約 545,827 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4004.html
『ゆっくりつり』 今日、俺は近くの神社の祭りに来ていた。 休日で仕事も無く、たまには祭りでも行くかと思い来たのだ。 焼きそば、ラムネ、チョコバナナなど俺が祭りを堪能しているとあるものが目に入った。 「お!ゆっつりじゃねーか!」 目の前には大きな看板にカラフルな文字で「ゆっくりつり」と描いてあった。 「小さい頃、俺もハマって、2千円も使ってかーちゃんに怒られたっけ・・・。 懐かしいな、いっちょやっか!おっちゃん大人一人!。」 「あいよ。」 おっちゃんは座っている椅子の横から、餌付きの糸を取り出し、男に渡した。 「あー!ちっくしょう!」 そんな声が隣から聞こえた。どうやら小学生ぐらいの子が失敗してしまったようだ。 それもそのはず。ゆっくりつりはかなり難しいのだ。 ゆっくりつりのゆっくりは大きなプラスチックの桶に入っている。 そのゆっくりを小さい針の付いた竿で釣るのだ。 ちなみに餌は甘い匂いのする謎の練り餌である。 これは、男が少年の頃から変わっていない。 ゆっくりつりは、かなり簡単そうに思えるが、やってみると凄く難しいのである。 「うーん、やっぱまりさかな。簡単だし。」 まりさ種は好奇心が強いため餌に食いつきやすいのだ。 男は餌をまりさに近づける。 釣りのルアーのように美味しそうな動きをさせながら。 まりさは餌をジィーっと見つめている。そして・・・ 「・・・あまあまさんはまりさにたべられてね!!」 食いついた。 「来たっ!」 ここからが勝負である。 体力があるまま、上に引き上げると糸が切れてしまうため。 下でゆっくりを弱らせないといけないのである。 男は竿を縦に動かし、まず口に針を引っ掛けた。 「むーしゃ むーし…!? ぴぎぃ!! いじゃいぃぃぃ!!!」 男は引っ掛かったことを声で確認すると竿を横に動かし始めた。 「やめぢぇえええ!! いちゃいよおおおおおおおお!!」 ちなみに桶にはオレンジジュースが少しだけ浸してある。 弱らすときに、ゆっくりの皮が裂けるのを伏せぐ為や 針から抜け出したゆっくりの傷口を早く再生させるためである。 もちろん、栄養剤としての効果も含まれている。 「ぴぃいいいいいいいいいい!!! やめてにぇえええええええええええ!! ぢんじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 赤まりさの周りのゆっくりは赤まりさを哀れな目で見ている。 赤まりさもこのように学んだのに、それを活かせないのは餡子脳の故か。 赤まりさは床を滑らされ体力を消耗してきた。 死んだゆっくりを持ち帰っても意味がないので、 そろそろ男は釣り上げる事にした。 男の得意技『壁当て』だ。 方法は簡単、勢いをつけて壁にぶつけるだけだ。 「ゆあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! ぶちゅがりゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 ペチョンッ!! そんなよわよわしい音だが赤まりさには大ダメージだった。 「ち゛・・ぬ゛っ・・・! ち゛んじゃ・・・う゛っ・・・・!」 まりさはそんな事を言いながら男に釣り上げられた。 まりさの針を外し、オレンジジュースが浸ってあるお皿に入れた。 隣の小学生たちが 「すげぇー!!」 と言っている。少し気持ちいい。 おっちゃんが1匹釣り上げたので、もう一個餌を貰った。 持ち帰りは1人、2匹までらしい。 釣れなくても1匹貰えるらしい。 ちなみに、俺の地元では取れたら取れただけ貰える。 取れなかったら貰えない。 地元ルールがあるんだな・・・・・。 2匹目の獲物はどいつにするかはすぐ決まった。 あの、大きなありすだ。 明らかに大きいありすは、あのおっちゃんの罠だという事は分った。 しかし、男には分っていても挑まなければいけない時がある・・・! 「大きなありす」といってもテニスボールぐらいのサイズだ。 だが、さっきのピンポン玉赤まりさに比べれば凄く大きい。 男はありすの前に餌を落とした。 しかし、先ほどのまりさのように餌を動かすが反応はない。 口に穴の痕が多数有る事から、『餌は危険だ』 と言う事が頭に焼き付いているのだろう。 駄目か・・・、と思ったとき。 「あみゃあみゃな においがちゅるわ!! とかいはにゃ ありちゅに ぴったちでゃわ!!」 なんと、あの大きなありすの後ろに居た赤ありすが餌に向かって飛び出してきたのであった。 そして、赤ありすが餌に食い付こうとした時。 「ちびちゃんだめぇええええええええええええええ!!!」 「ゆ゛ッ!」 大きなありすが赤ありすに体当たりしたのであった。 その隙を見逃さず、男は大きなありすの口の中に餌を振り入れた。 「ゆっ!! ぴぃい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 浅く針を掛けるとハズれてしまうため、男は糸が切れるギリギリまで糸を張った。 どうやら、声からしてガッチリ、ハマったようだ。 それにしても、結果はともあれ。 貴重な餌を奪おうとした赤ありすに男は苛立ちを覚えた。 「・・・このチビが・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・。 ・・・・・・・良い事思いついちまった・・・・・・・・・!・・・。」 この大きいありすは子どもな為、親と言う事は無い。 それに、この性格からしてレイパーと言うこともないだろう。 そのため、同じありす種という事で仲良くなったのではないか。 大きなありすは良い個体だが、 赤ありすはさっきの行動と言え、ゲスの素質があるのではないだろうか。 「さっきのチビ助、捕まった大きなありすから逃げてやがる・・・・・。 やっぱりとんだゲスだな・・・・・。 まあいい、最高のお仕置きをしてやるよ。」 男は竿を横に動かした。 オレンジジュースのおかげもあってか、重い体でもぬるぬると動く。 「よし、滑るな。」 そう言って、男はありすが滑る事を確認すると、 赤まりさの時と同じように動かし始めた。 「い゛じゃい゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! お゛に゛い゛さ゛ん゛や゛め゛て゛く゛ださ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 体重のある分痛みも強いのだろう。 大きなありすは、赤まりさの時よりよく叫んでいる。 しかし、そんなのは関係ない。 男の目的は『大きいありすを釣り上げる』から 『ゲスチビをぶち殺す』に変わったからである。 大きいありすを滑らし続けながらもさっきのゲスチビを男は捜した。 「・・・・・・・・・・居た! あの野朗、角でやり過ごそうとしてやがる。」 男は大きいありすをその角目掛けて移動し始めた。 まわりのゆっくりはピー ピーいいながらありすを避けている。 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ゆ゛っく゛り゛でき゛ない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 大きいありすは竿に身を任せ、どんどん加速していく。 目標になっている赤ありすは、なにかが自分に迫ってきて恐怖に怯えている。 「く゛る゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ばでぃずは゛と゛か゛い゛は゛に゛ゃん゛だじょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!! ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ぴぃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そして・・・ 2匹は激突した。 ぐちゃり…と音を立てて。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆう?」 赤ありすは潰されなかった。 なぜか?、答は簡単 『角に居たから』 だ。 恐る恐る目を開けた赤ありすの前には 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」 体中からカスタードをはみ出させた大きなありすが居た。 「・・・・ゆ・・・・・・っ゛・・・・・・・ぐり゛・・・・じね゛っ・・・・・・! ・・・・ゲ・・・・ス゛・・・・・め゛っ・・・・・・!」 弱りきった大きなありすは男に釣り上げられた。 そして・・・・・赤ありすの上に落とされた。 「ゆぴゃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 赤ありすは死んだ。恐怖に怯えながら。 「あ~ ごめん、おっちゃん。1匹、関係ないの潰しちゃったわ。」 「ああ、別にいいよ。いっぱいいるしな。」 それだけの命であった。 それから、2匹のゆっくりを手に入れた男は神社を後にした。 そして、帰り道。 「あー、すっきりした。あのゲスチビの最後の表情最高だったぜ。」 「・・・・・ん?」 男の持つ、ビニール袋の中でなにかがもぞもぞしている。 男はビニール袋に目線まで持ち上げてみると 最初に釣り上げたまりさが動き始めたのだ。 人間で言う全身打撲だというのに、 約30分である程度まで動けるとは驚きの生命力である。 「・・・・・ゆ・・・・ゆう・・・?・・・・こょこょ・・・どきょ・・・・?・・・・・・・・」 「すげーなー ゆっくりって、まあいいや。」 男はビニール袋の結びを取ると、中からまりさを取り出し手のひらに置いた。 まりさは初対面の男に対して緊張しているのか、怯えているのかプルプルしている。 「ゆっ・・・ゆっくりしてい「 い た だ き ま す ! 」 まりさは口の中に放り込まれた。 「くちょくちょ・・・・うん! ゆっくりの踊り食いは最高だな!」 お わ り 補足(※ありすはスタッフがおいしくいただきました) あとがき 初投稿SSです。 批判お待ちしております。 きよ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3288.html
ここはゆっくり牧場。 のどかにゆっくりと暮らすゆっくり達。 「ゆっくりおいしくなるよ!」 「いっぱいゆっくりしてもちもちになるよ!」 みんな、饅頭としての誇りにあふれている。 少しでも美味しくなって、消費者に届きたい。 そんな願いを持っていた。 だが、牧場出身のゆっくりから大量の危険物質が発見されてしまう。 被害を抑えるため、同時期に出荷されたゆっくり達はすべて廃棄処分に。 「どぼじでええええ?!れいむおいじいのにいぃぃ!!ぢゃんどだべでよぉおお!!!」 「まりざ、きけんじゃないのにい!ちゃんとおいじぐなっだんだよぉおお!?」 「おねがいだがらだべでよぉおおっ!!」 牧場に返品されてきたゆっくり達は、みなプライドをズタズタにされていた。 せっかく美味しくなったのに。 せっかく一生懸命育ったのに。 「おねがいだよぉおお!!のござないでだべでええええ!!!」 とある家では、オヤツにゆっくりを食べている最中にニュースで事件を知った。 半分だけ食べられ放置されたれいむ。 その半分の眼には涙があふれていた。 痛いけど嬉しかった。 ちゃんと人間に美味しく食べてもらえていたのに。 自分の体のことは自分が一番よく知っている。 「れいむにはめらにんはいっでないのにぃいいい・・・」 「うるさい汚染饅頭!死んだらどうすんだボケクソ!」 あまい、と笑顔でいっぱいだった顔はそこにはない。 その目はまるでウンコでも見ているよう。 半分になったれいむは声をあげずにないた。 なんのために生まれたのだろう。 なんのために痛い思いをしたのだろう。 れいむは足りない餡子で答えを探したが、結局それは見つからなかった -- 2008-10-07 18 30 30
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/863.html
緑に彩られた日光が木々の隙間に差し込み、人の足に汚されていない苔むした地面に恵みを与える。 鬱蒼とした森に風が吹き、隣り合う葉が擦れ合い、ざわざわと喧騒の音を立てる 暗い大気に柱の如く天上から貫く光が間隙を縫う。森が立てる声に釣られるように、 地から無数の影が姿を見せ、日光を浴びて木々と共に騒ぎ出した。 「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 ゆっくり姫 ここはもはや忘れ去られた地。幻想の彼方の、そのさらに奥に、余人を立ち入れずひっそりと暮らす小さな集落があった。 かつて人の世に起きた争いに敗れ、安寧を求めて旅立った人間の子孫が暮らしている。 村の男たちは狩猟により糧を得、女たちは男たちの居らぬ間に家と村を守る。 村を囲む森に住み着いたゆっくりと呼ばれる饅頭 -貿易のために諸国を旅する商人が立ち寄った際にその正体を聞かされた謎の生き物- は、町の近傍に棲むものと違い、無闇と村に近づかず、森で狩人に出会っても声一つ立てずに姿を藪の中に消す。 人とゆっくりの違いを知り、また人の力を知るがゆえに、森のゆっくりは野生に生きることを選んだのだ。 当然それまでに数年の月日と幾万の殺戮があったわけだが。 ゆっくりが現れてから村は少しだけ活気を増した。 獣を狩る術に長けた男達は容易くゆっくりを捕らえ,行商人に売りつけたり 乾燥させたゆっくりを得がたい甘味の補充に充て,または樹液に浸して固め女達の 身を飾る装飾品とするのだ(ゆっくりイヤリング・ゆっくり数珠etc)。 そんな村に起こる難事など、年に片手で数えうる小さな問題でしかなかった。 まして、ゆっくりが人に被害を成す話など、赤子の寝物語に等しいものだった。 そんな村に、この日、考えもしない大事件が起こった。 ゆっくり達の声が異常に騒いでいる。捕食種とされるれみりゃやふらんに襲われたときよりもずっと。それは群れへの警告ではなく,純然とした恐怖による叫びだ。餡子の詰まった中身でも本能は雄弁に,それがどれだけ恐ろしいものかを告げるのだろうか。 森の奥深くから,白靄を払い,押しのけ,それは強引に進んできた。 黒い何かうじゅるうじゅると身を這っている。地に落ち,草花を腐らせ黒い沁みを残してそれはゆっくりと村に近づいていた。 森に棲むゆっくりの殆どはそれに踏み潰されていた。それの速度はゆっくりのその名に等しい歩みなど比にもならず,逃げ惑い絶叫するゆっくりどもをぶちゅり,ぶちゅりと物言わぬ黒ずんだ餡子の屑へと変えた。 しかし,それだけでは済まなかった。潰され,黒い触手のようなものに触れたゆっくりは融けるように短い声を発し,『それ』の身体を覆う得体の知れぬ何かに混じっていく。 『それ』はゆっくりの餡子を身に纏っているのだ。 いつの間にか,絶叫は消えた。ただ這いずる『それ』だけが木々をなぎ倒し村へと走り去っていった。 その村の中を,トナカイのような獣に跨り森の方へと駆けゆく男の姿。 目鼻立ち良く、背もすらりと伸びた姿はなかなかの美丈夫であるが、 長老たち老人一同からは好ましくは思われていなかった。 彼こそは、都に生まれたならば必ずや後世に名を遺しただろう、 いわゆる虐待お兄さん,である。 都ならば珍しくもないが,自然に隔離された集落ではその存在は稀有である。 生まれながらにしてゆっくりの死骸を両手に握りつぶしたまま産声を上げたと云われる 虐待の権化とさえ呼ばれることもあった。 ゆっくりを獣とみなし、森と自然の一部として畏敬する村の習慣を破り、森に出ては人知れずゆっくり知れず、 ゆっくりを狩り殺している。大人たちは所詮ゆっくりのこと故,声を荒げるようなこともない。また,青年の弓の腕前は村随一であった。およそ三町(300m)の距離にあるゆっくりを一打ちで7匹,すべて眼球を撃ち抜いたほどのものである。 青年の名はアシタカ。いづれは村長(むらおさ)の嫡子として長の座に着かねばならぬ身だが、そんな自覚などどこ吹く風で 今日も物置のゆっくりを補充すべく、厩舎に繋ぐヤックルと呼ぶ赤獅子にまたがって森へと駆けていった。 その姿を乙女たちがやや頬を赤らめて見送る。 いつの世もどこにいっても,イケメンは得をする。 垣根を伝い,ヤックルを駆る内にアシタカの前方から籠を背負う乙女の一団に向き合った。 「あにさま!」 一人の乙女が声をかけた。アシタカの妹である。 「ちょうどよかった。ひぃ様が皆村にもどれと。」 アシタカは村を出る前に司祭を務める老婆からの伝言を伝えた。 「じぃじもそう言うの。」 「じぃじが?」 村の重鎮である老人がそういうのならば,何かしら異変が起きようとしているのではないか? ゆっくり狩りに懸想していたアシタカの楽しみは打ち切られたが,異変ならば仕方もあるまい。 「山がおかしいって。」 「鳥達が居ないの」 「獣達も」 「ゆっくりも!」 ゆっくりが居ない?例え姿を隠したとしてもあの騒々しい声が消えるとは…? 「そうか…じぃじの元へ行ってみよう。みなは村に帰りなさい。」 アシタカは乙女達を村に急がせ,自分はヤックルを森の方角へと急がせた。 村より離れ,森の入り口に立つ見張り台。その上にいるじぃじの元へアシタカは向かった。 じぃじは異様な気配を森から感じ,近づいている悪寒に注目していた。 