約 977,217 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3088.html
『長まりさをやってみた 5話』 12KB 観察 実験 群れ 自然界 愛でっぽい 長まりさをやってみた4話の続きです。 愛でより? わかりにくいので、うふふまりさを呼ぶ時は、まりさではなく魔梨沙になります。 「うふふふふ、師匠が出来ちゃった~♪」 な、うふふまりさだと!? みま種のことを慕うまりさが、ごく稀に変化するゆっくりだぞ!? 銅まりさは、俺を普通のまりさだと思い込んでいた筈だ! 「あら、何で師匠がでいぶを一撃で潰せたり、野菜の作り方を知ってるのかと思ったら...うふふ」 !? やばい、この帽子だけだと通常種は騙せても、うふふまりさを騙せないか? 『ま、まりさ?俺の正体がわかるのか?』 「まりさの帽子を被った人...でしょ?」 『っ!?』 やっぱり騙せない。 このままじゃ、群れのゆっくり達に俺が人間だとばれてしまう... 潰すか? いや、俺は虐待鬼威惨じゃなくて、観察お兄さんだ。 罪の無いゆっくり、しかも希少種を殺せるような人間じゃない...詰んだか。 『はぁ、この実験もこれで終わりかぁ。うまくいってたんだけど「大丈夫!」ん?』 「前に、長の邪魔をしたらゆっくりできないって言ったでしょ?あれは今も同じ♪」 『俺は人間だぞ?それでも師匠でいいのか?』 「うふふふ、師匠がゆっくりじゃなかったくらいで壊れるような信頼しかなかったら、私はまだ普通のまりさよ?」 そういえば、銅まりさがうふふまりさに変化する時、心から尊敬している師匠がいないといけないって言っていたな。 うふふまりさになったせいで正体がばれたのに、うふふまりさになったおかげで助かったのか。 「師匠の正体は、秘密にしてあげる!だから、これからもよろしくね!師匠♪」 『ははっ、これじゃあ断れないな。よろしくされてやるよ!』 次の日 今日は、大きくなった数匹の子ゆっくりが、独り立ちする日か。 独り立ちって言っても、新しい巣を作って一人暮らしするだけだから、群れから出て行くわけじゃないけどな。 「師匠!そろそろ、皆が起きる頃よ!」 『朝食が終わったら、俺の住んでる洞窟の前に集合って言ったのに、もう10時過ぎなんだけど。っていうか、起きるの遅すぎだろ。野生動物ならもっと早く起きろよ!』 「ゆっくりしていってね!!」×一杯 群れの方から大きな声がした。 一匹が起きて「ゆっくりしていってね!!」と言うと、連鎖反応で他のゆっくりも起きて返事するので、毎日森に声を響かせている。 ここらにゆっくりを襲う生物がいたら、毎朝大変なことになってただろうな。 「ねえ、師匠。何でわざわざお祝いなんてする気になったの?私達の代替わりは早いから、一人立ちする度にお祝いするなんて面倒よ?」 『別に、本当に祝いたいわけじゃないさ。今やっておかないと後で困る事があるからな。』 ぽよんぽよんぽよん 魔梨沙と話していると、ゆっくりの跳ねる音が聞こえてきた。 「あら、もう来ちゃったわ。これじゃ、師匠の話が聞けないじゃない。」 『まぁ、これから実践するから、それを見てくれ。』 このお祝いは、人間で言うところの成人式だ。 「ゆゆ!まりささまは、さいきょうっ!なんだぜ!せっかくだから、まりささまがおさになってやるんだぜ!」 「むきゃきゃ!ぱちぇは、けんじゃよ!ぱちぇのいうことにしたがっていればいいのよ!」 問題児がでるのも人間の成人式と同じだ。 「大人になったのに、問題「児」なの?」 『自分の力量もわからないで騒ぐ奴を、大人と言わないさ。...おまえ俺の心読まなかったか?』 ぎゃーぎゃー 調子に乗ったゆっくり達が騒いでいる。 「師匠、あんまりもたもたしてると、収拾つかなくなっちゃうわよ?」 『そうだったな。おまえらっ!静かにしろ!』 「ゆ!?」×一杯 「ゆあーん?なんなのぜ?おさていどが、まりささまにめいれいしていいとおもってるのかぜ?」 「むきゅ!ぱちぇのまえでおおきなこえをだすなんて、ていのうね!」 俺の注意でほとんどのゆっくりが黙る。 その中で、二匹のゆっくりが俺に対して反抗的な態度をとった。 今回の問題児は、まりさとぱちゅりーが一匹ずつか。 「酷いわね。こんなにわかりやすいゲスだと、もう更生できないんじゃないの?」 『やっぱりそう思うか...その勘違いのせいで飼いゆっくりを捨てる飼い主も多いんだよなぁ。』 一旦ゲス化したゆっくりを元に戻すのは、とても難しい。 一応ゆっくりのプロである加工所やブリーダーに依頼すれば治るが、数十万円かかるので、希少種でもない限り捨てられるか、処分される。 野生のゆっくりだと、治してくれる人間が居ないので、奇跡でも起きないと一生ゲスのままだ。 魔梨沙も、俺がこいつらを更生できると思っていないようだ。 まあ、口で説明するより見せたほうが早いか。 『それで、まりさ様(笑)は最強なんだって?』 「ゆっへっへ!そうなんだぜ!わかってるなら、さっさとまりささまをおさにするんだぜ!」 『そうか。じゃあ、そのまりさ様(笑)の強さとやらを、そこのちぇんと闘って見せてくれないか?』 「にゃ!?わからないよー!?」 俺が指名したのは、普通のちぇんだ。 ちぇん種は通常種の中で一番足が速いが、その分体が小さく、力も少し弱い。 このちぇんも、まりさより一回り体が小さく、あまり強そうに見えない。 「ゆっへっへ!そこまでいうんなら、とくべつにまりささまのつよさをみせてやるんだぜ!」 そう言ってちぇんに突撃していくまりさ。 「わが、わがらないよー!?」 ちぇんは、混乱しているようでその場で騒いでいるだけだ。 ぽよん まりさの体当たりがちぇんに当たった。 「ゆっへっへ!どうなんだぜ!さいきょうっ!のまりささまのいちげきで、ちぇんなんていちげきでえいえんにゆっくりしちゃったのぜ!」 自信満々に言うまりさ、それに対してちぇんは... 「にゃ?わからないよー?なんともないんだよー」 永遠にゆっくりするどころか、痛がってすらいなかった。 「なんでなんだぜぇええええええええ!?まりささまのさいきょうっ!のいちげきをくらたのにぃいいいい!?」 「まりさは、ぜんぜんさいきょうじゃないんだねーわかるよー」 「そんなはずないんだぜぇえええええええ!やせがまんはやめるんだぜぇえええええええ!」 ぽよんぽよん まりさは、自分の攻撃がちぇんに効かないことが信じられず、何度も体当たりしているが、全くちぇんにダメージを与えれらない。 「にゃーわからないよーじゃまだからやめてねー」 ぽよん! 「ゆぎゃ!?」 それどころか、ちぇんの体当たりで弾き飛ばされた。 「そ、そんなわけないんだぜ...まりささまは、さいきょうなはずなんだぜ...」 自分より弱いと思っていたちぇんに負けて茫然としている。 まりさと目があった。 『弱っ。』 「ゆがーん!」 言われたことがよっぽどショックだったらしく、気絶してしまった。 精神弱すぎだろ。 「師匠、どういうこと?まりさとちぇんが闘ったら、普通はまりさが勝つはずよ?」 『たまにやってた狩りの練習以外で、ほとんど群れの外に出なかったまりさと、毎日森を駆け回って食料集めしてるちぇんだぞ?勝負になる筈がないじゃないか。』 どういう仕組かわからないが、ゆっくりにとって筋肉の代わりになる餡子は、何故か鍛えることができる。 まだ、まともに狩りをした事が無いまりさと、毎日狩りをしているちぇんでは餡子の質が全然違うので、こういう結果に 「むきゃきゃきゃ!くちほどにもないまりさね!そんなまりさは、だまってぱちぇのいうことをきいていればいいのよ!」 こいつの対処もさっきと同じだ。 このぱちゅりーの知識は、子守りをしていたゆっくりから聞いた話だけ。 それ以外で学んだことが無いので、普通のゆっくりより遥かに知識が少ない。 適当な問題を出すだけで、すぐに降参するだろう。 『そうだな、ぱちゅりーは、あの魔梨沙と知識で勝負してくれないか?』 「むきゃ!いやよ!なんでもりのけんじゃであるぱちぇが、そんなことしないといけないの!!」 『あの魔梨沙に勝てば、ぱちゅりーの優秀さが他のゆっくりにも伝わると思うんだけどなー(棒読み)』 「むきゅ!?そうね!そこまでいうならしょうぶしてあげてもいいわ!」 「私に任せてる時点で、ぱちゅりーに勝たせる気なんてないのに...」 魔理沙が何か言ってるが気にしない。 『さて、この二つのあまあまの匂いがする黒い粒は、片方があまあまで、片方が...異様にまずい。どっちがあまあまかわかるか?』 二匹の前に黒い粒を置いた。 「こっちが正解だと思うわ。」 「むきゃきゃ!ばかね!そっちは、はずれよ!こっちがあまあまよ!けんじゃなぱちゅりーにわからないことなんてないわ!」 二匹とも置いた瞬間すぐに解答した。 魔梨沙は、どちらが正解かわかってて答えたんだろうけど、ぱちゅりーは、魔梨沙と一緒の答えだと嫌だから逆のほうを選んだんだろうなぁ。 『それじゃあ、実際に食べてくれ。食べたのがあまあまだったほうが勝ちだ。』 「むきゃきゃきゃ!ぱちぇのかちにきまってるわ!」 ぱくっ ぱちゅりーが無駄なことを話しているうちに、魔梨沙が食べ始めた。 ペッ が、すぐに吐き出してしまう。 『あれ?』 「むきゃきゃきゃ!やっぱりぱちぇのほうがせいかいね!mブホォッ」 ぱちゅりーがむーしゃむーしゃと言おうとしたが、何も言えずに吹き出した。 さすが、ゆっくり用の野菜の種だ。 でも、何で正解した魔理沙が吐きだしたんだ? 「師匠!これ甘すぎよ!他の食べ物が食べられなくなるじゃない!」 『ああ、すまん。舌が肥えるの忘れた。』 うっかり普通のチョコ渡してた。 それで吐きだしたのか。 「そ、そんな、ぱちぇはけんじゃよ?ぱちぇがまちがえるはずないわ...」 勝負に負けたぱちゅりーは、落ち込んでいる。 「馬鹿じゃねーの?」 「むきゃー」 追い打ちをかけると、まりさと同じように気絶した。 こういうのを豆腐メンタルって言うんだろうなぁ。 ざわざわ 静かに見守っていたゆっくり達の様子がおかしい。 「おさっ!たいへんだみょん!まりさがきぜつしたみょん!」 そういえばゆっくり用の野菜の種がトラウマになってた奴いたっけ。 その後は特に問題も起きず、その他の独り立ちするゆっくり達に向かって一斉に「ゆっくりおめでとう!」と言ってから解散した。 『なぁ、ゆっくりのお祝いってこれだけでいいのか?』 「言わないで...昔は、自分もそれで満足してたって考えると、残念な気分になるわ...」 俺と魔理沙の前に、さっき気絶させたゆっくり達が転がっている。 「それで、このまりさとぱちゅりーをどうするの?師匠は更生させる気みたいだけど、こんなゲスどうにかできるの?」 『多分大丈夫じゃないか?俺の予想だと、こいつらただのゲスじゃないから。』 「ゆ...ゆっくりしていってね!」 「むきゅ!ゆっくりしていってね!」 まりさと話しているとまりさが起きた、起きた時の挨拶に連られてぱちゅりーも起きる。 「おさ!ゆっくりおはよう!」 「むきゅ!ゆっくりおはよう!」 『起きたなら、さっさと行きな。独り立ちしたんだから、自分の家を造らないと駄目だろ?』 「ゆん!そうだね!まりさは、ゆっくりしたおうちをつくるよ!!」 「むきゅー、からだがよわいぱちぇにできるかしら?」 「だいじょうぶだよ!まりさがてつだってあげるよ!」 「むきゅ!ありがとう!じゃあ、いっしょにいきましょ!」 まりさとぱちゅりーは、自分の巣を造る為に跳ねて行った。 「な、何でなの?ゲスがあんなに簡単に更生するなんて...」 『正確には、あいつらゲスじゃなかったんだ。大人になったばかりで、自信過剰になってただけ。だから、自信の元が崩れると元に戻る。』 金バッジを取ったゆっくりがゲス化する理由の40%は、これが原因だ。 バッジを取ったことによって、自信過剰になってしまうらしい。 簡単に治せることを知らずに処分したり、捨ててしまう飼い主も多い。 『まぁ、放って置くと、本当にゲス化するから早めに対処しないといけないんだけどな。』 「だからわざわざお祝いって理由で、皆を集めたのね!うふふふ、やっぱり師匠の話は、ゆっくりできるわ♪」 『ゆっくりのことは、ある程度わかるけど、おまえの趣味は、全然わからないよ。』 おまけ 『なあ、あのぱちゅりーとありすって、魔理沙の友達だよな?』 「ええ、そうよ。何かあったの?」 『いや、魔理沙の見た目が変わってるのに気付かないのかな?って思って。』 「私も気になって聞いてみたら、「いめちぇんしたのね!」だって。」 『ゆっくりにとって、希少種への変化ってその程度なのか...』 「そうみたいね...」 ***************************************************************** 名前を考えてくれた人ありがとうございます! これからは、長あきと名乗ります! おっさんあきだけは、勘弁してくださいっ!!! 絵については、アドバイスにあったように絵師さんが描きたいって思えるまで我慢することにしました! 頑張って人気作家になって描いてもらえるようになろうと思います。 とにかく!これからも面白いssが書けるように頑張りますので、応援してくれると嬉しいです! おまけ2 魔理沙は、長お兄さんと狩りに来ていた。 今は、二手に分かれて食料集めをしている。 「これは、食べられる。これは、食べられない。これは...初めてみるわね。後で師匠に聞いてみよ♪」 ガサガサッ 「何!?」 後ろから音がしたので振り向いてみると、一匹のまりさがいた。 「ゆゆ!?まりさは、まりささまのむれにいたまりさなのぜ!ちょうどいいんだぜ!まりささまをむれにつれていくんだぜ!」 このまりさは、師匠に群れを任せて人間の街に行くって言ってた、前の長? 通常種なのに、挨拶をしないってことはゲス化してるようね。 「今居るゆっくりはまりさだけ?他のゆっくりは何処かに居るの?」 「ほかのクズはれみりゃにおそわれたときに、えいえんにゆっくりしたのぜ!クズだったけど、いちおうおとりにはなったのぜ!」 あれだけ沢山のゆっくりを連れていれば、狙われてもしかたないわね。 「しかたないから、まりささまがここのむれのおさになってやるのぜ!」 「!?そう...群れはあっちよ。まりさ様が帰って来たお祝いに、おいしいご飯を集めないといけないから、先に帰っててくれる?」 「ゆっへっへっへ!なかなかきのきくまりさなんだぜ!まりささまは、さきにもどってるから、おいしいごはんさんをたくさんもってくるんだぜ!」 ザクッ 元長まりさが後ろを向いた瞬間、木の枝が体を貫いた。 「ゆが!?な、なにするんだぜ!」 「あなたが戻って来ると、師匠の邪魔になるの。だから...さようなら♪」 魔理沙が木の枝を引き抜くと、元長まりさから餡子が漏れ出してくる。 「ゆひ、ま、まりさのあんこさん..でていっちゃだめ...な...の.....」 バタ 「うふふ、これじゃあ私もゲスね。師匠に気付かれないように気を付けないと!」
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/8564.html
人生の楽園 人生の楽園 2023年7月~23年9月 共通事項 放送時間…土曜18 00~18 30 絨毯の上にカラー表記 固定スポンサー 井上誠耕園(60秒) YAMADA 老人ホーム アビタシオン 龍角散 Ryukakusan 第一交通産業グループ unicharm ユニ・チャーム STARTS(スターツ) DAIHATSU 2023年7月1日 1’00”…井上誠耕園 0’30”…YAMADA、老人ホーム アビタシオン、龍角散 Ryukakusan、第一交通産業グループ、unicharm ユニ・チャーム、STARTS(スターツ) + AC JAPAN(PT)*DAIHATSU 自粛分 2023年9月30日 1’00”…井上誠耕園 0’30”…STARTS(スターツ)、unicharm ユニ・チャーム、第一交通産業グループ、YAMADA、老人ホーム アビタシオン、龍角散 Ryukakusan + AC JAPAN(PT)*DAIHATSU 自粛分
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1084.html
作:神奈子さまの一信徒 どこかで見たことのあるお話のパロディです。 クラシック好きな方への推奨BGM:レイフ・ヴォ−ン・ウィリアムズ、交響曲第七番 『とてつもなく南の島のまりさ』 初夏 観測基地のゆっくりたちは、無事冬を越すことができた。 これは室内に餌が豊富に用意されていたことが何よりの要因である。 しかし、ここに来て問題も発生した。すっきりによる赤ゆの急増である。 ありすとちぇんの間にも赤ゆが生まれたが、胎生であったため、赤ちぇんが2匹生まれ ただけだった。 まりさとれいむの間には、それなりの大きさに成長した子まりさと(故)子れいむがいた が、その他に10匹も赤ゆが生まれていた。しかし、れいむはそれでも足りなかった。 食糧が豊富で危険な狩りをせずにゆっくりできる。 そのような環境下で、ゆっくりが増えようとするのは、自然の摂理というべきだろう。 「ゆふふ、ここはとてもゆっくりしたゆっくりぷれいすだよ。きっとにんげんさんは ここでまりさとれいむに幸せになってほしくで出て行ったんだよ。」 その隣にいるまりさは虚ろな表情でどこかを見つめていた。防寒服はうんうんしーし ーができるように、下腹部にマジックテープ式の前張りがついていた。しかし、度々 れいむのその肥満体でのしかかられ、すっきりさせられたために、まりさの防寒服の 下腹部は表面が磨り減り、繊維のほころびが見られた。 もっとも一番磨り減っていたのは、衣服ではなく、まりさの心だったが。 まりさの心は、おちびちゃんを死なせてしまったことへの後悔によってズタボロだった。 れいむは毎日とてもゆっくりしていた。たくさんのごはんさん、たくさんの赤ちゃんに 囲まれたれいむはゆっくりしてすっかり大きくなり、最早、サッカーボールどころか、 大きなだるまだった。選挙に使えそうなサイズである。 飼育員の言いつけを守り、防寒服は着ていたが、背中の辺りが動くたびにみちみちと 音を立てていた。その姿で「おうた」と呼ばれる怪音波をまきちらす姿は、宇宙の根源 に座す痴愚神の周りで単調な音楽を奏でる醜悪な蕃神たちを思い起こさせた。 「まりさ!れいむはもっと赤ちゃんがほしいよ!!ゆっくりすっきりしようね!!」 子育てに他種よりも情熱を傾けるれいむ種としては、子沢山は夢だった。子供たちはた くさんいればいるほどゆっくりできるものなのだ。 しかし、まりさはれいむのように楽観していなかった。自分たちは人間さんが用意して くれたごはんさんを食べてるだけなのだ。あまりたくさん赤ちゃんを増やすとえっとう に失敗する。まりさはそう何度も言ってきたが、その度にれいむに無理矢理すっきりさ せられていた。 まりさは最早、ぶくぶくに太ったれいむの召使い兼すっきり相手であり、一部の子供た ちからは「南極1号」などとバカにされていた。 「…れいむ、おちびちゃんが多すぎるのはゆっくりできないよ…もう新しい赤ちゃんは いらないよ…今のおちびちゃんたちをゆっくり育てようよ…」 まりさはれいむに比べてげっそりしていた。れいむたちの食べる食糧はすべてまりさが 袋を破ったり、缶を開けたりして、初めて食べられるようになるのだ。子供の数が増え、 まりさがゆっくりごはんさんをいただける時間はなくなってしまった。 「あああああああああ゛!?あがじゃんがゆっぐりできるのはとうぜんでしょおおおお おお!?あがじゃんがうまれでほじぐないとが、ばがなの!?じぬの!?」 「…だったら…れいむもごはんさんを用意する手伝いや…うんうんの掃除を…してほし いよ…」 赤ゆが増えてからというもの、れいむは専ら赤ゆへのすりすり、おうた、赤ちゃんと のおひるねなどに忙しく、自分で狩り(ただ木箱からごはんの入った袋や缶詰を取っ てくるだけだが)やうんうんしーしーの後始末をすることはなくなっていた。 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ゛!? なにいっでるのおおおお゛!?れいむはあかちゃんのめんどうみなきゃいげないんだ よ!!いくじのきびしざをじらないのおおおおお゛!?まりさはすどれずでぐるじむ れいむをじっがりゲア゛しなぎゃだめでじょおおおおおお゛!?」 「…かったーさんやかんきりさんを…使えるようになって欲しいよ…まりさはれいむ にゆっくり教えたよ…ちぇんも…ありすも上手にかったーさんや…かんきりさんでご はんさんをあけてるよ…」 ちぇんとありすはまりさほど上手ではないものの、すっかり道具の扱いにもなれ、今 はこの飼育スペースではなく、空いていた観測員の部屋の一つを巣にして住んでいる。 たまに餌がある木箱の通路「アメ横」で会う他は、ほとんどちぇんとありすの家族を 見る機会はなかった。 「ああああ↑あ゛あ゛あ゛あ゛↓ああああーっ↑!? あのふだりはごぞだでをまじめにやっでないにぎまっでるでじょおおおお!!いぞが じいでいぶどいっじょにじないでねえええええ゛!!でいぶはごぞだでにずべでをざ ざげる聖母なんだよおおおおお゛!!!」 まりさはれいむの絶叫を最後まで聞かずに、食事を用意しに向かった。 「なんきょくいちごう!!はやくごはんしゃんもってきちぇね!!!」 「すっきりちかできないむのーはちゃっちゃとごはんさんもってこい!!」 「はやきゅもってこにゃいとどれーをくびにするよ!!!」 「ゆきゃははははは!!!」 生まれたばかりの赤ゆたちが実の親に罵声を浴びせる。もう慣れてしまったまりさは 視線を向けることすらしなかった。 「アメ横」にある餌はもうほとんどなくなっていた。人間用の食品もほとんどなく、 残っているのは開けにくい缶詰ばかりあと一週間分あるかないかだった。 「…きっとみんな死ぬよ…みんな死ぬよ…ごめんね、お兄さん…」 「アメ横」に陳列されていた食糧がゼロになったのは三日後のことである。 「どぼじでごばんざんないのおおおおおお゛!!!」 「…みんな食べちゃったからだよ…」 観測隊が残していった食糧は、人間の分も含まれば、6匹のゆっくりが一年以上生き延 びるのに十分な量だった。だが、個体数が途中で倍増すれば話は別である。 「ゆええええん!!!みゃみゃ~!おにゃかすいたよ~!!!」 「なんきょくいちごう!はやきゅれいみゅちゃまにごはんもってきょい!!!」 「ごばんざんがないならどっでぐるのがおやのやぐめでじょおおおおおおお!?」 「…お兄さんは…ここお外にはごはんさんはないって…言ってたよ…」 れいむは怒りのあまりまりさに体当たりをした。太りに太ったれいむの体当たりは、 痩せ細ったまりさにとって、あまりに重かった。まりさは思わず餡子を吐いてしまう。 「!!…ゆ…ぐ…」 「ごばんざんをどっでごれないげずはぜーざいずるよ!!!」 完全に見下した目でまりさをにらみつけるれいむ。その頬は、顎は、そして腹部は醜 悪なほどにたるんでいた。 「…………」 まりさは黙って廊下を見るようにれいむに促す。れいむは面倒臭そうに廊下をのぞい た。そこにあったのは、かつてあふれんばかりに食糧に満ちていた木箱が空箱になっ ているという、れいむには信じられない光景であった。 「どぼじでごばんざんのごっでないおおおおお゛!?でいぶにはあがぢゃんがだぐざ んいるんだよおおおおおお゛!!!」 原因と結果の順番が完全に入れ違っていた。 「みゃみゃー!!おにゃかすいたんだじぇい!!!」 「むーしゃむーしゃしないとゆっくちできないいいいいい!!!」 「おい!なんきょくいちごう!!はやくごはんさんもってきょい!!!」 赤ゆたちが騒ぎ立てる中、れいむは唖然として空箱だらけになった木箱を、まりさは そんなれいむを黙って眺めていた。 「まりさ!れいむ!」 ありすとちぇんだった。 「もうごはんさんがないんだよ~!分かるよ~!」 「ちぇんとあちこち探してみたんだけど、もうごはんさんがないわ!このままじゃい なかものよ!!」 「…まりさ…」 「?」 「かりにいくよ…」 「!?」 「ゆっくりしないでかりにいくよ…おちびちゃんをゆっくりさせたいよ…」 まりさは驚いた。れいむの母性がまだ錆び付いてはいなかったことに。まりさの瞳 は虚ろなままだったが、どんなに罵声を浴びても我が子は我が子だった。 「…まりさはゆっくりしないで狩りに行くよ…」 まりさは外出用の通路に向かった。その後を苦しそうに跳ねながられいむがついて きた。一緒に狩りをするのは…初めてだろうか?… さらにその後にちぇんが続く。赤ゆたちのこともあるので、ありすには残ってもら った。 まずは餌場を探さなくてはならない。 まりさは新しい餌場を見つけた場合、引っ越すことも考えていた。 まりさはあの飼育員特製の外出通路を通じて外へ出た。夏になると、気温が0℃近く で推移するようになるため、防寒服を着ている状態では特に寒いと感じなかった。 まもなくして、通路ぎりぎりにまで肥えてしまったれいむが苦労して通路から顔を 出す。まりさには、れいむがまだこの通路を通れたことが驚きだった。 観測基地は南極大陸周縁部の島に建てられている。そのため、夏場になると海氷が 縮小して海が接近し、基地周辺には陸地が顔を出していた。遠くの半島にはアデリ ーペンギンの群れがコロニーを形成し、その上空ではトウゾクカモメがペンギンの 雛を狙っている。 れいむは黙って、れいむ専用すぃー「ぶーねい」(びゅーねいの誤表記と思われる) に乗り、鳥が集まっている岩場に向けて走り出した。まりさは自身の専用機「ふぉ るねうす」に乗り、ハンドルのグリップをあにゃるで軽く握り締め、後を追う。 途中、何度もスピードを調整し、れいむを追い越さないようにしながら走った。 すぃーはそれぞれ、持ち主の好みに合わせて飼育員が改造を繰り返しており、まり さのすぃーは飼育員の愛情によって過剰なまでに強化されていた。 衝撃や振動を吸収するクッション、ぴかぴかに磨かれたボディ、さらにどんな荒地 でも走破できるよう各種改造・調整が施され、その加速性能は他の三台の追随を許 さなかった。 一方のれいむはスピードこそ出ないものの、通常のすぃーの倍近い大きさを誇り、 おちびちゃんをたくさん乗せて走り回れるようになっていた。 れいむはたるんだ体を右に、左にと巧みに動かしながら、重心を移動させてすぃー を操作する。風を切って走るすぃーの上でたるんだ達磨が「ぶりん!ぶりぶりぶり りん♪ぶりーん★」と踊る様子は、後方を走るまりさを思わず失笑させた。 「でいぶはかぜ!!でいぶはかぜになっだのよおおおおおお゛!!!」 その後方からちぇんが専用すぃー「ファーン?」がやってくる。 ちぇんのすぃーはれいむ同様、体重移動によって操作するタイプであり、小回りの 効く、軽快な機動性が売りだった。「ふぉるねうす」ほどの加速性能はないが、そ の分軽量で、海氷や新雪の上でもある程度安定した走行が可能だった。 三台のすぃーは、海鳥が集まる岩場を目指した。 岩場にいたのはユキドリだった。ユキドリはハトよりやや大きいくらいの真っ白な 鳥で、沿岸域の魚やアミを捕食して暮らしている。この時期ユキドリは南極大陸沿 岸の岩場に巣を作り、卵を産む。 その上空にはユキドリを狙うトウゾクカモメが乱舞していた。この時期の亜南極域 は海鳥があちこちで営巣しており、アデリーペンギン、ナンキョクトウゾクカモメ、 ユキドリの巣が近接して形成されていた。ペンギンなどは巣の材料となる小石をあ ちこちで奪い合っている。 珍事としては、ナンキョクトウゾクカモメがその餌であるはずの、ペンギンの卵を 抱卵して孵化させたという記録も残っている。これも、この巣の密度と、重複した 行動圏が生んだ一つのエピソードであろう。 また露出した大地には、コケや地衣類が生え、中にはイネ科の種子植物らしき草も 点々と生えていた。 このユキドリ、そしてユキドリを捕食するために集まるトウゾクカモメの糞が地面 に滋養をもたらし、この不毛な大陸の端っこに緑をもたらしているのだ。 三匹は颯爽とすぃーから降り、まずはこの草やコケを食べてみた。 「むーしゃ、むーしゃ、それなりー…」 二匹ともすっかり人間の食物の味に慣れてしまっていたが、今更文句は言えなかっ た。せっせと口の中や、まりさの帽子の中に植物を地面から引っぺがしては詰め込 んでいく。 「ゆ~…これだげじゃあ、おぢびぢゃんゆっぐぢでぎないよ…」 れいむはユキドリの巣に目をつけた。周囲にはトウゾクカモメの巣もあったが、 より体の小さいユキドリの方が与しやすいと考えたようだ。 「そろーり、そろーり…」 ぼよんぼよんと跳ね、ユキドリの巣に接近するれいむ。 「でいぶとおぢびぢゃんのためにゆっぐりたまごさんはいただくよ!!ありがだ ぐおもっでね!!!」 まりさはかわいそう、と思ったが、おちびちゃんと自身の空腹に耐えられないれい むはためらわなかった。 「どりざん、ゆっぐりでいぶたちのごはんざんになっでね!!!」 言うが早いか、体当たりを仕掛けて親鳥を追い散らす。親鳥は真っ白な体をいっぱ いに広げて抵抗したが、このサイズの、それも防寒服を着込んだれいむの前では無 力だった。そして、巣の中の卵を口の中にしまいこむ。 ユキドリは卵を一つだけ産卵し、そしてそれを40~50日かけて暖め、孵化させると 言われている。この極地という苛酷な環境下では、数少ない卵を大事に育てるしか とるべき手段がないのであろう。 「ゆふふ、まだまだいただぐよ!!まりざもてつだっでね!!!」 れいむはユキドリの巣を回り、片っ端から卵を奪っていった。生き残るためには手 段は選べない。それはユキドリの側でも同じことであり、何匹か、必死の抵抗を試 みた親鳥がいたが、上空から隙を狙っていたトウゾクカモメに次々と襲われ、真っ 白な羽と赤い染み、そして誰もいなくなった無残な巣だけが残された。 もうまりさの帽子もれいむの口の一杯だった。それでも、今まで食べていた量に比 べると足りなかった。しかし、もう太陽は傾き、タイムリミットが迫っていた。 長い長い極地の夏の昼が終わり、夜が迫る。 夜間にこの過酷な環境の大陸ですぃーを走らせるのは自殺行為と言えた。 ちぇんはありすとの間に二匹しか子がいないため、まりさたちよりも少ない卵やコ ケで満足していた。しかし、まりさとれいむが苦労して集めた餌は、おちびちゃん 全員のおなかを満たすには足りなかった。 観測基地に向けてすぃーを疾走させる三匹を、横から夕日が真っ赤に照らす。 ふと、太陽が今にも沈もうとしたそのとき、夕日が緑色になった。 グリーンフラッシュと呼ばれる現象である。 グリーンフラッシュは太陽が沈む直前に緑色の閃光を放つ現象のことで、普段は大気 中で散ってしまっている波長の短い光が、大気の透明度など様々な条件が重なった時 に地上まで届く現象のことである。 