約 2,163,501 件
https://w.atwiki.jp/yuumsp/pages/19.html
大きさや重さの単位 強さの目安 カラットの二乗+カラット*強さ 目安 1 相当弱い 10 弱い 50 結構弱い 100 普通 250 やや強い 500 強い 750 かなり強い 1000 国で争える 2000 世界で争える 5000 ????
https://w.atwiki.jp/team-nandemo/pages/96.html
★第22回オフ 「Teamなんでも・ク(クルモン)」 セットリスト 2015年2月8日(日曜日) カラオケ館錦本店にて開催 参加人数9名 □■曲名 / 作品名 / 歌った人 ▼第0ターン ゼロアニカラ 「自分以外誰も歌えないであろうアニソン」を歌っていただく時間 一番は1人で歌っていただき歌える方は二番から一緒に歌っていただくルール ○ 本人以外誰も歌えなかった曲 ● 本人以外歌える方がみえた曲 「○」の曲を歌ったメンバーには合唱曲選曲権+メインボーカル権をプレゼント ○CONFUSED MEMORIES / 金田一少年の事件簿 / GIN ●グローイング・アップ / 私のあしながおじさん / ある ●IN MY DREAM / ブレンパワード / あかい ●フューチャー・ヒーロー / 超電動ロボ 鉄人28号FX / きむねろ ○明日への闘志 / リングにかけろ1 / オデロ ●Wake up Angel~ねがいましては∞なり~ / ぴたテン / レイヴ ○Chain / エア・ギア / ミケ ○モノノケダンス / 墓場鬼太郎 / ふったま ●GO!GO!READY?!GO!! / Dr.リンにきいてみて! / なんでも ▼第1ターン 01■HARUKAZE / BLEACH / GIN 02■元気爆発ガンバルガー / 元気爆発ガンバルガー / きむねろ 03■めぐりあい / 機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙篇 / レイヴ 04■border / 憑物語 / ふったま 05■Gの閃光 / ガンダム Gのレコンギスタ / なんでも 06■素敵な君 / あずきちゃん / GIN 07■ドリーム・シフト / 絶対無敵ライジンオー / きむねろ 08■The Other Self / 黒子のバスケ / レイヴ 09■絶対無敵☆Fall n LOVE☆ / 美男高校地球防衛部LOVE!! / ふったま 10■終末のラブソング / クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 / なんでも 11■ルネッサンス情熱 / ミスター味っ子 / GIN 12■Zのテーマ / マジンガーZ / きむねろ 13■Can Do / 黒子のバスケ / レイヴ 14■No Limit / DOG DAYS / ふったま 15■GET THE WORLD / 爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP / GIN 16■KEEP ON DREAMING / 熱血最強ゴウザウラー / きむねろ 17■Infinite Love / 恋の天使アンジェリーク~心のめざめる時~ / レイヴ 18■DAYS of DASH / さくら荘のペットな彼女 / ふったま ▼第2ターン 19■さよなら文明 / ツヨシしっかりしなさい / GIN 20■Go!リュウケンドー / 魔弾戦記リュウケンドー / きむねろ 21■終末のラブソング / クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 / ミケ 22■New World Order / SHOW BY ROCK!! / オデロ 23■弾けろ!マックスショット / 爆球連発!!スーパービーダマン / なんでも 24■君がいるから・・・ / 金田一氏少年の事件簿 / GIN 25■復活のイデオン / 伝説巨神イデオン / きむねろ 26■超鬼神ZENKI、来迎聖臨! / 鬼神童子ZENKI / ミケ 27■SONIC DRIVE / ソニックX / オデロ 28■アメイジング ザ ワールド / ガンダムビルドファイターズトライ / なんでも+ミケ 29■ウイニング・ラン!-風になりたい- / 爆走兄弟レッツ&ゴー!! / GIN 30■セクシー・アドベンチャー / ルパン三世 PARTⅢ / きむねろ 31■Clear Mind / 遊☆戯☆王 5D s / ミケ 32■遥か遠い空の声 / 豚乙女 feat.ランコ / オデロ 33■Miss Mystery / 名探偵コナン / GIN 34■サムライハート / 鎧伝サムライトルーパー / きむねろ 35■炎ノ刻印-DIVINE FLAME- / 牙狼 GARO -炎の刻印- / ミケ 36■Now or Never / ファイ・ブレイン~神のパズル~ / オデロ ▼第3ターン 37■ゆめいっぱい / ちびまる子ちゃん / GIN 38■恋は渾沌の隷也 / 這いよれ!ニャル子さんW / あかい 39■ヤットデタマンの歌 / タイムボカンシリーズ ヤットデタマン / きむねろ 40■荒野のヒース / 創聖のアクエリオン / ある 41■極限Dreamer / 夜ノヤッターマン / なんでも 42■Everybody Can Do! / こちら葛飾区亀有公園前派出所 / GIN 43■仮面ライダーBLACK RX / 仮面ライダーBLACK RX / あかい 44■風のノー・リプライ / 重戦機エルガイム / きむねろ 45■愛がひとりぼっち / タッチ / ある 46■ひとりぼっちのデュエット / タッチ / GIN 47■いくつもの愛をかさねて / 機動戦士Vガンダム / あかい 48■10%の雨予報 / みゆき / きむねろ 49■夢冒険 / アニメ三銃士 / ある ▼第4ターン 50■HEART TO HEART / 勇者警察ジェイデッカー / GIN 51■永遠の孤独 / 宇宙の騎士テッカマンブレード / あかい 52■Gatherway / 勇者エクスカイザー / きむねろ 53■世界は恋に落ちている / アオハライド / ある 54■幸せについて私が知っている5つの方法 / 幸腹グラフィティ / ふったま 55■SOLDIER-哀しみの詩- / GUNDAM EVOLVE / オデロ 56■No More Time Machine / ソードアート・オンラインⅡ / なんでも 57■ブルーウォーター / ふしぎの海のナディア / GIN 58■Shine-未来へかざす火のように- / 信長の野望 創造 / あかい 59■コスモス・ドリーム~宇宙をかける夢~ / 新竹取物語1000年女王 / きむねろ 60■幸せについて私が知っている5つの方法 / 幸腹グラフィティ / ある 61■This game / ノーゲーム・ノーライフ / ふったま 62■ロストワンの号哭 / 鏡音リン / オデロ 63■ゲラゲラポー走曲 / [映画] 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン! / なんでも ▼ファイナルターン 64■恋のミノル伝説-完全版- / らき☆すた / ふったまさんと愉快な仲間たち 65■アニメじゃない-夢を忘れた古い地球人よ- / 機動戦士ガンダムZZ / オデロさんと愉快な仲間たち 66■めざせポケモンマスター / ポケットモンスター / GINちゃんと愉快な仲間たち
https://w.atwiki.jp/jewelery/pages/25.html
カラットとは重量単位であり1カラット(ct)は、0.2g。 カラット数が大きいほど稀少価値があって評価が上がるが、特に1カラットを超えると値段が一段と高くなる カラットの語源は、アフリカやインドなどで古くから使われてきた計量に使うおもり「カロブ」というイナゴ豆の一種で インドやオリエント諸国では、宝石の重さを計量するおもりとして、常に一定の重さだったこの実が使われていた カラットよりさらに小さい単位は、「ポイント」と呼ばれ、1ポイントは2ミリグラム。 ちなみに、日本でカラットが採用されたのは1909年の明治時代、11月11日だ。 現在では11月11日はジュエリー・デーとなっている
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/538.html
秋の日差しが注ぎ込むラムゼン商会のオフィス。 ルカパヤン紛争の終結からはや一ヶ月が経過しようとしていた。 ひっきりなしに訪れる様々な相談事を抱えた訪問客たち。 3日ほど前に開設された相談窓口は、連日戦争のような忙しさだった。 だが、本当の戦争を体験した者にとっては、この程度の争い事など、街角の歓談程度でしかない・・・・ 「ですから、この件に関してはですね、契約書にあるとおり免責事項の一環であると我々は考えます」 「そんな話はどうだって良い! 銭は出るのか!それとも出ねぇのか! はっきりしろい!」 「申し訳ありませんが免責ですので1センタたりともお支払いするわけにはいきません」 「てめぇ!」 テーブルを叩き割るかのような勢いで叩いて抗議する獣の男。 それを相手に交渉を続けるヒトの男。 今、ラムゼン商会はルカパヤン紛争で灰燼に帰した商品の補償について、各方面の債権者とギリギリの交渉をしていた。 「おう! 一服付けろい!」 唐突にドアを開けて入ってきたトラの大男がヒトの男の隣へどっさりと腰を下ろした。 ヒトの背を遥かに越える威丈夫でおまけにスカーフェイスの強面だ。 獣の男(キツネかテンか、そんな感じ)の表情に恐怖が混じった。 「あぁ、スイマセン。当商会の営業主任です」 「おぉ! 挨拶が遅くなってすまねぇなぁ なに、こればっかりはよ、喧嘩吹っかけたネコの連中を恨んでくれぃ」 「残念ですが戦争・騒乱などの紛争による商品の遺失または消失は管理の慮外で免責です」 「なんだ、まぁこればっかりはしかたねぇって諦めてくれ」 あくまで冷静な口調を崩さないヒトの男。 トラの男は迫力のある笑みを浮かべつつ、押しかけてくる客にグッと睨みを効かせていた。 「どうしても補償しないって言うんだな!」 「残念ですが仕方がありません。次回は騒乱の予兆を感じたら早めに商品を引き上げてください」 ギリギリと音を立てて歯を食いしばる獣の男。 だが、どれ程凄んでも喚いても効果が無い事を理解したようだ。 並のヒトの男なら、牙を向いて凄めばすぐに諦めるものなのだが・・・・・ 「おい、ヒトの男。お前のその余裕はやせ我慢か?それともラムゼンの看板か?」 「・・・・さぁ、どちらでも良いんじゃないでしょうか」 「喰えねぇ野郎だ」 「すいませんねぇ。