約 1,613,747 件
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/144.html
Alea jacta est! ◆SERENA/7ps … …… ……… ………… …………… ……………… ………………… …………………… ……………………… ………………………… …………………………… もはや使い捨てドッカンピストルも使い切ったサンダウンに、戦力を期待できない。 そう思ったニノは無慈悲に告げる。 「銃を持ってないガンマンなんて、南国のアイスホッケー部以下だよね♪」 その言葉に衝撃を受けたサンダウンは、急遽自分にも何かできることはないかと特訓を開始。 そしてついに得た新しい能力、それは催眠術!!!!! 催眠術を使って次からも大活躍できると意気込むサンダウン。 しかし、同じく新たな能力を会得しようとしてストレイボウもまた、催眠術を会得。 属性の被りを避けるため、ついに二人は決着をつけるべく激突する! 「暗示だぁ! お前は眠くなる!」 「いや、俺は暗示を自分にかけて眠くならないようにする!」 「お前は眠くなる!」 「いや、眠くならない!」 「眠くなる!」 「眠くならない!」 「眠くなる!」 「眠くならない!」 「眠くなる!」 「眠くならない!」 「眠くなる!」 「眠くならない!」 「眠くなる!」 「眠くならない!」 盛り上がっているか盛り上がってないかよく分からないバトルを繰り広げ、二人は意気投合する! 負けたサンダウンはキャラ被りを防ぐために、アニーのシミーズを手に入れた時の経験を生かし、女性の下着を盗む訓練に入る。 見事スカートめくり百人斬り達成なるか!? サンダウン・キッドの活躍に期待がかかる! 酒を飲んで、うにゅうにゅと傷が再生していくサンダウンさんの生態の謎についても迫るよ! 一方、シュウは無法松のハーレーをデイパックに回収し、一人修理を続けていた。 ついに修理が完了したバイクに跨り、気分よくバイクをカッ飛ばし、彼はクールな言葉を叫ぶ! 「COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL!」 ラジカセを使ってしゃべる能力を習得し、クールなシュウにさらなるクール属性が身に付く。 場所は変わって、どこの城下町にも一つはあるであろう何の変哲もない宿屋。 女三人による平和な時間が流れていた。 ちょっと早めの朝食を準備し、テーブルには宿屋に置いてあった食器やカップを用意。 いい感じに焦げ目のついたトーストと、ゆで卵などの簡単な料理が並ぶ。 温められたミルクが鼻孔を刺激し、はしたなくもお腹が鳴る。 それをマリアベル、ロザリー、ニノ、三食分。 お世辞にも豪華とは言い難い食事。 どこにでもあるような、ごくごく日常における朝食の光景だった。 でも、それでいいのだ。 粗末な朝食でも、三人で笑いながら食べればおいしいのだから。 どんなに豪勢な食事も、温かい雰囲気の食卓にはかなわないのだから。 「えへへっ、いっぱいジャムつけてね♪」 ニノが上機嫌でマリアベルとロザリーに、イチゴジャムの入った瓶を渡す。 それを受け取ったロザリーはジャムの瓶を置いて、何故かフォークを取り出した。 「ニノちゃんにはこっちのジャムが似合いそうですね」 そしてそのままフォークをニノの手に思いっきり突き刺す。 ザ シ ュ ッ! ! 「ひあああああああああーーーーーーーっ!?」 フォークはニノの手を貫通して、そのままテーブルに突き刺さった。 「あっ……ぐ、あああぁぁ……」 ニノはテーブルと繋がった自分の手をつかみ、激痛に悶え苦しんだ。 それを見て、マリアベルとロザリーはコロコロと笑いだす。 「おうおう、ニノの血の色は綺麗よのう」 「これで当分ジャムに困りそうにないですね」 そう、お楽しみはこれから。 一日はまだ始まったばかりなのだから。 ニノの苦しみはもっと加速する。 渦巻く熱気。 駆け抜ける嵐。 止まらない妄想ハイウェイ! 次回、RPGキャラバトルロワイアルは 『北方領土を取り戻せ!』 『多摩川の上流に落としてきた友情』 『伝説の樹の下で「やったか!?」と死亡フラグを叫ぶ』 の三本でお送りします。 お楽しみに! 【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】 [状態]:健康 [装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーⅥ、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣、 クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーⅥ、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いを止める。 1:ピサロ様を捜す。 2:シュウの報告を待つ。 3:ユーリル、ミネアたちとの合流。 4:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。 [備考] ※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。 ※クレストグラフの魔法は不明です。 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:健康 [装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式 [思考] …………………………… ………………………… ……………………… …………………… ………………… ……………… …………… ………… ……… …… … ――――なんて、サイコな展開にはなりませんのでご安心を。 ◆ ◆ ◆ そこには、城下町を抜け、一人でカエルを追っているストレイボウの姿があった。 あの五人の仲間と別れて、一人で行動する理由はただ一つ。 やはり、カエルのことが気になったからだ。 しかし、もうカエルのことであの五人に協力は得られないだろう。 三人が殺されかかってしまったのだ。 だからストレイボウはやりたいことがあると、引き止めの言葉を振り払って一人で行くことを選択した。 ふと、五人と別れ、最後に集合していた宿屋を出るときの会話を思い出す。 「聞いてくれないか……?」 「何でしょうか?」 見送りに出てくれたロザリーと会話する。 ロザリーを質問の対象に選んだのは、五人の中で一番人情の機微が分かりそうだったから。 シュウとサンダウンは暗そう、ニノとマリアベルはまだ子供(マリアベルはストレイボウよりも大人だが)だからだ。 この思いを伝えるにはどうすればいいのか聞いてみた。 「友に、伝えたい言葉があるんだ……」 友、と呼んだときのストレイボウの表情に暗い影が落ちるが、ロザリーはあえて触れない。 ロザリーは沈黙をもって、ストレイボウの次の言葉を促す。 「でも、どうすればこの言葉を伝えればいいのか分からない……俺は口が下手で……心も心底醜くて……。 あいつに伝えたい気持ちがあるのに……いつも言葉に詰まる。 実際、あいつと何度か言葉を交わしたが、たぶん俺が思っていることの一割も、言いたいことは伝わってない……。 ……まるで、女に告白したいのにできない女々しい男だな」 「そんなこと、ありませんよ……」 「……何?」 「そんなことありません。 私も、会いたい人がいます。 この心を伝えたい人がいます。 でも、私も口下手で……本当に話したいことも話せないまま別れてしまったことがあります……。 今は、以前よりは分かり合えたような気もしますが……それでも、時々とても不安になります……」 だから、とロザリーが続ける。 「私は聖者のように、たった一言で誰かを悲しみから救ってあげることはできません。 そう、私の言葉はすごく軽い……。 でも、だからこそ、私は何度でも言葉を重ねることしかできません。 たとえ一晩中でも、夜明けまで重くなる瞼を擦りながら、欠伸を我慢しながらでも話したいと思います」 ああ、そうか、とストレイボウは思う。 自分は友を思うあまり、簡単な道に流されようとしていた。 誰とも誤解のなく打ち解けることのできるような、魔法のような一言を探していた。 でも、それは所詮都合のいい幻想でしかない。 目の前のロザリーという女性は、自分の無力さを分かって、それでもなんとかしたいと模索している。 ロザリーの言うとおりだ。 一つの言葉で伝わらないなら、何度でも言葉を重ねればいい。 もしも運よくオディオと対峙することができれば、一度の謝罪で許されることなどないのだから。 「申し訳ありません……お力になれなくて……」 「いいや、参考になった……ところで、一つ聞きたいんだが、オディオについてどう思う?」 「え?」 突然の質問に、狐につままれた様な顔をするロザリー。 だからだろうか、答えに少し間が空いた。 「……こんなことをする人は、やっぱり許せないと思います」 「そうか……」 その一言を最後に、ストレイボウは歩き出した。 ロザリーは今の一言に何か重要な意味があるのだろうかと考えるが、結論が出るには至らない。 代わりに、ストレイボウの背中に言葉を投げかける。 「ストレイボウさん! 私たちは仲間です……例え貴方がそう思っていなくても」 「ああ、俺もそう思っている」 「どうか、お元気で……」 ストレイボウは無言で去る。 そう、ストレイボウが言ったオディオについてどう思うかという質問は、ずっと考えていたことがあったからだ。 それは、オディオのことを話してしまいたいというもの。 自分こそが魔王オディオを生み出した元凶だと。 誰にも話さぬまま、醜い部分を心の奥にしまいこんでは、かつての繰り返しだ。 それを続けていれば、またあの時のどす黒い感情が自分を支配してしまうだろう。 そう、ストレイボウは第三者にいつか裁かれねばならないと考える。 ここにいる残った43名の中には、極悪非道なオディオ討つべし、と憤慨している者も少なからずいるだろう。 それは当然の感情だ。 だが、だ。 同時に、オディオにそのようなことをさせるようにしてしまった者も、裁かれるべきではないだろうかと。 オディオを倒したいという者がいるのならば、自分が止められることではないだろう。 しかし、ここにオディオ以上の、言わば諸悪の根源がいるのだ。 先にこの諸悪の根源を倒すのが道理ではなかろうか? 魂の牢獄に繋がれるのはオディオによる天罰。 では、第三者による裁きは? 考えるまでもない。 だが、今の自分にその勇気はない。 最初からそんな勇気があれば、ストレイボウもオルステッドも、こんなことにならなかったのだから。 お前のせいで、と誰かに掴み掛かられるのが怖い。 自分が裁かれるのが怖い。 この醜い心を誰かに打ち明けるのが怖い。 サンダウンにアキラのことを知っているかと聞かれた時に、こちらが一方的に顔と名前だけ知っているだけだ、としか返せなかったのもそのためだ。 もしも、かくかくしかじかでアキラのことを知り、その時貴方の姿も拝見しました、と言ってしまえば、サンダウンが自分のことを思い出すかもしれないから。 あの時、ストレイボウはアキラだけでなく、サンダウンの姿も見つけた。 思い出されてしまっては、オディオとの関係も聞かれ、芋づる式に真相が発覚する可能性もある。 だから、聞かれた時、怖くて曖昧な言葉で濁した。 少なくとも、今はまだ、それを打ち明ける勇気がないから。 ――罪滅ぼしのためでは無く、お前の意思で友を救えよ。 カエルの言葉が思いだされる。 (ああそうさ。 これは罪滅ぼしのためじゃなくて、俺自身が変わるためのものッ!) でも、誰かを救うことができたのならば、自分は変われるかもしれない、そう思う。 卑怯な自分を捨て去り、少しはまともな人間に変われるかもしれない。 救いを求めている誰かに手を差し伸べることができれば、おなかをすかせている誰かにパンを差し出すことができれば、 あるいは悲しんでいる誰かに優しい言葉をかけてあげることができれば、寒くて凍えそうな誰かに温かい毛布を被せてあげることができれば、変われるかもしれない。 そう、オルステッドにかけていたような口先だけの偽りの言葉ではなく、心からの真心を届けることができれば。 (変わり『たい』んじゃない……変わ『る』んだッ!) 決意とともに歩みだす。 闇はまだ……深い。 【I-9 城より西 一日目 午前】 【ストレイボウ@LIVE A LIVE】 [状態]:健康、疲労(小) [装備]:なし [道具]:ブライオン、勇者バッジ、基本支給品一式 [思考] 基本:魔王オディオを倒す 1:カエルの説得 2:戦力を増強しつつ、北の城へ。 3:勇者バッジとブライオンが“重い” 4:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない 参戦時期:最終編 ※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) 「皆の者。 これを見よ」 さて、瀕死の存在が三つ、エリクサーが二つ。 加えて回復呪文を唱えることのできる人間は皆無。 以上のような状況から、三人全員が助かって宿屋の地下室に集まっている理由を述べよう。 まずはエリクサーをサンダウン・キッドとロザリーに使う。 これで二人が完全に回復する。 このままではマリアベルが死ぬかと思われたが、実際はそうならず、事なきを得たのだ。 実際のところ、計算でやった訳ではない。 最後の最後に、マリアベルがわずかに意識を取り戻したのが命運を分けたのだ。 では回答しよう。 マルチブラストで蜂の巣にされたとき、マリアベルはニノに無断でやった行為を、今度は許可つきでやったのだ。 レッドパワーの一つ、「ライフドレイン」を使って回復したのだ。 その名の通り、他者の生命力を吸い取って、自身の生命力に還元するレッドパワーで、まずマリアベルは比較的元気なシュウとストレイボウから吸い取り回復。 さらに、自分にエリクサーは使う必要はないと言った上で、 エリクサーで完全回復したサンダウンとロザリーからも少しずつ生命力をもらい、マリアベルも復活という顛末になったのだ。 ライフドレインの生命力の還元の効率もよくなかったので、四人からいただいたと言う訳だ。 これは、マリアベルが回復呪文を使える訳ではないと言ったのが、そもそもの騒動の原因。 だが、厳密な「回復」の定義に入るかと言われれば微妙なので、マリアベルが言わなかった理由も残った四人は納得したということだ。 「これは……旅の扉ですか……?」 記憶のデータベースにある知識と似たものがあったのか、ロザリーは呟いた。 また、マリアベルの知識に合わせれば、ライブリフレクターにも似ている。 地下室の一番奥には、ユラユラと空間が不安定にゆれている場所があるのだ。 マリアベルが得意げな顔をして、説明を開始する。 カエルとの戦闘時に、マリアベルが宿屋を戦場にしたくなくて、逃げたもう一つの理由がこれだったのだ。 「どうじゃ? わらわが発見したのよッ! しかも、これはノーブルレッドが近づいた時にしか見えん」 「本当?」 「見ておるがいい。 ほうら」 ニノの疑問に答えるように、マリアベルは揺れる空間からある一定の距離を境界線として、一歩前に出ては、一歩後ろに下がることを繰り返す。 空間は、たしかにマリアベルに反応しているようで、消えたり現れたりしている。 それを見てニノは素直にマリアベルすごいと喜び、サンダウンとシュウは胡散臭げな顔をする。 ロザリーが見たときはなかったというのも、マリアベルに反応して現れるのなら説明もつく。 「あのオディオも、ノーブルレッドの価値が少しは分かるようじゃ」 被りなおした着ぐるみを着たまま、マリアベルは得意げに腕を組んでうんうんと唸る。 しかし、サンダウンが冷静に意見を述べた。 「いや……少しおかしい」 「何がじゃ?」 「もう一度やってみてくれ……今度はデイパックを置いてな……」 「……用心深い男よの」 言いながらマリアベル手に持ったデイパックを下ろし、もう一度さっきの目測で計った境界線で行ったり来たりをする。 しかし、今度は何も起こらなかった。 何故じゃッ、と叫ぶマリアベルを置いて、サンダウンはマリアベルの持っていたデイパックを少しだけ前に転がした。 すると、ノーブルレッド族のみに反応すると思われていた蜃気楼のような、不安定な空間が現れた。 それを見て、シュウがなるほどと頷く。 ニノとロザリーはまだ原因も分からず、マリアベルと不思議な顔をしている。 「……おそらく、支給品に反応している」 サンダウンが説明するより先に、シュウが口火を切った。 そして、マリアベルのデイパックに手を突っ込み、ゴソゴソと中身を探る。 出てきたのは、ゲートホルダーだった。 「参加者は全員平等のはず。 首輪を無理に外そうとすれば、誰だろうと問答無用で爆発させられたりするようにな。 その中で、ノーブルレッドだけにとか、特定の人種に反応するような仕掛けをするのはおかしい……」 つまりそういうことなのだと、シュウはゲートホルダーを持って、マリアベルの行ったり来たりしていた境界線を移動する。 たしかに、不思議な空間はシュウの持つゲートホルダーに反応していた。 その名のとおり、ゲートをホールドするもの。 ……無論この恥ずかしい勘違いの一件で、わらわをたばかったオディオ許すまじ!とマリアベルが憤慨したのは言うまでもない。 ◆ ◆ ◆ 旅の扉のようでもあり、ライブリフレクターのようでもある、不思議な空間を前にして、五人の間で意見が交わされた。 それは、パーティを分割するべきだということ。 マリアベルが戦闘中に考えていたことだが、今ここにいる四人――仮にストレイボウを入れた五人でも――シュウを除いた全員が後衛で戦うタイプ。 集団で固まっても、思うように戦果がはかどらないし、シュウ一人に残り4人のお守りを一手に任せるのもどうか、というものだ。 また、これだけ広大な島で生存者を探すには、一箇所に固まって探すには時間がかかる。 なにせ、24時間死者が出ない場合は全員が死ぬというルールなのだ。 短時間で効率よく探索するために、パーティ分割の案は全員が同意した。 問題はパーティ分割。 話し合った結果、綺麗に女三人と男二人に別れたのだ。 大丈夫かという男二人の疑問を、女同士の方が都合のいいこともある、とマリアベルは笑って飛ばした。 そして、恥ずかしながら、現時点で戦力的に最も心許ないサンダウン・キッドに、パワーマフラーと怒りの指輪が渡された。 ニノとサンダウン、ロザリーが初めて会ったときのように、サンダウンが石や何かを投げつけて攻撃すれば、多少は戦力になるという理由だ。 最後に、このゲートを使ってみるのも女三人に決まった。 「わらわの支給品だからのッ! わらわが持つのに何の異論もなかろう?」 とのこと。 これも慎重派の男二人がストップをかけようとするが、集団を形成した女性の独特の姦しさとパワーを発揮して押し切られた。 「なあに、ゲートがどこに繋がってても死んだりはせんだろう……」 そう行って、恐れることなくゲートに近づいていった。 ニノ、ロザリー、マリアベルが手を繋ぐ。 それぞれが違う場所に放り出されても困るという理由でだ。 「サンダウンおじさん、シュウさん! 行ってくるね!」 「では、行ってきます。 お二人もご無事で」 「シュウ、サンダウンッ! わらわの許可なく死ぬでないぞッ!」 「……」 「……」 許可があっても死ぬのは御免だ、二人の男が心の中で思ったのは想像に難くない。 無口な男二人の雰囲気に、これで誰かと接触したときに交渉ができるのかと、今度はマリアベルの方が心配になるが時すでに遅く。 ゲートに飛び込んだ三人は空間に呑まれ、二人の男からは見えなくなる。 ゲートホルダーの所持者がいなくなったことで、宿屋のゲートも跡形もなく消えていった。 少しして、無言で宿屋から出るシュウとサンダウン。 ストレイボウの向かった先とは別方向に歩き出す。 シュウが、ポツリと漏らした。 「俺は……マリアベルがライフドレインを使っていなければ、お前を切り捨てるつもりだった……」 「……俺とお前の立場が逆なら……俺もそうした……」 それは、二人が敵対しているから出た会話ではない。 寡黙な男二人に、奇妙な連帯感が出来上がる。 「もし、カエルに会ったら……あの武器が欲しい」 「そうか」 カエルとの対戦でカエルが使っていたバイアネットを、サンダウンは思い出す。 マリアベルを蜂の巣にした弾といい、使い捨てのピストルを使って相殺した弾といい、ようやくサンダウンが見つけたまともな銃だ。 あれがあれば、戦力的にもっと活躍できる。 そういう旨をシュウに伝えて、シュウは了解した。 (そういえば……) サンダウン・キッドは思い出す。 アキラという人物について知っているというストレイボウにそのことを聞いてみると、直接の面識はなくこっちが一方的に知っているだけだ、という回答が帰ってきた。 それ以上聞くことはしなかった。 元々サンダウンも、アキラがどういう人物か詳しく知らない。 