約 2,714,689 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2308.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 6日目 その1 上条編 火曜日の朝、風呂場から起き上がりながら、上条は大きなあくびを漏らした。 昨日は考える事が多すぎて、ろくに眠れなかったのだ。 敵の目的、何故幻想殺しが効かない時があったのか、操られていた者達のその後、犯人は本当に食蜂なのか。 そして何より、御坂と特攻服男が楽しそうに話をしていた(ように見えた)時に感じた、 あの妙なイライラ感は何だったのか。 結局何一つ答えが出ないまま、彼は朝を迎えたのである。 とりあえず彼はテレビをつけ、朝食の用意をしつつ今日のスケジュールを頭の中でまとめていく。 修羅場に慣れている彼は、別の作業をしながらでも戦いの準備【シミュレート】をする事ができるようになっていた。 (結局今のとこ一番怪しいってだけで、食蜂って子が犯人って確証は無いんだよな…… あっ、芸能ニュースやってる。 いやでも木原加群の例もあるし、科学サイドでありながらグレムリンである可能性も…… へぇ~、一一一って破局したんだ。相手は確かグラビアの人だったっけか? あれ? かつお節どこやったっけな……っとやべ!玉子が焦げそうだ! つーかトイレ行きたくなってきた!!) わりと雑念だらけだったようだ。これも寝不足のせいかもしれない。 トイレから出ると、番組は朝の占いコーナーを始める所だった。 上条はこのコーナーが嫌いである。 不幸体質の彼は、元々こういったものは信じないのだが、 以前たまたま水瓶座が一位だった時にちょっとだけ試してみたのだ。 その日のラッキーアイテムは新品の靴、ラッキーカラーはダークブラウンだった。 しかしその日は、コンビニのトイレに入っては紙がきれており、バナナの皮で滑っては頭を強打し、 ラーメンを食べようとすればビンの中のコショウが全部入ってしまい、 川に捨てられた猫を助けてみたらただのヌイグルミだったりと、まるでマンガのような散々な一日だったのだ。 その上、新品の靴【ラッキーアイテム】でダークブラウン【ラッキーカラー】色の犬のウ○コを踏んだ事で、 止めを刺され、彼の心はポッキリと折られたのだ。 これは「ミツオ君の呪い」として語り継がれ、以後占いは一切信じないと彼は誓ったのである。 興味の無いコーナーに変わったため、上条はテレビに背を向け、再び朝食の用意を続けようと台所に立つ。 一瞬、ザザザッと未来日記の予知が書き換わったようなノイズがテレビから聞こえた気がしたが、 この部屋にある家電達は普段から上条の不幸に巻き込まれ慣れているため、半分壊れたような物も多い。 なので彼は気にせずきゅうりを切っていく。 『今日の占いカウントダウンのコーナー! だけど。』 アナウンサーの声がいつもと違う気がするが、気のせいだろう。 というより、この声とこの口調は、普段学校で聞きなれている気がするが、気のせいだろう。 『それでは本日の第一位は……水瓶座のあなただけど! 恋愛運が急上昇! 第7学区の鉄橋で告白すれば、大成功間違いないけど!!』 「恋愛運ねぇ……俺には関係ないな。」 『ちなみにラッキー髪型は「ツンツン頭」、ラッキー口癖は「不幸だー」、 ラッキー能力は「イマz…能力を打ち消す能力」だけど。』 「…何かピンポイントで俺の事言われてるような……んな訳ないか。」 『んな訳あるけど。』 「……? 今テレビと会話したような……気のせい…だよな?」 いや、気付けよ上条。どんだけ寝ぼけてんだ。 『おい姉よ。目玉焼きは固焼きと半熟どっちが… ってあれ? 何だこれ、上条当麻が映ってる。 おーい!上条ー!』 『あっ! バカ、鞠亜! ちょっと邪魔しないでほしいんだけど!?』 『何をー!? 姉の朝食をせっせと作る可愛い妹に対して、邪魔は無いだろ邪魔は!! ものすごくプライドに傷がついたぞ!』 『あーはいはい、悪かったけど! え、え~と、それじゃあスタジオにお返ししますけど~。 あ、それと鞠亜、私は目玉焼きは半j』 もうグッダグダである。 再びテレビにノイズが走り、謎の電波ジャック(といっても上条自身は気付いていなかったが)から元に戻る。 にしても、これだけの事が起こったのに上条は、 「んー…何か今日の占いコーナー違和感があったな……ま、いっか。」 と、対して気にも留めず黙々と味噌汁をかき混ぜている。 ちったぁ気にしろ。 「そういえば、第7学区の鉄橋で告白すると成功するとか言ってたな…… まぁ、あの占いはあてにならないし、そもそも俺に好きな人なんて―――」 そう呟いた瞬間、上条の脳裏には何故か御坂の顔が過ぎった。 (……今何で美琴の事思い出したんだ…?) それは単純に、第7学区の鉄橋が御坂との思い出の深い場所だからなのか、 それとも―――? その後、ボーっと考えている彼は、インデックスの「おなかすいた」の一言で我に返ったが、 味噌汁は沸騰し、玉子焼きは完全に焦げてしまっていたという。 御坂編 朝食もとり、学校に行くための身支度を整えながら、御坂は大きなあくびを漏らした。 昨日は考える事が多すぎて、ろくに眠れなかったのだ。 どうやってあの食蜂を連れ出すか、彼女は上条に一体何をしたのか。 そして何より、突如上条からされたあの告白。 何度も何度も頭の中で、「俺の恋人になってくれ!! 俺にはお前が必要なんだ!!」 という声がリピートされたまま、彼女は朝を迎えたのである。 一方、ルームメイトの白井もまた寝不足だ。 何しろ愛しのお姉様が一晩中キグルマーを抱き締めながら、ニヤニヤゴロゴロモフモフフニャフニャしていたのだ。 絶対何かあったはずなのだが、何度尋ねても、「え~? 別に何も~♪」という答えが返ってくるだけであった。 (何ですの!? 何があったんですのお姉様!!? あのキグルマーは誰の代役でしたの!? ぎゅっとして痛いくらいあなたじゃなきゃダメですのぉぉぉぉ!!?) 好きだと思うほど苦しくなるから出逢いたくなかったのだろう。 世の中知らない方が幸せな事もあるぞ白井。 と、その時御坂のケータイから、 『え? えっと…これ読めばいいのか? 「おーい! 電話鳴ってるぞー!」 …これでいいか?』 と上条の声の着ボイスが鳴る。 ちなみに余談だが、これは「そげ部」でダウンロードしたものだ。 これの他にも、『その幻想をぶち殺す!』や『不幸だー』などの有名なものは勿論、 『「ほら電話だぜ? 早くお前の声を聞かせてくれよ」……これ、誰が得するんだ?』といったものから、 『「お姉ちゃん、電話だにょん」って、何言わせんだよ気色悪い!!』といった変り種まで様々だ。 台詞の前後の余分なところをカットしていないのは、あえてそうしているのか、それとも姫神の編集が雑だからなのか。 以上、余談終わり。 御坂は電話をかけてきた相手の名前を確認し、通話ボタンを押す。 「おはよう初春さん。 どうしたの?こんな朝から。」 『あっ! おはようございます御坂さん! 突然で申し訳ないんですけど、今日の放課後って空いてますか!?』 「う~ん…放課後かぁ……」 先程も説明したように、御坂には食蜂を連れ出すという任務がある。 「どうかな…今日はちょっと忙しくなるかも。でも何で?」 『実はですね…今日佐天さんが好きな人に告白するらしいんですよ!! だから御坂さん達も尾行…もとい、見守りに来ませんか!?』 「えっ!? 本当なのそれ!! で?で?相手は誰!?」 予想以上の食いつきっぷりだ。やはり御坂も女の子、友人の恋愛話は楽しいものなのだ。 今まで自分が弄られる側だっただけに尚更だ。 『それが…お相手は私も知らないんですよ。まぁ、どんな方であっても応援するつもりですけどね。』 「……相手が『女の子なら誰でも構わないっていう関西弁の大男』や、『義妹に手を出すアロハシャツの男』でも?」 『あはは! そんな人いませんって!』 いるんだなこれが。 御坂はその人物達を夏休み最後の日に目撃しているし、悲しい事にソイツ等は上条のクラスメイトだったりする。 『じゃあもし来られたら来て下さい。また後で電話しますので。』 「うん、分かったわ。黒子にも伝えておくわね。」 『はい! お願いしまにょわ~~~~~!!!!!』 「!? ど、どうしたの初春さん!?」 『な、な、何でもないです!! それじゃあ失礼します!!』 と、明らかに何でもなくない切られかたをされた。あっちはあっちで大変なのだ。 「…何だったのかしら……」 「お電話、どなたからでしたの?」 「あぁ、初春さんから。 何かね! 佐天さんが今日誰かに告白するんだって!! だから皆で茶化しに…もとい、応援しに来ないかってさ!!」 「まぁまぁ、それはまた随分と面白そ…もとい、気になりますわね。」 全員本音がだだ漏れである。 要は尾行して茶化して面白がりたいのだろう。 「いや~、それにしてもどこでも春が来てるのね……まだ冬なのに。」 「(『どこでも』ってどういう意味ですのお姉様!!? 黒子の心は季節通り凍えきっておりますのに!!!) ……ん? 佐天さんのお好きな人って確か………」 白井は思い出した。 そう、佐天の好きな人は上条なのである。 白井は内から湧き出そうになる邪悪な笑みを必死に抑え、御坂にある確認を取る。 「お姉様…佐天さんの恋、勿論応援いたしますわよね…?」 「ん…まぁそうね。 初春さんにも言ったけど、相手がよっぽどアレじゃない限りはね。」 「何を仰いますか! 佐天さんがお選びになった方ですわよ!? きっといいお人に決まっていますの!」 「そう、ね。 うん! きっとそうよね!!」 それを聞き、再び白井は笑いを堪える。 (だ…駄目だ まだ笑うな… こらえるんだ…ですの) 「ねぇ黒子……佐天さん、きっとうまくいくわよね!!」 純粋な笑顔でそう言った御坂に対して、白井は心の中でほくそ笑みながらこう思った。 (お姉様【ニア】わたくし【ぼく】の勝ちですの!) その台詞はどちらかといえば失敗フラグなのだが。 白井は、『佐天さんと類人猿をくっつけて、わたくしはお姉様と…ウヒヒヒヒ!』作戦を再開させたのだった。 佐天編 いつもより少し早めに寮を出て、通学路を歩きながら、佐天は大きなあくびを……漏らしていなかった。 昨日は考える事が多すぎたはずなのだが、 「明日の事は明日考えればいいか」と思い、彼女はぐっすりと眠ったのだ。 ショチトルのおかげで吹っ切れたからなのだろうか、のんきに鼻唄なんぞを口ずさんでいる。 「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! Let’s\(・ω・)/にゃー!」 それにしてもこの少女、ノリノリである。朝っぱらから混沌を這いよらせるなよ。 単純に元から性格が楽観的なだけかもしれない。 学校に向かっている途中、佐天は電話中の初春を発見する。 佐天は当たり前のように、初春のスカートを持ち上げた。 ほほう、白と水色の縞パンか。分かっているじゃないか初春さん。 「はい! おねがいしまにょわ~~~~~!!!!!」 『!? ど、どうしたの初春さん!?』 「な、な、何でもないです!! それじゃあ失礼します!!」 電話を切り、初春は後ろにいる人物をキッ!と睨む。 「ダメだよ初春~。『にょわ~~~~~!!!!!』じゃなくて、 正しいリアクションは『いや~ん、まいっちんぐ!』だよ?」 「古っ【ぶぶっ】!? 一世代は昔でしょ!それが流行ったの!! ていうか何度も言ってますが! スカート捲るのやめて下さいよ!!」 「え~? あたしじゃないよ。 今日風が強いからそのせいじゃない? 今日は……風が騒がしいな…」 「でも少し…この風…泣いています……じゃないですよ! そんなので誤魔化されませんし、ポテトも半額じゃないですからね!!」 「人を疑うのはよくないな。ちゃんと証拠が無いと。 『裁判でモノを言うのは証拠品だけだ! その他のものは全て沈黙すべし!』 ってヒラヒラした検事が言ってたよ?」 「知らないですよ! いい加減罪を認めて下さいよ! 有罪ですよ有罪!!」 「ふっ…ばれちゃあしょうがねぇ…… よくぞ見破った! そう! 初春のスカートを捲ったのはこのあたしだったのだぁぁ!!」 「でしょうね!!!」 「これがあたしの能力、腰布捲り【パンツハイテルカー】なのだ!! ちなみにこの技は百八式まであるよ?」 「波動球!? そもそも佐天さんの能力って空力使いですよね!!?」 絶好調だな佐天さん。 いくらなんでも、テンション高すぎやしないだろうか。 まぁ今日告白するにあたって、気合でも入れた結果、おかしな方向に行ってしまったのかもしれない。 三者三様の朝を迎え、それぞれ行動を起こし始める。 だが彼等以外にも、今日という日を動き始めていた。 ある者は上条に協力し、ある者は復習を誓い、ある者は普段通りに行動し、 ある者は高みの見物を決め込み、ある者は全く関係ない事件に巻き込まれていた。 上条、御坂、佐天。 今日という日、彼等にとって、ついに『決着』がつこうとしている。 これはたった一人の『少年』と。たった二人の『少女』。 それだけでは済まない、ある意味最悪の騒乱。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2127.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 後編 この世は何が起こるか分からない。 人生の転機とは唐突にやってくるものだ。 とある不幸な少年は、魔道書を記憶しているという少女を助けた事で、科学と魔術の抗争に巻き込まれていく事になった。 最強を求めた少年は、今まで殺してきた人形と瓜二つな少女を助けた事で、学園都市の更なる闇へと堕ちていく事になった。 チンピラだった少年は、たった一人の愛する少女を助けた事で、学園都市を敵に回す事になった。 突然死神のノートを拾う事もあるかもしれない。組織の新薬の実験台にされ、子供になる事もあるだろう。 実家の蔵の地下に、大妖怪とそれを滅する槍が封印されている事だって、十分にありえるのだ。 だから驚くべきことじゃない。 「昨日までそんな素振りを全く見せなかった男から、突然告白される」なんてことは。 たとえそれが意中の相手だったとしても。 その二人が唐突に恋人同士になったとしても、別に驚くことではない。きっとよくあることなのだ。 そんなよくある二人の上条と御坂。 たった今恋人となった二人は、同じベンチに座っている。ただそこには、大分距離がある。 まぁ確かに告白直後だ。気まずいのも無理はないだろう。 そんな二人はそれぞれ思いにふけているようだ。これからのことを考えているのだろう。 (どどどどうしよう!!! すごくうれしいけどアイツの顔まともに見れない~~~!!! こんな時はどうすればいいんだっけ!? えっとえっとたしか、相手の顔に「人」って書いてカボチャを三回飲み込めばいいんだっけ!? あ~も~!! 全然頭が回らない~~~!!!) みさかは こんらんしている! わけも わからず じぶんを こうげきした! 少々テンパリすぎな感はあるが、御坂の反応は分かる。 問題は上条だ。 「ついに ねんがんのカノジョを てにいれたぞ!」なはずなのに、何だか浮かない顔をしている。 彼は御坂とは全く違う事を思っているようだ。 彼氏彼女の事情は違うのかもしれない。 (恋人役はこれでいいとしても、これからどうするかだな…… とりあえずその場しのぎにはなるが、根本的な解決にはなっちゃいねぇ。 かと言って、動きようにも情報が少なすぎる。 