アシタカが見張り台を駆け上がるとき,既に『それ』の気配は入り口にまで達していた。「じぃじ,あれはなんだろう?」 「わからん。人ではない。」 「村ではひぃ様が皆を呼び戻している…」 「きおった!!」 じぃじが鋭く叫んだ。同時にアシタカは背の弓を構え弓をつがえる。 森の入り口が暗く曇った。その光景はなんともおぞましいものであった。 樹が瞬く間に枯れ落ち,黒い触手がうねうねと這い回りながら飛び出てきた。 巨大な,まん丸なものが光る一対の瞳を村へと向け,森から這い出てきた。 それが通り過ぎた後は抉る様に草が枯れ果ててていた。 「タタリガミだ!!!!」 じぃじが絶叫した。 タタリガミと呼ばれたそれが森の影から這い出んとしたとき,黒い触手が日の光を嫌うようにそれの身体から剥がれた。 その姿にアシタカは息を呑む。 見たことのある.いや彼には日常に馴染みあるその形。帽子を無くしているも,泥と餡子に塗れようと,金色の髪を逆立て,憤怒の相で突き進む姿は,ゆっくりのものであった。都の辺りに住まうという,ゆっくりまりさの巨大種,ドスまりさの姿である。 一度は剥がれた黒い触手は,再びドスまりさの身体を包み込み,黒い塊となって村への直進を止めようとはしない。その方向には見張り台があり,下にはヤックルがいた。 ヤックルはあまりの恐怖に身が竦んでしまい,アシタカの声も聞こえない。 アシタカはつがえた矢をドスまりさではなくヤックルの足元へ放った。 風を切る感触に正気を取り戻したヤックルがすんでのところで触手から逃れた。 ドスまりさは全力で見張り台に体当たりし,崩れ落ちる台の上であやうくアシタカはじぃじを抱きかかえて飛び移った。 怯むことなくさらなる直進を続けるドスまりさは真紅に鈍く光る眼をただ村にのみ向けている。 このままでは村が危ない。アシタカはじぃじを置いて自分も駆け出した。 「アシタカー!タタリガミには手を出すな!呪いをもらうぞ!」 じぃじの呼びかけを無視し,ヤックルに飛び乗ってドスまりさを追う。 ドスまりさの進行を遮るように前に出たアシタカはドスまりさを鎮めようとした。 「鎮まりたまえ!鎮まりたまえ!名のあるゆっくりの主と見受けたが,何故そのように荒ぶるのか!」 まさか自分が虐待したゆっくりの仇討ちにでも来たのか?とアシタカは邪推したが,ドスはお構いなしに走り続ける。鬼気迫る,を通り越して凄まじい悪意を込めてドスは村を目指している。 そこに,先程アシタカが出会った乙女達が居た。ドスまりさは乙女達に気づき,進行を変えた。 これはいけない,と乙女達は逃げ出し,アシタカはさらに呼びかけを続けるもまったく通用しない。そのうち,乙女の一人が足がもつれて転んでしまった。覚悟を決め,短刀を抜き払うが,そこに,併走してヤックルの上から,アシタカは弓を引き絞った。 瞬間。放たれた矢は正確に眼と思しき部位に命中した。 跳ね回る触手。暫しドスまりさの動きが止まった。その隙に乙女達は体制を整えた。 触手は天を仰ぐように暴れ回り,いくつかの奔流と化してアシタカの方に伸びてきた。 一部が,アシタカの右腕に絡みつき,力いっぱいアシタカはそれをちぎり取った。 第二の弓をつがえ,触手が剥がれて剥き出したドスまりさの脳天に,矢が突き立たる。 もはやドスまりさに力は潰えた。奔流はべたりと落ち,大地に穢れた澱みを残した。 ドスまりさの身体がぐらりと傾ぎ,横転する。 アシタカは,掴まれた右腕に燃やされるような激痛を覚えていた。濃硫酸を浴びせられたように煙を立てて蒸発する触手の一部に腕をどうにかされたのあろうか。 と,そこに村の一団が迫ってきた。火を焚き襲撃に備えていた彼らはドスまりさが倒れたことを確認するとアシタカに元に駆け寄った。 ヤックルから降りたアシタカは激痛にうめきながら,皆が近づくのを拒んだ。 「触れるな…!これはただの傷ではない!」 一人の村人におぶさり,祭司たるひぃ様がやってきた。 「みんな,それ以上近づくでないよ!」 ひぃ様は瓢箪から水を注ぎ,アシタカに腕にかけた。さらに激痛が走り,必死に耐えるアシタカ。 ひぃ様は倒れたままぴくりともしないドスまりさに近づいた。深く一礼し,語りかける。「いづこよりいまし荒ぶるゆっくりとは存ぜぬも,かしこみかしこみ申す…。 この地に塚を築き,貴方の御霊を御祭りします。恨みを忘れ,鎮まり給え…。」 しかし,ドスまりさは光を無くした虚ろな瞳を向けて呪詛を吐いた。 「うぎぎぎぎぎぃぃ…ぎぎ…汚らわしい人間どもめ…!!我が苦しみと憎しみを知るがいい…!」 ドスまりさの身体は,途端に腐敗を始め,皮だけになり餡子をぶちまけて死んだ。 餡子の臭気が辺りに拡がる。凄まじい悪臭である。 その晩のこと。 貴重な灯油に明かりを燈し,村の重鎮たる者が合議の間に残らず集結した。 居並ぶ姿には沈黙のみ。老人達の視線は,中央に座すアシタカとひぃ様に向けられている。 ひぃ様は,占いを執り行っている。余人には知れぬ不思議な文様の布に,幾つかの石と,木切れ,獣の骨,凄まじい形相で凝り固まった琥珀ゆっくりの欠片を無造作に投げ, その吉兆を何やら伺っていた。 ぱちぱちと空気に弾ける火の粉の音に,やがてひぃ様の口が重く開いた。 「さて,困ったことになった。これは厄介なことだよ。かのゆっくりは,遥か西の国からやってきた。村より遠く,西の都からだよ。 深手の毒に気が触れ,身体は腐り,ゆっくりにあるまじき走りに走り,呪いを集め, タタリガミになってしまったんだ。 それほどの強い憎悪に支えられ,1頭のドスまりさが棲んでいた森を離れてここまでやってきたんだ。」 「アシタカヒコや。皆に,右腕を見せてやりなさい。」 頷いて,沈黙を保ったままアシタカは包帯を巻いた右腕を,ゆっくりと布を解き,居並ぶ老人の視線に差し出した。老人達はわずかに身を乗り出し,くぐもった苦鳴をもらした。 握りしめられた拳からやや上,黒ずんだドスまりさに咬まれた付近から,赤茶色の痣が 拡がっていた。 ゆっくりと吐き出された餡子がこびり付き,拭こうとも洗おうとも取れないのだ。 「ひい様…!これは…!」 「アシタカヒコや。お前には自分の運命を見定める覚悟があるかい。」 「はい。あのゆっくりに矢を射るとき,覚悟を決めました。」 「その餡子はそなたの肉に食い込み,骨まで腐らせる。やがてそなたを殺すだろう。」 ひぃ様のすべてをぶち壊すような宣言に,たまらず一人が叫んだ。 「どうにかならぬのですか!?このような,村をまとめる若者が」 「アシタカは村を守り,乙女達を守ったのですぞ!」 「ただ死を待つしかないのは…」 老人達の嘆きは次々と叫びとなった。かつて村にゆっくりが現れた当初,畑や森を荒らされ苦しめられた記憶を思い出していた。やがて静まるまでにどれだけ被害が出たか。 今,村長を継ぐべき青年がゆっくりの呪いに取り殺されようとは。 悔しさが怒涛のように渦巻いてゆく。 「誰にも定めを変えることはできない。 ただ,待つか自ら赴くかは決められる。見なさい。」 ひぃ様が何かを取り出し,ごろりと転がした。 鉄のようなそれは,丸い塊で,占いに用いる琥珀のゆっくりに劣らぬ苦痛の表情を浮かべていた。確かにそれはゆっくりである。しかし,その表皮のみならず中身までもが異常な硬度と重量を備えている。 「あのゆっくりの身体に食い込んでいたものだよ。骨を砕き,はらわた(餡子)を引き裂き,むごい苦しみを与えたのだ。」 アシタカの顔面に少しだけ興味の色が浮かんだ。虐待お兄さんとしては当然の反応かも知れぬが,明らかに場にそぐわなかった。誰も突っ込まないが。 「さもなくばゆっくりがタタリガミなぞになろうか。 西の国で何か不吉なことが起こっているんだよ。その地に赴き,曇りのない眼で物事を見定めるなら,あるいはその呪いを絶つ道が見つかるかもしれん。」 老人の一人が口を開いた。 「ゆっくりの戦に破れ,この地に潜んでから500猶予年。今やゆっくりにかつての勢いはない。(虐待の)将軍どものやる気も折れたと聞く…。だが我が一族の血も衰えた。 このようなときに,虐待の長となるべき若者が西へ旅立つのは定めかもしれん。」 アシタカは,短刀を取り出すと己の髪に当て,すぱりと髷を落とした。 老人が瞼を押さえる。色々と情けなくて泣き出したのだ。 「掟に従い見送らん。健やかにあれ。」 アシタカは一礼し,旅の準備を整えるべく祭殿を離れた。 ヤックルと共に,静まり返った村を横ぎるアシタカの元に,一人の少女が駆け寄った. 「あにさま!」 「カヤ!見送りは禁じられている!」 「お仕置きは受けます!どうか,これを私の代わりにお供させてください!」 少女が差し出したのは,光る石より作られた小さな小さな小刀であった。ゆっくりの形相が描かれている。否,ゆっくりが埋め込まれているのだ。 「大切な玉の小刀じゃないか!」 「お守りするようゆっくりを埋め込みました!いつもいつも,カヤはあにさまを想っています!きっと…!きっと!」 「私もだ。いつもカヤを想おう。」 アシタカはヤックルを駆り,真っ直ぐ村を離れた。 壮大な森の景色に,やがて朝日が光を撒く。 道なき道を駆け,餌を取りに降りてきたゆっくりを叫ぶ間もなく踏み潰し,餡子溜まりの中を西へと急ぐ。 ゆっくり姫 第一 続く こんにちは あるいはこんばんは もしくはおはようございます ごめんなさい。 VXの人です。 もののけ姫のパロともなんともいえないものを書いてみました。 虐待?でしょうか?なんでしょうか。 僕は疲れています。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2902.html
かつてはたくさんのゆっくりが生息していたこの森も 急速に近代化が進んだ影響で木々が切り倒され巨大な重機により平坦なさら地へと変化していった。 しかし、森の奥のゆっくりプレイスに生息する、れいむとまりさの一家は そんな事を知る術もなく今日もゆっくりと平和に過ごしていた。 「ゆっくり〜していってね〜♪ゆっくり〜♪」 「「「ゆっくち〜していっちぇね〜♪ゆっくち〜♪」」」 お歌を唄う親れいむと赤ちゃんれいむ3匹 その傍には子まりさと赤ちゃんまりさ3匹。 岩肌の頑丈な窪みに雨水がたまり、2メートル四方程度の水溜りが出来ており それを囲むようにして赤ちゃんれいむと同じ大きさのピンポン玉くらいの赤まりさが 熱心に子まりさの話を聞いている。 「この水溜りなら落ちても大丈夫だから、ゆっくり練習していってね お帽子をこうやって逆さにして枝で押さえてから真ん中に跳び乗るんだよ!」 「ゆっ、むずかちいよ!」 「おぼうしさん、ゆっくりうごかないでね!」 「ゆゆゆっ!」バシャーン! 1匹の赤まりさがバランスを崩して水溜りに落ちる。 子まりさは慌てずに、かつて自分の親まりさがしてくれたように口にくわえた枝を伸ばし 水溜まりの赤まりさを突っつくようにして水溜りの浅い部分へ押し出してから岸へ上げる。 「ゆっくりでいいから慌てないでおぼえてね!」 そこへ遠くからぴょ〜ん、ぴょ〜んとゆっくり独特の跳ねる音がして 親れいむ赤れいむもお歌をやめ、子まりさも赤まりさもその音のほうへ集まってきた。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」」」 子まりさよりも一回りもふたまわりも大きい親まりさだ。 森の奥はまだ人間の手が入っていないため自然の果実や木の実、餌となる虫達が豊富にあり 親まりさ1匹が午前中だけ狩に行くことで十分一家全員の食料と蓄える分を持って帰ることが出来た。 「今日は、苺とリンゴがとれたよ、虫さんは乾かして食べるものがないときに食べようね!」 親まりさの帽子は収納スペースが多分にあり、ひっくりかえすと 丸々と完熟した苺が20個と真っ赤なリンゴが4個、それにバッタ等の虫が半分は生きたまま ワサワサと蠢いていた。 「ゆ〜ん、ばったさんおいちちょうだよ、ゆっくりしてるよ!」 1匹の赤れいむがお尻をピコピコとしながらこびこびに前に進み出て、果物よりも 生きのいい虫の方に興味心身だった。 巣から近い蟻の巣は赤ちゃんたちが面白半分で狩りつくしてしまったため、生きている虫も珍しいのだ。 「だめだよ、虫さんは保存が利くから今食べたらもったいないよ!」 「そうだよ、お母さんれいむの言うとおりだよ」 親れいむと子まりさがそう赤れいむに注意した。 「ゆ〜、れいみゅはいきてるばったさんたべちゃいよ!」 巣穴の近くの蟻の巣が全滅したのは、この赤れいむともう2匹の赤れいむで巣穴を見つけては そこにおしっこをして蟻が溺れるのをみて楽しんだり 「これは、せいさいだょ!」・・・と 巣穴を掘って、そこにうんうんをして塞いだりしたせいである。 親まりさは時々は子まりさを連れて行っては狩を教えていたが、大きくなるまでは森も危険だから 赤れいむは過保護に育ててきた。 その結果、赤れいむ3匹はゆっくりの中でも少々わがままに育っていたのだ。 「いいよ、今日はばったさんを食べようね!まりさが明日また頑張ってもっと虫さんとってくるよ!」 「ゆっ・・・」 親れいむは親まりさに子供の教育によくないよと促そうと思ったが まりさの左ほほに小さな切り傷を見つけると、それ以上何も言えなかった。 きっと虫を追いかけて小枝で傷つけてしまったのだろう。 本当はゆっくりしたいだろうに、そんなまりさが自分のつがいである事がれいむには誇りに思えた。 「ぺーろ、ぺーろ」 「ゆっ、れいむくすぐったいよ!」 そのほほ傷をれいむは舐めてあげた。 ゆっくりの体は饅頭なので皮も小麦粉に良く似ている 故に、水分で湿らせて伸ばせばたちどころに小さな傷くらいなら塞がるのだ。 自分自身の舌では届かないため、こういったグルーミングはゆっくり間でよく見る光景である。 「それじゃあ皆、今日は苺さんと虫さんをいただきますしてりんごは明日のごはんにしようね!」 「ゆっくり、いただきます!」 「「「「「いちゃだきます!」」」」」 「むっちゃ、むっちゃ、しあわせー!」 「バッタさんゆっくりまっちぇね!にげないでにぇ!」 その夜 「おかーしゃん、すーりすーり」 「みゃみゃのほっぺはおもちみたいにやわらきゃいよ」 赤ちゃんれいむも赤ちゃんまりさも親れいむと親まりさにすりよって眠る。 子まりさも昼間は姉妹の手前、親に甘えないようにしていたが眠るときは姉妹と一緒に 親れいむと親まりさの間に挟まれるように寝息をたてる。 「みんな、明日もゆっくりしようね。」 こうして、ゆっくりプレイスの平和な一日が過ぎていった。 これがゆっくり出来る最後の一日だとは知らずに・・・。 朝、「ゆっくりしていってね!」の声で 一斉に目を覚ますのがゆっくり一家の通例である。 しかし、今朝はゆっくりの声ではなく不快な機械音によって覚醒させられた。 ガガガガ・・・ゴゴゴゴ ドドドドドド・・・ガガガガガー 「ゆっ?なんのおと・・・ゆっくりできないよ」 「ゆゆ〜ん、うるしゃくてゆっくちできにゃい」 巣穴の外には見たこともない巨大な鉄の塊が木を薙ぎ倒していたのだ。 ブルドーザーやパワーショベルといったいわゆる重機である。 とうとう、このゆっくりプレイスにも近代化の波が押し寄せてきたのだ。 「よーし、ここにプレハブおったてて開発工事の拠点にするべ」 重機が止まると、ヘルメットを被ったTシャツに作業ズボン首タオル姿の40歳前後の男が降りてきて あたりを見回し、そう呟いた。 ゆっくり一家の巣穴周辺は森の中にぽっかりと切開かれた平地になっていたため 重機や機材、工事関係者が住むための仮設住宅を建てる場所にうってつけだったのだ。 一家の眠りを妨げられ、自分たちの縄張りに侵入してきた生き物がいる 大黒柱である親まりさは先陣を切って抗議をするため巣穴の偽装を取り除き表にでた。 「ゆっくりしないで、その音を止めてね! それからまりさのおうちからでていってね!」 「「「ゆっくちでちぇいっちぇね!」」」 その後ろには、危ないから出てこないでねという注意を無視してついてきた 赤れいむが3匹 巣穴の中には親れいむと子まりさ、赤まりさが不安気に外を眺めている。 「あ〜ん?なんだゆっくりじゃねーか」 「おお、なんだよまだ森に残ってたなんて珍しいな」 「こりゃ、例のあれにつかうべか」 よくみると、重機にいた人間だけではなく、ぞろぞろと似たような風体の男たちが次々と増えて 親まりさに近づいてきた。 今この場に15人の男がいるのだが、ゆっくりからしてみれば3以上は数え切れないため およそ3人より多い そういった認識になる。 親まりさは自分の言葉が無視されたことで 話し合いの余地はなし、先手必勝にして倒すべし そう直感し勢いよくぴょーんっと跳びかかった。 実際、この森ではゆっくり以外には小動物も見当たらず せいぜい、ゆっくりの次に強いのはカマキリ、それから少し大型のかたつむり まりさは先手必勝の理論でほぼ無傷でそういった強敵を排除してきた実績があった。 時には多勢に無勢、20匹もの蟻に囲まれたこともあったが 勇敢なまりさは家族を守るために容赦なく飛び掛り押しつぶし、圧倒的な戦闘力の差をみせつけ 後悔させるまもなく命を奪ってきたのだ。 「ちょっ、やる気だぜこの饅頭」 一番まりさに近い位置にいた少し若い30半ばの男がヒョイとまりさと体当たりをかわす。 まりさにしてみれば自分の攻撃が回避されるのは始めての経験であった。 「ゆゆっ!」 たらり、とまりさの額に汗がにじむ。 ゆっくりとはいえ栄養状態が良い成体はバスケットボールよりも一回り大きく 重量はマッチョのダンベルに匹敵する。 柔らかいとはいえ修学旅行の枕投げよりは強い衝撃がある事うけあいだ。 かといって、人間からしてみれば子供でも成体ゆっくりに負けるわけがないのだが この三十路男は、勇猛果敢な親まりさと少し遊んでみたくなった。 