約 3,545,402 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/787.html
虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/498.html
「ゆっくり記憶していってね!」 「んんにゅふううううううううぅぅぅぅ!!!」 「んほおおおおおおおおおすっきりしちゃうよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」 この日、二匹のゆっくりは同時に達した。 口からは涎、目からは涙、全身からなんとも形容しがたい体液を漏らしながら、びくびくと痙攣している。 「ゆふぅん……ゆふぅ…」 「す、すっきりしたよぉ…まりさぁ…」 余韻に浸る二匹。 思い出すのは、自分達が今までゆっくりしてきた記憶だ。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむは、生まれたときから仲良しだった。 自分のお母さんであるまりさとれいむの仲がよかったために、この二匹も幼い頃から共に遊んでいたのだ。 片方が池に落ちると、もう片方が助ける。 片方が蜂に追われると、もう片方が隠れる場所を教えてあげる。 片方が人間の畑でゆっくりしてると、もう片方がその危険性を教えてあげる。 そんな風に互いが互いを支えあい、今までゆっくりしてきた。 この二匹が俗に言う『夫婦』の関係になったのは、今から二ヶ月前である。 昔から仲がよかったので、夫婦になってからも二匹は仲良くゆっくりしてきた。 一ヶ月前に見つけた今のおうちも、二匹にとってはぴったりだが… 今から生まれるであろう赤ちゃんも含めると、もしかしたら狭くてゆっくりできないかもしれない。 そしたら新しいおうちを探さなきゃね、と微笑む二匹。 そうこうしているうちに、れいむの頭から蔓が生えてきた。 そして数時間後。 「ゆ!!ゆっくりそだってね!!」 「ゆっくりいいこになってね!!」 赤ちゃん達が生まれるのを、今か今かと待ち望んでいるゆっくり夫婦。 何かが起こると感じ取ったれいむが、ぶるぶると震え始めた。 「ゆ!?…ゆゆゆゆゆゆゅゅゅ…」 ぷちっ! ぽとん!! 「ゆ!ゆっきゅりちていってね!!」 「う、うまれたよ!!まりさたちのあかちゃんがうまれたよ!!」 喜びを隠せないまりさ。 一匹目の誕生に続いて、次々と赤ちゃんが蔓から落ちていく。 「ゆぷ!ゆっきゅいちていってね!!」「ゆっくりちていってえ!!」 生れ落ちたのは、合計5匹のゆっくりれいむだった。 自分と同じ種がいないことにまりさは少し寂しく感じたが、自分の子供が無事生まれたことを思えば些細な ことだった。 「みんな!!いっしょにゆっくりしようね!!」 涙を流しながら呼びかける母れいむ。 それに答えるようにして、子れいむたちは一斉に声を上げた。 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 その姿こそ、親ゆっくりにとって最高の幸せ。 二匹のゆっくりは涙を流しながら、頬をすり合わせていた… 数ヵ月後。 すくすくと成長した子れいむたちは、母れいむの半分ぐらいの大きさになった。 もう親に頼らず、自分で餌を取るようになる時期である。 「ゆっくりいってくるね!!」「ごはんたくさんたべるよ!!」 「みんな!!ゆっくりきをつけてね!!」 5匹の子供たちを見送る、母れいむとまりさ。 野性の世界で、親が二匹とも無事でいられるのは珍しいことだ。 大抵は交尾の段階で片方が朽ちるか、子供の成長を待たずして捕食種や他の野生生物の犠牲となってしまう。 そういった意味で、この一家は他のゆっくりに比べれば格段に幸せだった。 「ゆゆゆぅ…れいむぅ…いっしょにすっきりしようねぇ!」 「ゆふん、いいよぉ…でももっとおくにはいろうね!」 子供たちが視界から居なくなったのを確認して、互いに誘い合って巣の中へと入っていく二匹。 今いる子供たちももうじき独立するだろう。ならば、親のするべきことは新たな子供を作ることだ。 二匹は完全にその気だったのだが…第三の声が、二匹を邪魔した。 「やあ!!ゆっくりしてるかい?」 「ゆゆ!?」 巣の外からの突然の声に、二匹は驚いた。 これからすっきりしようというのに、どうして邪魔をするのか。 知らない人が居たら、気になってすっきりできないではないか! すっきりモードに入っていた二匹は、来客に対して大いに不満を漏らした。 「ゆ!!おにーさん!!じゃましないでね!!」 「これからまりさとれいむはすっきりするんだよ!!ゆっくりどっかいってね!!」 「あぁ、ごめんごめん…そうか、君達には子供がいるんだね。じゃあ子供が戻ってくる頃にまた来るよ!」 そう言って立ち去ろうとする、見知らぬお兄さん。 「もうにどとこないでね!!」「すっきりをじゃましたおにーさんとはゆっくりできないよ!!」 巣の出口までやってきて、お兄さんを罵倒する二匹。 お兄さんはそんなの気にせずに去っていき…二匹の視界から完全に消えた。 「ゆふん…これでやっとすっきりできるよぉ…♪」 「まりさぁ、ゆっくりおくにいってすっきりしようねぇ…♪」 夜。ご飯を食べ終えて、一家で眠ろうという時間帯だ。 昼間の交尾では赤ちゃんは出来なかったが、チャンスはいくらでもある。 二匹は何とかして、新たな赤ちゃんを授かろうと考えていた。 「ゆ!!れいむいもうとがほしいよ!!」 「おかーさん!!ゆっくりいもうとをうんでね!!」 「ゆゆ…おかーさんたちがんばるからね!!ゆっくりまっててね!!」 と、家族計画を話題に談笑する一家。そこへやってきたのは… 「お!今度は子供たちも揃ってるね。ゆっくりしていってね!!」 昼間すっきりを邪魔したお兄さんだった。 「ゆゆ!?ゆっくりしていってね!!」 とりあえず本能に従って挨拶を返す子れいむたち。 それに対して、親二匹はお兄さんに対して明らかに警戒心を示していた。 「ゆ!?おにいさんはだれ!?ゆっくりできるひと!?」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさたちのおうちだよ!!」 ゆっくりたちにとっては、ゆっくりすることが全てである。 ならば、ゆっくり出来ない者は人間であろうと何であろうと、自分の家に入れるわけにはいかない。 親二匹は、ゆっくりの本能に従って…そして、親としての責任をもって、外敵を排除しようとしていた。 「いや、お兄さんはゆっくりできるよ。皆をもっとゆっくり出来る場所に案内しようと思ってね」 「ゆゆ!?ほんとう?おにーさん、はやくれいむたちをゆっくりできるばしょにつれてってね!!」 あっさりとお兄さんに懐柔されてしまう子れいむたち。 『ゆっくり出来る』という言葉を聞いて、親二匹も興味を持ち始めた。 「れいむもいくよ!!はやくゆっくりしたいよ!!」 「よしよしわかった。今から案内するからついて来てね」 一家は笑顔でお兄さんのあとについていく。 だが、この行動が一家の命取りになることを…一家はまったく予想できなかった。 お兄さんに招かれて、お兄さんのおうちに入っていく一家。 案内された部屋は冷房が効いていて、しかもとても広かった。 「ゆゆ!!すずしいね!!」「ここならゆっくりできるよ!!」 「おかーさん!!おうたうたって!!」 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆーゆゆーっ♪」 母れいむの歌を聞いて、楽しそうに踊る子供たち。 遠くから眺めているまりさも嬉しそうだ。 「ここをれいむたちのおうちにするね!!」 「きょうからここがまりさたちのおうちだよ!!」 「「みんなでゆっくりしようね!!」」 あまりにも快適なので、すぐにここを自分達の家にすることに決めた。 お兄さんも笑って賛成してくれたから、れいむたちはとても安心していた。 それから一週間。 気がつくと、母れいむが居なくなっていた。 「おにーさん!!おかーさんがいなくなっちゃった!!」 「れいむがいないよ!!どこにいったの!!」 優しいお兄さんは、優しく説明してくれた。 「皆のお母さんは病気を治すために、僕が狭い箱に入れてあげたんだ。今は別の部屋でゆっくりしてるよ」 「ゆ!!おにーさんがびょうきをなおしてくれるの!?」 「おにーさんやさしいね!!」 感謝の声を上げる一家に対し、お兄さんは説明を続ける。 「病気が治ったらすぐに箱から出してあげなきゃいけない。 みんなだって、狭い箱に閉じ込められたままなんて、いやだよね!」 「ゆゆ!!いやだよ!!」「せまいところじゃゆっくりできないよ!!」 「でもね、箱の中から出るには鍵を開けなきゃいけない。皆にはその番号を覚えて欲しいんだ!」 お兄さんはニヤッと笑う。 一家は最初困惑して、お互いの顔を見合わせたが… 「れいむおぼえるよ!!ゆっくりおしえてね!!」「ゆっくりおしえてね!!」 お母さんのためなら、多少の困難は乗り越えられる。 根拠の無い自信を持っている子れいむたちとまりさは、お兄さんの願いを受け入れることにした。 「よし、今から言うからゆっくり覚えてね」 「ゆっくりおぼえるよ!!」