ほんの数秒だけ、緑色の淡い光が、この無人の大陸を照らす。 「おひさまがみどいいろなんだよ~!!分からないよ~!!」 まりさはグリーンフラッシュに見入った。 こんなにゆっくりできないおそとなのに、なんでこんなにきれいなんだろう… 一方、れいむもグリーンフラッシュに驚き、そして怒り狂った様子で猛然と吼えた。 「ぢょっどだいようざん!!!みどいいろはゆっぐりでぎないよ!!!にーぴーから ーはじね!!!せーさいっずるよ!!!みどりじね!!るいーじじね!!!」 沈み行く太陽はそんなれいむの罵声を相手にしようともせず、静かに沈んでいった。 「ゆええええん!!!くさしゃんにがいいいい゛!!!」 「おいじくないよおおおおお!!ゆっぐりできないよおおおお!!!」 「まずっ!これめっちゃまずっ!!」 「味のりぐるきっくやあああああ!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお゛!!!」 新しく生まれた赤ゆたちは、人間の食物を食べて育ったため、両親が野外でとってき た餌を受け付けることができなかった。 「ゆぎいいいい゛!!!なんでだべないの!!!ごはんざんだべないどゆっぐりでぎ ないでじょおおおおおお゛!!!」 「うるじゃいよ!!!びゃきゃなおやははやくあまあまもってきちぇね!!!」 「たきゅさんでいいよ!!!」 「なんきょくいちごう!!!ゆっくりちてるひまあったらおいちいごはんしゃんさが ちてこい!!みゃみゃ!おみゃえもだ!!!」 「ゆぎゃあああああ!!!どぼじで!!!どぼじでぞんなにわがままなのお゛!!」 れいむは焦っていた。このままごはんさんを食べなければ、せっかく産んだおちびち ゃんが永遠にゆっくりしてしまう。それはたくさんの子供たちに囲まれることを特別 視するれいむ種にとって、想像するのすら辛いことだった。 れいむはコケを噛んで軟らかくし、なんとか赤ゆたちに食べさせようとした。 「いいがらだべなじゃい!!!ゆっぐりでぎなぐなるよ!!!」 「たまごしゃんまっず!!!」 一匹の赤まりさが、れいむたちが苦労して取ってきたユキドリの卵をぺっと吐き出す。 潰れた黄身が床に歪な楕円を描き、喚き散らす赤ゆたちのちーちーによって汚れてい った。れいむの沸点は近づいていた。 だが、そのとき、 「ゆゆ!たまごしゃんよりもいもうちょのほうがおいちそうだよ!!」 がぶ 怒鳴り散らすれいむの後ろで、一匹の赤ゆが妹に噛み付いたのである。 「ゆぎ!!?やべでね!?まりちゃ!!なにちゅるの!?きゃわいいれいみゅにかみ ちゅかないでにぇ!!」 だが、赤まりさは力に任せて、赤れいむの頬を食いちぎり、咀嚼した。 「むーちゃむーちゃ…ちあわせ~!!!」 たった一日絶食しただけ。 だが、それは急激に成長する時期にあたる、赤ゆたちには耐え難い苦痛だった。 一般的に赤ゆから野球ボールぐらいまでの時期のゆっくりの成長は急激であり、指数 関数的に成長する。その後、成長速度は対数関数的に変化するのだが、指数関数的に 成長する期間の餌料転換効率(食べた餌の何パーセントが成長に費やされたか)は非常 に高い値を示すことが知られている。 この成長期のゆっくりにとって、一日とは言え、絶食は危険であった。 そして共食いが始まった。 「ゆゆ!れいみゅのいもうちょおいちいよ!むーちゃむーちゃちゅるよ!!」 「やべで!おねえぢゃんやべで…ゆんやぁあああああああ゛!!!」 「いもうちょのおべべきちゃないけどおいちいよ!」 「ゆげっ…ゆ゛!ゆ゛!」 それは共食いというよりは、先に生まれてきた大きな個体が、まだ幼い赤ゆたちをむ さぼり食らう一方的な虐殺に近かった。 「でょ!!ぢょっどなにやっでるのおおおおおお゛!!!ゆっぐりごろじはゆっぐり でぎないでじょおおおおおお゛!!!」 れいむの雄叫びに、うつらうつらしていたまりさも飛び起きた。 「おじびぢゃああああん!!!ゆっぐりごろじはゆっぐりでぎないよおおお゛!!」 「ゆきゃきゃ!!!れいみゅにたべられるなんちぇ、ほきょりにおもって…」 ぶちゅ 次の瞬間、まりさが目にしたのは、妹たちをむさぼり、得意になる赤ゆたちを潰した れいむの姿だった。 「ゆ゛…ゆゆ゛…きゃばいい…れい…が…なんじぇ…」 潰された赤れいむが動かなくなると、止まっていたゆっくりたちの餡子脳がやっと動 き出した。 「ゆっぐりぎょろちだああああああああああ!!!」 「ゆっぐりできにゃいんだじぇえええ!!!」 さっきまで自分たちが何をしていたかも忘れて逃げ出す、赤まりさと赤れいむ。 「いもうどだぢをごろじだげずはじね!!!」 「ぶぎゅ!!!」 「ぶぽっ!?」 妹をむさぼっていた赤ゆたちは一匹、また一匹とれいむに殺され、残ったのは、あん よを齧られて動けなくなった赤ゆ一匹と、何とか難を逃れた三匹の合計四匹だった。 「ゆわああああああああああああああああああああああああん!!!」 れいむは号泣した。 たるんだ頬をぷーるぷーると震わせ、目と口から液体を振りまいて泣くれいむ。 その姿は薄闇の中で、ホラー以外の何者でもなかった。 もし、ここに小傘を連れてきたら、傘を放り出してでも逃げ出すだろう。 「なんじぇ!?なんじぇ!?どぼじでじんでれらでいぶがごんなめにいいい゛!!! ゆがあああああ゛!!!ゆばばああああああ゛ん!!!ぶばああああああああ゛!!」 子供たちのために苦労して取ってきた餌を拒否され、挙句共食いを見せ付けられ、自 分で産んだ赤ゆを自分で処分しなければならなかったのだから。 まりさは不思議と涙は出なかった。 ただ、久しぶりに、れいむに同情した。 れいむが泣き止む頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。 「…まりさ…」 れいむはたるんではいるが、疲れきった顔でまりさを呼んだ。 「…れいむは…新しいゆっくりぷれいすを探すよ…」 れいむは餌もなく、赤ゆの死臭が染み付いたこのゆっくりぷれいすに住むことはでき ない。そう思っていた。しかし、ここを離れてはいけない、まりさたちは飼育員に何 度もそう言われていた。 「…ゆっくりりかいしたよ…残ったおちびちゃんたちのために新しいゆっくりぷれい すを探すよ…」 このとき、まりさは今までのれいむの横暴への怒りを少しだけ忘れていた。 翌日、まりさとれいむ、子まりさと赤ゆ四匹、ちぇんとありす、そして二匹の子であ る子ちぇんが二匹、合計十匹のゆっくりたちは、三台のすぃーに分乗して昨日の岩場 へと向かった。 まりさは赤ゆたちが自分の生まれ育った場所を捨て、お外に出られるのか不安だった が、昨日の一件があったせいか、赤ゆたちは親に逆らおうとはしなかった。 本来なら、ありす専用すぃー「あらけす」があるはずなのだが、なぜか見つからなか った。「あらけす」はありす専用にカスタマイズされたすぃーであり、あにゃるで動 かすグリップには走行による振動が何倍にも増幅されて伝わるようになっている、恐 るべきすっきり使用のすぃーであった。 ありすは自分のすぃーがなくなっていたことを悲しんだが、幸い、ちぇんのすぃーな らば四匹乗せることができた。 「お兄さん…まりさはいつかきっと帰ってくるよ…」 ゆっくりたちは慣れ親しんだ観測基地を放棄し、昨日餌を漁ったユキドリが営巣して いる岩場へと向かった。 少しユキドリの数が減ってしまったが、そこには、相変わらずユキドリの巣が点在し ており、その上空をトウゾクカモメが舞っていた。 改めて見ると、ユキドリが営巣している岩場は氷河で削られており、大小様々な窪み がその表面に形成されていた。ここに観測基地から持ってきた毛布や、その辺のコケ などを敷き詰めれば、暖かいゆっくりぷれいすができるのではないか? まりさはそう考えた。 「とりざんゆっぐりででいっでね!!ごごはでいぶのゆっぐりぶれいずだよ!!!」 れいむはおうち宣言と同時に親鳥を巣の外にたたき出し、卵をくすねた。 れいむがおうち宣言をした巣は、うまい具合にくぼんだ岩に、大きな石が乗っかって おり、何箇所か隙間をふさぎ、出入り口を毛布で覆えば、外気をたやすく遮断できそ うだった。 「さ~、おじびぢゃんだぢ、ぎだないどりざんはおっぱらっだがら、あだらじいゆっ ぐりぶれいずにはいっでね!!!げっがいざんをはるよ゛!!!」 れいむはいそいそと持ってきた毛布を敷き、観測基地から持ち出した雑多な材料で新 しい巣の周りを覆っていく。危機に陥ったことで、眠っていた母性が目覚めたのだろ うか?れいむは子供たちのためにかつてないほどゆっくりしないで働いていた。 「ゆゆぅ~なんじゃかこのゆっくりぷれうしゅはくさいんじゃじぇ~!!!」 「でもとってもゆっくりできそうだよ!!!」 れいむが巣を作っている間に、まりさはすぃーから、一匹の赤ゆを下ろし、口の中に 入れて運んできた。 昨日、姉たちに食いつかれあんよを怪我した赤れいむである。 ちょっと前までの自堕落な生活からは想像もできないほど、れいむが献身的に介護し たことにより、傷はすっかりよくなっていた。この分ならば、あと数日もすれば這い まわれるようになるだろう。 「おい!なんきょくいちごう!!ここはちゃむくてゆっくりできにゃいぞ!!ぽかぽ かなあったかぷれいちゅにちゅれてけ!!きゃわいいきゃわいい…?」 まりさは最後まで言わせず、赤れいむを口から取り出して、岩場に置いた。 夏の日中であるため、気温は数度はあるため、凍死することはない。しかし、防寒服 のない赤ゆたちには、岩場の上で南極の風に曝されるのは耐え難い苦痛だった。 「ひゃぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!おい!れいみゅをたちゅけろ!!」 「口の聞き方の出来ていないおちびちゃんはゆっくりできないよ。反省するまで、そ こでゆっくりしていってね!」 「ゆっぐりできにゃいいいいいい゛!!!」 まりさは昨日のれいむの子供たちへの献身ぶりを見たことで、閉ざされていた心が少 しだけ開きかけていた。だから、暴言を振るう子供たちを教育し、立派なゆっくりに しようとし始めたのだ。兄さんが帰ってきた時に、みんなで歓迎できるように。 「なんぎょくいちごう!おねがいたじゅげでえええ!!!ちゃむいいいい゛!!!」 「なんきょくいちごうってだれ?まりさはまりさ、ぱぱだよ!」 「しょんなのどっちでもいいきゃらはやくぽかぽかあああああ゛!!!」 まりさは喚きたてる赤れいむを静かににらみつける。躾は根気の勝負なのだ。 赤れいむは岩場の上に置かれた当初こそ、どこで覚えたのか首を傾げたくなるほどの 罵詈雑言をまりさに浴びせ続けた。だが、所詮は、母親の保護下から出たことのない 赤ゆである。ものの十分もしないうちに、赤ゆの根拠のない居丈高さは砕け、まりさ に泣きながら謝り始めた。 「ゆっぐ…ゆっぐ…ごめんにゃしゃい…たちゅけてぴゃぴゃ…」 まりさは少しだけ笑顔になった。やっぱりまりさの子供なのだ、ちゃんと躾をすれば きっといい子に育つ。もう少しの辛抱だ。 「聞こえないよ…悪いことしたから謝っているんだよね?何をしたからぱぱに謝って いるの?」 「ゆゆ…れいみゅは…ゆゆ~んおちょらをとんでるみちゃ~い…」 実際に赤れいむはお空を飛んでいた。せっかく怪我が回復しつつあった上に、まりさ による躾の成果が見られつつあった赤れいむは、トウゾクカモメにくわえられ、どこ かへ連れ去られてしまった。そのまま雛鳥の餌になるのである。 「おぢびぢゃあああああああああああん!!!なんじぇええええええ゛!?」 それは昨日今日と、自分たちがやったことが裏返しになったに過ぎない、自然界では ありふれた一幕だった。 「ありすたちのとかいはなおうちの完成よ!!」 「おうちのなかぬくぬくなんだね~、分かるよ~!!」 こうして、ゆっくりたちは、ユキドリの営巣地を奪取することで、海岸沿いの日当た りの良い斜面に新しいゆっくりぷれいすを建設した。 その夜、狭い巣の中で、まりさとれいむ、そしてその子供たちは身を寄せ合い、久し ぶりに家族の暖かさを噛みしめながら眠りについた。 翌日、この季節にしては寒い日だった。 風はなく、穏やかだが、気温は−5℃まで下降した。 疲れて昼まで寝てしまったまりさたちはけたたましい鳴き声で目が覚めた。 餌をとるために沖合いの海にでかけていたアデリーペンギンたちが大慌てで海から 出ようとしている。 アデリーペンギンは産卵後、雄が卵を抱卵し、その間、雌が沖合いの海で餌をとる。 しかし、そこには、ペンギンを狙うヒョウアザラシ、そして南極の海最強の捕食者と されるシャチが待ち受けているのだ。 今回はシャチに襲撃されたようで、懸命に海氷に向かって泳いでいたペンギンがまた 一匹、シャチに襲われて丸飲みにされる。その間に、ペンギンたちは次々と海中から 脱出しては、岩場へと帰ってきた。 「ゆゆ!?ペンギンさんがいっぱいだよ!!」 まりさはペンギンを知っていた。かつて飼育員が教えてくれたのだ。南極のペンギン は人を恐れないため、近くで観察することが出来た。氷の海でゆっくりしている生き 物、それがゆっくりたちのペンギンに対する認識だった。 「きょうばべんぎんざんをやっつげで、おぢびぢゃんだぢにげんぎになっでもらう よ!!」 そう言い出したのはれいむだった。昨日ユキドリを散々に追い払い、その巣や卵を奪 取したことで、れいむは捕食者としての自信を持ち始めていた。 まりさもそれに賛同した。なんとしても栄養価の高い餌を子供たちに食べさせること で、少しでも早く、自力で餌が取れるサイズにまで成長してほしかった。 成体ゆっくり四匹と子まりさが三台のすぃーに分乗して、ペンギンの営巣地に近づく。 アデリーペンギンは体長70cm前後、体重は4−5?の中型ペンギンである。 いくら成体ゆっくりとは言え、まともに相手をすることができないサイズである。そ こで、ゆっくりたちはすぃーに乗ったまま、ペンギンを轢き殺す戦術に出た。 「ゆっぐりじねええええええ゛!!!」 れいむは巣に一羽残っていた雛を狙う。通常、巣に親鳥が不在ということは、両親が 捕食されて死んだことを意味していた。 ゴリッ 既に体重が3kg以上にまで増えたれいむがすぃーに乗っているのだ。雛鳥の脆弱な骨格 ではその衝撃に耐えることが出来ず、ペンギンの雛鳥は首の骨が折れて死んでしまった。 「ゆぶぶ、ごれもでいぶのがばいいがばいいおぢびぢゃんだぢがいぎのびるだめだよ。 わるぐおもわないでね。ぶぶぶ、づよぐっでごめんでぇ~♪」 その頃、まりさやちぇんは、すぃーで親鳥に体当たりしたものの、体当たりの衝撃で一 羽のペンギンが胃内容物を吐いてしまったほかは、何の打撃も与えられなかった。 この時期は、まだ孵化するには早い時期であり、雛自体が少なかった。そして、親鳥は 海中深く潜水するために、通常の鳥類とは違い、その骨は密度が高く、頑丈な骨格を形 成していた。 れいむは血に染まった雛の死体をすぃーに乗せ、次の獲物を探す。 「ゆゆ!?」 そのとき、成体ペンギンによってれいむは囲まれた。 「どいでね!!でいぶはだべられないべんぎんざんにようはないよ゛!!!でいぶの え゛んじぇる゛ずまいる゛にみどれるのはじょうがないげど、どいでね!!!ぶーで ほーでごめんね゛~!!!ぶっ!!!」 次の瞬間飛んできたのは、アデリーペンギンの翼による平手打ちだった。 ペンギンはかわいらしい、というイメージしかないが、実際は強力な海中の捕食者で ある。かつて、コウテイペンギンは捕まえようとする漁師たちをその力でてこずらせ、 犬を翼の一撃でノックアウトしたという。 アデリーペンギンにそこまでの力はないが、れいむの歯は衝撃で砕け散り、口内は切 れ、餡子の味がじんわりとれいむの口に広がった。 「ゆげえええ゛!!!でいぶのえべがんどなは…ゆべっ!!!」 次から次と、ペンギンによるビンタが続く。敵討ちなのだろうか?最早ペンギンによ るれいむのリンチになっていた。 「ゆべ!!!やべ!!!やべで!!!でいぶ!!!ぎでいな!!!でぶっ!!!」 歯が折れ、餡子を吐き、頬はずたずたになっていった。 「ゆびゃああああ゛!!!」 一匹のペンギンが何を思ったのか、れいむの目をくちばしでつつく。れいむの右目は 簡単に潰れてあたりに透明な液体を散らした。 「ゆぎゃああああああああああ゛!!!でいぶのみやびなおべべべっ!!!」 そしてビンタが続行される。 思わぬペンギンの反撃によってぼこぼこにされていたのはれいむだけではない。 「ゆっぎゃああああ゛!!!ばでぃざの…ばでぃざのあま゛あま゛なまずぐがあああ あああ゛!!!」 「ぼうじざんなぼっでね!!わがらないよおおおおお゛!!!」 「あでぃずの!!あでぃずのどがいばな!!ぶぼおおお゛っ!!? まりさはビンタによって歯を半分ほどやられ、その肌は乾燥と相まって所々、切れて 餡子がにじんでいた。 ちぇんは帽子をずたずたにされ、尻尾も片方が途中から食いちぎられている。 ありすは髪の毛をくちばしでむしられ、金髪はまだらはげとなり、左目は潰れかけ、 視力を喪失していた。 子まりさだけは、背丈が小さいことが功を奏し、ビンタをされずに岩陰に隠れること に成功していた。 「ゆっわあああああ゛!!!もうやじゃ!!!おうちがえるっ!!!」 「どぶぉじで!!!でいぶがごんなべにいいいいいいいい゛!!!」 ゆっくりたちはペンギンにボコボコにされ、ほうほうの態ですぃーに乗り込み逃げ出 した。当初の捕食者として自信は、もう欠片ほども残っていなかった。 逃げるゆっくりたちを、ペンギンは翼をぱたぱたと動かしながら、追撃してくる。 何度もつつかれたまりさの帽子はもうぼろぼろで、先端に穴が開いていた。 「ゆええええ゛!!!こにゃいでええええ゛!!!」 すぃーとペンギンたちとの距離が離れると、ペンギンたちは満足したように鳴き、 よたよたと巣へ帰っていった。 「ぺんぎんさんは…ゆっくりできないわ…とかいはじゃないわ…」 「なんでぢぇんがごんなべに…」 「ぶゅえええええええん゛!!!でいぶのおべべがああああ゛!!!」 「ばでぃざは…きんばっじ…おぼうじ…ゆっぐじできな…」 金バッジは野生で生き残るのに何も役に立たなかった。それとも、そもそも南極は 饅頭が生き残れる場所ではなかったのだろうか? やっとゆっくりたちが新しい巣まで逃げてきたとき、そこにあったのは新しい地獄 だった。 「おぢびぢゃあああああああああああああんっ!!!」 誰も守るもののいない巣をトウゾクカモメの集団が襲ったのだ。そもそも、ペンギン、 ユキドリ、トウゾクカモメがこの時期、同じような場所に営巣するのは、彼らが新し い命を育むことができる場所が限られているからである。そして、彼らはその中で、 常に天敵を警戒しながら生きていた。少しでも気を緩めれば、卵は、雛は、食べられ てしまうのである。 「やべで!!!どりざんやべでね!!!」 まりさがすぃーを降り、必死に巣へと跳ねていく。その後を子まりさが追った。 トウゾクカモメによって巣は荒らされ、貯めておいた食糧は全て持ち去られてしまっ た。三匹いた赤ゆは巣の奥に固まっていたおかげか、連れ去られてはいなかったが、 傷だらけだった。 「ゆんやあああああ゛!!!」 「ぐるなあああ゛!!!そりょそりょほんきでおぎょるよおおおおお゛!!!」 「ゆっぴゃああああ゛!!!まりちゃのこうきなおがおがぁあああああ゛!!!」 必死にぷくーっで応戦する赤ゆたち、だが、焼け石に水ほどの効果もなかった。 「おぢびぢゃんをばなぜえええええ!!!」 「いもうちょがらばなれろおおおお゛!!!」 「じね!!じね!!!おぢびぢゃんをゆっぐりざぜないくずはじね!!!」 まりさ、子まりさ、れいむが必死にトウゾクカモメに体当たりを繰り出す。 しかし、その度にトウゾクカモメは軽やかに攻撃をかわし、逆に子まりさの帽子を持 って飛んでいってしまった。 「ゆああああ゛!!!ばでぃざのおぼうじ!!がえじで!!!ばでぃざのわいるどな おぼうじいいいいいいいいい!!!」 だが、帽子が帰ってくることは二度となかった。 そのとき、両親が帰ってきたことに赤ゆたちは気づいた。 「ゆゆ!?ぱぱとみゃみゃが帰ってきちゃょ!!!」 「たちゅけて!!なんきょくいちごう!!!」 「もうこんなばかなとりしゃんなんてすぐやっちゅけちゃうよ!!!」 安心したのか、一匹の赤まりさが巣から出てくる。 「まりちゃはここだよ!!!はやきゅたちゅ…ゆゆ~!!おちょらをとんでるみちゃ い~!!!」 そして、ずっと巣を突っついていたトウゾクカモメの一羽のくちばしに捕らえられ、 そのまま空へと消えた。 「でいぶのがばびびおぢびぢゃんがあああああ゛!!!」 「ゆわああああ゛!!!おぢびぢゃんでてきちゃだめえええええええ゛!!!」 不運は続いた。絶叫しながられろれろ舌を動かすれいむ。その舌をトウゾクカモメが 捕らえたのである。 「ゆえええええええ゛!!!やへへへ!!!ふっふりふぃふぁいへははひへへ!!!」 何やら意味不明な絶叫を繰り返すれいむ。 しかし、トウゾクカモメはあらん限りの力で、れいむの舌を引っ張った。 「ゆえええええええええ!!!ゆひいいいいっ!!!」 ぶちっ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 れいむはショックのあまり、白目を剥いて倒れた。 トウゾクカモメは舌をくわえたまま自分の巣へと飛び去ってしまった。 一方、ありすとちぇんの巣では、子ちぇんはトウゾクカモメに持ち去られたのか、一 匹しか姿が見えず、その一匹もあんよや目を食いちぎられ、ひどい有様だった。 「ゆぴいいいいいいい゛!!!いじゃいよ~!!わきゃらにゃいよ~!!!」 「ごのいながものおおおおお゛!!!」 「がえぜ!!!ゆっぐりじないでおちびぢゃんをがえぜ!!!」 だが、トウゾクカモメは残った一匹の子ちぇんをくちばしに挟み、飛び去ってしまっ た。 「いじゃああいいいい゛!!!おちょらとんじぇるみじゃいいいいいいっ゛!!!」 「おぢびぢゃんをがえぜ~!!!わがるがよ~!!!」 ちぇんは砂糖水を目から振りまきつつ、必死にすぃー「ファーン?」でトウゾクカモ メを追う。ちぇんは「ファーン?」の軽快さを生かして海氷上を全速力で突っ走るが 鳥に対して速度差は明らかだった。 「ゆああああああああ゛!!!おぢびぢゃあああああん!!!どりのぶんざいでええ ええ゛!!!」 ちぇんは必死にすぃーを走らせる。「ファーン?」の軽さなら比較的薄い海氷の上も 走行可能である。しかし、タイドクラック−露岩近くで潮汐によって生じる海氷の割 れ目−の前では、軽量も最高速度も関係なかった。 ちぇんは子ちぇんを連れ去ったトウゾクカモメを追うのに夢中になるあまり、上ばか り見て、目前にせまるタイドクラックに気づかなかった。 「おぢびちゃあああああ゛!!ああっ!?」 ガツンという音と共に、「ファーン?」はタイドクラックにはまった。 「ゆあああああああ゛!!こおりのわれめさんでダンスっちまった~!!!わがらな いよぉ゛~!!!」 衝撃ですぃーから放り出されたちぇんは氷の割れ目の壁を滑走する。ちぇんはなんと か残された一本の尻尾で壁面の出っ張りを掴むが、冷たい氷をいつまでも掴んでいる ことは不可能だった。 「だじゅげで!!!だじゅげでありずううう!!!ばでぃざあああ!!!でいぶうう う!!!…ゆ゛!?」 そこに上から自身のすぃーが落ちてくる。 「やべで!!ごないで!!!ゆっぎゃああああ゛!!!」 ちぇんとすぃーはそのまま氷の下、水深数百メートルはある冷たい海に落下し、二度 とあがってくることはなかった。 やっとトウゾクカモメの襲撃から解放されたとき、そこにはぼろぼろの毛布とトウゾ クカモメの糞と羽が残った巣、まりさ、ありす、舌を失ったれいむ、帽子を失った子 まりさ、そして傷だらけの赤ゆ二匹と二台のすぃーだけが残された。早くも、ゆっく りたちの新しいゆっくりぷれいすはゴミ捨て場のようになっていた。 「…おにいさんといた…ゆっくりぷれいすにかえりたいよ…」 子まりさのつぶやきに異議を唱える声はなかった。 まりさたちは一日にして、新しいゆっくりぷれいすを放棄して、観測基地に戻ること にした。気圧が下がりつつあったことなど、まりさたちは知る由もなかった。 二台のすぃーに分乗して、観測基地を目指すまりさたち。 幸い、太陽はまだ高く、日が暮れる前に観測基地に着けるはずだった。 ユキドリたちがいる岩場からの帰り道、背丈の低いゆっくりたちには観測基地の屋根 やアンテナが物陰に隠れてしまって見えない。そこで、まりさは前回先が鋭く尖った 氷山を目印にして帰っていた。 「ゆゆ!?」 だが、今日は氷山がたくさんあって見分けがつかなかった。 「ゆゆ~?なんだかいつもとけしきさんが違うよ…」 蜃気楼である。 風がない、穏やかな日ならば、南極では度々発生する現象である。 蜃気楼によって、氷山はひっくり返ったように空へと伸び、まりさたちは形が変わっ てしまった氷山の前に道を誤った。そして、より気候の厳しい内陸部へとすぃーを走 らせた。 そしてその夜、雪が降った。 ここがどこかも分からないまりさたちは、氷原の真ん中で、岩と氷の間の小さな窪地 に避難していた。申し訳程度に毛布とすぃーで壁を作り、外気を遮断しようとするが、 あちこちの隙間から、風が、そして雪が入り込んできた。 冬のブリザードとは比べ物にならないが、それでもゆっくりたちにとって、横殴りに 吹き付ける雪は脅威以外の何者でもなかった。 吹き付ける風と表面に付着した雪が体温を容赦なく奪っていく。 肥満した体のせいで防寒服がぴちぴちだったれいむは、はみ出た部分が凍傷になり、 感覚を失った。ありすはペンギンやトウゾクカモメとの戦いで防寒服に穴が何箇所 か空いてしまい、そこから凍傷が広がりつつあった。 そして、防寒服のない赤ゆたちは今にも永遠にゆっくりしてしまいそうだった。 「んん~!!!んんんん゛!!!」 舌を失ったれいむは、今にも死にそうな赤ゆをぺーろぺーろしてやることも出来ず、 ただ涙を流していた。 「おちびちゃん、しっかりしてね…ぺーろぺーろ…」 「まりさのいもうと、げんきになってね…ぺーろぺーろ…」 だが、まりさたちは、ぺーろぺーろすることで、赤ゆの表面に水分が付着し、それが 夜間の低温、吹き付ける風によって冷却され、赤ゆの体温を結果的に奪っていること など気がついていなかった。 その後方で、ありすはぐったりしていた。番と子供たちの死を目にしたことで、精神 的に追い詰められており、凍傷で感覚がなくなった背中と頬は、ありすに忍び寄る死 神の鎌のきらめきを予感させていた。 れいむは動きが鈍くなったもみあげで、なんとか防寒服から頬を出し、元気のない赤 ゆたちにすーりすーりをする。 しかし、れいむの頬も、赤ゆたちの表面も凍傷で堅くなり、ごりごりと表面が削れた だけだった。 「…ゆぴゃああ…いじゃいよ…みゃみゃいじゃいよ…すーりすーりはゆっぐりできじ ゃい…」 れいむはすーりすーりを止め、ただ涙を流した。 献身的に赤ゆの世話をしていた三匹だったが、夜が深まり、疲れきっていた三匹はい つのまにか眠りこけてしまった。 夜、ありすは一人、寝床を離れた。 もう長くはない。その体を蝕む凍傷の具合から自分が動けなくなるのはそう遠いこ とではないと認識していた。どうせもう、愛したちぇんも、我が子もいない。あり すはせめて誰の迷惑にもならずに永遠にゆっくりしようと考えていた。 「さようなら、まりさ、れいむ…生まれ変わったら…また一緒にみんなでゆっくり しましょう…」 ありすはつぶやくようにそう二匹の寝顔に語りかけると、冷たい体を必死に動かし て、雪の舞い散る氷原に消えていった。 後日、ありすの遺骸は、飼育員と行ったことのある思い出のクジラの死骸、氷原に 残る骨の楼閣の中で発見される。その顔はとてもゆっくりしていたという。 翌朝、雪は止んでいたが、二匹の赤ゆは永遠にゆっくりしていた。防寒服のない状 態で、ただでさえ脆弱な赤ゆが、悪天候の日に南極の夜を越せるわけがなかったの である。 「んんんんん゛~!!!」 れいむは声にならない声をあげて泣いた。 「おぢびじゃああああああん!!!」 「もっど!…ゆっぐりじで…ほじがった…!!!」 赤ゆだったものは、黒ずんだ氷の塊、餡子味のアイスキャンディーになっていた。 そして、ありすもいなくなっていた。 「がえりだいよおおおおお!!!ぽーかぽーかなゆっくりぷれいすにがえりたいよ ~!!!ゆああああああん゛!!!」 観測基地での何不自由ない生活を思い出して泣く、子まりさ。 その金髪はぼろぼろになり、凍傷になった部分の皮が崩れて十円ハゲが出来ていた。 「…今日こそ…おにいさんのゆっくりぷれいすに帰るよ…」 まりさは「ふぉるねうす」の冷たくなったグリップをあにゃるでそっと抱え込んだ。 冷たいかどうか、その感覚は分からなくなり始めていた。 れいむの「ぶーねい」にはれいむと子まりさが乗る。 二台のすぃーはもうどの方角にあるのかも分からない観測基地に向けて走り出した。 まりさはとりあえず高いところに行き、海の方角を知りたかった。海に出れば、観 測基地のだいたいの方向が分かるのではないかと考えていた。 二台のすぃーに乗ったゆっくりたちは必死に海の方角を探した。そして、地面への 注意はおろそかになった。 昨日は雪だったのだ。当然、新雪で覆われたヒドゥンクレバスの存在に気がつくべ きだった。 「ゆゆ゛!!?」 ヒドゥンクレバスに落ちたのはれいむと子まりさの乗った「ぶーねい」だった。 すぃーはそのまま静かに、数十メートルはある割れ目に落ちていき、しばらくして 派手な破壊音が聞こえてきた。 「れいぶうううううう゛!!!おじびぢゃああああん!!!」 急いで引き返すまりさ。 「んー!!!んー!!!」 まりさの目に映ったのは、必死に歯とおさげでクレバスに落ちないよう氷に食らい つく子まりさと、そのあんよに歯のほとんどなくなった口で食らいつくれいむの姿 だった。どう見ても、肥満体のれいむを支えるだけの頑丈さは、子まりさにはなく、 そのあんよにはれいむの数少ない歯が食い込み今にも引きちぎれそうになっていた。 「んんんんんん!!!」 涙目で助けを求める子まりさ。まりさは必死に子まりさの髪の毛に食らいつき、引 っ張りあげようとする。 びちびちびち… 「んんんんんんん!!?」 風雪でもろくなった髪の毛はあっさりと切れてしまい、なかなか子まりさを持ち上げ られない。いや、まりさには子まりさとれいむを一緒に持ち上げるだけの力はなかっ た。人間でもなければ、救助は不可能だったのである。 「んー!…んふー!…」 落ちまいと必死に食らいつくれいむ。 まりさは必死に考えた。どうやったら二人を助けられるのか、それとも、れいむを見 殺しにするべきなのか… まりさは今までのれいむの行動、あまりにも強い母性から一つの結論を導き出した。 「れいむ!!」 「んー!!んふー!!」 