶすよう撃ち続けているためチーフから逃げられることはないが、 その間にリュウセイに逃げられる恐れはある。 そうなれば、また探しなおす必要がある。なんとなく、どこにいるか今のリョウトは把握することは出来たが、 かといって手間が増えるのはあまりよろしくない。 どうしたものかと周りを見回し、 「あ、れ……は……」 視界が、一瞬怒りで赤く染まった気がした。 怒りで思考力が根こそぎ奪われ、正常な判断を失ったリョウトが叫んだ。 「ロボォォッ!全弾アレにブチ込めェェェ!」 リョウトの目に映ったのは、R-ウィング。もとある世界でリュウセイの乗っていた戦闘機だった。 いつの間にかフォルカもいなくなり、一人フラフラと僅かな予感を頼りにR-ウィングは飛び続けていた。 どうしようもなく、リュウに会いたい。 そうしないと、自分は―――自分は、自分を保つことすら出来ないかもしれない。 深く、自分の殻にこもり続け、浅い呼吸でうなされるように顔を下げていた。そのため、 「え?」 ひたすら意識を内に閉ざし、リュウに会うために飛び続けていたマイは、一瞬反応が遅れた。 現実に浮き上がった意識いっぱいに映し出されるのは、大小さまざまな銃弾。 「よけろォーッ!!」 黄色、白、青の何処か戦闘機のような美しさをもった細身のロボットがマイの乗ったR-ウィングを突き飛ばした。 さっきまで、R-ウィングがいた――そして今は突き飛ばしたロボットがいる場所に、大きく爆発が広がった。 爆発に巻き込まれたロボットは、厚い煙と、炎でさえぎられてみることが出来ない。 確かに心配だし気にはなるが、こちらもそうはいっていられない。さらに追い駆けてくる多くのミサイルたち。 (駄目だ、このままでは……) いくら機動力があっても、全方位から迫るミサイルをとめることは出来ない。 ミサイルの隙間を縫うように飛びはするが、僅か僅かな減速の間に、確実に近づいてくる。 いくつかのミサイルがR-ウィングを捕らえるその直前、R-1に変形し、念動フィールドを形成する。 そこへ襲い掛かるミサイルの群れ。続けざまに多くのミサイルがR-1にぶつかり、念動フィールドとR-1をゆるがせる。 いくらマイの強念で生み出された念動フィールドいえど、それは鉄壁ではない。 マイの精神の消耗と共に、確実に薄くなっていく。 ギリギリの限界を見極めて、横っ飛びし、転がり続ける。すぐ真横で、爆発爆発爆発。 転げる勢いを使って、R-1を立ち上がらせ、メインカメラを急いで確認する。 「行けェェ!ロボォォォ!!」 大型のロボットがまっすぐこちらに突っ込んでくる。 「へんけ―――」 変形し、上に逃げようとしたさなか。視界の端、自分の後ろにいる影が見えた。 先程、自分をかばったロボットだ。右腕を失い、地に伏しぐったりしている。 だめだ、今自分がここを離れては、後ろのロボットは、粉砕される。 誰が乗っているかはわからない。だが、かばってもらった以上見捨てるというのは……! (だが、私では……どうしたら……!?) ジャイアントロボはこちらに迫る。 (どうする……どうする!?) さらに、ジャイアントロボは迫る。 (どうすれば……!?) ―――私に任せておけ。 マイの思考に、僅かに不純物が混じる。しかも、滴るような悪意のこもった毒の意思。 ジャイアントロボの腕がR-1に力強く振り落とされ――― 「下衆が」 ないでとまった。R-1の数メートル上で、何か同じくらいの力で押し返されているように震えている。 マイとは、比べ物にならないほどにならないほどに強固な念動フィールド。 しかし、生み出しているのは、先程と同じR-1だ。なら、いったいこの少女はいったい……? 「お前のような半端な念動力者が、サイコドライバーの私に敵うと持っているのか?」 その声には、とても10代半ばの少女とは思えないような嘲りの響きがこめられていた。 R-1の右腕に、緑色の光が集まる。それを、無造作にR-1は振り上げた。 体格差を跳ね返し、ジャイアントロボが後ろに吹っ飛ぶ。 ざっと見て、マイの3倍の念動力。 その隙を見逃さず、『彼女』は更なる念をR-1に込める。 R-1の横幅より広い巨大な剣が収束した。 「T-RINKブレード……いや、『天上天下念動破砕剣』とでもいってやろうか?」 