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腹巻系 銀杏の腹巻 (イチョウノハラマキ) 【腹巻】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (銀杏の腹巻.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 5 13.7 25 65 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 − +2 +5 +10 装備可能 侍、僧、鍛、薬 装備区分 胴装備 必要Lv 10以上 付与効果 − 備考 美濃の秋月の狼のドロップ
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腹巻系 銀杏の腹巻 (イチョウノハラマキ) 【腹巻】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (銀杏の腹巻.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 5 13.7 25 65 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 − +2 +5 +10 装備可能 侍、僧、鍛、薬 装備区分 胴装備 必要Lv 10以上 付与効果 − 備考 美濃の秋月の狼のドロップ
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No 名前 ★ コスト 属性 タイプ 限界突破 HP アタック ガード 0592 フーマのコノハ ★★★☆☆ 11 雷 クノイチ - 214 26 017 スキル Lv:-- スキルの名手★2 スキルの攻撃力を+40% Lv:+20 スキルの名手★3 スキルの攻撃力を+50% フーマ族のくのいち。隠し事が多すぎて、何を考えてるか謎。
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腹当系 麻生野腹当 (アソウノハラアテ) 【腹当】 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 13.6 28 70 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 − +4 +5 +10 装備可能 侍、僧、神、鍛、薬 装備区分 胴装備 必要Lv 16以上 付与効果 知力+5 備考 斎藤家の麻生野直盛のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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腹当系 麻生野腹当 (アソウノハラアテ) 【腹当】 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 13.6 28 70 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 − +4 +5 +10 装備可能 侍、僧、神、鍛、薬 装備区分 胴装備 必要Lv 16以上 付与効果 知力+5 備考 斎藤家の麻生野直盛のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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腹巻系 ならず者の腹巻 (ナラズモノノハラマキ) 【腹巻】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ならず者の腹巻.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 2 10.6 10 50 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 - +2 +5 +10 装備可能 侍僧鍛薬 装備区分 胴装備 必要Lv 4以上 付与効果 耐久+3 魅力-2 備考 越後の畑荒らしのドロップ 情報募集中 名前 コメント
