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その日、ハレがバナナを収穫していると見知らぬおねーさんが話しかけてきた。 「ねえ、君。ちょっと、聞きたいことがあるんだけどいいかな」 とりあえず、一房丸呑みしようとしているグゥをを止めてからはしごを下りる。 「え、なに?」 「このあたりで近頃、変な出来事がなかった?」 随分おかしなことを聞くおねーさんだ。 「なかったと思うけど・・・」 「そう、ありがとう」 おねーさんは歩いていった。 「・・・・・・・」 「何だよその目は」 グゥがなにかイヤな目でハレを見ている。 「いや、ハレは彼女を見捨てるのかと思ってな」 「はぁ?」 「彼女が何を捜しているにせよ不慣れなジャングルでは見つけるのは大変難しいだろうな」 「そうだけど・・・」 「彼女が何も言わなかったのは初対面のハレに迷惑をかけたくなかったからであろう。だが、そういう人に助けの手をさしのべてもいいのではないか?」 「うっ」 「まあ、ハレも現代っ子だ。他人に無関心でもしょうがあるまい」 「あー、もうわかったよ」 おねーさんの姿はまだ見えていた。 おねーさんは最初はハレの助けを断ったがグゥがまた、とうとうと語ると少し考えてからハレ達の手を借りることにした。 このおねーさん、時空管理局というところから来た高町なのはという人で何でもロスト・ロギアとかジュエルシードとかを探す仕事をしているらしい。 ロスト・ロギアとかジュエルシードの話は人類の未来に関わるとか大げさな気もしたけど、なのはがかなり真剣だったのでハレはつっこまないことにした。 「それで、そのジュエルシードってのはどんなことをするの?」 「私が知っているのはね・・・・くっついた生物を巨大化させたり・・・」 なのはの後ろで巨大化するグゥ 「暴れて周りにある物を壊したり」 なのはの後ろで暴れるグゥ。 「周りにある物を吸収したり、融合したりってこともあったわ」 壊した物を飲み込むグゥ。 ハレはグゥを引きずって、少しなのはから離れたところに行く。 「お前、昔なのはさんになにかしたんじゃないだろうな」 「まさかー、グゥーはー、何もー、してませんよー」 置いておかれたなのはが手をメガホンにしてハレを呼ぶ。 「ねー、ハレ君。どうしたの」 「あははははははは。なんでもないですよ。なんでも」 グゥの事はひとまず置いておくことにした。 ハレが一番の狩りの名人である長老ならそういうことには気づいているのではないかと思いついたので長老に会いに行くことにした。 長老に会うとなのはの顔が引きつった。 反応の仕方がわからないというようだ。 「まさか・・・ジュエルシード?胸毛に関わる願望をかなえようとしたの?」 「そう思うのもわかるけど長老の胸毛は前からあんなだし」 「ほんと?」 「ほんとです」 長老の胸毛は相変わらずもさもさいっている。 「でも、何でこんなことに」 「それは、言葉では語り尽くせないいろいろなことがあったんです」 少し遅れてグゥが来た。 「よぉ」 「ひぃ!!!グ、グゥ様」 「今日はお前に聞きたいことがあってきた。全て包み隠さず話すがいい」 「は、はい。仰せのままに」 長老は青ざめて震えだす。 「ねえ、ハレ君。何で、長老さんはグゥちゃんをあんなに恐れているの?」 「それも、言葉では語り尽くせないいろいろなことがあったんです」 ハレはため息をついた。 グゥのおかげというか、グゥのせいというか、とりあえずそういうことで長老はいろいろ話してくれた。 森の南の方で動物が突然少なくなったらしい。 長老達は明日、森を調べに行くそうだ。 「もし、ジュエルシードだったら危険ね。早く南の方を調べに行かないと」 なのはは今度は危険なことになるのでハレ達をおいていこうとしたが、またグゥがもっともらしいことを話すとハレ達に協力をたのんだ。 南の森は本当に静かだった。 鳥や虫の声も聞こえない。 動物が全て消えてしまったようだ。 だから、その音にすぐに気づいたた。 「何の音だと思う?」 「地面を揺らしているような、叩くような・・・・走っているような・・・・」 地響きが最高潮になると、森の中をかき分けて巨大なマンイーターが現れた。 「うわああああああああ。なのはさん、なのはさん。あれ、あれ・・・・・あれ?」 いつの間にかなのはがいなくなっていた。 「あれ?」 巨大マンイーターも消えている。 「グゥ、なのはさんが消えた!」 一方グウは何もないところに向かってノックするように手を動かしている。 「むう」 おもむろに何もないところに向かって渾身のパンチ。 何もないところがガラスのように割れ、何もないところに穴がいきなりできた。 「行くぞ。ハレ」 「ちょっ・・・・まて」 有無など言えずグゥに引きずり込まれる。 「うわーーーーーー」 なのはは巨大マンイーターが現れたとき、はっきりとジュエルシードの反応をみつけた。 すかさず広域結果を作る。 「レイジングハート!セットアッ・・・・」 横に、結界の外にいるはずのハレとグゥがいた。 「なんで二人とも広域結界の中に?」 「いやそれが・・・・」 グゥは我関せずとマンイーターを観察している。 「おお、アレか」 グゥ手を叩く。 「何か知ってるんですか?グゥさん」 ハレの首から機械のような音が出そうだ。 「うむ、あれはグゥが夜の散歩をしていたときだ。空から何か青い石が落ちてきてな。それを拾ったのだ。さらに散歩を続けていると、かわいそうなマンイーターがいたので、その青い石をやったのだ」 「お前のしわざかーーーっ」 グゥの首をつかんでぶんぶん振り回す。 「はっはっは。大きくなったなー」 「なりすぎだーーー」 なのはは少しくらくらしてきたが、目の前のジュエルシードとマンイーターを片付けるのが優先だった。 「二人とも逃げて。ここは私がなんとかするから」 首にかけているジュエルシードに手を当てる。 「レイジングハート、セットアップ」 「ハレ、お前、なのはの変身シーン見ただろう」 「な、みてない」 ハレの顔が赤い。 「ほんとうかー?」 「ほ、本当さ」 グゥが一回りおおきくみえる 「ほうとうにー?」 ハレはグゥの目が見られなかった。 「・・・・見ました」 「やーい、エロガキー」 「やかましーーー」 普通は見えない物を見えるようにした本人が怪しげに踊っていた。 バリアジャケットを装着し終わると何故か二人が言い争っていた。 その二人をかばい、なのははレイジングハートを構え砲撃を始める。 思ったよりも効果がない。 「なら、ディバインバスター。シューーート」 マンイーターの花びらの一部ががちぎれ飛ぶ。 これも効果は少ない。 「まあ、待て」 グゥがなのはを止めた。 「この、広域結界とやらも端はあるのだろう。そこにアレが行ったら外に出られるのではないか?そうなるとまずいのだろう?」 「そうだけど」 巨大マンイーターの力なら広域結界の端まで行けば結界を破壊もできる可能性は十分に高い。 だから、それまでに倒してしまわないといけないのだがランクを落としている今のなのはではマンイーターの進行速度が破壊スピードを上回っている。 もし、結界から外に出られたらハレの村に被害が出る。 「だから、ここはやつを足止めしながらがよかろう。そのために、巨大ロボットを使う」 「はぁ?そんなものあるわけ・・・」 そのときハレはグゥの目の中に何かが動いているのを見た。 「えー、またここ使うの?物置代わりにするもんじゃないね」 「ねえ、ねえ、これはどこに置くの」 「ここたいね。副座にするっちゅーとった」 「またそれかーーーー」 目の前が暗くなった。 そこは、いかにもなコクピットの中だった。 なのはは後ろのシートに座ってあたりをきょろきょろ見ている。 「さあ、ハレ。あれを倒すのだ」 「なにいってんだよ。だいたいな、いくら俺たちが乗っても大きさがグゥじゃなー」 「よくみろ」 「ん?」 窓から外を見ると地面遙か下。 おまけにグゥの体はリベット打ちの金属らしき物になっている。 「これくらい大きくなれば十分だろ」 「ま、まあ、これなら」 なのはがおそるおそる口をはさんできた。 「あの、私は何をすればいいのかな」 「その杖を持って、先ほどのように攻撃すればいい」 「こう?ディバインバスター」 グゥロボの口が開く。 桃色のビームが放たれマンイーターを茎を削る。 「ええ?で、でもこれならいけそう。ハレ君。あいつを押さえて」 「え?う、うん」 グゥロボを走らせ、マンイーターと四つに組ませる。 「なのはさんて順応早いですね。突然魔法を使えるようになったってことありませんでした?さっきの変身とか・・・」 「今は余計なことはいわない」 「はい」 ビームの連射がマンイーターを焼いていく。 マンイーターはもがくがグゥロボのパワーはつよい。 パワーに対抗できないマンイーターは触手の半分でグゥロボを殴り出す。 「いだだだだだだだだだだ」 ハレは両方の頬に激痛が走った。 「言い忘れたが、人機一体の極意を促すためにロボへのダメージはハレの痛みに変換するようになっている」 「余計な機能をつけるなーー」 ほっぺたが赤く腫れ上がっている。 「でも、これじゃハレ君が持たないわ。グゥちゃん。どうにかならないの?」 「仕方ないなー。必殺技を使おう」 「そんなモノがあるなら最初から使えよ」 まだ叩かれているハレがうめく。 「こういう物は順番があるだろう。そこのボタンを押すがいい」 赤いボタンが押されるとグゥロボの口が開き・・・・マンイーターを飲み込んだ。 コクピットに付けられていた引き出しが開きジュエルシードが出てくる。 「だーいしょーりー」 「大勝利じゃねーーー」 後ろの座席ではなのはが膝をついて疲れ果てていた。 「それじゃ、ここでお別れね」 夕日をバックに後始末をすませたなのはとハレは最後の挨拶をしていた。 「二人のおかげで回収できたわ。ほんとにありがとう。それから・・・」 なのははハレの肩に手を当てる。 グゥを見たあと、ハレの両目を真剣に見つめる。 「グゥちゃんがロスト・ロギアに指定されても私いろいろどうにかできないと思うからハレ君、しっかりね」 「へ?」 なのは足下に、光の羽を作ると空の向こうに飛び上がっていった。 「なんで俺がーーーー」 スコールが降り出した。 おしまいおしまい 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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『さぁ仕切り直しだ! 第四ラウンド行って見ようかぁ!?』 デビルアースラから再び冷静さを取り戻したデビルの声が響き渡るが、 次の瞬間デビルアースラにピンク色の魔砲が着弾し、大きく揺らいでいた。 『うおわぁ!?』 「今まで良くも私の身体を好き勝手弄ってくれたね!? 許さないから!!」 それはなのはの魔砲だった。しかしそれだけに終わらず、合体クロミーの重火砲が続く。 「オラオラ!! デビルの相手はオイラ達だって言ってるだろうが!!」 「と言うかあの戦艦に乗り移った状態の方が弱く無いか!? それとも何か!? あの戦艦は一人の女の子の力にも劣るのか!?」 デビルなのはの強さと比較した際のデビルアースラの弱さのギャップに 合体クロミー内のミーくんも呆れていたが、デビルアースラにはまだ手があった。 『ならば見せてやる!! デビルアルカンシェルを!! 良くて北海道が吹っ飛ぶぞ!!』 「な!! ここでアルカンシェルを使うつもりか!?」 「おい! そのあるかん…? って何だよ!!」 「アースラに搭載されたアースラ最強の武器だよ!! あれはハッタリじゃない! 発動地点を中心に百数キロメートル範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲…。 アルカンシェルにはそれだけの事が出来る威力があるんだ!!」 「おお! 何か良くわからんがとにかく凄いって事は分かった!」 「とにかく核とかメガトンミサイルとかより凄い兵器なんだね!?」 かつて起こった闇の書事件にて闇の書の防御プログラムを完全に葬ったのもアルカンシェルだった。 その時は宇宙空間で使用されたから良い物の…、それが地表に向けて放たれたら どうなるか分かった物では無い。ましてや今のアースラはデビルの力によって 異形の物へと変貌しているのだ。当然デビルアルカンシェルにも恐ろしい力があると見て間違い無い。 そしてデビルアースラはデビルアルカンシェルのチャージを行いながら上昇した。 着弾時の爆発に巻き込まれるのを防ぐ為に宇宙空間から発射しようと言うのであろう。 『グギャギャギャギャ!! これで終わりだなぁ!!』 「こ…この状態…どうすれば…。」 「せっかくなのはを取り戻す事が出来たと言うのに…。」 なのはとユーノは絶望して跪いた。流石にアルカンシェルが相手ではどうにもならない。 が…合体クロミーは違った。 「まだ方法はあるぜ?」 「え?」 「簡単な事じゃねぇか。もっとすげぇ大砲ぶっ放して奴の攻撃ごと吹き飛ばしちまえば良いんだ。」 「あのね~猫さん…。そういう事簡単に言うけどね~…。」 なのはとユーノは呆れた。余りにも短絡的過ぎる思考だと。 しかし、合体クロミーは構わずになのはからレイジングハートを取り上げていた。 「あ! 何をするの!?」 「ちょっと借りるぜ!」 今度は合体クロミーの内、胴体部にあたるミーくんの頭部からアームが伸びて 周囲に転がる粗大ゴミを集めて行く。そして悪魔のチップの機械融合能力によって レイジングハートを中心にした巨大なマシンを作り上げて行き、 なんとまぁ超巨大なレイジングハートが出来上がってしまった。そして その巨大レイジングハートの上にクロとミーくんの頭部がちょこんと乗っている。 「わぁ! とんでもない物が出来ちゃったの!」 「言うなればジャイアントレイジングハートって所かな?」 「どうだ!? コイツをぶっ放せばあのデビル戦艦の艦砲だってどうにかなるだろ!?」 「でもこんな大きな物持てないよ~!」 ジャイアントレイジングハートの大きさは既に数十メートル単位の代物になっている。 確かにこれだけ大きければ破壊力はあるだろうが…いくらなんでもなのはにこれを 持つ力などあるわけが無い。 「その辺もっと良く考えてよ猫さん!」 「所詮猫知恵か…。」 「おいこらそこのイタチ野郎! 今さり気なく酷い事言いやがったな!?」 「だってそんな持てない物を作ったって意味が無いじゃないか!」 「二人とも喧嘩はやめてよぉ! それどころじゃ無いでしょ!? でも…この状況一体どうすれば…。」 なのはも呆然と空を見上げる事しか出来なかったが…その時だった。 「それならワシに任せろ。」 「え?」 突如として皆の前に巨大な影が現れた。緑色で一つ目の変な巨大ロボット。 これこそ剛が作った巨大ロボット「オーサム」。そして頭部の操縦席には剛の姿があった。 「剛くん無事だったんだね!?」 「オーサムを引っ張り出してくるのに時間がかかったわい。」 そしてオーサムはジャイアントレイジングハートを楽々持ち上げたのである。 「この大きなレイジングハートはそこのロボットが持つとして…私は何をすれば良いのかな?」 「何言ってるんだ! お前にはこの大砲の生きた動力源と言う重要な役割があるじゃないか!」 「えええええええええええ!?」 「これは酷い爆弾発言だよ!」 「でも事実だろ? これにはエネルギー増幅装置が別に付いてるけど、まずそのエネルギーの元に なる物が無いと意味が無いからね。さぁ早く乗り込んで!」 すると、ジャイアントレイジングハートの方にもコックピットの様な物が現れ、 しぶしぶなのはは乗り込まされた。おまけにユーノの分もあったりする。 「う…う…私をただの動力源扱いにするなんて…酷いよ…。まるであれじゃない… 随分前にいたじゃない…あの…女性は子供を産む機械とか言った政治家… あれみたいなもんだよ!! うう~…。」 「おいおい悲しんでる場合じゃないだろ! 北海道の存亡がかかってるんだぞ!」 とにかく今は悲しんでいる時では無い。ちょっとプライドが傷付こうとも 北海道の存亡には代えられない。だからこそなのははスターライトブレイカー発射準備に入る。 アルカンシェルに対抗出来るのは周囲から魔力を集めて放つ集束魔砲スターライトブレイカーしか無い。 そして周囲に存在する魔力がジャイアントレイジングハートに集められ、エネルギーがチャージされて行く。 「おお! 物凄いエネルギーだ!」 しかもこのエネルギーをジャイアントレイジングハート内の増幅装置がさらに増幅させて行くのである。 「よし! それじゃあ照準を付けるぞ!」 「おお! 正確に頼むぞ剛!」 剛の操縦するオーサムがゆっくりジャイアントレイジングハートを持ち上げ、 既に北海道上空の宇宙空間にまで昇っていたデビルアースラに対し狙いを絞る。 前へ 目次へ 次へ
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――――時空管理局本局 「現在、多次元世界で確認されている『レリック』と呼ばれるロストロギアの回収と同時に現れる『ガジェット』 もしくは『ドローン』と呼ばれるUAV(無人兵器)が確認されます。」 本局統幕幹部である斎藤三弥中将はモニターに移る『ガジェット』を指しながら現状を説明する。 「ご存知だと思われますが、このガジェットにはAMFを搭載しており、我々の魔道士も苦戦しており、 ここ最近でも死亡12、負傷30名と甚大な被害を出しており…そこで我々陸戦課として。」 リンディ・ハラオウンはその後の言葉に一瞬顔をしかめる、斎藤中将がいった言葉、 そうそれは『質量兵器』の使用解禁なのだ、クロノからガジェットと交戦するにあたり陸課の部隊が独断で 質量兵器を使用する例が増えてきた報告をリンディは受けてきた、確かに法に違反した隊長達には処分が下される のだが緊急状況的判断によって重くても減給、謹慎といった極めて軽い処分なのだ。 ではそれらの質量兵器はどこにある?話は簡単だ、時空間に色んな犯罪組織が存在している、それを取り押さえたときには大体質量兵器が存在しておりそれらは 倉庫に乱雑に積み上げられているのだ、それを目につけた隊員が適当な理由をつけて持ち出しているのだ。 「無論何も我々は旧暦時代に使用していた大量破壊兵器などの戦略兵器などの解禁を求めているわけではありません、個人携帯火器 (無論97世界から持ち出され押収したスーツケース核は論外)の使用を許可していただきたい。」 発言を終えると斎藤中将に対し 「あの旧暦の被害を繰り返すのか!」「質量兵器使用絶対反対!」多くの罵声と 「よく言ってくれた!」「その通りだ!賛成!」少数の賛辞の声が飛ぶ、それを見ながら リンディはさっきから無言のままただ会議を眺めている将官を一瞥する。 (彼は一体何を考えている?) その将官の名前は宗方怜士中将といった、肩書きはリンディと同じ総務統括官である、 周囲に対して好印象を持たれているリンディと違い、彼女と同じ成果(むしろそれ以上) を挙げている彼は周囲に対して蛇蠍の如く嫌われていた、典型的な例が彼のあだ名が「蝿の王」と呼ばれることだ、 その名は敵対組織だけではなく管理局そして3提督からも恐れられている。 理由は?彼は物事を解決するときは徹底した合理主義を実践するからだ、在る時は貴重な重武装型時空航行艦に無能な連中と ほんの少数の有能な人材を乗り込ませ戦訓を得るために囮役を演じさせ見殺しにしたり、またあるときは平然と回収したロストロギアを囮にして敵組織を一網打尽、 そして持っていかれても仕込んだ自爆装置で吹き飛ばしたり、無能なものに対していは例え名家だろうが上官で何であろうが適当なスキャンダルや危険地域飛ばしで潰している、 と色々とある意味黒いつまり、管理局の悪と過言しても言われている。