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ここは、沙羅が所持している、漫画&小説を書き連ねる場所です。 あくまで、自己満足でしかないっていう(ぁ 【漫画】 うらさい 1~2巻 咲-saki- 1~7巻 白雪ぱにみくす 1~4巻 かんなぎ 1~5巻 ピクシー・ゲイル 1~2巻(打ち切り) ひゃくえん! 1巻 カードキャプターさくら 1~12巻(完結) ドラゴンボール 1~42巻(完結) NARUTO 1~31巻 アイドルマスターブレイク! 1~2巻 アイドルマスターrelations 1~2巻(完結) ぷちます! 1巻 テイルズオブイノセンス 1~3巻(完結) テイルズオブヴェスペリア 1~2巻 ひだまりスケッチ 1~3巻 女装少年アンソロジー 先輩アンソロジー 【小説】 双恋Novel BabyPrincess 1~3巻 ストライクウィッチーズ 乙女の巻 1~2巻 レンタルマギカ 1~4巻 生徒会の一存 1~2巻 乃木坂春香の秘密 1巻、4巻 紅-kurenai- 1~4巻(打ち切り?) デュラララ!! 1~4巻 よく分かる現代魔法 1巻 初恋マジカルブリッツ 1巻 銀盤カレイドスコープ 1~2巻 シスター・プリンセス キャラコレ 2巻、6巻、8巻 シスター・プリンセスRePure オススメ文書 ストライクウィッチーズ ジャンル不明。一応、異世界ファンタジーに属する…のだろう。第2次世界大戦あたりの世界を題材としており、作中に出現する機体・キャラ名などは、すべて実在する人物などに由来している。 女の子のキャラの服装が災いしてか、少し読者を選ぶ作品といえる。もちろん、服装にもちゃんと理由はあるのだが。 突如現れた世界の脅威を倒すため、世界中の「魔女」と呼ばれる少女達が協力する軍事物…かと思いきや、寮でのドタバタが描かれていたりと、読む人を飽きさせないストーリーとなっている。 ミリタリーが好きな人、銃器持った女の子が好きな人、萌えだけの作品に飽き飽きした人などに読んでもらいたい一作です。 ひだまりスケッチ 美術科の女の子達を中心とした日常系ほのぼの4コマ漫画。基本的には一話完結。 高校の寮に住む事になった主人公が、同じ寮に住む同級生や先輩、学校の先生などに囲まれ、平和で賑やかな日々を送る。 近頃のほのぼの漫画に多い「萌え」ではなく「可愛い」と思えるキャラと画風。そこに柔らかな感じの作風が交わり、読者に癒しを提供する。 萌えばかりの作品に飽き飽きした人、日常に疲れた人などは一度読んでみる事を薦めます。 BabyPrincess 「家族」をテーマにした日常もの。 十九人姉妹と聞くと大半は引くだろうが、公乃櫻子先生の描く麗しい文章、個性豊かな登場人物、暖かな家族愛、若月さな先生による綺麗な挿絵…読んでいる内に、気付けばいつの間にやら、物語に惹かれている自分がいます。読み終える頃には「俺もこんな家族に入りたい」と思うはずです。 貴方も一度、明るく愛のあふれたトゥルー家族を覗いてみませんか?
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ひめられたもの(1) ◆WwHdPG9VGI 「……っとにもう、後一歩だってのにさっ!」 腹立たしそうに園崎魅音が悪態をつき、 「けど仕方ないぜ。射手座なんて単語、普通は知らん」 ため息をつきつつキョンは答えた。 「そりゃ確かにターゲット1900には乗ってないけどさ……」 魅音の言葉にキョンは目を丸くした。 「園崎……。もうあれ全部覚えてんのか?」 「そりゃ完璧にって言われたら自信ないけど。まあ、大体は覚えたかな」 「マジかよ……」 キョンは感嘆を滲ませた声を漏らした。 「けど、あれをやっても定期試験に出んからなあ……。やらなきゃならんと分かっちゃいるんだが」 「そりゃそうだけどね。でも、キョンだって目標は大学受験でしょ? それを考えたらどっちを優先しなきゃならないかってことだよ。 定期試験はほどほどでいいって、割り切っちゃえばいいじゃない?」 割り切った場合、定期試験がどんな惨状になるか見当がつくキョンは、苦笑するしかなかった。 やにわにキョンは、猛烈に頬をつねりたい衝動に駆られた。 『定期試験』、『受験』。昨日までは確かにそっちが現実だったはずなに。 今自分がやっているのは、集められた異世界人との殺し合い。 ――これはひょっとして夢なんじゃないか? その思いが怒涛の如く湧き上がってくる。 涼宮ハルヒと出会って以来、非現実な出来事に度々遭遇してきたキョンにとっても、今の事態はいささか限度を越えていた。 慌ててキョンは首を振った。 (逃げるなってんだ。このクソったれたな状況は夢じゃない。現実だ!) 俯きながらキョンは唇を噛む。 痛かった。やはり現実らしい。 (できれば夢の方が良かったんだがな……) キョンは、こっそりため息をついた。 「こーこうせいというのは、中々大変なのだな」 キョンと魅音の会話を聞いていたトウカが、感心したように腕組みをした。 流石というべきか、トウカは平常心を保っているようで、それがキョンには頼もしい。 「そんなことないよ。大変なのは、どこの世界だっておんなじだよ、きっと。 それに、学校行けば友達もいたしさ……。そんなに……」 魅音の声が急速に弱まっていき、キョンも胸が締め付けられるように痛むのを、感じた。 学校へ行っても、もう死んでいった者達に会うことはない。 会えるのが、話せるのが、当然だと思っていた。 いつでも会える、いつでも話せる、そう思っていた。 (もう会えない、って分かった途端に、何でこうもたくさん、あれをしておけばよかったとか、言っとけば良かったて思うんだろうな……) 振り払っても振り払っても、ふとした瞬間に、喪失感と悲しみの波は押し寄せ、何もかも押し流そうとする。 魅音とキョンにとって、失ったものはあまりにも大きすぎた。 そして、当たり前の日常を思い出してしまったことが、それに拍車をかけた。 今は前に進む時だとわかっていても、それが死んでいった者達に報いる行為だとわかっていても、それでも……。 二人の足取りが重くなり、自然と顔が俯き加減になる。 「もう少しだ! キョン殿! 魅音殿!」 トウカの張りのある声に引っ張られるように、キョンは顔を上げた。 (何か、ずっと力づけてもらっちゃってるよな。俺も、園崎も) 病院までの道行きの間、何度この覇気ある声に助けられたことか。 景気づけにどんな話題を口にしても、すぐに暗い気分になった。 肉体的な、精神的な疲れで、足が止まりそうになった。 その度に励ましてもらった。 (しかも、それだけじゃなかったしな……) 途中D-4エリアの川付近を通った時、トウカが殺気を感じたと言い出した時はヒヤリとした。 ただ、幸いなことに、結局その殺気の主からの攻撃はなかった。 警戒した3人が相手では分が悪いと考えたのか、多少人間離れした容貌であるトウカの未知の能力を警戒したのか、 他に理由があるのか分からないが……。 (まあ、トウカさんにビビッたんだろうけどな。俺達ですら、怖かったくらいだ) あれが超一流の剣客の剣気というものであろうか? 人食い虎でも、ダッシュで逃げ出したに違いない。 その上で後戻りし、南下して浅瀬を渡って渡川したのは少しやりすぎのような気もするけれど……。 とにかく、トウカのお陰もあって何事もなくここまで辿り着けた。 これで、めでたしめでたし、のはずなのだが。 キョンは、闇の中に立つ病院に視線を移した。 「ちゃんとみんな、揃ってるといいんだけど……」 「……ああ」 心配そうに魅音は呟き、キョンもまた、声に不安の響きを宿さずにはいられなかった。 (セラスさんたちからも連絡がなかったってのが気になるんだよな。もう、病院についていてもおかしくないはずなんだが) 病院には、ジャイアン少年の友人であるのび太という少年、ドラえもんというロボット、カズマという青年がいるはずだ。 そして本来はあともう一人、八神太一という少年も「いた」はずなのだ。 (大怪我をしてたらしいから、手当てが間に合わずにっていう可能性。 次元さんの言ってた峰不二子って人が何かしたっていう可能性。 まったく違う別の誰かが病院を襲撃したという可能性……。 どれもあって欲しくないもんだが、とりわけ三番目は勘弁して欲しいもんだ) そしてその原因となった者が、劉鳳やセラス達に襲い掛かっていたとしたら? キョンは自分の顔が険しくなるのを感じた。 来る途中にあった破壊の跡がキョンの脳裏に浮かぶ。 セラスと劉鳳、特に劉鳳の強さは際立っているが、二人とも疲れの極地にあり、怪我も負っている。 ゆえに万が一、ということも考えられるのだ。 隣の魅音もどうやら考えていることは同じようで、銃に手をやって厳しい表情をしている。 (まったく……。邪魔をしないでもらいたいもんだぜ!!) 自分達は必死で脱出の方法を模索しているというのに、何故邪魔をするのか? 苛立ちが募り、心の中で怒りが暴風となって荒れ狂うのをキョンは感じた。 その時、凛とした声が響いた。 「キョン殿、魅音殿、ご安心召されい! このトウカのいる限り、お二人には指一本ふれさせませぬ!」 キョンと魅音の表情は同時に和らぎ、 「……アテにしてますよ、トウカさん」 「私もだよっ!」 キョンと魅音は、異口同音に合いの手を入れた。 つくづくこの声には救われている、とキョンは思う。 「まかされよ! この剣を手に入れた某に、もはや斬れぬもの無し!」 2人の言葉に応えるように、トウカは白鞘から刀を抜き放ち、天に翳してみせた。 「……なんかスゴそうですね、その刀」 ――トウカさん、ちょっとハイになってやしないか? 剣を抜くのはいささかやりすぎだ、と思いつつもキョンは相槌を打った。 「うむ、素晴らしい剣なのだ!」 トウカは嬉しそうに頷き、 「むっ、そういえば――」 続いてどこか悪戯っぽい表情を浮かべた。 「キョン殿には昨日、少しみっともない所を見せてしまっていたな……」 そう言いながらトウカは、大きめの街路樹の一本へと歩み寄っていく。 「出刃包丁では無理だったが……」 キョンの頭の中で警戒音が鳴った。 (何をするつもりだ? ……ってまさか!?) 慌ててキョンが静止しようとするよりも早く、キョンの視界の中でトウカの像がぶれ、チィンという小気味よい音が響いた。 一瞬遅れて木がズレ始め――。 数秒後、轟音が夜空を渡った。 ■ 「……ふう」 Ipodの調査をひとまず休憩し、ロックこと岡島禄郎は、後ろ手にドアを閉めると小さく息を吐いた。 涼やかな夜風が心地よい。 コメカミと瞼に手をやり揉み解し、大きく息をする。 エルルゥには、「大丈夫だ」といったものの、やはりロックとて疲れていた。 徹夜仕事をしたことは数あれど、流石にここまでヘヴィな一日をこなした後、徹夜した経験は無い。 ふと、ロックは自分の手が胸元を探っていることに気づき、苦笑を漏らした。 外へ行って煙草を吸うのは商社時代についた癖だが、まだ抜けない。 欧米では煙草を吸うヤツ、イコール、自己管理の出来ないダメな人間、とみなされるため、 何度も上司から「上へ行きたければ止めろ」と忠告された。 怒鳴られたこともあった気がする。 (結局止められなかったよな……) それは心の奥底で眠る、サラリーマンとして平々凡々な生き方を送ることに対する些細な抵抗であったのか。 ふと、そんな思いが心をよぎった。 (んなわけないか……) 頭をかきかきロックは、自嘲の笑みを漏らす。 そんな大げさなものではない、強いていうなら、 ――趣味、だったから というのが近いかもしれない。 例えそれが他人にとっては紙屑同然にみえることでも、何故か心がそれを捨てることを拒否する。 そういうものが誰にでもあるのではないか。 漆黒の中に浮かぶ黄金の真円を見ながら、ロックがそんなことを取りとめも無く考えていた、その時。 ずうん…… 夜を響いて伝わってきたかすかな衝撃音に、ロックは思わず身を硬化させた。 耳をそばだたせながら、頭の中で地図を広げる。 ロック達の今いる場所はC-4・山間部から市街地へ入ったところだ。といっても限りなくD-4に近い。 この先にあるのは、大通りであり、病院である。 (何てこった……。考えてみりゃ病人は怪我人の集まる場所、つまり、優勝狙いのヤツにとって絶好の狩場じゃないか) ロックの眉間に深い皺が寄った。 全神経を耳に集中させて音を探る。 しかし、それ以降音はまったく聞こえてこなかった。 (どういうことだ?) これだけの人間が死んでいる中、今の今まで生き残っているような人間同士だ。 いきなり全滅ということがありえるだろうか? ドアを開けて家の中にとって返すと、ロックは眠っているエルルゥの肩をゆすった。 「……ん……どうし……たんですか? ロックさん」 寝ぼけ眼のエルルゥの瞳が、覚醒の色を取り戻すのを待って、ロックは口を開いた。 「……病院の方角で大きな音がした」 ピクリとエルルゥの耳が動いた。 「そ、そんな……」 せっかくここまで辿り着いたと言うのに、何ということだろうか。 エルルゥの顔が、みるみる困惑と恐怖に染まっていく。 「落ち着いてくれ、エルルゥ。まだ、物騒なことが起こってると決まったわけじゃない」 宥めるようにロックはいった。 「……そう、ですね」 気を落ち着けようと大きく深呼吸するエルルゥに、ロックの表情がすこし和らいだ。 だが、すぐに顔を引き締め、 「俺は今からいって、ちょっと様子を見てくる」 「えぇ!?」 小さく悲鳴を上げるエルルゥに、ロックは押し殺した声で続けた。 「行き先に何があるのか、それが確かめないまま、病院に向かうっていうのは、あまりにも危険すぎる」 「でも、ロックさん……」 エルルゥは思わず、ロックの腕を震える手で握り締めた。 この世界に飛ばされて以来、エルルゥは何人もの人間に出合った。 そして、その中の何人かの命は、永遠に失われてしまった。 喪失の恐怖と不安が、エルルゥの胸を締め付けていた。 揺れるエルルゥの黒い瞳を見て、ロックはエルルゥの手に自分の手を添えた。 「大丈夫。ちょっと見てくるだけだから……。無理はしない、約束するよ」 手に少し力を込め、エルルゥの瞳を見つめながら、ゆっくりとロックは言葉を紡いでいく。 「俺がいなくなった後何か物音が聞こえたら、その時は動かずにここに留まること。その方が多分安全だと思う。 で、仮にだけど、朝までに俺が戻らなかったら、しんのすけ達と一緒にもう一度山の中へ戻るんだ。いいね?」 「分かりました……。でもっ!」 エルルゥは顔を上げた。 「そんなことにならないって、私、信じてますから。きっと……。ロックさんはきっと戻ってくるって、信じてますから!」 ロックの脳裏に、ハクオロという人の名を呼びながら号泣していたエルルゥの姿がよぎった。 (エルルゥにはこれ以上、悲しい思いをさせたくないな) 誰かを失う悲しみを、これ以上この子に味あわせたくない。 エルルゥの鈍い悲しみの光を宿した瞳を見ていると、つくづくそう思う。 ――もう誰も、悲しませたりなんかしない。俺が、絶対に 自分は確かにそう誓ったのだ。 誓ったからには、やり通してみせる。 「心配ないよ、エルルゥ。俺は臆病だから、危ない橋は渡りたくても渡れやしない。危ないと思ったら、すぐ逃げ帰ってくるさ」 穏やかに笑うと、ロックは再び戸口へと向かった。 「ロックさん。どうか、気をつけて……」 後ろ手に手を振り、ロックは闇の中へと駆け出していく。 残されたエルルゥは手を胸元で強く握り締めるとロックの無事を祈った。 ■ 「それにしても、私の名前を使うなんて……。腹立つわね!」 遠坂凛は、乱暴にその豊かな黒髪をかきあげた。 「まぁまぁ……。でも、気持ちは分かるけどね~。自分の名前を語ってるヤツが非道なことして回ってるんじゃあ……」 言っているうちに、本当に冗談ごとではないという思いが強くなり、セラスの口調も自然と苦いものになった。 その凛に化けた偽者が暴れれば暴れるほど、凛は襲撃を受けた者達から恨まれ、ことによれば命を狙われることになるのだ。 「……ヤツはどういウわけだか、真紅という人形の上に浮いていた宝石のことを知っていた。ひょっとしたら俺達が襲われたのは――」 俺がその宝石を持っていたせいなのかもしれない、と自罰的に劉鳳は続けようとするが、 「ちょっと待って」 凛の底冷えするような声に遮られた。 驚いて劉鳳が顔を上げると、そこには眉間に深い皺を寄せた凛の顔があった。 顔立ちが整っているだけに、えもいわれぬ迫力があり、思わず劉鳳はたじろぐ。 「あなた今、『真紅という人形』って言ったわね? その人形って赤いドレスに金色の髪ってデザインじゃなかった?」 劉鳳が頷くと、凛の眉間の皺は更に深さを増し、目の端が吊り上った。 「……他には何か言ってなかった?」 いまや氷点下にまで下がった声音で凛は言った。 「そ、そうだな……。ロー……ミスティがどうとか、言っていた気がする」 「へえ……。そのローザなんとかを手に入れて、そいつはどうしたの?」 「だ……断言はできないが……。力を増したように俺には、見えた」 不穏な空気を全身から立ち昇らせる凛に、劉鳳は顔面を引きつらせ、セラスは思わず腰を引いた。 だが、凛はそんな二人の様子も目に入らない様子であった。 ぎしり、と握り締められたレイジングハートの柄が音を立てた。 峰不二子と情報交換をした時のことが、凛の頭に蘇り始める。 ――その人形から浮かんだ結晶を、青い制服を着た男が持っていったわ。 遠目で見たからよく分からなかったけど 凛は劉鳳の制服に目を走らせた。 制服は青い。 ――ローザミスティカはとっても大切なものよぉ そして出会った時、水銀燈は言っていた。 ローゼンメイデンは『核となる物を奪って強くなる』、と。 (パスまで絶って、水銀燈が消えたほぼ同じ時間帯に、 劉鳳の所に、劉鳳が『真紅』という人形の『ローザミスティカ』を持っていることを知っている者が現れ、 しかもそいつは『ローザミスティカ』を手に入れてパワーアップしたと……。 これを全て『偶然』で片付けられるヤツがいたらお目にかかりたいくらいね) そして、『ドール』はただ一人を除いて全滅しているはず。 黒々とした炎が胸の中で燃え上がるのを凛は感じた。 (でも……。私が戦った相手は、どうみても水銀燈には見えなかった。あまりにも姿形が違いすぎる) 凛の胸の炎が一瞬火勢を弱めた。 ――いやまて。 (あいつが使った魔術は、間違いなくレイジングハート達の世界のものだったわ) 凛は身に纏ったジャケットに目を落とした。 「レイジングハート。いくつか質問に答えてくれる?」 『何でしょう。マスター』 「さっき戦った、敵の格好なんだけど――」 凛が口を開きかけたまさにその時、 「やっと会えたわぁ。捜したのよぉ?」 水銀燈がドアを開け、室内に入ってきた。 凛は、無言で水銀燈に視線を叩きつけた。 その視線は、ゲームが始まって以来、長く行動を共にしてきた相方に向けるにしては、あまりにも冷たかった。 部屋に入ろうとする水銀燈を外に押し出し、セラスと劉鳳がいる部屋からある程度はなれた廊下で、凛は口を開いた。 「……どこいってたの? それに、よくここが分かったわね」 「だって、私はあなたの使い魔だものぉ」 「そうだっけ? すっかり忘れてたわ」 凛の声音は酷薄であり、物言いは辛辣極まるものだった。 「やっぱり……。怒ってるわよねぇ」 水銀燈はガクリと肩を落とし、目を伏せた。 あまりの水銀燈のしおらしい態度と表情に、つりあがっていた凛の目の端と眉がわずかに緩む。 だが、すぐに顔を引き締めなおし、 「理由をいいなさい。パスまで絶って私から離れた理由を!」 厳しい調子で凛は問うた。 すると、水銀燈は力なく嘆息し、 「本当は、カレイドルビーのところには戻らないつもりだったわぁ……」 「えっ?」 「私、覚悟したつもりだったわぁ。アリスゲームが始まった時、絶対に勝ち残って、『アリス』になることを……。 どんなに仲の良かった妹だって、倒してみせるって誓ったのぉ それが私の宿命なんだからって、そうずっと自分に言い聞かせてきたわぁ」 顔を俯かせたまま、水銀燈は切々と言葉を綴る。 「でも、一番仲が良かった真紅が死んでるのを見て、何だか力が入らなくなっちゃった……。 こんなのが私の望んでたことなのかって思えてきてぇ。 こんな思いまでしてアリスになってどうするんだろう? そう思っちゃったのぉ」 そう言った水銀燈の顔は、凛が今まで見てきた水銀燈らしい不敵なものを全く感じさせない、弱弱しく疲れきったものだった。 「私は失敗作だったんだわぁ……。アリスを目指すことが私たちローゼンメイデンの全てなのに。 こんな私じゃ、きっとカレイドルビーの側にいたら足を引っ張っちゃうって――」 「そんなこと、ないわ」 気が付くと凛はそう口にしていた。 「どんな理由があろうが、血のつながった物同士が殺しあうなんてあっちゃいけないのよ」 キャスターに生贄にされかけ、暴走した桜を止める羽目になった時のことを凛は思い出す。 あの時、自分は桜を殺そうとした。 だが、殺せなかった。 甘いと分かっていても、自分の行動がキャスターのシナリオ通りのものかもしれないと分かっていても、できなかった。 「あんたは、正しいわ、水銀燈。失敗作なんかじゃない!」 静かだったが、その声音には優しさと確信の響きがあった。 「カレイドルビー……」 水銀燈の紫の瞳が大きく見開かれた。 「こんな私でも……。カレイドルビーの側に……」 「2つ条件があるわ」 おずおずと言いかける水銀燈を、凛はきっぱりした声で遮った。 「1つ。私の名前はカレイドルビーじゃなくて遠坂凛よ。だからカレイドルビーって呼ぶのを即刻やめること。 2つ。そのしおらしい態度を改めること! あんたは……」 一度言葉を切り、凛は小さな微笑を唇の端に上らせた。 「生意気で、嫌味ったらしいくらいの方が、あってるわよ。水銀燈」 「……酷い……言い草ねぇ……」 搾り出すように言って、水銀燈は顔を手で覆い、俯いた。 「ありがとう……」 水銀燈の肩が震えているのをみて、凛は視線を逸らした。 凛は見るべきだった。 人形の目を。嘲りと黒い炎が浮かぶその禍々しい瞳を。 (ありがとぉう、凛。やっぱり、あなたは最高だわぁ……。搾り取れるだけ取らせてくれる、ありがたぁい、私の操り人形ですものぉ) 彼女に目をつけた自分の判断は間違っていなかった。 悪魔のような歪んだ笑みを掌の中に隠し、人形は嗤った。 レイジングハートは歯噛みしていた。 目の前の人形は、マスターである遠坂凛の泣き所を熟知している。 どのボタンを押せば、自分の望む答えを引き出せるか知っている。 今の凛に何を言っても、彼女は躍起になって水銀燈を弁護するだろう。 それでも言い募れば、彼女はレイジングハートに助言を求めなくなるかもしれない。 故に、沈黙するしかなく、それがたまらなく腹立たしい。 だが、レイジングハートは諦めたわけではない。 マスターである遠坂凛の思いが踏みにじられること。そのことだけは、絶対に許容できない。 そして、伝えるタイミングさえ間違わなければ、遠坂凛は正しい判断をするとレイジングハートは確信していた。 故に、ただ沈黙したまま待ち続ける。 最善の『機』を窺い、ただ、待ち続ける。 「部屋に戻るわよ。新しい仲間を紹介するわ」 涙を拭くような仕草をして、水銀燈はコクリと頷いてみせた。 (もう知ってるけどねぇ) という本音は、表情の下に隠して。 二人が廊下を歩き出したその時、 ずうん……。 という衝撃音が小さく聞こえてきたのだった。 ■ 「――じゃあ、確認するわよ? セラスさんと私と水銀燈が様子を見に行く。劉鳳はこの部屋でのび太とドラえもんと、 ハルヒって子を守る。これでいいわね?」 「オッケー。つーか、早く行こうようっ!」 気が気ではないというようにセラスが言う。 ここに向かって来ているはずのキョン達に、さっきのアイツが襲い掛かっているのかもしれないと思うと、心配でたまらないのだ。 魅音の銃の扱いはなかなかのものだったし、トウカの強さも知っている。 しかし、さっきの魔法使いはデンジャーすぎる。 「……任せてくれ。何があろうと俺が守り抜く。俺の、命にかえてもな」 部屋の隅にいるのび太とドラえもんを見ながら、劉鳳は言った。 だが、その声はどこか空ろで弱弱しかった。 セラスは自分の眉間に皺がよるのを感じた。 「劉鳳君、大丈夫?」 「……アルターなら発動可能だ……。君達が戻ってくる時間くらいは稼いでみせる」 「そう……。なら、いいんだけどさ」 セラスの眉間の皺は取れなかった。寧ろ、深まってすらいた。 (『時間くらいは』って……。出会った頃と違いすぎでしょ!?) あの自信に満ち、己のやることに絶対の確信を持っているように見えた彼は、一体何処へ消えたのか? (そりゃぁ、例のことがショックだったってのは分かるけどさぁ……) 劉鳳とセラスは、水銀燈と凛が二人で消えた後、ドラえもんを呼んで、峰不二子が起こした騒動についての話を聞いたのである。 その最悪の結末について、劉鳳は初め信じたくないという風だったが、美女と呼んでもいい女が中年男性に化けたと聞いてがっくりと肩を落とした。 そのまま、劉鳳がただうな垂れるばかりだったことが、セラスには凄まじくひっかかる。 (断罪する! って喚いて飛び出していくと思ったんだけどなぁ……) それが杞憂に終わったのは喜ばしいが、あまりにも元気がなさすぎる。 きっと、全ての行動が裏目裏目に出ているように感じ、自信を喪失しているのだろう。 力づけてやりたいが、今は時間が無い。 「慌てないで、セラスさん。物音はあれ一つだけで、その後が無い。罠の可能性だってあるわ」 「それは……。わかってるけどさぁ」 「そうよぉ。イライラしちゃいけないわぁ。ちゃんと乳酸菌とってるぅ?」 セラスはじろりと声の主を睨みつけた。 「な、なぁにぃ? 私の顔に何かついてるぅ?」 険しいセラスの視線に驚いたように、人形――水銀燈というそうだ――が言う。 「べつに……」 ぷいっとセラスは顔をそらした。 (なんっか気に入らないのよね……。この人形) どうも吸血鬼のカンが、騒ぐのだ。この人形は、碌なヤツではないと。 それに、このしゃべり方、仕草。 (似てんのよねぇ。さっき襲ってきた、あの女に) 大きさと顔からして、そんなはずはないのは分かっている。 ――だが、どうにもひっかかる セラスが短い金髪を乱暴にかき回したその時。 「なにもたもたしてんのよ!?」 怒声を上げながら黒髪の少女が蹴り砕かんばかりの勢いでドアを蹴り開け、部屋に飛び込んできた。 「あたしの団員と、あんた達の仲間が襲われてるかもしれないのよ!?」 「あのね……。ハルヒちゃん」 「っるさいわねっ! 気安くさわんないでよ!!」 セラスの手をハルヒは振り払った。 「今行こうとしてたところよ……」 ため息をついて凛は言った。 「……あなたと違って私たちは命を張るのよ。だから慎重に行動しなくちゃならない。あんた、それくらいのことが分からないの?」 その物言いと声音に険が含有していた事に関して、凛を責めることはできないだろう。 一貫して脱出を模索してきたにも関わらず、優勝狙いの殺人者扱いされ、いい加減凛も頭に来ていたのである。 (まったく……。カートリッジ一つ使って治療してあげたっていうのに! なに? この態度は) 赤の他人同然の関係にもかかわらず回復魔法を施してやったのに、感謝の言葉一つ発せずにこの態度。 恩知らずにも程がある、というのが凛の偽らざる感想であった。 もっとも、ハルヒは、自分達の命を狙ったことがある人間と同じ空間にいるだけでも最大限の譲歩だと思っていたのだが、それは凛の知る所ではない。 ハルヒを押しのけて歩き出す凛に、ハルヒはふんっと鼻を鳴らした。 「どうかしらねえ? 本当に命張る気があるのか怪しいもんだって言ってんのよ!」 「……何ですって?」 凛の剣呑な眼光に怯みもせず、 「一人でも参加者が減れば、優勝するのが楽になるものねえ。分かりやすい発想だわっ!!」 「あんたねぇ! いい加減に――」 「まっ、まあまあ。凛ちゃんもハルヒちゃんも落ち着いて……。ね!? ほらっ……早く行かないと」 殺気に似たものすら漂わせて睨み合う二人の間に、慌ててセラスは割って入った。 「……分かってるわ」 怒りのオーラを発しながら凛は大股で玄関に向かって歩き出し、セラスもそれに続いた。 その後ろ姿を睨むハルヒの目の前に、 「確かにあなたの気持ちも分かるけどねぇ。仕方がないわぁ」 人形が現れた。 一瞬驚いたように目をしばたたかせたハルヒだったが、見る間にその顔は険しくなっていく。 その反応に頓着せず、水銀燈は続けた。 「凛は基本的にメリットのあることしかやらないし、あんまり人を信用しないものぉ……。 だから貴方のお友達を助けに行くのは、あんまり気が進まないんじゃないかしらねぇ」 「そんなもん、見ればわかるわよっ!」 怒りと共にハルヒは吐き捨てた。 「……ていうかなによっ!? あんた。消毒液くさいわよ!?」 何もかも気に入らないといった調子で所かまわず怒りを爆発させるハルヒに、水銀燈は困ったような表情を浮かべてみせる。 「さっき間違えてかぶっちゃったのよぉ。なのに、ルビーがシャワー浴びる時間もくれないから……。 ホント、困ったものだわぁ……。人形使いが荒くて」 「そこまで言うんなら、さっさとあの女と縁を切ればいいじゃない!!」 「それができないのよぉ……」 水銀燈は大げさに肩をすくめて見せた。 「いったん契約しちゃうとねぇ……。使い魔は、ご主人の言うことを聞くしかないのよぉ。主人が契約を解くその日までね」 「人を見る目がなかったあんたが悪いんでしょ!」 「それを言われると返す言葉がないわぁ……」 一言のもとに斬って捨てるハルヒに、水銀燈は苦笑してみせた。 「何してるの!? 水銀燈。早く来なさい!」 「はぁい! ただいまぁ!!」 玄関の方から飛んだ鋭い声に向かって返事をしながら、水銀燈はハルヒに手を振って歩き出す。 その背中に ハルヒの声が飛んだ。 「ま、せいぜい頑張ることね……。辛い年季だっていつか明けるものよ」 「ありがとぉう」 ハルヒの声音がわずかに和らいでいたことに、水銀燈はほくそ笑む。 (ちょろいもんねぇ……。これでまた一人、凛の敵が作れたわぁ……) スピードを上げるために飛翔して水銀燈は半壊した正面玄関へと向かう。 「何を話してたの?」 追いついた水銀燈に、トゲトゲしく凛が尋ねてくる。 「あのねぇ……。あんな言い方をしたら、いつまで立っても誤解されたままでしょぉう?」 「いいわよ、別に。ハナから信じようとする気がない人間に何言っても、無駄だもの。 けどまあ、あんたの気遣いには感謝しとくわ……。ありがと」 「どういたしましてぇ……」 本当にチョロイものだと水銀燈は心の中で舌を出した。 しかし、水銀燈は勘違いをしていた。 涼宮ハルヒが信用しているのは、『人間の形をした水銀燈』であって、人形の姿をした水銀燈ではない。 ハルヒにとって水銀燈は、凛と同じく自分達を襲撃した明確な『敵』だったのである。 先ほどの会話も、ハルヒが水銀燈に警戒心をもたれないように自制しただけであって、ハルヒは水銀燈のことなどまったく信用していない。 それどころか、さらに怒りを強めてすらいた。 (最っ低ね。自分の親玉がいないところで、悪口言うなんて。下をみれば上が分かるっていうけどまさにその通りだわ) ――やはり二人とも全く信用ならない。 それがハルヒの出した結論だった。 「ハルヒちゃん……。そろそろ部屋に入った方が……」 ドラえもんが、部屋から顔を出して言ってくるが、 「うっさいわね! ほっといてよ!」 ハルヒの拒絶が聞こえたのか、劉鳳も部屋から姿を現した。 「そうはいかない。まとまっていてくれなければ、今の俺では守れない。俺は、君達を守らなくてはならない」 ハルヒは、劉鳳の全身をじろじろと眺めた後、 「結構よ! あんた、なんか頼りにならなさそうだし」 そう言い放った。 「なっ……」 思わず劉鳳は絶句する。 普段の劉鳳なら、何も言わずに襟首を引っつかんで部屋の中に放り込んでいただろう。 だが、今の劉鳳にはできなかった。 みすみす多くの人間を死なせ、殺人者を病院に送り込んで犠牲を増やし、守りたいと思った少年に逆に庇われ、命をつないでいる自分。 ――俺の心の友は、もっと、もっと優しいんだぞ リヤカーの上で誇らしげに言っていた武。 あんなに会いたがっていた友達と会わせてやることができなかった。 ――武。お前は俺が必ず守ってやる。 自分は確かに、武にそう言ったというのに。 守るどころか守られ、おめおめと生き延びている。 (そんな俺に……。何ができる? 何が守れる?) 劉鳳はただ、立ち尽くすことしかできなかった。 「ねえっ! あんた何か便利な道具持ってないの? 物によっては、私の着せ替えカメラと交換してあげるわよ?」 立ち尽くす劉鳳を無視し、ハルヒはドラえもんと交渉を始める。 着せ替えカメラによる攻撃が、荒事の熟練者には効果が薄いと分かった以上、 『クローンリキッドごくう』の他に何か決め手が欲しいと思ったのである。 だが、ハルヒの提案にドラえもんは一つため息をつくと、 「ボクの持ち物は、竹刀と変なディスクだけだよ……。他のはみんな取られちゃったんだ」 無念そうに言った。 「そうだったわね……。ったく、あの年増女!」 額に手をやり、ハルヒは腹立たしそうに悪態をついた。 あの女のせいで、ヤマトとアルルゥという二人の特別団員と別れ別れになってしまった。 (本当に、手が足りないわ……。アルちゃんを早く見つけてあげないといけないし) あの無邪気なアルルゥが、悪人と壮絶バトルを繰り広げて、もしくは機転を利かして逃げ延びる、といった光景は流石に想像できない。 となるとやはり、ヤマトの方は、ドラえもん達の味方に期待するしかない。 聞けば超能力者だというから、アテにしていいだろう。 それにヤマトはあれでなかなか度胸もあるし、機転も利く。 あの襲ってきた金髪の騎士から逃げ切れたのは、ヤマトの力によるところも大きいのだ。 易々とやられたりはしまい。 もっとも、そうはいっても心配なものは心配なのだが……。 (無事でいなさいよ! ヤマト) とにかく、まずはこちらへ向かってくるキョンとその仲間と合流すべきだ。 セラス達は信用ならないが、キョンの仲間達なら信用できる。 そのためにも、凛が妙なまねをしないか見張る必要があるとハルヒは考えていた。 「とにかく……。危ないから、部屋に入っていたほうがいいよ。ハルヒちゃん!」 「そうはいかないわ! あたしの目の届かない所であの女が――」 「そんなに僕達のことが信用できないなら、勝手にしなよっ!!」 突如、部屋の中から大声が響いた。 「の、のび太くん?」 「治療してくれた凛お姉さんに酷いこと言って、今度は劉鳳さんにまで……。酷すぎるよっ!!」 膝を抱えてうずくまりながら、のび太は絶叫した。 誰も彼も死んでいく。 友達が、信頼した人が、みんな死んでいく。 あの強かったジャイアンまで、無残な死体になっていた。 これ以上ないほど傷つき、ささくれ立ったのび太の心は悲鳴を上げ、安らぎを欲していた。 今ののび太にとって、仲間を罵る言葉を吐き散らすハルヒは、耐え難いほど目障りな存在だった。 気まずい沈黙が満ち、 「……勝手にするわよ」 言い残してハルヒは何処かに消え、劉鳳は空ろな目で力なくベッドに腰を下ろし、のび太は部屋の隅で膝小僧を抱えている。 (どうしてこうなっちゃたんだろう……) ドラえもんは悲しげにため息をつくばかりだった。 ■ 病院にある程度近づいたところで足を止め、キョン達は周囲を警戒していた。 ――もう何分こうしているだろう? 数時間にも感じられる。 キョンの背中を嫌な汗が流れ落ちた。心臓の音がやたらとうるさい。 トウカが刀に手をやって辺りを睨み、魅音が銃を構えている。 (あれだけ盛大に響いちまったからな……) 誰に気づかれてもおかしくない。 加えて、悪い予感がどうも的中しそうだということが、三人の心に不安の黒雲を沸き立たせていた。 (誰も病院から出てこないってことは……。やっぱり何かあったのか!?) その元凶がそこらに潜んでいるかもしれないと思うと、自然と目があちこちを行き来する。 キョンはごくりと唾を飲み込んだ。 「……すまぬ。キョン殿、魅音殿……。どうして某はこう浅薄で、やることが雑なのだ……。本当に、すまぬ」 トウカの声には深い後悔と苦渋の響きがあった。 キョンが何か言おうと口を開きかけたその時、 「謝るのは私たちのほうだよっ」 声量を抑えてはいたが、はっきりとした声音で魅音が言った。 「私たち、ホテルを出てからずっとトウカさんにオンブ抱っこしてた……。 トウカさんだって、大切な人をなくして、悲しくて、疲れてるのに。 自分ばっかり辛そうな顔してさ……。ごめんね、トウカさん」 まったくだ、とキョンは心の中で自嘲を漏らした。 トウカは一回目の放送を聞いた後、本気で腹を切ろうとしていた。 ――そこまで思いつめてた人が、すぐに立ち直れるとでも思ったのかよ? キョンはケンカ手袋で自分を殴りたい衝動に駆られた。 (トウカさんだって、死ぬほど傷ついてるに決まってるだろう!) それなのに沈みがちの自分達を励まし、労わってくれた。勇気付け続けてくれた。 魅音はともかく、どう考えても戦力になりそうもない自分を守ろうと、ずっと気を張りすぎるほど張って、ここまで連れてきてくれた。 張り詰めすぎていた物が、病院が見えたことでふと切れてしまったからといって、それを責める事などなぜできようか? 「……園崎の言う通りですよ。ずっと一人で頑張らせちゃってすいません、本当に」 「キョン殿……。魅音殿……」 トウカの瞳が大きくなった。 「そうそう! だからさっ、トウカさんだって辛かったら私やキョンに言ってよ。私たちは……仲間なんだからさっ!」 「だな!」 ややあって、 「本当に……。本当に某は、よい仲間を、もった……」 一言一言噛み締めるようにトウカが言い、こんな状況だというのに、キョンは胸が熱くなるのを感じた。 それは魅音も同じだったようで、グスっと鼻をすする音がした。 「……でもまぁ、確かにちょっとうっかりさんだなって、おじさん思ったかな」 「すいません、トウカさん。俺もです」 冗談めかした二人物言いに、トウカが微かに笑みを唇の上に上らせ、 「あいすまぬ……。某としたことが」 いつものフレーズを口にした丁度その時、病院の中から人影が走り出た。 「お~い!! トウカさ~ん! 魅音ちゃ~ん!! キョンく~ん!!」 聞こえてきた声に、三人は安堵の表情を浮かべたのだった。 時系列順で読む Back 過去の罪は長く尾を引く Next ひめられたもの(2) 投下順で読む Back 『転』 Next ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く 遠坂凛 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く 水銀燈 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く ドラえもん 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く 野比のび太 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く 劉鳳 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く セラス・ヴィクトリア 253 ひめられたもの(2) 240 岡島緑郎の詰合 ロック 253 ひめられたもの(2) 243 共有 キョン 253 ひめられたもの(2) 243 共有 園崎魅音 253 ひめられたもの(2) 251 過去の罪は長く尾を引く 涼宮ハルヒ 253 ひめられたもの(2) 240 岡島緑郎の詰合 野原しんのすけ 253 ひめられたもの(2) 240 岡島緑郎の詰合 北条沙都子 253 ひめられたもの(2) 243 共有 トウカ 253 ひめられたもの(2) 240 岡島緑郎の詰合 エルルゥ 253 ひめられたもの(2)
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ふぉぉっ予選落ちーorz スマイル - 円 【静流の部屋】 【秋狼記】 【3 DOZEN NΘTE】 《プロフィール》 HN :サンダース 年齢 :23歳 ジョブ :がくせい 自己紹介: 大学生活も五年目に突入する多忙(自己申告)な学生さん。建物&街萌えー。 サンダースというのは「若き日の軍曹」の名前を付けただけのネタ。今さら変えるのも面倒なので放置している。 ポケモンじゃない。おや、何だコイツは? つぶやくクロー ムド偏愛中。現・看板娘はこの子に決定です。 +ちょっと前 近頃の関心事はHEROについて。本当のヒーローってなんだろう? なんでもヒーローは遅れてやってくるらしい。 悪いヤツらが出てきて、それを颯爽と倒す。たしかにそれはヒーローだと思う。 でも本当にそれだけでいいのかな、とも思うわけで。 怪人ナンバー49や旋風寺はやてというのは、そういう思考の中から生まれた人物。 たぶん、ヒーローはもっと掘り下げられる。そんな気がする。 ただ、改造人間がダメっていうのは、納得できないなぁ…… 《木彫りの本棚》 ★メイン小説 東方秋狼記:不定期に連載している東方二次小説。オリ主が前向きに何かと戦う話。更新頻度はT樫先生並み。 ★データ集 3 DOZEN NΘTE:つまりメンバー名簿。ここの常連客の名前が連なっているのかもしれない サンダースさんの元ネタ教室:教室であり、それは開拓を目指した無数の扉なのかもしれない +★過去を入れる倉庫 特売たまごで目玉焼き 自重をどこかに置き忘れたようなオリジナル小説の墓場 無名の丘にて…… 名も無き兵士の後日談 善の衣、悪の鎧 とある魔王の対話記録 バトロイウォーズ/傾向と対策/36の場合?:とりあえず、一夜城的な簡易版。名前などは変わるかもしれない 幻想郷奇譚 言うなれば、奇妙な来訪者を受け入れたことで始まる、もう一つの幻想郷の話(という名の解説) 四色起源神話? 元ネタのない、つまりは作者オリジナルの部分 焼き鳥屋、小説を考える 焼き鳥屋で語られる、小説を巡るあれこれ。ただの持論なのでお気になさらず 焼き鳥屋、WBRを斬る 焼き鳥屋で語られる、WBRを巡るあれこれ。要は下馬評なのでお気になさらず。 幻想郷は電気羊の夢を見るか? ダークで退廃的な雰囲気と、近未来的な風景の幻視。もう原型なんて残ってません。 サンダース軍を科学する なりきり板に出てくるチーム36のあれこれ 36工房アンダーザブリッジ サンダースの工房。各キャラのステータスがどう決められるか、など サンの雑記帳 工房に置かれているメモ帳。浮かんだアイデアを晒す……かもしれない。 《主なスタッフ》 秋 静流:看板娘。小説の更新時に広告塔として登録される予定。次回はいつになるんだろうね。 ムド:看板娘。森の中でニンゲンの真似をして暮らす竜人の少女。のんきだが、森の獣がビビるほどパワフル。 リグルtheK:静流の仲間。秋狼記参照。 チルノtheQ:同上。 朝霧アサギ:作者のお気に入りの主人公(予定) 近日登録(予定) 旋風寺はやて:第五回WBRに出場した鬱展開の申し子。 若き日の軍曹:前主将。たまに爆発する元祖サンダース軍。第八回WBR優勝の猛者。 無垢なる刃・ウドンゲイン:副主将。間違いなくエースだが、ムラっ気がある。ここ一発で強い。 東風谷サナツー:愛があるから出しているお気に入り。凡退率の低さが売り。サナツー愛してる。 焼き鳥屋・妹紅:不安定だが私好みの重戦車。セリフは気まぐれ。 夜明けのミョン:結局こうなった攻防強化のルーキー。セリフは3パターンある。なんとなーく登録。 無名03:まさかのレギュラー入り。各ステータスの上限が30という制限がある。復活。ネタ切れになると出現。 怪人ベーカー:霧の街の動かぬ都市伝説。それを象徴するように、2種類の全く異なるステータスを持つ。 《戦績》 ひらお式ポイント計算をやってみた。ただし、3種類とも集計できるキャラのみ。 1位 45p ウドンゲイン (15+5*2+4*5=45) 2位 43p 若き日の軍曹 (14+7*2+3*5=43) 3位 42p 秋 静流 (16+8*2+2*5=42) 4位 39p ムド (11+4*2+4*5=39) 5位 38p 東風谷サナツー(13+5*2+3*5=38) 6位 37p 怪人ナンバー49(10+6*2+3*5=37) 7位 36p 旋風寺はやて (14+6*2+2*5=36) 7位 36p 朝霧アサギ (14+6*2+2*5=36) 9位 35p 夜明けのミョン(10+5*2+3*5=35) 10位 34p マルボロ (12+6*2+2*5=34) 11位 30p 焼き鳥屋・妹紅(15+5*2+1*5=30) 12位 28p 無名03 (10+4*2+2*5=28) 13位 27p ラーちゃん (10+6*2+1*5=27) 14位 24p 怪人ベーカー (8+3*2+2*5=24) 15位 23p スペリオル上海(7+3*2+2*5=23) 16位 21p ルルアート=アルルゥ (11+5*2+0*5=21)
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アルル「……また知らない世界にきたのかな」 アルル「カーくんもまたどこか行ってるし……」 アルル「それにしても、すごい町だなあ」ポカーン アルル「りんごたちの世界とすごくよく似てるんだけど、もっと『ビル』とかがたくさん立ってる」 アルル「それに…あれは学校かな??学校自体はどの世界でもあまり変わらないのか」 アルル「とりあえず、情報収集して、カー君みつけて、帰る方法を見つけよう!」 アルル「とりあえず、このあたりの探索かなあ?けど世界のことは人に聞いてみないとわからないよね」トコトコ アルル「けどなんて聞こう?ここってどのあたりですか、かな?だとしたら地図見つけなくちゃ」 アルル「…それだと怪しまれるだけかな……記憶がなくなったことにしてしまうとか」 アルル「うーん…それはちょっとそれで心配かけたら申し訳ないかなあ。素直に『ボク異世界から来ました』って言ってしまおうかな」 アルル「ダメダメダメ!それはただの変な人だから…うーん、どうしようかな」 ??「あの、もし?失礼ですが多少お伺いしたいことがあるのですけどよろしくて?」 アルル「あっ、はい!?」 ??「風紀委員ですの。あなたは誰の許可でここにやって来られましたの?」 アルル「へっ、え??」 アルル「あの、ボクここに来るの初めてで…あっ、ここどこ? あとジャッジメントって…本名じゃないよね?君の名前はなに?」 黒子「……訳の分らぬ質問攻めも大概にしてくださいまし。ですが名乗るだけ名乗っておきますと、わたくし白井黒子と申します」 アルル「へえ、可愛い名前だね!くろこって言うんだ。よろしくね」 黒子「ですからいい加減にして下さいと! 基本的に誰かの許可無く立ち入ることが許されないこの『学舎の園』に貴方が居る理由をお聞きしていますの!誰からのお誘い合わせで此方へ?」 アルル「あぁ……ボク、違う世界から来たから、分からないんだよね。だから誰からも招待されてないし、ここがそのマナビヤノソノのどこかもわからないんだ」 黒子「その話を信じろと?ふざけないでくださいまし」 黒子「大体この科学の街で違う世界の話を持ち出す時点で貴方の頭脳が知れますわよ。風紀委員第177支部に連行いたしますが文句はございませんわね?」 アルル「あるある!すごく文句あるって!!だって本当なんだってば! 科学はボクの時代じゃたぶん物凄く遅れてるけど…ほら、このアーマーだってここの人たち全員使ってないじゃない! けどボクの時代じゃ身を守るために必要なものだから付けてるんだよ…って、おわあぁ!?」 唐突にアルルの反論の言葉は途切れた。黒子が強制的にアルルを連行したからだ。 『空間移動』でもの言う暇も逃げる隙も与えず、80mずつ支部へ移動する。 彼女らが転移していく近くの者たちは彼女らを確かに視界に入れたが、それもほんの一瞬だった。瞬きひとつしたら……とまでは行かないものの、1秒はかからずにまた彼女らの姿はかき消える。 その姿を見つけたのは、黄色いウサギのような生き物だった。額には赤い宝石が埋め込まれていて、太く短い尻尾がわずかにぴょこんと揺れる。 「……ぐ?」 見間違えたのではなかっただろうが、駆け寄ろうとしたらその生き物の主は既にそこから消えていた。だからカーバンクルは間の抜けた声をあげることしか出来なかったのだ。 これは一から全部説明して分かってもらうしかないか、とアルルは抵抗をやめた。 未知の空間移動に怯えたわけではない。彼女は以前空間移動を経験したこともあり、だからこそ空間移動中に干渉を行えば術者に大変な負担がかかることを知っていたからだ。 いくら突然連れて行かれたとしても、先ほどの黒子という少女が攻撃に入る様子はなさそうなら彼女を傷つけることはやめておこう、と。 アルル(そういえば、シェゾはどこにいるんだろう。サタンはこの様子に気づいてるかな) 風紀委員第177支部。彼女たちがやってきたそこでは何人かの学生たちが忙しそうに動き回っていた。 アルルは最初、もともといつも忙しいものなのだと思っていた。だが隣の黒子を見るとそうでもないらしく、「何かありましたの?」と近くにいた眼鏡の女性に声を掛けていた。 その女性の奥のほうでは花飾りを付けた少女が懸命にキーボードを叩いていたが、元の世界とこの学園都市の文明の発展度は著しく開きがあるために、それが何をしているのか、アルルにはわからない。 固法「謎の女性が現れたらしいわ。髪は水色の長髪、年齢は20前後、身長は170程度、服装は…チャイナドレスを動きやすくした感じといえばいいかしら。 言動が変だから声を掛けたら一人変なこと言って逃げたらしいわ」 黒子「はあ。それで彼女の捜索にあたっていますのね。言動が変、とは?」 アルル(……それって) 固法「別の世界からやってきたとの主張をしているそうね。学園都市のことも知らぬ存ぜぬで通していて 能力とレベルを聞いても何それ?と。ええと、偽名くさい名前なら名乗っているのね。確か」 アルル「ルルーじゃない!?」 突然アルルが会話に参加したことで二人の会話は途切れた。 大声を出した余波として沈黙が漂い、支部の人たちの視線がいっきに彼女に集中する。しかし黒子と固法の驚きは彼女ら以外の支部のものとは別だった。 固法「……え?」 黒子(別の世界と申す方がこの子以外にもう一人……?それに、あの冗談ではなさそうな言動…しかし…) アルル「ボク、アルルって言うんですけど…ボクも別の世界から来たんです!ええと…けどどうやってそれを証明しよう…? とりあえず、ボクとルルーはそこの世界のともだちなんだけど、うーん……」 固法「それで白井さんが連れてきたのね、ルルーさんで間違いないわ。 けど、あなたが別の世界から来たというのはにわかに信じられないわ。数年前には異世界から来たと主張して無能力者の冠を無くそうとしたスキルアウトたちだって居たのよ」 アルル「…そっか。けど、ボク…!!」 そこにぽつりと投下されたのは黒子の声だ。 黒子「アルルさんとやら」 アルル「え、なあに?」 黒子の心の中に引っかかっているのは、彼女が使用しているアーマーだ。確かに異世界を装うために作るくらいは出来るものの、使い古した感じは服装に違和感を感じさせない。 それに、不本意ながら自分は恐ろしき風紀委員だということで知られているが、スキルアウトではないのならあのなれなれしく話しかけてきた様子も理解できてしまうのだ。 2割くらいなら彼女の言うことが本当だと思える気がする。その物語に引っかかってやりますわ、と彼女は思った。 黒子「あなたが居たと主張される『世界』の事、お聞きしてもよろしくて?」 支部の端っこで、4人掛けのテーブルに3人の女がつく。…といえば人聞きはいいが、悪く言えば喚問そのものだ。アルルの隣に黒子が座り、彼女らに向かい合って固法が腰掛ける。 アルルは出来る限りの言葉を用いて説明をした。 はじめに簡単に自分について説明した。過去に2回、別の世界に飛んでしまったことがあり、そのうちの一度がこの世界に非常によく似た世界だったこと。 自分が居た世界はもっと森や山や川にあふれていて、モンスターと人間が共存していること。「ぷよ」と呼ばれるモンスターたちがその飛んだ世界に降ってきて困ったこともあったとも伝えておいた。 半魚人たち、耳の長い小人、よくわからないゾウやなすびのモンスター、魔法使いの一族。 と、そこで黒子は遮った。 黒子「……魔法使い、ですの?」 アルル「あっ、魔導について話してなかったか…ってことは、この世界って魔導は存在しないの?さっきのテレポートはなあに?あれすごく精密だったから驚いちゃったんだけど」 魔導とやらは存在しませんわ、と黒子は答えて、続きを促した。自分の空間移動が褒められたことは確かにうれしいが、論点はそこではない。 そして、彼女がこの際空間移動について語らなかったのは一つの理由がある。 彼女はこの街で初めて自分と話したらしいのが、記憶に残っていたのだ。もし、万が一それが本当ならば学園都市のことを知る筈がない。だから学園都市についての話題が出たらその時点で学園都市内の人間とみなし、不法侵入罪で拘束する。学園都市の話題を出さずに彼女の話の正誤や矛盾を確かめる。そのつもりだった。 アルル「魔導っていうのは、人やモンスターが使えるチカラのこと。それを使いこなせる人が魔導師って呼ばれてて、ボクはそれを目指して魔導学校に通ってたの。正確には古代魔導学校っていうんだけどね。 魔導っていうのは体の中に溢れる魔導力を練って練って1か所に集めて発射する感じかな。いろいろあるんだけど…簡単なのはファイヤーとかアイスとかヘブンレイとか…って、ああ!?!」 突然アルルは絶叫する。ようやく気付いたのだ。魔導が存在しないのなら、魔導を使えばいいこと。黒子や固法も同じことを思ったようで、顔を見合わせた後アルルに言った。 固法「ならアルルさん、魔導を見せてくれるかしら。出来れば何種類か」 アルル「わかった。えっと、じゃあガラスのコップってある?」 黒子「はあ?ありますけど」ヒュン 数歩歩いてガラスのコップに触れ、自慢の空間移動でそれを彼女の前に置いた。 アルル「あれ?テレポートは触れないと出来ないの??ボクはテレポート使えないけど、こっちの世界ではレベルによっては触れなくても出来るんだ…と、とりあえずやるね。」 ホット!と彼女は鋭く叫ぶ。その時突然虚空から水がばっと降ってきた…いや、正確にはコップの上にのみ、熱湯が。コップの半分くらいまで注がれた湯はほかほかと温かい湯気を放っている。 続いて彼女はコールド!と叫んだ。ホット同様に虚空から現れてコップに降り注いだのは、小さな氷の塊だ。何度か落としているうちに湯気はどんどん消えていく。 最後に彼女がショック、と叫ぶと、ばちりと水が帯電してぱりぱりと電気を覆う。 アルル「うーん…こんなもの?」 見ていた二人は言葉もなかった。 固法と黒子は目をぱちぱちと瞬かせている。 会話の流れに任せて魔導とやらの使用を頼んだのはこちらだが、まさか本当に複数の力を使用してくるとは思ってもいなかったのだ。 ホットとコールドだけなら空間移動や温度変化系能力でギリギリ説明がつくが、仕上げに電撃使いときたら驚くしかない。 アルル「これはごく初歩的な魔法で、わりと練習すればだれでも使えるようになる技かな。 他には光出したりとか、脳みそぷー…えっと、混乱させたりする技もあるけど…って、聞いてる?」 瞬き以外身動きひとつしない二人にアルルはむくれながら返答を促した。それに応じていち早く我に返った固法は「初春さん!」ととある少女の名を呼ぶ。呼ばれた初春は顔をひょこっと出して、何でしょうと答えた。 固法「調べてほしい能力があるの。彼女、お湯と氷をこのコップの上に連続して投下させたわ。そのあとに発電能力らしきものまで使っている。頼めるかしら」 初春「はい、大丈夫ですけど……多才能力でしたとかいうオチはありませんよね?」 アルル「……○に尽きる?」 黒子「マルチスキルですわ」 我に返った黒子が鋭く突っ込みをいれる様子を見て初春はそれはないかと推測した。 初春(発電が可能で、何もないところからお湯や氷を落とす…) 今までパソコンに向き合ってきて疲れた目をほぐすために目をくりくりとかいて、彼女は本格的に『書庫』の膨大なデータと向かい合う。 固法「これで能力が見当たらなかったら正真正銘異世界から来たことになるのかしら……他の能力はどんなものが使えるの?」 アルル「さっき言ったんだけどやっぱ聞いてなかったのかあ…光だしたり、混乱させたり。さっきのと同系統の技で言ったら、炎の渦とか電気で一閃することも出来るよ。 けどこれ以外はちょっと魔法が大きすぎてここでは使えないと思うけど」 固法「外なら使える?他にも使えるなら知っておきたいわ。」 あの子に検索してもらってるけど、あれだけじゃしばらく時間がかかりそうだから、と固法は付け足した。 初春は真剣にパソコンに向き合っていて、指を指した固法に全く気がついていない。 アルルはパソコンのことがよくわからなかったが、あれで人物を特定しているということに驚いた。学園都市にいる生徒はあっても一つの能力しか持たない、という絶対的なルールを知らないのも大きな理由だったが、あの機械の中に全員の情報が入っているとは信じられなかったのだ。 アルルはパソコンに視線を向けたまま首を小さく傾げた後、会話に意識を向け直す。 アルル「場所の広さにもよるけど、たいていは使えると思うよ」 黒子「外で使えるとおっしゃるなら、わたくしと戦ってみませんこと?」 アルル「え?うん、構わないけど」 唐突に話しかけた黒子は、もちろん傷つけるつもりはございませんわよ、と予め前置きをして、謝罪の言葉とともに右手を差し出す。 黒子「話の真偽はまだ証明しきれておりませんが、今の様子ですと貴方は無理に連行しなくても来て下さったかもしれませんわね。 派手な連行をしたこと、お詫び申し上げますわ」 小さな右手は、それでも十分に彼女の警戒心が薄れたことを主張していて、また同時に黒子の口元はすこし笑っている。 愛想笑いではなく、自然な微笑みだった。瞳も先ほどの鋭さと比べると非常に優しい光を持っているように見える。 それに気付いたアルルは、にこりと笑って、 アルル「親善試合だね!」 応戦を決めた。 黒子と固法とアルルの3人は広い第七学区をゆっくりと歩いていた。 はじめ黒子は空間移動で連れていくと言ったのに対して、アルルがこの街を見て回りたいから歩かせてほしいと言ったのが理由だ。 そんな訳で3人組はときどき立ち止まりながら最寄りの大きな公園までの道のりを楽しんでいる。 アルル「最初のところ、学舎の園って言うんだっけ?あそことはずいぶんと違うんだね」 黒子「あそこは別の街と思った方がよろしいかと。女子校5つとその寮、日用必需品が売ってる店程度しかありませんが、雰囲気はだいぶ異なりますわよ」 固法「お嬢様学校ばかりだから高級感が漂っているでしょう?白井さんもその学校の一つに通っているのよ」 アルル「へえ、すごーい!そことこことはどれくらい距離があるの?」 黒子「十五回程度は飛びましたから…ざっと600から700メートルですわね。」 アルル「距離を短くして何回かやってるんだね」 アルルのことはだいぶ信頼することができそうになってきたが、学園都市の核心的な部分に触れるのは、黒子にはまだ若干の抵抗が残っている。 初春の結果が出次第全てを話そうとは思っているものの、実際に結果が出ない限りはどうしようもないから、黒子はむず痒い。 それにしても、異世界ときた。 初対面でアルルに言い放った通り、科学の街で異世界の話を持ち出すなんて軽くぶっ飛んでいる。 けれど一人、そのぶっ飛んだ話を語り、証明してみせようとまでするひとが居る。 アルルと名乗る、この少女。 彼女の服のポケットにも背負っていた小さなリュックサックにも、学舎の園に入ってくるときに必要になる学園都市のIDカードが見当たらない、茶髪のポニーテールの女の子。 異世界から来たと主張して、屈託のない笑顔で矛盾ひとつ無い話をぽんぽんと口に出す、この少女は。 黒子(……パラレルワールド?それにしても、そんなこと) 一体何者なのかと問われると、異世界から来たと言った方がしっくりきてしまうのに、非科学的すぎて理解できない。 そんな黒子の様子をわかったのかわかっていないのか、アルルは話題を逸らした。 行き先の斜め右前を指差して二人に尋ねる。 アルル「あそこに見えるひときわ高い建物は何?」 固法「セブンスミスト。ここら一帯ではかなり大きなデパートね」 アルル「でぱーと??塔とは別だよね」 固法「店がいくつも一つの建物の中に入っているものをデパートと言うんだけど……あなたの世界にはなかったの?」 アルル「ん、買い物はほとんど商店街だったかな。ダンジョンの中にもお店はあるけど」 黒子「ダンジョン?」 アルル「遺跡とか洞窟とかのこと。モンスターが棲みついてて、襲ってくるときもあるんだけどね」 さらっと恐ろしいことを説明する彼女に、黒子は思わず歩みが止まりそうになった。 ただでさえ短距離の道のりを会話しながら歩くと本当にあっという間についてしまい、公園のベンチにアルルはリュックをおろす。 もう着いちゃったのか、と彼女は残念そうに呟きながら、大きく身体を伸ばした。 一面野原のこの場所なら問題ないかな、とアルルは思う。黒子は出発する前に自分はかなり優秀なほうのテレポーターだと自負しているから遠慮はせずにどうぞと言っていた。 転移の優秀さは、前の世界にいたアルルも知っている。手で触れてという条件付きとはいえ、自分以外も動かせるならなおさらだ。 きっと大きいものを相手の近くに転移させて動きを封じることもできるし、鋭いものを自分の身体に転移させてダメージを与えることもできる。 アルル(…けど、せっかくの親善試合だもんね。あっけなく負けはしないよ!) 心の中でそう意志表明をしている……はずだったアルルだが、実際にこぶしをぎゅっとにぎっているから周りに感情がバレている。 