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腹当系 水鬼の腹当 (スイキノハラアテ) 【腹当】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (水鬼の腹当.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 7 15.1 36 78 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 - +4 +5 +10 装備可能 侍僧神鍛薬 装備区分 胴装備 必要Lv 20以上 付与効果 器用さ+5 水+5 備考 伊勢鬼屋敷の水鬼のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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腹当系 水鬼の腹当 (スイキノハラアテ) 【腹当】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (水鬼の腹当.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 7 15.1 36 78 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 - +4 +5 +10 装備可能 侍僧神鍛薬 装備区分 胴装備 必要Lv 20以上 付与効果 器用さ+5 水+5 備考 伊勢鬼屋敷の水鬼のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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腹巻系 ならず者の腹巻 (ナラズモノノハラマキ) 【腹巻】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ならず者の腹巻.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 2 10.6 10 50 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 - +2 +5 +10 装備可能 侍僧鍛薬 装備区分 胴装備 必要Lv 4以上 付与効果 耐久+3 魅力-2 備考 越後の畑荒らしのドロップ 情報募集中 名前 コメント
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■ ――――その最後を知るものは誰もいない。 ■ 夢を見ている。 白でもなく蒼でもなく赤でもなく――――灰色の夢を。 遠坂凛は見ている。 「なのは――どこへ行くの」 ひゅう、と風が吹いた。からからと枯れ木が流れていく。 視界一杯に広がるのは、荒れ果てた荒野だ。 夕の太陽が、大地を暁に染めている。 中央には人影が二つ。 長い金の長髪を風に揺らす女性。 襟元に豪奢な毛をあしらえた白のジャケットを羽織り、黒の制服にタイトスカートを着込んでいる。手足に装着されているのは甲冑だ。夕の赤光を照り返す銀が、がちゃりと音を立てた。 右の腕甲冑の先には――〝杖〟のようなモノがあった。形状は鎌に近い。ただ先端は折りたたまれ、穂先の中央にある金色の――瞳のような――宝石が微かに煌めいていた。 金髪の女性の赤い双眸は、もう一つの影を悲しげに見つめている。 その人物――灰色の女性が僅かに振り向き、口を開いた。 「……別に言わなくても――フェイトちゃんなら、分かっているでしょう? 私のメモを見たんだから。あの断片的なメモだけじゃ、普通私の目論見には気付けないはずだけど……流石は〝閃光〟の魔導師――執務官の長、フェイト・T・ハラオウンと言ったところかな」 肩胛骨まで伸びる長髪が、風になびく。 くすんだ茶の髪に、くすんだジャケット。くすんだインナーに、くすんだスカート。そして――くすんだ黄金の杖に、乾いた両の瞳。 全体を構成する色は白と蒼と黒と茶と金、のはずだが、その全ての色彩がくすんでいるため、印象は既に別物だ。 灰色。 そう表現するしかないような姿だった。 フェイト、と呼ばれた金髪の女性が、なのは、と呼んだ灰色の女性に返す。 「まだ――誰にも言ってないよ。だから考え直して。今、この世界は不安定ながらも、ちゃんと平和への道を歩いている。 それは少しずつだけど……でも、確かに前進はしているんだ。なのはのおかげで……なのはが―― あの戦争を終わらせてくれたから、世界は今、平和になろうとしている。 ――――それなのに」 どうして。 「どうしてそれを――――わざわざ、自分の手で壊そうとするのっ!?」 風が凪いだ。咆吼が、荒野にしんしんと響き渡る。 灰色の女性――歴史上最悪と呼ばれた時空戦争を終結させた次元世界の英雄。 高町なのはは、ふ、と乾いた笑みを浮かべた。 そして、ぽつりと。 「疲れちゃったんだ」と呟いた。 振り向く。くすんだ灰色の瞳が、フェイトを見つめる。 「疲れたの。戦うことも、人を救うことも、もうどうでもよくなった。 確かに、あの最悪な戦争を終わらせたのは私だけど――――それは別に、やりたくてやったわけじゃないしね。 どうせこれから、うんざりするほど人を救う羽目になるんだし」 ……うんざりするほど――人を救う? フェイトは僅かに眉をひそめた。 