約 2,714,690 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1891.html
玄宗 直希 (仲介者) 年齢 21歳 所属 フリー 職業 「仲介者」(※) 家族 姉、両親(両親は海外を飛び回って仕事をしている為めったに家にいない) 長い薄い茶色の髪に小柄(160㎝後半)の身長に細いからだと言う中性的な外見の青年 チャラ男と魔女の一撃契約者の、高校時代の友人 生まれつき体が弱く激しい運動は苦手。趣味は読書…と、チャラ男達と仲が良い事を周囲に不思議がられていたりしていた 幼い頃に都市伝説と契約。以降、反動と言うか副作用に悩まされたりしつつも都市伝説と付き合い続けている 都市伝説契約者である事は、チャラ男には姉が巻き込まれた都市伝説事件の際に 魔女の一撃契約者には、マッドガッサー騒動終結直後にバレた 二人に対して強い友情を抱いているが、話し方がやや淡々としている事と、考えが表情に出にくいせいであまり伝わらない事が多い 決して頭が悪い訳ではないのだが、どこかが決定的にズレている思考をしている 大好きな物 姉、友人達、女性の胸 好きな物 己の契約都市伝説、甘い物 嫌いな物 悪党、吐き気をもよおす邪悪 大嫌いな物 家族や友人達を苦しめるもの 苦手な物 マゾサンタ、ピーマン。マヨネーズ (※) 都市伝説事件に巻き込まれたが、都市伝説組織を知らない人の為に事件を解決できる人材を派遣させる仕事をしている。場合によっては本人の契約都市伝説が事件解決に動く。本人も動きたいが、貧弱なので契約都市伝説に止められて不満 光輝の書(ゾハール) 13世紀のスペインの学者(ラビ)によって著された律法(トーラー)の註解書。ユダヤ教の神秘思想カバラにおいて重要視され、セフィロトの樹や天国、天使についての神秘的な解説がなされている書物である。 直希は、このゾハールとの契約により、ゾハールの主にセフィロトの樹(生命の樹)に名前が挙げられている天使や悪魔を召還する能力を得ている。 ただし、直希本人と都市伝説との相性により、召還した天使に能力を使用させると直希本人に激しい疲労感が圧し掛かる上、全ての天使を召還できるだけの実力が伴っていない。 現時点で召還可能な天使は以下の14人である ヌリエル…雹や霰を操る。炎を纏った鷲の姿をしている ハニエル…愛と美、そして勝利を司る天使。美しい女性姿 ザフキエル…ケルビムの長で、理解を司る。眼鏡をかけた気難しそうな青年の姿をしている。 ザドキエル…慈悲を司る天使。男であると同時に女。性別は自由自在。 ゾフィエル…密偵的役割を得意とする。武器は槍。 アフ…破壊の天使であり死の天使。禿好みのガチムチ体型で、炎に包まれた鎖を武器にする ヘマハ…破壊の天使であり家畜の死を司る天使 マシト…破壊の天使であり子供の死を司る天使 カマエル…豹の毛皮を身に纏った青年の姿 ライラ…夜を司る天使。出産を見守ったり赤ん坊の運命を予言したりするのが仕事。子守りが得意 ゼルエル…力を司る天使。甲冑を着ていて、武器は斧 ナアマ…売春の天使。黒い翼に褐色肌。ギリギリな露出の衣服を好む エイシェト・ゼムニム…売春の天使。乳丸出しのアウトな格好 ドゥマ…沈黙と死の静寂を操る天使。 玄宗 エリカ (追撃者) 年齢 27歳 所属 フリー 職業 「追撃者」、画家、小説家 家族 弟、両親(両親は海外を飛び回って仕事をしている為めったに家にいない) 長い黒髪に、女性としては長身(170㎝前半)でナイスバディ(推定Dカップ以上)な美女 不良教師やヤンデレ弟とは、高校の頃の同級生であり、親友と書いて好敵手と読む関係だった 都市伝説契約者なのだが、都市伝説に頼らなくとも優れた身体能力を持っている 正直、俺が出したキャラの中で人間のチート代表です、本当にありがとうございました かぁいいものを前にしての「かぁいいモード」に入ると、たとえ相手が禿だろうが盟主だろうが、互角以上の戦闘能力を発揮しそうだから困る なお、契約都市伝説に関してはまだひみちゅ ほぼ死んでいた「魔除けのお札」の契約者を回復させている為、優れた治癒能力を持っているらしい事は確かだが… 大好きな物 弟、マステマ、かぁいいもの 好きな物 弟の友人、美味しい物 嫌いな物 悪党、吐き気をもよおす邪悪 大嫌いな物 家族や友人達を苦しめるもの マステマ 年齢 不明 所属 フリー 職業 自由人と書いてニートと読む 家族 なし 青紫の髪をした、整った顔立ちの西洋人男性の姿をとっている その真の姿は、黒い翼を生やした堕天使である。なぜか、堕天使姿の時は、顔の上半分を覆う仮面を愛用している エリカとは恋人同士であり、6年程付き合い続けている…が、そんな彼女に振り回され続けている人生(天使生?)である 頑張れマステマ 大好きな物 玄宗 エリカ 好きな物 悪の誘惑に屈しない人間 嫌いな物 エリカにちょっかいかける男、エリカと仲のいい男 大嫌いな物 悪の誘惑に屈した人間、吐き気をもよおす邪悪 苦手な物 玄宗 直希 なお、マステマとは主に「ヨベル書(旧約偽典)」などに名前が挙げられている存在である 人間を堕落させ、その罪を告発する天使であり、その名前は「悪意」を意味する 神の命令によって人間の善性を試すのが主な任務 「ヨベル書」では、神が人間を苦しめる悪霊を全て捕縛しようとした時、「人間を堕落させるのに手勢が必要だ」と訴えてその1/10を自由に扱う権利を得ている これらの逸話から、マステマは悪霊(レギオン)を召還し、操る能力を保持していている。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4272.html
《ベッドの下の男》 たまに思うことがある。 どうして都市伝説は人間と契約するのだろうと。 忘れられないようにするなら脅かすだけで十分なはずだ。 それをわざわざ契約といったある意味で非効率的な手段を用いる理由は―― ま、考えてもわからないんだけどね。 その辺の小難しいことはどっかのお偉いさんに任しておくことにしよう。 ただの一般人であるぼくには全く持って関係のないことだ。 ただ一個だけわかってることがある。 今ぼくの部屋に居る都市伝説は契約云々は一切関係なしにぼくへの嫌がらせのためだけに居る。 ぼくのベッドの下に隠れている『ベッドの下の男』に限っては、ぼくが怯える様を見て楽しんでいる。 いつか襲われるのではないかとびくびくする様を見てほくそえんでいるんだろう。 そしてきっとぼくが油断した時を狙ってその都市伝説通りにぼくを殺す気でいるはずだ。 陰気でいけ好かない野郎だ。 こういう奴は足が臭いに違いない。 この臭いは間違いなく奴の足の臭いだ。水虫野郎め。 だが馬鹿め、それもこれも今日までだ。今日がお前の最後の日となるんだ。 アパートのチャイムが鳴り、家にやって来た業者さんが解体済みのベッドを運んでいく。 ふふふ馬鹿め、思い知ったか。 『ベッドの下の男』はベッドがあるから存在できるのであってベッドが無くなれば消え去る運命なのだ。 都市伝説のような脆弱で矮小で足の臭い存在が人間様に敵うと思うな! とまあ、そんな感じでかる~く都市伝説を撃退したぼくだったが、ひとつだけ予想だにしていなかったことがある。 どうやら足が臭いのはぼくだったらしい。 前ページ次ページ連載 - ぼくの物語
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3798.html
● 秋月のおっちゃんを伴って、俺達は通路を駆け抜ける。 次々と現れる兵隊は秋月のおっちゃんが信じられない早さで斬っていって道を作ってくれていた。 本当に俺達を道中守ってくれる気があるらしい。 何度目か、刀身に小さな光を宿らせて刃に付いた汚れや歪みを直した秋月のおっちゃんに隠し部屋をリカちゃんが察知した事を伝えながら、俺は訊ねた。 「その不思議刀ってさ、もしかしてこの前千勢姉ちゃんに槍ぶっ壊されたからその対策用の武器?」 「……一応はそうなる。それに今回は多く斬る必要がある。長く使える武器が要り用だったのだ」 そう言いながらおっちゃんは壁を斬って中を確認する。中は良く分からない実験室のような部屋で、特に怪しい所は無かった。 これまでも数回同じ結果を繰り返してる。モニカを見つけれなかった事に、もう変に気落ちする事もなく、すぐに次の隠し部屋を探してまた通路を走りだす。 「その今回多く斬る必要があった兵隊達だけどさ、やっぱそいつらもウィリアムの研究って奴に何か思い入れとかあんのかな?」 おっちゃんは不思議そうな目で俺を見て、ややあってから首を振った。 「……いや、無いだろう。ここに居る者達は金で雇われた者かウィリアムに力を与えられるのを狙っているような卑しい者ばかりだ」 「力……超能力部隊のことね?」 フィラちゃんが呟く。 「それも一つ。他にも、身に付けるだけで一定の効果を発揮する都市伝説をウィリアムは開発し、保持している」 ≪千人針≫みたいなやつか……。 「なんつーか、金とか、そんな理由でも殺し合いとかできるんだな」 「皆が皆立派な題目を掲げているわけではないし、ただ生きる手段として人を殺す者とている。現在のこの国に生まれた娘には分からないか」 秋月のおっちゃんが言う通り、俺にはそういうのはこれっぽっちも分からない。所詮は高校を卒業したばかりの小娘だ。分かってるさ。