なんせここだけはヒトも言いたい事を言える環境になったもので」 上半身をひねって右肘を自分の膝へとつき、三白眼の眼差しを送るヒトの男はにやりと笑った。 俺はこのヒトに舐められてる。それに気が付いた獣の男が心底悔しそうな表情を浮かべている。 一思いに襲い掛かって噛み殺してやろうか。 そうは思ってもヒトの男の隣に座るトラの男が・・・・ 「牙を剥くのは結構だが、場所を弁えろい。おめぇも生きてけぇりてぇだろ?」 鷹揚と椅子に腰掛けるトラの男。 だが、それで居て左の手は懐に忍ばせた匕首の握りを掴んでいた。 「しかたねぇな・・・・ 諦めるか」 フゥと溜息を一つついた獣の男。 そこにヒトの男が取り出したのは一枚の書類。 「申し訳ありませんが今回の一件の示談書です。散逸財の補償放棄同意としてサインもらえませんか?」 「サインしなきゃ駄目か?」 「えぇ。内容を良くお読みになって下さって結構です」 簡単な説明を終えたヒトの男はトラの男が持ってきたコーヒーを獣の男へと勧め、同時に自分もカップへと口を付けた。 柔らかな香りを振りまくコーヒーの湯気がユラユラと揺れていた。 「今度ラムゼンへやってきた交渉担当は強敵だと聞いてたが・・・・ こりゃ大したたまだな」 「お褒めに預かり光栄ですね。今後とも末永いお付き合いをお願いいたします」 子供でも分かる社交辞令な言葉をシレッと吐いて、ヒトの男はサインが帰ってくるのを待っていた。 渋々と書類へサインを入れる獣の男。 同じ書類を2つ用意して双方にサインを書き込んだヒトの男。 「これは双方が同じ内容の書類です。間違いないと判断したらこの真ん中に割り印のサインを」 「真ん中か?」 「えぇ。双方が1枚ずつ持つ事によって意味を成します」 口約束か、よくて契約掲示の証文だったラムゼン商会の経営形態。 だが、ルカパヤン紛争の後に入ってきたヒトの男は契約の形態を一気に変革してしまった。 「これでいいか?」 「結構です。では、こっちの書類はあなたが。もう一枚は我々が保管します。後日、何らかの事情で契約の再確認、または無効の申し立てを行う場合はこの書類2枚双方が揃っている事が条件です。書類を無くしたので内容は覚えていない。今からでも良いから補償しろと後日訴えられても我々は書類なき場合は再審査に応じませんのでご注意ください」 ヒトの男はサインの入った書類を封筒に収め獣の男に差し出した。 獣の男はその封筒を力いっぱい奪い取るようにして立ち上がった。 「月のねぇ夜は気をつけな!」 「そうですね。石に躓いて転ぶかもしれない」 あくまで喰えないフリをするヒトの男。 だが、その懐から小さな封筒を取り出す。 「これは当商会からの見舞金です。僅かですが足しにしてください」 獣の男がその封筒を開けると、中から1万セパタ分の紙幣が出てきた。 男の失った財は軽く100万セパタを越えるのだが・・・・・・ 「なんだこりゃ、昼飯代にもなりゃしねぇな」 「ご不要でしたらご返却を」 「・・・・もらえるモンは貰っておくぜ」 「そうですか。では、今後ともよろしくお願いいたします」 大股で歩いて出て行く獣の男。 ドアボーイを務めるライオンと思しき種族の青年が静かに戸を開けた。 「ごくろうさまでした」 精一杯の世辞だったのだろうが、財を失った者にとっては嫌味にしか聞こえない。 襟倉を掴みかかるかのような気迫で睨みを利かすのだが、なにせ相手は肉体戦闘において上位に入る獅子なのだ。 そよ風をもてあそぶ様な仕草で部屋からの退出を促した。 「あばよ」 そんな捨て台詞が精一杯の抵抗なのかもしれない。 そっと閉められたドアの中。書類を整理していたヒトの男は一息入れるかのように大きく息を吐いていた。 「さすがのおめぇさんでもよぉ」 ニヤッと笑うトラの男。 「いえいえ、この程度ならば何度もこなしていましたよ。それより、今日はあと20件はあるはずです」 処理済と言うハンコを打って書類箱に収めると、コーヒーのカップを優雅に持ち上げてもう一口つける。 「ネゴシェーター 次のお客を入れても良いですか?」 ドアボーイが外をちらりと見てそう言った。 一瞬見えたドアの外には、やや殺気立った獣の男や女達が見える。 いずれも、今回の騒乱で自らの財産を焼き払ってしまった人々だった。 「責任の一端は我々ヒトの問題でも有ります。私が努力しなければなりませんからね」 カップを下ろし目頭をグリグリと押さえて僅かでも疲労の回復を図る。 朝8時から休むことなく続けられている債権交渉の相談室。 その部屋の壁に掛かる時計の針は、そろそろ午後3時を指し示そうとしていた。 「飯にするか? 食わねぇと体が参っちまうぜ」 「外の人たちだって食べていないはずです。続けましょう」 「・・・・おめぇは義理堅ぇ男だぜ。たいしたもんだ。女二人が心底惚れるに値するな」 「褒めても何も出ませんよ」 「じゃぁ今夜は外の屋台で俺に一杯くらいおごりやがれ」 はっはっは!と笑い声を響かせてトラの男が手招きする。 ドアボーイが次の客を入れて交渉が再開された。 「整理番号4027番のお客様ですね。当商会のお預かりしていた物のリストです。お間違いないでしょうか?」 ヒトの男が差し出した書類に眼を通す獣の男。 そこに書かれた膨大な量の預かっていた筈の品々。 そして、末端市場価格とラムゼン商会が見積もった預かりの際の補償価格。 「当商会と致しましては戦争などの騒乱による商品の遺失紛失は免責であると考えております・・・・」 朝からずーっと繰り返されている交渉のルーチン。 それはラムゼン商会の基本方針。 市場価格がどうであれ、ラムゼン商会が見積もった金額に応じて商品を遺失した際は補償すると書かれていた契約書。 だが、現状では紛争により火をつけられてしまった倉庫の中身が例えなんであれ、補償は一切出来ないと言う交渉なのだった。 ギリギリと歯を軋ませる獣の男達を相手に、ヒトの男は孤軍奮闘していた。 やがて陽は傾き夕闇が音もなくやってくる時間帯。 押し寄せてきていた債権者を全部処理し終わって一息つく頃。 すっかり寂れてしまった中央通りで店開きしてた屋台街の一角には、ヒトの男とトラの男が座っていた。 「今日も疲れたな」 「えぇ、今日はちょっと酷い人が多かったですね」 「まぁなぁ ここがこんなに燃えるなんて思っても見なかった連中だろうよ」 この中央通りはルカパヤンのメインストリートだった。 かつて、この通りを埋め尽くす程の数だった屋台が、今は往時の半分にも満たなかった。 戦災で焼かれ一切の家財を失った者達がすする雑炊の音。 ラムゼン商会の者が炊き出す1日2度の食事で食いつなぐ者が、まだまだここにいるのだった。 「しかし、おめぇはいつまでここにいるんだ?」 トラの男の唐突な問いにヒトの男は黙ってしまった。 「おめぇさんが頭を下げて帰れば、あそこの連中は皆万々歳で迎えてくれんだろ」 いきなり突きつけられた刃のような言葉。 グラスに半分ほど注がれた安酒を煽ってトラの男が見つめるヒトの男。 「意地を張るってのはでぇじな事だけどよ それだけじゃ世の中窮屈だぜ」 小汚い皿に並べられたチーズは少し臭かった。 保存食として蓄えられていた物が紛争終結と共に闇市へ流れたのだろう。 一つの都市としてどれほど発展したとしても、国家規模の政治・経済介入が行われれば都市国家の脆弱な経済は破綻してしまう。 それでもこの街が掴み取った権利を守るためであれば、ここの住人はそれを受け入れるだろう。 だが、そのための代償はあまりに大きかった。 この街の胃袋を満たしていた豊富な食材は、ネコやトラの国家の穀倉地帯から流れ込んできていた。 紛争終結と同時にこの街へと侵攻した国家群が取った措置は、食料の無期限流入封鎖だった。 かつてこの街へは毎週毎週、大型の馬車何十台もの食料が運び込まれていた。 しかし、現在その流入は極端に絞られていて、事実上の兵糧攻めとも言える状態が続いている。 その意味で、紛争は現在も継続されているとも言えるし、この街から流出して行ったヒトの世界の様々な商品が焼かれた事による商品の損失で、事実上ルカパヤンの繁栄は終了したとも言える。 トラや獅子など食料消費率の大きな大型種族とて、ヒトやイヌやネコといったあまり食料を必要としない種族と同じ量でしか配給は行われていない。 全てを分け合い、分かち合い、共存する。 その理念に賛同し、そして耐えうる者のみがこの街に残って生きていける。 だが、飢えと渇きは理性や理想や理念の全てを壊してしまう。 紛争終結より半月。 この街はついにギリギリの所へとやってきていた。 「おめぇ この街で餓死するのが本望なのか?」 少しだけ強くなった口調の中に僅かならぬ苛立ちが隠されているのにヒトの男は気がついた。 だが・・・・ 「意地は張り通さなければ意味が無いんですよ」 「それでもよぉ・・・・」 安酒を煽ってグラスをテーブルへと置いたヒトの男。 深い溜息を一つ付いて空を見上げた。 「自分から気が付いてくれなければ意味が無いんですよ」 「・・・・おめぇは本当に孝行もんだなぁ・・・・ マサミ」 おっと・・・・ ついうっかり口を滑らせたと言わんばかりのトラの男。 「その名前は出されては困りますね 私はこれでも命を狙われる立場だ」 「そうだけどよ・・・・」 「それより、いつまで私に付いてるんですか? コウゼイさん」 反撃とばかりに名前を呼ばれたトラの男が慌てている。 「おいおい! あっちにゃトラの憲兵がいるんだぜ 勘弁してくれ」 ルカパヤンの自治組織にトラの男が関わっている。 そんな情報を受けたトラの国の治安組織がルカパヤンで裏切り者狩りをしている。 自由と自己責任とメンツと意地。 トラの男の突っ張らなければならない色んなものの為に、コウゼイもまたここに残っていた。 「だけどよぉ おめぇは大手を振って帰れる大義名分があるじゃねぇか」 「いえいえ、そんな物はありません。私は出て行けと言われて叩き出されたんですよ?」 出て行け! その言葉の持つ冷たさにコウゼイは一瞬だけうろたえた。 ・・・・そうだ。 もはやどこにも行き場が無い。 今現在、ルカパヤンに生きる多くのヒトが直面している、過去に経験の無い最大の危機。 主を持たず自分ひとりで生きていかねばならない境遇に問答無用で放り出されたヒトが、今現在のルカパヤンには掃いて捨てるほど居るのだった。 今のマサミのその一人。 主ではなく、組織の一員としてこの世界での立ち位置を確立しなければ、それこそこの世界の激流に流されていってしまう。 「でも そりゃ今回の一件の為の出まかせだって誰でもわかってることじゃねぇか」 言葉に詰まったコウゼイの口から苦し紛れの言葉が漏れる。 「えぇ、もちろんです。分かっているからこそ出来ないんですよ」 グラスに残っていた安酒がいつの間にかなくなっている。 コウゼイは店のオヤジにもう一杯注がせようとしたが、オヤジはやんわりと残りが少ないからダメだと言った。 みんな飲んじまったら他の客が飲めねぇ・・・・ マサミは残っていた自分のグラスの酒をコウゼイに手渡した。 「ヒトはそのうち自然に帰ってくるって実績を作ったらいけないんです。