だが、それも一瞬。すぐに顔を上げて。 「やりたくて、やったわけじゃないって。なのは、それは一体どういう――――」 言った直後だった。 あははははははは、という哄笑が、フェイトの言葉を遮るようにして辺りを震わせた。 「はははははっ! フェイトちゃん、それ本気で言っているの? アナタなら分かるはずでしょう? いいえ、分からないはずがないわ。〝もう一人の母親〟たるアナタに――分からないなんて言わせない」 なのはの言葉に、フェイトは、は、とする。 苦々しく唇を噛み締め。 ぽつりと。 「――――ヴィヴィオ」 と絞り出すような声で呟いた。 「そうよ! あの戦争を終わらせたのは、ただそれだけ! ヴィヴィオの死を無駄にしたくないから! ただそれだけなんだよ! フェイトちゃん!」 笑いながら、踊るように、なのはは叫んだ。 そして、ひとしきり笑った後。 諦観に満ちた瞳で――ふぅ、と息を吐いた。 「私にとって、こんな世界は何の意味も持たない。ヴィヴィオが居なくなった世界なんて……ヴィヴィオを私に〝殺させた〟世界なんて……消えてしまえばいい」 全ての感情が抜け落ちた、そんな表情で、なのはは告げた。 泣きそうになる衝動を抑え、振り絞るようにフェイトは「それはっ!」と返す。 「それこそ、ヴィヴィオの死が無駄になっちゃうよ、なのは。ヴィヴィオはそんなこと望まない。 ヴィヴィオの死を――本当に悼むのであれば、世界を壊すなんて言っちゃ駄目だ。そんなの、何の意味も無いじゃない……!」 言葉を受けるが、しかし、なのはは平然とした顔で。 「――――フェイトちゃんが、それを言うわけ?」 唇の端を吊り上げて、笑った。 「一つだけ、最後に教えておく。それは――偽善だよ。フェイトちゃんはいつもそうだよね。 いつだってフェイトちゃんは正しくて、綺麗で、品性高潔で――――まるで〝お人形さん〟のように空っぽ。アナタの言葉に、どれだけの重さがあるの? ……ヴィヴィオを殺したことのないフェイトちゃんに、一体何が分かるというの?」 そして。 「死者は何も望まない。死者は何も喋らない。死んだ人は――――絶対に蘇らない。この世界の絶対的真実が分からないとは言わないよね。他ならぬ……フェイト・テスタロッサなら」 「……!」 雷に打たれたように、ふらりとフェイトは蹈鞴を踏んだ。 ざ、となのはは足を一歩踏み出し。 「アナタの偽善を――――私に押しつけないで」 フェイトの瞳を見ずに、そう告げた。 なのはの歩みは止まらない。その瞳に何も映さず――ただ歩く。 ぎり、とフェイトは奥歯を噛み締め。 「――――そのやり方で、私を救ってくれたのは、なのはなんだよ」 俯き、言うが。 「――――昔と今は違う。私達はもう魔法少女じゃないんだよ。夢を見ていられる期間は、終わったの」 そうして、二人が擦れ違う一瞬。 「私は滅ぼす。この世界をぐちゃぐちゃに、滅茶苦茶に――――完膚無きまでに破壊する」 ニヤリと。 薄い薄い薄い――薄氷の笑いを浮かべた。 ばぎん。 奥歯が噛み砕かれる音共に。 「なのは――――っ!!」 フェイトが黒い鎌のような〝杖〟を振り抜き。 「フェイトちゃん――――っ!!」 なのはがくすんだ黄金色の〝杖〟を振り抜いた。 瞬間。 桃色の魔力光と金色の雷が激震し、世界をも砕く勢いで、大気に煌めいた。 かつて魔法少女だった二人は――今、互いに変わり果てた姿となり、激突する。 そして―――――――――― ざぐん、と肉を切り裂き骨を砕く感触が――フェイトの掌に来た。 ライオットザンバー――雷の大剣の先が、ちりちりと火花を散らしている。 高町なのはの血を、滴らせながら。 「なの……は……?」 応えるように、ごぶ、と血の塊をなのはは吐いた。 その腹部には――フェイトの〝杖〟、バルディッシュ・ザンバーの雷刃が深々と突き刺さっている。 肉を、骨を、内臓を、全て貫き、背中から刃が突き出ていた。 吐血を繰り返すなのは。その表情には――笑みが刻まれていた。 対し、フェイトは愕然としていた。その口が「どうして」という形を作る。 どうして。 「最後――わざと、私の刃を受けた……の?」 は、という吐息が、なのはから漏れた。 なのはの体は、今、フェイトに正面からもたれ掛かっている格好だ。呟く声は、まるで囁いているようだった。 「最初に……言ったでしょう? 〝疲れた〟、てさ」 は、とフェイトは目を見開き。 「そ、んな――そんな、ことって。なのは、まさかアナタは―――― ――――最初から、このつもりで……!?」 なのはは何も言わなかった。 肯定も否定もせずに、ただ「ふふ」と笑った。 「勘違いされると嫌だから言っておくけど。……私の言葉は全部本当だよ。撤回も言い直しも謝罪もしない。 私が世界を滅ぼそうとするのは多分、間違いないし。そう、今の私は――本当の悪魔なんだよ、フェイトちゃん」 だから。 「私に――止めて欲しかった、の? わざと私にメモを見せて……私だけに気付くような仕掛けをして――そうまでして、なのはは」 「だからさ、そんなんじゃないって。