「れいむもおぼえるよ!!」 「その番号は…115だよ!」 『いち・いち・ご』 その番号が、一家のゆっくりメモリーに刻まれる。 「いちいちご、だね!!」「いちいちご!!ゆっくりおぼえたよ!!」 「みんな覚えたかな?それじゃあお兄さんはもう番号を忘れちゃうからね。 みんなが番号を忘れちゃったら、お母さんは箱から出られなくなっちゃうよ!!」 「だいじょうぶだよ!!れいむぜったいわすれないよ!!」 「れいむもわすれないよ!!こんなかんたんなばんごう、わすれるわけないよね!!」 えへんと胸を張って、子れいむは自信を見せた。 「そうだよね!!お母さんを助けるための、たった3桁の番号を忘れるわけが無いよね!!」 お兄さんはケラケラと笑っていた。 さらに一週間。 母れいむはまだ戻ってこないが、残された子供たちとまりさは仲良くゆっくりしていた。 今までは自力で食料を調達する必要があったが、今となってはそれは不要な努力だ。 なぜなら、好き勝手にゆっくりしていればお兄さんが食べ物を持ってきてくれるからだ。 以前は母れいむが歌を歌っていたが、今は代わりにまりさが歌を歌ってあげる。 「ゆゆ~ん♪ゆっゆっゆ~ん♪」 「おうたじょうずだね!!」「もっとうたってー!!」 母れいむほど上手ではないが、まりさの歌も子れいむたちにとってはお気に入りだった。 お兄さんは、部屋の中で退屈している子れいむたちの遊び相手にもなってくれた。 特に子れいむたちが気に入っているのは、一匹ずつ手のひらに乗ってお兄さんと部屋中をお散歩することだ。 「わぁい!!おそらをとんでるみたい!!」 この時だけは、普段なら経験できないほど高い場所から周りを見渡すことが出来る。 子れいむたちは、まるで自分が鳥になったような気分だった。 「はやくおりてきてね!!つぎはれいむのばんだよ!!」 「ちがうよ!!こんどはれいむがのるんだよ!!」 順番をめぐって言い争う子れいむたち。 そんな子供たちを、お兄さんは優しくなだめる。 「喧嘩はしないでね。ちゃんと全員乗せてあげるからさ」 「わーい!!おにーさんはやさしいね!!」「おにーさんだいすきー!!」 そういうと、お兄さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。 そしてある日、お兄さんが透明な箱を一家の目の前に置いた。 その中には… 「みんな!!ゆっくりあいたかったよ!!」 一週間前から別の部屋でゆっくりしていた、母れいむの姿があった。 「ゆゆ!おかーさんだ!!」「おかーさん!!さみしかったよぉ!!」 あっという間に箱のまわりに群がる子れいむたち。 後からやってくるまりさも、嬉しさが顔全体に染み渡っている。 「まりさ…」「れいむ、ゆっくりまってたよ!!」 そして全員でお兄さんを見上げる。 「おにーさん!!おかーさんをここからだしてあげて!!」 「れいむをだしてあげてね!!これからぜんいんでゆっくりするよ!!」 すると、お兄さんは満面の笑みでこう言った。 「そうだね。それじゃ皆でお母さんを出してあげてね!」 「ゆ…?」 最初、皆はどういう意味か分からなかった。 お兄さんは、分かるようにゆっくり説明してくれる。 「この前教えてあげた番号、覚えてるよね。その番号をお兄さんに教えてくれれば、開けてあげられるよ」 「……………ゆ?」 不思議そうな顔をする一家。 …しばらく考え込んで、ある子れいむが飛び上がった。 「ゆゆ!!ずっとまえにおにーさんにばんごうをおしえてもらったよ!! そのばんごうがわかれば、おかーさんはそとにでられるんだね!!」 「そうだよ、よく分かったね」 褒めるお兄さん。しかし、問題はその後だった。 「みんなゆっくりばんごうをいってね!!おにーさんにばんごうをおしえてあげてね!!」 箱の中の母れいむは早く出たいのだろう、まわりのゆっくりたちを急かす。 しかし、母れいむを除く一家は考え込んだまま何も言おうとしない。 「ゆゆ!!ばんごうおぼえてるでしょ!?ゆっくりおしえてね!!」 「ゆぅん…ゆっくりわすれちゃったよ!!まりさおかーさんは!?」 「ゆゆゆゆゆ………あ、おもいだしたよ!!いちごだよ!!」 「は?イチゴ?」 まりさの答えを聞いて、お兄さんは困惑顔だ。 「番号は3桁なんだよ。まりさは『15』の2桁しか思い出せなかった。 きっと十五とイチゴの語呂合わせで覚えたんだね。でも、あと1桁分からないと開けられないよ!」 「ゆぎゅうううううう!!!どおしてわすれちゃったのおおおおおおお!!??」 母まりさが、悲痛な叫びを上げる。 番号がわからない状態で一番困るのは自分だから、当然といえば当然だ。 「ゆゆ!ごめんね!!でもおもいだせないよ!!わすれちゃったよぉ!!」 「ばかばか!!みんなのばか!!そんなばかなこたちとはゆっくりできないよ!!」 顔を真っ赤にして激怒する母れいむ。 でも、箱から出てこられないのでまったく怖がらない子れいむとまりさ。 「でもおかーさんがはこのなかにいても、れいむたちはゆっくりできるよ!!」 「そうだね!!そばにいるならだいじょうぶだよね!!」 「おかーさんはずっとそのなかにいてね!!れいむたちはそのまわりでゆっくりしてあげるよ!!」 必死な母れいむとは正反対に、あっさりと諦める子れいむとまりさ。 母れいむの呼びかけもむなしく、まわりのゆっくりたちは勝手にゆっくりし始めた。 「どおじでええええええええ!!!がんばっでおぼいだじでよおおおおおお!!!」 「おかーさんはそこでがまんしてね!!れいむたちがおうたうたってあげるからね!!!」 「うたはいらないのおお!!こんなせまいところでゆっぐりでぎないいいいいいい!!!」 「ゆ~ゆゆ~ん♪ゆゆ~yぶぎゃあ!!??」 歌が途中で途切れた。 歌っていた子れいむのほうを見ると、お兄さんの拳が子れいむだったものを押しつぶしている。 ニコッと微笑むお兄さんがその拳を上げると、その手から餡子がボトリと落ちた。 「ゆぎゃあああああああああ!!!まりざのごどもがああああああああああ!!!」 「おにーさんひどいいいいいいいいい!!!どおじでぞんなごどずるのおおおおおお!!??」 「まったく…大切なお母さんを見捨ててゆっくりするなんて、酷いなぁ!」 怒っているようだが、顔は相変わらず笑っている。 お兄さんは立ち上がると、逃げ惑う子れいむたちを片っ端から潰し始めた。 「ゆぎゃッばびぃいいいいいいいいい!?」 「まったく!!」 「ぐべえああああおあおあおあおあおあ!!!」 「お母さんを何だと思ってるんだ!」 「ふぎゅおうおおあおあおあおあおおお!!??」 「しかも番号を忘れちゃうなんて…!」 「るばっやああああああああああああ!!??」 「どうして!!たった3桁の番号を…君達は忘れちゃうんだ!?」 子供を全て潰し終えると、お兄さんは立ち上がる。 お兄さんは、泣いていた。顔は笑っているが、泣いていた。 箱の中の母れいむの横で、まりさはお兄さんの顔を見上げる。 「ゆ?おにーさん……ないてるの?」 子供を潰された怒りよりも、目の前のお兄さんが泣いていることに対する興味が勝った。 今まで自分をずっとゆっくりさせてくれたお兄さん。 子供を全員殺されたが、お兄さんが泣いている原因を解決すれば、またゆっくりさせてくれるかもしれない。 そんな期待がまりさにはあったのだ。 「ゆっくりなかないでね!!まりさがなぐさめてあげるよ!!」 「……」 お兄さんは無言でまりさのほうへと歩み寄る… が、まりさの横を素通りして、箱に収まったれいむの目の前に座り込んだ。 「ゆ!?おにーさん!!ばかなこどもをころしてくれてありがとう!! こんどはゆっくりここからだしてね!!」 もはや母れいむの関心は、ここからどうやって脱出するか…そのひとつしかない。 自分を見捨てた子供も…かつて愛を誓い合ったまりさも、もうどうでもよかった。 「ふふふ…あっはははははははははははは!!!」 お兄さんは優しい笑顔のまま、狂ったような笑い声を上げる。 母れいむとまりさは、完全に怯えきってしまった。 まりさに至っては、恐怖のあまり硬直してしまってその場から逃げることも出来ない。 「どうして!!どうして君達はそんなに馬鹿なんだ!! 3桁の!!たった3桁の!!簡単な番号を!!どうして忘れるんだアアアアアァァァァァァ!!!!!」 バァンッ!!! 箱を思い切り叩くお兄さん。母れいむがびくっと震える。 お兄さんは何かを発散しようとしているようだった。 内に秘めた黒い感情を、すべて消化しきってしまおうとしているようにも見える。 「あぁゾクゾクするよ!!君達の馬鹿っぷりにゾクゾクするよ!! どうして君達は到底敵わない人間に喧嘩を売るんだ!!どうして人間の作物を荒らすんだ!? もうどうしようもない馬鹿だ!!可哀相で可哀相で、笑いが止まらないよおお!!! 君達はどうして!!どうして!!どうしてどうしてどうしてどうして!!! どうしてそんなに!!!馬鹿なんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」 大声とともに腕を振り下ろすお兄さん。 居場所が悪かったためか、その腕がまりさに直撃し… 「ゆぶぎゃあああああ!!??」 まりさは破裂した。