約 2,293,893 件
https://w.atwiki.jp/politik/pages/1563.html
https://w.atwiki.jp/hachinai_nanj/pages/2213.html
【サマータイムメモリー】直江 太結 (投抑) 最終更新日時 2021/08/05 19 27 53 このページを編集 属性 レア 守備適性 決め球 ライズボール 変化球1 - △ 〇 ◎ - - - - - - - - 変化球2 - キャラ総評 「う~ん…ビキニはちょっと恥ずかしいなあ…監督も来るみたいだし…」 「あ…これだったら、フリルが大きめだからお尻が隠れてくれるかなあ…」 「夕姫ちゃんみたいにスタイルよくないし…やっぱり上にはシャツを着ようかなあ…」 ハチナイを愛するすべての人が待ち望んだたゆたゆの水着シーン。 いや、トレードマークであるキュートなおさげ髪を【隠し味には真心を】直江 太結 (遊)と同じリボンとヘアピンで一つ結びにまとめ、若妻のような色香を醸し出す彼女にたゆたゆは失礼か。 ここでは太結と呼ばせてもらおう。 冒頭のような逡巡があったのではないかと推察される露出度はやや抑えめの太結。 しかしフリルの下からわずかにのぞくふっくらとしたヒップ、そこから伸びる脚は決して細いだけでなくほどよく肉付いている。 今回の川遊びでもスイカ一玉を含む大荷物を運びこむなど、華奢なイメージと裏腹に太結が日々の練習で下半身をしっかりと鍛えていることを教えてくれる。 一方で上半身に着ているシャツからはホルターネックのビキニが透けており、見てはいけないものを見ているようで一瞬ドキリとさせられる。 バストは78と決して大きいわけではないが、このアングルからでも確かな存在感を放っており、太結が少女から成熟した女性になりつつあることを示している。 「おーい、3人とも~!そろそろ帰る準備しよ~」 有原の呼び声に太結はほんのわずかに憂いを含んだ表情で振り返る。 楽しかった今日一日とそれがもうすぐ終わろうとしている一抹の寂しさを思い出の宝箱に大事に仕舞いながら。 もうすぐ夏が終わる。 試合評価 * 球 速 コントロール スタミナ ミート パワー 走 力 守 備 備考 素パラメータ 124km/h 4208 3344 2585 2296 2738 3312 - 恒常スキル後パラメータ 149km/h 8158 3644 2585 2296 2738 3312 変化球発動率+1/ノビ+3/ゴロ率+2 最大バフスキル後パラメータ 149km/h 8758 3644 2585 2296 2738 3312 変化球発動率+1/ノビ+3/ゴロ率+2/フライ率-6 たゆたゆらしい高いコントロールやね。 とはいえハチナイでは抑えというポジション自体影が薄いことに加え、現在はUR投手による継投もしくは完投が主流となっている。 そのため素晴らしいイラストとは裏腹に試合での活躍の場は今のところ無いと言わざるを得ないのが残念なところ。 URたゆたゆのスキン用もしくは投手属性で実装されたならばスキルリンクや抑え適性を付けるのには役立つかもしれんな。 デレスト評価 メニュー ランク カード名 属性 力 速 技 効果 練習メニュー ★★ ぴょん太焼き栗 - - - - S型メニュー2枚までと同時に実行練習メニューを更新する 追加で1回行動 追加メニュー ★★★ シャトルラン 蝶 0 40 25 - 追加メニュー ★★★ シャトルラン 蝶 0 40 25 - 初期メニューがぴょんた焼き、追加メニュー強い方の★3が2つと猫車の完全上位互換。 デレストでは大活躍着間違い無しや。 スキル解説 ランク スキル名 条件 効果 入手可能デレスト1 入手可能デレスト2 ★★★ 日暮れの涼風 投球時 自身の球速・コントロールが超絶に上昇する 清城高校 重なる気持ち ★★ 低めの秘奥義 投球時 自身のコントロールが超バツグンに上昇し、ゴロを少し打たせやすくなる 練習なくして 0-0-45 重なる気持ち 0-7-45小麦色の世界 0-7-44 ★★ 全力投球の奥義 投球時/投球イニングが2回まで 自身の球速が超バツグンに上昇し、コントロールが上昇する 清城高校 2-35-0 一本足打法 5-34-0秤を揺らす若葉 0-30-0 ★★ 体重移動の奥義 なし 自身の球速が大幅に上昇し、コントロールが大きく上昇する 清城高校 2-20-20 秤を揺らす若葉 16-16-16 ★ パワーピッチの極意 なし 自身の球速が少し上昇し、スタミナが上昇する キャプテン代理 12-0-0 重なる気持ち 1-0-0綾織の水平線 13-0-0 ★ 速攻の極意 投球時/投球イニングが2回まで 自身の球速が大幅に上昇し、変化球発動率がわずかに上昇する シェイプアップ 0-16-0 重なる気持ち 0-13-0綾織の水平線 0-11-0 ★ ノビの心得 なし 自身のノビが上昇し、コントロールが少し上昇する 楽しさに潜むもの 清城高校 ★ スピンの心得 まれに/投球時 敵打者のミートを少し減少させる 楽しさに潜むもの清城高校踏み出す勇気キャプテン代理練習なくして いつもの二人一本足打法シェイプアップ重なる気持ち小麦色の世界綾織の水平線 ★ 速球の基礎 なし 自身の球速がわずかに上昇する 楽しさに潜むもの 清城高校 才能 才能名 Lv 条件 効果 夕暮れに振り返って 7 なし 自身の球速が大幅に上昇し、コントロールが上昇する 踏み込みが良い 5 投球時 自身のノビが上昇し、球速が大幅に上昇し、コントロールが少し上昇する パッキングの達人 7 なし 自身のコントロールが超バツグンに上昇する 広い視野 5 投球時/走者が1人以上いるとき 自身のコントロールが超大幅に上昇し、フライを超大幅に打たせにくくなる +ネタバレ注意! 固有悩み文 ★才能名★(→★才能名★) 条件: 効果: 『』 画像 セリフ集 +押すと開きます 状況 セリフ ホーム - - - - - - - - 試合 試合前 - 開始 - カットイン通常 - カットインターニングポイント - - 勝利 - - 敗北 - デレスト 特訓 - - コメント ログを開く 左下の坂上ちゃんが超絶可愛い - 名無しさん (2021-07-21 17 51 09) 可愛いというか、えっ……というかこの子ら渓流でビーチバレーやってるけど足場絶対悪いやろ - 名無しさん (2021-07-21 20 47 21) 怪文書が追加されていた - 名無しさん (2021-07-22 22 01 48) たゆ。たゆたゆたゆたゆたたたゆ? - 名無しさん (2021-07-24 12 31 34) 名前
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/32948.html
EDテーマ 回夏 『サマータイムレンダ』 Blu-ray 上巻 発売日:4月27日・9月28日 ■アニメ盤はTVアニメ『サマータイムレンダ』描き下ろしイラストデカ帯仕様 ■アニメ盤には、cadodeのリリース済み楽曲より、 代表曲をセレクトして特別に制作されたライブパフォーマンスMV 「cadode - Special Live Music Video」 を収録予定 ここを編集 2022年4月放送開始。 https //summertime-anime.com 監督 渡辺歩 副監督 中野悟史 原作 田中靖規 シリーズ構成 瀬古浩司 キャラクターデザイン 松元美季 サブキャラクターデザイン 烏宏明 メインアニメーター 為水翔太郎 プロップデザイン 松尾優希、佐藤和巳 動画監督 富永武志 動画検査 岩田美香、岩井亮子、中川美乃里、富永武志、キムジョンギュ、クジャチョン、吉田ひろみ、Choi.Y.H、岩井今日子、高橋昌大、安藤昴輝、渡邉聡太、並木祐一、西川莉央、円田智世 美術監督 赤坂杏奈、畠山佑貴 美術設定 多田周平 色彩設計 秋元由紀 撮影監督 木村俊也 特殊効果 小川猛 2Dデザイン 向井吉秀、吉垣誠 CGスーパーバイザー 瀬尾太 CGディレクター 小出秀治 CGプロデューサー 平野翔太 CGデザイナー 伊藤良太、今井優 CGプロダクションマネージャー 野本真樹 編集 小島俊彦 音響監督 小泉紀介 Sound Editor 勝俣まさとし、本郷俊介 サウンドミキサー 早野利宏 アシスタントミキサー 杉野美結 音楽 岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾 オープニングアニメーションディレクター 中島隆紀 ロゴデザイン 菅原悠里 アニメーションプロデューサー 児島宏明 アニメーション制作 OLM TEAM KOJIMA 脚本 瀬古浩司 絵コンテ 渡辺歩 山元隼一 待田町子 愛敬亮太 金子伸吾 菅原美幸 筆坂明規 井上圭介 誌村宏明 小島正士 境隼人 渡部穏寛 矢嶋哲生 小沢蟹 徳永竜志 大島克也 上田華子 演出 松田真路 山元隼一 石田暢 山本隆太 木村佳嗣 播摩優 萩原悠理 おゆなむ 四宮春 境隼人 減辺千伽 矢嶋哲生 田尻賀子 大島克也 上田華子 四ノ宮春 前屋俊広 作画監督 松元美季 西村広 稲手遥香 佐藤義久 烏宏明 迫江沙羅 髙田晴仁 飯田清貴 西田美弥子 橋本治奈 辻雅俊 阿見圭之介 宮崎麻美 楠木智子 吉野彰敏 二宮奈那子 本吉晃子 土方友希 萩原正人 菅原美幸 チャミョンジュン クジャチョン Lee Haneul Seo Seunghye Kim Gwangu Kim Jina Suh Jeonga Kim.S Kim.J.W Park.S.H Lim.S.K Lee.B.S 金正男 韓承熙 小林一三 金元会 Dogwood 黒染 白原継実 桜井木ノ実 飯飼一幸 服部益美 南伸一郎 杜伟峰 魏旭龍 陈亮 Song Hyeon-ju Han Eun mi Park Song-hwa Choi Eun-yeong 佐伯直実 日下部智津子 福地純平 宇都木勇 Studio MarBean 日影工房 西谷泰史 White Line 李望斌 岩畑剛一 北田久登 秦洋美 新村香奈 森川侑紀 石丸史典 小川茜 Y.S.Kwon Shin Jae Eun 櫻井拓郎 ジョンヨンフン キムキョンウン シンヨンスン 呉賢景 亮点動画 長城動画 暁 AAA BIG OWL グレーン B.S.Lee 皆川愛香利 森川侑紀 大釜沙也佳 難波功 鳥井隼人 朱世桀 嶋崎耕平 田島瑞穂 川畑えるきん ウィリアム・リー ソンヒョンジュ ハンウンミ イドンフン チェウンヨン 松田真路 中野悟史 福永なぎさ 日浦玲奈 上田華子 ■関連タイトル サマータイムレンダ Blu-ray 上巻 EDテーマ 回夏 原作コミック サマータイムレンダ 1 Kindleまとめ買い 原作コミック サマータイムレンダ 1 rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
https://w.atwiki.jp/wiki11_library/pages/147.html
CDライブラリー #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 ウィル・ブールウェア Will Boulware「Summertime」 2007.10 CDもようやく一皮剥けて一人前の音質になった。 躍動するトリオ。テナーサックスという隘路 オープニングはトリオで切れのあるユニゾン。思わず「おおっ」と言ってしまうくらい小気味良い。 その後フロントにエリックアレキサンダーのテナー。この人選は正直ユルイ。「纖細なブールウェア/野太いエリックのブロウ」みたいな対比がライナーに書いてあったけど、正直、「ブロウ」はもういい。「ヤング」という言葉と同じくらい機能不全。テナー界停滞の元だ。ジャズファンとしては次のコンセプトを探したい。 ブールウェアという職人に対して、頭と腕の切れる若者を据えるのが正解だったと思う。 日本のレーベル。スタッフも全員日本人。 一聴して印象的なのは音質が良いこと。きめの細かい仕事。ローゼン閣下の本で「とんでもない日本」というのがありましたが、確かに凄いことが出来ちゃっています。更には、マスタリングのシステムなんかを考えると東京でしか作れない気がします。大阪の老舖、澤野工房さんなどは唸ってしまうのでは。 躍動するトリオ。テナーサックスという隘路 オープニングはトリオで切れのあるユニゾン。思わず「おおっ」と言ってしまうくらい活きがいい。 その後フロントにエリックアレキサンダーのテナー。この人選は正直ユルイ。「纖細なブールウェア/野太いエリックのブロウ」みたいな対比がライナーに書いてあったけど、正直、「ブロウ」はもういい。「ヤング」という言葉と同じくらい機能不全。テナー界停滞の元だ。ジャズファンとしては次のコンセプトを探したい。 ブールウェアという職人に対して、頭と腕の切れる若者を据えるのが正解だったと思う。 時代に追いついてるトリオ しかし、その役割をベースのボナに集中させとのだとしたら、このアルバムに対する評価は「大躍進」に一転。ナイス抜擢。ドラムのビリーも盟友たり得ます。 ジャズでもフュージョンでもない音楽と、アナログとデジタルの良さを併せ持ったCDとが一体となって、これから面白いものが出てきそうな希望を感じることが出来ます。 トリオはこのまま継続して、フロントをとっかえひっかえしてみて欲しいというのが私の希望。できれば敢えてボーカルものをやって欲しい。アシッドジャズという行き止まりを突破出来る何かが見えそうな気がする。アルジャロウが隠居する前だったら面白かったのになあ。 マリリンマンソンさんなんていかがですか? 余談 エリックは「ブロウ」という資産を食い潰していってる人。いわばヒモみたいな人なのだ。「もうしょうがないわねエーちゃんたら。ねえ、いつものアレ聴かせてよ。」なんてのが本来の立ち位置。それはそれで彼の人生がある。こっそりと明るい処に連れ出してしまったのは気の毒だったと思う。 演奏や曲でやり切ってないもどかしさはあります。音質の良さと合わせ技で星4つ。 DATA メンバー ウィル・ブールウェア (p), リチャード・ボナ (eb),ビリー・キルソン (Ds), エリック・アレキサンダー (ts) 発売日 2007.8 録音 2007.6 NY フォーマット Hybrid SACD (普通のCDプレーヤーでも聴けます。DVDプレーヤーでは難アリらしい) レーベル ヴィレッジ・レコード 名前 コメント #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。CDライブラリ トップに戻る
https://w.atwiki.jp/simai/pages/931.html
アーティスト 曲:村カワ基成/歌:オンゲキシューターズ BPM BASIC ADVANCED EXPERT MASTER Re MASTER 178 4 7 9+ 12 - EXPERT MASTER Re MASTER 譜面制作者 BASIC (178.0){1}, {1}1, {1}1, {2}8,8, {1}8h[2 1], {1}8, {1}8, {2}1,1, {1}1hx[1 1]/8hx[1 1],, {1}1, {1}1, {2}2,2, {1}2, {1}3, {1}3, {2}4,4, {1}4x/5x, {2}5,5, {1}5, {2}6,6, {1}5x/6x, {2}7,7, {1}7, {2}8,8, {1}1x/8x, {1}B7, {1}B6, {1}B5, {1}B4, {1}B3, {1}B2, {1}B1/B8, {1}B2/B7, {1}Chf[8 7],, {4}8,8,8,, {4}1,1,1,, {1}8-4[4 3],, {2}2,2, {2}3,3, {4}4,4,4,, {1}4x/5x, {4}5,5,5,, {4}4,4,4,, {1}5-1[4 3],, {2}8,8, {2}7,7, {4}6,6,6,, {1}4h[2 1]/5h[2 1], {4}4,4,5,5, {1}4x/5x, {2}4b,4, {2}3,3, {2}2,2, {2}1/8,1/8, {2}7,7, {2}6,6, {2}5,5, {1}4x/5x, {1}4h[1 1],, {1}5h[1 1],, {1}3h[1 1]/4h[1 1],, {1}5h[1 1]/6h[1 1],, {2}7,7, {4}8,8,8,, {2}1,1, {4}2,2,2,, {1}1-4[4 3]/8-5[4 3],, {1}4x, {1}4, {1}4h[1 1],, {4}5,5,5,, {4}4,4,4,, {2}B4/B5,B3/B6, {1}Chf[4 5],, {4}8,8,8,, {1}1-5[4 3],, {2}5/6,5/6, {2}3/4,3/4, {4}2,2,2,, {4}1,1,1,, {4}8,8,1,1, {1}1h[2 1]/8h[2 1], {1}1b/8b,, {2}1,1, {2}2,2, {2}3,3, {4}4x,5x,4x,, {2}5,5, {2}6,6, {2}7,7, {1}1hx[2 1]/8hx[2 1], {4}8,8,8,, {4}7,7,7,, {4}6,6,6,, {4}5x,4x,5x,, {4}4,4,4,, {4}5,5,5,, {1}4hx[2 1]/5hx[2 1], {1}3hx[2 1]/6hx[2 1], {8}Chf[8 7],,,,,,,, E ADVANCED (178.0){1}, {4}3,3,3,, {4}5,5,5,, {4}4,4,4,, {4}6,6,5/6,, {4}7,7,7,, {4}1,1,1,, {4}8,8,8,, {4}1,8,1/8,, {1}2x/7x, {2}3h[2 1],4, {2}6h[2 1],5, {2}4h[2 1],5, {4}3,3,3,, {2}2h[2 1],1, {2}7h[2 1],8, {1}1-4[4 3]/8-5[4 3], {2},3x/6x, {2}2h[2 1],4, {2}7h[2 1],5, {2}2h[2 1],1, {4}8,8,8x,, {2}7h[2 1],5, {2}2h[2 1],4, {4}1,1,8,8, {2}1/8,2x/7x, {2}B3,B4, {2}E5,B5, {2}B6,E7, {1}Ch[2 1], {2}E3,B4/E4, {2}E7,B5/E6, {2}B3/E3,B6/B7, {2}B1/E2,B8/E8, {1}Ch[1 1], {2},1x/8x, {4}2x,3,3/4,3/4, {4}5,6,4/7,, {4}7,6,5/6,5/6, {4}4,3,2x/5x,, {4}2,2,1/2,, {4}7,7,7/8,, {4}1,1,1/8,1/8, {2}2h[4 1]/7h[4 1],2x/7x, {4}3x,2,1/2,1/2, {4}8,7,1/6,, {4}6,7,7/8,7/8, {4}1,2,3x/8x,, {4}3,3/4,2/5,, {4}6,5/6,4/7,, {4}2,1/2,3/8,, {4}1/8,1/8,2b/7b,, {1}1^4[4 3]/8^5[4 3], {2},3x/6x, {2}2h[2 1],4h[2 1], {4}3,3,3/4,, {2}6h[2 1],5h[2 1], {4}7,7,5x/7x,, {4}3,3,2/4,, {4}6,6,5/7,, {1}Chf[8 7],, {1}1-4[4 3], {2},5, {1}5-8[4 3], {2},1, {1}2-5[4 3], {2},6, {1}4^1[4 3]/5^8[4 3], {2},2x/7x, {4}1,1,2,2, {2}3/4,2/5, {4}5,5,6,6, {2}7/8,1/6, {1}1x^4[4 3]/8x^5[4 3], {2},3x/6x, {2}E5,C1, {1}E1, {2}E4/E6,E3/E7, {1}E2/E8, {4}E3,B3,B4,, {4}E7,B6,B5,, {2}B3/B4,B6/B7, {1}Ch[2 1], {4}1hx[4 1]/8hx[4 1],,2,3, {4}3/4,2/5,1x/6x,, {4}1/8,1/8,7,6, {2}5h[4 1]/6h[4 1],4x/7x, {4}2hx[4 1],1,3/8,, {4}7h[4 1],8,1/6,, {4}1h[4 1],8,2/7,2/7, {4}3/6,4/5,2b/7b,, {1}1^4[4 3]/8^5[4 3], {2},2x/7x, {1}Chf[8 7], {2},1x/8x, {4}3,4,5,6, {4}7,8,1/8,, {4}6,5,4,3, {4}1h[4 1]/2h[4 1],,8b,8b, {4}1,2,3,4, {4}5,6,5/7,, {4}8,8,1,1, {2}1hx[4 1]/8hx[4 1],2x/7x, {4}1x,2,3,4, {4}5/6,5/6,4/7,, {4}8,7,6,5, {4}2h[4 1]/4h[4 1],,1b,1b, {4}2,3,4,5, {4}5/6,5/6,4x/7x,, {1}3V14[4 5]/6V85[4 5],, {8}Chf[8 7],,,,,,,, E EXPERT (178.0){1}, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {8}4,4,5,5h[4 1],,4,,3h[4 1]/6h[4 1], {4},3/6,2x/8x,2x/8x, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {8}4/5,,7,7,,1 7[8 5],1,, {4},,,1/8, {8}2x,2x,,3x/6x,,4x/5x,,, {4}3h[4 7],4,5,4, {4}5,6,5,4, {4}3/4,2,1/8,7, {4}5/6,4/5,3/4,4/5, {4}6h[4 7],5,4,5, {4}4,3,4,5, {8}5/6,,4/6,,3/6,,2/7,2x/7x, {8},3x/4x,,5x/6x,,2/7,2/7,, {8}3/4,,5/6,,7,7h[4 5],,5, {8},3,,4,,2,,1, {8},2/8,2/8,,1/7,1/7 3[8 3],,, {8},,,,2x/7x,,,2h[4 1], {8},8,8,,1/7,1/7,,2/5, {8},6,6,,4/5,4/5,,8, {8},1/7,1/7,,1/8,,2/7,2x/7x 2[8 