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今日は紅魔館のピクニックの日である。 最近、昼間に起きているようになったレミリアが思いつきで開催したものだが、主とその妹以外は基本的に昼型の紅魔館である。 メイドたちも前日から嬉しそうに準備をしていた。 「全員集まったようね。それじゃあ出発しましょう」 レミリアの合図で数十人のピクニックが始まった。 その中には、図書館から無理矢理連れてこられたパチュリーも含まれている。 「う~! さくや~、れみりゃもいく~♪」 「ふらんもいぐー♪」 ふと、後ろから咲夜を呼ぶ声がする。 振り向くと、屋敷に住み着いているゆっくりれみりゃとフラン。 二匹とも手に日傘をもってよたよたと走ってくる。 とたんにレミリアが顔をしかめる。 「アレは私の予備の日傘じゃない、しかも私の鞄まで背負ってるし。咲夜! 今すぐあの二匹を昼食に加えなさい」 高貴な自分の物が泥臭いゆっくりに手に握られている、それは決して我慢できるものでは無いようだ。 「まぁまぁ、お嬢様。ゆっくり達がしたことですし。二匹ともピクニックの為に頑張って用意したんですから」 いつの間にか、ゆっくりを自分のもとへ来させた咲夜がそう言ってなだめる。 「これはれみりゃのだよ!! れみりゃじゅんびちたの!!!」 「ふりゃんもじゅんびしたの!!! だからふりゃんにょなの!!」 そう言って二匹は、大きめのポーチを開けて中身を見せる。 そこの中には、無造作に詰め込まれたお菓子、蝋燭台、置物などなど。 どれもレミリアの部屋に置かれていたものばかりだった。 「この、中華まん……」 それ以上語らず、二匹の首を締め上げるレミリア。 「がー!! ひゅー、ひゅー」 必死に暴れて離そうとするが、力の差が歴然なのでそれもかなわない。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 口から肉汁の泡を吹き、みるみる顔が真っ青になっていく。 「お嬢様! おやめください」 あと少し、と言うところで時間を止めてレミリアの手から二匹を助ける。 当の二匹は咲夜にしがみ付いて泣いている。 「ざぐやーざくやー!! わるいひどがいじめるよー!!!」 「ざぐやー!! わるいひどをやっつげでー! ゆぐっりじねーー!!!」 「はいはい。もうだいじょうぶですよ」 そう言って、両手で抱きしめて慰める咲夜は、顔だけをレミリアの方に向ける。 「お嬢様! 変えの品は直ぐに準備いたしますので気を荒げないでください」 「だって咲夜、そいつが私の……」 「この二匹は、メイド達も可愛がっているんですよ。少し我侭ですけど、まだ小さいんですから、大目に見てやってください。」 ねぇ、と他のメイド達に視線を向ける。 皆一様にハイ、とか、そうです、と言ってはいるが本心でないのは丸分かりだ。 しかも、先日咲夜と一緒に買い物に出かけた二匹のゆっくりが居なくなった。 それらは最近になって庭に住み着いたのだが、それでも咲夜は懸命に街中を探し回った。 それからは、一番初めのゆっくりであり、屋敷内で生活していたこの二匹を今まで以上に大事にするようになった。 外は危ないので買い物にも連れて行かず、庭に出るときも休憩中のメイドを呼び出して監視させた。 それゆえ、最近はれみりゃ達が泣こうものなら目を真っ赤にして飛んでくる、凄い溺愛ぶりを発揮しているのだ。 当然、今日も自室に置いていこうと思ったのだが、どうやら事前にこの事をしってこっそりと準備していたようだ。 ちまちまとポーチにモノをつめる二匹を想像して、思わず顔がにやける咲夜。 それを見てため息をつくレミリア。 「……、まぁいいわ。私の邪魔にならないようにして頂戴」 この場はそれだけ言って引き下がる。 レミリアとしても、折角のピクニックに水を挿したくはないのだろう。 「う~♪、こんどいじめたら、しゃくやにいいづけてやる!!!」 「ゆっくりしね!!! ゆっくりしね!!!」 ゆっくりの性か。 既に泣き止み、ふてぶてしい笑顔でレミリアにそう言い放つ。 レミリア達が反応する前に、咲夜の手からはなれ列の中ではしゃいでいた。 「いいわ、先を急ぎましょう」 それを合図にまた歩を進める一向。 二匹のゆっくりは、自分達からすればかなり早く歩いている事が不満らしく、咲夜に文句を言って歩く速度を遅らせた。 今日のピクニックは色々と波乱に満ちている。 満足そうに笑いながら、ヒョコヒョコと傘にバランスを取られつつ進んでいく二匹を見て、咲夜以外の誰もがそう思った。 ペースは遅くなったが、それでもお昼前には目的地に着くことができた。 小悪魔が提案した小高い丘の上、近くには綺麗な川も流れている。 程なくて、全員が集まったのを確認しレミリアが挨拶をする。 「さて皆、今日はゆっくり羽を伸ばして、明日からまた頑張って頂戴」 レミリアが言い終わると、各々がシートを広げて昼食の時間が始まった。 一番見晴らしの良い場所に陣取ったシートには、レミリア・フランドール・パチュリー・小悪魔・紅・咲夜という、何時ものメンバーが陣取る。 「たまには全員でピクニックも良いものね」 「お姉様、それ私が食べようと思ってたのに……」 「早い者勝ちよ! パチェ、本ばかり読んでいないで景色を楽しんだら?」 「さっき見たわ。……小悪魔、それは私じゃなくて、きちんとあなたが食べなさい」 「ギクッ」 屋敷にいる時とあまり変わっていない様にも見えるが、本心では全員楽しんでいるのようだ。 「そうだ。咲夜、霊夢とそれから魔理沙も呼んできて頂戴。折角だから大人数で楽しみましょう」 「畏まりました」 既に昼食を食べ終えた咲夜は、そのまま博麗神社へと飛んでいった。 ここに戻ってくるまでには一時間は掛かるだろうか? 一方、れみりゃとフランの二匹は我が者顔で走り回っている。 「ゆくっりしね! ゆっくりしね!」 「いだい! さくやー! さくやー!」 フランに傘で殴られながら、必死で傘を盾にして防ぐれみりゃ。 既に何度か殴られたのか、顔は醜い泣き顔になっていた。 幾ら泣いても咲夜は来れないのだが、もはや口癖に様になっているれみりゃに言ってもしょうがない。 「う~、おなかへった~♪」 「ぐすっ。れ、れみりゃもへった~♪」 お腹が減ったら仲直り、一瞬で醜い笑顔に戻ったれみりゃと二人で、また日傘をさしてシートをうろつく。 「う~♪ がぁお~♪」 「れみりゃも! れみりゃも! がぁお~、た~べちゃうぞ~♪」 ずんずんとシートの上に土足で上がりながら縦断していく、メイド達が遊んでいたトランプの山を蹴飛ばし、殆ど残っていないランチボックスは、中身が気に入らないようでまた蹴飛ばす。 メイドたちは咲夜が怖くて黙って見ているだけ。 それがいっそう二匹をエスカレートさせる。 「う~♪ う! がぁお~! た~べちゃうぞ~」 さくやがいたシートを覚えていたれみりゃ、しかし既に咲夜はいなかった。 が、変わりにまだまだ沢山残っているランチボックスを見つけて大声で踊り出す。 「う~♪ うっう~♪」 「ふらんもするのぉ! う~う~♪」 なにが楽しいのか、日傘を持ったまま起用にたどたどしいヒゲダンスを踊る二匹。 一通り踊り終わると、今一度ランチボックスに向き直り一言。 「れみりゃごはんたべるぅー♪ どって~」 「ふりゃんもたべるー♪ はやくどって~」 にぱーっとステレオ笑顔で話す二匹。 自分達でとれる距離にある上に、そんなふてぶてしい顔で言われても取る人はこの席にはいないだろう。 勿論、直ぐ取ってくれる咲夜もこの付近にはいない。 「……。あぅ。はっ、はーい、れm……どうぞー」 周りの空気に耐えられなくなった小悪魔が、慎重に言葉を選んで二匹に差し出す。 その手のには大きなおにぎりが二つ。 和風なお弁当、と言うレミリアの提案で今日のお弁当は全て和風のもので締められた。 中でもおにぎりは、初めて一緒に外で食べる主に食べてもらいたくて、小悪魔が一生懸命作ったもの。 何故かは知らないが、おにぎりを作っただけなのに、彼女の手には沢山の絆創膏がしてあった。 「がぁおーーー!!!」 地面に落ちていくおにぎり、勢いよくれみりゃが叩き落としたからだ。 「あっ」 それを踏みつけるれみりゃ、見ていたフランも倣う。 「れみりゃは、さんどいっちたべたいの!! こんなのいらない!!」 「ふらんもさんどいっちたべちゃい♪ さんどいっち!!」 ズカズカとシートに上がりこんで、バスケットの中身をおにぎりごとを全て踏みつけ、勝利のヒゲダンスを踊る二匹。 「う~♪ さんどいっち♪ さくやのさんどいっちたべるぅ~♪」 「さくやのさんどいっち! ふらんもたべる~♪」 「お前達! いいかげんn「そうですか、サンドイッチが食べたいんですか?」」 レミリアがこの場で不夜城レッドを繰り出そうとした時に、小悪魔が微笑みながら二匹に聞き返す。 人間以上の生き物なら分かるが『目が笑ってない』という状態だ。 レミリアもいそいそと退散する、オーラは既に大悪魔そのものだったから。 「うっう~♪ さんどいっち! はやくたべるぅ~♪ はやくしないどさくやにいいつけちゃうぞ~♪」 「う~♪ はやくもってこないならゆっくりしね♪ さくやにおこられてゆっくりしね♪」 異常な気配にも気付かずに命令する二匹、この性格は似ている吸血鬼とゆっくりの性格が合わさってできたものだろうか。 「はいはい直ぐ用意しますよ♪」 今度は目も笑って、そう答える小悪魔。 バンザイして喜ぶ二匹。 「「う~♪ しゃんどいっじ~♪ うーーー!! ? うー! う゛わ゛ーーー!!!!」」 勢いよく風が吹いた瞬間、二匹とも自分の片腕が切れ取られていた。 一瞬何が起こったのか分からなかった二匹だが、直ぐに痛みが押寄せて状況を理解する。 「うーー? !! う゛わ゛ーー!! う゛わ゛ーーー!!!」 「ゆ゛っぐりしんじゃう゛! ゆ゛っぐりしんじゃう゛!」 「はいはい、直ぐ準備しますから泣かないでくださいね♪」 ブチッ、ブチッっと二匹の羽を引きちぎる、二匹は口から肉汁の涎を出しながら絶叫している。 「「うあーー!! ざぐあーーー!! ざぐあどごーーー!!!」」 「そんなに涎を垂らさなくても、後ちょっとですよ」 羽二枚で同じゆっくりの腕を包んでサンドイッチの出来上がり。 「はい♪ どうぞめしあがれ♪」 有無を言わさず、サンドイッチを元のゆっくりの口に無理矢理ねじ込んでいく。 「むぐむぐ!! ごれはれみりゃのおでで!! れみりゃのおででなの!! むぐ……」 「ちがうの! むぐむぐ……、これはさんどいっちじゃないの!!!」 「美味しいですか? そもそも最初のサンドイッチは、サンドイッチ伯爵が……」 二匹の口を押さえつけながら、サンドイッチの薀蓄を語り出す小悪魔。 「……なんですよ。ねっ、レミリア様、フランドール様」 「「はっはいっ!!!」」 パチュリーの後ろにしがみ付いていた二人。 急に話を振られたので思わず声が上ずった。 「よかったー、あってました。と言うわけです、美味しかったですか?」 押させていた手を離して尋ねる小悪魔。 なみだ目になりながら、なんとか完食した様だ。 「うーー! おいちくない! ざくやにいいつげでやるーーーー!!!」 「ゆっくりしね!!! ざくやにおごられでゆっくりじね!!!」 「えー、美味しくなかったんですか?」 額に指を置いて考えるポーズをする小悪魔、その間に二匹の欠損部も再生したようだ。 「う~♪ さくやにいいつけやる~♪」 「ゆっくりしね♪」 小悪魔の目線まで飛んで得意げにしゃべり出す、このまま咲夜を探して飛び回るつもりだろう。 「あっ、わかりました♪」 そう言って、今度は一気に羽を切り落とす。 「れみry……ぶんぎゃ!!!」 「ぼぎょあ!!!」 羽がなくなった二匹は、勢いよく地面に飛び込んで顔面とお腹を強打。 その後勿論泣き喚く。 「そういえば、れみりゃさまは甘いほうが宜しかったんですね。反対にフラン様はお肉の方が宜しかったんですね!」 すぐ準備します、と宣言し手早くサンドイッチを作っていく。 今度は両腕を使って大盛りにするつもりらしい。 程なくして出来上がったそれを口にねじ込む。 「どうですかぁ? おいしいですかぁ? おいしいですよねぇ? ご自分がすきなものですからねぇ? それも上質な肉と餡子ですもんねぇ?」 今度はがっちり押さえ込んでいるので口も開けない。 飲み込んだ頃を見計らって手を離してやる。 「う゛わ゛ーーー!!!! ざくや!!! ざぐやどごーーーー!!! ごわいひどがいるよーーー!!!」 「ゆっぐりじね!!! ざくやにいじめられでゆっくりじんでーーー!!!!」 傘を畳んで、ペチペチ叩いてくる二匹。 「ああこわいですねぇ♪ だったらー、言いつけられなければいいんですよね?」 「「う? うーーーー!!!」」 小高い丘、そこから勢いよく蹴り落とされる二匹。 蹴り落とした小悪魔は終始ニコニコ。 ニコニコしながら丘のの下まで飛んでゆく。 「はいはいー縛りますよ♪」 二人を手足を縛って近くの大きな洞窟へ、ポイッ。 後生大事に持っていた傘もポイ。 そして、ありの子を散らすように出てくる沢山のゆっくり霊夢と一匹のアリスほか二匹。 「おねーさん、ありすのおうちにれみりゃがはいってきたよ」 「それは、私からの贈り物ですよ。ちょっと早いけれど、人は夏と冬に二回贈り物をするんです、特に都会の人はいっぱい貰うんですよ」 「ゆっ!! ありすはとかいはだよ!!! しかたがないからこれももらってあげるよ!!!」 「アリィス、モットトカァイハァ」 「トカイハー」 「ふふ、ありがとうございます。きつく縛ってあるし、魔法もかかっているので絶対外れないですよ。知ってると思ういますけど、れみりゃもふらんも少し残しておくと再生しますから、これから越冬するあなた達にはもってこいでですよ」 「しってるよ! そんなこと、とかいではじょうしきだよ!!! おねえさんはいなかものだから、しらないんだね!!!」 「そうですか、よくしってるますね。では、私はこれで失礼します」 そういって近くにいた一匹のゆっくり霊夢の頭を撫でる。 「ゆゆ! おねえしゃんもゆっくりちていってね!!」 そう言って、仲間と一緒に戻ろうとした一匹を川に遠投。 ご馳走に夢中な他の家族は全く気付かなかった。 「むしゃむしゃ♪ おいしー」 「うっめぇ、これめっちゃうめー」 「だめだよ、そんなことばつかっちゃ、でなーのときにわらわれるよ!」 「はーい」 「う゛あ゛ーーーー!!! ざぐやー!!!!」 「ゆっくりしんじゃうよーーーーーーー!!!」 美味しそうに餌にかぶり付く声を聞きながらその場を後にする。 丘に戻り、シートまで飛んでいく。 どうやら、咲夜はまだ戻ってきていないようだ。 ほっと一安心知ってシートに目をやる。 「えっ」 本を読みながら、潰れたおにぎりを食べている主。 ふと、こちらに気付いて一瞬目が合うが、直ぐにまた本に目を落とす。 「パチュリー様! 汚いですよ、お屋敷にもどったら急いで何か作りますから」 「大丈夫よ、シートの上に落ちたのだし汚れた部分はちゃんととったから」 「でも、でも」 「それにね」 目に涙をいっぱい浮かべている小悪魔を諭すように話す。 「こんなにしょっぱいおにぎりじゃ、蟻も食べてくれないわ」 「ぱちゅりーざまー!」 「抱きつかないで、涙で本にしみが出来る」 「あう」 魔法で突き飛ばされた小悪魔、その目線の先には咲夜がいた。 「さっさくやさん、あの、その……」 「わかってるわ、れみりゃ様とフラン様が悪戯したんでしょ。ここは私が片付けるから大丈夫よ」 手馴れた手つきで片付け始める、霊夢と魔理沙は、と姉妹が聞いてきたが二人とも留守でした、とだけ言って作業を再開する。 モノの数分で掃除が終わり、いとしのゆっくりを探す咲夜。 「れみりゃさま、フラン様! 和食は合わないだろうと思いまして、さくやがサンドイッチとミルフィーユを作ってきましたよ、ミルクセーキもよく冷えていますよ」 しかし、反応はない。 何時もだったら、醜い顔をさらして駆け寄ってくるのだが。 「れみりゃさまー……、フランさまー……。へんねぇ、あなた達二人を見なかった?」 近くにいたメイドに聞く。 ここで踊っていました。 違うメイドに聞く。 ここで遊んでいました。 何人のメイドに聞いても、二匹の足取りを辿るような答えは摘めなかった。 まるで事前に口裏を合わせたような答えに、あっちへフラフラこっちへフラフラと走り回る咲夜。 「その二匹ならあっちに駆け出していったわ」 「パッドしか見てないけどね」 そう言ったのはレミリアとフラン。 「「まさか私達にもお守りをしておいてくださいなんて、言わないわよね?」」 丁寧に肯定し、一目散にその方角へ向かう。 あの綺麗な川ものある森の反対側。 ゆっくり達が沢山住んでいる森へと。 その後さすがに主を放ってはおけないので、皆で帰る前に戻ってきた咲夜だが、その日から雪が振る一ヶ月の間、暇を見つけたはあの森に探しに行っていたようだ。 この事を契機に、姉妹が小悪魔に妙に礼儀正しくなったり、小悪魔の部屋が豪華になったり。 小悪魔に投げられた直後、子供の数を正確に把握していたアリスは食後に一匹足りない事に気付いたが、都会派の親は反抗期の子供を持ってこそだと訳の分からない理屈で軽く流したり。 味を占めたアリス一家が雪が降り始めた頃、里に下りて半数が高値で売られたり。 暇な越冬中に、偶然傘の開き方が分かり得意げに傘で遊んだり、自分達のポーチの中身を得意げに説明して自分の宝物にするアリスを見て、自分達のモノだと傲慢に主張する二匹がまた食べられたりするが、それはまた別な話。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2233.html