アキラとは偶然色褪せた世界に同時に放り込まれ、協力していただけ。 ひょっとしたら有名な人物かもしれないが、無闇に素性を尋ねるのは荒野ではタブーだったので、それ以上聞くこともしていない。 まさかサンダウン本人も、ストレイボウがサンダウンすらも見たことあるとは予想だにせず。 サンダウン本人もストレイボウの姿を見たことがあると、思い出すことができない。 ストレイボウが囚われていたあの空間には、ストレイボウだけでなく、ルクレチアに住むすべての人間がいたのだ。 ルクレチアにいるすべての人間の姿を覚えてることなど、できないのだから。 ストレイボウに関しての詮索も、それ以上することはしなかった。 このあたり、シビアな世界に生きる男ならではの行動と言える。 そのサンダウンの気遣いが上手く働くのかは、現状では分かるはずもない。 かくして、七人の運命の糸が絡まった物語はここで終わりを告げる。 シュウとマリアベルとストレイボウは再会の約束はしていない。 生きていて、オディオを倒すために行動していれば、いつか必ず会えると信じているから。 これからも、カエルのような心変わりをする者は必ずいる。 また、夜が明けて朝になったことで、本格的な行動を起こす人間が増え始める。 それぞれの胸にそれぞれの思惑を抱えて。 事態は、大きく動く。 【??? 一日目 午前】 【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】 [状態]:疲労(中)衣服に穴と血の跡アリ [装備]:クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WA2 [道具]:双眼鏡@現実、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いを止める。 1:ピサロ様を捜す。 2:ユーリル、ミネアたちとの合流 3:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。 [備考] ※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:疲労(大) [装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣、 [道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式 [思考] 基本:全員で生き残る。 1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流。 2:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。 3:フォルブレイズの理を読み進めたい。 [備考]: ※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC ※終章後より参戦 ※メラを習得しています。 ※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。 【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:疲労(小) [装備]:マリアベルの着ぐるみ(ところどころに穴アリ)@WA2 [道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL [思考] 基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。 1:ゲートを通り、どこかへ出た後は適当に移動して仲間や協力してくれる人物の捜索。 2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。 3:この殺し合いについての情報を得る。 4:首輪の解除。 5:この機械を調べたい。 6:アカ&アオも探したい。 7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った? 8:アキラは信頼できる。 ピサロ、カエルを警戒。 [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。 ※レッドパワーはすべて習得しています。 ※ゲートの先はどこ通じてあるか分かりません。島の施設のどこかかもしれないし、森の真ん中かもしれないし、時の狭間かそれ以外に行くかもしれません。 また、ゲートは何度も使えるのか等のメリット、デメリットの詳細も後続の書き手氏に任せます。 【I-9 宿屋 一日目 午前】 【サンダウン@LIVE A LIVE】 [状態]:疲労(中) 衣服を斬りさかれた跡と血がベットリついてます [装備]:いかりのリング@FFⅥ、パワーマフラー@クロノトリガー、アリシアのナイフ@LAL [道具]:基本支給品一式、使い捨てドッカンピストル@クロノ・トリガー(残弾0) [思考] 基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出 1:ロザリー、ニノ、シュウ、マリアベル、自分の仲間(アキラ、高原日勝)、また協力してくれる人材の捜索。 2:ピサロの捜索。 3:まともな銃がほしい(カエルの持つバイアネットに興味あり) [備考] 参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。 【シュウ@アークザラッドⅡ】 [状態]:疲労(中) [装備]: [道具]:紅蓮@アークザラッドⅡ、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WA2、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。 1:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間、協力してくれる人材を捜し合流。 2:この殺し合いについての情報を得る。 3:首輪の解除。 4:トッシュに紅蓮を渡す。 5:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。 [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※扇動を警戒しています。 ※時限爆弾は現在使用不可です。 ※『放送が真実であるかどうか』を疑っています。 ※シュウとサンダウンがどこに行くかは後続の書き手氏に任せますが、 ストレイボウとは行き先が一緒にならないように別の方向です。 時系列順で読む BACK△066-4 Justice ~それぞれの正義~Next▼069 時の回廊 投下順で読む BACK△066-4 Justice ~それぞれの正義~Next▼067-1 トゥルー・ホープ(前編) 066-4 Justice ~それぞれの正義~ シュウ 073-1 シュウ、『嵐』に託す サンダウン マリアベル 084 心の行く先 ニノ ロザリー カエル 069 時の回廊 ストレイボウ 079-1 たったひとりの魔王決戦 ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/145.html
第二回放送までの死亡者 時間 名前 殺害者 死亡作品 死因 朝 カノン ルカ・ブライト 067 トゥルー・ホープ(前編)067 トゥルー・ホープ(後編) 衰弱死 朝 フロリーナ シンシア 071 暗殺者のおしごと-The style of assassin 刺殺 朝 エドガー・ロニ・フィガロ ジャファル 071 暗殺者のおしごと-The style of assassin 刺殺 昼 シュウ ケフカ・パラッツォ 073 シュウ、『嵐』に託す073 シュウ、『嵐』に託す(後編)073 サンダウン、『花』を見守る 心臓破壊 昼 サンダウン ケフカ・パラッツォ 073 シュウ、『嵐』に託す073 シュウ、『嵐』に託す(後編)073 サンダウン、『花』を見守る 失血 昼 リオウ シャドウ 077 機械仕掛けの城での舞踏077 剣豪と影と輝ける星と 失血 昼 ビクトール カエル 079 たったひとりの魔王決戦 約束はみどりのゆめの彼方に 銃殺 昼 ルッカ 魔王 079 たったひとりの魔王決戦 約束はみどりのゆめの彼方に 衰弱死 昼 アズリア・レヴィノス シンシア 081 奔る紫電の行方、燃える炎の宿命(さだめ) 圧死 昼 エルク ピサロ 081 奔る紫電の行方、燃える炎の宿命(さだめ) 消滅 昼 アティ セッツァー・ギャッビアーニ 083 どこを向いても奴がいる 刺殺 おまけ 名前 最後の言葉 カノン 「終わりだ……ッ!」 フロリーナ (ああ、あそこにいかなくちゃ……) エドガー・ロニ・フィガロ 「うっ……おおおおおぉぉぉぉぉ!」 シュウ 「な……ら、ば……つ…………ら、ぬ………………け……!」 サンダウン 「き、みは……な、にも…………ま……ち…………がっ……て………………は…………い…………な…………」 リオウ 「ありがとう……。あなたは……無力なんかじゃ……ない。だって……」 アズリア・レヴィノス 「人一人くらい護ってみせろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 エルク 「ちくしょう……」 アティ 「あああアアアアアアアぁぁぁぁァァァァァ!!!!」 殺害数ランキング 順位 加害者 殺害人数 被害者 スタンス 生死 1位T ルカ・ブライト 3人 ティナ・ブランフォード、ナナミ、カノン 無差別 ○ 1位T ケフカ・パラッツォ 3人 アリーナ、シュウ、サンダウン 無差別 ○ 1位T ピサロ 3人 レイ・クウゴ、アリーゼ、エルク 無差別 ○ 4位 シャドウ 2人 エイラ、リオウ 無差別 ○ 4位T シンシア 2人 フロリーナ、アズリア・レヴィノス 奉仕 ○ 4位T 魔王 2人 リルカ・エレニアック、ルッカ 無差別 ○ 4位T セッツァー・ギャッビアーニ 2人 トルネコ、アティ ステルス ○ 7位T カエル 1人 ビクトール 対主催→無差別 ○ 7位T オディ・オブライト 1人 リーザ 無差別 ● 7位T エルク 1人 オディ・オブライト 対主催 ● 7位T イスラ・レヴィノス 1人 ビジュ 対主催 ○ 7位T ジャファル 1人 エドガー・ロニ・フィガロ 奉仕 ○ INDEX ~第一放送 ~第二放送 ~第三放送 ~第四放送 ~第五放送 ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/155.html
シュウ、『嵐』に託す ◆Rd1trDrhhU 嘘みたいな静寂だ。 風を頬に感じながら、サンダウンは思う。 ここは……本当に城下町なのか。俄かには信じ難い。 これが、ついさっきカエルと死闘を繰り広げた、あのフィールドのなのだろうか。 戦闘の後からずっとこの町を彩っていた賑やかさは、3人の少女達がみな時空の穴に持ち去っていってしまった。 隣で自分を見つめる忍者は自分と同じくらい寡黙であり、彼女たちのような騒がしさは全く期待できない。 尤も、サンダウンにとっては、こちらの静かな相方の方が居心地が良いのではあるが……。 「……さて」 無人の町を一通り感じたところでガンマンは思考を停止させ、意識を研ぎ澄ませた。 頬で感じるのは、左から右へ吹き抜ける風。 こんなもの、最早微風といっていいだろう。 射撃には、うってつけの日だ。 打ち抜くべき目標までの距離は五十メートルほどあるだろうか。 近い。余りにも近い。 そして背中にぶつかる朝日は、特に視界の邪魔にはなり得ない。 とはいえ、たとえ逆行が邪魔をしたところで、射撃の名手である彼には何の障害にもなりはしないのだが。 絶好のコンディション。 外す要素は皆無だ。 腰に手をやると、あとは一瞬のことだった。 「…………!」 目の前の男が動いたのを確認したシュウ。 その瞬間から始まった一連の神速を、彼の眼は全て完璧に捉えきっていた。 サンダウンが腰元にぶら下がっているピストルを掴み取る。 グリップを握る。親指で撃鉄を起こす。視線は常に目標物へ。風向きの変更はないかを肌で感じ続ける。 これらの作業を並行して行いながら、銃口を的に向けた。 躊躇いもなく引かれる引き金。 銃声はしない。 銃を持つ手にかかるはずの、発砲に伴う反動もない。 そもそも、この銃に弾は装填されていなかった。 もちろんだが、銃口からは何も出てはこない。 ……そのはずである。 この銃、『使い捨てドッカン爆発ピストル』はその名が示す通り、銃としての役割を発揮するのはたったの1度だけ。 1度でもその引き金を引いてしまえば、別の弾を込めようが何をしようが、最早使い物にはなりはしない。 そしてこの銃は、もう既に1度使用されていた。 先ほどのカエル戦でのことである。 国の為に、全てを犠牲にする覚悟を決めた異形の騎士。 彼が放ったバイアネットの弾を、サンダウンはなんと『発射されてから』打ち落としたのだ。 そんな事が可能なのか? 信じられないのは分かるが、本当に可能だったのだ。 なぜ可能なのかと問われれば、『サンダウンだからだ』としか答えようがない。 魔法も使えなければ、シュウのような体術も会得していない。 身体能力は高いといっても、一般人の物差しでの話である。 彼の仲間である高原やレイにはもちろん、アキラにすら劣るかもしれない。 そんな彼ではあるが、ただ一つの条件化においては話が変わってくる。 銃を手にしたとき、その瞬間に彼は『世界で最も神の領域に近い男』となるのだった。 彼の手元から解き放たれた鉛弾は、彼の意図したとおりの軌道で飛び、彼が狙ったまさにその場所を貫き、彼の望んだままの傷痕を残す。 彼が銃を手にしているその間では、『あり得ない』はあり得ないのだ。 そして、彼の隣に立つこのシュウという忍者も、銃の名手だ。 サンダウン程ではないのかもしれないが、彼もその指先で数々の奇跡を演出してきた。 そう、ここにいる2人は銃のスペシャリスト中のスペシャリストである。 だから、なのだろう。 響いた銃声。 サンダウンの右手に生じた反動。 そして、もう銃としての役割を果たす事はないその銃口から……装填すらされてないはずの弾が発射された。 もちろん、いくらサンダウンが神に愛されたガンマンだといっても、銃弾を具現化する能力など持ち合わせてはいない。 これは、イメージだ。 目標までの距離。 周囲の環境。 引き金を引かれた瞬間の銃の角度。 それらから予測される、銃弾の軌道が、2人の銃使いには明確なイメージとして再現された。 彼らの脳内で発射された鉛弾は、風を切り裂きながら死に絶えた町を突き進む。 かつては賑わっていただろう、寂れた商店街。 子供達がはしゃぎ回っていたはずの、侘しい広場。 この絶望の世界ではなんの慈悲も与えてはくれない、朽ちた教会。 それらを尻目に、架空の銃弾は与えられたルートを微塵も逸れることなく辿り、ついに目標と定められた小さな木の実を打ち抜いた。 風で折れてしまいそうなほど細い枝にぶら下がっていた小さな命が、音を立てて破裂する。 そこまでを鮮明に脳内で再現してから、2人の男は現実へと帰還した。 「見事だ……」 民家の外壁に寄りかかっていたシュウが、腕組をしたままその神業を褒め称える。 実際に銃弾が発射されたわけではないので、第3者がこの光景を見たらサンダウンの銃を撃つポーズのカッコ良さをシュウが評価するという、なんともマヌケなシーンに映ったはずだ。 しかし、シュウもサンダウンもそんなことは全く気にする様子はない。 この男たちは、『他人に自分がどう見られているか』などには、全く興味を持っていないのだ。 シュウが今興味を持っているのは、サンダウンの放った弾が描き出したはずの軌道だけである。 彼は一流のハンターであるとともに、一流のガンマンでもある。 銃の扱いには絶大な自信があった。 だが、彼の銃は、どちらかと言えば魔法や体術などと組み合わせる事に特化している。 高速で走り回りながら、銃を扱う術には長けていた。 実際に大勢のモンスターを前にすれば、その強力さが実感できるはずだ。 しかし、連射や射撃精度など、純粋に銃の腕それのみで比較すればサンダウンに軍配が上がる。 今の空想の一撃は、シュウに白旗を揚げさせるには充分すぎるものであった。 「…………」 彼の知る中ではトップレベルのガンマンからの賛辞であるにもかかわらず、当のサンダウンはその言葉に何の反応も見せない。 自分が引き金を引いた銃をジッと見つめて、考え事に耽っていた。 内心では、嬉しさや誇らしさを感じている。 だが、サンダウンという男がそれを表に出す事はない。 それは、彼が長年荒野で生きていく中で、自然と身に付けてしまった性格である。 ここで少し、昔の話をしよう。 彼は、超高額の賞金首だった。 罪もない誰かを殺したとか、そういった理由じゃあない。 この莫大な賞金は、彼が自分で自分の首に賭けたものだ。 戦いが好きだったわけでは決してない。 名保安官として名をはせていた彼は、その世界の誰よりも平和を愛する人間であったのだから。 自らをお尋ね者と化したのは、愛する町を護るための苦渋の決断であったのだ。 だが、平和を愛したその思いも空しく……当然のことながら、多くの男たちがこぞって彼の命を狙いに来た。 ある者は懸賞金を求めて。またあるものは彼を殺したという名声を求めて。 放浪生活を始めてからというもの、彼に近づくのはそういった人物ばかりであった。 鼓膜を響かせるのは、聞くに堪えないほど汚い罵声と無数の銃声。 鼻をつくのは、噴出した血液と立ち込める硝煙の臭い。 目に映るモノは、向けられたススまみれの銃口と孔の開いた無数の死体。 そんな日々を送る中で、サンダウン・キッドは少しづつ愛を忘れてしまった。 少しづつ友情を忘れた。 ありとあらゆる絆を、絆を紡ぐ心を、彼は失った。 どの人物が自分の命を狙っているのかも分からない以上、人を信じるという概念もない。 酒場でマスターの与太話を聞き流している最中でさえも、『誰かが突然銃口を抜かないだろうか』と常に警戒をする日々。 その警戒と不信こそが彼の人生の大半であり、彼にとっての日常だ。 ……だからなのだろう。 シュウという男は、サンダウンにとって居心地のいい男であった。 (忍者……だったか……) 銃を仕舞い、再び歩き出したサンダウンは思う。 シュウの『警戒心』は尋常ではない、と。 おそらく彼は、この殺し合いに呼び出されてから、誰1人として『信頼』してはいない。 カエルやストレイボウはもちろん、サンダウンやマリアベルすらもだ。 かつての自分がそうであったように、常に警戒心を仲間に対して張り巡らせていた。 いつ襲い掛かられても、すぐに反撃に移られるように。 マリアベルとロザリー、ニノの3人が談笑しているときでさえもである。 その僅かな警戒心に気付いていたのは、サンダウン以外ではマリアベルくらいなものだろうが。 それが、忍者の性なのだろう。 サンダウンは自分以上の用心深さを、眼前の男に感じていた。 だが、その『遠すぎる』と言っていい程の距離感は、荒野のガンマンにとってはとても心地のいいものに思えた。 正直に言ってしまえば、あの喧しい3人娘の笑顔を眺めているのも実は悪いとは思わない。 ここが平和な街中ならば、彼女たちを見守って過ごすのも一興だろう。 しかし、ここは魔王オディオの開催した殺し合いの会場。 その中で銃を握るのならば、シュウのようなパートナーの方が『やりやすい』のだ。 この殺し合いの破壊と弱者の保護という『任務』の遂行を第一に考え、いざとなったらサンダウンのような仲間ですらも躊躇なく切り捨ててくれる。 そして、必要以上の信頼を欲せず、自分を語らず、言葉による無駄なコミュニケーションを必要としない。 こういう男が、彼にとって絶好のパートナーと言える。 そういえば、シュウはオディオの放送すらも疑ってかかっていたようだ。 確かに、彼の言うとおり、『嘘の放送によって殺し合いを促進させよう』と主催者が目論んでいるという可能性も充分考えられる。 あの主催者の言うことなど、サンダウンだって信じたくはないのだから。 全くの疑念すら抱くことなくあの放送に一喜一憂する方が、間違っているのかもしれない。 (少し、過剰だとも……思えんでもないが…………) それにしたって、シュウの警戒心は自分と比較しても異常なレベルにある。 目の前の男に目をやると、彼は相変わらず多少の警戒心を孕んだ瞳をこちらに向けていた。 この男から信頼を得るには、相当な時間を共にしなくてはならないのだろう。 (もし主催者を倒しこの殺し合いから解放することができたら……その時は……) だが、一度信用すると、その絆は何よりも強い。 トッシュやエルクの事を、彼は微塵も疑ってはいなかったのだから。 強い信頼の宿った瞳で、彼らのことを『殺し合いには乗らない』と断言した。 (……いや、そんなこと、考えても仕方がない…………) 忍者から視線を反らして、帽子を深く被り直した。 