3], {4},,,1x, {4}B8,B7,B6,B5, {4}B1,B2,B3,B4, {4}B8,B7,B6,B5, {4}B3/E4,B7/E8,B1/E2,B5/E6, {4}7,7/8,7,1/6, {4}2,1/2,2,3/8, {2}1^4[4 1],8^5[4 1], {8}4,,3/5,,6 8[4 3],,1,1, {8},,,,,,,1/8, {8},2/7,2/7,,C1f,,,, {4}1b/8b,4-2[8 1]/5-1[8 1],,4-8[8 1]/5-7[8 1], {4},4/5,1/2,5/6, {4}3/5,B1/B2/E2/E3,4/6,B7/E7/B8/E8, {8}3/6,,C1/B4/B5,,,1b/8b,,, {8}2/7h[4 1],,5,5,,3/4z8[2 1],,, {8},,,,,1b/7b,,2h[4 1], {8},4,,7h[4 1],,5 6[2 1],,, {8},,,,,8b,,, {4}1/8,4-8[8 1]/5-7[8 1],,4-2[8 1]/5-1[8 1], {4},4/5,7/8,3/4, {4}4/6,B7/E7/B8/E8,3/5,B1/B2/E2/E3, {8}3/6,,C1/B4/B5,,,1b/8b,,, {4}1/2h[4 3],4,1,4, {8}3/5,,5/6,5/6,,1/8,,7, {4}7h[4 3],5,8,5, {8}4/6,,3/5,,1/2,1/2,,, {8}1p4[8 3]/8q5[8 3],,,,,,,3/6, {8},2/7,2b/7b,,,,,, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {8}5,5,4,4h[4 1],,5,,3h[4 1]/6h[4 1], {4},3/6,1x/7x,1x/7x, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {8}4/5,,2,2,,8 2[8 3],8,, {2},1x/8x, {1}4/3v4[2 1], {1}5/6q4[2 1], {1}4/3p6[2 1], {1}5/6q3[2 1], {1}3h[4 3]/4^1[2 1], {1}7h[4 3]/8^5[2 1], {8}4x/5x,,,3hx[4 1]/6hx[4 1],,,,2hx[4 1]/7hx[4 1], {8},,,1hx[4 1]/8hx[4 1],,,1x/8x,, {4}2,3,4,4/5, {4}5,6,7,1/8, {8}2,2,8,8,1,1,7,7, {8}1,1,8,8,2/7,,3 5[4 5]/6 4[4 5],3/6,{1}, {2},4x/5x, {2}Ch[2 7],B8, {2},B1, {2},E1,{1}, {4}6,6,5/6,4/5, {4}3,3,3/4,4/5, {8}3h[4 1]/6h[4 1],,,3/6,,,,Chf[4 3],{1}, {4},2b/7b,4/5,1/8, {8}3/6,,8,8,,1/2,,3/5, {8},4/6,,7/8,7/8,,1/2,1/2h[8 3], {8},7,7,,,1b/8b,,, {4}4/3h[4 3],1,4,1, {8}2/8,,7/8,7/8,,4/5,,6, {4}6h[4 3],8,5,8, {8}1/7,,2/8,,3/4,3/4,,, {8}6h[4 1],,5,5,,3/8,,1/8, {8},3/6,3/6,,5x,,4x,, {1}Chf[8 7], {4},,1/8,2/7, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {8}4,4,5,5h[4 1],,4,,3h[4 1]/6h[4 1], {4},3/6,2b/8b,2b/8b, {4}4/5,4/5,5/7,5/7, {4}4/5,4/5,2/4,2/4, {8}4/5,,7/8,7/8,,1/2,2/1 7[16 7],, {8},,,,,1b/8b,,, {4}1/8,1/8,6/8,6/8, {4}1/8,1/8,1/3,1/3, {8}8,8,1,1h[4 1],,8,,2h[4 1]/7h[4 1], {4},2/7,1b/7b,1b/7b, {4}1/8,1/8,1/3,1/3, {4}1/8,1/8,6/8,6/8, {8}1/8,,2/4,2/4,,3/6,,4/5, {8},5/7,5/7,,8h[4 1],,1x,, {8},,,,,,,C1f/B2/B3/B6/B7, E MASTER (178.0){1}, {4}6/1-3[8 1],8,6/1-5[8 1],8, {4}6/1-3[8 1],8,6/1-5[8 1],8, {8}1/6,1,8,2/7 3[4 1],,3,2,1h[8 3], {8},8,8,,5-2[8 1]/6-1[8 1],,5x/6x,, {4}3x/8x-6[8 1],1,3/8-4[8 1],1, {4}3/8-6[8 1],1,3/8-4[8 1],1, {8}3,4,5,6h[8 9],,8,8,8 5[8 3],{1}, {8}4,5,,B3/B6,,B4/B5,,, {8}3,3,5,5,3,3h[4 5],,2, {8},4,,5,,6,,7^5[8 1], {8},4,3,2,1/4,1/4,,6/2-5[8 1], {8},8,,6/2-5[8 1],,8,,4/7, {8},3,4,5,6h[8 3],5,5,5-1[8 1], {8},8,8,,1/7,2/8,,4/5h[8 3], {8},6,6,,4,5,3/6,3/6, {8},2/7,2/7,,C1,,1/8,2x/7x, {16},,3,4,3,,6,5,6,,7/4-7[8 1],,,,5-1[8 1],, {8},3V14[4 1]*pp4[4 1],,,,,,1/3, {8},4/5,5/4q5[4 1],,,,,4/7, {8},5/6,6/5w1[8 1],,,,,2x/7x, {16},,6,5,6,,3,4,3,,6,,7,,1x/8hx[8 3],, {8},7x,7x 2[4 1],,,,,1/5, {8},3,4,5,3/6,,4/5,5/4qq1[8 3]*pp7[8 3], {8},,,,,,2x/8x,1x/7x, {8},8,8-5[4 1],,5-2[4 1],,2-7[4 1],, {4}7-4[4 1],4-8[4 1],8x,1x, {4}3/4,5/6,2-6[4 1],6V42[2 1], {4}1,8,7,1/8, {8}6,5,4/7,,3,4,2/5pp5[4 1]*qq5[4 1],, {8},,,,3,4,5,6, {8}7-1[4 1],,1-5[4 1],,4,3,2,, {2}5q2[8 1]*-8[8 1],5qq5[8 1]*-8[8 1], {8}1,2,3,4/5,6,7,1/8,3/6p5[4 1], {8},2,2,,3,4,,7b/2bV48[4 1], {4},5b-7[8 1],3b-1[8 1],4b-8[8 1], {8}3b,,1/2,4/7,,3/4,,6b/1bpp4[8 3], {8},8,7,6,5,,1/6,1/6, {8},3/8,3/8 3[4 1],,,C1f,,1x/6x^8[8 1], {8},3,2,1/6^8[8 1],,3,2,1/6, {8},5,4,3/6,,7b/8b,,5/6h[8 3], {8},4,2h[4 1],4,6h[4 1],4,2,1/8, {8},2x/7x,2xV48[16 3]/7xV51[16 3],,,C1f,,2b/7bV51[4 1], {4},4b-2[8 1],6b-8[8 1],5b-1[8 1], {8}6b,,7/8,2/5,,5/6,,3b/8bqq4[8 3], {8},4,3,2,1,,7/8,1/6, {16},,1/2,,3V51[4 1]/8V62[4 1],,,,,,,C1f,,,,, {4}8h[1 1],E1,C1,E5, {8}4h[8 3],,3,3 6[4 1],,,,, {4}1h[1 1],E1,C1,E5, {4}5h[4 1],6 3[4 1]*q3[4 1],,, {8}2/4,,6,7h[4 1]/5-1[8 1],,,,3/6, {8},3/4,6b/1b 8[4 1],,C1f,,,, {4}3p5[4 1],5 4[4 5],,, {4}6,7,8,1, {8}2,2,1/3,,6,5,6,4/7h[8 3], {8},8,8-4[8 1],,8x^3[8 1]*^5[8 1],,8x,, {4}4x/5x-1[8 1],2,5/4-8[8 1],7, {8}1,8,1pp4[4 1]/7qq4[4 1],,,,,, {8}2b/4b,5,6,5b/7b,,1,1,2b/8b, {8},4/5,2x/7x,,4,5,3/6,, {4}6/4h[1 3],6,C1,, {4}7,7,C1,, {4}8,8,1,1, {4}2 6[4 1],,,4/5, {4}3/5h[1 2],3,C1,, {4}2,2,1,8, {8}7 4[4 1],,,,,8w4[2 1],,, {4},,,2/7, {4}5x/1x-3[8 1],4,1/5,3/4, {4}4x/8x-6[8 1],5,4/8,5/6, {8}1/5h[2 1],,6,,3,5,4,, {8}8/4h[2 1],,3,,5,4,3/6,2 8[8 7]/7 1[8 7],{1}, {2},C1, {1}4x-1[2 1], {1}5x-8[2 1], {1}4x-1[2 1], {1}5x-8[2 1], {4}C1,C1,C1,C1, {4}C1,C1,C1,C1, {8}2x/7x,3,4,5x-2[8 1]/6x-1[8 1],,,,8x 1[4 1], {8},,,,,3x,6x,2V48[8 1]/7V51[8 1], {617},,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,{633}C1f,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,{4}3b-1[8 1],4b-8[8 1], {8}3b,,1/2,4/7,,3/4,,6b/1bpp4[8 3], {8},8,7,6,5,,1/6,1/6, {8},3/8,3/8 3[4 1],,,C1f,,, {4}8h[1 1],E1,C1,E5, {8}4h[8 3],,3,3 6[4 1],,,,, {4}1h[1 1],E1,C1,E5, {4}5h[4 1],6 3[4 1]*q3[4 1],,, {8}2/4,,6,7h[4 1]/5-1[8 1],,,,3/6, {8},3/4,6b/1b 8[4 1],,,,,, {16}2h[4 1]/7h[4 1],,,,,,4qq1[8 3]/5pp8[8 3],,4/5,,,,,,,C1f,{1}, {8}6x/1x-3[8 1],7,8,,6/1-5[8 1],7,8,, {8}6/1-3[8 1],7,8,,6/1-5[8 1],7,8,, {8}2,2,1/3,,6,5,6,4/7h[8 3], {8},8,8-4[8 1],,8x^3[8 1]*^5[8 1],,8x,, {8}4x/5x-1[8 1],3,2,,5/4-8[8 1],6,7,, {8}6,5,4qq1[4 1]/6pp1[4 1],,,,,, {8}1b/3b,4,5,6b/8b,,3/6,2/7,8b/1b 8[8 3], {8},,,,,C1f/B2/B3/B6/B7,,, {8}5x/4x-8[8 1],6,7,,6/3-1[8 1],7,8,, {8}5/4-8[8 1],6,7,,6/3-1[8 1],7,8,, {8}5/4-8[8 1],6,7,,6,5,6,3x/8x, {8},2/7,1/8-4[8 1],,8x^3[8 1]*^5[8 1],,8x,, {8}4x/5x-1[8 1],3,2,,3/6-8[8 1],2,1,, {8}4/5-1[8 1],3,2,,4/5,4/5,3/6,2/7, {8}1b/8b,,3/4,1b/6b,,5/6,5/6,3b/8b, {8},3/6,8b/1b 8[4 1],,,,,, {8}B2/B3/B6/B7,,,B1/B4/B5/B8,,,,1b 8[8 15]/8b 1[8 15],{1},,, E Re MASTER 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/503.html
← 悪童の神が、悪童の王の凶刃に倒れる数分前に遡る。 響くチェンソーの音色は、暴走師団の駆け回る戦場の中でも存在感を失うことなく響いていた。 デッドプールも、そしてデンジも、好き勝手な暴走を縦横無尽に繰り返す聖華天(かれら)のことなどはもう完全に無視している。 いや、聖華天から見れば敵であるデッドプールの方は完全に、とは行かなかったが。 彼の場合、あさひを直接狙おうとすれば敵を融合しつつデンジにけしかけ、同士討ちを狙う――など、彼らの横槍をいなしつつ有効活用してすらいた。 デンジもデンジで、味方が宝具で呼び出したうるさい邪魔な暴走族への配慮などするわけもない。 向かってくる分は容赦なく両断して排除しつつ、自分を一度殺してくれたいけ好かない先輩風野郎を倒すべく突撃する。 刀とチェンソー。それは、デンジにしてみれば二度目となるマッチアップだ。 デッドプールが銃まで使ってくることを踏まえると、二重の意味で"因縁の戦い"といえた。 「どうしたよ。一回死んで気合入ったのか、チェンソー君」 「お~入ったぜ、おかげさまでなア~! その証拠になんだか無性にムカつく野郎を殺してえぜ!!」 「単細胞の権化かな? やっぱお前、あのクソアイドルとお似合いだぜ。磁石のS極とN極みたいによ、うま~く噛み合うんじゃねえの?」 「おだててんじゃねえぞ、この不審者マスク野郎があ~~!!」 「皮肉だバカ」 デンジの顎に、デッドプールの蹴り上げが入る。 脳震盪を引き起こすこと必至の一撃だったが、デンジは自分の舌を噛んで意識のゆらぎを文字通り食い止めた。 だが一瞬とはいえ隙は生じてしまう。そこを突いたデッドプールが、再び彼の首を狙うが。 その刃は、ぎゅうううん、と音を立てて伸びたチェーンに絡め取られる結果に終わった。 「へへへ……。見え見えなんだよ、テメエの魂胆はよ~……!」 デンジは、デッドプールが蹴りの予備動作を見せた瞬間、既にチェーンを動かしていたのだ。 こいつは必ず、何の遊びもなく確実なやり方で自分を殺しに来ると。 さっきの経験からそう分かっていたから、一か八かで"先置き"した。 結果、デッドプールはデンジの目論見に引っ掛かって最後の一手を止められる。 そして刃を絡め取れたなら、そこはもうデンジの間合いだ。 「ちょっとは頭使えるみたいだな。らしくねえじゃん、誰から貰った付け焼き刃だ?」 「性格の悪いクソジジイだよ。俺にも修行パートってのがあったからよお」 「へえ、そりゃ意外だ。お前に物教えるなんて、サスカッチ相手にマナー講師するくらい難しいだろ」 軽口は健在だが、今の状況に限って言えばデンジの方が優勢である。 チェンソーの刃をデッドプールも刀で受け止めていたものの、流石に馬力の優位はデンジの側だ。 結果、少しずつ、少しずつ……デッドプールは押されていき。 やがて刀の方がこの絶望的過ぎる押し合いへし合いに音を上げて、小気味いい音を立てながら砕け散った。 「はい勝ちィ! 死にやがれ!!」 チェンソーが、デッドプールの身体を斜め一直線に引き裂いた。 結果、出来上がるのは袈裟懸けに胴体を両断された世にもおぞましい猟奇死体である。 血飛沫をあげながらぐらりとよろめいた彼の骸は、狂気の車列に呑まれて見えなくなった。 だがデンジも、構えを解かない。それもその筈だ――彼は既に一度、デッドプールというサーヴァントの"体質"を目の当たりにしているから。 「俺ちゃんこう見えて、ご当地ヒーローに憧れてる一面もあってよ」 鉄騎馬を駆る暴走族達、ざっと百人前後。 その首が、一瞬にしてぽんぽんと間抜けな手品のように宙を舞う。 愉快に跳び上がった生首達と一緒に夜空に躍り出たのは、やはりと言うべきか"彼"だった。 しかし、今まで通りの姿ではない。 殺した暴走族から奪い取った単車を駆り、夜空でぐるんと一周宙返りを決めると――そのままアクセルをベタ踏み。 地上のデンジに向けて、車両の出せる限界速度で以っての爆速突撃を敢行した。 「この国じゃ、バイクに乗って颯爽登場するヒーローが人気なんだろ? 折角だからあやかってみたぜ」 「チィッ……! バカみてえな真似してんじゃねえよ!! この強盗殺人野郎がア~~!!!」 避けることは、デンジには出来ない。 その軌道は明らかに、背後のしおとアイを狙うものだったからだ。 だから舌打ちと悪態をついて、真っ向受け止めに向かうしかない。 もちろんデッドプールも、彼がそう動くだろうことを予想してこの攻撃を繰り出している。 結果――車輪とチェンソーが、小細工なしに正面衝突。 互いの回転で互いの回転を磨り潰しに掛かる、力押しの極致のような光景が繰り広げられたが。 しかし流石にこの勝負では、デンジの方が分が悪かった。 「そのバイクあげるよ。大切に乗ってくれよな、名も知らない暴走ドライバー君の形見だからよ」 「はあ!? ちょ、おま――ウギャアアアアアアアア!!」 恐ろしいまでの摩擦熱が、車両内部の燃料と誘爆したのだろう。 デッドプールが駆る鉄騎馬は大爆発を引き起こし、デンジは絶叫をあげながら吹き飛ばされる。 爆発が起こる寸前で、デッドプールは「よっこらせ」とマシンを降りていたから、主に被害を蒙ったのはデンジの側だった。 ボロ雑巾のようになりながら地面を転がったデンジが、よろよろと起き上がるが。 ――それを邪魔するように、彼の胸に数発の銃創が開いた。 「らいだーくん! しっかりして!!」 心臓を撃ち抜かれ、デンジは当然のように即死する。 すぐさま手を伸ばして、しおがデンジのスターターロープを引く。 まるで餅つきだった。ぶうん、といつもの音がして、"チェンソーマン"は再起動する。 「……お前、だんだん起こすの雑になってねえ?」 「そんなことないよぉ。ふぁいと、らいだーくん!」 「せめてちょっとは痛ましそうな顔すんのが"まとも"なマスターなんじゃねえのかあ?」 二度目の復活に、最初は渋い顔をしていたが。 「ライダーくん、もしかしてどこか痛いの? 今ライダーくんが負けちゃったら……私、困っちゃうなー」 「――アイさんを困らせてんじゃねえぞ!? 犯罪者野郎が! 強盗殺人は日本の法律じゃ、死刑または無期懲役だぜ~~ッ!!」 アイが仕上げをすれば、満を持して完全復活だ。 さっきまで心臓を撃ち抜かれて死んでいたとは思えないほどの元気っぷりで、再びデッドプールに向かっていく。 その姿を見ながら、デッドプールは呆れたように肩を竦めつつ。 一方内心では――此処に来て、デンジというサーヴァントの真の厄介さに気が付き始めてもいた。 「(経験は浅い、戦いのやり方はセンス頼みとほんのちょっぴりの付け焼き刃。 蘇生の条件も俺ちゃんのに比べて手間がかかりすぎる……が)」 デッドプールには、もう手加減をする気など毛頭ない。 今しがた、マスター達を狙った軌道で攻撃を繰り出したのもその一環だ。 神戸しおを殺す。あさひの覚悟を無駄にしない。自分が代わりに、彼の家族を殺してみせる。 まだ"憑き物"は落としきれていないが、兄妹同士で最後の話も出来たようだし、頃合いとしては十分だろう。 マスターを狙ってもいいのなら、最早デンジなど敵ではない。 全てにおいて自分の後塵を拝するしかない"若輩"なんて、デッドプールに言わせればいいカモだ。 そう思っていた――最初は。 「(やりにくいな。こいつ)」 まるで荒れ狂う台風のように、触れるもの皆傷付ける回転刃を振り回すデンジの相手をしながら。 デッドプールはそう思う。 全てにおいて上を行けている自信はあるのに、何故だか攻め切れない。 まるで、有利だとか不利だとか、そういう観念がそもそもこの男には存在しないかのような。 そんな"やりにくさ"を感じ出すにつれ、目に見えてデンジとデッドプールの戦闘は拮抗の様相を呈し始めてきた。 「お前よ、本当は不死身じゃねえんだろ」 「どういうことだいライダー。三途の川の向こうに、シャーロック・ホームズでも見えたのかい?」 「治るのが速えだけだ。死ぬような傷でもすぐ治るってだけで、実際に死んでるわけじゃねえ。違うかァ~?」 「だったらどうした。幼女(ママ)にロープを引いてもらわなきゃ生き返れない分際で、ミュータントの俺ちゃんにマウントかい?」 「おう、マウントだぜ。"そういうこと"なら、テメエは俺に絶対勝てねえ」 言葉を交わしながらも、手は緩めない。 火花を散らしながら、寄せ来る暴走族を切り払いながら、殺し合うヒーロー二人。 デンジも先ほどの返礼とばかりにチェーンで単車を引き上げると、投擲武器としてデッドプールに投げ付けた。 ひらりひらりと躱すデッドプールだが、次の瞬間その身体は激しい爆発に呑み込まれる。 此処まで含めて――"返礼"だった。 燃料の入っている部分に予めチェンソーで亀裂を入れておくことにより、火花で誘爆させてやり返した。 これで死なないことは既に実証済みだ。 爆炎の中に自ら突っ込み、デンジは再生したてのデッドプールに血も涙もなくチェンソーを振り下ろす。 滅多切りにしてやらアアアア!! という彼の心の声が、聞こえてくるかのようであった。 「テメエみてえな一生死なねえ野郎はよぉ――俺にしてみりゃ、ただの永久機関だぜ!!」 デッドプールの腹を切り裂いて、血と臓物を溢れさせる。 爆発で焼かれた手傷は小さくないし、デッドプールの刀に首筋も切り裂かれているが。 しかしその再生に必要な分の血を、目の前の敵の体内から直飲みで吸収して賄えば。 結果的に、受けた負傷は帳消しとなり。 デンジは文字通り"永久に"、このデッドプールという怨敵を殺し続けることが出来る。 かつて永遠の悪魔に対して使った戦法が、此処に来て再びデンジの身を助けてくれた。 「……お前、マジでイカれてんな。俺ちゃんちょっと舐めてたわ」 「お~? 死体が喋ってんなア~~~~!!!!」 こればかりは、デッドプールも見事なもんだと思わざるを得なかった。 確かにこれは、抜け出せない。 このまま行けば、いずれ霊核にまでチェンソーの刃が届くだろう。 そうなれば敗北するのはデッドプールの方だ。 此処まで殺され続けてきたデンジが、ようやく一本取り返した――しかし。 あくまで一本"取り返した"だけで、"勝った"わけではない。 