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『ゆっくりと(で)遊ぼう!他二本』 17KB いじめ いたづら 自業自得 飼いゆ 野良ゆ 現代 ぺにまむ 20作目ましてこんばんは、キャンセルあきです 小ネタ二本含みます ■一匹見たら三十匹 ――自宅の台所。 「り、り、りぐる!」 「あ、りぐるだ」 りぐるを見つけた私は、早速この家全体のりぐるを駆除することを決意した。 やり方は簡単だ。 先ず、流し台の脇に置いてあるゆっくりコンポストの蓋をあける。 「ゆ……! にんげんざん! まりざばはんぜいじまじだ! くそじじいどがいっでもうじわげありばぜん! でずがらどうが! どうがまりざをおうじにがえじでぐだざい!」 そして、中に設置されているコンポストゆっくりの頭部を割り開く。 効果音はくぱぁが良いかな、やっぱり。 「まりざはんぜいじまじだ! まりざはんぜい――ゆっぎゃあああああああああっ!」 そして最後に、水で溶いた小麦粉を使ってまりさの口を塞いで完了。 頭と口の順番は逆でも良い、悲鳴が聞きたかっただけなのだ。 「……! ……! ――――!」 後は一晩寝るだけである。 ――翌朝。 「……げ」 「「「「「「「「「「「「「り、り、りぐる! り、り、りぐる!」」」」」」」」」」」」」」 コンポストゆっくりの餡子に引き寄せられて集まったゆっくりりぐる達は、内側がすべすべの コンポスターを登ることが出来ずに中に溜まる。 そこまではよかったのだが、コンポスターの縁までわらわらと詰まったりぐるの大群には、流石に辟易した。 底の見えない量のりぐる達、中心から緑のわき水のように元気なりぐるが登ってきて、仲間達の頭を踏み コンポスターの壁に到達しては、かりかりかりかりと六本足でコンポスターをひっかいて、疲れたのだろう、 後続のりぐるに踏まれてりぐるの海に沈んでいく。りぐるりぐるりぐるりぐるりぐるりぐるりぐるりぐる。 視覚的にゲシュタルトが崩壊した私はのろのろとした動作でコンポスターの蓋を閉ざした。 冷蔵庫を開けっ放しにしたのでなければ、この大量増殖は何かを餌にしなければ不可能だ。 床下か何処かで、忍び込んだ野良ゆっくりが死んでいたのだろう――良くあることだ。 「次のゴミ出しに……あ」 私はカレンダーを見て硬直した。 ――公園。 数分後、燃えるゴミの日が明後日であることを失念していた私は、 「達者で暮らせよ、りぐるたち!」 「「「「「「「「「「「「「ゆっくりれぎおんしていくよ!」」」」」」」」」」」」」 つい、マナー順守の精神を放棄して公園にりぐるを捨ててしまった。 あるいは、解き放ってしまった。 「「「「「「「「「「「「「り、り、りぐる! り、り、りぐる!」」」」」」」」」」」」」 緑の絨毯、あるいは目の荒らい芝生の様に広がって、前進――いや、行軍していくりぐるたち。 コンポスターの底に、コンポストゆっくりのまりさが居たという証拠は何処にも見当たらない、 きっとその分りぐるが増えている、そういうことだろう。 「ゆっくり~のひ~。まったり~のひ~「「「「リ、リ、リグル!」」」」――ゆっぴいいいいいいっ!」 あ、野良まりさが一匹緑の波に呑まれた。 「ゆっくりしてないりぐるだよ! まりさがゆっくりせいっさい――ゆぴぃ!」 あんよでつぶせば頭に登り、背に転がれば腹にとりつく。 おさげで払えば髪をちぎり取り、言葉にならない悲鳴を上げれば開いた口から舌に噛みつく。 「ま、まりさをむーしゃむーしゃしたらゆっくりできな――ゆぴっ! やべでよ、ゆっくりできないことをするなんて、とってもゆっくりしてないことだよ!」 まりさが形を無くすまで、凡そ一分程か―― 大体そのような感じでまりさは解体され…………そして何も残らなかった。 ――自宅。 良いことをした気分になった私が、空になったコンポスターを抱えて帰宅すると、 まりされいむの番が台所でくつろいでいた。 「ゆ……? なんなのぜ、ここはまりさとれいむのゆっくりぷれいすなんだぜ!」 「ざんねんだけど、れいむたちがさきにおうちせんげんしたんだよ」 「はあ……疲れているから、出来ればひとりにさせて欲しいんだけどな」 ああ、数分の間におうち宣言も済ませていたようだ。 ドアについている猫用の出入り口をわざと開けておいた事については、まあ否定しない。 死骸は出さない、そしてコンポストの中身も補充する。 ゆっくり相手に両方やるのは、それほど難しくないだろう。 その時、私の背中に貼り付いていたりぐるが一匹、床に降りたって冷蔵庫の裏に逃げたが、 「り、り、りぐるは、そろーりそろーりにげるよ!」 緩慢な動作でまりさとれいむに手を伸ばしていた私は、それに気づく事は無かった。 「り、り、りぐる。りぐるはゆっくりはんしょくするよ!」 おわり。 ■まっちょりーの作り方 ――ゆっくり病院にて。 「ああ、これは急性まっちょりー化症候群――通称ザ・ガッツ病ですね。 ええ――はい、持ってきて頂いたうんうん、もといサンプルだけで診断可能です。 主に、ぱちゅりー種に運動をさせすぎた結果かかることの多い病気ですね。 けれども、ゆっくりの食生活の問題もあるのですよ。 サンプルの分析結果――ここの数値を見て下さい。 左が通常のぱちゅりー、真ん中が飼い主さんのぱちゅりーちゃん、右がまっちょりーのデータです。 違いがあるのはここと、ここ。 普通はぱちゅりーの中身は脂肪分と糖分が多いでしょう? 生クリームですから。 飼い主さん、ぱちゅりーちゃんにあたえている餌はなんですか? ああ――やっぱり。 これはまりさ種向けの餌ですよ。 それも、レース出場ゆっくり向けの、高級品ですね――プロテインの入っている。 もっと安い餌で充分なんですよ。 栄養面? 全く問題有りませんね。 まあとにかく、これからは飼いぱちゅりーちゃんの食事に気をつけられて下さい。 しばらくの間、口からタンパク質を摂取しなければ、自然と快復するはずです」 ――夜、自宅にて。 「ぱちゅりー。しばらくはその……やり方を変えてみないか? 口でするんじゃなくって」 「…………むきゅ?」 終わり。 ■ゆっくりと(で)遊ぼう! ここは町中にぽっかりと空いた虫食いのような空き地。 草むらのどこかから、饅頭達の視線を感じるような静かな空き地、口うるさい大人達の死角は、 少年達にとって絶好の遊び場だ。 「みんな~、ゆん踏みやろうぜ!」 としあき君(仮)が呼びかけると、すりーでぃーえすっ! や えぬじいぴいっ! をポケットに入れて、 たちまち六人の小学生が集まった。 としあき君の友達の鬼居君をはじめ、手に手に駄菓子を持っていて、ゆっくりを撒き餌で集める準備万端だ。 「ちるのチョコとか、"わかるよー"を釣るには高すぎない?」 「僕、食べる中国油持ってきたよ~」 「それで"じゃおー"が来たらお前の持ちゆっくりな、良いだろ? 決まり決まり」 「じゃ、隠れようぜ!」 そのように、空き地の真ん中に袋を開けた駄菓子を置いて、としあき君達が隠れると、 「ゆ……? ゆっくりにんげんさんたちはいなくなったのぜ?」 「ゆわあ! あれってあまあまじゃないの? れいむはやくむーしゃむーしゃしたいよ!」 「いまならゆっくりできるんだねー、わかるよー!」 「ちーんぽぅ!」 全然分かっていないちぇんを先頭に、ぞろぞろと饅頭達がやってきた。 草むらの影では、野良の賢者ぱちゅりーが危険を訴えていたが、「むーしゃむーしゃのじゃまをする げすぱちゅりーはせいっさいだよ!」と逆ギレしたれいむに永遠にゆっくりさせられた。 「と……とかいはなあまあまさんだわ! ありすにふさわしいゆっくりしたごはんさんね!」 「むきゅう、ほんとうにゆっくりしてるのかしら? にんげんさんの"わな"じゃないの?」 集まったのは、まりさとれいむ、ありすぱちゅりー、そしてちぇんにみょんの六匹。 「ゆ……にんげんさんたちはほんとうにいなくなったみたいなのぜ!」 「まりさっ! れいむ、もうがまんできないよっ! ゆっくりしたいよ!」 「わかるよー。これはもうちぇんたちのあまあまさんなんだねー」 「ゆっ! それではとかいはにいただきましょうっ!」 「「「「「「むーしゃむーしゃ。しあわ――」」」」」」 「今だ、のりこめー!」 「「「「「わあい!」」」」」 数を確認したとしあき君達は、駄菓子にかぶりついたとみるや、草むらから一斉に飛び出した。 悲しいかな不思議饅頭達は、あまあまを巣まで持ち帰って食べるほどの警戒心も存在しない。 隠れていたとしあき君達が飛び出した様子は、ゆっくり達にとって、無から突如として 人間さんが発生したかのようにも見えたであろう。 「ゆ……ゆわああっ! どぼじでにんげんざんがごごにいるのぜえっ!?」 「にんげんざんっ! これはちがうんだよ、まりさがたべようっていったんだよ! れいむわるくないよ!」 「あまあま? にんげんっ!? わきゃ、わきゃらにゃっ! わきゃ――わきゃ!」 「いーでぃーちんちんっ! いんぽーてんつっ!」 "ゆっくりしていってね!"も言えず混乱するゆっくり達に向って突進するとしあき君。 狙いはお飾りだ。 「あれ……!?」 ゆん踏みのセオリーとしてちぇんのおかざりを狙っていたとしあき君は、ちぇんの様子を見て、 即座に狙いをまりさに切り替えた。 「ちぇんのおかざり……もーらいっ! って――あぁっ!?」 「わぎゃ……わぎゃ……ゆ゛……ゆ゛……」 としあき君達が狙おうとしていたちぇんは、誰かが持ってきていた「食べる中国油」を口にして 既に瀕死だったのだ! ――しまった! その空気が少年達の間に広まる時間差を縫って、としあき君はまりさの三角帽子を取り上げる。 「ゆぅ!? かえしてねっ! まりさのおぼうしかえしてねえええっ!」 まりさは強がりをする性格だったのだろう、おぼうしを取られた瞬間に、だぜ口調も忘れて弱々しく としあき君に御願いしている。 当然、としあき君が返してあげる筈もない。 彼らがやろうとしているゆん踏みのルールはただ一つ。 自分がお帽子を取り上げた『持ちゆっくり』が、最後まで生きていた子の勝ち! 故に、一番人気は敏捷性に優れるちぇん種だったのだ。 だが、そのちぇんは既に死に瀕していて、緑のお帽子を取ってしまったとしあき君の友達は、 ちぇんが永遠にゆっくりする前に他のゆっくりを潰す戦略しか残されていない。 「いっけええっ! バズーカチャンネル!」 「まりざのおぼうしかえじ―『ゲシッ!』―ぶべえええええっ!」 当然、それを許すとしあき君ではない。としあき君は、鬼居君がまりさに迫るより一足早く、 まりさを思いっきり、けれど死なない程度の手加減をして蹴り飛ばした。 「おそらをとんでるみたいいいいぃぃぃぃ――ぺぎょらっ! い、いたいのぜえええええっ!」 餡子が詰まっていると思えない程に軽軽と放物線を描いたまりさは、かなり離れた草むらまで飛ばされ、 大きなけがもしていないのか遠慮無く泣きわめいている。 「あ~、くそ。としあきにまりさ飛ばされた!」 「れいむのおりぼんざんがえじでねっ! いまずぐでいいでずがらあああああ!」 このゆん踏み、自分がお飾りを持っている限り、ゆっくり達はのろまな影の様に後を着いてくる。 故に、他のゆっくりを踏みつぶそうとした時にカウンターを貰って自分のゆっくりが潰される 可能性があるのだ。 「よーし、鬼居のれいむ狙いだ!」 「させないよ、としあき!」 まりさを安全圏まで蹴り飛ばしたとしあき君は、おりぼんを外されたれいむに走っていくが、 その脳天を踏みつけようとした直前、赤いおりぼんを手にした鬼居君がれいむを蹴り飛ばし、 「れいむとりさんだよおおっ!」饅頭は奇声をあげて空き地の反対側へ飛ばされていった。 「ちぇっ! だったら先にみょんを叩く!」 ゆん踏みで有利なのは、敏捷性を誇るちぇん、そして耐久性に優れるみょんと、 無駄に生命力のあるまりさだ。 「みょん、もーらいっ!」 同じことを考えたのか、赤いかちゅーしゃを手にした友達が、「ちんぽーーーーっ!」と 叫ぶみょんに向って足を振り上げた。 と、その時だ。 みょんの白い髪飾りを持った少年が、「ぷくーしろ!」と叫んだ。 「ぷ、ぷっくうううううっ! 『ぐっしゃぁ!』――ちいぃぃん、ぽおおぉぉぉ!」 すると驚くべき事に、反射的に身体を膨らませてぷくーをしたみょんは、頭を思いっきり少年から 踏まれたにも関わらず、その圧力に耐えているではないか。 ぷくーで作った空気だまりに体内の餡子が移動して致命的な破裂を免れると同時に、膨らんだ部分が 少なからず衝撃を緩和したのだ。 「あ、くそ、コノ、"ちんぽ"早くしねって!」 「みょみょみょみょみょ……ちぃいんっぽうっ!」 かちゅーしゃを持った少年が激しく踏みつけるが、丸いゆっくりの事、上手く中心を踏み抜く 事が出来ない。逆にみょんのお飾りを手にした少年は、瀕死のちぇんを素早く潰し、一歩リードと 言った所だ。 そしてその間に、お帽子を持ったとしあき君と、おりぼんを手にした鬼居君が、 かちゅーしゃを奪われたありすにせまる。 「いなかものはありすにちかづかないでね!」 「だが断る!」と、としあき君。 「とかいはじゃないわ!」 「お前等饅頭程じゃないね」と、鬼居君。 「と……とかいはなまむまむをみせてあげるわっ! そしたらありすのかちゅーしゃを――」 「「そんなのうれしいわけあるかあああっ!」」 「とぎゃいびゃっ!」 としあき君と鬼居君が、瞬間、心、重ねて。今、必殺のツインシュートが炸裂。 「ありすが揺れたあ――!」 不規則な回転を加えられてぶっ飛んだありすは複雑な曲線を描いてコンクリート壁に激突し、 白いペンキとなって無垢な壁を彩った。 「あ、やべ。"かっぺ"がやられた……うわっ!」 赤いカチューシャをてにした少年は、みょんを踏んだままその光景に気を取られたせいか、 それともみょんが想像以上に滑りやすかったせいか、不自然な格好でバランスを崩してしまった。 「でかまらっ!?」 少年の全体重を乗せたヒップアタックが、みょんの頭上から墜落する。 「ぜぇぇぇつぅぅぅりぃぃぃんぅぅぅぅ……ぶぎょっ!」 渾身のぷくーも流石に意味が無く、みょんは少年の尻の下で饅頭からもんじゃ焼きにジョブチェンジ。 「あーあ、"かっぺ"と"ちんぽ"のせいでズボンが汚れた。ちっ……今度潰してやる」 かちゅーしゃを手にした少年はありすとみょんへのヘイトを深め、ここに勝負は、まりさを持ちゆっくりと するとしあき君と、鬼居君の持ちゆっくりれいむの、どちらが早く潰れるかに決まった。 「あ~僕のぱちゅりーが~……」 ちなみにぱちゅりーは、とっくの昔にストレスでエレ死していた。 みょんの死亡が確認される頃には、まりさとれいむも気を取り直して自分の大事大事なお帽子に 向ってきている。 「まりさはもうおこったよ! あやまってもゆるしてあげないよ!」ぴょいん、ぴょいん。 「れいむのおりぼんさんをかえさないげすは、せいっさいっしてやるよ!」ずーり、ずーり。 惨状を見てとっとと逃げれば、惨めながらも生きながらえることが出来ただろうに。 おかざりを失うのはゆっくりにとって最大の不名誉――故に、名誉の為ならば彼我の戦力差を 顧みないと言い換えれば格好は付くのだが、れいむまりさの場合、未だに、お帽子さえ取り返せば 人間さんを制裁してゆっくりできると思っているのだ。 「としあき――」 「いくよ……!」 向かい合うとしあき君と鬼居君。 互いに互いのもちゆっくりをつぶすだけでよく、勝負は一瞬で決まる。 二人の間を風が駆け抜けた瞬間、少年達は同時に動いた。 それぞれが手にしたお飾りを大きく投げ飛ばし、そして走り始める! 「まりさのおぼうじがっ!」 「れいむのおりぼんさんんっ!」 共に、持ちゆっくりが追いかけるお飾りを遠くに投げ、自分の生命線である持ちゆっくりを 相手から遠ざけた間に相手のゆっくりを踏む作戦だ。 だが、としあき君は確かな勝利の予感を持って走っていた。 「あ、しまった――!」 そう声を上げたのは、まりさに向って走っていた鬼居君だ。 「まりさのおぼうじにむかって、ぴょんぴょんするよっ!」 としあき君の投げたお帽子を追って、まりさは鬼居君から離れるように二回、三回とぴょんぴょん したのである。 としあき君がフリスビーの要領で投げたおぼうしは、風を受けて鬼居君の予想を超える動きをしたのだ。 対して、鬼居君が投げたおりぼんは、明らかに遠くへ投げ飛ばすには不向きな形をしている。 少し風に流されただけのおりぼんを、思い切りジャンプしたとしあき君は空中でキャッチして。 「とったどーっ!」 「れいむのおりぼんさん――だぶりゅっ!」 そして、着地した足下に、おりぼんさんを追ったれいむが居た。重力を借りたとしあき君必殺の ストンピングが、おりぼんを求めたれいむの右目に突き刺さり、饅頭皮をぶち破って中枢餡を一気に 破壊、としあき君の足首までれいむに埋まるほどの勢いで反対側の地面まで貫通する。 「もっど……ゆっぐじ……じだがっ……だ」 「やられたっ!」 その時点で鬼居君は、まりさに向けてあと一歩の距離を残して時既に時間切れ。 風向き、まりさのあんよの速さ、そしてお飾りの形状。限られたルールの中で勝利条件を 満たしたとしあき君が栄光を掴んだのは、必然的実力の結果なのだ。 「ゆんしょ! まりさのおぼうし……。…………。れ……れいむううううううううっ!? みんなどぼじでえいえんにゆっくりしてるのぜえええええっ!?」 ようやくおぼうしを取り戻して周囲を見渡す余裕の出来たまりさが、空き地に響かせる悲鳴が、 ゆん踏みの終結を宣言した。 ゆん踏み終了後の公園は、激闘の舞台であったとは思えない和やかな雰囲気に包まれている。 「やるな、としあき!」 「鬼居君こそ、風向きが逆だったらきっと僕は負けてたよ」 としあき君と鬼居君は、がっしと握手しながら『美味い棒読み(納豆味)』を半分こにした。 「ほら、お前の仲間の中身だろ、あまあま好きじゃんお前達、だから喰えよ、喰えって!」 「まりざ、みんなのしだいどか、もうたべだぐありばぜん~! ゆるじでくじゃざいいいっ!」 「あ、なに? "ちんぽ"は食べ飽きたって? じゃあ次は"えれえれ"とかどうだよ、傷無いよ?」 「ぱちゅりーは"えれえれ"なんかじゃありばぜんんっ! ばりざはんぜいじまじだがらああっ!」 「なにを反省したのか言ってみてよ、納得できたらおうちに返してやるからさ?」 「わがりまぜんんっ! ごべんなざいいいいっ! むーしゃ……ゆっげえええっ!」 少年達は互いの健闘を称えつつ、まりさに死体を後片付けさせていた。 ゴミを捨てると、お母さん達から怒られるからだ。 「ゆるじでぐだざいいいいっ! もうだべられまぜんっ! はんぜいでず! まりざはんぜいじまじだ!」 「あ~、君、残ったこの"中国油"食べる~?」 「ゆべええっ! こりぇどきゅはいっちぇるううっ!」 一応、このまりさも生かして返す事にしている。 ゆん踏みに巻き込まれたゆっくりが一匹も帰ってこないと、次にゆん踏みを行った時に ゆっくり達が絶望して"おたべなさい"自殺をしてしまうのではないかと恐れたためだが、 実際にはそんなに記憶力のあるゆっくりはいないので問題ない。 「余ったお飾りはどうしよう、鬼居君?」 「まりさのお帽子に付けちゃおうぜ。みんなの思い出と一緒に生きていければいいだろ、こいつらも」 「やべでぐだざいいいっ! ゆっぐじでぎないにおいがついじゃいまずううっ! ゆっぐじ! ゆっぐじじでぐだざいいいいっ!」 みんな餡子とくりーむで汚れていたが、正々堂々の勝負を終えた顔はすがすがしく、 遺恨の一つも感じられず、互いに明るく笑い合っていた。 互いの殴り合いに発展しないゆん踏みは、爽やかなスポーツなのである。 終わり。 ■後書き ここ一週間ぽんぽんさんがゆっくりしてなくってあにゃるがまじぱねぇ 32×32って言ってもドット1000個あるじゃんドット絵まじぱねぇ ■過去作品 anko2910 その台詞は言わせない6 anko2832 その台詞は言わせない5 anko2815 はぐれまりさとながれみょん anko2724 夕食、ゆっくり anko2537 小ネタ三本 anko2416 れありてぃ ~希少種の希少性~ anko2398 電車を待ちながら anko2298 どうする? anko2016 熱中症には気をつけよう anko1972 春、その季節は anko1910 そして何かが動き始めた anko1835 その台詞は言わせない4 anko1728 そして何かが軽くなった anko1666 春のとくっばんっ!編 anko1659 越冬のススメ anko1570 証言ゆ達 anko1521 その台詞は言わせない3 anko1508 その台詞は言わせない2 anko1481 その台詞は言わせない
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『公衆便所』 43KB 変態 現代 独自設定 ぺにまむ ドHENTAI注意、ばや汁です 注意! このSSの作者は『ばや汁』です。 このSSにはドHENTAIな表現、およびオリジナル設定、希少種胴付きゆっくり成分が多分に含まれております! 苦手な方は、申し訳ありませんがブラウザバックをされるか、 不快な思いをされる場合があることを了承のうえ、読み進んでください。 --------------------------------------------- きっと昔じゃ当たり前なことが当たり前じゃなくなって。 きっと昔じゃありえないことが当たり前になった、今。 昔の人は今を知ったら怒ったり悲しんだりするかもしれない。 けれど僕が生きている今は、そんな時代。 僕の職業は、便所掃除だ。 便所掃除といえば、ゴム手袋に長靴はいて、真っ白なマクスにいかにもな作業着を着て、 スッポンスッポンしたりタワシで便器をこすったり、そういうイメージを持つと思う。 確かにそれも便所掃除、でも僕の便所掃除はちょっと違う。 会社の作業用車に乗って住宅街を抜けていく、僕の仕事場は町の中にある公園の中だ。 さっそく一件目に到着し、許可書を窓から見える位置に置いて路上に駐車する。 荷物の入ったバッグを片手に車を降り、向かったのは『公衆便所』だ。 この公衆便所は大抵の場合『公衆トイレ』の横に併設されている、理由は簡単、水回りが近いから。 僕が便所に入ろうとすると、今まさに男性のお客さんが中から出てきた、大変満足そうな顔をしている。 僕は彼に軽く会釈をして、入口のドアを開けて中に入った。 入口をくぐると、まずは待合所が設置されていて、そこから奥へ進むと、個室部屋がある。 中は一見綺麗だったが、ところどころ心無い人が捨てたゴミが落ちている、そこはあくまで公共の施設、といったところだろうか。 まずはそれを拾いながら奥へと進むと、中から声が聞こえてきた。 「ゆふぅ~、つかれちゃったよぉ」 入口から少し進んだところで見えた声の主は、ゆっくりれいむ。 彼女は胴付きで、一糸まとわぬ姿で床にへたり込んでいた。 「こられいむ、僕がお客さんだったらどうするんだ、聞こえるだろ」 「ゆっ!ごめんなさいおにいさん」 「まったく、個室の扉も開けっ放し、お客さんが帰ったらすぐに閉めて準備中にして、 きっちり次の準備をしなさいっていつもいつも言っているだろう」 「ごめんなさい、きをつけるよ!」 毎度お決まりのお小言を言う、何度言ってもこのれいむはドジが治らない。 けれどそこがまたいいと評判のようで、ここの便所は割と人気らしい。 「すぐにかたづけるね!」 「いいよ、僕が来たんだからまずは体を洗ってきなさい」 「はあーい」 れいむは僕が促すと、そのまま個室を出てさらに部屋の奥にある準備室に入っていった。 「こうたいだーぜ、ゆっおにいさん、こんにちわ」 交代で準備室から、薄い肌着一枚に身を包み出てきたのは、同じく胴付きゆっくりのまりさ、 にっこりと僕に微笑みかける、礼儀正しいゆっくりだ。 「やあまりさ、今日も元気かい」 「げんきにしてるぜ、きょうもいじょうはないのぜ」 「そうか、何よりだ」 まりさは僕が入っている個室の扉を開けると、中でテキパキと準備を始め、ゆっくりと椅子に腰かける。 「って、おにいさんがいるってことはいまはじゅんびちゅうだったぜ、なにかてつだう?」 「いやいいよ、ゆっくりしてな」 「うん、ゆっくりしてるのぜ」 まりさはれいむと違ってしっかり者で、自分の仕事もこなすし、れいむのフォローもきっちりしてくれる、実に頼りがいのある子だ。 ここの便所は基本的にれいむとまりさが詰めていて、二人で運営している、 そこに僕が定期的にやってきて二人の仕事ぶりを調査するという形だ、今のところこの場所に大きな問題が発生したことはない。 僕はバッグから清掃用具を取り出すと、手際よく個室の掃除を始める、 使用直後ということもあり、それなりに汚れてはいる。 まずは大まかな汚れをふき取って、洗剤をしみこませたスポンジを使いぐいぐいと泡を広げていく。 床や壁の素材は水をはじきやすいものでつくられているので、あとは水を流すだけだ、 いつもきちんと掃除をしているのか、それともまりさがやってくれているのか、 特に問題のある汚れなどはなくスムーズに事が運んだ。 「そっちの部屋もチェックするよ」 「りょーかいだぜ」 れいむの個室を綺麗にし終わり、まりさに声をかける、まりさの個室は問題なく、僕が清掃するまでも無いようだった。 チェックが終わったところで、ピンポン!と、室内にチャイムが響いた。 「あ、おきゃくさんなのぜ、もうあけていいのぜ?」 「そうだな、僕は準備室に行くから開けてもいいよ、くれぐれも粗相のないようにな」 「わかってるのぜ」 入口に走っていくまりさを見送って、僕はれいむが先ほどはいった準備室の扉を開いた。 「ゆゆっ!いやあんえっち!」 中に入ると、素っ裸のままタオルで髪の毛を拭いているれいむと目があい、れいむは軽く頬を染めてはにかんだ。 「なにがえっちだ、まだシャワー浴びてたのか」 「れいむはていねいにからだをあらいたいんだよ!それにさっきのおきゃくさん、おくにだすんだもん」 れいむは自らまむまむを指で開いて、「まだのこってるきがするよ」と嘆く、まったく羞恥心もクソもあったものではない。 普通の男だったら、一見すると幼い女の子に見えるれいむのそんな行動に、やきもきしてしまうだろう。 けれどそんな様子に一々うろたえているようではこの仕事は務まらない、というかすっかり慣れたものだ。 「しっかり奥まで洗浄しておけよ」 「だいじょうぶだよ、ばっちり!なはずだよ」 「はずじゃだめだ、次の前に必ず挿入検査器でチェックするように、忘れたら処罰だからな」 「わかってるよ」 そういいながられいむはまったく悪びれるでもなく、にこにこと笑っている。 「まったく・・・」 僕はあきれながら椅子に腰かけ、備え付けのパソコンモニタに目を通す。 「本日来場数はさっきので3人目か、前回チェックからは30人、まずまずだな、頑張ってるじゃないか」 「ゆふふっ、もっとほめてほめて」 「調子には乗るなよ、ちゃんと採取もできてるか?」 「うん、ばっちりだよ、なかにだしてもらったのはぜんぶとってあるよ」 「よし、優秀だ」 れいむとやり取りをしながらパソコンのデータを持参した外部メモリに移し、室内の角にある冷凍庫を開ける。 中には保存用試験管に入った人間の精子が数本保管してあった。 データによるとどれも健康で、状態は良いらしい、僕はそれをバッグの専用容器に詰めていく。 「えーっと、それじゃ・・・ってれいむ、シャワー室あけっぱなし!」 さっきから妙に室内が湿気っぽいと思っていたらこれだ、れいむをしかりつけてからシャワー室を覗くと、これまたぐちゃぐちゃでとても衛生的とは言えない。 「ゆへへっ」 「笑うな!まったく、あとでまりさにお説教してもらうからな!」 そういいながらシャンプーやボディソープの位置を正し、モップで水を切ってやる、世話の焼けることだ。 準備室を出ると、ちょうどまりさがお客をとり終わった直後だった。 「またきてほしいぜ」 とっさに身を隠して観察すると、まりさはしゃがんで靴ひもを結んでいる青年の頬にキスをして、 笑顔ですこし談笑し、見送りもしっかりして、実に優等生な仕事ぶりだった。 「お疲れ様」 「あ、おにいさんかえるのぜ?これどうする?」 まりさはそういって、自分の個室にはいり口を結んだコンドームを掲げてみせる。 中には真っ白な精液が入り重たそうに垂れ下がっていた。 「ああ、今回の分は回収しちゃったから、冷凍して保存しておいてくれるか、それにしても量が多いな、期待できそうだ」 「ふふっ、あのおにいさんはわかいからね、このほかにもおくちと、なまでなかにだしていったのぜ」 まりさはそういってくすくすと微笑んだ、もちろん服もしっかりときなおしていて、今まさに性行為を行っていたなんていうのは見てわからないほどだ。 同じような状況だったろうれいむが全裸で身体を投げ出していたのとは大違いのその様子に、僕はねぎらいと称賛の言葉をかけ、便所を後にした。 僕は車に戻り、収穫した試験管を専用容器ごと大型ケースに入れて、エンジンをかける。 これで一か所目の仕事が終わったことになる、僕の仕事は『便所掃除』、公衆便所の清掃点検だ。 かつても公衆便所という言葉があったらしいが、今はそれは公衆トイレのことを指す。 今、『公衆トイレ』と『公衆便所』はまったく別のものを指す言葉になっている。 『公衆トイレ』はそのまま昔からの意味で、直接的な表現をすれば尿と便を排泄する公共の場所だ。 一方『公衆便所』は、排泄は排泄なのだが、男性の精液を排泄する場所、という意味で使われている。 むらっときたら、公衆便所にいって便所係のゆっくり達に排泄する、その程度の感覚だ。 公共の施設だから金銭の授受は一切ない、その代り排泄した精液の一部を採取されるというシステムだ。 これは現在、我が国の度を越して深刻的になった少子化問題が背景にある。 その昔、草食系男子、負け犬女などという言葉があった。 今我が国では、そんなレッテルでは済まされないほどの意欲の低下が問題となっている。 恋愛願望がない、結婚願望がない、子供をつくるのも育てるのも面倒くさい、自分を大切にしたい。 個としての欲が優先されすぎた結果、人々はオスとメスをやめ、一人のニンゲンを目指してしまった。 次の現場はここから3キロほど離れた場所だ。 昼間の閑静な住宅街を縫うように進み、現場の公園につくと、ベンチに座った人物がこちらに手を振った。 「こらゆうぎ!不必要に外に出るんじゃない!」 僕は車の窓を開けて一言注意し、さっさと準備を済まして車を降りた。 「よう!