手がかりといえば、精神系の魔術師か能力者。一度に大勢を操れる。……それくらいか。 しかも目的が全く読めないのも厄介だよな。 女の子を使って俺に告白させて何のつもりだ?俺の純情弄ぶやん? せめて魔術に詳しい味方がいればいいんだが…… あ~くそ! 土御門がやられてなきゃな~!!) 君は一体何を言うとるのかね。 彼は架空の敵を勝手に作り、勝手にピンチに陥っている。 つーか純情弄んでんのはお前なんだが。 「おーいたいた! 久しぶりなのよ上条当麻! ……ってそれほどでもないか」 迷走中の上条のもとに、ある男が話しかけてきた。 その光沢のあるクワガタのような特徴的な髪型の男は、 「た、建宮!? 何で学園都市【ここ】に!?」 「まぁちょっと野暮用なのよな。」 そう言いながら、建宮は御坂の方をチラリと見る。 (んー…この子が上条当麻のことを好きなのは間違いなさそうなのよ。 けどこれくらいなら、女教皇様と五和にもまだまだチャンスがあると見た!! お嬢ちゃんには悪いが、恋ってのは奪ってナンボの世界なのよ!!) なにやら燃えている建宮。 お願いだから、これ以上事態をややこしくしないでくれないか。 「野暮用って?」 「あー…実はアレなのよ。みんなしてお前さんに会いに来たんで、俺はその付き添いみたいなものなのよ。」 みんな、というワードに上条は嫌な予感がした。 「誰が来てんの……?」 「女教皇様に五和。それにオルソラ嬢、シェリー、アニェーゼ、レッサー。あとはステイルなのよ。」 言いながら建宮はケータイを取り出した。 「もしもしステイルか? ああ、上条当麻を発見したのよ。 そうそう……えっ?違う違う。 その猫地蔵の呪いにかかったって人は別人なのよ。 うんそう、似てるだけ。」 どんな会話してんだよ、と思いながらも、上条は益々嫌な予感を募らせる。 (まさか、神裂達まで!? 学園都市の中だけの問題じゃねぇのか!?) 事態はさらに深刻化する。主に上条の頭の中で。 すると反対側から、ちょいちょいと右腕の袖を引っ張られた。 「どうかしたのか?美琴。」 「ぅえっ!? あ、い、いや、その…誰なのかなって……」 やはりまだ会話がぎこちない。 ただし、ぎこちないのは御坂側だけで、告白した張本人は実にあっけらかんとしている。 「そう言えば美琴は会ったことなかったな。 アイツは建宮斎字っつって、まぁ、あっち側の人間だ。」 「…あっちって……魔術師ってこと…?」 「まぁな。けど仲間だから大丈夫。いいヤツだから安心しろって。」 「そう……」 御坂は魔術師に対して、あまりいいイメージを持っていない。 初めて触れた魔術が、「ガラスの靴」や「森の住人」だったのだから無理もないが。 これがもし「竜破斬【ドラグ・スレイブ】」や「光の白刃」だったら、また違った印象を受けたかもしれない。 いや、どちらにせよ、いい印象は受けないか。 「もうすぐ来るみたいなのよ。」 電話をし終わった建宮は、自販機に寄りかかりながら話しかけた。 (さて、みんなが来る前に、ある程度情報を引き出しとくとするか。) 尋問開始。 「まず聞きたいんだが、二人は付き合ってるのか?」 その質問に御坂はビクンと跳ね上がるが、上条は冷静に答えた。 「……何でそんなこと聞くんだ?」 「ただの興味……と言いたいが、こっちにも事情があるのよ。」 事情。その言葉に、上条は「やはりか」と先程の嫌な予感を確信へと変える。 「待て建宮。 そのことは全員揃ってから説明しよう。 ステイルも来てるんだろ? アイツにも協力してもらいたい。」 「………?」 上条の目は真剣だった。 建宮はこの目を何度か見ている。 法の書を巡る事件の時、アドリア海の女王に乗り込む時、そして後方のアックアと戦った時。 上条はいつも、何か大切なものを守る時にこの目をしていたのだ。 冷やかしに来た建宮だったが、その目を見て何かを感じ取り、仲間達の到着を黙って待つことにした。 (まさか、学園都市で何か起きているのか? だとしたらこんなことしている場合じゃないのよ……) こうしてまた、めんどくさい誤解が広がっていくのであった。 しばらくしてステイルらと合流した上条と御坂は、今はそれぞれ男子チームと女子チームに別れている。 「精神操作か……随分と厄介だね。」 「本当に右手は反応したのよな?」 ステイルと建宮は、神裂達が操られていないことを知っている。 上条の教室で起こった事だけを聞けば、神裂達同様、御坂への嫉妬心から起こした行動であろうことは予測できる。 しかし、それでは絹旗に幻想殺しが発動したことが説明できない。 やはり何か事件がおきている事は間違いなさそうだ。 全く、食蜂さんが余計なことをしなければ…… 「ああ、間違いねぇ。 しかもその絹旗って子とはほとんど面識が無い。ほぼ無関係だ。 つまり敵は、俺の近くにいる人間なら、誰彼構わず平気で巻き込むようなクソ野郎だってことだ。」 「お前さんがハワイで戦り合った魔術師はどうなのよ? 確かグレムリンの中にそういう魔術を使うヤツがいたはずよな。」 「いや、サローニャじゃないと思う。 アイツは大勢の人間を一度に操れないし、そもそもこんなことできる状態じゃないからな。 ステイルは何か心当たり無いか?」 「その手の魔術師なら何人か知っているが……学園都市に来ているとは考えにくいね。 それ以前に、土御門すら簡単に操るヤツが動いているなら、必要悪の教会に何の情報も入ってこないのはおかしい。 となると犯人は………」 「能力者…か?」 「その可能性が高いと言っているだけさ。 犯人が意図的に情報を遮断しているかもしれないから、断定はできないけどね。」 「結局は何も分からないってことか……」 「とりあえず僕は、吸血殺しの子に、魔力の痕跡が無いか調べてくるよ。 魔術を使ったのなら何か分かるはずだ。 ただ、もしこれが能力によるものなら僕にはお手上げだけどね。」 「なら俺は、怪しそうな能力者を洗い出しておくのよ。 心配しなさんな。隠密行動は天草式の十八番なのよ。」 「じゃあ俺は、引き続き美琴と恋人のフリをしながら、敵の出方をうかがう。 二人とも、くれぐれも気をつけてくれよ!」 「……その前に、本当にあの子とは恋人の『フリ』なのよな?」 「ああ、美琴もそれを承諾してくれてる。」 「それを聞いて安心したのよ。(後で女教皇様と五和に言ってやろう。)」 上条はそこで二人と別れた。 (それにしても、あの神裂まで洗脳するとは……敵がそれだけ強力ってことか。 もしこの状態が、魔術や能力なんかじゃなかったら、上条さんはどれだけ幸せ者か…… なんて、あるわけ無いよな……ははは…不幸だ……) 確かに、お前の鈍感さは不幸だよ。 現実を幻想と勘違いし、その幻想すらもぶち殺すあたり、流石はフラグメイカーにしてフラグブレイカーである。 一方、男子チームとはまた違った緊張感に包まれている女子チーム。 とても気まずい。 御坂は、五和とレッサーは知っているが、他のメンバーは知らない。 というか、レッサーが上条と知り合いだったというのは驚きだが、今はまぁいい。 6人中3人の乳がデカイのもどうかと思うが、それもまぁいい。 御坂が上条から頼まれたことは、「この女性陣に事情を説明してくれ」というものだった。 上条の考えは、 「今、神裂達が抱えている感情は、何者かによる洗脳で植え付けられたモノ。 だからまずはそれを説明して、それでもダメなら『御坂が上条の彼女だ』と暴露して、諦めてもらう。」 というものなのだが、洗脳云々を知らない御坂にとって事情を説明するということは、 「上条の友人達に、『自分が上条の彼女です』と自ら自己紹介する」 ということなのだ。 最終的にやることは変わらないのだが、モチベーションが大きく違う。 (でででできるわけ無いでしょうがっ!!! どんな羞恥プレイなのよっ!!!) まぁ、御坂の性格なら当然こうなるだろう。 いつまでもマゴマゴモゴモゴしている御坂に痺れを切らしたのか、この中で一番男らしいシェリーが、 誰もが聞きにくかったことを直球で聞いてきた。 「………なぁ、お前は上条当麻のコレか?」 そう言いながら小指を突き立てるシェリー。 それを見て御坂は、真っ赤になりながらも小さく頷いた。 「ぁ…あの……その…えと………はい………」 それを聞き、大なり小なりショックを受ける乙女達。 (何だ…やっぱりか……来て損したわね………) (そりゃそうですよね……彼になら、彼女の一人くらいいてもおかしくねぇってな話ですよ………) (や、やはり祝福するべきですよね……しかし、何故こうも胸が痛むのでしょう…?) (諦める…べき……なので…ございましょうか………) (あー!! 私の完璧な「人類イギリスに補完計画」がぁ~~~!! ……ん? それなら彼女さんも一緒に働いてもらえばいいんじゃないですか? すごい閃き!! レッサー天才!!) 一部さほどショックを受けていない人物もいるが、それはまぁ特例だ。 特に、「上条のためなら死んでも構わない」と本気で思っている五和などは、 「あ……は……ははは…は………」 完全に放心状態だ。そして危険な状態でもある。 アックア戦を思い出してもらえばお分かりになると思うが、彼女はヤンデレになれる才能を秘めている。 が、別になって欲しい訳ではない。 彼女には、殺した両親を埋めるために巨大な穴を掘ってほしいわけでも、 腹を掻っ捌いて、妊娠しているかどうか確認してほしいわけでもないのだ。 と、そんな状況の中、男子チームから一人になった上条が、ノコノコ歩いて来やがった。 コイツのせいでえらい騒ぎである。 上条は神裂達の顔を一通り見るが、やはり様子がおかしい。 (やっぱりダメだったか……) ダメなのはお前の頭なのだが。 上条は絹旗の例もあるため、一人一人の頭を撫でてみた。 しかし、彼女たちが顔を赤くするばかりで、幻想殺しは一向に反応しない。 今回も姫神たちの時のように不発したらしい。 上条は溜息をついた後、御坂の肩に手を回しこう言った。 「みんな、もう聞いたとは思うが、俺はこの美琴と付き合っているんだ。 だからみんなの気持ちには応えられない。本当にゴメンな。」 あの鈍感だった上条からは、想像もつかないような衝撃の言葉が、その本人の口から出てきた。 御坂から聞いたのとは訳が違う。 想い人である上条本人から聞くというのは、先程とは比べ物にならないくらいショックなのだ。 アニェーゼはうっすら涙を浮かべ、五和は走り去ってしまった。 奇しくも教室で起こったことを、そのまま再現する形になったのだ。 これが全て勘違いによるものなのだから、彼女たちも浮かばれない。 「ま、まぁそういうことらしいので、今日はもうお開きってことでいいんじゃないですか!?」 重い沈黙に耐えかねて、レッサーがこの場を何とかしようとする。 ここで「人類イギリスに補完計画」がどうとか言わないあたり、流石のレッサーも空気を読んだようだ。 レッサーの言葉を聞き、一人、また一人と彼女達はこの場を離れていく。 最後に神裂が、 「幸せに……なってくださいね………」 と言っていたのが、妙に印象的だった。 取り残された二人はしばらく沈黙し、再び思いにふけていた。 (今のってやっぱり、みんなコイツのことが好きだったってことよね……… あたしなんかで本当にいいのかな……ううん! コイツが選んでくれたんだもんね! 自信持たなきゃ!! か、か、彼女として!!!) 一方、上条も思うところがあるようだ。 (教室のことといい、さっきといい……明らかに俺を狙ってるよな…… となると美琴を巻き込むのはやっぱ危険か? いやでも、美琴が一緒にいないと「恋人がいる」って言い訳はできないし………) 悩んだ上条は、改めて御坂に決定権を委ねることにした。 断られたらその時はその時だ。 「美琴!」 「ひゃ、ひゃいっ!!?」 突然呼ばれて御坂は飛び上がった。 「こっちから頼んでおいてなんなんだけどさ……その、本当にいいのか? 俺の恋人(役)なんて……色々危険なこともあるしさ。」 危険。その言葉に御坂はピクッとする。 この男がいままでどれだけ危険な戦いをしてきたのか御坂は知っている。 自分の命を省みず、どれだけ多くの人を救ってきたのかを知っている。 かくいう御坂だって、その中の一人なのだから。 記憶を失おうが、右腕をぶった切られようが、何度死に掛けても彼は足を止めなかった。 そんな彼だからこそ、多くの女性が心惹かれたのだろう。 「もし美琴が嫌だったらさ、今からでも考え直して―――」 「いや!!!」 それまでのおどおどした態度とは一変し、御坂は自分の気持ちをはっきりと言葉にした。 「考え直せって何よ!! アンタがあたしのこと、ひ、必要って言ったんじゃない!! アンタの性格なんて百も承知なのよっ!! これからだってアンタは危険なことに首を突っ込むんでしょ!? ホントは止めたいけどアンタは止まんないんでしょ!? 分かってんのよそれくらい!! だからあたしが支えてやるっつってんの!! そういうところも受け入れてアンタのか、か、彼女になるって言ってんのよ!!! それくらい分かりなさいよこの馬鹿!!」 息を切らしながらも御坂は自分の気持ちを曝け出した。 それは全く嘘偽りの無い、純粋な彼女の想いである。 素直になれない彼女がここまで言うには、相当の勇気が必要だっただろう。 それを聞いた上条は、 (美琴……そこまで俺を心配してくれてたのか………俺はいい友達を持ったなぁ……) などと、もうお前マジで死んだ方がいいんじゃないかと言いたくなるような感想を述べているが、 上条自身も気付いていない。 赤くなりながらも自分への想いをぶちまけた御坂を見て、 自分の頬もほんのり赤みを帯びていることに、彼は気付いていない――― 「よ、よし! じゃあ何の問題も無いってことで、気を取り直してこれからちょっと街をぶらつくか!! (ステイル達の連絡はまだだ。 俺達にできるのはカップルのフリして敵の出方を待つことだけだもんな。)」 「そ、それって、デ、デートって…こと?」 「そりゃそうだろ。恋人(役)なんだから、デートしない方が不自然だろ?」 「そ、そうよね!! ここ、恋人だもんね!!」 こうして二人は公園を後にした。 この何ともいえない、アンジャッシュのコント状態はまだまだ続くようだ。 「あっ、ポケットに入れっぱなしだったけど……いちごおでん食べるか?」 「…いや、いらない………」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2179.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 佐天編 その2 病院内に激しい爆音が響き渡る。 何しろ争っているのは、超能力者の第一位と、第三位と同じDNAを持つ大能力者だ。 ベッドが飛び交い、窓は割られ、蛍光灯も落ちてくる。 こんな妖怪大戦争を、入院中の黒夜や、戦闘力5以下の佐天と初春とカエル顔の医者は止められない。 しかも黒夜に至っては、番外個体【パンストたろう】の電撃の流れ弾が当たり気絶してしまうというオマケ付きだ。 そのせいで彼女は入院が長引く事になる。 そんな状況なのに病室の半壊程度で済んだのは、打ち止め【みふえ】のおかげだ。 彼女はケンカしている二人に、何度もやめるように言ったのだが、二人は聞き入れてくれなかった。 そこで彼女は、二人がケンカしている事に対してか それとも自分の意見を聞いてくれないことに対してかは分からないが、悲しくなり急に泣き出したのだ。 そしてついでに、無意識なのか意識したのか、一方通行【ゆりこ】への演算補助も遮断した。 そのおかげで、「悲しみ」という負の感情の波をモロに受けた番外個体も急に泣き出し、 一方通行はその場に倒れ、モゾモゾと動き出した。 