約 4,739,420 件
https://w.atwiki.jp/tcgkira/pages/41.html
たいよう本店 URL - 住所 愛知県幡豆郡一色町前野川原19-1 電話番号 0563-73-5325 営業時間 取り扱いカードゲーム遊戯王 備考 特になし この店舗の様子などに関するコメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 最終更新日2007-02-1712 11 19 trackback
https://w.atwiki.jp/rozencos/pages/34.html
943 : 赤ひげ(四国) :2007/03/20(火) 00 24 03.05 (p)ID F2uMCN2lO(4) 「おはよう委員長」「いいんちょ、おはよー!」 紅「おはよう」 クラスのみんなと挨拶を交わし、今日も私の一日が始まる。 いつもの朝、いつもの面子。 紅「おはよう女さん」 女「あ、委員長おはよう」 紅「…おはよう男くん」 男「おはよう、蒼星石のマスターになれたらいいのに」 そしていつもの距離。委員長と生徒、未だ変わらないこの距離。 私と男くんは所謂幼なじみだ。 小さい頃は姉弟と間違えられるほど仲がよく、いつも一緒だった。 思春期を迎えてから少し距離が開くようになってはいたが、 それでも私達の関係は仲の良い幼なじみだった。 あの日までは 949 : 赤ひげ(四国) :2007/03/20(火) 01 01 15.67 (p)ID F2uMCN2lO(4) 中学生活もあと半年を残すのみとなり、 皆が最後の文化祭に向け盛り上がりをみせていた頃。 男が学校に来なくなった。 紅「また風邪でもひいたのかしら…」 男はあまり体が強い方ではなく風邪をよくひいていた。 なのでよくあることであったし、文化祭と体育祭をひかえたこの時期 委員長の私は大量の仕事に追われていた 「お見舞いに行きたいけれど…しょうがないわね…」 休みも四日目に突入し、さすがに本気で心配になり 今日はお見舞いに行こうかと思っていた時 男が登校してきた 「お、男じゃん」「おはよー、ひさしぶり」「この忙しい時にコノヤロー」 クラスメイトが声をかけていく。だが 男「………」 紅「……?」 クラスメイトの声に反応することなく、男はユラユラと自分の席についた 「おいおい無視すんなよ」 クラスメイトの一人がつっかかる 男「……おはよう……」 男くんは彼に目を合わせようともせず、じっと虚空を見つめながら呟いた 「いやいやおまえなー、その態度はないだろ?」 紅「待って、きっとまだ病み上がりで元気が無いのだわ 許してあげて頂戴」 クラスメイトは渋々席へと戻っていった そして私は、そう言いながら男の様子が明らかにおかしいことに気付き 言い知れぬ不安に襲われていた 959 : 赤ひげ(四国) :2007/03/20(火) 01 32 16.81 (p)ID F2uMCN2lO(4) 次の日もその次の日も、やはり男の様子に変わりはなく、 私は男に休みの間に何かあったのか尋ねたが男は 男「…別に…」 と曖昧な返事を返すのみだった。 「おい男、お前こないだからどういうつもりだよ」 男の休み明けにつっかかっていたクラスメイトが男に詰め寄る 「人が話し掛けてんのに目も合わせないしロクに返事もしない、 文化祭も近いってのにクラスの雰囲気悪くなるだろ」 男「………」 「だから無視すんなっての!」 ついに大声で怒鳴りだした彼に視線が集まり、場の空気が強張る 紅「ちょっ…」 あわてて彼を止めようとしたその時 男「…蒼星石のマスターになれたらいいのに」 さらに静まり返る教室 「……はぁ?」 男「蒼星石のマスターになれたらいいのに」 もう一度そう呟くと、男はフラフラとどこかへ行ってしまった 「蒼星石…?何言ってんだあいつ…キメェ…」 その日から、男は事あるごとにそのセリフを口にするようになった 蒼星石。ローゼンメイデンというアニメに出てくるドール そのマスターになりたいと譫言のように呟く男は皆に気味悪がられるようになった もともと虐められっ子のいなかったこのクラス 男がそうなってしまうのには時間はかからなかった 985 : 赤ひげ(四国) :2007/03/20(火) 02 18 07.69 (p)ID F2uMCN2lO(4) 虐めの内容は単純だ。ただ男の存在を徹底的に無視する。 体育祭でも文化祭でも、男はいないものとして扱われた だが男はむしろそれを歓迎しているような、そんな風にも見えた だから私は、毎日男に話し掛けた。だが 紅「おはよう男」 男「蒼星石のマスターになれたらいいのに」紅「…今日は英語の小テストがあるわよ ちゃんと勉強してきたかしら?」 男「蒼星石のマスターになれたらいいのに」紅「………」 毎日毎日変わらない反応。何を聞いても答えない。 返ってくるのは叶うはずのない願望、妄想。 男の目はまるで私を見ておらず、私はだんだんと疲れていき それに従い私達の距離も少しずつ離れていった そして時は流れ卒業の日 紅「…男、とうとう卒業ね」 男「蒼星石のマスターになれたらいいのに」 紅「男は確か〇〇高校だったわね、私と一緒だわ」 男「!………」 紅「まあその、だからこれからも…」 男「いい加減」 紅「え?」 男「ウザいよ」 紅「え…男…?」 男「もうすり寄ってこないでくれよ」 久しぶりの男の反応、嬉しいはずのそれは、どこまでも私を悲しませた 21 : 赤ひげ(四国):2007/03/20(火) 03 03 45.89 ID F2uMCN2lO あの日から私は男と一定の距離をおいている 同じ学校の委員長と生徒、ただの知り合い以上ではない距離 これ以上、自分が傷つかないように けれど、女は男のそばを離れようとはしない それどころか、蒼星石のコスプレまでして彼に更に近付こうとする どうして?そこまでして振り向いて貰えなくて どうしてまだ諦めないの?どうして… 紅「どうして…」 女「え?」 気がつくと私は女に問いかけていた 紅「…そこまでしても振り向いて貰えてないのに いえ、振り向いて貰えたとしてもそれはあなたに対してではないわ 男くんは蒼星石としてあなたを見る。あなた自身をみてはくれないわ…」 女「あは、そうかもね…」 紅「だったら何故」 女「それでも…男くんたまにとても寂しそうだから… 私が蒼星石になることでそれが解消されるなら、 それはとても嬉しいことだから、私は男くんにご奉仕したいの」 女「それに、いつかは私自身もみてくれるかもしれないじゃない? これからだよ、ゆっくりでも頑張ってみる 会話もちょっとだけど、してくれるようになったしね!」 女はそう言うと、とても嬉しそうに、にっこりと笑った 33 : 赤ひげ(四国):2007/03/20(火) 03 44 43.43 ID F2uMCN2lO 紅「…あの子は強いわね…」 自宅のベッドのなかで、私は呟いた 紅「寂しそうだから…か」 確かに男は時々寂しそうな、悲しそうな表情を見せる時がある 男が変わってしまったあの時に、何かがあったのは間違いない 男は話してくれなかったし、それを知るのは何故か怖かった。だけど 紅「やっぱり好き…なのかしら」 男の力になりたい。また拒絶されて傷つくかもしれないけれど 紅「女には、負けてられないわ」 紅「おはよう男」 男「おは…!紅…?」 紅「何を驚いているの?」 男「何って…それ…」 紅「蒼星石や翠星石がいるのだから、別に珍しいものでもないわ」 男「…」 紅「何をボーっとしているの?早く紅茶をいれてきて頂戴」 男「…」 男「…紅茶いれる道具なんかないよ」 紅「だったら缶でもいいわ。買ってきて頂戴」 男「…」 …やっぱりこれ(真紅コス)はやりすぎだったかしら… 男「…はいはい」 男はそういうと困ったように、少しだけ、笑った 終わり 32 : 養蜂業(関西地方):2007/03/20(火) 03 34 15.44 ID JYTPtZSC0 後日・・・私は聞かされた 彼があの日・・・病気のことを言われたことを そして、私たちに悲しい思いをさせないためにあんな態度を取っていたことを その彼の優しさを・・・つらさを・・・寂しさを・・・ 全てが私を・・・ 私はいつの間にか泣いていた 紅「馬鹿ね・・・ こんなこと聞いたら・・・結局、悲しくなっちゃうじゃない それに・・・あなたが一番ツラい癖に・・・逃げて、逃げて、逃げて でも、そのあなたの優しさを・・・私は・・・ ・・・愛してる・・・」 女「お、おはよー」 男「あぁ、蒼星石のマスターになれたらいいのに・・・」 女「ぼ、ボクがいるよ、マスター」 男「・・・蒼星石のマスターになれたらいいのに」 紅「あら、あなた達おはよう、毎朝同じ事をして飽きないわね」 私も・・・素直でいられたら・・・ いいえ、もう遅いの 私は・・・彼を・・・ だから私は同じ学校の委員長と生徒、ただの知り合い以上ではない距離 それであり続ける これ以上、自分が傷つかないように・・・彼が傷つかないように・・・
https://w.atwiki.jp/omaeumasoudana/pages/16.html
映画/おまえうまそうだな/漫画家の所十三が宮西達也の映画『おまえうまそうだな』の盗作疑惑を指摘
https://w.atwiki.jp/ocg-o-card/pages/10362.html
削除
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/612.html
てのひらのたいよう(前編) ◆tu4bghlMIw 「…………と、この辺りか」 「螺旋力とは――全ての根源たる始祖の力。スカー氏はそう判断された訳ですか」 「俺達の力は幾つもの多元的な流れを汲んだ全くの別物……唯一共通する項目は"ヒト"であるということ。 アルフォンス・エルリックのように魂だけの存在も参加はしていたがな」 そこまで一息で言い切ると、スカーは小さくため息を付いた。 明智は目の前に居る褐色の肌の男の予想以上に聡明な話し振りに思わず舌を巻く。 「ショッピングモールのコンテナ、というのも有力な情報ですね」 「目星は、付いているのか」 低い声。刑務所へと帰還し、会議室に帰って来た明智とスカーは互いの情報を交換していた。 ねねねは先程まで書いていた原稿の刷り上がりを確認するために席を外している。 しかし、これは中々。名簿によって彼の人柄はそれなりには把握していたつもりだったが、予想以上だ。 彼は単純に強大な力を振り回すだけの狂戦士とは明らかに一線を画す存在だ。 つまり、全てを破壊するその右腕による圧倒的な破壊力を根幹に置いた戦闘スタイルはまやかしに過ぎない。 彼は、賢い。そして自分達のグループの中に欠けていた要素をいくつも持ち合わせている。 それは純粋な武力であり、自然や天候などに関するアニミズム的な視点であり、冷酷さでもあった。 「一応は。螺旋力に関係する道具――おそらく、小早川さんの持つ『コアドリル』というアクセサリーが最もその条件に適しているかと」 「……出自は?」 「出自、ですか? おそらく、螺旋王の世界の物だと我々は認識しています」 「上等だな。その娘は今何処にいる?」 「彼女には高嶺君の元に行って貰えるようお願いしました。つまり地下にある巨大施設、そこに彼女はいます」 明智はグルリと人を詰め込めば三桁に及ぶ人員を収容可能であろう室内を見渡した。 すると部屋の隅に一箇所だけ椅子が引かれたままになっている長机があるのを発見した。 机の上にはカップに注がれたスープがほとんど手付かずのまま冷たくなっており、地味な柄の毛布が乱雑に放り出されていた。 「そして、もう一つ。"紛い物の空"ですか。大変興味深い仮説ですね」 「ああ……それが実際に上空へと至った俺が持った疑問だ。明智よ、貴様はどう考える?」 その言葉に明智が小さく反応する。 表情には一切の変化はなく、僅かながら身を捩らせた程度のリアクションだ。 当然、ある程度の考察には行き着いている。 「ループする大地。そして同時に現れる事のない月と太陽――これは、完全に盲点でしたね。 我々のような機械に囲まれた生活を送っている人間は、自然の機微を読み取る力が退化してしまっている」 「超小規模な天球であると考えるのも難しい。厳密には昼でも月は空に浮かんでいる。ただ明るくて見え難いだけなのだからな」 「首輪を外す、以外のゲームクリアの可能性がある、と」 「空が落ちればこの空間がどうなってしまうのか、保証はない……がな」 スカーのもたらしたもう一つの情報。それはこの会場の在り方に疑問を呈するものだった。 確かに、明智達もこの地が螺旋王に創造された箱庭であるとは想定していた。 ではその空間はどのような形をしているのか? そしてどのような力を持っているのか? 破壊は可能なのか? 中の事物はどのように用意されたのか? そこに至る確証は未だ、ない。 「つまり、この空はプラネタリウムのようなもの。仮初の星の海であるとスカー氏は考える訳ですね。ですが、」 「ああ、真っ当な方法で"天"を突き破る、というのは不可能だろう。 紛い物とはいえ、空には確実に在るのだから――太陽に順ずるエネルギー体が」 「無闇に空へと飛び出しても蝋の翼を焼かれたイカロスが如く大地に堕ちていくのが関の山、と?」 確かに、この大地は偽者なのかもしれない。 しかし天から八十二名の参加者を見守り続けるその光球が、明らかに莫大な熱量を持っている事は明らかなのだ。 ここがある種の温室である、と仮定すれば自由に温度を設定する事は可能なのかもしれない。 だが空調設備はどうなっている? 冷却は? 加熱は? そして、頬に感じたあの光の暖かさをどうやって説明するのだ? そう。空に浮かぶ星の輝きが紛い物であるとしても、膨大な力を持った光の塊が日周を擬態した運動を行っているのは明確すぎる事実。 「ねねね先生、そしてスカー氏。螺旋力に目覚めた人間は確かに存在するのですが……現時点で首輪を外すのは多大なリスクが伴います」 「別のルートを模索するべきか。天を突き破り――太陽を堕とす手段を」 「ですね。名簿から得られる情報では……考えられる要素は約五つ、と言った所ですか」 「……言ってみろ」 明智は二つの詳細名簿に記されていた情報を自らの脳内から引っ張り出す。 時間があった時に参加者の情報は整理し、それらを幾つかの項目に基づいて分類しておいたのだ。 しっかりと頭の中にその分析は記憶されている。 「一つ。英雄王ギルガメッシュの持つ切り札である乖離剣エアの真なる力の発露、「死」の国の原点――天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)。 一つ。史上最強のガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピードが扱う数千万人規模の大都市を一瞬で消滅させ、月に超巨大な穴を穿つ――エンジェルアーム。 一つ。現魔王の息子、ガッシュ・ベルとそのパートナーである高嶺君が唱える金色龍の呪文――バオウ・ザケルガ。 一つ。鴇羽舞衣が使役する古から行われた戦姫を決定する舞踏における衛星をも打ち抜く最強のチャイルド――カグツチ。 一つ。Dボゥイこと相羽タカヤがテッククリスタルによって変身したテッカマンブレードの放つ反物質砲――ボルテッカ。 この五つが現段階において太陽を砕くに値する――この殺し合いの参加者が持ち得る最大戦力です」 これらはあくまで『可能性』である。 Dボゥイには更にブラスター化という奥の手が残されているし、東方不敗とドモン・カッシュの放つ石破天驚拳もこれらに匹敵する力を持っているかもしれない。 それ以外に会場に放置された道具にも期待が懸かる。 だが、ある程度現実的な視点で考えればこれら五つが後々の鍵を握る事は明白だった。 「……なるほど。だが、螺旋王も確実に何らかの対処はしている筈だ。結界にしても一度、張ったならば張り直せない道理はない。 無闇矢鱈に天を穿てば穴が空く、というのでは彼らのうちの誰かが己の全力を出せば途端に遊戯は崩壊する。 それでは螺旋能力者の選定の場としては不十分だろう」 「ですね。何かしらのイグニッションキーとなるものが存在する事は確かでしょう」 「……難しいな。ところで、小早川ゆたかという少女はいつ戻ってくる?」 「……そういえば遅い、ですね。こちらの動きから私達が同盟を結んだ事には気付いているでしょうに」 今現在、探知機能付きの携帯電話は明智の手元にはない。 これは今頃ゆたかの手から清麿へと渡り、彼が他の参加者の動向を探るのに使用している筈だ。 そもそもスカーを戦力として確保する事は相当に分の悪い賭けだったのだ。 当然ゆたかには自分達がこれから何を行い、どのような覚悟で説得に赴くのかを話してある。 スカーに自分達が襲われるケースを想定して荷物を持たせて、清麿の所へ向かわせたのだ。 「何か問題があれば高嶺君から連絡があるとは思いますが……どうします?」 「……そうだな。ひとまず、顔合わせだけはしておくべきだろう」 「そうですね。私も一度地下の施設を見ておきたいと思っていましたし、丁度良い機会かもしれませ――なっ!?」 「これは……!」 その時、だった。突然、会議室の床に凄まじい振動が走ったのは。 ソレは丁度いい言葉で言い表すのならば、地震という自然現象と酷似していた。 だが、明らかな相違点が同時にいくつも挙げられる。 例えば揺れの幅が極めて限定的な縦揺れであるという事。そしてまるで『下方から何かが競り上がって来る』感覚である事。 「なんだ……この揺れは……!?」 「分かりません……螺旋王の造り上げたフィールドにおいて、まさか地震など……?」 そしてその揺れが非常に長い点。地面が振動を始めてから既に十秒近く経過している。 しかし、揺れの大きさは未だに全く変わらないのである。 地震が初期微動と主要動の二つの波によって構成される現象である事は非常に有名だが、大規模な地震であればあるほど初期微動は短くなる。 故にこの規模の地震が何十秒も続くなどという事は在り得ないのだ。考えられるケースがあるとすれば、 「下に……何かが?」 