約 1,127,602 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/548.html
※注意※ さなえしか出てきません。 文章が単調な気がします。 直接的な虐待描写はありません。 タイトルに肉便器とありますが性描写はありません。 幸せな肉便器* 近くの高架を列車が走るたびにその部屋はカタカタと揺れた。 部屋には窓がひとつしかなく、その上その窓はスモークガラスで外の様子を伺うことはできない。 だが、外から漏れて来る楽しげな音楽や呼子の声からここが繁華街であることは容易に想像できる。 ビジネスホテルのような内装。その中で存在感を際立たせているのは白で統一され嫌に清潔感を放っているベッドだ。 男はベッドのそばのいすに前後逆さにすわり、背もたれの上に腕を組みながら白いベッドに横たわる一匹のゆっくりを眺めていた。 不意に男は立ち上がりその部屋を後にする。 静かに扉を閉めると外にいる若い女に声をかけた。 「……このサービスの調子はどうだい?」 「いたって好評です。マネージャー」 「そうか。グレーっちゃグレーだけど今のところお咎めは無いからね」 「ええ。する側、される側、両者とも同意の上ですから」 廊下の突き当たりにあるエレベーターの前に立つ。相変わらず外は騒がしい。 「同意の上、ね。まあ確かにそうだよな」 そういうと男は後ろを振り返る。 どこか遠くを見るような目で先ほどの部屋の扉を見つめた。 「そんなことしても、あの子の気持ちは分かりませんよ」 女の言葉に決まり悪そうに視線をエレベーターのボタンに移すも、男のその視線は泳いでいた。 「そりゃあそうなんだけどね」 男は背負ったものを降ろすように肩を下げため息をついた。 「きっと幸せですよ、あの子は」 「だといいんだけど」 男は逃げるように足早にエレベーターに乗り込んだ。 その背中を心配するような、あきれたような、細い目で眺めながら女もその後を追い、閉まる扉の向こう側へと姿を消した。 ゆっくりさなえはある夕立の激しい午後に、ゆっくり専門のペットショップで生まれた。 生まれたのは3匹のゆっくりさなえ、そのうちの末っ子としてそれは生まれた。 血統書(といっても、ゆっくりに血などないが)が付いた所謂「高級希少」なゆっくりとして、比較的幸せな星の元に生まれたといえるだろう。 すぐさま職員が泣き喚く母親から強引に赤ゆっくりを奪い、生まれた子供たちをそれぞれ別のケージに隔離する。 3匹それぞれが別の職員の手によって丁寧に育てられてゆく。 そのさなえを担当したのは研修が取れたばかりの新人の職員。 毎日毎日規則的に体を洗い、食事を与え、やさしく語りかけるその姿はまるで母親の様であった。 ある日を境に度々ゲージの外へと出られるようになった。 狭いが静かで快適なゲージと比べ、外はすこし寒くてうるさかったが、今まで見たことのない広い世界に目を輝かせるさなえ。 ゲージを出されてすぐに、さなえは「ごはんのとりかた」を教わった。 手取り足取り丁寧に教えてくれる「母親」の期待にこたえようと、さなえはがんばって手ではなく道具を使うことを覚えた。 「さすがはさなえ、いい子ね」 「血統書付きだけのことはあるな」 「母親によく似て飲み込みの早い子だ」 みんなに褒められた。「母親」に似ていると言ってなでてもらえた。 嬉しそうに周りに頭を下げる「母親」の姿に、さなえも思わずほころんだ。 やさしく諭すように教えてくれる「母親」にさなえはとてもあこがれていた。 さなえは飲み込みが早く、新しいことを覚えてぐんぐんと前に進む度に、「母親」はさなえを良い子だと言って褒めた。 暖かい寝床があり、おいしいご飯があり、やさしい「母親」がいた。 さなえにとって世界はそれが全てだった。 やがて品評会で第一級品の印を押されたさなえは、すぐにある老夫婦に引き取られることが決まった。 だがさなえはどこに行ってもゆっくりできる事を確信していた。 自分の「母親」が教えてくれたこと、それさえ守っていれば思う存分ゆっくりできる事を知っていたからだ。 だからもう、「母親」に頼らなくても、一人でも大丈夫だと思った。 「この世界」で生きていけると信じていた。 ペットショップを去るその日まで、彼女は「自分のいる世界」を知ることはなかった。 「それに比べてお前はなんだ」 「どうしてあの子のようにできないの」 「お前はそれでも姉なのか」 「悪い子!きっと父親に似たのね」 さなえがゲージの中にいる間、どんな言葉が飛び交っていたかを彼女に知る由は無い。. 姉達がどんな目で自分のケージを眺めていたかなど、知る由は無い。 さなえはひとつ、大きな間違いを犯していた。 そしてさなえは気づかない。その世界の根底を覆す大きな誤りに。 * 「母親」の言いつけを守ったさなえは、ますますゆっくりした日々を送っていた。 老夫婦は礼儀正しいさなえをとてもかわいがった。 広い屋敷を自由に歩き回り、起きている間はずっと老夫婦が遊んでくれた。 老婦人が作るご飯はとてもおいしいものだった。 さなえが絵を描けば、老夫婦は上手上手と褒めてくれた。 さなえが踊りを踊れば、手拍子して一緒に楽しんでくれた。 さなえが家事を手伝えば、偉い偉いとなでてくれた。 何一つ不自由は無かった。 子供が独り立ちし、田舎に二人暮らしとなった老夫婦にとってさなえは「孫」そのものであった。 さびしい思いをしていないかと心配した息子が老夫婦にゆっくりを買うことを勧めたのだ。 さなえの世界は全く変わらなかった。 「母親」という存在が、老夫婦という存在にかわっただけであった。 まださなえは気づかない。その世界の根底を覆す大きな誤りに。 * ある日、老夫人が亡くなった。 夫がいなくなり、管理に負えなくなった老婦人はその家を明け渡すことにした。 老婦人は都会の息子家族の元へと行った。 だが、息子家族が住んでいた集合住宅にペットを持ち込むことはできなかった。 老婦人はさなえを手放すことに気を揉んだがどうすることもできなかった。 これから居候する身である。無理を言って息子夫婦に迷惑を掛けることはできなかった。 だが、さなえを飼う事を勧めたのも息子だった。 息子は仕方が無いよと老婦人を諭し、ある若い男にさなえを託すことにしたのである。 彼はその男に強い信頼を置いていたし、その男の人柄を良く知っていた。 決して悪いようにしないでくれ、と強く念を押し、彼はさなえをその男に渡した。 若い男はゆっくり喫茶というゆっくりにウェイトレスをさせるカフェレストランを取り仕切っていた。 かわいい、心を癒されると若い世代にとどまらず、中年層でも話題になっているちょっとした有名店だった。 ゆっくりにストレスの無い様に職場を調整していた彼は、さなえもここに加えてみてはどうかと考えたのだ。 さなえは人間慣れしている上に、きちんと躾をされており、尚且つ希少種であった。 きっとさなえも寂しい思いをせずにすむだろう、と彼はそのままさなえの配属を決めた。 だが、彼はここで気づいてしまった。さなえの世界の大きな誤りに。 さなえはまだ気づきたくなかった。その世界の根底を覆す大きな誤りに。 * ウェイトレスとしての船出はきわめて順調だった。 さなえはすぐにその愛らしさから店の人気者となり、ほかのゆっくりとも難なく打ち解けた。 やさしいマネージャーがさなえに店のルールや配膳の仕方を教えていた。 さなえはショップに居た頃を取り戻したような、懐かしい気分になっていた。 だが同時に、さなえはある事に不安を覚え始めていた。 それを肯定する事は「自分の世界」を否定する事を、さなえはもしかしたら知っていたのかもしれない。 一方の男は安心していた。まださなえは「自分の世界」に居たからだ。 だが男は気が気でしょうがない。 もし、さなえが「本当の世界」を知ってしまったら。 「さなえの世界」と「本当の世界」は180度の違いを持っていた。 きっとさなえは本当の世界を受け入れることはできないだろう。 それは余りにも残酷だった。 きっとさなえは壊れてしまう。 悪いようにはしない、といった以上、彼女の世界を守ってやらなくてはならない。 男が悪いわけではない。だが、男はさなえの痛々しいほどの愛嬌に、胸を締め付けられる思いだった。 だが、男の恐れる事態は程なくして現実のものとなる。 それはたった一言の簡単な言葉。 「きみのような礼儀正しいゆっくりをはじめて見たよ」 ……なにをいってるんだろう? さなえは不思議そうに首をかしげた。 「はは、やっぱりゆっくりはかわいいなぁ」 そういって、客はさなえの頭をなでた。 ……ちがうよ。さなえはそんなんじゃないよ。 「謙遜しちゃってさ、あー、俺も飼いたいなぁ、ゆっくり」 ……だからちがうっていってるでしょ。 「さなえは……さなえはゆっくりじゃないもん!」 そう叫ぶとさなえは持っていたトレーを男性客に投げつけた。 「うわっぶ!」 男の白いシャツが炭酸飲料水で薄黒く染まる。 それはまるで早苗の真っ白な世界に、一気に広がってゆく深い雨雲のようで。 その黒い雲はとどまることなく、その面積を広げていく。 騒ぎを聞きつけた男が飛んできた頃には、もうさなえは壊れてしまっていた。 さなえは「自分の世界」から「自分の居る世界」に引き戻されてしまった。 ――本当はきっとどこかで分かっていた。 自分がゆっくりであり、人間ではないことを。 でも、自分は人間に育てられてきた。 人間を母親とし、人間に囲まれて、人間の為に生きてきた。 だから当然、自分も人間であるに違いないと思ってしまった。 でも、考えてみればおかしいことばかり。 どうしてゲージに入れられていたのだろう? どうして同じご飯を食べられなかったのだろう? どうして他人の家に引き取られていったのだろう? どうして自分だけ、連れて行ってもらえなかったんだろう? どうしてまわりにゆっくりしかいないんだろう? どうして……わたしと良く似た姿をした子がこんなにたくさん居るんだろう? どうしてわたしは――人間として生まれてこれなかったのだろう? 「ちがうもん!ざなえはゆっぐりじゃないもん!ぢゃんどじだにんげんだもん!ほんどぉだもん!」 暴れるさなえを抱きかかえると、男はバックヤードへ飛んでいった。 教育係だった女性が男性客に頭を下げている。 「いやぁツンデレ?あぁヤンデレかな?いいねぇ、斬新でゾクゾクしたよ」 男性客はいいよいいよとあっけらかんと笑っていた。 きっと彼に悪気は無い。いや、きっと彼が言わなくともさなえはが悟る日はそう遠くなかったはずだ。 その後、さなえは仕事に戻ろうとはしなかった。 あのカフェが「ゆっくり喫茶」であることが分かっている以上、さなえはあの仕事を二度としようとは思わないだろう。 たださなえのプライドだけが、自分が人間であるとしてさなえを支えていた。 さなえの世界は正しい世界に戻った。 だが、さなえは正しい姿に戻ることはできなかった。 生まれてきてずっと信じていたことを否定されて、ホイと投げ出せるわけが無かった。 男の姿を見ると、さなえは駆け寄りこういうのだった。 「にんげんのしごとがしたい、にんげんのしごとがしたい、にんげんのしごとがしたい……」 輝きの無い瞳でそうくりかえすさなえに、男は押しつぶされそうになっていた。 だが、人間の仕事がそう簡単にゆっくりにできるわけが無かった。 どこに行ってもかならずゆっくりとしての扱いを受ける。 そんな折、彼は上層部から新しい企画がある事を聞いた。 最初こそ反対していたものの、彼はその企画に救いを見出した。 それは、救いと呼べるとは到底思えない余りにも酷い商売。 だが、さなえがそれで満足してくれるのであれば…… * 10号室は現在1番人気の部屋だ。 従順で可愛らしい「彼女」に魅入られたリピーターと、口コミを聞いてやってくる客。 10号室にはある特別ルールがあったが、それさえ守ればあとは何をしても構わない。 従順な彼女は、頼まれたことは何でもやってくれるだろう。 そのうえ希少種胴付きである。マニアから言わせれば所謂「生唾もの」らしい。 ゆっくりヘルス「TIE」、10号室はさなえの為に設けられた特別室。 特別ルールは「ゆっくり」という単語を口にしないこと。 その部屋からは、今日もまた甘い声が聞こえてくる。 「彼女」は今日も腰を振る。 その場でのみ、彼女は人間との対等な関係を許されていた。 彼女が「人間」で居られる場所。「彼女の世界」そのもの。 それが例え「性の対象」という意味でも、彼女はきっと幸せなのだろう。 彼女の世界は小さくなってしまった。 でも、彼女はその世界で生きていけた。 「人間として」生きていけた。 あとがき-- 大富豪の御題作品。 さなえがクセが無くて一番書きやすそうだったのでさなえで書かせてもらいました。 さなえ好きなヒトごめんなさい。 すまれみりゃ ゆっくりいじめ系1989 ゆっくりいじめ系2006 ぱちゅりーと鉄塔 ゆっくりいじめ系2011 満月の夜とひとりぼっち ゆっくりいじめ系2034 紙のさくやさくや ゆっくりいじめ系2092 はじめてのチュウ ゆっくりいじめ系2222 7本の稲荷寿司を捜し求める虐待お兄さんと愛と勇気のヌビビビンビドゥ ゆっくりいじめ系2432 SSがあっぷされるまで ゆっくりいじめ系2925 つきのいなば ゆっくりいじめ小ネタ366 爆裂資産 ゆっくりいじめ小ネタ540 YUKKULIFE7月号 切り抜き記事 じんちゅー 選択肢 投票 超カリスマ (319) 無カリスマ (29) このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/561.html
木の根元に作られた巣の中で、ゆっくりの子供達が遊んでいる。 4匹居るれいむはゆーゆーと音程を無視した歌を歌い、 2匹居るまりさはそう広くない巣の中でぐるぐると追いかけっこをしている。 前を跳ねるまりさが息を上げて速度を落とすと、追いかけて来たまりさが後頭部にのしかかる。 逃げようとする動きと押さえつけようとする動きが、次第にすりすりへと変わって行き じきに満足したまりさ達は走り混んだ疲れからぽてっと座ると、空腹を訴え始めた。 「ゆぅ、おなかちゅいたよ!」 「ごはんたべちゃい!」 子供達はまだ赤ちゃんゆっくりより少し大きいくらいのサイズで、 体内に栄養を多く溜め込んで置くことが出来ない。 加減を知らず遊びたいだけ遊んだまりさ達の体力は、 既に放っておけば命にかかわる所まで消費されていた。 「ゆゆ…でもごはんがにゃいよ?」 「おかあしゃんがごはんをとってくりゅよ、がまんしちぇね」 「がみゃんできにゃいよ! ゆあ゛ぁぁぁぁん!」 体力を温存しようとせずに騒がしく泣き出すまりさに、つられてれいむ達の目にも涙がこみ上げてくる。 この巣には食料の備蓄が無く、小さい子供は外に生える草の存在を教えられていない上 危ないので巣から出ないよう親から強く言われている。 何の打開策も持たない子供達は、ただ泣くことしか出来ない。 子供達の泣き声の合唱が巣の外にも漏れて聞こえ始めると、程なくして1匹のゆっくりが飛び込んできた。 「ゆっ! ゆっくりかえってきたよ! ゆっくりなきやんでね!」 「ゆうっ! おかあしゃんおかえりなしゃい!」 「ゆあぁぁん! おにゃかしゅいたよ!」 「ゆっくりごはんたべさしぇてにぇ!」 「ゆ! ゆっくりたべてね!」 帰ってきたゆっくりを見るなり子供達は泣き止み、すぐにごはんの催促を始める。 催促を受けた母親、成体のゆっくりれいむが膨らんだ頬からゆべぇ、と食料を吐き出すと 子供達が群がり見る見るうちに平らげていく。 「がつがつ、むっちゃむっちゃ! がつがつ、むっちゃむっちゃ!」 「ゆっ! まりしゃばっかりじゅるいよ! れーみゅのぶんものこしちぇね!」 「「むっちゃむっちゃ、むっちゃむっちゃ!」」 走り回って体力を消費していたまりさ達は一心不乱にがつがつと食い漁り、 取り分がなくなっては困るとれいむ達も競うように掻き込む。 まりさ種と比べ狩りが得意ではなく、物を運ぶ手段も口に含むしかないれいむが持ち帰った食料は 6匹の子供に食べさせるにはまったく足りていなかった。 「ゆゆっ、もっとたべちゃいよ! ごはんちょいだいね!」 「おかーしゃんごはんちょうだい!」 「じぇんじぇんたりにゃいよ!」 「ゆっ、す、すぐとってくるからゆっくりまっててね!」 次々と不満を漏らす子供達に、親れいむはまた狩りに出かけて食料を取ってくると伝え 全然ゆっくりすること無く巣から飛び出して行く。 この家族は片親だった。数日前巣にやって来た人間が親まりさを連れ去ってしまい、 それまで親まりさが担当していた食料集めを親れいむがしなくてはいけなくなった。 その結果、親れいむが狩りに出ている間に子供達を見る者がいなくなると、 体力の温存を考えられない子供達は疲れきるまで遊び、 親が残していた備蓄を2日もせずに食い尽くしてしまう。 親れいむは巣と狩場を1日に何往復もし、夜が来たら泥のように眠る生活を続けていたのだった。 親れいむが再び狩りに出かけ、残された子供達が少しだけ回復した体力を また遊びで消耗しようとし始めた時、巣の入り口の偽装ががさがさと外され 人間がぬっと顔を覗かせた。 「ゆゆっ?」 「やあ、ゆっくりしていってね」 「「ゆっくりしていっちぇね!」」 子供達が本能からの挨拶を返すと、人間は入り口の前に ゆっくりの入った透明な箱を移動させ子供達に見せる。 「ゆゆっ! おとーしゃん!?」 「ゆっ! ゆっくりあいたかったよ!」 箱の中に入っていたのはこの家族の父親役であるゆっくりまりさだった。 この箱を持ってきたのは数日前に親まりさをさらって行った人間なのだが、 その時巣の奥に隠れていた子供達は人間の姿も見ておらず、声すらも覚えていない。 「それじゃあお父さんを中に入れるよ」 「あぶないからゆっくりはなれてね!」 「「ゆゆっ」」 人間が箱を巣の中に押し込み、まりさの顔が巣の外側を向くように回転させると、 箱を巣の中の壁に少し寄せて手を離した。箱に轢かれないよう離れていた子供達も、 箱が止まったと見るやわらわらと集まり親まりさとの再会に顔を輝かせる。 「ゆっ! おうちにかえしてくれてありがとう!」 「「ありがちょう!」」 「ああ、良かったな」 親まりさが人間にお礼を言うと、子供達も揃ってお礼を言ってくる。 ほほえましい光景に人間が満足げに微笑んでいると、 1匹の子れいむが箱に入ったままの親まりさに疑問の声を上げた。 「ゆ? にゃんでおとうしゃん、そこからでちぇこにゃいの?」 「ゆゆっ?」 「ゆ、まりしゃおとーしゃんとすりすりしちゃいよ!」 「だ、だめだよ、すりすりはしたいけど、はこからでたらゆっくりできないよ」 スキンシップを望む子まりさからの要求に、箱から出ることを即座に拒む親まりさ。 ゆっくりから見ても異常な姿に、子供達の間に動揺が広がる。 「ゆっ? …でもおとうしゃん、うごきにくそうだよ?」 「だいじょうぶだよ、このはこのなかはすごくゆっくりできるよ」 「ゆゆっ?」 親まりさの入っている箱は前後の幅と高さに若干の余裕があるが、 左右の幅が成体ゆっくりの幅よりも若干短い。 親まりさは左右の壁から挟まれて若干変形し、中での方向転換すら 出来なさそうであるが、それでもゆっくり出来ると言う。 ゆっくり出来ると言う言葉に、子供達は目をキラキラさせながら箱の回りを跳ねて 入り口を探すが、四方の壁に子ゆっくりが入れるような穴は無い。 親まりさの背面の壁に蝶番と取っ手があり、引けば開くようになっているが 子ゆっくりの高さでは取っ手を掴む事が出来ず、また使い方もわからないようだ。 「おとーしゃんばっかりじゅるいよ、まりしゃもゆっくりしたいよ!」 「れーみゅもゆっくちちたい! にゃかにいれてにぇ!」 「ゆゆっ、このはこのなかはまりさでいっぱいだよ!」 