出て行ったらそれで終わり。全てを捨てて独立紛争に参加しておいて、終わったらそそくさと元の鞘に納まるなどと寂しい前例を作るわけには行きません」 酒の変わりに注がれた水を飲んでマサミはもう一つ溜息をついた。 「きっとあの方もそれを理解しています。ですが、向こうも意地を張っているのでしょう」 「厄介だな」 「えぇ、実に厄介です」 「なりは違うにせぇ 男と女の達引じゃねぇかよ」 ハハハ・・・・ 自嘲気味の笑いを残してマサミは立ち上がった。 ポケットから幾ばくかのセパタ紙幣を出しで支払いを済ませると路地を歩き始める。 必ず迎えが来るはずだ。 根拠の無い確信だけがマサミを支えていた。 「こんな事は言いたくねぇが・・・・ おめぇの中身はどっかと入れ替わっちまったみたいだな 目を覚ましてから」 立ち止まったマサミが振り返ってじっとコウゼイの目を見ていた。 「いや、あの日から変わっちまった。その方が正しいだろうな・・・・・ ************************************************************************************************************************ 「・・・・・・・・・・・・あれ?」 ふと目を覚ましたマサミ。 見知らぬ天井がそこにあった。 真っ白な部屋の中。清潔なベットの上に寝かされていた。 汗と泥と返り血で汚れていたはずの戦闘服が綺麗に洗濯されて壁に掛かっている。 開け放たれた窓から入る風からは、腐乱死体の焼け付くような死臭や硝煙の臭いや、あの喉を悪くする砂埃の気配が消えていた。 まるで、平穏な日常を過ごしていたスキャッパーの、のどかで麗らかな春の日に昼寝してしまった自室のようだった。 窓にさがるレースのカーテンが風に揺れている。その向こうからは子供達の楽しそうな笑い声が聞こえた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そっとベットから起き上がって床に足をつける。 ひんやりとしたリノリウム張りの床が冷たかった。 綺麗にそろえられたスリッパを履いて、マサミは窓際に立った。 窓の下。ヒトやイヌやトラや、多くの種族の子供達が、仲良く遊んでいた。 「夢か?」 カーテンを開けて外を見たとき、それは夢でもなんでもなく、これからの苦労を想起させるに十分な現実があった。 街の半分が焼け、その瓦礫を色々な種族の老若男女がせっせと片付けていた。 歴史映像のアーカイブで見た、第二次大戦後のドイツの街並みのように。 崩れかけた石造りの家々を一旦壊し、街が再建されていく途中の光景だった。 「あ! 目を覚ました!」 突然部屋の中に声がした。 振り返ると見覚えのあるヒトの少女が立っていた。 花瓶に生けられた綺麗な花を持って。 「説明してもらえませんか?」 マサミはそう尋ねた。 「ここはルカパヤン常任理事会の理事に宛がわれた建物よ マサミ先生1週間眠りっぱなしだったの」 ベットサイドのテーブルに花瓶を置いて花を飾った少女は、脇に抱えていたファイルと袱紗に包まれた物を置いた。 「あの日から、マサミ先生はこの街の常任理事の一人なんだって。これからよろしくね!」 「え? あの・・・・ あ、そうか 君はエレカ」 「私の名前はエレカじゃないです」 「そうだね。エレクトロニカだね」 「うん!」 バイバイ!と手を振ってエレカは部屋を出て行った。 ベットサイドのファイルには達筆な字の手書き報告書が挟んであった。 あの時、そこで何が起きたのか、克明に記録されている報告書。 ヴァルキュリアが召喚した眩く輝く巨大な『なにか』は黒い影を飲み込んで剣の鞘の中へ消えたのだと言う。 その場に居合わせ、その『なにか』を見た者すべてが気を失って倒れたのだと言う。 百草箱の中に隠れて様子を伺っていた子どもはたまたまその『なにか』を見なかったので、気を失わなかったらしい。 あの混乱の中、ヴァルキュリアの姿がスーッと消えて行き、落ち着いてから街中の何処を探しても見つけられなかった。 広場の中心に落ちていた魔剣は猛烈な熱を帯びていて、誰も近づく事すら出来なかったらしい。 しばらくして広場に静けさが帰ってきたとき、その剣は気が付けば鞘に納まっていたんだとか。 まるで、はじめからそうであったかのように。 広げたファイルをバサリと無造作にベットへ放り投げて、マサミは傍らの魔剣に手を掛けた。 ひんやりとした手触りが金属の冷たさを感じさせる。 あの日、想像を絶する事象を引き起こしたとは思えないその存在。 カチャ・・・・ 無造作に鞘から引き抜くと、波を打って伸びる丁字乱れも鮮やかな刀身が姿を現した。 窓から入ってくる涼やかな風が刃先をなぶってすり抜けていく。 磨き上げられた刀身の鏡のような刃先をじっと見つけるマサミ。 どこか引き込まれそうな魔力を持った美しさだ。 僅かに刃先を振って刀身に自分の顔を写してみる。 無精髭が伸びやせ細った顔。だが・・・・ え゙? 不意に口をついて言葉を漏らした。 刃先に写る自分顔の、その瞳が真っ赤に染まっていた。 赤い瞳の見知らぬ顔だった。 馬鹿な! 驚いて部屋の隅にあった鏡をのぞき込む。 見慣れた自分の顔が写る鏡をじっと凝視するマサミ。 瞳の色は黒だった。 もう一度だけと刃先に自分を映してみれば、そこには赤い瞳の自分の顔。 顔を横へ向けて鏡を見れば、鏡に映るのは黒い瞳の自分の顔。 どこか混乱しつつ再び刃先に目をやる。 赤い瞳の自分の顔が写っている。 そして、その表情は笑みを浮かべていた。 あり得ない・・・・ そんな驚きを胸にしていたら、刀身に写った自分の顔がプイッとばかりに横を向いて、どこか遠くを見てしまった。 「・・・・そうか。ヴァルキュリア君はそこにいるんだね」 そっぽを向いていたその顔が再びこっちを向いた。 赤い大きな瞳が優しく笑っている。 そして、僅かに頷いて、そのまま瞳を閉じてしまった。 「またいつか、力を貸してほしい。ありがとう」 刀身へ一礼したマサミは鞘の中へ納めた。 握っていた柄の中が僅かに暖かくなったような気がした。 どこか人肌の温もりにも似たものを感じた。 あの子はまだこの中で生きている。 それが妙に満足だった。 そっとベットサイドへと魔剣をおろしてウーンと背伸びをする。 背骨がバキバキと音を立て、今までの激闘がどれ程の物であったかを思い出させた。 そして、体に残る汗と埃の臭い。 「さて・・・・」 着替えて部屋を出たマサミ。 見知らぬ天井は焼け残ったルカパヤンの中央病院だった。 広々としたフロアには人気が無く、階段を降りて行くにつれ、下のフロアが酷い事になっている事を知った。 様々な種族が平等に手当てを受けていて、所狭しと並べられたベットには傷を負った者が寝かされていた。 これから大変だ・・・・ 復興と言うものは歴史の1ページでしかなかったマサミにとって、リアルに振って掛かってきた現実。 通りへ出てみれば、街の住人が種族を超えて総出で瓦礫を片付け通りを直していた。 一日も早く、あの栄えていたルカパヤンを取り戻すために。 「よう! もう体は良いのか?」 唐突に声を掛けられたマサミが振り返ると、あの隻眼のキツネが立っていた。 上等な背広を埃まみれにして働いている。 「あなたも働いてるのですか?」 「あたりめーだ。だってここは俺の街だぜ」 へん!と笑ってポケットからタバコを取り出し火をつけたキツネの男。 紫煙をフーっと吐き出して空を見上げる。 「汗を流し、血を流し、メンツの為に意地を張る。立派なもんだぜ。ヒトもこの世界の一員だ。胸を張って良いぜ」 「・・・・そうですか」 マサミはどこか淋しそうに笑った。 「なんだ。嬉しくねぇって顔しやがって」 「いや、そうじゃありません。ただ、この満足感を味わって欲しかったヒトが沢山いるな・・・・ そう思っただけです」 痛いほどの沈黙。 そしてマサミの表情。 キツネの男は何かを言い掛けて言葉を飲み込んだ。 「まぁ・・・・ なんだ。犠牲は付いて回るもんだ」 「えぇ、そうですね。お世話になりました」 「世話なんかしてねぇよ」 「いえいえ、これからお世話になりますから。だから、先にね」 ニヤッと笑ったマサミ。 キツネの男もニヤッと笑う。 「そういえばあなたの名前をまだ伺ってませんでしたね」 「・・・・そうだな。まぁ・・・・ そのうちな。楽しみにしてな」 マサミの方をポンポンと叩いてキツネの男は街の中心部へと歩いて行った。 どこかホッとしたような表情の街の人々。 これほどの数の人間がこの街で暮らしていたのかと思うと、責任の重さに身震いを覚える。 沢山の人々が働く中、マサミは再びあの広場へとやってきた。 広場の中心には丸く凹んだ大きな窪みが出来上がっている。 何故凹んだのかは良く分かっていた。 あの日。 ここで何があったのか。 それを語り継いでいかねばならない。 「マサミと言ったな」 広場の中央で感慨に耽っていたマサミは再び唐突な声で誰何された。 声の主を探して振り返った先。あの盲目のオオカミの女が立っている。 いつもの様にライオンやトラと言った大型獣人のボディガードを連れて。 「あ、えぇっと・・・・ ファギィさん」 全くの無警戒でその名前を出してしまった事にマサミは気が付いた。 体毛に覆われた獣人の男たちが一瞬色めき立つ。 だが・・・・ 「ファギィではない。ファギーだ。間違うな。失礼だぞ」 「恐れ入ります・・・・」 「お前は下手に出る必要は無い」 「え?」 話の飲み込めないマサミ。 だが、真っ赤なルージュを引いた唇を上品に歪ませて笑うオオカミの女・・・・ ファギー。 マサミは彼女が笑うところを初めて見た。 「ルカパヤンの理事、ヒトのマサミ。あんたはこれからどうやって生きて行くつもりだ?」 唐突に突きつけられた問いの意味を図りかねているマサミ。 だが、ファギーもその周りのボディガードもニヤニヤと楽しそうに笑っている。 正直、大型肉食獣の男たちが目の前で歯を見せてニヤニヤ笑うと言うシーンは、背筋に冷たいものが走るのだが。 「今日からラムゼンをよろしく頼む。あなたには組織の利益代表として理事会へ出てもらう」 「・・・・あの、話が良く飲み込めないのですが・・・・・」 ポカンとしているマサミ。 「ルカパヤンの理事が何の後ろ盾もなしに勤まる仕事だと思うか?」 「それは・・・・ と言うより、それなりの物は必要でしょうけど」 事態をうまく飲み込めていないマサミだが、何となく察しはついていた。 「私に何をさせようと言う事でしょうか?」 「させるんじゃない。勘違いも甚だしい。ここでどうやって生きていくつもりだった?」 「どうやって・・・って?」 微妙にかみ合わない会話がもどかしい。 ファギーのすぐ隣に立っていた獅子の男がにやりと笑って口を開く。 「しのぎだよ、しのぎ。あんた今のままじゃ収入ねぇだろ?飯を食うのだってどうすんだ?」 「そうさ。いつまでも炊き出しがあるわけじゃねぇし、それに、残飯すすって生きてく様な無様な事はしたくねぇだろ?」 