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『ゆっくリズム』 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりと呼ばれる饅頭みたいな生き物が人間の男に近づき、にこにこ笑いながらゆっくりしていくことを強要してきた。 この人間にもゆっくりしてほしい、そんな気持ちから笑顔で今日もゆっくり流のあいさつを人間にする。 ちなみにこのゆっくりは、まりさ種と呼ばれるもので、黒い薄気味悪い帽子を被っていて、金色の長くて綺麗な髪をもつゆっくりである。 これまでに挨拶した人間はみんな「ゆっくりしていってね」と笑顔で挨拶を返してくれた。 だから、この人間も笑顔で挨拶を返してくれる。まりさはそんな人間達が大好きなのだ。 だけど今回の人間はゆっくりまりさの期待している行動とは全く別の行動をとったのだ。 男は、ひょいっとゆっくりまりさのサッカーボールくらいの大きさの顔を、頬のあたりを掴んで片手で持ち上がる 「ゆっ! ゆっくりやめてね」 驚いているゆっくりまりさを男は無視する。 持ち上げたゆっくりまりさを片方の腕で「ぽすっ」と口と顎の中間辺りを叩く。 人間でいえばこの辺がお腹になるのだろうか? 顔しかない生き物だからよくわからない… が、ここをお腹と仮定する。 出産する時のゆっくりは口と顎の中間辺りから子供を産むと聞くから、ここがお腹だとは思われる。 「ゆっくりやめてね」 少しぷくっと膨れた顔で怒るゆっくりまりさ。 力を全く入れずに叩いただけなのて平気らしい。しかし男は何回もゆっくりのお腹を叩いていく。 「たたくのはゆっくりやめてね!」 「ほんとにまりさおこるよ!」 「ゆっ! ゆぶっ… ゆぶっ!」」 いくら力を入れないパンチといってもそれを何回も入れられるとゆっくりにとっては効いてきたらしい。 「おぅおぅ、言うね言うねぇいっちょまえに! こぉのゆっくりが!」 どんどん殴る速度を速め力も入れていく。 「ゆぶぅ゛!! ゆぶぅ゛!!」 今度は地面に仰向けの状態でゆっくりまりさを下ろし、マウントポジションを取ると、両手で殴る。 小刻みにリズムを取りながら、さらに速く速く殴っていく。 「悪いのは、この口か? この口か?」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 規則正しいリズムの音がゆっくりを殴りながら聞こえてくる。 「も゛う゛… や゛べでぐだざい… ぐぶょ!!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ まりさの言葉などには耳を貸さずに殴り続ける男。 そして仕上げに、思い切り強く平手を喰らわせる。 バシィィー!! 「ぶべあ゛ぁぁぁ゛!!」 いい音と声がした。そのまま5mくらい地面をぼよんぼよんとバウンドしながら飛んでいくゆっくりまりさ。 俯けで倒れたまま動かない。 男は倒れているゆっくりまりさに近づくと、ゆっくりまりさの帽子を取ってみる。 すると帽子を取られた事にはすぐに反応し、ずるずると起き上がった。 「や゛… やめてね… まりざのぼうじをかえしてね…」 ぼろぼろの顔で帽子を返せと言ってくる。 そんな言葉には耳をかさず、男は帽子を両手で持ち、力を入れてばりばりと真っ二つに破り捨てた。 これにはゆっくりまりさも大ショック! 大粒の涙を流し泣き始めた。 「ま゛ま゛りざのぼう゛じが゙あ゙あああああ!!!」 今度は帽子を失ったゆっくりまりさの長い髪をつかみ持ち上げる。 「ひ゛どい゛よ゛おじざん!! ぼうじを゛ぼうじ゛を゛がえ゛じで ごびゅ!!!」 ゆっくりまりさを地面にびたんと叩きつけ、再び両手でお腹を殴り始める。 「おぅおぅ言うね言うねぇ! こぉのゆっくりが!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「お゛おじざん… やべでぇ!」 再びゆっくりを殴るリズムが始まった。 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「ゆっくりの癖に調子くれて帽子なんか被りやがって…」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「おまけに、ゆっくりの癖に綺麗な髪しちゃって」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「しかも髪の色は金髪… おしゃれさんだねぇ」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「ぼ… ぼぅ… ゅるじでぐだ… ざぃ」 か細い声でそう訴えかけるゆっくりまりさ。 男が我に返ると目や口から餡子が漏れ出し、潰れた饅頭に変形していた。いくら軽く殴っていたとはいえ殴りすぎたようだ。 だからといってやめる気配は一向になかったが。 バシィィー!! もう一度、仕上げに本気の平手をお見舞いする。 「ゆびゅ゛う゛お゛え゛え゛え゛ぇぇぇ」 ものすごい奇声を上げ、ごろごろと転がっていくゆっくりまりさ。 そして、ピクピクと痙攣したまま動かない。 そんな事はお構いなしに再びゆっくりまりさの長い髪をぐいっと引っぱり持ち上がる。 「ゆ゛…」 殴られすぎてもはや何かを喋る気力さえないゆっくりまりさ。 ゆっくりまりさは思う。これだけ殴られた自分にまだ何をするのだろう? でももうこれ以上は殴らないだろう、だからこのまま目をつぶってやりすごそう。 無抵抗の自分を殴るほどこの人間も酷くはないだろう。 そう思いながら目を閉じてやりすごそうとする。 「おぅおぅ言うね言うね! こぉのゆっくりが!」 その言葉で閉じようとしていた眼がぐわっと開く。 「ま゛! ま゛り゛ざなにもい゛っでな゛ぐべぁ!!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ もちろんゆっくりまりさは何も言っていない。男に対して最初から「ゆっくりしていってね!」しか言っていない だけどその「ゆっくりしていってね!」が男の怒りにスイッチを入れてしまったのだ。 そして、このゆっくりまりさは日が暮れるまでリズム良く殴られ続け、フィニッシュには平手をお見舞いされるを繰り返された。 ギリギリで生きてはいるが元の形に戻るには時間がかかることだろう。 おわり ゆっくりまりさは、ゆっくりの中でもいぢめたいNo1です。 人を見下したような表情、卑怯な性格、黒い帽子、長い金髪。 これだけ揃えばいじめたくなります。 でも、このお話に出てくるゆっくりまりさは良いゆっくりまりさです。 何もしてないのに可哀想ですね。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/958.html
注意書き 舞台について特に決めてはいませんがたぶん幻想郷の外だと思います。 人間に飼われるゆっくりがいます。 虐待描写は温めです。 前半は特にいじめとか言った描写はありません。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ん?なんだ、ゆっくりか…」 俺が大学のレポートを作成していると窓からゆっくりれいむが入ってきた。 まあ、特にゆっくりが嫌いというわけでもないし、汚れているというわけでもない、荒らしたり自分の邪魔をしないのであればそのまま放っておこうと思った。 「えーと…財務管理財務管理…」 教科書をめくり索引から項目を探す。 「おにいさん!!ここはおにいさんのおうちなの?」 「そうだよ」 無視して自分の家宣言されても困るので適当に答えておこう、あ、財務管理、5ページか。 「ゆ…あまりひろくないけどとてもゆっくりしたおうちだね!!」 「そりゃどーも、でもおまえの家よりは広いぞ?」 「そーだね!!!」 なんだ、理解はしていたのか、じゃあいいや、レポートを書こう。 しばらくれいむは黙って俺の方を見ていたがしばらくして俺に声をかけてきた。 「おにーさん!ゆっくりしてる!?」 何度も教科書とレポート用紙を見比べ、ペンを走らせる俺がゆっくりしてないように思えたのだろう、事実俺は今ゆっくりしていない。 「いや、あまりゆっくりしてないな」 「どおして!?ゆっくりしよう!!ゆっくりしていってよ!!」 そんなこと言ってもレポート書かないわけにはいかないし、でも急いで書くものでもなかったので、休憩がてらこいつと少し話してもいいかなと思った。 「じゃあどうすればゆっくりできるんだい?少し教えてほしいな」 「ゆゆ、そうだね…」 れいむは顔をしかめながら、しばらく考えた後答えた。 「おひるねをするとゆっくりできるよ!!」 「パスだ、俺に昼寝の習慣はない」 夜眠れなくなって授業中に寝てしまい、先生に怒られるのは嫌だからね。 「ごはんをたべるとゆっくりできるよ!!」 「却下、さっき昼飯を食ったばかりだからこれ以上は食べれない」 「ゆゆゆ…おにいさん、てごわいね…」 何が手ごわいんだよ、何が。 「そうだ!すっきりすればゆっくりできるよ!!」 「!?!?!?」 「ゆふふふ、すっきりすることにきづいたれいむはさすがゆっくりしてるね!!」 「俺には…」 「ゆ?どうしたの、おにいさん?」 「俺には…すっきりする相手がいないんだよぉ…」 お兄さんは泣いてしまいました。 「そう、おにいさんにはすっきりするあいてがいないんだね…」 「うぅ…」 ちくしょー、今まで親戚以外の女性に振れたこともない、俺の心の傷を掘り返しやがって… 「でもれいむにはすっきりするあいてがいるよ!!まいにちまりさとちゅっちゅしてすっきりするよ!!それもれいむもまりさもまだわかいからにんっしんしないすっきりだよ!!」 なんだよ、その「まだ社会人じゃないので避妊しています」みたいな言い方は!?それに毎日やってるのかよ!? ああ、なんだろう、たかが饅頭の癖になんだか怒りが込み上げてきたぞ…? 「ちゃんとにんっしんしないれいむはとてもゆっくりしてるでしょう!!じゃあれいむはもうかえるね!!かえってまりさときょうもすっき…」 「饅頭が調子に乗ってんじゃねえぇー!!」 俺はれいむの顔面をがしりと掴むと全力で窓の外に放り投げた。 5秒ほどそのままの体勢で固まってた俺は、レポートを書くために椅子に座った。 「……ふぅ、すっきり、さて、レポートレポート…」 俺ったら学生の鏡だねぇ、さて、財務管理は… 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!や゛め゛て゛え゛ぇぇぇ!!!」 「な、なんだぁ!?」 急に窓の外から悲鳴が聞こえてきた、俺はあわてて窓の外、悲鳴をした方向を見る。 「い゛や゛だぁぁぁ!!す゛っき゛り゛し゛た゛く゛な゛い゛い゛ぃぃ!!!」 「はぁはぁ、しょたいめんのありすにいきなりちゅっちゅしてくるれいむかわいいいぃぃ!!すっきりしよぉねえぇぇ!!」 なんと、さっき投げたれいむをありすが襲っていた、どうやら俺が投げたれいむがありすに命中、ちょうど口と口がぶつかる形になってありすが発情したのだろう。 まったく、この饅頭はどうしてこう俺の目の前ですっきりの話をしたがるんだろうか、すっきりしたがるんだろうか? というか白昼堂々、何の遮蔽物もないアスファルト上で交尾するっておかしいだろ? 「んほぉぉお!!いいよぉ!!れいむ!!れいむぅう!!」 「い゛や゛だあ゛ぁぁぁ!!すっきりしたら…しんじゃう゛う゛よ゛ぉお゛ぉお゛!!!!」 最初は放り投げただけで許してやろうと思ったのに…目の前で交尾なんかされては俺の怒りは有頂天だ。 交尾に夢中で周りを見る余裕がない二匹に近づいた俺は金属バットで二匹まとめて叩き潰した。これでゆっくりレポートが書ける… そう思ってレポート用紙を見るとおかしなところに気づいた、途中から文章が同じことの繰り返しを延々と描いているだけになっている… きっと、れいむの話に適当に答えている時にレポートに対する注意がそがれたのだろう… 「やっぱり最初から追い出しとくべきだった!!あの饅頭がぁ!!」 結局、レポートは書き直す羽目になった。 あとがき 普通な虐待ものを書こうと思ったのですが… 虐待描写って難しいですね。 9月4日 1724 セイン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2364.html
ゆっくり達を飼い始めてどれくらいになるだろうか。 最近私が教育していたゆっくりに変化が訪れた。 私が育てているのはれいむ種が2匹、まりさ種が2匹、ありすが1匹、みょんが1匹。 それぞれ違う部屋で、別々に教育を施した。 人間に対して元より持つ野性的な行動を取らせない事が第一の教育方針。 これはどの種にも行い、それをしっかり身に着けさせるには骨が折れた。 しかし今回この場で話すのはそんなストレスがマッハになるような事例では無い。 この、各ゆっくりに対する育て方の違いで―この謎の生命体は驚くべき変化を遂げたのだ。 1つ目のれいむの部屋に入る。 「おにーさん、おかえりなさい!」 小さい畳を敷き、ミニチュアな鳥居と賽銭箱を備えた透明ケースから声を上げるれいむ。 「ただいまれいむ。今日もれいむのゆっくりぽいんとでゆっくりしてたんだね」 「ええ、ゆっくりしてたわ。でもちょっとくらいなにかおこらないの?」 れいむは部屋に一緒に住まわせていた亀の上に乗りにこやかに話す。 このれいむ、リボンには変化が無いものの、髪の毛が綺麗な紫色となっているのだ。 こんな感じになったのは―ここに住まわせて1ヶ月位経った頃だろうか。 ゆっくりと他の動物を一緒に住まわせたらどうなるか試した所、偶然にもこのような変化をもたらしたのだ。 「そんなれいむの為に、今日はこんなのを用意してみたよ」 そう言って私は捕まえてきていた野生のれいむをケースの中に入れる。 「ゆ!ここはとてもゆっくりできるよ!!!ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!!!」 何と言うか、お約束の一言。 よくもまぁこんな言葉をすらすら言える本能を持っているものである。 「ゆゆ、へんなれいむがいるよ、かみのいろがへんなれいむはゆっくりでていって…ゆべっ!?」 「ひとさまのいえにきて、よくもまぁそんなくちがたたけるわね」 紫髪のれいむに対して暴言―おっと、本能の言葉だった―を吐きつけるれいむに対してのしかかる紫髪れいむ。 「どぼじでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」 「あなたが、みのほどをしらないからよ」 「ゆびぃっ」 泣き喚くれいむに上からのしかかり、息も絶え絶えになったれいむに冷たい言葉を放つ紫髪れいむ。 そしてそのままとどめを刺さずに放置。 「ふぅ、これでいへんかいけつね。おにーさん、すてきなできごとありがとね」 髪の毛が紫になったれいむは以前に比べ好戦的になり、いつもと違う事が起きるとそれを解決するようになった、ようだ。 それじゃまたね、と紫髪れいむに挨拶をし、私は次の部屋へ向かった。 「あ、おにいさん!ゆっくりしていってくださいね」 ミニチュア鳥居にミニチュア神社、渡り石などを広げたケースから丁寧な声が聞こえてきた。 ここは、もう一匹のれいむを育てていた場所である。 「きょうもかみさまのはなしをきかせてくださいますか?」 「それはもう少し後でいいか? 今は皆の所を順番に回っているんだ」 ここではれいむに対して神様のお話を毎日欠かさずしていた。 これもまた1ヶ月位していたのだが、段々とリボンが小さくなり、れいむのかみのけが緑色になり… そして今では立派な"ゆっくりさなえ"に姿を変えていたのである。 「そうだったのですか」 「ああ、もう少ししたら皆に会わせてあげるよ」 これが元々れいむ種だったと誰が思うだろうか。 礼儀正しくてとても懐いてくれる、躾の行き届いたゆっくりである。 「もし私を悪く言うゆっくりが来たら、さなえはどうする?」 「そのわるいゆっくりをこらしめます!」 うんうん、さなえも私に対する信頼度は高いみたいだ。 野良ゆっくりに対しても紫髪れいむとまではいかないが攻撃を仕掛けるだろう。 「うふふ、おにいさんきょうもきてくれたのね」 魔法陣っぽい絵柄の書いてある地面にゆっくり用の本や何やらを用意したケースから笑い声と共にまりさが迎えてくれた。 「お、まりさ。今日も勉強してるのか?」 「ええ、どすとやらはふしぎなわざがだせるんでしょ?わたしもまけてられないわ」 躾ついでに本を読ませて勉強させてみた所、このまりさは帽子が紫色に、髪が赤色に変わった。 オマケに口調まで変わったときたものだ。 基本、まりさ種がうふふと笑うのは酷い虐待を受けて頭の中がイカレた時にしか言わないと考えていたのだが。 どうやら違う条件でもうふふと言うようになる、それの手段の一つなのかもしれない。 「うふふ、もっと強くなるわよ、うふ、うふ、うふふふふ・・・・・・」 自分の世界に入りながらも勉強する姿を見て、私は次の部屋に向かう。 「わぁっ!!!」 「うわぁ!?」 「ふふふ、おどろいたかい?」 薄暗い部屋のなか、ちょっと廃墟っぽいイメージを施したケースを覗き込んだ途端、後ろからした声にびっくりしてしまった。 元々はまりさ種を飼っていたのだが・・・・・・驚かせて、悔しかったら私を驚かせてみなと挑発したの結果なのだろうか。 "ゆっくりみま"、と言うらしいゆっくりになってしまった(本人がみまと名乗った)。 帽子もとんがり帽子となり、透明ケースをすり抜けられるようにまでなってしまった。うーん。 「今日は油断してしまったな、こいつは一本取られたよ」 「ふふ、でもまだまだおどろかせたりないからねぇ、だんだんといままでのぶんかえさせてもらうよ」 「言ってな、次はそう簡単に驚かないさ」 まぁ、こんな面白いゆっくりが出来るとは思わなかった。 「おにーさん、もっとじゅぎょうしてくれるの?」 綺麗に整頓した本にトランプ兵隊のミニチュア等を置いたケースから優しい声が聞こえてくる。 「ありす、今は授業の時間じゃないからね」 「ざんねん」 「大丈夫、ありすはいつも全力で頑張ってくれるじゃないか」 「えへへ、おにーさんありがと」 まりさは勉強を自主的にさせたのに対し、ありすには自分でみっちりと教え込む形にした。 レイパーになる危険性のある種だけに、細心の注意をしただけ、のはずだったのだが。 カチューシャがいつのまにか青色のリボンに変わり、心なしかサイズも小さめになっている。 すぐそばにはお気に入りの本が1冊あり、いつも持ち運んでいる。 「いざというときにぜんりょくでがんばれるようにならなきゃ」 「きっとありすならなれるさ、保障するよ」 「ありがとおにーさん」 レイパーとは似ても似つかないその姿に、正直ちょっと感動してしまった自分がいる。 いい子に育ってくれるだろうと思いつつ、次の部屋に足を運んだ。 「おお、お兄さんではないか」 畳に掛け軸、いかにも和風な部屋。 どうにかしてぺにすぺにすちーんぽなのを何とか喋らせようと頑張ってみた。 ついでに剣術も面白半分で覚えさせてみた所。 「本当に変わったなぁ」 「なに、昔は若気の至りが過ぎたんじゃよ、しかし殆どの者がああだとは嘆かわしい」 立派な髭を生やし、貫禄も十分。 縁側で一緒にお茶を飲むとすごくゆっくりできそうである。 "ゆっくりようき"だそうだ。 「こうして育ててくれた事には感謝しておる」 「まぁ、飼うと決めたからなぁ」 「あの姿のまま一生を送るなど、今の私には考えられぬ。本当に御主人様にはここまでして頂いた恩義をいつか返さねば」 まぁ、何と言うか。 凄く穏やかでゆっくりしているとはこういうのをいうのだろうか。 しかし私より貫禄あるかもしれないような姿になるとは思いもしなかった・・・・・・ ともあれ。 どうやら私の育てたゆっくりは『進化』したらしい。 もしくは『変異』したのだろうか? しかも野生のゆっくりに対し立ち向かったりする位だ。 ひょっとしたら昨今の被害に対するいい対抗策になるかもしれない。 ここまで立派に育ったんだ、試しにこの6人を顔合わせした後、わざと家の玄関を開けて外出しよう。 帰ってきた時が楽しみだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき ゆっくりがずっとあのままの姿でしかも主にいる面々だけ…とは限らないかなと。 何らかの要因で姿が変わる事くらいあってもいいんじゃないかなと思いました。 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3529.html
