約 2,067,052 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3720.html
マクロスなのは 第25話『先遣隊』←この前の話 『マクロスなのは』第26話「メディカル・プライム」 八神はやては部隊長室で、今後の六課の運用について思索をめぐらせていた。 脳内会議の議題に上がっているのはカリムの預言の事だ。 設立から半年。六課はその任務を忠実に果たし、今に至る。現状に不満はない。しかし不安要素はあった。それは『〝事〟が、六課の存続する内に起こるのか』という問題だ。 六課はテスト部隊扱いのため、あと半年足らずで解体される。1年という期間は何もテキトーに決めた期間ではない。聖王教会と本局の対策本部が議論の末導き出したギリギリのラインだ。 今より短い場合の問題は言わずもがなだが、逆に長いとそれはそれで問題がある。今でこそガジェットの出現から出動数が多く、各部隊からの信頼も厚い六課だが、当時は必要性の認識が薄かったため本局でさえ設立には渋ったのだ。それは予算の問題のみならず、当時対立関係にあった地上部隊が黙っていない。という意見もあったからだ。しかしこの問題は『地上部隊のトップであるレジアス中将が賛同した』というイレギュラーな、しかし嬉しい出来事から片づいている。 だがもう1つ問題が上げられていた。それは六課への過剰な戦力集中だ。地上部隊20万人の内、4万人は事務・補給・支援局員である。 そして残る16万人を数える空戦魔導士部隊や陸士部隊である純戦闘局員の内10人ほどしかいないSランク魔導士を八神はやて、高町なのは、ヴィータ、シグナムと4人も六課に出向させている。 このランクの持ち主は『北海道方面隊など6つある地方方面部隊、5個師団(2万7千人)に1人いるかいないか』という希少な戦力であり、本局ですら少ないSランク魔導士のこれほどの集中投入は極めて思い切った人事だった。 そのため『気持ちは分かるが、そう長くは留めて置けない』というのが周囲の本音だった。 仮に1年後に同じような部隊を本局主導で再編する場合を考えても、地上部隊を頼れない分、生み出されるであろう戦力の低下は憂慮すべき問題であった。 そこで『何か妙案がないだろうか?』と思考をめぐらせていたはやてだったが、その思索は打ちきられることになった。 空中に画面が浮かび、電話の呼び出し音が締め切った室内の空気を震わす。画面の開いた場所は左隣の人形が使うような小さなデスクだ。本来なら補佐官であるリインが受けるはずだが、今ここにいないことは承知済み。右の掌を空中にかざして軽く右に滑らせると、その動作を読み取った部屋が汎用ホロディスプレイを出現させる。この部屋だと電灯のスイッチなどの操作を行うものだが、こんな時のために電話もその機能に加えている。おかげで次のコールが鳴る前に通話ボタン触れることができた。 「はい。機動六課の八神二佐です」 サウンドオンリーの回線だったが、 直接外部から電話がかかることはなく、地上部隊のオペレーターを経由したルートが普通だ。しかし聞こえてきた声はオペレーターの声ではなく、レジアスのものだった。 『はやて君か。いきなりで悪いが1330時頃にこちらに来てほしい』 「え? ほんとにいきなりやなぁ・・・・・・もちろん何か買ってくれるんよね?」 はやての冗談にレジアスは電話の向こうで豪快に笑う。 『なるほどな。グレアムのヤツがそうやって「部下がいじめてくる」と嬉しそうに嘆いていた意味がようやくわかったよ』 レジアスのセリフに、はやては「バレてたか」と苦笑いする。 グレアムは以前本局の提督を勤めていた人物で、当時足が悪く両親のいなかったはやての、いわゆるあしながおじさんであった。 またはやて自身、『闇の書事件』の責任を取って自主退職するまでのほんの1年だけ彼の元に嘱託魔導士として配属されており、当時同事件で主犯者扱いされていたはやてが管理局に慣れるよう手を尽くしてくれていた。 彼女を学費面での援助によってミッドチルダ防衛アカデミーに入学させてくれたのも、管理局で風当たりの悪かった当時の身の振り方を教えてくれたのも彼だった。 閑話休題。 『・・・・・・まぁ、実際買ったのだがな。きっと君も驚くだろう』 「え、いったいなんなのや?」 『ああ、─────だ』 レジアスが口にしたその名は、確かにはやてが驚くに十分値するものだった。その後はやては2つ返事で了解し、身支度のために席を後にした。 (*) 同日 1200時 訓練場 午前中に行われた抜き打ちの模擬戦になんとか勝利した六課の新人4人は、一時の休憩に身を任せ、地面に座り込んでいた。そこへなのはにヴィータ、そしてフェイトを加えた教官陣がやってきた。 「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様。・・・・・・でね、実は何気に今日の模擬戦がデバイスリミッター1段階クリアの見極めテストだったんだけど・・・・・・どうでした?」 一同の視線が集まるなか、後ろのフェイトとヴィータに振る。 「合格」 「まぁ、そうだな」 2人とも好意的な判断。そしてなのはは───── 「私も、みんないい線行ってると思うし、じゃあこれにて1段目のリミッター解除を認めます」 その知らせを耳にした4人は〝やったぁ!〟とうれしさのあまり座り込んでいた地面から跳ね上がる。 「お、元気そうじゃないか。それじゃこのまま昼飯抜きで訓練すっか」 ヴィータのセリフに4人の子ヒツジは青ざめ、一様に首を横に振った。 彼ら新人にとって唯一の平安といっても過言ではない食事の時間は絶対不可侵の聖域であり、守らねばならぬ最終防衛ラインだった。 「も~、ヴィータちゃんったら」 なのはに言われヴィータは 「冗談だよ」 と、猫を前にしたハムスターのような目をした4人に言ってやる。 しかし彼女の目が〝本気(マジ)〟だったことを書き添えておこう。 落ち着きを取り戻した4人にフェイトが指示を続ける。 「隊舎に戻ったらまず、シャーリーにデバイスを預けてね。昼食が終わる頃にはデバイスも準備出来てると思うから、受け取って各自しっかりマニュアルを読み下しておくこと」 それにヴィータの補足が付く。 「〝明日〟からはセカンドモードを基本にして訓練すっからな」 しかしその補足を聞いた4人は、自分達が間違っていると思ったのか空を仰ぐ。真上に輝く真夏の太陽は、まだ時刻が正午であることを知らせていた。 「〝明日〟ですか?」 「そうだよ。みんなのデバイスの1段目リミッター解除を機会に、私とヴィータ教官のデバイスも全面整備(フルチェック)とアップデートをすることになったの。だから今日の午後の訓練はお休み。町にでも行って、遊んでくるといいよ」 なのはのセリフに、4人は先ほどを数倍する大声で、喜びの雄叫びを上げた。 (*) 同時刻 フロンティア航空基地 第7格納庫 「あと30分で出撃だ。しっかり頼むぞ」 愛機であるVF-25を引っ掻き回している整備員達に檄を飛ばす。 彼らはそれぞれの仕事をこなしながらも 「「ウースッ」」 と、まるで体育会系のような返事を返す。そして点検項目を並べたチェックボードを効率よく埋めて、整備のために開けたパネルやスポイラーを定位置に戻していった。 そんな中、こちらへと1人の整備員がやってきた。しかし他の整備員と違ってそのツナギはあまり機械油に汚れていないように見える。どうやら新人らしい。 「どうした?」 「はい、アルト一尉。恐縮ですが、モード2のバトロイドのモーション・マネージメント比は今までの1.50倍で良いでしょうか?先ほど戦闘のデータを見る機会があったのですが、自分の見立てではあと0.04増やした方が動かしやすいように思います」 幾分か緊張した様子の新人に言われて初めて思い出す。そう言えば確かに前回戦闘の最中、そのような違和感を覚えたような気がする。もっともSMSへの先行配備の段階から乗っているVF-25という機体なので多少の誤差など十分カバーできるが、修正するに越したことはなかった。 「よく気付いたな。そうしてくれ」 答えを聞いた新人は満面の笑みを作って 「はい!」 という返事とともに敬礼し、再びバルキリーに繋がれたコントロールパネルに返り咲いた。そこで航空隊設立当初からVF-25のアビオニクスを任せている担当者が 「やっぱり言ってよかったじゃねぇーか」 と、入力する新人の肩をたたく。 「俺達でもコイツのことは完全には把握してないんだ。だからこれからも新人とか専門外とか関係なしにどんどん聞いてくれよ!」 「はい!・・・・・・じゃ先輩、さっそくひとついいですか?」 「おう、なんだ?」 「明日地元から彼女が来てくれるんです!それでクラナガンでデートしたいと思うんですが、どこかいいスポット無いですか?」 「え・・・・・・彼女とデート?あ・・・・・・いや、俺はそういうのよくわからなくて・・・・・・その・・・・・・だな」 こういう事象に対しては知識がないのか大いに困っているようだ。そこへ彼の同期がデートと言う単語を聞きつけたのか機体越しに呼びかけてきた。 「どうしたんだよシュミット?お前俺たちと違ってモテるだろ?意地悪しないでデートスポットの一つや二つ教えてやれよ!」 「そういうわけじゃねぇんだよ加藤!」 「じゃあなんだよ?」 「だって・・・・・・なぁ?」 困ったように言うシュミットに安全ヘルメットを外してポニーテールの長髪を垂らした新人が 「ふふふ」 と蠱惑的に微笑んだ。 (*) その後彼女は 「キマシタワー!」 と叫びながらやってきた女性局員や、 「なになに?諸橋(その新人)に〝彼女〟がいるって!?」 とVF-25の整備を終えて集まった整備員集団に囲まれていた。しかしその顔触れはアビオニクス担当者であるシュミット、そして新人を含めて全員自分と同年代ぐらいだった。別に特殊な趣向を持った人間がそう、というわけではない。この航空隊に所属する整備員はほとんど同年代なのだ。 これはこのミッドチルダでOT・OTMという新技術に、最も早く順応したのが彼らのような若者であることの証左であった。 もっとも教養としての現代の技術はともかく、OTMはゼロスタートであったおかげで3カ月前まで整備の質はあまり良くなかった。それが第25未確認世界でも最新鋭機であったVF-25なら尚更だ。 しかし最近ではアビオニクスを整備するシュミットのような人材が育ってきてくれたおかげでなんとか乗り手である自分や、たまに技研から出張してくる田所所長などに頼らなくても良いぐらいの水準に到達していた。 しばらく馴れ初め話を語る諸橋とデートスポットの位置について真剣に話し始めた彼らの様子を遠巻きに眺めていたが、整備が終わった彼らとは違い、自分の仕事は目前に差し迫っている。名残惜しいが列機を見回ることにした。 まずはVF-25の対面で整備が急がれている天城のVF-1B『ワルキューレ』だ。 純ミッドチルダ製であるこの機体は、製作委任企業であるミッドチルダのメーカー『三菱ボーイング社』の技術者が、わざわざ整備方法を懇切丁寧に講義していた。そのため比較的整備水準は初期の頃から高かったようだ。 現在パイロットである天城はコックピットに収まり、ラダー等の最終点検に余念がなかった。 まるで魚のヒレのように〝ヒョコ、ヒョコ〟と垂直尾翼や主翼に付けられている動翼であるエルロンが稼動する。 「あ、隊長」 こちらに気づいた天城は立ち上がると、タラップ(はしご)も使わずコックピットから飛び降りる。 コックピットから床まで3メートルほどあり、生身なら体が拒否するところだが、その身に纏ったEXギアが金属の接触音とともに彼の着地をアシストした。 「今日のCAP任務が8時間ってのは本当っすか?」 「そうだ。今日はだましだまし使ってきた機体の総点検らしいからな。六課にいて一番稼働率が少なかった俺たちで時間調整するんだと」 「・・・・・・ああ、そうですか」 気落ちした表情に続いて小声で 「俺は六課でも出撃率100%だったのに・・・・・・」 という天城の嘆きにも似た呟きが聞こえたが、どうしようもないので 「まぁ、頑張れ」 と肩を叩いてその場を離れた。 次にVF-1Bの隣りに駐機するさくらのVF-11G『サンダーホーク』に視線を移す。 こちらは元の世界でも整備性が高い機体なので、性能に比べて整備が容易になっている。そのためかこちらにはもう整備員の姿はなく、さくら自身が最終点検を行っていた。 サーボモーターなどを使い、電子制御で機体の操縦制御を行う形式であるデジタル・フライバイ・ワイヤの両翼の動翼に、順番に軽く体重を乗せて動かない事を確認する。 そして次に『NO STEP(乗るな)』という表示に注意しながら上に昇ると、整備用パネルが開いていたり、スパナなど整備員の忘れ物がないか確認していく。 よほど集中しているのかアルトが見ていることには気づいていないようだった。しばらくその手際眺めていると、後ろから声をかけられた。 相手はVF-25を整備していた整備員だ。どうやらようやく全ての点検・整備が終わったらしい。 アルトはもう一度点検を続けるさくらを流し見ると、自らの愛機の元へ歩き出した。 (*) 1330時 機動六課 正門 そこにはヴァイスのものだという、このご時世には珍しい内燃機関の一種である、ロータリーエンジン式のバイクに跨がって六課を後にしようとしているティアナ達と、見送るなのはがいた。 「気をつけて行ってきてね」 「は~い、いってきま~す!」 なのはの見送りに後部座席に座るスバルが返事を返すと、ティアナは右手に握るアクセルをひねった。 石油ではなく水素を燃料とするそれは電気自動車や燃料電池車の擬似エンジン音だけでは再現できない振動やエンジン音を轟かせて出発する。そして狼の遠吠えのようなエキゾーストノートを振り撒きながら海岸に続く連絡橋を爆走していった。 なのはは背後の扉が開く気配に振り返る。するとそこには地上部隊の礼服に袖を通したはやての姿があった。 「あれ? はやてちゃんもお出かけ?」 「そうや。ちょっとレジアス中将に呼ばれてな。ウチがおらん間、六課をよろしく」 「は!お任せください!八神部隊長」 わざと仰々(ぎょうぎょう)しく敬礼するなのはに、 「似合えへんなぁ」 とはやてが吹き出すと、なのはもつられて笑った。 その後はやてはヴァイスのヘリに乗って北の空に消えていった。 (*) その後ライトニングの2人を見送ったフェイトと合流したなのはは、 「(フェイトの)車の鍵を貸してくれ」 というシグナムに出くわしていた。 「シグナムも外出ですか?」 フェイトがポケットから鍵を取り出し、シグナムの手に置きながら聞く。 「ああ。主はやての前任地だった第108陸士部隊のナカジマ三佐が、こちらの合同捜査の要請を受けてくれてな。その打ち合わせだ」 「あ、捜査周りの事なら私も行った方が─────」 しかしフェイトの申し出は 「準備はこちらの仕事だ」 とやんわり断られた。 「お前は指揮官で、私はお前の副官なんだぞ」 そう言われてはフェイトに反論の余地はない。 「うん・・・・・・ありがとうございます─────でいいんでしょうか?」 「ふ、好きにしろ」 そう言ってシグナムは駐車場の方へ歩いていった。 なのははそんな2人を見て、『知らない人が見たらどっちが上官なのかわかるのかな?』と思ったという。 (*) その後デスクワークをしなければならないというフェイトと別れ、なのはは六課隊舎内にあるデバイス用の整備施設に到着した。 「あ、なのはさん」 画面に向かっていたシャーリーが振り返って迎え、その隣にいたヴィータも 「遅かったじゃねーか」 といつかのように婉曲語法で自分を迎えた。 「ごめん、ごめん。それでどう?上手く行ってる?」 なのはは言いながらシャーリーの取り組んでいる画面を後ろから覗き見る。 自らのデバイス『レイジングハート(・エクセリオン)』は昼飯前からシャーリーに預けられており、アップデートは開始されているはずだった。 「はい、あと2時間ぐらいでアップデートは終わる予定です」 プログラムを構築したシャーリーの見立てにミスはない。ディスプレイに表示された終了予定時間は1時間以下だったが、こういう終了時間は信用できないのが世の常。それを証明するように次の瞬間には3時間になったり30分となった。 ヴィータの方も似たり寄ったりで、プログラムのアップデート率をみる限り、自分の1時間後ぐらいに終わるだろう。 しかしなのはは画面を眺めるうちにあることに気づいた。 自分とヴィータだけでなく、まだもう1つデバイスのアップデート作業が進行しており、もう間もなく終わりそうなことに。 検査兼整備用の容器に入った待機状態のそのデバイスは〝ブレスレット型〟だった。 「ねぇシャーリー、あのデバ─────」 デバイスは誰の?とは問えなかった。その前に持ち主がドアの向こうから現れたからだ。 「あ、なのはさん、お久しぶりです!」 地上部隊の茶色い制服に身を包み、ニコリと嬉しそうに挨拶する緑の髪した少女、ランカ・リーがそこにいた。 (*) ランカは本局の要請で無期限の長期出張に出ていた。 行き先は〝戦場〟だ。 第6管理外世界と呼ばれる次元世界で行われていた戦争は、人対人の戦争ではなく、対異星人との戦争だった。 本来管理局は非魔法文明である管理外の世界には干渉しないのが基本方針だったが、その世界の住人は管理局のもう1つの任務に抵触した。 それは〝次元宇宙の秩序の維持〟だ。 彼らは70年程前に次元航行を独自に成功させ、巡回中だった時空管理局と遭遇したのだ。 運の良いことに極めて友好的で技術も優秀な人種であったことから、1年経たないうちに管理局の理念に賛同した彼らと同盟を結ぶに至った。 以後管理局は次元航行船の建造の約8割をその世界に依存しており、管理局の重要な拠点だった。 しかし2ヶ月前、その世界で戦争が勃発した。 その異星人は我々人間と同じく〝炭素〟ベースの知性体(以下「オリオン」)であったが、彼らは突然太陽系に入ると先制攻撃を仕掛けてきたのだ。 当然管理局に友好的だったその惑星(以下「ブリリアント」)の住人は必死に応戦する。 管理局との規定により魔導兵器縛りだったが兵器の技術レベルではなんとか拮抗。戦力は圧倒的に劣っていた。しかしブリリアント側にはある〝技術〟があった。 次元航行技術だ。 この技術は実は超空間航法『フォールド』と全く同じ技術で、第25未確認世界(マクロス世界)とオリオンの住人達は知らなかったが、空間移動より次元移動に使う方が簡単だった。 この技術によってオリオン側の先制攻撃と戦力のメリットを塗り潰し、比較的戦いを有利にすすめた。 しかし所詮防衛戦でしかなく、オリオン側の恒星系の位置がわからないため、戦いは長期化の様相を呈していた。 だが捕虜などからオリオンの情報がわかるにつれて、戦争の必要がないことがブリリアント側にはわかってきた。 彼らの戦争目的は侵略ではなく〝自己防衛〟だという。 何でも彼らの住む惑星オリオンからたった数百光年という近距離にあったため、 「ベリリアン星の住人が攻めてくる!」 という集団妄想に駆られたらしい。 それというのもブリリアント側が全く気にしていなかった、それどころか最近までまったく観測すらしていなかったものが原因であった。それは次元航行に突入する際に発生してしまう短く超微弱なフォールド波だ。 これを次元航行発明から70年間完全に垂れ流しつつけ、これを受信したオリオンが盛大に勘違いした。 彼らにはまだフォールド技術は理論段階で、空間跳躍以外の使用法を全く思いつかなかった。そのため管理局に造船を任されてどんどん新鋭艦を次元宇宙に進宙させていったブリリアントの行為は、オリオン側にとって奇怪に映った。船を造ってどんどんフォールドするのはわかる。宇宙開発というものだとわかるからだ。しかし恒星外にフォールドアウトするでもなく、ただため込んでいるようにしか見えないその行為は、オリオンの住人にとって艦隊戦力の備蓄と思われてしまったのだ。 そう勘違いしてしまったオリオンは半世紀の月日をかけてフォールド航法を理論から実用に昇華させて、のべ一万隻もの宇宙艦隊を整備。そして今、万全の準備をして先制攻撃に臨んだようだった。 しかし実のところ彼らのことはまったく知らなかったし、『協調と平和』を旨とするブリリアントは知ったところで侵略するような野心もない。 そこで和平交渉のためにまず戦闘を止めようと考えたブリリアントは、次元宇宙で〝超時空シンデレラ〟とも〝戦争ブレイカー〟とも呼ばれるランカ・リーの貸出しを要請したのだ。 管理局としても戦争による新鋭次元航行船建造の大幅な停滞は困るし、70年来の大切な盟友を助けたいという思いがあった。 こうして1ヶ月前、六課に対し最優先でランカの出張を要請したのだ。 六課やアルトは危険地帯へのランカの出張に渋ったが、ランカの強い思いから根負けしていた。 こうして第6管理外世界に出張したランカは、本局の次元航行船10隻からなる特務艦隊と航宙艦約100隻から成るブリリアント旗艦艦隊に守られながら局地戦をほぼ全て歌で〝制〟して行ったという。 確かなのはが最後に見た関連ニュースは「全オリオン艦隊の内、50%がブリリアント側に着いた」というものだった。 そのランカがここにいるということは───── 「戦争は終わったの!?」 ランカは頷くと続ける。 「みんないい人達なんだよ。ただ誤解があっただけなんだ」 そう笑顔で語る少女は、とても恒星間戦争を止めた人物には思えぬほど無邪気であった。 (*) 1424時 クラナガン地下 そこは戦前は半径10キロメートルに渡って巨大な地下都市があり、戦時中は避難民が入った巨大な地下シェルターだった。 一時は全区画にわたって放棄されていたが、今では歴代のミッドチルダ政府の尽力によって大規模な地下街が再建されている。 しかしその全てに手が届いたわけではない。一部の老朽化や破壊の激しい区画は完全に放棄され、そうでなくともただのトンネルとして利用されていた。 そこを1台の大型トラックが下って(クラナガンから出る方向)いた。 そのトラックのコンテナには『クロネコムサシの特急便』のロゴとイメージキャラクターがペイントされ、暗いトンネル内をヘッドライトを頼りに走って行く。 運転手はミッドチルダ国際空港近くの輸送業者の新人で、この道は彼の先輩から教わったものだ。 地上のクラナガンに繋がる道はどこも渋滞であり、拙速を旨とする彼ら輸送業者はこの廃棄区画を開拓したのだった。 しかし残念ながら路面状態はよくない。 その運転手はトラックの優秀なサスペンションでも吸収できなかった予想以上の縦揺れに驚く。 「いかんな・・・積み荷が揺れちまうじゃねぇか」 彼はシフトレバーについたつまみを操作すると、ヘッドライトをハイビームにする。 すると少しは視認範囲が広かった。しかし───── (しっかし、いつ来ても廃棄区画は気味悪りぃな・・・・・・) 右も左も後ろにも他の車は見えない。それが彼に昨日見た映画を思い出させた。 それはベルカ(位置は第97管理外世界でアメリカ合衆国)の〝ハリーウッド〟で撮影された映画で、タイトルは「エイリアン」だ。 ストーリーは時空管理局の次元航行船が、新らたに発見された世界の調査のために調査隊を派遣する所から始まる。 そこには現代の技術レベルを持った町があったが、人の姿がない。調査が進むにつれてこの惑星の住人が、ある惑星外生命体の餌食になっていたことがわかった。 しかしその時には遅かった。 魔法の使用を妨害するフィールドを展開する敵に対し、調査隊には腕利きの武装隊が随伴していたが、また1人、ま1人と漆黒のエイリアンの餌食になっていく。 また、次元航行技術があったらしいこの世界は、厳重に隔離されていたが次元空間へのゲートが開きっぱなしだった。 このままではエイリアン達がこちらの世界に来てしまう。 何とか現地の質量兵器を駆使して次元航行船に逃げ延びたオーバーSランクの女性執務官リプリーと、1人の調査隊所属の科学者の2人は、艦船搭載型の大量破壊魔導兵器であるアルカンシェルによるエイリアンの殲滅を進言。そのエイリアンの危険性は認められ、それは決行される。 大気圏内で炸裂したアルカンシェルは汚染された町をクレーターに変え、船は次元空間に戻った。 しかしリプリー達が乗ってきた小型挺には小さな繭が─────! という身の毛もよだつ結末だ。 さて、問題のシーンは物語の終盤。先の生き残った2人と、3人の武装隊員が現地調達した軽トラで、小型挺への脱出を試みた時だった。 その名も無き(劇中ではあったと思うがいちいち覚えていない)武装隊員はこのようなだれもいない地下の道を走っていた。 しかし賢しいエイリアン達は天井に潜んでいた! ノコノコやってきた軽トラに飛び乗った〝奴ら〟は2人の武装隊員の断末魔の悲鳴とともに運転席を制圧。危険を感じ取ったリプリー達3人は荷台から飛び降りた─────というシーンだった。 (・・・・・あれ、俺って名も無き犠牲者その1じゃね─────) 彼の背筋に冷たいものが走る。 「ま、まさかな。そうだよ、杉田先輩だって10年以上この道を使ってたんだし、前にも先輩と1回通ったじゃないか」 わざと声を出して自らを勇気づける。 そして彼はラジオを点けると局を選ぶ。すると特徴的なBGMと共にCMが聞こえてきた。 『─────毎日アクセルを踏み、毎日ブレーキを踏み、毎日荷物を積み降ろす。・・・あなたのためのフルモデルチェンジ。新型〝ERUF(エルフ)〟登場─────!』 彼はそれを聞きながらそのBGMを歌い出す。 「いぃつ~までも、いぃつぅ~までも~、走れ走れ!ふふふ~のトラックぅ~」 それを歌うと何故か恐怖も飛んでいった。 (やっぱこの曲はいいねぇ~。でも─────) 彼はこのトラックのフロントにあるシンボルマークを思って少し申し訳なく思った。 そこには『ISUDU』ではなく、『NITINO』のマークがあったりする。 (どっちが悪いってわけでもないんだが・・・・・・) 彼はそう思いながらも歌い続けた。 「ど~こぅ~までも、どこぅまでも~、走れ走れ! ISUDUのトラック─────」 (*) 5分後 『そろそろクラナガン外辺部かな』と思った彼は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム。全地球無線測定システム)で位置を確認する。その時、一瞬サイドミラーが光を捉えた。 「?」 再び確認するがなにもない。 (勘弁してくれよ・・・・・・映画のせいで敏感になってるんだな・・・・・・) 彼はそう結論を出すと運転に意識を集中する。しかし今度はコンテナの方から無理に引き裂かれているのか、それを構成する金属が悲鳴のような悲鳴を上げる。 「ちょ・・・・・・マジで・・・・・・」 積み荷は食料品や医療品などで勝手に動くものは積んでいないはずだ。 (ということは・・・・・・!) 彼の頭に映画のシーンがフラッシュバック!あの武装隊員の断末魔の悲鳴が頭に響く。 (落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け─────!!) 彼はもはやパニック寸前だ。しかし無慈悲にもその時は訪れた。 一瞬静かになり、彼が振り返えろうと決意した瞬間───── 耳をつんざく轟音と眩いまでの黄色い閃光が閃光手榴弾のように彼の視界を奪った。 すでに冷静さを欠いていた彼は驚きのあまりハンドル操作を誤り、トラックを横転させてしまった。 (*) 横転事故より15分後、トラックに搭載されていた緊急救難信号を受信した救急隊が現場に急行していた。 「・・・・・・おい、あれか?」 救急車を運転する救急隊員が助手席に座ってGPSを操作する同僚に聞く。 「ああ、そうらしい。しかし、こんな薄気味悪い場所で事故らんでも・・・・・・」 「こんな場所だからだろ。・・・・・・運転席に付けるぞ」 救急車は横転したトラックの本体─────牽引車近くに横づけする。 「大丈夫ですか!?」 ドアを開けて助手席の同僚がトラックに呼びかけるが返事はない。車を離れているのだろうか? 後ろではもう1人の同僚が救急車の後部ハッチを開けて、懐中電灯でトラックを照らす。 どういう訳かコンテナだけがひどく損傷していたが、運転席付近は無傷だ。シートベルトさえしていれば助かりそうだが───── いた! エアバックで気絶しているらしい。トラックの左側を下に横転しているため、宙吊りになったまま項垂れている。 外に出た同僚2人はデバイスで超音波を発生させてフロントガラスを1秒足らずで割ると、センサーで彼の状態を調べる。 「・・・・・・大丈夫だ。バイタル安定、骨も折れてない」 2人は運転手を事故車両から引き離していく。 その間に運転席に残っていた彼は、どうも妙な事故なため、無線で1番近い治安隊に事故調査隊の派遣の旨を伝えた。 (*) 20分後 「通報を受け派遣されました第108陸士部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です」 『地上部隊 第108陸士部隊』と書かれたメガ・クルーザーのHMV(ハイ・モビリティ・ヴィークル。高機動車)に乗ってきたのは3人で、内2人は白衣を着、もう1人は挨拶をした地上部隊の茶色い制服を着た1人の女性隊員だった。整備されていないこの地下空間は世間では犯罪者の温床にもなっていると言われていることから、治安隊の代わりに陸士部隊の調査隊として派遣されたとのことだった。 「この事故はただの横転事故と聞きましたが・・・・・・」 「はい。それが事故状況がどうも奇妙でして、それほど大きな衝撃でもないはずなのにコンテナだけが吹き飛んでいて・・・・・・」 確かに救急車のヘッドライトに照らされたコンテナは、原型を止めないほどにひどく損傷していた。 