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もか【登録タグ も やみくろ 曲 蒼姫ラピス】 作詞:やみくろ 作曲:やみくろ 編曲:やみくろ 唄:蒼姫ラピス 曲紹介 『苦すぎて飲めないよ』 薫る、コーヒーと想い出の苦さ。(作者コメ転載) 本作が、初のラピスオリジナル曲となる。 イラストは さちこ氏 が手掛ける。 蒼姫ラピスコンピCD 『Blue Princess Memories』 収録曲。 歌詞 君がよく飲んでいたコーヒーを 久しぶりに店で見つけたよ。 あぁ、そういえば 初めてもらった時 『苦すぎて飲めないよ』 と、君に返したね。 もう、飲めるかな?って買ってみたんだ。 ・・・気付けば、何故だろう? この手に取ってしまってたんだ。 君がいつでも隣にいる事を 当たり前の様に思ってしまってた。 ありきたりな恋? ありふれた別れ? 溜め息は消えずまだ君を探してる。 君が大好きだったコーヒーを 久しぶりに見つけ飲んでみると あぁ、あの頃と 変わらない味のまま。 『苦すぎて飲めないよ』 って訳じゃ無いんだけど やっぱり飲めないよ。 こんな些細な出来事の中さえ 君が薫って、想い出があって そんな事を考えると 辛くて、君を思い出すから。 ねぇ・・・ ありきたりな恋? ありふれた別れ? 溜め息は消えず君を探すよ もう一度逢えたら・・・。君と歩けたら・・・。 想い出は絶えず君を探すよ 伝えたい事も、謝りたい事も、 出掛けたい場所も、見せたい景色も たくさん増えたよ。話をしたいよ。 君の大好きなコーヒーを飲みながら。 コメント 名前 コメント
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くろれら(2500)
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うろ鯖wikiへようこそ このWikiはうろ鯖の情報及びルールをまとめたサイトです。 このページは自由に編集することができます。各国の情報も添えて編集をお願いします。 お知らせ 2/10 来る3月20日、うろ鯖の1周年を迎えます。そこで、1周年記念リニューアルを当日までに完了させます。 具体的に「1.5へのバージョンアップ」「リスポワールドの整備」「Wikiの完成」を目指しておりますのでご協力お願いします。 今後の予定 3/20 うろ鯖1周年 当wikiコンテンツの紹介 国家 この鯖のサブアクティヴィティの国家に関するルール 領土 国家に伴い導入される「領土」に関するルール 地図 この鯖のマップ、国境を表示 編集に関して @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください
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マイクロクリッパー製作 data モータドライバボード 回路図 実装図 センサーボード回路図 CPUボード回路図 進捗 6月13日 前にできていたセンサーボードの写真 裏は不評なので・・・ 個人的な感想としては、これはもう作りたくないかな #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (sensorboard.jpg) 4月28日 モータドライバ基板の実装完了 一応通電は大丈夫そう出し、回路図どうりではある。素直に動いてくれるといいのだが・・・ 4月17日 新型のCAD完成。新型といてっても多少形を修正しただけ これから製作段階へ 4月5日 マウス部分のCAD完成 電池の置き方が変だって?いや仕様です。 アームハンド部分は後で設計する予定。これがかなり時間がかかりそうなので・・・ 回路図はCPUボード以外大体できた。 ボード図は・・・どうしようorz つくろうか?作らずに行くのか あとは、見栄えを良くするためにコネクタ、LEDなどにこだわってたら なかなか難しくなってきた。特にコネクタが現在の悩みって日記みたいじゃないかこれ!!
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2006/9/16 『くろく』で、気まぐれ限定の「くろくのもりそば」(780円)を。 06.9.16%20%82%AD%82%EB%82%AD%20%82%AD%82%EB%82%AD%82%CC%82%E0%82%E8%82%BB%82%CE.jpg ややこってりめで、ビターなラーメンが多いくろくにしては甘めな醤油味のつけ汁に、ほんのり辛味と酸味が効いています。 つけ汁内には角切りチャーシュー・細切りメンマ・ネギみじん切り。麺は水で締めた平打太麺。 醤油の風味が"くろくらしさ"をかもし出してはいますが、くろくのラーメンには珍しく?万人受けする味に感じました。 もちろんいい意味での万人向けの味。私的にも美味しくいただけました。 つけ汁の雰囲気や、メニュー名からしても、『大勝軒』の「もりそば」をくろく風にアレンジしたといったところでしょうか。 こちらは「豚ご飯」(350円)。 06.9.16%20%82%AD%82%EB%82%AD%20%93%D8%82%B2%82%CD%82%F1.jpg 何ヶ月ぶりかの豚ごはんは、以前よりご飯の上に乗っているチャーシューが、脂身の多い部分が多くなり、とろけるような食感に。 味付けの醤油ダレも、以前よりしっかりめに付いている感じで、ご飯によく合い、以前よりも美味しく感じました。油で揚げた麺も健在です。 住所:仙台市宮城野区榴岡2-2-12 アーバンライフ橋本1F by hiro 名前 コメント
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「ふっふっふ、私の名はくろチアキ。 千秋の悪なる心が生み出した者だ! 今の私はもはや天下無敵のお利口さんなどではない。 すべてのものを欲望のまま貪り尽くしてくれるわー」 「まずはハルカ姉様だ。 一日の疲れをいやす入浴の時間など与えない。 ただでさえ私やバカナの世話で忙しいのにお風呂の時間でさえ私の世話をさせるんだ。 勿論わたしは指一本動かさないぞ。 髪の毛から指の先までハルカ姉様に洗ってもらうんだ。 湯船につかる時もハルカ姉様ゆったり足を伸ばす事も出来ない。 常に私の重みを感じながら動けなくなる。 おぉ、神をじゅーりんするに相応しいこの悪事。我ながら恐ろしい。」 「次に藤岡だ。 奴にはいつも私の椅子代わりにするという人権を蔑ろにする行為をしているが今回はわけが違うぞ。 夕食の時にも藤岡は私の椅子になるんだ。 お行儀が悪いってハルカ姉様に怒られるだろうが聞かないぞ。 なんといったって今の私は悪人なんだ。おぉ恐ろしい。 勿論私は箸を使わない。すべてを藤岡にやらせるんだ。 自分も食べたいであろうハルカ姉様のご飯を藤岡の手で食べさせるんだ。 ふっふっふ、もはやお利口さんなどとは言わせないぞ」 「最後にカナだ。 こいつには普段から散々な目に合わされてるから特別にいやな目に合せてやる。 怠け者のこいつにとっての最大の仕打ち、それは睡眠時間の奪取だ。 カナが寝静まったらまずは布団の中に潜り込んで陣地を奪ってやる。 そして足を絡めて動きを封じて私の熱や重みでもはや安息の睡眠時間など ありはしないんだ。 朝までくるしめばかやろー」 「千秋は本当に可愛いなぁ」ナデナデ 「そうね、本当に可愛いわね」ナデナデ 「うんうん、可愛いよ千秋ちゃん」ナデナデ 「やめろぉー」 名前 コメント 11-541氏 11スレ目 スレ別 保管庫