弓のように体をしならせ、天上天下念動破砕剣を、リョウトを殺すべく放とうとするが、 「あ、ぐ………あ、頭が、違う、わたしは、こんなこと、うるさい、私の言うとおり……」 まるで、2人の人間『彼女』とマイが話し合っているように、マイがうわごとを呟く。 R-1がまとっていた威圧感が消え、収束した剣もまた解けて消えた。 たたらを踏むようにR-1がよろめく。 「こ、の声……レビ・トーラー」 さしものリョウトも驚きの声をあげた。あの戦争の最強の敵にして、敵の大首領。 先程見せた念動力といって、まちがいない。それほどの大物がこの場に居合わせようとは。 こいつは、危険だ。 自分のことは棚に上げて、リョウトは思った。 コイツほどの存在が、よりにもよって念動力を増幅するあの、R-1に乗っている。どれほど危険極まりないことか。 あの、リュウセイ=ダテが乗っていたR-1に。 「こいつは、殺しておかなきゃ……あの戦争で死んだ人たちのためにも」 ジャイアントロボが、無防備な姿をさらすR-1にこぶしを振り上げる。 「お前がいなかったら、DC戦争すら起こらなかったんだ……死ネェェェ!!」 もはや、支離滅裂である。 そもそも、彼が怒っていたのは、自分からリオを奪ったことで、至りの矛先は鉄也とリュウセイだけのはずだ。 潜在的にはあったかもしれないが決して、彼の巻き込まれた戦争に関してはない。 狂っている。 この言葉がこれほど似合う人間も、この世界には少ないだろう。 生きていようが、死んでいようが、リオの存在は、彼にとってイカリの役割を果たしていた。 だからこそどれだけ狂っても、リオがいたからこそ、それが基軸となってそこまで壊れることはなかった。 だが、それが外れた彼に、分別などあるはずがない。 ただ、『怒っている』と『狂っている』が状態として、こびりついている。 それに付属する『理由』や『信念』はもうすっぽりと抜け落ちた。 感情だけが心に固定され、その思うままに動く。 もう一度言おう。 狂っている。 だが。 その彼でも、怒りを向けるものへの優先順位というものは残っていたようだ。 場に、乾いた音が響く。 機械が砕ける破砕音ではない。 乾いた……まるで銃でも撃ったかのような音。 ピタリとジャイアントロボの動きが止まる。リョウトが錆付いた機械のような動きで振り向いた。 「やらせねぇ……これ以上やらせてたまるかよ!」 夜の空気を引き裂いて、澄んだ空気に足音が響く。 童話のヒーローのように、白亜の神像が姿を見せた。 「リュゥゥゥゥセエエエェェェ!!」 リョウトが方向転換しまっすぐアーバレストへと接近する。 「三人とも!征くぜ!」 「モーションマネージャ・設定終了……はい!」 〈ラージャ。バイラテラル角の設定1.チャーリー1の書き換え完了。しかしこの設定では本機の85%が限界〉 「そんなもん、勇気で補えば……」 「勇気で補えば?」 「100%だ!」 〈教育メッセージ。勇気で、本機の性能が上昇するのでしょうか?〉 「もちろんだ!3人力を合わせりゃ、120%、140%の力だって出せるぜ!」 〈本機に、そのような仕様は確認されておりません。ナンセンスです。……しかし、嫌いではありません〉 「そんなこと言ってる場合ですか!敵、きます!」 「おっしゃあ!MM(モーションマネージャ)3番!」 「はい!MM3番って……えぇ?」 疑問の声をあげながらも、エルマがMM3を起動させる。 次の瞬間、アーバレストは、安定しきった重心移動で、最速のスピードで前に走り出した。 「うあああァ!!」 ジャイアントロボが、無差別飽和のミサイルを吐き出す。 「ミサイル着弾地点演算。メインモニタに表示します!」 「オッケェーッ!俺だって、伊達や偶然で生き残ってたわけじゃないって教えてやる!」 エルマの演算に従い、ミサイル着弾点を避けるようにさらに走る。 その動きは、滑らかでよどみがない。まるで、猛禽類や猫化の猛獣が獲物に襲い掛かるような動きで距離を詰める。 「行けロボォォ!!」 左右から抉り込むようにパンチが振り落とされる。 「MM1番、続いて、MM2番起動!」 ギリギリまで拳をひきつけ、アーバレストがスケート選手のように横に回転しながら、第三世代ASの特有の高いジャンプを見せる。 「コイツを、思いっきり蹴り飛ばすイメージ……T-Rinkナックルと同じ……いっけぇ!」 