きっと俺の見識は狭いんだろう。 「秋月のおっちゃん達はどうなんだ? オルコットの世界の在り方を変えちまうって奴を目指してんの?」 「舞ちゃん」 フィラちゃんが注意するような口調で言ってきた。 「いいじゃん、気になる事を聞いたってさ」 「一応敵方なのよ?」 俺達の会話を聞いて、秋月のおっちゃんが苦笑した。 「異なことを聞く娘だ。質問すれば答えが聞けると思っているのも問題だが、答えたとして正直な事を話すとは限らんぞ?」 「話半分で構わねえよ。≪神智学協会≫って内紛起こしてオルコットに反対する奴を皆潰したりしたんだろ? 徹心のおっちゃんが作った資料見たけどさ、≪神智学協会≫としてオルコットが傍に残したのってめちゃくちゃ少人数じゃん? オルコットが最終的に手元に置いてる奴等がどんな事を思ってるかとかさ、やっぱ気になるじゃん?」 フィラちゃんが引き攣った顔で、そろそろやめておけ的ジェスチャーをする。 うーん……、 「やっぱ秘密?」 秋月のおっちゃんを見ると、押し殺した笑い声がした。 「面白い娘だ。――そうだな、エレナや≪冬将軍≫は本気でオルコットに従っているだろう。ユーグは複雑だ。彼は≪テンプル騎士団≫という都市伝説なのだが、どのような存在か知っているか?」 話を始めてくれた。その事にフィラちゃんと目を見合わせて軽く驚く。 「知らんのか?」 「あ、いや、知ってるぞ?」 Tさんとか徹心のおっちゃんに教わったからな。大体どういう存在かは分かってる。 秋月のおっちゃんは頷いて、 「――彼は元々都市伝説に語られるように異端者として存在していたのだ。そこにエルマー・リデル、モニカの祖父が契約者として現れた。彼は契約の後、世間から指弾され荒れていた≪テンプル騎士団≫達を纏め上げ、裏では史上のテンプル騎士団の名誉を回復させるために教会を弾劾した。 そのような過去があるために、彼は人間を、リデルの家を敬っている」 「それでなんでモニカを怪しげな実験に使おうとしたりあの子の両親を殺したりしたの?」 フィラちゃんが訳が分からないというふうに問いかける。秋月のおっちゃんは首を振って、 「そこまでは儂には窺い知れん。そも、儂が真実を話しているかもわからんぞ?」 おっちゃんの言い方はそっけない。その様子から今の話が本当かどうかを判断するのは俺には無理だ。 だから、とりあえず判断は保留。今の話は徹心のおっちゃんにでも訊けば本当かどうかわかるだろうしな。 じゃあ次は、 「秋月のおっちゃんはどうなんだ? 世界を改変したいって思ってんの?」 「儂は――」 呟いたおっちゃんは曲がり角から現れた兵隊を出会い頭に斬り付けた。驚いて反射的に身を竦めると、秋月のおっちゃんは口許を小さく歪めた。 「儂は元々時代遅れの武芸者。どこまで儂は力を得られるのか、その果てにあるものに興味があったのだ。人間の潜在能力の探究を標榜しておった≪神智学協会≫には儂の性向の縁で所属しておる。ウィリアムに身を預けて実験に使わせたのも興味故……オルコットには恩がある、彼の理想の手伝いはするが、エレナのようにそのために生きるという事はせん」 恩……。 「じゃあさ、ウィリアムの方には付こうとは思わなかったのか? ウィリアムの実験に身を預けたって事はさ、そっちとも繋がりがあったんだろ?」 「たしかにあの男は研究者としては有能な男だ。そして≪心霊手術≫、その能力の手練でもある。しかし人格がいかんともしがたい。好きにはなれぬよ。ウィリアムは元よりオルコットの世界の在り方の改変の結果そのものには興味が無いようだった。 そう、あの男はそこに至るまでの過程、世界の理を書き換えるその力そのものとその為に行われる実験に興味を持っていた。それゆえに力の器になるモニカ嬢に執着しているわけだが――」 『――――まったくその通りだね。そして今、その成果が見られようとしているんだ。アキヅキ、邪魔はもう少ししないでもらいたいな』 突然通路の天井から聞こえてきた声に思わず俺達は動きを止めた。 「なんだこの声!?」 「……ウィリアム」 「え?」 ……マジかよ? 始めて聞くウィリアムの声は妙に神経を逆なでするような声音だった。 『オルコットとは互いに利用し利用され、結局ワタシの方が多くを吐き出す事になってしまったが、それでも十分な報酬を得たね。モニカ嬢、彼女の封印もじきに解ける。邪魔はして欲しくないね。もう少しの間、その仔達の相手でもしておいてくれ』 「お姉ちゃん! 前!」 リカちゃんが叫んでケウが前肢に体重をかけて進むのを止めた。振り落とされそうになって必死にケウにしがみつく。 完全に止まったところで顔を上げて通路の先を見てみると、 「なんだ……ありゃ?」 通路一杯に奇怪な生き物が溢れていた。 一つはよく映画とかで見る≪フランケンシュタイン≫っぽく見えるけど……他の類人猿の出来そこないみたいのと不気味な粘土みたいな生き物はなんだ? 「あれは、≪ヨーウィー≫に≪ブギーマン≫?」 「フィラちゃん知ってんの?」 ええ、と頷いてフィラちゃんが堅い表情になる。 「モニカを攫いに来た時にウィリアムが連れていた都市伝説よ」 『正解だ』 天井からの声はやけに嬉しそうに言う。 『その仔らは人肉や都市伝説の残骸を組み合わせて作ったワタシの自信作だ、君等の居場所も機械を通して伝えているので白い獣の能力は意味を為さないね』 「く、居場所、ウィリアムにはわかってんのかよ!?」 「さっきの白衣の男のような透視……?」 『違う違う、ワタシは自身を超能力兵士に改造しようなどとは思わないよ。戦闘のセンスはからっきしだからね。これは≪ピリ・レイスの地図≫のおかげだ。オルコット達が持っている原本を改良する依頼を受けた時に占術系都市伝説を組み上げて複製した代物で、なかなかの精度を誇る。通路の監視カメラを破壊してもその仔らの補足からは逃れられんよ。――では、健闘を祈っている』 そう残して通信は途切れた。 奇怪な生き物達はどんどん俺達の方に迫ってきている。その外見のせいで目で俺達をしっかり確認しているのかを判断するのは難しいけど、多分居場所はばれてる。 「……どうする?」 「……強引に行くしかないでしょう」 「だよな」 答えてケウの首を叩く。 「ケウ、行っちまえ!」 言いながらフィラちゃん共々ケウの背中に思いっきりしがみつく。 ケウは低く唸り声を上げて床を跳ね飛んで壁を蹴り付けた。とんでも無い軌道で進むケウに振り落とされないようにしていると近くから声がする。 「やはり≪ピリ・レイスの地図≫が複製されていたか」 ケウの動きに余裕の表情で付いて来ている秋月のおっちゃんの声だ。 「≪ピリ・レイスの地図≫、モニカの居場所を探り当てたのもそれね?」 フィラちゃんが訊ねる。Tさん達が言ってた≪神智学協会≫が持ってる優秀な探知機の名前がそれなんだろうか? どんな都市伝説かは分かんねえけど、かなりの広範囲を探る事が出来る都市伝説って事になるよな。 「数年前、モニカ嬢を徹心が匿ったと推測したオルコットが最終的に彼の異界を探り当てられるようにあらゆる改造を施された都市伝説だ。時間さえあれば異界内に逃げても補足可能、その白い獣では隠れることはかなうまい」 そう言って秋月のおっちゃんは足を止めた。ケウも同じように動きを止める。 「……完全に包囲されているようだ」 「へ?」 「囲まれたわね」 フィラちゃんが言って俺も周囲を見回す。 通路一杯に広がっている奇怪な生き物の大群が視界いっぱいに広がっていた。 「うそだろおい……」 パニック映画とかだとこれ、もうなんか絶望的な状況じゃね? そう思っていると、秋月のおっちゃんが腰からボロい包丁見たいな刃物を取り出した。 この前も見た事のある……たしか北谷菜切とか言った、見えない斬撃を飛ばす危険物だったはずだ。 「――ッ!」 おっちゃんは空気を切る音を伴いながら北谷菜切を振るった。 見えない斬撃がいくつも飛んで、異形の大群が切り裂かれていく。 生肉が地面に転がる水気を含んだ嫌な音や異形達の絶叫が何度もして、今までの進行方向の逆方向、地上の方に続く通路が開かれた。 秋月のおっちゃんはその道を指さす。 「君達はここで手を引け、姿を補足されるのならもうこれ以上進めはしないだろう。儂としても武芸者以外を手にかけるのは忍びない」 「ざけんな、モニカを取り返す。んでもって≪神智学協会≫がまだモニカを狙うんならそれを邪魔する。手を引いてなんかやるもんか」 秋月のおっちゃんは呆れたようにため息を吐いた。 「……警告はした」 言って秋月のおっちゃんは一人で勝手に前進し始めた。 「あ、てめ、おっちゃん! 一人で先に行くんじゃねえよ! おい!」 おっちゃんは止まらない。でっかい刀で都市伝説の群れの中に突っ込んで、すぐに目じゃ追えなくなっちまった。 「くそ……っ」 「お姉ちゃん……」 ケウが唸り声を上げながら後ずさる。このまま強引に進もうとすればまた囲まれる事になるよなぁ……。 さて、どうしようか……。 ● ……何故あの娘達を気にかけたのだろうか? 文字通り、血路を切り拓きながら弘蔵は胸中に浮かんだ疑問を審議する。 ……戦うような者でもないのにこのような所にまで出向いて来ているからか、あの娘達相手ならいつでも殺せると高を括ったのか……。 どちらでも構わないか、と思う。彼女らに話した事等オルコットと旧知の徹心に訊けばその都度話してもらえるような事だし、各々の戦う事情なども刃を交えていれば自然と互いに分かって行くものだ。