「う~、ぷっでぃ~んおいしいど~♪」 「むきゅ!このけんきゅうしりょうはきょうみぶかいわ!」 「むこうであそぶんだぜ!」 「ゆふ~」 好物に舌鼓を打つもの、ただの広告チラシを百科事典と勘違いするもの、家においてある遊具で遊ぶもの、何もせずただぼーっとしているだけのもの。 とある家の一室でみな思い思いの方法でゆっくりしている。 彼女達はこの家の主である青年の飼いゆっくりだ。 しかし普通のゆっくりとは違う部分がある。 それはこのゆっくり達がすべて体つきの固体だからだ この家の主である青年はゆっくりのコレクターだ。 ただのコレクターではなく、体つきのゆっくり専門とするコレクターである。 「ゆ!おにいさん!まりさもあまあまたべたいよ!もってきてね!」 「はいはい、わかったよ」 体つきまりさの尊大な口調にもニコニコ顔で請け負う青年。 彼はここのゆっくり達がゆっくりする事に関して手間を惜しまない。 それが自らのコレクションを最高品質に保つもっともよい手段だと分かっているからだ。 ましてそれが希少種を通り越して奇形種とまで言えるようなまりさの要求であればなおさらだ。 いそいそと台所に向かう青年。 自慢のコレクションのすばらしさをかみ締めながらプリンを用意した。 「ああそうそう」 「むきゅ?」 青年は読めもしないチラシを見ていたぱちゅりーを抱えると楽園とも呼べるその部屋を後にした。 所変わってここは家の地下室。 ここにも体つきのゆっくり達がいる。 しかしその様は先ほどと同じ家とはとても思えないものだ。 青年はとある特殊な用事のためにその部屋へ足を踏み入れた。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「ゆ!おじさん!れいむをはなしてね!」 青年が入るなり罵声が飛び交った。 数対の体つきゆっくり達が木でできた簡素なベッドに固定されオレンジジュースをチューブで与えられている。 ここはゆっくり達の養殖場だ。 体つきゆっくりの子は比較的体つきとなる可能性が高いため不要になった体つきゆっくりを養殖用の家畜としてここに置いている。 彼は最も質の高い個体が一種につき一体いればOKという主義だった。 「うああああ~!!!うばでるどおおおおお!!!!」 今まさに一匹のれみりゃが子を産もうとしている。 体つきは動物型にんっしんが多いため時間も手間もかかる。 しかし質のいい固体を生ませるには必要な手間だ。 犬や馬などと同じくゆっくりもやはり優秀な固体からは優秀な子が生まれやすいのだ。 すぽーんとれみりゃの下膨れから赤ゆっくり達が産み落とされる。 「う~…、れみりゃのあかちゃんだどぉ…、かわいいどぉ…」 「う~♪まんまぁ~♪」 「どれどれ。…はあ」 産み落とされた赤れみりゃは早速親に甘えようとしている。 親のれみりゃは出産の消耗で元気が無いものの素直に子供の誕生を喜んでいる。 しかし青年は産み落とされた子を見るなり落胆のため息を漏らした。 勢いよく出てきた時点で分かりきっていたことだがこの赤れみりゃは体無しだ。 「う?うべっ!!!」 それを確認すると青年はその赤れみりゃを勢いよく踏み潰した。 その光景に一瞬何が起きたか分からぬ表情をするれみりゃ。 しかしすぐにその光景の意味するところを悟り大声で騒ぎ出す。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!でびりゃのあ゛がぢゃんがあ゛ああ゛う゛う゛っ!!!!!!」 しかしその声も途中で掻き消える、なにせ次の子が生まれようとしているのだ。 結局生まれてきた子はすべて体無しであった。 無論すべて青年によって踏み潰されている。 「あ…ああ…れみりゃのあかちゃん…」 もはや悲しみを叫ぶ気力も無いれみりゃを無視し先ほどから呆然とその光景を見ていたぱちゅりーに振り返る。 ぱちゅりーには分からない。 なぜあの優しい青年がこんな残酷なことをするのか分からない。 なぜ自分がここに連れてこられたのか分からない。 なぜ自分を抱いている青年が他のゆっくり達と同じようなベッドに自分を固定しているのか分からない。 なぜ青年が自分にチューブを突き刺さすのか分からない。 さっきまで天国のような場所にいたのに。 さっきまでごほんを読んでとてもゆっくりしていたのに。 ぱちゅりーが考えているうちに作業は終わった。 もはや他の母体と変わらぬ有様に自分がどういう事態になったのかようやく理解する。 「むぎゅぅ!!!!はなしてぇ!!!!」 大声で懇願するが青年は耳一つ貸さない。 今まで何か言えば必ず聞いてくれた青年が一切話を聞かない。 その事実はぱちゅりーを大きく打ちのめした。 青年はというと先ほどとは別のぱちゅりーの前にいた。 「まったく何度も死産しやがって、もう代わりがいるからお前はいらないよ、この不良品」 「む、むぎゅううううぶべら!!」 青年は騒ぐぱちゅりーを踏み潰す。 加工所に持っていけばそれなりに高く売れるのだが独占してこそのコレクション。 彼は売ってしまうくらいなら自分の手で殺すことこそ愛情であるという考えなのだった。 死体は繁殖用のありすが食べてしまうだろう。 用もなくなったため青年は部屋から出ていく。 「むぎゅうううううううううううううう!!!!!!」 一体のぱちゅりーの悲痛な叫び声を残して。 さて先ほどの青年はまた別の場所を訪れていた。 「むきゅ!おにいさんこんにちは!」 「ぷっでぃ~んをよこすんだどぉ~♪」 「れいみゅはあまあまたべちゃいよ!もっちぇきちぇね!」 ここは子ゆっくりを育てる場だ。 無論すべて体つきである。 この中から青年のお眼鏡にかなったものは晴れてコレクション入り、この家で最高の扱いを受けることとなる。 逆にお眼鏡にかなわなかったものは先ほどの養殖場行きか捕食種達の餌となる。 青年は子ゆっくり達に餌を与えるとコレクション入りを果たしたぱちゅりーを連れて行く。 「むきゅ?みんなごはんたべてるのにどおしてぱちゅりーだけつれていくの?ぱちゅりーもごはんたべたいよ」 「ああすまない、別の場所で食べさせてあげるからご飯は少しまってね」 そう言いながら出口へと向かう。 他の子ゆっくり達は出された餌に群がっている。 最近生まれた連中は質もよくないし落第が多そうだ。 「おにいさんもういっちゃうの?ゆっくりしていってね!」 不意にそんな声がかけられる。 子まりさだ。 この子まりさは性格も温和で髪質も良好、肌も質がよくで順調に育てばすぐにでもコレクション入りを果たすだろう。 「お兄さんはまだやることがあるからね、後また来るよ」 「ゆっくりりかいしたよ!まりさはゆっくりまってるね!」 そんな言葉をかけながら自分も餌の元へ向かう。 数日後この子まりさの代わりに生意気な体つきまりさが天国から地獄へ落とされたのは言うまでもない。 この青年は後に新種のゆっくりの発見で世間をにぎわせることとなる。 それでも変わらず彼は自慢のコレクション達とゆっくりし続けた。 彼は本当にゆっくり達を愛していた。 ──────────────────────────────── 過去書いたもの 奇跡のゆっくりプレイス 醜い男 生きるための選択 このSSに感想を付ける
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注意書き 特に悪いことをしていないゆっくりが死にます。 ゆっくりがかなりゲスです。 多少ぺにまむ描写があります。 ゆっくり達のバザール ここはとあるゆっくりの群れ。 それはいたって普通のゆっくりの群れであったが最近ちょっと違うところができた。 「ゆ~!さあれいむのおみせのきのみさんはどこよりもあまあまさんだよ~!」 「ゆ!まりさのおみせのきのこさんはとってもゆっくりできるんだぜ!!みんな買っていくんだぜ!」 「ありすのとかいはなこものさんをもてばあなたもきょうからとかいはよ~!!」 「むきゅ!このくささんはいたいいたいがなおるのよ!!かっていってね!むきゅ~!!」 そうこの群れはお店を開いていた。 元飼いゆっくりであったれいむが群れの長である老ぱちゅりーに飼い主から教えてもらったお店というものを やってみようという試みによってこれは実現した。 ただれいむの話はかなり曖昧な上、お店にあった綺麗な物やおいしいお菓子の話ばかりするのでなかなか実現は難しかった。 ともかく、いろんな物をお金という金属や紙と交換するのだという概念はわかったようだ。 とはいえゆっくりに通貨という概念はないのでその時々で物々交換を店主と交渉するのがこの群れのお店の形態であった。 はじめはほとんどのゆっくりがぱちゅりーのいうことを理解することができなかった。 しかし何匹かはぱちゅりーに同調してお店をはじめた。 もともと物々交換という概念はゆっくりの中にもあった。 たとえば友ゆっくりのおうちにおじゃましたときにこれがほしいからうちのこれと交換してという感じだ。 ただしそういった行為はかなり仲のいい個体同士でなければ行われない。 それがもっと簡単におこなえることゆっくり同士に広まると皆もこぞって店を出すようになった。 店といっても広場の地面に木の葉を敷き詰め売り物を適当に並べただけの粗末なものだ。 それはともかく広場はにぎわっていた。 木の実を集めるのが得意なれいむは木の実や途中で拾った綺麗な石を店に並べていた。 狩りやきのこを集めるのが得意なまりさはおいしいきのこや虫を店にならべていた。 とかいはでおしゃれだと評判のありすははっぱや石を加工して作った敷物や小物を店に並べた。 物知りのぱちゅりーは薬になる草や実を用途に分けて店に並べた。 「ゆぅ~♪れいむ、とってもおいしそうなきのみさんだね!まりさのおいしいきのこさんとこうかんしてほしいよ!」 「ゆゆ、いいよまりさ!それじゃあきのこさんときのみさんをこうかんだね!」 「ありす、このはっぱさんはな~に?」 「それはありすがつくったとってもとかいはなてーぶるくろすよ!とかいはなありすにしかつくれないとかいはなしなよ!」 「ゆぅ~すごいよ!とってもゆっくりできそうだね!このきれいないしさんとこうかんしてね!」 「ゆゆ!このいしさんもとかいはだわ!こうしょうせいりつよ!」 「ぱちゅりー、おなかのいたいいたいがなおるはっぱさんをちょうだいね!」 「むきゅ、それならこのくささんね!!きのみさんじゅっこでいいわよ!」 「ゆ~・・・ごめんねぱちゅりー、いまきのみさんはごこしかもってないんだよ・・・。 でもれいむのおちびちゃんのおなかがいたいいたいなんだよ!だからこれでわけてほしいよ、れいむのおねがいだよ!」 「むきゅ~・・・それならしかたないわね。でもこんどはれいむがおまけしてね!」 「ゆ!もちろんだよぱちゅりー!ありがとうね!」 この様子を見ていた老ぱちゅりーは満足していた。 れいむからきいたにんげんさんのお店がまさかこんなにうまくいくとはおもってもみなかった。 お店のおかげでみんなよく働くようになったし生活もよくなってきている。 このままいけばこの群れはもっと発展していくだろう。そういつか人間さんの村のように・・・ 「ゆ、ゆぅ~まりさそれじゃちょっとすくないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「ゆー!いいでしょれいむ!まりさのむしさんはほかのゆっくりのむしさんよりもおいしいんだよ!れいむこそゆっくりりかいしてね! ぷんぷん!!」 「むきゅ!そこまでよ!れいむ、まりさ!」 最近こういう争いが増えてきた。ぱちゅりーも頭が痛いところである。 通常こういった市場ができると付随して増えるものがある。 犯罪だ。 小さいものではスリ、酷いものでは強盗等。 本来ならぱちゅりーはそういったものを取り仕切るために組合やら自警団などを組織するべきであった。 まあ、いくら賢いといっても所詮ゆっくりであるぱちゅりーにそんな頭はないだろうが。 そんなこんなで犯罪はどんどん増加していった。 「ゆっへっへ♪おらおら、まりささまのおとおりなんだぜ!みちをあけるんだぜ!」 このまりさは群の嫌われ者のゲスまりさ。しかし一部の若ゆっくりなどには人気があり、今も子分のゆっくり何匹か連れている。 「ん~?おいしそうなきのみさんなんだぜ、まりささまがたべてあげるんだぜ!かんしゃするんだぜ!む~しゃ、む~しゃ・・・しあわせ~♪」 「ゆ、まりさそれはうりものなんだよ!かわりのものをちょうだいね!」 「なにいってるんだぜ!!ここはもともとまりささまのゆっくりプレイスなんだぜ!それをつかわせてやってるんだからこれくらいとうぜんなんだぜ!!」 もちろん言いがかりである。ここはもともと群れのゆっくり共有の広場であり。 そこを勝手にこのゲスまりさが自分のゆっくりプレイスだと主張していたにすぎない。 「なにいっでるの!!ごごはみんなのゆっぐりブレイズでじょ!!はやくおだいをぢょうだいね!」 「うるさいんだぜ!そんなれいむのきのみさんはこうなんだぜ!!」 そう言うと飛び上がってれいむのお店のきのみを踏み潰しぐりぐりと潰した。 「ゆあああああ!!でいぶのぎのみざんがぁぁぁああああ!!」 「ゆっへっへ!いいきみなんだぜ!ものわかりのわるいれいむはとっととしね!!」 「ゆぎゃ!」 そういうとゲスまりさはれいむに体当たりをかまして去っていってしまった。 後日これを聞きつけた老ぱちゅりーはまりさをきつく叱ったが 「うるさいんだぜ!あそこはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!だからあそこにおちているものはぜんぶまりささまのものなんだぜ!」 といって全く反省しない。 ここまで来ると状況は加速度的に悪くなっていった。 「おちびちゃんたち、ごはんだよ!ゆっくりあつまってきてね!」 「「「ゆっくりわかったよ!!!」」」 「さぁまりさのかわいいおちびちゃんたち、きょうのごはんだよ。」 そういって差し出したのは草や虫であった。 「ゆっ!またこれにゃにょ・・・。」 「もうまりしゃくささんもむしさんもやだよ!おいしいきのみさんをちょうだいね!」 「きょんなにょじゃじぇんじぇんゆっくちできにゃいよ!ぴゅんぴゅん!!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 このまりさは普段キノコや虫をお店で売っていたが最近キノコも木の実も取れる量が少なくなりまりさも売りに出せるほどの 蓄えがなくなってしまいしかたなく昔どおりの食事を赤ゆっくりに出していた。 ちなみに片親で番のれいむは死んでおり子供はすべてまりさ種である。 しかしお店のおかげでおいしい木の実の食事に慣れていた子ゆっくり達がぐずっているのだ。 それはあちこちでおこっており、れいむのいえでは逆に「おいしいきのこがたべたい」と親れいむに赤れいむがぐずっていた。 しかしキノコや木の実のある場所はそのゆっくりしかしらない秘密のゆっくりスポットであり、 たとえ友達だろうとその場所を教えることは無い。 故にまりさは木の実のある場所を知らないし、れいむはキノコのある場所をしらない。 「おきゃーしゃん!まりしゃはきにょみしゃんがちゃべちゃいよ!