頭に、ジャイアントロボを思い切り蹴り飛ばすイメージを浮かべる。そのイメージと共に浮かぶ、2人の顔……ジョシュア、セレーナ。 こいつを倒せなきゃ、またあんなことが繰り返される。そんなこと、絶対認められねぇ! 「アーバレスト!お前に魂があるんなら、答えろ!」 回転した体から足を突き出し、後ろのエンジンをつける。 アーバレストの肩が展開され、美しいオーロラのようなものが回転もあってアーバレストを包み込む。 英単語を口に出して覚えるように、口に出すことでイメージを強く増幅する。最後に脳裏に浮かべるのは、イングラムの撃ったあの一撃。 「稲妻……流星蹴りィッ!」 10tばかりのアーバレストが蹴ったとは思えない音があたりに響き渡る。 よもや、10mもない機体が、ジャイアントロボを大きく吹き飛ばしたなど、誰が信じられようか。 〈このような戦術は、想定されていません。ラムダドライバが発動しなかった場合、足のマッスルパッケージの7割が……〉 「うまくいったんだ!気にするなって!」 〈了解しました。〉 リュウセイが今、ラムダドライバを起動させられたのはリュウセイが似たような兵器を使っていたのも大きいが、 それよりも重要だったのは、アルの変化。 オムニスフィアを通じ、裏側の法則を引き出すアーバレストやヴェノム、ベヘモスたち。 これらとアーバレストは決定的な違いがある。兵器として、一定の水準を引き出すことを目標としたヴェノムたち。 対して、アーバレストは違う。 できるだけ搭乗者に近付くように。 搭乗者の心理や感情を把握し、シンクロできるように。 それによってオムニスフィアからの連鎖反応を高め、より効率よく増幅し、様々なことができるように。 本来、バニの死を知ったところから真の意味で覚醒したオリジナルのアルと違い、このアーバレストのアルは、最初から常に 『教育メッセージ』を取得してきた。ほぼずっとコクピットにいたセレーナの感情などを浴び続けていた。 だからこそ、セレーナを気遣う様子を見せた。 苦悩、悲哀、希望、悩み……そういったものをライブで受け続けたアルは、『人間的』に成長する。 そして、セレーナの撃ったラムダドライバのデータも、彼女の『死』についても。 本来、変更不可なパイロットの変更も、ユーゼスの無理なプログラミングでさせられているが、それはアルのリセットは 意味していない。人間は、身近な人の死を受け成長するというが、このAIはいったいどうだろうか。 さらに現在、接続されているエルマからも、生の経験の数々を吸い上げていた。 アルは今までの経験を持ってリュウセイとシンクロし、成長し続けている。 それも、凄い勢いで。 「次だ!ボクサーを出してくれ!」 「分かりました!」 〈ラージャ〉 起き上がりながらもミサイルを吐き出すジャイアントロボに、追走しながら散弾銃を撃つ。 しかし、今度はラムダドライバがこめられてないためか、装甲一枚抜くこともできない。 「緊急回避!」 ミサイルの着弾予測にいたアーバレストを、エルマが強制的に横っ飛びさせた。 さらに、アルがジャックナイフ機動で、アーバレストを起こす。 「す、すまねぇ2人とも」 〈「サポートは任せてください〉」 思わず二人の息が合う。 今のアーバレストは、三身一体で動いていた。バイラテラル角を1に設定し、リュウセイが極力戦いやすいようにする。 エルマが、モーションマネージャを独自に1~15番まで設定し、体の回線をアルに接続、フレキシブルに使用する。 自動照準モードも同様だ。本来、自動照準モードもMMの機動も、いざ戦闘になったら大して役に立たないが、 エルマがその場その場において微妙な調整をかけている以上、これ以上ないほどの武器となっていた。 今のリュウセイが受け持っているのは、火気のトリガーと、とっさの機動と、MMでカヴァーできない部分。 もっとも、折れた左腕をあまり動かさないようにするため、 武器は持ちっぱなしになっているが。(だから、リュウセイは蹴りを選択した) エルマは、MMと、自動照準モードの適切な調整、切り替え。 アルが本来アームスレイブの持つ機能と、リュウセイの補佐。 リュウセイの言葉どおり、3人の力をあわせることにより、100%以上の力をアーバレストは見せていた。 