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――――ゴロゴロゴロ。 「んー、降る、かな?」 「…きそうっすねえ」 外の音に、同時に竹刀を止めた二人が外を見やり、同じ事を思っていると。 ぴしゃり、というひとつ大きな雷鳴と共に振り出す雨。 おわっちゃあ、とこれまた同時に顔を抑える。 「しょうがねえな、今日は早めに――上がるか」 「仕方ないっすねえ…夜はずっと雨だって言ってましたし」 本降りになる前に帰ればいいさ。 コジロー的には、まだそんな感じだった。 ……実はこのとき――事件は、既に起こっていたのだが。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 「……遅せえな」 そんなわけで練習を終え、 シャワー室に入ったキリノが出て来るのを待っているのだが――遅い。 さすがに男女で一緒に浴びるわけにもいかないので、 終わったらキリノが合図を出すと言う事になっている筈なのだが、あまりにも。 そうこうしていると、先生、という声と共に、シャワー室の入口でひらひらと蝶のように手招いている、手。 「お前な……長過ぎんだよ。ふやけちまうぞ?」 痺れを切らし、半切れ気味にコジローがそう、まくしたてかけると。 ドアの2m手前で待ったがかかる。 「ちょ、先生ダメ!!それ以上近付いたら3段突きで地獄行きっすよ?」 その声にうおっ、とコジローが立ち止まると。 キリノの声は次の要求をしてくる。 「先生、まだ剣道着のまま…っすよね?――シャツ、貸して貰えませんか?」 「……はぁ?そんなもん何に使うんだ?」 「着られるものが無いんす……」 ごばっ、と勢いよくコジローが吹き出すと、 しかしドアの陰から差し出された手は深刻そうに打ち震えている。 おいおいマジか、と考えながらもコジローが女子と逆方向の男子更衣室から自分のシャツを取ってきて、渡すと。 「―――ありがとうございます」 そう言ってシャワールームの内側に消える手。 キリノが、コジローのシャツを羽織ながらしてくれた説明によると―――どうやら、こういう事らしい。 更衣室の窓は、換気の為に開けられていた。 キリノはいつも通りに、窓際の部長用棚に着替えと荷物を置き… まったくいつも通りに稽古を始めたのだが、そこにこの雨。 想像以上に雨足が強く、降り込んだ雨がキリノの荷物をぐしょぐしょにしていまうまでに、10分もかからなかった。 さらに不幸にも、予備の剣道着は全部、新入部員の為に4月の頭にクリーニングに出し、そのまま帰って来ていない。 (しかし――普段のコイツなら、用心の為にも窓くらい閉めるだろうに?) そう、心で思ってから答えが出るまでにもあまり時間はかからなかった。 ―――そういえば今朝コイツ、弟が風邪で熱出したとか言ってたっけ。 あまり気にはしていない様子だったが……やはり心配だったのだろう。 そういえば心なしか、今日は稽古にも少し身が入ってない様でもあった。 ともあれコジローがこの特殊な事態を自分の中で収拾していると。 もういいっすよ、とやっとシャワー室のキリノから声が掛かる。 徐にシャワー室に踏み込むと、そこには―――半裸に夢中で自分のシャツの臭いを嗅ぐ、キリノ。 「えへへ…先生のニオイするっすよ」 唖然、とするこちらをよそに。 スンスン、と目を半分閉じ、うっとりした表情で鼻を立ててその臭いに酔いしれているキリノ。 その姿に、しばし呆然としながら…… (よく見たら―――睫毛なげえな、こいつ) などとその目は釘付けに遭い、数秒そのままの状況が続く。 コジローがはっ、と我に返り、生唾をひとつごくん、と飲み込むと。 (――いかんいかん。) 首を振りどうにか理性を復活させ、 着替えようとしていた自分の剣道着の予備をキリノの肩にかける。 「お前まで風邪引くぞ、バカ」 コジローが強い口調でそう言うと、少しシュンとするキリノは、だが… かけられた剣道着にも再びコジローの臭いを見つけ、なおも嗅ぎながら。 「…じゃあ、こっちの剣道着とハカマ、お借りしまーす」 とだけ言い残し、女子更衣室に消えて行く。 コジローはと言うと、はぁ、と胸を撫で下ろし、どうにか心を平常にすると、 「…助かった」 とつぶやくのが精一杯であった。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 「…くしゅん!」 シャワーのじゃああ、という音に混じって、可愛いくしゃみが一つ。 先生のシャツ、ここに置いておきますね、と言って入って来たキリノのものだ。 そのまま部屋のどこかにいるであろうキリノに話しかける。 「……だから風邪引くっつったろ」 「ゔー、すいません。でも…こっちの剣道着と袴も、けっこうブカブカで…」 そりゃあ俺のだからな、とコジローが一人ごちしていると、不意に疑問が一つ。 脳裏を巡る暇も無く、それはすぐさま実声となって発せられる。 「――そういやお前、その格好で家、帰れんのか?」 「…え?え~と、傘差して帰るんで、スソとか汚しちゃったらごめんなさいですけど……」 そういう事を聞いてるんじゃねえよ、とコジローが零すと、 更に深い溜息を漏らし、意を決して、ひとつ。 「―――しょうがねえ、車で送ってったる」 「ホントっすか、ありがとうございます!」 ……その、喜ぶキリノの声に。 どこか「計算通り」という響きが混じって聞えた気がするのは―― 俺の気のせいなんだろう、たぶん。 と、コジローが温めのシャワーと共に自分の考えを流してしまおうとしていた、部屋の片隅で。 ―――金髪の小悪魔のしっぽがはたり、と揺れていたとか、揺れていなかったとか。 終わり-
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《デスデビルごっこ》 イベントカード 使用コスト0/発生コスト1/青 [アプローチ/両方] 自分の『けいおん!』のキャラ1枚は、ターン終了時まで+10/+10を得る。その後、そのキャラのAPとDPの値を、ターン終了時まで入れ替えることができる。 (やっぱりわたしたち放課後ティータイムは明るくて元気な曲が……。) 映画けいおん!スペシャルパックで登場した青色のイベントカード。 自分の『けいおん!』キャラ1枚のAP・DPを10上昇させ、APとDPを入れ替える効果を持つ。 《アフタヌーンティー》(1つ目の効果)+《豹変(けいおん)》の効果を同時に発動できるコンバットトリック。 強化したうえでAP・DPを入れ替えることができるので、相手の計算を狂わせることができる。 なお、入れ替える効果は任意であり、単純なコンバットトリックとしても使える。 AP DPのキャラに使うことで相手の意表を突くことができる。 入れ替えるカードとしては《豹変(けいおん)》と同じコスト0なので上位互換と言える。 <けいおん!>になら採用して損はないだろう。 カードイラストは娘TYPE2012年1月号の版権絵。フレーバーは映画けいおん!での唯のセリフ。 関連項目 《アフタヌーンティー》 《豹変(けいおん)》 収録 映画けいおん!スペシャルパック 05-025 パラレル 編集