自分は信頼など必要としていないのだ。 この男が誰を信じ、誰を疑うかなど考えても無意味なこと。 警戒されるくらいが、ちょうどいいのだ。 この男が『信頼できる仲間だ』と称したトッシュやエルクたちを、少しだけ羨ましく感じたのも気の迷いだったのだろう。 ◆ ◆ ◆ 「あれ? あれれ?」 左右に頭をブンブンと振り回して、キョロキョロと辺りを見渡す少女。 綺麗な黒髪が、オーロラ景色のようにユラユラと揺れる。 どうやら彼女は、ここがどこだか分かっていない様子であった。 見渡せば、視界いっぱいの緑。 さっきまでのカラフルな景色はどこへいったのだろうか。 一緒にいたはずの眼鏡の少女もいない。 弔ってやりたかったはずの仲間の亡骸も消えていた。 「……また、やっちゃったんだ…………」 そこまで確認すれば、ドジで鈍い彼女でも、流石に自身の犯した失態に気付いてしまった。 クシャミをした弾みで、こんなわけの分からない場所まで飛んできてしまったということだ。 溜め息を吐いてションボリと俯いたビッキー。 彼女の心に湧いてきた感情は、悲しみと……そして自責の念。 いつもいつも、事あるごとにテレポートを暴発させる自分に嫌気がさしてくる。 このミスのせいで、リオウたちには毎回迷惑をかけてしまっているのだ。 大事な戦いの前にテレポートを失敗して、要らぬ体力を使わせてしまったりしたこともあった。 どこだか分からない場所にリオウを連れ去ってしまい、一緒に飛ばした仲間とまとめて行き倒れになりかけたこともあった。 敵との戦いの最中に間違えて仲間を数人吹き飛ばして、残された自分とリオウ、ナナミが殺されかけたこともあった。 そして今回も……。 親友である少女を弔ってやる事が出来なかった。 彼女を花園に埋めてやろうと提案したのは、他でもない自分だったはずなのに。 「ナナミちゃん……」 名前を口にすると、少しだけ胸に痛みが走る。 チクリという刺激は胸元から喉、鼻へと徐々に上へと昇ってきて、少女の瞳を再び湿らせた。 もう泣いてはだめだ、と空を見上げて必死に瞼に力を込める。 何ともおかしな話だが、ビッキーがナナミの死を経験するのはこれで2度目となる。 以前は、ロックアックス城で、彼女がゴルドー軍の矢に打たれたときだ。 ナナミが死んだという知らせを聞いた彼女は、大急ぎでホウアンの医務室へと駆けつけた。 テレポートを使わずに、ちゃんと自分の足で。 そこで彼女が見たのは、蹲って泣いているリオウの姿。 心を無くしてしまった幽鬼のような表情で、少年は声を上げずに泣いていた。 そんな少年に声をかけてることなど、ビッキーには出来なかった。 不用意に話しかけたら、トランプタワーのように脆くなっていた彼の心が完全に壊れてしまう気がして。 もはや、ナナミの死体を見る気すら起こらなかった。 ただ、ただ、悲しかった記憶しかない。 会議室では、これからの戦いをどうしようとか、どうやって都市同盟を纏めるか、などという話をアップルとシュウがしていたはずだ。 が、ビッキーはそんな話、聞きたくもなかった。 正直に言えば、もう全て止めて欲しかったのだ。 こんな悲しい争いなんて。 もう……リオウとともに、どこか知らない場所にテレポートで逃げてしまいたかった。 ルカ・ブライトと戦ったときもそうだ。 彼女は悲しかった。 あの狂皇が、沢山の人を殺して、いろんな町を炎で包んだ事は知っている。 でも、それでも……大勢の精鋭でたった1人の人間を攻撃して、フラフラに弱っても、弓矢で滅多打ちにして……。 見ていられなかった。 可愛そうで仕方がなかった。 シュウは『平和のための戦いだ』なんて言う。 リオウは『僕がやらなければいけないんだ』などと言う。 誰かは『死んで当然だ、あんな外道』なんて言っていた。 (でも……) でも、分からない。 大切な人を失って、憎い人を殺して……。 そこまでして手に入れなければならないものとはなんなのだろうか。 大勢の血の上に平和を手に入れたって……そんな大地には綺麗な花など咲かないのだ。 血を吸い続けた大地には、赤黒く変色した花しか咲かない。 さっき見たような綺麗な花など、決して……。 「……あ、ルッカちゃん…………」 花と言えば……。 花畑に置いてきてしまった少女の事を思い出した。 きっと、城に帰る術を失って路頭に迷っているに違いない。 もしかしたら、酷く危険な状況におかれているのかもしれない。 それも、自分の失敗のせいだ。 「……しっかりしなくちゃ……ダメ……」 早いところ、眼鏡の少女の下に戻らなくては。 彼女まで失ってしまうわけにはいかない。 そのためには、まず現在位置を把握しなくては……。 よし、と気合を入れなおしてディパックから地図を取り出そうとした……。 「またお前ですかーーーー!!!!」 聞き覚えのある方向から、聞き覚えのある怒鳴り声。 カエルの潰れたような、酷く汚いダミ声だ。 驚いて足元を見下ろすと、花園で出会ったあの道化師の姿がそこにあった。 「な、な、なにしてるの?」 「いいから退きなサーイ!」 真っ白く塗られた顔を怒りで赤く染めて、ピエロが叫ぶ。 ビッキーが彼から足を退けると、ゆっくりと立ち上がり、肩で深く息をつきはじめた。 ぜーはー、ぜーはー、と何度も繰り返し、少女の踏みつけによって生まれた疲労を回復しようとする。 その姿を見て、ビッキーは気付いた。 この道化師をテレポートに巻き込んだ上に、踏みつけてしまった事に。 「あ……あの、怒って……ます、よね?」 恐る恐る問いかけるビッキーの表情は固い。 どうやら、テレポートしてからずっと踏み続けていたらしい。 彼の必死の叫びも、悲しみと自責にくれるビッキーには一切届かなかった。 「ぜーはー、ぜーはー……怒ってるか……ぜーはー……だとぅ……? ぐ……ぐぐぐぐ……グギィーーーー!!! 怒ってるに…………決まってるダロ! 2度目ですよ! 2度目! パン泥棒だって2度もやったら死罪ケッテイだっ! なぁぁぁんなんですかオマエ! 人を踏みつけて喜ぶシュミでもあるのか?! どれだけ歪んだ性格をしてるんだマッタクモーーーー!!!!」 10回足らずの呼吸で完全に息を整えると、凄まじい剣幕で少女を罵倒し始めた道化師。 発明少女との言い争いで、気が立っていたこともあったのだろう。 大量の唾を撒き散らしながら、少女へと言葉の弾丸を放ち続ける。 ……『性格がゆがんでいる』などというセリフ、どの口がいうのだろうか。 「あ、あの、ゴメンなさい。私、ドジだから…………」 両手を合わせて、本当に申し訳なさそうな表情を見せた。 どれだけ汚い言葉を浴びせられようとも、ビッキーはキチンと謝罪の言葉を述べる。 こんなワケの分からない男など、普通の人間なら関わりたくはないはずだ。 一刻も早く、友人を迎えに行かなくてはならないこの状況なら、尚更である。 それでも彼女は、限りなく面倒くさそうなこの男と対話を試みた。 そんな健気な姿を目にしたら、それだけでビッキーを許してしまうものだ。 一般人100人がいたら、100人全てが彼女の味方につくだろう。 だがしかし……。 「ボクちんが知るものか! そんな事!!!」 ……それは一般人の話。 一般人という集団が存在する為には、その対となる『狂人』が存在しなくては話にならない。 そしてケフカというのは、その狂人の中でも更にイカれた存在。 少女の真摯な対応に、なぜか更に怒りの炎を燃やす。 むき出しにされた犬歯の隙間から、罵声が放出された。 「きゃあ!」 遂に道化師の堪忍袋の緒が、プチンと音と立てて切れる。 ビッキーに襲い掛かる雷。 青緑に光る閃光が彼女の傍に落ち、地面に生えていた雑草を黒く焦がした。 プスプスという音と共に、焼け焦げた嫌なにおいがビッキーに届けられる。 「キィィィィー!! 上手く利用できそうだから生かしておいてやろうと思ってたのに!! ふんっ! 下手に出れば、つけ上がりやがって! バラバラに引き裂いてやるぞ!!!」 ついにその悪魔の本性を現した(最初から悪意丸出しではあったが……)ケフカ。 ありったけの恨みを込めて少女を睨みつけ、殺害を宣告した。 辺りに充満した毒々しい邪気を少女も感じたらしく、身を縮こまらせて怯えだす。 その真っ黒なプレッシャーは、あのルカ・ブライトと対峙したときに感じたソレと大差ない。 「ひゃっひゃっひゃ! ボクちんが怖いか? そうかそうか……ファイラ!」 少女が震えてるのを確認すると、一転して楽しそうな表情を見せる。 詠唱なしに放たれた魔法。 周囲の景色が歪み、朝の草原にまさかの蜃気楼を発生させる。 凝縮された魔力は、熱という悪意となり、少女の体で爆発した。 「きゃぁ! あぁ……あああぁああぁぁ!」 「まだ終わらんじょー! サンダラ!」 「ぐ……はぁ……はぁ……え? きゃあああああああぁぁぁ!」 赤き魔法の熱に苦しんでいる少女に、更なる魔法で追い討ちをかける。 雷の魔法が、ビッキーの体を直撃。 痺れた少女が叫び声を上げるのを、男は愉快そうな目で眺めている。 ジワジワと殺すために、わざと手加減をして高位の魔法を使わないでいた。 「はぁ、はぁ……どうして、こんなこと……」 魔法の応酬に立っていられなくなり、思わず膝をついてしまう。 汗が顎から滴り、大地に生えている雑草を湿らせる。 ビッキーは魔法使いであり、魔法に対しては丈夫に出来ている。 それでも彼女が目に見えるレベルのダメージを与えられているのは、ケフカの魔力がケタ外れだからだ。 「どうして……だってぇ? フォッフォッフォ! 決まってるでしょー! ユカイだから……さッ!!!」 「……あがっ!」 自らの言葉の語尾に合わせて、ビッキーの顔を蹴り上げた。 顎につま先をめり込ませた少女は、蹴られるがままに宙を舞う。 ふわりと力なく持ち上がった肢体は、重力に逆らえぬまま、頭から地面にぶつかった。 「……あう! ……う、うぅ……もう、嫌だよ…………どうして……みんな……」 仰向けのまま起き上がる事もできない。 体力はあっても、起き上がる気力がなかった。 汗に混じって流れた涙が、大地を一層湿らせる。 今受けた魔法が、蹴りが痛かったからじゃない。 死ぬのが怖かったからじゃない。 彼女が泣いていたのは……。 「ほら、踏まれるのは痛いでしょ」 「ぅぇぇ…………!」 さっきまでのお返しだとばかりに、胴体に足を乗せて思いっきり押しつぶした。 呼吸を封じられた少女は、息も出来ずにパクパクと口の端から泡を吹き出す。 それに血が混じっていたのは、蹴られたときに舌を噛んだせいだろう。 「ひゃっひゃっひゃ! う~ん、なかなかユカイなオモチャでしたよオマエは!」 一通り少女を痛めつけて満足した道化師。 トドメを刺すために、最大級の魔法を展開する。 (なんで……なんで! …………悔しいよ……ナナミ……ちゃん……) ボロボロの状態の中で、少女は悔し涙を流す。 こんな酷い事をされても、少女は道化師に恨みを感じていなかった。 今受けた数々の痛みすらも、どうでもいい。 置いてきたルッカが心配だという事も、忘れてしまっていた。 ただ少女は悲しかった。 世界が争いで満ちていることに。 「とっとと死ね! …………フレア!」 詠唱が完了したと同時に、魔法を放つ。 少女の体を四散させるために。 ピエロの魔力に呼応して、高密度のエネルギーを帯びた無数の光球が発生した。 それらが、一斉に仰ぎ倒れる少女に向けて集約される。 少女の体を爆心地とせんために。 (ごめんね……ルッカちゃん……リオウくん……もう、嫌だよ……) 抵抗する気もないビッキーは、涙を流して全てを諦めた。 さしてダメージのない体も、動かす気にはなれない。 支障なく仕事を全うできるはずの手足も、働かせる気になれない。 間に合うのかどうか、一か八かテレポート魔法も、使う気にはなれない。 ただ、深い悲しみの中で、少女はひとり……。 涙を流しながら……。 眼前に迫った死を……甘んじて受け入れた。 そして道化師の魔法は、その少女の生命に幕を……。 「そうは……させん!」 男が、飛んできた。 と言うのも比喩ではない。 本当に男は、どこからか飛んできたのだ。 「…………」 全てを諦めた力なき身体。それを抱きかかえた男。 ついでに彼女のディパックを拾い上げると、そのまま風のように速く、そして音もなく走り抜ける。 フレアの合間を縫って、その攻撃範囲からいとも簡単に脱出。 爆発によって舞い上がって土煙が晴れる前にその場から離れる。 あまりに華麗な脱走劇。 おそらくケフカは、乱入者がいたことにすら気付いていない。 水色の髪の毛が、まるで闇夜に光る火の玉のようにおぼろげに揺らめいていた。 「大丈夫か?」 そう問いかけた忍者を、ビッキーは返事もせずに見つめる。 口元は真っ赤なスカーフで覆われて確認できないが、その目は鋭い。 ビッキーは知っている。 これは『狩るもの』の目だ。 大空で獲物に狙いを定めるフクロウ。 水中で弱者を食い散らかす鮫。 そして地上で敵に殺意を向けた忍者。 自分を抱え上げた男は、彼女の仲間であるカスミやサスケたちと同じ目をしていた。 「あ、あの……えっと……」 お礼を言わなければ、と分かってはいる。 だが、急すぎる展開に、紡ぐべき言葉が出てこない。 わたわたと、口を開いては閉じを繰り返す。 「……え?」 ふいに、男の親指が顔に押し付けられる。 乙女の心臓が、ドキリと強く跳ね上がった。 男が自分の涙を拭ってくれた事に気付くのに、数秒を要してしまう。 気が動転した彼女は、泣いていた事すらも忘れてしまっていたのだ。 今度こそお礼を言わなければと、再び男の顔を見つめた。 「あの……ありが……」 「ちぃ!」 またもや、言葉は届かない。 叫ぶが早いか、男がビッキーを抱えたまま飛びのいた。 予告なしに男がジャンプしたものだから、思わず舌を噛みそうになってしまう。 何事かと不審に思いながらも、振り落とされないように男の身体にしがみ付く。 その直後であった。 さっきまで2人がいた場所に、雷が降り注いだのは。 「……サンダウン、彼女を頼む」 誰かに向かって呟くと、いきなり展開された雷魔法に驚く少女を、優しく地面に下ろす。 涙は枯れても、その身体は小刻みに震えていた。 全身は所々焦げたり服が破れたりボロボロで、口元には血が滲んでいる。 少女が味わった恐怖と苦痛を感じ取り、男の瞳が怒りに尖った。 立ち上がって振り返り、今の雷を放った道化師に向き直ろうとした。 だが、それができない。 原因は、心配と不安のあまり、忍者の手を握ったまま離そうとしないビッキー。 簡単に振り払えるほど弱い力ではあった。 しかし、男はそんなことはせず、少女を見つめなおして手を一度だけ強く握り返す。 ゴツゴツとした固い掌から、温かな熱が皮膚を乗り越えて伝わってくる。 その2つの手に更に別の男の手が重なる。 「……あ…………」 「……心配は……いらない……」 その持ち主を追いかけた彼女の瞳に、金色の髭を生やした男が映った。 たった今、サンダウンと呼ばれた男だ。 大切な贈り物の包装を解くように、忍者の手から少女の手を丁寧にほどくと、力強く頷いて仲間を見送った。 サンダウンに倣って振り返れば、あの忍者はもうすでに道化師に向かって走り出している。 その背中を見て、『お礼を言いそびれてしまった』と、ビッキーはそんなくだらなことを後悔していた。 「あの……危険です。あのピエロさんは凄く……強くて……」 さっきまで受けた攻撃の数々を思い出す。 明らかに手加減していたのにもかかわらず、あの威力。 ルカ・ブライトに匹敵する禍々しさを思い出して、戦慄する。 恐怖に汗を滲ませた少女を、いとも軽々と抱え上げたサンダウン。 仲間の戦いを邪魔しないように、走って戦線を離脱する。 彼の右腕には、『いかりのリング』が光っていた。 先ほど、風の忍者が少女の元に飛んできたのは、この腕輪のおかげである。 『仲間を投げる事ができる』という、このアクセサリーの効果で見事爆発からビッキーを救ってみせたのだ。 展開されつつあった魔法の合間を縫って正確に投合できたのは、サンダウンが世界一のガンマンだからこそ。 「シュウは……負けん……」 それでもサンダウンが心配そうな瞳をしていたのは、カエル戦での疲労が馬鹿に出来ないからだ。 さらに重くて少女救出の邪魔になるだろうリニアレールキャノンは、シュウに変わってサンダウンが未だに所持していた。 彼は万全の状態とは決していえなかった。 (シュウ……さん……) シュウ……男の名前を心の中で数回復唱する。 自分の知り合いと同じ名前であった。 あぁ、だからあんなに頼もしいのか、と彼の強さに納得する。 軍師、シュウ。 涼しい顔で戦局を分析し、常に数手先を読む。 周りの人間が焦りの汗を流す中でも、彼だけは顔色1つ変えないでいた。 そして最後には、彼が描いただろう通りの筋書きで戦いは幕を閉じる。 多くの屍を残して。 アップルは言う。 『兄さんは被害を最小限に留めたのだ』と。 分かってはいる。 争いを避ける道などない。あったら最優先で実行している。 そしてその止む終えず選択した戦争という選択肢の中で、シュウは出来る限りの努力をしたのだ。 出来るだけ、血を流さないように。 それでも、ビッキーはずっと考えて、悩んでいた。 戦わないで、皆が幸せになる道はないものかと。 そんなものはないと分かっていても、理解していても。 心のどこかで、ずっと、皆で笑える方法を探していた。 走り去った、男の背中を追いかける。 彼もまた、争いに身を投じた。 この戦いの結末は、どちらかの、もしくは両方の死を持って終わるのだろう。 酷く、胸が痛い。 「そんなのって……ないよ……」 風にすらかき消されるほど、小さな声。 少女は、白い花が好きだった。 「…………」 サンダウンは1人、少女の嘆きを聞いていた。 少女の涙を見ていた。 それと同時に思い出されるのは、あの村での戦い。 O・ディオ一味と戦ったあの戦いの事だ。 そこで彼は、ある大事な事を学ぶ。 長い放浪生活で、不信と憎しみの輪廻に晒されている中で、サンダウンが忘れてしまっていた大事な『感情』。 それをサクセズタウンで、もう1度教えられたのだ。 あまりジロジロ眺めるのもかわいそうだと思い、少女から目をそらすと。 サンダウンの視界に、彼女のディパックが映りこんだ。 「…………これは!」 中から何かが零れ見えているモノをサンダウンは確認する。 瞬間……気分が高揚した。 それは、サンダウンの心にたった今生じた『感情』に引き寄せられてきたものだったのだろうか。 運命を感じた。 「……すまない。……名をなんと言う?」 「え? あ! 私? ビッキーです」 胸元を押さえて苦しそうにしている少女に話しかける。 寡黙なサンダウンが、自分から会話を始めるのは珍しい事だ。 少女も、まさか話しかけられると思っていなかったのだろう。 焦った様子で返事を返す。 「そうか……ビッキー。支給品を…………見せてもらっても……」 「あ、はい。構いませんけど……」 ビッキーのディパックを覗く。 やはりか……。そうサンダウンが呟いた。 そこにあったのは、自分がずっと捜し求めていたもの。 手にすると、それは確かな熱を帯びてサンダウンの心に呼応した。 「……ビッキー。頼みがある」 「え? はい。どうぞ。差し上げます」 鉄面皮ながらも嬉しそうな様子が見て取れたのだろう。 サンダウンが尋ねるまでもなく、ビッキーが快諾。 男の顔から僅かな喜びが漏れ出たのを感じ、少女の悲しさを少しだけ中和する。 「ありがとう」 「……いえ。どうせ私には使えませんから」 一瞬で6発の弾丸を込めてみせる。 そのクイックリロードが相当凄い事なのは、銃に疎い彼女でも充分に理解できた。 そうだ、当然ながら、あの銃は誰かを撃ち殺す為に使われるのだ。 短く謝礼を述べると、そそくさと立ち上がって戦場へ向かおうとするサンダウン。 それをビッキーは残念そうな眼で見つめていた。 「もう1つ……」 「え?」 少し進んで立ち止まる。 ビッキーへの、もう1つの頼みを忘れていた。 切なげな表情の少女に、驚きという感情の波紋が生じる。 「笑って…………くれないか」 振り向いて、静かに呟く。 サンダウンは、荒野に咲いた白い花が好きだった。 ◆ ◆ ◆ 時系列順で読む BACK△084 心の行く先Next▼073-2 シュウ、『嵐』に託す(後編) 投下順で読む BACK△072 暗殺者のおしごと-The style of assassinNext▼073-2 シュウ、『嵐』に託す(後編) 056 Alea jacta est! シュウ 073-2 シュウ、『嵐』に託す(後編) サンダウン 063-2 ビッキー、『過ち』を繰り返す(後編) ケフカ ビッキー ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/172.html