この間にも子まりさのあんよはみちみちと裂け始め、餡子の色が見え始めている。 「大丈夫!おちびちゃんたちはちゃんとゆっくりさせるから、れいむは心配しないで ゆっくりしてね。」 まりさは帽子の中から、雪で錆び付いたカッターを取り出すと、れいむに投げつけた。 かったーはれいむの頭に刺さり、そこから横に体を抉るようにして、クレバスに落下 していった。 「ほほひへっ!!?」 どうしてそんなことするの? そう言いたかったのだろうか? 子まりさから口を離したれいむは真っ逆さまにクレバスを落ちて行った。 れいむには信じられなかった。あんなに愛し合ったまりさが凶行に及んだことに。 子供が残っている以上、れいむは生きて子の面倒を見なければならないはずだった。 自分なしで子供たちがゆっくりできるわけがない。 だが、まりさにしてみれば、これはれいむが何を望んでいるか、考えての行動だっ た。れいむに対する愛情なんてものは、観測基地から人間がいなくなって間もなく 失ってしまったが、土壇場でれいむが見せた母性に心打たれ、ここまで子供たちの ために頑張ってきた。つらいけど、きっとれいむは分かってくれる。 まりさは子まりさを引き上げると、 「れいむ!ゆっくりしていってね!!」 もう一度クレバスの奥に消えたれいむに最後の挨拶をした。そして、まりさは子ま りさを乗せてすぃー「ふぉるねうす」を走らせた。 まりさが考えたれいむの最後の思いをかなえるため−子まりさがゆっくりできるよ うにするためには一刻も早く観測基地へ帰らなければならなかった。 一方、れいむはクレバスの奥に叩きつけられ、肥満していた体は見るも無残に四散 していた。お飾りも、目玉も、体もどこかへ行ってしまっていた。ただ、中枢餡が 機能を停止するには、少しだけ猶予があった。 れいむには分からなかった。おちびちゃんのために必死に生きてきた自分がなぜ、 今、冷たい氷の床の上で死に掛かっているのかを。 れいむは…ゆっくりしたかった…だけなのに… れいむは子供を守る、という点で無能ではなかったが、自身を省みることはなかっ た。そして、ここはほとんどの生物を拒絶する場所だった。 まりさはどこか軽くなった心ですぃーを走らせた。 後ろでは子まりさが裂けた傷口をぺーろぺーろしながら泣いている。 とても楽観できる状況ではなかったのに。 「ゆゆ!?」 そのとき、まりさは上空に見慣れたものを見つけた。 真っ赤な小型飛行機、かつて観測隊が撤収したときに使われた、観測船に搭載され ている軽輸送機だった。観測隊が帰ってきたのだ。 「ゆゆゆー!!!おにぃさああああああああああん!!!」 まりさはあにゃるを巧みに動かし、お尻をぷりぷりりんと動かしながらすぃーの速 度を上げる。 後方に乗っていた子まりさは無言で涙を流していた。それは嬉し涙だった。 「まりさだよおおおおおおおっ!!!まりさはここにいるよおおおおおっ!!!」 観測基地が見えてきた。 観測基地には一年ぶりに人間の姿があった。 そして見慣れた真っ赤な人間さんの空飛ぶすぃー−飛行機はもう目の前に。 目の前…? まりさは知らなかったが、そこは雪上飛行機の滑走路だった。 接岸した観測船から先行した雪上車隊が雪原を平らにして作った滑走路だった。 「ゆああああああ゛!!!どぼじでにんげんさんのすぃーがぶっ!!!」 まりさは雪上飛行機の着陸用スキーに潰されて死んだ。 まりさのすぃーは大破し、放り出された子まりさは顔面から雪に叩きつけられた。 子まりさが意識を失う前に見たのは、泣きながら走り寄って来る、あの飼育員の姿 だった。 後日談 飼育員の献身的な介護により、子まりさは回復した。 失った歯は差し歯を入れてもらった。れいむに噛み付かれたあんよは全快しなかっ たが、這って移動するくらいなら出来るようになった。 ゆっくりに基地内を無茶苦茶にされたことで、飼育員はこっぴどく怒られたが、そ もそも緊急事態だったこともあり、一人で大掃除をすることで赦しを得た。 そして、越冬後、飼育員は子まりさと共に赤い軽輸送機で基地を離れた。もう子ま りさは成体になっていた。 結局のところ、観測隊員たちの 「饅頭より新鮮な野菜が食いたい」 という意見によってゆっくりの食糧化計画は破棄され、その資金で野菜の室内栽培 が行われることになった。また、観測隊員の精神面のケアでは効果が見込めるとい うことで、少数のゆっくりを基地内で飼育することが提案された。 実際、何を、どれくらい飼うのかは、これから決まっていくだろう。 成体になったかつての子まりさは、飼育員の腕に抱かれながら、窓からの景色を眺 めていた。そこは、かつて、自分たちが必死に生きようとして、拒絶された真っ白 な大地だった。 まりさはその景色を美しいと思った。とてもゆっくりしていると思った。 誰もいないのに、みんな死んだのに、なんでこんなにゆっくりしているんだろう。 まりさはふと思った。 ひょっとして、誰もいないから、全て拒絶してしまうから、 この白い大地は美しく、とてもゆっくりしているのかもしれない。 完 神奈子さまの一信徒です。 雪降ってテンション高まって書いたんですが、思いのほか楽しんでくれた方がいた ようで嬉しかったです。南極の天候や生態系を調べるのに手間取り、遅くなりまし た。すみません。 また、的を得た助言や素敵な感想ありがとうございました。 仕事で忙しくなったため、感想を返すより先にこちらを書き上げました。 せっかくのコメントにお返事できなくてすみません。 ただ、皆さんの指摘や意見の中に後編に書こうと思っていたものや、使おうとした 小ネタ、これは別にいいかなと手を抜いた部分あってヒヤリとしました。 皆様の見識には頭が下がります。 でいぶネタに飽きていた方々にはゆっくりしていただけなかったようで、申し訳な いです。皆さんの感想やご助言を参考にし、どんなものを書いたら楽しいか考えな がら、また皆さんにお目にかかる機会を窺いたいと思います。 ありがとうございました。 挿絵:M1
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1295.html
一家は逃走する。 ルートは川原の草むらを、川沿いに下る。 このルートは他のゆっくりたちに察知されやすいかもしれないが、 他のルートは別の意味で危険すぎる。 人間さんだ。 川原の草むらを外れれば、すぐに道路に出る。 住宅地のど真ん中だ。 まりさと赤ありすが出会ったときのように、 別段人間さんの側にゆっくりに対する害意がなくとも、 人間さんはその存在だけで非常に危険なのだ。 まりさはそれなりに優秀で勝手を知ったゆっくりだが、 それでも危険なことに変わりはない。 まして、普段まりさがごちそうを探しに出向く早朝などの時間帯ではなく、 日中に子ゆっくり連れでは無謀すぎる。 ただ、人間さんのプレイスに入り込むルートを取れば、追手のゆっくりたちが 諦めるという可能性もある。 いざという時には、選択肢として考えるべきかもしれない。 だが、今は急いでプレイスから離れることだ。 早々に追手を引き離してしまえば、どのコースを選ぶかなど問題にならない。 「ゆ!まりさ、ゆっくりしないでいそぐよ!」 ゆっくりしない。 それは、ゆっくりにとって身を削られるような喪失感を伴う。 だが、おちびちゃんたちのため、幸せな未来のため、まりさはゆっくりしない。 ぴょーんぴょーん 子ゆっくりと赤ゆっくり、合計三匹を乗せているにしては随分な俊足だ。 だが、それでもスピードは確実に落ちるし、体力の消耗も激しい。 それでも、子ゆ赤ゆにぴょんぴょんさせたのではすぐに追いつかれてしまう。 まりさは必死だった。 追いつかれたら、終わりだ。 そう理解していた。 一家が無事に逃げ切るためには、追いつかれないこと以外にはない。 一対一ならコミュニティに所属するゆっくりで、 まりさに適うものなどそうそういはしない。 とは言え、複数のゆっくり相手ではそんなことは考えるだけ無駄だろう。 猛者ゆっくりであるからこそ、そのことをよく理解できた。 ひとたび追いつかれたならば、自分が囮になって姉妹を逃がすか、 先ほどの人間さんルートに飛び込むか。 二つに一つだ。 自分が囮になれば、姉妹だけは逃げ切れる可能性もある。 自分がどれだけ長く相手の注意を引き付けられるかが、勝負だ。 だが、このやり方では自分が助かる可能性は極めて低い。 一方の人間さんルートなら、追手ゆっくりが 人間さんのプレイスに入ることに恐れをなして追跡を断念する可能性もある。 だが、あの恐ろしい、巨大なすぃー! あれの恐ろしさはゆっくりの比ではない。 たとえ百匹のゆっくりでも勝てないのでは、と思わせられるあのすぃーが 迫ってきたら、抵抗するまもなく一家まとめてゆっくりだ。 なにしろ、信じられない猛スピードで突っ込んでくるのだ。 百戦錬磨のまりさでさえ、勝てる自信がない。 やはり、人間さんルートは奥の手だ。 最後の最後までとっておくのがいい。 そう決意し、ただひたすらに跳ね続ける。 そして、一時間ほども跳ね続けただろうか。 まりさは、力の続く限り跳ね続けた。 ゆっくりとしては、相当の距離を進んだ。 今のところ、追手の迫ってくる気配はない。 だが、お帽子の上に三匹のゆっくり。 流石に、辛い。 「ゆ、ゆ、ゆはー、ゆぜー・・・。」 息も荒くなる。 「むきゅ!?おとーさま、むりしないで・・・。」 「まりさ、じぶんでぴょんぴょんできるのじぇ!」 「ありちゅも!ありちゅもじぶんで、ぴょんぴょんすりゅわ!」 辛そうなまりさを気遣う姉妹。 まりさのおちびちゃんたちは、ほんとうにゆっくりしてるね。 まりさ、とってもゆっくりできるよ。 ・・・とは言え本当に子まりさや、赤ありすを自分で跳ねさせるわけにもいかない。 いや、子まりさならば、まりさの負担軽減のために 短時間なら自分で跳ねさせるというのも手かもしれない。 だが、子ぱちゅりーと赤ありすは論外。 遅々として進まないだろう。 このペースで駆け続ければ、無事に逃げ切れるかもしれない。 だが、流石に小休憩は取ったほうがいいかもしれない。 「ゆぅ・・・、ゆぅ・・・。 おちびちゃんたち、ちょっとだけゆっくりしようね・・・。」 立ち止まり、体を傾けおちびちゃんたちにお帽子から降りるよう促す。 「ゆぅ・・・、ゆぅ・・・。ゆふー・・・。」 やっと一息つけた。 ここまでは、順調だ。 一休みしたら、さらに川沿いに下っていこう。 まさか、追手ゆっくりたちも夜通し自分達を追ってはこないだろう。 一般的に言って、ゆっくりは夜行性ではない。 もう少しすれば、日が暮れてくる。 プレイスへ戻る時間を考えれば、夕暮れ時ぐらいまで見つからなければ、 追手ゆっくりたちも引き返さざるを得なくなる筈だ。 もう一がんばりだ。 新しいゆっくりプレイスでは、きっとおちびちゃんたちと幸せな毎日が待っている。 最初は、お家を建てたり狩場を開拓したりと苦労も多いかもしれない。 しかし、そこは自慢ではないが、 コミュニティでも優秀なまりさとして通っていた自分だ。 おちびちゃんたちを飢えさせたりなどはしない。 お家も、きっと立派なのを建てる。 その覚悟がある。 もう少しで、夢のような毎日が始まる。 まりさは、疲れもあってか少しばかり、気が抜けてしまった。 がさがさ 「にゃ!」 「だじぇぇ!?」 「むきゅー!?」 子ぱちゅりーと、子まありさが驚きの声をあげる。 そこで初めて、まりさも異常に気がつく。 近づいてくるゆっくりの気配を見落としてしまった。 こともあろうに、子まりさと子ぱちゅりーよりも、発見が遅れてしまった。 ゆ・・・。まりさ、ゆだんしちゃったよ・・・。 悔いたところで、既に遅い。 相手の先制を覚悟して身構える。 「みつけたんだよー!」 追ってはちぇん一匹だ。 ゆっくりのなかでも、俊足で知られるちぇん種。 おそらく、単独で先行してきたのだろう。 見つかってしまったのは、失策だが一匹だけならなんとでもなる。 しかし、追手ちぇんは、くるりと身を翻す。 「みつけたんだよー!みんなにしらせるんだよー!」 ぴょーんぴょーん そのまま跳ねていく。 「ゆ!?」 まずい。 てっきり一匹でも襲い掛かってくるとばかり思っていたが、思いのほか冷静だ。 向かってくるのならば、返り討ちにしてやることろだが、 すぐに仲間を呼びに行くとは! もしかすると、ぱちゅりー種あたりが入れ知恵したのかもしれない。 追うか。 駄目だ。 おちびちゃんたちを連れては、追いつけない。 おちびちゃんたちを置いていくのは危険すぎる。 「おちびちゃんたち、お帽子にのってね! ゆっくりしないでね!」 「むきゅ!!」 「だじぇ!!」 「ゆ・・ゆん!!」 子ゆっくりたちも大慌てでそれに従う。 ゆっくりしないでね、という強い語勢とまりさの緊張感が伝わっているのだろう。 「ゆっくりしないよ!いそぐよ!」 ぴょーんぴょーん まりさは、今まで以上に速度を速める。 だが、位置を把握されてしまった以上、追いつかれるのは時間の問題かもしれない。 何しろ、自分はおちびちゃんたちを乗せて跳ねている。 比較的身体能力が高めのまりさ、ちぇん、みょん、ありすといったゆっくりたちなら 他の種から先行してまりさに追いつくのも、それほど苦とはしないだろう。 やはり、いざとなったら、自分が囮になっておちびちゃんたちを逃がすしかなさそうだ。 だが、今は力の限りぴょーんぴょーんだ! まりさは、ひたすら力の限り跳ねた。 体力の配分など考えなかった。 そんな場合ではない。 すこしでも、遠くへ。 まりさは、跳ね続ける。 そして、ほんの暫く。 背後に気配を感じるようになった。 複数のゆっくりだ。 ゆゆゆゆ!? ・・・とうとうおいつかれちゃったね。 幸いまだ多少の距離はあるようだ。 まりさは、再びあんよを止め、おちびちゃんたちをお帽子から降ろす。 「ゆ!よくきいてね!このままじじゃ、まりさたちはにげきれないよ! だから、まりさがここにのこるよ!」 「むきゅ!?」 「だじぇ!?」 「ゆん!?」 口々に驚きの声をあげる。 まりさは、落ち着いて続ける。 「だいじょうぶだよ!おちびちゃんたちは、さきににげてね! まりさは、おってをひきつけるよ! まりさは、とってもあんよがはやいから、ひとりならかんたんににげきれるよ! おちびちゃんたちが、さきににげたら、まりさもすぐにおいつくからね!」 「ゆ、ゆわああぁぁ!すごいんだじぇ! おとーさんはてんさいなのじぇ!」 「おとーしゃんはすごいにょにぇ! でもきをちゅけてにぇ!けがしにゃいでにぇ!」 「むきゅう・・・。きをつけて・・・。」 子まりさと、赤ありすは素直に感心している。 それに比べ、子ぱちゅりーの顔色は優れない。 きっと、まりさの言葉が半分嘘なのを理解しているのだろう。 まりさとしては、嘘を言ったつもりはないが嘘になってしまうかもしれない。 だが、唯一つ、おちびちゃんたちを逃がすということだけは嘘にするつもりはない。 「もしもだよ! もしも、おちびちゃんたちが、ほかのゆっくりにおいつかれたら・・・。 そのときは、人間さんのプレイスにでてね。 人間さんのプレイスにでれば、ほかのゆっくりはおってこないよ。 でも、人間さんのプレイスはあぶないから、きをつけてね。 さいごのしゅだんだからね・・・。 それじゃ、はやくいってね! はやくいくんだよ!」 それだけ口早に伝えると、まりさはおちびちゃんたちに先を急がせる。 おちびちゃんたちが茂みの無効に消えたのを確認すると、それとは反対方向、 追手の方へと進む。 少し進んだ所で静かに待つ。 気配が近づいてくる。 見えてきた! 五匹といったところか。 しかし、ゆっくりとして平均的な認識力しかもたないまりさには『いっぱい』だ。 その『いっぱい』の追手の前に姿をさらけ出す。 「ちぇんのいったとおりだよー!飼いゆっくりのなかまなんだよー!」 「ゆ!ほんとうなのぜ!ゲスのかぞくのまりさなのぜ!」 「飼いゆっくりをかくまうゲスゆっくりはゆるさないちーんぽ!」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!ゆるさないんだよ!」 「んほおぉぉぉーーーー!!」 関係ないことを言っている連中もいるが、とにかく戦意は旺盛なようだ。 猶のこと、おちびちゃんたちの所へ行かせるわけにはいかない。 「ゆ!まりさをつかまえられると、ほんきでおもってるの! ばかなの?しぬの?」 「これだけのかずをあいてに、いいどきょうだみょん!」 「なまいきなんだぜ!まりささまが、せいっさいっしてやるんだぜ!」 まりさの挑発に頭に血を上らせる追手ゆっくりたち。(頭とはどこだろう) 「ゆっふーん!まりさが、つかまるわけないよ! くやしかったら、つかまえてみてね!」 そう言うと、おちびちゃんたちが逃げたのとは別の方向へと跳ねる。 追手ゆっくりたちは、陽動に引っ掛かってくれるだろうか? 「ゆがー!まつのぜ!」 「まってねー!ちぇんは、ゆるさないんだよー!」 「れいむは、かわいいんだよ!」 うまくいった。 追手ゆっくりたちは、みんなまりさを追い始めた。 できる限り、おちびちゃんたちのために時間を稼がなくては。 まりさは、少しずつ逃走方向をずらしていく。 基本的に逃走ルートも追跡ルートも川沿いに進むだけであるから、 うまく半円を描く奇跡で、プレイスへと帰還するルートへ誘い込んでやればいい。 そうすれば、おちびちゃんたちは安全に逃走することができる。 だが、流石は追手のなかでも先頭集団。 足の速いものが揃っている。 ここまで、子ゆっくりたちを運び続けたまりさの体力では、 どこまでやれるかわからない。 だが、やるしかない。 と、いつのまにか、追手たちの集団から例のちぇんが飛び出してきて、 自分と並ぼうとしている。 「おそいよー!くちほどにもないんだねー!」 普段ならこの程度で追いつかれたりはしない。 やはり、疲労の蓄積で相当あんよが鈍っている。 「くらってねー!」 ちぇんが、体当たりを仕掛けてくる。 「ゆ!あまいよ!」 瞬間、速度を落とすことでちぇんをやり過ごす。 まりさを追い越し、背後を見せる形となったちぇんに対して、渾身の体当たり。 「ぎにゃーー!!?」ごろごろごろ あさっての方へと転がっていく。 やったよ! けれど、今のやり取りで、後続との差は更に縮まった。 意外なことに、次に追いついてきたのはれいむだ。 「にがさないよ!れいむはまりさのかたきをうつんだよ!」 ゆゆ!? まりさのかたき!? おそらく、このれいむの番は飼いゆっくりの餌食となったのだろう。 先ほどのしんぐるまざー発言もここからきているのだろうが、 「そんなのまりさたちには、かんけいないでしょーーー!!!」 ばすん 黙ってきいてれば、みんな飼いゆっくりがどーこー言ってるが、 実際のところ、まりさたちには何にも関係ないよ、ぷんぷん! そんな、これまでの怒りも併せて、まりさの体当たりが火を噴く。 「れいむは、しんぐるまざーなんだよ!」 どっすーん 「ゆぴゃ!?」 ころころ なんと、百戦錬磨のまりさがあっさりとはじき返されてしまった。 どうやら、このれいむ、ただのれいむかと思いきや、でいぶだったようだ。 まりさはなんとか体勢を立て直す。 幸い怪我は大したことがないようだ。 だが、追手ゆっくりたちに追いつかれてしまった。 追手でいぶが、近づいてくる。 流石に、でいぶが相手では真っ当な力比べでは勝ち目はない。 ならば・・・。 「ゆっくりしんでね!」 「ゆん!」ざくっ 「ゆわあーーーー!!いじゃいぃぃーーー!! かわいいれいむのおかおがー!」 まりさは、お帽子のなかに隠し持っていた木の枝で、でいぶを切り裂いた。 「ゆ!まりさは、ほんきだよ!かかってくるなら、ようしゃはしないよ!」 「ゆ・・・。」 「にゃー・・・。」 切れ味するどい木の枝と、それを構えるまりさの勇姿。 裂帛の気合に戻ってきたちぇんやでいぶが及び腰になる。 威嚇が成功したかと思われたが、追手の中からみょんとまりさが一匹ずつ進み出る。 二匹とも、まりさと同様鋭い木の枝をくわえている。 「ゆっへっへ!なかなかやるようなのぜ! でもしょせんはたぜいにぶぜいなのぜ! かこめばこっちのもんなのぜ!」 「そうだみょん!けんじゅつなら、みょんがまけるわけないみょん! おそるるにたらないちーんぽ!」 「わかるよー!あいてはひとりなんだねー!」 「ぐぎぎぎぎぎ!!よくもかわいいれいむをおこらせたね! しゃざいとばいしょうをようきゅうするよ!」 「んほおおおおおおお!!」 追手まりさとみょんの言葉に勢いを取り戻す。 特にあのでいぶの傷はそう浅くはないはずだが、ぴんぴんしている。 流石は、でいぶといったところか。 「ゆゆぅ・・・。」 囲まれてしまった。 「まりさのこうげきをくらうのぜ!」 まりさの死角に位置取りした、追手まりさが突っ込んでくる。 辛くもその攻撃をやり過ごす、と、 「くらうみょーーん!」 びゅっ 追手まりさの攻撃に続いて、みょんが攻撃を仕掛けてくる。 これも回避に成功した。 だが、ぎりぎりだ。 「んほおおおおおおお!!」 れいぱーが突っ込んでくる。 「ゆゆー!?」 ばすん ころころ 体当たりを避けきれず、その勢いで、ころころと転がるまりさ。 ダメージはそれほどではないが、ねっちょりしていてなんか気持ち悪い。 流石、れいぱー。 このままじゃ、やられちゃうよ・・・。 どうにかしないと・・・。 転がったまりさを、再び包囲しようと近づいてくる追手ゆっくりたち。 まりさは、挽回の一手を求め、周囲に目を走らせる。 手頃な大きさのいしさんに、目が留まる。 ゆゆ!きんだんのあのてがあったよ! 急いで、いしさんを口に含むまりさ。 近づいてくるゆっくりたち。 まりさは大きく膨れると、先頭の追手まりさ目掛けていしさんを吐き出す。 追手まりさの目に食い込むいしさん。 「ゆぎゃああああああ!!!?まりささまのおめめがーーーーーー!?」 のた打ち回る追手まりさ。 「ん、んほおお!???」 「ま、まりさー!?わからないんだよーー!!!?」 追手の動揺に付け込んで、木の枝をくわえ突撃する。 「にゃ、にゃにゃ!???ちぇんのほうにこないでねーー!!」どすん 体ごとちぇんにぶつかっていくまりさ。 「にゃ゛にゃ゛にゃ゛にゃ゛!????」 見事に追手ちぇんの体のど真ん中に突き刺さる、木の枝。 追手ちぇんは、痙攣をおこしてすぐに動かなくなる。 やったよ・・・。まずは一人だね・・・。 同属を殺めたとあれば、心晴れやかとはいかない。 だが、黙って殺されてやるほど、まりさも甘くない。 なんと言っても、厳しい野良として生きているのだ。 「まりささまのおべべがああああああああ!!!」 追手まりさは、先ほどから、物凄い叫び声をあげ続けている。 とりあえず、こちらも戦闘不能のようだ。 「まだやるの!まりさ、もうてかげんしないよ!ぷくーーーー!!」 更に威嚇。 「んほおおおお・・・。」 「でいぶはしんぐるまざーなんだよ・・・。」 「まだだみょーーーん!!」 みょんが突進してくる。 回避しきれない。 みょんへと、体の向きを変えたところで衝突する。 目の前が真っ白になる。 だが、それも一瞬のこと。 木の枝を構え直し、 「びゅ?」 おかしい、木の枝をくわえていない? いや、だが木の枝は口元にある。 だが、短い。 それに、まりさの声もおかしい。 「びゅげげげげげげ!?」 どうしたというのだろう。 声が出ない。 出てくるのは、潰れたような呻きばかりだ。 体の奥の餡子さんが痛い。 必死で自分の口元に視線をやる。 木の枝は折れてはいないようだ。 だが、やはり短い。 良く見れば木の枝は、自分が口にくわえているわけでもないのに、 口元から落ちもしない。 どういうわけだ。 とりあえずは、包囲を抜けよう。 ずーりずーり 「ゆびゃびゃ!?」 いたい。 それに、自分はぴょんぴょんしようとしたのだ。 ずーりずーりではない。 あんよを痛めてしまったのだろうか。 いや、痛いのはあんよではない。 寧ろ口元から、体の奥、そして更に突き抜けて体の反対側、後頭部までだ。 まさか。 まさかまさか。 嫌な想像が餡子脳に閃く。 そして、混乱したまりさは気づかなかったが、 まりさのすぐ傍には息絶えたみょんが転がっていた。 体の中央に木の枝が刺さっている。。 まりさとの衝突時に、深々と刺さった木の枝が中枢餡を貫いたのだ。 そしてみょんの木の枝は、まりさに刺さった。 まりさの口元の木の枝は、まりさのものではなく、みょんの木の枝が刺さったものだ。 まりさは当たり所がよく、即死は免れた。 だが、大きなダメージを負ってしまったのは確かだ。 もし、木の枝が刺さったまま、さらにずれれば中枢餡を傷つけ、 永遠にゆっくりしてしまうかもしれない。 それほどの傷だ。 だが、それ以前にまりさの危機は目の前に迫っていた。 「ゆぷぷぷぷ!いいざまだね! かわいいれいむをいじめたばつだよ!」 「んほおおおお!!」 でいぶと、れいぱーが残っていた! まりさが、串刺しになり抵抗もないとみるや、素早く距離をつめてくる。 「ぎゅんびゃああああああ!!!?」 紛れもない恐怖の悲鳴を上げるまりさ。 木の枝に串刺しになったのみならず、でいぶとれいぱーという、 忌避すべき輩が自分目掛けて襲い掛かってくる。 もはや、自分に抵抗する力がないことは、理解できていた。 自分がこのあと、どうなるのかも。 のしっ 「ばべでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 背後から凄い力で、圧し掛かられ、押さえつけられてしまう。 「んほおおおおおおおお!!しまるわーーーー!!」 「ぶびげええええええええ!!」 普段の勇敢なまりさからは想像もつかない、悲痛な泣き声。 ぱんぱん、ぬちょぬちょ ぱんぱん、ぬちょぬちょ 「んほおおおおおおお!!もりあがってきたわぁぁぁぁぁぁ!!!」 「びびゃがああああ!!!!ばらじでえええええ!!! ばがびゃんでびぢゃぶううううううう!!!!」 泣き叫ぶまりさ。 もう陰惨以外に言葉がない。 「すっきりー!」 「びゅっびりー!」 そして、同時声をあげる二匹。 まりさの頭上に一本の茎が生えてくる。 まりさからは見えないが、小さい数体の実ゆっくりが生っているはずだ。 まりさ、犯されちゃったよ・・・。 れいぽぉされて、赤ちゃんできちゃったよ・・・。 ざくっ 「びゅう!?」 そんな悲痛な思いに沈む間もなく、まりさに衝撃が走る。 「ゆふふ!かわいいれいむのかおに、きずをつけてくれたおれいだよ!」 でいぶが木の枝をくわえ、まりさに傷をつけたのだ。 だが、傷は深くない。 手加減されているのだ。 無論、慈悲などではない。 甚振るつもりだ。 ざくっ ざくっ ざくっ 滅多矢鱈に木の枝でまりさに切りつけるでいぶ。 「ゆびぎゅうううううううう!!!」 あまりの苦痛に悲鳴を上げる。 と、 「んほおおおおおお!!だい2らうんどよおおおおお!! えんりょしなくていいのよおおおお!!!」 ぱんぱん、ぬちょぬちょ ぱんぱん、ねちょねちょ 「ぎゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ!!!」 「ゆぷぷぷぷぷぷ!こっちもえんりょしないでね!」 ずぶっ 「ぐぎゃああああああああああ!!!」 そして、少し離れたところでは、 「まりささまのおめめがーーー!!おめめがみえないいいい!!!」 ゆっくりたちは大騒ぎを続けて、とんでもない騒音を周囲に撒き散らしていた。 れいぱーと、でいぶの饗宴はいつ果てるともなく続いた。 続くと思われた。 が、唐突にそれは終わりを告げる。 ぐちゃり つい、たった今まででいぶがいた場所に、巨大な何かが生えている。 いや、巨大な何かがでいぶを踏み潰したのだ。 巨大な何かを見上げる。 人間さんだ! 何故? ここは人間さんのプレイスではない。 川原だ。 ゆっくりプレイスではないが、ゆっくり以外はほとんど訪れることのない場所だ。 なのに、何故人間さんが現れ、しかもゆっくり殺しをしているのか。 まりさの知る限り、わざわざ川原にまできてゆっくりを殺していく人間さんなどいない。 「ん、んほ!?」 驚愕にすっきりの途中だというのに動きを止めるれいぱー。 巨大なあんよを持ち上げる人間さん。 「んほおおおおおおおおおおお!?????????」ぶちゃ れいぱーが潰される。 まりさの目の前で。 次は自分の番だ。 恐怖のあまり、身動きどころか、呻きさえ漏らすこともできず死を待つ、まりさ。 が、 「いじゃいいいいいぃいいいいい!!いじゃいのぜえええええええ!!!! まりささまのおめめが!きれいなおめめがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 延々と大騒ぎを続ける追手まりさの方へと向き直る人間さん。 そして、 ぐちゃり 静かになった。 ほんの少し前までの喧騒が嘘のように静まり返る。 人間さんが、脚を振っている。 靴についた餡子を落としているようだ。 ゆ!? もしかして・・・・! 自分を助けてくれた!? この人間さんは自分を助けてくれたのだろうか!? 「にん・・・げ・・・じゃ・・・。ゆっぐ・・・じ・・・ありが・・・・。」 人間さんが、まりさの絞り出すようなお礼の声に気づき振り向く。 ぐちゃり 汚い物を踏んだとばかり、 靴の裏にこびり付いた餡子やカスタードを地面に擦り付け落とす人間さん。 そしてそのまま去っていく。 姉妹は歩みを止めず、逃走を続けていた。 まりさの言いつけの通り、川原を川沿いに下っている。 とはいえ、子ゆっくりのあんよではさほどの距離は進めない。 まして、身体能力の低いぱちゅりー種と、赤ゆっくりが一緒では尚更だ。 ともすれば、遅れがちになる二人のために、 比較的体力に余裕のある子まりさが殿を引き受け、二人を励ましつつ先に進んでいた。 別れた直後はそれほど不安でもなかったが、姉妹だけで逃走していると どうしても不安が頭をもたげてくる。 特に赤ありすは、しばらくすると改めてまりさのことが心配になったらしく、 おとーしゃんだいじょうぶかちら、と何度も口にしていた。 そのたびに子ぱちゅりーと子まりさが、おとーさんならだいじょうぶ、 と安心させてやらなければならなかった。 不安と疲労との戦いではあったものの、しばらくは何事もなく逃走を続けた姉妹だが、 「ゆゆ!?」 ふと違和感に気づいた子まりさは、立ち止まると周囲へと注意を傾けた。 がさごそ、がさごそ ぴょーん、ぴょーん 背後から草を掻き分けてくる音と、ゆっくりが跳ねるとき特有の物音が聞こえてくる。 自分の気のせいだろうか。 だんだんと近づいてくるように思える。 それも一匹ではない。 どうやら複数のゆっくりが近づきつつあるらしい。 子まりさは考える。 おとーさんは姉妹のために、一人残った。 ぱちぇおねーちゃんは、体が弱い。 ありすはまだ赤ちゃん、論外だ。 いざと言う時は、人間さんのプレイスに逃げ込めといっていた。 だが、それも危険な手だとも言っていた。 最後の手段だよ、と。 だが、まだ自分がいる。 体の弱い姉妹二匹のために、自分にはやれることがある。 