デッドプールの窮状を悟った神戸あさひが、その右手に刻まれた刻印を輝かせたからだ。 「令呪を以って命ずる――戻って来い、アヴェンジャー!」 「あっ!?」 令呪による、空間転移。 チェーンでしっかりと拘束していたデッドプールが忽然と消え、デンジは素っ頓狂な声をあげた。 デンジ自家製の永久機関に囚われていたデッドプールは、あさひの前へと転移し。 そのまま銃口を向ける――しおへ。そして一発、二発と引き金を引いて発砲した。 「ナイス判断だ、あさひ。助かったぜ」 「礼なんかいい。それより……頼んだ」 「おう。任しとけ、俺ちゃんやる時はやるし、殺る時もちゃあんと殺るんだよ」 ぽん、とあさひの頭に一度手を置いて。 デッドプールは再生したての肩をコキ、と鳴らした。 元より油断など一寸たりともしていない。 マスターをしっかり庇って腹から血を流すチェンソー頭、それを"殺し切る"ことだけを考えて戦っている。 「お前の妹、殺すぞ」 「ああ。……お前なら、いいよ。俺の全部、お前に委ねるから。だから――」 「いい。皆まで言うな」 デンジを真正面から殺し切るなら、スターターロープを誰にも引けない位置で殺すことだろう。 もしくは、マスターのしおを殺して自動的にデンジも消滅して貰うかのどちらかだ。 尤も前者だったとしても、結局デンジが死んでいる間にしおは殺すことになる。 神戸しおの死は、デッドプールがデンジに勝利する上では必要不可欠だった。 だからあさひに質問した。あさひは、全てを委ねると言った。 ――であれば、それで十分だ。 デッドプールに、憂いはない。 「しお。アイさんと一緒に離れてろ、あの野郎はお前らを狙う気だ」 「うん、わかった。……らいだーくん、お願いね」 「――正直、お前らの兄妹喧嘩なんぞどうでもいいんだけどよ。 けどあの野郎は嫌いだぜ、俺ぁ。きっちりしっかり、跡形も残さずブチ殺してやらあ」 デンジも、デッドプールの狙いは分かっている。 的になるしおを近くに置いておくのは危険だと、そう判断して下がらせた。 デッドプールのことは嫌いだというのは本心だ。 自分を二度も殺してくれた彼には、どうにかして吠え面かかせてやらなきゃ気が済まない。 ……だが、それとはまた別に。 この世界に来てから一つ屋根の下で一緒に暮らしてきたしおに、ああも真剣な眼差しで頼まれては――断るのは気が引ける、というのもあった。 神戸あさひを殺すことを彼女が望むならば、サーヴァントである自分はそれに応えるのが筋なのだろう。 細かいことを考えて、一人で勝手に悩むのはもうやめた。 当人であるしおが良いと言うなら、それでいい。 自分はただ、要望に応えて敵を殺すだけの武器(チェンソー)になればいいだけだと。 葛藤やもどかしさを心の中から排除して、いざ敵を殺すために前へと進む。 やること自体は変わらない。いつも通り、誰かにとっての"悪魔"を排除するだけだ。 「――行くぞオオオオオ! ブッ殺オオオオオす!!」 デンジが走る。 デッドプールも、走る。 彼らは、対城宝具だの軍勢宝具だの、そうした派手な奥の手は持っていない。 だから結局最初から最後まで、純粋な接近戦が全てになる。 交差の瞬間、デッドプールの無事だった方の刀までもが砕け散った。 これで彼の二刀流はどちらも中途で折れた、実に不格好なものへと変わってしまったが。 彼はそもそも、剣の達人などではないのだ。 剣の見てくれや格好など、気に留めたことは一度たりともない。 剣など、斬れればそれでいいのだから――刀身が砕けた程度では、デッドプールの手を止める理由には到底なり得なかった。 「(お前も、なかなか立派なもんだよ。 俺があさひのために戦ってきたように、お前もしおのためにずっと戦ってきたんだろ?)」 デッドプールは。 実のところを言うと、このデンジというライダーのことが嫌いではなかった。 言動も行動も、とにかく見ていて退屈しないから――というのもある。 けれど一番は、神戸しおという"子供"の言葉とその夢に、どこまでも対等な目線で向き合っていることだった。 彼はしおに仰々しい何かを見出すことはない。 だがその代わり、しおという"子供"の願いを軽んじることもない。 とにかく、対等なのだ。二人三脚で、それこそ兄妹か友人かのように同じ歩幅で歩んできたのだと……デッドプールには分かった。 「(――そういうヤツは、嫌いじゃない。敵でさえなければ、だけどな)」 松坂さとうへの愛に取り憑かれているしおも、デンジは数少ない例外としているのだろう。 彼女の方も、彼のことを信用しているように見えたし。 それも、頷けた。粗暴でメチャクチャな言動は、裏を返せば偽らないし隠さない性格の裏返しでもあるのだから。 子供は、そういう人間にはよく懐く。 ましてやしおのように"拗れた"子供にとっては、余計にデンジは付き合いやすい存在として写ったのかもしれない。 「――あばよ、チェンソーマン」 デッドプールの刀が、半ばからへし折られたそれが。 デンジの首を刎ね、三度(みたび)その身体を死に至らしめた。 IF(もしも)の未来に思いを馳せても、デッドプールがその手を鈍らせることは決してない。 ほんの少しの名残惜しさだけを心の味蕾で感じながら、斬首の感触からデンジを再び"殺せた"ことを確信。 するや否や、次は彼を完全に"殺し切る"ために神戸しおの抹殺へと移り始めた。 標的はしおだけではない。あさひを嘘のニュースで晒し者にし、間接的に破滅させようとしてきた因縁のある星野アイも、デッドプールは此処で確実に殺し切るつもりだった。 令呪であの"暴走族神"を呼ばれれば、いささか状況は面倒になっただろうが―― 「……っ」 「とうとう天に見放されたな、腹黒女」 アイの顔色が、らしくもなく"曇った"こと。 そして彼方、ガムテ側の戦場からの魔力反応が急激に薄くなったこと。 それらを踏まえてデッドプールは、ガムテと彼の同胞達が"成し遂げた"のだと理解した。 であればもう、道を阻むものは何もない。此処で全ての因縁を清算し、あさひに"明日"を歩ませる。 そう誓って銃を構える――あさひの方はもう、振り向かない。 振り向かずとも、彼の覚悟はもう身に沁みて分かっているから。 「これで終わりだ」 そう言って、デッドプールは。 アヴェンジャーであり、ヒーローでもある彼は、引き金を――引こうとした。 しかし、そこで。 彼は、確かに聞いた。 聞こえる筈のない音を。 もう二度と響くことはないと、そう確信していた筈の音を。 ――ぶうん。 ……。 ……、……。 ………、………。 デンジは。 死の瞬間、いやその数瞬ほど前に。 自分の胸のスターターに、チェーンを結び付けていた。 デッドプールの刃が自分の首を切り落とすことは、もう分かっていて。 だから内心舌打ちしつつ、デンジはこう思ったのだ。 ――くそ。どんだけ強えんだよ、こいつ。 あーあ、また殺されちまうな。 死ぬのは痛えから嫌なんだけどなあ。 けどこのまま雑に死んじまったら、アイさんにがっかりされちまうよな。 ……あと、一応。しおの奴にも。 死の間際、ありったけチェーンを伸ばしたことをデッドプールは見落とした。 最後、果たせなかった攻撃の名残だろうとそう認識してしまったのかもしれない。 しかしそれは、攻撃ではなく。 死にゆくデンジが、死にゆく者なりに考えた――復活のための布石だったのだ。 デッドプールを轢き殺すために、彼方から津波のように押し寄せてくる暴走師団。 彼らの車輪が、路上にだらりと投げ出された電鋸のチェーンを引きずった。 猛烈な速度で進むそれは、デンジの身体も諸共に引きずってミンチに変えたが。 それに合わせて、スターターロープを"再起動"の条件を満たすところまで引いてもくれた。 その結果、ぶうん、と音は鳴り響き。そして―― 「この国にはよー……二度あることは三度あるって諺があんだよ」 「おい、おいおいおい――マジかお前」 神を失い、緩やかに消え始めている暴走師団の一人。 その身体を単車から引きずり下ろして、車両を奪い取った。 ブレーキが最初から壊れている、進み暴走(つづけ)ることしか知らない改造二輪。 暴れ馬故の超速でデンジはデッドプールに接近し、あと少しというところで彼の駆る鉄騎馬が消滅した。 空中に投げ出される格好になるが――構わない。この間合いでなら、手(チェーン)が届く。 「せっかく日本までやって来たんだからよぉ~……その身でしっかり、覚えて帰れやアアアアア!!!」 今まさに銃を撃とうとしていたその腕を絡め取って、空中まで引き上げる。 デッドプールの膂力は、決して低くはない。 だが、それでも。この状況を脱せるほど、彼は怪力無双なサーヴァントではなかった。 詰めの一手を、卓袱台返しで台無しにされ。 空中旅行へと連れ出されたデッドプールが、至近でどうにか銃をぶっ放す。 しかしその弾丸も――デンジの顔を滑って右目を潰すだけの結果に留まり。 「……はは。流石にムチャクチャ過ぎんだろ、お前」 肩をすくめるデッドプールの霊核を、今度こそデンジのチェンソーが引き裂いた。 「ざまあ~~……みろってんだよ。人の首、散々ぶった切ってくれやがって」 ぼと、とデッドプールの死体が地面に落ち。 デンジは勝者として地に立ち、ぺっと血混じりの唾を吐き捨てた。 その片目はまだ潰れたままになっているが、このくらいの傷は血を飲めば簡単に治る。 しかし、消耗は大きかった。身体がどっと疲れているのが分かる。 この後、まだ大ボスの"皇帝"相手に戦わなければならないのだと考えると、デンジはどっと肩が重くなった。 「つーか……あのヤクザ野郎、やられてんじゃねえか。 キザったらしいおっさんだったから別に悲しくはねえけどよ、アイさん困らせるようなことすんなよな……」 デッドプールの屍が、金色の粒子に変わって消えていく。 それを見送るほど、デンジは彼に対して感慨を抱いていない。 デンジにとってのデッドプールは、ただただ面倒臭くて、ひたすら厄介な敵だった。 ビッグ・マムとはまた別のベクトルで、もう二度と戦いたくない相手。 もっとこう、分かりやすく悪くて適度に隙のある――それこそ元の世界で言うところの、悪魔のような敵が相手だとやりやすいのだが。 そんなことを思いながら、変身を解き。 さて相棒が死んだアイさんを慰めてやらなくちゃなと、歩き出したその時だ。 「――らいだーくんっ!」 「あー、良いって良いって。でかい声出さなくても聞こえてるぜ」 しおが、デンジに向けて叫んだ。 その叫びの意味が、どうも"祝福"ではないらしいと気付いた瞬間。 ぽんぽん、とデンジの肩が、何者かによって叩かれる。 何だよ、と鬱陶しそうに振り向いたデンジの表情が――凍った。 「よっ。お前凄えな、チェンソーマン!」 「は?」 意味不明の事態に、思考が凍る。 確かに殺した。その手応えを、デンジは覚えていたし。 何よりその身体が金色の粒子に変わって消えていく様を、つい数秒前に見た筈ではないか。 じゃあ、こいつは誰だ? デンジは、背筋を冷たい水が一滴伝っていくのを感じずにはいられなかった。 冷や汗。"イカれている"彼らしくもないそれは、目の前の事態がどれだけ異常なものであるかを物語っているようで。 「俺が死ぬ方に賭けたって? 残念だったな」 デンジが反撃の準備を整えるのを、待たずに。 傷一つない真新しい身体でそこに立っていたデッドプールが、彼を再殺した。 ◆◆ ……アヴェンジャー・デッドプール。 彼の宝具は、脅威的な自己再生能力を可能とするその肉体である。 霊核を破壊する以外の手段では滅ぼせない、異常すぎる回復力。 その凄まじさは、デンジがその戦いで余すところなく味わされた通りだ。 ――しかし彼には、もう一つの宝具がある。 都市を吹き飛ばす対城宝具などではない。 軍勢を呼び出して、敵を磨り潰すご立派な対軍宝具でもない。 誰かを呪い殺すだとか、敵の宝具を奪い取るだとか、そんな奇を衒ったものでもない。 彼の第二宝具は、ごくごく小さな奇跡を起こすだけのちっぽけなものだ。 その証拠にランクもE。使えるのはたったの一度きりで、かと言って絶望的な状況を覆せるほど劇的なものではない。 されど、それは。 どんなに小さくとも、一度きりでも。 間違いなく――"奇跡"と呼ぶに相応しい、とびっきりのインチキだった。 『俺が死ぬ方に賭けたって? 残念だったな(デッド・プール)』。 対人、否。対軍、否。対城、否。前代未聞の"対死"宝具。 一度きりの、死の拒絶。生前の逸話を元手にした、あらゆる因果も法則も無視した"自己蘇生"。 デンジは確かに、デッドプールに勝利した。 だが、結局のところ勝負事というのは何であれ、最後に笑っていた者の勝ちなのだ。 デッドプールは、爽やかに笑い。デンジは目の前の不条理を見て、笑顔を消した。 それがこの戦いの幕切れであり――結末の、すべてであった。 デンジは負けた。 デッドプールは、勝った。 兄妹の対決は、今度こそ白黒付いた。 勝ったのは――兄(あさひ)だった。 ◆◆ 「――殺ったみてえだな、ガムテ」 暴走師団聖華天による、いつ終わるとも分からない"暴走"がようやく終わった。 地平線の果てまで埋め尽くすような鉄騎馬の軍勢が、まるで蜃気楼のように揺らいで消えていく。 それを見送って、あまりにも絶望的な防衛戦を辛くも生き延びた"割れた子供達"の一人――"毒"が呟いた。 その声を聞いて、傍らでずっと彼女へ指揮を出し続けていた相棒・"天使"が気が抜けたように地面へへたり込む。 彼女達が生き延びられた理由は、ひとえに天使の極道技巧の影響が大きかった。 極道技巧"妖精通信(ムシノシラセ)"。 麻薬の効果で増強された危機察知能力で、自分を襲う"脅威"を怪物の姿として可視化する。 これを用いて、彼は絶えずやって来る暴走師団の軍勢の中でも視線の濃淡を見極め続けた。 その結果、ギリギリのラインながらも命までは失わずに戦い続けることが出来たのだ。 とはいえ常に極道技巧をフルで使い続けた消耗は大きく、天使はもう立ち上がることもままならない状態のようである。 「……ねえ。何人死んだのかな」 「さあな。けど、大勢だろ」 「――生き延びちゃったなあ」 「しゃあねえよ。オレ達があっちに加勢しに向かってたら、こっちで引き受けてた分の暴走族(バカども)まであっちへ行ってたかもしれねーんだ」 普段は喧嘩の耐えない二人ではあったが、今ばかりはそれも鳴りを潜めていた。 胸を満たすのは、喪失感と達成感。 失ってしまった、という思いと、生き延びたぞ、という思い。 とはいえ、まだ戦いは終わっていない。 ガムテは勝った。しかし敵は、全滅していない。 死んでいった者達の分までも、自分達は殺し続けなければ。 「ちょっと休息(やす)んだら、また働いてもらうぞ。 ……ムカつくけどよ、お前の技巧(ちから)はオレには必要不可欠だからな」 「了解(りょ)。あーあ、いっつもそのくらい素直だったらちょっとは可愛げもあるんだけどなー。一ミクロンくらい」 「無駄口叩くな、ぶっ殺すぞクソ天使」 勝つのは、ガムテだ。 彼でなければならない。 毒も天使も、彼の勝利を疑う気持ちがないという点ではずっと共通していた。 だから彼女も彼も、止まらないのだ――自分達を救ってくれた王子様(プリンス)が、いつか心から笑えるように。 「あー、ちょっとごめんな。どいてくれるか、通りたいんだ」 「あ?」 不意に響いた声に、毒が訝しげな顔をして振り返る。 その顔を……左半分が醜く爛れた痛ましい顔を、一本の手が無造作に掴んだ。 「――は? おい、ドブス……何してんだよお前、はぁ……?」 それに憤る暇も、反撃する暇も、彼女にはなかった。 断末魔の叫びの一つも残せないまま、毒の顔が崩れる。 そのまま塵のようにボロボロになって、かつて毒だったものが天使の足元に積もった。 何が起こった。一体、今、何が――その時天使は、自分の弱さと未熟さを殺したいほど激しく憎んだ。 「あ、あああ、ああああ、――ああああああああああ!!!!」 そこに居たのは、今までに見たものとは比べ物にならないほど悍ましい……怪物だった。 絶叫は相棒を殺された憤怒と、そして本能を直接揺さぶられるような激しい恐怖からあげたものであったが。 それでも死んだ毒の得物を拾い上げ、酸を吹きかける行動に移れた辺りは流石殺し屋だと褒め称えられて然るべきだろう。尤も―― 「なんだよ。上出来じゃねえか、ヤクザ野郎」 その行動は、実行にまでは届かず終わる。 毒の死体から伝播した"崩壊"が、天使の身体を足元から崩したからだ。 敵を討つどころか一矢報いることも叶わないまま、天使は相棒を追って散った。 彼女達の遺骸、もとい、"残骸"に目をくれることもなく。 この大虐殺を強く望んでいたその男は、今悠然と姿を現した。 「――ガキ共、ちゃんと大勢死んでやがる。社会のゴミは嫌いじゃないが、落とし前は付けさせなくちゃなあ」 ◆◆ 勝った。 勝ち取った。 しおに――、勝った。 あさひがそれを認識したのと、デッドプールが勢いよく振り向いたのは全く同時のことだった。 その視線は、あさひを見てはいない。 あさひの遥か後方から、こちらに向かって足を進めてくる――……一つの人影を見据えている。 「――走れ! 逃げろ、あさひ!!」 あさひの身体がびくんと震えたのが分かった。 デッドプールがこうも声を張り上げて、あさひに何か言うことなど今までなかったからだ。 驚くと同時に、しかしあさひは急いでその場を退く。 "あの"デッドプールが声をあげた。それはつまり、それほどの"何か"が今この場に迫っているということだから。 ――あさひが、視線を向ける。 デッドプールの見据える方向を、見る。 そこには、一つの人影があるだけだった。 ぞくり、とあさひの背筋が冷える。毛穴という毛穴が、ぶわっと開くのを感じた。 その時抱いた感情はきっと、かつて彼が同居していた一人の悪魔。 あさひとしおがこの世に生まれるきっかけとなった人物であり、そして神戸家の幸せ全てを奪った元凶でもある……父親。彼に対して抱くものに近かった。 しかし、同じではない。同じなわけがない。 あんな男となど、比べ物にもならない。 それほどまでの、何か。言葉には尽くせない"何か"を感じ取り、あさひは心からの恐怖に歯を鳴らした。 なんだ、あれは。なんだ、あいつは。あの男は、一体何だ――! 「……とむらくんっ!!」 嬉しそうなしおの声に、あさひの心が揺らぐ。 恐怖から、また別な方向性の絶望で揺さぶられた。 しおが、何か巨大な勢力に属しているという話は――ガムテから聞き及んでいた。 星野アイもそこに所属しており、共に聖杯を目指しているらしいと聞いていた。 その事実と、しおが彼の名前を呼んだことを踏まえて考えるに。 あの男は――妹(しお)の同盟相手の一人なのだろうと、あさひは結論を出す。 ……、……あんなものと? あんなものと、しおは手を組んでいたのか。 あんなものを見て、しおは何故目を輝かせるのか。 「……なんで、そんな顔が出来るんだよ――しお……っ」 白い、男だった。 白い髪の毛、白い肌。 純白は本来清らかだとか、神々しさだとか、そういうものを見る者に感じさせる筈なのに。 この男からは、ひどく恐ろしいものしか感じ取れない。少なくともあさひはそうだった。 色濃いなんてものではない暴力の臭い。 ――もしかしたらそんな領域の話ですらない、途方もない恐ろしさをあさひは感じた。見た。 「なんだ。チェンソー野郎、負けてんじゃねえかよ」 「うん、一回はかてたんだけどね……」 「まあいいや。お前、今のうちにさっさとそいつ生き返らしとけ。星野はそこから動くな」 「……分かった、けど――死柄木くんはどうするの?」 恐ろしさに、声も出せないあさひとは違い。 デッドプールはすぐさま、自分が取るべきと確信した行動に打って出た。 神戸しおを殺してあの"チェンソーマン"の蘇生を防ぐ。星野アイを殺して、ケジメを付けさせる。 今は全部、二の次だ。何よりも優先して、まずはこの男を殺さなければならないと――"ヒーロー"としての直感がそう告げていた。 「こいつらを殺すよ」 目元に独特の模様が浮かんでいることから、地獄への回数券を服用していることは分かった。 だがそれだけならば、これほどまでに強い危機感を覚えることはなかった筈だ。 違うのだ――そういうカタログスペックの話ではなく、もっと根本の部分で、この男はまずい。 生かしておけば必ず、あさひの未来を閉ざす存在になると。 いや、それどころかこの聖杯戦争に関わる誰もに致命的な結果を齎すと。 確信をもってデッドプールはその男へ、必殺の腹積もりで二丁拳銃を発砲した。 その弾丸を、彼は避けすらしなかったが、両足の腱を撃ち抜かれれば一瞬なれども足は止まる。 そこを突くべく、デッドプールは折れた双剣を得物として……"彼"を殺さんと振り翳した。 「よう、イキってんな根暗ボーイ。おたく、あれかい? なんとか連合の頭取かな?」 「そういうお前はヒーローだろ。奇を衒っちゃいるが、臭いで分かるぜ」 「ピンポーン。だけど質問に質問で返す野郎はホームズだって赤点だ――あの世で追試受けてきな」 それに対し、彼――死柄木弔は手を振るう。 その手が、自身の二刀に触れた瞬間……デッドプールは得物から手を離した。 本能的直感。もしくは、ミュータントとしての超視力が金属の表面を伝い出す"崩壊"を見抜いたか。 とにかくデッドプールは二刀を捨て、死柄木の顔面を蹴り飛ばしてその胴体に銃弾を叩き込んだ。 鼻血が顔を伝って落ちるが、死柄木は臆するでもなくデッドプールへと向かってくる。 ちら、と目を向ければ。デッドプールが捨てた二刀は今、既にぐずぐずに崩れて元が金属だったということすら分からない状態となっていた。 「――あ、そうだそうだ。君とも話をしてみたかったんだよな、ガムテくん」 触れたものを、"崩す"力。 種は見抜けたが、恐るべきはその崩壊が物質の垣根を超えて伝播することにあった。 現にデッドプールが捨てた刀に触れていた箇所の地面も、崩れて塵の塊のようになっている。 難儀な相手だと、デッドプールがそう思った矢先に――大きな戦いを終えたばかりであるにも関わらず、飛び込んできた小さな影があった。 「そりゃ光栄だなァ~。こっちもババアの小指落とせたくらいでいい気になってるお山の大将のツラ、拝みてえと思ってたんだ」 「おいおい、よくこの状況で弁を立たせられるな。 おまえの大事な"お友達"は、不幸な交通事故でずいぶんお亡くなりになっちまったみたいだが」 「ああ~? ガキみたいな煽りすんじゃん、加齢臭野郎(オッサン)がよ。子供大人(フリークス)かア?」 「お山の大将はお互い様だろ? もしまた仲間を集められたら、今度は交通ルールから教育した方がいい。"赤信号はみんなで手をあげて渡りましょう"ってな。 暴走(はし)ってるバイクの前に飛び出したらよ、そりゃ死ぬだろ」 関の短刀は、殺島飛露鬼を討つために使い潰してしまった。 だから今、ガムテの手に握られている刃物(どうぐ)は一般流通品のなんてことないナイフだ。 しかし、死柄木弔はサーヴァントではない。クーポンを服用しただけの人間だ。 であれば、首を刎ねれば殺せる――ガムテの技巧があれば、決して勝てない相手じゃない。 