それよりも、と弘蔵は意識を眼前の敵へと向けた。 ……確かに自信作と言うだけはある。少なくとも超能力部隊とやらよりは手応えがある相手だ。 伸ばされてくる≪フランケンシュタイン≫の縫い目だらけの腕を紙一重で躱して、すれ違いざまに首を落とす。 弘蔵自身の姿に擬態した≪ブギーマン≫の胸に何の感慨もなく剣先を突き入れて、回避運動をとるついでに強引な動作で刃を引き抜く。 乱暴な扱いを受けた大太刀がその能力で曲がった刀身を補修する間に、見えない斬撃を飛ばす刃で周囲の者達を牽制し、その間も足を止める事無く通路を走る。道中、幾人もの超能力部隊の兵がウィリアムの遣わした都市伝説に殺されたらしい残骸を眺めやり、彼等の知性は敵味方の判断が細かくつくほど高くは無いものと推測する。 ……この、まさに使い捨てと言わんばかりの数の放出……より敵の数が集まっている所へと向かえばそこにウィリアムが居ると言っているようなものではないか……。 まさか弘蔵やユーグをこのようなもので倒せるとウィリアムも思ってはいまい。 ……あれは狂ってはいるが、考え無しではなかった。 ならばこの都市伝説の群れは、 本当にただ壁のつもりか……。 それほどにウィリアムが欲する時間が短いということだろう。 ……オルコットの目的自体は儂のような世捨て人には尊さも意義も理解し難いが、彼には恩がある。 自分に戦う場所を与え、自身の限界を探る為の場を提供してくれる。それが弘蔵がオルコットに従う理由のようなものだった。 戦って、戦った果てに死ねる場所を探しているのだろうな……。 死地を探す生き方、そのために我ながら随分と道を外れてしまったものだと弘蔵は思わず苦笑する。 オルコットの下にいれば、より危険な戦場、より強い相手を彼の目的が呼び寄せる……。 因果なものだ。だがその因果がやがては弘蔵自身の死地を呼び寄せてくれるだろう。 ならば、 モニカをウィリアムの手にいつまでもおいてはおけない。ウィリアムに徒に壊されてオルコットの目的に陰りが現れてしまえば弘蔵も死地を見つける事は出来無くなるのだ。 封印を解いた所をすぐさま連れ出せるのが理想……。 そう考えながら、見ようによっては人のものにも、化け物のものにも見える死体の山を後に残して弘蔵は走る。 前ページ次ページ連載 - Tさん、エピローグに至るまで
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1514.html
「コーク・ロアに支配された人間が、なぁ」 適当に獲物を物色した帰り、マッドガッサーは似非関西弁の女性と合流し、並んで歩いていた 時刻は、そろそろ深夜を回る こんな時刻に、ガスマスクの男が若い女性と並んで歩いていても通報されなこの街は、本当にありがたい 「爆やんも、二回くらい襲われとるやん?相当数が増えとるんちゃう?」 「…支配型で、支配している対象を増やしてるんだよな?だとしたら、あいつが狙われたのは完全に能力目当てだろ。コーク・ロアの能力で支配された状態でも、契約している都市伝説の能力は使えるからな」 …やはり、この街は危険か? いや、だが、同時にここまで動きやすい街はない ここを逃さない手はないのだ ……それに、魔女の一撃の契約者は、この街に住んでいるとある対象に、異様に執着している そっちの目的が叶うまでは、この街にいたいところだが… 「………だとしても、やばいかね?」 「…ヤバイんちゃう?」 …気配が 二人に、ゆっくりと近づいてきていた ざわざわと、何かが近づいてくる感覚 「…走るぞっ!」 「りょーかいっ!」 言うが早いか、二人は駆け出す しゅるしゅると、背後から迫ってきていた気配が、途端に隠す事をやめた 漆黒の闇の中、黒いそれが迫ってくる 「げ、この髪は…………うぉわっ!?」 「んみゃっ!?」 しゅるり 髪は、何時の間にか、二人の真正面からも迫ってきていて あっと言う間に、二人の体を絡めとった 「-------っ!!」 ごがっ!! 「マッドはん!?」 マッドガッサーの体が、塀に叩きつけられる その衝撃で、からんっ、と……被っていたガスマスクが、落ちた 「おや、こりゃまた……随分と、可愛らしい顔してたんだな」 すたん、と 塀の上に降りる影…髪をわさわさと不気味に伸ばす、黒服 「ってめ……」 「よぉ、また会ったな」 ニヤリ、その黒服はマッドガッサーを見下ろして笑った 髪は、完全にマッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛し、その動きを封じている 「あー、そんなに睨むなや。殺すんじゃなくて、お持ち帰りするよう言われてんだから……生け捕りとか、そう言う方針で行くならいくで、もっと早く決めとけってのな」 「生け捕りて……マッドはんに何する気や!?」 「さぁ?俺は聞かされてないし、っつか、具体的には聞きたくねぇや」 似非関西弁の女性の言葉に、その黒服は肩をすくめてみせた …生け捕りにしたマッドガッサーを、「組織」はどうするつもりなのか? 正直、考えたくもない 突然変異の個体、その特殊な研究対象を、「組織」がどうするか…考えなくとも、大体想像はつく 「…そう言や、マッドガッサーは生け捕りにしろって言われてっけど、その仲間に付いては指定受けてないな…どうすっかねぇ」 「!」 黒服が何気なく呟いたその言葉に、ぴくり、マッドガッサーが反応したように見えた …そうだ、マッドガッサーの仲間については、何も指示が出されていない つまりは、処分しろと言う事なのだろうな、と黒服は考えた 特に、「13階段」に対しては、そうなのだろう 「組織」の裏切り者で、しかも、あんまりよろしくない…今ではもうなかった事にされている計画の、生き証人のようなものだ 見つけ次第始末しろ、といわれてもおかしくない …個人的に、ちょっと可愛がった事もある対象だから、自分が「13階段」を追う事にはなりたくないものだ、黒服はそう考えていた ついでに……今、捕まえている似非関西弁の女性 そっちも、始末は勿体無いよなぁ さて、どうにかならないものか 考えていて……マッドガッサーが自分を睨みつけている事に、黒服は気づいた 「---っは、いいね、その目。人を殺した事がある奴の、殺意交じりの眼差し、ってか?」 はっきりとした、敵意、殺意 自分の大切なものを護ろうと言う、獣の目 今のマッドガッサーの眼差しは、そう言う目だった 「仲間が大切か?…………都市伝説の癖に、契約者でもない人間と仲良く、とは珍しいもんだ」 「お前だって、都市伝説だろうが」 「あぁ、そうだよ?」 そうだ、自分も、都市伝説だ くっく、と黒服は笑う 「元人間の…都市伝説に飲み込まれて、都市伝説と言う化け物になっちまった存在だよ?」 すたん、と塀から降りて、マッドガッサーに近づく 髪によって動きを束縛され、しかし、マッドガッサーは鋭く黒服を睨み続けていた …かつて、殺戮を行った経験がある者の、殺意の眼差し それを、黒服は真正面から受け止める 「どうせ、都市伝説なんざ、人間から見りゃあ化け物だ。そんな化け物と契約してくれる人間だって希少だってのに……その化け物と、契約もしてないのに、一緒に行動するような人間がいるなんてな。どんな手を使ったんだか」 「…ッマッドはんの事、悪く言わんといてや!」 あぁ、随分と慕われているじゃないか 都市伝説の癖に、化け物の癖に 俺はうまくいかなかったってのに、こいつはうまくいきそうだってかい? ……気に食わないねぇ? 「まぁ、そう言いなさんなや?……今、俺はあんたらの命を握ってる状態なんだぜ?」 「……彼女だけでも、放せ」 黒服を睨みつけたまま、マッドガッサーが低い声で告げてくる 完全に動きを束縛された何もできない状態だと言うのに、それでも護ろうとでも言うのか? 「嫌だ、って言ったら、お前さんはどうする?」 「…そう、だな」 …ぎりっ、と 束縛された腕を、マッドガッサーは無理矢理動かそうとする 無駄なことを 黒服は、マッドガッサーを束縛する力を強めていく 「無理に動かすと、腕が引きちぎれるぜ?」 「…マッドはん!」 ぎり、ぎり……と マッドガッサーが動かそうとするその腕を、束縛し続ける ……しかし 「-------っ、う、ぁ」 「っ!」 ぶちり 束縛していた黒服の髪を、半ば引きちぎるように…その腕に髪を食い込ませ、肉を、骨を切らせ出血しながら…マッドガッサーは、無理矢理に右腕をうごかした その指を、口元まで運んで ぴぃいいいいいいいい…………----------------- 高い、口笛の音が、周囲に響き渡った ひゅうっ、と 風の音が、辺りに響いて 直後、激風が黒服に襲い掛かった 「っく……!?」 立つ事すらままならない、激風 まるで、竜巻が自分の場所にピンポイントで直撃してきたかのようなその風に、黒服は体勢を崩した その拍子に、マッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛していた髪の力が、緩む 叫び声のような、何かの鳴き声が、風の音に混じって響く 再び襲い掛かってきた激風に、黒服は体を飛ばされ、塀に体を叩きつけられた 直後、目の前を…何か、巨大な、巨大な 鳥のような生き物が、通り過ぎていったのを、確認する 「ぐ……くそ、何だってんだ…?」 …風が、やんで マッドガッサーの姿も、似非関西弁の女性の姿も、消えていた 残っているのは、引きちぎられた髪の毛と……マッドガッサーが流した血痕だけだ 「…まさか、さっきのが…例の、巨大都市伝説か…?