さっきまでガニ股だった三十路男は、バイクのニーグリップをするようにやや内股に構えなおし 左半身を前に半身になって、右足かかとの重心を浮かせて爪先立ちのような格好をとる。 右こぶしは自身の顎の辺り、左こぶしは鼻先前から垂直に前に置いて肘をやや伸ばしている。 男の仲間たちはニヤニヤと笑いながら、男が一発でもまりさにからだを触れさせるかどうか タバコを賭けていた。 「おかーしゃんがんばっちぇ!」 「ゆっくちじじいをやっちゅけちぇね!」 「じじいはゆっくちちんでね!」 赤れいむ達の声援。 「ゆゆ!ゆっくり潰れてね!」 まりさは再度、男の顔面をめがけて飛び掛る。 その刹那、まりさの鼻のあたりにパッっと火花がとぶ錯覚を覚えた。 三十路男の左肘が鞭のようにしなり、手首のスナップを利かせてピシャッとまりさを叩き落したのだ。 ヒュー!っと男の仲間から口笛が鳴る。 まりさにも赤れいむにも何が起こったのかわからない。 一歩も動いていない男の前に見えない壁があるように弾かれたのだ。 「ゆゆぅ?」 体重が乗らないよう手加減があったため、まりさはさほどダメージを受けていない 再度、男に飛び掛る。 ピシャ!ヒュッ、ピシャ! 「ゆべぇ!」 グシャっとまりさが顔面から地面に崩れ落ちる。 今度は赤ゆっくりにも見えた。 一発目はやはりなんらかの見えない壁に阻まれた様でわからなかったがが、同時に男の足がススッと動くと まりさが落ちる前に、ペニペニのあたりに左手の手の甲で払うように叩いていた。 幸い、まりさのペニペニは発情しなければ内臓されているため 人間の様にタマタマを打ち付けることがないためダメージにはなってない。 しかし、まりさには何が起こったのかやはりわからず 「どぼぢであだらないのおぉぉぉお!」 と喚いていた。 今度はまりさは一旦後ろに退き、助走をつけて飛び掛った。 いまだかつて、どんな生物にも使ったことがないまりさが思いつく限り最大最強の必殺技である。 おそらく同サイズのゆっくり相手にならかなり効果的な攻撃方法であろう。 「ゆっぐりじねぇぇぇえ!」 ニヤリ、三十路男はスッと左こぶしをさげると キュキュッっと足先で体重移動を行い、垂直に跳んで来るまりさの産道の当たりめがけて いままで使っていなかった右こぶしを動かした。 半ひねり加えて肩まで前のめりに体重を乗せて放つ渾身の右 人間でもひとたまりのない高速のストレートがまりさの産道にめり込んだ。 「ぶぎゅがぎゃああぁ・・・」 わけのわからない奇声をあげて地面に突っ伏すまりさ。 ぴくぴくと痙攣しながら、水分が放出され失禁していることがわかった。 赤れいむ3匹は、親まりさのしーしーに濡れないように 「ゆっ、きたないよ!」と遠ざかった。 そして、しばらく間をおいて まりさは相変わらずピクピク痙攣しながら 「まりざのたまたまがぁぁぁああああ・・・」 などと泣きじゃくりはじめた。 それを聞いた男たちは大いに笑い 「まりさのたまたまがぁ♪」 「うははははは」と腹を抱えた。 その惨状を離れた巣穴から見ていた親れいむは涙を流しながら 巣穴の隠すために偽装の枝を口に加えて並べ始めていた。 子まりさは、赤ちゃんたちがまだだよ!と訴えたが 「ごめんね、ごめんね!」と呟きながら巣穴を塞ぐ作業に没頭していた。 「おう、おまえら遊びは終わりだ!仕事にかかれや!」 60代の男がドスの聞いたよく通る声で一括すると 男たちは 「よーし、仮設トイレから設置するぞ」と赤れいむ3匹を手に取る。 いまだ痙攣を続ける親まりさを足でつつき 「巣穴はどこだ?れいむ種がいるってことは、親のれいむがいるってことだろ?」 と巣穴の場所を聞いた。 まりさは 「ゆぐぐぐ・・・まりさに子供はいないよ その赤ちゃんもまりさと関係ない、人間に飼われてる赤ちゃんの子を預かってるものだから ゆっくり逃がしてあげてね・・・」 精一杯の嘘に男は「なに、飼いゆっくりの子だって!?」と一瞬動揺するが 赤ゆっくりの 「おかーしゃん、どうちてうちょつくのー!れいみゅはおかーしゃんのこどもだょ!」 という言葉ですぐに無駄になってしまった。 ペッっと唾を吐くと 足でドスンとまりさに重みをかけ 「もう一度聞くぞ巣穴はどこだ?」と問い直した。 「まりざはてんがいこどくだよ・・・だからその赤ちゃんは」 「れいむちゃんよ、巣穴はどこだ?」 赤れいむを握る手に力を少し込めると 「ゆゆ〜、くるちいよ!れいむのおうちはすぐそこだよ!」とあっさり場所を教えた。 男はまりさを踏みつけていた足に体重をかける。 「ゆっ・・・」 ブチッ 頭部を踏み抜く事が、これから起こる不幸に対するせめてもの情けであった。 「へーい、おこんにちわー」 ビクッっと口に加えていた小枝を落とす親れいむ ほとんど巣穴を塞ぐ作業は終了していたが、結局赤れいむにより場所が明らかになり 簡単に偽装は取り除かれ、たった一つの出口から容赦なく人間の手が入り込んできた。 子まりさは自分の後ろに赤まりさを隠しぶるぶると震えている。 ここに人間が来たということは、あの強いお母さんまりさはもう殺されてしまったのだろうと直感した。 親れいむも子まりさも声を立てないように震えていたが、そんな事はもはや意味をなさず ひょいひょいと人間の手につかまり捕らえられていった。 赤まりさは感極まって「ゆえ〜ん」っと大泣きを始め そのせいで暗がりの奥にいた赤まりさは見つからないはずだったのにあっさりと一緒に捕らえられ 先に死んだ親まりさを除いて一家全員が虜となった。 「よ〜し、今日からお前らにはこの簡易トイレの中で働いてもらうぞ」 「くちゃい〜」「ゆっくちできにゃい〜!」 「ゆゆゆ・・・赤ちゃんだけでも助けてあげて!」 と喚いたが、一匹残らずトイレのいわゆるボットン部分に落とされた。 工事現場の簡易トイレは水道のある場所であるなら水洗式にもなるが このような辺鄙な森では汲み取り式となる 人間の糞尿の始末をするために一家はボットンにおとされたのだ。 すぐにお昼休憩となり、次々と工事現場の男がトイレにかけこみ用をたす 主に小便が多い。 上からジョロローっと落ちてくる臭い汁に親れいむも赤れいむも自分の体にかからないように 壁いっぱいに逃げた。 子まりさと赤まりさはお帽子を傘のようにして耐えている。 「ゆっくちこないでね!しーしーきちゃないよ!」 やがて、小便は溜まってきて 壁に避けても足元が濡れるようになってきた。 一家全員泣きつかれたおめめに、再び涙がにじんでくる。 「すーぱー、うんうんたーいむ♪」 次にトイレに入ってきた男は親まりさを痛めつけたあの三十路男だ。 よっと和式の便座にうんうんスタイルで構えると ブババッっと汚い音とともに、リアルうんうんが降り注いだ。 これはしーしーの比ではない。 悪臭と不快な重量感にまりさ達も壁沿いに逃げた。 赤れいむと親れいむが壁を占拠していたため、おしあいへしあい結果 1匹の赤れいむが壁から押し出されて、リアルうんうんの直撃をうける。 「ゆぎゃあぁああ!ゆっくちできにゃいよぉぉおお!」 ピンポン玉くらいしかないその体はリアルうんうんに埋没し 脱出するためにはそれを食すしかなかった。 手足のないゆっくりは口でしか、物を動かすことが出来ないのだ。 壁際に逃げられたまりさ達は、それが自分達の明日の姿だとゆっくり理解し 親れいむと一緒にゆんゆん泣いた。 次の日にもなると、簡易トイレは便と小便でいっぱいになってきて やむなく親れいむが、餡子をはきながらぐびぐびと飲んだり、んぐんぐと塊を体内に押し込んだ。 「ゆっくり見てないで、みんなもやってね!」 と叱ったが、甘やかされた赤れいむはもちろん、赤まりさもそれを拒否して しかたなく子まりさが一緒に食べた。 「にがいよぉぉおお、くさいよぉぉおお・・・ゆっくりできない・・・」 やがて、初日にうんうんに埋没した赤れいむが半死半生で外に出ようとしたが 一心不乱に食べる、親れいむはついつい赤れいむをかじり飲み込んでいた。 「いちゃいっ!れいみゅだよ!かわいいかわいいれいみゅだよ!」 そんな声は届かず 懐かしい甘みに「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」と声を漏らした。 子まりさは、赤れいむが食べられたところを目撃してしまい 顔を真っ赤にして親れいむに体当たりをする。 「どぼじでまりさのいもうとをたべちゃうのぉぉおお!」 親れいむは正気に返り、また泣いた。 簡易トイレ生活から数日、便は食べることが出来ても リアルしーしーは床に溜まってきて、とうとう赤れいむ2匹がとけだしてしまった。 「もっとゆっくりしたかった・・・」「うへっへ♪ゆっくり〜♪していっちぇ・・・♪」 子まりさはお帽子を逆さにして水に浮き、赤まりさも右にならえで帽子に乗る しかし、赤まりさの1匹はどうしても帽子に乗ること出来なくて 親れいむの頭に乗せてもらった。 成長して大きくなればきっと水に浮くことが出来るからねと、その赤まりさをはげましたが その夜、寝てる間に赤まりさはおちてしまい、それに当たってしまったもう一匹の赤まりさも水没してしまった。 親れいむは2匹を助けたかったがすでに底面がふやけてしまい 2度と歩くことの出来ない体になっていた。 もはや出来ることといえば残された、子まりさと赤まりさのために少しでもリアルうんうんを食べてあげるくらいだ。 2週間が過ぎた。 親れいむのからだもずっと漬かっていたせいかダルマおとしのように足は完全になくなり スライム状になって、最後には目まで解けて無残な姿を晒していた。 子まりさにも赤まりさにも、もう親れいむが生きているのか判別することが出来なくて ただ、ただ一生懸命 リアルうんうんの始末に追われていた。 2匹には希望があった。 うんうんに潰されないようにしーしーだけでこの簡易トイレを満たすことが出来れば 水かさが増して最後には外にでることができると・・・。 「ゆっくりがんばってね!」 「いっちょにいきのこりょうね!」 簡易トイレが設置されてから一ヶ月が過ぎた。 あともう少し、しーしーをしてもらえれば自分たちは助かる。 そんな思いから人が入るたびに 「ゆっくり、しーしーしていってね!」 「しーしーしてくれてありがちょうね!」と言うようになっていた。 これは男達から見慣れた光景である。 親まりさがいると脱出できる水かさが早めに達してしまうため どのみち早めに処分をするが、最終的にまりさが生き残るのだ。 やがて工事の期日が近づいてきて、そろそろ簡易トイレを撤去しようということになった。 いまでは森は完全に消えていて、そこにはクライアントの館が建っており もし、まりさがその館の窓を割っておうち宣言をしたりしたら困りもものだ。 だからどうしても生かしておくわけにはいかない。 最終日 簡易トイレに、あの三十路男がやってきた。 子まりさも赤まりさも巣穴から親まりさを痛めつけるところを見ていたため どうしても、その男が来るとはらわた煮えくり返り 愛想よくする気にならなかった。 「お前ら、ご苦労さん これはお前らの巣穴にあったリンゴだ。」 「ゆ?」「ゆゆ?」 2匹はあの日のことを思い出した。 赤れいむが我侭を言って、苺と虫を食べることになり リンゴは次の日にとっておくことになったのだ。 もちろん、ずいぶん時間がたってそのリンゴは腐っている これは男が市場で買ってきたリンゴだ。 そんなことはゆっくりにはわからないし、三十路男は余計なことを言うつもりはない。 フンっ!と両手で力を込めるとリンゴは握力で砕け 食べやすいように、そしてお帽子が沈まないように小分けにされて2匹に渡された。 子まりさも、赤まりさもゆっくりプレイスにいた事を思い出しながら 泣きながらリンゴをむさぼった 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 そして、便座を木の板で塞ぎ その場を後にした。 過去の作品 ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 まりさの皮を被ったアリス 肥料用まりさの一生 ゆっくっきんぐ ドナーツ編 可愛そうな赤ちゃんにゆっくり恵んでね ゆっくりしなかった魔理沙と愛のないアリス ゆっくりクアリウム 作者:まりさ大好きあき
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1646.html
(注)何の罪も無い、純粋で心優しいゆっくりが酷い目に遭います。 ゆっくり姉妹 前編 ある秋の休日、僕は自宅の庭でデッキチェアに寝そべり、のんびりと過ごしていた。 夏が終わった事を実感させる爽やかな風が心地よい。 すぐ側のテーブルに用意しておいたクッキーを食べながら紅茶を飲む。 とても穏やかな時間。だが、同時に孤独な時間でもあった。 誰か、訪ねて来てくれないかな、と思っていると、突然やかましい声が響いてきた。 「ちょうちょさん! ゆっくりまってね!」 子供のように甲高く、キンキンと頭に響く声。声の主はゆっくりまりさだった。 どうやら蝶を追いかけてここまでやって来たらしい。『まって、まって』と騒ぎながら、蝶の後ろを飛び跳ねている。 僕の家は森に囲まれているので、リスや鹿が庭に迷い込んでくることはあったが、ゆっくりは初めてだった。 小さく溜息をつく。確かに先程、来客を願ったが、こんなのが来るとは。 僕は騒がしい奴や、むやみやたらに動き回る奴が嫌いだった。 だが、身体を起こして追い払うのも億劫だったので静観することにした。 そのうち蝶と一緒に庭から出て行くだろう。 しかし、そんな僕の思惑とは裏腹に、まりさは僕の存在に気がついたようだ。 ヒラヒラと逃げていく蝶を放って置いて、ぴょんぴょんと僕の方に向かって来る。 そして、太陽のように輝く笑顔でお決まりの台詞を言う。 「ゆっくりしていってね!」 まりさは『してやったり』と言わんばかりの達成感に満ちた顔で僕を見つめている。 勝手に人の庭に入ってきて、ゆっくりしろとはどういう事だ。 鬱陶しい、と思ったが、相手をするのが面倒なので、僕はただ冷ややかにまりさを見下ろしていた。 相手にされないと分かれば何処かへ行ってしまうだろう。 「ゆゆぅ…」 まりさは何らかの反応が返ってくる事を期待していたのだろう。 僕の顔を上目遣いに見つめながら、寂しそうにしている。 『ゆっくりしていってね!』とでも言い返して欲しかったのだろうか。 さあ、もう行ってくれ。僕はお前の言うとおりゆっくりしたいんだ。静かにね。 だが、その時。まりさはテーブルの上にあるクッキーを発見した。 「ゆ! おいしそうなクッキーだね! まりさ、クッキー大好き!」 だからどうした。早く消えてくれ、だんだんイライラしてきた。 「いいなあ…たべたいなあ…」 まりさは、ちらちらと僕の顔に甘えた視線を投げかけてくる。 これは駄目だ。何らかの行動で拒絶の意思を表さないと、こいつはここでクッキーをねだり続けるだろう。 そこで僕は、この甘ったれた人面饅頭の顔に、飲みかけの紅茶を無言でぶちまけた。 「ゆ゙ぎゃあ゙あ゙あ゙!!あづい゙!!!!あづいよ゙お゙お゙お゙お゙!!」 淹れたてではないが、それでも80度くらいの熱い紅茶を突然浴びせられ、まりさは苦痛に転げまわる。 そして、泣きながら庭の外の森に逃げていった。 これでゆっくりできる。僕はそう思いながら、高く見える秋の空を仰ぐ。 青い空に映える、ふかふかの絨毯のようなうろこ雲が美しかった。 まりさが森に消えてからも、僕は何をするでもなくデッキチェアの上で過ごしていた。 僕には、仲の良い友人や恋人などはおらず、熱中するような趣味もなかったので、休日はいつもこんな調子だった。 こうやってのんびりと過ごす事は好きなので、まあまあ幸福だったが、時々、無性に寂しくなる事があった。 『犬でも飼えば、寂しさを感じなくなるのかな』 そんな事を考えながら目の前に広がる森を眺めていると、不思議なものが見えた。 ぽよんぽよんぽよん 木々の間を縫って、二つのボールがこちらに跳ねて来ているのだ。 目を凝らしてよく見ると、それはボールではなく、二匹のゆっくりである事が分かった。 顔面にうっすらと赤い火傷の跡がある、金髪に黒い帽子のゆっくり。 こいつは先程のまりさだろう。そしてもう一匹は黒髪に赤いリボンのゆっくり、ゆっくりれいむだ。 なるほど、仲間を連れて仕返しにやって来たということか。 そんな事を考えているうちに、二匹のゆっくりは庭に侵入し、僕のすぐ側まで接近していた。 遠くから見ると二匹とも同じ大きさに見えたが、こうして近くで観察するとれいむの方が一回り大きい。 まりさはれいむの陰に隠れて、不安げに僕の様子を伺っている。 それかられいむに向かって、小さく『おねえちゃん…』と呟いた。この二匹、どうやら姉妹らしい。 れいむは自分の後ろで縮こまっている妹に優しく微笑み『大丈夫だよ』と言った後、僕の方に向き直る。 「おにいさん!」 れいむは、大きくは無いが良く通る声で僕に話しかけてくる。 『まりさにあやまってね!』とか『ゆっくりしね!』なんて罵詈雑言を吐くつもりだろうか。 さて、どうしたものかな、と思っていると、れいむの口から意外な言葉が発せられた。 「まりさが勝手にお庭に入ってごめんなさい!」 ゆっくりが謝罪してくる、なんて事はまったく予想していなかったので、思わず目が点になる。 「もうこんな事が無いように、よく言って聞かせるから、まりさを許してあげてね!」 れいむはそう言うと僕に向かって深々と頭を下げた。僕は驚いた。そして、ただ純粋に感心した。 ゆっくりは、どれもこれも自分勝手で、品性の欠片も無い頭の悪い生き物だと思っていた。 