子供達が揃って、ぷくっと頬を膨らませた所で、 ずっと様子を眺めていた人間がここぞとばかりに声を掛ける。 「ゆっくり出来る箱に入りたいのかな? 箱ならいっぱいあるよ」 「ゆっ! はこしゃんちょうだいね」 「まりしゃもほしいよ!」 「よし、それじゃ入れてあげるから、ゆっくり並んでね」 「ゆっきゅりならぶよ!」 並ぶよ!と言いながら我先にと一気に跳ねてくる子供達をひょいひょいと摘み上げると、 天井の板が無い子ゆっくりサイズの箱に次々と入れて行く。 この箱は親まりさの物とは違い、背面に蝶番で開くドアが無いが 前後、左右共に若干の余裕がある広さで方向転換くらいなら可能である。 「ゆゆっ、ひんやりしちぇきもちいいよ」 「ゆっきゅりできりゅね!」 6匹の子供達全員を箱に入れると、開いた天井にぴったりなサイズの透明な板を乗せて行き、 手のひらでしっかりとはめ込み蓋をして巣の中に戻してやる。 全員を横一列に並べて、親まりさと同じように巣の外側を前面にしてあげると、 最初はひんやりとした壁に頬をつけて楽しんでいた子供達も圧迫感を訴え始めた。 広さに若干の余裕があるとは言え、飛び跳ねれば天井に頭をぶつける程度には狭いのだ。 「ゆゆ、せまいよ、おしょとにだしてにぇ!」 「ゆっくりできにゃいよ!」 「そう言ってるがまりさ、箱の外に出たいか?」 「ゆっ! でたくないよ、はこのなかのほうがゆっくりできるよ!」 「「ゆゆっ!?」」 自分達の箱よりも窮屈そうで、左右の壁に若干潰されているのに 平然とゆっくり出来ると言い放つ親まりさに、驚きの声を上げる子供達。 「お父さんはこんなにゆっくり出来てるのに、これくらいでゆっくり出来ないなんて 君達はゆっくり出来ないゆっくりなのかな?」 「ゆゆ、そ、そんにゃことにゃいよ!」 「れーみゅはゆっくりちてるよ!」 「そうだよ、はこのなかはとってもゆっくりできるよ、ゆっくりりかいしてね」 「ゆ、ゆっくりできりゅ…?」 「ゆっくりりかいしゅるよ…」 子供達は人間と親まりさ両方から否定されて困惑してしまう。 「いやー、まりさは本当にゆっくりしてるね」 「ゆっ、このなかでゆっくりできないなんておかしいよ!」 「本当に素晴らしいゆっくりだ、ゆっくりゆっくり」 「ゆっ! まりしゃもゆっくりしてりゅよ!」 「れーみゅだってゆっきゅりしちぇるもん」 目の前で繰り広げられる、箱の中はゆっくり出来ると言う胡散臭い会話に 子供達もゆっくり出来ると思い込んで行く。 その様子を見た人間は、「それじゃ、ゆっくりしてってね!」と言い残すと そそくさと立ち去って行った。 突然の行動に後に残された子供達は呆然とするが、親まりさが目を細めて ゆっくりしているのを見ると、自分達もゆっくりして母親の帰りを待つ事にした。 * この親まりさが箱の中でゆっくり出来ているのは、数日前に連れ去られた 人間の家での生活に起因している。 家族の元に返せと喚くまりさを連れ帰るや否や、背面にドアの開いた透明な箱に押し込むと、 まりさは窮屈な箱の中でずりずりと後退し、背中でドアを押し開けて箱から出ようとする。 「ゆぐぐ…ひどいよ! ゆっくりあやまっべぇっ!!?」 まりさが箱の外に出たら、木製のパドルで頬を叩く。 薄く平べったい板状のパドルは、叩いた力が広く分散する為皮も破れず 致命傷にはならないが、大きな打撃音と皮の表面に残る痛みがまりさに恐怖を植えつける。 「ゆびゅ、やめべっ、やめでべぇっ!」 パアンパアンと数回頬を叩いてから箱の中に押し込んでやると、 しばらくはパドルを恐れて箱の中で震えているが、まりさの視界に入らない位置に移動すると 「そろーり、そろーり」と声を上げながら脱出を試みる。 そうして箱から出る度にパドルで頬を叩いては箱に押し戻し続けると、 箱の外ではゆっくり出来ない、と言うトラウマがまりさの餡子に刻み込まれる。 それと同時に、箱の中ならゆっくり出来る、と言う記憶も植えつけてやる。 箱の前面の下側、まりさの口の前には横にスライド出来る小さな窓があり、 内側にだけ取っ手が付いている。舌を使って窓を開ければご飯が食べられる事を教え、 実際にくず野菜を与えてやる事で、野生では味わえない食事にまりさは涙する。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!!」 箱の外に出れば痛い板で叩かれる、と言う恐怖とのギャップから、 おいしい食事を食べられる箱の中がゆっくりぷれいすであると、まりさの餡子に強く印象付けられた。 元居た巣では備蓄した食糧が無くなり、親れいむが餌集めに奔走している間、 まりさは安全な箱の中でゆっくりした生活を満喫していたのである。 * 「ゆっくりおかえりなさい!」 「「ゆっくりおかえりなしゃい!」」 「ど、どうなってるの…?」 くたくたになりながら餌集めから帰ってきたれいむは、目の前の状況に困惑していた。 元々いい加減だった入り口の偽装は取り外され、巣の中では居なくなったはずのまりさと、 6匹の子供達が1列に並んで皆一様に透明な箱に入っている。 「ゆ! まりさ、どうしたの!?」 「ゆっくりかえってきたよ!」 「ゆゆ! どうしてみんな、はこにはいってるの!?」 「ゆっくりできるからいれてもらったんだよ!」 「「ゆっくりしちぇるよ!」」 「ゆ、ゆううっ!?」 一番端の箱に入っている親まりさに跳ね寄り、何があったのか聞くが ゆっくりに正確な説明を求めても、まずまともな返事は返って来ない。 つがいのまりさが帰って来たことは嬉しいが、あまりにも異常な事態は 親れいむの限りなく狭い理解の範疇を大きく逸脱していた。 「ゆゆっ、まりしゃおなかがしゅいたよ」 「ゆっきゅりごはんちょうだいね!」 「ゆ! まりさもごはんがほしいよ!」 満足のいく食事を取れていなかった子供達は、母親が持ち帰った食事の催促を始め、 親まりさもなんとなくで一緒に食事を求める。 母れいむも狩りに出た目的を思い出し、その場にゆべぇ、と餌を吐き出すと 子供達は餌に飛びつこうと跳ねるが揃って天井に頭をぶつけてしまう。 「ゆびぇっ! でりゃれにゃいよぉぉ!?」 「どうちたらいいのぉぉぉ!?」 「ゆっ! だいじょうぶだよ!」 親まりさの上げた声に子供達がそちらを見ると、まりさは箱の前面にずりずりと近づき 板の下方にある小さな取っ手に舌を引っ掛け、食事用の窓をスライドさせて開ける。 「こうすればごはんをたべられるよ、ゆっくりあけてね!」 「ゆっ、ゆっくりりかいしちゃよ!」 見れば子供達の箱の前面にも、親まりさの箱と同様に小さな窓があり、 内側に付いた取っ手で開けられるようになっていた。 親まりさは子供達が窓を開けたのを確認すると、 「ゆ! れいむ、ゆっくりごはんをもってきてね!」 と親れいむに声を掛ける。れいむも状況を理解しそれぞれの箱の窓の前に食事を運びだした。 食事用の窓が開くとは言え、箱自体を動かせない為近くまで食事を運ばないと食べられないのだ。 「「むっちゃ、むっちゃ、ちあわちぇ!」」 「むーしゃ、むーしゃ…」 子供達は遊んで体力を消耗する前に箱に詰められた為それなりに満足し、 親まりさもくず野菜と比べると味は落ちるがそこまで空腹でもなかった為、 眉をひそめながらも苦情は言わない。 人間の家での生活で、餌を持ってくる相手に苦情を言うと お仕置きをされると理解していたからである。 親れいむは子供達が問題なく食事を取れる事に少し安心し、また親まりさの帰還に胸を撫で下ろした。 狩りの上手なまりさが帰って来たので、後は箱から出せば前の生活に戻れる。 箱が絶対に開かない可能性など、れいむの餡子には浮かんで来なかった。 「ゆっ、まりさがかえってきてよかったよ」 「ゆ、まりさもかえってこれてうれしいよ!」 「それじゃ、つぎからはまりさがかりにいってね!」 「ゆゆっ!? はこのそとはゆっくりできないよ!」 「なにいってるの? ゆっくりしないではこからでてね!」 連日の狩りの疲れからストレスの溜まっていたれいむは、理解出来ないことを言い出す 親まりさにぷくぅと頬を膨らませ、出口が無いかと箱の回りを調べ出す。 広くは無い巣穴に一列に並んでいる為、箱と箱の間には成体が通り抜けられる程の幅がなく、 親まりさの箱の隣に居た子れいむの箱を押しのけながら親れいむは後ろに回り込んだ。 「ゆゆうっ!? お、おかーしゃんにゃにしゅるの…?」 「ゆ゛…ゆ゛え゛えぇぇぇぇん」 「うるさいよ! ゆっくりだまっててね!!」 「「ゆ゛っっ!?」」 「れ、れいむ、ゆっくりおちついてね?」 箱ごと押しのけられた子れいむは大きな揺れに怯え、 他の子供達も親れいむが発する険悪ムードに耐え切れず泣き出すが、 ストレスの溜まっていた親れいむは強く怒鳴りつけてしまう。 「ゆっ、はやくでてきてね!」 「ゆゆっ、あけないでね! ゆっくりできないよ!」 親まりさの箱の背面にドアを見つけた親れいむが、取っ手に舌を絡めてドアを開けると 背中に空気の流れを感じたまりさは落ち着けない様子で怯えだす。 一向に出てこようとしないまりさの様子にれいむは痺れを切らせ、 まりさの長い髪に噛み付いて引っ張り出した。 「ゆ゛っ、ぐり、ででぎで、ねっ!?」 「やめでぇぇぇ! いだいのやだぁぁぁぁぁ!」 木の板で叩かれる恐怖が蘇った親まりさは、ただでさえ狭い左右の壁に 突っ張るように体を変形させ、箱から引っ張り出されないよう抵抗する。 「いだい! いだい! ひっぱらないでねぇぇ!?」 「いだいなら、ででぎでねぇっ!?」 親まりさも親れいむも、どちらも全く引かず力比べを続けていると、 まりさの頭部がめりめりと音を立てはじめる。 「ゆ゛っ!? や゛めでね? や゛め゛ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」 「ゆべっ! ゆゆ…ま、まりざぁぁ!?」 引っ張られる力に耐え切られずに、親まりさの後頭部がびりっと音を立てて裂けると、 急に抵抗が無くなった為親れいむは後ろに勢い良く倒れる。 痛がりながら起き上がった親れいむが見たものは、まりさの後頭部に出来た大きな裂け目と そこからぼとぼととこぼれる餡子であった。 子供達も絶句し、目と口を一杯に広げてぶるぶると震えている。 「ど、どぼ、じ、で…」 「まっ、まりざ、まりざ!」 裂け目から勢い良く餡子を漏らし、まりさは痙攣しながらぱくぱくと口を開閉させる。 親れいむは慌ててまりさに近寄るものの、おろおろするばかりで何も出来ないまま、 まりさは動かなくなってしまった。 一部始終を見ていた子供達も、目の前で繰り広げられた親同士のゆっくり殺しに 盛大に泣き出してしまう。 「おとーしゃぁぁぁぁん!」 「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁん!!」 「おきゃあしゃんのばきゃぁぁぁぁぁ!」 「おかーしゃんにゃんておかーしゃんじゃないよぉぉぉ!」 「ゆ……ゆ……」 自分でつがいのまりさを殺してしまったれいむは、辛い狩りから開放される喜びから一気に突き落とされ、 子供からの罵倒に反論することも出来ず、白目を向いて気を失う。 散々泣いた子供達も次第に泣き疲れて眠り、騒がしかった巣からは寝息だけが聞こえるようになった。 数日が経過したが、巣の中は散々なものだった。 一際大きな箱には後頭部の裂けたまりさの死体が放置されており、 6匹居る子供は全て、ほとんど空間に余裕の無い箱に閉じ込められている。 「ゆっくりいってくるよ」 「……」 既に偽装が外しっぱなしになっている入り口から、親れいむがとぼとぼと出て行く。 子供達は目の前で親まりさを殺した親れいむに一切口を効いてくれなくなり、 代わりにじっとりと恨みのこもった視線を返して来るのみである。 食事だけは窓を開けてもくもくと平らげるが、しあわせー!の一言も無い。 元々母性の強いれいむは、パートナーを失った上で子供まで捨てることが出来ず、 前以上に疲れを感じる狩りの連続に体力だけでなく、希望もすり減らして行く。 幸い子供達は無駄に体力を消耗する遊びすらも出来ない為、 狩りが上手ではないれいむでも食糧難に陥る事は無くなったが、 順調に成長して行く子供達の体は、もう狭い箱の中で余裕が無くなっている。 このままでは子供達がゆっくり出来なくなる。 餡子の中に何か恐ろしい考えがよぎるが、ゆっくりの頭では どのようにして子供がゆっくり出来なくなるのか具体的な想像が出来ず、 れいむは餡子内に広がる焦りを払うようにぶるぶるっと震える。 「ゆ…ゆっくりかえるよ!」 頬に食料を溜めたれいむは、何かに追われるように家路を急ぐのだった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) ゆっくりいじめ系940 三角の頭巾 (fuku2628.txt) ゆっくりいじめ系1026 ゆっくり宅に挨拶 (fuku2789.txt) ゆっくりいじめ系1027 ゆっくりの救急車 (fuku2790.txt) ゆっくりいじめ系1062 甘い言葉 (fuku2852.txt) ゆっくりいじめ小ネタ151 みょん語体 (fuku2670.txt) お帽子の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/368.html
まえがきという名の弁解 ゆっくりを全然いじめてない上につまらないです 後半と前半でテンションがまるで違います ゆっくりらしい台詞はほとんど出てきません 一応ドスものです それでも構わんという心の広い人だけ読んでね 見ただけで気が触れそうな満月の夜。 人も近づかない、近づけないような森の奥深くを、ゆっくりと丸い巨体が進んでいく。 そのまん丸い巨体の頭頂部にのった巨大な黒いとんがり帽子。 ドスまりさだ。 しかし彼女はどうやら普通のドスとは様子が違った。まず髪に信頼の証の飾りがなく、 いつでも楽しそうなゆっくりと違い、一言も喋らず、やや物憂げな顔で歩みを進めている。 帽子の中にいくばくかの必需品はあるが、他のゆっくりなど一匹も入っていない。 このドスは他のゆっくりから信頼されていないのか? いや、違う。どのドスよりもこのドスは信頼されていたし、このドスもそれを自覚していた。 だからこそ、権威をふりかざすような真似に必要性を見出せず、飾りをつけようとするゆっくりをやんわりと断っていた。 帽子の中に他のゆっくりを格納しないのも、他のみんなに自分に守られるだけの存在になってほしくなかったからだ。 このドスはかなりの過酷な経験をしてきた。普通のゆっくりの時も、壮絶な生を生き抜き、ドスになれた。 ドスになり、群れを作った。その頃は飾りもつけ、帽子の中にゆっくりを入れて運んだり、遊んでやり、普通の標準的なドスだった。 いつまでも群れの幸せが続くと思っていた。しかし、それは間違いで。 やはり標準的なドスの群れのように、群れはゆっくり崩壊に近づき、やがて自分だけが生き残る。 生き残り、また群れを作った。また崩壊させた。 ある時は人間に騙され、ある時は反乱勢力が台頭し、ある時は自分たちを捕食するものに襲われ、ある時は… そうした繰り返しの中、幾度も守るべきものを奪われ、それでも崩壊しそうな理性をつなぎ留め、歯を食いしばり、目から餡子を流しながらこのドスは生きてきた。 そうしてようやく気づいた、自分がゆっくりを守るだけでは駄目なのだと。 己を己が守れるようにしてやり、自分はそれを精いっぱい手助けする。それこそが崩壊を防ぎ、群れを長続きさせる最善なのだ。 強烈な一つの個ではなく、小さな個を集めて強大な一つとする。それがこのドスのたどり着いた結論。 そのための群れの掟や、制度、システムを、実験を繰り返しながら練り上げた。 その途中で、人間という存在は自分たちと切り離された。彼らとは、出来るだけ関わらない方がいい。 そして、人間も滅多に入り込まぬ森に居住区を移した。 リスクはあった。外敵の存在、人すらあまり手をつけない自然環境。 しかし、それは普通のゆっくりに限った話。このドスになら、人間を含む、大抵の外敵は相手にならなかったし。 多少の危険な場所も、乗り越えていく強靭さがあった。 そしてその場所の下見を存分に終え、普通のゆっくり視点での対処法や生活方法を編み出し。 それを根気よく教育した。教育し、そして多少の手助けはするものの、決して全面的に支援することはなかった。 巣はあくまで自分たちで個別に作らせた。ドスを中心とした一つの巣は、ドスに対する甘えを呼ぶ。 そして自分たちで開拓させることにより、自分たちはこの環境に勝てるという意識を植え付ける。 普通のゆっくりでは無理だろうと思えるようなことだけは手伝ったが、他の事は一切手伝わなかった、指示も出さなかった。 それは普通のゆっくりなら、群れのボスとしての仕事を放棄した怠慢だと思ったかもしれない。 事実そう思ったゆっくりもおり、公然とドスを批判する者もあった。 「ドスはなんでまりさたちをてつだってくれないんだぜ!?みんなでたすけあってこそのむれだぜ!」 だがドスはそんな意見には取り合わず 「不満があるなら出て行っていいよ、ここよりゆっくり出来ると思うところがあるなら」 その言葉に憤慨し、出て行ったゆっくりも少なくない。だがドスは気にしなかった、残ってくれたものがいるのだ。 しかし、中には多くのゆっくりを言葉巧みに扇動し、少しでも大きな群れにして出ていこうとするものもいた。 そういうゆっくりだけは、秘密裏にドスは殺した。 普通のドスは群れのゆっくり、いやすべてのゆっくりの命に対して強い執着と保護心を持つものである。 まれにドゲスという命をなんとも思わないものもいる。 しかしこのドスは、あまりに多くの死に触れたため、すでにこのどちらでもない精神をもっていた。 自分はこの弱きもの達の圧倒的上位にいるのだから、管理せねばならない。 それは、動物の生息地をなるべく自然の状態で保護する研究者や、植物などを植え育て、森などを作る人間のようなそれであった。 管理者。そう、自分は群れのリーダーではない、管理者だ。 群れを崩壊に導きそうな悪い芽は潰す。そこには命を奪う快感も、罪悪感も、後悔も、何もなかった。 慈悲もなく、許容もない。 次に食べられる植物や生物などの教育を終え、ある程度生活環境が整い始めたら、外敵に対する対処を教え始めた。 いや、それは教えなどではなく、訓練であった。 狩りに出向ける個体に、ゆっくりでも協力すれば倒せる外敵に対しての戦闘方法を訓練させた。 チームワークを教え、何度も仮想敵に対する訓練を行う。 そのハードすぎる訓練に、脱落するゆっくりも少なくなかった。 その中で、本当についていけなかったものは訓練をやめさせ、別の仕事につかせることにした。 そういうゆっくりは元来こういう仕事に向いていないものなのだ。なので、子守や安全な地域の植物採取などを行わせる。 中には、ダルイ、ゆっくりできないなどの理由で訓練を放棄するものもいた。 その中で本当に疲れたふりをして訓練を抜けようとするやつは、戻らせて徹底的にしごいた後に、他の狩りゆっくりに命令を下す指揮官の教育を施す。 単純にゆっくりできないから反抗しているものは、大半は軽めの体罰をつけて戻らせた。 中にはそれに対してすら徹底的に反抗するものもおり、そういうものは群れから出てもらった。 ここでの振り分けはこうだった。まず普通に訓練を続けるゆっくり、こいつらは特に問題もない普通の狩りゆっくりになるだろう。 次に騙してサボろうとするゆっくり、こいつらは多少知恵の回る奴らだということで、生き残るためなら存分に知恵をしぼりだすだろう。 次に反抗するゆっくり、体罰を受けて戻るなら、それは自分本位ながらも多少の状況は判断できるということだ、どうにもならない状況なら自分のためにがむしゃらに生き残ろうとするだろう。 