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4つの郡の端っこをつなぎ合わせてできた「東宇和市」の地域づくりを考えていくページ。 下記の想定人口を合算し、人口は84,000~104,000人とする。 地域横林(予子林)・中津 遊子谷・野井川・檮原西部 惣川・船戸 小松・大野ヶ原 河辺東部 河辺西部 小田南部・西谷・檮原東部 行政・議会 教育高等学校 中学校 小学校 交通 地域 横林(予子林)・中津 史実の西予市野村町横林と、大洲市肱川町中津を中心とした範囲。 想定人口は11,000~16,000人ほど。 遊子谷・野井川・檮原西部 史実の西予市城川町北部と高知県高岡郡檮原町の北西部。 想定人口は9,000~13,000人ほど。 惣川・船戸 史実の西予市野村町惣川、船戸の2地区。市役所はここに置く。 想定人口は16,000~21,000人ほど。 小松・大野ヶ原 史実の西予市小松、大野ヶ原の2地区。 想定人口は16,000~21,000人ほど。 河辺東部 史実の大洲市河辺町の東部。 想定人口は13,000~18,000人ほど。 河辺西部 史実の大洲市河辺町の西部。 想定人口は8,000~11,000人ほど。 小田南部・西谷・檮原東部 史実の喜多郡内子町の南東部、上浮穴郡久万高原町の南端、高知県高岡郡檮原町の北東部。 想定人口は11,000~13,000人ほど。 行政・議会 市議会定数:24 教育 高等学校 県立は東宇和、東宇和農業、河辺の3つ。私立が1~2校。 偏差値は東宇和>東宇和農業≧河辺くらい。 中学校 公立は、子供の人口比にもよるが10~15校程度。13校設置なら遊子川、野井川、予子林、天神、船戸、宮成、小松、大野ヶ原、植松、川崎、川上、西谷、永野。 最低の10校なら野井川、宮成、川崎を削る。逆に最大の15校なら中川、井高を追加。 小学校 公立は20~30校程度。 交通
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#contents **風紀委員への道 ***第一次接近遭遇 ~ちょっと忘れてただけなんですってば~ 水曜日、放課後。 図書室には、図書委員としてカウンターに座っている夏希以外、誰の姿もなかった。~ 仕事がないのをいいことに、夏希は持参した文庫本を黙々と読みふけっている。 ~ 戸がゆっくりと開いていく控えめな音を聞いて、夏希は図書室の入り口に目を向けた。 入ってきたのは、きつい目をしたボブカットの生徒だった。~ それなりに使い古された鞄の状態から、少なくとも上級生であると判断できる。 ~ その上級生は、元からお目当ての本があったのか、とある本棚へ迷うことなく近寄った。 しばらく、その最上段の本の並びを、親の仇でも見るような目で見据えていたが、~ やがて目当ての本が見付かったのか、おもむろに爪先立ち、手を伸ばした。 しかし、なかなか取り出せない。 確かにその上級生の背丈ならギリギリ本を取り出すことは出来るが、~ 一緒に両隣の本まで引っ張ってきてしまっている。 当事者にも勿論それは分かっていて、~ 五本の指をうまく使って目当ての本だけを取り出そうと四苦八苦していた。 ~ そんな様子を数秒ほど眺め、夏希は席を立った。~ 一人だけの訪問客のほうへと歩き出す。 「……?」 視界の端に映ったのか、爪先立ちで背を限界まで伸ばした姿勢のまま、~ その上級生が夏希のほうに顔を向けた。 「あ、」~ 「わっ、た」 バサバサバサ、と、聞いていて残念な気分になってくる音を立てて、~ その上級生が取り出そうとしていたものと、その周囲の本が、まとめて足元に落下した。 「あ……すいません」 その本を拾うべく、慌てて屈んだ上級生に、夏希は背を向けた。~ 放置したわけではない。 「ちょっと待ってくださいね」 そう潜めた声で言い、一旦どこかへ引っ込んだ夏希は、~ 上段の本を取り出すために常備してある足場台を抱えて戻ってきた。 小さな階段状になった足場を置き、夏希はその上に立つ。 「はい、貸して下さい」~ 「ありがとうございます」 本ごとに割り振られたコードに従って本を並べていく。~ 落下したのは全て同じ作者の本だったため、簡単な作業だった。 ~ そうして本を戻し終え、足場を降りてから、~ その上級生の手に一冊の本もないことに、夏希は気付いた。 「あれ、何か欲しいものがあったんではないんですか?」~ 「いえ、ありませんでした。その作者の、最後の本が欲しかったんですが」 どんな題名だったか、と一瞬だけ頭を悩ませて、夏希はすぐにピンと来た。 「ああ、あれ……」~ 「いつ戻ってくるか、分かりますか?」 目を合わせ、ずい、と上級生が身を寄せてくる。~ しかもやたら目付きが悪い。 「あ、え、ええ、はい、もうすぐだと思いますよ」 だってそれ、あたしが借りてる本だし。しかも貸出期限切れ。 後半は口には出さず、半歩引きながら夏希は頷いた。 「すいません、ありがとうございました」 去っていく上級生を見送ってから、~ 忘れなかったら明日きちんと返却しよう、と夏希は思った。 ~ 後日、本を渡したら貸出履歴から夏希が犯人だったことがすぐにバレた。 ~ ~ ~ ~ ***第二次接近遭遇 ~水曜は出来るだけ早起きするようになりました~ 風紀委員の仕事は数多いが、中でも特に生徒から嫌われている仕事が二つある。 一つは、不定期かつ突発的に敢行される持ち物検査。~ そして二つ目は、朝の立ち番だ。 ~ 「おはー、いんちょ」~ 「……っす」~ 「おっはよぉう」 朝八時過ぎ。~ 全開にされた校門を、大勢の生徒たちが通り抜けていく。 校門のすぐ外側には、“風紀”と刺繍された腕章を装着した三好ゆたかが、~ 小さな手帳を持って立っていた。 ~ 三好ゆたかは風紀委員である。 委員会の中でも特に勤勉に活動している彼女は、~ 新たに入学してきた一学年の生徒たちのチェックも怠っていない。 先日もとある新入生に対して、職員室へ入る際の挨拶について指導を行ったばかりだ。 ~ 「おはようございます。はい、おはようございます」 一ヶ月もすれば新入生も慣れたもので、ゆたかの姿を見ては、挨拶をしたり頭を下げる。 自分への挨拶に返事を返しながらも、~ ゆたかの目は雑踏の間を縫うように忙しなく動き回っていた。 生徒が身に着けているもので、校則違反と思われるものがないかチェックするためだ。 「(今日は良好ですね)」 ひとり小さく頷いて、ゆたかは挨拶を返しながらチェックを続けた。 ~ それから五分、そして十分が経過すると、~ 次第に人はまばらになり、急ぎ足の生徒の割合が増える。 風紀委員への挨拶をしない生徒も多くなってくるが、~ ゆたかにもそれを黙認するくらいの寛容さはある。 「八時十五分になりました。速やかに教室に向かって下さい。自転車の方は注意をお願いします」 ゆたかは腕時計を確認して、校門周辺にいる生徒たち全員に向かって、そう声を張り上げた。~ そして、両引き戸となっている校門の片側のロックを外し、ゆっくりと閉じていく。 八時十五分になると校門の片方が閉じられ、~ 二十分のチャイムが鳴ると同時に完全に閉門されることになっている。 しかし、そもそもSHRは二十分から始まるのだから、~ 十九分に校門を抜けたとしても、間に合うかどうかは微妙なところだが。 「(……さて)」 ~ 急ぎ足で駆け抜けていく生徒たちを眺めながら、ゆたかは暫し頭を悩ませた。~ ここ最近に目に付くようになってきた、一人の新入生徒について。 名前とクラスは既に記憶している。~ 一-Aクラス、伊織夏希。 切欠になったのは、先日の図書室でのとある出来事だが、~ あれがなくても、近いうちに自分は彼女の顔を覚えることになっただろう、とゆたかは思う。 というのも―― ~ 「っと……ショートホームルームの時間です。一旦閉門します、注意して下さい」 SHR開始のチャイムが鳴った。~ クラスによっては、既に点呼が始まっていることだろう。 融通の利く教師ならまだ分からないが、~ これから先、校門を通るのは出席状況には遅刻と明記されるべき生徒だけだ。 ひと一人が辛うじて通れる程度の隙間を空けて、正門がギリギリまで閉じられた。~ そしてその狭い通り道には、風紀委員の三好ゆたかが立ちはだかる。 「以降、この名簿にクラスと名前を書いてから、速やかに教室に向かって下さい」 汗だくになった生徒たちが、悔しそうな顔をして記名していく。 ~ 記名した者について、いちいち各クラスに届け出るようなことはない。~ 遅刻の回数が看過できない数まで達した者にだけ、風紀委員からの注意がなされる。 そもそも立ち番は雨天中止だし、それほど厳重なチェック体制でないこともあって、~ ほとんどの生徒はこのルールを遵守している。 そう。一握りの不届き者を除いて。 ~ 記名回数が十回に達した者は、風紀の委員会活動への協力が義務付けられる。~ もちろん、参加日時についてはある程度の融通が利く。 それが嫌で、記名する際に適当な名前や他人の名前を書く生徒もいるが、~ 判明した時点で、罰則として三回の奉仕活動を強制される。これには参加日時の自由もない。 というように、他の道徳に反した行為にも、相応の罰則が科せられることとなっている。 ~ このような体制から、この学園での遅刻生徒数は減少の一途を辿っている……~ かと言われればそんなことはなく、遅刻する生徒は何がどうだろうと遅刻する。 そして、それを誤魔化そうとする生徒もまた存在するのが現実なのだ。 ~ 最後の生徒が記名を終えると、ゆたかは校門の片方を開け放った。~ 生徒が授業をしている時間帯にも、何かしらの業者の出入りがあるためだ。 腕時計を確認すると、分針は二十二分へ差し掛かっていた。~ そろそろ頃合だと見て、ゆたかは校舎裏へと向かうべく駆け出した。 ~ ~ ~ かくして予想通り、その生徒はそこにいた。 遅刻確定、でも絶対に記名はしたくない、ついでに言うけど出席扱いにしてくれませんか。~ そんなわがままを押し通そうとする、風紀委員の三好ゆたかとしては絶対に見逃せない所業。 その下手人は、道路に面したフェンスを馴れた動きでよじ登り飛び越えて、~ たった今、軽やかに学園敷地内への侵入を果たしたところだった。 頭頂で、大きな髪の一束がふさふさと揺れている。 その生徒が降り立ったのは、体育館の裏手だった。~ 二つの体育館の隙間を抜ければ、誰にも見咎められずに校舎に入ることができる、そんな抜け道。 「そこ、何をしているんですか!」 姿を視認してすぐ、ゆたかはそう叫んだ。~ その生徒は驚いてゆたかを見て、一目散に逃げ出した。不届き者の背中が新体育館の影に消える。 一見して、叫んだのは失策だと思われることだろう。お互いの距離は、ゆうに五十メートルはあった。 加えて、風紀委員であるゆたかが廊下を走ることは許されない。~ 校舎内への侵入を許した時点でゆたかの負けが決まる。 それでもゆたかは焦らなかった。勝利を確信していたからだ。 ~ 下手人が降り立ったのは、二つの体育館の、ちょうど真ん中の辺り。~ そこから二つの体育館の間を抜けて、最短距離で北校舎に入るのが最も効率的だと言える。 ゆたかはその最短ルートを塞ぐよう、左右を体育館に挟まれた位置に立った。 朝のSHRは、一分一秒が生死を分ける。~ 二十五分を過ぎれば、いかな教師でも出席を取り終え、遅刻は確定する。 現在時刻は二十三分三十秒。~ 新体育館を大きく回りこんでから校舎に走りこんでも、どう考えても間に合わない。 よって、ゆたかはこのまま彼女を追いたて、遅刻を磐石のものとしてやればいい――! ~ 「待ちなさい伊織さん! 遅刻は確定です、大人しくこの手帳に記名して下さい!」 実を言うと、前回も似たようなことがあった。お陰で今回は気合の入り方が違う。 前回、フェンスからの侵入を発見したのは偶然だったが、~ 記名なしで遅刻者に校舎へ侵入されてしまった苦い記憶は、今もゆたかの責任感を苛んでいる。 そして、その経験を生かしての今回である。ルート取りは完璧、負ける要素がない。 ~ 夏希を追い、ゆたかは駆ける。~ 勢い込んで角を曲がり、その少し先にいるであろう夏希の背中を探して、 「わっ!」~ 「……ッ!?」 ~ 数秒後、我に返ったゆたかが後方を振り返ると、~ 謝罪しながら逃げる伊織夏希の姿が、校舎内に消えていくところだった。 「あの、遅刻魔……っ」 まだ動悸が収まらない。~ 乾いた土に尻餅をついたまま、胸に手を当てて、努めて落ち着こうと浅く深呼吸。 混乱から立ち直ると、先ほどの出来事をようやく冷静に思い起こすことが出来た。 ~ ゆたかがスピードを落として角を曲がり、視界が開けたところで、~ 陰に隠れていた夏希が、ゆたかの眼前にいきなり顔を出して、『わっ!』と叫んだ。 驚愕に声もなくへたり込んだゆたかの脇をすり抜け、夏希は最短距離で校舎へと走り去った。 ~ 長町学園では、違反行為は現行犯逮捕が基本である。 遅刻なんぞで証拠がどうの言うのは面倒だというのが教師たちの見解だ。~ 重大な違反行為ならともかく、遅刻や侵入程度であれば、走って逃げられれば事も無し、になる。 しかも、夏希の所属する一-Aの担任は、“そういうこと”にはかなり寛容な人間だ。~ 出欠確認を終える前に教室に滑り込めば出席扱いになるという話は、ゆたかも耳にしている。 ~ 有り体に言ってしまえば、“してやられた”というわけだ。 「ふ、ふふ……」 怒りのあまり、笑いがこみ上げてきた。 けしからん遅刻魔のとんでもない子供じみた暴挙に、~ そして、そんな策とも言えないような策に出し抜かれた自分に。 怨嗟の篭もった笑みを漏らしながら、ゆたかは自分の教室へ向かうべく立ち上がった。 ~ ~ ~ ~ ***大惨事近接遭遇 ~今にして思えば、あれこそが致命的な失態だったのです~ 昼休みを告げるチャイムが鳴り響くと、生徒のほとんどが机の上を片付け始めた。 授業はまだキリのいいところまで進んではいなかったが、~ 昼休みを前にした少女たちに対して、頑として授業を続けるのは良い選択とは言えない。 年配の数学教師が残念そうに授業を終える旨を告げると、生徒たちは機敏な動きで立ち上がり、~ 授業終了の挨拶もそこそこに、思い思いの場所に散っていった。 ~ 「やー、やっとおわたよ」~ 「おつかれ」 夏希が教科書の類を整理していると、横合いから聞き慣れた声が掛かった。~ 目も向けずに短く返すと、遥は夏希の前の席の椅子に腰を下ろした。 「今日は屋上だっけ?」~ 「うん、今日は漫画の日!」 弾む声に視線を上げて見れば、遥は既にジャージ類の入っている鞄を持ってきていた。 その中には、彼女が登校中に買ってきた漫画本が入っているのだろう。~ 遅刻して一時限目をスッポかしただけはある。 よほど楽しみなのだろう、午前中の授業が終わったことも相まってか、~ 遥は、見ているほうの気分まで明るくなるような、晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。 「それじゃ、売店いっか」~ 「おうさ!」 ~ ~ 学園への漫画本の持込みは禁止されている。~ 所持だけであれば見逃してくれる教師もいるが、基本的には見付かった時点で没収される。 なので、登校中に漫画本を買ったところで、学園内でそれを読むことの出来る場所は限られる。~ 八割がた安全であると夏希が確認しているのは、トイレ、部室棟、空き教室……そして今から向かう屋上だ。 とは言え、大々的に開放されている南校舎側の屋上は、昼休みには人が集まるため、~ 漫画本を堂々と読むには適さない。 二人が向かおうとしているのは、侵入が禁止されている北校舎側の屋上だ。 ~ 北校舎の階段を三階まで上がると、また更に上へ続く階段がある。~ 屋上へ続く扉はもちろん施錠されているが、夏希はとあるツテから屋上へ抜ける方法を手に入れていた。 二人は売店で昼食を購入してから、北校舎の階段を上っていった。~ そこに気まずい先客がいるとは、顔を合わせるまで気付かないまま。 ~ 「げ、」~ 「あれれ?」 三階から屋上へ続く階段の踊り場で、夏希と遥は足を止めた。~ 屋上へ抜ける扉の前の小さな空間には、既に先客が陣取っていた。 扉の足がかりとなる段差に腰掛けて、ピンと伸ばした背筋に、冷然とした表情。~ 右の二の腕には、安全ピンで留められた“風紀”の腕章。 親しげに夏希へ笑い掛ける、三好ゆたか風紀委員がそこにいた。 「あら、こんにちは伊織さん。奇遇ですね」~ 「……どうも」 怪しい。と夏希は思った。ものすごく嫌な予感がする。 売店で買った幕の内弁当を膝の上に置いて、ゆたかは普通に昼食を摂っているように見える。~ しかし、普通は一人ではこんなところに来ない。昼食を食べない。 鞄に手を突っ込んで、屋上への扉の鍵を取り出しかけていた夏希は、~ 鍵を鞄の中に落として手を抜いた。 「ともだちさんかい?」~ 「顔見知り。二年の風紀委員」 耳打ちに夏希が小さく返すと、遥は興味深げにゆたかのほうを向いた。~ 遅刻と言えば二時限目からが基本の遥は、まだゆたかと顔を合わせたことがなかったらしい。 「昼食ですか?」