「運転手の方(かた)は?」 ギンガの質問に救急隊員は困った顔をする。 「・・・・・・それが運転手も混乱していまして・・・・・・お会いになりますか?」 「できるならお願いします」 ギンガは同乗者の2人に現場検証を頼むと、運転手が手当てを受けているという救急車に入った。 「本当なんだよ!あの〝エイリアン〟が出たんだ!!」 そう手当てしながら困った顔をする救急隊員に喚く運転手に、ギンガは〝ギョッ〟とする。 (そうかぁ、あの映画を見た人かぁ・・・・・・) 彼女は彼に、一気に親近感を覚えた。 彼女も実は1年ほど前にその映画を劇場でみていた。人には言えないが、その後1ヶ月ぐらい1人で真っ暗な部屋に入る時には、デバイスをその腕に待機させねば安心できなかった。 「すみません、そのエイリアンのお話をお聞かせ下さい。私はそのために管理局から派遣されました」 「なんだって!・・・・・・それじゃあの映画は!?」 思わせぶりに頷いてやると運転手の口はようやく軽くなり、やっと事故の状況が判明した。 (*) 「コンテナが勝手に爆発ねぇ・・・・・・」 救急車から出たギンガが腕組みして考える。 地面に散らばる積み荷は食料品などで爆発するような物はないし、クロネコムサシの本社から預かったそのトラックの輸送物リストもほとんどが医療品や食料品と書いてある。 しかし本当にエイリアンが来たなどということはあるまい。 鑑みるにこれはテロで郵便爆弾の誤爆という可能性があるが、どこかの政府系機関に届ける予定の荷物は───── 「・・・・・・あれ?」 ギンガの目がリストの一項目で止まる。 (これがベルカのボストンで?) 内容物は、輸入品としては珍しくないとうもろこし。しかしベルカの比較的北にあるボストンでは寒すぎて生産していない。 ビニールハウスという手もあるが、最近赤道付近の地価は安く、補助金も出るためそんなところで作るメリットはない。 それどころかボストンでは10年前からあるベンチャー企業の進出が進んでおり、農業をやるような場所はもう残っていないはずだった。 (確かその企業がやっているのは医療用のクローン技術─────) そこまで考えた時、一緒に来た調査隊員の自分を呼ぶ声が耳に入った。 「はーい。今行きます!」 ギンガはリストを小脇に添えると声の主の元へ走る。 「どう─────」 どうしました?と問うまでもなかった。 彼は顔を上げると〝それ〟をライトで照して見せる。 そこには他の積み荷と違って無粋な金属の塊『ガジェットⅠ型』の大破した姿があった。 「他にもこんな物が」 少し離れていたもう1人が、床に転がっているそれを指先でトントンと叩いて見せる。 「それは・・・・・・生体ポット!?」 ギンガは目を疑うことしかできなかった。 (*) 『君はいったい何をやっているのかね!?管理局に感づかれたらどうする!』 画面の中で怒鳴る背広を着た中年男にスカリエッティは涼しい顔をして答える。 「〝あれ〟が本物かどうか試しただけですよ。それに、管理局など恐るるに足らない」 その軽い態度に更に熱が入ったのかまた怒鳴ろうとした中年男だが、画面の奥の人物に制される。 『しかし社長!』 中年男は社長と呼ぶ30代ぐらいの若い人物に異議を唱えようとするが、彼の鋭い視線だけで黙らされてしまった。 社長は中年男が席に座るのを確認すると、今度は彼自ら詰問し始めた。 『スカリエッティ君、我々はもうかれこれ7年間君の研究のために優秀な魔導士達の遺伝子データを提供してきた。だが我々が君に嘘をついた事があるか?』 「いいえ。おかげさまで研究は順調に進んでますよ」 『なら今後、このような事は無いようにしてくれたまえ。・・・・・・それと〝あの子〟の確保は後回しでも構わないが、一緒に送った3つのレリックの内〝12番〟は必ず回収したまえ。あれがなければこの計画は失敗だ』 「仰せのままに」 スカリエッティの同意に社長は通信リンクを切った。 画面に『LAN』という通信会社の社名が浮かぶ。この回線はミッドチルダから太平洋を横断し、ベルカの大地まで繋がった長大な有線回線だ。 現在ミッドチルダ電信電話株式会社(M T T)に市場で敗れたこの会社はもうなく、海底ケーブルは表向き放棄されている。しかし海底ケーブルというローテクさ故に注目されず、盗聴も困難なため、水面下で動く者達の機密回線にはもってこいだった。 「またスポンサーを怒らせたの?」 いつものように気配なく彼女はスカリエッティの背後に現れた。 「まぁね。しかし必要なことさ。それに、彼らには〝あれ〟の重要さがわかっていない」 スカリエッティは肩を大仰に竦めると首を振った。 「そう・・・・・・。まぁ、私はあなたの副業には干渉しないけど、せいぜい頑張ってね」 グレイスは微笑むと退室していった。 「・・・・・・ウーノ」 スカリエッティの呼びかけに、彼の背後に通信ディスプレイが立ち上がり、彼の秘書を映し出す。 「はい」 「あれは本物だったか?」 「確定はできませんが、恐らく本物でしょう。」 スカリエッティはその答えに陶酔したように 「すばらしい・・・・・・」 とコメントすると、〝それ〟の追跡を依頼した。 (*) 『ベルカ自治領 マサチューセッ〝チュ〟州 ボストン』 その地域は最近発展してきた医療科学系企業『メディカル・プライム』が席巻していた。 この企業はミッドチルダでは禁止されている「クローン技術」を用いて、要請を受けた本人のクローンの臓器を作っている。無論これは移植のためだ。 この『クローン臓器移植法』は、移植時の拒絶反応が全くないことから定評があった。 しかし従来の全身のクローン体から、移植のため一部を取り出すという行為はクローン体を殺す事を意味し、倫理上の問題があった。 そこでこのベンチャー企業は必要な臓器を必要なだけ、ある程度〝瞬時に〟クローン化する技術を開発し、これを武器に発展してきていた。 社名の「メディカル・プライム」も「最上級の医療を!」という熱い思いを込めて付けられたもので、お金さえあれば〝パーツ〟の交換で脳を含めた若返りすら可能だった。 現在、その企業内では深夜に関わらず、上級幹部達が緊急会議の名目で集っていた。 ある幹部が通信終了と同時に口を開く。 「全く、あの男の腹の内は読めん」 それに対し、スカリエッティに怒鳴っていた中年男が彼に怒鳴る。 「なにを言っている!やつなど野心丸見えじゃないか!だから犯罪者と手を組むことには反対だったのだ!」 「・・・しかしあいつにしかこの計画は遂行できないだろうな」 5,6人の幹部達が思い思いに意見をぶつける。今までこの議論が何度重ねられたことか。しかしやっぱり最後の結論は決まっている。 「諸君、すでに賽(さい)は投げられたのだ。この計画にスカリエッティを巻き込んだことを議論しても仕方がない。それに管理局には非常用の鈴が着いている。〝不本意だが〟もしもの時は彼女に揉み消してもらおう。我々はスカリエッティを監視しつつ、ベルカの誇りである〝あの船〟の浮上を待てばよいのだ。あの船さえあれば、ミッドの言いなりになってしまったこの国の国民達も、目が覚めるはずだ!」 社長の熱を含んだスピーチに幹部は静かに聞き入る。そして社長は立ち上がると、会議室に飾られた今は無きベルカ国の国旗に向き直り、掛け声を上げる。 「偉大なるベルカに、栄光あれ!」 「「栄光あれ!!」」 幹部達も立ち上がり、彼に続いた。 ―――――――――― 次回予告 地下より現れた謎の少女 同時に始まったガジェット・ゴースト連合の一大攻勢 彼らは無事クラナガンを守りきることができるのか? 次回、マクロスなのは第27話「大防空戦」 「サジタリウス小隊、交戦!」 ―――――――――― シレンヤ氏 次
https://w.atwiki.jp/adx992/pages/18.html
CV:田村ゆかり 初出:魔法少女リリカルなのは(1期) 防御力 標準 Lv3スキル ロングレンジパワーLv3 シングル解放条件 初期解放 シリーズ主人公で砲撃魔導士。 高速砲撃「ディバインバスター」を主軸に、ロングレンジを主戦場とする遠距離型。 クロスレンジのパワーには恵まれない反面、魔法の火力が全体的に高いのが特徴。 前作からの変化 アクセルシューター(長押し)の性能が大きく変化。 FD中の大威力砲撃「ハイペリオンスマッシャー」を装備、FD中はキャッチもマニューバACSに変化、威力が上昇する。 SLBのコンボ組み込みが可能になった ロングレンジ魔法 操作 魔法名 解説 □ アクセルシューター 誘導弾を3発発射 □(長押し) アクセルシューター 弾丸を12発設置、時間差で発射 △ ディバインバスター 高速直射砲 △(長押し) ディバインバスター 大威力な直射砲を発射 ○ レストリクトロック スタンダードなバインド魔法 ○(長押し) レストリクトロック スタンダードなバインド魔法。追尾性能がある FD中△(長押し) ハイペリオンスマッシャー 大威力の砲撃。前方に発生する幕部分に防御判定がある □:アクセルシューター 通常 3hit 9.31% 消費MP約8% ガードされた際のMPダメージ約20% 「シュートッ!」 長押し 1~10hit 2.87~15.81% 消費MP約17% ガードされた際のMPダメージ約6~72% 「アクセル・シュートッ!」 通常は3発、長押しでは12発の弾丸を発射。 通常版 前作と同じくやや放射状に広がってから誘導して飛んでいく遅い弾丸。 一見地味だが、牽制弾としてはかなりの高火力。 追尾性が高いので、相手のアクセルやガードを誘っていける。クロスレンジに踏み込んできた相手の背後に回り込んでヒットする事もある。 中距離からの牽制・起き攻めとして使うのがベター。 発射前と発射後の硬直がやや長めなのがネックか。 長押し版 前作とは異なり、「正面に多数の光弾を発射 相手の近くで弾丸が散開配置 時間差で相手に一斉収束」というスタイルになった。 弾丸自体に誘導性能はないが、相手の付近に設置されてから順次発射されるため命中率は高い。 ただし全弾ヒットする事はほとんどなく、6~8hit(10~12%)程度が多い。 相手を囲い込むように撃ち出されるため横移動に引っかかりやすいが、その場で動かなければ射出直後は当たりにくい。 時間差で大量の弾が襲い掛かり、加えて収束時点でなのはの硬直が解けているため、凌ぎきるのが非常に難しい。 ヒット確認してバスター、アクセルを見てバスター、ガードを見てレストリクトロック、など状況に応じて簡単に対処できる。 通常ガード時のMP削り量も大きく40~70%ほど。 EXガードされても相手はガード状態が優先されて動けなくなるため、やはりバインドが決まる。 欠点は発生の遅さと、ダメージにオレンジゲージが多いこと。 △:ディバインバスター 通常 3hit 13.80% 消費MP約15% ガードされた際のMPダメージ約30% 「バスター!」 長押し 6hit 18.92% 消費MP約24% ガードされた際のMPダメージ約45% 「ディバイン・バスター!」 スタンダードな直射砲撃。長押し版は出が遅くなる分威力が増加する。 弾速・方向修正共に優れ、発生も早めと非常に当てやすい。砲線全体に攻撃判定があり、持続時間も長め。 ただし通常版から下手な溜め砲撃より硬直時間があるためバインドや優秀な差し技、カウンターなどを持つ相手に適当なぶっ放しは厳禁と言える。 通常版 牽制や反撃、吹き飛ばし後の追撃などさまざまな用途で活躍する。 通常版砲撃の中ではトップの火力。反撃やコンボの追撃の際に光る。 長距離よりも中距離から撃つ方が、相手にとっては避けにくい。 長押し版 威力は上昇するが、発射前後の隙が大きい。 相手がバインドかガードブレイク状態の際に使用することを推奨。 しかし、通常版シューター 通常版バスターの方が威力が大きく隙も小さいため、あまり出番はない。 △:ハイペリオンスマッシャー 長押し 1~16hit 6.46~27.82% 消費MP- ガードされた際のMPダメージ100% 「ハイペリオン・スマッシャー!」 フルドライブ時のみ使用可能。 砲撃の出は非常に遅いが高ダメージで、単発技としては(FDB以外では)作中最大級のダメージを誇る。 発生の遅さは、長押しバインドやガードブレイクから出してもタイミングが遅いとガードや回避されてしまうほど。 ガード時のMP削り量が高く、約100%。 動作中何時でもアクセル・ガードでキャンセル可能。通常版ディバインバスターや長押し版レストリクトロックが繋がる。 発動直後の杖振り動作と、発動後に前方に展開される光の幕には攻撃判定(3Hitで7.06%)とガード判定あり。ガード判定は光の幕の方が強い。 キャンセルでリスクは低く追撃も出来るので、慣性撃ちで突進技感覚で出していくのも手。 杖振り動作を当ててアクセルキャンセルからアタック・キャッチに繋ぐ事も出来る。 ただし密着では当たらず、幕の判定から砲撃も連続ヒットしない模様。 ガード判定は正面~ある程度回り込んでくる弾丸も防いでくれるが、サンダーレイジなど地点・範囲に発生する攻撃は防げないので注意。 発生は遅いが威力・ガード時のMP削り量が大きく正面のガード判定といつでもキャンセル可能な性質もあり、ローリスクハイリターンな攻撃。 動作時間が長い分フルドライブの時間を大きく経過してしまう欠点もあるが、かなり強気で出していける。 なお、発動中にフルドライブが切れた場合、砲発射時点でMPを消費する。消費量は長押しディバインバスターと同等。 ○:レストリクトロック 通常 バインド(短) 消費MP約8% - 長押し バインド(長) 消費MP約8% 「捕まえた!」 スタンダードなバインド技。 通常版 発生が早いが追尾しない。拘束時間が短く、通常版ディバインバスターをギリギリ打ち込める程度。 中距離の立ち回りで光る。相手が魔法を使用した際の硬直に刺していくことでプレッシャーをかけられる。 バインドが決まった相手に、バインドが切れかけるタイミングを狙えば再度バインドをかけることが可能。中距離からバインドをかけ続けながら接近し近距離でコンボを決める、なんてこともできる。 長押し版 バインドが成立するまでボタンを押し続ける必要があるが追尾性能を持ち、拘束時間が長い。 成立モーションはロングレンジ魔法とフルドライブ発動、FDBでキャンセル可能。 アクセルシューター(長押し)をガードして足が止まった相手に使用したり、コンボに組み込んだりもできる。 通常版と同様に、バインドを連続でかけつづけることができる。バインドを決めたのが遠距離であっても、近距離まで踏み込んでFDBを当てることが可能。 バインド成立時のダウン値は高めだが拘束中の時間経過で減少していくため、終わり際に再度重ねてループすることも出来る。 クロスレンジ 初段射程は約2.7m。コンボは3段型。初段の出が早く扱いやすい。 外した時の隙もかなり小さいので相手のアタックで踏み込んでくる相手なら牽制として射程外で振るのもあり。 ~△△/~△○は一回目の△時点で受身を取られてフィニッシュが避けられてしまうが、その後の状況は五分程度でおそらく確定の反撃は受けない。 安定した水準での攻撃力・MP回収率に恵まれないのが弱み。 □□□ 6.98% MP回復量約40% 打ち上げ □△△ 8.71% MP回復量約45% ダウン □□△△ 9.68% MP回復量約60% ダウン □○ 8.08% MP回復量約60% 吹き飛ばし □△○ 10.17% MP回復量約70% 吹き飛ばし □□△○ 10.91% MP回復量約90% 吹き飛ばし □□□ 打ち上げフィニッシュ。 威力は振るわないが、なのはのアタックで唯一状況を問わず安定して最後まで繋がる。 追撃が決まればまずまず良好なダメージとMP回収なので、割り切って受身狩りの読み合いに徹するのも選択肢。 □△△/□□△△ フィニッシュのガード時MP削り量が非常に多いのが特徴(約50%)。 前述の通りヒットしても途中で受身可能なので、ガードされた時用か。 □○/□△○/□□△○ ○フィニッシュは吹き飛ばし。厳密にはダウン×2 吹き飛ばし、という構成。 吹き飛ばしの軌道がやや高くなるため、通常版ディバインバスターのほか長押し版レストリクトロックを当てることも出来る。 LCAも可能だが多段ヒットが祟って補正が厳しく、ダメージはあまり伸びない。 受身可能な~△○のほか、□○も間合いが遠めだと連続ヒットしない事がある。 特殊技 EXアタック 杖での打撃 8.62% MP回復量約15% 射程3.6m ダウン(相手が浮いている状態なら吹き飛ばし) 「スマーッシュ!」 キャッチ 砲撃 10.34% MP回復量約15% 射程1.6m 吹き飛ばし 「ロックオンバスター!」 FD中キャッチ マニューバACS 21.75% MP回復量- 射程1.6m 吹き飛ばし 「ACS、ドライブ!」 ブロック 杖での打撃 8.62% MP回復量約15% 近接攻撃 吹き飛ばし 「シュート!」 吹き飛ばしが多い点は、なのはの長所と噛み合っている。 一方でいずれも単発打撃なため、揃ってMP回収率が低い。 EXアタック 立ち状態に当てた場合はダウン。浮いている相手に当てると吹き飛ばしに変化。 キャンセルポイントの最後の方でACGすれば、最大2mほどのスライド移動が一応可能。 ただし移動の発生はかなり遅い。受け身狩りとして使える。 キャッチ 通常時は吹き飛ばしの単発攻撃。 フルドライブ中はキャッチがマニューバACSに変化、威力が大幅にアップする。 ブロック 成立時は吹き飛ばし。 バスターで追撃が可能。補正が緩いため、ダメージは良好。 FDB「スターライトブレイカー」 トリガー 射程 ヒット数 命中時威力 FD発動で吹き飛ばしてトリガー 杖での突き 約4.1m 16hit 47.5% 近距離なら可能 周辺魔力を集めて放つ集束砲撃。コンボにも組み込みやすく、威力も前作より上昇している。 FD発動→吹き飛ばしから直接トリガーもFD発動で吹き飛ばす位置がある程度近ければ可能。 主な立ち回り ディバインバスター・アクセルシューターが高性能なので、CPU戦や初心者同士の対戦であれば撃ちまくっているだけでもなんとかなる。 慣れてきたら長押しシューターからの攻め(ガードさせてのバインド(短)、ヒット確認からのバスター)や、吹き飛ばし後のバスター追撃なども。 近距離(クロスレンジ)における立ち回り なのはのアタックは出が速い方なので、決してクロスレンジが弱いというわけではない。ただ威力が低いので、ダメージソースとしてあまり期待できない。アタック・キャッチ・ブロックのどれであろうと、相手を中距離にぶっ飛ばせる点は優秀。 相手との間合いを取るための距離と割り切った方が良い。読みあいに勝てば、有利な遠距離戦が待っている。 考えようによっては、この距離でさえ有利。相手の出方を見る待ちの戦い、つまり後出しジャンケン。遠距離に特化したなのはだからこそ成り立つ戦法である。 クロスレンジに入られたら、ひたすら後退。相手はなのはとの距離が広がるほどに不利になるため前進せざるを得ない。ここを叩く。 前進する以上、先に手を出すのは相手の方。こちらはそれを見てから対処すればいい。上級者はAGCを使って攪乱してくるが、それを使えるのはこちらも同じ。やはり有利である。 ブロックかキャッチで読み勝てば、相手を中距離にぶっ飛ばせる。決まればアクセルシューター(長押し)を撒いて距離を取る。 アタックで読み勝った場合は、□〇のコンボで。 中距離(ミドルレンジ)における立ち回り キャラとの相性にもよるが、概ね立ち回りがしやすい距離。シューター(通常)を撒いて、ヒット少し前にバスター(通常)を打ち込む。バスター(通常)のタイミングが良ければ、シューターを回避した直後の相手にガンガン決まる。 相手の魔法をアクセルで回避した直後に反撃でバスターを撃ちこむことも忘れない。 起き攻めにはシューター(長)で。撃った後は遠距離同様の立ち回りを取ってもいいし、(少々難易度が高いが)相手との距離次第では近距離に切り込んでコンボ(MP回復にもなる)を決めてもいい。 反撃のバスターが当たらないorカウンター魔法持ち(ザフィーラやりーぜロッテ等)には、バスターより出の速いレストリクトロック(通常)を使ってバスターを確定させる。 遠距離(ロングレンジ)における立ち回り なのはの最も得意とする距離。この距離間での単純な魔法の打ち合いであればまず負けはない。 アクセルシューター(長)を撒いて相手の動きを見る。ヒットすればバスター(通常)を撃ち、ガードされればレストリクトロック(長)>バスター(長)。 アクセルシューター(長)を相手がEXダッシュで回避特攻してくることがある。これに釘を刺す意味で、アクセルシューター(長)を撃った後すぐにバスター(通常)を撃って牽制するアクションを時折混ぜよう。 おすすめスキル ロングレンジパワーLv3、MPローダー 【その他、立ち回りにおける重要事項】 MPの管理を怠らない これが重要であるのはどのキャラであっても同じだが、クロスレンジの火力が低く、ダメージソースの殆どがMP消費の魔法であるなのはにとっては特に重要。 MPが切れればアクセルでの回避不可な上、バインド(長押し)も確定ヒットしてしまう(アクセラレイターは特に悲惨)。 ①無駄なアクセルは避ける(横移動だけで回避可能な魔法を見極める)。 ②魔法の無駄撃ちはしない(特にバスター)。 相手のMPを常に観察し、MP切れを見逃さない MPが切れた相手はアクセルを行えないため、レストリクトロック(長押し)が確実に決まる(ただし、相手にドライブストックが残っていれば回避されるが)。後は、バスター(長押し)なりハイぺリオンスマッシャーなり、近づいてFDBなり自由に料理すればいい。 なのはは遠距離では圧倒的に有利であるため、わざわざ近づいてやる必要はないが、逆に相手は接近せざるを得ないため、アクセルの消費はさせやすい(近づかれすぎた際にこちらがアクセルを使用する場合も忘れてはいけないが)。 ドライブストックは可能な限り温存、自分より先に相手がストックを使い切るのを待つ CPU戦では簡単に達成できるが、対人戦では必ずしも上手くいくとは限らない理想論ではあるが。バインド保有キャラを相手にして、ドライブストックが無い時にMP切れを起こすというのは詰んだも同然。 FD時にはガンガン攻める 大半のキャラのFD時というのは、FDBを決めるために接近するものである(そして逆に対戦相手はFDBを警戒して距離を取る)が、なのはにその必要はない。遠距離からのシューター(長押し)の連射が強力なためである。 MPを気にする必要が無いので、アクセルを使いまくって距離を取り、隙があればシューター(長押し)を撃てるだけ撃つ。 バインド(長押し)が決まればハイぺリオンスマッシャーを撃つ。高い確率で、相手は回避しようとFDを使うので、ドライブストックを消費させられる。しかも中~遠距離で。 近距離に攻めてもいいが、FDBは無理に狙わない。近距離でコンボからFDBに繋ぐにはアタックからでなければならないため、当然アタックは警戒される。しかしダメージ2割超のACSがあるので、相手はブロックも容易に出せない。いつもよりは立ち回りがしやすいはず。 相手からすれば、この時ばかりはどの距離であってもプレッシャーが大きい。離れればシューターの雨、近づけばFDBとACSの危険性。 【一部キャラクターへの対応】 VSザフィーラ、ユーノ、アルフ 慣れないうちは高速の突進魔法に悩まされる。バスターを発射前に潰されやすいうえに、近距離の戦いに持ち込まれやすい。 しかし(体感だが)突進魔法はEXガードの判定が甘いため、練習して安定してEXガードを合わせられるようになれば怖い相手ではなくなる。 VSトーマ こちらのクリムゾンスラッシュも突進魔法だが、こちらは初撃がかなり速いためEXガードを合わせるのはかなり難しい。 反面、突進の追尾性能は無いので初撃をアクセルでかわすことができれば近距離戦に持ち込まれることはない。 VSヴィヴィオ レストリクトロックとフローターロックが非常に強力で、遠距離でも安心できない強敵。 アクセルスマッシュは速いが、シューター(通常)を壁にすれば怖くない。 兎に角レストリクトロックを警戒し、フローターロックを出させる隙を与えないようにガンガン攻めていくのがベター。 攻撃力は低いので、殴られつつも確実に当てていけばダメージレースで負けることはないはず。 VSアインハルト なのはの天敵。 繋がれぬ拳で魔法被ダメージ半減&怯まない。 そして下手に魔法を撃てば旋衝破のカウンターと中~遠距離でも隙がなく非常にやり辛い相手。 遠距離ならシューター(長)をばら撒く。 中距離ではシューター(通常)を撃ち、隙を見てレストリクトロック(通常)を積極的に使ってバスター(通常)を確実に決めていく。 近距離戦はリスクが高い。 「高町なのは」ページに関するコメント 名前 コメント すべてのコメントを見る ロック!はヴィヴィオだよな・・・? -- (名無しさん) 2012-01-09 00 19 40 なのはさんだからでは? -- (名無しさん) 2012-01-08 22 52 01 俺のなのはさんはレストリクトロックで「捕まえた!」っていうんだが。「ロック!」なんて聞いたことがない。 -- (名無しさん) 2012-01-08 20 16 33 下はミス。□△△〇>レストリクトロック(長) □△△〇 このコンボで、バインド後即□~だと10HIT。バインドが切れかけから□~だと12HIT。訂正しておく。 -- (名無しさん) 2012-01-07 01 53 41 ↓検証したがそのようだった。□△△〇>レストリクトロック(長 -- (名無しさん) 2012-01-07 01 49 29 バインドするとダウン値が減る じゃなくて バインド中でもダウン値が時間経過で徐々に回復 だと思うんだが 同じコンボレシピでもバインド後の攻撃タイミングが違うと切り揉みになったりならなかったりするから -- (名無しさん) 2012-01-06 00 32 30 わかりやすかったです。ありがとうございます -- (なのは) 2012-01-05 00 33 08 ストーリのリニスvsなのはの時にキャッチされると、たまにエクセリオンバスターって叫ぶ時あったがストーリ限定かな? -- (名無しさん) 2011-12-30 20 16 39 誤字×ガードキャンセルキャンセル〇ガードキャンセル -- (名無しさん) 2011-12-30 01 22 00 ホントだ失礼した。EXアタック>ガードキャンセルキャンセル>キャッチが3.5m付近で届くのを確認 -- (名無しさん) 2011-12-30 01 17 56
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3735.html