その様子を黒子は見やって、こちらも負けはしませんわと心の中でそっとメッセージを送る。 さて始めようといったところで、アルルと黒子は試合を始めるタイミングをなかなかつかめない。じゃあ始めようかと言ってもすこし照れくさくて、つい始めづらいのだ。 固法(アルルさんの正体がどうこう抜きに、二人ともすっかり仲良しじゃない) そんな二人をすこし離れた場所から見つめていた固法は、小さく笑った。 私が合図をしましょう、と声を掛けると、待ってましたと言わんばかりのきらきらとした視線に若干気圧される。 固法「じゃあ行くわよ……試合開始!」 アルルと黒子はようやく同時に動き出すことができた。 転移なんてされたらスピード勝負ではアルルに勝ち目などない。 だから彼女は速さを競うのはもともと諦めていた。 アルル「アイスストーム!」 空間移動でアルルの背後にまわって一気に決着をつけようと思っていた黒子は、強烈な寒さに思わず動きが鈍った。 蹴り上げようとした足は、ギリギリ間に合ったアルルの技の影響で急速に凍えていって勢いは止まる。 アルルは周囲360度に氷雪の嵐を起こして、近づいた黒子に対応させたのだ。 ようやく背後の黒子に気づいたアルルも、ゆるい勢いとはいえ至近距離からの蹴りを防ぐことはできずに立っているバランスを大きく崩される。 アルル「っく、ライト!」 強烈な光が近くで炸裂して、アルルも黒子も視界を一時的に失う。だがその間にアルルは体制を立て直し、黒子は太腿に巻きつけた針を自分の手に移動させる。だが、それだけだった。 黒子は転移に座標を指定する必要がある。アルルの居場所がわからないのにこの針を打ち込むのは非常にまずい。 下手すれば彼女の心臓に突き刺さる可能性だって否定できない。親善試合とやらに殺人はいらないのだ。 そこで黒子に一瞬思考の時間が出来る。 黒子(やはり多重能力者と言わないと説明がつかない……!?威力もきっと今のは牽制程度。想像以上に使用する能力の幅が広そうですわね…!) アルル「ダイアキュート!」 そこに光の中から一つの声が響いた。 黒子に警戒が走る。 どんな攻撃が来るか、と彼女は攻撃の方向を探すために回復しかけている視界に目を凝らす。 そして影程度しかわからないけれども視界が戻った時、黒子はアルルが両手を大きく上に掲げていることに気付いた。 ――攻撃が来る。 急いで黒子は回避のためにもアルルの背後に回ろうとするが。 知らないとはいえ彼女は致命的なミスをした。ダイアキュートは攻撃技ではないこと。そのため、先ほど手を上に掲げていたのはダイアキュートの技のためではないこと。 アルル「ファファファイヤーストーム!!」 ダイアキュートの効果は、次の呪文の威力を増幅させること。 背後にふわりと現れた黒子の周囲は高温の炎に覆われていた。 黒子(やはり二度も背後に回っては動きが読まれてましたわね……!) いきなりの高温に一瞬で汗が滴り落ち出すが、この程度で動きを止められた白井黒子ではない。即座に自分の座標を移動して灼熱地獄から逃げ出す。 それでも、もう少し転移が遅かったらと考えると黒子は少しだけほっとした。今のが転移の限界だ。 あれ以上行動が遅かったら暑さに精神がやられて転移が出来なくなっていただろう。 アルルはスピードに関しては諦めていたものの、結局は完全なるスピード勝負だった。 黒子は先ほどとは異なり、ギリギリまでアルルに近づけるよう転移した。 先ほどの氷雪の嵐が黒子に間に合ったのは、黒子が蹴りを入れるためにアルルと若干の距離をとっていたからにすぎない。 それなら間に合わないようにするだけだ。 ほんの数センチ程度指を動かせばアルルに触れられる距離に現れた黒子は、軽くアルルに手の甲で触れる。 それだけでアルルは気がつけば横になっていた。 アルルはほんの一瞬こそ格闘技の一種かと思ったがすぐに状況を察する。ごく短距離の転移で横にさせられたのだと。 なんだかんだでいろんな危機を乗り越えてきた彼女の状況判断能力はかなりのものだった。 その彼女は、黒子が針を両手に何本か持っていることに気づく。 アルル(やばっ!?そっか、最初にテレポート使えないって言っちゃってたっけか!) 素早く状況を整理するものの、横になっている自分の身体に黒子が馬乗りになっているため、なかなか立ち直れない。 アルル(それなら!) アルル「アイス!!」 黒子の針が一本ずつ虚空に消えていき、アルルの服のみを丁寧に突き刺していく。 左手だけで辛うじて発動した氷の魔法は威力もだいぶ小さくなっていたが、それでも魔法は発動した。 しかしそれと同時に針は左手のリストバンドにも食い込む。 片方は両手足と腹部の服を針で固定された。 もう片方は腕から先と足を凍らされた。 両方とも次の行動ができなかった。 アルルは攻撃魔法は手を必要とするから拘束を解除する手段もないし、黒子は手が凍らされているために移動は出来てもそこから先が何もできない。 互いにどうしようもなかった。引き分けである。 黒子「……両者とも手詰まりですわね」 アルル「そうだね、引き分けだ」 それを見た固法は、二人だけでは体勢を元に戻せないと知り急いで彼女らの元へ駆け寄る。 黒子はアルルの隣に腰を下ろすように転移して、固法はアルルの服に食い込んでいる針を一本一本抜いていく。 そして自由になったアルルは黒子の両手足を拘束する氷を温かい湯で溶かした。 アルル「えっと…たぶん凍傷出てるよね。ごめんね、ほんとはもっと調節して 内部は水にするつもりだったんだけど、切羽詰まって強くなっちゃった。痛む?」 黒子「そこまでではありませんが、多少の痺れは……」 アルル「わかった」 ごめんね、と重ねがさね謝るアルルに、黒子は腕のぴりぴりとした軽い痛みを抑えつけた。 しかし、何がわかったのか、黒子が尋ねようとするとアルルは一言、 アルル「ヒーリング」 そう声を出した。すると、ふわりと淡く輝く光が黒子の両手足を包みはじめる。 きれいな光だ、と黒子は素直に思ったが、直後に自分の身体の異変に驚きを隠せなくなる。 痛みは全くなくなっていた。それどころか、空間転移の影響の気疲れすらもほとんど感じないほどに体力がもとに戻っている。 アルル「これ、回復魔法なんだ。もう大丈夫かな?」 本日幾度目かもう数え忘れたが、黒子は驚いた。大丈夫を通り越して完璧な体調だ。 感謝しますわと彼女は礼を言い、固法の方を振り返って言う。 黒子「……これは、本当に異世界から来たのかもしれませんわね。先輩も見ましたでしょう?今の能力、全部」 固法「そうね。最後のヒーリングっていうのなんて初めて聞いたわ」 アルル「回復魔法にも、アイスとアイスストームみたいな能力の強弱があるんだよ。 今のは一番簡単なものだけど、出血が止まらなかったりしたらガイアヒーリングってほうを使うことが多いかも」 魔翌力を結構消費しちゃうからヒーリングばっかりだけどね、とアルルは無邪気に笑った。 固法と黒子はいよいよ信じるしかない。二人の戦闘中、固法の携帯に一通のメールが入っていたことも真偽を明かしている。 初春から、「どれだけ甘く検索かけても、やはりそのような能力は見当たりません」と。 ぽつりと黒子は言葉を漏らした。 黒子「……本当ですのね、貴方の話は」 アルル「信じてくれる?まあ、さすがに信じがたい話ではあるよね」 固法「あなたの能力がその話を証明しているのよ、はいどうぞ」 完全に回復した身体で近くのベンチに腰掛け、アルルにも同様に促す。 固法もジュースを黒子とアルルに一本ずつ渡して、黒子の隣に腰を下ろす。 ここではじめて黒子は学園都市について語った。 ここら周辺は学園都市と呼ばれる大きな街だということから、能力を開発すること、それが一人に一つしか宿らないことまで。 七人の超能力者、自分が大能力者であること、約六割が無能力者であることなども触れておいた。 途中、超能力者の件で黒子がとある一人の少女を語りすぎて暴走して固法に取り押さえられるという事態も発生したが。 書庫には生徒たちとその能力がデータ化されて全て登録されていることを話すと、アルルは不思議そうな顔をした。 アルル「データって…テレビみたいなあれ?」 黒子「テレビもデータといえばデータですわね。機械に0と1で記された暗号や赤・黄・青を読みとらせて、色や文字を表示させるのです。 情報を詰め込んでいるだけなので、紙のようにかさばることもないためにこれくらいの小さなものにも膨大なデータが収まりますの」 アルル「へえ~、すごいや」 黒子は自分の携帯電話を見せながら解説する。 常識だと思っていることを言葉で説明することは思いのほか難しいが、ギリギリわかってくれているようだ。 アルル「これはだあれ?」 携帯の待ち受けを指差して、アルルは単純に疑問を持ち尋ねたのだが、 黒子「そう!これが!先ほど語りました御坂美琴お姉様ですの!この麗しき瞳と凛々しき表情ッ!!そしてこのぷるぷるの唇…!!ああん、黒子がきっと頂いてみせましょう!そして願わくは(以下省略)」 黒子はマシンガントークモードに入ってしまい、少し質問したことを後悔した。 固法は苦笑しながらアルルに告げる。 固法「白井さんはこうなると止まらないから……私たちは一度支部に戻るけど、貴方も一緒に来てもらえないかしら?」 アルル「うん、行くあてもないし大丈夫だけど。何かあるの?」 固法「先ほども言ったけど、支部では貴方の知り合いらしき女性の捜索が急がれているわ。 彼女の情報を一番知っているのは貴方じゃないかしらと思って。協力を頼みたいの」 アルルはようやく彼女のことを思い出した。 元の世界の話を信じてもらうのに精一杯で今まできれいさっぱり失念していたことに、心の中でルルーに謝る。 ゴメン、今度カレーおごるから!と。 アルル「それならボクから協力させてもらいたいくらいだよ! ボクも元の世界に戻る方法を見つけたいから、こっちに来てる人とは早く合流したいし」 ありがとう、と固法は笑った。 そして「ほら白井さん!!」と花園の世界へ旅立っている黒子の耳を引っ張って現実世界へ呼び戻す。 固法「幸い、うちの支部の近くで姿を見せているそうだからなんとかなるんじゃないかしら。 もう一度情報を得なおしましょう」 アルル「うん!」 --------------- 一方その頃。インデックスは一人の少年を探して第七学区をふらふらと歩き回っていた。 そこまでして探す理由は、空腹に耐えきれなくなったからという単純なものだ。 禁書「うう……とうまひどいんだよ用事あるからっていってお昼ご飯だけおいていっておやつを置いてかないとかありえないのに楽しい楽しいティータイムしたいんだよねぇスフィンクス」 にゃあ、と猫は賢く返答するが、その言葉に同意しているわけではなさそうだ。 むしろ不機嫌なのか、インデックスにしっぽをむけて耳を前足でかりかり掻いている。 それも、空腹に耐えかねたインデックスがスフィンクスの魚肉ソーセージを食べたからなのだが。 そんなこんなで上条を求める一人と一匹はみた。 長い耳、丸っこいを通り越してただ丸い体、額には赤い宝石のような石がついている黄色いものを。 十万三千冊もの知識を有するインデックスの頭に数え切れないハテナが浮かぶ。 インデックス「な……なにあれ?生き物……だよね?」 スフィンクスはにゃあと鳴く。 何を言ったのかインデックスにはわからないが、その声に反応して、黄色い生物はくるりとこちらを向いた。 ??「ぐうー」 スフィンクス「にゃあ」 ??「ぐぐぐっぐーぐぐー、ぐう」 スフィンクス「にゃあ、にゃー」 禁書「…………全然わからないんだよ」 いくらインデックスといえど人間語以外は理解できず、頭の中のハテナはどんどん増えて行くばかりだ。 そこに、その疑問をどうでもいいと言わんばかりに、彼女の空腹感が自己主張を再開しだした。 禁書「…けど、おなかへった」グー ??「ぐうー」グウー 禁書「!!きみもおなかへってるの?」 ??「ぐう!」 禁書「じゃあ、一緒にとうまを探そうよ。ごはんくれるんだよ」 ??「ぐーっ!」 改めて、上条当麻を見つけ隊、一匹(?)プラスアルファバージョンは上条の捜 索に忙しい。 空腹で倒れるまでがタイムリミットだ!いそげインデックス! ……とばかりに自分を鼓舞するものの、空腹で力はどんどん落ちていく。 お昼ご飯はとうの昔に消化されきっていて、胃液だけが痛い。 と、ぐーぐー鳴いている黄色い生き物が動き出した。 ぐ!と一声なにやら叫んだ後、一直線に人ごみの中に走り出す。 ??「ぐーーーっ!!」 禁書「!?待つんだよ!わたしはそこまで早く走れないし何よりおなかがすきすぎてこれ以上……」 そんな言葉とは裏腹に黄色い生き物は人ごみに消える。 唯一の情けというべきか、スフィンクスはインデックスの隣に座り、しっぽをゆるく振っていた。 禁書「ううー……」 何やらよくわからない出会いとその直後に訪れた何やらよくわからない別れのせいで、ただでさえ残り少なかったHPは最早ゼロ近い。 インデックスは食い倒れの悪寒に震えたが、そこに二つの影が現れる。 ??「ぐうー」グゥー ??「はぁ……カーバンクルが呼んでるからサタンさまだと思ったのにこんなちっちゃい子なの? 空腹で耐え切れなくて倒れてるってところかしら」 別れたはずの黄色い生き物と、水色の長髪が印象的な女性が彼女の前にやってきていた。 カーバンクルが連れてきた女とカーバンクル自身を何度か見比べて、インデックスはきらきらと効果音が出そうなくらいに瞳を輝かせた。 おなかへった。 何も言わず、けれどぐぅ~という腹の音は隠せずに、インデックスは言いたいことをきっちりと伝えてくる。 ルルーはあまりの期待のされかたに思わず、―― ルルー「本来貴方を私が助けても何の得にもならないんだけど……カーバンクルが居るのなら放置するわけにも行かないのよね。 あんたこの街の人?」 禁書「……?違うよ。この街に来てから結構経ってるし、とうまの学生寮に居るけど、ここで育ったわけじゃないかも」 ルルー「まあこの街のことはある程度知ってるのね?ならいいわ。 私は初めて此処に来たんだけど、何が何やらさっぱりなのよ。それについて教えなさい」 禁書「…………そしたらご飯くれる?」 ルルー「その程度なら構わないわよ。カーバンクルも来なさい」 ――インデックスに食事を与えてしまう。それが致命的なことになることも知らずに。 インデックスとカーバンクルは抱き合って大喜びしながらよくわからない歓喜の声をあげて喜んでいる。 ルルー「と、いうわけであんた食事出来るところに案内しなさい」 禁書「…歩けないかも」 ルルー「はあ!?」 とはいえ、まだ食事への道は長そうだ。 アルル・ナジャと白井黒子は不穏な状況での邂逅から一変、町の案内と人探しという小さな冒険を作りだす。 一方で、インデックスをルルーがおんぶした形で、ルルーとカーバンクルとインデックスの食事探しの短い旅は始まる。 この二つが交差する時はじわりじわりと迫っている。 そして、それとは別の新たな交差もまた、この学園都市で始まろうとしていた。 ルルー「ここでいいのね?」 禁書「ありがとう!!はいろはいろはいろ~!!」 カーバンクル「ぐーぐーぐー!!」 ルルー「二重奏しない!ええいさっさと入りなさいよ鬱陶しい!!」 と、なんだかんだでレストラン、ウエイターさんの真ん前にて。 何が食べたいのかとルルーが聞いたら、インデックスは何食べてもいいのかと嬉しそうに尋ね返して。 普通何食べてもいいでしょと疑問に思いながらルルーが肯定の意を返したら、インデックスはメニューを片っ端から指差していった。 思わず絶句しながらもルルーはカーバンクルのためにカレーをとりあえず十皿くらい注文してから、自分のパエリアを頼む。 ルルー(……まあ、お金なら有り余ってるから問題ないもの) とはいえ、カーバンクルに対抗できる程の大食いなんて初めて見たのだからルルーは驚きを隠せない。 一匹と一人の食事の光景に思わず胃を抑えかけながら、ルルーはようやく本題を切り出すことにした。 ルルー「それで、ここはどこなのかしら」 禁書「んぐんぐ、ほえ?あなたはどこから、んぐっ、来たの??」 ルルー「それが、」 別の世界なのよねえ、と。 ルルーは何気なく、買えばなんとかなる落とし物を探すような口調でとんでもないことを言ってのけた。 インデックスはへえそうなんだと思いながら最後の一口のハンバーグを口に運びかけて、数秒して目の前の女の言葉を理解した後、固まった。 禁書「…………………えっ?」 ルルー「少しばかりインパクトが強すぎたかしら。まあ私も三度目となれば驚かなくなっちゃったのよ」 禁書「……驚かないどころの話じゃないんだよ?とうまの右手並に信じられないかも」 ルルー「まあとりあえず信じなさい。それで?ここはどこなのかしら」 禁書「…………にわかに信じられないけど……ここは学園都市だよ」 ルルー「学園都市??」 禁書「えっとね、『学園都市とは約230万人の学生と教師による日本国東京都を中心とした巨大な都市であり……」 インデックスは以前調べたり聞いたことのある内容から、学園都市についてのあらゆることをすらすらと述べていく。 ルルーがその言葉を噛み砕く際に何度か呼び止めたこともあったが、彼女の完全記憶能力のおかげか、学園都市の人間ではないインデックスは、それでも何一つ矛盾点や疑問点が浮かばない完璧な解説をしてみせた。 ルルーも、実はこの都市内にいるアルル同様に、二度目に訪れた町を思い浮かべる。 飛んできた場所は違うものの、後にアルルと合流した後に訪れた町はそういえば「ニホン」と呼ばれていた気もするし、町の雰囲気もなんとなく通じるものがある。 ルルー「なるほどねえ……」 禁書「なんか質問とかあったら答えるよ?私は一応ゲスト扱いだから答えられることはあまり多くないと思うけど」 ルルー「大丈夫よ。 とはいえ、信じがたいわよね。チカラがほとんど全員が頭いじくらないと何かしらのチカラは使えないわけ?それも一種類だけなのね。 私は使えないけど、私の周りには何種もの魔法を使いこなすやつがわんさか居るのに」 その言葉に再びインデックスは驚きを露にした。 禁書「……え?魔術師………?」 インデックスの中では、魔術と科学は完全に分断されている。 「とうま」こと上条当麻は例外的にそのどちらにも属しているが、学園都市について話すにあたっては完全に科学サイドについてしか考えてなかった。 それなのに、突然「魔法」と、魔術用語が出てきたのだから。 禁書「……?魔術師なの?あなたの知り合いって」 ルルー「? 魔術師って単語は聞かないわ。魔導師、かしら。アルルっていうこの黄色い子の保護者はまだ卵らしいけど」 禁書「…………え」 それなのに魔法はばんばん使ってくるのに、と不平を漏らすようにルルーは、インデックスの変化に気付かず呑気に付け足した。 ここでルルーとインデックスの「魔導師」の解釈は大きく異なっている。 ルルーのいう魔導師とは何かしらの現存する魔法を使いこなすだけでなくさらなる進化を求めて改良を加えていく魔法使いである。 一方でインデックスのいう魔導師とは、原点やその写本などから学び得た知識を後世へ残していくものである。 どちらにせよ魔法を扱う者の中でかなり上位に立つ者、ではある。 しかし、その定義のずれを指摘することは出来るものはこのレストランになんか居るはずもなく、互いに共通した知識があるという勘違いだけがここにある。 ただの学園都市の人間ではないインデックスには問題があった。自身の立場についてだ。 禁書目録として十万三千冊の原点を所有する彼女にとって魔導師は危険な存在だ。 禁書(……どうしよう、別の世界から来ただなんてあまりにも坦々と言ってたから、私の知識に無くても信じかけてたけど、 魔術を知ってるだなんて…ハッタリだったのかも) その様子にルルーは気づかない。 インデックスは普段はのんびりとしているように見えても緊急時には冷静な判断を下す。その判断が命取りにならないように思考を隠すことも難しいことではなかったから。 ルルー「そういえばアルルの名前だして思ったのだけれど、まだ名乗っていなかったわね。私はルルーだけど、貴方の名前は?」 禁書「……私は、――――」 けれど、インデックスは言葉に詰まってしまう。 全く別の世界が交差するというとんでもない事実がもたらす被害は大きい。 誰が悪いというわけでもなく、ただ両者に通ずる知識が不足しすぎているだけだった。禁書目録でさえも。 ふと言葉を紡ぎだせなくなった目の前の少女にようやく気付き、ルルーは少し驚いた。 あまりこの少女が名前を出せない程の理由があるように見えないのだ。 ルルーはしばらく黙った後、敢えて何も問いたださずに話をそらした。 ルルー「まあどうでもいいことね。とりあえずはカーバンクルが居ることですしアルルを探したいの。 あんた、この街の案内できる?」 禁書「……ごめんね。とうまに何も言わずに出てきちゃったから、はやく帰らないといけないかも」 その言葉の裏に「アルルという魔導師がもし自分を狙っていて、自分の顔を知っているのなら会いたくない」という意図があるのだが、ルルーはそこまでは気付かない。 インデックス自身も彼女が悪い人だとは思っていないが、万が一を考えると危険は避けて通るべきだ。 禁書(―――それに、何かあったらまたとうまに迷惑かけちゃうしね) あの一見頼りなさげに見えるがとても心強い少年を思い出しながら、インデックスは別れの道を選んだ。 ルルー「あ、そう。まあいいわ。けれどこのカーバンクルは頂いていくわね」 カーバンクル「ぐぐー」 禁書「うん、また縁が会ったら一緒にごはん食べようね、カーバンクル」 カーバンクル「ぐー」 インデックスは短い時間で知りあった奇妙な仲間と別れを惜しんでいるつもりなのだが、カーバンクルはまだまだ食べられるらしく13杯めのカレーに取り掛かっている。 その様子をみてもう少しカレー食べようかな、とインデックスは何気なく思って。 そこでふと単純な問題に気付いた。 けれど、もしルルーの話が本当なら、とてつもなく重大な問題だ。 禁書「あなたって別の世界から来たの?」 ルルー「はあ?何度も言ってるじゃない。そうよ」 禁書「………おかねは?」 ルルー「……………あ」 禁書「…………………………あなたが持ってるお金は使えないのかな」 ルルー「……これは使えるかしら」 禁書「……そんなお金見たこと無いから無理かも」 ルルー禁書「「…………………」」 ほんの数十秒で空気は冷めきって、カーバンクルがたてる皿の音だけがかちかちと響く。 禁書「これって……無銭飲食だよね」 ルルー「……そうね」 禁書「…………どうしよう。ケイタイデンワーっていう連絡するのがあるけど、わたし使い方わからないし」 ルルー「……携帯電話?」 ルルーはふとその言葉に反応した。 そういえば、少し前にこことは別の世界に飛んだとき、皆がその携帯電話なるものを使っていたのだ。 すべての機械に番号が振られており、番号を押すとその番号の者に連絡がかかるらしいが。 ルルーはアルルがとある赤髪の少女のを借りて扱うのを横で見ていただけなので使ったことはないが、わりと簡単な操作だった気がする。 ルルー「それ、私が二度目にとんだ世界で見たことがあるわ。貸しなさい」 禁書「え?うん、いいけど……私に使い方聞かれても何も答えられないよ?」 ルルー「記憶のルルちゃんを舐めないで頂戴」 ぺろりと舌で上唇を舐めて、ルルーはきわめて魅力的に勝ち誇ったような笑みを浮かべる。 そんなルルーの言葉にインデックスは、むぅ、と頬を膨らませて「私だって記憶力は自信あるもん」とぶつぶつと不平を漏らす。 もっともそのトンデモ記憶力は科学技術に対応しきれていないから意味が無いのだが。 ルルー「確かこの十字のどれかを押して…と、違うわね。じゃあ次は……あ、これかしら」 機械の扱い方がわからないインデックスも押すボタンしかわかっていないルルーもわからなかったのだが、それは着信記録の一覧だった。 一覧から現れた名前は全てが「上条当麻」だ。 ルルーはその少年が「とうま」と呼ばれていたことからもこれかと推測しつつ、念のためインデックスに確認をとる。 インデックスはそれそれ!と大きく頷き、ルルーによって通話ボタンを押された携帯電話を受け取った。 つー、つー、という音がインデックスの耳に響く。 しばらく機械音が続いた後、ぷつりと音がして、彼女が聞き慣れている少年の声が聞こえてきた。 上条「……インデックス、なのか?」 禁書「あ!とうまだ!うん、私だよ!」 上条「突然どうして……もしかしてまたなんか事件が起こったのか?っていうかお前携帯使えたのか……」 禁書「ケイタイデンワーはね、ルルーにかけてもらったの! いろいろあるといえばあるんだけど、とりあえず第七学区のレストランに居るから来てほしいかも。夏休みに読書感想文書いたとこ」 上条「はあ?ルルー??とりあえず俺今から教室掃除してから行くから、30分はかかるぞ」 禁書「うん、じゃあ待ってるね。あのね、お金が無くて食事代が払えないの」 上条「ん、わかった………………って、はあああああああ!?」 ただでさえ貧乏生活を送っている上条がその言葉に反応するのは言うまでもなく。 そもそもなんで払えないのにレストランに入ったんだ、という至極真っ当な疑問すらどこかに飛んで行ってしまっている。 禁書「ルルーがおかね持ってると思ってたら持ってなかったんだよ。だから待ってるね」 インデックスはふと、あの少年がこれだけの食事の代金を払えるのか疑問に思いながらも、ルルーに携帯を渡した。 インデックス限定なら辛うじて行けるかもしれないが、ここにはカーバンクルが居て、二人に比べると少ないがルルーも食事をとっている。 禁書(……無理かも?) ルルーはそんな懸念も知らず、電話の終了ボタンをよくわからずに長押しして、携帯電話の電源が切られた。 上条「おい、インデックスちょっと話を聞かせろ!だからルルーって――」 携帯電話からはつーつーと、通話が終了した合図しか聞こえない。 上条は財布の中を確認する。三千二百円。 インデックスがただの少女なら問題なく払える額だが生憎と彼女は「ただの少女」どころではすまないレベルの大食らいである。 一つ百円のハンバーガーならともかく、あそこのレストランは子供用メニューでも四百円前後からだ。 誰かにおごってもらうつもりで食べているのなら彼女は遠慮しないだろうからまず三千二百円は飛んでいくし、きっとその誰かの食費も払う羽目になる。 上条(…………死んだ。俺は死んだ!払えるかよチクショー!この三千二百円は安売りのための貯金だったのに……ってそれどころじゃない!) 上条(補助金支給が近いからおろしてくる金もせいぜい五百円程度……か。) 救いを求めるように教室を見回しても、掃除当番だけが残っている教室には土御門も青髪ピアスも居ない。 正確には土御門は当番のはずなのだが、さぼるにゃーよろしくにゃーとニヤニヤとトンズラされている。 姫神も居るが、彼女もそこまで金に余裕があるわけではなさそうだし、それよりも女子から金を借りるということがプライド的にあまり喜ばしくない。 ……というか、無能力者ばかりが集まるこの学校で金が有り余ってそうな人など、思い浮かばない。 せいぜい必要悪の教会から金が入ってるかもしれない土御門程度か。ちくしょうあいつなんで逃げやがった、と上条は一人愚痴を吐く。 上条(マジで不幸だ……逮捕か俺) こんなときほどすぎる時刻は早い。 上条は学校を陰鬱なオーラと共に出て、とぼとぼと行きたくないレストランの方向へ向かう。 待ってるね、と一切の邪気の無い声で言ったインデックスの声と、無銭飲食で逮捕の二文字がちかちかと点滅する。 と、そこに。 「あ、やっほー。なーに普段よりさらに暗い顔してんのアンタは?」 上条には彼女がまぶしい光を放っているように見えた。 先ほど姫神に金を借りることを断った理由は確かに彼女にも当てはまるはずなのに、その理由はどこかに飛んでいっていた。 彼にはブレザー姿のその少女を見て思わず言葉を漏らした。 上条「ああっ女神さま!!!」 美琴「私それ読んだことないんだけ………って、はああああ!?!?!?」 --------------- 土御門元春はバイブで震える携帯電話の電源を切った。 画面にはメール:上条当麻と表示されている。彼は親友であり見逃すことのできない存在だが生憎と今はそれに構ってる余裕が無い。 バイブレータの音ひとつが命ひとつとイコールマークを結ぶのなら危険はさっさと排除しておくに限る。 てめえ掃除逃げんなとか書かれているのだろうか、と土御門は適当に推測した。 ――仕事が入りました。複雑な事情のようで、統括理事長直々の依頼です。詳細は全員が集まり次第説明します。 先程授業が終わった途端にかかってきた電話がこれだ。 素顔も知らない上司からの命令も、自分のスパイのスパイという肩書き上へたに逆らうこともできないから、「とりあえず従っておく」ために学校を急いで抜け出す。 掃除当番は彼に任せておけばいい。 彼が万が一暗部組織について知ったらまた一悶着起きることも容易に想像できる。 下手に探らせないためにも、「彼」については短時間でも教室に置いておいた方がいいというのが土御門の考えだった。 そうして「主人公」が知らないまま、グループは今日も動き出す。 日常に紛れ込んで近くをとろとろと走っていた非日常に乗り込むと、既に白い超能力者と露出狂の大能力者が集まっていた。 海原はまだ学校に居るのだろう、ワゴン車は彼の潜入先の学校に向かって静かに動き出す。 そういえばこいつらは引きこもりだったか、と土御門は思わずぼそりと呟くと、結標が唇を尖らせて「公欠よ」と反論を返す。 一方通行は無視してごろごろと簡易ベッドで転がりながら携帯のボタンを連打している。 注意深い土御門ですら「なんとなく」程度しかわからないが、彼はそこまで不機嫌ではないらしいことから、宛先の予想はついた。 土御門「……そろそろ電源を切っておけよ。お前のことだから命取りにはならないだろうが、万が一のためだ」 一方通行「俺がそンなヘマするように見えンのか鬱陶しい」 とはいえ口の悪さはいつも通りであったが、土御門はそこに気にかけもしない。 結局は仲間の無事を確保することで自分の命を保証するという自己勝手な意図しか、このどす黒い暗部にはないのだから。 そこで。 がたり。 突然静かに進むはずの車が、平坦な道で左右に大きく揺れた。 それもハンドルを切り損ねたようなものではなく、台風に煽られたかのように。 土御門「―――!?」 一方「……」カチリ 結標「――」 だらりとしていた『グループ』の面子に、その刹那緊張が走る。 土御門は拳銃を握り、一方通行はチョーカーのスイッチを最大まで押し上げ、結標は隣に置いたコルク抜きの位置を改めて目で確認しなおす。 彼らが限りある武器や能力の制限時間に躊躇わなかったのは揺れるまで一切の予兆が見当たらなかったからか。 土御門「スピードを落とすな」 土御門は運転手にそう命令した後、一方通行にワゴン車の辺りを確認するよう言う。 一方通行は他人に命令されるのが不服なのかひとつ舌打ちをしたが、車窓をがらりと開けてそこに足をかけ、上半身を乗り出した。 