(無能な味方ほど最も恐ろしいという意見もあるし、敵対組織で最も敵に回したくない管理局将官ランク1位だったりもする) かつてグレアムが闇の書封じの為に作り上げたデュランダルの製作の協力したのは彼なのだ、本来ならそこで首チョンパで管理局法会議なのだがそれは出来ない、理由は簡単だった、 彼は他世界に色々な人脈を作り上げており彼自身も先に述べたド外道行為は滅多にしなし、管理局にとって非常に優秀な人材なのだ(無能だったらとっくの昔に豚箱行き)、おかげで中将のポストについている。 (最も本部や局での評判は最悪だが)だが宗方は何も発言することもなくただ会議を見つめている。 そしてもう一つの議題である八神はやてが唱えている『機動第6課構想』に対しては比較的賛同声が挙がったが…最も特殊部隊、緊急展開部隊構想は元軍人、警察組織出向者達から以前から唱えられていたが 何かの理由で潰されていたのだ(まぁ理由として管理局多数を占める魔法使いによる軍人、警察関連出向者に対する蔑視もある)、結局三提督の反対もあり質量兵器解禁はあくまで禁止、しかし6課成立は承認された、 そうしたまま会議は終了した、そして同じくただこの事件の経過と犯人割り出しに全力を注ぎますと口だけで言った情報局局長のゲーレンは呟いた「とんだ茶番」と。 ――――本局一室(BGMは全能なる調停者(スパロボ)で) 「ふむ…やっぱり予想通りに会議は進んだな、とんだ茶番だったな。」 無表情のままで宗方は呟いた。 「予想通りと言いますと?」 肩書きとして一応は彼の部下であるチャールズ・T・ベイツ二佐が恐る恐る問うた、 ベイツは海課に所属していたが、優秀な頭脳を持っている事により(本人は海にいたがったが) 本局に引き抜かれ、何の因果か知らないが宗方の下でじっくり調教…もとい教育中だった。 「ああ、あの老害のことだよ」 悪びれもせずに宗方は言った。 「まさか、その老害って・・・」 副官的立場である情報局隊員である夏目尚康二佐の呟きに宗方はニヤリと笑った。 「ああ、あの3提督といまだ自分たちが導き手だと勘違いしている脳髄だけの連中とその取り巻きだよ。」 その答えにやっぱりという表情をする夏目、それを尻目にベイツはうめいた。 「ああ、安心しておけこの部屋は情報局の連中でしっかりと消毒している」 同じく部下であるカール・ライカー一佐は対した事ないように言う、ライカー自身も指揮する立場として 管理局内で5本の指に入るほど優秀なのだが、無能と判断した上官に対しては侮蔑を隠さない言動や行動をとる為、 上層部の受け(プライドが高いだけ無能な連中)は凄まじく悪く、本来ならクロノ・ハウラオンと同じく XL級を指揮できるほど優秀なのだが、ある任務においてクロノの副官としてロストロギア回収を巡って、 クロノに対して馬鹿にした態度を取った為に激怒したクロノと衝突した結果、後方で冷や飯を食い続けている。 そして部屋をノックする音がする、斎藤中将直属の部下である佐藤大輔一佐だ、それを待ち望んだ ように出迎える宗方そして佐藤はソファに腰をおろすと葉巻に火をつけると慇懃無礼に切り出した。 「やはり、あの老害連中とその取り巻きを潰さなければ犠牲は大きくなるだけ、例え6課が成立してもね… まぁそれを解決する手はずはついてますが」 佐藤はパネルを操作するとある映像を写す、ジェイル・スカエリッティと呼ばれる男の映像と経歴、そして現状についてだった。 「ああ、あの無限の欲望か…」 「どうやらあいつは謀反を企んでいるそうだ、すでに本部に彼の手駒が紛れ込んでいる、それを知らずに本部の馬鹿共はつるんでいる」 「だが、改革の為には丁度いい、実にいい展開だ」 宗方は悪びれもせずに言う。 「頑固な連中を分からせるには血を流す必要がある、下っ端だけではなく、自分自身の…」 「はん、そうだよ…偽善者共は歴史からも現状からも何も学んでいない、ただ過去の成果にしがみついているだけ」 「歴史的必然だよ、まぁ自浄努力って言うものが必要だな」 そして本題に移る 「すでに情報局は3提督派を除いた連中は味方につけている、それに提督派の連中は少数だ」 「ゲーレン(情報局ナンバー1)とシェルドン(情報局ナンバー2)がこちらについたのは大きいな」 「まぁ彼らの尊敬すべき上官であるカナリス(前総局長)が3提督側勢力に逆らって辺境に飛ばされた挙句に死んでしまったからな」 「キーの一つである情報局はすでに味方についた、次は実働部隊だな」 「オメガはいつでも動けるようにしてある、そして軍属、特殊警察部隊出向者の各世界からの引き抜きを始めて、彼らに装備すべき武器の確保も完了しつつある、問題は、そうですな恐らく投入すると予測される遺船… まぁヴォルケンクラッツァーやヴォルフィードに比べればたいしたことないですがね」 「…ヴォルケンクラッツァーはすでに沈んでいるし、ヴォルフィードの世界はこちらでは手出しできない世界(科学が魔法取り込んだから)だ、 まぁ予測されるベルカの遺船に対する対抗手段、すでに何を使用するかは判明した、対抗する為子飼いの藤井2佐の船(ドレッドノート)は いつでも動けるようにしている、そして軍事技術が発展した管理外世界からツテを利用して対艦ミサイルなどの購入を急がせている」 「流石は、多数の世界に人脈を作り上げているだけはありますな、後は奴らの出方次第と言うことか」 「ああ、そうだ」 「わかりました、統幕にはそう言っておきます」 「機動6課の連中が彼らに対抗している隙を狙って…」 「最高のタイミングで殴りつける、まぁ酷い話ですよいたいけな少女達が聞いたら何ていうか」 「彼女たちは様々な場所で多くの借りを作った、ならそろそろそれらを取り立てても良い頃だ」 「ふむそうですなでは…では、また」 「ああ、斎藤君はよろしく言っといてくれ」 佐藤は宗方の部屋から出て行った、そしてベイツは思った (チクショウ、どうやら俺もこの陰謀に買わされる1人になったのか) それを知ったのかライカーは彼の肩に手を乗せる (畜生!畜生!畜生!こんなどす黒い陰謀に加担するぐらいなら船に乗りたい) 彼は自分の優秀すぎる頭脳を心から呪った、それを尻目に夏目は繰り出した。 「中将、クラナガンの事ですが…どうやら彼は例の事を掴んだそうです」 「ああ、市川のことか…やめておけ彼に対して下手な真似は避けた方がいい、 でないとこちらが大変な目に会うからな、第一今我々の手もとにある実働部隊は全員彼の教え子だぞ、 沼田はともかく伊達や田宮相手ではどうにもならん」 それに沈黙する夏目、そして宗方は悪魔と契約したような笑みを浮かべ呟いた 「さて、御手並み拝見といきましょうか少女達よ、精々足掻いてくれたまえ」 リリカルなのはストライカーズ エピソード 「黄色の悪魔 2」 ―――リッチェンス邸 市川は表門の前にたった。そこには見張り番と思われる若者が立っていた。若者はたずねた。 「何か用か?」 「この大きな屋敷の持ち主に面会したい」 若者の顔が赤くなった。市川は安心した。脳や顔面に血が集まっている人間の攻撃は鈍いからだった。 「それだけじゃ通せないね」 「この大きな屋敷にわたしの家族が世話になっているのだ」 「一体誰だ?」 「君ならば、そうだなうかつなことをやっただけで腕の一本を失いかねないような立場の女性だよ」 若者は市川の言葉の意味すら分からなかった。しかし、莫迦にされたことだけは察したらしい。市川に掴みかかろうとした。 市川は彼の尖った顎を僅かに突き上げ、路上に打ち倒した。そして敷地に入り込んだ。 庭の奥まったあたりにかなり大きな温室があることが分かった。 あちらこちらからスーツを着こなした若者や中年たちが飛び出てきた。 市川は彼らを眺め回した。自分を取り囲んでいる男たちの中でも最も格のありそうな1人に言った。 「リッチェンス氏にお会いしたい。私は市川。娘がここで御世話になっているそうだ」 ―――邸内 内部は奇妙なつくりになっていた、通路は僅かに身体を斜めにしなければ通り抜けられないような狭さで、 不必要に折れ曲がっていた。この屋敷の主人が誰かの襲撃を恐れ続けている証明だった。その誰かとは 自分の職場だろうと市川は判断した。市川が通されたのは16畳ほども有りそうな応接室だった、 そこは冷房がしっかりと働いておりひんやりとしていた。ソファに腰をおろした市川は室内を見回した。 内装は極めて豪華であり、金を用いた装飾品や彫像があちこちに置かれていた。この部屋の飾りつけにかかった金だけで 自分の家の土地が4つほども買えそうだった、彼は好みでない豪華さの中で30分待たされた。 そして分厚い扉が開いた。最初に入ってきた男は庭で市川が話し掛けた男だった。リンデマンという名前で、 口元から微笑が消えることはないが、ふくらんだ印象のある瞼の陰に光る目には墓石のような冷たさがあった。 続いて何かを記憶する必要が認められない筋肉が発達しただけの男が二人入室し、そして主人が入室した、 仕立ての良いダークスーツを着ている。リッチェンスは市川の対面に置かれた一人がけのソファに腰をおろすと 天然木の形状を利用したテーブルに両手をつき、深々と頭をさげた。 深みのある声だった。市川よりもさわやかな声だと言ってよかった。リッチェンスは顔を上げ市川と視線をあわせる。 ほっそりとした印象の男だった。額は高く、知性すら感じさせるひとみを持っている、しかし、そこには 同時に常識で推し量れないものも存在していた。 「こちらこそ娘を預かってくれて感謝している」 「御預かりしているわけでは有りません、娘さんが自分の意思で私の元へとやってきたのです」 「貴方の見解はそうなわけだ」 「見解ではありません、全くの事実です」 「おそらくそうなのだろう、だが、納得できない、せめてのこと、彼女と二人きりで話す事が出来なければ」 「ええ、本来ならそうすべきであると私も思います。親御さんとして当然な判断です」 「ならばこの場合はどうだと?」 「娘さんは貴方にお会いしたくないと言っております。以前に、貴方の女性の友人が訪ねてこられたときも同じでした。 そして私は彼女の意志を尊重しなければならない、誠に残念でありますが」 「貴方の許しが得られるのならば、一言、二言私から話し掛けてみたい。娘の気持ちも変わるかもしれない」 リッチェンスの背後に立っていた筋肉の塊が一歩踏み出そうとするが、リンデマンが視線を向け彼を押しとどめた。 「御気持ちはよく分かります、しかし、ここは私の家なのです」 リッチェンスは深く頷いて見せた 「成る程…なら私は失礼しよう」 市川は答えた。 「一杯やってゆきませんか」 リッチェンスは言った、彼の視線の先には封の切られていない酒瓶だ、驚いた事に97管理外世界 の高級スコッチ・ウィスキーだった、だがあまり市川は好きな銘柄ではなかった。 「この4年酒を一滴も口にしていない。できる事ならば、健康の為にこのまま禁酒しようかと思っている。 恐らく無理だろうが。それに何より、私は酒を口にする環境に五月蝿い方なのでな」 「ではお帰りください」 リンデマンは扉を開けて誰かを呼んだ。市川は室外に出た、扉が閉められた。リッチェンスは何か から解き放たれたように深いため息をついた、もしスーツを取ったらシャツは冷や汗でずぶ濡れと 言ってもよいだろう、クラナガン警察上層部や管理局本部上層部を買収する時に比べ凄まじいほ どに消耗しきっていた。 「どうしますか?」 リンデマンが尋ねた。 「たいした男だ…流石、あの娘の父親だけのことである」 「だから殺す?」 「そこまでしなくていい」 「あんな奴―――」 先ほど市川を恫喝しようとした筋肉の塊が言った。 リッチェンスは煙草を加えた、表の慈善事業の裏家業である不正時空間密輸で入手した ボロワーズだった、リンデマンが金色のライターを差し出して火をつけた。 「その莫迦を壁に立たせろ…左腕を水平にしてな」 リンデマンが顎を動かした。もう1人の筋肉の塊が片割れを壁に押し付けた。リンデマンが左腕を掴み、それをまっすぐに伸ばす。 リッチェンスは立ち上がった。 「リンデマン、最近若い者の扱いが甘すぎるんじゃないのか?」 「申し訳ありません」 「その通りだよ。まさか俺の下に、本当の男を見ても敬意を抱けない奴がいるなんて想像もしていなかった」 リッチェンスは壁に押し付けられた男の顔をみつめた。 「俺の顔を見ろ」 怯えた瞳が彼に向けられた。 「あの女の父親は、以前下らない正義感でこちらの事業を妨害しようとして、俺を逮捕しようとして捕まった挙句に 『親がいない妹がいるんだ、許してくれ!』とほざいたが、体重の倍にさせる程銃弾を撃ち込んできた・・・ 確かランスターと言ったな、その他の屑連中と違う本物の兵士だ。いいか、俺も管理局でいたことがある。 貴様より若い頃にな。その時もあんな上官がいた。有能で、慈愛に溢れ、知性と教養を持っている。 勇気については口にするまでもない。まさに理想の管理局の職員、醜の御盾なるべく生まれたような男だった。 そいつをすべて合わせると何になるか分かるか、オイ!どんな男が出来上がるか想像がつくか?」 怯えた男は蒼白くなった顔を横に振った。 「悪魔だ…あのエースオブエースと呼ばれこちらの同業者では悪魔と呼ばれているあの高町なのはという 女と比べ物にならない本当の悪魔だ」 リッチェンスは言った。 「地獄の門番にこそ相応しい勇気としぶとさを持った悪魔だ。たしかに奴は管理局に雇われた狗かもしれない。 しかし、魂まで支配されているわけじゃない。奴は何処までも自分自身だ。自分にとって最も大事な何かを守る為ならば、 管理局本部・・・いや本局にでもアルカンシェルをぶち込むような奴だ、ええ?わかるか?どうなんだ? お前が莫迦な脅しをかけようとした男はそんな怪物なんだぞ」 リッチェンスは男の懐から銃を取り出し装弾しているか確認する。そして彼は再び男に言った。 「俺の顔を見ろ!分かっているな?お前があの男とは比べ物にならない屑だということは? だが、その屑でも責任と言う言葉の意味を知っているだろう」 リッチェンスは壁に押し付けられた男の左手に銃を突きつけた、そして引き金を引く、銃声、絶叫、 壁に飛び散る血飛沫、筋肉の固まりの左手小指の第1関節から先がなくなっていた。 「リンデマン」 リッチェンスは振り向いて言った。 「あの男に警告を与えてやれ、決して殺すな。あれは、尊敬出来る男だ。むしろ俺はあいつのことが好きだよ」 「すぐにですか?」 「当然だ」 「分かりました」 リンデマンは部屋から飛び出した。リッチェンスは相棒を壁に押し付けている男に言った。 「後5分そのまま立たせていろ。そいつの身体からいくらかでも毒気が抜けたら、医者を呼んでやれ」 リッチェンスは上着のポケットから札束を取り出し、テーブルへ放り投げた。 「医者にはこれで払え、残ったら二人で女でも買いにゆけ、お前たちの毒気は血の中にだけ有る訳でもあるまい」 リッチェンスは男の傷口にタバコを押し付けて火を消した。再び屋敷に悲鳴が響き渡った ―――リッチェンス邸近く 市川は屋敷を出た。外は暗かった。商店はちらほらあったが繁華街から離れた場所なのでネオンや 街頭の数は少ない、そして尾行にすぐ気づいた。市川はその種の経験も豊富に持っている。彼をつ けているのは路上に男が二人、そして車が一台だった。市川はそれを一瞥するとゲイズから貰った 葉巻を取り出す、驚いた事に97管理外世界にあるハバナの葉巻だ、恐らく別の密輸事件で押収し たものらしい、SAS時代ですら滅多に吸えなかった高級葉巻に火をつけ辺りを見回す、尾行こそ続 いていたが、行動を起こす気配は見られない、市川は流れタクシーを止め乗り込んだ、そしてタク シーが動き出し、スピードに乗った時である、尾行していた車から銃型デバイスの銃口が顔を見せ タクシーのタイヤを撃ち抜いた。そしてタクシーは回転しながら柱にぶつかりL字に折れ曲がった。 ――――本部・メディカルルーム個室 市川はメディカルルームで意識を回復した。視界が妙だった。その視界にオーリスが入った。市川は、やぁ、と言った。 オーリスは懸命に涙を抑えようとした後で、感情の抵抗を放棄し、ああ、あなた、ああ、あなたと二度呟くと彼に縋りついた。 市川はこの20時間昏睡状態に陥っていたのだった。そしてオーリスはさらに10分間を自分に為に消費した後で医者を呼び、 そして自分のあるべき仕事の為に名残惜しそうに退室した。 そして医者と共に八神はやてと白衣を着た金髪の女性が入室したことにより市川はここが本部のメディカルルームだとわかった、そして医者は言った。 「貴方は幸運でした、本来ならあの事故の際、飛び込んだ異物で水晶体が完全に破壊されましたが、その御隣にいる女性が丁度本部にいた為に 保持スキルである程度修復できました」 そして金髪の女性は市川にあいさつをした 「シャマルと申します、貴方の事ははやてちゃ…じゃなくて八神隊長から貴方のことはよく聞かされています」 市川は目を修復してくれたことに感謝した、がシャマルは続ける 「ですが、完全というわけではありません、今後も何度か私の術で少しずつ治療してもらう必要が あります、その間できるだけ目に何か起きないように眼帯をして頂きたいのですが」 市川は内心何かをわずかな繭の動きだけで表現した。 「眼帯は黒がいいな、ほらよく映画で海賊が好んでつけているような」 そしてシャマルはクスリと笑うとはいそうしますと言って退出した、それに習うように医者も退出 した。部屋には市川とはやてだけが残された。 「礼を言う」 「ええって、困った時は御互い様や!それに市川さんには管理局に入局した時やそれ以外にも色々御世話になってんで、そのお礼をいうわけです」 「そうか…一つ聞いてもいいか」 「何でしょうか?」 「何故私を君の構想した機動第6課に向い入れようとした?少なくとも私の悪名は知っているはずだが、 少なくとも君たちにとって相応しくないと思えるが?」 管理局で密かに市川につけられている仇名それは「子供殺し」、SAS時代の、IRAのとりわけ過激 でしられる強硬派を制圧する時に、偶然本部にいたIRAの少女を殺したことだ。だがそれは(SAS でも本部でも)非難される事はなかった、銃を持ってこちらに撃ちかけられたら誰でも撃ち返す・・・ 当然の話だ、それ以外にも彼は任務において支障をきたす存在に一切の情けは与えなかった、一部 の人たちはそのことで(他色々)で市川を嫌っていた奴らは(クロノも含む)『子供殺し』の名をつけていた。 「確かにそう呼ばれていますけど、それは関係ありません、理由として…」 はやては6課のメンバー表(仮)のリストを見せる、市川は一瞬にしてその欠点を見つけた 「成る程打撃としては優秀だが…」 「ええ、市川さんも分かっていると思いますが」 「そうだな欠点として 1、隊長や隊員を抑えるもしくは補佐するポストがいない(参謀や幕僚がいない) 2、バックサポートが少なすぎる(人がいないから仕方ないけど) 後者は君のコネに訴えれば何とかなる、問題は2だな、君たちの部隊はたしかに実戦経験者を主体に構成されて打撃力はいいが …前衛が揃って命令違反の常習者、そしてお前自身も・・・」 「ええ、それは分かっています」 はやては隊の欠点と自分の欠点を分かっていた、前者は先も述べたが命令違反の常習しかも問題は彼女たちがそれでいいと思っていることだ (自分も言えた義理ではないが)緊急の際に部下が思い思いの行動を取られると作戦に齟齬が起きてそのままパーになる可能性が高いのだ。 そして後者ははやても感じていただろう、そう人を失う恐れだった。確かにある程度克服したとはいえ未だに父や母が事故で死んだ影響は大きい、 その例がかつてヴォルケンリッターがグレアム(と裏で宗方)の陰謀で闇の書に吸収されてしまったとき自分が暴走してしまったこと、 そして高町なのはが重傷を負って生死の境を彷徨った時に相当取り乱してしまい医者に詰め寄ったこと。それらを踏まえて市川は言う。 「指揮官と言うのは、時に非情にならなければならない。時には部下を切り捨て、時には部下に対して死んで来いと言う必要もある…私もそんな判断をしたことがある」 それに驚くはやて、上には悪名が轟く市川だが、下や前線部隊からの評判は極めて高い、何故なら彼の下で戦えば死んでも必ずつれて帰るし、 何より負傷した部下を自ら背負って帰還する例もあるからだ、それを知っているからこそはやては驚いた。 