マクロスなのは 第28話『撃墜』←この前の話 『マクロスなのは』第29話『アイくん』 ランカが悲しみの歌声を発したのと同時刻 クラナガン上空200キロメートル(衛星軌道上) 「アイくん」は困惑していた。 さっきまであんなに嬉しそうに歌っていた〝愛しい人〟が、今度は心から悲しみに満ちた歌を歌っている。腸内(バジュラ)ネットワークを通して感じる痛みに、アイくんは改めてヒトの心の痛みという物を認識した。 しかしアイくんも約1年前、フロンティア船団で起きたいわゆる『第2形態バジュラ暴徒化事件』のように、悲しみに任せて下界に広がるヒトの町を破壊しないだけの分別はあった。 でも何もしないのは嫌だった。そこで〝愛しい人〟がなぜ悲しんでいるかを思考する。喜びの歌と悲しみの歌との間にあった出来事は、極小の粒を粒子加速して目標を破壊せんとする稚拙な暴力機械である〝筒〟から出た〝線〟が、彼女の友人が乗る〝ひこうき〟に命中したことだ。直後ひこうきからは、大量のフォールド波の奔流が異空間に流れ出たが、それは関係ないだろう。 人間はよく殺し合いをするが、こと味方や友人といった人種がやられることに関して敏感だ。〝自分がいた集団(惑星フロンティア防衛隊)〟でも同僚がやられると、弔い合戦だなんだと勝手に集まってきて不必要なまでの大きな戦力でその敵をねじ伏せる。 バジュラは全体としてその感情について完璧に理解したわけではない。彼らにとっての友軍(バジュラ)がやられたことを人間に当てはめると、腕や足を失くしたという認識に近い。確かにそれなりには怒りや痛みを感じるが、結局代わりの効くものだ。 しかし、アイくんにはわからなくもないものであった。 これもまた〝自分がいた集団〟にいた時の話だ。翻訳機の開発以来、編隊長として見た目にほんの少し差別化を図っていた自分に、いつも声を掛けてきてくれる〝よく一緒に飛んでいた男(バルキリーパイロット)〟がいた。平時の彼の通信からは曰く〝ろっく・みゅーじっく〟なるものが流れており、哨戒任務中いつも 「いい曲だろ」 などど自慢されていた。 しかし彼は〝大きな好戦的人間の集団(はぐれゼントラーディ艦隊)〟との戦闘中に撃墜。亡くなってしまった。それ以来哨戒任務中などにその曲や彼の声が聞こえなくなったことは、自分にとって大きな驚きと喪失感を与えるに至っていた。 だからわかる。人間にとって仲間を失うことは、丸ごとひとつ、世界を失うことに等しいとても悲しいことなのだと。 長くなってしまったが、その友人の乗るひこうきが破壊され、同時に友人を失った事に彼女の悲しみの根源があり、筒を持ったヒトが悪らしい。結論の出たアイくんの行動は決まっていた。 『そのヒトを捕獲または殺傷する』 アイくんは戦闘用の〝特殊な電波〟をピンポイントでその地域に放射すると、赤いフォールド光の光跡を残しながら現場に急降下した。 (*) 早乙女アルト撃墜、死亡の知らせはほとんど伝播されなかった。なぜなら撃墜からすぐ、核兵器クラスの強力な電磁波ショック(EMP)とジャミングが放たれ、一帯ですべての民間の電子機器がオーバーロードし、通信がダウンしたためだ。─────これをアイくんがやったとは誰も認識できなかっただろう─────通信設備から機器まで全て民間のミッドチルダ電信電話株式会社(MTT)に依存していた管理局はひとたまりもなかった。 軍用機である六課の輸送ヘリ(JF-704式)、バルキリー、AWACSはこのような事態に対応するために、基盤レベルで対電子攻撃の対抗と強力な電子攻撃防御手段(ECCM)を行っているため、EMPでオーバーロードしたMTT製の通信機器(ほとんど全て)以外はノイズ程度でなんとかなった。ちなみに、デバイスは元々電子機器でないためまったく関係ない。 通信できないことで周囲が混乱する中、ヘリを狙撃した砲戦魔導士に対する管理局側のファーストストライクは、怒りからMMリアクター(小型魔力炉)の消耗を無視して行われたさくらの大威力砲撃だった。 「破邪剣正(はじゃけんせい)、桜火砲神(おうかほうしん)!」 詠唱破棄した集束砲は非殺傷設定で放たれ、敵へと殺到する。だがそれはミッド、ベルカ両魔法でも、オーバーテクノロジー系列でもない別系統のシールドによって弾かれてしまった。 効果がなかったと見るや、間髪入れずに破壊設定にした第2射の充填に入る。なのはのそれよりも淡い桜色を湛えたドラグノフ・ライフルの銃口。MMリアクターによって強化され、Sランク相当となったこの集束砲は撃てさえすれば、管理局の戦艦を串刺しにできるほどの出力を有していた。だがそれは〝撃てさえすれば〟である。 MMリアクターの異常加熱により、緊急閉鎖を知らせる警告音と表示がさくらの視界を瞬時に覆う。そして引き金を引く間もなく銃口に集束していた魔力球は閉鎖システムに流用され、その輝きを失ってしまった。 「こんなときに!」 敵はこちらのオーバーヒートを察したらしく、構えを解いて逃げていく。こちらが完全に追撃能力を失くしたと判断したのか、屈辱的なことに後姿丸出しで、である。逃走速度は超音速。通常のバルキリーではMMリアクターの閉鎖と修復に時間を取られて、とても追えないことを知っているようだ。だが――――― 「させない!!」 さくらは目前を覆っていたホロディスプレイの群れを腕の一閃で吹き飛ばすと、スラストレバーを目いっぱい押し出して追撃に入った。 元々Aランクのリンカーコアを保有する彼女は、機載のMMリアクターに頼らずとも、ある程度の戦闘が可能なのだ。 「止まりなさい!こちらは時空管理局です!あなた方を、市街地での危険魔法使用と、殺人〝未遂〟の罪で現行犯逮捕します!」 あれが未遂かはわからないが、どうしてもアルトが死んだとは認めたくなかった。しかし今、撃墜現場は残った天城に任せるしかない。 『また今度にしておきま~す!』 そう言いながら逃げる2人組。 焦りと怒りに燃えるさくらの瞳が、謎の赤い飛翔体を認識したのはその時だった。 「あれは・・・・・・?」 敵の召喚士の寄越した増援とも考えられたが、どうも違うようだ。そのバルキリーほどの大きさをもつ飛翔体は2本の腕から連射される青い曳光弾・・・・・・いや、ビームを逃げる2人組に放つ。ビームは少なくとも非殺傷設定ではないらしく、着弾したアスファルトを耕していく。 「ちょ、ちょっと─────!」 考えようによってはあの2人組よりヤバそうな攻撃に声も出ない。ただ1つ救いなのはここは郊外であり、道路には人影がなかった事だった。それに〝それ〟は〝決して〟建物には当てようとしなかった。 そうして目標を決めかねていると、2人組の逃走者は突然姿を消した。 「うそ!?」 通常レーダー、魔力レーダー、ジャミングのせいでノイズは酷いが共に反応なし。フォールド式の方は、ジャミングの影響かなぜか画面の全面がホワイトアウトしている。どちらにせよ行き先がわからない事実には変わりがない。 「そんな・・・・・・!」 思わず苦虫を噛んだように顔になった彼女だったが、赤い飛翔体には違ったようだ。 それは背中に担ぐ甲羅から生えた巨大な針がスパークしたかと思うと、ビームを射出した。ある世界では〝重量子ビーム〟と呼ばれるこの粒子ビームは、空中で弾ける。果たしてそこには例のシールドを展開した2人組がいた。外部マイクが1人の声を拾う。 『私の迷彩が破られるなんて・・・・・・』 実はこの時、アイくんは彼女の固有武装である〝シルバーケープ〟の光学迷彩を破ったわけではない。彼女が併用して発動させた魔力の隠密装置がいけなかったのだ。 この装置は〝フォールド波〟を応用して魔力の探知を不能にする。しかし代わりに大量のフォールド波を放ってしまうのだ。人間の使用するフォールド式レーダーでは相手側の放射量が大き過ぎてオーバーロード。一時的にホワイトアウトするはずだったので問題はなかった。しかしフォールド波を血とし、肉とするバジュラには関係ない。それどころか多すぎる放射は、よりアイくんの照準を確実なものにした。 また、ビーム出力を下げたのはアイくんの判断だ。でなければシールドなど関係なく貫通し、下界の町をも吹き飛ばしていただろう。しかし生身の人間がシールドを張るなど思っておらず、最低出力で撃ったことが仇となった。かといって出力を上げれば周囲への被害は避けられそうにない。 こうして両者が手詰まりになった所に、管理局側のセカンドストライクが入った。ヘリの急を聞いてこちらに向かっていた、なのはとフェイトが間に合ったのだ。 『トライデント、スマッシャァー!』 『ディバイン、バスタァー!』 同一直線上を対になって発砲された桜色と金色の魔力砲撃は誤たず、2人組のいた空間に着弾した。 「やったぁ!」 さくらが声を上げるが、なのはは否定する。 『違う、避けられた!』 続けてフェイトが補足する。 『直前で救援が入った。』 さくらは即座に上空で待機するAWACS『ホークアイ』に、頭部対空レーザー砲を照準。長距離レーザー通信で後を追うよう要請した。自ら探しに行かないのは、更なる懸案事項が隣に鎮座するからであった。 『・・・・・・それで、さくらちゃん。〝これ〟は何・・・・・・かな?』 なのはが油断なくデバイスを飛翔体に突きつけて、その隣を飛ぶ自分に問うた。 (*) 時系列は少し戻って三浦半島上空 そこでは勢いづいたガジェット・ゴースト連合に対してフロンティア基地航空隊の必死の迎撃が続いていた。 EMPで軌道上のAWACS及び、各機を繋ぐ統合戦術情報分配システム(JTIDS)のデータリンクを失い、乱戦になってしまっている。こうなると編隊規模ですら組織立った戦闘行動は行いにくい。参加者の誰もが相手よりよい位置に着こうと無秩序なベクトルで飛び回る空戦なら尚更である。 その乱戦の中をカナード翼も映える1機のVF-11S(指揮官機仕様)が飛翔していく。そこへ上方から飛来したゴーストがガンポッドから20mm弾を放ってくる。 「そんなとこにいやしねぇんだよ!」 ガウォークの足を展開したVF-11Sは急速に進行ベクトルを変えて回避する。未来位置を追いきれなかった敵機の火線が過ぎ去り、ゴースト自身もそのまま擦過していく。それを見届けたVF-11Sのパイロット、スコーピオン小隊隊長アーノルド・ライアン二等空尉は機体の〝足首〟を横に振って機体をハーフループさせる。続いてバトロイドに可変。狙い澄ましたガンポッドの狙撃は吸い込まれるようにゴーストの主機関に飛び込み、それを爆散させた。 バルキリー(人型可変戦闘機)という奇想天外な兵器が誕生したのは、SDF-01(初代マクロス)の本来の持ち主が巨人族である。と知れたことに端を発する。 当時、惑星間航行がやっとだった人類は慌てふためき、あらゆる局面に対応可能な装備の開発に着手した。こうして誕生したのが人型陸戦兵器(デストロイド)とバルキリーだ。デストロイドは大火力・重装甲に代表される『モンスター』やフロンティア船団で主に使われる『シャイアンⅡ』など歩兵や戦車をスケールアップしたようなオーソドックスな設計思想に基づいている。しかしバルキリーは、宇宙・大気圏内両用の軍用戦闘機から機動歩兵に変形することで多目的な任務に対応しようという野心的な兵器だった。 例えば敵陣地を制圧するにあたって、従来の方法だと、まず制空権確保のために航空機部隊が先行。対空火器や敵戦闘機を撃滅し、それから輸送機で陸戦部隊を派遣する。しかし広大な宇宙空間、さらには移動する要塞である敵母艦を制圧するにはこんな時間的余裕はない。 そこで考えた有識者達は 『ならば制空権を確保してヒマになった航空機部隊をそのまま陸戦部隊にすればよいではないか』 という結論に到達したのだ。 まったくもって無理難題に聞こえるこの結論だが、マクロスのもたらしたオーバーテクノロジーはそれをいともたやすく可能にし、開発から5年ほどで実戦に耐えうる人型可変戦闘機、『VF-0 フェニックス』や『SV-51』などを生み出した。だがこうして誕生したバルキリーは技術者や軍部が最初に想定していた以上の働きを見せた。 ライアンは即座にファイターに可変。現域を急速に退避する。すると数機のガジェットがノコノコやってきた。 (やっぱりな) バトロイドなどで減速するとガジェットは即座に集まってくる。おかげでバルキリーとは相性が良い。 彼はしたなめずりすると、鋭くUターン。慌てたガジェットが撃ってくるが、速度のついた回避運動する物体にそう簡単には当たらない。VF-11Sは密集するガジェットの中に突入する寸前にバトロイドに可変。その拳にPPBを纏わせ逃げ遅れたガジェット達を撃破していった。 数ヶ月前の演習ではシグナムとタイマンを張ったライアンにとって、これらの敵はまったく脅威足りえなかった。 そこへ、友軍からデバイスを介した短距離通信が入る。 『メイデイ!メイデイ!こちらイエロー3、ゴースト2機に付かれた!っくそ!誰か追い払ってくれ!』 ライアンの視界の端を1機のVF-1Aとゴースト数機がすり抜けていく。どうやらあれらしい。 「待ってろよイエロー3!」 ライアンは再びファイターに可変。友軍目掛けて邁進するゴーストに追いすがる。 (ったく、もっとガウォークを使えと教えただろうに!) ファイターでエンジン全開、がむしゃらに振り切ろうとする友軍にライアンは舌打ちする。 そう、バルキリーが手に入れた付与機能、それは変形である。空戦において形態を変えることによって得られる恩恵は計り知れない。大気圏内で変形することで急激なエアブレーキをかけることも可能であり、腕や足を大きく振って、その反作用で推進剤をなるべく使わずに旋回できる。また、魔導士のように武装をその腕に保持することで随時広い射角を得、足先の推進器を振り回すことで推進モーメントを変え、あらゆる方向への加速を可能にする。 その最たるものがファイターから腕と足だけを展開したガウォークという形態だ。 開発の過程おいて偶然発見されたこの形態は、一見不恰好にも見えるがその用途は十二分に広い。推進モーメントを下に集中する事によってホバリングしたり、前方に大きく足を振り出して急停止するなどのポピュラーな使い方だけではない。ある程度の速度を保ったままその腕に握る武装で全方位を射軸に収め、足を振ることで、空中においてファイターでもバトロイドでも得られないヘリのような高機動を実現することができる。 VF-0、VF-1と乗り継いだ撃墜王ロイ・フォッカーやマクシミリアン・ジーナスなど黎明期のエース達によってこの形態の運用方法は昇華され、バルキリーの代名詞とも呼ばれるに至っていた。 しかしライアンもアルトから同じような叱責を受けていたことを思い出し、『まぁ、最初はみんなこんなもんか』と経験不足な2期生に視線を送り、ゴーストを流し見た。そして瞬時に未来位置を予想すると、ガウォークでフィギュアスケートのように空を〝滑り〟、まるで魔法のように友軍とゴーストの間に割って入った。 「喰らえ!」 ガンポッドを斉射。2機の内1機の主翼に、赤い曳航を引く30mm弾が吸い込まれるように着弾して、制御不能に陥ってキリモミ落下していった。もう1機のゴーストがライアンを横切る。 「逃がさん!」 ライアンは両翼のMHMM(マイクロ・ハイ・マニューバ・ミサイル)を照準、連続発射する。都合6発ものMHMMが音速の5倍という圧倒的な速度で飛翔し、目標に接敵した。 包む爆煙。 「・・・・・・他愛ない」 彼は撃墜を確信して再び索敵に戻ろうとする。だが次の瞬間には地獄の蓋を開けたような凄まじい音と衝撃が機体を揺らし、次には爆音が轟いた。 「なん、なんだ!?」 機位が乱れてキリモミ落下を始めようとする機体を抑え込み、出力に任せて退避する。 多目的ディスプレイに表示される転換装甲のキャパシティは大幅に削られていた。 「いったい誰が!?」 後ろを振り返った彼の目に映ったのは、先ほど撃墜したと思ったゴーストだった。しかしよく見ると、ゴーストの追加装備であるガンポッドどころか外装されていたミサイルランチャーもなくなっている。どうやらこちらのミサイル回避のために装備を全てパージ。囮としたらしい。 「なんて思い切りのいいヤツなんだ!」 ライアンは思わず感嘆の声を上げた。その間もゴースト内蔵の20mm機関砲(以前は魔力素粒子ビーム機銃だったが、対ESA弾を装備するために換装された)とマイクロミサイルの嵐が彼を襲う。 彼は機体を操作してなんとか振り切るが、そいつは用意周到だった。回避した先にすでにミサイルが撃ち込まれていたのだ。対応する間もなく着弾。機体を再び激震が襲った。 (*) (なんだ。俺もやればできるじゃないか) こちらの攻撃を叩き込まれて満身創痍になった敵エース級バルキリーを眺めてユダ・システムである彼は満足した。 (小細工を使おうとするからいけなかったんだ。俺はユダ・システム、直接戦闘なら人間なんかに劣らん!) 彼は自信を取り戻し、それを見下ろした。 (*) 機体の被弾アラートがコックピットに鳴り響き、何かが焼けたような刺激臭も鼻をつく。目前の多目的ディスプレイなど〝本機は撃墜されました。脱出を推奨します〟と告げる始末だ。 しかしエンジンはなんとか稼働しているし、ライアンもその闘争心を失っていなかった。 彼は機体のシステムを再起動して正確な被害状況を把握し始める。 ガンポッド以外の武装は使用不能。レーダーはブラックアウト。『アクティブ・ステルスシステム』、『アクティブ・空力制御システム』、『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』などは軒並み沈黙していた。 しかし奇跡的にエンジンも変形機構も生きていた。 ライアンは顔を上げると、先ほどのゴーストを探す。それはまるでこちらを見下ろすような格好で無防備な機体の腹を見せていた。 (勝ち誇ってやがる・・・・・・) 本能的に彼はそのゴーストが無人機であるという先入観を捨て去った。無人機はそんな無駄な機動は行わないし、結果的にそれは正しかった。 ライアンは煙幕発生機(スモークディスチャージャー)から黒煙を吹き出させ、スラストレバーを絞って機体をふらふらと降下させた。すると彼の狙い通り故障で動きが遅くなったと見たゴーストは、ミサイルでなく機銃でトドメをさすために悠々と接近してきた。 「(かかった!)全ミサイルセーフティ解除!」 EXギアになったデバイスに命令を発して、ミサイルの信管を活性化させる。そしてゴーストの放った火線を、バトロイドに可変して紙一重で回避。そのままバトロイドの腕でパイロンに装備されていたミサイルランチャーを無理やり外して、ゴーストに投擲した。 「今だ!」 ライアンの指示と同時に遠隔操作によってランチャーに残っていたMHMMの全弾12発、都合大容量カートリッジ弾計96発が強制撃発。強力な魔力爆発が気流をかき乱し、敵ゴーストの機位を失わせた。 「当ったれぇ!」 ガンポッドが必殺の30mm弾をばらまく。照準器がイカれたため狙いはテキトーだ。 だがさっきのライアンのように勝利を確信した〝人〟は、敵の突然の反撃には脆いものだ。ゴーストはまるで人間のように驚いた挙動を見せると、逃げていった。 駆け付けた友軍機がそれを追撃していく。ライアンも追撃しようとスラストレバーを上げるが出力が上がらない。どうやら機体は本当に限界らしかった。彼は機体を降下させると、なけなしのエンジン噴射で三浦半島に着陸した。 「ふぅ・・・・・・」 思わず安堵のため息をつくが、機体の可変機構はバトロイドで固定されて、とても空戦には耐えられそうになかった。 (さてどうするか・・・・・・) そう考えながら後ろを見ると、大規模な黒煙が幾重も空に延びていた。それら黒煙の出どころは・・・・・・民家にしか見えなかった。 (畜生!これだから防衛戦は!) 吐き捨てる間にも彼の近くにゴーストが墜落。紅蓮の炎が無傷だった民家を包んだ。 「なんてこった!」 ある理由のため住民達は、家屋の内部から逃げていない可能性が高い。 そのままバトロイドで接近すると、外部マイクが声を拾った。 『お願い!─────を助けて!』 「何だって?」 ライアンはその民家の2階から、煙を避けるように叫ぶその少年をマニュピレーターで助け、コックピットに入れる。 「何だって?」 繰り返された質問に少年は必死に答えようとするが、泣き声になって聞き取れない。ライアンは彼を安心させるように抱くと、「大丈夫、大丈夫だから」と言い聞かせた。 そうしてようやく得られた情報は、あの民家の二階にいるこの子の母親が、倒れてきた家具に挟まれ脱出できないという事だった。 「わかった。大人しくしてろよ」 ライアンは少年を後部座席に座らせ、バックドラフトが起こらぬよう細心の注意を払いながら民家の壁を破壊する。しかし内部はすでに黒煙にまみれて、バルキリーからではそれより先が見えなかった。 「仕方ないか・・・・・・」 彼はキャノピーを開いてEXギアで内部に飛翔する。バリアジャケットとして機能するこのEXギアは気密が保たれており、この黒煙の中でも酸素マスクなしで入れた。 そして少年の情報を頼りに彼女を探すと、すぐにみつかった。しかしすでに大量の煙を吸い込んで意識不明だった。 「今助けるからな!」 EXギアのサーボモーターは彼の力を数倍にまで増幅し、その家具─────タンスを軽々持ち上げた。 (*) 「ありがとうお兄ちゃん!」 「ああ。次からはお前がお母さんを守ってやれよ」 「うん!」 元気よく頷く少年。その後ろでは担架に寝かされ人工呼吸器を付けられた母親が『ありがとうございます』と小さく頭を下げていた。そしてすぐさま後部ハッチが閉められた救急車は病院へと走っていった。 しかしライアンの活動は終わってなかった。後ろからかけられる声。それを発したのは災害出動していた陸士部隊局員だった。 「あのバルキリーはお前さんのか?」 陸士の指先が道路の真ん中で片膝を着いて沈黙するVF-11Sに向けられる。 「そうだ。すまない、邪魔だったか?」 「いや、重機が入れない場所があって手伝ってもらいたいんだ。大丈夫か?」 「了解した。誘導してくれ」 そう告げるとEXギアを介さない浮遊魔法で離床。続いてEXギアのエンジンで飛翔すると、頭部からコックピットに飛び込む。EXギア固定と同時にエンジンが始動し、ディスプレイとライトに光が灯っていく。 「基地に戻ったらオーバーホールの続きをしてやるから、もう少し頑張れよ」 彼の呼び掛けに応えるように、多目的ディスプレイに〝READY〟の文字が躍った。 (*) アルト撃墜後20分をピークに敵が撤退していく。 ヴァイスからAWACSからのレーザー通信によって戦闘が終わったとの知らせに、歌うのをやめ、ヘリのイスに座り込む。とても撃墜現場を返り見る勇気は出なかった。 コックピットから悲鳴が聞こえたのはその時だった。 「・・・・・・どうしました?」 しかしヴァイスには見たものをどう表現していいかわからないらしく 「すまない、来てくれ」 と返してきた。 (なんだろう・・・・・・) そうお思いつつも、重りでも付けられたのではないか?と思う程重い腰を上げ、キャビンからコックピットに向かった。そこで見たものは、なのはとフェイトによって幾重ものバインドで固められた成虫バジュラの姿だった。 「アイ、くん・・・・・・?」 何故だかわからないが、一瞬でわかった。そうわかるとデバイスを再起動し、マイクでなのは達に呼び掛ける。 「バジュラを、アイくんを放してあげて!」 フォールド波を介した声は即座になのは達の元に届く。なのはは拘束をフェイトに任せると、こちらへ飛翔してきた。 「ヴァイスさん、後ろのハッチを開けてください」 「お、おう」 ヴァイスの操作によって後部ハッチがモーターの軋み音とともに開いていき、吹き込んでくる冷たい強風に交じってなのはが乗りこんでくる。 「アイくんってリスみたいのじゃなかったの?それにバジュラって危ないんじゃ─────」 走り込んできたこちらになのははそう言い訳する。言い分を聞く限り、どうやら情報の伝達に齟齬があったようだ。 「アイくんは・・・・・・ううん、バジュラはね、そういう悪い生き物じゃないの!」 気が付くと必死にバジュラを、そしてアイくんを弁護していた。惑星フロンティア奪取作戦で、そして1年とアイくんと過ごした半年余りで知りえた〝バジュラ〟という生き物を。具体的にはアイくんはバジュラであり、手乗り小動物だったのは1年以上前の話であること。でもバジュラは決して好戦的な悪い生物ではなく、以前人間を襲ったのは誤解であり、自己防衛であったことなどなどだ。 (これ以上なにも失くしたくない!) その思いでいっぱいだった。 時空管理局には極端に保守的なところがある。一度危険と思うと、もうその判断はめったなことでは覆さない。例えば元夜天の書の主、八神はやても実は今でも完全には信用されてなかったりしている。 この世界に来て日も浅く、少しおこがましいと思うが、彼女がいない会議の席で何度か庇ってあちらの無理な命令を撥ねさせたり、こちらの要求を通させたりしていた。はやてもそれを知ってか知らずか、よくしてくれているので、お互い持ちつ持たれつなのだと思ってる。 管理局に青春を捧げる少女ですらそんな扱いなのに、アイくんは管理局にとっては質量兵器にしか映らないだろうし、その行動を理解してくれない可能性が大いにある。なにしろあのOT、OTM(オーバー・テクノロジー、オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)を結集したようなギャラクシー船団を壊滅させた生き物なのだ。その噂は何人か来ているという第25未確認世界の住人から筒抜けだろうし、最悪殺処分、もしくは厳重に封印されてしまう。アイくんにそれに抵抗するななどとはとても言えない。となるとそれまでに管理局側に壊滅的打撃を与えるであろうことは自明なことだった。 アイくんだけでなく六課のみんななど、失いたくないものは無数にこの世界にもできてしまっていた。 真剣に安全を主張するこちらに根負けしたのか、なのはが頷く。 「・・・・・・わかった。でも念のためバインドは外せないよ」 「それは仕方ないかもしれませんね・・・・・・」 そしてなのはとフェイトの監修の元、ヴァイスに頼んでヘリを寄せてもらう。 「アイくん、私だよ!わかる!?」 渾身の声で呼びかけるが、腰に付けた命綱でお腹を押さえられて声はまともに出ないし、ヘリのローター音で自分の耳にすら届かない。しかしフォールド波を通して感じたのか、アイくんは唯一動く首をこちらへと動かして応えた。 直後、腸内(バジュラ)ネットワークを通じてアイくんの感情が流入してくる。それは「会えて嬉しい」という類いのものだった。 (よかった・・・・・・いつものアイくんだ) そんなかつての小動物に愛くるしさが込み上げ、その頭を撫でようと手を置いた。 驚くべき事態はその瞬間訪れた。 光る手首。 そこにつけられたブレスレット型のデバイス『アイモ』が勝手に稼働を始めたのだ。 「・・・・・・え?」 血を抜かれるような肌寒さを伴って魔力が強制的に引き抜かれ、自分の魔力光であるエメラルド色の光がアイくんを包み込んでいく。 「ちょ、ちょっと待って!どういうこと!?」 デバイスに問うが、デバイス側は念話によって『I can t answer.(解答不能)』の音声を繰り返すだけだった。 (*) エメラルド色の眩い光がアイくんを包み、その姿が完全に隠れてしまう。 一同固唾を飲んで見守る中、その光が突然四散した。しかしそこにいるはずのアイくんの姿はなく、金色と桜色のバインドが空中に空しく漂っているだけだった。 (消滅?) 誰もが息を呑んだが、本当は違った。 「・・・・・・ん、あれは─────」 フェイトが何か見つけたのか、超高速移動魔法を起動し急降下。そして「キューッ」と鳴く〝何か〟を、地面に落ちる寸前に抱き止めた。 「・・・・・・あら、あなたがアイくん?」 腕の中で丸くなった緑色した生物は、間違いなく、かつての手乗り小動物の姿だった。 ―――――――――― 次回予告 燃え上がる市街地 出てしまった死傷者 救助活動に参加したスバルは何を思うのか? そして八神はやては、なぜ戦線に参加しなかったのか? 次回マクロスなのは第30話『アースラ』 「本艦をバルキリー隊の移動航空母艦として運用する!」 ―――――――――― シレンヤ氏
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3306.html