黒夜が気絶したのは、二人にとってはラッキーだったかもしれない。 こんな姿を見られた日には、確実に爆笑された挙句、向こう半年はネタにされるだろう。 急に泣き出した兄(?)妹、モゾモゾしだした白髪の女性(?)、気絶した入院患者、 惨状となった病室、騒ぎに気付き群がる野次馬達、それらを冷静にテキパキと処置していくカエル顔の医者。 「…何なの? この状況。」 「わ、私にも分かりませんよ。」 ずっとポカンとしていた二人の脳が、ようやく動き始めたようだ。 それを見てカエル顔の医者が話しかける。 「申し訳ないが、ナースステーションからもう2~3人ほど看護師を呼んできてくれないかな? ナースコールもこのように壊れてしまったみたいだからね?」 「あ、は、はい! 私が行ってきます!」 風紀委員としての責任感からなのか、初春は率先して手を上げた。 そして野次馬の波を掻き分けながら彼女は病室を出て行く。 一方、佐天はやる事が無いので、とりあえず病室の隅に突っ立っている。 (う~ん…あたしも手伝いたいけど下手に手を出すのはマズイし、 せめて邪魔にならない様に病室から出たいけど……勝手に出ても大丈夫かな?) という訳でその場から動けずにいたのである。 と、そこへ、 「おや? またお会いしましたね。」 聞き覚えのある声がした。 声のほうへ振り向くと、野次馬の中に、花束を持った海原がいたのだ。 「う、海原さん!? どうしてここへ!?」 「いえ、自分は見舞いに来たのですが、人だかりがあったもので気になりまして……何かあったのですか?」 「あー…うー…ま、まぁいいじゃないですか! それよりお見舞いって、ご家族の方ですか?」 佐天は説明が面倒だからと強引に話題を変えた。 「家族…そうですね。 ショチトルと言うのですが、彼女は自分にとって妹のような存在です。」 ショチトル。その名前を聞いて佐天は一瞬息が止まった。 それは学芸都市で出会ったあの少女と同じ名前だ。 偶然かもしれない。名前が同じなだけかもしれない。 それでも佐天は確かめずにはいられなかった。 「海原さん! そのショチトルって人の所に案内してください!!」 海原は少し躊躇したが、佐天のその真剣な表情に何かを感じ取ったのか、一言、「分かりました。」と頷いた。 「ここです。」 海原に連れてこられたのは大きめの病室。患者のネームプレートには二人の名前が書かれている。 「トチトリ」。そしてもう一人は「ショチトル」だ。 若干強張っている佐天に、海原は緊張をほぐそうと話しかける。 「それにしても、ショチトルから『学芸都市で出会った日本人の少女』の事は聞いていましたが、 まさか貴方だったとは……いやはや、世間というのは広いようで中々狭いですね。」 「あたしだってビックリですよ! 海原さんとショチトルが兄妹だったなんて!」 「あ、いえ…妹のようだとは言いましたが、本当の兄妹という訳では……」 「でも全然似てないですよね。 肌の色も違うし、『ショチトル』って名前も日本人っぽくないですし。」 「…あの、ですから……」 「…ひょっとして、複雑なご家庭なんですか? 例えば、二人は血が繋がっていない兄妹とか。」 「もういいです。それで。」 基本的に彼女は、人の話を聞くのが苦手らしい。 海原も説明するのが面倒になったらしく、諦めた。 海原は、病室のドアをコンコンとノックをする。すると、中からバタバタと慌ただしい音がした。 何かを急いで片付けているのだろうか。 音が止み、少しするとドアが開いた。 「すみません! ちょっと相方が着替えていたもので…って、なんだお前か。」 そう言って出てきたのは、車椅子に乗っている少女。だがショチトルではない。 ということは、トチトリという名前のもう一人の入院患者だろう。 「申し訳ありません。今日は自分の他に、もう一人ゲストがいるのですが。」 「……? 誰だ…って、お前は!!!」 トチトリは海原の後ろにいた佐天を見て、驚きのあまり大声を出した。 「何だ急に。 騒々しいぞトチトリ。」 そう言って顔を出したのは、不機嫌そうなもう一人の入院患者。 ちなみに彼女が不機嫌なのは、せっかく海原が見舞いに来てくれたというのに、 もう一人余計な誰かが一緒について来たのが分かったからだ。 「ショチ…トル…?」 聞き覚えのある声を聞き、ショチトルはバッ!とその余計な誰か【さてん】の方へ顔を向ける。 「お…お前…は……」 その様子を見て、海原はトチトリの車椅子に手を掛ける。 「さて、我々は一旦席を外しましょうか。 積もる話もあるでしょうし。」 「わ、分かった…けど、大丈夫なのか?」 「あの二人なら何の問題もありませんよ。」 そう言って海原とトチトリは病室を後にした。 「えっと…何から話せばいいのかな……ひ、久しぶりだね?」 「そ、そうだな。」 残された二人はぎこちなく会話をし始める。 実はこの二人、あの後大覇星祭の時に再会しているのだが、その事を佐天は知らない。 「……元気だったか?」 「あ、うん! あたしはいつだって元気だよ! ショチトルこそあの後大丈夫だったの? ……って、入院してるのに大丈夫も無いよね……ゴメン…」 「いや平気だよ。 この入院もたいした理由じゃない。心配する事はないさ。」 嘘である。 ショチトルはとんでもない理由で入院している。が、それを佐天に言ったところで仕方がないのだ。 「あっ! そう言えば、なんかすごく慌てて着替えてたみたいだけど、どうしたの?」 「あぁ、普段私は民族衣装を着ているんだが、医者が診察に来たと思って焦ってな。 急いで化学繊維の寝巻き【こっちのふく】に着替えた訳だ。なにしろ目立つからな。 ……どうにも化学繊維の服は肌に合わん。」 「……あの時のエロ水着も、バリバリ化学繊維の塊だったと思うけど。」 ぶふぉっ!!っとショチトルは吹き出した。 「アアアアレはお前が勝手に!! てか人のトラウマをほじくり返すな!!」 嫌な過去を思い出され、ショチトルは佐天に噛み付いた。 だが佐天は大して悪びれた様子もなく、「結構似合ってたのになー」と、のんきな事を言っている。 これ以上この話題に触れていたくないらしく、ショチトルはコホンと咳払いし、話を変えた。 「と、ところでお前…その…エツァリとはどういう関係なんだ…?」 「……? エツァリって…誰それ?」 しまった!と、ショチトルは口を滑らせた事に後悔した。 エツァリとは、先程までいた海原光貴の本名である。 いや、まぁ、本物の海原光貴もいるので、その辺はややこしいのだが。 しかし、なぜ彼が海原に成り済ましているのか、 その辺りを説明するのは非常に厄介なので、ショチトルはとっさに誤魔化した。 「ねぇねぇ、エツァリって誰誰?」 「い、言い間違えただけだ! ほら、『ミツキ』と『エツァリ』って響きも似てるだろ!?」 「似てないよ……」 「ミツキ → ムィツァクィ → ムェツァルィ → エツァリ ……ほらな?」 「いやいやいや!強引だよ! 2番目と3番目の間が特に!!」 「失礼、噛みました。」 「違う、わざとだ……」 「噛みまみた!」 「わざとじゃない!?」 「ええい!そんな事はどうでもいい!! とにかく、お前とアイツはどういう関係なんだ!?」 「ど、どうって言われてもなぁ……昨日スキルアウトに襲われそうになったところを助けてもらったってだけだし… ほら、あたしってスライムも倒せないくらい弱いから。」 「あんなもん、ひのきのぼうで一発だろ。 っていうか物理攻撃【たたかう】が駄目でも能力【メラ】くらいなら使えるんじゃないのか? お前も学園都市の人間なんだから。」 「使えないよ。あたしLEVEL0だもん。」 「第四波動もか?」 「……ショチトルは知らないだろうけど、あたしそのネタで何百回とイジられてるんだよね………」 「ス、スマン……」 「とにかく、あたしと海原さんはショチトルが考えてるような関係じゃないから、安心してよ。」 「あ、安心って何だ! 私はお兄…エツァ…光貴の事などなんとも……」 「まったまた~、お兄ちゃんのことが大好きなくせに~」 「んなっ!!?」 ショチトルの浅黒い顔が真っ赤に染まる。 それを見て佐天はにししと笑い、その後ふっと真剣な表情になった。 「……でも海原さん、他に好きな人がいるよ?」 「…知っているさ。どこぞの中学生にうつつを抜かしていると聞いたことがある。」 「……つらくない?」 「多少はな。だが奪われたら奪い返せばいいだけの話だろう?」 「でももし!もしもだよ!? ショチトルの大好きな友達も海原さんの事が好きだったら!?」 佐天はショチトルに、自分と御坂達の事を重ねていた。 もし、大好きな友達【みさか】が自分の好きな人【かみじょう】の事を好きだったら。 それは、昨夜佐天が寝ずに考えた事なのだが、結局出てきた答えは「諦める」しかなかったのだ。 だが、ショチトルの出した答えは、全くの逆だった。 「関係ないだろ。 愛と友情は全くの別物だ。」 「ぅえっ!!? いやいや、関係なくはないでしょ!! もしかしたら、その友達とはもう二度と仲良くできなくなるかもしれないんだよ!?」 「その程度で壊れる友情なら、初めから無かったのと同じだ。」 「いや…でも……」 「こ・の……ホビロン!!!(『ほんとに びっくりするくらい 論外』の略。 東南アジアの卵料理『ホビロン』が、グロくて生理的に受け付けないことから命名。)」 「あれっ!?何でだろ! 生まれて初めて聞く言葉なのに、ものすごく聞き慣れた感がある!!」 「ぐじぐじ考えるな! 好きなら好きと言えばいい! 重要なのはお前の気持ちだろう!? 言わずに悩むくらいなら言ってから悩め!!」 「!!!」 ショチトルには分かっていた。先程の質問が、佐天の抱えている悩みであることなど。 「だから…頑張れ!!」 だからこそ応援するのだ。自分と同じ立場の佐天を。 佐天はプッと吹き出した。ショチトルのあまりのシンプルな考え方に、悩んでいるのが馬鹿らしくなってきたのだ。 「あはははは! それもそうだね! グダグダ悩むなんてあたしらしく無かったよ! うん、明日告白してみる! だからショチトルも頑張ってね!?」 「う…あ…お、おう……」 ショチトルは歯切れの悪い返事をする。 佐天に偉そうな事を言った手前、自分だけやらないとは言えなかったのだろう。 それにしても、佐天の好きな相手が、かつて自分が在籍していた組織の標的だった、 あの「上条当麻」だったと知れば、ショチトルは相当驚くことだろう。 「じゃあな。」 「ル・イ・コ!」 「?」 「仲のいい友達は、あたしのこと『ルイコ』って呼ぶよ? ま、一番の友達は『佐天さん』って呼ぶんだけどね。」 「……逆じゃないのか?」 「あはははは! 言われてみれば確かにそうだね!」 ショチトルもフッと薄く笑った。 「またな、ルイコ。 今度結果を聞かせろよ。」 「いいよ! その代わり、その時はショチトルの方の結果も聞くからね!?」 「う…あ…お、おう……」 こうして、友達となった二人は別れた。 病室を出ると、そこには一番の友達が立っていた。 「あれ? 初春、いつからそこにいたの?」 「えっ!? い、いつからって……い、今北産業ですよ!!」 「あ、そうなんだ。 いや~実は昔の友達に会っちゃってさ、まぁ昔って言っても、4ヵ月くらいなんだけどね?」 「へ、へぇ~、そうだったんですか……」 と、相槌を打っている初春だが、実は先程の佐天とショチトルの会話を丸々聞いている。 あの後、看護師を連れてきた初春は、病室に佐天がいないことに気が付いた。 カエル顔の医者から、佐天が行った場所を聞きだして追いかけたところ、 とある病室から、車椅子に乗った浅黒い肌の少女と、その車椅子を押すさわやか系のイケメンが出てきたのだ。 だがドアは半開きになっており、その隙間から彼女は、まぁ、覗いた訳である。 一応は悪いと思ったらしいが、好奇心が勝ったのだから仕方ない。 そしてその結果、知ってしまったのだ。佐天の気持ちを。 (ま、まさか佐天さんに好きな人がいたなんて! しかも告白は明日! これは御坂さんや白井さんも呼んで応援しなければ!! 面白がってるんじゃありませんよ! 友達だからです!!) 断言しよう。彼女は面白がっている。 それにしても、佐天の好きな相手が、御坂の好きな相手でもある、 あの「上条当麻」だったと知れば、初春は相当驚くことだろう。 こうして、ややこしい事態がさらに輪を掛けてややこしく加速していくのであった。 上条は犯人を捕まえられるのか。 御坂はいつ勘違いに気付くのか。 佐天の告白はどうなるのか。 全ては、明日に掛かっていた――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2084.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 前編 今思えば、今日は朝から何かがおかしかった。 一方通行からは「おめでとう」とだけ書かれた謎のメール届いていたし、 クラスに空気もピンと張り詰めていて、居心地が悪かった。 男子にも女子にも、終始睨まれている気がした。 おまけに吹寄からは何も言われずに、 自慢のおでこでスーパー頭突き(コマンド入力 : ← タメ → +P ※ 右向き時)をくらわされ、 土御門と青髪からは、顔を両サイドから殴るという、 愛と友情のツープラトン(コマンド入力 : 同じ強さの P+K 同時押し)をくらった。 いつものデルタフォースならば、どつきあいするにも理由がある。 例えばこの前は、 「やっぱり愛花タンは最高やね~ 他の二人もええけど、同級生の魅力には勝たれへんわ。」 「分かってないぜい、分かってないぜい! 年下で後輩の凛子ちゃんこそ至高の存在だろうが!!」 「お前らバカじゃねぇのか!? お姉さんキャラで包容力のある、寧々さん一択だろ!」 という口論が喧嘩にまで発展したのだ。 セーブをせずに電源を切るからそんな事になるのである。 結果、数学教師・親船素甘から職員室に呼び出される事になったわけだが、 喧嘩の原因を聞いて、彼女は翌日熱を出したという。 統括理事会のメンバー【ものすごくえらいひと】の娘さんに何してくれてんだ、お前らは。 だが今回は違う。 何の意味も無く殴られたのだ。 理不尽極まりない攻撃【イジメ】に対し、当然上条は抗議したが、青髪からは睨み返され、 土御門からは、腹に一物抱えたような笑みを返されるだけであった。 そういえば、小萌先生も何かおかしかった気がする。 妙にそわそわしていたし、目が合うと顔が赤面していたように思える。 おまけに宿題が終わらなかったのに、今日は補習も説教もナシだという。 それ自体は喜ぶべきだが、やはり腑に落ちない。 そう、今日は朝から何かがおかしかったのだ。 そして現在は放課後。 上条は教室の一番後ろで正座をさせられている。 それを囲むクラスメイト達は、まるで仁王のような顔で上条を睨みつけている。 ただ土御門だけは、笑いをこらえて小刻みに震えている。 今は笑ってはいけない。 笑ったら、『デデーン! 土御門ー アウトー』である。 「さて上条。 貴様にひとつ聞きたい事がある。」 仕切り屋の吹寄が尋問を始めた。 いや、上条の態度しだいでは拷問になるかもしれないが。 「単刀直入に聞くが、これは何かしら?」 吹寄は「この紋所が目に入らぬか」といわんばかりに、ケータイの画面を上条に見せ付ける。 するとそれを起爆剤に、クラス中の人間が、次々とケータイを取り出した。 もう、格さんだらけである。 そしてその全てのケータイに、例の写真が写っている。 (やっぱりこれか……) 上条は滝のように冷や汗を流してはいるが、特に驚いた様子は無い。 