畳み掛けるように口を挟んだヒョウ柄の体毛を持つ大型の獣人が言った。 ファギーの周りに立っている男達は、どれ一人として堅気な仕事じゃございませんと顔に書いてあるような成りと雰囲気だ。 あたしは立派なヤクザでございますが、堅気の皆様方にはご迷惑おかけしませんので御免なすって・・・・ おいおい・・・・ 「つまり、私にヤクザになれ・・・・と」 薄ら笑いを浮かべたマサミが上目遣いでファギーをじっと見た。 視線を交わす事は出来なくとも、肌で感じるその眼差しにオオカミの女が笑った。 「なんだ、ずいぶん飲み込みが早いじゃないか」 ハッハッハ! その場にいる者達が皆笑っていた。 「ただな、あんたは別だ。あんたはうちの堅気の方の・・・・社員さんってやつだ。裏の仕事は俺たちがする。明るい表のよぉ、おてんとさんの下で堅気の皆さんとする仕事があんたのしのぎさ。そして、その会社をバックにしてあんたは理事会へ出席する。あんたは実入りを得られるし、後ろ盾が出来る。俺たちは理事会へ口を挟む隙間を得る。どうだ?持ちつ持たれつ。美しい関係じゃねぇか」 先ほど言葉を交わしたばかりの、あのキツネの男が横から口を割って入ってきた。 やはり交渉ごとや相談事になるとキツネは強い。 ネコを丸め込んで手玉にとって交わすなど、ヒト以外ではキツネしか出来ない仕事なんだろう。 「わかりました。つまり、私は準構成員ですね」 「それはなんだ?」 「ヒトの世界にもヤクザは居ますよ。極道です。その立場でも隠れ蓑が必要だから、ダミー会社を作って隠れるんです」 フン・・・・ 鼻を鳴らして笑うファギーが上着の中からタバコを一本取り出した。 すぐ隣の男が素早く火をつける。 流れるような作業が美しい。 「お前の国の組織から連絡が来た。あんたを生かして帰せとな。ルハス一家の親父には色々と義理がある・・・・」 そうか! やっとマサミが合点が行った。 「じゃぁ、今日から私もラムゼン商会の一員と言うことですね」 「そうだ」 栗毛の獅子がピョイピョイと手招きする。 「常務。それがあんたの肩書きだ。よろしく頼むぜ常務。まずは着替えてさっぱりしようぜ。あんた埃くせぇ上に汗くせぇ。ウチのもんに紹介しよう。忙しくなるぜ・・・・ * * * * * * * * * * 「まぁ、あの日から私の身分は変わりましたからね」 「・・・・奴隷からヤクザへ転職ってか」 「そうですね」 どこか自嘲気味に笑うマサミ。 スキャッパーに居た頃よりも遥かに上等に誂えられたスーツを着こなして、マサミは路地を歩き始めた。 路地の片隅の暗がりから大柄の男がスッと出てきてマサミの前を歩き始める。 今この街の中には傭兵崩れの雑多な種族も同居していた。 様々に鬱屈した劣等感を抱えて炊き出しの雑炊をすする者ばかりだ。 多額の借金をこさえて装備を整えて、そして事実上の負け戦で給与を貰いそびれ、帰るに帰れなくなった者達ばかり。 夜陰に乗じてヒトの自治会の関係者を闇討ちして歩いているらしい・・・・ 今週に入って既に3人殺されている・・・・ 傭兵経験のあるコウゼイだけでなく、ラムゼン商会の荒事担当もまたマサミの警護に付いている。 商会の得た既得権益を守るための、いわば必要投資でもある。 「なんだかんだで、ちょっと息苦しいですね」 「死ぬよりは良いだろ?」 「まぁそうですが・・・・」 通りの中で僅かに店開きしている様々な屋台の客が視線を投げかける先。 この街の命運ですらも背負ってしまったマサミは、プレッシャーを感じながら家路を歩いていた。 ************************************************************************************************************************ その数日後。 コウゼイはスキャッパーを訪れていた。 ポールから依頼された物を幾つか持って、馬で山を越えてきた。 「これはコウゼイどの。ご苦労様です」 紅朱館の入り口でコウゼイを出迎えたカイト老は手綱をフックに掛けると、馬に水と飼葉を与える準備を始めた。 「すまねぇな。それよりポールの野郎はいるかい?」 「御館様は書類と闘ってられますよ。最近は全部お一人でこなされております。そろそろ限界ですな」 ウンウンと頷いたコウゼイは勝手に紅朱館の扉を開けて入っていった。 それほど大きくないとはいえ、仮にも領主の公邸でもある。 本来ならばそんな事は許されないのだが・・・・ 「お邪魔するぜぃ」 勝手にツカツカと歩みを進め階段を上がるコウゼイ。 紅朱館2階の生活空間は領主夫妻とその従者のものだった。 だが、今ここは改築の真っ最中。 かつてカナが酷い目にあった砦を解体し、その資材を運んできては根気良く石を積み上げている。 そもそもが石積みでどっしりとした作りの紅朱館。 だが、悲しいかな。長い間、碌に手入れをされていなかったこの館は石積みのその隙間からは風が入っていた。 しっかりと積み上げ治された石の隙間へ水に溶いた藁灰を詰め、更に砂と泥を混ぜ込んで厚みを増したこの石壁は断熱効果を大幅に改善させた。更には、小さなクローゼットの中身を出しただけの執事公室も、一旦壁を壊しその奥へと廊下を作って増築された石組みの上にライフスペースを拡大している。 僅か6畳間にも満たない空間だったその部屋は、今日も城下の職人が何人も作業をしていて、8畳間ほどのリビングスペースにベットルームを2つ備えた、ちょっと高級なホテルのスイートルームに近い空間へ変貌を遂げつつあった。 全ては・・・・ ある事のために。 「おや、コウゼイさま。お迎えもせず申し訳ありません。この賑やかな作業の音で聞こえませんでした」 「いいって!気にするねぃ! だいぶ出来上がったじゃねぇか! それよりも・・・・」 ニコッと微笑むカナがお腹を押さえている。 ポッコリと膨らんだところを両手で押さえ重みを支えるかのような仕草だ。 「もうね、内側から蹴ってくるんですよ。早く出せって」 「そいつぁめでてぇなぁ。どれ、おらっちも触って良いかな?」 「どうぞ。ご随意に」 小柄のカナの前へと膝を付いて、まるで殻を剥いた生卵でも触れるかのようにそっと手を触れたコウゼイ。 柔らかな温もりと共に、その大きな掌の真ん中へ弱々しくも確実な衝撃があった。 「こりゃぁ男だなぁ あいつの子だろぉ? 良い男になるぜぇ~」 「そう期待してますよ」 ちょっとだけ淋しそうなカナ。 コウゼイはマズイ一言だったと気がついた。 「カナさんよぉ ほんとすまねぇなぁ おれっちはそういう気がきかねぇんで 申し訳ねぇ」 「いえいえ、良いんですよ。それより、あの人は元気にやってますか?」 「そりゃぁもうな、おれっちが保障するぜ。ここしばらく寝る暇もねぇくれぇ忙しいがな」 いつもと違い控えめに笑うコウゼイ。妊婦さんの前では大声厳禁だ。 何度も何度も釘を刺されいい加減うんざりしていたが、慣れてしまえばこれも良いもんだ。 ゆったりとしたマタニティドレスに胸まですっぽりと覆う大きなエプロンを掛けるカナ。 転ばないように倒れないように。気を配って歩きつつも仕事をこなしている。 「それはそうと、アリスさんはでぇじょうぶかい?」 「えぇ、今日はあっちで現場監督のはずですよ」 カナに連れられて入った執務室は一足先に増改築が終了した木の香りが漂う真新しい部屋だった。 その部屋の中央。向かい合わせのテーブルの上に大量の書類を並べ次々に処理をしていくポール。 向かいの机の椅子を引いて、それを見守っているアリス。 妊婦姿のカナと同じく、ゆったりとしたラインのドレススタイルに身を包むアリスもまた、大きくお腹が張り出していた。 「あら、レディに部屋に入るのにノックも無くて?」 「おっとすまねぇ 婦長殿のお導きなもんでよぉ 失礼した」 まもなく出産となるアリスのお腹はまさに卵型に膨らんでいた。 大きな椅子のシートバックをやや寝かし、厚手の毛布を敷いて座っている。 膨らむお腹にぴたっと乗っている服のあたり。 時々ピクピクと動くのは子供の足だろうか? 「この子はダメね。父親似よ。全くデリカシーが無いんだから」 「オイオイ、人聞きの悪い事をいうな」 げっそりと痩せ細ったポールが書類の山に目を通しながら、次々と代理サインを入れて決済していく。 だが、テーブルの上には単なる決済のサインではなく指示を仰ぐための書類が山積みだった。 軍関係、行政関係、訴訟事に関する仲裁判定、様々な機密書類。 そして、改築増築の進む紅朱館の完成見込み図面。 「コウゼイ、あいつは息災か?」 「あぁ、まいんちバリバリ働いてんぜ おめぇの3倍忙しい」 「そうか、なら良い。しかし、お前も、痩せたな」 「あぁ、ここ半月で15キロ落ちたぜ」 「飯は食えてるのか?」 「・・・・・今のルカパヤンにぁ・・・・ トラが腹いっぱい食えるほど飯はねぇよ」 「じゃぁ・・・・」 手を止めたポールがコウゼイを睨む。 それだけじゃない。部屋の中のアリスやカナの目もまたコウゼイを射抜いた。 「おめぇさんがたの心配の通りだ あいつはここ半月近く3日で5食の生活だ、夜もろくに寝てねぇ」 ひっくり返るのも時間の問題だな・・・・と言いかけたコウゼイだが、最後の言葉はなぜか口から出なかった。 心配そうな表情を浮かべるカナの姿を見ていたら、そんな言葉を吐くほどの余力を殺がれたと言うべきだろうか。 「なぁポール。ここにある食料をルカパヤンに輸出しねぇか?」 唐突なコウゼイの提案にポールが思案する。 だが、アリスは冷静に口を開いた。 「それはダメね。中央も飢えてるのに他所へ輸出なんて無理よ。議会に目を付けられるわ」 「銭になるって話でも無理か?」 「そうね。それが例えば市価の3倍とかで売れて、しかも何かしらの副産物がつくのなら・・・・って話になるわね」 ル・ガルとて飢えている。 それもただ飢えているのではない。一般の民衆から見れば絶望的に飢えている。 ここスキャッパーはマサミが来てからの約10年で大幅に農業収益や収穫量が拡大し、地域食糧需給率は100%を大きく越えるようになっていた。 だが、ル・ガル全体で見れば食料の収穫に対する需給率は依然として70%に満たない数字であり、生産量で満たしきれない部分でのカロリーベース需給率を補うのは、山間部での狩りや河川での水産水揚げなどによるたんぱく質補給と、そして森の恵ともいうべき収穫果樹やキノコなどの栄養価に依存している。 かつてマサミはこう言った。 ―― 20年以内に地域食糧需給率を500%にしましょう ―― 他の地域から人を受け入れ産業を安定させ、中央へ食料を送りましょう ―― それだけでなく、ル・ガルの外へ食糧を輸出して現金を得るのです ―― 我々以外にそれが出来ないと成れば、議会も王府も迂闊にスロゥチャイム家の転封が出来なくなります ―― そして将来的には国内全体の食料の約20%をここで生産するのです。あなたの所領のうちに。 明確な目標を立てた地域発展プログラム。 ここを離れる時にマサミが残していったプラン図は、アリスとポールの執務室の壁紙になっていた。 