そして最後まで反抗したゆっくり、そこまで嫌ならこいつらの性根はそれまでである、頭も回らず自分の嫌なことにただ拒否するだけ。こういうのは危険にあっても状況がわからず、みじめに叫んで死ぬだけだ。 そうしてゆっくりをふるい分け、最終的な訓練卒業として外敵との実戦に移ってもらう。ある数の部隊にわけ、一つずつこれを行った。 この時、ドスは後ろでその光景を眺めていた。 戦闘が始まり、ある部隊は快勝を続けた。ある部隊は窮地におちいる。その中で、自分たちで奮起し、何とか勝利をおさめる部隊もあった。ある部隊は後ろで見ているドスに助けを求めた。 だがドスはどれだけ助けを請われようと、どれだけ惨たらしく群れの仲間が目の前で殺されようと、決して手を出さなかった。 ある部隊はドスが絶対に自分を助けてくれないだろうことに途中で気づき、絶望的ながら辛くも勝利をおさめた。ある部隊は最後までドスに助けを求めながら全滅した。 実戦が終わると、ドスは部隊の成績によって役割を与えた。前線で狩りをする部隊、狩りをしながらその部隊を護衛する部隊、居住区に残り守る部隊。 それはあたかも人間の軍隊のようであった。 中には教育や訓練をドスが任せるゆっくりもいた。いつまでも自分がやるわけにはいかないのだ。 そうして狩りの教育を終え、食糧が潤沢になってきたところで、食糧制度に手をつけた。 本来ゆっくりは冬以外に食べ物をため込むことはない、取ったら取っただけ、食べられるだけ食べる。 そして普通のドスの群れはそういう事態を憂い、食糧を一か所に集め、管理し、食べない分を非常用として保管する。 だが、それが一部のゆっくりの不満や懐疑を招き、結局反発され、群れが崩壊した例も少なくない。 では、どうするか。ドスはこれに大いに悩んだ、何せ食糧管理は反発を招く恐れもあるが、食料供給の安定した維持にこれ以上の手段はない。 そこでドスは食糧管理の仕事をわけることした。 つまり、食糧を集めるゆっくり達、集められた食糧の量を管理するゆっくり達、その食料の量を聞き分配するゆっくり達。 これによって相互をある種の緊張状態にし、互いに監視させ、一部の独走を阻止しようとしたのだ。 すなわち、食糧調達部隊は、その食料を献上しなければ、食糧管理部隊にすぐさま疑われる。 次に食糧管理部隊は、その食料を正確に管理しなければ、分配部隊に疑われる。 そして分配部隊は、それを正確に分配しなければ、たちまち分配される皆から疑われる。 多少の歪みは出るかもしれないが、致命的な崩壊には繋がりにくいとして、ドスはこの方法を選んだ。 そして、管理、分配の仕事はなるべく頭の良く、公平性があって信頼されているゆっくりでなければならない。 故にこの仕事につくゆっくりを、ドスは皆の推薦による選出と投票で選ぶことにし、もし選ばれたゆっくりに不満があるならば、一定数の投票で辞めさせられることにした。 そしてさらに、一定のサイクルで浄化するために、ある期限ごとに管理分配の仕事につくゆっくりを全員一旦やめさせ、もう一度選びなおす制度も導入した。 それはゆっくりによって形成された、未熟な政治制度のようなものであった。 ドスはゆっくりと色んな制度を導入し、根気よく教え込んだ。 そしてドスの手を借りずにそれが運営されていくようになると、後は全てを任せて手を引いた。 群れの運営がスムーズになり始めてから、遠くの地からドスが直接頼み込み、ゆうかりんを連れてきて農耕制度を作った。 さらに月日が流れ、世代交代にさしかかる頃には、教育制度を狩りの教育や、管理分配の教育、農耕の教育などにわけ、色んな仕事を選べるようにした。 すでに自分の手をほぼ離れて歩いて行く群れをゆっくり眺めながら、ドスは満足していた。 ようやく、自分の理想郷を作ることが出来た、と。ゆっくりがゆっくり暮らしていける理想郷を……。 そこはまさにゆっくり郷とも呼べるものであった。 だが最後に一つだけ、ドスは群れの中で自分だけが行う仕事を持っていた。 すなわち、罪を犯したゆっくりに対する、裁きと罰の執行を……。 夜の下を行くドスが、ある巣の前で止まった。 目的地だ。 その巣の中から、悲鳴のような声と耳が腐るような嬌声が聞こえてきている。 ドスがため息をつく、が、それには何の感情もこめられていなかった。 そしてゆっくりと、気づかれないように中を覗き込んだ。 中には一匹のゆっくりまりさとゆっくりアリス、そしてゆっくりれいむの親子がいた。 だがれいむ親子の様子はおかしい、親と比較的大きいれいむは動けないように痛めつけられ。 まだ交尾に耐えられないと思われる小さなれいむは、アリスによる一方的な性的暴行を受けていた。 「いやあああああああやめじぇええええええいじゃいよおおおお!!!」 「はぁっ!はぁっ!いやぁぁぁぁんかわいいいぃぃやっぱり犯すならちっちゃいゆっくりだわぁぁぁ!!」 親や他のれいむは涙を流しながら「やめてぇ…」「こどもだけはたすけて…」などと弱々しい声で呻いている。 「ゆっへへへ、やっぱりアリスのこうびをつまみにたべるのはさいこうだぜ!!」 そしてまりさはその隙に巣にあった食料をむーしゃむーしゃと食べていた。 押し込み強盗である。 実はこの二匹、最近この郷では有名な犯罪ゆっくりであり、すでに二件の被害報告が届けられている。 どの一家も無残に惨殺され、巣を荒らされていた。 さっき言ったように、ドスはゆっくりに対する裁きを行ってはいたが、それは普通のゆっくりには手に負えないと思われるものだけであった。 このドスの郷には、警察のような役割をもつゆっくりも、裁判もちゃんと存在する。 だがそれでは立ち行かないものがある……。法の手をすり抜け、悪事を続けるゆっくりは後を絶たなかった。 そんなゆっくりを、ドスは心底憎んだ。自分の作ったこの郷を、荒らすものだけは絶対に許さなかった。 ギリギリまで事件解決を見守っていたが、一向にゆっくり郷の警察ゆっくりでは犯人が捕まりそうな様子はない。 長く生きた知恵か、この二匹が次にどこで犯行をするかを予測したドスは、自分だけで制裁を加えるために動いた。 ドスは中の様子を確認した後、そこに向かって「出て来い」とだけ、ただ一言だけ言った。 それだけで十分だった。 色の変わらない体表が本当に青くなるんじゃないかというような顔をして出てきた二匹は、 ドスにすがりつき、必死に言い訳を始め、媚びへつらった。 「ゆるしてほしいんだぜ!まりさたちのいえにはたべものがたりなかったんだぜ!」 「そうなのよ!ついでにすっきりできるゆっくりもたりなかったわ!」 「ゆっ!これはきっとかんりふやぶんぱいふのやつらがわるいんだぜ!」 「そうよ!そうよ!それにどすといえどもむれのゆっくりをころしたりはしないわよね?」 「そうだぜまりさたちはなかまのはずだぜ!ゆるすべきなんだぜ!」 それは聴くに堪えない理屈だったが、ドスはしゃべり終えるまでじっと押し黙ったままであった。 そして何の反応も返さないドスに二人が不思議がっていると、ドスがようやく口を開いた。 「死ね」 そのまま開いた口から溢れる光が、二匹の見た最後の光景だった。 その二匹だけを焼き尽くすために威力を調節したドスパークの照射が終わると、ドスは巣の中に話しかけた。 「大丈夫、れいむ?動ける?」 「ゆぅ…なんとかうごけるよ…」 弱々しいながらも返事が返ってきて、しばらくしてから親れいむの三匹の子供がよろよろと這い出てきた。 「今から病院の方に行って、治療を受けるといいよ。まだ開けとくように言っておいたし、警察もそこに待機させてあるから、事情を説明して」 ドスがそう言うと、口の中に弱った子供を入れているのか、親れいむ達はうなずいてずりずりと這って行った。 れいむ達が行ってから、ドスは大きくため息をついた。 あきれしか出てこない。悪事を犯して、悪びれもせず許しを乞うあの二人。 驚くことにあれが普通のゆっくりなのだ。 わかっている、この郷のゆっくりは、もはや普通ではない。 人間のまねごとのようなものだが、決まり事を順守して生活を営むなど、昔では考えられなかった。 いや、今でも普通のゆっくりには考えられないだろう……。 何で自分たちはこうなんだ。なぜゆっくりは……。 知らず、月を眺める。 最近月を眺めていると、なんだか体の底から力が湧いてくるのだ。 これを活力にして、明日からも頑張ろう。 そう思っていた矢先である。 「はぁい」 それは、何もない空間を割いて、ぬるりと現れた。 妖しく光る髪と、鮮やかな紫の衣装艶めかしく。 「こんばんわ」 絡みつくような声を発し、出てきた裂け目に腰かけていた。 ドスは一瞬で敵だと判断した、それも自分でしか対応できないような。 「あんた誰だ?」 警戒しか含まない問いに、女は目をにこやかに細めると、 「やだ怖い」 口も吊り上げ、 「怖いから」 細めた目を開いて、 「私も怖くなっちゃおうかしら」 その場の何もかもが一変する。 肌を刺した空気で、一瞬で支配された場の雰囲気で、勝てない相手だとわかった。 ドスはため息をついた。このような相手がいつか来ることは、前々から何となくわかっていた。 自分が作った郷は、異常だ。考えの回るこのドスの目は、他の視点から自分達を見ることもできた。 こんなものは、人間からしたら恐怖でしかない。 わかっていた、でもやらずにはおれなかった。なぜ人間に許されることが、ゆっくりには許されないのか。 だから、それでも。 「ここを……潰しにきた?」 ほぼ諦観と、疑問を少しだけ含ませて問う。 人間の上位の存在、人を守るもの、調停者。この郷に対する自分のようなものが人間にも存在すること、それは容易に想像できる。 それが目の前のこの女なのだろう。 女は少しだけ意外そうな顔をすると、すぐに首を横にふった。 「まさか」 そして片手に持った扇子で口を隠し、 「でも、予想以上。そんな考えもできるのね」 そこから出る感情を見せないように呟いた。 「なら何を?」 今度は疑問だけで問うと、 「話をしに」 そう言って、今度は優しく微笑んだ。少し、安心できる笑顔だった。 女は隙間から地面に降り立つと、ドスと向かい合うように座り込む。 「そうね、じゃあまず最初、あなたはゆっくりって何だと思う?」 ようやく話し合いの場が整って、女は最初にそう問うた。 「……」 ドスは難しいと感じた。自分の存在は何だと問われているのだ、何と答えるか……。 「まぁ、難しいわよね。逆の立場なら私も言葉を濁す……一般的な定義を私が言いますわ」 女は返答を待たずつらつらと、 「そうね、饅頭の体を持ち、人語を操り、畑や民家を荒らす頭の悪い汚い野生生物……これが一般的なゆっくり」 挑発するようなその物言いだが、ドスは何も言い返さなかった。 「あら、怒らないのね」 「大方その通りではあるよ」 そう、と女は呟き、 「でも、それは悪いことではないわ。むしろ野生生物の本懐。これより傲慢で、危険で、自分本位な生き物はたくさんいるわ。人間だってそう」 そして、 「普通のゆっくりなら、先の発言には醜く憤慨すべき。それがゆっくりの在り方」 ドスは驚いて女を見つめた。この女は人間に嫌われるゆっくりの性質を何と言った? 「そう在るべきと言いました。多少の程度はあれど、ゆっくりがゆっくりらしく生きること、それこそがゆっくりの在るべき理由」 謳うように続ける、 「憎まれることも、慈しまれることも、虐められることも、世話されることも、全てがこの世界におけるゆっくりの在り方」 理解できない、いや、理解したくない。この女が真顔で今述べていること、それは。 「じゃあ、いつもどこかで繰り返されている、ゆっくりの悲劇……その全てが」 「そう、ゆっくりの生きる理由」 そのためにゆっくりは生きている。 「人間の……ために……」 女はふう、と息をつくと、 「ゆっくりの理由……ここまではいいかしら?」 衝撃から、ドスはまだ立ち直れなかった。 自分たちは言うなれば、人間のおもちゃとして生まれてきたのだ。それが自分たちの本来の在り方なのだと。 「あなた達はおよそ自然環境のどの役割も担っていないのですもの、そうとしか言えないわ……まぁ、これ以上ゆっくりについて議論する気はございません」 女はまだ話を続ける、 「そして次、次はあなた。あなたは果たして……」 あなたは、ゆっくり? 「!?」 問われた。自分はゆっくりか?当然だ、でなければ自分はなんなんだ。 「当たり前だ!」 声が荒れる。 「……あなた、自分を何て呼ぶ?」 女は少し息をついて、 「私……」 「その呼び方はいつから?なぜ?」 「いつからかは覚えていない。何故かは……この方が、らしいと思った」 「普通のゆっくりは、絶対に自分をそんな呼び方はしない」 心にザクリと矢が撃たれた、 「普通のゆっくりは、そんな言葉づかいもしない」 二発目。 「あなた、ゆっくり出来てる?」 「出来てるよ。毎日、郷の管理で、みんなの生活を見守るのが私のゆっくりだ」 「それはゆっくりじゃないわね」 「違う!それが……!」 「他人のための行為はゆっくりではない、ゆっくりの価値観に照らし合わせるならね」 三発目。 「御希望なら、この他にも理由を計上してあげましょうか?子供でも指摘できるものがまだまだあるわ」 荒々しく首を振った。三発。たった三発で、ドスの脳は理解した。 「……私を否定して、何が楽しいの?」 問いは、悲しみと怒り。 「……そうねぇ。あなたはゆっくりの在り方を外れている、ここまではいい?じゃあ次は、人間とゆっくり以外のもう一つの種族の話」 答えず、女は話を進める。 「妖怪の話」 「あなたは妖怪を知ってる?」 「……とても強い生き物。ゆっくりよりも、人間よりも」 投げやり気味にドスは答えた。 「正解。じゃあ、妖怪の種類。そこまではあなたも知らないわよね」 「……?」 女は師が生徒に教えを説くように話し始めた。 「まず、私は妖怪。わかるわね?」 「へぇ……」 ここに来て初めて女の正体が明かされたが、別段驚かなかった。 「私は同族もない、どうやって生まれたかも秘密のワンオフ妖怪よ。こういうのはそれほど数もいないの、さびしいわ」 女は泣き真似の仕草をしたが、ドスは冷やかな視線でそれを見ていた。 「いやん、ツッコミが欲しかったのに……まぁ、気を取り直して次」 女は小芝居をやめると話を再開する。 「次はメジャーな種族に属する妖怪。鬼、天狗、河童、吸血鬼……こういうのは結構な同族がいて、蛮行が広く知られているからカテゴライズされている」 「名前だけは何となく聞いたことあるよ。湖の館……妖怪の山……」 「大正解。ゆっくりにまで知れ渡っているなんて、中々……いや、あなただけでしょうねきっと」 「?」 「なんでもないわ、続けましょ」 女はコホンと小さな咳をすると、 「次は妖獣、これは強大な力を持った獣が、それ故にその生き物の枠を離れて妖怪になってしまったもの」 「動物が?」 「私の式達もこれね、竹林の兎達もそう。これが幻想郷には中々多い……自然が残ったままだからかしら」 ここで女は教鞭を振るう笑顔から、真顔に戻った。 「そう、人間を超える力を持って、その生物の寿命を超えた長い時間を生き、ついにはその定義から弾かれる……」 ドスも気づいた。いや、それはかつて、ドスだったもの。 「まるであなたのことね」 「違う……」 否定する声は、聞き取りがたいくらいにか細い。 「あなたはもう普通の人間より遥かに強いわね」 「違う……」 「あなたは今で何年生きた?普通のゆっくりの寿命は平均五年、巨大種なら十年ってとこかしら」 女は辺りを見回し、 「この郷、ここまでするのに少なくとも十年以上はいるわよね」 「違う……」 「定義から外れる、これはさっき散々説明したから言うまでもないわね」 「違う!!」 違う、違う。私は、私は…… 「あなたは、妖怪よ」 「正確にはゆっくりと妖怪の境界線……その上に今のあなたはいるわ」 その言葉に、うつむいていたドスは少しだけ期待をこめて見上げた。 「でも、その境界がゆっくりに傾くことは決してない」 絶望を、女は吐く。 「これからあなたは、ゆっくりと妖怪になっていく……いや、今でも弱い妖怪程度ならいい勝負をするでしょうね」 「……」 妖怪は応えなかった。もう何も応える気もなかった。 「ゆっくりが、この幻想郷に誕生してもう何年経ったのかしら……そろそろだとは思っていたけれど、私が見つけたのはあなたが初めてよ」 女は、満月の空を見上げ、 「永琳に改造されたわけでもなく、自然に生まれ、自然に生きてきたあなた。ここまでの生、私は敬意を表します」 そして、再びその妖怪へ視線を向けると、 「そして、幻想郷はあなたを受け入れます」 「……そう」 妖怪も女を見つめ、ただそれだけを呟いた。 女が軽く扇子を振ると、空間の隙間は再び開いた。ゆったりと浮き上がりその中に下半身を入れる。 「では、ごきげんよう。これからあなたがどんな選択をして、どう生きるのか。少しだけ楽しみにしてますわ」 上半身だけを出してそう言った後、女は隙間に消え、何事もなかったかのように閉じて元に戻った。 後には月を見つめる妖怪だけが残された。 それから、ゆっくりの郷からドスは姿を消した。 ゆっくり達は思った、ドスがついにすべてを自分たちに任せてくれたのだ、と。 ドスが、自分たちで何かが成せるようになると、必ず身を引いたのをゆっくり達は世代が代わっても覚えていた。 その郷の歴史に、偉大なるドスの名が刻まれ。 後にはゆっくりと続いていくだろう、理想郷だけが残された。 あとがきという名の言い訳 今回はゆっくりいじめ作品としては駄作極まりないと思われる本作を読んでいただきありがとうございます。 ゆっくりいじめに憧れていました。色んな作品を読み、深く感銘を受けました。 自分もこんな作品を書いてみたい、彼の憎き饅頭を虐め抜きたい、そう強く願い、ようやく実行に移った次第ではありますが 出来上がったのはこんなものでした。皆さんのような、加虐心に油をドンドコ注ぐゆっくり語や、醜い物言い、くさった饅頭心。 何もかも自分の実力では描けない、難しいものでした。才能のなさが恥ずかしいです。修行の足りなさを実感しました。 まあ自虐はこれまでにして、本編の補足です。 今回のゆっくりの生活制度はまったく人間のそれのパクリです、そして世界はこんなに簡単ではありません。多分。 本当はドスに反発して「ゆ゙っぐり゙でぎな゙い゙い゙い゙い゙!!」と叫ぶゆっくりの描写をふんだんに取り入れてみたかったのですが、どうにも力不足でした。 後半の会話にいたっては雰囲気がまったく前半と違ってしまい申し訳ないです。これではただの東方SSです。本当に(ry それにしても、ドスはこれほどまでにならなくても、人間を殺せる時点で十分妖怪だと僕は思いました。 最後に、こんな作品とやたら長い言い訳を最後まで読んでくれた方にもう一度お礼を。また修行して今度は上手く書けるように目指したいです。それでは。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2408.html