ならば、自分がやるしかない。 あの偉大なおとーさんと同じまりさ種である自分が。 「ぱちぇおねーちゃんとありすは、はやくにげるんだじぇ! まりさもすぐにおいつくんだじぇ!」 「むきゅう・・・。」 「ゆぴぃぃぃぃ!いやぢゃあぁぁぁぁぁ! おねーちゃぁぁぁん!いきゃないぢぇぇぇぇぇぇ!」 躊躇う子ぱちゅりー。 泣き叫ぶ赤ありす。 「だいじょうぶなのじぇ、ありす! おねーちゃん!いもーとをたのんだのじぇ!」 そう言って、二匹に背を向ける子まりさ。 いもーとをたのむ。 その言葉にはっとなる子ぱちゅりー。 まりさの言わんとするところを理解したのだろう。 「むっきゅん!いくわよ、ありす!」 「いやぢゃ、いやぢゃぁぁぁぁ!」 赤ありすは、子まりさに追いすがろうとする。 ぱしっ 「ゆっ!?」 子ぱちゅりーが赤ありすに軽く体当たりする。 赤ありすは、驚いて目を見開き、思わず動きを止める 「むきゅー!いいかげんになさい! ありすが泣いてると、まりさだってゆっくりできないわ! いそいでにげるのよ!」 「ゆっぐ・・・、ゆぅぅぅ・・・。ゆっくちりかいしちゃわ・・・。 おねーちゃん、かえってきちぇね!やくちょくよ!」 「ゆ!やくそくなのじぇ!またみんなでゆっくりするのじぇ!」 背を向けたまま答える子まりさ。 そのまま、二匹と距離をとり、追手の声が聞こえる方へと向かう。 しばらく進むと、追手と思しき、まりさとれいむの姿が見えた。 周囲には他のゆっくりの気配はない。 どうやらこの二匹だけが先行してきているようだ。 「子ゆっくりどもはこっちにむかったはずなのぜ! はやくみつけるのぜ!」 「あまあま、たのしみだね!れいむがおいしくおりょうりするよ!」 「ゆっへっへ!れいむのりょうりはてんかいっぴんのんだぜ! いまからたのしみなのぜ!」 あまあま? おりょうり? 何のことだろうか。二匹の追手の話の内容は良く分からない。 しかし、大事なのはこの二匹の向かう先だ。 この二匹は先に逃げた姉妹の方へと向かっている。 予想したとおり、このままでは身体能力の低い姉妹たちは逃げ切れないだろう。 やはり自分が覚悟を決めるしかない。 子まりさは追手とある程度の距離を保ったまま、タイミングを計り姿を現した。 「ゆ!まりさはここなのじぇ!つかまえてみるのじぇ!」 偉大なおとーさん譲りの俊足を今こそ見せるときだ。 恐怖は勿論あるが、気分が高揚してくるのをとめられるものでもない。 いかに大人ゆっくりとはいえ、そうそうこの自分が遅れをとるものか。 そして追いかけっこを初めて数分。 「はひぇ、はひぇ・・・。」ぜーはー、ぜーは 追手もなかなかの俊足だ。 だが、負けてなるものか。 なかなか距離が離れない。 ならば我慢比べだ。 「はひぇ、はひぇ・・・・。」ぜーは、ぜーはー 相手はすぐに音を上げるに決まっている。 自分に追いつけるものか。 「はひぇ、はひぇ・・・。」ぜーはー、ぜーはー そう思っていたのに、そう思った結果が・・・、 「konozamaなんだじぇ・・・。」 だじぇ、だじぇ言いながら元気良く逃げ回っていたのも最初のうちだけ。 すぐに息が切れてきて、はひぇーはひぇーな様になった。 相手は別段無理をするでもなく、淡々と子まりさの少し後を着いてきている。 このままでは逃げ切れない。 いつか追いつかれる。 その焦りから、子まりさは周囲への警戒を怠る。 目の前に突き出た鋭い枝と、その先に三十センチほどの高低差が できていることに気づかない。 ザクッ ぼすん、ごろごろ 「ゆぴぃぃぃぃぃ!!!」 鋭い痛みと続く鈍い痛みに、子まりさは思わず悲鳴を上げる。 木の枝に速度を落とさぬまま突っ込み、皮を切り裂かれてしまった。 そして、そのままの勢いで三十センチの高さから落下し、転がった。 木の枝で裂いたのだろう頬と、落ちたときに石にでもぶつかったのか まりさのあんよも破け、餡子さんが漏れ出している。 「ゆぴぴぴぴぴ!!?まりさの餡子さん、とまるのじぇ!」 いたい、いたい 早く先に進まなければいけないのに。 姉妹を逃がして、そのあと自分もにげきらなければいけないのに。 まりさのあんよさん、はやくうごくのじぇ! 傷ついたあんよはどれだけ必死に動かしても、ずーりずーりがやっとだ。 しかも動くほどに、微量だが餡子が漏れていく。 子まりさはまだ気付いていないが、傷自体も動くほどに少しずつ大きくなっている。 ずーりずーり、ずーりずーり がさごそ、がさごそ ずーりずーり、ずーりずーり がさがさ、ごそごそ 子まりさは痛みを無視して必死にあんよを動かす。 しかし、遅々として先に進まない。 それに比べて、後ろから聞こえる物音はどんどん近づいている。 ずーりずーり、ずーりずーり がさごそ、がさごそ・・・「みつけたんだぜ!」 「ゆぅぅぅぅぅぅ!」 追いつかれた。 見つかってしまった。 あんよがいたい。 逃げ切れない。 「まりさはつよいのじぇ!いまならみのがしてやるのじぇ!」 精一杯の虚勢を張り、威嚇を試みる。 上手くいけば、戦わず相手を追い払える。 が、 「ゆっへっへ!まずはあんよなのぜ!」がぶっ 「まりちゃのあんよがーー!?」 相手は子まりさ如きの威嚇など意に介さない。 追手まりさの一噛みで、子まりさの底部の四分の一ほどの皮が噛み千切られた。 あんよ四分の一の損傷ならすぐに死に至ることもない。 しかし、これだけのケガを負ってはずーりずーりすらまともにできない。 まして、この二匹から逃げ切ることはもう不可能だろう。 続いてれいむが近づいてくる。 恐怖と痛みに半ば反射的に、再びの威嚇を試みる。 今度はぷくーだ。 「なにするのじぇ!?やめるのじぇ!まりさ、ほんきでおこるよ!ぷくー!」 しかし、追手のまりさとれいむは、そんな子まりさを全く相手にしない。 「これでもうにげられないね!ごくろうさま、まりさ! おりょうりはれいむにまかせてね!」 「れいむはりょうりめいじんなんだぜ!たのしみなんだぜ!」 「ゆふふふ!てれちゃうよ!ほんとうのこといわないでね! それじゃ、おりょうりかいしだよ!りょうりはあいじょうなんだよ!」 追手まりさと追手れいむが何を言っているのか理解できない。 りょうり? 一体何を料理するというのか。 理解はできないが、なにやら不吉なものを感じる。 「な、なにをするきなのじぇ・・・。」 気丈に振舞おうと努めるが、怯えが隠せない子まりさ。 声が震える。 ふと気づくと追手れいむが、先の鋭い木の枝をくわえている。 そして、それを子まりさ目掛けて振るう。 さくっ 「ゆぴいぃぃぃぃ!?いたいのじぇ!やめるのじぇ!」 さくっ さくっ 「ゆ!?ゆびぃぃぃぃぃ!!」 さくっ さくっ さくっ 「ゆっ!?ゆっ!?いちゃい、いちゃい、いちゃいぃぃぃぃぃ!!!」 追手れいむは子まりさを浅く、何度も切りつける。 その傷口は、皮が僅かに裂ける程度で、ほとんど出餡しない。 つまり苦痛を与えはするが、命を脅かすことのない傷だ。 子まりさが、苦痛とショックで痙攣を起こしかけるまで続ける。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 しかし、ショック死などさせない。 『りょうりめいじん』のれいむは、ギリギリの所を見極め一旦りょうりの手を休める。 「ゆぴー、ゆぴー・・・。ゆぅぅぅぅ・・・。」 子まりさが落ち着くのを待って、次の手順に移る。 「それにしても、このちびまりさ、きたないお帽子だね! まりさとはおおちがいだね!」 「まったくなんだぜ!おなじまりさとしてはずかしいんだぜ!」 「「ゆぷぷぷぷぷ!」」 二匹で子まりさを口々に罵倒し始める。 なかでも、ゆっくりにとっては個体認識などに極めて重要なお飾り、 この場合はお帽子について集中的に罵倒する。 「ゆ!?ゆゆゆゆ!?まりさのお帽子をわるくいわないでね! まりさのお帽子はとってもゆっくりできるんだじぇ!」 「ゆっぷー!!そんなきたない汚帽子がゆっくりできるの!? まったくかたはらいたいよ!しょうしな!だよ!」 「やっぱりきたない汚ちびまりさの汚帽子はゆっくりできないんだぜ! うんうんのにおいがするのぜ!」 「ゆびぃぃぃぃぃ!!やめるんだじぇ!まりさほんきでおこるのじぇぇぇぇ!」 度重なる侮辱に、痛みも忘れ怒り心頭の子まりさ。 しかし、二匹の追手はそんな子まりさの怒りもさらりと無視すると。 おりょうりの最終段階へと進む。 「こんなきたないお帽子はめざわりだね!わいせつぶつちんれつざいだね! れいむがしょぶんしてあげるよ!」 ぐいっ 言うや否や、追手れいむは子まりさに近づくと、 そのお帽子を口にくわえ剥ぎ取ってしまった。 「ゆんやー!!?まりちゃのお帽子さんかえすのじぇ! お帽子さんがないとゆっくりできないのじぇぇぇ!!!!」 子まりさはほとんど身動きが取れない。 そんな体でも、追手れいむの方へと這いずっていく。 その体からは少しずつだが、餡子が漏れる。 「ゆゆゆゆゆ!そんなにだいじなお帽子ならはやくとりかえしにきてね! はやくしないと・・・!」 びりっ 「ゆびゃああああああああ!!!」 追手れいむが子まりさのお帽子を少しだけ破いてみせる。 子まりさは狂ったように叫び始める。 じたばたと無意味に体を動かし、そのせいで出餡も増加する。 「ゆんやー!ゆんやー!かえすのじぇ!かえすのじぇぇぇぇ!!」 「おお、ぶざま!ぶざま!」 「くそちびがいいざまなのぜ!」 びりっ びりっ 「まりちゃのおぼーし!ゆっくりできるおぼーししゃんがああぁぁぁ!!」 びりっ びりっ 「ゆわーー!!もうやめるのじぇ! はやくぺーろぺーろしないとまりちゃのおぼーちなおらないのじぇ!」 ペーろペーろしたところでお帽子が治る訳もないが、 一刻も早くお帽子の元にたどり着こうと必死の子まりさ。 びりびりびりびりびり 「ゆ・・・!?ゆわあああああああああああああああ!!!???」 とうとう子まりさの目の前でただの布切れに姿を変えるお帽子。 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ・・・。 ゆわあああああ!?なんでなのじぇ! なんでおぼーちしゃん、なおらないのじぇぇぇぇぇ!!!???」 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ!はやくなおるのじぇ!? まりちゃのすてきなおぼーちしゃん!なおるのじぇ!」 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ・・・。」 一向に治らないお帽子をぺーろぺーろし続ける子まりさ。 「ゆゆゆ!?なんだかゆっくりできないこがいるよ!」 「ほんとうなんだぜ!おかざりなしのゆっくりできないゆっくりなのぜ!」 さも、今気づきましたと言わんばかりのわざとらしい態度の二匹。 しかし、子まりさはこれまで以上に動揺が激しい。 ゆっくりできない。 おかざりなし。 ゆっくりとしてのアイデンティティに関わる言葉だ。 既に異常な心理状態の子まりさが、更なる動揺を誘われたとしても無理はない。 「きもちわるいね!きっとおやにすてられたんだよ!」 「ちがうんだぜ! きっとこのおちびのかぞくもゆっくりできない連中なんだぜ!」 「ゆぴぃぃぃぃ!まりちゃはゆっくりできないゆっくりじゃないいぃぃ! ゆっくりしないであやまるのじぇ!」 「ゆぷぷぷぷ!この汚まんじゅうなにかいってるよ!」 「お帽子なしのくせにうるさいのぜ!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」 とうとう精神的なショックから再度の痙攣に突入しかける子まりさ。 「ゆゆーん?そろそろいいね!あじみするよ!」 ぱくっ 「ゆぴっ!?」 小さく子まりさを齧る追手れいむ。 「ゆゆーん!おいしいよ!おりょうりかんせいだよ!」 「やったのぜ!まりさもあじみなのぜ!」 ぱくっ 「ゆぴいいいいいい!?いちゃいぃぃぃぃぃぃ!!」 むーしゃむーしゃ 「いいおあじなのぜ!さすがはまりさのれいむなのぜ!」 「ゆふふふふ!てれるよ! ゆん!それじゃ、ひさしぶりのごちそうだよ!いっしょにたべようね!」 「そうするのぜ!」 「「ゆっくりいただきます!!」」 一体何なのだ、この二匹は。 おりょうり? どうやら自分のことらしい。 それよりさっきこの二匹は自分のことを食べた。 そう、少しだけだが、確かに自分の体を食べたのだ。 ガタガタ ガタガタ 子まりさは今更体の震えが止まらない。 この二匹が自分に何をするつもりなのか、ようやく理解できた。 こいつらは自分を喰らうつもりなのだ。 どういうつもりかは知らないが、わざわざ自分を痛めつけた上で 生きたまま喰らうつもりだ。 ガタガタ ガタガタ 先ほどは、僅かに齧られただけだ。 齧られた場所も体の表面だ。 だが、この先はどうだろう。 自分の体を喰らうということは、自分のおめめや残ったあんよ、 なにより体の内にあって命の源である餡子さんまで食らうつもりではないのか。 ガタガタ ガタガタ 人間で言うところの内蔵や筋肉に当たるゆっくりの餡子。 それを生きたままにして貪られる。 餡子脳の子まりさにもこれから自分の身に起こること。 その苦痛と、恐怖がやっと理解された。 「ゆぴぴぴぴぴ!!おとーしゃ?おかーしゃ?ぱちゅりーおねーちゃ?ありちゅ? みんなどこなのじぇぇぇぇぇぇーーーー!!?」 ずーりずーり 「たすけてほしいのじぇ!まりちゃはここなのじぇぇぇぇーーー!!」 すーりずーり 痛めた体で無理に体を動かす。 ぽろぽろと餡子がこぼれる。 「ゆぅぅぅ!?もったいないよ! せっかくの餡子さんがもれちゃうでしょ!ぷんぷん!」 「まったく、しょうがないのぜ!」 がぶり 「ゆぎいいいいいいい!!!?」 追手まりさは更に子まりさのあんよを噛み千切る。 子まりさの底面は、ほぼ餡子が剥き出しでうねうねと不気味に蠢くものの、 最早僅かたりとも先に進むことはない。 「これでいいのぜ!こんどこそ、ゆっくりごちそうをあじわうのぜ!」 むーしゃむーしゃ ぺーろぺーろ がーつがーつ 旺盛なゆっくりの食欲の前に小さくなっていく子まりさの体。 叫ぶ子まりさ。 「やめるのじぇ!?やめるのじぇ!?まりしゃをたべないでほしいのじぇ! ゆぴぴぴぴ!!!そんなとこかじらないでほしいのじぇぇぇぇ!!!!!」 弱弱しく、途切れ途切れになっていく声。 「やめるのじぇ!!まりしゃの餡子しゃんたべないでほしいのじぇ!? いのちの餡子しゃん・・・。まりしゃ、の、・・・・。」 「ゆっふー!あまあまさんおいしかったね、まりさ!」 「ほんとうだぜ!こんなときぐらいしか、あまあまさんはたべられないのぜ! まりさたちはうんがいいのぜ!」 「あとのおちびはどうするの?」 「ゆあーん?まりさは、おなかいっぱいなのぜ! きょうのところはかえるんだぜ!」 「ゆっゆゆーん!そうだね!はらはちぶんめだね!さすがまりさだよ!」 「「ゆっくりごちそうさまっ(なのぜ)!!」」 ぴょーん ぴょーん 追手ゆっくりが去った後にはお帽子の残骸の黒い布以外は何も残されていない。 一方の子ぱちゅりーと赤ありす。 子まりさと別れた後も必死の逃走を続けてはいるものの、 歩みの遅さは変わらない。 「むきゅー、むきゅー・・・。」 「ゆはー、ゆはー・・・。」 二人とも無言で跳ね続ける。 「ゆっ!?」 ごろんごろん 赤ありすが石ころに躓いて転がる。 「ゆ・・・、ゆぴぇぇぇぇぇぇん!」 痛みに泣き出す赤ありす。 「むきゅん・・・。」 本来なら、赤ありすを宥めるなり叱咤するなりして先を急がせるべき 姉の子ぱちゅりーも精も根も尽き果てていた。 「むきゅ・・・。すーりすーり・・・。ゆっくりしていってね・・・。」 「ゆ!?・・・ゆっくりしちぇいってにぇ・・・。」 なんとかすーりすーりをしてやるので限界だ。 「・・・・。」 「・・・・。」 そのまましばらく、二匹は無言のままじっとしていた。 体力が尽きているのだ。 もう先に進めない。 それに。 おとーさんは無事だろうか。 姉妹のまりさは無事だろうか。 こうしている間にも二人が自分達に追いついてこないだろうか。 二人のことが心配でならない。 不安で不安で仕方がない。 だが、何もできない。 「むきゅ・・・。先にすすみましょうか・・・。」 「ゆ・・・。」 ずーりずーり ずーりずーり それこそ、ナメクジが這うような速度で先に進む。 少し行っては立ち止まる。 その繰り返し。 まわりは本格的に暗くなり始める。 暗くなれば、追手たちも諦めてまりさと、子まりさも戻ってくるかも知れない。 子ぱちゅりーは、自分を誤魔化してそう言い聞かせる。 そうしないと、不安で泣き叫び出しそうになる。 だが、今となっては赤ありすの面倒を見られるのは自分だけだ。 姉としてできる限りのことをしなければ。 無言のまま進む二匹。 稀に子ぱちゅりーから、赤ありすへの短い激励があるだけだ。 少し離れた道路のほうから、物音が聞こえてくる以外は、 しんと静まり返ったなかを二匹は進む。 不意に歩みを止める二匹。 それまでの静寂を破って川原から物音が聞こえる。 自分達の後方。 ゆっくりプレイス側から近づいてくる。 もしかしたら、まりさと、子まりさだろうか! 耳を済ませる。 違う! 物音の数はもっと多い。 おそらく大勢のゆっくりが近づいているのだ。 間違いない。 追手ゆっくりだ。 「むきゅ!ありす、いそぐわよ!」 急いだところで、自分達が逃げ切れるとは思えない。 「ゆん!わかっちゃわ、ぱちぇおねーちゃん!」 おとーさまは、なんと言っていただろうか。 疲労で鈍った餡子脳で考える。 そうだ、人間さんのプレイスに出ろと言っていた。 人間さんのプレイスは危険だ。 しかし、だからこそ追手も人間さんを恐れて、立ち去るかもしれない。 賭けるしかなさそうだ。 「ありす、川原をでるわ。人間さんのプレイスにいくのよ!」 「ゆゆ!?ぢぇも、あっちは・・・。」 赤ありすは、まりさと出会った時に 人間さんのプレイスでさんざん怖い思いをしている。 ショックで死に掛けたほどだ。 赤ありすは、人間さんのプレイスを「ゆっくりの地獄」と表現した。 あながち間違いではない。 そうした体験があるため、まりさに言われたことを覚えてはいても、 いざ人間さんのプレイスに出ると言われると、恐怖から尻込みしてしまう。 「むきゅん!ありす、おとーさまの言ったことをわすれたの!行くのよ!」 厳しい口調で、命じる。 赤ありすの戸惑いは理解できるし、自分も進んでそうしたいわけではない。 危険があることも承知している。 それでも、他に助かる手立てがないのだ。 本当にこれが最後の手段。 自分達の為に、囮になってくれたまりさや、子まりさはここにはいない。 誰も自分達姉妹を守ってはくれないのだから。 「ゆ・・・。ゆっくちりかいしちゃわ・・・。」 最後の最後の力を振り絞って、人間さんのプレイスへと出て行く。 この辺りは川原から、道路へは斜面になっている。 力尽きようとしている二匹のあんよをさらに鈍らせる。 後ろから近づく物音はどんどん近づいている。 自分達の位置は既に捕捉されているのだろう。 「むきゅー、むきゅー・・・。」 「ゆうー・・・、ゆふー・・・・。」 もうすぐ、人間さんのプレイスだ。 しかし、 「むきゅ!みつけたわ!ゲスの飼いゆっくりよ!」 「みつけたよ!ゲスはせいっさいっだよ!」 「ゆっくりしないで、まつんだぜ!」 とうとう追いつかれてしまった。 全部で十匹ほどの集団だ。 勿論、二匹にはたくさん、としか認識できない。 逃げる二匹。 追う十匹。 追う側が、ふと気づく。 「にゃ!あっちは人間さんのプレイスなんだよー!」 「みょ!?まずいみょん!人間さんのプレイスにはいけないみょん!」 「ゆんやー!人間さんはこわいよー!れいむはもどるよ!」 「ありすももどるわ! 人間さんのプレイスに入り込むなんていなかもののすることよ!」 追手ゆっくりの大半が、戻っていく。 むきゅ!やったわ、本当に諦めたわ! しかし、追手もあと三匹残った。 「むきゃきゃきゃ! 人間さんのプレイスに入っても、悪いことをしなければいいのよ! ぱちゅは、こんな手には引っ掛からないわ!」 「まりさは、ゲスゆっくりをしまつするまであきらめないよ!」 「れいむもおちびちゃんのために、ゲスをせいっさいっするよ!」 人間さんのプレイスに入ったというのに、構わず追ってくる。 二匹は必死であんよを動かすが、あっと言う間に距離をつめられる。 「おいついたよ!」ばすん 追手まりさから体当たりを受ける赤ありす。 「ゆぴいいいいぃぃぃぃぃ!?」 悲鳴を上げながら、ごろんごろんと転がっていく。 転がった先で今度は待ち構えた、追手れいむに弾かれる。 「れいむのいかりをおもいしってね!」どすん ごろんごろん 転がった先でようやく止まる赤ありす。 目を回したのか、痛みのせいか、その場所から動かずに泣き喚く。 「ゆぅぅぅぅぅ!!?ゆんやーーーー!!ゆぴいいいいいいいいい!!!」 「うるさいよ!なけばいいってもんじゃないんだよ!」 「そうだよ!なきたいのはこっちだよ!みんなのうらみをおもいしってね!」 どすん ばすん ぼすん 赤ありすに何度も体当たりを食らわせる、追手のれいむとまりさ。 「む、むきゅ!ありすにさわらな・・」どかっ 「むはー、むきゅー・・・。やっと追いついたわ・・・。」 止めに入ろうとした子ぱちゅりーも、 遅れて追いついた追手ぱちゅりーに不意打ちを食らわされ、動きを阻まれる。 「む、、むきゅん・・・。あ、ありす・・・・。」 「ゆびびびびびびびびび!!!?やめちぇぇぇぇぇぇ!! ありちゅのお飾りとらにゃいぢぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぷぷぷぷ!お飾りなしのありすはゆっくりできないね!」 「ゲスの飼いゆっくりにはお飾りなしがおにあいだよ!」 お飾りを奪われた上、体当たりを食らわされたり、噛み付かれる赤ありす。 子ぱちゅりーも、追手ぱちゅりーに圧し掛かられる。 体の弱いぱちゅりーでは、これだけで、じわじわと生命力を奪われていく。 むきゅう・・・。もう、だめかしら。 諦めが、頭をもたげてくる。 すると、 シャー、キキッ 鋭い音がして、ゆっくり一同がそちらに視線をやる。 そこには、人間さん用の小さいすぃーに跨ったおにーさんがいた。 「ゆゆ!?」 「ま、まずいよ!?人間さんにみつかっちゃったよ!」 動揺する追手まりさとれいむ。 「むきゅきゅん! 人間さん、ぱちゅりーたちは、こっちのゲスゆっくりをせいっさいっしてるの! 人間さんたちの迷惑になることはしないから、ほうっておいてね!」 「ゆ!?さすがだよ、ぱちゅりー! そうだよ、まりさたちはゲスゆっくりをせいっさいしてるんだよ! だからにんげんさんにはかんけいないんだよ!」 「ゆゆん!人間さんはゆっくりしないで、はやくいってね! れいむたちは、わるいゆっくりじゃないんだよ!」 口々に、言い立てるゆっくりたち。 だが、おにーさんは、黙ってこちらを見つめてくる。 立ち去ろうとしない。 焦れたのか、ぱちゅりーが少々短気を起こす。 「むきゅん!聞こえないの!?ぱちぇのいったことが理解できる? 人間さんには迷惑を掛けないから、人間さんもさっさとどこかにいってね!」 それでも、無言のおにーさん。 追手ゆっくりたちは、動くどころか、何一つ話そうともしないおにーさんの その態度をどうとったのか、調子に乗って騒ぎ出す。 自転車で帰宅中に妙なものに行き当たった。 ゆっくりだ。 しかし、なんだこいつら。 この辺りのゆっくりたちは、その多くがとある場所を住処にしている。 この川沿いに少し行った先の空き地だ。 かなり広い場所で、私有地。 ただし、長いこと放置されてるようだ。 そこに多くのゆっくりが棲みついたんだ。 苦情がないわけじゃないけど、 公園なんかに棲みつかれるよりましってことで黙認されてる。 それと、黙認されてるもう一つの理由は、野良のゆっくりたち自身だ。 長く人間からの駆除を受け続けて、少しは学習したらしい。 人間に楯突いたり、そもそも人間の前に姿を現すことを控え始めたのだ。 そうして、ゆっくりの側が大人しくしていれば、 わざわざ望んでゆっくり潰しに走る人間は少数派だ。 この辺りのゆっくりは比較的大人しくて善良って言われてるんだけどな。 こいつら、理由は分からんが、子ゆっくりを虐めてるし。 あっちのありすなんか、お飾りを盗られて泣いてるな。 しかも、こっちが黙ってると調子に乗ってきやがったな。 こんな風に人間の生活圏に入ってきて大騒ぎするような連中は久しぶりに見たぞ。 とりあえず、潰しておこう。 ぶちゅ ぶちゅ ぶちゅ よし。 静かになった。 でも、まだ、残ってるんだよな。 こっちに小さいのが二匹。 ありゃ、二匹で寄り添って、小さく震えてやんの。 かわいいねー。 さて、こっちのちっこいの二匹は・・・・・・・・。 それから、子ぱちゅりーと赤ありすは、しあわせーな生涯を送った。 二匹を助けてくれたお兄さんが、そのまま二匹の飼い主さんになってくれた。 二匹は成体になる頃には、銀バッジのゆっくりになった。 成長した二匹は姉妹から番となった。 二匹は、何匹もの子ゆっくりと孫ゆっくりに恵まれた。 ほとんどの子供達は里子に出されたが、何匹かの子や孫はお兄さんの手元に残され、 ぱちゅりーとありすと一緒に暮らすことになった。 里子に出された子ゆっくりたちも、ときどきは会うことができた。 優しい飼い主さん。 暖かなお家。 おいしいごはん。 愛しい番に、可愛い子に孫、円満な家庭。 多くのものを失った二匹だったが、失った家族以外の全てを取り戻した。 失った家族は戻ってこなかったが、新しい家族を手に入れることができた。 二匹は、しわわせーに生き、老いて、そしてその生涯を終えた。 偶々助けた子ゆっくりを、ほんの気まぐれで飼い始めたが、 思ったより長い付き合いになったな・・・。 元野良の割りにこいつら、いいゆっくりだったよ・・・。 俺もすっかり情が移ったよな。 それにしても。 ゆっくりって本当に三より大きな数がわからないんだな。 実ゆを間引いたりしても全然気づかないし。 お飾りとって、口を利けないようにしておけば、 自分の子ゆがゆっくりコンポストにされてても全然気づかないし。 それに、数が増えすぎたと思ったら事故死、病死に見せかけて殺しちゃっても 俺がやったなんて疑いもしないし。 おかげで、実ゆ食べ放題だったし、生ゴミの処理も楽になったし。 まあ、生ゴミだけじゃなくて燃えないゴミとか、 危険物もちょっと無理させれば普通に処理してくれたけどさ。 最初の躾はちょっとコツがいるし、必ずしも責任もって飼おうとすれば楽じゃないよ。 ゆっくりって。 勿論、無責任に飼おうとすれば楽な連中だけどな。 しかし、潰したり食べたりできるし。 まあなんにしろ、一つ言えるのは、 ゆっくりってのは処分するには手間の掛からないペットではあるってことだ。 それは確かだろう? さいごまでよんでくれた人、ほんとうにありがとうございます。 それとおつかれさまです。 よむだけでひとくろうだったのではないでしょうか。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 空地の野良を完全駆除 ゲス飼いゆれいむを(なんやかんやで)処分 赤ありすの本来の親の最期 やっぱり赤ありすと子ぱちゅりーの虐待 ↑のストーリーを書き忘れているよwwwwww -- 2018-02-06 01 10 47 オチがなぞ過ぎる -- 2016-09-07 00 09 37 最後がちょっとすっきりしないね 事実がどうであれ2匹が心理的に救われて終わったのがゆっくりできなかった -- 2013-04-26 21 24 56 最初は野良狩りをする飼いゆが赤ありすの親なのかと思った。 -- 2012-09-20 09 54 22 なぜ途中で諦めたww 親まりさと子まりさを永遠にゆっくりさせたのはとてもよかった でもどうせなら子ぱちぇと赤ありすにも悲惨な最後を遂げさせれば 善良一家全滅ENDでもっとゆっくり出来たのにw -- 2011-03-03 13 28 13 逆恨みゆっくりどもがゲスだったんだねー全然ゆっくりプライスじゃないよー。 中途半端なのが残念。 前編は一杯描写があってゆっくりできたよー -- 2010-10-18 20 15 36 後半からの失速が残念だ… 父まりさの立ち回りは、無常感含め心が躍った。 子まりさは一矢報いる方が、逃避行で犠牲になる二代目で良かったかも。 -- 2010-10-01 18 15 10 最後どうした -- 2010-09-15 01 33 10 中途半端すぎ。 -- 2010-09-08 12 14 04 飼いゆっくりと逆恨みゆっくりを全部殺しなさいよ じゃないと全然ゆっくりできないよ -- 2010-08-17 03 28 09 面白かったけど最後の無理やり感は否めないなw 何にせよ乙。もっと続いてもよかったねー -- 2010-08-04 23 57 44 頭の良いゲスな個体が生き残るのは生き物として当たり前だよ 物語だからってご都合主義な勧善懲悪ばかり求めるのはやめてねっ -- 2010-08-02 18 44 39 もっとつづけてよ -- 2010-06-18 11 10 56 なんというか、物語を広げすぎて単に破綻しただけだったね・・・・ -- 2010-06-18 06 17 44 強引なオチだなあ・・・作者は途中で飽きた? -- 2010-06-09 01 47 42 ゲスはどうなったんだ -- 2010-05-18 05 48 10 ゲス飼いゆをなんとかするべきだろ まぁ最後二匹が普通に暮らせたのはいいけど -- 2010-03-17 16 36 29 ゲス飼いゆはこの作品のと同一? M1 M1DC / 「即興ゆっくり物語②」より 009/09/25 駆除れいむ yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1253961570706.png 2009/09/25 偽バッジ yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1253961795518.png -- 2010-02-15 20 02 05 面白かったけど、回収していない複線だらけだよ!! その後のゆっくりプレイスのみんなやゲス飼いゆの状況を知りたいよ!! -- 2010-01-29 21 20 38
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/998.html