私は要するにさ――八つ当たりが、したかっただけなんだから」 にゃはは、と昔のようになのはは笑った。 フェイトの手が、震えていた。愕然とする中、それでも魔導師の性として、状況を脳内で整理していく。 ……今のなのはと、まともに闘うことが出来るのは――管理局でも殆どいない。 その誰もが会うのに困難な人達ばかり――……だけど、執務官の私は、その人達より――ほんの僅かだけど――自由だ。 〝八つ当たり〟ということなら、きっと一番向いている……! その思考に至った瞬間、ふるふるとなのはは首を振った。 「そんなんじゃない。そんなんじゃないってば。私はさ、ただ単純に――――」 息を吸って。 「親友で〝もう一人の母親〟だったフェイトちゃんに、私を殺して貰いたかっただけ」 と嬉しそうな声で告げた。 「そ……んな」 「気付かなかった? 気付かなかったでしょう? フェイトちゃんは、これからこの罪を背負うことになる。 親友を殺したこと、次元世界の英雄を殺したこと――人を殺したという十字架を、これから一生背負っていく。 ……これはさ、〝この世界の『タカマチナノハ』〟という存在を〝殺す〟儀式と同時に――――ヴィヴィオが死んだとき、その場にいなかったフェイトちゃんへの、断罪」 そう告げる声が、吐き出される息が、脈動が、少しずつ小さくなっていく。 生命が終わっていく。 からん、となのはの掌から杖が落ちた。 「な、……のは」 フェイトの生気が抜け落ちたかのような瞳を、横目で見ながら。 「じゃあね、フェイトちゃん。縁があったら――――どこかの〝滅び〟で、また会おうね」 にぱっと、いつもの無垢な笑顔で――高町なのはは絶命した。 がくん、とフェイトの膝が崩れ落ちた。 全身が震え、赤の瞳から涙が零れた。 そして。 「あ、あ、あ、ぁああああああああああ――――――――――――――――――――っ!!」 笑みの表情のまま固まっている――高町なのはの屍を抱きしめながら、悲嘆の声で絶叫した。 ――――それが、英霊タカマチナノハの最後の瞬間だった。 遠坂凛は夢を見る。 白でもなく蒼でもなく赤でもなく。 灰色の夢を、遠坂凛は見る。 歴史の裏に葬られた、一つの出来事を、遠坂凛は見る。 それは最終決戦の日――サーヴァント・アーチャーがマスターを裏切る、十日目朝の出来事だった。 「Ash / staynight」 10日目(4)『Golden Starlight』 「――――じゃあ、少し、頭冷やそうか」 アーチャーは言うが早いか、手に持った〝杖〟――レイジングハートを三人に向け。 その莫大な魔力を撃ち放った。 ず――という震えの後。 目も眩むような破壊が来た。 「――――っ!」 アーチャーの『元』マスター遠坂凛と、両手に干将・莫耶を握る衛宮士郎と、そして異世界の魔導師高町なのはは息を呑み、同時に散開した。 桃色の流星が走る。――着弾、爆砕。それが繰り返される。 大地が捲り上がる音が連続して響く。 その破壊の中、三人は駆ける。 瓦礫が体を擦過し、爆音と衝撃が各々の体を貫いた。 士郎が思わず声を上げる。 「っっっっ! これがマスターのいないサーヴァントの魔力かよ! 幾ら何でも無茶苦茶だ!」 ぼふ、と爆煙を突っ切り、横を走る凛が大声で返す。 「馬鹿士郎! 事前に言ったでしょうがっ! アーチャーは、魔力だけで言うなら――アンタのセイバーをも上回るって!」 際限なく降り注ぐ魔弾。 本来ならば正規のマスター、つまるところ魔力供給源を失ったサーヴァントは、直ぐさま消え去る運命にある。それはサーヴァントというシステム上、どうしても逃れられない弱点だ。 だが、今三人の目の前で砲撃を放つアーチャーにその気配は見られない。 それはアーチャーの固有スキル、〝単独行動〟も大いに関係しているが――それ以上に、アーチャー・真名タカマチナノハの強大過ぎる魔力量が原因にあった。 ……何てったって、この私の魔力量を以てしても、アーチャーの最大には届かなかったんだから……! 一流の魔術師たる凛がマスターとして魔力を供給しても、アーチャーはそのスキルの全てを使用することが出来なかった。 タカマチナノハの十全を発揮するには、一般魔術師の遥か上を行く凛の魔力量を以てしても、不十分だったのだ。 その底知れぬ魔力量。それが今、令呪によって満たされている。 ギルガメッシュ戦から既に一時間以上が経過しているが、その魔力が尽きる気配は無かった。 無論、ギルガメッシュを打倒するにおいて、かなりの魔力量が消費されているはずだが、それでも、こうして単なる射撃魔法を撃ち放つ程度には残っている。 そしてアーチャー……タカマチナノハには、〝その程度〟で十分だった。 現界さえしていれば、聖杯は願いを叶えてくれる。彼女にとっては、それだけで、十分なのだ。 今こうして〝掃除〟をしているのは、ただ単に士郎達が邪魔なだけ。同時に、〝高町なのは〟を消去するというアーチャーの本来の目的故に、だ。 それだけ。ただ――それだけだった。 「邪魔はさせない。