【名前】シュウ 【出展】アークザラッドⅡ 【種族】人間 【性別】男 【年齢】25歳 【外見】黒装束の忍者。 【性格】寡黙な性格。 【呼称】 一人称:「俺」、二人称:「お前」など。 【口調】口数は少なく、喋るときは淡々と喋る(CV 池田秀一) [セリフ集] 「死んで償え」(戦闘中) 「どこを見ている」(戦闘中) 【特異能力】 忍術、風属性の魔法を使う。 使用武器はキック、銃。 [ゲーム内でシュウが覚える技] 盗む 敵のもっているアイテムを奪いとる テンダリーショック 敵の防御力を一時的に低下させる ウィンドシールド 風のめぐみが嵐から身を護る スピードアップ 相手の運動神経を鋭くし素早さを高める スケープゴート 直接攻撃を受けた仲間の身代わりとなる 時限爆弾 セットされた爆弾が周囲一帯をふきとばす 乱れ撃ち 全ての武器を駆使し四方八方に攻撃 ウィンドスラッシャー 鋼の鎧をも切り裂く風の魔法 【備考】 砂漠を彷徨っていたエルクを拾い、ハンターに育て上げた人物。 銃器も使用する謎の忍者。 国籍や過去の経歴などは不明で、ゲーム中でも断片的にしか知ることは出来ない。 +開示する 【現在状況】 登場話 024 仲間を求めて 死亡話 073-1 シュウ、『嵐』に託す073-2 シュウ、『嵐』に託す(後編)073-3 サンダウン、『花』を見守る 登場話数 6話 参戦時期 本編終了後 スタンス 対主催 現在状況 死亡 【本ロワにおける動向】 024 I-9城下町にて、マリアベルと会う。情報交換を行い支給品を確認する。 029 城にてストレイボウ、カエルと会い、情報交換を行う。カエルに疑念を抱き、ストレイボウに警告する。その結果彼らと別行動をとるためマリアベルと城を発つ。 049 I-8で起きた爆発に気付き、現場に向かう道中でサンダウンら3人に会う。一触即発となるが、和解する。マリアベルを加えて彼らを城下町に戻らせ、周囲の警戒のため1人現場付近に残る。 060 放送でリーザの死を知り、彼女とエルクを想う。爆発現場から立ち去ろうとする際、カエルと遭遇。彼の覚悟を知り、対峙する。 066 カエルと戦うが、ストレイボウの出現によりカエルに逃げられる。ストレイボウと情報を交換しつつ城下町へ戻る。カエルがニノに止めを刺そうとする寸前に間に合うが、彼に撤退を許す。仲間の治療を行い、ゲートホルダーを使って移動するマリアベルらと別れ、サンダウンと2人で城下町の宿屋に残る。 073 ケフカに殺されかかるビッキーを救い、ケフカと戦う。サンダウンの援護もあり、魔力を使い果たすまで追いつめるが、殺される。死体はI-8荒野に放置される。 【最終状態表】 【I-9 宿屋 一日目 午前】 【シュウ@アークザラッドⅡ】 [状態]:疲労(中) [装備]: [道具]:紅蓮@アークザラッドⅡ、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WA2、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。 1:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間、協力してくれる人材を捜し合流。 2:この殺し合いについての情報を得る。 3:首輪の解除。 4:トッシュに紅蓮を渡す。 5:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。 [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※扇動を警戒しています。 ※時限爆弾は現在使用不可です。 ※『放送が真実であるかどうか』を疑っています。 ※シュウとサンダウンがどこに行くかは後続の書き手氏に任せますが、 ストレイボウとは行き先が一緒にならないように別の方向です。 ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/156.html
シュウ、『嵐』に託す(後編) ◆Rd1trDrhhU 「ファイガ!」 呼吸をするかのように軽々と、道化師は巨大な炎を生み出した。 ビッキーのときとは違い、必要以上の手加減はしない。 かといって最初から隙の大きい最大級の魔法をぶつけるほど、愚か者でもない。 この上級魔法は、ケフカにとっては相手の力量を確かめるためのジャブだ。 ファイガの目標は、こちらに向けて信じられない速さで走ってくる忍者。 巨大な炎は、逃げ場のない高熱の檻となって男を包囲する。 ゴフゴフと大型獣のような雄たけびを上げて、男に牙を向く。 鼓膜を破壊しかねない轟音と共に、赤き獣は男を完全に飲み込んだ。 ビッキーに食らわせたものとは、段違いの一撃だ。 「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! もう終わりですか! 期待して損したよ!」 炎の中から男が姿を現さないのを見て、ケフカは勝利を悟った。 随分とあっけないものである。 尤も、あの1撃を食らって生きていられる人物など、ケフカの知る中でも両手の指の数程いるかどうか。 こんな事なら、もう少し下級の魔法で嬲り殺しにしてやればよかった、と今更ながらに後悔した。 「さて、正義のヒーローは、どんなマヌケ面をして…………なにィ?!」 おびただしい黒煙が晴れた後には、何も存在してはいなかった。 そこに生えていたはずの草は、全て焼け焦げて消えてしまった。 そして死んだはずの男の姿も、そこにはない。 彼も燃え尽きてしまったのか。 しかし、あの男がそこまで脆いとはとてもじゃないが考えられない。 つまり、導き出された答えは1つ。 「ど、どこだ!?」 男はファイガを回避した! しかも、ケフカの気付かない間に。 男の姿を探して辺りを見渡すが、緑の大地が続くばかりで誰もいない。 バニッシュを使用して透明になったのか。 だとしても、気配すらもこんなに完全に消せるのか? 「……甘い!」 必死に身体を回転させて、東西南北を見渡すケフカ。 だが、唐突に響いた男の声と、同時に発生した気配。 それは、ケフカが今まで失念していた方向から……。 「……上だな!」 すぐさま魔力を展開。 敵の姿を確認すると同時に魔法が放てるように。 しかし、ケフカが見上げたそこには誰もいなかった。 確かにそこから声がした、気配がしたはずのなのに……。 「遅い」 彼は、ケフカの背後にいた。 次の攻撃の為の予備動作を、しっかりと完了させた上で。 道化師の放ったファイガの魔法を、後方に高速で下がる事で回避したシュウ。 魔法が止むまではその爆炎に遮られて、ケフカからシュウの姿を確認する事はできない。 そして煙が晴れると同時に空高くジャンプ。 上空から超高速で落下しながら、着地する直前にわざとケフカに呼びかけた。 自分を悟らせる為に。 敵が空中にいると知ったケフカは、当然その方向を見て意識を集中させる。 それこそがシュウの狙い。 その『ケフカが空を見る』行為の最中にシュウはその背後に着地していた。 そして発生させた絶対の隙。 「ぐぇ!」 遠慮も躊躇もない。 あらん限りの力を込めた、全力の蹴りだった。 それを背中にモロに食らって、道化師が大きく吹き飛ぶ。 小手調べのジャブを放ったはずのケフカに、強烈なカウンターをお見舞いする。 相手の隙を探すのではなく、無理やりにでも相手に隙を作る。 これこそが、戦闘のプロであるシュウの戦い方だ。 (……固い!?) ケフカの背中にめり込ませた足に、痺れを感じた。 絶好のクリーンヒットにはつき物のはずの、確実な手ごたえ。 それが今の1撃からは感じられない。 この防御力は、イーガやグルガのような『強靭な肉体』のものではない。 そういったレベルを超えたこの反作用は、ちょこのような『異なる者』が持つもの。 「なるほど……」 『蹴り心地』から、敵の分析を完了させる。 あの男、人であることを捨てたものか……。 あるいは、元々が人でない出生なのか……。 どちらにせよ、異形であることは確かであった。 大きく吹き飛んだ道化師が、ゆらりと起き上がったのを見る。 やはり、大したダメージは与えられてないらしい。 (ならば……叩き続けるのみだ!) どんな化け物だろうと、蹴り続ければ……死ぬ。それだけの事。 だったら、何十発でも何百発でも与え続ければいいだけの話だ。 相手が体制を立て直す前に、猛スピードで肉薄。 そのスピードを殺すことはせず、とび蹴りとしてケフカにぶつける。 「ふげぇ!」 腹部に踵をめり込ませたケフカが、無様な叫び声を上げる。 だが、やはり大した手ごたえは感じない。 この苦しそうな声も、本当なのかどうか疑わしくなってくる。 「ごのぉ!」 ケフカもただ黙ってサンドバッグになるつもりはないらしい。 蹴られながらも、シュウの顔に拳を振りかぶる。 全力のとび蹴りを放った直後のシュウには、絶大な隙が出来ていた。 空中にいては、大した回避行動もとることは出来ないはず。 そこを狙っての1撃だ。 「ふん……」 道化師が反撃を繰り出してきた事に驚きつつも、彼は冷静であった。 飛んできた拳を目で確認するや否や、頭を後ろにずらす。 ケフカの拳はアッサリと避けられ、ただ空気を撫でただけで終わる。 そしてシュウはそのまま背中を大きく反らせると、ブリッジをするように地面に両手をついた。 逆立ちの状態になったら、足でケフカの顎を思いっきり蹴り上げる。 ガツンとした衝撃が、シュウの足にも伝わった。 しかし、それ以上の衝撃が、ケフカの脳を大きく揺さぶる。 「ごへぁ!!!」 狂人の口から、涎が撒き散らされる。 生憎、血は一滴も流れてはいない。 それはつまり、内部へのダメージは殆どないということだ。 それでも、顎を蹴られたら誰だって悔しい。 ケフカが怒りのままにシュウを睨みつけようとした。 「……喝ッ!!!」 だがその目に映ったのはシュウの足。 忍者はいつの間にか体制を立て直して、攻撃に移っているではないか。 浮いた状態という最高の隙を作った敵に、戦闘巧者のシュウが大技を仕掛けないはずがなかった。 全力の回し蹴りがケフカの喉めがけて炸裂する。 ミシリ……と嫌な音が響き渡った。 「死んで償え……!」 「ごぉっっっふ!!!!!!」 最も脆いだろう箇所に、最大級の攻撃を受けたケフカ。 その口から、少量ではあるが血液が噴出す。 受けた蹴りの勢いのままに、大きく吹き飛んだ。 何度もバウンドした末に倒れ付して……遂に動かなくなる。 (やった……か?) シュウも今回ばかりは確かな手ごたえを感じていた。 期待を込めて、道化師の様子を観察する。 致命傷に至らないまでも、戦闘不能にはなったであろう。 そう、予想していたのだが……。 「ぎ、ぎ、ぎ……」 「…………チィ!」 歯軋りのような耳障りな音は、確かに倒れたままのケフカから聞こえたもの。 そしてこの禍々しい魔力も、間違いなくそこから発せられている。 敵の持つ桁外れの耐久力、そして魔力を前にして、シュウの額から初めて汗が流れた。 「キィィィィィーーーー!!!」 サイレンの様な奇声が響く。 イルカなどは、この音を耳にしただけで気絶してしまうのではないか。 シュウの生存本能が告げる。 逃げろ、と。 1人では、決して敵う相手ではないと、ハンターの勘が告げる。 (引き際も、見極めねば……) この戦いでのミッションを『勝利』から『生存』へと切り替える。 侮っていた。目の前の敵は、一種の『山』だ。 かつてのガルアーノやヤグン、アンデルのように。 信頼できる仲間、強力な武器、綿密な準備。 それらの要素を、完璧に兼ね備えて臨むべき敵なのだ。 たった1人で、大した武器もなく、カエル戦のダメージと疲労を引きずったままで挑むべきではない。 「キィィーー! 私が手加減してあげてるのをいいことに、お調子に乗っちゃってーー! ヒャヒャ! いいだろう、このケフカ様がちょっとだけ本気を出してあげますよ!」 怒りから歓喜へ……狂気はそのままで。 仰向けのままで、長ったらしいセリフを一息で言い切ったケフカ。 ヌゥ……と、軟体動物のように不気味に立ち上がる。 海老反りの状態から、まるで倒れる様子を逆再生するかのように起こされた上半身。 露わになったその顔は、この世のものとは思えないほど邪悪なものだった。 「第2ラウンド、始めようか」 ニヤリと、口を大きく歪めて笑う。 毒薬を丹精込めて、3日3晩煮詰めたような目の色。 あの猛攻を受けても全く剥げない白いメイク。 思わず後ろに飛びのいたシュウに、巨大な雷が迫る。 予備動作もなしに突如発生した魔法は、ゴーゲンの生み出すソレとは比較にならないほどの威力だ。 自分目がけて疾走してきた雷撃を、サイドステップで何とかやり過ごす。 魔法が通り過ぎたのを目で確認すると、それを放った張本人に向き直る。 「……な!」 振り返った彼の目の前に、ソイツはいた。 密着するほど近い位置で、シュウの驚く顔を観察している。 「まさか、逃げるなんて言わないよねえぇぇぇ?」 そう囁いただけで、何もせずに距離を取ったケフカ。 絶好のチャンスを手放したという事は、『いつでも殺せるんだ』という宣言のつもりだろう。 (……不味いな) 冷や汗が止まらない。 魔法に気を取られていたとはいえ、こうも簡単に懐にもぐられるとは……。 スピードも、魔法も、耐久力も、全ての要素が出会ったときの分析を上回っている。 今になってやっとシュウは気付いた。 自分が今まで、遊ばれていたことに。 「そら、避けないと痛いヨ。 ブリザガ!」 開戦のゴングは、冷気の魔法であった。 この瞬間から、両者の攻守関係が逆転。 ついに、ケフカの魔法ラッシュが開始した。 「……!」 自らの周囲の温度が、急激に下がっていくのを感じた。 忍者は、これが氷の魔法である事を悟る。 だが、気付いたからといって、それに応じた対処が出来るわけじゃない。 この冷気を相殺できるような炎の呪文は持ち合わせてはいない。 出来る事といえば、この魔法の有効範囲から逃れる事のみ。 事前にスピードアップをかけておかなかった事を、今更ながら後悔した。 「オミゴト、オミゴト。 じゃあ次は……ファイガ!」 何とか氷塊から逃れたシュウに、今度は炎が襲い掛かる。 この魔法は、最初にケフカが放った魔法なので、その範囲も知っていた。 だから、避けると同時に、それを反撃の機会としようとしたのだが……。 (……早い!) 炎の勢いが以前に比べて速くなっている。 魔法が唱えられてから実際に熱が発生するスピードも、熱が生まれてからそれが燃え広がるまでのスピードも上昇していた。 以前放った『ファイガ』は、手加減されたものだったのか? (違う……!) そんな考えが浮かんだが、シュウはそれをすぐに否定した。 感じたからだ。 風と、それになびく草。 それらすらも、さっきまでの倍近くの速度で活動している。 そう。この世界の全てが加速していたのだ。 (『俺が遅くなった』のだ……!) ケフカは、シュウの最大の長所である『速さ』を殺しにかかっていた。 実際にスロウを食らってから、その事実に気付くまでに要した時間は約1秒。 信じられない状況判断力である。 それでも、ケフカの前ではその1秒さえも致命的。 避けきれなかった分の炎を、右腕でガードする。 直撃したわけではないのでこれといったダメージはないが、それよりも視界が遮られたことのほうが大きい。 「ヒャハハハハハ! こっちですよ、サンダガ!」 「ぐがあ!」 視界不良という絶大な隙に加え、スロウまで食らっている。 この状態で、最大級の雷を避けるなど不可能な話だ。 真後ろから放たれた魔法が、遂にハンターに命中した。 「グラビデ!」 カエル戦での疲労もあるが、シュウが元々魔法に強くない事も決め手だった。 増加した重力は、オリハルコンの鎖となってシュウを大地へと縛りつける。 疲労の溜まった身体に、魔法の直撃まで受けた忍者は限界であった。 足元がぐらついた直後……遂に膝をついてしまった。 「……ぬぅ……!」 「おやぁ? もうオシマイですか?」 ヘラヘラと笑いながら歩み寄るケフカ。 その手には、いつの間に盗んだのであろうか、シュウの支給品である刀。 大切な戦友の愛刀だ。 「言い残す事はあるかな~?」 死刑執行人気取りの道化師は、芝居がかった口調で問いかけた。 大仰な仕草で、紅蓮をシュウの喉元に突きつける。 切っ先が皮膚を薄く裂いて、紅き液体を滴らせた。 (ここまでか……!) せめて手傷を負わせようと、立ち上がろうとするが、どうにも力が入らない。 そんなシュウを見て、ケフカは手にした凶器を無言で振り上げた。 「あの世に行ったら、ティナに伝えてちょーだい。 『ザマーミロ』ってね!」 握り締めた柄に力を込める。 ありったけの憎しみを込めて、刃は振り下ろされた。 辺りに噴出した血飛沫。 紅い飛沫は草原の緑と共に、妙に綺麗なコントラストを生み出していた。 さて、太陽はもうじき、空の頂点に昇ろうとしている。 光は真上から参加者達を照らし、その視界を逆光で遮る事はもうなくなっていた。 そして風は比較的穏やかで、大した影響はない。 やはり今日は、絶好の射撃日和だ。 サンダウンキッドは引き金を引きながら、そんな事を考えていた。 「なにぃ?!」 銃弾に貫かれたケフカの手首から、血が流れる。 ここに至って初めて、道化師がダメージらしいダメージを受ける事となった。 思わず振り下ろそうとした刀を取り落としてしまう。 「ぐげぇ!」 そんな隙を、超一流のハンターが見逃すはずがない。 重力の枷がなくなった忍者が、ケフカの腹に拳をぶつける。 反撃しようとしたケフカに、サンダウンの銃弾が襲い掛かった。 「チ、チクショー!」 あの銃の威力を身をもって知っているケフカ。 シュウの殺害を諦め、距離を取って正確に繰り出された銃撃を避ける。 「……苦戦……してたようだな」 「……すまない」 駆けつけたサンダウンの手には、彼の愛銃である44マグナムが握られていた。 あのケフカの身体に傷を負わせた千両役者は、未だに銃口から白い煙を吐き出し続けている。 「……そんなに、強いのか?」 このシュウが殺されかけていた事が、未だに信じられないサンダウン。 ケフカをみると、傷ついた腕に回復魔法を必死にかけていた。 どうやら回復の利きが悪いらしく、何度も何度も腕に向かって手を翳している。 あのふざけた男が、それほどの強者だとはとても思えないのだが……。 「カエルが可愛く見える程にはな」 「……そうか」 シュウが言うならそうなのだろうと、アッサリ信じ込む。 一言だけそっけなく感想を述べると、そのセリフよりも短い時間でリロードを完了してみせた。 通常よりも一回り大きな弾薬であったが、サンダウンにしてみればこれが最も使いやすい標準形だ。 「さて、どうしたものか」 サンダウンの扱っている銃、おそらくあの少女の支給品か。 同じガンマンとして興味をそそられたが、今はそんな事を言っている場合じゃないだろう。 今はあの道化師を何とかしなくては。 サンダウンの銃がケフカに通用したのは、シュウも確認していた。 だが、あれは不意打ちだから命中したようなもの。 今後は、相手もこの銃を警戒してくるに違いない。 ケフカに向かって銃口を構えたら、引き金を引く前に強力な魔法が飛んでくるに決まっている。 どう考えても命中しないリニアレールキャノンなど論外だ。 「方法なら……………………ある」 遠くでこちらを忌々しそうに睨みつけるケフカと、ずっと睨めっこを続けているシュウに告げる。 忍者の片眉が持ち上がった。 異形の力を持つあのピエロすらもを殺す方法を、サンダウンは知っている。 だが、そこには1つだけ、大きなハードルが存在した。 「シュウ……俺が、信じられるか?」 それは、彼の信頼を勝ち取ること。 世界一疑り深い男に、夢物語を信じさせる。 それこそが、ケフカ撃破の唯一にして最大の課題であった。 ◆ ◆ ◆ 「はぁっ……はぁっ……サン、ダウン……さん……」 胸が締め付けられるのは、全力疾走しているせいだけではないだろう。 息を切らせて走るのは、シュウを助けに行ったサンダウンを追いかける少女。 自分の支給品には銃があった。 どうやら、サンダウンが本来使っていたものらしい。 元々、戦うつもりなどなかったので、ビッキーにとっては無用の長物であった。 ビッキーが付属の弾薬と共に譲り渡すと、眠っていた銃は急に生き生きと嘶き始める。 ガン、ガン……と数発の試し撃ち。 (戦うつもりなんだ……) 恐るべき速さで鳴り響くその銃声を聞きながら、ビッキーは後悔していた。 また、血が流れるのかと。 あのオディオの思惑通りに殺し合い、無意味な悲しみが上澄みされていく。 もう、嫌だった。 冷たくなった身体に涙を零すのは、もう沢山だ。 サンダウンに『笑ってくれ』と頼まれたときも、笑みを見せることは出来なかった。 戦場に向かう彼を見るのが、悲しかったからだ。 「はぁ……いっつぅー……!」 あの道化師につけられた傷が、ヒリヒリと痛む。 もう疲労も限界だ。 ドジだけど元気が取り柄のはずの精神もズタズタ。 いっそのこと、倒れてしまいたかった。 倒れたって誰も責めはしない。 それでも、少女は走る事を止めなかった。 ケフカのような強力な攻撃魔法も、シュウのような鍛え上げられた体術も、サンダウンのような洗練された射撃もない。 この絶望を止める手立てはなに1つなく、危機に瀕した誰かを救う術もなに1つない。 「あう! ……はぁ……それでも……嫌なの……」 盛大に転んでも、細い腕に力を込めて立ち上がる。 お気に入りの白い服は、泥だらけで酷い有様だった。 少女は走れば何かが変わるのだと信じていた。 何かを変えようと必死だった。 「もう、嫌なの……!」 