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こいびとごっこ…恋人ごっこ。 それは何気ない梓の言葉が始まりだった。 夏期講習を何となくといった感じで終え、澪が用事があるからと言って駅前で別れた私は、 暇潰しにと思って入ったハンバーガーショップで後輩の姿を見つけた。 梓はジュースを飲みながら、唯の妹である憂ちゃん、それからなんだっけ、なんとか純ちゃん と話し込んでいるようだった。 私は驚かせてやれ、と梓の背後に周り、憂ちゃんたちが驚いているのにも関わらず、 梓の耳元で「猫耳」と囁いた。 「ふにゃあ!?」 案の定、梓はそんな可愛い悲鳴をあげてくれた。梓は後ろを振り向くとそこに私が いたことでさらに驚いたらしく「律先輩!?」と叫び思い切り後ろに退いた。 おいおい、そこまでされたらなんだか悲しくなってくるぞ、梓。 「な、何なんですか律先輩!っていうか何でここにいるんです!?夏期講習は!?」 「もう終わったよー」 私は答えると、梓の隣にどさりと腰を下ろした。純ちゃんがきょろきょろと周りを見て 「澪先輩はいないんですね」と少し残念そうに言った。 私じゃ不満かー?と冗談交じりに言うと、「いえ、そんな」と純ちゃんはハハと目を逸らし 笑った。 そんな態度とられるんならはっきり言われた方がマシだって。 「律さんっていつも澪さんと一緒にいるイメージあるから」 憂ちゃんがどよーんとした私を慰めるように声を掛けてくれた。私は「そうかなー」と 言うとさっき買ってきたジュースをテーブルの上に置いた。 確かに澪とはよく一緒にいるけど、「いつも」ってわけじゃない。 幼馴染の腐れ縁で親友。澪とはそんな関係。 「あ、そういえば憂ちゃんさー、唯……」 「ちょっと、やめてよーう」 「いいだろ、俺たち付き合ってるんだから」 「やだー」 あちこちにハートマークが飛び交う声に私の声がかき消された。 もう一度言葉を紡ごうとすると、今度は別の方向から恋人たちのお熱い声が 飛んでくる。 「何か、……私、悲しくなってきました」 梓がぽつりと呟いた。憂ちゃんと純ちゃんも控えめに頷いた。 うん、大丈夫。私もだから。 夏休みだというのに女四人で狭い席に集まって雑談。何だこの悲しい状況。 さわちゃんじゃないけど、この周りにいるカップルをどうにかしてやりたくなる。 十代のうちは軽音部に捧げるんだから別に彼氏なんていらない。いらない、けど。 「くうっ……寂しい!」 「なんだか私たち、場違いですよね」 梓がそう溜息をついたとき、純ちゃんがそういえば、と言った。 「律先輩って彼氏、いないんですか?」 「へ?」 「だって、律先輩って結構モテそうじゃないですか」 私は慌てて首を振った。 そんなわけない。それなら美人で凛々しい澪のほうがモテるに決まってる。 けど憂ちゃんも「そうだよね」と言った。 「律さん、かっこいいですし」 「そうそう。意外と小学校とかのときモテたんじゃないですか、律先輩」 「意外とって何だよ意外とって!」 「あ、あはは。でも律先輩は女の子にモテるタイプじゃないですかー?」 「な、何かムギみたいなこと言うな……」 「律さんを彼氏って言って紹介されても違和感ないかも」 「は、はあ!?」 その時だった。梓がその言葉を言ったのは。 「そうだよね、じゃあいっそ私、律先輩と付き合ってみようかな」 「へ?」 「梓!?」 「あぁ、いいかも」 約一名、違う反応をしたのは置いといて(こうして話してみると唯と憂ちゃん、 結構似てるんだな)私と純ちゃんは驚いて梓を見た。 「や、やだ、冗談ですよ冗談」 梓はそんな私たちにもっと驚いたようであははと乾いた笑みを漏らした。 冗談か。私はほっと息を吐いた。 けど……。梓と付き合う、か。冷静に考えてみれば私たちは女同士なわけで。 ただの遊びなら面白いかもしれない。そうだな、これは『ごっこ』と考えればいい。 『恋人ごっこ』 悪くないな。夏期講習で疲れた頭をフル活用しながら考える。 どうせ明日からはまた暇なんだし。良い暇潰しになるかも。 「そうだなー、じゃ私と付き合うか、梓」 「……は!?」 自分の発言を本気にとられて恥かしかったからなのか少し赤くなりながらジュースを 飲んでいた梓は盛大に噴出した。それもわざわざ私のほうを向いて。 ……いや、唯とかで慣れてるからいいんだけどさ。 純ちゃんやさすがの憂ちゃんまでも目を丸くして私を見た。 私は得意げにその場にいた三人を見回すと、「『ごっこ』だよ、『ごっこ』」と 言った。憂ちゃんが私の顔を拭いてくれながら「『ごっこ』?」と首を傾げる。 純ちゃんはあぁ、と小さく納得したような声を上げた。 「要するに遊びみたいなものですか?」 「そ、暇潰し。それにこんな寂しい思いしなくてもすむだろ」 「いや、けど……」 「何だよ梓ー。どうせ梓も暇だろー?」 「まあそうですけど……、っていうか先輩受験生じゃ……」 「期間は夏休みが終わるまで!それなら他の皆に知られて変な噂たてられなくてもすむだろ?」 私はそこまで言うと、梓に向き直った。 「ってことで」 あぁ、やっぱり遊びってわかってても改めてこんなクサい台詞を言おうとすると 恥かしいな。 「中野梓さん、私と付き合ってください」 場所が場所。ハンバーガーショップでこんなこと言うバカなんて普通いない。 ムードもへったくれもないそんな場所で、私と梓はその日、『恋人』になった。 梓は私の差し出した手をとると、「ちょっとだけ、『暇潰し』に付き合ってあげます」 と言ってはにかんだ。 純ちゃんがヒューと口笛を噴いた。憂ちゃんもわあ!と嬉しそうに手を叩く。 いやあ、ありがとう、ありがとう。 ……なんて愛想笑いを振りまいている場合じゃない。 ここ公共の場!公共の場だから!いくら遊びだとはいえ、さすがに恥かしい。 