屋上のゆっくり ●寒さとの戦いの続きですが、特に前作を読む必要はありません。 ●現代物です。 お兄さんは悩んでいました。 先日の大型冷蔵庫によるゆっくり軟禁実験は予想外に短期間でゆっくり達が自滅してしまったため、暇が余ってしまったのです。 ゆっくりが自滅する様を見るのは、大変楽しいとはいえ、今少し長く楽しみたい。 与えた環境が過酷過ぎたなら、少々緩和してみようと。 「ゆっくりだすんだぜー!」 「わからないよー。」 「むきゅー。」 やいのやいのと騒ぐゆっくり達。 今回はペットショップで買って来た餌用ゆっくり(三匹セット200円) 小動物用に子ゆっくりサイズで成長が止まる加工がされているものを屋上の高架水槽のフロアに離します。 「さて、君達にはここで暮らしてもらいます。」 周囲はビューという風の音がなり響く、ゆっくり達にとって、過酷な環境です。 強い風はゆっくり出来ない音を出しますし、体を冷やします。 最悪、飾りが飛びかねません。 「むきゅー、かぜさんがつよすぎでゆっくりできないわ。」 ばたばたと三匹の髪飾りが風に揺れています。 「かぜさんはゆっくりできないんだね。わかるよー。」 「じじいははやく、ここからまりさたちをだすんだせ!」 お兄さんは冷笑を浮かべながら、宣言しました。 「断る。お前達は子孫に至るまで、ここで死ぬ。変更はない。」 「「「どぼぢでぞんなごどいうの゛ぉぉ!」」」 嘆き騒ぐゆっくり達を尻目に、お兄さんは雑草だらけとなったプランターをしっかり固定して高架水槽の周りに小さな草原を作ります。 プランターの下の湿った場所にはダンゴムシなどのゆっくりの好物の虫を、高架水槽の隙間には防水加工したゆっくり達の巣箱を三つはめ込みます。 「では、食うものも住み家も用意した。後は達者でくらせ。」 「「ゆべっ!!!」」ゆっくり達はフロアの床に転がされ、プランターにぶつかったところで止まります。 「ゆっゆっゆっ」 「ひどいめにあったんだねー。わかるよー。」 ぴくぴくと痙攣しながら気絶しているゆっくりぱちゅりーを介抱するように、用意された巣箱にちぇんは運んでいきます。 しっかり固定された発泡スチロール製の巣箱はソフトボール程度の大きさしかないこの種のゆっくり達にとってだいぶ大きなおうちでした。 「さむいのぜ;ゆっくりできないんだぜ」 屋上は地上五階部分。普段住んでいる場所と違い、常時強風が吹き荒れます。 「おぼうしさんがとばされないようにしなきゃだぜ」 ソフトボール大のまりさはゆっくりハウスの中で呟きます。 お兄さんが用意した草や虫、ゆっくりフードを一日一定数供給するえさ箱など、食べるには困らない環境です。 しかし、ほぼ観察するのみとはいえ、虐待お兄さんが用意したものです。仕掛けはゆっくりと動いています。 その日の夜 「なんでなのぜー!」 「わからないよぉー!」 寝ているぱちゅりー以外の二匹の叫び声が響きます。 「むきゅ・・・どぼじであがぢゃんできてるのぉぉ」 ちぇんのお腹は二倍程に膨れあがり、中で赤ゆっくりがぴくぴくと動いているのが薄い皮越しに見えます。 お兄さんが残した餌さ箱の餌は低確率でゆっくりをにんしんっさせる効果があるためです。 「ゆっ!うばれるんだねぇ。わがるよぉ!」ぽんぽんぽんっと、ゆっくりちぇんの赤ゆっくりが三匹産まれます。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!」 「ちぇんの赤ちゃんとってもゆっくりしてるよー。わかるよぉぉ。」 「むきゅ、このこたちのえさはどうするの?」 「ゆっ!」 ぱちゅりーの言う通りこの屋上にある餌は三匹のゆっくりが暮らす分には不足ありません。 逆に言えば、増えたゆっくりに回せる余裕はないのです。 しかも、餌さ箱の餌はにんしんっを促進させるもの・・・ 記憶力がいいぱちゅりーはお兄さんが言った言葉を思い出しました 「子孫に至るまでここから出れない。」 「むきゅっ!ぱたっ。」 ゆっくり出来ない想像をして、ぱちゅりーは失神しました。 「意外に頭がいいぱちゅりーだな。餌さ用にもたまには当たりがあるのかね?」 次の朝、様子を見にきたお兄さんは、ぱちゅりーとちぇんの会話を聴きながら、そう評します。 「どぼじて、ぞんなごというのぉ!」 「わきゃらにゃぃよぉー!!!」 「むきゅ!これいじょう、あかちゃんがふえたら、みんなゆっくりできなくなるわ!」 「あかちゃんはゆっくりできるでしょー!わからないよー。」 早くもプランターの下の虫は全滅状態のようです。 赤ゆは只でさえ燃費が悪いのに、ゆっくり的には美味しい虫を食べさせ続けた結果がこれです。 餌箱も一週間もしたら餌が尽きます。 「そうしたら、こいつらはどうなるか・・・今から楽しみだ。」 そして一週間後。 お仕事が終わったお兄さんは、ゆっくり達を確認に屋上に上ります。 ここ一週間、納品続きでさっぱり確認できなかったからです。 「「「ゆぎゃー!」」」 「お、やってる。やってる。」 そこには、殆んどの草が食い尽されたプランター。 あちこちがかじられた巣箱、そして、共食いしはじめた赤ゆっくり達。 「やっぱり、うまれたてはさいこうなのぜ。」 自分の赤ゆを食べるまりさ、どうやら初期のゆっくりはこれしか生き残っていないようです。 他は 赤まりさ×20 赤ちぇん×10 赤ぱちゅりー×8 ちぇんやぱちゅりーの姿がないところを見ると、二匹とも巣箱の中でおたべなさいしたらしく、二つに割れたまんじゅうが入っていました。 赤ゆっくり達を生き残らせるために、自らを犠牲にしたのでしょう。 「ここにはぜったいいれにゃいわ!」 「たてきょもりだょー」 雑草の茎で入り口は塞がれています。ゆっくりのやることなので、隙間は空いていますが、外で共食いを始めたまりさが入れない程度の強度はあるようです。 「むーちゃ、むーちゃ、・・・ゆげぇ!!!」 巣箱の発泡スチロールの欠片を食べてあんこを吐いて死ぬもの。 そのあんこを美味しそうに食べる親まりさ。 最早、まとまった餌はぱちゅりー達の巣箱だった中にある親ゆっくり二匹の残骸くらいのものです。 「ゆっ!もう、あんこはたべあきたのぜ。」ぎろりと封鎖された巣箱を見る親まりさ。中には、生クリームの詰まった子パチュリー達と チョコクリームの詰まった子ちぇんがいます。 「む~しゃ、む~しゃ 、それなりー。」 「ゆが~ん!!まりしゃはゆっくちできないよ!!」 「むきゅ!みんなでたたかえばかてるわ!」「わきゃるよー!とちゅげきにゃんだにぇー」 わらわらと出てくる赤ゆっくり達。普通なら成体ゆっくりと赤ゆっくりでは勝負になりません。 ですが、子ゆっくりサイズまでにしかならない品種改良を受けたまりさには、意外に多数の赤ゆっくりが突っ込んで来るのは効果がありました。 「ゆ!こなまいきなあかちゃんはしんでね!まりさのでぃなーに、ゆべべっ!!」 「ゆ!まじゅいおめめだにぇ!!」 「ゆべっ!わきゃらにゃいよー。ちぇんのあんよがー。」 「むきゃっ!ふまにゃいでー。ゆ゛っゆ゛っゅ゛ゅ゛ゅ゛っっ。」 次々に飛びかかる赤ちぇんや噛みつこうとして 赤ぱちゅりー。体のあちこちをえぐられ、噛み千切られながらも、赤ゆを食い殺し続ける親まりさ。 遂には親まりさの皮がずるりと千切れ、断末魔の悲鳴もあげることが出来ずに一塊のあんことなります。 「あーあ、遂に死んだか。追い詰められた結果は人もゆっくりも変わらんね。」 ぱちゅりー達の巣箱付近では、殆んどの赤ゆが死に絶え、後に残ったのは、赤ぱちゅりーと赤ちぇんが各1匹、赤まりさが三匹だけ。 大量の赤ゆと親まりさが永遠にゆっくりしてしまった結果、破滅的に悪化した食糧事情は回復しました。 「むーちゃ、むーちゃちあわちぇぇ!!!」「こにょあまあまさんはみんかまりさのものだぢぇ!」 「ちらにゃいじぇ、みんなまりしゃがたべるにょじぇ!!」 危機が去ったにも関わらず、醜い言い争いを続ける赤まりさ達。 対照的に仲間の過半を失った赤ぱちゅりー達はゆ~ゆ~と嘆きながら、巣箱に仲間の残骸を運び始めます。 かーかーかー。 「ゆっ!真っ黒さんがやってきたよ!!」 外にいて、あんこを食べ続けた赤まりさ達は飛んできたカラスを見ました。 「ゆっ!ゆっきゅりし、ゆぴっ!!」 「まりしゃのいもうとがー。 赤まりさの目を手早くカラスはえぐり、他の赤まりさの底部をつついて動けなくします。 「ゆっゆ゛っゆ゛っ」「いちゃいよぉ!おうちかえる!!」 「にゃんで、こんにゃ、ゆきゃー!!」 ぶちぶちと音を立てて赤まりさの体は縦に引き裂かれ、カラスはゆっくりと食べていきます。 害鳥扱いされているカラスも、ゆっくりを喰らう時だけは人間に邪魔されません。 動きがとれなくなった赤まりさ達は、時間をかけてついばまれ、生きながらにして原形を失なっていきます。 「もっぢょ・・・ゆっくち・・・」 ぐしゃりと舌を潰され最後に残った赤まりさはクチバシにくわえられ、カラスによってさらわれていきます。 「むきゅっ・・・おそとはゆっくりできないわ。」 「きょわいんだにぇ・・・わきゃったよー」二匹の赤ゆっくりは、小刻に震えながら、巣箱の中で赤まりさがばらばらにされる様を見ていました。 「ゆっくり出来ない環境にさらされ続けたゆっくりは餌があっても成長できないか。試して見るのも楽しそうだな。」 お兄さんはゆっくり屋上を後にします。 食べられ尽くされていたプランターには、ゆっくりと雑草が再び生え始めていました。 ~~~~一ヶ月後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ようやく仕事を一段落させたお兄さんは、屋上のゆっくり達を思いだし、貯水タンクの辺りをみてみました。 ゆっくりしていってね!」 「ここはみんなのゆっくりぷれいすだよ。おにいさんもゆっくりしようね!!」 小さな赤ちぇんと赤ぱちゅりー二匹の他に、ねずみに相討ちになった状態で永遠にゆっくりしてしまっているちぇんと、食い殺されたぱちゅりーの残骸がありました。 「お前達はゆっくり出来ているのか?」 「むきゅ!!ゆっくりしているわ。おかあさんたちがえいえんにゆっくりしてもまもってくれたんだもの。」 「そのぶんまでゆっくりするんだよー。」 三世代目に入ったゆっくり達には既にこの小さな屋上以外の知識は消えているのでしょう。 「そんなお前達にあまあまをやろう。」 「むきゅ!おにいさんからものをもらうとゆっくりできないって、おかあさんにいわれたわ。」 「わかるよー。たべちゃいけないんだね。」 多少は教育を受けたのか、賢い個体になっているようです。 「まぁ、いい。食べたければ食べるがいいさ」 そっと、10円チョコを二つ置き、お兄さんはその場を後にしました。 その次の週、お菓子の甘味に負けた赤ゆっくり達が飢えて死んだのが、それとも耐えてゆっくりしてるのか・・・ 箱の中の猫の生死を確認するように、屋上までやってきたお兄さん。 そこには少し予想と違った光景がありました。 「むきゅ・・・ゆっくりできないわ。」 「わかるよー・・・」げっそりしながら、ソフトボール程度の大きさになったゆっくりが二匹。 「何がそんなにゆっくり出来てないんだ?」足元には、先日おいた10円チョコが二つ。 「むきゅ!いいにおいがするのに、たべられないのはゆっくりできないわ!!」 「でも、いいにおいはゆっくりできるよー。それはわかるよー。」 二匹はゆっくりらしからぬ忍耐で食べるのを我慢している。食べたらゆっくり出来なくなるのが分かるのか、涙を流しながら見ているだけ。 「いいことを教えてやろう。そのあまあまは食べるとしあわせーになる代わり、他の食べ物は二度と食べられなくなるぞ。」 「「ゆ゛っ!!!。」」 ぱたっと二匹のゆっくりは巣箱の中で気絶したようです。 屋上のゆっくり達はようやく、餌が自給出来るようになったのに、今度はパンドラの箱を渡されたようなものでした。 いつまで我慢できるでしょうか? 続く? 後書き 屋上の貯水タンクのあるスペースは6畳くらいのサイズで、屋上の他のスペースとは一段高い位置にあります。 続きを書くとすれば、その後お菓子を巡るゆっくり達の対立物にするような感じですね。 本編は携帯で書いているので変な部分がありますが見逃してください。 orz 著:moltoke これまで書いたの ゆっくりいじめ系2263 ゆしるだー ゆっくりいじめ系2357 寒さとの戦い このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2968.html
「に゙ゃあ゙!?」 畑の野菜を収穫に来ると俺の畑の野菜を齧っているゆっくりの姿を見つけた。 何時もと同じように後ろからゆっくり近づいて捕まえる。 何時もと違ったのはそれがゆっくりちぇんだったことだ。 「わるかったよー。おなかすいてたんだよー。」 ちぇんは所々傷だらけだ。 今年は豊作ではなかったし凶作でもなかったのだが、ゆっくりに取っては餌を集めることが厳しいらしい。 俺はガシガシと頭をかいて悩んだ。 「ごめんよー。もうしないよー。」 ちぇんは捕まれたままであったが逃げ出そうとはせず必死に謝っていた。 俺はちぇんを水遣りのために持ってきていた大き目の桶の中に放り込む。 「に゙ゃ!」 悲鳴が聞こえたが無視して桶の上に板を置いてちぇんを閉じ込めた。 ガタガタと桶が揺れる。 しかし、倒すほどではないようだった。 念のため板の上に重石を置き、俺は畑作業の続きを始めた。 作業が終わり、道具を片付けて家に帰る。 いまだ暴れるちぇんを閉じ込めた桶を除いた道具を手入れして物置に入れ、桶を縁側に運ぶ。 縁側に着くと桶を置き、台所から小麦粉を持ってくると、俺はゆっくりと桶に乗せた板を外した。 中ではちぇんが涙を浮かべて泣いていた。 「に゙ゃああああああ、ごわがっだよおおおおおおおお!」 泣き叫ぶちぇんをゆっくりと持ち上げ、傷ついている場所に小麦と水を混ぜたものを詰めていく。 最初は泣き叫んでいたちぇんも、傷が治っていくにつれだんだんと笑顔になっていた。 「わかるよー、いたくないよー!」 「おにいさんのおかげだねー!ありがとー!」 今までは傷によって動きを制限されていたのだろう。 俺の手の中でちぇんは元気よく暴れて、危うく落とすところだった。 なんとか傷に小麦粉を塗り終わった。 乾くまでちぇんを押さえつけていっしょにゆっくりとする。 ちぇんは嫌がるそぶりも見せず一緒にゆっくりしている。 傷を治した俺をいい人間だと勘違いしてるのだろう。 やがて、固まったのを確認した俺はちぇんをふたに使った板の上に乗せる。 「わかるよー、おもかったんだねー。」 ちぇんは勝手に動かされたことに文句も言わず、板の上で先ほどと同じようにゆっくりし始めた。 板の上ではちぇんに付いている二本のしっぽがゆらゆらと揺れていた。 俺はそのうちの一本をやさしくつかんだ。 「ゆゆっ、くすぐったいよー。」 尻尾を触られると痒くなるらしい。 しかし、ちぇんはどこか気持ちよさそうだ。 撫でるたびに震えている。 俺は一本の尻尾をゆっくりさすりながら、その先端に包丁を叩きつけた。 「にゃ?・・・いぢゃいいいいいいいい!」 ちぇんは最初何が起きたのか分からず、暫くしてから痛みが伝わったのか見たことないような表情で暴れ始めた。 俺はちぇんが逃げないように手で押さえつける。 そして、ちぇんの尻尾をどんどん輪切りにしていった。 「に゙ゃああああああああああああああ!」 「わがだないよおおおおおおおおおお!」 「やめでえええええええええ!」 尻尾を切るごとにちぇんはさまざまな悲鳴をあげる。 一本丸々と輪切りにした後は、残った一本を柱に釘で打ちつけてやった。 「ぎゃあああああああああああ!」 「わからなよー!はやくおろしてよおおおおおおおお!」 「い゙ぢゃい!じっぼがぢぎれぢゃうううううううう!」 一本の尻尾で全体重を抑えているので尻尾にあいた穴がだんだんと広がっていく。 「おにいさんたすけてほしいよ!このままじゃおちちゃうよ!」 「いだあああああちぎれるううううううう!」 「いし、そのいしをどけてえええええええええ!」 ちぇんは必死に俺に助けを求める。 石と連呼するのでちぇんの下を見ると、確かに尖った石が下にあった。 俺はちゃんとちぇんの下に石を移動させる。 上を見上げるとちぇんの顔が青くなっているのが分かった。 それから暫く待ってみたがなかなか落ちない。 「わがらないよおおおおおおおおお!」 「だれがだずげでほじいいよおおおおおおおおお!」 このままじゃ時間がもったいないな。 俺は手に持った包丁で尻尾を真ん中で切ってやった。 「にゃ?」 ちぇんは急に浮遊感を感じたのが不思議だったのだろう。 石がだんだんと近づいてくる。 「わかるよー。これはおちてるん・・・に゙ぎゃ!?」 ちぇんの下に移動させた石は俺の期待を超える働きをしてくれた。 尖った部分はちぇんの左目に食い込んでいる。 刺さったときに悲鳴を上げたちぇんも今はただびくびくと痙攣しているだけだ。 もしかして死んでしまったのだろうか。 中身でぐちょぐちょな体を持つ気にはならなかったので半分残った尻尾をつかんで持ち上げてみる。 ペシペシ。 「ゆぎゅ・・・わがら・・・ないよ・・・なにもみえないよ・・・」 「もうよるになっちゃったのかなー?」 ちぇんは強すぎる痛みによって混乱しているようだ。 顔を良く見ると中身によって残った右目も隠されているようだ。 俺は井戸から水を汲み、水の入った桶にちぇんを突っ込んだ。 「づべぢゃ!?」 突っ込んだときに暴れたので両手で押さえ込む。 暫くつけとくと動かなくなったので水から出してやった。 顔はきれいになったようだ。 これで目も見えるだろう。 「・・・」 どうやら気絶してしまったらしい。 このままでは死んでしまうので桶の水を勢いよくかける。 「ゆ゙・・・」 どうやら気がついたようだ。 ちぇんは水でぐちょぐちょだった。 俺はゆっくりを飼っている仲間の言っていたことを思い出す。 確か水でぬれたときは乾かさないとダメだったか・・・ 俺はちぇんの尻尾を持ち、勢いよく振り回した。 「めがまわるよおおおおおお!やめてほしいよおおおおおお!」 「ゆぐっ、ぎもぢわるいよおおおおお!わがらないよおおおおおお!」 ちぇんは何かを言っているようだが聞く耳をもたない。 ぐるぐるぐるぐると何回も回す。 まわす度に水しぶきが飛んでいき、やがて水しぶきが飛ばなくなった。 もう乾いたか。 俺はそれを確認すると森の前まで行き、ちぇんを森の中に投げ入れた。 これに懲りてもう俺の畑の野菜を取ることはないだろう。 家にもどろうと桶を手に取ろうとした時、地面に落ちた帽子と輪切りの尻尾に気がついた。 「わがらないよ・・・どうしでごうなっだんだろ・・・」 ちぇんは男に投げられた後、木に体ごとぶつかった。 ずるずると木を滑り落ちた後、そこから動く気にもならずゆっくりとしていた。 体はどこが無事なのか分からない。 目も片方が潰れてしまい、これから生きていくことを考えるとちぇんは不安でいっぱいになる。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 いきなりかけられた声にちぇんは本能で返事をする。 傷ついたちぇんに声をかけたゆっくりが茂みから現れる。 「ら、らんしゃま・・・」 「ちぇえええええええん!」 それは9本の尻尾が特徴のゆっくりらんだった。 ちぇんの悲鳴を聞きつけここまでやってきたのだろう。 ちぇんの顔に先ほどまでの不安はなくなり、自然と笑顔が現れる。 らんはちぇんの傷を見ようと急いで近づき、そして気づいた。 帽子がない。 らんは木で休むちぇんを木から離すように弾き飛ばした。 完全な不意打ちを食らったちぇんはかおをこすりながら地面をすべる。 「ら、らんしゃまどうして・・・」 「ぼうしがないよ!ちぇんのにせものだな!」 「わ、わからないよおおおおおおおお!」 ちぇんは傷ついた体を無理やり動かし逃げた。 それをゆっくりらんが追う。 その顔は怒りに満ちていた。 らんはちぇんをちぇんのまねした小汚いゆっくりと認識していた。 ちぇんは逃げた。 「わからないよー!わからないよー!」 「ちぇえええええええええん!」 帽子、帽子はどこだ。 ちぇんは残り少ない中身を総動員して思い出す。 そして、先ほどの虐待を思い出した。 「わかるよー!あそこでおとしたんだよー!」 ちぇんは投げられた場所に戻った。 きっとそこに帽子があるはず。 ちぇんの予想は正しかった。 縁側にいる男の足元、ちぇんは帽子を見つけた。 「よかったよー!ぼうしはぶじだよー!」 ちぇんはこれでらんさまも分かってくれると思うとどこからか力がわいてきた。 力を込めて帽子に向かって跳ねていく。 その帽子が真っ赤に燃えた。 「にゃ?」 ちぇんには最初何が起こったのかわからなかった。 男が細い棒を小さな箱に擦ると火が起きた。 その火が帽子に近づくと、帽子は真っ赤に燃え上がった。 いつの間にか帽子の上には網があり、ちぇんの尻尾だったものが載っていた。 「わ、わからない・・・よ・・・」 跳ねるのをやめたちぇんの上に影が差す。 ちぇんにはそれがゆっくりらんであることが分かった。 「らんしゃま・・・」 らんしゃまは重かった。 今まで書いた作品 ゆっくり水攻め ゆっくりの川流れ 天井のゆっくり ゆっくりまりさの水上生活 ゆっくり訓練 ぶるぶる とりもち 子ゆっくり きめぇまる ゆっくりがんばるよ さらちくび 冬のゆっくり 親れいむのがんばり 子れいむのがんばり しろくろ 黒歴史 まりさとぱちゅりーの子育て まりさとぱちゅりーのお引越し このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2432.html