だから、今まで僕はゆっくりがどんなに話しかけてきても、まともに相手をしたりしなかった。 不愉快な思いをすることが分かりきっていたからだ。だが、このれいむの殊勝な態度はどうだ。 人間の能力に個人差があるように、一口にゆっくりといっても、 頭の良い者や、運動能力に優れる者など、固体差があるのかもしれない。 僕は、この利口なれいむに強い関心を持った。 「君は、わざわざそのことを僕に伝えるためにここに来たのかい?」 「ゆ! おにいさん 話せたの?」 まりさは、僕がれいむに話しかけるのを聞いて、驚いていた。 先程、自分がどんなに話しかけてもまったく喋らなかったので、僕が言葉を話せないと思っていたらしい。 だが、こんな奴の事はどうでもいいので無視する。 「うん! そうだよ! 悪いことをしたら、謝らなくちゃいけないんだよ!」 れいむが、人間のテリトリーを侵す事が良くない行為である、と理解している事に嘆息する。 「でも、僕の庭に勝手に入ってきたのは、君じゃなくてまりさだよね?」 僕がそう言いながらまりさを冷たい瞳で睨むと、まりさはれいむの陰にあわてて隠れる。 「や、やめてね! まりさをいじめないでね! まりさをいじめるなら、かわりにれいむをいじめてね!」 れいむの大きな瞳がまっすぐに僕を見つめている。 真剣な眼差し。妹が苛められるくらいなら、自分が身代わりになる、と本気で言っているのだ。 僕はこの妹思いの優しいれいむに、心から感動していた。良い子にはご褒美をあげよう。 「れいむちゃん。クッキー食べる?」 妹が苛められるかもしれない、と警戒しているれいむに、僕は柔らかく微笑んでクッキーを差し出す。 その甘い香りの力で、れいむの緊張は幾分か解けたようだ。そろりそろりとこっちに近づいてくる。 「わあ! 美味しそう! 食べてもいいの?」 れいむはすぐにクッキーに貪りつく様な真似はせず、僕の顔を見上げて尋ねる。 「遠慮しなくていいよ。沢山あるから好きなだけお食べ」 「うん! むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー♪」 美味しそうにクッキーを頬張るれいむの姿を見ていると、自然と頬が緩む。 可愛い。ゆっくりとはこんなに可愛い生き物だったのか。 今までゆっくりの事を真剣に見たことなど無かったので、気がつかなかった。 それに、必要以上に大騒ぎせず、落ち着いている所も良い。 僕は『このれいむと友達になりたい』と思った。 そうすれば、時折僕を襲う寂しさから救われるような気がする。 ぼんやりとそんな事を考えているところに、耳障りな甲高い声が響く。 「ま、まりさも食べたいよ!!」 こいつ、まだいたのか。すっかり忘れていた。 まりさは、僕の周りをスーパーボールのように飛び跳ねながらクッキーを催促している。 それにしても、でかい声だ。おまけに、ラッパのようにトーンが高いので、頭が痛くなる。 「おにいさあん!! まりさも食べたいよお!!」 まりさは再び金切り声を上げる。それでも僕が無視していると、 我慢が限界に達したのか、テーブルに飛び乗って勝手にクッキーを食べようとする。 下品な奴だ。とても、利口なれいむの妹とは思えない。それに、お前には食べていいなんて言ってないよ。 まりさと同じように、我慢の限界に達した僕は、無言でまりさの身体を掴むと地面に向かって叩きつけた。 「ゆ゙ぎゃっ!!」 まりさはグシャという音と共に顔面から地面に激突し、口から少量の餡子を吐き出す。 僕はあまり力が強い方ではないので、死にはしないだろう。別に死んでしまっても構わないが。 「いだい゙い゙い!! いだい゙よ゙お゙!! うあ゙あ゙あ゙ん!!」 まりさは地面に突っ伏したままの姿勢でわんわん泣き出した。やかましい奴だ。少しは賢いお姉さんを見習え。 そう思いながられいむの方を見ると、れいむは『信じられない』といった表情でぶるぶると震えていた。 しまった、と思った時には遅かった。ぱっちりとした綺麗な瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。 「ひ、ひどいよ! おにいさん! どうしてこんな事するの!? まりさ! 大丈夫!?」 れいむは倒れているまりさに駆け寄り、その体を起こした後、悲しそうな表情で僕を見つめる。 その視線に心が痛みながらも、僕はある事に驚いていた。 このれいむは、感情が高ぶっても『ひどい゙い゙い゙い゙い゙!!』と発音が濁ったり、 『どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ!?』といったような間抜けな言葉を発しないのだ。 この事で僕は、ますますれいむが好きになった。 だが、このままではそのれいむに嫌われてしまう。 うるさいまりさに腹が立ったとはいえ、もう少し良く考えて行動すべきだった。 まったく、短気は損気とはよく言ったものだ。 「ご、ごめんね、れいむちゃん。まりさがテーブルに飛び乗ろうとしたから、止めさせようと思って…そしたら…その…手が滑って…」 我ながらなんと苦しい言い訳。地面に叩きつけておいて手が滑ったもクソも無い。 もっとも、そこらに雲霞のごとくいる馬鹿なゆっくりなら、これでも納得したかもしれないが。 「お゙ね゙え゙ぢゃあ゙ん! いだい゙! いだい゙よぉ!」 まりさは濁った目玉から汚水を垂れ流しながら、まだぎゃあぎゃあ喚いている。 クソ饅頭が、黙ってろ。れいむの僕に対する印象が、ますます悪くなるだろうが。 「た、確かにテーブルに飛び乗るのはお行儀が悪いけど、これはやり過ぎだよ…」 れいむはまりさの 傷を舐めながら、そう呟く。やはり、手が滑ったなどという戯言は通用しないらしい。 人間の嘘を見抜く事が出来る、賢くて可愛いれいむ。まったく、惚れ惚れする。 「まりさ、歩ける?」 「う、うん…」 まりさがよろよろと動き出すのを見て、れいむは安心したように、ほっと息を吐く。 「おにいさん…れいむ達、もう帰るね…」 「え!? ちょっと待って、もっとゆっくりしていきなよ」 僕は、まりさを体で支えながら庭から出て行こうとするれいむを引きとめようと手を伸ばす。 しかし、れいむは僕の指先が体に触れそうになると、びくっと身をすくませた。 れいむの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。そんなに僕の事が怖いのか。 このまま森に帰してしまったら、二度と僕の前には姿を現さないかもしれない。 そう思った途端、僕はれいむを捕まえていた。 「は、はなして! おうちかえる!」 僕に抱えられているだけでも恐ろしいのか、れいむはぶるぶると震えている。 まったく、嫌われたものだ。少し、悲しい気持ちになる。 だが、僕はこのれいむが気に入ったのだ。どうしても、友達になりたい。 そのために僕が思いついた方法は、れいむを誘拐する事だった。 今は怯えているが、美味しいものを食べさせ、たっぷりと可愛がってやれば、三日ほどで今日の事など忘れてしまうだろう。 賢いと言っても、所詮ゆっくりの餡子脳だ。たかが知れている。 もう少しソフトなやり方もあるだろうが、 ゆっくりという生き物の単純な性格を考慮すると、これがベストだと思う。 僕は、あやすようにれいむの頭を撫でながら、家に向かって歩き出す。 「今日からここがれいむちゃんのお家だよ。とっても広いし、食べ物も沢山あるから、ゆっくりできるよ」 その時、僕の足に何かが猛烈な勢いでぶつかってきた。まりさだ。 「お゙ね゙え゙ぢゃんをがえ゙じでぇぇぇ!!!」 こいつにはなんの興味も無い。しかし、まりさを殺してしまえば、れいむは僕の事をさらに恐れるようになるだろう。 それは避けたいので、僕はしつこく体当たりしてくるまりさを軽く蹴飛ばして、素早く家の中に入り、扉に鍵をかける。 ゆっくりの力では、どんなに頑張ってもこの家に入ることは出来ないだろう。 「まりさあ! たすけてぇ!!」 れいむの悲痛な叫びが聞こえたのか、扉の外でまりさが狂ったように騒いでいる。 だが、家の奥に進むとその耳障りな声も聞こえなくなった。 「まりさぁ…まりさぁ…」 れいむは僕の腕に抱えられたまま、うわ言のように妹の名を呼んでいる。その顔は、悲しみと恐怖の涙でぐしょぐしょだ。 可哀想なれいむ。でも心配しなくてもいいんだよ。これからは今までよりもっとゆっくりさせてあげるからね。 六日後。 夕刻。僕は仕事から帰ると、一目散にれいむの部屋に向かう。 ポケットから部屋の鍵を取り出し、シリンダー錠に差し込んで回す。 かちり、という小さな音がした後、ドアを開ける。 この部屋は、ほとんど使っていなかった客間を、れいむがゆっくりできるように、改装したものだ。 ふかふかのベッド、輝くガラステーブル、革張りの椅子、全てゆっくり用のサイズに合わせてあつらえた逸品だ。 だが、れいむはその豪華な設備をどれも利用せず、冷たい床の上にぽつんと座っていた。 「ただいま。れいむちゃん」 「お、おかえりなさい。おにいさん…」 僕が声を掛けると、れいむはひきつった笑顔で挨拶を返す。ゆっくりらしくない、不自然な作り笑顔。 六日前、れいむはこの部屋に連れてこられてから、しばらくの間は『外に出して欲しい』『まりさに会わせて欲しい』 と泣きついてきたが、僕にまったくその気が無い事を悟ると、すぐに大人しく、従順になった。 しつこく喚いて、まりさのように暴力を振るわれることを恐れたのだろう。れいむは、いつも僕の顔色を伺ってビクビクしていた。 「今日は美味しいケーキを買ってきたよ。ほら見て、苺が乗ってるんだよ」 僕は小脇に抱えた箱から、大きなショートケーキを取り出し、 ケーキナイフで食べやすいサイズに切って、れいむの前に置いてやる。 れいむは、葬式のように沈痛な面持ちでケーキを口に含むとゆっくりと咀嚼する。 「むーしゃ…むーしゃ…しあわせ…」 そう呟くれいむの顔は、少しも幸せそうじゃなかった。 六日前、クッキーを食べさせた時のれいむの笑顔を思い出して、あまりの違いに、少しイラっとする。 そのケーキは、あんな安物のクッキーとは違う、一流の洋菓子店で買った高級品だぞ。なんだ、その態度は。 それに、この六日間、毎日美味しい食事を与えて、風呂にも入れてやり、こんなにも上等な部屋に住まわせてやってるのに、 まったく僕の事を好きになろうとしない。三日で誘拐された事を忘れると思っていた僕の計画は、既に破綻していた。 れいむは僕が思っていたよりもずっと賢く、そして臆病だったのだ。 れいむと僕の関係は、友達と言うには程遠く、奴隷と主人のようであった。 僕はこんなにもれいむのことを可愛く思っているのに、れいむが僕に抱いている感情は恐怖のみ。 そのことが、たまらなく不愉快だった。 「ねえ、れいむちゃん…」 「ご、ごめんなさい!」 どうやら、れいむにも僕が不快を感じていることが伝わったらしい。 僕の表情と声色が変わった事を敏感に察知して、謝罪の言葉を述べる。 怯えた瞳と卑屈な態度がますます僕をイラつかせた。 「何で謝るの? 僕、まだ何も言ってないよ」 「で、でも…おにいさん…怒ってる…」 「怒ってないよ」 「ご、ごめんなさい…」 「謝らないでよ」 「ごめんなさい…ごめんなさい…」 「謝るなって言ってるだろ!!!」 僕は思わず、れいむの頬を平手で打ちつけていた。パシーンという乾いた音が部屋の中にこだまする。 しばしの静寂の後、れいむはふるふると震えだす。 「いたい…いたいよぉ…まりさ…助けて…まりさぁ…」 れいむは全身の水分が無くなるんじゃないかと思うほどに大量の涙を両の瞳から溢れさせ、 ただひたすらに、ここにはいない妹に助けを求めていた。 まりさ、まりさ、か。この六日間、れいむは何かにつけてその名を口にした。 食事の時は『まりさ、お腹すかせてないかな』 雨が降れば『まりさ、濡れてないかな』 寝る前には『まりさ、ひとりでも寂しくないかな』 まりさまりさまりさまりさまりさ… 六日前、僕はまりさに何の関心も無かった。 生きていようが死んでいようが、どうでも良かった。 だが、今は違う。僕は、まりさに嫉妬していた。 「ねえ、れいむちゃん。そんなにまりさに会いたい?」 ぼくの言葉により、れいむの憂いに満ちた泣き顔が、驚きと期待を含んだ笑顔に変わる。 「会いたいよ! 会わせてくれるの!?」 僕はれいむの問いを無視して、さらに尋ねる。 「まりさの事、好き?」 「うん! 大好きだよ! だって、れいむの可愛い妹だもん!」 ひまわりのような笑顔。まりさの事を話しているだけでも幸せらしい。 僕がどんなに笑わせようと努力しても、下手糞なな作り笑いを浮かべるだけだったれいむが今、楽しそうに笑っている。 でも、れいむを笑わせたのは僕じゃない。まりさだ。僕の心の中に、何かドス黒い感情が渦巻きだす。 「そうなんだ…じゃあ、まりさが死んじゃったら悲しい?」 『まりさ』と『死』。れいむにとって決して結び付けたくない二つのキーワードが同時に現れた事により、 晴れ晴れとしていた表情が、急に雨模様になる。 「ま、まりさが死ぬなんて、考えたくないよ!」 「でも、考えておいた方がいいと思うよ」 「そんな必要ないよ! まりさは元気だし、足も速いから、れみりゃにだって捕まらないんだよ!」 胸を張って誇らしげにそう言うれいむ。妹の自慢をするのが楽しいのだろう。 『れみりゃ』というのは、確か、空を飛ぶゆっくりで、れいむやまりさの天敵だったと思う。 「それはすごいね。じゃあ、人間にも捕まえられないのかな?」 「そ、それは無理だよ…。でも、まりさはとっても可愛いから、人間も意地悪なんてしないよ!」 「そうかな? 少し前、その可愛いまりさを地面に叩きつけた人間がいなかったかな?」 れいむはぎょっとして僕の事を見上げる。その顔は、死人のように青ざめていた。 「お、おにいさん…さ、さっきから…どうしてそんな事ばっかり聞くの?」 れいむの声が震えだす。本当に賢い奴だ。 『まりさ』『死』『人間』この三つのヒントで、僕の質問の真意に気がついたらしい。 「どうしてって? れいむちゃんは頭がいいから、もう分かっているんじゃないのかい?」 「し、しらないよ! れいむには、全然わからないよ!」 れいむは涙目で、いやいやと左右に首を振る。 分からないんじゃない、分かりたくない、の間違いだろう? 仕方が無い。駄々っ子のれいむちゃんにも分かるように、はっきりと言ってやろう。 「じゃあ教えてあげるね。僕、まりさを殺そうと思うんだ」 れいむの時間が止まる。僕は、じっとれいむの顔を見つめ続ける。まるで、この部屋の全てが凍りついたようだった。 壁掛け時計の秒針がカッチコッチと時を刻む音だけが、無情に響いている。 カッチコッチカッチコッチカッチコッチカッチコッチカッチコッチ 10秒ほど経ったところで、れいむの時間が再び動き出す。 「やめてぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!! まりさを殺さないでぇぇぇえええええ!!!!!!」 魂の慟哭。この世の悲しみと苦しみ、そして恐怖をごちゃ混ぜにして塗り込んだような瞳。 そして、そこから溢れる絶望の涙を見た瞬間、小さな復讐を達成した暗い喜びが、僕の全身を駆け巡った。 「れいむちゃんが悪いんだよ。まりさの事ばっかり喋って、いつまでたっても、僕の事を好きになってくれないから」 「そんなことないよおおおおお!!!!!! れいむ、おにいさんのことが大好きだよおおおお!!!!!!」 れいむは必死に僕の脹脛に擦り寄ると、足の甲にキスをする。そして、哀願するような瞳で僕を見つめる。 この嘘つきめ。そこまでしてまりさを殺されたくないのか。 「本当かい? 嬉しいなあ。それじゃあ、僕とまりさ、どっちの方が好き?」 「ゆっ!?」 僕の意地悪な質問により、れいむが固まり、小刻みに震えだす。 どう答えればまりさを救う事が出来るか、懸命に考えているのだろう。額から滝のような汗が流れ落ちている。 時折、誰かに助けを求めるように視線を左右に動かすが、もちろん誰も助けてはくれない。 やがて、れいむは意を決したかのように、ゆっくりと口を開く。 「お、おにいさんの方が好きだよ!」 「そうか。れいむちゃんの気持ちは良く分かったよ」 にっこりと微笑んで、頭をよしよしと撫でてやると、れいむは大きく安堵の溜息をつく。 その顔には、自分は正しい答えを選んだんだ、という達成感が浮かんでいた。 僕は、そんなれいむの様子を見ながらほくそ笑む。 分かってないな。正しい答えなんて、最初から無かったんだよ。 その事を教えてやるために、僕はれいむに語りかける。 「僕の方が好きなら、まりさは殺してもいいよね?」 れいむの表情が一瞬で凍りつく。 こんな展開になるとは、まったく予想していなかったのだろう。 しばし口をパクパクと開閉させ、再び叫びだす。 「だめだよおおお!!! なんでそうなるのおおお!?」 なんでもクソもない。れいむがどんな答えを選ぼうと、 最初から僕はまりさを殺すつもりだった。これはもう決定していた事だ。 泣き叫ぶれいむを無視して、庭に向かうためドアノブに手をかけようとすると、 れいむがジャンプしてドアノブに噛りついた。なんとしても僕をこの部屋から出さないつもりらしい。 凄まじい執念、いや、妹を思う姉の情愛、と言うべきか。恐れ入った。 「困ったなあ。これじゃ、外に出られないよ」 涙を流しながら、必死にドアノブに噛み付いているれいむを見ながら、僕はにやにやと笑う。 もう『れいむをゆっくりさせてやろう』とか『れいむに嫌われたくない』などという気持ちは無くなっていた。 その代わり、僕の心の中に、暗く歪んだ欲望が蛇のように鎌首をもたげ始めていた。 