「ルカパヤンを食わせるためには理由が必要か・・・・ 確かにそうだな」 忙しく働いていたポールは手を止めて壁を見る。 マサミの手書きによるプラン図はいつも見えるところに貼ってあった。 「で、コウゼイ。あいつはそろそろ帰ってきそうか?」 「それがなぁ・・・・ おめぇが迎えに行ったほうが良いんじゃねぇかなぁ」 「どうしてだ?」 なぜかを問うたポール。 だがコウゼイはアリスを見ていた。 「アリスさんもよぉ ボチボチあいつを赦してやっちゃどうでぇ」 「赦すも何も、当の本人が言ってこないと判断のしようが無いじゃない」 「だがよぉ 言いたくても言えねぇって事もあるんじゃねぇのかい?」 「例えそうだったとしても主が従者を迎えに行くなど無理ね。主従の関係とするなら、主の沽券に関わるわよ」 「そんなもんかなぁ」 コウゼイはどこか納得いかない部分でも有るかのようだ。 「第一、私があの街へ行ってマサミに帰ってきなさいなんてやったら、それこそあの街の独立闘争はイヌの貴族が仕込んだって言われてしまうじゃない。それはあの街にもマサミにも不幸なことだし、ル・ガルにとってみれば政治工作の介入をしたと言う実績にもなってしまうわよ。そんな事をしたら私は貴族院議会で弾劾されちゃうし、王府にもまた眼をつけられてどっかへ転封されちゃうわね」 「その通りだがよぉ」 「だから物の順番としてはマサミに折れてもらうしかないの。難しいかもしれないけど」 「おぅ、それそれ、それよ」 コウゼイはちらりとカナを見やってから、体を向き直ってアリスのほうをまっすぐに向いた。 「あいつが言うにゃぁ・・・・ 何ぼ理由があってもヒトはそうやって許しを請うちゃなんねぇって話だとよ」 コウゼイの言葉にアリスもポールも首をかしげている。 だが、コウゼイ越しに夫の言葉を聴いたカナは真意に気が付いた。 「・・・・そうですね。その通りです。そうか、気が付かなかった」 トントン・・・・ カナの手が優しくお腹を叩く。 その仕草はまるで、抱く我が子の頭をやさしく撫でる様だ。 「カナ。どういうこと?」 「アリス様。ルカパヤンは曲がりなりにも自治権を得ました。国家とは言いがたい状況ですが」 「そうね。建前上はオオカミの保護地域。そして、カモシカの権益がネコやトラより優先される」 「はい、でも少なくとも、どの国家の主権もあの街では最優先になりません。最優先はヒトの自治組織の決定です」 「それがどうかした・・・・・・ あ・・・・ そうか・・・・ 」 何かに気が付いたアリスがカナを見ている。 「そうです。独立してなお誰かの奴隷に身を堕とすなどと前例を作れば、それは他国の介入の口実になります。少なくとも、奴隷でいるより名誉ある死を迎えて、それに胸を張れるようでないと独立紛争の意味がありません」 アリスもそれに気がつたようだ。 同時に、ポールもまたそれに気が付いた。 「あいつはそこまで読んでいたんだろうか」 「それは無いと思います。先に気が付いていれば話をしてくれたはずです。多分当人も途中で気が付いたんじゃないでしょうか」 本来、仕事が山積みな筈の執務室。 だが、今、その場は恐ろしいまでに静まり返っていた。 「打つ手無しか」 「えぇ、そうなりますね。私たちは夫を迎えに行くわけには行きませんし、夫はルカパヤンを差し置いて主へ許しを請うなどありえません。主を捨てて独立紛争に参加したのですからね。つまり、双方相竦みです」 沈痛な溜息が漏れる。 アリスの溜息にカナの溜息がシンクロしている。 なんとも重苦しい空気。 我慢ならず口を開いたコウゼイは傍らのズックカバンから油紙に包まれた物を取り出した。 「じつぁ・・・・ あいつからこれを預かってきた」 バリバリとにぎやかな音を立てて包みを解くコウゼイ。 中から出てきたのは艶やかに光るマサミの拳銃。 ベレッタM92Fだった。 「こりゃぁあいつが言うにはポール、おめぇが預かってて欲しいそうだぜ」 「俺がか?」 「あぁ、そうだとよ。でな、カナさんが子を産んだら、それに渡して欲しいんだとよ。あいつにゃぁまだカナさんの件は話をしてねぇし、もちろんアリスさんの事だって内緒だ。けぇってきてビックリさせるって部分を理解しねぇほどおれっちも下種じゃぁねぇ」 コウゼイから受け取った拳銃をしげしげと眺めるポール。 オープンになったスライドと弾丸の装填されていないマガジン。 包みの中にはアモケースに入ったままの銃弾が2箱入っている。 ヒトの手による必殺の武器を託されたのは、それ自体が闘うと言う冷徹な意思の、その無言の伝言でもある。 そして、妻ではなく、妻の主の夫へと託されたその武器。 「妻を守って欲しい。あいつはそう言いたいのだろうな」 黙って見ていたカナ。 しかし、真っ白のエプロンにポタリと垂れる一滴がその心境を何よりも語っている。 「お父さんに会いに行こうね・・・・」 お腹の内側から何かの意思表示をするのだろうか。 「大丈夫、お母さん泣かないから。大丈夫よ。心配してくれてありがとう」 カナは膨らむ腹部を易しく叩きながら、それでも涙を流していた。 「コウゼイさん・・・・」 「・・・・おぅ」 「ルカパヤンへ帰ったら夫に伝えてください。家族で会いに行くから・・・・ それまで、死なないで・・・・ と」 搾り出すような言葉を呟いて、カナは自分の顔を手で覆った。 意地でも泣かないように堪えるものの、肩を震わせ慟哭するその姿がなんとも言えず悲しくて健気で、そして、美しかった。 「奴隷って・・・・ 嫌なものね・・・・ 誰がこんな事を考えたのかしらね」 「全くだな。実にその通りだ。下卑た妄想の果てなのだろうなぁ。全くもってくだらん事を考えたものだ」 深い溜息を茶菓子代わりにして、ポールは残っていたお茶をすすった。 まだまだ書類の山は残っている。 落ち込んでばかりも居られない状況なのだが、それでも悲痛な空気だけは如何ともしがたかった。 その夜。 ついにポールが倒れた。 ハードワークが祟ったのだが、当の本人は『全然平気だ!かまうな!』と強がっている。 夜間にも関わらず紅朱館へとやってきたリコがベットでひっくり返るポールを診察した。 「まぁ、典型的なオーバーワークですな」 「そんな事は無いはずなんだがなぁ」 「とりあえずは安静に。仕事は多少遅れても構わない物は先送りにし、毎日最低6時間は睡眠を取ってください」 「そんなに寝てる暇は無いんだが・・・・」 昼夜を問わず作業の進む紅朱館の増築作業。 妊婦が2人もいるのだが、逆にいうと生まれるまでに間に合わせなければならない箇所はあまりに多い。 夜間は城下の宿に部屋を取り、アリスとカナはそこで寝泊りしている。 紅朱館に残るのは作業主任のポールと世話役の3人組だけだった。 「ポール公、マサミさんを呼び戻したらどうですか?」 「うむ・・・・ そうなんだがな」 ポールは事のあらましを包み隠さずリコに話した。 ルカパヤンの権益を失った種族たるネコにそんな事を話してしまって良いのだろうか? だが、ポールはそれを全く意に介さずに話を続けた。当のリコの方が最初は面食らったほどだった。 「・・・・ポール公。恐れながら申し上げますがね」 「なんだ、もったいぶるな」 「こんな簡単な問題を何故解決できないんですか」 「かんたん・・・・ だと?」 「えぇ、簡単ですよ。いちいち悩む方が不思議ですな。むしろバカバカしい」 真底呆れたと言わんばかりのリコ。 ポールは怒る前に不思議そうだ。 「どうしたら良いと思う?」 怒りにヒゲを震わせるでもなく、耳を動かすでもなく。 純粋にポールは一手指南を求めている。 リコは目の前にいるイヌという種族の純粋さに初めて触れたような気がした。 「赤心を推して人の腹中に置く。ヒトの世界の諺だそうです」 「その意味も知りたいがまずは対処だ。」 掛けていた眼鏡を外し懐から取り出したハンカチで綺麗に拭いたリコ。 黒ぶちの丸い眼鏡を掛ける丸顔なネコの男は線を引いたような細い目を笑わせた。 「雇用すれば良いじゃないですか。この地域の行政機関に勤める従業員にすればよろしい。それでもなくばスロゥチャイム家の被雇用者として身分を確定し、それに沿った待遇をすれば良いんじゃ無いですかね」 「・・・・その通りだ。何故気がつかなかったんだろう」 「奴隷という言葉に振り回されていたんじゃないですか?または、上下関係という部分での常識」 しばらく思案しているポール。 リコは次の言葉をジッと待っていた。 「明日にでもアリスと相談してみよう。夜遅くにすまなかったな。診察費は明日でよいか?」 「いえいえ、そのような物は結構です。私は城下でも無償で診療してますからね」 「ところでリコ。なぜ無償なのだ? ネコの国の諜報活動ならば無意味では無いか?」 「そうですなぁ・・・・ 単純に興味としておきましょうか。私個人の道楽ですよ」 「ネコの道楽という物は良く分からんな」 よっこいしょ・・・・ 掛け声と共に起き上がったポール。 だが、フラフラとする頭は不安定なままだった。 「歩くときは気をつけてください。一時的な貧血です。それと、今宵は風呂は控えてとにかくお休みになってください」 「あぁ、そうしよう。まだひっくり返るわけにはいかん」 一礼して部屋を出て行くリコを見送るポール。 入れ替わりにキックがアリスとカナを補佐して部屋へと入ってきた。 「聞いたか?」 「なにを?」 「マサミの処遇だ」 「いいえ?」 アリスとポールの会話が微妙に噛み合っていない。 だが、カナは意に介さず口を開いた。 「あの、ポール様。夫の件なんですが」 「遠慮なく言ってみろ」 「はい。あの、夫を紅朱館の従業員として雇えないでしょうか」 ポールは目を丸くしてアリスを見ている。 「実は今、リコが同じ事を言って行ったよ。こんな簡単な事を何故解決できないと笑われた」 「・・・・気がつかないのは私たちイヌだけって事ね」 ポールとアリスの目がカナを射抜く。 「・・・・すいません」 恐縮するカナ。椅子に腰掛けるアリスとベットに座るポールを横目に、カナは立っていた。 「キック、そこのイスを取れ。毛布を掛けてな」 「あ、そうか。気が利かずすいません」 慌ててイスを引き寄せたキックが毛布をかけた。 「婦長様、どうぞ」 「・・・・ほんとすいません」 そっと腰を下ろしたカナ。 その姿を見ていたポールが笑みを浮かべる。 「あいつを呼び戻そう。そうだな、ここを地域商業拠点とし、その会社の社長という肩書きで良いだろう。従業員はキックやメルを当てる。カイトは相談役だな。そして・・・・」 あれこれブツブツと言いながらポールは構想を練っている。 だが、カナはそこへ口を挟んだ。 「ならばポール様。紅朱館ではなくあの地域の、ルカパヤンの総合商社にするべきです。ありとあらゆる物を商品として扱う総合商店です。夫はスキャッパー地域から食料品を買い入れルカパヤンで売ります。その事務所としてここ紅朱館へ事務所を作れば良いんじゃ無いでしょうか」 カナの提案にポールもアリスも興味を持った。 「カナ、続けてくれる?」 「はい、アリス様」 カナは軽く咳払いをして一息入れた。 