マクロスなのは 第2話「襲撃」その1←この前の話 『マクロスなのは』第2話その2 (*) 30分後 アルトはガウォーク形態のVF-25を、超低空で飛行させながら郊外へと向かわせていた。 管理局の広報担当者曰く、 「例えあなた達の物でも、質量兵器を管理局本部ビルの前に置くのは体面もあり困ります。だから受け入れ先が見つかるまで、郊外の施設中隊のヘリ格納庫に移動してください」 との事であった。 また、今後VF-25は機体自体がシール(封印)されるか、武装が全て撤去されてしまうそうである。 「しかし、魔法の世界とはなぁ・・・・・・」 簡易的な検査によると、俺とランカにもクラスオーバーA相当のリンカーコアが存在することが確認されていて、この世界でも十分やっていけることがわかっていた。 (EXギアなしで空を飛べるのか・・・・・・) この青い空を風を切って飛ぶ自分の姿を想像して内心ほくそえんでいると、レーダーに映る多数の小さな機影を発見した。 そちらの方向をみると、人間ほどの大きさの全翼機、魚でいうエイのような形をした航空機がいた。数は60機ほど。それらは綺麗な編隊を組んで飛んでいた。 (管理局のゴースト(無人機)か?) そんなことを考えるうちにそれらは急降下し、レーザー様のものを撃ち始めた。 (なに・・・・・・?) 驚愕しつつもモニターで彼らの行方を追う。着弾地点はどうやら学校だ。どう見てもそこは軍事基地には見えないし、下で逃げ惑う子供は小学生程度にしか見えなかった。 そこでは警備の者が散発的な対空射撃を行っているが、当たらないのかそれらはびくともしない。 そのゴーストは後に『ガジェットⅡ型』と呼ばれる機体で、速い上にAMFとシールドを展開しているので全く歯が立たないのだ。 防衛側は徐々にそのレーザーに倒れていく。建物に当たってもなんともないところを見ると非殺傷設定のようだが、それは子供に当たれば後遺症を残すに十分だろう。なぜなら彼らはバリアジャケットと呼ばれる装甲服を着ていないからだ。その程度のことははやてやなのは達からこの世界のこととして説明されていた。 いますぐ反転して救援しに行きたい衝動にかられるが、はやて達から厳重に質量兵器(VF-25)の使用禁止命令を受けていたため、あと1歩を踏み出せずにいた。 その時、視点がそのある一点に止まった。運動場の端の小屋からみんなのいる校舎に逃げ込もうとしたのだろう。子供が1人、運動場の真ん中を走りながら横切っていた。 (バ、バカ野郎!小屋にいれば安全なのに!) もちろん思いは届かない。 また、更に悪い事に彼は転んでしまった。それに興味を持ったのか、数機のゴースト(ガジェット)達が子供へと向かい、撃ち始める。 そこに1人の警備員が校舎から駆けつけた。彼は全方位バリア(魔力障壁)を張って子供を庇う。 しかし、ゴースト達は執拗だった。何発も何発もレーザーを撃ち込む。それは無人機が行うのに殺意すら感じられる。 その猛攻は遂にバリアを破り、レーザーが子供に覆い被さった彼の身を焦がす。 その光景はかつてフロンティアを襲った第2形態のバジュラの大群が、そこを蹂躙する光景をまざまざと蘇らせた。それと同時に、恋人を守って宇宙に吸い出されていった親友であり戦友であった者の姿が、その警備員と重なった。 瞬間、彼の中で何かが切れた。 45度傾いていた左手のスラストレバー(エンジン出力調整レバー)をさらに倒して真横に。 するとガウォーク形態だったVF-25は即座にファイター形態に可変した。続いて空力特性を悪くする翼下のフォールドスピーカーをパージ、スラストレバーを押し出しA/B(アフターバーナー)を点火。後ろから蹴られたかのように一気に増速する。しかしその手はコックピット前面の多目的ディスプレイを操作し続け、全ての兵装のプロテクトを解除していく。 多目的ディスプレイに映る兵装モニターが緑色の〝SAFETY(セーフティ)〟の文字から赤い〝ARM(アクティブ)〟という文字に変化する。 そして現場への到着と同時にさっきの2人とゴーストの間をわざと飛び、フレア(赤外線誘導型ミサイル回避用の高熱源体)を数発撒き散らした。 すると、予想通り危険度の優先順位を再設定したゴースト達は、こちらを追ってきた。その数は総数の半分程度にすぎないが、2人が逃げ込むには十分な隙を与えたはずだ。バックミラーで2人の退避を横目で確認すると、一路、海を目指す。 (こんなとこに墜とせるかよ) 下は住宅地。ゴーストが墜ちたらその被害は計り知れない。また、VF-25の装備するFASTパックの追加武装であるマイクロミサイル型HMM(ハイ・マニューバ・ミサイル)は、対バジュラ用のMDE(マイクロ・ディメンション・イーター)弾頭を搭載している。 バジュラの反乱に備えて改良と生産の続くこの弾頭は1発、1発が超小型のブラックホール爆弾のようなものだ。そんなものが万が一外れて民家に当たったら・・・・・・と思うと背筋が寒くなる。 幸い海までは10キロなく、すぐに眼下は青く染まった。 「ここなら・・・・・・!」 呟くと、押し出していたスラストレバーをフルリバースして簡易ガウォーク形態(噴射ノズルのついた足を展開するだけで、腕を省略した形態)に可変して足を前に振り出し、強烈な逆噴射を行う。それによって、従来の戦闘機のエアブレーキとは比較にならない加速度で減速、さらにバックした。 対してVF-25を全力で追っていたゴースト達は当然そんな機構などなく、勢い余って通り過ぎていった。 その航跡を目で追いながらミサイルのスイッチに指をかけると、ゴースト達を流し見る。するとそれに連れてコンピューターが敵にマルチロックオンを掛けていった。そして数にして10強の敵をロックオンレティクルに収めたのを確認した。 「アタァークッ!!」 掛け声と同時に、VF-25のエア・インテーク(吸気口)上に装備されたミサイルランチャーの装甲カバーが〝ガパッ〟と開く。 それと同時に内部のHMMが飛翔していった。 音速を遥かに超える戦闘機やバジュラに対抗する為に作られたこのミサイルは、内蔵するAI(人工知能)によって回避行動をしつつ1機につき3発ずつ、着実に命中した。 炸裂と同時に30もの紫色の異空間が出現し、空間をえぐりとっていく・・・・・・ あっという間に10数機の友軍を失ったゴーストだが、学校からやってきた分隊との合流を果たすと再び向かってきた。 これにはさすがに焦った。 VF-25は単体としてミサイルを搭載していないが、ブースター以外パージしていなかったFASTパックの追加武装によって肩部に38発のマイクロミサイルを搭載している。こちらの圧倒的な力を見せて撤退に追い込もうと思って、その数の4分の3強にも上るミサイルを一斉に使う大盤振る舞いをしたのだが、相手は損害をまったく恐れていなかったようだ。 また、MDE弾頭はお世辞にも安全とは言い難い。大気圏内で空間を抉り取れば、そこにあった大気は当然消滅する。すると気流がめちゃくちゃになり飛行を妨害する。 炸裂と同時に放射される大量のフォールド波の奔流も人体に悪影響を及ぼさないという保障はない。 それらを勘案して残ったミサイルの斉射を見送ると、兵装をチェックする。 「ガンポッドとビーム機銃、あと格闘でしのぐしかないか・・・・・・」 VF-25は再加速して敵に対峙した。 (*) 5分後 残る敵の4分の1を撃破したが、ガンポッドの残弾はすずめの涙となっていた。 撃破した敵に比べて弾の消費が多いのは、ここが大気圏であるせいだった。普段無重力で、ほぼ真空である宇宙での戦闘に慣れているためその修正に多くの弾を割(さ)いてしまったのだ。 また、敵もこちらが完全無欠の質量兵器だとわかったのだろう。エネルギーを防御力に転換するアドバンスド・エネルギー転換装甲(ASWAG)にかかる負荷が先ほどから大きくなっていて、構造維持のキャパシティ確保を脅かしている。これは相手の攻撃が殺傷(物理破壊)設定になったという事だろう。 そして転換装甲にエネルギーを回したため、両エア・インテークの隣(バトロイド時は腰)に装備された2基の『マウラーROVー25改 25mm荷電粒子ビーム機銃』、2門の頭部対空レーザー砲『マウラーROVー127C 12.7mmビーム機銃』も打ち止めだ。 脚部の装甲兼用のコンフォーマルタンクに入った推進剤もこの戦闘機動を続けるには残り少ない。通常飛行なら無尽蔵に存在する空気を圧縮膨張させて推進剤にすれば十分だが、通常の推進剤を使えば推進力は空気に比べて約6割アップする。またVF-25の各所に装備された高機動スラスターを作動させるにも推進剤は必要だ。自らを数倍する敵にあたるには推進剤に頼る他に選択肢はない。 しかし、ガンポッドに残る弾同様、推進剤はほとんどなくなってしまっていた。 「おっと!」 敵の激突覚悟の特攻攻撃に、ファイター形態のまま可変ノズル基部に装備されたスラストリバーサを吹かして急減速。そのままバトロイドに可変して肩すかしを食らったゴーストに射角を調整すると、『ハワード GU-17V ガンポッド』を一斉射。装填されていた対バジュラ用58mmMDE弾で大穴を空けて撃墜した。 しかしその機動でほとんど空中に止まってしまったことにより、ゴースト達は集中砲火を浴びせようと反転してくる。だがそれを甘んじて受け入れるほど馬鹿ではない。 即座にガウォークへと可変していたVF-25はその場から滑るように急速に離れ、こちらの動きについて来れなかったらしい1機のゴーストをバトロイドに可変してマニュピレーターで鷲掴みにする。 そして真後ろからこちらを追尾してきた3機のゴーストに向き直ると、フリスビーのように投げてやった。 金属同士がぶつかり合う鈍い激突音。 3機は密集していたため即席フリスビーは見事ゴースト達の追尾を阻止していた。続いて止まったそれらをガンポッドで照準、スリーショットバースト(3点射。3発だけ連続で撃つ事)を行う。しかし58mmMDE弾の狭い炸裂範囲に4機全機を見事に巻き込んでこれを海の藻屑とした。 だがその戦果に満足することなくすぐにファイターへ可変し、位置を変えた。次の瞬間にはその場所を敵の集中砲火が覆った 周囲を警戒しつつガンポッドに残る残弾を確認。 (もう持たないな・・・・・・) さきほどのフリスビー戦法も拳やコンバットナイフを用いた肉弾戦も加速や制動の多いせいで推進剤を大量に消費する。かといってガンポッドは残り1秒ぐらい全力で斉射すれば無くなるほど弾が欠乏していた。 (残った推進剤を全部注ぎ込んで一気に戦線離脱するしかないか・・・・・・) と思い始めた時、陸の方から飛んでくるものがあった。目を凝らすと、人が音符のような杖を持ち、編隊を組んで空を飛んでいる。ようやく管理局の空戦魔導士のご登場らしい。 「ほんとに新・統合軍みたいに遅いやつらだ」 フロンティアのそれを思い出して呟く。そしてそれゆえに内心気が気でなかった。空戦魔導士部隊を擁する地上部隊は新・統合軍とは似た苦境であるという。そして統合軍はバジュラに手も足も出なかった。だからどうしても彼らが統合軍と重なって見えて、 「あいつらにゴーストが落とせるのか?」 と心配になった。 その結果はすぐ出た。 ゴーストに対して魔力ビーム(砲撃)による攻撃が行われるが、AMFによって出力を下げられ決定打にならない。そこで魔導士達は2人1組になって1機に同時に着弾させる事によって初めて撃墜することに成功した。なるほど、その技量はなかなかのものだ。しかし、いかんせん数が足りなかった。 速度もゴーストの方が速く、5~6機撃墜したあとその機動力で連携を崩され、逃げ惑うばかりになった。 「・・・・・・やっぱりか」 仕方なく虎の子のミサイル8発を、彼らの後退を援護するように全弾発射。必要なくなったミサイルランチャーをパージする。 この援護によって魔導士のほとんどが敵の追尾を逃れたが、1人だけ孤立してしまった魔導士の少女がいた。 彼女は他の魔導士のように飛ばず、足元に道を展開しつつその上を走るように移動する方法をとっていた。 また、敵を撃破するときも魔力弾や魔力ビームでなく、直接殴って撃破するという珍しい戦い方をしていた。それゆえ1人でも撃破率は高かったが、移動方法は効率が悪く、MDE弾頭の起こした気流の激変に煽られて逃げ遅れたらしい。 周囲は彼女を助けようと援護するが、彼女は周囲の敵の数に翻弄されて動けなかった。 (*) 彼女の名はスバル・ナカジマといい、今回の出撃は有志だった。なぜなら通常スクランブルするはずだった空戦魔導士達はさっきまで労働争議をやっていて、疲労のため使い物にならなかったからだ。 彼女は『ミッドチルダ防衛アカデミー』と呼ばれる管理局員を養成する学校の3年生である。 防衛アカデミーの推薦を獲得した彼女は、最後の実習地として『本局第1試験中隊』と仮称で呼ばれているはやての部隊を彼女の親友と共に志願していた。と言っても教官からは難しいかもしれない。期待しないでくれ。と言われていたが・・・・・・ まだ実績もない、難しいと言われる部隊であることに級友たちが敬遠する中、彼女がそこを強く志望した理由は簡単だった。それはガイドブックの教官の欄に、彼女の尊敬する「高町なのは」の名があったからだ。 (最後にもう1度、なのはさんに会いたかったなぁ・・・・・・) 時折ベルカ式魔力障壁を越えてくるレーザーに身体を焼かれる痛み。それは徐々に彼女の気力を奪っていき、観念しかけていた。 しかしその時、ノイズ混じりの念話が入った。 『(させるか!)』 どこだと思い発信源を辿ると、こちらを援護してくれていた質量兵器からだった。それは機関砲を乱射しながらこちらに突撃してくる。そして自分のすぐ隣を擦過していった。 よく見れば、質量兵器はその間にいた航空型魔導兵器を全て蹴散らしていて、そこにはぽっかりと切り開かれた道があった。 (チャンス!) 即座に自身の移動魔法『ウィングロード』を開けてもらったその包囲の穴に高速展開し、その上をインラインスケート型の簡易ストレージデバイスで駆け抜けていく。 しかし、そこに1機の航空型魔導兵器が体勢を立て直し、立ち塞がる。 (ここで止められてたまるか!!) カートリッジを2発ロード。その間もレーザーが身を焼いたが、かまわず最高速で走りながら篭手型のデバイスを着けた右腕を振りかぶる。 「一撃、必倒!ディバイィン、バスタァァーーーーー!!」 右腕から発射されたゼロ距離の魔力砲撃は、粗いながらも強靭な破壊力を見せ、シールドを貫通。それを粉砕した。 その後抜け出るまでの包囲の穴の保持は友軍と、いつの間にかロボットに変形した質量兵器がやってくれたらしい。 それ以上詳しい事は分からなかった。なぜなら抜け出すと同時にさっきとは違う念話が入ったからだ。 『(総員直ちに射軸上から退避してください)』 それは聞き覚えのある声だった。同時に出現したホロディスプレイの射軸線を頼りに発信源を辿ると、地上の海岸線だった。果たしてそこには巨大な魔力球が集束されつつある。それはオーバーSランクレベルの魔力砲撃を示唆していた。瞬間、誰もが射軸上から逃げ出す。 自身も友軍に肩を貸されて退避しつつ、あの魔力球に不思議な懐かしさを覚えていた。桜色の魔力光。あの声。そしてSランクの魔導士。それらは1本につながった。 「(あれは、)なのはさんだ!」 その名を叫ぶのと、なのはが発砲するのは同時だった。 空を切り裂く一条の桜色の光は、あやまたずガジェット達に突き刺ささった。そしてそれらの展開するシールドを易々と貫き、その3分の1を一瞬で叩き落とした。 スバルはそれを神を見るかのように見つめ、次の瞬間にはやってきた傷の痛みと安心感で意識を喪失した。 (*) 少し離れたところで、ガウォークに可変してそれを眺めていたアルトは驚愕した。 ガンポッドに残る全弾を注ぎ込んで管理局の魔導士を助け、機体の通信システムのプロテクトをスルーして出現したホロディスプレイの退避要請に従って退避してみればこのビーム砲撃だ。 VF-25のセンサーによると、VF-27『ルシファー』の重量子ビーム砲と比べても、見劣りしない数値を叩き出していた。 (いったいどんな兵器だ?) そう思い、モニターで発砲地点の倍率をあげる。するとそこには、自身の特徴的な杖から大量の煙を出し、構えを解いた高町なのは一等空尉の姿があった。しかし彼女の顔は先ほどまでランカと談笑していた少女の顔ではなく、歴戦の戦士の顔がそこにあった。 (*) その後残るゴーストの掃討は彼女の参加で拍子抜けするほどあっけなく終わった。 (*) 気づくと私は寝かされていた。全身が痛みに悶えるが、なんとか目を開けてみる。はたして視界には青い空。どうやらまだ外らしい。しかし素手で触った寝床の感触は布だった。 そして見回してみると、ここは海岸で自分は救急車に乗るために担架に乗せられていたようだ。というような状況把握がどうでもよくなるような光景があった。 「なのはさん・・・?」 おもわず救助隊員に簡単に負傷場所と理由を説明していたらしい彼女の名を呼んでしまった。 「ん? 大丈夫だった?」 なのははこちらの意識が戻ったことに気づいて、こちらへやってきた。それだけで全身の痛みを忘れてしまうほどパニックに陥ってしまった。 私がなのはを尊敬し、憧れる理由。それは6年前の事故がきっかけだった。 その日デパートに家族と出かけていたが、運悪くはぐれ、これまた運悪く火災にまかれてしまったのだ。 この時まだ幼かった私を救助に来たのが、当時出世街道を順調に登っていたエース。高町なのは二等空尉だった。 記憶に残る彼女の姿は凛々しく、カッコよくて、それ以来なのはに憧れ続けた。 私はクラスAのリンカーコアを持っており、成績も主席、次席クラスと、極めて優秀だったため、再三再四 「次元宇宙で働かないか?」 と本局の誘いが来た。しかしそれを全て断り、わざわざミッドチルダを守る道を選んでいた。それは陸士部隊の部隊長である父や、同じく陸士部隊に籍を置く姉の影響もあったが、同じぐらいに大きくなのはの存在があった。 それほど自分の人生を大きく左右した憧れの人が目の前にいる。 パニックに陥るには十分な理由だった。 『は、はい!いえ、あの、高町教導官・・・・・・一等空尉!』 痛みを忘れたといってもやはり無理に動けば痛いもので、上体を起すことが精一杯。しかもその痛みとパニックでなのはに関する知識がこんがらがり、状況に合わない「教導官」という役職が出てしまった。 しかし彼女はそんな小さなことを関しないかのように答える。 「なのはさんでいいよ。みんなそう呼ぶから。・・・・・・6年ぶりかな?大きくなったね。スバル」 「!! えっと・・・あの、あの・・・」 「うん。また会えて嬉しいよ」 その笑顔を伴ったセリフと、頭に置いてくれた手は反則的なまでのスピードで私の心に深く染み渡った。おかげで涙腺が瞬時に決壊。止まらなくなってしまった。 そんな私をなのはは、救急車に担架と共に搬入し、担架の横にある席に座りながらながら根気よく落ち着くのを待ってくれていた。 (*) 海岸にはなのはの要請した救急車が待機している。そこには先ほどの傷の酷かった魔導士の少女が担架に乗せられて救急車に搬入された。 しかしなかなか搬送されない。様子を見に行こうにもガウォーク形態で着陸するVF-25の周りには先ほどの空戦魔導士部隊が質量兵器使用でこちらを警戒するように配備されているため動けない。それでも理由を知りたくなったアルトは、高感度指向性マイクを照準した。 すると少女の声に混じり、なのはの声が聞こえてきた。 ―――――――――― 『私のこと、覚えててくれたんだ』 『あの・・・覚えてるって言うか・・・・・・あたし、ずっと、なのはさんに憧れてて・・・・・・』 『嬉しいなぁ。バスター見て、ちょっとびっくりしたんだよ』 『んあっ!』 〝ガタッ〟という、その救急車を大きく揺らすほどの彼女の驚きは、 「なんだ元気そうじゃないか」 と、彼女を心配していたらしい周囲の魔導士達に笑顔をよんだ。 『す、すみません。勝手に・・・・・・』 『うふふ。いいよ、そんなの』 『え、でも、その・・・・・・』 『まぁ、確かに独学で使うには少し危ないかな。これから〝私が見ていてあげられる〟から、一緒に頑張っていこうね』 『はい!・・・・・・え!?』 『ふふ。隊員さん、この子の搬送、よろしくお願いします』 『了解しました』 ―――――――――― なのはを降ろした救急車は一路、病院へと走っていった。 (*) その後、VF-25に関する事情がなのはの口からその場の空戦魔導士部隊の隊長に説明された。 そしてなのはが責任を持ってVF-25を格納庫までエスコート・・・・・・と言えば聞こえがいい。しかしそれは見かけだけだが、機体をバインドする強制連行になった。 これは 「『質量兵器は禁止』という主張を堅持するための体面的なものだろう」 と、たかをくくっていたアルトはその後質量兵器、とくにD(ディメンション・次元)兵器の使用について(「次元震が起こったらどうするんや!」とかで)はやてから恐ろしいお叱りを受ける事になるが、それはまた別の話である。 (*) 現場から少し離れたビルの屋上には、事件のすべてを見ていた1人の人影があった。 「またあの子達?まったく恐ろしい程の悪運ね」 彼女は普段のキャリアウーマン風の緑色のスーツに身を包み、呟く。 いつもならここで遠いい所から見ている〝彼ら〟が茶々を入れる所だが、今彼女は時空どころか次元おも通り越してしまっている。そのため、いかがフォールドクォーツを使用した精神リンクと言えど繋がらなかった。 「まぁ、その方が面白いわ。健闘を祈るわね。フロンティアと、ミッドチルダの皆さん」 転送魔法が行使される。そして彼女、グレイス・オコナーのいた痕跡を何一つ残す事なく、いずこかへ消え去った。 次回予告 踏み出した歩み。 彼らを待つものとは――――― 次回マクロスなのは、第3話『設立、機動六課』 ミッドの空に、彼らは何を描くのだろうか? シレンヤ氏 第3話へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3303.html
マクロスなのは 第4話『模擬戦』←この前の話 『マクロスなのは』第5話「よみがえる翼」 午前の模擬戦を終え、食堂で一息いれていたアルトに凶報が届く。 あらかた食べ終わっていた焼き魚定食と自分との前に現れたのは無機質な金槌だった。 「午後はあたしと戦え!」 そう殴り込みに来たのは隊舎内なのに、未だ赤いバリアジャケットに身を包んだ小さな少女。しかし、アルトは彼女が外見で計れないことは知っていた。 かつて六課設立記念パーティーがあったとき、食堂で珍騒動が起こった。あの時その身の丈の数十倍は巨大化した、そして今、目の前に突き出されたハンマーはなんといったか。そう、確か『グラーフアイゼン』だった。 そしてバルキリーの改修完了時、なのはの砲撃でも一撃では簡単に破れないであろうバトロイド形態の時のPPBを盛大にぶち抜いたのもコイツだった。 そんな事を思い出していると、彼女の後ろにいたもう1人が声を上げた。 「その後、私もお願いするわ」 と言う女性は茶色い地上部隊の制服を着用し、腰すら超える金髪の長髪をストレートにした女性だった。 しかし、その温和な物腰に隠しきれない戦闘意欲が垣間見える。これは彼女がこの六課で、シグナムと並んで〝バトルマニア〟と呼ばれる所以だろう。 「しかしまだ整備が―――――」 「んなん大丈夫だろ? とっとと来い!」 アルトの微々たる抵抗は有無を言わさず却下された。彼はこれを断れない自らの准尉という階級を恨んだ。 目の前の、頭に〝のろいうさぎ〟のぬいぐるみを載せた外見年齢12、3歳(実年齢はどういう訳か特秘となっていた)のヴィータが二等空尉。そして隣のフェイトは1歳違うだけなのに一等海尉(執務官は称号)・・・・・・ 「わかった!わかったからせめて飯を食わせろ」 「・・・・・よし、食ったらすぐ来いよ」 食卓との間を遠く隔てていたハンマーが退けられ、ヴィータとフェイトの2人は食堂から出て行く。 そして自身の食事に視線を戻すと、あと2口ぐらいで完食してしまうだろう定食が目に入った。 (この程度の抵抗しかできないのかオレは・・・・・・) そんなことを考えながらすずめの涙のように残った味噌汁を飲み干してやる。そしてお椀を盆に戻すとき、骨身になってしまったさばの焼き魚と目があった。それは 「次はお前だ」 と言っているような気がした。 (*) 今度の模擬戦は全てのハンデが解消され、可変にPPBに空中戦にと存分に戦えた。しかし、たまった疲労は確実に彼と機体を蝕んでいた。 エンジン出力の不安定な変動などが原因でヴィータとの模擬戦は相討ちに終わり、続くフェイトとの模擬戦は、アルトの撃墜に終わった。 (*) 格納庫へとアルトが機首向けた時、日は傾きかけていた。 VF-25は整備なしで酷使されて機嫌を損ねたのか、ガウォークの右足からは異音がする。そして遂に――――― アルトは突然の浮遊感を感じて驚いた。 警報ががなりたてている。多目的ディスプレイには大きく〝エンジントラブル〟の文字。どうやら先ほどから不調を訴えていた右舷エンジンが止まったらしい。 右舷だけだが、2基の足で空中をホバリングするガウォーク形態だったからたまらない。たちまち姿勢を崩し、キリモミ落下を始めようとする。すぐにスラストレバーを倒し、推進モーメントのバランスがとれるためエンジンが片方だけでも飛べるファイターに可変しようとするが、変形機構も言うことを聞かなかった。 ここは高度2000メートル。下界はすでに陸地のため墜落すれば大破では済まないだろう。 「イジェクト(緊急脱出)しかないのか・・・・・・!」 機体を振り返って確認する。 キリモミ落下の始まった機体を立て直すには高機動スラスターだけでは荷が重いだろう。 しかしアルトはそこで天命を受けた。翼が白い尾を引いていたのだ。それは彼にここが大気のある天体である事を思い出させた。 「そうか、空気に乗れば!」 普段から風を読むことに関して冴えた才覚の持ち主である彼は第六感とも思えるその能力で、見えないはずの上昇気流を地形、日照等から瞬時に割り出す。そして生き残った左舷エンジン(左足)と両翼を駆使してその気流へと突入して落下速度を減殺し、錐揉み方向と逆の方向のラダーを一杯に踏み込み、スティックを錐揉み方向へ目一杯倒す。また、可変ノズルと高機動スラスターもエマージェンシーモードのコンピューター制御で機体を水平にしようと青白いきらめく粒子(現在VF-25は魔力を推進剤代わりに使っているため)を噴き出す。 パイロットを含めた機体の全てのシステムが一体になって墜落を防ごうとその能力をフル活用する。そうした結果、対地距離が100メートルほどになったときにはなんとか機体は水平を維持し、高速で螺旋回転をしながら降下していた。下界の地面が迫る。 アルトは次の瞬間にはやってくるであろう衝撃に備えて呼吸を止め、身を固めた。 (着地!) まずガウォークの足が地面に触れる。もちろんいつもの垂直着陸ではないのでその足はこの形態で出しうる限界の速度で走っており、螺旋回転のエネルギーを地面とその足のサスペンションで受け止めていく。 おかげでカクテルシェイカーのように上下振動するコックピット。 ISC(イナーシャ・ストア・コンバータ。慣性エネルギーをチャージすることでその慣性を一定時間抑制する)によってなんとか〝ケチャップ〟にならず命を繋ぐアルトは意識を失いそうになりながらでも機体を保全するため可能な限りのエネルギーをエネルギー転換装甲へと回し、その生き地獄を耐える。 途中で何かに蹴躓いたら最後、高速道路の車並みのスピードでVF-25とそのパイロットの命は硬い地面に投げ出されることになるだろう。 そのパイロットが誰なのか?と考えると彼は生きた心地がしなかった。 その時、地面にある〝もの〟がその驚異的な視覚によって捉えられた。 (なんであんなとこにブロックが!?) 六課の海岸線に花壇を作ろうと大量のレンガを一時的に置いていた場所、そこへ向かってガウォーク形態のVF-25は邁進していた。 その集積所は見る見る近づいていき――――― (*) 「止まった・・・・・・のか・・・・・・?」 振動が収まり周囲を見渡す。海辺では波が揺れ、植えられた草木は風に気持ちよくそよいでいる。レンガ集積所も無事だ。そして何より、地面が動いてなかった。 トラブル発生からの時間は1分に満たなかったかもしれないが、アルトにとってそれは永遠にも思える時だった。 (*) こうしてアルトはなんとか着地に成功した。 しかしJAF(レッカー車)などないため、ヴァイスの輸送ヘリを要請。格納庫へと空輸した。 こうして搬入されたVF-25に即座に点検が行われる。整備員達が一昔前の医療用の内視鏡のようなものと、超音波スキャナーでエンジン部を点検していく。 2時間後、原因の一端が判明した。 右舷エンジンのファンが破断してズタズタになっていたのだ。これは左舷エンジンも同様で、それでも最後まで動いてくれたことにアルトはVF-25を撫でてやりたくなった。 「見たところ小石が原因ですね。午前の模擬戦で空いた穴を午後で悪化させたみたいです」 とは整備員の言だ。 どうやらそもそもの原因は、午前の模擬戦の時、転換装甲なしのバトロイドで戦闘したことにあるらしい。 推進力アップのためバトロイドでは普段シャッターで閉じられているはずのエアインテーク(給気口)を開けていたのだ。その時入り込んだ大量の小石にファンが耐えられなかったようだ。 整備員は同様の材料を使った補修材で直すことを提案したが、アルトは待ったをかける。 レンガ集積所を反射的にジャンプしてかわしたが、その無茶な運用と、ガウォーク形態で走りながら着地するという前代未聞の不時着方法によって半壊してしまった一体形成型のベクタードノズル(足)は補修材では強度に不安が残るからだ。しかし、そんな規模・設備は技研の方にしかないらしい。 そこでアルトはその許可を求めるために部隊隊長室に向かうことにした。 (*) アルトが廊下を歩いていると、途中でバッタリと、ヴィータとフェイトに出くわした。 (どう文句を言ってやろうか・・・・・・) とずっと考えていたアルトだが、予想に反して2人はすぐに頭を下げ 「ごめんなさい!ごめんなさい!」 と、ペコペコ謝った。 (・・・・・・なんだ。案外素直な奴らなんだな) フェイトはともかくヴィータは階級パワーを使って 「あれくらいで壊れる飛行機の方が悪い」 とか言って逃げると思っていたため、本気で謝っている2人の様子に毒気を抜かれてしまったアルトは、文句を言うのを忘れ、さらりと2人を許して部隊長室への歩を進めた。 (*) 着いた部屋の表札には『機動六課 部隊隊長室』とある。 (そういえばはやてに会うのは2日ぶりになるのか。確か食堂で昼食を食いながら「来週までの書類処理が大変!」とか何とか言ってたな・・・・・・) そんなことを思い出しながらノックしようとした時、ドアの向こうから声が聞こえた。 『わぁ、リイン、綺麗な朝日だねぇ~』 どことなく上の空に聞こえる声。これははやての声だ。 リインとは、正式名称を『リインフォースⅡ(ツヴァイ)』といい、はやてのユニゾンデバイス(術者と融合することで、その者の魔法のパフォーマンスを向上させるデバイス。しかし彼女自身もクラスA相当のリンカーコアを持ち、単独の魔法行使も可能)で、妖精のような小人だ。 アルトは自分の認識が間違っているのか不安になって腕時計を見る。 (間違いない。今は〝午後〟6時だ) つまり、窓の外に見えている太陽が朝日であるはずがない。 『はい~、また仕事が始まるですぅ~』 今度はリインの声だ。彼女の声もどこか浮いている。しかしここで考えていても仕方ない。怪訝に思いつつも扉をノックした。 『はぁ~い、誰ですかぁ~?』 リインの声だ。彼女は普段はやての秘書をしているため、こういう返事は原則的にリインが行うことになっていた。 「早乙女アルト准尉です。八神はやて部隊長にお話があります」 『んがっ!ア、アルト君!? ちょ、ちょっとごめんな。少し待っといてや!』 答えたのはリインでなく、はやてだった。直後内側からは何かが倒れる音や、2人の悲鳴などが聞こえた。 しばし待つと、入室の許可が降りた。 「失礼します」 アルトは注意深く中に入る。そこはまさに異世界だった。 空気は完全にコーヒーの匂いに占拠され、床には所々書類の山がある。 「おはようアルト君。朝、早いんやな」 床から目を離してはやての声のする方を見ると、そこには彼女に見える人がいた。 制服はしっかり着こなしているが、気づかなかったのかサラサラであるはずの茶髪の髪がボサボサで酷く荒れている。また、役者である自分から見ても涙ぐましいほど必死に笑顔を作っているが、目の下の隈が不気味さすら漂わせていた。 (まさかコイツ・・・・・・) 「・・・・・・なぁはやて、今日が何曜日かわかるか?」 はやては突然の問いに思案顔になる。 「うん? 確か書類の処理を始めたのが月曜日の昼で、今は日付が変わったから・・・・・・火曜日やな」 「今は水曜日の午後6時だ!」 どうやら自分が食堂で彼女を最後に見てから今までの2日間を貫徹をしていたようだ。 窓には分厚い雨戸のようなカーテンがあり、それで外光を完全にシャットアウトしていたのだろう。 食事もゴミ箱に放り込まれたプラスチック包装の量から推察できた。たくさんの備蓄が消費されたようだ。 (人間のリズムが太陽の光を浴びないと狂うとはガッコ(学校)で習ってはいたが、まさかここまでとは・・・・・・) のべ48時間を越える彼女の集中力には畏敬の念すら覚えるが、おかげで頭も回らないようで、こちらの突きつけた真実に 「え!? ウチ、タイムスリップしてもうたん?」 と言っているあたり末期だ。 