『大好きなれいむの顔を、苦しみや悲しみでもっと歪ませてやりたい』 こういうのを、サディズムと言うのだろうか。 思えば、それ程悪い事をした訳でもないまりさに乱暴したり、怯えるれいむを無理やりさらったりしたのも、 僕の心中深くに埋もれていた、サディストとしての才能の片鱗がそうさせたのかもしれない。 まりさに対する嫉妬も、もうどうでもよくなっていた。 僕が今、まりさを殺そうとしているのは、ただ純粋にれいむを苦しめてやりたいからだ。 目の前で、最愛の妹をズタズタに切り刻まれて殺されたら、れいむはどんな顔をするだろうか。 その素晴らしい光景を想像して、僕は勃起していた。 「ゆぐぐぐ…うがぐぐ…」 やがて、れいむが苦しそうにうめきだした。 ゆっくりには鼻が無い、つまり、息を吸うのも、吐くのも口だけである。 れいむは、その唯一の呼吸器官をドアノブで塞いでいるのだ。当然、息が出来ない状態である。 無呼吸状態をいつまでも続けられる生き物などいない。 僕が何もしなくても、後数秒もすれば、れいむはドアノブを放すだろう。 「ぷはぁっ!」 思ったとおり、酸欠で紫色になったれいむが床に落ちる。一分間は呼吸を止めていただろうか。 ゆっくりとしては驚異的な時間、無呼吸で過ごしたれいむは、時々ひきつけを起こしながら荒い息を吐いている。 僕は、頑張ったれいむの背中を優しくさすってやる。 「お疲れ様。それじゃ、行ってくるね」 「ま、まって…ごほっ! やめ、やめて…げほっ! ごほっ!」 まだ呼吸が回復していないのに、無理に喋ろうとして激しく咳き込むれいむ。 僕は、動けないれいむを残して部屋の外に出ると、一応鍵をかける。 それから、庭に向かって歩き出した。 後編に続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4007.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ 弥生、三月。 朗らかな陽射しが大地にあまねく生命を祝福する、緑の季節がまた巡り来た。 「春ですよー!」 高らかに歌声を響かせる春告精が誘うのは、西からの柔らかい風と、その風が伝える優しく力強い春の息吹。 野山を鎖す白い雪は足早にどこかへと消え去って、大地はモノトーンから草花の鮮やかな彩へとその装いを変えている。 その多様な彩の合間に目を配れば、冬の厳しい環境を潜り抜けて春の恵みにありつくことが出来た多くの命の歓喜の様子と、 余裕を得た彼らが新たに生み出した真新しい命を見つけることもできただろう。 「むーしゃむーしゃ!」 「むーしゃむーしゃ!」 遠く妖怪の山にまで連なる広大な山地の一角、杉林の斜面。 ここにも一組、生まれて始めての冬をなんとかやり過ごした一組の生命が早速がつがつと集めてきた昆虫や草花を頬張っていた。 草木は枯れ果て、昆虫も姿を消す冬場はゆっくりにとって忍耐に次ぐ忍耐の季節だ。備蓄食料の在庫管理を怠って、敢え無く おうちの中での餓死を迎える家族の存在もそう珍しいことではない。 だから、そうした食事制限の一切から解放される春の訪れはとても幸せであるもののはずだった。 「むーしゃむーしゃ、へっくちょん!」 「むーしゃむーしゃ、はっくちょん!」 だが、斜面に掘り抜かれたおうちの奥底で備蓄の残余を食い尽くす勢いで食料に向かう二匹には何か、ゆっくりがゆっくりで あるために重要不可欠なものが足りない。 足りないだけでなく、語尾に余分なものがついていた。 「ゆゆっ。おかしいよれいむ! しあわせー!なごはんさんなのに、おあじがぜんぜんしないよ! へっくちょん!」 「ゆゆっ!? おかしいねまりさ! しあわせー!なごはんさんなのに、れいむもおあじがしないよ! はっくちょん!」 口に含んだご飯のかけらを飛ばしながら、ぎゃあぎゃあ騒々しく言い交わす二匹。実にゆっくりできていない。 そう、二匹に足りないのは「しあわせー!」だ。 腹いっぱい、おいしいごはんを食べているはずなのに、何故かしあわせー!を感じない。 むーしゃむーしゃをいくらしても、しあわせー!の代わりに出てくるのはゆっくりできないくしゃみばかりなのだ。 「「これじゃむーしゃむーしゃしあわせー!できないよ! ぷんぷん、ぷく……へっくちょん!!」」 誰が悪いのか、なんでくしゃみが止まらないのか。 ここにいるのはれいむとまりさの二匹だけなのだから、向ける相手は勿論どこにもいない。 とにかくやり場のないゆっくりできない気持ちを表現しようと二匹は「ぷんぷん、ぷくー!」としてみようとしたが、 頬を揃ってぷっくり膨らませたところでくしゃみが止まるわけでもなく。 吸い込んだ空気を残らず吐き出し、二匹は少し困った顔をお互い相手に向け合った。 「れいむ! まりさはかぜさんかもしれないよ! へっくちょん!」 「まりさ! れいむもかぜさんかもしれないね! はっくちょん!」 馬鹿は風邪を引かないというけれど、ゆっくりだって風邪を引くものらしい。 そういえば、あんまり気にしていなかったけれどどちらも少し涙っぽい目をしているようだ。 実にゆっくりとした感覚でようやく自分と相手の身体の異常を感知し、二匹は「ゆんっ!」と揃って頷いた。 「「おねつをたしかめようね! すーり、すーり!」」 わざわざそう宣言して、二匹はお互いぴったりすりすりと身体を寄せ合う。 といっても、親愛の表現や繁殖行為と違って、すり合わせるのはおでことおでこ。 難しい顔をつき合わせて「ゆゆゆ……」と唸り、額を突きあわせること数秒間。 「おねつはないみたいだね! へっくちょん!」 「じゃあかぜさんじゃないね! はっくちょん!」 すっと身を離した二匹は一瞬ぱぁっと笑顔を咲かせ、でも流石に直後のくしゃみに何にも問題が解決していないことに気付いたらしい。 すぐに顔を曇らせて、「ゆぅぅん」と慰めあうように身をすり合わせた。 『はーりゅでーしゅよー♪』 本当なら嬉しいはずの、春の訪れを告げるそんな声も今日のところはちっとも心が躍らない。 ごはんはおあじがしなくて、だからいっぱいたべてもおいしくなくて、おなかがいっぱいになるだけではあんまりゆっくりできなくて。 風邪なら、おなかいっぱい食べていたらその内治ってしまうけれど、風邪でないなら治し方だってわからない。 さっきの呼び声も、なんだかちょっとゆっくりできない感じがした。 空を飛んでいるはるさんは一人だけのはずなのに変に重なって聞こえたし……おみみも少し、おかしくなっているのかもしれない。 おうちの外に見える世界はとーっても蒼く晴れ渡っているけれど、二匹の心の中はどんより分厚い雲で覆われて、しあわせのおひさま なんてほんの少しだって目にすることはできなさそうだった。 というかそろそろ、二匹の心の雨雲からおめめを抜けて大粒の雨が降り出しそうな。 「ゆう、こういうときは……」 涙目まりさはどうしたらいいか考える。 これが何なのか、どうしたらいいか、まりさとれいむにはわからない。でも、物知りのぱちゅりーなら知っているかもしれない。 そうだ、物知りのぱちゅりーは色々まりさやれいむが知らないことを知っている。この間だって言っていた。 はるさんはとってもゆっくりできるけど、ゆっくりできないこともあるって。 『はーりゅでーしゅよー♪』 ゆっくりできなくなったのは、春さんが来てからすぐじゃなくて、このお声が重なって聞こえるようになってからのことで…… あ、ちょっと待て。このお話はなにか関係あるような気がしてきた。 ……ええと、それはなんだっけ? 「……そうだ! ぱちゅりーが、はるさんのあいだはかふんしょうさんになることがあるかもしれないっていってたよ!」 「ゆゆっ。かふんしょうさん?」 思い出した! まりさが狭いおうちの中でぴょこんと飛び上がって喜ぶと、れいむがびっくりした顔でずるずるっと反対側の壁までずり下がった。 まりさはぱちゅりーのお話を知っていて、れいむはそのお話を全然知らない。 何故って、冬篭りを終えて無事春を迎えた群れのみんなが初めて広場に集まった時、年長さんのぱちゅりーがまりさたちみたいな 初めて春を迎えるゆっくりたちに色々春の過ごし方を教えてくれたのに、れいむは陽気に中てられてゆぅゆぅ寝息を立てていたもの。 「ゆゆっ。そっか! れいむあのときすーやすーやしてたもんね! へっくちょん!」 「あのときっていつかわからないよ。ゆっくりせつめいしてね! はっくちょん!」 少し、得意げな顔でふんぞり返ったまりさにれいむは気分を害したらしい。 ぷくー、と膨れる番の姿にまりさは楽しそうにくすくすと笑って、でもそれ以上は意地悪せずに素直に教えてあげることにした。 「ぱちゅりーはおはなさんがとってもゆっくりできているときに、かふんさんがいっぱいとびだすと、ゆっくりかふんしょうになるって いってたよ!」 花粉症になると、匂いがわからなくなったり、味がわからなくなったり、くしゃみが出たり、涙が出たりするらしい。 それって風邪さんとどう違うの?って質問も当然出たけれど、そこはぱちゅりーも上手く説明はしきらない様子で。 『むきゅ、それはほんとうにかふんしょうさんになっちゃったらわかるわ。とにかく――しちゃだめよ』 なんて誤魔化していたのも、まりさはついでに思い出した。 「……ゆぅ。そういえば、ほかのせつめいもそんなかんじでおわっちゃったようなきがするよ……っくちゅん!」 ぱちゅりーは確かに物知りだけど、あまりその知識は役に立たないような。 そんなことに思い至って、まりさは小さめの溜息を吐いた。うん、ぱちゅりーを頼りにするのは少しだけ考え直したほうがよさそうだ。 もっとも、その場にいたけど全く話を聞いてなかったれいむは全く違う感想を抱いたらしい。 「じゃあ、いまはおはなさんはゆっくりできてるんだね! それはとってもゆっくりしてるよ!」 ゆっくりしているのは、いいことだ。 それがおはなさんだって、まりさやれいむに食べられるむしさんだって、ゆっくりしている時は邪魔しちゃいけない。 それでまりさやれいむたちが少しゆっくりを我慢しなくちゃいけないとしても、他人のゆっくりを台無しにするのはとっても ゆっくりできないことだった。 そんな純粋なれいむの喜びには、まりさとしても少しも異論はない。 ――とてもたいせつな何かを忘れてしまっているような気が、ほんの少しだけしたけれど。 でも、そんなの、思い出せないならどうでもいいことなんじゃないだろうか。 「「おはなさん、かふんさん、はるさん、ゆっくりしていってね……へっくちょん!」」 だから、まりさはそれ以上考えなかった。れいむはもとより知らないのだから、何かを思うこともなかった。 とにかく自分のゆっくりは、後回しだ。かふんさんが思う存分ゆっくりしたら、自分もその後でゆっくりできるはずだから。 『はーりゅでーしゅよー♪』 まりさとれいむが春と野山の草花に向けて投げかけた心からの祝福に応えるように、またおうちの外からそんな声がやっぱり 幾重にも重なりあって聞こえた。 二匹はそれを春からの返事なのだろうと、漠然と信じた。 もちろん春という季節が、なにがしかの言葉を紡ぐことなんてありえないのだけれど。 「れいむ。はるさん、とってもゆっくりしてるよ!」 「まりさ。はるさんにもういっかいごあいさつしようね!」 しかし、信じたれいむとまりさは何とかして春の顔を見たくなった。 見て、きちんと笑顔で挨拶に答えてあげたくなった。 だからいそいそとおうちの玄関まで這い出して、もう一度、お花さんにも負けない満面の笑みを咲かせてお決まりの挨拶を投げ返す。 「「ゆっくりしていって……ゆげぇ!?」」 ……投げ返す、つもりだったのだけど。 その挨拶半ばにして、お外を眺め渡した二匹の顔が奇妙な声と共に歪んだ。それはもう、傍から見ていてこっけいなほどに。 どう見てもゆっくりできていない顔立ちを見せて、二匹はその場で凍り付いてしまった。 『ゆーっきゅり、しちぇいっちぇねーー!』 おうちをぐるりと取り巻く『春』は、愕然としたままのれいむとまりさに向けて確かに言葉を返した。 驚愕に揺れる二匹の目にもそれらは確かにとってもゆっくりとした笑顔で咲き乱れていた。 ……ただ、その『春』たちが咲き乱れている場所が、失望だったり絶望だったり諦観だったり逃避だったり、とかくゆっくりには 程遠い顔をした群れのゆっくりたちの頭に生えた茎の上だったりするのだが。 『はーりゅでーしゅよー!』 みんなの頭に鈴生りに生る『春』は、眼下の親の悲歎なんか気付きもしない様子で愛らしい声を揃えて春を謳う。 その頭に被るのは、一様におそろいの三角帽子。親の種類なんてまるで関係ない。 それは形も違えば色も違う。赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 (『かふんしょうさんにかかったら、はるですよー、っておこえがきこえてるあいだはおうちをとじまりしておそとにでちゃだめよ』) ……そういえば。 目にしたものの衝撃から立ち直らないままのまりさは、ようやくのことであの日ぱちぇりーが教えてくれたことの続きがどんなもの だったかを思い出していた。 (『そうしないと、からだにたまったかふんさんのせいではるさんのあかちゃんができちゃうから、きをつけてね』) そうだ。ぱちゅりーは『はるさんのあかちゃん』ができるといっていたんだ。 教えをぼんやりと思い出すうちに、頭頂部のむずむずとした痒みと、身体からどんどん餡子が抜けていく感覚が同時にまりさを襲った。 ここまで来たらさすがに、まりさの頭でも深く考えなくたって分かる。 「どおじでごんなごどになっでるの……?」 それでも自分の頭を確認するのが怖くて、ほんのわずかばかりの期待を込めてまりさは隣のれいむの方をちらりと見た。 「「……ゆげげっ」」 ちらりと見て、やっぱりこっちを縋るような目で見ているれいむと視線が衝突して、そのままお互いの頭の上へと視界を移動させて、 それから同時に小さな悲鳴と少量の餡子を口から吐き出した。 二匹の期待も空しく、真っ白な雲が漂うお空を背景にしてすらりと伸びた緑の茎。 そこに鈴生りに生るのはれいむともまりさとも形も違えば色も違う小さな赤ちゃん、三匹ずつ。 未だ目覚めぬその小さな赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 つまり、群れのみんなが浮かない表情で見上げている赤ちゃんたちと全く同じ種類の、ゆっくりの赤ちゃん。 極めつけは、この子達の背に生えた昆虫のような羽だ。こんなもの、この群れのゆっくりには一匹だって生えていないのに。 どうしてこんな事にと聞いても応えてくれそうな相手はいない。 よく見ると、今のこのことお外に出ていたのは自分と同じで春を迎えたのは生まれて始めての若いゆっくりしかいないようだったから。 つまり、大人のいうことをきちんと聞いていなかったお子様ばかりだったということで――まりさはこれからはきちんと、年を取った ゆっくりの言うことは聞いておこうと心に決めた。 ……それは今この場の問題を解決するには遅すぎる決意だったけれど、これからのゆん生にはとても大切なことではあるはずだ。 特に、そう。たとえば望まずして出来てしまった子の育児とかのために。 「ゅっ……」 「……ゅきゅっ……」 せっかくの陽気だというのに、『これから』を想像してげっそり疲れきってしまったまりさとれいむが見上げる先。 普通のにんっしんっならありえない速さでゆっくりとしての形を成してゆく赤ちゃんたちが、早くもごにょごにょと意味を成さない 音の羅列を口から漏らし始めている。 実際に茎から生れ落ちるのはまだ先のことだろうけど、この分なら目を見開き元気な挨拶を『両親』に向けて放つのは遠くない。 「……れいむ。ふゆごもりようのごはん、まだのこってたっけ」 「うん、まだのこってるよ……」 感情の篭らないぼそぼそとしたまりさの問いかけに、応えるれいむの声も似たようなもの。 それを耳にしたまりさは「そう、よかった」と呟いて、別に今更残っていなくても大丈夫かと思いなおした。 かふんしょうさんで赤ちゃんが出来てしまった以上は、今更お外に出る制限なんてないのだから。 お外にさえ出てよいのなら、ごはんは幾らでも集められる。季節はもう、寒くて野山にごはんの乏しい冬ではないのだし。 「「「「「「ゅきゅ……ゅきゅっ。ゆゆっ!?」」」」」」 そう。それはとても忌々しいことではあるのだけれど。 陰鬱な想いを消せないままに、まりさは頭上にその声を聞いた。 「「「「「「おきゃーしゃん? おきゃーしゃん、ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」」」」」」 そう。忌々しいことに、春はまだ、目覚めたばっかりなのだ。 * * * 「おお、子宝子宝。おつむの中身同様、春めいたことで実に結構な騒ぎですね」 春だというのに暗雲たちこめるゆっくりプレイスを見下ろす木の枝で、一匹のきめぇ丸が嘲笑とも苦笑ともつかない笑いを 右往左往するゆっくり達に向けている。 いや、ひょっとするとそれは憐憫、もしくは共感に類する笑みだったのだろうか。 覇気のない笑顔を浮かべるきめぇ丸の頭の上には、ごたぶんにもれず白い帽子を被った赤ちゃんを実らせた茎が伸びていたのだから。 「「「ゆーゆゆー♪」」」 きめぇ丸は知っている。 今頭の上で楽しげに歌声を合わせているこの子達は、春の終わりには前触れもなく風に誘われるようにしていなくなってしまうことを。 人里や多くのゆっくりの間では、初春に突然大量発生し、初夏までにいっせいにどこかに姿を消してしまうと思われている準希少種、 ゆっくりりりー。 それがこの赤ちゃんたちの名前だった。 彼女たちは背中に生えた透き通った翅に五月の風をいっぱいに受けて、どこか根付くべき土地を求めて旅立ってしまうのだ。 