くそ、マジでマッドガッサーの仲間かよ」 舌打ちする 事実を確認できたのはいいが…これは、やっかいだ 今回は逃走に使用したようだが、あれに暴れられては洒落にならない 流石に、報告するしかないだろう 黒服はため息をついて、懐から携帯を取り出した 「怪我はないか?」 「うちは平気や…それより、マッドはん、腕」 「都市伝説だから平気だよ。後でジャッカロープの乳でも分けてもらうさ」 ぶらり、半ば使い物にならなくなった腕をぶら下げつつ、マッドガッサーは似非関西弁の女性にそう答える 彼女に怪我がなかった事実に、酷くほっとしている自身に、マッドガッサーは気づいていた 「なぁ、アレが、ひょっとして前に話とった秘密兵器?」 「あぁ。あいつがいりゃあ、いざとなりゃどこにでも逃げれるぞ」 「って、逃げる専用かいっ!?」 「約束なんだよ、荒事には手を出させないっつぅ」 ばさり 二人を逃がしたその巨大な存在は、翼をはばたかせ、高く、高く飛び上がっていっている それは、軽く見積もっても軽飛行機くらいの、巨大な存在 これがヘタに暴れれば、何がおきるかわかったものではないし…それこそ、本格的にあちこちの組織に目をつけられる 「マッドはん?…考え込むのもええけど、まずは早よ教会に入って治療しよや?」 「ん……あぁ」 …自分は、「組織」には生け捕りにされようとしている だが、仲間は…どうなるか、わからない それこそ、始末でもされかねない それを、改めて自覚する …だからと言って、今更計画を諦めるつもりもなく ……いや、半ば、その計画など、どうでもよくなってきているはずなのだが しかし、それを手放す気にもなれず 「…しばらく、潜むぞ」 「うん?……おおっぴらに動かん、って事?」 「あぁ、多少は動くが……ちまちまやっても、目をつけられていくだけだ…………一気に、やってやる」 それだけの知識を、自分は思い出している …この学校町を全体を、一気にガスで包み込んでやる その準備が、必要だ 「…後で、他の連中にも言うつもりだが………身を引きたくなったら、いつでも引けよ?俺がこれからやろうとしている事は成功するかどうかわからないし、何より…他の都市伝説契約者たちにかぎつけられたら、本格的に戦いになるだろうしな」 「……今更、何言うとるん」 苦笑してくる、似非関西弁の女性 …あぁ、本当に今更だな、と 感覚がなくなってきた右腕の事など忘れながら…マッドガッサーもまた苦笑したのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4316.html
ここら辺には有名な都市伝説が二つある 一つは黒マント売りの都市伝説 もう一つは・・・ 俺は今ものすごく焦っている それもそのはず!今にも死にそうなんだからな!っはっはっはっはっは・・・うわぁぁぁぁぁぁ 目の前には黒いマントの男がいる・・・その男は俺を殺そうとしている・・・ もういやだぁぁぁぁぁぁ なんでこうなっちまったんだ・・・ 時は少しさかのぼる・・・ 「あっちぃ・・・死ぬ・・・これは死ねる・・・」 そんなこといいながら俺は自転車で見慣れた道を走っていた とりあえずコンビニにでもよってアイスでも買おうかと思ってたんだ・・・ だが俺はなにを血迷ったのか 自動販売機を見つけてジュースを買おうと思ったんだ・・・ 自動販売機に近寄った瞬間 「黒いマントはいらないかい?」 後ろからそんな声が聞こえた・・・そしてさっきの暑さが嘘のようになくなり 逆に肌寒くなった 俺は振り向いたそこには黒いマントに身を包んだ男がいた・・・ その男はもう一度言う 「黒いマントはいらないかい?」と 俺は「い・・・いらないです」と答えてしまった というかどっちみちこれに解決策はない いりますといっても黒いダガーナイフでさされるらしいし 無視して帰ろうとしたらマントが胸を刺すらしい マントが胸に刺さるのかよ・・・っと思ってたのだがどうも刺さるらしい なんぜ今は信じているんだって? そりゃ黒いマントがいきなり尖って向かっきてよけたら 自動販売機に刺さったんだぜ?信じるしかねぇだろ・・・ そしてその黒マント男は「しねしねしねしね・・・」 と連呼してたその本体だと思っていた男は白目をむいていて 本体は黒いマントに見えた・・・ とここで回想終わり そして黒マントは俺に迫ってきてこういった 「買ってくれないんなら・・・死ねぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!ひゃはぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」 何それ怖いていうか何故いきなりハイテェンショォン??? とか考えてた その瞬間後ろから赤いマントが現れて黒マント男に突進してきた 黒マントは「きさまぁぁぁぁぁぁぁぁ赤マントォォォォォォォ」 と叫んでいた何これ恐い その赤いマントはどこから喋っているのかわからないが黒マント男を抑えて俺に 「にげろ!!!!」と言っていた だが情けないことに俺の腰は抜けていて動けなかった 「どけぇぇぇぇぇぇ!!!」と黒マントが叫び赤マントをこちら側に投げ飛ばした そして俺の顔に直撃した 「ぐわっ!!!」そんなな避けない声を出したと思う・・・ すると赤マントは俺にこういった「おい!人間!死にたいか!?」 俺はまだ彼女もいないし童貞なのにこのまま死ねると思うか?答えは 「死にたくない!!!!」だ そう叫んだかと思うと赤マントは「なら協力しろ!!!じゃないと死ぬぞ!!!」と叫んだ そんな会話をしてると黒マントが攻撃してきた すると 赤いマントが俺に巻きつき顔に仮面のようなものが張り付いた いつのまにか口が「よっしゃぁぁぁぁ勝負だまっくろくろすけ!!」と言っていた 黒マントは「・・・ぶちころしてやる・・・ころすころす」と連呼していた 「うらぁぁぁぁぁ」と赤マント・・・に取り付かれた俺の体が黒マントに向かっていく 赤マントが尖り黒マントに攻撃したあと取り付かれているであろう人物に蹴りを入れてしまった・・・ いや・・・決して俺のせいじゃない俺に取り付いた赤マントのせいだ! と考えていたら「うらうらぁぁぁぁぁぁ」と叫びながら黒マントに連続攻撃をしていた 黒マントは「ぬぐぅぬぁぁぁ」と攻撃を一方的に受けていた それでも赤マントの攻撃は続く「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」人の体をそんなに乱暴に使わないでほしい そして黒マントが後ろに倒れたと思うと 赤マント=俺は飛んだ・・・こんなに飛べるのかと思うぐらい そして赤マントは俺の全身を包み込み回転しながら黒マントに攻撃をしていた 一言で言うなら必殺キックだな正直アレは吐きそうになる そして開放されたかと思うと黒マント男の黒マントがビリビリになり消えかけていた 「ぅ・・・ぐぁ・・・くそぅ・・・赤マントぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!」と叫び そして消えた と同時にまた暑さが戻ってきた ・・・マントのせいで余計暑い・・・ とりあえずマントにお礼を言う 「た、助かったありがとう・・・で俺を解放してくれないか?」 顔に張り付いていたものは消えたがマントは張り付いていた 「いや無理だ」「・・・は?」・・・こいつはなにを言っているんだ? 「まだ貴様には協力してもらう。もう契約は結んだんだ最後まで協力してもらうぞガハハハハハ」 「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」と叫んだ・・・ これからこいつと仲良くしないといけなさそうだな・・・ まぁいい楽しそうだしな・・・ 俺はそう思った・・・ ここには二つの都市伝説がある 一つは黒マント売り もう一つは・・・ 赤いマントのヒーローだ 終わり 前ページ次ページ連載 - 赤いマントのヒーロー
https://w.atwiki.jp/trpgken/pages/2727.html