※俺設定注意 ゆっくりいじめ小ネタ189 新製品 ゆっくりいじめ小ネタ453 新製品 その2 の設定を使わせていただいています。 暇で暇でしょうがないのでゆっくりを魔改造したいと思う。 いつぞや俺が買ってきた、ゆっくりのスペア用パーツ「おめめ」。 こいつで百々目鬼ゆっくりを作成したいと考えている。 用意するものは、例の「おめめ」20個(これは別に何個でも良い)、そこら辺で捕まえてきたゆっくり。 前回はれいむが頑張ってくれたので今回はまりさの出番にした。 「ゆゆっ!おじさん、ゆっくりしていってn」 誰がおじさんだこの大福が。 即効で麻酔用アルコールを突き刺し、眠らせる。 起こしていてもいいのだが、そうなると作業がめんどくさい。 まずはまりさの帽子を取る。 この帽子は特に利用価値は無いので捨てるなりなんなりしても構わない。 俺は後で実験に使用したいのでとっておく。 次に、髪の毛。 必要ならば全部剃ってしまおう。 確かゆっくりは髪の毛の有無よりも飾りで判別するはずだから・・・問題ないな。全て剃る。 まりさの髪を適当に坊主刈りにしてから、丁寧にかみそりで剃っていく。 あっという間にハゲ饅頭の出来上がりだ。 本饅は幸せそうに眠っているが、今起こしたら泣くわ喚くわでさぞ大変だろう。 今回の趣旨に逸れるので眠らせたままにしておく。 さて、ここからが本番だ。 どこでもいいからハゲまりさの皮に切れ込みを入れる。 「ゆうう・・・・・・ぅん・・・・・・」 ハゲまりさが唸っているが無視。 この程度では麻酔は切れない。 切れ込みを入れたらその中にスプーンを差し込み、ある程度餡子を取り除く。 ちょうど目を入れる眼窩をイメージすると良い。そんな感じにくりぬいていこう。 最後に適当な「おめめ」を切り口の中に押し込む。 オレンジジュースをかけても良いが、うっかりすると切り口が塞がってしまうので今回はパスだ。 自然治癒を待とう。 そんな調子でどんどん「おめめ」の移植を続けていく。 両目の間とか、後頭部とか、両頬とか、とにかく沢山だ。 結構「おめめ」は色のバリエーションが多いので楽しんで着けていける。 「おめめ」を使い切ったら完成だ。 ハゲまりさ・・・いや、百目まりさはその名の通り、ありとあらゆる場所に瞼らしきものがついている。 目玉が入ったことでその部分が目の機能を始めたのだ。何故か睫毛も生え始めている。 底部以外にびっしりと目がついたゆっくり。正直キモイ。 百目まりさが起きるまで時間を潰す。 とりあえず本でも読むか。 「ゆ・・・・・・ゆぅ・・・・・・」 お、丁度いいタイミングで目が覚めたようだ。 本を投げ捨て、まりさの傍に近寄る。 ゆっくりと、開かれていく沢山の瞼。 怖ぇ。 「ゆっくりしていってね!!!」 テンプレのごとき挨拶。まぁそれはどうでもいい。 百目まりさの顔を構成するのは口意外に、目と目と目と目と目と目と・・・・・・とにかく目だらけだ。 ここで取り出したるは先程取り外しておいたまりさのお帽子。 「ゆっ!!まりさのおぼうし!!かえしてね!!」 複数の目玉が一斉に帽子を見つめる。 試しに帽子を振る。つられて動く大量の視線。 自分で作っておきながらなんだが、もし夜とかに出会ったら卒倒する自信がある。 百目まりさがこちらに向かって跳ねてきた。 怖っ。 思わず百目まりさの後ろに回りこむ。 「ゆゆっ!!?まりさうしろがみえるよ!?なんで!?」 あ、そうだった。 こいつの後頭部にもびっしり目玉を移植したんだっけ。 ていうか今の今まで後ろ見えることに気付かなかったのかよ。 後ろどころか全方位見えるはずだぞ。 これ以上勝手に近寄られても怖いのでさっさと帽子を返すことにする。 百目まりさにむかって帽子を軽く投げる。地面へと落ちる帽子。 ぴょんぴょん跳ねて帽子を回収する百目まりさ。 「ゆっくり!!まりさのおぼうしさん、もどってきたよ!!!」 喜色満面とでもいうべきか。 にっこりと笑顔を作る百目まりさ。 ただ、全部の目が笑っているのでキモい事この上ない。 覚悟を決めてそっと近寄り、百目まりさを持ち上げる。 途端、複数の視線がこっちを向く。怖い。 「ゆぅ~おそらをとんでるみたい!!!」 能天気な百目まりさは放っておいて、じっくりと観察しよう。 うん、やはり全ての目はちゃんと機能しているな。 赤、青、黄、緑、黒。いろんな色の目玉がそれぞれ独立してギョロギョロ動いている。キモい。 どうせなので同じゆっくりにも見せてくるか。 百目まりさを抱え、適当に道を歩く。 こうしていればゆっくりに出会えるだろう。 「ゆっくり!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「むきゅ!!」 もう出てきた。 れいむ、ありす、ぱちゅりーの三匹。 早速百目まりさを降ろしてみよう。どんな反応をするのやら。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆ?・・・ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりして・・・・・いってね?」 「むきゅ?・・・・・・まりさ?」 あれ、案外普通に挨拶してる。 もっとパニックを起こすものかと思ってたんだが。 飾りさえあれば何でもいいのかこいつら。 「まりさ、なんだかゆっくりできてないよ?」 「ゆぅ・・・・・・まりさがとかいはじゃないわ・・・・・」 「むきゅん・・・・・・なにかへんよ、まりさ・・・・・・」 「ゆっ!?まりさはゆっくりしてるよ!!へんなこといわないでね!!!」 流石に変だとは思うらしく、3匹は百目まりさに対して引き気味だ。 ゆっくりできないと言われ、怒る百目まりさ。いやお前、自分の姿自覚しろよ。 と、ここでネタばらし。百目まりさのお帽子を取り上げる。 「ゆっ、おじさん!まりさのおぼうしとら―――」 「「「ゆぎゃあああああああああ!!!ばげものおおおおおおおおおおお!!!!!」」」 百目まりさの声を遮るように、3匹の叫びが当たりに響く。 帽子取っただけでこれかよ。いい加減な審美眼してるなこいつら。 「ゆっ!?ばけもの!!?どこ!?どこにいるの!!?」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ごっぢぎだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「お゛も゛に゛め゛がぎも゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「むぎゅっ・・・・・・え゛れ゛え゛れ゛え゛れ゛・・・・・・」 化け物と聞いて3匹に近寄ろうとする百目まりさ。 そしてそんな百目まりさから逃げ出そうとするれいむとありす。 ぱちゅりーは白目剥きながら痙攣してクリーム吐いてる。こりゃ死んだな。 「ゆあああ!!おいてかないでね!!おいてかないでね!!」 「ぐっ、ぐるなああああぁぁぁぁ!!!!」 「ごわっ、ごわいいいいいいいいいい!!!!!」 「・・・・・・・・・・・・」 置いてかれまいと必死に2匹についていこうとする百目まりさ。 さらに逃げる2匹。鬼ごっこの始まりだった。 とりあえずぱちゅりーは黒ずみ始めた。誰にも気にかけてもらえてない。 「まってよおおおぉぉぉ・・・・・・れいむぅぅ・・・・・・ありすぅ・・・・・・」 「いやあああああぁぁぁ・・・・・・ごないでぇぇ・・・・・・」 「とがいはじゃ・・・・・・な゛いわぁ・・・・・・・」 そのまま草むらへと消えていく3匹。 特に止める必要も無かったのでそのまま見送ることにした。 しかし本当に誰もぱちゅりーの事に気付いてない。哀れな奴。 さて、百目まりさも居なくなってしまったし家に帰るか。 きっとあいつのことだ。何とか上手く生きていけるに違いない。 そういえば帽子を持ったままだったが、置いていったのだし要らないんだろう。 俺は百目まりさの帽子をびりびりに破いてから意気揚々と家路についた。 非常にどうでもいいことだがそれから数日の間、この町に妖怪が出るという噂がまことしやかに流れた。 なんでもその妖怪は全身に目が付いた生首だとか。 どう聞いても百目まりさの事です本当にありがとうございました。 おわり ――――― 書き溜めです。 そういえば書いてないなと思い適当に仕上げた。 構想3秒、執筆期間30分、推敲0秒。適当は良くないね。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2934.html
ゆっくり実験02 ~ありす掘削~ 作:アイアンマン やあ。僕は人里に住む普通のお兄さん。 以前、ゆっくりまりさの底をぐるっと切って、皮を持ち上げたりした者だ。 あれ以来、ゆっくり実験には手を出していなかったんだけど、今日たいへんなことが判明した。 「えへっ……実は私も……好きなんだ。ゆっくりいじめ」 可愛らしく笑ってぺろっと舌を出したのは僕の妹。 「おまえもか」 「うんっ♪ だからお兄ちゃんといっしょに、虐待したいしたい、した~い♪」 そう言って僕の手に取り付き、ぴょんぴょんと跳ねる。 セミロングの髪とミニスカートがはためき、健康的な太腿がちらちらと見える。 僕は普通のお兄さんだが、妹が好きだ。 妹が好きでも別に異常ではないことは、多くの人に賛成してもらえると思う。 賛成してもらえるよね。 可愛い妹のためとあれば、やらないわけにはいかないだろう。 「で、こいつか」 「うん、あたしはこれが好み」 そういって僕たち二人はテーブルの上に目を注いだ。 そこにいるのは金髪に赤いカチューシャを差したゆっくりだ。 「ゆふん、ゆっくりしていってね!」 ゆっくりありす。 まあ説明の必要もないと思うが、マスクメロンぐらいの大きさで、健康そうだ。 「冷蔵の赤ちゃん状態で買ってきて、手塩に掛けて育てたのよ。 この四ヵ月、ず~っと仲良く暮らしてたんだから。ねー、ありす」 「ゆっ! まちがえないでちょうだいね、ありすがなかよくしてあげたのよ! とかいはなわたしとくらせて、おねえさんもゆっくりできたでしょ?」 ありすはそう言って、自慢げにふんぞり返った。 僕の胸の底で、メラッと何かの炎が燃える。 ――すると妹が、しっとりした華奢な指で僕の手をキュッと握った。 「ね、可愛いでしょ?」 天真爛漫な笑顔の奥に、異質な気配が見える。 うんうん、さすが僕の妹だ。ただ単に美少女なだけじゃなく、ミステリアスで素敵だなあ。 「それで、この仲良しありすを、やっちゃうの?」 「そう、やっちゃうの♪」 嬉しそうにうなずくと、妹はいそいそと準備を始めた。 ありすは、いくら都会派を自称していても、しょせんは空気の読めないゆっくりなので、間の抜けた質問をする。 「ゆっ? ゆっ? なにかたのしいことをするの? ありすもさんかしてほしいんじゃなくて?」 「ああ、ありすも一緒に遊ぼうなー」 僕は平和そうな雰囲気を装って、ありすの髪をなでてやった。 「き、きやすくさわらないでほしいわね! ぷんぷん!」などと頬を赤らめながらも、身を任せるありす。 ああ、こういうところは可愛いな。 もちろん、可愛いからって手を緩める気はない、というか可愛いからこそやっちゃうんだけど。 そうこうしているうちに妹が準備を整え、ありすの前に何かを差し出した。 「はい、まずはこれを召し上がれっ」 「ゆ、なにかしら?」 皿に盛ったクッキーだ。あら、これはほんとにとかいはなおかしね! とありすはよだれを垂らして平らげる。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせえええ……っと、こほんこほん! まあまあね」 などと気取った態度を取ってはいたが、五分も立たないうちに目がトロンとしてきた。 クッキーを口から落として、すやすや……と眠り込んでしまう。 僕は妹を見る。 「眠り薬入りなんだ?」 「そう。でも普通のとはちょっと違うの」 「どんな風に?」 「強い鎮痛作用があるんだって。眠り薬って言うより麻酔薬だね」 「そんなもの、よく手に入ったね」 「ショップで普通に売ってたよ?」 さすがゆっくりショップ。多様なニーズに対応しているらしい。 「さぁて、ここからがいよいよイジメです……あふん、ドキドキする」 言いながら妹が取り出したのは、奇妙で武骨な器具だった。 垂直に立つ枠のようなもの。さながら刃のないギロチンとでも言うべきか。 「ここに、ありすちゃんをハメまーす……」 メロン大のありすを枠の中央に収め、上の横木を下ろして挟み込んだ。ありすは固定され、動けなくなる。 作業しながら、妹がささやく。 「ごめんね、ありす。仲良くしてきたのにね。ショッピングにいったし、サイクリングもしたね」 言いながら電気バリカンを持ってありすの後ろに回り、綺麗な金髪をガーッと剃り始めた。 「大好きだよ、ありす。かわいいよ、ありす……」 なんか膝をもぞもぞこすりあわせ始めた。ほっぺたがほんのり赤く染まっている。 僕は思わずごくりと唾を飲んで、妹の肩に手をかけた。 「ひゃん!」 ビクッ、と震えて妹が振り向く。僕は何度もうなずいた。 「うんうん、わかるよ、今のおまえの気持ち」 「やだ……」 とうつむいた妹が、ふと何かに気付いたように顔を上げた。 「そっか、お兄ちゃんも、なんだ……?」 「そうさ。僕だって、まりさをいじめたときには……」 「ああ……お兄ちゃん! やっぱりあたしのお兄ちゃんだぁ……♪」 花が咲くようにふんわり微笑んだ妹に、僕は愛情をこめて頬ずりしてやった。 「さあ、何はともあれ、これを続けなきゃ」 「うんっ、そうだね! 薬の効き目が切れちゃう。そうそう、お兄ちゃんにも役柄があるの。手伝ってね!」 明るく元気にうなずくと、妹は残りの準備をてきぱきと進める。 ビデオとディスプレイの設置、配線、そして術具の配置など。 すべてが終わると、僕たちはありすの前の椅子に腰掛けた。 「さあ、ありす、目を覚まして……」 すでにパンツの中が大変なことになっちゃってるらしい。 スカートの上から股間を直したりしつつ、妹がありすの顔の前に気付け薬をかざした。 「ん……ゆ……くちゅんっ!」とくしゃみをする。人間でいえばアンモニアを嗅がされたようなものか。 うっすらと目を開けたありすが、しぱしぱと瞬きして状況を把握しようとする。 右手に僕、左手に妹。 そして正面には大画面の液晶モニター。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 僕と妹のかけた声に、ありすはびくっと驚いた。 「ゆ、ゆっくりしていってね……?」 そして落ち着きなく、辺りを見回そうとした。 動かない。 いや、動けない。 ゆっくりありすは体を動かせない。顔を押さえる枠のせいだ。 そして、そちらまで視界が届かないので、なぜ動かないのかも分からない。 おまけに薬で思考が鈍っている。 「ゆ? ゆ? なんなの? ゆっくりうごけないわ?」 きょときょとと左右を見るありすの前に、いきなり妹が、ずいっと身を乗り出した。 「ねえ、ありす!」 「ゆっ?」 僕の横に小ぶりなお尻をツンと突き上げた姿勢で、テーブルに手をついて妹はありすに詰め寄る。 「今日はあなたに見てもらいたいものがあるの」 「ゆ、そんなことより、ありすはゆっくりうごきたい――」 「いいから、ね、見て! きっとゆっくりできるわよ?」 押しかぶせるように言うと、妹は身を引いてリモコンの電源ボタンを押した。 ぱちっ、と映像が映し出される。 板の上に乗っている、白いものの映像だ。もっちりとして柔らかそうな楕円状の物体。 かなりアップにしてあり、その白いものと、台になっている板以外は映っていない。 「ありす、これがなにかわかる?」 妹が聞く。ありすは眉をひそめ、ふるふると首を振――ろうとしたが、枠に阻まれて失敗し、目だけを横に動かした。 「わからないわ。ねえ、ありすはゆっくり――」 「いい、見ててね? ありす」 ありすを無視して言った妹が、目顔で僕に合図した。 僕はうなずき、席を立って離れる。ありすがとまどったように言う。 「あら? おにいさんはどこへいくのかしら?」 「さあね?」 妹がしらばっくれたその時、画面に変化が起こった。 刃物を持った人間の手が現れたのだ。 その手は、ためらいなく刃物を白いものに突き立てた。ぷつり、と弾力のある生地に刃が食い込む。 手はそこでいったん止まった。妹がありすに目を移す。 「ありす、これをどう思う?」 「ゆぅ……? いみがわからないわ」 「そう? じゃあもう少し見てて」 手が再び動き出し、白いものに切れ目をつけていった。 さくり……さくり……と刃が生地を切る。そのたびに妹がせわしなく瞬きする。 足を組み替えて、ぎゅっと力を入れたのが分かる。両手で自分の胸を抱きしめた。 僕はにやにや笑う。妹の気持ちがわかる。 声をかけたかったが、そうするわけにはいかない。声を出したら僕の居場所がありすにばれてしまう。 さくっ……と生地を四角く切ると、画面の中の手は、生地をめくりあげた。 もちもちとした生地がぐにゃりと持ち上がる。 と、その中で形を保っていた黄色いねっとりしたものが、とろぉり、とゆっくり垂れてきた。 妹が身を乗り出し、唇を震わせて尋ねる。 「ね、ねえ、ありす。ほ、ほんとになんとも思わない?」 「ゆゆぅ……?」 ありすは眉をひそめて映像に目を凝らしているらしい。クイズか何かだと思ったのかもしれない。 「これは……なにかしら。やわらかくて、もちもちしているわ」 「うん、そうね」 「なかから、とろとろしたものがたれてるわ。なんだかゆっくりしたものにみえるわ」 「そう、そうよ」 「でも……なにか、なにか、ゆっくりできないかんじが、す、る……」 「うんうん……うんうん!」 期待を込めてありすの顔を覗きこんでいた妹が、しばらくしてから、僕に目配せした。 僕は静かに歩き、妹のそばに戻った。考えこんでいるありすの前に、コトリと皿を置く。 「ゆっ?」 目を上げたありすが、皿に気付いた。その顔を、ふわりと甘い香りが撫でる。 皿には、スプーンで盛りつけた黄色いカスタードクリームが乗っている。 「あら……あまあまだわ! とかいはなにおいのするあまあまだわ!」 口の端によだれを浮かべて、ありすが僕を見上げた。 「これをありすにくれるのね? ありすがたべていいのね?」 「いいけど、あたしもほしいなあ……」 「ゆっ! いいわ、おねえさんたちにもあげるわ! ありすはやさしいのよ!」 気取った調子でありすが言ったので、僕と妹は顔を見合わせ、一緒に食べ始めた。 「あーん……おいし」 「ありすにも! ありすにもあげなきゃいけないでしょ!」 「わかってるって。はい、ありす。あーん……」 「あーん……ぱく! ぺーろ、ぺーろ♪ しあわせええぇ♪」 口を開けて目に涙を浮かべ、ふるふると感動するありす。 