「地下の施設に異変があった……と判断するべきか」 「しかし……クッ……あそこには高嶺君と小早川さんが!」 揺れは、止まない。 前に足を踏み出そうとしても、どうしても身体がふらついてしまう。 一体この刑務所の地下に存在するのはどのような物体なのか、明智は未だ解答を得る事が出来ずにいた。 ▽ どうすれば、いいんだ。 清麿はそのあまりにも"アレ"な事態に頭を抱えるしかなかった。 アンチシズマドライブにノーマルシズマドライブを差し込む事、これは全くの想定外の事態だ。 この大怪球フォーグラーは通常、アンチシズマドライブを嵌め込むことによって起動する巨大ロボットである。 では逆に、ノーマルシズマをフォーグラーに組み込んだ場合はどうなるのだろう。解答は――導き出せない。 「クソッ! どうしてゆたかちゃんが……っ!」 清麿は真紅に染まった視界の中で必死に思案を巡らせる。 フォーグラーのメインルームとも言うべき、コックピットは「警告」のニュアンスを多分に含んだ赤い光に覆われている。 彩度の高い緑色だった筈のシズマ管を満たしていた液体はその色合を変え、清麿はまるでピンク色のカクテルの中に沈んでいるような錯覚を覚えた。 加えて在り得ないほどの振動。まるで大地が呼吸するかのように、フォーグラーが揺れる。 「ゆたかちゃん! ゆたかちゃん! しっかりするんだ!」 清麿はすぐさま床に倒れ伏したゆたかの元へと駆け寄る。 全参加者の名簿には一通り目を通してある。 ……年上だとは到底思えないほど、小さな身体だ。 抱き締めれば本当に折れてしまうのではないかと思うくらい、か細く心もとない存在。 完全に身体の力が抜けてしまっている彼女を抱き上げ、数度揺すってみるもまるで反応は無い。 指先から神経を通じて、彼女の柔らかい身体の感触が清麿の脳内を擽る。 どことなく良い匂いがするような気もするが、そんな余計な事を考えている場合ではない事も十分過ぎる程承知している。 今は――最善の対処法を導き出されなければならない。 「動く…………のか? アンチシズマドライブではなく、普通のシズマドライブが一本だけ。そんな状態で起動なん…………て?」 と、清麿が思った時だった。 凄まじい音を立てて、振動していたフォーグラーの揺れが突然、ピタリと収まったのだ。 警告音も鳴り止み、シズマ管の色も黄緑色に戻る。 そう、まるで『何もなかった』かのように。 唯一の異変と言えば、メインルームの中心に位置する孔には未だ通常のシズマ管が突き刺さっているという一点のみ。 「……へ?」 思わず漏れる間抜けな声。 ぐるり、と辺りを見回してみても事実は変わらない。 先ほどまでの異変は何だったのかというぐらい、フォーグラー内部の状態は元に戻ってしまったのだ。 「ハハハハハ……そうだよな。まさか夢や幻じゃないんだから、そんな都合の良い事がある訳ないか! 普通のシズマドライブで起動するんだったら、アンチシズマ管なんて必要ないしな。 考え過ぎって事か…………だな。アハハハハハ、まるで悪い夢でも見ていたような――――ッ!!?」 事件とは立て続けに起こるものなのか。よく分からない出来事は連鎖するのか。 丁度、清麿が「フォーグラーが起動する?そんな事ある訳ないじゃないですか。ゲームじゃあるまいし」的な結論を出した時だった。 『下』からではなく『上』から凄まじい音が響いたのは。 その衝撃は断続的なフォーグラーの振動とは明らかに違う種類のものだった。 例えるならば砲弾、であろうか。 外部から飛来し一瞬の破壊をもたらした後に、炸裂する――そんなイメージだ。 明らかに異物が何処からか飛んで来たのは確実だ。地下に潜っているために正確な方向は分からないとはいえ……、 「上……!? どうなっている、遠距離からの射撃か……っ!?」 ちらり、と何気なく握り締めていた携帯電話を一瞥する。 刑務所に存在する光点は五つ。 中心点、つまり自分とゆたか。そして少し離れた地点にスカーと明智。そして所内で単独行動をしているらしいねねね。 誰かが突撃して来た訳ではないようだが……実際に眼で見て確認してみないと詳しい事情は分からないだろう。 しかし、 「何……!? これは……!」 新たに三つ。 この刑務所に接近して来る存在を感知したとなると、話は全く変わってくるのだ。 正確には四。 だがこのレーダーは首輪の存在を読み取る物なので、道具として首輪を所持している場合は画面にもソレが反映されてしまう。 今回の場合で言えば『クロ』という参加者がその例に挙がる。彼は第二回放送でとっくに死亡しているのだから。 「ヴィラル……シャマル……そしてルルーシュ・ランペルージ……!! 畜生、こんな時に!!」 更に懸念事項は増加する。 ヴィラルとシャマルは明らかに殺し合いに乗った人間だ。 とはいえ、自分は彼らに一度遭遇しているし言葉も交わしている。 二人は悪い人間ではない……と思う。だが、それ故に何かを守るために戦っている、という事も清麿は十分に理解していた。 話せば分かってくれる、分別を持った相手ではあると思う。 だが、事態は一変した。 第四回放送の後に、主催側からの駒として会場に降り立った――怒涛のチミルフ。 詳細名簿の項目を見るに、彼はおそらくヴィラルの直属の上司と見て間違いないだろう。 ヴィラルをこちら側の戦力としてスカウトする……というのはほぼ難しくなったと見て間違いない。 なぜなら、チミルフとヴィラルの間で何らかのコンタクトを取る手段が設けられている筈だからだ。 先発隊と後発隊の合流、とでも考えれば都合がいいかもしれない。 レーダーに映らないチミルフが今現在彼らに同行している可能性もあるのではないか。 「……ダメだッ! これを見過ごす訳にはいかない!!」 清麿は携帯をポケットにしまうと、再度腕の中のゆたかの顔を眺めた。 彼女は両目を瞑り、苦しそうにその端正な顔を歪めている。 白雪のような頬は紅色に紅潮し、明らかに体調が悪い事が見て取れる。 額に手を当ててみるが、やはり予想通りだ。相当に熱っぽい。精神的な問題ではなく、体力的な事情だろうか? とはいえ、イリヤや士郎の死が彼女に多大な影響を与えた事は想像に難くない。出来れば彼女の側に付いていてやりたいのだが…… 「ゴメン、ゆたかちゃん! すぐ戻るから!」 ここで清麿はゆたかを一旦、フォーグラー内部に置いて行く、という選択を下す決意を固めた。 確かに今のゆたかは情緒不安定と判断してしまってもいいだろう。 が、同時に病人でもある。つまり無理に動かす事で体調を悪化させる可能性もあるのだ。 これがもし、フォーグラーの何かしらの異変が尚も健在だった場合、無理をしてでも背負っていくのだが……それ以上に今はヴィラル達の接近が重要事項であると判断したのだ。 携帯電話の首輪レーダーを使った周囲の監視は集団にとっての一大事だ。 それを、疎かにする訳にはいかない。スカーが加わったとはいえ、自分達のグループは非戦闘員ばかりなのだから。 強者に襲撃されれば一溜まりもない。 内に燻った種火よりも、外から投げ込まれる災禍の方がずっと、恐ろしい。 ▽ 高嶺君の台詞を頭の中でゆっくりと、ゆっくりと、反芻する。 『すぐに、戻ってくる』 でも私の中にその言葉は入っては来なかった。 新しい疑問へと形を変えて心の中へと浮上……それで終わりだ。 感慨も、安堵もない。 だから、何気なく私は思った。 一体『すぐ』っていつの事なんだろうって。 一分? 五分? 十分? 一時間? もっと、それ以上? いつまで、私は一人っきりで居ればいいのだろう。答えてくれる相手は……誰もいなかった。 言葉は曖昧で嘘吐きだ。 好き勝手な理屈で相手を傷付けるし、気が付いたら自分を守るために事実とまるで違う話をしてしまう。 そう、嘘吐き。 それは臆病な私にとって、今一番痛い言葉なのかもしれない。 状況は十分過ぎるくらい分かっている筈なのに、私は我が身可愛さでその口を塞いでしまった。 「螺旋力、というのに心当たりがあります」って一言言うだけで良かった。 だけど、結局私は臆病なままだったのだ。両目を瞑って、何も知らない振りをした。 無知なコバヤカワユタカで在り続けた… 殺し合いとはまるで無縁な環境で私は今まで生きてきた。 私が一番最初に出会った相手、Dボゥイさん。 彼との出会いは、確かに私を変えたと思う。 ヒィッツカラルドさんとの戦いを通して、私は少しだけ勇敢になれた気がした。 Dボゥイさんが危なくなった時、自然と動いていた私の身体……その感覚だけは本物だったと思うから。 今もほのかに残っている気がする。 掌の中にお日様を握り締めているような、暖かい気持ちが。 「き……れい」 緑色の水槽に囲まれ、私は天井を見上げる。 空は漆黒の、闇。屋内だから当たり前だけど、月も星も見えない。 私の中で強烈な熱が暴れ回っている。それはある種、諦めにも似た感情を私に抱かせる感覚だった。 元の世界で、私は嫌と言う程この熱と付き合ってきたのだから。 小さくて、小さくて、くだらない私はやっぱりいつも通りだった。 「あつい……な」 炎が私の中でパチパチと音を立てて燃えているような気分。 やっぱり慣れっこだ。でも、どんなに経っても苦しみは軽くなるどころか益々大きくなるだけ。 だって、私が気分を悪くする度に皆を悲しい表情にさせるからだ。 そして、思い出す。あの夏の日、みなみちゃん達と花火を見に行った日の事を。 一人だけ具合を悪くして、倒れそうになった日の事を。 「……みなみ、ちゃん」 大好きな親友の名前が勝手に唇からこぼれ落ち、そして消えて行く。 会いたいなぁ、みなみちゃん。 みなみちゃんは今一体何処で、何をしているんだろう? それに、どうして―― 「あ……!! ……ダメ、だ……」 その時、私の頭を『絶対に考えてはならない疑問』が過ぎった。 それはある種の禁忌だった。タブーだった。 私が私であるためには、想像する事さえ許されない可能性。 何気なくみなみちゃんの顔を思い浮かべた瞬間、私の中に芽生えた問い掛け。 ――――どうして、みなみちゃんはここに呼ばれなかったんだろう? 本当に……最悪だ。 みなみちゃんがこの場に居ない事を私は心の底から喜ばないといけないのに。 だって、お友達の幸せを祈るのは当たり前のことなんだから。 良かった、本当に良かった!って考えていないと――私の中の悪魔がもっともっと大きくなってしまう。 汚らしい泥のような嫌な小早川ゆたかが出て来てしまう。 「高嶺君……どうしたん……だろう」 慌てた顔をして走り去っていた高嶺君が何を悩んでいたのか、私には良く分からなかった。 何か、大変な事があった……せいぜい、想像出来てそれぐらいだ。 でも、ソレって私を置いて行かなければならないくらい、重要な事だったのかな。 どうせなら私も連れて行ってくれれば良かったのに。そうすれば、一人きりにならずに済んだのに。 ……ダメだ。 やっぱり、気付けば他の人に依存してしまっている。 だから……嫌なんだ。 本当によわっちくて、情けない―― 私の大嫌いな、私。 ▽ 「明智さん!」 「高嶺君、丁度良かった。今から私達も地下へ――」 「違います! そんな場合じゃないんです!」 スカーは息を切らしながら、こちらへと走ってくる少年を冷酷な眼で見定める。 歳は十代半ば、エルリック兄弟と同じくらいだろうか。 一見、何処にでもいる普通の少年に見える――が、スカーを誤魔化す事は出来ない。 腕や首筋などに刻まれた傷痕……明らかに数多くの修羅場を潜ってきた証拠だ。 筋肉の付き具合などから見て、自らの肉体を鍛えて戦う種類の戦士ではないようだが、戦場の前線に身を置く者であることは確実。 「高嶺君一度落ち着きましょう。そんなに慌てて、君らしくもない」 「あ、す……すいません。ですが、今は!」 「……そうも言っていられませんか? 話を――おっと、高嶺君。こちらがこの度我々の戦列に加わって下さったスカー氏です」 「いや、俺の事は後回しで構わない。少年、どうした。何があった?」 スカー達と清麿が出会ったのは地下へ向かうエレベーターから少し先、刑務所の正面口に近い食堂であった。 多数の受刑者達が一斉に食事を行うためか非常に広く、また同時に密閉間を感じる妙な構造となっている。 下方からの不可解な揺れもすぐさま収まり、二人はフォーグラーへと急いでいたのだが、実際、清麿の行動の方が早かった形になる。 「……要点を纏めれば、ヴィラルとシャマルがこちらに向かっています。 彼らを追跡しているように近付いて来ているルルーシュ・ランペルージの動きも見逃せません」 「ふむ……厄介、ですね」 「それに先ほどの衝撃はいったい……?」 「南方、消防署の方角から何かが飛んで来たようですね。着弾した時点では爆発を覚悟しましたが……どうも、ソレとは違うようです」 清麿の報告に、明智は一瞬表情を曇らせたがすぐさま冷静に事態の分析を始める。 飛来した物体――順当に考えれば不発弾だろうか。おいそれと調査に出向く事も出来ない。 「映画館と同じくここを破棄するにしても、位置が近過ぎます。スカー氏との対応に追われ、準備を怠った我々のミスでしょう。 当然、ここは引き払います。しかし、すぐさま行動に移すには後手に回り過ぎている」 「……ですね。俺達だけならまだしも、ゆたかちゃんや菫川先生が……女性の方々がいます。 それにゆたかちゃんの状態は深刻だ。熱もあります。置いていく訳にもいかないですし……」 「ええ。彼らがここを素通りしてくれるのが最高なんですが……何らかの対処は必要でしょう」 やはり彼らの問題点は力という訳か、そうスカーは認識する。 明智、高嶺、菫川――明らかに頭脳労働を主とする人間がこのグループには集結している。 自分の力を求めたのも分かる。逆にあの時説得に失敗していた場合、確実にこの集団は全滅していたであろう事も、だ。 が、ここは退く事の出来ない場面だったのだろう。 逃げ回ってばかりでは決定的な武力を手に入れる事は出来ないと判断したか。 彼らは単純な力で言うならばあまりに脆弱だ。 銃、という武器を持っているとはいえ、相手はおそらく何かしらの修練を積んだ戦士に違いない。 覚悟も信念も、そして経験も何もかもが足りない。 ――死合。 命を賭して戦う事は言葉では表せない程に重いものなのだから。 「俺が行こう」 「スカー氏!? …………分かりました。相手は二人です。私もお供を――」 「いや……俺だけで十分だ」 「しかし!」 デイパックから銃を取り出し、自分も戦闘へと赴く事を主張した明智をスカーは戒める。 彼は元の世界で犯罪者を取り締まる仕事に就いていたらしい。 ある程度格闘術を学んでおり、銃器の取り扱いにも精通している。だが、 「――貴様は俺に何を期待している?」 「何を、ですか?」 「そうだ。俺達にはそれぞれ役割がある。螺旋王の真意へと迫る者、状況を察し適切な作戦を練る者、世界の仕組みを解析する者。 明智健悟。貴様は俺に……何を望む?」 その程度の練度では、闘いの場に身を窶す者としてはあまりにも足りないのだ。 スカーにはこの会場の誰よりも"螺旋"を我が物にしようとする意志があった。 遠いイシュバールの惨劇で死んでいった同胞達。 その恨みを晴らす……それこそが自身の願い。何よりも優先して叶えなければならない条項。 明智達の情報力は、スカーにとってここで失うには痛過ぎる飛車角だ。 「螺旋王の実験に終止符を打ち、闇を払い天を衝く剣――ソレがスカー氏に私が何よりも期待している役割です」 「では尋ねよう、明智健悟。頭脳であるお前が、剣に気遣いをする必要があるのか?」 「…………参りましたね」 明智は眼鏡の位置を直しながら、少しだけ俯き僅かながらの逡巡を行う。 清麿もグッと両の拳を握り締め、スカーを見つめている。 シン、と静まり返った夜の刑務所。印刷機が何かを刷り上げる音が残響する中、彼らの心は一つになる。 「スカー氏。任せてしまってもよろしいのでしょうか?」 「問題はない。この程度の修羅場ならば幾つも潜ってきたのだから」 ▽ 気がつくと、私は地上へと向かうエレベーターの中にいた。 当たり前だけど、物凄く息が苦しい。熱があるんだ。本当なら黙って寝ていないといけない。 ――――でも置いていかれるのは嫌なんでしょ? ……そうだ。あそこでジッと何もせずに居るくらいなら、息を荒くしながら散歩でもした方がマシだ。 無力なまま、誰かの帰りを待っているのは……とても辛い事だから。 Dボゥイさんと、シンヤさん。 ずっとDボゥイさんと一緒にいた私は、シンヤさんに攫われて一時期彼と行動を共にしていたことがあった。 シンヤさんは乱暴で、少しだけ怖い人だった。 他の人を傷付ける事になんの躊躇もしない人だった。 でも、私を傷付ける事だけは絶対にしなくて……ほんの少しだけ……優しい人だった。 彼は、高嶺君の知り合いに殺されたらしかった。 その事実を聞かされた時、私が何を思ったのか……実はよく覚えていない。 頭の中が真っ白になってしまって、まともに涙を流す事も出来なかったのだ。 私には理解できなかった。 シンヤさんが最期に何を思ったのか。何故、倒れた私は病院で寝ていたのか。 そして――何故、同じ場所でシンヤさんが死んでいたのか。 「また、言い訳」 ああ、やっぱり私は嘘吐きだ。 それだけの情報を与えられて、知らない振りなんて出来る訳がないのに。 ずっとずっと、答えを先送りにしていた。自分を傷付けないようにしていた。 どうでもいい。疲れた。私じゃない……何度自分に語りかけた事だろう。 何故、シンヤさんが死んだのかなんて考えるまでもない事だ。 自分を馬鹿だと、愚かだと偽ってみても自然と答えが出てしまう問題。 高嶺君も明智さんも、私を気遣ってほとんどシンヤさんの話題を出さなかった。 ほら、なんて分かりやすいんだ。 ――――シンヤさんは、私を守って死んだんだ。 私は灰色の道をまるで夢遊病者のようにフラフラと蛇行しながら進んでいた。 足を小さく踏み出すだけで次の瞬間には身体が地面に吸い込まれそうになる。 一歩先は永久の闇だ。窓から見える景色は白と黒と黄金。星と空と月だけが私の身勝手な行進を見ている。 「あ……れ……?」 そんな時、目の前に奇妙な鉄の塊が転がっているのを見つけた。 それはいわば『顔』だった。 正確には顔で身体の大部分が構成されている人形、とでも言うべきか。 