あっけない最期だった。 「ゆゆ!!ゆっくりやめてね!!ゆっくりここからだしてね!!」 「ふふふ…出せるわけないだろう。あの子達が、番号を覚えてなかったんだから…」 くくくと笑うお兄さん。顔は優しい笑みだが…その笑い声に、唯一生き残った母れいむは恐怖する。 「でも安心してね。れいむはこの中にいればずっと安全だよ。お兄さんも守ってあげるからね」 「ゆゆ!!やめて…ここじゃゆっくりできない……ゆっくりだしてよ!」 お兄さんは笑みを崩さず、首を横に振る。 そしてれいむが収まっている箱を抱きしめて、その場に寝転がった。 「馬鹿な子供たちは殺してあげたよ。馬鹿な恋人も殺してあげたよ。だかられいむ…お兄さんとずっとゆっくりしようね」 一体何をどこで間違えたのか。 母れいむは必死に記憶をさかのぼるが、どうしてもわからない。 どこをどうすれば、こんな目にあわずに済んだのか… 餡子脳の記憶容量では、さかのぼれるのはせいぜい数週間前まで。 唯一わかるのは、いまさら考えても遅いということだけだ。 れいむの入った箱を優しくなでる優しいお兄さん。 その笑みは、狂気に蝕まれてる。 「ふふふ…れいむ…君は一生その中でゆっくりしていってね!」 「イやだよおおおおおおオオオオオおおおおおおお゛お゛お゛お゛!!!!」 その日から。 れいむはずーっと、お兄さんとゆっくりし続けた。 晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も。 れいむは箱の中で、狭い箱の中でゆっくりし続けた。 出して、と言ってもお兄さんは出してくれない。 定期的に食べ物を与えられて、ゆっくりし続けるだけ。 お兄さんが、おじさんになって。 おじさんが、おじいさんになって。 その間も、れいむは窮屈な箱の中でゆっくりし続けた。 ある日、おじいさんが二度と目覚めなくなった。 おじいさんが布団の中からいなくなって…れいむだけが取り残された。 れいむはとてもお腹がすいてきた。そのうち意識も朦朧としてきた。 迫りくる死の影を目の前にして…れいむはやっと安堵の表情を浮かべて、こうつぶやいた。 「ゆっくりしていってね…!」 あとがき 優しいお兄さんを書いてたら、いつの間にか変なお兄さんになってたよ!! ゆっくりしていってね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3170.html
これは日露戦争のパロディです 大湯作理帝国→大日本帝国のゆっくり版 れみりゃ帝国→ロシア帝国 めーりん半島→朝鮮半島 エゲレツ帝国→イギリス 合衆連邦→アメリカ合衆国 売国奴はゆっくりしないで死んでね! あと前編です。 それでも良いと言うならドゾ… 時はゆっくり歴1903年、大湯作理帝国はある悩みを抱えていた。それは、 〘れみりゃ帝国〙との関係である。 何故かというと、何とれみりゃ帝国軍が、めーりん半島に攻撃を仕掛けてしまったのだ。 これに大湯作理帝国(これからはゆっ帝と呼ぶ)は激怒した。何しろ自分達の傀儡国が奪われるかも知れないのにみすみす見逃す訳には行かなかった。 しかしゆっ帝には軍備力はそこまでないし、何しろ相手はれみりゃだ。だからゆっ帝はれみりゃ帝国と戦いたくはなかったのだ。しかしこうなった以上は戦わなければならない。そこでゆっ帝は軍備増強をすることにした。 まず装備品を合衆連邦から輸入していたユンチェスター銃から最新式の参零式ゆっくり銃に変更、 更には敵陣地砲撃のために、弐拾八式臼砲を開発した。 また、エゲレツ帝国とも同盟を結んだ。 かつて上層部のゆっくりは、戦争派か交渉派で別れていた。交渉派はなるべく戦争をしたくなかったのだろうが、めーりん半島攻撃によって交渉派は全員戦争派に変わった。 「めーりん半島を征服しようなんてかんがえてるげすれみりゃはゆっくりしないでしね!」「れみりゃはゆっくりできないんだねーわかるよー」「ぜったいにゆるさなえ…」「みんなまつんだぜ!まださくせんを決めてないんだぜ!」こうして議長のまりさは、この会議に出席している全ゆっくりにさくせんを聞いた。 まずはもりけん(笑)のぱちゅりーに聞いた。 「むきゅ!そんなのぜんいんでとつげきすればいいじゃない!」流石はもりけん(笑)考えている次元が違う。次は次!霊夢の意見。 「れいむはしんぐるまざーで可哀想なんだよおおおおおおおお!?!?」あっ(察し) こうした壮大な議論の中、世論は一体何をしていたのでしょうか。 「れみりゃはゆっくりしないでしねぇーーー!!」 「「「ゆっゆっおー!」」」「れみりゃをたおせー!」 「「「「ゆっゆっおー!」」」」 「れいむはしんぐるまざーで可哀想なんだよおおおおおおおお!?!?!?」「「「あっ(察し)」」」 こうした中で政府は決断した。 「れみりゃに宣戦布告をするからがんばってねー。」 「「「「「「「「は?」」」」」」」」 こうしてれみりゃと戦争が始まったのであった。 続く ゆっくり突撃していってね!2 今まで書いた作品 わされいむ 鉄壁の軍人まりさ ゆもんぐあす れみりゃの悲劇 ゆっくり機関士 ゆっくりいじめ系3526 ゆっくり機関士2? うーぱっくを虐待するゾ! ゆっくりいじめ系3527 れいむとまりさのれみりゃ復讐大作戦? 原種ゆっくりvs鬼威参 ゆプラトゥーン どすのけつだん ゆっくりのww1rts ゆっくりのww1RTS 2 新設定集
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1931.html
虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1210.html
「ゆっくり記憶していってね!」 「んんにゅふううううううううぅぅぅぅ!!!」 「んほおおおおおおおおおすっきりしちゃうよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」 この日、二匹のゆっくりは同時に達した。 口からは涎、目からは涙、全身からなんとも形容しがたい体液を漏らしながら、びくびくと痙攣している。 「ゆふぅん……ゆふぅ…」 「す、すっきりしたよぉ…まりさぁ…」 余韻に浸る二匹。 思い出すのは、自分達が今までゆっくりしてきた記憶だ。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむは、生まれたときから仲良しだった。 自分のお母さんであるまりさとれいむの仲がよかったために、この二匹も幼い頃から共に遊んでいたのだ。 片方が池に落ちると、もう片方が助ける。 片方が蜂に追われると、もう片方が隠れる場所を教えてあげる。 片方が人間の畑でゆっくりしてると、もう片方がその危険性を教えてあげる。 そんな風に互いが互いを支えあい、今までゆっくりしてきた。 この二匹が俗に言う『夫婦』の関係になったのは、今から二ヶ月前である。 昔から仲がよかったので、夫婦になってからも二匹は仲良くゆっくりしてきた。 一ヶ月前に見つけた今のおうちも、二匹にとってはぴったりだが… 今から生まれるであろう赤ちゃんも含めると、もしかしたら狭くてゆっくりできないかもしれない。 そしたら新しいおうちを探さなきゃね、と微笑む二匹。 そうこうしているうちに、れいむの頭から蔓が生えてきた。 そして数時間後。 「ゆ!!ゆっくりそだってね!!」 「ゆっくりいいこになってね!!」 赤ちゃん達が生まれるのを、今か今かと待ち望んでいるゆっくり夫婦。 何かが起こると感じ取ったれいむが、ぶるぶると震え始めた。 「ゆ!?…ゆゆゆゆゆゆゅゅゅ…」 ぷちっ! ぽとん!! 「ゆ!ゆっきゅりちていってね!!」 「う、うまれたよ!!まりさたちのあかちゃんがうまれたよ!!」 喜びを隠せないまりさ。 一匹目の誕生に続いて、次々と赤ちゃんが蔓から落ちていく。 「ゆぷ!ゆっきゅいちていってね!!」「ゆっくりちていってえ!!」 生れ落ちたのは、合計5匹のゆっくりれいむだった。 自分と同じ種がいないことにまりさは少し寂しく感じたが、自分の子供が無事生まれたことを思えば些細な ことだった。 「みんな!!いっしょにゆっくりしようね!!」 涙を流しながら呼びかける母れいむ。 それに答えるようにして、子れいむたちは一斉に声を上げた。 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 その姿こそ、親ゆっくりにとって最高の幸せ。 二匹のゆっくりは涙を流しながら、頬をすり合わせていた… 数ヵ月後。 すくすくと成長した子れいむたちは、母れいむの半分ぐらいの大きさになった。 もう親に頼らず、自分で餌を取るようになる時期である。 「ゆっくりいってくるね!!」「ごはんたくさんたべるよ!!」 「みんな!!ゆっくりきをつけてね!!」 5匹の子供たちを見送る、母れいむとまりさ。 野性の世界で、親が二匹とも無事でいられるのは珍しいことだ。 大抵は交尾の段階で片方が朽ちるか、子供の成長を待たずして捕食種や他の野生生物の犠牲となってしまう。 そういった意味で、この一家は他のゆっくりに比べれば格段に幸せだった。 「ゆゆゆぅ…れいむぅ…いっしょにすっきりしようねぇ!」 