ゆっくりの性質だとはいえ、こんなときでも感動してしまうなんて、業だなあ。 「おいしいよね、クリーム」 もうひと口、自分で味わった妹は、次にすくったクリームを僕に差し出した。 「はい、お兄ちゃん♪」 「いいの?」 「んふ、あたしが大事にしてきた……クリーム、食べてね」 中ほどのところは言葉を濁して言い、妹がスプーンを向けた。僕は口を開ける。 「はい……」 妹の唾液のまだ残るスプーンを、僕はぱくりとくわえた。 じっくり舐め取って、と言わんばかりに、妹はじわじわとスプーンを引き抜いた。 そして、僕の唾液の残るスプーンでクリームをすくい、僕に見せ付けるように桜色の唇にくわえて、ねっとりと舐め取った。 上気したような上目遣いでささやく。 「ごめん、あたしのスプーン、使わせちゃって……」 「いや、いいよ。僕は平気」 「そうなんだぁ……♪ うれし」 小悪魔みたいに色っぽい笑みを浮かべると、妹はわざとクリームを残すような舐め方をして、僕にも使わせた。 僕もお返しに、口に入れたクリームをかき混ぜてからスプーンに載せて差し出し、妹に舐めさせてやった。 そんな甘甘プレイを兄妹でやっていると、ありすが「ぷくぅぅ!」とふくれてしまった。 「おねえさん、おにいさん! ありすにももっとくりーむをよこしなさいな! ありすはもっとほしいわ!」 仲間はずれにされた悔しさからだろうが、それを聞いた妹が、また目を輝かせて身を乗り出した。 「もっと? ありす、もっとほしいの?」 「ゆん、そうよ! ゆっくりもってきてね!」 「ほんとうにいいの?」 「いいっていってるでしょおおお!」 うわ、青筋立てた。ヒスを起こしたみたいだ。 ありすは他のゆっくりより怒りやすいのかもしれない。 ともあれありすのご用命なので、僕は席を立ち、クリームのお代わりを持ってきた。 そしてありすにひと口か二口やり、あとはまた兄妹で舐めたり舐めさせたりする。 クリームがなくなると、また持ってくる。 それを繰り返しているうちに、どうも違う気がしてきたので、いつの間にか抱きついていた妹を押し戻して、僕は言い聞かせた。 「ちょっと待ちなよ、これ、ありすとの遊びだったろう」 「そ……そうだね」 妹はスイッチが変なほうに入ったらしく、汗ばんだ顔を僕の胸に埋めて、はふはふ息をしていた。 僕に押し戻されて、ようやく正気を取り戻す。 「こんなことしてちゃ、いけないよね……」 「そうだよ」 「でもなんか、これはこれでいいから、お兄ちゃん、あとで……ね?」 おねだりするような目をしてきたので、僕はそのおでこにキスをして、頭をなでてやった。 それから二人でありすに向き直った。 「ねえありす、まだまだクリーム、ほしい?」 「ほしいわ! もっとありすにもあまあまがほしいの!」 かなりイライラしているようだ。まあ無理もないか。仲良しの飼い主である妹を、僕に取られちゃったんだから。 妹がありすの頬に触れて、やさしく言い聞かせた。 「ごめんね、つい夢中になっちゃった。でもありすのことも好きだよ」 「すっ……すき、なの?」 好きだと言われたとたん、ぽっ、とありすは頬を赤らめた。 じつに単純だと思うけれど、ありすが一番弱いキルワードが、「好き」のひとことだと聞いたことがある。 仕方がないんだろう。 「す、すきっていえばゆるされるなんて、おもわないでね!」 「わかってる。だから態度で示すね。ありす……」 顔を寄せた妹が、ありすの頬にキスした。 それも、つついて離すような軽いキスじゃなくて、唇を塗り当てるような濃厚なキスだ。 「ゆ、ゆうぅぅ、おねえさん、そんなぁ……ちゅっちゅ、すごいわぁぁ♪」 たちまちありすが身をくねらせる。うーん、可愛いかどうか微妙なところだ。 キスを終えると、妹は僕に目配せした。僕はクリームを取りに行く。 妹はありすの顔のそばで、睦言のようにささやく。 「ね、画面見て、ありす」 「ゆぅ?」 そこには、例の白いもちもちに刻まれた、拳が入るほどの穴が映っている。 今またそこに現れた手が、空洞と化しつつある穴の奥にスプーンを差し込んで、クリームをかき出していた。 「もうずいぶんクリームを取っちゃったから、スプーンが届かないの」 「ゆぅぅ? それはこまったわね……」 「だから、しぼり出してもいいかな?」 「あら、しぼればでるの? じゃあしぼればいいとおもうわ」 「そう? ありがとう」 妹は微笑むと、ありすの両方の頬を、手のひらで挟んだ。 「ゆぅ……?」 そして、少し力をこめて、ぎゅっと押した。 画面に映る空洞の奥から、ねろねろとカスタードクリームが出てきた。 スプーンがそれをすくい、持ち去った。 妹が、またありすに顔を寄せてささやく。 「まだまだ出てくるわね、ありす」 「ゆ、そうね……」 うなずこうとしたありすが、ふと、言葉を切った。考えこむような顔をしている。 その間に僕は戻ってきて、ありすの前に皿を差し出した。 そして次の皿を手にして、また立ち去った。 「あら? おにいさん? たべないの?」 「全部食べていいのよ、ありす」 妹が頬杖をついて、うっすらと微笑む。 「ううん、全部食べなきゃダメよ、ありす」 「……おねえさん……?」 ありすが不安を感じたように尋ねたとき、画面に再び人間の手が現れた。 それと同時に、妹がありすの頬に手を伸ばした。 「ゆううっ!?」 妹がありすをおしつぶす。 画面に映る穴から、ムリムリとクリームが出てくる。 人間の手がその大部分をかきとった。 ややあって、僕がありすの視界に現れ、一枚目の皿の隣に二枚目の皿を置いた。 そして妹と二人で並んで、にこにことありすを見つめた。 妹がとびきりのプレゼントをするような声で言った。 「さあ。わかったかしら? ありす」 「ゆ……?」 ありすの、ゆっくりにしては端正な顔に、疑問のさざなみが走った。 次第にそれが、黒く深くグロテスクな恐れの色へと変わっていった。 「ゆ……え……? これ……だれのあまあま……え?」 混乱している。無理もない。常識的に考えればありえない。 だってその想像が本当なら、ありすは激痛で悶え苦しんでいるはずだから。 それなのに現実は、大好きな飼い主とごく普通に会話できている。 でも。 「ありす、一緒にお買い物にいったよね」 おねえさんの、 「ショーウィンドウのウェディングドレス、見とれてたよね」 いうことが、 「ゆっくり用のドレスなんてなかったけれど、帰ってからレースのハンカチでヴェールを作ってあげた。すっごく喜んでくれたね」 なつかしい、うれしい、とてもうれしかったのに、 「覚えてる?」 おもいだせない。 確かに見たはず聞いたはずのことが、思い出せない。 あるべき記憶がない。ごっそりと失われている。 まるで誰かに食べられてしまったかのように。 僕には、ありすのそんな恐怖が手に取るようにわかった。 僕が三枚目の皿を手に取って席を立つと、ありすが脂汗を流しながら叫んだ。 「ど、ど、どうな゛っでるのぉぉぉ゛!?」 「食べな。ね?」 返事の代わりに、妹が皿をありすの前に押し出す。 「食べるのよ、ありす」 ありすは本能的に悟ったようだ。食べなければまずい、と。 ものすごく、とてつもなくまずい、と。 「はっふはっふ! がっぷ、あぶあぶ、べーろべーろ!」 つんのめるようにしてクリームに舌を伸ばし、ありすは必死でクリームを舐め始めた。 そんなありすの頭を押さえ、妹が哀れむような顔でささやく。 「がんば・れっ」 ぎゅうううう! 容赦ない圧迫。潰れるありす。画面に映る穴からねろねろっとほとばしるクリーム。 そして、間をおかず自分の前に置かれる、三皿目のクリーム。 「べーろべーろべろべろ! ぬっちょねっちょ、あっぶあっぶ!」 ありすは舐める。必死で舐める。 口の周りはあっというまにべたべたになった。もはや都会派もへったくれもない。 舌の届く限り、飲み込める限りのクリームを飲もうとしている。 さあ、もう全貌を話してもいいだろう。残るのはもう競争だけだから。 要するにありすを麻酔し、前しか見られないようにしてから、後ろ頭に穴を開け、それを撮影してありす自身に見せているわけだ。 自分の頭に大穴が開き、中身を掻き出されているさまを見せつけ、感想を聞く。 あくまでも本人に確たることは教えず、ただ不安だけをじわじわと煽っていく。 自分の妹ながら、よくこんなねちっこいいじめを思いつくものだ。 ……とても素敵な妹だと思う。 僕と妹は、機械的なほど無造作に、しぼってはかき出す作業を続けた。 静かな共同作業の中心で、ありす一匹が必死で自分の中身を食らい、カスタードクリームをぐるぐると輪廻させていた。 だが、いくら頑張ったって、舌一枚で僕ら二人の作業に追いつくには、無理がある。 五枚、六枚、七枚……ありすの前の皿の枚数は、次第に増えていった。 それにつれて、空洞はありすの奥のほうへと広がっていった。 皿が九枚になった時、ありすの頭は、後ろ五分の三がぺらぺらの皮だけになっていた。 空洞から奥を覗くと、まだ生きて動いている顔面のほうから、ぬぽっ、ぬぽっ、と嚥下したクリームが押し込まれているのが見えた。 後ろへ回ってきた妹が、僕の隣からそれを覗き込んで、はふー、と吐息を漏らした。 悲嘆とも感動ともつかない声を漏らす。 「ありす、ありす。あなたもう、ほとんど空っぽじゃない……!」 「ゆぎいぃぃぃいぃ!! んべっ、べよっ、あぼっ」 泣き出しそうに悲痛な声をあげて、ありすがしゃにむにクリームを舐める音がした。 僕と妹は肩を寄せ合って、テーブルの前に回った。 ありすはまだ咀嚼していた。だがその顔は、内側からの圧力が減ったために、歪んだお面のようにぐにょぐにょになっていた。 涙とクリームでべちょべちょに汚れ、いつの間にか、生きようとする意志も薄れ始めているように見えた。 顔が歪んだので両目のピントがうまく合わなくなったようだが、右目でふっと妹を捉えて、ありすはゴボゴボというような声で言った。 「おべえ ざん どうじべ こん こと」 「好きだったから」 妹はありすの頬に手を伸ばし、慈愛のこもった目でささやきかけた。 「ゆっくりの仕組みに、とても興味があったから。あなた、どうしてまだ生きてられるの? ほんとにすごい……」 「あでぃ ず じんじゃう もお じんじゃうじゃ わ゛」 「こわい? ゆっくりでも、死ぬのはこわい?」 「ごわい゛ わ゛よっ しぬ゛の い゛やっ い゛やい゛や いばゃ」 だらだらと滝のように涙を流しながら、ありすがうめいた。と、その左目が、内側にごぽりと沈んだ。 あとに残った眼窩には、あふれ出してくるクリームすらなく、後頭部につながる暗いトンネルができた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あり゛ずっ、ゆっぶりじだいのぉ゛お゛お゛!!」 絶叫しながら、ありすは残り少ない生命力をふりしぼって、クリームをごぶごぶと飲もうとした。 最後のあがきをゆっくり見てやりたくて、僕たちはありすを固定する枠を外してやり、皿のクリームを口元に次々と差し出してやった。 だが、やはり、減った分を食わせて補わせるという方法では、無理があったのだろう。 息を詰めて見守る僕たちの前で、ありすの動きが急に鈍った。 妹が肩を縮め、僕の手をぎゅっと握る。 「お兄ちゃん……!」 「うむ。ほら、耳を澄まして」 ぬぢゃっ、ぬぢゃっ、と咀嚼していた口が、ふっと動きを止め、かすれた声を漏らした。 「もっど……ゆっぐ」 すべてのゆっくりの魂に刻まれた、臨終の言葉。 それを口にしたとたん、ありすの命は尽きた。 次の瞬間、ありすの口から、どぽぽぽぽぽぉーっ、とすべてのクリームが流れ出してきた。 ありすの存在を支え、ありすによって支えられていたそれが、ただの食材に戻った一瞬だった。 机いっぱいのクリームと、べっこりと潰れた金髪混じりの皮と化したありすを見つめて、妹が感極まったように叫ぶ。 「ありす……死んじゃった……!」 妹はきゅううっ、と身を縮めてびくびくと肩を振るわせた。 僕はその体を抱いてやった。細い妹の体が、とても熱くなっていた。 こぼれたカスタードクリームをすくい集め、冷蔵庫から出した新しいクリームを加える作業をしながら、さっぱりした顔で妹が言った。 「あー、すっごくよかったな、ありすの死にざま♪」 「そうだね。ありすなんてツンデレなだけでたいしたゆっくりじゃないと思っていたけど、どうしてどうして」 「えーっ、そんなこという?」 僕の前にきた妹が、ふふっ、と悪戯っぽく笑った。 「だったら、今度のいじめは一人でやっちゃおうかなあ……」 「あれ、一人でやっていいの? 僕と一緒のほうがいいくせに」 僕はわざと冷たく聞き返す。むっ、と眉を吊り上げて、妹が言い返した。 「一人でできるもん」 「ほんとに?」 「……うそ! やっぱりお兄ちゃんとしたい!」 ふにゃ、と顔を崩して、僕に抱きついた。 うん、やっぱりこの妹は可愛い。 「そうだね、いっしょにいじめようね」 「うん! ねえ、ゆっくりれいむにする? それともぱちゅりー?」 「まあゆっくり考えよう。うちには僕の壊れまりさもいるし、まだこいつもいるし」 僕たちはありすの口を洗濯バサミで閉じておいてから、後頭部にカスタードを注いでいった。 満タンにしてから、取り除いてあった皮を戻し、耐水の絆創膏を貼る。 ここらあたりは、まりさで一度やったことだから、もう慣れている。 そして声をかけてやった。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね、ありす!」 しばらく待ったが、動き出す様子がない。 首をひねった時、妹がポンと手を打った。 「そうだ。乙女ちっくなありすのことだから……」 妹はありすを持ち上げると、その唇にキスをした! たちまちのうちに、青白かったありすの頬に紅が差し、金髪がふっさりとしたつやを取り戻した。 何度か瞬きをして、目を開ける。 「ゆぅ……ん」 「おお、目覚めた」 「王子様のキスのほうがよかったかなあ」 「起きたんだから別にいいじゃないか。さあ、ありす。ゆっくりしていってね!」 僕が声をかけると、ぱちくりと瞬きしたありすが、ぱあっと光が散るような笑顔で答えた。 「ゆっくりしていってね!!!」 あっさり生き返った。本当に単純な生き物だ。 まだ記憶が戻らないのか、それとも単にぼんやりしているのか、僕たちを見る目に嫌悪や恐れはない。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりのように、わくわくした顔で二人を見比べている。 妹がちょっと寂しそうに言った。 「あれぇ、あたしたちのこと忘れちゃったのかな、ありす……」 「いやそんなことはない、ちゃんと覚えてるよ」 僕が言ったとたん。 「ゆ・が・あ・あ・あ・ああ……!」 ありすがガッと口を開けて、がくがく震え始めた。 以前、解体したまりさと同じように、思い出したのだ。 僕は妹の頭に手をあて、優しくなでながら言ってやる。 「な、大丈夫だったろう。よかったな」 妹は嬉しさに顔を輝かせて、うなずく。 「うん、たっぷり怖がってもらえそうだね!」 僕と妹の虐待道は、まだ始まったばかりだ。 これまでに書いた話 ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1235 少年 ゆっくりいじめ系1246 二人のお兄さんと干しゆっくり ゆっくりいじめ系1279 れいむよ永久に安らかに ゆっくりいじめ系1386 ゆっくりボール続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/950.html
※注 意※ 飼いゆっくり 無事なゆっくり 頭のいいゆっくり ハートマン軍曹に負けず劣らずな量の暴言 原作キャラと交流のある鬼井山 ほかの漫画や小説のパロネタ 軍人鬼井山 自分の過去作品とのつながり(fuku3229.txt fuku3430.zip fuku3442.txt fuku3457.txt fuku3460.txt) があります それが許せるならどうぞ。ごゆっくりと・・・・ あ、いや間違えたごゆっくりせず。 朝~ 「おにいさん。朝だよ。そろそろおきて」 あぁん、ひどぅい・・ 「早く起きてよ。ご飯食べちゃうよ?」 「わかってるが寒いんだ・・・」 ちなみに俺は重度の寒がりである。 寒さなんてセイウチのケツに頭突っ込んで死ね。 「・・・先に行ってるわよ」 「あぁん!?あんかけちゃーはん!?」 ガバッ! 「・・・まいてたべろよぷーさん?」 「何故お前にそのネタがわかる」 朝~ 鬼井山宅 朝食後 「ドスの様子報告と食料庫の状態報告。どーぞ」 ドスはそろそろ佳境に入ってるはず・・・。 「むきゅん。ドスはぎりぎり精神崩壊してない。って感じよ」 「その段階になってもまだ生きるのを諦めてないわよ。流石ゲスドス」 ふーむ・・・・ 「食料庫は十分だよーわかるねー?」 「ゆふん!冬を越すのには十分なんだぜ!」 「ちなみに人里から依頼はきてません。 ・・・あぁうつだ・・・」 ふむふむ。食料は十分。暇が続く。 「寒さに強い饅頭共は外出て野良饅頭探し 見つけたら巣の中は荒らせ。その後はそいつらの足を焼いてドスのところへ放り投げろ 留守番組は暖房準備、暖炉をきれいにしとけ。 ついでに食事も作っといてくれるとありがたい」 ・・・こんなもんかね? 「ゆはぁー・・・冬前にすっきりしなくなってから結構たつわね。」 「むきゅ。だからといって子供は増やさないでね?」 「そうだよー。わかるねー?」 おぉう、失念していた 「・・まぁ、その、なんだ? 溜まってる奴はドスですっきりしてこい あ、外行き組が帰ってくるまでに終わらせろよ?」 「「「「「ゆっくりわかったよ!!!」」」」」 「んじゃぁ外行き準備しろー」 「はいはい、おにいさん。殺していいの?」 「生け捕りだ。殺すな」 「うー。わかった」 「うー!うー!」 ~~~中略~~~ 朝~ 森 ゆっくり生息地区 「んじゃぁここからは単独行動だ。 集合は昼ごろだ。俺の家の前で。だ いいな? もし死んでも屍は拾わん。動物を見かけたらすぐ逃げろ。いいな? 拳銃もちは使い方わかってるな? だがゆっくりは殺すな。いいな? まぁ、適度に努力しろ イエスがケツに奇跡ぶち込んでくれるから。いいな? だが手抜きは許さん 手抜きした奴ぁ・・・わかるな?」 「「「わかったよ、じゃあ」」」 ~~~移動~~~ ~~鬼井山視点~~ 「お、巣発見 騒ぎ声からして5~8か? カモフラージュもしてねぇ。 馬鹿な親子か。」 とりあえず中から引っ張り出す。と 巣の中に発煙筒を投げ入れて。 入り口に網をセット。OK 「ゆっくりできないよ!ゆっくりにげるよ!」 「「「ゆっくりわかったよ!!!!」」」 お、飛んで火にいるなんとやら。 火じゃなくて網だし飛んでねぇし。とは言うな 「ゆっ!?ゆっくりできてないよ?!」 「「「ゆゆゆっ!?」」」 「ぷぎゃー」 れいむ種が3 まりさ種が4 ふむ、スタンダードすぎるゆっくり家族だな ゆっくり麻酔投下ッ! 「「「「「ゆっくりねむくなってきたよ・・・すーや、すーや、おやすみー・・・」」」」」 ~~留守番組の性欲発散中の奴ら(会話文のみ)~~ 「はぁ、なんで私がこんな醜い饅頭とすっきりしてるのかしら。でもやるしかないわよねぇ・・・」 『やべどぉおおお!!!ずっぎぢずづだぁああああ!!!』 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!れいむすっきりしそうだよ!!!」 「みょぉおおおん!!!!みょん!!!ぺに・・・みょぉおおおん!!」 「「すっきりー♪」」 「うっ うけとめなさい!すっきりー♪」 『ずっぎぢーーー!!』 昼前~ 森 ゆっくり生息地区 ~~鬼井山視点~~ はぁ、結局いまんところ捕まえたのはれいむ8、まりさ12、ぱちゅりー4、ちぇん5、みょん3。 