よく見ると近くの壁に大きな穴が空いている。 吹き込んでくる冷たい風が少しだけ気持ち良かった。火照った身体には絶好の薬だ。 もしかして、何処からか飛んで来たってことなのだろうか。 私は鉄の人形を更に凝視した。赤くて、手が付いていて、足もある。明らかに人を模した物だ。 中には人が二、三人は乗れるであろうスペース。意外と大きい。 もしかしてこれは、ゲームに出て来るような……ロボットなのかもしれない、そんな事を思った。 「……ん?」 ロボットと視線が合った瞬間、私はまるで相手が生きている人であるかのような錯覚を覚えた。 そう、まるで機械で出来た身体を持つこのロボットに意志があって、私に応えてくれたような――そんな感覚だった。 まるで夢物語だ。生きている機械なんて居る訳がないのに。 小さく頭を振って湧き上がってきた妄想を一蹴。視線はロボットの外面から内部のパネルへ向かう。 ぼんやりと、それでも何故か引っ張られるように私はその操縦席らしき部分を覗き込んだ。 「穴、かな」 外見に負けず劣らず、中も良く分からない構造をしていた。 コックピットの前面、メインパネルの中央には丸い穴のようなものが空いている。もしかして、ここに鍵を差すのだろうか? 穴の中にはグルグルと渦巻きのような溝が走っている。 そして、穴の周りには青いメーターのような物があってソレもまた渦巻き――いや、螺旋を描いていた。 「あ……」 ピンと来た。そう――コアドリルだ。 ずっと、私を守ってくれていたあのアクセサリーと丁度大きさがピッタリのような気がしたのだ。 首に紐で掛けてあったコアドリルを取り出し両者を見比べる。 ……うん、悪くない。サイズも形状も上手く嵌まりそうだ。 「ここで、いいの……かな」 ポットみたいになっているロボットの外枠を掴みながら、オズオズと、それでも少しだけワクワクしながら―― 私は、コアドリルをそのロボットに差し込んだ。 もしかしたら、奇跡が起こって動き出すかもしれない。 そうしたら、私はパイロットになれるのだろうか。 鍵を持っている女の子が戦闘メカの搭乗者になるのは小さい頃に見た戦隊アニメでも御馴染みの光景だ。 見るからに非現実な物体を前にして、私は子供の頃と似たような気分になっていた。 そして、思った。 ――――そうすれば、皆のお荷物じゃなくなるのだろうか、と。 カチン、と音がした。 「あ……れ……?」 でも、何も起こらなかった。 多分、コアドリルはこのロボットに使うための鍵だった――これは確実だ。 でも、それだけ。パネルが光る訳でも、ロボットが動き出す訳でもなかった。 どうやら、条件が足りないらしい。さしずめ……エネルギー、といった所だろうか? 淡い期待は脆くも崩れ去った。 このロボットがあれば、皆が私を褒めてくれると思ったのに。 「すごいね!」って、暖かい笑顔で迎えてくれると思ったのに……ううん。どうせ私には初めから無理だったに決まってる。 「やっぱり、ダメなんだ」 私は名残惜しい気持ちを抑えながら、操縦席を後にした。 もうこの場所に用はないと判断したのだ。 動かない鉄屑と戯れていても虚しいだけ。コアドリルを差しっぱなしにしてきた事が少しだけ気になった。 でも、私の身体は勝手にまた、夜の散歩を始めてしまう。 でも、あの道具は多分ここに刺す物だ。 だったら私なんかが持っているよりも、ずっとずっと相応しいようにも思えたのだ。 それに、多分私にはもう必要のない物なのだとも思える。 持っていてはいけない気さえする。 最初から一緒にあったお守りですら、私の手にはもう馴染まなくなっていた。 私は……変わってしまったのかもしれない。 よく、分からない。 心の奥底では、ずっと、無知で愚図なままでいたいと思っているのだろうか。 もし、そうだとしたら…… 私は……なんて、醜いんだろう。 ▽ 『ヴィラルさん。本当にこっちでいいの?』 『お前らしくもないな、シャマル。よく地面を見てみろ』 『え……これは……何かが通った跡……かしら』 『だろうな。しかもコレは大分新しい……地面の乾き具合で分かる』 『誰かが刑務所から南下した、って事?』 『ああ。車輪の大きさから判断して、大きな乗り物という事はないだろう』 『!! もしかして……マッハキャリバー!?』 『シャマル? 分かるのか?』 『サイズもピッタリ。多分魔術の素養のある人間がマッハキャリバーを使ってここを通ったんだと思います』 『なるほど。これは……とんだ拾い物かもしれんな』 『ええ。でもさすがヴィラルさんね。こんな地面の跡なんて私、全く気付かなかったわ』 『いや、違うぞシャマル。俺一人ではそこまで正確な分析は不可能だった。お前がいたからこそ、そこまでの真実に到達する事が出来たんだ』 『そんな……私がいたから、なんて……』 男と、女の声。 「クソッ……アイツら、何を考えている……ッ!!」 そして一人、彼らを背後から追跡する少年。 ルルーシュ・ランペルージは湧き上がる苛立ちを抑え切れず、思わず足元の石を蹴っ飛ばす。 カッ、という小さな音を残し、灰色の石は明後日の方向に向けて数回転がると、そのまま見えなくなった。 道は薄暗く、灯りも着いたり消えたりを繰り返す街灯ぐらいのものだ。 当然のように、その程度で彼の怒りが収まる訳もなかった。 ルルーシュの怒りは前方をイチャつきながら移動する二人組の背中へと向けられる。 夜の闇が未だ退かぬ空の下で、ルルーシュはシャマルとヴィラルを尾行していた。 この殺し合いが始まってから、枝葉の陰に身を潜め幾度となく他の人間の様子を監視する機会に出くわしたルルーシュだ。 見つかるようなヘマをやらかす訳もない。 今回の追跡行為も、現状における最上の手段と認識したまでの事である。彼の中に油断はない。 (チッ……コイツらは今がどういう状況なのか理解しているのか!? 互いに顔を赤らめている場合なのかッ!? ……こんな馬鹿共が生き延びて何故、スザクが死ななければならなかったのだッ!? クソッ!!) ヴィラル達と遭遇した民家において散々二人の愛の営みを見せ付けられたルルーシュは憤慨していた。 何度、イチャつき合う馬鹿共の前に踏み込んでやろうと思ったことか。 だがルルーシュは既に数時間前、温泉において全く同じような心境へと至り、その場のテンションでギアスを使用し手痛いしっぺ返しを受けている。 (クッ……我慢しろ、ルルーシュ。今は時期ではない……強力な制限下にあるギアスは出来るならば使わない方がいい。 これが最良、もっとも効率的なやり方だッ……) ヴィラル達とすぐさま接触する事を逡巡の末、ルルーシュは放棄した。 当然ソレは、あの時点での接触は好機ではないと判断したゆえの選択だ。 いまいち二人の行為に割って入る踏ん切りが付かなかった訳では決してない。 ポイントは二つ。 まず、あの周辺で戦闘が行われたばかりであるという点。 あれだけ派手に周囲の建物を破壊しながら戦えば、周囲から人が集まって来る可能性は非常に高い。 『複数人に対してギアスを使用する』というテストは、ギアスの試し掛けを始めてから未だ一度も行っていない。 最初の使用時にはそれほど複雑な命令でなかったにも関わらず、ルルーシュは昏倒してしまった。 が、三回目の使用時に同程度の難易度の命令を行う事によって、新たな仮説を導き出した。 つまり――問題点はおそらく『一度に使用する人数』なのだろう。 殺し合いの特性を鑑みるに即座に生命に影響する命令にも何らかのストッパーが掛かっている可能性はあるが、この考察は大部分で的中している筈である。 加えて話術による交渉も利点が薄い。 確かにその場のテンションで行動しているのが明確な二人組を誘導する事など、自分にとっては造作もない事だ。 だが、困った事に奴らは殺し合いに乗っている。 しかもヴィラル、という男の方は加えて先ほどの放送から参戦した「怒涛のチミルフ」の部下であるというのだ。 奴の目的は――次回の放送までに、参加者を最低1人討ち取り、チミルフにその首を献上する事。 あまりにも野蛮な到達点だが、こんな会話を聞いてノコノコと奴らの前に姿を現すなど出来る筈もない。 故にある程度、事態が変わるまでルルーシュは彼らを尾行することに決めたのだ。 (誰も見ていないと安心しているのか……? いや、ただ単純にイチャつきたいのか……理解に苦しむな) が、これは中々上等な自己防衛手段でもある。 なぜならば、突然の襲撃者に出くわした場合も、ヴィラル達が先に敵と接触する可能性の方が高いのだ。 加えてルルーシュが攻撃された場合も、初撃だけ回避すれば立ち回り次第で二人に敵を擦り付けることが出来る。 まさに一石二鳥の策略と言えるだろう。 (問題は奴らが有力な参加者を一方的に攻撃してしまう場合か……奇襲を掛けるにしても誰と接触するのかは非常に重要だろう。 が、シャマルとヴィラル。螺旋王の情報を多く知る二人は是非とも押さえておきたい人材。 隙を見てギアスを使えれば……やはりタイミングが難しい、な――――む?) そこまで考えた所で、前方を行くヴィラルとシャマルが突然立ち止まったのだ。 ルルーシュも見つからないように、すぐさま身体を物陰へと隠し、様子を窺う。 「――お前達がヴィラルと、シャマルか」 「な……貴様は!?」 「……螺旋の力に覚醒して、それでも人を襲う決意を固めるか」 「ヴィラルさんっ!」 「螺旋王が配下、ヴィラル。湖の騎士シャマル……だな」 現れたのは全身を隆々とした筋肉に覆った褐色の肌の男だった。 目付きは鋭く、顔に刻まれた痛々しい傷跡が彼の歴戦の勇を証明する。 右腕に刻まれた多数の紋章は何かしらの異能の印なのか。 (奴は……カレン達の言っていた偽ゼロを襲撃した男か!? まさかこんな場所で出くわす事になるとは!!) 話だけは聞いていた。 キャンプ場を襲撃した男が糸色望と読子・リードマンを殺害した、という事実を。 しかも読子という女はスパイクを軽く凌駕する実力を持っていたらしい。 その事実だけで、彼が相当な実力者である事が窺える。 「もう一人は……いないのか? 隠れているのか?」 「ニンゲン!! 何を訳の分からない事を言っているっ!?」 「……明智を連れてこなくて正解だったな。俺としても覚醒者は保護したい――のだが、」 「ふん……話を聞くつもりはないのか。保護、だと!? ふざけるなッッ!!!」 「……すいません。私達は……二人で優勝しなければならないんです」 「やはり、そうか」 顔面に深い傷を持つ男――スカーが闘いの構えを取った。 当然のようにヴィラルとシャマルもそれぞれの得物を持ち、戦闘に備える。 漆黒が世界を埋め尽くす中、二対一という傷の男に極めて不利な状態で戦いの幕は開こうとしている。 (何……ッ!? 俺の存在がバレている……だと!? どうなっている!?) ルルーシュは驚愕した。なんと、男はどうやらルルーシュが近くに潜んでいる事を半ば確信しているようなのだ。 だが、不思議な事は『ルルーシュが近くにいる事』しか知らない点だ。 感知しているのは存在だけで、場所までは分からないという事だろうか。 ならば、ひとまず姿を見せずに事の次第を見守るのが最良だろう。 「行くぞ、シャマル!」 「はい、ヴィラルさん!」 「――――掛かって来い」 (スザクのようなイレギュラーな戦士……なのか? ……どちらにしろ、今出て行く訳にはいかない。 そして考えるんだ。何故、奴はあの事を……?) 時系列順に読む Back 盟友 Next てのひらのたいよう(中編) 投下順に読む Back 童話『森のくまさん』 Next てのひらのたいよう(中編) 245 【ZOC】 絶望の器 (後) 明智健悟 249 てのひらのたいよう(中編) 245 【ZOC】 絶望の器 (後) スカー(傷の男) 249 てのひらのたいよう(中編) 249 まきしまむはーと 高嶺清麿 249 てのひらのたいよう(中編) 249 まきしまむはーと 小早川ゆたか 249 てのひらのたいよう(中編) 243 リ フ レ イ ン ヴィラル 249 てのひらのたいよう(中編) 243 リ フ レ イ ン シャマル 249 てのひらのたいよう(中編) 243 リ フ レ イ ン ルルーシュ・ランペルージ 249 てのひらのたいよう(中編)
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/3168.html
概要 アレフガルドの古き伝承は語る。雨と太陽が交わる時、魔の島に虹の橋が掛かる、と。 雨とはすなわち【あまぐものつえ】であり、太陽とはすなわちたいようのいしである。 【せいなるまもり】、のちの【ロトのしるし】と併せ、魔の島へ虹の橋を掛ける【にじのしずく】を入手するための三種の神器の一つ。 …だったのだが。 DQⅠ DQⅢ DQⅨ DQⅦ(3DS版) DQⅠ 竜王の住む魔の島へ渡るために勇者が探し求める道具の1つ。 ラダトーム城にある、という情報は貰えるのだが、城内をいくら探しても見つからない。 それもそのはず、太陽の石は城壁の外側を歩いて行くと見つかる隠し地下室に居る爺さんが守っているのだ。 意地悪なことに城の中からは地下室の入り口は見えない。こんなもの分かるか!と思いきや、 堀の外側を歩くギミックはリムルダールでレクチャーしている ラダトーム城で「この城のどこかに地下室がある」という情報がもらえる ため、なんだかんだで自力で見つけられる人は多い。 初期のDQはこういう所が良くできている。 ちなみにこの爺さん、勇者ロトから太陽の石を受け取り、ずっとここで守ってきたらしい。 ラダトームの町の呪いを解いてくれる爺さんといい、一体何歳なんだろう? DQⅢ ゾーマの住む魔の島へ渡るために勇者が探し求める道具の1つ。 ラダトーム城にある、という情報がもらえるので、「ならⅠと同じ所にあるに違いない」と考え 早速地下室へ行くと「なに? たいようのいし? そんなものは ここには ないぞ。」と突っぱねられる。 正解は城の台所の隠し部屋にあるのだった。Ⅰをプレイした者を引っ掛けるよくできたトラップだ。 戦闘中に使うとザメハの効果があるのだが、にじのしずく入手時にあまぐものつえ共々無くなってしまうので、怪しい瞳の怖い【しんりゅう】戦では使えない。 一応にじのしずくを入手してからノーセーブでゾーマを倒してしまえばしんりゅう戦での使用も可能ではあるが、けんじゃのいしが一個減ってしまうことになるため割に合うとは言えないだろう。 なお、地下室の男性の話には続きがあり、先ほどの台詞のあとに彼は「この国に朝が来た時、誰かが太陽の石を自分に預けに来る夢を見た」という話をする。 そこでゾーマを倒した後に彼に話しかけると、彼に太陽の石を託すイベントが発生するのだ。ⅠとⅢの繋がりを感じることができるので必見。 太陽の石はすでに勇者一行の手の中には無いのだが細かいことは気にしない事。 DQⅨ 長い時を経てまさかの復活。表記は「たいようの石」となっている。 ただし、ⅠおよびⅢではストーリークリアに必須の重要アイテムであったのに対し、ただの錬金材料へと大幅に格下げされた。 もちろんなくてもクリアは十分に可能。 もっとも、終盤でも通用するほど強力な武器防具の材料となる上、クエストNo.021「ぜいたくな石やきイモ」をクリアする条件ともなっているので、 作っておくに越したことはない。 【ほしのカケラ】×2+【かがみ石】×3+【ヘパイトスのひだね】×1から錬金するのが唯一の入手法。 Ⅸの連中が自在に太陽の石を作って持ち歩く様子をⅠの爺さんが見たらショック死すること請け合いである。 コレを使用する錬金レシピは以下のとおり。いずれも、太陽やそれをイメージさせる高熱、炎を印象付けるアイテムが作れる。 たいようの石×1 + 【ばくだん石】×3 + 【ほのおのつるぎ】×1 = 【インフェルノソード】 + ばくだん石×3 + 【ほのおのツメ】×1 = 【しゃくねつのツメ】 + ばくだん石×3 + 【ほのおのブーメラン】×1 = 【フレイムカッター】 + 【赤いサンゴ】×3 + 【グラディウス】×1 = 【サラマンダー】 + 赤いサンゴ×3 + 【つきのおうぎ】×1 = 【たいようのおうぎ】 + 【たいようのかんむり】×1 + 【しんかのひせき】×1 = 【アポロンのかんむり】 DQⅦ(3DS版) 配信石板「魔術師の塔」の報酬アイテム。 戦闘中に道具として使うと【メラゾーマ】の効果がある。 Ⅰは敵が必ず単体で出現するため、もしこんな効果がⅠにあったらゲーム崩壊しかねない。 ローラ姫をさらったドラゴンだって、メルキドの番人のゴーレムだって、ラリホーで数多の勇者をフルボッコにしたダースドラゴンだって、そしてラスボスかつ最大の難敵である竜王だって、 これなら一瞬にして丸焦げにすることができただろう。もっともこの時代にはメラゾーマがなかったが…
https://w.atwiki.jp/higumaroyale/pages/360.html