しかし、ここで彼女を追い詰めてもこれもまた仕方ないので早々に本題に入ることにした。 「バルキリーの本格的な修理をするために、管理局の技研に運び込みたいんだ。許可をくれないか?」 「え?まぁ、ウチはかまへんけど、どうして壊れたん?・・・・・・うちの整備員が何か粗相をしてもうたんか?」 「いや、アイツら(整備員達)は知らない技術相手に十分頑張ってるよ。それで壊れた理由なんだが実は―――――」 これまでの経緯を説明すると、彼女はすぐに頭を下げた。 「うちのヴィータがご迷惑をおかけしました」 「いや、さっき本人達から謝られたからそれはもういい。それで修理するとき機密面から俺もバルキリーに同行したいんだ」 そう言うと、はやては気の毒そうな顔をして言う。 「透視魔法に転送魔法。素粒子スキャナーにMRI(磁気共鳴映像装置)・・・・・・ウチは魔法以外のことはよく知らんから他にも色々あると思うんやけど、たぶんランカちゃんのAMFでも守りきれんで」 「じゃあ、この世界は覗き放題か。機密もあったものじゃないな」 と言うと、そこはそれ。 個人情報や機密事項を守るための守秘プログラムがあり、それは主に施設そのものやデバイスの管轄で、個人情報はデバイス、機密は施設とデバイスの双方で守るらしい。 「でも今回は、施設の所有権が向こうにあるから支援は期待出来ん。それにデバイスの守秘プログラムではバルキリーは大きすぎて現状では守りきれんのや」 そう諭すように続けるはやてだったが、あのVF-25はSMSから預かった大切な機体。このまま引き下がることはできない。 「それでもいい。同行させてくれ!」 食い下がると、彼女はあっさりと許可を降ろした。やってみればわかるということなのだろう。 ともかく同行できるだけでもよしとしよう。と思いなおすと、簡単な輸送の手続きを済ませ、部屋を出た。 (*) その後彼女たちは鏡を見たのだろう。結果として、六課の隊舎全てに響く悲鳴が発生したことは、言うまでもない。 (*) 次の日 はやての手配した大型トレーラーに載せられたVF-25は技研へ向かう。しかしそのトレーラーにはアルトの姿はなかった。 「昨日は本当にごめんね」 そう謝りながら自身の愛車を運転するのはフェイトだ。 「あぁ。なんてことはないから安心しろ」 アルトは答えると前方のトレーラーに視線を注ぐ。幸い、トレーラーにはビニールシートが掛けてあり、それをVF-25と思う人間はいないだろう。 ちなみに、フェイトは純粋にアルトを送るために乗せているのではない。もちろん償いの意味もあっただろうが、彼女のデバイスの改良は今度、大規模なOT・OTM取り入れだった。そこで、設備の大きい技研で改良及び調整をするためらしかった。 こうして2人でそれぞれ自分の世界の事などを話ながら2時間ほど車に揺られていると、ミッドチルダ一(いち)の高さを誇る『富嶽(ふがく)山』の麓まで来た。そして大した時も置かずトレーラーが門の前に到着した。 表札には『時空管理局 地上部隊 技術開発研究所』の文字があった。どうやらここらしい。 検問で簡単な確認を済ますとゲートが開き、中に入った。 入ってすぐの建物は鉄筋コンクリート製の六課よりも小さいビルで、所々ヒビが入っていた。しかし企業団の出資によって達成された予算拡大の影響か、補修と拡張工事が急ピッチで進んでいた。 VF-25を載せたトレーラーは新設されたらしい真新しい格納庫へ入っていき、自分達を乗せた車もそれに続く。 格納庫内には人間が1人もいない様だった。代わりに誘導は滑走路の誘導灯ように地面に光の道が浮かび上がり、それに沿って進むよう指示されるようだ。 トレーラーはやがて巨大な自動洗車機のような所で停まった。そしてトレーラー本体と荷台とを切り離してVF-25の乗った荷台を置いていくと、トレーラーはそのまま格納庫から出でいく。だが自分達は誘導によって格納庫内を一望出来そうな制御所の下に停車させられた。 「じゃあ帰りも送って行くから、その時は呼んでね」 フェイトは車を降りたアルトにそう告げると車を発進させ、格納庫から出ていった。 それを見送ると、トレーラーに載せられている愛機VF―25を一瞥して制御所の方を見上げた。 その制御所はそれほど大きくなく、壁にくっついた箱のように設置されていた。 そして足元にはまっすぐ伸びる光の道。どうやら地面には簡易的なホログラムテクノロジーが使われているようだ。 「・・・・・・あれに乗ればいいんだな」 光の道の終着点である制御所すぐ下のエレベーターを見つけて呟く。だがこの広さに比してのあまりの静けさに 「誰もいない格納庫は気味が悪いもんだな・・・・・・」 とSMSの整備員が整備、点検、修理と24時間体制で作業をしていたマクロスクォーターを懐かしく思いながらそこへ向かった。 (*) エレベーターはゆっくり6メートルほど登って止まる。そしてドアが開くと、白衣を着た研究者が1人、アルトを迎えた。しかし――――― (お、親父!?) その顔は自らの父、早乙女嵐蔵にそっくりだったのだ。 「こんにちは、早乙女アルト君。私はこの技研の所長をしている田所だ」 だが他人の空似のようだった。嵐蔵の巌(いわお)のような雰囲気と違って人の良さそうなそれを放っていた。 「・・・・・・よろしくお願いします」 握手を交わす。田所所長は生粋の技術屋らしい。シワの多い手には無数の傷があった。 「君の境遇は八神部隊長から聞いている。早く君の世界が見つけられる事を祈っているよ」 「はい、どうも」 しかしその静かな中、外から場違いな歓声が聞こえた。 『デカルチャー! デカルチャー!』と。 こちらの怪訝な顔に気づいたのだろう。田所が窓越しに1軒の建物を指し示す。 「今所員のほとんどが休憩の許可を受けていて、あそこに集まっているんだ。どうだ?あいつらが戻ってくるまで検査は始められないし、君も行くか?」 「・・・・・・ん、あぁ。わかった。」 1人残されても仕方ない。と、所長の後を追った。 (*) 臨時の休憩所となっている大型食堂は歓声と熱気に包まれていた。 皆一様に展開された大型のホロディスプレイの映像を見ながら声援を送っている。画面の中には自分がよく知る、緑色の髪をした少女がステージ上で歌っていた。 (そうか、ランカのセカンドライブは今日だったな・・・・・・) アルトは2日前に彼女から送られて来たメールの内容を思い出す。 ランカは六課の一員だが、現在次元世界各国でチャリティーライブを続けていた。 ちなみに、管理局の企業団の出資を含めた全予算の25%に上るライブで集まったお金は、9割近くが貧困に喘ぐ次元世界の救援物資に化けている。 「しかしなんて華(はな)だ・・・・・・」 思わず生唾を飲み込む。 容姿が、ではない。もちろんそれを否定するわけではないが、もっと、その立ち居振る舞いのほうだ。 ただ舞台に立つだけで、全ての人間の耳目を集めてしまう〝華〟。 彼女の笑顔が光の矢となって放たれる度に血が熱くなるのを感じる。 第25未確認世界を席巻していた彼女の人気は、この世界でも健在だった。 ランカの歌声は既に全次元世界を駆け巡り、超時空シンデレラの名に恥じぬ人気を叩き出している。 また、彼女によって終結した戦争、紛争も少なくない。 学者達はこの現象を『フォールド波が人の聴覚に直接作用して、理性に直接的な感動を与えている』と言う。 だがそれならフォールドスピーカーを使った全ての歌に普遍的に作用されてしまうはずだ。しかしそんな調査結果は出ていない。つまり科学的にはなかなか説明は難しいのだ。 だがアルトの様な人間には、彼女の歌がなぜこんなにも聴衆を引き付けるかわかる。 彼女の歌には、彼女を支え、愛してくれている世界に対しての無償の愛がありありと感じられるのだ。 それは人々の心の奥で忘れかけている母親の愛を連想させる。そのことが、特に戦場で荒んだ兵士達の心に響くのだ。 上からの命令で日々人を殺めたり、傷つけたりしている内に彼らは、人間より生体兵器に近くなる。そんな彼らに母の愛を思い出させるとどうなるか。 母の愛とは無論、無償の愛であり、よほど偏屈した家庭でない限りそれは自らの存在を許し、生かしてくれるものだ。それが双方敵味方を越えて存在することを思い出した彼らは、もう戦争などという愚かな事はしないのだと。 (*) 熱狂の中曲が2~3曲終わると、休憩タイムに入る。この局は国営放送だがCMを流すようだった。 人混みの中、田所とはぐれたアルトは彼を探していると、視界の端に研究員の白衣や作業員の灰色のジャンプスーツ(つなぎ)とは意が異なる茶色の服を着た女性(ひと)が写った。 「あれ、アルト君も?」 「どうやらそっちもランカ・アタックのようだな」 「うん。着いて誰もいないから、警備の人に理由を聞いたの。そしたらみんなここだって」 フェイトは苦笑を浮かべつつ言う。 『ランカ・アタック』は、第25未確認世界の『ミンメイ・アタック』に相当する。これは彼女らの歌が戦闘を止め、ほぼ精神攻撃とも取れる事からこの名がついている。 また『デカルチャー』も、第25未確認世界の言葉だ。これは元々ゼントラーディ(巨人族)の言語で、『感動』や『驚愕』を意味する。元の世界では陳腐化していたが、ここではランカが時々口にすることから彼女が持ち込んだ新しい文化として大ブレイクしていた。 「まったく・・・・・・」 ため息をつきながらテレビに向き直ると、丁度CMが変わった。 ―――――――――― 大写しになるVF-25のキャノピー。そしてどこからか流れてきた『星間飛行』と共にそれが開く。 「みんな、抱きしめて。銀河の、果てまでー!」 副操縦席で立ち上がったランカのその常套句が、労働争議中の時空管理局本部ビルに響き渡った。 直後曲をBGMに、画面が切り替わる。 「テレビの前の皆さんこんにちは。ランカ・リーです!」 ステージ衣装を身に纏ったランカが挨拶した。バックには、時空管理局のエンブレムが躍る。 「時空管理局は平和を守るっていう、すっごい大切な仕事をしています!だけど・・・・・・」 声と緑の髪が落ち込むようにシュンとなる。そこでランカの肩に手が置かれた。 手を置いた彼女は今、隣でその人が着ているような地上部隊の制服ではなく、本局の真っ黒な執務官の服を着ている。 「でも今、管理局の地上部隊は人材不足に陥っています」 そこに今度は陸士部隊の礼服を着て、画面右側から出てきたはやてがフェイトの後を継ぐ。 「地上部隊はランカちゃんのおかげでだいぶ待遇も改善されたで。それに今なら重要なポストもけっこう空いとるよ!」 「来たれ勇士達。私達は、あなた達を待っている!」 最後にバリアジャケット姿のなのはが画面上からやってきて、アップと共にレイジングハートを〝ズバッ〟とこちらに向けて大見得を切った。 「「みんなのミッド、みんなで守ろう!・・・・・・キラッ☆」」 最後に4人の声が唱和し、同時にやってきたBGMに合わせ〝なぜか〟決めポーズ。 画面がまた切り替わる。そこにはまた大きく時空管理局のエンブレムが描かれていた。 そこにランカの声が重なる。 「こちらは時空管理局広報です」 ―――――――――― 冒頭の労働争議の映像はその時撮られたものではない。1週間前に時空管理局広報部から正式に依頼されてホログラム場で再現したものだ。そのためこのCM撮影は、六課も全面的にバックアップしていた。 しかし完成版のCMを初めて見たアルトは苦笑した。 ランカは台詞を頭で演じているようだ。多分台本通りに読んでいるのだろう。これではあまり聴衆の深層心理には訴えられない。 しかし、他3人の訴えには心がこもっていた。やはりまだ来てから1ヶ月では、日々実感するであろうはやて達3人にかなうものでもなかった。 「思わざれば花なり、思えば花ならざりき・・・・・・か」 だが、これらの考察はアルトレベルの同業者にしかできるまい。 事実、周囲の人々は、 「いいぞ!ランカちゃん!」 「フェイトさん最高!」 「「デカルチャーッ、デカルチャーッ!」」 等々やんや、やんやの大騒ぎだ。 (いや?待てよ・・・・・・「フェイトさん最高!」って言ったか!?) しかし、気づいた時には遅かった。もっと早く気づくべきだったのだろう。ランカが来る前、管理局の『3大美少女オーバーSランク魔導士』として名を馳せていた『はやて』、『なのは』と並んで『フェイト』がいたことに。 振り返るとそこに麗しき金髪の魔導士の姿はなく、奥の方で席に座らせられ、困った顔でペンをサラサラと動かしていた。また、時折シャッターの閃光が彼女を白く包む。 フェイトはこちらと目が合うと、助けて欲しそうな魅惑的な視線を送ってくる。しかしアルトは、胸の前で十字を切って合掌すると、さっと身をひるがえして離脱した。 不利な体勢になったら推力を生かして戦線離脱!混戦から抜ければなんとでもなる! それが空戦のセオリーだ。 そんなアルトの戦線離脱に、フェイトは色紙に次々自分の名を書き込んでいく作業と、記念撮影をせがんでくる所員たちの要望に応えながら、小さな声で呟いたという。 「アルト君の意地悪・・・・・・」 (*) フェイトの臨時サイン会が中断したのはCMタイムが終了したためだった。所員たちは再びテレビの前に集い、ライブ会場に画面が戻ったテレビがそこの人々の熱気を放射する。 現在セカンドライブは、首都クラナガンの中央にあるクラナガンドームで開かれている。そこは普段公式野球に使われるため十二分に広いはずだったが、グランドから客席まで人で埋め尽くされていた。 絶えることのないランカを呼ぶ声。そして彼女が舞台袖から出てくると、それは一気に歓声に変わった。 ランカはその歓声を手を上げるだけで制すると、そのままマイクを〝空中〟から掴み出し歌い始めた。 <ここは『What ’bout my star? @Formo』をBGMにすることを推進します> 〝Baby どうしたい 操縦? ハンドル キュッと握っても―――――〟 彼女のクリアなア・カペラが世界を静寂に引き戻した。しかし、観客は次第にリズムに乗って体を揺らす。 少女はスポットライトに照らされながら、歌い続ける。 緑の髪が別の生物の様に躍って、汗の粒がきらきらと宝石のようにきらめく。 そしてそのメロディがサビになる頃には観客は総立ちで跳び跳ねていた。その動きは、クラナガンの地震計に記録されるほどだったという。 また、待機していた空戦魔導士達がサビ突入と同時にスタントを開始した。 魔導士達は2サビ突入寸前の歌のカウントに合わせて技を披露し、ゼロと同時に全方位にパッと散って美しい軌跡で花を添えた。 ・・・・・・しかし、聡明な読者ならもうお気づきだろう。 『なぜランカの歌という超強力AMFのなかで飛べるんだ?』と。 その秘密は、彼女が空中から取り出したマイクにある。 実はこのマイクはシャーリーの作ったデバイスなのだ。このデバイスは、待機中はブレスレット状態なので、空中から取り出したように見える。 また、攻撃的な装備はないがその他の装備は充実している。 ステージ衣装は言わずもがな、バリアジャケットであるし、バルキリーと同種のフォールドアンプやフロンティア移民船団の装備していたのと同じオーバーテクノロジー系列の全方位バリア『リパーシブ・シールド』。そしてインテリジェントデバイスのため、術者であるランカが歌に集中していても防衛機構は全自動運転できる。 中でも特筆すべきなのは『SAMFC(スーパー・アンチ・マギリンク・フィールド・キャンセラー)』と呼ばれる機構だ。これは不規則に変化するランカのサウンドウェーブの周波数を、体内を流れる電気信号から推測。推測した周波数を周囲の友軍のデバイスにデータリンクを通して伝え、そのAMFをキャンセルするという画期的な装備だった。 これにより六課をはじめとする管理局は、対魔法、対魔導兵器戦では強力なアドバンテージがあった。 その後彼女のセカンドライブは1時間以上続いたが、誰もが時間を忘れて聞き惚れていた。 シレンヤ氏 第5話 その2へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/959.html
第10話「再会は異世界でなの」 「フェイトォッ!!」 エイミィからの連絡を受けたアルフは、すぐさまフェイトの元へと駆けつけた。 幸いにも、彼女が相手をしていたザフィーラは「十分過ぎる成果を得られた」と言い残し、すぐに撤退してくれた。 その為、フェイトが倒されてからあまり間を空けずに到着する事が出来た。 彼女がその場に到着した時、そこに仮面の男の姿は無かった。 あるのは、意識を失ったフェイトとそんな彼女を抱きかかえるシグナム二人の姿だけだった。 「シグナム……!!」 「……テスタロッサの目が覚めたら、伝えておいて欲しい。 言い訳をするつもりは無い……すまなかったとな。 テスタロッサは、リンカーコアを抜かれてから大して時間は経っていない。 すぐに適切な処置をすれば、目も覚ますだろう。」 「え……あんた……」 アルフは、シグナムの言葉を聞いて少しばかりの戸惑いを覚えた。 自分達は敵同士、追う立場と追われる立場なのだ。 今、フェイトは極めて無防備な状態にある。 再起不能になるだけのダメージを負わせるなり、人質として連れ帰るなり、状況を有利に出来る手段は幾らでもある。 だが彼女は、その一切を取らなかった。 一人の騎士として、そんな卑劣な真似をしたくは無かったのか。 互角にまで渡り合えたフェイトに、敬意を払ったのか。 それとも……守護騎士として、主の名を汚したくなかったのか。 どれにせよ、シグナムが正々堂々とした態度を取っているという事実には変わりない。 「……敵同士で、こういう事を言うのもあれだけどさ。 その……ありがとうね、シグナム。」 「……礼には及ばない。」 シグナムはアルフへと、フェイトを手渡した。 そして、直後……彼女は転移呪文を使ってこの世界から姿を消した。 敵でありながらも、シグナムはフェイトの身を案じてくれていた。 アルフは、少しばかり複雑な気持ちではあったものの、その事に感謝していた。 とりあえず、何はともあれフェイトを急いで運ばねばならない。 アルフの術では、ここから時空管理局本局まで飛ぶのは流石に無理な為、エイミィに頼むしかなかった。 すぐさま、エイミィとの連絡を取ろうとするが……その瞬間だった。 突如として、激しい地響きが発生したのだ。 震源は真下……アルフの足元からだった。 「まさか!!」 嫌な予感がしたアルフは、すぐに上空へと飛び上がった。 この世界には人間は一切いないが、その代わりに大型の野生生物が多く存在している。 それが、今まさに現れようとしているのだ。 フェイトを抱えたままでは、対処の仕様が無い……彼女を安全な場所に避難させなければ。 すぐにアルフは術を発動させ、フェイトを先にエイミィの元へと送ろうとする。 「エイミィ、フェイトの事お願い!!」 『うん、もう本局に連絡は取れてるから何とかできるけど……アルフは?』 「流石に、二人一緒にってのは少し時間がかかるからね。 私なら大丈夫だよ、すぐに後から行く。」 『分かった……気をつけてね!!』 「ああ……!!」 フェイトの姿が、その場から消えた。 アルフの術によって、無事にエイミィの元へと転送させられたのだ。 後はエイミィがゲートを繋いで、フェイトを本局へと送ってくれるだろう。 これで、彼女の事は何とか安心できる……後は、自分の問題を片付けるだけである。 地響きが真下から来た事から考えれば、相手の狙いは間違いなく自分。 恐らくは、餌と認識されたのだろう。 「さあ、来るならさっさと来なよ!!」 アルフが構えを取った、その直後。 大量の砂塵を巻き上げながら、その生物は姿を現した。 青い体色の、顎が大きく発達した怪獣。 かつて、ウルトラマンジャックとウルトラマンエースの二人が戦った相手。 そしてメビウスも、その亜種と激闘を繰り広げた敵―――ムルチ。 「ギャオオオォォォォッ!!」 ムルチは口を大きく開き、アルフへと破壊光線を放つ。 アルフはそれを障壁で受け止めると、すばやくムルチの胸元へと移動した。 体格の差は圧倒的ではあるが、逆にそれが味方をしてくれた。 ムルチの巨体では、懐に入ってきたアルフに対処が出来ないのだ。 「ハアアァァァッ!!」 強烈な拳が、ムルチの胴体に叩き込まれた。 鳩尾に一撃……かなり効いている。 そこからアルフは、間髪入れずに拳の連打を浴びせた。 ザフィーラからの連戦だから厳しいかと思ったが、どうやら予想していたよりも大した敵ではなさそうだ。 アルフは少しばかりの余裕を感じた後、ムルチを沈めるべく一気に仕掛けた。 しかし……この時、彼女は思いもしなかっただろう。 もしもミライがいたならば気づけただろうが……本来ムルチは、こんな砂漠にいる筈がないなんて。 ムルチが、『巨大魚怪獣』の呼び名を持つ『水棲怪獣』であるなんて。 一応過去に一度、ムルチは地中からその姿を現したこともあるが……それでも、砂漠という環境は流石に無茶である。 ならば何故、ムルチがここで活動できているのか……その理由は一つしかない。 悪魔の魔の手は……既に、数多くの世界に広がっていたのである。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ディバインシューター!!」 『Divine Shooter』 「シュート!!」 なのはは5発ほどの魔法弾を生成し、それをレッドキングへと一斉に放った。 しかしレッドキングは、大きく尻尾を振るってその全てを掻き消す……ダメージは皆無。 その後、レッドキングは再び大岩を持ち上げると、なのはへと投げつけてきた。 遠距離にいるなのはに仕掛けるには、これ以外の攻撃手段はレッドキングにはない。 確かに命中すればダメージは大きいだろうが、流石に攻撃が単調すぎる。 なのはには、あっさりと避けられてしまった。 「パワーは凄いけど、距離さえ離しちゃえば……!!」 レッドキングの戦闘スタイルは至って単純。 怪力に任せての、荒々しく凶暴なものである。 接近戦における圧倒的不利は、目に見えている。 しかし距離さえ離してしまえば、攻撃の手段は岩を投げる以外に無い。 両者の戦い方は、完全な対極に位置している。 その事実は、なのはにとっては幸運であり、そしてレッドキングにとっては不幸以外の何物でもなかった。。 流石にレッドキングもこのままでは不利と悟り、一気に距離を詰めにかかった。 だが……レッドキングが取った行動は、走ってくるとかそんなレベルの話ではなかった。 力強く両脚で地面を蹴り、文字通りに『跳んで』きたのだ。 これにはなのはも度肝を抜かれた。 幾らパワーが持ち味とはいえ、あの巨体でここまで跳び上がれるのか。 しかもスピードがある……回避は出来ない。 なのははとっさに、障壁を出現させる……が。 「っ……キャアァッ!!」 レッドキングは、2万トンの体重を持つ超重量級の怪獣。 そのロケット頭突きには、流石に堪え切る事が出来なかった。 なのはは後方へと大きくふっ飛ばされ、派手に地面に激突する。 ヴィータにラケーテン・ハンマーをぶちかまされた時と同じ。 いや、あの時以上かもしれない破壊力があった。 不幸中の幸いだったのは、地面に激突する寸前に、レイジング・ハートが自動的に障壁を展開してくれた事。 その為、何とかダメージは軽減できたのだが…… レッドキングは、ここで追い討ちを仕掛けてきた。 大きく足を上げて、なのはを踏み潰しにかかったのだ。 ロケット頭突き以上に危険すぎる……防御の有無抜きで、命中したら致命傷は免れない。 「ギャオオオォォォン!!」 「レイジングハート!!」 『Flash Move』 とっさに急加速し、間一髪攻撃を避ける。 その直後、相当な量の土煙が吹き上がってなのはの全身を覆い隠す。 あと少し遅れていたら、確実に踏み潰されていただろう。 そのままなのはは、素早くレッドキングから離れようとする。 しかし今度は上空には飛び上がらず、低空飛行で移動している。 これは、先程のロケット頭突きを警戒しての行動だった。 今レッドキングの周囲には、大岩は勿論、投げる事の出来るような物は一切無い。 普通に考えれば、なのはを攻撃する手段は無いように思われるが……先程のロケット頭突きの様な奇襲もありえる。 そう安易に考えてはいけないのは、なのはも重々承知していた。 そしてレッドキングはというと……そんな彼女の考えどおりに、仕掛けてきた。 投げる物が無ければ、作ればいい。 そういう風に考えたのだろうか、あろうことかレッドキングは、地面を怪力で引っぺがしたのだ。 そのまま、なのは目掛けて巨大な土の塊を投函してきたのである。 土は岩に比べれば、かなり脆い。 命中まで形をとどめる事が出来ず、上空で砕け散り、無数の土砂となってなのはへと降り注いできたのだ。 「っ!!」 『Wide Area Protection』 相手が岩ならば打ち砕けたのだが、土砂となるとそうもいかなくなる。 なのははとっさにカートリッジをロードして、広域防御結界を展開した。 その直後、彼女の身に大量の土砂が降りかかった。 あっという間にその全身は土砂の中へと埋まり、姿が隠されてしまう。 土砂は大量、結界も何もなしに埋まったのではまず助からないレベルである。 だが……レッドキングは、それで満足するような怪獣ではなかった。 なのははミライから聞いたときに少しばかり疑問に思ったが、レッドキングは名前に反して『白い』体色をしている。 ならば何故、レッドキングなどという名前が名付けられたか。 それは、この上なく凶暴で『赤い血』を見ることを何よりも好むからである。 レッドキングは、極めて獰猛かつ残忍なのだ。 かつては、自分よりも遥かにか弱い存在であるピグモンを徹底的に甚振り、死に至らしめた事すらもある。 そんなレッドキングが……土砂で覆い潰したぐらいで、満足するわけが無い。 「ギャアオオオオォォン!!」 確実な死を与える為、レッドキングは両手を組んで、地面へとハンマーフックを打ち下ろした。 それも一発ではなく、何度も何度もである。 拳が叩きつけられるごとに、土砂が勢いよく跳ね上がる。 そして、およそ十発程打ち下ろした後。 レッドキングは周囲を見回して、丁度いいサイズの大岩を見つけ出した。 仕掛けるのは、駄目押しの一撃……豪快に持ち上げて、そして地面に叩きつけようとする。 これで、まずなのはは生きてはいまい……そうレッドキングは思っていただろう。 だが……その瞬間だった。 『Divine Buster』 「ッ!?」 地面の下から、レイジング・ハートの声が聞こえてきた。 直後、眩い桜色の光が地面を突き破って出現し……レッドキングの手首に命中した。 レッドキングは思わず大岩を落としてしまい、そしてその大岩がレッドキングの足の指を直撃する。 かつてミライ達も取った、レッドキングにとって最も効果的な攻撃手段の一つである。 『ギャオオオォォォン!!??』 レッドキングは足を抱えて、悲鳴を上げた。 なのはは倒されていないどころか、全くの無傷。 何故なら彼女は今、土砂の下……攻撃の届かない、深い穴の底にいるからだ。 レッドキングが追い討ちに出てくるのは、容易に想像できた。 それをまともに耐え切ろうとするのは、自殺行為に他ならない。 そう判断したなのはは、土砂で姿が隠された瞬間に、地面に穴を空けたのだ。 後は攻撃がやむまで、安全な穴の中に身を隠すだけだった。 上方の土砂は、障壁を展開する事でなだれ込んでくるのを防いでいた。 そして、レッドキングが大岩を拾いにいき攻撃が中断された瞬間。 なのはは契機と見て、仕掛けたのである。 ちなみにディバインバスターを放ったのは、外の様子が分からない現状でも、攻撃範囲が広いこの術ならば当たると踏んだからだ。 「いくよ、レイジングハート!!」 『All right』 レッドキングの悲鳴から察するに、レッドキングは怯んでいる。 またとない攻撃のチャンス……仕留めるのは今。 なのはは一気にカートリッジをロードし、レイジングハートの矛先を斜め上へと向けた。 直後、膨大な魔力が彼女の周囲に収束し始めた。 カートリッジシステムに変更してからは、これが初めてになるなのは最強の魔法攻撃。 「全力……全開!!」 『Starlight Breaker』 「スターライト……ブレイカアァァァァァッ!!」 膨大な量の魔力光が、地面を突き破りその姿を現した。 そしてそのまま、真っ直ぐにレッドキングへと向かい……直撃。 レッドキングは猛烈な勢いで、光と共に上空へと打ち上げられていった。 数秒して、レッドキングは地上20メートル程の高さに到達し……そして。 ドグアアアアァァァァァァン!!! 大爆発。 レッドキングは、見事に打ち倒されたのだった。 なのはは、スターライト・ブレイカーによって吹き抜けになった穴の底から、それを確認する。 無事に打ち倒す事が出来、ほっと一息つく。 そして、彼女が地上へと出た時……ようやくメビウスが、現場へとその姿を現した。 彼は、既にレッドキングが倒されていたのを見て、少しばかり驚いた。 流石というべきだろうか……自分の助けは無用だったみたいだ。 「なのはちゃーん。」 「あ、ミライさん。」 「レッドキング、もうやっつけちゃったんだ……来た意味、あまりなかったみたいだね。」 「にゃはは……じゃあ、早く戻りましょう。 フェイトちゃんの事が心配だし……」 「うん……!?」 帰還しようとした、まさしくその時だった。 これで二度目になる、強烈な地響きが発生した。 揺れはかなり激しい……一度目よりも大きいかもしれない。 流石に立っていられなくなった二人は、上空へと飛び上がる。 そしてその後……同時に、レッドキングが出現した火山へと視線を向ける。 二人とも、とてつもなく嫌な予感がしていた。 まさかと思うが、もう一匹何かが来るんじゃなかろうか。 