そしていつかどこかの大地にたどり着き、そこに根を下ろし、雨にも溶けず鳥獣や昆虫にも食われずに済んだ一握りの子供だけが、 ゆ木となって森を作るという。 そうしてゆ木となったりりーほわいとたちは、歌うことなく、しゃべることすらなく春までひたすらに静かに過ごす。 実は付けないがゆっくりの好む味の葉を多く大地に落とす森として、多くのゆっくりを惹きつける。 「おお……おろかおろか」 「「「ゆっ♪ ゆっ♪」」」 やはりこの年に成体になったばかりの若いゆっくりとして、うかつにもその罠に引っかかってしまったきめぇ丸は頭上のわが子を リズミカルに揺らしながら、今度ははっきりとした自嘲の笑いを口元に浮かべた。 そう、あまあまな落ち葉こそがりりーのゆ木が集まるこの森の罠だ。 春に枝いっぱいの白百合に似た花を咲かせ、多くの花粉を飛ばし――落ち葉の味に惹かれてやってきたゆっくり達に、わが子を 数多宿らせるための。 きめぇ丸は同族に教わった知識をなぞって軽いため息をつき、湿度の高い視線を背後に聳える木の幹へと向けた。 上空から見れば枝葉にすっぽり覆い隠されたその部分の樹皮に、顔のような凹凸が隠されていることにどうしていま少しばかり 早く気づくことができなかったのだろう 「はーるでーすよー♪ ゆっくり、していってね♪」 「おお、拒絶拒絶。子供を育てるということまで含めて、悉く拒絶させていただきます」 その顔のような凹凸――ゆ木となったりりーの成体の歌声に、きめぇ丸は酷く嫌そうな口ぶりで応じた。 そして、なんの躊躇もなく茎を赤ちゃんごと幹、りりーの顔のある部分のすぐ傍へと叩き付ける。 声もなく弾ける、三匹の赤ちゃんゆっくり。飛散した微量の餡子が、りりーの顔をわずかに汚した。 りりーはわが子の無残な末路に一瞬不満そうに目を細めて――しかしすぐに、何事もなかったかのように花のような笑みを咲かす。 「はーるでーすよー♪」 「おお、非情非情。まああれだけ実が生っていれば十分なのでしょうかね……」 不本意に生まれた子だ。育てず、異物として排除するゆっくりはこのきめぇ丸に限ったことではない。 だからこそ、膨大な花粉を飛ばし、数多の子供を作らせる。 別に気にする必要も感じないのだろう、無邪気なゆ木りりーの歌声にきめぇ丸こそ呆れた、いささか非難を含む目を声の主へと向けた。 地上から聞こえるのは、多くの嘆きと幾らかの怒り、そしてたくさんの幼過ぎる歌声と、末期の言葉。 理不尽な子宝を得て育てようと決意するもの、間引くことに決したもの、つがいや姉妹間で意見が纏まらず争いとなったもの、 春から若ゆっくりの間に――多くはこの森に対する無知、油断による――不幸が齎されたゆっくりプレイスはいつも以上に賑やかだ。 そんなゆっくりプレイスの喧騒と、ゆ木りりーの歌声とを聞きながら、きめぇ丸はふわりと空へと飛び上がる。 花粉の季節そのものは、もうじき一応の収まりを見せるはずだ。収まったら、またここに来よう。 きっとその頃には、ある程度育った子供とその若い親を中心にもっと素敵で、悲劇的な光景が幾つも繰り広げられているだろうから。 地上を一瞥したきめぇ丸は、最後に心底からの笑いを見せた。 春が、赤ちゃんが、通常のゆっくりが言うようにひたすらゆっくりできる存在だというならば。 「おお、祝福祝福。赤ちゃんといっしょに、ゆっくりしていってね!」 地上で失意に打ちのめされる若いゆっくりたちに、それができないはずがないのだから。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1525.html
森でまもなく子供が生まれるゆっくりれいむとそれを見守るゆっくりまりさをみつけた。 「どうしたんだい?」 「ゆっ!?まりさ、にんげんだよ!」 「おにーさんどうしたの!ゆっくりしていってね!」 俺の声かけに気づいたゆっくりまりさがれいむを守るように俺の前に立ちはだかる。 すこし膨れているのでだいぶ警戒しているのだろう。 れいむはまりさに隠れながら自分の頭の上の実を気にしている。 その後ろは土が崩れている用に見える。 「もしかしてここに巣があったのかな?」 「ゆぅ・・・おにーさんにはかんけいないよ!はやくかえってね!」 「そうだよ!れいむはふたりでゆっくりしたいよ!」 「まぁまぁ。この様子だと巣を掘りなおすにはしばらく掛かるんだろう?」 「ゆぅ・・・」 「その間うちに来ないかい?」 俺の質問にまりさとれいむは俺を気にしながら相談を始める。 ゆっくりにとって人間は捕食者の一つである。 昔は人間を気にせず人の畑や家に入り込んで食料を漁っていたが、人間によってゆっくりが殺されだすとゆっくりは森の奥に逃げ出した。 森の中で人間にあってもすぐに逃げるようになったので一部を除く人間は無視するようになった。 これにより人間とゆっくりは上手く生活できるようになった。 しかし、一部の人間がゆっくりを捕まえに森に入っていたので、このように人間を警戒するのである。 「おにーさんのていあんはうれしいけどまりさたちはもりでくらすよ!」 「でも近くに身を隠せる場所は無さそうだけど。」 「でもにんげんはしんようできないよ!」 「子供達がどうなってもいいのかい?」 「ゆゆゆゆ・・・」 人間は怖い。しかし、このまま森でいるとやがて夜になり、捕食者が目を光らす時間になる。 まりさは何とかなるかもしれないが、実を生やしたれいむは明日にはいなくなるだろう。 まりさは決断を迫られた。 「ゆっ!おにーさんすこしゆっくりさせてね!」 「まりさ!?」 「だいじょうぶだよれいむはまりさがまもるよ!」 「じゃあ俺の後についてきてね。」 まりさは子供とれいむを見捨てれなかった。心配するれいむをなだめるまりさの目にはれいむを護るという決意の火が見えた。 もうすぐ日が暮れる。このままでは俺も危ないので崩した巣穴を離れた。 俺は後ろからついてくるまりさとれいむを気にしながらゆっくりと家に帰った。 帰る間俺は一度もれいむに近づけなかった。 近づこうとするたびにまりさが間に入るのだ。これなら夜も過ごせたかもしれない。 家につくと庭の一角にある小さな小屋に連れて行く。 「ゆゆっ!これはほかのゆっくりのすだよ!」 「そうだよ!かえってきたらゆっくりできないよ!」 「あぁ前にも使ってたゆっくりがいるだけだよ。」 「ゆぅ?」 「ここは巣をなくしたゆっくりに使わせるために作ったんだ。 今までに何匹ものゆっくりがここで巣が見つかるまで暮らしてたんだよ。」 「じゃあいまはいないの?」 「そうだよ。今は誰も使ってないからそこでゆっくりしていってね。」 「ゆっくりしていくね!」 「おにーさんありがとう!」 ちゃんと俺にお礼を言うゆっくり。 家に来るまではだいぶ警戒していたが、先ほどの話とこの巣に残っていたのだろうゆっくりの気配から俺を少しは信用したようだ。 しかしまだ完全に信じきってはいないようで巣箱の入り口は俺の手が入らないように枝や木の葉で隠せるようにしていた。 「ずいぶん厳重だね。」 「しらないばしょだからね!なにがくるかわからないもん!」 「まりさ!ごはんはどうしよう?」 「ゆぅ・・・」 「こんな時間だしね。何か食べれるものを持ってこよう。」 「ゆ!おにいさんいわるいよ!」 「まりさ!ここはおにーさんにたすけてもらおうよ!れいむはおなかがぺこぺこだよ!」 「ゆゆゆゆ・・・」 「料理に使わなかった野菜屑だから平気だよ。俺は捨てるものがなくなってうれしい。君達は食べれるものがもらえてうれしい。」 「ゆっ、じゃあへいきだね!おにーさんごはんください!」 「じゃあこっちにきて一緒に食べようか。」 そういってまりさとれいむを家の中に招待する。 れいむは縁側を登るのに苦労しそうだったので俺が持ち上げることにした。 まりさはいやがってたがお腹がすいたれいむはすぐに持ち上げてと言って来た。 まりさも言葉では嫌がっているがよだれがすこし見える。 朝早くに巣を壊したのでほとんど一日何も食べてないのだからしょうがないのかも知れない。 「うっめぇ、これめっちゃうめぇ!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!」 野菜屑を一心不乱に食べるゆっくり達。それを見て俺も夕食を食べだした。 夕食を食べ終わるとこれからのことを話し合う。 「ゆっ!あさになったらでていくよ!」 「おにーさんありがと!」 「でも巣の当てはあるのかい?」 「ゆっ・・・でもなんとかするよ!」 「まぁまぁもうすぐ雨が良く降るのは知ってるだろう?」 「うん!もうすぐゆっくりできなくなるよ!」 「巣ができる前に雨が降っちゃうと溶けちゃうよ?それでもいいのかい?」 「ゆぅぅぅぅぅ・・・」 「だからさ、巣が出来るまであそこを使ってほしいんだ。餌は俺がやっても良いし自分でとってきてもいい。」 「おにーさんいいの?」 「ああ、もちろんその代わり話し相手になってくれないかな?ひとりだと退屈でね。」 「いいよ!ゆっくりしていってね!」 餌は雨の日以外は自分でとって来るそうだ。俺としては毎日上げてもよかったがまりさが嫌がった。 「かりのしかたわすれちゃうとだめだからね!」 「まりさはとってもじょうずだもんね!」 「れいむもすごいじょうずなんだよ!」 「はいはい。」 次の日からまりさとれいむの新しい生活が始まった。 朝のうちからまりさは巣のあった場所に出かけて穴を掘りに、れいむは新しい巣で子供達が落ちないようにじっとしている。 俺はまりさについていき一緒に森で食べ物を集めた。 森のことはゆっくりの方が詳しいのだ。まりさに連れられてかごをいっぱいにして家に帰る。 まりさは帰るとすぐに巣にいきれいむにご飯をあげる。そして次の日までれいむやおれとゆっくりして過ごす。 物覚えもよく、人の畑の餌をとらないなど俺が教えたことはすぐに覚えた。 どうやらゆっくりしているときに教えてもらったことはちゃんと覚えるらしい。 昔はゆっくりに厳しく教えていたそうだから逆効果だったのだ。 そんな生活も1週間続くと終わりが見える。 れいむの実がだいぶ育ち、赤ちゃんゆっくりの形が分かるようになった。 ゆっくりれいむが6匹、ゆっくりまりさが同じく6匹。 まりさの巣ももうすぐ完成だという。 「おにーさんいままでありがとう!」 「れいむたちはあしたにはでていくよ!」 「急だね。赤ちゃんが生まれてからでもいいんじゃないか?」 「にんげんになれちゃうよだめだからね!」 赤ちゃんが俺になれてしまうと、親ゆっくりがいない間に人里に近づくことを心配しているのだ。 「うーん、明日は止めた方がいいかな。」 「ゆ?」 「明日の天気予報は雨なんだ。」 「だいじょうぶだよ!あさはふらないよ!」 「しかし、もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむが昼までに巣までいけるのかな?」 「ゆぐぅ・・・」 俺はまりさたちがここに一日留まるように雨のことをはなす。 実際に雨が降るのでまりさも困っているのだろう。 「まりさ!まりさ!」 「れいむどうしたの!」 「あかちゃんみてみて!もううごいてるでしょ!」 「ほんとだもうすぐゆっくりだね!」 「うん!あしたにはうまれるよ!」 「ゆゆっ!?じゃああしたはここでゆっくりしようね!」 「うん!あそこならゆっくりうめるよ!」 実を宿したれいむが言うのだから本当なのだろう。明日には赤ん坊が生まれるのだ。 「じゃああとすこしだけここにいさせてね!」 「分かったよ。そのかわり後で赤ちゃんを見に行っていいかな?」 「ゆっ!うまれたあとならいいよ!」 「あといえにはあげれないよ!」 「うん。本当はおいしいものをあげたいんだけどそれもだめだよね?」 「だめだよ!もりでくらせなくなるよ!」 「じゃあ明日はすこし多く野菜屑をあげよう。れいむはゆっくりがんばってね。」 「ゆっくりがんばるよ!」 胸?をはるゆっくりれいむ。赤ちゃんが生まれる姿を見れないのは残念だがしょうがない。 俺はゆっくりをおいて部屋の奥で作業を始めた。 その夜、ゆっくり達が寝静まったのを確認してゆっくりの巣箱に向かう。 餌に睡眠薬を入れていたので朝までぐっすりだろう。始めのうちは警戒していたが今は無警戒だったので楽だった。 巣箱につくと屋根の上の鍵を外して屋根を持ち上げる。 巣の入り口は枝や石で入れないようになっていたが、そんなものは意味がない。 屋根を外すとゆっくり寝ているまりさとれいむが見えた。 朝まで時間がない。急ごう。 俺はれいむを持ち上げ外にだす。 次に実の大きさを測り、2番目に大きいれいむを手に取る。 そして用意していたライターで赤ちゃんゆっくりの底部を焼く。 焼きすぎると動けなくなるので、跳ねれない程度にライターであぶる。 これまで何度もやってきたので感覚でライターをうごかす。 一番大きいれいむ以外を焼くと、まりさのほうも同じように焼く。 これで、一番大きい赤ちゃんまりさとれいむ以外は生まれて来ても跳ねることができないだろう。 焼けた後が見えないように小麦粉で隠し、れいむを元の場所にもどして屋根を置く。 明日が楽しみだ。 赤ちゃんが生まれる日。妙にげんきなまりさとれいむに赤ちゃんが生まれたら教えてほしいと言い、家の中で待つ。 しばらくすると、巣が騒がしい。どうやら全部生まれたようだ。 まりさはまだやってきてないが俺は巣箱に近づく。 巣箱の前まで行くと外にまりさとれいむのこれが漏れていた。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」 親ゆっくりの声に元気に答える赤ちゃん達。 俺はまりさに呼びかける。 「あかちゃん、生まれたみたいだね。出て来て見せてほしいな。」 「ゆっ!!ちょっとまってね!」 「ん?どうしたんだい?」 「なんでもないよ!ゆっくりまっててね!」 どうやら子供達のことで焦っているようだ。 俺はゆっくり出てこいとまりさを説得する。やがてあきらめたのか、れいむとまりさが出てきた。 「みんなでてきてね!」 「ゆっ!ゆっ!」 れいむのこえに赤ちゃんまりさが一匹と赤ちゃんれいむが一匹巣から出てきた。 元気に親まりさのまわりを跳ねる。 しかし、親まりさとれいむはうかない顔だ。 その原因が巣から出てきた。 「ゆっ!ゆっ!」 小さいまりさと小さいれいむが五匹ずつ、巣から這いずって出てきた。 「おかーしゃんまっちぇ~!」 「ゆっ!ゆっくりはねてね!」 「ゆうううう!できないいいいい!」 5匹は上手く焼けたのかずるずるすべるしかできないようだった。 親まりさとれいむは必死に飛び跳ねさせようと口に咥えて目の位置ぐらいから落とす。 元気な赤ちゃんれいむとまりさはぽよんと地面で跳ね返った。 しかし残りの十匹はべちょっと地面に引っ付く。 「どうしてええええええ!」 「これはいったい!?」 「まりさにもわからないよおおおおおお!」 我慢していたのだろう。泣き出すまりさとれいむ。 この赤ちゃん達は外敵から逃げることも餌を取ることも出来ない。 親ゆっくりもそんな赤ちゃんを養い続けれないので赤ちゃんゆっくりはやがて餓死する。 そんな未来を思い描いてないているのだろう。 「ゆぅ・・・おにーさんありがと。まりさたちはここをでていくね・・・」 「子供達はどうするんだい?」 「がんばってそだてるよ!できるだけがんばるよ・・・」 最後まで元気が続かないれいむ。まりさも子供達を捨てることを考えているのがうかない顔だ。 そこで俺が提案する。 「もしよければ、その10匹預からせてくれないかな?」 「ゆ!でもこの子達は・・・」 「俺なら十分な量の食事を与えれるから。だめかな?」 「ゆぅぅぅぅ・・・」 捨てることを考えてた親ゆっくりにとっては願ってもないことだろう。 ゆっくり理解するのを待ってると 「まりさ、おにーさんにおねがいしようよ!」 「ゆっ!そうだね!おにーさんならだいじょうぶだね!」 信用してくれて何より。 ところで今までの話を子ゆっくりも聞いていたんだけど大丈夫なのだろうか。 「「「おかーちゃんおなかしゅいた~」」」 ・・・どうやら自分のことを話していたとは考えてないようだった。 元気な子ゆっくりはともかく、飛べないゆっくりはもう少し危機感を持つべきだろうに。 まぁその方が話が楽だ。飛べないゆっくりを手にとって手元に集める。 「じゃあ確かに預かったよ。」 「おにーさんまりさとれいむのあかちゃんをおねがいします!」 「あぁ、ちゃんと育てるよ!」 親ゆっくりは安心したのか子供達に餌をやり始める。元気なゆっくりにはもちろん、飛べないゆっくりにも餌を渡そうとする。 「おにーちゃんはやさしいからね!げんきにそだってね!」 「とべるようになったらもどってきてね!」 親ゆっくりはまだ子供達が跳ねれるようになると思ってるのだろう。 もう無理なんだけどね。 まぁ最後になるだろう子ゆっくりとの時間を潰すのはかわいそうなのでそのままにしてあげることにした。 次の日の朝親ゆっくりと元気な子ゆっくりは親ゆっくりの作った巣へと旅立っていった。 俺は残った赤ちゃんゆっくりを用意してあった箱に落とす。 「ゆべっ!」 「ゆぐっ!」 べちゃべちゃと床に引っ付く赤ちゃんゆっくり。 始めはこちらに文句を言ってきたが、しばらく無視しているとこちらを気にせず集まってゆっくりをしだす。 全部がゆっくりしだしたところで話を切り出した。 「それじゃこれから君達を鍛えるよ。最後までついてきたら親ゆっくりの元に帰れるかもね。」 「ゆっ!ゆっくちがんばりゅよ!」 元気よく返事した赤ちゃんゆっくりを確認すると赤ちゃんゆっくりから離れた場所に旗を立てた。 「じゃあ今からこの砂時計が終わるまでにあそこについてね。