私は目下、戦争に駆り出されていた。 学徒動員とは、このようなことをいうのか。 「――丸太足りません! 早く持ってきてください!!」 「マスター! お願いねぇッ!!」 ――いや、戦争のセの字も知らないただのJKの感覚なので、実際はこんなものじゃないんだろうが。 「智子さん遅いよ! 何やってんの!!」 「黒木智子、小径のでいい! 数を運べ!!」 「ぜぇ……、ぜぇ……」 背中から複数のイケメンに声を掛けられている――。 という、普段なら狂喜するシチュなのにも関わらず、私にはもう、喜ぶ体力はなかった。 ここは製材工場という名の、戦場の最前線。 私が今何をしているかというと、そこで、軍人さんたちの使う武器を必死こいて供出しているわけだ。 解りやすく言えば、この場に溢れている丸太を、地下から逃げてきた穴で防衛戦を繰り広げているヒグマたちの元へ届けているんだ。 「早くしてよ智子さん……! その丸太、僕が運んでたのより細いだろ!」 その私の脇を、弱冠5歳のクソガキであるクリストファー・ロビンがずかずかと通り過ぎ、罵声だけを後に残して工場の中に消えていった。 「ク、クソぉ……。てか、あいつが、丸太、運べることの方がおかしいんだよむしろ……」 ロビンは、私より背の低いへちゃむくれであるにも関わらず、私の顔くらいある太さの丸太を軽々と曳いて運んでいくのだ。 野球選手ってのはこんな化け物ばっかなんだろうか。 「と~も~こ~さぁん、走りなよ……! 腕より細い丸太運べないでどうすんのさぁ!」 そして早々と、ロビンは工場から戻ってくる。 丸太を両手で携えるその姿は、吸血鬼相手にサバイバルしてますと言われても違和感がないほど堂に入っていた。 うるせぇクソガキ。私だってもう何往復も丸太運んでんだ。 早く吸血鬼でもヒグマでも潰して来いよ畜生め……。 「そ、そんなこと、言わないで、て、てつ、だって、よ……」 脳内で毒づいたものの、思考と裏腹に、体は正直だった。 放送禁止レベルのアヘ顔を晒しながら、私は恥を忍んで去りゆくロビンの背に声をかける。 でも、ロビンは振り向かない。 私の喘ぎが、聞こえてない。 会話が、続かない。 それどころか、会話が、始められない。 肺活量が足りなさ過ぎて、ほとんど声帯が震えてないんだ。 この際、処女膜からでもいいから、他人に届く声が出て欲しい。頼むから。 ようやくたどり着いた地面の大穴では、二頭のヒグマ――、グリズリーマザーとヤスミンが、その崩落した地下へと大量の丸太を突き込んだり投げつけたりしていた。 既に、敷地周囲に散乱していた分は粗方放り込んでしまっている。 「そらぁッ!!」 「ぬぁっ――!?」 「伏せろぉぉおおお――!!」 グリズリーマザーがその青い毛を振り立たせて突き出した丸太は、地下からの追手が投げ上げてきた魚雷を叩き落とし、空中で爆発させていた。 「あぁ、マスター、ありがとうね! 悪いけどまだまだ先は長いよ!」 「ひゃ、ひゃいぃ……」 「有難う御座います黒木智子さん……。ちょうど、この程度の細さの弾体が必要でした」 私がやっとの思いで運んできた丸太は、隣にいたヤスミンの手にひょいと奪い取られる。 軽々と担ぎ上げて、丸太を投げ槍のように耳元へ掲げ上げた彼女の姿は、場違いながらかなり絵になっていた。 古代ローマの彫刻のような、途切れることのない曲線で描かれる研ぎ澄まされたプロポーション。 簡素でありながらチラリズムに満ち溢れた純白の白衣の隙から、対照的に野生を感じさせる獣毛としなやかな筋肉が、うねりを持って流れ出す。 全身のしなりを以って放たれた丸太は、矢のように地下へと奔っていた。 「龍田提督! 秘蔵っ子の『46㎝三連装砲』、到着しましたぁ!!」 「よぉし、撃っちゃいなさい!!」 その丸太は、どうも彼らの最大装備であるらしいクソでかい主砲の口に、ぴったりと突き刺さる。 瞬間、ちょうどぶっぱなされようとしていたその大砲は、コルク栓のようにハマり切った長い丸太を貫ききれず、盛大に暴発していた。 周りにいた彼らは、その爆発で一気に吹き飛ばされる。 「いぃやぁだぁあああわぁあああ!! あぁぁあ、お洋服がぁああああ!! 許さないわよヤスミンちゃんんんっ!!」 「あなたは被服を一切纏っていないではありませんか! それは『お洋服』ではなく『毛皮』と表現するべきです!!」 中ボスクラスであるらしいヒグマは、甲高い声を上げながら、負傷から逸早く体勢を立て直す。 龍田提督と呼ばれたそのヒグマとヤスミンとが、地下と地上で激しく叫び合った。 「んまっ! アチシのこのお洋服を傷つけていいのは、龍田さんだけなのよぉおぉ! 百合を解さぬ石頭めぇ!!」 「あなたはオスでしょう! 恋愛の内容を『百合』と形容する際は、女性同士のものに限って用いるべきです!!」 「やぁねぇこれだからお医者さんはぁ!! カラダはオスでも心は乙女なのよぉぉおおおおぉぉぉっ!?」 「『GID(Gender Identity Disorder)』でお悩みなら、患者としていらして下さい!!」 叫びながらヤスミンは、そいつに向けて立て続けに丸太を投げつける。 オネェ口調に反してムキムキの筋肉ダルマのような相手のヒグマは、「イヤイヤ」をするようにちょびちょびと爪を打ち振って、その数本の丸太全てを引き裂いていた。 くねくねと身を捩りながら、その龍田提督とかいうヒグマは、配下らしい50頭ほどのヒグマに一斉に指示を出していた。 「あぁもうムカツクぅ~!! みんなぁ! 仰角ギンギンにオッ勃てなさぁい!! あのクソアマに、タップリ高角砲のタマぶっかけてやるのよぉおお!!」 「ほぎょぉおぉぉぉぉおぉぉぉ!! イクよぉおぉぉおぉぉ!!」 「ひぃっ!?」 「危ない、マスター!!」 地面の穴に身を乗り出していた私の体がグリズリーマザーに掠め取られた直後、その穴から大量の銃弾が雨あられと噴き出してくる。 凄まじい奇声を発しつつ、絶頂に至ったかのように、ヒグマたちが一斉に高角砲の弾幕をお見舞いしてくるのだ。アブナすぎる。 色んな意味で、私たちを追ってきたこのヒグマどもは危険すぎた。 「この銃弾をスペルマに見立てているのでしょうか……? 一回のイジェキュレーションのスペルマ数に匹敵するほどの弾薬を彼らが有しているとは、到底思えませんけれど」 私たちと共に穴の横へ即座に引っ込んでいたヤスミンは、目の前を通ってゆく下ネタ塗れの弾丸に向け、平然とそう呟いていた。 そのどこかずれた価値観の彼女へ、グリズリーマザーは苦笑と共に声をかける。 「そういうのって、お医者さんの間じゃなんて言うんだい?」 「そうですね……。『オリゴスペルミア(乏精子症)』?」 クフクフと声を立てて笑いを漏らす彼女たちの元へ、神父の声がかかる。 「埒が開かないなら、一度、これを試してみてもいいのではないか?」 「ああ……、それね。ほとんど、あんたの注文で作ったようなものだから、いらないなら良いよぉ使っても」 「それならば遠慮なく振る舞ってやってくれ」 腹黒愉悦神父の言峰綺礼が、聖職者らしからぬ外道な表情とともに持ってきたのは、午前中に、私も熊汁と共にぶっかけられた味覚破壊麻婆だ。 寸胴鍋に大量に余っているその激辛の液体を受け取ったグリズリーマザーは、弾幕の間隙を縫って、穴の下へ一気にその中身をぶちまけていた。 「皆さん、ランチでもいかが~?」 「ぎゃああああぁぁああぁぁあ!?」 「眼がぁ!! 眼がぁアアアア!!」 人間より遥かに鋭敏なヒグマの五感に、煙幕弾のように降り注いだそれは効果抜群だったようだ。 視覚は爛れ、聴覚は詰まり、嗅覚は麻痺し、味覚は壊れ、触覚は焼け付く。 文字通り五感でその料理を味わうことになった彼らの攻勢は一気に崩れる。 ランチではなく乱痴気のように統制の崩れた地下へ、ロビンの運んでくる丸太を、ヤスミンが一気呵成に突き込んでゆく。 その躍動感溢れる活劇に、私は興奮した。 グリズリーマザーの柔らかい毛皮に守られたここは、最高の特等席だ。 私には関係ないし。 安心して傍観できるし。 背の毛のそそけ立つような戦いも、遠巻きに見れば、この上ないエンターテイメントだった――。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 「……智子さんさぁ、観戦に回るのは早いよ。今は7回裏の攻撃くらいの正念場なんだから、さっさか運ぶ運ぶ!」 「い、痛い痛い!! やっ……、み、耳、引っ張んないで……!」 そんな束の間の安息から、労働の場へ即座に私は連れ戻された。 相変わらずロビンは手伝ってくれず、その背中に声をかけるタイミングも、私は逃していた。 ……そういえばアメリカは自主性を重んじるから、身体障碍者にも極力自分で身の回りのことをしてもらうんだってさ。 知るかよ。構ってくれよ。 言峰神父は言峰神父で、遠巻きに私をチラ見してくる割には、自分からは全く手を出そうとしてこないし。 あれは絶対、私を視姦してる。私がひいこら言う姿を見て楽しんでるに違いない。 クソッ。 みんなクソじゃないか。 クソッ。 なんだよ、このクソ野郎どもはよ――。 「……はぁ」 そこまで考えて、私は首を横に振った。 工場に山と積まれた木材を前にして、私は溜息をつく。 思いを新たに、聖杯戦争を勝ち抜いて成長するんだと意気込んでは見たが、なんだこのザマは。 10分ももってないぞ意気込み。それどころか、いつもの自己主張できない自分に逆戻りじゃんか。 いや、戦闘中だからっていう言い訳はできるけどさ。 それだってちゃんと自分から向かい合っていかないと、今後、このヒグマ島で生き残ることなんてできないだろ。 ……なにしろ、恐ろしいことに。 私がグリズリーマザーの背中で抱いた興奮は、きっと、言峰神父と同じ感情だ。 自分に関係の無いところから遠巻きにドタバタを眺めて、愉悦を感じる。 そして騒動の渦中で慌てふためく奴らを見下して、自分の詰まらない優越感とプライドを保つんだ。 そんな自分、もう嫌だ。 明日も、同じ自分だなんて。 待っても、去っても変わらないなら――、自分から動くしかない。 うん、そうだよ。ちゃんと働こう。私はニートじゃないし。 せめてあの5歳児のお子ちゃまには馬鹿にされない程度にはさ! 私は息を整えて膝を叩き、ちょっと太めの丸太に手をかけた。 それでも、ロビンや言峰神父の運んでいる奴よりはだいぶ細いけど。 私だって人並みのことはできるんだってところ、見せてやんよ――! そう思った時、急にひょいっと、丸太の反対側の端が持ち上げられた。 「あ――、ありがと、手伝ってくれるんだ……!」 ロビンに違いない。 きっと、私の頑張っている姿を認めて、感銘を受けたんだ。 そう思うと途端に嬉しくなって、張りのある声が出た。 そうして私は、丸太を持ち上げている、逞しい男の腕の先を見上げる。 ――そこには、何もなかった。 「……へっ?」 空中に、何者とも知れぬ男の腕が浮いていて、それが丸太を掴んでいる。 そいつはずるずると丸太を引っ張り、私の体ごと、その空中の何もない空間に引きずり込もうとしていた。 「ひやぁぁああぁあぁっ――!?」 慌てて丸太から手を離し、尻餅をついたままわたわたと後ろに下がる。 男の腕は、まるで亜空間に飲み込まれるように空中に消滅し、それに握られた丸太も、続けざまに飲み込まれて消えた。 私の物語も、徐々に奇妙な冒険になってきたなとは思っていたが。 これじゃあまるで、バニラアイスのクリームだ。一口で丸呑みにされて、まるっと消滅だ。 こんなものに、もし、私が飲み込まれていたら――。 ――粉微塵になって、死ぬ。 「ぎゃああああああああっ!! お、おばっ、おば、お化けぇぇええええっ!!」 「うるさいなぁ智子さん。どうしたの一体」 私は生涯最高と思える速度で工場の中を走り、そのまま、丸太を渡して戻ってくる途中だったロビンに縋り付いていた。 心底鬱陶しそうな目で見下ろしてくるロビンへ、私は必死に後ろの方を指さして示す。 「おばっ、おばっ、けが、でたぁ……! おば、けがぁあ……!」 「へー、叔母さんに毛が生えたんだ。そりゃ良かったね」 「ちげぇよぉ!! おば、お、お化けだよぉお……」 「……お化けぇ?」 茶化してくるロビンに言い返す言葉さえ震えていた。 思い返すだに恐ろしく、腰が抜けて、涙で顔はぐちゃぐちゃだった。 その様子に、流石に只事でない雰囲気を感じ取ってくれたのか、ロビンはデイパックの中に手を差し入れつつ、ゆっくりと製材工場の奥へと足を進めていく。 「……どこにいたの、その、『お化け』ってやつは」 「あ、あっち……、あっちの丸太の、山……!」 5歳児の背中に縋り付きながら、私はぶるぶると震えていた。 情けないとは思うが仕方ないだろ、怖いんだから……! ロビンは私が例の『腕だけ男』を目撃した付近までやってきて、きょろきょろと辺りを見回した。 「……何もいないじゃないか。見間違いじゃない?」 「い、いたんだよ!! 絶対いた!! あ、亜空間に隠れて、地下とか壁とかをくり抜きながら襲ってくるんだよ!!」 「はぁ? 何言ってるんです。そんな馬鹿げたモノがいるわけないじゃないですか」 「こ、この島じゃ無いって言いきれないだろ!!」 漫画の知識を活かして必死にアピールするも、ロビンは「やれやれ」と肩をすくめるだけだった。 呆れと面倒くささを綯い交ぜにしたような視線で鼻を鳴らし、彼はスタスタと歩き出してしまう。 「そんなヒグマがいてもおかしくはないですけど、それならあのヒグマさんたちが気付いてるでしょ」 「あ、あ、あの、げ、幻覚ヒグマとかだって、いたじゃないかぁ!!」 「そのヒグマの部下がいるんだから直接訊きなよ」 「グ、グリズリーマザぁ――!!」 ロビンが立ち去りながら工場の外を指すや、私は即座に後ろを向いて、外の穴の元に走っていた。 息を切らして青い毛皮に縋り付いた私を、グリズリーマザーとヤスミンは、困ったような視線で見下ろしている。 「……もしシーナーさんがいらしていたとしたら、私がいる時点で、まず私に詳細の確認をなさるはずですよ。 あの方は、向こうから危害を加えて来ようとする者以外に対しては、極めて理性的ですから。突然あなたに襲い掛かるようなことは決してありません」 既にロビンとの会話を耳に入れていたヤスミンは、淡々とそう語った。 グリズリーマザーが私を抱きしめて、ふかふかと頭を撫でてくれる。 「マスター……、一体何を見たんだい? アタシが一緒に居てやれればいいんだが……」 目下防衛戦の最中であるグリズリーマザーたちは、当然、ここから離れるわけにはいかない。 地下のヒグマたちも、体勢が乱れたとはいえ、依然として追撃を諦める気配はない。 隙を見せたら、また大口径砲なり爆弾なりでこちらに攻め込んでくるんだろう。 穴の縁を崩されて、昇って来られてしまう。 「……霊の類ならば、私がなんとかできるかも知れんな」 困惑する私たちに声をかけたのは、言峰神父だった。 運んできた丸太をごろごろと転がし、彼は私に向けて微笑んだ。 「私の洗礼詠唱は、霊体にならば相当に効力を示すぞ。どちらにせよ、一旦はこの製材所で休息するつもりだったのだ。 お化け狩りのついでに見回りさせてもらおうじゃないか」 「……神父さん、僕だけに丸太運び押し付けるつもりですか? 大人として恥ずかしくないんですか?」 ちょうど丸太を運んできたロビンが噛みつくが、言峰神父は涼しい顔。 完全に、私を口実にして重労働をサボる気だ。 それでもいいから、早くあのお化けを何とかしてほしい。 「はっはっは、何を言っているのだ少年。女性のエスコートくらいできないと、将来困るぞ?」 言峰のその言葉に、ロビンは苦々しく口を歪ませた。 そして、言峰神父に吐き捨てるように叫びを投げて踵を返す。 「……神父にエスコートを訊くくらいなら、ヒグマに訊いた方がマシだよ!!」 その苛立ったようなロビンの足取りをニヤニヤと見送った後、言峰はそのまま私に振り向いた。 「……では、行こうか、黒木智子よ」 「う、うん……」 私は言峰神父に腕を掴まれて、工場の中へ引っ張られていった。 言峰は、たいそう愉悦を感じているようで、ご満悦だった。 ロビンが立ち去る間際の、赤みの差したような頬が、私の脳裏には強く残っていた。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 製材工場の間取りを、脳内でマッピングしてみる。 大体、工場自体は東西南北に約100メートルの正方形をした平屋だ。 それがほぼ1エリアを占める敷地の真ん中へんに建っている。 工場への入り口は東西南北全てに、フォークリフトや車なんかの入れる大きなものが一つずつ開いている。 私たちが追手のヒグマどもと交戦しているのは、その北端だ。 ちょうどそこは、直近に『製材場』区画があって、切り出された丸太が、サイズや種類別に山になっている。 今、製材場区画と言ったが、この工場の内部はどうも4つのブロックに仕切られているみたいだ。 製材場、加工場、乾燥場、製品置き場の4つ。 だいたい北から順に25メートル幅でその区画が縦に並んでいると思っておけば間違いないだろう。 そして、乾燥場の余った端、場所で言えば東南東の隅で東入り口の隣の位置に、それなりの広さの休憩室があった。 私が例の『腕だけ男』を目撃したのは、製材場区画の東端、細い方の丸太が置いてある山だ。 なお、ロビンは西の方の太い丸太を持っていっているので、出入口から先は全く分かれ道である。 軽く身長を超える高さの丸太の山が幾つも連なっているので、通路を兼ねたようになっている山の間に入ってしまえば、隣の山の方を見やることは一切できなかった。 「……ここか。なるほど、確かに、何らかの魔術が行使されたような気配がうっすらと残っているな……」 「ま、魔術、なのか……?」 言峰神父は丸太に向けて屈み込み、そこで興味深げに呟いていた。 霊魂やお化けやスタンドの類ではないのか、と、なんとなく私は少し安心する。 「魔術を使う英霊も山ほどいるからな。これだけではなんとも言えん」 「うっ……! う、うん……」 そしてその安心感は即座に叩き壊された。 丸太の山に沿って移動しつつ、言峰は独り言のように呟いている。 「少なくとも、もうこの近くにはいないな。直近で魔術が行使されれば、私にも認識できるだろうが……」 「ひっ……、ちょ、ちょ、ま、お、置いてかないで……!」 一人でずかずかと歩いて行ってしまう言峰に、私は必死に追いすがった。 エスコートという話はなんだったのか。 慌てる私を見て楽しんでるのか。 それとも自分の興味に集中したくなったのか。 どちらにせよロクな状況じゃない。頼むから私を守ってくれ――。 「む、待て」 「げふぅ――!?」 そして突如、立ち止まった言峰の鉄棒のような腕が横に差し出された。 走り寄っていた私はちょうどラリアットでも喰らったような形でそこにぶつかり、見事に背中からぶっ倒れてしまう。 「待てと言っただろう黒木智子……。立てるか?」 「うげぇ……、ぐふっ……。痛ってぇ……」 強かに打ち付けた背中と後頭部の痛みで涙が出てくる。 よろよろと起き上がると、ぐらつく視界に眩暈を覚えた。 ほとんど自爆ダメージとはいえ、痛みと怒りとやるせなさで、気力すら萎えそうになる。 言峰は、私を引き起こすだけ引き起こして、第二ブロックの加工場区画側に向けて耳を澄ましている。 「――たった今、ひとりでに向こうの機械が動き出した。誰か、スイッチを入れたモノがいるはずだ」 「う、腕だけ男……ッ! ヤツだよ……!!」 製材場の南端から加工場区画にかけては、何やら呼び方のよくわからない幾つもの大型機械が所狭しと並んでいる。 