『野良ゆっくり根絶計画』 舞台は今より百年程先の未来。ゆっくりは愛でられ食べられ虐待され捕まえられ殺され……と色々な事があったが徐々に数を増やしていった。 出鱈目な生態に生き物とは思えない成長の早さ、そして後先考えずに交尾をするのがその原因である。ゆっくりが出現した当初はペットにされることもあった。 だがゆっくりによる被害…特に畑荒らしや器物損害などが横行したため段々と人々から疎まれるようになった。メカドスやメカゆっくり、メカうーぱっく などのロボットを作り共存と監視を試みたがコストの高さやゆっくりの学習能力の無さ、そして何よりもゆっくりの個体数の把握ができていなかったことにより ロボットによるゆっくり対策は打ち切られてしまった。徐々にゆっくりを絶滅させるべきであるとの意見が多くの人間や妖怪から寄せられるようになった。 それでもゆっくりは根絶されなかった。なぜならばゆっくりの"出鱈目さ"に研究者が目をつけていたからである。特に体の構造は魅力であった。 生ごみや腐った食べ物、果ては限度はあるが食べ物ではないものまで消化し餡子やカスタードに変えてしまうのだ。 このような体の構造に目をつけた研究者は多かった。加工所もこれに目をつけ研究者に多大な資金援助を行い解明を急がせた。 多くの研究者が取り組み長い年月をかけ、ついに謎を解明することに成功した。 ゆっくりの体にある消化酵素を特定しこれを作り出すことに成功したのだ。これにより生ごみから餡子やカスタード、チョコクリームなどを精製することが可能となった。 もはやゆっくりは……不要。山でひっそりと暮らし人里に降りて破壊活動をしなかったら…ちゃんとした知能を持ち人間や妖怪と共存できていたら…… ゆっくりは抹殺されることは無かったであろう。しかし今更ゆっくりを教育することはできない。そもそも3分もすれば全てを忘れる餡子脳では教育も意味が無い。 冬になり加工所、妖怪、人間によるゆっくり根絶が行われることとなった。駆除対象はれいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種である。 ゆっくりにはまだ多数の種族が存在するがこれらの種による被害がゆっくり被害の8割を占めている。よってまずはこれらの種がターゲットとなる。 また全てのゆっくりを消滅させるわけではない。ゆっくりをペットにしたいという者もいれば虐待に使いたいと言う者もいる。 既にペットとしてパートナーとして人間と共存できている殊勝なゆっくりもいる。そこで野良ゆっくりを駆除することとなった。ペット用、虐待用などのゆっくりは以後 人工的に繁殖させ教育することで賄うこととした。野良でも見込みのあるゆっくりが繁殖用として駆除を免れることになっている…いやむしろ駆除されたほうがいいのかもしれない。 ちなみに駆除の費用は全てゆっくりを利用した胡散臭い団体の財産から賄われている。ゆっくりんピースをはじめとする環境団体…いつの時代にも偽善団体は存在する。 その実はゆっくりを保護することをアピールし少々お頭の弱い金持ちから寄付を受ける一方で裏では好き勝手やっていただけの連中である。 ゆっくりを利用した宗教団体というのも存在した。詐欺団体も存在した。こうした胡散臭い団体に一斉に捜査が入り財産は全て没収され駆除費用に充てられることとなった。 これからお送りするお話はゆっくり駆除の様子をまとめたものである。都市部編、農村部編、山間部編の3編をお楽しみください。 -都市部- 都市部では農村部や山間部ほどゆっくりは見当たらない。都市部にいるゆっくりといえばペットとして生きているゆっくりがほとんどだ。 しかしペットブームが下火になった今飼いゆっくりが捨てられ野良化しているゆっくりも多い。こうした元飼いゆっくりにはペットであることを証明するバッチが 付いたままであることがあるため駆除にあたり飼いゆっくりの判別が一新された。バッチ無し&旧バッチを付けたゆっくりが駆除の対象となるわけである。 誤解を免れるため飼いゆっくりは当分の間外に出ることが禁じられた。都市部でのゆっくり被害の多くはゴミ荒らし、家屋侵入、飼いゆっくり襲撃&レイプである。 最近では元飼いゆっくりが乞食をするようになってきた。歌を歌ってカンパを募る種も現れたが聞けたものではない。騒音といっていい。 都市部に住むゆっくりはどこに住んでいるのだろうか?一番多いのはゴミ箱の中である。外に比べれば暖かく食料の確保ができるからだ。 前々からゆっくり対策が取られてきていたがそれでもゴミ箱に住むゆっくりはいる。まずは都市部のゴミ箱が全て撤去された。コンビニや駅などからゴミ箱が消えた。 「おかしいよ…きょうはごみばこさんがどこにもなかったよ…。えささんがとれなかったよ…」 「おきゃーさん…さみゅいよ…」 このゆっくりは元飼いゆっくりの親れいむと赤まりさである。いつものように巣(ゴミ箱)から近くにあるコンビニのゴミ箱へ餌を取りに行ったがゴミ箱が無く その後も餌を求めてゴミ箱を探したのだがどこにも見当たらず巣に戻ってきたところだ。 「ごめんねえ…きょうはえささんがとれなくて…ゆううう…」 「まりしゃおにゃかへったよおおおお。さみゅいよおおお」 「おうちでゆっくりしようね…ゆ?ゆゆゆゆゆ!!!!!」 残念ながらもうおうちは無い。 「ない!ない!どうして?どぼじでおうぢがないのおおおおおお」 「さみゅいよおおおおお。うわあああああん」 その後この家族は巡回中の加工所職員によって袋に詰められ回収されていった。 「ここはあったかいね!」 「うん。ここならふゆさんをこせるね。」 「あかいおうちさんとってもとかいはだわああ」 このゆっくりは農村部から流れてきた親まりさ、子まりさ、子ありす家族である。都心部で二番目にゆっくりが住処とするところは自動販売機である。 特に自販機の裏は人気プレイスであった。なぜならとても暖かく住みやすかったからである。小型のゆっくりなら自販機の裏側に納まることができる。 裏だけではなく缶の取り出し口を寝床とするゆっくりも多かった。 都心から自販機を全て撤去する…これはいくらなんでも無理があった。そこで地道に自販機を調べゆっくりを捕獲するということになった。 「そろそろえささんをさがしにいこうね!」 「まださむいよ~。もうちょっとゆっくりした~い」 ポイッ 「ゆ!おちびちゃんあぶないからおくにかくれてね。なにかおちてきたよ」 投げられたのは煙幕である。ただの煙幕ではない。唐辛子やタマネギのエキスが混ざったものである。投げたのは駆除にやってきた加工所の職員だ。 「おがあしゃん!めがいたいよ!!」 「げほっ!げほっ!」 「げほっ!おぢびしゃんはやくごごがらででね…めがしみるよおおおお」 ゆっくり達が自販機から出てきた。 「おじざんなにずるのおお!!ここはまりざのゆっぐりぷれいすだよお!!」 「こんなごどするなんでとかいはじゃないわ!!!いしゃr…」 職員は何も答えずに黙々とゆっくりを袋に詰めていく。 「なにするの!!まりさのおちびちゃんをかえしてね!!!ゆっくりできないじじいはしね!」 親まりさが職員に体当たりをする。彼はやれやれといった顔をする。今日はこれで10回目。いい加減ストレスも溜まってくる。 「しね!しね!ゆっくりしないでしね!」 「死ぬのはてめえだ」 彼は思いっきり親まりさを蹴飛ばした。このまりさでストレスの発散をするつもりだろう。 「いたい!いだい!!やべでええええええ!!!!!!」 彼は何度も何度も親まりさを殴り続けた。餡子が口から漏れ出している。 「おでがいじまずうううう!!!!ばりざの…ばりざはどうなっでもいいでずがらおちびぢゃんだけはあ!!!!」 まりさ種に珍しく母性の強いゆっくりである。彼が今日相手したまりさ種は皆子供や姉妹をだしに逃げ出そうとしてたのに。 「ゆぎゃああああ!!!!!!」 職員はまりさを破き袋の中に入れた。だが自販機から追い出してもゆっくりはまた自販機を住処とする。いたちごっこであるがゆっくりが根絶するまでやるしかない。 「ゆゆ!からだがうごかないよ!!!どうじで!!だれがだずげでえええええ!!!」 各家庭や至る所でゴキブリホイホイならぬゆっくりホイホイが設置された。数日ごとに加工所職員が回収し新しいのを設置していった。 「ちょっとくさいけどここならあめさんにぬれないね!」 排水溝に住み着くゆっくりもいる。当然水に濡れればゆっくりは溶けてしまうが水量の少なかったり水が全く流れていない排水溝に住み着くのだ。 特に都市開発によって使われなくなった排水溝がそのまま残っているところでは多くのゆっくりが見付かった。勿論全て回収された。 念のために下水道や地下鉄の線路まで調べられた。そういったところにもゆっくりは住み着く。そこでずっとゆっくりできると信じて…。 しかし全て回収されてしまった。 「庭に穴が開いてるんですけど…ゆっくりの巣穴かしら?」 「すぐに駆除に向かいます」 「家の軒下から変な声がします」 「多分ゆっくりでしょう。駆除に向かいます」 「倉庫の中が怖くて開けられないのですが」 「至急向かいます。整理の手伝いもいたします」 戸建やマンションにもゆっくりはいる。庭や軒下、物置、車庫etc…。あるゆっくりは唐辛子入り煙幕で巣を追い出されたところを捕獲された。 あるゆっくりは巣穴にお湯をぶち込まれ巣穴から脱出する前に汁粉になった。あるゆっくりは巣穴に油を注がれたあと火を点けられ焼饅頭と化した。 「あじゅいよおおおおお!!!!おかあああさあああんん!!!!」 「だじでえええええ!!!!ごごからだじでくだざあいいいい!!!」 「ゆっぐりじだいよおおおおおお!!!!!!」 住宅街にゆっくりの叫び声が響いた。誰も助けてはくれない。駆除を始めて4日は叫び声が絶えなかった。その後はゆっくりの声を聞くことはできなくなった。 「いやだああ!!!!たすけてえええ!!!!!」 「こっちにこないでね!あっちいってね!!」 「まりさはにげるんだぜ!!!!れいむがかわりににんげんさんにつかまるといいんだぜ」 「どぼじでぞういうごどいうのおおお!!!」 「うるさいんだぜ。まりさはもtt…」 毎日毎日ゆっくりは捕獲されていった。休日ともなればボランティアも参加した。公園、川原、駅高架下…至る所で袋を持った人間がいた。 「やべでええええ!!!!れいむはゆっぐりじだいだけだよおおおお!!!!」 「あじずはわるいごどじでなああいいいい!!!!とかいはにいぎでるだけだよおおおお!!!」 原則ゆっくりは捕獲である。餡子を撒き散らされては掃除に手間がかかるからである。だが時には殺していく人もいる。 誰も何も喋ってくれなかった。たいしたことは言ってない、喋るだけ無駄。ゆっくりが何か言ったらムカムカするだけだ。その前に駆除してしまえ。 都市部に住むゆっくりは段々以前に増してゆっくりできないことに気付いていった。餡子脳でも自分達が何者かに狙われていることに気付いたのだ。 真昼間に行動するゆっくりは減っていった。駅前で下手の歌を歌ったり物乞いをするゆっくりは消えていった。 早朝、都市部のある産廃場に多くの職員と妖怪、さらに巨大な加工所特製の透明な箱を積んだ大型車が集まった。都市部で最も大掛かりな駆除は産廃場であった。 廃車にタイヤに冷蔵庫、TV…野良ゆっくりにとっては住処として充分であった。時々ゴミが崩れ落ち何組かの家族が死んでしまうこともあったが。 「ゆっくりおきるよ…きょうこそえささんをみつけるよ…」 元飼いゆっくりのれいむである。最近このれいむをはじめゆっくりは餌を見つけることが出来ない。ゴミ箱が撤収されゴミ回収が徹底されたからである。 人間に見付かれば有無を言わさず袋の中に入れられた。「ゆっくりしていってね!」と挨拶をする前に潰されるゆっくりもいた。 れいむは思う。何で最近こんなに怖くなったんだろう?何でご飯が食べられなくなったんだろう?もう5日もご飯を食べていない。何かに狙われてる気がする。 そういえば飼いゆっくりすら見なくなった。隣に住んでいたありす一家や冷蔵庫の中で暮らしていたちぇん一家が帰ってこないがきっともうゆっくりできなくなってしまったんだろう…。 「おなかすいたよ…むーしゃむーしゃしたいよ…」 れいむの足取りは重い。れいむだけではない。この産廃場にいるゆっくりはみな早朝から出かけ餌を探しに行く。しかしどのゆっくりも餌を見つけることは出来なかった。 「おなかすいたよお…」 「ぜんぜんゆっくりできないよ…ゆああああんん!!!」 産廃場からは悲しげな泣き声がする。 「ゆぅ…ゆぅ…ゆ!」 れいむは急に止まり近くにあったタイヤの中に隠れた。 「にんげんさんがいっぱいいるよ…」 この産廃場に人間がやって来るのは数年ぶりだった。れいむは思い出す…。人間さん…れいむのご主人様はお姉さんだった。 ペットショップでちゃんと躾けてもらったのにお姉さんが怒らないのをいいことに我侭ばかり言ってた。散々文句言ったっけ。 ご飯が不味いだのふかふかのベットで寝たいだの……。ある日起きたら臭い所にいた。周りはゴミだらけだった。それから散々な目に遭った。 リボンはもうボロボロだしご飯はなかなか食べられないし…こんなことになって初めて自分が間違っていたことに気付いた。 「おねえさん…れいむが…わるかったよ…」 れいむは泣いていた。 さて集まった人達はみな作業服だった。彼らはここのゴミとともにゆっくりを回収しに来たのだ。 「ゆっくりを見つけたらこちらの箱に入れてください」 「粗大ゴミはこっちのトラックに積んでください。小さ目なのはこっちのトラックです」 「ではよろしくお願いします」 彼らは作業に取り掛かった。 「ゆゆ!にんげんさん!!!ゆっくりs」 ヒョイッ 「おでがいじまずうううう。なにがたべるぼのぐd」 ヒョイッ 「にんげんさん!!あまあまty」 ヒョイッ 「はやくれいむにあまあまさんもってきてね!!ゆっくりしないではやくしてね!」 「ゆ!まりさのおちびぢゃんになにするの!!!」 「むきゅ、ばかなにんげんさんね。ぱちぇのいうことがわからないの?」 そんな声を無視し彼らは黙々と作業する。ある者はゆっくりを捕獲しある者は粗大ゴミを片付けた。 「むじじないでえええええ!!!!」 「それはちぇんのおうちだよおおおお!!!!!!わがらないよー!!!!」 「ばりざのおぢびぢゃんをがえぜええええ!!!!!!」 誰も何も喋ってくれない。数分後ようやく自分達がターゲットにされていることに気付いた。 「ゆっくりしないでここからにげるよ!!」 「りぇいみゅのおうぢがああ!」 「おうちはまたちがうところでみつけようね!!みんなおくちのなかにはいってね!」 「わからないよーわからないよー!!」 「れいむをもっていくといいんだぜ!まりさはにげるんだぜ!」 「ゆっくりしないでにげるよ!おちびちゃんのぶんまでゆっくりするよ!」 「むきゅ…ぱちぇをおいてがないでええ」 「ばりざあああ!!!!たすげでえええ!!!」 辺りはパニックになった。必死にみな逃げた。しかし産廃場の周りには網が仕掛けられており外に逃げることは出来なかった。 「だじでええええ!!!!!ごごがらだじでええ!!!」 「あじずはなんにもわるいごどじでないよおおおお!!」 「はごのながはいやああああああ!!!!!」 産廃場はゆっくりの悲鳴でいっぱいだった。中には既に諦めているゆっくりもいた。 「ゆっくりしないでころしてね…」 「いなくなっちゃったまりさのところにいかせてね…」 「おねえさん…ごめんなさい…」 あのれいむもその中の1匹であった。 数時間後産廃場は綺麗になった。ゴミも無い、ゆっくりもいない。ただの空き地になった。 袋に詰められたゆっくりは各地からゴミ焼却場に集められた。何にも利用されることは無い。焼却処分するだけである。 ゆっくりを確実に殺すことができ尚且つあまり手を汚さない方法だからだ。 「あじゅいよおおおおおおお!!!!!」 「でいぶなにもわるいごどじでないよおおおおお!!!」 「ゆっぐりできるおうだうだうがらゆるじでええええええ!!!!」 「ばりざのばがあああああ!!!!どがいにいげばだべぼのがいっばいあるっでいっだのにいいいいい!!!!!」 「らんじゃまあああ!!!!!!!」 「おにいいざあんんんん!!!!!たずげでえええ!!!!!」 「ぼうわがばばいばないがらごごがらだじでよおおおお!!!!」 焼却炉にはゆっくりの断末魔が響く。この様子を多くの人が眺めていた。 「こ…こわいよおおお」 「まりさ、ちゃんと目を開けて見るんだよ」 「でいぶ…じにだくなあいいい…」 「れいむはああはならないよ。ちゃんとしていればね」 「悪いことをしたらああなるんだよ。わかったね」 「わかりましたあああ!!!!」 「ぼうずぎぎらいじまぜん!!」 ある人は飼いゆっくりを連れ野良ゆっくりが焼かれるところを見せつけていた。 「とってもいい音色だなあ」 「録音とかしてないんすかね?」 「しかしこれで虐待が出来なくなると寂しいですね」 「ちょっとの間だけだよ。野良潰したってあの生態だ、養殖モノもすぐに発売されるさ」 「半年以内にまた虐待できるって聞いたぜ」 彼らは虐待鬼意山と呼ばれる人たちだ。ゆっくりの断末魔が延々と聞けると聞いてやって来たのだ。 焼いても焼いてもまたゆっくりが投下される。全てのゆっくりを焼却し終わるのに1週間かかった。焼却処分が終了したあと焼却場には 餡子の匂いが充満していた。とても重苦しい匂いだった。まるでゆっくりの怨念が漂っているかのように。 都市部の野良ゆっくりはほぼいなくなった。ほんの一部のゆっくりは危険を察知し農村へ逃げ出した。農村に逃げられたのはその中の一部だけだった。 だが農村でもゆっくり駆除が始まっていた。そのお話はまた次の機会に。 その後も加工所の職員やボランティアによって毎日見回りが行われ生き残ったゆっくりを回収していった。1日10匹も見付からない。 ある日突然加工所は野良ゆっくり1匹につき10万円で引き取ると発表した。人々はその高値に驚いた。しかし行動は早かった。 子供からお年寄りまで周辺を探し始めた。休日ともなるとほとんどの人がトレジャーハンターと化した。どこか探していないところは無いか? どこか穴は無いか?どこかに隙間はないか?運良く見つけたゆっくりを巡って喧嘩が起きることもあった。 ある者は空き家を見つけそこで10匹以上のゆっくりを捕獲することに成功し大儲けをした。なんだ、まだいるじゃないか。 飼いゆっくりはそんな状況をTVや噂で聞き更に人間に従順になった。捨てられたら人間に見付かった瞬間加工所行きだ。 もしかしたら飼い主がお金欲しさに自分を売ってしまうのではないか?いい子にしてなかったら加工所行きなのでは?文句を言ったら加工所行き? 朝起きたら加工所にいるのではないか?いや、もう朝が来ないのかもしれない……。 ストレスで死ぬ飼いゆっくりも現れた。飼いゆっくりはもう"ゆっくり"ではなかった。ただの喋るペットになった。 もはやゆっくりに居場所は無い。 農村部編へ続く by 虐待おにいちゃん あとがきやら加筆修正 皆様はじめまして。様々な意見や感想を頂きました。 ありがとうございます。 さて私のSSは全て同じ世界観を有しているつもりです。当初では幻想郷を舞台としてましたがその後のSSの内容や色々と矛盾が発生したことから幻想郷という設定を外しました。 といって現代社会でもありません。 ……現代社会でもなく幻想郷でもない…また別の世界です。 物凄く出鱈目で強引な設定ですがゆっくり自体が出鱈目な 生き物なので…これで許してください。 今後ともよろしくお願いします。