「切り捨てた部下の家族から何か言われなかったのですか?」 「ああ、言われたよ『何であんただけ生きて帰って来た!』『父さんを帰せ!』と…罵声を…」 「後悔はしなかったのですか?」 「した、何度もした…それに伴う悪夢も見続けた。だからこそ次はどうすべきか、部下を不用意に切り捨てない為にどうするか、 考えなければならない、悔やんだまま次の作戦にそれを持ち出してさらに部下が死んだら話にならない、頭を切り替えることも大事だ」 「強いのですね…」 はやてはとても自分では出来ない感じで市川に言った。 「強いのどうのこうではない、それが部隊を預かる指揮官して当然の責務であり義務だ、君が思っている以上に指揮官というのは厳しい…」 君にそれが勤まるのか?と市川はそう言う視線ではやてを見る。 「指揮官は助からないと判断した部下も処断しなければならない・・・現にSAS時代にいざしらず他の方面で何回か瀕死の部下にグデークラ(慈悲の一撃) を加えたこともある、君に人を殺せるのか?大事な者の命を失うことが許容できるか?」 それが出来るのか?という視線ではやてを見る、はやては何も言い返せなかった。『何とかなる・・・』 彼女はクロノやカリムに対して笑顔で言った言葉を市川に対してそうは言えなかった、大体世の中 100%という言葉は存在しない、そしてそう言えばたちまち「お前のような奴に指揮官が勤まる か!」と首をへし折られるだろう。そして市川ははやてに大して最も言って欲しくない一言を言う。 「おまえは指揮官に向かない、優しすぎる、確かにリストで見た君たちの知り合いなら君を知っているから許してくれるだろう、 いずれ君の知らない人が入ったら?優しさだけでは部下はついてこない、時には指揮官としての厳しさ、非情さがない無理だ。」 淡々とした感じで市川は言う、はやては沈鬱な顔をして俯く、そしてはやては何かを決心したように言う。 「確かに市川さんの言う通り、私はまだまだひよっこです・・・でも私は、この6課成立の為にすべてをかけています、だからこそ 貴方の言う通りにその優しさを捨てる覚悟はあります」 それにほうと頷く市川、はやての覚悟に曇りも何もないことで彼女が心からそう思っている、だが…市川は思う、本当に出来るのか?彼女に? 「ひょっとしてこの事件で人を殺してしまうこともあるかもしれん、大事な人を見捨てるかもしれへん…だけどそれも心を鬼にして受け入れます」 はやてはきっぱりと言い放った、少なくともこの場に見る限りは信じられる、そういう回答を市川は得た。 「わかった、今は君を信じよう…ああ、すまないな話が随分と脱線した、本題を言ってくれ」 「ええ、貴方を副隊長にスカウトしたい理由、1つは貴方が様々な戦闘におけるベテランであること、確かにヴォルケンリッターは貴方以上に戦闘に対してはベテランですが、 私の意見に是として心情的に答えてしまうので、否と言い切れるベテランであること、戦況を読める目があること。2つめは万が一動揺した私や隊員達を支える補佐役として 適任であること、知っていると思いますが戦闘部隊は命令違反の常習者です…場合によっては私もそうなるかもしれません、それを抑える役目としてやってもらいたいのです」 「つまりは女房役と言うわけか」 「はい、そうです」 ああ、それもいいかもしれない、久方ぶりに若手の面倒を見るのも正直悪くはない。 「いいだろう」 「本当ですか?」 はやては喜びの声を上げる。 「仮に私を入隊させて大丈夫なのか?君のバックサポートについている友達の兄であるクロノ提督は私の事を蛇蠍の様に嫌っているし、 上層部でも受けの悪い『傷持ち』だ、君の経歴に傷がつくのじゃないね?」 「そんな経歴なんて知ったこっちゃありません、それにクロノ提督は若いのにコチコチの爺ちゃんみたいに頑固すぎるんや、 文句はつけさせません、安心してください。」 「ああ、分かったよだが決まったわけではない、私の一存で決められることではない、陸戦課がどう動くかできまるからな」 「はいわかりました」 「君も仕事があるだろ、早くいきたまえ」 「はい、了解しました」 はやては市川に敬礼をする、そして市川も敬礼をするとはやての頭を撫でる。 「だ、だからうちは子供ちゃいます!」 はやては抗議する、そして市川は罰の悪い笑みを浮かべる、だがそれにはやては不快感を覚えなか った、父と子と並に年が離れ、新入り時代の自分を案じて世話を焼いてくれた市川の姿をはやては かつての自分を可愛がってくれて、大きな手で自分の頭を撫でてくれた父を重ねていたかもしれな かった、そいて病室から出て行ったはやてに市川は思った、本人の覚悟はよくわかった…だが主戦 力の2人(なのはとフェイト)は大丈夫なのか?あいつらああいったこと一番嫌っていると聞いたぞ。 ―――通路 八神はやてと高町なのはとフェイト・ハウラオンは歩いていた、これから会議において機動6課成 立における役割を各課に発表する為だ、本来なら緊張ものであったが、はやてはどこか嬉しそうな 顔をしていた。 「あれ?はやてちゃん、何かうれしそうだね」 通路で一緒に歩いているなのはは言う。 「ええ、そうや」 「何かあったの?」 疑問そうにフェイトも問う 「それは6課出来てからのお楽しみや」 疑問そうな顔を浮かべる二人だった、それに対し背後にいたシャマルはクスリと笑った、彼女はその理由を知っているからだ。 ―――メディカルルーム 医者が断言したとおりに身体は順調に回復していった、そしてシャマルの術によって壊された左 目も少しずつでもあるが回復していった(でも正直クラールヴィントで目玉いじくられるのはヒヤ ヒヤものだが)、そして病室には連日彼の同僚や、部下であったものがおとずれ、彼と会話をして出 て行った、そしてゲイズ中将も面会に着た。 「やはり君はあの八神二佐の機動6課に配属されることを希望するのか?」 「ええ、ずっとは恐らく無理でしょうが、たまに女房役と言う役も悪くはないと思います」 「ふむ・・・」 ゲイズは難しい顔をする、市川はゲイズが八神二佐の事を嫌っているのは知っていたが、それと別 のような顔をしているように見えた。 「確かに、彼女達の部隊はあまりにも若すぎる、そして君みたいな人材が必要なのは承知だ…だが…」 ゲイズは珍しく歯切れが悪かった、そう、もし市川が戦闘機人計画の事を知ってしまったら?そし て…その場合上層部に彼の始末を言い渡されたら?いくら彼とは言え殺されてしまうだろう、また 失うのか?自分とゼストと3人で共に戦場を駆け抜けた大切な戦友を? 「君が八神二佐と知り合いなのは分かっている・・・だが・・・」 「部署が違う?そう言うことですか?」 ずばり指摘された、海や空に何かしらの恨み(まぁ優秀な連中が引き抜かれればなぁ)をもっているゲイズに比べて、 市川は全くに意に介さずに必要な時は平然と助力を得る。 「中将、貴方の気持ちも分かります、ですが部署同士が対立して一体何の得がありますか?喜ぶのはこちらを疎ましく思っている連中です、 こっちが冷や飯ばっかり食っているというなら皆で食べればいいのです」 「…そうだな」 こいつはそうだな、上官であろうと忌憚なく意見を吐く、だがこのままでは。 「分かった、人事に取り計らっておくように要請する」 「ありがとうございます」 「だが、それが通らなかったら諦めてくれないか?」 「…わかりました」 「そして、君の娘のことなのだが」 「ええ、そのおかげで現在こうなっています」 「リッチェンスは狡猾な男だ、裏で密輸業に勤しんでいるが表では慈善活動を行っている上に、警察やこちらに利益の一部を回している」 「まぁ、つまりは」 「この管理局や警察に金の持つ魅力に心を奪われた下衆がいるということだ」 ゲイズは吐き捨てた、少なくともミッドチルダを愛している彼にとって許しがたい行為だろう。 「しかも奴は狡猾だ、金はきっちり消毒している…まぁそうでなければクラナガン近郊に堂々と屋敷を建てられるわけがないがな、 ああ安心しておけ、八神二佐やその一派にはこの事はまだ知られていないし、尻尾もつかませていない」 これに市川は安堵した、おそらく彼女のことだ、必要以上に自分を気遣う為といらぬ正義感で部下 を引き連れてリッチェンス邸に堂々と殴りこんで事態を悪化するのは自明の理だ。 「ありがとうございます」 市川は礼を言う、そして私は仕事があるからとゲイズは病室から出て行った、そしてゲイズは軽く うめく、彼は本気だ、少なくとも娘を助けるならば悪魔に魂を売る男だ、だが彼は陸課において 要不可欠な人材だ、これ以上戦友を失わせる訳にはいかない、そして彼のことを好いている愛娘を 悲しませることは…ゲイズは歯噛みした、彼を止める手段がないからだ 友人、知人から贈り物が届いた。その中に紫色を帯びた花を束ねたものがあった。花束について いたカードはリッチェンスと市川の娘の連名になっていた。市川はそれを花瓶へ生けて欲しいとオ ーリスに頼んだ、贈り物にどんな意味が有るのかオーリスはわからなかった。珍しいですね、オー リスは言った。その花はクリスマスローズの亜種だと、市川は問うた、なら負傷した父親にわざわ ざ送りつけるような花なのか?オーリスは考え込んだ 「たしか、根にはステロイドが含まれており、強心剤と使用されたこともあるはずです」 「その花に根はついていない、それに、あの娘は貴方ほど学術的な姿勢で植物を好んでいたわけではない。 意味があるとするならば、何か、もっと素直なものだと思う」 「調べてみます」 今晩も泊り込みますとオーリスは続けた。いや家に帰って欲しいと市川は言った。悲しそうな顔をしたオーリスに笑みを向け、 いまだ、激しい運動を禁じられている状態で、貴方と夜を過ごすのはかなり辛いことなのだと言った。オーリスの笑顔は処女のようだった。 そして面会時間終盤間際、誰もいない事を狙ってフレイザーはやってきた。 「私を病院に運んでくれたのは君だと押しられた。感謝している」 「まさか、連中があれほど荒っぽい手に出るとは予想できなくて」 「そうなのか?」 「貴方がある程度の役割を果たしてくれるだろうとは期待していました、科学事件の触媒のように」 「恋と戦争は手段を選んでいけないと言うからな。想像するに、警察活動も、まぁ、そんなものだろう」 「なんとも私的な表現ですね」 「何、何年も前に娘が教えてくれたのだ」 「その娘さんについてですが」 「話したまえ」 「彼女が、望んでリッチェンスの下へ飛び込んだことは事実のようです。たしかにそうですが」 「義務に忠実な警察官として何か言いたいわけかね?」 「私はリッチェンスに対する意識はあくまで公的なものですが、貴方とリッチェンスの関係は全く個人的なものです。一人の女性を巡る愛情の問題と言ってもよい、リッチェンスがいきなり荒技を用いたのもそのためでしょう、本来あの男は、どんな場面でも慎重な実業家なのです」 「私が娘に対して抱いている感情は、畜生道に値するものではないと思うが」 「貴方はそうかもしれません。貴方にはそれだけの強さがある。素晴らしい女性の心を手に入れてもいる」 「娘は違うと?」 「私の見るところ、父親の存在を大きく認識しすぎている女性には二種類の典型があります」 「君は心理学はやるのか」 「優秀な警官は皆心理学者ですよ」 「実践心理学のご高説を承ろう」 「かんたんなことです、意識の表層で男を求めすぎているか、その逆か、それだけですよ」 「単純化しすぎに聞こえる」 「そうでもありません、意識の奥では、全く反対の願望を抱いているのですから、男好きの女は男と長く付き合えない、男嫌いの女はたまたま掴んだ男を一生はなさない。まぁそんな所です。 医者や学者ならばまた別の表現をするでしょうが、私の仕事では之で十分です。もし分からなければ専門家に尋ねたらよいのですから」 「で、私の娘はどちらに当てはまるのかと言うのだ」 「後者でしょうね。男性としての魅力に溢れた父親を持った娘の悲劇です。表層的には父親ほどの男などいないと信じている。しかし内心ではまた別の感情が有る。 そしてたまたまあの男に出会った。部分的に父親のレベルに達し、他の部分でまた別の願望、あまりに完璧な父親に対する秘めたる反感を充足してくれる相手に。言うなれば、 リッチェンスは彼女にとって理想の男性であったわけです。リッチェンスへ頼ることによって自分の内心にいた貴方を殺そうとした」 「必然だと言いたいわけか」 「冷酷に聞こえたならば申し訳有りません。しかし、貴方の娘さんは私にとって完全な三人称認識の対象ですから。警官と言う職業はそのような思考法を強制されます」 「その点については理解できる。職業病はどんな仕事においても発生しうる」 「少なくとも、娘さんはあの戦争の被害者、その一人であります。彼女のこんにちはは貴方が行方不明になった事から始まったのですから」 「不愉快な男なのかもしれないな、君は」 「不愉快なのは私ではなく、私の仕事ですよ。之でも近所では善人で通っているのですよ」 「つまりこの世は並べて不愉快さに満ちているわけだ」 「ええ、全くもって不愉快な現実です。この点については貴方の方が詳しいでしょう」 出来る事ならば、退院後、暫くクラナガンから離れてくださいとフレイザーは言った、私は本気で リッチェンスを片付けたいと思っていますが、この町で個人的な戦争が起きるのどうも。 考えてみるよ、と市川は答えた。そして数日後オーリスが、彼女の几帳面さを裏付けるように学究的な態度で記されたクリスマスローズについてのあれこれがあった。 市川は三度読み返した。そして、娘が興味を持つだろう部分を見つけ出し、順位をつけ、判定した。人を狂気から回復させると信じられた霊薬の原料。 エデンから放逐された最初の男女が免罪符として持ち出したもの。花言葉は「我を不安より解き放ちたまえ」 退院当日、シャマルは市川が注文したとおりの眼帯を持って現れた、そして左目の水晶体も治り視力も徐々に戻っているが出来るだけ左目に衝撃を与えないで下さいと言った、 それに礼を言い、眼帯をつけた市川にはやては男ぶりあがったなぁと言った市川はありがとうと答え内心で、まさに黄色い悪魔そのものだと呟いた。 本部の前にはフレイザーが数人の部下と共に彼を待っていた。町を離れてくださいとフレイザーは言った、そして市川はかつての妻の墓参りをした後にエルセア辺りで左目を完全に直す為 にゆっくりしますよと…そして自宅で準備を行い(オーリスも行きたがったが、6課成立やレリック事件で振り回されておりとても行ける状態ではなかった)、列車に乗り込んだ、 途中でフレイザーが派遣した彼の護衛兼監視役をトイレにいくふりをして、あっと言う間に気絶させた。そして駅員に彼は疲れているのか良く眠っている置き引きに会わない様に注意して貰いたいと伝えた。 彼が降り立ったのはかなり大きな町だった。市川は駅で中古車を扱う店の場所を確かめ、そこへ向かった、店についた市川は受付の女性に店長を呼んでもらいたいといった。事務室から出てきたのはいかのも 苦労人といった風情の五〇絡みの男性だった、局にいたことがあるなと市川は見当をつけた。 すぐに持ち帰ることの可能な車はあるだろうかと彼は店長に尋ねた。店長は怪訝そうな表情を浮かべた。市川は身分証を取り出し、彼はそれを見せた。局務で必要なのだと市川は言った。 店長は背筋を伸ばし、二佐、お貸し出来る車ならばありますと言った。市川は店長へ強引に金を押し付けた。彼には4年間手付かずだった俸給があった、そして市川は目立つことを避けた色の車で、 彼が責任を果たさなければならない場所、彼自身の戦場へと戻っていった。 戻る 目次へ 次へ
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黄色い悪魔 2部編 上 ―――管理局内のある将官達の会話 「機動6課の予算増額だってよ」 「オイ!ちょっと待て増額する分どこから削るんだよ」 「・・・俺の部署とかお前の部署とかも・・・後陸課(泣)」 「じょ、冗談じゃ!というか何で予算豊富なあの部署から削られないんだよ!」 「しょうがないだろ、あそこの部署は古参の派閥で占められているんだし」 「腹立つな~、あいつらのせいでとばっちりはいつも陸課か新参組ばっかだよ」 「くっそ~あいつら湯水のように予算使いやがって、こっちにも少しは回せって」 「人間はね、一度権益を握るともう離せなくなるよ…」 「「「「「「はぁ~~~~(深い溜息)」」」」」」 ―――本局のとある喫茶コーナーの一角 「イデアシードが片付いたと思ったら、ジュエルシード、そして闇の書、ダークスター事件、 クリムゾンバーニングにそしてレリック…全く時空が静かになる日は来るのかしら?」 レティ・ロウランは愚痴る、ずっと管理局で仕事してきたからこそ言える愚痴だった。 「仕方ないわ、『世界は変わらず慌しくとも危険に満ちている』から…」 向かい合う椅子に座っているリンディも言う。 「機動6課成立案は通ったけど、反発はいたるところで生まれているわね」 レティは静かに言う。 「ええ、陸課からの猛反発は凄まじいからね…」 リンディは若干顔を曇らせて言った。 「まぁ、彼らの言い分も分かるわ…三つの部署で予算が最も削られている所に追い討ちのように予算削減されているからね…」 確かに新部隊設立する発言は容易だ、だが設立するまでが問題だ。それは予算だ、新部隊が成立す る為の人件費、機材費、維持費その他諸々、当然ながら膨大な予算がかかる。ではその予算は何 処から持ってくるか?時空管理局は名の通り時空の平和を管理する存在、当然の如く世界を維持する為の 予算は幾等あっても足りない、そして人の作った組織だからこそ必ず起きる上層部の腐敗と権力と 利権を巡っての意地汚い争い…そしていっつもとばっちりを喰らうのは所謂3提督派=魔法至上 主義者が占めている空や海とは違う陸である…成立に当たって空や海から予算捻出されたが、そ んなもの所詮雀の涙…流石に酷すぎるか、精々猫の額ぐらいの予算しか捻出されていない。当然 こんな事をされては誰でも怒る。 「だからと言って情報局の予算まで減らそうなんて一体何を考えているのかしら?」 レティは言い、リンディも頷く、確かに3提督寄りの2人だが時空を守るべく絶対必要な情報を手 に入れ解析する重要な局の予算を削る大蔵(予算配分)部門の神経は疑ってしまう、レリックだけ ではない、『セプテントリオン』と呼ばれる反管理局組織の動きも活発化しようとする今、何を考え ているのだろうか。情報局と聞いてリンディはある男を思い浮かべる。 「ロウラン、最近情報局局長のゲーレンと副局長のシェルドンが宗方と接触しているという噂があるわよ」 宗方という名前を聞いてレティは渋い顔をする。 「あの御仁、一体何を考えているのかしら?」 そのセリフは局の上層部では大体浮かべる宗方の印象である、常に何を考えているのかわからない、 徹底した合理主義者であるため、時には平然と局員を死なせる、彼の血は暖かくないだの、彼は人 ではなく悪魔から生まれたと散々な評価である。 「だが彼の行動はいつも管理局の益になる事ばかり」 リンディは沈鬱な表情でポツリと言う。 「確かに彼の功績は正直言って凄まじいものね」 確かに鬼畜王だの蝿の王(ベルゼバブ)などの仇名のついている彼だが、彼があげた戦果は凄まじ いものである、リンディが優秀な魔導士を確保したように、宗方は管理局と反管理局的世界の首脳 部と一種の国交関係を結ばせる手腕を見せたり、そういった世界を動かしてロストロギアを確保、 提出させたり、そして「クリムゾンバーニング」と呼ばれる管理世界最悪と呼ばれた戦争を終結に 導いた手腕は目を見張るものであった。 リンディが前線向きの活躍をしたと思えば宗方は裏方でコツコツと着実に管理局の益になるよう に行動していった。