周りの人たちが怪訝そうに見てるし!あのバカップルだって。 ――恋人、か。 私は純ちゃんと憂ちゃんの喝采を何とか鎮めると、隣にちょこんと座って さっきよりも恥かしそうに頬を赤らめている梓を見て思った。 恋人って何するんだろ。 手を繋ぐ?抱き合う?……キスをする、とか? いや、無理。さすがに『ごっこ』とはいえそれは無理だろ。 私は自分で考えたことに思わず心の中で突っ込みをいれた。あぁ、 何か梓と『恋人らしいこと』してるのを想像してしまって顔が熱い。 そっと気付かれないように梓の横顔を眺めた。 一応、私が『彼氏』役みたいなもんなんだから、私がリードしなきゃダメだよな。 先輩でもあるんだし。部長でもあるんだし。関係ないかも知れないけど。 「……、何ですか?」 そんなことを考えていると、ふっと横を向いた梓と目が合った。 私は慌てて「何でもないぞっ」と手と首をわたわたと振った。 「そうですか」と梓も気まずそうに目を逸らした。 「何か本当に初々しい恋人同士みたい」 純ちゃんがそう言ってけらけらと笑った。 「そろそろ帰るか」と腰を上げたのは日がだいぶ傾いてきた頃だった。 後輩三人組とこんなに話したのは初めてだったけどいつもの三年生メンバーと 違ったノリで面白かった。たまには学校でもこの三人組に絡んでみようか。 「それじゃあ、律さん、失礼します」 憂ちゃんは夕飯の買物があるからとかで駅前のスーパーに入っていった。 純ちゃんも気を利かせたらしく、用があるからと電車で帰って行った。 去り際、梓に「『恋人』なんだから二人きりのほうが良いでしょー」と笑いながら 言っていた。 その言葉を聞いていた私は、だから妙に梓を意識してしまって他の二人がいたときは すらすら出てきたジョークも言えずにいた。暫く無言のまま歩いた。 そろそろ居心地が悪いなと思い始めたとき、梓は立ち止まった。 「先輩、私、こっちなんで」 「あ、そっか」 えーっと。ここはなんて言えばいいんだろう。かっこよく「送ってくぜ」とか? いやいや、何か違うよな。私が迷っていると梓は「それじゃあ」と私に背を向けた。 私は思わず梓の手を掴んで引き戻した。 「先輩?」 引き戻したのはいいけど、何も考えてない。 あぁ、もう何とでもなれ! 「今は『先輩』はやめないか?」 やけくそで口をついて出た言葉はそれだった。梓が目をぱちくりさせて 私を見た。「どういうことですか」と首を傾げる。 私はえっと、と口篭ると「律、とかりっちゃんって呼んで、っていうか……」 としどろもどろに答えた。 すると梓は。 「……律」 え? 思考停止。 上目遣いで私を見る梓の頬が、段々赤く染まっていく。 「これでいいんですか」とそっぽを向いた梓を、私は思わず抱き締めていた。 「……せ、先輩!?」 「今は『恋人』同士だからいいだろ」 そう言うと、梓はおずおずと私の背中に腕を回してきた。不覚にもかわいいと 思ってしまった。いつも梓に抱きついている唯の気持ちがわかった気がした。 夜。 携帯を開くと澪からメールが来てた。 『明日、一緒に勉強しないか?』 明日、か。私はうーん、と考える。いや、本当はもうとっくにその返事は決まってる んだけど。 『ごめん、明日無理』 『そっか。わかった』 メールを送ると返事はすぐに返ってきた。ずっと私からの返信を待ってたのかな、澪。 そう思うのは少し自意識過剰か。けど私はもう一度心の中で澪に謝ってから、 もう一度メールボックスを開いて文字を打った。 『明日午後10時。駅前の噴水で待つ』 まるで果たし状だな、と自分で呆れながら梓にメールを送る。 私は携帯を閉じると、大きく欠伸をしてベッドに寝転んだ。寝返りを打つと、 ふいに梓の温もりを思い出した。 明日は何をしてやろうかな、なんて考えながら私は浅い眠りの海に堕ちて行った。 まだ夜が明けていない頃、私は目を覚ました。最近、良く眠れない。 これでも受験生ということで色々不安があったりする。大学どこに行くかまだ 決めてないし、就職するにしても何するにしても私だって普通の女子。それなりに 将来のことを考えて怖くなる。 こんなときは澪に電話したくなる。私は傍においてあった携帯を手に取って開けた。 暗い部屋にぼうっと小さな光。暗闇に慣れた目で眩しいディスプレイを見ると午前3時。 微妙な時間だな、なんて思って澪に電話するのを躊躇っていると、メールが来ているのに 気付いた。開けてみると梓からだった。 『わかりました』 さっき送ったメールの返事。簡潔だなあ、と苦笑する。そういえば梓、今起きてるかな。 まさか起きてないだろうな、と思いながらも私はお化けの絵文字を1つだけ打つと他は何も 書かずにそのメールを送ってみた。 なんと、その数秒後、梓からメールの返信が来た。 まるでさっきの澪並みだ。 『なんですか』 私はそのメールに返信せず、梓のアドレス帳を呼び出した。 そしてそこに記されてあった電話番号に電話を掛ける。 真夜中、静かな部屋で聞こえる呼び出し音。 程なくして、梓は電話に出た。 「梓、やっほー」 『やっほーって……。先輩、今何時だと思ってるんですか!』 「梓だって起きてるしいいじゃん。何か眠れなくってさー」 『……先輩も、ですか』 「ん?」 『い、いえ、何でもないです!』 「なあ、梓」 『はい?』 「本当に良かったのか」 私は携帯ストラップを指で弄びながら訊ねた。何となく、何となくだけど聞きたくなった。 遊びだってわかってるけど。わかってるからこそ、訊ねたくなった。 だって、無理矢理私の暇潰しに付き合せるのも先輩として、部長として、かっこ悪いし。 『何がですか』 けど梓は惚けたようにそう言った。鋭い梓がわからないはずない。きっとわかってて そう言ってるんだ。それは「良い」ととっていいんだろうか。けど、多分そう。 これも自意識過剰かも知れないけど。梓はきっと、私との『遊び』を楽しんでくれてるんだ。 それから、私は梓とどうでもいいようなことを話した。 本当にどうでもいいようなこと。唯や澪が一年の時にしでかしたこと、ムギの不思議な 言動や今日夜にあったドラマの話から楽器や好きなミュージシャンの話。 気が付くとそろそろ夜明けだった。時計を見ると午前4時過ぎ。 私は立ち上がるとカーテンを開けて外を見た。 電話越しに梓も同じことをしているらしく、カーテンの開く音がした。 今登ってきたばかりの朝日が眩しい。 「梓、おはよう」 『おはようございます』 私たちはそう言ってくすくすと笑った。 待ち合わせ時間を12時に変更して、私たちは電話を切った。