「ゆふん、いいよぉ…でももっとおくにはいろうね!」 子供たちが視界から居なくなったのを確認して、互いに誘い合って巣の中へと入っていく二匹。 今いる子供たちももうじき独立するだろう。ならば、親のするべきことは新たな子供を作ることだ。 二匹は完全にその気だったのだが…第三の声が、二匹を邪魔した。 「やあ!!ゆっくりしてるかい?」 「ゆゆ!?」 巣の外からの突然の声に、二匹は驚いた。 これからすっきりしようというのに、どうして邪魔をするのか。 知らない人が居たら、気になってすっきりできないではないか! すっきりモードに入っていた二匹は、来客に対して大いに不満を漏らした。 「ゆ!!おにーさん!!じゃましないでね!!」 「これからまりさとれいむはすっきりするんだよ!!ゆっくりどっかいってね!!」 「あぁ、ごめんごめん…そうか、君達には子供がいるんだね。じゃあ子供が戻ってくる頃にまた来るよ!」 そう言って立ち去ろうとする、見知らぬお兄さん。 「もうにどとこないでね!!」「すっきりをじゃましたおにーさんとはゆっくりできないよ!!」 巣の出口までやってきて、お兄さんを罵倒する二匹。 お兄さんはそんなの気にせずに去っていき…二匹の視界から完全に消えた。 「ゆふん…これでやっとすっきりできるよぉ…♪」 「まりさぁ、ゆっくりおくにいってすっきりしようねぇ…♪」 夜。ご飯を食べ終えて、一家で眠ろうという時間帯だ。 昼間の交尾では赤ちゃんは出来なかったが、チャンスはいくらでもある。 二匹は何とかして、新たな赤ちゃんを授かろうと考えていた。 「ゆ!!れいむいもうとがほしいよ!!」 「おかーさん!!ゆっくりいもうとをうんでね!!」 「ゆゆ…おかーさんたちがんばるからね!!ゆっくりまっててね!!」 と、家族計画を話題に談笑する一家。そこへやってきたのは… 「お!今度は子供たちも揃ってるね。ゆっくりしていってね!!」 昼間すっきりを邪魔したお兄さんだった。 「ゆゆ!?ゆっくりしていってね!!」 とりあえず本能に従って挨拶を返す子れいむたち。 それに対して、親二匹はお兄さんに対して明らかに警戒心を示していた。 「ゆ!?おにいさんはだれ!?ゆっくりできるひと!?」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさたちのおうちだよ!!」 ゆっくりたちにとっては、ゆっくりすることが全てである。 ならば、ゆっくり出来ない者は人間であろうと何であろうと、自分の家に入れるわけにはいかない。 親二匹は、ゆっくりの本能に従って…そして、親としての責任をもって、外敵を排除しようとしていた。 「いや、お兄さんはゆっくりできるよ。皆をもっとゆっくり出来る場所に案内しようと思ってね」 「ゆゆ!?ほんとう?おにーさん、はやくれいむたちをゆっくりできるばしょにつれてってね!!」 あっさりとお兄さんに懐柔されてしまう子れいむたち。 『ゆっくり出来る』という言葉を聞いて、親二匹も興味を持ち始めた。 「れいむもいくよ!!はやくゆっくりしたいよ!!」 「よしよしわかった。今から案内するからついて来てね」 一家は笑顔でお兄さんのあとについていく。 だが、この行動が一家の命取りになることを…一家はまったく予想できなかった。 お兄さんに招かれて、お兄さんのおうちに入っていく一家。 案内された部屋は冷房が効いていて、しかもとても広かった。 「ゆゆ!!すずしいね!!」「ここならゆっくりできるよ!!」 「おかーさん!!おうたうたって!!」 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆーゆゆーっ♪」 母れいむの歌を聞いて、楽しそうに踊る子供たち。 遠くから眺めているまりさも嬉しそうだ。 「ここをれいむたちのおうちにするね!!」 「きょうからここがまりさたちのおうちだよ!!」 「「みんなでゆっくりしようね!!」」 あまりにも快適なので、すぐにここを自分達の家にすることに決めた。 お兄さんも笑って賛成してくれたから、れいむたちはとても安心していた。 それから一週間。 気がつくと、母れいむが居なくなっていた。 「おにーさん!!おかーさんがいなくなっちゃった!!」 「れいむがいないよ!!どこにいったの!!」 優しいお兄さんは、優しく説明してくれた。 「皆のお母さんは病気を治すために、僕が狭い箱に入れてあげたんだ。今は別の部屋でゆっくりしてるよ」 「ゆ!!おにーさんがびょうきをなおしてくれるの!?」 「おにーさんやさしいね!!」 感謝の声を上げる一家に対し、お兄さんは説明を続ける。 「病気が治ったらすぐに箱から出してあげなきゃいけない。 みんなだって、狭い箱に閉じ込められたままなんて、いやだよね!」 「ゆゆ!!いやだよ!!」「せまいところじゃゆっくりできないよ!!」 「でもね、箱の中から出るには鍵を開けなきゃいけない。皆にはその番号を覚えて欲しいんだ!」 お兄さんはニヤッと笑う。 一家は最初困惑して、お互いの顔を見合わせたが… 「れいむおぼえるよ!!ゆっくりおしえてね!!」「ゆっくりおしえてね!!」 お母さんのためなら、多少の困難は乗り越えられる。 根拠の無い自信を持っている子れいむたちとまりさは、お兄さんの願いを受け入れることにした。 「よし、今から言うからゆっくり覚えてね」 「ゆっくりおぼえるよ!!」「れいむもおぼえるよ!!」 「その番号は…115だよ!」 『いち・いち・ご』 その番号が、一家のゆっくりメモリーに刻まれる。 「いちいちご、だね!!」「いちいちご!!ゆっくりおぼえたよ!!」 「みんな覚えたかな?それじゃあお兄さんはもう番号を忘れちゃうからね。 みんなが番号を忘れちゃったら、お母さんは箱から出られなくなっちゃうよ!!」 「だいじょうぶだよ!!れいむぜったいわすれないよ!!」 「れいむもわすれないよ!!こんなかんたんなばんごう、わすれるわけないよね!!」 えへんと胸を張って、子れいむは自信を見せた。 「そうだよね!!お母さんを助けるための、たった3桁の番号を忘れるわけが無いよね!!」 お兄さんはケラケラと笑っていた。 さらに一週間。 母れいむはまだ戻ってこないが、残された子供たちとまりさは仲良くゆっくりしていた。 今までは自力で食料を調達する必要があったが、今となってはそれは不要な努力だ。 なぜなら、好き勝手にゆっくりしていればお兄さんが食べ物を持ってきてくれるからだ。 以前は母れいむが歌を歌っていたが、今は代わりにまりさが歌を歌ってあげる。 「ゆゆ~ん♪ゆっゆっゆ~ん♪」 「おうたじょうずだね!!」「もっとうたってー!!」 母れいむほど上手ではないが、まりさの歌も子れいむたちにとってはお気に入りだった。 お兄さんは、部屋の中で退屈している子れいむたちの遊び相手にもなってくれた。 特に子れいむたちが気に入っているのは、一匹ずつ手のひらに乗ってお兄さんと部屋中をお散歩することだ。 「わぁい!!おそらをとんでるみたい!!」 この時だけは、普段なら経験できないほど高い場所から周りを見渡すことが出来る。 子れいむたちは、まるで自分が鳥になったような気分だった。 「はやくおりてきてね!!つぎはれいむのばんだよ!!」 「ちがうよ!!こんどはれいむがのるんだよ!!」 順番をめぐって言い争う子れいむたち。 そんな子供たちを、お兄さんは優しくなだめる。 「喧嘩はしないでね。ちゃんと全員乗せてあげるからさ」 「わーい!!おにーさんはやさしいね!!」「おにーさんだいすきー!!」 そういうと、お兄さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。 そしてある日、お兄さんが透明な箱を一家の目の前に置いた。 その中には… 「みんな!!ゆっくりあいたかったよ!!」 一週間前から別の部屋でゆっくりしていた、母れいむの姿があった。 「ゆゆ!おかーさんだ!!」「おかーさん!!さみしかったよぉ!!」 あっという間に箱のまわりに群がる子れいむたち。 後からやってくるまりさも、嬉しさが顔全体に染み渡っている。 「まりさ…」「れいむ、ゆっくりまってたよ!!」 そして全員でお兄さんを見上げる。 「おにーさん!!おかーさんをここからだしてあげて!!」 「れいむをだしてあげてね!!これからぜんいんでゆっくりするよ!!」 すると、お兄さんは満面の笑みでこう言った。 「そうだね。それじゃ皆でお母さんを出してあげてね!」 「ゆ…?」 最初、皆はどういう意味か分からなかった。 お兄さんは、分かるようにゆっくり説明してくれる。 「この前教えてあげた番号、覚えてるよね。その番号をお兄さんに教えてくれれば、開けてあげられるよ」 「……………ゆ?」 不思議そうな顔をする一家。 …しばらく考え込んで、ある子れいむが飛び上がった。 「ゆゆ!!ずっとまえにおにーさんにばんごうをおしえてもらったよ!! そのばんごうがわかれば、おかーさんはそとにでられるんだね!!」 「そうだよ、よく分かったね」 褒めるお兄さん。しかし、問題はその後だった。 「みんなゆっくりばんごうをいってね!!おにーさんにばんごうをおしえてあげてね!!」 箱の中の母れいむは早く出たいのだろう、まわりのゆっくりたちを急かす。 