そうどんなに憎んでも宗方を管理局から叩き出す事はほぼ不可能に近いのだ、 叩き出した瞬間、彼の下で鍛え上げられた秀才は一斉に辞表を叩きつけ、彼に恩義のある情報局を はじめとする重要部署からの猛反発は避けられないし、彼が心血注いで築き上げた管理世界のパイプも千切れしまう …いやもし反管理局組織にスカウトされたらどうなる事か…レティは言う。 「アーネスト・キングの再来と言われているしね、彼」 キングと言う人物にリンディは嫌な顔をする、アーネスト・ジョセフ・キング作戦部長、 かつて管理局海課において管理局内で高齢にも関わらず辣腕をふるった提督だった、 彼は徹底した合理主義を貫き時空間の安定に尽力を尽くし行動力と頭脳は管理局随一と言われていたが、 キングに好意を見せるものは管理局では誰もいなかった。何故なら彼を性格にあまりにも問題があった。 キングは人の犯す些細なミスも許そうとせず、人が持っている弱い面、不完全な面を全く理解しようとしないのだ。 傲岸不遜、人を道具にしか思っていない、人情が抜け落ちている、それらを元に管理局では 「シャープエッジ」「ドライアイス」などの仇名が1ダース以上ついていた。 例えばある無能と判断した将官を即刻部署から叩き出した上にそのポストについたのは追放された将官の副官であったり、 人事面では自分の好きなように動かしていた。リンディが嫌な顔をする理由は以前闇の書の暴走でエスティアと運命を共にした 亡き夫であるクライド・ハラオウンの死に対しても慰めるどころか 「役立たずが…」 と吐き捨てるだけだった。彼の他の提督に対する人物評価は凄まじく悪く、3提督を平然と老害と言ったり、その他提督に対しても(たくさんあるのでry) しており、当時海課の長官を務めており優秀な戦果をあげ、露骨なまで政治嫌いであり部下から絶大な信頼を得ていたチェスター・ニミッツでさえも 「温厚すぎ、人間関係を極度に大事にする」とまで酷評する始末である…それでもまだマトモな方であった、キングがただ評価(に値する) していたのは精々レイモンド・スプルーアンス提督だけであった。 だがそのあまりの傲慢ぷりに怒ったジェームズ・フォレスタルと中央との抗争によって管理局からたたき出された。 しかしその後キングのポストについたフォレスタルもXV級を始めとする艦船などの予算問題などで心労が祟り局内で 首吊り自殺を行った。 「リンディ、貴女の気持ちも分かるけど…時空を守るにはあのぐらい非情でなくては勤まらない」 「…ええ、分かっている…」 沈鬱な表情をする両者、机に置かれたコーヒーは冷めていた。 「そういえば貴女のご子息であるのクロノ提督は、あのカール・ライカーを船から叩き出したのだっけ?」 レティの問いにリンディは苦笑いの表情を浮かべる、何せライカーをクラウディアに配属させたのは紛れもなく二人なのだ、 そう二人ともライカーの優秀さと冷静さを知っていたからこそ時には暴走気味になるクロノの押さえ役として送ったのだが、 結果的にクロノはライカーの冷静さ、冷徹さについていけずクラウディアから叩き出した。 だがクロノもある意味哀れな存在だった、親は夫婦とも揃って超エリート、当然周囲からの期待も凄まじいだが 同時に嫉妬も付随する… 「何だ、あの二人の息子なのにたいしたこと無いじゃないか」 「エリート出の癖にしてその程度か」 周囲の目はクロノでなく、その親を中心に見ているものだ…誰もクロノの事を見てくれもしない、 では自分を認めさすにはどうすればいいのか?認めさすようにがむしゃらに頑張るしかない、 必死に修練を行い、猛勉強をした、そして彼はエリートになった。だが周囲の視線は彼を褒めもしなかった。 「どうせ親の七光りで昇進したに決まっているだろ」 「親があれだから順調という名の昇進道を歩んでいるだけだろ」 とクロノ自身を認める視線ではなかったがそれでも少しずつ評価を掴んで行った。 だがPT事件、闇の書事件においてクロノの評価は一気に暴落する、何故なら… それを解決したのは管理局とは関係が無いただの少女だったからだ、そして之幸いとして周囲の評価は益々厳しくなる。 「所詮は親だけがエリートか」 「はん、無能が、マグレだよ今まではマグレだよ」 有能な親を持つ二世の悲劇と言うべき視線の結果クロノは少しずつ歪んでいった、 人に認めてもらいたいから…そんな一心で彼は管理局の正義を盲信する事になったのだ。 リンディもレティ自身も管理局の正義は信じているがそれは一歩引いた視点で見ているのだ。 だがクロノはそれを自分のアイデンティティとして管理局の正義を心の拠りどころとしているのだ、 結局周りのプレッシャーに押し潰された結果クロノは歪んでいったのだ。 ――――本局内宗方の部屋 「リストアップは完了したか?」 「ああ、情報局の総力を挙げれば造作もないな」 宗方とゲーレンは情報のやりとりを行っていた、モニターに映るのはスカリエッティとつるむ管理局の将官の名前達であった。 「あの脳みそとレジアス以外にも結構いるな」 宗方はニヤリと笑いそして。 「しかしゲーレンの腹心は優秀だよ、わざと提督派の情報局局員の正義感を煽ってミッドチルダに放ち調査活動を行わせて、 そしてそれに危機感を抱くあの評議会によって事故死させられその証拠を得る、すべてが終わった時その責任は情報局では なくて、評議会となる…いやいいプランだよ」 「お前ほどではないがな宗方」 一瞬不気味な笑みを浮かべるが、ゲーレンはすぐ元の表情に戻る。 「だが終わったわけではない、まだ始まってもいない…」 「そうだな…慢心は禁物だな」 「ああ」 「分かった、引き続き調査を行ってくれ…局内に潜入している戦闘機人の監視を頼む」 「了解した」 通信は途切れる。 「やはり、つるむ連中は結構いますね」 副官の夏目は言う。 「どうしようもない連中ですよ、生き長らえたい事に固執するバカはどこにでもいる」 ライカーは鼻で笑う、ベイツはリストを見てただうめくばかりであった。 「どうしようもないだろ、ベイツ君」 宗方は不気味な表情で言う、ベイツ深い溜息を吐き嘆いた。 (…腐りきっている、管理局は) 上は汚い利権争い、そして予算配分を巡っての汚いやりとり…管理局に忠誠を誓った身として 呆れ果てるとしか言いようが無い。 「うん、腐りきっているよな」 ベイツの心情を察するように宗方は言う。 「人が運営している以上、必ず腐敗はおきるさ…それが平和ならなおさら… 前線で生死を賭けている局員がどうなろうと自分の利益さえ守られていればいい、 そういうものだよ」 宗方は達観したように言う。 「しかし、この事を知っている人はいるのでしょうか?」 ベイツは問う。 「ああ、結構いるさ、我々だけではない。結構な人がな…恐らくレティ・ロウランもリンディ・ハラオウンもな… だが皆管理局を裏切れない、それが何故か分かるか?それは管理局の旗に忠誠を誓った身、 どうあろうとも反乱なんて起こせない…それは自分の忠、心のあり方を全否定するからな」 宗方は言う。 「そうそう、機動6課が設立した理由が何故か知っているか?」 「確か、レリック事件を解決する為に試験的に設立したと」 「それも一理あるが、実際問題は客寄せパンダと予算だよ」 「は?」 ベイツは疑問の表情を浮かべた。 「考えても見たまえ、6課の部隊表を、そして前線部隊から市川二佐が省かれたか…」 少し考え込むベイツだがはっとする。 「あ、全員が」 「そう、管理局の正義を信奉している奴、そして管理局に夢を見すぎている奴そして全員日が当たる側、 それに比べて市川はあまりにも悪名がつきすぎている」 「確かに…そうか、知名度があり、そして尚且つ前線部隊は20以下で美女…」 「うん、ベイツ、君は優秀だ。宣伝広告としては最高だな、 『管理局の誇る聖女達は平和を守るために頑張っています、悲劇的な過去を持つ小さな子供もその悲劇を生み出さないように頑張っています』 …立派なプロパガンダだな。広報局のゲッペルスあたりに脚色をつけた編集させて映像を管理世界にばらまいてみろ、 管理局の威信は高まり、反管理局的な世論も忽ち管理局寄りになる。 実に素晴らしいシナリオになるに違いないな」 「…しかし八神はやて達はそう言う事を知っているのですか?」 「…知るわけが無いだろ、彼女達は三提督派にとって金の卵を産む鶏」 ライカーは吐き捨てる。 「そうだ、確かに彼女達は日陰仕事に参加していない」 管理局内では極少数しか存在しないAAA級ランク魔導師…そういった優秀な魔導師達は積極的に 様々な任務に参加させられる、所謂表仕事もあれば非合法な裏仕事もある、それに激戦的な任務に 放り込まれる事も多々あり、常に前線を駆け抜ける事となる…そういった結果彼らに何が生まれる か…簡単だ。 ――――「正義なんてクソ喰らえ」 そう、人の汚さを嫌ほどに知り、管理局に忠は尽くせども、正義と言った言葉などに対して 凄まじい嫌悪感を示す事になったのだ、例えばプロパガンダ編集にきれたSランクの魔導師が それを編集した人に対して暴力をふるう事になったり、とあるAAAランク魔導師が管理局の正義を 信じて入局する若手に対してと露骨なまで侮蔑を向けたり、そして最悪な事に戦争調停に参加したりした Sランク魔導師の中には「質量兵器使ったって悪くは無いじゃないか」という思想まで生まれてしまう、 当然上層部では大問題になる。 だけど気付いた時には遅かった、管理局中のAAAランク以上の魔導師は全て戦場に駆り出されており、 (一部正義を盲信する極少数を除いて)管理局に冷めた視線で見るようになった。当然頭を抱える上層部だが、 一筋の光が差し込む… そう「高町なのは」、「フェイト・テスタロッサ」、「八神はやて」という優秀であり、 プロパガンダに必要な要素が詰まっており、管理局の闇を知らない優秀な魔導師が手に入ったのだ。 当然自身の駒にすべく上層部は3人の魔導師に対する保護を行う、例えば戦争といった介入は一切行わせずに、 犯罪者を捕らえるのは、彼女達が感化されないような犯罪者、例えば己の快楽の為に人を踏みにじると言った犯罪者であり、 やむをえない理由でしょうがなく罪を犯す者などの犯罪者に対しては別の局員を向かわせそういった者に対して 一切向かわせないなどの徹底振りを見せ、彼女達を過保護して管理局の正義を信じ込ませていったのだ。 宗方は言う。 「大体6課が出来た背景は予算的な問題がある、自分の息のかかった子飼いの連中に新部署を作らせる、 そして必要な予算を動かして自分たちに反抗的もしくは意に添わないな部署を脅迫する。必要な新部隊発足の為 という理由で予算を削ろうとする、無論自分達で予算はあまり提出せずな 『予算が欲しければ、削られたくなければこちらの言う事を聞け』 と…前例が出来、いつでも脅しがかけられて、こうして自分達の足場は固まると言うわけだ」 人はあくまで自分の利にならない限り支援や援助を行わない、結局上層部にとって高町なのは達は自分達の利益を 生み出す鶏として飼われているのだ。沈黙する一同、そして一人の男が発言した。 「ええ、その通りです、現に上層部に反抗的であった情報局の前局長であるカナリスを辺境世界に追いやり事故死させ、 そして非公式に予算関連で脅しをかけてきたのは事実です」 苦虫を噛み潰した表情で男は言う。ウィリアム・ドノヴァン、情報局現局長ゲーレンの腹心であり、 極秘裏に局内の情報収集に当たっている男だ。ジェイル・スカリエッティと繋がっている管理局の上層部のリストを纏めたのも彼なのだ。 「何か、いっそ機械にでも時空の管理を任せてみたいですね、そうすれば腐敗も起こらず適切に出来そうな気がしますよ」 沈鬱な空気を戻そうと夏目は冗談を言う。 「はん、そうしたら我ら人類が真っ先に時空の平和の為に粛清されるよ」 ライカーもニヤリと言う。 「違いないな」 一同は笑った。 ―――管理局クラナガン地上本部 「久しぶりだな、ゲンヤ」 本部から去ろうとする市川は部内で古くから付き合っている戦友と出会う。 「おう、市川か」 ゲンヤ・ナカジマも市川に対して挨拶をする、階級の違いはあれど気軽に声をかわす、両者とも気 にとめない。 「少し時間あるか?」 ゲンヤは言う。 「ああ、時間なら充分ある」 市川も言う。 「なら少し付き合ってくれないか?」 「ああ、分かった」 ―――管理局某施設 地上課のストレス発散場所、押収された質量兵器を管理(といってもただ積まれている)する倉庫は 射撃場も兼ねており、よく地上課の人達が鬱憤を晴らすためにやってくる場所、的に嫌な人物の写真を 貼り付けて銃弾やバズーカを叩き込んだりするのは日常茶飯事。 「お前さんだろ、リッチェンス邸襲撃をかけたのは?」 押収され倉庫に眠ってあるグロッグを受け取り的に向けてぶっ放しながらゲンヤは言う。 「…知っているのか?」 市川も同じくベレッタで的を撃ちながら答える 「当然だ、お前さんの知っている連中なら、あの襲撃かけた奴は誰か分かるさ、お前さんらしいといえばらしいな、 娘を救う為に警察や管理局まで引っ掻き回して、おかげでレジアス中将はこっ酷く怒られていたぞ」」 市川は顔色を変えずに言う。 「ああ、その通りだ、そのおかげで機動6課の入隊は取り消しになったがな」 「全く…お前さんならスバルを鍛え上げてくれるのにいいと思ったのだのだが」 「部隊表を見たが、スバルまで局員になるとはな…」 確かに6年近くあっていないが、市川の記憶にあるスバルは局員になるとは思えない子だった。 「去年の春に空港火災があっただろ、その時に高町なのはに助けられてその影響でな…」 銃を撃ち続けながらゲンヤは言う。 「それで管理局に入ろうとしたのか、ギンガと同じく」 「ああ、本当はいれたくなかったんだけどなぁ…」 ぼやくゲンヤ、ゲンヤがぼやくのも無理もなかった、彼が心配しているのは安全面と言うわけでもあるが。 「人の汚さか…」 市川は呟く、市川もゲンヤも人の汚さを知り尽くしている。二人ともクリムゾンバーニングに参加 していたのだ、市川は特殊部隊隊長として、ゲンヤも前線において観戦武官として…途中で捕虜に なった市川は兎も角として、ゲンヤも末期戦における悲惨さを目の当たりにしたのだ、狂信的な政 治士官に率いられて戦車に肉弾特攻を行う10歳前半の子供、60歳以上の老人、それを阻止す べく、戦車や周りの兵士の機銃射撃によってなぎ倒されて行く光景、兵士の欲求のはけ口として あるいは足手まといとして殺されて行く民間人、あの3人が見たら確実に発狂しそうな光景…そ れだけではない、極限における人の恐さを二人は実感している、そうスバルもギンガも優しすぎた のだ、もし彼女達が戦争でなくとも人の汚さにそれに触れたらどうなるのか?それをゲンヤは心配 している。 「まぁ、ちびたぬき達がいるから一応大丈夫だと思うのだがな」 ゲンヤ言う、だが同時に心配している。6課の人選に…酷い例えようだがお花畑なのだ。 「はやても指揮官として覚悟を決めているから大丈夫だと思う」 自分が病院に入院していた時に二人きりで話し合いそして誓い、はやてが真顔で言ったあの言葉… そして両者は持ってきた弾を撃ち尽くした。 「しかしレジアス中将は6課成立にかなり怒っているようだよ」 市川は横を見る。 「確かに仕方ないな、上層部の押し付けで自分の縄張りを荒らされたらな」 ゲンヤも言う。必死になって地上を守りぬいているのに突然別の部署から 「こいつらの面倒をしっかり見てね、あ、だけど指揮権はそちらじゃなくて彼女達にあるから 余計な事はしないでね(はぁと)」 何ていわれたら誰でもきれる。そう横には明らかに通常の銃や小銃では起こせないほどの破壊の嵐 があり、過剰なまでに撃ち抜かれ、そして黒焦げになった的が散乱していた。大まかストレスが溜 まりに溜まったレジアスがチェーンガンやバズーカをこれでもかといわんばかりにぶっ放したのだ ろう。 そして持ち出した弾を全て撃ち、市川は真顔になってゲンヤに言う。 「ゲンヤ、ひょっとしてレジアスは何か隠しているかもしれん」 「何かと言うと?」 「アインヘリアルは分からんが。ひょっとしてゼスト、クイント、メガーヌが死んだのもその秘密に関係する事かもしれん、レジアスは俺の6課入隊希望に渋い顔をしているが同時に何か入隊させたくない理由がありそうな顔をしていた」 陸課の上位魔導師であった3人と市川も又戦友であった。 「…」 ゲンヤは沈黙したままである。 「まさかと思うが戦闘機人に関連する事かも…杞憂であればいいのだがな」 市川もスバルやギンガの素性を知っていた。 「万が一の事があるかもしれん、ゲンヤ、はやて達を見守ってくれないか?」 「ああ、分かった、辛気臭い話はそれぐらいにしておこうや」 「そうだな、久々に水入らずで話し合おうか」 そして二人はそのまま居酒屋に直行した。 ―――地上本部食堂 「オーリスさん、趣味悪すぎやで、よりによってコールドヴィッターを査察によこすなんて」 机に二人の女性が座っていた、一人は八神はやて、もう一人はオーリス・ゲイズ、本来なら相容れない二人のはずだったが… 市川と言う男の存在で彼女達は友達関係でもあった。 「仕方ないでしょ、私はあくまで秘書ですし、人事権は握っていないから」 二人は昼食を取っていた、それは情報交換であり、それはたんなる世間話でもあった。機動6課が創立、 稼動してまだ数日…だけど6課は陸課から査察を受けることになった、そしてその査察官がよりによって 地上本部第二課に所属するヴィッター三尉であった、規則を第一とするヴィッター三尉と和を第一とする はやてとの相性は最悪で、嫌味でないヴィッターによる本音の言葉ははやて達を容赦なく切り刻み、 そしてお祭り部隊と言われれてヴィータはぶちぎれるわ、新人は揃って怯えるわ、その後の模擬戦で なのはが廃墟地をクレーターに変えたり色々あった。 「少しは部隊長ならもう少し規律をしかければいけないでしょ」 オーリスは言う、彼女自身もはやての規律に対する緩さは正直呆れ果てるものであったが同時に羨ましくもあった。 「まぁ、それはわかっておるんやけど、それはそうとオーリスさん」 はやては悪戯のような笑顔になってオーリスに問う。 「市川さんとどこまでいっとるん?」 オーリスは飲んでいるコーヒーを吐き出しかけた。 「な、な、なに言っているの」 冷静沈着なのに慌てるオーリスにはやては追い討ちをかける。 「え~だって、オーリスさんと市川さんは結婚寸前までいったと聞いておったし」 クリムゾンバーニングが始まるまで市川とオーリスの結婚式は秒読みと言うのは 陸課でも結構有名な話であるからだ。 「あ、貴女には関係ありません」 真っ赤になりながらもオーリスは言う。 「あははは、すいません」 はやては謝ると真顔になって言う。 「市川さんとオーリスさんが結婚するなら私も歓迎します…まぁ私も市川さんが好きなんや… 好きと言うのは恋愛とかそういうもんやなくてなんていうか言いにくいいんやけど… そやな私にとって市川さんは父という…そんな感じがするんや」 はやての表情のオーリスは頷く、オーリスもはやての過去を知っており、また自分の境遇からはや てが思う気持ちもよく分かった。地上の平和を守ると言う名目で戦う父の姿は逞しかった、しかし 同時に家庭を顧みない父の姿に憎悪を覚えている、周りの子供達は父と母と遊んでいるのにどうし て自分の父は自分と遊んでくれないのか?そういった感情から管理局に入ってもまだ レジアスの事を「お父さん」と呼ばず「閣下」と呼んでいる、逞しさと優しさを兼ねそろえている ある意味二人にとって市川は理想の父親かもしれなかった。 「あ、もう時間が終わりますね。でははやてさん、私はこれで」 「ええ、オーリスさん、また一緒に食事をとりましょう」 こうして二人は互いの仕事の為に自分のあるべき場に戻る。 「本当は市川さんいてくれれば助かったんやけどな」 はやては思う、いざ新部隊を設立してはやては思った、ある程度覚悟していたが司令官として今ま でと違い、沢山の部下を効率よく動かす為の手腕は正直大変だった。 「まぁやると決めたんや、ならやってみせる」 病院でかわした約束、それを守るためはやては隊舎に急いで戻った。 ―――中将室 「ではこれで」 レジアスは通信を切ると歯噛みする、あの狂人…ジェイル・スカリエッティとの通信は毎度毎度重 度のストレスを生む、レジアスの本音で言うとこうだった… 「誰が好んで貴様のような基地外と手を組む!誰が好んで貴様の言いなりになる!誰が好んで貴様に出資をする! 誰が戦友を殺した相手にヘコヘコ頭を下げる」 この事は娘には知らせず、自分の独断でやっている… そして頭を抱える、戦歴が認められ自分が陸課のトップに上り詰めた時の嬉しさと理想と平和の為 燃えた日…そして予算と人員と言う絶望的な現実の前に何度も自殺を試みた日、そして平和のために 家庭を省みず働いた結果ただ一人の娘から受ける憎悪の眼差し、そして悪夢、戦友達から侮蔑の 目で見て自分から離れて行く光景、それにうなされ飛び起きた事も何度もある、そして悪魔との契 約…戦闘機人…ジェイル・スカリエッティ、腐りきった最高評議会。 あの時に…戦友達と笑いあい、自身の信じる正義の為に共に戦ったあの日に戻りたい…レジアスは 強く思った。 ―――エルセア・療養所 「市川二佐ですね」 市川の目の前にやってきた男、名刺にはこう書かれていた 「情報局員 沖田 静」 と。 「情報局が何か私に用かね?」 憮然としたまま市川は言う。 「本局のある人物があなたの腕を買ってある部隊の隊長について欲しいと」 「私の腕を買っているとなると…宗方中将からの差し金か」 市川は瞬時に判断する、本局で自分を評価しているのはクリムゾンバーニングで出会った彼しかいないからだ。 「鋭いですね、ええ、その通りです」 「奴の事だ何を企んでいるのか分からないが…よかろう、ではいつまでに準備をすればいい?」 「一週間後またこの場所で」 「分かった」 ――――そして時は着た。 ジェイル・スカリエッティは自らの欲望の為暴走し、そしてゆりかごは飛び立った… ――――本局 想定していない出来事、管理局を揺るがす大事件に本局は右往左往するばかりであった、 しかしそれを想定内として行動する人達がいた。 ―――宗方の部屋 「始まりましたね中将」 ベイツは言う。 「ああ、そうだな…準備は完了している」 「もし失敗したらどうします中将?切腹の介錯なら務めてあげますよ」 ライカーは言う。 「あなたはどうします?」 宗方は言った。 「重要書類持ち出して、反管理局組織にでも身を投じるとでもするか」 「冗談じゃない、そっちは私に任せてください。貴方はその前に、私の盾になって死んでもらいます」 ゲーレンは悪びれもなく言った。 「心得た」 「ドレッドノートならびにオメガは配置につきました」 「では始めようか」 宗方は悪鬼のような笑みを浮かべた。 ―――某所 「我々はこれより、研究所に突入、首謀者であるジェイル・スカリエッティの確保に向かう。本部に向かう敵部隊はすでに鬼怒田一佐率いる部隊が防戦に当たっている …では諸君、管理局は諸君の果すべき義務を待ち望んでいる」 市川は簡単な訓示を行う、新部隊の隊長として鍛え上げた部下達は敬礼を行い、そしてヘリに乗り込んだ。 そして始まる、管理局を変える戦いが――― 戻る 目次へ 次へ
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本編051~100 051 魔法使いが落ちていく 登場人物:高町なのは(StS),早乙女レイ,影山瞬 作:◆UOleKa/vQo氏 052 Masked Rider 登場人物:エリオ=モンディアル,シーナ=カノン,草加雅人,グリフィス=ロウラン,神崎士郎 作:リリカル龍騎 053 Pyrophobia 登場人物:スバル=ナカジマ,クロノ=ハラオウン,ディード 作:なのは×終わクロ氏 バトロワまとめへ TOPページへ このページの先頭へ
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第8話 もう一人の魔法少女 バラージの一戦を終えた後、ビートルを失った為に帰る手段を失い意気消沈していた時、突如何処からもなく現れた一隻の浮遊船。 時空管理局の保有する次元航行船アースラである。 その全長は現代である巨大タンカーと同じかそれよりも二回り位大きい。 そして、その次元航行船アースラの中にある部屋に連れて来られた。 其処にあったのは畳に盆栽にと和風をイメージしているのだろうがハッキリ言うと誤解しているようにも見て取れる。 その証拠にその部屋を見た途端ムラマツキャップが微妙そうな顔をしていた。 そして、その部屋の奥には一人の女性が座っていた。 翠色の髪を後ろに束ねたポニーテールと呼ぶべきだろう髪型に綺麗なルビー色の瞳をし紺色の制服を纏った綺麗な女性だ。 「困っていた所を助けて頂き有難う御座います。私は科学特捜隊のムラマツです。それでこちらに居るのが隊員のハヤタ、イデ、アラシ、そして特別隊員の兜君に高町君です」 「宜しくお願いします。高町なのはで」 「マママ、マイネームイズ、コウジ・カブト。ディスイズアペン。ハウアァユー」 なのはは普通に挨拶を交わしたが甲児は何故か片言の様な英語を話し出した。 しかも半分以上が解読不明の様な。 「どうしたんだい甲児君」 「だだだ、だぁってよぉハヤタさん。あの人外人だろう? 俺英語苦手なんだよぉ~」 どうやら目の前の女性が明らかに外人に見えた為に日本語は通じないだろうと判断しての事だろうか甲児がハヤタに泣きが入った。 それを見ていた女性がクスリと口元を隠しながら笑う。 「心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと日本語も話せますから」 「本当ですか? そりゃ良かった」 ホッと胸を撫で下ろす甲児。 そんな甲児を見て皆がドッと笑い出したのはご愛嬌である。 そんなお茶目な一面もさておき、一同は用意された座布団の上に座るとその女性の話を聞いた。 「自己紹介が遅れましたね。私は時空管理局所属のアースラ艦長であるリンディ・ハラオウンと申します。貴方達の戦いですが、失礼ですが見させて貰いました」 (ギクリッ!) リンディのその言葉を聴いた途端ハヤタは思わず肩が震えた。 もしかしたら自分の変身する瞬間を見られたのでは? そう思っていたのだ。 そんなハヤタに向かいリンディは微笑んだ。 (心配しなくても貴方の正体は誰にも伝えませんよ) 「!!!」 すると、ハヤタの脳裏にリンディの声が伝わってきた。 驚きである。まぁ何はともあれ皆にばらされないのであれば一安心である。 そんな訳で会話は続いた。 「私が貴方達を救助したのには実は理由があるんです」 「理由、それは一体何なのですか?」 「はい、その理由はそちらにいらっしゃるなのはさんです」 「え、私ですか?」 突然自分を指されたので思わず自分を指差した。 何せ指名されるなど思ってもいなかったのだから。 「なのはが? 一体何で?」 「それは、貴方が使ってるインテリジェントデバイスの事と、貴方が集めているロストロギアについてです」 「ロストロギア? それってもしかしてジュエルシードの事ですか?」 イデが鋭く尋ねる。 それにリンディは頷いた。 だが、隣でアラシは首を傾げていた。 「ロスト何チャラだのジュエルシードだの、俺はどうもそう言った難しい単語は苦手だ」 どうやらアラシには理解するのは難しいようだ。 そんなアラシは放っておき会話は続いた。 「それで、貴方はそのジュエルシードの捜索をしているみたいだけど、それは一体何故?」 「えっと、頼まれたんです」 「すみません、僕から説明します」 答えに渋るなのはに代わりユーノが説明を行った。 彼がジュエルシードを見つけた経緯。 輸送中に謎の事故により殆どのジュエルシードが地球に散らばってしまった事。 それを集めようと向かったは良かったが力が足りずなのはに協力を申し出た事。 その後の事も全て話した。 「成る程ね、自分で起こしてしまった事件を自分の手で解決しようとしたのね。偉いわ」 「い、いえ…それ程では」 「でも、同時に無謀でもあるわ。何故、事前に私達に通報しなかったの? 貴方一人ではどうしようもない事位分かってたんじゃないの?」 「す、すみません」 今度はユーノが更に小さくなってしまった。 体がフェレットなだけに更に小さく見える。 そんなユーノを見てリンディは軽く溜息を吐く。 「それより、そろそろ元の姿に戻ったらどう? 何時までもその姿じゃ窮屈でしょ?」 「へっ? 元の姿」 「何言ってるんだよリンディさん。ユーノは元々フェレットだったんじゃねぇの?」 なのはが甲児が不思議そうに尋ねる中、ユーノの体を閃光が包み込む。 そして、彼の姿が瞬く間に人間の少年に変わったのだ。 金髪に奇妙な柄の入った服を着てマントを羽織った少年であった。 「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだね」 「ゆゆゆ、ユーノ君がぁぁぁ!」 「おおお、お前人間だったのかああぁぁぁ!」 振り向いたユーノの先では仰天して腰を抜かした甲児となのはが居た。 幾ら何でも驚き過ぎでは? 「あ、あれ? 僕前にこの姿見せてなかったっけ?」 「見せてないよ! 最初からフェレットだったよぉ!」 「お、お前! どうやって変身したんだよ!」 どうやらお互い意志の疎通が出来てなかったようだ。 「ふむ、まぁ君達の事は後で思う存分話してもらうとして、それでリンディ艦長。私達を此処に連れてきた目的とは?」 驚く三人をとりあえず置いておいて、ムラマツキャップは話を進めた。 其処は流石と言うべきである。 「本来なら私達時空管理局が以降のジュエルシード捜索を一手に引き受けたいと言いたいのですが、この地球には私達の常識を遥かに超えた存在が多数居る事が分かったのです」 「怪獣に宇宙人、それに機械獣の事だな」 「うむ、私達も怪獣には手を焼いています。ウルトラマンが居なければ我々は満足に怪獣を撃退する事が出来ない。何とも歯痒い話だ」 「そうですね」 苦虫を噛み潰したような顔をするムラマツにリンディは同情の言葉を述べた。 そして、一呼吸を置こうと置かれたお茶に手を伸ばす。 そして、何故か横に置かれていた砂糖の入った瓶を取ると主室にお茶の中にそれを入れたのだ。 その光景には一同が眼を疑った。 「あ、あのぉ…リンディさん? それ砂糖なんじゃぁ…」 「えぇ、皆さんもお使いになります?」 「い、いえ! 僕は結構です」 流石のイデもそれは願い下げだったようだ。 「しかし何故お茶に砂糖を? 折角茶菓子があるのに口が返って甘味で濁ってしまうのでは?」 「私この飲み方が好きなんですよ。勿論お茶菓子も食べますよ」 ムラマツの問いにリンディが何の迷いもなく答える。 流石のアラシやハヤタも若干引き気味に見ていた。 しかしムラマツは流石と言うべきか全く動じていない。 「確かに味覚は人それぞれと言うでしょう。しかし甘いお茶とは今まで飲んだ事ないなぁ」 そう言って懐からパイプを取り出して口に咥える。 タバコの草を入れて火をつけようとした際にハヤタが止めに入った。 「キャップ、此処でタバコは控えた方が宜しいですよ」 「む、そうか。いやぁ申し訳ない。つい癖なもので」 赤面しながらパイプを仕舞うムラマツキャップ。 普段ならお咎めなしなのだが今回はなのはやユーノなど子供が居る。 子供の成長に悪影響を及ぼすので科学特捜隊としてはそんな事はNGなのでハヤタが止めたのだ。 かなり話が逸れてしまったので此処でリンディが強引に話を戻した。 「簡潔に言います。ジュエルシードの捜索ですが、我々時空管理局もご協力致します」 「それは有り難い。イデの開発したジュエルシード探索装置も此処でなら有効に利用出来るでしょう」 「いやぁ、時空管理局の皆様から比べたら僕の発明なんて子供騙しみたいなもんですよぉ」 謙遜しながら自作の探索装置を目の前に出すイデ。 何気に嬉しそうだ。 リンディがそれを手元に引き寄せてマジマジとそれを見る。 するとリンディの眼の色が変わった。 「とんでもない! イデさん。これは素晴らしいですよ。私達の技術でも此処まで正確な探索技術は作れません。是非私達のところで使って宜しいですか?」 「え? 本当ですか! そりゃもう喜んでお願い申し上げる所存で御座います」 イデがとても嬉しそうに頭を下げる。 その光景を見て隣のアラシが笑っていたが今は別に気にしない。 「と、なるとこれからはジュエルシードの捜索の際にはこのアースラを基点として行う事になるみたいですが、移動手段はどの様にすれば宜しいですかな?」 「それならば必要ありません。要望があれば我々がこちらに転送致します」 何とも至れり尽くせりな事であった。 これなら移動でビートルの燃料を使う必要もない。 「それから、甲児さん」 「は、はい!」 「貴方のマジンガーZですが、こちらで格納しておきますね。そうすれば何処でも瞬時に転送出来ますから今回の様に探し回る必要が無くなりますよ」 「本当ですか? そいつは助かります」 甲児としてもそれは嬉しい事でもあった。 今回の捜索は本当に疲れた。 何せ広大な砂漠の中マジンガーZを探し回ったのだから。 もうあんな思いは御免であった。 「それからなのはさん。貴方も私達が自宅にお送りしますね。もう何日も帰ってないのでしょう?」 「はい、有難う御座います。お父さん達きっと心配しているでしょうし」 「なのは、折角だから暫くはジュエルシードの事は忘れてゆっくりすると良いよ」 「ユーノ君?」 いきなりユーノが持ち出したのは以外な言葉であった。 それに驚くなのはにユーノは続ける。 「此処数日連戦続きだからきっとなのはも疲れてるだろうし、なのはも学校があるし、良い機会だよ」 「でも、ジュエルシードの捜索はどうするの?」 「その辺は大丈夫だよ。僕と科学特捜隊、それに時空管理局の皆で捜索はする。だから思い切り羽を伸ばしてきなよ」 「その通りだよなのはちゃん。子供ってのは思い切り遊んで勉強するのが仕事なんだよ。ジュエルシードの捜索は我々に任せなさい」 「ムラマツキャップ…はい、分かりました」 皆の言葉もあってかなのはは頷いた。 「あれ? もしかして俺も学校に行かなきゃなんねぇの?」 「当然だろう。君も学生なんだから」 「げぇっ、折角学校サボれると思ったのになぁ~」 ガッカリした顔で愚痴る甲児に部屋に居た全員が声を出して笑ったのであった。 「そう言えばなのはちゃん、貴方年は幾つ?」 「今年で9歳になりますけど、どうかしましたか?」 「いえね、貴方を見てると家の子供を思い出しちゃってね。丁度なのはちゃんより4つ位上の感じなのよ」 リンディがそう懐かしむように言う。 「それで、そのお子さんは何処に居るんですか?」 「今丁度別任務中で此処には居ないのよ。丁度地球の調査に行ったとこなんだけど、変な事に通信が出来ない状態になってるのよねぇ。大丈夫かしら」 途端に心配そうな顔をする。 が、今此処でどうこう出来る問題でもなさそうな事でもあったのは事実だった。 *** 「ただいまぁ!」 リンディの計らいで家の前に転送して貰ったなのはは早速家の扉を開いて大きな声で帰宅時に言う言葉を発した。 すると真っ直ぐに家族全員が飛んできたのだ。 どうやら皆心配していたようだ。 すぐさま抱き寄せられて押し潰されんばかりに抱きしめられたり頬ずりされたりとかなり大変な目に会うのではあったが、なのははそれが苦とは感じられず、寧ろ嬉しくも感じられた。 それから、直ちに夕食の支度が行われ、久しぶりのなのはの帰宅と言うのもあってか目の前には豪勢な料理がズラリと並んだ。 「なのはが無事に帰ってきてくれて嬉しいから、お母さん腕によりを掛けて美味しいご飯作ったからねぇ」 「お、そりゃ嬉しいなぁ。さ、頂こうか」 両手を合わせて皆が揃っていただきますした後、各々が料理を取り食べ始める。 その間話題になった事と言えば数日間に起こった出来事である。 「ふぅん、甲児君とキャンプした際に怪獣と出くわしたのか。そりゃ災難だったなぁ。竜ヶ森だっけ? あれニュースにもなったしなぁ」 「父さん、それを言ったら砂漠の怪獣も出たじゃないか」 恭也が父士郎に向かい言う。 どうやら怪獣の出現は直ちにニュースになったようだ。 あれだけでかいのだから余計に目立つのは当たり前だろう。 「ま、何はともあれなのはが無事に帰って来てくれた父さん達は凄く嬉しいよ。後で甲児君にはお礼を言っておくとしよう」 「うん!」 その後も夕食は楽しい話題で持ち切りになった。 その後、夕食を食べた後自宅の風呂に入り数日間の戦いの汚れを洗い流し自室で眠る事にした。 久しぶりの自分のベットの感触が妙に心地よく感じられた。 そうして、物の数分で忽ちなのはは深い眠りに落ちてしまった。 翌日は久しぶりに友人のアリサとすずかに会った。 二人共数日間帰らなかったなのはを凄く心配していたのだ。 そんな二人になのはは謝罪した。 もしかしたら今後同じ様に友達を心配させてしまうかも知れない。 そんな思いがなのはの中にあったのだがその胸中の思いに気づきはしなかった。 「それで、学校は進んでる? 私授業出てなかったから心配なんだけど」 「学校なら休校状態よ。竜ヶ森で出た怪獣のせいで授業どころじゃないってさ」 アリサがそう言った。 どうやらさきの竜ヶ森でのベムラーとの戦いの件で学校は授業どころではなく休校状態になったと言うそうだ。 まぁなのはからして見れば一人だけ授業が遅れる心配がなくなったので嬉しい事ではあるが。 「そうだったんだ。何だか私が居ない間に大変な事があったんだねぇ」 「って、現場に居たあんたが何言ってるのよ! 聞いたわよ。あんた怪獣が来た際に竜ヶ森でキャンプしてたそうじゃない! 危うく踏み潰される所だったんじゃないの!」 流石アリサ。鋭い洞察力である。 まぁ其処はなのは自身上手く誤魔化したと言う事にしたので幸いなのはがその事件に関与していた事は二人には知られる事はなかった。 *** 付近の雑木林。 其処に数匹の子猫が戯れていた。 そんな時、一匹の子猫が青く輝く石の様な物を見つける。 その石に興味を引かれた子猫がその石に手を触れる。 すると、その石、ジュエルシードが眩い光を発し、子猫を包み込んでいく。 閃光が止んだ時、其処に居たのは先ほどの子猫の姿ではなく、おぞましい姿をした化け物の姿が其処に居たのであった。 アリサとすずかとの会話を終えて帰り道を歩いていたなのは。 時刻は既に夕刻に差し掛かっており空は茜色に染まり日は西に傾きだしている。 そんな中、なのはは一人帰り道を歩いていた。 ジュエルシードの捜索は一先ずユーノや甲児達、そして時空管理局が行ってくれている。 なのはは一先ず束の間の休息を楽しむ事にしていた。 そんな時、首筋に嫌な感じを感じ取った。 人間の心理の様な者で、敵意のある物、危険性のある物が近くにあるとてき面この現象が起こる。 「レイジングハート…もしかして?」 【はいマスター。近くにジュエルシードを感じます。この反応からすると既に発動した模様と思われます】 「大変! 早く封印しないと!」 付近に誰も居ない事を確認したなのははレイジングハートを起動させてバリアジャケットを纏いデバイスを手に持つ。 「レイジングハート。私一生懸命頑張るから一緒に戦おうね」 【勿論です、マスター】 なのはの言葉にレイジングハートは頷く。 そして、雑木林の中を突っ切っていく。 其処には数匹の子猫が怯えているのが見える。 そして、その子猫達の前には一匹のおぞましい姿をした怪物が其処に居たのだ。 「な、何あれ?」 【どうやら動物と融合したみたいです。気をつけて下さいマスター】 なのはにとって動物と融合したジュエルシードとの遭遇は初めてな事であった。 怪獣の時はウルトラマンや甲児の助力のお陰でどうにかなったが今回は一人しか居ない。 応援を呼ぶと言う手もあるが時間が足りない。 一人でやるしかない。 覚悟を決めてデバイスを構える。 すると化け物がなのはに気づいたのか彼女の方を向く。 その姿はまるで豹の様な姿をしていた。 しなやかな体つきをしており機敏に動きそうである。 