大体はその内部に、帯ノコだったり丸ノコを備えている、見るからに凶悪そうなものだ。 一番手前にある製材場の機械なんか、『ギャングソー』って書いてある。 丸太を投入すると、その中に何枚も重ねられた帯ノコが一斉に動いて、何枚もの薄板に切り裂いてしまうものらしい。 きっと、ギャングのボスが、組員を処刑で輪切りにした機械がこれなのかもしれなかった。 言峰と一緒に聞き耳を立てれば、確かに、ブーンという低い駆動音が加工場で鳴っている。 そして次の瞬間、パチンと音を立てて、その電源が切られた。 「……行くぞ!」 「ふえっ!? マジで!?」 風のような急加速で、言峰は即座に走り込んでいた。 Fate/zeroのアニメを見た人なら解るだろうけど、切嗣との戦いで見せた、あの低い姿勢の十傑衆走りだ。 本物の武人の走り。 とても私が追いつける代物じゃない。 恐る恐る彼の通った後を歩いて行くと、言峰は加工場の区画で眉を顰めたまま立ち止まっていた。 「……何かを持ち去ったようだな」 周囲には、ノミやカンナ、ノコギリといった、手で持てる大工道具が散らばっている。 先程稼働したのは、その横に据えられている大型機械のようだった。 「この機械は、物色している最中に誤ってスイッチを入れてしまった、ということか……。 あまり、周辺への感覚は鋭くないようだな……」 「あは、は……。そりゃ、そうだよな……、腕だけだもんな……」 冷静に状況を観察していた言峰は、呟く私に向けて振り返る。 「……いや、もしかすると、腕だけではないのかも知れんぞ」 「へ……?」 「黒木智子、その腕の根元には、魔法陣のようなものが存在しなかったか? もしかすると、これは『第二魔法』か、それに類する強力な魔術の使い手の仕業やも知れん」 第二魔法――。 言峰の説明によれば、それは、並行世界を行き来する魔法なのだという。 限定的には、空間に穴を開けて繋げたり、異なる世界の自分の能力を身に着けたりする武器も実在しているそうだ。 「例えば限定的に、『腕だけを別の空間に移動させる』ような礼装――。そんなものを保有しているのかもな。 わざわざこの工場を物色しているなら、参加者である可能性が高い。接触してみて損はないだろう」 「そ、そうなのか……? 大丈夫って、言い切れるのかよ……」 「ああ。第二魔法関連の由来には、師が詳しかったからな。この相手は英霊やヒグマの類ではなく、人間だよ」 言峰はあっさりと嘯いた。 こいつの言う師とは、自分で後ろから刺し殺した遠坂時臣さんのことである。 よく言ったもんだ。私がアニメ版最後まで見てること教えてやろうか。 それにしても、あからさまに警戒心を1ランク落としたこいつの振る舞いは如何なものだろうか。 言峰は魔術の気配を探りながら、ぶらぶらと休憩室の方にまで足をのばしていく。 こいつは、『空間移動魔術を使う』という点だけで相手を人間だと思い込んだが、それは愚かすぎる。 ネットや漫画で培った私の知識から言わせてもらえば、数々の創作において、時空間を操作する妖物なんて山のように出てくる。 『次元のアギトに臭さ嗅げよ!!』だったり。 『おまえ自身が放つ、殺気の射線』だったり。 『美しく残酷にこの大地から往ね!』だったり。 自分だけの常識で物事を判断するのは非常にアブナイことなんだと、私はそう思う。 ――私たちはもしかすると、信じられないほど凶悪な化け物に、狙われているのでは。 「……お、来たか」 「へ……?」 ふと私の前で、言峰が何かに気付いたように私の方を振り向いていた。 「後ろだ、黒木智子」 言峰が顎をしゃくる。 恐る恐る振り向いた私の目の前に、『腕だけ男』がいた。 そして、男の手に握られていたのは。 ――大きな斧だった。 「ぎゃああああああああ――!!」 「おい! 大丈夫だ――! どこへ行く!!」 目の前で振り上げられた斧の切っ先を見るや、私は肺を絞り上げて逃げ出していた。 製材工場の奥に、全力で走り出す。 言峰の声が聞こえたが、気にかけている余裕はない。 これじゃジェイソンだ。 13日の金曜日だ。 エルム街の悪夢かも知れない。 殺される。 腕だけの殺人鬼に少年少女が殺されるホラー映画になってしまう。 あれだ。 言峰は、映画の前半で決まって殺される屈強な黒人枠のかませ。 またはしたり顔で怪奇現象に高説を垂れた挙句、常識外のことで驚愕の間に殺される解説役。 逃げなければ。 何としても、最後まで殺人鬼に立ち向かって生き延びるヒロイン枠を確保しなければ――。 そこまで考えて、私はふと思い至る。 ――あれ? ――『最初の殺人にパニックを起こして逃げ惑う』のも、盛大な死亡フラグじゃね? ドルン。 と、耳元で何かの駆動音が鳴った。 「ア――……」 私は知った。 本当の恐怖というモノを感じた時に、ヒトは言葉なんて出なくなるんだってことを。 ヂュイィィイイィィィイィィィィ……。 と、無慈悲な鳴き声を上げて、私の頭上には、チェーンソーの刃が振り上げられている。 『腕だけ男』は、その手に明らかな殺意と凶器を掴んで、私の前の空間に出現していた。 テキサス・チェーンソーだ。 わたしのぼうけんはここでおわりだ。 死ぬんだ――。 死ぬ間際に、走馬灯や思い出なんて、蘇ってこなかった。 私はただ、次の瞬間に迫り来るであろう、肉と骨が抉り裂かれる激痛を想像して、背筋をぶるぶると震わせているだけだった。 それだけで心臓は止まり、私の息は咽喉で凍っていた。 ヂュイィィイイィィィイィィィィ……。 そしてチェーンソーはゆっくりと――。 ――空中に飲み込まれて消えた。 最後に、うっすらと宙に浮いていた赤い魔法陣が消えると、そこにはもう何も残ってはいなかった。 「……まったく。大丈夫だと言っただろうが黒木智子。君に気を取られたおかげでこの魔術師と接触できなかった。 向こうは私たちの存在に、気づいてすらいない……!」 その奥から、言峰綺礼が明らかに苛立った様子で私の方に歩いてくる。 工場の中ではもう、どこかで丸太が動いたり、機械がついたりするような音はしなかった。 「は……へ……」 止まっていた心臓と息が解凍されると、血液がサーッと下に落ちて、へなへなと私は床にへたり込んでいた。 全身から力が抜けて、動けない。 眼の力も緩んで、立ち眩みのような暗い視界へ、ひとりでにぼたぼたと涙が零れ落ちていた。 「……粗相の始末くらい、自分でするのだな、黒木智子」 私の傍までやってきた言峰綺礼は、私の様子を一瞥した後、呆れたように目を逸らしていた。 吐き捨てられたその言葉と共に、私は下に視線を落とす。 私の下腹部から、体温が溢れていた。 じょろじょろと音を立てて、スカートの下から、私の女子力が黄色い水たまりとなって工場の床に広がっていく。 腰の前から尻の奥までを温もりで覆い、抑止力を失った女子力は止め処なく、無慈悲に漏れていった。 ふとももを伝ってすべての女子力が流れ出した後の私は、抜け殻だった。 サナギを破って、美蝶々になろうとしていた私は、サナギのままですらいられなかった。 変態しようとして失敗し、どろどろの液体になった後、殻に開いた穴から溶け落ちてしまったのだ。 その余りにも冴えない現実を、私は立ち去ってゆくアニメキャラの背中を見ながら、気化熱で冷えてゆく下着の裡に思い知った。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 「――龍田提督ぅ! もう弾薬がないわよぉ!」 「困ったわぁ……、魚雷も破壊されてるし……」 「キーッ!! やってくれたわねヤスミンちゃん!! アチシのタマを全部搾り取るなんて、この淫乱!!」 「その表現は、比喩だとしてもご自身に使った方がより適切だと思われますが」 工場外の戦場では、ようやく地下からの攻勢が止まったところだった。 相当数の武装を保有していた第七かんこ連隊の猛攻を、グリズリーマザーとヤスミンはなんとか凌ぎきった形になる。 「このメスグマ!! メスヒグマ!! 覚えてなさいよ!!」 「ああ、それなら適切です。罵倒としては有効でないでしょうけれど。またのご来院をお待ちしております」 別れの挨拶と共にヤスミンが投げつけた丸太を叩き落とし、龍田提督と呼ばれるヒグマが率いる部隊は、補給のためにぞろぞろと撤退を始めていた。 彼らに手を振るヤスミンに対して、隣からグリズリーマザーが呆れた顔で視線を投げる。 「……ヤスミンちゃん、呼ばなくていいからね」 「敵ではなく患者として、ご来院頂ければいいのです」 「あー、やっと試合終了した?」 そこにやって来て息をついたのは、クリストファー・ロビンである。 投げ槍のようにまとめてきた丸太をガラガラと穴に落として、彼は大きく伸びをした。 地下ではその時、先程の艦これ勢と入れ替わりに、何やらよくわからない大量のヒグマたちがぞろぞろとやってくる。 「みんな!グリズリーマザー達が逃げた穴から丸太が沢山落ちてきたぞーーー!!!」 「おお!!でかした!!」 「みんな!!丸太を持て!!突撃じゃぁぁぁ!!!!」 彼らは、さもその現象が当然であるかのように、戦闘の形跡も新しい空間に何の疑念も抱かず、ヤスミンの投げていた丸太や、ロビンが落とした丸太などを嬉々として拾い上げてゆく。 そして彼らは、穴の縁にいるグリズリーマザーたちに気付かず、どこへともなく引き返して行った。 クリストファー・ロビンは、眼下の彼らを呆れながら見下ろした。 「……何もなく、ひとりでに地上の丸太は落ちてこないよ、きみたち」 「何も見えてはいないんですね、嘆かわしい……」 「艦これ勢の上の奴らは物を解ってるからこそ、下の奴らを馬鹿なままにしておくんだろうねぇ……」 「まぁなんでもいいや。追撃は暫く来ないだろうし。ようやく落ち着けるよ」 ヒグマへの感想を切り上げて、ロビンは製材工場の中へ眼をやった。 「……智子さんは、大丈夫かね」 彼の溜息に、ヤスミンとグリズリーマザーは顔を見合わせた。 彼女たちの耳は、言峰綺礼と黒木智子の会話を、余さず捉えている。 「……まぁ、肉体的には大丈夫なはずだけど」 「精神的に、ですね……」 三者三様に視線を交わし、彼らは工場の中に急いだ。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 鏡に映っている、自分の貧相な姿。 それを少しずつ、結露する湯気で覆い隠す。 「うっ……、ぐすっ……」 休憩室奥のシャワールームは、かろうじて私の心を壊さない程度に、すすり上げる声を水音で打ち消してくれた。 ――自分の漏らした尿を、自分のスカートで拭き取る。 その行為は、私の人生最大の恥辱と言ってもよかった。 思い出したくもない。 そんな姿を見られたのだ――と考えると、恥ずかしさで頭が爆発しそうだった。 泣きながらシャワールームに駆け込む下着姿の私を、先に休憩室にいた言峰は、鉄面皮の下に押し殺した薄笑いで見送っていた。 結局、全ては私の思い込みと、勘違いだった。 自分だけの常識で物事を判断していたのは、言峰ではなく私だった。 言峰の愉悦がどうとか、性格破綻がどうとかじゃなく。 こんな結果を招いてしまったのは、やはりきっと、私自身のせいだ。 デイパックの中にあった石鹸で洗う体は、相変わらず、血色も成長も芳しくない。 ゆうちゃんとか。 地下で見た布束という女とか。 同年代の女子には、私より遥かに綺麗でスタイルもいい奴らがあんなにもいるのに。 どうして私はこんな、身も心も弱くて貧しいんだろうか。 それどころか、いくら人種の違いがあるとはいえ、私の体力も覚悟も、5歳児のロビンに遥かに及ばない。 外の戦闘は、決着したようだった。 シャワールームから窺える脱衣場の外が、にわかに騒がしくなる。 ――きっと言峰は、私の情けない失態を、べらべらとしゃべくるんだろう。 それどころか、グリズリーマザーたちの耳なら、もう事態の大半は把握しているのかも知れない。 呆れ。 落胆。 失望。 ヒグマたちやロビンの蔑んだ表情が目に浮かぶかのようだった。 「何故だ……? どうしてだ……?」 独り言が。 独り言が。 独り言が、止まらん。 「なんでだよ……。なんで私が頑張った時は、いつも……、いっつも、裏目に出るんだよ……」 シャワーの飛沫を撥ねて鏡を叩いても、鏡は割れてくれない。 そのままずるずると滑った掌が、その奥に私の蒼白い顔を拭い出す。 真っ黒いクマだらけの酷い目元。 白目勝ちで凶悪な三白眼。 張りのない肌。 整えたこともない眉毛。 濡らさないように後ろにまとめ上げた髪も、はたして似合っているのかいないのか。 「鏡よ、鏡……。私は、いけてるか……?」 自問した答えは、解り切っている。 「……知らない。そんなん、知らない……」 ――いかんせん、私には、何が綺麗で何がモテるのかの、判断基準すらないんだ。 冴えない自分を凝視することに耐えられなくなって、私は目を瞑る。 ともすれば見つめただけでゲシュタルト崩壊に襲われて吐いてしまうほど、今まで私は、自分を観察してこなかった。 そのツケの極地が、このザマだ。 勘違いで恐怖し。 人前で失禁し。 その衣服を一人洗う。 ヒグマに殺されなかっただけマシ? ヒグマに殺される恥と、人前で漏らす恥の、どちらが大きいかねぇ? 恥の文化である日本人の私には、耐えらんねぇよ、どっちも……。 「……マスター。お茶、ここに置いておくよ」 脱衣所から、グリズリーマザーの声がした。 「落ち着くまで、そこにいていいからね。向こうで、みんな待ってるから」 それだけ言い残して、彼女の大きな影は、静かに休憩室の方へ立ち去っていた。 シャワーを止めてドアを開けてみると、脱衣所の洗面台の上に、湯気の立つマグカップが一つ、置いてある。 体を拭き、タオルの中に、洗って絞ったパンツとスカートを挟み込んだ後、私はそのカップを手に取った。 ほとんど透明で澄んだそのお茶は、パッと瞼を開かせるような、爽やかな香りに満ちていた。 「……なんかの、ハーブティーか? これ……」 顔を近づけて湯気を吸い込むと、レモンのような柑橘系の芳香が鼻に広がる。 そして、気管から肺腑の奥までスッと、雪に裏打ちされたかのような清涼感が吹き抜けた。 口をつけていた。 日照りに雨を仰いだように、砂漠に水場を見晴らしたように、私はそのカップを呷っていた。 甘い。 蜂蜜の甘さだ。 レモンの香りがするのに、全く酸味はない。 ただ香気が。 湯の温かさと同時に、風雪の涼しさを持って、私の口の中に遊んだ。 水ぬるむ春のような、雪解けの味だ。 草木が芽吹き、小動物が目覚め、静止の冬から立ち上がる時の味だ。 力を漲らせるような温もりと、身を引き締めるような冷たさが同時に、私の全身と心中に広がっていた。 飲み干して見上げた顔が、洗面台の鏡に映る。 「……行こう」 蔑まれようと。 会話できなかろうと。 私は、ここにいる私なんだ――。 ――私になれ。私。 映っている自分の姿を、私はさっきより2秒だけ長く、見つめられた。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 「……社交不安障害、ですね」 「そういう病名がつくのかい、マスターは」 休憩室の片隅で、ヤスミンがやかんに湯を沸かしながらそう答えていた。 グリズリーマザーの方に振り返り、彼女は言葉を繋げる。 「人間では今時、そう珍しいものでもありません。誰しも人前で緊張してしまったり、あがってしまうことはあります。 ですがそれを繰り返して、その失態の後に訪れる疎外感への不安のあまり、どんどんと他者との交流を避けたり、突飛な行動に走ってしまうようになるのならば、それは問題です」 「……何をしてやるのが、一番いいのかねぇ」 ティーポットの中に、屋台から持ち出してきたレモンバームとペパーミントをブレンドしながらグリズリーマザーは問うた。 製材工場休憩室の窓からは、東の入り口から乗り入れた灰熊飯店の屋台バスが見える。 艦これ勢を撃退した後、屋台を乗り付けたグリズリーマザーたちは、お茶の用意をして休憩室に上がり込んでいた。 豊富な香草や薬草が自前で手に入っているのは、この島が北海道であることの強みの一つである。 お茶の準備が成されている間、クリストファー・ロビンは、設えられているソファーで言峰綺礼と向かい合い、彼の語る事の顛末を静かに聞いていた。 途中で放送が鳴っていたが、この場の人員大半の予想通り、反乱したヒグマが放送室になだれ込んで放送をジャックしていた。 今更、起こってしまった事は仕方がない。 問題は、これからどのように事態に対処していくかである。 それを考えるにつけ、言峰の苛立ちはますます深まっていた。 「……と、このように。彼女の予想外の狂乱により、私たちは参加者と接触できる貴重な機会を逸してしまったというわけだ」 「……ふぅん」 ロビンはじっとりと、一方的に語り続けた言峰の顔をねめ上げたまま、黙っていた。 グリズリーマザーの言葉に、ヤスミンが答えている。 「普通に接してあげることが一番でしょう。生憎、SSRIなどの薬は持ち出して来ていませんし。 このまま、あなた方との関わりが認知行動療法のようになれば、それが最大の治療だと思います」 「認知行動療法?」 「患者さんの改善すべき状態を一つ一つ認識してもらって、どう行動を変えれば良くなるのかを自覚してもらうんです。 彼女は恐らく、親しい人とは話せる、選択緘黙の気があるようですので、結局は、あなた方が彼女と親しくなってあげて、同じように、彼女の言動を受け入れてくれる朋友を作る方法を教えてあげることですね」 「なるほどねぇ……。とにかく、気分を入れ替えてもらわなきゃね」 会話をしながら、5つのマグカップに、澄んだ色のハーブティーが淹れられていく。 そこに突然、クリストファー・ロビンが声を投げた。 「ああ、智子さんに持ってくなら、これも使ってあげて」 「――なんでしょう?」 ロビンの放り投げた物体を振り向き様に受け取ったヤスミンは、その小さな壺の中身を見て驚愕する。 「これは……、ハニーの蜜ではありませんか。あの時、回収していたのですか」 「何かしら役に立つだろうと思ってね。落ち込んだ時は、甘いもの食べるのが一番さ。プーも僕も、そうしてた」 「ヤスミンと言ったな、その蜜には、何か特殊な効能があったりするのか?」 