ボロボロの足はなんとか動く。 亀の歩みだけど、まだ進める。 その勇気は、この戦局の結末を、確かに動かす事となる。 「行かなきゃ……」 大切なのは、ある『感情』。 悲しみを解放する鍵は、そのある『感情』に秘められていた。 そして、絶望の連鎖を引き起こすのもある別の『感情』。 こうして、役者は戦場に集う。 最後に笑うのは、悪魔のピエロか。 荒野のガンマンか。 風の忍者か。 無力な少女か。 「行かなきゃ!」 最終ラウンド開始のゴングは、少女の決意の声であった。 ◆ ◆ ◆ 「何を企んでいるのか知らないですケド、逃げた方が良かったんじゃないかな~? さっき死にかけたのにねえ。頭ダイジョウブー?」 「…………ふん」 サンダウンを後方に残して、単身でケフカに挑む事になったシュウ。 カエルにケフカと、強者との連戦の疲れは流石に隠しきれない。 戦局は、さらにケフカ有利に傾いてしまっていた。 にも関わらず、頼みのガンマンは仲間に加勢することなく、遥か遠くで目を瞑って棒立ちになっているではないか。 「ま、さ、か、仲間だけでも逃がすつもり? うひゃひゃひゃひゃひゃ!」 そうは言いつつも、ケフカはサンダウンに注意が向いてしまう。 あのガンマンの持つ銃器の威力を、身をもって知ってしまっているせいだ。 あれを何発も食らっては、流石のケフカも身が持たない。 注意が逸れたところをズガンなんて事は、絶対に避けたい事態である。 だから、目の前の男とは早期に決着をつけたかった。 その為に狂人が選択した戦い方は……。 「スロウ!」 前回と同じく、シュウの長所を殺す事。 先の戦いでケフカは理解する。 この忍者は、回避力は凄まじいものがあり、攻撃魔法を当てるのは至難の業である。 だが、当ててしまえば脆いのだ。 魔法に対する防御力はそれほど高くない。 寧ろ、あのテレポート娘よりも下なはず……。 だから、アキレス腱を潰す。 それこそが、道化師が学んだ事。 「あ~あ、ざんねーん。これでオマエは……」 「はぁ!」 だが、学習したのはシュウも同じ。 天から金色の、光が降り注いだ。 と言っても、別に天使が迎えに来たわけじゃない。 輝く円柱はシュウを囲んで、その身体に加護を与える。 スロウをかけられる直前に予備動作を済ませたスピードアップで、ケフカの魔法を即座に無効化したのだ。 そして、これは魔法の『相殺』ではなく、『上書き』である。 「……! ふ、ふん! ちょっとは学習したようだけど……」 「喧しい」 故に、この魔法の重ねがけの結果として残ったのは、スピードアップの効果のみ。 シュウもまた、長期戦など狙ってはいなかった。 凄まじい勢いで繰り出されたシュウの蹴りを、ケフカが何とかガードする。 サンダウンにも注意を取られている分、道化師の動きはいささか精彩を欠いていた。 「ファイガ!」 「……く!」 それでも疲労の差が大きい。 ケフカが有利な事は変わらなかった。 ガードしたまま、得意の魔法で反撃に出る。 それをシュウは距離を取る事で、回避した。 「あれれれ? まさか、あのピストルヤローは、ただの案山子なのかな~」 「……さて、どうかな」 ここで、ケフカの心に疑念が生まれる。 サンダウンの存在は、ただのこけおどしではないか、と。 つまり、ケフカの注意を散漫にする為だけに、ただ立っているだけ。 銃弾が飛んでくる気配もなければ、2人の戦いを見ている様子さえないのだから。 (ひゃひゃひゃ、そうなんだな?) 嬉しそうに笑う。 一晩かけてジグソーパズルを完成させた子供のように。 シュウの目が泳いだ。 知られてはいけない秘密を、探り当てられた顔をした。 生まれた疑念が、大きく膨らむ。 だとしたら、目の前の男にだけ注意すればいいのだ。 そうなれば、ケフカがこの忍者に負ける要素はない。 ケフカは、心の中でガッツポーズを繰り出した。 目の前の忍者に、ピントを合わせる。 確実にこの男を殺すために。 だが、それこそがシュウの目的だった。 今から数分前のことである。 「ふざけているのか?」 シュウの容赦ない不信が、サンダウンにクリーンヒットした。 ケフカを殺す方法。 サンダウンが提案したその唯一にして絶対の方法は、あまりにも現実離れしたものであった。 「至って真面目な話だ……ハリケンショットならば……ケフカを…………」 「…………12連射なんて……不可能だ……」 サンダウンの持っている44マグナムの回転式拳銃を見やる。 リボルバーな上にシングルアクションという、連射にはまるで不向きなその性能。 おそらくは威力重視して造られているのだろう。 だが、そんな点はサンダウンのテクニックならば障害にすらなり得ないだろう。 シュウが言っているのはそんな事ではない。 彼の主張は、それ以前の話であった。 「リロードをしないで、どうやって12発も……」 シュウが呆れたような声で尋ねる。 サンダウンの拳銃の装弾数は6発。 これは標準的な拳銃の装弾数に等しい。 つまり、この銃はそもそも12発の連射など不可能な作りになっているはずなのだ。 「リロードはするさ……一瞬でな」 実際にカシャリと弾を込めて見せた。 神速のクイックリロードである。 サンダウンの言いたいことは分かった。 6発撃って、すぐさま弾を装填。 そして続けて6発を放つ。 すなわち、リロードを挟んでの連射をすると言っているのである。 「信じられると……思うのか?」 確かに、そんな技が命中すれば、ケフカすらも殺しきる事ができる。 だが、この場でただリロードするのと、連射の合間にリロードを挟むのではわけが違う。 そんな事が可能だとは、シュウはどうしても信じられない。 連射というからには、前に放った6発から間髪いれずに次の6発を放たなければいけないのだ。 そんな馬鹿げた話、長年銃を扱ってきたシュウでさえも聞いたことがない。 「信じてくれとしか言えない」 「…………」 シュウは、ケフカと睨みあいを続けながらサンダウンと会話をしていた。 一瞬だけ、サンダウンの瞳を見つめる。 真剣な瞳は、今の話に嘘も虚勢もない事を証明していた。 「…………頼む」 「………………」 忍者の沈黙が続く。 サンダウンの本気の眼。 そして彼の必死の願い。 それを受けて、シュウが出した結論は……。 「無理だ。逃げるぞ」 「シュウ…………!」 シュウがジリジリと後ずさりを始める。 逃走のタイミングを計っていた。 やはり、信じられない。 その技の難易度や、失敗したときのリスクを鑑みれば、当然の判断だといえる。 「次がある。あの少女を探して逃げるぞ」 「…………」 逃げようと足に力を込めたシュウ。 だが、サンダウンはそれに追従しなかった。 ケフカに向き直って銃を強く握り締める。 「ならば1人で行ってくれ。ビッキーなら東にいるだろう」 だんだんと強くなってきた風が告げる。 射撃を止めるように。 今はその時ではない、と。 「サンダウン! なぜ……」 「……俺には」 ザクザクと、道化師に向かって歩みを進める。 その背中をシュウは、『信じられない』といった目つきで睨みつけた。 サンダウン1人だけで敵うような相手じゃない。 たった1人であの悪魔と戦ったところで、ハリケンショットを撃つ暇などないはずだ。 「護りたい……ものがある……」 サンダウンが今、どういう目をしているのかシュウには分からない。 彼のいる方向からでは、その背中しか確認できない。 それで、充分だった。 「だから俺を置いて…………。……シュウ?」 歩き出したサンダウンの肩を、ガッシリと引き止めた。 そして変わりに自分がズイと前に出る。 直後、サンダウンに降り注ぐ光の柱。 シュウがスピードアップの魔法をかけたのだ。 「……3分までなら稼げる」 サンダウンのハリケンショットは、撃とうと思ってすぐに撃てるものではない。 リロードを挟んでの12連射という矛盾を可能にするには、それなりの精神統一が必要だという。 そのためにシュウが安全に稼げる限界が3分。 蓄積した疲労や、ダメージなどを考えると、それ以上は命に関わる。 「なんとか……5分、稼いでくれ」 「…………分かった」 それほど長時間、無防備な状態を晒すなど、シュウのサポートなしでこの技を放つのは不可能ではないか。 そんな様なのに、サンダウンは1人でケフカに挑もうとしていたのだ。 その無計画さに、思わず笑ってしまいそうになる。 「…………行ってくる」 「あぁ…………」 風が更に強くなってくる。 どう考えても、射撃には不向きな天候であった。 「……ぐぉッ!」 雷撃だけは、何とかわすことができた。 だが、その隙を狙って繰り出された道化師の拳が、忍者の顔面に命中。 グラリと足元がふらつくが、何とか踏ん張って倒れないように努める。 たたらを踏みつつも、何とか立ったままで次の攻撃に備えた。 ケフカが交戦を始めて3分。 その注意をサンダウンから完全に逸らす事には成功。 だが同時に、シュウの体力にも限界が来ていた。 「あひゃひゃひゃ! 動きにキレがなくなってきましたねえ」 ケフカの高笑いすらもが、肩で息をするシュウのなけなしの体力を削り取ってしまう。 それでも、意識を集中して気を失いそうになるのを必死でこらえる。 大地を踏みしめ、まだ足がマトモに機能する事を確認した。 「はぁ!」 大口で嗤う道化師に、とび蹴りを向かわせる。 作戦もなにもない。 戦闘巧者が聞いて呆れる、愚直で真っ直ぐな攻撃であった。 再確認するが、これは防戦だ。 生き残ればそれでいい。 いや、死んだとしても時間さえ稼ぐ事ができれば成功なのだ。 だが敢えて、シュウは自分からケフカの懐へと飛び込んだ。 ケフカにこの戦いの目的を悟らせない為に。 『まだ自分は、お前を殺すつもりなのだ』と思い込ませるために。 しかし、そんな単調な攻撃が当たるわけもない。 安易な攻撃をした、その代償は大きかった。 横にスライドしただけで蹴りを避けたケフカは、大きな隙を作ったシュウにファイガをお見舞いする。 「がぁッ!」 「ヒャハハハ、ブザマですねえ」 追撃をせずに、爆風で吹き飛んだシュウを指差して笑う。 もうサンダウンの事などこれっぽちも気にしていないケフカには、短期決戦で済ませる気は皆無なようだ。 なぶり殺しにシフトしてくれた事は、シュウにとっては忌々しい反面、好都合であった。 (サンダウン……まだか……!) ドロリと吐き出した血が、健気に生えている雑草を汚す。 ここにきての魔法の直撃は、あまりにも痛い。 体力をごっそりと奪われてしまった。 立ち上がろうと四肢に力を込めるが、限界を超えた肉体はそれの作業にすらも悲鳴を上げる。 4分経過。 もうそろそろ、ハリケンショットとやらが発動してもいいころだ。 もはや、いつ殺されてもおかしくない。 あと1分という短いはずの時間が、永遠に終わらないような気にさえなってくる。 (やはり、無理だったのでは……?) そんな疑いが浮かんできた。 そんなネガティブな考えを、どうにか脳から消し去る。 信じると誓ったはずだ。 かつて共に世界を救った、トッシュやエルク。 今だけは、彼らと同じように、サンダウンの事を信頼すると決めたのだ。 (嵐は必ず……起こる!) 限界を主張する足を無視して、なんとか立ち上がる。 魔法でつけられた傷口から、軽く血が噴出した。 もう、目の焦点が定まらない。 ケフカが、5人くらいに見える。 遥かに続く平坦な筈の草原は、大海原のように波打っていた。 「……はぁ……っぐ!」 横から吹き付けた風に煽られて、よろけてしまう。 シュウがいつも支配しているはずの風。 それすらも、敵となって彼の前に立ちはだかる。 4分30秒経過。 強風は、ここにきて更に強さを増してきた。 天が、サンダウンの射撃の邪魔をしているのだ。 人の分際で、嵐を起こそうとしている愚か者を制裁しようとしているのだ。 「まだ立つんですか? そういう暑苦しいの、ダーイキライなんです!」 そう叫びながら両手を掲げ、魔法を展開する。 それが炎なのか、冷気なのか、雷なのか、もうシュウには分からなかった。 感覚器官が正常に機能していないのだから。 限界など、当の昔に通り過ぎた。 彼は、気力で立っているのだ。 (…………立つさ) 本当ならば、ケフカにそう言ってやりたい。 だけど、喋る体力すらも惜しいのだ。 そんな彼が選択した攻撃は、突進。 捨て身とか、そんなレベルじゃない。 ただ、それしかできないのだ。 だが、その選択は、結果的には正解であった。 「……なぁにぃぃぃ!」 巧みな戦術で自分を翻弄してきたこの忍者から、まさかタックルが飛び出てくると思っていなかったケフカ。 油断する余り、不用意に近づいてしまっていた事もあり、その対処が遅れる。 さらに、ケフカが使っていた魔法は高位の魔法で、その効果範囲も広い。 スピードアップ状態のシュウが避けられるかどうかギリギリだった事からも、その範囲の広さが伺える。 だから、タックルしてきた相手に使用したら、自分も巻き添えになる可能性だってあった。 結果として、道化師はその魔法をキャンセルし、忍者の突進を両腕でガードする事となる。 「ふんッ……調子に、乗るんじゃないッ!」 「……ぐあ!」 予想外の攻撃に、怒りを露わにするケフカ。 そのアッパーが、シュウの腹部を捉える。 続けて繰り出されたストレートが顔面にヒットし、忍者はまたしても地面に倒れこんだ。 血液の飛沫が、赤い虹を形成する。 それがケフカには、たまらなく汚いものに映った。 「ヒャヒャヒャヒャ! そうして這い蹲っているのがオニアイですよ!」 もはやシュウには、その笑い声すらも聞こえない。 もう、敵が誰だとか関係なかった。 ゆっくりと、老人のように立ち上がる。 ただ彼は、嵐を待っていた。 (……立つさ…………) 中腰になったあたりで、一度派手に転んだ。 傷だらけの身体が、地面と擦れる。 だが、シュウはその痛みすらも感じることはできない。 間髪いれずに、もう一度立ち上がろうとする。 嫌になるほどの晴天の中で、馬鹿みたいに嵐を信じていた。 酷く、惨めなで誇らしい気分だった。 4分50秒。 カウントダウンが始まる。 (……何度でも…………) 強風に背中を押されて、立ち上がる。 動かないはずの両腕に、『まだ行けるよな?』と問いかけた。 『当たり前だ』と、右腕。 『愚問だ』と、左腕。 『それでこそ俺の身体だ』、と忍者。 強くなった風は、やがて暴風に変わるのだろうか。 その答えが出るまで、あと10秒。 いや、もう残り8秒になる。 途方もなく、長い。 「……シィッ!」 渾身のパンチは空を切り、勢い余った忍者がよろける。 屈んだ忍者の後頭部に、唾を吐き捨てピエロが笑った。 これが好機とケフカは魔法を発動させようとした。 だが、忍者はまだ終わらない。 重力に逆らう事を止めて素直に地面に手をつき、その手を軸にコマのように回転。 しゃがんだままで回し蹴りを放ったのだ。 あと5秒。 「どこにそんな体力があるんダヨ?!」 足払いを受けて、ケフカの身体が宙を浮く。 だが、そのまま転んでくれるほど甘くはない。 地面に手をつくと、そのまま側転。 クルリと一回転して華麗に着地を決める。 その瞬間に生まれた余りにも短い隙を、好機と言っていいのかは微妙である。 だが忍者は、そこを狙って最後の攻撃に出た。 あと3秒。 (嵐よ……来い……) バネのように立ち上がって、走り出す。 その手には、友の刀。 不慣れな武器ではあったが、殴るよりは威力が高いだろうと踏んだのだ。 刹那のチャンスを見計らい、シュウの斬撃が放たれた。 もはやケフカにも、軽口を叩く余裕などない。 紅蓮の一撃を右手で簡単にいなすと、右フックをシュウの頬に浴びせる。 グラリとその身体が揺れるが、それでもシュウは倒れない。 だが、刀は今の衝撃でどこかへと吹き飛ばされてしまった。 最後の攻撃は、あっけなく失敗に終わる。 攻撃が空振りに終わったとて、そんな事を嘆く余裕はない。 元よりこれは、時間稼ぎ。 魔法だけは出させないよう、接近戦を続けさえすればそれでよかった。 あと、2秒。 即座に繰り出されたケフカのキックを受け止める。 両腕に響いたがぁんという衝撃は、骨を伝って全身に伝わる。 更に、ガードが降りたところに頭突きを食らい、意識が遠のきそうになる。 流れ出た血が目に入るが、その影響は少ない。 定まることのないフラフラの視界など、使い物になるはずがなかった。 今となっては、皮膚感覚のほうがまだ頼りになる。 (なんでもいい、かわさなくては) 距離をとったケフカが放つのは、パンチか、キックか、頭突きか。 次の1撃さえ、かわせれば……。 道化師が最後に放った攻撃は……。 「ファイガ」 当然ながら、魔法であった。 距離を取ったのだから、得意の魔法を使わない手はないだろう。 限界を迎えたシュウは、そんな事すらも考えられなかったのだ。 脳に供給する分の酸素を、無意識下で運動の方に回していたのかも知れない。 巨大な炎が……弾けた。 あと、1秒。 「風は、吹く……」 全身から血を噴出しながら、シュウが倒れる。 男は、まだ死んでいなかった。 限界を超えて戦い続けた身体に魔法を受けても、まだ生きていた。 意識して魔法を避けたわけじゃない。 ただ、彼は前進したのだ。 先述したように、ケフカの魔法の効果範囲は広い。 そして、ある程度距離を取ったとはいえ、ケフカとの忍者はそれほど離れてはいなかった。 シュウを中心として魔法を展開してしまうと、ケフカ自身も巻き込んでしまう。 それを恐れて、道化師は忍者の後方に魔法を放ち、彼をそれに巻き込ませようとした。 だが、忍者は高速で前進した。 道化師と戦い続けようとしたから。 その結果、魔法はシュウに殆ど命中することはなかった。 「必ず……吹く!」 体内時計が、正確に5分を告げたのを忍者は感じた。 強くなった風は、更に勢力を増して嵐と生まれ変わるのだ。 そう、忍者は信じる。 あと、0秒。約束の時間だ。 戦い続けた男に対して、天は残酷であった。 風が……止んだ。 だんだんとその強さを増してきた風が、ピタリと止んだのだ。 銃弾は飛んでこない。 もう、限界であった。 「そうか……」 前進を続ける身体の力が抜ける。 前のめりに傾いた忍者は、そのまま地面に倒れ付した。 男が待ち焦がれた嵐は……起きなかった。 「そうか、失敗したか」 サンダウンは責めはしない。 彼はおそらく、嘘などついてなかったのだから。 彼を信じた事に、後悔はなかった。 グルリと回って、仰向けになる。 見上げた空は、憎たらしいほど青く静かだった。 そう、こんな日は…………。 時系列順で読む BACK△073-1 シュウ、『嵐』に託すNext▼073-3 サンダウン、『花』を見守る 投下順で読む BACK△073-1 シュウ、『嵐』に託すNext▼073-3 サンダウン、『花』を見守る 073-1 シュウ、『嵐』に託す シュウ 073-2 サンダウン、『花』を見守る サンダウン ケフカ ビッキー ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/114.html