確かめる為、二人はエイミィに連絡を取ろうとする……が。 「あ、あれ……?」 「念話が、繋がらない……!?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「レッドキングは倒され、ムルチも圧倒されっぱなしか。 ヴォルケンリッターを相手にした後で、よくやれる……」 広大に広がる砂漠、荒廃した建物の山々。 黒尽くめの男―――ヤプールは、自分以外には何者も存在しないこの異世界から、全てを見ていた。 そう……レッドキングとムルチを仕向けたのは、他ならぬこの悪魔だったのだ。 ヴォルケンリッターや仮面の男の御蔭で、多少なりともなのはとアルフは消耗している。 倒すのならば今がチャンスと感じ、現地に潜ませておいた怪獣を襲い掛からせたのである。 超獣は、怪獣がベースとなって作り出される生物兵器。 怪獣がいなければ、一部の例外的なものを除けば、基本的に作成は不可能なのだ。 そして、より強い怪獣がベースであればあるほど、生み出される超獣も強くなる。 そこでヤプールは、これまで異次元空間内に捕らえてきた多くの怪獣を、近辺の異世界に解き放ったのだ。 野生のままに暴れさせ、成長させる方が、より強くなるだろうと判断した結果である。 その内幾つかの怪獣には、既に軽い改造は施してある……ムルチもその内の一匹。 乾燥した、砂漠のような土地でも動けるよう改造してあったのだ。 無論、狙いはそれだけではない……今回の様になのは達が異世界に現れた際、それを撃退する事も目的である。 しかしながら、レッドキングとムルチは倒されてしまった。 ならば、次の手を打つまで……特になのはとメビウスの二人は、ここで確実に潰す必要がある。 魔力の蒐集が不可能な以上、二人は単なる邪魔者でしかない。 管理局の方に対しては、既に手は打ってある。 仮面の男が、自分達の足跡を下手に辿られない様にと、先程ハッキングを仕掛けておいてくれたのだ。 これは、仮面の男が管理局に通じているからこそ出来た裏技。 御蔭で管理局側からの増援は、当分の間食い止められる……思う存分に叩き潰す事が出来る。 ヤプールは、不適に笑い……新たなる僕を呼び出した。 「行け……ドラゴリー、バードン!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「エイミィ……?」 一方その頃。 ムルチと戦っていたアルフも、異変に気がついた。 いつのまにか、エイミィとの連絡が全く取れなくなっている。 あのエイミィに限って、現場から離れるなんてそんな馬鹿な事はありえない筈。 そうなると……考えられるのは、何者かからの妨害行為しかない。 ヴォルケンリッターか仮面の男か、どちらかもしくは両方か、自分達の足跡を辿られない様にしたのだろう。 しかし先程のシグナムの事を考えると、ヴォルケンリッターがこんな真似をするとは考えがたい。 (いや……そうとも言い切れないか。) 一人だけ、そんな真似をしかねない者がいた。 初遭遇の日、なのはに奇襲を仕掛けてリンカーコアを抜き取ったシャマルだ。 考えてみれば、ヴィータ・シグナム・ザフィーラの三人しか異世界には姿を現していない。 ダイナに関しては別として、シャマルは先日の戦いにも、直接の参加はしていない。 完全なバックアップ担当と見ていいだろう。 それに、あまりこういう言い方はしたくないが……一人だけ、正々堂々とは言い切れない。 彼女の性格はよく知らないが、それでも十分にありえる話だ。 勿論、仮面の男が妨害行為をした可能性もある……寧ろ、こちらの方が可能性としては高い。 仮にシャマルがやったのだとしたら、何でそれを今までやらなかったのかという話になるからだ。 だが仮面の男は、先日はベロクロンのゴタゴタに紛れてだったが、今回にはそれがない。 完全な形で姿を見せたのは、これが初……ならば、彼等であるのはほぼ間違いないだろう。 タイミング的にも、十分合う。 「どっちにせよ、こいつをぶっ倒してさっさと戻ればいい話さ。 とっとと決めに……!?」 とどめの一撃を叩き込もうとした、その瞬間だった。 何処からか、「ミシリ」と何かに亀裂が走るような音が聞こえてきた。 アルフはとっさに、その音源……上空を見上げた。 見渡す限り砂漠のこの世界に、そんな物音を立てられそうな代物なんて一つもない。 ただ一つ……昨日も目にした、空を除けば。 「まさか、嘘……!?」 ガッシャアアアァァァァァン!!!! 空が割れ、その超獣は姿を現した。 地球上に生息している蛾と、宇宙怪獣とを組み合わせて誕生した超獣。 かつて、エースとメビウスを苦しめた蛾超獣ドラゴリー。 ドラゴリーは着地すると、早速アルフへと攻撃を仕掛けてきた。 唸りを上げ、両腕を振り回す。 アルフはとっさに急加速し、その一撃を逃れる。 しかしその背後には、大口を開けて待ち構えていたムルチがいた。 「ギャオオオォォン!!」 「くっ……!!」 ムルチは口を開き、破壊光線を放つ。 アルフはとっさに障壁を展開し、その一撃を受け止める。 するとここで、今度はドラゴリーが背後から仕掛けにきた。 両の眼球から光線を放ち、アルフを焼き殺そうとする。 挟み撃ち……両方の攻撃を防御しきる自信はない。 ならばと、アルフは障壁を維持したまま上空へと急上昇した。 それにより、ムルチとドラゴリー両者の攻撃は、それぞれ正面にいる相手に命中してしまう。 見事、同士討ちをしてくれたのだ。 「ギャアアァァァ!?」 「グオオオォォォン!!」 「やった……あんまり、頭はよくないみたいだね。 それにしても、どうして……!!」 何故、ヤプールの超獣がこんな異世界に現れたのか。 先日の襲撃の件も考えると、やはり狙いは自分達ということになる。 メビウスに味方する者を全滅させるつもりなのは、まず間違いない。 ヤプールが闇の書を狙っているというのなら、尚更になる。 ここで自分が倒れれば、ヤプールは簡単に魔力を手に入れることが出来るからだ。 後は何らかの形で仮面の男同様にヴォルケンリッターに接触し、それを渡せばいい。 「全く、面倒なことしてくれちゃって……!?」 ここでアルフは、言葉を失った。 その眼下では、ドラゴリーとムルチが争いあっている。 同士討ちを狙った以上、それ自体はありがたいことなのだが…… 正直言うと、これは争いとは呼びがたい。 そう、それは……一方的な虐殺だった。 両者の戦闘能力の差は、圧倒的過ぎた。 ドラゴリーはムルチを、徹底的に甚振っていたのだ。 ムルチはドラゴリーに馬乗りにされ、滅多打ちにされている。 必死になって抜け出そうと、ムルチはもがいている。 だがドラゴリーは、無情にもそんなムルチの左腕と肩を掴み……その怪力で、一気に左腕をもぎ取った 鮮血を噴出しながら、ムルチがもがき苦しむ。 しかしそれでも、まだドラゴリーの攻撃は終わらない。 今度は右腕と肩を掴み、そして勢いよく右腕をもぎ取った。 ドラゴリーは、ムルチを徹底的に八つ裂きにしようとしているのだ。 ムルチが悲痛な叫び声を上げる。 それが癪に触ったのだろうか、ドラゴリーはムルチの嘴を掴んだ。 そして……両手で一気に開き上げ、そのまま顔面を真っ二つにしたのだ。 ムルチの泣き声が止む……絶命したのだ。 「っ!!」 あまりの酷さに、つい動きを止めてしまっていたが……そんな場合じゃない。 寧ろ、敵の注意がそれている今は最大の攻撃のチャンスである。 アルフはすぐに飛び出し、全速力でドラゴリーへと向かった。 魔力を乗せた拳を、その後頭部へと全力で叩き込む。 流石にドラゴリーも、この奇襲には反応できなかった。 少しよろけ、地面に倒れそうになる……が。 「キシャアアァァァァッ!!」 そう簡単には、倒れてはくれない。 ドラゴリーは踏ん張ると、振り向き、その鋭い目でアルフを睨みつけた。 強い殺意に満ちているのが、一目で分かる。 この超獣は、ムルチよりも遥かに危険。 即座にその事実を、アルフは理解する事が出来た。 「……どうやら、最初に来た奴ほど甘くはないみたいだね……!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「どうして、連絡が……」 「なのはちゃん、くる!!」 「あ、はい!!」 同時刻。 なのはとメビウスの前にも、ヤプールから送り込まれた刺客が現れた。 レッドキングが出現したのと同じ、火山の麓。 そこから唸りを上げ、その怪獣は現れた。 その姿を見て、メビウスは思わず声を上げてしまった。 現れたのは、ウルトラ兄弟最強と詠われた二大戦士、タロウとゾフィーを一度は葬り去った大怪獣。 メビウス自身も、かつて深手を負わされてしまった、最大の強敵が一匹―――火山怪鳥バードン。 レッドキングとは……格が違いすぎる。 「そんな……!! レッドキングの次は、バードン!?」 「キュオオオォォン!!」 バードンは高らかに泣き声を上げると、その場で強く羽ばたいた。 強烈な突風が巻き起こり、周囲の木々が次々に吹き飛ばされていく。 バードンの羽ばたきは、民家を一つ破壊する程の威力がある。 なのはとメビウスは、とっさに防御を固めるが……踏ん張りきれない。 「セヤァァッ!?」 「キャアァァァッ!!」 二人は突風に煽られ、後方へと吹き飛ばされてしまった。 特に、バードンとのサイズの差があるなのはの方は、100m以上吹き飛ばされてしまっている。 そうなると、攻撃対象が近くにいるメビウスの方となるのは必然。 バードンは大きく翼を広げ、メビウス目掛けて飛びながら迫ってきた。 その巨体からは想像がつかないほどの、とてつもない速さ。 とっさにメビウスはメビウスディフェンスサークルを展開して、バードンの嘴を受け止める。 嘴による一撃だけは、絶対に受けてはならない。 その恐ろしさがどれ程のものか、メビウスは身をもって味わった経験があった。 メビウスはすぐに間合いを離して、光弾をバードンへと放つ。 しかしバードンは、それを翼で弾き飛ばした。 そしてそのままの勢いで、メビウスに翼を叩きつける。 「グゥッ!?」 「キュオオオォォン!!」 「ミライさん!! レイジングハート、カートリッジロー……!?」 『Master!?』 「なのはちゃん……!?」 まともに胴体に打ち込まれ、メビウスが怯む。 それを見たなのはは、すぐさま助けに入ろうと、カートリッジをロードしようとした。 だが、その瞬間……異常は起きた。 なのはが胸元を押さえ、急に苦しみ始めたのだ。 顔色は悪く、汗も酷く流れ出ている……全身の震えも止まらない。 レイジングハートは、一体彼女に何が起こったのか、まるで分からなかったが……数秒して、事態を把握した。 よく見てみると、バードンの周囲の木々が枯れはじめているのだ。 『まさか……この生物は……!?』 「なのはちゃん、急いで地球に戻って!! バードンは、体内に猛毒を持ってる……このままじゃ危険だ!!」 「毒……!?」 バードンはその体内に、強力な毒素を持っている。 それが先程の羽ばたきによって、微量ながらも散布されてしまっていた。 なのはは運悪く、それを吸い込んでしまっていたのだ。 メビウスが嘴による攻撃を恐れていたのも、ここにあった。 万が一、刺されてしまった場合……直接毒素を注入されてしまうからだ。 このままでは命に関わりかねないと、すぐに撤退するようメビウスはなのはに促した。 彼女をこのまま戦わせるのは危険すぎる……バードンは、自分一人で倒さなければならない。 幸い、メビウスは空気中の毒素の影響は受けてはいない。 戦うことは十分可能……すぐに向き直り、構えを取る。 「セヤァッ!!」 「キュオオオォォン!!」 メビウスはバードンの胴体へと、蹴りを打ち込む。 バードンは少しばかり怯むも、すぐに持ち直して反撃に移った。 怒涛の勢いで繰り出される、翼による殴打の連打。 メビウスは防御を固め、反撃の隙をうかがった。 そして、その時はすぐに来た。 バードンが大きく振り被って、翼を打ち下ろしにかかる。 その一瞬の隙を狙い、メビウスは前転。 バードンの背後に回り込んで、一気に仕掛けにかかった。 「セヤァァァァッ!!」 メビウスブレスのエネルギーを開放し、拳に纏わせる。 必殺の拳―――ライトニングカウンター・ゼロ。 メビウスは勢いよく、全力でその一撃を背後から叩き込んだ。 直撃を受けたバードンは、呻き声を上げて地面に倒れ…… 「キュオオオン!!」 こまない。 とっさに地面へと両手をつけ、ギリギリのところで踏ん張っていたのだ。 その後、地面を蹴ってそのまま跳躍。 メビウスとは逆方向―――なのはのいる方へと、接近していったのだ。 肝心のなのはは、魔方陣を展開して撤退寸前だった。 しかし……この強襲を前にして、それを中断せざるを得なくなる。 とっさに、バードンを迎撃しようとするが…… 「っ……!!」 視界が霞んで、狙いが定まらない。 毒の影響が、予想以上に響いていたのだ。 ならば先程レッドキングに仕掛けた時のように、ディバインバスターでいくのみである。 なのはは気力を振り絞り、魔力を収束させる。 「ディバイン……バスタアアァァァァッ!!」 魔法光が放たれ、真っ直ぐにバードンへと向かう。 だが……その威力が、先程に比べて弱い。 毒による消耗のせいで、完全に力を出し切る事が出来なかったのだ。 バードンは迫り来る光に対し、口を開き高温の火炎を吐き出した。 ディバインバスターが、相殺されてしまう。 そのままバードンは、なのはへと接近……嘴を突きたてようとした。 なのはは、とっさに目を閉じてしまう。 しかし……その瞬間だった。 「グッ……!?」 「!! ミライさん!!」 なのはをかばって、メビウスがその一撃を受けてしまっていた。 深々と、バードンの嘴が肩に突き刺さってしまっていたのだ。 メビウスはすぐにバードンへと拳を打ち込み引き離すも、その場に膝をついてしまう。 これで彼の体内にも、毒が回ってしまった。 胸のカラータイマーが赤色へと変化し、音を立てて点滅し始める。 バードンはその様を見ると、高らかに鳴き声を上げる。 それはまるで、己の勝ちを確信し、嘲笑うかのようであった。 そして、トドメを刺すべくバードンが動く。 大きく口を開き、二人目掛けて火炎を噴出した。 (まずい、このままじゃ……!!) せめて……なのはちゃんだけでも……!!) 障壁の展開は間に合わない。 自分の体を盾にして、炎からなのはを守るしかない。 重傷を負うのは確実……最悪死ぬかもしれないだろうが、それ以外に方法は無かった。 メビウスは、迫り来る炎を前にして覚悟を決めた。 なのははそんなメビウスを見て、力を出し切れなかった己を呪った。 何とかして、メビウスを―――ミライを助けたい。 なのはとメビウスと。 二人が、互いを思い強く願った……その時だった。 祈りは通じた―――奇跡は起こった。 ドゴォォォンッ!! 「えっ!?」 上空から、二人とバードンとの間に赤く輝く光の玉が落ちてきた。 その玉が丁度、火炎から二人を守る盾の役割を果す。 なのははこの予想外の自体を前に、ただ驚くしかなかった。 しかし……メビウスは違った。 彼は、この光の玉に見覚えがあった。 やがて光は消え、玉の中から何者かが姿を現した。 メビウスと同じ大きさをした、銀色の巨人。 その胸に輝くは、六対の球体―――スターマーク。 そしてその中央には、蒼く輝くカラータイマー。 「兄さん……ゾフィー兄さん!!」 「ようやく会えたな……メビウス。」 ウルトラ兄弟を束ねる長兄―――ゾフィー。 予想していなかった、しかしこの上なく心強い増援を前にして、メビウスは思わず声を上げた。 ゾフィーはそのままバードンに蹴りかかり、その巨体を吹っ飛ばす。 その後、大きく首を振るい、己の頭で燃え盛っていた炎を消す。 どうやら先程火炎を受けた影響により、燃えてしまっていたらしい。 ゾフィーはなのはとメビウスへと振り向くと、掌をカラータイマーへと一度乗せた後、二人に向けた。 そこから、エメラルド色に輝く光が二人へと放たれる。 「あ……体が、楽に……!!」 なのはは、己の体が軽くなるのを感じた……毒が抜けたのだ。 それはメビウスも同様であり、そのカラータイマーは青色に回復している。 ゾフィーが、己のエネルギーを二人へと分け与えたのだ。 二人は立ち直り、そして構えを取った。 「メビウス、そして地球の者よ。 ここまで、よく頑張ったな……もう一息だ。 力を合わせて、バードンを倒すぞ!!」 「はい!!」 圧倒的不利かと思われていた形勢は、一気に逆転した。 ウルトラマンメビウス、高町なのは、ゾフィー。 今……三人の、反撃の狼煙が上がる。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/239.html
零式防衛術は敵を殺す技にあらず。 己が愛憎を殺す技なり。 されど、心を無視する技には断じてあらず。 怒りを胸に沈めてはならぬ。 両足に込めて己を支える礎となせ! 友情を胸に沈めてはならぬ。 両腕に込めて友を守る楯となせ! 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第三話 『轟心招来』 「…こんな話をしてたんよ、うち」 退院した覚悟君を誘って、今、お茶してるんやけど、 この恋、実るかフラれるかは即日決まるところやで。 零(ぜろ)には黙っていてもらって、うちの口から全部伝えた。 覚悟君をもの扱いしたことを。 零(ぜろ)をもの扱いしたことを。 それで。 「ごめんなさい」 頭を下げて、謝った。 そんでそっから、さらに調子のいいことをぬかすんや。 ホンマ、最低やな。 「もし、覚悟君が許してくれるなら… そのうえで、一緒にうちらと戦ってくれるなら…お願いしたいんや」 これ以上は何も言わない。 いくら飾り立てたって、結局全部うちの都合の話やから。 というか、覚悟君の目を見てると、どんな言葉もかすんじゃう気がするわ。 すっごく澄んでるんよ、透明なんよ。 素直な気持ちだけで話すしかあれへんねん。 それから少しして、覚悟君から返ってきた返事は。 「忠誠無くして同じ禄(ろく)を食むことなどできませぬ」 「…そっか」 「ですから、一介の食客としてご協力申し上げたく思います」 「え…?」 「零(ぜろ)と共に日本へ帰ることだけが望みでありますれば」 この言葉を要約すると… 零(ぜろ)のそばから離されさえしなければ手伝ってもいいよ、別にお給料もいらないし。 でも、ご飯と住む場所お願いね。 …あかん、我ながらミもフタもなさすぎや。 でも、これって、現実的な範囲で最大限の協力やんか。 「ごめんな、零(ぜろ)は管理局の管理になってもーたから…」 「無理もありませぬ。 それよりむしろ、あなたが手元に留めおいてくださったことを感謝せねば」 「零(ぜろ)と話せるの今のところ、うちだけやしなー。 リィンと同じ扱いなんよ」 「零(ぜろ)は今?」 「うちでお留守番の守り神様や。 90キロは乙女の細腕にはキツイて」 覚悟君にしてみても、零(ぜろ)と離れないためには管理局に協力するしかないねんな。 考えてみれば、最初っから人質をとったような取引やなー。 でも多分、覚悟君のことだから、納得いかなければ零(ぜろ)を取り返して逃げるやろ。 管理局員の責任としてそれを許すわけにはいかへん。 ひっどい話や思わんか? だからこそのお願いや。 約束は絶対に守る。 「うん…ありがとな。 家とかは、うちが責任もってどうにかするわ。 生活費も出す…必要なら、お金たかってもええよ。 最大限の身の軽さは約束するて、管理局に縛られんように」 「お手数をおかけして、申し訳ありません」 「ちょっ、謝るんはうちの方やて! もー覚悟君と話してると恐縮してまうわー それにタメ口でええよ、管理局入りしないんなら上下関係無いやろ」 覚悟君、少し迷ってから、首を縦にふってくれた。 「…了解、これよりは友人として扱う」 「ええ子や」 そうそう、お姉さんの言うことは、素直に聞くもんやで。 第一、十三歳のくせに折り目正しすぎやて… 十五歳で自分の派閥作ろうとしてるうちが言うのもアレやけど。 大人になるって、ホンマ、イヤやわ。 その後は、覚悟君をうちの家に連れてきて、 なのはちゃん、フェイトちゃんも一緒にお話することにした。 もちろん、零(ぜろ)も一緒や。 そのためのうちの部屋や。 前から話してて、明らかに食い違ってるのがわかる部分があったから。 「それじゃあ、覚悟君のいた日本は…」 「二十一世紀初頭の大災害にて全世界もろとも壊滅状態」 「…違うね。 わたしとはやてちゃんの日本は、今日も平和だよ?」 どうも、考えている以上に根が深い問題らしいわ。 管理局に知られている第九十七管理外世界…つまり、うちらのいた地球と、 覚悟君のいた地球は、また別の世界ちうことになる。 そんな話、聞いたことないて。 どないしたらええやろ? さすがに覚悟君の表情も暗くなった。 「鬼が解き放たれている…早く帰らねば」 「…鬼?」 「現人鬼(あらひとおに)、散(はらら)。 強化外骨格を得ると同時に、やつは腐り果てた。 人など守るに値せぬと…討たねばならぬ」 みんな、何も言えなくなった。 覚悟君のひどいケガ、その散(はらら)という人にやられたことは聞いてた。 シャマルも覚悟君のうわごとを何度か聞いてたらしい。 だけど少しして、なのはちゃんが、突拍子もないことを言い出した。 「好きだったのかな、その人」 「何故?」 「悲しそうな顔したよ、覚悟くん」 覚悟君の表情がこわばったのを、うちは確かに見た。 『なんという感受性…覚悟の裏腹の痛みを見抜くとは』 零(ぜろ)が関心したように息を漏らしてる(?)… ここで聞こえているのは、覚悟君と、うちだけなんやけど。 「余計なことを言うな、零(ぜろ)」 覚悟君が声を荒げるの、初めて見たわ。 …や、それでも、授業中のおしゃべりを注意する先生レベル、なんやけどね。 心を乱したのを恥ずかしい思うたんかな、覚悟君、ちょっとだけしおしおとして座り直しとる。 「父殺しを、兄とは思わぬ…気遣い無用」 「………」 覚悟君、それ、もっとヘビーやで。 つまり、散(はらら)さんは覚悟君のお兄ちゃんで、 覚悟君は、実のお兄ちゃんにお父さんを殺された、いうことやんか。 なのはちゃんも、途方に暮れた顔になってもうた。 仲直り、できるうちにしたほうがいいよ。 そう言いたかったんやね。 でも父殺しって…無茶や。 もう、言葉が見つからへん。 みんな、お通夜みたいにうつむいてる。 そのまま、永遠に続くか思うたわ。 「少し、身体をほぐそうか」 高町なのははそう言って、おれを表に連れ出した。 八神はやてに、零(ぜろ)をわざわざトランクに詰めさせて。 連れてこられたのは時空管理局が訓練施設。 立体映像を具現化させ、実物の廃墟そのままの戦闘領域を再現。 まさに、魔法の産物なり。 そして、ここに来たならば、やることはひとつであろう。 これより同志となるならば当然ということか。 「覚悟くんの強さ、わたし、知りたいな」 彼女は不敵に微笑み、胸元の宝玉を天に掲げた。 轟 心 招 来 レイジングハート セットアップ 白き聖闘衣 着装確認。 あれは高町なのはが超鋼(はがね)なり! 「来なよ…零(ぜろ)さんも一緒に」 「爆芯靴のみ着装にてつかまつる!」 知っているのだ、Sランク魔導師に管理局からの制限あり! 強化外骨格がロストロギアに相当するなれば 全身着装では同じ土俵にあらず。 トランクより射出されし零(ぜろ)の脚部、着装! 覚 悟 完 了 「当方に戦闘の用意あり」 「どこを殴ってもいいよ。 顔も、お腹も。 そのかわり、わたしも容赦しないから」 「当演習の勝利条件は?」 「お互い納得いくまで!」 「了解!」 …結論から言おう。 この高町なのは、確かに実戦における先達なり! 距離を詰めさせぬ戦いに習熟しており 障害物の間隙より狙い来る狙撃は精妙の域。 直撃すれば一撃にて戦闘不能は確実! その威力打撃系なれば、零式鉄球が異物防御、まるで意味をなさず! されど零式防衛術は必勝すべき拳なり。 壁を走りて跳びて、想定される狙点へと先回って打ち込むは、 「零式積極重爆蹴(ぜろしき せっきょく じゅうばくしゅう)!!」 「フラッシュ・インパクト!!」 …読まれていた! 蹴りに蹴りをぶつけられ、両者反動にて距離拡大! 長き距離は全面的に高町なのはの味方なり。 攻撃が届かぬということは無限大の装甲を纏われるも同じ。 レイジングハート砲発射態勢確認。 このまま狙い撃つつもりならば。 「ディバイン・バスター!」 「爆芯!」 推進剤噴射にて飛び上がる。 打ち下ろされし光柱すれすれ三寸わずか! 高町なのはの直下より地を蹴りて肉薄し、水月へ直突撃(じきづき)極めるなり。 気づいたところでもう遅い。 砲口向けるその動作、まとめて威力として返す! 「因果!」 直撃せり。 高町なのは、吹き飛びて廃墟に激突。 白き聖闘衣の上一枚、はじけて消えたり。 なるほど、こうして常人ならば死ぬ威力に耐えうるものか。 だが、聞かねばならぬ。 彼女の元へ近づきて、その身を起こす。 「けほっ…強いね、覚悟くん」 「なぜ、高空より狙い撃たぬ」 「えっ?」 「当方の爆芯にて到達不可能な高空にて狙撃すれば あなたの完封勝利であった」 「それは、覚悟くんの方がよくわかってると思うけどな。 どんなときも、勝てばいいってものじゃないよ」 「………」 高空より狙い撃ちて砲の角度過(あやま)てば 廃墟へ直撃、崩落せしめんこと必定。 もし逃げ遅れた人々、中にて肩を寄せ合いふるえておれば… これは仮想現実なり! なればこそ最悪の可能性想定せし動きをとらねばならぬ! 「覚悟くんだって、建物壊して視界ふさげばよかったのに、しなかったよね?」 「…もう一戦、よろしいか」 「次は勝つよ」 その勝利宣言に嘘は無し。 二分後きっかり、わが五体、光芒に包まれたり。 勝率が五分と五分にて拮抗した頃、 気がつけば暮れなずむ夕日を共に眺めていた。 「ちょっとは、すっきりした?」 出し抜けに声をかけてきた高町なのはは、まだ止まらぬ鼻血をぬぐっている。 その言葉に反射的にうなずき…そして、恥じる。 わが心中に立ち込めたる暗雲振り払うべく、この女性は計らってくれたのだ。 「鬱憤は溜めちゃダメだよ。 毒になって、もくもく吐き出しちゃうんだから」 「おれは未熟だ…」 「そんなことないよ。 自分の力でどうしようもないことがあれば、当たり前だよ」 「それでは駄目なのだ。 零式は己をこそ殺す格闘技なれば」 「おのれを、殺す?」 「心に愛憎あらば敵につけ入られよう。 そうでなくとも、いつか己自身を鬼へと墜とすことになる」 「その弱さも含めて人間だよ、覚悟くんも。 大切なのは、間違った自分にダメって言える気持ち。 心がひとりぼっちだと、どんどんそれが見えなくなっていくんだよ」 ふと思い出す、空港火災を。 あのとき、限界を超えてわき上がった闘志は おれの後ろにいた娘とその父の心に触れて初めて知ったもの。 一人で戦っていると思ったら大間違い、か。 ならばこの出会い、感謝すべき運命(さだめ)であろう。 「…友達に、なろう?」 かざりものの言葉は不要。 ただ伸ばされたその手をとるだけでよい。 おれは、おれのやり方で友情を証明しよう。 戦いしか、能なき男なれば。 向こうから、八神はやてとフェイト・テスタロッサ・ハラウオンのやってくる姿が見えた。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1709.html