続けて言葉を投げてくる言峰綺礼に応じつつ、ヤスミンはグリズリーマザーに壺を手渡した。 「特殊、という意味では特には。ですが、通常の蜂蜜に比してカロリーが高く、抗菌物質やビタミンに富み、ハニー由来の免疫グロブリンなども含まれているはずです」 「なんでもいいよ。とりあえず体に良いってことだろ」 追い払うように手を打ち振るロビンの仕草に合わせ、グリズリーマザーは各人のカップに蜜を溶かし込んだ。 黒木智子のものには、特に多めに。 各人にマグカップを配って、グリズリーマザーはシャワールームの方へ立ち去った。 「……へぇ、なるほど。良い香りだね。もう一戦続投する気力が湧きそうな感じ」 「うむ……。悪くない香りだ。このささくれた気分を鎮めてくれるようだ」 「……ハニー……」 クリストファー・ロビンと言峰綺礼は、同じハーブティーを飲んで互いに異なる感想を抱いた。 その気配を感じ取ったヤスミンは、同胞を思い出しながら、壁にもたれたままに呟く。 「……このハーブの組み合わせは、そのどちらの作用も、起こし得ますから」 「そうか」 「なるほどね」 ――その体感は、あなた方の心身の状態で、変化するだけなんです。 二人の返答に、ヤスミンはハーブティーの甘みと共に、言葉の後半を飲み込んでいた。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ グリズリーマザーが戻ってきたタイミングで、言峰はマグカップの中を干し、ロビンたち3名の元へ向き直った。 「……さて、もう皆わかっていることだと思うが。我々は参加者と接触する機会を一つ逃した。黒木智子の所為でだ。 あの少女にはどうにか、聖杯戦争に勝ち抜けるような心身の実力を、早急に身につけてもらわねばならない」 「それは違うんじゃないかな」 言峰が重々しく言い放った提言へ、間髪入れずにロビンが反駁していた。 「焦らずとも、参加者に出会える機会はまた来るはずさ。わざわざこの工場まで探りに来てるっていうなら、あっちは相当に状況の余裕がある。 それになにより、機会を逃したのが智子さんの所為だっていうのが、そもそも大きく間違ってるよ、神父さん」 「……なんだと?」 全員から自分の意見に賛同がくるものと頭から思い込んでいた言峰は、その言葉に眉を顰める。 少なくとも、黒木智子に成長してもらわねばならないという点では、全員がその思考を一にしているはずであった。 唯一言峰が他者と異なる点としては、時臣を始末した後の遠坂凛へ画策していたように、言峰がその教育指導の主導権を握り、智子の信頼と尊敬を一身に受けて安定した立ち位置を確保することを考えていた点である。 しかし、そんな考えを、言峰はおくびにも出していない。違和感があるはずはない。 ――それではなぜ、この少年はこんなにも恨みがましい目で私を睨むのか。 「……まず、その男の人の存在に気付いたのは智子さんのお蔭だ。同じ魔術師といいながら真っ先に気付かなかった自分の未熟さを、あなたはまず気に掛けた方が良い」 「ぬ……。だが、それは話に関係ないぞ」 「ええまだありますとも」 5歳児とは思えぬ、威圧感に満ちた瞳を座らせて、クリストファー・ロビンは言葉を続ける。 「……次に、あなたは結局僕たちに戦闘を押し付けて、一人で楽な傍観席に行きましたね? 参加者と接触する機会うんぬんなんて、完全にあなたの後付け理由じゃないですか。気付いてもいなかったくせに」 「……そうですね。丸太が足りず、危うく何度か魚雷の着弾を許しそうになったことがありました」 「放られた魚雷に一回、『活締めする母の爪』を真名解放する羽目になったからね」 「……」 言峰の行動には、マイナス点しかない――。 と、ロビンはそう言っているようであった。 前線に立っていたヤスミンとグリズリーマザーの談を聞いても、言峰の欠けた穴は相応に大きかったことが窺える。 ここから実際問題として言峰に下される評価は、 『適当な口実をつけて楽な仕事に逃げた挙句、なんの成果も挙げず、失敗を他人のせいにする信用ならぬ男』 という甚だしいものだった。 マグカップを握り込む言峰の手が震える。 彼は目尻を引き攣らせて、極力静かに言葉を紡いだ。 「……いや。よしんばそうであったとしても、最終的に機会を失ったのは、完全に黒木智子の失敗であろう。どう考えても私は悪くない」 「いいえ。違いますね。悪いのはあなただ。言峰綺礼神父」 「……お、お、おまた、せ……。ただいま、あ、上がりまし、た……」 ロビンが即座に言峰へ返事をしたその時、黒木智子が脱衣場からおずおずと歩み出てきていた。 洗った制服の代わりに、工場の作業員が来ていたらしいぶかぶかのツナギに身を包み、彼女は怯えた小動物のように姿を現す。 彼女の、余りにも奥ゆかしい小声の挨拶は、グリズリーマザーとヤスミンにしか聞こえなかった。 智子のことに気付かぬロビンは、同じく気づかぬ言峰へ、最後の発言を突き付ける。 「極め付けに……! 智子さんを泣かせたのも、参加者と接触する機会を逸したのも、全てはあなたの行ないの所為だ!! どう考えても、智子さんは、悪くないッ!!」 「……ロ、ロビン……?」 彼の言葉に、黒木智子の胸は、一瞬締め付けられるようだった。 壁際に身を寄せるグリズリーマザーたちと、ソファーで口論になっているロビンたちを交互に見やり、彼女は一気に血の昇ってくる頭で、どうにか事態を把握しようとしている。 「……面白い。言ってみろ、その理由を」 「あなたが、自分のいいように事態を進めて楽しもうとする気質の人だとは薄々思ってましたけどね。 結局あなたのしたことは、『智子さんの慌てる姿を見てやろうとちょっかいを出したけれど、思った以上に事が大きくなって傍観者じゃいられなくなったために興が冷め、全責任を智子さんに擦り付けて逃げた』ってことでしょうが」 「……ふざけるのもいい加減にしろよ、少年。私の行動のどこに、そんな要素がある」 互いに怒りを抑えられていないような震えた会話に、ついにロビンがソファーから立ち上がる。 「『後ろだ、黒木智子』――! この発言が、あなたの邪悪の全てを表現しているッ!!」 「――!?」 全く予測していなかったポイントをやり玉に挙げられ、言峰は困惑した。 ロビンはそのまま、指先を言峰に突き付けて語る。 「……智子さんがそれで後ろを振り向けば、恐怖に耐えられなくなることは、わかりきっていたはずだ。 その慌てぶりを見て楽しもうとしていたら、予想外の反応をされて楽しむどころじゃなくなった。そういうことでしょう」 「フッ……。何を言うかと思えば。それならば他に、どうすれば良かったというのだ」 ロビンは、自分より遥かに年長かつ屈強な言峰を、燃える氷のような視線で見くだしていた。 本当にわかってないのか――。 と、噛んだ奥歯に、悲しみの響きすら湛えて、彼は豁然と言い放つ。 「男なら――! 自分よりか弱い女の子を、守るものだろうが!!」 休憩室の内部は、暫くロビンの叫んだ残響に満たされていた。 「その魔術師の腕が現れたら、まず自分が彼女の前に入って、静かに交渉すれば良かったんだ。 斧? チェーンソー? そんな凶器を見て怖がらない女の子がいたら教えて欲しいくらいですよ。 何がエスコートですか。笑わせる。どうせ奥さん子供もいないクソ坊主の言うことだ。 神の愛とやらにばっかかまけて、人を愛することのなんたるかも知らないんだろ。 自分だってお母さんから生まれて来たくせに子供をいじめるとか。 あなたになんか、智子さんを任せなきゃ良かった――」 頭上から注がれる少年の罵倒を、言峰は俯いて聞いた。 飲み干されて乾いた言峰綺礼のマグカップの底に、一粒の水滴が零れていた。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 私は、脱衣場の扉の隙間から、二人の様子を見つめていた。 熱気を帯びたロビンの言葉は、私を擁護してくれていた。 蔑んだり。 疎外したりするものじゃない。 ただありのままの私を、守ってくれるものだった。 「――妻子なら、いた」 「あぁん? なんだって?」 「妻子なら、いたッ――!!」 その時、顔を上げて叫んだ言峰の掌で、マグカップが粉々に砕け散った。 その握力のままに拳を握りしめ、血の滴る双拳を下げたまま、彼もソファーから立ち上がる。 ロビンと言峰の両者が立ち上がれば、その身長差は明らかだった。 上から降り注ぐのは、今度は言峰の言葉だ。 「ああそうとも。私は妻を愛そうと努力した。だが結局、私は愛のなんたるかなど、理解できなかった。 子供が生まれたのは奇跡だった。だが私に愛想をつかしたんだろう。結局妻は自殺したよ!!」 「――っ」 ロビンはたじろいだ。 自分が知らず知らずのうちに、言峰の心の地雷を踏み抜いてしまったんだと、察したんだ。 『言い過ぎた』と、ロビンは顔でそう語っていた。 ――私は知っている。 言峰綺礼の奥さんの名は――、クラウディア・オルテンシア。 アルビノという虚弱体質で、長くは生きられなかったんだ。 言峰は人を愛せないし、美しいものを美しいと思えない、性格の破綻したクソ野郎だけど。 それでも、言峰は彼女を愛そうとしたし、彼女は最後に、「貴方は私を愛しています」と告げて、死んだ。 言峰が、本当は人を愛せるんだと、証明するために。 ――言峰はその時、「どうせ死ぬのなら、私の手で殺したかった」と、考えてしまった。 だから彼は、その時の自分の思いと記憶を、封印した。 でも本当はその思いは、本当に彼女を愛していたからこそ、抱いたものなんじゃないかと――。 私は、そう思った。 「……はぁ。もう、どうとでもなれ。こんなクソ神父の思い出話を引き出してもつまらんだろう。 私を論破して気が済んだなら、さっさと代案でも立てろ、少年――!!」 言峰はどっかりとソファーに倒れ込み、背もたれに大きく身を預けて、仰向けになってしまった。 「あぁ――」 私はそいつの、思いっきり引き結ばれた口元を見て、思った。 こいつも、私と同じなんだ。 サナギから美蝶々になろうと、どうにかもがいていた人間なんだ。と。 醜いイモムシから、やっとの思いでサナギになり、その先に待つ未来を夢見た。 それがこいつの場合、サナギから目覚めて脱皮した後の自分は、進化せず、変態もできず、変わることなくただぶくぶくと肥大した、イモムシのままだったんだ。 溶け落ちて抜け殻になるより、それはきっと、もっと恐ろしいことだっただろう。 醜くて、汚くて――、そんな自分を押し隠そうとしながら、こいつは生きてきたんだ。 イモムシの自分を出してしまえば、目に映る愉悦の先に帰ってくるのは、その先の者たちの怨嗟だ。 イモムシの私も、このままでいたらきっと、この言峰と同じ末路をたどるだろう。 それどころか、私の場合はもっと悪い。 こいつは、その自分を押し隠して、ひたすら信仰と戦いに打ち込めるだけの気力があったからこそ、中身が外道でも外面だけは立派な地位を保ってこれた。 でも、私の場合にはそれすらない。 中も外も、ただのクズのままで終わってしまう。 そんなのだけは、御免だ。 ――こいつを、反面教師にしよう。 絶対に、言峰のようにだけはならない。 と、私はそう、心に誓った。 「――あれ、智子さん、上がってたんだ。そのポニーテール、可愛いね」 「はえ……?」 その時、収まりの悪さに辺りを見回していたロビンが、私の姿に気付いていた。 そして真っ先に掛けられた言葉に、私は驚いた。 『ポニーテール』、『カワイイ』だ。 濡らすと乾燥に手間取るから制服のネクタイで上げただけの髪だったけれど、こいつは、すぐさまそれに気付いた。 そして、それをカワイイ、と――。 私のことを、かわいいと、言ってくれた。 「……さっぱりしたかい、マスター」 「う、うん……」 「こっちきて座りなよ。今、神父さんと今後の予定を話してたところだから」 「お、おう……」 話してたというか、一方的に叩きのめしていたように見えたのは私だけだろうか。 グリズリーマザーとロビンに招かれ、私はソファーに座り込む。 反対側のソファーで大の字になっている言峰は、一瞬頭を持ち上げて私を見た後、また後ろにもたれかかってしまう。 「……世間では、そういう格好をカワイイと言うのか? 私にはわからんな……」 おう。そうだろう。 私もこと装いに関しては、世間一般と美的感覚が真逆のお前に評価してもらうつもり無いんで。 ごめんな。 「……とにかくねぇ、おもらしの一つや二つで恥ずかしがらなくていいよ智子さん」 「ひえっ……!? き、きい、たの、か、よぉ……」 「僕も最近までおねしょしてたしね。よくあるよくある」 「う、あ、そ、そりゃ、お前はだって、5歳かそこらだろ……」 「何歳とか、そういう枠にはまった評価で話すのはやめようよ」 案の定、言峰は私の失態の全てを語り尽くしたらしかった。 それでも、ここにいる者はみんな、私のことを蔑んだり、していなかった(約1名を除く)。 他人のことを蔑むのはきっと、自分に自信が無いからだ。 ここにいる者は全員、自分の存在に自信を持っているんだろう(約1名を除く)。 みんな私が、お手本にすべき、者たちなんだろうな。きっと。 「……とりあえず落ち着いたところで、お互いに物資の確認でもするかい? 予定の話し合いといったら、まずそれだろ」 「私はこのカソックとパーカー以外に、何もない! あとは預託令呪9画のみ!」 グリズリーマザーの発言に、言峰は仰向けになったまま、投げ遣りにそう叫んでいた。 ウケ狙いなのか。 それとも単に苛立っているのか。 さもなくば装備品の無い自分を嘆いているのか。 唐突過ぎて、誰も言峰の叫びに反応を返せなかった。 痛い。 かたわらが、痛い。 まるで新年度の自己紹介の時に浮きまくった自分を見ているようだった。 グリズリーマザーが、その時の担任の教師のように、進行に困って目を泳がせている。 「――あー、えぇと。じゃ、言峰さんはそういうことで。マスターは?」 「私……か」 私が持っているのは、ちょっとした食べ物や地図なんかの基本的な支給品。 それに大量の石ころと、グリズリーマザーの聖遺物にあたるんであろうカードだ。 令呪も持ち物に入るのなら、まぁそれもだけど。 「あぁそうそう。智子さんにはこれがあったよね。投石用の石ツブテ。 良かったらちょうだい? 持ってるボールがほとんどないんで」 「お、うん……。わ、私が持っててもどうしようもないし……」 テーブルに出した支給品をロビンが掠め取るのは、私が返事するより遥かに早かった。 遠慮の無さで言えばネモ以上かもしれん。 「少年……。人のものを取っておいて、自分は何もせんのか。それこそ、人間としてどうなんだ」 「やだなぁ神父さん。そんな低レベルなこといちいち口に出すと器が知れますよ」 ロビンの行為に、仰向けのままに言峰が口を挟む。 しかし、当のロビンはさらっとその言葉を流して、支給品を広げ始めた。 さっきは、言い過ぎたことに対する反省の色が多少なりとも見えたのだが、既にロビンの中でそれとこれとは別になっているらしい。 私には、目をつぶったまま震える言峰が、心中で悔し涙でも流してるんじゃないかと思えてきた。 「さーて、なんでも取っていっていいよー智子さん。ここら辺のボールはダメだけどー……」 なんでも、と言っておきながら、ロビンは取り出していく傍ら、手榴弾、砲丸、野球ボールなんかはサッとテーブルの隅にまとめてしまう。 その他に出てきたのは、何かの手甲や、銀色のものものしい鎧。 「あ、智子さんにはこれが良いかも知れない。ちょうどポニーテールだし」 なんでも取っていっていいよ、と言っておきながら、最終的にロビンは、デイパックの片隅に明らかに邪魔なものとして追いやられていた何かを私に押し付けてきた。 そのパッケージは、どうやらアニメのサントラのようだった。 絵柄は、パンストみたいなアメリカチックのデフォルメキャラで、2チームの女の子たちが楽器を手に、コンサート会場で競っているようなイラストになっている。 「ん……!? こりゃ、『マイリトルポニー』!?」 「あ、やっぱり知ってた。智子さんこういうの好きそうだモンね」 正確なそのタイトルは、『My Little Pony Equestria Girls Rainbow Rocks - Original Motion Picture Soundtrack』。 私の記憶が正しければ、これは日本でも放送されたアメリカ発のポニーのアニメ『マイリトルポニー』の、その公式擬人化映画。そのサウンドトラックが焼かれたCDというわけだ。 「……やっぱアメリカだと、これ有名なアニメなのか!?」 「ん? 僕はイギリス人だよ。もっと言うとスコットランド人だけど」 丸一日枯渇していたアニメ分が思わぬところから補給され、私は興奮した。 ロビンは私の思い込みをやんわりと訂正しながら、CDのパッケージを叩く。 「まぁ、ロンドンでもグッズは見かけるよ? 女の子向けだからたまにしか見なかったけど、森のみんなみたいで可愛いとは思う。 でも、支給品にもらったところで困るから、あげるよ」 「いやぁ……火曜日の朝7:30とかから始まるから、見てるといつも学校遅刻寸前でさぁ……」 日本語版スタッフは、一体何を考えてそんな放映時間にしたんだろうか。 幼女だって、見てたら小学校に遅刻するだろうに。 「このさぁ、レインボーダッシュってヤツの声質が私とそっくりなんだよ。アテレコできんじゃねとか思って、こいつの出てる回はつい最後まで見ちゃうんだよね~……」 「うん、確かに似てる。でも智子さん、性格はダッシィと正反対だよね」 「うっ……」 興奮して語り始めていた私は、ロビンの発言に硬直してしまった。 レインボーダッシュっていうのは、速さ自慢のペガサスのキャラクターだ。 なんか気象管理士の地区長かなんかの、結構立派な職業についてる。 声は似ているけど、自分の実力に確固たる自信を持ってるところとか、ちゃんとした職業についてるところとかは、私と全然違う。 私は、私だ。 それでも、こいつみたいな自信が、少しでも私にあればいいのに――。 そう思いつつ漫然とめくっていた歌詞カードに、レインボーダッシュのソロ曲があった。 