たどりつけたらおいしいご飯をあげるよ。」 「ごはんごはん!」 「おなかしゅいたー!」 「ご飯はたどり着いてからだよ。それじゃスタート。」 スタートと同時に砂時計をひっくり返す。赤ちゃんゆっくりも同時に旗を目指して動き出した。 跳ねると楽に間に合う距離だったが跳ねれない赤ちゃんゆっくりには遠い距離だ。 必死に這っていく赤ちゃんゆっくり。俺はそれを横から眺める。 「ゆ~!砂しゃんゆっくちちてね!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 砂にお願いするもの、無言で這う物、声をあげながらがんばってるもの。 赤ちゃんゆっくりはそれぞれ思いつく方法で旗を目指す。 やがて一匹、二匹と旗にたどり着く。差が出るのは途中で休む休まないの違いだ。 今回は最後まで見るためにかなり距離を短くしていたので全匹たどり着くことが出来た。 それでも予想していた時間よりはだいぶ掛かっていたが。 「つかれちゃ~」 「ゆっくちきゅうけいだよ!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 さて約束どおりおいしいものを上げよう。 「よくがんばったね!じゃあおいしいものをあげよう。」 「やっちゃね!」 「これれゆっくちできるよ!」 「はやくちてね!」 うれしそうな赤ちゃんゆっくりの下にお菓子を置いていく。 「さぁお食べ。」 「むーしゃ!むーしゃ!・・・しあわちぇええええええ!」 「うっめ!これめっちゃうめ!」 「ゆっくちたべるよ!」 さっきまでの疲れはどこへやら、夢中にお菓子を食べるゆっくり。 やがて食べ終わった赤ちゃんゆっくりは思い思いにゆっくりしだす。 と、言っても跳ねれないので壁に寄り添ってたり、赤ちゃん同士で話すぐらいなのだが。 ゆっくりしだしたのでもう一つルールを教えることにする。 「さてじゃあ次からは食事にも砂時計を使うよ。」 「ゆゆ?」 「この砂時計の砂が落ちる間だけご飯の時間だからね。」 「それじゃゆっくちできないよおおおおー!」 「ご飯を取り上げるだけだからゆっくりはできるよ。それに砂時計ゆっくりしてたでしょ?」 「ゆっくちちてたよ!ごはんだけならゆっくちできるね!」 「でも次の旗も同時に置くからね余りゆっくりしてるとたどり着けなくなるから気をつけてね。」 「わかっちゃよ!」 「じゃあ次を始めるよ!」 そういって今度は先ほどよりすこし遠い距離になるよう旗を置く。 今回は最初と違って赤ちゃんゆっくりは二つに別れた。 旗に向かうものとゆっくりしてるものだ。 先ほどは旗についてからもだいぶ時間があったからゆっくりしてるのだろう。 しかし砂時計はそんな赤ちゃんゆっくりを待たずに砂を落とす。 やがて全部の赤ちゃんゆっくりが旗を目指すが、砂が全部落ちたとき辿りつけていたのは半分だった。 たどりつけてなのはまりさ種の方が多い。這うだけでも身体能力の高さが出るようだ。 それに加えて最初にゆっくりしてたのはれいむ種が多かったのもあるだろう。 「今回は半分になったね。じゃあご飯の時間だよ。」 そういってたどり着いた方には前と同じようにお菓子を、たどり着けなかったほうには野菜屑や近くで取った虫を与える。 「「「むーしゃ!むーしゃ!しあわせ~!」」」 おいしそうにお菓子を貪る赤ちゃんゆっくり。対照的に、 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」 「ゆゆっ!むししゃんうごかないでね!」 「れいみゅもおかしがいいよ!」 こちらは野菜屑や虫の赤ちゃんゆっくり。 親ゆっくりが取ったのを食べたことがあるので食べないことはないが、食べやすいように口渡しだったので動く虫は食べずらそうだ。野菜屑も食べやすい大きさに切ってないのでうまく食べれない。 お菓子を食べてるゆっくりの方に向かおうとしたが透明な壁によって旨そうに食べる赤ちゃんゆっくりを見て涎をたらすしか出来なかった。 そうして食べている頃に砂時計の砂が落ちる。 「はい、時間切れー。次の旗はあそこだよ。」 「ゆ~!まだたべおわっちぇないよ!」 「もっとゆっくちちゃちぇてね!」 「だめだめ。砂はもう全部落ちたよ十分ゆっくりできたよ。」 「おにーしゃん!れいむちゃちにもおかしちょうだい!」 「旗まで辿りつけたらね。辿り着けなかったらさっきみたいな野菜屑と虫だよ!」 「「「ゆ゙ゔううううううううううう!!!」」」 砂時計は砂の量を少なくしていたので短いと感じるのは当然だったが、赤ちゃんゆっくりには砂の量の違いは分からない。 野菜屑はもう嫌なのか先ほど辿り着けなかったゆっくりは我先にと旗へと向かう。 お菓子だった赤ちゃんゆっくりも野菜屑を食べないように旗に向かうが野菜屑だったゆっくりよりはゆっくりしていた。 「ゆっくち!ゆっくち!」 今回の旗はさっきよりはかなり遠くにおいているからしばらく掛かるだろう。 砂の量は増やしたので全匹辿り着けないことはないはず。砂が落ちる頃に見にこよう。 赤ちゃんゆっくりの必死な声を聞きながら俺は部屋を後にした。 「じゃあご飯の時間だよ!」 「むしゃむしゃむしゃ・・・」 旗に向かうってご飯と言うことを3日間繰り返した赤ちゃんゆっくりはもはや喋ることもせずに黙々とご飯を食べる。 一口でも口に含もうと必死なのだ。それは野菜屑と虫の方も変わらない。 この三日間で野菜屑にならなかった赤ちゃんゆっくりはいなくなった。 まだ野菜屑と虫を食べにくそうにしている赤ちゃんゆっくりもいるが、慣れて普通に食べる赤ちゃんゆっくりも出始める。 「はい時間切れ~。次はあそこだよ。」 「ゆ・・・ゆっくちがんばりゅよ・・・」 次の場所を教えると赤ちゃんゆっくりはゆっくりせずに旗に向かう。 お菓子のほうはだいぶ食べられているが野菜屑はまだ残っている。 タイムアップと同時にご飯の時間が始まり、食べる場所は旗の近くなので遅れたゆっくりは食べ始める時間もそれだけ短いのだ。 この3日間で距離と時間はだいぶ延びた。 今では俺と同じ時間に食事をするように砂時計と距離を合わせている。 赤ちゃんゆっくりは朝昼夜と制限時間内に旗に辿り着けるように一度もゆっくりせずに旗を目指し。 夜と朝の長い時間の間にだけ眠ることが出来た。 それもゆっくりしすぎると旗までたどりつけないのでゆっくり眠れない。 野菜屑をあげるのは朝の時間が多く、昼夜は余り野菜屑が必要なくなっていたが、野菜屑なんてそんなに多くでないので好都合だった。 お菓子を食べてる間は幸せそうに思えるだろうが、忙しなく食べていてはおいしさも分からないだろう。 現に今は小麦粉をこねてお菓子に見せたものなのだ。 遅れてご飯を食べれずに衰弱していく赤ちゃんゆっくりも出始めるが、寝ている間に果実の汁をかけてやれば元気になる。 死んでゆっくりさせないようにゆっくりの体調管理には気をつけねば。 赤ちゃんゆっくりを鍛えるようになって1週間、うれしい誤算があった。 赤ちゃんゆっくりが心配になった親ゆっくりが現れて、旗に向かって懸命に這う赤ちゃんゆっくりをみてマツタケを置いていったのだ。 どうやら、ちゃんと育ててくれていると勘違いしたようだ。 もっとも勘違いするように音は届かないようにしているし、近づくと気が散るからと言って遠くから見せたから当然だが。 赤ちゃんゆっくりも必死なので周りに目がいかず、親ゆっくりが来ても気づかなかった。 「どうだい。がんばってるだろう?」 「ゆっ!あかちゃんたちがんばってるよ!」 「そうだろう。みんな君たちに会うためにがんばってるんだ。」 「あかちゃんたちにももってきたものたべさせたいよ!」 「あとで俺がちゃんと食べさせるよ。」 「ゆ~、まりさがちょくせつわたしたいよ!」 「それはだめだね。今は君達に会うためにがんばってるから今あっちゃうと今までの苦労が無駄になっちゃうんだ。」 「ゆゆゆ・・・」 「まだ野生に耐えれないから我慢してね。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「よし、じゃあこの野菜屑をやろう。こんなものしかないがよければもっていってくれ。」 「おにーさんありがとう!」 それからも親ゆっくりは俺にいろいろなものを持ってきた。 どれも山で取れる珍しいもので、赤ちゃんゆっくりのためにがんばって取ってきたのだろう。 ありがたく全部いただくとする。 赤ちゃんゆっくりは一度もゆっくりさせずに這い回っている。 今は平地だけじゃなく、砂利道や坂など様々な障害を加えている。 今は綱渡りだ。 旗は立方体の箱の上にある。跳ねれればいいのだが跳ねれないゆっくりは崖で止まってしまう。 そこで坂がついた箱を用意し、そこから旗の箱まで綱を引いてやるのだ。 旗に辿り着くには綱を渡らなければならず、綱から落ちたら最初からだ。 これだと辿り着けない赤ちゃんゆっくりは一度も食事を出来ずに衰弱してしまい、果実汁に頼りっぱなしになるが、 親ゆっくりが持ってきているものの中に果物が含まれているので余り負担は増えなかった。 それに赤ちゃんはまったく育ってない。 実は親ゆっくりに遠くから見せていたのは育っていない赤ちゃんを気づかせないためでもあった。 こいつらはゆっくり出来ないと成長も出来ないらしい。 おかげで餌代も増えず、場所もずっと同じでいいので楽だ。ご都合設定バンザイ。 「もっとゆっくちちたいよおおおお!」 「ゆぅ、れいみゅがんばっちぇね!」 「ゆっくちがんばりゅよ!まりしゃもがんびゃろうね!」 相変わらず食事中は声もなく急いで食べるが、ほとんど旗に辿り着けるようになって赤ちゃん達はお互いに助け合うようになった。 協力しないと辿り着けないようなギミックを増やしたせいもあるだろう。 これはどんどん無口になっていく赤ちゃんゆっくり対策だ。 綱を渡るゆっくりをもう渡りきったゆっくりが応援する様子を見ながら、 まだまだ退屈させない赤ちゃんゆっくりのために次はどんなギミックにしようか考えるのはもう日課になっていた。 「おにーさんまりさたちはしばらくこれないよ!」 「ん、そうかもう冬篭りか。」 「そうだよ!あしたにはあなをふさぐんだよ!だからはるまであえないけどあかちゃんをよろしくね!」 「それなら餌が必要だろう。よければもってけ。」 「ゆゆっ!おにーさんありがとう!」 そうかもう冬篭りか、ゆっくりが言うのだからそろそろ雪が降るだろう。 ゆっくりは天候に敏感だ。身の危険と直結してるから当然だろう。 そろそろ虐待の手段に欠いてきたのでここらで赤ちゃんゆっくりをかえしてやるか。 最後の旗とりをさせた次の日、俺は赤ちゃんゆっくりを外に出してやる。 「ゆー!おしょとだー!」 「しゃ、しゃぶいよおおおお!」 「ゆっくちできないいいいいい!」 「あぁ悪い悪い、これを着ればゆっくりできるよ。」 そういってゆっくりを綿で包んで外れないように止めてやる。 「どうだ?まだ寒いか?」 「ゆゆ~!あっちゃかぃ~」 「これなりゃゆっくちできるよ!」 「よし、じゃあゆっくり親の元へお帰り。これまでがんばってきたから野生でもゆっくりできるよ。」 「おにーしゃんありがちょー!」 「巣の場所は教えたとおりだからね。がんばって帰るんだよ。春にはまたおいで。」 「おにーしゃんまちゃね~!」 そういって綿に包まれた赤ちゃんゆっくりは森に入っていった。 今日巣を閉じると言っていたから間に合うだろう。 今までの訓練から野生でゆっくりと生きる赤ちゃんゆっくりを想像しながら俺は雪の降る道を帰っていった。 「おかしいな。あいつらがゆっくりしてる姿が想像できないぜ。」 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1821.html
※現代社会に当然のようにゆっくりがいます。 ※オリ設定満載です。 ※ぬる虐めです。ボリュームも少なめです。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気がする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして、私はよくわからない成り行きでそのゆっくりを9匹も飼う羽目になってしまった普通の女子大生だ。 「あ~・・・お酒が飲みてぇ・・・」 私の家にゆっくりがやって来てはや2ヶ月。ここ最近全くお酒を飲んでいない。 それまでは毎日リットル単位で酒盛りしていたのだが、連中の食費を捻出するために真っ先に嗜好品のための出費を切ってしまった。 そんな訳で、齢20にしてアル中同然の私の我慢はもはや限界。 しかし、たとえゆっくりと言えど2ヶ月も付き合っていれば愛着は湧く。 今更捨てるわけにもいかず、かといって「1杯だけ」と言ってお酒に手を付ければ転がりやすい坂式にまた飲みたくなるのは目に見えていた。 「あ~・・・ゆっくり酒飲みてぇ・・・」 再び呟くが、流石にこればっかりはどうにかなるものでもない。 ため息をつきつつ、しばらくボーっと空を眺めていたが、10分ほどして飲みたい衝動が落ち着いてきたところでのっそりと立ち上がる。 そして、「さて、今日も頑張るか」と誰に言うでもなく口にしたそのとき・・・ 「ゆっくりしていってね!」 「んあ?」 これでもかというくらい聞きなれたその挨拶に反応した私はすぐさま視線を地面に落とし、きょろきょろと足元を見回した。 そこにいたのは見たこともない大きな2本の角の生えた下膨れのどこか既に出来上がった感のある顔饅頭。 見たことはないが聞いたことはある。確かこいつはゆっくりすいかだ。 「なんだ、ゆっくりか」 「おねーさん、ゆっくりしていってね!」 「はいはい、ゆっくりしていってね・・・ん?」 少しでも目の高さをあわせるためにしゃがみこんだ私に満面の笑みと二度目の挨拶を向ける。 すると、私を“ゆっくりできるもの”と認識したすいかはふらふらと酔っ払いの千鳥足を髣髴とさせる足取りで私の傍へ寄ってきた。 「・・・あんた、酒臭いね?」 「あたりまえだよ!すいかゆっくりできるおさけをもってるもん!」 「・・・・・・ほうほう」 そうかそうか、お酒を持っているのか。 しかし、相手はゆっくりだ。お酒を製造する技術があるとは思えず、また保管する技術もあるとは思えない。 となると、こいつの言う「持っている」の意味するところは一つしかない。 「・・・いただきます」 「ゆっ?!いだい、いだいよっ!ゆっぐぢやべでね!!」 「む~しゃ、む~しゃ・・・なるほど酒饅頭か」 すいかに向かって手を合わせてから、彼女の他のゆっくりより弾力のある頬を少しちぎって食べると口内にご無沙汰だったような気がしなくもない風味が広がってゆく。 「ん~・・・でも、これはお酒とは言いがたいなぁ・・・」 「おね゛ーざん、なにずるの!?すいがおごっだよ!!」 なまじ酒の味がするだけに酒を飲みたい衝動が緩和されるどころか一層フラストレーションが溜まる。 一方、すいかは私のそんな身勝手な不満に気づく様子も無く、“ぷっくううううぅぅっぅぅぅううぅぅぅぅ~”と頬を膨らませて膨張していた。 さっきまでは角を除けば普通のゆっくりよりやや小柄なくらいだったのに、今やすいかの頭頂部は私の腰の高さにまで達している。 「みっぢんぐばわーしたすいかはこわいんだよ!はやくあやまってね!」 「ん、ああ・・・ごめんごめん」 鬱陶しいのでさっさと謝るとすいかはいっぱい溜めた空気を吐き出し、すぐに元の大きさに戻った。 なるほど、すいか種は他のゆっくりの頬のような伸縮性が全身に備わっているらしい。 元の大きさに戻ったすいかはお約束のゆっくりを浮かべ、何故かプルプルと震え始める。 「ゆゆっ!おこったら、おさけがのみたくなってきたよ!」 「・・・そうかそうか」 その言葉を聞いた瞬簡にもし、万が一にも「酒よこせ」と抜かしたら踏み潰そうか・・・などと考える。 しかし、すいかが取った行動は私の想像とは異なるものだった。 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆ~っ!」 元気良く叫んだ瞬間、ポロッと右側の角が取れ、ころころと地面を転がる。 そして、すいかは取れた角を咥えると、細い先端部を噛み砕いた。 「ご~くご~く・・・うめぇ~♪」 よくも飲みながら喋れるものだ、などと思いつつもある確信を得た私はすいかの左側の角を引っこ抜く。 それから、実はかりんとうで出来ている角の先端部を噛んで潰し、その中の空洞を覗き込んでみた。 「ゆぎゅ!おねーさん、なにずるの!?」 「おおっ!お酒が入ってる・・・」 15cm以上はあろうかと言うすいかの角のなかをいっぱいに満たす液体。 しかも、なかなか美味しそうな匂いがする。 もはや飲め飲めモードに突入した私は、すいかの文句を聞き流しつつ、一気に酒を飲み干した。 「ご~くご~く・・・うめぇ~!」 「ゆううううううう!すいかのおさけだよ!かってにのまないでね!?」 傍らで空気を吸って膨張したすいかが何か言っているが、何かアレなスイッチの入ってしまった私の耳には届かない。 爛々と目を輝かせながらすいかの頭を見てみると、信じられない事に、なおかつありがたい事にもう右の角が再生していた。 というわけで、引っこ抜きそして飲む。 量はしっかり回復していたものの、さっきのより味は悪い。 なるほど、ある程度寝かせておかないと味が良くならないのか。 「やめでえええええええええええ!?」 しかし、それでも十分飲める程度の味だ。気にするほどのものでもない。 再びすいかの頭を見てみると今度は左の角がきっちり再生していた。 本当にありがたい。これで久しぶりに心行くまでゆっくりとお酒が楽しめる。 「ひゃあ、我慢できねぇ!酒盛りだぁ!!」 「これぢゃゆっぐぢできないよおおおおおおお!!」 人目もはばからずに叫んだ私は相変わらず膨らんで威嚇しつつも泣きじゃくるすいかの左の角を引っこ抜いた。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ この後、我に返ったお姉さんはお詫びも兼ねてすいかを家に招待することになる。 彼女の家を気に入ったすいかも住み着いて、家計が更に逼迫することに。 それでも、彼女にとって水さえあれば酒を作れるすいかは最高のゆっくりだったという。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3239.html