「ルカパヤンの資本で総合商社を作り、そこの資金でスキャッパーから食料を買い入れます。ここにはルカパヤンのセパタが流入しますが、それを使って今度はルカパヤンから物を買います。そうですね、今一番の商品は人材でしょう。能力や才能を持つヒトを人材バンクとして登録してもらい、そのヒトをここへ派遣してもらいます。その対価として流入したセパタを還流させます。出来れば食料を高めに買ってもらいルカパヤンへと流通させましょう。そして今まであそこで商売してきた食料品関係の買い入れを一切ストップさせるのです。そうすれば従来の食料品相場は商品のだぶつきから大幅に値崩れします。で、イヌの国はそれを救済するべく今度はそれを安値で買い叩いて中央へ送れば・・・・・」 まるで社会構造学の教授が授業をするようにカナは説明を続けていた。 やや複雑な金銭の流れと資本の循環・還流が行われるシステム。 そして、最も重要な部分はヒトを経済的な戦力として組み込む仕組み。 ネコの国と違い、絶対的な身分制度に縛られたイヌの社会で、奴隷ではなく従業員としてヒトの主権を尊重する方法。 それは同時にマサミのヒトとしての名誉と奴隷ならぬ身分としてここスキャッパーへ帰ってくるための方策でもある。 何より、有能な技術者としてスキャッパーに運びいれたヒトが、ル・ガルの中央政府から一方的に奴隷として連れ去られる危険を防ぐ手段。 「カナ。あなたのプランを採用するわ。明日になったら書類を作るから文面を考えておいて。私がサインして中央に送れば議会は渋々でも了解するはずよ。それに、少なくとも今なら中央では父の遺した人脈がまだ生きてるから。逆に言えば時間との戦いね」 ニコッと能天気に笑ったアリスの表情は喜びに満ちていた。 マサミの帰還がそれほど嬉しいのか? 自らの主たるイヌの女が見せた姿にカナはどこか複雑な嫉妬にも似たものを感じていた。 「承りました。でも、夫の立場は今までとは変わってしまいますね」 「それは仕方が無いわ。いずれ元の鞘に戻しましょう。そうしないとあなたの子供が困るじゃない。もちろんあなたも」 やはりアリスは屈託無く笑っているのだった。 人の主たる者の貫禄にも似たもの。 なんとなくそんな風に考えてそれ以上の思考的詮索をカナはやめる事にした。 ************************************************************************************************************************ ポールが貧血に倒れてから5日後のルカパヤン。 金品の補償放棄交渉をほぼ終えたマサミも、もはや限界に達していた。 顔はむくみ眼は輝きを失い、目に見えて増えた白髪と乾燥してひび割れた皮膚。 典型的な栄養失調の症状だった。 「おう!マサミ! ひでぇナリだな でぇじょうぶか!」 馬を飛ばしてやってきたコウゼイが見たものは、椅子の上でガリガリにやせ衰えているマサミの姿。 およそ10日見なかっただけだが、マサミはもはや限界と言ってよかった。 「あぁ、問題ない。今日で交渉も終わりだ」 「とりあえず飯を喰え。外は待たせておこうぜ」 「・・・・いや、いいよ。先に仕事を進めよう」 「でもよぉ!」 「もう無いんだよ・・・・ 食べるものが」 力なく笑ったマサミがポケットから取り出したのは、数枚のビスケットだった。 「これが最後だ。次の食料がネコの国から配送されてくるのは4日後。それまで喰い繋がないとな」 「・・・・マサミ、手を出せ」 不思議そうに見上げるマサミ。 コウゼイはカバンの中から握り飯を取り出した。 「これ、どうしたんだ?」 「スキャッパーから持ってきたのさ」 「それなら皆で食べよう」 「いんや、それはおめぇのもんだ。おめぇが喰わねぇなら俺はそれを持ってスキャッパーに行かなきゃなんねぇ」 僅か3個ほどの握り飯だが、それを支える腕の力ですらマサミには辛かった。 膝に降ろした握り飯は既に冷えているものの、そのとんでもない大きさと、いい香り。 懐かしさのあまりに涙を流しそうなほどだ。 無表情のまま包みを解いたマサミ。 中からパラリと小さなメモ書きが落ちた。 ―― 体に気をつけて 「カナ・・・・」 「こんな事言いたかぁねぇけどよ マサミ おめぇ意地を張りすぎだ」 「意地も張れない身分などこちらから願い下げです。もう奴隷じゃないんです」 「だけどよぉ・・・・」 深い溜息をついたコウゼイはマサミの向かいへ腰を下ろす。 僅か数日のスキャッパーでたらふく食べたのだろうか。 艶を失っていた体毛が今日は輝いている。 「おめぇを待ってる人間の気持ちを察してやれや おめぇがここで死んだらカナさんは後追いしかねねぇぞ」 もっともきつい一言とも言えるコウゼイの言葉。 妻の名を出される事はどんな事よりもマサミには辛かった。 「とりあえずそれを喰え な? それを喰ったらこの書類に眼を通せ」 コウゼイの取り出した書類の表紙に書かれた文字はカナの書いたものだった。 日本語で書かれたその書類にサッと眼を通す。 「だからよぉ まずは喰えって言ってんだろ? それともてめぇの口に力ずくで押し込まれてぇか?」 「あぁ、すまない・・・・」 握り飯を頬張ると塩の効いた梅干の味がした。 スキャッパーで梅干を作っている所など無いはずだ。 自分で漬けたのか、さもなくば何処からか入手したか・・・・ 「コウゼイさん 妻はこの握り飯をどうやって作ったんでしょうか?」 「質問の意味がわからねぇ 普通に手で作ったんじゃねぇのか?」 「いや、そういう意味でなくて・・・・・ いや、いいです」 「なんだよ」 口の中に広がる酸味と塩の味。 それだけで涎がにじみ出てくるのは日本人ならではなのかもしれない。 二つ目を頬張ると、中から出てきたのは魚の身。これもまた塩味の付いた魚だ。 海水魚を食べる事の難しいスキャッパーでどうやって塩味の魚を入手したのだろうか? きっとこの握り飯を作るためにカナは奔走したのだろう。 自分の為に・・・・ そう思うと、マサミはなにか自分がとてもみじめに思えてきた。 メンツの為に意地を張る自分と、自分の為の真心を尽くしてくれる妻との対比。 冷え切った飯ですらも暖かく感じる心遣い。 書類をテーブルに置いて無心に3個目の握り飯を手に取った。 海苔の巻かれた握り飯の中身はスキャッパーの森の豊かな恵みだった。 キノコや木の芽を炊き込みにした五目飯。 乾燥しいたけの戻し汁を使って風味豊かに作られた味は、きっとポールもアリスも喜ぶだろう。 包みの隅に添えられている漬物はべったら付けだった。 甘みを感じさせる大根のしゃきしゃき感が食欲をそそる。 なんとなく喰い足りない・・・・ そう思わせるに十分だった。 「マサミ これもおめぇ専用だ 他の誰でもねぇ おめぇの女房が俺に持たせたもんだ どうあってもおめぇが喰え いいな?」 袋の中に入っていたのは餅だった。 もち米をどうやって入手したのか。 「コウゼイさん スキャッパーの食糧事情は随分改善したんでしょうか?」 「さぁなぁ それはおめぇさんが一番良く分かってるんじゃねぇか?」 「確かに昨年の作付け計画は過去最大規模でしたが・・・・ それにしても」 「ありえねぇもんを喰ってるってんだろ?」 コウゼイは椅子に座りなおすと懐から焼き締めたパンを取り出した。 飢えるルカパヤンではここしばらく見てないような大きさだ。 二つに切り分けたパンの片方をマサミへと差し出したコウゼイは、何も付けずにムシャムシャと食べ始める。 「あっちへ行くとよ カナさんがおめぇを心配してんだよ でな 悪いとは思ったんだがつい口を滑らしちまった」 コウゼイが差し出したパンをひと齧りしたマサミがコウゼイを見る。 その眼差しの力強さにコウゼイは驚く。 「おめぇがろくに飯も喰ってねぇんで随分痩せちまったってよ そしたらカナさん泣きだしてな」 「・・・・・・・・・・・・・・・・なんて事を」 「あぁ そうだろうな おめぇは言うとおもったぜ 余計な事をするんじゃねぇってよ でもな」 コウゼイの指が書類を指す。 数ページわたる書類の内容を書いたインデックスには早急の文字があった。 「それを読んでみろ カナさんはよ 寝ないでそれを書いたみてぇだ 何でだと思う?」 内容を読み始めるマサミ。 カナの丁寧な文字で書かれた総合商社設立によるスキャッパーとの持ちつ持たれつな関係の構築計画。 それは自分たちではなく、次の世代、その次の世代への投資でもあり礎でもあり。 そして、権益を確保し一定以上の発言権をイヌの国がルカパヤンにも、またスキャッパーが中央にも持つための戦略書。 「おめぇに生きてけぇって来て欲しいって事じゃねぇか おめぇがこの街の為に頑張るのは良いけどよ おめぇの・・・・」 懇々と説教をしてるかのようなコウゼイだったが、ふと気が付けばマサミはそんな事は上の空で書類を読みふけっていた。 「聞いてんのか?」 「・・・・えぇ、もちろん。凄いな。これは凄いですよ。見事に隙間を突いている。ですが、これじゃ不完全だ」 「そうじゃねぇ」 「え?」 不思議そうなマサミの顔を見ていたらコウゼイは笑うしかなかった。 「何でもねぇよ 今日の仕事が終わったらそれもって理事会へ行ってこい」 「えぇ、そうします」 書類にチョコチョコと加筆しつつ内容を精査するマサミ。 その表情は完全に仕事モードだった。 一心不乱に仕事するマサミを見てコウゼイは思う。 このヒトの男が本気で取り組めば、どんな事も不可能ではないな・・・・と。 夕方。 この日の相談を終えたマサミは書類を持って理事会へと出席した。 残り僅かなルカパヤンの第1世代が集まっているこの委員会。 紛争の終結に至る経緯、そして、バックに付いているラムゼン商会の関係か。 マサミはこの席でも一定以上の発言権と影響力を持っていた。 「皆さん、今宵の会議にこれをかけたいのですが」 「どれ。拝見しましょう」 コピー機などという文明の利器の無い世界だ。 一つの書類を皆で回し読みし、それぞれが重要と思う案件を自前のノートにメモしていた。 ―― マサミさん。これは? 「妻が書き起こしたものです」 ―― ル・ガルでこれだけの事が可能ですかね? 「それはどうでしょう。いずれにせよ私は戻ってあっちの改革を進めないと、いずれパンクするでしょう」 ―― オオカミとの関係はどうしましょうか? 「スキャッパーの領内にあるオオカミの集落ですし、それにスロゥチャイム卿とは友好度AAAクラスです」 ―― 反対意見が出る可能性は? 「反対意見は出ないかと思いますし、また、反対意見が出るならば説得に行きましょう。私が」 ―― ル・ガル中央はどうしましょうか? 「そうですね。ここから一定以上の人材や商品を運び出し、現地へ送り込んである程度は融通を利かせるべきでしょう」 ―― それで足りますかね? 「あとはル・ガルの中から出る製品をルカパヤンブランドで世界へ流通させる窓口業務も必要じゃないでしょうか」 ―― 双方が依存する関係を構築することですな 「そうですね。それが理想です」 ―― いつからはじめましょうか? 