左右には何も見当たらなく、下は乗り出す際に何も見なかった、と車の上を見上げた瞬間に何かが飛んできた。 それが何かを視認する前に、一方通行の視界が闇に覆われる。 身体が思い通りに動かず、彼の身体はワゴン車に振り落とされる。 だが、地に叩きつけられた(と、一方通行は感覚から推定した)身体は何の痛みも発しない。 一方(何、が……?) 恐らく、身体は動かなくても無意識下の反射が適用されているから最小限のダメージに抑えられたのだろうと一方通行は考える。 だがどのようなベクトルをどう操作しても、なぜ身体は動かないのか。視界は戻らないのか。 一方通行は理解できず、頭の中で情報の解析を全力で行う。 だが、その数秒後にふと闇は消える。身体も楽に動く。 一方通行は去っていくワゴン車を注視したが、そこには何の怪しさもなかった。 車道に立ち止まっていた一方通行は軽くジャンプしてその足のベクトルを操作し、歩道まで一歩で移動した。 先程まで乗っていた車は去ってしまっている。何もなかったことにして海原を迎えに行ったのだろうか。 一方通行はため息を吐いた後、携帯電話を開き「いや明日は特に何の予定もな」とまで書いて止まっているメールをボタン2回で放棄したあと、土御門に電話をかける。 しかしツーツーと機械音が流れるだけで電話は繋がらない。 先程土御門は電源を切っていたか、と一方通行が気付いた直後、結標から着信が来た。 結標「もしもし、死んでる?」 一方「お生憎様だがピンピンだ」 結標「あ、そう残念。こちらには何も起こっていないわね。 とりあえず今引き返して迎えに行っているところよ。もう着くでしょうから適当なところで待っていて頂戴」 何を返させる間もなく通話は終了した。 自分を迎えに来ることに少なからず驚きながらも右を向くと、なるほどワゴン車は間もなくやってきた。 念のため能力使用制限のスイッチを解放したまま乗り込み、車が「静かに」動き出したのを確認してスイッチを切る。 一方「携帯切れっつった後にコレかよ」 土御門「悪いな。想定外だった」 大して悪びれる様子もなく土御門は適当に返しながらも携帯の電源を入れることにした。 メールが一件。内容は「助けて金くれ俺逮捕される」とのこと。上やんらしいにゃあと思いながらも返信はしない。 結標「――何が起こったのよ」 一方「知るかクソボケ」 一方通行の機嫌は素晴らしく右肩下がりだった。 その一番の原因はやはり自分の能力が何も役立たなかったこと、そしてその原因が理解できないことか。 彼の能力にも、窒素や酸素など生命維持に必要なものは普段反射していないから対応がし辛いなどといった穴はあるが、それだけで説明がつくものではなかった。 使用された能力が一方通行にはわからない。 土御門「一方通行が『反射』出来なかったということは…魔術か?」 土御門はぽつりと一言つぶやいた。 魔術。 一方通行と結標はその言葉を以前数回聞いたことがある。 海原と土御門の会話に紛れていた単語だ。 ――そういえば土御門は別種の異能の力とでも呼んでいたか。 一方通行はとある抗争前の一言を思い出す。 科学的でない方法で得た能力科学の頂点に立つ一方通行としては、ある意味でもっとも厄介な敵になるかもしれない。 もっとも先程の魔術とやらなのかはわかっていないが。土御門も断定はできていないらしい。 いつ再び敵襲が来るかとの緊張感が消えないまま、ワゴン車はいつのまにか海原を拾うポイントまで来ていたらしい。 柄にもなく平和に車は止まり、海原が入ってきた。 彼はいつもと漂う雰囲気が違うことに微かに眉をひそめた。 海原「どうかされましたか?」 それに返答しようと土御門は口を開き、声を出すところでワゴン車に付いているテレビ電話機能に通信が入る。 SOUND ONLYとの画面と共に何時もの電話の男の声が流れてきた。 『彼が説明するより私が説明する方が手っ取り早いでしょうから今回の仕事内容をお話しします』 皆の意識はスピーカーに注目する。 アイドリングストップを知らぬ車のガソリン音はうるさいはずなのに、電話の声以外の音は何も聞こえなくなる。 『学園都市に複数の侵入者が現れているということでその調査と、その侵入者たちの確保が今回の仕事です。 先程の襲撃の報告も既に受けましたが、それも侵入者の一人によるものだとほぼ確定してよいと統括理事長は判断されました。 さて、ここからがわざわざ私がこうやって話す理由となりますが…… 襲撃時もこの車内に居た土御門さんは侵入者を魔術師と考えているでしょうが、魔術師ではありません。 私も俄かに信じがたいのですが、侵入者のうち比較的友好的な者は自身を『異世界からやってきた者』と自称しているようで、 その言動などからも、今のところはそれが真実だと認めざるを得ないそうです』 しばらくの沈黙後、結標が「はあ?」と思いっきり呆れた声をあげたことで、他三人の硬直もようやく解けた。 土御門「……まあ仮に異世界人だとして、そうするとIDカードも無いんだろう?資料はあるのか?」 土御門は驚きつつも表面上の平静を取り戻し、電話の男に問うた。 俄かに信じがたい話を敢えて仮定とする程度までに留めておいたのは、やはり統括理事長からの直接依頼だというのが最も大きい。 一方通行も海原も結標もおそらく同じだろうと土御門は勝手に虫の良いひとりぎめをしておいて、さっさと仕事の実行へ進もうとする。 『そうですね。IDカードは誰一人として持っていません。 滞空回線から画像と声質、今までの行動パターンなどといった情報を一人ずつまとめていますからそれをお渡しすることになります。 とはいえ現状では確保すべき人が何人いるかも正確に判明していませんから、まずは大きく行動している三人のみの確保となりますが』 一方「まずは三人って、何人で鬼ごっこしてりゃ気が済むンだよ」 心底面倒くさそうに言い返したのは一方通行だ。 能力の性質と制限時間上、ターゲットを見つけ次第さっさと殺すほうが得意である彼としては、怪我をさせない程度の手加減のほうが面倒臭い。 不完全燃焼だろ、と彼は誰に告げているわけでもなくぼやいた。 そんな一方通行の愚痴を聞かなかったことにした電話の男は土御門の望み通りにさっさと話を進めていく。 『まず海原光貴さん。今回は表の人々とのかかわりが予想されますのでこちらで残りの三人の情報整理と送信を。 土御門さんは現在第七学区の南部に居る二人の女の確保をお願いします。特にうち一人はあなたの知人と現在関わっているようですから。 それから一方通行さんと結標さんは二人がかりでこの男の確保をお願いします』 突然SOUND ONLYと表示されていた画面は写真画像に切り替わる。 まず表示されたのは茶髪の、まだ十四歳程度に見える少女と青い長髪の成人に近いであろう女性。 全く別のところの写真ではあったが、一度に表示されたことと二人の性別から土御門が受け持つ資料だとわかる。 次に現れた写真に写っていた男は、グループの男三人が思わず結標の髪の長さと見比べてしまうほどの長髪の人物だった。 驚くほどまとまっているストレートの緑色の髪。しかも頭には何か三角のものが付いている。 まるで角のようだ、と一方通行は漠然と感じた。 結標「……まあ随分とカラフルなお方たちで」 土御門「緑髪に青髪か。青髪は知り合いに居るが……それにしても分かりやすそうな色をしているな」 一方「三人目はわざわざ二人使ってでも探す必要ねェだろ。飛びぬけて見つけやすすぎる」 海原「………………いえあなた方も十分にカラフルでだと思いますが」 海原の必死の突っ込みは一方通行の舌打ちで清々しく霧散した。 ともかく、目立つ色をしていることはすなわち命を狙われやすいことであるとわかっているのか、全員が彼女らの衣装に違和感を覚えたらしい。 自分の命に直結することを第一に考えるあたりが皆暗部にいるからこその思考なのだが。 一人目の少女はアーマーを無くして十歩くらい譲ればまだ許せるとして、残りの二人がさすがに異質すぎる。 それこそどこかのRPGゲームに出てきそうな衣装だ。 『そうですね。その分探しやすいのは利点だと思われます。 とはいえ三人目を二人がかりで探していただくのはそれなりに理由がありまして…… 彼はどうも翼を出して空を飛んだりテレポートしたりものすごいスピードで走っていったりと、万が一の時に逃げられる可能性が高いのです。 この方のみ『窓の無いビル』に案内しろとの命令なので結標さんが。空を飛ぶなら空を飛べる一方通行さんがということであなた方二人が必要なのです』 窓の無いビルと聞いて眉を潜めたのは、『案内人』である結標ではなく、学園都市第一位である一方通行でもなく、土御門だ。 スパイとして彼に直接仕える形となっている土御門は二人よりもアレイスターとその綿密な計画をよく知っている。 アレイスターがわざわざ細部が不明の人物を、危険を承知してまで呼ぶ理由がない。 ご自慢の科学で証明ができない魔術サイドの者の可能性があるなら尚更だ。 土御門(……いや) けれど彼はその答えを知っている。 本当は自分の立場から薄々気付いている。 土御門(異世界などと謳う魔術らしきもの……『計画』の大幅な変更が懸念されるか、あるいは『計画』に予め組み込んでいるか) 土御門は後者と考える。 なにせあのアレイスター・クロウリーだ。演技次第でどうこうなる主張を簡単に真に受ける人物などではない。 『さて。話すことはそれくらいでしょうか。資料を間もなく送りますので、送り次第仕事開始となります。 その車は土御門さんを送るために第七学区南部へ向かいます。確保したらまずは一報お願いしますね。それではご武運を』 暗部のオシゴトは今日もひっそりと幕を開ける。 --------------- アルルは風紀委員の二人とのんびりと、非常にのんびりと風紀委員第一七七支部へと向かう。 足取りは軽いものの、何か店がある度に進む方向があちらへ行ったりこちらへ行ったりしている。 彼女らの詳細な移動記録を取って見れば、きっと蛇のようにぐねぐねとしていることだろう。 アルル「なんか画期的な道具ばっかりだね!削る必要のない鉛筆なんて…!!まるで世界が違うみたいだ!」 黒子「実際に違うでしょうに」 シャープペンシルひとつに驚くアルルを見ていると黒子も固法も自然に昔を思い出してしまう。 まだ学園都市に来る前の頃、科学に疎かった時代を。 素直におばけや妖怪の噂話を信じて怖がっていた過去を。 アルルの話によれば、お化けや亡霊などのモンスターなども出てくるらしい。 それは即ち完全に科学と切り離された世界である。 「科学的に」という言い訳が通用しないのがあたりまえの場所は、見たこともないはずなのに不思議な懐かしさがある気がする。 アルルの言動が幼く見えるのもそのせいか。 そこで黒子はごく自然に、同い年かせいぜい一つ上に見えるアルルに質問した。 黒子「そういえば貴女、年齢はおいくつで?」 アルルは固法に奢ってもらったいちごクレープをのクリームを口に付けながら、もぐもぐと口を動かして答える。 アルル「ん、十六!」 風紀委員の二人が同時に「え」と素っ頓狂な声を出した。 アルルはそれに気付かずクレープの包み紙をゴミ箱に捨てて、新たに目移りしたのか、ショッピングモールの入口にある小さな花屋の花をじっと眺めている。 造花にちょこんと指を置いて、硬質さが意外だったのかおおっと驚いた仕草をしてみせた。 黒子「…………三つ上、ですか」 学校一つ違うと思ってはいなかった黒子は何故か半ば茫然と息を吐く。 つくづく変なお方に出会ってしまった、と思った。 気持ちはわかるがここまで奔放に動かれると、風紀委員としての目的も忘れそうである。 ただの観光になっていないだろうか、と固法は残る二人に呼び掛ける。 固法「ほら、ルルーさんを探すんでしょう?」 アルル「ああ、そういえばそうだっけ!忘れてた」 黒子「……友人ではありませんの?」 アルル「あは、友達だけど……つい楽しくて」 うん、そろそろ探そう、とアルルはようやくまっすぐな道を歩き始めた。 時たま興味の惹かれる店でもあるのか、瞳を輝かせて街角を見つめるものの、ぶんぶんと首を振って前方に向き直る。 なかなかオーバーリアクションな少女だった。見ていて飽きない少女だ。 そこで、ふと固法の携帯がかわいらしい着信音を鳴らした。 数歩先歩いていたアルルが反応して首をかしげる。 なんのおと?とアルルは口を開きかけたが、黒子が携帯を取り出している固法を指差したのを見て、納得して何も言わずに口を閉じた。 戻ってきた彼女は固法の隣でじっと携帯を見つめていた。 固法「もしもし?」 初春「あい、私です。アルルさんがそちらに居るのかわかりませんが、ちょっと構いませんか?」 淡々と事務的な調子で告げる初春に固法は眉をひそめた。 固法「どうかしたの?」 初春「ええと、ルルーさんとやらの捜索が突如打ち切りになりました。上の方で特殊な捜索部隊が動くようで。 それとそちらに居る彼女のことなんですが」 すう、と一息おいて初春は告げる。 固法は空気がしんと凍っていくのを静かに感じていた。10月もまだ前半だというのにいやに肌寒く感じる。 初春「彼女は一七七支部で保護しておいて外出させないようにと。誰かが迎えに来るらしいです」 要するに一単語で言いきってしまえば軟禁である。 固法「…………それは、」 初春『あ、ご安心ください。出来るだけ早くに来てもらうよう頼みつけたので、お茶か食事でもしていればすぐかと思いますよ』 どれくらい彼女を閉じ込める必要があるのか。そう聞こうとした固法の質問は、最後まで言わせずに返ってきた。 ほんの数時間なら軟禁というレベルでもなさそうか、と固法は静かに息を吐いた。 そこで、ふと視線を落とすと二人の少女がこちらをじっと見ていることに気付く。 雰囲気がわかったのだろうか、黒子がアルルにちらと視線を向けてなにやらアピールをしている。 固法「これは本人に伝えても大丈夫そうかしら」 初春『大丈夫ですよ。ただ』 固法「ありがとう。じゃあ私たちも帰るわ」 ぷつり。 固法はアルルに薄い愛想笑いを浮かべて、出来るだけ何事もないかのように告げる。 風紀委員は所詮学生の集まりの組織であって、権力は警備員に比べるとはるかに劣る。 その警備員が出ない程の上位組織が彼女のために出ることは、即ち、「風紀委員なんかが出しゃばるな」と。 先程知り合ったとはいえ、彼女のあっけらかんとした笑顔からも内面は容易に想像できる。 きっと害を与えることはないだろうとは思うが、それでも彼女が望むのなら学園都市をせいいっぱい堪能してほしい。 ごめんね、あなたについて調べるための組織が動き出したんですって。急いで支部に戻りましょう。 黒子は視線を地に落として静かにその言葉を反芻した。 黒子はほんの朧げながらも学園都市の深部を知っている。 自分の尊敬する人物が戦おうとしていた何かしらの理由、一月ほど前に戦った同じ空間移動能力者がかかわっているもの。 最近でいえば、初春の大怪我の原因が意図的に封鎖されていることか。 そうやって過ごしていれば、意外と学園都市というものはどろどろとしていて、裏面はなかなかにどす黒いらしいことは嫌でもわかる。 未知の力の研究という名目があれば何をされるかわからないから恐ろしい、と黒子は思う。 アルル「うん、わかった」 彼女は不安もためらいも一切見せずに肯いた。 そしてふと黒子のやけに固まった無表情の顔に気付くと、笑ってぽんと肩を叩いた。 アルル「大丈夫だよ、ボクもこういうことは何度かされたことあるしね。 それに万が一のことがあったってボクはきっと切り抜けてみせる」 それは、一見気弱そうだが芯の強い同期の風紀委員や、心底尊敬してやまない中学の先輩が、それでも自分の信念や決意を曲げなかったときに使った表情と全く同じだった。 奇しくも、というわけではない。きっと必然的にそのようなものになるのかもしれない。 ならば、その優しさに甘えてしまおう。 「いつか」借りを返せればいいのだ、そういうものを友情というらしいのだから。 黒子「……勘違いされているのではなくて?この白井黒子がそう及ばない実力を持つ貴女のことなど、心配する価値も御座いませんわよ」 アルル「なんかそう言ってくれるのは嬉しいけど、意外とひどーい!! けどけど、ボクもテレポートは対処苦手だから及ばないってわけじゃないと思うよ?」 黒子「個人的にはいくつもいくつも違う能力を使われる方が厄介ですわよ」 独特の明るい会話に戻ってきたところで、支部の姿も大きくなってくる。 きい、と一七七支部の扉を開けると、花飾りを頭につけた少女がちょうど紅茶を入れていた。 ダージリンの優しい香りの中に、もうひとつ甘い匂いが漂っていることに最初に気付いたのは黒子だった。 初春「せっかくですから、ティータイムにしましょうよ。 ほら、前に白井さんにお嬢様チックなダメ出しを食らったからちゃーんとケーキも買ってきちゃいました」 黒子「それは嬉しいですけど……先ほどアルルさんがクレープ食べておられましたわよ?」 あうっ、とかわいらしい声を出したまま固まる初春に、アルルはあわわと手を振って、食べる食べると主張した。 「私はこれから別件に行かなきゃいけないから食べられないけど、太らないようにねー」と固法が釘をさすと黒子とアルルが同時に固まる。 アルル「………うぅ、食べるもん。絶対食べるもん……元の世界に戻ったらダンジョンに潜って走って痩せるもん……」 黒子「……別に私は先ほどクレープ食べてませんし、カロリー的にはまだ余裕が……」 なんだかんだで二人ともなかなかいいペースでショートケーキを堪能しているのだが、言葉の端々から若干の後悔が滲み出ている。 初春も自分のケーキを頬張りながら、ああそういえばと話を切り出す。 初春「アルルさん、同じ世界から学園都市に来た他の人って誰か知ってますかね?」 アルル「ん~?ここでルルーのこと教えてもらった以外はだれも知らないかも。カーくんも見当たらないしなあ……居ないのかな」 初春「かーくん?」 アルル「そっか、言って無かったっけ。このくらいの大きさの黄色い……ウサギ?」 黒子「……疑問形?」 どうもアルルはそのカーくんとやらを表現できないのか、身振り手振りで出来る限り説明する。 それでも無理だとわかると彼女はとうとう紙に書いてみせた。 そこから浮かび上がったのはやはり黒子や初春の知る生き物ではない。モンスター、とでも形容するのが一番適切そうにすら思えてくる。 黒子はその紙を手に取り、まじまじと見つめて、とある一点に目を留めた。 指を指したのは両目の間の少し上にある丸模様だ。 黒子「……この丸いのは?」 アルル「それはルベルクラクって言う宝石だね。なんか特殊な力があるらしくて、前にプリンプっていうまた別の世界に飛ばされた時は 特殊な力を持つメダルにカーくんのそのルベルクラクから光を当てることで元の世界と行き来してたんだ。 だからボクもカーくん探すのが先決かなと思ってるんだけど、ボクも実のところよくわからないからまた別のサタンって人に聞く必要があるかも」 彼女にはさらりと重要なことを流す癖があるんじゃないかと風紀委員の二人はほぼ同時に思った。 さっぱり理解できないです、と初春は詳細を求める。 アルル「要するに、このメダルとカーくんのルベルクラクの力を合わせれば元の世界に戻れると踏んでるんだ。 本当にそれでいけるかどうかは自信がないケド」 詳細なんてものは特になくてただそれだけ、とアルルはぺろりと舌を出しながら照れたように笑う。 初春が聞きたかったのは「その力を合わせただけでなぜ帰れるのか」という部分なのだが、この様子からみると彼女も結果しか把握していないらしい。 頭にクエスチョンマークが尽きないまま、初春はとりあえずの結論を導き出した。 初春「……じゃあ、そうですね。まずはそのカーくんを見つけましょう。うまくいけば迎えが来る前に見つかるかもしれません」 アルル「へ?どうやって?」 学園都市は監視カメラで溢れかえっているんですよ、と初春は笑みを浮かべた。 紅茶をお嬢様らしくなく一気に飲み干して、う~んと身体を伸ばした後、パソコン前に移動する。 アルルも思わず席を立ち後ろからデスクトップを覗き込んだ。 初春はそういう捜索に関しては一流ですからと初春はフォローする。 あまり彼女自身はそういう類は得意ではないのか、呑気にケーキを口に入れている。 初春「この周辺を移動しているようであれば、監視カメラに映ってると思いますから そこから白井さんがテレポートで一気に連れてくる、というのはどうでしょう」 アルル「わあ、すっごい!」 初春「ただ、そのカーくんが白井さんを警戒しないといいのですけど」 黒子「何気なく普通のことを言うように見えてこちらをチラチラ覗くのは嫌味ですの?」 初春「御坂さんが居たりしたらドン引きするかもしれませんからね……って、あいたたたた」 瞬間テレポートした黒子が初春の頭を拳でぐりぐりとこねくりまわす。 アルルはアルルでスキンシップと判断したのか、大丈夫だよ~、と呑気に返事をしながら風紀委員二人を眺めていた。 アルル「カーくんは女の子好きだから君なら喜んで付いていくかも」 初春「それならよかったです。白井さんの邪魔が入りましたが早いうちにパッパと片づけてしまいましょう」 --------------- そんな第一七七支部に一直線に向かうのは一台の黒い大型ワゴンだ。 それに乗っているのは三人の男、正確にはそのうちの運転手を除く二人はまだ少年の域である。 にもかかわらず子供らしさを持たない雰囲気をまとっているのは、暗部特有のものと言えよう。 土御門「たった一人の風紀委員に交渉負けするってどうなんだ……」 海原「まあ、それでも一人を早々確保できた点はかなり喜ぶべきことですよ」 サングラスで鋭い眼光を隠しながら土御門はため息を吐いている。 彼としては無事に場所を固定させることが出来る人間はしばらくそこに置いておいて他の標的を探しに行きたいところだ。 それができなかったのは先述の風紀委員がその固定を条件に最短時間で引き取りに来ることを取り付けたからである。 どうせその近くに居るのだから問題ないように思えるが、交渉を破棄してしまえば彼女らが何かを察して逃がす可能性もある。 それを懸念して交渉に応じた海原だったがそれが土御門には不満らしい。 確かにもう少し上手に出ることもできただろうが、実を言うとその風紀委員がとある少女の知り合いであることが少なからず影響しているのだが。 しかし海原は土御門に言うつもりはない。 「彼女」や彼女の知り合いにこれ以上狙いをつけられることは彼としては決して許さない。 暗部に抵抗したとして何かしらの制裁を受けさせてはならない。 以前、自分が陥れようとしてしまったようなことはもう二度と起こさない。 とある少年が、「彼女」を守ると誓ってくれたのだから。 海原(……そもそもこの暗部に居るのにそんな小さなところまで手を加えるのも馬鹿なものですけれど) 海原は自嘲気味に唇を歪めるが、幸い土御門には気づかれなかったようだ。 運転手は二人に声をかける。 運転手「目的地はもうこの通りにありますから、降りる準備をお願いいたします」 土御門「はいよ」 海原「彼女はこの車に乗せるんですか?」 土御門「いや、数分遅れで護送車がついてきてる。俺は一旦そっちに乗って窓のないビル付近まで行くらしい。 結標たちもそろそろ緑の男に合流しているだろうから、そいつをビルの中に放り込んだ後 風紀委員に保護されてるチビさんも続けてビル内に転移させるってところか」 チビさん本人に聞かれたら本気で怒りだしそうな代名詞を使いながら土御門は言う。 海原「しかしそれで既に二人が確保出来るなら、僕がアシストに回る必要性は薄いように思われますが」 土御門「それでもいいんだが、多分さっき電話の男が言ってた俺の知り合いってのはかみやん関連だぞ?」 海原は思わずほう、と声を漏らした。 しかしながら感動のあまり出したわけではなく、また彼ですか的なニュアンスが含まれている。 土御門もそれを察したのか、まあアイツだからにゃー、と気軽に言い、 土御門「まあその分、超電磁砲やら禁書目録やらが関わってくる可能性も高い。。 もともと彼女たちの敵だったお前は大人しくサポートしてくれたほうが何も起こらなさそうだからな」 海原「……それならば」 話はその一言で終了する。 海原にとってもわざわざ危険に会いにいくのは御免だし、それが「少女」に関わるものなら尚更だから。 静かに支部の前に車を止め、少年は軽く片手をあげて降りていく。 土御門を送り出しながら海原は一人ため息を吐いた。 運転手に、連絡があるまで暇ですよね、と話を切り出すと意外と彼も乗ってくれる。 彼は自覚がないが、暗部組織『グループ』の下っ端構成員にとって、メインメンバーに君臨する四人の中では海原が最も……というか唯一まともに話せる人物である。 そのため運転手は少し気が抜けたらしく、ほんの少々気楽に海原に話しかけた。 運転手「とりあえず止まっておくと目を付けられそうですからここから『窓のないビル』まであたりをぐるりと回って構いませんか? そうして連絡を待った方が次の行動にも移しやすいと思われます」 海原「ではそれでお願いします」 海原は適当に返して、降りていった土御門や先に降りて行った二人のことをぼんやりと考える。 彼は進みだした車の窓から後ろを眺め、土御門が支部に消えていくのを確認した。 コンコンと軽くドアが叩かれる。 いまだにとある小動物が見つからずにパソコンと格闘していた初春飾利は苦い顔で「どうぞ」と答えた。 隣で初春同様画面とにらめっこしていたアルルに、声を出さずにごめんなさいと口を動かす。 扉が、開く。 土御門「どうもー。お迎えに上がりましたぜい。そこの彼女さんかい?」 アルル「ああ、うん」 彼女はリュックを背負って、ごちそうさまでしたと黒子と初春に告げた。 アルル「――じゃあ、行ってきます!」 せめて別れの挨拶は夢に満ち溢れた言葉を。 黒子と初春は、まるで買い物にでも出かける少女を見送った後、二人で顔を見合わせた。 やってきた人間がにゃーにゃー鳴いていたときはたいそう驚かされたが、口頭ではやはり「異世界なんて話なんで、ちょっと調べさせてもらわないといけないんだにゃあ」なんて言ってるのだから、暗部組織のものと認めざるを得ない。 指紋やら精神能力者やらによる鑑定だけだから安心しろとも言っていた。 しかし二人はそれ以上、否、正確に言うならそれ以下か。ともかく発言より悪い方向に現実は進むのではないかとの懸念が拭いきれない。 それはある意味、望まず知ってしまった暗部の知識が中途半端すぎるからなのだが。 さて。 黒子「……アルルさんが出て行かれるまでにあの子を見つけられなかったようですけど」 初春「…………はい」 悔しそうに唇を噛んで俯く初春の頭を、黒子は花に遠慮しながら数回軽く叩いた。 初春は顔を上げる。 彼女の唇は普段の凛としてお嬢様らしく弧を描いている。 初春が、目の前の女が笑っているのだと理解したのは、しばらく彼女の顔を数秒見つめた後だった。 黒子「ですと、建物の中に居る可能性が高いですわよね。食いしん坊だとおっしゃっていましたから スーパーかファーストフード店かレストランかショッピングモールあたりでしょうか?」 初春「……はい!そうですね、他の仕事がないようでしたらさっそく聞き込みと行きませんか?」 黒子「待っていましたわ。どうせ元の世界に戻るときに必要ならいずれ狙われますものね」 最初はぽかんとしていた初春もつられて笑顔になって身体を伸ばした。 アルルの使った食器を片づけながら黒子は着々と準備を進める。 初春「やはり確立が高いのはレストラン街でしょうか?」 黒子「誰かと合流してる可能性が高いですから、それが最善ですわね」 二人の駆ける先は1kmほど北にあるやや大きめのショッピングモールだ。 彼女らの言うレストラン街は地下に展開しているが、地下だけ異様に縦に長いため入口は多い。 しかもレストランに限らずゲームセンターや大型書店、携帯ショップといった若者たちに人気の店も点在している。 出入りしやすく学生が多く集まるそこなら目撃証言も期待できると、彼女らは踏んでいた。 とはいえ、それゆえの欠点も見逃せるものではない。 黒子「彼女に出会ってからだいぶ時間が経っていますから…… 証言を手に入れてから出てしまわれてはタイムロスですわよね」 初春「出口が近くにいくつかある場所はひとつを除いて閉鎖してしまいましょうか?」 黒子「いえ、大きく動いて目を付けられると厄介ですわ」 初春「ですよね……あ、そうだ。もしかしたら」 初春は携帯を出してどこかに電話をかけ始めた。10秒ほど待って、だんだん初春が心細くなってきたあたりで電話がつながる。 聞きなれた音がBGMとして流れてきたのを聞いて、彼女は自分の予想を確信に近いものに変えた。 初春「もしもし佐天さん、突然ですがいまどこにいますか?」 佐天『あっれえ、初春じゃん!お仕事中だと思ってたよ!!あ、今ねえ、』 電話の向こうで佐天は例の地下街の西端のほうに居ることを告げた。クラスメイトと遊び歩いているところらしい。 思わず初春は声をあげて喜び、あと1時間ほどその近辺にいてくれないかと頼んだ。 佐天『ああ、お仕事?わかった!どうせあたしたちずっとこのあたりで遊んでると思うから、人探しなら手伝うからねー』 初春「ありがとうございます!えっと、黄色くてちっちゃい子を探してるんです。 けど地下街に居るかどうかもまだ定かじゃないので、ある程度時間たったら連絡しますね!!」 佐天『え、ちっちゃくて黄色い?なにそ』 ぷつり、つーつー。 最後の一言は聞き取れなかったが、初春は得意げに満面の笑みを浮かべる。 自信満々に東から入りましょうと告げるものの、黒子は「やる気が出すぎていて空回り気味。減点ですわよ」とぐさりと釘を刺してのけ、初春の心は音を立てて崩れていった。 --------------- アルル「えっと、とりあえず初めまして。ボクはアルル・ナジャ。きみの名前は?」 土御門「ん、初めまして。まーまー名前はそんなに気にするもんじゃないぜい」 アルル「なんで?」 土御門「俺は学園都市の裏世界の人間だから覚えていても殆ど意味がないからにゃー」 アルル「けど、そしたら今ボクは君のことを呼べないじゃない」 きょとんとした表情を浮かべながら、アルルは当然のように言った。 悪気も他意も何も見つからない彼女の黄金の瞳を見て、土御門は内心笑った。 土御門(ずいぶんと面白そうなやつだが、確実にアレイスターは気に入らないだろうな。 ここまでストレートな動きをするとは……上やん並、ってところかにゃー) 土御門はなんて答えるか、しばらくサングラスの奥で考えた後、 土御門「じゃあお兄ちゃんって呼んでくれ」 アルル「わかった、よろしくねヘンタイさん」 土御門「すまんかった、じゃあ兄貴で構わんぜよ」 アルル「じゃあそっちにしようかな、ヘンタイさんはボクをどこに連れてくの?」 土御門「……オイ」 この手の会話には慣れてきっているかのようなスルーっぷりだ。 もうどうでもよくなって名字だけ本名を告げると、少女は嬉々としてツチミカド、ツチミカドと繰り返し呼んだ。 変な名前だね、と言われもしたが彼にとっては大層心外である。片仮名の方が余程珍しいのに。 土御門「まあ、あれぜよ。