※現代ものです ※かなり無理がある設定だけど気にしない ゆっくりが世にあらわれて数十年経ち、ゆっくりは人々の生活に浸透していた。 愛玩用として、加工食品として、時にはストレス解消用として。 彼らはこの世のものの一部として受け入れられていった。 しかしある日のこと、ゆっくりの加工から研究まで幅広く手がける大手企業に修正不能な問題が発生した。 始まりは社長の汚職事件が発覚したことだった。 この程度ならば、代表たちの記者会見での謝罪と社長辞任で済むはずであった。 しかしそのことがきっかけとなり、その他もろもろのスキャンダルが発覚した。 その中でも痛手だったのは『食品になるゆっくりたちが食べている餌は餓えた豚も食べないようなひどい臭いを放つ劣悪なものである』ということがメディアに知られたことだった。 ゆっくりは栄養や鮮度が悪くてもなんら問題はなく、その餡子も健康に害を及ぼすものにはならない。 このことは科学的にも証明されていることであった。 しかし、一時世間を騒がせていた有害物質を含む食品も餌として使用していたこともばれてしまい、信用を完全に失い、株は紙と化した。 このようなことになり、会社は倒産、研究所は閉鎖、加工場は永久凍結されるのは自然な流れであった。 ゆっくりの一部は他の研究施設に売却されていったがその多くは山へ放たれていった。 加工場や研究所は世界各地にあり、その数は膨大だった。 そして数年後、企業の倒産により、多くの失業者が出たことやゆっくりの不法投棄騒ぎなど世間に騒がれていたが他の話題が出れば、世間は興味をなくし、いつものように人々の記憶から薄れていった。 だが着実に問題は発生していた。 野へ放たれたゆっくりたちは加工場で何世代も過ごしており、野生で生きていくことは不可能だった。 水の危険性、捕食種の恐ろしさ、野生生物の存在、ゆっくりという種族の脆弱さ、全てを忘れていた。 その中で数を減らしながらも経験を経て、やがて野生へと還ることだろう、専門家もそう結論づけていた。 だが、よりゆっくりしたいという浅ましい執念と価値観の違う先住ゆっくりから追い出されることなどを彼らは失念していた。 あるゆっくりは山を降り、人の住む町へと入っていった。 あるゆっくりは恵み豊かではあるが、危険も多い平原へ移り住んだ。 あるゆっくりはもともと住んでいたゆっくりに打ち解け子を増やした。 しかしこれはゆっくりの生活圏が広がり、人と接触知ることが多くなったということでもある。 これにより、各地でゆっくりによる被害が発生した。 もともと自然界のバランスを保っていたゆっくりの数が激増したことにで人以外にも被害が出ることになった。 ゆっくりが家宅に侵入、家財道具が破損した。 ゆっくりに畑をあらされ、収穫できなかった。 ゆっくりが山の資源を食い荒らし、他の生物の個体数が減った。 ゆっくりが大量に溺れて川が汚染されて生物の種類が減り、河の流れ込む海にいたり、海洋汚染にもつながった。 これらは以前から騒がれていたことだがゆっくりが増殖したことにより、目に見えるほどの事態になった。 しかし被害はこれにとどまらなかった。 加工場では繁殖させるため、個体数を増やせるように特殊なゆっくりが使われていたことにより、自然ではありえない速度で増えていき、山は一面ゆっくりだらけになり、他の生物を追い出し、その山は禿山に変わってしまったところもあった。 数が増えていったことにより、ゆっくりは人の生活圏にも侵入し、町のゆっくりも増えていき、 ゆっくりがゴミや死骸を撒き散らすことにより、町にも汚物が溢れることになった。 道路を通行しようとして車に轢かれて、車やバイクがスリップし、交通事故の多発につながった。 研究用として使われたゆっくりには薬物実験にも使われたものもあり、ゆっくりには特に変化がなかったが、餡子の中で変化し、有毒になるものも数多くあった。 渡り鳥が大量死していたり、飼育していた動物が変死したりという事件が起こり、解剖してみるとゆっくりのものと思われる餡子が胃に入っており、その中から人をも死に至らしめる物質も検出された。 このような事件はメディアが放っておくわけもなく、連日報道され、人々は『ゆっくりは人に対して害になる』という考えを抱くようになった。 その流れに乗るようにゆっくりの悪い点ばかりを掲載したような書籍も出版された。 『ゆっくりは総じて人を下であると見ている』 『れいむは愚鈍であり、まりさは薄情、ありすはレイパー、ぱちゅりーは貧弱な愚者である』 『ゆっくりは人類の敵』 このようなことは冷静に見れば何の根拠もない嘘八百であるものばかりであったが、メディアもそれを煽り立てるように報道して、人々はゆっくりに対し悪いイメージを抱いていった。 飼いゆっくりは捨てられ、ゆっくりの加工食品も売上が落ち、月日は流れた。 各国は政府に対し、ゆっくりをどうにかするよう訴えたデモが起こり、加熱していった。 政府も何もしなかったわけではなかったが、駆除しようにも数が多すぎて瞬く間に増えていき、 経費もかさみ、どうにもできなくなっていた。 ゆっくりを捕獲した数に応じて賞金を出す国もあれば、ゆっくりの駆除を義務とした国もあったが思うような成果は得られなかった。 ゆっくりを効率よく駆除できる策や薬品の開発を待つばかりとなった。 ゆっくり対策費用などにより、経済不況が起こり人々は不安な毎日を過ごすようになり、ゆっくりへの憎悪を強めていった。 こうして地上にゆっくりの安住の地はなくなった。 ※※※※※ れいむは分からなかった、どうしてこんなことになってしまったのか。 狭い檻の中、自分のかわいい子供たち、赤れいむ2人赤まりさ1人と一緒に入れられ考えた。 れいむは春に両親ともれいむの間から長女として生まれた。お母さんはとても優しく、2人に 挟まれるととても安心でき、幸せな気分になれた。 みんなで一緒に食べるご飯もおいしく、すくすくと成長した。 長女としてみんなの先頭に立ち、まとめ役としてお母さんの役に立とうとした。 お母さんはそのことをとても褒めてくれて、「れいむが大きくなったらとても いいお母さんになれるね」と言われ、嬉しかった。 季節が過ぎみんな大きくなり、冬が来た。冬の間は狭いおうちの中、みんなで寒くないよう固まっていた。 妹たちはお外で遊びたいと駄々をこねたりしたが、れいむはみんなでくっつきあっているのが好きだった。 お母さんの綺麗なお歌もいつでも聴けたし、穏やかに過ごせた。 一人も欠けることなく春になり、れいむも十分に大きくなって、ついに巣立ちの日を決めた。 お家の前に立ち、みんなに別れの挨拶をした。秋に生まれた妹たちは行かないで大泣きした。 れいむも泣きそうになったがお別れは笑顔でしようとがんばって笑っていたが、今にも泣きそうだった。 お母さんが「辛かったらいつでも戻ってきていいよ」と言ってくれた。 その一言で涙が我慢できなくなった。 今まで育ててくれてありがとう、お母さんみたいにゆっくりしたあかちゃんをうむからね、と みんなにお別れした。 半日ほど跳ねて綺麗なお花さんが咲いている野原についた。 そこではいくつかのゆっくりの家族がお花を食べたり、みんなで歌ったり、 遊んでいたりとみんな楽しそうだった。 家族のことを思い出し、寂しくなったがれいむもお花さんを食べたりした。 日が傾きみんな自分たちのおうちへ帰ろうとしていた。れいむもお家を探そうと森を探索していたとき、1人のまりさと出会った。 ゆっくりしていってね!と挨拶した後、まりさに「何をしているの?」と尋ねられた。 家を探していることを伝えると、「まりさのお家に泊まってっていいよ!」と言ってくれたので 甘えさせてもらうことにした。 次の日も一緒に食べ物を集めたり、ゆっくりしたり、たくさんのことをしてまた泊めてもらった。 そんなゆっくりした日が続き、二人は恋をした。どちらともなく告白し、一緒になることを誓った。 暑い日が続くようになり、ご飯が豊富になってきたころにすっきりをして頭から茎が生えた。 そして3人とも無事に生まれた。茎を食べやすいように噛み砕いてあげた。 「おかぁしゃん、ありがちょぉ♪」赤ちゃんがお礼を言ってくれた。生まれてきてくれてありがとう。 れいむは最高に幸せだったし、これからももっとゆっくりできるだろう。そう信じて疑わなかった。 次の日、まりさは赤ちゃんたちのためにご飯を集めに出掛けた。その間れいむは赤ちゃんたちと す〜りす〜りしたり、お歌を歌ってあげたり、舐めて綺麗にしてあげた。 赤ちゃんたちがおなかがすいたと言い始めた。まりさはそろそろ帰ってくるだろうと待った。 すると、お家を隠している枝や葉っぱがどかされていった。まりさが帰ってきたと思い、ゆっくりしていってね!とお帰りの挨拶をした。だけど見えた顔はまりさじゃなかった。 そして長いものが伸びてきてれいむの頭を掴んだ。痛い、離して、いくらいっても離してくれなかった。 そして外まで引っ張り出された。そして外にいるのは何なのか見た。 れみりゃよりずっと大きく、長い手足がついていた。お母さんから聞いたことがある、 『にんげんさん』だ。 そして、れいむは袋に入れられた。出してと叫んでもだめだった。赤ちゃんたちが何か言っているがうまく聞き取れない。赤ちゃん逃げてと叫んだ。 そのうちくぐもった声になった。きっとれいむのように袋に入れられてしまったんだ。 袋に入れたまま、れいむはどこかへ連れて行かれた。 冷たい檻の中に赤ちゃんたちと一緒に放り出された。赤ちゃんたちは「いちゃぃぃぃぃ」と 泣いていたがぺ〜ろぺ〜ろすると泣き止んだ。 この檻から出られるんだろうか、きっと無理だろう。『にんげんさん』はれみりゃよりずっとずっと怖いとお母さんは言っていた。ここから出れたとしてもまた捕まってしまうだろう。 正直怖くてたまらなかった、今にも泣いてしまいそうだ。けど泣いたら赤ちゃんたちが不安になってしまう。 赤ちゃんにはゆっくりしてほしい。 まりさはどうしているだろう。一生懸命探してくれているかもしれない。助けてほしい、 ここはとてもゆっくりできない。でも助けに来てくれてもまりさも『にんげんさん』には敵わないだろう。 それでも助けに来てくれると思っていないと不安に潰されそうだ。 れいむはもうゆっくりできなくなるだろう。そう思うと楽しかった思い出がよみがえってきた。 お母さんと一緒にいたこと、まりさとのゆっくりした日々、でも二度と叶うことのない夢。 赤ちゃんたちにもゆっくりしてほしかった、楽しいことを何も教えてあげることができなかった。 そう思うと気分が沈んだ。 「おきゃぁしゃん、どぅしちゃにょ?」 暗い顔をしていたのを見られたんだろう、赤ちゃんが聞いてきた。 大丈夫だよと言おうとしたが、ちょっと涙声になってしまった。 「おきゃぁしゃん、どきょきゃぃちゃぃぃちゃぃにゃにょ!?ぺ〜りょぺ〜りょしちぇあげゆきゃりゃ ゆっくちよきゅにゃっちぇにぇ!ぺ〜りょぺ〜りょ♪」 「にゃりゃまりしゃみょ〜♪ぺ〜りょぺ〜りょ♪」 「りぇいみゅみょ〜♪」 ちょっとくすぐったいが、赤ちゃんたちがれいむを励まそうとしてくれているのが分かる。 涙を我慢できなくなった。そして今までにないほどの大声で泣き叫んだ。 それを見た男の感想は「でかい饅頭が泣き叫び、ちっこい饅頭がまわりで気持ち悪い声を出して でかい饅頭を舐めているのは最高にキモい。饅頭は共食いすると言うし、大方腹が減って食おうとしているのだろう。浅ましい奴らだ。」というものだった。 ゆっくり処理場で働く男はさっさと済ませてしまおうと思い、ゆっくりの入った底に キャスターのついた檻を押していった。 れいむが男が近くにいるのに気づき、 「ここからだしてね!」 と言っていたが無視された。 目的の場所に着いて、男は檻を押す手を離し小窓ほどの大きさの鉄の窓を開いた。 そこから目も開けられないほどの熱気が立ち上る。ここはゆっくり焼却炉、ゆっくりを焼却処分するために国が建設した施設であった。 男は檻の上部を開けて赤ゆっくりを捕まえだした。 れいむは赤ゆっくりたちに 「はやくおかあさんのおくちにはいってね!」 と言っていたが男が待つわけもなく、一匹もれいむの口の中に入ることはなかった。 「はなちちぇ〜!」 「おきゃぁしゃん、たしゅけちぇ〜!」 「きゅりゅしぃよ〜!」 赤ゆっくりは男の手の中で悲鳴を上げていたが男は 『ゆっくりは命乞いをするが浅ましい執念で他のゆっくりを身代わりにしてでも生き延びようとする醜い物体である』 とマニュアルに書いてあり、それに従い容赦はしなかった。 そして赤ゆっくり3匹を焼却炉に放り込んだ。 赤ゆっくりは断末魔もなく燃え尽きた。 「でいぶのあがぢゃんがああああぁぁぁぁ!!!」 霊夢は嘆き悲しんでいたが 『ゆっくりは他のゆっくりの死を嘆き悲しむそぶりを見せるが、餌を与えたり、 時間がたてばそのことを綺麗に忘れる』 男はマニュアルを信じ切っていた。れいむに様子を見ても、 これだからゆっくりは嫌いなんだ、と言うことしか思わなかった。 そしてれいむを両手で掴みあげて焼却炉に放り込んだ。 「ゆぎゃあああああぁぁぁぁあづいよおおおおおおぉぉぉぉ!!!」 れいむは思った。どうしてこんな目にあうの?れいむ何も悪いことしてないよ? このままじゃ死んじゃう!助けてまりさ!助けてお母さん! この焼却炉はゆっくりを文字通り“必殺”するために設計されている。 れいむは欠片も残さずに燃え尽き灰になった。 男は次に処分するゆっくりたちを運び込むために、鉄の窓を閉め檻を押しながら離れていった。 実はまりさも少し前に処分されていた。 まりさがご飯を探しているときに捕まり、巣はどこにあるか言わなければ殺すと脅されていた。 最初は抵抗した。しかし、殴られ続けて歯が全部折れ、どうにかしゃべれるような状態になって 白状した。 巣の前まで来るとまりさはまた殴られて、今度はしゃべることもできず、 右目が飛び出した状態にまでされた。そしてれいむや赤ゆっくりたちが入れられた袋とは別の袋に入れられた。 まりさは袋の中でれいむと赤ゆっくりたちが捕まるのを聞いて、心の中で何度も ごめんね、ごめんね、とわび続けた。 れいむと赤ゆっくりが入れられた檻の近くの檻に入れられていた。 しかし薄暗い部屋の中、周りは見えず声だけでしかれいむと赤ゆっくりたちを確認できなかった。 お母さんはここにいるよと言いたかった。でも声が出せなかった。 やがてまりさの檻が運ばれていった。 れいむや赤ちゃんと一緒にいたい、と心で思うことしかできなかった。 そしてまりさは焼却炉に放り込まれた。 痛い、熱い、助けて、どうして、いろんなことが思い浮かんだが声には出せなかった。 まりさは悲鳴を上げることもできず灰になった。 こうしてれいむとまりさ一家は他のゆっくりたちともだが、一緒になることができた。 ちなみにれいむの両親と妹たちも数日前に焼却処分されていたが、灰はすでに書き出されたあとであったため 一緒になることはなかった。 ゆっくりはゆっくりすることが果たしてできるのだろうか あとがき また懲りずにSSを書いてみました。前よりは上達したのかしら。 実は続きも考えてあるんですけど今回はここまでとしました。 続きはまた今度にします。需要あるか知らんけど。 やっぱりゲスよりもこういう無垢なゆっくりを虐めるほうがぞくぞくしますね。 ゆっくりは人間みたいに考えることができるがボキャ貧だから人間に誤解されて ゲスだと認識されたりしているんだと思う。 きっと7,8割は人間に関わることもせず、平和に過ごしているんだと思う。そう思いたい。 まあ何はともあれ、これからもゆっくりを虐めていこう! それでは、また。 こんな駄文を読んで頂きありがとうございました。 書いたSS ゆっくりいじめ系1932 バカは死んでも
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2831.html
ゆっくり鉄の掟 1.ゆっくりできないゆっくりは、ころす。 2.ぐずなゆっくりは、ころす。 3.じぶんだけゆっくりするゆっくりは、ころす。 4.みにくいゆっくりは、ころす。 5.びょうきのゆっくりは、ころす。 6.すっきりがへたなゆっくりは、ころす。 7.いなかものなゆっくりは、ころす。 8.にんげんにこびるゆっくりは、ころす。 9.かざりのないゆっくりは、ころす。 10.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 11.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 12.こどもをゆっくりさせないおやゆっくりは、ころす。 13.みんなをゆっくりさせないドスまりさは、ころす。 14.おやきょうだいでも、ゆっくりするためなら、ころす。 元ネタはゲルショッカーの掟 カッとなってやった、特に反省はしていない。 何という内ゲバ、とか ここが矛盾してるだろ、とか 大事なことなので2回言いました、等は全て仕様です。だってゆっくりだし。