傍らにいぬ君よ ◆iDqvc5TpTI 夜の蚊帳は開け放たれ、天の座を取り戻そうと太陽が重い腰を上げる中、二組計5人の人間が対峙する。 一組目は見るからに怪しげな男女のペア。 片や黒装束、片や奇妙なぬいぐるみを纏い、共に陽の光を避けるかのように闇に紛れている。 それも仕方のなきこと。 シュウとマリアベル、忍者とノーブルレッド。 彼らほど太陽に照らされた世界が似合わないコンビは滅多にいまい。 対する二組目も、これはこれで奇妙な組み合わせだ。 右後方に桃色の髪の美しい女性を。 左後方に緑髪の可愛らしい少女を。 両手に花とでも言うべき光景だが、中心に立つ男はいささか年齢的に女性陣に釣り合いそうにない。 事実、男――サンダウンの庇う二輪の花――ロザリーとニノは、それぞれが別々にちゃんとした恋人のいる身だったりする。 そしてそのことが、この鉢合わせの状況を構築する一因ともなったのだ。 事の発端は数分前。 カエルとストレイボウと別れ、城下町の出口にさしかかったまさにその時、シュウとマリアベルは無人の街に似つかわしくない爆音を耳に した。 続いて目に映ったのは、森の中からもうもうと空へと上がりいく一条の煙。 共に『炎』を扱う人物に心当たりのある二人は、すぐさま現場に急行。 判断自体は素早かったものの、女性二人の速度に合わせなければならなかったサンダウン達を補足したのだ。 早くも訪れた新たなる出会いの機会。 先頭を歩く男の服装が見慣れた荒野を渡る者が好む服装であることにややがっかりするも、 シュウが言うには当然といえば当然かもしれないが、彼の世界にも砂漠や荒野は存在していたという。 外見だけでファルガイア出身と決めてかかるは早計だ。 早く逢って話をしてみたいと、長く一人居城に閉じこもっていた不死者の心は逸る。 そんな彼女とは対照的に忍者は気を引き締める。 疑心暗鬼が過ぎると少女に言われたばかりではあったが、今回は状況が状況だ。 戦闘が起きたのだと決め付けるほど愚かではないが、爆発が起きたのは確かなのだ。 見たところ逃げるかの如く走ってはいるものの、件の3人に目立った傷はない。 他人と組んでいる上に、明らかに年配の男は少女達に気を配っていることからも少なくとも彼は安全だとは思いたいところだが。 かって自らの甘さから手痛い失敗を犯したことのあるシュウは、隠れて様子を見ることを提案する。 案の定マリアベルにはいい顔をされなかったが、浮かれ気味なことを自覚していた吸血鬼の少女は、渋々と最後には折れたのだった。 しかし、思わぬ誤算がシュウ達に立ち塞がった。 三つもだ。 一つは既に夜が明けていたこと。 場所が森なだけに影や闇は存在してはいたが、忍者はともかく夜の支配者が全力を発揮するにはいささか役不足だった。 もう一つはサンダウンという優秀なガンマンの存在。 伝説にまで謳われた保安官である彼の視覚、聴覚、皮膚感覚をフルに活かしての気配察知能力の高さは並尋常のものではない。 そして、最も予想外だった最後の一つは。 「ジャファ、ル?」 凄腕の暗殺者を恋人に持つ少女が、無意識のうちに彼の影を求め、周囲に気を配っていたこと。 ニノ自身にこそ隠行の技能はないものの、彼女は暗殺集団に身を置き続けていたのだ。 僅かにとはいえサンダウンに先んじて、潜んでいたシュウを見つけたのは当然の帰結だったのかもしれない。 「違う。誰っ!?」 「「「……っ!!」」」 衣装の類似に膨らんだ少女の期待が弾けるとともに、動きを見せたのは三人の男女。 ばれてしまえば隠れるているのは逆効果だと踏み、シュウとマリアベルが姿を現す。 シュウの手には万一に備え握られし獲物。 だが、それが突きつけられるよりも、二人の女性を庇おうと前に出たサンダウンの方が早い。 重ねて言うが、彼は凄腕のガンマンなのだ。 早撃ち、及びその初動作であるクイックドロウはお手の物。 「しまっ……!?」 シュウさえ目を見張る一部たりとも無駄のない動作で素早く腕を振り抜き……、 「俺達に殺し合う気はない。降りかかる火の粉は……払うがな」 両の手を天へと挙げた。 ようやっと状況を理解したロザリーと気落ちした表情をひっこめようとしているニノも続く。 戦意はない。 身をもって示す3人に、応えるようにシュウは武器を相手のほうへと投げ捨て、マリアベルも安堵の息を漏らす。 「同感だ」 「わらわがこのような戯れに乗ることなぞなかろう」 一見すれば平和な光景。 ともに歩み寄ろうとしているかに思える。 間違ってはいない。 実際ニノやロザリーは純粋にサンダウンの行動を不戦の意思表示だととり、それに習った。 マリアベルもそんな彼らに対し気を許した。 しかしながらサンダウンとシュウにとってこれは駆け引きだ。 今のサンダウン達3人に戦う力はない。 襲われればろくに抵抗もできないまま全滅したことだろう。 よって、サンダウンは相手が隠れて近づいてきていることから、 少なくとも問答無用に力任せでかかってはくるまいと推測し、口を開いたのだ。 殺す合う気はないと、誰よりも早く。 そう、誰よりも早く、だ。 そこが最も重要なポイントだった。 何故か? 殺しあう気がないと言っておけば、武器を持っていなくとも不自然ではないからだ。 その上でかかってくるなら容赦はしないと念を押しておくことも忘れない。 直前に見せたクイックドロウのこともある。 あの速さならバックから取り出す手間も致命的なタイムラグにはならないと知らしめるには十分。 サンダウン達は武器を持っているも殺し合いに乗っていると思われたくがない故に無手である。 少しでもそう疑わせることこそが狙いだったのだ。 慎重にこちらを覗っていた相手だ。例え善人な振りをして機を狙っている悪人であっても、釘を刺すことはできる。 ロザリーやニノとは違い、恐らくこの二人には身を護る以上の手段がある。 でなければ、理由を知る自分達以外の者が火災の起きた場所へとのこのこと近づきはしないだろう。 火のないところに煙は立たぬ。 古今東西火を放つのは夜盗や山賊、愉快犯に酔っ払いと係わり合いになりたくない類の者だと決まっている。 それでもやってくるとすれば、知り合いであるアキラのような正義感ある人間か、リスクを覚悟で人に逢おうとする実力者か。 はたまた火に誘われる者達を手にかけようとする悪人か。 守るべきものを背にサンダウンは瞳に力を宿し目で問う。 お前達はどの類だと。 相手のことを警戒しているのはシュウもまた同じだった。 武器を手放しはしたが、術という戦う手段を彼らは内に秘めている。 特にマリアベルのレッドパワーは手数、威力、範囲共にかなりのものだ。 誰しもが手馴れた装備を奪われている中、このことは大きい。 並大抵の事態には対応できることだろう。 要するにドッカンピストルは相手の下心の有無を測るための餌だ。 殺傷力がなく、一発限り使い捨てであるため、どう転んでもシュウ達二人を倒すことはできない。 もっとも、自分達のように無手での戦いを心得ている可能性もあり、そうなると策に掛からなかったとしても信用はできない。 打って出た結果、サンダウンの視線がシュウとマリアベルに注がれたままだったにも関わらず、 彼が緊張を解かないのはそういうわけだった。 傍らの少女が何度も言わせるなとばかりに紅き眼で抗議されるも迂闊なことはできないのだ。 多分自分と同じ辛さを味わったこの不死の少女を護る為にも。 サンダウンとシュウ。 共に寡黙なようでいて胸の奥に熱き想いを秘めた男達は無言でにらみあったまま。 さながらガンマン同士の決闘を思わせる二人の静かな気魄に空気が張り詰める。 10秒、20秒、30秒……。 いつ終ると知れず刹那が永遠に続くかに思えた状況を動かしたのはまたしても二ノだった。 「……どうして?」 漏れでたのは言葉と思い。 どうしてまたこんなことになっちゃうの? あたし嫌だよ。 どうして?どうして戦わなきゃいけないの!? 話し合おうとしているのに、どうしてそんなにぎすぎすしてるの! 「やだよ。あたしは、嫌だ! ここにはフロリーナもエルクもリンもヘクトルもジャファルだっているんだよっ!?」 フォルブレイズを抱えた腕に力が篭る。 そうだ、サンダウンさん達に助けられて落ち着いて以来気になっていたけれど、この魔道書には覚えがある。 当たり前だ。 さっきは色々動揺していて気付けなかったけど、ニノはそれが使われる様を見たことがあった。 激しい戦いの最中、横目に見た程度だ。 すぐには思い出せなかったのは仕方がなかったのかもしれない。 いや。 何よりも。 あの最後の決戦でニノの気はそれどころではなかったのだ。 ブレンダン、ロイド、ライナス……。 間に合わず殺された父が。 避け得ずに戦った兄が。 知らぬ間に奪われたもう一人の兄が。 手の届かないところに行ってしまった、大事な人たちが。 モルフとして、傀儡として、駒として。 少女の行方を遮っていたのだから。 「あたしは、辛かった!本物でも偽者でも、ロイド兄ちゃんやライナス兄ちゃん、父さんと戦ってる時、心が痛くて痛くて仕方なかった!」 ニノはずっと、ずっと、後悔していた。 どうしてちゃんと話できなかったんだろう。 もっとしっかりしてたなら、あんな別れ方もしないで済んだかもしれなかったんじゃないか。 何度も何度も何度も何度も、悩んで、悔やんで、泣いて。 決めた。 決めたのだ。 「あたしは、あたしは戦いたくない! もうあんなのは沢山だもん。あなた達も、そうじゃ、ないの……?」 今度同じようなことがあったら絶対に失はせはしないと。 「そう……、ですね」 ロザリーもまた泣きじゃくる少女を後ろから抱きしめ、言葉を紡ぐ。 「生きているって素晴しいことだと思います。 会いたい人に会える……。ただそれだけのことがどんなに尊いことか……」 脳裏に浮かぶあの人はこの島のどこで何をしているのだろうか? ロザリーは想う。 人間のことを一概に悪だとする考えからは抜け出てくれたのだ。 すぐに打ち解けることは無理でも、誰かに刃を向けてはいないと信じたい。 けれども。 人を憎んでではなく、ただ、力の無い自分を守らんがために剣を振るっているとしたら。 「信じてもらえないかもしれませんが、私は一度死んだことがあります。痛くて、暗くて、怖くて、辛くて。 でも、それ以上に。私を亡くして、悲しみにくれたあの方を見ていることしかできなかったことが……。 あんな感情を他の誰かに味わってほしくなんかありません」 あの時とは違い進化の秘法に犯され、元に戻れる確証もなかったあの時とは違う今。 言葉が届かなかったとして、かってそうしたように、命を奪ってでも止めてくれとサンダウンに頼むことはできるだろうか? そもそも殺人を殺しをもって止めることは間違っているのでは? デイパックに目を移す。 一本のナイフ。 ちっぽけなナイフ。 人を殺すには十分な道具。 ……使いたくない。 己が命。愛する人の心と体。争いの無い世界。 幸運にも失った全てを取り戻せ、誰よりもその尊さを知った少女は、考えた末に言葉を変えて、再び願う。 「お願いします。誰にも罪を重ねさせたくないのです……。私と、私たちと! ピサロ様を、この殺し合いを止めて下さい!」 桃色の髪を揺らし頭を下げる少女を前にして、やれやれとマリアベルは息を吐いた。 ニノとロザリーの気持ちが本物だということは痛いほど伝わってきている。 これ以上疑う余地はない。 「のう、シュウ。もういいじゃろ、この辺で。こやつらが嘘を言ってるようには思えぬ。それにエルクとやらはお主の知り合いの名でもなかったか?」 初対面の自分をあっさり信じたわりに、それから後は他人をいささか警戒しっぱなしの男を諌める。 「……一人になればなるほど……人は、人のぬくもりが欲しくなってしまう。お前なら……分かるはずだ」 驚くべきことにサンダウンも少女に追随する。 その顔に既に敵意はない。 相対したことで感じ取ったのだ。 シュウの、そしてマリアベルの根底にあり彼らが共通して一時抱いていた感情を。 ――孤独を それが答え。 シュウとマリアベルが互いに相手をすぐ信じられたのも、 知らずのうちに相手が優勝を―――自分や誰かが一人になることを望まない人間だと直感したから。 危険な目にあわせないようにと過敏になっていたのもしかり。 常からして仲間思いの彼だが、世界を救うことと引き換えにアーク達を死なせてしまったことも、尾を引いていたのだろう。 「ほれ、やっこさんの方が物分りがいいようじゃぞ? 全く、お得意のハンターの勘とやらもあてにならんのう!」 何故だか薄い胸を張りふんぞり返るマリアベル。 シュウもこうなっては、自分が一人相撲をしていたらしいと認めるしかなく頷いた。 「違いない」 口元に僅かな笑みを浮かべて。 シュウは一人森の中を駆け抜けていた。 あの後気まずくなったシュウが、脱兎のごとく逃げ出したというわけでは勿論ない。 戦力不足の3人の護衛を、仲間内では最強であるマリアベルに任せ、自らは偵察をかって出たのだ。 自分達のように爆発に呼び寄せられた参加者が、他にもまだ来るかもしれないと踏んで。 5人で改めて情報交換したものの、探し人のことについて知りえた者は誰一人いなかった。 どころか、ニノの言うエルクとシュウの言うエルクが、同名の別人であることが発覚。 カエル達との接触時から同名の人間のことを想定していたとはいえ、こうなっては他の名前も鵜呑みはできない。 サンダウンの言うアキラが、ストレイボウから聞いた人物像と一致していたことから、少なくとも無関係の者ばかり呼ばれたわけではないはずだが。 「エルク……」 ニノの知り合いの方は、よく難しい本を読んでいる礼儀正しい少年らしい。 ニノも字はあまり読めないが何度か興味から本を覗いたとか何とか。 よくも同じ名前でここまで正反対になるものだ。 そんな小さなことで笑えることが素直にうれしい。 「リーザ、トッシュ、ちょこ」 名簿に記載されていた覚えのある名前。 果たしてこの中の何人が自分の知り合いだろうか。 分かるすべの無い今、シュウはただただ全員の無事を祈った。 【I-8東部 一日目 早朝】 【シュウ@アークザラッドⅡ】 [状態]:健康 [装備]:パワーマフラー@クロノトリガー [道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーⅥ、紅蓮@アークザラッドⅡ、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。 1:I-8の爆発現場に向かい、誰かやってこないか偵察。 2:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間と合流。 3:この殺し合いについての情報を得る。 4:首輪の解除。 5:トッシュに紅蓮を渡す。 6:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。 [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※扇動を警戒しています。 ※時限爆弾は現在使用不可です。 「シュウさん、大丈夫でしょうか」 「なに、心配あるまい。おぬしが渡した薬やらもあるしの」 遭遇時のいざこざに時間を取られてしまった残る4人は、シュウとの打ち合わせどおり南下していた。 西は目立つ事故現場、北は未踏地帯、東にはシュウが危険と見なしたカエル。 こうなっては安全だと確認している無人の城下町に身を潜めるしかない。 「カエル、か……」 マリアベルは不機嫌そうに眉をひそめる。 サンダウン達との一件でシュウも少しは懲りたかと思っていたが、そこだけはガンと譲ろうとせず。 バカチンじゃと怒鳴り散らしはしたが、どこ吹く風。 共通の知り合いを持つサンダウンもストレイボウのことは少し気にしているようではあったものの。 結局はカエルに気をつけろと強く主張するシュウに根負けする形となった。 「ふむ、それよりもクレストグラフは使えそうか?」 ロザリーとニノの手に握られているカードを見やる。 サンダウンも銃を手に入れたとはいえ、使い捨てドッカンピストルでは本領発揮には程遠い。 特に弾が一発限りでは心もとない。 そこでリルカと合流するまでという条件で、マタンゴと交換にクレストグラフを二人に貸し与えたのだ。 使い勝手のよさに特化したクレストグラフによる魔法は、魔力さえ注入できれば誰でも使えるはず。 そのマリアベルの読みどおり、 「わっ、すごいなー、理魔法よりかんたーん!」 「私にも使えるようですね」 ニノとロザリーの魔力に応え、魔法が発現する。 特に理とクレストの司るエレメントの属性が一致しているからか、ニノの筋はいい。 威力だけならリルカ以上だろう。 あくまでも付け焼刃ではあるが上々だ。 マタンゴも人にとっては毒だが、人外である自分ならフォースキャロット代わりの使用もできよう。 「あ奴も初めてわらわの力を見た時は、怯えもせずはしゃいで感心していたのう……」 どのカードを所持するかをわいわいと話し合ってる二人を眺めつつ過去に浸っていると、 同じようにしていたサンダウンが声を声をかけてきた。 何か悩み事でもあるのかと。 若造がわらわを心配するには早すぎると笑って返したが、心中に浮かんだ問いは一向に消えはしなかった。 果たして同名の人間は居たとしても、同姓同名の人間なんてそうほいほい居るのだろうか。 「生き返ったか……。そうじゃの、ここにも一人実例が居るのだし、お主もまたそうなのかの、アナスタシア……」 空を見上げる。何時しか太陽は昇りきっていた。 【I-9とI-8の境界付近 一日目 早朝】 【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:健康 [装備]:マリアベルの着ぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LIVE A LIVE [思考] 基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。 1:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。 2:この殺し合いについての情報を得る。 3:首輪の解除。 4:この機械を調べたい。 5:リルカにクレストグラフを渡す。 6:アカ&アオも探したい。 7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った? 8:アキラは信頼できる。 ピサロに警戒。カエルに一応警戒? [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。 ※レッドパワーはすべて習得しています。 【サンダウン@LIVE A LIVE】 [状態]:健康 [装備]:使い捨てドッカンピストル@クロノ・トリガー [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出 1:ピサロの捜索 2:ひとまず南下してシュウの報告を待つ 2:ロザリー、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間の捜索 3:自分の仲間(アキラ、レイ・クウゴ、高原日勝)の捜索(そう簡単には死ぬことはないと思っているので上記の人物よりは優先度は下) 4:まともな銃がほしい 5:アキラを知るストレイボウにやや興味有り [備考] 参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。 【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】 [状態]:健康 [装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーⅥ、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣、 クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーⅥ、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いを止める 1:ピサロ様を捜す 2:ひとまず南下してシュウの報告を待つ 3:ユーリル、アリーナ、トルネコ、ミネアたちとの合流 4:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す [備考] ※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。 ※クレストグラフの魔法は不明です。 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:健康 [装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式 [思考] 基本:全員で生き残る 1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流 2:ひとまず南下してシュウの報告を待つ 3:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す 4:フォルブレイズの理を読み進めたい [備考]: ※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC ※終章後より参戦 ※クレストグラフの魔法は不明です。 時系列順で読む BACK△048 『勇者』の意味、『英雄』の真実Next▼050 三人でいたい 投下順で読む BACK△048 『勇者』の意味、『英雄』の真実Next▼050 三人でいたい 029 ストレイボウ、『友』を信じる シュウ 060 心の行き着く先 マリアベル 028 届いた手、届いた心 サンダウン ロザリー ニノ ▲
https://w.atwiki.jp/powerkoil18/pages/41.html