「今からやりましょう」 理事会の8人がそれぞれに問題点を提起し合い、僅かな時間で総合商社の形態が固まりつつあった。 ラムゼン商会の後押しを受け、また、その利益代表でもあるマサミもラムゼン商会の権益を得るために発言を繰り返す。 ある意味で玉虫色の決着とも言えなくも無い。 だが、逆に言えば理想的な形での落とし所で決着を見た。 ―― では代表取締役社長は空席とし、この理事会が取締役会を兼ねる形にしましょう。 ―― 異議なし ―― スキャッパー現地事務所はマサミ理事が常駐とし、決裁権と経営判断における先行指揮権を持って貰います。 ―― 異議なし ―― 報告義務を持って経営に携わり、特定利益誘導等の特別背任の場合は理事会の全会一致を持って罷免と言う事で。 ―― 異議なし 「マサミさん。これで元の鞘ですね」 持ち回りで努める議長席。 今期ここへ陣取るのはユウジだった。 「そうですね。でも、まずはここへ食料を運び入れなければ」 相変わらずむくんだ顔のマサミが笑う。 引き続き、残っていた案件の吟味を続ける理事会。 今宵、ルカパヤンの自治組織が持つ理事会では、この街における基本的な各種族の権利取り決め案が決定された。 出来る限り一方的にヒトが有利にならないように。だがしかし、ヒトの権利を最大限尊重するように。 1.この街は各種族国家間のいかなる条約や取り決めの一切から独立する 1.この街ではいかなる種族とも他の種族に対する優先権利を否定する 1.この街に生まれ育ったものは両親の出生地の如何を問わずこの街の市民権を有する 1.この街の市民権を持つ者を本人の同意なく連れ去り、または略取誘拐せしめたものは厳罰に処する 1.以上の取り決めにおいて判断の難しい案件は理事会での決定を最優先とする 「大至急これをオオカミの集落へ届けましょう。事は一刻を争う」 議長たるユウジの案で翼竜の郵便配達が深夜に関わらず飛び立っていった。 漆黒の闇に溶けて消えるドラゴンライダー。 理事会の会議室では皆がそれを見送っていた。 「しかし、落ちたばかりの第1世代にあたるヒトを保護するのは難しいですなぁ」 「ここへ落ちれば良いが、それ以外へ落ちれば、やはりその落ちた国の法に従わざるを得ない」 「不公平を是正する事も大事な努力目標ですな」 理事たちが次の課題を上げ、それについて雑談を初めている。 どの顔もみな、一大事業を成し遂げたと言う満足感が溢れている。 「さぁ、ここからが大変です。我々の最終目標はあくまで全国家からの独立と種族国家の樹立。道のりは険しいですが100年後を目指しましょう。次の世代へ。その次の世代へ夢のバトンを繋いで。国家が出来た頃の世代がヒトの権利を勝ち取りますよ。きっとね」 ユウジの言葉が会議の締めを飾った。 ささやかな拍手。そして笑顔。 そう遠くない未来。夥しい犠牲と、積み重ねられた非業の死と、そして、流血の努力の末。 この街はヒト自らの手によって独立を勝ち取りゆく事になる。 悲願であったヒトの国家が樹立されるその輝くべき第一歩は、こうして記されたのだった。 ************************************************************************************************************************ それから1ヶ月。 ラムゼン商会の事後処理を終えたマサミは、今度は総合商社設立に向けた活動で奔走していた。 様々な書類を書き、人材をルカパヤン内で集め、借り手の居なくなった雑居ビルの一室に最初の事務所を構えた。 利権者はいまだラムゼン商会なのだが、いずれル・ガルで認可が下りれば、ここは総合商社ルカパヤンの本社となる。 ―― 常務・・・・・ 事務所の中を忙しく動き回るヒトの男たち。 そして、ヒトと共に働く事を選択したネコやトラなどの種族の男たち。 皆が常務と呼ぶマサミの忙しさはそろそろ限界を突破していた。 連絡役を買って出た有翼人の男が翼竜で運んでくるスキャッパー地域からの食料。 今努力すれば必ず報われると信じるヒトの情熱を支えるエネルギー源だった。 ―― 常務、そろそろスキャッパーに事務所を開設するようですね 「あぁ。向こう側で仕事をする環境が必要になってきたね。誰を送り込もうか」 商社の中で発言権を持つべく頑張るコウゼイがスキャッパーに常駐しているのだが、やはり獣の男故だろうか。 時々、信じられないポカをしていた。 その後始末までやらされるとあっては、社内での風当たりが微妙に強くなっているのも事実だった。 このままではラムゼン商会との繋がりを見直そうと言う言葉が出てきてしまう・・・・。 やはり、マサミが舞い戻るしかない・・・・・ ―― 常務、スキャッパーからお客様です。 「え?」 ニコニコと笑う事務方の若い娘が外を指差していた。 雑居ビルの小汚い階段を下りて行くと、1台の馬車が停まっていた。 馬の御者はカイト老が勤めていて、その隣にはコウゼイが座っている。 「おや?意外な人物が見えましたな。どうされましたか?」 「これはこれはマサミ殿。いや、マサミ常務ですな。話どおり随分やつれたお姿で」 「ですが、充実してますよ。で、今日は?」 「お迎えに上がりました」 「誰をですか?」 「あなたですよ」 「え?」 年老いたイヌの男が笑う。その隣でコウゼイも笑う。 「そろそろ良いだろ! 俺とポジションを変われ」 「コウゼイさん、勝手に現場を離れてもらっては困ります」 「まぁそんな硬い事言うなってんだ。 それよりよぉ、今日はアシスタント連れてきてんだよ」 「アシスタント?」 コウゼイがニヤッと笑って手招きした。 ・・・・あ なんとなく察しがついたマサミ。 だが、やはり・・・・ 「いらっしゃいませ」 馬車のカーテンを開けて中を見るマサミ。 アリスがそこに座っていると思って開けた先にはカナが座っていた。 パンパンに膨らんだお腹を抱えて幸せそうな笑みを浮かべて。 「・・・・・・・・カナ。無理をするなよ」 そっと手を伸ばしてカナを引き寄せるマサミ。 「大丈夫。あなたより無理してないから・・・・」 見るからに動くのもしんどいと言った姿のカナ。 その奥にはリコが座っていた。 「痩せたね・・・・」 「あぁ、良いダイエットだったよ」 「・・・・バカ ・・・・心配したんだから ・・・・バカ」 オフィスの前だと言うのに、マサミはカナを抱き寄せてキスした。 スタッフも街の人間もみな見ているのだが、そんな事はマサミもカナも気にしていなかった。 馬車の前、カナのお腹に配慮してそっと抱きしめたマサミ。 だが、その腕の中で不思議な感触があった。 「あれ?」 「どうしたの?」 「あ、そうか」 マサミの胸に残った水濡れの染み。 カナのエプロンにもそれがあった。 「あ、ごめん。言うの忘れてた」 「そうか。そうだよな。母親だもの」 「2回目なんだけどね・・・・ 今度は大丈夫よ。リコさんがね ずっと看ててくれたから」 「そうか」 やれやれと言わんばかりに馬車から降りてくるリコ。 「お世話になりました」 「いやお世話は現在も進行中です。私は主治医ですからね」 「ですから・・・・ いや・・・・ 妻がお世話に・・・・」 「カナさんを診察するのは私の趣味ですから宜しい。アリス様も一段落だ。次のクランケはあなただ。まずは血圧を測らせてもらう」 「あ、アリス様?」 マサミは馬車の前に並ぶスキャッパーの面々を順番に見た。 一番下世話な笑みを浮かべているのはコウゼイ。 ニヤニヤと笑う様は下品と言う表現がぴったりだった。 「なんつうんだ おめぇがいねぇからよぉ ポールの野郎もてぇへんでな」 「・・・・そうか。そういうことか」 「アリスさんにもカナさんにもな 実は口止めされてたってわけよ おめぇをビックリさせてぇ女心だ 癇癪おこすなよ」 「まさか!」 マサミの手がカナの肩をやさしく抱き寄せた。 カナの手はお腹に添えられていた。 「ほら、お父さんよ」 カナが自分のお腹をマサミに向けた。 大きく膨らむそのお腹を、マサミが膝を折ってキスしている。 「パパだよ。よく来たな」 そっと触れたお腹の辺りからトントンと叩く感触が会った。 「この子が喜んでるわよ。 あ! そんなに蹴ったら痛いじゃないの もぉ・・・・」 「大丈夫なのか?」 「うん、実は時々痛いの」 「え゙?」 驚くマサミ。その腕に血圧計をつけて計っていたリコが怒る。 「マサミさん、少し安静にしたまえ。血圧の変動が大きすぎる」 「しかし、妻の!」 「ただの陣痛ですよ。もうそろそろ来ているだけです。月の位置から予測すれば、あと2週ないし4週程度ですな」 柔らかな笑みを浮かべて幸せそうにマサミを見ているカナ。 「あのね、今日は重要な話なのよ」 「なに?」 次の言葉を待っていたマサミの脇。 血圧を測っていたリコがやれやれとでも言わんばかりにマサミを見た。 「マサミさん、あなた不整脈が出ておる。それと心音が不安定だ。しばらく安静にしたまえ」 「そんな余裕はありませんよ。今頑張らないと全てが水の泡です」 「まったく・・・・ ヒトと言う生き物は無理をするなと言う医者の言葉を全く聞かん」 「その言葉を真に受けて全く無理しないヒトの方が多いと思うんですがね・・・・」 ハハハと笑うマサミ。 リコもカナも釣られて笑った。 「ところでカナ。重要な話って?」 「あ、そうそう」 カナがリコの視線を送った。 その仕草にマサミは僅かな胸騒ぎを覚える。 「マサミさん、そう警戒せんでも宜しい。実はな、カナさんにはここで出産に及んでもらう事にしたい」 「と、言いますと?」 マサミの視線がリコからカナへと移る。 「私を臨時職員にしてもらいたいの。そうすると」 「そうすると?」 「商社の収入になるから」 「え?」 話が飲み込めないマサミ。 リコはあくまで医者としての冷静な口調で語り始めた。 「マサミさん。胎盤と言うものの存在はしっておるよな?」 「えぇ、もちろん」 「ヒトの胎盤は高価で売れるものなんじゃよ。それも出所がはっきりしていて栄養状態が良くて、そして、新鮮なもの」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 「嫌な顔をされるのも道理なんだが・・・・ ヒト胎盤は裕福な層のご婦人がたにとっての若返りの魔法薬を作る材料になる」 「・・・・・・・・そうなんですか」 「あぁ。出所がはっきりしておれば1000万セパタも夢ではない」 「へっ? 1000万セパタ??」 マサミは驚きのあまりに思わず声が裏返ってしまった。 とんでもない大金が行き来する高付加価値産業。 「えぇ、そうですよ。魔法薬の材料としてヒトの新鮮な胎盤は重要な材料の一つです。通常は干された物が流通します。ヒトの出産に立ち会える現場などそうありませんからね。ですから、新鮮な生の胎盤は重要なんですよ。なんせ命の力が沢山詰まっている。その生胎盤を使って作られる僅かな量の若返りの秘薬は裕福なご婦人方などがまとめて買われていく。1本に僅かしか入ってないにもかかわらず、一本10万セパタの薬です。