死柄木とて、それは分かっていた。 こうして対面してみて、ガムテの強さはひしひしと伝わってくる。 感覚としては"ヒーロー殺し"のそれに近いだろうか。 信念と、狂気と、鍛錬とセンスに裏打ちされた"完成度(つよさ)"。本心から、見事なものだと思うが。 結局、触れれば壊れるのだ。 この世の誰よりそれをよく知っている死柄木は、ガムテに向けて躊躇なくその右手を突き出した。 「――よく聞けガムテ、その手は触れたものを問答無用で崩しちまう。 崩れたものからまだ無事なものへと崩壊を"伝わせる"、感染機能まで盛り込まれたヌルゲー仕様だ」 「……あ~~、了解(りょ)。面倒臭え技巧持ってやがんな。アヴェンジャー、細かい話は後だ」 それを避けつつ、ガムテはその瞳の奥に――新たな殺意を光らせる。 「このカス、殺すぞ」 「異議なしだ。ビッグマウスのツケを支払わせてやろうぜ」 泣く子も黙る。 それどころか、向けられた時点で失神しても不思議ではないようなとびっきりの殺意と殺意。 一人の人間に向けられるには過剰と言ってもいいほどのそれを前にしても、死柄木弔はただ不変だった。 そんなものはもう飽きた、と――そう言葉にする代わりに腕を伸ばす。 対し、ガムテの選択は実に無慈悲だった。 既に敵の能力には当たりが付いている。 "崩壊"。手のひら、もしくは五指で触れた物体を崩壊させる異能。 ならば腕を切り落としてしまえば、指を咥えて見守ることすら出来ない木偶の坊の完成だ。 それに対し死柄木は、身を軽く引くことで躱しながら笑った。 「俺とおんなじこと考えんだな。ちゃんとしてるじゃん、王子様」 避けられた、という事実自体にガムテは小さくない驚きを禁じ得ない。 目の前の男からは――八極道や忍者のような頭抜けた強者特有の、磨き上げられた"強さ"は一切感じなかった。 なのにその身のこなしは、野生の獣を思わせるほど軽やかで迷いがなかった。 最速の殺し屋であるガムテの"本気"を空振らせる難易度がどれほどかなんて、今更語る必要はないだろう。 「ははっ、速ッええな。麻薬キメてなかったらまともに見えなかったかな」 かつて、魔王と呼ばれた男は。 最高の魔王を目指し、死柄木弔を利用した男は。 人体改造を施すことで、死柄木を肉体面でまず超人に仕立ててしまうことを考えた。 しかしこの世界に魔王オール・フォー・ワンは居らず――彼の竹馬の友が長い年月をかけて仕上げた、"設備"もない。 そんな状況で、死柄木の肉体的貧弱さを克服させたのが"地獄への回数券"だった。 運動能力から動体視力まで、おおよそ考えられる全てのパラメータが底上げされた今の彼はまさに超人。 元より、ギガントマキアという"災害"との交戦を一月近くも続けたことで、秘められたセンスを限りなく引き出された状態であったことも幸いし。 今や死柄木弔の動き、そしてその体術は――"八極道"にすら並び立つ水準にまで達していた。 だからガムテも容易くは攻め切れない。 クーポンによる回復ですら補いきれない、身体の芯まで染み込んだ疲労も災いして……想像以上の苦戦を余儀なくされる。 故にこの戦いの鍵を握るのは彼ではなく、彼と肩を並べて戦うアヴェンジャーのサーヴァント・デッドプールである。 「ずいぶん気持ちよくラリってるみたいで何よりだ。 ハッピーで埋め尽くされたまま、R.I.P(レストインピース)まで逝ってくれ」 死柄木の指が、デッドプールの左腕を掠める。 しかし彼は冷静に、自身の右腕を切断して崩壊の進行を食い止めた。 そうしている間も足は動かし続け、再生したての左腕で死柄木の腹へ一撃。 内臓を叩き潰しながら、手刀を作ってそれを用い斬首を試みる。 忍手"暗刃"と呼ぶには――強度も練度も足りないが、人間の首程度なら簡単に切り飛ばせるパワーは持っている。 こいつは一秒たりとも生かしておくべきではない、その直感に従って確殺を試みるデッドプールだったが。 青年は、次代の魔王は――ただ笑って。 「そういう感じね」 身を屈め、素早く地面に触れた。 それを察知し、ガムテは空に逃れる。 だが、デッドプールはそうは行かない。 死柄木弔の"個性"は、その崩壊は――感染(うつ)るから。 そうなれば、もしかするとあさひにまで崩壊が届くかもしれない。 それだけは是が非でも避ける必要がある。だからデッドプールは、その"最悪"を回避するように動くしかない。 「なら――話は早いんだ」 自分から意識を反らした、デッドプール。 アヴェンジャーではなく、ヒーローとしての行動をしてしまう彼の背中に死柄木の五指が触れる。 意図を理解したガムテが死柄木の首にナイフを突き立てたが、肉を切り裂き首を落とすまでのわずかな間で刀身に触れられれば命は奪えずじまいだ。 ホーミーズ化もされていない、量産品のナイフでは一秒たりとて死柄木の崩壊に耐えられない。 "伝播"による死を避けるためにガムテは大きく飛び退く必要があり――更に得物は失われ。 死柄木弔はヒーロー・デッドプールの抹殺という本懐を、悠々と遂げる。 「守るものが多いよなあ……ヒーローってのは」 ……ヒーローを憎む、かつて救われなかった少年は。 師である魔王から、ヒーローを殺す最もベターな手段を教わっていた。 ヒーローは、守るものが多いのだ。 だからこそ、彼らはいつか選ばなければならなくなる。 助けを求める誰かを見捨てて、ヒーローではなくなるか。 身を挺してでも大切なものを守り抜いて、ヒーローとして死ぬか。 デッドプールは、世間で言われるヒーローのイメージとは大きくかけ離れた人物だ。 言動は下品で、場合によっては差別発言だって平気で行う。 セクハラなんて日常茶飯事。人を殺すことにさえ、それが必要な行為であるなら躊躇は一切しない。 世間話をしながら、そのノリの延長線で相手の頭を撃ち抜ける――彼はそういう人間だが。 それでも、神戸あさひに対して触れる時のデッドプールは紛れもなく"ヒーロー"だった。 だから、守らずにはいられなかった。 そうする以外の選択肢は、なかった。 「……クソ」 デッドプールは、どうしようもなくヒーローで。 ウェイド・ウィルソンは、そのために死ぬ。 背中から伝わってくる"崩壊"が自分の霊基を崩していくのを感じながら、デッドプールは虚空に向かって悪態をついた。 「だから、"優しい男"やんのは割に合わねえんだよ……」 ◆◆ "その光景"を、あさひは見た。 そして、悲鳴をあげた。 そうせずにはいられなかったからだ。 自分を此処まで導き、支えてくれたデッドプールの身体が――崩れる。崩れていく。 「っ、デッドプール……! 令呪を以って――!!」 「……ダメだ、やめろあさひ。今お前のところに向かえば、俺ちゃんの献身が全部無駄になっちまう」 腕や足なら、切り落とすことで対応も出来た。 だが、胴体に直接触れられるのだけは――ダメだった。 全ての損傷を力技で修復させることの出来るミュータントの肉体も、回復した端から蝕まれては立つ瀬がない。 その上で、彼の崩壊は再生したばかりの……今度こそ後がないデッドプールの霊核にまで、きちんと届いていた。 デッドプールが可能とする死者蘇生、その"奇跡"が輝くのはたったの一度きり。 一度使ってしまったのなら、もう二度と彼に奇跡は微笑まない。 つまり、デッドプールの死はこの瞬間逃れようのない未来として確定された。 脳裏をよぎったのは名残惜しさと――そして、自身の生に対する諦めだった。 「逃げろ。俺ちゃんが死んだら、こいつは間違いなく次にお前を殺す」 自分はもう、どうやったって生き延びられない。 あさひと過ごした時間、交わした言葉。 その全てが走馬灯のように駆け巡るが、感傷に浸る言葉などこの場ではカスほどの価値も持たないことをデッドプールは理解していた。 願わくば、見たかった。あさひが幸せな日常に帰り、自分の人生に戻る瞬間を。 柄ではないが、自分はそれをずっと楽しみにしていたのだと。デッドプールは遅まきながら、そう気付く。 でもそれは――もう叶わない未来だ。 ならば、夢見た未来は溜息と共にゴミ箱へ放り込もう。 これから死ぬ自分が、今成し遂げられる一番のこと。 それは、逃がすこと。未来へ繋ぐこと、だ。 この霊基が完全に崩れ落ちるまであとどれだけ掛かるか分からないが、その時間を最大限に有効活用してやろう。 一撃で霊核まで崩せなかった不手際のツケを、野望の頓挫という最悪の結果でたっぷり支払わせてやろう。 もはや銃も握れない死に体となりながら――デッドプールは立つ。 「……早く行け。お涙頂戴な別れとか、俺ちゃんがやっても誰得だ。読者がみ~んな冷めちまう」 「な、に……言ってんだよ。お前は……お前は、どうするんだ――デッドプール!」 「死ぬ。力も運も、全部使い切っちまった。身ぐるみまで賭けて破産したギャンブラーは、カジノから蹴り出されるのが相場さ」 ガムテも、これ以上は戦えない。 得物がなければ、殺し屋は真には輝けないから。 その状態でこの怪物を相手取るのは、いかに彼が八極道と言えども死にに行くようなものである。 戦えるのは、もはやデッドプールだけなのだ。 これから死ぬ男だけが、これからを生きる少年を守ってやれるのだ。 「ふざ、けるな……! お前が――お前が死んで、どうするんだよっ……!! 今までさんざん振り回しといて、自分だけ一抜けするなんて勝手すぎるだろっ、なあっ」 「大丈夫。今のお前ならもう、俺ちゃんが"振り回さなくても"やっていけるよ」 「っ……!」 だから早く行け。 デッドプールは、言う。 あさひは動かない、動けない。 すうっ、と――デッドプールは、大きく息を吸い込んだ。 「じゃあな。お前は、結構……俺ちゃんにとって、いいサイドキックだったぜ」 じゃあな。 その言葉で、あさひはようやく動けた。 涙をぼろぼろと情けないほどこぼしながら、身体をがくがく震わせながら。 おぼつかない足取りで、それでも必死に走り出した。 ――その足は、もう止まらない。 足を止めて振り返らなくても、あさひはデッドプールに言葉を届けられるから。 心から心へ。マスターとサーヴァントの、既に途切れかけた繋がりにのせて。 『……今まで、ありがとう。俺の、ヒーロー』 その声を聞くなり、デッドプールは駆け出した。 前へ――神戸あさひの未来を閉ざすだろう、死を揮う魔王へ。 ……死ぬのは何度目だろうな。 どんなに死なないと思ってる奴でも、結局いつかは死ぬもんさ。 タナトフォビアに苦しむ奴らにゃ悪いが、死は人類が滅亡するまで決して離れることなく寄り添ってくれるにこやかな隣人だ。 人は死ぬ、絶対死ぬ。いつか必ず死ぬんだ、どんな善いやつも悪いやつも。 大事なのは、天国に落ちるか地獄に召さるかしたその後で――いい死に方したなって、ゲラゲラ笑えるかどうかだよ。 その点俺ちゃんは外さない。誰より死ぬのが上手いのさ、このウェイド・ウィルソンは。 ガキに見送られて、ガキを守って、そうして死ねる以上に胸張って語れる死に方もそうはねえだろ。 心底、本当にガラじゃないけどよ――元々、ちゃんと宣言してただろ? 今日の俺ちゃんはガキのために戦う、優しい男だってよ。 だから貫き通してやったのさ。 笑っておどけて、イカしたジョークを決めまくって、なんだかんだでのらりくらりと生き延びる、そんな俺ちゃんを期待した奴らは残念だったな。 なあ、あさひ、あさひよ。 俺ちゃんからお前に話すことは、もう何もねえ。 どうせ届かねえしな。もう自分の身体がどんだけ残ってんのかも、分かんねえよ。 けどな。 お前が思ってるより、世界ってのは優しいもんさ。 クソみたいな世界にも、どうしようもねえお人好しってやつはいる。 クズ野郎にぶつかったら金的でもして、顔面に唾吐きかけてやれ。 そうやってさよならすりゃ、それもスカッとした良い思い出に早変わりすんのさ。これ、俺ちゃんの人生哲学。イカしてるだろ? 俺ちゃんは此処までだ。 お前の世界に、もう二度と俺ちゃんのジョークが響くことはない。 せいせいするか? それとも寂しいかな? どっちでもいいさ、俺ちゃんも保護者キャラから解放されて、ようやくのびのび好き放題出来るってもんだ。 流石に自重した下ネタとか、えぐめのブラックジョークとか、色々あったんだぜ? こんな俺ちゃんでも一応青少年に配慮してたのさ。なんかの条例に引っかかると、界聖杯ちゃんに怒鳴られちまうかもしれないからよ。 だから、まあ、なんだ。 あんま腐んないで、なあなあで生きちまえ。 お前は真面目すぎるし、優しすぎるからよ。 もっと肩の力抜いて、のらりくらりと生きりゃいいんだ。 ――幸せになんな、あさひ。 俺ちゃんとの、約束だ。 じゃあな。 【アヴェンジャー(デッドプール)@DEADPOOL(実写版) 消滅】 ◆◆ 「そんな宝具(もん)持ってやがったのか。遅れて来て良かったぜ、殺されるところだった」 「頭くらい下げろよテメエ。お前が遅いせいでよ~、こちとらなんべんも首チョンパされてんだぞ」 「サーヴァントが人間の手助けをアテにすんなよ。情けねえ奴だな」 そして、最後に残ったのは死柄木弔。 霊核を砕かれ、全身を崩させながら勝率のない戦いに身を投じた男の末路はあえて語らない。 ただ一つだけ確かなのは、彼を葬った死柄木が抱いた感想は"思っていたよりも手こずった"、というものだったこと。 手負いのヒーローが最も恐ろしい。それも、師の言葉だった。 「サーヴァントを失ったマスターを野放しにしておくと……後々面倒だ。 出来れば殺しちまいたかったが、今から追い掛けるとなるとタイムロスになるか」 「ヤクザが生きてればな。あいつら、弱え奴に追い込みかけんのは得意分野だろ」 「まあ、そう言うな。あいつは立派に死後を果たしてくれたよ」 そのせいで、神戸あさひを殺すことは出来ずじまいに終わってしまった。 とはいえ、戦果としてはだいぶ上々だろう。 割れた子供達の主力部隊は、殺島が一人残らず皆殺しにしてくれた。 ガムテを取り逃したのも痛いが、鏡面世界からの襲撃のリスクもこれでかなり少なくなった。 前哨戦はとりあえず、連合の勝利。 もしも死柄木がこの場に立ち寄らず、直接スカイツリーへと向かっていたならば――危うかったが。 「とむらくん、なんでこっちに来てくれたの? スカイツリーでまちあわせの予定だったよね」 「ガキどもを殺しておきたかったんだ。本社のビル壊されたの思い出すと、どうもムカついてよ」 そう、危なかった。 本当に危なかったのだ、さっきのは。 デッドプールの"奥の手"は、しおにとってまるで予想だにしない隠し玉だった。 あの状況から逆転勝利を決めるためには――令呪を使い、交代してもらう必要があった。 デンジの中で、彼を見守るチェンソーの悪魔。 ビッグ・マムをすら追い詰めた地獄のヒーローを呼び、無理やりデッドプールを殺すしかなかった。 しかし、霊地争奪戦の前に限りある令呪を使ってしまうのは避けたかった。 真の"チェンソーマン"は非常に強大だが、デッドプールがそう容易く殺されてくれるとは思えなかったのもある。 のらりくらりと時間を稼がれれば、それだけでしおにとっては大きな痛手になってしまう。 そんな状況で、死柄木が助けに現れてくれたのは彼女にとって非常にありがたかった。 彼のおかげで、しおは余力を持った上で霊地争奪戦を見据えることが出来るようになったのだから。 「それに、お前らに万一のことがあっても困る。 霊地に来るのはどうせババアだけじゃねえんだ、戦力は一人でも多く温存しておかねえとな」 「……へへ、そっかあ。たすけてくれてありがとうねえ、とむらくん」 「止めろ、気色悪い。第一、助けられてねえだろうが」 結果だけを見れば、間違いなく勝利だ。 だが――失ったものも、大きい。 十万にもなる軍勢を召喚して、その気になれば都市一つをものの数分で更地に出来る力を持っていた"暴走族神"。 彼の損失は、連合にとって大きな痛手だった。 霊地争奪戦にあたっても、あれだけの人数を用いた物量攻撃はさぞや活躍してくれただろうに。 子供達の意地と執念の前に、神と呼ばれた不良(アウトロー)は倒れた。 「星野は、あいつのとこか」 「ああ。本当は近くで護衛してあげたかったんだけど、断られちまってよ」 「まあ、あの女なら大丈夫だろ。ガキ共の残党に殺されるようなタマには見えねえ」 「アイさんにタマとか言うんじゃねえよ、ったく下品な奴だぜ」 人は死ぬ。誰もが、当たり前のように死んでいく。 改めてしおは、そのことを実感していた。 兄が消えていった方向を、見つめる。 既に、兄妹喧嘩の決着はついた。 勝ったのは兄の方。ただし、最後に勝ち取ったのはしおの方。 たぶん、第二回の兄妹喧嘩が起こることはないだろう。 兄妹の対話は終わり、兄はサーヴァントを失った。 そして妹は結局……兄の方を振り向くことは、もうない。 「――でも。はじめて、お兄ちゃんとお話できたな」 そんな小さな感想だけを抱いて、神戸しおは頭数の減った連合に帰るのだ。 神戸家は元には戻らない。元に戻るには、あまりにも時間が経ちすぎた。多くのものが、変わりすぎたから。 それでも、あの一瞬。交わることをやめた二人が、あの一瞬だけは確かに交わった。触れ合った。 それだけは、確かなのだった。 ◆◆ 「うそつき」 壊れた単車が、一台だけ残っていた。 他は軒並み消えているのに、その一台だけが残っている。 そこに理由を求めても、答えが出ることは決してない。 強いて言うならばそれは、神と呼ばれた男の最期が地面の上で終わることを認めなかった"彼ら"の遺志だったのかもしれない。 単車に寄りかかって、胸に大穴を空けた男が力なく笑っていた。 最後の煙草を口に咥えて、静かに紫煙を立てている。 「……送迎(おく)ってくれるって、言ったくせに。悪いんだ」 「……はは。いや、返す言葉もねえな」 殺島飛露鬼は、もう何をすることも出来ない。 ガムテが、宿敵(ちち)との絆を懸けて打ち砕いた霊核はクーポンの効力をしても癒えることのない致命傷だった。 その証拠に殺島は立ち上がることも出来ず、ただこうして最後の一服に興じている。 それでも――とうに消滅していても不思議ではない筈の彼が、今もこうやってぎりぎりのところで現世に踏み留まっているのは、きっと。 「悪り、アイ。しくじっちまった」 「何してんのさ、もう。おかげで私、毒にも薬にもならない可愛いだけの女になっちゃったんだけど」 「麻薬も……当分の間は大丈夫だろうが。量産は効かなくなっちまったなあ」 アイと。自分をこの世界に呼んだ、このしたたかで、どうしようもなくいじらしい"母親"と、最後に言葉を交わすためだったのだろう。 「死んじゃうんだね、殺島さん」 「……そうだな」 「私さ、なんとなくだけど――思ってたんだよね。 私達はこのまま勝ち上がって、絶対に聖杯を掴むんだって。 そんで元の世界に帰って、私の子供達を殺島さんに抱っこしてもらうの。 それが当たり前にやってくる、私達の未来だって……そう思ってた」 しかしそれは、もう絶対に叶わないもしもの未来と化した。 殺島飛露鬼はじきにこの世界を去り、アイはサーヴァントを失った無力なマスターに成り下がる。 聖杯への道は……いつか必ず来ると信じていた未来は、遥か彼方に遠のいてしまった。 「でも。行っちゃうんだね、殺島さんは」 「オレも……見たかったよ、お前のガキ。母体がいいからな、さぞかし可愛いんだろうなって思ってた」 「可愛いよ。私の子供だもん」 「――しくじった身で、こんなこと言うの……我ながら、マジで狡いと思うんだけどよ」 だとしても。 まだ、途切れたわけじゃない。 「お前は、絶対家に帰れよ。そして、帰ってやれよ」 「ふふっ……なにそれ。ほんとにずるいじゃん」 「……、オトナってのは、狡いもんなのさ」 殺島は、霞む視界でそれでもアイを見つめる。 そしてふと、感慨深いものを覚えた。 オトナってのは、狡いもんなのさ。 オトナ、か。 そんなもの、もう二度と名乗ることはないと思ってたんだけどな。 「……お前は最高のアイドルだよ、星野アイ。 不良の神性(アイドル)だったこのオレが、全面的に保証する」 最後の煙草が、口からぽろりと落ちる。 それは、殺島のスーツを通り抜けて地面に落ちた。 その火がふっと消える、その時には、もう。 「ありがとな。いい夢見れたよ」 「……うん。おやすみなさい、殺島さん」 かつて父親だった男の姿は、何処にもなくなっていた。 【ライダー(殺島飛露鬼)@忍者と極道 消滅】 . ◆◆ ――そして。 「……あさひ。お前は、何処に行く?」 少年たちは、肩を並べて歩いていた。 彼らは互いに失った者。大切なものを、失くした者同士。 だが、ガムテは既にこれからどうするかを決めていた。 東京スカイツリーへと向かう。それ以外の選択肢は、彼にはない。 「オレは……あの崩壊野郎をブッ殺しに行く。 此処まで――これだけやって、ババアが霊地を取れませんでしたじゃ話にならねえ。 オレにとって今回の戦いは、もう何をどうやってでも勝たなきゃならないものに変わった」 あさひは、ガムテの言葉に……すぐには答えられなかった。 彼は、ガムテとは違う。 彼は確かに割れた子供だ。 しかし――神戸あさひは、ガムテのようにはなれない。 割れた子供達(かれら)のようには、どうやったって生きられないのだ。 なぜならあさひは、優しいから。 妹を殺すと覚悟を固めていても、実際に顔を合わせてしまったら"最後にもう一度"と言葉を求めてしまうくらいには、優しいから。 そんな彼は、自分が受けた喪失を素直に怒りや殺意に変換出来ない。 もっと酷な言い方をするならば……すぐには、立ち直れない。 「……ごめん、ガムテ。もう少しだけ――考えさせてくれ」 「あっそ。けど、オレはもう行くぞ」 「ああ。ここから先は、一人で大丈夫だ。……お前も、気を付けろよ」 「だぁれの心配してんだ。生意気だぞ、昆布アイス」 ガムテは、それを責めることはしなかった。 しかし、その心に寄り添うこともしない。 そんな暇は、もはや彼にはないから。 仲間達が命を賭してまで繋いでくれたものを、必ず未来へ繋げなくてはならないから。 死柄木弔を殺して、彼らの死が決して無駄なものなんかじゃなかったのだと胸を張ってそう言えるようにしなければ。 そうでなければ――自分はもう二度と、殺しの王子様(ガムテ)を名乗れない。 そうして、神戸あさひは一人残される。 頭の中に浮かぶ面影は、こんな状況にも関わらずマスク越しでも分かる笑顔を浮かべていて。 けれどその笑顔がもう二度と自分に笑いかけてくれることはないのだと思い、一粒の涙を落とした。 ……懐の中にあった筈の、彼から託してもらった拳銃。 それはいつの間にか、影も形も残さず消えていた。 暴力の世界を生き慣れていないあさひにとってあの感触は、すごく落ち着かなくて邪魔なものだった筈なのに。 今はどうしようもないくらい、叫び出してしまいそうになるくらい――その鬱陶しさが恋しかった。 【新宿区/二日目・早朝】 【神戸あさひ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:疲労(大)、深い悲しみと喪失感、サーヴァント消失 [令呪]:残り2画 [装備]:着替えの衣服(帽子やマスクを着用) [道具]:リュックサック(保存食などの物資を収納) [所持金]:数千円程度(日雇いによる臨時収入) [思考・状況] 基本方針:絶対に勝ち残って、しおを取り戻す。