トレーニング中級編(3)〜ローダウンの導入〜 目次 ローダウンの導入<一瞬カップ>の原理 <一瞬カップ>の動作イメージ リストを<脱力>する感覚をつかむ ローダウン効果と振り子スイングの関係 筋力がない場合のローダウン 体が大きい場合のローダウン ローダウンの導入 <一瞬カップ>の原理 <一瞬カップ>の発生する原理を説明します。 バックスイングがトップにある状態から話を進めます。 5歩目の踏み込みと同時にフォワードスイングを開始しますが、 ここで重要なのはスイングの中に「ボールを引っ張る」という動作を加えることです。 振り子の糸をピンと張るようなイメージです。 この「ボールを引っ張る」ために蹴り足での強いキックが必要になります。 これは<一瞬カップ>のための重要な予備動作です。 次に蹴り足により最大に加速された体が減速をはじめる直前、 先ほどの「ボールを引っ張る」という動作が 「ボールを引っ張り上げる」という動作にかわります。 ガツンと急激に向きが変わるわけでなく、緩やかなベクトルの変化です。 <手遅れ>とボールと支点(肩)の位置関係により 自動的に生じる現象で意識しておこなう必要はありません。 これにより球は遠心力からほぼ完全に解放されます。 ボウラーの体とボールは平行に移動し、 カーリングでストーンと選手が一緒に滑っているような状態になります。 この辺りから一般的にフラットスポットといわれる部分に入りますが、 上で述べたように重要なのは「ボールの引き上げ」であって、 「ボールがレーンと平行に移動するように〜」という よくある解説は仕組みを理解できずに 動作を表面的になぞっているだけなので気にすることはありません。 次に5歩目のブレーキにより体が減速をはじめると、 「ボールを引っ張り上げる」動作の余力によって、 ゴムやバネが縮むように肘が曲がり、 それをきっかけに肘からのスイングがはじまります。 腕力でボールを持ちあげるのではありません。 電車が急ブレーキをかけたときに、 つり革が進行方向にゆれるのと同じ現象です。 あとは肘を伸ばせば勝手にカップができます。 重要なのは体の減速がはじまった時の腕の角度です。 平均的には45度ぐらいでしょう。 腕が遅すぎると肘が曲がりすぎて球速が落ち、 速すぎれば充分にカップを作れません。 投げ込んでジャストな<位置/タイミング>をつかんでください。 ボールをぶら下げただけでは解りにくいかもしれませんが、 常にボールは手のひらによって押されています。 スイング中は常に内側に巻き込もうとする力、 カップリストを作ろうとする力が働いているのです。 球に掛かる遠心力や重力を無視できるくらい 小さくする事でこの作用が際だち、 肘からのスイングと合わせ、<一瞬カップ>を作る助けとなります。 サムのフォワードが大きいほどこの力も大きくなります。 リリースのタイミングがシビアになりますが、 上級者がこのドリルを好むはこのためです。 以上が<一瞬カップ>発生のしくみになります。 まず小さなフォームで一つ一つの作用を感じながら、 少しずつフォームを大きくし徐々にメリハリをつけていくのがいいでしょう。 バックスイングのトップが膝の高さほどの小さなフォームでも、 一連の作用はしっかり感じ取れるはずです。 ▲ <一瞬カップ>の動作イメージ <位置/タイミング>でカップリストをつくる <一瞬カップ>の動作イメージを理解しましょう。 まず感覚をつかむためにガチャッとまわして開けるタイプのドアノブを 回転させるときの手の動きを考えてみます。 肩を扉に近づけて逆手に持つように かるくドアノブをにぎってみましょう。 すこし肘をたわませドアノブをにぎった状態で、 ノブを時計回り(開く方)に回してみます。 そのときノブは扉に固定されているのですから 手の高さは変わっていません。 必然的に肘を伸ばすことになります。 その動きがローダウンの<一瞬カップ>の動作です。 繰り返しますが手首の力でボールを持ち上げているのではありません。 持ち上げればボールの位置が上に移動します。 その逆で肘を伸ばすことで手をボールの下に持っていっているのです。 ボール自体には力を加えてようとしていないことに注意してください。 もし手首の力でボールを持ち上げようとすれば ボールの重さをまともに受け止めることになります。 それでは途方もなく大きな力が必要です。 <一瞬カップ>では肘を伸ばして手を下に入れているので ボールの位置自体は変わっていませんし、 まともにボールの重さを感じていません。 そのように<一瞬カップ>で手首を勝たせているのは 手首の力ではなく肘を伸ばす動作です。 次はドアノブをがちゃがちゃと軽くすばやく回してみましょう。 手首よりも肘の曲げ伸ばしで回転させている感覚があるはずです。 それがローダウンリリースの動きです。 親指を下に向ける、手首を倒すことでボールに回転を与えています。 <リフトアップ>で回しているのではありません。 ドアノブが扉に固定されている以上は リフトアンドターンのように手首を固定したまま <リフトアップ>で回転させることはできません。 リフトしようとすればドアノブをひきちぎってしまいます。 <一瞬カップ>を実現するためには 手首は<脱力>している必要があります。 手首が<脱力>していないと肘を伸ばしたときに 手が肘と一緒に下におりてしまうからです。 <脱力>し手首が柔らかい状態になっていることで、 肘を伸ばしたときに手のひらは動かず 手首の関節だけが移動し「カクッ」とボールの下に入ります。 上記の理由から力で手首を勝たせようとすると 手首が固定されてしまい逆にカップリストにならなくなります。 重要なのは手首を<脱力>し下半身をうまく使うことです。 ▲ リストを<脱力>する感覚をつかむ <一瞬カップ>の動作をおこなうためには リストを<脱力>している必要があります。 重いボールでは力んでしまいますから ボール以外の軽いものを使って練習をします。 手提げのバッグを用意しボールに見立ててスイングします。 スイングの両端でバッグが軽くなることを感じます。 さらにスイングを大きくするとバッグが浮き上がってくることがわかります。 そのときに感覚を鋭くすると自分の肘やリストも 前に振られているのが感じられるはずです。 スイングの端でバッグが浮き上がるタイミングを掴めたら 浮き上がった瞬間にすかさず肘を伸ばします。 するとバッグはさらに跳ねて手のひらの上に来ます。 バッグが手のひらの上にきた瞬間にすばやくリストを倒し手前に引きます。 タイミングが良ければバッグは勢いよく回転するでしょう。 上記の練習には下半身の動きがありません。 ボールはバッグなどよりはるかに重いので 実際の投球ではステップの反動を利用しなければ 浮き上がる効果はほとんど得られませんので注意してください。 ▲ ローダウン効果と振り子スイングの関係 ローダウンはボールの落下速度を回転に変えるリリースです。 そのためリリースの前にボールの下に手を入れる必要があります。 ボールの下に手が来るように重心移動をうまくすることが 回転数をあげるためのポイントです。 リストを勝たせるために重要なのは腕の力よりも下半身の力であり なにより<位置/タイミング>であるといえるでしょう。 ただ良いタイミングというのは人それぞれに違うもので その感覚は投げながらつかむ他はありません。 そのようにボールの下に深く手が入っているほど回転数は上がりますが、 肘を曲げてボールを抱え込むほどに ボールの落下速度が回転に変わる<ローダウン効果>が高まるため 振り子の原理がはたらかなくなり球速が下がっていきます。 この現象を実感するためにボールに親指を入れず 手のひらにボールをのせた状態で速いボールを投げてみましょう。 まだ自力でカップリストが作れない人は 2〜3ポンド軽めのハウスボールでおこなってください。 リリース前にボールが落ちてしまわないように 左手をボールに添えサムの代わりにします。 リリースと同時に左手を離してください。 下記のフォームを参考にしてください。 ジェイソン・ベルモンテ このときリリースは10cmより高くならないようにします。 またアプローチでいつも以上に走ったりせず、 普段の投球となるべく近いフォームで投げてください。 かなりボールを走らせるのが難しいことがわかります。 それが<ローダウン効果>を最大に使っている状態です。 <ローダウン効果>によって ボールの落下速度をすべて回転に変えた場合は 上記のサムレスの投球と同じ状態になります。 通常の投球はスイング、つまり腕によって球速が得られますが、 ローダウンはその速度を回転に変えてしまうので球速がなくなります。 すなわち腕の力以外によって球速を上げなければいけません。 なんらかの方法でのプッシュの動作が必要です。 ただ<ローダウン効果>は<抱え込み>の深さによって変えられます。 <ローダウン効果>は常に100%使う必要はありません。 肘をあまり曲げず<抱え込み>を浅くして <ローダウン効果>を減らすことにより 振り子スイングの原理を増やせば 回転は減りますが球速を上げることができます。 ローダウン効果を使うほど回転は増え、振り子の要素は減り球速が落ちる ローダウン効果を減らすほど回転は減り、振り子の要素が増え球速があがる ここでいう球速はあくまで振り子スイングで得られるものに限ります。 腰のひねりなどによるプッシュ効果は含まれていないことに注意してください。 ▲ 筋力がない場合のローダウン 回転数を上げると曲がりが大きくなるためそれだけ球速も必要になります。 上記のように<ローダウン効果>を使うほどにオールドスタイルのように 振り子の原理によって球速を得ることができませんから、 別の方法で球速を得る必要が出てきます。 その場合はおもに腰の力を使うことになりますが、 そのプッシュ効果については別に述べることにして ここでは<ローダウン効果>を制限して使用する場合について考えます。 <ローダウン効果>を減らした場合は肘曲げが浅くなりますので、 振り子の原理がはたらき、それなりに球速が得られます。 ただし振り子の原理がはたらくと遠心力で腕が下に引っぱられます。 肘をたわめたままスイングするのはかなり腕力が必要です。 あらかじめリストを勝たせているとさらに力が要ります。 <ローダウン効果>を得るためにはリリース時に 手がボールの下に入っていればいいのですから フォワードスイング中はリストがどうなっていてもかまいません。 そこで肘を曲げず、リストもブロークンの状態でスイングするという もっとも楽な状態からリリース時にボールの下に手を入れる方法について考えます。 ローダウンの基本のとおりに <抱え込み>から<一瞬カップ>をつくるために <手遅れ>の<位置/タイミング>で投球します。 フォーワードスイング中に肘から先が<脱力>できていれば 4歩目からのワンステップ投球の動作で得られる 加速と減速による反動で肘から先が跳ね上がりボールが浮き上がります。 ただし腕がのび切った状態でスイングしていますから ボールが跳ねあがる具合はかなり小さくなります。 跳ね上がり具合をカバーするため 通常より遅くまでボールを持っているようにします。 それにより<抱え込み>が浅くてもフィンガーはボールの下に来ます。 そうしてリストがあがってきたところで体を沈めます。 そうすると肩の位置が下がって肘を伸ばすのと 同じ作用がおこり<一瞬カップ>になります。 上記の方法であれば上半身の筋力がなくても そこそこの回転と球速のローダウンリリースがおこなえるでしょう。 球速が足りなければ少しアプローチを走ればいいでしょう。 ▲ 体が大きい場合のローダウン 次に長身のボウラーが<ローダウン効果>を得る方法を考えます。 体が大きい場合は筋力に恵まれますが、 それだけ体重もあり関節に負担がかかるため 速く走ったり、すばやく動くことが難しい人が多いでしょう。 ワンステップ投球がうまくできなければ 加速と減速によってボールを浮かせないことになります。 <一瞬カップ>を作るのが難しくなります。 また速く走れなければアプローチの速度も出せません。 すなわち球速を得る方法が限られます。 しかし身長がある場合はバックスイングが低くても ボールの位置が高くなるので落下速度が容易に得られます。 ここに回転を得る材料があります。 腕力があれば肘をたわめた状態でも普通にスイングできるでしょう。 つまり振り子の原理をいかして球速をだせるということです。 アプローチはゆっくりでもかまわないことになります。 手が長ければたわめた肘を伸ばした時の落差も大きくなります。 肘を伸ばすことにより<一瞬カップ>からローダウンのリリースをおこなえます。 体が大きいとそれだけ<ローダウン効果>を起こしえる材料が多いということになります。 上記の方法で並のボウラーより球速と回転のあるボールが行くでしょう。 ただし体の使い方が間違っていればローダウンになりません。 もっとも重要なのは<位置/タイミング>であることに注意してください。 ▲ 前へ
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/132.html
心の行き着く先 ◆6XQgLQ9rNg 星たちが散らばる天空が、目も覚めるような蒼穹に塗り替えられていく。 浮かんでいる雲は白く、回遊する鯨を思わせるほどに雄大だった。 朝の空気に微かな焦げ臭さが入り混じる。 とはいえ悪臭というほどに強烈ではない以上、さほど気にはならなかった。 既に鎮火し、立ち上っていた煙も薄くか細くなっていて、すぐに消え行くだろう。 焼け焦げた草花の中心に、ぼろぼろになったハーレーが横倒しになっている。 残骸のそばにしゃがみ込み、使えそうな部品がないか探していたシュウが手を止めたのは、声が唐突に響き渡ったからだ。 それは、魔王の声音。この殺し合いが始まってから、六時間の経過を示すものだ。 表情を変えずに、地図を取り出した。 告げられていく禁止エリアの場所、時間を書き記していく。 そして、続けられる声を耳にする。 一番最初に告げられた名は、よく知ったものだった。 リーザ。 それは、リーザ・フローラ・メラノに相違ないだろう。 無表情だったシュウの眉間に、皺が寄る。 睨み付けるように見上げた空は、嫌味なほどに澄み渡っていた。 自分やエルク、トッシュに比べれば、彼女の戦闘能力は決して高くはない。 とはいえ、だ。 共に多くの死地を潜り抜けてきた仲間である彼女が、そう簡単に殺されるとは思えなかった。 この発表が虚偽の可能性が、ふと脳裏を過ぎる。 これはあくまで『ここで殺し合いが行われている』ということに真実味を持たせ、参加者の恐怖や不安、絶望感を煽り上げるためのハッタリではないのだろうか。 そんな思考を許さないように、魔王の声は告げていく。 そのいくつかを、シュウは知っている。 トルネコ、アリーナ、レイ・クウゴ、リルカ・エレニアック。 直接の知り合いではないが、打倒魔王の力になってくれそうな者たちの名だ。 もしもオディオが事実だけを告げているのならば、もたもたしてなどいられない。 オディオの言のごとく、憎悪や怨恨を燃え滾らせた者が増えれば、それだけ殺し合いは加速するだろう。 ――あいつは、大丈夫だろうか。 ふと過ぎった心配の種は、炎使いの少年のことだ。 真偽はどうあれ、リーザの死を告げられたら、あの激情家は落ち着いてなどいられないに決まっている。 もし、『エルク』という人物がシュウのよく知る少年だとすれば、急いで合流しなければならない。 もう少しハーレーの残骸を調べたいところだが、まずはマリアベルたちと落ち合うべきだろう。 彼女らも仲間の名を呼ばれている。取り乱しはしないとは思うが、心配なことに変わりはない。 踵を返し、爆発点から立ち去ろうとして――。 シュウは、一つの影を発見する。 ◆◆ 石製の建物のとある一室には、ベッドがいくつも並んでいる。 宿として使われていたらしいその建物の中、ベッドの上に、二つの人影が並んで腰掛けていた。 オディオの声が過ぎ去って、数分。 静けさに満ちていた石の部屋に、小さな声がぽつりと生まれた。 「アリーナさんは、明るくて、前向きで、強い方でした。 一国の姫君だというのに、少しも気取らなくて、とても魅力に溢れた女性でした」 訥々と語るのは、豊かな桃色の長髪と、尖った耳が印象的な女性だ。 エルフであるロザリーが、俯き加減で語るのは、人間のこと。 「トルネコさんは、面白くて、お話が上手で、優しい方でした。 彼の周りにいるだけで、思わず楽しい気分になってしまう、素敵な男性でした」 全てが過去形で語られる言葉は、物悲しく沈痛だった。 その声を、緑髪の愛らしい少女は黙って聞いている。 手の中にあるクレストグラフが、やけに冷たくて硬かった。 「二人だけじゃありません。あのとき、蘇生を試みたクリフトさんだって、とても素晴らしい方でした。 なのに、なのに……っ!」 寒さに凍えているかのように自身を掻き抱くロザリーの手が、小刻みに震えていた。 その小さな唇は戦慄いていて、途切れたままの声の、続きを産み落とさない。 少しだけ迷ってから、ニノはおずおずと、自身の手をロザリーの手に重ねる。 ニノの方が安心感を覚えてしまうくらいに、ロザリーは温かくて柔らかかった。 エルフの女性が、手を握り返してくる。応じるように、指の力を少しだけ強くしてやる。 すると、悲痛に、悔しげに、ロザリーは、呟いた。 「涙、出ないんです。一滴も……」 ニノはちらりと、ロザリーの瞳を見る。ルビーの涙は、少しも落ちてはいなかった。 それでも、少女は手を離さない。 「私は、最低です……」 続けるロザリーの声に、ニノは首を横に振って応じた。 同意するつもりなど欠片もない。 ロザリーの声が、横顔が、瞳が、深い哀しみに沈んでいるのが分かる。 涙など落とさなくても、ロザリーが胸のうちに深く濃い悲しみを湛えていると、分かっている。 「そんなことない。今のロザリーさん見て、最低なんて誰も思いっこないよ」 だから言う。嘘偽りのない本心を、真っ直ぐに告げる。 繋いだ手は離さない。痛いくらいの力が返ってきても、構わない。 その手からも、想いを伝えたかったから。 今度はロザリーが、首を横に振っていた。 「だって、だって、私は……思ってしまったんです!」 弾かれたように、ロザリーの顔が上がる。 その美しい容貌はくしゃりと歪んでいて、今にも泣き出しそうなのに、彼女は、涙を湛えてはいなかった。 痛々しさすら感じられる表情から、ニノは目を背けない。 「多くの方が亡くなったのに! 素晴らしい方々や、サンダウンさんにマリアベルさん、シュウさんのお仲間が命を落とされてしまったのに! 私は、私は……ッ!」 堰を切ったように、ロザリーはまくし立てる。 その感情の出所がどこで、源泉が何なのか。 どんなことを想い、感じ、抱き、何を言おうとしているのか。 なんとなく、察しがついた。 「ピサロ様のお名前が呼ばれなかったことに、安堵してしまいました……。 それが嬉しくて、堪らなく安心できて、亡くなってしまった方々へ、涙を流すことすら叶わないのです……!」 懺悔するように、心情を吐露していく。 あまりに馬鹿正直なその態度のロザリーを、ニノは責められなかった。 手にロザリーの爪が食い込んでくる。その痛みに、ニノは逆らわない。 何故ならば。 「……あたしも、同じだよ」 ロザリーが言いたかったことを察せたのは、ニノが胸の奥で、同じことを思っていたからだ。 だからこそ。 罪悪感を帯びたロザリーの視線から目を背けない。 背けるつもりもない。背けたいなど、思うはずもない。 彼女が抱いている罪悪感を、共有できるのは、きっと自分だけだから。 目を見開いたロザリーに、ニノは小さく頷いた。 「正直、あたしもホッとしちゃったんだ。 フロリーナも、リンも、ヘクトルも、あたしの知ってる人じゃないかもしれないけど、エルクも。 そして誰より、ジャファルも。 みんな、みんな無事なんだって分かって、すごくホッとした」 心からの安心感を吐き出すように、ニノは溜息を漏らす。 それは、仲間たちが無事だったことへの安心感だけがもたらしたものではない。 「不謹慎だけどさ、安心してるのがあたしだけじゃなくて、嬉しかった」 「ニノさん……」 ニノが目を細めると、ロザリーの表情が少しだけ和らぎ、手を握る力が緩まっていく。 同じ罪の意識を共有することで、肩に圧し掛かる罪の重みを軽くしようとする。 それは傷の舐め合いでしかない。罪を正面から受け止められない、弱さの証明だ。 だとしても、彼女らを責める権利は、誰にもない。 大切な人たちの無事を願い、望み、喜ぶことは、決して、許されざる罪悪などではないのだから。 ◆◆ 太陽が昇り、日差しが徐々に強くなっていく。 明るさを増していく世界を、城下町にある宿屋のロビーから、奇妙な着ぐるみが眺めている。 着ぐるみの中、マリアベル・アーミティッジは、不機嫌そうに眉根を寄せていた。 苦手な日光に恨み言を漏らそうとしているわけではない。 今はもう聞こえない、魔王オディオの声。 その憎悪に溢れた音によって告げられた死者の名が、頭の中をぐるぐると回っていた。 隣室から、ニノとロザリーの話し声が微かに届いてくる。 それを聞かないようにして、マリアベルは振り返った。 椅子に、一人の男が座っている。 彼――サンダウン・キッドは、テンガロンハットを深く被り、俯いていた。 二人の間に会話はない。 サンダウンという男が、もともと寡黙なのだということは既に理解していた。 マリアベルは知っている。 一人ぼっちで自分の内に全てを溜め込むことの辛さと、無意味さを。 マリアベルは、重そうな着ぐるみを纏っているとは思えない足取りで窓際から離れると、サンダウンの向かいに座る。 「未熟なひよっ子じゃった。じゃが、いつも一所懸命で、どんなときも諦めない、強い心の持ち主であった」 サンダウンからの返事はない。だが彼は、いつしか帽子を持ち上げ、マリアベルへと視線を注いでいた。 「まだまだ未来があったというのに。頑張りすぎたんじゃろうな。バカチンが」 吐き捨てるような口調だが、言葉に込められているのは揶揄ではなく、悲しみだ。 「わらわよりも長生きしろとは言わぬ。じゃが、まだ逝くには早すぎるじゃろうに……」 親しい者や大切な人の死は、何度経験しても寂しく、辛い。 だからといって、慣れたいとは思わない。慣れてしまったら、きっと、もっと寂しいと思うから。 