生胎盤一つでそれが100本は作れる」 目を丸くするマサミ。カナはニコニコ笑っている。 「どうせ子供生んじゃえば要らない物だし、お金になるんなら良いじゃない」 「だけどさ・・・・ って言うか・・・・ まぁ、臍滞血とかプラセンタエキスとか・・・・」 「私は胎盤食とかしないから、どうせベロっと出るもんならお金にしちゃおうかなって」 エヘヘと笑うカナは能天気なものだ。 胎盤が重要な材料になると言うなら、それはつまり・・・・・ 「リコさん。あの、聞きにくい事ですが、胎盤を利用する産業ってつまり」 「君の質問は最もなことだよ。その通りだ。ヒトの授産産業のもう一つの主力商品だよ」 やっぱり・・・・ ある意味で想像していた通りの回答だが、それでも改めて言われると驚きを隠せない。 そして、もっと言うならば、生理的な嫌悪感を抱かずにはいられない。 食物連鎖の頂点にあって全ての生物を食材としてみていた自分たちが、この世界では供給源にされている現実を思い知る。 「きっとこれも報いね。でも、お金になるなら売った方が良いわよ」 「前向きって風に考える事にしておくよ。それより」 「それより?」 「アリス様は?」 「うん、彼女はもう出産済みよ。ちょっとしたらここへ来るはず」 「ここへ?」 「そう。私の出産に立ち会うの」 「・・・・なんで?」 「だってほら、私はまだ一応彼女の持ち物だから」 あっけらかんと笑うカナ。 しかし、アリスの持ち物でないと色々まずい部分もある。 ましてや、目の前がカモシカの国で、しかも勢力圏下のルカパヤン。 そこで子供が生まれたら、ヒト攫いにやられるかもしれない。 「ところでマサミさん」 色んな事がグルグルと頭の中を駆け回っていたマサミにリコが声を掛ける。 「あ、スイマセン」 「あなたの事業。私も組み込んでもらえませんかね」 「と、言いますと?」 「私はこれでも病院経営者です。ここに私の医院の分院を作りたい」 「つまり、事業拡大したい」 「えぇ、その通りです。で、出来るならルカパヤン資本で独立してもらって全部こっちへ移動したい」 「ネコの国はどうするんですか?」 「息子に全部譲りますよ。ネコの医者もだいぶ育ったし、私もボチボチ良い歳だ。そろそろ死ぬ準備をしなければいけません」 不思議な事を言うな・・・・ マサミには真意がまだ掴めない。 「あのね」 カナが唐突に口を挟む。 「リコさんの病院にはヒトの医師が結構居るのよ」 「・・・・・・・・つまりヒトをこっちに移したい。そういうことですか?」 リコが細い目をさらに細くして笑った。 「えぇ、そうです。ここにヒトによる病院を作りたい。私がそれを作りヒトを用意します。そうすれば」 「名前が残る。そういう事ですか」 「やはりあなたの洞察力は素晴らしいですな。その通りです。死んで名を残す。ネコの誉れです」 猫耳に上手く挟まる聴診器を被り、リコはカナのお腹に聴診器を当てた。 カナが大きなお腹を抱えたままされるに任せている。 「カナさん。少し座った方が良い。血圧が上がっておる」 「あ、そうですね」 ―― 常務・・・・・ 唐突に背後から声を掛けられたマサミ。 振り返れば商社スタッフが笑っていた。 「ルカパヤンホテルに部屋を取りました。あちらへ」 「あぁ、ありがとう」 カイト老を促して皆をホテルへと案内するマサミ。 全てが上手く回り始めている。 希望に満ちた未来がそこにある。 ここまでの苦労は無駄ではなかった。 マサミはそんな実感を少しずつ感じ始めていた。 ルカパヤン戦記 第6話 了
https://w.atwiki.jp/nnct/pages/116.html
クリパ 【くりぱ】 クリスマスパーティーの略。お菓子食べ放題で。 冬休み前日に寮食堂で行われる。自由参加。 72点になる。 スタッフ募集がある。 実行委員長をクリパ長というが、通常来年度の副寮長?がなる。 スタッフ募集の際に「クリタ長のクリパです。」と言った栗田さんがいた。 通称クリパのくりたさん。
https://w.atwiki.jp/360catalog/pages/20.html
2010-09-12 21 13 33 (Sun) エブリパーティ(エブリパーティ) 発売日 2005/10/20 [プラチナコレクション 2006/11/02] 発売元 マイクロソフト 開発元 ゲームリパブリック ジャンル1 パーティー ジャンル2 - 価格 ¥6,090 [プラチナコレクション ¥2,940] オフラインプレイ 1-4 システムリンク - xboxLive 2-4,コンテンツ ダウンロード ローカライズ - その他 - マイクロソフトサイトより 誰でも楽しい、みんなで楽しい、一緒に楽しいパーティゲーム! 手に取ってすぐに遊べる簡単操作と、じっくり考えて進みたい人でも楽しめる戦略性。誰でも、みんなで、一緒に、エブリバーディのエブリパーティ! ひとりで遊ぶ、仲間と遊ぶ、Xbox Live® で遊ぶと、遊び方色々。遊び本来の面白さをエブリパーティで再発見。 プロデューサー/ディレクター: 岡本吉起 開発: ゲームリパブリック キャラクターデザイン: さくらももこ ルールはいたってシンプル。ルーレットを回して出た目に合わせて進み、一番はじめに「あがり」についた人が勝ち。行きたいマスに狙いを定めてルーレットを選んだり、メダルを稼ぐために遠回りしたり、「ちからっ子」を味方につけて他のプレイヤーをジャマしたりする作戦も。運と駆け引きと戦略性の絶妙なバランス感覚がモノをいいます。
https://w.atwiki.jp/yosugawiki/pages/23.html
歴史 18世紀の初め頃、ドイツ人のデンナー(Christian Denner 1655-1707)が、シャリュモー(仏:chalumeau)を改造して作成したのが始まりである。シャリュモーは、18世紀の後半頃までオーケストラに使用されていたフランスの古楽器で、シングルリードの円筒形木管楽器である。バス・クラリネット等音域の低いクラリネットは、その原型はアドルフ・サックスが考案したといわれる。 基本構造 構造は吹口に近いほうからマウスピース(ベックとも=唄口)、バレル(=ビルネ・樽 アルト・クラリネットより低い音域のクラリネットではネック)、管体、ベル、となっている。管体は、ソプラノ・クラリネットより大型のものでは上部管(上管)と下部管(下管)に分割できるものが多く、これより小型のものでは一体型のものが多いが、これは可搬性を確保するためのものであり、必ずしも音色や音質、音程などの面で優れているわけではない。このため、ソプラノ・クラリネットでも一体型の管体を有するものが、少数派ではあるが存在する。全長のほとんどを占める管体の太さは、ほとんど一定である。これが、クラリネット独特の運指や音色を生む理由である(後述)。 クラリネットの名の付く楽器は多く、クラリネット属と総称する。それらは移調楽器で、それぞれ音域を変えるために管の長さを変えたものであり、運指などは殆ど同じである。 クラリネット属の楽器の基準形はソプラノ・クラリネットで、単にクラリネットと呼んだ場合には通常ソプラノ・クラリネットを指す。ソプラノ・クラリネットの調性は、変ロ(B♭)調が一般的であり、この他にイ(A)調のものがあり、オーケストラなどで多く使われる。変ロ調の楽器とイ調の楽器は唄口部分が共通であるために、演奏中の持ち替えではこの部分だけを差し替えることもある。作曲家によってはそれぞれの管の音色の違いにこだわって、B♭管の曲とA管の曲を書き分ける。たとえば2曲のクラリネット協奏曲を作曲したウェーバーの曲はすべてB♭管用である。しかしながら、単に音域や運指のしやすさでどちらの管を使うかを決める作曲家や演奏家もいる。 音域と音色 (以下の説明文でイロハ音名での表記は記譜音を指す) クラリネットの音域は、記譜で中央ハ音の下のホから上に約4オクターブ弱である。 クラリネット属は楽器学上、現在の西洋音楽で用いられる中ではパンフルートと同様に閉管構造の楽器であり、長さが同じならば開管の管楽器よりも、最低音が1オクターブ低い。また、閉管であるために偶数次倍音が殆ど得られず、音波の波形は矩形をしており、独特の音色を持つ。 他の木管楽器では第2倍音である1オクターブ上の音に同じ、または似ている運指を使うことができるが、クラリネット属では第2倍音が使えないので、第3倍音の1オクターブと完全5度上の音に類似の運指を使う。すなわち、最低音のホですべての側孔を閉じ、ヘ-ト-イ-ロ-ハ-ニ-ホ-ヘ-ト-イと変ロまで順次開けて行き、1オクターブと完全5度上のロで再びすべての側孔を閉じる。このとき第3倍音を出しやすくするためにレジスター・キー(他の楽器でのオクターブ・キーに相当)の孔だけ開く。上のロの直下の変ロおよびイの音域は頭部の短い部分だけで共鳴するため、「喉の音」(スロート・トーン)と呼ばれ、あまり歓迎されない、他の音域とは異なる音色となる。(木管楽器#音の高さを変える方法も参照) 童謡 詳細は「クラリネットをこわしちゃった」を参照 日本においてクラリネットを一躍親しみやすい楽器にしたのが、童謡「クラリネットをこわしちゃった」である。訳詞者である歌手の石井好子 によれば、フランスの原題は「私はドの音を無くした (J'ai perdu le do)=ジェ・ペルドュ・ル・ド」(作詞作曲者・不詳)という子供向けの行進曲である。ちなみに訳詞中の「パキャマラード」の意味は、歌詞に出てくるオパ・キャマラド (Au pas camarades) 「みんな足並みそろえて」を子供向けに言い易くしたとの事である。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/niconicokaraokedb/pages/2387.html
ダブルラリアット/rockleetist たふるらりあつと【登録タグ:rockleetist アゴアニキP 曲 曲た 曲たふ 替え歌】 曲情報 作詞:rockleetist 作曲:アゴアニキP 編曲:アゴアニキP 唄:rockleetist ジャンル・作品:替え歌 カラオケ動画情報 オフボーカルワイプありダブルラリアット/nekoとのデュエット 関連曲 ダブルラリアット コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/keibainnetoraji/pages/46.html
ドリパス君 ♂(doripasukun) 初の10代DJ。10代ながらも競馬知識はなかなかのもの。 【好きな馬】 ? 【主な出没時間】 ? 【主な放送内容】 ? 雑談 【放送URL】 http //std1.ladio.net 8060/keibatest.m3u 使っているラジオソフトは「ねとらじレボリューション」
https://w.atwiki.jp/nanonanodebienn/pages/24.html
3DSのヘアカラーのQR