しかし、母れいむを除く一家は考え込んだまま何も言おうとしない。 「ゆゆ!!ばんごうおぼえてるでしょ!?ゆっくりおしえてね!!」 「ゆぅん…ゆっくりわすれちゃったよ!!まりさおかーさんは!?」 「ゆゆゆゆゆ………あ、おもいだしたよ!!いちごだよ!!」 「は?イチゴ?」 まりさの答えを聞いて、お兄さんは困惑顔だ。 「番号は3桁なんだよ。まりさは『15』の2桁しか思い出せなかった。 きっと十五とイチゴの語呂合わせで覚えたんだね。でも、あと1桁分からないと開けられないよ!」 「ゆぎゅうううううう!!!どおしてわすれちゃったのおおおおおおお!!??」 母まりさが、悲痛な叫びを上げる。 番号がわからない状態で一番困るのは自分だから、当然といえば当然だ。 「ゆゆ!ごめんね!!でもおもいだせないよ!!わすれちゃったよぉ!!」 「ばかばか!!みんなのばか!!そんなばかなこたちとはゆっくりできないよ!!」 顔を真っ赤にして激怒する母れいむ。 でも、箱から出てこられないのでまったく怖がらない子れいむとまりさ。 「でもおかーさんがはこのなかにいても、れいむたちはゆっくりできるよ!!」 「そうだね!!そばにいるならだいじょうぶだよね!!」 「おかーさんはずっとそのなかにいてね!!れいむたちはそのまわりでゆっくりしてあげるよ!!」 必死な母れいむとは正反対に、あっさりと諦める子れいむとまりさ。 母れいむの呼びかけもむなしく、まわりのゆっくりたちは勝手にゆっくりし始めた。 「どおじでええええええええ!!!がんばっでおぼいだじでよおおおおおお!!!」 「おかーさんはそこでがまんしてね!!れいむたちがおうたうたってあげるからね!!!」 「うたはいらないのおお!!こんなせまいところでゆっぐりでぎないいいいいいい!!!」 「ゆ~ゆゆ~ん♪ゆゆ~yぶぎゃあ!!??」 歌が途中で途切れた。 歌っていた子れいむのほうを見ると、お兄さんの拳が子れいむだったものを押しつぶしている。 ニコッと微笑むお兄さんがその拳を上げると、その手から餡子がボトリと落ちた。 「ゆぎゃあああああああああ!!!まりざのごどもがああああああああああ!!!」 「おにーさんひどいいいいいいいいい!!!どおじでぞんなごどずるのおおおおおお!!??」 「まったく…大切なお母さんを見捨ててゆっくりするなんて、酷いなぁ!」 怒っているようだが、顔は相変わらず笑っている。 お兄さんは立ち上がると、逃げ惑う子れいむたちを片っ端から潰し始めた。 「ゆぎゃッばびぃいいいいいいいいい!?」 「まったく!!」 「ぐべえああああおあおあおあおあおあ!!!」 「お母さんを何だと思ってるんだ!」 「ふぎゅおうおおあおあおあおあおおお!!??」 「しかも番号を忘れちゃうなんて…!」 「るばっやああああああああああああ!!??」 「どうして!!たった3桁の番号を…君達は忘れちゃうんだ!?」 子供を全て潰し終えると、お兄さんは立ち上がる。 お兄さんは、泣いていた。顔は笑っているが、泣いていた。 箱の中の母れいむの横で、まりさはお兄さんの顔を見上げる。 「ゆ?おにーさん……ないてるの?」 子供を潰された怒りよりも、目の前のお兄さんが泣いていることに対する興味が勝った。 今まで自分をずっとゆっくりさせてくれたお兄さん。 子供を全員殺されたが、お兄さんが泣いている原因を解決すれば、またゆっくりさせてくれるかもしれない。 そんな期待がまりさにはあったのだ。 「ゆっくりなかないでね!!まりさがなぐさめてあげるよ!!」 「……」 お兄さんは無言でまりさのほうへと歩み寄る… が、まりさの横を素通りして、箱に収まったれいむの目の前に座り込んだ。 「ゆ!?おにーさん!!ばかなこどもをころしてくれてありがとう!! こんどはゆっくりここからだしてね!!」 もはや母れいむの関心は、ここからどうやって脱出するか…そのひとつしかない。 自分を見捨てた子供も…かつて愛を誓い合ったまりさも、もうどうでもよかった。 「ふふふ…あっはははははははははははは!!!」 お兄さんは優しい笑顔のまま、狂ったような笑い声を上げる。 母れいむとまりさは、完全に怯えきってしまった。 まりさに至っては、恐怖のあまり硬直してしまってその場から逃げることも出来ない。 「どうして!!どうして君達はそんなに馬鹿なんだ!! 3桁の!!たった3桁の!!簡単な番号を!!どうして忘れるんだアアアアアァァァァァァ!!!!!」 バァンッ!!! 箱を思い切り叩くお兄さん。母れいむがびくっと震える。 お兄さんは何かを発散しようとしているようだった。 内に秘めた黒い感情を、すべて消化しきってしまおうとしているようにも見える。 「あぁゾクゾクするよ!!君達の馬鹿っぷりにゾクゾクするよ!! どうして君達は到底敵わない人間に喧嘩を売るんだ!!どうして人間の作物を荒らすんだ!? もうどうしようもない馬鹿だ!!可哀相で可哀相で、笑いが止まらないよおお!!! 君達はどうして!!どうして!!どうしてどうしてどうしてどうして!!! どうしてそんなに!!!馬鹿なんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」 大声とともに腕を振り下ろすお兄さん。 居場所が悪かったためか、その腕がまりさに直撃し… 「ゆぶぎゃあああああ!!??」 まりさは破裂した。あっけない最期だった。 「ゆゆ!!ゆっくりやめてね!!ゆっくりここからだしてね!!」 「ふふふ…出せるわけないだろう。あの子達が、番号を覚えてなかったんだから…」 くくくと笑うお兄さん。顔は優しい笑みだが…その笑い声に、唯一生き残った母れいむは恐怖する。 「でも安心してね。れいむはこの中にいればずっと安全だよ。お兄さんも守ってあげるからね」 「ゆゆ!!やめて…ここじゃゆっくりできない……ゆっくりだしてよ!」 お兄さんは笑みを崩さず、首を横に振る。 そしてれいむが収まっている箱を抱きしめて、その場に寝転がった。 「馬鹿な子供たちは殺してあげたよ。馬鹿な恋人も殺してあげたよ。だかられいむ…お兄さんとずっとゆっくりしようね」 一体何をどこで間違えたのか。 母れいむは必死に記憶をさかのぼるが、どうしてもわからない。 どこをどうすれば、こんな目にあわずに済んだのか… 餡子脳の記憶容量では、さかのぼれるのはせいぜい数週間前まで。 唯一わかるのは、いまさら考えても遅いということだけだ。 れいむの入った箱を優しくなでる優しいお兄さん。 その笑みは、狂気に蝕まれてる。 「ふふふ…れいむ…君は一生その中でゆっくりしていってね!」 「イやだよおおおおおおオオオオオおおおおおおお゛お゛お゛お゛!!!!」 その日から。 れいむはずーっと、お兄さんとゆっくりし続けた。 晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も。 れいむは箱の中で、狭い箱の中でゆっくりし続けた。 出して、と言ってもお兄さんは出してくれない。 定期的に食べ物を与えられて、ゆっくりし続けるだけ。 お兄さんが、おじさんになって。 おじさんが、おじいさんになって。 その間も、れいむは窮屈な箱の中でゆっくりし続けた。 ある日、おじいさんが二度と目覚めなくなった。 おじいさんが布団の中からいなくなって…れいむだけが取り残された。 れいむはとてもお腹がすいてきた。そのうち意識も朦朧としてきた。 迫りくる死の影を目の前にして…れいむはやっと安堵の表情を浮かべて、こうつぶやいた。 「ゆっくりしていってね…!」 あとがき 優しいお兄さんを書いてたら、いつの間にか変なお兄さんになってたよ!! ゆっくりしていってね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/auaukobe/pages/35.html
チラシの裏 ゆっくりしていってね!!! _▲_ | | ξ( ゚ヮ゚) (゚ヮ゚ ))) 最新ニュース あの「ゆっくりしていってね!!!」がぬいぐるみに 好評発売中! ゆっくり買っていってね!! キャラクター紹介 通常種 ゆっくりれいむ ゆっくりまりさ ゆっくりありす ゆっくりぱちゅりー ゆっくりみょん ゆっくりちぇん ゆっくりらん(旧ゆっくりてんこー) ゆっくりめーりん ゆっくりさくや ゆっくりにとり ゆっくりさなえ ゆっくりゆゆこ 捕食種 ゆっくりれみりゃ ゆっくりふらん きめぇ丸(きめら丸含む) ゆっくりゆうか のうかりん ゆっくりに関わる人たち 博麗 霊夢 霧雨 魔理沙 十六夜 咲夜 アリス・マーガトロイド 東風谷 早苗 ゆっくりになってしまった可哀想な人々 ゆっくりうさどん ゆっくりかんちょう ゆっくりこぶいち ゆっくりこん ゆっくりきゅうり ゆっくりざん ゆっくりしお ゆっくりしょうた ゆっくりじろー ゆっくりずた ゆっくりせりぽ ゆっくりたかせと ゆっくりたっくん ゆっくりたまちん ゆっくりとぅるー ゆっくりどどんぱ ゆっくりとれいん ゆっくりなかなか ゆっくりなつひこ ゆっくりはんぞる ゆっくりぴょん ゆっくりふっど ゆっくりふるる ゆっくりぺー ゆっくりべにー ゆっくりまっつん ゆっくりみつお ゆっくりみっちょ ゆっくりみよし ゆっくりもかめし ゆっくりやまい ゆっくりりんめい ゆっくりテンプレート autolink