「……そのように思われる……リルカ・エレニアックは幸せ者だ……」 サンダウンの短い言葉に、マリアベルは哀しげに、それでも、小さく笑う。 湿っぽい気分をずっと引きずっていても、あの魔女っ子は喜ばないと思うから。 「違いないのう」 その言葉を最後に、沈黙が戻ってくる。 サンダウンを促したりはしない。そんなものが必要な子供ではないのだ。 やがて、男は声もなく立ち上がる。見上げたマリアベルの視線に、サンダウンは小さく口を開いた。 「偵察にしては遅い……様子を見てくる……」 「シュウか。奴なら大丈夫だと思うが、確かに遅いの。わらわが行こう。お主は休んでおれ」 立ち上がろうとしたマリアベルを、サンダウンは手で制す。 「お前は……二人を守ってやってくれ……。彼女らに何かあったとき、お前の方が力になれる……」 言って、男はドアに手を掛けた。そのまま開け放つ前にマリアベルを振り返ると、呟いた。 「……簡単に死ぬつもりはない。安心して……待っていてほしい……」 静かながら力が篭った言葉だった。 それは虚勢なのかもしれない。張りぼてでしかないのかもしれない。 それでも、そう言われるだけで、十分だった。 「よかろう、約束じゃ。絶対に、シュウを連れて戻ってくるのじゃぞ。 ――できるだけ、早くの」 サンダウンは、マリアベルに声を返さない。 だが、彼は口角を小さく持ち上げ、余裕に満ちた不敵な笑みをマリアベルに見せ付ける。 笑みだけを残して、背中を向けてドアを開け放つ。 四角く切り取られた朝の光は、マリアベルには少しばかり眩い。 それでも彼女は、目を閉じることも細めることもせずに、その背中を見送った。 ドアが閉ざされると、マリアベルは、勢いをつけて椅子から降りる。 客室にいるロザリーとニノと、今後の方針を相談するつもりだった。 事態は、確かに動いている。 シュウとサンダウンが戻ってから案を出しているようでは、遅くなる可能性が高い。 マリアベルはふと、もう一度出入り口のドアを見やり、サンダウンの背中を思い出す。 うっとりメロメロ級にはまだ遠い。 だが、ナイスミドルであることは認めてやってもよいかと、そう思った。 ◆◆ 後ろ手に、静かにドアを閉めると、大きな城下町が広がっている。 朝の空気は、殺し合いの場にはそぐわないほどに澄み渡っていた。 それでも、この爽やかさや清涼感は、仮初でしかない。 透明感溢れる空気の向こうには、鮮血と肉片と屍の臭いが漂っていて、憎しみと嘆きと恨みが溢れかえっているに違いない。 そんな中、サンダウンは、表情を変えずに、確固たる足取りで石畳を歩いていく。 既に、十一人もの死者が出ている世界を、進んでいく。 死者の中には、容易に死を迎えるなどとは思えない人物も含まれていた。 レイ・クウゴも、そんな人物のうちの一人だ。 銃がなければまともに戦えないサンダウンとは違い、武芸に秀でた彼女にとって、その身に染み付いた技こそが最大の武器だ。 それはつまり、支給品が、戦闘能力にそれほど影響を与えないということを意味している。 多くの参加者に引けを取らない実力者である彼女は、しかし、殺害されてしまったという。 仲間の強さを、サンダウンはよく知っている。 だが、それ以上の強者が、この島で暴れている事実を、間接的にだが思い知らされてしまう。 今まで以上に、仲間との合流を急ぐべきだった。 手が震えそうになる。油断すれば、歯の根が合わなくなりそうにさえなる。 原因は無力さによる不安と、喪失感による恐怖だった。 この使い捨てである銃一丁しか、まともに使える武器を持っていない自分が、どこまで戦えるのか。 足手まといにしかならないのではないか。 一人、仲間が殺された。これから、その人数がどんどん増えていってしまうのではないか。 仲間や知人を守りきれず、力になれずに死ぬのは、怖い。 いや、見知らぬ他人だとしても同様だ。 理不尽な暴力に晒されて、嘆きを抱いて死んでいく様を見せ付けられるのは、堪らなく恐ろしい。 じわじわと広がっていく感情は、サンダウンの精神を削り取ろうとする。 だから、ロザリーとニノの護衛をマリアベルに任せ、行動することにしたのだ。 もしもあの場に残っていたら、情けない顔を見せてしまったかもしれないから。 それでも、進むサンダウンの顔は、いつもと変わらない無表情だ。 震えなど微塵も感じられない。怯えなどおくびにも出さない。 弱い心に負けないために、ただひたすら、サンダウンは往く。 レイのことを、心の拳の強さを思い出し、敬意と哀悼の意を表しながら。 【J-9 城下町にある宿屋 一日目 朝】 【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】 [状態]:健康 [装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーⅥ、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣、 クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーⅥ、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いを止める。 1:ピサロ様を捜す。 2:シュウの報告を待つ。 3:ユーリル、ミネアたちとの合流。 4:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。 [備考] ※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。 ※クレストグラフの魔法は不明です。 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:健康 [装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式 [思考] 基本:全員で生き残る。 1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流。 2:シュウの報告を待つ。 3:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。 4:フォルブレイズの理を読み進めたい。 [備考]: ※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC ※終章後より参戦 ※クレストグラフの魔法は不明です。 【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:健康 [装備]:マリアベルの着ぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION [道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LIVE A LIVE [思考] 基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。 1:シュウ・サンダウンを待つ間、ロザリー、ニノと共に今後の方針の相談。 2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。 3:この殺し合いについての情報を得る。 4:首輪の解除。 5:この機械を調べたい。 6:アカ&アオも探したい。 7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った? 8:アキラは信頼できる。 ピサロに警戒。カエルに一応警戒? [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。 ※レッドパワーはすべて習得しています。 【I-9 一日目 朝】 【サンダウン@LIVE A LIVE】 [状態]:健康 [装備]:使い捨てドッカンピストル@クロノ・トリガー [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出 1:シュウを捜索し、合流後、マリアベルたちの待つ宿へ戻る。 2:ピサロの捜索。 3:ロザリー、ニノ、シュウ、マリアベル、自分の仲間(アキラ、高原日勝)の捜索。 4:まともな銃がほしい。 5:アキラを知るストレイボウにやや興味有り。 [備考] 参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。 ◆◆ 夜が明けた。 陽光は生命力に溢れていて、輝かしい希望を象徴し、明るい未来を予感させる。 だがその輝きは、強く眩し過ぎると、彼は思う。 朝の日差しを受けて、こんな感想を抱いたのは初めてだ。 何もない平野のど真ん中でうなだれる彼は、カエルの姿をしている。 バイオネットを担ぎ、ゆっくりと歩く彼の身は震えていて、弱弱しい印象を与えてくる。 余りにも、余りにも早すぎて、あっけなすぎた。 エイラのために――引いては国のため、守りたいもののために戦おうと決意したばかりなのに。 騎士として生きる道を閉ざし、自分のための戦いの道を選択したばかりなのに。 大切な国を守るための手段が、手の中から滑り落ちてしまう。 もしもこの、手袋に包まれた手が粘膜に塗れていなければ、しっかりと握っていられただろうかと、思う。 ――下らない。 そんな仮定をしたところで、何の足しにもなりはしない。 変わりはしないし揺らぎもしないのだ。 エイラが死んだという事実は、変わりはしない。ガルディア王国の消滅は、約束されてしまった。 死を『なかったこと』にできる方法を、カエルは知っている。 だがそれは、現状で取ることのできる手段ではない。 今、時を超えることなど不可能だし、よしんば出来たところで、『エイラが死ぬ瞬間』に戻ってこられるとは限らない。 ならば。 ――ならば、どうしたら王国を守ることができる? 自問する。 答えなど、分かっているにも関わらず。 ――本当に、それでいいのか? 自問する。 迷いと躊躇いが、答えをブレさせる。 太陽は確かに昇っていて、時は前へと進んでいる。迷っている時間は、多くない。 光の中に、ずっといたいと願う。 顔を、上げる。 空は高く青く広がっていた。 何もかもを照らし出すように、映し出そうというように、広がっていた。 浮かぶ雲へと、手を伸ばしてみる。 そんなことをしたって、掴むどころか、届きさえもしないのだ。 だけどもし、届かせる手段があるのなら。 あらゆるものを、仲間の生命でさえ踏み台にすれば、届くのならば。 かざした手を、握り締める。 空から前へと戻したとき、人影が目に映った。 そいつも、ほぼ同じタイミングでこちらに気付いたらしい。 「お前は……」 呟いた先にいる男――シュウは、感情の読み取れない瞳をカエルへと投げかけている。 直立し、微動だにしないシュウから感じられるのは、お世辞にも友好的と呼べる雰囲気ではない。 だからといって、強い敵意が感じられるわけでも、ない。 『急いで行きたいところがあり、別行動を取った』と、ストレイボウからは聞いていた。 にもかかわらず、別行動を取った男が、出会った城からそれほど離れていない場所にいる。 これはつまり、ストレイボウが嘘を吐かれたか、あるいは、自分がストレイボウに嘘を吐かれたか。 しかしそんなことは、どちらでもよかった。 どちらにせよ、ストレイボウを責めるつもりなどない。 友を想い、そのために行動しようとする彼を、今の自分が糾弾できるはずがないのだ。 そして、眼前にいる男を責めるつもりもまた、ない。 信頼を得られなかったのは、きっと、理由があるに違いないのだ。 その心当たりだって、ある。 一定の距離を置いて、カエルはシュウと対峙する。 バイアネットの刃が届く距離ではない。 だが、カエルのジャンプ力を以って思い切り踏み込めば、一気に詰められる距離だ。 シュウは黙っている。黙したまま、警戒心を露にするその男は、一分の隙さえ見せはしない。 この男に剣を向けてしまったら、もう戻れなくなる。 下り坂を転がり落ちて、勇者でも騎士でもない、外道に身を落とすだけ。 だが、だとしても。 もう、縋るものがそれしかないのなら。 雲を掴むために、仲間も、誇りも、全て捨て去らなければならないのなら。 覚悟を、しなければならない。 良心、情け、甘えを完全に吐き出し、ただ一つのもののために、自分の手を汚す、覚悟を。 光の中にいられない、覚悟を。 深く酸素を吸い込む。 冷たい空気が、胸中に漂う靄を拭い去っていく。 カエルは、バイアネットを跳ね上げ、右手だけで器用に回転させる。 そして。 その鋭い刃を、切っ先を、勢いよく。 自らの左腕に、突き立てた。 粘膜を、皮膚を、筋肉を、刃が貫いていく。 硬く冷たい異物が入り込んでくる不快感と、筋繊維と血管が纏めて千切られる激痛が、腕の中で暴れ回る。 その全てを、カエルは、声を出さず目を閉ざさず、飲み込んだ。 左上腕が裂かれ、垂れ落ちた血液が、べっとりと衣服を汚していく。 ゆっくりと、引き抜いた。血液がごぽりと吹き出るが、構わない。 「許しを請うつもりなど、欠片もない……。 罪から逃れるつもりなど、塵ほどもない……!」 カエルは呟いて、血塗られた刃を、呆然とするシュウに、向ける。 「俺は、これより外道となろう。 無慈悲に一方的に身勝手に、全てを奪い尽くす悪鬼となろう! 国のためなどと言い訳をせず、俺自身の意志で、仲間すらもこの手にかける魔王となろうッ!」 そのための覚悟は、完了した。 全てが終わった後に、審判を受ける覚悟さえも、もう済ませた。 かくして勇者は騎士の称号を捨て、修羅の道へと足を踏み入れる。 踏み外したわけではなく、誰かにそそのかされたわけでもなく、自身による選択の結果だ。 故にその決意と信念と覚悟は、硬く強く揺るぎがない。 「止めるつもりならば――」 静かに臨戦体勢を取るシュウに向けて、カエルは、大気を震わせて一喝する。 「――命を奪いに来いッ!」 【I-8 西部 一日目 朝】 【シュウ@アークザラッドⅡ】 [状態]:健康 [装備]:パワーマフラー@クロノトリガー [道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーⅥ、紅蓮@アークザラッドⅡ、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式 [思考] 基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。 1:カエルの撃退。 2:撃退後、マリアベルたちの元へ合流。 3:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間と合流。 4:この殺し合いについての情報を得る。 5:首輪の解除。 6:トッシュに紅蓮を渡す。 7:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。 [備考]: ※参戦時期はクリア後。 ※扇動を警戒しています。 ※時限爆弾は現在使用不可です。 ※『放送が真実であるかどうか』を疑っています。 【カエル@クロノトリガー】 [状態]:左上腕に『覚悟の証』である刺傷。 [装備]:バイアネット(射撃残弾7) [道具]:バレットチャージ1個(アーム共用、アーム残弾のみ回復可能)、基本支給品一式 [思考] 基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。 1:シュウの殺害。 2:仲間を含む全参加者の殺害。 3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい [備考]: ※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。 時系列順で読む BACK△059 第一回定時放送Next▼061 Avengers 投下順で読む BACK△059 第一回定時放送Next▼061 Avengers 049 傍らにいぬ君よ シュウ 066-1 カエルとシュウとストレイボウと サンダウン マリアベル ニノ ロザリー 047 勇者の強さ、人の弱さ カエル ▲
https://w.atwiki.jp/horoai/pages/37.html
透過スキン ROのプレイで日頃出しっぱなしのウインドウが邪魔に感じたので透過できるスキンを探したのですが、余計な模様が入ってたり、透過しすぎて見にくかったり、アップデートで基本ウインドウが透過しないなど、色々と問題があったので自分で作りました。 基本的にはベーシックスキン(skinホルダーには無い)に必要な部分だけを透過するようにしました。 また、自分がお気に入りのスキンにも必要な透過部分だけをコピーしても使えます。 RO透過スキンダウンロード (↑ダウンロードはこの上のリンクを押してね!) 使い方 デフォルト設定のROに追加する場合 透過.zip ファイルをPCの任意の場所に解凍します。 中身は 透過 ー basic_interface というディレクトリ構造になっています。 このディレクトリに上図の様に5つの bmp ファイルが入っています。 ROにスキンを何も追加していない人はROをインストールしているディスク(ここではCドライブ)で C \Gravity\Ragnarok\skin というディレクトリにこの回答したディレクトリをそのままコピーしてください。 お気に入りのスキンに追加したい場合 上図の4つのファイルをお気に入りスキンの basic_interface ディレクトリに複写上書きしてください。 スキンの反映 ROの画面でESCボタンを1~数回押してゲームオプション画面を表示させます。 (↑ROを終了させる機能を持ったウインドウ) その中の「ゲーム設定」の「基本条件」タブにスキンを切り替えるプルダウンメニューから使用するスキンを「透過」にします。 また、お気に入りのスキンを使っている方はROの再起動を行います。 以上です。 改造再配布について 雑談質問にご一報ください。 一報いただければ後はご自由にどうぞ! ラグナロクオンライン 及び その他の名称等は以下に帰属します。 © Gravity Co., Ltd. Lee MyoungJin(studio DTDS). All rights reserved. © GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. 当コンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/103.html
LIVE A LIVEからの支給品 アイテム名 効果・説明 所有者 アリシアのナイフ アリシアがストレイボウの後を追って自刃するのに使ったナイフ。 ロザリー→サンダウン→ブラッド→マリアベル→アナスタシア→セッツァー→ゴゴ→消失 かくれみの おぼろ丸が使用した隠れ蓑。使用中は身動きできないが、姿を消せる。 シンシア→ジャファル→焼失 最強バンテージ 高原日勝最強の武器。単なる布なのに、バカみたく腕力と体力が上昇する。 ユーリル→C7に埋葬 17ダイオード キューブ最強の……武器? 少なくとも右手に装備するらしいパーツ。装備すると大きく知力が上昇し、素早さも上がる。 ルッカ→破壊(F-8荒野に廃棄) 昭和ヒヨコッコ砲 ヒヨコ弾を発射して攻撃するアイテム。誰でも使える、何度でも使える、その上何故か威力も高い。 エドガー→シンシア→ブラッド→マリアベル→アナスタシア→セッツァー→ゴゴ→消失 鯛焼きセット 通りすがりの鯛焼き屋さん、無法松が屋台で売っていた焼売詰め合わせ。内訳は、鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2。どれも使用すると体力が回復する。ど根性焼きは大回復、それ以外は中回復。 高原日勝→クロノ、イスラ→ユーリル(随時消費。108話時点でユーリル所持の鯛焼きのみ残る)→ミナデインの光となって消滅 ブライオン 魔王山への道を切り開く勇者の剣。中世編終了後は、何者かの手によってハッシュの墓に戻されていた。 ストレイボウ→ゴゴ→アキラ マタンゴ キノコ。精神を際限なく増幅させることで意識の許容範囲を決壊させ、夢遊状態に伴う恍惚的な悦楽を得る――要するに、ラリる。 二人分の致死量が配給されている。 ニノ→マリアベル→アナスタシア→セッツァー 無法松のハーレー 無法松の愛車である赤いハーレー・ダビッドソン。異世界の住人のための説明書付き。 ニノ→大破 ヨシユキ 0人斬り達成で坂本竜馬からもらえる強力な刀。マヒの追加効果あり。 ピサロ→破壊 44マグナム サンダウンの最強装備。具体的な数は不明だが弾薬もセットで支給されている。 ビッキー→サンダウン→マリアベル→アナスタシア→セッツァー→アキラ カギなわ 幕末編でおぼろ丸が使用。 ルカ・ブライト→焼失