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小腹の空いた俺は昼食を取ろうとファストフード店に立寄り Mサイズのコーラとハンバーガーを注文、 2Fへの階段を上って窓際の列の端に座った。 窓から見下ろせるものは交差点、横断する人、向かいの果物屋、その左隣の眼鏡屋。 ガラス窓の外の声は聞こえない。 聞こえるのは2つ離れた席でお喋りをする、奥樣方2名の楽しそうな会話だけだ。 俺はただただボーッっとハンバーガーの包みをカサカサと開きながら、窓の外に目をやった。 交差点の向こう、果物屋の左隣、眼鏡屋の前の歩道に居るものへ目をやった。 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の向こうで恐らくその様な事を言っているのであろう。 眼鏡屋の前に居るあの丸っこいのは"ゆっくり"という生き物。 黒い髪に紅いリボンを巻き、まん丸な輪郭を持つ、 まるで人間の顔をデフォルメしたかの様な生き物。 所謂"れいむ"だ。黒髪のゆっくりは大抵そう呼ばれる。 大きさはバスケットボールくらいだろう。 何処から来たのか知らないが、何処でもいい。どうせその内誰かが処分する。 期待外れなゆっくり達 作者:古緑 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の外の、ふてぶてしい笑顔を浮かべたゆっくりはきっとそう言いながら 果物屋に向かうのであろうエプロン姿の太ったオバさんに近づいて行った。 眼鏡屋の前の歩道は狭い。 だからオバさんは寄って来るゆっくりを避ける為に少し車道に出て、 迂回する様にしてゆっくりを振り切っていった。 (…ゆっくり?ゆっくりしていってね!) その背中に向かって不思議そうに叫ぶゆっくり。オバさんは振り返らない。 少なくともこの辺でのゆっくりに対する対応なんてあんなモノだ。 例え俺があのオバさんでも同じルートを取ってゆっくりを避ける。 どんなに暇だったとしてもゆっくりと一緒にゆっくりなんてしない。 (ゆっくりしていってね! れいむと一緒にゆっくりしていってね!) オバさんに無視された事で生来の自信に満ちた表情にも陰りが見える。 それでも健気に周りの人間に呼びかけるゆっくり。 次にゆっくりが向かっていったのはだらしない格好をした中年男性。 無論彼も通り過ぎて行くだけ。パチンコにでも行くんだろう。 (…ゆっくり…… …ゆっ!ゆっくりしていってね!) 寂しそうに男性を見送った後、また次の通行人に話しかけるゆっくり。 次は杖をつくお爺さんだったが 彼は避ける事もせずに真正面からゆっくりとゆっくりを突破して行った。 本気で気付いていなかったのかもしれない。 その背中を見送るゆっくりの、斜め45°に引かれていた眉はハの時に変わっていた。 ゆっくり。 彼等は俺がまだ子供だった頃、20年以上前だ。 彼等は突然どこからか現れ、世の話題を攫った。 或る人は宇宙人と、或る人は妖精と、悪魔と呼んだ者さえ居た。 なんせあの様にワケの分からない生き物だ。 餡子の詰まった饅頭なのに何故か動けて、人の言葉(日本語)を解し、更に喜怒哀楽の感情を持つ。 話題にならないわけが無い。 あの頃はテレビ、新聞、雑誌、様々なメディアを通して彼等の姿を見る事が出来た。 だがそれも現れてから数年間の間だけ。 俺が成人を迎える頃、世間はとっくにゆっくりに対する興味を失っていた。 研究員だの科学者だの、その辺の人にとっては興味の尽きない存在に違い無いだろう。 しかし俺みたいな好奇心の薄い人間にとって ゆっくりは次第に『ただ言葉を解し、中身が餡子の生き物』それだけの存在になっていった。 あれだけ不思議生物と騒がれていたのに何の事は無い。 超能力を使えるわけでもない。その体に何か重大な秘密を秘めているわけでもない。 ただ跳ねて叫ぶだけ。ゆっくりしていってね、と。 馬鹿にしてるとしか思えない。 テレビなんかはゆっくりの番組をしつこく流し続けていたが いい加減飽きられて姿を消すのに大して時間は掛からなかった。 横でお喋りしてる奥様方も、ゆっくりに対する興味なんてもう持ってないと思う。 ガラス窓の下の不思議生物よりも旦那のムカつくところを話してるんだから。 (ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!れいむと一緒にゆっくりしていってね!) 窓の下ではゆっくりが叫ぶ様に人々に呼びかけている。 俺のところにまで声が届くくらいに大きな声で呼びかけている。 その声を聞きつけ、眼鏡屋の中からカジュアルな格好をした店員が出て来た。 ここに居て聞こえるくらいなんだから、下でのあの声は営業の邪魔でしか無い。 (ゆっ!おじさん!れいむとゆっくりーー ーーーーーゆぶっ!) 店員はゆっくりのリボンを摘んで持ち上げ、反対側の歩道に放り投げた。 反対側の歩道には何の店も無く、工事中なのでスチール製の真っ白い壁がそびえ立っている。 気絶したのか、れいむはピクリとも動かない。顔から落ちたんだから無理も無いだろう。 ゆっくりは痛い目に遭ったら何処かに消え失せるのが通常だ。 だからあのれいむも起きたらきっと何処かへ行く。 そしてその先で何時か死ぬ。 別にここが駅前だから、ゆっくりの事が嫌いだからという理由から 人はあの様な冷たい態度を取るわけではない。 さっきも言った事だが、もう誰もゆっくりに対する特別な興味を持っていないのだ。 少し前は違った。 喋るペット、元気なペット、モチモチと柔らかい体をした、可愛いペット、 そんな魅力的な特徴に皆が惹かれ、ゆっくりがペットとして大流行した時代も有った。 しかし今じゃペットゆっくりの人気もガタ落ち。かつての大人気っぷりは見る影も無い。 その理由は"喋れる"ゆっくりに対して人々が期待を持ち過ぎた事に有った様に思える。 自分の言う事を理解してくれるから手が掛からない。暇な時は楽しくお喋り出来る。 初めゆっくりを飼った人はそんな風に都合良く考えていた者が多かったのだろう。 しかし逆だったのだ。 何故ならゆっくりは人間にとって都合のいい事ばかりを喋るぬいぐるみではなく、 人間と同じ様に聞き、感じ、思考して喋る生き物だったから。 しかも人間並みに、或いは人間以上に喜怒哀楽の激しい正直な生き物だったからだ。 そんな生き物と上の様な期待を抱いていた人間が一緒に暮らして食い違いが起こらない筈も無い。 飼えばゆっくりは無条件で自分に懐き、何の文句も言わないなんて事も有り得ない。 そして多くの飼い主を落胆させたのは 言葉が通じるのに中々ゆっくりが言う事を聞いてくれないだけでなく、 不平不満、そして要求している事を自分に分かる言葉で持ちかけてくる事。 これは飼い主にとって面倒臭い事この上無く、"時と場合"に応じて非常に不快なものにすらなる。 手がかからないと期待してた人達からすれば尚更の事だ。 手の掛かり具合は腕白盛りな人間の幼児と遜色無いものなのかもしれない。 そんな本当は手のかかるゆっくりを上手に躾けられた飼い主がどれだけ居たか。 それは現状が物語っている。 そして肝心のゆっくりとのお喋りも、多くの人が『思っていたより』楽しくないと言う。 理由は人とゆっくりの知能の程度には一定の開きが有る為、会話がし難い事。 そしてその知能の差故に各々が持つ関心も異なるからだ。 ゆっくりは美味しいご飯が好き、楽しい玩具が好き、『ゆっくり』の話が好きだ。 だが人間側のちょっと難しい話になるとあまり興味を示さず、嫌がってしまう。 よく分からないからだ。愚痴なんかは当然嫌い。 しかし多くの人が望んだのは後者の様な会話だったんじゃないだろうかと思う。 また当然の事ながら知識や語彙も少ない為、出来る会話の幅も広くない。 大抵の場合ペットゆっくりは家の中でお留守番だから知識も語彙も碌に増えないだろう。 飼い初めの頃はまだ良いだろうが、そのうち話す事も尽きて会話をしなくなるかもしれないな。 『ゆっくり』の話がしたくて飼ったワケでは無いのだろうから。 兎に角、人語を解するから飼ったという人は拍子抜け。 勝手な事だが人は喋るゆっくりの事を『期待外れ』と感じたのだ。 小さくて可愛いと考えてた人の期待も外れる。 人の元では平均寿命8年と長生き。最終的に体高だけで60cmを超えるのも珍しくない。 デカくなったゆっくりは俺から見てもあんまり可愛くない。というか怖い。 ちなみに食う量も増えてゴールデンレトリバー並に食費がかさむ。 デカくなったのは更に重くノロくなる為、家の中での様々な面において邪魔になる。 かと言って庭なんかで飼うと寂しがり、大きな体をしてゆんゆん泣く。 それでも外に放って置くと知らないうちに死んでたり いつの間にか恋仲になった他のゆっくりと子を成していたりもする。 これが悪夢ってヤツだろう。とてもじゃないが笑えない。 手が掛からないとの期待はこんなところでも裏切られる。 人々の勝手に抱いていたゆっくりへの多大な期待はことごとく裏切られ、 ペットとしてのゆっくりへ関心も次第に薄れていった。 その結果かなりの数のゆっくりが無責任にも街に捨てられ、未だに問題になっている。 捨てる主な理由は仲違いしたから。反抗されたから。二匹飼いしたら自分と話さなくなったから。 妊娠したから。意外とつまらなかったから。どれも最高に無責任なものだ。 今ではもう、そんな面倒なゆっくりを飼う人間は ゆっくりの事が本当に好きな僅かな人達だけになった。 そして俺はゆっくりが何の為に人間の前に現れたのかを心の底から理解出来ていない。 ゴチャゴチャ考えてるうちにハンバーガーはもう食い終わった。 あとは尽きるまでコカコーラをズルズルやるだけ。 兎に角ゆっくりはもうペットとしてさえ人の関心を惹かない。そもそもあまり向いてなかったのだ。 久しぶりに見たから気になったが、そろそろどうでもいい存在になってきた。 保健所の人間が来ないうちにとっとと消え失せる事をお勧めしておく。 (ゆっく…り…ゆっぐり”ぃ…) 永らくガラス窓の下でダウンしていたゆっくりだが ようやく起きたようで、泣きながら体を起こした。 泣いてるのはゆっくりしていって貰えないのが辛い為だろう。 (ゆっぐり”じでいっでね”!ゆっぐじじでいっでね”ぇ!!) 涙混じりのガラガラ声で叫び出すゆっくり。周りには誰も居ないのに。 あれだけ痛い目に遭わされたのに消え失せないとは。 何がそんなにあのゆっくりを駆り立てるのか? どうして人をゆっくりさせたがるのだろうか? 俺は彼等と"ゆっくり"した事が一度だけ有るが、それも未だ謎だ。 ゆっくりの『ゆっくり』と言えば俺は俺で期待を裏切られた事が有る。 随分前に駅前のベンチで本を読みながら友人を待ってたら ゆっくりが近寄って来た事が有ったのだ。 『ゆっくりしていってね!』とお決まりの言葉を言いながら。 俺はちょっと困ったが、当時はまだゆっくりに興味が残っていたので 読んでいた本をカバンに仕舞ってゆっくりと『ゆっくり』する事にした。 『ゆっくり』と名乗るくらいなんだからとんでもなくゆっくりしている筈だ、 もしかしたら他人をリラックスさせる力を秘めているのかもしれない、と期待しながら。 しかしなんの事は無い。ゆっくりは空いたベンチに乗って日向ぼっこをしてるだけ。 普通にゆっくりするだけだったのだ。 勝手に期待しておいてこんな事を言うのもなんだが、ガッカリした。 ゆっくりの『ゆっくり』なんてゆっくりじゃなくても出来るし 別に俺が居なくても出来る、ごく普通の事だったのだ。 期待外れもいいところだった。 その日を境にゆっくりは俺にとって完全に無価値な存在に変わった。 (お、おにいさん…れいむと、れいむと一緒にゆっくり…) 窓の下では汚れたれいむを避ける様に、また一人通り過ぎて行く。 彼はipodらしき物を弄りながら歩き去って行った。 どうでもいいのだ。ゆっくりとの『ゆっくり』なんて。 それこそ何十回も聞いていい加減飽き気味のポップス以上にどうでもいいのだろう。 「あれ、○○さん、あそこに居るのゆっくりじゃない?」 「あらホント、いまどき珍しいねぇ。 そう言えばね、この前○○さんが電話で話したことなんだけどーーー」 隣の奥様方が今更ゆっくりに気付いたように話題に上げる。 ずっと俺と同じ方向見ながら話していたのに(ガラス窓に反射して丸わかりだった) 会話のクッション程度のものにゆっくりを使ったのだ。 そんなモンだ。例えゆっくりが少しくらい泣いてたとしてもな。 (ゆっぐり”ぃ…… ゆ”っぐ りぃ” ぃ”い”ぃ”!!) コーラを飲み干して立ち上がると、 俯いて本格的に泣き崩れるゆっくりの姿が見えた。 あそこで泣いてる分にはまだ良いが、果物屋の店員がボソボソ何か喋っている。 もしも交差点を超えてアッチ側にいったら 動けなくなるくらい強く蹴られるかもしれないな。 俺等人間の中でも、彼等にとってゆっくりは特に邪魔なんだから。 もう休み時間は終わりだ。 俺は紙コップの底にヘバりつく氷を4、5個口に放ってガリガリ噛み砕きながら、 トレイの上のモノをゴミ箱に捨てて店を出た。 生暖かい風が頬を撫でる。近所に予備校があって高校生が良く通る所為だろうか この歩道は黒ずんだガムやらツバやらがこびり付いてて汚い。 こんな小汚い歩道でゆっくりとゆっくりするくらいなら 今みたいな店の中で一人でゆっくりしてた方がずっと良い。誰だってそう思う。 「ゆっ、ゆっくり!ゆっぐりしていっでね!」 交差点で信号を待つ間、左から嬉しそうな声が聞こえて来た。 左方向に視線をやるとあのゆっくりが居た。 頬を涙でベショベショに濡らしているが笑顔満面。嬉しそうだ。 立ち止まっている俺を見て勘違いしたのかもしれないな。 "ようやくゆっくりしていってくれる"って。 「ゆっくりしていってね!」 ビデオ屋に寄って帰ろう。 最近ずっと行ってなかったから新作テープの取れたのが沢山有る筈だ。 そんな事を考えながら、信号が青になったのと同時に俺は歩き出した。 口の中の氷はもう無くなっていた。 ーENDー
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「うー♪うー♪うま♪うま♪」 「ゆ゛っぐい゛、ざぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!!」 今まさにゆっくり親子が、ゆっくり食種であるゆっくりれみりゃに食べられていた。 頭に食らいつき、口の周りを汚し周囲を散らかしながらそれは下品に貪り食われていた。 「おいちー♪」 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!おがあ゛ざんをがえじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 食われて意識を失っていく母ゆっくりを、逃げる事すら考えられずにただ眺め続ける子ゆっくり。 そんな食物連鎖の場に、新たな闖入者が現れた。 食物連鎖のピラミッドにおいて、ゆっくりれみりゃの更に上に位置するゆっくり。 ゆっくりフランである。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 上空2メートルから急降下して、ゆっくりれみりゃに気付かれる間もなく、 ゆっくりれみりゃの手から食いかけの母ゆっくりれいむを手ごと奪い取り、近くの木に叩き付ける。 「う゛あ゛ー!い゛だい゛よ゛ー!!ざぐや゛ー!!ざぐや゛ー!!」 「ぎゃはははははははははははは!!ゆっくりしね♪ゆっくりしね♪」 手と食事を闖入者に奪われて、地面に足を投げ出して号泣するゆっくりれみりゃ。 ちなみに「ざぐや゛」とはゆっくりれみりゃが何か都合の悪い出来事に遭遇した際に上げる鳴き声である。 何かしら意味があると考える者も居るが、特に何の意味も無いとする意見が大半を占める。 先程までただ母親が食われる様子を眺めるだけだった子ゆっくりは、 「おかあさーん!!おねえちゃんたすけてくれてありがとう!!」 と、母親にトドメを刺した者に対して暢気に礼を言っていた。これにはゆっくりフランも苦笑い。 子ゆっくりれいむを優しく抱き上げ、目の前に掲げる。 「ゆっゆっ!だっこだっこー!!たかいよたかいよ!!ゆっくりできるよ!!」 もう既に母親は助かったものとして忘れているらしい。ゆっくりの中でも稀に見る愚鈍さである。 そんな愚鈍をとりあえず泣き喚くゆっくりれみりゃに向けて投げつけるゆっくりフラン。 「びゅっ!!」 「い゛だい゛よ゛ー!う゛ー!い゛じめ゛る゛ど、ざぐや゛に゛い゛い゛づげぢゃう゛ぞー!!」 べそをかきながらもたもた立ち上がって威嚇するゆっくりれみりゃ。 涙と涎で顔と胴体がべしゃべしゃなので、迫力は全く無い。一方子ゆっくりれいむは地面で泣き喚いていた。 「どお゛ぢでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ね゛え゛ざん!!ゆ゛っぐい゛ざぜでぐえ゛る゛んでじょお゛お゛お゛お゛!!!」 どうやら子ゆっくりれいむのブレインは、ゆっくりフランは自分にとって都合のいい存在であると結論付けているらしい。 そんな子ゆっくりれいむを拾い上げ、再び大きく振りかぶって…… 「ゆっくりとんでけ!!」 ゆっくりれみりゃに向けて全力投ゆっくり。顔面にめり込ませた。 「ん゛ー!!ん゛ー!!」 「ゆっくりさせてええええええよおおおおおおおお!!!ここからだしでよおおおおおおおお!!!」 「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 偶々顔が外向きになった子ゆっくりれいむは物凄い声で泣き叫ぶ。 