さよなら!ゆっくりまりさ! スポーン! 「ゆっくちうまれたのじぇ!」 地面に降り立ったまりさは一瞬「ふにょん!」と体を平らに縮込ませると、 元の丸い体系に戻る反動で小さく弾んで元気な産声をあげた。 「うまれちゃよ!かわいいまりさがゆっくちうまれたのじぇ!」 まりさは自分を産んでくれたお母さんに元気でゆっくりしている所を見て貰おうと、 そのつぶらな瞳を爛々と輝かせながら何度も「ぽいん!ぽいん!」と地面を蹴った。 自慢のおさげを棚引かせてキャッ!キャッ!と笑いながらお母さんの返事を待つまりさ。 「お飾りの大きさが基準以下、マイナス1」 「お飾りに2箇所傷アリ、マイナス2」 「語尾が”のぜ”ですので、マイナス1」 「デフォルトで半笑い、マイナス2」 「なんかムカツクので、マイナス2」 「ゆっ?ゆゆっ?」 「とってもゆっくりしたおちびちゃんが生まれたねっ!」といわれる事を確信していたまりさ。 しかし辺りから聞こえる声は母親の声では無く、なにやらゆっくりできない気がする声のみだった。 お母さんの代わりにその場に居たのは、体の下に不気味なパーツを色々とつけた生き物達。 まりさはこの生き物を知っている。そう、これは「にんげん」と呼ばれる生き物だ。 何故人間がまりさのお母さんのゆっくりプレイスに居るのだろう?まりさには訳が分からなかった。 そしてここに居るはずのまりさのお母さんは一体何処へ行ってしまったのだろうか? まりさは困ったような表情を浮かべて再びキョロキョロと辺りを見回す。 「ゆっ?ゆっ?おきゃーしゃん!どこなのじぇ!」 「これは何本?」 生まれて早々に困ってしまったまりさに気を使うことも無く、人間の1人がまりさの目の前に三本の指を突きつけた。 まりさは人間の大きな手を暫く目を丸くして「ゆゆーっ!」と見つめていたが、はたと今はそれ所では無い事を思い出す。 何故はぐれてしまったのかはわからないが、きっとお母さんも心配して一生懸命まりさを探しているだろう。 「ゆっ!人間さん!いま忙しいから後にしてにぇっ!」 「何本?」 「おうどん!」 眉毛をキリッ!とさせながら元気に答えるまりさ。 ケチの付け所の無い完璧な回答である。元気でゆっくりしつつ、何よりおいしそうである。 してやったりの表情のまりさを他所に、人間は淡々とチェックシートの「バカ」の項目に○をつける。 「合計、マイナス12点です」 「ねぇよ」 「にんげんさんっ!きいちぇにぇ!まりさはおかあさんを探してるよっ!」 もしかしたら人間さんがお母さんの居場所を知っているのかもしれない。 そう考えたまりさだったが、人間さんはこちらからの問いかけには全く耳を貸そうともしてくれない。 叫びつかれたまりさは「ゆふぅ」とため息をついてその場に「へにょり」と体を沈めた。 「ゆっくちうまれたよっ!」 「ゆゆっ!」 その時、頭上から声が鳴り響くと、赤れいむが「ふにょん!」と地面に降り立つ。 きっとこの子はまりさの姉妹だ。かわいい妹のれいむがゆっくりと生まれたのだ。 まりさは元気を取り戻してぴょんぴょんと地面を蹴って空から落ちてきたれいむの元へ向かう。 「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」 取るものもとりあえず、互いに挨拶を交わす2匹。 やっとゆっくりできた。ようやくまりさの顔に安堵の表情が浮ぶ。 「まりさがおねぇちゃんだじぇ!」 「ゆっ!れいむがいもうとだにぇっ!」 自己紹介も終了してゆっくり同士のスキンシップである「すりすり」を行おうと「ぽすんぽすん」と駆け寄る2匹。 しかし、行く手を阻むように上から伸びてきた人間の手によってまりさは掴みあげられてしまう。 「ゆゆっ!やめてにぇ!まりさは・・・まるでおそらを飛んでるみたいっ!」 人間にれいむの傍へ行くから邪魔をしないで欲しい。と言うつもりだったまりさだったが、 掴み上げられたことによって、その視界が一気に広がるとそんな事もすぐに忘れてしまい、 一気に開けた広大な世界に目をパアァ!と輝かせると、フルフルと身を振るわせて喜びの声をあげた。 「ゆわぁぁっ!とっても高いにぇ!ゆっくち!ゆっく・・・・ゆ゛っ!?」 その時、まりさがゆっくりと産まれた場所からずっと上の位置に 器具によってガッチリと固定されて宙に吊られている丸い物体がまりさの視界に入った。 その大きなゴム毬の様なつるつるした丸い物体にはいくつものチューブが挿入されており 時折、身を揺らしながら苦しそうに体をビクン!と波打たせていた。 「ゆっ!こわいよっ!ゆっくちむこうへいってにぇっ!」 「お゛っ・・・お゛ぢびぢゃ・・・」 まりさは丸い物体に背を向けてプルプルと体を震わせながら、 人間の軽く握られた拳の中にスルリ!と潜り込むと目を瞑って丸い物体が居なくなる事を祈った。 そのまま、まりさは人間の手によって運ばれて丸い物体から遠ざかっていく。 その得体の知れない丸い物体はまりさの姿が見えなくなるまで、何時までも食い入る様にまりさを見つめていた。 「ゆゆっ!まってねっ!おねぇちゃんっ!れいむをおいていかないでにぇ!」 「マイナス2、マイナス1、マイナス2、マイナス・・・・あぁ、駄目だこりゃ」 「この母体はもう寿命だな、規格外しか生まれて来ないぞ、機械を止めないと・・・」 「上の馬鹿どもに連絡してくれ、暢気にお茶ばっか啜ってんじゃねぇってさ」 徐々に遠ざかって聞こえなくなっていく人間達の声。 得たいの知れないゆっくりできない生き物から逃げる事ができたので、 まりさは人間の手の隙間から「にゅる!」と顔だけを出してニコニコと安堵の表情を浮かべた。 「ゆっ!これでゆっくちでき・・・ないよっ!れいむっ!れいむはどこなのじぇっ!?」 しかし、可愛い妹のれいむがあの場所に置き去りだった事を思い出して、途端にまりさはオロオロと狼狽し始めた。 それに、あの場を離れるとお母さんに見つけて貰えなくなってしまうのではないだろうか? 折角助けてくれた人間さんにまた我侭を言うのはゆっくりできないかも、とも思ったが 背に腹は変えられず、せめてさっきよりも大きくて元気なゆっくりした声でまりさは人間に話しかけた。 「にんげんしゃん!ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「・・・・・・・・・」 「ゆっ!ゆっくち・・・ゆっくり!しちぇ・・・して!・・・いってね!」 「・・・・・・・・・」 「ゆぅ!まりさちゃんとゆっくち言えたよっ!」 「・・・・・・・・・」 「きいてねっ!にんげんしゃん!まりさはおかあさんにあいたいのじぇ!」 「・・・・・・・・・」 「きいてねっ!いもうとも連れてっ・・・・おきゃー・・・しゃ・・・ゆふぅ・・・」 「・・・・・・・・・」 その時、まりさの体を突然急激な眠気が襲った。 目を何度もしぱしぱと瞬かせながら、必死に眠気と戦うまりさ。 生まれて早々にまりさに降りかかったゆっくりできない出来事の数々、 そして、人間に何度話しかけても無視され続けた為に、まりさは「ゆっくり不足」に陥ってしまったのだった。 肉体が本能的にゆっくりを求めて強制的にまりさを眠りへと誘う。 まりさはそのゆっくり特有の生理現象に逆らう事ができずに「すーや!すーや!」と元気に眠りについてしまった。 きっとまりさは今、お母さんの所へ向かっているのだろう。 目が覚めれば、きっとお母さんとゆっくりできるのだろう。まりさはそう思った。そう思うことにした。 何故なら、返事はしてくれなかったが、人間さんの手はとても暖かくてゆっくりできそうだったからだ。 悪い人ならば、きっとこんなにもゆっくりできない筈。だから大丈夫だ。ゆっくりゆっくり。 こうしてまりさはゆっくりと眠りについた。 そして目が覚めると、何時の間にか傍らで笑顔を浮かべていたお母さんに「ゆっくりおりこうさんだね」とゆっくり待てた事を褒めてもらった。 そんな夢を見た。 「ゆっ!ごはん!?」 ガタガタと揺れる地面に違和感を覚えたまりさは目を覚ました。 ここは一体どこなのだろう?まだ完全に覚醒していない重い体を引きずりながら辺りを見回すまりさ。 そこは細い一本道だった。そしてその地面はガタガタと常に僅かに振動している。 どこまでも続いていく道の脇を白い服を来た人間達が立ち並んでいる。 そして、まりさの周りには足の踏み場も無いほど、無数の赤ゆっくり達が居た。 何匹もの同種のまりさ、そしてれいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん。 人間には「通常種」と呼ばれるゆっくり達である。 「ゆゆんっ!ゆっくちしていってねっ!」 「「「「「「ゆっ!ゆっくちしていっちぇにえぇぇ!」」」」」 まりさは周りの沢山の同属のゆっくり達に目を輝かせながら挨拶をした。 一同に元気良く、挨拶を交し合う赤ゆっくり達。 何も教えられずに連れて来られた得体の知れないこの環境に不安な表情を浮かべていた赤ゆっくり達だったが、 ゆっくりとした挨拶を交わしたことによって辺りは少しだけゆっくりとした活気に包まれた。 「ゆっ!ここはどこなのじぇ!」 隣に居たありすに頬を摺り寄せて、挨拶代わりの「すりすり」をしながらまりさは問いかけた。 まりさとのすりすりに嬉しそうに頬を高揚させながら、ありすは答える。 「ゆっ!ありすはちらないよっ!」 「ちぇんもわからにゃいよー」 「むきゅん!でもこの道さんはゆっくち動いてるわっ!きっとお母さんの所にむかっているはずよっ!」 「ゆゆっ!ぱちゅりーは賢いんだにぇ!」 「わかるよーこの奥にお母さんがいるんだねーわかるよー」 ぱちゅりーの鋭い推測に周りの赤ゆっくり達は目を丸くして「ゆぉぉ!」と感心したような唸り声をあげた。 先程まで水を打ったように静まり返っていた細長い道の部屋は、赤ゆっくり達の笑顔で溢れるゆっくり空間へと様変わりした。 しかしこの勝手に動く道、人間の名づけた名前は「ベルトコンベアー」という。 「ゆっ?」 突然、白い服を纏った人間がまりさの隣に居たありすを鷲づかみにして持ち上げると、 ありすの体をマッサージするように「ふにふに」と揉み出した。 「ゆっ?ゆっ?やめてねっ!ゆふふっ!くすぐったいよっ!」 ありすは屈託無い笑顔を浮かべながら楽しそうに「プルプル」と体を振るわせる。 そのありすのゆっくりとした様子を見て他の赤ゆっくり達も身を弾ませながら声をあげた。 「ゆっ!ちぇんもやってほしいよー」 「むきゅん!人間さん!ぱちぇにもっ!ぱちぇにもちてにぇ!」 「ゆゆーん!ありすはとってもゆっくりしてるねー」 次々と人間の手によって掴み出されていく赤ゆっくり達。 最初に連れて行かれたありすはマッサージが終わると、ボールに満たされた水で体を綺麗に洗ってもらっている。 「ゆふぅ」と気持ちよさそうな声をあげて満面の笑顔でゆっくりを満喫するありす。 きっとお母さんの所へ行く前に体を綺麗にして貰っているのだろう。 「ゆーっ!まりさも!まりさもきれいきれいにするよっ!」 地面を跳ね回って自分をアピールするかの様に周りの人間に笑顔を振りまきながら声をかけるまりさ。 そんな和気藹々とした雰囲気に包まれていた「勝手に動く道」だったが、 次の瞬間、辺りの様相は一変する。 「ゆ゛ぎっ!!」 突然、背後で響いたその声に驚いて思わず振り返るまりさ。 そこには先程、体を綺麗に洗ってもらってうれしそうな声をあげていたありすが お飾りを奪われると、髪の毛を引きちぎられて苦悶の表情を浮かべていた。 「い゛っ!い゛びゃい゛っ!なにするにょぉぉ!」 人間はありすの様子に気をかける事もなく、ありすの体を押さえつけながら残った頭髪を握り締めると、 雑草を抜くかのように無造作に真上に引っ張り上げた。 「ん゛ぎゅぅぅぅ!!」 まりすは顔を真っ赤にしながら大きく縦に伸び上がる。 先程までキラキラと可愛らしい光沢を放っていたつぶらな瞳が醜く縦に歪んで血走る。 そして、体が引き千切れてしまうのではないかという位に体が伸び上がった瞬間、 ありすの頭髪は根元からゴッソリと抜けてプルン!と元の丸い体系に戻った。 見るも無残な禿饅頭になってしまったありす。 人間は足元の青いバケツの中に引き抜いたありすの頭髪とお飾りをゴミの様に投げ捨てた。 「い゛ぎっ!」 「ゆ゛べぇ!」 「ぴきゅう!」 ありすの叫び声を皮切りに次々とお飾りを奪われ、髪を毟られていく赤ゆっくり達。 その光景を見て、まだ人間に捕まっていない赤ゆっくり達もパニック状態に陥った。 「いやぁぁぁ!なにちてるのぉぉぉ」 「やめちぇねぇ!やめちぇあげちぇにぇ!」 ダラダラと汗をかきながら必死に人間に説得を始めるゆっくり、 何とかこの場から離れようと涙を撒き散らしながら右往左往するゆっくり。 自分は捕まるまいと目に涙を溜めながら、体を膨らませて精一杯の威嚇をするゆっくり。 その中で、まりさは何もすることができずに、 カチカチと歯を鳴らしながら周りの惨状を呆然と眺める事しかできなかった。 「おねぇちゃぁぁん!おねぇぇちゃああん!」 その時、1人震えるまりさにすがり付くように「ふにふに」と頬を摺り寄せて来たれいむ。 その赤ゆっくりは、先程逸れてしまった妹のれいむだった。 「きょわいょおおお!ゆっくちできないよぉぉ!」 「ゆぐっ!れいむっ!ゆっくち!ゆっくちだよぉぉ!」 再開できた事を喜び合う事もできずに、抱き合うように頬をすり合わせながら、 ガクガクと震えるまりさと妹れいむ。 「びっぎゅうううううう!!!」 視界に広がる悪夢の様な光景に耳を劈くような奇声が鳴り響いた。 まだ逃げ回っているゆっくりも、不幸にも人間に捕まってしまったゆっくりも無意識にその声がした方向へ思わず視線を移す。 「やべちぇぇぇ!やべちぇにぇぇぇ!」 視線の先には最初に捕まって禿饅頭にされてしまったありすが、作業台の上に体を押さえつけられていた。 ありすの体にあてがわれているのは、野菜の皮を剥くときに用いられるピーラーである。 何とかして人間の手から逃れようと必死に体を「にゅるん!にゅるん!」と左右に振って暴れるありす。 「はなちぃてぇぇっ!ゆっくりちゃちぇ・・・・ん゛びゃぁい゛っ!!ゆ゛っぐりゃれ゛っ!!」 人間がピーラーでありすの体をひと撫ですると、必死に暴れていたありすの動きはピタリと止まった。 人間の手馴れた手つきによってあっという間に中身が剥き出しの黒饅頭の様になったありす。 その想像を絶する痛みに歯をギリギリと食いしばって痙攣している。 人間はありすをまりさたちが乗ったベルトコンベアーと併走している隣のベルトコンベアーに投げ捨てると 次の赤ゆっくりを求めて逃げまどう赤ゆっくり達の群れに手を伸ばした。 クワッ!と目を見開いてその手に捕まってなるものかと、必死に跳ね回って逃走する赤ゆっくり達。 「やめちぇにぇ!あっちいっちぇにぇ!」 「いやぁぁぁぁ!!いやぁぁぁ!!」 「わがらないよー!!わがらないよー!!」 まりさと妹れいむは人間達の手を縫うようにして掻い潜ると、何とかありすの近くへとたどり着いた。 隣のベルトコンベアーの上で苦しそうに目を丸くして微動だにしないありすに向かってまりさは叫ぶ。 「ありすっ!ゆっくりしてねっ!ゆっくりしてねっ!」 「ゆ゛っ!までぃさっ!いだいよっ!ゆっぐりできないよっ!」 中身が透けて見えるほどに薄く削り取られてしまった皮は外気に晒されているだけで激痛が走る様で、 ピクリとも体を動かせずに剥き出しになった丸い眼球からポロポロと涙を流すありす。 「ばでぃざっ!いだいのっ!どうなっだの!?あでぃずはどうなっだのぉぉぉ!?」 「な、なんともないよっ!ありすはとってもゆっくりしてるよっ!だからゆっくりしようねっ!」 まりさの目から見てもありすの置かれた状況は絶望的だった。 しかしありすを不安にさせない為に必死に無事であるとウソをついてありすを励ますまりさ。 しかし、次々とありすの居るベルトコンベアーに投げ込まれる無残な姿のゆっくりを見たありすは、 自分が今どういう事になっているのかをゆっくりと理解して、千切れそうな程に大口を開くと断末魔の叫びをあげた。 「ぴゅっ!!ぴゅみ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 狂ったように異様な奇声を発するとコロリと力なく地面に倒れこんだ。 その瞬間、併走していたベルトコンベアーが途切れてありすは忽然とその姿を消した。 「ありすっ!どこいったのっ!ありすぅぅ!」 「おねぇぇちゃん!にげでえっ!にげえちぇにぇぇぇっ!!」 「ゆっ?」 妹れいむの大声に驚いて、咄嗟にれいむの居る方へ体を捻るまりさ。 しかしその方向にいる筈の妹れいむはまりさの視界には入らなかった。 代わりにまりさの瞳の映ったのは大きな大きな人間の白い手だった。 「い゛や゛あああああ!ゆ゛っくちっ!ゆ゛っくちぃぃ!」 人間の手に鷲づかみにされて上空に連れ去られるまりさ。 その時、ようやくありすが何処へ行ってしまったのかわかった。いや、わかってしまった。 「ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 併走していたベルトコンベアー、その途切れた部分の床には青いバケツが置いてあり、 そこにはギッシリと皮を剥がされた黒いゆっくり達が詰まっていた。 全員、苦しそうに歯を食いしばりながら苦悶の表情を浮かべて、時折思い出したかの様に「びくん!」と痙攣している。 そして次々と「ポトリ、ポトリ」と描き写した様な同じ形相を浮かべた黒いゆっくり達が青いバケツに吸い込まれていく。 まりさには、もうどれがさっきのありすだったかはわからなかった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぎっ!ゆ゛ん゛っ!」 逃げるように地獄絵図から視線を逸らすまりさ。 視線を逸らしたその先にはジッとまりさを見つめる人間の両目があった。 その目だけでまりさの体くらいの大きさがある。大きい。余りにも大きかった。 「ゆぐり・・・っ!ゆぐっ!ゆぐんり゛!でいっでっ!」 何とかこの場を収めようと、できるだけ元気に、明るく、そして友好的に 「ゆっくりしていってねっ!」と叫ぼうとまりさは口をあける。 しかしカラカラに乾いた喉、震える口先、爆発してしまうのでは無いかという位に波打つ餡子の鼓動。 とても挨拶などできる状態ではなかった。 まりさはダラダラと汗を流しながら口の端を引きつらせて人間の顔を見つめる事しかできない。 「ゆぴっ!」 だが、次の瞬間まりさは元のベルトコンベアーに戻された。 わからなかった。何故助かったのかはわからなかった。生還!よくわからないが生還! しかしそれを喜ぶ暇など無かった。 何故ならまりさを放した人間が次に掴んだゆっくりは・・・ 「おねぇぇぇちゃあああん!!だじゅげでええええっ!」 妹のれいむだったからだ。 暫く、れいむを凝視していた人間は小さく頷くとれいむの体を揉み始めた。 最初はゆっくりできるマッサージだったその行為は「死刑宣告」にその姿を変えていた。 皮だけ切り刻み易くなる様に寄った餡子を解しているのだ。 「まっでねっ!やべでねっ!れいむはどっでもゆっぐり・・・っ!ゆっぐりじでるのにぃぃ!」 ベルトコンベアーの上を必死に跳ねてその流れに逆らいながら、れいむを握った人間に向かって叫ぶまりさ。 他の逃げ惑うゆっくりにぶつかり、体を地面に叩きつけられてもすぐに立ち上がって何とか妹へと近づこうと跳ねる。 「までぃざはっ!どうなっでもいいがらっ!れいむはだずげでねっ!」 「ゆふぅゆふぅ」と荒い呼吸を繰り返して地面を跳ねながら必死に人間に向かって懇願の声を張り上げるまりさ。 ゆっくりしていたまりさは助かった。だから同じ位ゆっくりしているれいむもきっと助かる筈。 まりさはそう信じた。お母さんが居なくて途方に暮れている時、空から降ってきてまりさをゆっくりさせてくれたれいむ。 白い人間さんが突然、まりさ達にゆっくりできない事を始めた時、まりさの元へ駆けつけてくれたれいむ。 そんなとってもゆっくりとしたれいむが助からない訳がない。そう、助からない訳が無いのだ。 しかしれいむは助からなかった。 妹れいむはまりさの前で髪の毛を引きちぎられて、皮を剥がれて、あっという間に黒いゆっくりになった。 併走するベルトコンベアーに投げ捨てられた妹れいむは先程のありすの様に 他の黒いゆっくり達と混ざってあっという間にどれがれいむなのかわからなくなってしまった。 「どぼじでぇぇ・・・どぼじでごんなごとしゅるのぉぉぉ・・・」 体力も限界に達してその場に倒れこむまりさ。 ベルトコンベアーに流されてどんどん遠ざかっていく妹が居るであろう場所。 そしてどこまでも続いていると思った一本道の終点が見えてきた。 ベルトコンベアーが途切れて「ずるり」と奈落へ落ちるまりさ。ゴールに居たのはお母さんではなく、赤いバケツだった。 ぱちん! バケツの底に体を打ち付けてその激痛にギュッ!と目を瞑るまりさ。 お母さんにも会えずに、それどころか唯一の肉親だった妹のれいむも死んでしまった。 どうしてこんなことになっているんだろう?まりさは涙をボロボロと零しながら泣き叫ぶしかなかった。 その時、けたたましい唸り声をあげていたベルトコンベアーの振動音がピタリと止まる。 「よーし、次のクズ餡子用ゆっくりが来るまで休憩」 「はーい」 遠くで人間達の声が聞こえる。 そこから聞こえる笑い声とリラックスした雰囲気にまりさは唖然とした。 あんなにゆっくりできない事をした人間達が「ゆっくり」しているのだ。 まりさにはわけがわからなかった。ただただまりさはゆっくりできなかった。 人間に当てはめるとその感情は「悔しい」という気持ちだったが、まりさにはそれを理解する事ができない。 そして、ずしん、ずしんと地面に響く轟音が徐々にこちらへと近づいてくる。 まりさが痛む体を少しだけ動かして上空に目をやると、高いところからまりさを見下ろす人間の巨大な顔が見える。 それを見てまりさはビクリ!と体を振るわせた。 「きゅう!」と小さく声を漏らして地面に顔を擦り付けて縮こまるまりさ。 「3匹も混入してるじゃねぇかよ」 「こんなザルでいいなら俺でもできますよ、識別なんてさ」 「普通にゃあそこへは就けないんだよ、知り合い同士で楽な仕事回してんのさ、死ねばいいのにな」 よくわからないが、ゆっくりできない人間達が苛立たしそうに話をしている。 まりさが、視線を赤いバケツの中へ移すとそこには、ぱちゅりーとちぇんの姿があった。 2匹ともたった今起きた惨劇を受け入れることができずに、呆然とした表情を浮かべてガクガクと震えている。 「わからにゃいよぉぉぉ・・・わからにゃいよぉぉぉ・・・」 2本の尻尾を自分の体に巻きつけてキュッ!と縮まって震えていたちぇんが、 地面にこすり付けていた顔を僅かに持ち上げた。 「ぱちゅりーぃぃ、お母さんの所に行くんじゃなかったのぉぉぉ・・・?」 涙をポロポロと零しながらぱちゅりーに問いかけるちぇん。 ぱちゅりーは震える体をカタカタとちぇんの方へ向ける。 「むきゅっ・・・ぱ、ぱちぇにもわかにゃいわ・・・っ、むぎゅっ!けふっけふっ!」 顔を真っ青にして時折激しく咳き込むぱちゅりー。 何もしていなくても時折生きる事を諦めてしまう程に体の弱いぱちゅりー種にとって この状況はいつお迎えが居てもおかしくない程に過酷なものだった。 「ゆっ!ゆぅ・・・ぱちぇ!ちぇん!ゆっくち!ゆっくちしようにぇ!」 まりさはズルズルと這うようにして2匹に近づくと、 抱きつくように頬をすり合わせて「すんすん」と泣き始めた。 2匹を何とか元気づけようという気持ちもあったが、 まりさは自分の他にも生き残ったゆっくりを見つけてすがるように飛びついたのだ。 その「ゆっくりしよう」と言う言葉も自分に言い聞かせるという意味合いのほうが強かった。 明るい言葉とは裏腹にこの世の終わりの様な表情を浮かべるまりさを見て、 ぱちゅりーとちぇんもその表情をグシャグシャに歪ませた。 「わっわがるよぉぉぃ、ゆっくち!ゆっくちちようにぇ!」 「むっ!むきゅっ!大丈夫よっ!ぱちぇが居ればあんしんよっ・・・ゆっくちできるわっ」 身を震わせながらも「むきゅん」と胸を張る様な姿勢をとるぱちゅりー。 そんな何やら頼もしいぱちゅりーの態度に、まりさはまりさにお姉ちゃんが居たらきっとこんな感じなのだろうと思った。 その時、まりさの脳裏にゆっくりとした笑顔を浮かべている妹のれいむの姿が過ぎる。 まりさはれいむにお姉ちゃんらしいことを何一つしてあげる事が出来なかった。 このぱちゅりーの様にまりさは頼りになったのだろうか?ただ一緒に抱き合って泣いただけである。 まりさがもっとしっかりしていればれいむは死なずに済んだかもしれない。 「ゆっ・・・ゆぐっ!ゆわぁぁぁん!!」 まりさはポロポロと涙を零しながらぱちゅりーの頬に自分の頬を摺り寄せた。 ちぇんもそんな2匹を見ながらオロオロと尻尾を振って「ゆっくちだよ、ゆっくちだよ」と頷いている。 しかしその時そんなゆっくり達の「ゆっくり模様」を嘲笑うかの様に、 地面が大きく揺れて3匹の体が「ふわり」と宙に浮くと、壁に全身を叩きつけられた。 「「「ゆべぇ!」」」 まりさがコロコロと地面を転がりながらも何とか空を見上げると、 景色がグルグルと回りながら物凄い速さで移動している。 人間がバケツを持って何処かへ移動しているのだ。 「むぎゅっ!だ、だいじょううぶよっ!ぱちぇにゆっくちつかまってにぇ!」 真っ青な顔色もなんのその、ぱちゅりーがガクガクと身を震わせながら、 まりさとちぇんをかばう様に体を伸ばして立ち上がるような体勢を取る。 2匹はぱちゅりーにしがみつく様に体を押し付けると、まるで念仏の様に「ゆっくりゆっくり」と何時までも唱え続けた。 「これ、そっちのCラインのゆっくりだわ、こっちに来てたぞ」 「えっ?Cラインはさっきので今日の運転は終わりだぞ?」 「マジかよ、どうすんだよこれ」 「この品質じゃCラインより上には持っていけないしな」 「明日まで持たないだろうし、処分すれば損失として記録されちまうぞ」 「あぁ、鬱陶しい糞饅頭だ」 人間達の苛々としたゆっくりできない声が赤いバケツの中に響く。 まりさ達と一緒に居てゆっくりできないのなら、ほおっておいてくれればいいのに。 あの暖かいゆっくりできた人間さんの手はまりさの思い違いだった。 人間さんはゆっくりできない。 それなら、ゆっくりできない同士、関わる事無く「えいえん」にお互いに顔を会わせないで、 人間さんとゆっくり達は別々の場所で好きにゆっくりすればいいのに。 再び「ゆっくり不足」に陥ってしまったまりさは、泥の様な睡魔に襲われながら、ふとそんな事を考えた。 所変わって施設の外。 紺色のシンプルな作業着を着た男がトラックの荷台に荷物を運び終えて一息ついている。 そこに先程の白い防塵服を来た男のひとりが小さな箱を抱えて男の元へ駆け寄って来た。 「ご苦労さん!」 「は?・・・・あぁ、お疲れ様です」 別段親しくも無い防塵服の男の気さくな様子に運転手は、少し戸惑った様な表情を浮かべて挨拶に答えた。 防塵服の男は運転手の肩に馴れ馴れしく手を回すと、手に持った小さな箱を運転手に押し付けるように手渡す。 それを無理やり握らされたトラックの運転手は怪訝な表情を浮かべた。 「は?何ですかこれ?」 「これから○○までぶっ通しでしょ?甘いものだよ、おすそ分け」 「えぇ・・・?はぁ、どうも・・・ご馳走様です・・・」 「運転気をつけてな、ゆっくりしていってねっ!ってか?」 「はっ・・・・ははっ・・・・いってきます」 軽快に立ち去る防塵服の男。 それを何とも言えない複雑な表情で見ていたトラックの運転手は小さくため息をついてから運転席に乗り込む。 そして手に持っていた小さな箱を暫く見つめていたが、面倒臭そうに蓋を開いた。 中には先ほどのまりさ、ぱちゅりー、ちぇんの3匹が身を寄せ合いながら「すーや!すーや!」と寝息を立てている。 ボロボロの3匹は閉じた瞳から薄っすらと涙を浮かべてモゴモゴと口を動かしている。 「お、おきゃーしゃん・・・まっちぇちぇにぇ・・・」 「食えるかッ!!!」 すぐさま、蓋を閉じて運転席の後ろ側の荷台に小箱を投げ捨てる運転手。 加工所の奴等は頭のネジが何本か抜け落ちて居るのではないだろうか? 何故、人語を操るこいつらにその辺の駄菓子と同じような扱いができるのだろう? 別に可愛いとか愛くるしいとかそういう感情が沸くからではない。 一言で言うと「面倒くさい」のだ。 原型を残してぐったりとうな垂れた豚や、羽を抜かれてぶら下がる鳥を好き好んで買う人間が居るだろうか? 物を食べるという人間として避けて通る事の出来ない行為にそういった負の要素を持ち込みたくない。 何も難しい事を考えずに屠殺場によってバラされた肉をお手軽に調理してパクつきたい。それが運転手の考えだ。 そして何よりも重要な問題はこの運転手、生粋の辛党である。 「何回言えばあいつら俺が辛党って覚えるんだろ」 苛立たしげにキーを回してトラックにエンジンをかける運転手。 けたたましい轟音と共にトラックが施設内を駆け抜けて出口へと移動する。 眠そうな顔を隠そうともしない警備員とすれ違うと、トラックは巨大な施設から抜け出して国道へ飛び出した。 ゆっくりの繁殖からその加工まで一手に担う「ゆっくり加工所」 この加工所は生まれたゆっくりをその品質によって様々な分野へ商品として販売していた。 ここで生まれたゆっくりが生きたまま外に出られる事は極めて稀である。 様々な偶然が重なってこの地獄の加工所から出る事ができたまりさ。 揺れる荷台に無造作に放り込まれた小箱の中でまりさ達は疲れ果てて弱々しい寝息を立てる。 そこでまりさはまだ生まれてから一度も会った事の無いお母さんの夢を見た。 夢の中に現れたまりさのお母さんは・・・ (怖かったね。もう大丈夫だよ、おちびちゃん) と、優しい笑みを浮かべてまりさをすりすりをしてくれた。 そんなお母さんのゆっくりした様子にまりさの寝顔は幸せそうに少しだけ綻んだ。 「ゆ゛っ!!」 加工所の施設内、台車に乗せられたでっぷりと太った禿れいむが人間に殴られて目を覚ました。 目を丸くして驚いた表情を浮かべながら、キョロキョロと辺りを見回している。 「うるせえぞ、禿饅頭」 「ゆっ!ゆっくりごめんなさいっ!れいむつい、すーや!すーや!しちゃったよっ!」 ある日、れいむは目を覚ますとこの加工所に居た。 人間さん達によって体中にゆっくりできない器具の数々を無理やり取り付けられて、 「すっきり」をしていないのに「にんっしん」を繰り返し、来る日も来る日もおちびちゃんを産み続けた。 しかし、今日のゆっくりできない「おしごと」が終わった時、人間さんの口からこれでれいむの仕事は全部終わったと告げられた。 「れいむはおちびちゃんの夢を見たよっ!お外に出たらすぐにおちびちゃんを探してあげないとねっ!」 「うるせぇってんだよ!」 再び人間の拳がれいむの脳天に突き刺さった。 れいむは再び「ゆっくりごめんなさい」と謝ったが、その表情は先程と変わらずにニコニコと嬉しそうなままだった。 全部の仕事が終わったので、れいむは自分のゆっくりプレイスに帰してもらえるだろう。 そうしたら逸れてしまった沢山のおちびちゃん達を探して、元々住んでいた森の群れへと帰ろう。 髪の毛さんが無くなってしまったので、最初はれいむがれいむだと言う事に気がついて貰えないかもしれないけれど、 ゆっくりと説明すれば大丈夫だろう。だってれいむの群れにいたゆっくり達はとってもゆっくりしていたのだから。 れいむはやっとお外に出られる。だってれいむのお仕事は全部終わったのだから。 人間が分厚い扉を両手で開けてれいむをその中にいれると、荷台を傾けてれいむだけを置いて荷台だけを部屋から取り出した。 地面に体をぶつけたれいむが「ゆっ!」と、もぞもぞと体を動かして立ち上がり、「ゆっ!ゆっ!」と辺りを見回している。 その分厚い金属で四方を囲まれた狭い部屋は真っ暗で、はじめて見たれいむにはそれが8畳ほどの狭い部屋とわからないようだった。 「ゆっ!お外は今まっくらだねっ!人間さんっ!ゆっくりさようならっ!れいむはおうちにかえるよっ!」 こちらにキリッ!とした表情を向けてペコリと器用にお辞儀をするれいむ。 人間はそんな禿饅頭の様子に気をかける事もなく、分厚い扉を閉じると閂を落として扉の脇にあるレバーを下に引いた。 入り口の傍に設置してあるランプが点灯して辺りに低い振動音が響く。 暫く扉の内側から何かがぶつかる音が何度も響いたが、すぐにそれも収まり、低い機械の起動音だけが辺りに何時までも鳴り響いていた。 しつこい様だが、ここからゆっくりが生きたまま外に出られる事は極めて稀である。 つづく 今まで書いたもの? ゆっくり見せしめ ゆっくり電柱 ゆっくり脳内補完 副工場長れいむの末路1234 ゲスの見た夢12 元野良れいむの里帰り ゆっくりできない四畳半1 黒い箱123 さよなら!ゆっくりまりさ!1 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5029.html