私の願いは、この願いだけは――誰にも邪魔させない」 アーチャーは酷く冷淡な声で呟き、機械的に砲撃を撃ち続ける。 それに。 「こ……のぉ――分からず屋ぁ――――っ!」 十四歳の――〝現在〟の高町なのはが、同じように砲撃を撃ち放った。 ディバイン・バスター。 なのはの杖、レイジングハートの無機質な声が響き、アーチャーと同色の魔力弾が大気を疾駆する。 が。 「分からず屋は――どっちのほうかな?」 アーチャーはソレを、ただ指先から放った掌大ほどの魔力弾だけで――相殺した。 どころか。 「っ――――!」 なのはのディバインバスターを真正面からぶち抜いた。 爆砕。 「なのはっ!」 士郎と凛の声が、同時に響いた。 瞬間、煙の中で、きん、と桃色の光が瞬いた。 ぼ、となのはは灰色の空気から飛び出した。その両足には両翼がはためいていた。 フライヤーフィン。レイジングハートの穂先に吐いている宝玉には、そう書かれていた。 しかし。 「残念。――――アナタの動きは、〝手に取るように〟分かる」 アーチャーは、く、と指先を曲げ、なのはの後方に飛ばした数個の魔力弾を射出した。 「ディバイン――シューター」 言葉と同時、お、という音が伸びて。 魔力弾の全てが――なのはに着弾し、爆ぜた。 「ぁうっ!」 短い悲鳴と共に、全身に衝撃が走り。 思い切り体が大地によって横殴りにされた。 吹き飛び、砂埃を上げながら、地面に強く擦りつけられていく。 白く輝く聖杯を背負い、アーチャーは〝かつての自分〟を見下して。 「これで、お仕舞い」 ストレイト・バスター。 くすんだ金色のレイジングハートの声が響き。 止めとばかりに、数個に枝分かれする直射砲を撃ち放った。 その寸前に士郎と凛が、なのはの元へと駆け出し―――― ――――炸裂。 魔力が魔力に反応し、連鎖爆裂を起こした。 ごごごごごごご――――と地下大空洞が悲鳴を上げるように、その身を軋ませる。 ずどん、という音が連続して響き、天井から瓦礫が落下、爆ぜるように砕かれた。 アーチャーは灰色のバリアジャケットを翻し、聖杯へ向いた。 ……十四歳当時の〝私〟じゃ、今の砲撃は防げない。ま、当然の結末だよね。 『高町なのは』の究極たるアーチャーに、今だ道の途中にある現在のなのはに叶う道理はない。 仮に『高町なのは』が、生まれたときから〝世界を救う〟因子を持っている生粋のメシアだとしても――その道理は覆すことは出来ない。 高町なのはの相手もまた高町なのはなのだから。〝必ず困難を突破する〟という概念は、世界でただ一人、この相手にだけは通用しない。 勇気や希望、気合いや根性――主人公(せかいからの)補正という、いかなるご都合主義も、タカマチナノハには届かない。 ……だけど。 と、アーチャーは思い。 ――この悪寒は、一体――――……! 自らに走る直感に従って、勢いよく振り向いた。 そこには。 大気を疾駆するディバインバスターと。 それに重なり合わさるように絡み合った三つの宝石弾と。 両翼から迫る干将・莫耶が。 目前に―――― ……!! 破壊。 白く輝く聖杯の下、耳を劈くような爆音と、先ほどまでのアーチャーを上回るほどの破壊が起こった。 大地が蹂躙され、大気が焼き付き、暴れ狂い、音と衝撃が辺り一面に踊る。 圧縮された空気が空間を駆け上がり、破裂した。 破壊の音の後に、破壊の音が鳴り、更にその後に破壊の音が鳴り続き―――― 柳洞寺地下の大空洞が、広大な大地のソレが、大きく抉れた。 その破壊を以てしても――しかし、アーチャーは健在だった。 聖杯の目前に穿たれた巨大なクレーターの底で、環状の魔法陣を展開させながら、苦々しく歯を噛んだ。 ……なるほどね。〝今〟の私が、〝この〟私を倒すとするなら――それしか方法はない、か。 単純な話だ。 十四歳のなのはもアーチャーも結局は〝高町なのは〟なのだ。 その技量は〝いつか届くモノ〟という延長線上にある。ただ単純に〝現在〟の高町なのはでは、〝足りていない〟だけ。 ならば、それを他から補うことが出来れば――――〝現在〟でも、〝未来〟に並びうるかもしれない。 そんな小学生でも出来る単純な計算だった。 だが。 ……残念。サーヴァントでも居れば別かも知れなかったけど――只人である凛と士郎を足したところで、私には届かないよ。 十四歳の高町なのはに――魔術師という種類ではあるが――ただの人間が何人合わさったところで英霊に届くはずもない。 ニヤリと笑い、今だ粉塵晴れないその場所を見やる。 「少し驚いたけど、でもやっぱり、アナタは絶対に勝てない。魔法少女でしかないアナタが――魔法少女の上の存在である私には、絶対届かない。 ――――アナタのそんな甘っちょろい偽善では、私の願いは止められないっ!」 言って、レイジングハートの穂先を向ける。 きぃん、と光が走り――周囲に数個の魔力弾が顕現する。 放った瞬間―――― 煙が晴れ。 アーチャーの笑みの瞳を射貫くように。 衛宮士郎の鷹の目が―――― 「――――てめぇの方こそ、頭冷やしやがれ」 〝偽・螺旋剣〟。 お、と捻れた剣が矢となり、黒い弓から射出された。 