~ 「ええ、まあ」 そもそも、なぜ親しげなのか。 顔を合わせれば校則違反の真っ最中であることの多い夏希に対して、~ このお堅い風紀委員サマがいい感情を抱いているはずもない。と思う。 世間話の一つもしたことがない、知り合いと呼ぶのも憚られるような相手に対して――~ いやさ、そうでなくとも、この眼前の風紀の鬼が笑っている表情が夏希には思い浮かばない。 「でも、今日は先客がいるみたいですから。別の場所を探します」 遥の手を引いて、夏希は屋上に背を向けた。~ その背中に、ゆたかの声が掛けられる。 「屋上に出れば場所は沢山ありますよ。てっきり伊織さんは屋上に出るために来たものと思っていましたが」~ 「あー、そういう手もありましたね。鍵さえあればいいんですけど」 夏希に動揺はなかった。~ ゆたかがこんな場所にいた時点で、ある程度の心構えが出来ていたからだ。 「……」 しかし、ゆたかから向けられる視線には相変わらず疑惑が篭もっていた。 夏希の受け答えにはは動揺がなさすぎた。~ 『屋上に出るために来たんじゃないんですか?』などと言われたら、少なからず動揺するのが普通だろう。 「じゃあ、すいません、失礼します」~ 「失礼しましたー」 ~ ~ そそくさと逃げるように階段を駆け下りて、二人は自分のクラスまで戻ってきた。 道中、今日は教室で昼食を摂るということで相談を終えていたので、~ 夏希は自分の席に戻り、遥はその前の席に勝手に座って、とりあえずぐったり。 「いやもう、どういうことなの……」~ 「びっくりしたねー」 しばらく屋上は使えない。~ しかも、夏希は更に目を付けられる要素を増やしてしまった。 「風紀委員すげえ……」 すげえだるい、と嘆息する夏希に、遥がにこやかに笑い掛けてきた。 「なっちゃんすごいねー、もう二年の人で友達つくっちゃったんだ」~ 「ただの顔見知りだって。登校中とか校門に立ってる人」 断じて友達と呼べるような関係ではないと夏希は否定するが、~ 遥にとっては、“顔見知り”も“友達”も似たような意味しか持っていなかった。 「うちの部活はまだそういうの全然でねー、もー、ねー」~ 「あー、まあ、もう友達でいいや、うん」 ~ ~ ~ ~ ***インタールード ~日本民主主義人民共和国~ 「今から風紀委員を選出します。最低一人、上限なし。決まるまで帰れません」 放課後直前のSHRで、担任教師が笑顔で発したその言葉に、~ これからの楽しい楽しい放課後に想いを馳せていた生徒たちの空気は一瞬凍り付き、 「「「えええええええええっ!?」」」 そして、一-Aが爆発した。 ~ ~ 「はーい、静かにしてください」 手を打ち鳴らして教室の動揺が落ち着くのを待って、~ 担任がプリントを配り始める。 プリントが回った生徒の側から、教室内が徐々に小声の雑談で満たされていく。~ 特権がどうの、ボランティアがどうの。 手元に回ってきたその紙を読んでみると、~ 要するに風紀委員とはこういうことをしてますよ、という説明が並んでいた。 ~ 風紀とは“日常生活で守るべき道徳上の規律”のことを指す。 風紀委員会は、それを維持するための集まりである。 風紀委員の仕事。~ ポスターの貼付。校舎内の巡回。自主清掃などの奉仕活動。~ 服装などへの指導。失せ物の捜索。生徒間の問題の仲裁。~ 生徒の不平不満を受け止め、オブラートに包んで教師に伝達。 特権行使。~ 風紀委員は、必要に応じて以下の権利を行使することが出来る。~ 特別教室などの鍵の貸出、必要に応じた授業時間中の退室と校舎外への外出、~ 持ち物検査、証拠物品の一時的押収、強制連行、他。 よくある質問への答え。~ 他の委員会との重複所属は許可される。~ 部活、委員会などとの兼ね合いは考慮する。~ 初めの一定期間は先輩からの指導が入るので、初心者でも安心。~ 風紀委員として相応しくないと判断された場合は、然るべき処置がなされる。 ~ 一通りざっと目を通して、~ 夏希はプリントを早々に折り畳み、机の中にしまった。 「やってらんないっつーの」 仕事内容を見てみると、毎日放課後居残りとか、何時から何の仕事があるとか、~ 定期的に拘束時間が発生するような仕事はほとんどないようだ。 しかし、逆に言えば不定期かつ唐突に仕事が発生するということでもある。 言ってしまえば雑用係だ。~ 風紀委員の数が少ないのも頷ける話である。 そして、だからこそ、ひとクラスにつき最低一人の風紀委員を~ 選出するようなことになっているのだろう。 ~ 「立候補してくれる人、いない? いないかぁ」 担任が立候補を探している。~ そんなのいるわけねえ、と夏希は内心で吐き捨てた。 「ほら、みんなの好きな何でも屋じゃない。学園の揉め事処理屋よ?」 カッコよく言っても雑用は雑用だ。面倒ごと押し付けられるだけだ。~ しかし、教室内のざわめきは何割かボリュームを上げた。 「一般生徒より教師に近い位置に立てるわよ? 相談役顧問よ。コンシリエーレよ」~ 「……」 生徒たちが反応を示したのを見て、担任教師が更に畳み掛ける。~ ニッチ市場をカヴァーすべく、話題がとってもマイナーだ。 ちょっとカッコいいな、と思ってしまった自分が恥ずかしくて、~ 夏希は頬杖をついて窓の外を眺め始めた。 ~ 「んー、そこの頬杖ついた伊織さん。プリントしまっちゃって、我関せずかな?」~ 「ああいや、もう読み終わっちゃったんで、ええ」 しまった、と思った。 今、自分は非常に危険な状況にいるのだとすぐに察した。~ 一刻も早く話題を自分からズラさなければ。と夏希は頭を働かせる。 「ほ、ほら、あたし遅刻ギリギリとか多いっすから、風紀とかは合わないかなーとか」~ 「風紀委員になれば、そういうのも直るかしら。ねえ」 担任の目が怖い。~ 徐々に集中してくる周囲の生徒の視線が痛い。 「いやいや、風紀委員会とかでうまくやってける自信ないですよ」~ 「あらそう? 先生、意外と伊織さんみたいな人も多いかもって思うけどなあ」 ざわめきが収まってきた。危険な兆候だった。~ このままではまずい、このままでは、 ~ 「そういえばなっちゃん、風紀の人と仲いいよね」~ ~ よりにもよってこのタイミングで、遥が口を出してきた。~ それが何よりも致命的な一撃であることを、夏希は理解していた。 「……ほう」 担任教師の両の眼が眇められる。~ 教室が完全に静まり返る。 状況は、“上司からの軽いパワハラを受ける新入社員”から、~ “狩る蛇と狩られる蛙”にまで転落した。 残念ながら投了一歩手前だった。待ったなし。 「ねえ伊織さん。風紀委員、やってくれないかなぁ?」 最後に夏希の意思を確認するように、そう担任の言葉が投げ掛けられる。 夏希は知っていた。~ ここで本気で拒否すれば、おそらく風紀委員会への所属を免れることは可能だ。~ しかし、それは今まだギリギリで和やかなムードを保っている教室の雰囲気を、~ 完膚なきまでに破壊してしまうのと全くの同義だった。 現に、運動部に所属している短気な生徒の何人かは、苛立たしげに貧乏揺すりを始めていたりする。 仮に拒否したとしても、それを表立って責める生徒は皆無だろう。~ なぜなら、風紀委員に入りたくないのは、クラスメイト全員に共通した認識なのだから。 しかし、内心ではブーイングを鳴り響かせる生徒が沢山いるであろうことも確かだ。 ~ だから、担任教師が伊織夏希に確認したのは、~ クラスメイト全員の心証を悪くしてまで、風紀委員を拒否するのかどうか。 そういうことだった。 ~ 朗らかに、ほんの少しだけ申し訳なさそうに微笑む担任に、~ 夏希は至極面倒臭そうに一言だけ返した。 「……うぃーっす」~ 「ぃよし決定っ! 夏希さん以外解散!」 にわかに教室が沸き立った。~ 日直の声が響き渡り、平時の五割増のボリュームで別れの挨拶が唱和される。 通りすがりに、夏希の肩を叩いていく者がいた。~ 目を合わせると肩を竦める者がいた。~ ラブコールを叫ぶ者がいた。 その生徒たち全員に共通しているのは、~ 嬉しそうな笑顔で教室を出て行くこと、その一点のみであった。 ~ 居残った夏希は、担任から一枚のプリントを手渡された。~ 新たに選出された風紀委員の初顔合わせだ。 明日、放課後。決戦である。 ~ 仮病使って休んじゃおうかなー、と、夏希は半ば以上本気で考えていた。 ~ ~ ~ ~ ***貸与時接近遭遇 ~ころし苦おネガ遺志まままm~ 新入風紀委員の入会式兼初顔合わせは、南校舎一階、小会議室にて執り行われた。 と言っても、何か大層なことをするわけではなく、~ 改めて風紀委員についての説明をされた後、腕章を手渡されて終わりだ。 現在、新入生にして新入風紀委員である三人は、横一列に並んで下座に着席し、~ 向かい合うように配置された机に陣取った上層部三人から、風紀委員の説明を受けていた。 ~ 「必要とあらば、時には証拠物件としてそれらを押収することも――」~ 「……」 夏希は、もぞもぞと腰を動かした。~ 何か落ち着かない、据わりの悪い感覚を先ほどから味わい続けていた。 というのも、いま目の前で風紀についての訓辞を垂れているのが、~ ちょっとした顔見知りであることと、 「(う、またこっち見た)」 その顔見知りであるところの三好ゆたかが、~ ちらちらとこちらに視線を送っているからに他ならなかった。 ~ ゆたかの表情からは、『なぜ貴方なんかがここにいるんですか』という意思が、~ ひしひしと伝わってくる。 しかし、そんなことを言われても困るし、夏希だって逃げられるものなら逃げたい。 でもそれはちょっと難しいので、夏希はせめて先輩委員の厳しい眼光からだけでも逃れようと、~ 微妙に視線を外し、壁に立てかけられたパイプ椅子を眺めていたりした。 ~ そこで夏希が視線を外していることが分かると、ゆたかは語気を殊更に強めて、~ 『風紀委員となるものは全校生徒の模範となるべく云々』などと、~ もう三回は言ったことをちゃんと聞けとばかりに反復してくるのだ。 そもそも、前日プリントで読んだばかりのことを、分かりやすく説明し直しているだけだ。~ 夏希にとっては、退屈でしかない時間だった。 欠伸を噛み殺すと、視線が更に強まった。~ 全くもって今さらな話なので、この際、夏希は気にしないことにした。 「(ああ……帰りたいなあ……)」 ~ そうこうしているうちに風紀についての説明は終了し、腕章の授与に移った。 腕章の貸与も、やはり三好ゆたかが行うようだ。~ ここにいる三人の先輩は、風紀委員の中でも何かしらの役職に就いてるのだろうか、~ と夏希は適当に考えながら、ゆたかから腕章を受け取った。 手渡す瞬間、ゆたかがものすごく不本意そうな顔をしたのを見て、~ 夏希は内心で肩をすくめた。 ~ ~ 新入委員の三人が腕章を受け取り、さて終わりだ、帰ろ帰ろ……と、思ったところで、~ 「最後に、」と声を上げて夏希の足を引き留めた。 「新入委員の指導を行う先輩がたをご紹介します」 ああ、そういやそんなのあったなあ、などと、夏希が暢気に回想に耽っているうちに、~ ゆたかがスラスラと指導者を告げていく。 「一-Cの近江さんは、国生先輩が。一-Bの屋久島さんは栗山さんが指導に当たります」~ 「……ん?」 BとCクラスの子が黙礼し、それに先輩がた二人が頷き返す。 ちょっと待て、と夏希は思った。~ それは何の何かの何だ。 「一-Aの伊織さんは、私、三好ゆたかが担当します」 夏希に動揺はなかった。~ 驚愕で思わず叫び出すことも、露骨に顔をしかめたりすることもなかった。 なぜなら、あまりに理不尽なこの仕打ちに、夏希の魂は数秒ほど飛んでいってしまっていたからだ。 ~ 会合が終わり、三好ゆたかと伊織夏希以外の人間が会議室から退室したあと。~ 今まで思い描いていた、これからの自由奔放な学園生活が、~ 『以後、よろしくお願いします』という一言で粉々に破壊される音を、夏希は聞いた。 ~ ~ ~ ~ **だから言ったのに 放課後。 英美とゆたかは、最近駅前に出来た、~ 美味しいと評判の鯛焼き屋で買い食いをすることにした。 より正確に言うなら、以前食べに来たところ気に入った英美が、~ ゆたかにも食べさせるために連れてきた、というのが正しい。 ~ 「ありがとうございましたー」 まだ店の前にずらりと並んでいる行列から少し離れたところまで歩いてから、~ 英美は紙袋から一つ鯛焼きを取り出して、隣に立つゆたかに手渡した。 「はい、かなり熱いから気を付けて食べてね」~ 「あ、はい」 受け取った鯛焼きを、ゆたかは物珍しげに見詰める。 「あれ、あんまり鯛焼きとか食べたことなかった?」~ 「はい。買い食いなどは、あまりしませんから」~ 「だったらほら、早く食べてみなよ。すっごく美味しいよこれ」 がぶっと! などと勢い込んで催促されるままに、~ ゆたかはその手に持った鯛焼きを頭から、大きく開けた口でがぶりとくわえ込み―― 「っ……」 ぱっと口を離して、黙り込んだ。~ 鯛焼きには深い歯形が残り、そこから黒い餡子が覗いている。 「あー、だからさっき熱いって言ったのに。水あるよ。まだ開けてないやつ」~ 「…………いえ」 差し出されたスポーツ飲料のペットボトルを横目で見てから、~ ゆたかはそっぽを向いて否定した。 水をくれるのは大いに有難かったが、言葉の掛け方が悪かった。~ 子供扱いされているようで機嫌を悪くしたゆたかは、憮然とした顔でこう呟く。 「別に、熱くないです」~ 「え? ……って、そんな」 そんなわけないでしょ、と英美が続ける前に、ゆたかは鯛焼きに再度かぶり付いた。~ もちろん、まだ熱い。 「っっっ!?」 ゆたかは口を一度離し、~ 苦し紛れに餡子の入ってないような皮の部分だけを小さくかじった。 そして、噛まなくても飲み込めそうなその欠片を、ちびちびと咀嚼する。 「まだ熱いよ。私もまだ食べれないもん。はい、水あるから」 ゆたかはペットボトルに一瞬手を伸ばしかけて……やめた。~ そして、恨みがましい目で英美の顔を睨む。 「だから、別に熱くないです」~ 「そ、そっか。私の勘違いだった、うん」 わけが分からないながら、ここは引くのが正しいと判断し、~ 英美はペットボトルを入れるべくバッグを開けて、 「……いらないとは言ってないです」~ 「っとと」 そう言いながらのゆたかの手に、ペットボトルをひったくられた。 やっぱり熱いんじゃないか、と思ったが、それを口に出すほど英美は愚かではない。 水を口に含むゆたかを努めて見ないようにしつつ、~ 英美は自分のぶんの鯛焼きを取り出した。 「うん、熱くない熱くない」 実際はけっこう熱かったのだが、心構えさえあれば我慢できないほどではない。~ 熱くない風を装いながら、英美は無理のない程度に鯛焼きを食べ続けた。 「………………」 そうして、ほんの一分ほどで鯛焼きひとつを食べ切ってからようやく、~ すぐ隣からの怨念の篭もった眼光に気付く。 「あ、あれ? なんで睨まれてるんだろう、あの、その」~ 「……んッ!」~ 「いったあ!?」 中身が半分ほど減ったペットボトルと、ほとんど食べてない鯛焼きを手に持ったまま、~ ゆたかは足を速めてスタスタと先に行ってしまった。 それを片足飛びで追い掛けながら、英美は叫ぶ。 「なんで足踏まれるの!? っていうかちょっと待って! ねえー!」~ 「知らない」 なんだかよくわからないままにご機嫌を取ろうとしたが、~ 英美に泣きが入るまで許して貰えなかった。 ~ ~ ~ ~ **別に謝る必要はないんだけど申し訳ない気分になった ラーメン屋にて。 夏希は頬杖をついてレンゲを弄びながら、隣に座った小米のどんぶりを覗き込んだ。~ 麺がまだ半分は残っている。ちなみに、夏希は既に完食していた。 「ねえ、おこめちゃん」~ 「んー?」 麺を啜りながら、小米は横目を向け、返事をした。 「昨日、英美先輩とカラオケ行ったんだけどさ」~ 「……んく、なにか新しい曲でも入ってたのかしら」 口の中に入った麺を飲み込んでから、小米が返事を返す。~ その間、食事が止まる。 「入ってたけど、微妙だった」~ 「残念ねー」 そう間延びした声で言ってから、小米はちゅるちゅると控えめに麺を啜る。 麺がなくなるまで、あとどれくらいかかるだろうか。~ あまり話し掛けすぎてもよくないが、この所在無い空気はどうにかならないものか。 夏希は三杯目の水を飲み干してから、お手洗いのために席を立った。 ~ ~ ファミレスにて。 「お待たせ致しました、ガーリックステーキでございます」~ 「うぃす、ども」 ようやく出てきた夕飯にかぶりつく。 向かいの席では小米がピザを食べている。~ 既に八等分されたピザの半分ほどは、既に彼女の胃の中だ。 