この学園都市の市長サンみたいなやつに会いにいくんだにゃー」 アルル「え~、乗せてもらってるからいいけどさ、せっかくだから直々に会いに来ればいいのに」 土御門「そう出来ない理由があるんですたい」 アルル「むぅ」 一般車に扮した護送車は静かに町の中央へと進んでいく。 その後部座席でしばらく続いていた沈黙を破ったのはやはりというかアルルであった。 ねえねえツチミカド、と少女は窓をぼんやりと眺めながら会話を振る。 アルル「ボクとルルー以外にこの街に来てる人はいるの?」 来ると思った、と土御門は顔をしかめる。 いずれ来る質問だと思っていたし、本名はともかく他の情報は教えるつもりなど全くなかったが、先ほどの名前の件からしても言い包めるのは面倒そうだな、とは思っていた。 しかしここで舞い降りたのはさりげない新たな情報である。 土御門「ルルー?」 アルル「あれ、ルルーは知られてないの?髪の毛青くて身長高いおねーさん」 土御門「あー、……うん居たな。アレイスターの話だと来てるうちのとりあえず何人かだけ集めるって話だったがにゃー」 アルル「ってことは、他に来てる人の特徴ならわかる?」 土御門「残念。あとアンタとソイツともう一人いるが生憎秘密事項だ」 アルル「その人も迎えに行くの?」 土御門「そうだぜい。とはいえこれでも逆らう場合は強制連行だがな」 さらっと告げてのける。 アルルの喉が唾を呑むかのように小さく動いた。 土御門は見逃さない。内心でああ言いすぎたかな、と軽く思った。 面白かったためにからかいすぎたが、やはり表の世界の人間か、とも。 しかしながら彼は目の前の少女をせいぜい米粒程度しか理解していない。 彼女が唾を呑んだのは間違いないが、その理由は恐怖ではなくその相手への純粋な心配であり、また、裏の世界を恐れているわけでもない。 そもそも、裏の世界を知らない彼女には知ることができるはずもない。 アルルが思い出すのは黒子と初めて出会ったときのことだ。 似合わない格好で不審な動きをしていた自分に一切の責任はあったが、一度体験した能力による強制連行は楽しいものではないことを、あのとき知った。 彼女の空間転移だったから穏便に済んだものの、もし炎や氷や雷で拘束する人だったら。 そして、なによりも。 打ち解けてみると心優しかったあの少女の、あの警戒に満ちた瞳と声は忘れられない。 アルル「ボクの知り合いたちは皆強いから大丈夫だと信じてるけど」 打って変って堅く静かな声が小さな車の中に響く。 アルル「……けど、必要以上の攻撃を加えたり、大切な言い分をわざと無視したりしているのなら、 それなら、ボクは許さないからね」 黒いサングラス越しに眺めた少女は、いつのまにかこちらを向いて強い意志を向けていた。 学園都市第一位すら相手にするつもりなのか、そもそもどうやってその情報を掴むのか。 詳しいことはちっともわかっていないのだろうが、これはなかなかピリピリとして心地よい。 土御門「―――ま、善処するぜよ。余程のことがない限りはそんなこと無いだろうしな」 彼は、普通に笑ったはずの表情が不敵なものになっていることには気づかない。 そんな土御門とアルルが「向こう」を思っている頃。 少女の懸念する最悪の事態は案外あっさりと回避されていた。 人通りの少ない、……要するに裏の世界との繋がりも少なくはない、第十学区のとある通りにて。 学園都市第一位の超能力者と、超能力者に最も近い大能力者とすら評価される最大の空間転移系の能力者。 以前は敵対する仲ではあったものの、何かあれば互いに全力を引き出しあい捕まえにかかる覚悟でいた。 一方通行はビルの隙間に身を隠しつつ、耳に全神経を集中させ、チョーカーから指を離さずにいる。 結標は能力を見せびらかすことなく、ひとり例の緑の髪をもつ長身の男に近づいていく。 よくよく見るとワゴン車の中で写真に見た角らしきものはそのまま角だった。 内心で結標は何やってるんだコイツ、となんとなく生温い気分になる。 結論から言うと角は本物なのだが、学園都市の常識から判断している結標には痛いようにしか見えないらしい。 近づいてくる彼女に気付いた男が、ふとそちらに首を向ける。 おかしな見た目にも関わらず異様な威圧感を纏う男だ。 血のように真っ赤な瞳と目が合い、結標は微かに唇を歪める。 9月のあの真夜中、絶望にも聞こえる杖の音を響かせながら笑って自分を殴り飛ばした超能力者が重なった。 ああ、やだもうムカつく。本人にも声が出たかどうかわからないくらい小さな声で、結標は小さく呟いた。 結標「学園都市のトップが貴方を呼んでいるから、来ていただきたいのだけど」 男は、雰囲気を一転させおおわかったぞと驚くほどあっさりと了承した。 無意識に警戒していた結標の緊張が一気に解けていく。 お前もこの町の人間か?ほう、学園都市というのか!ところで愛しのカーバンクルちゃんとアルルはどこだ? 今まで誰とも話相手になってくれる人に合わなかったのだろう、想定外のマシンガントークが飛んでくる。 若干引きながらも話を流して流して、ふと後ろを見る。 ビルの陰に隠れていた一方通行も呆れかえった顔をひょこりと出していた。 どうやらこの男は見た目以上になかなかの変人らしい。 話を聞き流すのがだんだんと面倒になってきた結標は途中で男の話を切って話を元に戻す。 結標「それで来ていただきたいのだけど、飛ばしたいから一応私に触れてくれるかしら」 男は「飛ばす」の意味がわからずに首を傾ける。 結標の座標移動は元々、触れていない物も飛ばせるとして空間移動系能力の最上位に相当しているが、移動前の座標の把握が必要となるために危険もその分高くなる。 彼に触れるように言ったのは座標を限りなく自分に近づけることでより正確な座標を知るためだ。 今からテレポートで貴方を連れていくから、移動後に壁に詰められるのが嫌ならさっさと腕を掴んで。 そう言って結標は好意の欠片も見せず、つまらなさそうに腕を男に伸ばす。 しかしながら彼は手をつかむ前に、彼女の後ろを指差して、そこの彼はいいのかと問うた。 指をさした先には誰の姿も見えない。しかし結標は小さく驚く。 やがて10メートルほど先のビルのすきまから姿を現したのは、鋭い眼光を灯したままの白い少年だった。 一方通行は不機嫌そうに舌打ちをした。 結標「あれでも人の動きは見てるのね」 サタン「なんたって私はサタンさまだからな!私にはできないことなど一つもないのだ!!」 結標「そのわりには元の世界に戻ってないのね」 サタン「まだアルルやカーバンクルちゃんやらを見つけてないからな。大切なものを置いて帰れんだろう」 結標「……そのわりにはまだそのアルルとカーなんとかやらを見つけていないのね」 サタンと名乗る男はぴしりと固まった。 結標は一方通行に軽く手を振り、貴方なんかを運んでやる気はないから自分で窓のないビルまで来てよね、と伝える。 そして返事も聞かず、動かないサタンの髪を引っ張るように持って姿を消した。一方通行は非常に不機嫌そうに舌打ちをした。 結標はサタンの緑の髪を強引につかみ、学園都市の空を飛ぶ。 本来結標の移動距離は優に800メートルを超えるが、他のテレポーター同様に長距離になればなるほど精度が甘くなるという欠陥を抱えている。 その上建物の並ぶ視認できない場所に正確に飛ばすとなると尚更だ。 そのため、遠くまで見渡しやすく若干の座標の誤差なら問題ない空を、彼女は常々の転移に利用する。 さらに今のように正確さを必要とするには何度か転移を繰り返す必要もある。 以前は連続移動すら出来なかったのだから十分な進歩と言えるのだが。 結標(それにしても、あの風紀委員と同じことをやるだなんて。全く苛々する) 能力の使い勝手がもう少しよくなれば、と結標は澄みわたる空の中でため息を吐いた。 ふと隣の男がもごもごと動いた。転移後と次の転移前の僅かなラグで言葉を発している。 サタン「それにして、もだ。髪を、掴むのは、痛いの、だが、どうにか…」 結標「ああ、悪いわね。もう着いちゃった」 時間に換算すると二十秒もかかっていない。 窓のないビルを視界の下に収めた結標は、地上に身体を移動させて適当に返答した。 地上には人通りも少ない。 サタンの髪をぱっと話して、少女は上空をぼんやりと眺める。 彼女が眺める北西の方角には、やがて白い点が現れて人の形を成していった。 彼はと言えば髪を整えて、なかなかの空の旅だったぞーと満足げに肯いていた。 そこで空中飛行に驚かないあたり、いよいよ電話の男の情報に真実味が見えてくる気がして、結標はじろりとサタンの容姿を眺めた。 結標(……うん、やっぱり胡散臭い) 結標より長い空の旅を終えて、音も出さずに二人のそばに着地した一方通行は自身の気分を隠そうともせずに言う。 返答する彼女も彼女で、売られた喧嘩を買うような調子だ。 一方「で?これ送った後はどうしろってンだ。一番人手と時間がかかるはずじゃなかったのかよ」 サタン「おいこれ扱いするなこれとはなん」 結標「私に言われても。土御門でも待ってたら?もっとも一時間はかかるでしょうけど、先に土御門に会ったら宜しく」 私はこれを運ばなきゃ行けないし、と彼女は女子高生という響きにそぐわぬ笑みを浮かべた。 だからこれとは、などと言っているサタンとともに彼女の姿が掻き消える。 見えない場所への転移のはずだが慣れているのか、サタンには触れようとすらしなかった。 一方通行は何度目かもわからない舌打ちをして、電極のスイッチを元に戻してビルにもたれかかった。 先ほどの発言からしてもどうせ結標はビルの内部の一室かどこかで暇つぶしでもして話が終わるのを待っているのだろう。 人通りも少ないこの道では、通行人を見て暇つぶしなど出来そうにない。 もういっそどこかで食事でも摂ろうかとも考えたが、結標が戻る時間がわからないのでまた何か言われたら面倒くさい。 一方通行は溜息を吐いて独り言を呟く。 一方通行「ったく、マジでつまンねェ」 そうか、と返事があった。 ビル風に酷似した、しかし明らかに不自然なつむじ風が舞う。 いつのまにやら、近くの電灯の上に黒服の男が立っていた。 --------------- つづく
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FATE ◆lbhhgwAtQE 「……ふぅっ! ここらへんなら問題無さそうだな……」 激戦の続く病院を出てからしばらく。 凛とドラえもんを運んできたトグサは、道路沿いにあった普通の民家よりもやや豪勢な雰囲気の漂う住宅――世間で言うところの豪邸――へと足を踏み入れていた。 そして、彼はその豪邸の一室に入ると、ドラえもんをソファに横にし、次いで凛をベッドの上に寝かせた。 「さて、どうするかね、と」 トグサは目を閉じたままの凛を見ながら、一考する。 セラスと劉鳳が言うには、彼女はあの銀髪の人形に唆されているだけとのことだ。 それは、人形と決別して戦っている姿を目撃したこともあって、限りなく事実に近い話だろう。 だが、自分がそう思っていても目の前の彼女が自分に対して今どのような感情を抱いているかは分からない。 自分が善意でここまで運んできたことなど、運ばれている間ずっと気絶していた彼女が知る由もないだろうし、彼女目掛けて銃弾を撃ち込んだ事実もある。 突然目覚めて、自分の姿を見た瞬間に襲われる――などという可能性も大いにある。 「怪しいとなると、こいつをどうするかも問題になってくるが……」 そう言ってデイパックから取り出したのは、気絶している間も凛が握っていたピンクの柄に金色の金具、赤の宝玉というファンシーな色彩の杖。 トグサは、これこそが自分を追い詰める程の砲撃を放っていた武器と推測していた。 そしてその推測を正しいとするならば、この杖は凛に不用意に使われないように遠ざけておく必要があった。 (しかし、こんな杖のどこにあんなレーザー顔負けの砲撃を行う機構が取り付けられてるっていうんだ……) 自分に支給された技術手袋といい、ギガゾンビを映し出す巨大ホログラムといい、長門やセラスのような強化義体といい、ここには自分にとって未知のものが多すぎる。 杖から砲撃など、娘の見る魔法少女アニメだけで十分なように思いたかったのだが…… 『待ってください』 突如、どこからともなく大人の女性の声が聞こえた。 トグサはその声に驚き、声の出所を探そうとあたりを見渡すが、ここにいる3人以外に人の気配などしない。 ……そして、何より声はすぐ間近――そう手元から聞こえてきたわけで…… 「まさかこの杖が……?」 『はい、そうです』 「おいおい、一体どんなAI積んだらこんなに流暢に――」 『私の名前はレイジングハート。魔法発動の補助を行うインテリジェントデバイスです。そして彼女、遠坂凛は私の――』 「あ~、ちょっと待ってくれ!」 トグサがレイジングハートの言葉を遮る。 「俺はこの義体を修理し次第、すぐに病院に戻るつもりなんだ。だから、面と向き合って話を聞いてる暇は無い。……話はこいつを修理しながらの片手間になるが、構わないか?」 『構いません。どうぞ仕事を続けてください』 「そりゃ、どうも、っと」 声の調子から察するに、このレイジングハートという杖には剥き出しの敵意はない。 凛の攻撃手段であるだろう杖がこの様子ならば、まず目覚め一発で砲撃を喰らって死亡という事は無さそうだ。 トグサはそう判断し、レイジングハートをそばの壁に立てかけると、技術手袋をドラえもんに近づけ、彼の修理を開始した。 それから少しして。 修理を続けるトグサは、レイジングハートから今まで彼女が見聞き(?)した情報や魔法の概念についての大まかな説明を聞き終えた。 「なるほどな。要するにお前さんと凛は、その水銀燈っていう人形型の義体にまんまと騙されてたって訳だ」 『はい。悔しいですが事実です』 「となると、最初に俺達を襲った時もきっかけは水銀燈が作ったと考えるのが適当か……」 全てを見てきたという彼女が言うならば、間違いはないだろう。 つまりセラスと劉鳳の仮説は正しかったことになる。 ならば、こちらが凛に敵対する理由はもう完全になくなったという事だ。 「だったら、後はお姫様が目覚めてから、だな」 『大丈夫です。マスターならきっとそんな短気は起こさないはずです。……もし何かあっても私が説得してみせます』 「はは、頼もしいな」 口では笑うが、トグサの目には焦りの表情が浮かんでいた。 とはいっても別に、凛の事について焦っているのではない。 問題は、レインジングハートの話を聞きながら並行していたドラえもんの修理だ。 この修理は、トグサの予想以上に時間を食う作業であった。 それもそのはずで、このドラえもんはトグサがいた時代よりももっと未来、それこそ技術手袋と同じ年代に製造された未知の技術がふんだんに使われたロボットなのだ。 そして、その修理を行うのだから時間が掛かっても仕方がなかった。 (……クソッ。こうしてる間にも劉鳳が窮地に立たされてるのかもしれないっていうのに……) 自分達を逃がすべく水銀燈の前に立ちはだかった少年はあまりに傷つきすぎていた。 あのままでは負けて――死んでしまうかもしれない。 それだけはなんとか避けたいと、彼はただひたすらに早く修理が終わることを祈る。 すると……。 『マスター!』 突如、横から聞こえてきたそんなレイジングハートの声に、彼女が“マスター”と呼ぶ少女の方を振り向く。 するとそこには、ベッドの上で上半身を起こした凛の姿があった。 「う、うぅん……頭がガンガンするぅ…………ってあれ? ……あれ?」 凛はどうやら自分がいる場所がベッドの上であることに違和感を覚えているようで首をせわしなく動かす。 そうして動かしているうちにその視線は、ドラえもんの修理を続けるトグサを捉えることになり―― 「やぁ、お目覚めかい?」 とりあえずトグサは、自分なりに親しげな調子でそう声を掛けた。 ◆ 頭を押さえながら目覚めた凛が目にしたのは、自宅並に豪奢な部屋とその片隅の壁に立てかけてあるレイジングハート、そしてソファの横になるドラえもんとそれに何やら手をかざしている男の姿。 いきなり大量に入る真新しい情報に彼女はこれを夢だと思うが、その頭に僅かに残る鈍痛や身に纏うバリアジャケットがまだ自分が血塗られたゲームに参加中であることを否が応にも教えてくれた。 「……ここはどこ?」 「病院から西に少し行ったところにある民家の一室だ」 「あんたは一体誰なの?」 「俺はトグサ。警察関係者だ。一応参加者ってことになってるが、俺にはまったくそのつもりはない」 凛の問いに、目の前の男――トグサは一つ一つ答えてくれた。 彼女は、彼が先ほどまで対峙していた男であることは既に分かっている。 だが、水銀燈が自分を姦計に陥れようとしていたことが分かった以上、彼がゲームに乗っている一味の一人だという彼女の話の信憑性も限りなくゼロに近いものになった。 そして、それに加えて、自分が意識を失う直前に見た劉鳳と一緒にいる姿と先ほどの彼の言葉や今までの行動を鑑みるに導かれる答えは―― 「……それじゃ要するに、私があなたと敵対する理由はもうないわけね」 「ま、そういうことだ」 『流石、マスター。理解が早いですね』 どこかレイジングハートだけは自分を小馬鹿にしているような気がしないでもなかったが、深くは考えない。 「で、病院にいた他の連中はどうしたの?」 「劉鳳は水銀燈の相手をしている。セラスも同様に甲冑の騎士の相手をな。俺はセラスと劉鳳の二人に気絶していた君らを遠くに逃がすように頼まれた」 「……のび太君はどうしたの?」 「彼は……………………殺されたよ。甲冑の騎士に剣で首を刎ねられてね」 のび太が視界に入らなかった時点でしていた嫌な予感は的中した。 しかも最悪な経緯で。 「そう……。教えてくれてありがと」 すると凛は、完全に起き上がり床に足をつけると、そのまま壁に立てかけてあったレイジングハートを掴み、そばに置いてあったデイパックを拾い上げる。 トグサはドラえもんの修理をしながら、驚いた表情でそんな彼女の方を向いた。 「お、おいおい。まさかとは思うが、そんな起きたばっかりの体で動くつもりか?」 「……水銀燈とのパスが途絶えたのよ。あいつ、また何か悪巧みを考えてるのかもしれないし確かめに行かないと……」 「待て。だったら俺もついてい――」 「ダメよ。だって、あなたにはそれよりも先にやるべきことがあるでしょ?」 凛は、そう言って未だ気を失ったままで修理を受けている猫型ロボットを一瞥する。 「彼……ドラえもんはあのギガゾンビの持つ科学技術についてを知る最後の生き残り。……いわばギガゾンビに対抗する為の切り札って言っても過言じゃないわ」 「あぁ。それは分かってるさ」 「……だったら、あなたは彼の修理に専念していて。私達は彼という脱出の切り札を手放すわけにはいかないんだから」 確かに凛の言う通りだ。 トグサ自身は現在、ドラえもんの修理中であり、ここから離れるという事はその修理を中断してしまうことになる。 「……どうしても行く気なんだな?」 「水銀燈を今までのさばらせていたのは私の責任だし、それにセイバーの方も気になるしね」 この様子では、無理に止めようとすれば、何をされるか分かったものではないだろう。 トグサは、自分が知り合う人間の度重なる無謀な決断に頭を抱えつつも、最後は頭を縦に振る。 「分かった。……だが、無茶はするなよ。お前もレイジングハートもまだ……」 『大丈夫です。凛は私がコントロールしてみせます』 「――って、ちょっと何であなたが私をコントロールするわけよ! 逆でしょ、逆!」 凛はレインジングハートのそんな言葉に反論する。 だが、トグサからしてみれば、一通り話した中でレイジングハートの聡明さを理解していた為、その言葉は正論に聞こえていた。 「よし、それじゃ頼んだぞ、レイジングハート」 『All right』 「――って、あなたまでっ…………。まぁ、いいわ。それじゃ、彼の事は頼んだわよ」 「任せておいてくれ。俺も修理が終わったらそっちへ向かうからな」 凛はトグサの言葉に頷くと、部屋を飛び出していった。 残るのは、依然気を失ったままのドラえもんとそれを修理するトグサのみ…… 「さて、こっちも早めに仕上げないとな」 ◆ トグサ達が豪邸にいる頃。 彼らが気にかけていた病院には、満身創痍になりつつもまだその目をギラつかせた少年カズマが到着していた。 「どーなってやがる……。ここで何があった……?」 照明の落ちた薄暗い廊下を歩き、その周囲の無残な光景を見ながらカズマは呟く。 元々、いくつかの戦闘の痕跡のあったこの建物であったが、カズマが最後に見たときよりも明らかにその見た目は外観、室内ともに酷くなっていた。 ――それは明らかに、新たな戦闘がここで行われた痕跡。 「クソッ!! 次から次へと俺のいないところでドンパチしやがって…………」 ここで大規模な戦闘があったことが確実である以上、最も気がかりなのはここに残してきた少年とロボットのこと。 二人が戦闘を得意としない弱者であることを彼は知っていたし、それ故にその戦闘に巻き込まれたらひとたまりもないことも分かっていた。 「あいつら一体どこに行きやがっ――――おうわっ!!!」 そして、周囲を警戒しつつそんな二人を探していると、不意に足を滑らせ転倒した。 「――っつつ…………。何だ何だ? 足元が急にヌルヌルしやが……って………………」 尻餅をついたまま、足を滑らせた原因を見ようと床を見たカズマは、そこで気付いた。 床には粘性のある赤い液体が撒き散らされており、その液体の中心には首と胴体の分かれた少年の遺体があることに。 そして、その少年の服装に彼は見覚えがあったわけで……。 「お、おい…………冗談……だよな?」 カズマは、その光景に半信半疑でありつつも起き上がると少年の首の正面へと回り込む。 すると、そこには正真正銘、彼の知る野比のび太の呆然とした表情が張り付いており―――― 「く……くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」 彼はそのアルター化した拳を目一杯床に叩きつけた。 「チクショウ! お前まで死んじまってどうするんだよ、のび太……」 アルルゥに次ぎ、のび太もまた自分のいないところで死んでいってしまった。 だが、そこで自分の無力さを嘆き、立ち止まっている暇など彼にはない。 ――立ち止まっている暇があるなら、のび太やアルルゥ、それにかなみや君島、ヴィータ、太一といった仲間を殺していった連中を叩き潰して、ついでに気に入らないギガゾンビも最終的には潰す! そう彼は心に決めていたのだ。 「誰だ……一体誰がやりやがった……」 のび太の首と胴体を廊下の端に寄せながら彼は、その断面を見る。 すると、その断面は骨まで綺麗に切断されており、昨日見た少女の首を切断したようなナイフよりももっと鋭利な刃物で斬られた事が分かる。 そして、これだけ出血している以上、生きている時に切断が行われたことも。 ということは、即ちのび太を殺害した相手は、首を刈る素振りを直前まで見せずに一瞬のうちに凶行に至ったという事になる。 そのような早業を誰もが出来るわけもなく、出来るとするならば恐らくは今は亡きヴィータと共に立ち向かったあの甲冑の剣士くらいの実力を持った人物くらいだろう。 ――と、そこまで思考をめぐらせたその時。 ――カツン、カツン、カツン………… 彼は背後で聞こえる足音に気づいた。 その足音は、徐々にこちらに近づいている。 当然だが、足音を聞いただけではカズマには、一体どんな人物が近づいているのかは全く分からない。 だが、ここにのび太の死体がある以上、まだここにその犯人がいる可能性は大いに考えられる。 そして、足音の主がその犯人であるならば、カズマが行うべきことは唯一つ。 「――!!!」 そう意気込んで彼は後ろを振り返ってみたが、そこにいたのは太一を殺しヤマトを連れ去った女でも例の甲冑剣士でもなく、長い金髪を二つに分けた小さな少女だった。 「……な、ガキか?」 一瞬気を緩めるカズマであったが、アルター能力者に歳は関係ない上にヴィータのような前例もある。 子供といえど、力量に関して油断は出来ない。 すぐに拳に力を入れなおし、少女を見据える。 「一体どこのどいつは分からねぇが、それ以上近づく前に一つ聞きたいことがある」 「あ、あの私は……」 「つべこべ言う前に答えろ。いいか? まずは――」 すると、その時少女は何かを思いついたような顔になる。 「あの……もしかしてあなたはカズマさん……ですか?」 ◆ ――学校には誰もいなかった。 それを確認したフェイトは、早々に探索を切り上げ、病院へ向かった。 ゲインやゲイナーらとの合流時間にはまだ早いものの、病院内を先に調べておきたい気持ちがあったのだ。 そうしてフェイトは病院についたわけだが…… 「これは……」 彼女もカズマ同様にまずその酷く損壊した外観に呆然とした。 「明らかに人の手で破壊された痕跡だけど……誰か中にいるのかな」 『内部に一人分の生体反応があります』 「一人…………か」 バルディッシュの答えを聞いて、フェイトは病院の内部へと入ってゆく。 これだけ崩壊している以上、内部にいる人間がその破壊に関わっている可能性は大いにある。 しかし、だからといって彼女は逃げるわけにはいかない。 むしろ、何かしらの悪意を以って破壊を行っているのだとすれば、それを止めなければならなかったのだから。 「……どっちの方にいる?」 『この先の廊下を左方に曲がった先約50ヤード、依然その場に留まっています』 バルディッシュの指示に従いながら、薄暗い廊下をフェイトは進む。 ――すると、その先にいたのは目をギラつかせた一人の少年であり………… 「ほぉ、お前があの女とゲイナーの仲間だったのか」 「はい。レヴィ達とは12時にここで合流することになっています」 フェイトが出会った少年の身体的特徴は、ゲイナーが教えてくれたカズマという少年の物と一致していた。 それに気付いた彼女は、咄嗟に彼の名を呼び、レヴィとゲイナーの名前を出し、自分の素性を明かした。 その結果、カズマは拳を収め、彼女との会話に応じ、今に至っているのである。 ……いや、それだけではカズマは素直に話を聞かなかったかもしれない。 彼が話を聞く気になった最大の理由、それは―― 「それにしても、お前があのフェイトだったとはな……」 フェイトがカズマの事を伝え聞いていたように、彼もまた彼女の名前を高町なのはとヴィータというフェイトにとっては亡くなってもなお大切な二人の仲間から伝え聞いていたのだ。 「なのはとカズマさんが一緒だったことはゲイナーから聞きましたが……ヴィータとも一緒だったんですね」 「短い間だったけどな。……あんなちっこい体してるガキの癖に大した奴だったよ」 聞けば、ヴィータはカズマとともにとても強大な力を持つ襲撃者に立ち向かい、そして消えていったのだという。 消えた――という言葉にフェイトは一瞬違和感を持つが、彼女は夜天の書が魔力から作り出したプログラムであり、その体を構成する魔力を全て使い果たしたという事にすぐに気付いた。 ――何故、同じ守護騎士なのに、シグナムとヴィータでこれ程にも異なる道を歩んでしまったのだろう。 自分の知らないうちに道を違え、それぞれ散っていった二人の事を思い、フェイトは胸を詰まらせる。 すると今度は、カズマがフェイトの髪を束ねる片方のリボンを見ながらそんなフェイトに尋ねる。 「そのリボンをしてるってことは……お前もなのはには会えたんだよな?」 「……はい。これはなのはの大切な形見です」 「………………そうか」 そこまで聞くとカズマは、再びその顔をフェイトへと向ける。 「で、お前はどうするんだ? こんなところまで来て、一体どうする気だ?」 「勿論、なのはやヴィータ、それにカルラさんやタチコマの為にも、私は何としてもこれ以上の犠牲を無くして皆でここを脱出する手立てを探します。その為なら、私は力を使うことも厭いません。……カズマさんも協力してくれませんか?」 レヴィやゲイナーから聞いたところによると、カズマもまた相当の実力の持ち主という。 ならば、協力を仰ぎたいのがフェイトとしての本音だった。 だが…… 「俺は誰かに指図されて動くなんてまっぴらだね。俺は俺の好きなようにやるさ」 「そう、ですか……」 フェイトは顔を暗くするが、これ以上言い寄ることもなかった。 そして、そんなフェイトの顔を見ると、カズマは足元に転がる少年の遺体を見やりながら言葉を続けた。 「……ま、でも、お前らがあの仮面ヤローみたいな気に食わない奴らと戦うってんなら、そん時は俺も参加させてもらうぜ。俺にも、太一やアルルゥ……それにこいつの仇を討たなきゃ気がすまないからな。それでいいなら……」 これは、つまり肯定と捉えていいのだろう。 素直でないカズマのそんな態度にフェイトは笑みを浮かべる。 「はい。ありがとうございます、カズマさん」 それから。 カズマがのび太と太一の埋葬すると言い出したことによって、二人は別行動をとる事となった。 本来、フェイトも二人の少年の埋葬を手伝おうと名乗り出たのだが―― 「――これは俺の仕事だ。お前はお前のやることを先にやっておけ」 カズマがその申し出を断ったのだ。 既に、彼は毛布に包んだのび太と別の部屋に安置していた太一の遺体を抱え、二人を埋葬すべく外へと出ていってしまっている。 そして、残されたフェイトはといえば―― 「……ここで合ってるの?」 『はい。彼女の体の傍から魔力を関知できます』 彼女は院内捜索中にバルディッシュに告げられた“付近から無視できない量の魔力反応がある”との知らせに従い、その発生源を調べに病院のとある地点へと向かっていた。 そこは、既に病院“内部”と言うべきかどうか微妙な――病院の壁を突き破ったその先であり、瓦礫や抉れた樹木に混じって、二人の男女が息絶え倒れていた。 一人は、白と青、そして血の赤に染められた服を身に纏った少年。 もう一人は、白と黒のゴシックドレスをこれまた血の赤に染めた状態で倒れている少女……を象った人形。 この酷く損壊した人形こそが魔力の発生源らしかったのだ。 「でも何で人形がこんなところに……」 よく見ればその首には自分に付けられたのと同じ首輪がついている。 つまりこの人形――彼女もまた、参加者の一人ということのようだ。 そして、体の上に小さな光が浮いているのを見ると、彼女はそれを手に取ってみる。 「もしかして、これが魔力を出しているの?」 『その通りです。魔力の反応、極めて大です。……それに体の下からも大きな反応があります』 「体の下から?」 バルディッシュの報告に訝しげになりつつも、確認したい気持ちが強いフェイトは「ごめんなさい」と一言言って人形の体をゆっくり持ち上げる。 すると、そのうつ伏せになった体の下敷きになるように何かが挟まっているのを見つけ―― 「これは――!!」 それを拾ったフェイトは酷く驚いた。 なぜなら、それはかつて自分となのはで破壊したはずの融合型デバイス――闇の書だったのだから。 ――何故、消滅したはずのデバイスがここにあるのか? その疑問に関しては答えはすぐに出る。 ギガゾンビが何らかの時空干渉を行い、不正に入手したのだろう。 今疑問なのは、“持ち主であるはずのはやて亡き今、何故転移せずにこの場に存在するのか”という点だった。 