化け物の口から牙が姿を現し不気味な唸り声をあげる。 その唸り声が人間の中に眠る恐怖心を煽りたてる。 幾ら魔導師として戦う覚悟が出来たとしても彼女はまだ9歳の少女なのだ。 普通に怖い物は怖いのだ。 だが、怖がってなどいられない。 自分が戦わなければ更に大勢の人達が怖い目に会う事となってしまうのだ。 「怖いけど…私が頑張らないと!」 自身にそう言い聞かせて恐怖心を振り払い、デバイスから数発の魔弾を放った。 桜色の閃光の魔弾が化け物目掛けて飛んでいく。 だが、その全てをしなやかな動きで華麗に化け物はかわした。 そしてかわしざまになのはに向かって飛び掛ってきた。 「きゃぁっ!」 咄嗟に倒れたから外れた物の、あの牙に噛まれたら一溜まりもない。 一撃貰えば終わりなのだ。 「レイジングハート! ディバインバスターは撃てないの?」 【危険です! 此処の様な狭い空間でディバインバスターを撃てば被害は甚大です。それにあの様に動きの素早い相手には不向きな武器です】 レイジングハートの言う通りだった。 ディバインバスターの威力はなのは自身が一番良く知っている。 マジンガーZやウルトラマンの武器が通じなかったあのアントラーを一撃で葬った武器なのだ。 あれをこんな雑木林の生い茂った場所で使おう物なら付近に甚大な被害が出てしまう。 また、魔力のチャージに時間のロスが発生してしまいその間無防備な状態となってしまうからだ。 即ち大技で仕留める事は出来ないのだ。 「それじゃ、アクセルシューターとかバインドで仕留めるしかないって事?」 【そうなります】 とは言うものの、あの様に機敏に動く化け物を相手にまだ戦闘面で不慣れななのはがアクセルシューターやバインドで仕留めるのは難しい。 だが、やるしかないのは事実なのだ。 「シュート!」 なのはが叫びデバイスから魔力弾を放つ。 しかしそのどれも華麗にかわされてしまう。 かわした隙にバインドを掛けようとしたがやはり駄目であった。 動きの素早い化け物を相手にバインドで固めるのは相当の錬度が必要なのだ。 その点ではなのはにまだそれが欠けていた面があったのだ。 その上、敵の動きが素早く狙いが付け辛い。 それが更に敵の厄介さであった。 「くっ…あ、当たらない…早くて狙いが定まらない」 【落ち着いて下さいマスター。焦っていては当たる物も当たりませんよ】 レイジングハートが注意するも敵から放たれる威圧感とジュエルシードを早く封印しなければと言う使命感の為かなのはの中で焦りは募っていくばかりだった。 それが災いとなり一気に化け物が間合いに入るのを許してしまった。 化け物の鋭い爪が唸りを上げて襲い掛かってきた。 咄嗟になのははレイジングハートのデバイスでそれを受け止める。 が、力の差が有りすぎた為になのはの手からデバイスが弾かれてしまいその拍子になのは自身も地面に叩きつけられてしまった。 其処へ化け物が上に圧し掛かってきた。 両手を押さえつけて動けない状態のなのはを見下ろすように化け物が唸りを上げる。 ダラリ… 化け物の口から垂れた唾液がなのはの頬に掛かる。 嫌な匂いが鼻についた。そして、その匂いが同時に彼女の中にあった恐怖心を更に煽り立てた。 必死に逃げ出そうともがくが子供の力では振り解く事などできず無駄にじたばた動くだけで終わった。 そんななのはに向かい化け物が雄叫びを挙げる。 勝利の雄叫びだ。 もうなのはに抵抗する力などない。 今やもう食べられるだけの餌と成り果てた。 そう言う意味の篭った雄叫びだったのだ。 そして雄叫びを挙げ終わった後、なのはに向かい巨大な牙を突き出してきた。 「い、いやぁ!」 咄嗟に首を右に思い切り捻った。 それが幸いしたのか化け物の牙は地面に突き刺さった。 なのはに外傷はない。 しかし、それも唯のまぐれだ。 次はない。 次こそは確実に自分の体に鋭い牙が突き刺さる。 そう感じ取ったのだ。 (嫌だ、嫌だ! こんな所で死にたくない! 助けて、ハヤタさん、甲児さん、ユーノ君! 誰か、誰かぁ!) 声にならない叫びを上げる。 しかしそんな叫びを上げた所で誰も助けに来る筈がない。 無情にも化け物の牙が迫ってきた。 が、その時、化け物を横から何かで弾き飛ばしたかの様に横っ飛びに吹き飛んでいく。 吹き飛ばされた化け物は付近の巨木に体を激突させて地面に倒れこむ。 「え? 誰!」 誰かが助けてくれた。 そう思えたのだろう。 なのはは化け物とは反対の方向を向く。 其処には一人の少女が居た。 年頃はなのはと同じ年であろう。 金色の長い髪を両端に束ねた髪型に黒を基調としたバリアジャケット。 そして鎌か斧のどちらかを思わせる形をしたデバイスを手に持っている。 「間に合って良かった」 「えっと、貴方は?」 「下がってて、アイツの相手は私がするから」 それだけ告げると少女はなのはを通り越して化け物の前に立つ。 そして持っていたデバイスを構える。 化け物が今度は少女に狙いを定めて唸りを上げる。 「ジュエルシード…回収させて貰うよ」 静かに、澄んだ様な声でそう呟く少女。 その直後、一瞬の内に少女の体は化け物の目の前に来ていた。 それには化け物は勿論なのはも驚かされた。 「は、早い!」 それが思わずなのはの口から出た言葉であった。 あの少女はとても素早く動けるのだ。 その目の前で少女がデバイスから発せられた光の刃を思い切り化け物に叩き付けた。 化け物の腕に傷が付き化け物が痛みの叫びを上げる。 カウンターに腕を振るったが、そんな物に少女が当たる筈もなくかわされカウンターに今度は顔面に刃が叩きつけられた。 「凄い、あの子…凄く強い」 圧倒的であった。 なのはでは全く歯が立たなかった相手を圧倒しているのだ。 それ程までに少女はなのはよりも実戦慣れしていると言う事が伺える。 すると、化け物が少女に背を向けて逃げ出した。 恐らく少女には勝てないと判断したのだろう。 だが、それに対し少女がデバイスを振りかぶる。 「逃がさない。切り裂け! ハーケンセイバー!」 叫び、デバイスを思い切り振るった。 すると振るわれたデバイスから光の刃がブーメランの様に化け物目掛けて飛んでいく。 その刃が化け物を縦一文字に両断する。 断末魔の悲鳴と共に化け物の体が閃光に包まれ、やがて閃光が収まると其処には幼い子猫が横たわり、その横にジュエルシードが落ちていたのだ。 「良かった。怪我もなく済んで」 子猫に大した怪我がない事を知り安堵した少女がデバイスをジュエルシードに近づける。 そして、それを封印し、この場の脅威は去った。 「あ、あの…」 「ん?」 後ろからなのはが声を掛けた。 それを聞き少女は振り返る。 「あ、有難う。助けてくれて」 「君も魔導師なの?」 「えっと、うん!」 「そ、だったら…今すぐ止めた方が良い。君の腕前じゃその内ロストロギアに殺されるから」 そう言い残すと少女は飛び去っていく。 「あ、名前…行っちゃった…まだ自己紹介してなかったのに…」 なのはの前では大空へと飛び去っていく少女の後姿だけが見えた。 今から大声を発した所で聞こえる筈がない。 なのはからしてみれば命の恩人であり自分と同じ魔法少女との出会いだったのだ。 出来れば名前を聞きたかったし、どうせなら友達にもなりたかった。 だが、あの少女はジュエルシードの回収を終えるとその場から立ち去ってしまったのだ。 「あの子もジュエルシードを集めてるんだよね。だったら、きっとまた会えるかな? その時は、ちゃんとお礼を言って、名前を聞かせて貰わなきゃ。その為にも…もっと強くなる! もう皆のお荷物にならない様にもっと強くならなくちゃ!」 なのはの中である決意が芽生える。 少女に認められる為に。 そして、仲間達と肩を並べて戦う為に。 少女は更に強くなる事を決意した。 そんな少女を黙って夕日が見つめて、やがて沈んでいった。 つづく 次回予告 少女は強い決意の元己を磨きだした。 そんな少女はある出会いを果たす。 それは、他人に運命を弄ばれた一人の不幸は青年との出会いであった。 次回「仮面の戦士」 お楽しみに
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Another View(Raven) 「それは困るな」 そう言いながら銃を向けるが、正直、全く撃つ気はなかった。 それはそうだろう。 何せ相手は、幼くなってしまった自分と同じ、いや、もしかするとさらに年下かもしれない少女達なのだ。 昔の自分ならいざ知らず、今の自分に彼女達を撃つことはできない。 とはいえ、状況は好転したかというとそうではなく、むしろ悪化したといってもいいだろう。 先程の彼女達の会話から察するに、今、床に転がっている奴らとは別の部隊がいるようだ。 離脱し、追跡を振り切ることはできるだろうが、面倒なことには変わりない。 おまけに、何故このような場所にいるのかさえ分からないままときている。 下手に騒ぎを大きくするより、目の前の少女達から情報を入手するほうが良い。 そう判断して、口を開こうとした時だった。 「お前がやったのか・・・?」 真っ赤なドレスに身を包んだ方の少女が戦鎚をこちらに向けて問いかけてきた。 だが、放っている気配は幼い子供のそれではなく、一人の戦士―――しかも数多の戦場を駆け抜けてきた――――の纏うものだ。 間違っても唯の子供であるはずがない。 もうひとりの白服の少女に目を向ける。 相方と違い、こちらはそこまで闘志を感じられないが・・・ (位置取りが上手いな) 心の内で嘆息する。 彼女の立っている位置、それは恐らく前衛であろう相方をうまくフォローできる位置である。 それをなんの打ち合わせもなく、ごく自然に行っているのを見るだけで分かる。 彼女達は強い。 先程、面倒を見てやった連中とは比べ物にはなるまい。 さらに敵の攻撃手段を自分はよく分かっていない以上、間違っても油断できる相手ではない。 (さて、どうするかな・・・) Another View End(Raven) 「それは困るな」 その言葉と共に銃を向けてくる少年とその傍らで唸り声をあげる飛竜を見据えながら、なのはとヴィータは念話で作戦会議中だった。 (とりあえず、あの銃をどうにかしなくちゃだね) (そーだな。それにB班の連中がどうしてああなったのかもちゃんと聞き出さねえと) (それにあと10分もしたら、C班の人達とも合流できるし・・・。今は時間を稼ぐ事を優先しよう) (お、おう。んじゃ、フォローは任せたぜ) (まっかせといて!!) (・・・?やっぱり変だな) ヴィータは、先程からずっと感じていた違和感の正体を、おぼろげながらにも把握してきていた。 なのはが消極的なのだ。弱気といってもいい。 先程のことにしてもそうだ。 仲間のピンチには誰よりも早く行動するなのはが、自分にかなり遅れるようにして、この部屋に飛び込んでいった。 いまの念話にしてもそうだ。 時間稼ぎという作戦は確かに理に適っている。現状ではベストと言ってもいいだろう。 しかし、なのはにしては、時間稼ぎという考えに辿り着くのが早すぎる。 (いつものなのは・・・だよな?) ヴィータは思わず横目で確認してしまったが、そこには“全力全開”をモットーとする高町なのはがレイジングハートを構えているだけだった。 (ま、誰にだって調子の悪い日はあらーな。今はそれよりも・・・) 目の前の少年に注意しなくては、と、ヴィータは起動させていたグラーフアイゼンを構え直し、 「お前がやったのか・・・?」 地面に横たわっている隊員を示して問い質した。 最後の通信から想像するに、彼らはそこの黒い飛竜にやられたのだろう。 そしてその飛竜は目の前の少年の使い魔と見て間違いあるまい。 しかし、分からないのは何故使い魔に襲わせた隊員達を介抱したかという事だ。 ヴィータは、彼の意図している所が全く掴めなかった。 そのヴィータの質問に対し、少年は 「ん?ああ。あのまま放っておいても無事だったろうが、こっちにも非はあるからな。一応、介抱しておいた」 とあっさり認めてしまった。 「分からねーな。一度は襲わせといて、何で助けるような真似をするんだ?」 「いや、俺は足止めするように命令しただけだ。なにも殺そうとしたわけじゃない。情報元がなくなってしまうからな。・・・まあ、シャドーがここまでするとは俺も思ってもみなかったが」 (・・・シャドー?それがあの飛竜の名前か) (そうみたいだね。それにあの子のお話を信じるなら、そんなに悪い人じゃなさそうだよ、ヴィータちゃん) (でも油断はできねえぞ。嘘の可能性もあるし、なにより銃を持ってるってだけで信用でき・・・、何!?) (!?) なのはとヴィータは驚愕した。 なんと目の前の少年が銃を足元に落とし、両手を挙げたのだ。 シャドーという竜も羽をたたみこみ、唸り声をあげるのをやめている。 一連の行動の意味が分からない程、二人は馬鹿ではない。 「降伏するってのか?」 「ああ。俺は、現状が全く把握できてないんだ。とりあえず、ここはどこなのか。後、君達が何者なのか説明して欲しい。こいつらに聞くつもりだったんだが、シャドーがのしてしまったからな」 「「・・・?」」 思わず顔を見合わせる二人。 彼の言葉を信じるなら、この遺跡の事、また、自分たち時空管理局のことを何も知らないということになる。 (どーゆーこった) (わ、私に聞かれても困るよ。でもやっぱり、悪い人じゃなさそうだね) (なのは、おめーは相手の言うことを信じすぎだ。罠かもしれねーんだぞ) (ヴィータちゃんは疑いすぎだと思うけどなぁ) と念話で会話しつつ、なのはは両手で構えていたレイジングハートを左手に持ち替え、右手を自分の胸にあてながら少年に微笑みかけた。 「と、とりあえず、初めましてだね。私は高町なのはっていうんだ。こっちはヴィータちゃん」 「ヴィータだ」 にこやかななのはとは対照的に、ぶすっとしながらも、自己紹介をするヴィータ。 「俺はレイヴンだ。こいつはシャドー」 そう言ってなのは達の自己紹介に答える少年―――レイヴン――――は、苦笑していた。 「てめー、何がおかしい?」 「ん?いや、悪いな。おまえの性格が分かりやすいもんだからつい・・・」 「んだとぉ!」 「ちょ、ちょっとヴィータちゃん!落ち着いて」 それを聞いてレイヴンに向かって一歩踏み出そうとするヴィータを後ろから羽交い絞めにするなのは。 レイヴンはといえば、相変わらず苦笑しながら彼女達の様子を眺めている。 それを目にしたヴィータは、さらに頭に血が上ったようで、なのはから逃れようと体をよじらせた。 どうやらこの二人、相性はよくなさそうである。 「ヴィータちゃん、落ち着いてったら!!もう!!レイヴン君もからかう様な事言わないの!!」 「・・・!」 すると、なのはのその言葉の何処に驚くところがあったのか、レイヴンは表情から苦笑を消し、半歩ほど後ずさった。 その予想外の反応に思わずなのははヴィータへの拘束を緩めてしまった。 しかし、解放されたヴィータもレイヴンを訝しげに見据えるだけで、突っ込んでいくようなことはしない。 「あ、あのっ。わ、私、何か変な事言ったかな?」 「・・・いや。別にそういう訳じゃない」 レイヴンはそう言いながら、自身のとった態度に気が付いたのか、再び苦笑を滲ませた。 しかし、その笑みは先程のからかう様なものではなく、どこか自嘲を含んだものだった。 「そんな呼び方をされるのは初めてだったからな。少し驚いただけだ」 「・・・?」 「・・・(こいつまさか)」 その発言と表情に何か感づいたヴィータと、全く意味が分からないなのはが、同時に声をかけようとしたその時だった。 「高町隊長!ヴィータ副隊長!ご無事で!?」 大声を上げながらC班の隊員達が雪崩れ込んできた。 位置的には、レイヴンを挟んでなのは達の反対側。 つまり、図らずして挟み撃ちできる位置に到着したのだ。 既に全員がデバイスを起動しており、戦闘準備は万端といった様子だ。 しかし、彼らがまずのは目にしたのは、床に倒れ伏したB班の隊員である。 勿論彼らは、なのは達からの連絡を受けていないのでB班全員が無事である事を知らず、また、レイヴンとシャドーが彼らの視線を遮る様な位置にいた為に、隊員の状態を確認することは困難だった。 その為、なのは達と向かい合う様に話していたレイヴンとシャドーに敵意の篭った視線を向けた。 「何!?」 「子供!?」 「そんな馬鹿な!」 「飛竜にやられたんじゃなかったのか!?」 皆が様々な事を口走るなか、リーダー格の男が一歩前に踏み出してレイヴンを睨み据えた。 「なあ、坊や?パパやママにやって良い事と悪いことがあるって教わらなかったのかな?それと、足元の銃を拾う様な事はするんじゃないぞ。拾ったら最後、次に目を覚ますのは病院のベッドの上だ」 と悪意たっぷりに言い放つ。 しかし、レイヴンは返事の代わりにこれ見よがしに溜め息を吐くだけだった。 「貴様・・・!」 「ちょ、ちょっと待って下さい!」 声を荒げる隊員から険悪なものを感じてなのはが声を掛けた。 「彼は、レイヴン君っていうんですけど、反撃の意思はないそうです。それにB班の皆さんは無事です」 「そーいうこった。こいつも悪いけど、子供相手にいつまでも目くじらたててんじゃねー。それよりも、おめーらはさっさとB班の奴らを運んでやれよ。A班とD班の奴らには私が連絡しとく」 なのはに続いてヴィータも声を掛ける。 さすがに隊長の言葉を疑う訳にもいかなかったのか、C班の隊員達はレイヴンの横を警戒しつつも通り過ぎ、B班のもとにたどり着くと、気絶している隊員達に浮遊魔法をかけ、遺跡外へと運び出すべく動き出した。 その間、なのはとヴィータは、銃を回収するべくレイヴンへ歩み寄った。 「悪いんだけど、銃は預かるね。分かってると思うけど、ミッドチルダでは所有するのも禁止されているから、もしかしたら返せないかもしれないよ」 「後、バインドもかけさせて貰うぞ。アースラ―――私らの母船の次元航行艦に戻るまで我慢してくれ」 そう言いながら、声を掛ける二人。 しかし、レイヴンは返事をしない。 怪訝に思ったなのはがレイヴンを見ると、彼は何か驚愕したような表情で、運び出されていくB班の様子を見ていた。 「レイヴン君?」 「あれは、一体何だ?どうやって人を浮かばせている?」 「え?いや、唯の浮遊魔法だけど・・・」 「魔法?」 レイヴンは信じられないという様に頭を降った。 「そんな物が現実に存在するなんてな」 「ひょっとして・・・」 なのはがある予感を感じながら、レイヴンに問い返した。 「魔法の事、何も知らない・・・?」 「ああ」 即答だった。 それだけでなのはとヴィータは、ある程度レイヴンのおかれた状況が分かり始めてしまった。 (魔法の事を何も知らないって事は、もしかしたら、レイヴン君はここの世界の人じゃないのかな?) (もしかしなくてもそーだろ。つーか、こんな無人の筈の遺跡の奥深くに子供と使い魔一匹いるってだけで充分おかしい。たぶんだけど、何かのロストロギアでいきなり転送されたんじゃねーのか?) (じゃあ、捜査対象の魔力反応は・・・) (そのロストロギアが発生させたもんだろーよ) (でもおかしいなあ。ここの遺跡を調査したのってユーノ君だよ。ユーノ君が、ロストロギアを見落とすことなんてあるかな?) (私が知るかよ。でも、もしかしたらそのロストロギアはレイヴンの世界だけにあって、各世界へ勝手に飛ばす物かもしんねーだろ。それだったら、この遺跡からは何も出てこねーじゃねーか) (あ、そーか。ヴィータちゃん、あったまい~) そう、念話でなのはとヴィータが話し合っている間、レイヴンも現状の把握に努めているようだったが、如何せん情報が全くと言っていいほど少ないため、結局なのは達に尋ねることにしたようだ。 「とりあえず、魔法があることは分かった。君達やあいつらも魔法を使う組織に属してるんだろう。じゃあ、何で関係のない俺がこんな所にいるんだ?」 もっともな疑問である。 「あ、うん。それはね、私たちがロストロギアって呼んでる、古代遺産のせいだと思うの。