限界を超えた投影を行ったせいか、その瞬間、士郎の全身の血管が千切れ、鮮血が飛沫(しぶ)いた。 だが構わないとばかりに、螺旋剣が大気を捻殺しながら突っ走る。 魔力弾と、激突すらしなかった。 拮抗もない。相打ちもない。相対すら無かった。 魔力弾を捻じ殺し、〝偽・螺旋剣〟がアーチャーに向けて一直線に走る。 「っ!」 アーチャーに初めて――驚愕、そして焦りという表情が浮かんだ。 「レイジングハートっ」 応、という――どこかひび割れたかのような無機質な声が響くが。 時既に遅し。〝偽・螺旋剣〟がアーチャーに直撃し、〝壊れた幻想〟となり、爆ぜた。 空間が砕ける。衝撃の音がする。 アーチャーの放った魔力弾は大きく逸れ、三人の後方で――爆発四散する。 数瞬の凪の後――ばきん、と手にした弓が割れて、士郎は膝を崩した。 「士郎さんっ!」 ……やっぱり無茶だったんだ。この作戦は……。 アーチャーの砲撃によって摺り切れたバリアジャケットと、骨折・裂傷などの激痛に耐えながら、なのはは思った なのはは魔導師だ。魔術師ではない。だから士郎がどれほど無茶をしたのか。どれほどの奇跡を行使したのかは、よく分かっていない。 だが、結果として士郎は、この短時間で有り得ないほど疲弊し――血を流していた。 その事実が、なのはの心を軋ませる。 凛はそんななのはを見やると、にぱっと笑った。 「気にすることはないわよ。なのはが囮で、アタシが策謀、 ――んでコイツは無茶やる係なんだから。いつもそうだったでしょ? 第一、アーチャーを倒すにはこれくらいしか策がなかったんだし」 「ぜっぜっぜっぜ――――いや、言うことは間違って、ないけど、な。遠坂、労いの言葉――の一つもないのかよ」 汗と血で塗れ、魔術回路が焼け焦げ、抉るような痛みが全身を駆け抜けている中、士郎は凛に言った。 凛は士郎の頭に手をやり。 「――――いいこいいこ」 「犬かよ、俺は……」 そんな二人を見て。 ――……確かに士郎さんって子犬系だよね……。 なのはは微笑した。 士郎は横目でなのはを見やり。 「ごめんな、なのは。結局――アイツを、アーチャーを救ってやることが、出来なかった」 苦しそうに蠕動しながら、言った。 なのはは「ううん」と笑って首を振り。 「――多分、これが最善だったんだよ。あの様子じゃあ、話なんて、とてもじゃないけど聞いて貰えそうになかったから。――全く、自分事ながら呆れるほどにガンコなんだから」 と、少し口を尖らせながら、応えた。 「〝今〟のアンタも筋金入りの頑固者だからねぇ……なるべくして、というのが正直な感想ー」 「……凛さん、それちょっと酷くない?」 「お前ら……暢気にしてるけど――俺たちはこれで打ち止めなんだぞ……」 血を流しながら息を吐く。 すでに、そのなけなしの魔力は空っぽだった。魔術回路は焼き切れて、しばらくは使い物にならない。 凛も先ほどの宝石弾と投影のバックアップ――そして自身の強化により、虎の子の宝石は全て使い切っていた。 まともに戦闘という戦闘が出来るのは、なのはしかいない。しかし、なのはではアーチャーには敵わない。 相対する敵もまた、高町なのはなのだから。 それでも凛はひらひらと手を振りながら笑い。 「大丈夫よ。コイツのアレをまともに受けたのよ。十全な状態ならともかく、 マスター不在で魔力供給もままならない今のアーチャーじゃ――これ以上立ち上がることは出来ないはずよ」 「馬鹿――お前、そんなこと言ったら」 「――――え」 凛がぼんやりと、そんなことを言った瞬間だった。 「ざーーんねーん。古今東西、そう言って本当に倒れた悪役がいた?」 声が響いた。 煙が晴れ、明確になったその場所に――アーチャーが厳然として立っていた。 凛が顔に手をやり「あっちゃあ」と呟いた。 「……直撃は――したと思うんだけどね。じゃあ何? アンタはアレを――耐えきったって訳?」 アーチャーは髪を掻き上げながら笑い。 「うん、危ない所だったけどね。〝この子達〟の発現が後コンマ一秒遅かったら、流石にやばかったかな」 す、と手を横に振った。 すると背後から――七つのくすんだ金色が現れた。 それはアーチャーが手に持つレイジングハートのミニチュア版のような機械だ。一つ一つに紅の宝玉が添えられており、桃色の燐光を散らしている。 〝偽・螺旋剣〟をも受けきった、その宝具の名は。 「ブラスター――……ビット」 唖然、とした体で、なのはは呟いた。 「ああ」とアーチャーが素っ気なくソレを見やる。 「そういえば十四歳って言ったら、〝コレ〟の制御に四苦八苦している最中だっけ。懐かしいなぁ、本当に懐かしい……」 ぼんやりと昔を懐かしむように言い、そして。 「本来のブラスターシステム……完成された〝5thモード〟なら、こんなもんじゃないんだけどね。ビットの数はざっと百と少し――今の魔力量じゃ、七つが限界だけど、それでもアナタ達を相手にするには十分すぎる。凛なら分かるでしょう? この――絶対的戦力差が」 刻まれた笑みと相反する、圧倒的な殺意を放った。 