守護騎士の件といい、この空間には自分の知りえない技術がまだ使われているらしい。 「でも、こんなものまであるってことは……」 何故、闇の書がこの銀髪の人形の下敷きになっていたのかは分からない。 何故、人形と少年が相打ちになるような形で息絶えているのかも分からない。 ただフェイトが分かっていることはただ一つ。 闇の書が極めて危険なアイテムであるという事だ。 彼女は思い出す。 かつて、はやてを飲み込み暴走を開始した闇の書――正確には闇の書の防御プログラム――の凄まじい魔法の力を。 もし、時空管理局のような組織のバックアップ無しにこの場で融合事故が発生してそのような暴走を起こされたりしたら、手に負えなくなってしまう。 (これを……早くどうにかしないと) 管制人格リィンフォースが応答をしない以上、いつどんな災厄を及ぼすとも分からない。 最悪の場合、ギガゾンビが手を下すまでもなく書が暴走して全滅などというシナリオすらも描かれかねない。 しかし、だからといって自分ひとりであの時の儀式のように完全に破壊できるかどうかも分からない。 そんな危機感を抱きつつ、フェイトはその対処法を見つけるまでの間の処置として、その闇の書を正体不明の魔力の塊である光球ともども自らのデイパックで保管することにした。 「よぉ、病院の中の捜索はもう終わっt――――って、おい。これはどういう……」 カズマがフェイトに声を掛けたのは、まさにそんな2種類のアイテムをデイパックにしまっていたその時だった。 ◆ 「……こんなもんか」 外に出たカズマが病院横の庭で二人の少年の埋葬を終わるまでには、そう時間は掛からなかった。 かなみの時同様の、音を全く気にしない拳を使った穴掘りが時間を大幅に短縮したのだ。 二人を埋めた上に小高い山を作り、その前にはのび太のものと思われるデイパックから取り出したうちわを刺す。 「せっかく俺が墓を作ってやったんだ。二人一緒の穴で狭いとかっちゅう文句は受けつねーからな」 ――そんな物言わぬ質素な墓にカズマは一言言うと、その墓に背を向ける。 見てみれば、病院の庭には二人の墓以外にも、いくつかの墓がある。 その内の三つの並んだ墓は、まさに今埋めたのび太がドラえもんとともに作ったものであり……。 「テメーまでここに埋まってちゃ話にならないってんだよ……」 拳を強く握り、カズマは再び悔しさを露にする。 そして、そのイラついた顔で周囲を改めて見渡すと、瓦礫や倒木が散乱する奥の方で金髪の少女を見つけた。 それは、つい先ほど出会ったばかりのフェイトという少女であり、院内を捜索していたはずだった。 「あいつ、何しに外になんか……」 もう院内は調査し終わったのだろうか――埋葬を終え手持ち無沙汰になったカズマはとりあえず彼女の方に近づいて見ることにした。 そして―― 「よぉ、病院の中の捜索はもう終わっt――――って、おい。これはどういう……」 フェイトに声を掛けていた最中に彼は気づいてしまった。 彼女の傍に転がる二人の死体の存在に。 双方ともに知っている顔であった。 一人は、ドラえもん達と病院へ向かう途中で出会ったいけ好かない喋り方をする人形。――名前は水銀燈だったか。 そして、もう一人はロストグラウンドで幾度となく戦い、そしてこの地でも一度顔を合わせた宿敵の…… 「劉鳳だと……!? おい、なんでこいつがこんなところに……」 誰に言うでもなくカズマが呟くと、それを聞いていたフェイトは首を振って答えた。 「私がここに来た時にはもう二人は……。…………この人は劉鳳さんと言うのですか?」 「あぁ。こいつは俺たちの敵、ホーリーの劉鳳。……絶影の劉鳳さ……」 そう言うとカズマは膝をつき、倒れたまま何も言わない劉鳳の髪を掴み、持ち上げる。 「カ、カズマさん!? 何を……」 「おい、劉鳳。こんなところで寝てんじゃねーよ。まだ勝負の決着がついてねーだろ、あぁ? なのに何でこんなところで寝てるんだよ。なんとか言ってみろよ……なぁ!」 カズマは叫ぶが、劉鳳は目を閉じたまま何も答えない。 「お前が何も言わないんじゃ分からねーだろ? テメーがのび太やアルルゥを殺したのかどうかも、お前がどーして寝てたのかもよぉ……」 既にカズマにも分かっている。 劉鳳はもう死んでしまっているのだ。 森の中で倒れていたかなみのように。病院前で見つけた車椅子の少女のように。廊下で見つけたのび太のように。 そして、ダース部隊との戦いの後、共にかなみの下に帰った後の君島のように。 「ふざけんじゃ……ねーよ……」 宿敵である劉鳳の死に対しては、悲しみはこみ上げない。 変わりに湧き出てくるのはもう二度と戦えない、叩き潰せないことへの悔しさと苛立ち。 劉鳳の髪から手を離し、項垂れるカズマをフェイトは呆然と見ているしかできなかった。 ……だが、次の瞬間。 『Sir,病院に何者かが近づいてきています』 バルディッシュの声がフェイトの目を覚ました。 「……誰かが来てる?」 『はい。……それも、魔力反応を伴っています』 「魔力……」 その言葉に自分以外の未知の魔導師の存在の可能性を覚え、フェイトは緊張をする。 ――だが、カズマは違った。 「上等じゃねぇか。誰が来ようと俺は構わないぜ……。気に入らねぇ奴だったらボコる……ただそれだけなんだからよぉ」 先ほどまでの姿からは一転、立ち上がったカズマはそう言って目をギラつかせると拳を構える。 そう、のび太が死のうと、劉鳳が死のうと、彼の意志は決して変わらない。 相手が誰であれ、今の状況がどうであれ、今の彼の意志を曲げることは不可能なのだ。 『……距離60ヤード。……そろそろ目視できるはずです!』 「さぁ、誰だ? 誰なんだ? 一体誰が来るってんだぁ?」 緊張の面持ちのフェイトと興奮気味のカズマ。 その二人の前に姿を現したのは――。 ◆ 「……本当に2人いるのね?」 『間違いありません。2人とも近い位置にいるようで、一方からは魔力の反応もします』 病院に向かいながら、凛は念を押すようにレイジングハートに話していた。 トグサ曰く、自分達が病院を離れた後にそこに残っていたのはセラスとセイバー、そして劉鳳と水銀燈の4人。 ということは、少なくともその内2人は何かしらの理由があってその場からいなくなったということだ。 何らかの理由――それは戦闘の場を移動したのかもしれないし、生存者として反応しないだけかもしれない。 生存者として反応しない――それは即ち死亡してしまったということであり…… 「……ダメね。弱い考えなんか持っちゃ」 最悪の事態のイメージを頭から払拭すると、レイジングハートを握る手に力をこめる。 ……魔力反応を伴う生存者の反応。 劉鳳とセラスがどうなったかは別としても、それがあるのは確かな事実。 そして、それに該当する参加者として、真っ先に思いつくのは他ならないリインフォース形態の水銀燈のみ。 その彼女が自分とのパスを断ち、別の参加者といるのだとしたら、考えられる理由は一つ。 ――新たなカモを見つけたのだろう。 「パスを断ったかと思ったら……そういうことなのかしらね」 『まだ確定したわけではありませんが、注意することに越したことはありません』 「分かってるって。……さて、もうすぐそこね……」 白塗りの病院の姿が大きくなってゆく。 そして、その病院の横にある庭に二人の参加者はいるのだ。 相手が誰であれ、油断は出来ない。 凛は、静かにその場所へと向かう。 そして―――― ◇ Fate。 運命の名を冠し、決して運命に背を向けないと誓った少女が一人。 運命の名を嫌い、その壁を叩き潰そうと意気込む反逆者の少年が一人。 運命の名のもとに、いいように翻弄され続けた少女が一人。 三者三様の様相だが、主催に反旗を翻す意志は同じ。 今、その三人が顔を合わせる。 それは運命か、はたまた…………。 【D-3・病院横の庭/2日目/午前】 【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA s】 [状態]:全身に中程度の傷(初歩的な処置済み)、魔力消費(中)、バリアジャケット装備 [装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム、残弾4/6)魔法少女リリカルなのはA s、双眼鏡 [道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA s、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ ルルゥの斧@BLOOD+、ルールブレイカー@Fate/stay night、闇の書@魔法少女リリカルなのはA s ローザミスティカ(水銀燈)@ローゼンメイデン [思考・状況] 基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。 1:接近してくる参加者を警戒。 2:病院にてゲイナー、トグサ等との合流を待つ。 3:ゲームの脱出に役立つ参加者と接触する。 4:闇の書への対処法を考える。 5:カルラの仲間やトグサ、桃色の髪の少女の仲間に会えたら謝る。 6:人形から入手した光球の正体について知りたい。 [備考]:襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。 首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。 【カズマ@スクライド】 [状態]:中程度の疲労、全身に重度の負傷(一部処置済)、西瓜臭い [装備]:なし [道具]:支給品一式(食料-1)、翠星石の首輪、エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に [思考・状況] 基本:気にいらねぇモンは叩き潰す、欲しいモンは奪う。もう止まったりはしねぇ、あとは進むだけだ! 1:接近する参加者を警戒。 2:変装ヤローを見つけ次第ぶっ飛ばす! 3:べ、別にドラえもんが気にかかっていないわけじゃねぇぞ! 4:気にいらねぇ奴はぶっ飛ばす! 5:レヴィにはいずれ借りを返す! [備考] :いろいろ在ったのでグリフィスのことは覚えていません。 のび太のデイパックを回収しました。 【D-3・病院横の庭付近/2日目/午前】 【遠坂凛@Fate/stay night】 [状態] 魔力中消費、中程度の疲労、全身に中度の打撲 ※気絶中の休養でやや回復しました。 [装備] レイジングハート・エクセリオン(カートリッジ残り三発・修復中、破損の自動修復完了まで数時間必要)@魔法少女リリカルなのは バリアジャケットアーチャーフォーム(アーチャーの聖骸布+バリアジャケット) デバイス予備カートリッジ残り28発 [道具] 支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、ヤクルト一本 エルルゥのデイパック(支給品一式(食料なし)、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん 五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に 市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り2パック) [思考] 基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。 1:庭にいると思われる参加者を警戒。 2:1の参加者が水銀燈ならば、今度こそ倒す。 3:劉鳳、セラスと合流。トグサ&ドラえもんともいずれ。 4:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。 5:セイバーについては捜索を一時保留する。 6:自分の身が危険なら手加減しない。 [備考] ※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。 ※水銀燈の正体に気付きました。 [推測] ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い(推測) 膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能(推測) 首輪には盗聴器がある 首輪は盗聴したデータ以外に何らかのデータを計測、送信している [全体備考] ※野比のび太と八神太一が埋葬されました。二人の墓には「風神うちわ@ドラえもん」が刺さっています。 ※水銀燈の人間形態は死亡後、自動的に解除された模様です。 ◆ 一方その頃。 「……ふぅ、ようやく終ったか」 ドラえもんの修理を終えたトグサは、手袋を外し、大きく伸びをしながら時計を見やった。 あの病院からの脱出から既に随分と時間が経過している。 「これで何の収穫も無しだったら、喜劇にもなりゃしないな、本当に……」 そう言いながら、トグサは自らの拳銃に弾を装填しておく。 大分遅れてしまったが、今からでも病院に向かえば凛のサポートは出来るはずだ。 それに劉鳳やセラスの様子も気になる。 トグサとしては少しでも早く、病院に戻りたいところであったが―――― 「う、う~ん…………」 そんな時に限って、予想外の出来事は起るものである。 「あ、あれ、ここは…………のび太君…………ん? あれれ?」 起き上がったそのまん丸ボディのロボットは周囲を見ながら、困惑の表情を浮かべる。 (……やれやれだな) 起きてしまった以上、放置することは出来ない。 彼はドラえもんの方へ向き直ると、面と向かって凛にしたのと同じような言葉を口にした。 「……調子はどうだい? ドラえもん」 ◇ そして。 ここでもまた、運命を左右する切り札になりうる男とロボットが再起動しようとしていた。 【D-2・豪邸/2日目・午前】 【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】 [状態]:疲労と眠気、特に足には相当な疲労。SOS団団員辞退は不許可 [装備]:S W M19(残弾6/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク [道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S W M19の弾丸(28発)、警察手帳(持参していた物) 技術手袋(使用回数:残り15回)@ドラえもん、首輪の情報等が書かれたメモ1枚(内部構造について追記済み) 解体された首輪、フェイトのメモの写し [思考] 基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。 1:ドラえもんに事情を説明する。 2:1の後、病院へ直行。 3:ハルヒや魅音など、他の人間はどこにいったか探す。 4:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。 5:ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。 6:情報および協力者の収集、情報端末の入手。 7:エルルゥの捜索。 [備考] ※風、次元と探している参加者について情報交換済み。 【ドラえもん@ドラえもん】 [状態]:中程度のダメージ(修理によりやや回復)、頭部に強い衝撃、強化魔術による防御力上昇 [装備]:虎竹刀@Fate/stay night [道具]:支給品一式(食料-1)、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱 [思考・状況] 基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする。 1:状況を把握したい。 [備考] ※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました。 ※凛とハルヒが戦ってしまったのは勘違いに基づく不幸な事故だと思っています。 偽凛については、判断を保留中。 時系列順で読む Back 請負人Ⅲ ~決意、新たに~ Next 最初の過ちをどうか 投下順で読む Back 請負人Ⅲ ~決意、新たに~ Next ひぐらしのなくころに(前編) 261 「ゲインとゲイナー」(後編) フェイト・T・ハラオウン 273 銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) 260 運命に反逆する―――――――!! カズマ 273 銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) 264 正義の味方Ⅲ 遠坂凛 273 銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) 264 正義の味方Ⅲ トグサ 273 銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) 264 正義の味方Ⅲ ドラえもん 273 銃撃女ラジカルレヴィさん(前編)
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共有 ◆/1XIgPEeCM ようやく希望の光が見えてきた、そんな時、それを握り潰すかの如くあの糞忌々しい声が辺りに響き渡る。 『おめでとう! ついに1日目の終了だ』 可能ならば、思わず耳を塞ぎたくなるほど不愉快な声だ。 だが、そんなことはできない。この首輪がある限り、禁止エリアの聞き逃しは死に関わるからだ。それは百も承知なのだが……。 俺は湧き上がる怒りを抑えるため、持っていた受話器を強く握り締めた。ミシリ、と受話器が小さな悲鳴を上げる。 そんな俺をお構いなしに放送は進み、大勢の死者の名が告げられる。 そしてその中には……。 「う、嘘……そんな、ことって……」 ストレイト・クーガーと、高町なのは。その二人の名が呼ばれたからか、園崎は強い動揺を見せる。その瞳や唇は、ぶるぶると震えていた。 ……またか。またなのか。俺はもう、うんざりだった。誰かが悲しむのは見たくなかった。 俺はその二人がどんな人物なのか、はっきりとは知らない。 だが少なくとも園崎にとって二人は、特にクーガーという男の存在は、短時間の間にとても大きなものになっていたのだと思う。 「園崎……」 俺は、そんな彼女になんと声をかけたら良いのか分からなかった。下手な慰めは、逆効果になることも有り得るしな……。 「ぐっ……うぷっ」 園崎は突然手で口を押さえ、その場に膝を付き、嘔吐し始めた。 「み、魅音殿!?」 「お、おい、大丈夫か?」 俺とトウカさんは思わず崩れ落ちた園崎に駆け寄った。 一体急にどうしたんだ。泣くとかならまだしも、このような例は見たことがないぞ。 ……ひょっとするとこれはアレだろうか? 精神的なストレスから引き起こされた嘔吐。そう考えるのが妥当だろう。 知っている人が次々と死んでいく。いつ誰かに殺されてもおかしくない状況。あのギガゾンビの不快な声。自分が全く知らない世界。 これだけの要素が集まれば、このような症状が表れても無理もないことかもしれなかった。 俺は嘔吐が治まってきた頃合いを見計らって、園崎に声をかけた。 「……園崎、少し休んだ方がいい。トウカさんは園崎についててあげてください。 場所は……その中で待っていてください。俺は病院に電話をかけてから戻ります」 俺は手近にあった小さなビルを指差すと、そこで彼女を休ませるように促した。 「承知いたした。魅音殿、こちらへ……」 「…………」 トウカさんは園崎の手を引いてやり、その身を立たせた。 多少ふらついたものの、園崎は倒れることなく歩いていった。 「くそ……」 二人の後ろ姿を見送った後、俺は一人呟いた。 園崎の気持ちは痛いほど分かる。ここに来てから、それもほんの丸一日の間に何人かけがえの無い仲間を失ったことか。 さっきだって、長門の名前が呼ばれた。あいつが死ぬ瞬間も実際に見たさ。墓だって作った。 それでも長門の名前が呼ばれたのは幻聴か何かなんじゃないかって、そんな現実逃避的な考えが頭を過ぎったりもした。 だが、どう足掻こうともあいつらはもう帰ってこない。これは、書き換えようのない現実なのだ。 ……ちょっと待て。長門は死んだ。放送で名前も呼ばれた。 ということは、ハルヒも勿論そのことを知っているじゃないか。それなのに俺はあいつへの気遣いも無しに電話で……。 ああ、何をやっているんだ、馬鹿か俺は。焦るんじゃない。冷静になれ。いつものお前はそんなんじゃないだろう? ……どうやら俺は、自分でも気が付かない内に色々と追い詰められていたらしい。 俺は再び電話ボックスに入り、乱暴に受話器を取ると、病院の電話番号をプッシュした。 「……出ないな」 聞こえてくるのはプルルルル、という規則的且つ無機質な音だけだ。念のためもう一度かけなおしてみたが、結果は同じだった。 今現在病院に誰もいないとか、電話が鳴っているのに気付いていないとか、そういうのならまだいい。 一番あって欲しくないことは、病院で何かしらのトラブルがあり、そのせいで電話に出ることが不可能な状態になってしまっている、ということである。 病院にはセラスさん達が向かったはずだ。何事も無ければいいのだが……俺はどうしてか、嫌な予感がしてならなかった。 俺は仕方なく病院に映画館にかけた時と同じ留守電メッセージを残し、受話器を戻してから電話ボックスを出た。 ふと、嘗てホテルが建っていた方角を見る。俺には一つ気になることがあった。 先程園崎との情報交換で教えてもらったことなのだが、ホテルには元々セラスさん達の帰りを待っていた四人の人間……。 即ち、ガッツ、野原みさえ、ゲイン・ビジョウ、そして危険人物であったはずのキャスカが居たという。 内三人は先の放送で名前を呼ばれてしまったが、ゲインという人はまだ生きているらしい。 その人がどんな人物なのかは全く知らないが、常人ならばあの崩落に巻き込まれて、未だに瓦礫の下で生き残っているとは思えない。 彼は上手くホテルを脱出できたのだろうか? そんなことを考えながら、俺は二人が入って行ったビルへ向かった。 ビルの入り口を潜って少し歩いた所に、椅子に座らせられた園崎と、その彼女を不安そうに見つめるトウカさんの姿があった。 俺がやってきたことに気が付いたトウカさんは、こちらを振り向く。 「結局電話は繋がりませんでした。園崎の様子は?」 「幾分落ち着いたように見られる、が……」 俺は、下を向いている園崎の顔を見た。顔色が悪そうだ。 「大丈夫だよ、私は……」 そう言って、園崎はゆっくりと立ち上がった。 「じっとしてたって何も始まらないしさ。早く病院に行こうよ。『射手座の日』のことも考えなきゃいけないし……」 俯いていた顔を上げ、その表情に小さな微笑みをたたえて、明るめの声で園崎は言った。 でも、俺にはすぐに分かった。これはどう見ても空元気だ。 生きていると信じていた仲間が死んでしまった。本当に大切な仲間が死んでしまった。 だがそれでも、今は前を向いて歩いて行かなければならない。彼女はそう思っているのだろう。 だからこそ、ついつい一人で抱え込んでしまうのだ。まったく、こっちまで悲しくなってくるじゃねぇか。 「そ、そんな目で見ないでよ。本当に大丈夫だから……」 俺の哀れむような視線に気付いたのか、園崎は慌ててそう言った。 「魅音殿、あまり無理はなさるな。苦しい時は某にいつでも遠慮なく言ってくだされ」 「トウカさん……」 トウカさんが園崎に言った。そうだ、こいつは明らかに無理をしている。もう暫くの休息は必要だろう。 まあ、俺自身も無理をしていると言えばしているのだが。 「トウカさんの言う通りだ。お前には俺達がついている。俺達は、仲間なんだからよ」 「キョン……」 俺はつい、そんなことを言ってしまった。 正直、ちょっぴり気恥ずかしくなった。こういうセリフはやっぱりガラに合わんな……。 「ごめん、二人共……ありがとう……本当に、ありがとう……」 なんていう俺の思いを余所に、園崎は泣き崩れた。我慢していた分も溢れたらしい。トウカさんはそんな彼女を優しく抱き締めてあげた。 親切な人だな、と改めて思う。色々と世話の焼ける部分もあったりするが。こんな状況下で、彼女のような人に出会えて本当に良かった。 俺達は皆、苦境に曝されながらも、こうやって支え合って生きている。やっぱり仲間っていいもんだなと、俺はこの時確かに実感した。 瞬間、俺は俺の中に何かが込み上げてくるのを感じた。 あれ、おかしいな……。 いつしか俺の目からは、汗が流れていた。 【D-5/大通りに面したビル内/2日目・深夜】 【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:疲労、全身各所に擦り傷、ギガゾンビと殺人者に怒り、強い決意 [装備]:バールのようなもの、スコップ [道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-1)、わすれろ草@ドラえもん、キートンの大学の名刺 ロープ、ノートパソコン [思考] 基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る 1:もう暫くここで休みながら、落ち着く。 2:1の後、レジャービルへ行き、回答が留守電に入っていないかどうか調べる。 3:1の後、病院へ向かい、2が不可だった場合にセラスから直接射手座の英語スペルを聞く(戦力の分散は危険と考えている)。 4:掲示板が気になる。 5:長門の残してくれたメッセージを解読する。 6:トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いを捜索する。 7:あれ? そういえばカズマってどこかで聞いたような…… [備考] ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照。 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「仲間を探して」参照。 【トウカ@うたわれるもの】 [状態]:疲労、左手に切り傷、全身各所に擦り傷、額にこぶ [装備]:斬鉄剣@ルパン三世 [道具]:支給品一式(食料-1)、出刃包丁(折れている)@ひぐらしのなく頃に、物干し竿(刀/折れている) @fate/stay night [思考] 基本:無用な殺生はしない。だが積極的に参加者を殺して回っている人間は別。 特にセイバーは出会うことがあれば必ず斬る。 1:もう暫くここで休む。 2:その後、病院へと向かう(戦力分散は愚行と考えている) 3:キョンと共に君島、しんのすけの知り合い及びエルルゥを捜索する。 4:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンと武、魅音を守り通す。 5:ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す。 【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:疲労(中)、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り)、クーガーの死による精神的ショック、空腹 [装備]:AK-47カラシニコフ(30/30)、AK-47用マガジン(30発×3) [道具]:支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている) 、パチンコ [思考] 基本:バトルロワイアルの打倒 1:もう暫くここで休む。 2:その後、病院へ向かう(戦力の分散は危険と考えている) 3:「射手座の日」の暗号を解く。 4:沙都子を探して保護する。 5:武に謝りたい 6:圭一、レナ、クーガーの仇を取りたい(水銀燈、カレイドルビー、シグナムが対象)。 [備考] ※キョンがノートパソコンから得た情報、及びキョンの考察を聞きました。 時系列順で読む Back POLLUTION(後編) Next 峰不二子の陰謀 投下順で読む Back POLLUTION(後編) Next のこされたもの(相棒) 236 廃墟症候群 キョン 253 ひめられたもの(1) 236 廃墟症候群 トウカ 253 ひめられたもの(1) 236 廃墟症候群 園崎魅音 253 ひめられたもの(1)