「ん……?」 グレイがこの世界に現れてから二日が経った。 彼が目覚めたのはベッドの上。それも宿屋にあるような上等なものではなく、どちらかと言うと簡素なものだ。 しばらくグレイはその場で停止する。どうやら状況を飲み込んだ上で、これからの行動を考えているのだろう。 この状況になるまでに憶えている事は、エロールによってこの世界に飛ばされたこと。続いて燃え上がる建物の中での戦闘。それからの記憶は無い。 これがどういう事かを考え、戦闘後に建物から連れ出され、ここに運び込まれたのだと結論付けた。 あの場にいた中でそれができそうなのは、白服の女、高町なのはただ一人。あの後で誰かが来たのでなければ、なのはに連れ出されたのだろう。 ふと、近くに来ていた看護婦が気付き、話しかけてきた。 「あら、目が覚めたんですね」 そう言うと、看護婦がグレイへと歩み寄ってくる。対するグレイは、その看護婦に問い、看護婦もそれに答えた。 「ここはどこだ? 何故俺はここにいる」 「ここですか? ここは聖王医療院です。あなたはミッド臨海空港でモンスターと戦って、その後ここに運び込まれたんですよ」 実に簡潔な回答。おかげで先程の考えが正しかったと証明された。 さて、グレイの頭には現在、一つの単語が引っかかっていた。『ミッド臨海空港』という単語である。 ここで言うミッドとは、おそらく彼の目的地であるミッドチルダ。つまり到着時の状況はともかく、目的地には到達できたという事らしい。 と、ここで看護婦がグレイに一つ伝言を伝えてきた。 「ああ、そうそう。あなたが目を覚ましたら伝えるように言われていたことがあったんでした。 目が覚めて、もし動けるようになったら時空管理局本局に来てほしいって、高町教導官からの伝言です」 ……本局とは一体どこだ? Event No.02『高町なのは』 目覚めてから数日後、グレイが本局ロビーの椅子に座っている。受付の順番待ちである。 普段から腰に差している古刀は無い。どうやら管理局で預かっているようだ。 先日の伝言には、本局に来たときに返すとの旨もあった。だから刀を返してもらう意味でもこちらには来る必要があったのである。 ちなみに他の荷物は病院を出る際に返してもらっている。 と、そんなことを言っている間にグレイの番が来たようだ。受付カウンターまで移動し、用件を伝える。 「高町教導官という人物に呼ばれて来た。取り次いでくれ」 「高町教導官に……ですか? ただいま確認しますので、少々お待ちください」 そう言うと受付嬢は通信モニターを開き、なのはへと連絡を取る。 こう言っては悪いが、いきなり現れてエースオブエースとまで呼ばれるような有名人に呼ばれたといわれても信用するのは難しい。 待つこと数十秒、モニターの向こうになのはの姿が映った。 「あ、高町教導官。あの実は、教導官に呼ばれたっていう男の人が来ているんですが……」 『男の人? その人って、灰色の長い髪をしてませんでしたか?』 「え? あ、はい。確かにそうでしたけど……」 その言葉になのはがしばらく考える。対する受付嬢は反応の無くなったなのはに怪訝そうな表情だ。 (もしかして、空港の時のあの人じゃあ……) 「あの……高町教導官?」 『あ、すいません。じゃあ、その人に待合室で待ってるように言ってくれませんか?』 受付嬢の表情が変わった。本当になのはに呼ばれていたのがそんなに驚くような事なのだろうか? とにかく、すぐに了承して通信を切り、グレイにその旨を伝えた。 「遅い……」 十数分後の待合室。グレイが暇そうな表情でそこにいた。 近くの本棚から本を取り出して読もうとするも、マルディアスとは文字が違うために読めない。 かといって剣の練習もこんな狭いところではできないし、術の練習もまた然り。 それ故に暇潰しすらできずに椅子に座っているほかなかった。他にできる事があるとすれば集気法で回復速度を上げるくらいか。 と、待合室のドアが開く。そこから現れたのはグレイにとっても見覚えのある女性だった。もっとも今は服装も髪型も違っていたが。 「えっと……怪我の具合はどうですか?」 「見ての通りだ。動ける程度には回復している」 まずはその女性、なのはがグレイの具合を聞き、それに答えを返す。 もっとも、動ける程度に回復したら来るよう言われていたので、ここに来ている時点である程度想像はつくのだが。 それを聞き、なのはがほっとしたような表情を浮かべて礼を言う。 「そうだ、あの時はありがとうございました」 急に礼を言われ、頭に疑問符を浮かべるグレイ。どうやら例を言われる理由がサッパリらしい。 どういうことか分からないので、なのはに直接聞くことにしたよう。 「……? 何の事だ?」 「ほら、あの時命がけでモンスターと戦ってたじゃないですか」 「その事か……あそこを出るのにあれが邪魔だっただけだ。感謝されるいわれは無い。 それより、俺を呼び出して何の用だ、高町教導官?」 グレイがそう聞くと、なのはの表情が変わる。今までの優しい顔から多少厳しい顔に。 「一つ、あなたにとって重要な話をするために呼びました」 話は空港火災の日まで遡る。 「なのはちゃん、ちょっと話があるんやけど」 「どうしたの?」 空港火災の日、そこで指揮を執っていた茶の短髪の女性『八神はやて』がなのはを呼び止めた。 表情からすると、何か真面目な話題なのだろう。いつになく真剣な顔である。 「まず、これを見てくれへん?」 そう言ってはやてが出したのは、空港内で確認された何かの反応のデータが映ったモニター。 それは人間だったりモンスターだったり、あるいは炎だったり色々である。 少しずつ時間を進めるような形でデータを進め、そしてある所で一時停止をかける。 「……ここや」 はやてが指差した箇所。その箇所には一秒前まで何の反応も無かった。一秒前までは。 だが、そこに突如人間一人分の反応が現れた。同じように転移の反応も同時に。 これが何を意味するか、理解に時間はかからない。 「え? これって、もしかして……」 「せや。転移魔法かそれとも次元漂流者かは分からへんけど、この時間に誰かがここに転移して来てるって事や」 そのまま再生ボタンを押し、その反応を追う。その反応はどうやら出口を探しながら移動しているようだ。 移動した軌道上のモンスターの反応は少しずつ減っていっている。その反応の主が倒したのだろうか? そしてある程度進んだ時点で再び一時停止。 「そして、この反応がなのはちゃんや」 そう言いながら、その反応の近くにある別の反応を指差す。どうやらこれがなのはの反応らしい。 近くには子供一人分の反応と、大物モンスターの反応もある。 「はやてちゃん、これ……」 なのははすぐに感づいたようだ。その反応の主の正体に。 そう言ったなのはに対し、はやても頷いて返した。 「これは多分、なのはちゃんが助けた灰色の髪の人の反応やろな」 そして、その詳細や目的を確かめるためになのはがグレイを呼び出し、今に至るという訳である。 「えっと……」 そういえばなのははグレイの名を知らない。そのため少し言いよどむ。 それを察したグレイが、自分の名を名乗った。 「まだ名乗っていなかったな。俺の名はグレイ」 「それじゃあ、グレイさん……ここは、あなたがいた世界ではありません」 この後の反応はなのはにも予想はできている。おそらく驚くか、あるいは現実を受け入れるのに多少考えるかの二択。 今までの次元漂流者の場合は、ほぼ全てがそのどちらかだったと、データで見たことがあったし、今まで見てきたのも大抵そうだったからだ。 だが、グレイの反応はそのどちらでもなかった。 「知っている。ミッドチルダだろう?」 その事に逆になのはが驚いた。 ここが異世界だと知っている上で、それで猶ここにいる。それはどういうことか。 いくつか思い当たる可能性はあるが、直接聞いたほうが早い。もしかしたら犯罪目的で違法に転移を行った可能性もある。 表情を若干厳しいものに変え、その疑問を口に出した。 「それはどういう事なんですか? 場合によっては、あなたを拘束しなければいけなくなるかもしれません」 これはどうやら、グレイがエロールから聞かされていた真相を話す必要があるようだ。というより、そうしないと面倒になりそうである。 意を決し、その真相を話した。 「――――俺が聞かされているのは、それで全部だ」 その話は、なのはにとっては信じがたい事であった。 何せ異世界の邪神が復活し始め、完全な復活のための力を蓄えるためにミッドチルダに来ているなどと聞かされても、どう反応すればいいのか分からない。 だが、グレイの目は嘘をついている目ではない。おそらくは真実なのだろう。 「じゃあ、一人でそのサルーインと戦っているんですか?」 相手が神だというのなら、一人で戦うのは無謀。なのに一人でいる……という事は、まさか一人で戦っているのだろうか。 なのははそう思い、グレイへと尋ねる。そして返ってきたのは否定だった。 「いや、仲間があと四人いる。この世界に飛ばされる時に散り散りになったようだがな。 ……そうだ、時空管理局……だったか? お前達の方で同じように見つけてはいないのか?」 飛ばされる時に散り散りになった四人の仲間。それがこの世界に来ているのならば、管理局の方で見つけているはず。 その事に一縷の希望をかけて同じように質問を返すが、なのはから返ってきたのは否定。 「……残念ですけど、あの日に転移してきたのはグレイさんだけでした」 「そうか……分かった」 やはり落胆しているのだろうか、グレイは声のトーンを幾分落として返す。 そうして次の瞬間には、席を立った。 「仲間を探す時間は無い。俺はサルーインを探しに行く」 それはあまりにもいきなりな事。そのせいでなのはは面食らい、のけぞる。 そのまま椅子ごと後ろに倒れるのを何とか踏みとどまり、何とかグレイを引き止めようとした。 あても仲間もないのに出発するという自殺行為を止めたいという一心で。 「待ってください! 出発するって言っても、あてはあるんですか?」 沈黙。 やはりあては無かったらしい。 「それに、相手は神なんですよね? 一人で戦って勝てる相手なんですか?」 さらに沈黙。 「あ、これは絶対無茶だ」という思考が頭を支配しているのだろう。だからといって他の手など思いつかない。 そういう事を考えていたグレイに対し、なのはがとある提案を持ちかけようとした。 「……グレイさん、管理局に協力する気は『なのはさん!』 が、急にオペレーターからの通信が入り、中断せざるを得なくなった。 「どうしたんですか?」 『例の海賊たちです! 次元航行艦が一隻襲われました!』 海賊? この世界にも海賊がいるのだろうか。 そのような疑問を浮かべるグレイを尻目に、通信で二言三言話したなのはが椅子から立ち上がる。 そしてグレイへと向け、謝罪の言葉を口にして部屋を飛び出した。 「ごめんなさい、グレイさん! 急ぎの用ができました! 後で続きを話すので、ここで待っててください!」 部屋に残されたグレイは、一人考えていた。 会話の内容からすると、その急ぎの用とは海賊退治だろう。 ならばある程度役に立つことはできるだろうし、何より待たされるのは御免だ。 そして結論……なのはに同行し、手を貸す。話の続きは移動中でも可能だろう。 その結論を出したグレイは、荷物袋から予備として持っていた武器『アイスソード』を取り出し、それを背に負って駆け出した。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/762.html
次元の海に浮かぶ巨大な時空管理局本局。 大型の次元航行艦が何隻も停泊している。もはや艦と言うよりも要塞と言ってもいいかもしれない。 そこにクラウディアは帰還し、エドワード・エルリックは降り立った。 顔つきは妙に晴れやかで生き生きとしている。それもそのはず、探し求めた元の世界に戻る手掛かりを掴みかけているかもしれないのだから。 「お~い、エドワード君」 「あ、マリーさん」 本局に戻るなり声を掛けてきたのはマリエル・アテンザ。彼女が彼の義肢の製作、修理等を担当している。それ故、彼女には少々頭が上がらない。 「義肢のメンテナンスするからちょっと付き合ってくれる?」 「ああ、わかったよ」 結局ここでも手足のメンテナンスは必要になる。もう慣れたものとはいえ、やはり面倒なものだ。 自分は前に進めているのだろうか?この腕はそう問いかけているような――。 たまにそう思うことがある。 第3話 真理の扉/からくり~しろがね 第一幕 開幕ベル 「う~ん、大分損耗が激しいね。ちょっと無茶しすぎだよ」 エドは下着姿で台の上に寝転び、マリーは取り外した義肢をまじまじと調べる。 「あはは……悪い」 とりあえず苦笑してお茶を濁す。つい先日も魔力弾を直接殴り返すようなことをした手前、言い返せない。 「でもさ……この義肢、デバイスみたいに魔力ダメージにも耐え得る素材を使ってるけどさ。 もっと見た目も質感も本物に近い義肢だってあるんだよ?何もこんな頑丈さ重視の面倒なのじゃなくっても……」 彼女が握っているそれはずっしりと重い、鈍く光る鋼の腕だった。 「まあな。でも、もう慣れたよ。それにデバイスはいまいち性に合わないからさ。これのほうが戦い易い」 それともう一つ、あまり便利な腕に慣れてしまうと、あの世界のことを忘れてしまうのではないかと不安になるのだ。 自分はいつか必ず、元の世界に帰る。それなら機械義肢〔オートメイル〕に近いものの方がいい。 機械義肢とよく似た重み、関節の軋み、神経の痛みが過去を思い出させてくれる。忘れずにいられる。 「あの掌をパンってやるヤツ?エドワード君の稀少技能〔レアスキル〕」 「ああ、何度か使った魔法は詠唱無しで発動できるんだ」 元々覚えたての頃ふと試してみたらできてしまったものだが、今では慣れたものだ。 錬金術の下地があったせいだろう。魔法の覚えも平均よりもかなり早かったらしい。 物質を理解し、分解し、再構築する。その力を望む方向にコントロールする式を刻んだものが錬成陣。 自分は『真理の扉』のその奥を見たことで、自身を構築式として錬成陣を利用せず錬成することができるようになった。 掌を合わせるのはその為のトリガーである。 手を合わせることで錬成陣の円――すなわち力の循環を示すのだ。構築式は己の中にある。 自分はこの世界へと渡った際に真理の扉を潜った。ならば詠唱を省略することも可能なのではないか? 魔法を独学で学んだ時に必要とした知識も理数系。錬金術を学んだ時と同じ分野のものが多かった。似ていると感じたのはこの時。 力を望む形にコントロールした構築式を自ら理解する必要がある――この点では錬金術も同じである。 そしてそれを集中、詠唱によって発動させる。それが魔法だ。 作用する形があまりに多岐に渡る為、知らない術式を即興では使えないが、それは錬金術でも同じだ。 結局は術者の資質や学習が肝心であるという点も。 決して万能な技能ではなく、便利であるという程度の認識でしかない。結局は魔法も錬金術も科学の一つなのだ。 不可能を可能にすることなどできない。 ましてや死者を完全に生き返らせることなど――。 「へぇ~。凄いんだねえ、錬金術って」 そうしている内に予備の義肢の用意が出来ていた。 「っ~!」 神経を繋ぐ独特の痛みに歯を食い縛って堪える。これが嫌なところまでそっくりとは皮肉だと思う。 「どんな感じ?違和感ある?」 「う~ん、少し。まあ慣れると思うけど」 肘や膝を曲げ伸ばしたり、飛び跳ねたりして感覚を確かめてみる。 以前の機械義肢に比べると多少の違和感は拭えないが、まあこんなものだろう。 「悔しいなあ。君の前の義肢?造ってた技師さんはよっぽど君のことを熟知してたんだね。そりゃあもう身体の隅々まで」 熟知していた?身体の隅々まで? 急に頭の中に幼馴染の少女が浮かぶ。彼女とも、もう二年以上も会っていない。 「そ、そんなことないって!ただ昔からで慣れてたからさ……」 しまった。ついつい声が上擦ってしまった。 「ふぅ~ん、まぁいいけどぉ~」 マリーはからかうようにニヤニヤした笑みを向けてくる。顔が赤くなっているかもしれない。 「でもね。こういった義肢は着ける人の体型は勿論、癖や歩き方まで技師が知ってないとなかなか違和感無くって訳にはいかないと思うよ。 また会えたら感謝しとかなきゃ」 「考えとく」 「そうそう。私もその内、六課に出向すると思うからその時はよろしく」 エドは振り向かずにひらひらと手を振り、そそくさとその場を去った。 異世界から飛ばされてきたことは三人にしか話していない。一人はクロノ、一人はマリー。 クロノには自分が元の世界を探していることを伝えておいた方が動きやすかったから。 マリーには機械義肢の特徴をできるだけ詳細に話す為に必要だったのだ。 そしてもう一人――。 「やあエド。久し振りだね」 次の目的地、無限書庫に着いて早々にユーノ・スクライアと鉢合わせた。もっとも彼は大抵ここにいるのだから当然といえば当然だ。 「よっ、ユーノ先生」 エドもユーノに片手を上げて答える。彼がその最後の一人である。 「一つしか違わないんだから先生は止してよ」 本局勤めになって自分の部屋よりも長くいたのがここ無限書庫だった。 管理世界のあらゆる情報、書籍が集まる場所であるここには、戻る為の方策を求めて幾度と無く足を運んだ。 尤も一武装局員ではアクセスできる情報にも限りはあったが。 当然司書長であるユーノとも親しくなり今では友人に近い。 情報収集の手伝いを頼んだ時に事情も打ち明けてある。幸い彼は快く引き受けてくれた。 「へへ、まあ先生には違いないからさ」 彼からは私的に魔法を学んだこともある。 デバイスを使用しないこと。補助や防御魔法に長けていること。 デバイスでの攻撃魔法にどうにも慣れないエドは彼のスタイルにヒントを見出した。 「僕が教えたのは、拘束や防御、転移、結界魔法だよ。エドはそれに幻術なんかも加えてそれを駆使して接近。後は――」 「ゲンコでボコる!だな」 エドが彼の言葉を繋いだ後、二人で同時に吹きだした。 それが自分の性に合っていた。もともと体術だけで多人数と渡り合うのも慣れている。 「それで?今日はどうしたんだい?」 「ああ、ちょっと調べ物。それと今度ミッドの機動六課に転属になったから、その報告に」 「機動六課!?」 ユーノが素っ頓狂な声を上げてエドに詰め寄る。あまりの勢いに少し怖気づく。 「な、何だよ……」 「いや、機動六課っていったら僕の友達が三人いてね。ちょっと驚いただけ」 「へえ、偶然だな」 「ほんと、凄い偶然だよ。六課課長の『八神はやて』と分隊長の『フェイト.T.ハラオウン』。もう一人の分隊長の『高町なのは』。この三人」 「ああ、覚えておくよ。それじゃ適当に見せてもらうぜ」 少なくとも高町なのはという名前には聞き覚えがあった。『エース・オブ・エース』だのなんだの天才としてえらく有名なんだとか。 正直どうでもいい話だった。ユーノがえらく頻繁に口にする名前であること以外は。 「エドはいつも熱心に本を読んでるけどさ。なんでそこまでするんだい?君ぐらい足繁く通う人なんていないよ」 適当にあしらわれたユーノが少しむっとしながら訊ねる。 最初は元の世界に戻る為に、やがてそれは苛立ちを紛らわせる為になった。錬金術を学ぶように魔法書を読んでいるとそれに没頭することができた。 そして今は再び振り出しに戻る。 エドは首だけをユーノに向ける。その顔は自信と活力に満ちていた。 「元の世界に帰る為に決まってんだろ」 エドは黙々と本を読み漁り、ユーノはデータの整理。その間は互いに話すこともなく、書庫には静寂が満ちていた。 数時間が経過した頃、それは突然の来客によって引き裂かれた。 「ユーノーーー!」 「アルフ!?」 この耳と尻尾を生やした少女は、フェイトの使い魔である。たまに手伝いに来てくれるのだが――。 「どうしたんだい、アルフ?」 彼女は今は目一杯に涙を溜めている。出来るだけ優しく話しかけるが、嗚咽を漏らすばかりで話にならない。 「うるせえなぁ……書庫では静かにしろよな、アルフ」 読書の邪魔をされたエドの文句に 「エドには関係ない!!」 と怒りを露わにするアルフ。 怒って少しは話せるようになったのか、息を荒くしながらもぽつりぽつりと話してくれた。 「ここ何日か本局に来てて海鳴を留守にしてたんだけどさ……」 彼女はリンディの付き添いで本局に来ていたらしい。そういえば何度か書庫にも顔を出していた。 「さっき海鳴に帰ってみたらさ……そしたらエイミィもチビ達も……それどころか街中の人がいなくなってたんだよ!!」 「ええ!?」 これには無視して読書をしていたエドも振り向いた。 「街中って……海鳴市全部がかい?」 「中心部のあたりは誰もいなかった。翠屋も見に行ったけど……滅茶苦茶に荒らされてた。街中が全部そんな感じだ……」 アルフはまた力無く肩を落とした。余程ショックだったのだろう、耳も尻尾も彼女と同じ様に沈んでいる。 「それに海鳴の中心部に繋がる道は全部が警察に封鎖されてたんだよ……」 「封鎖って……何があったんだ……?」 呟いてみても答えを返せる者はいなかった。アルフは泣きながら首を振るだけ。 エドにも一応視線を振ってみるが、彼も首を無言で振る。 「銀成市寄りの辺りを何人か変な奴等がうろついてたんだ。武器を持ってて……近寄らない方がいいと思ったから全部は聴いてないけど、 『ホムンクルス』とか言ってた……」 「ホムンクルスだと……!?」 ホムンクルスという単語に、エドの表情が険しくなる。 ホムンクルス――錬金術で造られた人造人間である。これくらいは錬金術を知らない者でさえ物語等で耳にしたことがあるだろう。 ユーノが知っているのはその程度だ。だが、彼は他に何を知っている? そういえば、彼からは錬金世界について何度も話を聞いたが、"最も知名度の高いであろうもの"に関しては彼は語らなかった気がする。 それはあらゆる病を癒す霊薬、或いは卑金属を貴金属へと変化させるもの。万物に永遠を約束するもの。 天上の石、大エリクシル、哲学者の石、第五実体、赤きティンクトゥラ。様々な名で呼ばれる幻の物体――。 錬金術とあの世界に関して意図的に伏せていたことがある。クロノにもマリーにも、ユーノにさえ深くは語らなかった。 『賢者の石』とそれを求めるホムンクルス。その正体についてである。 語れば、自らの罪も語らねばならなくなる。だからできるなら語りたくはなかった。 それは錬金術最大の禁忌――『人体錬成』。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― フランスはキュベロンの郊外の海辺にひっそりと佇む洋館。無数の墓に囲まれたそんな場所に敢えて近づく者などまずいないだろう。 それでも彼女は行かなければならなかった。決意に満ちた表情で歩を進める彼女の傍らには、未だあどけない少年と少女の姿があった。 「あんたにしちゃ早かったじゃないか……」 扉を開くとそこには黒衣の老女が三人、こちらを向いて立っている。どうやら口振りから察するに誰かと間違えたようだ。 「誰だい?あんた達は」 三人は声こそしゃがれているものの、背筋はピンと立ち異様な迫力を感じさせる。それは彼女達の銀髪、そしてガラス玉の様にこちらを映す銀の瞳のせいでもあるだろう。 「失礼しました、私はフェイト・T・ハラオウンと申します。お呼びしたのですが返事が無いので、勝手とは思いましたが入らせていただきました」 フェイトは粛々と頭を下げる。続いて傍らの二人が一歩前に出る。 「僕はエリオ・モンディアルです」 「キャロ・ル・ルシエです……」 二人とも緊張しているのか、それとも気圧されているのか随分と動きが固い。特にキャロは最後まで聞き取れないくらいだ。 「それで?こんなところまで入ってきたということは私達に用があったのだろう?」 「はい。あなた達でしたら『ゾナハ病』の治療法に関してご存知と聞いて参りました」 『Z.O.N.A.H.A.Syndrome』――他者の副交感神経系優位状態認識における生理機能影響症。 通称ゾナハ病。 激しい痛みと痙攣、呼吸困難に襲われ最終的には死に至る。発作を解消する方法は他者の副交感神経を優位状態に導くこと、 すなわち笑わせること。 全世界に広がっているこの奇病には予防法も治療法も解明されていない。 これがフェイトがこの世界に戻ってから必死に調べたゾナハ病の全てである――。 「それを誰から聞いたんだい?」 左の老婆が口を開いた。先程とは目つきが違う。彼女らは明らかに自分達を警戒している。 それほどまでにゾナハ病の治療法とは隠さねばならないものなのだろうか? 「ギル・グレアムという方をご存知ですか?」 「グレアム……」 三人は目を合わせて黙り込む。何かを示し合わせているようにも見えた。 「ということは……あんた達は管理局の魔導師だね」 沈黙の後、中央の老婆が口を開く。いきなり正体を看破され、フェイトは見るからにうろたえた。 「私達を知っているのですか……?」 老婆達はまたも顔を見合わせて、今度は一斉に笑い出した。 「ほほほ、軽く鎌をかけてみただけなのに、随分と分かり易い反応だこと」 「なっ……!」 右の老婆はからかうように赤くなったフェイトを笑う。 「お止しよマリー。何のことはない、あれがまだそこの坊やぐらいの時に少し面倒を見てやっただけさ。 確か三等海士だったっけねえ……あれは息災かい?」 「グレアム元提督は現在は引退され、故郷のイギリスに隠棲されています」 もう隠し通せないと思ったフェイトは正直に情報源を話すことにした。どうやら年季が違う。 「あのヒヨッコが提督……しかも引退とはね。私達も年を取ったもんだ。ねえタニア?」 「そうだね、ルシール。それにしても、まさかあれが私達を覚えていたとはね」 会話の内容から、老婆達は右からマリー、左がタニア、中央がルシールというらしい。 この三人は一体何歳なのだろう?既に八十に近いグレアムをまるで子供扱い。だが嘘を言っているようには見えない。 改めて大変な人達なのかもしれない。しかしそれでいいとも思った。 フェイトが必死に探し回っても、たった一言で済ませられる程ゾナハ病に関しては解っていないのだ。 普通の人間の知らないことを知っている者が普通なはずがない。 「あの……それで治療法をご存知なんでしょうか?ご存知なら教えて頂けないでしょうか?私達にはどうしても必要なんです」 おずおずとフェイトが談笑に割り込んだ。 「お願いします!」 「お願いします!」 エリオとキャロも続いて頭を下げる。 「ああ、そのことかい。それは勿論教えられないね」 三人は談笑が続いているかのようにあっさりと、しかしはっきりとフェイトの訴えを跳ねつけた。 あまりにあっさりとした答えだった為に、フェイトは暫く呆然としてしまった。 エリオとキャロも愕然として言葉を発することができないようだ。 「それは……ご存知ない、ということでしょうか?」 呆気に取られた挙句、出てきたのはそんな間抜けな言葉。 「聞いていなかったのかい?私達は教えられない、と言ったんだよ」 マリーは表情一つ変えずに、再びフェイトを突き放した。 「ゾナハ病に困っている人間は世界に五万といるんだ。あんた達だけに教えられる訳ないだろう?」 タニアも、いやルシールもだ。それが病に苦しむ者達にとって、どれほど絶望的な言葉かを知りながらも平然としている。 「……!」 湧き上がる激しい怒りを唇を噛み締めて堪えてみても、拳は小刻みに震えてしまう。それでもフェイトはそれを抑え、ゆっくりと床に膝を着いた。 「お止め!」 そのまま両手を床に着けようとしたところで、ルシールの声にフェイトの動きが止まった。 「あんたが土下座したところで何も変わらない。私達の答えは同じさ」 「そう、私達はもう何百年も変わらないのさ……。まるで人形みたいにね」 マリーとタニアの顔はまさしく人形のように見えた。 「今……ミッドチルダでは徐々にですがゾナハ病が広がっています。 今は数百人程度ですが、患者は少しずつ増えて……そして減って……それ以上に増えているんです」 震える声で呟くフェイトを三人は冷ややかに見下ろしている。だが、先程までとは微妙に表情に変化が現れた。 ほんの僅かだがそれは"驚き"だった。 「ミッドチルダにゾナハ病がね……それは詳しく聞く必要がありそうだ」 「それじゃ――!」 明るい声でエリオが期待の声を上げる。それはキャロも同じだったが、 「勘違いをするんじゃないよ。教えられない、いや教えたところでどうにもならないのは同じこと」 すかさずルシールに釘を刺され再び顔を曇らせる。 「どのみち、私達には関わりの無い別世界の話。あんた達、管理局が昔に言ったことだよ」 「それは……どういうことですか……?」 タニアの言葉にフェイトはその意味を問うが、彼女はそれきり何も答えない。 「私も気になることがある。あんたはそれなりの地位みたいだが、何故わざわざこんな辺境まで自分で調べに来たんだい?」 「それは……私もこの世界に住んでいたからです。この世界のことなら私が――」 「本当にそれだけかい?あんたの口振りじゃミッドも大変なんだろう?市民達の為だけに直々にこんなところまで?」 「それは……」 フェイトは言葉に詰まってしまった。エリオとキャロは彼女の気持ちを察してか何も言わない。 マリーとタニアも共にフェイトの答えを待っている。 「仮に……」 沈黙を破ったのはルシールだった。彼女はガラス玉のような目でフェイトを睨む。 「私達がゾナハ病の治療薬を持っているとする。でもそれは二度と作り出せぬ特効薬さ。苦しむ人々を全て救うには到底足りない」 「ルシール?」 マリーとタリアは何を言うのかとルシールを見るが、彼女はそれを片手で遮った。そして再び話し出す。 「それをあんたにやれるとしても精々が十数人分。あんたはそれを受け取ったら大人しく帰るのかい? それはたとえ管理局でも培養や解析はできないだろう。断言してもいい」 ほんの僅か数人に限定された『救い』。それに一瞬、ほんの一瞬だが心が揺らいでしまった。 ただの仮定に過ぎないのに、それを解っていてもフェイトは求めてしまった。 「ふん……」 ルシールは静かに鼻を鳴らす。 「あ……」 フェイトは心を見透かされて、俯いた。 自分の身勝手さを、己の愚かさを恥じるフェイトにだけはその意味が痛い程解った。 索敵対象は『ルシール・ベルヌイユ』。意識を手元のレーダーに集中させ、対象の顔を思い浮かべる。 抱えた自動人形〔オートマトン〕があんまり煩いので後頭部を『ヘルメスドライブ』で叩くと静かになった。 目を開いた時、もうそこは海中の研究所ではなく海の見える洋館の一室。 突然現れた自分に当然目を見張る三人の老女。そして子供連れの若い女性。 何やら取り込み中のようだが、今更帰る訳にもいくまい。 「お久し振りです、ルシール先生。そちらはタニア先生とマリー先生ですね?」 「あんたは確か……」 「はい。錬金戦団の使いで参りました、『楯山千歳』と申します。まずは突然の訪問をお許しください」 目の前に突然、人が現れた。魔力を感じないことから転移魔法の類ではない。 老婆達は驚きながらもすぐに平静を取り戻したが、フェイト達はそうもいかなかった。どうやったらこんなことが可能なのか皆目見当がつかない。 彼女は老婆達に向いて礼を取った後、フェイトを無表情で一瞥した。 「申し訳ありませんが、席を外していただけませんか?」 あからさまな拒絶に腹も立ったが、フェイト自身も今はルシールの目を見るのが怖かったし、 何よりこれからのことをエリオとキャロと相談する必要もあった。 「わかりました……」 勝手な希望的観測でこんなところまで来て、呆気なく断られて、蚊帳の外と追い出される。フェイトには今の自分がひどく滑稽に思えて仕方なかった。 「申し訳ありませんが、説明するよりもまずはこれを……」 千歳は手元に抱えた自動人形を差し出す。饅頭のような頭の自動人形、エンゼル御前はぶすっとした表情だ。 「なんだい?これは」 「通信機のようなものです。これなら盗聴も電話代も心配ありません」 「俺様を電話代わりにすんじゃねー!」 千歳の言葉に、遂にゴゼンは暴れ出した。