そのために、全部“やり直す”。 0:……、……。 1:折れないこと、曲がらないこと。それだけは絶対に貫きたい。 2:ガムテと協力する。後戻りはもう出来ない 3:さよなら――しお。 4:星野アイと殺島は、必ず潰す。 5:櫻木さん達のことは、次に会ったら絶対に戦う……? 6:あの悪魔を殺す。殺したい、けど、あの人は―― [備考] ※真乃達から着替え以外にも保存食などの物資を受け取っています。 ※廃屋におでん達に向けた書き置きを残しました。内容についてはおまかせします。 【ガムテ(輝村照)@忍者と極道】 [状態]:疲労(極大)、精神疲労(大)、覚悟 [令呪]:残り三画 [装備]:地獄への回数券 [道具]:携帯電話(283プロダクションおよび七草はづきの番号、アドレスを登録済み) [所持金]:潤沢 [思考・状況] 基本方針:皆殺し。そして、救われなかった子供達の“理想郷”を。 0:止まれはしない。必ず、勝つんだ。 1:刺すべき瞬間? ああ、理解ってるぜ。 2:もうひとりの蜘蛛が潜む『敵連合』への対策もする。 3:283陣営は一旦後回し。犯罪卿は落とせたが、今後の動向に関しても油断はしない。 4:黄金時代(北条沙都子)に期待。いざという時のことも、ちゃんと考えてんだぜ? これでも。 5:世田谷で峰津院のサーヴァントを撃退したのは何者だ? 6:じゃあな、偶像(アイドル)。 [備考] ※ライダーがカナヅチであることを把握しました。 ※ライダーの第三宝具を解禁しました。 ※ライダーが使い魔として呼び出すシャーロット・ブリュレの『ミラミラの実の能力』については以下の制限がかけられています。界聖杯に依るものかは後続の書き手にお任せします。 NPCの鏡世界内の侵入不可 鏡世界の鏡を会場内の他の鏡へ繋げる際は正確な座標が必須。 投射能力による姿の擬態の時間制限。 ※関の短刀は消滅しました。 【死柄木弔@僕のヒーローアカデミア】 [状態]:疲労(小)、覚醒、『地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)』服用 [令呪]:残り二画 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:数万円程度 [思考・状況]基本方針:界聖杯を手に入れ、全てをブッ壊す力を得る。 0:さぁ――行こうか。 1:勝つのは連合(俺達)だ。 2:四皇を殺す。方舟も殺す 3:便利だな、麻薬(これ)。 [備考] ※個性の出力が大きく上昇しました。 【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:疲労(小) [令呪]:残り二画 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:数千円程度 [思考・状況] 基本方針:さとちゃんとの、永遠のハッピーシュガーライフを目指す。 1:さよならがいっぱいだ。 2:アイさんととは仲良くしたい。でも呼び方がまぎらわしいかも。どうしようねえ。 3:とむらくんとえむさん(モリアーティ)についてはとりあえず信用。えむさんといっしょにいれば賢くなれそう。 4:最後に戦うのは。とむらくんたちがいいな。 5:れーじゅなくなっちゃった。だれかからわけてもらえないかなぁ。 【ライダー(デンジ)@チェンソーマン】 [状態]:疲労(大)、血まみれ [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:数万円(しおよりも多い) [思考・状況] 基本方針:サーヴァントとしての仕事をする。聖杯が手に入ったら女と美味い食い物に囲まれて幸せになりたい。 0:つ……疲れた…………。 1:死柄木とジジイ(モリアーティ)は現状信用していない。特に後者。とはいえ前者もいけ好かない。 2:星野アイめちゃくちゃ可愛いじゃん……でも怖い……(割とよくある) 3:あの怪物ババア(シャーロット・リンリン)には二度と会いたくなかった。マジで思い出したくもなかった。 ……なかったんだけどな~~~~~~~~~~~~~~~……ハア~~~~…… [備考] ※令呪一画で命令することで霊基を変質させ、チェンソーマンに代わることが可能です。 ※元のデンジに戻るタイミングはしおの一存ですが、一度の令呪で一時間程の変身が可能なようです。 【星野アイ@推しの子】 [状態]:疲労(小)、サーヴァント消失 [令呪]:残り三画 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:当面、生活できる程度の貯金はあり(アイドルとしての収入) [思考・状況]基本方針:子どもたちが待っている家に帰る。 0:うそつき。ありがと。……バイバイ。 1:敵連合の一員として行動。ただし信用はしない。 [備考] ※櫻木真乃、紙越空魚、M(ジェームズ・モリアーティ)との連絡先を交換しています。 ※グラス・チルドレンの情報をM側に伝えました。 【備考】 ※新宿に展開されていた"割れた子供達"はガムテを除いてほぼ全滅しました。 死者の中には舞踏鳥、黄金球、司令&攻手、毒&天使、解放者(前原圭一)などが含まれています。 どの程度の構成員が新宿戦を免れた、生き延びられたかは後のお話におまかせしますが、前線に出ていた構成員と新宿で落ち武者狩りを命じられていた構成員を合わせて最低でも全体の八割ほどが死亡したと考えられます。 少なくとも前線に出ていた構成員は、全員死亡した可能性が高いです。 ※暴走師団聖華天によって、新宿区が今度こそ壊滅しました。 ※ライダー(殺島飛露鬼)は消滅しましたが、彼が生成した"地獄への回数券"は残留しています。 時系列順 Back いつか見た地獄もいいところ Next さらば、掲げろ 投下順 Back 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) Next いつか見た地獄もいいところ ←Back Character name Next→ 133 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) 死柄木弔 138 地平聖杯戦線 ─High&low─ 133 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) 神戸しお 138 地平聖杯戦線 ─High&low─ ライダー(デンジ) 133 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) 星野アイ 136 さらば、掲げろ ライダー(殺島飛露鬼) GAME OVER 133 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) ガムテ 140 Heaven`s falling down(前編) 133 地平聖杯戦線 ─RED LINE─(1) 神戸あさひ 136 さらば、掲げろ アヴェンジャー(デッドプール) GAME OVER
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/500.html
"破壊の八極道"とは、極道斜陽時代を終わらせるための最後の灯火である。 輝村照の父、輝村極道が組織した忍者抹殺のための魔人集団。 道を極めるが故に孤独を強いられる哀しき極道者(ヤクザ)達の切り札。 極道にとっての救世主であり、忍者にとっての怨敵であり、堅気にとっての悪夢である八人。 しかしてその実力の水準(レベル)は決して一律ではない。 麻薬無しに忍者の殺害を成し遂げてきた"忍殺(ニンジャスレイヤー)"から、根性と侠気のみを寄る辺にする凡夫まで幅広い。 そこにあるのは確かな優劣――そしてその点で言うならば、今輝村照/ガムテが前にしている男は確実に彼よりも格下の存在であった。 「悲しいぜェ――殺島ァ。アンタのこと、これでも結構本気(マジ)に慕ってたんだけどなァ~~……」 殺島飛露鬼。通称を"暴走族神(ゾクガミ)"。 不良の歴史上類を見ないカリスマ性を以って、文字通り酔い痴れるような暴走を魅せてくれた男。 彼は八極道の中では明確に下から二番手だった。 直接戦闘に限るならば最弱に数えてもそう間違いはないだろう彼よりも、ガムテは確実に極道としてのステージで上に立っていたが。 しかしガムテの目に宿る敵意の中には、驕りも嘲りも微塵たりとてありはしなかった。 殺島と殺し合うとしたら、勝てる自信はあった。むしろ負ける可能性の方が少ないと認識していた。 だがそれは、あくまでも彼が人であった頃の話。 今の殺島は人ではない。人であるのは、ガムテの方だけだ。 かつてガムテが兄ちゃんと呼んで慕った男は――ガムテをただの子供と侮らずに居てくれた"不良(ヤンキー)"は今。 「良い絆(モン)持ってるじゃねえか、ガムテ。正直、お前が界聖杯(こっち)でも殺し屋の王子やってると知った時は冷や汗かいたぜ」 名実共に、人ではなくなった。 命を失い、魂となってガムテの前に立つ障害物。 道を極めた結果の、その成れの果て。 暴走族神は此処に在る。死の峠をすら超えて、地獄の果てから舞い戻ってきた。 ガムテの知る笑顔を浮かべて、ガムテの知る拳銃(チャカ)携えて。 ガムテと、その同胞である割れた子供達の精鋭集団を前にしながら――笑う。ただ、不敵に。 「勝てないよ、アンタは」 そんな殺島にガムテは酷薄にそう告げた。 それは頑然とした事実。警戒はしているし、侮りは最初から抱いていない。 だが勝利を疑う気持ちは微塵もなかった。 殺し屋としてのプライドが、たかだか英霊になった程度で自分とアンタの差は埋まらないのだとガムテにそう吐かせる。 「オレはアンタをブッ殺す。殺し屋の威信にかけてブッ殺す、八極道のよしみとして後腐れなくブッ殺す。 死柄木とかいうシャバい加齢臭野郎(オッサン)に着いたアンタには、もう欠片の魅力も感じねー」 「何だよ、そうなのか? 寂しいじゃねえか、ガムテ。 オレは今でもお前のことが好きだぜ。可愛い可愛い……オレの弟分さ」 その懐から取り出したのは、有刺鉄線だった。 それを、殺島は慣れた手付きで自分の額へと巻き付ける。 有刺鉄線の鉢巻。たかだか鉄線如きでサーヴァントの肌が破れる筈もないのに、その額からは血が滴り落ちた。 さながらいばらの冠。神の愛した独り子イエス・キリストをなぞるが如くに――暴走族神は君臨する。 「死ぬ気で来いよ、ガムテ」 戦力だけを見れば、取るに足らない相手だ。 殺島は技でも執念でもガムテに及ばない。 英霊故に物理攻撃が効かないという唯一の利点さえも、今のガムテは克服済みだ。 皮肉にも。必ず殺すと決めたクソババア――シャーロット・リンリンのお節介のおかげで。 今のガムテは英霊すらも殺せる。だから、殺島飛露鬼などという八極道の捨て石に負ける道理はない。 その筈なのに、ああ何故。 「――オレも本気で行くからよ」 血を滴らせ、二丁拳銃のみを携え立つその姿がこうまで大きく見えるのか。 後光すら幻視するような立ち姿に、ギリッとガムテは奥歯を鳴らす。 癪だった。かつて確かに勝っていた相手に怯まされかけたという事実が、彼のプライドを逆撫でした。 なればこそもう容赦はない。語るべき言葉も、もはやない。 抜刀――関の短刀(ドス)。 女王によって改造/改悪された凶器(ホーミーズ)。 見るだけで腸が煮えくり返りそうになるそれをなるべく視界の片隅に追いやりながら、ガムテは声を張り上げる。 開戦の号砲を鳴らせるのは、子供達の王様である彼だけであるから。 「総員、予定通りだ。――命令(オーダー)は一つ、この場の全員ブッ殺せ! どいつを殺してもMP(マサクゥルポイント)は言い値だ! どの首も値千金、殺し屋にとって最高の名誉だと思えッ!!」 狂気の形相を浮かべて、高らかに宣言する。 それと同時に鳴り響く咆哮、雄叫び。 溢れ出すは子供達。ガムテに付き従う幼い殺し屋達。心の割れた殺意の群れ。 本格的な混沌の幕開けが成った今。 ガムテが、その先頭へと躍り出る。 そこは彼にだけ許された位置、彼にしか許されない位置(ポジション)。 殺島飛露鬼――不動。 歯は見せず、あくまで不敵に口元に弧を作り。 殺し屋と偶像が……極道と極道が。 今、此処に、交差する。 「"破壊の八極道"――ガムテェ!!」 「"破壊の八極道"……いや。"敵連合"――殺島飛露鬼」 浮かべる表情は殺意と殺意。 それだけで十分、否それ以外にはない。 それこそが彼と彼が語り合うのに必要な、この世の何より雄弁な言語であるから。 「「――――ブッ殺す!!!」」 さあ、始めようか。 極道と極道。 どちらが生存るか、死滅るか……!! ◆◆◆ 「極道技巧――狂弾舞踏会(ピストルディスコ)」 想定通りの行動だった。 殺島飛露鬼は凄腕の銃手(ガンナー)だ。 殺し屋としてのステージで上に立つガムテであれど、銃の扱いでは殺島の影すら踏めない。 超人的なセンスと感覚によってのみ実現する自由自在の跳弾。 彼が人間であった頃でも十分に異次元の技巧であったが、英霊となった今の脅威度はもはやその頃の比ではない。 跳弾、跳弾跳弾跳弾跳弾―― 跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾。 ガムテの記憶に残っている殺島の拳銃の装弾数を遥かに超えた弾数が朝焼けの街並みに弾ける。 チッ、と舌打ちが漏れた。当たって欲しくない予想が的中したのを物語るリアクション。 改めて確信する。殺島飛露鬼はもはや単に銃撃の巧い極道の領分には留まらない。 致死の銃弾を際限なく自由自在に撒き散らす、魔弾の射手(カスパール)であると。 「(弾薬の補充を、マスターの魔力に依存してんのか……)」 その推測は的中している。 英霊と成った殺島に、弾切れの概念はもはやない。 撃てば撃った端から残弾がアイの魔力を源泉として補充されるのだ。 即ち、無限大。銃弾一発を生み出す際にかかる魔力の消費など極小であるのだから、そこの枯渇を期待するのは無謀だとガムテは即断する。 「おお――良いね。流石じゃねえか、ガムテ。間違いなく殺す気で撃ったんだけどなァ」 「そうだったのかよ、ごめんな兄ちゃんッ♪ せっかくサーヴァントにまでなったんだ、一発くらい嘘でも当たってやれば良かった!」 だが、ガムテは被弾しない。 短刀で斬り伏せ、あるいは純粋に避け、受け流す。 ほとんど生存する隙のない弾幕の中に強引に生存圏を作り出して、殺島にそのまま肉薄。 殺島は正確無比に、ガムテが振るう短刀の切っ先に弾丸を命中させる。 微かに逸れる軌道を良いことに、約半歩分の歩幅で回避――からの、至近距離からの銃撃。 過失(ミス)など一万回に一度だって期待出来ない。 視界を常にフル稼働させなければ死ぬのは此方だ。 クーポンをキメている極道を殺すのに、拳銃など本来は役者不足も甚だしいが。 極道の実用に堪える改造を施され、最上の担い手の腕で扱われる銃が吐き出すそれは最早弾丸(タマ)ではない。 ――魔弾(ギョク)だ。 「(サーヴァントの銃撃ってのがまず未知数だ。一発(テスト)だって喰らいたくねえ――)」 全弾回避した上でブッ殺す。 殺し屋の美学通りに刺して殺す。 意識を限界まで研ぎ澄ました今のガムテは、殺意という概念で形作られた一匹の獣に他ならなかった。 弾幕を切り払い、掻い潜り、縦横無尽に戦場を跳ね回る。 スーパーボールのように不規則な軌道でバウンドする小さなシルエットを、しかし殺島も見逃さない。 それどころか移動の先に配置するように跳弾を飛ばし、かと思えばストレートでの射殺軌道で発砲。 正攻法と搦め手を巧みなセンスで配分した、殺島飛露鬼だけが奏でられる鉄風雷火の極道多重奏(デクテット)。 認めざるを得ない。一人じゃ殺せない――独りじゃ命(タマ)取れない。 予想通りの事実という名の身の丈を受け入れながら、ガムテはしかし獰猛に笑った。 「アンタは凄えよ、殺島飛露鬼。あいつが見初めたのも分かるぜ」 弾幕の渦を抜け、殺島に迫るガムテ。 サーヴァントの魔弾雨を無傷で抜けて殺害圏内に入り込む時点で、マスターとしては破格の性能なのは間違いなかったが。 振るうドスに合わせて殺島も放つ。この至近距離で逐一ドスの動きに対応し、それを潰す形で射撃するのは並大抵の技術ではない。 まして殺島はそれを――あえて地面に弾丸を放ち、跳弾させることによるいわば"先置き"した迎撃という形で実現させていた。 異次元。常識外れ。まさに、神業。 改めてガムテは確信する。 自分は殺し屋として殺島より上だが、それは目の前の男が傑物でないことを意味などしない。 この男は間違いなく怪物だ。 しかし考えてみれば、それもその筈。 いかに自分と境遇が近くとも――殺しの王子様ともあろう者が、技も力もない凡夫に懐くなどあり得る筈がないのだから。 「だから……こっちも全力だ。オレに使えるモン、全部使ってブッ殺す!」 銃弾とドスが激突する。 最高の使い手により振るわれたそれらは、激突の瞬間に激しい衝撃波を生じさせ。 ガムテのみならず殺島さえもを、後退させた。 そして下がったその先で――殺島は瞠目する。 夜空を引き裂きながら自分に迫る、実に禍々しい球体があったから。 「黄金球(バロンドォォル)ッ!」 「応さガムテェ――オレは絶対外さねえ!」 サッカーボールを模した鋼鉄球。 クーポンによるブーストを受けた超脚力で蹴り上げられたのだろうそれは、時速数百キロを超える魔球だった。 そして何より驚くべきは、その表面に顔があったこと。 夜空を背にして微笑む球体は、まるで絵本の中にしばしば登場する人面の月のよう。 殺島の知る"彼"が使っていた球は、こうではなかった。 その上で。顔のある得物というモノに、今の殺島は覚えがあった。 ・・・ 「驚いたぜ。てっきりお前らは、あのババアのことは嫌いなモンだと思ってたんだが――」 四皇ビッグ・マムの能力。もしくは、宝具。 物体や現象に魂を与えることで誕生する、喋る人面の武器――ホーミーズ。 考えたものだと殺島は思う。確かにこの方法でなら。 肉体はクーポンで強化し、得物には魂を与えて極道の領分から英霊の領分まで押し上げるという手段でなら。 「嫌いに決まってんだろ、暴走族神(ゾクガミ)の兄ちゃんよぉ。 だけどオレらがアンタら英霊ブッ殺すには、こうでもしなきゃ届かねえんだろ?」 ――割れた子供達。彼らの凶器/狂気は、サーヴァントに届く。 「だったら嫌悪感(ニガムシ)噛み潰して嚥下(ゴックン)さ! 割れた子供達――"黄金球"! アンタのことは何だか嫌いになれねえが、ガムテのためにブッ殺す!!」 黄金球……割れた子供達が誇る"三凶"の一角。 膂力だけならば末席とはいえ八極道である、あの夢澤恒星にすら届くと聞いていた。 そんな使い手が、狂った母の力を授かり更に強化されているのだ。 これは既に、殺島をして脅威と呼ぶに値する暴力だった。 「極道技巧――"蹴球地獄変(ビバ・ラ・ファンタジスタ)"ァ――!」 縦横無尽にして変幻自在。 一度躱しただけでは終わらない、それは本来殺島の十八番である筈だったが。 躱したところでビルを削り取り戻ってくる、止まらない鉄球。 「(こりゃ……まともに食らうとちとマズいか)」 地面に潜り込めば、今度は殺島の足元を食い破るようにして飛び出してくる。 きゃきゃきゃきゃ、とまるで子供のような笑い声をあげながら跳ね回る黄金球の象徴。 純粋な火力で相殺するのが難しい分、ある意味ではガムテ以上に厄介な攻め手だった。 その上で、黄金球の技巧(スキル)も癖も傾向も全て知り尽くしているガムテは当然……この暴れ馬ならぬ暴れ球と、同時に彼を攻められる。 「笑顔(ツラ)が曇ったね」 「……おう、そりゃな。何だよお前ら、見ない間にずいぶんデカくなりやがって」 刃の雨霰が降り注ぐ中で、雷のようにやって来る蹴球を捌く。 並大抵のことではないが、それを可能にしている辺りはやはり彼も八極道である故だろう。 避けきれない分はしょうがないと弁えて、クーポンの再生能力で即座に追いつく分のみ選んで受け止める。 黄金球の鋼球を右手で受け止めれば、べきべきと音を立てて殺島の腕が内側から破砕した。 死地になる前に退いて――そのついでにガムテ、及び黄金球本人へ銃撃を見舞う。 黄金球は跳弾によって身体を貫かれていたが、彼は八極道にも届く剛の者(タフガイ)。 牽制程度の攻撃では、さすがの殺島も容易くは削り切れないらしい。 そしてそれは、サーヴァントとの戦闘経験がないガムテ及び子供達にとって値千金の情報だった。 「――嬉しいじゃねえか」 魔弾が、それを収める銃身が、火を噴く。 溢れ出す無尽蔵の弾薬、弱点を克服した無敵の二丁拳銃。 狂弾舞踏会の火力は、当然ながら装弾数の概念が破綻したことで天井知らずに上昇していた。 そして殺島ならば、視界に収まる全ての敵へ同時並行して"本気"の跳弾射撃をすることも――もちろん可能である。 顔の真横を通り過ぎていく鉄球にすら怯えず、臆さず、地を蹴って前に進む殺島の姿はまさに"極道"。 魔弾を断ちながら、ガムテが殺島と再度接敵する。 殺島ならこの距離でも自分を殺せると、近付かれたからというそれだけの理由で詰む雑魚ではないと、ガムテは確信していた。 やろうと思えば銃口を武器にして、物理攻撃で自分を殺しに来る可能性も十分にある。 あらゆる可能性を想定しながら、ガムテは彼と鍔迫り合いの状態になり。 殺島と奇しくも――いや、"当然"か。 同じ表情(えがお)を浮かべながら。 ガムテは欠けた歯を覗かせ、呟いた。 「今だ――オレごと爆(や)れ」 その指示の意味を殺島はすぐに理解したが、逃さない。 違う。逃げられないのだ。ガムテの言葉を受けた"彼ら"が行動を完了するまでの時間は、殺島が逃げの動作に移るよりも速いから。 55・39・78・89―― 呟く声は殺し合いの騒音に解けて、一切聞こえないまま。 気付いた時には既に、鍔迫り合う殺島とガムテの頭上から"それ"が墜ちていた。 「ッ……! 何だそりゃ……!!」 刀剣での近接戦が時代遅れに成り果てた現代の戦場にて、唯一使われ続けている"槍"がある。 神槍(グングニル)の如く雄々しいフォルムを持つそれは、しかし正確には槍ではなく"弾"だ。 名を徹甲弾。間違っても市街地でぶっ放すべき兵器ではないこれが、ガムテが託した"彼ら"の凶器(エモノ)。 極道技巧――"剛拳巨砲主義"。腕で殴り飛ばすという使用法で放たれた徹甲弾は、両者の丁度真ん中に墜ちて。 そして――――爆ぜた。 「……良いのか"司令(オーダー)"? 直接首ぶち抜いた方が確実に殺せたんじゃねえのかよ?」 「サーヴァントを舐め過ぎだ。欲を掻いて空振りに終わるよりは、殺し切れる公算が薄くても確実に"削る"方が理に適ってる」 殺島から距離を取った場所にて、四肢のない少年が盲目の相棒に背負われていた。 