「確かにね」と凛は冷や汗を流す。 脳裏に浮かぶのは対ギルガメッシュの光景だ。 あれは正に――圧倒的だった。 六対の翼に、黄金に輝く歪で醜悪、だけれども美しさと壮麗さを兼ねたレイジングハート。発せられる魔力量は竜の炉心を持つセイバー、半神であるギルガメッシュをも大きく上回る。そこにいるだけで世界を激震させ、大地を揺らす、その姿は正しく規格外。 その魔力量の四割以上も使って放たれる――英雄タカマチナノハの究極の一撃は、ギルガメッシュの〝天地乖離す開闢の星〟とも拮抗した。 時空世界の英雄――魔導師の頂点。歴史上、ただの四人しか数えられなかったSSSランク――〝無限光 アイン・ソフ・アウル 〟に辿り着いた〝受け入れし者〟。 世界に選ばれ、世界に導かれた生粋のメシア。救世の権化――それこそが英霊タカマチナノハの真の姿である。 それから見れば、マスター不在の今の状態が、いかに脆弱であるか分かるだろう。 だが。 ……やっぱり、私達が勝てる相手じゃ――ないってことか。ま、元から勝率なんてゼロに等しかったんだけど……見積もりがちょっち甘すぎたなぁ。 仮にもアーチャーは、セイバーとの連携があったとはいえ、英雄王ギルガメッシュの乖離剣に拮抗し、あまつさえそれを打倒した化け物だ。 異世界の魔導師――異端の、規格外の英霊。凡百たる人間の凛達が敵う道理など、初めから無かった。 士郎がぎり、と奥歯を噛み締める。横目で凛を見るが、眉尻を下げて軽く息を吐き「お手上げ」と言いたげに両の手を持ち上げた。 血に塗れたその体で「くそ」と悪態を吐く。 ……こいつは、こいつだけは――倒さなくちゃいけないのに。 士郎は思う。 キャスターの想いを受け継いだ自分が――キャスターを否定した自分が――救わなければならないのに。 ――どうして、こんなに自分たちは無力なんだ、と。 だが、士郎のそんな諦観を吹き飛ばすように。 「――――なのは」 高町なのはが、アーチャーを見据え、一歩前に踏み出した。 士郎と凛は、その背中から放たれる声を聞いた。 「ありがとう、士郎さん、凛さん。でも、やっぱりこれは――私の、闘いだから」 言って、レイジングハートを構える。 と『その通りです、マスター』と無機質な声が応えた。 アーチャーが眉根を寄せ、不快げに、かつての自分を見やる。 「おかしいなぁ。これだけ言っても、これだけ見せても、まだ分からないのかなぁ。そこまで私――馬鹿だったかなぁ」 きつく絞った瞳から放たれるのは、正しく殺気だ。殺さん――とばかりに放たれるソレは、びりびりとなのはの体を震わせる。 圧倒しそうな中で――なのはは。 「――――ふ」と笑った。 恐怖するでもなく、戦慄するでもなく、絶望するでもなく、悲観するでもなく、諦観するでもなく――――ただ笑っていた。 最早そこには、先ほどまで泣いていた少女はいなかった。 絶望に枯れ果てた灰色の自分を前にしても――高町なのはは、揺らいでいない。 「ねぇ、〝私〟。そんなことも忘れちゃったの? ――私っていう人間は、どうしようもなく単純で馬鹿なんだよ?」 笑い、髪を掻き上げる仕草はアーチャーに似ていた。 「私は馬鹿だから。アリサちゃんやすずかちゃん、フェイトちゃんやはやてちゃんみたいに器用じゃない。 ――頭が悪くて不器用なの。そんな私に出来ることなんて――――たった一つ。いつだって、たった一つ。 ――――全力全開で相手にぶつかっていくことだけなんだから」 「その生き方が――間違っているというのよ」 ぎしり、とアーチャーはレイジングハートを握りしめた。 「アナタのソレは相手の思想や信念を蹂躙し砕く暴力でしかない。そんな子供の言い訳で、どれだけの人が巻き込まれ、迷惑したと――すると思っているの? 人だって沢山死んだ。 〝私達〟のその思想は、どうしようもなく人を殺す。未熟で不完全で、害悪でしかない。 そんなの、ただの偽善の押し付けじゃない。そんな偽善では誰も救えない。いや、何を救うかも定まらない! アナタのその偽善の結果が〝これ〟なのよ。娘を殺すという最悪の、灰色の結末を迎えることになる。 ――――アナタはそれでも、その生き方を貫き通すの!?」 対し、なのはもレイジングハートを握りしめる。がしゃん、とカートリッジが廃莢される。 そして――ばさり、と桃色の羽根が瞬いた。 エクセリオンモード――出力リミッターの解除である。 「じゃあ、やっぱり私とアナタは違う存在だ。私は、後悔しない。何があったって後悔だけはしない。全てを無かったことにしようなんて絶対に思わない。 助けたいと思って。 そうして助けることが出来て。 沢山の人と出会って。 沢山の笑顔があって。 沢山の、涙があって。 それは全部全部――確かにあったことで」 今まで救ってきた人達。 これから救っていく人達。 ボロボロで、歪な道のりだけど。 歩いた先に、歩ききったその先に――誰かの笑顔があるのならば。 「私はそれを――嘘に、したくない。 ――――この想いは、決して間違いなんかじゃないんだから」 なのはは噛み締めるように、そう宣言した。 