ぼく、げんきにしてたかい」 「はいはい元気にしてましたよ、わかってるのかゆうぎ、お前便所係として・・・」 「だいじょうぶだって、そとにでたらかならずふろにはいれ、しょうどくしろ、みみにたこができちまうよ」 「わかってるならいいんだ、だけどいつも言ってるように極力外には・・・」 「わかってるって、でもぼくにだってむかえくらいあったっていいだろう?きょうぼくがくることはしってたんだからさ」 「そりゃあ・・・別に」 一々僕の言葉をさえぎって話す彼女は、その名の通り胴付きのゆっくりゆうぎ、この公園の便所の一員だ。 ゆうぎ種の特徴でもあるのだが、中でもこいつはかなり背が高く、男の僕と同じくらいある。 それに僕のことを「ぼく」などと軽々しく呼び、からかう様なことを平気でやるので、正直あまり得意なタイプじゃない。 「で、きょうのおつとめはゆっくりしていけるのかい?あたしがいっぱつぬいてあげよっか」 そんなことを言いながら手で丸をつくり上下に動かし、いやらしい視線を投げかけてくる。 「下品・・・」 平気でセクハラを飛ばしてくるゆうぎをシカトしながら便所に入ると、緑色の大きな瞳にいきなりガンをつけられた。 「うぉっ!」 「ちょっと、なんであんたがここにいるのよ、ゆうぎがさんぽしてくるなんていうからまってたのに!」 彼女は胴付きのゆっくりぱるすぃ、この子はどうやら僕のことが気に入らないらしく、いつも文句をつけてくる。 「まあまあ、おつとめごくろうなぼくのつかれを、すこしでもいやしてあげようとおもってね」 ゆうぎが僕の腕を後ろから抱きしめるようにひっつくと、もちもちの胸がぎゅうと押し付けられ、 その様子をみたぱるすぃが顔を真っ赤にしてきぃきぃと金切声をあげた。 「もー!いちゃいちゃしないで!あんた!しごとしにきたならさっさとしてかえりなさいよぉ!」 「はいはい・・・」 ここの現場ははっきり言って疲れるので、手を抜かない程度に急いでチェックを済ます。 記録を見ると今日はまだ客が来ていないようで、どこも綺麗なままだった。 そのままデータと精液の採取も済ませてしまう。 「施設チェックは問題なし、何か備品切れとかあるかい、少しなら持ってきてるよ」 撤収準備を終えた僕が彼女らに振り返ると、ぱるすぃはゆうぎの後ろに隠れてじっとりと僕をにらみつけたままだった。 それに苦笑する僕をみて、ゆうぎはくすりと笑ってからう~んとうなった。 「そうさなあ、よびのこんどーむをいちおうほじゅうしておいてくれないかな」 「了解、他には」 僕が促すとゆうぎは再度首をひねり、少ししたら何か思いついたのか、再びニヤリと笑ってこちらを向いた。 「なあ、ひんしつちぇっくもしごとだろう?」 「そうだな、便所の総合的な管理が僕の仕事だ」 「じゃ、こいつもみてくれよ」 ゆうぎはそういうと白いシャツをまくり上げて、豪快に胸を揺らして上半身を露出させた。 「ちょっ!なにやってるのよ!」 俺はあくまで動じなかったが、突然のことにぱるすぃは顔を真っ赤にして狼狽する。 「なにってちぇっくさ、それにぼくにはもうなんかいもはだかをみられてるし、べつにはずかしくなんかないね」 そういいながらもゆうぎはこちらにニヤニヤとした視線を投げ、 ヒップをくねくねとゆらしながら下半身の服も脱ぎ捨て、僕の前で全裸になった。 「どうだい、おっぱいもまむまむも、へんなところないかい」 「まったくお前は、しかたないな・・・」 本当のところ、彼女らの生体データは日々の自主的な管理や、 コンピュータでのデータから問題が起こればすぐにわかるようになっている。 けれどゆうぎがこうして求めてくるのは、言ってしまえばスキンシップを欲しているということなのだろう。 暇つぶしをしているだけなのかもしれないが…。 「じゃあチェックするぞ」 面倒くさくなって僕はあくまで事務的に、ゆうぎの胸に手を伸ばした。 「そうそう、あっ!やさしくしてくれよ」 両手で大きな胸をもちあげ、ぐいと見せつけるようにしてくるゆうぎ。 僕は不要な情報は全て無視して、ぐにぐにと指を胸に沈めていく。 「色よーし、形よーし、弾力よーし、問題ない健康な乳です」 「じゃあ、つぎはこっち」 胸への刺激に顔を赤くしたゆうぎは、そのまま僕の手をつかんで指をまむまむに導いた。 「えー、色よーし、形よーし、傷なし濡れ具合よーし」 まむまむに指を滑り込ませるとすぐに濡れ始める、ゆうぎ自身の性格には難があるが、優良なまむまむだ。 「ああんっもっとつよくぅ」 ゆうぎはすっかり勝手に一人で盛り上がり、僕の手をつかんだままぐいぐいと腰を押し付け始める。 「ええいオナニーは自分の指でしろ!チェック終了!」 「ちぇっ、かいしょーなしだねぇ」 「うるさい」 準備室を出ようとすると、すっぱだかのままのゆうぎが僕を引き留める。 「ちょっとぼく、まちなよ、ちぇっくするんだろ?」 「は?なにいって」 「ちょっ!なにす!いやあ!」 僕がいぶかしげな声を上げるのと、ぱるすぃの悲鳴が上がるのとはほぼ同時だった。 ゆうぎは素早くぱるすぃの衣服を脱がせ、あっという間に僕の目の前で丸裸にひん剥いてしまう。 そのまま片手で腕を拘束し、開いたほうの片手でぱるすぃの身体を嘗め回すようにまさぐりはじめる。 「ほら、ぱるすぃのからだもちぇっくしてあげてよ、しごとしごと」 「あーはいはい」 「こらあ!ちかよらないで!やめてけだもの!」 あくまで、あくまでも事務的にゆうぎにしたように胸やまむまむ、身体のチェックをしていく。 「はい問題なーし」 全てが終わった後、僕の手で刺激されていた他にゆうぎからねっちりと撫で回されていたぱるすぃは、すっかり惚けてしまっていた。 「はぁ・・・はぁ・・・も・・・らめ・・・」 「かわいいよぱるすぃ」 「んっ・・・」 再び部屋を出ようとする僕の目の前で、すっかり二人の世界を作ってしまった彼女らはうっとりと濃厚なキスを始めてしまう。 「おい、お客が来たらしっかり対応するんだぞ」 小言をいう僕に、ゆうぎはひらひらと手を振ってこたえる。 僕はそれを見て、ため息をつきながら部屋を後にした。 ここの便所は住宅街のそばにあるせいで、もともと昼間に来る人の絶対数が少ないためか、 二人の間の絆はああいうようなのも含めた、暇な時間をつかったスキンシップで大変良好だった。 ただし良好過ぎて、いくら避妊処理をしてある便所係のゆっくりだとしても、ちょっと心配になってしまう。 「別に成績は悪くないからいいんだけどさ・・・」 便所に設置されたアンケートの中には、二人のレズ行為を見るのが楽しみだという意見もあったほどだ、趣味はさまざまである。 彼女らは、親がいて、子がいて、という正常な生態系からは外れた存在だ。 品種改良は技術発展により、遺伝子改竄の域に達している。 もはや改良などという聞こえのいい段階ではない、まさに人類は神の領域に足を入れたところだ。 便所用ゆっくりはゆっくり科学研究所で生まれ、育てられる。 大きな機械から製造された彼女らは、そこであらゆる性知識、性技術、男性から快楽を引きだし、 精液を採取するためのすべてを学び、便所係として配属される。 といっても初めはひよっこだ、年齢的にも子供の状態で配属されることが多い。 ここで現地業務を積み、人間に慣らされて彼女らは完成する。 便所係といっても、ありていに言えばセックスの相手だ、本来の性行為の意味から行けば、 人間と心を通わせ、慈しみ愛し合う必要がある。 けれど彼女らとここを利用する男性が肉体関係以上になることはない、 彼女らは世間の認識からいけば生き物ではない、モノだからだ。 失敗し、矯正が効かないとなればその場で処分される。 処分とはそのままの意味だ、破壊され、廃棄されるのだ。 中には例外的に一人の便所係に入れ込む男性もいるらしいが、それはそれ、特殊な例だ。 あくまで施設利用のこだわりのようなもので、便所係がもしも便所係の役割を逸脱するような関係、 たとえば便所係をやめて一人の男性の物になる、ということはできない。 便所係が便所係ではなくなる時、それは壊れ、廃棄される時なのだ。 次に向かった公園は、森林風景を残した、駐車場もある大きな公園だ。 といっても平日昼間からあまり人がいるわけではない、だがここの公衆便所は、 公園の規模から人目につきづらいという理由で、施設自体にそれなりに人気があった。 よって新人便所係の育成にもよく使われ、今から行く現場はまさに今新人育成の真っ最中。 何か問題が起こってやしないかと、多少の不安に駆られながら、便所の入口を開けた。 「んあっ!ふっぅううう!あっあっあっ!」 扉を開けると同時に、鼻にかかったような嬌声が耳に入ってきた。 「ああ、使用中か」 何故使用中だと気付かなかったのかと怪訝に思い外に出ると、使用中のランプの電球が切れていた。 僕は中の行為が終わるまでの暇つぶしの意味も含めて電球を交換することにした。 車に戻って電球をとり、交換している最中に、便所からスーツ姿の男性が出てきた。 「あっ、職員の方ですか?こりゃどうも」 彼は人のよさそうな笑みを浮かべると、僕にあいさつをしてくれる。 「あ、どうもです」 あいさつを返すと、彼は少し近寄ってきて息をひそめるようにして僕にささやいた。 「いや、新しい子、よしかちゃん?いいこだよ、頑張ってるって感じがして、また来るね」 「ありがとうございます」 僕がお辞儀をすると、男性は鼻歌交じりに上機嫌で帰って行った。 電球を交換して中に入り、準備中の札をかける。 すると個室のほうから、さっきの男性が言っていた、胴付きゆっくりのよしかがやってきて、僕をみあげた。 「うー、おきゃくさん~?」 「違うよ僕は清掃員だよ、わすれちゃったかな」 「う~?」 別にこの子と会うのは初めてというわけではない、今回で三回目。 けれど彼女が便所係になって日が浅いためか、まだ顔を覚えてもらっていないようだ。 「準備中の札は僕がかけておいたから、あとちゃんとお洋服を着てから出てこようね」 「あー」 僕がまだ彼女が裸のままだったことをやんわりととがめると、彼女は今気付いたというように目を丸くする。 「はだかだー」 「そうだね、裸だね」 僕は彼女の肩に手を置いてくるりと反転させると、個室の部屋におしこんで入口のカギを閉める。 「あ~・・・うー・・・」 まだ行為の感覚が残っているのか、よしかちゃんはぼーっとしている。 「ま、まだまだ日が浅いからな、しょうがないか」 便所係になって日が浅いうちは、最悪のパターンだと性行為自体を拒絶し、心を閉ざしてしまうこともある。 一応事前訓練は積んでいるはずなのだが、それでも実際に一対一で客を相手にすると、どうしてもそういうことがあるようだ。 それにしては彼女は堂々としていて、ぼんやりとしながらも仁王立ちで、 股の間の小さなまむまむからさっきの男性の精液を垂れ流している様子は、実に貫禄があった。 なにも考えていないだけのような気もしないでもない。 「はいはい、ふきふきしましょうね」 「ん~」 一人前になるまでは、多少過保護気味でも手をかけてやらなければいけない。 僕がこの仕事をこなすうえで心がけていることの一つだ。 他の便所で頑張っている子達も、こんな時期があったなあなんて、 ちょっぴり懐かしい気分に浸りながらよしかちゃんの身体を拭いてやっていると、準備室から青い髪の子が飛び出してきた。 「もうよしかちゃんったら、おわったらこえをかけてねっていってるでしょう? あ、おにいさんこんにちわ、ごめいわくをかけちゃってごめんなさい」 「いや、いいんだよ」 彼女は胴付きゆっくりのせいが、ここの便所の古株で、彼女の教育能力は確かなもので、 僕が掃除点検に来れない日でも安心して新人の子を任せられる存在だ。 せいがは慣れた手つきでよしかの身体を綺麗にし、身支度をさせて、丁寧に説明しながら使用した個室を片付けていく。 慈しみを込めた視線を投げかけるせいがと、たどたどしいよしかちゃんは、まるで親子のようで微笑ましい。 よしかのことはせいがにまかせることにして、僕は準備室に入り自分の仕事をこなした。 しばらくすると、よしかの手を引いたせいがが準備室に入ってきた。 「お疲れ様、調子はどうだい」 「かわりありません、よしかちゃんもすこしづつものおぼえがよくなってきたんですよ」 「う~」 せいががよしかちゃんの頭をぐりぐりとなでると、よしかちゃんは目を細めてくすぐったそうに身をよじる。 今でもだいぶにぶちんな感じではあったが、確かに最初と比べるとこれでもだいぶマシになったほうなのだ。 よしかちゃんがやった失敗といえば、ここの便所に入って間もないころ、同じように僕が清掃しに来たとき、 個室部屋に入ると精液まみれになったよしかちゃんが、部屋の真ん中で倒れていたことがある。 僕は心底驚いて、あわてて抱き起したところ、よしかちゃんはただ単に疲れて寝ていただけだった。 たまたま偶然僕が発見したからいいものの、お客が目撃していたら苦情か通報は免れなかっただろうとおもうと、思い出しただけで肝が冷える。 これでよく製品試験をパスしたものだなとも思うが、今日出会った男性は満足していたし、性技術は確かなんだろう。 僕は、ここに来た時にお客の男性がよしかちゃんを褒めていたことを伝えると、せいがも一緒になって喜んでいた。 その後、せいがから前回からの報告、備品の発注や気になったことなどの細かい相談などを聞いて、便所を後にした。 もちろんせいがも便所係として大変優秀で、せいが目当てでわざわざ遠くからくる客もいるほどの人気なのだが、 こうして甲斐甲斐しく業務をこなしている様を見ると、裏方のほうが向いているのではないかと思う。 実際大きな便所では、長く務めた便所係のゆっくりが、ほぼ裏方に徹して他の便所係の子をサポートしているというところもある。 ここもそのようにして、新人や技術を磨く修行途中のゆっくりを受け入れてせいがに任せてみるのもいいかもしれないと思った。 公衆便所の利用客数は、年々伸びている。 恋人を作る、伴侶を作る、家庭を作る、それを放棄したとしても、 人間が生き物である以上、原始的な欲求である性欲自体は消えないからだ。 一方、ただ勝手に排泄されたのでは貴重な人材を作る『資源』を捨ててしまうことになる。 だから気持ちよく排泄させてあげる代わりに精液を採取し、国を支える『国民の材料』にする。 それが我が国が最終的に決定したことだった。 この決定に人々はもちろん初めは難色を示した、なにをいっているんだ、ばかばかしい、これが普通の反応だった。 けれど男は正直なもので、いざ実施されると初めは少なかった利用者が後から後から増えていくことになる。 では女性のほうはどうなのかというと、これまた技術の発展というものは恐ろしいもので、 もう女性は子を産む苦しみをわざわざ味合わなくても良いということが発表されてしまったのだ。 男性の精液採取のための便所と同時に発表されたのが、完全人口子宮、まさに人間製造機だった。 これはあくまで偶然の産物だったらしいのだが、過去、ある時人間の子供を妊娠することができたゆっくりが現れた。 そのゆっくりを研究し、人間の内臓と同じものを体内で製造するゆっくりが人工的につくられることになる。 今ではそのゆっくり達は医療の現場でも用いられ、安価で臓器の代替え品が入手できるということで、 そのあまりに革新的画期的な事実から、タブーの壁を越えて一般的に利用されることになってしまった。 もっとも、その過程で徹底的にいじくられたゆっくりは、もはやゆっくりといえる外見は残っていなく、 人間の内臓を培養する肉の玉、といったことになってしまっているようだが…。 あくまで完全人口子宮は人間の子供を生まれる状態まで育てるためのものであり、卵子は人間の女性が提供している。 これはすでに義務化されていて、女性は成人を迎えると、数か月に一度健康な状態の時に卵子を提供することになっている。 もしくはそれすらも煩わしければ、卵巣ごと提供すればその後義務はなくなる、というシステムらしい。 とにかく今や人間は誰の痛みもなく生まれ、勝手に生きることが国に補償されているのだ。 かといって、家庭を持ちたい人は家庭を持っていいし、子供だけが欲しければ、国から貰い受けることもできる。 貰い手がない子供は、国の施設で育てられ、独り立ちして社会の歯車になる。 昔の人はどう思うだろうか、けれど今はこれが普通、普通なんだ。 その後も数件の便所を清掃点検し、一日の業務が終わる。 業務報告と明日の準備をするために本部に車を走らせていると、急に携帯に着信が入った。 あわてて車を路肩に止めて電話に出ると、本部のオペレーターが淡々と指示を話す。 その内容は、ここから数分のところの公衆便所で問題が発生したとのことだった。 非常通信を発した現場のゆっくりはひどく狼狽しているらしく、詳しい事情は分からないとのことだ。 僕は急いで現場に向かった。 指定された便所につき入口を開けると、むせ返るような甘い匂いが鼻を突いた。 「うっ・・・ひっく、うえぇぇ・・・」 同時に子供のすすり泣くような声が聞こえる。 「っ!」 待合室を抜けて個室部屋に入ると、そこには無残な光景が広がっていた。 床一面に広がった真っ白な液体、その中心に、紫色の頭と、人間の子供のような大きさの皮が落ちていた。 そしてそれに縋り付くように泣いていた金髪のゆっくりが、僕に気付いて顔を上げる。 「ぱちゅが・・・ぱちゅがぁ・・・」 「・・・」 僕は黙って首を横に振る、どう見てももう再生不可能な傷をおって、 完全に息絶えているのは、ここの便所係の胴付きゆっくりぱちゅりーだったものだ。 目を泣き腫らしているのは、同じくここの便所係の胴付きゆっくりありす。 僕はただただ泣き続けるありすをなだめて、準備室で休ませ、個室の死体を片付けた。 準備室のベッドの上でまだ静かに涙を流しているありすに事情をきく。 「いきなりおんなのひとがはいってきて、すごくこわいこえをだしてて・・・ ありすたちは、にげようとしたんだけど、ぱちゅがつかまって、それで・・・」 話すことで思い出したのか、身体をぶるぶるとふるわせ涙をこぼしながら、ありすはぽつりぽつりと状況を説明していった。 僕は全てを聞いてありすを寝かしつけたあと、監視カメラの映像を確認する。 そこに映っていたのは、ありすの言った通りの状況で、包丁を持った女が便所に押し入り、 ぱちゅりーをとらえてめった刺しにしている映像だった。 よほど衝動的な犯行だったのか、顔を隠す様子もない、この証拠を出せばすぐに逮捕されることだろう。 見た目からすれば実に痛ましい事件だが、あくまで罪は器物破損で、殺人などに比べれば刑は軽いものだ。 そして僕は静かに寝息を立てるありすのこの後を思い、憂鬱な気分になってしまう。 今回のことは全て本部及び研究所に報告される、これは当たり前のことだ。 死んだ子の代わりに別の子が配属されて、はいおしまい、というわけには、実はいかない。 この事件で、ありすは明らかに人間に不信感を持ってしまった、たとえ本人が自覚していなかったとしても、 人間という存在に植えつけられたトラウマは、簡単に払拭することはできない。 彼女らには心がある、けれどあくまで存在理由は男性の精液を絞り出すモノであって、 それが個の感情で少しでも奉仕内容に揺らぎが出てしまうような事態は避けなければいけない。 あのありすは、この後いったん研究所に戻され、記憶を一部または完全に消去されるだろう。 それはもう、その時点でありすは今のありすではなくなってしまうことを意味している。 最悪そのまま経年劣化も加味されて処分されてしまうかもしれない。 本来、僕の業務上余計に、個のゆっくりに思入れを持つことは望ましくない。 けれど毎日彼女たちと接し、大切に扱っている僕は、時々そんな運命しか与えられない彼女らがひどく哀れに思えてしまう。 僕がどんなに哀れんだところで、世の中が変わるわけじゃないけれど…。 今回のような事件は、実はそれほど珍しくはないというのが現実だ。 公共施設はみんなの物、マナーを守って大切に使いましょう。 当たり前のルールだが、公衆便所の場合は内容が内容だけに、よくない感情の的になってしまうことがある。 中でも多いのが、利用者の男性が一人のゆっくりを本気で好きになってしまい、誘拐する、 もしくは他人に触れされたくないために殺害してしまうケース。 そして、今回のように本来利用者ではない女性がやってきて、便所係のゆっくりを殺害するケースだ。 便所係の殺害や施設への破壊行為は、監視カメラの映像が準備室に一定期間保存されているので、 たとえ便所係のゆっくりが全員死んでしまったとしても、点検清掃員が閲覧し問題を発見することができる。 また、誘拐に関しては便所係のゆっくり達には一匹一匹に管理用の発信機が埋め込まれていて、 これによってすぐに居場所がわかるという寸法だ。 ゆっくりを殺害する女性の大半は、好きな男性が盗られただとか、 私に振り向かないのはゆっくりなんかがいるからだ、とかそんなくだらない理由がほとんど。 前述したとおり、子を作り家庭を育まなければならないという労から人が解放されたとはいえ、 恋愛の自由までは失われていない。 したい人は、昔と同じように勝手に恋をして、勝手に結婚して子供を作って、勝手にその人の幸せを求めればいいんだ。 自分の求める物への努力もしないで、それができないのを、 何の罪もない便所係のゆっくりのせいにするなんて言うのは、お門違いも甚だしいと僕は思う。 本部に戻り、全ての業務報告と採取した精液の保存作業、それと明日の準備を終え、 仕事着から私服に着替えて、真っ暗になった外をふらふらと歩いて帰宅する。 僕の家は会社からそんなに遠くない、走ればすぐにつく程度の距離だ。 けれど今日はなんだか足取りが重たい、単純な疲れもあると思うが、ちょっとショックな出来事のせいだろう。 こんな時は酒に限る。 途中にあるコンビニによって、お気に入りのチューハイとつまみのスナック菓子を買う。 歩きながら缶を開けて、勢いをつけてチューハイを流し込むと、 疲労のためかすぐにアルコールが回り、なんだか気分がよくなってきた。 ふと気づくと、僕は家のそばにある公園の前を通るところだった。 「ん~、よってくかなぁ」 僕が向かったのは、その公園にある公衆便所。 こんな仕事をしていても、僕にだって一歩会社の外に出れば所詮一人の男なわけで、当たり前に性欲はある。 普段は便所係のゆっくりを性的な目で見すぎないためにも、自分で処理しているのだが、 今日はなんとなくそんな気分だったのだ。 僕がふらふらしながら近づくと、玄関に緑色の髪の毛の子が立っていた。 その子は僕を見つけると、申し訳なさそうな顔をして口を開く。 「ごめんなさいおにいさん、きょうはもうしまっちゃうんだ」 彼女は胴付きゆっくりりぐる、ボーイッシュな格好をしているので、男の子と間違えられることもよくあるのだとか。 今日は回らなかったが、ここの掃除も担当区域に入っているので、僕は当然彼女のことを知っている。 暗がりのためか気付かなかったんだろう、僕はもう少し近づいて便所の明かりに身をさらし、顔を近づけ、 僕、僕と顔を指差すと、りぐるははっと目を見開いて、ばつが悪そうな顔をする。 「あ、なんだおにいさんか、ごめんごめん、おようふくがちがうし、くらかったからわかんなかった」 やはり僕の思った通りだったらしい、僕はりぐるの前に片手を立てて、お願いのポーズをする。 「今はもう仕事終わりさ、それよりさ、いれてくれないかな」 僕が頼むと、りぐるはきょろきょろと周りを見渡す、どうやら人がいないことを確認しているらしい。 「もう、とくべつだよ、おにいさんにはおせわになってるからなんだからね」 そういうと彼女は僕の手を引いて中に招き入れ、便所のシャッターを下ろして鍵を閉めた。 「うむ、時間ぴったり、優秀優秀」 僕が時計を見ると時刻はちょうど9時を回ったところ、ここの便所の営業時間ぴったりの締めだ。 もっと都会の町には、24時間営業の大規模な公衆便所もあったりするが、 ふつうの住宅街の公園にあるような便所は、防犯の都合もあり大体このくらいに閉まる。 「ここにるーるいはんさんがひとりいるけどね」 りぐるはくすくすといじわるそうに笑った。 「まったく、こういうの、しょっけんらんようっていうんじゃない?」 シャッターの鍵を確認する僕とりぐるの後ろから、大人っぽい声がする。 声に振り返ると、そこにいたのは緑の髪の毛の女性。 髪の毛の色は同じでも、りぐるよりよっぽど女性らしくて大人っぽい体つきの、胴付きゆっくりゆうかだ。 この便所はりぐるとゆうかの二人が担当している。 「どうしたの?さみしくなっちゃった?」 ゆうかは僕にすっと近づいて、少し背伸びをして僕の首を捕まえて、そのまま大きな胸に頭を包み込むように抱きかかえる。 「う~ん、そんなとこー」 「ふふっ、あまえんぼさんね」 仕事中なら決してそんなことはしないが、ついつい僕は心地よい柔らかさに力を抜いてしまう。 「あー、ゆうかさんめあてなんだー、わたしのことはじゃまなんだー」 「そんなことないそんなことない」 デレデレとした僕の態度に、りぐるは唇をとがらせる。 そんな様子が可愛くて、僕は手を伸ばしてりぐるの尻をいやらしく撫で回してやった。 「うひゃっ!まったくおにいさんったらむっつりすけべだよね」 「おしごとちゅうは、しゃきっとしてかっこいいのにね、ふふふ」 実をいうと、セックス目的でここに来たことがあるのは、一度や二度ではない。 結局家が近いというだけの理由だが、僕が一人で処理する気分にならないときは、ここを頻繁に利用していた。 おかげで二人とはすっかりお馴染みで、和気藹々とした空気の中個室部屋を抜けて準備室に入り、 もつれ合うようにして服を脱がしあい、三人そろって裸になる。 先に指摘された通り、確かに職権乱用も甚だしいとは思うが、ここの管理担当は僕だ。 監視カメラの映像が残っていても、僕が自分で自分を通報しない限り、よほどのことがなければ僕が時間外に利用したことがばれることはない。 もちろんこれは、ここの便所係のゆうかとりぐるとの信頼関係もあってこそのものであるのは言うまでもないが。 なんて現実味のある言い訳は所詮素面の時に思いつくもので、 酔った僕は勢いに任せて裸のゆうかを準備室に備えてあるベッドに押し倒した。 「あんっ、やさしくしてね」 「わかってるって」 口ではそう言いながら、両手を使ってゆうかの両腕を頭の上に押さえつけて拘束し、そのまま頭を胸元に押し付けて、 ちゅうちゅうと音を立ててまん丸おっぱいの先にある桃色の乳首にしゃぶりつく。 「じゅっ、ちゅるる、じゅぱっ、ちゅぽっ」 「あっ、いやあ!もうっ、そんなつよくしたらっ!」 わざとらしく音を立てる僕の愛撫に、ゆうかは頬を真っ赤に染めて身体をよじってもじもじと抵抗を試みる。 けれど人間の、まして男の僕の力にかなうはずはなく、舌全体を使うようにしてべろんべろんと何度も舐めあげるうちに、 すっかり陥落し、身体からはどんどん力が抜けていく。 僕の口の中には、ゆうかの乳首から分泌されたほんのりと甘い蜜の味が広がっていった。 ゆうかの息遣いは荒くなり、表情は徐々に弛緩してだらしないものになっていく、 その様子を見て僕は自分の股間に勢いよく血液が流れていくのを感じた。 「ゆうかさんばっかりずるーい!ええい、ぼくだって!」 素っ裸のまま、僕がゆうかを押し倒して淫行に及んでいるのを眺めていたりぐるがしびれを切らし、 ぷりぷりと怒ってから僕の背後に回り込んだ。 「うわっ!!」 次の瞬間、僕は自分の股間に突然訪れた衝撃に、思わずゆうかの胸にしゃぶりついている口を離し、腰を引いてしまう。 けれど本来予定した動きはりぐるの両腕が僕の腰に絡みつき阻害され、股間からは甘く痺れる快楽の波が強烈に押し付けられた。 「んふふぅ~、ろーお?ひもひいい?」 りぐるがくぐもった声を出すたびに、僕の股間は意識とは関係なく快感によってびくびくと震えてしまう。 何が起こっているのかと自分の股のほうを見ると、りぐるがゆっくり特有の大きな口を目いっぱいに広げて、 僕の股間をすっぽりと包むようにしゃぶりついてた。 体勢は、僕とゆうかの股の間に無理やり顔を滑り込ませる形になっている、その上僕の勃起したペニスを咥えて、 普通に考えたら苦しそうな体勢だが、りぐるは実ににこやかな笑顔で、口に含んだ僕のペニスを舌で愛撫し始めた。 「うっぐううぅう!」 自分の手でしごくのとは、何倍などという単位で比べられないほどの快感が一気に押し寄せる。 ゆっくりの口の中は、人間の女性とは違い、ほとんど硬さというものがなく、どこまでも柔らかく暖かい。 そして唾液で十分に湿った口内と舌が、別の生き物のようにうねうねと動き、 まるで初めから男の精液を搾り取るためだけに存在している器官のように、僕のペニスを責めたてる。 「まらまら、ひふよ~」 りぐるは何かを話すと、そのまま僕のペニスをどんどん口内の奥へ奥へと導いていく。 やがて根本にやわらかな唇が到達し、ペニス全体が快楽空間の中に無防備にさらされたかと思うと、 なんとりぐるはそのまま舌をさらに伸ばし、ペニスのさらに向こうにある睾丸までをも、 すっぽりと暖か柔らかの海に放り込んでしまった。 「うぅぅぅううう!!」 こうなってしまうともう抵抗のしようがない、こんなエロ貞操帯をつけられて理性を保っていられる男がいるはずもなく、 僕はがっしりと腰を抱えられたりぐるの腕の中で、ガクガクと震え、りぐるの口の奥の奥に滾る欲望を吐き出してしまう。 「あらあら、もうだしちゃったの?そうろうさんね」 「んっ・・・んっぐ・・・んっ・・・」 ゆうかは顔を真っ赤にして目を閉じて快感に打ち震えている僕の顔をやさしく抱きしめ、ほわほわの胸に押し付ける。 りぐるは僕のペニスを口に含みきったまま、もごもごと口内をゆっくりと動かして、僕の精液を搾り取るように飲み干していった。 「はぁっ・・・はぁっ・・・うわっ!」 強烈な射精感を味わい、ゆうかの胸に抱かれたままただただ空気を求めて荒い息を吐いていると、 僕の下に組み敷かれていたゆうかがごろりと横になり、その勢いのまま僕と上下の関係を交換してしまった。 「もちろん、いっかいでおわりなんていわないわよね?」 「え?いやぁ」 正直りぐるの口内奉仕でだいぶ満足してしまい、これで終わってあとはちょっといちゃいちゃして、 そのまま帰ってもいいかななどという思考がよぎっていた僕は、ついついゆうかから視線をそらしてしまう。 それを見たゆうかはむすっとした顔になり、ぴったりと抱きついていた僕から上半身を浮かして身体を離し、 僕の胸にぐりぐりと指を押し付けた。 「りぐる!」 「あ、はーい」 怖い顔のままでゆうかがりぐるの名前を呼ぶと、りぐるは僕にはわからない何かを察して、 掃除段階に移行していたフェラチオをやめて、僕の尻の穴を舐め始めた。 