ゆっくりフランはそんな間抜けな二匹を見て腹を抱えて笑い転げている。 「ゆっくりしね♪!!」 いたぶるのも気が済んだのか、めり込んだ子ゆっくりごとゆっくりれみりゃの顔に噛り付くゆっくりフラン。 食われ所が悪かったのか、二匹とも声も出せずに絶命した。 後は特に何も起こらない。ただ時々笑い声を上げながら残骸を食らい尽くすゆっくりフランが居るだけだった。 ゆっくりれみりゃを食べつくして満腹になったゆっくりフランの元に、一人の少女が現れた。 どうやら夜の散歩の途中だったようだ。 「あら、これはゆっくりフラン…珍しいなぁこんな所にいるなんて」 少女に気付くいたゆっくりフランは、あろう事か牙をむき出しにして飛び掛った。狙いは少女の首! 「ゆっくりしねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ほっ」 一直線に首に向かって飛び掛ってきたゆっくりフランを事も無く叩き落す少女。 ゆっくりフランは地面にめり込んで伸びている。 「へぇ…ゆっくりフランってゆっくり以外にも襲い掛かるんだ。やっぱり根本的におバカなんだなぁ」 そんな感想を吐きながらゆっくりフランの羽を持って自宅へ持ち帰る少女。 「丁度先代のコキンが死んじゃった所だし……これを29代目コキンにしようっと」 チャイナ服の裾を靡かせて颯爽と紅魔館の宿舎に帰る門番・紅美鈴。 ちらりと見える生脚が月光を浴びて美しく輝き、世の男達の煩悩をこれでもかと刺激しまくっていた。 「ぐう…?ゆ、ゆっぐり!!?」 「ああ起きた?おはようコキン29世。よく眠れた?」 ゆっくりフランことコキン=トウ29世ことコキンが目を覚ましたのは、美鈴がコキンを自室に持ち帰ってすぐだった。 「ゆ、ゆっくりしね!!」 起きてすぐ美鈴に飛び掛るコキン。だが美鈴にゆっくりフランに過ぎないコキンが敵う筈も無く、 「えい」 あっさりと蹴り飛ばされた。蹴られる瞬間コキンは一瞬この世の至宝を視界に捉えたが、コキンにとってはどうでもいいものだった。 「ぐぐぐぐぐ……」 壁に打ち付けた後頭部を押さえて悶絶するコキン。よく見れば後頭部が平らになっているのが分かる。 「大丈夫よ。あんたたちゆっくりフランはその程度じゃ死にやしないから。すぐ直るよ」 「ぐー?」 美鈴を涙目のまま見上げて首を傾げるコキン。何故、自分を殺さないのか。そんな事を言いたげだ。 そんな涙目コキンにギュンギュンきている美鈴だったが、そんな事は顔の血色以外には表わす事も無く、 「あんたは私のペットになったのよ。あんたの名前は今日からコキン=トウ29世。通称コキン」 「ぐおー!!ゆっくりしね!!」 どうや某共和国国家主席から戴いた名は全くお気に召さなかったようである。 物凄い形相で美鈴に飛び掛った。今なら顔だけでどんな愚鈍なゆっくりでもショック死させられる。 「そうそうもっと刃向かってね」 言いながらコキンの両目に指を突き立てる美鈴。指が根元まで刺さってしまっている。 「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!め゛!!めがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 指にぶら下がったままで狂ったように暴れまわすコキン。動けば動く程痛いという事にパニックで気付いていない。 「ほーれほれ。ここかーここがええのんかーなんちゃって」 「ぎい゛ぃい゛い゛ぃぃぃっぃい゛ぃぃぃぃっ!!!ごああぁあぁぁあぁあっぁぁあぁぁぁ!!!」 美鈴が指を曲げ伸ばしする度に、顔の中身を掻き回されて大暴れするコキン。 見えないままで美鈴の手を掴み、顔を引き抜こうとする。だが、 「あぁ駄目よ抜いちゃあ。まだまだお楽しみはこれからでしょう?」 ブツッ 「っっっっいぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 美鈴の手を掴んだ両手をむしり取られたコキン。 その間も美鈴の指はかのゴールドフィンガーばりに中を掻き回し、この世の物とは思えない絶叫を上げる。 「ふふふふ、元気で何より。あぁたまらん。どうせ見えてないし、今日はこのまましちゃおうかなっ」 「ぐっ!ぼぉえ゛っ!!ぉえ゛っ!!え゛っえ゛っ!!ごはっ!!」 あまりの苦痛に吐き気を催したのか、激しくえずくゆっくりフランを恍惚とした顔で眺めながら、 美鈴は左手をそっと動かし、 【これ以上は色々危険なので美鈴の描写はあえて行わない。想像力を逞しくすれば必ず見える筈である。】 刺している指を今度は左右交互にゆっくりと出し入れされるコキン。 指が抜けたスペース分はすぐさま回復し、再び指で抉られるという苦痛のループに耐え切れず失神してしまう。 が、気を操る美鈴にかかれば失神した者を起こす事など朝飯前である。 頭の中に直に電流を流されたかのような痛みに全身を痙攣させて起きる。 「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「そうそう。そうやっていい声でもっと私を愉しませてねっ……」 何としてもこの地獄から抜け出そうと、羽で全身のバランスをとって美鈴の右手を掴んで脱出を試みる。 が、だめっ……! 両脚を薬指と小指と親指で器用に掴まれ圧搾される。中の肉がうじゅうじゅと動く感触に身震いする美鈴。 「ッがあああああああああのおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!」 再生してきた両手で懸命に両脚の拘束を解こうとするコキン。 その生えたてほやほやの両手は美鈴の足の指でがっちりホールドされ、今度は肩から引きちぎられた。 「~~~~~~ッッッ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 傷口からぶしゅぶしゅと肉汁と餡をこぼしながら全身を激しく揺さぶるコキン。 その拍子に両脚も膝からちぎれてしまった。 「う゛ぇお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 ぼたぼたと床に染みが広がり、部屋中にすえた香りと肉の芳醇な香りが漂う。 残った膝までの脚と羽をこれでもかと暴れさせて苦しみ、もがき、泣き、叫ぶコキンの狂乱は、 見る者をこの上ない高みへと連れて行った。 「全くあんなに汚しちゃって。悪い子だね今度のコキンは」 「い゛っっっぎい゛ぃぃ!!」 部屋を掃除し終えてからぼやきつつコキンの両羽を根元からもぎ取る美鈴。 その、ゆっくりにしてはかなり硬質な羽を無造作にコキンの両手の平に突き刺す。 「がっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!はっ!!はな゛ぜっえ゛っえ゛っえ゛え゛え゛!!」 直った両目にこの上ない憎悪を漲らせて美鈴を睨みつけるコキンを、 壁にかけられたコルクボードに串刺しにする。 無数にある餡や肉汁を拭き取った跡がコキンを恐怖させる。 磔刑にされたコキンは、両手を何とか引き剥がそうとするが、手が羽の軸をスライドしただけだった。 やがて背中の羽が再生し、再びそれを根元からもぎ、今度はそれを両脚の甲に刺して串刺す。 「ゆぐあ゛っ!!お゛、お゛ろ゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「駄目よコキン。そこがコキンのお家なんだから。我が家に帰ってきたんだから、ゆっくりできるでしょう?」 どんな男も一撃で失明させられる程眩しい笑顔で言い放つ美鈴。 その言葉で、コキンの顔は完全に色を失った。それでも痛みは感じるらしく。 頬を千切って食べられた時には全身を激しく揺さぶってもがき叫んだ。真下の床には早くも大きな肉汁の染みができている。 「じゃ、私は明日も仕事があるから寝るわよ。ほら、今日の夕食。これ食べてあんたも寝なさい」 「や゛め゛でや゛め゛でや゛め゛で!!たべな゛い゛でよ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 頬に開けられた穴からゆっくりまりさの子供が押し込められる。どうやら部屋で飼育しているものらしい。 痛みをこらえながらゆっくりと咀嚼するコキンの姿は、常の凶暴さを微塵も感じさせなかった。 しばらくの間部屋に食われる餌の絶叫だけが響く。 「ごちそうさまは?」 「ご、ごぢぞう……さま゛」 「よくできました。じゃおやすみなさいコキン」 「はい゛……おやずびなざい゛」 翌朝 美鈴が目を覚まして壁に目をやると、コルクボードに大きな肉汁の染みが広がっていた。 何事かと思い近付いて確認すると、コキンの首から上が完全に潰れており、既に絶命していた。 よく見ると両手と両足が羽軸の中ほどにまで移動している。 どうやら、痛みをこらえてここまで体を壁から離し、全力でコルクボードに頭突きして自害したものと思われる。 何度も何度も試したのか、コルクボードには百以上の窪みがある。 「そうかぁ……ゆっくりも自殺する事なんて、あるんだぁ……ふふ、ふふふふ」 美鈴はそれらの事実に気付くと、顔に満面の笑みを浮かべた。 「そっかそっか。私の攻めはそこまで良かったのかぁ……ふ、ふふふっ」 全身を笑いで揺すりながらコキンの死体を持って餌用ゆっくりの檻に放り込む。 ゆっくり達が普段以上に怯えた様子で美鈴を見ている。 「それにしても、まさか自殺するなんて……ゆっくりフランは初めてだったけど、まさかこんな事をするとは…… これは面白い事実ね。最も凶暴な捕食種が一晩いたぶられたら自殺。ふふっ何この皮肉。面白すぎるわ。ふふふふ」 檻の中のゆっくり達が美鈴の様子を伺いながら恐る恐る食事している間中、部屋に不気味な笑い声は響き続けた。 「んーっ、さてと!じゃあ今日もお仕事頑張りますか!」 掃除を終えて着替え終わる頃にはいつもの門番さんが出来上がっていた。 その豹変ぶりもまた、檻の中のゆっくり達の恐怖を煽っていた。 部屋を出る間際、おやつ用のゆっくりを無造作に胸元にしまい込む。 世の男性からすれば羨ましいが、そのゆっくりにしてみれば今日食われる事が確定した事になる。 「ゆ゛っぐい゛じだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「黙りなさい」 軽く胸を寄せ上げて中のゆっくりを圧迫しながら脅す。一言で黙るゆっくり。 と、そこに美鈴の上司が通りかかった。 「おはよう美鈴。何そのポーズは。新しい朝の挨拶かしら?」 「わわ!咲夜さん!お、おはようございます!!これは別にその、ちょっとした体操ですよ!」 「ふぅん?てっきり私に対する宣戦布告かと思ったけど」 「ちちちち違いますよそんな!咲夜さんに宣戦布告だなんてその……は、恥ずかしいです!!」 「……?貴女大丈夫?今日は別の者に仕事を代わって貰った方がいいんじゃない?」 「そんな事はありません、私はいつも元気です!!健康です!!」 「そう。ならいいわ。さっさと食事を済ませなさい。早くしないと……」 「わ、分かってます!分かってますからナイフはしまってくださーい!」 慌てて食堂に向かう美鈴。咲夜はどこか満足げに見送って、今日の仕事に取り掛かる。 今日も何事も無く紅魔館の一日が始まった。 SUICIDE END... 作:ミコスリ=ハン
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ゆっくり罵倒 うちに帰るとゆっくりが強盗に来ていた。 「ゆっ! ゆっくりにげるよ!」 キッチンでジャガイモをくわえていたまりさが、ぴょんと飛び上がって、もそもそ走っていく。 バカヤロ誰が逃がすか。俺はダッシュしてまりさを飛び越え、縁側に先回りした。 割られていたガラスの代わりにガラガラッと雨戸を閉める。 あーあちくしょう、これ実害じゃねえか。侵入だけなら許してやらんでもないと思ったのに。 実刑判決だな。執行猶予なし。 「ゆうっ! しめられちゃったよ! しかたがないね、ゆっくりあやまるよ!」 またピョンと跳ねたまりさが、俺を見てニコニコと笑いかけた。 「おにいさんごめんね! まりさははんせいしてるよ、ゆっくりゆるしてね!」 ピキキッ。 いかん、温厚なつもりが。 これはけっこう……クるわぁ。 「あぁ? なんだこのお調子もんが、それで許されると思ってんのかバカアホ短足ふくれ饅頭」 「ゆゆっ!? ゆるしてくれないの?」 「ったりめぇだ誰が許すかトンチンカンのアンポンタン! 藪にらみのへっぴり虫のインチキお化けのぶちゃむくれーのスットンキョーのデブ饅頭!」 「でぶっ!? まっまりさでぶじゃないよ! ゆっくりおこるよ!?」 またピョンと跳ねると、まりさは涙を浮かべてぷぅーっと膨れ上がる。 ゆっくり怒りのポーズだ。すかさず俺は怒鳴る。 「うるせえバーカ何がデブじゃないだこれだけボヨボヨならデブ以外の何もんでもねえだろうが!」 「ゆうっ? ゆゆゆゆ」 「デーブデブデブ脂肪の子! 太った中身はあんこっこ! 三段腹の怪生物!」 「ゆぐあああ、まりさでぶじゃない、でぶじゃないいい!」 ぷひゅるるる、と潰れてから、のてんばたん、のてんばたんとまりさはもだえる。 その鼻面に顔を突きつけてさらに怒鳴る。 「デブだしトンマだしノロマだド畜生! 田舎くさい土饅頭がダサボロい古帽子かぶって似合うと思ってんのかエセ生首の低脳団子!」 「だだだだだっ、ださくないいいぃぃぃぃ!!! まりさのおぼうしはさいこうのおぼうしなのぉぉ!!」 お、真っ赤になってわめきだした。そうだそうだ、ここがツボだった。 「お帽子お帽子素敵なお帽子真っ黒お帽子なんの色? あ・ヘドロ色♪ あ・ゴミの色♪ あ・葬式の・服の色♪」 ぺしぺしぺしぺし。帽子をはたいて歌ってやると、狂ったようにゴロゴロころがった。 「うだうな゛あぁぁぁぁぁぁ!!! おぼうしのへんなうだうだうなああぁぁぁ!!!」 「お帽子お帽子素敵なお帽子真っ黒お帽子なんの色? あ・燃えちゃった♪ あ・おコゲ色♪ あ・臭くて汚いうんうん色♪」 「やめろ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!!? ぞんなうだ、なじなじなじなじぃぃぃぃぃぃ!!!」 「真っ黒まりさのお帽子は 昔々のお婆ちゃん しわしわばばあのお帽子だ かぶるとばばあだ、ババまりさ」 「ばばばばばばば、ばりざばば゛あじゃないよ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!?」 半狂乱で喚き立て、跳ね狂い、唾を飛ばす。 俺はにんやり笑って、正面から言う。 「ばば・まりさ☆」 「ばばあじゃないぃ!」 「ばばあ。おばばまりさ。しわしわクシャクシャ口臭い」 「くざぐ゛ないいぃぃぃ!!」 「鼻がない。耳もない。ないない尽くしない尽くし。ゴロゴロ転がるボールまりさ」 「なぐな゛いっ! なぐないのぉぉぉぉ!!!」 ぐっ、と腰を据えたかと思うと、猛烈に激怒した風情でぶるぶるぶるぶる震えながら怒鳴った。 「服も着てないパンツもはかない、エプロンもなければ箒もない。貧乏まりさ、ないないまりさ」 「ふっ、ふぐっ? ふぐってなに?」 目を白黒させるまりさを、すかさず嘲笑。 「服って何って? 服を知らないんだ。やぁーいやぁーい、バカまりさアホまりさ何にも知らないオタンチンまりさ! 服ってのはなぁーこれだよこれ!(バフバフ)見りゃわかんだろなんでわかんないんだっとにゆっくりはバカで愚かで無知でスカタンでアンポコリンでオッチョコチョイでメンチボーでアンガラモンガラでブッポーソーだなアッチョンブリケ!」 「あんがらっ! ぶりっ! ぎゅあああああああああ!!!!」 鬼のように目を吊り上げて、口をグワッと全開にして、とにかく何か言い返そうとした途端―― ぶっちーん、とまりさのこめかみが弾けた。途端に、ぶりゅーっと餡が噴出する。 「ゆ゛う゛っ!?」「うおっ!?」 まりさ本人だけでなく俺も驚いた。まりさの横顔から噴水のように餡が吹き出ていく。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、だめっあんこざんっでちゃだめっ!」 餡子を止めようと思ったのか、そわそわっ、とまりさはせわしなく左右を向いた。 しかしそれで遠心力がついてしまって、かえってビュッビュッと餡が勢いを増した。 「ゆ゛を゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!? とめてとめでどめで! おに゛いざんあんこどめでぇぇ!」 びょびょっ、と俺に近づいて、まりさは哀願した。しかし悪いが、俺はまったく逆のことを考えた。 「あーんこあんこ、あんこはうんこ、うんこがぴゅー! まりさがぴゅー! うんこまりさがぴゅっぴゅっぴゅー!」 「ゆがあああああ!!! ばりざはうんごまりざじゃない゛いぃ゛い゛ぃ゛!!」 びゅびゅー。 「や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! おに゛いざんや゛めろ゛お゛お゛、あんごでぢゃうでじょおおおお!!?」 「うーんこまりさは真っ黒まりさー、中身も帽子もうんこっこー」 「う゛んごじゃなあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い!!!」 それがまりさの遺言だった。 激怒とともにブシャアアアアと餡子が噴いた後は、急にまりさは空ろな顔になって、ヘタヘタと崩れてしまった。 帽子の下で、くぼんだ眼窩の中の目玉を左右別々の方向に向けたまま、「う゛ う゛ん う゛ ゆ」とつぶやいている。 どうやら、激怒により餡圧が高まりすぎて破裂した挙句、餡子欠乏に陥ったらしかった。 俺は、畳一面の餡子とガラスの破片を避けながら、雨戸をカラカラと開け、マイルドセブンエクストライトに火をつけた。 「ふぅ……」 そして、次から外で罵倒しようと心に決めた。 =============================================================================== 罵倒マジで難しいです。すぐ子供言葉になってしまう。 「機関銃のように罵声を浴びせる」ことのできる人がうらやましい。 YT 過去作品 その他 エレベーターガール そ その他 変身 そ ゆっくりいじめ系27 幻想鉄道の動物対策 虐 機 霊夢×ゆっくり系2 博麗神社の酒造り 虐 料 その他 諸君私はゆっくりが好きだ そ 美鈴×ゆっくり系2 ほんめーりん×ゆっちゅりー甘甘水責め 虐 そ その他 FireYukkuri そ ゆっくりいじめ系187 終端速度 虐 家 無 永琳×ゆっくり系11 八意永琳のアルティメット・サイエンス 虐 そ ゆっくりいじめ系264 幻想郷のみにくい生き物 虐 ゆっくりいじめ系281 冬眠ゆっくりの子守唄 そ 環 性 家 ゆっくりいじめ系312 乙女よ、森はまだ早い 虐 性 無 ゆっくりいじめ系345 ゆっくり塊魂 虐 ゆっくりいじめ系1044 ゆっくりと共同生活 虐 家 ゆっくりいじめ系1052 ゆっくりとガチバトル そ 魔理沙×ゆっくり系4 ゆっくりの身の程 ゆっくりいじめ系1285 ゆっくり夢幻 驚異のマイクロゆっくり このSSに感想を付ける