□トレーラー 広大な電子の海。 人造のステージに潜むこれ面白いのかな? 悪意無き悪意によってんー情緒的な表現、センスあるね 揺り籠で嗤う←そんなことしてないんだけど(^^;) なんだ、ボクについて知りたいのか それなら教えてあげよう ボクは都市伝説を改良し、より面白く…よりみーんなのためにする伝道師!その名も・・・ 都市伝説と契約者TRPG キャンペーン 『怪異緊急対策特命室 夜雀たちの事件簿』 「File.3:Customくん」 _組織のみなさん、どうぞよろしくね!一緒に遊ぼう! □ハンドアウト(敬称略) ■神無月・恭介 行方不明の父が死亡し、失意のあなたを慮って2人の幼なじみ…水無月と木暮はあなたを休日のショッピングモールに連れ出した。あれやこれやと巡っているうちに少しく気分が晴れてきたあなたは、不意に視線に追われているような感覚を受ける。見渡せば、白いワンピース、艶やかな黒髪をなびかせて、室内で日傘をさす怪しの影…1話で特命室を襲った都市伝説がいた…。 (わっ、怖いね…関係ないんだけどこの都市伝説ちゃん、めっちゃお洒落さんだよね。美人だし。ちょっと興味出てきたなあ) ■生川・紗良々 それは、何気ない日常の1コマだった。プライベート端末を弄っていると、通知音と共に見知らぬアイコンがポップする。あなたが認証しようがしまようが、かわいいニコニコマークのアイコンは一方的に主張を投げてきた。「おめでとうございます!あなたは選ばれました!」…右目が強烈な痛みを覚える。眼球にぐりぐりとクレヨンを塗られているような不快感と鈍痛。これは、この感覚は…あなたが邪視と契約した時と、同様のものだ。 (うんうん、君は選ばれたんだよー。一緒に楽しもうね!) ■薄瀬・幸 その日あなたはちょっとした用事で4課…都市伝説を管理する課へ出向いてた。特に問題なく済ませ、帰ろうとしたあなたの下へ課長の文車がやってくる。ちょっとした雑談の中で、文車がこんなことを言い出す。「そういえば…最近、妙に都市伝説が活発なのよね…」 (へー何でだろう。気になるね…都市伝説の動向。) ■灰ヶ峰・紅葉 母に渡したのか、自ら処分したのか、あるいは別の手法を取ったのか。「霧夜の幽霊船」の船長より受け取った書類に始末をつけたあなただが、何故か妙に気分が晴れずにいた…。何か大切なことを忘れているような…?室長に呼び出しを受け、今回の任務…「生川・紗良々の都市伝説が変異している件」について説明されているとき、その違和感は最高潮に達し…ふと、強烈な既視感。これに似た状況を以前経験したような錯覚を強く覚えた。 (「デジャブるんだよ!」だ。いいな、前話したときも思ったけどこの子面白いね、好きだよ)
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2462.html
夫が死んだ。 隣を見れば娘が、反対側を見れば息子と夫の親友たちが泣いている。 棺桶の中に死体はない。ぐちゃぐちゃになって燃えてしまった。一応、体と呼べるものがあったが、ただの肉片であり夫と呼べるものではなかった。 葬儀には多く人間が参列した。夫にはなかなか人望があったらしい。勤めていた会社の上司の人たちも、その目に涙を浮かばせている。 もう一度娘と息子を見る。泣いている娘と息子。自分の子供にここまで愛されていたのなら幸せだろう。 会社の人間にここまで愛されていたのなら幸せだろう。 よき友人たちがいたなら幸せだろう。 そして、誰よりも速く車を走らせながら死ぬことができたのなら幸せの絶頂だろう。 おめでとうあなた。今までありがとう。 そしてさようならあなた。 あたしもあなたみたいに『速く』死にたいよ。 モデルケース『ターボババア』① 腕時計を見る。8時50分、待ち合わせのちょうど10分前。 櫛間篤子はそれを確認すると、あたりを見回した。彼女が待ち合わせている人物はまだ来ていない。 それを確認し、彼女は近くのガードレールに腰を乗せる。 (この1週間、色々あったわ) 櫛間篤子は思い馳せる。桑村伊斗子が死んだと聞いてからの1週間を。 (伊斗子が死んだ) 彼女の親友である桑村伊斗子は口裂け女に殺されてしまった。彼女がそれを知ったのは殺された次の日である。 死んだと聞かされた時、涙は出なかった。彼女にとって、それはショックなことだった。 親友だったはずの人間に対して、自分は涙を流せないなんてなんて薄情な奴なんだろうと苦悩した。 しかし、それは桑村伊斗子の死を実感できていなかっただけと知った。 死んだと聞いた次の日、桑村伊斗子の葬式に篤子は出席した。葬式の前日、彼女は桑村伊斗子を殺した犯人である口裂け女に係わったゴタゴタで通夜には出席していない。 桑村伊斗子の実家にて行われた葬式で、死亡後の伊斗子に彼女は初めて対面した。 口裂け女に殺された被害者はすべて口を引き裂かれていると聞いていたが、桑村伊斗子の顔は生前と何ら変わりないように篤子には見えた。 しかし、すぐさまここの中でそれを否定する。死体には化粧が施してあった。生前の桑村伊斗子は化粧っ気のない女性だった。 近くでよく見ると、口の端から耳たぶのあたりにまでうっすら線のようなものがあることが確認できた。引き裂かれた口を昨日のうちに修復したのだろう。 安らかに目を閉じ、死化粧を施された伊斗子を、篤子はしばらく眺めていた。 棺桶のそばで泣きじゃくる伊斗子の母親と、それを慰めながらも自分も泣いている伊斗子の父親。着ているのは当然喪服である。 篤子はあたりを見渡した。死体が置かれている座敷には、すでに多くの親戚たちが集まっている。そのすべての人たちも、やはり喪服である。 自分が着ているのも喪服だと、篤子は改めて確認する。そして、再び伊斗子に目を戻した。死化粧。棺桶。喪服。すべて死人のためにあるものだ。 それらはすべて、自分の親友である桑村伊斗子のために使われているとはっきり確認した時、初めて篤子は伊斗子の死を認めた。認めてしまった。 涙が、あふれた。 (まさか、3人の中で一番死んだと認めてなかったのが私なんてね) 死んだと聞いた日、涙が出なかったのは死んだと認めていなかっただけだったのだ。 自分があまり泣かないのは、何でもかんでも泣く理由を認めてないだけかもしれないと、篤子は自分を冷静に分析している。 (そういえば、藤枝は大変なことになってたわね) 口裂け女と係わり合った夜、そこで出会った麦野アブラカダブラは3日後に会う予定をして坂本光輝と黄色い救急車に乗ってどこかへ去って行った。 その後、篤子の連絡を受け藤枝の父親がやってきた。藤枝の父親は、車から降り、なにも言わず藤枝の前に立つと間髪いれず藤枝を殴り倒した。 篤子とナオコがあっけにとられている間に、藤枝の父親は藤枝を掴み上げ無理やり立ちあがらせる。 「二人とも。今日は本当にすまなかったね」 藤枝の父親はそう言うと、藤枝を引き連れさっさと車で帰ってしまった。 次の日、桑村伊斗子の葬式で篤子が見た藤枝の有様は、ひどいものだった。 態度は伊斗子の葬式という事もあっていつもよりおとなしいものであったが、篤子が驚いたのはそこではなかった。ひどい有様だった部分は顔だった。 藤枝の顔は、左頬が大きくはれ上がり、大きな痣ができていた。のちに語った藤枝によれば、この時奥歯が折れていたらしい。 なんでも、家に帰った後またグーで左頬のあたりを思いっきり殴られたんだそうだ。 さらに次の日、藤枝の髪の毛が劇的に変わっていた。 肩まで伸ばしていたつややかな髪は、ばっさり切られ短めのおかっぱ頭に変わっていた。ボブカットなどではなくおかっぱという方がしっくりくるそんな髪型。 篤子もナオコもこれにはさすがに驚いた。 藤枝という女学生は、偏屈なまでに肩までのストレート好む人間であり、小学生のころから髪型を変えたことがない人間だったからである。 それを知っているからこそ、二人は驚いた。そして、伊斗子が死んだことにどれだけショックを受けたのかを悟る結果となった。 どうしておかっぱなのか、ナオコは知っているんだろうなと篤子は思う。ナオコは彼女よりも驚いていたからだ。 しかし、彼女はその理由を聞こうとは思っていない。いつか話してくれるだろうと信じているからだ。今は。聞くべき時ではない。 彼女はそう思っていた。 (ナオコは……特に変わったところはないわね) 石田ナオコは良くも悪くも平凡な人間である。予想以上のことをしなければ、予想以下のこともしない。 親友が死んで悲しみ落ち込んでいたが、それだけだ。 (いいえ、) 篤子は不意に否定する。変わったところは、あった。本をよく読むようになった……らしい。 らしい、というのは篤子自身がその目で確認していないからだ。あくまでナオコの母親である石田ユキコから聞いた情報である。 何を読んでいるかまでは把握していないらしいが、それでも娘が本をよく読むようにあったのはうれしいと篤子に語っていた。 それと同時に、興奮した様子で娘に彼氏ができたとも語っていた。しかし、それはユキコの認識違いであることを篤子は知っている。 ユキコが娘の彼氏だと思っている人物は口裂け女とのゴタゴタで知り合いになった坂本光輝である。 ナオコと光輝は最近よくともに行動しているようで、今日は藤枝も交えて行動すると言っていた。 (坂本光輝か) 目下、篤子にとってよくわからない人物その1である。 身長は170センチほどで、手入れをしていない乱れた髪の毛をカチューシャで後ろへ押さえつけている。 篤子の見立てでは年齢は自分たちよりは上だが、そこまで離れていないだろうとしている。 彼がナオコをストーカーしていた口裂け女の正体であることは、すでにナオコから聞かされている。 なんでも口裂け女の被害者たちには実は共通点があり、ナオコにもその共通点があったらしい。 しかも、その共通点はナオコどころか藤枝や自分にもあったと聞いて篤子は驚いた。ただし、その共通点が何だったのかは教えてもらっていない。 その共通点などをナオコに教えた坂本光輝は、普段は真っ赤なコートを着てカチューシャを外している。その姿はまさしく口裂け女そのものである。 その姿の彼に篤子は異様な威圧感を受ける。 (威圧感じゃないわね) 威圧感ではなく恐怖。息をすることさえできなくなってしまうほどの恐怖を覚えるのだ。 彼が言うには次第になれるものらしいが、あれほどの恐怖に慣れることなんてあるのだろうかと、篤子は自分に問いかける。 体を動かすこともできない恐怖に慣れることができるのかと。そんな中、藤枝だけは全く平気だったことを思い出す。 彼女は光輝に対し、まったく恐怖を感じていなかった。恐怖を感じている篤子たちを後目にしっかりと受け答えをしていた。 