内、蔦付きれいむが1、にんっしんっれいむが1。 内、子ゆっくりはれいむ2、まりさ3、ぱちゅりー1、ちぇん1、みょん1 赤ゆっくりはいない。 「「「「「おうちがえるぅううう!!」」」」」 「ファッキン!饅頭は黙れよ! 石棺を模擬的に作ってやってもいいんだぞ!?」 「「「「「おうぢがでるぅううううう!!!!」」」」」 「黙れ!貴様らは死ぬまでは両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない! その日まではウジ虫だ! 地球上で最下等の生命体だ!!! 足切り落として糞流し込むぞダムシット!ファック!」 「「「「「ゆっ・・・」」」」」 よし静かになった。そろそろ合流するべか。 昼頃~ 鬼井山宅 玄関前 「おーう、一匹も欠けてないな 戦果は?」 「ゆっへっへー!ヘルイェア!だぜ つがいが3組ぐらいだぜ!」 「つがいが2組です、一人身が1匹。じゃぉん」 「あら?私がもしかして一位かしら? 番4組 一人身2匹」 「いや、俺がトップだ。 合計で32匹だ。どうだ?」 「「「ゆへぇ・・」」」 昼頃~ 鬼井山宅 居間 「よーっし。帰ったぞー」 「「「おかえりなさい!」」」 「ごはんはごはんとかわざかなのしおやきです。あぁ、鬱だ・・」 ~~~中略~~~ 「おぅおぅ。ご馳走様」 「「「「「ご馳走様でした!!!」」」」」 「えーっと、このあとは子持ち以外は全部ドスのところに入れろ。 行動力を奪ってな。菓子材料庫から餡子をもってってやれ。 餌としてな。」 「「「「「ゆっくりわかったよ!」」」」」 ~~~中略~~~ 夕方~ 鬼井山宅 庭 「「「「「「ゆっくりできるドスだね!!!」」」」」」 『ゆっふーん!さすがまりささまだぜ!ゆっくりできてるぜ!』 「「「「「「にんげんなんてざこだね!!!」」」」」」 『そうだぜ!にんげんがなにかしてきたけど、まったくいたくなかったぜ!』 「「「「「「どすかっこいーーー!!!ゆっくりできてるね!!!!」」」」」」 『ゆっへっへっへ!!!!』 夕方~ 鬼井山宅 拷問室 「ゆ、ゆっくりできてないよ!」 「おうちかえしてね!」 うっぜぇ・・・ 「あー・・とりあえずお前らに愚痴らせろ。聞け」 「「ゆ・・・?」」 「・・・ ほかの鬼意山ならここで「ごめんね!きみたちに云々!」 っていうだろうがおれはいわん。なぜなら 饅頭にテンプレだろうが屈するなんて信じられんからだ。 本当に信じられん スキをみる?絶望を深くする? そんなんどうでもよい!ソ連軍人が裸足で逃げ出す拷問をすればいいんだ! わかるな!? ・・・・アレ?俺は何を言っているんだ?」 「「ゆっ・・・?」」 なんか急に意識が飛んだ気がするが気のせいだ。さて拷問の時間だ にんっしんっを箱(内外防音加工)にいれて。 「やめてね!だしてね!!!」 蔦付きを縛り付けて 「ゆぎいぃいいい!!ゆっくりできないぃいい!!」 蔦付きに蔦が見えるように細工をして 「ゆ~♪ゆっくりした赤ちゃんだよ~・・・」 蔦付きにほかのゆっくりの精子餡 (加工するときに取り除いたもの。精子餡はべたついて好みではない。と言う人が多い) を塗りこむ 「ゆゆぅ~♪・・・ゆ?」 するとぐんぐんつたが生えてくる 「ゆゆっ!?なんかへんだよ!?」 「おぉ、放置してた精子餡でも蔦生えるのなー・・・」 「ゆゆぅうう!?どぼぢでぇえええ!?」 「はっはっは、何で生えてくるのかな?キモイ饅頭だな いや。ホー饅頭っつったほうがいいか?」 「どぼぢでばえでぐるどぉおおお!?」 「黙れよ饅頭、耳障りだ」 「ゆぅううううぅぅうぅぅうぅぅううううう!?」 「シャラップ!」 「ゆがぁあああああ?!」 ・・・こうなったら実力行使だな ぷちっ 「あがぢゃんーーーー!?」 まぁ、目の前の赤ゆっくりつぶせばそうなるわな。 「しゃべったらもう一匹だ。」 「ゆっ・・・・・」 ~~中略~~ 「あかちゃん・・・ふえちゃったけどかわいいなぁー・・・」 「おい饅頭 お前にいいこと聞かせてやるよ」 さてここからは・・・頭脳戦タイムだ!!! 「ゆっくり、って痛めつけると甘くなるらしいが。 それを俺流に考えた結果 苦い=ゆっくりできない 甘い=ゆっくりできる なんだろ? だからゆっくりできない状況を克服するために体内にゆっくりできるものを生産した と考えた。てめーはどう思う? ちなみにゆっくりに甘いものだけを与え続けたら体内で苦味物質を生成しだした。 何故?と思って与える甘いものの量を増やしたら徐々に砂糖化した。どう思う? ゆっくりでも甘さに限界があるんだな。とおもった。お前は? ゆっくりに酸味を与え続けたら、ゆっくりの中身がいつの間にか腐ってた。ってこともあるな こればっかりはなぜかわからん 酸っぱい臭い=腐ってる だからか? お前はどう思う?」 「ゆぎ、ゆぎ、ゆぎいいぃいいぃいいぃいいい!? ゆっぐぢわがんだいよぉおおおおぉおおおおぁあああああああ!!」 おぉ、頭から煙出してやがる!超反応!!! 「はーい煩いから2匹潰すぞー」 ぷちぶちっ 「・・・ゆぎゃぁああああああああああああ!!」 「はいもう一匹~♪」 ぷちっ 「やべでええええええええええええ!!!」 「はいはい気分で3匹~♪」 ぷちぶちぶち 「ゆぎゃぁああああああああああああ!!」 「蔦二本~♪」 ぶちぶぢぃっ! 「ゆびゃぁああああ!!!やぶぇでええええええ!!」 ~~中略~~ 「おいおい、すっかり禿げ饅頭じゃねーかよ 笑えるなぁ・・・・・」 「ゆ・・っぐり・・・やべ・・・で・・・・・」 「やめるも何も、もう取るものなにもないもん」 「なに・・いっでづの・・・・・?」 あ、わかってないとみた 「おまえの、頭の、上の、蔦に、生えてる、赤ゆっくりは、 もう・・」 「もう・・・なに?」 「ぜ・ん・め・つ♪」 「ゆぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 ゆっくりゃの時の反省から耳栓を付けていて正解だったぜ! 「ゆぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 うっせ 「あがぢゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!?」 「もうしんだよー!よかったねー!!!」 「ゆぎゅがじゅいあいdsyfぎあおsdhf8さdfdぬあいえjらんづふぁspどfjわおえいいおdsjふぁsdふぁ」 おぉおおう!すごい狂いっぷり! 「生んでくれなかった親を呪いながら死んでいったよーーー!!!」 「くぁwせdrftgふじこうhytgfれwせちゅいおあsdふぁおいsd@fじゃえれあ」 「ヒャッハーーーーーーー!!!」 「あおdgふぁksdふぁい・・・・えれえれえれっ!えれえれえれれれれれれれれれれ!!!」 おぉう!吐餡し始めた! 「うぅえれえれえれえれえれえれれれれれれれれれれ!!!げれれれれれ!!!」 致死量確実! ヘルイェエエエエエアアアアアア!!!! 「えれっ!えれれれっ!えれれ・・・・」 「はっ!死んだか!屑がっ!」 ・・・ふぅー。すっきりしたー・・・ あ、もう一匹いるの忘れてた・・ おぅ、箱でガタガタふるえてらぁ 「どぼぢであんだごどずづどぉおおお!?」 ん? 「楽しいからさ?」 ここで極上の笑みッ! 「おにいざんばゆっぐぢぢでぇええええええええええ!!!」 「おっと!動くと腹のなかの赤饅頭がつぶれるぜ!?」 「ゆっ・・・・」 まぁ、足が焼けてるから動けないんだけどね・・・ 饅頭に排泄餡とゆっくりの出した砂糖水、 死んだ饅頭の残骸を溶かしたものを混ぜたものをかける。 「ゆぎぃいいいいぃいぃぃいぃいいぃい!?ぐざぃいいいぃいいいいいぃいいいぃ!?」 「そんな大声上げると赤饅頭に害があるだろ?頭を使えよこのくそったれ」 「ゆっ・・・・」 ふひひ、馬鹿だこいつ そんで次は農薬とゆっくり用シュッサンハヤメールヤゴコロをかける 「ゆっ!?あかちゃんうまれそうだよ?!」 ここからが正念場だ!! 「死ね!屑!ごみ!蛆虫!ファッキン!饅頭!」 「どぼぢでぞんだごどゆうどぉおおおお!?」 「土に還れ!無価値!生まれたことが罪(笑)!」 「やべでぇええええ!!ゆっ!うまれるぅううう!!」 ぽーん 「ゆっ!あかちゃんゆっくりしていってね!」 「ゆっ!まんじゅうつちにかえってね!」 「ゆ・・・?」 成功したぁあああああ!!! 説明しよう! 生まれる前から暴言を教え込ませることで暴言を吐くゆっくりが生まれるんじゃないかと! やってみたら本当に成功しちゃったし! 「どぼぢでぞんだごどいうどぉおおおおお!?」 「ゆっ?なにいってんの?つちにかえるの?くずなの?しんだほうがいいの?」 「ゆぅううぅううぅううううう!!」 よーし、暴言をいい感じではいてくれてますね・・・? 「おい子ゆっくり!」 「ゆ?」 「親になんてこと言うんだよッ!!!」 ギャン! 拳銃って音でかいのね・・・ 「ゆ・・・?あがぢゃん!?あがぢゃぁあああああああああああん!!!」 あ、ショックは受けるんだ? 「あがぢゃん!ゆっ!まだうばでるよ!!!ゆーっ!ぢゅーっ!」 今度は静観だ。 まぁ、生まれてくる奴は大体わかるがな・・ 「でゅーっ!でゅーっ!!!ゆっ!!!!」 ぽーん 「あかちゃん!あかちゃん!ゆっくりしていってね!」 ・・・シーン 「あかちゃん?あがじゃん!べんじじでね!!!」 あーあ、馬鹿な奴だよ。 「あがじゃん!べんじじで!べんじじでよぉおおお!!」 死産、って奴だな 「ゆぎぃいいいいいい!!まだ、ばだうばでるっ!」 これがラストだろうなぁ。 「ゆぎぃいいいいい!!!」 ぽーん 「こんどごぞ!ごんどごぞゆっぐりじでいっでね!!!」 「ゆっきゅりちちぇいっちぇね!」 これでうまれたのは 「ど、どういうごどだどぉおおおおお?!?!」 「ゆっきゅりはゆっきゅりちてるよ!げほん!げほんげほん!」 混成種、だ ありすのかみかざり、れいむのリボン、みょんのはんれい、らんしゃまの尻尾 髪はまりさのウェーブのかかった金髪、体質はぱちぇのものだな 「ゆぅうううううううううううううううう!?」 まぁ、こんなキモイのは・・・・ ギャン!ギャンギャンギャン!!!! 「ゆぎゃぁあああああああああああああああああああ!! あがぢゃんぎゃぁあああああああああああああ!!」 殺す。 あ、ちなみに食料に対して容赦ないのは 農薬かけたゆっくりなんぞ食物じゃねぇ。 ということです♪ 「ぎゃぁあああああああああああ!! ぎゃぁあああああああああああああああああああああああ!! ぎゃ・・・ゆー?ゆっくり!ゆっくりゆっくり!!!」 あー、あ。精神崩壊した。 「チッ!もう少しネバれよ!楽しくねぇ・・・」 あー、醒めた。 上にもどろ・・・・ 「ゆー♪ゆゆゆー♪ゆゆゆゆー♪ゆゆゆーゆゆゆゆゆーゆー♪」 ギャン! ・・・・・・ ・・・ ・ 後書き あー、どうもです。半年ROMです。 鬼井山のテンションが変なのと、メタ発言が多いのは俺のテンションがおかしい所為です 鬼井山の暴言は俺が使える暴言を総動員して書いてます。 暴言のバリエーションがあったら教えてください。助かります あとシムゆっくりの方は着手できません。 ルナいっす。 過去作品 ありすをいじめる(fuku3229.txt、Wiki,1298) ゆっくりいじめ。(fuku3430.zip、Wiki,1439) いっぱいいじめる。(fuku3442.txt、Wiki,1444) ちょっぴりいじめる。(fuku3457.txt、Wiki,1455) 短編にほん。(fuku3460.txt、Wiki,1457) 半年ROM このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1204.html
※ゆっくりいじめSSですが虐待成分極薄です、描写がほぼ無い;; ゆっくりではなく人間がメインだったりします。それでもよろしければお読みください。 染物 数年前、ここ幻想郷にゆっくりなるしゃべる饅頭のようなものが現れた。 動物か植物か、あるいは生物かすら怪しいそんな奇妙な存在。 人間はそんな彼女達を最初は疑問に、あるいは恐怖に感じていたが今ではそんなこともなくなってしまった。 あるものは農業や日々の作業を手伝い、人間と友好的な関係を築いた。 あるものは人間の家や田畑を襲撃し、そのため人間に駆逐されるような敵対関係を築いた。 あるものは食料や労働力を目的とし捕獲され、一方的な搾取を行われる支配関係を築いた。 その形は様々であるがゆっくり達は人間社会に浸透してゆき、その結果人々の生活は概ね豊かになっていった。 これは、そんな彼らと正面から向き合うある真摯な1人の男の物語である・・・ 「実録、ゆっくりにみる! ~ある伝統工芸者の挑戦~」 第2回 染物職人 染物職人の朝は早い。 日の出よりも早く床を発ち、黎明の空気を体全体で浴びる男が一人。 彼は「尾二山 猛」(ひじやま たける)さん、62歳。 彼の職業は染物職人、様々な繊維や生地に色を吹き込むことを生業にしている。 「まずは朝の空気を吸う、これが基本やな。これでその日の温度や湿度なんかを感じるんよ。」 温度計や湿度計、そんなもんよりワシの方が正確だ。 尾二山さんはそう言うと、いたずら小僧のようにニヤリと笑った。 染物と言うのは様々な素材から色素を抽出し、それで布や糸を染める技法である。 方法は様々で、単純に色を移すだけのものから、着物に一枚の名画を描きあげるまで用途は広い。 あらゆる染料、染色法を組み合わせることにより様々な効果を生み出すのだ。 そしてこの尾二山さん、ゆっくりを原料に使うという変わり染めを行っているのだ。 「ゆっくり染めは『二の三』て言うてな、染料を取る『部位』と染色の『目的』が3つずつあるんよ。」 二の三、どうやらそれがゆっくり染めの基礎らしい。 「まずは部位の三な。1つめはゆっくりの飾り、2つめが髪、3つめが餡。ここでの餡てのは餡子だけでなく中身全般を指すからな。 ほんで次が目的の三。1つめは装飾、2つめが忌避、3つめが誘引だわな。主にこれらの組み合わせで作るんよ。 まぁ聞くより見たほうが解りよいだろ。ほな作るん見に行こか。」 私達は工房へと向かった。 「まず染色液から見よか。これはまずゆっくりから飾りと髪を取るんや。」 そこでは多種多様なゆっくり達が次々とハゲ饅頭にされていた。次々と生み出されるハゲ饅頭の恨み言でなんとも賑やかだ。 「こん時、ハゲ散らかしたゆっくりを種別ごとに分けんと解らなくなるから注意な。ほんで饅頭は使う直前まで生かしとく。 これはストレスを溜めたほうがええ色が出るからな。必要だったら痛めつけることもある。」 なるほど、同じ材料でも扱い次第で出来上がりが違ってくるらしい。そこを見極めるのも職人の技と言ったところか。 「ほないっちょこ作りましょか。今回は紫色の染料をつくろうか。まずぱちゅりーの髪を5、ゆゆこの髪を2いれるな。 次にゆかりんの帽子を3、そして最後にまりさの餡を1いれると。少し黒を入れることで全体が引き締まるんな。 まりさ種は腹黒いから深みのあるええ色が出るんよ。」(※単位は匹です) そして禿げたまりさをおもむろに掴むと、「今回は深みを出そうか」そういって両目を抉りはじめた。 「ゆっがあああぁぁぁぁぁぁぁああっぁぁぁぁあぁ!!!??」 一気に抉らずじっくりくり抜いていく、その間もまりさは声をあげ苦痛を訴えている。 「で、たっぷり時間をかけて絞っていくと。」 「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!」 目玉をくり抜き終えると、尾二山さんはまりさを揉みしごきはじめた。指先が食い込む度に空洞となった目から餡が飛び出す。 このようにほぐしながら取り出すのがコツなのだそうだ。その後まりさは30分ゆっくりし、ようやく死ぬことができた。 そしてそれらを煮込むこと十数分、釜の中には固形物は見えなくなっていた。 「元が饅頭やからね、溶けるのも早いんよ。で、これを濾して完成と。」 そうして出来上がった液体は赤黒く、まるで血の様な色をしていた。 あまりに想像していたものと掛離れていたことから呆気に取られていると 「まぁ見とれって・・・・・ほれ。」 尾二山さんが木綿切れをさっと通すと、それは透き通った美しい紫に染まっていた。 「染料は見た目が濃いになるからな、こうするとよう解るやろ。」 なるほど、実際に染めてみて初めてその美しさが見えてくるわけか。 そのように私たちが感心していると 「なぁ、ちっとこれの匂い嗅いでみ?」 そういって切れを渡してきた。どういうことかと嗅いでみると 「「!!!!!」」 「どや、なかなかええ香りするやろ。」 なんとも爽やかな紫蘇の香りが鼻腔をくすぐったのだ。よくよく嗅ぐとほんのりとした甘さも含まれており、それにより紫蘇本来の鋭さが より生かされていることがわかる。尾二山さん曰く、まりぱちぇはジャスティスなのだそうだ。それくらい相性がいいのだろう。 「見た目だけでなく匂いを楽しめるんも染物のおもしろいとこやな。普通の草木染でも香りは残るんやけど、ことゆっくり染めに関しては おもしろい香りが多い。匂い自身も長持ちするしな。これを利用してふらんやれみりゃを用いることによって、ゆっくりの嫌う匂いを作 り出し、無闇に寄せ付けんようにすることも出来るんや。これは畑を囲む縄や、玄関マットだっったか?何やあのハイカラなんに使うた りするこが多いな。」 なるほど、これが目的の1の装飾と2の忌避であるわけか。すると残す3つめは? 「ああ、それは匂いが移らんように別のとこでやってます。」 そういって私達は次の部屋へと案内された。 「ゆがああああああぁぁぁぁあ!!! ごべんなざいいいいいぃぃぃ!!!」 「もう揺るじでえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ひゃっはああぁぁぁぁぁ!! たまんねえええぇぇぇぇ!!! 毎日がお祭りじゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 そこには大量のゆっくりと数人の男がいた。 ゆっくり達は総じてボロボロで今にも力尽きんばかり、一方男達は文字通り有頂天、とろけんばかりのヘヴン状態である。 男達は肉体的、精神的にゆっくり達を己の手業や道具、あるいは暴言などあらゆる手練手管を用い虐め抜いていた。 「おー。皆ようやっとるのう。」 「「先生、おはようございます!!」」 尾二山さんを先生と呼ぶこの男達は一体? そう思いあぐねていると、ふと男の1人が語りはじめた。 「こんにちは、記者さんですね?私達はここで誘引用染料を仕込んでいます虐待お兄さんです。」 仕込み・・・?どうにもあの光景が染物へと繋がらない。そこで尾二山さんが口を開いた。 「今から誘引用の染物についての説明するんで、それ聞いてもらったらこの作業の意味がようわかると思います。 まず誘引やけど、これは虫なんかに見られるメスがオスを呼ぶためのホルモンやとか、あるいは光に集まる性質なんかが有名やね。 そんで、ゆっくりにおける最も強力な誘引作用を持つものは容姿の良い美ゆっくりでも、おいしい食べ物でもないんよ。 その正体ってのは死んだ仲間の飾りなんやね。それもうんと苦しんで死んだ、恨み辛みの詰まったものほど強力や。 そこで、ここでは虐待お兄さん達に極限までゆっくりを痛めつけてもろて、それから染料つくっとるんですよ。」 ここまで話してお兄さん 「私達は元々イタズラにゆっくりを虐待して回ってたんですが、ある時先生に出会いましてその才能を生かさないかと声をかけていただき ましてね。それまでは虐待と言うと世間の認識も厳しいことがありまして、まともに見られたことなんてなかったんですよ。