さよなら!ゆっくりまりさ! スポーン! 「ゆっくちうまれたのじぇ!」 地面に降り立ったまりさは一瞬「ふにょん!」と体を平らに縮込ませると、 元の丸い体系に戻る反動で小さく弾んで元気な産声をあげた。 「うまれちゃよ!かわいいまりさがゆっくちうまれたのじぇ!」 まりさは自分を産んでくれたお母さんに元気でゆっくりしている所を見て貰おうと、 そのつぶらな瞳を爛々と輝かせながら何度も「ぽいん!ぽいん!」と地面を蹴った。 自慢のおさげを棚引かせてキャッ!キャッ!と笑いながらお母さんの返事を待つまりさ。 「お飾りの大きさが基準以下、マイナス1」 「お飾りに2箇所傷アリ、マイナス2」 「語尾が”のぜ”ですので、マイナス1」 「デフォルトで半笑い、マイナス2」 「なんかムカツクので、マイナス2」 「ゆっ?ゆゆっ?」 「とってもゆっくりしたおちびちゃんが生まれたねっ!」といわれる事を確信していたまりさ。 しかし辺りから聞こえる声は母親の声では無く、なにやらゆっくりできない気がする声のみだった。 お母さんの代わりにその場に居たのは、体の下に不気味なパーツを色々とつけた生き物達。 まりさはこの生き物を知っている。そう、これは「にんげん」と呼ばれる生き物だ。 何故人間がまりさのお母さんのゆっくりプレイスに居るのだろう?まりさには訳が分からなかった。 そしてここに居るはずのまりさのお母さんは一体何処へ行ってしまったのだろうか? まりさは困ったような表情を浮かべて再びキョロキョロと辺りを見回す。 「ゆっ?ゆっ?おきゃーしゃん!どこなのじぇ!」 「これは何本?」 生まれて早々に困ってしまったまりさに気を使うことも無く、人間の1人がまりさの目の前に三本の指を突きつけた。 まりさは人間の大きな手を暫く目を丸くして「ゆゆーっ!」と見つめていたが、はたと今はそれ所では無い事を思い出す。 何故はぐれてしまったのかはわからないが、きっとお母さんも心配して一生懸命まりさを探しているだろう。 「ゆっ!人間さん!いま忙しいから後にしてにぇっ!」 「何本?」 「おうどん!」 眉毛をキリッ!とさせながら元気に答えるまりさ。 ケチの付け所の無い完璧な回答である。元気でゆっくりしつつ、何よりおいしそうである。 してやったりの表情のまりさを他所に、人間は淡々とチェックシートの「バカ」の項目に○をつける。 「合計、マイナス12点です」 「ねぇよ」 「にんげんさんっ!きいちぇにぇ!まりさはおかあさんを探してるよっ!」 もしかしたら人間さんがお母さんの居場所を知っているのかもしれない。 そう考えたまりさだったが、人間さんはこちらからの問いかけには全く耳を貸そうともしてくれない。 叫びつかれたまりさは「ゆふぅ」とため息をついてその場に「へにょり」と体を沈めた。 「ゆっくちうまれたよっ!」 「ゆゆっ!」 その時、頭上から声が鳴り響くと、赤れいむが「ふにょん!」と地面に降り立つ。 きっとこの子はまりさの姉妹だ。かわいい妹のれいむがゆっくりと生まれたのだ。 まりさは元気を取り戻してぴょんぴょんと地面を蹴って空から落ちてきたれいむの元へ向かう。 「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」 取るものもとりあえず、互いに挨拶を交わす2匹。 やっとゆっくりできた。ようやくまりさの顔に安堵の表情が浮ぶ。 「まりさがおねぇちゃんだじぇ!」 「ゆっ!れいむがいもうとだにぇっ!」 自己紹介も終了してゆっくり同士のスキンシップである「すりすり」を行おうと「ぽすんぽすん」と駆け寄る2匹。 しかし、行く手を阻むように上から伸びてきた人間の手によってまりさは掴みあげられてしまう。 「ゆゆっ!やめてにぇ!まりさは・・・まるでおそらを飛んでるみたいっ!」 人間にれいむの傍へ行くから邪魔をしないで欲しい。と言うつもりだったまりさだったが、 掴み上げられたことによって、その視界が一気に広がるとそんな事もすぐに忘れてしまい、 一気に開けた広大な世界に目をパアァ!と輝かせると、フルフルと身を振るわせて喜びの声をあげた。 「ゆわぁぁっ!とっても高いにぇ!ゆっくち!ゆっく・・・・ゆ゛っ!?」 その時、まりさがゆっくりと産まれた場所からずっと上の位置に 器具によってガッチリと固定されて宙に吊られている丸い物体がまりさの視界に入った。 その大きなゴム毬の様なつるつるした丸い物体にはいくつものチューブが挿入されており 時折、身を揺らしながら苦しそうに体をビクン!と波打たせていた。 「ゆっ!こわいよっ!ゆっくちむこうへいってにぇっ!」 「お゛っ・・・お゛ぢびぢゃ・・・」 まりさは丸い物体に背を向けてプルプルと体を震わせながら、 人間の軽く握られた拳の中にスルリ!と潜り込むと目を瞑って丸い物体が居なくなる事を祈った。 そのまま、まりさは人間の手によって運ばれて丸い物体から遠ざかっていく。 その得体の知れない丸い物体はまりさの姿が見えなくなるまで、何時までも食い入る様にまりさを見つめていた。 「ゆゆっ!まってねっ!おねぇちゃんっ!れいむをおいていかないでにぇ!」 「マイナス2、マイナス1、マイナス2、マイナス・・・・あぁ、駄目だこりゃ」 「この母体はもう寿命だな、規格外しか生まれて来ないぞ、機械を止めないと・・・」 「上の馬鹿どもに連絡してくれ、暢気にお茶ばっか啜ってんじゃねぇってさ」 徐々に遠ざかって聞こえなくなっていく人間達の声。 得たいの知れないゆっくりできない生き物から逃げる事ができたので、 まりさは人間の手の隙間から「にゅる!」と顔だけを出してニコニコと安堵の表情を浮かべた。 「ゆっ!これでゆっくちでき・・・ないよっ!れいむっ!れいむはどこなのじぇっ!?」 しかし、可愛い妹のれいむがあの場所に置き去りだった事を思い出して、途端にまりさはオロオロと狼狽し始めた。 それに、あの場を離れるとお母さんに見つけて貰えなくなってしまうのではないだろうか? 折角助けてくれた人間さんにまた我侭を言うのはゆっくりできないかも、とも思ったが 背に腹は変えられず、せめてさっきよりも大きくて元気なゆっくりした声でまりさは人間に話しかけた。 「にんげんしゃん!ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「・・・・・・・・・」 「ゆっ!ゆっくち・・・ゆっくり!しちぇ・・・して!・・・いってね!」 「・・・・・・・・・」 「ゆぅ!まりさちゃんとゆっくち言えたよっ!」 「・・・・・・・・・」 「きいてねっ!にんげんしゃん!まりさはおかあさんにあいたいのじぇ!」 「・・・・・・・・・」 「きいてねっ!いもうとも連れてっ・・・・おきゃー・・・しゃ・・・ゆふぅ・・・」 「・・・・・・・・・」 その時、まりさの体を突然急激な眠気が襲った。 目を何度もしぱしぱと瞬かせながら、必死に眠気と戦うまりさ。 生まれて早々にまりさに降りかかったゆっくりできない出来事の数々、 そして、人間に何度話しかけても無視され続けた為に、まりさは「ゆっくり不足」に陥ってしまったのだった。 肉体が本能的にゆっくりを求めて強制的にまりさを眠りへと誘う。 まりさはそのゆっくり特有の生理現象に逆らう事ができずに「すーや!すーや!」と元気に眠りについてしまった。 きっとまりさは今、お母さんの所へ向かっているのだろう。 目が覚めれば、きっとお母さんとゆっくりできるのだろう。まりさはそう思った。そう思うことにした。 何故なら、返事はしてくれなかったが、人間さんの手はとても暖かくてゆっくりできそうだったからだ。 悪い人ならば、きっとこんなにもゆっくりできない筈。だから大丈夫だ。ゆっくりゆっくり。 こうしてまりさはゆっくりと眠りについた。 そして目が覚めると、何時の間にか傍らで笑顔を浮かべていたお母さんに「ゆっくりおりこうさんだね」とゆっくり待てた事を褒めてもらった。 そんな夢を見た。 「ゆっ!ごはん!?」 ガタガタと揺れる地面に違和感を覚えたまりさは目を覚ました。 ここは一体どこなのだろう?まだ完全に覚醒していない重い体を引きずりながら辺りを見回すまりさ。 そこは細い一本道だった。そしてその地面はガタガタと常に僅かに振動している。 どこまでも続いていく道の脇を白い服を来た人間達が立ち並んでいる。 そして、まりさの周りには足の踏み場も無いほど、無数の赤ゆっくり達が居た。 何匹もの同種のまりさ、そしてれいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん。 人間には「通常種」と呼ばれるゆっくり達である。 「ゆゆんっ!ゆっくちしていってねっ!」 「「「「「「ゆっ!ゆっくちしていっちぇにえぇぇ!」」」」」 まりさは周りの沢山の同属のゆっくり達に目を輝かせながら挨拶をした。 一同に元気良く、挨拶を交し合う赤ゆっくり達。 何も教えられずに連れて来られた得体の知れないこの環境に不安な表情を浮かべていた赤ゆっくり達だったが、 ゆっくりとした挨拶を交わしたことによって辺りは少しだけゆっくりとした活気に包まれた。 「ゆっ!ここはどこなのじぇ!」 隣に居たありすに頬を摺り寄せて、挨拶代わりの「すりすり」をしながらまりさは問いかけた。 まりさとのすりすりに嬉しそうに頬を高揚させながら、ありすは答える。 「ゆっ!ありすはちらないよっ!」 「ちぇんもわからにゃいよー」 「むきゅん!でもこの道さんはゆっくち動いてるわっ!きっとお母さんの所にむかっているはずよっ!」 「ゆゆっ!ぱちゅりーは賢いんだにぇ!」 「わかるよーこの奥にお母さんがいるんだねーわかるよー」 ぱちゅりーの鋭い推測に周りの赤ゆっくり達は目を丸くして「ゆぉぉ!」と感心したような唸り声をあげた。 先程まで水を打ったように静まり返っていた細長い道の部屋は、赤ゆっくり達の笑顔で溢れるゆっくり空間へと様変わりした。 しかしこの勝手に動く道、人間の名づけた名前は「ベルトコンベアー」という。 「ゆっ?」 突然、白い服を纏った人間がまりさの隣に居たありすを鷲づかみにして持ち上げると、 ありすの体をマッサージするように「ふにふに」と揉み出した。 「ゆっ?ゆっ?やめてねっ!ゆふふっ!くすぐったいよっ!」 ありすは屈託無い笑顔を浮かべながら楽しそうに「プルプル」と体を振るわせる。 そのありすのゆっくりとした様子を見て他の赤ゆっくり達も身を弾ませながら声をあげた。 「ゆっ!ちぇんもやってほしいよー」 「むきゅん!人間さん!ぱちぇにもっ!ぱちぇにもちてにぇ!」 「ゆゆーん!ありすはとってもゆっくりしてるねー」 次々と人間の手によって掴み出されていく赤ゆっくり達。 最初に連れて行かれたありすはマッサージが終わると、ボールに満たされた水で体を綺麗に洗ってもらっている。 「ゆふぅ」と気持ちよさそうな声をあげて満面の笑顔でゆっくりを満喫するありす。 きっとお母さんの所へ行く前に体を綺麗にして貰っているのだろう。 「ゆーっ!まりさも!まりさもきれいきれいにするよっ!」 地面を跳ね回って自分をアピールするかの様に周りの人間に笑顔を振りまきながら声をかけるまりさ。 そんな和気藹々とした雰囲気に包まれていた「勝手に動く道」だったが、 次の瞬間、辺りの様相は一変する。 「ゆ゛ぎっ!!」 突然、背後で響いたその声に驚いて思わず振り返るまりさ。 そこには先程、体を綺麗に洗ってもらってうれしそうな声をあげていたありすが お飾りを奪われると、髪の毛を引きちぎられて苦悶の表情を浮かべていた。 「い゛っ!い゛びゃい゛っ!なにするにょぉぉ!」 人間はありすの様子に気をかける事もなく、ありすの体を押さえつけながら残った頭髪を握り締めると、 雑草を抜くかのように無造作に真上に引っ張り上げた。 「ん゛ぎゅぅぅぅ!!」 まりすは顔を真っ赤にしながら大きく縦に伸び上がる。 先程までキラキラと可愛らしい光沢を放っていたつぶらな瞳が醜く縦に歪んで血走る。 そして、体が引き千切れてしまうのではないかという位に体が伸び上がった瞬間、 ありすの頭髪は根元からゴッソリと抜けてプルン!と元の丸い体系に戻った。 見るも無残な禿饅頭になってしまったありす。 人間は足元の青いバケツの中に引き抜いたありすの頭髪とお飾りをゴミの様に投げ捨てた。 「い゛ぎっ!」 「ゆ゛べぇ!」 「ぴきゅう!」 ありすの叫び声を皮切りに次々とお飾りを奪われ、髪を毟られていく赤ゆっくり達。 その光景を見て、まだ人間に捕まっていない赤ゆっくり達もパニック状態に陥った。 「いやぁぁぁ!なにちてるのぉぉぉ」 「やめちぇねぇ!やめちぇあげちぇにぇ!」 ダラダラと汗をかきながら必死に人間に説得を始めるゆっくり、 何とかこの場から離れようと涙を撒き散らしながら右往左往するゆっくり。 自分は捕まるまいと目に涙を溜めながら、体を膨らませて精一杯の威嚇をするゆっくり。 その中で、まりさは何もすることができずに、 カチカチと歯を鳴らしながら周りの惨状を呆然と眺める事しかできなかった。 「おねぇちゃぁぁん!おねぇぇちゃああん!」 その時、1人震えるまりさにすがり付くように「ふにふに」と頬を摺り寄せて来たれいむ。 その赤ゆっくりは、先程逸れてしまった妹のれいむだった。 「きょわいょおおお!ゆっくちできないよぉぉ!」 「ゆぐっ!れいむっ!ゆっくち!ゆっくちだよぉぉ!」 再開できた事を喜び合う事もできずに、抱き合うように頬をすり合わせながら、 ガクガクと震えるまりさと妹れいむ。 「びっぎゅうううううう!!!」 視界に広がる悪夢の様な光景に耳を劈くような奇声が鳴り響いた。 まだ逃げ回っているゆっくりも、不幸にも人間に捕まってしまったゆっくりも無意識にその声がした方向へ思わず視線を移す。 「やべちぇぇぇ!やべちぇにぇぇぇ!」 視線の先には最初に捕まって禿饅頭にされてしまったありすが、作業台の上に体を押さえつけられていた。 ありすの体にあてがわれているのは、野菜の皮を剥くときに用いられるピーラーである。 何とかして人間の手から逃れようと必死に体を「にゅるん!にゅるん!」と左右に振って暴れるありす。 「はなちぃてぇぇっ!ゆっくりちゃちぇ・・・・ん゛びゃぁい゛っ!!ゆ゛っぐりゃれ゛っ!!」 人間がピーラーでありすの体をひと撫ですると、必死に暴れていたありすの動きはピタリと止まった。 人間の手馴れた手つきによってあっという間に中身が剥き出しの黒饅頭の様になったありす。 その想像を絶する痛みに歯をギリギリと食いしばって痙攣している。 人間はありすをまりさたちが乗ったベルトコンベアーと併走している隣のベルトコンベアーに投げ捨てると 次の赤ゆっくりを求めて逃げまどう赤ゆっくり達の群れに手を伸ばした。 クワッ!と目を見開いてその手に捕まってなるものかと、必死に跳ね回って逃走する赤ゆっくり達。 「やめちぇにぇ!あっちいっちぇにぇ!」 「いやぁぁぁぁ!!いやぁぁぁ!!」 「わがらないよー!!わがらないよー!!」 まりさと妹れいむは人間達の手を縫うようにして掻い潜ると、何とかありすの近くへとたどり着いた。 隣のベルトコンベアーの上で苦しそうに目を丸くして微動だにしないありすに向かってまりさは叫ぶ。 「ありすっ!ゆっくりしてねっ!ゆっくりしてねっ!」 「ゆ゛っ!までぃさっ!いだいよっ!ゆっぐりできないよっ!」 中身が透けて見えるほどに薄く削り取られてしまった皮は外気に晒されているだけで激痛が走る様で、 ピクリとも体を動かせずに剥き出しになった丸い眼球からポロポロと涙を流すありす。 「ばでぃざっ!いだいのっ!どうなっだの!?あでぃずはどうなっだのぉぉぉ!?」 「な、なんともないよっ!ありすはとってもゆっくりしてるよっ!だからゆっくりしようねっ!」 まりさの目から見てもありすの置かれた状況は絶望的だった。 しかしありすを不安にさせない為に必死に無事であるとウソをついてありすを励ますまりさ。 しかし、次々とありすの居るベルトコンベアーに投げ込まれる無残な姿のゆっくりを見たありすは、 自分が今どういう事になっているのかをゆっくりと理解して、千切れそうな程に大口を開くと断末魔の叫びをあげた。 「ぴゅっ!!ぴゅみ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 狂ったように異様な奇声を発するとコロリと力なく地面に倒れこんだ。 その瞬間、併走していたベルトコンベアーが途切れてありすは忽然とその姿を消した。 「ありすっ!どこいったのっ!ありすぅぅ!」 「おねぇぇちゃん!にげでえっ!にげえちぇにぇぇぇっ!!」 「ゆっ?」 妹れいむの大声に驚いて、咄嗟にれいむの居る方へ体を捻るまりさ。 しかしその方向にいる筈の妹れいむはまりさの視界には入らなかった。 代わりにまりさの瞳の映ったのは大きな大きな人間の白い手だった。 「い゛や゛あああああ!ゆ゛っくちっ!ゆ゛っくちぃぃ!」 人間の手に鷲づかみにされて上空に連れ去られるまりさ。 その時、ようやくありすが何処へ行ってしまったのかわかった。いや、わかってしまった。 「ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 併走していたベルトコンベアー、その途切れた部分の床には青いバケツが置いてあり、 そこにはギッシリと皮を剥がされた黒いゆっくり達が詰まっていた。 全員、苦しそうに歯を食いしばりながら苦悶の表情を浮かべて、時折思い出したかの様に「びくん!」と痙攣している。 そして次々と「ポトリ、ポトリ」と描き写した様な同じ形相を浮かべた黒いゆっくり達が青いバケツに吸い込まれていく。 まりさには、もうどれがさっきのありすだったかはわからなかった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぎっ!ゆ゛ん゛っ!」 逃げるように地獄絵図から視線を逸らすまりさ。 視線を逸らしたその先にはジッとまりさを見つめる人間の両目があった。 その目だけでまりさの体くらいの大きさがある。大きい。余りにも大きかった。 「ゆぐり・・・っ!ゆぐっ!ゆぐんり゛!でいっでっ!」 何とかこの場を収めようと、できるだけ元気に、明るく、そして友好的に 「ゆっくりしていってねっ!」と叫ぼうとまりさは口をあける。 しかしカラカラに乾いた喉、震える口先、爆発してしまうのでは無いかという位に波打つ餡子の鼓動。 とても挨拶などできる状態ではなかった。 まりさはダラダラと汗を流しながら口の端を引きつらせて人間の顔を見つめる事しかできない。 「ゆぴっ!」 だが、次の瞬間まりさは元のベルトコンベアーに戻された。 わからなかった。何故助かったのかはわからなかった。生還!よくわからないが生還! しかしそれを喜ぶ暇など無かった。 何故ならまりさを放した人間が次に掴んだゆっくりは・・・ 「おねぇぇぇちゃあああん!!だじゅげでええええっ!」 妹のれいむだったからだ。 暫く、れいむを凝視していた人間は小さく頷くとれいむの体を揉み始めた。 最初はゆっくりできるマッサージだったその行為は「死刑宣告」にその姿を変えていた。 皮だけ切り刻み易くなる様に寄った餡子を解しているのだ。 「まっでねっ!やべでねっ!れいむはどっでもゆっぐり・・・っ!ゆっぐりじでるのにぃぃ!」 ベルトコンベアーの上を必死に跳ねてその流れに逆らいながら、れいむを握った人間に向かって叫ぶまりさ。 他の逃げ惑うゆっくりにぶつかり、体を地面に叩きつけられてもすぐに立ち上がって何とか妹へと近づこうと跳ねる。 「までぃざはっ!どうなっでもいいがらっ!れいむはだずげでねっ!」 「ゆふぅゆふぅ」と荒い呼吸を繰り返して地面を跳ねながら必死に人間に向かって懇願の声を張り上げるまりさ。 ゆっくりしていたまりさは助かった。だから同じ位ゆっくりしているれいむもきっと助かる筈。 まりさはそう信じた。お母さんが居なくて途方に暮れている時、空から降ってきてまりさをゆっくりさせてくれたれいむ。 白い人間さんが突然、まりさ達にゆっくりできない事を始めた時、まりさの元へ駆けつけてくれたれいむ。 そんなとってもゆっくりとしたれいむが助からない訳がない。そう、助からない訳が無いのだ。 しかしれいむは助からなかった。 妹れいむはまりさの前で髪の毛を引きちぎられて、皮を剥がれて、あっという間に黒いゆっくりになった。 併走するベルトコンベアーに投げ捨てられた妹れいむは先程のありすの様に 他の黒いゆっくり達と混ざってあっという間にどれがれいむなのかわからなくなってしまった。 「どぼじでぇぇ・・・どぼじでごんなごとしゅるのぉぉぉ・・・」 体力も限界に達してその場に倒れこむまりさ。 ベルトコンベアーに流されてどんどん遠ざかっていく妹が居るであろう場所。 そしてどこまでも続いていると思った一本道の終点が見えてきた。 ベルトコンベアーが途切れて「ずるり」と奈落へ落ちるまりさ。ゴールに居たのはお母さんではなく、赤いバケツだった。 ぱちん! バケツの底に体を打ち付けてその激痛にギュッ!と目を瞑るまりさ。 お母さんにも会えずに、それどころか唯一の肉親だった妹のれいむも死んでしまった。 どうしてこんなことになっているんだろう?まりさは涙をボロボロと零しながら泣き叫ぶしかなかった。 その時、けたたましい唸り声をあげていたベルトコンベアーの振動音がピタリと止まる。 「よーし、次のクズ餡子用ゆっくりが来るまで休憩」 「はーい」 遠くで人間達の声が聞こえる。 そこから聞こえる笑い声とリラックスした雰囲気にまりさは唖然とした。 あんなにゆっくりできない事をした人間達が「ゆっくり」しているのだ。 まりさにはわけがわからなかった。ただただまりさはゆっくりできなかった。 人間に当てはめるとその感情は「悔しい」という気持ちだったが、まりさにはそれを理解する事ができない。 そして、ずしん、ずしんと地面に響く轟音が徐々にこちらへと近づいてくる。 まりさが痛む体を少しだけ動かして上空に目をやると、高いところからまりさを見下ろす人間の巨大な顔が見える。 それを見てまりさはビクリ!と体を振るわせた。 「きゅう!」と小さく声を漏らして地面に顔を擦り付けて縮こまるまりさ。 「3匹も混入してるじゃねぇかよ」 「こんなザルでいいなら俺でもできますよ、識別なんてさ」 「普通にゃあそこへは就けないんだよ、知り合い同士で楽な仕事回してんのさ、死ねばいいのにな」 よくわからないが、ゆっくりできない人間達が苛立たしそうに話をしている。 まりさが、視線を赤いバケツの中へ移すとそこには、ぱちゅりーとちぇんの姿があった。 2匹ともたった今起きた惨劇を受け入れることができずに、呆然とした表情を浮かべてガクガクと震えている。 「わからにゃいよぉぉぉ・・・わからにゃいよぉぉぉ・・・」 2本の尻尾を自分の体に巻きつけてキュッ!と縮まって震えていたちぇんが、 地面にこすり付けていた顔を僅かに持ち上げた。 「ぱちゅりーぃぃ、お母さんの所に行くんじゃなかったのぉぉぉ・・・?」 涙をポロポロと零しながらぱちゅりーに問いかけるちぇん。 ぱちゅりーは震える体をカタカタとちぇんの方へ向ける。 「むきゅっ・・・ぱ、ぱちぇにもわかにゃいわ・・・っ、むぎゅっ!けふっけふっ!」 顔を真っ青にして時折激しく咳き込むぱちゅりー。 何もしていなくても時折生きる事を諦めてしまう程に体の弱いぱちゅりー種にとって この状況はいつお迎えが居てもおかしくない程に過酷なものだった。 「ゆっ!ゆぅ・・・ぱちぇ!ちぇん!ゆっくち!ゆっくちしようにぇ!」 まりさはズルズルと這うようにして2匹に近づくと、 抱きつくように頬をすり合わせて「すんすん」と泣き始めた。 2匹を何とか元気づけようという気持ちもあったが、 まりさは自分の他にも生き残ったゆっくりを見つけてすがるように飛びついたのだ。 その「ゆっくりしよう」と言う言葉も自分に言い聞かせるという意味合いのほうが強かった。 明るい言葉とは裏腹にこの世の終わりの様な表情を浮かべるまりさを見て、 ぱちゅりーとちぇんもその表情をグシャグシャに歪ませた。 「わっわがるよぉぉぃ、ゆっくち!ゆっくちちようにぇ!」 「むっ!むきゅっ!大丈夫よっ!ぱちぇが居ればあんしんよっ・・・ゆっくちできるわっ」 身を震わせながらも「むきゅん」と胸を張る様な姿勢をとるぱちゅりー。 そんな何やら頼もしいぱちゅりーの態度に、まりさはまりさにお姉ちゃんが居たらきっとこんな感じなのだろうと思った。 その時、まりさの脳裏にゆっくりとした笑顔を浮かべている妹のれいむの姿が過ぎる。 まりさはれいむにお姉ちゃんらしいことを何一つしてあげる事が出来なかった。 このぱちゅりーの様にまりさは頼りになったのだろうか?ただ一緒に抱き合って泣いただけである。 まりさがもっとしっかりしていればれいむは死なずに済んだかもしれない。 「ゆっ・・・ゆぐっ!ゆわぁぁぁん!!」 まりさはポロポロと涙を零しながらぱちゅりーの頬に自分の頬を摺り寄せた。 ちぇんもそんな2匹を見ながらオロオロと尻尾を振って「ゆっくちだよ、ゆっくちだよ」と頷いている。 しかしその時そんなゆっくり達の「ゆっくり模様」を嘲笑うかの様に、 地面が大きく揺れて3匹の体が「ふわり」と宙に浮くと、壁に全身を叩きつけられた。 「「「ゆべぇ!」」」 まりさがコロコロと地面を転がりながらも何とか空を見上げると、 景色がグルグルと回りながら物凄い速さで移動している。 人間がバケツを持って何処かへ移動しているのだ。 「むぎゅっ!だ、だいじょううぶよっ!ぱちぇにゆっくちつかまってにぇ!」 真っ青な顔色もなんのその、ぱちゅりーがガクガクと身を震わせながら、 まりさとちぇんをかばう様に体を伸ばして立ち上がるような体勢を取る。 2匹はぱちゅりーにしがみつく様に体を押し付けると、まるで念仏の様に「ゆっくりゆっくり」と何時までも唱え続けた。 「これ、そっちのCラインのゆっくりだわ、こっちに来てたぞ」 「えっ?Cラインはさっきので今日の運転は終わりだぞ?」 「マジかよ、どうすんだよこれ」 「この品質じゃCラインより上には持っていけないしな」 「明日まで持たないだろうし、処分すれば損失として記録されちまうぞ」 「あぁ、鬱陶しい糞饅頭だ」 人間達の苛々としたゆっくりできない声が赤いバケツの中に響く。 まりさ達と一緒に居てゆっくりできないのなら、ほおっておいてくれればいいのに。 あの暖かいゆっくりできた人間さんの手はまりさの思い違いだった。 人間さんはゆっくりできない。 それなら、ゆっくりできない同士、関わる事無く「えいえん」にお互いに顔を会わせないで、 人間さんとゆっくり達は別々の場所で好きにゆっくりすればいいのに。 再び「ゆっくり不足」に陥ってしまったまりさは、泥の様な睡魔に襲われながら、ふとそんな事を考えた。 所変わって施設の外。 紺色のシンプルな作業着を着た男がトラックの荷台に荷物を運び終えて一息ついている。 そこに先程の白い防塵服を来た男のひとりが小さな箱を抱えて男の元へ駆け寄って来た。 「ご苦労さん!」 「は?・・・・あぁ、お疲れ様です」 別段親しくも無い防塵服の男の気さくな様子に運転手は、少し戸惑った様な表情を浮かべて挨拶に答えた。 防塵服の男は運転手の肩に馴れ馴れしく手を回すと、手に持った小さな箱を運転手に押し付けるように手渡す。 それを無理やり握らされたトラックの運転手は怪訝な表情を浮かべた。 「は?何ですかこれ?」 「これから○○までぶっ通しでしょ?甘いものだよ、おすそ分け」 「えぇ・・・?はぁ、どうも・・・ご馳走様です・・・」 「運転気をつけてな、ゆっくりしていってねっ!ってか?」 「はっ・・・・ははっ・・・・いってきます」 軽快に立ち去る防塵服の男。 それを何とも言えない複雑な表情で見ていたトラックの運転手は小さくため息をついてから運転席に乗り込む。 そして手に持っていた小さな箱を暫く見つめていたが、面倒臭そうに蓋を開いた。 中には先ほどのまりさ、ぱちゅりー、ちぇんの3匹が身を寄せ合いながら「すーや!すーや!」と寝息を立てている。 ボロボロの3匹は閉じた瞳から薄っすらと涙を浮かべてモゴモゴと口を動かしている。 「お、おきゃーしゃん・・・まっちぇちぇにぇ・・・」 「食えるかッ!!!」 すぐさま、蓋を閉じて運転席の後ろ側の荷台に小箱を投げ捨てる運転手。 加工所の奴等は頭のネジが何本か抜け落ちて居るのではないだろうか? 何故、人語を操るこいつらにその辺の駄菓子と同じような扱いができるのだろう? 別に可愛いとか愛くるしいとかそういう感情が沸くからではない。 一言で言うと「面倒くさい」のだ。 原型を残してぐったりとうな垂れた豚や、羽を抜かれてぶら下がる鳥を好き好んで買う人間が居るだろうか? 物を食べるという人間として避けて通る事の出来ない行為にそういった負の要素を持ち込みたくない。 何も難しい事を考えずに屠殺場によってバラされた肉をお手軽に調理してパクつきたい。それが運転手の考えだ。 そして何よりも重要な問題はこの運転手、生粋の辛党である。 「何回言えばあいつら俺が辛党って覚えるんだろ」 苛立たしげにキーを回してトラックにエンジンをかける運転手。 けたたましい轟音と共にトラックが施設内を駆け抜けて出口へと移動する。 眠そうな顔を隠そうともしない警備員とすれ違うと、トラックは巨大な施設から抜け出して国道へ飛び出した。 ゆっくりの繁殖からその加工まで一手に担う「ゆっくり加工所」 この加工所は生まれたゆっくりをその品質によって様々な分野へ商品として販売していた。 ここで生まれたゆっくりが生きたまま外に出られる事は極めて稀である。 様々な偶然が重なってこの地獄の加工所から出る事ができたまりさ。 揺れる荷台に無造作に放り込まれた小箱の中でまりさ達は疲れ果てて弱々しい寝息を立てる。 そこでまりさはまだ生まれてから一度も会った事の無いお母さんの夢を見た。 夢の中に現れたまりさのお母さんは・・・ (怖かったね。もう大丈夫だよ、おちびちゃん) と、優しい笑みを浮かべてまりさをすりすりをしてくれた。 そんなお母さんのゆっくりした様子にまりさの寝顔は幸せそうに少しだけ綻んだ。 「ゆ゛っ!!」 加工所の施設内、台車に乗せられたでっぷりと太った禿れいむが人間に殴られて目を覚ました。 目を丸くして驚いた表情を浮かべながら、キョロキョロと辺りを見回している。 「うるせえぞ、禿饅頭」 「ゆっ!ゆっくりごめんなさいっ!れいむつい、すーや!すーや!しちゃったよっ!」 ある日、れいむは目を覚ますとこの加工所に居た。 人間さん達によって体中にゆっくりできない器具の数々を無理やり取り付けられて、 「すっきり」をしていないのに「にんっしん」を繰り返し、来る日も来る日もおちびちゃんを産み続けた。 しかし、今日のゆっくりできない「おしごと」が終わった時、人間さんの口からこれでれいむの仕事は全部終わったと告げられた。 「れいむはおちびちゃんの夢を見たよっ!お外に出たらすぐにおちびちゃんを探してあげないとねっ!」 「うるせぇってんだよ!」 再び人間の拳がれいむの脳天に突き刺さった。 れいむは再び「ゆっくりごめんなさい」と謝ったが、その表情は先程と変わらずにニコニコと嬉しそうなままだった。 全部の仕事が終わったので、れいむは自分のゆっくりプレイスに帰してもらえるだろう。 そうしたら逸れてしまった沢山のおちびちゃん達を探して、元々住んでいた森の群れへと帰ろう。 髪の毛さんが無くなってしまったので、最初はれいむがれいむだと言う事に気がついて貰えないかもしれないけれど、 ゆっくりと説明すれば大丈夫だろう。だってれいむの群れにいたゆっくり達はとってもゆっくりしていたのだから。 れいむはやっとお外に出られる。だってれいむのお仕事は全部終わったのだから。 人間が分厚い扉を両手で開けてれいむをその中にいれると、荷台を傾けてれいむだけを置いて荷台だけを部屋から取り出した。 地面に体をぶつけたれいむが「ゆっ!」と、もぞもぞと体を動かして立ち上がり、「ゆっ!ゆっ!」と辺りを見回している。 その分厚い金属で四方を囲まれた狭い部屋は真っ暗で、はじめて見たれいむにはそれが8畳ほどの狭い部屋とわからないようだった。 「ゆっ!お外は今まっくらだねっ!人間さんっ!ゆっくりさようならっ!れいむはおうちにかえるよっ!」 こちらにキリッ!とした表情を向けてペコリと器用にお辞儀をするれいむ。 人間はそんな禿饅頭の様子に気をかける事もなく、分厚い扉を閉じると閂を落として扉の脇にあるレバーを下に引いた。 入り口の傍に設置してあるランプが点灯して辺りに低い振動音が響く。 暫く扉の内側から何かがぶつかる音が何度も響いたが、すぐにそれも収まり、低い機械の起動音だけが辺りに何時までも鳴り響いていた。 しつこい様だが、ここからゆっくりが生きたまま外に出られる事は極めて稀である。 つづく 今まで書いたもの ゆっくり見せしめ ゆっくり電柱 ゆっくり脳内補完 副工場長れいむの末路1234 ゲスの見た夢12 元野良れいむの里帰り ゆっくりできない四畳半1 黒い箱123 さよなら!ゆっくりまりさ!1 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/926.html