正座をさせられたときから、うすうすは気付いていたのだ。これから公開処刑が行われることを。 (おかしいと思ったんだよなぁ~! あの土御門が大人しくしてるわけがねぇんだよ!! しかもこっそり隠し撮りなんかしやがって~~!!) ヘビの大群に睨まれたカエルの上条。 だが彼は、数々の修羅場を潜り抜けてきたヒーローだ。 こんなときの対処法も心得ている。 「すいませんでしたーーー!!!」 流石は上条の血筋というべきか、彼は刀夜直伝、「めっちゃ土下座」をくりだした。 これは怒り狂う敵の前で、深々と謝罪する事で、敵の戦意を消失させるという立派な技である。 無差別格闘早乙女流では、これを「猛虎落地勢」といって、奥義にもなっている程である。 普段なら、大抵これでなんとかなる。 しかし吹寄は許してはくれなかった。 「質問に答えろ! こ・れ・は・な・に・か・し・ら!?」 土下座したままの上条に、吹寄は容赦なく、持っているケータイを上条の左頬にぐりぐりと押し付ける。 「何と聞かれても…事故としか……ていうかぐりぐりすんのやめて………」 「……恋人ではないの?」 「ではないです…はい。 あとぐりぐり痛い……」 それを聞いてクラスの女子達は、心の中で「なんだ、いつものフラグか」と、安堵の息を吐く。 その辺の理解力は流石に早い。 伊達に上条と一年近くも同じ教室だったわけではないのだ。 吹寄もなぜかホッとしていた。 これにて一件落着―― 「…でも。デートはしたんでしょ。昨日。上条君そう言ってた。」 ――しかけた空気を、姫神の一言が再び悪化させた。 「い、いや! デートっつってもそんな大したモンじゃないし! つーか異性の友達と遊びに行くなんて、よくある事だろ!?」 上条のふざけた意見に、男子共がブーイングを始める。 「無いわボケッ!!アホッ!!カスッ!!コラッ!!」 中でも青髪のひがみはハンパない。 お前ならしっとマスクになれるかもしれん。 吹寄も男子に混ざり、上条を罵倒していたが、 「よくあるだと!? だったら何で私は誘ってくれないのよ!!」 という一言でブーイングが止まる。 言った本人と鈍感な上条は気付いていなかったが、それは明らかにジェラシーが込められた言葉だった。 「う、うそや…カミジョー属性完全ガードが……A.T.フィールドが破られてもうた~~~!!!」 青髪をはじめ、数人の男子が次々と崩れていく。 おそらく、密かに吹寄を狙っていた連中だろう。 女子達からも、「吹寄さんもやっぱり……」と、ひそひそ声が聞こえてくる。 状況が飲み込めていないのは、上条と吹寄の二人だけだ。 絶対にフラグが建たない女性【ふきよせ】対、どんな女性にもフラグを建てる男【かみじょう】の、ほこ×たて対決は、 どんな女性にもフラグを建てる男に軍配が上がったらしい。 グダグダな空気に染まりかける中、姫神が吹寄に代わって上条の尋問を続けた。 「上条君。恋人じゃないって言ってたけど。今。付き合ってる人はいる?」 当然いるわけが無い。 上条の鈍感力が折り紙つきなのは、姫神だって知っているはずだ。 それでもやはり、上条の口から直接聞きたかったのだろう。 「いや、いねぇけど……」 「じゃあもし。上条君のこと。好きな子がいたら。上条君はどうする?」 「そりゃもちろんうれしいさ。 けどそんな人、世界中探してもいるかどうか……」 おかしい。 姫神の尋問は、上条を追い詰める類のモノではない。 むしろこの会話の流れは――― 「……だったら私が。上条君のこと…す。好きだったら……付き合ってくれる?」 は い ? 完全にクラスの空気が止まった。 姫神は基本的に無表情だが、ほんのり紅色に染まった頬と、かすかに震える両手から、かなりの勇気を振り絞ったことが伺える。 流石の上条でも、今のが告白だというのは理解できたはずだ。 だが、自分はモテるわけがないと頑なに信じ込んでいる上条にとって、 なぜ突然、姫神が告白してきたのかまでは理解できなかった。 なにか言わなきゃと上条が口を開いた瞬間、「ちょっと待ったー!」と、ねるとんのような掛け声が響く。 「あ、あたしも上条君、好きだよ!」 クラスの女子のひとりだった。 だがそれで終わりではない。 彼女に負けじと、「私も、私も」と、次々に手を上げる女子達。 ダチョウ倶楽部の「俺も、俺も」に似ているが、決定的に違うところがある。「どうぞ、どうぞ」が無いことだ。 いつもならあり得ないこの光景に、上条は慌てるどころか、むしろ冷静になっていた。 そして彼の灰色の脳細胞は、フル回転することで、ある結論を導き出した。 (これはまさか……精神操作系の魔術!? しかもこれだけ大勢の人間を一度に操るってことは、 「御使堕し」やヴェントの「天罰」みたいに、広大な術式が組まれてんじゃねぇか!? くそっ!! あの様子じゃ、頼みの綱の土御門までやられちまってるみたいだし、俺が何とかするしかねぇってことか!! それにしても敵の目的が読めねぇ……姫神たちにこんなことさせて、一体何を企んでやがるんだ!?) と、上条の思考はとんでもないところに着地した。 そんな役に立たない脳みそならば、三分割されてネバネバした液体の入った容器にでも入れられてしまえ。 とりあえず上条は姫神の頭に触ってみる。 相手が魔術なら、彼の右手が活躍するはずだ。 だが反応は無い。 今度は十字架に触れないように気をつけながら、姫神の全身をくまなく触ってみる。 だがやはり反応は無い。 当然である。 告白直後の女性に、返事もせず、ただただ体中をまさぐるという上条の奇行に、シュールすぎて誰もツッコめずにいた。 だが、姫神本人はさすがにたまらないので、仕方なく彼女がツッコんだ。 「あの…上条君。 その……やめてほしい。」 (やっぱりこの様子じゃあ、姫神たちは、自分がおかしくなってることに気付いてないみたいだな…… まずは「俺の事が好きだ」って錯覚を何とかしなくちゃいけないけど、 幻想殺しが効かないなら、術者本人を叩くしかないな。 けど、この場はどう治めるか……) 再び彼の脳は、ろくでもない結果をはじき出す。 (とりあえずは、諦めてもらう事が先決だ。 そのためには恋人をでっち上げるしかねぇ!! インデックス……はダメだ! 敵の狙いが魔道書とも限らない! この場にいなくて、敵が来ても対処できるほどの能力者で、魔術の知識が多少はあって、すぐに会って説明できる人物……) 上条は、呆然としている吹寄のケータイの画面が目に入る。 そこに写っている写真。 上条が無理やり押し倒し、強引に唇を奪っている(ように見える)人物。 (すまん!! 美琴!!) 追い詰められて花が咲く。あとは勇気とタイミングである。 「み、みんな聞いてくれ! さっきは恥ずかしくて、つい、いないなんて言っちまったけど……本当は彼女いるんだ!! 黙っててごめん!!」 「……誰? 貴様の彼女って………」 吹寄は搾り出すような声を出す。 自分でも驚くほど口が渇いていた。 そんな様子に気付くわけも無く、上条はあっさりと答えた。 「だからその写真に写ってる娘。 美琴っつって、常盤台のお嬢様なんだぜ? …って、制服見りゃ分かるか。」 上条の言葉を聞いて、泣き崩れる女子が数名。 ひどい者は、教室から駆け出す子もいた。 (うぅ……操られているとはいえ、やっぱ心苦しいモンがあるな………) 教室中ドエライ空気になったが、とりあえず収拾はついた。 上条はこのままフェードアウトしようと、そーっと教室を出ようとする。 だがそこに立ち塞がる者達がいた。 「カミやん……どこ行くねん、ワレェ……」 忘れていた。青髪を筆頭とする男子軍団だ。 どうも大人しいと思ったら、彼らはモップや箒など、各自それぞれ武器を調達していたらしい。 青髪などは、わざわざ野球部の部室から、金属バットをお取り寄せしている。 本気だ。彼らは本気で上条を殺しにきている。 だって、目が尋常じゃなく赤いもの。 背中に「天」とか「滅」とか浮かび上がっているもの。 殺意の波動に目覚めた青髪たちは、一斉に上条へと襲い掛かる。 上条はデビルバットゴーストで彼らをかわしながら、必死で逃げた。 そう、生き残る為である。 生存戦略、しましょうか。 遠くで爆笑している土御門を見て、魔術で操られているとか関係なく、ただ純粋にぶん殴りたいと思ったという。 上条は、命からがらハンター達から逃げ出した。 この逃走中は、捕まると賞金が無くなるどころか、命が無くなるという危険なルールである。 気が付けばここは、いつも御坂とよく会う例の公園だ。 必死に走っていたら、こんなところについていたらしい。 全速力で走ったせいで、口の中はカラカラだ。 指先がチリチリして、目の奥も熱い気がする。 上条は自販機に小銭を入れ、比較的まともな、ヤシの実サイダーのボタンを押す。 が、忘れてはいけない。 彼は不幸体質なのだ。 出てきたのは、あったか~いいちごおでんだ。 この寒い季節には、やはり温かい飲み物が欲しくなる。 しかし考えてみて欲しい。 冬にマラソンした後、はたしてコーンスープやおしるこに手が伸びるだろうか。 上条は無言のまま、いちごおでんをポケットにしまった。 帰ったらインデックスにでもあげよう。 そんな事を考えていると、向こうから人影が近づいてくるのが見えた。 追っ手かと思い、上条はサッと身を隠すが、どうやらクラスの男子ではないらしい。 常盤台の制服に、短めの茶髪。 上条がこれから会おうとしていた人物。 御坂美琴だ。 探す手間が省けたとばかりに、上条は御坂に駆け寄った。 だが御坂は、上条の存在に気付くやいなや、即座に踵を返し逃げようとする。 やはり、あの一件で相当嫌われたらしい。 上条は、御坂の腕をガッと掴み、逃げられないようにしてから話しかけた。 「すまん美琴!! この前のは、俺が全部悪かった!! 謝ってすむ問題じゃないけど、とにかくゴメン!!」 「べべべ別にいいわよ!!! あ、あれは事故だって分かってるし!!」 とりあえず許しは得た。 目を合わせないところを見ると、完全に許してもらったわけではないらしいが。 だが問題はここからだ。 謝った直後に頼みごとをするというのは、いくらなんでも都合がよすぎるし、相手が了承しないかもしれない。 しかしこちらとしても悩んでいる時間は無い。 一刻も早く、精神操作系の魔術師(笑)を倒さなければならないし、 早急に彼女役も見つけなければならない。 だがその前に、御坂も魔術に掛かっている可能性があるので、上条は一応確認してみた。 「美琴、ひとつ聞くけど……お前、俺のこと好きか?」 「バッ!! ババババカじゃないのっ!!!? そそそんなことあるわけないじゃない!!! バカじゃないの!!? あ、あ、あたしが何でアンタのこと、す、すすすす好きじゃないといけないのよ!! バカじゃないの!!?」 思いっきり拒否られた。 普通「バカじゃないの」は一度に三回も言わない。 どうやら美琴は魔術には掛かっていないらしいが、これだけハッキリ断られると、それはそれで傷つくものだ。 だが同時に安心もした。 これで頼みごとができる。御坂が断るかどうかは別として。 それは御坂にとって、とんでもない要求だった。 「頼む美琴!! (事件が解決するまで)俺の恋人(役)になってくれ!! 俺(がこの件を何とかする為)にはお前(の力)が必要なんだ!!」 御坂がその言葉を理解【ごかい】するのに、たっぷり30秒はかかったという。 上条が焦って言葉をはしょってしまったが為に、事態はさらにややこしく、混沌としていくのであった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2001.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 4日目 上条編 日曜日の朝6時である。 一般的な学生なら二度寝する時間帯だが、上条はコタツに入りながら宿題をしている。 本来なら昨日からやっていたはずなのだが、いろいろあってそれどころではなかった。 ていうか、今も頭に中はそれどころではないのだが、さすがに真っ白な宿題を提出するわけにはいかない。 小萌先生に泣かれてしまう。 そんなわけで宿題をやろうとする意志はあるのだが、やはり昨日の事を思い出してなかなか作業がはかどらない。 (美琴だって女の子だし…やっぱりアレはマズかったよな~……) 溜息をつき、コーヒーでも飲もうかとコタツから出たとき、眠り姫が目を覚ました。 「とうま、お腹すいたかも。」 彼女の朝の挨拶は「おはよう」ではない。「お腹すいた」である。 今日は朝飯を作るのが面倒だったので、おかずはごはんですよだけだ。ビンの蓋を開ければそれでいい。 だがご飯のほうは炊けるまであと10分はかかる。 「とうま、ご飯はまだなのかな?」 「あー…悟飯はアレだ。ピッコロさんと修行中でまだ時間がかかる。」 「もう!早くしないとサイヤ人が攻めて来ちゃうんだよ!?」 中身の無い会話をしつつ、インスタントコーヒーを濃い目で淹れる上条。彼曰く、ゴドーブレンドの完成だそうだ。 インデックスはコタツの上にばら撒かれたプリントや問題集に目を向ける。 「と、とうまがお勉強してる! これは悪い事がおきる前触れかも!! きっとこれから核戦争が起きて文明が滅んで、世紀末覇者が支配する荒廃した世界になっちゃうんだよ!!」 「失礼なヤツだな君は……」 「でもしゅくだいは昨日やるってとうま言ってたよね。」 さすがは完全記憶能力者。余計な事まで覚えていやがる。 だが言えない。「実は美琴と遊んでて宿題に手がつきませんでした~」などとは言えない。 そんな事言ったら頭をガブガブを噛み砕かれる。万事屋さんとこの定春くんだって最近はあまり噛まなくなったというのに。 「そ、そういえば昨日は風斬とどこ行ってたんだ!?」 上条は強引に話題を変えた。 「あのね!あのね!昨日はひょうかとね!ふれんどぱーくって所に行ったんだよ! なんかね!すごくね!色んな機械がいっぱいあってね!ぷりくらもね!いっぱい撮ったんだよ!」 よほど楽しかったのだろう。興奮しすぎて喋り方が子供っぽくなっている。 かわいいなこの子。 「へー。お前達もあそこにいたのか。」 「……お前達も? 『も』ってどういうことなのかな……」 ヤバイ!と思ったときには後の祭りであった。 インデックスの歯がギラリと光る。 「もしかしてとうまもあそこにいたのかな……? でもしゅくだいを放り出してまでとうま一人で行くとは考えにくいんだよ…… 誰かと一緒だったのかな……? ひょっとして女の子なのかな……?」 コロンボや古畑のようにネチネチと攻めてくるインデックス。 上条はあからさまに目を泳がせる。 「い! いやいや!! 上条さんにはナンノコトヤラワカリマセンガ!?」 「とうま……正直に言えば許してあげるんだよ?」 「…本当に? マジで? 神に誓って噛み付かない?」 「私は敬虔な十字教徒なんだよ? さすがに神に誓ったら嘘はつけないかも。」 「そ…そっか……あー、まぁなんつーか…昨日は美琴と一緒にあそこに行ってたんだ。」 「へー。どおりで気前よく五千円もくれると思ったんだよ。 短髪と遊ぶためには私は邪魔だったわけなんだね。 しかも何気に『みこと』って呼び捨てにしてるし……ホントヨカッタネーとうまー。」 「ア、アレ? ちょっと待てインデックス! どうして口を大きく開けているのでせうか!?」 「それはね、今からとうまに噛み付くためなんだよ?」 「おかしいおかしい!! 神に誓って許してくれるんじゃなかったのか!!?」 「うん。 でもそれはとうまが嘘をついたことに対して許しただけであって、 黙って短髪と遊びに行ったことは許してないんだよ?」 「なんだよそれ!! 屁理屈じゃねぇか!!」 