ずっと手を上げてたから腕が 痛いけど程よい眠気が襲ってきて私はベッドに寝転ぶとすぐに眠りにおちた。 次に目が覚めたときにはもう日は高く上っていて、私は慌てて携帯を開いて時間を 確認した。12時過ぎ。駅前まで行くにはどれだけ頑張っても10分はかかる。 私は急いで着替えると家を飛び出した。家を出た後、遅れると連絡を入れればよかった んだと気付いたけど私はそのまま走った。 駅前につくと12時半過ぎ。もう梓、帰っちゃったかもな、なんて思いながら噴水のほうへ 歩いていく。 「やっぱり」 私は荒い息を整えながら呟いた。どこを見ても梓らしい姿は見えない。 梓も遅れてきたかも、なんて考えて暫く待とうとしたけどやめた。あの真面目な 梓が遅れるわけないから。 私はポケットから携帯を取り出すと今更ながら遅れてごめんメールを打とうとした とき、ぽんっと肩を叩かれた。 「あ、梓?」 そこには見知らぬ女の子――いや、梓が立っていた。 梓は普段ツインテールの髪を下ろしていた。だから後姿じゃわからなかったんだな。 ていうか。 「律先輩?」 梓に怪訝そうに私の顔を覗きこんだ。梓の顔が近くなり、私の心臓が飛び跳ねた。 それを悟られないように乱暴に梓の手を掴むと歩き出す。 バカ、私。何梓に見惚れてたんだ。 私はこの火照った頬を冷やそうと、人のあまりいない河原のほうへと歩いた。 少し私に引っ張られるようにして着いて来ていた梓が、いつのまにか私の隣を 歩いていた。 梓はどこへ行くのか訊ねてこなかった。だから私も早足で歩いた。 何も会話はなかったけど、昨日みたいに重苦しい雰囲気にはならなかった。 握った手だけで満足で寧ろこの沈黙が心地よくすら感じた。 そうだ。 私は突然思い立って方向転換した。 「律先輩、どうしたんですか?」 「梓、秘密の場所へ連れてってやる」 私はふふふ、と笑うと言った。昔澪と一緒に作った秘密基地。きっと澪は覚えてない と思うけど。私は中学校に上ってからも何かある度そこへ行っていた。高校生になった今は 中々行く機会がなかったから行ってないけど。澪以外、誰にも言う気はなかった。 けど梓なら何となく良いかな、って。 「秘密の場所、ですか?」 「そ。誰にも言っちゃダメだからなー!」 言うと私は走り出した。梓も私に手を引かれ慌てて着いて来た。 息を切らせて辿り着いた場所は、一目につかない開けた場所だった。草むらに 隠れて、周りから隔離された空間。 「こんな場所、あったんですね」 梓が驚いたように言った。私は「もっとデートの定番っぽいとこに連れてきたほうが 良かったか?」と笑いながら訊ねるとふるふると首を振った。 「いえ、ここ、律先輩の秘密の場所なんですよね?それならここのほうが嬉しいです」 「そ、そうか?」 何でそんな嬉しそうな顔で言うんだ、梓は。 私はまた突然抱き締めたい衝動に駆られてそれを慌てて必死に押し止めた。 だめだめ、確かに私たちは『恋人』同士であるわけだけど、今ここで梓を抱き締めて しまったら何でかわからないけどだめな気がする。 ……抱きつくのは唯の特権だし。 そう自分に言い聞かせて、私は地面に座り込んだ。 そういえば、ここには何もない。ずっとここで過ごすのは無理があるよな。 いくら梓がここに来れて嬉しいとか言ってても。 梓は興味深そうに辺りを見回している。何か面白いものでも見つけたんだろうか、 突然梓は「あ!」と声を上げた。 「どしたー?」 私は地面に座り込んでいた腰を上げた。梓は遠くを指差しながら「律先輩、 川が見えます!」と言った。思わずがくっと声に出してずっこけていた。 何だ、それだけであんな驚けるのか梓は。 けど梓は私の手を引っ張ってその「川」が見える場所まで連れて行った。 確かに川があった。凄く細々とした川。今にも干からびて水がなくなっちゃいそう。 結構この辺探索したつもりだったんだけどな。こんな川があったなんて気付かなかった。 「ちっちゃ」 「ですよね!この川、何なんでしょう?行ってみましょうよ」 子供みたいにはしゃぐ梓に手を引っ張られる。やれやれ、何がそんなに珍しいんだか。 けど私は梓の横顔を見てたら自分まで楽しくなってきて、「よし、行くか」と逆に私が 梓の手を引っ張った。 『彼氏』なんだから『彼女』に引っ張られるなんてかっこ悪いだろ? 川は小さかったけど長かった。梓が手に水を浸し、「冷たい」と目を丸くして呟いた。 本当、小さい子みたいだな。 私はそんな梓を見ながら思った。軽音部にいるときと違った表情。もしこれが私の前 だけで見せてくれてるものなんだったら多分、絶対凄く嬉しい。 水面に映る梓の表情は本当に幸せそうで。 そんな梓を見てるとあぁ、まただ。抱き締めたくなる衝動に駆られた。 「梓」 梓の名前を呼んだ。梓は「はい?」と振り向いた。私は「何でもない」と答えた。 やっぱりだめ。このままじゃ。 このままじゃ。 きっと、本気になってしまう―― 2
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85「私たちの恋人ごっこ」 登場人物:桜、石川、ユキ、レミ。 石川とユキが付き合っているという噂を聞き、誤解する桜。 桜に実際はどうなのかと問われたが、本当の事が言えなかったユキ。 「ユキが石川のことを好きと認めたら、桜に真実を話さない」と言うレミ。 レミに自分の気持ちを話すユキ。 石川の優しさに甘え、恋人ごっこを続けてきたことを悔いるユキ。 コメント ←84「カベ」 86「ユキ」→
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たまごっち!ゆめキラドリーム 第168話 「ハッピーバースディ!どーするプレゼント... 投稿者 rx78sora ※ ラップバトルは07 20付近から 【曲名】 たまごっちラップバトル(仮) 【アーティスト】 めめっち(CV 柚木涼香), ひめスペっち(CV ゆかな), ゆめみっち(CV 福圓美里), キラリっち(CV 豊口めぐみ) 【歌詞】 【作詞】 【作曲】 【編曲】 【作品】 たまごっち! ゆめキラドリーム 【メディア】 TVアニメ 【テーマ】 劇中歌 【初出】 2013年 【備考】 第2期たまごっちのアニメ『ゆめキラドリーム』第168話「ハッピーバースディ! どーするプレゼント!?」から、カフェママへのプレゼントを巡って突然勃発するラップバトルwww キラリっちのロボットダンスも必見! 音源化超希望!!