「うひゃっくすぐったいって!こら!」 「いやあ、ぬらしておかないと・・・ねっ!」 あまりのむずがゆさに声を上げた僕にりぐるは意地悪そうな笑みで返すと、 唾液でべちょべちょになった僕の尻穴にいきなり指を突っ込んでしまう。 「ぐおぉ!?」 りぐるの指は、にゅるにゅると僕の肛門を通って腸内を勢いよく進んでいき、 狙い澄ましたようにある一点を執拗に責めたてた。 すると何とも言えない独特な圧迫感が腰全体に広がっていき、自分の意思とは関係なくペニスがビクビクと脈動し、 見たこともないほど赤く大きく充血し腫れ上がっていく。 「な、なにこれぇ!」 「じょうでき、うまくなったじゃない」 「えへへ~」 狼狽する僕をよそに、僕の股間にいるりぐると僕の腹の上にまたがるゆうかは和気藹々とした雰囲気をつくっている。 そんなつもりはないのに、今にも射精してしまいそうになったところで、 りぐるはちゅぽんと音を立てて僕の肛門から指を抜き取ってしまった。 「あっ・・・ああああっ!!!」 それとほぼ同時に、限界まで怒張した僕のペニスを、ゆうかが何の予告もなしに自分のまむまむの中に奥まで一気に差し込んだ。 「んっ!ふぅううう!きくわぁ、やっぱりこれ・・・よねっ!」 絶対に挿入と同時に射精したと思ったが、ゆうかが乱暴に腰をふりたくって僕のペニスをまむまむの壁でしごく中、 僕のペニスの痺れは倍に倍にと膨れ上がっていく。 ねっとりもちもち、ふわふわにゅるんにゅるん、擬音しか考えられないほどのむず痒さに襲われる中、 僕は自分の股間の違和感に気付く。 「しゃ、射精っ!できっないっ!?」 僕の股間をよく見ると、根本の根本、陰毛に隠れて見えないくらいの位置に、肌色の何かがくっついていた。 ばちんばちんと、粘液のはじける音と肉のぶつかる音を立ててゆうかの腰が上下し、 まむまむが何度も僕のペニスをしゃぶりあげ捕食していく。 その腰の向こう側で、りぐるがニヨニヨと嫌らしい笑みを浮かべて僕の表情をうかがっている。 「おっ!おまえ!ばか!りぐる!はなせ!ちんこはなせ!」 「やーだー」 犯人はりぐるの指だった、ゆうかの暴力的な愛撫に導かれて何度も絶頂を迎える僕のペニスは、 ただただ震えるだけで最高の瞬間の射精にどうしてもたどり着けない。 ペニスが、睾丸が、股間全体が爆発してしまうかもしれないという錯覚に僕が陥っている中、 りぐるは再び大きな舌をだし、べろんべろんと肛門と玉袋を犬のように舐めあげる。 「ひぃっ!ひぃぃぃい!!」 もうあえぎ声というより悲鳴しか出なかった。 手の指はもがくようにシーツをつかみ、足の指は引き攣れを起こすようにピンと張る。 乳首は身体にたまった快感で女の子のように勃起し、射精感は今や行き場を失い、 ペニスの先の鈴口のイメージがどんどん増大していき、妖艶な笑みで僕を見下ろすゆうかのまむまむの奥と、 太い大きな管でつながっているような錯覚すら覚えてしまう。 「ああんっ!いく!いくぅぅう!!あっあっあっあああああ!!!」 大きなおしりを限界まで動かして、重力と反動をフルに使ってセックスマシンと化していたゆうかも、 ついに快感が昇華し、絶頂の階段をかけあげり、背中をそらせて絶叫する。 りぐるがそれに合わせて指の呪縛を解き放ち、ついでに僕を奈落の底に突き落とすように睾丸を口に含んで音を立ててバキュームした。 とうのとっくに限界を迎えていた僕は、もう快感の知覚容量をふりきり、 これ以上気持ちいいがどこまで行くかさっぱりわからないまま、 頭の中を真っ白な精液色にしてただただゆうかの体内に子種を打ち込んでいく。 「ーーーーー!!!!」 ゆうかも声なき声を上げて僕の限界突破の射精をお腹に受け止めていた。 いつまでも続くかとおもった全ての射精が終わり、ゆうかは僕の胸の上にぐったりと倒れこむ。 湿気でぺったりと額に張り付いた髪の毛を拭ってゆうかは柔らかく微笑み、僕たちはどちらともなく濃厚なキスをした。 じっくりと時間をかけて舌を絡ませあい、唾液を交換していくと、暖かな気持ちが胸に広がり、 なんとも言えない充実感が満ちていった。 音を立ててお互いの口を離し、唾液のしずくが途切れないうちにまた唇を重ねる。 それを何度か繰り返していると、ゆうかがそっと僕から身体を離した。 「じゃ、たっち」 「こうた~い!」 「へっ?」 入れ替わりにりぐるが僕の上に颯爽とまたがり、ゆうかの代わりにちゅうちゅうと僕の唇に吸い付いた。 「じゃ、つぎはわたしのばん!」 「うそぉ!」 僕の情けない叫びに、脇に移動したゆうかがクスクスと笑い声をあげた。 「でも、こっちはまだまだやるきあるみたいよ?」 そういって指差す先は僕の股間。 両足の間にそそり立つペニスは、びっくりするほどの射精を二回も繰り返したというのに、 まだまだいけると主張するように天を衝いていた。 それをみた僕はなんだか自分にあきれてしまい、同時になんだかふっきれた気分にさせられる。 「ええいっ!こうなりゃヤッてやる!覚悟しろよ!」 「きゃっ!」 僕が力任せに体を反転させると、りぐるは可愛い悲鳴をあげてベッドの上に転がった。 僕は勢いのままりぐるの足の下に手を差し込み、そのまま両足をばんざいさせるように抱え上げ、僕の肩に乗せる。 「やっ、はずかしいよ!」 僕の下にくみしかれてまんぐりがえしのような姿勢にさせられたりぐるは、頬を染めて抗議の声を上げた。 しかし僕の下でもじもじと揺れる腰の真ん中にあるかわいらしいまむまむのタテスジは、 僕とゆうかの行為を見てか、それとも僕に口淫奉仕をしたからか、期待に蜜を垂らしてひっそりと綻び始めている。 それを今の僕が見逃すはずはなく、僕はろくに愛撫もしないまま怒張したペニスを押し当て、一気に腰を突き出した。 「ああんっ!!」 「わおっ」 りぐるが苦しそうな快感の悲鳴を上げ、ゆうかが僕たちを見て感嘆のため息を漏らす。 りぐるのまむまむは待ってましたと言わんばかりに、僕の乱暴な訪問をやすやすと受け入れてしまっていた。 僕はそれに気をよくして、疲労に痺れた腰に鞭打って、力強くばしんばしんとりぐるの股に僕の股間を叩きつけていく。 「あぁっ!やあああ!おにいさん!らんぼうすぎ!あひぃっ!」 口ではそう言いながらも、もうりぐるの視線は自分のまむまむが僕のペニスを飲み込み、おいしそうにしゃぶっている光景にくぎ付けだ。 「そんなこといって、きもちいいんだろ?これがほしかったんだろ!?そらっ!そらっ!」 僕はりぐるの足を抱えたままどんどん体重をかけ、りぐるとほとんど密着するようにして腰を振りたくり続けた。 そうすることでストロークの幅が次第に深く大きくなり、抜けてしまうほどに引き抜き、 お腹が破けてしまうほどの突きこみを何度も何度も繰り返す。 りぐるの体格がゆうかより小さいせいか、ゆうかのまむまむの柔らかく包み込むような感じと違い、 りぐるのまむまむは柔らかいヌルヌルの手で軽く握られているような確かな締め付けがある。 かつゆっくりの身体の構造から、厳密な最奥という概念はほとんどなく、 僕のペニスが押し付けられるままに飲み込んでいき、りぐるの小さなお腹が僕のペニスの形を浮き彫りにしていた。 りぐるもそれを見て真っ赤な顔をさらに真っ赤にして、恍惚の笑みを浮かべる。 「あはっ!あははっ!きもちいー!きもちいいよおにいさん!でもぉっ!こんなのれいぽぅだよぉ!」 「ああそうだ!僕は今りぐるをレイプしてるんだ!ほら!出すぞ!射精するぞ!」 「ああん!きてきて!おにいさんのせーしでわたしのおなかいっぱいにしてぇ!」 背徳的な疑似プレイに脳内が焼け焦げていく。 りぐるも積極的に腰をうごかし、僕達はお互いをチキンレースのように快楽の淵に向かって押し込んでいった。 ついに股間の攻防だけでとどまらず、かぶりつくように唇を貪りあい、ガリガリと理性を削りあっていく。 お互いの口のまわりを唾液でびしょびしょにしながら、僕はりぐるの腹を突き破るように、 りぐるは僕のペニスを腹の中で食らいつくすように激しい攻撃を繰り出しあった。 そして両者の戦いは引き分けで終わる、ひきつけを起こすように、僕が抱えていたりぐるの足が跳ねた瞬間、 僕もりぐるのお腹の奥の奥にペニスを叩きつけて最後の一撃を打ち込むように勢いよく射精する。 「うっ!ふぅぅ!ぐぅぅぅううう!」 「んふっあああああ!あっはあああああ!!」 二人とも獣のような叫び声をあげて、お互いの背中に腕をまわしてがっちりと抱き合うようにして天辺まで上り詰め、 そのまま地面に叩きつけられるように全身を弛緩させて、ぐったりとベッドに沈み込んだ。 もうこれ以上は絶対に無理だと絶望するような感じと、 このまま死んでもいいかもしれないという幸福感が身体を支配し、僕の意識は闇に沈んでいく。 完全に意識が途切れる前に、僕の身体の上に暖かい何かが、やさしくかけられたような気がした。 「こら、おきなさい」 怒ったような、けれどとても優しい響きの声に目を覚ます。 「ん~・・・ん?んんっ!?」 寝ぼけ眼をこすって目を開けると、そこにいたのは緑の髪の毛の女性。 ふっくらした頬にあきれたような、でもとってもやさしい笑顔。 でもその顔を見た瞬間、僕は眠気が吹き飛び、そして血の気も吹き飛んだ。 「げっ!い!今何時!?やっべ便所で寝ちゃうなんて!!!」 僕ががばっとベッドから身体を起こすと、かけられていた布団がずりおち、 同時に僕の横で幸せそうに寝息を立てている全裸のりぐるが目に入った。 そして僕も当然全裸、そしてところどころエロチックな匂いが布団がはげた拍子にむわりと鼻をつく。 「うっ・・・僕はなんてことを・・・」 「まあまあおちついて、まだだいじょうぶよ、いまからきがえればちゃんとかいしゃにはまにあうんじゃない?」 そういって笑うゆうかはしっかりと身支度を整えていて、僕とのセックスの余韻はこれっぽっちも身体に残ってはいない。 ちゃんと洗浄と消毒もしたんだな、関心関心。 などとふと仕事モードになりそうになって時計を見ると、確かに今から着替えてしたくしてギリギリという時間だった。 当然いったん家に帰る暇なんてあるはずもない。 「ごめんっ!シャワー借りる!」 「ごゆっくり~」 ゆうかは慌てる僕を見てにこにこと笑いながら、小さく手を振る。 「ん~、むにゃ、ゆうかさんあさごはん・・・」 「はいはい、りぐるもいつまでもねてないでおきなさい」 背後から微笑ましいやり取りが聞こえてくるが、今の僕には和んでいる余裕なんてものは全くといっていいほどなかった。 『いってらっしゃい』 まったくこれじゃ、嫁のゆうかと娘のりぐるみたいな感じじゃないか。 僕を見送って便所の入口で手を振る二人に背を向けて、僕は思わず苦笑する。 あのあと、過ぎてしまったことはあきらめて、さっさと荷物をまとめて時間に余裕を持たせた僕は、 ゆうかと二人でりぐるの身支度を整え、ついでにちょっぴり仕事モードを出して、 りぐるとゆうかの体調チェックやら営業前のチェックやらを済ましてやった。 すっかり公私混同してしまったが、気持ちを切り替えて会社へ向かう道を歩く。 途中ふと、昨日のセックスを思い出し、やはり僕はこの仕事をしっかりと続けていこうと再確認した。 なんだかんだ言って僕は結局のところ、彼女たちが、ゆっくりのことが好きなんだと思う。 このどこかおかしくなってしまった社会に翻弄されながらも、彼女たちは形はどうあれ健気に懸命に生きている。 僕の仕事は便所掃除。 公衆便所を管理し、健全な運営を保つ仕事だ。 そしてそれは、彼女たち便所係の幸せな生活を守ることにもつながっている。 彼女達が僕に向けてくれた感情が、たとえ営業やマニュアルにそった行動であったとしても構わない。 彼女達が幸せに、ありのままの笑顔を保っていられることが僕の幸せだ。 今日も、新しい、いつもと変わらない一日が始まる。 おしまい。 ------------------------------------------------- どうも、ばや汁です。 胴付きオンリーの変な設定のしかもエロでしたすみません。 最後まで読んでいただいてありがとうございました。 ご意見ご感想等ありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。 個人用感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/ 過去作はこちら。 ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー-ばや汁ページ- http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/395.html ばや汁でした。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2750.html
台車に乗せられた檻の中にいるのは10匹の胴体の無いゆっくりれみりゃ。 この最もメジャーな捕食種は、空を飛ぶことでゆっくりとしてはでたらめな速さで移動することが出来る。 その高い機動力と旺盛な食欲を武器に通常種を追いまわし、蹂躙する恐るべき存在。 「うー!うー!」 「ううーーー!」 「ぎゃおー!」 人語を話すことの出来ない彼女達は一見すると楽しそうな笑顔を浮かべながらもここを出せと訴えてくる。 そんな要求を適当に聞き流しつつれみりゃ達をゆっくり達の姿が見えるところまで連れてゆく。 白い牙を光らせて、いっそう元気良く鳴いた直後、れみりゃ達を檻から解き放った。 「うーうー!」「うーっ!」 「れれれ、れみりゃだあああああああ!?」 「れびりゃいやああああああ!」 これが本能のなせる業なのか、生気を失った瞳で怯えていたゆっくり達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ始める。 もはや絶望しきって微動だにしないのではないかとも思っていただけに、これは嬉しい誤算だった。 しばらく餌を与えていなかった10匹のれみりゃは涎を垂らしながら獲物めがけて一直線に飛んでゆく。 「うーうー!」 「や、やべでえええええええええ!?」 「ま、まりざああああああ!?」 最初に襲われたのは1匹の成体のゆっくりまりさ。 彼女の頭に食いついたれみりゃは本能の赴くままにその中身を吸い上げる。 そして、まりさが襲われたためについ足を止めて振り返ってしまったれいむ目掛けて2匹のれみりゃが牙を剥いた。 「ゆぐっ!いぢゃ、いだぃい!?やべでね!ゆっぐぢやべでね!?」 「「うーっ!」」 「ゆっぐ・・・やめでよぉ、ゆっぐぢぃ・・・!」 毒による理解不能の死や人間による不条理かつ一方的な暴力とはまた違った恐怖がゆっくり達を包み込む。 毒ならば、人間相手ならばもはや諦めるしかなかった。 しかし、れみりゃならば逃げれば死なずに済むかもしれない。 「ゆっぐぢやべでね!あでぃず、ゆっぐぢぢだいわ!?」 「おちびちゃんはまもるよ!ぷくうううううう!」 「「おかーしゃん!?」」 若いありすが喚く傍らで1匹のれいむが頬を膨らませてれみりゃを威嚇していた。 恐らく子どもを守るためなのだろうが、空を飛べるれみりゃに通常種が一対一で勝つ事は不可能。 1匹のれみりゃが彼女の頭に噛み付いている隙に、別のれみりゃが子ゆっくりに迫る。 「おぢゃああぢゃ・・・ぎゅ!?」 「うーうー!」 「ゆゆっ、おちびぢゃ!?やべでね、ゆっくぢはなれでね!?」 が、そうそう簡単に食うものと食われるもの関係が変わるほど世の中は甘くない。 何とか対抗策を考えようにもそれを仲間に話す前に食われ、よしんば話してもうまく実行できる保証も無い。 ましてや、こんな平坦で開けた場所でれみりゃを相手にするなど自然では愚の骨頂でしかない。 「ゆ゛っ・・・」「まぢざぁ・・・」 「おきゃ、ゆびぃ!?」 「おぢびぢゃあああ、ゆぎぃ!?」 「ごんなの!どかいはぢゃ、ないいいいい!」 そうこうしているうちにも全てのれみりゃが適当なゆっくりを見繕ったらしく、満面の笑みを浮かべて食事に取り掛かる。 彼女達は狡猾にも上から覆いかぶさるようにして食いついているので他のゆっくりから攻撃を受けにくい。 もっとも、幸いにも狙われなかったゆっくり達は離れたところで固まって怯えるばかりなのだが。 「ゆっぐ・・・れいぶのおぢびぢゃ・・・ゆ゛っ」 「ぢんぼおおおおおおおお!?まらっ!?まらっ!?」 「むっきゅううううううう!」「ゆげぇ・・・」 やがて最初に襲ったゆっくりを食べ終えたれみりゃ達は次の標的を探し始めた。 うーうー!と先ほどよりも力強い声で鳴きながらふらりふらりと飛び回る。 それを見たゆっくり達の中には立ち向かおうと頬を膨らませるものもいたが、大半は逃げ惑う。 「ごわいよおおおお!ゆぐっ、おみずざっ、やべっ・・・やべでぇ!?」 「おびずざん、どがいはぢゃないわああああ!?」 「ゆゆっ、やべでね!こっぢごないでね!?」 逃げ惑う最中に柵のあった場所の外側にはみ出してしまい、3匹ほどのゆっくりが落とし穴に落ちた。 それを見た他のゆっくり達は方向転換しようとするが、前が見えていないゆっくり達とれみりゃが行く手を阻む。 こうして思うように身動きが取れなくなったところに更にれみりゃが悠然とゆっくり達の頭にかじりついた。 「ゆ゛っ!や、やべでねぇ!?」 「ゆっぐりぃ!ゆっぐりぃ!?」 「ゆっくりやべでね!ゆっぐぢぢでね!?」 必死になって許しを請うゆっくり達。 しかし、れみりゃ達にそれに応じる理由がない以上、止めるはずがない。 それどころか、悲鳴を楽しむためにいっそう勢いづいてしまった。 「うーうー!」 「やべでー!でいむのあがぢゃああああん!?」 「おきゃああああぢゃあああああ、びぃ!?」 あえて死なない程度に衰弱させてから子どもを狙うれみりゃ達。 身動きひとつ取れない彼女達の前で、必死に助ける子ども達が無残にもれみりゃの中に消えてゆく。 そして、喪失感に絶望する親達は落とし穴の中の水へと落とされた。 「やめぢぇえええええ、びゅ!?」 「あぢずのおぢびぢゃああああああん!?」 「やべでね!おびずざんはゆっぐぢでぎないよ!?ゆぐぅぅぅ!?」 「わきゃりゃに゛ゃいよおおおおお!?」 流石は捕食種とでも言うべきだろうか。 自分とさほど変わらない大きさの成体を含めた相当の数のゆっくりがあっという間に消えてゆく。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん・・・いろんな味を楽しむかのように。 「ゆひぃ!こっち、ごないでね!」 「「おきゃあああぢゃあああ、まっぢぇえええええ!?」」 「もうやだ!れいむおかーさんやだあああああ!?」 中には恐怖のあまりに子どもを見捨てて逃げ出すものもいた。 しかし、そういった個体を追うときはあえて子ゆっくりを狙わず、とにかく成体の捕獲に全力を上げる。 恐らく、そうやってじっくり恐怖を味あわせることで甘味が増すことを理解しているのだ。 「ゆっぐ・・・もうやだ!おうぢがえる!?」 「「おきゃーしゃあああああん!」」 「うーっ!!」 こうして次々にゆっくり達の中身を吸い出し、あるいは面白半分に嬲り殺してゆく。 哀れな餌達はなすすべもなく食われ、時には食われることさえなく次々にはかない命を奪われる。 その、傍目には間抜けだが凄惨な宴は10匹のれみりゃが遊びつかれておりに戻ってくるまで続けられた。 「ゆゆっ!なんだかへんなこがいるよ!」 「ゆぅ・・・なんだかゆっくりできないよ・・・」 「りーぐるんるん!」 れみりゃが去って一息ついたゆっくり達に新しい脅威が差し向けられる。 その名もゆっくりりぐる。成体でも赤ゆっくりの半分ほどの大きさしかない希少種のゆっくりだ。 彼女達の特徴はその小ささと、古いゆっくりが持っていたとされる壁のぼりの能力を受け継いでいる点。 そして・・・・・・ 「ゆゆっ、やめてね!?れいむのおくちにはいら・・・ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!?」 「ゆ?・・・れ、れいむ?!」 「やめちぇね!れーみゅ、ゆぐっ!?」 何よりも特筆すべきは相手の体内に侵入し、中から食い破ると言う恐ろしい捕食方法だろう。 真っ先に標的にされたれいむ親子がりぐるの集団に進入を許し、内側から食い破られていた。 泡を吹き、白目を剥いた恐ろしい形相で呻きながらのた打ち回り、やがて赤れいむの皮を破ってりぐるが飛び出してきた。 「りーぐるんるん!」 「おくちをとじるよ!むん!」 「むーしゃむーしゃ!」 そう言ってまりさは思いっきり口を瞑った。 しかし、りぐるは口内で生成される微量の鬼胃酸でいとも容易く皮を破って体内への侵入を試みる。 結局、まりさはその拍子に声を上げてしまい、他のりぐるの口からの侵入を許してしまった。 「ゆぐっ!やべでね!まぢざ、おいぢ、ぢぢ・・・ぢ、ぢ・・・ゆ゛びぃ!?」 「りーぐるんるん!」 「ゆぅぅぅううう!そうだわ!」 その凄惨な光景に驚愕し、多くのゆっくりが逃げ惑う中、1匹のありすが敢然とりぐるに飛び掛った。 圧倒的な体格差に物を言わせてのボディプレス。 平地であることが幸いしたのか、りぐるはくぼみに身を隠して攻撃をかわすことが出来なかった。 「ゆゆっ!いっぴきやっつけたわ!」 「「「「りーぐるんるん!」」」」 「ゆゆっ!どおぢでー!まだいっばいいるよおおおおお!?」 が、解き放たれたゆっくりりぐるの数はおよそ100匹。 あっという間に取り囲まれてしまったありすは、わずかな隙にりぐるに侵入される。 こうなってしまえば後はただ食われるばかり。 「ゆ゛っ!いだっ、いだいいいいいい!?ごんなの、どかいはぢゃないわ!?」 「「「りーぐるんるん!」」」 「や゛べ・・・でぇ・・・」 またたく間にありすの柔らかい皮は外と内から溶かし、食いちぎられてみるも無残な姿になってしまう。 破れた皮からカスタードが漏れ出し、彼女がもはや助からないことを示している。 10秒後、中に侵入したりぐるが飛び出してきたときには、ありすはすでに息絶えていた。 「「「「「りーぐるんるん!」」」」」 「「「りーぐるんるん!」」」 「ゆうううう!ゆっくりしね!」 カサカサと地面を這いながら逃げ惑うゆっくり達に近づいて行くゆっくりりぐるの群れ。 衝動に任せて若いまりさがその群れの中に飛び込んで行くが、2匹ほど潰しただけで大半が健在。 今度はそのまりさに目を付けたらしく、彼女の周りをくるくる回りながら、歯と酸でじわじわと嬲る。 「ゆぐっ!いだいよ、やべでね?!」 「りーぐるんるん!」 「ゆぶぅ!やべでえええええ!?おぐぢさんはまりざのゆっぐぢぷれいずだよ!?」 が、必死の抵抗もむなしく、まりさもまた中と外から食い破られてずっとゆっくりしてしまった。 その後もりぐる達は今までと同じように集団からはなれた個体を襲う戦法を繰り返した。 その度に数を減らしながらも1匹1匹確実に食い散らかしてゆく。 「むきゅ・・・ここまでね。でも・・・!」 「「「りーぐるんる、びぃ!?」」」 「さあ、ぱちぇのおくちにはいってきなさい!」 集団の中にいてこそ力を発揮するはずのゆっくりぱちゅりーが意外な奮戦を見せていた。 どうやら彼女は現在のりぐるの戦法が最善のものでないことに気づき、身をもって仲間に戦い方を示しているようだ。 小さなりぐるがその力を遺憾なく発揮するのは一箇所に固まっている集団の中に潜り込んだその時である。 「む゛ぎゅ・・・」 「「りー・・・ぐ、るん・・・る・・・」」 「「「!!?」」」 何故かぱちぇを食い破って出てきた仲間が虫の息であることを知ったりぐる達は驚愕した。 1匹はぱちゅりーに食われ、もう1匹は彼女があらかじめ含んでいた土を彼女の中で被って痛手を負わされた。 平坦な場所で、死を覚悟して戦えば体の弱いぱちゅりーでさえも5匹は倒せる。 その事実がゆっくり達を励まし、りぐる達を恐怖のどん底へと陥れた。 「れいむ、おちびちゃんのためにがんばるよ!」 「まりさもゆっくりがんばるよ!」 「わかるよー」「ちーんっぽ!」 生き残ったゆっくり達の中でも勇敢な数匹がぱちゅりーの遺志を継いで、りぐる達めがけて飛び跳ねてゆく。 一方のりぐる達は一応抵抗するものの、先ほどまでの勢いは微塵もなく明らかに逃げ腰だった。 「ゆっくりふまれてね!」 「「ゆぎっ!?」」 「「「りーっぐるんるーん!?」」」 れいむの一撃で2匹のりぐるが潰され、続く2度目の踏みつけで更に1匹のりぐるが潰される。 りぐるの攻撃には先ほどまでのキレも統率の取れた動きもなく、それがさらにれいむ達を優位に立たせる。 こうして、たった1匹のれいむを倒すために最終的に9匹ものりぐるが犠牲になった。 「ゆーっ!ありすもいくわ!」 「むきゅ・・・ぱちぇもがんばるわ~」 「りーっぐるんるーーーーん!?」 更に続々と参戦するゆっくり達を前にりぐる達は完全に戦意を失って逃げ惑う。 が、必死の逃亡も逃げられない状況ではジリ貧を招くだけ。 1匹、また1匹と潰されながら徐々にその数を減らし、更に10匹ほどのゆっくりを道連れにりぐるは全滅した。 「ゆふぅ~ん、ゆうかすっきりしたいわ!」 「ゆゆっ!ゆうかだよ!?」 「ゆうかがたくさんいるよ!ゆっくりぃ?」 思った以上に不甲斐なかったりぐるの代わりに、今度は発情しているゆうかを20匹ほど差し向ける。 ゆっくりゆうか。何故か畑を耕すことを好むゆっくりで、一般に捕食種とされている。 しかし、正当防衛でもない限り積極的に他のゆっくりを食べようとしない彼女の捕食種たる所以はあまり知られていない。 「ゆっくりしていってね!ねえ、まりさ、ゆうかとすっきりしましょ?」 「ゆゆっ!?ま、まりさは・・・ゆ、ゆっくりぃ・・・?!」 「まりさのほっぺ、とってもすべすべでゆっくりできるわ!」 本来ここまで積極的な種ではないのだが、すでに発情しているがゆえにすぐにすっきりーを求めるゆっくりゆうか。 まりさはその申し出にためらうが、ゆうか種は総じて美ゆっくりとされている。 このゆっくり出来ない地獄の中でそんなゆうかに積極的に迫られて抗うことなど出来るはずもなかった。 「ゆぅ~ん!ゆ、ゆうかのほっぺもとってもゆっくりしてるよ!」 「す~りす~り」 「す~りす~り・・・ゆっくり~」 ゆうかの美貌を間近で目の当たりにしたまりさはもう彼女の虜。 他のゆっくりの目もはばからずにすりすりに興じる彼女の頬はとてもだらしなく緩んでいる。 今、柵?の中ではそんな痴態が差し向けられたゆうかと同じ数だけ繰り広げられていた。 「ゆぅ~ん、ゆうかおーねちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「れいむもとってもゆっくりしてるわ!す~りす~り」 「ゆぅぅうん・・・とってもとかいはだわ!」 最初は軽いスキンシップ。 その行為を徐々に激しくしていくと、頬をこすり付けあう2匹の体から汗のようなものが噴き出す。 汗のようなものをお互いの頬に練りこむように、いっそう激しく頬を擦り付ける。 「ゆ~ん、ゆふん・・・ゆぅぅぅうん・・・」 「ゆぅ・・・まりさぁ~、ゆっくりぃ~♪」 やがて、2匹の頬が赤く染まり、体温も若干上がって本格的にすっきりーの体勢に入る。 と言っても人間の目には今までの頬ずりを体が湿った上体で続けているだけにしか見えないのだが。 それでも2匹にとっては情熱的な愛の舞踏であることに違いはなく・・・お互い、徐々に昂ぶって行く。 「ゆっ!まりさぁ・・・ゆっくりぃいいぃぃい!」 「ゆぅぅぅぅうん・・・ゆうかぁあぁぁ・・・!」 「「すっきりー」」 お互いのゆっくりした気持ちが最高潮に達した瞬間、同時にすっきり宣言をした。 直後、まりさの額からにょきにょきと茎が生え、そこにいずれ赤ゆっくりとなる小さな実が実る。 他のゆっくり達もゆうかでないほうの種がにんっしんっしたらしく、それぞれ額に赤ゆっくりを実らせていた。 「ゆゆ~ん・・・すごくゆっくりしたあかちゃんだよ~♪」 「ゆうかとありすのとかいはなあかちゃんだわ!」 「みんなとってもゆっくりしてるね!」 本人達ばかりでなく、周りに居た他のゆっくり達も子どもの誕生を祝福する。 こんなゆっくり出来ない場所でようやく見つけたゆっくりをかみ締め、分かち合うように・・・。 後のことを考えていないのか、考えたくないだけなのか、ただ目の前のゆっくり出来るものを眺めながら微笑んでいる。 「ゆぅ・・・ゆうか、みんながみてるよ!ちゅっちゅははずかしいよぉ」 すでに公開交尾をしているにも関わらずゆうかにキスを迫られて照れる彼女のつがい達。 しかし、その表情はまんざらでもなくあっさりとゆうかのキスもといちゅっちゅを受け入れた。 「~~~~~~~っ!!?」 「おああああああ!?」 「うあ゛あ゛ーーーーっ!?」 直後、ゆうかと口づけを交わしたゆっくりがろれつの回っていない悲鳴を上げた。 当のゆうかは涼しい顔をしてつがいから引きちぎった舌を地面にはき捨てると、再びパートナーに擦り寄る。 そして、茎を折らないように彼女達をひっくり返すと、底部を容赦なく食いちぎり始めた。 「あ゛あ゛あ゛・・・!?」 「う゛い゛い゛いい゛ぃ!?」 「ゆゆゆっ!や、やめてあげてね!いたがってるよ!?」 周囲のゆっくりはその凶行を必死に止めようとするがゆうかは一向に止めようとしない。 何匹かは力づく止めようとしたが、ゆうかの方が圧倒的に身体能力が高くそれも叶わなかった。 そうこうしているうちにも茎を生やしたゆっくり達の底部は二度と使い物にならないほどに傷つけられていった。 「う゛う゛・・・うい゛ッ!?」 「・・・ゆっくりかんせいしたわ」 「ゆえーん、ぎょわいよおおおお!?」 今や周囲のゆっくり達はゆうかに近づこうとすらせず、遠巻きから様子を伺いながら怯えるばかり。 が、ゆうかは舌と底部を失いただの鉢植えとなってしまったつがいを眺めながら満足げに笑っている。 それから傷を付けすぎて中身が漏れ出している場所がないかを念入りに確認し終えると、大事な鉢植えに頬ずりをした。 「ゆうかのあかちゃん・・・ゆっくりうまれてね」 総勢20匹、もとい20個のゆっくり植木鉢というのは中々の壮観で、虐待家にとっては悪くない光景だろう。 しかし、今回の目的はあくまで虐殺。そんな有様になったゆっくりを生かして嬲るというのは目的外。 と言うわけで、全力で植木鉢どものそばまで駆け寄ると彼女達を踏み潰し、放り投げ、水の中に落として処分した。 「ゆゆっ、ゆうかのあかちゃ・・・ゆ゛っ!?」 「なにするの、ゆっくりやめて・・・ぎぃ!?」 ついでに文句をたれてきたゆうかも処分し、いつの間にやら100匹以下にまでを数を減らしたゆっくり達と向かい合った。 (その5へ?)