「と~う~ま~~!!」 「ギャー!! 不幸だーーー!!!」 朝っぱらから騒がしい二人である。ご飯もう炊けてるよ? 「とうまのバカ!」と言い残し、インデックスは出て行った。 ちなみに、朝ごはんはしっかり食べていった。おかわりも3回した。ごはんですよの力は偉大である。 一瞬、追いかけたほうが良いのかとは思ったが、どうせ行く宛など小萌先生の所しかないので、放っておくことにした。 それより問題は宿題である。 あまりにもはかどらないため、上条は助っ人を呼ぶことにした。 「こんなときドラえもんでもいたらなぁ~」と思うのは日本人なら仕方ないだろう。 真っ先に思い浮かんだのは御坂だ。 彼女はこういうときなぜかよく勉強を見てくれる。 そしてなぜかよく目が合う。ついでになぜかよく顔が真っ赤になる。 ちなみにインデックスのことを話すとなぜか途端に不機嫌になる。 まぁそんなわけでいつものように御坂を呼びたい所だが、昨日の今日でそれは無理だろう。 次に思い浮かんだのは土御門と青髪である。 だが即座に頭から消した。アイツ達から学ぶことなど何も無い。 と、そこで土御門でふと思い出した。 ヤツも例の現場を目撃したはずだ。 それにしてはお隣が静かすぎやしないだろうか……? 不気味である。しかし確認しに行けば、自らからかわれに行くようなものだ。 ここはそっとしておくことにした。 これが嵐の前の静けさだと分かるのは後のことだ。 しかしそうなると助っ人は誰を呼ぼうか。やはり姫神あたりだろうか、とケータイをいじる。 なんとなくフォルダ内のア行から見ていく上条。 すると真っ先に出てきた名前は「一方通行」だった。 (いやいや、アイツはないだろう…たしかに頭はいいだろうけど、こんなくだらないことで呼び出したら、 つぶれたトマトのでき上がり!ほひ~ほひ~ってなっちまう。 上条さんは愉快なオブジェにはされたくありませんのことよ!) そう思い下へスクロールしようとした瞬間、昨日の一方通行の言葉を思い出した。 (そういえば何かあったらいつでも言えって言ってたな…イチかバチかけてみるか……?) 生きるか死ぬかの問題を、イチかバチかのギャンブルで決めるなよ。賭博黙示録じゃないんだから。 結局、一方通行にかけてみた。ざわ…ざわ… だが3回コールした後に出てきたのは、 『ハイハ~イ! こちらスネーク、応答願いま~す! キャハ!!』 明らかに一方通行ではなかった。 「あ、あれ? えっと…誰? これ一方通行のケータイで合ってるよな!?」 『ミサカはミサカだよ? 第一位なら今現在、見た目10歳くらいの幼女とソープでローションプレイ中で~す!』 要約すると、打ち止めと一緒にお風呂に入って体を洗ってあげている、ということらしい。 チッ! 期待させやがって。 「あー…それじゃあ、風呂から出たら伝言頼めるか?」 『いいよ。……ていうかお宅はどちら様? 「ヒーロー」って名前なの?』 どうやら一方通行のケータイでは、上条は「ヒーロー」という名前で登録されているらしい。 なんて恥ずかしいヤツなんだ。 「いや…違うけど… そういうアナタはアレですか?美琴がスーパーキノコ食ったバージョンの…えーと… そういえばお互い自己紹介がまだだったな。俺は上条当麻。アンタは?」 『あ…えと…ミサカは番外個体……』 この電話の声の主、番外個体は上条当麻が苦手である。 ミサカネットワーク内の悪意の塊である番外個体にとって、負の感情を和らげてしまう上条はまさに天敵なのだ。 そんなことをしたら彼女の存在価値が失われてしまう。球磨川だって改心したのだから。 『あの…ご用件はなんでしょうか……』 さっきまでの変なテンションはどこへやら。番外個体は急におとなしくなる。 「ちょっと勉強教えてもらおうと思ってな。昨日会ったとき、『困ったときは力になる』的なこといってたからさ。」 『昨日って……ゲーセンみたいなところ?』 「ああ、そうだけど…なんだお前もいたのか。 俺は美琴と一緒に遊んでたんだけどな。」 『美琴ってお姉様!!?』 番外個体はまだ御坂本人に会ったことはない。 だが、やはり産みの親(?)であるお姉様には少なからず興味があるようだ。 いや、それだけではない。この男についても、ミサカネットワークを通じて、ある程度の情報が入ってきている。 (コイツとお姉様が遊びに行った!? そんなの絶対、面白い【ろくでもない】ことになったに決まってるじゃない!!) にたぁ~っと歪んだ笑みを浮かべる番外個体。藤田和日郎作品の悪役みたいな笑い方だ。 厄介な人物、四人目の誕生である。 『ねぇ! 勉強ならミサカが見てあげよっか!?』 「え……そりゃ嬉しいけど、いいのか?」 『平気平気! ミサカだって、学習装置で脳内にあらゆる情報ムリヤリぶっ込んでんだから!! 高校の勉強くらい、食ったものをケツから出すくらい普通にできるって!!』 「本当か? 因数分解とかできるか?」 『全然余裕っち! ミサカその気になれば、2桁の掛け算から人体練成の構築式まで暗算できるから!!』 「すごいのかすごくないのかよく分かんねぇよ! けど人体練成はやめとけ! 身体、持ってかれるぞ!!」 『じゃー今から行くね。一回行ったことあるから道案内もいらないし、それじゃ!』 そう言って番外固体は通話を切った。 十数分後、番外個体が寮の前で見たものは、 コンビニのビニール袋を片手に、頭にシャケの切り身を乗せた上条の姿であった。 「えっと…これはミサカがツッコむところ?」 「いや…ははは……」 実はあの後上条は、 (さすがに宿題手伝ってもらうんだから、茶菓子のひとつくらいは出さなきゃだよな……) と、思ったのだが、この家には食料を蓄えるという習慣が無い(正確に言えば人型星のカービィ【しろいあくま】が根こそぎ食べる)ため、 コンビニへ行ったのだ。 まぁそのコンビニの店員さんに、新しくフラグを建てたことは割愛しよう。本人も気付いてないし。 その帰り道、降ってきたのだ。シャケが。 シャケが好きな第四位でもこのシチュエーションは喜ばないだろう。 ちなみに、こけしや赤べこが降ってきたこともある。 不幸な彼にとってこのくらい日常である。 「まぁ入ってくれよ。散らかってっけど。」 「ねぇ、そのシャケ食べるの?」 食ってたまるか。 部屋に上がり、上条の買ってきたポッキーをポリポリつまみながら宿題を手伝う番外個体。 「……なんか意外だな。」 「何が?」 「なんつーか、電話した感じだともっとふざけてくるのかと思ったけど、マジメに教えてくれるからさ。」 「なにそれ!? 心外なんだけど!! ミサカこれでも約束は守るほうだよ!? 約束ハ大事ヨネ。」 流石でございますドロッセルお嬢様。 「気を悪くしたならすまん。すごく助かるって言いたかっただけなんだ。 ありがとうな。」 そう言ってニコッと笑う上条。その笑顔に番外個体は少しドキッとする。 だが直後に首をブンブン振った。 「ミ、ミサカはその手には乗らないから!!」 上条は例のごとく、なんのこっちゃ分からない。 (あぶないあぶない……危うくコイツの魔の手に引っかかるところだった。 そもそも恋愛感情なんて、ただのドーパミンの過剰分泌だってのに……いや、恋愛感情じゃないけどさ。) このまま上条に主導権を握られてはいろんな意味でマズイと判断し、 番外個体はここに来た本当の目的をとっとと切り出した。 「そういえば、昨日はお姉様とデートしたんでしょ?」 「デートじゃねぇよ。二人で一緒に遊んだだけだって。」 「……いや、男女二人で遊びに行けば、それはもう立派なデートだよ。」 「え!? そういうもんなの!!?」 目からウロコとはこのことだ。 へえ~とか、ガッテン!とか鳴るボタンがあったら押しまくっていただろう。 本当にコイツはデートって何だと思ってたんだ? (落ち着け!落ち着くんだ上条当麻!! ということはだ、以前インデックスや風斬と地下街に行ったときは……三人だから違うか。 イタリア旅行はどうだ?……あれも途中からインデックスがはぐれちまったからノーカンだよな。 罰ゲームんときは……まぁ罰ゲームだしな。 てことは、つまり昨日のアレが俺にとっての初デートぉぉおおーーーー!!?) 「は…はは……そんな記念すべき日に俺は……」 なにやら思い出し落ち込みしている上条。 番外個体の目がキラリと光る。 「ナニナニ!? 何か落ち込むようなことがあったの!?」 「あー…実はさ……」 上条は昨日の出来事を話した。 「え~? それだけ~?」 「それだけって!! やっちまったんだぞ!?」 「どうせやっちゃうなら一夜限りの過ちとか、 もっとドロドロでヌレヌレでエロエロな展開じゃないとミサカつまんな~い。 今時、小学生でももっと進んでるよ? …まぁ学習装置からの情報だけど。」 「余計な情報まで教えんなよ学習装置!!」 「少なくとも、責任とって付き合うくらいしろよ根性なし。」 「……そういうことは好きな人同士でするもんなの!」 「だって、お姉様は上条当麻のことが好きなんでしょ?」 「いや、それはねぇよ。 まぁ嫌われてはいないみたいだったけど。 …つーか昨日の事で嫌われちまったかもしれないけど……」 「うわ…マジかコイツ……じゃあ逆に、上条当麻はお姉様のことどう思ってるの?」 ―――俺は?――― 好きか嫌いかで聞かれたら好きなのだろう。 だが、それが恋愛感情かと聞かれたら答えられない。 なぜなら彼はインデックスのことも好きだし、吹寄や姫神のことも好きだ。 イギリス清教の人たちだって好きだし、土御門に青髪、一方通行や浜面だって好きだ。ステイルはまぁ、微妙だ。 要するに鈍感な彼は、自分の気持ちにも鈍感なのだ。 大きなくくりでの「好き」という感情は分かるが、それが家族へのものなのか、友人へのものなのか、恋人へのものなのか、 その先が細かく仕分けできない。2位じゃダメなんです。 はたして御坂への好きは、どの「好き」なのだろう。 「……よく……分かんねぇ……」 番外個体はふぅ、と溜息をついた。 (ま、コイツから引き出せるのはここまでかな。) 番外個体的にはちょっと不完全燃焼だが、まぁ収穫はあった。 今、聞いた話をミサカネットワーク内に流せば、妹達は面白い反応をするだろう。 「…じゃあミサカもう帰るね。今日来た目的は達成されたし。」 「……えっ!? 目的って宿題手伝ってくれることだろ!? まだ半分も終わってないんだけど!!」 「ミサカ、宿題は自分の力でやらないと意味が無いと思うの。」 「ごもっともな意見!! だけど約束は!?守るほうじゃなかったっけ!?」 帰ろうとする番外個体を引き止めようとして、上条はコタツの角に足をぶつけた。 そして倒れこむ。番外個体を押し倒す形で倒れこむ。 またかよコイツ。 そして右手は、番外個体の左胸を完全ホールドしている。私の氷はちょっぴりコールドである。 「ミ、ミサカこういうこと初めてなんだけど……」 「ち、違う!!俺はそんなつもりじゃ―――」 「とうま、ただいまー! お腹すいたn……」 最悪のタイミングでドアが開く。 小萌先生の家でごちそうになり、上機嫌で帰ってきたインデックスは急激に不機嫌になっていく。 いや、その前にメシ4杯食って、その後人ん家でごちそうになり、まだお腹がへってるってどういうこと? なんて言っている場合ではない。この後どうなったかは言うまでもないだろう。 番外個体はドサクサに紛れて帰った様だ。 結局、残りの宿題は自力でやることになった。 が、6分の5くらい終わったところで上条は力尽きた。 ここまでやれば、小萌先生も泣くことはないだろう。まぁ、説教くらいはあるだろうが。 だが翌日、小萌先生の説教の他に、とんでもないイベントが上条を待ち構えていたのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2097.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 中編 今思えば、今日は朝から何かがおかしかった。 寮の中はいつもよりざわついていたし、 普段から注目を浴びてはいるが、今日はいつにも増して視線を感じている気がした。 白井も朝から滝【シャワー】に打たれながら、なんだかぶつぶつ呪文を唱えている。 まだ上条を呪い殺す事を諦めていないらしい。 「スベテハアイノターメリック ハラハラハラペーニョ ナカレチャヤダモンシナモンカルダモン ムリカパプリカ―――」 節子…それも黒魔術の呪文やない。おいしいカレーを作るための呪文や。 うん、白井だけは通常運転だったようだ。 とまぁそんなわけで、御坂は今日一日中、授業も集中できなかった。 そう、今日は朝から何かがおかしかったのだ。 そして現在は放課後。 御坂は大勢の少女達に囲まれている。 「御坂さん! 好い殿方がいらっしゃるというのは本当ですか!?」 「さすがは御坂さんですわ! 是非、私にも紹介してくださいな!」 「御坂様がお選びになった方なら、きっと素敵な御人なのでしょうね……羨ましいですわ。」 なぜか、「御坂には恋人がいる」という噂が広まっていたらしく、彼女は放課後になると同時に質問攻めにあっていた。 どうやら噂の出どころは婚后らしい。 おそらく婚后は、昨日風紀委員第177支部で聞いた話を学校中に広めたのだろう。そして噂には尾ひれがつくものである。 たしかに常盤台の生徒にとって、これ以上の話のネタはない。 なにしろ御坂は、校内ツートップのひとりだ。 しかもそれが恋愛話となれば、それはもう盛り上がるだろう。 いくらお嬢様といえど、そこはやはり中学生なのだから。 だが当の本人はたまったものではない。 昨日、上条への想いを姫神にぶちまけたおかげで、多少吹っ切れたことは確かだが、それでもこの状況はあまりよろしくない。 「え…あの…だから…それは…アレが…コレで…ふにゃ…ふにゃ…」 御坂はあまりの恥ずかしさに、うまく否定することもできず漏電しかかっていた。 このままでは多くの少女達が犠牲になってしまう。 だが、ついに御坂が「ふにゃー」しかけたその瞬間、 周りを囲んでいた少女達は、一糸乱れぬ動きで一斉に御坂から離れ、 突然、腕を前から振り下ろして、前曲げを深く大きく反り始めた。 「なっ……!?」 おどろく御坂だが、彼女達が急にラジオ体操第二を、しかも途中から始めた事におどろいている訳ではない。 むしろ原因が分かっているからこそおどろいているのだ。 こんなことができるのは、学園都市広しといえど、いや、世界中探しても彼女だけかもしれない。 常盤台中学のもうひとりのLEVEL5。 食蜂操祈だ。 (……何を考えてるのかしら………) 助かったが、素直に喜べない。 食蜂は無償でこんなことをする人物ではないのだ。 ただの気まぐれか、何か企んでいるのか。 まぁ十中八九後者だろう。 だが問い詰めたところで、はぐらかされるのがオチだ。 なので、御坂は食蜂に会わずに教室を出た。 というより、そもそも会うのも嫌だったのだ。 それほど食蜂のことが苦手なのである。 走り去る御坂の背中を見つめながら、食蜂は何を思うのか。 「くすくすっ…上条当麻ねぇ………面白いこと聞いちゃった☆」 おそらく、ろくでもないこと思ってる。 御坂はいつもの公園に向かっていた。 上条と会うのは気まずいはずなのに、気が付くとそこへ足が向いていたのだ。 いやはや習慣とは恐ろしい。 ここは、上条のエンカウント率が最も高い場所だ。 とはいえ毎回会えるわけではない。 狙って会おうとすると会えず、忘れた頃にばったり会ってしまうのだ。 まぁ、はぐれメタルのようなものである。 見慣れた自販機が見えてきた。いつもハイキックをきめる、あの自販機だ。 するとその隣に人影が見えた。 