ですが先生 は私達をそんなの一切ぬきに正面から見つめて評価してくださったんですよ。」 なるほど、そんな理由があるとは露知らず何という失礼をしてしまったのか。私達は自身の行いに恥ずかしくなり精一杯詫びた。 「いえいえ、無理もないことですから。私も今は仕込みの虐待しかできませんが、いつかは先生のように一人で作品を仕上げるまでになっ て、少しでも世間に我々虐待お兄さん達が理解されるようにがんばっていきますよ!!」 そういって笑うお兄さんの目は熱く輝いていた。私達は再度謝罪し、このことを記事で世の人々に伝えることを約束した。 「ほな纏まったところで実際に染めていきましょか。まず特製の釜を火にかけるんですが、この釜からもう違うんよ。」 そう言われて見た釜は先ほどの部屋のものとは全く違うものであった。 「ぅぅ・・・ぅぅ・・・」 何と釜の正体は特大サイズのゆっくりだったのだ! 「でかいゆっくりの中身を死なん程度に抜いて、外皮を特殊なこんにゃく液で固めたもんや。漆なんかも試してみたけど意外とこんにゃく が一番しっくり来てな。この釜を使うことで込められる怨嗟がより強力なもんになるんよな。そんでここにさっき用意しといたゆっくり 達を入れて、なかなか死なんように加熱していくと。で、流石にそのうち力尽きるんで全部がそうなったらここで初めて水いれるんやな 。後はこいつを濾して完成や。これで染めた布を球状のもんに着けとくだけでおもろいようにゆっくりが集まるんや。罠なんかを使うて 一網打尽にする時や、ドスサイズのを討伐する時に矢にくくって打ち込んで混乱させたり、主に討伐に用いられるな。死んだゆっくりの 飾りをそのまま使うてもこの効果はある、けどここまで凝縮したこれの威力は半端でない。染めた物の強度に依存するから手荒く扱う ても平気やし、雨なんかにも強いしな。」 そうしてしばらく、この部屋が隔離されているのは他の布に匂いが移らんためだ、卸先は主に加工場であるなどの講義が続いた。 そして夕刻 「これで今日の仕事は終いや、長いことおつかれさんな!」 笑いながら尾二山さんは労いの言葉をかけてくれた。 「染物ってのは不思議なもんでな、材料や方法もさることながら作り手が変わってもガラッとさまを変えてまう。 自慢やないけどな、ワシのつくる染物はワシにしか作れんのよ。もちろんさっきのお兄さん達も、あいつらだけの染物持っとる。 もっともワシのがまだまだ上やけどな。まぁそれはともかく、こんなワシの作るもんでも喜んでくれる人がおるわけよ。 その人達に応えるためにも、ワシはまだまだこの仕事を続けていくんよ。ゆっくりて言うおもろい素材も謎が多いしな。 つまり、何が言いたいかって言うと何か夢中になれるもんを見つけて欲しいんよ。もちろん染物で無くてもいい。 何かに夢中になれる、ひた向きになれるってのは幸せなことやからな。そんで、もし染物に興味がわいたなら内に来たらええ。 いつでも誰でも歓迎したるからな。それだけや、長々臭いこと言うてすまんのぉ。」 そう言葉を紡ぐ尾二山さん照れた様子ながらも、その瞳はどこまでも真っ直ぐであった。 最後に私達は握手を交わした。尾二山さんの手は燃えるように熱く、そして力強かった。 今日も一人、己とまっすぐに向き合う男が釜へと向かう。 自身の情熱のため、そしてそんな彼を慕うもの達のために尾二山さんは挑戦し続ける。 染物職人の朝は早い。 終われ 作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人 今までに書いちゃったの ゆっくりディグダグ ゆっくりディグダグⅡ みかん キャベツ 和三盆 みかん修正版(温州蜜柑) 水虫 水虫(治療編) このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/391.html
川原の石を踏み、がりがりとした感触を楽しんでいると、足元にゆっくりの死体を見つけた。 皮が破れ、餡子が漏れ出しているが、綺麗な金髪と帽子からまりさ種とわかる。 周りで数匹の蟻が、大量にこぼれた餡子を巣に持ち帰ろうと、あくせくと働いている。 何が原因で死んだかはわからないが、ゆっくりは本当に些細な事で死んでしまうような 脆弱な生き物なので、このように死体を発見する事も日常茶飯事だった。 だがこの死体の側には、珍しくもう一匹、死体に見えないゆっくりが居る。 金髪と瞳の色から、死体と同じまりさ種とわかるが、お馴染みの黒い帽子が無く 代わりに三角の白い頭巾を額につけている。幽霊のような格好だが半透明ではない。 寝ているのか起きているかもわからない、半分だけ目を閉じた表情で、 口元をわずかに微笑んでいるかのように閉じたそのまりさは 呼吸もしていないかのように微動だにしていない。 こんな所で帽子も被らず動かないゆっくり、まさかこいつも死んでいるのだろうか。 頭巾のまりさの前にしゃがみ込んで、頬を軽くつついてみると、 ゆっくりのもちもちした肌の感触が返って来る。体温とでも言うのか、温度も冷たくは無い。 つついている内に、頭巾のまりさの意識が戻ってきたのか、 眠りに落ちた人間がまれに見せるような、ビクッと震える反応を見せた。 そのまま、少しびっくりしたような表情でこちらを見つめてくる。 「…ゆっ?ゆ…ゆっくりしていってね!」 「あ、ああ、ゆっくりだな」 頭巾のまりさは挨拶を返してもらった事に、満足したかのように軽く微笑むと きょろきょろと左右を見回し、自分の横に落ちている皮と餡子の塊に目を向けた。 すぐ横に居たのだが、もしかしてこの頭巾のまりさが殺したのだろうか。 頭巾のまりさは同族の死体を見るなり少しだけ寂しげな表情をした後、 ずりずりと餡子に口を近づけ、何を思ったか蟻のたかる餡子を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…」 「お、おい!」 「ゆ?どうしたの?」 「お前、ゆっくりの餡子でも食べるのか?」 冬篭りで餌が足りなくなるとか、わざと絶食させるとかで共食いを始めるという話も聞くが まだ冬でもなければ連れ帰って虐待している訳でもない。 この頭巾のまりさはどこかで餡子の味を覚えて、食べる為に死体のまりさを殺したのか? 「これはまりさのからだだよ?まりさのからだをどうしようとまりさのかってだよ!」 「? どう言う事だ?」 「わからないの?ばかなの?」 言っている意味がわからず聞き返すと、頭巾のまりさは半笑いの呆れ顔を返してきた。 腹が立つので皮を千切らない程度に頬をつねってやる。 「ゆ゛っ!?なにずるの!?まりざはまりざだよ!」 「ええと、お前が、これなのか?」 頬をつねったまま、頭巾のまりさと死体のまりさを順に指差して確認する。 「そうでずぅぅ!だがらはなぢで!」 幽霊のように白い三角頭巾をつけている変なゆっくりだとは思ったが、 まさか死体と自分が同一人物だと主張してくるとは。 頬から指を離してやると、まりさは涙目になりながらぷくぅぅ!と膨らんで威嚇してくる。 「つまり、この死体のまりさが死んだ後、お前になったのか」 「ぷひゅるる…そうだよ?」 「その、なんだ、ゆっくりは自分の体なら食べても平気なのか?」 「ゆ?あまくておいしいよ?」 さも当然のように答えてくる、美味しければいいのか。 ゆっくりのいい加減さなのか、弱い生き物が食料を得る為には仕方がないのか。 多分いい加減の方なんだろうなぁ、と考えていると、まりさはまた死体を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!」 定番のセリフを言うや否やまりさは顔を上に向け、ふわふわと宙に浮き上がる。 天にも登る程幸せなのか、と言うかゆっくりは空を飛ぶ生き物だったのか? 「な、なあ」 「ゆ?」 「何でお前は浮かんでるんだ?」 頭の上に?を浮かべたような表情でこちらを見てくるまりさだが、 視点が高くなった事と浮遊感から、やっと自分が浮かんでいると気付いたようだ。 「わあ!おそらをとんでるみたい!」 「いや、実際に飛んでるんだ。他のゆっくりも飛べるのか?」 「…しらないよ?」 懲りずに半笑いの呆れ顔を返してくる。あまりにも人を馬鹿にした表情に腹が立ち、 おいィ!と鞠をつく要領で頭を叩くと、まりさは勢い良く地面に叩きつけられた。 「ゆべっ!いだい゛ぃぃ!なにずるの゛ぉぉ!?」 痛みからしあわせー!な気分が抜けたのか、まりさは地面に叩きつけられたまま浮かんで来ない。 ひとしきり泣き喚くと、ゆんゆんと小さく泣き声を上げながら、ゆんしょとばかりに立ち上がる。 芝生なら痛いだけで済んだのだろうが、川原の石の上に叩きつけられたので皮が破れていたようだ。 起き上がった拍子に後頭部の傷からどろりと餡子がこぼれ落ちる。 「ゆ゛ぎっ?せなかがいたいよ!なんでぇぇ!?」 「ん?…あちゃあ、大きい傷から餡子がこぼれてるな」 「ゆ゛ぅっ!?ゆっくりできないよ!はやくなおしてね!」 「うーん、直そうにも、材料もジュースも無いな…」 「ゆ゛ええぇ!?おね゛がいだがらなおぢでぇぇ!」 まりさは顔を青くしてじたばたと体をゆするが、暴れる事でますます餡子が漏れていく。 だんだんと痙攣するような動きを見せ始めたまりさは、仕舞いには白目を剥いて、 「ああ、そんなに動くと…」 「も…もっと…ゆっくりした、かった…」 動かなくなってしまった。幽霊なのにまた死ぬのか。 先ほどまで暴れていたゆっくりが動かなくなった為、新しく地面に落ちてきた餡子にも ちらほらと蟻がやって来る。1匹分の餡子が追加されれば蟻も大喜びだろう。 そんな様子を眺めながら、さっきのゆっくりは一体なんだったのかと考えていると、 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「!?」 帽子の死体と頭巾の死体の更に横、一直線に並んだ位置から声が聞こえ、 半透明の丸いシルエットが現れた。半透明ながらも長い髪と三角の頭巾が見え、 後ろの風景が透けて見える体も次第にはっきりとした色へと変わっていく。 「どろどろどろどろ…じゃーん!」 「…またお前か」 完全に透明度を失った所で、新しく登場したまりさは胸を張って叫んだ。 じゃーん!って自分で言うのか。 「ゆー、しぬかとおもったよ」 「実際死んだと思うんだがなぁ」 華麗な復活を褒められたとでも思ったのか、まりさはゆへへ、と笑い 再び自分の体、頭巾を付けた出来立ての死体へずりずりと口を近づけていった。 また食べるのか、死んで幽霊になると腹が減るのだろうか。 そんな考えをよそに、まりさが一口二口と餡子に口を付けたところで、 「そこまでよ!」 「したいをたべてるんだね、わかるよー!」 「それにぼうしをかぶってないんだぜ!ゆっくりしてないやつだぜ!」 共食いにしか見えない光景をぱちゅりー、ちぇん、帽子付きまりさに目撃されてしまった。 「ゆっ?これはまりさのからだだから、まりさがどうしようとかってだよ!」 「? わかんないよー!?」 「むっきゅ!よくみたらふたりもころしてるわ!」 「ひどいやつだぜ!ゆっくりできないやつはしぬんだぜ!」 「ゆっ、ゆうぅ!?」 突然現れた同族からの、激しい非難に困惑する頭巾のまりさ。 やはり他のゆっくりから見ても、自分の体であれ共食いは異常な事らしい。 それ以前に目の前の死体と、それを食べるまりさが同一人物だと気付いていないようである。 「むっきゅっきゅ!せいぎをしっこうするのよ!」 「ゆっへっへ!くるしんでしねぇっ!」 「わかるよわかるよー!」 「ゆっ、やめてね!まりさはわるくないよ!?」 3匹のゆっくりは、川原に転がる石を咥えては次々と頭巾のまりさに投げつける。 その全てはコントロールの悪さから、頭巾のまりさよりもずっと手前に落ちるが、 頭巾のまりさは滑稽にもぴょんぴょん跳ねて、届かない石を避けようとしている。 だが、ゆっくりにとっては足場の悪い川原で飛び跳ねた事で、自分で足を傷つける結果となった。 「ゆがっ!いだいぃ!」 「ちゃんすだね!わかるよー!」 「わるものにとどめをさすんだぜ!」 「むきゅ!ちかづいておしつぶすのよ!」 頭の良いぱちゅりーは投石が届いていない事に気付いたのだろう。 指示通りにちぇんとまりさは、頭巾のまりさに勢い良く迫ると一方的な体当たりを始め、 ぱちゅりーは体力が低く走れないのか、その場から動かずに見物している。 「ゆへへへへっ!しねっしねっ!」 「しぬんだよー!わかってね!」 「やっやべっ、やべでっ!ゆぼぉっ!」 足を傷つけ抵抗の出来ない頭巾のまりさは、2匹からの挟み込むような猛攻に成すすべも無く 餡子を吐き、再び皮と餡子と頭巾の塊へと成り果てた。 荒い息を立てる2匹のゆっくりは、悪者を退治したと達成感をあらわにし、 離れた場所で見ていたぱちゅりーも満足げに、ゆっくりと近づいて来た。 「ゆへー、ゆへー、やってやったんだぜ!」 「わ、わ、わかるよー!」 「むきゅ!これでむれもへいわになるわ!」 悪いまりさを懲らしめるのに夢中になっていたのか、3匹は頭巾のまりさの側で 黙って見ていた人間にやっと気がつき、揃ってこちらに顔を向けて来る。 「ゆっ、わるいゆっくりをやっつけたまりさたちにごはんをよこすんだぜ!」 「そうね!ぜんこうをはたらいたわたしたちには、せいとうなほうしゅうがはらわれるべきだわ!」 「わかるよーわかるよー!」 「さっきのまりさ、そんなにゆっくり出来ない奴だったのか?」 「むきゅ、わたしのめにまちがいはないわ!」 頭巾のまりさを倒したからご褒美をくれ、と言うことらしいが、畑を襲った訳でもないゆっくりを倒しても 人間には何の特にもなっていない。人間に向かって報酬をよこせとは勝手な話である。 それでも自信満々で胸を張っている3匹の横に、半透明なシルエットが現れた。 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「またか」 「ゆゆ、な、なんなのぜっ?」 「むきゅう、なんだかさむけがするわ…!」 「わっ、わからないよー!?」 3匹のゆっくり達はすぐ側から聞こえてくる滑稽な擬音語に、落ち着かない表情で怯えている。 間の抜けた声だが、ゆっくりには怖く聞こえるものなのだろうか。 頭巾のまりさの緊張感の無い顔を見れば落ち着くかも知れないと、帽子のまりさの頭をぽんぽんと叩き、 だんだんと透明さを失っていくシルエットの方を指差してやる。 「ゆっ?」と指差した方を見た帽子のまりさと頭巾のまりさの目が合った。 「どろどろ…じゃーん!」 「ゆっ!?ゆぎゃあああぁぁぁ──!?!?」 「!? おっおっ、おばけぇぇ!?」 「わっ、わかっ、わかっ、わかに゛ゃぁぁぁ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 はつらつな笑顔でじゃーん!と叫ぶ頭巾のまりさに、絶叫を上げる帽子のまりさ。 それを聞いたぱちゅりーとちぇんにも恐怖が伝染し、2匹も続けて絶叫を上げる。 頭巾のまりさだけが、他のゆっくりが絶叫を上げる事態について行けない様子である。 「もうやだぁぁぁ!!」 「わがにゃぁぁぁぁん!!」 「むっ、むきゅ、まって、おいてかないで…!!」 「もうおうぢがえる!ぱちゅりーはゆっくりおとりになってね!」 「む、むきゅぅぅっ!?」 帽子のまりさとちぇんが我先にと逃げ出すが、ぱちゅりーは腰が抜けたのかその場から動けない。 助けを求める仲間に、帽子のまりさは泣いて逃げながらもちゃっかりと追い討ちをかけて行く。 そんなまりさとちぇんも、慌てて川原を走った為足に傷を負って転げまわってしまった。 「ゆっ、ゆぎゃぁぁぁ!いだい゛!たずげでぇぇぇ!」 「わぎゃんにゃいよぉぉぉ!!」 「むっ、むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅぅん!」 「ゆゆ…いったいどうなってるの?」 「…本当にどうなってるんだ」 まりさとちぇんから見捨てられたぱちゅりーも、もはや泣く事しか出来ない。 先ほど自分を痛めつけた相手が、勝手に怯えて逃げながら自滅する様に、頭巾のまりさも 訳がわからずおろおろするばかりで、事態は進展せずただただ騒音が流れるのみとなる。 余りにも騒がしいし、それに他のゆっくりも幽霊になるのか確認したい。 おもむろに立ち上がると、近くに居るぱちゅりーから踏み潰していく事にした。 「むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅうべっ!!!」 「わかんにゅぶ!!!」 「う゛わ゛ぁぁぁぁん!わ゛ぁぁあ゛ぐっ!!!」 少しだけ離れた所で転がっているちぇんとまりさにも平等に引導を渡し、 様子を見てみるが一向にゆっくりの幽霊が出てくる気配は無い。 ただ呆然としている頭巾のまりさと、更に餡子が量産されて大喜びの蟻がいるだけである。 「やっぱり、生き返るのはお前だけか」 「ゆ?」 何の話か理解していない頭巾のまりさは少し考え、 「ゆっ、まりさをいじめるわるいゆっくりをたおしてくれたんだね、ゆっくりありがとう!」 「ん?あ、ああ」 自分に都合の良いように解釈したようだ。笑顔でこちらに跳ねてくる。 ちゃんとお礼を言うし、人懐っこくていいゆっくりじゃないか、と思いきや 「まりさおなかがすいたよ、ごはんちょうだい!」 「……」 自分を助けてくれるとみるや、にこにこ笑顔で余計な要求までしてきた。 やはりゆっくりはゆっくりである。 「さっきみたいに、自分の体を食べれば良いんじゃないのか?」 「ゆー?あんまりあんこばっかりだとあきるよ?」 飽きるのか。やはり半笑いの呆れ顔を見せてくるが、死んでも復活する珍しいまりさ種なら 連れて帰って里の人に見せるのも面白いだろう。つねりたくなるのを我慢して餌付けしてやる事にする。 都合の良いことに、外で食おうとおにぎりを持って来ていたのだ。 「それなら、おにぎりでいいか?」 「ゆっ!おにぎりたべたい!ちょうだい!ちょうだい!」 よだれを垂らして見上げて来るまりさの口に、おにぎりを半分に割って放り込んでやる。 「むーしゃ、むーしゃ」 具こそ入っていないが、少量の塩をふったおにぎりの、餡子の甘みとは違ったうまさに 満面の笑みを浮かべるまりさ。自分の欲求がまかり通ってこれ以上無い程の至福をかみ締めている。 「むーしゃ、むーしゃ、し…」 「どうした?」 しあわせー!と宣言しようと顔を上向きに上げた瞬間まりさは動きを止め、 「おげろぉぉぉ!」 「お、おい!」 突然目を見開いて餡子を吐き出し、痙攣し始めた。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆげっゆげっ」 がくがくと震えながら、目から大粒の涙をぼろぼろと流し、地面に接した足から 酸をかけたかのようにじゅわじゅわと泡を立てながら溶けていく。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げっ、ゆ゛っぐり、で、でぎな゛い゛ぃぃぃぃ!」 そう言うとまりさの目玉はぼろりとこぼれ落ち、地面に落ちると、じゅうと音を立てながら 溶けて消える。見る見るうちに頭髪も頭巾も、全てが溶けてしまった。 おにぎりにはゆっくりを殺すような毒も入っていない。ただ塩をふっただけの具なしおにぎりである。 ゆっくりは思い込みの強い生き物だが、幽霊を気取るとこんな少量の塩でも死んでしまうのか。 「…いい加減な生き物だし、また生き返るかな」 そこらに散らばる餡子をせっせとアリが運ぶ中、また笑顔で復活するかと待っていたが、 いつまで経っても頭巾のまりさは現れなかった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) お帽子の人? このSSに感想を付ける