たぶんだけど、レイヴン君がこの世界に転送された時に発生した魔力の調査の為に私達は、この遺跡にやって来たんだ」 「・・・?つまり、古代遺産の転送装置のせいで俺はここにいる、ってことか」 「現状ではそれくらいしか理由が思いつかないよ。レイヴン君がもといた世界に、何か変わった物はなかった?」 「いや、特にそれらしきものはなかった」 「それじゃあ、この遺跡に転送されてきた時、側には何もなかった?」 「その筈だ。少なくとも、俺が通ってきた道には何もなかった。シャドー、お前は何か見たか?」 しかし、傍らの黒竜は首を横に振るばかり。 「・・・だそうだ」 「もしかしたら、見落としてるかもしれねーしな。調査の続きもしなくちゃいけねーから、レイヴンの出てきた場所まで行ってみるか。道順は覚えてるか?」 「問題ない」 「じゃあ、さっきも言ったけど銃は預からせてもらうね」 「あとバインドもな。両腕を前に出してくれ」 そう言うと、なのはは足元に落ちていた銃を拾い上げ、BJのポケットに仕舞い込んだ。 続いて、ヴィータがレイヴンの両手首にバインドをかける。 「なるほど、これも魔法か。便利なもんだな」 「ごめんね。しばらくこのままになっちゃうけど」 「構わないさ。そうされても仕方がないことをやったんだからな」 苦笑しながら返すレイヴン。 「ほー、意外と聞き分けがいいじゃねーか。さっきまでの態度はどーしたよ?」 「ふん。やっぱり分かりやすい性格だなお前」 「っんだと!」 「もーう、だから喧嘩は駄目だってば!」 しかし、喧嘩は続くことはなかった。 なぜなら・・・・ 「こちら、C班!遺跡入り口周辺にて、アンノウンと交戦中!至急救援を!繰り返す!現在、アンノウンと交戦中!至急救援を!なお、敵は、微弱ながらもAMFを纏っています!」 「「「!?」」」 突如として飛び込んできた、通信になのはとヴィータは顔を見合わせ、レイヴンに向き直った。 その表情から何を聞きたがっているかを察したレイヴンは、二人が口を開くより先に 「悪いが俺は何も知らない」 と言い放った。 なのはと違い、事の真偽を質したそうなヴィータだったが、すぐにそれが本当のことである事に気づかされることになった。 突然、シャドーが通路のある方向へ向き直り、唸り声をあげ始めたのだ。 「どうしたシャドー?」 「「?」」 何が起こっているか分からないままに、警戒態勢をとる3人。 そして次の瞬間だった。 シャドーが羽を広げるやいなや、何も見えない空間に向かって突撃していく。 そして80m先で金属のひしゃげる様な嫌なおとが響いてきたと同時に、なにもなかった筈の空間に突如として小型の機械が転がり出た。 それはまるで蜘蛛の様な機械だった。 鋭角的な胴体にカメラアイ、そして3対の足を持っている。 否、持っていたのだ。つい先程まで。 もはやそこにあるのは、ただの鉄屑だった。 カメラアイは粉々になり、5本の足がひしゃげて地面に転がっている。 そしてそれを行った張本人は、通路の先を警戒するように睨み据えていた。 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはとのクロス作品集 ビックタイトルの一つ。18禁ゲーム【とらいあんぐるハート】のからスピンオフ作品(結構この事を知らない人が多い) 派手な魔法アクションが特徴の一つ。 ついでに魔法の杖(デバイス)の担当声優がネイティブスピーカー喋るのでかっこいい 題名と変身シーンのせいで、見てると言えなかった隠れアニメファンが結構居たりするw 作中で登場のMS娘達については、リンク先から該当の職人さん部分で呼んで下さい。 シンの紹介 デスティニーの設定 デスティニー以外のMS娘の設定 登場人物紹介へ 登場人物紹介その2へ 旧アンカー氏の作品集 当時にスレに潜んでいた、名無しさん達の投下もあったかもしれないが、トリを皆付けていなかった為に判別は不能 ■ 作品集 ├ 旧アンカー氏の作品-01 ├ 旧アンカー氏の作品-02 ├ 旧アンカー氏の作品-03 ├ 旧アンカー氏の作品-04 ├ 旧アンカー氏の作品-05 ├ 旧アンカー氏の作品-06 ├ 旧アンカー氏の作品-07 ├ 旧アンカー氏の作品-08 ├ 旧アンカー氏の作品-09 └ 旧アンカー氏の作品-10 新アンカー◇4BJipWFrX2氏の作品 旧アンカー氏と共にスレ黎明期を支えた人 ■ 作品集 ├ 新アンカー氏の作品-01 ├ 新アンカー氏の作品-02 ├ シンの誕生日 ├ 新アンカー氏の作品-03 └ 新アンカー氏の作品-04 夜向性◆pLz4u.wgPs氏の作品 主に熱い展開で進む作品が特徴、でもドタバタもあったりで一粒で二度美味しい 当時のスレの雰囲気を多分に含み、かなりカオスな面々がちょいちょい出てくるが気にしてはいけない ■ 夜向性◆pLz4u.wgPs氏 ├ なのはクロスの作品集-01 ├ なのはクロスの作品集-02 ├ なのはクロスの作品集-03 ├ なのはクロスの作品集-04 ├ なのはクロスの作品集-05 ├ なのはクロスの作品集-06 ├ なのはクロスの作品集-07 ├ なのはクロスの作品集-08 ├ なのはクロスの作品集-09 ├ なのはクロスの作品集-10 ├ なのはクロスの作品集-11 ├ なのはクロスの作品集-12 ├ なのはクロスの作品集-13 ├ なのはクロスの作品集-14 ├ なのはクロスの作品集-15 ├ なのはクロスの作品集-16 ├ なのはクロスの作品集-17 ├ なのはクロスの作品集-18 ├ なのはクロスの作品集-19 ├ なのはクロスの作品集-20 ├ なのはクロスの作品集-21 ├ なのはクロスの作品集-22 ├ なのはクロスの作品集-23 ├ なのはクロスの作品集-24 ├ なのはクロスの作品集-25 ├ なのはクロスの作品集-26 ├ なのはクロスの作品集-27 └ なのはクロスの作品集-28 長編補足の小ネタ ■ 夜向性◆pLz4u.wgPs氏の番外編 ├ 夜向性氏の番外編-01 ├ 夜向性氏の番外編-02 ├ 夜向性氏の番外編-03 ├ 夜向性氏の番外編-04 └ 夜向性氏の番外編-05 ■ 夜向性◆pLz4u.wgPs氏の小ネタ ├ 小ネタ-01へ ├ 小ネタ-02へ ├ 小ネタ-03へ ├ 小ネタ-04へ ├ 小ネタ-05へ ├ 小ネタ-06へ └ 小ネタ-07へ 誕生日ネタ バレンタインネタ アスカ家の兄とランスター家の妹◇iKzSPVRKzM氏の作品 アスカ家の兄とランスター家の妹 ◇0t6EqpwX8M氏の作品 へいこうせかいなですてぃにー01 へいこうせかいなですてぃにー02 名無しさん達の小ネタ スレの本当の意味での主役 妄想したり暴走したりと居なければいけない人達 ■ 小ネタ1~10 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-01 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-02 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-03 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-04 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-05 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-06 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-07 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-08 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-09 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-10 ■ 小ネタ11~20 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-11 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-12 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-13 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-14 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-15 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-16 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-17 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-18 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-19 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-20 ■ 小ネタ21~30 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-21 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-22 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-23 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-24 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-25 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-26 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-27 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-28 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-29 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-30 ■ 小ネタ31~40 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-31 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-32 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-33 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-34 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-35 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-36 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-37 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-38 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-39 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-40 ■ 小ネタ41~50 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-41 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-42 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-43 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-44 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-45 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-46 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-47 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-48 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-49 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-50 ■ 小ネタ51~60 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-51 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-52 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-53 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-54 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-55 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-56 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-57 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-58 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-59 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-60 ■ 小ネタ61~70 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-61 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-62 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-63 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-64 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-65 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-66 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-67 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-68 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-69 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-70 ■ 小ネタ71~80 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-71 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-72 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-73 ├ 名無しさん達のなのは小ネタ-74 └ 名無しさん達のなのは小ネタ-75 ■ 替え歌シリーズ ├ 替え歌-01 ├ 替え歌-02 ├ 替え歌-03 ├ 替え歌-04 └ 替え歌-06 八神沢症候群 女シンin機動六課 電王小ネタ ピーーーーーーーー!! ギャグ六課日和 ギャグマンガ六課 聖徳太子で・・・ ■ 六課inミネルバ ├ 六課inミネルバ-01 ├ 六課inミネルバ-02 └ 六課inミネルバ-03 なのポネタ01 なのポネタ02 なのポネタ03 なのポネタ04 なのポネタ05 なのはクロスの作品集その2へ 元ネタ別インデックスへ 作者別インデックスへ トップページへ