篤子はそれを馬鹿だから恐怖心がマヒしていると結論付けた。あれでは参考になることなんて何一つない。きっとナオコも同意見だろうと篤子は思う。 (そんな人と一緒にいる麦野アブラカダブラ) 黄色い救急車に乗る、あからさまな偽名を使う女性。そしてよくわからない人物その2である。 右目に眼帯をしていること以外は見た目に怪しいところはない。 (私は、あの人を見たことがある) 今でもよく覚えている。よく印象に残っている。麦野という女性の印象はそれほどまでに強い。 (でも、あの時は眼帯なんて付けてなかった) 篤子が物思いにふけっているとこに、足音が聞こえてきた。 その足音に反応し、篤子は顔を上げる。 「すまない。待たせてしまったかな?櫛間、篤子君だったかな?」 「あ、はい。あってます。私もさっき来たところですから。麦野さん」 篤子の視線の先にいたのは、ついさっきまで思い巡らしていた麦野アブラカダブラだった。 時計は9時丁度。麦野は時間丁度に来る人間のようだ。 この間見たときと同じマニッシュショートに眼帯、今回は細めで灰色のタートルネックセーターを着込んでいる。 「そうか。じゃあ早速案内してくれる?」 「はい。行きましょうか」 お互い最低限の挨拶だけ交わし、二人は歩きだした。二人の目的地は百々藤枝の祖父である百々石原の住んでいた家である。 篤子もナオコも何度か藤枝に連れて行ってもらったことがあるので家の位置は知っていた。 「ひとつ聞いてもいい?」 「はい?」 沈黙の中、会話の糸口を見出そうとしていた篤子の予想を裏切り、麦野は自ら篤子に話しかけた。 予期せぬことに多少驚きはしたが、篤子はそれをおくびにも出さず対応する。 「どうして道案内役を立候補したのかしら?」 今から4日前で、桑村伊斗子の葬式の次の日、麦野は藤枝と会っていた。 藤枝の祖父、石原の家に行く日を決めるためである。その日居合わせた篤子は自ら道案内兼家宅捜索に当たっての監視を立候補した。 本来なら藤枝が行うべきところだが、彼女は面倒だったのか喜んで篤子にその役を任せたのである。 「君は藤枝さんやナオコさんと違って私とはまったく接点がないと思うのだけど」 そう、篤子には麦野とは全く接点がない。藤枝は祖父というつながりが、ナオコには坂本光輝というつながりがある。 それでも、篤子には自分から引き受けたのには十分な理由がある。 「接点がないから立候補したんです。こうでもしない限り会う事もないと思いますから」 「なるほど。何か聞きたいことでもあるのかな?大方、都市伝説のことだと思うが」 「……やっぱりわかりますか?」 なんの接点も無いから、何の情報も入ってこない。 人並みに好奇心があれば、自分の身に降りかかったことを知りたいと思うのは当然のことだと篤子は考える。 好奇心は猫をも殺すというが、それは好奇心を持つなという事ではない。好奇心はほどほどにしろという意味である。 この好奇心は度を超えていないと篤子は信じている。 そもそも、口裂け女の被害者たちの襲われた共通点、つまり伊斗子が殺された理由などを麦野は知っているだろう踏んでいるからこそ、麦野に聞くことにしたのだが。 「君みたいな人が今までいなかったわけじゃないから。もっとも、今まではすぐに別の所に移動して答えなかったけど」 「今回は答えてもらえるんでしょうか?」 「答えない理由は無いよ」 「ありがとうございます」 会話の最中も、二人の足が止まることはない。並行して目的地まで歩いていく。 しかし、喋り始めるとそちらに集中してしまい篤子の歩みは先程までより遅くなっていた。麦野はそれに気が付いていたが表には出さず、篤子の歩くペースに合わせる。 「それでは、一番初めに聞きたいことがあったんですけれど」 「うん」 「なんで偽名なんですか?」 初めから本題の質問をぶつけることを篤子はしなかった。初めからその質問をぶつけて、答えられてしまっては後に続かないとか思ったからである。 なので初めはどうでもよさそうな、しかし疑問に思っていることをぶつけることにした。 「なんとうか、予想していた質問とずいぶん違うね。別にかまわないけど」 麦野もさすがにそんなどうでもいい質問が来るとは思っていなかったようだ。 「私は7年ぐらい前までアメリカのとある団体に所属していたんだ。メンバー全員が契約者のね」 「契約者?」 篤子にとって馴染みのない言葉が耳に入ってくる。 『契約者』 しかし、それが重要なキーワードであることは理解できた。 「そうだった。まずはそこから説明しないといけないな。簡単に言うと、契約者というのは都市伝説と契約して超能力が使えるようになった人間のこと」 「都市伝説と契約って……」 「たとえば今回の事件、この町を襲った都市伝説『口裂け女』は実体化した口裂け女。実はああいった現実に現れた都市伝説はたくさんいるんだよ。 今回みたいなことは実は特別なんかじゃない。ニュースなんかに取り上げられるのは珍しいがね。実体化した都市伝説は、自由意思で行動する。例外もあるがね。 たとえばその場に口裂け女が5人いたとしよう。すると、5人の口裂け女は人と同じように別々の個性がある」 篤子にとっては信じがたいことだった。麦野の説明はまるで漫画の中でしかありえないようなことだ。 酔っ払いの妄言と同等だといっても過言じゃないだろう。都市伝説が実体化するなんて、なおかつ被害をふるうなんて。 しかし、篤子は実際に見たのだ。人を超えた動きをする口裂け女を。ただし、あれは男だったが。そこで篤子は一つの疑問にこの話を結びつける。 「坂本さんは、契約者ですよね。たぶん口裂け女だと思うんですけど」 「よくわかったね。といっても彼は分かりやすいか。普段から口裂け女の格好をしているから。そう、彼は口裂け女と契約した人間。口裂け『男』だ。 契約したことによって得た力は身体能力の超人化。弱点はポマードだ」 「やっぱりそうだったんですね。ならあの人から感じる恐怖は何なんですか?」 「ああ、あれはちょっと特殊な事情があってね。彼の問題だから私が口にしていいものではない」 「あっ、すみません」 少し深めに質問していしまったことを篤子は後悔する。場合によってこのまま質問を打ち切ってしまいかねない。 「いや、かまわない」 幸いにもその心配はなかったようだ。 「でも、いいんですか?そんな弱点まで言ってしまって。不利なことじゃないですか」 「口裂け女なんていうメジャーなものはすでに弱点が露呈しているじゃない。ポマードがダメ。ベッコウ飴が好き。ポマードと3回唱えるのもよし。 メジャーな都市伝説は誰でも弱点を知っているし、弱点が無くても対抗策を知っている」 「あ、確かに」 「彼は口裂け女と契約していることを隠そうともしていないからね。常に弱点を教えているようなものだよ」 それはきっと自信の裏返しなのだろう。弱点であるポマードを使われても勝つという。 しかし、篤子がナオコから聞いた話だと、彼はポマードを使われるとまともに動けないどころか発狂しそうな感じらしいが。 ただの虚勢なのだろうか?篤子はその可能性を真剣に考えた。 「ちなみに私の契約している都市伝説は複数あるが、たとえばこんなものがある」 麦野は歩きながら、ジーンズのポケットからペンを取り出した。長さは約18センチほどだろうか。そしてセーターをめくり上げる。 さらされたのは何の変哲もない普通のおなかだ。 「何をすっ!」 麦野はペンを握りしめると、勢いよく自分のおなかに突き刺した。あまりにも突然のことに篤子は声を失い足を止める。 麦野が握っていた部分を離す。臍のあたりから右に5センチほどのあたり部分にペンが半分まで刺さっていた。麦野はさらに押し込んでいき、3分の2ほどまで刺さっていく。 「……!」 目を見開く篤子を後目に麦野はペンを上下左右に動かし始める。篤子は慌てて麦野顔を見る。そこに痛みの表情は無い。それどころか面白がっている笑みすら浮かんでいる。 もう一度刺さっているペンを見る。さっきから動かされているが、血も出る様子はない。 呆けてみていると麦野は目の前で何事もなかったかのようにペンを腹部から抜き取る。やはり出血はない。刺さっていた部分を見る。 そこにはうっすらとだが痕の様なものがあった。麦野はペンをポケットに戻すと、服を整えた。何事もなかったかのように。 「なかなかいい驚きっぷりだ」 「…………い、今のって、手品とかじゃ、ないんですよね」 「もちろん。これが私が手に入れた能力の一つだ。何かわかるかな?」 「再生、ですか?」 「近くて遠い答えだ。正解は『不死身』。どれだけ怪我を負っても再生し、死ぬことはない」 なんて非常識な存在なんだろう。それが篤子の本心だった。 不死身なんて、それこそ漫画やアニメだ。あり得ない。しかし、その一端を目にしてしまった。あれを目にした後なら、不死身だといわれても信じてしまう。 だからこそ、非常識だと思わざるを得ないのだ。 (気持ち悪い……) 今や篤子の眼に映る麦野アブラカダブラは人ではなかった。人の形をした化け物という認識になっていた。 自分の隣に、人の形をしたものが一緒にいる怖くなった。 「怖い?」 「えっ」 それを見透かしたかのように麦野は篤子を見つめて微笑みを浮かべる。 その微笑みに、篤子は心臓をわしづかみにされたかのような感覚を覚える。まるで心を読まれているよな錯覚に陥る。 「今私のことを怖いと思わなかったかな?」 「………思いました」 「正直だね」 「どうしてわかったんですか。