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台車に乗せられた檻の中にいるのは10匹の胴体の無いゆっくりれみりゃ。 この最もメジャーな捕食種は、空を飛ぶことでゆっくりとしてはでたらめな速さで移動することが出来る。 その高い機動力と旺盛な食欲を武器に通常種を追いまわし、蹂躙する恐るべき存在。 「うー!うー!」 「ううーーー!」 「ぎゃおー!」 人語を話すことの出来ない彼女達は一見すると楽しそうな笑顔を浮かべながらもここを出せと訴えてくる。 そんな要求を適当に聞き流しつつれみりゃ達をゆっくり達の姿が見えるところまで連れてゆく。 白い牙を光らせて、いっそう元気良く鳴いた直後、れみりゃ達を檻から解き放った。 「うーうー!」「うーっ!」 「れれれ、れみりゃだあああああああ!?」 「れびりゃいやああああああ!」 これが本能のなせる業なのか、生気を失った瞳で怯えていたゆっくり達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ始める。 もはや絶望しきって微動だにしないのではないかとも思っていただけに、これは嬉しい誤算だった。 しばらく餌を与えていなかった10匹のれみりゃは涎を垂らしながら獲物めがけて一直線に飛んでゆく。 「うーうー!」 「や、やべでえええええええええ!?」 「ま、まりざああああああ!?」 最初に襲われたのは1匹の成体のゆっくりまりさ。 彼女の頭に食いついたれみりゃは本能の赴くままにその中身を吸い上げる。 そして、まりさが襲われたためについ足を止めて振り返ってしまったれいむ目掛けて2匹のれみりゃが牙を剥いた。 「ゆぐっ!いぢゃ、いだぃい!?やべでね!ゆっぐぢやべでね!?」 「「うーっ!」」 「ゆっぐ・・・やめでよぉ、ゆっぐぢぃ・・・!」 毒による理解不能の死や人間による不条理かつ一方的な暴力とはまた違った恐怖がゆっくり達を包み込む。 毒ならば、人間相手ならばもはや諦めるしかなかった。 しかし、れみりゃならば逃げれば死なずに済むかもしれない。 「ゆっぐぢやべでね!あでぃず、ゆっぐぢぢだいわ!?」 「おちびちゃんはまもるよ!ぷくうううううう!」 「「おかーしゃん!?」」 若いありすが喚く傍らで1匹のれいむが頬を膨らませてれみりゃを威嚇していた。 恐らく子どもを守るためなのだろうが、空を飛べるれみりゃに通常種が一対一で勝つ事は不可能。 1匹のれみりゃが彼女の頭に噛み付いている隙に、別のれみりゃが子ゆっくりに迫る。 「おぢゃああぢゃ・・・ぎゅ!?」 「うーうー!」 「ゆゆっ、おちびぢゃ!?やべでね、ゆっくぢはなれでね!?」 が、そうそう簡単に食うものと食われるもの関係が変わるほど世の中は甘くない。 何とか対抗策を考えようにもそれを仲間に話す前に食われ、よしんば話してもうまく実行できる保証も無い。 ましてや、こんな平坦で開けた場所でれみりゃを相手にするなど自然では愚の骨頂でしかない。 「ゆ゛っ・・・」「まぢざぁ・・・」 「おきゃ、ゆびぃ!?」 「おぢびぢゃあああ、ゆぎぃ!?」 「ごんなの!どかいはぢゃ、ないいいいい!」 そうこうしているうちにも全てのれみりゃが適当なゆっくりを見繕ったらしく、満面の笑みを浮かべて食事に取り掛かる。 彼女達は狡猾にも上から覆いかぶさるようにして食いついているので他のゆっくりから攻撃を受けにくい。 もっとも、幸いにも狙われなかったゆっくり達は離れたところで固まって怯えるばかりなのだが。 「ゆっぐ・・・れいぶのおぢびぢゃ・・・ゆ゛っ」 「ぢんぼおおおおおおおお!?まらっ!?まらっ!?」 「むっきゅううううううう!」「ゆげぇ・・・」 やがて最初に襲ったゆっくりを食べ終えたれみりゃ達は次の標的を探し始めた。 うーうー!と先ほどよりも力強い声で鳴きながらふらりふらりと飛び回る。 それを見たゆっくり達の中には立ち向かおうと頬を膨らませるものもいたが、大半は逃げ惑う。 「ごわいよおおおお!ゆぐっ、おみずざっ、やべっ・・・やべでぇ!?」 「おびずざん、どがいはぢゃないわああああ!?」 「ゆゆっ、やべでね!こっぢごないでね!?」 逃げ惑う最中に柵のあった場所の外側にはみ出してしまい、3匹ほどのゆっくりが落とし穴に落ちた。 それを見た他のゆっくり達は方向転換しようとするが、前が見えていないゆっくり達とれみりゃが行く手を阻む。 こうして思うように身動きが取れなくなったところに更にれみりゃが悠然とゆっくり達の頭にかじりついた。 「ゆ゛っ!や、やべでねぇ!?」 「ゆっぐりぃ!ゆっぐりぃ!?」 「ゆっくりやべでね!ゆっぐぢぢでね!?」 必死になって許しを請うゆっくり達。 しかし、れみりゃ達にそれに応じる理由がない以上、止めるはずがない。 それどころか、悲鳴を楽しむためにいっそう勢いづいてしまった。 「うーうー!」 「やべでー!でいむのあがぢゃああああん!?」 「おきゃああああぢゃあああああ、びぃ!?」 あえて死なない程度に衰弱させてから子どもを狙うれみりゃ達。 身動きひとつ取れない彼女達の前で、必死に助ける子ども達が無残にもれみりゃの中に消えてゆく。 そして、喪失感に絶望する親達は落とし穴の中の水へと落とされた。 「やめぢぇえええええ、びゅ!?」 「あぢずのおぢびぢゃああああああん!?」 「やべでね!おびずざんはゆっぐぢでぎないよ!?ゆぐぅぅぅ!?」 「わきゃりゃに゛ゃいよおおおおお!?」 流石は捕食種とでも言うべきだろうか。 自分とさほど変わらない大きさの成体を含めた相当の数のゆっくりがあっという間に消えてゆく。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん・・・いろんな味を楽しむかのように。 「ゆひぃ!こっち、ごないでね!」 「「おきゃあああぢゃあああ、まっぢぇえええええ!?」」 「もうやだ!れいむおかーさんやだあああああ!?」 中には恐怖のあまりに子どもを見捨てて逃げ出すものもいた。 しかし、そういった個体を追うときはあえて子ゆっくりを狙わず、とにかく成体の捕獲に全力を上げる。 恐らく、そうやってじっくり恐怖を味あわせることで甘味が増すことを理解しているのだ。 「ゆっぐ・・・もうやだ!おうぢがえる!?」 「「おきゃーしゃあああああん!」」 「うーっ!!」 こうして次々にゆっくり達の中身を吸い出し、あるいは面白半分に嬲り殺してゆく。 哀れな餌達はなすすべもなく食われ、時には食われることさえなく次々にはかない命を奪われる。 その、傍目には間抜けだが凄惨な宴は10匹のれみりゃが遊びつかれておりに戻ってくるまで続けられた。 「ゆゆっ!なんだかへんなこがいるよ!」 「ゆぅ・・・なんだかゆっくりできないよ・・・」 「りーぐるんるん!」 れみりゃが去って一息ついたゆっくり達に新しい脅威が差し向けられる。 その名もゆっくりりぐる。成体でも赤ゆっくりの半分ほどの大きさしかない希少種のゆっくりだ。 彼女達の特徴はその小ささと、古いゆっくりが持っていたとされる壁のぼりの能力を受け継いでいる点。 そして・・・・・・ 「ゆゆっ、やめてね!?れいむのおくちにはいら・・・ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!?」 「ゆ?・・・れ、れいむ?!」 「やめちぇね!れーみゅ、ゆぐっ!?」 何よりも特筆すべきは相手の体内に侵入し、中から食い破ると言う恐ろしい捕食方法だろう。 真っ先に標的にされたれいむ親子がりぐるの集団に進入を許し、内側から食い破られていた。 泡を吹き、白目を剥いた恐ろしい形相で呻きながらのた打ち回り、やがて赤れいむの皮を破ってりぐるが飛び出してきた。 「りーぐるんるん!」 「おくちをとじるよ!むん!」 「むーしゃむーしゃ!」 そう言ってまりさは思いっきり口を瞑った。 しかし、りぐるは口内で生成される微量の鬼胃酸でいとも容易く皮を破って体内への侵入を試みる。 結局、まりさはその拍子に声を上げてしまい、他のりぐるの口からの侵入を許してしまった。 「ゆぐっ!やべでね!まぢざ、おいぢ、ぢぢ・・・ぢ、ぢ・・・ゆ゛びぃ!?」 「りーぐるんるん!」 「ゆぅぅぅううう!そうだわ!」 その凄惨な光景に驚愕し、多くのゆっくりが逃げ惑う中、1匹のありすが敢然とりぐるに飛び掛った。 圧倒的な体格差に物を言わせてのボディプレス。 平地であることが幸いしたのか、りぐるはくぼみに身を隠して攻撃をかわすことが出来なかった。 「ゆゆっ!いっぴきやっつけたわ!」 「「「「りーぐるんるん!」」」」 「ゆゆっ!どおぢでー!まだいっばいいるよおおおおお!?」 が、解き放たれたゆっくりりぐるの数はおよそ100匹。 あっという間に取り囲まれてしまったありすは、わずかな隙にりぐるに侵入される。 こうなってしまえば後はただ食われるばかり。 「ゆ゛っ!いだっ、いだいいいいいい!?ごんなの、どかいはぢゃないわ!?」 「「「りーぐるんるん!」」」 「や゛べ・・・でぇ・・・」 またたく間にありすの柔らかい皮は外と内から溶かし、食いちぎられてみるも無残な姿になってしまう。 破れた皮からカスタードが漏れ出し、彼女がもはや助からないことを示している。 10秒後、中に侵入したりぐるが飛び出してきたときには、ありすはすでに息絶えていた。 「「「「「りーぐるんるん!」」」」」 「「「りーぐるんるん!」」」 「ゆうううう!ゆっくりしね!」 カサカサと地面を這いながら逃げ惑うゆっくり達に近づいて行くゆっくりりぐるの群れ。 衝動に任せて若いまりさがその群れの中に飛び込んで行くが、2匹ほど潰しただけで大半が健在。 今度はそのまりさに目を付けたらしく、彼女の周りをくるくる回りながら、歯と酸でじわじわと嬲る。 「ゆぐっ!いだいよ、やべでね?!」 「りーぐるんるん!」 「ゆぶぅ!やべでえええええ!?おぐぢさんはまりざのゆっぐぢぷれいずだよ!?」 が、必死の抵抗もむなしく、まりさもまた中と外から食い破られてずっとゆっくりしてしまった。 その後もりぐる達は今までと同じように集団からはなれた個体を襲う戦法を繰り返した。 その度に数を減らしながらも1匹1匹確実に食い散らかしてゆく。 「むきゅ・・・ここまでね。でも・・・!」 「「「りーぐるんる、びぃ!?」」」 「さあ、ぱちぇのおくちにはいってきなさい!」 集団の中にいてこそ力を発揮するはずのゆっくりぱちゅりーが意外な奮戦を見せていた。 どうやら彼女は現在のりぐるの戦法が最善のものでないことに気づき、身をもって仲間に戦い方を示しているようだ。 小さなりぐるがその力を遺憾なく発揮するのは一箇所に固まっている集団の中に潜り込んだその時である。 「む゛ぎゅ・・・」 「「りー・・・ぐ、るん・・・る・・・」」 「「「!!?」」」 何故かぱちぇを食い破って出てきた仲間が虫の息であることを知ったりぐる達は驚愕した。 1匹はぱちゅりーに食われ、もう1匹は彼女があらかじめ含んでいた土を彼女の中で被って痛手を負わされた。 平坦な場所で、死を覚悟して戦えば体の弱いぱちゅりーでさえも5匹は倒せる。 その事実がゆっくり達を励まし、りぐる達を恐怖のどん底へと陥れた。 「れいむ、おちびちゃんのためにがんばるよ!」 「まりさもゆっくりがんばるよ!」 「わかるよー」「ちーんっぽ!」 生き残ったゆっくり達の中でも勇敢な数匹がぱちゅりーの遺志を継いで、りぐる達めがけて飛び跳ねてゆく。 一方のりぐる達は一応抵抗するものの、先ほどまでの勢いは微塵もなく明らかに逃げ腰だった。 「ゆっくりふまれてね!」 「「ゆぎっ!?」」 「「「りーっぐるんるーん!?」」」 れいむの一撃で2匹のりぐるが潰され、続く2度目の踏みつけで更に1匹のりぐるが潰される。 りぐるの攻撃には先ほどまでのキレも統率の取れた動きもなく、それがさらにれいむ達を優位に立たせる。 こうして、たった1匹のれいむを倒すために最終的に9匹ものりぐるが犠牲になった。 「ゆーっ!ありすもいくわ!」 「むきゅ・・・ぱちぇもがんばるわ~」 「りーっぐるんるーーーーん!?」 更に続々と参戦するゆっくり達を前にりぐる達は完全に戦意を失って逃げ惑う。 が、必死の逃亡も逃げられない状況ではジリ貧を招くだけ。 1匹、また1匹と潰されながら徐々にその数を減らし、更に10匹ほどのゆっくりを道連れにりぐるは全滅した。 「ゆふぅ~ん、ゆうかすっきりしたいわ!」 「ゆゆっ!ゆうかだよ!?」 「ゆうかがたくさんいるよ!ゆっくりぃ?」 思った以上に不甲斐なかったりぐるの代わりに、今度は発情しているゆうかを20匹ほど差し向ける。 ゆっくりゆうか。何故か畑を耕すことを好むゆっくりで、一般に捕食種とされている。 しかし、正当防衛でもない限り積極的に他のゆっくりを食べようとしない彼女の捕食種たる所以はあまり知られていない。 「ゆっくりしていってね!ねえ、まりさ、ゆうかとすっきりしましょ?」 「ゆゆっ!?ま、まりさは・・・ゆ、ゆっくりぃ・・・?!」 「まりさのほっぺ、とってもすべすべでゆっくりできるわ!」 本来ここまで積極的な種ではないのだが、すでに発情しているがゆえにすぐにすっきりーを求めるゆっくりゆうか。 まりさはその申し出にためらうが、ゆうか種は総じて美ゆっくりとされている。 このゆっくり出来ない地獄の中でそんなゆうかに積極的に迫られて抗うことなど出来るはずもなかった。 「ゆぅ~ん!ゆ、ゆうかのほっぺもとってもゆっくりしてるよ!」 「す~りす~り」 「す~りす~り・・・ゆっくり~」 ゆうかの美貌を間近で目の当たりにしたまりさはもう彼女の虜。 他のゆっくりの目もはばからずにすりすりに興じる彼女の頬はとてもだらしなく緩んでいる。 今、柵?の中ではそんな痴態が差し向けられたゆうかと同じ数だけ繰り広げられていた。 「ゆぅ~ん、ゆうかおーねちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「れいむもとってもゆっくりしてるわ!す~りす~り」 「ゆぅぅうん・・・とってもとかいはだわ!」 最初は軽いスキンシップ。 その行為を徐々に激しくしていくと、頬をこすり付けあう2匹の体から汗のようなものが噴き出す。 汗のようなものをお互いの頬に練りこむように、いっそう激しく頬を擦り付ける。 「ゆ~ん、ゆふん・・・ゆぅぅぅうん・・・」 「ゆぅ・・・まりさぁ~、ゆっくりぃ~♪」 やがて、2匹の頬が赤く染まり、体温も若干上がって本格的にすっきりーの体勢に入る。 と言っても人間の目には今までの頬ずりを体が湿った上体で続けているだけにしか見えないのだが。 それでも2匹にとっては情熱的な愛の舞踏であることに違いはなく・・・お互い、徐々に昂ぶって行く。 「ゆっ!まりさぁ・・・ゆっくりぃいいぃぃい!」 「ゆぅぅぅぅうん・・・ゆうかぁあぁぁ・・・!」 「「すっきりー」」 お互いのゆっくりした気持ちが最高潮に達した瞬間、同時にすっきり宣言をした。 直後、まりさの額からにょきにょきと茎が生え、そこにいずれ赤ゆっくりとなる小さな実が実る。 他のゆっくり達もゆうかでないほうの種がにんっしんっしたらしく、それぞれ額に赤ゆっくりを実らせていた。 「ゆゆ~ん・・・すごくゆっくりしたあかちゃんだよ~♪」 「ゆうかとありすのとかいはなあかちゃんだわ!」 「みんなとってもゆっくりしてるね!」 本人達ばかりでなく、周りに居た他のゆっくり達も子どもの誕生を祝福する。 こんなゆっくり出来ない場所でようやく見つけたゆっくりをかみ締め、分かち合うように・・・。 後のことを考えていないのか、考えたくないだけなのか、ただ目の前のゆっくり出来るものを眺めながら微笑んでいる。 「ゆぅ・・・ゆうか、みんながみてるよ!ちゅっちゅははずかしいよぉ」 すでに公開交尾をしているにも関わらずゆうかにキスを迫られて照れる彼女のつがい達。 しかし、その表情はまんざらでもなくあっさりとゆうかのキスもといちゅっちゅを受け入れた。 「~~~~~~~っ!!?」 「おああああああ!?」 「うあ゛あ゛ーーーーっ!?」 直後、ゆうかと口づけを交わしたゆっくりがろれつの回っていない悲鳴を上げた。 当のゆうかは涼しい顔をしてつがいから引きちぎった舌を地面にはき捨てると、再びパートナーに擦り寄る。 そして、茎を折らないように彼女達をひっくり返すと、底部を容赦なく食いちぎり始めた。 「あ゛あ゛あ゛・・・!?」 「う゛い゛い゛いい゛ぃ!?」 「ゆゆゆっ!や、やめてあげてね!いたがってるよ!?」 周囲のゆっくりはその凶行を必死に止めようとするがゆうかは一向に止めようとしない。 何匹かは力づく止めようとしたが、ゆうかの方が圧倒的に身体能力が高くそれも叶わなかった。 そうこうしているうちにも茎を生やしたゆっくり達の底部は二度と使い物にならないほどに傷つけられていった。 「う゛う゛・・・うい゛ッ!?」 「・・・ゆっくりかんせいしたわ」 「ゆえーん、ぎょわいよおおおお!?」 今や周囲のゆっくり達はゆうかに近づこうとすらせず、遠巻きから様子を伺いながら怯えるばかり。 が、ゆうかは舌と底部を失いただの鉢植えとなってしまったつがいを眺めながら満足げに笑っている。 それから傷を付けすぎて中身が漏れ出している場所がないかを念入りに確認し終えると、大事な鉢植えに頬ずりをした。 「ゆうかのあかちゃん・・・ゆっくりうまれてね」 総勢20匹、もとい20個のゆっくり植木鉢というのは中々の壮観で、虐待家にとっては悪くない光景だろう。 しかし、今回の目的はあくまで虐殺。そんな有様になったゆっくりを生かして嬲るというのは目的外。 と言うわけで、全力で植木鉢どものそばまで駆け寄ると彼女達を踏み潰し、放り投げ、水の中に落として処分した。 「ゆゆっ、ゆうかのあかちゃ・・・ゆ゛っ!?」 「なにするの、ゆっくりやめて・・・ぎぃ!?」 ついでに文句をたれてきたゆうかも処分し、いつの間にやら100匹以下にまでを数を減らしたゆっくり達と向かい合った。 (その5へ)
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蛍 雑踏が流れていく。 大通りの交差点は多くの人が行き交っていた。 様々な格好をした人たちが足早にそれぞれの目的地へ向かう。 角に面したビルの壁には、巨大なテレビが掛かっていて、CMを映し出している。 その映像が急に切り替わった。 アナウンサーが座り、深刻な顔でニュースを告げる。 「臨時ニュースです。 アメリカ・ミネソタ州に核ミサイルが打ち込まれた事件で、中国政府は誤射を主張していましたが 議会の決定を受けてアメリカ大統領は報復攻撃を加えると先ほど発表されました」 人々は足を止めて、一様に画面を見上げた。 ニュースよりも興味を引くものが、上空に現れていた。 「なお、発射されたミサイルは日本にも向かっているとの情報が――」 アナウンサーが言い終わる前に画面は途切れた。 上空のミサイルが一瞬で膨れ上がり、人々の目の前で巨大な火の玉になった。 それは何もかもを飲み込んで、世界を白く染めた。 ***** 暗闇に包まれた街の姿がぼんやり浮かび上がった。 一か月前なら、空が暗くなるころに灯り始める街灯はどれも折れ曲がって割れている。 ビルの窓やネオンの看板は割れて破片が地面に落ちていた。 無事なものにも明りは灯っていなかった。 街中が停電になったようだった。 この街だけでなく世界中がこうなのだった。 巨大なビルが半ばから折れて巨大な生物の骸のような姿を晒している。 コンクリートの舗装は地面に空いた大穴によって大きく裂けていた。 大穴の隙間から、ぼんやりとした光の塊が覗いている。 いくつかの小さな塊に分かれたそれは、静かに動いて地中へと潜っていった。 日が沈みかけた街を照らしているのは、この光だった。 光の一つはすっと飛び上がると、飛び去った。 その先には、廃墟となったデパートがあった。 光が割れた窓の一つに入る。 デパートは沈黙していた。 きらびやかな商品やお客で溢れんばかりだった店内は、今や荒れ果てて誰もいない。 地下では、止まった冷蔵庫から嫌な匂いが漏れている。 地下のフロアから少し奥に入った場所に、両開きの扉があった。 在庫を置く倉庫だった。 扉の奥には、二人の男女がいる。 辺りには缶詰やペットボトルの空き容器が転がっている。 二人は一つの毛布にくるまって、壁にもたれて座っていた。 男が女に話しかける。 「寒くないか……?」 「うん、でも、こうしていると安心する」 女も話しかけた。 「わたしたちのほかに誰もいないのかな」 「ああ、いたとしても俺たちと同じように、放射能にやられているだろうな」 二人は死の淵にいた。 世界中を襲った、大量のミサイルが撒き散らした放射能によって体を蝕まれているのだった。 しばらく前から食事もとっていない。 消化器官の粘膜が放射線によって破壊され、食べても体の中を素通りしてしまうのだった。 「非常食、役に立たなかったね」 「役に立つ時は、ここの食料が全部なくなったときだ。 それまで生きていられるかな」 二人は黙った。 やがてどちらともなく体を寄せ合い、首をもたれかけた。 そのまま二人は眠りに落ちた。 その頃、食料品を置く棚の上で眠っていたれいむが目を覚ました。 「ゆ?」 隣にはまりさがすやすや眠っている。 鏡餅のように棚に置かれていたれいむは、そこから飛び降りた。 ミサイルが街を襲ったとき、多くのゆっくりも灰となった。 だが、生き残ったゆっくりは饅頭だからか、放射能の中でも平気だった。 掃除するも人もいなくなった街の中で、焼け残ったごみなどを漁って暮らしていた。 二匹は幸運なつがいだった。 街の下を流れる暗渠の中に潜んでいて奇跡的に無事だった二匹は、 様変わりした地上に這い上がって驚いた。 非常食として男女に拾われて、デパートの地下倉庫で一緒に暮らしている。 あまり食料がないので、普段はよく眠っているが、空腹を感じて目を覚ました。 「ゆっ、おなかすいたよ!」 「ゆふん?」 まりさも目を覚ました。 二匹でそろって眠っている男女のそばに跳ねていく。 「おにーさん、おなかすいたよ! かんづめさんちょうだいね!」 「おなかすいたよ!」 二人は返事をしない。 ぴくりとも動かずに、ゆっくりたちを無視している。 「ゆゆ、おにーさんたちへんじしないよ?」 「きっとねてるんだよ! おこしたらおこられちゃうよ!」 以前にも、人間はこのように喋らずにじっとしていることがあった。 不安になって騒ぐと、むくりと起き出してうるさいといった。 人間さんもすーやすーやするんだと、二匹はその時初めて知った。 「ねちゃったんだね! つまんないよ!」 「まりさたちでかりにいこうね!」 「そうだね! おにーさんたち、ゆっくりしていってね!」 男は答えない。 蛍光灯が毛布にくるまれた二人を照らしていた。 二匹はこっそりと倉庫を抜けだした。 階段を一段ずつ登り、外れて蝶番にぶら下がっているドアを抜けて、一回のフロアに出た。 割れて落ちた窓や蛍光灯の破片をよけながら、出口へ向かう。 正面入り口のガラスはすべて割れていた。 そこから外へ出た二匹は、荒廃した街を眺めた。 辺りは薄暗闇に覆われている。 夕焼けは厚い黒雲に隠れていた。 その下に瓦礫の山となった街が死んだように広がっている。 二匹はご飯を求めて歩き出した。 途中、大穴があいている道路を避けて、さらに進む。 やがて水道管が破裂して噴き出した水が、地面に溜まっている所へ出た。 何かの加減でそこだけ地面がくぼんで、濁った水が溜まっている。 瓦礫の間に挟まれたその空間に、うごめくものがあった。 野生動物は今やほとんどいない。虫にしては大きかった。 ちょうどれいむたちくらいの大きさの黒いものが、触角をうごめかせて水場に群がっていた。 れいむは物おじせずに叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 すると群がっているそれらから、いくつもの挨拶が帰ってきた。 答えたのは緑色の髪と虫のような羽をもつ、りぐるだった。 彼らは荒廃した街でも生き延びていた。 れいむは訊ねる。 「おみずさんのんでるの?」 「うん、れいむたちものむといいよ!」 りぐるたちは二匹のために場所を空けた。 口をつけると、舌で舐め取った。 「ごーくごーく、それなりー」 濁った水でも、喉は潤った。 れいむは顔を上げた。 気になっていたことを訊ねてみる。 「にんげんさんは、どこいったの?」 「りぐるたちはしらない。でも、ごはんさんはにんげんのくらしているところにあるからね。 にんげんがいなくなっちゃって、ごはんもすくなくなったみたい」 「ふーん」 れいむたちはあまり深刻に受け止めていなかった。 何しろ、倉庫に戻れば、お兄さんが缶詰を開けてくれるのだから。 そのうち、辺りが本格的に暗くなってきた。 相変わらず厚い雲に覆われて見えないが、その向こうでは太陽が地平線に沈もうとしていた。 瓦礫や地面の隙間にできた影がじわじわと広がっていき、すぐに街を覆い尽くした。 それと同時に、りぐるたちの体が内側からぼんやりと光り始める。 水場が光に覆われ、れいむたちは歓声を上げる。 「ゆっ、りぐるたちはそろそろいくよ!」 不思議な光を放つりぐるたちは、集まって跳び立つ準備をした。 まりさは一目見て格好いいと感じた。 魂を抜かれたように訊ねる。 「どこへいくの?」 「きれいなおみずさんがあるところ!」 一匹のりぐるが振り向いて答える。 りぐるたちがいっせいに飛び立ち、最後のりぐるも後を追った。 地面から光の柱が吹き上がったように見えた。 星一つ見えない夜空に、蛍のように淡い光の粒が何十も舞い上がった。 それらは空中で広がって散っていく。 不思議な軌道を描いて、れいむたちに別れを告げた。 れいむたちはそれを見上げた。 見る間に遠くなっていく光を、ずっと見つめていた。 「ゆゆ、いいなぁ……」 「まりさたちも、ぴかぴかしたいよ!」 まりさの願いはすぐに叶えられた。 れいむたちの体が、かすかに光り始める。 りぐるたちと同じ光だった。 「れいむ、ひかってるよ!?」 「まりさもだよ!!」 二匹は、おさげともみあげを取り合って喜んだ。 見ると、周囲に崩れた建物の中にも、ぽつりぽつりと同じ光が見える。 「あんなにたくさんいるよ!」 「みんなひかってる!」 ゆっくりたちが光を発している。 かつての街灯の光よりずっと弱いが、それはどんな小さな隙間や建物の中にもあった。 見る者があれば、神秘的な光景に写ったかも知れない。 それは放射性物質の光だった。 凝集されて取り込まれた放射性物質は体内の餡子に蓄積され、暗くなると光を発するようになる。 生き延びたゆっくりたちは皆例外なく、汚染された食べ物や水を飲んでいた。 空は相変わらず曇っていた。 地上では星々のようなゆっくりたちの光がいくつも灯っている。 本物の星はまだ見えなかった。 「おにーさんたちに、しらせにいこうね!」 「きっとびっくりするよ!」 二匹は並んで元来た道を戻って行った。 もはや動くもののないデパートの地下倉庫へと。 あとがき 蛍の放流のニュースを見て急に書きたくなりました いろいろ変なところがあって申し訳ないです Wikiの名前が意外としっくりきたので これからゆ焼きあきと名乗らせていただきます どうぞよろしくお願いします 過去に書いたもの anko1016 『赤ゆ焼き』 anko1046 『贈り物』 anko1098 『子まりさとれいぱー』 anko1249 『おそらをとんでるみたい!』