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※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。 ※オリ設定満載です。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる謎の生物。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎるゆっくり達。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして俺はそんな不思議に満ちた生命体の研究や飼育用の商品の開発に携わっている“ゆっくりカンパニー”のしがない一社員だ。 今日はある町の住民の知らせを受けて町の近くの山に分け入って、野生のゆっくりの駆除に向かった。 もっとも、厳密に言うと駆除というよりも間引きに近いのかもしれないが。 装備は標準的な登山グッズとゆっくりに取り付ける発信機兼集音マイクが5つ。 加えてゆっくりを眠らせるための睡眠薬入りの飴玉が50個ほど。それとちょいと大きめの饅頭がゴミ袋の中に入れられている。 「先ぱぁい、なんでこんなクソ暑い中、野生のゆっくり探しなんて・・・「仕事だからだ!」 「あと、男が「ぱぁい」とか使うな、気持ち悪い!それが許されるのは可愛らしい女の子と我らが紫社長だけだ」 不勉強な後輩の研修も兼ねて、男2人でゆっくりが住んでいると言われる山を登っていく。 もっとも、ゆっくり学はまだ始まったばかりの学問で認知度は低いし、ゆっくりカンパニーの社員の8割は美人社長目当てなので野生種の保護の必要性が理解できなくても仕方ない。 だから不勉強を咎めるつもりはないが、近隣住民から集めた目撃情報をもとにゆっくり達の出没箇所をマークした地図と睨めっこしながら俺はため息をついた。 咎めるつもりはなくてもいちいち説明するのを煩わしいと思ってしまうのはどうしようもない。 「はあ、仕方ない・・・ゆっくりはな一定数以上になると何故か突然増長するんだよ。で、人間の町に下りて来る」 「で、ゆっくりによる被害がでるんですね?」 「そうだ、ゆっくりの死体が転がって町が汚れる。だからこういう知らせを受けたときにはゆっくりを保護するんだよ」 「保護?ゆっくりンピースにでも預けるんですか?」 「馬鹿言え。餡子が新鮮な赤ゆっくりは持ち帰る。にんっしんゆっくりも研究用に持ち帰る。特殊な個体は持ち帰る。他の連中は必要なら速殺す」 「速殺す?」 「・・・お前、ちょっとは自分で勉強しろよな。・・・・・・っと、ゆっくり発見」 その言葉を合図に、俺と後輩は身を低くして草むらの中に隠れた。 俺達の前を通り過ぎるゆっくりの一団の数は4匹。内訳はまりさ、れいむ、ありす、ぱちゅりーとなっている。 全員が比較的多量の食料を咥えており、またみんな満面の笑みを浮かべていた。 「ねえ、まりさ!むれもだいぶおおきくなったね!」 「むきゅ!これもまりさのかりすまのおかげよ!」 「ゆ!あたりまえだぜ!」 「でも、そろそろあのおうちじゃせまくなってきたわよ!もっととかいはなおうちをみつけないと!」 赤ん坊はピンポン玉、子どもは野球のボール、成体はバレーボールサイズが一般的だ。この4匹は全員バレーボールサイズ、つまり成体である。 その一団が目の前を通り過ぎていったのを確認すると、木陰に隠れながら追跡を開始した。 「追うぞ」 「りょーかい。しかしあの饅頭鈍くさいっすねぇ・・・」 「まあ、時速900mだからな・・・」 大抵の生き物の歩行は一歩目のエネルギーの何割かを二歩目に利用するが、ゆっくりの場合一部の種を除いてそれを一切しない。 そのせいで恐ろしく無駄と負担が多いのだ。余談だが、這って移動する場合は時速200mというカタツムリ級の鈍足だ。いや、体の大きさを考えるとそれ以下か。 が、そんなことを愚痴っても仕方がないので、それ以上は何も言わずに淡々と4匹を追いかけていった。 その4匹を追いかけていった先にはゆっくりの集落があった。 さっきの4匹を除くと、目に付く限りでは赤ん坊が9匹、子どもが10匹、成体が11匹の計30匹。 そして、成体のうち4匹が植物型のにんっしんをしていた。 植物型出産はにんっしんから僅か3日で出産を向かえ、生まれる子どもの数は1回につき大体10匹前後。 あれら全てが生まれればこの群れの人口は50匹を軽く超える。そうなれば変な自信をつけて人里に下りてくる可能性が十分にあった。 「先輩、あいつら集まって何してるんですかね?」 「聞いてりゃ分かる。少し静かにしてろ」 出来の悪い後輩を睨みながらも、俺はゆっくり達の言葉に耳を傾ける。 群れの中心にいるのはさっきの4匹。その中でもリーダーはまりさのようだ。 「むきゅ、みんなゆっくりはなしをきいてね!」 4匹を取り囲んで、がやがやと騒がしくしていた群れのメンバーがぱちゅりーの鶴の一声で静まり返った。 そして、その静寂の中、まりさが(ゆっくりにしては)重々しく口を開く。 「みんな!いまにんっしんしているこがうまれたらここではたべものをあつめきれなくなっちゃうよ!」 いまいちことの深刻さを理解できていない赤ゆっくりは「ゆぅ?」と首をかしげているが、他のゆっくりたちは固唾を呑んでまりさを見つめる。 「だから、あかちゃんたちがうまれたらにんげんのまちをゆっくりぷれいすにするよ!」 「「「みんなふあんかもしれないけど、これだけのなかまがいればだいじょうぶだよ!」」」 「「「「「「「にんげんのまちならもっとゆっくりできるね!!!」」」」」」 恐るべき集団心理。もしくは無知の幸福とでも言うべきか? まりさの宣言を聞いたゆっくりたちはにわかに活気付き、口々に人間の町を手に入れた後のことを話し始めた。 「あんな事言ってますよ?」 「仕方ないさ。野生のゆっくりには人間もいちいち干渉しないし、不味いから他の生き物に食われることも少ない」 「ああ、要するに怖いもの知らずなんですね」 まりさたちの言葉に苦笑する俺と後輩。しかし、この群れが人里に出ようと考える規模になっているならさっさと用事を済ませなければならない。 俺は段取りを考えてから、リュックに入れておいた睡眠薬入りの飴玉を取り出し、後輩にも目配せで自分に続くように促した。 「そういうことだ。それよりも・・・さっさと済ませるぞ」 「りょーかい」 指示と同時に、円陣を組んでいる群れの中に50個の飴玉を景気良くいっぺんに放り投げた。 「ゆ!なにこれ!?」 「いだい!いだいよ!」 「ゆっきゅりーーー!!」 「いったいなんなんだぜ!?」 「むきゅうーーー!!」 突然の飴の雨に群れは瞬く間に混乱に陥った。 ゆっくりの脆い体にとって飴は相当の硬さを誇るもの。 それらが50個もいっせいに降り注げば当たって怪我するものだっているし、考えなしに飛び跳ねて踏んで転ぶものもいるだろう。 が、群れの中に1匹だけ飴を知っているものが居たらしい。 「ゆゆっ!これはあめだわ!あまくておいしいとかいはなものよ!」 その一言で場の混乱が恐怖から食欲によるものにすり替わった。 「あまいのはぜんぶまりさのものだぜ!」 「ゆー!ゆー!」 「でいぶもあばいのほぢいよおおお!!」 「むきゅー!あまいものはかしこいぱちゅりーのものよ!」 全員の頭数より飴のほうが多いにもかかわらず群れは言い争いを始めてしまった。 さっきまでの結束力は一体なんだったんだか。 「ゆ!ゆっくりしていってね!!!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!」」」」」」」」」」」 そんな混乱のさなかに響き渡ったのはリーダーまりさの怒声。 本能に刷り込まれたその言葉は一瞬ながらも間違いなく全員の興奮と熱狂を鎮めた。 「みんな!いまはけんかしてるばあいじゃないでしょ!」 「「「そうだよ!まりさのいうとおりだよ!」」」 まりさと、それに続く参謀格のゆっくり達の叱責。 実は混乱の火付け役になったのは参謀格のありすだったりするのだが、そんな事は誰も気にしていない。 「みんな、あめはひとりひとつずつだよ!わかったね!」 有無を言わさぬリーダーまりさの剣幕によって、ゆっくりたちは完全に冷静さを取り戻した。 ・・・しかし、誰も飴が降ってきたことに疑問を持たないのはさすが餡子脳と言ったところ。 「む~しゃむ~しゃ、しあわ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「早っ!?」 「突っ込むな。起きたらどうするんだよ?」 睡眠薬入りの飴を食べたゆっくりたちはあっという間に眠りについた。 しかも、まりさが音頭をとっていっせいに食べたためものの見事に全員が一斉に。 「で、先輩。結局何を回収するんですか?」 「ゆっくりの頭の茎とにんっしんゆっくり。それと・・・リーダーまりさもだ。それが済んだら参謀3匹と適当な大人に発信機をつける」 「りょーかい」 後輩はポケットからナイフを取り出すと、茎を生やしている1匹のれいむに近づき、少しだけ茎の根元の皮を抉った。 茎にはようやく種族の区別がつくようになってきた赤ちゃんが12匹ほど成っている。どうやらパートナーはぱちゅりーだったらしい。 まだ成体になり立てと思しき若い母は幸せそうに「あかちゃ~ん」などと寝言で呟いている。 その言葉にしかめっ面をしながらも後輩は茎をきれいに引き抜くと、ゴミ袋の中の饅頭にそれを突っ込んだ。 「あんまり気分の良い仕事じゃないっすね・・・」 「仕方ないさ。本当はもっと頭数を減らしたいところなんだが、それをしないのが俺たちが出来る最大限の譲歩だろ?」 そう言いながら、俺はゆっくり達も気付いていない初期段階にんっしんのゆっくりを3匹ほどゴミ袋の中に放り込んだ。 「ん~、先輩って案外ドライなんですね」 「仕事だからな」 後輩の無駄話に付き合いながらもリーダーまりさを回収する。って、こいつも何気ににんっしんしてるじゃないか。 「ふ~ん・・・でも、先輩ゆっくり飼ってませんでしたっけ?」 「こいつらは俺のペットじゃないし、そもそもそれとこれとは話が別だろ?」 それから、参謀格の3匹と、比較的大きな成体の頭の飾りに発信機を装着した。 「よし、作業完了。ちょっと様子を見てからずらかるぞ」 「・・・ずらかるって、なんか悪党みたいっすよ?」 律儀に突っ込んできた後輩にローキックを入れつつ、ゴミ袋に放り込んだゆっくりの口に散乱していた飴を放り込んでから再びさっきの木陰に隠れた。 「ゆ!みんな、おはよう!ゆっくりしていってね!」 一番最初に目を覚ましたのは参謀格のれいむ。 「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」」」」 その言葉に反応して他のゆっくり達もいっせいに目を覚ました。 「「ゆゆっ!まりさがいないよ!」」 「「「ゆっきゅち~・・・!」」」 「ゆぅうううう~・・・おか~しゃん、どこ~?!」 「おねーちゃん!あかちゃんたちが!?」 「ゆ?ゆゆゆっ!?でいぶのあがぢゃんがあああああああああ!!」 目を覚ましたゆっくり達を待ち受けていたのはリーダーや仲間と可愛い赤ちゃん達の失踪だった。 そして、その場にいる全員が好き勝手に各々の大事なものを探し始める。 全くの無秩序。ぱちゅりーが必死に「むきゅ!みんな、まずはだれがいないかかくにんよ!」と真っ当なことを言っているが、誰の耳にも届いていない。 しかも、他の参謀格2匹さえも他のゆっくりに混ざって必死にまりさを探している始末だ。 「まりさああああ!どごなのおおおお!」 「おがーぢゃあああああああああん!」 「「「「ゆっきゅち~!」」」」 「まりざのあがっぢゃんがあああああああああああ!!」 群れが混乱しきっている様子を見届けると、俺たちは足早にその場を後にした。 上司に報告を済ませた俺はさっさと自分の担当する実験に取り掛かる。 今回の実験は植物型と胎生型の出産に関するもので、ゆっくりにとって有害なものを検証するために行われるそうだ。 実験方法は至って簡単。茎を挿した饅頭に無駄に強力な農薬を大量に混入したり、栄養が届きにくいように茎を傷つけたり、水分や糖分を異様に多くしたりする。 もしくは母体に定期的に肉体的または精神的苦痛を与えてストレスを加えたり、毒も同然のものを食べさせたり、栄養を過剰摂取させたりする。 今回の実験に使用するゆっくりは先ほど回収した茎4本とにんっしんゆっくり4匹だ。それぞれにA~Dのアルファベットをつける。 茎Aは非常に整った環境で、非常にバランスの良い栄養配分の饅頭に挿した。 そして、この茎からは当然のように非常に健康的な赤ちゃんが生まれた。 れいむ種6匹とぱちゅりー種5匹。不運にもぱちゅりー種が1匹だけ死産してしまったが、それ以外はみんな非常に元気な、ゆっくり風に言うならばゆっくりした赤ちゃんだ。 俺がその赤ちゃんの入っているケージの蓋を開いて様子を伺うと、その気配に気付いた1匹のれいむが満面の笑みを浮かべた。 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」 「「「「「「「「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」」」」」」」」 「ああ、ゆっくりしていくよ」 そんな赤ん坊達のケージの中にゆっくりカンパニー製ベビー用ゆっくりフードを入れてから蓋を閉じた。 「11匹か。それだけいりゃ次の実験の経費が節約できるな」 俺の傍らで、同僚がそんなことを呟くのが聞こえたが、無視して、中の赤ん坊達の様子を伺う。 「ゆ~・・・」 「ゆゆゆ~」 「ゆぅ!」 体の弱いぱちゅりーはみんな大人しくしていた。 ひとりお昼寝をするものもいれば、仲間同士で話しをするものもいた。 「「ゆっきゅちー!」」 「ゆっ!ゆっ!」 一方のれいむ達は元気に跳ね回りあるものは仲間とじゃれあい、あるものは仲良く歌を歌っている。 仲間と一緒にいることが当然になる前に別のケージに移すのが実験用ゆっくりの扱いのセオリーだ。 しかし、孤独にどう向き合うかを研究するのなら、こいつらはもう少しだけみんなで一緒に居させても良いんじゃないだろうか? 茎Bは一部を抉ってから包帯で固定して再生しないようにした状態で饅頭に挿した。 この茎からは意外なことに面白い結果が出た。 健康な個体は3匹で、その内訳はまりさ2匹にありすが1匹。未熟児が4匹は双方が2匹ずつ。そして個体識別不可能なものが2匹。 ここまでは予想通りの結果だった。全員の栄養が不足するのか、栄養が一部の個体に偏るのか・・・予想されていた結果通りのものだったといえる。 未熟児は殆ど喋らないし動かない。個体識別不能なものはすぐに死んだ。しかし、面白いのは健康な個体の行動だ。 ケージの蓋を開けて餌をばら撒いてやると、未熟児として産まれたもののために餌を噛み千切って口移しで与えてやっていた。 「ゆ、ゆっきゅちー!」 「ゅぅ・・・ゅぅ・・・」 未熟児サイズのゆっくりは非常に小さくビー玉ほどの大きさしかないため、ベビー用のゆっくりフードでさえ食べられないのだ。 しかし、生まれたてのゆっくりに自分より弱い個体を助けるなんて概念があるとは思わなかった。 とは言え、餌を与える側も所詮は赤ん坊。しかも、未熟児よりも頭数が少ないのだ。 やがてまりさ種の1匹が未熟児のために餌を千切ってあげるのを放棄し、もう1匹のまりさもそれに追従した。 「ゆ!ゆぅぅ~・・・」 「「ゅぅ・・・」」 「「ゅ・・・ゅゅ・・・」」 それでもしばらくはありす種が1匹で世話を続けていたが、やがて弱っている個体を切り捨て、最後にはありすも未熟児の世話を放棄した。 茎Cは大量の農薬を混入した饅頭に挿した。 子供が産まれたその日、ケージの中は魔境と化していた。そこに居たのは9匹の異形。 あるれいむは足が半透明のゲル上になってしまっていた。これでは歩くこともままならない。 あるまりさは目が顔の中心に1つしかなかった。そして、その目は何も映さなかった。 あるまりさは口がなかった。成長を見守るためにチューブをつないで生きながらえさせたが、野生ならばすでに死んでいただろう。 あるまりさは「ゆっくり」と言うことができなかった。口を開けば「qs、dんぢmgy、、wddg」と聞き取ることの出来ない訳の分からない音声を発するだけだった。 あるれいむは目が顔の横についていた。正面から見ればのっぺらぼうのその子は正面を視野に納めることが出来ないのでまっすぐ歩くことが出来なかった。 あるれいむは背中にも顔がついていた。だからと言って何があるわけでもないが実に不気味だった。 あるまりさは体が柔らか過ぎて大福としての形を保てなかった。まるで子供のころに作ったスライムのようだ。 あるれいむは体が異様に硬かった。そのせいで歩くことはおろか体を上下させることもままならず、口も殆ど動かなかった。 あるれいむは口が異常に大きかった。そして口以外のものがなかった。口だけの饅頭が狂ったように「ゆっくり」を連呼していた。 目の見えるものは他の姉妹の姿に怯えていた。でも、自分も似たようなものだと言うことには気付こうとしない。 「ゆ!ゆっきゅちー!ゆー!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!」 顔2つの赤れいむが狂ったように口だけのれいむに体当たりをしている。 きっと、その化け物を追い払おうとしているのだろう。でも、傍目にはどっちも化け物だった。 どれもまともに育つ可能性があるとは思えないが、奇形の生存可能性を検証するのも研究になるだろうか、と思った。 茎Dは塩分を過剰に投入した饅頭に挿した。 産まれた子どもの大半は形はまともだった。そして、死産したのは4匹だけ。 10匹中6匹が何とか誕生したというこの結果には俺以外の研究員も驚きを隠せなかった。 もっとも、まともだったのは形だけだが。 まずゆっくりの形をした6つの饅頭は言語中枢が完全に狂ってしまっていたいた。 口を開けば聞こえてくるのは薄気味悪いノイズ。 「「「、。jsbん。、fdghrdmじdsんmdms」」」 「xcんm、。zx、smyんfjwめ、」 「「えgkdtcjrcldtr、いcvf」」 そして、1匹たりともゆっくりらしい心を持ったものが居なかった。 あるありすは生まれたてであるにも関わらず日長一日壁に体をこすり付けて自慰行為にふけっていた。 あるぱちゅりーは眠ることをせず、食事の時さえもずっと言葉にならない何かを発し続けていた。 あるありすはいつも何かに怯えてがたがたと震えていた。そして、近づいた姉妹を片っ端から攻撃していた。 あるぱちゅりーは何かにつけて姉妹を食べようと後ろから襲い掛かっては追い払われて、「むきゅ!」と悲鳴を上げていた。 あるありすは突然泣いたり、怒ったように頬を膨らましたり、酷く情緒不安定だった。 あるありすは自分のことをぱちゅりーだと信じ込んでいた。こんな狂った家族の中では誰も間違いを指摘してくれなかった。 俺は今度は糖分や水分だとどういう結果が得られのかも検証する必要があるな、と酷く覚めた目でその様子を眺めていた。 母体Aは広い部屋の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 産まれた3匹の子どもはどれもちゃんと子供サイズ近くまで大きくなっていて、みんな非常に元気だった。 