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アルル カーバンクル レア度 ☆6~7 カードタイプ こうげきタイプ・単体 Lスキル能力 味方全体の攻撃力と体力を強化し、2連鎖以上で味方全体に「かいふく」×5の回復 スキル能力 フィールド上のすべての色ぷよをあおぷよにし、その直後に落ちてくるぷよが(あおぷよと)きいろぷよになる とっくんスキル能力 スキル発動中の攻撃力を1.5倍にし、フィールド上の色ぷよとハートBOXを、色ぷよ(5色)とプリズムボールに変化させる。 Bスキル能力 なし コスト量 48,60 概要 2017年10月のぷよフェスで登場。 2020年2月4日(ぷよの日)に☆7が実装された。 通称「アルカバ」。 ステータス レアリティ たいりょく こうげき かいふく ☆6 Lv99 4210 2603 351 ☆7 Lv120 6210 4165 430 同じこうげきタイプで主属性が青のフェス限定キャラクターであるくろいシグと比較して、 各レアリティとも全てにおいて勝っている。特に攻撃と回復が高い。 スキル レアリティ 効果 ぷよ数 ☆6 フィールド上のすべての色ぷよをあおぷよに変え、その直後に落ちてくるぷよをきいろぷよに変える(最大48個) 40 ☆7 このスキル発動中、味方全体の連鎖係数を2.4倍にし、フィールド上の色ぷよをすべてあおぷよに変え、その直後に落ちてくる色ぷよをあおぷよ、きいろぷよに変える(最大48個) とっくん このスキル発動中、味方全体の攻撃力を1.5倍にし、フィールド上の色ぷよとハートBOXをあかぷよ、きいろぷよ、みどりぷよ、あおぷよ、むらさきぷよ、プリズムボールに変える とっくんスキルは同レアリティのラフィソル系と同じスキル。 ☆6のときは、青属性カードながら、黄属性カードにさらに大きな攻撃力をもたらすという変わり種。 あおぷよ化で一掃したあと、空いた部分に落ちてくるぷよが全てきいろになる。 フィールドが全て色ぷよであれば合計2回の48個消しとなる。 あおぷよは、ほかの48個消しや24個×2色(異世界の旅シリーズ)のぷよ変換スキルと同じ威力の最大でこうげきの14.2倍。 きいろぷよは2連鎖目として消えるため、最大で14.2倍×1.4倍=19.88倍となる。 確実に2連鎖するため、このカードをリーダーにしている場合は必ず連鎖回復も発生する。 さらに、フィールドリセットやおじゃまぷよ処理も兼ねられ、他スキルより「かたぷよ」の処理に強い。 発動するだけでほぼ必ず96個のぷよが消えるため、ぷよ消し数デイリーミッションの数も稼ぎやすい。 ☆7でのスキルはまぶしいサタンと同様に連鎖係数が増加し、 2連鎖目では左半分が青ぷよ、右半分が黄色ぷよとなりそれぞれ24個ずつ消えるようになるので、 スキル単体での威力は青属性が14.2+14.2×(1+0.4×2.4)=42.032倍、黄属性が14.2×(1+0.4×2.4)=27.832倍になる。 こちらでは、属性どおり青属性の攻撃のほうが強くなる。 ほかのぷよ変換スキルと異なり、漁師ボーイズなどのネクスト変換は 2連鎖目のための変換により、本スキル発動中は一時的に上書きされてしまう(スキルが終わると元に戻る)。 そのため、本スキルにおいてネクスト変換は何の効果ももたらさず、追加の連鎖などにはならない。 さらに、2連鎖目が全消しだと、その後フィールドリセットと同様の配置が降ってくることが多く、落ちコンはほぼ起こらない。 レガムントのリーダースキルやシズナギのスキルなどの条件のために3連鎖以上を狙うなら、 チャンスぷよを巻き込みだいれんさチャンスで条件を満たすことが必要になる。 ☆7のとっくんスキルは最大で全色57.3倍となる。 単色でも多色でもまんべんなく高威力が出せるので、汎用性が高いリーダースキルとの相性も抜群。 スキル砲として非常に強力で、☆7にしたら、こちらのスキルを解放して普段使いしたほうが 強みを発揮できるだろう。サポートカードにする場合も、こちらのスキルにしたほうがより多くの人に役立つ。 しかし、プリズムボールやおじゃまぷよがフィールドにあると不発になりやすいというデメリットもあるので、 場合によって、とっくん前のスキルと適宜切り替えながら使うとよりベターだろう。 とっくんで解放する必要があるかわりに、単色のぷよ変換と使い分けができるのはこのカードならでは。 リーダースキル 味方全体の攻撃力と体力を強化し、2連鎖以上で味方全体に「かいふく」×5の回復。 ☆6で攻撃力3倍、体力3倍。 ☆7で攻撃力4.2倍、体力3.5倍。 属性などの条件なしで攻撃体力を3倍にするのはこのキャラクターが最初。 またハートBOXに依存しない回復があるため、喫茶店の3人娘などと同様に安定してクエスト等のクリアが可能。ギルドイベントでも活躍できる。 こうげきタイプであるため、類似リーダースキルでバランスタイプであるまぶしいサタンと比べて、 回復量は倍率ほどのインパクトはなくとも、☆6でも最低でも4桁はほぼ毎ターン回復できる。 またステージ効果で攻撃回復が逆転しているときは、2連鎖で全カードの体力を全回復できる。 (これを見越して「攻撃力ダウン」の状態異常を使ってくるボスがいることには注意。回復量が減り全快できなくなる) 「みんなでクエスト」でも使いやすく、クエスト出発決定後のタイミングで部屋に入ってきてカードが変更できなかったり、 リーダースキルの条件を勘違いしていたりするプレイヤーもいる野良マルチで起用すると非常に便利。 コンビネーション 初代メンバー ヒロイン ガールズ ボス!? ふんいきトーク アルルとカーバンクル両者を組み合わせた豊富なコンビネーションを持つ。 とっくんボード まんざいデモ追加 なし 段階 内容 必要野菜 7 状態異常耐性 怯え 8選択式 たいりょくアップ +500 イチゴ(2) ナスビ(2) アスパラ(10) ブロッコリー(3) こうげきアップ +250 イチゴ(10) ナスビ(2) アスパラ(2) トウガラシ(3) かいふくアップ +100 イチゴ(2) ナスビ(10) アスパラ(2) キャベツ(3) 15 属性ダメージ耐性(緑) +5.0% 16選択式 たいりょくアップ +500 イチゴ(2) ナスビ(2) アスパラ(10) ブロッコリー(3) こうげきアップ +250 イチゴ(10) ナスビ(2) アスパラ(2) トウガラシ(3) かいふくアップ +100 イチゴ(2) ナスビ(10) アスパラ(2) キャベツ(3) デッキ考察 自由度の高いリーダースキルにより、単色にも多色にも使える。 本カードの標準スキルは単色向きで、青単か黄色中心のデッキにするとエンハンス(攻撃力アップ)などのスキルも活かしやすい。 ☆6では、黄色デッキに入れるとスキル溜めが揃わなくなるかわりに、スキルの威力が増す。 戦乙女ダークアルル(青属性)・伝道師りすくま(黄属性)とはどちらの属性にも対応でき、 スキルで生成した大量のプリズムボールを本カードで一掃し大ダメージに変えられるため相性が良い。 特に、黄デッキで組みきいろいサタンでスキル減らしながら、プリズムボールを出してからスキルを使うと、 最初の青消しでもプリズムボールによりダメージを与え、2連鎖目補正(1.4倍)のかかった最大48個同時消しになるため、 1キャラあたり30倍くらいの高火力になる。 更に、リーダースキル(このカードをリーダーにすると更に3倍で90倍)や、エンハンス攻撃力アップ等を組み合せも自由である。 ☆7では、通常スキルでは属性通り青のほうが威力が高くなるので、素直に青属性の単色で使うとよいだろう。 また、☆7とっくんボードで獲得できるスキルは多色対応なので、とりあえず獲得してセットしておくだけで、 汎用性が高いスキルとリーダースキルを併せ持った、単色・多色問わず活躍できるオールラウンダーとなれる。 多色デッキにした場合、どんなクエストも非常に安定して周回できるが、 くろいシグなど多色に対応したエンハンスを持つカードは全般的に入手しづらいので、まったく何も持っていないと ギルドイベントやプワープチャレンジなどで大ダメージを与えたいとき、火力を上げる手段が限定される点に注意。 何もない場合は、「星のお菓子集め」のイベントでサビクをゲットしておくとよいだろう。 ギルドイベントの攻撃回復逆転ステージでは、とにかく攻撃の前に2連鎖を維持すればハートボックスが枯渇しても耐久し続けられる。 西洋妖怪シリーズ(複数色詰められるのも利点)で割合ダメージを入れたり、闇の天使シリーズで大ダメージを入れる場合に安定性を発揮する。 1ターンのダメージが大きく自カードがワンキルされるなら、サゴやソラと組んだ単色デッキで、2連鎖で維持するゾンビデッキを作る手段もある。 盤面が悪くなってきたときは本カードのスキルで回復と盤面リセットを兼ねられるのも便利。 評価 どのようなデッキでもリーダースキルとスキルの効果を発揮でき、初心者から上級者まで役立つ非常に強力なカード。 攻撃と体力の両方をアップするリーダースキル持ちのカードが乏しいならば、一気にクエストを進めるのが楽になるだろう。 連鎖による回復効果も高難度クエストの安定した攻略にかなり重宝し、 スキルの火力もギルドイベントでも主力級となる戦力を持っている。
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静かに訪れる色なき世界◆SqzC8ZECfY 輝く陽光が市街地の家屋とビルディングを照らしている。 アスファルトで黒く塗り固められた路上には人の姿は無く、そのものたちが駆るべき車や自転車の走る姿もない。 音は無く、太陽に熱せられた道路から発せられる僅かな陽炎の揺らめきだけがあった。 そんな静寂に包まれた街を横切るひとつの河川があり、だがそこにかけられた橋は先ほどの戦闘で行使された強大な力によって折れ砕けていた。 その川に沿った土手から下りた先の河川敷にハクオロとレッドがいる。 芝生が敷き詰められた平らな場所だった。 そこに男がうつ伏せで寝かされている。 男の背中は真っ赤に染まっていた。 それは男が羽織っていたコートに染みた血液の色だ。 鋭い金属の破片が深く食い込んでいて、そこからにじむ血の量は見るからに尋常ではなかった。 顔に血の気は無く、一刻も早く適切な処置をしなければ手遅れになるであろうことは想像に難くない。 レッドは先ほどの少女に受けた電撃の痺れがまだ取れていない。 無理に動こうとする彼をハクオロが押しとどめ、まずは重傷の男をどうにかすべく治療のすべを探していた。 男が倒れていた場所には様々なものが散らばっていた。 一つ一つを見てみると、それらには食料やコンパスなど、ハクオロや魅音に配られていたのと同じ支給品が混ざっている。 そこから察するにこれは男の支給品か、それとも手ぶらでここから逃げ出した少女のそれであろうとハクオロは結論付ける。 「な……あ、何やってんだよ……はやく……治療しなきゃ……」 レッドの声だ。 まだ痺れが抜けない身体では口を利くのもつらかろうに、重傷の男の身を案じている。 ハクオロはそれに冷静な声で応えた。 「じっとしていろ。正直……彼は重傷だ。私やお前の手持ちでは、治療の役に立つものがない。 だが……この橋のあたりにはあの傷の男と、この負傷した……衛宮とあの少女は呼んでいたな。衛宮と少女の荷物が近くにあるはずだ。 そのなかに何か治療に使えるものがあれば、傷を何とかできるかもしれん」 「そ、そっか……それを探してるんだ……じゃあ、俺も――」 「探すのを手伝ってくれるのはありがたいが、ふらついた足取りでは足手まといだぞ」 「……くそっ」 悔しそうな顔でレッドは立ち上がろうとした己の体を再び芝生の上に戻す。 そんな少年の優しさを快いと感じる。 だがハクオロはその優しさが絶望へと変わるような、そんな一つの事実をレッドにさとられぬように心の内へと封じていた。 ――この男……とっくに死んでいてもおかしくない。 それが先ほど衛宮の傷を診断したハクオロの結論だった。 傷は深く臓腑を抉り、今は突き刺さった破片が栓の役割をしているが、その内部では溢れんばかりの内出血が出口を求めて腹腔内に充満している。 事実、いったんは刺さった破片を衛宮から抜こうとしたハクオロだが、僅かに引き抜いただけで血の飛沫が傷口から噴出したほどだ。 むしろこれで何故生きているのかと疑問に思うレベルだった。 何らかの特殊な能力が肉体に宿っているのか。 カルラやトウカの身体能力、またはウルトリィたちのような特別な力を考えれば、この男にもそのような力があるのだろうか。 「……」 ハクオロは押し黙ったまま、周囲に散らばった品々を拾っていく。 骨折のため片腕が使えないので、デイパックのストラップを肘に引っ掛けて無事なほうの手で回収する。 拾ったそれは透き通った小さな容器で何かの液体が入っている。 それはレッドから、ライターというものだと教えられた。 その使用法を何故かハクオロは知っている。火をつけるためのものだ。 二つの筒をつなげたようなもの。穴があったので覗いてみると遠くのものがはっきり見えた。双眼鏡というらしい。 次に拾ったのは数枚の紙の束をまとめたものだった。 何かのまじないの符にみえるが、何に使うかは分からない。とりあえず拾っておく。 治療に役立ちそうなものはない。 こうしている間にも刻一刻と衛宮の命は失われていく。 だがハクオロには何故かさほど焦りの感情が生まれてこなかった。 失われかけた命を助けるのは当然だ。かつてハクオロ自身もエルルゥたちにそうやって救われたのだから。 だが一つの引っ掛かりがあった。それがどうしても気になる。 ――あの男と少女は何故あそこにいたのか? 少女を諌めにかかった時は、歩み寄るためもあってライダーを撃ったことは問わなかった。 だがそれにもかかわらず向こうはあの傷の男を殺し、そしてこちらをも殺そうとした。 事情はどうあれ攻撃的な意志を持っていたことは明白だ。 ただでさえ橋の上という目立つ場所で二人の偉丈夫が刃をぶつけ合っていたのだ。 いや、それ以前からも魅音やハクオロが戦闘を行っていた。 危険なことは遠目からでも分かる。双眼鏡のような遠くを見通す道具を持っていたなら尚のこと。 ならば何故? 争いを止めるためにわざわざ乱入したのか? いや、少女はライダーを敵だ、といった。 つまり……ライダーが傷の男と争っている機を狙って、漁夫の利を掻っ攫おうとしたと考えるのが自然だ。 少女の雷を操る力は強大だ。ライダーや傷の男相手でも勝機はあると見るのが道理だろう。 ならばあの二人は殺し合いに積極的に関与していたということではないのか? レッドはあの少女が泣いていると言った。 が、だからといって被害者的な立場といっていいとは限らない。 むしろ傷の男なども含めて、ここに集められた者達は全員がギラーミンの被害者なのだ。 そして死の恐怖を押し殺して相手を殺すのが戦場の常だ。 そういったことを楽しむような輩もいるにはいるが、それは少数派。 ハクオロ自身も楽しめるようなタチではない。むしろ忌避してさえいる。 それでも相手を殺さなければ生き残れない。だからそうするのだ。 彼らもそうだったのだろうか。 ライダーを敵だといった、その衛宮たちの立場に立って考える。 ならばライダーが実は彼らに討たれる理由をもった悪逆非道の輩であったと? だがそれは考えづらい。むしろハクオロは自分を庇ったレッドを撃った彼女のこともあり、ライダーを信じるべきだと考える。 見も知らぬハクオロたちの窮地に飛び込み、助太刀してくれたことも大きかった。 そうでなければ今頃ハクオロの命はなかっただろうから。 ――ならばレッドには悪いが衛宮を助けぬほうがいいのかもしれない。 どうせ放っておけば死ぬだけだ。 万が一、ここで彼を治療できる奇跡のような薬が見つかったとしよう。 だがそれで蘇生させたとして、また誰かを襲うことになっては元も子もない。 いや、こいつらはもしかしたら放送前にも誰かを襲っていて――エルルゥたちの誰かを殺したかもしれないのだ!! そんな暗い考えがよぎった時だった。 ハクオロの眼前に一枚の紙片が落ちていた。 拾う。 橋の崩壊による水しぶきでやや湿り気を帯びた紙を慎重に広げて文面を探った。 ――治癒符。 そこにはそう書かれていた。 重傷の者でも治療できる札。 そんな品物にハクオロは心当たりがあった。 「……ハクオロのおじさん?」 「いや……なんでもない。どうやら何か書いてあったようだが濡れていて読めない」 立ち尽くして拾い上げた紙片を見つめるハクオロにレッドの問いが投げかけられる。 それに対してハクオロはその紙を握りつぶしながら答え―― 嘘を、ついた。 ◇ ◇ ◇ それは御坂美琴のものだった。 彼女は治癒符の存在をもちろん知っていた。 だが切継が負傷した直後にそのことに思い当たるには、あまりに平常心というものに欠けていた。 そしてレッドたちと遭遇し、疑心暗鬼に陥り、最後にはハクオロの一言が決定的な引き金をひいた。 誰が悪いというわけでもない。 運が悪かったという他はない。 だが――ー。 何故。 よりにもよって何故ここでこんなものを見つけてしまったのか。 知らなければ。 知りさえしなければ、『選ばなければならない』などということにはならなかったはずなのに。 殺すか助けるかという選択肢に向き合う必要など無かったというのに。 ◇ ◇ ◇ 「うぉーい、小僧! それに仮面の男! 生きておったかぁー!」 崩れ落ちた橋の向こう側。 河川の南側に残った橋の残骸から声が聞こえた。 「ライダーのおじさん……! 生きてたんだ……!」 レッドの声に喜びの嗚咽が混じっているのをハクオロは聞いた。 どこから調達したのか四本足の動物にまたがり、一人の偉丈夫が手を振って大声をあげている。 「今、そっちにゆくぞぉー! 待っておれ!」 そういってどこかウォプタルにも似た動物にまたがったまま身を翻すと、ハクオロたちからは姿が見えなくなった。 だがそれから数秒。 崩れた橋の先から矢のように飛び出したのはライダーだ。 「この河を飛び越えるつもりか!? 無茶な!!」 ハクオロは思わず叫ぶ。 だが彼は知らない。 ライダーがまたがる駿馬こそがブケファラス。 馬でありながら伝説となった英霊にも等しい存在だ。 その力はハクオロの知るウォプタルなどとは比べ物にならない。 ライダーを乗せたまま、英馬は強靭な後ろ肢のひとけりで高々と宙を舞っていた。 それを一組の人馬は易々とやってのける。 何事も無かったようにハクオロたちのいる北岸へと辿り着き、豪壮な気を纏った駿馬が蹄を鳴らしてこちらへと近づいてきた。 「よう、小僧。それに確か最初にギラーミンに突っかかっていた奴だな。余は征服王イスカンダル。ここではライダーという名になっておるがな」 言いながら馬から下りて、どすどすと地を踏み荒らすような足音ともに歩み寄ってくる。 イスカンダルと名乗ったその男はまるで熊のような巨躯だった。 ずぶぬれの黒い外套を脱ぎ去り、肩にかけるようにしている。 「いやあ参った。向こう岸の下流に流されたもんで、我が愛馬を召喚して急いで戻ってきたが……どうした? こちらが名乗ったからにはそちらも名乗るのが礼というものではないのか? ん?」 「あ、ああ……私はトゥスクルの皇、ハクオロというものだ」 「ほう、貴様も一国の王か。だがトゥスクルとは聞いたことが無いな。歴史上にある名ならば余が知らぬ者はいないはずだが」 「おじさん! ちょっと見てよ、大変なんだ!」 ハクオロたちの会話を遮ってレッドが叫ぶ。 指差すのは血まみれのまま横たわる衛宮の身体だ。 イスカンダルがレッドに促されるまま二人の足元に横たわるその姿を認めると、途端に表情が王者と呼ぶべき威厳を纏ったそれに変わる。 その視線は男の右手に注がれていた。 そこには妙なしるしがあった。 「令呪……この男はマスターか」 「何……?」 その言葉を聞きとがめ、ハクオロはイスカンダルに問いかける。 衛宮はライダーを敵といっていたという。あの雷を操る少女の言だ。 そしてイスカンダルのこの反応をみるに、なにやら因縁があることは間違いないだろう。 「イスカンダル……この男は貴方の敵なのか」 「うむ? なんだ、貴様ら令呪を知らんのか?」 イスカンダルの問いにレッドもハクオロも首を横に振る。 「うーむ……だいぶ前から疑問だったが、余が受肉していることといい、これはもしや聖杯戦争ではないのか?」 「なに、どういうことだ?」 「聖杯戦争のことは知っておるか? ……やはり知らんか。簡単に言えば、最後まで戦い抜き勝利した者が何でも望みを叶えられるという戦いだ。 余はここに来る前にその戦争に参加していたのだが……この殺し合いも概要はよく似ているが、細部に違いがありすぎるからのう」 イスカンダルはこめかみに拳をやってぐりぐりと押し当てながら難しい顔で思考している。 それがこの男のクセなのかもしれない。 その時ふと、ハクオロはイスカンダルの言に対してある疑問が湧き上がった。 それを問いという形にして口に出す。 「何でも望みを叶えるなど……可能なのか」 「全ての不可能を可能にするのが聖杯だ。その証拠に二千三百年前の世で滅んだ余の肉体も、これこの通り蘇っておる」 その言葉はあまりにも堂々としており、嘘とは思えぬ確信の響きを持っていた。 それでもにわかに信じられるものではない。 …………しかし。 ……もし、 そうならば、実現可能なことであるならば、 エルルゥたちを……生き返らせることもできるのか……? 「――そんなことよりも大変なんだよ! 早くこの人を手当してやらなきゃ!」 ハクオロの思考はレッドの大声によって目の前の現実へと引き戻された。 もう痺れはほとんど取れているようだ。 ハクオロは次にイスカンダルのほうを見る。 彼は困ったような顔をしてレッドに向かって話しかけた。 「まあ、そうするにやぶさかではないのだが……どうすればいい? 余のブケファラスで治療できるところまで運ぶのか?」 「……待ってくれ」 ハクオロがここで口を開いた。 その声には重々しい響きがある。 誰もが言葉を遮ることができない力が宿った声だ。 皇としての力を示すその声にレッドは押し黙り、イスカンダルは、ほう、と感心の表情を見せる。 「イスカンダル、あなたは先ほど戦っている最中に、あの傷の男の以外から攻撃を受けなかったか?」 「うむ? ああそういえば乱入者がおったな。なにやら電雷のような攻撃を喰らったが、誰だったかは見ておらん。 あの後すぐに河に飛び込んだからな」 雷。 その攻撃ができる者にこれ以上ないほど心当たりがあった。 しかも警告もなしに攻撃を加えるということは、やはりそういうことなのだろう。 助ける気持ちがあるなら事前に避けろとでも言うのが自然だ。 やはり甘かった。その甘さでレッドが危うく死に掛けたのだ。 「我々は貴方が戻ってくる前に、ここで一人の少女と出会った。そしてその娘はあのコートの男を衛宮と呼んでいた。 彼女は貴方を敵だといい、そしてレッドが貴方の知り合いとわかると我々に向かって電撃による攻撃を放ち、そして危うく私を庇ったレッドが死ぬところだったのだ」 「待ってよ、ハクオロのおじさん! じゃあ……この人が敵だって、だから助けないっていうのかよ!」 「察しがいいなレッド。そして彼らはあちらから進んでイスカンダル殿に攻撃を仕掛けたのだ。つまり自分から殺し合いに乗っている。 あの少女を……魅音を殺したあの傷の男と同じだ。それでも助けるのか? イスカンダル殿……貴方はどうだ?」 イスカンダルは、ふむうと大きく頷くといきなり豪快な一喝を叩き付けた。 ハクオロの問いを些細なことと嘲笑うように。 そんなことを聞かれようとも答えは決まっていると言わんばかりに。 「――勝利して滅ぼさず、征服して辱めぬ! これこそが真の征服である!」 皇としての威厳をまとったハクオロすらも一瞬気圧される迫力だった。 歯を剥く獣の笑みをもって宣言する。 「ゆえにその問いに対する答えは決まっておる。殺し合いを望むというなら叶えたい望みがあるのであろう。 ならば我が配下となって共にこの戦を勝ち抜けばよい! 受肉を果たした今、その望みを譲ることに何の躊躇いがあろうか!」 ま、とりあえずさっさと助けようではないか、と征服王を名乗った男は屈託無く笑った。 釣られてレッドも瞳を輝かせて笑う。 賛同者を得られ安心したというわけだ。 ハクオロは大きく溜息をついた。 「そうか――私の命を助けてくれた貴方がそういうのならば何も言うまい。イスカンダル殿、あの橋のあたりに傷の男の荷物があるかもしれない。 探してもらうことは出来るだろうか?」 崩れ落ちた橋の北側付近を指差す。 ここまでで見つかった荷物は三つ。 衛宮の近くに転がっていたデイパックが一つ。 そして少女のものであろう散らばった荷物が一つ。 イスカンダルが所持していたものが一つ。これで彼の荷物が橋の瓦礫に埋まったり、川に沈んだりしていないことが判明した。 ならば傷の男の荷物が残っているはずだ。 治療に使えるものがあれば何とかなるかもしれない。 以上のことをハクオロはイスカンダルに説明する。 「うーむ……実はな。余の荷物ではないのだ、これが。おそらく戦闘のどさくさで誰かのものと入れ替わったのであろう」 「とすると……」 「うむ、見つかっていないのは余のデイパックということだな」 三人は崩れ落ちた橋の残骸を見る。 イスカンダルに聞くと治療に使えそうなものは無いという。 つまり、手詰まりだ。 ◇ ◇ ◇ 彼らに出来ることは何も無かった。 ここで拾った薬や包帯などの医療品で何とかできるレベルの負傷ではない。 もはや外科手術が必須の状況であり、怪我をしてからかなりのあいだ放置していたのだから輸血も必要だろう。 そのための技術がレッドたちにはない。 ましてやハクオロのほうは片手を骨折しており、自身の治療が必要なほどだ。 「……なあ、本当に何とかならないのかよ!?」 レッドが悔しさのこもった声を上げてハクオロを見た。 落ち着け、とハクオロは返し、そして言葉を続ける。 「お前の持っていたX-Wiといったか? それで飛んで運ぶことが出来たとしても、イスカンダル殿の騎馬でも、病院まで運ぶのは無理だろう。 迂闊に動かすだけでも危険だし、何よりこの男の体力が持つとは思えん。それに……治療しようにも医術の心得を持った人間がいなければどうにもならん」 「まあ、みたところ魔術師のようだし、簡単には死なんだろうがなあ。それでもほっとくだけでどうにかなる怪我でもないのは確かだ」 本人が気を失ってるからなあ、とライダーは付け加える。 衛宮自身の意識があれば自分の治療魔術でどうにかできるはずなのだそうだ。 だが現実問題として彼は意識不明であり、無理矢理起こすというわけにもいかない。 レッドは自分の支給品であるX-Wiを見る。 肩に背負うためのストラップが取り付けられた白い板状の物体が二枚ついていた。 説明書きによれば、これを背負って発動させることにより、光の翼を羽ばたかせて高速で飛翔することが出来るらしい。 便利な移動手段になりそうではあるが、今必要なのはそんなものではなかった。 目の前にあるこの怪我を治すことのできる何かだ。 最初に動けるようになってから、レッドは男の背中から破片を抜こうとしたがハクオロに止められた。 血の出血具合からして、体の中の大事な血の管を損傷したのだろうと。 この破片を抜けば栓の役目を果たしていたものが無くなり、血が一気に吹き出るだろうと言う。 そうすればもはや男の命はもつまい。 だが破片を抜かないままでは包帯を巻くことすらできないのだ。 状況は絶望的といっていいものだった。 「それでも、それでも諦めるなんてできるか! また死んじまうんだぞ……イエローみたいになんかさせるかっ!」 レッドはおもむろにX-Wiを担いで南へと駆け出した。 そこには広大な河川が横たわりレッドの行く手を遮っている。 「何をする気だレッド!」 「劇場に行けばチョッパーがいるはずだ! だから……こいつで飛んで行ってチョッパーを連れてくる!」 走るレッドの背中に位置する白い機殻が光の翼を展開する。 その時、空間に金属を打つような響きがあった。 ――光とは力である。 これは声なのか。 レッドには分からない。 だがその瞬間、強烈に背中を推す力が生まれた。 「うわぁあああああああああああ!?」 猛烈な勢いで斜め上の空に押し出される。 体勢が崩れそうになるところをすんでのところで踏ん張った。 「レッド!」 「大丈夫……っ!!」 空中戦は初めてではない。 空を飛ぶポケモンに捕まって戦ったこともある。 レッドはその感覚を思い出し、体の余計な力を抜く。 自然体。 そして背中の翼に語りかけるように意思を込める。 「飛べ!!」 再びその背に強烈な推進力が宿った。 地上の景色が遠く離れていく。 ハクオロとイスカンダルの姿も小さくなっていく。 「んじゃ、いってくる! すぐ戻るから待ってて!!」 眼下の二人に手を振ってから、レッドは再び前を向いた。 行くは南の町並みに存在するはずの劇場。 チョッパーを連れて戻ってくることを考えれば、どんなにスピードをだしても急ぎすぎということはない。 「頼むぞ……X-Wi! 加速しろぉぉおおおお!」 今そこに消える寸前の命がある。 それを救える可能性があるのなら止まることなど考えられなかった。 目の前で死んでいったイエローだけではない。 そのショックから立ち直らせてくれたフィーロという青年もすでに命を落としたという。 レッドたちが辿り着く直前に傷の男の凶刃にかかったポニーテールの少女は、もう二度と目を開けることはない。 ここで何とかしなければ取り返しなどつかないのだ。 だからレッドは動くことをやめない。 もうあんなことを繰り返したくないから。 雄叫びにも似たレッドの声に応えるように光の翼は輝きを増した。 猛烈な勢いで、まさに風を切るような速度で――――レッドは南を目指して空を征く。 【B-4 南端/一日目 昼】 【レッド@ポケットモンスターSPECIAL】 【状態】:南に向かって高速移動中、疲労小、左肩に傷(両方とも簡易治療済み)、腕に○印 【装備】:X-Wi@終わりのクロニクル、蓮の杖@とある魔術の禁書目録、絶縁グローブ(軽く焦げ)@ポケットモンスターSPECIAL 【所持品】:基本支給品一式、二重牙@トライガン・マキシマム 【思考・行動】 1:劇場に向かい、チョッパーを連れてB-4の橋の袂へ戻る 2:衛宮の治療後、美琴を追う。 3:女の子(魅音)を救えなかったことを後悔。 4:ライダーと慎重に仲間を捜し、『ノルマ』を達成する。 5:ある程度はライダーを信用していますが…。 6:赤い髪の『クレア』に会ったら、フィーロの名前を出す。 7:絶対に無常からフシギダネと取り戻す。 【備考】 ※参戦時期はポケモンリーグ優勝後、シバの挑戦を受ける前です(原作三巻) ※野生のポケモンが出てこないことに疑問を持ってます。 ※フシギダネが何故進化前か気になっています ※『クレア』をフィーロの彼女だと勘違いしています。 ※後回しにしていますが図書館にあったパソコンに興味 ◇ ◇ ◇ 「おっほォ、すげえなオイ! 余も今度機会があったら是非使わせてもらおうか!」 レッドが小さくなっていった南の空を眺め、イスカンダルは顔に似合わぬ無邪気な声を上げた。 確かに凄まじい性能だ。 誰でも空を飛べる道具などハクオロのいた世では考えられない。 だがだからこそ確信する。 今この手に隠し持つ治癒符というものが本当に傷を治す力があると。 己の常識の外にこの殺し合いは成り立っているのだと改めてハクオロは実感した。 「イスカンダル殿。彼が戻るまでこうしていても仕方ない。貴方の荷物を探しましょう」 「ん? おお、申し出はありがたいが、見ればハクオロよ、貴様は手傷を負っている様子。 まあ自分の荷物くらいは自分でどうにかするゆえ、そこでその男の様子でも見ておいてくれ」 「それは貴方も――」 「なあに気にするな。こんな傷はそのうち血も止まる」 そういってイスカンダルは巨大な十手を取り出した。 元はハクオロが持っていたものだ。 だが、腕を折った者が持っていたところで役には立たないだろう。 ゆえにそれについては黙っていることにした。 「よし、ブケファラスよ、ご苦労であった。下がってよいぞ」 ブケファラスと呼ばれた駿馬はイスカンダルの声に応えるように嘶くと、すぅっと姿を消した。 ハクオロが目を見開いて驚く。 それを受けて浅黒い肌の偉丈夫は得意げに口の端を歪ませた。 「あれぞ我が愛馬ブケファラスよ。なにやらいつもよりちょいと召喚に魔力を使うんで引っ込ませてもらったがな。怪我のせいかのう」 「召喚……? 自由に呼び寄せることができるのか」 「おう、そうだ。ところでこれから貴様はどうする気だ? 当面の目的がないなら余やレッドと共に来ぬか?」 「ああ……そうだ、アルルゥという少女を知らないだろうか。あとはカルラという妙齢の女だ。共に尻尾や獣の耳が生えているのだが……」 そうだ。 魅音は死んでしまったが、まだ守るべき者は残っている。 ここで休んでいるわけにはいかないのだ。 「ほう、獣人か? だがそのような女は見とらんなぁ」 「そうか、では前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、古手梨花、園崎詩音という名前は……」 「レナだと?」 その名前に征服王はぎょろりと目を向けて反応した。 知り合いだろうか。 ハクオロはそれについて問うてみる。 「我らの仲間として別行動しておるよ。