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床には酷く不恰好な足跡が続いていた。 いや、足跡だろうか?とにかく、ネトネトと不可解な粘膜が、人気の無い廊下を一定の規則をもって 覆っている。 ただし、非常に良い匂いがした。何だろう?食欲はそそられる。 「―――試しに食べてみるか?」 「―――馬鹿な冗談言わないで、ちゃんと持ってね!!!」 人間なら、何とか粘膜を避けて通れるが、ゆっくりかなこともなると、どこかで体に直接付着する事を 避けられまい。 あまりおんぶや抱っこ等、甘やかしたくは無かったが、流石に哀れに思って両手で抱え挙げて通る。 重い。 「注連縄も御柱も部屋においてくればいいのに」 「そんな事できないよ!!!」 そっぽを向いて一言 「何が起こっても変じゃないんだよ」 不安なのだろうか?そうこうしている内に、粘膜を避けつつ、好奇心に駆られて足跡を辿っていくと、 食堂街へ出た。街というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、世界一の客船・ゆイタニック号の事。 室内のトイレが、自分の子供時代の部屋より遥かに大きいのと同じく、地元の商店街より街らしい。 深夜だからか?彼の目には、ゆっくりはたくさん映ったが、人間の姿はまばらだった。 足跡? は、更にその先の3軒の店へと続いていた。 「Night sparrow」 「kuneri guru」 「河城飯店」…… 船内のレジャー施設を遊び尽し、興味が湧いてほいほい足跡を追跡してきたのはいい。 それにしても腹は減っていた。どういう訳か、粘膜と足跡は3軒共に入り口の前で途切れていた。 とりあえず、最も流行って無さそうな―――だがそれ程お高くなさそうな、中央の「kuneri guru」へ入る。 店に入ると、客用のテーブルで、店長らしきゆっくりりぐるが食事を摂っていた。それも不味そうに。 慌てて、片付けるのもそこそこに、厨房の奥へカサカサと駆けむ。 奥では何かを言い争う声が聞こえた。 店長らしきりぐると、あと2名。 ドタバタと弾かれたように、胴の無い子りぐるを連れて、店長は何かを手にして此方へ向かってきた。 パパン クラッカーである 「ゆっくりしていってね!!! 『kuneri guru』へようこそ!!!」 「おきゃくさまは、きねんすべき――――ええと」 「30人目のお客だよ!!!」 「ゆゆ~ すごい!!!」 それは、キリがいい―――――が、気になった。 (―――まさか………開店始まって以来とかいうんじゃないだろうな!!?) 連れのを席につかせると、はや水におしぼり、メニューが置かれている。店長が先ほど食べていた まかない(?)はまだ片付けられていない。 メニューを見ると、何語か解らない文字で書かれている。ロシア辺りだろうか? ただし、手書きのイラスト が全てに添えられており、これが存外上手いのでそれ程不自由ではなかった。 流石に無国籍料理店と名乗るだけはあるが、こういう意味ではなかった気がする。 内装はいかにも東洋かぶれの西洋人といった風情で、ある程度和風にしようとして所々が中華風に なっている。 ―――――不安だったので、鴨南蛮と、親子丼に、水餃子を頼みました――――― 注文を受けた少し小さいりぐるは何やら不満そうな顔をしていたが、すぐにカサカサと奥に入っていった。 水餃子を先に運んできた時、まだ不満そうな顔をしていた。少し気になった事を聞いてみる ガタガタと、何故か船内が揺れた。 「ここは長いの?」 「造船以来だよ!!!」 「何ていうか―――無国籍料理って話だけど、コンセプトは何なの?」 「そんなもの実は無いよ!!!」 水餃子は美味しかったが……… とにかくこの店は、立地が悪い。右隣に、最高級の食材が集まる 五ッ星レストラン「Night sparrow」と、 左隣に伝統と格式の中華料理の「河城飯店」支店――――まるで、大ゆっくりに頬を挟まれた小ゆっくり の様。 今ここ ↓ "-..,,_r-'ァ'"´/ i ,/! ハ .ハ ! iヾ_ノ \-‐ァ _ __ 'r==─- --─===ヽ、ン、 !イ´ ,' | /i/__,.!/ V 、!__丿ハ ,' ,ゝ、r-r'"´(ゝ-´ ̄`-ゝ イ,' イリiゝ、イ人レル/_ルリ ', i ( `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノヘァ二ハ二、r´iゝイ人レ/_ルリレ (ヒ_] ヒ_ン ) ヽイ i | (( )) ) 丿/ ////// ,___, /////i-'/__,.!/V、!__`i=(r=- r=ァ )レリイ//// ,___, ///// | .|、i .|| / i i ヽ _ン !/ r=- r=ァ | , ヽY! ヽ _ン 「 !ノ i | )) ノ ) ハ '| ノ( 」 .|' ー=ョ .|,. L」 ノ| .| y' ノ i 「Night sparrow」 iレi⌒ ー=ョ | ノ(「 !| 「河城飯店」|イ| / ノノ ( ,ハ |! .|.',. ⌒ L」ハ ノ| || |/ (( こんな大御所に勝てる訳もないのだから、もっと大衆的な雰囲気と料理を目指せば良かったのだろうが、それとは 真逆のイカモノに走ってしまったようだ。 「3人だけでやっていくのは、大変だね!!!」 「3人?りぐると、店長の2人だけですよ!!!!」 「―――?厨房に誰かいない?」 「―――3人だよ!!!」 間髪入れず、滝の様な汗を描いて子りぐるは訂正した。 はて、何があるのか? 何やら厨房では店長が変な声をあげている。 ややあって運ばれてきた親子丼と鴨南蛮は、あまり美味しくなかった。。本当に美味しなかったので、口直しにガララ鰐の ソテーでも頼もうとした時、客が来た。 「ゆっくりしていってね!!!」 「『kuneri guru』へようこそ!!! おきゃくさまは、記念すべき31人目のお客様だよ!!!」 「33人目かな?」 「―――どうしよう?」 3人同時の来店である。 ゆっくりゆゆこ・れてぃ・るーみあの三名。 「おいしそうな匂いがしたんできたよ!!!」 「無国籍なのかー」 「あら、アーモンドキャベツの匂いも……うふふふ……」 大食らいで有名なゆっくりが3名集まった。これは、閑古鳥が鳴いている見せにとっては、少数精鋭といった所。実際に この3人が集まる所も、食事を摂る所も見た事がない。 「良かったねえ。お客が100人分来たようなもんだ」 「えへへへ」 「それは大袈裟だよー」 ずぞずぞと、ドッハムの湧き酒を飲みつつ、かなこは一人ごちた。 「ばかね……… 『大食いゆゆこ』でも行けばよかったのに」 「ん?」 「100人分じゃないよ 後で後悔するよ」 「? ?」 まず、れてぃは一口餃子3人前と、グラナレタス炒飯に百葉のクローバーサラダ、ふぐ鯨の雑炊を頼む それにしても、何やら外が騒がしい。 「――――それが、前菜でね」 「は?」 「ゆゆこは?」 「アシュラサウルスの蒲焼があるのね。それを2本。あと王陸鮫の姿焼き?と沢蟹ダブルで」 ――これが、始まりだった。 中華料理にふさわしく、炒飯や餃子はそれなりの量だったが、すぐに出された。その後、恐ろしく窮屈そうな 厨房から、彼とかなこよりも大きいアシュラサウルスの蒲焼が運ばれ、ややあって王陸鮫の姿焼き(テーブルを 二つ使った)が運ばれる頃には、既に今までの料理は食べ尽くされていた。 喜びと驚きの混じった笑顔を浮かべつつ、りぐる達は厨房に戻ったが、ダブルの沢蟹を待たずして――― 「次、虹の実ベーコンの葉っぱ巻き―――ハーフサイズしかないの 200kgの?じゃあ、それでいいわ。コンソメマグマスープと、 デビル大蛇のバーガー これはフルサイズあるわよね?」 「野菜ラーメン、塩と味噌の両方ね」 「メープル丼とストライプサーモンのラクリマクリスティー。あとファナティッククライシスの生姜焼きも追加できるのかー?」 それまでは、注文を複数受け、その料理が出揃った辺りでその前の料理が食べ終わっており、新たに注文を受ける―― というリズムがあったが―――徐々に そのペースは乱れ。 何かを一皿運ぶ毎に、注文は増えた。 「店長!! 金色いくらまだ残ってます?」 「まるっと残ってるよ!!! 残ってるから、トロルコング切るの手伝ってぇえ!!!」 厨房は本当に狭いらしく、一緒にトロルコングの肉(筋張って本来は食用ではない)を鋸で切断する際、子りぐるの背中が 入り口からはみ出していた。 当然食器も洗える余裕など無く、既に入り口に皿が積まれ、危ないわ入りにくいわで、ついに子りぐるは近くのテーブルの上に 皿を置き始めた。 と、ややあって、入ってきた者がある 「よろしいですか?」 人間の船員だった。 「しばらくの間、店内を調べさせていただきたいのですが」 「何で?」 船員は少し押し黙った。言い訳を用意しなかったのだろうか?本物の船員かどうかまで確かめる術は無い。彼自身とかなこに断る理由も 無いが、何やら怯えた反動で威圧的に構える船員に食後を邪魔されたくは無かった。 それに―――子りぐるが怯えて切っている。 「入りますね」 と、一歩踏み入れた瞬間、厨房から何かが飛交った。 入り口のところで鈍い音を立てて落下したが――――猿の腕だった。 勿論食材の一つだろう 「それ、持ってきてね!!!」 厨房からの店長の声は落ち着き払っており、子りぐるは多少気を持ち直した様子だった。 船員はそれでも入ろうとしたが―――それを止めた音があった。 箸をおく音。 テーブルに、落石でもあったように、重く三つ。 客の3ゆっくりである。 「後になさい」 「―――いえ、ですが………」 「食事中なのが見えないのかー?」 れてぃは無言だったが、麺を一際大きな音をたててすすり上げた。 ―――何か戦闘的な動物の威嚇にも近い響きがあった。 「後ほど。食べ終わった頃に―――また!!」 実際、他にも調べる部屋がたくさんあるのだろう。 心底ほっとした面持ちで、子りぐるは方を下ろしていた。 ―――何が起きている? ―――何を隠している? 客のゆっくり3人は、はや誰も訪れなかったかのように食事を続けている。 「蟹豚のソテー、まだなのかー?」 「次、 「あらあら、ドラゴリーのマリスミゼル風味もあるのね。これ4杯頂くわ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!」 積みあがっていく皿。 立ち込める熱気。 何度か自身も運ぶのを手伝っていた店長は、もう厨房から姿を現さなくなった。 代わりに、何度も怒声が飛交う。 「かなこ………ガララ鰐のソテー、本当に頼むか?」 「―――やめとくよ それより、このあと『プリズムリバー』に行かない?」 次から次へと運ばれる料理や、それを淡々と平らげていく3人のゆっくりを見るのは中々楽しくはあったが…… そして、子りぐるはテーブルに皿を運ぼうとして、こぼして派手に割った。 「う………腕が腕があああああ!!!」 「お皿はいいから、早く手伝ってね!!!」 「大変ねえ。―――あ、タッコングの磯部まき追加ね」 「腕が麻痺しちゃったのかー………… グドンとツインテールのカルパッチョ頼む」 「無理は良くないわね………バードンのアンデッド唐揚げ風味と、キングジョーのトルティーヤ。ゼットンのナイトメアシューターもよろしく」 「あ………!? あっ……!!?」 「―――3人目は何をしてるんだ?」 ガタガタと震えながらも、注文を受ける子りぐるを気の毒に思いつつ、気になって狭い厨房を見やるが、入り口に立った店長の背中しか見えない。 3人目は必死で調理に専念しているのだろうか? 本当に気になって席を立って近づいたら、子りぐるが不自然な歩き方でこちらへ来て、皿を落とした 「おっと……ごめんね!!!」 「な、何だ?」 明らかに厨房に入る事を拒んでいる様だ。 3人目には何の問題があるのだろう。 店長は大声を張り上げているため、声も聞こえない ただ―――― うねうねと蠢く何かが見えた。 食材に、鰻か何かがあるのかと思ったがそうでもないらしい。 髪か何かか? ゆっくりさなえ の髪につけられている蛇の装飾品に近いものがあるが、あれはあくまで飾りの一部で、まりさやれいむのもみあげのように それ程可動性がある訳ではない。 やはり、ゆっくりの体毛の一部とはまた違うようだった。 これを、先ほどの船員から隠そうとしていた事は間違いないだろう。 かなこの方を見たが、頭を振って何なのかは解らない事を示している。 ただ一つ。 良い匂いがした。 かなり食欲を促進させるもので、やはりガララ鰐のソテーと、ガウチの丸焼きでも頼もうかと考えていたが、気を失いそうな子りぐるを見ていると そんな事はできなかった。そう、先ほどの匂いである。 とは言え―――――この見せ始まって以来の注文なのだろう。それは喜ばしい事だ。 「――材料はなくなるけどね」 「いや、そんな事は流石に……」 とも言えないペースで、3ゆっくりは次々に平らげていく。 入店後、かれこれ1時間は経っただろうか。 「おまたせしました。酒乱牛のマッドカプセルマーケッツに、もち肌もやし炒め、ネオトマトのレオロメンでございまっす」 「ご注文は以上だね!!!」 「材料はそれですべてです」 咀嚼は止めずに、ゆゆこは会釈をしつつ最後のメニューを受け取った。 るーみあは、先にデザートである酒豪メロンを食べつつ、まだメニューを眺めている。 「本当に全部なのかー? このチーズ鉄火丼とポップコーン茶漬けはまだ頼んでないよ?」 「グミジュー棒も欲しいわね。ソーナンスの醤油たたきも追加ね」 「バレンタイントーストも」 子りぐると店長は顔を見合わせて、調子は崩さずに言った。 「申し訳ございません。そちらのメニューは、他のお客様へ――――」 「あら、予約でもあるの?」 「そうじゃないけど、大事なお客様が来るんだよ!!!」 店長は3人に見えないように、子りぐるの後頭部を引っぱたいたが、手遅れだった。 「いや、その」 「??別にそのお客がまた来る、って訳じゃないんでしょ?」 「――――いや、また来るんです」 「予約とかじゃないって言ってたよ」 先ほどとは違う種類の汗をたらしつつ、店長は目を泳がせている 「――――ばかだね」 「かなこ、知ってるの?」 「そうそう、最後までつきあえる店は無いのにね!!! あんたも見たことないの?」 そう。 恐らくるーみあは――――ゆっくりにしては妙に発育の良い肢体と、るーみあにしてはやや大柄ななりで思い出した。 月曜から金曜にかけて、「目覚めよ ミッシングパゥアー」 という番組に出ている。 「ルーミア教」とやらの教祖である。隠してもいないが、お供もつけないで、こんな所で何をやっているのだろう? どこか辺境の、野生生活を頑なに続けるゆっくりですら、存在は知っている。それくらいの影響力も、まああるゆっくりだ。 「それなら、出さないのかー?」 「お金がないわけじゃないから、安心してね!!!」 「いえ………来るんですよ………」 ふと壁を見ると、写真が飾られている。その数、およそ30枚。――――本当に、店ができてから、30人目のきゃくだったのだろうか!!? かなり優遇された高価な額に、満面の笑みの店長と子りぐる、そしてゆっくりゆうかが写っている。 「今度また来て、花作りについて話そうっていってもんね!!! 店長!!!」 しかし、材料が……… 「そういう事なら、仕方が無いわね」 パンドンの串焼きを飲み込み、れてぃは少し残念そうに言った。ただ、それは食い意地によるものではなかった。 「この店の、評価をさせてもらってました」 れてぃの方は忘れたが、ゆゆこの方は、確かフリーライターだ。義理の親が、これまた有名なコラムニストのきめぇ丸で、親の七光りも あったのだろうが、好感の持てる文章と、気さくなキャラクターが受けて、るーみあの番組にレギュラーで出ている。 食い友達でもあるのだろう。れてぃはごそごそと名刺を取り出した。 「おや………『ゆしゅらん』…………」 あんなの嘘っぱちぇだとか、闇の権力が働いているとか色々言われているが、依然としてゆっくり飲食店の、まあそこそこのステータスの一つである。 基準はあくまでもゆっくりに対してであり、審査員もゆっくりが行うのだが―――ゆっくりが安心して食事できるのなら、人間も安心できる、 という事で参考にされる事も多い。 「ええとね………素材は皆素晴らしかったわ。レパートリーも凄い。べムスターがここで食べられるとは思わなかったもの。でもね―――味付けは―― ――少なくとも、子供やお年寄りには優しくないわね」 確かに、親子丼は辛すぎた。 「勿論、私の前にも数名審査員は来たわ。黙ってたけどね。最後に来たのが私。仲間内では、一番評価が甘いって言われているわ。――でも、 そんな私でも、この店は……」 どこに隠していたものか、ボードを見ると――――これは本人には見せられまい。中々辛辣な結果。 店内の内装・味付け・衛生さもさることながら、店員の態度 「こっちもたくさん食べてたけど、二人ともゆっくりしなさすぎ」 「―――――」 「ゆっくりなんだから、ゆっくり作ってくれればよかったのよ」 彼は流石に立ち上がった。かなこは、今度は「バッカスホエールの湖」を注文してちびちびと飲みつつ横目で見ている。 「いや、確かにりぐる達は、ゆっくりしていなかったし、態度もあまりよくなかった。 ―――っが、あんたらもゆっくりしていなかったじゃないか」 「何か意見でもあるのかー?」 「いや、しょうがないでしょう。あれだけドカ食いしてたんだから、焦りますって」 「それはそうよね~」 名残惜しげにメニューを閉じて、3人はしげしげと頷く。自覚はあるのだろう。 「全メニュー制覇しておくのがポリシーなのよ……こっちもゆっくししなさ過ぎたわ。ごめんなさいね。でも……」 厨房を覗き 「―――何かお腹が空くのよね」 「今まで嗅いだ事のない匂いだったのかー」 「思わず、ついついたくさん注文してしまったわ」 それは感じていた。3人の暴食っぷりに呆れ、食欲を多少喪失していたが、丼物一杯と、水餃子を平らげた後でも、肉料理を頼みたくなった。 かなこは、ドリンクを先ほどから何度も注文している。 よく嗅いで見ると、海産物のそれだ。 「―――う~ん……」 かなこは、椅子から下りると、子りぐるに近づいて耳打ちを始めた。 「―――色々評価は悪かったみたいだけど……」 「このまま、ランク落とされちゃったら、この船にいられないよ!!!」 「だったら、ここで点数稼ごうね!!!」 厨房からは、またギトギトとした線状のものが蠢いていて、思わず肩をすくませた。 「あれだけの量に対応できたのは、凄い事だよ」 「ありがとう」 「奴等の胃袋を満たす事自体は凄く難しいんだよ。だから、あとちょっと料理を出して、満腹にだけさせれば、かなりの高評価がもらえるよ!!!」 「でも………」 店長りぐるはまだ俯いている。余程、そのゆっくりゆうかにまた料理を振舞いたいのだろうか? 「お店の今後を考えれば、そっちの方がいいと思いますよ……」 「それにしても、何でこんなにお腹が空くの?」 「本当に何でだろう……」 二人が対応に困っている――――隙に、彼は思い立って厨房を覗いた。 足跡(?) 食欲をそそる匂い 3人目の従業員 入れない厨房 何かを捜索に来た船員 異様に狭く見えた空間 触手 ――――昼間、何かが捕獲されたと騒がれていた。 その時の野次馬達の台詞をいくつか思い出す <見たけど、野牛だよ!!!うしさんがいたんだよ!!!> <蛸じゃない?蛸が………> <―――ゆっくりか?ゆっくりだったのか、あれ?> ―――――― ノi ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,ヘ /|  ̄ (ヽ | .| iヽ _,,,.......,,,,__ L_>r-‐ァ ヽヽ | .| ヽ.`ヽ、,. '" ,.- 、 `ヽ./ ./ヾ、」 | .| ))) | .| .`y' ,メ、!,_! !ハ ! (´_,/、 | .| | .| / i, i' i,ゝ、| // ',!i ヽ ',. ヽ、 / / ヽヽ イ ! ハ!(ヒ_] レ' ヒ_ン!、イハ ', iヽ ー '' / ヽ__ヽ、!ヽ.!!" ,__, "!、! ! i | ` ̄ ̄´ .i ! 7 ヽ _ン ,り ! レi | .l | ヘ、 /! /i | ))) ノ ノ| | i>.、.,__ ,..イ/ / !| | ., ' , ' | |ヽ ヽ、ヽ;;;;;;;;l l l| | ., ' , ' | | ヽ ヽ ヽ;;;;l l l| | ))) .レ' ノ ノ ヽ ゝ ゝ.l l、 ノヽ .ゝ ノノ `' ´ ヽ、ニ `' ええと、あのその 「見たなあー」 「店長、こいつ見ちゃいましたよ!!!」 「―――――見てしまいました………」 かなこも後ろから覗き、呆然としたが、すぐさま覗こうとするれてぃ達を牽制する。 なるほど。確かにこれでは厨房も狭くなるというもの。 それにしたって……… 「ばれてしまったか。まあ仕方が無いな。変に事を荒立てるタイプの人でもないようだ、あなたは」 「あのその」 「とは言え、どうしたものか。私の事を外部に漏らさないようにしてくれといっても難しいだろう」 ―――これは、この、厨房にて店長達が必死に隠そうとしていた謎のゆっくりの台詞 「喋ることくらいおかしくはないはずだ。『うわっ 喋りやがるぞこいつ』なんて失礼だな」 「べ、別にそんな事言ってないですよ………」 大学の講座でも何でも、「ゆっくり生物学」など真面目にやる者はいない。それほど進んでいない(=研究がはかどらない)、 教科書も、せいぜい各ゆっくり達の好きなアーティストや食べ物が載っているくらいだ。 しかし、こんな存在に遭遇するのなら、「特殊ゆっくり大全(ドスまりさの写真が世界一多く収録されている事で有名)」でも 買っておけばよかったと思えてきた。 「あの………あなたはどういう素性のゆっくりで……?」 「それは流石に話すことはできないな。察してくれ。しかし、ここの店長と子りぐるには感謝してもしたりない。こんな私をかくまって くれたのだからな」 話している内に、彼は、どういう理屈か食欲を促進させるあの匂いが、このゆっくりから放たれている事に気が空いた。 床に垂れていた粘膜は、十中八九このゆっくりから放たれているのだろう。 そういえば、ゆっくりの中身は確かにお菓子関係が多いとされる。 だが、ここにいる面々はそうでもないゆっくりばかり。図鑑を見ると、るーみあは「幼女」、りぐるは「虫」、ゆゆこは忘れたが、 れてぃは「お姉さん」とされている。隣のかなこは、ドーナツとされているが、それは背中の注連縄がドーナツなだけで、実際は まだなんだか解らない。 このゆっくりは、おそらくゆっくりけーねなのだろうが、この人も「先生」とだけ書かれていた。 それにしても、近くで匂いを嗅ぐと、食欲がそそる。 先ほどの粘液―――食べてみるかとふざけたが、本当に食べられるのだろう。 多分、クリームシチューだ。 蛸だから、あの足一本ずつの中には何か炊き込まれたご飯が入っているかもしれない。 こちら側の考えを察したか、けーね先生(と呼ぶ事にした)は顔を赤らめて言う 「いや………確かに、私は今日、この船内を逃げ回っていた。ここの親切な店長にもかくまってもらった。恩義も感じているし、 返したいとも思う。いつまでもここにはいない。 しかしだ……」 「まだ何も言っていませんよ、けーね先生」 「けーね先生、りぐる達、そんなに悪い事は考えていないよ?」 「利用したい相手を、すぐに『先生』と呼ぶのは日本人の悪い癖だと聞いた事はないか?」 厨房の外では、かなこが自分の酒と、千歳あめの御柱を振舞っていた。代えはあったと思うが、ある程度馴染んだ相手にしか 食べさせないはずだった。 「私が、こうして周りに涎を垂れさせるのは、不可抗力であってだな・・・・・・・」 「いや、店長に恩返ししたい気持ちがあるんでしたら、協力してあるってのは? いや、むしろあの御三方の食欲を促進させてしまった って点では、この店を更に窮地に追い込んだ訳ですよ」 「私にどうしろというんだ」 「ねえ店長………」 言葉遣いは変わらないが、子りぐるは涎を拭いている。店長の方はというと、子りぐるよりも分泌量が多い。 「仕方ないな………一本だけだぞ……?」 「ゆっくりはこういう所が話がわかるよなあ……」 「蛸は、自分の足を食べて飢えをしのぐ事がある、って聞きますからね」 「蛸ではない。私は烏賊だ」 顔を赤らめつつ、腕(?)を一本突き出した。存外それは太く、付け根付近の方は一抱え以上もあった。それだけ、彼女が大きいという事だが…… ずっしりと重いらしく、店長りぐると子りぐるは協力して切断に当たった。 けーね先生はさして痛みを感じていないようだったが、笑っているとも、怒っているともなんとも判別のつきにくい顔をしていた。 本当に何者なのだろう。 何とか一本もらった足は、中を覗くと案の定もち米が詰め込まれていた。 が、その内訳は―――万華鏡の様。 「ここからここまでが―――チキンライス?おこわもあるね!!!」 「炒飯、キムチご飯、ターメリックライス―――カレーピラフ………」 なんともはや。中身の色とりどりの世界各国の米料理に見とれていると、けーね先生はどこから取ってきたのか、ボール一杯に何かを差し出した。 ―――先ほどから涎の元となっているクリームシチューであったが、どこから出したのかは聞かなかった。こちらも聞かないことにした。 ただ、驚いた事に中にはジャガイモとしめじ、牛肉らしき具が含まれているのであった。 「じゃあ……これで………」 盛り付けも美しく、輪切りにスライスして、味付けはシンプルにリンゴソースをかけ、レタスを添えて、3人は厨房からでた。 「ん?」 大きく、船内ごと揺れたのは、その時がはじめてである。 ―――この船ごとが、動くなどという事がありえるのだろうか? 何が起こった? 「まだなのかー」 「はい、ただいま!」 るーみあは最初から浮遊していたので、あまり影響を受けなかったのかもしれないが、客達は暢気もいいところ。かなこもほろ酔っている。 「ええ、バイツァダストのナインインチパネル包み でございます」 「他のものはできないけど、これで我慢してください!!!」 喜色満面で、かなこも皿を覗く。れてぃとるーみは気前良く、自分の分を小皿に少しより分けてかなこに渡してくれた」 「これは………」 4人のゆっくりは目を剥いた。 「メロンじゃないのか!!?」 「へっ?」 「表面の蛸? の歯にしっとり食い込むけど上手く反発する噛み応え!!」 「ご飯はねっちりもっちり!!!」 「だけど、具の一つ一つがしゃっきり!!!」 「だけど所によってはパッサリ!!!」 「このビビンバの所なんか、口に入れた瞬間にソフトクリームみたいに溶けて消えるわ!!!」 「だけどミントライスは凄いは痛いほどの舌触り!!!」 喜んではくれている。 しかし、味に関しては、最初の「メロン」だけで、後は食感の感想だけ。 美味いのか?そうでもないのか? 「まあ………これで………」 「ゆうかさんをいつでもお迎えできるね!!!」 材料も全て使い切り、今までに無いほどの売り上げ。 全体的に評価は低めだが、れてぃのあの様子なら、そこそこの修正をしてくれるだろう。 むしろ、けーね先生に感謝してもしたりない程かもしれない。 「最初に、かくまってほしい、って言った時は驚いたよ!!!」 「でも、何でこの店に来たの?」 それは、この店があまりにも目だっていn…………いや、言うまい。 ゆイタニック号にあるまじき、薄汚れた壁と少し緊張した面持ちの客の写真を見つつ、彼は一人ごちると―――写真が、一つ、壁から落ちた。 「あれ?」 子りぐるがすぐさま拾いに行く。 彼は、少し興味が湧いて、かなこからお相伴に預かろうとテーブルを覗いた。 「どれどれ」 切れ端と、寿司飯の部分を口に入れると、確かに不思議な食感だった。噛むまでもないと思っていると、突然米や蛸であることを半端に 主張し始めるのだ。味の方の感想を言おうとした その時 腹への衝撃で、少し床にだけ吐いた。 ついで、隣の店―――「河城飯店」にて、派手な銃声がこだました。 汚いし勿体無いと顔をあげると、足元に椅子が、目の前にはテーブルが迫ってきていた。 どういう理屈なのかと考える間もなく、体が傾いて、後方の壁にたたき付けられた。 どうやら、店ごと、しいては船ごと傾いているらしい。 ダメージに耐えかね、体を起そうとした瞬間に、先ほどのテーブルがまた腹にのしかかった。 痛い。 あまりの痛みに、絶叫しつつ一言漏らす。 「もうやだこの店!!!」 と、すぐに返す声が 「”やさかだこ”の店?」 横を見ると、けーね先生の触手が…… 「けーね先生、こんな所に出てきちゃまずいでしょう」 が、正面には、必死に厨房の入り口付近の壁に触手と言う触手を使ってしがみついているけーね先生が……… 改めて、自分に圧し掛かっている触手を、その先の持ち主を見る。 ,ト、_/| く \/|>-‐──-- 、., ,>''"´ ´ ̄ ̄`"' 、 \ / \ ' , / ∨ハ ,' / __/ /| i ヽ; | ! | ;ハ/トゝ / '、 /_ i '; '、 | / | (ヒ_] ヒ_ン )_;ハ | ヽ /∨ 7/// ,___, ///" |/! / ハ /! | ト、 ヽ _ン '/レ' | | ↓ 〃....`ヽ / ο゜ゝ-‐‐ー、 .. l / ` l キ ´oО .l レ ・ ´ .. ..、 l┬= ~フレ l \б / / o 〇σ⊂l ノ ノノ ノ ...- _ノ_ ノ .l V l.. ◎ ο゜ _ -‐ " / . / .l ノ ヽ ∞ ゝ´ .... o l ....σ〇 σノo ノ ∠ο〇 ⌒〇ο つ ;ヽ 、O の ~ `ー ゝ 「”もうや”と”やさか”が一文字もあってない件について………」 店長がつけた名前は忘れたが、あの蛸の部分か?それとも中身の米が問題だったのか!!? 食べると、すべからくこんな体になってしまうのか!!? ガタガタと震える彼を、不思議そうに見つめるかなこ。 自分の体の変化には先に気がついてもよさそうなものだが、そうでもないのは、やはり精神にも影響があるのだろうか!!? 他の食べてしまった3人はどうなったかと横を向こうとした瞬間、今度は食器が降り注いで顔を殴った。 店内は完全に傾いてる。 みすぼらしい店だからといって、これはない。 外をみやると、早、阿鼻叫喚の図となっていて、人間からゆっくりまでが、血眼で逃げ惑っている。 どうやら本当に船が傾いているらしい。 原因は何かと考えていると 「オルトロスが出たぞー!!!!」 何か内部であったんだろうか? 人騒がせな……… かなこがテーブルをのけ世としてくれている。が、これからどうすればいいものか 店内は完全に停電となり、ゆゆこ・れてぃ・るーみあの姿は確認できない。横で転がっている店長と子りぐるに手を差し伸べようとした時―― 浸水が始まった。 これ以上の恐怖があるかと思った瞬間、幸運にも意識が途切れた。 「た、TACOが出たああああ!!!」 外ではそんな悲鳴がいくつも聞こえた。 あれは、けーね先生か、それとも押し流されたかなこの事だろうか? =========================================== 気がつくと、波に揺られていた。 何かに乗っている。 脇には、店長りぐると、子りぐるが。 二人とも目を覚まして、おいおいと泣いている。 「お店、なくなっちゃったね!!!」 「船がしずんじゃったよ!!!」 「もう、ゆうかさんにもあえないのかなあ」 慰める言葉も見つからないが、自分がどこいるのかと確かめると――――― ドーナツに乗っていた。 これは、間違いなくかなこの注連縄だった。浮き輪の役割を果たしてくれている。 店に入る前、 「注連縄も御柱も部屋においてくればいいのに」 「そんな事できないよ!!!」 なんて会話があった。 あの時 かなこも、こんな状況を想定してはいなかっただろう。 