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 俺がケージを覗くと、母れいむは満面の笑みを浮かべて話しかけてきた。 「ねえ!みてよ、おにーさん!れいむのあかちゃんだよ!とってもゆっくりしたこだよ!」 「ああ、そうだな。ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 あの日、回収したゆっくり達は「野犬に襲われているのを助けた。見つけたときには君だけだった」と言ったらそれを簡単に信じて、俺になついた。 「よし、それじゃあ、赤ちゃんたちにお兄さんから美味しいお菓子をあげよう!」 「ゆ!ほんとうに!」 「ああ、本当だよ。でも、ここじゃ食べられないから、ちょっとケージから出てもらうよ」 「「「ゆ~!ゆっくちたべるよ!」」」 そういって俺が赤ちゃんを連れて行くのを、母れいむはニコニコと微笑みながら見守っていた。 そして、このれいむが赤ちゃんと会うことは二度となかった。 母体Bは口の部分だけ開いている透明な箱の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 この母ぱちゅりーの子どもは1匹しか生まれなかったが2匹生まれたとも言える状態だった。 いわゆるシャム双生児のようなものだろうか。その赤ちゃんは体と口の横幅が異様に大きく、目が3つあった。 そして、髪の毛は真ん中の目を境に右側がまりさ種のもので左側がぱちゅりー種のものになっていた。 「「ゆっくりしていってね!」」 2つの種の声が同時に聞こえてくる。声帯も少しおかしなことになっているのだろう。 それは、箱によって圧迫され、赤ちゃんがそれ以上大きくなる余地が残されていなかったために起きたものだった。 「やあ、ぱちゅりー。赤ちゃんはどうしたんだい?」 出産時には箱から出さねばならないので、当然俺は出産に立ち会っている。 「むきゅ、おにーさん!ぱちぇのあかちゃんはまだぽんぽんのなかよ!」 そして、中にこれ以上赤ちゃんが居ないこともしっかり確認している。 しかし、ぱちゅりーは中にまだ赤ちゃんが居ると思っている。 それは体も心も弱いぱちゅりーにとって独りっきりになってしまった上に普通の赤ちゃんを産めなかった絶望から身を守るための手段だった。 そう、この奇形の赤ん坊は母親に見捨てられてしまったのだ。 ケージを閉じたところで、後輩が「そいつ、最近箱から出せって言いませんね?」と尋ねてきた。 「箱から出たら気味の悪い赤ちゃんに触られるかもしれないからだろ?」 とりあえず、苦笑交じりにそう返しておいた。 母体Cは遠隔発火のライターを内蔵し、定期的に痛い目にあってもらった。 唐突の訪れる痛みにいつも怯え続けて眠ることもままならなかった元リーダーまりさも子どもは、全員異様に小さかった。 「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」 「ゆっくりしていってね!」 茎から生まれるタイプと大差ない大きさながら元気いっぱいに鳴く赤ちゃんたちに疲れきった表情で微笑むまりさ。 とは言え、全員これと言った異常もなく出産できたことを考えるとゆっくりはストレスに強いと見てよさそうだ。 多分、餡子脳だからだろう。 「ゆ~!」 「ゆっ!ゆっ!」 「ゆ~ゆ~ゆ~♪」 ケージの蓋を開けて、子どもたちが遊んでいる姿を眺めているまりさに話しかける。 「やあ、まりさ」 「ゆ!おにーさん!」 「とってもゆっくりした子だね!」 俺のその言葉を聞くと、まりさは少しだけ踏ん反りかえって、嬉しそうに笑う。 「まりさ、がんばったよ!」 「そうか。お疲れ様」 「おにーさん、ありがとう!」 その言葉に少し良心が痛んだが、すぐに思考を仕事優先に切り替える。 「まりさの子どもに美味しいお菓子をあげたいんだけど、ここじゃ食べられないんだ。だから少しだけ連れて行って良いかな?」 「ゆ!おにーさんならいいよ!でも、すぐにつれてかえってきてね!」 「分かってるよ。さ、おちびちゃんたち?おにーさんと一緒にゆっくりお菓子を食べに行こうか」 母親同様に俺のことを信頼しきっている赤ん坊たちは、何の疑いもなく手の上に乗ってきた。 「悪いけどまりさの分はないから、ここでゆっくり待っててくれ?」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりまってるよ!」 そうして、この元リーダーまりさは永遠にゆっくりと赤ちゃんの帰還を待ち続けた。 母体Dは廃油や産廃同然のものを餌にして生活してもらった。 しかし、茎Cと全く変わらない結果にうんざりさせられるだけだった。 予想通りの上に、頭数が少なく新鮮味もないこの結果を記録する気にもなれなかった。 ---あとがき--- スレに書き込めねえよ、ちくせう。 奇形を産ませておいてつまらない結果にうんざりってのは虐待お兄さん以上にアレだと思う。 普段は基本的に優しくても仕事のときは一片の慈悲もなし。まさに、冷徹お兄さんですよ。 そんなこんなで、現代ゆっくりシリーズの3作目です。 野良ゆっくりとその末路の一部を書いたつもりですが・・・あー、文章力が欲しいorz byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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前 さて。 小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。 残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。 赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。 やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね? ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。 その表情、たまらん。 俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。 もうちょっとだけ我慢してほしい。 すぐ終わるからさ。 「おーい、起きろー」 俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。 「ゆっ、じしんだよ!?」 「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」 「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」 ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする! 俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。 「やぁ、起きたかい?」 「ゆっ、おにいさん!?」 「いまのはおにいさんがやったの!?」 「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!」 相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。 こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに…… とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。 「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」 「ゆっ!?」 姉妹たちが母親を見る。 ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。 そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。 いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。 当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。 「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」 「って、言ってるけど、信じる?」 普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。 だが、この家族は既に普通の家族ではない。 俺がそうした。 「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」 「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」 「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」 「わるいゆっくりはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」 もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。 憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。 しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。 姉妹を見殺し。 食事を独り占め。 昼寝すら邪魔をする。 果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。 否。 母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。 目の前にいるのは『敵』だ。 自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。 ――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか! 俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。 こいつら面白すぎる。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりせずにしね!」 「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」 「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」 おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。 いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。 で。 その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、 「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 やっぱり咽び泣いていた。 休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。 いいねいいねー。 泣くゆっくりはやっぱり可愛いな! 涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。 管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。 これでも現実は見ているつもりである。 「では、準備があるので少々お待ちを」 俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。 太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。 なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。 俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。 大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。 木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。 活きがいいな、これなら期待出来そうだ。 俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。 予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。 「ゆっ、なにそれ?」 「ゆっくりできるの?」 「ゆっくりしていってね!」 うむ、ではご期待に添えようじゃないか。 俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。 途端、 「うー!」 中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。 赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。 無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。 突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れ、れみりゃだ、こわいよー!」 「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」 「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」 ゆーゆー泣き出す姉妹たち。 くはっ、萌え狂う! っと、鼻血を出している場合ではない。 「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」 ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。 ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。 俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。 ああごめんよ、我慢してね。 俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。 「う、うぁー!?」 卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。 あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。 でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。 紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。 そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。 「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」 「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」 「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」 スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。 俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。 「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」 ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。 うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。 二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。 まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。 ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。 「さて、最後はこれだな」 俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。 途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。 「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」 「れみりゃをこわがらなくてすむね!」 「やーいやーい、れみりゃのばーか!」 中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。 ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。 このうーうーってやつ可愛い。 「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」 自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。 「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」 「……ゆ?」 「そ・こ・で」 俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、 「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」 「ゆ、ゆーっ!?」 赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。 「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」 「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」 「よ、よくないよーっ!?」 