はやくとちぇきちぇね!」 「そんなものはないんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「いやぢゃ、いやぢゃぁぁぁぁぁ!!まりちゃきにょみしゃんがちゃべちゃいにょぉぉぉぉ!ゆびぇぇぇぇぇぇぇん!!」 「にゃんできにょみしゃんにゃいにょぉぉぉぉぉ!!まりちゃがゆっくちできにゃいでしょぉぉぉぉぉ!!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!きっちょおきゃーしゃんがまりちゃのきにょみしゃんたべちゃったんだぁぁぁ!ゆびぇぇぇぇん!!」 「ななな、なにいってるのおちびちゃん!ないものはないんだよ!ゆっくりりかいしてね!くささんもむしさんもおいしいよ!」 「きょんにゃのおいちくにゃいぃぃぃぃぃ!!やっぴゃりおきゃーしゃんがまりちゃのきにょみしゃんとっちゃんだぁぁぁぁぁ!!」 「しょれでもおやなにょぉぉぉぉぉぉぉ!!ちね!まりしゃをゆっくちさしぇにゃいおきゃーしゃんはちねぇぇぇぇ!!」 「きょにょぐじゅ!にょりょま!きょんにゃゆっくちできにゃいおやからうまれちゃにゃんちぇまりちゃはじゅかちいよ!!」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ・・・!!!」 ここのところ親まりさは食事ごとに子供達から文句を言われ続けていた。 そしてついにそのストレスは爆発した。 「そんなゆっくりできないことをいうおちびちゃんはまりさのこじゃないよ!!ゆっくりしねっ!!!」 「「「ゆびゅぇぁっ!!」」」 怒った親まりさは容赦なく赤まりさ達を壁にたたきつける。 なんてゆっくりできない子供達なんだ!こんなのはかわいいれいむとまりさの子供じゃない。 だがこのまま殺してしまえば他のゆっくりにゆっくりできないゆっくりとして制裁されてしまう。 どうすれば・・・ まりさはたっぷりゆっくり一時間ほどかけて名案を思いついた!! 「ゆっくらめいたよ!」 「ゆぎぎぎ・・・おかーしゃん・・・いちゃいよぉぉぉ・・・」 「たしゅけちぇ・・・ちんじゃうよぉぉぉ・・・」 「ごみぇんにゃしゃいおきゃーしゃん・・・もうゆるちてぇぇ・・・」 「ゆ、おきゃーしゃんまりちゃのぼうちどうちゅ・・・ゆぎゃあああああああああ!!まりしゃのぼうちがぁああああああ!!」 「やめちぇぇぇぇぇぇぇ!!ゆっくちできにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「まりしゃのかみしゃんひっぱりゃないでぇぇぇぇぇ!!」 「いだぃぃぃぃぃぃぃぃ!!まりしゃのかみがぬけちゃうぅぅぅぅぅ!!」 「ゆぁぁぁ・・・まりしゃのかみが・・・ゆびぃぃ!にゃにしゅるのおきゃーしゃん!まりしゃをひっくりかえしゃにゃいでぇぇぇ!!」 「いぢゃい!!いぢゃいよぉぉぉ!!まりさのあんよがぁぁぁぁ!!ありゅけにゃくにゃっちゃうよぉぉぉぉぉぉ!!」 「「「ゆぎゃぁぁぁぁあああああああああ・・・!!」」」 次の日、まりさは広場でお店を出していた。 「ゆー!さぁ、まりさがとってきたおまんじゅうさんだよぉ~!!とってもあまあまでゆっくりできるよぉぉ!!」 「おきゃーしゃん!!なにゃにいっちぇるにょぉぉぉぉ!!」 「まりちゃあまあましゃんじゃにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「たしゅけちぇぇぇぇぇ!!からだじゅうがいちゃいよぉぉぉぉ!!」 「ゆぅ~?まりさ、このおまんじゅうさんなにかうるさいよ。ゆっくりしてないね!」 「そうだね、しゃべるおまんじゅうさんなんてきもちわるいよ、なんとかしてね!」 「ゆ、ごめんね!いましずかにさせるよ!」 「ゆぎっ!!やめちぇぇぇぇ!!ふがががががが・・・ゆびぃっ!」 ぶちっ! 「ゆふぅ~・・・これでしずかになったよ!さあ!おいしいあまあまさんだよ!!かっていってね!」 「ゆ~ん・・・せっかくのあまあまさんなのにあまりうれなかったよ・・・。」 「ゆ・・・ゆががが・・・」 「それもこれもおまえのせいだよ!もっとおいしそうにしてね!!ぷんぷん!・・・ゆ?れいむ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆ!まりさ、ゆっくりしていってね!!・・・ゆ?まりさ、そのあまあまさんどうしたの?」 「ゆ~・・・きょうのうれのこりだよ・・・」 「まりさもうれのこったの!れいむもあまあまさんがうれのこっちゃったんだよ・・・。」 「ゆゆぅ・・・そうなの・・・ゆ!そうだ!れいむのあまあまさんとまりさのあまあまさんをこうかんしようよ!」 「ゆ!で、でもこのあまあまさんは・・・れいむの・・・」 「ゆぅ~?だめなの?じゃあしかたないね・・・またあしたひろばでうるよ・・・」 「・・・、わかったよまりさ。じゃあれいむのあまあまさんとまりさのあまあまさんをこうかんしようね!!」 「ゆ!やったよ!これできょうはかんばいだよ!!それにあまあまさんでゆっくりできるよ!!はい、れいむ。あまあまさんだよ!」 「ゆががががががが・・・」 「そ、そうだね!ゆっくりできるね!!はい、まりさ!れいむのあ・・・あまあまさんだよ。」 「ゆが・・・お・・・ゆ・・・」 「じゃあね、れいむ!ゆっくりしていってね!!」 「う、うんまりさ、ゆっくりしていってね。」 この日をさかいに赤ゆっくりの姿がだんだん少なくなっていった。 また行方不明の赤ゆっくりが増えた。 「♪ゆっくり~のひ~、まったり~のひ~・・・♪」 「「「「ゆっゆゆっゆ~♪・・・ゆゆっ!?」」」」 「ゆ?れいむのおちびちゃんたち?どうしたの・・・?ゆゆっ!おちびちゃんたち!!どこにいったの!?かくれてないででてきてね!!」 「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・でいぶのおぢびじゃんだぢ・・・どごなのぉ・・・」 「ゆ!れいむどうしたの!」 「ばりざあああああ!!れ、れいむのおぢびじゃんだぢがみづがらないのぉぉぉぉ!!」 「ゆ!?そ、そうなの?それはたいへんだね!」 「ぞうなのぉぉぉばりざもでいぶのあがじゃんいっじょにさがじでぇぇ・・・」 「ご、ごめんね!いままりさはおみせばんしてるんだよ・・・もうすこしまっててね。」 「ゆ、ぞうなの・・・?なにをうっでるの?」 「ななな、なんでもないよ!ちょっとまっててね!すぐにうっちゃうからね!」 「さぁ、あまあまさんだよぉ~とってもゆっくりできるよぉ~!!」 「「「「ゆぐぐぐぐぐぐぐぐぐーーーーーー!!!!」」」」 さらに貧富の差も発生した。 「ゆっふぉっふぉ・・・まったく、みんなびんぼうくさいみせばっかりなんだぜ・・・」 こいつは成金まりさ。 運よく人間から貰ったたくさんのお菓子から財をなし、今では大量のあまあまと美ゆっくりたちをはべらせゆーれむを築いた。 今も用心棒のゆっくりみょん二匹と美れいむを連れて広場を練り歩いていた。 「ゆ!まりさ!れいむのおちびちゃんはとってもゆっくりしているでしょ!!それにかじもうまいし巣作りもできるんだよ!!」 「ゆ~♪まりさおねーしゃ~んれいむまりしゃおねーしゃんのところでゆっくりしたいよぉ~♪ゆゆ~ん♪」 「ゆー!そんなきたないれいむなんてきにしないでね!うちのまりさのほうがゆっくりしてるんだよ!!」 「「どぼじでぞんなごというのぉぉぉぉ!!」」 この頃すでに出所不明のあまあまは普通に出回り、酷い所ではゆっくりの身売りまで起きていた。 みなせめていい暮らしをさせてやろうとこの成金まりさに媚びてゆ~れむに入れてもらおうと必死だ。 しかし、 「ゆっふぉっふぉ!!なんなんだぜおまえら?そんなうすぎたないかっこうでまりささまにはなしかけるんじゃないんだぜ! それにそのれいむもまりさもぜんぜんゆっくりしてないんだぜ~♪ でもどうしてもというならまりささまのうんうんとうばんにしてやってもいいんだぜ・・・?ゆ~っへっへ!!」 「「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!エレエレエレエレ!!」」」 もうどうしようもない状況であった。 老ぱちゅりーはかなり前から心労がたたって長いことふせっていたが他のゆっくりたちから何とかして欲しいとの声が抑えられないほど きていたのでだるい体を引きずりながら広場についてみるとそこは地獄であった。 他のゆっくりにはわからないが長く生きてきた老ぱちゅりーにはわかってしまった。 ゆっくり達があまあま、もしくはまんじゅうと称してゆっくりを売買している。 しかも飾りを奪われ、髪を引き抜かれ他のゆっくりにはそれとわからないようにしてお店に並べてある。 それもそこらじゅうで。 そしてそれを口汚く罵り合いなんとか値切ろうとするゆっくり達・・・ 地獄だ・・・この世の地獄だ・・・そしてその元凶は・・・ 「むぎゅぇっ・・・!!」 「ゆぎゃあああああああ!!おさぁぁぁぁぁああああ!!」 この後この群れはさらなる地獄につき進んでいった。 あまりに赤ゆっくりが減りどこも赤ゆっくり不足になった。 もうこのころになると通常の草や虫ではゆっくり達は満足できない。しかし赤ゆっくりもいない・・・。 いや、ならば作ればいい。多くのゆっくりがこう考えむやみなすっきり~、そしてにんっしん!を繰り返した。 それに耐えられず黒ずんで死んでいくゆっくり、またれいぱーと化して他のゆっくりをにんっしん!させる個体もでた。 「でいぶぅぅぅぅぅぅ!!またあまあまがたべたいよぉぉぉぉぉ!!またすっきりー!してにんっしん!してねぇぇぇぇ!!」 「だめだよばりざぁぁぁぁ!!ごれいじょうはもうでいぶじんじゃうよぉぉぉぉぉぉ!!」 「いいからはやくばりさをすっきりー!ざぜでねぇぇぇぇぇ!!んほぉぉぉぉぉぉぉ!!すっきりー!」 「すっきりー!・・・ああ、だめだよぉぉぉぉぉ!でいぶのあんごが!!あがぢゃ・・・ずわれ・・・ゆべぁ・・・」 「ああああ!!ごべんねぇっぇぇぇ!!でいぶぅぅぅぅぅ!!で、でもごれであまあまざんががえるよぉぉぉ・・・」 「んほぉぉぉぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁぁ!!ありずがとがいはのれいぶをおじえであげるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆげぇっ!!ああああああありずぅぅぅぅぅ!!やべでぇぇぇぇぇぇ!!ばりざ、これいじょうずっぎりじだらじんじゃぅぅぅぅぅぅ!!」 「「すっきりー!」」 また一攫千金を夢見て人間の村に出て行くゆっくりも増えた。 「ゆうー!さいきんまりささまのゆっくりプレイスのゆっくりどもがはんこうてきなんだぜ・・・ こうなったらさいきょうのまりささまがにんげんさんのまちにいってあまあまをいただくんだぜ!!おまえらついてくるんだぜ!!」 「「「「「えい!えい!ゆーーーー!!!」」」」」 当然全て潰された。 暴動も起きた。 ここはあの成金まりさのおうちの洞窟・・・ そこにあった頑丈なバリケードは壊され、多数のゆっくりが出入りを繰り返していた。 「やべでぇぇぇぇぇぇ!!まりさのあまあまもっでいかないでぇぇぇぇぇ!!」 「うるさいよ!まりさはあまあまさんをたくさんもってるのにぜんぜんわけてくれないのがわるいんだよ! ゆっくりりかいしてね!!りかいしたらさっさとしんでね!!」 「ばりざぁぁぁぁぁぁぁぁぁだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「あああああ!!でいぶぅぅぅぅぅ!!でいぶをはなぜぇぇぇぇぇぇ!!」 「んほぉぉぉぉ!!なんてびれいむなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!とかいはなありすにぴったりねぇぇぇぇぇ!!」 「やべでぇぇぇぇぇ!!ばりざのゆ~れむがぁぁぁぁぁぁ!!でいぶがぁぁぁぁぁぁ!!・・・ゆ?」 「まりざもどっでもずでぎよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!とかいはのすっきりをさせてあげるわぁぁぁぁぁ!!んほぉぉぉぉぉ!!」 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」 数時間後・・・ 破壊しつくされた成金まりさのゆ~れむにはいくつものリボンと帽子が散乱していた。 しかしそんな地獄にも終わりは訪れる。 冬だ。 餌を蓄えることも無く、ただすっきりー!を繰り返しあまあまを貪り食う生活を繰り返したこの群に越冬はほぼ不可能である。 しかし冬まではいまだ日にちがある。 それまでゆっくり達の狂ったお店は止まらない。いや、止まれない。 あとがき おかしい・・・書き始めていた長編の息抜きに書いていたはずがなぜかこんな長さに。そしてまた話が重い。 そして書いていた長編がどうでもよくなってきた・・・。なんてこったい。 人が出ないのを書いてみようと思い書いてみました。 難しい・・・。精進します。 甘党 今まで書いたもの ゆっくりコールドスリープ ゆっくりを効率的に全滅させるには。 ユマンジュゥ きれいなゆっくりの作り方
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前 あるところに一匹のドスまりさがいた。 群れを出て行った、老ドスまりさである。 「ゆゆ~、これでやっとゆっくりできるよ」 老ドスまりさがいるのは、若ドスまりさが生まれ育った深い森の中であった。 老ドスまりさは若ドスまりさが歩いた痕跡を辿り、ここに辿り着いたのである。 あれだけ愚かなゆっくりが、ドス級になるまで育つことの出来るような場所だ。少なくとも安全には違いないと当たりをつけていた。 そう──老ドスまりさは、若ドスまりさの精神の未熟さを、正確に把握していた。 その上で、若ドスまりさにあの群れを譲ったのである。 正直なところ、老ドスまりさは人生に疲れていた。 毎日毎日、愚かなゆっくりの相手をして過ごすことに、意味を見出せなくなってしまったのだ。 そこにちょうどあの若ドスまりさが来たので、老ドスまりさは群れに対して一つのテストを行った。 つまり、若ドスまりさに演説を行わせ、それに対し群れがどのように反応するかを試したのである。 結果は明白。ゆっくり達は若ドスまりさの根拠のない自信を全面的に信用し、さっさと鞍替えしてしまった。 あれほど人間は強く怖ろしいものだという老ドスまりさは教えていたのに、群れのゆっくり達は反省した様子もなかった。 中には家族を人間に殺されたものもいたのに、である。 ゆっくり達が自分の髪から躊躇なくリボンを解き、付け替えるのを目の当たりにするに至って、とうとう老ドスまりさは群れそのものを見限った。 そして、群れを捨てる自分についてきてくれるパチュリーとアリス、子れいむ、れいむ一家とまりさ一家だけを連れて、老ドスまりさは旅立った。 そこには微塵の後悔もない。 あの若ドスまりさも、群れ自体も、もう知ったことではなかった。老ドスまりさは、ゆっくりという存在そのものについて諦めを抱いていた。 そう思ったから、若ドスまりさに『協定』のことも教えなかった。 「どす、ながいあいだおつかれさま。これからはここでずっとゆっくりしていってね!」 帽子から降りたありすが、老ドスまりさにそう言ってくれた。 「ありがとうありす。でも私はもうドスでもなんでもないよ。これからはただのまりさと呼んでね」 「むきゅ! わかったわ、まりさ!」 ぱちゅりーの言葉に、老ドスまりさは目を細めた。 ああ──これで本当にゆっくりできる。 群れを捨てた立場であるというのに、こんな良いゆっくりが側にいてくれて、なんと自分は幸せなのだろうか。 思えば自分の人生は、幸運によって導かれてきた。 幼少期、家族がれみりゃに襲われて自分だけ生き残ったのも幸運だったし、その後ぱちゅりーに拾われ育てられたのも幸運だった。 色々と苦難に塗れた時代もあったが、ドス級に至るまで大きくなれたのも、ひとえに幸運の賜物であろう。 つがいになってくれるゆっくりと、リーダーを務めた群れには、生憎と恵まれなかったが。 それでもこうしてようやくゆっくりできる時間が持てたのだから、自分は幸せなのだろう。 