都市伝説の力ですか。私の心でも読んだんですか!?」 「ハハハッ。全然違うよ」 多少落ち着きをなくした篤子をなだめるように麦野は優しく語りかけ、肩に手を置く。 「あいにく心が読める都市伝説は契約してないよ。ただ君の表情の変化を読み取っただけ」 「ひょう、じょう」 「そう。表情。君はポーカーフェイスを気取っているけど完璧にやるならもっと訓練しないと。恐怖なんて顔に出やすい感情の一つなんだよ?」 麦野は薄く笑いながら篤子の肩をたたく。 「ひとつ教えてあげよう。私の不死身は完璧じゃないんだ。弱点があるんだよ」 「……」 「さすがにそれを言うわけにはいかないけど。この世に完全な不死身なんて存在しないよ。私はまだ人間の範疇。 でなければ、この右目のような怪我なんて負うはずがないだろう」 「……そう、ですね」 そうだ。この人は右目に怪我をしている。それを改めて意識した瞬間、篤子の心は再び平常心を取り戻し始める。 篤子の眼に映る麦野アブラカダブラが人間に戻っていく。 「あの、すみません。私失礼なことを考えてしまって」 「そんなことはない。目の前で不思議なことが起こった時に恐怖を持つ人の方が多いものだよ」 「そう言ってもらえると、楽になります」 「よかった。さ、足が止まってる。歩こうか」 「はい!」 二人の足は百々石原邸に向けて再び動き出す。 「話が大分脱線してしまっていたね。なぜ偽名なのかだったね。団体に所属していたところまでは話したね?」 「はい。所属している人全員が契約者なんですよね」 「そう。所属条件が契約者であることだからね。その団体の規則の一つで、全員があだ名で呼びあうというものがあった」 「何ですかそれ?」 「リーダーの茶目っ気だったのだ思うわ。そういう親しい雰囲気が好きな人だったから。それで皆自分の契約した都市伝説からあだ名を付けたわ」 「その時のあだ名がアブラカダブラなんですね」 麦野は懐かしそうに目を細めながら頷く。楽しかった思い出を思い出しているのだろうか。 「所属したての頃、私は特定の病気を癒す都市伝説としか契約していなかった。それが呪文のアブラカダブラ。それがそのままあだ名になった」 「不死身が初めじゃないんですか?」 「不死身になったのは所属して8ヶ月後ぐらい、だったかな。ちなみに、ほかの人のあだ名は『フィラデルフィア』『51』『メン』『ビッグマン』とかかな。 都市伝説に詳しい人が聞けば、どんな都市伝説と契約しているかすぐわかってしまうようなあだ名だらけだった」 篤子にはよくわからないあだ名だらけだが、麦野がそう言うからには直接的なあだ名だらけだったのだろう。 (でも、) 篤子にも一つだけわかるものがあった。それは『51』だ。『51』というのはエリア51のことじゃないのだろうか? 都市伝説などというもにはそれほど詳しくない篤子だが、それでも耳にしたことがある名称だ。たしか宇宙人やUFOなどの特集でよく耳にした名称だということ思い出す。 それは一体どんな能力なのだろうか。篤子には想像がつかなかった。 「本名は教えてもらえないんですか?」 「本名は3つあるのよ。日本名、アメリカ名、ロシア名。親の都合でね。戸籍に登録されてるのはアメリカ名だけど」 「親がハーフとかですか?」 「そうそう。親がロシアと日本、アメリカと日本のハーフでね。育ちはアメリカ。一時期ロシアにも住んでたけどもう済みたくないな。 ちなみに本名はここ4年くらい特別な理由がない限り名乗ってないから、教えることはできないわね」 「そうですか」 そうだ、と言わんばかりに麦野が突然両手を合わせる。 「そういえば。あとどれくらいで家に着くのかしら?」 「えーと、このペースでいけばもう2分も掛かりませんね」 「案外近くなんだね」 「ちょっとペースを上げますか?」 「そうだね。上げてもらえるとうれしいかな」 それを聞いて篤子はペースを上げた。質問はまだあるが、歩きながら喋るよりも家に着いてから喋った方が落ち着いて喋ることができるだろうという考えからである。 ペースを上げて歩き始めて2分もしないうちに篤子たちは目的地に着いた。その家は約8坪2階建の狭小住宅で、同じような家がそこらへんにいくつも建っている。 「ここは借家かなにか?」 「はい。そこらへんにある同じような家も全部そうです。家主は百々辰巳って言います」 「百々石原の息子」 「名前がまともなんでたぶんお婿さんだと思いますけどね」 「ひどいこと言うね」 与太話をしながら、篤子がポケットから取り出した鍵を使い戸を開錠する。引き戸を開けると、こじんまりとした玄関が目に飛び込んできた。 横に備え付けられている靴箱の上には所狭しとこけしが置かれている。家には誰も立ち入っていないらしく、到る所に誇りがうっすら積もっている。 篤子は玄関の隅に置かれていたスリッパを手に取り靴を脱ぐと、スリッパを履く。麦野もそれに倣いスリッパを履いた。 「狭い」 「一人で暮らす分には十分ですけどね。私も友達ときた時は狭い狭いと文句を言いましたけど」 「こんな家に女の子が遊びに来るなんて、面白いものでもあったの?」 「ゲームがたくさんあったんですよ。ただ全然遊んでる形跡がなかったんで、孫に来てほしくて買ってたんだと思いますけどね。とりあえず家の中見て回ります?」 「そうしようかな」 狭小住宅という言葉の通り、8坪の家は狭く約1分ほどで大まかに家の中を見て回れてしまった。 今二人がいるのは2階、2階は二つ部屋があり、片方が寝室でもう片方は壁という壁に本棚備え付けられている。さらに畳の上にも本が積み重ねられていた。 二人はその本の大量にある部屋に留まっている。 麦野は本棚から本を一冊ずつ取り出しパラパラとページをめくっていく。篤子はその様子を床に積み上げられた本の上に座りながら見つめていた。 とりあえず一番時間がかかりそうな所から調べえいくことにしたらしい。 「ここにある本、全部見るつもりなんですか?」 「そうだね。目的のものが見つかるまで調べるつもりだからそうなるかもしれない」 「ちなみに、目的のものとは?」 「さあ?」 「えー…」 「探して、これだ!と思うものが目的のものさ」 (適当なのね) 篤子は立ち上がると、移動して窓を開ける。これから色々と本を動かすことになる。 うっすらとはいえ、目に見えるほど埃が積もっているのなら、物を動かすたびに埃が舞ってしまう。窓を開けてしっかり換気しなければ埃を吸い込んでしまう。 それは健康に悪い。篤子はそんな思いから窓を開けた。晴れてはいるがまだ外は肌寒く、外の冷気が部屋の中に入り込んでくる。 顔に当たった冷気に、篤子は少し身を震わせた。 篤子は後ろにいる麦野を見る。彼女も窓が開いたことには気づいているのだろうが、そんなこと関係ないといわんばかりに本を読んでいる。 部屋の温度は一気に変わったはずだが、身を震わすことすらない。 (喋るタイミングを逃した気がするわ) 間が空いたからだろうか、何となく喋りかけづらい。ましてや相手は調べ物をしている途中である。話しかけるのはマナーが良いとは言えない。 これからどんどん時間が経っていくだろう。暇をつぶせるものを持ってこなかったことを篤子は後悔する。 「君のメガネ」 「は、はい?」 そう思っていた矢先、喋るチャンスがやってきた。なんと彼女の方から喋りかけてきたのである。 ここなんとか会話に繋げなければ。そう思う篤子の心に多少緊張が走る。 「君のメガネは男ものだね?なんで男ものなんだい?」 「これですか?」 メガネに触りながら、篤子は中学生のころを思い出す。死んだ父のことを。 別に聞かれて困るような話ではない。 「私の父の形見なんです。度もぴったりなんで使ってるんですよ」 「パパが好きだったんだね」 「そうですね。好きでした。とても尊敬していました。だから、このメガネを付けていると父が見守ってくれているんじゃないかと思えるんです」 「素敵な話だ」 「こういう話ってちょっと照れますね。そうだ私からも聞きたいことがあるんですけど」 篤子には聞きたいことが2つあった。今がそれを聞く良いチャンスだと考える。 「聞きたいこと?都市伝説と契約する方法?学校町に行けば契約しやすいよ。死ぬ確率も高いと思うけど」 「いえ、それも興味がありますけど違います」 「なに?」 「2年前にターボババアと戦いませんでした?」 「……君は、都市伝説と接するのが今回初めてじゃなかったかな?それにどうして2年前と具体的に?」 「見たんです。2年前旅行に行った時、あなたとターボババアを」 篤子は思い出す。2年前、母と姉と旅行に行った時のことを。そこで見た麦野を、帰りに見たターボババアを。 「あの時は、ターボババアを見たときは幻覚だと思ってました。姉も見てましたが、一緒に幻覚を見たんだと思い込むようにしてました。 でも今回のことがあって、あなたにあって、あれが現実なんだと信じることができるようになりました。 あそこにあなたがいたのはターボババアと戦うためじゃないんですか?」 「2年前に旅先で見た人間を覚えているなんて記憶力がいいわね。では、お答えしましょう。そうです。私は2年前ターボババアの契約者と勝負をしました。 でも命のやり取りじゃない。もっと平和的なことだったがね。興味ある?」 「当たり前じゃないですか」 篤子と麦野は同時に笑った。そして麦野の口からターボババアのことが語られ始めた。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/67.html