楽園の終焉 現代日本注意 ドス登場 何とかという地方都市の近くに大きな森が広がっていた。 一昔前ならよく見られた動植物にとっては最後の楽園でもあった。 もっとも、今その森の主要な生物はゆっくりと呼ばれる最近になって大発生した謎のナマモノである。 都市や農村でも多く見られるが、ここまで野生のまま、人間との関わりを持たずに生活を営むゆっくりは最早そうはいないだろう。 この森に棲むゆっくり達の群れもその数少ない群れの一つであった。 最も、そのゆっくり達の繁殖力は凄まじく、食害によって多くの森が昔の姿を失いつつあった。 ここでも他の動植物の繁栄を押しのけるまでに数を増やしたゆっくり達が森の主要なナマモノとなった経緯がある。 今ではゆっくり達の楽園と言っても過言ではないだろう。 この森に棲む群れはドスまりさが治める数百匹単位の一つの群れである。 この群れは先にも述べたとおり、極めて野生のゆっくりの原型に近い生態系を保っていた。 というのも、この森は広く、森の大部分がとある富豪の所有地であったため、人間すらもめったに立ち入らず、外因によるリスクがなかったのだ。 森の深くなったところにゆっくり達のコミュニティが存在し、そこにはとあるれいむとまりさの番が暮らしていた。 この二匹は幼馴染であったため、仲がよくいずれは将来を誓い合う伴侶にと決めていた。 そしてつい最近、二匹がにんっしんしても耐えられるまでに体が成長したため、ついに互いにすっきりしあい、晴れて番いとなったのだ。 「まりさのあかちゃんとってもゆっくりしてるよー♪」 「れいむのあかちゃんもとってもゆっくりしてるね!きっとわたしたちににてゆっくりしたこになるよ!!」 朽ちた木の窪みの巣の中でこんな微笑ましい会話が続いていた。 そしてついに互いの子供達が生まれた。れいむ、まりさともに4体ずつ生まれ、二匹とも大満足である。 「「「ゆっくちちていってぃえにぇ!!!」」」 プチトマト程の大きさの8匹が元気よく挨拶した。 「「ゆっくりしていってね!!」 二匹の愛の結晶に涙を流して喜んでいた。早速互いの蔓を千切り、赤ちゃん達が食べられるように咀嚼し、ぺっと吐き出した。 赤ちゃん達は両親の吐き出した最初のごはんに群がっておいしそうに食べ始めた。 「「「むーちゃむーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!!」」」 そんな赤ちゃん達を見て二匹はほほ笑んだ。確かに苦しいこともあったし、これからも苦しいことがあるだろう、 だがこの赤ちゃん達がいればどんなことでも乗り越えられる。そう二匹は確信していた。 次の日からまりさは狩りに出かけ、れいむは子守りをしてまりさの帰りを待った。 毎日のように美味しいごはんを食べ、赤ちゃん達もゆっくり成長していった。 赤ちゃん達が生まれて一月半も経つと、8匹はソフトボール程度の大きさにまで成長し、もう狩りに連れて行ってもいい頃合いである。 その日は家族10匹で狩りに出かけ、小さな虫やトカゲ、雑草等を食べて家に帰った。 そんな日が何日が続き、やがて子供達も狩りの時は単独でも行動できるようになっていった。 ある日いつものように親子で狩りに出かけたとき、一匹の子まりさが森の外れの方まで行き奇妙な音を聞いた。 ・・・ガガガガガガガ・・・・・ 今まで聞いたことのないようなゆっくりできない音だった。 「ゆっ?このおとはなんだかゆっくりできないよ!ゆっくりやんでね!!」 そんなことを言っても止む気配はない。子まりさは怖くなって両親の元へ帰り、そのことを報告した。 「そんなおとわたしたちもきいたことないよ!あしたどすにゆっくりきいてみようね。」 子供の言ったことが何だか分からないが、気になるので群れのドスに聞いてみることにして今日は帰ってゆっくりした。 次の日に家族は群れのドスまりさの元へ行き、“ゆっくりできない音”について報告した。 「ゆぅ・・・そんなおとドスもきいたことないよ、でもゆっくりできないおとがつづくようならなんとかしないといけないね!」 この群れのドスは古くから森に棲んでおり、群れの信頼も厚いゆっくりであった。 ドスは早速、そのゆっくりできない音を調べるために数匹のゆっくり達と子まりさをそこに行かせた。 だが調査に赴いたゆっくり達は二度と帰ってこなかった。 それからまた一月も経つとついにはゆっくり達のコミュニティにも“ゆっくりできない音”が響くようになり、また狩りにでたゆっくりが帰ってこない事件が続出した。 群れのゆっくり達はドスに“ゆっくりできない音”の正体を確かめるために同行してほしいと提案し、 行方不明になるゆっくりが続出していたため、黙って傍観してられないと判断したドスは調査に同行した。 ゆっくり達はより鮮明に聞こえるようになった“ゆっくりできない音”のする方向を目指したが、目の前の光景を見て絶句した。 ガガガガガガガガ・・・・・・ ドドドドドドドド・・・・・・ 今までゆっくり達の狩り場であった森の一角には既に一本の木も生えておらず、 人間達が見たこともない巨大な乗り物に乗り木を切り倒し、地面を均しているではないか。 そう、この“ゆっくりできない音”の正体は人間達のブルドーザーやチェーンソーによる開発に伴う騒音だったのだ。 「な゛に゛ごれ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!???」 「にんげんさん!ゆっくりやめてね!!きさんがいたがってるよ!!!」 この群れのゆっくり達にとって木は棲みかを与え、外敵や寒さから守ってくれる大切な存在である。 そんな木が人間達によって切り倒されていく・・・ゆっくり達には何をしているかは分からなかったが許せなかった。 だがゆっくり達がいくら叫んでも人間達は作業の手を休めようとしない。 怒りに震えたドスは人間達に叫んだ。 「ゆっくりやめてあげてね!!!」 流石に声が大きく、ロードローラーを操縦していた男がゆっくり達に気づいた。 「ん?なんだ、またゆっくりかと思ったら今度はやけにデカいのがいるじゃないか。」 「なんだじゃないよお!!きさんになにやってるの゛お゛お゛お゛!!?」 「何って見りゃ分かるだろ、木を切ってるんだよ。」 男は平然と答える。 「どぼじでぞん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」 「ゆっぐりしてないでざっざどやべであげてね!!!」 ゆっくり達も一緒になって抗議する。 だが男は「止めろって言われても俺にゃムリだ。もっと偉いサンに頼みな」と言って取り合わない。 「「じね!ゆっぐりじね!!」」 ゆっくり達は最後の手段とばかりにドスが止めるのも聞かずロードローラーに体当たりを仕掛けた。 勿論、そんなものが効くわけがないが。 男は煩わしそうな顔をして、躊躇いもせずにゆっくり達をローラーに巻き込み潰していった。 「「「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」 「どずぅ゛!ゆ゛っ゛ぐり゛だずげdゆ゛ぎぃい゛・・・」 ドスはその時悟った。今まで行方不明になったゆっくり達は皆このように嬲り殺されていったのだと。 事実、今まで行方不明になったゆっくり達は、このゆっくり達と同じように作業を中止させようとしたために殺されたのだ。 だがこうなってしまえばもはや関係ない。ドスは意を決してドスパークを撃つ態勢に入った。 「ゆっ、おじざん、よくもなかまたちをごろじだね!!」 「殺したっつかお前らが邪魔するからだろ・・・どっちか言うと事故だろこれは。」 男は悪びれる様子もなく答える。 「もんどうむようだよ!!しんだなかまたちのかたきはゆっくりしんでn・・・ゆ゛ぎゃ゛あ゛!!」 ドスが言い終わるのを待たずに男はロードローラーを進めドスも巻き込み踏み殺してしまった。 例え2m近い巨体を誇るドスまりさであっても鉄の麺棒の前では餡子の塊にすぎなかった。 「あーあ・・・こんなに汚れちまったよ、整備が大変そうだな、こりゃ・・・ おーい、またゆっくりを潰しちまった!水撒いてくれ、このままじゃ蟻が沸いちまうぞ!」 男はそう言うなりまた作業に戻って行った。 ガガガガガガガガ・・・・・・ ドドドドドドドド・・・・・・ ドスや調査に行ったゆっくり達も帰って来ず、ますます近づく“ゆっくりできない音”のために群れのゆっくり達は混乱状態に陥った。 やがて現れた人間や巨大な鉄の怪獣のためにゆっくり達は多くが殺され、生き残ったゆっくり達は森の更に奥へ逃れて行った。 その翌年、ゆっくり達のコミュニティがあった場所は巨大なゴルフ場に変わっていた。 毎日多くの人々がこのゴルフ場を訪れコースを回っていた。 そのゴルフ場には今でもたまにゆっくり達が現れる。 かつて森であったため、木々は所々残されており、そこで逃げたゆっくり達が暮らしていたのだ。 だがかつてのような広い森はなく、生き物は極端に少ない。そのため餓えたゆっくり達はコースへ出て人間にクラブで叩き殺されたり、 運悪く飛んできたボールに当たり命を落としたり、またある者は池に落ちてそのままゆっくり溶けて死んでいった。 ゆっくり達がまたコースへ出てきた。 大きな個体が2匹、やや小さな個体が7匹。内訳はれいむが5匹、まりさが4匹であった。 そう、かつてゆっくりの楽園があったときのあの家族だ。 このゆっくり達は子まりさがいなくなり、群れが崩壊した後も何とか森の奥へ逃げ、身を寄せ合って暮らしていた。 一年経てば通常大人になって、各々が家庭を持つのが普通だが、群れが崩壊し、森はコースによって隔てられてしまった上に、 極端に栄養状態が悪かったために子供も十分に成長できなかった。ここまで生き延びてこれたのは単衣に家族愛のお陰であろう。 ゴルフ場が出来てから、コースに囲まれた小さな島状の森に身を潜め、その小さな範囲で餌を探していたが、 やがて餌に困るようになり、ついにコースに出てきたのだ。 その時コースに人間がいなかったためゆっくり達はフェアウェイに降りてゆっくりし始めた。 「ゆー、ひさしぶりにゆっくりできるよ!」 「くささんもたくさんはえてるね!!」 「にんげんさんたちもいないから、みんなでゆっくりたべようね!」 家族は久しぶりに心からゆっくりできた。 やがて芝をついばみ始め少し経ったとき家族に異変が起きた。 「ゆ゛・・・な゛んだがゆっくり゛できな゛いよ゛・・・」 「みんなしっかりしてね!・・・ゆ゛べぇ゛え゛え゛え゛!!」 ゆっくり達は嘔吐し始め、やがて死んでいった。 「も゛っ゛どゆ゛っ゛ぐり゛じだがっ゛た゛よ゛・・・」 普通、ゴルフのコースに生えている芝はその青々しさを保つためや、雑草を除くために、 除草剤やその他多くの薬品が散布されている。異物に対する抵抗力の弱いゆっくりにとっては劇薬以外の何物でもない。 だがこんな光景はこのゴルフ場内では頻繁に見られることなのだ。 かつてゆっくり達の楽園であった森は既にその姿を失い、ゆっくり達も激減していった。 最早ここには二度と「ゆっくりしていってね!!!」のこだまが響くことはないだろう。 Fin どうも、またまた駄文にお付き合い頂きありがとうございました。 人間による開発とそれに翻弄される生物をゆっくりという形を借りて書いてみました。 コースに除草剤やら撒いているというのはうろ覚えです・・・ 確かそうだったとは思うのですが、書き終わってから不安になるってどういうこったいw 過去作品 男と一家 きめぇ丸の恩返し 丙・丁 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2150.html
30年前、人類は突如として現れた謎の生物『ゆっくり』の脅威に晒された。 全長2m~4m、幅3m~6mのその巨大な侵略者は本当に振って湧いたかのように突然人間の住んでいた領域に現れた。 発生源は不明、餅のように柔らかい球体に顔を貼り付けたようなそれはさながら巨大な生首だった。 その肉体を形作っているのは、小麦粉を練った皮の中に餡子がたっぷりとつまった物 そう、驚くべきことに彼等は饅頭だった。 その現代科学をあざ笑うかのような無軌道摩訶不思議ぶりは 何人もの有望な研究者を狂わせ自殺させるという痛ましい事件を呼び起こした。 しかもただの饅頭ではない。 その表皮に拳銃などの通常兵器は通じずロケットランチャークラスの兵器を用いてやっと体に傷がつく。 最新の戦車でさえ一対一では場合によっては遅れを取る。 生身の人間には太刀打ちできる相手ではない。 そしてその強靭さ以上に驚くべきことに、ゆっくりは人の言葉を用いた。 「ゆっくりしていってね!」 それが初めてゆっくりと出逢った男がゆっくりから聞いた言葉だった。 このことから、その巨大な怪生物は以後『ゆっくり』と総称されるようになる。 なのでゆっくりとの対話による和解も試みられたが その天敵を持たない強さからその性分は他の種族に対して傲慢極まりなく そもそもゆっくりは小さな家族的集団しか作らないためいくら対話してもキリが無く大抵の場合破綻した。 そのことを人間がこれまでやってきたことのしっぺ返しと揶揄する識者も居たが やがて自分にも脅威の及ぶ頃になると彼等も他の大勢と同じように自分を棚に上げてゆっくりを口汚く罵った。 傲慢な者同士の対話などうまく行くわけは無かったのかもしれない。 いくら強力なミサイルを使って辺り一帯ごと焼き尽くしても、その場所にまた別の場所からゆっくりが移り住んで 人類は逆に自分たちが住める土地を失っていった。 そうして至る所に突如発生しだすゆっくりにより人類は次々と生活圏を追われ 人類は辛うじて自衛を可能とする力を持っていた都市部へと追いやられた。 多くの人がこのまま人類は地上の覇権をゆっくりに譲り渡し、細々と生きて行くしかないかと思われた。 だが、ある天才の発明により人類に逆転のための炎が燈る。 ゆっくりを研究していたとある女性研究者の手により ゆっくりを長期に渡って完全な休眠、仮死状態にする薬品 ゆっくり休眠剤『ヤゴコロス』が発明されたのだ。 世界中が都市部内の工場を『ヤゴコロス』を製作するために作り変えた。 これを一帯に散布することによりゆっくりをほぼ完全に無力化することに成功する。 そして人類は再び地上の覇権を取り戻した。 だが、問題は山積みだった。 『ヤゴコロス』は非常にコストが高く、また定期的に投与しないと休眠状態を維持できない。 また不可解なことにゆっくりはそれまで居なかったところ、制圧したはずの場所からも突如発生し続けた。 人間は一時的に地上の覇権を取り戻したもののその覇権を守るための刃を必要としていた。 鉄の臭いがする。 鉄の臭いは好きだった。 普段かいでいる甘ったるい臭いと全く逆なところが特に気に入っている。 俺はポケットやら何やらが色々ついたダークグリーンの服を脱ぐと 専用のスーツに着替えていった。 体にピッタリと密着するそのスーツは、一言で言うと所々に堅いパーツのついたスウェットスーツだ。 色はグレーの地に所々暗めの青、専用にあつらえているため俺の体に完全にフィットした。 俺は背中のチャックをあげると扉を開けてヘルメットを片手に抱え歩き出した。 通路を歩き格納庫へと入ると、整備士たちが駆け回る慌しい喧騒を無視して 迷うことなくまっすぐに自分の機体の元へと向かう。 甘い臭いが鼻腔をくすぐった。 機体の前に立って見上げる。 機体のハッチは高さ3mのそのボディの一番上にある。 毎回乗り降りが大変なのだが、構造上そう設計せざるを得ないので仕方ない。 最初の頃は登るたびに一々文句も言ったものだが今では黙して淡々と梯子を登りハッチを目指す。 手動で黒い扉を開けると、立てひざをついて機体の頭頂部に設置されているロックを解除した。 そして重々しいハッチを開けて俺は機体の中に乗り込んだ。 ボスンとパイロットシートの上に背中を預ける。 ずっと思っていたのだが、この中では甘い臭いはしないのは少々奇妙なものを感じる。 中にはコードで繋がれたリングが何個もある。 その形状から拘束具などと揶揄されるソレはコレを操縦するための要だ。 実を言うと、このスーツのシンプルな構造といくつかのパーツもそのための物だ。 俺は手首や足首にあるパーツに次々とそのリングを接続した。 全てのリングを接続したのを確認して、俺は脇に置いておいたヘルメットを被った。 そしてヘルメットに備え付けられている通信システムを起動させると言った。 「スタンバイ完了、これよりジャックを開始する」 『了解、Bjh開始してください』 形式的な文言を言い終わると俺は目を瞑り力を抜いていった。 ゆっくりと溜め込んでいた息を吐いていき、鼻から吸った。 格納庫の甘い臭いが鼻腔をくすぐる。 「嗅覚…同期」 体の力が限界まで抜けきった時、俺の体を外の熱気が撫でた。 「感覚、同期」 順調に行程が進んでいくことに満足して唾を呑む。 甘い味がした。 「味覚、同期」 耳を澄ましていくと格納庫の喧騒が聞こえてくる。 「聴覚、同期」 俺は通信を入れた。 「同期完了、視覚データの転送を」 『了解、視覚データ転送します』 ゆっくりと目を開くと、ヘルメット全体にさっきまで見ていた格納庫の映像が映し出された。 たださっきと違う点を上げるならば、少々目線が高いことだろうか。 さっきは見上げるようだった整備士の中年の大男も今では遥か下に見下ろしている。 俺は進路に障害物の無いことを確認すると言った。 「ジャック完了」 『Bjh完了を確認、ハッチを開放します』 「了解、ゆっくりまりさ、出ます!」 俺は不敵な笑みを浮かべると、ぼいんぼいんと跳ねながら格納庫から発進した。 人類は、ゆっくりに対抗するための刃を欲した。 しかしこれまで人類が作り上げてきた力はゆっくり相手には余りに脆弱すぎるものと 強力すぎて周りまで傷つけてしまうものばかりで帯に短し襷に長しといった有様だった。 だが人類はゆっくりを相手にするのにもっともふさわしい力を手に入れたのだ。 そう、ゆっくりそのものである。 しかしゆっくりはそのまま使うには手に余った。 だからゆっくりの中身を改造して、その脳を侵略してゆっくりに手綱をつけて使役することにしたのだ。 それをゆっくり休眠剤『ヤゴコロス』は可能にした 『ヤゴコロス』を使い休眠状態にしておいたゆっくりをゆっくりの内部に入力デバイスを埋め込む。 そして薬品の量を減らしてゆっくりを半休眠状態にする。 ここからがさっきやった『ジャック』『Bjh』と呼ばれるものだ。 『Bjh』とはBean jam hijackの頭文字からとったもので、要するにゆっくりの餡子をのっとるということだ。 入力デバイス内に人間が乗り込み、自分の感覚を通して半休眠状態のゆっくりの脳を侵略し支配権を奪っていく。 完全に支配権を奪ったところで、今度はゆっくりを半覚醒状態にして五感をのっとられたゆっくりを動けるようにする。 後は操縦者の思うがままに、その手足となってゆっくりは動かせる。 とは言っても所詮操り人形を操るようなもので、完全に自由自在というわけには行かない。 だがそれでも訓練次第でかなり自由に動かせるようにはなる。 スウェットスーツのようなパイロットスーツもゆっくりとの感覚を共有しやすくするための ゆっくりと人間の間にある変換機のような役割を担っている。 人類はこの人の手で動くゆっくりを饅頭兵器、すなわちSteamed bun armsの頭文字をとって Sba、もしくはSb兵器と呼んだ。 そしてそれに乗る人間のことをSb乗り または餡子を乗っ取る人という意味でBean jam hijackerを略してBean jackerと呼んだ。 まあ年を取った人は見も蓋も無く饅頭乗りと呼んだりもする。 これの副次的効果として半休眠状態をデフォルトとすることで『ヤゴコロス』の使用量を減らすことも出来た。 こうして人類はゆっくりと戦うのにふさわしい刃を手に入れ、本格的な反撃を開始した。 そうしてゆっくり駆逐戦、後に第一次ゆっくり大戦と呼ばれる戦いは開始し 15年ほど前に以前人間が生活していた地域を殆ど人の手に取り戻して大戦は終焉した。 大戦を人の手に導いたのはやはり人の操縦するゆっくりを主力にした特殊部隊だった。 ゆっくりが現れ始めてから30年、ゆっくりに人が打ち勝ってから15年 俺は母国の軍隊に、ゆっくりのパイロットとして入隊していた。 ゆっくりとの戦争があった時は俺はまだ小さな子どもでその頃のことは良く覚えていない。 軍隊に入ったのも別に何か特別な理由があったわけではない。 偶然受けた適性検査に受かってそのまま入っただけだ。 そんな軽い気持ちで何故俺が軍隊生活を続けられているのか。 「敵機を視認、これより戦闘を開始します」 『了解、戦闘を開始してください』 俺は足を弾ませ目の前のゆっくりに対して直進した。 予想外に早いこちらのアプローチに驚いたのか、目の前のまりさは驚愕の表情を浮かべている。 そのまりさがやっと対処をしようと動きだした時にはもう大勢は決していた。 俺はまりさの眼前に大きくジャンプし、その勢いで真上に跳んだ。 体一つ分ほど俺の体が宙を舞う。 俺は相手のゆっくりまりさの帽子にとび蹴り ゆっくりの感覚的には底部の端に力を入れてすこし伸ばしてする体当たりが蹴りなのだが それをしてまりさの帽子を叩き落し、まりさの頭の上に乗っかった。 ゆっくり同士の戦いにおいて、これだけでほぼ勝敗は決する。 後は上から数度ジャンプして踏み潰してやればツブレ饅頭の出来上がりだ。 「ど、どおぢでぞんなにゆっぐりぢでないのおおおおおお!?」 悲鳴を上げるまりさに対して俺は言った。 「あんたが遅すぎるのさ」 [まりさがゆっくりしすぎてるんだよ!!] 俺の言葉が俺の操縦するゆっくりまりさを通して、ゆっくり言葉で喋られた。 操縦者が外に向けて言った言葉は、このようにゆっくりの言葉に変換されてゆっくりによって喋られる。 『そこまで、訓練を終了してください』 俺は相手のまりさの頭から降りて、格納庫へと戻るために跳ねていった。 「同期…解除」 手のひらを握ったり広げたりしながら自分の感覚が自分の手をちゃんと動かしていることを確認してから もう外の景色を映していないヘルメットを外し息を吐いた。 面倒な行程だが、これをしておかないとうっかりゆっくりと同期したままヘルメットを外したりしようとして 妙な事故を招いてしまうこともある。 俺もド素人の頃に一度やって格納庫の備品を壊して始末書を書かされた。 さて、さっき言いかけたそれほど目的意識の無い俺が軍隊でやっていけているのかというと つまるところ、それなりに才能があったからだ。 ただしゆっくりの操縦に関してだけで他は平均かそれ以下といったところだが それでもゆっくりの操縦を出来る人間は少ないので重宝される。 人類は地上の覇権を取り戻したものの、まだ自然発生するゆっくりはなくならない。 また、ゆっくり休眠剤『ヤゴコロス』で休眠させているゆっくりを駆除するにもそれが出来る兵器は金がかかる。 かといってそのままにしておいてもゆっくり休眠剤『ヤゴコロス』を定期的に散布せねばならず金がかかる。 なので戦争が終わってから十五年経った今でもSb乗りは引っ張りダコだ。 それから数日後、俺に辞令が下った。 「転属…ですか?」 俺は上官に尋ねた。 「ああ、書類に目を通してから荷物をまとめておいてくれ」 それだけ言って書類を俺に渡すと上官は全て済んだというように立ち去っていった。 俺は面倒だななどと考えながら頭を掻いて書類に目を通した。 転属先は南の方にある大戦前からある古い基地だ。 元々は合衆国の基地だったが、大戦時の混乱によりいつの間にかわが国が実質的に管理運営している。 どこも自分の国のゆっくりに手一杯で、他の国までどうこうしようという余力は無い。 なので合衆国もその基地にこだわらずに放置してしまっているのだろう。 転属は一週間後 それまでにそれほど多くは無い荷物をまとめなくてはならず整理整頓の苦手な俺は溜息をついた。 転属の何が嫌かといえばやはり人間関係の再構築だろう。 特に、ゆっくり操縦士は重用されている割に若者が多い。 ゆっくりと同期するという行為が自我の確立した熟年よりも 若くて自我のやわらかい人間の方がやりやすいからと言われているが科学的に証明はされていない。 まあそんな訳で一般の、特に中年くらいの兵隊からの風当たりは強かったりするのだ。 ここでも大分苦労してやっと操縦士以外の何人かと馴染んできたところだったので 正直に言うと転属はしんどい。 が、そのことで上に文句を言えるほどの立場も俺には無い。 なのでそれなりの覚悟をして、かなり肩肘張りながらこの基地にやってきた。 軽く挨拶だけ済まして特に打ち解けようとすることも無くふらふらと格納庫の方へやってきた。 これから俺の乗る機体も見ておきたいという、別にそれだけの理由だ。 「俺タクヤってんだ!渡邊タクヤ タクヤでいいぜ?オマエ歳いくつ?タメ? まあどうでもいいや、あんま歳かわんなそーだし敬語とか無しな? ゆっくりの整備士やってるんで多分オマエの担当になんじゃないかなと思うわけ なんていうかビビっと運命って奴? ってか今専属無い奴俺だけだしさーってことでヨロシクゥ☆」 捲くし立てながらぽんぽんと肩を叩いたりと 異常なまでに馴れ馴れしいその整備士の態度に俺は正直、「なんだこいつ」と思いながら眉を潜めた。 「あー、その 俺の機体見に来たんだけど…」 俺はマシンガンのごとく繰り出されるその整備士の言葉の縫い目を見つけて控えめに目的を伝えた。 「あーはいはいはい命を預ける愛機のことを一刻も早く知りたいって訳ねオーケーオーケー 多分あのまりさじゃないかな、他に空いてるのは無いし」 そういってそいつは斜め後ろに陣取っているゆっくりまりさを指差した。 俺はその整備士を置いて、そのゆっくりまりさに歩み寄った。 肌の艶から見て整備はきちんとされているようだ。 手で触った弾力から考えても生育は良好 そう悪くない いや、むしろ何故こんないい仕上がりのものがエンプティになっていたのか疑問に思うくらいの機体だ。 「よろしく頼むぜ、相棒」 俺は何の気なしにそんなことを呟いた。 「おっけー!任せてけって!」 オマエじゃない。 そんな感じで、鬱陶しいのが一人懐いてきたものの 俺は引越し後で忙しいというのを理由に訓練時以外は殆ど同僚達とは接触しなかった。 接触すれば波風が立つだろう。 まず新人としての注目が薄れてからじっくり馴染んでいくのがいい。 特にこの基地は高齢の隊員が多いようなので慎重に行こう。 そう思って周りに反感を抱かれない程度に意識して避けていた。 意図してやっているとはいえ宙ぶらりんの居心地の悪い状態の続いていた日のこと。 遂に俺にこの基地に転属されて初めてのスクランブルがかかった。 「坊主!仕事だ!郊外に野生のゆっくりが出やがった!」 ヒゲ面の上官、山崎源五郎二等陸曹の言葉を聴きながら 既に専用のパイロットスーツに着替えていた俺は格納庫へ向かっていた。 山崎源五郎二等陸曹は定年間近の大分年を食った男で いかにもな傷だらけの浅黒い肌と筋肉 そして体毛と酒臭さを供えた男臭い男をそのまま体現したような男だ。 