「…………♪」 「「「じゃお~……じゃお~……」」」 少し離れた場所では、さっそくゆうかが新しい畑作りに取り組んでいるし、めーりん一家は木陰で眠っていた。 子れいむはれいむ一家やまりさ一家の子供達と遊んでいる。とても微笑ましい光景だ。 ここにどれくらいの餌があるか分からないが、しばらく食べ物に困ることはないだろう。 老ドスまりさの帽子の中には、巣から持ち出してきた食糧が目一杯に詰め込まれていた。 その量は、若ドスまりさにお祝いとして出した量の倍ほどもある。節約して生活すれば、かなり長いこともつだろう。 「ゆっくりしていってね!」 老ドスまりさは、長らく心からは口にすることのなかったその言葉を、高らかに謳いあげた。 もはや動くものとてない森の奥に、一匹のドスまりさが放置されている。 あの若ドスまりさであった。 若ドスまりさは、どうしてこのようなことになっているのか、理解できなかった。 若ドスまりさは、自分の人生が幸運によって導かれてきたと思っている。 あの森で暮らしていたとき、自分だけ生き延びたのも幸運なら、ドス級に至れるほどの豊富な食糧に恵まれたのも幸運だった。 そして森を出てみれば、すぐに群れが自分のものとなる幸運にも恵まれた。 これからもそのような生活が続くのだと、無条件に信じていた。 その結果が、今の姿である。 ……若ドスまりさは、確かに幸運であった。生き延びることが幸運と言うなら、確かに幸運であり続けた。 だが若ドスまりさは、その幸運をひたすら無条件に享受し続けるだけであった。 努力をしない者には、いつしか幸運の女神も愛想をつかすのだ。 それを、若ドスまりさは今も理解していない。 「……まだ生きてるな」 そんな愚かなドスまりさに、声をかけるものがあった。一人の人間の男であった。 「ゆぃいぃい……!! やべでぇええ、ぶだないでぇえええ……!!」 散々殴られた恐怖から、ドスまりさは人間というだけで無条件に怯えた。 男はドスまりさの言葉を無視し、言った。 「お前、ドスまりさじゃないな?」 「ゆ゛?」 「最近までここにいたドスまりさじゃないだろ。お前、違うドスまりさだろ?」 「……ゆっ!」 ドスまりさは希望を見出した。ああ、やっと自分の言葉を聞いてくれる人がいてくれた。 これで誤解は解ける。人間達も、あのドスまりさと自分が違うことを分かってくれる。 事情を知らなかったわけだから、自分のことも赦してくれるだろう。そう思った。 ドスまりさは必死に気力を振り絞って、目の前の人間に訴えかけた。 「ゆっ! そうなんだぜ! まりさはあのどすじゃないなぜ! だからたす「ウルセェエエエエエエエエエエ!!!!!」」 「ぎゃっびぇ!!!???」 男の豪腕が、ドスまりさの肉体を一撃で揺らした。 ドスまりさが何が起きたのか理解する前に、さらに拳が飛ぶ。 「お前のせいでっ! お前のせいでっ! お前のせいでっ! 何もかもが滅茶苦茶なんだよォォォォ!!! よくも俺の獲物を逃がしてくれやがってよォォォォ!!! あのドスはっ!!! 俺が長いこと目ぇつけてたやつなんだよ!!! いつか虐待してやるって心に決めてたやつなんだよ!!! 俺のっ、俺だけのっ、俺だけが虐めていいはずのっ!!! ドスまりさだったんだよォォォォォ!!! それをっ! それをッ!!! そ れ を ッ ッ ! ! ! ! ! 全部ブチ壊しにしてくれやがってェェェェェェエ!!!!! ナメやがってっ、ナメやがってッ!!! 一体どんだけ俺をコケにすりゃ気がすむんだ、この…… 腐 れ 餡 脳 ミ ソ が ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! ! ! ! 」 「ゆっげびゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 秒間十二発の拳の猛打が、容赦なくドスまりさを痛めつける。 男は筋金入りの虐待お兄さんであった。その証拠に、あれだけ殴られておきながら、ドスまりさの顔は全く破れていなかった。 「……ゆ……ゆ……」 「フーッ、フーッ……フゥゥゥゥゥゥゥ」 最早反応を返さなくなったドスまりさを前に、ようやく虐待お兄さんは息を整えた。そして、 「……ま、いっか」 ケロッとした表情で笑った。 「ドスを逃がしたのは残念だけど、代わりに今回の騒動でたくさんゆっくりを捕まえられたしな。 あんだけいればしばらく楽しめそうだ。久しぶりだから、殺さないよう加減するのがちょっと難しいけど。 ま、そういうわけだからさ、お前のことなんかもうどーでもよくなったわ」 そう言って虐待お兄さんは踵を返した。 良かった、とドスまりさは思った。何がどうなったか分からないが、ひとまず生き長らえたようだ。 あとはどうにかしてこの縄を解き、逃げ出すだけだ。逃げ出せたら、故郷の森へ帰ろう。外は怖いことばかりだ。 そうしたら、あとはずっとゆっくりし続けるのだ……そう心に決めていた。 だが去っていく男の、無慈悲な言葉がドスまりさに突き刺さる。 「お前の処刑は、あのれみりゃとふらんがやってくれる! じゃあね、クソ饅頭」 男がひらひらと手を振るのに答えるように、森の闇の中から、幾つもの飛行する影がドスまりさめがけて迫ってきていた。 「「「「うー! うー!」」」」 「ゆあ゛……あ゛あ゛あああああ……!!!」 このドスまりさは、今夜のれみりゃとふらんのディナーとなるだろう。 しかし体力に恵まれたドスまりさは、幸運にも、今夜を生き長らえることだろう。 そしてゆっくりゆっくり数日かけて、その命全てをれみりゃ達に奪われていくのだ…… 「もっどゆっぐりじだがっだああああああ…………!!!」 あとがき どんだけ面倒見のいい人でも、度を過ぎれば愛想つかすよねという話。 前回(復讐のゆっくりまりさ)では、まだ若さの抜けきらないドスを書いたので、今回は老輩と若輩のドスまりさをそれぞれ書きました。 ……書いたつもりです。 自分は、ドスにもピンキリいると思います。 そして実際、もしドスまりさが人間ほどの知能を身に着けていたら、さっさと他のゆっくりなんか見限って山に引きこもってると思います。 人の面倒を好んでみるというのは、そこに利益があったり、単純に人が良かったり、支配する快感が得るためだったり、そういう理由がないと大変ですから。 二匹のドスの設定は↓のような感じでした。 ・老ドスまりさ:(ゆっくりとしては)凄く長く生きてる苦労人。いい加減人生に疲れている。 それでも根が真面目なので、いきなり群れをほっぽりだすとかできなかった。 話の開始時点で既に怒りが有頂天寸前。漢字をたくさん使って喋る。 ・若ドスまりさ:図体がでかいだけで中身はただのゲスまりさ。 豊富な栄養事情に支えられドス級に至るが、世間知らずなため傲岸不遜。しかも痛みに弱い。平仮名で喋る。 今回は短い話のつもりで、かなり色んな部分を削ったんですが(老ドスの苦労話とか若ドスの馬鹿っぷりとか)それでもこの長さに…… wiki編集者の方にはご迷惑をかけますが、適当なところで切ってくださると助かります。 それでは、また。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 復讐のゆっくりまりさ(中) 復讐のゆっくりまりさ(後) by 土下座衛門 このSSに感想を付ける
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あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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お手軽な甘味として大勢に親しまれている「ゆっくり」たち。 ただ食べるのではなく、さまざまに趣向を凝らされているのが、長い流行の秘密だろうか? ふとある方法を試してみたくなってので野生のゆっくりを捕獲することに決めた。 外に目をやると日も落ちかけていて、空がゆっくりと暗色に染まっていく。 ゆっくりの生態について知らないことが多いのだが、やはり夜のほうが捕まえやすいのだろうか? 昼日中であれだけ動き回っているのだから、夜はゆっくりと休息をとっていると考えるのが妥当だが、 なんとなく夜中でも「ゆっくりしていってね!」と叫びつつ飛び跳ねているような気もする。 せん無いことを考えながらもすでに外に出て、ゆっくりを探しはじめる。 できれば夜中は遠出をしたくないと考えながら耳をすますと、草木のざわめきや虫たちの合唱にまじり、 あきらかに場違いな声があった。 奴らだ! 良かった、どうやら近くにいるようだ。今夜中に捕獲できることに安堵し、声の方向に向かう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりやすもうね!」 おあつらえ向きに二匹のゆっくりたちが今日の寝床であろう木の根元に寄り添っている。 思わず頬がゆるむ。 微笑ましいと感じたのではない、あまりにも幸先がいいから出た笑みだ。 そのまま捕まえてもいいのだが夜に騒がれるのは本意ではない。 「ゆっ、ゆっくりしていってね?」 「ゆっ!?」 「ゆゆっ!?」 泣き声を真似て近づいた。どもったのは恥ずかしかったからだ。 が、それが功を奏したのかゆっくりたちは無警戒に声をかけてきた。 人懐っこいとは聞いていたが、警戒させないにこしたことはない。 「ゆっくりしていってね!」 「おじさんもゆっくりする?」 赤いリボンに黒い髪。二匹とも「ゆっくり霊夢」と呼ばれる個体のようだ。 「ありがたい申し出だけど、ここじゃあゆっくりできないよ」 「どうして?ゆっくりできるよ!」 「ゆっくりしていこうよ!」 「ここは何でも食べちゃう妖怪の棲みかなんだよ。こんなところでゆっくりしたらむしゃむしゃと食べられちゃうよ」 「ゆ゛っ!?」 「ゆぐっ!」 かぶりつく身振りと共に言ってやる。子供騙しもいいところだが、表情を見るにすっかり信じたようだ。 何を想像したのか「ゆっぐりじだい!」「ゆっぐりざぜでえええ」となみだ目で震えている。 さて。 「ものすっごくゆっくりできる場所があるけど、いきたい?」 「いきたい!いきたい!」 「すっごくゆっくりしたい!!」 満面の笑みで言うゆっくり。それは媚びている笑みなのだろうか? そうして、二匹のゆっくり霊夢を抱きかかえて帰路につく。 「さ、ここでゆっくりしようか」 「「ゆっくりしていってね!」」 二匹をおろして扉を閉める。二匹は興味津々と言った態で家中を飛び跳ねている。 ここからが正念場だ。 ゆっくりと三和土からあがり、あぐらをかいて座ると笑みを浮かべながら二匹に声をかける。 「さ、いっしょにゆっくりしようか」 「ゆっくりしようね!」 「すっごいゆっくりしたい!」 近寄ってきたゆっくり霊夢たちをわしづかみにすると、そのままぎゅうぎゅうと押さえつける。 「ゆぎゅんぬぬぬぬぬぬぬ」 「ゆぐりじたいっゆぐりぃいい」 と声ならぬ声をあげるゆっくりの手触りからはみ出るかはみ出ないかの境界を推し量る。 なにぶん初めてだから失敗してしまうかも知れないが、なぁにそのときはまた持ってくればいいのさ。 中身が少しずれた感触が伝わってきたので、解放する。 「「ゆっ!!!」」 体が自由になり、怒りの言葉を出そうとする二匹。しかし口を開いた瞬間二匹を強くゆすった。 大きく、緩やかに、時にかきまわすようにゆする。 「ゆっゆっゆっくっりしっしして」 「いいいってっててってってねっね」 という泣き声が、しばらくすると 「ゆーゆーーゆーゆゆーーー」 「ゆ~ゆ~~~ゆ~ゆ~ゆ~」 と歌っているかのようなものとなる。 今度は小刻みに激しくゆする! すでに二匹の表情は赤らんでいて、目がうるみを帯びている。鼻息も荒くなり、明らかに熱を発している。 思い切り殴りつけたい気分を押し殺し、そのまま蠢動を続ける。 「「ゆっゆっゆっゆっゆっ」」 機械的に泣くようになったら、手を離して放置した。 一仕事終えたような感覚で、三和土の甕から水をすくって飲む。 振り返ると二匹のゆっくり霊夢は身を寄せ合って震えていた。 いや、これはお互いをこすりあっているのだ。それが徐々に鈍い動きになっていく。 いよいよか!と思い目を凝らすが違う。 二匹の体表に粘り気のある透明な液体が流れているのだ。粘度の高いそれはねとねとと音を立てて水溜りを作っていく。 掃除するはめになることにうんざりしながら見つめていると、粘液の音と「ゆっゆっ」という機械的な声に、 さらに荒い息遣いが混じって、とても精神衛生上よろしくない音が奏でられる。 吐き気を抑えるように水を一口ふくんだ。 しばらくすると、二匹が同時に 「ゆ゛ゆ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーッん!!」 と絶頂に達したように一声泣いた。 すると、これはもうやばいんじゃないかというくらい痙攣し始め、白目をむいて限界まで見開く。 さらには口もこれ以上ないほどに開かれ、まるで断末魔をあげているようだ。 表情の変化が終わると、痙攣も止まっていた。そのまま目に見えてわかるほどに色が黒ずんでいく。 二匹の頭の天辺から芽が出て、葉が伸び、蔦のように伸びていく。 蔦にいくつもの実をつける頃には二匹はからからに干からびていた。 身体をこすり合わせ始めてからここまでで、まだ一時間と経っていない。 植物か動物か定かではないが、生命の神秘の一端を垣間見た気がした。 同時に、あれだけ乱獲されているゆっくりが絶滅しない理由がわかったように思う。 やがて肉色の実は徐々に、だが確実にそれとわかる形を成していった。 黒い髪に赤いリボン。親と同じゆっくり霊夢だ。 一匹につき十個はあろうか、プチトマト程度の小さなゆっくり霊夢が並んでいるのは、壮観というよりは気色悪いと言えた。 そのまま観察していると、実のうちのひとつがゆっくりと震えはじめる。 眠りから覚めるように、糸のようにぴっちりと閉じられた目がゆっくりと開かれていく。 完全に見開かれると 「ゆっくりしていってね!」 と蚊の泣くような声で産声を上げた。 目覚めたゆっくり霊夢は、そのまま目だけできょろきょろと左右を見渡している。 蔦から離れないと自由に動けないのだろうか? 目があった。 「ゆっくりしていってね!」 その声はこちらに言ったものだろうが、それがきっかけになったのか他の実もぶるぶると震えだす。 二十個ものゆっくり霊夢のひとつひとつが目覚めて産声を上げている。 無事に繁殖は成功したのか、目覚めないものはひとつもなかった。 さぁ、長かったがここからが本番だ。 一番最初に目覚めたゆっくり霊夢に手を伸ばす。 「ゆぅ~?」 自分に近づいてくるそれをなんの危機感もなしに見つめているゆっくり霊夢。 そのまま無造作に蔦から引きちぎる。 「ゆ゛っ!」 一声なくとそのままぐったりしてしまった。手のひらで転がすがなんの反応もない。 しまった!早すぎたか!? そう思ったが、そのゆっくり霊夢はゆっくりと起き上がる。 「ゆっぐりじだがったのにぃ~~~」 涙をこぼしてこちらを見るゆっくり霊夢に安堵のため息をつくと、それを無造作に口の中に放り込んだ。 そのまま舌で口の中を転がすようにゆっくりと味わう。 時折、 「ゆっぶぅ~」 「ゆっぶりじゃぜでぇ」 「ぐらいよーっぜまいよーっごわいよーっ」 と口の中から聞こえてくる。お構いなしにゆっくりと味わい、咀嚼する。 「ゆっぎゃぶぅッ」 と聞こえたきり、なにも聞こえなくなった。 「あ……甘酸っぱいんだ……」 十分に成熟しきってないゆっくりは酸味があるようだ。食感も通常のゆっくり霊夢よりもいくらか歯ごたえがなかった。 お子様やお年寄り向けにできるかもしれないと思いつつ、次のゆっくり霊夢に手を伸ばす。 今度は口に入れたら弄ばずに即座に飲み込んだ。 ゆっくり霊夢の踊り食いだ。 これが一番やりたかったのだ。のどの奥から 「ゆっくり落ちるよ~!」 という声が伝わってくる。どこか滑稽で思わず噴出してしまった。 やがて胃に達したのか「ゆッ」という声とチャポンという音を聞いた気がした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしたいお?」「ゆっくりしようね!」 と聞こえてきて、すぐに 「ゆゆっ?」「とける?ゆっくりとけてる!?」「ゆっぐりじだいのにぃ」 となり「ゆっぐりざぜでぇえ…………」と沈黙した。 腹の中から聞こえるという不思議なことに興奮した。面白っ。 興奮した僕はゆっくり霊夢たちをちぎっては呑み、ちぎっては食べた。 声を上げてのどを通り過ぎていき、胃に落ちていく感覚に思わず熱い息をもらしてしまった。 腹から聞こえるゆっくり霊夢たちの声に、熱くほてっていく身体。 熱っぽい目で見ると、もうゆっくり霊夢は残り一匹になっていた。 それまでの惨状をおぼろげにも理解したのか、それはふるふると身を震わせていた。 ゆっくりと最後のゆっくり霊夢に手を伸ばし、やさしくつかみ、細心の注意を払ってちぎった。 声はあがらなかった。 それを手のひらにおき、見つめる。ゆっくり霊夢はなみだ目で震え、にっこりと笑うと 「ゆっくりしていってね!」 と言った。泣き笑いの表情と必死の物言いに、まるで命乞いをしているように見えてしまった。 思わず微笑み 「ゆっくりしようね」 というと、ゆっくり霊夢は満面の笑みを浮かべた。心からの微笑みに見えた。 それをやさしくつまみ、ゆっくりと持ち上げていく。 ゆっくりと口を開き、濡れた舌を出す。 ゆっくり霊夢をそこに近づけると 「ゆ、ゆっくり!?」 となぜか驚いたように言った。 そのまま舌に乗せると、飛び出そうとするのをかまわず口を閉じた。 口蓋に何かが当たった気がしたが、そのまま舌で口の中に転がし、存分に味わう。 泣き叫ぶゆっくり霊夢。 胃の中でどれだけが溶けて、どれだけが原型をとどめているかはわからないが 寂しくないようにと仲間のもとへと送ってやった。 プチトマトほどの大きさとはいえ、二十匹ものゆっくり霊夢をたいらげたので満腹だった。 げっぷに混じって、「ゆっくりしていってね!」という声が聞こえた。 おわり。 お付き合いくださりありがとうございました。