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【あるかもしれない未来】 まだ本編だとここまで到達していませんが、キニシナイデクダサイ。 達也「……んでだな、俺はあの時――」 エリオ「へえ、意外ですねぇ、スバルさんが……」 ヴァイス「いや、年頃の子はそんなもんじゃないのか?」 なのは(あれ? 皆、あそこで何してるんだろ、なんかスバルの名前が出てるけど) たまたま偶然、格納庫に立ち寄っていたなのはが三人の話し声に気付く。 達也「いや、マジであの時は困った。スバルの奴、すっごい勢いで俺のものをねだるんだもんな。 こう膝の上でさ、ちょうだいちょうだーい! ってさ」 なのは(俺のもの? なんだろう?) ヴァイス「妹の頼みならばやらざるをえないな。俺だったら、こう丁寧に剥いてやって……」 なのは(やる? 剥く?) エリオ「あ。もしかして、あーんって食べさせたんですか?」 達也「……うん。あまりにも可愛いものだから口に突っ込んでやった。涙目でそのままポカポカ 殴られたけどなー、俺は後悔していない」 なのは(口に突っ込んだ?! 涙目?!)←何かを想像中です。 達也「んで、その後なんだが、スバルが服を脱ぎ出して――」 なのは「――ディバイン・バスター!!(不意打ちの上に、何故か殺傷設定です)」 吹き飛ぶ格納庫。 達也「な、何だぁああ?!(防衛反応で生存)」 エリオ「……ボクはもう駄目です(アフロ)」 ヴァイス「エリオ! しっかりしろエリオ!!(同じくアフロで、エリオを揺り動かしている)」 なのは「私は悲しいよ達也くん……義兄の立場を利用して、そんな鬼畜をする人だったなんて?」 達也「は? いや、昔のスバルの頃の話をしてたんだが……四年前くらいの」 なのは「え?」 達也「スバルにアイスをあげるのが、どこか鬼畜なんだ? 上げないほうが鬼だと思うんだが…… こう、兄的に」 エリオ「……あ、ボクと同じ顔の人がいるー……こんにちはー(輝くような笑みで)」 ヴァイス「え、エリオー!!!」 なのは「え? え? え?!」 達也「……なのは、もしかして」 なのは「いやぁああああああああ!」 (恥ずかしさに逃亡) スバル「……子供の頃の話なんてしないでよ、タツ兄」(偶然通りかかった) ティアナ「……人のことはいえないけど、いい感じにアンタもブラコンよね、スバル」(同じく通りかかった) フェイト「義兄……クロノも昔そんなことしてくれたなぁ」(何故か居る) スバル・ティアナ「隊長いつのまに?!」 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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火神——マーズ—— グリーンの部屋のドアを開け、彼との邂逅を得ようとしていた。 ――その筈だった。だが、 「ここは……何処だ……?」 いきなり見知らぬ場所に連れてこられての拘束/高町なのはの友人らしき人物の死/そして殺しあえ。 その次の瞬間には、また違う場所へ。 チェシャキャットのイタズラだろうか――否/動機が不明。 またヴァイオレット/マーチヘア/バロールの魔眼のように幻覚を見せる能力を有していない。 それに向こうもこちらの情報を欲しがっていたと思われる。 そのチャンスを見逃すほど、グリーンも愚かではない。 二つ目の可能性――管理局――先の戦闘で見せたARMSの能力を恐れての強行。 それも否――もう一つのARMS/キース・レッドの存在に対抗するために自分は有用。 また処分を考えての行動にしても目的達成には迂遠すぎる。 三つ目の可能性――管理局の敵対勢力/列車上にいたサイボーグ。 動機/目的/いずれも不明。だが、前者の二つよりは可能性が高い。 彼らについて、顎を手に当て考える。 ――思考は空白を維持――情報が不足。 より詳しい情報/あの場で主催者らしい女と接していた高町なのはとフェイト・T・ハラオウンに会う必要がある。 と、いつの間にか手に持っていたバッグに気がつく。 恐らくはあの女/プレシアの仕業――意図が不明。 確認のために中を開ける。 食料/水/ランタン/時計/筆記用具/コンパス/地図/名簿/車の鍵/そしてカードが数枚。 これで殺しあえというのか。思わず失笑が漏れる。 だが、自分にはARMS/人を殺すには十分なものがある。問題はないのだろう。 中にあった地図を広げ、この場を形成しているであろう地形を覚える。戦略や戦術において地理の把握は必要不可欠。 今後、どう行動するにしても、覚えておいて損はない。 続いて名簿に目を移す。 その内容に目が開く――キース・レッドの名前を確認。 このゲームの主催者/レッドを含む組織との等号が崩れる――それともレッドは廃棄処分にされたのか。 ――だが、これは好都合かもしれない。 首輪が爆発したところで、コアが大丈夫な限り、その傷はARMSの能力によって再生される。 よって、死を脅迫材料にして、行動を強要するのは無意味。 しかし、未だ全容を把握出来ぬミッドチルダの科学技術に魔法技術。 もしかしたら首輪だけによってARMSを殺すことが可能なのかもしれない。 その確認のためにもレッドの首輪を、彼が生きている状態で破壊することが必要となってくる。 そこまで考えて、一度名簿から目を離す。 そしてこれからの行動の指針を考える。 闘争は自分のプログラムの核/己の存在意義/故に殺し合いに忌避はない。 だがキース・ブラックの呪縛/戦闘生命としての生は終わりを告げた。 今更、また他人にその呪いの戒め/戦闘の強要をされる謂れはない。 今は自分の意志で闘いを選び、自分の道を歩いていくと決めたのだ。 ――それが管理局に入局した理由。 ならば、この闘争を管理局の勝利として終わらせるのが自分の道/自分の闘い――そして自分の意志。 まずは六課のメンバーと合流して、情報を纏めるべきか。 立体駐車場に並んでいる数台の車に順々にバッグの中に入っていた鍵を指していく。 ――やがてジープを思わせる車に鍵がはまる。 軽快なエンジン音、スムーズなハンドリング、安定したホールディング――悪くない支給品だ。 目的地/機動六課隊舎へ向かう。 他のメンバーが向かっている可能性、彼らがいなくとも何かの情報/武器がある可能性。 ――それらを考慮しての判断。 だが、思いの外、すぐに機動六課のメンバーとの再会を果たす。 車を出して数分後、車のライトに照らされた後ろに束ねられたピンク色の長い髪/ それと調和するようにあしらわれた騎士甲冑/右手に持つ剣/機動六課所属ライトニング02副隊長/烈火の騎士/シグナム。 ジープを降りて歩み寄る。 「シグナム、無事だったか?」 同じ職場の仲間を案じての発言――だが彼女の顔に浮かぶ微かな疑問/眉間に皺が寄る。 「……お前は私を知っているのか?」 質問の意図が不明/何かの冗談だろうか。 「知っているも何も同じ機動六課のメンバーだろう」 その言葉によって彼女の表情が正される。 自分の存在をちゃんと認識してくれたのだろう。 ――だが、返ってきた彼女の言葉は自分の予想とは、またかけ離れたもの。 「お前のことは知らん。悪いが記憶にはない。 ……だが、例え本当にお前とは知り合いであったとしても、私のやることには変わりはないはだろう」 どういうことだ――その疑問を口にする前に彼女が剣を構え、それを振りかぶり、迫ってくる。 「死ねっ!」 彼女の手には不似合いな大きな剣が、激昂の言葉と共に振り下ろされる。 切るという言葉は生易しく、正に破壊の体現/衝撃と共に破砕されるアスファルト。 それを跳んでかわし、確認のために問う。 「お前は本当にシグナムか?」 「……ああ、私は烈火の騎士、シグナム。だからこそ、お前には死んでもらう」 再び振るわれる大剣/明確な殺意を含み、命を摘まんと迫ってくる。 理由は分からないが、彼女はこのゲームに乗ったようだ――故にこちらも戦闘態勢に移行する。 それと同時に死と破壊を内包する剣が目前に迫らんとする。 だが、その迫力とは裏腹にそれは存外に見切りやすい。 その大きさゆえの初動の遅れ/その重さゆえの二撃目/斬り返しの遅れ。 ――容易にかわすことが出来る。 加えて、先の模擬戦において愛剣/レヴァンティンを持つ彼女との対峙。 それと比べれば、遜色は明らか。 隙を見つけ、そこに蹴りを入れ、更に怯んだ隙に起動したARMSの腕を叩き込む。 しかし、流石はシグナムといったところか――致命傷は避ける。 そこに驚きはないが、一つに気にかかる点――ARMSを起動した瞬間、シグナムが見せた表情/驚愕/戸惑い ――そこに生まれる疑問。 「本当に俺を知らないのか?」 返答は沈黙――恐らくは肯定を意味。 より詳しい情報を望むが、今の彼女からそれを得るのは難しいだろう。 それならば情報は惜しいが、他の管理局員に被害が及ぶ前にシグナムを殺すことが得策か。 滲み出たその殺意に呼応するように、彼女は剣を手に襲い掛かる。 だが、それは無意味。 シグナムの能力/戦い方は既に知っている。 反対にシグナムはアレックス/シルバー/ARMSの能力/戦い方を知らない。 それは戦闘における一つ一つの判断速度に差をもたらし、時間の経過と共に二人の優劣をより明らかにしていく。 そして再びシグナム身に刻まれるARMSの爪痕――出血と共に堪らず片膝をつく。 それを悠然と見据え、左腕に力を込め、ブリューナクの槍/荷電粒子砲の発射態勢に入る。 しかし、心に感じる躊躇い――眼前にいるのは間違いなくシグナム/管理局員。 故に確認のために最後に問う。 「お前は管理局員ではないのだな?」 シグナムは瞑目し、その答えを考える。 騎士としての矜持/命の重さ/使命感を天秤に載せながら……。 そして紡がれる言葉。 「……お前ほど強さを持っているものと出会っていれば、覚えている。 出来ればレヴァンティンを持って、お前と戦いたかったがな……」 答えは否定――それならば容赦する必要はない。 細められるシグナムの双眸からは、諦観とも取れる言葉とは反対に、折れることのない意志が見受けられる。 だが、それがどうしたことか。 ブリューナクの槍/焦点温度数万度――触れずとも、その熱と衝撃の余波だけで殺害は可能――必死は免れられない。 だが、光の槍はARMSからは放たれず、代わりに横合いから女性の甲高い声と共に 幾つもの固まりとなった光弾がアレックスに襲い掛かる。 「クロスファイヤー、シュートォッ!」 舌打ち一つ/発射プロセスを中断――急いで被弾圏内から離れる。 しかし誘導制御を受けた高密度の魔法弾にその対処法は無意味――距離を取って尚、威力を損なうことはなく、対象を狙う。 仕方なくARMSの腕を盾代わりに使用――衝撃と共に訪れる倦怠感/疲労/非殺傷設定の魔力弾の効果。 その射手は橙色の髪/ツインテール/手に持つ銃/機動六課スターズ03/ティアナ・ランスター。 彼女はこちらに銃を向けながらシグナムとの間に立った。 ■ 「大丈夫ですか?シグナム副隊長?」 支給されたデバイス、アンカーガンを油断なく構えながら、 シグナムのもとに歩み寄る。 「……ああ、すまん……助かった」 その一言は決死の覚悟で舞台に降り立ったティアナの心を沸き立たせ、喜ばせた。 シグナムを圧倒する存在。その前では間違いなく自分の実力などたかが知れている。 もしかしたら、シグナムの助けになるどころか、足手まといになってしまうかもしれない。 そういった不安は六課での経験、執務官補佐としての働きを経て尚、感じるものだった。 だけど、現状は予断を許さない。 その緊迫した状況は大切な仲間を失いたくないという一念により軽挙とも言われる行動に移させた。 私の行動は余計なものだったかもしれない――シグナムの元に近づきながらも、感じる僅かな不安。 だけど、それを綺麗に取り払ってくれるかのようにかけられる感謝の言葉。 自分の行動は正しかったのだ。 ――知らず知らずの内に頬が緩んでしまう。 とはいえ、いつまでも喜悦に浸り、油断をしている暇などはない。 表情に緊張を与え、アンカーガンを握る手に力を込める。 2対1になったからといって、相手が大人しくなる理由にはならない。 「私は時空管理局執務官補佐、ティアナ・ランスター。あなたを傷害及び殺人未遂の現行犯で逮捕します」 ハラオウン執務官の元で働き、身についた口上。 犯罪者に対して、ましてこの状況において、どの程度効果があるかもしれないけれど、 ある程度は脅しになる――そう思っての行動。 だけど、返ってきた彼の言葉は余りに予想とはかけはなれたものだった。 「俺は時空管理局機動六課所属、アレックスだ。このゲームには乗っていない」 耳に届けられる言葉は余りに馬鹿げたものだった。 よりにもよって自分がかつて所属し、既に解散してしまった部隊名を名乗りあげる。 その明白すぎる嘘は、思わず笑ってしまいたくなるものだった。 だけど、その滑稽な嘘に不思議と笑いは込み上げてこなかった。 代わりに感じたのは、かつてないほどの怒り。 犯罪者が、それも今、目の前で尊敬すべきシグナム副隊長の命を奪おうとしたものが、 自分が信じた正義を体現し、尊敬と愛着を感じていた部隊の名を騙る。 それは自分の過ごした思いを汚し、自分が築き上げた大切なもの全てを侮辱するようなものだった。 故に相手がどんなに自分を超える強さをもっていても、それは決して許せるものではない。 「ふざけんじゃないわよっ!!あんたなんかにっ……!」 我先にと口から飛び出す怒号。彼にぶつけられる怒りの言葉。 だけど最後までそれを吐き出す前に、中断を余儀なくされる。 胸に違和感――そこには何故かシグナムが持っていた剣が生えていた。 「……な……ん……?」 さっきまでの勢いが嘘のように言葉が生み出せない――何故だろう? だけど、言葉の意が伝わったのか、後ろにいるシグナムは答えてくれた。 「すまない……主のためだ」 耳に入る言葉に何故か納得。 意味が分からないが、彼女がここまですることなら仕方ないことなのかもしれない。 だけど、胸を貫く剣を見つめていても、何故か死の実感は湧かなかった。 胸に痛みはない――それが原因かもしれない。 そして、自分の気持ちを裏付けるもう一つの理由 《やっぱりシグナム副隊長が人を殺すなんて出来ないよね》 そう考えて安心 ――六課で過ごしたみんなとの日々が走馬灯のように映し出され、 その辛くとも楽しかった思い出が自分の考えにまた保証を加える。 やはり自分が感じた死の懸念は間違い。 シグナム副隊長に殺されたかと思ったなんて話したら、また彼女に殴られてしまうかもしれない。 そんな未来を思い浮かべて、ほんの少しの微笑を漏らす。 そして振り向き一瞬でもシグナム副隊長を疑ったことを謝ろうとするが、何故か身体が動かない。 彼女に殴られるという恐怖により身体が竦んでしまったのだろうか。 こんなことを知られたら、スバルはおろかエリオやキャロにまで笑われてしまうかもしれない。 そんな未来はごめんごうむりたい。 だから身体が動けるようにと、気を引き締め、 更に深呼吸をして身体を落ち着けてみようとするが、何故か息を吸うことができない。 代わりに自分でも驚くくらいの血を口から吐き出される。 《あれ?何で?》 心に浮かぶ疑問。それに対しての答えを思い浮かべようとするが、 内臓が擦れるこそばゆい感触――剣が引き抜かれていく感覚がそれを邪魔をする。 《何なのよ、こんな時に!》 思わず悪態を吐く。 人が必死になって考えようとしている時に、横槍を入れてくるのはスバルに決まっている。 また彼女が暇を持て余して、私のところにやってきたんだろう。 全く傍迷惑な子だ。 いい加減きつく言ってやらなければいけないかもしれない。 そう思いはするが、目に映るのはスバルではなく、近づいてくる地面の姿。 訳が分からない。取り合えず、受け身を取ろうと手を伸ばそうとするが、その暇もなく顔から着地。 痛い、と心の中で叫ぼうとするが、痛みなどなかった。 何なのだろう。状況に理解が及びつかない。 ひょっとしたら、夢を見ているのかもしれない。 この所、訓練づけだったし、疲れがたまっていたのだろう。そのせいかもしれない。 そういえばスバルにも早朝に、深夜にと、訓練をつき合わせてしまった。彼女もきっと疲れていることだろう。 今度の休みの日に、訓練のお礼として、いつものお店でアイスクリームでも奢ってやるとするか。 そうすればきっとスバルのことだ。喜んでくれるに違いない。 それにこんなに訓練ばっかしていたら、またなのはさんに怒られてしまう。 あの時は怖かったなぁ。まあ、でも自分が悪かったのだし、仕方ないか。 だけど、あれがきっかけでなのはさんともっと深く知リあえて仲良くなった。 情けなくはあるけれど、私の大切な掛け替えのない思い出……。 でも、何か変だなぁ。なのはさんに怒られたのは無茶な訓練して、模擬戦をやった後で、今じゃない。 あれ…………?今っていつだ? なのはさんに怒られて…………そう、ゆりかごでJS事件の決着がついて、それから六課が解散して……、 確か……フェイトさんの……補佐として働いていたはず。 その後は……八神特別捜査官に……呼び出されて、久しぶりに……えーと、六課の終結と喜んで…………それから……なんだっけ? ……ダメだ……。今は眠い。考えがうまく纏まらない……。 今日はゆっくり寝て、また明日考えることにしよう…………。 時間はまだたくさんある…………………………………………………………………………………………………………。 【ティアナ・ランスター@リリカル遊戯王GX 死亡】 ■ 現れたのは同じ機動六課メンバー/ティアナ・ランスター。 同じ管理局員と思った以上に早く会えるというのは好都合だが、状況が芳しくない。 恐らくシグナムと対峙している自分を敵と誤認。 また入局して浅い自分よりかはシグナムの方が信頼がある――それは自明。 ――故に誤解による戦闘を避けるために、ARMSを解除し、彼女に伝える。 「俺は時空管理局機動六課所属、アレックスだ。このゲームには乗っていない」 だがこの言葉を受けて、彼女の顔は怒りに染まる。 「ふざけんじゃないわよっ!!あんたなんかにっ……!」 言葉の中断――彼女の胸に刺さるシグナムのバスターソード それと共にもたらされる結論――ランスター二等陸士の死 「すまない……主のためだ」 微かに届けられるシグナムの言葉を思考。 今までの彼女の言動を思い返し、主と呼称していた人物を思い出す。 ――そして導き出す答え。 「……八神はやてのためか?」 この返答も沈黙。 だが、険しさを増す彼女の瞳は紛れもない肯定を示す。 動機が分かれば説得の道筋は立てやすい。彼女の行動を改めることが出来るかもしれない。 しかし、同時に疑問/自分にそれが可能か? 八神はやてとの付き合いの浅い自分に彼女を語る資格はない。 それにシグナムはもう仲間であり、部下であったランスター二等陸士を殺した。 後戻りは出来ないだろう。 ――故に説得ではなく、自分の認める強者としての会話を続ける。 「……何故殺した?」 幾重にも意味を込めた質問。 「……愚問だな。元より主以外は全て殺すつもりでいた。それが守護騎士である私の役目だ。 私の躊躇いや逡巡によって、主に危険が及ぶことは避けねばならない。 相手がお前のようなものやこの女のような管理局員であるというのならば、事は尚更だ。 主の命に比べれば、私の騎士としての誇りなど、何と軽いことか……」 饒舌とも言える回答/ランスター二等陸士の支給品を確認するための時間稼ぎ/阻止は可能 ――だが、彼女の言葉/思いの方が気になる。 言い終えると同時にシグナムはティアナが持っていたバッグから新たな刀を取り出す。 そしてその剣先をこちらに向け、不敵に笑う。 「レヴァンティンとはいかなかったが、これならお前にも遅れをとることはないだろう」 バスターソードと同じく規格外の武器。 しかし、それよりは彼女に馴染む剣/長大な日本刀 状況は最悪/仲間の死/仲間との戦闘 だが、目の前の彼女との闘いに喜ぶ自分がいる。 それを意識しながら再びARMS/マッドハッターを起動。 「いいだろう。俺もお前とは決着をつけたいと思っていたところだ」 【1日目 深夜】 【現在地 F-3】 【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】 【状態】健康 、疲労(小) 【装備】なし 【道具】支給品一式、はやての車@魔法少女リリカルなのはStrikerS、サバイブ"烈火"のカード@仮面ライダーリリカル龍騎、 ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【思考】 基本 この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる 1.シグナムの排除 2.1の後、機動六課隊舎へ向かう 3.六課メンバーとの合流 4.キース・レッドの首輪の破壊 【備考】 ※シグナムに多少の違和感を覚えています ※キース・レッド、管理局員以外の生死には余り興味がありません 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA s】 【状態】疲労(小)、胸に裂傷(我慢できる痛みです) 【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式×2、バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、ランダム支給品0~3個 【思考】 基本 はやてを優勝させるため、全ての敵を排除する 1.アレックスの排除 2.はやてとの合流 3.ヴォルケンリッターの仲間達との合流 【備考】 ※アレックスとティアナとのやり取りに多少の違和感を覚えていますが、さして重大なこととは思っていません 【支給品情報】 ※アンカーガン@魔法少女リリカルなのはStrikerSはF-3にあるティアナの死体が手にしています 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? 本編時間順 SWORD DANCER meet TYPOON 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? 本編投下順 アイズ GAME START! アレックス - Wolkenritter シグナム - GAME START! ティアナ・ランスター GAME OVER!