もともと、SRXに乗っていたリュウセイは、操縦系の分割に抵抗がない。さらに、この分割でアルが一個の存在として扱われ、 成長を促進させられているというのも大きい。 「撃て、撃てェ!」 ジャイアントロボの重火器が一斉に発射される。 しかし、アーバレストには当たらない。それどころか、ジャイアントロボに正確に近づいていく。 「セレーナも……ジョシュアも……いいやつだったんだ……」 〈アラート!〉 ステップを踏み、唸りを上げてさらに接近する。 「それを!お前に何をやったって言うんだよ!!」 バズーカの連射の間隔を正確にカウントしていたエルマにあわせ、対戦車ダガーがきらめいた。 狙い済ましたようにバズーカの中に吸い込まれ、中の火薬に引火。大爆発を起こす。 「こ、んな……おかしい、こんなはず……ロボ、いったん補給だ!」 リュウセイの気迫に、リョウトがさがる。 おかしい。リュウセイにこれほどの技量があるはずかない。 彼の知っているリュウセイは確かにマシンに対し天性の素質というものがあった。 だが、ここまで研ぎ澄まされたような戦い方をする人間ではなかったはずだ。 無駄が多くて、突撃屋で、感情的で…… なまじ、性格が自分の知るものと同じだけに、得体の知れない感覚が背中を這った。 「アル!エルマ、もう一発いくぞ!MM3番、MM1番、続いて2番!」 まっすぐ、スピードを上げ、ジャイアントロボの背中にアーバレストが飛ぶ。 もう一度、完璧な角度で、回転蹴りが炸裂する。 ここにいるのは、リョウトの知るリュウセイではない。 未来を含む3度の大戦乱を乗り越え、一度は仲間の死すら乗り越え、霊帝を砕いた偉大な勇者の一人。 真の成長した戦士なのだ。 吹き飛ばされ、補給ポイントにジャイアントロボがぶつかった。 「う、ぐ、ぐぅ……」 頭を強くぶつけ、ただでせさえ血だらけのリョウトの頭が、さらに赤くなる。 補給ポイントに手をつき、ジャイアントロボが起き上がる。同時に、補給ポイントから工具ロボがあふれ、また弾薬を補給する。 「これで終わりだ!」 アーバレストが手の電気銃をリョウトへ向ける。 そのとき、ジャイアントロボの目が薄く輝いた。 「ッやべぇ!」 先程と打って変わって風をまとい早い突きがアーバレストへ打ち込まれた。 「MM4を起動します!」 エルマの声と、アーバレストが下がるのは、同じだった。 ジャイアントロボに仕込まれている、オートガード機能が発動したのだ。 ジャイアントロボは、片腕でリョウトを庇いつつ、またもミサイルを狂ったように撒き散らした。 アーバレストが回避に専念し、意識が僅かにジャイアントロボから離れる。 ジャイアントロボが、それほど高度なAIを備えているかは分からない。 だが、その時ジャイアントロボは、その隙を狙いアーバレストへこぶしを打ち込もうとした。 「駄目です!緊急回避間に合いません!」 「ラムダドライバを……」 使おうとしたが、その集中も、追いつかない。もはやこれまで……! 「リュウを……やらせはしない!」 横から、一つの影が割り込み、ジャイアントロボの腕にしがみ付いた。 さっきまで、ひたすら某立ちしていたR-1だ。 「その声、マイなのか!?」 その声に答えるより早く、ジャイアントロボが横に手を振った。 通常の50倍を超えたパワーを受け、R-1は、木屑か何かのように吹き飛ばされ、R-1はビルに激突し、また動かなくなった。 だが、それによってできた隙をリュウセイは見逃さない。 アーバレストがジャイアントロボの腕に渡り、肩へと走り出す。 反対の手がアーバレストをつかもうと伸びる。 「やらせん!」 ジャイアントロボの腕がはじけとんだ。 遠く離れたところから、見たことのない機体が腕を伸ばし、武器を手に取りこちらにかざしていた。 ついに、目の前にリョウトの姿が明らかになる。 このまま、12,7mmチェーンガンで吹き飛ばすことができた。いや、むしろそれがもっとも容易で、簡潔な選択肢だった。 (でも、それじゃダメだろ……みんな) 憎しみを、憎しみで返してはいけない。そんなことをしても、皆悲しむだろう。だから、このまま殺してはいけないのだ。 アーバレストが手のひらをリョウトに向ける。 そして、ついに戦いの終わりを告げる、爆音に比べればささやかな音が鳴った。