「この前、アルバムがまた新しく出たのよねー」~ 「んー」 適当に返事を返しながら、どんどんステーキを口の中に放り込む。うまい。 「出たねえ」~ 「出たのよー」 ぴょいぱく、ひょいぱく。~ ステーキは順調に夏希の口の中へ。 「あたしまだ聞いてないや。どうだった?」~ 「そうねえー……」 早くもステーキの半分ほどを処理し、夏希はちらりと小米の皿に目をやった。~ 残り、三切れ。 「(ん?)」 いくらなんでも食べるのが遅すぎる。 肉を咀嚼しながら、つと小米の手を見ると、~ 夏希のステーキが届いたときから持っていた一切れが、まだ半分ほど残っていた。 「うわあ」~ 「どうしたの?」 夏希は思わず呻いた。 このやろう、とも思った。男じゃないけど、と内心で一人ツッコミもした。 「おこめちゃん最高。尊敬する。ていうかごめんなさい」~ 「ええー」 意味不明の言動に、小米は困ったように笑った。 「これを進呈しよう」 切り分けたステーキの一切れを、小米のピザの皿に載せる。 「いやいや夏希ちゃん、これをどうやって食べろって言うのよー」~ 「そういやそうだ」 夏希は、自分が使っているフォークでステーキを小米の口に運ぶ―― ことも考えたが、恥ずかしいのでやめにして、~ 普通に自分の近くにあった食器入れからフォークを取り出して手渡した。 ~ ~ ~ ~ **わたしたちの幸せを守る答え(わたしたち編) 「そういう時はですね、一度引いてみるのもアリだと思いますよ」~ 「引く……ですか?」 ある日の放課後。 心配そうな顔をしたみちるに声を掛けられ、唯は自分の悩み事を打ち明けた。~ その悩みとはもちろん、英美に関することだ。 「押して駄目ならというやつで。間違いなく寄ってきますよ、あの人なら。保証します」~ 「ですか? じゃあじゃあ、こういうときは――」 それからしばらくみちると話して、唯は随分楽になったようだ。~ 明るい顔をして帰っていった唯の背中を見送ってから、みちるは携帯電話を取り出した。 「あ、どうも伊織さん。お疲れさまです。あのですね、ちょっと頼みがあるんですけど」 ~ ~ その後、またある別の日の放課後。~ 英美に呼び出され、夏希は駅前のとある喫茶店へとやってきた。 「……あのさ、唯ちゃんの様子、最近どうかな?」 夏希が席に着くなり、英美は暗い顔でそんな風に切り出した。 「んー? いや、普通じゃないですかね。ちょっと前までは元気なさそうでしたけど、今は全然」~ 「そっかぁ、まずいなあ、どうしようかなあ」 頭を抱えてしばらく沈黙してから、英美は上目遣いでこう打ち明けた。 「ちょっと悩みを聞いてくんないかな。長くなるかもだけど」~ 「ええ、いいですよ。英美さんのためならいくらでも」~ 「実は、最近ちょっと唯ちゃんを怒らせちゃって……なんか、避けられてるっていうか」 腕を組み悩む振りをしてから、~ 夏希はいかにもふと思いつきました、という風に話し出す。 「自分が悪いと思ってるんなら、やっぱり謝らないとマズいんじゃないでしょうかねえ」~ 「そ、そうかなあ、やっぱりそうかなあ!?」 ~ ~ そのまた後日のこと。 「英美せんぱいっ。今日はですね、プリンの日なんですよっ」~ 「ああうんちょっと待って、ゆた――って、ちょ、なんで先に行くの、ねえ、ゆたかー!?」~ 「知りませんし。別に約束とかしてませんし」 いつもの光景、騒がしい三人を見つめる、生温かい二対の目があった。 「いやー、よかったよかった」~ 「よかった、のかなあ。いやまあ、あたしはいいんですけど」 納得し切っていない様子の夏希に、みちるはくすくすと小さく声を漏らして笑った。 「いいんですよ。これが最も冴えていて、かつ今後も面白くなるやり方なんですから」~ 「いやあ、ホント、大丈夫かなこれ……」 もう半泣きになっている英美を眺めながら、~ 今度はどんな愚痴を聞かされるんだろう、と夏希はぼんやり考えた。 ~ ~ ~ ~ **わたしたちの幸せを守る答え(英美編) 松島英美は信じていた。 はじめのうちは他の――例えば彼女の言う通り、~ 委員会の仕事、習い事、あるいは家族の用事なのだと、そう納得していた。 しかし、それがこう何度も続けば、気付かないわけもない。 ~ 「……ゆたかに避けられてる気がする」 「え? なんですか?」 「あ、うん。なんでもないよ」 すぐ隣からの声に、英美は慌てて笑顔を取り繕った。 それが上の空だとは誰が見ても分かる。~ 戸部唯は、不安そうに英美の顔を見上げた。 「このアイス、あんまり好みじゃありませんでした?」 「んーん、そんなことない。おいしいよ」 「ですよねっ」 子犬のようにうな垂れたり、かと思えば爛漫の笑み。 そのいちいち可愛い唯の挙動に頬を緩めながら、~ 心のどこかに『もしかしたらマズい』と考えている自分がいることを、英美は自覚していた。 ~ 放課後の駅前、英美は唯と二人で買い食いをしていた。~ その光景を三好ゆたかが遠くから見ていたことは、二人とも気付くことができなかった。 「………………ばーか」 ゆたかはそう小さく吐き捨てて、見るからに不機嫌そうな顔でその場を去った。 ~ ~ 翌日。 なんだかんだと避けられて、今日でゆたかと最後に遊びに出掛けてから一週間、~ 最後に昼食を一緒に食べてから四日、そして最後に言葉を交わしてから二日が経っていた。 遅まきながら、そろそろやばいと英美も気付いた。~ 今日こそはゆたかと話をしなくてはならない。 ~ 最後のショートホームルームが終わり、日直の挨拶が終わった瞬間、~ 英美は教室のドアを開け放ち、 「あ、先輩! おつかれさまですっ」 「お……おつかれさまー」 唯に捕まった。 今日はこんなことがありました、帰りにあの店でどんなものを食べたいんです、などと、~ 自分のことを信頼しきった顔で言われると、英美は首を横に振ることができない。 数秒前までの決心をうやむやにして、そのまま唯と連れ立って歩き出そうとしたところに、 「先輩、なんか鳴ってますよ?」 自分の鞄から携帯電話の振動する音が聞こえてきて、英美は顔をこわばらせた。 「あ、うん、ちょっと待っててね」 確認してみると、それはゆたかからの電話でもメールでもなく、ただの迷惑メールだった。~ しかし英美は、そうとは唯に伝えなかった。 「ごめん唯ちゃん。今日はその、ちょっと用事があるから、付き合えなくなっちゃった」 「ええぇーっ」 逃げられないよう、英美の腕を抱えるようにして捕まえて、~ 唯は不満そうに口を尖らせた。 「今のメールの人ですよね。わたしのほうが約束早かったのに、そっち行っちゃうんですか」 「ホントごめん。でもほら、駅前はまた今度で大丈夫じゃない。ね」 このとき英美は、ああ、唯ちゃん怒った顔も可愛いなあ、持ち帰りたい、だとか、~ そんなことを思う程度に軽い気持ちでいたのだけれども。 『私とメールの人、どっちが大事なんですか?』にけっこうな気持ちを込めていた唯に、~ 『また今度でいいじゃん』という返答はなかった。ありえなかった。 ~ 「そう、ですね」 唯の手から力が抜け、拘束されていた英美の腕が自由になる。 俯いてしまった後輩の少女に、~ 英美は何かを言わなくてはいけないような気分になったが、 「唯ちゃん、あの、」 「それじゃ、さよならです、先輩」 すぐさま身を翻して、英美が呼び止める間もなく唯は走り去った。~ その声は、英美にも分かるほど震えていた。 ~ ~ 唯の背中を追いかけたくなる衝動を必死で堪え、~ 英美は南校舎にある二年の教室へと向かった。 それは勿論、ゆたかと話すためだったのだが。 「(いや、でも、あれ?)」 廊下を歩いていた英美は、ふと我に返った。怖気づいたとも言う。 「(なんて話せば……いいんだっけ)」 そもそも、と英美は考える。 なんとなく意気込んでみたものの、自分は何も悪いことをしてたわけではない。~ 謝る必要もないし、では何をしに行くのかと言えば、特に用事があるわけでもない。 むしろ、いらない嘘をついて唯の機嫌を損ねてしまったことのほうが、~ よっぽど重大なことなのではないか? ~ 客観的に見れば、ゆたかと顔を合わせるのが気まずいからと~ こんなことを考え出しているのは明白なのだが、本人にそんなつもりはなく。 二年教室の廊下に差し掛かったあたりで、うん、やっぱり唯ちゃんを追い掛けて、~ などと全力で後ろ向きなことを考えていた英美は、 「――あ、」 「……っ」 教室から出てきた三好ゆたかとバッタリ顔を合わせて、硬直した。 