その人影は、こちらにどんどん近づいて来る。 嫌な予感がする。 見間違えるわけがない。あのツンツン頭。 御坂が今、一番会いたくない人物。 上条当麻だ。 やはりこの男は、会いたくないときほど、ピンポイントで会えるらしい。 御坂は、上条の存在に気付くやいなや、即座に踵を返し逃げようとした。 このままではマズイ。 一昨日の出来事が鮮明に蘇ってくる。 上条の顔を見ただけで、体温が1℃上昇しているのだ。 話しかけられたら、どうなるか分かったものではない。 しかし上条はそんなこと知る由もないらしい。 御坂は腕をガッと強引に掴まれた。 逃げられない。 いつもならこんなとき、適当に電撃でも浴びせて相手から距離をとるのがセオリーだ。 だが上条に能力【でんげき】が効かないことは、過去の経験【おいかけっこ】から分かりきっている。 そういった意味ではまさに天敵だ。いまなら神・エネルの気持ちがよく分かる。 「すまん美琴!! この前のは、俺が全部悪かった!! 謝ってすむ問題じゃないけど、とにかくゴメン!!」 腕を掴まれて心臓がバックバックしている中、上条が一昨日のことを謝ってきた。 御坂も、自分の心音が上条に伝わらないか心配しながら答えた。 「べべべ別にいいわよ!!! あ、あれは事故だって分かってるし!!」 冷静に対応した(つもりだ)が、目は合わせられない。 もう何がきっかけで漏電するのか分からない状態なのだ。 だが、せっかくこっちが漏電しないように必死に頑張っているというのに、 上条は「知ったこっちゃねぇよ」と言わんばかりに、次々に追い討ちをかけてくる。 「美琴、ひとつ聞くけど……お前、俺のこと好きか?」 突然なんちゅう質問してくるんだコイツは。 きっと上条の作戦は「ガンガンいこうぜ」なのだろうが、「いのちだいじに」に変更したほうがいいのではないだろうか。 御坂的には当然「YES」なのだが、そんなもん言える訳がない。 だって恥ずかしいから。 「バッ!! ババババカじゃないのっ!!!? そそそんなことあるわけないじゃない!!! バカじゃないの!!? あ、あ、あたしが何でアンタのこと、す、すすすす好きじゃないといけないのよ!! バカじゃないの!!?」 思いっきり拒否ってしまった。 本当にツンデレというのは、苦労が絶えない生き物である。 しかし上条は諦めていないらしい。 彼は、少し切羽詰ったような真剣な顔で、御坂にある頼みごとをしてきたのだ。 それは御坂にとって、とんでもない要求だった。 「頼む美琴!! 俺の恋人になってくれ!! 俺にはお前が必要なんだ!!」 …………………………? 御坂は、上条の言った言葉を頭の中で繰り返す。 始めはその意味が分からなかったが、彼女はこの学園都市でも三番目の頭脳だ。 30秒間じっくり演算した結果、ついにその意味を理解する。 !!!!!!!???? 「美琴? おい美琴!!」 理解した結果、彼女は立ったまま気絶した。 氷帝の部長のように、この後坊主にされないか心配である。 「くそっ…美琴まで……」 突然気絶した御坂を、上条はゆっくりと公園のベンチに寝かせた。 きっと魔術によってこうなったとでも思っているのだろう。 (これからどうすっかな……) 上条はどう動くべきか悩んでいた。 一刻も早く魔術師を見つけなければならないが、御坂をこのままにしてもおけない。 そもそも敵の情報が少なすぎるのだ。 というかそんなものは端から無いのだが。 下手に動くこともできず、上条は御坂の隣に腰掛けた。 その様子を食蜂はこっそり見ている。 彼女はあの後、御坂のあとをつけていたのだ。 御坂にさとられないように大分距離をとっている為、会話はまったく聞こえなかったが、 二人の様子を見た感じ、確かに恋人同士に見えなくもなかった。 (あの御坂さんに彼氏ねぇ……情報力には自信あったけど、直接見るまでは半信半疑だったのよねぇ。 それにしても、いまどき公園デートだなんて、なかなかカワイイ所があるじゃないのぉ。 まぁ、御坂さんには子供っぽいデートの方がお似合いだけどぉ。) そこで食蜂はニヤリと笑った。 (本当、その幸せそうな空気、私の改竄力でぶち壊したくなっちゃうわぁ……) 食蜂は、バッグからリモコンを取り出し、そのまま上条に向けた。 「ピーリカピリララポポリナぺーペルトー! 御坂さんのことが大っ嫌いになぁ~れ☆」 ……………おかしい。 食蜂が、お邪魔な魔女のような呪文を唱えたことがおかしいのではない。 何も起きないことがおかしいのだ。 彼女の能力は「心理掌握」。 精神に関することならば、読心、念話、洗脳はもちろんのこと、 記憶の消去や意志の増幅など、もはや何でもござれな能力だ。 その応用性の高さから、十徳ナイフに譬えられる程である。 ベガ様のサイコパワーだって、ここまで便利ではないはずだ。 彼女が、「牛丼を嫌いになれ」と言えば、牛丼一筋300年の人だって食えなくなるのだ。 だが上条が御坂を嫌いになった様子は無い。 相変わらず御坂の隣に座っているし、 たまに御坂の髪を撫でてみたり、ほっぺをプニプニ突付いてみたりしている。 上条的には、「早く起きてくれないかなぁ…」と刺激しているつもりなのだが、 傍から見れば、カップルがじゃれ合っているようにしか見えない。 (ど、どうしてぇ!? 私の改竄力は完璧なはず……なのにどうして効いてないのぉ!?) 今までこの能力は、御坂以外に破られたことはない。 しかも、御坂のときのように電磁バリアで遮られている感覚はない。 まるっきり効いていないのだ。 まるでその場で打ち消されているような、そんな感覚だった。 全く出会ったことのない未知の能力に、食蜂は顔を強張らせた。 まさか「幻想殺し」なんてトンデモ能力がこの世にあるなんて、想像もつかなかったであろう。 しかし、ここで諦める食蜂ではない。 (………ほ、本人に効かないなら、周りの人間を使えばいいだけじゃない。) 食蜂は辺りを見回した。 すると、映画のパンフレットを二冊持って唸っている、小柄な少女を発見したのだ。 「むー……超迷いますね。 『エイリアンVSプレデターVSジェイソンVSフレディ』にするか、 それとも『実写版 ジョジョの奇妙な冒険(第5部)』にするか…… どっちもC級の匂いが超しますが、今月はあの超名作『義妹』のDVDも発売することですし………う~ん……」 何かぶつぶつ言っているが、関係ない。 食蜂は「今度こそ!」と、意気込みながら、少女にリモコンを向けて能力を使う。 すると少女は、一目散に上条のところへ駆けつけた。 (……今回は全速力で効いたわねぇ。本当にさっきのは何だったのかしらぁ?) 上条はベンチに腰掛けながら、ケータイをじっと見ている。 (一応、一方通行と浜面にも連絡しといたほうがいいかな…? あいつらも『闇』に深く関わっちまってるし……) などと思っていると、向こうから小柄な少女が猛ダッシュしてきた。 名前は知らないが見覚えはある。 確か、屈辱のバニーがどうとか言っていた子だ。 「えーと……何かご用でせうか?」 「好きです! 超好きです! 超付き合ってください! 今すぐに!」 上条は内心「またか」と思いながら、念のため少女の頭を触ってみる。 するとあっさり洗脳が解けた。 「あ、あれ? 私は何をしてたんですかね…?」 (解けた!? 姫神たちにはダメだったのに…… 幻想殺しも効くときと効かないときがあるのか。 何か法則があるのか?) おどろく上条だが、その一方でもっとおどろいている人物がいた。 (な、な、な、何でなのぉ!? 私の洗脳力がまったく通用しないなんて、一体どんな能力なのよぅ!! くっ……ここは一旦退くしかなさそうねぇ…… 一度、彼のことをじっくり調べてから出直しましょう……) 食蜂は作戦を立て直すために、そそくさと帰っていった。 彼女は、もはや御坂を邪魔することよりも、上条本人に興味がそそられていることを、はたして自覚しているのだろうか。 「何だかよく分かりませんが、超助かりました。 ありがとうございます。」 「いや、気にしなくていいって。 それよりも、あんたを洗脳したヤツに心当たりはないか? 犯人を追う手がかりが、ひとつでも欲しいんだ。」 「う~ん、分かりませんね……でもこの私の精神を乗っ取るってことは、 相手は超やり手の能力者だと思います。 それこそ「心理定規」や「心理掌握」クラスの……」 「そっか…ありがとな。(なるほど、魔術師だとばかり思ってたけど、能力者って線もあるのか。)」 さらにドツボにはまっていく上条。 その上条を横目で見ながら、少女はケータイを取り出した。 「ケータイの番号、超教えてください。」 「? なんで?」 「協力します。 私もやられっぱなしじゃ超気が済みません。 情報が入ったら連絡しますので。」 「ありがと。 そう言えばお互い、自己紹介してなかったな。 俺は上条当麻。 よろしくな。」 「私は絹旗最愛です。 超よろしくおねがいします。」 アドレスを交換して絹旗と別れた。 食蜂と絹旗。 新たに二本の小さい旗【フラグ】を建てたことは、当然上条は知らない。 (それにしても、思ったよりも事態は深刻なのかもな…… やっぱり恋人役は必要だな。 返事もまだだし、早く起きてくれ美琴~!!) 深刻なのはお前の頭の中だけである。 目を覚ますと、そこは公園のベンチだった。 (あれ……どうしてあたし、こんな所にいるんだっけ……) ぼんやりとした頭が徐々にはっきりしてくると、なぜ自分が気絶したのか思い出してきた。 「!!!!!!!!」 御坂はガバッと起き上がる。 すると目の前には、いきなり上条の顔があった。 「おっ! やっと起きたか美琴……って、うおーい!!!」 再び気絶しかけた御坂を、上条は抱きかかえた。 そんなことするから気絶するんだってば。 「しっかりしろ! 美琴!!」 「ううううるさいわね!!! アアアアンタが変なこと言うのが悪いんでしょうが!!! ああああたしにだって、その、こ、こ、こ、心の準備ってもんが……(ごにょごにょ)」 変なこととは、先程の告白のことだろう。 確かに変だった。 「そっかぁ~…やっぱダメかぁ~…… そりゃそうだよなぁ~……」 「!!! ダ、ダメなんて言ってないでしょうが!! 何で簡単に諦めんのよ!!」 「えっ? じゃあいいのか?」 「えっ!!? ま、まぁどうしてもって言うなら? 考えてあげても? いいけど?」 テンパって自分でも何を言っているのかきっと分かっていないだろうが、御坂は恋人になることを否定しなかった。 この無自覚男が突然、本当に突然、不自然なくらい突然に告白してきたのだ。 聞きたいことなど山ほどあるが、そんなことは後でいい。 このチャンスを逃してはならない。 本当のところは、もういっぱいいっぱいなのだが、気絶なんかしていられない。 御坂は気合と根性で漏電を堪えていた。 そもそも、向こうから恋人になってくれと言っているのだ。 そりゃもう、なってやろうじゃありませんか。 「良かった~! ありがとな美琴!!」 「~~~~~!!!」 何かもう、うれしいとか恥ずかしいとか、色んな感情が入り乱れすぎて、どんな気持ちか分からない。 「じゃあ詳しく説明しなきゃな。(事件のこととか。)」 「い、いいわよ! あ、あ、あたしだって子供じゃないんだから!! ど、どうすればいいかなんて分かってるんだから!! (今のアンタの気持ちなんか詳しく聞いたら、絶対にまた気絶しちゃうじゃない!)」 「そっか、じゃあこれからヨロシクな!(美琴は事件のこと知ってるのか……まぁ説明する手間が省けたし、いいか。)」 「う、うん! ヨロシク!!(ヨロシクってことは……やっぱりそういうことよね…… うわ~!どうしよ~!!)」 こうして晴れて恋人同士(?)になった二人。 しかし、二人にはこれからも様々な障害が立ち塞がることだろう。 だって会話が成り立ってるようで成り立ってないんだもん。 そしてそんな二人のもとに、8人の魔術師が近付きつつあった。 彼等は果たして何者なのか。 敵なのか、それとも……? つづく。 なんだこの状況。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2205.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 その他大勢編 食蜂編 上条について興味を持った食蜂は、彼について調べるため書庫を覗こうとしていた。 とはいえ彼女には、御坂や初春のようにハッキングするスキルは無い。 しかし、自分でできないなら他人にしてもらえばいい。パンが無ければお菓子を食べればいいのだ。 彼女の能力なら簡単だ。適当な警備員を捕まえて、あとは「書庫見せて」と命令すればそれで済む。 そんな訳で、運良く【わるく】捕まった鉄装綴里【アンチスキル】のノートパソコンを見せてもらっている。 「出ましたドン。これが上条当麻のデータザウルス。」 語尾がおかしくなっているのは食蜂の遊び心なのか、それとも単純に鉄装がラリッているからなのか。 ディスプレイを見つめて、食蜂は眉をひそめる。 (おかしいわねぇ……LEVEL0なら私の超能力が効くはずなんだけどぉ…… それともあの防御力には、何か能力以外の秘密があるのかしらぁ?) 当たらずと雖も遠からずだが、書庫にその秘密は記載されていない。 書庫を見ても何も分からない事を知り、とりあえずダメ元ではあるが、普通に「上条当麻」でググってみた。 すると気になる記事を発見する。 「…この『そげ部』って何なのかしらぁ?」 「どうやら個人運営のファンクラブのようでザウルス。」 「ふぅ~ん…ファンクラブねぇ……」 食蜂は何気なくそのサイトをクリックしてみる。 その十数分後、「そげ部」に新しい会員が一人増える事になるのであった。 ステイル&姫神編 『姫神の様子はどうだ?』 そう上条に聞かれて、ステイルは隣に立っている姫神をチラリと見る。 彼女はあまり表情を変えないが、頭にでっかく怒りマーク付いている(ように見える)ので、まぁ怒っているのだろう。 「それは、明日になれば分かるんじゃないかな。」 そう言って電話を切った。 「……これでいいかい?」 「それでいい。ありがとう。」 あの後ステイルは、姫神から魔力の痕跡が無いか調べたのだが、結局は何も無かった。 ならば今回の事件は能力者の仕業か、とも思ったのだが、話を聞く限り操られている様子も無さそうだ。 幻想殺しが発動したという、絹旗については確かに疑問は残るが、少なくとも姫神は自分の意志で告白したのだ。 「それにしても、ひどいヤツだね。上条当麻は。」 「本当そう。私がどれだけ勇気を出したか……それなのに。それを魔術のせいとか。どういう神経してるんだろう。」 「で? 君は明日どうするつもりだい?」 「いい質問ですねえ。それはこの。魔法のステッキを使って……」 「使って?」 「血の雨を降らす。」 「そうかい。良かったら僕も手伝ってあげようか?」 「そうしてもらえると。すごく助かる。」 こうして、三沢塾で共に戦った二人が、同じく共に戦った上条をぶっ倒すためにタッグを組んだのであった。 妹達編 『どうなっているのですか。ミサカ10032号と通信ができません、とミサカ11000号は困惑します。』 『あの野郎、上条【ターゲット】と接触した瞬間ネットワーク切りやがった、とミサカ12000号は憤慨します。』 『上位個体は何をしているのですか、とミサカ13000号はこんな時だけあのアホ毛を頼ります。』 『びええぇぇぇ~~~ん!!! 二人がケンカをやめてくれないよぉ~、ってミサカはミサカは~~~!!!』 『びええぇぇぇ~~~ん!!! ミサカ本当は悲しくも何ともないのにぃ~~~!!!』 