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ごっつええこんぴ。【登録タグ CD CDこ sunny spotCD van=jin(遅刻オトメンP)CD yksbCD うかく(cafe au lait P)CD お兄PCD かぐらPCD ぐらしゃCD つきのPCD はやくPCD ぴょろPCD ふーにんCD やみくろCD ガリCD コモレビノーツCD ヘリPCD 乾燥地帯CD 単純明快PCD 石風呂CD】 sunny spot 石風呂 うかく(cafe au lait P) ヘリP ガリ つきのP van=jin(遅刻オトメンP) かぐらP 乾燥地帯 単純明快P やみくろ はやくP ぐらしゃ ふーにん ぴょろP BIRUGE お兄P イママP 流通 即売 発売 2011年10月30日 価格 ¥1,000(税込) サークル ホンマにでらsunny spotじゃけぇ CD紹介 ~生まれた場所は違えども、関西で出会えばみんな関西人やで!~ sunny spot こと 水那月詩音氏 が主催の、関西(で出会った)P・絵師によるコンピレーションCD。バラエティに富んだ、全18曲を収録。 ジャケットイラストは mikoko氏 が手掛ける。他には 流良氏 ・ 雨羅螺氏 ・ そらうた氏 が絵師として参加。 クロスフェード内に出てきたデフォルメキャライラストを使った特製缶バッチを同時頒布。 VOCALOID PARADISE 6(ボーパラ6) にてリリース。 曲目 ゆるふわ樹海ガール feat. 初音ミク / 石風呂 ハッピー・サニーデイ feat. 鏡音リン(Power) / sunny spot blue Bird feat. 巡音ルカ / うかく(cafe au lait P) endless journey feat. 初音ミク / ヘリP 10分間の奇跡 feat. 初音ミク / ガリ 真夏の雨 feat. 鏡音レン(Power) / つきのP ねっちゅーしよう feat. 鏡音リン / van=jin(遅刻オトメンP) 秋月哀歌 feat. 巡音ルカ / かぐらP スターダスト feat. 初音ミク / 乾燥地帯 イカ焼き食べて! feat. 初音ミクAppend(Light) / Yat@単純明快P きりんにのって。 feat. 巡音ルカ / やみくろ 「ハロー、遠いきみ」 feat. 巡音ルカ / はやくP 夢色キャンバス feat. 初音ミク / ぐらしゃ 流星ガール feat. 初音ミク / ふーにん 雨の随に曖昧に feat. 鏡音レン / ぴょろP 夢色の空 feat. 初音ミクAppend(Dark) / BIRUGE カクテルグラスを傾けながら feat. 巡音ルカ / お兄P アイリス feat. GUMI / イママP リンク 特設サイト コメント おお、やりますな。羨ましい・・・ -- 野良猫のポチ (2011-10-26 23 08 26) 絶対手に入れるぜ -- MOも (2012-03-23 12 44 50) 欲しい!欲しい!難としても欲しい!! -- そーたS (2012-06-20 07 08 06) ほしい -- 名無しさん (2012-10-08 15 43 38) いいなー欲しいわぁこれ ( ̄^ ̄) どこで売ってんのかなー( ̄3 ̄)〜♪ -- 秋桜* (2013-02-04 16 20 39) 名前 コメント
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「な!三人でお医者さんごっこしないか?」 「え?でも、子供っぽいし……」 「あんたって本当にバカね」 「じゃあ、かのこんごっこしないか?」 「それくらいだったら……いいわよ」 「お医者さんごっこよりは面白いかもね。私もつきあうわ」 新ジャンル「かのこんごっこ」
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おいっす! 729 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2008/12/26(金) 23 51 56 ID YS0J5Gsx ド○フを見てたらつい…。
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10月も半ばを過ぎ、そろそろ衣替えに本腰を入れる頃ではないかと思う平日の昼過ぎ。 今でこそ、弾んだ足取りで「一緒に部室に行きませんか」と、咲を教室まで向かえに行く和であったが、 実は彼女は最近まで、とある心配事に悩まされていた。 厳密に言えばそれは和自身に起きたことではないのだけれど、 彼女にしてみればむしろ、自分以上に重大なことだったのだ。 “だった”…そう、過去形である。 ということで、もうなんやかんやで解決していたりして。 「あっ!今サッカー部の誰か転んじゃったよ!痛そう…!」 「え?あ…!大丈夫なんでしょうか…」 「運動部の人たちって大変だよね…ケガするかもしれないんだし」 「えぇ…」 驚く咲に続き、和も窓から校庭を覗き込んだ。 (麻雀部の私たちにケガは無縁ですものね) 私たちも体育で運動することはあるけれど、 ケガをするまで全力でやっているかと聞かれれば… 自信を持ってYESとはうなずけない。 先生に指導されたことをできるだけ実行し、 授業と言えど楽しみながら、 しかし試合になればそこは絶対に勝つつもりで…… 「…サッカーと言えばさ」 「はい?」 「こないだの…ククッ、和ちゃんのミラクルシュート…あははっ!」 「ま、またその話ですか!?」 「あはははっ!だ、だってー!ホントにビックリしたんだもん!」 「だからアレはただの偶然だって、何回も言ってるじゃないですか!」 「それをミラクルっていうんだよ~!さすが…フフッ、和ちゃん!」 「も、もう…!咲さんなんて知りませんっ」 「あ!ご、ごめんっ!でも1回笑い出したら、アハ、止まらなくなっちゃって…!」 「笑いながら謝っても意味ありませんから!」 …とは言うものの、本当は和だって全然怒ってなんかいない。 『あの事件』のことをこんな風に笑い話にしている咲に、心の底から安心しているのだ。 (芯が、強いんですね) 何せ他でもない咲があんな大変なことに巻き込まれてしまったのだから、 友達として、好意を抱く側として、心配しない方がおかしい。ね、そうでしょう? だけどその心配事も、ここ2~3日ですっかり和らいだ。 その全貌はこうだ。 ― ―― 忌々しい事件が起きた10/3。あれから数日が経った。 今、咲さんは何を考えて過ごしているのだろう? …時間は、副作用のない薬だと聞いたことがある。 だからなるべくあの日のことに触れないよう、 ふとした瞬間に思い出させてしまわないよう、 細心の注意を払って接してきた。 例の犯人らが翌日には捕まったという朗報でさえも黙っていた…というのに。 『優希ちゃん聞いてよ!スゴかったんだからっ、あの時の和ちゃん!』 これである。 今からだいたい3日ほど前のことだった。 がっくり。 正直言って、拍子抜け。 まさか彼女自身からその話題に触れてくるとは夢にも思っていなかったのだから。 (考えすぎだったんでしょうか…?) ──いや、待てよ? 無理して笑っている可能性も…充分にある! まだ日は浅いんだ。薬とは言っても、いくらなんでもすぐに効きすぎだろう。 それにあんなこと、簡単に忘れられるはずもない… そう思った和は、早速その日の帰りに咲に問い掛けてみることにした。 「あの…さっきの話のことなんですが…」 「さっき?」 「優希と話していた…」 「あぁ!音楽のテストの」 「い、いえそれではなくて!」 「え?違うの?」 「…あの日のことです」 「あの日って……あぁ」 ここまで遠慮がちに聞かれれば、咲も気が付かないわけにはいかない。 記憶がリフレインしたのか、一瞬目を伏せた咲を見て和の疑問がより確信めいたモノに近づいた。 ──無理をしないでください。 トラウマになっていて当然なのだから… そう思い口を開きかけるが、それよりも少しだけ早く咲が笑った。 「無理してるんじゃないかって思ってるでしょ」 「え…」 図星。 「やっぱりね」 「……違うんですか」 「んー…半分正解ってトコかな」 「半分?」 「今はもう大丈夫!ってこと」 「……」 …本当なのだろうか? 「あ、信じてないでしょー!」 「うっ…」 またもや図星。 「…だ、大丈夫と言われましても」 「だってホントのことなんだよ?」 「ホントに」 「ホント!」 「……」 「…まだ信じられない?」 「そういうワケでは…」 信じるか信じないかで聞かれれば、答えはもちろん「信じる」一択。 ただ、やっぱり他の誰でもない彼女のことだから、どうしようもなく心配になってしまうのだ。 その辺のこと、いつまで経ってもうまく伝えられない自分がもどかしい。 「もう…そんな顔しないで?」 「えっ?」 「今の和ちゃん、私よりも無理してるように見えるのわかってる?」 「…!」 「ほら、やっぱりわかってなかった」 あっけに取られている私を尻目に、咲さんはケラケラと笑う。 わ、私がそんな顔をしていただなんて… 「そう、だったんですか…?」 「うん。私にとっては、そっちの方がツライ」 「あっ…!え、えっと、その」 「でも、心配してくれてるのはわかってるよ。ありがとう。すごく嬉しい」 「え…!あ、いえそれは当然のことですから…!?」 「あははっ」 …い、いつのまにかすっかり咲さんのペースじゃないか。 このままじゃことの真相にたどり着く前にはぐらかされて… あれ?でも咲さんはもう大丈夫だって…え?ん? つまり…どういうことなんですか? 私が次に聞きたかったのは……― 「――そう!咲さんは本当にもう大丈夫なんですか?」 「本当だってば!和ちゃんは疑り深いなあ」 「嘘では、ないんですね?」 「和ちゃんに嘘なんかつかないよ」 「そっ…ぅですか」 私を見つめるその瞳が、あまりにもまっすぐだったものだから。 私に向けたその信頼が、あまりにもあっけらかんと伝えられたものだから。 つい、一瞬だけ押し黙ってしまった。 でもそれまではしっかりと真剣な目付きで問い掛けたつもりだ。 彼女を思い、想う気持ちには何の偽りもない。 それをこんなふうにあっさりと返されたのだから…恐らく本当に“本当”なのだろう。 (加えて、私が言うのも変な話だけど咲さんは嘘がヘタだ) 「大丈夫だよ。何かあったらすぐに言うから」 「…約束ですよ?」 「うん、約束」 交わされる2人の小指。 和と咲の、始まりの瞬間。 傍から見ればそれは「ふつうの指切り」の他ないけれど、 この2人にとっては、何よりも特別なものに感じられるものだった。 ……ところで。 皆さんは『赤い糸の伝説』なるものをご存知だろうか? 運命の人とは左手の小指にある見えない赤い糸で繋がっている、というアレだ。 一度は聞いたことがあると思う。 (あ……) その事が、和の脳裏にもたった今思い出された。 ──この指に、繋がっていたらいいな…咲さんと…… なんてことをふと考えて、 (な!何をバカなことを!) と勝手に顔を赤くして俯く。 頭からは今にも湯気が出てきそうだった。 「ど、どーしたの?」 「…なんでもありません……」 ―― ― そして、今。 まるで何事もなかったかのようにはしゃいでいる咲に、つられて和も笑いだした。 いつのまにか2人だけになっていた教室内に、明るい笑い声が響く。 そうして笑い疲れた息がとぎれとぎれになったとき、咲が切り出した。 「…ねぇ、今度の日曜日、空いてる?」 風に舞い散る花びらを… 追いかけて追いかけて…--- * これはデート、なのだろうか。 いや違う。たぶん違う。 デートとはそれすなわち、「日付。日時を約束し異性と会うこと」らしいから。 適当に手に取った辞書にはそんなことが書いてあった。 私たちは、異性じゃない。 恋人でもない。…残念ながら。 あ、いや「残念ながら」って! じゃあ、……まだ。 いやいや「まだ」の方が問題アリ…!? と、ご覧のように先ほどから悶々とし続けている和。 時刻は夜の11時を回った辺り。 翌日には、約束の日曜日が控えている。 (ああ…もうこんな時間!早く寝ないと) そう思って寝付けたら苦労はしないのだけど。 実はさっきから同じことを繰り返しているのだけど。 とにかく、眠れない。 まるで遠足前日の小学生のように。 明日への期待が高まりすぎて、 2人で会うという事実に胸が高鳴りすぎて。 