「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」 「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」 「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」 激嘘。 「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」 「な、なに!?」 「ゆっくりしないでいってね!」 「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」 つまりは今までと同じである。 当然、 「ゆっ、それはだめだよ!」 「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」 「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」 「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」 反発が起こる。 今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。 今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。 「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。 答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。 激しく嗜虐心をそそります、はい。 ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。 愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。 同情を買う? いいえ、滑稽です。 「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」 「そんなのしんじられないよ!」 「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」 赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。 最っ高! 「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」 「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」 「お、おねえちゃーん!!!」 俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。 するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」 「や、やだぁー!!!」 「ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。 「う、うわぁー!!!」 泣き出すゆっくりれみりゃ。 か、かわえぇ! っと、見とれている場合ではない。 このままでは不公平だしな。 俺はゆっくり魔理沙に向き直った。 「では問題です」 「は、はやく出してね!」 「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」 「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」 俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。 やれやれ、仕方無いな。 「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」 あ、『問題』じゃねーやこれ。 まぁいいか。 ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。 「そ、そんなこと言えないよ!」 「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」 「そ、それはだめだよ!」 「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」 「ゆっ……」 諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。 言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。 だが、それでも親の愛が勝るのだろう。 ゆっくり魔理沙は大声を上げた。 「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」 「ゆっ!?」 突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。 ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」 「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」 「ゆっくり!?」 そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。 今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。 「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「シチュー落っことしたじゃねーか」 もう忘れたのかよ。 「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」 「ゆ……」 再びの葛藤。 だがやらないと子供は助からない。 ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。 「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」 糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。 この全てに絶望したような顔、素晴らしい! これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。 さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。 「うー! うー!!」 「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」 「れいむっ、こっちだよ、はやく!」 「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」 成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。 なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。 対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。 自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。 しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。 考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。 ……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。 そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。 「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」 呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。 その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。 逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。 母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。 何度も、何度も。 そして。 ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。 どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。 しかしそれは、なんという自殺行為。 「うー♪」 「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「……ゆっ!?」 周囲に障害物はない。 身を隠す場所は、何も無い。 ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。 妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。 「うー!」 「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。 飛び散る餡子。 平べったくなった饅頭の肉体。 「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ゛……ゆ゛べっ……」 姉の悲痛な悲鳴。 それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。 大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。 無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。 「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」 「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」 赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。 皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。 「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「うー♪」 しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。 いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。 兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。 「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」 ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。 自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。 その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。 ……まぁ、それはそれとして。 「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」 「ゆっぐ!?」 ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。 そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。 ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。 慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。 先程までの70回くらいは全てパーだ。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。 そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。 「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」 「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」 ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。 間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。 「う、うぁー! うぁー!!」 顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。 姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。 気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。 「ゆっ、おいかけてきたよ!」 「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」 心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。 勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。 ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。 「うぁーーー!!!」 余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。 萌ゑる。 一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。 「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」 「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」 二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。 しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。 突如。 頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。 「…………ゆ?」 赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。 妹は何処へ行った。 と。 視界の端に、引っかかるものがあった。 黒い、点々とした影。 それが、何処かへと続いている。 赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。 そして。 妹は、そこにいた。 「……」 物言わぬ亡骸となって。 大量の餡子を撒き散らしながら。 「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。 刹那、 ごぅん! 一迅の風が舞う。 赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。 餡子を少量、付着させて。 ――つまり、なんだ。 妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。 ブランコを動かしたのは自分。 だから。 妹を殺したのは。 「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。 生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。 それが、死んだ。 自分が殺してしまった。 ゆっくり出来なくしてしまった! 赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。 身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。 だけど、そんな余裕でいいのかな? 「うー!!!」 ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。 悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。 箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。 ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。 「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」 「うっうー!!!」 ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。 思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。 「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」 口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。 ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 絶叫。 ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。 何度も、何度も。 「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。 食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。 苦しい。 痛い。 助けて。 そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。 だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。 もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 身体の中身がどんどん失われていく感覚。 段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。 しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。 今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。 先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。 激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。 もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。 ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。 復讐を完遂させて満足なのだろう。 幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。 「うー♪ うまうまー♪」 「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」 その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。 その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。 「おい、もういいぞ」 「……ゆっ?」 「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」 「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」 ああ、いい。 何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。 その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。 こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。 で。 七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。 可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。 だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。 さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。 壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。 なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。 ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。 感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。 「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」 子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。 色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう! そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。 だが。 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」 突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。 「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。 だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。 身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。 「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」 「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」 痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。 だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。 そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。 自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。 俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み! 感動しすぎてちょっと涙が出てきた。 「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」 お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。 力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。 「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」 「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」 「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。 だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。 「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」 「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆっ……じだ……だよ……」 「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」 「……」 「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」 「ストップ、そこまでだ」 事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。 未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。 「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」 「下をよく見ろ」 「……ゆっ?」 言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。 そこには、 「……」 物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。 「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」 「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」 「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」 勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。 だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。 元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。 箱に詰められたときに、それに気付いていた。 そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。 でも、生き延びることを許された。 そして、助かるチャンスはいくらでもあった。 どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。 ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。 だけど、答えられなかった。 何故? それは。 自分が、ゆっくりしていた、から。 赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。 それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。 今までのように騒いだりしない。 ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。 「……ころして」 「なに?」 「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」 俺は驚いた。 まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。 それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。 仲間のことはすぐ忘れたというのに。 過去に何かあったのだろうか。 ……まぁ、興味ないけど。 「殺して欲しいのか?」 「うん……ゆっくりせずにころしてね……」 「だが断る」 「……ゆっ!?」 ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。 俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。 「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」 だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。 「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」 続く。 このSSに感想を付ける
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「よし、理解した」 俺は虐待お兄さん、その中でも特に調査と分析を重んじるとても知的なお兄さんだ。 ここ数年、沢山のゆっくりどもを毎日毎日ブチ殺してきて理解した事がある。 あいつらが悪意を表にするのは集団のときだけで、一匹で居るときはさほど酷い事をやらないのだ。 ゆっくりによるゆっくりいじめもそう。集団での村への攻撃もそう。やつらは群れると悪意が濃くなっていく。 一匹だけだとせいぜい素の傲慢さで態度が大きい程度で、畑荒らしすら怯えて行わないのだ。 人間の家に侵入する割合もかなり低くなる。人に見つかっても逃げようとする固体が大半だ。 その事に気付いたからには調査開始だ。まず森でゆっくりれいむの家族を発見、捕獲する事にした。 かなりの数が居るな・・・ついさっき出産したばかりの母親と父親、お姉さん8匹に妹12匹、赤ちゃん20匹ってとこか。 「ゆっ!おにいさんゆっくりできるひと?」 「ごめん、今急いでるんだ」ポイッ 「何するのおおおお!!れいむの赤ちゃ」ポイッ 「ゆっくりできないお兄さんはゆっくりし」ポイッ ゆっくりどもを適当にあしらいつつ、背中の籠に放り込んでいく。 この籠はこの時の為に俺が自作した特性のゆっくり籠だ。 入り口には返しがついてるから入るときはスムーズなのに出すのは外部からバラさないと出られないんだ。 我ながらなんという便利な籠。文明の利器には感謝するべきだと常々思う。 「ゆ゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!ぢゅぶれ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 「れ゛い゛む゛の゛あ゛がぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 唯一欠点を挙げるとすると、構造の欠陥から大量に入れると内圧で大変な事になるらしい。 まぁ、そんなのゆっくりハントじゃまったく無意味だから気にしないけどね。なんでもかんでも悪いところを探して叩くのは不毛だ。 とりあえず巣に居るゆっくりどもを全部捕まえると、俺は家の実験室に帰る事にした。 俺の家まではここからだと10kmくらいか。岩場も多いけど気をつけて走って帰るとしよう。 「「「「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」」」」 俺が跳ねる度に声がする。まぁ、いい熊避けになるだろう。 やっべ虐待お兄さんの血が騒ぐ!スキップとかもしちゃうぞーw 「「「「や゛あ゛あ゛あ゛あ゛め゛え゛え゛え゛え゛え゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」」」」 「ははは、ゆかいだ。はははははは!!!!!」 俺はゆっくり達の悲鳴をBGMにくるくると踊り跳ねながら5時間くらいかけて家に帰った。楽しいんだからちょっとくらい遊んでもいいよね。 年甲斐もなくはしゃいだので明日は確実に筋肉痛だろう。やれやれ。 「「「「ゆ……ゆっぐり…ざぜでぇ……」」」」 「ほら、お前らでておいでー」 蓋を外した籠をひっくり返して床に立てる。ここからがコツが居るんだ。 籠の底にある一本のピンを倒すと、底から空気が入って簡単に中身が出てくるらしいんだ。 ポキッ……シュー……べちょっ。 「「「「ゆぐうっ!」」」」 よし抜けた。あとは引っ張るだけだ。ここで垂直に持ち上げられないと中のゆっくりが崩れてしまう事がよくあるらしい。 ズズズ……ポンッ ぷるんっ 無事ゆっくりが取り出された。元々赤ちゃんから入れていったから上の方には餡子を吐きつつピクピクしてる赤ちゃんれいむ数匹が張り付いてる。 あ、ゆっくりの吐いた餡子が上から垂れてきた、これじゃまるでれみりゃの好物じゃないかw まぁ、捕獲するのが目的なので一回バラさないとな。しばらく養生すれば元に戻るだろう。ゆっくりだし。 そう思い、台所からスプーンを持ってきた。え?他になんかあるだろ? 他に使えそうな道具が無かったんだから仕方ない。バラすのに使える道具ならあるんだけど。 んじゃ、早速右端の赤ちゃんから外してやるか。 「「「「いだい!!ゆっぐりやめてね!!!」」」」 全てのれいむがいっせいに抗議の声を上げる。 ………あれ? もしやと思い、別のゆっくりの間にスプーンを入れていく。 他のゆっくりに負担がかからないように……そーっと…… 「「「「やめてっていってるでしょ!!おにいさんはひどいひとだね!!!!」」」」 結論:こいつら融合しちゃってるーーーー!!!!!! 少なくとも、感覚は共有してるらしい。どんなふうに融合しているのか気になるな…… 俺は桶に水を汲むと、こいつらにぶっ掛けた。 「「「「すっきりー!!」」」」 上にかかっていた餡子を流して気付いた事が有る。 1、表面上は完全に再生していた。赤ちゃんれいむもどうやら元気なようだ。 2、接着面は完全に結合してる。引っ張ると痛がるみたいだ。 3、この状態でも動く事は可能らしい。下になってるゆっくりがプルプル跳ねてた。 なんだこれ……… とりあえず次のステップに移りたいと思う。俺は赤ちゃんれいむを掴んで勢いよくひっぱった! ブチッ! 「「「「いだいよおにいざん!!やめでえええ!!」」」」 結構余裕あるな、こいつら。ところで外した赤ちゃんれいむは……… 「ゆゆ……ゆっくりちていってね!!」 うお!個別の意思を持った!?どうなってんだこれ!? とりあえず、手の中の赤れいむに現状を見せてみるか。何かわかるかもしれない。 「おーい、赤ちゃんれいむー」 「ゆゆ?おにいちゃんゆっくちできるしと?」 「これなーんだ」 そう言って手の中の赤れいむをゆっくりの集合体に向ける。 「ゆぐううう!!!れいむのばげものおおお!!!どっがいっでぇええええええ!!!!」 「「「「ゆゆっ!!ひどいよ!!あかちゃん、おかあさんれいむだよ!!!ゆっくりしてね!!!!」」」」 あー…………なるほどね。コアはおかあさんれいむか。 で、赤ちゃんはそう認識できないと。 しかし…これは俺の手にはおえんなぁ…… 「赤ちゃん、これはご飯だからゆっくり食べてね!!ほら、おいしいよ!!」 「わかった!!ゆっくりたべるよ!!むーしゃむーしゃ!!しあわせー!!」 「「「「どう゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」」」」 おー、食ってる食ってる。必死に逃げようとはしてるみたいだけど体の使い方がわからなくて抵抗できないみたいだな。 これなら当分は大丈夫だろう。 俺は研究所に鍵をかけて一週間ほど放置した。 一週間後に残ってた一匹のれいむはげんのうで叩いて上げた。 「ゆぴゅっ!!」 これが最後の言葉だった。 後に加工所の人に聞いたことだが、ゆっくり同士の癒着事故は稀によくあるらしく、 その中でも出産間近~子供を産んだばかりの頃のお母さんれいむが居ると意識が全員統合されるらしい。 出産前の段階で子供が暴れないように体がそういう処理をしているらしいが、まだメカニズムはよくわかっていないようだ。 今回の件で俺が理解した事が一つだけある。 「ゆっくりは一匹でも親族を食い殺す害悪だ!!俺は間違っていた!!」 より真理に近づいた俺は虐待お兄さん、その中でも特に調査と分析を重んじるとても知的なお兄さんだ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ドスまりさへの復讐(中篇)書くはずが気がついたらこんなのになってたよ!! しかも元々は21スレ890番の証明をするはずだったのに………なんだこれ。 ゆっくり現実逃避した結果がこれだよ!! このSSに感想を付ける