彼らは相棒(バディ)だ。割れた子供達の中でも最高精度の殺人(コロシ)を可能とする、以心伝心を地で行く戦闘人形。 本来なら、彼らは神槍を爆発物ではなく純粋に槍として用いて敵を殺す。 だが、ビッグ・マムの能力によりホーミーズ化させた神槍の爆発は――普段のスタイルを曲げてでも使うに足る"価値"がある。 確実に殺島を削りつつ、ガムテの体勢を立て直させて戦場をこちら有利の状況で仕切り直せるのだ。 「構えろ攻手。次は、いつも通りだ」 「了解だぜ……司令! やっぱりオレぁこっちが性に合う――景気良くブチ抜いてやるよォ!!」 更に―― 爆発が奪うものは、敵の体力や命だけではない。 誇りを曲げて手を染めた皇帝の力、魂を操る魔女の権能。 その炸裂はサーヴァントであろうと、一時的に聴力を奪われるほどの威力を誇る。 そしてそれだけの大爆発が生み出す爆炎、巻き上げる粉塵は――敵の視界までもを奪い去る。 「……チャチな真似するじゃねえの。目眩ましした隙に、訳も分からないまま削り切っちまおうってか?」 爆風が晴れるまで、数秒。 正しくはそれだけの時間があれば、サーヴァントの視界は平時と変わらない見通しを取り戻す。 それまでを勝機と見据えたことを確信しながら、殺島はまず手始めに銃乱射を開始した。 聴力はまだ死んでいる。だが殺島ほどの銃手になれば、弾丸が物体に衝突した感触を大気の震えから感じ取ることすら容易であった。 ましてや今、彼は不純物が大量に含まれた爆風の中に居るのだ。 感知の制度は、むしろ普段以上に良好でさえあった。 この状況にあって尚、殺島飛露鬼に隙はない。 その証拠に黄金球の鋼球を、まるで"見えている"かのように回避し―― 「で、上だな」 真上から飛来する攻手の徹甲弾(ミサイル)を察知し、一歩移動。 そのまま着弾に合わせて神槍を足場に跳び上がる。 真上へ。爆風の外へ。司令の状況分析から繰り出される、攻手の剛拳砲撃は言わずもがな正確無比の命中精度だったが、それですら不足していた。 此処が複雑でかつ逃げ場に乏しい建造物(ビル)の内側だったならば、いざ知らず。 周囲が開けている野外においては、彼らの精密砲撃の脅威度は目減りを強いられてしまう。 視界が開ける。 世界が、戻ってくる。 音も少しずつ、帰ってきている。 まずはガムテよりも、周りの子供達から殲滅するべきか。 そう考えながら数秒ぶりの世界を目の当たりにした殺島の表情が――凍った。 「――何……だ、こりゃ……」 そこに広がっていたのは――東京のコンクリートジャングルではなかった。 一面に広がる、湖。一目見ればどんな悩みも苦しみも忘れ果てるような、美しい湖だった。 流れる空気も、響く安らかな水音も、全てが静謐とした長閑さに満ちていて。 だからこそ殺島は一瞬、確かに呆気に取られた。 それを責めることはきっと、ガムテにすら出来ない。 何故ならこれは、彼の父であり。 破壊の八極道を組織した極道の救世主……極道の未来を担う孤独な男ですら、麻薬なしだったとはいえ初見では順応出来なかった技巧(わざ)。 白鳥の飛び交う麗らかな湖により、思考を空虚に染められたその一瞬を縫って。 殺島飛露鬼の肺が――鋭く、それでいて美しい一撃の前に突き破られた。 「ガ……ッ!?」 殺島の前に立つのは、一人の少女だった。 顔にガムテープを巻いた、割れた子供達の新参者(ルーキー)。 しかしその才能は、すぐさま彼女を三狂の一人にまで駆け上がらせた。 殺島は同じ破壊の八極道として、割れた子供達の構成員をいくらか知っている。 だが、それは決して全員ではない。 黄金球のように分かりやすく目立つ殺り方(スタイル)なら目に付くし、種も割れるが。 顔は知っていてもどういう技巧を持っているのかは知らない、そんな構成員が殆どだ。 彼女もその内の一人であった。 白鳥の湖を背にするに相応しい舞踏鳥(プリマ)――この世界の主。 「極道技巧――"夢幻燦顕視"」 夢幻燦顕視。 その効果は読んで字の如く、夢幻の展開。 標的に幻を見せながら、弛まぬ練習によって鍛えられた舞踏鳥の舞に載せた攻撃を打ち込み抹殺する美しき明晰夢。 人間の脳のキャパシティを、幻と割り切って尚無視出来ない迫真(リアル)な幻覚によって食い潰す、プリマに憧れた少女の狂気のかたち。 「……あのババアから貰った靴だなんて、死んでも履きたくなかったけど。 貴方を殺すために我慢してやったのよ。だから――私達の屈辱(イラつき)のためにも、ちゃんと此処で死になさい。オジさん」 それに殺島は、まんまと嵌った。 一度爆風で視界を奪われていたからこそ、完全に虚を突かれた。 結果として殺島の動きは止まり、舞踏鳥はそれを見逃さず彼の肺を破り。 ようやく幻覚に嵌められたことを認識し、反撃に転じようとする殺島の胴へ――追い打ちのように鋼球が食い込んだ。 「(ッ……視えな――)」 「視えないでしょう。それは当然。貴方は今も変わらず、私の極道技巧の中にあるから」 跳ね飛ばされ、殺島が背から倒れ込んだ。 そのまま地面を跳ね、車に撥ねられた歩行者のように転がっていき。 やがて大の字で横たわり、がはっ、と口から血を吐いた。 誰がどう見ても明白な、"敗北"の光景が――そこにはあって。 「――ガムテ。殺りなさい」 「最ッ高(グ~~ッド)、お前ら。イイ仕事してくれたぜ」 美しい青空を、幻の蒼穹を見つめながら、殺島は笑う。 そこに迫るのは、ガムテだ。 いざや止めを刺さんと、此処でかつての先輩(アンちゃん)ブッ殺さんと。 駆ける、迫る。死神の足音は、幻覚の中に居る殺島には聞こえない。 よって彼はこの瞬間、完全に詰んでいた。 "破壊の八極道"殺島飛露鬼は、同じく"破壊の八極道"ガムテと、その同胞達の前に敗れ去った。 極道は互いの目的のため、野望のため、面子のために殺し合う。 敗れた極道は全てを失うのが常だ。面子も、沽券も、信用も、部下も、そして命も。 殺島は極道としてガムテよりも下だと、完全に格付けがされてしまった。 「界聖杯(こっち)でもよ、運転手やってたんだ……」 殺島自身、そのことはよく分かっている。 悔しさもあったが、喜びも大きかった。 可愛がっていた後輩が、こうして自分を乗り越えてくれたのだ。 ガムテが殺島に懐いていたように、彼もまた、ガムテのことを快く感じていた。 根本の部分を理解することは決して出来ないだろうと察知しながらも、それでも、彼の前での殺島飛露鬼は確かに"兄ちゃん"だった。 強えじゃねえか、お前。 一人で戦わなければ卑怯だとか、そんな古臭い考え方に殺島は興味などなかった。 ましてガムテは殺し屋だ。ルール無用をこそルールとする彼は今、まさに最善を尽くして自分を倒してみせた。 そのことを嬉しく感じながら、殺島は血を吐きながら笑っていた。 そのスーツは黄金球の一撃を受けた時に大半破れ、もはや服というよりも不格好な外套のように成り下がってしまっている。 「けどよ――やっぱり極道やる時は、特攻服(こっち)の方が性に合うんだよなァ。礼服(スーツ)は、どうも堅苦しくってよ……」 ゆらり、と幽鬼のように立ち上がれば。 スーツだった布切れは、ずるりと彼の身体からずり落ちた。 それにより、スーツの下に着込んでいた衣服が露わになる。 特攻服(トップク)。暴走族のシンボルであるそれが、湖に吹く風によってひらりとはためいた。 「ようガムテ。それに友達(グラチル)のお前ら。 お前ら強えなあ。オレみたいな凡夫より、お前らよっぽど極道してるよ」 緩んだ冠を締め直す。 既に受けた傷はほぼほぼ回復していたが、力なく笑う姿は弱々しい。 つう、と顔を伝っていく血。 その顔に浮かぶ薄い笑みは、依然として崩れる気配はなく。 そして―― ぞわり、と悪寒を覚えた。 . 殺島が、ではない。 彼以外の全員が、だった。 黄金球も、舞踏鳥も。司令と攻手も。 そして、彼らの王子であるガムテ自身も。 誰もが背中に氷柱を直接突っ込まれたような、そんな悪寒に固まった。 どう考えても、自分達は勝っているにも関わらず。 あとは王将を圧殺すればそれで終わるだけの話なのにも関わらず――。 「だから、極道はもうやめだ」 何故、こんなに怖いのか? 一度倒し、地に臥させた男が、何故。 こうも底知れない、眩く輝く"何か"に見えるのか―― その答えが出るよりも前に。 舞踏鳥は、確かにそれを聞いた。 「え……」 穏やかにせせらぐ湖のほとりに。 この世界に相応しくない音が、響いている。 それはマフラーの音。違法改造された単車(バイク)の咆哮。 彼女が作り上げた舞踏(バレエ)の幻界を、無粋に塗り潰し掻き消すように。 白鳥たちが飛び立って湖から次々と消えていく、去っていく。 音は増え続ける。一台、二台、百台、千台、それさえ遥かに超える単車の騒音(ノイズ)。 「何よ、これ――」 殺島も、当然それを見る。 湖から白鳥は消え。 凪いでいた湖面は無粋な振動によって掻き乱される。 それと同時に、世界に罅が入った。 まるで砕け散るダイヤモンドのように美しく、夢幻が悲鳴をあげている。 「……ッ! ガムテ――早くトドメを刺しなさい! 今すぐにッ!!」 舞踏を変更――"白鳥の湖"から、チャイコフスキーの"くるみ割り人形"へ。 くるみ割り人形の兵隊が無数に具現化し、殺島を抹殺するべく行進を始める。 だが音は止まない。世界は、またしても罅割れていく。 あがく舞踏鳥を見やり、殺島はふっ、と笑った。 そこにはあの輝村極道ですら怯んだ、兵隊達の幻に対する恐怖や動揺など微塵もない。 「違う――退けお前らッ! 今すぐにッ!!」 舞踏鳥の声を、ガムテは否定する。 彼は既に分かっていた。これから何が起こるか、いや何が来襲(く)るか。 今選ぶべきは突撃ではない。最後の一手を此処で詰めるのは悪手の中の悪手だと、実際に"あれ"を見ているガムテには分かった。 今すぐ退かせるしかない。そうでなければ、負けるのは……失うのは此方だと理解していたからガムテは吠えた。 だが―― 「もう遅え。覚悟しろよ、ガムテ。 そんでもってしかと見てくれや。 オレにもお前に決して負けない、凄え仲間(ダチ)が居るんだ」 そう、遅い。 既に、招集は掛けられたのだ。 かつて彼がその一声で以って、世界中から彼らを呼び戻したように。 暴走(ユメ)の終わりから十年以上の年月が経っていたにも関わらず、誰一人としてその呼び声を拒む者など居なかったように。 彼らは必ず来襲る。 そこに、神が居るならば。 地獄の果て、地平の果てまでも先陣に立って自分達を導いてくれる、眩しく雄々しい現人神が、暴走族神(ゾクガミ)が居るならば。 彼らは来襲るのだ、それが何処であろうとも。 どんな世界であろうとも、敵が誰であろうとも。 忍者も閻魔も恐れない、大人になれない馬鹿共は。 いついかなる時であろうとも、騒音(エンジン)かき鳴らしてやって来る。 「来襲(く)るぜ、そして開闢(はじま)るぜ――――オレ達の黄金時代(オウゴン)が」 そしてこの瞬間を以って――かつて地獄と化した街(シンジュク)は、今度こそ焦土と化すことが確定した。 ◆◆ それは、一言で言うならば狂気だった。 轟く閃光、響くは騒音。 数十、数百、数千、数万――それですらまだ足りない熱狂の騎馬。 ある者は笑いながら、ある者は泣きながら、またある者は言葉ですらない音を吠えながら。 彼らは、新宿区の町並みを文字通り蹂躙し始めた。 爆走、暴走、疾走。果てしない熱病に浮かされた黄金時代(オウゴン)の亡霊達。 現代の日本に形をなしたワイルドハントが、明日も未来も知ったことかと全ての現実を拒絶しながら駆け回る。 道に人がいるなら轢き殺し。 車がいるなら撥ね飛ばし。 建物が遮るなら吹き飛ばし。 ビルが建ち並ぶなら、引き裂いて進む。 朝焼けの街を照らすヘッドライトは、"彼ら"の来襲る証。 地上の流星群は、辛くも新宿事変の大破壊から難を逃れた日常の残滓をすら無慈悲に、そして無造作に殺戮する。 ――事の序でに。"暴走"という目的の序でに、誰かの笑顔を轢き潰して進む狂った車輪。 彼らは誰もが夢を見ている。 夢を見ながら、人を殺す。 爽やかな気分のままに、荒れ狂う。 現世に甦った"神"の託宣に従い――地獄の釜から溢れ出た。 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 爆走(はし)る、 暴走(はし)る、 疾走(はし)る――この世に神を見出した者達。 悪童(ワルガキ)の群れ、総数十万! 吹き荒れるは死の嵐。青龍と鋼翼の戦争すら、世田谷消滅の激戦すら、純粋な規模で言えば上回り得る暴走の津波! 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 今宵――この街に理(ルール)は存在しない。 掟を定めた神そのものが、全ての無法を許すから。 彼らにとっての神である男が、彼らをこの地に招いたこと。 それは即ち、止まず終わらない暴走(ユメ)の幕開けに他ならないから。 暴走を神が赦す。殺害を神が赦す。 その暴走(ユメ)邪魔する全部――殺害せよと、神はそう望んでいる。 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 ――破壊の八極道は、神をも恐れぬ極道者の集まりだ。 忍者をすら殺す"番長"、救済を標榜しながら人を殺す"怪獣医"。 滅びの歌を奏でる"歌姫"、全てを笑覧する"脚本家"。 だが、彼らの中で最も英霊という形に向いている男は間違いなく"暴走族神"殺島飛露鬼である。 十万の軍勢を率いて忍者と戦った"伝説"。 二十年の年月を経て甦った"再生"。 全ての逸話が、この上ないほどに信仰の獲得に適している。 仮に他の八極道がサーヴァントになろうとも、殺島ほどの規模で悪事(わるさ)を働く宝具は得られまい。 こと語られること、崇められること、畏れられることにおいて暴走族神は間違いなく唯一無二。 そして今――極道・殺島飛露鬼は敗れ。現人神・殺島飛露鬼の"本気"が、割れた子供達の全殺しという目的のために新宿へ解き放たれた。 「暴走師団……聖華天……ッ」 ガムテは、それを知っている。 その筈だったが、しかし彼が知っているのはあくまでも"再生"した暴走師団の姿でしかない。 しかし今宵、此処に再現されたのは紛れもない全盛期の暴走師団。 忍者に半殺しにされ惨敗を喫したとはいえ、殺島の宝具として立派な神秘に押し上げられた彼らの疾走の脅威度は生前の比ではない。 ――ガムテの想定を、此処で殺島が超えた。 聖華天は無軌道の極みだ。 神の号令一つで、何にでも文字通り全力で取り組む馬鹿の集団だ。 笑いながら、吠えながら、悪童達に新宿が蹂躙されていく。 ――辛うじて難を逃れた都庁。 邪魔だとばかりに、単車の群れに食い破られた。 ――新宿中央公園。 ショートカットのために数千台の単車が通り、草木一本残らない轍の山と化した。 ――新宿ゴールデン街。 極道車の爆速大渋滞(スクランブル)で、平らな地平に均された。 ――避難民数千人が集まった避難所。 聖華天に認識されることすらなく、ものの十数秒で"全殺し"に遭った。 異常事態を中継しようとしていたテレビ局のヘリは、ウィリー走行で勢い余って天空に跳ね上がった一台で轢き潰され。 仮設の遺体置き場となっていた体育館は、暴走の余波で燃え上がり巨大火葬炉と化し。 今回の大戦争でサーヴァントを失った落ち武者マスターを狩るべく潜ませていた、"割れた子供達"五十三人が抵抗の余地も許されず粉砕された。 そのまま迫る、神の号令に応えるために。 "狩る側"を"狩られる側"へと変える鋼の軍勢が――ノスタルジアを超えた黄金時代(オウゴン)が。 大人崩れの悪童(ワルガキ)が、本当の悪童(チルドレン)殺すためにやって来襲(き)た。 「"今の"ボスに倣おうかね、オレも」 そして――殺島がその口に放り込んだのは、地獄への回数券。 既に服用している筈の麻薬(それ)を、追加で服用することの意味。 当然ガムテは、理解していた。 聖華天の出現以上の戦慄が走る。 クーポンの二枚服用(ギメ)が禁忌な理由は、一つだ。 人間の肉体は、如何にデフォで屈強な極道であろうとも二枚服用の負荷に耐えられない。精神も、また然りである。 只でさえ常軌を逸した薬効を持つ地獄への回数券のオーバードーズは、それ即ち数分後の死を約束するもので。 それだけに、極道としての仕上がりでガムテに敵わない殺島は生前――この芸当が不可能だった。 しかし今は違う。 肉の器から解き放たれ、魂の器となったその肉体(カラダ)に限界は最早なく。 精神だって、人間とは比較にならないほど高い次元にまで鍛え上げられている今。 殺島にとってのクーポン二枚服用は、"不可能"ではなく"可能"となり。 「完全解放だ――全部ブッ破壊(こわ)せ。アイツの夢見る地平(みらい)の、前夜祭と行こうぜ」 "無謀"ではなく――"切り札"と化した。 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 「暴走族神! 暴走族神! 暴走族神! 暴走族神!」 暴走族神・殺島飛露鬼。 今、改めて――悪童の王の前に、立ち塞がる。 →
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/502.html
← 『帝都高爆葬・暴走師団聖華天』。 真名解放後の新宿は、一瞬にして地獄と化した。 死と騒音が底なしに響き続ける此処は、まさしく地獄の一丁目。 「ははははッ! 久しぶりだなァオメーら! 久方ぶりの暴走(マツリ)だ、日和んねえで楽しく行こうや!!」 巻き上がる歓声は、彼が、殺島飛露鬼が不朽の偶像(アイドル)であることの何よりの証明だった。 殺到する聖華天。黄金球の蹴ったホーミーズ化鋼鉄球が、先陣の三人を纏めて文字通り粉砕したが―― 止まらない。終わらない。果てしない。キリがない。 続く後続の単車の群れが、遂に鋼鉄球を押し返した。 更にその勢いのまま、立ちはだかる障害物(タフガイ)を轢殺せんとして。 「――黄金球!」 「ッ……陳ッ謝(ワッリ)舞踏鳥! 助かったぜ!!」 そこで舞踏鳥が極道技巧を展開し、どうにか殺到を押し留めた。 黄金球の窮地を助ける傍らに、手もとい足の届く範囲の暴走族(ゾク)を蹴殺する。 黄金球も先の返礼とばかりに動きを止めた連中の首を文字通り"刈り取る"。 元は烏合の衆とはいえ、サーヴァントの宝具と化した聖華天(かれら)を相手にこれだけの獅子奮迅を見せられる辺りは流石だったが。 しかし逆に言えばそれは、主力格に数えられるメンバーでなければ芥子粒のように轢き潰される運命しかないことを意味してもいた。 「なッ……んだよこれェェ!! 理不尽(クソゲー)過ぎんだろォが!?」 「ぐッ……偉大(グレート)! お、お前……もう死んでね?」 「いやお前もだろ色男(カサノバ)! い、嫌だ……オレ、オレ、まだ何も偉大なこと出来てな――」 偉大(グレート)、色男(カサノバ)。 美容師(ビュティシャン)、兵士(ソルジャー)。 探偵(ディティック)、守護者(スター)。 割戦隊(ワレンジャー)、幻想作家(アニメーター)。 花嫁(ファムファタル)、太陽(ファミリー)。 暴走師団聖華天の突撃走行と相対し、いずれも轢殺。 肉体の原型が残っていた者は幸運だ。死んでいく子供達の殆どは、もはや"人のパーツが付いている肉片"と化していたから。 ――その様を、黄金球は静観できない。 討ち死にする覚悟を決め、それでも一人でも多くの聖華天を殺すのだと足を踏み出そうとして。 しかしその肩を、背後の舞踏鳥に掴まれて止められた。 「無謀よ。あの数は、気合と根性じゃどうにもならないわ」 「ならどうすんだ。"鏡"は奴らの突撃(ブッコミ)と、あのヤクザ野郎の銃撃でほとんど壊されちまった。 撤退なんて虚無(シャバ)い手段選ぼうにも、試してる間に大勢死ぬぞ!?」 「……そうね」 状況は、ほぼほぼ詰みに等しかった。 聖華天の完全展開という一手が、割れた子供達の"数"という強みを完全に塗り潰したから。 逃走経路は現在進行形で破壊され尽くし、念の為にと各自に一枚持たせてあった手鏡もあの魔弾じみた跳弾によってほぼほぼ全滅状態だ。 割れた子供達を殲滅する。鏡の世界に逃げることすら許さず、一人でも多く殺す。 そんな強い意思の元に作り上げられたのが――この地獄である。 「勘違いしないで、黄金球。私だって――貴方と同じくらいには怒り狂ってるのよ」 「そんなこと分かって――、……いや」 舞踏鳥も、黄金球も。 大人のせいで歪まざるを得ず、こうなる以外に生きようのなかった割れた子供達という群体を尊く思っている。 仲間を無慈悲に轢き潰されて削られて、それで泣き寝入りかまして善しと出来るような利口な人間ではない。 胸にあるのは怒りと殺意。だが、それを外に向けたところであの数の聖華天を全滅させるのはどう考えても現実的ではなかった。 あの"海賊(ババア)"がこっちに飛んできてくれるのなら、その劣勢も恐らく覆るだろうが。 それはまず間違いなく有り得ないと、舞踏鳥も……そして黄金球も理解していた。 ビッグ・マムは、宝を手に入れるためにスカイツリーへと向かったのだ。 その宝から手を引いて、自分の部下を助けるために踵を返す海賊が何処に居るだろう。 いや、居るかもしれない。 仲間を財宝より大きなものと考える海賊も、居るのかもしれない。 だがビッグ・マムはそうではない。あの女は、要石であるガムテならばともかく――それ以外の雑兵の生き死にに興味など示さない。 ガムテが令呪を切った場合のみ、その前提は崩壊することになるだろうが……。 そこまで考えたところで舞踏鳥は、彼方を見つめた。 地平線と化しつつある都市の彼方からやって来る聖華天を、ではない。 こうしている今も、最前線で絶望的な戦いに臨んでいる王(ガムテ)のことを――見た。 「……舞踏鳥、まさかお前――」 「現実的に考えて、他にこの状況を最大の形で損切りする方法はないと思うの」 ガムテに令呪は切らせられない。 三画のストックがあるならば、一画くらいは問題にならない。それは確かにそうだろう。 だが、駄目なのだ。霊地争奪戦からビッグ・マムが離脱する事態は、此処で死んだ子供達(みんな)の生き様を無駄にしてしまう。 殺したいほど憎らしくて、反吐が出るほど嫌いなババアだったが、あの女海賊は間違いなくガムテにとっての生命線だ。 ビッグ・マムが争奪戦を制し、龍脈の力とやらを手に入れられなければ――その時自分達は、ただ失っただけで終わる。 「ふざけんな……ふざけんじゃねえぞッ舞踏鳥! そんなの……そんなの、よぉ……!!」 小さく震える、黄金球。 その拳は硬く握り締められ、表情は俯いた。 だが臆病風に吹かれたかと疑う人間が居たならば、そいつはきっと部外者(パンピー)だ。 バッと顔を上げた少年のその顔には、嬉しそうな満面の笑みが浮かんでいて。 「――オレもちょうど今、おんなじこと考えてたんだよ! 嬉しいぜ、以心伝心じゃねえか!?」 「そういうのは要らないわ」 「衝撃(ガーン)……! なんだよ、こんな時までつれねえのかよ舞踏鳥ァ~……!!」 この時、彼らの運命は確定した。 