ああ、なんて楽しみなんだろう! (遊ぶのなんてこれが初めてじゃないのに、私ったら… ――あ、明日何を着ていきましょう…?) こうしてまた、恋する乙女の睡眠時間は減っていくのであった。 ~ ~ ~ それでいて、早くに目が覚める。 「はぁ…」 自分の気持ちに正直すぎるのも考え物だ。 こんな子どもっぽいところ、咲さんには見せられません。 私は、なんていうか…そう、大人っぽくて頼られる存在でありたいのだから。 ――あ、でも。 無邪気な子どものように「素直な気持ちで向き合う」というのは、とてもいいことだと思う。 思えば私はいつも、咲さんに対してツンっとした態度を取ってきたような気がする。 それも、肝心なときに限って――だ。 こういうの、何て言うんでしたっけ…確か、「熱帯雨林」のような言葉だったような。 …とまあ、それは一旦置いといて。 話を戻します。 せっかくそれまではふつうに会話ができていたとしても、 ちょっと気恥ずかしくなった途端に口下手になってしまう。。 優希相手ならこんなことはないのに、なぜでしょう? いや、理由はなんとなくわかってはいますけど… 「…決めました」 『素直』を目標に、今日1日を過ごしましょう! 少しずつでもいいから、素直に気持ちを伝えさえすれば…きっと。きっと…! ……その時、和を応援するかのように、朝の日差しに反射した『希望』がキラリと輝いた。 ― ―― 集合場所は最寄の駅。 映画館付きのショッピングモールへ赴くために、ちょっとだけ遠出。 『観たい映画があるんだ!』 咲さんが言うそれは少女漫画が原作となった話題作。 小説版にもなっていて、これは以前咲さんから借りて読んだことがあるが、 とても心に沁みるいい作品だと思った。 それの実写化映画を観ることが、今日1番のメイン。 がたん…ごとん… 静かに揺れる電車のリズムが、妙に心地いい。 「ちょうどいい時間に間に合えばいいんだけど」 「大丈夫ですよ、確認してきましたから」 「確認って、始まる時間のこと?」 「ええ。今はネットで調べることができるんです」 「へー!すごいね、ありがとう!」 「っ!い、いえ、ヒマな時間を持て余してもと思って…」 (…っていけない!これじゃあいつもと変わらない私のままじゃないですか!) もはや一種のクセのようについ顔をそらしてしまった和だが、 このままじゃダメだと思い、頬を赤くさせたまま咲に向き直った。 「あ…あの私、本当は咲さんのために―――」 「あっ!見て見て和ちゃん!キレイなコスモス畑っ!」 「え!?あ、あぁ…そうですね…」 ―――くっ…もう終わった話扱いだったとは…… せっかく入れ直した気合も早々にくじかれ、早くも心が折れそうになってしまった和。 がしかし、まだ1日は始まったばかり! (次こそは絶対素直に…!) と、決意を新たに密かに燃えている少女・Nのとなりで (和ちゃんとおんなじ色だ…) と、こちらも密かに微笑んでいる少女・Sなのであった。 * 「ポップコーン…見本を見るに、レギュラーサイズでもたくさんありそうですね」 「うん…私そんなに食べられないからスモールでいいかな。和ちゃんは?」 「私もスモールで」 「あ、じゃあ2人でレギュラー買って、一緒に食べない?」 「なるほど、そうしましょう!」 そういったわけで2人の席の間に置かれるおいしそうなキャラメルポップコーン。 休日だけあって、混み具合もなかなかだ。 咲と和以外にもキャラメル味のポップコーンを頼んだお客は多いらしく、 館内には甘く優しい匂いが立ち込めていた。 上映開始まで、あと少し。 携帯電話の電源を切りましょうとか、上映中のお話はご遠慮くださいとか、 そんな注意を促す定番のムービーを眺めていると、ふいに照明が落とされた。 言われたとおりケータイの電源を切っているので時間の確認はできませんが、 暗くなったということはいよいよ始まるのでしょう。 …と思ったら。 (あ、予告…) そうそう、忘れてた。映画館にはこれがあったんだった。 始まる前の、他映画の宣伝と予告。 本編を早く観たい人にとっては必要ないと思うかもしれませんが、 普段見ないジャンルのものを知ることができるので、どちらかといえば私は好きです。 でもホラーだけはありえませんから。 1ジャンルとしての意味がわかりませんから。 怖いとか怖くないとかそういう問題じゃありませんから。 第一存在しませんから。 (…だ、だから…早く次行ってください…!!) (あわわ、大丈夫かな和ちゃん……) そんな和の強い祈りが通じたのか、パッとスクリーンが切り替わった。 同時に安堵のため息をつく2人。各々の意味は違うけれども。 そして始まったのは、…今度はラブストーリー。 冬公開らしい。一瞬「それらしい季節だな」と思ったが、ふと改める。 ――恋愛に季節なんて関係ない。 恋に落ちたらその時が“その時”だ。 現に私の場合は、春。 そう思うと「1番それらしい季節は春」だなんて、そんなおかしなことも思ったりする。 (…ふふ、私ったら) 心の中で小さく嘲笑しながら改めてスクリーンに目をやると… ラブストーリー映画お馴染み、キスシーンの真っ最中だった。 「……ッ!?」 思わず目を見開いてしまう。 そして硬直。 次に赤面。こちらもお馴染みのパターン。 でも、そうなってしまってもしかたがなかった。 ご家庭でもたまに味わうことができる何とも言えないこの空気… それに思いっきりあてられて平然としていられるほど、和は落ち着き払ってはいなかったのだから。 ましてや、今自分のとなりには……! 比較的濃い内容ではあったが、 時間的にはたったの数秒しかなかったそれはもうとっくに過ぎ去っていったけど、 一度生まれた空気はそう簡単にはなくならない。 となりにいる咲に動揺を悟られないよう、誤魔化しの意も含めてポップコーンに手を伸ばした。 …しかし、その手にふれたのは──… 「…?あ…!ごめんなさいっ」 「う、ううん…!」 なんと、咲の手。 同じタイミングで伸ばされていた手に気付かず、図らずも想い人の手を取ってしまったのだった。 しかも、こーんな空気の中で。 ホラー映画の予告を見ていた時とは全然違うドキドキが、胸の中を埋め尽くしていく。 (左手が……熱い…。でも、できることならずっと今のままで…) 館内に広がるキャラメルが、さっきよりも甘くなっているような気がした。 