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4429.html
「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっでね!」 散歩中に突然の夕立に襲われた俺が近くの穴ぐらの中に身を隠すと、そこには2匹のゆっくりがいた。 1匹は金髪黒帽子が特徴的なゆっくりまりさと呼ばれるゆっくりで空気を吸い込んで頬を膨らませている。 もう1匹は黒髪赤リボンのゆっくりれいむで、現在出産の真っ只中らしく産道が開いている。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりぃ~・・・」 つがいが出産の真っ最中だと言うのにまりさは俺のほうを向いて頬を膨らませている。 一般にこういう自分を大きく見せる行動は威嚇を意味するが、まりさは「ゆっくりしていってね」と言っている。 ならば、愛するパートナーを無視してでも俺に声をかける理由はなんだろうか? 「ああ・・・そうか」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりぃ~・・・!?」 こいつらにとって誰かをゆっくりさせることは至上命題であると聞いたことがある。 つまり、雨に打たれてゆっくり出来ない俺を見過ごすことが出来ないのだ。 出産の最中にあってなお、俺に「ゆっくりしていってね」とれいむが言ったのが何よりの証拠だろう。 「だったら、ありがたくゆっくりさせてもらうよ」 「ゆっくりしていってね!?」 「ゆっくりぃ~・・・!?」 と言うわけで俺はまりさが膨れている理由を考え、その大きさが座るのに最適であることに気づく。 そして、まりさの厚意に感謝しながら、彼女の帽子を除けて頭に腰掛けた。 なかなかどうして、弾力があって悪くないすわり心地である。 「ゆっくりしていってね!?」 「ゆっく・・・りぃ~!?」 「お、まりさ!もうすぐ産まれるぞ!?」 そう言いながら少しだけ腰を浮かしてまりさの顔をれいむの方に向けさせると再び腰を下ろす。 れいむの「ゆっくりしていってね!」は恐らく「珍しい出産を見ても良いよ」と言うことだろう。 これも厚意を無駄にするわけにはいかないので頬杖を突いて、その様子を見守った。 「ゆっくりー・・・ゆっくりー・・・ゆっ!」 「ゆっくりー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「おお、これが赤ゆっくりなのか~」 すぽんっ!と勢いよく飛び出してきた小ぶりな饅頭がこてんと地面に落ち、転がってゆく。 やがて慣性が失われたところでゆっくりと底部を地に着けて、ぷるぷると小さな体を震わせながら立ち上がる。 れいむ種の彼女はクリッとした大きな瞳を開いてまりさと俺を見つけると、満面の笑みを浮かべた。 「ゆっくりしていってね!」 「さすがゆっくりだな。産まれてすぐでも『ゆっくりしていってね』か」 生まれたてながらも主の本能に則って、しっかりとした言葉遣いで初「ゆっくりしていってね」を済ませた子れいむ。 子ゆっくりを始めてみる俺は思わず彼女をそっと摘んで手のひらの上に乗せると、まじまじと観察をし始めた。 キラキラと輝く双眸でこちらを見つめながらぽよぽよと柔らかい体を動かしつつ、何度も俺にあの言葉を投げかけてくる。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「れいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりぃー・・・ゆっくりぃ~・・・!?」 そうして俺が子れいむと戯れている間もれいむとまりさはゆっくりしていってねを連呼していた。 もっとも、れいむの方は途中で2匹目を生む作業に入ったらしく、いささか苦痛交じりの声色だったが。 しかし、そこまで言われてはゆっくりしない訳にも行くまい。 「なあ、おちび? お前はどうゆっくりして欲しいんだ?」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりぃ~・・・!?」 俺の問いかけに首をかしげながら毎度の言葉を返した子れいむ。 こいつの大きさではまりさのように椅子には出来ないし、れいむのように出産シーンの披露というのも無理だろう。 そこまで考えて、不意にゆっくりが饅頭であることを思い出してしまった。 「お前・・・産まれたばっかなのにそこまで・・・」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりぃ~!?」「ゆっくりしていってね!」 そのゆっくりとしての氏名を全うせんとする子れいむの覚悟を前にして、俺は深く感動した。 そこまで言うのなら、その想いを無碍にするわけには行かない。 ゴクリとつばを飲み込み、すぅっと息を吸い込んでから、子れいむと目を合わせないように目を瞑ったまま彼女を口に含んだ。 「ゆっくりしていってね!ゆっくり!ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!?ゆっくりしていってね!?」 「ゆっくりー!ゆっくりしていってね!?」 直後、口の中から子れいむが俺にさあゆっくりしろと言わんばかりに「ゆっくりしていってね!」と声をかけてくる。 その光景を目の当たりにしたれいむもまた、我が子の晴れ姿に感涙しながら「ゆっくりしていってね!」を連呼する。 ただ、まりさはその様子伺うことが出来ない状況にあったためにれいむと比べると反応が薄く、なんとなく気の毒だ。 「まりさ、お前達の赤ちゃん・・・とても美味しかったよ」 「ゆゆっ!?ゆっくりー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりー!あかちゃん、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 俺がまりさの子どもがいかにゆっくりとしての責務を立派に果たしかを伝えると、俺の尻の下で歓喜のあまりにじたばたと暴れ始めた。 一方、れいむはそろそろ2匹目が産まれそうになっているらしく、一生懸命これから産まれるわが子にゆっくりのあり方を説いている。 数十秒後、新たにこの世界に生を受けた子まりさは姉のれいむと同様にゆっくりとしての使命と天命を全うした。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「おいおい、雨がやんだから仕方ないんだ。分かってくれよ・・・」 気がつけば雨が小降りになっていて、俺が穴ぐらを出ようとすると2匹は柔らかい体を摺り寄せてきた。 どうやらまだ俺と一緒にゆっくりしたいらしい。いじらしい奴らだ。 しかし、小降りになっている間に家に帰るためには急がなければならない。 「そうだ!まりさ、この帽子を傘代わりに借りて行くぞ?」 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「ほら、晴れてるときに返しに来るから!そしたらその時また一緒にゆっくりしよう、な?」 それでもなおも食い下がる2匹を少し乱暴に引っぺがし、俺は家路を急いだ。 それから数日後のある晴れた日、俺が帽子を返しに行くとまたしても熱烈な歓迎を受けた。 どうやら新たに子どもを産んだらしく、5匹ほどの以前のものよりも小さな子ゆっくりの姿があった。 彼女達もまたゆっくりとしての使命に殉じることを至福とするとてもゆっくりした連中ばかり。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってねー!ゆっくりしていってねー!」 彼女達の願いを聞き届けて5匹とも食べ終えて家に帰ろうとする俺をまたもや引きとめようとする2匹。 今回はれいむのリボンを再開の約束の証として貰い受け、ゆっくりとした気分で家に帰った。 ---あとがき--- いまどき珍しい「ゆっくりしていってね!」しか言えないゆっくり。 このタイプは人間にとってはもっとも都合の良い存在かもしれませんね。 byゆっくりボールマン このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3171.html