「それより。良いのね?」 「当ッ然(アッタリマエ)だろ」 「そう。――じゃあ、行きましょう」 「おう、行こうぜ。オレ達の王子を支えによ」 ……割れた子供達は、何をどう足掻いても此処で壊滅的な損害を受ける。 大勢が死ぬ。もはや残党としか呼べない程度の人数しか、恐らく残らない。 それはもはや決まっていることで。 三狂に数えられる舞踏鳥、黄金球の二人をしても諦めて受け入れるしかない逃げ場なき現実だった。 哀れな子供達の、大勢の物語が今宵で終わる。幕引きとなる。 見事。悪童の神は、悪童の王子が率いた子供達(チルドレン)を殲滅せしめるだろう。 ――だが、勝ち逃げなんてさせるものか。 界聖杯という舞台においては何者でもない、きっと舞台装置にすらなれない無銘(モブ)の二人は今。 真に守るべき未来を繋ぐため、荒ぶる神に報復(カエシ)決めるべく踏み出した。 ◆◆ 地獄への回数券、二枚服用。 可能となった不可能、切り札となった禁忌。 その成果は、あまりにも如実に顕れていた。 「ッ……がぁぁあああッ!」 速い、目で追えない。 それが全てだった。他にも無論、様々な変化が生じているのだろうが。 そこまで気を回す余裕がない、注視などしようものならその瞬間にクーポンの回復限度を超える負傷を受けて死ぬとガムテの第六感が告げていた。 最速の殺し屋であるガムテの"全力"が、風車のように空を切る。 目視不可能なほどの高速での指捌きは、殺島の二丁拳銃を戦略兵器もかくやというほどの魔銃に変えていた。 例えるなら機関銃(マシンガン)の二丁持ち。それを常に全自動(フルオート)で解放し、欠片のブレもなく目標に撃ち込んでくるような。 それでいて――たとえ外れようとも跳弾で同じだけの弾数を、確実に撃ち込んでくるのだからほぼほぼこれは悪い冗談じみている。 ガムテの手足が、臓腑が、弾けて吹き飛んで。 再生しては撃たれ、再生しては砕けを繰り返す。 「はぁーッ……はぁーッ……! クソ、があ……!!」 「どうしたよ。王子様(プリンス)にしちゃ、ちと無様な姿なんじゃねえか?」 これが、限界を超えた力。 本当の意味で道を極めた、極道。 差を埋める手段は、すぐに思い当たった。 ガムテもまた、殺島と同じように二枚服用をして追い掛ければいいのだ。 だが、ガムテには――未だただの人間の枠に収まっている彼には、それが出来ない。 「実際のところ、麻薬キメた極道ってのは銃で殺せるのかね。 忍者の野郎共みたく首を飛ばさなきゃダメなのか? ……いいや、そんなこたぁねえ筈さ。再生が追い付かない速度で撃ち込んでブッ破壊(こわ)せば、殺せんだろ」 「べらべらと、よく喋りやがんな――殺島ァ……!」 「無駄なお喋りは強者の特権なんだぜ、ガムテ」 ほざけ――ガムテが地を蹴る。 彼の速さも、常人では残像の認識もままならない次元(レベル)なのだ。 なのだが、それでも今の殺島には追い付けない。 ガムテが何をどうしても、殺島はその先に立って待っている。 英霊に対する唯一の有効打である関の短刀は、もうずいぶんと長い間、殺島の皮膚に掠りもしていなかった。 「(脳と心臓への被弾は絶ッ対ェ避けねえとな……。 地獄への回数券は部位の欠損まで補っちゃくれねえのは、この身で実証済みだ。 殺島(コイツ)の連射速度(レート)で急所撃たれたら、ワンチャン再生が間に合う前に消し飛ばされる……!)」 撤退の選択肢も、もはや取れない。 逃げるにしても、この男を野放しにしている限り割れた子供達に未来はない。 甘く見ていた。軽く考えていた。対策はしたつもりでいた。 それでも――足りなかった。 天敵だったのだ、この男は。 数で自分達を押し潰し、逃げ場になる鏡を弾幕と都市破壊で潰し、挙句二枚服用で技巧の差すら吹き飛ばせるこの男は。 己(ガムテ)にとって、他の何よりも警戒してかかるべき天敵だった! 降り注ぐ弾丸の嵐が、殺しの王子様と呼ばれた少年の肉片を散らす。血風を吹かせる。 短刀で切り払うことは幸いまだ可能だったが、この数の弾幕を正面突破するのは不可能。 よって必然、ガムテはある程度逃げに回らなければならず。 そうしている間にも消耗は積み重なり、そして背後あるいは視界の端で起こる"轢殺"は進んでいく。 喘鳴のような息遣いを漏らす、ガムテ。 それは必ずしも疲れだけから生じるものではなかった。 「おいおい――なんて顔してんだよ」 大勢、死んだ。 今も、殺されていく。 もう片方の戦場にちょっかいを出す余裕など、完全に消えた。 ガムテの同胞(なかま)が、ゴミのように潰されていく。 怒りと焦燥で染め上げられたその顔は、間違いなく彼が界聖杯の地を踏んでから最も余裕のないもので。 それを指して殺島は、涼やかに笑ってみせた。 「修羅(ツラ)い時こそ笑わなくちゃあよ、つまんねえだろ」 「――、――」 「――神(オレ)を見習いな。 ほら、こうやんだよ」 にぃ、と指で笑みを作ってみせる――殺島。 それを見た瞬間、ガムテの心はむしろ冷めた。 怒りを通り越して、此処に来てようやく。 本気の殺意を、目の前の現人神(てき)に対して抱くことが出来たのだ。 「ま……それでもいい。そらよ、来な。胸ェ貸してやるぜ」 声なき咆哮をあげながら。 ガムテは、これまでで一番の冴えで特攻する。 勝算はあった。此処で必ず殺すと、そう決めるだけの自信があった。 弾薬の隙間を縫いながら、多少の被弾は文字通り許容して。 風になり駆けるガムテに、殺島は笑みを崩すことなく引き金を弾き続ける――のではなく。 「ッ……!」 前に、踏み込んだ。 それはガムテにとって、予想外の行動。 目を見開くが、しかし動揺で手を鈍らせはしない。 殺島の肝臓。十八番(いつも)の位置へと、ホーミーズ化した短刀をねじ込み。 そして――ズラす。 極道技巧・"疒(ヤマイダレ)"。 殺島の肝臓がずれ、途端に彼の身体へ奇怪な斑点が浮かび上がるが。 それでも崩れぬ、殺島の余裕。 殺し屋ガムテが誇る最大の技巧。その殺人技術の、極致。 それが効いている証である斑点模様が、まるでタイムラプスを巻き戻したみたく消えていく。 「悪いな。修復(なお)る方が速かったみてえだ」 ――通じない可能性を、予想は出来ていた。 当たって欲しくない可能性だったが、的中してしまった以上は次に行く。 英霊すら殺傷出来る武器を用いた、必殺の極道技巧。 忍者ですら病死させられる最強の"刺し"ですら、二枚服用の回復力の前には追い越されてしまったという事実。 それさえ糧に、ガムテは進まんとするが。 その眉間に、銃口が突き付けられた。 「じゃあな、ガムテ。 殺したいほど憎んでるだろうけどよ、お前のことは好きだったぜ。誓って本心だ」 ――まだだ。 まだ、終われない。 終われるものか、こんなところで。 「(殺られっぱなしで終わる殺し屋が、何処に居る……!?)」 ガムテは、最後の切り札を切る決意を固めた。 令呪を使って、あのクソババアを――ビッグ・マムを此処に喚ぶ。 令呪の力は空間転移すら可能にする、ならばこの詰みを覆すことだってもしかしたら可能かもしれない。 それはあまりにも多くのものを失う一手。しかし、そうしなければ全てを失う。 「――令呪を以って! 命ずる!!」 殺島の指に力が籠もる。 無様でもいい、何でもいい。 言いたい奴には好きに言わせておけ、後で殺してやる。 全力で肺から声を絞り出し、ガムテは一パーセントの勝率に懸けて叫んだ。 「来い、ラ――――!!?」 その瞬間、であった。 真横から、突然乱入した鋼鉄球(ボール)が――ガムテの横っ面に直撃。 幼き殺し屋の身体を、まるで竹とんぼみたいに吹き飛ばしたのは。 殺島の眉がぴくりと動く。発射された弾丸は無人の空間を射抜き、誰にも命中することなく虚しい跳弾をして地に落ちた。 「――水くせえじゃねえかよ、ガムテ! オレ達を差し置いて、あんなクソババアに頼んのか?」 「……っ。黄金、球……!」 「頼れよ、オレ達を。オレはまだまだ……ぜんぜん平気だぜ!?」 乱入したのは、黄金球。 そしてその隣に立つのは、舞踏鳥。 ガムテを支え続けた三狂の二人が、臆することもなく神の射程圏内へと足を踏み入れる。 「その選択肢が一番ダメよ、ガムテ。 それをすれば――貴方はきっと、ただ多くのものを失ったままで終わってしまう」 「……舞踏鳥」 「心底嫌いだし、絶対に認めなくないけど。 あのババアは間違いなく、この聖杯戦争における最強(トップランナー)の一人よ。 あいつが龍脈の力を手に入れて強化されれば、銃と爆薬の戦争にルールを無視して核爆弾を持ち込めるようなもの」 その可能性を捨てるのは、絶対にダメよ。 改めてそう言う舞踏鳥に、ガムテは何も言えなかった。 彼は殺し屋だ。そして、この二人との付き合いもそれなりに長い。 皆まで言わずとも、分かってしまったのだ。 今から此処で――彼らが、何をする気なのか。 ビッグ・マムを呼ぶ選択肢を取らない分を、どうやって埋める気なのかが。 全部分かった。分かったからこそ、何も言えない。 何を言ったとしても、それは彼らという殺し屋に対する冒涜になるから。 「私達じゃ暴走族神(あいつ)は殺せない」 「だからお前が殺れ、ガムテ。そこまでの道は――オレ達で作ってやる」 四皇。魂を司る者。ナチュラルボーンデストロイヤー。 海賊同盟の片割れ、"怪物"シャーロット・リンリン。 殺し屋。狂おしき子供達。墨極道(メキシカン・マフィア)すら殲滅する軍勢。 ガムテと夢見る景色を共有する、"人間"の群れ――グラス・チルドレン。 ……天秤にかければ、どちらが重いのかなんて瞭然だ。 ましてや彼らはこの世界が作り出した虚構の存在。聖杯戦争における、有象無象(モブ)。 ガムテだってそれは分かっている。分かっているが、それでも。 それでも、軽んじることなんて出来る筈もなかった。 たとえ空っぽだったとしても、そこには何の重さも、もしかしたら魂や命さえないのかもしれないと分かっていても。 ――子供(なかま)を自ら切り捨てたら、それはもうガムテではない。 だからガムテに出来ないことは、彼らがやる。 割れた子供達が、やる。 「……いいんだな、とは聞かねえぞ」 「おう! それでこそだ!!」 「ええ、それでこそ、よ」 「分かった」 三人、並び立つ。三狂、共に立つ。 いや、彼らだけではない。 命を捨てられる人間が二人だけだなんて、大間違いだ。 それでもやはり、先陣に立つなら彼らだ。 そこは、誰もが認めるところであった。 「――加齢臭(クッセ)え暴走族神(ロートル)、此処でブッ殺す。もう一回力貸してくれ、みんな」 ……返事など、当然要らない。 呼び声一つあれば十分なのは、あちらもこちらも同じなのだから。 神の銃声と殺到する暴走族の軍勢がかき鳴らす騒音を開戦の合図にして、今戦局は最終局面へ突入した。 ◆◆ ――奇跡とは、起こらないからこそ"奇跡"と呼ばれる。 意思の力で現実をねじ伏せられるのは、ごくごく一部の例外のみだ。 傑物、怪物、その中でもほんのたった一握りだけが不可能を可能に出来る。 そしてその点。可能性の器ですらない彼らがそれを成し遂げる可能性は、絶望的なほどに低い。 限りなく絶無(ゼロ)に近い確率をこじ開けるために踏み出した子供達を襲うのは、魔弾と狂騒。 「づ……ッ」 黄金球の首から下が、数秒で蜂の巣になった。 生きているのが不思議なほどの重傷を、クーポンの薬効と根性に任せて無視する。 蹴り上げた鋼鉄球は当然のように当たらない。 いや。仮に当たったとしても、此処まで強く成り上がった今の殺島には果たしてどの程度通用したか。 舞踏鳥は冷静に、極道技巧の展開を試みる。 "夢幻燦顕視"は魔術ではなく、あくまでも技術だ。 だからこそ、ライダークラスの対魔力を抜きにして相手を嵌めることが出来る。 そのため、黄金球の"蹴球地獄変"に比べれば、まだ殺島に通じる余地はあった。 彼女にとって不幸だったのは――本気を出す前の殺島に、夢幻燦顕視(それ)を見せてしまっていたこと。 「悪いな嬢ちゃん。今となっちゃ敵じゃないだろうが、それはちっと面倒臭くてよ」 神の指揮に従って、暴走族の車列が舞踏鳥へ勢いよく向かってくる。 先頭を走るのは聖華天が誇る"Σ"。日本刀を振り翳した彼を筆頭に、数千に届く暴走族が殺到する。 彼らの目的は神の意に沿うこと。この場においては、厄介な極道技巧を持つ舞踏鳥の抹殺だった。 「そこで雑に轢殺(つぶ)されててくれ」 ……舞踏鳥の"夢幻燦顕視"は、聖華天に通用しないわけではない。 だが、元々彼らは夢など見るまでもなく見たいものしか見ない暴走状態。 白鳥の湖に招こうが、風車の巨人を見せようが、基本的にはやることが変わらないのだ。 馬鹿ほど考えなくて済む。頭が良いほど、囚われる。 その点明確に前者である暴走師団に対しては、長/神である殺島以上に技巧の効きが悪い。 故に、舞踏鳥は順当に考えれば詰んでいたが。 それを覆させたのは――黄金球の蹴球と、車列を突き抜ける形で発射された徹甲弾・神槍(グングニル)だった。 「こういう使い方じゃねえんだよなあ、本当はよ」 「文句を言うな、攻手。今はこれが最適解だ。 銃で撃墜(キル)するだけが殺しじゃない――必殺技(ウルト)だと思え」 「了解了解(オケオケ)、司令。んじゃ、景気よくブッ放すかぁ――!!」 ――命を捨てる、捨てられる子供は二人だけではない。 司令、そして攻手。彼らもまた、ガムテのために死ねる人間だ。 この状況では貴重な貴重な範囲攻撃、それは聖華天の進軍をほんの一秒止められるかという程度のそれでしかないが。 その一秒があれば、舞踏鳥は十分聖華天から距離を取れる。 狙うのはあくまで殺島だ。こんな有象無象にまで構っていたら、数で劣るこちらは負けるに決まっているのだから。 この数を相手に出来るのは、ガムテから伝え聞く"忍者"やこの世界で言うところのサーヴァントだけである。 だから無理はしない、弁える。殺すべき相手を――見誤らない。 「26・42・35・78」 「了解(りょ)――直撃(ドンピシャ)かましてやるぜ!」 司令と攻手の本領は、こういう開けた場所で発揮されるものではない。 遮蔽物と狭さのある空間でこそ、一方的な精密攻撃というのは最高の破壊力を生み出せるものなのだ。 だが、それならそれでやりようはある。 たかだか内か外かの差で使い物にならなくなるような殺し屋ならば、彼らに殺されてきた人間もまだいくらか幸運だったろう。 「そぉらァ――!!」 ありったけの弾薬を持ち込んでいる今、繰り出すのは連続での神槍発射。 当たれば忍者の屈強な身体さえ容易く貫く徹甲弾も、しかし当たらなければ何の意味もない。 高速で迫るそれも、二枚服用をキメて限りなく強化されている殺島へ命中させるには"遅すぎる"と言う他なかった。 ステップ一つで矢継ぎ早の神槍を躱し、次々空振らせていく殺島。 「鈍速(ノロ)いな。派手なのは見かけだけか?」 ――しかし、だ。 たかだか"当たらない"程度で詰むような殺し屋(タッグ)だったなら、彼らは今日まで生き残れてはいなかったろう。 司令は、指示を出す前から既にこの結果を予測していた。 現実的に考えて、あの速さに対して飛び道具を当てるのは不可能だと。 かと言ってホーミーズ神槍の炸裂……疑似壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)では火力が足りなくて殺し切れない。 つまり、だ。自分と攻手では、殺島飛露鬼を殺すことは出来ない。 それが司令の弾き出した"結論"だった。故に彼はそれを承知で、攻手に失敗すると分かっている指示を出したのだ。 「……36・47・55・79」 優れた聴力と、それに基づく空間把握能力と先読みでなら――司令は割れた子供達の中でも最優(トップ)クラスの才を持つ。 そして攻手は、司令の指示を受けて目的を遂行することに誰より長ける。 だからこそ彼らは難攻不落、最高精度の殺人を可能とする二人(バディ)なのであったが。 攻手を除いて唯一、司令(かれ)に付いて行ける者があるとすれば―― 「聞こえたよな――譲ってやるから、殺っちまえガムテ!」 それは当然――殺しの王子様・ガムテを除いては他に居ない。 「了解(りょ)……ナイス陽動(ベイト)だ、お前ら」 降り注いだ無数の槍、徹甲弾。 殺島にしてみれば確かに避けるなど容易い、下手の鉄砲でしかなかっただろうが。 司令の計算と、それを完璧な再現度で反映した攻手の砲撃は殺島を本人にさえ気付けないレベルで高度に誘導していた。 徹甲弾の連射攻撃という囮(ベイト)で司令の意思通りの形に操られ、誘導された殺島。 その隙をガムテは、司令の口にした暗号を元に正確に縫って接近。 関の短刀による一撃で、殺島の両目を横一直線に切り裂いた。 「……! 猪口才なことするじゃねえかよ、お前ら……!?」 「皮肉(まけおしみ)ありがと~☆ ――神様気取ってる割には、こんな単純な作戦にも気付けねえ単細胞なんだな」 殺島が二枚服用でどれだけ強くなったとしても、司令の暗号を知る筈はない。 だからこそ成り立った奇襲攻撃。 ガムテが、少しでも仲間への理解を怠っていたなら成立し得なかった一刺し。 結果を見ればそれはたかが目潰し、しかしされど目潰し。 視界が戻るまでのわずかな時間を突いて、ガムテは殺島の心臓を。 そして天高く跳び上がり、上空から――黄金球が脳破壊を狙い挟撃を仕掛ける。 「合わせろガムテ!」 「お前もなァ~……黄金球!」 本来なら、"人間の"殺し屋などもはや殺島の敵ではない。 しかし蟻の一噛みを鰐のそれまで引き上げるのが、殺し屋達にとっての屈辱の証。 憎くて堪らない暴君ビッグ・マムから"施された"、魂による武器加工だった。 関の短刀も、鋼鉄球も、殺島の霊核に届く機会(チャンス)を有している。 そうでなくても、だ。 ガムテは、殺島の死に様を知っていた。 サーヴァントは生前の死に様に左右される。 忍者に首を落とされて死んだ殺島が、首を刎ねられて無事で済む筈がない。 ガムテは黄金球に首飛ばしを任せた。そして彼自身は、慣れた"刺し"で霊核の破壊を狙う。 ――言葉は不要(いら)ない。ガムテは割れた子供達の誰とでも、以心伝心に事を為せる。 「発想(アイデア)は悪くねえが……舐めすぎだ」 渾身の連携(コンビネーション)、だがまだ遠い。 それほどまでに二回摂取の再生は速く、反応速度も元の殺島の比ではないほど引き上げられていた。 身を躱してガムテの刺突から心臓を逃して。 真上から来る黄金球の蹴球は、ヘディングで跳ね返す。 無理の反動で頭蓋骨が砕けたが――これも当然、一秒と殺島のことを害せない。 殺島からのパスを受け切れず、全身の骨を砕かれながら吹き飛ぶ黄金球。 そして当の殺島は、自分の身体が引き裂かれるのも顧みず……刃が突き刺さったまま地を蹴り跳んだ。 裂傷は滞空中に問題なく回復。ガムテは追おうとするが、追いきれない。 麻薬によるブーストを込みにしても、少年王の脚力ではそこまでは跳べなかった。 「攻手ッ! 19・37・28――」 司令が、すぐに悟る。 報復(カエシ)が来ると。 だから叫んだ、暗号を。 攻手は当然、それに従うべく構えを取るが―― 「――か……ッ!?」 「司令ッ?!」 その喉笛が、殺島の射撃によって弾け飛んだ。 声帯が吹き飛ばされたことにより、当然彼の暗号は発声の中断という形で妨害される。 盲目の攻手は、それだけで機能不全に陥る。 もちろん彼なりに、がむしゃらに危機を脱そうとはするのだったが。 それも――相手が悪すぎた。 「あばよ」 司令を抱え込むようにして、逃げようとした攻手。 その首に背後から銃口を突き付け、零距離から発砲。 英霊の銃だ。そんなものに間近から撃たれて、人間の身体がただで済む道理もない。 銃声は二発。攻手の首が、まず弾丸の威力に負けて千切れて。 結果空を切った二発目の弾丸は、跳弾して腕の中の司令の首を同じく吹き飛ばした。 宙を舞う二人の首。それが、虚空で見つめ合う。 攻手は、相手の顔を見ることは出来なかったが。 「……悪り……司令。オレ……守り切れなかったわ。 ワンチャン……お前だけでもって、思ったんだけどなァ……!」 「いや……いいさ。オレだけ残されても、仕方なかったよ。 やっぱりオレ達は、二人一組(ニコイチ)じゃないと……ダメだろ」 最後、その首は最後まで並んで地へと堕ちていく。 悪行を重ねに重ね、境遇を免罪符に屍を積み上げ続けた殺し屋コンビ。 にも関わらず、命を張って同胞のために強敵へと挑んだ生き様を――何処かの誰かが労おうとしたかのように。 寸分も離れることなく、並んだまま墜落していって、そして。 「後はガムテを信じよう。オレ達の王子は、必ず――オレ達をまた、巡り合わせてくれるさ」 「おう。そん時ゃ久々に……二人でよ、ランクマでも荒らしに行こうぜ! もちろん、FPSのよ……!!」 進軍を続ける暴走師団の車輪によって、欠片も残らずこの世から消し飛ばされていった。 ――司令(オーダー)、攻手(アタッカー)、死亡。 それに加えて今回の進軍を止めるべく立ちはだかったことで、崇拝偶像(アイドル)、解放者(リベレイター)、勇者(ブレイバー)が戦死した。 子供達の運命は車輪と凶弾の中に消えていく。 ガムテは振り返らない、子供達もまた振り返らない。 次に行動に出たのは、回復を果たした黄金球だった。 「(ガムテ……お前、本当に優しい奴だよな。 お前はオレに、一度だってこんな使い方があるなんて教えなかった。 ――理解(わか)ってたんだろ? 教えたらオレは必ず、"どうなるか"なんて構わず、お前のために"やる"ってよ!!)」 さあ――怖くはない、震えはない。 誇らしいほどの勇ましさを胸に、懐から取り出したのは二枚目の麻薬。 殺島はそれを妨害するべく引き金を引いたが、身を丸めることで無理やりに麻薬を撃ち抜かれることを阻止。 脳漿を軽く噴き出しながらも、全壊でないのを良いことにその負傷も無視(シカト)して。 そのまま、二枚目の麻薬を口内へ放り込み……黄金球はその時"どくん"と、自分の心臓が今までに聞いたことのないほど大きな音を立てて脈打つのを聴いた。 禁断の二枚服用。 殺島(あいつ)に出来るなら、オレに出来ねえ筈がないと――黄金球は躊躇なくそれを冒した。 もちろんその代償はあまりにも大きい。 ボゴッ、ボゴッと内側から破滅へ向かう膨らみを起こす身体は、死へのカウントダウンが始まったことを単細胞の黄金球にもわかるほど明確に示していた。 「ガムテェェェェェッ! オレ、オレ――お前に見つけてもらえて、真実(マジ)に幸せだったぜ!!」 叫ぶと同時に、黄金球の面影が聖華天の流星群(スクランブル)に呑み込まれて消えた。 犬死に? いいや、そんなことはない。ある筈がないのだ、何故なら彼はある要素においては。 ことド根性(タフネス)という分野においてだけは……八極道に匹敵し得る輝きを持つ、不可能を力技でねじ伏せられる極道なのだから。 「――マジかよ。イカれてんな、オイ」 「当ッッ……たり前だろうがアアアアアアア!!」 単車の底から這い上がって、人間を足場に突き進む無茶を当たり前のように成し遂げる。 二枚服用の代償で、もう脳はまともに機能していない。 