目頭が熱くなるのを堪え切れなかった。 「かなこ………無用心な俺のために、大事な注連縄を自分で使わないで・・・・・・・・・・・!!!」 と、歯を食いしばった時 「呼んだ?」 声は下から 「「「うわあああああああああああああああ!!!」」」 浮上し、御柱も注連縄も無いかなこ。 「やさかだこ」になったかなこ。 しかし、顔は3人の無事を見届けて満足そうだ。 「よかったね!!! このまま、注連縄につかまっててね!!!」 「お前は………無事なのか?」 「蛸になったから大丈夫だよ!!!」 「ありがとうおばさん!!!」 「おばさん、ありがとう!!!」 この後、助かった所で社会復帰できるのかどうか不安だったが、4人は固く抱き合った。子りぐると店長を、かなこは触手でギリギリと 抱き締めつつ、絞り上げていた。 「このまま、皆で帰ろうね!!!」 「うんうん」 「でも……けーね先生が…………」 辺りを見回したが、何人か板切れにしがみついている者はいても、けーね先生の姿は見えなかった。 「きっと、大丈夫だよ……」 「――――そうだね!!! 本当の、海の中のおうちに帰って行ったんだよ……!!!」 しかしだ 「ゆゆこさん・るーみあさん、れてぃさんが……」 あの3人の行く末は見届けていない。 あの中で、浮遊できるるーみあと言えども………… 「うう………お客さん……」 「大変な客だったけど………」 「戻ってきておくれよう………あんなに食べてくれたゆっくりは初めてだよう/・・・・・・・・それに・・・・・・・・」 2人の嗚咽が、再びコダマした時――――― 「あれ?かなこ腕、11本?」 「? 8本だよ」 ドーナツにまとわりついている触手の数である 覗き込もうとした時 、 r;ニヽ、 「あらドーナツ うふふふ」 -''"´ `' リ | ! ,'´ ,. -‐ァ'" ̄`ヽー 、`ヽ / ⌒ヽ._,ノ丿 /ヽ._,,,...,,,__ ゝ// `ヽ`フ 、(⌒'ー-‐'´ ,. -‐/ @ ' , . . . . . .`"'' ...、 / .,' /! /! ! ハ ! ',ゝ ヽ、\ ,.' . . . ,'-‐r-‐‐'、_ノ_. . . . . . . . `ヽ. ( ! ノ-!‐ノ ! ノ|/ー!、!ノ ,.ゝ `ヽ、 ,ゝr,ァ'-‐'"´ ̄`ー-く二ヽ-、 . . . .) ヘ ,ノレ' rr=-, r=;ァ ir /! ノ、 Y :}_ i´ .ァ'´, ! ! ; i `ヽ、 ーヽ、 ( ノ ! /// /// ! ヘ (/ヽハ/.〃´.__`ヽ. `ソ / ハ- ,ハ /!._L」;、 '; i`iー-r' ) ,.ハ ''" 'ー=-' " ' ! ',ヽ.(ヽ、’・ ,ハ.〈 `ヾj i '; !iゝ、 ∨ /_ ヽ ,ハ! '、 人__人〈 lヽ, 个、 ヾこ彡{.’イ、.`<__丿 ・} .'、. i ,ハ!(ヒ_] ヒ_ン ) ,レi ! '; ヽ. ヾご..√ `ヽ._丿.! ・ト、’・`ヾ!・ ・ し'⌒ヾ、.‘_ノ )レヽ| '' ,___, '' / i '; i _,ノ〉 ヾご..√ `ヽ._丿.! ・ト、’・`ヾ!・ ・ し'⌒ヾ、.‘_ノ く).ハ、 ヽ _ン , ' ;' .,ハ レ'i_ノ `ーく.〈_,r‐- 、  ̄ ( ;' ,ノ>、,__,,. く ! ./_/V!_r'-' ,ハ. '´ . . .;, ヽ,/ヽノ ヽ ,. '"´ ̄ ̄`"'' ヽ、/ヽ、__ /;; ; . . . . . "''-,,_ / //`ー∠ 「ポンデリングなのかー」 /,;.,;,/ヘy ;, . . "ヽ / , ヽ!_/ヽ ィ''ー-=―――”;; rjソ;;;;;;oi . . _ i i / i !__ ハ ハ-‐i- 「__rイ´', ! イ⌒"'-ー 、五rツ';;;;;;;;O从 . .r‐、 . ,;;; i';;;;| ! i /.ゝ、 レ' /ハ |/ .i ヘ ∨^ ̄三ミ''ー''rtO;;9;;ノ ri . 3;)ソ . . .. }ヘ !;;;l レヘ/ i (ヒ_] ヒ_ン ) ! | | )( . r之こ; ; ; ; ; ;_98O○oヾ、 i!';;;ヽノ . | ) ノ;;;;! | !7"" ,___, "" | .| | //! !、 `"''フ;; . ;;;. ; .;. O_,=! . . };; ;;|@;; ! i' /|;;;;i .| 人. ヽ _ン .| | i | (( ! 1 /. ; ;; ;; ;;_,-'て . . . _,ノ| . /、; 八 i' };| ノ ノ| | i>.、.,__ ,..イ/ / !| | `" ! i! !;; ;; ;; ( { ( / | l} / i ヘ ヘ !;;! ., ' , ' | |ヽ ヽ、ヽ;;;;;;;;l l l| | ノノ ヽ;; .\ ゝ、ヽ、 {; {q ,' i \\i; i ., ' , ' | |ヽ ヽ、ヽ;;;;;;;;l l l| (r' "''-ニ二ヾ i / 人,,,_二テ=ー、} ノ'!;! ., ' , ' | | ヽ ヽ ヽ;;;;l l l| | ))) ) r''"ヽ、 ヽヽi i' _,rfニ彡イ/ ii .レ' ノ ノ ヽ ゝ ゝ.l l、 ノヽ .ゝ ) ー=ニ,,人! ,rシ''´ .|!__丿 ノノ `' ´ ヽ、ニ `' V (_ノ⌒ ⌒ヽJ 「く、来るなあアアアアアアアアアア!!!」 「お客さん、お代、お代!!!」 了 ――――少し遠くを見ると、見たことの無いれいむが、同じ様な体になって、次から次へ乗客を助けていました ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・案外、私が知らないだけで、こういう事ってたくさんあるのかもしれません キングジョーはペダン合金の塊だったような・・・・ -- 名無しさん (2012-01-09 12 33 23) 名前 コメント
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前のページから/最初のページから 「……………………それで、どうする?説得なんて無駄だぜ?ならさっさと帰った方が」 「こうするのよッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」 紅里はそう叫んで思いっきり全握力をもって拳を作り可燐の頬を殴りつけた!!! 虫故に体重が軽いのか可燐はそのパンチで大きく吹き飛んでいく。 「はっっ!!誰があんたに同情するだって!?ふざけんじゃないわよッ!!まだあんたにやられた傷残ってる! とにかく今まであんたをぶちのめすことだけを考えてきたわ!!!どうしてやろうかしら! 揚げてイナゴのように竜田揚げにしてやろうかしらッッ!!ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!!!!!!」 それはもはや鬼子母神。優しさと恐怖に満ちた神の表情である。 そんな様子を影から見ていた伝子とまりさはその圧倒的威圧による恐怖で怯えてきっている。しかし可燐の方は頬を殴られながらもとてつもなく良い笑顔をしていた。 「あっっっははははははははははは!!!!いいじゃねえか!!!でもさ勝てるの!?針にびくびく怯えていたあんたがさ!!」 その時の紅里の瞳には鋭さがあった。そしてその目で可燐を睨みつけながら紅里は上の作務衣を脱ぎ始めた。 「……………そう、これは「試練」よ。 過去に打ち勝てと言う「試練」と私は受け取った」 「…………………?あんた、そんなに胸…………あった?」 「人の成長は……………未熟な過去に打ち勝つことだとな… え?あんたもそうだろう?ビーブーン・カーレーン!!!」 「びーぶーん・かーれーん!!!」 脱ぎさると共に作務衣の下からりぐるが飛びだし、紅里はペンダントに一枚のメダルをはめ込んだ!! 『ユックライドゥ!!ディケイネ!!』 「いくわよっ!!!りぐる!!!」 変身するやいなや紅里は続けざまに次のメダルをペンダントにはめ込む。 『ファイナルフォームライドゥ!!!りりりりりりりりりぐる!!!!』 「りぐるは!今こそ飛び立つよ!!!」 すでに心の成長は果たした。りぐるは自分の未熟な過去と決別を果たすために今こそ戦う。 りぐるの体が光り、次々と幾つかのパーツになっていく。それは鎧、籠手、ブーツ、肩アーマー。 そしてそれら全てがディケイネに装着されて、ディケイネはまるで体付きゆっくりのようになった。 緑色に光る鎧はかつての初代ライダーのように雄々しく輝いている。 「…………………さぁ主役の凱旋よ。」 『覚悟してね!!!』 そしてディケイネは肩に付いていた赤いマントを首に巻き付けた。 「……………は、主人公も一緒で最初っからクライマックスという事カァ!!!いくぜぇ!!!」 可燐は楽しそうに叫びながらポケットから一枚のカードを取り出す。 そして耳障りな羽音が突如森中に響きそうなほどの大音量となり可燐の姿は五つに分かれていった。 「分符『クイーン・B・B』!!」 そして五つに分かれた可燐は赤い本体を中心に陣を取る。 「わたしの名前はビーブーン・サーレーン。どんな敵の中だって切り込んでいって見せよう。マゾ?それでいいのだ」 「私の名前はビーブーン・ターレーン。私じゃなきゃこの有象無象の集団を纏められないわ。でも分身体なのはご愛敬」 「ええと、私の名前はビーブーン・ナーレーンです。あんまり積極的じゃないけどみんなの為に頑張ります。〆ちゃいます。」 「私の名前はビーブーン・マーレーンですよ。コミュニケーション能力抜群。いつでも何処でも戦闘以外では引っ張りだこです。」 「そして私の名前がビーブーン・ハーレーン。サディスティックだけどなんか動く気しないのよね。でも言葉の刺でちくちく刺すわ」 「「「「「私たち!!ビーブーン突撃隊!!」」」」」 「相変わらずじゃかましいわっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」 一昨日も鳴り響いた5.1chサラウンドは今回もディケイネの耳をつんざいていく。 さらに妙な自己紹介が余計に紅里のかんに障った。紅里は頭を抱えて一度は気が滅入ったが顔を上げて可燐たちを見据える。 「…………行くわよ」 『わかったよ!』 ディケイネは腰に装着されていた虫取り籠みたいな銃を構え、そのまま五人に向けて発砲していく。 可燐たちは本体を残して散り散りになり、本体もその弾丸をたった一本の指で跳ね返していった。 「ああ、何にも変わってないように見えた。成長してるの?」 そして昨日と同じ様に可燐分身体達はディケイネの上空を飛び回りそこから弾幕を放っていく。 一見回避不可能のように見えるその弾幕だがディケイネは背中の羽を動かし真上に移動することで回避した。 「飛べるのか!」 「空はあんた達だけの物じゃないわ!!バグ!!シュート!!!」 ディケイネは空を飛ぶと同時に銃の照準を分身体に向けて、発砲した。 銃身から放たれる弾丸は数こそ少ないが速度は通常弾幕の比ではない。だからこそ、高機動の蜂には効果がある。 「サーレーンとマーレーンは攻撃を続けて!ナーレーンは本隊の護衛をお願い!!」 「「イエッサ!!」」 三つ編みの分身体の掛け声の通りに可燐たちは動いていく。 相手が空を飛べると分かった以上やたら弾幕をばらまくのは同士討ちの危険性がある。 なら出来るだけ少数で仕留めに掛かった方がいいと考えたようだ。 「ああもう!行動速過ぎよ!!」 流石軍団と言うべきか。 可燐分身体達は空を飛んでいるディケイネを追い続けながら弾幕を放っていった。 「いつまで逃げ続けるんですか?いくら空を飛べても慣れないでしょうに」 「くぅっ!!バグ!シュート!!」 ディケイネは逃げつつも弾丸を放ち応戦するが、速度を持った弾丸を持ってしても大量の弾幕に相殺されてしまう。 弾幕は相対速度がある故に避けるのは難しくなかったが速度の差もあってディケイネと可燐たちの距離は次第に縮まっていった。 「どうにかなんないの!?」 『これは蜂さんのスペカの中でもじょういにはいるほどのつよさだよ!!対策たててなかったの!?』 「…………………あ。」 いままでずっと自分の恐怖について考えていたからすっかり忘れていた。 ここぞとばかり碌でもないことが起きる物だ。 「前はゴリ押しだった………でも一応仕組みは理解したつもりだけど」 「だったらはやくやろうよ!」 「仕組みが分かってもこいつら強すぎなのよ!!!!」 と、そのように話し合っている内にいつの間にか視界から可燐たちが消えているのに気付き、ディケイネは空中で制止する。 「だから速いっつうの!!!」 「そら!!!」 真下からの声に気付いた時にはもう既に弾幕がディケイネを襲っていった。 上昇しながら弾幕を撃っていたようでその速度は半端無く一発二発避けるのが精一杯であった。 「こ、この!!!!」 「………………………これが、チェックメイト」 ディケイネの首に冷たいながらも肌のような感触が走る。 完全に後ろを取られた。真下からの弾幕に気を取られていた隙に可燐分身体の指がディケイネの首に触れていた。 この距離では逃げる余裕もない。その上ディケイネは例え一発であったとしてもこの零距離弾幕に耐えきれる自信は無かった。 「これが軍団。分かっていただけましたでしょうか?」 「『オープンゲット!!!』」 「なっ!!!」 ディケイネの頭部と胴体が分解し迂回して逆に可燐分身体の後ろを取って再び合体する。 そしてディケイネは虫取り籠みたいな銃を可燐分身体の背中に押しつけた。 「形勢逆転ね」 「う、う、うあああああ!!それでは皆さん!私はこれまでです!ありがとうございました!!次回作も宜しくお願いします!」 「バグシュート!!!」 二丁の銃が連続して零距離で発砲され可燐分身体の体を抉っていく。 そのまま分身体は力なく落ちていき、落ちていく過程において消滅していった。 「まず一人ッ!残る分身体は三人だッッ!!」 『え!?まず本体からやっちゃった方がいいよ!』 「いえ!分身体がいる状態じゃきっとアイツにダメージすら与えられないわ! 一昨日見たのよ!分身体が全員やられたとき本体の色が変わるのを!きっとそう言うタイプのスペカなのよ!」 それは敗北したときの記憶。かなり印象的であったため朧気ながらにも紅里の脳裏に焼き付いていた。 そしてそれがまるで事実であるかのように可燐たちは動揺の色を隠しきれていなかった。 「ああ、ばれちゃってるなら護衛は必要ないわね!ナーレーンちゃん!サーレーンさん!三人で行くわよ!!」 「「いぇすまいろーど!!」」 「………寂しいわ」 本体が完全に蔑ろにして分身体はディケイネを囲むような形で襲いかかってくる。 一体倒したことによってある程度有利になるかと思われたが、逆に相手が本気を出して三人で襲いかかってきたため寧ろ不利になってしまった。 「相手の上を取れば同士討ちの危険は無いの!いくわよ!!」 その命令に従って可燐分身体達はディケイネの上部に回り込む。 今度は真上に飛ばれないように三つ編みの分身体がディケイネの真上に配置していた。 「一斉照射!スタンバイ!?」 「「OK!!」」 「くぅ!!オープンゲット!!!」 ディケイネは再び分離して弾幕のスキマをくぐり抜けていく。 そうしてまた可燐分身体の後ろを取るが既に察知され、可燐分身体はディケイネから距離を取る。 一応包囲状態からは脱出できた。しかし猛攻はこんな事くらいでは止まらない。 「私は上、ナーレーンちゃんは真ん中、サーレーンさんは下で攻撃よ!」 「「Yes!Yes!Yes!」」 可燐分身体達は上下一列になって弾幕を放つ。ただでさえスキマが少なく速度が速い弾幕が全てディケイネのいるポイントで重なるように放たれたのだ。 避けるスキマが見つからず、また動いても状況そのものを変える事が出来ない。 ディケイネは本格的にこの蜂妖怪の圧倒的パワーに恐怖した。そして目の前の弾幕に対し、覚悟を決めた。 その時ディケイネの前に何者かの姿が降り立つ。 『ユックライドゥ!!!!ディエーーキ!!』 『ユックライドゥ!!!るーみあ!!!』 『スペルライドゥ!罪符「彷徨える大罪」!!!』 それは森定伝子、いや、ゆっくらいだーディエイキであった。 ディエイキはるーみあに乗ってディケイネの前に降り立ち、可燐たちに向かって弾幕を放っていった。 「!!!で、でんこ!あんた!」 「あんただけにいいかっこはさせないんだから!!あとでんこっていうな!」 そして勢いよく放たれたディエイキの弾幕は、 全てが全て可燐の弾幕をすり抜けていった。 「へ?」 いや、それどころかその弾幕はディエイキの体さえもすり抜けてディケイネに向かっていく。 さらに悪いことにディケイネはディエイキの体で視界が遮られたせいで弾幕に上手く対応することが出来ず、弾幕が見事ディケイネの顔面に被弾した。 「うぎゃぶ!!」 『ぎゃん!!!』 「……………………ええと………………………外した?」 伝子はこの森に渦巻く仮想現実に対応することが出来ない。聞く事も出来なければ触ることすら敵わない。 だからいくら弾幕を放とうが罪を裁こうがHENTAIしようが可燐や可燐の放った弾幕にさえも一切干渉できないのである。 「……………………………」 俯いて弾幕が当たった部分をさすりながらディケイネは含み笑いをしていた。ただし物凄く黒い笑い方だが。 そしてディケイネは顔を上げるとそのままその腕でディエイキをぐわしと掴んだ。 「もう二度と邪魔すんな!!今度家に来て家のゆっくり罰××罰していいから!!あと!」 「マジ!?じゃあもう二度と邪魔しない!!」 やけに聞き分けが良くディエイキはそのままゆっくりとるーみあと共に地面に降り立っていく。 そんなディエイキを一瞥して視線を元に戻すと可燐たちは二人の様子を大いに笑っていた。 「さ、流石にこれはちょっと滑稽すぎというか、妙に聞き分けが良いのもまた……あはははは」 かんに障るような笑い方では無かったがただでさえ邪魔されて腹が立っているディケイネは余計に苛ついた。 ディケイネは感情に身を任せ可燐たちを睨みつけながら怒りと共に銃身を向ける。 「……………ああもう、慣れないのよスペカ無しの戦闘は!」 そうぼやいてディケイネは可燐たちと距離を取りながら弾丸を発射していく。 だが可燐たちはいとも容易くそれらを躱していき速度を緩めずにディケイネを追っていった。 「くっ!!」 長期戦になるかもしれないけれどこの広い空間で戦うのは不利と感じたディケイネはそのまま森の中に突入していく。 可燐たちもそれを見てディケイネを追っていった。 「弾の数を少なくして精密射撃!いいわね!」 「わかりました!」 可燐たちは少し速度を弱めて森の中に入るがそれでもディケイネを見失わずに追い続けディケイネとの距離の差は依然縮んでいく。 相手は小回りが良い上にこの森を知り尽くしている。ディケイネもそれなりの速度、小回りを持っているが可燐には到底及ばない。 逃げてる間でも可燐分身体達の弾丸と化した弾幕がディケイネを襲っていく。 「くっ!!オープンゲット!!!」 ディケイネは分離して攪乱を目論むが弾幕は正確にディケイネに向けて発射され、可燐たちの前では全く無意味であることを思い知るだけであった。 そして何回か周りを迂回した後再び合体しディケイネは木々のスキマから空に向かった。 「追うわよ!!」 三つ編みの可燐分身体を先頭に可燐たちは同じ様にそのスキマからディケイネを追っていく。 そして三人は距離があるにも関わらずディケイネの後頭部に向けて照準を合わせた。 「一気に高速弾で仕留めるわよ!」 「「わかった!!」」 「1・2・3・SHOOT!!!」 一斉に三人の指先から弾丸が放たれ、空気を切り裂きながらディケイネの後頭部目がけて飛んでいく。 だが弾丸を放った直後、司令塔の可燐はディケイネの姿に違和感を覚え、そして気付いた。 「し、しまった!あれはディケイネじゃない!」 そう、そのりぐるの体に乗っていたのはディケイネではなくディエイキだった。 三人が放った弾丸はそのままディエイキの体をすり抜けていく。ディエイキが可燐に干渉できないのと同様に、可燐もまたディエイキに干渉できないのだ。 「後で森に入ったときにりぐるに乗れって言われたから乗ったけど………これで良いのよね」 『ばっちりだね!!』 「ああ、りぐるちゃんに乗れて、し、あ、わ、せ~~~」 気持ち悪く微笑んでいるディエイキを無視して可燐たちはディケイネの姿を探す。 あの身体無しに飛べないことは知っている。だから絶対何処かの地上にいるはずだ。 「引っかかったわね!!!私はここよ!!」 「!!!そこか!!!」 地上からディケイネの声がして三人ともその方向に体を向ける。 と、そこで司令塔の可燐はまた不思議な違和感に襲われた。 不意打ちするなら静かに行えばいいのに何故わざわざ声を出した? そしてその可燐は振り向くまでにその真意を読み取った。 しかし振り向いた頃にはもう遅いのだ。 「体も本体…………」 『ばぐしゅーとしゅーとしゅーーーと!!!!!!』 りぐるの手元にある銃から放たれた弾丸は容赦なくその可燐の背中に襲いかかっていく。 背後からの攻撃に避けることも振り向く事も出来ず司令塔の可燐は羽を潰され地上に落下していった。 「み、みんな………頑張ってね……………」 「たーれーんさん!!!!!!!!!」 何でこうみんな散り際の言葉残せるんだ?ディケイネは地上からその光景を見てそう思った。 「くっ!司令塔のターレーンさんがいなくなったら私たちはどう動けばいいのだ!」 「頑張ろうよ、何てったって私たちは分符『クイーン・B・B』で生まれた分身体だよ。 名前通りちゃんと統制が取れ……………あれ?」 「その通りだ!私たちは統制が取れるぞ!いくぞ!!」 分身体が次々消え去っていくというのにも関わらず二人は迷いもなく真っ直ぐりぐるに向かって弾幕を放つ。 りぐるはそれを舞いながら躱していく。ただ上にいるディエイキは支えが殆ど無いのでりぐるの上で揺さぶられていた。 「ちょっ!ゆれるゆれるぅ」 「りぐる!!!一度こっちに戻ってきなさい!!」 そのディケイネの言葉に応えりぐるは大きく可燐たちから迂回してディケイネの元に戻ってきた。 りぐるが戻ってくるとディケイネはすぐにディエイキを叩き落としてりぐると再び合体する。 「ああんもっと乗っていたい!」 「まりさの所にでも行ってろ!!」 ディエイキはもう用済みだぜ!てな感じに無視してディケイネは再び大空を舞い、二人の可燐の間に入った。 「わざわざ懐に入り込んでくるとは!いくぞ!!」 「あ、ええと、うん…………凄く不安」 可燐達は二人同時に弾幕を放っていくがディケイネは慣れているのか機敏に動いて避けていく。 そして予想できたことだがその弾幕は互いに向かい側にいる方の可燐に命中していった。 「うひゃうん!」 「ひゃああん!!!!」 「全然統制がないわね!!行くわよ!!」 二人が怯んだ隙にディケイネは腕を伸ばしてどっかのMSのように弾丸を放つ。 それは決定打にはならなかったが二人にかなりのダメージを与えたようだ。二人は被弾したところを抱えながらディケイネから距離を取っていく。 「……やっぱりおかしいよ、前はこんなざまにはならなかったよ。いまのはひどい」 「そんな苛めないでくれ………でも確かにその通りだ…………全然統制が取れない」 「……………設定が変えられてる……………」 その発言にこの場にいる存在(でんこ除く)に少し反応した。 設定という言葉が皆の心に引っかかり辺りは羽の音しか響かない、そんな中ディケイネはふとあることを思いだした。 「……………統符だった、よね」 『…………だね』 一昨日発動したときは『統符』だった。しかし先ほど聞いたばかりだと『分符』であったと思う。 『でも、それがなにかかんけいあるの?』 「名前ってのは大事な物なのよ。名前があるから存在が確認できる、名前は色々縛るとともに価値を与えるのよ そんな事、だと思うけど」 統という名前の縛りが無くなったから、相手は統率が上手く取れなくなり今のこの状況がある。 では、一体誰がその設定を変えたというのだろうか。紅里の頭に一人の女性の姿が浮かんだ。 「………………………稗榎……さん?」 『え、えのちゃん?』 「…………数文字くらいなら………出来るって言ってたよね、設定を変えること」 この世界、この異変、目の前にいる敵は全てあの原稿用紙の上にある文字で成り立っている存在だ。 だからあの原稿用紙を名前だけでも修正すれば、全てが変えられる。 『でも!さっきはあの火花のせいで出来なかったよ!』 「きっと彼女は全力であの火花に耐えながらやってるんでしょうよ!くぅ!」 あの稗榎さんと言えど猛烈な火花に何回も耐えられるとは思えない。 だからこれ以上の設定変更に期待することは無理そうだ。 「……………………りぐる」 『?なに、おねーさん』 「稗榎さんも全力で頑張ってる!!!だから私たちも全力で行くわよ!!!」 『……………………うん!!!!』 ディケイネは羽を大きく奮わせておどおどしている可燐に向かって一直線に突撃していく。 それに対しその可燐はディケイネに向けて広角の弾幕を放つがその直後にディケイネは止まりその場所で発砲した。 「ああ当たらないぃ」 「もう何回も同じ様な弾幕ばっか見せられたらそりゃ簡単に避けられるっての」 そしてディケイネの弾丸は次々とその可燐に命中し、何か言いたそうに涙を流しながらその可燐は空中で消滅していった。 「残るは一人!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」 背後からの咆哮に気付きディケイネはその方向に向かって発砲する。 しかしその可燐は弾丸を腕で弾き散らしながらかなりの速度でディケイネに迫りつつあった。 「効くかぁ!こんなの!私たちを舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!!」 「もう残る一人じゃん!!」 ディケイネは何度も何度も発砲するも一直線に突撃することによってかなりの速度と力を持った可燐の前ではそれらはいとも容易く弾かれる。 そしてとうとう可燐はディケイネの懐に入りその指をディケイネの腰に押しつけた! 「十連弾幕砲!!!零距離斉射!!!」 「オープンゲット!!!」 弾幕が放たれようとするその瞬間ディケイネは自らの上半身と下半身を分離させる。 飛行能力のない下半身はそのまま重力に引かれ落下していき可燐の弾幕はそのまま目標を見失い空に消えていった。 「ば、莫迦な!!」 「殴られないかとヒヤヒヤしたわよ…………でも、これで私たちの勝ちね」 ディケイネは伸ばした手に握られた銃ををゆっくりゆっくりと動かし可燐の額に押しつける。 引き金を引く瞬間、可燐の表情がどこか悟りを開いたような、何故か悦としたようなものに変わっていったように見えた。 「………全然正義の味方っぽくない」 そんな事つまらなそうに呟いてディケイネはほんのちょっと指に力を入れて引き金を引く。 消滅していく可燐分身体から目を逸らしディケイネは地面に落ちていく下半身を取りに行った。 最後の分身体をやっつけたという事でディケイネは気が抜け達成感と共に一気に倦怠感に襲われる。 しかしこれでこのスペカが終わりというわけではない。まだ本体が残っている。 「出てきなさい!何処かにいるんでしょう!!」 「…………………よくもやってくれたわね」 そのディケイネの呼びかけに応え森の中から一人の蜂が出てくる。その色はかつての危険の赤ではなく警戒の黄色であった。 「……予想は当たったわよ、りぐる」 『本当だね』 「あら、何を言ってるのかしらこれは所謂脱色よ。無敵の力は変わって痛ッッ!!!」 ディケイネの銃から煙が上り、可燐の膝に弾痕が出来ていた。 可燐は傷ついたところを抱えながら鬼気迫るおぞましい形相でディケイネを睨みつけた。 紅里の予想どおりあれほどの無敵能力はもう持っていないようだ。 「もう一つのスペカにだらだらやるのもメンドイのよ!!最後は一気に行くわよ!!!」 「あとでこの借りは全て返すわよ…………この」 可燐は発狂弾幕並の弾幕をディケイネに向かって放つ。 だが多方向からの弾幕に慣れきっていたディケイネにはそんな物easyクラスの物しか思えずスキマを器用にくぐり抜け攻撃していった。 「きゃあああああん!!!!!!!!!!」 避けることもせず可燐は弾丸を全身に受けまくってそのまま地上に落ちていく。 このあまりにも長く、そして強固であったスペルカードもようやく終焉を迎えた。 「………………ふぅ…………」 紅里はかつて無い安心を得ると共に激しい疲労に襲われる。 トドメ用に使っていたファイナルフォームライドをこうも長きにわたって使い続けたのだ。 まだ戦えることには戦えるがいつまで保つかさえも分からない。 「………………カ、ァ!!!やってくれたじゃねーか!!!このやろー!!」 再び可燐は空を飛びディケイネと向かい合う。髪型も口調も元の可燐に戻っているからどうやら本当にあのスペカは終了したようだ。 「……いい気になるなよ、私はまだ戦える」 「そ、私達だって戦えるわよね」 『まだまだ頑張れるよ!!』 「……………は、は、ははははははは!!!!!!!!!」 可燐は突然大声で笑い出しディケイネからある程度距離を取る。 中距離と言えるような所で可燐は止まりそこで尻の針をディケイネに向けた。 「…………………」 「試練って言ったよな……じゃあ大切な物はちゃんと克服できるのかぁ?この針をよぉ」 「……………………撃ってみなさいよ、このハチ女」 ディケイネはそう言うが針が向けられてから体は震え始める。 所詮虚勢に過ぎないのだがそうでもしないと恐怖そのものに押しつぶされてしまうのだ。 