そっと手にしたひとひらに… あふれだすこのキモチ…--- * 無事、映画も観終わり(果たして和が前半部分を覚えているかどうかは謎だが) せっかくこんな所まで来たのだからとショッピングモール内を探索していた和と咲。 たまに気になるお店に立ち寄ったり、 おいしそうな匂いにつられてクレープを購入するなどして とても満足いく休日を過ごすことができた。 だが残念ながら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので… 「うわあ、もうこんなに暗いんだ…」 「すっかり秋なんですね…」 今までずっと建物の中にいたから気が付かなかったけれど、 まだ6時だというのに空一面がすべて濃い灰色に染まっていた。 この前までは7時を過ぎてもまだ明るかったというのに。 なんだか少し物寂しい。 「肌寒いね」 「そうですね…さ、行きましょうか」 「うん」 駅まで徒歩10分足らず。歩けば少しは暖まるでしょう。 そう思い、ふと左を見ると 「ハァー…」 咲が息を吹きかけながら手の平を擦り合わせているところだった。 「……」 ――もしかしてこれは、チャンス…? 今なら自然に手を取ることができるはず…恐らく。 ただ、肝心なのは勇気がそれに追いついてくれるかどうか。 …ゴクリ。 無意識に息を飲む。 素直に…そう、自分の気持ちにまっすぐに……―――。 ぎゅっ、と。 「わ、和ちゃん?」 「…え、っと」 右往左往としていた視線が、彼女のそれと交じり合ったところでやっと落ち着いた。 目が合うだけでこんなに緊張するなんてこと、この春までは全く知らなかった。 でも、今ならわかる。 この人の前でなら、自在に弱くも強くもなれる自分自身を。 そして込み上げてくるは、「すき」。 例えるものが何もなくて、 超えられるものも何一つない。 ただ、すき。 もうどうしたらいいかわからないくらい、すき。 「もしあなたに風邪を引かれでもしたら、困ります」 「でもこのくらい平気だよ?」 「それだけでは…ありません」 「な、なぁに?」 「私が、こうしたかったんです」 「っ!」 全身から「すき」があふれて止まらない。 こうしている今この時この瞬間にも「すき」が育っていくのを、心の底で感じていられるくらい。 「──私は」 いったん咲から目を離し、想いが零れ落ちてしまわないよう 右手を胸に添えて、ゆっくりとまぶたを降ろした。 「あなたとこうしていると、自分が自分じゃなくなったようになるんです。 でも、それもれっきとした“私”。 きっと私はあなたと過ごしているだけで、 どんどん知らない自分に出逢っていっていると思うんです。 最初はもちろん戸惑いました。 こんなこと、今まで想像したことも経験したこともありませんでしたから」 手にふれた『希望』を軽く握り締めて、続ける。 あれ、私、今ちょっと震えてる。 「けど、今ではそれがないとものすごく寂しいんです。 咲さんと共に過ごすこの日常が、他のどれを差し置いても必要なくらい大切で。 …とにかく、すごくすごく楽しくて。 ……咲さん。私は、あなたのことが――――え?」 最後の言葉くらい、きちんと目を見て言いたかったから振り返ったのだけれど。 つい、あっけに取られてしまった。 ――和の視線の先にあるものとは? 「…ッ…、の、のどかちゃん……!」 頬全体をこれでもかと真っ赤に染めた、初めて見る咲のしどろもどろな姿だった。 驚きと困惑を足して、もみじの紅で割ったような、そんな表情。 無垢な瞳も今やあっちこっちへ泳いでばかりいる。 けど、決して嫌がってはいない。 それだけは和にも理解できた。 「咲さん?」 「あ…ぅ。ううん違うの…!その、ちょっと意外だったっていうか」 「な、何がですか?」 「和ちゃんが…そーゆうこと、言うの」 「…ま、まあ…」 その通りである。 「だ、だからビックリしちゃって!あは、あははは…」 と言いながら空いている左手で頭をかく咲。 その時和は、さっきまでひんやりとしていた咲の右手が熱を持ってきているのに気が付いた。 と同時に、そんな咲の姿になんとなく覚えがあるように思い、少し思考を凝らす。 (これは…いつもの私?) …そうだ、きっとそう。 ということは、ふだんの私たちの立場が入れ替わっている、ということになるのだろうか? ――それ、おもしろいですね。 「ビックリ、ですか?」 「う、うんそう!それだけっ」 「でも、顔が赤いですよ?」 「え!?っと、これは…さ、寒くて…!」 「なら、もっと暖まらないといけませんね」 「えぇぇ…ッ!?」 調子に乗って、もう片方の手でもぎゅっと握りしめてみた。 案の定すぐさま固まる咲さんの体。 私の目の前でうろたえている彼女を見るのは、なぜだかニヤけが出てきそうで少し焦った。 ですが咲さん、私はいつもこんな気持ちでいるんですよ? たまにはいいと思いませんか、こういう立場でお話しするというのも。 「あぅ、の、和ちゃん…」 「ふふっ」 「え、どうしたの?」 「いえ、別に!」 風に舞い散る花びらを… 追いかけて追いかけて…--- 「ただ――」 「? ただ……?」 そっと手にしたひとひらに… あふれだすこのキモチ…--- 「やっとつかまえられた――と思っただけ、です♪」 遠い・おさない・想い。初恋の『おにごっこ』---
https://w.atwiki.jp/minegokko/pages/16.html
マイクラごっこは、「どどんとふ」でやる事を前提に作られています。 アナログでも出来るような気はしますが、多分果てしなく大変です。 ワールドマスター(WM / マスター)=ゲームの進行役です。 一般的なTRPGでいう「GM(ゲームマスター)」です。 クラフター(CR)=ゲームのプレイヤーです。 一般的なTRPGでいう「PL(プレイヤー)」 一人遊びも可能です。 一人で遊ぶ場合、マスターとクラフターを兼ねましょう。 複数人で遊ぶ場合、1人がマスターとして進行し、他のクラフターを遊ばせるか、 全員がクラフターをするなら、1人がマスター、もう1人がサブマスターを兼ねましょう。 後は全員がある程度ルールを理解すればゲームを開始できます! マスターは、できればマイクラにある程度詳しい人がいいでしょう。 各アイテムのスタック数や、クラフトに使う素材などを覚えている人がいいです。