ゆっくり突撃していってね! 前回までのあらすじ! 政府が宣戦布告したよ!以上! 遂に時は来たれり。 我が大湯作理帝国の反撃が始まる。 まずは旅順を攻撃することになった。 「れみりゃをたおすんだぜー!」「「ゆっゆっおー!」」 ゆっくりの思惑はこうだった。 れみりゃはたしかに強い。 しかし、こちらは軍備的な差があると思っていたのかと思っていた。 しかし、現実は違った。 何とれみりゃは、 「重機関銃」を持っていたのだ。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!いだいいいいいいいいいいいいいいい!!」「ぼうやべでえええええええええええええええええええ!!!!!」 「ゆうう…どんどん味方がえいえんにゆっくりしまくっているよ…」「もうここを攻めるのはむりなんだぜ…別の所を攻めるのぜ。」 こうして、ゆっくりたちは旅順港を攻めるのを辞め、203高地を攻めることになった。 そして、ゆっくりたちが撤退したことで、れみりゃは歓喜した。 「れ☆み☆りゃ☆う〜!」「やっぱりえさはざこだう〜!」 れみりゃは超ムカつく。はっきり分かんだね。 その頃ゆっくりたちは… 「これから203高地を攻めるのぜ!気合をいれるのぜ!」「「「ゆっゆっおー!」」」 しかしここにも要塞があった。 そこで、ゆっくりたちは、一斉突撃をかけることにしたのだ。 「これより!とつげき!をかいしするよ!つぎにあうときはやすくにだよ!」「「「わ、わかったんだよー!「ぜ!」」」」 「とつけきーーー!!!!」「「「ゆーーー!」」」 突撃した瞬間、重機関銃から弾丸が放たれた。 しかし、こちらもおめおめと同じ作戦にかかる訳にはいかない。そこで、重機関銃を跳ね返す盾を開発したのだ。 キンッ!キンッ! 「うー!どうしてきがんじゅうがとおらないのおおおおおおお!?!?」 「クックック!機関銃なんかきかないよ!なんたってこのたてがあるんだからね!」 「どぼじでええええええ!?!?ぎがんじゅうがぎがないなんでええええええ!?!?」 「さぁ…」「「「「反撃開始だよ!「ぜ!」」」」」 続く
https://w.atwiki.jp/ltltgtgt/pages/242.html
《ゆっくりしていってね!!!》 AAネタのひとつ。 「上海アリス幻楽団」謹製の同人シューティングゲーム「東方Project」作品群の主役格である霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)と博麗霊夢(はくれい れいむ)に酷似した(ここ重要)謎の生首が「ゆっくりしていってね!!!」と叫んでいるAAが元ネタ(下参照)。 あまり気に掛けられていないようだが「!」の数は基本的に3つ。 _,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_-''" `''> ゆっくりしていってね!!! <ヽ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ __ _____ ______ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 'r ´ ヽ、ン、 rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 ,'==─- -─==', ir-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i |,' ノ !'" ,___, "' i .レ' L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| ( ,ハ ヽ _ン 人! | ||ヽ、 ,イ| ||イ| /,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ 一応、右が「ゆっくり魔理沙」、左が「ゆっくり霊夢」と言う名称。 神主(東方の生みの親であるZUN氏)による原画や、東方シリーズの大半の二次創作とは似ても似つかない憎たらしさを持っている。デフォルメされているとはいえ、馬鹿にしたような目つきといい下から煽った形のアングルといい、人を寛がせようとする意思は殆ど伝わってこない。かわいく見えてきたら末期とも言われる。 また、同作品群の別キャラクターに酷似したゆっくりたちも「それぞれに似た全く別の生物である」ということになっている。 2008年1月前後から「2ちゃんねる」などのゲーム関連のスレで散見されるようになり、その後全板に飛び火する中でガイドライン板(ガ板)に 「ゆっくりしていってね!!!のガイドライン」 スレが立ち(2008年2月3日)、また無数の改変バージョンが生まれることとなった。 しかし、この元ネタそのものは不明。 一説には『ある同人作家のファンが作成、その関連スレに書き込み、それを東方ファンらが気に入って他の掲示板などにコピペ。信者、アンチ巻き込んでの流行となった』…といわれるが、槍玉に挙がった当人がこれを否定しており、発祥地や誕生のきっかけについて統一された見解は未だ存在しないと言われる。 しかし、いわゆる「ゆっくり霊夢」はかつてその形状から「霊夢まんじゅう」、あるいはそのプロトタイプの一つとされるAAに使われる文字列から「ケヒヒ霊夢」などとも呼ばれ、それらは少なくとも2004年ごろから存在したとも言われており、ルーツをたどれば意外にその歴史は古いようだ。 やがて2007年夏頃に対となる「ゆっくり魔理沙」AAが作られ、関連スレや板でネタが洗練されるうちに今の形になったと思われる。 あまりによく使われるために、これを中心とした同人および二次創作作品、AA板にありがちな虐待ネタなども多数作られた(AA板のしぃ虐待ネタ衰退により虐待ネタ師がゆっくり虐待へシフトしたという説も)。 しつこいようだがあくまでゆっくりたちと大本となった東方キャラとはまったく別の生物であり(二次創作では同じ場所に霊夢と複数匹のゆっくり霊夢両方がいたりするという描写も多い。他キャラについても同様)、まとめwikiによればゆっくり生物の大半はまんじゅうなどの御菓子類であるようだ。さらに舞台である幻想郷とはまた別世界の生物であるらしく、ゆっくりたちがどのようにして住み家となる世界と幻想郷を往来しているかも不明であるという。 「ゆっくり~していってね!!!(しないでね!!!)」などという口調で喋ったり、「ゆっゆっ」などと鳴くことがある。しかしこれもすべてのゆっくり生物で共通した特徴ではなく、例えばこの派生である「きめぇ丸」は「おお、こわいこわい」と言う(元々スレが荒れた時どのゆっくりもこの台詞を吐いたが、きめぇ丸登場後はほとんどきめぇ丸の当たり役になっている。また、この台詞の改変も多い)。 このように基本的な「ゆっくり」たちの生態は明らかではなく、動きや大きさ、身体的特徴もネタの製作者やそのキャラによってまちまちである。小さいものでは手乗りサイズのものから、大きいものだとビル並み、時に山よりもでかかったり果ては小惑星並みのメガトンサイズゆっくりも存在する。 また生首だけでなく、四足動物のような胴体を持っているかその他諸々の合成生物であったり(きめら丸、カオス丸など)、人間と全く変わらない四肢があったりする(のうかりん、きもんげなど)場合もある。生殖機能も雌雄同体だったり雌雄異体だったり、アメーバのように分裂して増えたりするなど様々な解釈がある(胎生の場合もあるが、幼生体が母体の頭から伸びたツル状の何かに、まるで植物の実のようにぶら下がって生えてきたりもする)。 動く時もぼよんぼよんと跳ねたり、リニアモーターカーのように宙を浮いてすべるように移動したり、台車(時に乗用車や戦車、戦闘機)のようなものに乗ってスィーと移動したりと明確な決まりはない。別の全身があるゆっくりが首だけ(?)のゆっくりを台車に乗せて運ぶこともある。 その解釈の自由さゆえに、多種多様なMADやネタが作成される…のだと思う。 イラスト化された中ではウッーウッーウマウマ(゜∀゜)のネタとの複合バージョン(ポーズはウマウマでキャラの顔と台詞が「ゆっくり」というパターン)もよく見られる。 現在では他のゲームのキャラを用いたモノも存在し、かごめスレにかごめだけのゆっくりAAが貼られたこともあったほか、熱帯のコメント設定で「ゆっくりしていってね!!!」を使う者も散見されるようになった。一時、当wikiのトップにきゃんで&ひなバージョンが使われたこともある。 余談だが、ニコ動の海外版ではゆっくり関連動画のタグに「take it easy!!!」とつけられる事が多い。 「take it easy」は「ゆっくりする」「気楽にやる」の意味である。 ゆっくりしていってね まとめwiki(総本家) http //www8.atwiki.jp/yukkuri/
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5208.html