「毒符『ヘルニードルカノン』」 何の言葉も躊躇いもなく、しかめ面をしながら可燐は尻に付いていた針をディケイネの顔面に照準に合わせ発射した。 それに対しディケイネは体を震わせはするものの避ける行動を一切しない。 「ま、任せるわよ。りぐる」 『ゆっくり了解したね!!!』 この針が威嚇でないことはディケイネも承知している。恐らくこの針はディケイネに眉間を正確に射ることだろう。 だが針はディケイネの間合いに入った瞬間大きく逸れディケイネに当たることなく彼方に飛んでいった。 「ナニッ!!!このっっっっ!!!」 可燐は驚き次から次に針を発射する。それらは全てディケイネの急所を狙って発射されたがやはり先ほどと同じ様に大きく逸れていった。 「……………刺さるのが怖いなら……当たらないようにしてもらえばいいのよ」 「………………てめぇ………それは………りぐるの力か?」 『そうだよ!!!』 注意して見なければ分からなかった。あまりにも速く、そして小さい虫たちがディケイネの周りを回っていたのだ。 「りぐるの能力で………虫たちに弾道を逸らさせて貰ったわ……私は震えて何も出来ないけどりぐるなら大丈夫よ」 『虫さん達頑張ってね!!!』 「……………はっ!頼り切りで何も出来ないのかよ」 ほんの少し興ざめしたような顔をして可燐はディケイネを見つめる。 その言葉と視線に少し物怖じしながらも、ディケイネは口を開き可燐に向かってこう言った。 「そうよ、仲間って………助け合うものでしょう?」 誇らしげな顔をしてディケイネは手を震わせながらも銃を構える。 震えて正確に照準を合わせることは出来なかったけれど、それでも引き金を引いた。 「うぎゃっ!」 銃から放たれた弾丸は針によって相殺されることなく可燐に命中し、可燐はその衝撃で大きく吹き飛んだ。 「……………結局、恐怖なんて、ね」 恐怖の克服のことばかり考えていた今日は一体何だったんだよ、とディケイネは自嘲した。 こんなことならちゃんとスペカ対策しとけば良かった。マジで。 「だぁ!ケツに向かって撃つなんてどうかしちゃってるんじゃねぇの!?」 「あんたがケツ向けてるからいけないんでしょうに」 「あーもう怒った。今から本気!まじだぞ!!!」 そう子供っぽく喚き、可燐はポニーテールを逆立てながら服のポケットから一枚の札を取り出した。 「正義直『火憐蜂』!!!!」 なんの愛着もなく宣言しただけでその札を捨て可燐は今までと違った体勢を取る。 間違っても弾幕を撃つような構えじゃない。強いて言うなら、そう、格闘技をするときのような構えだ。 「………………」 でも空中で格闘なんてするはずがない。ディケイネはそう思ってあまり警戒をしなかったが次の瞬間可燐は高速でディケイネの真上に移動し 両腕を振り上げ一気にディケイネを叩き落とした!! 「ぎゃあああ!!!」 そのままディケイネは羽を動かすこともままならず地面に落ちていく。 胴体部分の体重が軽いから地面に落ちたときの衝撃はそう激しくはなかった。 ディケイネは追撃があると思ってそのままその位置から離れた。 「が、がぁ!!」 「ははは、大丈夫か~生きてるか~」 可燐はそのまま追撃はせずそのままゆっくりと地面に降り立っていく。 そして地面に足を付け再び格闘技のような構えを見せた。 「今朝言ったよな、虫ってのは自分の何倍もの重量を運べるパワーがあるってな」 「でもそれは数の前にはそれさえもって………」 「かぁ!!分かってないな!そのパワーを持った軍団がいたら!!どうなると思う!?」 そう言い放って可燐はディケイネの前まで大きく跳躍し拳を勢いよく振り上げる。 ディケイネは紙一重で回避することが出来たがその拳は地面を震わせ、衝撃でディケイネは宙に吹き飛んだ。 「うそッ!?」 「もらったァ!!!」 可燐は宙に浮いたディケイネの体目がけて拳を突き出す。それに対しディケイネは空中でガードの体勢を取り可燐の攻撃を何とか防いだ。 ただ勢いは殺しきれずそのまま背中を前に空を飛ぶように吹き飛んでいった。 『いたいよ!!!』 「あ、ごめ……」 「まだまだまだまだまだぁ!!!!」 なんと可燐はディケイネが吹き飛ぶよりも速く空を飛び、再び両腕を振り上げディケイネを叩き落とす。 今度も腕で防ぐことが出来たがやはり勢いは止まらず地面にぶつかる。何故かは知らないけど背中の方を地面に向けていたはずなのに頭の方から落ちた。 「ちょ!!りぐる!!」 『もうかんべんしてよ!!』 腕でガードしたと言っても腕そのものがりぐるなのだ。つまりりぐるにとってはガードでも何でもなく、ダメージをダイレクトに喰らっていることとなる。 頭から落ちたのもりぐるの自己防衛手段なのだろう。 「……………でも二発も耐えたってことはそれなりの防御力はあるって事ね」 『でもこれ以上やるとりぐるも怒るよ!』 ディケイネは起き上がりすぐさま可燐からかなりの距離を取る。 このスペルカードは完全に近距離に特化している。予想だが絶対弾幕は撃ってこないだろう。 「……りぐる………あんたも、虫よね」 『そうだよ!!きらきらかがやく蛍さんだよ!!』 「なら、頑張れるわよね。格闘戦」 『ゆっっ!!!そんなの!』 りぐるの不安が体を通して伝わってくる。誰だってあの規格外の蜂と近くで戦いたくない。 でもそんな不安は何処かに捨て去れ。戦いに赴くとき覚悟は決めたはずだ。 「……………ここが正念場、これでヤツを倒せばきっと勝てる!!」 『……………ほんと?』 「私を信じろ、おまえをしんじてやつをしんじ………ええと。とにかく!!全力全開で行くわよ!!!」 そのうろ覚えで適当な言葉でりぐるも完全な覚悟を決めたようで可燐と同じ様に格闘戦の体勢に入る。 だが可燐はいっこうに近づく気配もなくただ拳をそのままワケもなく突き出している。 「………………………?」 「はあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 可燐はその体勢のまま地面が揺れるような雄叫びを上げ、空気が震えるくらい羽を動かしている。 ディケイネはその光景を見て果てしない危機感を覚えた。 「避ける準備を…………」 「おらあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」 そして可燐はディケイネに向けて一直線に拳を突き出して突撃してきた。 その速さは風そのもの、近づいてくるのに気付いた頃にはもう二人の距離の半分まで迫ってきていた。 「オ、オープンゲット!!!」 焦りからディケイネは分離し、その直後二人の間を可燐の拳が通り抜けていった。 少しでも反応が遅れていたらあの拳に完全に体か頭部、もしくは両方破壊されていただろう。 「ぬおっ!?」 可燐の拳は木を一本貫通したところでようやく勢いが止まった。 そして難なく木から拳を引き抜き、怪しげな笑顔でディケイネの方を見る。 「………やばいわね」 『こ、こわいよ!!はやくたおしてかえりたいよ!』 「でも攻略法は見えた。分離したらアイツの側面に向かって一気に銃をぶっ放しなさい!」 あまりにも力に任せた暴力的な攻撃だが直線的で小回りがきかないことが弱点だ。 そこをつけば簡単に打ち崩せる、と思った矢先可燐は先ほどとは違った構えを見せた。 「おい、一つだけ言ってやるよ」 「……何よ」 「あたしの必殺技は193個まである!!」 …………………………………………………そのあまりの多さに言葉が出なかった。 なんて設定考えてるのよ、稗榎さん。 可燐はその場で大きくドリルのように回転し始めその矛先を私たちに向ける。 羽の音が回転の音と共にいつもよりけたたましく森中に鳴り響く。私たちはその異質さに今までにない恐怖を覚えた。 「必殺技その11!腕勇破幻影!!!」 その言葉が羽の音と重なり可燐は再び私たちに向かって回転しながら突撃してくる。 先ほどの攻撃とは違って体全体を武器にしてるため攻撃範囲が異常に広い。その上速度は先ほどとあまり大差がないのだ。 『あ、あ、分離じゃ………にげられな……』 「諦めんじゃないわよ!!覚悟決めなさい!!」 『スペルライドゥ!蠢符「リトルバグ」!!!』 『!?スペルカードじゃ相殺できないよ!!!』 「いいから!!」 ディケイネから放たれた弾幕はそのまま一直線に可燐に向かって飛んでいく。 だがその弾幕はあのボムバリアによってすぐに掻き消されてしまった。 そう、それが狙いなのだ。 「跳ぶわよ!!痛いと思うけど我慢しなさい!!」 『え、え、ええええ!??!』 何を血迷ったのかディケイネは回転してくる可燐に向かって跳んでいく。 そしてまだ残っていたボムバリアに体を打ち付けてそのまま可燐の後ろに吹き飛んだ。 ダメージはあったがこれでいいのだ。あの回転に巻き込まれたらただでは済まない。 だからわざとスペカを放ちボムバリアを形成させそれを盾代わりにしたのだ。 だが後ろに跳ぶ瞬間、ディケイネの背後にあった木の陰に変身を解いた伝子とまりさがいたのが目に入りディケイネの背筋に冷たい物が走った。 「でんこーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!まりさを地面に置いてふせてええええええええええ!!!」 「え、ああ、わかったけど……」 ディケイネの言うとおりに伝子がまりさを地面に置いた瞬間、伝子の背後にあった木は文字通り『木っ端微塵』となった。 「…………………え?」 「うわあああああああああああああああああ!!!まりさのサイン入り帽子がぁぁぁぁ!!!」 可燐の体は回転を続けながら伝子の体を貫いていた。 まりさも地面に置かれたおかげで直撃は免れたようだが帽子は回転に巻き込まれ見事に襤褸切れとなってしまった。 「………………な、何が起きたのよ。何が起こったのよおおおお!!!!」 「あーあー、触れなくて良かったなぁ」 可燐はようやく回転が止まり切り株と成り果てた木の上に立ち、狼狽え続けるでんこ達を気にせず再びディケイネの方を向いた。 「しかし羨ましいくらい頭の切れが良いなぁ、こりゃ大技はダメだな」 「…………………」 常人ならもう何回も逃げ出したくなる状況だろう。しかしディケイネはその感情を一心に押し込めた。 架空と言ってもあのゆっくり達のために、自分の物語に苦しめられる稗榎さんのために、そして愛すべき同居人れいむのために。 クソゲーをやり続けた紅里にとっては!こんな事ではへこたれないのだ!!! 「掛かってきなさいよ!ピルナス!!」 「あんなロボにもならないボインと一緒にすんじゃねぇ!!」 可燐は大きく跳躍しディケイネの目の前まで迫り拳を振るう。 それに対しディケイネは一歩退いて躱すが可燐は続けて攻撃をし続ける。 「ああもう!!全然手応えがないんだよ!!!弱い物イジメしてるようでさ!!」 「今までそれを続けてたんでしょうに!!!」 「仕方ないだろ!!!それもこれもあんたのせいだよ!!!!!!!りぐる!!!!」 その言葉にりぐるは一瞬だけど動きを止める。その隙に可燐は足を広げ一気に二人を挟み込もうとした。 「必殺技その77!!ホッチキス・クラブ!!」 「ぐっ!オープンゲット!!」 ディケイネはそれを上半身と下半身を分離させることで回避したが上半身を可燐に捕まれてしまった。 「いい加減ウザいんだよッッ!!その分離!!」 そして可燐はそのまま手をぐるぐる回して一気にディケイネを地面に叩きつけた。 「ぐぎゃああああああああああ!!!」 「あたしはなぁ!!!もっと強いヤツと戦いたいんだよ!!だからあの腐ったような物語をとっとと終わらせたかった!! そのためなら喜んでゆっくり共を病気にしてやる!!」 「かぁ………かぁ………そ、れは……もうBADEND………よ」 「じゃあ誰がハッピーエンドにしてくれるっつうんだよ!! それにこの物語じゃハッピーエンドだとあたしが死ぬじゃねぇか!!あたしはまだ死にたくない!!」 ………………………根本的に悪い奴じゃない、あんな事言ってたけどやっぱこいつも被害者なんだ。 ディケイネは薄れゆきそうな意識をフル稼働させて下半身を動かし可燐に攻撃を加えた。 「くそっっ!!!!!」 「…………ハッピーエンドとかバッドエンドとか…………そうじゃないのよ………… 『ゆっくりエンド』………皆がゆっくりできるそんな終わり方を……目指してる」 「………………………こんにゃろうがああああ!!!そう言うことはあたしに勝ってから言えぇぇぇぇぇ!!!!!!」 可燐は腕を振り上げて上半身に拳を振り下ろしたがディケイネはそれを躱し再び下半身と合体した。 そして可燐の懐に入り込み拳を可燐の土手っ腹に突き上げた!!! 「………………………………………ぐ」 「虫の装甲をなめんな、あんたの攻撃なんてへでもない!!!」 最強クラスの攻撃力、防御力、速度。故に最凶最悪。 可燐はその体勢のままディケイネを遠く蹴り飛ばした。 「ぎゃあああ!!!」 「あたしは!!こんな所じゃ終わらないんだよ!!!」 そして追撃を掛けるように可燐は両手を手刀の形にしてディケイネに振り下ろした。 「必殺技その78!レイニーギロチン!!!」 ディケイネはその両手のスキマにちょうど入りこむようにその攻撃を躱す。しかし先ほどと同じ様に地面に衝撃が走りディケイネの体が宙に浮いた。 「とりゃああああ!!」 しかしディケイネはその宙に浮いたのを利用して可燐の顔を蹴りその反動で再び可燐から距離を取った。 『スペルライドゥ!灯符「ファイヤフライフェノメノン」!!』 「効かないんだよ!!その攻撃が特大であればあるほど!!私の巣のバリアはそれに比例する!!」 その言葉の通りディケイネの放った弾幕は可燐のボムバリアに全て防がれた。 しかしその隙にディケイネは可燐からほどよい距離を取ることが出来た。 「………ふぅ、最凶最悪だけど、最強で無敵ってわけじゃないようね………」 『………体への攻撃は全然効かないよ、やるなら関節だよ!!』 「だめよ、きっと関節に対しての攻撃はあっちもナーバスになってる。でも逆に言えばそれ以外への攻撃は手薄なのよね」 先ほど腹に攻撃が当たったのもそれがあるからだ。 でもりぐるの言うとおり関節以外の打撃攻撃はほぼ効かないと言っていいだろう。 「弾幕は効くんだけどね………ねぇりぐる」 『何?おねーさん』 「もう一回、アイツの懐に入れる?」 『ねーよ』 一蹴されてしまった。でも紅里本人は至って真面目である。 「お願い、これが最後だから」 『最後最後詐欺だね!どうせ次のスペカがあると思うよ!』 「いや本当に終わらせるから!!」 「何ごちゃごちゃ言ってんだよぉぉぉ!!!」 可燐は空気を読んでとりあえず黙っていたがとうとう痺れを切らし二人に迫ってきた。 「お願い!!!」 『………………分かったよ!!』 次のページへ
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蛍 雑踏が流れていく。 大通りの交差点は多くの人が行き交っていた。 様々な格好をした人たちが足早にそれぞれの目的地へ向かう。 角に面したビルの壁には、巨大なテレビが掛かっていて、CMを映し出している。 その映像が急に切り替わった。 アナウンサーが座り、深刻な顔でニュースを告げる。 「臨時ニュースです。 アメリカ・ミネソタ州に核ミサイルが打ち込まれた事件で、中国政府は誤射を主張していましたが 議会の決定を受けてアメリカ大統領は報復攻撃を加えると先ほど発表されました」 人々は足を止めて、一様に画面を見上げた。 ニュースよりも興味を引くものが、上空に現れていた。 「なお、発射されたミサイルは日本にも向かっているとの情報が――」 アナウンサーが言い終わる前に画面は途切れた。 上空のミサイルが一瞬で膨れ上がり、人々の目の前で巨大な火の玉になった。 それは何もかもを飲み込んで、世界を白く染めた。 * * * * * 暗闇に包まれた街の姿がぼんやり浮かび上がった。 一か月前なら、空が暗くなるころに灯り始める街灯はどれも折れ曲がって割れている。 ビルの窓やネオンの看板は割れて破片が地面に落ちていた。 無事なものにも明りは灯っていなかった。 街中が停電になったようだった。 この街だけでなく世界中がこうなのだった。 巨大なビルが半ばから折れて巨大な生物の骸のような姿を晒している。 コンクリートの舗装は地面に空いた大穴によって大きく裂けていた。 大穴の隙間から、ぼんやりとした光の塊が覗いている。 いくつかの小さな塊に分かれたそれは、静かに動いて地中へと潜っていった。 日が沈みかけた街を照らしているのは、この光だった。 光の一つはすっと飛び上がると、飛び去った。 その先には、廃墟となったデパートがあった。 光が割れた窓の一つに入る。 デパートは沈黙していた。 きらびやかな商品やお客で溢れんばかりだった店内は、今や荒れ果てて誰もいない。 地下では、止まった冷蔵庫から嫌な匂いが漏れている。 地下のフロアから少し奥に入った場所に、両開きの扉があった。 在庫を置く倉庫だった。 扉の奥には、二人の男女がいる。 辺りには缶詰やペットボトルの空き容器が転がっている。 二人は一つの毛布にくるまって、壁にもたれて座っていた。 男が女に話しかける。 「寒くないか……?」 「うん、でも、こうしていると安心する」 女も話しかけた。 「わたしたちのほかに誰もいないのかな」 「ああ、いたとしても俺たちと同じように、放射能にやられているだろうな」 二人は死の淵にいた。 世界中を襲った、大量のミサイルが撒き散らした放射能によって体を蝕まれているのだった。 しばらく前から食事もとっていない。 消化器官の粘膜が放射線によって破壊され、食べても体の中を素通りしてしまうのだった。 「非常食、役に立たなかったね」 「役に立つ時は、ここの食料が全部なくなったときだ。 それまで生きていられるかな」 二人は黙った。 やがてどちらともなく体を寄せ合い、首をもたれかけた。 そのまま二人は眠りに落ちた。 その頃、食料品を置く棚の上で眠っていたれいむが目を覚ました。 「ゆ?」 隣にはまりさがすやすや眠っている。 鏡餅のように棚に置かれていたれいむは、そこから飛び降りた。 ミサイルが街を襲ったとき、多くのゆっくりも灰となった。 だが、生き残ったゆっくりは饅頭だからか、放射能の中でも平気だった。 掃除するも人もいなくなった街の中で、焼け残ったごみなどを漁って暮らしていた。 二匹は幸運なつがいだった。 街の下を流れる暗渠の中に潜んでいて奇跡的に無事だった二匹は、 様変わりした地上に這い上がって驚いた。 非常食として男女に拾われて、デパートの地下倉庫で一緒に暮らしている。 あまり食料がないので、普段はよく眠っているが、空腹を感じて目を覚ました。 「ゆっ、おなかすいたよ!」 「ゆふん?」 まりさも目を覚ました。 二匹でそろって眠っている男女のそばに跳ねていく。 「おにーさん、おなかすいたよ! かんづめさんちょうだいね!」 「おなかすいたよ!」 二人は返事をしない。 ぴくりとも動かずに、ゆっくりたちを無視している。 「ゆゆ、おにーさんたちへんじしないよ?」 「きっとねてるんだよ! おこしたらおこられちゃうよ!」 以前にも、人間はこのように喋らずにじっとしていることがあった。 不安になって騒ぐと、むくりと起き出してうるさいといった。 人間さんもすーやすーやするんだと、二匹はその時初めて知った。 「ねちゃったんだね! つまんないよ!」 「まりさたちでかりにいこうね!」 「そうだね! おにーさんたち、ゆっくりしていってね!」 男は答えない。 蛍光灯が毛布にくるまれた二人を照らしていた。 二匹はこっそりと倉庫を抜けだした。 階段を一段ずつ登り、外れて蝶番にぶら下がっているドアを抜けて、一回のフロアに出た。 割れて落ちた窓や蛍光灯の破片をよけながら、出口へ向かう。 正面入り口のガラスはすべて割れていた。 そこから外へ出た二匹は、荒廃した街を眺めた。 辺りは薄暗闇に覆われている。 夕焼けは厚い黒雲に隠れていた。 その下に瓦礫の山となった街が死んだように広がっている。 二匹はご飯を求めて歩き出した。 途中、大穴があいている道路を避けて、さらに進む。 やがて水道管が破裂して噴き出した水が、地面に溜まっている所へ出た。 何かの加減でそこだけ地面がくぼんで、濁った水が溜まっている。 瓦礫の間に挟まれたその空間に、うごめくものがあった。 野生動物は今やほとんどいない。虫にしては大きかった。 ちょうどれいむたちくらいの大きさの黒いものが、触角をうごめかせて水場に群がっていた。 れいむは物おじせずに叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 すると群がっているそれらから、いくつもの挨拶が帰ってきた。 答えたのは緑色の髪と虫のような羽をもつ、りぐるだった。 彼らは荒廃した街でも生き延びていた。 れいむは訊ねる。 「おみずさんのんでるの?」 「うん、れいむたちものむといいよ!」 りぐるたちは二匹のために場所を空けた。 口をつけると、舌で舐め取った。 「ごーくごーく、それなりー」 濁った水でも、喉は潤った。 れいむは顔を上げた。 気になっていたことを訊ねてみる。 「にんげんさんは、どこいったの?」 「りぐるたちはしらない。でも、ごはんさんはにんげんのくらしているところにあるからね。 にんげんがいなくなっちゃって、ごはんもすくなくなったみたい」 「ふーん」 れいむたちはあまり深刻に受け止めていなかった。 何しろ、倉庫に戻れば、お兄さんが缶詰を開けてくれるのだから。 そのうち、辺りが本格的に暗くなってきた。 相変わらず厚い雲に覆われて見えないが、その向こうでは太陽が地平線に沈もうとしていた。 瓦礫や地面の隙間にできた影がじわじわと広がっていき、すぐに街を覆い尽くした。 それと同時に、りぐるたちの体が内側からぼんやりと光り始める。 水場が光に覆われ、れいむたちは歓声を上げる。 「ゆっ、りぐるたちはそろそろいくよ!」 不思議な光を放つりぐるたちは、集まって跳び立つ準備をした。 まりさは一目見て格好いいと感じた。 魂を抜かれたように訊ねる。 「どこへいくの?」 「きれいなおみずさんがあるところ!」 一匹のりぐるが振り向いて答える。 りぐるたちがいっせいに飛び立ち、最後のりぐるも後を追った。 地面から光の柱が吹き上がったように見えた。 星一つ見えない夜空に、蛍のように淡い光の粒が何十も舞い上がった。 それらは空中で広がって散っていく。 不思議な軌道を描いて、れいむたちに別れを告げた。 れいむたちはそれを見上げた。 見る間に遠くなっていく光を、ずっと見つめていた。 「ゆゆ、いいなぁ……」 「まりさたちも、ぴかぴかしたいよ!」 まりさの願いはすぐに叶えられた。 れいむたちの体が、かすかに光り始める。 りぐるたちと同じ光だった。 「れいむ、ひかってるよ!?」 「まりさもだよ!!」 二匹は、おさげともみあげを取り合って喜んだ。 見ると、周囲に崩れた建物の中にも、ぽつりぽつりと同じ光が見える。 「あんなにたくさんいるよ!」 「みんなひかってる!」 ゆっくりたちが光を発している。 かつての街灯の光よりずっと弱いが、それはどんな小さな隙間や建物の中にもあった。 見る者があれば、神秘的な光景に写ったかも知れない。 それは放射性物質の光だった。 凝集されて取り込まれた放射性物質は体内の餡子に蓄積され、暗くなると光を発するようになる。 生き延びたゆっくりたちは皆例外なく、汚染された食べ物や水を飲んでいた。 空は相変わらず曇っていた。 地上では星々のようなゆっくりたちの光がいくつも灯っている。 本物の星はまだ見えなかった。 「おにーさんたちに、しらせにいこうね!」 「きっとびっくりするよ!」 二匹は並んで元来た道を戻って行った。 もはや動くもののないデパートの地下倉庫へと。 あとがき 蛍の放流のニュースを見て急に書きたくなりました いろいろ変なところがあって申し訳ないです Wikiの名前が意外としっくりきたので これからゆ焼きあきと名乗らせていただきます どうぞよろしくお願いします 過去に書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 898 赤ゆ焼き ふたば系ゆっくりいじめ 928 贈り物 ふたば系ゆっくりいじめ 979 子まりさとれいぱー ふたば系ゆっくりいじめ 1128 おそらをとんでるみたい! このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! ◆SS感想掲示板 10作品未満作者用感想スレへ ※書き込む時はSSのタイトルを書いて下さい。 コレをコピーしてから飛びましょう→『ふたば系ゆっくりいじめ 1330 蛍』 トップページに戻る
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フォレスト・オブ・マッドネス 28KB 「フォレスト・オブ・マッドネス」 ※『ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ!』 の微妙な続編です。希少種はいろいろな意味で優遇されています ※現代設定(?)です ※独自設定があります ※ネタ被りがありましたらご容赦ください ※人間側の描写が多いです 「……それで、せっかくアメリカまで研修に行ったのに、皆から頼まれてたお土産を買うのを忘れちゃってて。 挙句、『俺が元気な体で帰ってきたことが何よりのお土産です』なんて言うもんだから、どつかれてたわ」 「あはは、そりゃそうっすよ」 2人の男が談笑している。 「そういうおにいさんも、わりとほんきでなぐってたわ」 いや、訂正しよう。2人と1匹だ。 彼らがいるのは、上空100メートルを飛行するヘリコプターの中。 窓の外では、山の稜線を朝日が照らすところだった。 操縦桿を握る男は森林管理署の署員で、先ほどから聞き役に徹している。 その隣に座り、同僚の笑い話をする男の膝の上にはゆっくりゆうかが抱かれていた。 「あいつはああ見えて頑丈だから、大丈夫なのよ」 そう言ってゆうかに微笑むと、男は眼下に広がる森を見渡した。 この地域一帯は自然遺産に登録されている国立公園だ。 1週間前から降り始めた雪が広大な森林を覆い、緑と白の対比が大地に美しいコントラストを描いていた。 彼の職業は、対ゆっくり専門の「自然保護官」であり、ゆうかは仕事の相棒である。 今日は森林管理署のヘリに同乗させてもらい、定期的に行う監視活動に従事していた。 「今日は付き合わせちゃって、ごめんなさいね」 「いいっすよ、どうせ俺も暇でしたし。 それに保護官の皆さんにはお世話になってますから」 同じ自然保護を仕事とする者同士、それぞれの機関は協力関係にある。 ゆっくりは森林地帯にその多くが生息し、希少な植物を食い荒らすこともあるため、森林管理署にとっても悩みの種であった。 この時期、野生のゆっくりの多くは冬眠、あるいは永眠している。 例外として活発に活動するのは、れてぃやちるのなど一部の希少種だけだ。 ついでに言えば野生動物もその多くが活動休止中。 つまりこの監視は形式だけで、特に神経を尖らせるような仕事でもないのだ。 とはいえ、雑談に興じつつも保護官とゆうかは地上への注意を怠らなかった。 「この地域のゆっくりたちは、まだ生態系を破壊するには至っていないのよね?」 「ええ、大人しいもんっすよ。このまま静かに暮らしてくれれば一番なんすけどね……」 異常はどこにも見当たらない。 まるで遊覧飛行をしているかのような、気楽な時間が続く。 1時間ほどで予定のコースを周り終え、帰還する旨を本部に連絡したとき、「あら?」と保護官が声を上げた。 地上に何か蠢くものが見えたような気がした。 「高度を下げてちょうだい!」 「えっ、はい」 指示されるまま、操縦士はヘリを地上から30メートルのあたりまで降下させる。 しかし、地上には動くものなど何も確認できなかった。 聞こえてくるのはヘリ自身が出す爆音と木々のざわめきだけ。 「何かいたんすか?」 操縦士の問いかけには答えず、保護官はあたりを見回す。 やはり、小動物の1匹さえ見えない。 ―普通に考えれば“あれ”が今の時期に現れるはずがないのよね……。 ―錯覚? でも……。 「だいじょうぶ? おにいさん」 ゆうかの声で我に返ると、保護官は操縦士に答えて言った。 「……ごめんなさい、見間違いだったみたいだわ……。戻りましょう」 そう言う保護官の顔はどこか晴れない。 心配したゆうかが声をかけようとした瞬間、 「あ、そういえば」 それまで相槌を打つだけだった操縦士が、唐突に喋りだした。 「俺、実は基地に恋人がいるんすよ」 「「……え?」」 突然の話題に驚く保護官とゆうか。 操縦士は彼らの怪訝な表情に気付いているのかいないのか、構わずに続ける。 「戻ったらプロポーズしようと」 「ちょ、ちょっと……」 「花束も買ってあったりして……」 「ちょっと! なんでいきなりそんな話始めるのよ?」 「え、いや、なんとなくしなきゃならない気がして……」 その時だった。 ヘリの後方の木々の間から一条の光線が放たれ、テイルローターを掠めた。 猛烈な火花を噴き上げ、破片を撒き散らしてテイルローターが吹き飛ぶ。 バランスを失ってたちまち制御不能に陥るヘリ。 自らの生み出す抗いがたい力に掴まれ、ゆっくりと旋転しながら降下し始めた。 操縦士がマイクに向かって叫ぶ。 「メイディ、メイディ、メイディ!! ブラックホークダウン! ブラックホークダウン!」 「これのどこがブラックホークよ?! ベルじゃない! 本部、こちらっ……!」 「アイムイジェクティン!」 「出来るわけないでしょっ!! 黙っててよ!!」 「ふたりともおちついてっ……!」 そんなやり取りの間にも、ヘリはどんどん高度を下げる。 