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※これはfuku2324.txt「ゆっくり奇々怪々(上)」の続きです。 独自解釈・設定ありです。 長いので注意。 翌日、鶏小屋には人だかりが出来ていた。 10匹からなる鶏達が、血と羽を残してこつ然と消えていたのである。 何かに喰い散らかされたのは明白だ。 「け、慧音様、これは・・・。」 男の顔は蒼白だ。後ろに控える妻、村長も険しい表情。 慧音は鶏小屋の中に入り、一通り惨状を見渡すと、言った。 「・・これがもし、妖怪や熊の仕業だというのなら、網や戸が破られているのが 普通だ。しかし、見たところこの小屋には目立った損傷は無い。あるとすれば」 と、鶏小屋の仕切りの接地部分を指差す。 そこはわずかに土が掘られており、隙間が空いていた。 「犯人が狐ならばこの穴があれば納得できる。だが、 狐と言えど一晩で鶏を10匹も腹に入れることは出来ん。」 「つ、つまり・・・。」 男の顔色は蒼白を通り越して土気色だ。 「うむ、君の言ったことは間違いでもなさそうだ。」 その後、慧音は村長に村人を広場に集めるよう頼んだ。 そこで自身の口から、村長の息子を襲い、鶏を食い荒らしたものが 同じモノによる仕業で、それはゆっくりである可能性が高いことを説明した。 当然、村人達は戸惑った。 この村は慧音が驚いたように、ブリーダーを筆頭としてゆっくりとの共存関係が うまく成り立っていることもあり、ゆっくりへ好意的な見方をする者が多い。 毎日熱心に働くれいむやのうかりん達の姿を見ていればなおさらだ。 「・・・・ゆぅ、残念だけど、お兄さんみたいな人達に色々教えてもらってない ゆっくりたちの中には、人のものを盗ったりする悪いゆっくりはいるよ。」 ざわつく村人たちの中で、ブリーダーに抱えられたれいむが発言する。 「・・・私も、畑を荒らされた。」 続いてブリーダーの足下にいるのうかりん。 「でも、鶏さんを食べちゃったり、人間に噛み付くゆっくりにはまりさ達会ったことないよ。」 最後にまりさが発言する。三匹の発言は村人達の気持ちを代弁していた。 「・・私としても、ゆっくりがこのような事を起こしたとは 考えたくない。お前達のようなゆっくりを見ていれば、なおさらだ。」 そう言って、ゆっくり達を勇気づけるように笑いかける。 「だが、この状況を放っておく訳にもいかん。よって、本日からこの 村を中心とした一帯を調査したい。村の若衆、協力してくれるか?」 そういうことならばと、続々と手が挙がっていく。 「慧音様、僕も一緒に行きます。」 ブリーダーの青年も手を挙げる。 「いいのか?」 ゆっくりを殺すことになるかもしれないんだぞ、と言いかけて、やめた。 ブリーダーという仕事はゆっくりをただ愛でて育てるだけの職業ではない。 時には悪いゆっくりを懲らしめ、場合によっては駆除するという役割も持っている。 青年の目は真剣だ。のうかりん達の姿を常に見ているからこそ、 この件に対する気負いも人一倍強いのだろう。 そこまで思い至った慧音は言葉を引っ込めた。 「考えれば、村でお前ほどゆっくりに詳しい者はいない。頼りにさせてもらうぞ。」 「ええ・・・れいむ達、行ってくるよ。」 「ゆっ!ゆっくり気をつけてね!!」 こうして、慧音、ブリーダーの青年を先頭に、調査隊は出発した。 「・・・・見て下さい慧音様!!ここにも。」 調査隊は男が襲われた場所よりも森側に来ていた。 叫んだ若衆の一人が指差すのは、一本の木の根元だ。 そこには、何かに齧られたような傷跡がついている。 「ここにもか。」 出発し、襲われた現場に着いたあたりから、木にこのような傷跡がつき始めた。 「熊などは自分の縄張りの印として爪痕を残すらしいが、 これは明らかに爪痕ではない、強いて言うならば歯形だ。」 爪が使える動物ならば、わざわざまずい木に噛み付く事は無い。 だが爪が使えないモノだとしたら? そう、例えば、ゆっくりのような。 ここにきて、犯人はゆっくりであるという確信めいたものが慧音、若衆達にはあった。 青年も、険しい顔で現状を分析している。 「・・・可能性は高いでしょうね。」 「だろうな。では、もっと奥に行こうか。」 進んで行く慧音の前に、茅葺きの屋根が見える。 「あそこにはどなたか住んでおられるのか?」 青年に問う慧音。 「ああ、あの家にはおじいさんが一人で住んでいますよ。 ブリーダーとしての先輩にも当たる方で、仕事を始めた 頃はとてもお世話になりました。 ・・・あまり人付き合いが得意な方ではないですから、この 場所に一人で住んでいるんですよ。あの方に聞けば、 今回の事に関して何かわかると思いま」 「待て!!」 「え?」 「気づかないか?・・・このにおいに。」 「・・・・・これって・・・!」 家から漂ってくるにおい。 それは何かが腐ったようなにおい。 「急げ!!」 慧音は家に向かって走り出す。 続いて走り出す青年達。 家が近づいてくる。畑を突っ切る。 雑草が伸びている。おかしい、畑の世話を怠るような人じゃなかった!! 青年の鼓動は早鐘のようだ。走っているからではない。 慧音は戸まで辿り着き、施錠されていない戸を思い切り開いた。 青年は中に入ろうとして、慧音の背中に阻まれる。慧音が入り口で立ち尽くしていたからだ。 「先せ・・・・い・・・・?」 見てしまった。 荒らされた家具。 腐りかけた食糧の残骸。 その真ん中には。 「・・・・う、うげええっ!!」 先頭二人の間から中を見た若衆が、口を押さえてよろめく。 「何という事だ・・・。」 部屋の真ん中には、腐敗し、所々が欠損した死体が転がっていた。 「あ・・・・そんな・・・・。」 青年は思わず床に膝をつく。 慧音はかがみ込み、青年の方を軽く抱く。 「・・・すまん、だがこの状況だ。このご遺体は、この家の方か?」 「・・・・・はい、服装から見て間違いありません。」 「わかった・・。」 慧音は遺体に近づくと、手を合わせた。 と、どたどたと誰かが走る音が家に近づいてくる。 駆け込んできたのは、万が一の時に備え村に残った若衆の一人だった。 息を切らし必死な様子の彼に、慧音が振り返って尋ねる。 「どうした?」 若衆は絞り出すように言う。 「大変です・・・・村に・・・・化け物が・・・!」 村は、若衆の呻き声で満たされていた。 ある者は木に叩き付けられ。 ある者は腕や足を齧られ。 皆が身動きが取れないほど痛めつけられていた。 その中心には。 「ゆっへっへ・・・・ありす、やっぱりにんげんなんてたいしたことないんだぜ」 「そうね、とかいはのしたでれいぞくするべきいなかものたちなんてしょせんこんなていどよ」 人間の腰までの大きさのゆっくりまりさとありすが、倒れ伏した若衆の一人の背中にのしかかっていた。 「う・・・う・・・。」 「ゆ!!みてありす、このにんげんうーうーうなってるぜ!!」 「まるであのはねつきぶたまんみたい。おお、ぶざまぶざま!!」 そう言って飛び跳ねながら、大口を開けて笑う二匹。 大きく開いた口からは、血で薄汚れた牙が。 よく見れば、その体は筋肉組織のようなものが表皮の下にあることを 伺わせる隆起があり、更にその瞳は爬虫類のように縦長だ。 ただのゆっくりではない。 いや、もはやゆっくりと呼んでいいのか。 ここにいるのは、人を喰らう妖怪と何ら変わりのない存在であった。 「・・・・最悪だ、こんな時間に村まで来てしまうなんて・・・。」 齧られた肩を押さえながら、村長の息子は二匹の前にいた。 調査隊が行ってしまってる時間である事が災いした。村に残っている男でかろうじて 動けるのはもはや彼一人。女子供、老人は絶対に家から出ないように言ってある。 「まりさ!!あいつこのあいだまりさがかみついたにんげんだよ!!」 「おじさん、せっかくにがしてやったのに、またたべられにきたの? ばかなの?しぬの?しなすよ?ユッヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘッ!!」 「で、出て行け!!化け物ども!!!」 「これだからいなかものは!!わきまえなさいよ」 「おじさん、いますぐにくをもってくるんだぜ。おんなやこどものにくがいいんだぜ!! さもないと、おじさんのあたまからばりばりかじってやるんだぜ!!」 「とかいはにふさわしいきのきいたむすめをつれてきなさい!!それで、すっきりー!!! させてあげる。ありすのぺにぺにでよがりくるわせてアゲルゥゥッ!!」 ゆっくりがただ食糧を要求するのでなく、女子供を喰い、犯そうとしている。 その事実に、男の背筋にぞわっとした感覚が走る。 「そ、そんな要求は、飲めない!」 男は今にも逃げ出したい気持ちを抑え、手にしたゆっくり撃退用の棍棒を握り直す。 「じゃあしかたないぜ、おじさんからむしゃむしゃしちゃうんダゼェェェ!!」 飛びかからんとするまりさ。 「ゆ、まってまりさ!!」 「ゆぅ・・・?」 と、二匹の動きが止まる。 「お前・・・。」 男と二匹との間に、のうかりんが現れた。 男を二匹から守るように手を広げ、二匹を視線で射殺さんと睨みつけている。 「まりさ!!こののうかりんは!!」 「おもいだしたんだぜ、あのくそじじいのところのなんだぜ!!」 「・・・おじいさんにいっぱい懲らしめられたのに、まだわからないの?」 「わかるわけがないんだぜ!!くそじじいはみのほどしらずだったんだぜ!!」 「そうよ!!だからわたしたちあいつを」 「おじいさんに何をしたの!!!!」 普段寡黙なのうかりんの大声に、男は驚いた。それは二匹も例外ではないようだ。 「・・・ゆ、うるさいんだぜ」 「・・な、なにをしたかって・・・ねぇ?ゆっふふふ♪」 のうかりんの剣幕に多少気圧されながらも、二匹は不敵な表情を崩さない。 「でも、ひとつだけおしえてやるんだぜ♪」 「・・・・・・!!」 「あなたのだーいすきなくそじじいは、もうしんだのよ♪」 「「ゆっははははははははハハハハハハハハハッ!!」」 のうかりんは二匹に向かって突進していた。 「ブザマァ!!!!!」 笑っていたまりさはのうかりんの突進を真正面から受け止め、逆にはじき飛ばした。 男の遥か後方、家の壁に激突し、崩れ落ちるのうかりん。 「のうかりん!!くそ!!」 「ゆぅ、まりさ、あののうかりんにはきょういくてきしどうがひつようだわ」 「あいつにはさんざんいたいめにあわされたんだぜ。ゆっくりすっきりさせてからころしてヤルンダゼエェ!!」 二匹は牙を剥き出しにし、のうかりんへ突進しようとした。 しかし。 「ゆぅ・・・ありす・・・?」 「ええ・・・まりさ・・・しおどきのようね」 と、二匹は用心深く辺りを見回すと、のうかりんや男がいる場所から反対方向の家の屋根へと一瞬で跳躍した。 「きょうのところはこのくらいでかんべんしてやるんだぜ!!!」 「こんどもりへくるときはみつぎものをもってきなさい!!かんげいしてあげるわ!!!!」 ゆっくりらしからぬ洪笑をまき散らしながら、二匹は去っていった。 そこへ。 「大丈夫か!!!?」 調査隊が、慧音を先頭に村へ帰ってきたのだ。 村は、負傷者の手当に追われていた。当初は逃げた二匹を追うべきという 意見も出たが、慧音が深追いを制し、体制を立て直すことを優先したのである。 手当の傍ら対策本部としておかれた村長の家には、男、青年、慧音の三人が集っていた。村長は手当の指揮をしている。 「そうですか、森の方ではそんなことが・・・・。」 「あの化け物ども、おじいさんだけじゃなく、村のみんなまで・・・!!」 青年は激昂し、畳に拳を叩き付けた。 「・・・・・。」 慧音は考えていた。 目の前で被害が出てしまった以上、犯人がゆっくりであることは確定した。 しかし。 普通では考えられない身体能力をもったゆっくり。しかも、あろうことか人の肉を要求したという。 何故、そのようなモノが現れたのか? ふと、開かれた縁側の方へ目を向けると、庭でのうかりんが月夜の下、手にしたじょうろに目を落とし、立ちすくんでいた。 それを遠巻きに心配そうな目線をおくるれいむ、まりさ、ちぇん。 「・・・・彼女は、あのご老人のところで育てられたそうだな。」 「はい。」 のうかりんがまだ幼いゆうかりんだったころ、あるゆっくりの群れによって家族を殺された。 いくら他のゆっくりより優れた能力を持つゆうか種でも、圧倒的な数の優位は覆せない。 森の片隅で花を育てていた一家に襲いかかった賊は、ゆうかりんの父親を圧殺し、母親を犯し尽くして殺した。 二匹に素早く木立の中に隠されたゆうかりんは、全身を貫かれるような思いでそれを見ていた。 何度飛び出してやつらと刺し違えようと思ったか。 しかし、両親の願いは、彼女に生きてもらうこと。ここでやつらに踏みつぶされることではない。 そう悟るほどに聡明だったゆうかりんは、涙を振り払いながらその場から逃げようとした。 しかし、運悪く見張りをしていた一匹に見つかり、捕らえられてしまう。 大れいむにふみ殺されようというその時、群れは周辺から悲鳴に包まれていった。 ブリーダーが組織した討伐隊だった。 助けられたのうかりんは、そこでおじいさんに会った。 怖いと聞かされてきた人間。 初めての人間は、勇気づけるような笑顔だった。 おじいさんに引き取られ、育てられたゆうかりんはすくすくと成長し、畑の作り方も覚えた。 彼女は二度と畑荒らしの駄ゆっくりどもに負けないよう、鍛錬を欠かさなかった。 ゆうかりんはおじいさんがいなくとも多くのゆっくりを蹴散らせる程に強くなった。 おじいさんに育てた花や野菜を褒められ、自分が強くなっていくと感じる日々。 ゆうかりんは幸せだった。 やがて体ができ、のうかりんになると、おじいさんは村の新米ブリーダーのところで暮らすよう言われた。 おじいさんは言った。お前はもう一人前だと、お前の育てる花で今度は大勢を笑顔にするんだよと。 のうかりんは寂しさを覚えたが、いつでもおじいさんには会えるのだし、多くの人に自分の花を見てもらいたくもあった。 こうして、のうかりんは村で暮らすようになり、今に至る。 「そうか・・・・辛いだろうな。」 「・・・ええ、彼女のもう一人の父親とも呼べる人でしたから。」 「君も大丈夫か?」 男が青年に尋ねる。 「・・・泣くのはこの件が片付いてからにします。それで、慧音様。」 「うむ、のうかりんから情報があったそうだな。」 「はい、まず、あの二匹のゆっくりに関して、やつらにはのうかりんが以前会ったことがあるそうです。」 のうかりんがまだおじいさんの畑を守っているころ、家族らしきゆっくりの一団が畑を襲撃した。 情けはかけなかった。 親らしき二匹以外は全て踏みつぶし、残った二匹ーまりさとありすも散々痛めつけて動けなくした。 ぼこぼこになった体をよじりながら悪態をつくさまを見て、のうかりんははっとした。 