※初投稿 色々本気にしちゃいけない 【ゆっくり歌っていってね!】 「さぁ始まりました新コーナー【ゆっくり歌っていってね!】のお時間です。司会の私と、そのアシスタントの二人でお送りしていきます」 「よろしくお願いします」 「さてこの新コーナー【ゆっくり歌っていってね!】は視聴者の皆様もお馴染みの腐れ饅頭『ゆっくり』が、我々人間が聞くに耐え得るまでの歌声を獲得するまでの様子を実際にご覧いただきながら調教していく番組です。 なんです? あの腐れ饅頭共に人間の歌を歌わせるなど、無理な話だ、ですって? 確かにゆっくり達の歌声は、そのままであれば聞くに耐えないものです。ですが、少しの技術と情熱さえあれば、それは決して不可能ではないなのです。 まだ信じられませんか? では、論より証拠、実際に調教していきましょう。アシスタントくん、準備を」 「かしこまりました」 「さて、準備が整ったようです。 ここに有るのは皆様お馴染み、腐れ外道なクソ害獣ことゆっくり。今回は一番ポピュラーなれいむ種を用意させていただきました」 「ゆっくりしていってね! かわいいれいむにあまあまさんもってきてね! ぐずはきらいだよ!」 「言葉遣いからもお分かりかと思いますが、こちらのれいむはアシスタントくんがレストランの裏手のゴミ箱で捕まえてきた野良れいむです。 ゆっくりを歌わせるのに、バッジや血統や性格は関係ありません。ただゆっくりであれば良いのです。 もちろん、衛生面が気になる方はペットショップや食料品店などで購入されたゆっくりでも構いません」 「なにしてるのおねえさん! れいむのいうことがきこえないの? ばかなの? しぬの?」 「ではまずこのゆっくりに五十音表を手渡し、読み上げさせた声を録音します」 「ゆ? なにこれ? れいむはあまあまさんをもってきてっていったんだよ? きいてたの? やくにたたないどれいだね!」 「こちらの言うことを素直に聞かない時は、死なない程度に痛めつけます。今回は三十路前にして恋人の一人もおらず体力だけは有り余ってるアシスタントくんにやっていただきましょう」 「この五十音表を読め」 「なにいってるの? どれいのぶんざいでれいむにめいれいしなぶぎゅるっ?!」 「読め」 「どぼぢでごんなごどずるぶぎゃっ!?」 「読め」 「おわびとしてあまあまさんぼげらっ!?」 「読め」 「どれいのぐぜにどぼぐぎゅるっ?!」 「読め」 「ぼうやだ! でいぶおうぢがえぷぎょお!?」 「読め」 「ぼうやだ! いだいのやだごっ!?」 「読め」 「ぼうでいぶにいだいごどじなぐっぎょぎょぎょぎょ?!」 「読め」 「よびまず! よびばずがらやべっ?!」 「読め」 「よぶ! よぶがらっ! いだいのやぶひゅう!!」 「読め」 「ぐす…あ、あぁ、いぃ、うぅ…」 「さすがはアシスタントくん。問答無用の拳のラッシュでゆっくりに五十音表を読ませることに成功しました。 録音が終わるまでは暇ですので、のんびりと揚げ饅頭でも齧っていましょう」 「……たぁ、ちぃ、つぅ、てぇ……れいむおなかすいたよ! どれいはぐずぐずしないであまあまさんもってきごぼぉっ?!」 「録音の途中で雑音が混じった場合も気にせず録音を続けましょう。あとでどうにでもなります。 ここで優先すべきは『ゆっくりの声の録音』ですので、声さえきちんと出せれば問題ありません。 言うことを聞かなければ、死なない程度に痛めつけましょう」 「わぁ、をぉ、んん……ぜんぶよめたよ! だからごほうびにあまあまさんをぶごべっ?!」 「五十音が終わったら次は濁音、半濁音の録音です」 「ぼうやだおうぢがえるぅぅぅぅ!!」 「録音が終わるまでは暇ですし、ここはしばらくアシスタントくんに任せましょうかね」 「だれががわいいでいぶをだずげでよぉぉぉぉぉ!!」 「おや、ようやく録音が終わったようですね」 「ゆっぐ……ゆっぐぢ……ぢだい……」 「この間15歳下の従兄弟とマジ喧嘩をし、父親にこっぴどく叱られた鬱憤を大人げなくもゆっくりの調教で晴らしたアシスタントくんの猛攻により、用意したゆっくりがボロ雑巾同然のゴミになってしまいましたが、このゆっくりはまだ使いますのでとって置いてください。 ただ、しばらく出番がありませんので、精神が死なない程度にボコっても構いません。と、言うわけでアシスタントくんやっちゃって」 「かしこまりました」 「ゆっぐぢ! ゆっぐぢぢでいっでよぉぉぉぉぉぉ!!」 「ではここからは私のターン。 まず、先ほど録音したゆっくりの音声データをPCに取り込み、波形編集ソフトに読み込ませます。ここでノイズや要らない雑音、打撲音などを切り取って除去してしまいましょう」 「ゆっぐぢ! ゆっぐぢ! ゆっぐぢじでいっでぼらっ!?」 「ある程度ノイズの除去や波形の編集が出来たら、次はこの修正した音声データを音声切り出しソフトに読み込ませます。そして一音一音丁寧に、子音や母音が途切れないように音を切り出していきます。 地道な作業ですが、頑張りましょう」 「おうぢがえるぅぅぅぅ! がえらぜえぇぇぇ! ぼうにんげんざんをいじべないがぼぎゅう?!」 「全ての音が切り出せたら、それら全てをひとつのファイルに書き出します。ファイル名はなんでも構いません。ここではまぁ、便宜上『ゆっくり』とでもしておきましょうか」 「おねーざんだずげでよぉぉぉぉぉ! がわいいでいぶがごまっでるのにぃぃぃぃぃぐっ?!」 「そしてその書き出したファイルを、某フリー音声切り貼りソフトに食わせます。 これで終わり? またまたご冗談を。ここからが一番のキモですよ」 「おにーざんぼうやべで! でいぶなんでぼずる! ずるがらぼういだいのやだぁぁぁぁぁぁ!!」 「某フリー音声切り貼りソフトを開き、先ほどの『ゆっくり』というファイルを選択してからエディタを起動。まずはここで周波数表を作らないとお話になりません。 お使いのPCのスペックにより異なりますが、全ての周波数表を作るまでにだいたい30分から1時間ほどかかります。 その間に、ゆっくり本体の加工を済ませてしまいましょう。アシスタントくん、お願い」 「かしこまりました」 「ぼうやべでぇぇぇぇぇ!!」 「ではまず、髪の毛と邪魔なお飾りを取っ払います」 「やべで! でいぶのぎれいなおりぼんざんがぁぁぁぁぁ!! でいぶのぎゅーでぃぐるべあーざん! もどっでぎでぇぇぇぇ!!」 「次に、口と目を潰します。どう潰していただいても構いませんが、今回はオーソドックスに焼いた鉄の棒で潰していきましょう。 他にもボンドを使ったり、小麦粉で塗り固めていただいても構いません」 「あつあつさんはゆっくりできないよ! ゆっくりどげべべべべべっ!?」 「目はもう泣いたりできないように焼き潰し、口は特に念入りに焼いていきます。もう二度と食事をしたり、声を出したりしないように。こうすることで後々の雑音を防ぐ効果と、加工がやりやすくなる効果があります」 「……! ……!?」 「さすがはこの間父親とガチ喧嘩をし、三十路前にして衆目に晒されながら父親の本気のスパンキングを受けた アシスタントくん。仕事に余念がありませんね。 ではこの焼いた口の中に、ワイヤレスのスピーカーを突っ込み固定します。先ほど念入りに焼いたので、消化される心配もなく安心ですね」 「……!! ……!?」 「焼いた口の中にワイヤレススピーカーを固定して設置したら、その口を閉じ、その上から塗り固めるように水溶き小麦粉をハケで塗っていきます。 これは口だけでなく、ゆっくりの体全体に塗ってください」 「……! ……!!」 「さて、こうして出来上がった美味しそうなお饅頭に、『ゆっくりなりきりラバーマスク ~れいむ~』を貼り付けます。 そして周りの皮との境目が分からなくなるよう、ハケで念入りに水溶き小麦粉を塗っていきます」 「……!! ……!!」 「貼り付けたラバーマスクと皮の境目が分からなくなったら、次に『ゆっくりなりきりウィッグ ~れいむ~』をだいたい頭頂部に、違和感のないよう固定します。これは接着剤などできっちりと貼り付けましょう」 「……! ……!」 「はい、これで先ほどとは比べものにならないくらい綺麗な『れいむ』が出来上がりました。 ……おや、ちょうど周波数表の製作も終わったようです。では詰めの作業に移りましょうか。 アシスタントくん、このゆっくりの微調整よろしく」 「かしこまりました」 「……!! ……!!」 「では、先ほどと同じように某フリー音声切り貼りソフトのエディタを開きます。そして、なにもないところをダブルクリック。 こうすると、ソフトがテキトーに音の調整をしてくれます。 時間の都合上説明は省きますが、詳しいことは番組テキストに載っていますのでそちらでのご確認をよろしくお願い致します。 ……さて、これで準備が整いました。実際にソフトのピアノロール上に音符を置き、歌わせてみましょう。 まずはシンプルに、『ドレミファソラシド』から。 ピアノロール上に音符を置き、再生。すると……?」 『ど~れ~み~ふぁ~そ~ら~し~ど~♫』 「無事、あのゆっくりの中のワイヤレススピーカーから音が出ましたね。 どうです? あの音痴なゆっくりの声から、このようにちゃんとした音階を持った歌声を作り出すことに成功致しました。どうですか? アシスタントくん」 「素晴らしいですね。同じゆっくりとは思えません」 「そうでしょう。けれど、まだちゃんとした『歌』とは言えませんね?」 「そうですね。音階をなぞるだけでは『歌』とは言えません」 「ですので次回からはこのゆっくりを使い、実際に歌を歌わせながら調教の仕方を解説していきたいと思います。 アシスタントくん、今日はありがとうございました」 「いえいえ、こちらこそありがとうございました」 「それでは皆様、今日はこの辺で失礼致します。 司会は私、DTMお姉さんと」 「そのアシスタント、ボーカルお兄さんがお送り致しました」 「「それでは皆様、また来週、お会い致しましょう」」 続く? そんな訳で初投稿作品でした。 綺麗に歌うゆっくりって、こんな手順でつくってるんだと、思う。