行く前から不満気だったので心配だったのだが――。 「だいたいお前ら!俺様は桜花の武装錬金で蝶高速精密射撃が売りだってのに、いつもいつも俺様をパシリや電話にしやがって!そもそも――」 「お黙り!!!」 「ひっ!?」 じたばたもがくゴゼンを見かねて三人の老婆が怒鳴りつけた。深く皺が刻まれた顔三つ、銀色の眼六つに同時に凄まれる様は恐ろしさをも感じさせる。 「HELP~~」 その恐怖に耐えられなかったのか、ゴゼンは千歳に助けを求めながら彼曰くの"魂の汗"を股間から噴出させた。 そして"魂の汗"は千歳の手をしとどに濡らす。 「!!」 千歳は無言でレーダーの武装錬金『ヘルメスドライブ』をゴゼンへと振り下ろす。 ヘルメスドライブ本体は非常に硬質で盾や鈍器にも使用できる――ゴッ!と鈍い音がしてゴゼンはぐったりと大人しくなった。 「(ごほん!そろそろいいかね……)」 「失礼しました……」 千歳はその声に、改めてゴゼンを老婆達へと向けた。 「(お久し振りです、マリー先生、タニア先生、そしてルシール先生)」 「やっぱりあんたかい」 ゴゼンから聞こえたのは優しげな物腰の落ち着いた紳士の声。彼女らには馴染みの深い声でもあった。 「(私も行くとなれば戦士・千歳に負担が掛かってしまうので、このような御挨拶になってしまったことをお詫びします)」 「いいからさっさと本題に入りな。わざわざ連絡してきたからには何かあるんだろう?」 「(はい。それでは……)」 ルシールに急かされ、彼の声は和やかなものから緊迫したものへと変わる。 「(先日、日本の海鳴という街がホムンクルスの大群に襲撃されました)」 「おや?一年程前に主だったホムンクルスは全て月へと飛ばしたんじゃなかったのかい? そして直後の活動凍結――なかなかの英断だとあたし達も感心していたんだがね」 「(お褒めに預かり光栄です。ええ、確かにそのはずでした。 残ったホムンクルスがいたにせよ、こんなに大規模な襲撃を行えるとは考えにくかったのですが……)」 「それで?それが『しろがね』に何の関係があるんだい?」 ホムンクルスは戦団の領分である。これまでもどれだけ大事件だろうと、しろがねに連絡してくることはなかった。ということは――。 「(ですが死傷者、行方不明者は数名。そして海鳴市の一万超の市民がゾナハ病に罹患していました)」 「何だって?『真夜中のサーカス』のものなのかい?」 「それはおかしいね……。昨日、イリノイで真夜中のサーカスの興行があったばかりだ」 マリーとタニアが口々に述べる。彼はそれも予想していたのか、淡々と話を続けた。 「(解りません……。ですが、私はこう考えています。ホムンクルスと自動人形〔オートマータ〕が手を組んだのだ、と。 そして奴等は街中に突然現れた。これは自動人形でもホムンクルスでもない何者かの協力があったのではないか、と」 「話が飛躍しすぎなんじゃないかい?」 「(かもしれません。ですが、連中がゾナハ病で動けない人間を喰うでもなく、血を吸うでもないというのは……)」 「明らかにおかしいね。それで肝心の街はどうなった?」 「(ええ。それでしたら、一人の戦士が時間を稼いでくれたおかげで今朝方全てを殲滅することができました。ですが……)」 「……首謀者は取り逃がしたのかい?」 ここまでほとんど話さなかったルシールが訊ねた。話を纏めるにホムンクルスは銀の煙が街に回るまで逃がさない役割を果たしていたのだろう。 抵抗する人間だけを攻撃する命令を受けて。 「(はい。人間型ホムンクルスは一体も確認できず、他は捨て駒でしょう。自動人形も一体のみでした)」 「自動人形とホムンクルス。そして第三の存在、厄介だね……」 「(ええ、我々でも調査を続けますが、そちらも警戒をお願いしたく……。いずれ共闘をお願いするかもしれません)」 「その時はまた、男爵の雄姿が拝めるかい?」 彼はそこで初めて苦笑した。戦団全てを取り纏める立場となれば疲労も緊張も相当だろう。 「(そうならないことを願っています。それでは、御三方とも十分にお気をつけ下さい)」 「あんたもね。大戦士長『坂口照星』」 そこで通信は終わった。ルシールはゴゼンを千歳へと返す。 「それでは失礼致します」 彼女は短くそう言うと、また宙に消えてしまった。 「ミッドチルダに日本。これまで確認されなかった場所にゾナハ病が出たのもホムンクルスや他の勢力と組んだとなれば説明もつく」 「そして次元を移動する能力を持っている奴がいるのも確実だ」 「これまで『フランシーヌ』を笑わせることしか眼中に無かった連中が、しろがねや戦団を滅ぼすことに目を向け出したら厄介だね。 ここを移動することも考えないと……」 マリーがそう言い終えると同時に、彼女の背後の壁に無数のヒビが走る。ドォンと衝撃が部屋を揺らす度にそれは伸び――。 何故真実を語れなかったのか。多くの市民のためという気持ちに嘘はない。でもそれだけならここまで来ただろうか? 真実を話せばきっと教えてはくれないだろう。罪もない市民のためだと言えば教えてくれるだろう――そんな考えがあったのかもしれない。 つくづく自分の浅はかさに腹が立つ。 部屋から追い出され、ホールの階段で塞ぎこむフェイトに、エリオとキャロはどう声を掛けたものか迷っていた。 「あの……フェイトさん。あんな訳の解らない変な仮定なんか気にする必要ないです」 「私もそう思います。たとえ十数人でも救いたいと思うのは当然ですもん。それに薬さえ手に入れば何か解るかもしれないじゃないですか」 「うん……。ありがとう、エリオ、キャロ。でも、ミッドチルダに帰ってもいいんだよ?これは私の我儘〔わがまま〕なんだから」 無垢な言葉にまた胸が痛む。それでもフェイトは二人に笑って見せた。 「何言ってるんですか!僕達でフェイトさんを助けるって二人で決めたんです!」 「そうです!ここで帰ったら、なのはさんにも隊長にも申し訳が立ちません!」 そうだ、彼女達は必ず何か知っている。それを確かめなければ二人に背いた意味が無い。 もう一度頼もうと立ち上がった瞬間、屋敷中が揺れたかに思える程の轟音が響いた。 「何!?」 音の源はすぐに解った。自分達がさっきまでいた部屋だ。 階段を駆け上がる間にも断続した衝撃が鳴る。そして老婆の誰かの悲鳴が聞こえた。 「エリオ、キャロ!」「はい!!」 フェイトが言うまでもなく二人ともBJを装着する。 二階へと上がり、扉を開くと真っ先に目に入ったのは壁の大穴から見える海、そしてフランス語で綴られた真赤な血文字――。 「ギイへ。 一人だけババアを預かった。お前をカルナックでぶっ殺してやる。 フラーヴィオより」 壁には両断された巨大な人形が杭で打ち付けられ、糸の先にはマリーが倒れている。 「大丈夫ですか!?」 フェイトは抱き起こして初めて気付く。 脇から心臓に掛けての肉がごっそり抉られていた。それなのに血は一滴たりとも流れていない。 「これは……!?」 「フェイトさん、ヒーリングを!」 キャロが進んで治癒魔法をかけるが、全く効果が現れない。確かに重傷を治す治癒魔法などないのだが、これはそれとも違う。 抉られた肉は完全に乾いて、まるでミイラだ。この身体はまるで――とうの昔に死んでいるかのよう。 「遅くなった――」 フェイトの背後でゆっくりと扉が開かれた。現れたのは二人の男。 一人は銀髪に銀の瞳、人形のような美しさを感じさせる優男。 もう一人は黒髪の大男。太く逞しい剥き出しの右腕は野生的で、相方とはまるで対照的だ。 二人とも、この光景に驚いていることだけは確実だった。 「あなた達は……?」 フェイトの問いに二人は答えない。大男は急ぎ駆け寄り、優男はゆっくりと歩み寄る。 「大丈夫か!?ばあちゃん!」 「マリー……ルシールとタリアは?」 「ギイ……ですか。タニアは……フラーヴィオという自動人形に捕らえられ……あなたをおびき寄せる為にカルナックへ……ルシールは追っています」 ギイ――壁の血文字の名前。もしや老婆達は彼を待っていたのか。 「あの自動人形に血をほとんど吸い取られてしまった……。 さすがの『生命の水〔アクア・ウイタエ〕』も……もう……私を、この呪わしいしろがねの役に縛りつけては……おけないでしょう」 「遂に……さよならだな」 「ええ……ようやくさよならね……ギイ」 まるで死を待ち侘びていたかのように老婆は微笑んだ。 「諦めないで下さい!まだ……」 「そうだぜ!ばあちゃん、今医者に……」 もう助かりそうにないことはフェイトから見ても明らかだった。キャロが全力でヒーリングを掛けていても乾いた身体は血を流すことすらしない。 「はぁ……はぁ……」 無理にでも魔力を搾り出そうとするキャロは荒い息を吐いて、。老婆は彼女の腕を掴んでそっと下ろし、囁く。 「せっかく……死ねるのです。邪魔をしないでおくれ……」 「そんな……」 キャロの魔法が止まるとマリーは涙を流した。それは歓喜の涙――。 「ああ、長かった……二百年……二百年もの間……死ねなかったのだもの……」 フェイトもエリオも、キャロも、もう何も言えない。笑顔を浮かべるマリーの顔が、腕が硬化していく。 「いよいよ……さよならです、ギイ……。告白するけれど……私はずっと後悔してきたのですよ……」 ギイは静かにそれを見送り、大男はそれを信じられない顔で見ている。やがてマリーの全てがフェイトの腕の中で砕けた。 「ゾナハ病にかかった時、生命の水〔アクア・ウイタエ〕など、飲まなければよかったって……」 ボキンと彼女の身体がボロボロに砕け、首が床を転がる。その音さえも金属のように乾いて響く。 木片か石の欠片のような、完全に水分を失くした肉が散らばった。 「ああ……」 キャロとエリオはショックで声も出せないようだ。フェイトも状況の認識が全く追いつかない。それほどにその光景は狂っている。 「羨ましいよ……先生……」 ギイはたった一言彼女を祝福し、コートをはためかせ立ち上がる。 「君達はどうする?去るならこの事は忘れたほうがいい。行くなら好きにしたまえ」 ――手に持った大きな鞄を開き、指輪に十指を通す。 「私は……」 ――糸を引くとキリキリ歯車が回りだす。 自動人形。それがミッドチルダにゾナハ病をばら撒いたのなら、それがタニアを攫ったのなら――やはり放ってはおけない。 しろがね、生命の水、解らないことが多過ぎる。その答えがカルナックにあるだろうか? 「やめときな」 逡巡の末、「行く」と言いかけたフェイトを大男が止めた。彼の視線は背後で呆然とするエリオとキャロに向けられている。 「あんたが誰かは知らねえ。ここでばあちゃんを助けようとしてたんなら、きっと無関係じゃないんだろう。 でもよ……あんたはそのガキ達をこんな危険な……化け物同士の戦いに連れて行くのかよ?」 そうだ、自分が行くということはエリオとキャロも巻き込んでしまうということになる。やはり二人だけでも帰したほうが――。 ――鞄の中から、ゆっくりと彼女は立ち上がる。両手を身体の前で握り、純白のドレスを白いグローブを着けた細い指で摘まんで。 「行きます……!」 「私達にだって行かなきゃならない理由があります。絶対にゾナハ病の治療法を見つけて帰るって約束したんです!」 フェイトに代わり答えたのは、自失状態だったエリオとキャロの二人。 何も映してなかった瞳は、今は涙で溢れていても強い意志でフェイトを見つめている。 「お願いします!絶対に足手纏いにはなりませんから……僕達も行かせて下さい!」 「お願いします!」 真っ直ぐな目を見てフェイトは思う。色々と考え過ぎて自分は最も大切なことを忘れていたようだ。 皆を救いたいのは二人も同じ。その為にここまで来たのだから。 できれば危険には近寄って欲しくはない。でも、それも彼らが選んだ道。 それでも生き残れるよう、自分はこれまで鍛えてきたし、二人も厳しい訓練に耐えてきた。 自分がいる限り、絶対に死なせはしない。 「足手纏いなんて言わないで……。私には二人が必要なんだから」 そっと二人の首に腕を回して抱きしめた。いつだって救っていたようで、救われていたのは自分だった。 ――抱き合う三人の背後で、彼女はその背中に大きな翼を広げる。翼に隠された腕が一本、露出した。 「へへっ……」 大男が何故か笑いながら鼻の下を擦る。きっと顔をくしゃくしゃにして"泣きながら笑っている"可笑しな三人を見て笑っているに違いない。 「お嬢さん……君が誰かは知らないし、詳しく聞いている時間もない。僕からはしろがねについては話せない。 ルシールとタリアを助けて、彼女から聞きたまえ」 「はい……」 「来い、ナルミ。更なる疑問はカルナックで解けるだろう」 ――ギイが彼女を壁の穴へと向け、ナルミを促す。 「ああ……。お前ら、名前を教えてくれよ」 「私はフェイト。フェイト・T・ハラオウンです」 「僕はエリオ・モンディアル」 「キャロ・ル・ルシエです」 ナルミはフェイト達を見て一度、穏やかに笑った。 「ギイ・クリストフ・レッシュ」 「そんで俺が鳴海、加藤鳴海だ」 自己紹介を済ませても和やかな雰囲気になるはずもない。これからカルナックで待っているのは、もっと激しい戦い。 そして厳しい真実かもしれないのだ。 ギイの懸糸傀儡〔マリオネット〕、『オリンピア』は鳴海を抱え飛び立つ。 「お願い、フリード」 次に白竜フリードに跨ったキャロとエリオが続く。 フェイトは最後に一度、マリーだったものを振り返る。彼女の首は笑みを湛えたまま、静かに海を眺めていた。 彼女は何故、あんなに喜ぶことができたのだろう?しろがね――少なくとも今のフェイトにはそれを理解することはできそうにない。 見開かれたマリーの瞼を閉じることはせず、フェイトもギイの後を追って飛び立った。 偶然に思われたフェイトと鳴海、ギイの出会い。 誰もがからくりの歯車の一部であり、サーカスの役者であることなどフェイトには知る由も無かった。 ましてやそれがフェイトのみでなく、高町なのはを含む全ての人もそうであることなど――。 次回予告 ミッドチルダを貫く光は始まりの終わりを告げる。 第4話 『光』 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/13.html
12月2日 なのは、リンカーコアの蒐集を続けるヴィータの襲撃を受け、戦闘に。 なのはが初めて体験する、カートリッジシステムを使用して魔力を瞬間的に強化する「ベルカ式」魔法の一撃に なのはは負傷。レイジングハートも破損するが、そこに救出に現れたのはフェイトとユーノだった(A sDVD/第1話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 戦闘。 フェイトとヴィータの戦いにアルフ、シグナム、ザフィーラが加わる。劣勢な戦いになのはは傷ついた体を押して 結界破壊のスターライトブレイカーを放とうとするも、シャマルの手によってリンカーコアを奪われてしまう。 そしてクロノは映像によって「闇の書」の存在を確認する。(A sDVD/第2話) なのはとフェイト、ギル・グレアム提督と出会う。 フェイトの保護観察官にあたるグレアムは「自分を信頼してくれている人を裏切らないこと」条件に、 フェイトの行動を制限しないことを約束した。(A sDVD/第3話) リンディ、クロノたちアースラのスタッフが、「闇の書」の捜索、魔導師の襲撃事件の担当になる。 アースラは修復中のため、臨時作戦本部をなのは宅の近所に決定。アリサとすずかも引っ越し先を訪れ、 フェイトと初対面。一方、ヴォルケンリッターとの対戦で破損したレイジングハートとバルディッシュは、 自らの強化「ベルカ式カートリッジシステムの搭載」を願い出る。(A sDVD/第3話) ある日の出来事。はやて・守護騎士一同と、なのは・フェイトらが、偶然同じスーパー銭湯へ。 すずかとはやて、アリサとヴィータなど、偶然の出会いはあったものの、なのは・フェイトと ヴォルケンリッターの遭遇はなし。(A sサウンドステージ01/第3.5話) フェイト、聖祥大付属小学校へ編入。なのはと同じクラスに。(A sDVD/第4話) レイジングハートとバルディッシュの修理が完了。 転入1週間後のフェイト。徐々に学校に馴染み、友人たちとの日々を過ごす。(A sTHE COMICS/ReporIV) クロノはユーノに無限書庫での「闇の書」についての調査を頼む。 クロノは自分の師匠であるリーゼ姉妹を訪ね、ユーノの調査への協力を依頼する。(A sDVD/第6話) はやての夢の中で管制人格と出会う。 闇の書の歴史と守護騎士たちの過去を知って悲しむが、目覚めた時にはその記憶を一時的に無くしていた。 (A sサウンドステージ02/第6.5話) 再び現れた仮面の戦士 管理局に捕捉されたシグナム・ヴィータ・ザフィーラ。仮面の戦士は、なのはの攻撃からヴィータを救い、 その数分後に別の場所でシグナムと戦闘を繰り広げていたフェイトの背後からリンカーコアを掴みだした。 (A sDVD/第7話) 捜査司令部がアースラに戻される。 「闇の書」対策の最後の切り札となる反応砲「アルカンシェル」を搭載したアースラ。 フェイトのリンカーコアが奪われたことや、駐屯所の管制システムがハッキングされたこともあり、 司令部はアースラへと復帰。(A sDVD/第8話) ユーノは「闇の書」の本来の名前が「夜天の書」ということと、本来の目的と、その改変の変遷を報告する。 無限書庫での調査を続けるユーノ。引き続き「闇の書」の停止や封印方法について調べを続ける。(A sDVD/第8話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12月13日 はやてのお見舞いに行ったなのはとフェイト。「闇の書」の主・はやてとの初めての出会い。 守護騎士たちじゃ見舞いの際を避けることで出会わないようにつとめる。 そして「闇の書」がはやてを侵食する速度が上がってきていることも判明する。(A sDVD/第8話) 12月22日 「闇の書」の収集が残り60ページまで進む。 守護騎士たちは入院を続けるはやての元に戻らず、ひたすらに収集を続けていた。(A sDVD/第9話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12月24日 蒐集から戻った守護騎士たちと、はやての見舞いに訪れたなのはとフェイトが病院で鉢合せをする。 シグナムたちからはやてが闇の書の主であることを聞かされ、ユーノのレポートで「闇の書」の過去を知っていた なのは達とフェイトは真実を伝えようとするが、騎士達はそれを聞き入れず、戦いとなる。戦いに最中、乱入した 仮面の戦士によって守護騎士たちのリンカーコアが強奪。それによって完成した「闇の書」と守護騎士達が消滅 させられたことに衝撃を受けたはやてによって封印が解かれ、「闇の書の意志」が目覚めてしまう。(A sDVD/第9話) 事件の背後にはグレアムの姿が。 2人の仮面の戦士はクロノによって、リーゼ姉妹であることが判明。仮面の戦士の動きは「闇の書」の完全なる封印を 狙ったグレアムによるものだった。(A sDVD/第10話) 「闇の書」内部に吸収されるフェイト 激しい攻防を繰り広げる「闇の書の意志」となのは・フェイト。懸命に事態収束にあたるが、フェイトは 「闇の書」内部に吸収される。フェイトは「闇の書」の中で自分の過去と記憶に向き合い、同時にはやても 「闇の書の意志」と対話する。フェイトは過去の記憶に別れを告げ、はやても「闇の書」の防御プログラムを切り離し、 管理者権限を得る。(A sDVD/第11話) 「闇の書」の防衛プログラム「闇の書の闇」を破壊、「闇の書」事件は解決する。 「闇の書の意志」に「祝福の風・リインフォース」の名を贈ったはやて。守護騎士プログラムも復旧し、騎士達は再生する。 そして、暴走を始めた「闇の書の闇」のコアを宇宙空間の軌道上へ転送、アルカンシェルにより、完全消滅させる。 (A sDVD/第12話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― リインフォースとの別れ。 はやてへの侵食は止まったものの、再び狂った防衛プログラムを生成してしまう、というリインフォースは 自ら消滅することを選び、騎士たちの見守る中、愛する主であるはやての前で「世界で一番幸福な魔導書」 としてその長い生涯を閉じる。(A sDVD/第13話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 事件その後 グレアムは希望辞職の形となり、故郷へ帰ることに。フェイトは「執務官になりたい」という夢を語り、 なのはも魔法と向き合い、管理局の仕事を継続するつもりであることを語る。ユーノは無限書庫の司書へ。 はやても嘱託魔導師として、守護騎士たちも管理局任務への従事という形で保護観察を受けることに。(A sDVD/第13話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1月4日 任務を終え、平和な時間を過ごすなのはとフェイト。はやてはそんな2人にリインフォースへの思いを馳せる。 (A sTHE COMICS/ReportIV) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― なのは・フェイト・はやて、時空管理局に仮配属。 資格取得、試験や研修などで忙しい日々を過ごす。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4月 4年生になったなのは・フェイト・はやて・アリサ・すずか、5人で一緒のクラスに。 足も徐々に良くなり復学を果たすはやて。そして土曜日、リンディ運営のお花見が開催される。その席でフェイトは、 リンディからの養子縁組の申し出の答を出す。はやてはリインフォースの名を継ぐ自身のデバイス作成プランを考え、 融合型デバイスの作成を決める。(A sサウンドステージ03/第14話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5月 なのは、フェイト、はやては時空管理局に正式に入局。 なのはは武装隊の士官候補生、フェイトは執務官候補生としてアースラに勤務。はやては特別捜査官候補生に。 シグナムたちはは武装隊の特別捜査官補佐になっていた。(A sTHE COMICS/TheEpilogue of ACES) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6月~12月 はやて、特別捜査官として正式採用。 ロストロギア関連の事件解決に才覚を発揮。なのはとフェイトもそれぞれの部署で士官として正式採用され、 キャリアを重ねる。リンディは艦長職を退き、本局勤務へ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後、新春 はやての手によって、リンカーコアを分け与えるという形でリインフォースIIが誕生。 八神家の末っ子として日々を過ごし始める。同時期、聖王教会の関連任務で招かれた先で、はやては カリム・ヴェロッサの義姉弟と知り合い、古代ベルカ式継承者同士として友人に。以降、互いに気安い仲となる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後、冬 教導隊入りを目指して日々を過ごしていたなのは、武装隊の演習でヴィータや隊員たちとともに異世界に。 その際、「事故」が発生。なのは、負傷する。(StrikerS THE COMICS/Episode2「A s to StrikerS」Phase2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後冬-3年後、夏 フェイト、半年に一度の執務官試験に2連続で落第。 (StrikerS THE COMICS/Episode3「A s to StrikerS」Phase3) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3年後、夏 なのは現場復帰。リハビリ生活を続けながら、再び夢を目指し始める。 秋口には実質上の完全復帰、魔導師ランク「S」を取得。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3年後、冬 フェイト、執務官試験合格。(SoundStageM TheStrikerS) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4年後、春 なのは念願だった教導隊入りを果たす。(SoundStageM TheStrikerS) フェイト、魔導師ランクS取得。同時期に携わった事件で、研究施設から1人の少年「エリオ・モンディアル(当時4歳)」 を保護。数か月の仮保護期間を置いた後、正式に保護責任者となる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4年後、秋 はやて、上級キャリア試験受験、合格。指揮官としての道を進み始める。 リインフォースII、局員採用試験合格。それを受けて、はやてはそれまで彼女と共用で使用していた魔導書型ストレージ 「蒼天の書」を正式にリイン専用とし、自身用のストレージを作成。その名を、かつて自身の運命を開いた魔導書と 同じである「夜天の書」とし、「夜天の主」の名とともにその使用を開始する。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6年後=新暦71年、春 なのは・フェイト・はやて、私立聖祥大付属中学校の3年生に。 「ちょっとした同好会的任務」へ向かう。(A sDVD/第13話) その任務で出会ったロストロギア「レリック」が、後の一同の運命を大きく変えることになることを、一同はまだ知らなかった。 (StrikerS THE COMICS/Episode1~2「A s to StrikerS」Phase1~2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― その後2週間後 休暇を利用して、はやての研修・演習先であるミッドチルダ北部へと遊びに行ったなのは・フェイト。 同日、ミッドチルダで暮らす少女、スバル・ナカジマとギンガ・ナカジマは、父・ゲンヤ・ナカジマが部隊長を務める 部隊に遊びに来る予定だったが、突然の空港火災が発生。スバルとギンガの2人はそれに巻き込まれる。 臨時協力の魔導師として、現場の救助に向かったなのはとフェイト。スバルはそこでなのはに救出され、 以降、自らの道を進み始める。(StrikerS/第1話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦71年 はやての「自分の部隊を持ちたい」という夢が、カリムの協力によって早い時期での実現の可能性を帯びてくる。 管理局地上本部が持て余すロストロギア「レリック」の保守管理・対策部隊としての構想で部隊の準備が進み始め、 はやてに協力するフェイトは部隊の人材探しに取りかかる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年2月 フェイト、ある事情から竜召喚師の少女キャロと出会い、行き場のなかった彼女を保護。 保護責任者としてキャロの立場を確保する。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年5月 フェイトの希望指名によって、本局勤務の通信士兼デバイスマイスター、シャリオ・ルフィーニが 執務官補佐となり、フェイトと行動を共にしはじめる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年6月~ スバル・ナカジマ12歳。ミッドチルダの管理局陸士訓練校に入行。当時13歳のティアナ・ランスターと出会い、 「自作デバイス持ち同士」ということから、ルームメイト兼コンビに。 以降、魔導師としての道を進み始める。未熟なスバルに最初は苛立ってばかりのティアナだったが、 スバルが秘めた思いやその前向きさに少しづつ共感を覚えてゆく。なお、ティアナはこの時期スバルの紹介で ギンガに出会っている。(StrikerS THE COMICS/Episode4~5「Starting Stars」Phase1~2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦73年5月 スバル・ティアナ、訓練校卒業。陸士386部隊・災害担当突入隊へと配属される。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦75年3月 機動六課、4月からの正式稼働を前に準備が進んでゆく。隊舎セッティング開始。 エリオ・モンディアル、管理局員としての研修課程を修了。管理局員となり、機動6課への配属が決定。 キャロ・ル・ルシエ、辺境自然保護隊から機動六課への配属が決定。アルトやヴァイスら、 一同が機動六課へと集結してゆく。(StrikerS THE COMICS/Episode7「Started Riot 6」) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦75年4月 スバル・ティアナ、魔導師ランク試験「陸戦Bランク」を受験。 そして、なのはとスバルは再開する…。(StrikerS/第1話)