新たな仲間を探すためにな」 「何だって!?」 魅音は言っていた。 仲間は何よりも大事なものだと。 そんな彼女の仲間も同じ考えを抱いていた。 皆の力を合わせてここから抜け出すという奇跡を成し遂げると。 彼女は、園崎魅音は間違ってはいない。 そう――。 「ハクオロよ。その名前、何処で聞いた?」 「あの少女だ。彼女の名前は……園崎魅音」 「……そうか」 ハクオロは魅音の遺体が横たわる樹の方角を見ながらその名を告げた。 それを聞いてイスカンダルも察したのか、重々しく頷いた。 「ならばハクオロよ。我らと共に来い。おぬしの探し人もレナたちが見つけてきておるやも知れぬ。 そして余の配下となるがいい。共にギラーミンへと挑もうではないか」 「配下……いやそれは……私も一国の皇として……」 「ならば返事はすぐでなくとも構わん。考える時間は与えよう。 もし嫌というのならば余はいつでもその挑戦を受けるゆえ、遠慮なくかかってくるがいい――王は一人で充分ゆえ、な」 「いや、そういうことではなく……」 なにやら無理やりイスカンダルのペースに乗せられている気がしないでもない。 結局ハクオロの返事も聞かぬまま言いたいことを言い終わると、征服王と名乗る巨漢は豪快に笑いながら己の荷物を探しに瓦礫へと向かっていった。 「……」 残されたるはハクオロと衛宮のみ。 レッドもイスカンダルも好人物であることは疑いようも無い。 だが、この男はどうなのだろうか。 あのレッドが危険を犯してまで助けようとする価値のある人間なのか。 「私は……何を考えている」 この男は殺し合いに積極的に加わっている可能性が高い。 もしこの男を蘇生させたとして、魅音の仲間たちやハクオロの家族を害する可能性がないと言い切れるのか? もしアルルゥやカルラを殺したら? いや、それ以前にエルルゥ、ベナウィのどちらかを殺していたとしたら? この男を蘇生させたとして、その後で出会ったアルルゥやカルラが重傷を負っていたとしたら? 治癒符を余計に使ってしまっていて彼女たちを助けられなかったとしたら? 自分はそのとき後悔せずにいられるのか? 「……仲間は、何よりも、大事だ……」 園崎魅音の言葉だ。 ハクオロもそれを正しいと思う。 ならばこれはその仲間を守ることになるのではないのか? この男に突き刺さっている破片を、ほんの少し押し込むだけでいい。 レッドは怒るだろう。イスカンダルは……分からない。 だが、そうしたところでハクオロの仕業とはわからないだろう。 元から瀕死の身体。 ほんの僅かに破片が深く食い込んだところで気付く者はいない。 今、イスカンダルは橋の瓦礫に向かい、こちらに背を向けている。 「うおーい、ハクオロよ! 荷物がどこら辺にあったか、心当たりはないか!?」 突如として大声を向けられた。 一瞬、ハクオロの鼓動が高鳴る。 落ち着け。 そう念じて固い唾を飲む。 「確か、橋の上にそれらしいものが置いてあったかと!!」 叫びかえす。 その声に震えは無い。 だが、なぜわざわざ彼の目をここから遠ざけるようなことを? 「おう、すまんなぁ!!」 イスカンダルが土手を駆け上がっていき、そして姿が見えなくなる。 視線を戻す。 血まみれの衛宮。 ピクリとも動く様子は無い。 「……私は」 無意識のうちに心は決まっていたということなのだろうか。 突き刺さった破片の頭に袖をあてがう。 力を込めた。 ずぐり、と。 一瞬だけ衛宮の体が痙攣した。 はらわたを切り裂いた感触だ。 「もし地獄(ディネボクシリ)というものが本当にあるとするなら……私はそこに堕ちるのだろうな」 そういってから、ふと何を今さらと自嘲した。 もはや数百数千数万に至るほどの屍を、数え切れぬ戦の中で造り出してきたのではないか。 戦乱を呼ぶ獣と、この自分をそう呼んだのは誰だったか。 地獄行きはとっくの昔に決まっていたことだ。 そう――、 それでも仲間を――自分を家族と呼んでくれた人々を守りたかった。 だからハクオロは皇となったのだ。 歩き出す。 イスカンダルの方角へと。 間もなく衛宮は死ぬだろう。 レッドはその死を悲しむだろう。 だが彼ならばきっと大丈夫だ。 それを乗り越えて前へと進む強さを持っている。 この身は手負い。 そしてレッドやイスカンダルも傷を負っている。 機を見てこの治癒符を使ってやればよい。 説明書きがなかったので今まで使用法に気付かなかったとでも言えばよい。 風で飛ばされた説明が書かれた紙片を今さっき、そこで見つけたと。 「荷物は見つかったか!?」 大声でイスカンダルを呼ぶ。 彼は数秒後、土手の上から顔を出し、 「おお、見つかったぞ! わざわざ来てくれてすまんが、ゆえに貴様はゆっくり休むがいい」 「それは良かった。ではレッドを待とう」 ハクオロの言葉の上に波はない。 凪のように、一切の揺ぎ無く。 ◇ ◇ ◇ 殺し続けた。 ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で。 貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。 一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、天秤の傾いた方を救うべく。 もう一方を空にするべく、殺した。 殺して殺して殺し尽くした。 そう、それは正しい。 多くを救うべく犠牲を認める。 増えた不幸の数よりも、守られた幸福の数が勝るなら、世界はほんの少しだけ救済に近づくはずではないか。 たとえ足元におびただしい数の屍が積み重なっていたとしても。 それで救われた命があるなら、守られた数こそが貴いはずだ。 100を救う代わりに50を殺す。 1000を救う代わりに500を殺す。 10000を救う代わりに5000を殺す。 切嗣がやってきたことはそういうことだ。 かつて彼は憧れた。 だがそれを口に出すには少年特有の気恥ずかしさが先に立った。 もしそれを口に出すことが出来ていたなら、切嗣の運命は変わっていただろうか。 眩しい日差しの中で、憧れの彼女に訊かれた。 その微笑を、その優しさを、決して失いたくないと思った。 こんなにも世界は美しいのだから、今この瞬間が永遠であって欲しいと。 そう思うから、そう思うなら、誓いの言葉を口に出来たはずだ。 初めにあった気持ちを、いつまでも、決して忘れずにいられたはずだ。 始まりの自分を忘れ、いつしか磨り減っていくことしかできなかったような、そんなことにはならなかったはずだ。 数多の嘆きを知って、数限りない絶望の果てに、何も残さず終わるようなことには――、 ――――きっと、ならなかったはずだ。 【衛宮切嗣@Fate/Zero 死亡】 【B-4 橋の袂(北岸)/一日目 昼】 【ハクオロ@うたわれるもの】 【装備】:なし 【所持品】:基本支給品一式×4、 コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット、コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、ロープ×2、消火器、防火服、 カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、 デリンジャーの残弾20 鉄パイプ爆弾×4、治癒符5枚@終わりのクロニクル 【状態】:右足と右肩に銃創(包帯処置、止血処置済み。ただし消毒なし)、左手首骨折 【思考・行動】 1:ギラーミンを倒す。 2:レッドを待つ 3:仲間(魅音の仲間含む)を探し、殺し合いを止める。全てを護り抜きたい。だが…。 4:できれば美琴を助けたい。 5:ミュウツーに対して怒りの念。 6:アルルゥを失ったら……失った家族を取り戻す為に……? 【備考】 ※クロコダイルの名前は知りません。 ※クロコダイルの能力を少し理解しました。 ※B-4の橋が美琴の超電磁砲によって完全に崩落しました。渡る事はまず不可能です。 ※B-4木陰に園崎魅音の死体が腕を組まされて横たわっています ※B-4橋崩落現場付近に、クロコダイルの首と胴に別れた死体があります。 ※レッドの包帯は治療のために消費しました。 【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】 [状態]:魔力消費(小)、疲労(中)、全身に傷(小~中)および火傷(小)、出血中 腕に○印 [装備]:張維新の衣装とサングラス@BLACK LAGOON、包帯、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE [道具]:基本支給品一式×2、きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集 イリアス英語版、各作品世界の地図、拳銃の予備弾30発、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース [思考・状況] 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。 2:レッドを待つ。 3:レッドを従え『ノルマ』を達成し、レナ達に自らの力を示す。 4:四次元ポケットとバイクを回収しに図書館へ戻りたい。 5:首輪を外すための手段を模索する。 6:有望な強者がいたら部下に勧誘する。 7:次の放送までに劇場へ向かう。 8:アーチャー(ギルガメッシュ)、クロコダイルを警戒する。 【備考】 ※ヤマハV-MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。 ※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。 ※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します 【治癒符@終わりのクロニクル】 御坂に支給。 身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。7th-Gの肉体改造技術や1st-Gの文字に寄る能力付加で造られている。 作中では他にも防護符、加速符、強化符など、様々な種類がある。 負傷した部位に張ることで治癒の効果を得ることが可能で、丸一日でかなりの重傷も回復する。 五枚ずつのセットになっている。 【X-Wi@終わりのクロニクル】 レッドに支給。X-Wi(エクシヴィ)と読む。 風見・千里が装備している、賢石式概念兵器のバックパック。 起動すると、光の翼を生じさせて高速飛翔が可能。使用者への負荷を無視すれば超音速まで到達する。 また、概念条文 ・――光とは力である を発動させている効果でマグライトの光などがビーム砲になったりする 時系列順で読む Back 銃弾と交渉と Next This Speed Never Ends(前編) 投下順で読む Back 銃弾と交渉と Next This Speed Never Ends(前編) Back Next 私らしくあるためのImagine(幻想) レッド CIRCLE RHYTHM ~追想のディスペア~ 殺人連鎖 -a chain of murders-(後編) ライダー(征服王イスカンダル) 地獄への道 私らしくあるためのImagine(幻想) ハクオロ 地獄への道 私らしくあるためのImagine(幻想) 衛宮切嗣 死亡
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設定の重要度を 対象が操作キャラとして存在する(以下、キャラ存在) 対象が何らかの媒体で絵や台詞が存在したり作中で言及されたりしている(以下、作中で言及) 対象が居るという設定のみ(以下、設定のみ) の3段階に分けて表示しています。 CAPCOMストリートファイター ヴァンパイア サイバーボッツ その他 SNK SNKPLAYMORE餓狼伝説 龍虎の拳 サムライスピリッツ THE KING OF FIGHTERS 月華の剣士 風雲黙示録 その他 ADKワールドヒーローズ ニンジャマスターズ 覇王忍法帖 アトラス/ノイズファクトリー豪血寺一族 レイジ・オブ・ザ・ドラゴンズ アークシステムワークスGUILTY GEAR 戦国BASARA X エクサムアルカナハート 同人及びアニメキャラ等の版権作品ウルトラシリーズ 仮面ライダーシリーズ ガンダムシリーズ ジョジョの奇妙な冒険 School Days ドラゴンボール ドラゴンクエスト テイルズオブシリーズ TYPE-MOON作品 北斗の拳 Leaf作品(QOHシリーズ及びとぅふぁいとに関連) MUGENオリジナル CAPCOM ストリートファイター 父 キャラ存在 豪鬼(息子 リュウ ただしOVAで描写があったのみで言及はされていない) 作中で言及 ケン(息子 メル)、ガイル(娘 クリス)、ダルシム(息子 ダッタ)、スカロマニア、シャドウガイスト、マイク・ハガー(娘 ジェシカ) 兄 キャラ存在 ガイル(義弟 ケン ガイルの妻ユリアの妹がケンの妻のイライザ)、ギル(弟 ユリアン)、ユン(弟 ヤン)、剛拳(弟 豪鬼)サンダー・ホーク(妹 ユーリ ただし『SNK VS. CAPCOM 激突カードファイターズ』のみ)、コーディー(弟 カイル・トラバース(FF)) 作中で言及 ダン(妹 火引百合子 パラレル設定の筈だったがVで正式登場)、ヒューゴー(弟 アンドレJr.(FF)) 弟 キャラ存在 ケン(兄 ガイル ガイルの妻ユリアの妹がケンの妻のイライザ)、ユリアン(兄 ギル)、ヤン(兄 ユン)、豪鬼(兄 剛拳)カイル・トラバース(FF)(兄 コーディー) 作中で言及 レミー、ソドム(三兄弟(FF)) 姉 作中で言及 春日野さくら(弟 春日野つくし) 妹 作中で言及 まこと、源流斎マキ(姉 源流斎レナ) 息子 キャラ存在 リュウ(父 豪鬼 ただしOVAで描写があったのみで言及はされていない) 作中で言及 ヒューゴー(父 F.アンドレ(FF)) 娘 作中で言及 春麗、まこと ヴァンパイア 父 作中で言及 オルバス(息子アルバ EDで登場) 息子 作中で言及 ビクトル・フォン・ゲルデンハイム(父 ゲルデンハイム博士) 設定のみ ガロン(父 バラバ・クロイツ ただし明言されていない) 弟 作中で言及 ビクトル・フォン・ゲルデンハイム(姉 エミリー プロトタイプの人造人間) 妹 作中で言及 レイレイ(姉 リンリン お札として登場) サイバーボッツ 兄 キャラ存在 バオ(妹 マオ) 妹 キャラ存在 マオ(兄 バオ) 作中で言及 マリー・ミヤビ(兄 エドワード、トーマス、カール) 息子 作中で言及 神楽千代丸(父 辰乃進)、ジン・サオトメ(父 ケン・サオトメ) 娘 作中で言及 デビロット姫(父 デスサタン) その他 兄 キャラ存在 バージル(弟 ダンテ)、ブルース(弟 ロックマン、カットマン、アイスマン、ファイヤーマン、エックス、妹 ロール) 兄であり弟 キャラ存在 ロックマン(妹 ロール、弟多数)他DRN、DWN 弟 キャラ存在 鑑恭介(兄 忌野雹)、ダンテ(兄バージル) 姉であり妹 キャラ存在 ロール(兄 ブルース、ロックマン、弟多数) 息子 キャラ存在 一文字伐(父 忌野雷蔵)、ネロ(父バージル) SNK SNKPLAYMORE 餓狼伝説 父 キャラ存在 ギース・ハワード(息子 ロック・ハワード)、キム・カッファン(息子 キム・ドンファン、キム・ジェイフン) 作中で言及 フランコ・バッシュ(息子 フランコ・バッシュJr.) 兄 キャラ存在 テリー・ボガード(義弟 アンディ・ボガード)、キム・ドンファン(弟 キム・ジェイフン)、牙刀(妹 双葉ほたる ただし明言されていない)秦崇雷(弟 秦崇秀)、ギース・ハワード(弟 ヴォルフガング・クラウザー、義弟 カイン・R・ハインライン ギースの妻メアリーの弟)ビリー・カーン(妹 リリィ・カーン) 弟 キャラ存在 アンディ・ボガード(義兄 テリー・ボガード)、キム・ジェイフン(兄 キム・ドンファン)、秦崇秀(兄 秦崇雷)ヴォルフガング・クラウザー(兄 ギース・ハワード)、カイン・R・ハインライン(義兄 ギース ギースの妻メアリーの弟) 妹 キャラ存在 リリィ・カーン(兄 ビリー・カーン)、双葉ほたる(兄 牙刀 ただし明言されていない) 息子 キャラ存在 ロック・ハワード (父 ギース・ハワード)、キム・ドンファン、キム・ジェイフン(父 キム・カッファン) 作中で言及 テリー・ボガード(義父 ジェフ・ボガード)、アンディ・ボガード(義父 ジェフ・ボガード) 龍虎の拳 父 キャラ存在 タクマ・サカザキ(息子 リョウ・サカザキ 娘 ユリ・サカザキ)、藤堂竜白(娘 藤堂香澄) 設定のみ リー・パイロン(息子 青竜) 兄 キャラ存在 リョウ・サカザキ(妹 ユリ・サカザキ) 設定のみ ミッキー・ロジャース 姉 作中で言及 キング(弟 ジャン) 妹 キャラ存在 ユリ・サカザキ(兄 リョウ・サカザキ) 作中で言及 藤堂香澄(姉 藤堂瑞穂) 息子 キャラ存在 リョウ・サカザキ(父 タクマ・サカザキ) 娘 キャラ存在 ユリ・サカザキ(父 タクマ・サカザキ)、藤堂香澄(父 藤堂竜白) サムライスピリッツ 父 キャラ存在 服部半蔵(息子 服部真蔵=後の新章の半蔵)、反面のアスラ(娘 命) 作中で言及 不知火幻庵、壬無月斬紅郎、妖怪腐れ外道(娘 儚)、祭囃子双六(娘 駒) 母 キャラ存在 色(娘 命) 作中で言及 パピー(初代~)(娘 パパー、ピピー、ピパー)、パピー(零)(娘 パピー) 兄 キャラ存在 タムタム(妹 チャムチャム)、風間蒼月(弟 風間火月 ) 作中で言及 風間蒼月(妹 風間葉月) 兄であり弟 キャラ存在 風間火月(兄 風間蒼月) 作中で言及 風間火月(妹 風間葉月)、徳川慶寅 設定のみ ガルフォード 弟 作中で言及 王虎(双子の兄 王竜) 姉 キャラ存在 ナコルル(妹 リムルル)、レラ(妹 リムルル) 設定のみ シャルロット(弟 カルダン) 妹 キャラ存在 リムルル(姉 ナコルル、レラ ナコルルとレラは同一体)、チャムチャム(兄 タムタム) 息子 キャラ存在 服部真蔵=後の新章の半蔵(父 服部半蔵) THE KING OF FIGHTERS 父 キャラ存在 草薙柴舟(息子 草薙京)、ハイデルン(養女 レオナ・ハイデルン)ルガール・バーンシュタイン(息子 アーデルハイド・バーンシュタイン 娘 ローズ・バーンシュタイン) 兄 キャラ存在 アルバ・メイラ(弟 ソワレ・メイラ)、アーデルハイド・バーンシュタイン(妹 ローズ・バーンシュタイン)、草薙蒼司(妹草薙葵) 設定のみ 八神庵 兄であり弟 設定のみ 矢吹真吾 弟 キャラ存在 K (姉 ウィップ ウィップはK の姉のクローン)、クリザリッド(姉 ウィップ ウィップはK の姉のクローンであり、クリザリッドはK のクローン) 姉 キャラ存在 ウィップ(弟 K ウィップはK の姉のクローン)、クリザリッド(クリザリッドはK のクローン)、神楽マキ(妹 神楽ちづる 妹 キャラ存在 神楽ちづる(姉 神楽マキ)、草薙葵(兄草薙蒼司) 息子 キャラ存在 アーデルハイド・バーンシュタイン(父 ルガール・バーンシュタイン) 娘 キャラ存在 ローズ・バーンシュタイン(父 ルガール・バーンシュタイン) 月華の剣士 父 キャラ存在 概世(養子 御名方守矢・雪・楓) 兄 キャラ存在 御名方守矢(義弟 楓 義妹 雪)、真田小次郎(妹 真田香織) 弟 キャラ存在 楓(義兄 御名方守矢 義姉 雪) 姉であり妹 キャラ存在 雪(義兄 御名方守矢 義弟 楓) 妹 キャラ存在 真田香織(兄 真田小次郎) 作中で言及 一条あかり(姉 一条ひかり 兄 一条達磨) 息子 キャラ存在 楓、御名方守矢(養父 概世) 娘 キャラ存在 雪(養父 概世) 作中で言及 一条あかり(父 一条幻貌) 風雲黙示録 兄 キャラ存在 真・獅子王(弟 マックス・イーグル)、ゴズウ(弟 メズウ、カズウ) 設定のみ ショー・疾風(妹二人 名称不明) 兄であり弟 キャラ存在 メズウ(兄 ゴズウ 弟 カズウ) 設定のみ ジョーカー(七人兄弟の次男) 弟 キャラ存在 マックス・イーグル(兄 真・獅子王) 作中で言及 ニコラ・ザザ 息子 作中で言及 ショー・疾風(父 剛・疾風) その他 妹 キャラ存在 八雲(姉 阿国(天外魔境 真伝))、紅(姉 阿国(戦国伝承2001)) ADK ワールドヒーローズ 父 作中で言及 ジョニー・マキシマム(息子 コック)、エリック(息子 ビッケ、娘)、ラスプーチン(娘 ラスプーチコ) 弟 作中で言及 シュラ(兄 アシュラ) ニンジャマスターズ 覇王忍法帖 姉 設定のみ 南天朱雀棗(妹 ナツミ) アトラス/ノイズファクトリー 豪血寺一族 父 キャラ存在 キース・ウェイン(息子 クリス・ウェイン) 母 キャラ存在 豪血寺お志摩(娘 豪血寺お梅、豪血寺お種)、アニー・ハミルトン(息子 クリス・ウェイン)、花小路クララ(娘 花小路ポプラ) 兄 キャラ存在 九戸文太郎(弟 九戸真太郎) 作中で言及 大山礼児(妹 ただし漫画版のみ) 兄であり弟 設定のみ 弧空院干滋(兄 徳之進、弟 春樹、妹 お彩) 弟 キャラ存在 九戸真太郎(兄 九戸文太郎) 設定のみ サハド・アスラン・リュート(姉 フランチェカ、ソフィア、セーラ)、弧空院金田朗(兄 卓、健次、猛) 姉 キャラ存在 豪血寺お梅(妹 豪血寺お種)、エリザベス・ベルテ(妹 サンドラ・ベルテ) 姉であり妹 設定のみ 城門光(男系の一族に生まれ、兄弟がいるとの設定から推測) 妹 キャラ存在 豪血寺お種(姉 豪血寺お梅)、サンドラ・ベルテ(姉 エリザベス・ベルテ) 作中で言及 プリンセス・シシー(兄 プリンス 『先祖供養』のプリンスとは別人) 息子 キャラ存在 クリス・ウェイン(父 キース・ウェイン、 母 アニー・ハミルトン) 設定のみ 天神橋筋六(父 天神橋組組長)、雪上火澄(父) 娘 キャラ存在 豪血寺お梅と豪血寺お種(母 豪血寺お志摩)花小路ポプラ(母 花小路クララ) レイジ・オブ・ザ・ドラゴンズ 兄 キャラ存在 オニ(妹 カサンドラ)、ジミー(弟 ビリー) 兄 設定のみ ラデル 弟 キャラ存在 ビリー(兄 ジミー) 妹 キャラ存在 カサンドラ(兄 オニ) 作中で言及 プパ・サルゲイロ アークシステムワークス GUILTY GEAR 父 キャラ存在 ソル=バッドガイ(娘 ディズィー)、カイ=キスク(息子 シン=キスク) 母 キャラ存在 ジャスティス(娘 ディズィー)、 ディズィー(息子 シン=キスク) 弟 作中で言及 ブリジット 娘 キャラ存在 ディズィー(母 ジャスティス) 戦国BASARA X 兄 キャラ存在 織田信長(妹 お市) 妹 キャラ存在 お市(兄 織田信長) エクサム アルカナハート 姉 キャラ存在 ゼニア・ヴァロフ(妹 リーゼロッテ・アッヒェンバッハ ただし明言されていない)、アンジェリア・アヴァロン(妹 ミルドレッド)犬若あかね(妹 犬若なずな) 作中で言及 朱鷺宮神依(妹 現在は死別) 設定のみ このは 姉であり妹 作中で言及 春日舞織(姉 鼓音 妹 小糸・小唄) 設定のみ 安栖頼子(姉・妹・弟二人) 妹 キャラ存在 犬若なずな(姉 犬若あかね)、ミルドレッド・アヴァロン(姉 アンジェリア)リーゼロッテ・アッヒェンバッハ(姉 ゼニア・ヴァロフ ただし明言されてはいない) 娘 作中で言及 リリカ・フェルフネロフ(父 ライゼル・フォン・フェルフネロフ) 設定のみ 愛乃はぁと(母)、廿楽冴姫(父母)、フィオナ・メイフィールド(父母) 同人及びアニメキャラ等の版権作品 ウルトラシリーズ 父 キャラ存在 ウルトラセブン(息子 ウルトラマンゼロ) 兄 キャラ存在 ウルトラマンレオ(弟 アストラ) 息子 キャラ存在 ウルトラマンジード(父 ウルトラマンベリアル 正確にはクローンのようなものだが互いに親子とみなしている)ウルトラマンタイガ(父 ウルトラマンタロウ) 作中で言及 ウルトラマンタロウ(父 ウルトラの父(ケン)、母 ウルトラの母(マリー)) 仮面ライダーシリーズ 父 キャラ存在 紅音也(息子 紅渡)、園咲琉兵衛(息子 園咲来人) 弟 キャラ存在 城戸真二(兄 城戸真一 ただし『HEROSAGA』のみ) 弟 作中で言及 葛葉紘汰(姉 葛葉晶)、呉島光実(兄 呉島貴虎) 妹 作中で言及 稲森真由(姉 稲森美紗) 息子 キャラ存在 葛木巧(父 葛木忍) ガンダムシリーズ 父 作中で言及 武者頑駄無真悪参(息子 射駆零) 兄 キャラ存在 キョウジ・カッシュ(弟 ドモン・カッシュ)、シャア・アズナブル(妹 セイラ・マス) 作中で言及 ゼクス・マーキス(ミリアルド・ピースクラフト)(妹 リリーナ・ドーリアン(リリーナ・ピースクラフト)) 姉 キャラ存在 カガリ・ユラ・アスハ(弟(もしくは兄) キラ・ヤマト) 弟 キャラ存在 キラ・ヤマト(姉(もしくは妹) カガリ・ユラ・アスハ)、ドモン・カッシュ(兄 キョウジ・カッシュ) 作中で言及 カトル・ラバーバ・ウィナー(姉 イリアをはじめ29人) 妹 キャラ存在 セイラ・マス(兄 シャア・アズナブル) 息子 作中で言及 アスラン・ザラ、アムロレイ、イザーク・ジュール、カトル・ラバーバ・ウィナー、キョウジ・カッシュ、キラ・ヤマト、サイ・サイシーゼクス・マーキス(ミリアルド・ピースクラフト)、チボデー・クロケット、ディアッカ・エルスマン、ドズル・ザビ、ドモン・カッシュニコル・アマルフィ、ランバ・ラル 娘 作中で言及 カガリ・ユラ・アスハ、セイラ・マス、レイン・ミカムラ ジョジョの奇妙な冒険 父 作中で言及 空条承太郎(娘 徐倫)、ジョセフ・ジョースター(娘 ホリィ)、DIO(ただし自身の肉体は別人のもの)、ウィル・A・ツェペリ(子 マリオ) 母 作中で言及 エンヤ婆(息子 J・ガイル) 兄 作中で言及 ジャン=ピエール・ポルナレフ(妹 シェリー) 弟 作中で言及 ボインゴ(兄 オインゴ) 息子 作中で言及 花京院典明、吉良吉影、空条承太郎(母 ホリィ、父 貞夫)、シーザー・アントニオ・ツェペリ、ジョセフ・ジョースター、チャカ、広瀬康一ブローノ・ブチャラティ、リンゴォ・ロードアゲイン、DIO 祖父 キャラ存在 ジョセフ・ジョースター(孫 承太郎)、ウィル・A・ツェペリ(孫 シーザー・アントニオ・ツェペリ) School Days 姉 作中で言及 桂言葉(妹 桂こころ) 娘 作中で言及 西園寺世界(詳しくは コレ を参照) ドラゴンボール 父 キャラ存在 孫悟空(息子 孫悟飯、孫悟天)、ベジータ(息子 トランクス)、パラガス(息子 ブロリー)、ミスター・サタン(娘 ビーデル)バーダック(息子 ラディッツ、カカロット)、孫悟飯(娘 パン) 作中で言及 クリリン(娘 マーロン)、フリーザ(息子 クリーザ) 母 作中で言及 人造人間18号(娘 マーロン)、チチ 兄 キャラ存在 孫悟飯(弟 孫悟天)、ラディッツ(弟 カカロット)、クウラ(弟 フリーザ) 作中で言及 トランクス(妹 ブラ)、ベジータ(弟 ターブル) 弟 キャラ存在 フリーザ(兄 クウラ(アニメオリジナル)) 姉 作中で言及 人造人間18号(弟 人造人間17号) 息子 キャラ存在 トランクス(父 ベジータ) 作中で言及 フリーザ&クウラ(父 コルド大王) ドラゴンクエスト 父 キャラ存在 ドラゴンクエスト5主人公(息子 ドラゴンクエスト5主人公の息子、娘 ドラゴンクエスト5主人公の娘) 弟 作中で言及 テリー(姉 ミレーユ) テイルズオブシリーズ 父 キャラ存在 スタン・エルロン(息子 カイル・デュナミス)、ヒューゴ・ジルクリスト(息子 エミリオ・カトレット 娘 ルーティ・カトレット) 母 キャラ存在 リリス・エルロン(娘 リムル・エルロン)、ルーティ・カトレット(息子 カイル・デュナミス) 兄 キャラ存在 スタン・エルロン(妹 リリス・エルロン)、チェスター・バークライト(妹 アミィ・バークライト)、ロニ・デュナミス(義弟 カイル・デュナミス) 弟 キャラ存在 カイル・デュナミス(義兄 ロニ・デュナミス)、リオン・マグナス(姉 ルーティ・カトレット) 姉 キャラ存在 ルーティ・カトレット(弟 リオン・マグナス) 妹 キャラ存在 アミィ・バークライト(兄 チェスター・バークライト)、リリス・エルロン(兄 スタン・エルロン) 息子 キャラ存在 カイル・デュナミス(父 スタン・エルロン、母 ルーティ・カトレット) 娘 キャラ存在 リムル・エルロン(母 リリス・エルロン) 作中で言及 藤林すず(父 銅蔵)、メルディ(母 シゼル)、イレーヌ・レンブラント(父 シャイン・レンブラント) TYPE-MOON作品 父 キャラ存在 セイバー(息子 モードレッド) 作中で言及 衛宮切嗣(養子 衛宮士郎) 兄 キャラ存在 遠野志貴(妹 遠野秋葉) 妹 キャラ存在 翡翠(姉 琥珀) 作中で言及 間桐桜(兄 間桐慎二)、ライダー(姉 ステンノ、エウリュアレ)、蒼崎青子(姉 蒼崎橙子) 北斗の拳 父 作中で言及 シュウ(息子 シバ) 兄 キャラ存在 ラオウ(弟 トキ 義弟 ジャギ 義弟 ケンシロウ) 作中で言及 レイ(妹 アイリ) 兄であり弟 d トキ(兄 ラオウ 義弟 ジャギ 義弟 ケンシロウ)、ジャギ(義兄 ラオウ 義兄 トキ 義弟 ケンシロウ) 作中で言及 ジュウザ(兄 リュウガ、妹 ユリア) 弟 キャラ存在 ケンシロウ(義兄 ラオウ 義兄 トキ 義兄 ジャギ) 姉 作中で言及 マミヤ(弟 コウ) Leaf作品(QOHシリーズ及びとぅふぁいとに関連) 姉 キャラ存在 来栖川芹香(妹 綾香)、柏木千鶴(妹 梓・楓・初音)、エルルゥ(妹 アルルゥ) 作中で言及 雛山理緒(弟 良太 妹 ひよこ) 姉? キャラ存在 HMX-12マルチ(妹? HMX-13セリオ) 姉であり妹 キャラ存在 柏木梓(姉 千鶴 妹 楓・初音)、柏木楓(姉 千鶴・梓 妹 初音) 妹 キャラ存在 柏木初音(姉 千鶴・梓・楓)、来栖川綾香(姉 芹香)、アルルゥ(姉 エルルゥ) 妹? キャラ存在 HMX-13セリオ(姉? HMX-12マルチ) MUGENオリジナル 父 キャラ存在 クリス・ウィルソン(息子 ケイン、娘 アリス)、プロジオ・トリリオーネ(娘 クローディス・トリリオーネ)、Final(息子 Animus) 兄 キャラ存在 アイル(弟 リュート)、シュウ・ナナサワ(妹 ケイ・ナナサワ)、右京練児(妹 右京雪希) 設定のみ 桑原虎氏、グレル・ボルト(妹 アローニャ) 姉 キャラ存在 シルヴィ・ガーネット(妹 アルティ・ガーネット)、神崎ゆか(妹 神崎ゆん)、 レギン・ヴェグルレスフ(妹 イアリ・ヴェグルレスフ)、クレア・フォスター(弟 クレス・フォスター) 設定のみ 御曉切奈、クローディス・トリリオーネ 妹 キャラ存在 神崎ゆん(姉 神崎ゆか)、ケイ・ナナサワ(兄 シュウ・ナナサワ)、イアリ・ヴェグルレスフ(姉 レギン・ヴェグルレスフ)