他と同じようにこの人のこともなるべく避け様と思っているのだが 小ざかしい俺の意図など意にも介さずに向かってきてやたらと呑みに誘ってくる人だった。 俺のことは名前ではなく坊主と呼ぶ。 二十歳過ぎて坊主と呼ばれるのは勘弁して欲しいのだが 上官だし顔を見合わせるとどうにもその男臭さに気圧されて指摘出来ずに居た。 「数は何匹ですか?」 「確認されたのは二匹だ、まあそこらに隠れてるかもしれんが こっちで出せるのはオマエだけだ 後は出払ってるか帰ってきたばかりで休養中ってとこだ いけるな?」 「はい、問題ありません 俺一人で充分です」 「言ったな坊主 よし、トレーラーに積むからとっとと糞饅頭に乗って来い!」 「了解しました」 走りはしないが早足にゆっくりの方へと向かう。 ゆっくりの後ろに立つと、その金色の髪の間から垂れている縄梯子を掴んで上っていった。 前はアルミ製だったので最初は面食らったがこの縄梯子にも既に慣れて上るのに5秒とかからない。 黒い帽子についた扉を開けてハッチを開きコックピットへ滑り込む。 すぐに感覚共有用のデバイスに接続してヘルメットを被り呟いた。 「スタンバイ完了、これよりジャックを開始する」 目を瞑り体の力を抜いて鼻から息を吸う。 「嗅覚…同期、触覚、同期 味覚同期、聴覚同期」 感覚を共有させていく順番は人それぞれで、俺は嗅覚から同期させていくのが癖になっていた。 余談だが嗅覚から行く人は結構珍しいらしい。 それにしても、こちらに来てからの訓練で分かってはいたがこのまりさとはこれまでになく同期がスムーズに行った。 どうにも俺とこのまりさは相性がいいらしかった。 「早く視覚データを、ハッチも開けて下さい」 『了解しました、これより視覚データを転送します』 すぐに視覚データがヘルメットに転送され格納庫の映像を映し出した。 それと同時に格納庫のハッチも轟音を立てながら開かれる。 「ジャック完了、ゆっくりまりさ、出ます!」 [ゆっくりいくよ!] 俺はまりさから感覚を奪い去り、外へと飛び出した。 巨大になった体が否応無く巨大な力を手に入れたのだということを感じさせる。 俺は専用の、だが旧式の大型トレーラーに乗り込むと目を瞑り神経を集中した。 『坊主!どうだ、緊張してるか?』 山崎二等陸曹からの通信が入ってきた。 「いえ、実戦は初めてでは無いので大丈夫です」 野生のゆっくり二匹、実戦では一匹しか相手にしたことは無いが 訓練では3対1で勝った事もある、なんら問題ないはずだ。 それでも神経が昂ぶって仕方が無い。 それを見透かされたのか、と思うと心が読まれているようでどうにも座りが悪かった。 「嘘付け!オマエのゆっくりを見りゃ誰だって緊張してるのがわかるぜ!」 なるほど、そういうことかと俺は頷くと同時に まりさとの相性が良すぎるのも考え物だと思った。 以前はそこまでダイレクトに心情がゆっくりに表れてしまうほど細かい機微を再現するようなことはなかったのだが。 それとも単にこの山崎二等陸曹が図抜けて鋭いだけなんだろうか。 そうこうしているうちに、俺を乗せた旧式の大型トレーラーは郊外のゆっくりの発生した地点に到着した。 場所は郊外のさらに外れの広さだけはある寂れた場所。 近くにはクヌギなんかが群生した小さな林もあった。 所々に見える古いコンクリートの欠片や床から上の無い民家の跡から考えて ここも昔はそれなりに栄えていたのかもしれない。 だが30年前に人類が都市部に追いやられた際に家や建物はゆっくりに踏み潰され こんな風に人気の少ないだだっ広い場所がたくさん生まれた。 その殆どは未だに復興しておらず、そんな中ではここはまだ盛り返している方だった。 民家は半径1kmに三軒ほどで通報者含めて避難は完了済み。 多少暴れて周りに被害が出ても問題ない、保険がおりるはずだ。 政府は人口がパンクしかけて問題が山のように出てきた都市部から離れて こういう土地を再び栄えさせようとする人間には寛大なのだ。 『いました!ゆっくりです!』 『種類は?つがいか?』 『それぞれまりさ型とれいむ型です! 恐らくつがいなんじゃないでしょうか?』 『だそうだ坊主』 「了解しました、直ちに駆除を開始します」 俺は跳ねると頭を打つので這いながら大型トレーラーから降りると野良ゆっくりに対して向き合った。 俺のことを見つけたゆっくりれいむとまりさは、こちらを見てこう言った。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 初めて人類に接触したゆっくりが最初に言ったというあの言葉だ。 俺は息を軽く吸うと、腹の底から思いっきり言ってやった。 「あいにくと、この地球上にお前等の安穏の地は無い お前等はここで排除する!」 [ゆっへっへここは俺のゆっくりぷれいすなんだぜ!ゆっくりでていくんだぜ!] 「どおぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおおお!?」 「れいむだぢゆっぐりぢでだだげなのにいいいいい!!」 せっかく気張って言ったのに変換後の会話の間抜けさにガックリと肩を落とす。 『坊主!そいつ乗ったまま啖呵は切らないほうがいいぞ 情け無いことになるからよ』 「今痛感してます」 俺は半眼で呻いた。 本当にいらんことを言ったと後悔する。 無駄なことをしたと嘆息しながら 気を取り直して標的のゆっくり二匹を見る。 大きさは、高さ3m横幅5m程と実に平均的で種類もれいむ種とまりさ種の組み合わせという 最もオーソドックスで普遍的な物だった。 これといって見るべきところも恐れるようなところも見当たらない。 ならば二対一でも問題ないだろう。 野生のゆっくりに対して何故数の上で不利にも関わらず俺が余裕を持っているのか。 それは訓練をしているというのもあるが、それは数の不利を完全に覆せるほどではない。 むしろ人間の扱うゆっくりはどうしても人の意思を伝達するためにわずかばかりの遅れが生じるため身体的能力においては劣る。 それでも人間の扱うゆっくりは野性のものに対して優位に立てるのだ。 それは人類が高いとはいいがたい身体的能力で他の強大な力を持つ生物に対して優位に立てた理由と同じことだった。 「ぷんぷん!れいむたちのゆっくりぷれいすなのにきゅうにでてけなんてぜんぜんゆっくりしてないよ!」 「ゆー!だいたいそのぼうしからしてゆっくりしてないよ!」 確かにこのまりさの言うとおりゆっくりから見ればこのとんがり帽子は珍妙なのだろう。 鍔は曲がっているし先の部分も普通のゆっくりからみれば尖り過ぎている。 まあそれは構造上仕方ないことだ。 「アウェイクン」 ゆっくりに備え付けられている一部の装備は意識しながら音声入力をすることで操作可能だ。 手を動かそうとするとゆっくりの方が動いてしまうので通常のボタンなどによる入力方法は使いづらく 苦肉の策でこういった入力方式をとらざるを得ないらしい。 音声は一応個々人で変更可能だが俺は面倒なのでデフォルトのままにしてある。 俺が指示すると、頭にコツンと棒が当たる感触と共に頭上の黒いとんがり帽子が真上に飛び上がった。 ぽかんと口を開けるまりさを他所に俺は体を捻って、ゆっくりと落ちてくるとんがり帽子の、その中から伸びる棒に食い付いた。 そしてとんがり帽子の先をまりさに向けて構えると、そのまま一直線に突撃する。 一瞬後には自分の腹に深々と突き刺さった帽子を愕然とした表情で見下ろすまりさがいた。 「ど、どおぢでぼう゛じがざざっだりずるのおおおおお…!?」 何故野生のゆっくりに対して人間の扱うゆっくりが有利であるのか 要は武器を持っているということだ。 ゆっくりまりさの帽子を加工・コーティングして作り上げた硬化饅頭皮製帽子型突撃槍。 帽子に支柱が通してありこちらの指令に応じて伸縮させて口に咥えて振り回せるゆっくりまりさの主要武器だ。 ゆっくりの研究を進めていく過程で副次的に発見されたこの武器に用いられている新素材は非常に堅く その上比較的軽いため発見当初は技術革新だのなんだのと持て囃された。 だがさらに研究を進めていくにつれて、すぐに劣化する、温度変化に弱い、加工するのが難しい 安定供給するためにはゆっくりの養殖が不可欠、そもそもコストがかかる 生産・加工にもゆっくりの飾りそのままの形を保たないと時間がかかるetcetc 山のような問題点が発見された。 結局いまだにこのかつての新素材を用いているのは対ゆっくり用の武器くらいだ。 それも使いこなせるのは同じゆっくり位なのだ。 この槍だってゆっくりの体重と力で振り回すから対ゆっくり用の武器足りえているが 他のものにとっては雨宿りくらいにしか使えない。 散々扱き下ろしてきたがそれでも対ゆっくり戦においてだけは有用なことは確かだった。 「げふっ、ごぱぁ」 まりさは内部から槍で圧迫され口から餡子を吐いた。 驚愕の表情は既に失せ、土気色の顔で焦点の合わない虚ろな瞳で視線を空に漂わせていた。 「ま゛り゛ざのあんごがあああああ!?」 れいむは伴侶の身に起こった突然の凶事に目を見開き悲鳴をあげた。 後腐れ無くこのままれいむの方も突き殺してしまおうと槍を引き抜いた。 直径一メートルはあろうかという巨大な傷穴から大量の餡子が零れ落ちた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!!」 れいむがまりさの傷口に駆け寄り、舌を使って必死に餡子をまりさの体の中にに押し戻そうとした。 しかしいくら舌を器用に動かしても舌の上を流れて餡子は地面に零れて行く。 傷穴に押し戻されたわずかな餡子も未だ止まることの無い餡子の濁流に押し返され体から抜け出していった。 「ま゛り゛っ、ま゛り゛ざああああ!!い゛や゛あああああ!!」 「おどどざあああああああああん!!」 未だ餡子に濡れる槍を構え直し、再び突撃しようと腰を深くした時 近くの森から体長1mほどの小さなゆっくりが現れまりさに駆け寄った。 「!?きちゃだめえええええええええ!!」 俺はその小さなゆっくりごとれいむを貫こうと飛び出した。 『まずい坊主!子持ちだ!小さいのは後にまわせ!』 通信が入ったがもう遅い、既に俺の槍は子れいむの体を貫く いや押しつぶしていた。 『畜生!!やっちまった!!』 山崎二等陸曹は何故か悪態をついた。 そんなに俺の腕が信用できないのだろうかと思って不快感に眉を潜める。 確かに大きい方のれいむは仕留め損なったが別に大きなミスではない。 このれいむをとっとと駆除してしまえばそんな態度を改めさせることも出来るだろうと俺は再び槍を構えた。 「れ゛い゛む゛のあがぢゃんがあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!! うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 「な!?」 [ゆ!?] 今まで一度も聞いたことの無い大地を揺るがすかと思うほどのれいむの雄たけびに俺は立ち竦んだ。 槍を持つ手、いや舌と唇が震えた。 『気をつけろ!もういままで倒してきたゆっくりと同じと思うな!!』 山崎二等陸曹が耳が痛くなるほどでかい声で俺に助言を送った。 「い、一体どういう…」 よく意味がわからずに俺は戸惑いながら聞き返した。 『母は強しだ!!』 「じねえええええええええええええええええ!!!」 山崎二等陸曹が叫ぶと同時に、鬼神のごとき形相で突進してきたれいむに俺はたじろいだ。 「っ!?」 [ゆゆっ!?] 辛うじて槍を斜に構えて体当たりを受け流したものの、その余りの迫力に呼吸が荒くなる。 汗や唾液で槍が滑らないように注意しながら穂先を突きつけて牽制しながら距離を取ろうとした。 「よ゛ぐも゛れ゛い゛む゛のあがぢゃんおおおおおおおおおお!!!」 だがそんなもの意にも介さずにれいむはこちらに向かって突進してくる。 このままこちらも突撃で応じるか一瞬迷うが もしこちらの突きを避けられた時あの勢いの体当たりをどうにかできるか不安だったので 再び槍でいなしてから間合いを取った。 「よ゛ぐも゛よ゛ぐも゛よ゛ぐも゛ぉ゛…!れ゛い゛む゛だぢばがぞぐでゆっぐりぢでだだげだどにぃ…!」 お前等が近くに居るだけで人間は恐ろしくて仕方が無いんだと心中で呻く。 「糞っ、隙が無い…!」 [もっとゆっくりしてね!] 「お゛ばえのぜいでゆ゛っぐぢでぎだぐなっだんだあああああああああ!!!」 意図せずして発動したゆっくり語変換機能がれいむの神経を逆撫でてしまった。 俺は舌打ちしつつ槍を咥えたまま横っ飛びに飛んでれいむの突進を避けようとした。 「う゛があああああああああああああああああ!!」 が、予想以上の速さで突っ込んできたれいむに、槍の穂を横から噛み付かれてしまう。 「しまった!」 [ゆぅ~!?] 俺は振りほどこうと頭を振ったが、れいむはガッシリと槍を咥えて離さない。 お互い槍を奪い取ろうと喰い縛り、力が拮抗しあってお互いに動けなくなった。 「くっ…」 俺は冷や汗を垂らしながら呻いた。 今は持ちこたえているが、さっきまでの戦いで向うの方が腕力が上なのは散々見せ付けられた。 このまま膠着状態を続けていればいずれ槍を奪われる。 そうなれば勝ち目は無い。 『坊主!大丈夫か!?』 トレーラーの山崎二等陸曹から通信が入る。 「すいません…厳しいです…!」 俺は情け無いことこの上ない気持ちで弱音を吐いた。 『仕方ねえな、なんとか援護するから切り抜けろ! 1、2の3でいくからタイミング合わせろ』 「…?了解しました」 俺はゆっくりに対抗できるような強力な装備があのトレーラーに積んであったかと疑問に思い首を傾げた。 ゆっくり以外の対ゆっくり兵器はそうポンポン使えるような兵器ではないのだが。 『1!』 そうこうしている内にもカウントダウンは進んでいく。 俺はそれまでなんとか持ちこたえようと歯を食いしばり目の前のれいむを睨みつける。 『2の!』 ひょっとして休眠剤でも積んでいたのかと思い当たり心中で合点する。 滅多に無いことだが作戦中にSbaの休眠剤が切れてしまう場合に備えている可能性も無くは無い。 それなら一応納得がいく。 『3!』 と思った瞬間トレーラーがゆっくりれいむの横っ腹に突っ込んだ。 トレーラーのコックピットがれいむの体にめり込んで、目の前のれいむの顔がひしゃげた。 いくら軍用とはいえ、トレーラーの体当たり程度でゆっくりが傷を負う事はまず無い。 衝撃は完全に饅頭側と餡子の弾力に吸収されてしまう。 が、それでも槍を咥えていた口の力を少し緩ませるには充分だった。 少し面食らったが兎にも角にもれいむから槍を奪い返した。 がっしりとくわえていた口からちゅぽんと音を立てて槍が抜ける。 そのままこちらに槍を引き込み、糸を引いていた唾を引きちぎる。 「マジかよ…」 目の前の事態に頭が時間差で追いついてきてやっと呻きながら 俺は未だトレーラーを頬に減り込ませながら驚愕の表情を浮かべるれいむの額に槍を突き刺した。 「も゛っど…ゆ゛っぐりぢだが…だ…」 か細い断末魔をあげるれいむから槍を引き抜くと、頭から滝の様に餡子を噴出しながらその勢いでれいむは後ろに倒れこんだ。 大地が揺れ、あたりに落ちているコンクリート片が震えた。 「任務…完了か」 ぐるりと周りを見回して、もうゆっくりが居ないことを今度こそ確認して 緊張を解いた俺は溜息を吐いた。 『危なかったな坊主!』 「ええ、お互いに」 元気そうな山崎二等陸曹の声に俺はよくトレーラーで突っ込んでピンピンしてるなと呆れながら返した。 『まあルーキーにしては上出来だ! とりあえず後始末は他の奴等に任せて帰って酒でも飲もうや! どうせ饅頭乗りは一度出撃したらリフレッシュやらなんやらで当分出撃できないんだしよぉ 徹夜だ徹夜!朝まで呑め!三日くらい二日酔いで頭ガンガンなるまで呑むぞ!』 山崎二等陸曹の語気の強さに 比喩じゃなく本当にそれくらい飲まされそうな気配がしたので俺は適当に言い訳を考えて断ることにした。 「あー、その、これから飲み会の準備するのも大変なのでまた今度に…」 『大丈夫だ、整備士の方の坊主に店の準備やら何やらやらせといたから』 渡邊め。 心中で毒づきながら、くたびれ切った体で俺はトレーラーに乗り込んだ。 ―――――――――――――――――――― 次回予告 山崎は大戦時の戦友にして合衆国軍の英雄ブライアンの来訪に沸き立つ。 だが、変わり果てたブライアンの姿に俺はゆっくり乗りの闇を見ることになった。 次回 緩動戦士まりさ 『英雄の末路』 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2562.html
楽園の終焉 現代日本注意 ドス登場 何とかという地方都市の近くに大きな森が広がっていた。 一昔前ならよく見られた動植物にとっては最後の楽園でもあった。 もっとも、今その森の主要な生物はゆっくりと呼ばれる最近になって大発生した謎のナマモノである。 都市や農村でも多く見られるが、ここまで野生のまま、人間との関わりを持たずに生活を営むゆっくりは最早そうはいないだろう。 この森に棲むゆっくり達の群れもその数少ない群れの一つであった。 最も、そのゆっくり達の繁殖力は凄まじく、食害によって多くの森が昔の姿を失いつつあった。 ここでも他の動植物の繁栄を押しのけるまでに数を増やしたゆっくり達が森の主要なナマモノとなった経緯がある。 今ではゆっくり達の楽園と言っても過言ではないだろう。 この森に棲む群れはドスまりさが治める数百匹単位の一つの群れである。 この群れは先にも述べたとおり、極めて野生のゆっくりの原型に近い生態系を保っていた。 というのも、この森は広く、森の大部分がとある富豪の所有地であったため、人間すらもめったに立ち入らず、外因によるリスクがなかったのだ。 森の深くなったところにゆっくり達のコミュニティが存在し、そこにはとあるれいむとまりさの番が暮らしていた。 この二匹は幼馴染であったため、仲がよくいずれは将来を誓い合う伴侶にと決めていた。 そしてつい最近、二匹がにんっしんしても耐えられるまでに体が成長したため、ついに互いにすっきりしあい、晴れて番いとなったのだ。 「まりさのあかちゃんとってもゆっくりしてるよー♪」 「れいむのあかちゃんもとってもゆっくりしてるね!きっとわたしたちににてゆっくりしたこになるよ!!」 朽ちた木の窪みの巣の中でこんな微笑ましい会話が続いていた。 そしてついに互いの子供達が生まれた。れいむ、まりさともに4体ずつ生まれ、二匹とも大満足である。 「「「ゆっくちちていってぃえにぇ!!!」」」 プチトマト程の大きさの8匹が元気よく挨拶した。 「「ゆっくりしていってね!!」 二匹の愛の結晶に涙を流して喜んでいた。早速互いの蔓を千切り、赤ちゃん達が食べられるように咀嚼し、ぺっと吐き出した。 赤ちゃん達は両親の吐き出した最初のごはんに群がっておいしそうに食べ始めた。 「「「むーちゃむーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!!」」」 そんな赤ちゃん達を見て二匹はほほ笑んだ。確かに苦しいこともあったし、これからも苦しいことがあるだろう、 だがこの赤ちゃん達がいればどんなことでも乗り越えられる。そう二匹は確信していた。 次の日からまりさは狩りに出かけ、れいむは子守りをしてまりさの帰りを待った。 毎日のように美味しいごはんを食べ、赤ちゃん達もゆっくり成長していった。 赤ちゃん達が生まれて一月半も経つと、8匹はソフトボール程度の大きさにまで成長し、もう狩りに連れて行ってもいい頃合いである。 その日は家族10匹で狩りに出かけ、小さな虫やトカゲ、雑草等を食べて家に帰った。 そんな日が何日が続き、やがて子供達も狩りの時は単独でも行動できるようになっていった。 ある日いつものように親子で狩りに出かけたとき、一匹の子まりさが森の外れの方まで行き奇妙な音を聞いた。 ・・・ガガガガガガガ・・・・・ 今まで聞いたことのないようなゆっくりできない音だった。 「ゆっ?このおとはなんだかゆっくりできないよ!ゆっくりやんでね!!」 そんなことを言っても止む気配はない。子まりさは怖くなって両親の元へ帰り、そのことを報告した。 「そんなおとわたしたちもきいたことないよ!あしたどすにゆっくりきいてみようね。」 子供の言ったことが何だか分からないが、気になるので群れのドスに聞いてみることにして今日は帰ってゆっくりした。 次の日に家族は群れのドスまりさの元へ行き、“ゆっくりできない音”について報告した。 「ゆぅ・・・そんなおとドスもきいたことないよ、でもゆっくりできないおとがつづくようならなんとかしないといけないね!」 この群れのドスは古くから森に棲んでおり、群れの信頼も厚いゆっくりであった。 ドスは早速、そのゆっくりできない音を調べるために数匹のゆっくり達と子まりさをそこに行かせた。 だが調査に赴いたゆっくり達は二度と帰ってこなかった。 それからまた一月も経つとついにはゆっくり達のコミュニティにも“ゆっくりできない音”が響くようになり、また狩りにでたゆっくりが帰ってこない事件が続出した。 群れのゆっくり達はドスに“ゆっくりできない音”の正体を確かめるために同行してほしいと提案し、 行方不明になるゆっくりが続出していたため、黙って傍観してられないと判断したドスは調査に同行した。 ゆっくり達はより鮮明に聞こえるようになった“ゆっくりできない音”のする方向を目指したが、目の前の光景を見て絶句した。 ガガガガガガガガ・・・・・・ ドドドドドドドド・・・・・・ 今までゆっくり達の狩り場であった森の一角には既に一本の木も生えておらず、 人間達が見たこともない巨大な乗り物に乗り木を切り倒し、地面を均しているではないか。 そう、この“ゆっくりできない音”の正体は人間達のブルドーザーやチェーンソーによる開発に伴う騒音だったのだ。 「な゛に゛ごれ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!???」 「にんげんさん!ゆっくりやめてね!!きさんがいたがってるよ!!!」 この群れのゆっくり達にとって木は棲みかを与え、外敵や寒さから守ってくれる大切な存在である。 そんな木が人間達によって切り倒されていく・・・ゆっくり達には何をしているかは分からなかったが許せなかった。 だがゆっくり達がいくら叫んでも人間達は作業の手を休めようとしない。 怒りに震えたドスは人間達に叫んだ。 「ゆっくりやめてあげてね!!!」 流石に声が大きく、ロードローラーを操縦していた男がゆっくり達に気づいた。 「ん?なんだ、またゆっくりかと思ったら今度はやけにデカいのがいるじゃないか。」 「なんだじゃないよお!!きさんになにやってるの゛お゛お゛お゛!!?」 「何って見りゃ分かるだろ、木を切ってるんだよ。」 男は平然と答える。 「どぼじでぞん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」 「ゆっぐりしてないでざっざどやべであげてね!!!」 ゆっくり達も一緒になって抗議する。 だが男は「止めろって言われても俺にゃムリだ。もっと偉いサンに頼みな」と言って取り合わない。 「「じね!ゆっぐりじね!!」」 ゆっくり達は最後の手段とばかりにドスが止めるのも聞かずロードローラーに体当たりを仕掛けた。 勿論、そんなものが効くわけがないが。 男は煩わしそうな顔をして、躊躇いもせずにゆっくり達をローラーに巻き込み潰していった。 「「「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」 「どずぅ゛!ゆ゛っ゛ぐり゛だずげdゆ゛ぎぃい゛・・・」 ドスはその時悟った。今まで行方不明になったゆっくり達は皆このように嬲り殺されていったのだと。 事実、今まで行方不明になったゆっくり達は、このゆっくり達と同じように作業を中止させようとしたために殺されたのだ。 だがこうなってしまえばもはや関係ない。ドスは意を決してドスパークを撃つ態勢に入った。 「ゆっ、おじざん、よくもなかまたちをごろじだね!!」 「殺したっつかお前らが邪魔するからだろ・・・どっちか言うと事故だろこれは。」 男は悪びれる様子もなく答える。 「もんどうむようだよ!!しんだなかまたちのかたきはゆっくりしんでn・・・ゆ゛ぎゃ゛あ゛!!」 ドスが言い終わるのを待たずに男はロードローラーを進めドスも巻き込み踏み殺してしまった。 例え2m近い巨体を誇るドスまりさであっても鉄の麺棒の前では餡子の塊にすぎなかった。 「あーあ・・・こんなに汚れちまったよ、整備が大変そうだな、こりゃ・・・ おーい、またゆっくりを潰しちまった!水撒いてくれ、このままじゃ蟻が沸いちまうぞ!」 男はそう言うなりまた作業に戻って行った。 ガガガガガガガガ・・・・・・ ドドドドドドドド・・・・・・ ドスや調査に行ったゆっくり達も帰って来ず、ますます近づく“ゆっくりできない音”のために群れのゆっくり達は混乱状態に陥った。 やがて現れた人間や巨大な鉄の怪獣のためにゆっくり達は多くが殺され、生き残ったゆっくり達は森の更に奥へ逃れて行った。 その翌年、ゆっくり達のコミュニティがあった場所は巨大なゴルフ場に変わっていた。 毎日多くの人々がこのゴルフ場を訪れコースを回っていた。 そのゴルフ場には今でもたまにゆっくり達が現れる。 かつて森であったため、木々は所々残されており、そこで逃げたゆっくり達が暮らしていたのだ。 だがかつてのような広い森はなく、生き物は極端に少ない。そのため餓えたゆっくり達はコースへ出て人間にクラブで叩き殺されたり、 運悪く飛んできたボールに当たり命を落としたり、またある者は池に落ちてそのままゆっくり溶けて死んでいった。 ゆっくり達がまたコースへ出てきた。 大きな個体が2匹、やや小さな個体が7匹。内訳はれいむが5匹、まりさが4匹であった。 そう、かつてゆっくりの楽園があったときのあの家族だ。 このゆっくり達は子まりさがいなくなり、群れが崩壊した後も何とか森の奥へ逃げ、身を寄せ合って暮らしていた。 一年経てば通常大人になって、各々が家庭を持つのが普通だが、群れが崩壊し、森はコースによって隔てられてしまった上に、 極端に栄養状態が悪かったために子供も十分に成長できなかった。ここまで生き延びてこれたのは単衣に家族愛のお陰であろう。 ゴルフ場が出来てから、コースに囲まれた小さな島状の森に身を潜め、その小さな範囲で餌を探していたが、 やがて餌に困るようになり、ついにコースに出てきたのだ。 その時コースに人間がいなかったためゆっくり達はフェアウェイに降りてゆっくりし始めた。 「ゆー、ひさしぶりにゆっくりできるよ!」 「くささんもたくさんはえてるね!!」 「にんげんさんたちもいないから、みんなでゆっくりたべようね!」 家族は久しぶりに心からゆっくりできた。 やがて芝をついばみ始め少し経ったとき家族に異変が起きた。 「ゆ゛・・・な゛んだがゆっくり゛できな゛いよ゛・・・」 「みんなしっかりしてね!・・・ゆ゛べぇ゛え゛え゛え゛!!」 ゆっくり達は嘔吐し始め、やがて死んでいった。 「も゛っ゛どゆ゛っ゛ぐり゛じだがっ゛た゛よ゛・・・」 普通、ゴルフのコースに生えている芝はその青々しさを保つためや、雑草を除くために、 除草剤やその他多くの薬品が散布されている。異物に対する抵抗力の弱いゆっくりにとっては劇薬以外の何物でもない。 だがこんな光景はこのゴルフ場内では頻繁に見られることなのだ。 かつてゆっくり達の楽園であった森は既にその姿を失い、ゆっくり達も激減していった。 最早ここには二度と「ゆっくりしていってね!!!」のこだまが響くことはないだろう。 Fin どうも、またまた駄文にお付き合い頂きありがとうございました。 人間による開発とそれに翻弄される生物をゆっくりという形を借りて書いてみました。 コースに除草剤やら撒いているというのはうろ覚えです・・・ 確かそうだったとは思うのですが、書き終わってから不安になるってどういうこったいw 過去作品 男と一家 きめぇ丸の恩返し 丙・丁 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/971.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 457 あるドスまりさの一生 とてもゆっくりした群れ/コメントログ」 己の過ちを知り、その上で絶望するクズ共…すっきりー -- 2010-06-21 11 31 03 善良なゆっくりが群れの長になってもなにもいいことないよね みんなが長にごはんを貢いでくれるわけじゃし、感謝されるわけでもなし -- 2010-07-21 18 24 52 何で全滅させるのか、勿体無い 反省したヤツを野に放せば善良なゆっくりが増えるかも知れないのに -- 2010-09-14 00 45 25 >れいむ種の子供達による合唱を絶賛する大人ゆっくりたち。 >次は子まりさたちによるラインダンスだ。そして子ありすによるとかいはミュージカルが予定されている。 虐待欲を刺激する名文章だと思う -- 2010-09-21 18 31 15 >反省したヤツを野に放せば うん、糞饅頭にもどるだけだな -- 2010-09-24 07 56 50 反省して野に放しても意味ないと思うぜ。 周りからゆっくりさせてもらうのが当たり前だと思ってた奴に野生を生き抜く力なんてないだろうしなー -- 2010-10-10 20 38 56 てんこのくだりで笑った。 -- 2010-10-13 18 55 56 これはおもしろい! 大変ゆっくりさせて頂きました 躾も出来ないようなものがドスになる資格はないって事だね あとクズ群れの巻き添え駆除される他の群れってのも見てみたかったw -- 2010-11-07 14 42 55 ↓↓↓↓↓ 確かに捕食種に半分以上食われたっていう子ゆっくりが ちょっと前まで能天気に合唱やラインダンス、とかいはミュージアム(笑) とかやってた馬鹿共だと思うとQNQNくるものがあるな。 -- 2010-11-28 17 46 08 ドスのために怒った会長の息子さんがナイス -- 2011-08-16 13 52 47 てんこぬるいじめして可愛がりたい -- 2011-10-12 01 22 11 てんこハアハアてんこハアハア。 -- 2012-04-20 22 32 53 おややくにからほごされるのをとうぜんとおもって ずっとぱそこんさんをさわってるおにーさんはこれをみてよくかんがえてね -- 2012-10-03 04 39 24 恐るる飼い主 悦ぶてんこ そして笑う俺 -- 2012-12-24 18 04 29 てんこが清涼剤だわー -- 2013-01-29 02 25 43 先代のドスが可哀相 やっぱりゆっくりは第二世代は糞だね -- 2016-03-19 21 26 32