豊富でクオリティの高い歌が有名なマイリトルポニーだけど、たぶんこれは、このキャラの初のソロ曲のはずだ。 タイトルは『Awesome as I want to be』。 声が似てるから、私でもたぶん歌えるはず――。なんだが、本国版のためか、歌詞は全部英語で書かれていた。 幸いにも、大体の意味は私にも解る程度の簡単なものだ。 きっと、ロビンも知ってるこいつをプロっぽく歌ってやったら、さぞ尊敬されるに違いない――。 「あのさ、『アウェソメ・アズ・アイ・ウォント・トゥ・ビー』ってどんな曲よ。お姉さんがキャラボイスで歌ってやってもいいんだぜ!?」 「はぁ? 何を言ってるんですか智子さん?」 メロディさえ分かれば――、と思って問うた言葉に返ってくるのは、ロビンの不可解な二度見だ。 すっと、彼は歌詞カードのタイトルを指さし、そしてこみ上げるように笑いで震えてくる。 「智子さん……。このタイトル、『オーサム・アザイ・ワナビー(夢見てたくらいサイコー)』って読むんですよ。 なんですか『アウェソメ』って……。こんなのも読めないとか……。アウェソメ……。あおイソメみたいな……。 Awesomeが読めないのが許されるのは、エレメンタリースクールまでですよね……、クククククッ」 「……う、うっ、うるせぇな!! そ、そんなの日本の文科省に言えよ!! そんな英単語習ってないもん!!」 私は顔を真っ赤にして立ち上がっていた。 ガキでもわかる英単語を、読み違えていた。 これは間違いなく私のせいじゃなく、日本の英語教育の低レベルさのせいだ。 頼むから、外国のガキに馬鹿にされるような英会話を日本人にさせないで下さい、お願いします。 「聞きました言峰さん? 可愛い智子さんを引き出すなら、これくらい平和な環境下でやらないとダメですよ?」 「……留意しておくよ、少年……」 赤面の叫びをスルーして、ロビンは向かいの言峰に笑いかけていた。 言峰は心底嫌そうな顔で言葉を飲んだ。が。 この意味するところはつまるところ。 ……私はずっと、この言峰とロビンに弄ばれていただけというわけだ。 「ふぇっ……、ふえぇ……」 顔を覆って、ソファーにへたり込んでいた。 恥ずかしいけれど、なんかカワイイと言われたからそれはそれで良いような気がしてきて、面映ゆすぎて爆発しそうだった。 何も言わずぽふぽふと頭を撫でてくれるグリズリーマザーの手が、気持ちよかった。 「んで、あとはこのクッキーみたいなので、僕の支給品はお終いですね」 何事もなかったかのように支給品整理に戻ったロビンが最後に取り出したのは、一枚のクッキーだ。 今まで状況を静観していたヤスミンが、そのクッキーを見てピクリと反応していた。 「……それは」 「あ、ヤスミンさん、これなんだか解るんですか? クッキーにしては色も臭いも生々しくて、あんまり食べる気にならなかったんですけど」 「スフェア培養されたHIGUMA細胞の塊ではありませんか……!? まさか凍結乾燥して状態を維持しているとでも……」 ヤスミンはロビンからそのクッキーを受け取って眺め回し、そして何度か頷いた。 「……間違いありません。これは私たちヒグマの体を構成している幹細胞だけを、純粋に培養したものです。 このような形で保存する技術があったとは、驚きましたね……」 「え……、じゃあ、もしそのクッキーを食べたら、ヒグマになっちゃうとか……!?」 ヤスミンの言葉に、私は恐ろしい想像をしてしまい、思わず身を引いていた。 私の呟きを聞いたヤスミンは、暫くきょとんとした後、急に相好を崩してクフクフと笑い始める。 「……面白いことを言いますね智子さん。確かに、水分さえあればこれは細胞としての機能を取り戻すでしょう。 ですが、人間がこれを食べたところで、人間は人間のままですよ。ジンギスカンを食べたら羊になりますか?」 「いや……、でも、病気みたいに、なるかも……」 「なるほど。腸管から細菌やアメーバのように感染し、臓器などに停滞する――。可能性はゼロではないでしょう。 ですがそれは身体からすれば異物ですし、だからこそ免疫応答・炎症反応が発生し病気となるんです。 もし、このHIGUMA細胞に、遺伝子操作や免疫調節などもなしに適合してしまうのなら――」 ロビンにクッキーを返しつつ、ヤスミンは私に微笑んだ。 「――きっと元から、その『人』は『ヒグマ』だったんですよ」 彼女の言葉を受けて目を落とした私の膝には。 公式で『人』となった『ポニー』のアニメが置いてある。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 「――むっ」 その時突然、黒木智子の隣でグリズリーマザーが耳をひくつかせ、顔を上げていた。 その動きにヤスミンが反応する。 「あら、グリズリーマザーさんにも聞こえましたか」 「ああ――、実を言うとさっきも一度聞こえたんだが。ヤスミンちゃんにも聞こえたとなると聞き間違いじゃないね」 「ええ。先ほど12発、今4発――。位置は南南東に数百メートルというところでしょうか」 両者で話す雰囲気には、緊張感が漂っていた。 言峰綺礼も起き上がり、ロビンもクッキーを仕舞いながらそのヒグマたちの動きに注目する。 ヤスミンが彼らに振り向く。 「今、遠くで、明らかに戦闘が発生していると思われる大口径の砲音が聞こえました。 私たちのような者が、同じく艦これ勢相手に戦っているのかも知れません」 「……なんだと。ではすぐに向かってやるべきではないか」 「ほら神父さん、見ましたか? 参加者と接触する機会なんて、すぐに来たじゃないですか」 勢いよく立ち上がった言峰に、ロビンはソファーから鼻持ちならない得意顔で見上げてくる。 こめかみに浮かぶ青筋を気合で押さえつけ、言峰は鼻息も荒く休憩室の外に歩み出していった。 「そぉうだな……! すぐに来たからすぐに行くぞ!! それでいいな!!」 「は~い、神父さん♪」 ロビンはマグカップのハーブティーを干して、朗らかな声で立ち上がる。 肩を怒らせて真っ先に灰熊飯店のバスに乗り込んだ言峰に、ヤスミンが追いすがっていた。 「キレイさん……。掌、手当て致しましょうか」 「ああ……、これか。すまない、頼む」 マグカップを握り砕いていた言峰綺礼の掌は、血塗れだった。 ヤスミンはそこからマグカップの破片を取り除き、ミズゴケで血を拭き取った後にヒグマの体毛包帯で巻いた。 「……おいおい。これはヒグマ用のではないのか? 大丈夫なのか?」 「……それはご自身がヒグマになるなどと思っていらっしゃるがゆえの問いですか? あなたにも免疫機能があるんですよ? HIGUMA細胞が生着するわけないじゃないですか」 「それではなぜこれを使う」 「ヒト-HIGUMA間の異種細胞においても、創傷治癒サイトカインのオーソログが保存されていますので。人間の傷の治りも早いのです」 「……半分以上意味が解らなかったんだが。まあいい」 整然とした手つきで言峰の手に包帯を巻きながら、ヤスミンは暫くして、ふと低い声で囁いた。 「……私が問診すれば、あなたにも相応の精神疾患が見つかると思うのですが。希望なさいますか?」 包帯を切り、ヒグマの毛皮で保護された自分の手に目を落として、言峰は返す。 「……見つけたところでどうなる。末期がん患者に余命を告知してトドメを刺すのか?」 「……彼女のように、治療法は、有るかも知れませんよ?」 顔を上げた言峰の眼に、バスへジャンプで飛び乗ってくる少年、ロビンの姿が映る。 運転席に座るグリズリーマザー。 そして彼女の後ろに着座する、赤いリボンのポニーテール。 ――よくよく見ればそのリボンはネクタイで、青い衣服は丈の余ったツナギなのだが。 その少女は、装いと共に心境も新たにして、バスの進行方向を見据えているようだった。 溶け落ちたプライドで、羞恥の殻をかなぐり捨てた黒木智子のその姿を見て、言峰は両手をきつく握りしめた。 「……よしんばあったならあったで。ヒグマなどの世話にはならん……ッ!」 「……そうですか。それでは」 ヤスミンは彼の返答を聞き、静かに言峰の元から立ち上がった。 「……あなたが私たちの味方である限り、私はあなたの味方ですので」 それだけを言い残して、ヤスミンは最後部の座席から振り向く。 「ヤスミンちゃん、そっちの何かは終わった!?」 「ええ。キレイさんの手掌を治療していました」 「よし、それじゃ行こう。いつでも投石はできるようにしておくから」 「うん……。頼んだ、グリズリーマザー……!!」 「それじゃあ出すよぉッ!!」 全員の着座を見届け、グリズリーマザーが屋台バスを稼動させた。 走りゆくバスの振動を感じながら、言峰の表情は晴れなかった。 ただ彼の心中には漠然と。 ――クリストファー・ロビンは、邪魔だな。 という、率直な感想が立ち上っていた。 【F-3 街/製材工場 日中】 【クリストファー・ロビン@プーさんのホームランダービー】 状態 右手に軽度の痺れ、全身打撲、悟り、《ユウジョウ》INPUT、魔球修得(まだ名付けていない) 装備 手榴弾×1、砲丸、野球ボール×1、石ころ×96@モンスターハンター 道具 基本支給品×2、ベア・クロー@キン肉マン、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、ヒグマッキー(穴持たずドリーマー) [思考・状況] 基本思考 成長しプーや穴持たず9を打ち倒し、ロビン王朝を打ち立てる 0 智子さん、麻婆おじさん、ヒグマたちと情報交換し、真の敵を打倒する作戦を練る。 1 投手はボールを投げて勝利を導く。 2 苦しんでいるクマさん達はこの魔球にて救済してやりたい 3 穴持たず9にリベンジし決着をつける 4 その立会人として、智子さんを連れて行く 5 後々はあの女研究員を含め、ヒグマ帝国の全てをも導く [備考] ※プニキにホームランされた手榴弾がどっかに飛んでいきました ※プーさんのホームランダービーでプーさんに敗北した後からの出典であり、その敗北により原作の性格からやや捻じ曲がってしまいました ※ロビンはまだ魔球を修得する可能性もあります ※マイケルのオーバーボディを脱がないと本来の力を発揮できません ※ヒグマ帝国の一部のヒグマ達の信頼を得た気がしましたが別にそんなことはなかったぜ。 【黒木智子@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】 状態:ネクタイで上げたポニーテール、気分高揚、膝に擦り傷 装備:令呪(残り3画/ウェイバー、綺礼から委託)、製材工場のツナギ 道具:基本支給品、制服の上着、パンツとスカート(タオルに挟んである)、グリズリーマザーのカード@遊戯王、レインボーロックス・オリジナルサウンドトラック@マイリトルポニー [思考・状況] 基本思考:モテないし、生きる 0 グリズリーマザーと共に戦い、モテない私から成長する。 1 ロビンやグリズリーマザー、ヤスミンに同行。 2 言峰は反面教師にする。 3 ビッチ妖怪は死んだ。ヒグマはチートだった。おじさんは愉悦部員だった。最悪だ。 4 どうすればいいんだよヒグマ帝国とか!? ※魔術回路が開きました。 ※グリズリーマザーのマスターです。 【グリズリーマザー@遊戯王】 状態:健康 装備:『灰熊飯店』 道具:『活締めする母の爪』、真名未解放の宝具×1、穴持たず82の糖蜜(中身約2/3) [思考・状況] 基本思考:旦那(灰色熊)や田所さんとの生活と、マスター(黒木智子)の事を守る 0 マスター! アタシはあんたを守り抜いてみせるよ! 1 あの帝国のみんなの乱れようじゃ、旦那やシーナーさんとも協力しなきゃまずいかねぇ……。 2 とりあえずは地上に残ってる人やヒグマを探すことになるかしら。 [備考] ※黒木智子の召喚により現界したキャスタークラスのサーヴァントです。 ※宝具『灰熊飯店(グリズリー・ファンディエン)』 ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:4~20 最大捕捉:200人 グリズリーマザーの作成した魔術工房でもある、小型バスとして設えられた屋台。調理環境と最低限の食材を整えている。 移動力もあり、“テラス”としてその店の領域を外部に拡大することもできる。 料理に魔術効果を付加することや、調理時に発生する香気などで拠点防衛・士気上昇を行なうことが可能。 ※宝具『活締めする母の爪(キリング・フレッシュ・フレッシュリィ)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1~2人 爪による攻撃が対象に傷を与えた場合、与えた損傷の大きさに関わらず、対象を即死させる呪い。 対象はグリズリーマザーが認識できるものであれば、生物に限らず、機械や概念にまで拡大される。 【言峰綺礼@Fate/zero】 状態:健康、両手の裂傷をヒグマ体毛包帯で被覆 装備:令呪(残り9画) 道具:ヒグマになれるパーカー [思考・状況] 基本思考:聖杯を確保し、脱出する。 1 黒木智子やヤスミン、グリズリーマザーと協力体制を作り、少女をこの島での聖杯戦争に優勝させる。 2 ロビン少年に絡まれると、気分が悪いな……。ロビカスだな……。 3 布束と再び接触し、脱出の方法を探る。 4 『固有結界』を有するシーナーなるヒグマの存在には、万全の警戒をする。 5 あまりに都合の良い展開が出現した時は、真っ先に幻覚を疑う。 6 ヒグマ帝国の有する戦力を見極める。 7 ヒグマ帝国を操る者の正体を探る。 ※この島で『聖杯戦争』が行われていると確信しています。 ※ヒグマ帝国の影に、非ヒグマの『実効支配者』が一人は存在すると考えています。 ※地道な聞き込みと散策により、農耕を行なっているヒグマとカーペンターズの一部から帝国に関する情報をかなり仕入れています。 【穴持たず84(ヤスミン)@ヒグマ帝国】 状態:健康 装備:ヒグマ体毛包帯(10m×9巻、8m×1巻) 道具:乾燥ミズゴケ、サージカルテープ、カラーテープ、ヒグマのカットグット縫合糸 [思考・状況] 基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため傷病者を治療し、危険分子がいれば排除する。 0 帝国の臣民を煽動する者の正体を突き止めなければ……。 1 エビデンスに基づいた戦略を立てなければ……。 2 シーナーさん、帝国の皆さん、どうかご無事で……。 3 ヒグマも人間も、無能な者は無能なのですし、有能な者は有能なのです。信賞必罰。 ※『自分の骨格を変形させる能力』を持ち、人間の女性とほとんど同じ体型となっています。
https://w.atwiki.jp/vermili/pages/971.html
発言者:ニナ・オルロック 対象者:トシロー・カシマ そんな、優しく……いえ、もっと、強く、荒々しく……… 乱暴に犯しても……蹂躙しても構わないの……よ? ホテル・カルパチアから、“主”の求めに応じその身柄を奪い去ったトシロー。 ……やがて、『ノーマ・ジーン』で目覚めたニナは、 かつて知ることの出来なかったトシローという武士(サムライ)の過去、 そして、迷いを振り切った彼が今一度捧げると誓う“忠義”の重みを、確りと受け止めようとしていた。 そうして、決心を固めた彼女は、12年間踏み込めなかったあの一夜の“先”へと自ら踏み込む――― 「……判ったわ。主従。君臣。私たちが、そういう関係になったという事は」 「──では、それ以外(・・・・)は……?」 少女の面影を残す躯が男に触れ合い、細い腕が背中に回される。 見つめるその瞳の中には、逸るような、怯えるような……相反する感情の鬩ぎ合いが演じられていた。 回された腕に、力が増してゆく。 「あの事は(・・・)……私の中でずっと負い目になっていたの」 「女の武器で男を繋ぎ止めようだなんて…… 売女と呼ばれても仕方ない、浅はかな考えだったと思う。 貴方の顔を見るたび思い出しては、自己嫌悪に陥っていたわ……」 「なのに貴方は、この12年何も言わず、私の傷口(よわみ)に触れもせず、 ただ黙って己の務めだけを果たし……そんな貴方を憎らしく思った事さえある」 「きっとこの男は、心の底で汚らわしい私を軽蔑しているに違いないと……」 明かされたニナの苦しみ。そこにある誤りを、トシローは確かな言葉で以て否定する。 「俺は古い男でな……女の操(みさお)には命に等しい重さがあると、物心つく頃からそう信じているのだ」 「そんな純潔(もの)を差し出してまで、何かを守りたいという決意(おもい)…… 士道を逸(はぐ)れて百数十年。月なき闇を彷徨ったこの眼には、眩しく映った」 「……それは、闇夜に射した一筋の月光のようだった」 「とんだ買い被りかもしれなかったわよ…… 私が、そんな純潔(もの)に道具程度の価値しか持っていなかったとしたら……」 「ならば、あの涙の説明はつくまい」 安堵し、微笑む少女はしかし、再び不安に心を揺らす……… 「でも貴方は……私に“女”を求めないのね。それは、貴方の忠義(せかい)には邪魔だから」 「男の貴方には理解できないかもしれない…… でも、やっぱり私は女。女には女の納得の仕方があるものよ?」 「傍に立ちこの背中を守ってくれる、 誰よりも勇敢な男に求められている(・・・・・・・)…… そう思えることが、何にも代えがたい納得に、自信になるの」 素直な心で語られる主の望みを、かつてのような戸惑いを見せることなく、確かな意思を持ってトシローは荒々しい抱擁で迎えた。 強大な敵に、かつてない窮地に立ち向かう自信を、今彼女に与えられるのは己だけであると。 「誰が、おまえを欲しくないなどと言った……?」 「トシロー………」 ――――酒場の暗がりに、ニナは着衣をはだけて…… 12年前と変わらぬ、白雪のように肌理の細かい肌と、見る者を圧倒する淫らな果実を露にしていた。 「……不思議ね。あの時と違って恥ずかしくないのは、どうしてかしら……」 「2度目だから……? いいえ、違うわね……きっと。 あの時の私はこれ(・・)を恥ずべき行為だと思っていた。後ろめたさを持っていた……」 「けれど、今は……心の底から貴方を求めている……貴方だけを……」 そして、激情を秘めたまま、一人の女としてニナは命を告げる―――― ………何をしているの? さあ、貴方のしたいようにして頂戴……私を可愛がって………ね? ????「……………」 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/friendsvsfriends/pages/21.html
どうしても勝てない相手に対する対策 相手の戦術別 対策方法 相手が刀を持って襲ってきた①相手よりも足を速くする ②相手が移動できない場所に移動する ③連射武器を使って毒を付与する ④爆発を使う ⑤相手の武器を奪うor削除する ⑥自爆する 相手が強い武器を装備していて 勝ち目がない!①相手の武器を奪うor削除する ②爆発を使う ③相手の武器が苦手な交戦距離に移動する ④自爆する なんか脳みそ打たれて即死した①無敵になる ②スモールヘッドを使う ③上を向くor後ろを向いて下を向く ④自爆する なんかずっと無敵の人がこっちに来た間違って無敵だと思い込みやすいカード ①相手の心臓を見つけ出して破壊する ②相手が力尽きるまで逃げる ③ハートレスに属性ダメージを与える ④相手に刀を渡す 相手の自爆がどうしようもない/避けられない①爆発耐性を積みましょう。 ②無敵になりましょう ③相手よりも足を速くして 遠距離で倒す ④ラウンド有利を取りましょう 相手からどうしようもないレベルのデバフを受けてしまった①武器カードを多く採用する ②自爆する ③爆発を使う ④タレットを使う 相手が巨大化した①連射武器を使って毒を付与する ②炎ダメージで倒す ③マインドブロウで倒す ④体力ダウン/ポイズン などで直接ダメージを与える ⑤自爆+ビックボム 相手がめっちゃ小さくなった①ノージャンプを使う ②バレットタイムを使う ③爆発を使う ④逃げる/時間を稼ぐ ⑤燃やす ⑥自爆する 勝てる見込みのないラウンドは 極力カードを使わないで温存する 相手の戦術別 対策方法 Friends vs Friendsを遊んでいたら 刀持ってる奴 自爆特攻してくる奴 攻撃全部効かない奴 めっちゃデカい奴 めっちゃ小さい奴 まるでチートのような強さの相手と出会い わけわからない戦法で ボコボコにされる 勝 て る わ け が な い ! こんなの どうやって 対策 するんだ !? ここでは、そんな 一見どうしようもない状態から 逆転するためのヒントを記載します。 単に対策するだけではなく 相手の使ってきた戦法を真似したり 参考にして 自分も相手と同じ戦法をデッキに組み込み それらの長所 短所を知ったり 今度は自分がこの恐ろしい戦術の使い手になったり 逆に相手の戦法を崩すようなカードを採用して 相手の作戦をめちゃくちゃにしたり 自分なりの楽しみ方を見つけられるヒントになれば幸いです。 [部分編集] 相手が刀を持って襲ってきた 刀は近接の火力が高いため、近づかれたら一気に切り刻まれて終わりです。 また、刀は右クリックをしている間 リロードするたびに8回 被ダメージを85%カットする能力もあります ガードしながら距離を詰めてきて 近距離戦になったら一気に切り刻まれてしまいます ①相手よりも足を速くする スピードアップ スピードダウンなどで相手よりも速くなれば追いつかれることがありません。 また ハル (キャラクター/移動速度+10%)を使うことも有効です。 身代わりの術で攻撃を1発無効化して 再度距離を取ることも出来ます。 ②相手が移動できない場所に移動する ムース・サルト (キャラクター/毎ラウンドダブルジャンプ可能) ダブルジャンプ ノージャンプを使って 相手が届かない位置に移動してしまいましょう。 ③連射武器を使って毒を付与する ブラスホッパー FK-82 これらを使用した状態で ポイズンバレットを使用すれば相手の刀はすぐに防御回数を消費して 全くの無防備になり 一方的にボコボコにできます。 また、毒ダメージは刀によるダメージ軽減の影響を受けないため、効率よくダメージを与えられます ④爆発を使う パンチR ランドマイン スティッキーボム などで相手に一気にダメージを与えて やられる前に倒してしまいましょう。 ⑤相手の武器を奪うor削除する ウェポンスワップ (相手の武器と自分の武器を入れ替える) ディスアーム (相手の武器を初期武器へ変化させる) プレゼント (全員にランダムな効果を発生させる→半分以上の確率で全員強制的に武器変更) 刀狩りのお時間です。 ⑥自爆する セルフデストラクション 相手も道連れにしてやりましょう 相手は接近して来るので どうあがいても避けられません 相手が強い武器を装備していて 勝ち目がない! Friends vs Friendsにおいて武器の差はかなり戦力を変化させる重要な要素と言えます。 相手が強力な武器を入手してしまったときの対処法を紹介いたします。 ①相手の武器を奪うor削除する ウェポンスワップ (相手の武器と自分の武器を入れ替える) ディスアーム (相手の武器を初期武器へ変化させる) プレゼント (全員にランダムな効果を発生させる→半分以上の確率で全員強制的に武器変更) これでチャラです。 ②爆発を使う パンチR ランドマイン スティッキーボム 相手が接近してきたなら 大チャンスです 爆発で大ダメージを与えれば 武器が不利でも 相手に打ち勝つことができます。 ③相手の武器が苦手な交戦距離に移動する 例えば 相手がショットガンなら 逃げて遠距離戦にする 相手がスナイパーなら接近戦にして 頑張って避ける など パーレイを使用して、相手との距離を安全に詰めることも可能です。 スナイパーは近距離であっても 当たってしまえば大ダメージなので 油断は禁物です ④自爆する セルフデストラクション 自爆はどうしようもない時 全てを解決します 相手は強力なカードを使ったわけですから リソースの差で次ラウンド以降有利になれます。 なんか脳みそ打たれて即死した 脳が出ているのは マインドブロウの効果です。 最大で6秒間 頭の上に脳が出現する 脳に弾丸が当たると 通常の10倍のダメージを受ける ①無敵になる ティンマン アイスブロックなどを使用すれば やり過ごせます。 ニュークを使用すれば 使用中の演出でマインドブロウの効果時間をかき消すことができます。 パーレイでも同じことができます。 アイスブロックで効果時間が切れるまで 待ちましょう 効果時間が切れても ラグで脳が出ていることがあるので 少し待ってから氷状態を解除しましょう。 身代わりの術も攻撃を1発無効化して 尚且つ透明で移動できるので 非常に良い手段です。 相手を倒せそうなのであればペインキラーで一時的に死亡判定を無効化し やられる前にやれば勝利できます。 ②スモールヘッドを使う スモールヘッドを使うと 頭が小さくなるので、出てくる脳も豆のように小さくなります。 シュリンキングスペルも同じ理由で脳の判定が小さくなります。 ③上を向くor後ろを向いて下を向く 脳は頭に追従するため 上を向いたり 後ろ向いて下を向くと 自分の体に隠すことができます。 打つ手がない時は この方法で避けることも出来ます。 ④自爆する セルフデストラクション ドカン!と相手もろとも破壊します。相手は強力なカードを使ったわけですから リソースの差で次ラウンド以降有利になれます。 その他注意点 マインドブロウはビッグヘッドと併用されることが多いカードです。 ビッグヘッドが来たら 相手のマインドブロウを警戒するようにしましょう。 なんかずっと無敵の人がこっちに来た これはハートレスの効果です。 心臓を取り出して地面に置く。移動スピード-12% 弾を弾く体になるが、秒単位で(HP-4 または HP-5) 相手に心臓を射抜かれてしまうと、一巻の終わり 間違って無敵だと思い込みやすいカード 体が虹色に光って無敵のイメージがある ペインキラーというカードもありますが こちらは ×数秒間無敵...ではなく 〇数秒間死亡判定だけを無視する という効果なので、間違えないようにしましょう。相手が虹色に光っていてもダメージを受けます。 『体は虹色に光るけれど 無敵ではない でも光っている間は体力が0になっても 死なないので注意』 ①相手の心臓を見つけ出して破壊する 相手がカードを使用した位置に心臓が設置されています。それにダメージを与えると相手は即座に死亡します。 ②相手が力尽きるまで逃げる 相手は移動速度が-12%されています。走れば逃げられる速さです。 逃げるのが難しい場合は スピードアップ スピードダウンなどで相手よりも速くなれば追いつかれることがありません。 また ハル (キャラクター/移動速度+10%)を使うことも有効です。 パーレイは確実に7秒経過させることが出来るので 28ダメージ分の時間を稼ぐことができます。 このゲームはしゃがんで移動すると足音を完全に消すことができます。相手に見つからないようにかくれんぼするというのも手です。 ピンポイントでハートレス対策するならインビジブル(最大12秒透明になる)も有効です。 スモークボムも効果時間が30秒と長く 相手を巻くのに最適です。 アイスブロックの中に閉じこもれば かなりの時間を稼げます。 身代わりの術で透明になりながら高速移動することで時間稼ぎが出来ます。 ③ハートレスに属性ダメージを与える ハートレスは通常攻撃と爆発攻撃が効きませんが、 ポイズンバレットの毒ダメージ カロトフの炎ダメージ ディープフライヤーの炎ダメージ などは効果的で 特にディープフライヤーには非常に弱く ハートレス状態でも一瞬で倒されてしまいます。 ④相手に刀を渡す 刀→ウェポンスワップで相手に刀を渡しましょう。 相手の方が移動速度が遅く 相手からすれば近接戦は絶望的です。 永遠に追いつけない鬼ごっこが始まります。(ただし相手がスピードアップ スピードダウンを使っている場合は不利になるので注意) 相手の自爆がどうしようもない/避けられない 自爆は発動すると最大で130ダメージを周囲に与えます。 通常キャラクターの最大体力は150なので体力がMAXでなければ基本的に倒されてしまいます。 ①爆発耐性を積みましょう。 シックスキンがあれば相手の爆発攻撃が殆ど無力になります。 こちらが有利で 相手が自爆を使ってくる可能性があるときは 予め使っておきましょう。 また リトル・ラーズ (キャラクター/爆破耐性常時+65%)を使うことも有効です。 素の状態でも自爆のダメージを45に抑えることができます。 相手が自爆しそうなときにタイタンを使うのも有効で、 タイタン状態ならレベルMAXの自爆を 爆破耐性が無くてもかなりダメージを抑えることができます。 ②無敵になりましょう ティンマン ペインキラー ハートレスなどを使用すれば 相手が自爆してきても耐えることができます。 ただし、ハートレスの場合 自爆に心臓が巻き込まれない範囲で使う必要があります。 また、身代わりの術で自爆をやり過ごすことも出来ます。 ③相手よりも足を速くして 遠距離で倒す スピードアップ スピードダウンなどで相手から 離れながら戦闘すれば 自爆に巻き込まれることはありません。 また ハル (キャラクター/移動速度+10%)を使うことも有効です。 ニュークを使用すれば お互いの位置関係を変えることが出来るので 逃げられなくなったら 一度これで仕切り直りにすることも出来ます。 ④ラウンド有利を取りましょう こちらが既に2ラウンドを先行で取っている場合 相手は自爆しても負けになります。 相手が自爆を引く前に ラウンド有利を取ってしまいましょう。 仮にこちらが1ラウンドだけ先制していたとしても2-1でこちら側はリーチになるので依然として有利です。 予め自爆を食らっても大丈夫なリードを取っておくことも 良い対策になります。 相手からどうしようもないレベルのデバフを受けてしまった 例えばスローリロード2枚 体力ダウン2枚 スモールマガジン2枚 など 相手と対面する前から 負けを悟るレベルのデバフを受けることがあるでしょう。 ①武器カードを多く採用する 武器カードは使用した瞬間に マガジンが満タンの状態になります。 リロードに入ってしまったときに使えば デバフを無視して戦闘を続けられます。 特にブーンスティックは1発のリロードも短く 威力も高いため このような状態になっても 逆転できる可能性が高いです。 ②自爆する セルフデストラクション やっぱり自爆は全てを解決します 相手は強力なカードを使ったわけですから リソースの差で次ラウンド以降有利になれます。 ③爆発を使う パンチR ランドマイン スティッキーボム これを当てれば相手はほぼ瀕死です デバフの差を無視して勝てるかもしれません。 ④タレットを使う ニャータレット カブーマー バットタレットラヴァーなどはデバフの効果を無視して攻撃できます。 相手が巨大化した これはタイタンの効果です。 最大3mまで大きくなる 大きさに応じて 最大与ダメージ2倍 被ダメージ-75%のボーナスを受ける 足が遅くなる 当然ですが正面から普通に戦ったら即死します。 タイタンは被ダメージが4分の1になるので 自爆しても50ダメージしか与えられず 倒すことが出来ません。 ①連射武器を使って毒を付与する ブラスホッパー FK-82 これらを使用した状態で ポイズンバレットを使用すれば相手に毒ダメージを与えられます。 毒ダメージはタイタンのダメージ減衰の適応外なので タイタン側はとんでもない毒ダメージを受けます。 ②炎ダメージで倒す 炎ダメージは軽減されません カロトフの炎ダメージ ディープフライヤーの炎ダメージ 特にディープフライヤーには非常に弱く タイタン状態でも一瞬で倒されてしまいます。 ③マインドブロウで倒す マインドブロウで出てくる脳みそは 相手の頭の大きさに比例して大きくなります。 つまり、タイタン状態の敵は脳みそが非常に大きくなります。 脳みそに攻撃を当てた場合 通常の10倍のダメージを与えられます。 これにはさすがのタイタンもたまったものではないでしょう。 ④体力ダウン/ポイズン などで直接ダメージを与える 体力ダウンやポイズンは相手と戦闘をせずに相手の体力を減らすことができます。 上記の対策と併用すればより タイタンに勝利しやすくなります。 ⑤自爆+ビックボム セルフデストラクション+ビックボムを使用すれば タイタン状態の敵にも100のダメージを与えられます。残りの50は別の手段を用いるか 自力で削れば 相手のタイタンを消費させたうえで 相打ちに持ち込むことができます。 相手がめっちゃ小さくなった これはシュリンキングスペルの効果です。 体のサイズが40%程度まで小さくなる 与ダメージ-10% 被ダメージ+10% 効果時間は15秒か25秒(レベル依存) 正面から普通に戦ったら一方的に攻撃を当てられて やられてしまいます。 ①ノージャンプを使う ノージャンプの効果時間は最大で23秒なので シュリンキングスペルの時間をほぼつぶすことができます 高いところに逃げれば簡単に撒けますし、仮に戦わざるをえない状況になったとしても 相手はジャンプをしないので 攻撃が当てやすいです。 ②バレットタイムを使う バレットタイムで敵が停止すれば 的が小さくても狙えるようになります。 3~4発程度なら相手に攻撃できるので 相手の体力が少ない時にとどめとして 使用すると 倒せるかもしれません。 ③爆発を使う パンチR ランドマイン スティッキーボム 相手が小さくても 爆発は範囲攻撃なので 当てやすいです ④逃げる/時間を稼ぐ 実は小さくなっても 移動速度は変わっていません。 スピードアップ スピードダウンなどで相手よりも速くなれば追いつかれることがありません。 また ハル (キャラクター/移動速度+10%)を使うことも有効です。 ニュークを使用すれば お互いの位置関係を変えることが出来るので 逃げられなくなったら 一度これで仕切り直りにすることも出来ます。 パーレイは確実に7秒経過させることが出来るので 有効な手段です スモークボムも効果時間が30秒と長く 相手を巻くのに最適です。 アイスブロックの中に閉じこもれば かなりの時間を稼げます。 身代わりの術で透明になって 高速移動するのもありです。 ⑤燃やす ディープフライヤーの炎ダメージは判定が大きいので小さい敵にもあてやすいです。 ハートレスもタイタンもシュリンキングスペルも全部燃やしてしまえば解決です。 ⑥自爆する セルフデストラクション 今回も自爆は全てを解決します 相手は強力なカードを使ったわけですから リソースの差で次ラウンド以降有利になれます。 勝てる見込みのないラウンドは 極力カードを使わないで温存する 今まで強力な戦法を使ってきた相手に対する対策を述べてきましたが 必ずしも 対抗できる手段が手札に揃っているとは限りません。 相手が圧倒的に有利だったり カードを使っても逆転できる見込みが少ない場合は 諦めてラウンドを捨てる判断をすることも重要です。 勝てる見込みがない場合はカードを温存して 次以降のラウンドに託しましょう。
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/1622.html
ギコのたいよう乗り 2赤赤 クリーチャー ― ギコ・さいたま 2/2 飛行 あなたがギコのたいよう乗りという名前ではないギコをコントロールしている限り、~は先制攻撃を持つ。 あなたがギコのたいよう乗りという名前ではないさいたまをコントロールしている限り、~は+1/+1の修整を受ける。 29版の 286 エキスパンションモナリング・ザ・ランド収録 二つクリーチャー・タイプがあるというのはキメラの抹殺という難点もあるにはあるが ギコとさいたまという二つのメジャークリーチャー・タイプを持つのはやはり有利 これ自身が最大3/3先制攻撃まで強化出来る にしてもこのギコ、暑くないんだろうか? それともモダーのようにハーフな種族 ? イラスト ∧∧ \( ゚Д゚)/ (/ ̄\) ─( ゚ ∀ ゚ )─ \_/ /U│U\