『…何やってんだコイツ等、とミサカ14000号は上司と末っ子の役立たずっぷりに嫌気が差します。』 『というか他の逆ラブラビッツのメンバーはどうしたのですか、とミサカ15000号は確認を取ります。』 『こちら10039号。現在常盤台中学周辺にて、お姉様のファンと思われる人たちに、 お姉様と間違われ追いかけられています、とミサカは息を切らしながら実況します。』 『こちら13577号。あの人だと思って声を掛けたら、猫地蔵の呪いに罹った人でした、 とミサカはミサカのうっかり具合に舌を出して反省します。』 『どいつもこいつも……とミサカ16000号は呆れます。』 『………こちら10032号。まずは通信が遅れた事を謝罪します、とミサカは深く頭を下げます。』 『!!! そんな事はいいから彼とどうなったのか教えてください、とミサカ17000号は催促します。』 『結論から言えばフラれました。やはり二人はすでに恋人同士だったようです、とミサカは報告します。』 『そう…ですか、とミサカ18000号は妹達を代表して落胆します。』 『あ、あの~…その情報は誤りかもしれません、とミサカ19090号は意見します。』 『どういうことですか、とミサカ19000号は聞き返します。』 『先程、クワガタのような髪型の人がどこかに電話しているのを聞いてしまったのですが、あの人とお姉様は、 ある理由で恋人のフリをしているらしいのです、とミサカは耳にした情報をそのまま伝えます。』 『……その話、くわしく聞かせてください、とミサカ20000号はきな臭いものを感じ取ります。』 建宮編 上条から五和達へのフォローを頼まれた建宮は、携帯電話で今日一日の事を五和に説明していた。 誰かが人々を操って上条に何かをしようとしている事。犯人は能力者の可能性が高い事。 学園都市には精神操作を得意としたLEVEL5がいる事。動くのは明日である事。変なくの一もどきがいた事。 そして、上条と御坂が本当は恋人同士で無いことだ。 「それじゃあ五和、このことを女教皇様にも伝えておいてほしいのよ。」 『ぅぇっ!? いや、あの…うえっ!!?』 「あっ、それと、このことは他の皆には黙っておいてほしいのよ。」 『えっ、あの、でも……』 「じゃ! そういう訳でヨロシクなのよな!」 通話を切り、ふうっ、と一息入れる建宮。 何故今回の事を五和と神裂にしか伝えないか、理由は簡単。余計なライバルを増やさないためだ。 (皆には悪いが、女教皇様と五和の恋を応援している俺としては、 「上条当麻とあのお嬢ちゃんが付き合っている」という誤報は、そのままにしておいた方が都合がいいのよ。) 内心ほくそ笑む建宮だが、彼は知らなかった。 まさか五和とのこの会話を、丸々ミサカ19090号に聞かれていただなんて。 イギリス清教女性組編 建宮からの報告を聞いた五和は、言われた通り神裂だけに話していた。 「あ…ありのまま今聞いた事を話しますよ! 私は、御坂さんが上条さんの彼女だと思ってたら実はそうじゃなかった。 な…何を言っているのかわからないと思いますが、私も何を聞かされているのかわかりませんでした…」 「お、落ち着きなさい五和! なにナレフですか貴方は!」 「と、とにかく、上条さんは私達まで操られていると思っているみたいです……」 「それは…何と言うか複雑な心境ではありますが…… しかし学園都市で何かが起きているというのは事実のようですね。この事をオルソラ達にも―――」 「ダ、ダメです! 建宮さんが、この件は私達だけに留めておけと……」 「何を言っているのですか!非常事態なのかもしれないのですよ!?」 「そ、そうですけど……」 「皆をここに呼びます。いいですね?」 「は…はい……」 流石の五和も、女教皇様には逆らえない。女教皇様 越えられない壁 教皇代理なのだ。 さて、この話を聞いた他の女性達の反応はいかに…? 忍び編 服部はうんざりしていた。浜面と別れた後、事も有ろうに郭【めんどうなの】に捕まってしまったのだ。 「半蔵様聞いてください! 私さっき変なクワガタ男にナンパされたんですよ! やっぱり忍者ブームが来てるんですって! 海外ではワンピよりナルトの方が人気があるらしいですし…… だから今のうちに服部家の復興を! し、子孫繁栄には協力いたしますから!!」 服部はとてもうんざりしていた。 吹寄編 吹寄はトボトボ歩きながら悩んでいた。 (……どうして私はあんなことを言ったのかしら……) まさか嫉妬しているなどとは夢にも思っていない彼女は、考え事をしていたので、ろくに前を見ていなかった。そのため、 「うわっ!!」 「キャッ!?」 人とぶつかったのである。 「す、すみません!ちょっとボーっとしていたもので……」 「いや、こっちこそ悪い。大丈夫か? …ってアレ? アンタ、大将にくっついてた人だよな。」 「……大将?」 「ああ、上条のことだよ。 アンタもやっぱアレか?酒池肉林パーティーの参加者なのか?」 出会い頭に何聞いてるんだこの男は。当然、吹寄の頭にはクエスチョンマークが浮かび上がる。 「あの…ごめんなさい、言っている意味がよく……」 「だからさ、アンタも上条ハーレムの―――うおっ!!?」 吹寄は目の前の男の襟首を強引に掴んだ。 「上条ハーレム…? その話、詳しくお聞かせ願えますか?」 削板編 削板はラーメンをかっ食らっていた手と口を止めた。 彼の耳はその気になれば、500㎞先のコインの落ちる音さえ聞くことができる。デビルイヤーは地獄耳なのだ。 おそらく彼も、上条たちの事を気に掛けていたのだろう。今回の事件を聞きつ――― 「なに!?各地でロボットが暴走しているだと!? おのれDr.ワイリーめ…まだ世界征服を諦めていなかったのか。こうしちゃいられないな!!」 ―――けた訳ではなさそうだ。 彼は彼で、またとんでもないことに巻き込まれそうではあるが、面倒なので別にいいや。 アイテム編 いつものようにファミレスに集まっているアイテムの面々。 いつもと違うのは、浜面の代わりにフレメア=セイヴェルンがいる事だ。 「何か今日の絹旗、いつもと様子が違くない?」 そう切り出したのは、アイテムのリーダー、麦野沈利だ。 ちなみに絹旗は、あの後映画館に行ったのだが、混んでいたのでやめたらしい。 で、仲間たちと合流し、現在はドリンクバーで超ミックスジュースを超作っている。 「映画見れなかったのに、何であんなにご機嫌な訳? いい事でもあったのかしら?」 「多分、きぬはたは誰かに恋したんだと思う。」 そう言ったのは滝壺理后。正真正銘浜面の彼女だ。 「こ、恋ぃ!? あの絹旗が!?冗談でしょ!」 「本当。同じ恋する乙女として、私には何となく分かる。」 そこでオレンジジュースを飲んでいたフレメアが割り込んできた。 「にゃあ。麦野も滝壺も、大体浜面が好き。でも私も好きだから四角関係。」 フレメアのとんでもない一言に、滝壺はカッと目を見開き、麦野は飲んでいたコーヒーを噴き出した。 「……むぎの? 道理で最近、妙に艶っぽくなったと思ったら……」 「違う違う違う違う!! わ、私があんなの好きになる訳ないでしょ!!?」 「あれ?皆さん何だか超盛り上がってますね。何の話してたんですか?」 ドリンクバーから戻ってきた絹旗も交え、ガールズトークはさらに花を咲かせる。 グータンヌーボでやれ。 キャーリサ編 ステイル達から遅れること数時間。 ここ第23学区に着いたのは、イギリスの第2王女である軍事のキャーリサと、護衛に付いてきた騎士団長。そして、 「学園都市に来るのは三度目である。」 聖人と神の右席の力を失った、元後方のアックア、ウィリアム=オルウェルだ。 「……随分と遅くなっちゃったし、今日はもー宿を取って明日にするぞ。」 「遅れてしまったのは、キャーリサ様がお着替えに手間取っておられたからですよ。 全く、あの少年に会うためとはいえ、少々気合いが入りすぎているのでは?」 「は、はぁー!? 別に気合いなんか入ってないし! 学園都市に来たのもただの観光だし!」 「やれやれ、キャーリサ様は、いざご自分の色恋の話となるといつもそうやって素直になられない…… え~と、こういうのをこの国では何と言ったかな……」 「ツンドラ…であるか?」 「それは永久凍土の広がる地域の事だろう。たしか…カンダタだったような……」 「違うな。それは蜘蛛の糸の主人公か、もしくはドラクエ3に出てくる盗賊の名前だし。 そーじゃなくて、お前達が言いたいのはチンさむの事だろ?」 「…それは股間がふわっとする現象の名前である。」 「チンチロ」「ぎんたま…」「とらドラ!」「みんゴル?」「…ガンダム」「つるとんたん!」 どうでもいい事を言いながら、ホテルへと向かう王女とその護衛達。 それだけ日本のサブカルチャーに詳しくて、何故「ツンデレ」が出てこないのか。 アステカ編 佐天が帰った後、海原はショチトルに呼び出されていた、 「それで、トチトリにも言えない事とは何なのですか?」 「だ、だから……その…だな…」 ショチトルはさっきからこの調子だ。顔を真っ赤にしたまま口ごもっている。 「…まぁいいでしょう。では言えるようになったらまた呼んでください。」 「いや待て! 言う!言うから!!」 ショチトルは佐天の一言を思い出していた。 『だからショチトルも頑張ってね!?』 「(ルイコだって勇気を出すって決めたんだ……私だって!!) あ、あのな……? エツァリ…お兄ちゃん……わ、わた、私は…だな。お、お兄ちゃんの…ことが――――― 浜面編 浜面は今日、非常についていなかった。 服部と遊ぶために第15学区に来たのだが、ここまでは良かった。 だがその後、上条に会ってしまい、そのおかげで不幸が伝染ったのかもしれない。 服部と別れた後は、変な女(ただし巨乳)に絡まれ、延々と上条ハーレム(ただし浜面の想像)について聞き出され、 それが開放されたかと思えば、麦野から「好きじゃねぇから!」という謎のメール。 訳が分からないため、折り返し電話をしてみると、何故かブチギレられた。 なので、彼は麦野のご機嫌を取るために、シャケ弁を買って帰るはめになったのである。 そんな訳で、彼は今、閉店間際のスーパーに来ている。 狙うは半額シールの貼られたシャケ弁当。 最近では、しょっちゅうこんな事をしているため、知らないうちに「シャケ弁ハンター」などと呼ばれ、 3種類の都市伝説の一つとなっているほどだ。 だが、半額弁当を狙うのは彼だけではない。 目の前に転がるのは、絶賛気絶中の貧乏学生やスキルアウト。 彼等もまた半額弁当を狙い、そして手に入れられなかった者達だ。 今、ここに立っているのは浜面と、 「よう、シャケ弁ハンター。 やっぱり最後はお前か。」 彼だけだ。黒妻綿流。スキルアウトグループ、「ビッグスパイダー」の元リーダー。 噂では、風紀委員の固法美偉と付き合っているとかいないとか。あくまでも噂だが。 「うっせぇよムサシノ魔人! いいからそのシャケ弁を渡せ!じゃねぇと俺はブ・チ・コ・ロされるんだよ!!」 「駄目だな。俺だって腹が減って死にそうなんだ。 売れ残りの弁当はこのシャケ弁一つ。だったら…分かってるだろ?」 「くそっ! こっちは本気で殺されるかもしれないってのに……仕方ねぇ、やるしかねぇか!!」 腹が減ったら拳で語れ。 半額弁当をめぐり戦い続ける者達。人は彼等を「狼」と呼んだ。 果たして、この最後のベン・トーを手に入れるのは、浜面か、それとも黒妻か。 非常にどうでもいい戦いが、今幕を開ける。 土御門&雲川編 土御門は今、自分の寮で雲川と電話中である。 『かなり面白い事になってるみたいだけど。お前もなかなか腹が黒いというか何というか……』 「何言ってるにゃー雲川先輩。 オレの能力は『肉体再生』、つまりは強化系だぜい? 強化系の性格は単純一途なんだにゃー。」 『…気まぐれで嘘つきは変化系のはずだけど。』 「だったら先輩も変化系だぜい。そっちだって気まぐれに楽しんでるんだろ?」 『まぁな』 「けどいいのか? 先輩だってカミやんの事―――」 『土御門、昔の偉い人の言葉にこんなのがある。「愛は 勝たなくてもいい」』 「……不知火半袖は昔の人じゃないにゃー。」 『ま、とにかく明日は傍観者でいるつもりだけど。私なりに仕掛けもしたしな。それに……』 「それに…何だにゃー?」 一呼吸ついた後、雲川はとんでもない事を言ってのけた。 『略奪愛の方が燃えるだろう?』 小萌編 第5学区の居酒屋にて、小萌と、その同僚の黄泉川愛穂は飲んでいた。 「だから例えば、例えばですよ? もしその…生徒さんを好きになってしまったら、どうするのかって聞いてるんです。」 「んー…そういう経験が無いから分からないじゃん。 でも最近じゃあ、年の差カップルとか流行ってるし、別にいいじゃん? そもそも、好きになっちゃったもんは仕方無いじゃんよー。」 「はぁ…そう単純な話では無いのですよ……」 「で、お相手はやっぱりあの悪ガキじゃん?」 「た、例え話なのです! それに、か、上条ちゃんは関係無いのですよ!!」 「あっれ~? 私はただ悪ガキとしか言って無いじゃん。」 「うぐっ……それは…そのですね……」 「まぁまぁ、ここは一つ、告白する練習でもしてみるじゃんよ。 『月詠小萌は世界中の誰よりも、上条当麻を愛しています』 ほれほれ、言ってみるじゃん!」 「先生は甲子園なんか目指してないのですよ!!」 「なら、『僕は死にましぇ~ん!』…とか?」 「さっきからチョイスが古すぎです! てかだから!先生は別に上条ちゃんのことはですね!!」 数時間後、迎えに来た結標が見たものは、へべれけに成り果てた二人の教師の姿だった。 御坂編 常盤台中学女子寮内。 御坂は上条からの告白を受け、だらしないほどニヤケきっていた。 センチュリースープでも飲んでいるのではあるまいな。 明日は食蜂を連れ出してくるという、大事な任務があるはずなのだが、今の彼女は上の空だ。 まぁ、やっと想いが通じたのだから、今日くらいは浮かれてもいいのかもしれない。 たとえ真実が、偽の恋人【ざんこく】であったとしてもだ。 一方、ルームメイトの白井は、目が血走っている。 ドーピングコンソメスープでも飲んでいるのではあるまいな。 彼女はいまだに上条を呪い殺す事を諦めていないらしく、魔法陣の描かれた紙の上で黒魔術の呪文を唱えている。 「タッカラプト ポッポルンガ プピリット―――」 節子…またそれも黒魔術の呪文やない。ナメック星の神龍を……いや、もういいか。このくだりも3回目だし。 それにしても、もうすでにこんな調子の白井が、 上条と御坂の恋人(役)の事を知ってしまったら、一体どんな行動を起こすのだろうか。ある意味見てみたい。 さて、いつまでもこんな様子の二人に、巡回中の寮監様から何か一言、言ってもらおう。 「貴様等!! もう寝ろ!!!」 上条編 「悪いなインデックス。メシこんな時間になっちまって……」 「本当なんだよ! もしお腹と背中がくっついたら、とうまのせいかも!! お土産があったから良かったものの……」 急いで調理している間、とりあえずインデックスには、あの時出てきたいちごおでんで飢えを凌いでもらっている。 まさかハズレのいちごおでんが、こんな形で役に立つとは、上条自身も全く思っていなかっただろう。 「あーい、ご飯できたぞー。」 「うわーい!!待ちくたびれたんだよ!! いっただっきまーす!!!」 また随分とゆるい空気が流れているが、今のうちに、この平和なひと時をよぉく味わっておけ上条当麻。 明日は色んな意味で、とても大変な一日になるのだから――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2068.