難しいことなど考えられない、この時点で既に黄金球は人間としてはほぼほぼ死んでいた。 にも関わらず彼は、根性の二文字だけで意識を繋ぎ止め、ガムテのため/皆のためという指向性を失わずに突き進む。 殺島の射撃で肉を散らされようが耐える、耐える耐える耐える耐える耐える――堪える。 二枚服用で増強された再生能力は、幸いなことに黄金球のタフネスと最高の噛み合いを見せた。 常人なら一分すら保てない過活性の負荷を――毎秒顎が粉砕骨折するほど歯を食い縛って耐え続け。 その足で殺島に向けて蹴球を蹴り込む。 隕石(メテオ)のような威力を得るに至ったそれは、今の殺島でさえおいそれと食らうことは出来ないものだった。 「(そりゃイカれるぜ、イカれもするぜ! オレの……オレのどん底みたいな人生を終わらせてくれた、救済(すく)ってくれたガムテ! あいつのために死ねるんだ――命張ってあいつに託せるんだ! これから死ぬってのに、胸が高揚(キュンキュン)して止まんねえッ!!)」 だから当然、殺島は避ける。 が、黄金球もまたその反応は予想済みだった。 その上で跳弾させる。跳弾はお前だけの専売特許ではないのだと、今此処に来て見せつける。 「(……! なんつー馬鹿力だ――こりゃあ、あの夢澤(ひと)クラスの……!!)」 空中に、まるで見えない壁があるかのように。 触れるものがないのに跳弾を繰り返させるという芸当は、ひとえに黄金球の得物が球体(ボール)である故だった。 スーパーボールの要領でボールを跳ねさせ、一枚摂取時とは比べ物にならない速度で殺島を逃さぬ"檻"を作る。 やむなく鋼鉄球を力技で退かそうと触れた殺島は、目を見開いた。 ほんの掠めた程度であったにも関わらず、腕が猛烈な勢いでひしゃげ、出来損ないの花弁のようにあらぬ形に歪んだからだ。 「うおおおおおおおおおおおおおおォォオオオオオ――ッ!!」 確かに、これは厄介だったが。 とはいえ黄金球本体の特攻は、まったく取るに足らないものでしかない。 現在進行形で膨れ続け、所々から血液やら脂肪やら、内臓だったものやらが噴き出している黄金球。 その首を殺島の魔弾が刈り取った。刈り取られた首すら、空中で自壊して割れた風船のように弾け飛ぶ。 ――黄金球は、死んだ。 ――だが、彼は止まらない。 その頭が潰れても、その肉体(からだ)は止まらない。 「(見ててくれよ、ガムテ! これが! オレの! 最期の!!)」 殺島の元を離れて、黄金球のところへ返ってくる鋼鉄球。 それを、首から上を失った黄金球は自らの両腕で抱き止めた。 抱き止めた拍子に心臓が消し飛んだが、それでも彼は進み続ける。 結局、殺島をその豪腕で"捕まえる"ことまでは出来なかったが―― しかし。ある程度まで近付ければ、それで及第点(じゅうぶん)だった。 「(最期の……! 勇姿(ゴラッソ)だ……!!)」 自分のためにこれまで戦ってくれた、壊れずにいてくれた鋼鉄球。 黄金球の、かつての夢の残滓。 ホーミーズ化し、英霊をすら殺害(ころ)し得る神秘を獲得したそれが。 黄金球の声なき声に応えるようにして――夜闇を切り裂く閃光と共に、大爆発を引き起こした。 黄金球。夢を否定され、割れた少年。 その最期に歓声はなかったが、しかし英雄(バロンドール)を目指した少年の末路としては上出来な派手さだった。 花火が咲くように。星が爆ぜるように。 一撃(イッパツ)かまして彼はこの世を完全に去る。生きた形はないけれど、生き様で以って彼は自分の存在を見る者全てに刻み込んだのだ。 「……! ちいッ――!!」 壊れた幻想。あくまで疑似なれど、威力の高さは折り紙付きだ。 ましてや距離も距離。その爆風は殺島の総身を余すところなく焼き、肉を焦がした。 もちろんこの程度で、彼は死なない。 死ぬ筈もない、それが限界を超えた極道の恐ろしさだ。 「灼ッ熱(アッチ)いじゃねえかよォ~……黄金球(バロンドール)」 ならば、生き延びた自分が引き継ごう。 それがリーダーの、王子(プリンス)の役目だと、ガムテはそう心得ていた。 だから熱波の余波を浴びるのも厭わず接近し、殺島の首筋に向け刺突を放つ。 肝臓が無理だとしても、殺るべきことは何も変わらない。 殺す、ただ殺す。敵として殺す、いつも通りにブッ殺す。 その刃を銃身で止めながら、殺島はガムテの顔を改めて、見る。 ――相変わらず、笑ってはいない。 だが、良い顔をしていた。本当に、怖(よ)い顔を。 何かを失いながら戦う者特有の、鬼よりもずっと恐ろしい冷たい貌。 「……年下のガキにこうも激しく魅せられちゃ、先輩(としうえ)としての威厳が危ぶまれんな」 射撃、避けられる。 刺突、躱す。 蹴撃でガムテの腹を蹴り上げれば、臓腑を潰した感覚があった。 顔を歪めることもせず、短刀を突き出したガムテ。 その刃は殺島の喉を掠めるだけに留まったが、しかし彼の感覚はもう先ほどまでの余裕綽々としたそれとはまるで変わり果てていた。 ――死を感じる。 まるで忍者を前にした時のような、ひりつきを感じるのだ。 ガムテと、彼の仲間達の文字通り命懸けの肉薄が……一つ一つは小さくとも、確実に自分の命脈を断ち切らんと迫ってきているのが分かる。 人間が、サーヴァントに死を感じさせる。その不条理に心から慄きながらも、それ以上に興奮しながら。 殺島飛露鬼は――"暴走族神"は、己を信じる全ての者にこう呼びかけた。 「なあ……お前らもそう思うだろ? 魅せていこうぜ、とびきり神々しくよ――!!!!」 それは、特攻走行。 神に、そして目の前で繰り広げられた若輩(ガキ)の生き様に呼応して。 命も明日も一時の暴走(ユメ)のままに投げ捨てられる、大人になれない悪童達の夢花火。 極天の流星雨などと呼べば大袈裟だが、破壊力に関して言うならばそれはまさしく地上の流星群だった。 一台一台が魅せる自爆特攻、数百数千と連なる死と破壊の徒花――誰もが笑いながら死んでいく。 網膜を焼き尽くすような閃光を迸らせながら、新宿の大地が揺れた。 一体どれほどの命を呑み込んだのか定かではない大爆発――その後に立つのは、当然の如く暴走族神。 そして……彼と殺意を胸に向き合う、ボロボロのガムテだった。 「……あー。もう嵌っちゃやらねえつもりだったんだけどな」 周囲に広がるのは、またしても"白鳥の湖"。 舞踏鳥の極道技巧を受けていることを理解し、殺島は頭を掻く。 "風車の巨人(ドン・キホーテ)"を出して来なかったのは、純粋に役者不足だからだろう。 こうまで力の差が離れた相手には、幻の敵では対抗出来ない。 舞踏鳥に出来るのは、白鳥が飛び交う湖に殺島を閉じ込めて、少しでもその動きと視界を縛ることだけだった。 の、だが――…… 「舞踏鳥……? お前、なんでオレまで――」 今、夢幻燦顕視の中に囚われているのは殺島だけではなかった。 守るべきガムテまでもが、この湖を幻視している。 そのことにガムテは不可解を感じるが、しかしそれでも幻は解けない。 舞踏鳥は、意図的にガムテを巻き込んだのだ。 無論、極道の最高峰の一人であるガムテはこの湖の中でも問題なく戦える。 白鳥の目眩ましを逆に活用して、殺島を翻弄し殺すための材料にしてのけるだろう。 だが、だとしても。何故彼女は此処で、ガムテを巻き込んだのか? それがガムテには分からない。分からないままでいいと、舞踏鳥自身もそう思っていた。 「(女心ってやつよ。アナタにはまだ、分からないでしょうけどね)」 夢幻(ユメ)の外の世界で、舞踏鳥は独りごちる。 目の前に待つのは、狂おしい暴走の軍勢。 現実に居ながら暴走(ユメ)を見続ける、死んでも治らない馬鹿な悪童達。 黄金球、司令と攻手、その他数多の子供達が死んだ今。 聖華天の突撃はガムテにとって、殺島本体にも並ぶ脅威になるだろうと舞踏鳥は踏んでいた。 殺島と戦いながら、この数の軍勢を――それも恐怖や絶望で震撼(ブレ)ない神風特攻集団を相手にするなんて不可能だ。 その上相手は一方的に連携を取ってくるのだから、正面突破など非現実的もいいところ。 だから舞踏鳥が選択したのは、自分がやれる限り最大限"引き付ける"ことだった。 短時間でもいい。とにかく、ガムテが殺島と一対一で戦える時間を引き伸ばす。 彼があの"神"を必ず殺してくれると、そう信じて。 舞踏鳥は、勝ち目も未来もない最後の戦いへと単身で踏み出した。 その片足は既に、先の爆発の衝撃で吹き飛んでいた。 彼女を舞踏鳥たらしめる足は、もうない。 地獄への回数券が服用者に与える再生能力も、欠損までは補えないのだから。 喪失感も悲しみも、全てを怒りと使命感に変換して舞踏鳥は自分の死を確定させる。 二枚服用。それは、一分以内の死を確定させる行為だが――逆に言えば"一分間は"死なないということ。 「行くわ、よ――アナタ達を、一人でも多く……! その幼年期(ユメ)から、覚ましてあげる……!!」 一枚服用では、数秒と保たないだろう。 だが二枚服用で強化された状態であれば、その限りではない。 結果的に舞踏鳥の寿命は伸びる。ガムテを助けられる時間は――長くなる。 しかし、代償に。 舞踏鳥の姿形は一秒ごとに、人の形を失っていく。 血が噴き出し、肉はこぼれ、膨れ上がって崩れていく。 麗しいバレリーナとはまるで正反対の、見苦しくて醜い最期へ突き進んでいく。 彼女自身、承知の上でのことではあったが。 それでも、ほんのちょっぴりの乙女心。 ガムテにだけは、この最期(すがた)を見られたくなかった。 自分を救ってくれた、彼。 新しい人生をくれた、彼。 この先に進み、聖杯を手に入れなければならない彼の記憶(なか)でだけは、せめて――最期まで美しい姿でいたかったから。 「(ありがとう、そして――行きなさい、ガムテ)」 ――白鳥は、流星群に向かい飛び立った。 「アナタは、私達の……王子様(ヒーロー)なんだから」 ◆◆ 「殺島ァアアアア――!!」 「来いよ、ガムテェエエエエ!!」 白鳥の舞う湖で、殺し屋と神が舞い踊る。 銃声と刺突が交差する。 やはり損傷の数はガムテの方が多かったが、此処に来て殺島の動きには微かな乱れが生まれ始めていた。 乱れ、というよりも。それは、"焦り"に近かったかもしれない。 クーポンの二枚服用という"奥の手"は確かに強力であるものの、その効果時間には限りがある。 ――五分間だ。 ガムテのような、二枚服用に耐えられる肉体と精神を持つ類稀なる極道でさえも……命をそこまでしか保てない。 今の殺島はオーバードーズの反動を素で耐えきれる"英霊(バケモノ)"と化していたが、それでも薬効を無限に維持することは不可能だった。 そこを、ガムテは見抜いていた。 殺島が勝利を急ぎ始めたことを、殺し屋の"感覚"で看破した。 相変わらず流れる血と飛び散る肉片の殆どは彼のものだったが、その殺意は一瞬たりとも鈍らない。 圧倒的な格上となった殺島でさえ戦慄を覚えるほどの、殺人(コロシ)にかける圧倒的な集中力。 割れた子供達不動の最強、殺しの王子様……彼がそう呼ばれる所以を、殺島はひしひしと感じ取っていた。 「(真実(マジ)かこいつ……! この期に及んで、防戦主体に切り替えやがった……!?)」 普通なら、舞踏鳥の身を案じて速攻で片を付ける方に舵を切るだろう。 だがガムテはそれをしない。殺島の弾丸を防ぎ、リスクを最低限に留めながら戦いを引き伸ばす戦術に移行している。 「あの子のことが心配じゃねえのか?」 「あー? 侮辱(ペロン)してんじゃねえぞ、おっさん。 仲間が命(タマ)張って作ってくれてる時間をよ、最大限有効に使うのは当然だろうが……!」 「――フッ。ああ、そうだな。真実に正しいよ、お前は」 やっぱりお前は、殺し屋として百点満点だ。 現に殺島はその判断のせいで、優位に立っている筈なのにリスクを取らなければならなくなってしまった。 幻影の白鳥を全て蹴散らしながら、銃手にあるまじき突貫を繰り出す。 二枚服用していなければ自殺行為も甚だしい、殺し屋相手の接近戦。 鋭い前蹴り(ヤクザキック)でガムテの胴体を直接破壊する、そういう公算だった。 「舐めんなッ」 その行動に、ガムテは歯を剥いて笑う。 狂気の笑みだった。彼がよく使う道化のメッキではなく、本心からのアルカイックスマイル。 ガムテが防御に用いている技術は、中国拳法の"化勁"に近いものだ。 攻撃の拍子に合わせて威力を殺す。 忍者ほどのセンスがあれば、それを逆手に取って、攻撃一つ一つの拍子を微妙に変えて使い手を撹乱。 その上で連撃(かず)に物を言わせて押し切ることも可能だったろうが――殺島は近接戦を得意とする極道ではない。 いくら強化されていようが、性能(スペック)でガムテの上を行こうが、経験と感覚の不足を補うのには限度がある。 結果、ガムテは殺島の蹴りをいつも通りに受け流して難なく凌ぐことに成功した。 殺し切れなかった衝撃のせいで体内の骨が四割ほど砕け散ったが――この程度は"難"の内には入らない。 返す刀で振るう刃。避けるべく退く殺島に、ガムテは強引に追い縋る。 理屈などない、単なる気合と根性。あるいは執念で肉薄して、彼はついに神の首に刃を走らせることに成功した。 「……危ッ機(アッブ)ねえ~……!!」 だが、浅い。 仕留めきれない。 首の半分ほどを切り裂くことしか出来なかった。 仕損じた殺し屋は、手痛い反撃を食らうのがこの業界の常識だ。 ガムテの肺に、向こう側を見通せるほど大きな穴が空いて――バケツをひっくり返したような大量の血が、彼の口から夢幻の湖畔に撒き散らされる。 「(あァ~……丁度いい、ぜ……! 呼吸(いき)、すんの……面倒臭えと、思ってたんだ……!!)」 それでもガムテは、止まらない。 相手が自ら詰めてくれた距離を、二度と渡さない。 逃げようとするなら追い掛ける、死んでも離れさせない。 「ァ……ァアアアアアアアア――!」 「ッ……! 正気(ガチ)か、お前ッ……!!」 ――まさに、狂気だった。 身体中を蜂の巣にされながら、それでも止まらない。 なのに間近まで近付いて、それでもずっと"防戦"ばかりしている。 素人からすれば矛盾以外の何物でもないだろう。だが、殺島は知っていた。 優れた殺し屋であれば、極道であれば――防御(まもり)すらも殺人技巧(ころしわざ)になるのだと。 だが、それをこの状況で。格上に対して殺るなど、正気の沙汰ではない。 「(……夢澤の旦那。今更だけどよ、あんたがこいつに殺されかけたって話――仕方(しゃあ)ねえっスよ)」 イカれている。ガムテは、こと殺人という分野において誰よりイカれている。 改めてその事実を実感した殺島は、湖を埋め尽くす勢いで飛び交う白鳥達を狙って弾丸を撒く。 白鳥達はこの湖に蔓延る、実体のない幻でしかない。 だが二枚服用によって平時を遥か超える力を得た殺島には、可能だった。 幻影を撃ち、そこを起点に……より正しくは標的とみなした空間そのものを起点に跳弾させる。 もはや人智を彼方に置き去った、魔銃と魔弾の最高峰極道技巧――!! 「極道技巧――"魔弾舞踏会(タスラムディスコ)"……!!」 ガムテの周囲、三百六十度全方向から迫る死の凶弾。 狂おしい殺し屋を縫い止めて、その上で原型も残さず蹂躙するだろう魔弾の絨毯爆撃。 "世界の終わり"は切れない。あの代償はクーポンの力だけでは賄えないし、使ったとしてもガムテには通用しないだろうから。 だからこうして、純粋な技巧の高さで彼を潰しに掛かった。 此処で殺す、確実に仕留めると。この時ばかりは神ではなく、極道としての矜持(プライド)に懸けて誓った。 「――は、はは、はははははは」 ガムテは、笑う。 振り返りもせずに、笑う。 死を前にして自棄になったか。 それとも、何も守れず遺志さえ汲み取れない自分を自嘲したか。 ――違う。そんな理由で、殺し屋(かれ)は笑わない。 「あ、り、が、と、よ……!!」 ガムテの身体に魔弾が次から次へと食い込んでいく。 にも関わらず、彼は巧みに即死に繋がる箇所への被弾だけは避けていた。 更に、手足もだ。当たった瞬間に身体を特定方向に動かして、弾丸の威力をあらぬ方向へ逃がすことで四肢の断裂を回避している。 狂った人形(マリオネット)のように踊り狂いながら、ショック死必至の激痛と損壊を浴びるガムテ。 その殺人的なまでの苦痛の代償に――彼の本懐(ねらい)は、遂げられた。 「……!? な――ン、だと……!?」 身体に食い込んだ、弾丸の推進力。 それを、彼は殺島へと向かう"加速"のために利用したのだ。 段違いに上がるスピード。ほんの一瞬、一秒にも満たない時間の急加速。 されどそれは、ガムテにとっては喉から手が出るほど欲しかった"追い風"だった。 ガムテが来襲(く)る。 反撃のための銃弾は、しかし――照準の段階で、両者の間に割り込んだ一羽の白鳥によって遮られた。 たかが幻、されど不確定要素であることに変わりはない。 当然、狙いは狂う。わずかな軌道のズレは、本来ガムテの脳を吹き飛ばす筈だった魔弾をその左耳が吹き飛ぶ程度の損害に押し止めた。 そして、殺島が殺し切れなかった悪童の王は。 とうとう加速の終点、神の御前へと辿り着き―― 「アアアアアアアアアアアアアア!!!」 「……! が、はっ……!!」 ――その心臓を、真正面から貫いた。 ……。 …………。 ………………。 夢幻(ユメ)が、終わる。 世界(マボロシ)が、晴れる。 それは舞踏鳥が死亡した証だった。 聖華天の行進で轢殺された彼女は、黄金球や他の子供達と同じく肉片一つも残っていないが。 それでもその"生き様"は、此処に残っている。 神の心臓を貫くガムテという、"結果"で。 「……見事だぜ、ガムテ。オレの霊核(しんぞう)――見事にブッ刺してくれたな」 しかし、まだ殺島飛露鬼は終わらない。 霊核を貫かれたにも関わらず、彼はまだ笑っている。 笑い続けている。神は、まだ生きている。 「けどよ……まさかたったこれだけで、神(オレ)を殺したつもりになっちゃいねえよな?」 地獄への回数券、二枚服用(オーバードーズ)。 その回復力は異次元だ。流石に牛歩ではあるものの、霊核の損傷さえ修復し得る。 現にガムテに貫かれている今も、彼の霊核は少しずつ元の形へと治り始めていた。 死の淵から、殺島飛露鬼は三度蘇る。 一度目は、輝村極道によって。 二度目は、界聖杯によって。 そして三度目は、他でもない自分自身の力によって。 三度目の"死"までもを跳ね返し、不良の神は今こそ高らかに勝利を謳う―― 「いいや。もう、"ブッ殺した"よ」 「……あ?」 ことを、殺しの王子は許さない。 その手が、握った短刀の柄から離れる。 彼にとってそれは、絶対に選びたくない選択だった。 いつかの聖夜(クリスマス)、糞野郎(サンタ)が彼にくれた贈り物(プレゼント)。 憎たらしいババアの手によって汚されてしまった、親子の絆。 それを自ら手放すなんて――ガムテがする筈がない。 絶対に殺さなければならない相手を、そうすることで確実に殺せる……そんな状況でもない限りは。 「ッ、ガムテ――まさか、お前……ッ! お前……"これ"、は……!!」 ……ビッグ・マムは、親子の絆に余計なお世話という名の唾をかけた。 ガムテの短刀に魂を与え、ホーミーズとして英霊をも殺せる殺傷力を宿らせた。 今や関の短刀は、ただの業物ではない。 ビッグ・マムの魔力を内包した、その宝具の一片とすら呼べる代物と化している。 殺島の頭の中に過ぎるのは、黄金球の最期だった。 ホーミーズ化させた鋼鉄球を爆発させ、散っていったあの男。 此処に来てようやく、本当の意味での死を感じ取った神の手は、刺さったままの短刀へと伸びる。 急いでそれを引き抜こうとするが――もう何もかもが遅い。 ガムテは、笑わなかった。 笑わずに、中指を立てて――言った。 「じゃあね、殺島の兄ちゃん」 ……"親子の絆(ドス)"が、音を立てて爆ぜ。 ……現世に甦った不良の神性"暴走族神"の霊核は、今度こそ粉々に弾け飛んだ。 →
https://w.atwiki.jp/bgpopfolk/pages/49.html
Алисия(アリシヤ) - Лятно време(リャトノ ヴレーメ)サマータイム 歌詞 Слушай ме, сега! スルシャイ メ セガ 聞いて、今! Казват ако жена каже "не", カズヴァット アコ ジェナー カジェ ネ 彼らは言う、もし女性が「イヤ」と言う時、 всъщност тя има друго предвид с това! フサシットノスト テヤ イーマ ドルーゴ プレドヴィド ス トヴァ 彼女は実際、何か他の事を意味している! Вярно ли е , питаш ти? ヴャルノ リ エ ピータシ ティ 本当ですか?あなたは尋ねる、 Вярно е, казвам ти! ヴャルノ エ カズヴァム ティ 本当だよ、あなたに言う! Но ще чуеш и тук лъжи! ノ シュテ チュエシ イ トウック ラジ しかしあなたは又ここに嘘が有るのを聞く! Не вярвай на лъжите лятно време, ネ ヴャルヴァイ ナ ラジーテ リャトノ ヴレーメ 夏の季節の嘘を信じてはいけない、 че жените, бързо, лесно се предават, с някой си лягат! チェ ジェニーテ バルゾ レスノ セ プレダヴァット ス ニャーコイ シ リャガット 女性は早く簡単に、誰かとベッドに行く! Ти няма ли да ставаш, от леглото ми да бягаш? ティ ニャーマ リ ダ スタヴァシ オット レグロート ミ ダ ビャガシ あなた起きてちょうだい、私のベッドから出て行って? Не запомних снощи кой си. ネ ザポムニフ スノシッティ コイ シ 昨夜のあなたの名前を覚えていないわ。 Чао, еди кой си! チャオ エディ コイ シ さようなら、誰かさん! (繰り返し) Ако каже жена "Оф , боли ме глава", アコ カジェ ジェナー オフ ボリ メ グラヴァ もし女性が「オー頭が痛いわ」と言ったら、 щяла скучна да е нощта! シッタヤラ スクチナ ダ エ ノシッタ 退屈な夜になるだろう! Вярно ли е , питаш ти? ヴャルノ リ エ ピタシ ティ 本当ですか?あなたは尋ねる、 Вярно е, казвам ти! ヴャルノ エ カズヴァム ティ 本当だよ、あなたに言う! Но ще чуеш и тук лъжи! ノ シュテ チュエシ イ トウック ラジ しかしあなたは又ここに嘘が有るのを聞く! アリシアのフェイスブック ←ここをクリック! _MG_0096%20copy.jpg 名前 コメント 選択肢 投票 お気に入り (4) -
https://w.atwiki.jp/europe/pages/248.html
サマータイムマシン・ブルースの略称。 観客はSTMBなどの略称も使うが、ヨーロッパ企画メンバーは「サマー」と呼ぶことが多い様子。 一方、冬のユリゲラーは「冬」とは呼ばず普通に「ユリゲラー」と略している模様。 by つきみさん