こいつらは、のうかりんの親を殺した群れの一員だったと。 無論、当時見かけた姿より大きくなっていたが、顔に張り付いた下衆の表情は忘れようが無かった。 討伐隊に狩られた時はまだ小さかったこともあり、混乱に乗じて逃げ延びたのだろう。 憎い仇の一員。しかし、わめき散らす二匹を見て、のうかりんは最早哀れみしか感じていなかった。 自分はあれからいろんなことを学んだ。だが、こいつらは違う。学べなかったのだと。 このことをおじいさんに報告すると、温厚な顔を憤怒の形相に変えて、更に二匹を痛めつけた。 泣き叫び、しかしなお悪態をつくまりさ達に、おじいさんは彼らを監督下におき、性根を叩き直すと宣言した。 それが、のうかりんが村に来る直前の出来事である。 「では、あいつらは最近までおじいさんの家で監督されていたということか。」 「そのようです。」 「・・・・・。」 二人の会話を聞きながら、いまだ慧音は考えていた。 あの二匹の出自はわかった。 しかし、やはりわからない。 何故、おじいさんを、人一人殺せるようなゆっくりが生まれたのか。 「原因はわからないが、あいつらがあんな化け物になって、おじいさんが最初の犠牲になった・・・。」 「・・・・さっきご遺体をあらためましたが・・・やはり欠けていた部分はやつらに齧られていたようです。」 そう言うと、青年は顔を伏せ、歯を食いしばるような表情をした。 慧音は思った。耐え難いだろうと。恩師が亡くなり、それもゆっくりに喰われたのが原因で。 ゆっくりに喰われた。 ゆっくりが、人の肉を、喰った。 「ん、慧音先生、どうしたんですか。」 はっと顔をあげた慧音に、男が尋ねる。 「・・・少し、長話をしていいか?」 「君たちは、妖怪が仙人の肉を喰らったらどうなると思う?」 「・・・・?」 「え?」 姿勢を正した慧音の第一声がそれだ。 「・・お前には寺子屋で教えた筈だがな。」 「へ?あ、ええと。」 青年は記憶を辿る。 「確か、妖怪としての格が上がって、強くなるんじゃありませんでした?」 「その通り。では、獣が仙人の肉を喰らった場合はどうなる?」 「妖獣になることがある、でしたよね?」 「そうだ。」 「あの、慧音様?それと今回の件は」 「気づかないか?」 「?」 怪訝な顔をしている男の横で、青年は言う。 「今回ゆっくりは、人間の肉を喰った・・・?」 「そうだ。」 「・・・・!!まさか。」 獣+仙人の肉=妖獣 ゆっくり+人間の肉= 「ゆっくりが、人間の肉を喰らって、妖怪になった・・・?」 青年が、自分の言ってることが信じられないといった調子で、呟く。 「・・・私も完全には信じられないがな。傲慢な言い方になるかもしれんが、客観的に見て ゆっくりにとっては人間とは我々にとっての仙人のような存在だ。その体を取り込む ことで生物としての格が上がるのは、むしろ自然なのかもしれん。」 「し、しかし、それではどの時点でやつらが化け物になったのかわかりませんよ。 おじいさんの家に閉じ込められていたわけですし、人間の肉を喰う機会なんて。」 男が戸惑ったように意見する。 「やつらはおじいさんのご遺体を齧るまでは、ただのゆっくりだったのだろう。」 「そ、それでは、それ以前におじいさんは亡くなっていたと・・・・?」 「・・・・おじいさん、胸が悪かったんだよ。」 「のうかりん・・・。」 いつのまにか縁側にはのうかりんがいた。 三人に向かって更に口を開く。 「心配かけたくないからって、村の人には誰にも言ってなかったんだけど、おじいさん 怒ったり重いもの運んだりした後はたまに胸を押さえて苦しそうだった。だから、多分 あいつらを懲らしめてる最中にすごく怒ってしまって、それで苦しく・・・・・っ。」 のうかりんは耐えられなくなったというように両手で顔を覆う。 青年のうかりんに近寄り、軽く抱き寄せる。 「恐らくは、このようなことだったのではないか。」 慧音が口を開く。 その日、おじいさんは監視下においていたまりさ、ありすと対峙していた。 散々罰を与えても直らない二匹の性根。二匹はその日も傲慢な態度を取り続けた。 おじいさんは、いつものように罰を与えた。 いつもなら泣いて謝るところまで来て、その日二匹はいまだ罵詈雑言をやめなかった。 愛娘と言っていいのうかりんの仇ということもあり、おじいさんは激昂してしまい、更なる罰を与えようと 立ち上がった。 そこで、限界が来た。 おじいさんは胸をおさえて苦しみだし、床に倒れ伏す。 驚く二匹。もしくは自分達の力だと勘違いしたかもしれない。 周りに人もいなく、助けを求めることも出来ず、やがておじいさんは息を引き取った。 残された二匹は狂喜したに違いない。憎い相手が動かなくなってくれたのだから。 二匹は好き放題部屋を荒し、食糧を喰い荒らした。 しかし、食糧はすぐに尽きてしまった。 更に、元々二匹を逃がすまいと厳重だった戸締まりは、二匹が外へ逃げることを許さない。 次第に衰弱していく二匹。 このまま朽ちるのか。 いや・・・・朽ちるのは、おじいさんの体の方が先だった。 腐敗し、形が崩れた遺体へと目を向ける二匹。 贅沢は言っていられない。 彼らにとって、目の前にあるのは人間の体ではなく、腐りかけの肉だった。 二匹は遺体へのそのそと近づき。 口を開け。 齧り、ついた。 やがて、戸は破られ、二匹の化け物・・・・妖ゆっくりは、野に放たれた。 続き 無理矢理な解釈で混乱させてしまったかもしれません。やっぱもの書くのって難しい・・・・。 予想以上に長くなってしまい、上下のつもりが上中下構成になってしまいました。 続きは3、4日中にはあげたいと思います。 ゆっくりゃバーガーの人 このSSに感想を付ける
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※fuku2025の続き。人物オリジナル注意。 前回のあらすじ ゆっくり二匹の「おうち」を家族もろとも消し去ってやったぜ!ざまあみろ! 第三話 さぁ晩飯の時間だ。 ゆっくりの「おうち」を燃やすのに夢中になって昼飯を食い損ねたから余計に腹が減っている。 昨日の食べ残しのめーりん残り二食分をペロリと平らげた。それでも一部だけ残したが。 腹が減っていたこともあるだろうが、それよりもゆっくり共を駆逐できてとてもいい気分なのだ。 食事を済ませ、箱詰めされたままの連中の様子を見る。 「………………」 かなり沈んでいる。当然だろう。目の前で「おうち」ごと家族が燃やされたのだから。 「おい」 「ゆ……ゆっくりしていってね…」 「まりさたちは…ゆっくりしてるよ…」 俺に敵対意識が無いのを見るに、おうち全焼が俺の仕業だということには気づいていないのか? それとも忘れているだけなのか…餡子脳なら十分有り得ることだ。 「お前らの飯だ、食え」 そう言ってハッピーターンの袋をちらつかせる。 「ゆ…れいむごはんいらないよ。おにいさんがたべてゆっくりしてね」 「まりさたちは、ごはんがなくてもゆっくりできるよ…」 生気が無いというのはこういうことを言うんだな。 このまま放っておけば勝手に餓死するだろうがそれは俺が許さん。 生きる気力がないなら与えてやればすむ話だ。 俺は二匹を掴み、箱から出してやる。 「「ゆ…?」」 二匹は俺の手に掴まれたまま中に浮いている。 俺はそのまま両手を揺さぶり、二匹に振動を与える。 そう、これこそ加工所が編み出した最古の繁殖法、「バイブレーション」だッ!! 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 顔が紅潮してきた。発情したのだろう。 俺は時期を見計らって揺さぶりをやめ、二匹をさっきまでとは別の箱に閉じこめた。 それはゆっくり二匹入れても十分余裕のあるスペースのある箱だった。親子捕獲用のスケルトンボックスである。 ちなみにこの箱は防音加工の施してある特別製である。これで交尾の際の不快な声を聞かなくて済むというわけだ。 放火の際もそうだったがゆっくりの音量は高いのだ。 次の日の朝。 発情したゆっくり共の様子を見るため起きてすぐにリビングに向かう。 そこで目にしたのは予想通りの光景だった。 「ゆっゆっゆっ♪」 「ゆっくりしていってね~♪」 (歌っているわけではない。嬉しさを表現しているだけだ) れいむの方に三本の蔓が伸びている。 そのうち一本には赤ちゃんれいむが五匹、一本には赤ちゃんまりさが五匹、もう一本にはまだ判別不能の赤ちゃんの実が四匹生っている。 あの一晩のうちに交尾し、子種を作ったのだ。 無理矢理だろうと子供ができれば生きる気力を取り戻すだろうと踏んだ結果がこれだ。 俺は二匹を箱から出し、床に置いた。 運ばれているというのに嬉しさのせいか意に介していないようだった。 「ゆっくりそだっていってね!!!」 「いいこになってね!!!」 あ、やべ、ダメだ。 ブチブチブチッ 「や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ま゛り゛ざの゛あ゛がぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 あーあ、ついやっちゃった。 生きる気力を与えるために子作りさせたのにそれを毟っちゃってどうすんだよ。 でもあんなこと言われちゃあな。「毟ってください」って言ってるようにしか聞こえなかったんだよ。俺は悪くねぇ。 ちなみに毟ったのは判別不能の四匹の蔓である。栄養が途切れたせいか白目剥いて泡吹いてやがる。死んだなこりゃ。 「お゛に゛い゛ざん゛びどい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「どう゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「悪い、悪い、あれお前らの赤ちゃんだったのか。てっきりお前らに寄生した悪い何かかと…」 わかっててやったに決まっているが嘘をついてごまかす。 「ゆ…じらながっだらじょうがないね…」 「あのごだぢのぶんまで、ごのごだぢをゆっぐりざぜであげようね…」 物わかりのいい奴らだ。流石はスタンダード。今は亡き家族達とたっぷりゆっくりした生活の賜物だな。 とりあえず朝飯を食うことにする。昨日と同じくシリアルだ。体にいいんだぜ。 すると二匹が物欲しそうにこちらを見ている。 「何だよ」 「あのね、おにいさん、れいむたちにもごはんをわけてほしいの」 「あかちゃんがゆっくりするためにはごはんがいるの、まりさのぶんはいいからせめてれいむだけでもゆっくりさせてね」 「昨日食わなくてもゆっくりできるって言ってたじゃねーか」 「れいむたちはゆっくりできても、このこたちがゆっくりできないんだよ」 「いまゆっくりできないと、うまれたあともゆっくりできないんだよ」 子供の栄養が必要だから飯を分けろということか。声のトーンまで落とすとはよっぽどのようだ。 「いいだろう!」 俺はシリアルをバラ撒いてやる。昨日よりもずっと多い。 「「ゆっくりいただきます!!!」」 なんだかんだでまりさの方も空腹に耐え切れなかったのかがっつき始める。 「「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」」 「あかちゃんたちもゆっくりあじわってね!!!」 「あかちゃんたちもしあわせになってね!!!」 即座にブッ殺したくなる光景である。だが耐えろ…今はその時じゃない… 俺は握り拳に力を入れ歯を食いしばりじっと耐えた。 「おにいさんありがとう!!!おかげでゆっくりできたよ!!!」 「これでゆっくりしたあかちゃんがうまれるよ!!!ゆっくりしていってね!!!」 自分達の家族を殺した張本人にお礼とは実におめでたい奴らだ。 あと少し黙れ。お前らが騒ぐとゆっくりできないんだよ。 赤ん坊ゆっくりは昼頃になるとプチトマトよりちょっと大きい程度まで成長した。そろそろだろう。 「ゆっ!?まりさ!!!あかちゃんがうまれるよ!!!」 「ほんと!?れいむ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 誕生の時が近づいたようだ。俺は二匹のそばで様子をうかがう。 「あかちゃん!!!ゆっくりうまれてね!!!」 「あわてなくていいからね!!!ゆっくりでいいからね!!!」 赤ん坊のうちの一匹がゆらゆらし始めた。暫くすると… プチン、コロン。 「ゆ…ゆ…うまれたよ!!!まりさあああああ!!!」 「まりさたちににてゆっくりしたいいこだよおおおおおお!!!」 赤ん坊れいむの誕生だ。生まれた赤ん坊はゆっくりと瞼を開き、両親を認識する。 「ゆ…おかあしゃん…?」 「そうだよ!!!れいむはおかあさんだよ!!!」 「まりさはおとうさんだよ!!!あかちゃん!!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆ…ゆっくいちていっちぇね!!!」 赤れいむの誕生を皮切りに次々と床に落ちていく他の赤ゆっくり達。 そして十匹全てが無事に生まれ落ちた。 奇形児などいない。どれもこれも「ゆっくりした」赤ん坊だ。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「「「「「「「「「「ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」」」」 愛護派にとってはさぞ感動的な光景なのだろう。虐待派にとっては非常にゾクゾクする光景である。 「「あかちゃんたち!!!このおにいさんのおかげでゆっくりできたんだよ!!!みんなでおれいをいおうね!!!」」 「「「「「「「「「「おにいしゃん!!!ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」」」」 それがお礼のつもりか。当たり前だが全然嬉しくない。 だったら体で示してもらおうか。 俺は赤れいむとまりさを一匹ずつ手のひらの上に乗せる。 「「わぁい!!!おしょらをちょんでりゅみちゃいー!!!」」 「わぁー!!!いーなー!!!」 「りぇいみゅもおしょらちょびちゃーい!!!」 「まりしゃもー!!!」 「おにーしゃん!!!ちゅぎはりぇいみゅにもやっちぇね!!!」 「じゅるいよ!!!まりしゃにもやっちぇー!!!」 「おにいさん!!!ゆっくりさせてあげてね!!!」 「まりさたちのかわいいあかちゃんゆっくりかわいがってあげてね!!!」 やなこった!!! 俺は手の上の赤ゆっくり共を口に放り込み咀嚼する。 プチュプチュっと潰れる感触がたまらない。 「あ゛ぎゃあ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!い゛ちゃい゛ぃぃぃ゛い゛いぃ゛ぃいい゛い゛!!!」 「ま゛り゛し゛ゃのお゛おぉぉぉお゛お゛か゛り゛ゃだぎゃあ゛あ゛ぁぁぁああ゛ああ゛あ!!!」 「ぢびぢゃあ゛ああ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ああ゛ぁぁあ゛ああ゛あん!!!」 「り゛ぇーむ゛のい゛ぼう゛どぎゃあ゛ああぁぁ゛あああ゛あぁあ゛あ゛あぁあ゛ぁあ゛!!!」 「お゛ね゛え゛じゃあ゛ぁぁあ゛ああ゛ぁあ゛ぁあ゛ああ゛あぁぁぁあ゛ああ゛ぁああん!!!」 「「どーじでごん゛に゛ゃごどじゅる゛に゛ょお゛お゛お゛おぉ゛ぉお゛おお゛ぉお゛ぉ!!!」」 「おにいざあああん!!!あがぢゃんだべないでえええええ!!!ゆっぐりだじであげでえええええええ!!!」 「ゆっぐりだじであげてね!!!あがぢゃんだちゆっぐりざぜであげでね!!!ゆっぐりざぜてあげでね!!!」 涙と絶叫の大合唱。だからこそ親子の苦しむ様は面白いのだ。 それにしてもやはり産みたては違うな。甘さとコクが段違いだ。 人間型出産だとさらに違うそうだが今度試してみるかなー。 俺は赤ゆっくりを飲み込み、親子の方を向く。 「悪い悪い。うまそうだったからつい食っちまった」 「でい゛むだぢばだべも゛の゛じゃな゛い゛よ゛お゛お゛お゛ぉぉぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ばり゛ざだぢの゛あ゛がぢゃん゛だべぢゃだめ゛でじょお゛お゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛ぉ゛お゛お!!!」 「でも昼飯時だから俺腹減ってたんだよね。