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 4日目 佐天+その他大勢編 その1 佐天は第7学区の公園のベンチに、ホットココア片手に一人で腰掛けていた。 初春から遊びの誘いはあったのだ。なんでも昨日の事で、面白い話が聞けるらしい。 昨日の事。つまりは上条と御坂の事だ。 そして面白いという事は、二人に何かしらの進展があったのだろう。 しかし佐天は聞きたくなかった。 何故かは分からないが、聞くのが怖かった。 昨日からモヤモヤが晴れない。胸が苦しくなり、溜息ばかりついている。 「はまづら、もっとギュッとして。」 「け、けどみんな見てるぞ? いや、むしろそれが二人を燃え上がらせるってのも分からなくはないが、 まだビギナーカップルの俺達には、そのステージは早くないか?」 「……ぐーすかぴー……」 「ね、寝てるぅーっ!! つーかさっきまで会話してたよね!? なにその寝つきのよさ!! あなたの前世はのび太くん!?」 隣のベンチでいちゃついている(?)カップルが、よけいに佐天をイラッとさせる。 というか日曜の午前中から公園でいちゃつくなよ。子供達ガン見してんぞ。 佐天は持っていたココアの空き缶を捨て、公園を出た、 出る前にカップルの方をチラッと見ると、ふわふわした茶髪のお姉さんが、男になにやらビームを浴びせている最中だった。 ちょっとだけスッとした。 が、直後に再びテンションの下がるイベントに遭遇する。 「ヘイヘイ! 姉ちゃん、一人かい?」 「よかったら俺らと遊ばね?」 アレッ!? デジャヴかな?三日前も同じような事があった気がする。 「あー…えっと、そういうのはちょっと……」 「おっと! へたに断らないほうが身のためだぜ!? こちらの内臓潰しの横須賀さんは今、気が立ってんだ! なにしろさっきナンパに失敗した上に、買い物袋まで吹き飛ばされたんだからなぁ!!」 「よけいな事まで言うんじゃねぇ!!」 さてどうしよう。 前にも言ったが、佐天に戦う力はない。 相手は自称内蔵潰し(他称モツ鍋ナントカ)と、舎弟数名。 逃げる事はできず、従えば親に言えないことをされてしまうだろう。 しかも佐天は知る由もないが、あのとき助けてくれた王子様は、現在自分の部屋で古文と戦っている真っ最中である。 イチかバチか、「あっ! あんな所にUFOが!!」作戦を決行しようとした瞬間、 「やめなさい! その子が困ってるじゃないですか!」 助けが入る。 佐天はとっさに「あの人」かと思ったが違う。そもそも声が違う。 「誰だテメェは!!」 「人に名乗る前に自分が名乗るのが礼儀……ですがまぁいいでしょう。 なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。 自分は海原光貴といいます。」 爽やかさ100%な男だった。むしろ爽やかさからできてますって感じである。 王子様度は、はっきり言って上条よりもはるかに高い。 しかしその爽やかさは、どことなく胡散臭さが滲み出ており、 風早くんよりは、どちらかといえば古泉に近い。 下の名前も似ているし。 「やれやれ、困ったものです。」 まんまじゃねーか。 「そうか、だがまずい所へ首を突っ込んでしまったようだな。 対能力者戦闘のエキスパート、この内蔵潰しの横須賀サマの前に」 「あっ、すみません。 長くなるなら攻撃してもいいですか?」 「話、最後まで聞けよ!! 何で俺と戦うやヤツはいつも聞いてくれないんだよ!!」 「えい」 「だから話をって、え~~~!!?」 海原は「えい」の掛け声とともに、手に持っていた黒い石のナイフをモツ鍋さんに向けた。 何かが光った瞬間、モツ鍋さんはパンツ一丁になっていた。 「またつまらぬものを斬ってしまった」の状態である。 覚えてやがれ!と、三流の捨て台詞を吐きながらモツ鍋さんたちは逃げていった。 このあと彼らは一般人の通報により、ツインテールの風紀委員に捕まるのだが、まぁどうでもいいことである。 「いやー、ありがとうございます! 助かりましたよ。」 「いえ、困っている女性を見たら放っておけない性分でして。それに……」 「? それに?」 「………あぁ、何でもありません。」 それに御坂さんの御友人を見捨てるわけにもいきませんから、と言いたかったのだろう。 実はこの男、ある理由で御坂の周辺を徹底的に調べ上げた経験がある。 当然、その友人である佐天の事も知っているという訳だ。 もっとも、こうして面と向かって話すのは初めてなのだが。 「それにしても今のすごかったですね!! どんな能力者なんですか!?」 海原が使ったのは能力ではない。魔術である。 金星の光を反射し、あらゆるものを解体するというものなのだが、そんなことを科学サイドで、しかも一般人である佐天に言える訳がない。 なので海原はこんな時のために用意しておいた、とっておきの言い訳【うそ】をついた。 「自分の能力は『等価交換【アルケミスト】』といって、 物質の構成元素を『理解』し、物質を『分解』し、『再構築』することで別の物質に作り変える、というものです。 先程のはその『分解』の段階で止めたという訳ですね。」 「へぇ~……(じゃあゴミを木に変えたり、手ぬぐいを鉄に変えたりとかもできるのかな?)」 佐天さん、それは天界力だ。 「それよりも気をつけてくださいね? またああいうのが来るかも分かりませんから。」 「あはは! 確かに危機感がなかったかもですね。反省してます。 ……まぁこの前も同じような事があったもんで。」 「それは大変でしたね。大丈夫だったのですか?」 「はい! そのときも助けてくれた方がいたので……」 そう言ってほんのり赤くなる佐天。その様子を見て海原は一人の少年の顔を思い浮かべた。 いや、彼を知る人間なら誰もが頭に浮かぶだろう。 ピンチのときに現れ、助けたついでにフラグを建て去って行くあの男を。 「それはひょっとして、ウニのような髪型の人ではありませんか?」 「えっ!? 海原さんも知ってるんですか!?」 「やはり…ですか。(どうやら自分との約束は守ってくれているようですね。……しかしまぁなんと言うか、建てすぎ【やりすぎ】では?)」 「上条さんも、あっ! その人上条さんっていうんですけどね!? すごかったんですよ!! こう、飛んできた火の玉をパキーンって消して! なんか能力を消せる能力者みたいですよ? それで―――」 上条のことを楽しそうに話す佐天。 先程の様子も含め、ある確信をした海原は、実にシンプルでストレートな質問をした。 「好きなのですか? 彼のことが。」 「え………」 それは考えた事もないことだった。 いや、考えないようにしていたのかもしれない。 自分が上条のことをどう想っているのか、そしてどう想われたいのか。 「な、何言ってるんですか! も~、あたしが上条さんと会ったのってついこの前ですよ? そんなわけないじゃないですかー。」 佐天は否定する。しかし否定すればするほど苦しくなる。 海原の一言で、気付かされてしまった自分の気持ち。 「……人を好きになるのに時間は関係ありませんよ。自分もそうでしたから。」 「…海原さんも?」 「ええ…ただその人には、別の好きな人がいるんです。 まぁどこにでもある話ですよ。」 「そう…ですか……」 「しかしその上条という方には彼女がいないのでしょう?」 「どうして分かるんですか?」 「いえ、話を聞く限り、ずいぶん鈍感そうな印象を受けたもので。」 「あはは! 確かにそうかもしれませんね!」 「つまり、貴方にはチャンスがあるということです。」 「でも……あたしの友人も上条さんのことが好きなんです。 あたしなんかよりずっと前から上条さんが好きだった人なんです。 あたし、その人のことも大好きだし、恩人でもあるんです。だから……」 「だから自分は身を引こうと? それで貴方はいいんですか?」 「……………」 「…確かにデリケートな問題ですから、じっくり考える時間も必要でしょう。……っと、すみません。」 海原のポケットが振動する。どうやらメールのようだ。 (土御門から…? グループが解散してから初めてですね……) そして海原はメールを開いて後悔する。 見なければよかったと顔をしかめる。 「あの、どうかしたんですか?」 「どうやら…あまり考えてる時間は無さそうですよ……?」 時間は数分前に遡る。 「どうだ舞夏、隣の様子は。」 「むー……どうやら上条のヤツ、また違う女を部屋に入れたみたいだぞー。 全く、昨日は御坂にあんな事しておいて、とんでもない男だなー。」 「この後、帰ってきたインデックスと血みどろの争いが起こるのが目に浮かぶぜい。 こりゃーきっついお灸をすえる必要があるにゃー。」 「何をする気だー?」 「戦争ですたい!!!」 そう言うと土御門はケータイを取り出した。 メールの件名に「緊急事態発生」と打ち、本文に昨日こっそり撮っておいた上条と御坂のキスシーンの写真を貼る。 「にゃはははは!! カミやん! 今回こそはお前さんも年貢の納め時だにゃー!! ブラックメ~ル、一斉送信 ズキュン!だぜい!」 土御門の放ったブラックメールは、海原以外の場所にも届いていた。 小萌のアパート内 「あれっ? あの子はもう帰ったの?」 「あっ、インデックスちゃんなら、ちょうど今かえったところなのです。 それにしても上条ちゃんには困ったものなのですよー……」 「ずっと愚痴言ってたわね。」 「そういえば結標ちゃんはどこで上条ちゃんに会ったのです?」 「まー…色々あって、ちょっと助けられただけよ。」 「……本当に上条ちゃんは………」 「ねぇ、あの人って小萌の生徒なんでしょ? 何年?」 「上条ちゃんは一年生なのです。」 「へぇー…年下かぁー……(イケルかも。)………あっ、メールだ。」 「先生もです。」 (土御門? 珍しい…………なんだ…脈ないじゃん……) 「な、な、な、何なのですかこれは~~~~!!?」 黄泉川のマンション内 「ねぇ見て見てー、ってミサカはミサカはおニューの服を着てあなたを誘惑してみたり!」 「うるせェな……そもそもさっき一緒に風呂入って裸見てンのに、今更誘惑もクソも無ェだろォが………」 「えっ!!? あなたはミサカの産まれたままの姿を見て、欲情しちゃってたの!? ってミサカはミサカはあなたの社会的抹殺を心配するとともに、これからの展開にwktkしてみたり!」 「ぶっ潰すぞクソガキィ!! 色気づくには10年…いや5年くらいかァ? 早ェンだよ!! ………あン? メールか…ちっ!土御門かよ……って、その前に三下から着信あったンじゃねェか!!誰だよ勝手に出たヤツ!!! …クソッ! まァいい。 で、メールの内容は……………」 「どうしたの?ってミサカはミサカは興味津々!」 「…見るか?」 「なになに………って!ミサカはミサカはくぁwせdrftgyふじこlp!!!」 「バグってンじゃねェ!! 三下とオリジナルがどォなろォと関係無ェだろォがァ!! (どォすりゃいいンだ!? やっぱここは、おめでとうメール的なモン送ったほうがいいンじゃねェか!? 友達として、そう友・達・として!!)」 某パン屋内 「嘘や! こんなん嘘にきまっとる!! 嘘って言うてくれーーー!!!」 吹寄の寮内 「か~み~じょ~~~!!!」 上条の寮近く 「………これは。さすがにショック……………」 第8学区のマンション 『…どうかしたのかね?』 「…別に。ただ不愉快なメールが届いただけだけど。」 『不愉快?』 「……………」 そして土御門のメールは、海を越えイギリスの地にまで届いていた。 イギリス清教 女子寮 「こ、これはきっと何か訳があるはずです!! あの少年がこんなことをするとは思えません!!」 「諦めろよ神裂。あいつだって高一だろ? 普通するだろこれくらい。」 「し、しかし!」 「まぁまぁ、シェリーさんも神裂さんも、お茶でも飲んで落ち着くのでございますよ。」 「熱っつう!!? これ煮えたぎってるぞ!!」 「あらあらまぁまぁ…」 (オルソラも相当動揺しているようですね……) イギリス清教 女子寮 アニェーゼ部隊 「このままでいいのですか? シスター・アニェーゼ。」 「な、何のことですか?」 「分かっているでしょう。あの少年ですよ。」 「あ、あぁ…例の事ですか。 けど私には全く関係無え話ってな訳ですよ。」 「そ、そんな事無いはずです!! シスター・アニェーゼはあの人の事………」 「シスター・アンジェレネまで何言っちまってるんですか!! 私は彼の事なんざこれっぽっちも! …これっぽっちも………」 日本人街 天草式 隠れ家 「ぅおらーーー!!! もっと酒持ってこんかいコンチクショーーーーー!!!!!」 「俺の菊姫が! 黒龍が!! 十四代がーーー!!!」 「た、建宮さん! 早く五和を止めてください! 牛深さんのお酒が無くなる前に!!」 「無茶言わんでほしいのよ!! 今の五和は、女教皇様と後方のアックアと範馬勇次郎が束になっても敵わないのよ!!!」 「そんなの人間じゃねー!!」 王室派 「おやキャーリサ。清教派からあのことを聞いてからずいぶん大人しくなったじゃないか。 そんなにあの少年の事が気になるのかい?」 「……気にして無いし、いつも通りだし。」 騎士派 「件の少年に好い人ができたらしい。 …ふむ。 これは神裂火織嬢を振り向かせるチャンスかもしれないな。 お前はどう思う?」 「………色恋の話は苦手である。」 新たなる光 レッサーの隠れ家 「あーもー!! 人がさんざん誘惑したってのに!!!」 「……もう諦めたほうがいいのでは?」 「いーや! あの少年にはイギリスの為に馬車馬のように働いてもらいます!! こうなったら…」 「こうなったら?」 「ふっふっふ……」 そしてこの話題はミサカネットワーク内でも騒ぎになっていた。 『上位個体の情報などアテになるのですか、とミサカ10404号は間違いであってほしいという願いを込めて確認を取ります。』 『番外個体からも同様の情報が得られました。どうやら真実のようです、とミサカ11122号は残酷な事実を告げます。』 『しかし彼にもお姉様にもそんな度胸はありません、とミサカ10050号は断言します。』 『いや、彼のフラグ能力を侮ってはいけません、とミサカ12399号は冷静に判断します。』 『今、問題視するべきは、なぜそうなったかではなくこれからどうするべきか、ではないでしょうか、 とミサカ18000号はあえて客観的立場で意見を言います。』 『それは確かに、とミサカ13131号は同意します。』 『ではこれからの事について話し合いましょう、とミサカ16677号はおもむろに仕切りだします。』 世界のあらゆる場所でこのことは物議を醸していた。 それだけフラグを乱立させたという事だろう。 はたして無意味にフラグを建てられた彼女達は、この後どう動くのだろうか。 土御門の言った「戦争」とは何を意味しているのか。そして佐天の出した答えとは? 騒動の中心である上条と御坂を置いてけぼりにしたまま、物語は大きく動きだした。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1961.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/ログ 18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲ 編集 Back
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1960.html
18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