驚いたのは相手も同じようだったが、ゆたかの行動は早かった。~ 即座に英美に背を向けて、すたすたと早足で歩き去る。 「ちょっ……ゆたか!」 英美も慌ててその背中を追う。~ 直前まで自分が考えていたことはさっぱり忘れた。 「ね、ちょっと待ってよ」 声を掛けても、ゆたかは立ち止まらない。~ 不機嫌そうな顔で黙ったまま、英美のほうを向こうともしない。 「なんで怒ってるのかわかんな――……くはないです、はい、あの」 冷たい目で睨まれて、英美がへどもどし始める。~ その姿を横目で見ながら、ゆたかの口から小さな呟きが漏れる。 「……腕組んでたくせに」 「え、なに?」 「なんでもないです」 聞こえないような小さな声で呟いたので、聞き取れなくて正解なのだが、~ 半端に聞かれるとそれはそれで頭にくる。 英美を引き離そうと、ゆたかは階段を急ぎ足で駆け下りていく。~ 一段飛ばしでそれを追いながら声を掛けるが、英美への返事はない。 ~ そして一階、一・二年の下駄箱に辿り着いた。 三年の昇降口は北校舎にあるため、英美は一緒に外に出ることはできない。~ 英美が付いてこれるのはここまでだった。 上履きを仕舞い、ローファーを履くゆたかに、~ 英美は今までで一番真剣に、優しく声を掛けた。 「ね、今日は一緒に帰ろう?」 「…………」 ゆたかは、もうそろそろ英美のことを許してやる気でいた。 ただ少しだけ、すれ違いが多かっただけで、~ 先ほど英美が考えていた通り、元々ゆたかが怒るようなこともなかったのだから。 ~ だが。 「いつも通り、今日も唯さんとでも帰ればいいじゃないですか」 ゆたかの口から出てきたのは、そんな冷たい言葉だった。 『今日は』一緒に帰ろうだなんて、そんな細かくてどうでもいいことに、~ ゆたかの心はささくれ立ってしまっていた。 ~ ~ 「…………はぁ……」 背を向けたままのゆたかに、英美は低くため息をついた。 なんにせよ、靴を履き替えなければいけない。~ 自分の下駄箱に向かおうと、英美は踵を返して歩き出し、 ~ 「……ん?」 袖を引っ張られて、立ち止まった。 「は、いえ、これはなんでも、」 振り向くと、ゆたかはつまんでいた英美の制服の袖を慌てて離して、 「ゆたかーっ!」 「おぶっ」 英美に抱きつかれて、ゆたかの口から変な声が漏れた。 「ごめんね、ホントごめんね!」 「離してください、いや、校内ですから、はな、離してっ」 そのあと英美は、公園でアイスを奢らされた。 ~ ~ ~ ~ **厳しいけど優しそうな先輩 「……まーす」 失礼します、と言ったつもりが、~ 戸部唯の口からまともな声として出てきたのは、語尾のほんの少しだけだった。 それでもドアの開閉する音は職員室には大きく響き、教師たちの何人かの目がドア付近を映す。~ 出入り口付近に立っていた上級生らしき生徒も、眼鏡を掛けた顔を唯のほうへ向けた。 「(ううー……)」 自分に向けられた視線から逃げるよう、露骨に顔を逸らしつつ、~ 唯は少し怯みながらも、自分の役目を果たすために職員室内を見回した。 用事があるとかで、チャイムが鳴るなり教室を飛び出していった古典の教師に、~ 先ほど行った小テストをその教師の机の上に置いておくよう、言い付けられていたのだった。 ~ 唯は出入り口から少しだけ歩いて道の端に寄り、目的の教師の机を探す。 が、見付からない。それもそうだ。~ 唯は、その教師の机がどこだったかなんて話を聞いてくるのを、すっかり忘れていたのだ。 ~ 分からなかったら誰かに聞くしかない。~ 話し掛けやすい優しそうな先生はいないものかと、唯は視線を巡らせて、 「どうも」 「へぇっ!?」 すぐ横から声を掛けられて、思わず素っ頓狂な声をあげた。 先ほどから唯のことを見ていた、眼鏡を掛けた少女が、~ いつの間にか唯のすぐ傍まで近寄ってきていた。 「……すいません、驚かせるつもりはなかったんですが」 「いえっ、いえあの、だいじょぶです、けど、その」 わたわたと両手を振りながら、唯は初めてその人のことを真正面から視界に収めた。 ~ まず、しっかりしてそうな人だ、と唯は思った。~ 背筋をピンと伸ばし、唯に正対するその立ち姿からして、だらしない印象がない。 全身に学校指定の服を着用し、楕円形の眼鏡に、肩に掛からないくらいのボブカット。~ 唯に向けられた視線は少しきついが、目元が幼いためか、それほど冷たい印象はない。 何より印象的なのは、そのヘアスタイルだ。~ 右側の前髪だけを長く伸ばしてあり、顔の右側を半ば覆い隠すようになっていた。 「入室・退室の挨拶は大きな声で」 「あ、」 怒るよりは窘めるといったニュアンスの声だった。 それはドアの窓ガラス部分にある張り紙に書いてある文字と、一字一句まで同じだった。 自分が悪いと分かっているだけに、唯はその視線に耐え切れず、顔を俯かせた。 「あっ、あの、すいません、でした」 「……いえ、入学したばかりでしたし、緊張もするでしょう。次から気を付けて下さいね」 唯を許すように、やはり上級生らしいその人はふ、と微笑んだ。 「あれ、わたし一年だって言いましたっけ?」 「聞いていません。単純に、在学生であれば顔を覚えているだけのことです。と言うか、」 何か言いかけて、眼鏡の少女は口をつぐんだ。 「……?」 「それより、ここに来た用事を済ませてはどうですか?」 さりげなく話を逸らす。 『その身長とその顔で二年三年のわけがないじゃないですか』~ という言葉を飲み込んでいたことは、当の本人にしか分からないことだった。 「あ、はい、そうでした。あの、これ、古文の先生に持ってきたんですけど、」 やはり上級生らしいその少女は、唯の様子を見てすぐに事情を把握した。~ 数秒ほど考え込む素振りをしてから、唯の視線を誘導するように顔を動かす。 「一年の古文担当……その角の机ですね。厚い辞書がいくつか平積みになっている」 「あ、ありがとうございます」 「いえ。それでは失礼します」 そのまま立ち去ろうとする少女の背中に、慌てて唯が声を掛けた。 「あっ、あの」 「はい?」 「お名前を教えてもらってもいいですか?」 「……二-Aの三好です」 「みよし先輩、ですか。わたし戸部唯って言います。よろしくお願いしますっ」 両手を前に置いて、唯は大仰に礼をした。~ 頭を三十度は下げた大振りの挨拶だ。 首だけ振り返っていた三好も体ごと向き直り、小さく頭を下げる。 「はい、こちらこそ宜しくお願いします。それでは、また」 失礼しました、と職員室を出て行く三好の姿を見送ってから、唯はプリントの束を机の上に置いた。 ~ ~ ~ ~ **遥×唯のアレから 戸部唯が目を覚ましたときには、既に車内には誰もいなかった。 ~ 彼女が慌ててバスから降りてみると、そこは広々とした駐車場だった。 平日だけあってか、自家用車の数はとても少ない。~ 自分たち学園の生徒が乗ってきた大型バスが何台かあるだけで、閑散としている。 唯は首を巡らせて同級生の姿を探してみたが、~ ちらほらと年配の観光客がいるだけで、学園の制服はひとつも見当たらない。 しまった、困った、と頭を悩ませていると、すぐ後ろから声がした。 「あれ、あんた、長町学園の生徒さん? まだ残ってたのかい」 唯たちが乗っていたバスの運転手は、親切に生徒たちが向かった場所を教えてくれた。 ~ ~ 一番城は、長町駅から西に行ったところにある大きな城だ。 いつの時代にどんな歴史を積んできたかはさて置き、~ 城の本丸は博物館として当時の資料を展示公開していて、~ 周囲に広がる城下公園は市民の憩いの場としての人気も高い。 ~ 長町学園の一年生徒たちは今日、この一番城へと社会科見学に来ていた。 朝早くに学園に集合し、一時間ほどバスに揺られて到着したのがつい三十分ほど前。~ ふとバスの中で目が覚めて、自分一人だけが置いていかれてしまったことに気付いたのが五分前のことだ。 誰か起こしてくれてもいいじゃないか、と唯は思ったが、~ 入学して一ヶ月も経っていないことを考えると仕方のないことだし、~ そんなことより今は、早くクラスメイトたちと合流することのほうが重要だった。 財布も携帯電話もパンフレットも車内に置き去りのまま、唯は城へと走った。 ~ ~ 駐車場を抜けてしばらく歩くと、城の敷地内に入る。 常緑樹の合間を縫うように通る小道を抜け、~ 受付にもなっている外壁の門をくぐれば、すぐに開けた場所に出られた。 城下公園だ。 ~ 何を置いても、この時期まず目に付くのは桜の木だろう。~ 至るところに植えられた桜の木々は、この城下公園の最大の見所とされている。 散りつつある桜たちの周囲には、美観のためか局地的に天然芝が敷き詰められていて、~ そのさらに外側に、腰を掛けて飲み食いをするためのベンチやテーブルなどが点在していた。 ~ 城下公園の全体で見れば敷地の半分以上は砂利道で、その中を石畳の道がずうっと先まで走っている。~ 三割ほどが芝生と桜の木々で占められ、残りが土産物屋などの建物、といった割合だ。 城が建造された当初からそういう意図があったため、~ 食堂や売店などの建物はできるだけ背を低く設計され、全体を通して見晴らしの良さを確保している。 「あっ」 唯は、小さく声をあげた。 公園内に入ってすぐ、遠くに見える土産物屋と思しき大きな建物の付近に、~ 長町学園の生徒たちの姿を確認することができた。 ~ 桜並木の中、石畳の道を走る。 しばらく走ると、向こうもこちらに気付いたのか、何人かの生徒が唯のほうを見ていた。~ 手を振るのももどかしく、唯は息を弾ませ、クラスメイトたちの元へ向かう。 近寄るにつれ、安堵が心を埋めていくのが分かる。 ようやく追いついた。よかった。~ とりあえず先生に謝って、隣の席の近江さんのとこに入って、それからそれから――~ 「……あれ?」 さらに近寄り、もうあと数十歩で彼女たちの輪の中に入れる、というタイミングで、~ ようやく、唯はおかしなことに気が付いた。 知った顔がない。ひとつもない。~ まだ名前を覚え切れていない子は何人もいるけど、この距離で知り合いを見つけられないのはおかしい。 ~ 速度を緩め、ほとんど歩く速度になり、一人の生徒が唯の元へ走り寄ってきたとき、~ その違和感はカタチを成して唯の目の前に立ちはだかった。 「やーーー、唯ちゃん! こんなとこでなにしてるの? Cクラスも近くに来てるのかな?」 中条遥。~ 一-Aに在籍している、唯の友達だった。 ~ ~ 事態を正しく把握した唯は、Aクラスの担任に見付からないよう、土産屋の裏手まで遥を連れ込んだ。 「その、クラスのみんなに置いてかれちゃって……」 バスで三〇分ほど寝てました、とは言いづらく、唯は端的にそれだけを語った。~ それがどんな結果を引き起こすのかも知らずに。 「そっかー。それじゃ早く戻らないとダメだね。もうすぐお昼だし」 遥はうん、とひとつ頷いて、唯の手を取った。 「へっ?」 「わたしも行くから、早くCクラスに戻ろう!」 文字通り、唯は引っ張られるように走り出した。 土産物屋の脇を抜け、すったかたーと駆けて行く二人。~ 幸い教師には見付からなかったらしく、誰の声も掛からぬまま、土産物屋を遠く後ろに離していく。 生徒の幾人かはその背中を目撃してはいたが、トイレか何かの可能性もあるし、~ でなくとも教師に報告するような野暮をするような者は(不幸なことに)いなかった。 「あっ、あのねっ」 「ねえ唯ちゃん、あっちのほうってもう行った?」 唯の声を遮るように、遥の声が掛けられる。~ 指された指の方向を見て、唯は律儀にこう答えた。 「う、ううん、橋は渡ってない、けど」 「よし、じゃああっちかも!」 駆ける遥と、追いすがる唯。~ 二人の進む方向は、Cクラスのいる『歴史体験館』から見ると、まさに正反対なのであった。 ~ ~ 「ねえ、伊下さん」 「ん?」 ちょいちょい、と服を引っ張られ、夏希は土産の物色を止め、振り返った。 そこに立っていたのは、背の低い、眼鏡を掛けた少女だった。~ 夏希とは、図書室で何度か顔を合わせたことがある程度の仲だ。 「あのね、さっき遥ちゃんが、他のクラスの子と一緒に抜け出したみたいなんだけど、」 「はあっ!?」 いっそ怒気を孕んだ夏希の反応に、クラスメイトの少女がびくっと震えた。 「ひぇっ」 「……あー、ごめ、あたしはそれ分かんないわ。にしても、何してんだかねーあいつは」 手にしていた、若干いやらし系のマスコットキャラのストラップを放り投げ、~ 夏希は不機嫌そうにがりがりと頭を掻いた。 「お手洗いとかじゃないみたいだったから、気になって。わかんないならいいの、こっちこそごめんね」 背を向けようとするその子に、ふと思い立って夏希は問い掛けた。 「ちょい待ち。一緒にいた子って誰だかわかる?」 「たぶん、Cクラスの戸部唯ちゃんだと思う。背が低くて、可愛い子」 「そっか。どもね」 がんばってね、と言い残して、その少女は去っていった。~ その言葉に頭を傾げながら、夏希はまず携帯電話を取り出した。 通話履歴の一番上の『ハル』と書かれた番号に繋ぎながら、土産物屋の外に出て行く。 「…………」 何度コール音が鳴っても、出る気配も、切れる気配もない。~ いつも通りリュックに入れっぱなしで気付かないんだろう、と結論付け、とりあえず電話を仕舞う。 ~ その時、近くに立っていたクラスメイトの話し声が聞こえてきた。 ~ 「ねえ、Cクラスからいなくなっちゃった人がいるんだって」 「え、本当? なんだろ、どこ行ったんだろ」 「いなくなったのって唯ちゃんなんだって! ね、私思うんだけど、これって誘拐じゃない!?」 「でもでも、バスから降りた時からもう目撃証言がないんだって。なんかおかしいよ」 ~ ああ、そういうことか、と一人頷いて、夏希はもう一度、遥に電話を掛けてみることにした。 「…………」 何度か続くコール音を聞きながら、何の気なしに首を巡らせる。 すると、夏希からは遥か遠く、大きな水堀の向こう側を、~ うちの学園の制服が二つ駆けていくのが目に映った。 その二つの人影は、いかにも行き当たりばったりな感じで角を曲がり、すぐに見えなくなった。 ~ あっちの方向には何があったかと、~ 入場時に貰えるパンフレットをポケットから取り出して、夏希は顔をしかめた。 パンフレットは二つあった。~ 前にトイレに行ったときに、遥のぶんも夏希が預かっていたのだった。 「……なんか、やな予感がする」 遥へのコール音は、いつまで経っても鳴りっぱなしだった。 ~ ~ ~ ~
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くろねこけーき【登録タグ レア度ノーマル レシピ 不破評価2 五十音く 伊達評価3 作られる個数5 必要体力29 最大レベル☆5 洋食 神崎評価4 辻評価3 追加日20131024 霧島評価3 音羽評価4】 カテゴリ 洋食 習得条件 期間限定クエスト"ハロウィン★ナイトパーティ(ドキドキセット)" クリア(ビーフカレー 90個・ケーキマフィン 90個・チーズケーキ(カット) 90個作る) 最大レベル ☆5 必要体力 29 作られる個数 5 レア度 ノーマル レシピ追加日 2013/10/24 習得方法 期間限定クエスト"ハロウィン★ナイトパーティ(ドキドキセット)" クリア・レシピ獲得 → くろねこケーキ 習得(※2013/10/24 10 00~11/1 14 00まで) 料理レベル別 獲得リッチ・イベント 料理レベル 獲得リッチ グルメ値 習得レシピ 発生クエスト 達成クエスト 獲得アイテム ☆0 85 78 - 【悪魔】ハロウィンメニューを作ろう(1/3)期間限定10/25~11/1 14 00 - - ☆1 94 86 - - - - ☆2 102 90 - チャレンジクエスト【悪魔】ハロウィンメニューを作ろう(2/3)期間限定10/27~11/1 14 00 【悪魔】ハロウィンメニューを作ろう(1/3) - ☆3 111 94 - - - - ☆4 119 98 - - - - ☆5 128 102 - - - - キャラ別 花・渦の数 花は正の数、渦は負の数にしてください。 背景色はコメントの文字の色です。(花・渦の区別ではありません。) 料理レベル 霧島 音羽 辻 伊達 不破 神崎 ☆0 1 2 1 1 -1 2 ☆1 ☆2 ☆3 ☆4 ☆5 1 ▲▲ページ top
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