アーチャーは低く唸るような声で問う。 「つまり、アナタはその押し付けで――自分の娘を殺しても構わないというのね? 誰かが笑っていればそれでいいと。自分さえ良ければそれでいいと、アナタはそう言うわけ?」 響く声に込められているのは、狂気に満ちた憎悪だ。 なのはの言っていることは――どうしようもなく偽善で、押し付けだ。いかに結果が綺麗でも、その始まりはアーチャーにとって、唾棄すべき偽善に他ならない。 ただ嫌われたくない一心で。ただ〝良い子〟であろうとする一心で。 人を救い、人を殺す。 自分の娘――ヴィヴィオすら手にかける。 それが偽善でなく何なのだろう、とアーチャーは思う。 これは〝タカマチナノハ〟にとって、どうしようもない結論だ。 かつて自分も同じように考え、生き抜いた結果に得た答えが――〝ソレ〟なのだ。 魔法少女の人生は、灰色の結末を迎えることになる。それは絶対の真実、一足す一が二になるように、実に当たり前な正答だ。 だが――なのはは溜息を吐き。 「あのね、何だか散々、〝当たり前〟のように語ってるけどさ。 ソレは〝アナタの結末〟であって、〝私の結末〟ではないでしょう? アナタは――諦めた。否定した。今までの人生を、〝タカマチナノハ〟の道のりを――人を救う魔法少女を止めた。 その時点で、私とアナタはもう〝違う者〟なのよ。確かに最初は騙されちゃったけどさ――でも、士郎さんが気付かしてくれたから」 ――お前が背負った誰かの笑顔をっ! 全て無かったことにしようとしていることだ!!―― ……そうだね。その通りだよ、士郎さん。 「だから、私はもう迷わない。もう泣かない。私はこの生き方を変えない。誰かを救おうとすることは止めない。 でも、自分の娘も殺さない。私は誰も殺さない。いつだって、どこだって――私はハッピーエンドを目指す。 自分が納得できる、皆が笑って生きていられる大団円に――全力全開で、突っ走る」 「私だってっ!」 アーチャーが叫んだ。乾いた言葉に――感情が迸っていた。 「私だって――そうだった。ハッピーエンドが欲しかった。でも結局は、駄目だった。 果てに待っていたのバッドエンドだった。沢山の人が死んで、救った人も、救えなかった人も、皆皆死んだ。 ヴィヴィオも死んだ。私のせいで死んだ。どうしようもなかった。 私はそんな結果を迎えるために――魔法少女になったわけじゃないっ! アナタのその生き方の――私の生き方の結果がソレなの! それでどうして――諦めない、なんてことが出来るのよっ! アナタのそれはどうしようもないほど偽善――都合の良い理想論に過ぎないの!」 は、という息が断続的に響く。その視線には、憎悪・諦観・悲嘆といった負の感情が絡み合っている。 「……そうだね」 ふ、となのはは目蓋を閉じた。 「もしかしたら、きっと、そんなこともあるかもしれない」 目を開く。 「でも――――」 失ったモノがある。 失おうとしているモノがある。 あの痛みも。 あの孤独も。 あの寒さも。 あの恐怖も。 多くのモノを無くして、沢山のモノを零してきた。 それでも――何もかもを無かったことにしてしまえば。 一体、奪われた全ての想いは――何処に行ってしまうのだろう。 だから。 例え、どうしようもなくみっともなくて。 例え、避け得ない孤独な破滅が待っていても。 例え、何もかもを失って。 ――――みんなにきらわれることになったとしても―――― 「この道が。――今までの自分が、間違ってなかったって信じてる」 嘘に、したくないから―――― 「――――っ!」 アーチャーが初めて――蹈鞴を踏んだ。その場から一歩も動かなかった足が、動いていた。動かされていた。 なのははしっかりとアーチャーを見つめて。 「ねぇ、私。アナタは本当に――〝諦めた〟の?」 本当に。 心の底から。 〝タカマチナノハ〟は誰かを救うことを―――― がぎ、と奥歯が砕ける音がする。 「――諦めたに、決まってるでしょ! この姿を見ても、まだ気付かないの!?」 なのはは「そう」と呟いて――フライヤー・フィンを展開した。 両の足からそれぞれに二対の翼が現れる。 「なら――私は絶対にアナタを認めない。アナタが私の結末だというのなら、悉くを凌駕して、その存在を叩き落としてみせる」 アーチャーは顔を歪ませ、狂的に笑い。 「よく言ったわ。私の砲撃に――――ついてこれるかしら!?」 けれども、なのはは取り乱すことも、泣くこともせず、厳然と前を見つめ。 「ついてこれるか――じゃないよ」 一息に。 「アナタのほうこそ――ついてきて」 レイジングハートとレイジングハートが互いに煌めき。 高町なのはとタカマチナノハが互いに魔力光を迸らせ。 それらを静かに見ていた正義の味方が。 「そうだ。なのは――――そんなヤツ、ぶっ飛ばしてやれ」 笑い、砲撃の音が大空洞に響いた。 ここに。 全てを救う魔法少女と。 全てを救ったかつて魔法少女だったモノの。 高町なのは同士の、その存在を巡った――たった一人の生存競争が開始された。