回転翼が空しく大気を切り裂く。 地面はすぐそこまで迫ってきた。 保護官はゆうかを強く抱きしめ、衝撃に備える。 そして、 「きめぇ丸ーっ!!」 「ゆうかっ……!」 「おにいさっ……!」 ズズン……。 三者三様の悲鳴を飲み込む鈍い音と共に、ヘリは墜落した。 ◇ ◇ ◇ 人間が生み出した鋼鉄の鳥が身を捩るようにして苦しみ、咆哮を上げて落ちていく一部始終を見ていたものがいた。 先ほどヘリのテイルローターを破壊した怪光線、「ドススパーク」を撃ったドスまりさである。 「ゆふ、ゆふ、ゆふふふふ……」 ヘリの撃墜を確認すると、不気味に笑いながらドスまりさは森の中へと消えていった。 ◇ ◇ ◇ 俺の仕事は自然保護官だ。 今日は同僚と一緒にこの国立公園の監視にやってきたのだが、 ジャンケンに負けた俺はパートナーのゆっくり共々、管理署の施設でデスクワークをするハメになった。 ちなみに俺の横で報告書の資料を仕分けしているのが相棒の「かなこさま」である。 冬眠した「すわこさま」とその世話を頼まれてくれた「さなえさん」は家で留守番している。 「少し休憩するか……」 「そうだね、お兄さん!」 報告書の作成が一段落つき、背伸びする。 せっかく自然遺産にまで来たというのに、朝から活字ばかり見ている。 外の景色でも眺めようかと席を立ったとき、内線の電話が鳴った。 同僚の保護官とゆうか、それに操縦士の乗ったヘリが消息を絶ったとの報せを受け、俺たちは通信室に飛び込んだ。 数人の職員が慌しく動き回り、ヘリとの通信を試みていたが繋がる気配はない。 その内の1人から詳しく事情を訊くと、現在の状況はこんな感じらしい。 ―最後の通信内容から、機体に何らかのトラブルが発生したことは間違いなく、恐らくは墜落したものと思われる。 ―山向こうの天候が悪化しており、駐屯地から救難隊が到着するには何時間かかるか分からない。 ―そして管理署に常駐する職員は少なく、救難隊や自治体との通信の必要もあって捜索に乗り出すことは出来ない。 ならば、俺たちの出番だ。 「そんな、無茶ですよ! 何が起こったのかも分かっていないのに……!」 「だからこそだ。俺たちはこういった時の訓練も受けてるし、経験もある。 今は危険な野生動物はいないし、無茶もしない。頼む、行かせてくれ」 職員を説得し、俺たちは出発の準備を始めた。 俺は素早くライディングスーツに着替え、かなこさまにも耐寒・雪中装備を施す。 装備を整えた俺は、管理署のスノーモービルに跨り、かなこさまを後ろに乗せた。 予測されるヘリの遭難地点は、ここから6キロほど北上した所だった。 直径およそ500メートルの円の中のどこかに、同僚たちがいるはずだ。 「行くぞ!」 「いつでもいいよ、お兄さん!」 天候が変わらないうちに、なんとしても発見しなければならない。 俺たちは鬱蒼とした森の中へと入っていった。 ◇ ◇ ◇ 墜落したヘリの中で、最初に意識を取り戻したのはゆうかだった。 保護官の屈強な体に包まれ、奇跡的に軽傷で済んだのだ。 自分を守ってくれた保護官に、必死に呼びかける。 「おにいさんっ! しっかりしてっ! おにいさんっ……!」 ややあって、「う……」と目を開ける保護官。 だが次の瞬間、その顔は苦痛に歪む。 「……ッ! 足が折れてるみたいね……。ついてないわ……」 むしろその程度で済むことが凄いのだが。 隣を見ると操縦士が計器に頭を突っ込んで気絶していた。 保護官が体を揺すっても、目覚める気配はない。 もとより、引っこ抜けそうになかった。 異臭がするので、ゆうかが後方をチェックすると燃料が漏れていた。 しかし雪が積もっているので大事には至らないだろう。 実際のところ、墜落時の衝撃を吸収してくれたのも雪だった。 「……でもその雪が、今はネックなのよね……」 通信機器は完全に壊れ、人間2人は移動不可能。 唯一動けるゆうかは、雪の上を長時間跳ねることなど出来ない。 「助けが来るのを待つしかないわね……。でも……」 墜落の直前に見たあの光。あれは恐らくドススパークだ。やはり見間違いではなかったのだ。 どうしてこんな時期にドスまりさが活動しているのか、何故いきなり攻撃してきたのかは、皆目見当もつかない。 本部に報告できなかったことが悔やまれた。 保護官はゆうかを抱き上げる。 ドスまりさがこのヘリを発見しないこと、そして救難者たちがドスまりさに遭遇しないことを祈りつつ、 彼らは静まり返った森の中で、体力の消耗を抑えるしかなかった。 ◇ ◇ ◇ スノーモービルで森を突き進む俺とかなこさま。悪路を何とか突っ走る。 木々の間を斜めに差し込んでくる陽の光は、常緑樹の葉に濾過されて眩しさを感じさせない。 その光によって、森の中の空気はどこまでも透き通っているようだ。 出発してから5キロほどの地点だった。 何かしらの手がかりはないかと周囲に気を配っていたら、不意に横合いから白い物体が2個、飛び出してきた。 バレーボールくらいの大きさだ。 「うぉっ!」 轢きそうになったので、慌ててスノーモービルを停止させる。 よくよく目を凝らすと、雪にまみれた黒帽子のゆっくりまりさに猫耳二尾のゆっくりちぇんである。 まりさとちぇんは俺たちの姿を見るや否や、 「……! にんげんさんっ?! たっ……たったったすけてぇぇぇぇぇぇ!」 「わからないよぉぉぉぉぉぉぉ……!」 必死に助けを求めてきた。 俺たちは困惑するが、まりさたちはそれ以上に恐慌をきたしていた。 雪道を跳ね続けたせいで、体もふやけていた。 とりあえず携行していたタオルで包んでやると、何とか話せる状態まで落ち着いた。 俺はまりさに訊ねる。 「一体何があった? 冬篭りはどうしたんだ?」 「……まりさたちは……」 まりさは自分たちの身に起こった出来事を話し始めた。 ◇ ◇ ◇ まりさたちの群れはとてもゆっくりした群れだった。 賢く強いドスまりさの庇護の下、秋の早い段階から越冬のための食料も充分に集めることが出来た。 慢心して、新たに子供を作るゆっくりたちもいなかった。そして何よりみんな仲良しだった。 絵に描いたようなゆっくりプレイスで、まりさたちは冬の到来を迎えた。 「みんな、はるになるまでゆっくりしていってね!」 「むきゅ! まりさたちもゆっくりしていってね」 「は……はるになったら、げんきなかおをみせなさいよね!」 群れの全てのゆっくりが春に再会することを信じて疑わなかった。 みんな笑顔でそれぞれの巣穴へと入っていく。 まりさは番のゆっくりれいむと、子まりさと子れいむが1匹ずつの家族と一緒に巣穴に入り、入り口を塞いだ。 中は真っ暗だったが、子供たちの賑やかな笑い声と、れいむの歌声のおかげでとてもゆっくりできた。 「おちょーしゃん。はるしゃんはいちゅきゅりゅにょ?」 「まりしゃ、はやきゅありしゅたちとあしょびちゃいよ!」 「おちびちゃんたちがゆっくりしていたら、すぐにきてくれるからね!」 「そうだよ! それまで、おかあさんといっしょにおうたのれんしゅうをしようね!」 「ゆぅん、ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!」 「おうたはゆっきゅりできりゅね!」 暗闇に家族の明るい声が満ちて、楽しい時間が過ぎていった。 それは突然に起こった。 冬篭りを開始してだいぶ経った頃、眠っていた一家は親れいむの呻き声で目を覚ました。 「……? れいむ……? どうしたの……?」 「……ぐぅ……! ぎゅ……ぎょぉ……!」 母親のただならぬ様子を感じ取ったのか、隣で寝ていた子供たちがれいむに擦り寄った。 「おきゃーしゃん? どうしちゃにょ?」 「ぽんぽんいちゃいにょ? ゆっきゅりしちぇにぇ? しゅーりしゅーり」 懸命に呼びかける子供たち。 その優しさを嬉しく思いながらも、れいむを心配したまりさが口を開こうとしたときだった。 「おぐぉ」ミチリ。バリバリッ。「おきゃーしゃ……?」グチャッ。グッチャッグッチャッ。ゴキュ、グキュ。 「ゆう? れいみゅ? れいみゅどうし……?」ズグシュ。ズチュルズチュル。ジャク、ジュプ、ギチャ。 何かとてもゆっくりできない音がした。 「れいむ……? おちびちゃ……?」 言いかけてまりさは口を噤んだ。 凄まじい悪臭が漂ってきたのだ。ゆっくりの忌み嫌う死臭に似ていた。 そして、れいむたちがいたはずの所から、ズル…ズル…と“何か”が近づいてきた。 「なに……? どうしたの……? れいむ? おちびちゃん? へんじをしてね!」 悪臭を放ちながら近づいてくる“それ”は無言のまま、にじり寄ってくる。 視覚に頼ることが出来ない闇の中で、恐怖だけが膨らんでいく。 大自然に暮らすゆっくりの生存本能が、まりさに告げた。 逃げろ、と。 「う……うわぁあああああああああああああっ!!」 弾かれたように跳び、“それ”の脇を素早くすり抜け、まりさは入り口を塞ぐ「けっかい」をぶち破った。 久しぶりの陽の光に目が眩んだが、必死に巣穴から離れる。 家族を残してきたことに罪悪感がないわけではない。 それを上回る感情がまりさを突き動かしていた。 雪の冷たさなど感じなかった。一刻も早くこの場から逃げなくては。 まりさ以外にも悲鳴を上げるゆっくりがいた。 「わっからないよぉおおおおおおおおおっ!!」 「ちぇ……ちぇえええええん!」 ちぇんも同じく“何か”に襲われそうになり、巣穴から飛び出したところでまりさと合流した。 2匹はひたすらに逃げ続け、今に至る。 「ふむ……」 保護官としては極めて興味深い話だが……今の俺たちは捜索隊だ。優先すべきことがある。 俺はまりさたちに質問する。 「ところでお前たち、大きな音を出して空を飛んでいくものを見なかったか?」 ヘリの行方を掴む手がかりがあるとすれば、森に棲むゆっくりだ。 本当はれてぃなどを探していたのだが、こいつらも何か見ているかもしれない。 「みたんだよー! こっちにとんでいったんだよー!」 ちぇんが示す方向は、奇しくもちぇんたちの群れの巣がある方角と一致した。 結局、行くしかない、か。 俺はまりさとちぇんをそれぞれ腹と背中にくくりつけ、スノーモービルに乗り込んだ。 俺たちは再び森の中を疾走する。 「すごい! はやいよ、にんげんさん!」 「きもちいいよー!」 さっきまでの泣き顔が嘘のようにはしゃぐまりさとちぇん。 ゆっくりらしいといえばゆっくりらしいが、俺はそんな2匹のことをどこか微笑ましく思った。 仕事柄ゆっくりを駆除することが多いとはいえ、俺個人としては善良なゆっくりは嫌いではないのだ。 雪の上に500メートルほど轍をつけたところで、木々に囲まれた広場のような空間に到着した。 自然のカーテンが途切れ、太陽が直接俺たちの顔を照らす。 「「「「え……?」」」」 そこはゆっくりプレイスなどではなかった。 純白の雪は、餡子、カスタード、生クリームその他諸々で染め上げられ、散らばっているのは色とりどりの飾り。 そして、バラバラに引き裂かれ、原形も保っていないゆっくりの死骸がその隙間を埋め尽くす。 ざっと100匹はいたのだろうか。異様な臭気が漂ってくる。 僅かに残った頭髪や、瞳の色からおおよその種類が判別できるが、それに何の意味があるのか。 巣穴の悉くが破壊されており、中にいたゆっくりたちが引き摺り出されたようだった。 「う……うわぁあああああああああああああ!! みんなぁあああああああああああああああ!!」 「わからないよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」 悲痛な叫び声を上げるまりさとちぇん。 その瞳はいっぱいに見開かれ、止め処もなく涙が溢れ続ける。 「これは……」 「……」 俺も凄惨な光景に圧倒され、しばらく動くことが出来なかった。かなこさまも絶句している。 ようやっとスノーモービルのエンジンを切り、かなこさまを降ろした。 かなこさまの底部には、タイヤをキャタピラに換装した特別製のすぃーが装着されている。 かなこさま寒冷地仕様、通称「がんきゃなこ」だ。これなら雪も怖くない。 俺1人で2匹を抱えるのは無理なので、ちぇんをかなこさまに乗せる。 俺たちは広場に足を踏み入れた。 出来る限り死骸を踏まないように歩を進める。 2匹の泣き声が痛々しかった。 周囲を警戒しつつ、俺は考える。 捕食種はもちろん、熊なども今は冬眠中だ。 それ以外でこれだけの数を屠る存在は…。 駄目だ。考えても埒が明かない。 正体不明の“何か”がいるのは間違いない。俺はかなこさまのオンバシラを見る。 俺もライフルを持ってくるべきだったか。 広場の中央付近まで入ったところで、かなこさまが声を上げた。 「お兄さん! あそこで何か動いているよ!」 それはゆっくりぱちゅりーだった。 死骸の山に埋もれて、苦しそうに喘いでいる。 「ぱっ……ぱちゅりぃぃぃぃぃぃぃ!!」 俺の腕の中でまりさがもがき、スポンと抜け出した。 そのままぱちゅりーのもとへと跳ねていく。 「まりさ! 待つんだ!」 慌てて止めようとするも、俺の腕は虚空を切るだけだった。 まりさはぱちゅりーに擦り寄り、必死に呼びかける。 「ぱちゅりー! まりさだよ! ゆっくりしてね!」 「……むきゅ……、まり……さ……? ……にげ……て」 ぱちゅりーが言いかけたときだった。 巣穴の一つから、ゆっくりが這い出してきた。 それを見たまりさが叫ぶ。 「れ……れいむぅううううう!! ぶじだったんだね! よかったよぉお!!」 どうやらまりさの番のれいむらしい。 喜びの涙を流すまりさ。 だが、ちょっと待て。まりさの話が事実なられいむは…。 “れいむ”はまるで感情のない能面のような顔でまりさを見やると、「ゆ」とだけ呟いた。 緩慢な動作でぱちゅりーに向かって言う。 「たべのこしがかえってきたよ。ぱちゅりーにあげる」 ミチリ。バリバリッ。 ぱちゅりーが「むぎゅ」と短い悲鳴を上げると、その顔の中心からアルファベットの「X」を描くように亀裂が走った。 そこから一気にぱっくりと裂ける。まるで蕾の花がパッと咲いたように。 裂けた中からは触手?のようなものが2本伸びていた。 呆然とするまりさと俺たち。 “ぱちゅりー”はブジュル、ブジュルと白い液体を撒き散らしながら、とまりさに近づく。 「……! まりさ逃げ……!」 間に合わなかった。 「ぱ―」 それがまりさの最後の言葉になった。 “ぱちゅりー”はまりさの顔面に飛びつくと、ゴシャグシャ、という咀嚼音を響かせた。 「うわぁああああああああ! まりさぁあああああああああ!!」 「畜生ッ!!」 ちぇんが叫び声を上げると同時に、俺は駆け出していた。 全力で“ぱちゅりー”を蹴る。 予想以上に重い感触が伝わり、“ぱちゅりー”は放物線を描いて宙を飛んだ。 “ぱちゅりー”が離れると、まりさはピクンと痙攣して、仰向けに倒れた。 まりさの顔は跡形もなく消えて、黒い餡子が覗いていた。 「まりさぁああああああ……! どうしてぇえええええええええ?! わからないよぉおおおおおおおおお!!」 一方“ぱちゅりー”はドチャッ、と音を立ててゆっくりたちの死骸の上に落下する。 生クリームが飛び散った。 だがまだビクン、ビクンと震えている。 そして、“ぱちゅりー”の中から“それ”は現れた。 緑の髪に2本の触覚をもち、底部には簡略化された蜘蛛の足のようなものが生えている。 ゆっくりりぐる。 りぐるは成体でも体長が5センチに満たない極めて小さいゆっくりであり、 通常は他のゆっくりに寄生して、おこぼれに与ることで生きていくことで知られている。 その見返りとして、りぐるはゆっくりにとって害となる毒虫などを排除する。 いうなれば共生生物みたいなものだ。 だが、俺たちの前にいるこいつは何だ? 一体何の冗談だ? 宿主を変形させ、意のままに操り、ゆっくりを捕食する? おまけに体長は20センチ近くある。 突然変異にしたって変わりすぎだ。 「このぱちゅりーはもうつかいものにならないよ」 そう言いつつ、りぐるはぱちゅりーの皮を脱ぎ捨てた。 雪の上に敷かれた醜悪なモニュメントの仲間となるぱちゅりー。 「ひどいよぉおおおおおお……! わからないよぉおおおおおおおおお……!」 ちぇんが泣き叫ぶ。 そのとき別の巣穴からゆっくりが出てきた。ゆっくりありすだ。 ありすはやつれた顔で、何かを懇願していた。 「おねがい……。もぅ……ころしてぇぇぇぇぇぇ……」 直後、ありすの顔面が真っ二つに裂け、りぐるがズルリと出てきた。 「こわれちゃった」 そう言ってこちらにやって来る。 ……寄生され、操られても意識は残るのか。 俺はりぐるに訊いた。 「お前たちは、いつからこの群れに寄生したんだ?」 「りぐるたちはゆっくりしてるよ」 “れいむ”の中にいるりぐるも答える。 「そうだよ。りぐるたちはゆっくりしてるよ。 りぐるたちだけじゃなくて、みんなゆっくりしてるよ」 会話が噛み合わない。りぐるたちの目は焦点が合っていなかった。 俺の後ろにいるかなこさまたちに、その虚ろな視線を移す。 「おいしそうなゆっくりがいるね、ぱちゅりーだったりぐる」 「おいしそうだね、ありすだったりぐる」 「ゆっくりしようね、れいむのりぐる」 「「「みんなでいっしょにゆっくりしようね」」」 カサ……カサカサ……カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……。 3匹の声に呼応して、巣穴から一斉にゆっくりが出てきた。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇん……。 皆一様に生気のない顔をして、足を生やしていた。 その数は10匹。 初めからいた奴を合わせて、全部で13匹のゆっくりが俺たちを取り囲んだ。 りぐるたち―その殆どはりぐるが寄生したゆっくりたち―の目はみな、かなこさまとちぇんに注がれている。 俺はかなこさまに目で合図する。頷くかなこさま。 ガタガタと震えるちぇんに向かって叫んだ。 「ちぇん! かなこさまから離れるな!!」 叱咤すると、一番近くにいたれいむを蹴り飛ばす。 衝撃に耐え切れず飛び出すりぐる。 そこにかなこさまがオンバシラを撃ち込んだ。 パン、という発砲音と共に赤い火線がほとばしり、硬い飴玉がりぐるを砕く。 黄土色のゲルのようなものをぶち撒けてりぐるは絶命した。 仲間の死にも動揺した様子はなく、りぐるたちは無表情のまま群がってくる。 ゆっくりらしからぬ俊敏な動きで。 「ゆっくりしようよ」カサカサ「たすけて……」 「ゆっくりしてよ」カサカサ「やめてぇ……」 「ゆっくりぐる」カサカサ「いやぁぁ……」 微かに残ったゆっくりたちの意識が助けを求める。だがどうしようもない。 「クソッ!」 完全に狂っていた。 俺とかなこさまはりぐるたちを宿主ごとひたすらに蹴り、踏み潰し、撃つ。 グチャッ。カササ。パパパン。ブチュ。 広場に、湿った打撃音と乾いた発砲音が木霊した。 最後の1匹を仕留め、俺たちは周囲を見渡した。 どうやらもう残ってはいないようだ。 緊張を解いたとき、背後の茂みから何かが飛び出した。 「!! まだいたか!」 反射的に回し蹴りの体勢をとる。が、次の瞬間、 「おにいさん……! かなこ……! たすけにきてくれたのね!!」 それは俺たちを見て嬉しそうに言った。 同僚の相棒のゆうかだ。 片足を上げた微妙な姿勢で固まる俺。アホなことをやっている場合ではない。 俺はゆうかを抱き上げた。懸命に跳ねてきたのだろう、全身傷だらけだ。 再会を喜ぶのもそこそこに、応急処置をしつつ、ゆうかに何があったのかを詳しく訊ねた。 ゆうかは、ドススパークによってヘリが撃墜されたこと、同僚たちも負傷はしているが無事であること、 そしてオンバシラの発砲音を聞いてここまでやって来たことを話してくれた。 ヘリはここからそう遠くないところに落ちたらしい。 全員の生存が分かり、ひとまず安心するものの、悪い報せもあった。……ドスまりさ、か。 俺はちぇんに訊く。 「ちぇん、お前たちの群れのドスはどこで冬篭りしているんだ?」 「もりのなかの、どうくつだよー……」 泣き腫らした瞳は真っ赤だったが、ちぇんは気丈に答えてくれた。 「りぐるたちとはいつから一緒に暮らしていたんだ?」 「ちぇんたちのむれにりぐるなんていなかったよー。ちぇんははじめてみたんだよー……」 ちぇんは力無く体を横に振った。 最悪の可能性も考えていた方が良さそうだ。 俺はゆうかを抱え、ちぇんを乗せたかなこさまを連れて、同僚たちのもとへ向かった。 ◇ ◇ ◇ ヘリは数本の木を薙ぎ倒し、ローターを大地に突き立てる格好で墜落していた。 急いで駆け寄り、同僚たちの無事を確認する。 ゆうかとちぇんを機内に乗せて、かなこさまには見張りを頼んだ。 同僚は足を骨折していたが、命に別状はない。 俺たちの姿を見て、驚きと安堵のため息をついた。 「まさかとは思ったけど、やっぱりあなただったのね。…恩に着るわ。 かなこちゃんも、ゆうかも、本当にありがとう……」 「安心するのはまだ早いぞ。動けそうか?」 「そうしたいのは山々なんだけど、彼を動かせないのよ……」 そう言って同僚が指し示す操縦士は、計器類のパネルに頭をめり込ませいた。 「……本当に生きてるのか?」 「ええ、脈があるもの」 同僚が操縦士の腕を取り、俺も確かめた。なるほど、生きてる。 引っこ抜こうとするもビクともしない。……工具がないと駄目だな、これは。 とりあえず管理署を通じて救難隊に俺たちの現在位置と状況を伝える。 ドスまりさという単語を聞いて驚いていたが、あと1時間ほどで到着するとのことだった。 通信を終え、俺は同僚にりぐるたちのことを話した。 「……そうなると、あたしたちを攻撃してきたドスまりさも、 りぐるに寄生されている可能性が高いのね」 「恐らくな。今の俺たちじゃ対処できんから、救難隊が」 「お兄さんっ!」 かなこさまが叫んだ。 ヘリから飛び降り急いで駆けつける。 ヘリから10メートルほど離れた木立の中に、“それ”がいた。 粘液に濡れ、ヌラヌラと照り輝くドスまりさが俺たちを見つめていた。 ヘリの中の同僚も息を呑む。 「ゆうかたちを連れて逃げて……!」 「出来るかっ!」 そんなつもりなど毛頭ないし、第一この距離では逃げ切ることなど不可能だ。 俺はヘリを背にしてドスまりさと向き合った。 「ドスまりさ……いや、りぐるか? 立派な鎧を手に入れたな」 「なにをいってるの? どすはどすだよ。あんなむしけらといっしょにしないでね」 その声は怒気を含んでいたが、ドスまりさの目には確かに知性が感じられた。 ひょっとすると、りぐるに寄生されていないのだろうか? 僅かな希望を見出し、言葉を発しようとしたとき、ヘリからちぇんが飛び出した。 「どすぅううううううう!! あいたかったよぉおおおおおおおおお!! むれのみんながぁあああ……!」 歓声を上げながらドスまりさに跳ねていくちぇん。その顔は喜びでいっぱいだった。 ちぇんの姿を見た瞬間、ドスまりさは豹変した。 「ゆっがぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!! もういやだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」 半狂乱になりながら、ドスまりさはちぇんを跳ね飛ばした。 「にゃあぁっ?!」 大木に叩きつけられゴプッと餡子を吐き出し、そのまま動かなくなるちぇん。 一体何が起こっているのか分からないという表情だった。 巨体をくねらせ、ドスまりさは奇声を上げる。 「ゆひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ! どすはじゆうだよ! むれのみんなのことなんかしらないよ! しるもんか! ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! だからもうどすはつらくないよ! かなしくないよ! ゆっくりできるよ! あああ! でもいるんだよ! たくさんたくさんいるんだよ! まだまだまだまだ、あっちにもこっちにも! たくさんたくさんたくさんたくさん、いるんだよ! みんながどすをよんでるんだよぉおおおおお! まっててねみんな! どすがたすけてあげるからね! まもってあげるからね! だれにもてだしなんかさせないよ! このもりにはいってくるやつはみんなどすがころしてあげるからね! だからみんなもさっさとしんでね! ゆぎょひょひょひょひょひょひょひょひょ! ゆ~♪ ゆっくり~♪ しんでいってね~♪ ゆぎゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 その言葉、その表情が、このドスまりさが正気ではないことを物語っていた。 ヘリを撃ち落したのも、ただ単に森に近づいたというのが理由だろう。 あの群れの惨状を見て発狂したのだろうか? どうして洞窟から出てきたのか、などと考えている余裕は無さそうだ。 ひとしきり叫んだあと、ドスまりさはゆっくりとこちらを向いた。 憤怒に満ちた目で俺たちを睨みつける。 その凄まじい形相に気圧されて、俺とかなこさまはジリジリと後退った。 背中がヘリにくっつく。 ドスまりさはその場から動かない。 そのとき俺はある臭いに気がついた。この臭いは……。 ドスまりさはゆっくりと口を開け、ドススパークを撃つ体勢に入った。 万事休す。 最早これまでかと覚悟したときだった。 ドスまりさは突如「ゆぐぇえええっ……!」と大量の餡子を吐き出した。 餡子にまみれて出てきたのは、りぐるの死骸だ。 体を支配するには至らなかったものの、体内を食い荒らしていたらしい。 冬篭りをしていたドスまりさが目覚め、狂うわけだ。 俺たちがこんな目に遭う原因となったりぐるに、最後の最後で助けられるとはな。 一瞬の隙に俺はしゃがんで、起死回生の一撃を握り締めた。 姿勢を立て直し、再度ドススパークの発射を試みるドスまりさ。 その口めがけて、俺は足下の雪を固めて作った雪玉を投げ入れた。 俺の意図を測りかね、ドスまりさは構わずドススパークを撃とうとした。 その刹那、ドスまりさの口から炎が噴出した。 ヘリの航空燃料がたっぷりと染み込んだ雪が、ドススパークによって引火したのだ。 「ひゅごぉおおおおおおっ……?!」 口内から溢れ出た炎はドスまりさの顔面をなめ、豊かな金髪と黒帽子に燃え移った。 俺はさらに雪玉を投げつける。あっという間に火達磨となるドスまりさ。 「今だ! かなこさま!」 「わかったよ!!」 焼け焦げて脆くなった表皮に、かなこさまのオンバシラが命中する。 ボロボロと分厚い皮が剥がれ落ち、膨張した目玉がバチュンと破裂する。体中から餡子が流れ出てきた。 オンバシラの連射により下半分の支えを失い、遂にドスまりさは倒れた。 「いひゃひゃひゃひゃ! ゆっくりぃいいいいいいいいいいいいい……!」 哄笑しながら崩壊していくドスまりさ。 その狂った笑い声は、ドスまりさが完全に燃え尽きるまで森の中に響き渡った。 ◇ ◇ ◇ 俺たちの頭上に、1機のヘリがホバリングしている。 UH-60J―ブラックホークを改修した救難ヘリコプターだ。 降下してくるヘリを見上げながら、俺は同僚に訊ねた。 「……どうしてりぐるたちはあんな変異を起こしたんだろうな」 「さあね、放射線でも浴びたんじゃない? ゴジラみたいに。 あるいは宇宙からやって来た生命体と融合したのかもね」 「……まあ、考えるのは学者の仕事か」 交換研修とやらで日本にやって来た各国のゆっくり研究者・専門家たちは仕事熱心だ。 彼らの嬉々とした顔を思い浮かべる。 救難ヘリからロープが降りてきた。 俺は腕の中で眠るちぇんを見る。 ドスまりさに吹っ飛ばされたちぇんは、俺が持ってきていたオレンジジュースで一命を取り留めた。 独りぼっちになってしまったちぇんをどうしたものか。 ゆっくりらんを飼っている知り合いに打診してみようか。 まあ、俺自身も家族が増えるのは問題ないか。 地上に降り立った救難隊が、同僚と操縦士を搬送するのを見ながら、俺はそんなことを考えた。 再び空を見上げると、いつの間にか雪が降り始めていた。 * * * * * * * * * 森の奥深く、未だ人が訪れたことのない場所に、ドスまりさが棲みかにしていた洞窟があった。 内部には、数万年の時をかけて成長した鍾乳石や石柱が連なっている。 その洞窟の奥でりぐるたちは生まれ、ドスまりさとその群れを襲った。 そしてそこからさらに奥深く、光すら届かない場所に“それ”はいた。 「うにゅん…」 青白く発光する“それ”は、楽しい夢でも見ているかのような笑顔で、静かに眠り続けていた。 (了) あとがき 最後までお付き合いいただきありがとうございます。 作者はジョン・カーペンターが大好きです。 やりたい放題やってしまいましたので、次があればまた違った話に挑戦したいと思います。 書いたもの 『ふたば系ゆっくりいじめ 392 お前たちに明日はない』 『ふたば系ゆっくりいじめ 411 明日に向って飛べ!』 『ふたば系ゆっくりいじめ 430 幸せ』 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る エイリアンかと思ったらりぐるでしたか(‐_‐) -- 2013-07-18 08 10 52 つまり同僚の言ってた通り、りぐるはうにゅーの放射能を浴びておかしくなったのか(´Д`) -- 2011-08-02 20 33 22 エイリアンかと思った!こえぇ…ゆっくりでホラー作品を読めるとは… 面白かったです -- 2010-10-11 17 31 05 面白ぇ。ゆっくりたちの特性を生かした良作に仕上がってる。 -- 2010-07-18 04 42 24
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まだら じょにー りぐる