お前ら俺にお礼したかったんだろ?いいじゃねーか赤ん坊の一匹や二匹」 「「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅううう゛うぅう゛うううぅう゛ぅううう゛ううぅ゛ううう゛うう゛っ!!!」」 二匹は考えていた。 確かにお兄さんは自分達の赤ちゃんを食べた。 でもお兄さんは自分達をお兄さんのおうちでゆっくりさせてくれた。 ゆっくりさせてくれたおかげで、とてもゆっくりした赤ちゃんたちが生まれた。 そのお礼として赤ちゃん二匹を差し出して当然なのかもしれない。赤ちゃんはまだたくさんいるのだ。食べられた二匹の分も残りの子たちをゆっくりさせてあげよう。 それが二匹の餡子脳の導き出した答えだった。 …どうやらわかってもらえたようだ。 親二匹とあまりの衝撃で気絶してしまっている赤ゆっくり残り八匹を全員箱の中に閉じこめた。 昨日交尾用に使った箱より小さめで、防音効果は施されてはいない。 「「おにいさん!!!ここじゃゆっくりできないよ!!!ここからだして!!!おうちかえる!!!」」 親二匹が箱をガタガタ揺らし俺に懇願する。赤ん坊もいるし昨日より狭いから一匹分の箱に入れられた時のトラウマが蘇ったのだろう。 「おうち帰るっつってもお前らのおうちもう無くなっちゃったじゃねーか」 「「あ゛…あ゛ああ゛あぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁぁ゛ああ゛ぁああ゛ぁぁ゛あ゛ぁあ゛!!!」」 思い出したように絶叫する親二匹。幸せの絶頂からどん底に落とされた気分だろう。 その叫びを聞いて気絶していた赤ゆっくりが目を覚ましたようだ。赤ゆっくりは現在の状況に不満を漏らしてはいない。両親がいるから安心しているのだろう。 俺はその様子を見て昼飯の準備に取りかかる。カップ麺だけどね。 ゆっくりの方にはある物を用意する。夕べの残り物だ。 「ほらお前らの飯だ。食え」 べしゃ、と箱の中に落としてやる。 「ゆ…あ゛ああ゛あぁぁ゛ぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛あああ゛ぁ!!!」 「な゛に゛ごれええ゛ええぇ゛ええ゛えぇぇ゛ぇええ゛え!!!」 両親の絶叫も当然である。 それは二日前俺が「助けた」めーりんの苦痛に歪んだデスマスクだ。 わざと顔の部分が残るように食べておいたのだ。 ゆっくりをちゃんと識別できる両親はそれの正体にすぐに気がついたのだろう。 「おにーしゃん、こりぇなーに?」 「お前らの食べ物だよ」 「ゆ、ちゃべもにょ?」 「れいみゅおにゃかしゅいたー!」 「まりしゃもおなきゃちゅいたよー!」 「「「「「「「「ゆっきゅりいちゃだきましゅ!!!」」」」」」」」 「「だめ゛え゛え゛えぇ゛えぇ゛ええ゛ぇぇ゛え゛え!!!だべぢゃだめ゛ええ゛えぇ゛えぇ゛え゛ええ゛ぇえ゛ぇ!!!」」 「「むーちゃ♪むーちゃ♪」」 「「ちあわちぇー♪」」 「「おいちいね!!!」」 「「おかあしゃんたちもちゃべよー♪」」 うわマジ殺してぇ。まぁすぐに死ぬんだけどね。 両親の制止も聞かずめーりんだったモノを貪る赤ゆっくり達。 それを見ていた両親は口を噛み締めながら涙を流し続けている。 「「おにいしゃん!!!おいちいものをありがちょう!!!」」 「「「「「「「「ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」」 完食。顔だけだったとはいえ赤ゆっくりにとっては相当な量だったはずだが八匹もいるのだ。ものの数分で平らげてしまった。 両親はというと、子供が同族を食べてしまったことに悲しんでいたようだが、子供達の幸せそうな様子を見ていてものすごく複雑な表情をしている。 さてと。 「俺は少し出かけてくる。すぐに戻ってくるから待ってろよ」 「「「「「「「「ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」」 「「ゆ…ゆっくりしていってね…」」 俺は戸締まりをすませ、外に出た。調達したいものがあったからだ。 「れいむ…あのおにいさんほんとうにゆっくりできるのかな…」 「ゆ…なにいってるのまりさ、おにいさんはおうちのなくなったれいむたちをゆっくりさせてくれたよ。 おにいさんのおかげで、ゆっくりしたこたちがうまれたんだよ」 「でも…このめーりん…」 「きっとちがうめーりんだよ。このめーりんはきっとゆっくりしてないからたべられちゃったんだよ」 口ではそう言っているれいむだが、心の奥では少年に対する疑念が深まっていた。 昨日の出来事はあまりのショックで部分的に記憶が欠けているため、少年が放火したという事実は忘れてしまっている。 「「おかあしゃん、れいみゅちゃちとあしょぼー♪」」 「「まりちゃともあしょんでー♪」」 「ゆ…そうだね!みんなでゆっくりしようね!!!」 幸せそうな子供達の様子を見て、そんな考えは吹っ飛んでしまったようだ。すばらしき餡子脳。 「ただいまー。ゆっくりしてたかー?」 「「「「ゆっきゅりちてちゃよ!!!」」」」 「「「「おにーしゃんもゆっくいちていっちぇね!!!」」」」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 赤ん坊とじゃれついているうちに両親もすっかり元気を取り戻したようだ。 またすぐに沈んでもらうけどな。 俺は箱を持ってキッチンへと移動する。 「「ゆゆっ??ここどこー??」」 「「ゆっきゅいできゆの??」」 「「ゆっくいちようね!!!」」 箱の中で騒ぎ出す赤ゆっくり。 俺は箱の中から赤れいむとまりさを二匹ずつ取り出した。 「「わぁい!!!おしょらをちょんでりゅみちゃいー!!!」」 「「ゆー♪ゆっくいできりゅよ!!!」」 「「ゆー!いいなー!!!」」 「「ちゅぎはまりしゃたちにもやっちぇね!!!」」 思い思いの喜びの声を上げる赤ゆっくり達。 しかし先程俺に赤ん坊二匹を食われたことをはっきり覚えている両親は 「おにいさん!!!やめてね!!!ゆっくりおろしてね!!!」 「あかちゃんたちたべないでね!!!ゆっくりさせてね!!!」 当然の如くわめきだす。 無視して蛇口を捻り水を出し、赤れいむを洗浄する。 「ゆ~♪きもちいー♪ゆっくいできりゅよ!!!」 気持ちよさそうな声を上げる赤れいむ。握り潰してしまいたい衝動にかられながらも残りの三匹も洗浄してやる。 その際邪魔な赤まりさの帽子を取り上げると 「かえちて!!!まりちゃのぼーしかえちてね!!!」 「後でキレイにして返してやるから我慢しろ」 「ゆー♪ゆっくちがみゃんちゅるよ!!!」 適当にごまかしてやる。どうせこの帽子はお前らの元には戻らない。 四匹の洗浄を終え、用意しておいた白い粉のそばに置いてやる。 「その粉の上で転がってみろ。たーのしーぞー」 「ゆゆっ!!ゆっくいこりょがりゅよ!!!」 「ゆー!ゆー!ゆっくち!!!」 粉の上でコロコロ転がる四匹。そのたび体中に粉が付着する。 「ゆー♪たのちいね!!!」 「ゆー♪りぇいみゅまっちろー♪」 「まりちゃもまっちろー♪」 「れいみゅもあしょびちゃーい♪」 「まりしゃもー♪」 箱の中のゆっくりも羨ましがっている。両親も楽しそうな四匹の姿を見て安心したようだ。 「やっぱりおにいさんはゆっくりできるひとだ」と。 四匹にまんべんなく粉が付着したのを確認し、俺は油の入った鍋に四匹を放り込む。 「ゆー♪」 「ゆっくいうきゃんでりゅよー♪」 「ゆっくち♪ぷかぷか♪」 「ちあわちぇー♪」 その幸せもここまでだ。 カセットコンロのつまみを捻り点火する。 その瞬間 「おにいさん!!!あかちゃんをゆっくりだしてあげてね!!!」 「ゆっくりできなくなっちゃうよ!!!ゆっくりさせてね!!!」 両親は二日前、うーパックが焼き殺された現場を目撃し、さらには昨日家族もろとも「おうち」が全焼する様を目の当たりにしたのだ。 火に対するトラウマから咄嗟に「ゆっくりできない」ことを察知したのだろう。 だが当然無視だ。 「ゆー♪おかーしゃん、ゆっくいできちぇりゅよー♪」 「ぷかぷか♪ゆっくち♪」 「ゆっくい♪ちあわちぇー♪」 「ちあわ…ちぇ…?」 四匹の中で一番小さい子まりさが異変に気がついたようだ。 そして。 「ゆ゛……あ゛ぁあ゛あぁあ゛あ゛あ゛あぁ゛ああ゛あ゛ぁああ゛!!!」 「あ゛ちゅい゛!!!あ゛ちゅい゛よ゛ぉおお゛おおぉぉ゛おおぉ!!!」 「ゆっくち!!!ゆっくちできな゛い゛い゛い゛ぃいい゛いぃ゛い!!!」 「お゛がぁじゃああ゛あああ゛あああ゛ああ゛ぁああ゛あ゛ああん!!!」 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛がぢゃあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛あぁ゛ああ゛ぁぁあ゛あん゛!!!」」 「「ぢびぢゃあぁ゛あぁぁあ゛ぁぁぁあ゛ん!!!」」 「「お゛ねえじゃああ゛あぁぁ゛ぁあぁぁん!!!」」 こんがり焼き色が付き始める赤ゆっくり達。 ちなみに箱は鍋の中身がよーく見える場所に置いてあるため、中で赤ゆっくりがもがき苦しむ様を特等席で見ることができるのだ。 両親は、赤ゆっくり達の悲鳴を聞き、昨日の出来事を思い出していた。 今と同じく絶望の悲鳴を上げながら焼け死んでいった自分の妹達を思い浮かべていた。 「「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってねえええええええ!!!」」 赤ゆっくりの悲鳴が聞こえなくなった時が食べ頃だ。 俺はこんがり狐色になった四匹を皿の上に盛る。息を吹きかけ少し冷ます。 そしてその後やることといえば…試食である。 ガブリ。 「や゛め゛でぇぇえ゛ぇえ゛え゛えぇ!!!でい゛ぶの゛あ゛がぢゃん゛だべない゛でぇえ゛え゛えぇ゛え゛えぇ゛え゛!!!」 「な゛ん゛でっ!!!どう゛じでごんな゛ごどずるの゛おお゛お゛ぉ゛お゛おぉ゛お゛お゛お゛ぉお゛お゛ぉお゛ぉお゛!!!」 無視して咀嚼を続ける。残った赤ゆっくり共は全身から体液を出し白目を剥き歯茎を剥き出しにしながら気絶している。 さっきよりひどい状態だ。中には痙攣モードに入っているヤツもいた。 「う……う……うまい!!!(テーレッテレー)」 改心の出来だ。これならきっと喜んでもらえるだろう。 キッチンペーパーで残りの三つを包む。おっとそうだ忘れてた。 「ひかえおろー。これが目に入らぬかー」 俺はかじった揚げ饅頭を両親に見せてやる。 「お゛お゛お゛ぉ゛お゛ぉ゛お゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛ぉお゛おお゛おぉお゛おぉ゛おお゛お゛お゛おぉ゛おぉ゛ぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉお゛お゛おお゛!!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 それは、さっきまで幸せそうにはしゃいでいた我が子の、絶望と苦痛に歪みきった目も当てられないような顔だった。 今までで一番面白い反応だぞ。 気絶した赤ゆっくりは放置し、両親に猿轡を噛ませ、最初にこいつらを入れた一人用の箱に詰め込み、外へ出た。 目的地は目と鼻の先。隣の家のインターホンを押す。 ピンポーン 「どちらさまですかー?」 「俺だよ、オレオレ。開けてくれるかい」 「あーおにーちゃん。いまあけるね」 中から出てきたのはゆっくりちぇんを抱いたとても可愛らしい女の子。ちなみに幼稚園児だ。 彼女は俺と同い年の姉と二人暮らしなのだが、今姉は外出中のようだ。 俺とも仲が良く、暇な時はよく一緒に遊んであげている。目の前でゆっくりの虐待はしていない。この子の姉にキツく言われているからだ。 三日前に風邪をこじらせ、外せない用事のあった姉に代わって俺がつきっきりで看病してあげた。 …勘違いするなよ。俺は年上に甘えたいタイプなんだ。 「そろそろおやつの時間だろ。おいしいもの持ってきたから食べなよ」 「え?ほんと?ありがとう」 「わかるよー。おいしそうなにおいがするよー」 いやしんぼめ!!! 「わぁ!これなーに?」 「揚げ饅頭っていう食べ物だよ。召し上がれー」 「いただきまーす♪」 「わかるよー。ちぇんもたべるよー」 ちゃっかり者め!!! 「もふもふ…おいちーっ♪」 「わかるよー。こくがだんちがいだよー」 やかましい!!! 「む……!!!ゆ…………!!!ふ……………!!!」 「ん……!!!ぐ…………!!!う……………!!!」 箱の中の両親が唸っている。目の前で自分の子供達が食べられているのだ。しかも同族にまで。 「おにーちゃん、そのゆっくりなーに?」 「あぁ、あれは…「おしおきされてるんだね、わかるよー」 この野郎!!!だがナイスフォローだ。あとで顔をナメナメしてやる。 「おにーちゃん、おしおきおわったらちゃんとだしてあげてね。かわいそうだよ」 ええ子や。これで愛護派じゃなけりゃな。 「大丈夫。ちゃんと出してあげるから心配しなくていいよ」 嘘ではない。そうする予定である。 「あ!そうだ!おにーちゃん、あのね、おとといね、すぐそこでゆっくりたちがおうたうたってたんだよ」 「え、あ、ああ…」 「とってもへたっぴだったけど、「おかねいれてね」っていってたから、いちえんだまあげたの」 「そ、そうなの…」 その一円玉は今は俺の財布の中です。 そういやあいつらどうしてるんだ。一応様子を見てみたが母の残骸は無くなっていたし、やはり野垂れ死んだのか。 というか幼稚園児にまでヘタ認定されてんのかよww 「それじゃ今日はこのへんで。風邪ぶり返さないように気をつけるんだぞ」 「うん!おにーちゃん、またね」 「またたべものもってくるんだね、わかるよー」 次はお前を料理してやろうかアァアアァァ!!! 続く このSSに感想を付ける 選択肢 投票 しあわせー! (35) それなりー (2) つぎにきたいするよ! (6) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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次の日が来た。 何かねっとりした感触に違和感を感じた少年が目を覚ますと 母まりさが平べったくなって粘液をダラダラと垂らしていた。 「ゆっ…!!! お、おかあさんはもうげんかいだよ!!!ゆっくりおきてね!!!」 少年を一晩中支えていたその体は大きくへしゃげ、半分ぐらいの厚さになっていた。 あまりにも間が抜けた姿に少年は吹き出しそうになった。 「ゆっ!おちびちゃんたちをおこさないと!!!それにきょうはかりにでかけないとね!!!」 潰れた身体で子供達を起こしに行く母まりさ。 目を覚ました子まりさは自分の母親が無様に潰れひしゃげた姿をダイレクトに見た 「ゆっ!!! お、おかあさん!!!どうしたの!? からだでもわるいの!?」と、叫ぶ やはり餡子脳のゆっくりは少年の行動だとは思わなかったようだ。 つか体調以外の何かを疑えよ。 すると母まりさが平べったくなった体で「ゆっ!!!だいじょうぶだよ!!!おかあさんはつかれたまりさのために まくらになってあげただけだよ!!! ぜんぜんへいきだよ!!! それよりきょうはおいしいおさかなさんを とってこようね!!! みんなであさごはんをとりにいこうね!!」 子供に無駄な心配をさせぬと嘘をついてみせた。 そんな体で大丈夫か?大丈夫だ、問題あるw だがもう一方の子まりさは「ゆゆっ!!!おかあさんはむりしちゃだめだよ!!! まりさたちがかりにいくからおかあさんはおうちゆっくりでやすんでね!!!」 と、言い出し、赤まりさ達も「「「「「「「そうだよ!!!ゆっくちやすんでね!!!」」」」」」」 と一斉に言い出した。 ズガッ!!! 少年はすかさず言い出しっぺの子まりさに弱い蹴りを入れてやった。 「駄目なんだぜ!!!お母さんは実はサボりたい為にわざと体を平べったくしてるんだぜ!!! 実はお母さんはムッキムキのスーパーマッチョな状態なんだぜ!!! お母さんの言う通り、全然平気なんだぜ!!!いつ狩りをするか?今なんだぜ!」 勿論メチャクチャな理論であることに間違いはない。 だが彼らが餡子脳なのか姉のカリスマ性なのか、一家の論調は一気に変わった。 