夢の国 夢の国 某遊園地にて語られる都市伝説群の集合体。 所属:フリー 契約者 容姿:13~19の女。貫頭衣のような衣服を着た腰まで伸びた長い髪の女。容姿、身に纏う雰囲気共に少し幼く感じる。 口調:子供っぽくもあったりお姉さんみたいであったり。 相手に自らの能力を語る癖がある。 目的のために我が道を突き進んでいるため≪組織≫≪首塚≫両方に目を付けられている。でも構わず我が道をいっちゃう。 +詳細設定(ネタバレ注意) =侵攻時戦力・能力= 子供達を攫い、都市伝説の一部(『黒いパレード』)として使役できる。 都市伝説を吸収することにより≪夢の国≫は強大になっていく。 都市伝説に完全に取り込まれると、子供達は夢の国では臓器売買の為、子供さらいがいる。 の都市伝説によって臓器を抜かれるか、≪夢の国≫の持つ他の都市伝説に取り込まれる。大人たちは異形の住人になる。 しかし、一部は本当の王様によって確保されるか気まぐれに1000匹目の幽霊として≪夢の国≫内にて発狂するまでそのまま放置される。 夢の国著作権侵害の都市伝説の曲解により、 『夢の国の能力』を真似する能力(パサラン、ドッペル、化け狐、ムジナなど)は≪夢の国≫に触れると消滅する(解除される)。 ≪夢の国≫に対して不利益を働く者のところには黒服が行く。(人間味がほとんどない存在のため、≪組織≫の黒服のような特殊存在相手でないと入れ替わりやら諜報活動とか無理無理! ぶっちゃけ役に立たn――) 『夢の国』の契約者は、以前の自分をほとんど覚えていない。 普段はカラスがいないのは、特殊電波を出して寄ってこないようにしているためである。の拡大解釈による人避けを張っている。(あまり契約者、都市伝説には効かない) 何件かの死亡事故が発生したが、夢の国での死亡事故は0件である。故に≪夢の国≫の勢力圏において(楽しげな気配のある空間)夢の国の住人は死なない。 夢の国の住人の中身は奇形の人間である。 夢の国のマスコットキャラクターは園内の各所で見かける。しかし、あくまで彼等は世界で一人だけである。 故に≪夢の国≫の王様は≪夢に国≫の中において一人しかいないが、どこにでもいる。(瞬間移動) 夢の国はどんどんその事業を拡大している。故に結界・領域を侵食する能を住人に与える。 東京を名乗っているのに所在地は千葉。を曲解した異空間形成。 夢の国の創始者は当時の医学では治療困難なウイルス性の病気にかかっており、いつかその治療法が確立されるまで肉体を冷凍保存したという。そして、きたるべき未来によみがえるといわれている。 で、我が道を行って学校町を≪夢の国≫に取り込もうとしたら阻止されてしまったのです! 侵攻以後、夢の国 +詳細設定(ネタバレ注意) 某遊園地にて語られる都市伝説群の集合体。 所属:フリー 王様 容姿:13~19の女。貫頭衣のような衣服を着た腰まで伸びた長い髪。容姿、身に纏う雰囲気共に少し幼く感じ、見る者によって外見年齢に幅がある。 口調:普段は控えめに、しかし≪夢の国≫の王様として住人を使役するときには子供っぽい口調になったりする。 相手に自らの能力を語る癖がある。 ≪夢の国≫の本分として世界中に夢を与えに諸国漫遊の旅に出る。 =能力= 子供達に夢のような時間を過ごさせる。 夢の国著作権侵害の都市伝説の曲解により、 『夢の国の能力』を真似する能力(パサラン、ドッペル、化け狐、ムジナなど)は≪夢の国≫に触れると消滅する(解除される)。 ≪夢の国≫に対して不利益を働く者のところには黒服が行く。(人間味がほとんどない存在のため、≪組織≫の黒服のような特殊存在相手でないと入れ替わりやら諜報活動とか無理無理! ぶっちゃけ役に立たn――) 普段はカラスがいないのは、特殊電波を出して寄ってこないようにしているためである。の拡大解釈による人避けを張っている。(あまり契約者、都市伝説には効かない) 何件かの死亡事故が発生したが、夢の国での死亡事故は0件である。故に≪夢の国≫の勢力圏において(楽しげな気配のある空間)夢の国の住人は死なない。 夢の国の住人の中身は奇形の人間である。 夢の国のマスコットキャラクターは園内の各所で見かける。しかし、あくまで彼等は世界で一人だけである。 故に≪夢の国≫の王様は≪夢に国≫の中において一人しかいないが、どこにでもいる。(瞬間移動) 夢の国はどんどんその事業を拡大している。故に結界・領域を侵食する能を住人に与える。 東京を名乗っているのに所在地は千葉。を曲解した異空間形成。 ≪夢の国≫には臓器を奪う悪い人がいる。 Tさんたちの紹介はこちら Tさん ≪夢の国≫への復讐者の登場人物はこちら ≪夢の国≫への復讐者 神智学協会編の紹介はこちら 神智学協会編 ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3495.html
いつもなら、とっくに家に帰っている時刻。 紗江は、とある廃ビルの屋上に立っていた。 靴を脱いで、錆びついたフェンスを乗り越える。 「組織」での任務の途中―紗奈が死んだ。 自分は討伐対象の都市伝説を退治し、紗奈にはその契約者の少年を捕縛して貰う手はずだった。 あの時、二手に別れるべきではなかった。 都市伝説を退治して戻って来た紗江が見たのは、追い詰められた少年に刺され、赤に染められて事切れている紗奈だった。 思考が白く染まって、何も考えられなくなった。 護りたかった世界が、がらがらと音を立てて壊れていった。 紗奈は、事故死ということになった。 彼女を亡くして、今までの生活が一変した。 学校までの道を、一人で歩かなければならなかった。 彼女の席。そこに座っているはずの主の姿はなく…代わりに花が飾ってあった。 一人で食べる食事は、味がしなかった。 いつも傍にあった温もりは、もうどこにもない。 鏡に映るのは、彼女に似た自分の顔。 自分を呼ぶ声も、無邪気なあの笑顔ももう二度と見る事が出来ない。 心に、塞がらない大きな穴が空いて、じくじくと痛む。 助けられなかった、最愛の妹。 自分が代わりに死ねばよかったと何度思ったか知れない。 紗奈のいない世界なんて、生きていても意味がない。 「待ってて、紗奈ちゃん。すぐ、そっちに行くからね」 一歩、虚空へ踏み出す。 少しずつ地面が近付く中、自分に微笑む紗奈の姿を見たような気がした。 ――ばしん、と何かが地面に叩きつけられる嫌な音がして 赤い華が一つ咲いた。 DEAD END 初期設定を拾ってみました。(初期設定では、「組織」編で紗奈が死ぬ予定でした) 紗奈が死んだあと、紗江は「首塚」に拾われて少しずつ傷を癒していく予定だったんですが…これはそのルートのBAD ENDのようなものです。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3092.html
夕刻の住宅街を、2人の少女が歩いていた。 中央高校の制服を着た、一卵性の双子の姉妹…姉の天倉紗江と妹の天倉紗奈である。 花を模したヘアピンをつけた大人しそうな少女が紗江で、カチューシャをつけた活発そうな少女が紗奈だ。 ちなみに、紗江の後ろを一匹の黒い大型犬が付いてきているのだが道行く人は誰も気づいていない。この黒犬は紗江の契約した都市伝説『犬神憑き』であり、都市伝説契約者以外には見えないのだ。 学校町という町は、都市伝説で溢れている。都市伝説は都市伝説を引き寄せやすい、という性質から、都市伝説契約者は都市伝説との戦いに巻き込まれやすい。 「…グルルル」 「…紗江ちゃん、下がってて」 前方の電柱の陰の気配を感じ取った犬神がうなり声を上げる。 紗奈が、通学カバンから携帯電話を取り出し、紗江を庇うように前へ出た。 紗奈も『怪人アンサー』と契約している契約者だ。 「私…綺麗?」 その言葉と共に電柱の陰から姿を現したのは、口裂け女だった。質問への返答などどうでもいいかのように手に持った鎌を振り上げ、姉妹に襲い掛かってくる。 「…行って!」 「この…!っがあぁ!!」 紗江が犬神に指示を出す。犬神は口裂け女に飛びかかり、喉に噛みついて動きを封じた。 「貴女に質問。2030年2月18日は何曜日ですか?5秒以内に答えて下さい」 その間に紗奈が口裂け女に質問をする。 …最も、質問に答えようにも、喉を封じられているために声を出すことは不可能なのだが。 「5…4…3…2…1、はい、時間切れ。アンサーさん!」 時間切れを宣告した紗奈が携帯電話に呼びかける。 「我が主君が問い掛けに答えられのうござった代償をば貰い受ける」 エセ武士口調の男性の声が答え、それと同時に携帯電話の液晶画面から巨大な手が出現し、犬神が口裂け女から離れたのと入れ替わるように口裂け女の頭部を掴んだ。 すると、掴まれた頭部が消滅し、それに伴って残りの部位も光の粒になって消えていった。 これは、『怪人アンサー』の「質問に答えられなかった場合、代償として体の一部を持っていかれる」という能力である。 「よーしよしよし」 口裂け女が完全に消滅した後、紗江が犬神を褒め、撫でまくっていた。 とっても幸せそうな表情をしているのは、紗江が小動物(特に犬)好きだからだ。 犬神の方も尻尾をぶんぶん振っていて、まんざらではないようだ。 なぜかムツ○ロウさんみたいになってる、とか突っ込みどころはあるものの、紗江が幸せならそれで満足な紗奈だった。 続く…?