「「「おかあさん!!!ずるやすみはいけないよ!!!」」」 「「「「「「「おさかなさんをとりにいこうね!!!」」」」」」」 これでこいつらが魚をどうやって捕まえるのか分かるな こいつらを利用して魚をたらふく食ってやろうか…少年はそう思った。 そんな訳で狩りに出かけたのだが、こいつらの遅さと言ったら… たった数メートル進むのにどんだけ時間かけてんだ…少年は苛立ちを隠せなかった。 「ゆっ!たいようさんこんにちは!くささんこんにちは!もりさんこんにちは!むしさんこんにちは!」 「「「「「とりしゃん!ゆっくちちていってね!!!」」」」」 誰もそんなこと聞いてないのにのんきな奴らだ。潰したくなるがそこは我慢だ。 つか、こいつら昨日の空腹状態は何処へやら… 「ベチョ!」鳥のフンが赤まりさに落とされた 「どぼしてそんなことちゅるのおぉぉぉぉ!!!」相変わらずこれだ。 鳥さんはこいつらのウザさに怒っているのかもしれない。 90分後、奴らの絶好のゆっくりプレイスに到着した。移動距離約300m 遅い、遅すぎる。300m進むのにこんだけ時間を掛けるとはウサイン・ボルトも真っ青だ。 草木や花が生い茂り、昆虫も沢山いる。ん?こいつら魚取るって言ってたよな? ほとんどのゆっくり達は昨日の食事にありつけなかったのか草花や昆虫を見つけるや否や、 恐ろしい勢いでむさぼり始めた。 「ゆっ!!!むしさんまってね!!!ゆっくりたべられてね!!!」 「むーちゃ、むーちゃ、しあわせー!おはなさんおいちー!!!」 平べったく潰れた母まりさにに草花や虫を運ぶ子供や赤ゆっくりもいる 「おかあさん!!これをたべてゆっくりげんきになってね!!!」 「ありがとう!これでおかあさんもゆっくりできるよ!!」素晴らしい親子愛(笑) そんなんで潰れた体が元に戻ったら物理学者も真っ青だろう。 もちろん少年がこいつらの食事を許すはずがない。じわじわ痛めつけると決めたのだ。 ズガッ!! 子まりさに蹴りが入れられる。 「駄目なんだぜ!!!お花さんや草さんは光合成で酸素を作ってるんだぜ!!! 草さんやお花さんが少しでも消えたらみんな死んじゃうぜ!!!」少年は熱く(?)語る。 もちろんそんなのはデタラメだ。微量な草花の消失程度では酸素の供給が尽きることはない。 そんな事で酸素が尽きてたら今頃あなたは呑気にネットなど見れないはずだ。 「「「「「「「「「「「「ゆっ!?」」」」」」」」」」」 衝撃の事実(?)を突きつけられたゆっくり達の口の動きが止まった。 少年は続ける「それに、昨日虫さんは食べるなって言ったはずだぜ!!! お前ら学習能力ゼロかだぜ!?それだから人間さんに舐められるだぜ!!!」 無論、このままゆっくりが食事を終えると自分が何も食べれないし、 何よりもゆっくり達の飢えを満たす訳にもいかないのだ。 「じゃあなにをだべればいいのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛!」 ゆっくり達が口々に叫び出す。 少年は「お魚さんを食べればいいんだぜ!!!お魚さんは川を放射性廃棄物で汚す悪いやつなんだぜ!!! このままだと2年後には地球が滅んでみんな大変になるぜ!!!」と、言ってやった。 勿論デタラメだ。 つか、こいつら魚を取ることすっかり忘れてんのかよw あなた達の脳年齢は120歳です。 (どうしてうちの子はこんなにひねくれてしまったのか、街に出たことでおかしくなったのだろう。 この子に魚をもっと食べさせれば元のいい子にもどってくれるはず。)母まりさはひしゃげた体でそう考えた。 「おさかなさんをとりにいこうね!」 「そうだね!おさかなさんをつかまえればゆっくりできるよ!!」 すっかりこいつら乗り気になりやがった …やはりこいつらの移動は遅い。と言うか無駄な行動が多い。 「おはなさん!!!ゆっくりしていってね!!!」流石に少年も我慢の限界だった。 ここは一喝すべきだろう。 ゴキッ!! 母まりさに激痛が奔る。 「何タラタラしてるだぜ!こうしてる間にもお魚さんが地球を破壊してるだぜ!! 地球住めなくなったらどうするだぜ!!新しい地球用意できるかだぜ!?」 「ゆっ!!ごめんねまりさ!!ちびちゃんたち!!ゆっくりはやくいこうね!!」 母まりさは矛盾したことを言いながら子供たちに早く移動するよう促した。 30分かけてたどり着いたのは人里だった。だがそこは少年の住んでいる街ではなかった。 街というよりも町と呼ぶに相応しいその場所は、数十件件の民家と漁船が並ぶ漁業の町だった。 ここでは毎日新鮮な魚が定期的に上がってくる。 つか、人里から手に入れるんなら「捕まえる」じゃなくて「盗む」だろ やはりこいつらに魚が取れるはずないか。少年はそう思った。 …誰か続きを このSSに感想を付ける 選択肢 投票 しあわせー! (15) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (9) 選択肢 投票 しあわせー! (10) それなりー (1) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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「ゆっくりしていってね!!!」 目の前にゆっくりの一家がいた。 ゆっくり。 人語を解するが知能の低い、生きる饅頭。 その餡子は甘く、非常に美味であることから老若男女に人気のある食べ物だ。 しかし、畑を荒らすこともあり農業を営む者からは疎まれている存在である。 また、家に不法進入をしてきたり、その大きな声による騒音被害もあることから人間の里では害獣に指定されている。 「ゆ?ゆっくりしていってね!!!」 俺が何も返事をしないことを不思議がったのか、同じセリフを繰り返すゆっくり達。 大きいゆっくり霊夢が一匹と、小さなゆっくり霊夢が4匹。 大きいものはバスケットボールほど、小さいものはソフトボールくらいであった。 片親のようだ。 「君達は家族かい?お母さんは大きいれいむだけ?」 「ゆ!みんなれいむのあかちゃんだよ!!すごくゆっくりしたいい子達だよ!」 大きな霊夢、親れいむの話では、交尾した後すぐにもう1匹の親のゆっくり魔理沙は出ていったという。 自身と同じゆっくり魔理沙が生まれなかったためらしい。 なんというやり逃げ。 「れいむたちはゆっくりするよ!おにいさんもゆっくりしていってね!!」 俺が何も食べ物を恵んでやらなかったせいだろうか、興味を失った親れいむは野原でゆっくりし始めた。 俺もゆっくり霊夢なぞに興味はない。 ヘタに関わって付きまとわれたくないので家に帰ろう、と思った矢先、いいことを思いついた。 「なあお前ら、俺の家はここよりもっとゆっくりできるぞ。こないか?」 そして今、俺の家にはゆっくり一家がいる。 「ゆゆ!おにいさん早く食べ物を出してね!こどもたちがお腹すいてるよ!」 「ゆー!おにいさんはやくゆっくちさせてね!!」 「ゆっくち!ゆっくち!!」 当然、ゆっくりさせる気など毛頭ない。 俺は子れいむを2匹ずつペアにして、少し離したところに移動させた。 「ゆ?れいむの子供になにをするの?」 取り残された親れいむが不思議そうな顔をする。 もう用済みだから殺してもいいのだが、特に悪さもしていないゆっくりだったので生かしてあげよう。 それが生き地獄だとしても。 「お母さんれいむはどっちかの子供のほうに移動してね」 「どうしてなの?みんな一緒でゆっくりしたいよ!!」 「ご飯の前にはお風呂に入らないと。一度に5匹は大変だから2回に分けようと思ってね。先に入るほうと後に入るほうでわかれてね」 「ゆ!おふろ!れいむさきにはいりたい!!!」 「ずるい!れいむがさきだよ!!」 「おにいさんれいむたちをさきにして!!」 「そんなわけだから、お母さんれいむ、どっちかに移動してね」 そういうと、親れいむは特に不審に思うこともなく比較的近くだった子れいむの班へと移動した。 これが向こうの子れいむ達との今生のお別れだとも知らずに。 「よーし、じゃあお母さんがいなくても大丈夫なこっちのれいむたちからお風呂だよ!」 親れいむがいないことで少し不満がっていたので、おだててあげる。 単純な頭なのですぐにきゃっきゃと喜び始めた。 軽い体を持ち上げて、俺は奥へと歩きだす。 「わあ!おそらをとんでいるみたい!!!」 「すごくたかいよ!!」 もう生涯見ることのない外の世界を楽しんでいるようだった。 「じゃあここで永遠にゆっくりしていってね」 ここはお風呂場ではなく、台所。 そこに置いてあった鉄の箱に2匹の子れいむを投げ入れた。 「ゆ?おふろは?」 「ここはゆっくちできないよ!」 2匹の子れいむを入れてもあと5匹は入れるくらいスペースが余っていたので、あまり緊迫感がないようだ。 透明な箱ではないので、閉めると中の様子が見えないのだが、今回は好都合だ。 俺は子れいむ達の質問を無視して蓋を閉めた。 中から「ゆっくりあけて!」だの「暗くてゆっくりできない」といったことがかすかに聞こえるくらいだ。 鉄製だけあって、蓋を閉めるとあまり声は届かないみたいだ 俺は居間に戻り、残りの3匹達をさっきの2匹とは別のところに持っていく。 「ゆ?お兄さんここは何?」 「ここはお兄さんの家のお庭だよ」 つれてきたのは中庭。 塀で囲まれており、家の中からじゃないと入ることができない庭だ。 夏まっさかりの今日、中庭は背の高くなった雑草が生い茂りジャングルのようになっている。 「じゃあここで死ぬまでゆっくりしていってね」 ぽーん、と中庭に3匹のゆっくりを投げ込む。 「ゆ!?お兄さんお風呂はどうしたの!?こんなところじゃゆっくりできないよ!!」 「いちゃい!!ゆっくちさせて!!」 「ゆぅうう・・」 着地に失敗した子れいむ2匹が涙目になっていた。 「お風呂はないよ。君達はここで永遠にゆっくりするんだよ」 親れいむが俺に体当たりをしてきたので、全力で蹴り返す。 餡子を撒き散らしながら塀にたたきつけられ、そのまま動かなくなった。 「あら、死んじゃった?まあゆっくりしてけよ」 中庭唯一の入り口を閉じ、俺はその場を後にした。 夕方。 晩御飯の支度を終えた俺の足元には、先ほど子れいむ2匹をつめこんだ鉄の箱がある。 いよいよこれの出番がやってくる。 これは一言で言うなら、ゆっくりコンポストだ。 使用方法はとても簡単。 調理を終えた流し台の三角コーナーには、野菜のいらない部分や割れた卵などが入っている。 これを箱の中にいる子れいむ達に食べて処分してもらおうというものだ。 蓋を開けるとノンキに眠っている子れいむ達がいた。 「れいむ、ご飯を用意したよー!」 ご飯、その単語にピクリと反応し、すぐに目を覚ます子れいむ。 「ゆ!おにいさんはやくここからだしてね!ごはんもだしてね!!」 「おかあさんはどこなの!?はやくあわせてね!!」 お怒りのようだ。 しかし俺はこんなコンポスト達の相手をしているほどヒマではない。 子れいむに振り掛けるように生ゴミを入れた。 「それが君達のご飯だよ。これからずっとだよ。ちゃんと処分してね」 生ゴミにびっくりして何も喋らなかったのでそのまま蓋を閉めた。 ゆーとかやーとか騒いでいるが、さすが鉄製の箱だけあって3メートルも離れたら何も聞こえなくなった。 次の日、朝ごはんの用意で出た生ゴミを捨てようと蓋を開けると、昨日のままの生ゴミがそこにあった。 「ゆ!おにいさんれいむたちこんなのたべられないよ!!はやくだしt」 言い終わらないうちに生ゴミを捨て、蓋を閉める。 働かないコンポストの相手なんてしないものだ。 中庭に回ると、入り口の目の前で3匹が眠っていた。 親れいむは顔がぐちゃぐちゃに歪み、皮はずたぼろ、ところどころ餡子が飛び出しているが生きてはいるようだ。 こいつらは放っておけば勝手に働くだろうから、俺は放置して外に遊びに出かけた。 帰宅する頃にはもう夕方になっていた。 急いで夕飯の用意をし、生ゴミを捨てるためにコンポストの蓋を開ける。 すると、そこには子れいむ2匹の姿以外、特に何も無かった。 昨日と今朝の生ゴミは綺麗サッパリ消えていた。 さすがに育ち盛りの子れいむ達は、食欲に勝てなかったのだろう。 それに生ゴミと言っても、調理後すぐのものであったから腐ってはいなかったはずだ。 「よお、結局食べたんだな。おかわりを用意してやったぞ」 また振り返るように生ゴミをぶちまけ、四の五の言う前に蓋を閉めた。 ちらっと見た感じ、2匹はぼろぼろと泣いていた様子だった。 いきなり閉じ込められてゴミを食べさせられるのだから、その心境は分からないでもない。 どこからか、家に体当たりをするような音が一晩中聞こえていたが、俺はぐっすりと眠ることができた。 「おはよう。ゆっくりしているかい」 朝一番に中庭を訪れると、小さいながらもぷくっと膨れて威嚇する2匹の子れいむと、汚らしい皮の親れいむが待っていた。 「ゆ!おにいさんはやくここからだしてね!!れいむおなかすいたよ!!」 「おにいさんはゆっくりできないひとだよ!!ゆっくりしね!!」 「ぼべべびゅびゅっぼぼぼ!!!」 餡子を撒き散らしながら話す親れいむの言葉は理解できなかったが、とりあえず怒っているということだけは分かった。 子れいむを手にとると、若干痩せた感じがした。 「みんなはもう草刈りの道具だよ。早く草を食べてね!ご飯はそれだけだよ!」 こちらの班は、草刈りを目的としている。 草まみれの庭に放てば、食うものがなくなったゆっくり達は草を食べてくれるだろう。 育ち盛りの子れいむ2匹と、大きな親れいむがいれば、すぐに庭は綺麗になるはずだ。 「やだよ!!れいむ、にがいくさはきらいだよ!!」 「れいむもやだよ!はやくおいしいごはんをよういしてね!!!」 「ぶびっ!!!」 餡子が飛ぶ。汚いなあ。 「草を食べたくなかったら食べなくてもいいよ。お腹すいて死んじゃうだろうけどね」 その前に親れいむは出餡子多量で死にそうだが。 その後もゆーゆー文句を垂れる子れいむ達を置き去りにし、俺は扉を閉じた。 それから、3週間が経った。 ゆっくりコンポストはきちんと働いていた。 開始1週間ほどしたときに、子れいむ達がボイコットをしたこともあった。 生ゴミ以外の食べ物をくれ、くれるまで生ゴミの処理はしない、と。 俺は気にせず毎食ごとに生ゴミを投げ入れた。 2日もすると夏の暑さで溜まった生ゴミは腐臭を出し始め、どこに鼻があるのかもわからないのに子ゆっくりは悪臭に涙していた。 くさいくさいと涙ながらに許しを請う子れいむ達に、俺は一言、早く処分しろとだけ告げて蓋を閉じた。 次に蓋を開いたときには生ゴミは全て消えていた。 真っ青な顔をした子れいむ達を見れば、腐った生ゴミの処分がいかに大変かがよく分かった。 それ以来、腐らせることを極端に恐れ、生ゴミを入れるとすぐに食べるようになってくれた。 今、3週間前にうっかり捨てるのを忘れていたお弁当を、子れいむ達が必死で処分してくれている。 たまに嘔吐し、戻すこともある。 しかし、結局自分で処理しなければならないのだから一度で済ませばいいのに、と俺は思う。 これからも生ゴミの処理をよろしくね、そういい残し、俺は蓋を閉じた。 中から泣き声が聞こえたのは多分、気のせいだろう。 中庭も綺麗になった。 それこそ、最初の頃はニガイだの不味いだの文句たらたらだったが、いつしか諦めて黙々と食べるようになった。 そもそも野生のゆっくりは草や虫が主食なのだ。 何も問題はない。 それにコンポスト組に比べれば広い庭もあるし、子れいむにとっては親れいむもいるのだから幸せだろう。 それに家族だって増えている。 3匹では草が思うように減らないと感じ、おれはゆっくりアリスを加工所からレンタルし、強制的に交尾をさせ続けた。 そしてあっという間に3匹だった草刈り組は30匹へと増員された。 最近は近所で草刈りのアルバイトを始めた。 縄でつなぎ、リボンを人質にとって連日不味い草を食べさせている。 赤ちゃんゆっくりがわがままを言って草を食べない時は、見せしめに親や姉妹の前で皮を引き裂いた。 飛び散った餡子を食べさせると共食いを覚えてしまいそうだったので、一切食べさせることはしなかったが。 今日の出勤場所は、3丁目の田中さんの家だ。 リボンのない30匹のゆっくり霊夢を縄で繋ぐと、俺は家を後にした。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける