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代表ゆっくり(前) 帰ってくると、今にゆっくりの一家がいた。 思わず「あっ」と声を出してしまい、奴らはそれに気付いた。 「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ゆっくりしていってね!!」 「おなかがすいたよ!!まりさたちにおかしをもってきてね!!」 「おにいさんはゆっくちできりゅひと?ゆっくちちていってね!!」 「ゆっくりできないひとはでていってね!!」 ゆっくりどもは一斉に俺に向き直ると、口々に好き放題抜かした。 大きめのまりさ種が一匹、これは母親らしいがまだ若そうだ。 更に子供らしいのがれいむ二匹、まりさ三匹の五匹。子供たちの中には赤ちゃんサイズのものも混じっている。 どこから入ってきたのかと思って見回すと、窓が開いていた。暑さから窓を開けて過ごしていたので、出る時閉め忘れたようだ。 台所に備蓄してあった食糧は食い荒らされ、大事に飾っていた花瓶は割られて中の花も食べられている。 押入れのふすまも体当たりで破られていた。あ、押入れの中にもう一匹子れいむ発見。ハマって出られなくなっていたんだな。 「ゆ!くらくてこわかったよ!れいむをこんなこわいめにあわせるおにいさんとはゆっくりできないよ!!はやくあやまってね!!」 とか、頬を膨らましながらありえないことをのたまっている。 以前ゆっくり虐待仲間である友人に聞いたのだが、 奴らの“自分の家宣言”は、そこが自分の家だと完璧に思い込んでいるわけでは必ずしもなく、 ゆっくりによっては頭のどこかで「本当はニンゲンのおうちである」と認識しているらしい。 その論拠には、自宅で“自分の家宣言”をしたゆっくりに「ここは誰の家?」と暴行を加えつつ詰問したところ、 「お゛にぃざんのお゛うちでずぅぅぅぅ」と答えた、ということだ。そのあと死んだってさ。 この子れいむは勝手に侵入した人家で勝手に怖い目に陥っておきながら、 それを自分のせいとは決して考えず、「この家が自分を怖い目に遭わせた」というあらぬ方向に考えを曲げ、 あろうことか、この家に現れた本来の持ち主だと思われる俺に責任転嫁してきたのだ。 よって先ほどの友人の論は、少なくともこのれいむ相手に限っては立証されたことになるだろう。殺したい。 しかし、そんなムカつきエピソードはとりあえずどうでもいい。 俺は無断で家に入ってきたゆっくりは全て苦しめながら殺す信条だ。 結果としてこいつらに待っているのは拷問死、それはどう足掻いても変わらない決定事項。 部屋を荒らしたり俺をイラつかせるのは、死際のささやかな抵抗として見守ってあげようじゃないか。 その点、この子れいむは良い線いってると思うよ。苦しむ時間が若干延びたかも知れないけど。 「一応言っておくけど、ここは俺の家であってお前らの家ではないよ!」 「ゆ?おにいさんなにいってるの?ここはまりさたちがさきにみつけたんだよ!!」 「まりさたちのいってることわからないの?ばかなの?」 「ゆっくりできないおじさんはゆっくりしね!」 別に言っても無駄なのは解ってたからどうとも思わない。むしろ素直に聞かれたら俺がびっくりして死ぬ。 とはいえこれで遠慮は要らなくなったので、とりあえず親まりさを蹴り飛ばして俺強いアピールしておく。 強めに蹴ったので、壁に顔面から叩きつけられた親まりさから多量の餡子が飛び散る。染みになっちゃうな。 子ゆっくり達は「ゆ゛ゆ゛っ!?」とか喚いて非難の限りを俺に浴びせてきたが、 親をぶっ飛ばしたことで人間の強さは印象付けられたらしく、同じ目に遭いたいかと問いかけると静かになった。 次に俺は、家に侵入してきた悪いゆっくりは全員殺すこと、子供達をどう潰していくかを宣言しておいた。 死刑宣告にも似た俺の言葉に、静かにしていた子ゆっくり達は泣き出してしまう。 何も知らせないまま虐待した方が新鮮なリアクションが得られるのでは?というご意見もあるだろうが、 俺は泣かせられる時は泣かせておく主義なのだ。それにどうせこんなの、ちょっとしたことでコロッと忘れるし。 閉ざされた居間の中を逃げ惑い始めた子ゆっくりたち。それをゆっくり追い回していると、 今まで俺が経験したこともなく、また思ってもみなかったことが起こった。 怪我をして顔面餡子まみれになった親まりさが俺のところまで這って来てこんなことを言ったのだ。 「ごべんばざい。ごごはおにいざんのおうぢでず。ばりざがみんなをざぞいまじだ。 だがらごろずならばりざだけにじでね。あがちゃんだぢはだずげてね」 おいおい、ピンチとなれば家族をも売ると悪名高いまりさが何を言い出してるんだ? 頭でも打ったのか? 打ったか。 「お前が家族を代表して罰を受けるってことか?」 「ぞうだよ。ばりざがだいひょうだよ」 「何でそんなこと考えた? 家族を売っても助かろうとするお前らまりさが……」 「がぞぐをうっだりじないよ。おにいざんはづよいよ。ざがらっでもむだだよ」 子ゆっくりをビビらせるためにやった俺TUEEアピールが、思わぬ効果を発揮したようだ。 このまりさは強いものに大人しく従うタイプのようだ。森の生活でも辛酸を舐めさせられてきたんだろう。 俺の怒りを鎮めるのが不可能だと悟るや、せめてその怒りを自分だけで全て引き受けようと思ったらしい。 うーむ、餡子頭の饅頭でも母親ということだろうか。惜しむらくは、家に入る前に人間の強さに気付けよ。 しかしその条件を飲むとなると、俺のどんな拷問や虐待もこいつらの美しい親子愛を演出するだけだ。 そんなのは気に食わないし絶対にごめんだ。とはいえ、虐待時のコミュニケーションを重視する俺としては、 まりさからの珍しい提案を全くの無碍にするのも惜しい。どうしたものか…… 「うーん……そうだな、気に入ったぞ! まりさ種にしては珍しい心掛けだ。殺すのは無しにしてあげよう」 「ゆゆっ!?」 「ただし、別のおしおきはするぞ。悪いことしたって解ってるなら、しょうがないって解るよね?」 「ゆ゛っ・・・わがっだよ。でもあがぢゃんだちはたずげでね」 「解ってるよ、お前が家族の代表だからな。お前こそ、その言葉忘れるなよ」 「ゆっ!?れいむたちころされなくてすむの?」 「おかあさんがおにいさんにゆるしてもらったんだよ!!」 「おがあざああぁぁぁぁん!!だずげでぐれでありがどおおぉぉぉぉ!!」 話を聞いていたらしい子ゆっくりたちもいつの間にか集まってきて、歓喜の涙を流している。 これでじぶんたちはたすかるんだ。忘れていた生の喜びを噛み締めている。 こいつらの餡子頭では、どうせまたすぐ忘れるだろうけどね。 でも一つ忘れちゃいけないのは、俺は家に入ってきたゆっくりはみんな殺す信条ってことだ。 たださっきのまりさの勇姿を見て、ちょっと別のことを思いついただけさ。 ーーー 俺は別室に行き、透明な仕切り板を使って、部屋を真ん中から二つに分けた。 一方にはゆっくり飼育道具が一揃い。すべり台やブランコなど、ゆっくり用の大きな玩具もある。 もう一方には今は何も置いておらず、仕切り板は人間にはまたげるがゆっくりに飛び越えるのは不可能な高さだ。 俺は手早く準備を済ませると、居間にいるゆっくり一家のところに戻る。 奴らは傷の癒えてきた親まりさを中心に、早くもゆっくりし始めていた。 手を叩いて注目を集めると、全員に聞こえるように話し出す。 「みんな聞いてね! お母さんまりさの立派で優しい姿に胸打たれた俺は、みんなを叩き潰すのをやめることにしました」 「ゆ!さすがおかあさんだね!!」 「おにいさんもこんなすてきなゆっくりにであえてよかったね!!かんしゃしてね!!」 「はいはい。でも悪いことをしたみんなにはお仕置きが必要だよね!」 「ゆ・・・おしおきいらないよ!れいむたちわるいことしてないよ!!」 「まりさはまりさたちのおうちでゆっくりしてただけだよ!!」 「ド饅頭は黙ってね! それでどんなお仕置きにしようかなって考えたんだけど、恐ろしいお仕置きを思いついちゃったんだ」 「ゆ゛ゆ゛!?もういやだよぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」 「おしおきだめぇぇぇえぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないのぉぉぉぉおぉぉ!!」 「まりざもうおうぢがえるぅぅぅぅぅ!!」 「ここがおうちじゃなかったのかよ。まあいいや、とにかく新しく考えたお仕置きを改めて発表します! それは……『ゆっくりさせること』!」 「「「ゆ?」」」 さっきから鬱陶しく表情を二転三転させていた子ゆっくりたちは、俺の言葉に戸惑い、一瞬固まった。 ゆっくりすることが至上の目的であるゆっくりに対し、ゆっくりさせることがお仕置きだとは。確かに意味不明だろう。 「みんな全然大したことないって思ってるだろ? でもそんなことないよ。これは恐ろしいことなんだ。 怖い人間のところで悪さをして、せっかく生き延びて反省する機会を与えられたのに、 君たちはその機会すら生かせず、逆にゆっくりさせられてしまうんだ。 そうするとまた調子に乗って人間のところで悪さをして、今度は殺されちゃうかもしれないよね! ある意味ただ殺すよりも恐ろしい、残酷な制裁行為だね!」 「ゆゆ!ここでずっとゆっくりするからだいじょうぶだよ!!」 「おにいさん、れいむたちをゆっくりさせてね!!おかしいっぱいちょうだいね!!」 「おにいさんもまりさたちのおうちでゆっくりしていっていいよ!!」 「ゆっくちちていってね!」 「ゆっくり~!!」 俺のありがたいお言葉には耳も貸さず、ゆっくりどもはニコニコしながら嬉しそうに跳ねている。 こいつらの脳内ではもう思い思いのゆっくりライフが始まっているらしい。 親まりさは俺の言っていることの意義を一応理解したらしかったが、自分もゆっくりしたいという誘惑には勝てないらしく、 子ゆっくり達と一緒にニコニコして喜んでいる。まったく。まあこんなのは詭弁だから良いんだけどね。 大体「ゆっくり」って何なんだよ、抽象的過ぎるんだよ糞が。それで何か意図が通じるとでも思ってるのかね? そんな良く解らないものを人様に強いるゆっくりどもには、一度同じ苦痛を味わってもらいたい。 「じゃあみんな、お仕置き部屋に移動しようね。覚悟しててね」 俺はゆっくりたちを全員抱きかかえ、先ほど板で仕切った別室へと移動を開始した。 「わーい!おそらをとんでるみたい!!」 「ゆゆ!たのしそうなものがいっぱいみえるよ!!」 「とってもゆっくりできそうだね!れいむきにいったよ!」 「はやくゆっくちちたいよ~~!!」 「おにいさん!はやくあのおもちゃのあるところにおろしてね!まりさのゆっくりスポットにするよ!!」 覚悟しろとやや凄んで言ったにも関わらず、ゆっくり達は能天気なものだった。 部屋に置いてあるおもちゃなどを見て、期待に目を輝かせている。 親まりさもそんな子供達を見て満足そうに微笑んでいた。苦痛に歪ませてやりたかったが、今は我慢した。 さて、子ゆっくりたちを床に降ろしてやる。ゆっくりを抱きかかえたまま身体を低くかがめると、 子供達はゆっくり~!とか奇声を発しながら各々畳の床へとべちょべちょ着地していく。 親まりさも子供達と一緒に飛び出そうとしたが、そこをぐっと押さえつける。「ゆ?」とか言いながら こっちを見上げて来る親まりさだが、俺は視線に構わず、親まりさだけ仕切りのもう一方側へと降ろした。 「おにいさんありがとう!!れいむたちのためにおもちゃをよういしてくれたんだね!!」 「いっぱいゆっくりしてあげるからほめてね!!」 「ゆゆゆ~♪」 すべり台やブランコ、シーソーにアスレチック、ゆっくり用柔らかクッション、涼しげな水場などなど。 さしずめゆっくり用遊園地とでも形容すべきパラダイスに、我先にと飛び込んだのは、好奇心旺盛な赤ちゃんれいむであった。 しかしその楽園への跳躍の途中で、赤れいむは無様に「ぶべっ!」と叫んで床に落ちてしまう。 夢中だった赤れいむはその存在に気付かなかったが、透明な仕切り板にぶつかったのだ。 「ゆゆ?かべがあってとおれないよ!!」 「おにいさん!これじゃれいむたちゆっくりあそべないよ!!」 「はやくかべをどかすか、まりさたちをむこうにはこんでね!!」 「これじゃゆっくちできにゃい~~!!」 ぷくーっと膨らんで怒ってみせる子ゆっくり、泣き出してしまう赤れいむ。 しかし俺はにっこりと優しく微笑んで返す。 「大丈夫だよ、安心してね!」 「あんしんできないよ!ゆっくりはやくしてね!!」 「まあまあ。実は君たちには、お仕置きしなくても良いことになってるんだ」 「ゆ?なにいってるのかわからないよ!ゆっくりせつめいしてね!」 「さっき聞いてた子もいるだろ? 君たちのお母さんが、『まりさがだいひょうになるからこどもたちをたすけてね』って言ったんだ」 「ゆゆ!まりさたちのおかあさんはりっぱだよ!!」 「りっぱなこどものれいむたちもはやくゆっくりさせてね!!」 「だからぁ、君たちはそんなことしなくていいんだって」 「ゆ?」 「君たちのお母さんが代表になって、君たちの分まで『ゆっくり』してくるからね!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!?」 驚愕の表情を隠せない子ゆっくりたち。やがて一匹の子れいむが発見してしまう。 透明な板の仕切りの向こうに一匹だけたたずむ、親まりさの姿を。 「ゆゆゆ!?なんでおかあさんだけそっちにいるの!?」 「ずるいよぉぉぉおぉぉぉ!!れいむだぢもゆっぐりそっぢにづれでってねぇぇぇぇ!!」 「はやくこのかべをゆっくりなんとかしてね!!」 親まりさはおろおろと戸惑った様子で、子供達の方を見ている。 「おにいさん!これはどういうこと!?こどもたちもこっちにつれてきてあげてね!!」 「おいおい、そりゃ無いだろ。お前さっき自分で言ったこと忘れたの? 代表じゃなかったの?」 親まりさの苦情に、俺は親まりさにだけ聞こえるような小声で応えた。 「ゆ゛っ・・・でもこどもたちがゆっくりできないとかわいそうだよね!!ゆっくりはやくしてね!!」 「あのね、さっきの俺の話理解したよね? ここで『ゆっくり』しちゃうのは、子供達のためにならないんだよ。 正しい躾を受けられない子供ほど不幸なものは無いって、お前も親だったら解るよな?」 「ゆぅ~・・・?」 「だからお前が子供達の分まで『ゆっくり』するのは、立派な親の勤め! あいつらを助けることに繋がるんだよ。 むしろこんなところで『ゆっくり』させることは、お前らにとって大きな苦しみになるんだ! ゆっくり理解したか? お前は子供達のために、良いことをしているんだよ!」 「ゆゆっ?まりさ、ゆっくりしたほうがいいの?」 『子供達のため』『良いことをしてる』というフレーズに心が揺れたらしい。 そもそも『ゆっくりさせる刑』なんて意味不明なことを言い出した俺のマッチポンプなんだが、そんな難しい事は餡子には解らない。 ここまで来れば、思いついた通りの展開に持ち込むまでもう一押しだ。 「そうだよ! その板越しにお前らを分けたのは、見せしめのためなんだ。 恐ろしい『ゆっくり刑』を受ける母親を、子供達に見せて反省させるためのね」 『ゆっくりすると反省できず、結果的に恐ろしい』という論理から、 『ゆっくりすること自体が子供にとって恐ろしい』にすり替える。 冷静に考えればおかしな話だが、俺の畳み掛けに親まりさの餡子脳では対応できない。 「ゆ~・・・じゃあまりさ、みんなのためにしょうがなくゆっくりするよ!」 「偉いぞ! お前はまさしく親の鑑、子供達の誇りだな。だからちゃんと、家族の代表として宣言してやれ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 そして親まりさは、仕切り板の向こうでゆーゆーぴーぴー喚く子ゆっくりどもに笑顔で向き直った。 「おーい、お前らの偉大なお母さんから発表があるぞ!」 「みんな!!おかあさんがみんなのぶんまでちゃんとゆっくりしていくからね!! しんぱいしないでね!!ゆっくりしないでね!!」 「「「「ゆ゛ゆ゛!?な゛んでなのぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」」」」 親まりさに裏切られ、自分達のゆっくりプレイスを独り占めされたと思った子ゆっくり達は、一斉に悲鳴を上げた。 うーん、親の心子知らずとはこのことか。 「おにいさんありがとう!!まりさ、あのこたちをくるしめるところだったよ!!」 「うんうん、お前も親として一皮剥けたな」 こいつはこいつで、俺の暗示にかかりまくってるしな。お礼まで言ってるよ。 ゆっくりがゆっくり出来ないことのどの辺が良いことなんだろうね。人間の子供の躾じゃないんだから。 親まりさだって、『自分がゆっくりするのが子供達のため』なんて本気で思ってるかどうか怪しいもんだ。 俺のこねた屁理屈の尻馬に乗って、自分がゆっくりする大義名分を得ようとしているんじゃあないのか? 自分がゆっくりするためには、他の全てを正当化する。そういう奴らだから今ここにいるんだ。 まあ仮に反省したとしても、全くもって無駄なことだけどね。それを生かす機会は永遠に来ないのだから。 こうして嘘と欺瞞で二重三重にコーティングされた、俺と親まりさによる躾が始まった。 子ゆっくりどもは真摯に反省する必要もなければ、欺瞞を暴き立てる必要もない。 ただ突きつけられた理不尽な現実に、ゆっくり出来ずに泣いててくれればいいのさ。 ーーー さて、それからゆっくりタイムが始まった。 まずは「おなかがすいたよ!!ゆっくりごはんもってきてね!!」と言う親まりさの要望に応え、 とりあえず棚にしまっておいたお菓子を出してやる。つーか、よくもいきなりここまで図々しくなれるもんだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」と癇に障る声を出しながら美味そうに食っている。 それを透明な板の向こうでうらやましそうに眺める子ゆっくりたち。 「おにーさん、れいむたちにもおかしちょうだいね!!」 「ゆゆ!おかーさんばっかりずるいよ!!」 「そう言うなよ。お母さんはお前らの為を思ってゆっくりしてるんだぞ。 良いお母さんだな! お前らはそんなお母さんの思いに応えないとね!」 「そんなことよりゆっくりおかしだしてね!!おもちゃももってきてね!!」 「こんなんじゃゆっくりできないよ!!」 こりゃ押し問答だな。しかし親に対して「そんなこと」は無いだろうに。 大体ゆっくり出来ないってどういう事だ? 針のむしろにいるわけじゃなし、畳の上で充分ゆっくりできるだろ。 極めて限られた条件下でしか『ゆっくり』とやらを出来ないこいつらを、果たしてゆっくりと呼んでいいものか。 「お前ら全然ゆっくり出来てないね! ちゃんとお母さんの想いを受け止めてるんだね。 お母さんがああしておしおきを受けている甲斐があるってもんだね」 「ゆゆ!?あれのどこがおしおきなの!!とってもゆっくりしてるよ!! あとまりさはゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!ゆっくりできるよ!!」 おや、それは問題だ。俺はそう言う子まりさの帽子を取り上げた。 「ゆ゛ゆ゛ー!!まりさのぼうしかえして!!それがないとゆっくりできないよ!!」 「それはそれは、良かった良かった。お母さん思いの良い子だよお前は」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!ゆっぐりじだいのぉぉぉぉ!!」 俺はしきりに『ゆっくりするのは悪いこと』であると強調していく。 しかし子ゆっくりたちにそんな論理を受け入れられるわけがない。親まりさに苦情を言う子ゆっくりも当然出てくる。 お菓子を食べ終えた親まりさは、すべり台を「ゆ~♪」と滑って子供のように遊んでいる。 子供の分もゆっくりするんだから当然か。 「おかーさん!なんでたすけてくれないでひとりでゆっくりしてるの!!」 「そこにあるおもちゃはまりさたちのだよ!!ひとりじめしないでね!!」 「しょんなおかあしゃんとはゆっくちできにゃいよ~~!!」 「それでいいんだよ!ここでおかあさんがだいひょうとしてゆっくりしてるからみんなはゆっくりしないですむんだよ!! そっちでおかあさんにかんしゃしててね!ゆっくりしないでね!!」 「な゛んでぞんなごどい゛うのお゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!?」 この親まりさの子供に対する態度には、虐待好きの俺も顔負けである。クレイジーだぜ…… つがいや家族の絆を引き裂いて遊ぶ為には、いかにゆっくりの思考を誘導するかが問題になるが、 ここまで俺に追従してくれるとは予想外だ。 一瞬立派かもしれないと思ったが、所詮まりさはまりさだったかな。 そんなことを考えながら、俺は親まりさの乗るブランコを後ろから押してやる。 徐々に振れ幅が大きくなり、勢いを増していくブランコ。前後に振れる度に「ゆっゆっ」と声を出して喜ぶまりさ。 ある高さに達した時、ついに親まりさはぽーんと空中に投げ出される。 「ゆ~ん♪ おそらをとんでるみたい!!」 その様を見つめる子ゆっくりたちの瞳は、親まりさが地面に激突し、怪我をすることへの期待に輝いていた。 一人でゆっくりした罰を受けろ、と。さっきは身を挺して自分達を助けた母親なのにだよ? ひどい話だね。 しかしそんな子供達の様子など視界にも入れず、親まりさはやわらかクッションの上にぽよんと落下し、 そのままクッションの上で気持ち良さそうに転げまわっている。 一人ゆっくりした罰を受けるどころか、ますますゆっくりしてしまっている親まりさ――― その圧倒的ゆっくりっぷりは、まるで運命が味方をしているようにも映っただろう。 あまりに理不尽な現実に、子ゆっくり達は何とも言えない絶妙な表情で固まっている。 「ゆ~!このクッションとってもきもちいいよ!すごくゆっくりできるよ!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!なんで!!な゛んでなのぉぉぉぉぉ!!!」 「何でって、あれは加工所でも売ってないような高級ゆっくりクッションだからね。 並のゆっくりじゃ一生触れないような代物だよ。そりゃあ気持ちいいだろうなあ」 「ぞんなごどぎいでないぃぃぃぃぃい゛ぃぃぃ!!」 「おがあざんばっがりずるいの゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!れいぶだちのゆっくりどらないでぇぇぇえぇぇぇ!!!」 「ここはあちこちゆっくりできるものだらけの、さいこうのゆっくりプレイスだよ!! みんなこっちにこれなくてよかったね!!そっちでゆっくりしないでみててね!!」 「「「おがあざんのばがぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「ゆゆ!みんなのためにやってることだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 ホーントにバカですねぇ。 子供に罵倒されたゆっくりが悲しむ様は何度か見てきたが、こいつはゆっくり出来る喜びの方が勝っているようだ。 子供達に見せ付けるように本能の赴くまま、色々なアイテムを使って存分にゆっくりしている。 思えば、ゆっくり特有の人を見下す態度、他が自分のために動くのが当然というような言動。 それも本能なのだとすれば、他者を見下して「よりゆっくりしている自分」を際立たせることにより、 更なるゆっくりを実現するための無意識の働きなのかもしれない、と俺は思った。 つまり「みんなのぶんまでゆっくりする」為には、そういった優越感も親まりさにとっては重要なのだ。 子供達のためという大義名分、最高のゆっくりプレイスという具体的動機。 ゆっくりするのに充分なお膳立てを得たまりさは、もはや全力でゆっくりすることに何の躊躇も無かった。 「ゆゆゆ!おにいさん、おなかがすいたよ!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ゆ!れいむもおなかすいたよ!!」 「ゆっくちごはんたべゆ~~!!」 「おっと、もうそんな時間か。用意するから待ってろよ」 ゆっくり達全員から催促され、俺は台所に向かう。 ちゃちゃっと晩飯を作り、俺と同じ献立をお盆に載せ、親まりさのところに持っていく。 そう豪華な食事ではないが、野生のゆっくりにとっては人間の食事というだけで至上のごちそうだろう。 よだれをだらだらと垂らした子ゆっくりどもが、飯を催促しながら足にぽんぽんぶつかって来るが無視。 結局、「ゆぅ~・・・」とか言って萎んでいきながら親まりさに食事を運ぶ俺を見送るしかない。 「ゆ!おそいよおにいさん!」 「悪い悪い、ゆっくりしてたもんでな。お前もゆっくりしてたろ?」 「ゆゆ!もちろんゆっくりしてたよ!!まりさはみんなのぶんもゆっくりするよ!!」 「よーし、そんなゆっくり出来るゆっくりまりさにご飯だぞー」 「ゆー!おいしそうなごはんがいっぱいあるよ!!」 「みんなの分もたくさん食べないとな?」 「ゆっ!そうだね、いただきます!はっふ、うっめ!めっちゃうんめ!すごくゆっくりできるごはんだよ!!」 俺達はしきりにゆっくりしていることを確かめ合っていた。 『ゆっくり』が何を指すのかは、未だに全然解らないが。 板の向こうまで美味しそうな匂いが流れていくので、子ゆっくり達は辛抱たまらないだろう。 脱水症状起こすんじゃないかってぐらいよだれを流しながら、爛々と輝く目で親まりさの食事を見つめる子ゆっくりたち。 「ゆゆ!れれれいむたちにもはやくごはんちょうだいね!!」 「ゆっくちはやくたべたいよ~!」 「おなかがへってしにそうだよ!しんだらゆっくりできないよ!!」 「ゆ゛!?まりざあぁぁぁぞんなこといっちゃだめぇぇぇえぇぇぇ!!」 「ゆ゛ゆ゛!!しんだらえいえんにゆっくりしちゃうよ!!!」 子まりさの『ゆっくりできない』発言に反応した子れいむが子まりさを咎める。自浄作用。 ゆっくり出来ないのは良いことだが、死なれてはつまらないので食事を与えるとする。 予め抜いてきた庭の雑草を子ゆっくりたちの前に放り捨てる。サービスで土は付いたままだ。 「ゆ゛ぅぅぅ!!なにごれぇぇぇえぇぇぇ!!」 「きたないよ!!こんなのごはんじゃないよ!!」 「お前らいつもこんなの食ってるだろう」 「お゛があざんだげずるいよ゛ぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!」 「こんなまずそうなくさたべられないよ!!おかあさんとおなじごはんをだしてね!!」 「これじゃゆっくちできないよ!!」 「へぇ~、ゆっくり出来ないのかい」 子れいむや子まりさ達はしまったという顔で、失言をした赤れいむを睨んでいる。 赤れいむは何が悪いのか解らず、目に涙を浮かべたまま姉ゆっくり達の視線に震えている。 「ゆ!いまのみんなにとってさいこうのごはんだね!!みんなはずっとそれをたべてね!!」 「「「ゆ゛ぎぃぃぃぃいい゛ぃぃぃぃぃぃ!!」」」 ごはんをべちゃべちゃ食い散らかしながら、親まりさは子供達に向かって笑顔で言い放つ。 子ゆっくり達は涙を流し、ぎりぎりと歯噛みしながら、 何匹かは失言の赤れいむを攻撃し、何匹かは仕切り板にべちゃべちゃ体当たりしている。 何か俺、親まりさと息が合って来た? 人生に二度とない、貴重な体験かもしれない。 しばらく見ていると、最初は文句を言っていた子ゆっくりどもも空腹には勝てないのか、 ごちそうの良い匂いの漂う中、ばらまかれた雑草をもそもそ食べ始めた。 うなぎを焼く匂いだけでご飯一杯いけた人もいたということだし、これはこれでオツなのかもしれないな。 だが「しあわせー♪」などと言い出すゆっくりは一匹もおらず、親まりさと対照的に重苦しい食卓となった。 もっとも、もしも雑草が美味しかったとしてもそれを口に出そうものなら、 俺に……いや、親まりさに咎められ、更に食事のグレードを下げられるだろう。 なぜなら親まりさのゆっくりは、みんなの分のゆっくり。 子供達がゆっくりしてしまっては、自分が存分にゆっくりできないのだ。それもこれも『子供達のため』。 このパラドックスに対してわずかな疑念が浮かんでも、ゆっくりしたいという本能的欲求に掻き消される。 クックック、この状況……いつまで続けようかな? よく考えてなかった。 しかしこの分では限界も近そうだ。ゆっくり見守っていくとするか。 やがてゆっくり達は食事を終え、就寝の時が近付いてきた。 あくびをした親まりさは、先ほどのクッションをベッド代わりにうとうととしていた。 と、そこに俺は小さなタオルケットをかけてやる。 「ゆ?おにいさん、これはなに?」 「掛け布団だよ。寝汗が冷えて風邪でもひいたらゆっくりできないだろ? よく汗を吸うし、風も通すから暑苦しくもならないぞ!」 「ゆ!とってもやわらかくてきもちいいよ!これならゆっくりねむれるよ・・・」 「それからこれもな」 ゆっくり用耳当てを親まりさに見せる。 「ゆ!こんどはなあに?」 「これをつけると静かになって、ぐっすり眠れるようになるよ。 風の音とか犬の鳴き声とかで起こされちゃったらゆっくり出来ないだろ? 朝になったら取ってやるよ。ほうら」 「ゆゆ!すっごくしずかになったよ!ありがとうおにいさん!!」 ゆっくりに耳なんてものがあるのか甚だ疑問だったが、効果は発揮されているようだ。 しかし今の俺って、まるでゆっくり愛でお兄さんだよな。正直気分悪いが、何事も経験だな。 それに後ろの方で苦しんでるゆっくり達もいるわけだし。 俺は親まりさにおやすみと声をかけて頭を撫でると、親まりさは小さく身体を震わせ、すぐに寝息を立て始めた。 親の過剰なゆっくりっぷりに、「ゆ゛!ゆっぐりねるなぁぁぁあぁぁぁ!!」「おがあざんはねむれずにくるしんでね!!」 などと呪詛の声を送っていた堪え性のない子ゆっくり達だったが、耳当てによって何も聞こえなくなったことを悟ると、 さんざん喚き倒して疲れたのか、みんなうとうとと夢の世界に入り始めた。 と、そこで俺が一喝。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」」」」」」 俺の挨拶に対し、本能的に子ゆっくり達がお決まりの返事をする。 こればっかりは逆らえないのでしょうがない。たとえゆっくりが何をしている時であっても。 「ゆ!おにいさんなにするの!!やめてね!!」 「まりさたちはつかれたからゆっくりねるんだよ!!」 「ねみゅれないよ~!!」 「え~? だからお母さんの眠った夜中ぐらい、君達にゆっくりしても良いよって言ってるんじゃないか。 ほら、ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛~~!!」」」」」」 ゆっくりって、本当にマヌケな生き物ですねえ。ちなみに親まりさは耳当てをしてるのでぐっすり夢の中だ。 その安眠を保障するためにも、子ゆっくり達をゆっくり眠らせるわけにはいきませんもんねー。 とはいえ、俺も人間なので一晩中ゆっくりに付き合って起きてるわけにはいかない。 そこでこいつの登場だ。河童謹製、蓄音機~。 これは音を記録し、再生できる機械だ。更に自動ループ機能もついている。作業用BGMとか流す時に使える。 まあ作業っつっても主に虐待なんスけどね。 で、今回はゆっくりが「ゆっくりしていってね!」と言った時の音声を記録したものを、一晩中ループさせ続ける。 声は数秒置きに流れる。眠りに落ちつつある子ゆっくりを確実に引きとめ、覚醒させるだろう。 ゆっくりに止められないように高い台に置いて、セット完了だ。 いきなり知らないゆっくりの声が流れ出し、子ゆっくりたちは戸惑いの表情を浮かべた。 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっ、ゆっくりしていってね!ゆぅ・・・」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛があ゛ぁぁぁぁ!!」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 よしよし、ちゃんと動作しているな。 ゆっくりは寝不足が原因で死ぬことはないと噂に聞いたので、実験してみる次第だ。 機械の作動を確認した俺は、「おやすみ~」と小さく声をかけ、部屋を出て自分の寝室に向かった。 寝る時は俺も耳栓をした。子ゆっくりの悲鳴が聞こえてきてうるさいのなんの。 明日に備えて、俺もゆっくり眠らないとね。 続き このSSに感想を付ける
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灰色に染まった壁と、鉄格子で区切られた窓。 冷たく、硬い地面。 無機質に区切られた小さな部屋で、1匹のゆっくり霊夢が途方に暮れていた。 「ゆっくりさせて!」 大きさはバスケットボールほどにもなる。 そして頭には、一本の茎が生えていた。 「あかちゃんもゆっくりできないよ!」 心配そうに見上げた茎には、9匹の赤ちゃんゆっくりが実っている。 れいむ種が5匹、まりさ種が4匹。 どれもプチトマトより一回り小さいが、あと数時間もすればぷっくりと実って生れ落ちるだろう。 「まりさ!どこにいるのぉお!?」 何も置かれていない、8畳ほどの部屋。 その部屋の中心でれいむは叫んだ。 茎に実った赤ちゃんに気をつけながら周囲を見渡すが、最愛のゆっくり魔理沙はどこにもいない。 「まりざあ・・・まりざぁ・・・」 赤ちゃんを身ごもっているゆっくりは、パートナーへの依存度が高い。 このれいむも例外でなく、姿の見えない伴侶を求めて身重の体を引きずり這いずり回っていた。 「まりさ・・・にんげんにいじわるされてるのかな・・・まりさ・・・あいたいよ・・・いっしょにゆっくりしたいよ・・・」 れいむはこの部屋に連れてこられた時のことを思い出していた。 それは昨日のこと。 れいむとまりさは森の入り口で日光浴をしていた。 春先とはいえ、まだ寒さの残る日が多い。 あたたかいお日様にあたって赤ちゃんにゆっくりしてほしい、まりさが提案したことだ。 最初、れいむは反対した。 自身の両親は日光浴の最中に人間に捕まったからだ。 それも、茎に命を宿しているときに。 人間達は両親に宿った、妹となるはずの赤ちゃんを皆殺しにした。 巣穴を襲撃され、茎を同じくした姉妹が次々と殺され、一家は崩壊した。 れいむが助かったのは、親のまりさが最後まで諦めずに守ってくれたからだ。 だが結局親まりさは力尽き、残ったのはれいむ1匹となってしまった。 れいむは住み慣れた土地を逃げ出した。 ただ怖かった。 川を越え、野原を越え、山を越え、皮がぼろぼろになりながらもれいむは生き延びた。 時は流れ、あのときの親ゆっくりと同じくらいの大きさにまで成長できた。 だが人間への恐怖心がなくなることはなかった。 かつての両親の姿が頭によぎり、外に出る気が起きなかったのだ。 しかし、赤ちゃんに日光浴をさせてあげたい気持ちもあった。 いつもおいしいご飯を取ってきて、自分をゆっくりさせてくれた親まりさ。 幼い自分を必死で守ってくれた親まりさ。 そんな親まりさを、れいむはずっと尊敬していた。 自分も赤ちゃんだけは何があっても守る、ゆっくりさせてあげると決めていたのだ。 パートナーのまりさは言った。 れいむとあかちゃんはまりさがぜったいにまもるよ、と。 だかられいむはその言葉に甘えることにした。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・ゆぅぅぅぅ・・・」 結局、親と同じように人間に捕まってしまった。 まりさは懸命に戦ってくれたが無駄だったのだ。 れいむの前に一人の男が現れた。 右手はまりさの底部を掴み、逆さ吊りにしている。 「ゆっ!おにいさん、まりさをかえしてね!!」 れいむは餡子脳ながらも、その男を覚えていた。 自分とまりさを誘拐した男だということを。 「ほらよ」 ふわりと宙を舞い、まりさは硬い床に落とされた。 「ゆべへっ!」 顔面から落下したまりさに、れいむは擦り寄った。 幸い、餡子は吐いていない。 死ぬことはないだろう。 「まりさ、まりさっ!ゆっくりしよう!ゆっくりしていってね!!」 なかなか顔を上げないまりさ。 れいむは不思議に思い、まりさの体を見回した。 「ゆっ・・・!?」 丸々とした、美しい曲線を描いていたまりさの輪郭は、どこにもなかった。 あちこちが歪み、ところどころ陥没や隆起を繰り返している。 何度も殴られたであろう皮は、餡子の色がうっすらと滲み、黒いアザを作っていた。 逆さ吊りにされて帽子が落下しなかったのは、ぼこぼこになった頭部がうまいこと引っかかっていたためだ。 「ど・・・どうして!?まりさ!!あのにんげんにやられたの!?」 れいむは男に振り返り、威嚇をしようと息を吸い込んだ。 だが、途中で膨れるのをやめた。 膨れて不用意に茎を動すと赤ちゃんに悪影響があるかもしれない、れいむはそう判断したのだ。 「おにいさん!れいむはゆっくりおこったよ!!まりさにひどいことをしないでね!!」 精一杯の抗議。 しかし男はれいむの言うことなど気にもせず、籠から道具を取り出し吟味していた。 ハンコほどの太さがある鉄の棒と、ハエ叩き、アルコールランプ。 れいむには、何に使う道具なのか理解できなかった。 「れ、れいぶぅ・・・・」 背後から聞こえてきたまりさの声に、れいむは振り返った。 「ま!まりざぁああ!!?」 まりさの顔面は真っ黒に腫れ上がり、不気味な色をしていた。 暴力に耐え切れなかった内部の餡子が行き場を失い、皮の下で蠢いているのが見て取れる。 皮に傷らしきものはなかった。 人間で言うと、内出血に近い状態かもしれない。 「ごべんねぇ・・・まりざあ・・・・ごべんねえ・・・」 痛みを少しでも和らげてあげたい。 そんな思いから、れいむはまりさに頬擦りをした。 「ゆべぇっ!!いぎゃぁっ!!いぢゃいいい!!」 膨れた傷に力強く押し付けられたれいむの頬は、まりさに激痛をもたらした。 「やめでぇ!いだいよぉ!!!」 予期せぬ悲鳴に、れいむは思わず体を引いた。 そしてその言葉の意味をゆっくり理解する。 「ご、ごめんねまりさ!もうすりすりはやめるよ」 まりさは触れられた頬が痛いのか、目から涙をこぼした。 「ごべんねれいぶ・・・まりざ、れいむをまもっであげられながった・・・!それに・・・ありざのがわぃいかおがぁ・・・!」 「ゆっ!?ちがうよ!まりさはわるくないよ!!ぜんぶあのおにいさんがわるいんだよ!!」 元はといえば、いきなり自分たちを誘拐したあの人間が悪いのだ。 頬をあわせることはできないが、れいむはまりさに寄り添う。 そしてまりさの分の怒りも込めて、れいむは男を睨み付けた。 男はそのやりとりを冷めた目で見ていた。 この2匹を捕まえてから、男はまりさだけを隔離し暴行を加えた。 男にとって、まりさは重要ではなかった。 れいむの茎に実る赤ちゃんが大きくなるのを待つ間の退屈しのぎに利用されただけだ。 捕獲の際、邪魔をしたことに対する制裁の意味もあったが。 暴行に使われたのはハエ叩き。 竹製のごく一般的なものである。 スナップをきかせて延々と叩いた結果が、あのボコボコ饅頭である。 ハエ叩きは当たる部分の面積が大きいため、皮を破ることなく衝撃だけを伝える。 右頬、左頬、底部に頭頂部、後頭部。 全身余すところなく叩かれたまりさは、動くことすら苦痛なはずである。 念入りに叩かれた顔面は、見るも無残なほどに黒あざだらけだ。 『やめて!もういたいのいやだよ!』 『いだいよぉ!まりざのおかおがぁ!』 『きぼちわるいよ!なかがきもちわりゅいぃ!』 そんな叫びの声を掻き消すように、男はハエ叩きを振り続けた。 最後の頃になると、その場にいないれいむにまで助けを求めていた。 れいむを守るために戦っていたというのに、そのれいむに助けを求めるとはなんとも情けない話だ。 そして今、れいむの茎に実る赤ちゃんはプチトマトよりも一回り小さいくらいに成長していた。 捕獲した時点ではビー玉ほどであったから、だいぶ大きくなったといえる。 もうまりさに用はない。 男はハエ叩きを手に取った。 「ゆっ?おにいさんなんなの!?ゆっくりこないでね!!」 男に振り返り、れいむは警戒態勢をとる。 まりさは男の手に握られたハエ叩きを見て、黒あざだらけの顔を青くした。 「やぁああ!!!いだいのいやだよぉおっ!!!もうたたがないでえええぇぇ!!!」 ひゅんひゅんと、風を切る音を立てて男は素振りをした。 まりさの様子を見て、れいむはとっさに男の前に立ちはだかったが、横を難なく素通りされてしまった。 「さあ、続きをやろうか」 「ゆぅああ!!ゆるじでね!!もうゆるじでねえ!!」 壁に追い詰められたまりさに、容赦なくハエ叩きが飛ぶ。 鼓膜を突き抜けるような、乾いた音が部屋に響いた。 「ゆべえ!!いだいよぉお!!やめでええ!!」 倒れようとするまりさ。 そうはさせまいと、まりさの顔面に向かってハエ叩きがアッパーをする。 「びっぶぅ!!ゆぅぐぅ!!」 仰向けに倒れたところで、男は右頬と左頬に往復ビンタのごとく連続して攻撃をする。 手首のスナップが重要な技である。 「おにいさんやめてね!!まりさがいたがってるよ!!ゆっくりしないでやめてね!!」 ずりずりと近寄ってくるれいむに向かって、男はハエ叩きを突きつけた。 「赤ちゃんを叩き落としてやろうか?」 その言葉に先に反応したのはまりさであった。 「やべてね!まりざとれいむのあがぢゃんをいじめないでねっ!!」 「まりさ・・・!」 「れいむぅ、れいむは離れててね・・・!まりさならだいじょうぶだよ!」 必死で体を起こすまりさ。 それを見たれいむは無言でうつむくと、男から離れた。 「まりさぁ・・・」 「ゆっくりしていってね!!あかちゃんといっしょにゆっくりしていってね!!」 れいむに笑顔を見せたまりさだが、すぐにその表情は崩された。 やむことのないハエ叩きの嵐。 皮が破れないから餡子も漏れない。 いつまでもまりさの苦痛は続いた。 「まりさ・・・!まりさ・・・!」 れいむはただ、愛するものの名前を呼ぶことしかできなかった。 10分もすると、まりさは声すら上げなくなった。 男がハエ叩きを振り上げたまま、動作を止めた。 ドラ焼きのように平べったくなったまりさは僅かに痙攣しているものの、動く様子は見られない。 「まりざぁああ・・・・!!」 近寄ろうとするれいむに、男はハエ叩きを向けて牽制した。 「そろそろいいか。じゃあな、まりさ」 そう言うと男は立ち上がり、まりさを見下ろした。 一瞬、れいむに視線を移したがすぐに戻す。 「なにをするのぉぉ!?まりざをいじめないで!!」 れいむが言い終えるのを確認し、男は右足でまりさの体を蹴り飛ばした。 「ゆ゙っ!」 それだけ言い残し、饅頭もといドラ焼きがはじけ散る。 飛び散った餡子が壁にこびり付いた。 「い゙ゆあぁあ゙ああ゙ああ゙ああぁぁ!!!!!まりざああ゙あぁああぁあ゙ああ゙あ!!!!」 形が歪んだ帽子を前に、れいむは泣き崩れた。 最後まで赤ちゃんと自分を守ってくれたまりさ。 ありし日の親まりさと姿が重なり、れいむは赤ちゃんのことも忘れて泣き叫んだ。 「静かにしろ」 れいむの頬に、強烈な衝撃が走る。 「ゆびぃっ!?」 ひりひりと頬が痛む。 男の手に握られたハエ叩きを見て、れいむはその痛みの正体を知った。 まりさはこんなに痛いことをされていたんだ、れいむは身の危険よりも先にまりさへの感謝を覚えた。 「やべでえ!!れいむにはあがぢゃんがいるんだよ!!やべでねえっ!!」 「だったら黙っていろ。それなら叩かない」 普通だったら構わず泣き叫ぶところであったが、頬の痛みが冷静な考えを生み出した。 いま泣き叫んではまりさが守ってくれた赤ちゃんが危険にさらされる、と。 「ゆっ・・・・!ゆ・・・・!」 れいむはこぼれそうになる嗚咽をどうにか喉の奥に押し込め、代わりに涙を垂れ流した。 「そうだ。そうやって黙っていれば叩かない。赤ちゃんもちゃんと産める」 ハエ叩きを無造作に床に投げ捨て、男はアルコールランプに火をともした。 「ゆっ・・・!」 燃え上がる炎に、れいむは餡子が冷える思いをする。 それは本能からくる反応でもあったし、経験からくる反応でもあった。 れいむは以前、足(底部)を人間に焼かれ、動くことができなくなったゆっくり魔理沙の話を聞いたことがあったのだ。 あのゆっくり魔理沙も、人間に捕まった伴侶や子供を殺されて開放されたのだという。 男は右手に持った鉄の棒を火にかざしていた。 長さも太さも、ハンコほどだ。 熱で火傷をしないため、手ぬぐいのようなものを間に挟んで棒を持っている。 「さっきお前を叩いた道具、それで生まれたばかりの赤ちゃんを叩いたらどうなると思う?」 れいむに目線を移すことなく、男は言った。 声を出していいものかれいむは迷ったが、これはきっと大丈夫だろうと判断した。 「ゆっ・・・」 声に出すのも恐ろしい、れいむは返答に困る。 だが黙っていては、また叩かれてしまうだろう。 れいむは意を決して答えを告げた。 「・・・つぶれちゃうよ。・・・やめてね!おねがいだよ!」 餡子脳でも簡単に導き出せる結論だ。 あの叩く部分は赤ちゃんゆっくりの体よりもはるかに大きい。 さきほどの力で叩かれれば、簡単に潰れてしまうだろう。 「よくわかってるな。じゃあ俺の言うことを守れば赤ちゃんは潰さない」 「ゆっ!はやくおしえてね!!ぜったいにまもるよ!!」 火にかざした鉄の棒を見ていた男の目が、れいむを捉える。 「目を閉じて、俺がいいというまで黙っていろ。そうしないと・・・」 「ゆっくりとじるよ!だからあかちゃんをいじめないでね!!」 言い終える前にれいむは目を閉じた。 理解の早いゆっくりに、男は関心した。 「いいって言うまでだぞ。途中で目を開けたら、赤ちゃんがまりさみたいになるぞ」 「ゆぎっ・・・!ぜったいにあけないよ!!」 まりさみたいに、という表現にれいむは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、目は閉じたままであった。 それを確認すると、男は熱した鉄の棒を火の上かられいむの頭上に移動させた。 そこにいるのは丸々と実ったれいむの赤ちゃんだ。 どれも順調に育っているが、まだ生れ落ちるほどではない大きさ。 男は一番手前にいた赤まりさに目をつけた。 左手に持ったピンセットで、ぴっちりと閉ざされた赤まりさの口を開ける。 目を閉じたままの赤まりさが表情に疑問符をつけるが、そんなものはどうでもいい。 赤まりさの口は、成長段階だけあってあまり大きくなかった。 ハンコの太さがぴったり合うくらいだろう。 喉も小さく、綺麗に研いだ鉛筆で穴を開けたくらいの大きさだ。 声は出るのかわからない。 男は熱した鉄の棒を躊躇うことなく、赤まりさの口内に押し込んだ。 予想通り、太さはぴったりであった。 「ゅ゙っ!?」 蚊の消え入るような、小さな悲鳴が男にだけ届いた。 れいむは赤ちゃんの危機も知らずに、目を閉じたまま待っている。 高温の鉄の棒は赤まりさの口内を焼き付けていく。 何度か鉄の棒を火に当て直しながら、男は鉄の棒で赤まりさの口内をこねくりまわした。 赤まりさはどうにか苦痛から逃れようと体を揺するが、男相手では無意味であった。 男が棒を抜くと、口をあけたままの赤まりさがいた。 口内はコゲで硬くなり、閉じることもできない。 喉も完全に焼き潰れたため、声を発することも、ものを食べることもできないだろう。 口としての機能はなく、ただ窪んでいるだけ。 そのことをわかっているのかいないのか、赤まりさは今にも死にそうな顔をしていた。 閉じた瞳から今にも涙があふれそうである。 男は思わず顔がにやけた。 時間がかかったが、男は同じように全ての赤ゆっくりの口を丸コゲにした。 赤ちゃん達から「くち」がなくなってから10時間ほど経った頃。 「ゆっ!あかちゃんうまれるよっ!」 ようやく出産のときがやってきた。 口を開けたままの赤ゆっくりが揺れ始めている。 男は読んでいた本を床に置き、その光景を楽しそうに眺めた。 一段と揺れが大きくなったかと思うと、ぽとりと1匹の赤ちゃんが床に落ちた。 長女となったのは赤れいむだ。 「ゆっ・・・!」 声をかけようとして親れいむは口を閉じた。 赤ちゃんの第一声を待とうと思ったからだ。 だが、いくら待っても赤れいむは声を上げない。 口を大きく開いているが、そこから出てくるものはなかった。 「ゆっ・・・?がんばってね!!」 生れ落ちた感動に喜んでいた赤れいむの顔は、徐々に暗く落ち込んでいく。 懸命に体を揺すったり飛び跳ねている様子から、声を出そうと努力していることが見て取れる。 静かな部屋に、赤れいむの跳ねる音だけが空しく響いた。 「おちびちゃん!ゆっくりがんばってね!!がんばってね!!」 「・・・」 飛び跳ねるのを止め、親れいむを見上げる赤れいむ。 その目には、涙が溜まっていた。 「お゙ねがいだよぉおぉおおっ!! おかあざんとお゙しゃべりしよゔよぉお゙おお゙ぉぉ゙ぉぉ!!!」 涙のダムは、その言葉をきっかけに崩壊した。 何本もの涙の線が、赤れいむの顔に浮かぶ。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってねっ!!!ゆっぐりじでいっでねええぇえっ!!!」 「・・・」 お手本を聞かせようと、親れいむは定番のセリフを壊れたカセットテープのように繰り返す。 親の期待にこたえたいのか、再び赤れいむは体をねじったり、飛び跳ねたりを繰り返した。 そのやり取りを見ていた男は笑みを浮かべていた。 ゆっくり達のアイデンティティーともいえるセリフ「ゆっくりしていってね」は、男によって赤れいむから永遠に奪われているのだ。 それも知らずに無駄な努力を続ける親子を見ていると、笑いがとまらない。 「ゆっ!?またうまれるよ!こんどはげんきなあかちゃんがほしいよっ!」 「・・・」 茎に違和感を覚えたのか、親れいむは茎を見上げた。 間接的にではあるが「元気でない赤ちゃん」の烙印を押された赤れいむは、恨めしい顔をして親れいむを見ていた。 ふらふらと揺れる赤まりさ。 それは最初に口を潰された赤ちゃんであった。 「ゆゆぅ!がんばってね!!ゆっくりうまれてね!!!」 赤まりさはゆっくりするはずもなく、すぐに茎から離れた。 赤れいむのすぐ横に落ちた赤まりさ。 まだ目も開けていなかったが、親れいむは待ちきれないとばかりに声を荒げる。 「ゆっくりしていってね!あかちゃんっ!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってねっ!!」 今度の赤ちゃんは、ちゃんとおしゃべりができるはず。 親れいむの願いが声のボリュームを引き上げる。 「ゆっくり!!ゆっ!!!ゆっぐりじでねっ!!!ゆっぐりいいいいい!!!!」 とても赤ちゃんを迎える表情ではなかった。 赤まりさが最初に見た親の顔は、般若のごとく歪んだ表情であった。 「・・・」 驚いたが、声は出なかった。 口内はウェルダンを通り越して丸コゲなのだ。 赤まりさは体を起こし、声を出そうと体をひねった。 「ゆっ・・・!?こっちのおちびちゃんもなのぉおお!?」 その動きに、長女の赤れいむと同じものを感じる親れいむ。 しばらくすると、赤まりさは飛び跳ね始め、そして泣き出してしまった。 やっぱりこの子もおしゃべりができない子なんだ、親れいむはその事実を認めざるを得なかった。 「で、でもつぎのあかちゃんはきっとゆっくりできるよ!!」 茎を見上げる親れいむの目は、希望と不安が入り混じった色をしていた。 焼かれた時点でこの結果は決まっていた。 結局、生まれ落ちた赤ちゃんゆっくり9匹は、1匹として第一声をあげることがなかった。 「どぼじでぇ・・・・どぼじでなのぉお・・・!?」 9匹の赤ちゃんを前に、オロオロと対処に困っている親れいむ。 それを黙って見つめる9匹の赤ゆっくりも神妙な面持ちだ。 「ゆっくちさせて」「ゆっくちちたいよ!」「おかーしゃんとすりすりしたい!」などと一部の人間が聞いたら有頂天になるようなフレーズを言うものはいない。 中には涙を流している赤ゆっくりもいるが、口が笑っている状態のため、あまり可哀想に見えない。 「ゆっ・・・!」 親れいむは思う。 喋れなくても、自分とまりさの大切な赤ちゃんなのだと。 少し生活に困るかもしれないが、自分が守ってあげればきっと元気な、ゆっくりした子に育ってくれるはずだ。 この子達にとって、ただ一人のお母さんなのは自分。 亡きまりさが守ってくれた赤ちゃん。 自分を守ってくれた親まりさのようになるんだ。 親れいむは赤ちゃん達を正面から受け止める決心をした。 「みんな、ゆっくりしていってね!!!」 力強さを感じる親れいむの「ゆっくりしていってね」。 赤ゆっくりから不安が消えた。 このお母さんならゆっくりさせてくれる、そう感じるほど頼りがいのある声であった。 「それじゃあゆっくりごはんをたべようね!」 まずは赤ちゃんの旺盛な食欲を満たそうと考えたのだろう。 親れいむは水に濡れた犬のように体を揺すり、頭に生えた茎を落とした。 「ゆっくりたべてね!」 満面の笑みで親れいむは子供達を見守る。 赤ゆっくりの目も笑っていた。 幸せな家族のワンシーン、そうなるはずだった。 「ゆ・・・?ゆっくりたべてね?」 茎の周りに9匹の赤ゆっくりが群がっているのだが、1匹として食べる気配がなかった。 顔を近づけ、口に含むような動きをするが、それから先へは続かない。 口内は硬くて動かない、そして喉もないので飲み込めない。 男だけが赤ゆっくりの不思議な行動の理由を知っていた。 「ゆっ!わかったよ!」 何を思いついたのか、親れいむは赤ゆっくり達の間に押し入り、茎にかじりついた。 むーしゃむーしゃと言いながら、茎を咀嚼する親れいむ。 横取りされるのではないかと、不安な表情で9匹が見守っている。 「まずはおちびちゃんからだよ!」 一番近くにいた赤れいむに、親れいむは口を近づける。 そして、開きっぱなしの赤れいむの口に、噛み砕いて唾液まみれになった茎を流し込んだ。 「かたくてたべられなかったんだね!!でもゆっくりりかいしたよ!!」 記憶をたどり、自分が赤ちゃんであったときのことを親れいむは思い出していたのだ。 ご飯が食べられなかった自分におかあさんが、噛み砕いたご飯を食べさせてくれたことを。 口移しを終え、親れいむは達成感にあふれる顔になった。 「ゆっくりたべてね!むーしゃむーしゃだよ!」 だが赤れいむはそれに答えず、固まっていた。 開いた口には噛み砕かれた茎がそのまま残っている。 「むーしゃむーしゃだよ!!!ゆっくりりかいしてね!!むーしゃむーしゃだよっ!!!」 自分はできたこと。 それなのに、なぜ自分の赤ちゃんはできないのだろう。 親れいむの中に不安が広がり、声が荒くなっていく。 それを敏感に察知した赤れいむは、必死で飲み込もうと努力をした。 だが、開いてない喉にご飯は通せない。 しばらくすると、動くことをやめて親れいむを見つめ始めた。 助けてくれると信じて。 「・・・」 「どうじでぇ・・・?ごはんをたべないとゆっぐり゙できないのにぃいい・・・・」 他の赤ゆっくりにご飯を食べさせようとしたが、結果は変わらなかった。 途方に暮れた親れいむは、男に頼ることにした。 「おにいざん・・・・あかちゃんにごはんをたべさせてあげて・・・」 親れいむの顔はどことなく歪んで見えた。 涙で皮がふやけたのかもしれない。 「無理だな。赤ちゃんの世話はお母さんのお前が一番上手に決まってる」 「ゆぅ・・・そうだよね・・・ごめんね・・・」 「そんなお前が赤ちゃんにご飯を食べさせられないなんて」 「ゆゆ・・・」 「お前が無能なせいで赤ちゃん達はゆっくりできないんだよ。ダメな親を持って残念だったね、そこの赤ちゃん達」 男が言い終えると、赤ゆっくり達はうつむいていた顔を上げた。 その顔に涙は無い。 あるのは怒りの表情。 口は笑っているが、その目は鋭く、眉は45度を保っていた。 「ゆっ・・・?どうしたのおちびちゃんたち・・・?」 最初に飛び掛ったのは赤まりさだ。 プチトマトほどの赤まりさが、バスケットボールほどもある親れいむの頬にタックルを仕掛ける。 「ゆ!?」 特に反撃をしたわけでもない。 体格差から、親れいむは赤まりさを弾き飛ばしていた。 「どうしたの!?ゆっくりやめてね!!」 その赤まりさを引き金に、次々と赤ゆっくり達が親れいむに体当たりを始める。 無言で飛んでくる弾丸プチトマト。 顔には怒りと憎しみだけが写し出されていた。 「やめてねっ!!おかあさんだよ!?ゆっくりやめてね!!」 親れいむはケガをするどころか、痛みすら感じなかった。 質量も速度もない赤ちゃんゆっくりの体当たりには、攻撃のコの字すら感じられない。 しかし、親れいむはその衝撃を通じて赤ゆっくり達の声を聞いた。 『おまえのせいでゆっくりできない』『やくたたず』『それでもおやか』『ゆっくりしね』 『ゆっくりさせろ』『まりさがくるしいのはおまえのせいだ』『れいむはゆっくりしたいのに』 『おねがいだからゆっくりさせてよ』『もっとゆっくりできるおかあさんがほしかった』 無論、それは親れいむの餡子内で勝手に想像した言葉にすぎない。 だが赤ゆっくり達が訴えたい内容としては、正しいものだろう。 本来であれば、そっちの人たちが天にも昇るようなセリフで親を罵っているはず。 一言も喋ることなく体当たりを繰り返す赤ゆっくり達の姿は、実に新鮮だ。 先ほど弾かれた赤まりさは、ころころと床で数回転がると、すぐに立ち直った。 そして再び眉を引き締め、親れいむの元へ跳ね寄る。 今度は顎のあたりを目掛けて体当たりを繰り出し、また弾き飛ばされた。 赤まりさは言葉を発することなく、延々と同じような動作を繰り返した。 その異常な光景に、男は声を立てて笑い始めた。 親れいむが男を一瞬だけ睨んだが、すぐに赤ゆっくり達に向き直る。 「もうやべでえええ!!!ゆっぐりじでよぉおおおっ!!!」 壁に追いやられた親れいむが叫んだ。 相手は弱っている、と勘違いした赤ゆっくり達がさらに体当たりを加え始める。 赤ゆっくり達の体には、かすり傷ができていた。 親れいむにぶつかった時や、床を転がるときにできたのだ。 体当たりをする度に増え、見ていて痛々しいのだがそれでも懸命に赤ゆっくり達は立ち上がる。 それを見て、親れいむの心が痛む。 傷だらけになってまで自分を殺そうとする赤ゆっくり達に、体は痛まないが心が痛む。 ゆっくりさせてあげると誓った赤ゆっくりが、ゆっくりすることなく自分に立ち向かう。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 親れいむは嗚咽をこぼし、涙を流す。 それが赤ゆっくりを調子付けているとも知らずに。 「赤ちゃん達、ちょっといいかな」 猛攻を止めたのは、暢気に鑑賞していた男。 何かを期待しているのか、赤ゆっくり達の目が輝いている。 「君達、ご飯食べられないんだよね」 9匹が目線を床に移した。 親れいむだけは男の目を見たままだ。 「あんまり運動すると、おなかすいて死んじゃうよ」 「ゆっ!!」 親れいむは思わず声を漏らしてしまった。 ご飯を食べないと餓死してしまう。 そんなことにまで頭が回っていなかったのだ。 「ちびちゃんたち!うごいちゃだめだよ!!おなかがすいてしんじゃうよっ!」 その言葉に、赤ゆっくり達は顔を青くした。 もうすでに空腹感があるのだろう、迫りくる死をゆっくり理解したようだ。 「ゆぅぅううぁぁああ!!!どうじだらいいのぉおぉ!!??」 慌てふためく親れいむとは裏腹に、赤ゆっくり達は静かに瞳から雫をこぼした。 「泣いてると、喉が渇いて死んじゃうよ」 そもそも、喉が渇くどころかコゲている。 男の言うことがわかるのか、赤ゆっくり達は顔に力を入れて涙を止めようとした。 「はやくじないどあかちゃんがゆっぐりでぎなくなっぢゃうよぉおぉ!!!」 生まれたときからゆっくりしていない、男はそんな感想を持った。 8時間が経った。 男はその間、一切口を挟むことはなかった。 死のゴールが見えているゆっくり達をいじる、そんな無粋なマネはしない。 最期の時まで生暖かく、助かる道を探す親れいむを見守るのだ。 そんな道など存在はしないが。 「ああぁぁ・・・おちびちゃん・・・ごめんねぇええ・・・・」 今、1匹の赤ゆっくりが目を閉じた。 通算8匹目。れいむ種では最後の1匹となる。 あれから、赤ゆっくり達は何もしなかった。 忍び寄る餓死の足音におびえながら、目の前にいる親れいむを恨む事でなんとか正気を保っていたのだ。 憎しみに染まった8の瞳が、親れいむをずっと捉えていた。 赤ゆっくりは総じて体力が少ない。 小さな体では、体力となる餡子があまり確保できないからだ。 旺盛な食欲は、生きるための本能である。 親れいむへの攻撃と、それによって負った傷は予想以上に赤ゆっくりから体力を奪っていた。 7時間を越えた辺りで最初の1匹、赤まりさが永遠にゆっくりした。 それから先は早く、赤ゆっくりは次々と瞳を閉じた。 動かなくなった赤ゆっくりは、ほとんど皮だけの状態になっていた。 最後まで親れいむを睨み続けていた目の周囲や眉間に、深いシワが残っている。 「がわいいれいむがぁあ・・・!おめめをあげでねぇえ!!れいむ゙をにら゙んでもい゙いがらぁ・・・おね゙がいだよお・・・・」 れいむれいむと泣き叫ぶ親れいむを、最後に残った赤まりさが真っ赤になった目で睨みつける。 赤まりさの体はほとんど皮だけになっており、あちこちにシワが走っていた。 もう長くないはずだ。 そう思っていた男、そして親れいむも赤まりさの次の行動に驚く。 「・・・・ゆ゙っ!?」 たるんだ皮を引きずり、赤まりさは親れいむに近寄っていく。 その目に光はない。 幼くして死を受け入れた目。だが、その奥には黒く歪んだ感情が潜んでいた。 「まりざぁ・・・!ゆっぐりしようねっ!おがあじゃんがすりすりじであげるがらねっ!!」 隠された激情に気がつかない親れいむ。 最期の時を親である自分と過ごそうと思っている、そう勘違いした。 「ゆ゙!おがざんと・・・いっじょにゆっぐりじようねっ!!」 だから、親れいむは笑顔を作った。 赤まりさをゆっくりさせてあげたい。 切なる願いだった。 「・・・・ゆ?」 体に感じた、小さな衝撃。 それは、赤まりさの最期の体当たりだった。 「ゆ゙ぁあ゙ああ゙あぁ゙ぁあ゙っ!!!!」 弾けとんだ赤まりさは、床に落ちて絶命した。 仰向けに倒れたままだ。 「あ゙りざあぁあぁぁあ゙あ!!!どぼじでえ゙ええ゙ええ゙っ!?!?!?」 他の赤ゆっくりと違い、赤まりさの目は開いたままだった。 完全に光を失いながらも、その瞳は親れいむを睨みつけていた。 「あ゙ぁああ゙ああ゙ぁあああ゙ああ゙あ゙あ!!!!!!ごべんねええ゙ぇえ゙ええ゙っ!!!ごべんねぇええ゙え゙!!!おがあ゙ざんをみらいでえぇえ゙え!!!」 狂ったように嘆き叫ぶ親れいむを置いて、男は部屋を後にした。 「ぁあ゙あ゙・・・・あ゙ああ゙あぁ゙あ゙あ゙ぁぁ・・・」 外へ通じる扉を開け放したまま。 しばらくして男が部屋に戻ると、そこに親れいむの姿は無かった。 床には赤ちゃんゆっくりの死骸も見当たらない。 食べたのか持ち帰ったのか、男にはもう興味のないことであった。 それから数日後、農家の男性が1匹のゆっくり霊夢を発見した。 どうやら洞窟の中で赤ちゃんを育てているようだった。 男性は、そのれいむがエサを探しに行っている間に赤ちゃんを捕獲ようと、洞窟に入った。 だが中にいたのは、真っ黒になって腐っていた9匹の赤ちゃんゆっくりであった。 帽子やリボンがあったので、かろうじて赤ゆっくりだと判断できた。 不気味に思い、洞窟を離れたところで親のれいむが帰ってきた。 様子を伺っていると、洞窟の中かられいむの歌が聞こえたり、赤ちゃんにご飯を食べるよう促す声が聞こえてくる。 男性は気味が悪くなり、その場から逃げたのであった。 それからさらに数日後。 男は書斎で、一冊の本を手に取った。 「お、また来てる」 文庫本ほどの大きさ。 今もこの世界や別の世界で、ゆっくり達が虐待されている。 その様子を自動で小説に変換し、ページを増やす、魔法の本。 男はこの本に影響されて、ゆっくり霊夢を虐待することに決めたのだ。 本に登場する赤ちゃんゆっくりは、大抵我侭で口が悪く、生意気で浅ましい。 男の経験でもそれは正しかった。 親を親とも思わないものばかりだ。 そんな物語を読んでいた男は、赤ゆっくりをゆっくりさせることなくその命を散らせてやろうと思ったのだ。 まったく関係のない親れいむにとってはいい迷惑である。 「・・・これ、俺じゃん」 新しいページには、赤ちゃんゆっくりの口を焼く男の話が載っていた。 どう読んでも自分のことである。 「あー、新作まだかなー」 男は本を棚に戻すと、たまった鬱憤を晴らすため、今日も森へと足を運んだ。 作:アルコールランプ このSSに感想を付ける
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「にんげんさんなんか、だいっきらいだぜ!!」 森の中で、いっぴきのゆっくり魔理沙が人間に対する憎しみを叫んでいる。 しかし、この魔理沙は、仲間が人間に殺された訳でも、人間に捨てられたわけでもない。 「いっつもおいしーものばっかりたべて、ふかふかーなべっどでねて、とってもゆっくりしすぎだよ!!」 そう。 この魔理沙は人間に嫉妬していたのだ。 自分たちよりも、ゆっくりしている人間に対して。 「ぷんぷん!! まりさおこったよ!! こうなったら、にんげんにいじわるするよ!! あやまってもらうよ!!」 「ゆゆゆ~~♪ れっれれいむ~~♪」 「ありす!! ゆっくりはやいよ!! もっとゆっくりしてね!!」 「みんなまっててね♪ まりさがもっとゆっくりできるようにしてあげるよ!!」 決心した魔理沙は、 森の中でのんびりと遊んでいる仲間の姿を目に焼き付け。 勢いよく森の中を駆け抜け、普段は近づく事の少ない人里へと入っていった。 魔理沙の心の中にあるのは復讐そのものだが、その眼はとても生き生きとしていて、とても復讐をする者の目ではない。 まるで、自分がゆっくりを代表して人間に制裁を加えるものであるかのような表情である。 あくまで人間と対等に付き合いができると思っているゆっくりにとって、自分たちと人間との差が開くことは決して許せることではないのであろう。 「ゆ!! そろ~~りそろ~~りだよ!!」 人里に着いた魔理沙は、そこから、人間に見つからないように慎重に移動していた。 幸い、昼間の通りは賑やかなもので、魔理沙が声を上げたところで気付く者はいなかった。 「ゆへへ。みつからないでこうどうしてるよ!!」 飼いゆっくりもそこらじゅうを歩いている中、一匹のゆっくりに注意を払うものなどいなかったのだ。 「ゆゆ!! あれはにんげんがあつめたたべものだね!!」 街の中心へ中心へと歩いていった魔理沙が見つけたのは、総菜屋の屋台であった。 数多くの食べ物が並んでいるその屋台には、多くの人間たちが詰めかけ、各々気に入った食べ物を買っていった。 「ゆっへん!! まりさたちのごはんをかってにあつめて!! そんなにんげんはゆっくりするしかくはないよ!!」 最初の目標を見つけた魔理沙は、人が引くのを見計らい、物陰から勢いよく飛び出し、数回の跳躍で屋台の上に飛び移る事に成功した。 そして、瞬く間に商品を地面に突き落としていった。 その間わずか数分である。 「ゆへへ~~ん!! かってにたべものをとるにんげんさんがわるいんだよ!!」 ゆっくりはんせいしてね!! その言葉を残して、一目散にその場を去った魔理沙。 上手く人ごみの中に逃げ込めたようで、出鼻を挫かれた人間たちはどうする事も出来なかった。 「ゆへへ♪ うまくいったね!!」 一方、作戦が成功した魔理沙は、再び物陰に隠れ、ほくほくの笑顔で今回の成果を喜んでいた。 「でもこれじゃまだだめだよ!! もっといっぱいこらしめて、にんげんさんにごめんなさいっていってもらわなくっちゃね!!」 そう言うと、魔理沙はさらに人間を懲らしめるために、再び身をひそめて行動を開始した。 何も知らない人間が見たら、活き活きしているをと思うであろう、キラキラと輝く瞳のままで。 「ゆっゆ~~♪ ここはにんげんさんがかってにゆっくりぷれいすにしたところだね!!」 次の目標としたのは、畑であった。 そこでは、ちょうど収穫時期になった野菜が、とても美味しそうに実っている。 みずみずしく、パンパンに育った野菜を見ていると、一瞬このままゆっくりと食べたくなった魔理沙であったが、本来の目的を思い出し、何とかその思いを封じ込めた。 「ゆゆ!! まりさがこんなにたべたくなったおやさいをかってにじぶんのものにしちゃうなんて、やっぱりにんげんさんはゆるせないね!!」 怒りにまかせ、どんどんと畑の中に入っていく。 ちょうど畑の中心あたりに来た時、魔理沙はピタッと立ち止まり、周りの野菜に視線を向けた後に行動を開始した。 「やさいさん!! ごめんなさい!! でも、にんげんさんをこらしめるのはこうするしかないんだよ!!」 次の瞬間。 その言葉を発した口で、実っている野菜を引きちぎり、地面に叩きつけ、踏みつぶす。 まるで鬼神が乗り移ったように、次から次へと野菜をつぶしていく。 その畑の全ての野菜が潰されるまで、それほど長い時間はかからなかった。 「お!! おだのはたげがーー!!!!」 食べ物が散乱とした畑に、しばし呆然としていた魔理沙であったが、遠くから人間の声が聞こえるとすぐに我に返り、気が付くと一目散に逃げ出していた。 「おおおお!! おらのとまぴーちゃんがーー!!!!!!」 残ったのは男の悲しそうな声だけであった。 次の日も、その次の日も魔理沙の奮闘は続いた。 「ゆゆ!! あっちからにんげんさんがくるよ!! ゆっくりにげるよ!!」 森の中を動く時でも、人間を避けて動くようになった。 その気分は、スパイのように魔理沙の感情を高ぶらせ、さらに大胆に行動するようになっていった。 「これもかってにとっちゃったものだね!!」 時には、綺麗な反物を汚水の中に落とし、 「ゆゆ!! にんげんにつかまっちゃったんだね!!」 「むきゅきゅ!! かえじで!! それはぱちゅりーがべんきょうしたあかしなのーー!!」 「むぎゅーー!! まっでーー!! ……まっで……ま…………」 時には、飼いゆっくりを襲い、その帽子に付いていたバッジを奪って逃げた。 そして、魔理沙が行動を開始してから一カ月がたった。 「ゆゆゆ!! もうすぐだよ!! もうすぐれいむたちもゆっくりさせてあげられるよ!!」 気温が中間を通り越し、一気に変わったのと同じように、既に行動を開始したのが遠い昔のことと感じている魔理沙にとって、 人間達もそろそろ己の行いを戒めているころだろうと言う実感が起こるのは当然のことである。 空を見上げれば、晴れ晴れとした空が高く上っている。 おそらくは、そろそろ実りの秋になる。 そうなったら、自分も越冬の準備をしなくてはならない。 いくら人間達が反省して、自分たちがゆっくりできるからと言って、越冬には大量の食材が必要になってくる。 「でも、ことしはいっぱいゆっくりできそうだね!!」 魔理沙はこの行動が無事終えた暁には、霊夢と夫婦になろうと決意していた。 もともと、小さい時から一緒に遊んでいた霊夢である。 自分たちにも、お互いを意識していることは分かっていた。 それ以上踏み込めなかったのは、単にタイミングが掴めなかったからであった。 「ゆへへぇ~~♪ れいむとたっくさんすっきりして、いっぱいあかちゃんをつくるよ!!」 「そうして、まりさのぶゆーでんをたっくさんはなしてあげるよ!!」 思い描いているのはバラ色の未来。 それは、綺麗すぎるほどであった。 季節は進む。 魔理沙はの行動もいよいよ終幕である。 「そうだ!! きょうは、ちょっとれいむのよ~すをながめてからいこ~ね!!」 そのままにこの物語を終えるのに、何か納得のいかないものがあったのだろう。 この日、魔理沙は街へ出かける前に、広場で遊んでいる霊夢の姿を一目見ようとコースを変えた。 久しぶりに通るゆっくり道。 草すらも踏み固められていない道。 いつもはほかのゆっくりで賑わっているはずのその道は、どういうわけか今日はシンと静まり返っていた。 「ゆゆゆ!! きっとみんなえっと~じゅんびでいそがしいんだね!!」 なんたって、食べ物はどっさりあるからね!! こんなにも早く、みんなが幸せになれるとは思ってもみなかった。 やっぱり、自分のしたことは正解だったんだね!! さぁ、ここを抜ければ霊夢達のいる広場だよ!! 「ゆゆ!! みんなでにげるよ!!」 「みんな? どこにいったの? ゆっくりでてきてね!!」 「ゆーー!! どうしてだれもへんじをしてくれないの!!」 霊夢の姿を見つけた直後、魔理沙はかくれんぼをしているのだと思った。 数秒後、霊夢が鬼になっているのだと思った。 数分後、霊夢だけが生きていることに気づいた。 「れれれれれいいぶーー!!!! いっだいどーしだのーー!!!」 自身の同様もさることながら、さらに動揺している霊夢の元へ、一直線に駆け寄っていく魔理沙。 「ま、まりざーーー!!!」 近寄って見ると、魔理沙は霊夢が見ていた景色を改めて見直した。 そこらじゅうに転がっているのはゆっくりの亡骸。 そして、そこらじゅうにできている水たまりは餡子である。 もちろん、その餡子はゆっくりの体の中に入っているものだ。 「どうしてこんなことになったの!! ゆっくりせつめいしてね!!」 「ゆゆ!! にんげんさんが!! にんげんさんがやったんだよ!!」 「ゆ!! にんげんさんはまだこりてなかったんだね!!」 再び魔理沙の中に怒りの炎が燃え上がった。 以前とは比べ物にならないほど大きな炎である。 「にんげんさん!! ゆっくりしていないで、はやくでてきてね!!」 「ま、まりさ……」 傷こそ負っていないが、逃げるのに体力を使いすぎたのだろう。 体を大きく震わせ、統一の取れない呼吸を繰り返す霊夢。 「ゆゆ!! れいむはゆっくりしててね!! まりさがゆっくりやっつけるからね!!」 そんな霊夢を元気付けようと、魔理沙はこれまでの事を簡潔に話し出した。 本来は、全てが終わった時に話そうと思っていた自慢の武勇伝。 そして、一緒に暮らしたいという事を。 「まりさ……。すごいね。まりさはすごいね!!」 得てして、魔理沙の思いは全て受け入れられた。 幾分、調子の取れてきた霊夢が、魔理沙の行動に対して、賞賛の言葉をかける。 本来は、こんな筈ではなかったが、逆にこの様な状況で霊夢が受け入れてくれた事で、魔理沙の気分は限りなく高く上っていった。 「まっててね!! いま、にんげんさんにあさまってもらうからね!!」 弾丸のようにその場から駆け出した魔理沙は、一目散に人里への道を駆け下りていった。 霊夢から聞いたところでは、人間はまだ近くにいると踏んだ魔理沙は、精一杯の速さでどんどん突き進んでゆく。 「ゆ!!」 そして、大きな曲がり道を抜けたところで、タバコをふかして休んでいる人間の集団を見つけることが出来た。 その様子から、人間たちは安心しきっていると感じた魔理沙。 その瞬間、体が自然と動いていた。 「にんげんさん! れいむたちにあやまってね!!」 怒り心頭。猛然とそこへ突っ込んでゆく魔理沙。 おそらくは、こいつらが霊夢に酷いことをした人間だろうと踏んだ上での行動である。 「リーダーサン。まぁだ、テークイットイージー、リビングシテマシタヨー!!」 しかし、魔理沙の思い描くような結果にはならなかった。 「ゆぐ!! いだいよ!! なにするの?」 所詮は饅頭である。 文字通り、あっと言う間にに捕まり縄で縛りあげられてしまう。 身動き一つ出来なくなった魔理沙であったが、この位でくじけなかった。 それでも尚、口調だけはしっかりと、人間たちに食ってかかる。 「なにするの!! って俺らは野良ゆっくりの駆除に来たんだが? ……なぁ、この魔理沙か?」 一人の男が、何かに気付いたように尋ねると、他の人間たちは口々に肯定の意を唱えだした。 「なんだ、おまえか。お前が人間の里を荒らすから、こういうことになったんだぞ」 戒めるでもなく、子供を諭すような口調で魔理沙に語りかける男。 「そんなのしらないよ!! まりさはゆっくりできるように、こーどーしてたんだよ!!」 しかし、そんな事は理解できずに、魔理沙は精一杯の厳しい口調で自分の行動を正当化しようとする。 「まぁ聞けよ。お前らが勝手に俺らの作ったものを捨てたり、壊したり。挙句の果てには飼われていたゆっくりの、 区別するために付けられていたバッジを無理やり毟り取ったりしていただろ?」 「あれはみんなのものだよ!! にんげんさんたちが、かってにじぶんのものにするからいけないんだよ!! ほかのゆっくりだって、むりやりとじこめたんでしょ!!」 聞く耳持たず。 その魔理沙をみて、やれやれと肩をすくめる人間たち。 このまま平行線を辿るのかと思い始めたとき、あの男が口を開いた。 「なら、聞いてみるか?」 「ゆゆ……?」 そう言って男が持ち出してきたのは、一匹のゆっくりであった。 「ゆゆ!! ありすだね!! にんげんさんにつかまったんだね!!」 「そんなわけないでしょ!! ゆっくりりかいできないの?」 魔理沙の発言を一刀両断したのはゆっくりは、カチューシャに金色のバッジを付けているゆっくりアリスであった。 「ゆ……? ゆ?」 「い~~い? のうそんぶにすんでいるまりさにもよくわかるように、としぶにすんでるありすがおしえてあげるわ!!」 そのまま、魔理沙の目の前まで近づいたアリスは、まるで子供に難しい話を教えるかのように話し始めた。 「はたけっていうところにあるおやさいは、みんなにんげんがつくったものなのよ」 「ゆ!! うそつかないでね!!」 「なら、なんでほかのばしょよりもきちんとしていて、おつちのいろがちがって、かってにぼうやひもががってあるの?」 「ゆぐ……」 「それに、ありすたちはにんげんといっしょにくらせて、しあわせなのよ」 「ゆ……ゆ……」 「でも、そのしあわせなありすのおともだちのなかにも、あなたのせいでゆっくりできなくなちゃったのがいるのよ」 「ゆぐぐ……」 アリスは淡々と、しかし分かりやすいように話を続けてゆく。 その中には、ここの周辺の野生のゆっくりは、今まで人里を襲わなくてゆっくりしていたこと。 一匹のゆっくりによってそれが壊されたこと。 余りの被害の為に、一斉に山狩りが行われたこと。 それは、あくまで周辺の山一つだけであって、奥のまでは行わなかったこと。 などなどであった。 そして、自信満々に語るアリスに、まったく反論が出来ないまま次々と説明されてゆく魔理沙。 直ぐにマルッと信じるのがゆっくりの良いところである。 そんな事が諺化している程、ゆっくりはころころ言われた事を信じる。 結果として、魔理沙が今まで築いてきた信念は、あえなく音を立てて崩れる事となる。 「でいぶ!! ごめんね!! もっどゆっぐりじでほしかったのにーー!!」 同時に出てきた言葉は、好きであった霊夢への懺悔であった。 霊夢の為に、と思って行動していたことが、全て意味のない、むしろ逆効果だった。 その事が、魔理沙の心に、強い後悔を埋め込んで行った。 同時に、大きすぎるそれによって、魔理沙の心は砕けてしまう。 「……ゆ。わるいのはまりさだよ……。 だから、まりさをゆっくりころしてね。ほかのゆっくりはみのがしてあげてね」 魔理沙の口から出てきたのは、お願いの言葉であった。 今まで、目の敵にしてきた人間に対するお願いであった。 それは、自分のしてきた事を理解した魔理沙が出来る、せめてもの罪滅ぼしと考えたからであろう。 「ん~~。……」 男の一存では決められない。 一旦人間たちが集まり、相談をする。 白熱する事もなく、モノの数分で話し合いを終えた男は、先ほどと変わらぬ表情で魔理沙に結果を報告する。 「別にいいよ。元々は君が目的だったし」 「ゆ……。ありがとうね……」 「でも、もうこの辺りにゆっくりは殆どいないぞ。少し前から、何度か山狩りはやってたし。まぁ、それは、仲間意識が強いから、 感化された可能性も含めてだったんだけどな」 「ゆ……。そうだったの…………」 魔理沙はそれっきり黙りこんでしまった。 それは、魔理沙なりの意思表示の証か、はたまた精神の限界が来てしまったのか。 理由は分からないまま、男はただの饅頭と化した魔理沙を抱え、他の人間と連れ立って山を降りていった。 ~~~~~~ それから一ヶ月がたった。 それでも尚、あの魔理沙は食事を取らされ生きていた。 否、無理やり生きさせられていたというほうが正しいのかもしれない。 街の一角に立てられた見世物小屋。 ここが魔理沙が連れてこられた場所である。 「……とまぁ。このゆっくりが原因で沢山のゆっくりが犠牲になったんだよ」 「ゆっくりしていたぱちゅりーーをかえしてね!! せっかく、せっかくまりさがごーるどばっじをとったのに……。 おまえなんかゆっくりしね!!!!!」 「わかってねー!! あのまりさみたいになっちゃだめだよー!!」 「ゆっくりりかいちたよ!!」 「さっすが、ぎんいろぷらちなばっじのれいむとちぇんのこどもだね!! ゆっくりしてあたまがいいね!!」 「……!!! ……………………!!!!!」 そこには、毎日のようにゆっくりや、飼いゆっくりを連れた人間たちがやってくる。 教育。 怒り。 そして侮辱の対象として。 しかし、その殆どが飼いゆっくりの為、飼い主の言いつけを守り攻撃のアクションを起すゆっくりはいなかった。 理由は様々である。 しかし、舌も歯も抜かれ、足も焼かれてしまった魔理沙には、ただ聞く事しか出来ない。 反論か、それとも謝罪か。 残念ながらそれを確かめるすべはない。 「まりさ!! れいむがきてあげたよ!! ゆっくりしていってね!!」 そして夜。 魔理沙の元へ駆けつけてくる一匹のゆっくり。 「……!! …………!!」 「ゆっくりりかいしたよ!! たべものをもってきたよ!!」 そう言うと、一旦自分の口に含み、柔らかくしてから口移しで魔理沙に食べさせる。 「……!!」 「おいしいんだね!! ゆっくりたべていっていいからね!!」 この霊夢は、何を隠そう魔理沙と将来を誓い合ったあの霊夢である。 あの後、他のゆっくりが沢山いると山の奥のほうに移り住んでいた霊夢は、魔理沙がまだ生きている事を知って、毎晩こうして尋ねてくるのだ。 「ゆゆ♪ まりさ♪ れいむのあたまをよっくみてね!!」 「……? ……!!」 嬉しそうに話す霊夢の頭には、妊娠の証である蔓が生えていた。 魔理沙は相手を知っている。 毎晩ずっとすっきりしていたからである。 そして、今までは妊娠する事がなかった事も。 「ゆへへ♪ まりさ!! もうすこしのしんぼうだよ!! このこどもたちがおおきくなったら、にんげんにそうこうげきをかけるよ!!」 「……!! ……!!」 「ゆっくり~~ばんじおけ~~だよ♪ まりさだけでも、にんげんにだいだげきをあたえたんだから、これだけいればらくしょうだよ♪」 「ゆっくり~~♪ していってね~~~♪」 あの時。 魔理沙の一句一句に目を輝かせていたときと同じ顔をして話す霊夢。 しかし、口が利けない魔理沙にはどうする事も出来ない。 “今直ぐにでも死んでしまいたい” そう思った所でどうする事もできない。 もしかしたら、数ヵ月後、ここを譲る形で自分は死ぬのだろうか? ふっと、そんな考えが魔理沙の頭を過ぎった。 出来れば、その前に死んでしまいたいとも思った。 「ゆゆゆ~~~♪ れいむは~~ゆっくり~~♪ ……」 そんな魔理沙の思いを知ってか知らずか、霊夢は暢気に歌を歌い続けている。 その暢気な歌を聞くと、魔理沙は瞼の裏に、山の中でのんびりと暮らしていた情景が淡々と映し出されていくのだった。 このSSに感想を付ける
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「ヒャッハー!」 「ゆぇーじごくじごく」 虐待お兄さんに追われてる私はゆっくりれいむ。ごく普通のゆっくり。強いて違う事を上げるとすればゲスって 事かナー。名前はれいむ。 そんなこんなで私は虐待お兄さんの手が出せない人間の家にやってきたのだ。 虐待お兄さんが去っていった後でふと背後を見ると人間がいたのだ。 「ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ! ゆっくりしないでごはんをもってきてね!」 この家はれいむが見つけた時点でれいむの物になっていたのだ。この人間はその事を知らずホイホイとれいむの 前に現れてしまったのだ。 人間はそのまま家の奥へと姿を消した。れいむの威光にひれ伏したのだ。 れいむはご飯が出てくるのをゆっくり待った。 そして十分が経った時である。 パリーン、と甲高い音を立てて窓ガラスが割れ、そこから何者かが入り込んできた。れいむは思わず驚愕する。 窓が割れたからとか、そいつが窓から入ってきたからではない。いや、それも多少はあるかもしれないが、 れいむが最も驚愕したのは違う部分だった。 「アンゲロ、アンゲロ!」 そう、奇声を発しながら窓から入ってきたそいつは、頭にパンストを被りハイソックスを身に着けている以外、 何一つ衣類を着用していなかったのだ。 その男(股間にぷーらぷーらしているものちーんぽ! なのでわかった)は、固まるれいむの前で唐突に 逆立ち、両足を開いて頭を軸にその場でぐるぐると回りだした。もちろん(何がもちろんなのかは不明) 股間の棒は隆々とそそりたっている。 「びっくりするほどユートピア! びっくりするほどユートピア!」 叫び、回転する勢いのまま開脚前転でれいむに近寄り、れいむを細々とした……しかし、適度に鍛えられ 確かな力を感じさせる腕で掴み、その口を己の剛直で掻き回した。 「幸せだから! 幸せだから!」 「ゆぶぇ?! ぎぼぢばるいぃぃぃぃぃ!!」 固く太い縮れ毛が肌をなぞり不潔感を醸し出す汗の臭いが体にこびり付く。何よりも口内を駆け回る剛直の 妙なしょっぱさが、たまらなくたまらない。 嫌悪感をひたすら我慢していると、唐突に体が自由になった。口中を支配する嫌悪感に、遠慮なくその場で 嘔吐する。ひとしきり吐いてからちらっと男に目を向けると、手に持った何かで股間の棒を擦っていた。 その、男の手にもっている物が何なのか理解すると同時に、れいむは目の前が真っ白になるような錯覚を覚えた。 「ムッシュムッシュ!」 「でいぶのおりぼんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 そう、男は先程れいむの口中を陵辱している間にれいむの大事なリボンを奪い取っていたのだ。 「かえしてね! れいむのおりぼんかえしてね!」 れいむは慌てて男の足元に縋りつき、泣いて請う。 「ウッ」 男は達した。 れいむの紅いりぼんに浮かぶ白のコントラスト。その時、れいむはそのりぼんが物理的、衛生的にではなく、 精神的な意味で決定的に汚されてしまったのを理解した。 哀しみに打ちひしがれたれいむはその場にへたりこんだ。命より大事なりぼんが穢された。これ以上に ゆっくりできない事など、存在しない。れいむは今、まさに地獄の底にいるようだった。 男はそんなれいむにそっと手を差し伸べると、穢れたりぼんをれいむの髪にしっかりとくくりつけた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! ぎぼぢわるいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 頭を覆う生暖かい感触と、鼻(正確には、全身に多数存在する嗅覚器官)をつく異臭。必死の逃れようと飛び 跳ねるが、それはどこまでもれいむに付いて回り、生理的な嫌悪感に思わず中身を吐き出しかける。 男はその様子をしっかりと見届けると、「俺に充電しろ! 俺に充電しろ!」と叫び、ゾンビの真似をしながら 部屋の奥へと消えていった。 れいむは思った。このままここにいればきっと死ぬより酷い目にあう。早く逃げ出さないと。 その時、男の消えた方向からぎしりと小さな足音が響いた。 れいむは決断した。 「おそらをとぶ!」 れいむは窓から身を投げ出し、鳥のように空を舞った。 唐突だが、この家はマンションの4階だった。 「……あれ、いない」 全裸パンストハイソックスの男は、手にいちごショートケーキの乗った皿を持って部屋にいるはずのれいむを 探していた。先程まで床の上を元気に走り回っていたのに、今はその影すらも見つけられない。 手に持ったショートケーキを机に置き、男は被っていたパンストを頭から外し、残念そうに大きく溜息をついた。 その男は、れいむが「ごはんをもってこい」といったこの家の先住民だった。 「せっかく言われた通り、出来る限り『ゆっくりしないで』ごはんを持ってきたのに……」 男は気付かない。そのゆっくりしてなさがれいむの命を奪った事に。 おしまい あとがき ゆっくりしないでご飯をもってくるのとゆっくりできない動作でご飯を持ってくるのは違うと思うけど、気にしないでください byゆっくりのあねきィィ!の人 このSSに感想を付ける
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山へと続く道を、一目で無頼と知れる男が歩いている。 細い一本道を散歩のようにぶらりぶらりと歩いていると、呼び止める声が傍らから聞こえてきた。 「そこいくお客様!どうかゆっくりしていっておくんなまし!」 目をやると、汚いダンボール箱が草むらに転がっていた。幾枚かを張り合わせ、2m弱の大きさに拡張されている。ゆっくりが作ったにしては悪くないものだ。雨が心配になるが。 道に向けられた面の一部をくり抜き、その上にこれまたきったねー字で「ちゃみせ」と大きくのたくったように書いてあった。 「お客様!こちらはちゃみせでごぜぇます!どうかゆっくり茶などのんで休んでいってくだせぇ!」 そうのたまうのは一匹のゆっくり。れいむ種である。 男は顎を一捻り、愉快そうな顔でれいむに近寄った。 れいむが茶店と呼ぶダンボールの傍には、藁を敷いたり新聞紙が盛ってあったりしてどうやら座るところも作ってあるらしい。 男はとりあえず切り株に腰掛けて煙管をとりだした。 「茶店といったな。なら茶を一杯もらおうか。あと菓子もな。」 「かしこまりやした!おい!」 嬉しそうに跳ね、れいむはダンボールの中に声をかける。 中から「承知しやした!」と声がしてなにやらごとごと揺れだした。 「女将、あの中はなんだいね?」 煙管を箱に向けるれ男が尋ねる。 「へぇ、『ちゅうぼう』でして。うちのやどろくが今、茶とまんじゅうをよういしております。」 そう答えるれいむ。 ほぉ。これは面白い。男は煙管をくゆらせて立ち上がると、箱の入り口から中を覗いて見た。 箱の奥では、ゆーゆーとか細い声で鳴く小さなゆっくりと大きなゆっくりが、種別問わず大量にビニール袋に詰められている。 どうやら叫ばないように口をふさいで処理しているようだ。 れいむが宿六と呼んだのは、袋詰めのゆっくりとポットの間を行き来しているまりさの事だろう。 特徴のとんがり帽子に白い布が巻いてあるのは前掛けのつもりか? まりさはポットから湯呑みに茶を注ぎいれ、袋の中からまだ赤ん坊らしき小さなゆっくりを二匹咥えこんで盆の上に置いた。 それを器用に頭の上に載せてゆっくり零さぬように運んでくる。 男は切り株に戻り、まりさとれいむの給仕をうけた。 湯飲みはちゃんと洗ってあり、饅頭もぷるぷる震えているが暴れはしない。裏返してみると無数の切り傷がある。 虐待の作法として底部を火で焙ると歩けなくなる、とは聞いていたがここでは切り刻んで痛みで動きを止める方法を取っているらしい。 茶をすすり、饅頭をぽいぽいと口に放り込んで一息ついた。 「なかなか美味かった。しかし不思議なのは、お前たちは仲間を人に食わせて平気なのかね?」 客の様子を見守っていたれいむ。まりさは既に厨房に引っ込んでいたので、れいむが男の問いにこう答えた。 「へぇ。ゆっくりちゅうもんにも色々ございまして。れいむたちはここの森のおくにすんどります、ドスまりさにやしなってもらってるんですがね。 このところたべものが不作でして、そうなるとわるいやつは人間さまのはたけに手ぇ出すんですわ。 うちらもよけいなさわぎは好みませんので。そういうわるいゆっくりは処刑するんですが、ただ殺してもなんですので、いっそ商売にしたらどうかと。 きもんげ、ちゅうゆっくりに教えてもろうたんですわ。」 なるほど。ゆっくりが饅頭であることを利用して甘味を提供しようというわけか。それなら加工場にでも売りつければいいのに。 「かこうじょうには、ほかの森のれんちゅうがいっとりますけん。」 縄張りというか、ゆっくりにも商売敵がいるのか。 このゆっくり達は人間と共存しようと考え、色々な方法を試したらしい。町で歌を歌ったり、新聞を書いて売り歩いたり、そうした商売の一環として 茶店をはじめたのだとか。ポットはごみ捨て場から拾ってきたのを使い、ダンボールを集めて屋台を作り、今日が初の店開きだったという。 面白い試みだ。茶葉は森から毟ってきて饅頭は罪ゆっくりを使えばいいし、元手はかからない。 なまじ人間に干渉するより安全だし。 しみじみと男とは茶を飲み干した。 「ご馳走さん。それじゃぁまた寄ることがあったら贔屓にしよう。」 「ありがとうございやす!またゆっくり寄っていってくだせぇ!」 れいむと、厨房からでてきたまりさが男にお辞儀し、気持ちよく男は茶店を去った。 しばらくお辞儀したまま客を見送ったれいむだが、5分ほどしてふと気づいた。 「ゆ!お会計を忘れてるよ!」 急いでれいむは男を追いかけた。 「おきゃくさま!おきゃくさま!」 追いついたまりさに男が振り返った。 「なにか用か?」 「おきゃくさま。お会計がまだでございます。」 「おぉ、忘れておったわ。」 男の手が懐に伸び、抜き出されると弧を描いてれいむの頭に振り下ろされた。 れいむの頭がひしゃげ、目玉が片方飛び出た。 男が支払ったのは鉄扇であった。 この男は町でもそれと知られる「虐待お兄さん」。たまたまゆっくりを捕獲しにゆく途中で思いもかけぬ体験にうっかり虐待を忘れるところであった。 ゆっくり一匹無礼討ちしたところで咎められぬ。男はそう嘯いた。 事実そうであった。 おはようからこんばんはまで貴方を見守るVXの人です。 どこからこんな電波を受信したんでしょうね? このSSに感想を付ける
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小名浜駅(おなはまえき)は、福島県いわき市小名浜にある塩田鉄道東北線の駅である。 駅構造 歴史 隣の駅 駅構造 駅舎側に単式ホーム1面1線、その奥に島式ホーム1面2線のあわせて2面3線のホームを持つ地上駅である。 ■塩田鉄道東北線 いわき・郡山方面 (入線メロディ ふるさと) ■塩田鉄道東北線 上下待避線 (入線メロディ われは海の子) ■塩田鉄道東北線 日立・北浦方面 (入線メロディ 線路は続くよどこまでも) 歴史 1986年4月1日 開業。 隣の駅 ■塩田鉄道東北線 特急・俊快速・特別快速 通過 ときわ快速 勿来駅-小名浜駅-湯本駅 快速・普通 鮫川駅-小名浜駅-湯本駅 塩田鉄道東北線 北浦-大洋-鉾田-涸沼東-大洗-那珂大野-勝田-東海-大甕-常陸多賀-日立-ときわ新町-鵜ノ岬-高萩-赤浜-磯原-大津港-勿来-鮫川-小名浜-湯本-いわき-石森-小川郷-川前- 夏井-小野-滝根-入水-大越-船引-三春-東郡山-郡山-新日和田-五百川-本宮-安達太良-東二本松-渋川-松川町-金谷川-黒岩-福島-御山-東福島-伊達長岡-桑折-国見- 越河-白石-深谷-大河原-船岡-槻木-岩沼-仙台空港-名取-南仙台-富沢-長町-五橋-仙台-幸町-鶴ヶ谷-七北田-利府-富谷-大和吉岡-大衡山-三本木-南古川-古川-福浦- 荒谷-高清水-蟹沢-築館-くりこま高原-沢辺-有壁-一ノ関-平泉-前沢-胆沢口-水沢-江刺-北稲瀬-北上-二子-南城-花巻-花巻空港-石鳥谷-日詰-紫波-矢幅-南盛岡-盛岡- 高松-松園-巣子-滝沢-東渋-好摩-岩手川口-沼宮内-岩手五日市-奥中山-小鳥谷-一戸-二戸-上二戸-堀野-金田一温泉-中三戸-名久井沢-苫米地-八戸-北豊崎-五戸- 南十和田-十和田市-奥入瀬-十和田湖口-蔦湯-法量-酸ヶ湯-八甲田口-萱野茶屋-モヤヒルズ-南横内-横内-問屋町-南青森-青森
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Eみのりこ タイプ くさ 特性 ようりょくそ 分布 種族値 HP 115 すばやさ 45 こうげき 60 とくこう 60 ぼうぎょ 90 とくぼう 90 進化系統 ちびみのりLv21でみのりこリーフの石でEみのりこ(要全国図鑑) レベルアップで覚える技 Lv01 たいあたり Lv01 やどりぎのタネ Lv01 あまいかおり Lv01 つるのむち Lv01 せいちょう Lv01 のしかかり Lv01 タネマシンガン Lv01 こうごうせい Lv01 ソーラービーム 覚える技マシン 04 めいそう 06 どくどく 09 タネマシンガン 10 チームワーク 11 にほんばれ 17 まもる 19 ギガドレイン 20 しんぴのまもり 21 やつあたり 22 ソーラービーム 26 じしん 27 おんがえし 28 あなをほる 32 かげぶんしん 33 リフレクター 36 ヘドロばくだん? 43 ひみつのちから 44 ねむる 45 れいげき 48 スキルスワップ 49 よめしゅぎょう 覚える秘伝マシン 01 いあいぎり 05 フラッシュ 倒すと獲得できる努力値 HP +3 育成例
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竹取り男とゆっくり 10(最終回・前編) *登場人物 男・・・主人公。竹切って売って生活してる人。餡子好き。 甘味屋の店主・・・ゆっくり饅頭を売ってる人。虐待好き。 ゆっくり全般・・・ヒロイン(笑) *最終回です。ここまでお付き合いくださったみなさま、本当にありがとう! 「ここをあけるのぜ!」 「ゆっくりしないででてくるんだぜ!」 2匹のゆっくりまりさが、石を咥えて男の家の窓に体当たりしていた。 ぱちゅりーとれいむは道中まりさたちに追いつかれながらも、子れいむと子ぱちぇを守ってなんとか家の中まで逃げのびることができた。 そうして今、怯える子ゆっくりを勇気づけながら男の帰りを心待ちにしていた。 「でてこないならかんがえがあるのぜ?」 「ゆっへっへ、このはたけをめちゃくちゃにしてやるぜ!」 まりさたちは下品な笑い声をあげながら菜園に跳ねていくと、おおきな白菜に齧りついた。 「やめてね! ゆっくりやめてね! それはおにいさんのおやさいだよ!」 「ゆげっへぇ、やめてほしかったらでてくるのぜ!」 「ぐーちゃぐーちゃ…ぐーちゃぐーちゃ…これめっちゃうっめ!」 男のために育てた白菜を食い散らかされ、れいむは悔しさに涙をにじませた。 このままでは全部食べられてしまうと思ったれいむは、ぱちゅりーの制止をふり切って飛び出した。 「ゆがーっ!! はたけをあらすまりさはゆっくりしねええ!!」 ぱちゅりーはあわてた。 敵のまりさはれいむと同じバスケットボール・サイズ。 体当たりが武器のゆっくりは体の大きさと攻撃力が比例するため、数の多いほうが有利だ。 ぱちゅりーは覚悟を決めた。 「むきゅ、こどもたち、ここからうごいたらだめよ」 「む…きゅ?」 「おかーさん、どこいくの?」 「れいむおかーさんをたすけてくるの。なにがあってもここでゆっくりしてるのよ?」 そうしてぱちゅりーはれいむに加勢するために飛びだした。 2匹と2匹は互角に戦っていたが、男に飼われて栄養状態の良いぱちゅりーとれいむは徐々にまりさたちを圧倒していった。 「ゆっ! かてるよ! まりさたちをゆっくりやっつけようね!」 よろける敵を見て歓声を上げたれいむ。だが、ぱちゅりーはある光景を目にして硬直した。 「ゆげっへっへっへっ、ぼっこぼっこにしてやんぜ!」 茂みの向こうから現れたのは、4匹の新手のゆっくりまりさだった。 タケノコを掘り終えたドスまりさ偵察隊のガングロぱちゅりーが応援をよこしたのである。 「ぱちぇ……れいむはとってもゆっくりできたよ」 「むきゅ?」 「れいむはね……ぱちぇとおちびちゃんとおにいさんと、いっぱいゆっくりできたよ」 突然なにを言いだすのか、ぱちゅりーにはれいむの意図がよくわからなかった。 「だからこんどは、れいむのゆっくりをぱちぇにあげるよ! ぱちぇはさっさとにげてね!」 「むきゅう!? なにをいうの!? ぱちぇもいっしょにたたかうわ!」 「ぱちぇはにげて、おにいさんをよんできてね! れいむはここでゆっくりまってるよ!」 ぱちゅりーは揺らいだ。 おうちに子供を残している以上、ここから逃げることはできない。 だが、二人でまりさたちに勝ち目のない戦いを挑むよりは、片方が一刻もはやく男を呼びに行ったほうが助かるかもしれない。 ……でも、本当にいいのだろうか? ……そのあいだに、れいむがやられてしまったら? ぱちゅりーはどうするべきか迷った。だが、事態はぱちゅりーに時間を与えなかった。 「まりさがくるよ! ぱちゅりーさよなら! ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」 まりさたちが横から叫んだ。 「ゆゆ? まりさはかんけいないでしょ! じゃましないでね!」 「ち、ちがうのぜっ!! いまのはひとりごとなのぜ!!」 敵にご挨拶してしまったまりさたちは赤面した。 「むきゅ、わかったわ! れいむもしなないでね! ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」 あぁ…餡子脳。 餡に練りこまれた本能にあらがえず、逃げるぱちゅりーまで笑顔で見送ってしまう。 「だからまりさはかんけいないでしょお!? "ふうふ"のあいだにはいってこないでね! ぷんぷん!」 「ち、ちがっ! いまのはっ……………………ゆがーーーーーっ!!!」 羞恥心で真っ赤なまりさたちが歯茎をヒン剥いた。 「「「「「「でいぶぅ!! ゆっぐりじねええええええええええ!!!」」」」」」 襲いくる6匹の凶暴なまりさ。 れいむはプク~ッと体をふくらませて立ち向かった。 * * * …男が山の麓までたどりついたそのとき。 斜面を転がり落ちてきた全身土まみれ、生クリームまみれのぱちゅりーと出会った。 幸運だった。 もう少し遅ければ、物言わぬ饅頭と化したぱちゅりーと再会する運命にあっただろう…。 男は咳こんでいるぱちゅりーを抱きかかえると、山の中腹にある家を目ざした。 れいむと別れ、約半刻…。 ぱちゅりーは男の腕の中でれいむの無事を祈りつづけた。 だが、幸運はつづかなかった。 メチャクチャに荒らされた菜園、割れた窓ガラス、そして…………無数の茎を生やして朽ち果てた黒いかたまり。 まりさたちの影はすでに消えていた。 「れいむ!!」 震える手でそれに触れると、苦しみをはりつけた亡骸が砂のように散った。 「おにいさん、こどもたちは!?」 男は弾かれたように立ちあがると、割れた窓を蹴り倒して家に入った。 そして名前を呼びながら食料庫に入ったとき、視界の隅でなにかが動いた。 「チビ! 無事だったか!?」 残念ながらそれは1匹のまりさだった。 おなかが減ったので群れに戻らず、白菜を食べてゆっくりしていたのだった。 「てめぇ…!」 「ゆひぃ! ゆ、ゆっくりびっくりしたぜ!」 「2匹のチビはどうした。正直に言わねえと…」 「ゆっへっへ、このまりささまにそんなくちをきくなんて、みのほどしらずもいいところだぜ! "たいあたりぢごく"におとしてやるぜ!」 「やってみろ」 「ばかなじじいだぜ! ゆっくりしねぇ!!」 ビシッ!! 「ゆげええええええ!!? ぶぎゃんっ!!!!」 男のビンタ一発ではね飛ばされたまりさは、壁に叩きつけられてからツツーッと餡子の線を引いて落ちていった。 「ゆげぇっ…だ、だめぇじがおおきすぎるぜ…………ゆげぇぇ!」 男は餡子を吐いているまりさに近づいていった。 「ゆ゙っ!? ば、ばでぃざがわるかったんだぜ! ばでぃざはゆっぐりはんせーしてるんだぜ! だからこっちこないでねっ!」 バチン! バチン! バッチィン!! 「ゆぶっ!? ゆぶゔっ!! ぎゅぶゔゔゔっっ!!! ………………ゆぐっ……おぶっ……ゆぷぷぷっ」 「もう一度聞くぞ。2匹のチビはどこだ」 「しょうじきにいうがら……ばっちんはやべでぐれだぜ……こ、こどぼは…ながまがつれてったんだぜ…」 「どこにだ」 「ばぢゅじーのところだぜ…ばぢゅじーはどすのさんぼうで…どすはまだきてないけど…ばぢゅじーは"ていさつたい"をひきいてて……」 まりさの話では…街に向かっていたドスまりさの一群は、途中である野良ゆっくりからタケノコの噂を聞いたらしかった。 ドスはたいへん美食家らしく、さっそくこの山にぱちゅりー率いる偵察隊をよこしたが、渋くてマズいタケノコしか見つからなかった。 そんなおり、土の中のタケノコを掘りだして美味しそうに食べているれいむ一家を見つけた。 偵察隊長ぱちゅりーは土の中にこそおいしいタケノコがあるのだと知り、それを見つけられる子れいむと子ぱちぇを拉致させたという。 …ビンタされて顔をパンパンに腫らしたまりさは、命惜しさに聞かれてもいないことまでペラペラしゃべっていた。 「ぞういえば…ここのおやざいざんはすごくおいじぐて…まりささまはしあわせだったぜ…」 「"びゆっくり"なれいむともずっぎりできで…まりささまへぶんじょうたいだぜ…」 「ついでに…そこにいるびぱちゅりーと…ずっぎりしてみたいぜ…」 男は無言で睨みつけていた。 「ゆっ…これでぜんぶだぜ……ぜんぶはいたから…まりささまはびぱちゅりーといっしょに…ゆっくりむれにかえるぜ…」 「待て。お前にはもうひとつ吐いてもらうものがある」 「ゆ…? すなおでしょうじきなまりささまは…いまならなんでもはくぜ…?」 「吐いてもらうのは…………てめぇの餡子だこのクソがッ!!!」 ブチャアァァァッ!!! 「ぷゆげえっ!!!!????」 渾身の力でブン殴った瞬間、まりさの体が破裂して餡子を盛大にぶちまけた。 れいむとぱちゅりーが育てた白菜の上に、まりさの黒い餡子が点々と振りかかった。 男はぱちゅりーを抱いて庭に出ると、朽ちたれいむを葬ってやった。 こんもりと盛り上げた土の上に竹の切り株を立てる。 墓前には、れいむが育てた白菜と、大好きだったタケノコ…。 ぱちゅりーは大粒の涙を浮かべていた。 『ゆっくり……たけをかっていってね!』 思うように竹が売れなかったあの日、れいむが街の人々にかけてくれた言葉がよみがえる。 たぶんあのとき、男とれいむのあいだに最初の絆が生まれたのだろう。 最初は生意気でワガママだったれいむ…。 「一緒に暮らして子供もできて…だんだんいいゆっくりになってきたのにな」 饅頭が天国に行けるのかは知らないが、男はれいむが安らかに眠れるように祈った。 それが終わると、準備にとりかかった。 ドスまりさを迎え撃つのだ。 * * * 時刻は午後2時。 初春の太陽はやや西へと傾いていた。 明るい陽ざしの下、200匹はくだらないと思われる群れの中心に、ひときわ巨大な影。 これが本隊。そして中央にいるのがドスまりさだった。 「どす、ここが"たけとりやま"よ」 隣にいた直属の部下・ありすがドスを見上げて言った。 ありすの体は並外れて大きく、体長1メートル以上はある。 だが、それを遥かにしのぐのがドスまりさだ。 長い年月を生きてきたということは、後ろ髪にビッシリと結わえられた飾りを見ても明らかだった。 ドスだけではない。ありすも含め、この群れのゆっくりは総じて体が大きかった。 食糧にも困らずヌクヌクとゆっくりしてきた証拠だろう。 すなわち、このドスの管理能力がすぐれていることを意味する。 「ゆ゙ふぅぅぅっ! ありすしょうぐんんん? ぱちぇはまだかえってこないのおおおお!?」 「たぶんもうすぐ……ゆ! どす、ぱちゅりーがかえってきたわ!」 妙に間延びした声でたずねていると、山の上から偵察隊を率いていたガングロぱちゅりーと十数匹のまりさが戻ってきた。 「むきゅ、いまもどったわ」 「ゆ゙ふぅぅぅっ! おそいよおおお! ゆっくりしすぎだよおおおおお!」 「むっきゅっきゅ。そのかわり、たけのこをみつけるぎじゅつをうばったわ」 「ゆ゙っふん! こどものことだねえ!? ぱちぇはおてがらだよお! こどもはどうしたのお!?」 「ごうもんにかけたわ。あと、にんげんがすんでるみたいだわ」 ぱちゅりーの「にんげん」という言葉に、ドスたちは色めき立った。 「ゆ゙ゆ゙ううっ!? にんげんはいないってきいてたよおおお?」 「むっきゅ、たったひとりよ。どすのてきじゃないわ」 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っ、それならかんたんだねええ! いつもどおり、じゃまなにんげんはゆっくりぶっとばそうねええええ!!」 ドスは全身をブルンブルン震わせて武者震いした。 「ゆ゙ふんっ! それじゃあみんなぁ、ゆっくりぜんしんするよおおおおおおおおおおおお!!!」 「「「「「「「「ゆーーーーーっ」」」」」」」」 ドスの群れは、雲霞のごとく広がってゆぅゆぅと山を登りはじめた。 * * * 「むっきゅ!? おにいさん!!」 「来たか…」 窓の外を見ると、竹林の向こうから無数のまるい影がぞくぞくと近づいてくる。 大きいのから小さいのまで多くのゆっくりがひしめいており、それはそれは不気味だった。 男は武器を入れた布袋を体に巻いた。 「ゆ゙ふぅっ! おうちのなかのにんげんにつぐよおおお! ちょっとそとにでてきてぇ、どすとゆっくり"おちゃ"しようねえええええ!」 「お茶ってどこのナンパ野郎……げえっ、まりさ!?」 初めてドスまりさを見た男。 デカイデカイとは聞いていたが、こんなに巨大なゆっくりがいることに愕然とした。 うす汚れた巨大な帽子、たゆんたゆん揺れる巨大な下あご、ニンマリ笑った巨大な口、だだ漏れの涎…。 男は総毛立った。 「おいぱちゅりー、あれホントに饅頭か?」 「むきゅ、あれがどすまりさよ。でもちょっとおおきすぎるわ。ぱちゅりーのよそうがただしければ、じゅうごさいぐらいだとおもうわ」 だれも家から出てこないので、ドスはありす将軍に目配せした。 すると、十数匹の成体ありすが道中掘りだしたタケノコを咥えてきて、家の前で盛大にタケノコパーティーをはじめた。 まぎれもない挑発だ。 「あぁぁ、俺の収入源が…」 「むきゅう…?」 ドスまりさに関する知識を持つぱちゅりーは首を(無いけど)かしげた。 力を見せつけてくるならまだしも、こんな些細な挑発をしかけてくるのは妙だ。 そうこう考えているうちに、ドスは再度呼びかけてきた。 「ゆ゙ふぅっ! あんしんしてねえ! どすたちはひどいことをするつもりはないんだよお! ちょっときょうていをむすんでほしいだけだよおおおお!」 「饅頭と協定だと!? バカにしてら!! あの醜いツラのデカ饅め、下っ腹ひっぱたいてやる!!」 「むきゅっ、おにいさんおちついて! ちょうはつにのっちゃだめよ!」 だが、男はぱちゅりーを抱いて飛びだした。 家を囲んでいたゆっくりたちがニヤニヤと笑った。 男とぱちゅりーが見たのは憎らしい笑顔のドスまりさではなく、太陽が地上に落ちたかと見まごうようなまばゆい光だった。 「おにいさん!! にげてえっ!!」 男は反射的に飛んだ。 同時に、ドスまりさの口から強光度の波動が放射される。 直撃を受けた男の家は凄まじい大爆発を起こし、爆風は周囲の竹林を一挙に薙ぎ倒した。 燃えさかる火炎と黒い煙…… ドスまりさは満足な表情を浮かべて、その惨状に見入っていた。 間一髪、ぱちゅりーの叫びで直撃をまぬがれたものの、爆風にあおられて数分間意識を失っていた男は頭を振って周囲を見まわした。 「ゆ゙っふん? ぶじだったみたいだねえええ!」 声のほうに視線をやると、ドスまりさがニヤニヤしていた。 「こんちくしょう…クソ饅頭め…」 軽い脳震盪を起こして視界がかすんでいる。 しかも抱いていたぱちゅりーがいない。 「ぱちゅりー…ぱちゅりーはどこだ! ドスまりさ! チビ2匹も返せ!!」 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っ! ぱちぇぇ、めいどのおみやげにみせてあげるといいよおおお!」 参謀のガングロぱちゅりーが咥えてきたのは、生クリームを垂らしてボロボロになった男のぱちゅりーだった。 …ぱちゅりーがぱちゅりーを咥えているのは意外とレアな光景だ。 「くっ…チビはどうした!?」 さらわれた子れいむと子ぱちぇも連れてこられたが、さんざん拷問されたせいですでに中身を流し尽くしていた。 「てめぇら…れいむだけじゃなく子供まで…」 「ゆ゙ーっゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」 「協定とか言ってたのはどういうわけだよ…」 「ゆ゙ふんっ! なにいってるのお? ここはどすたちがみつけたゆっくりぷれいすだよおお! きょうていなんてむすぶひつようないでしょおおお!」 家どころか、山ひとつおうち宣言したドスまりさ。 「このやろう…じゃあハナッから不意打ちねらいだったわけか…」 「ゆ゙ーっゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!! ゆ゙ーっゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」 そう…このドスまりさは確実に男にドスパークを当てるため、「協定」を口実として家から誘い出したのだった。 もともと協定を結ぶつもりなどなかったのだ。 「聞いたぞ…なんで里を潰して回ってるんだ。てめぇらが住んでた場所でおとなしく暮らしてりゃいいじゃねえか!」 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っ! じじぃはばかだねえ! どすは"ぐるめ"なんだよお!? まいにちおんなじごはんじゃあきちゃうでしょおおおお!!?」 「ガキかっ! 計画的に食べりゃいいじゃねえか! 俺だって捕まえたれいむとまりさとありすを分別して、その日の気分で食べ分けてるんだ!」 「ゆ゙っふん!! それだけじゃないよお!! どすは"たいしょくかん"だし、むれもおおきいからごはんなんかすぐになくなっちゃうんだよおおお!!」 「ばっかやろ! それだってちゃんと計画的に…」 そこまで言って、男は悟った。 こいつらはイナゴだ……と。 これだけ強力なドスまりさが後ろ供えしていれば、数にまかせて遮二無二突撃すれば小さな里の住人ぐらいなら追い出すこともできる。 そうして人里を襲っては田畑を食い荒らし、食い潰すと次の里を襲ってまた食い荒らす…。 それを延々とくり返しながら、群れをここまで肥大させてきたのだ。 限りある食糧を計画的に食べて群れを維持しようとするドスもいれば、力をふるって無限の食糧を手に入れようとするドスもいるのだった。 「くっそ……ぱちゅりー! ぱちゅりぃ!!」 男の呼びかけに、気を失っていたぱちゅりーが目を覚ました。 「むきゅ……おにいさ……」 「無事か!? 今助けてやるからな!!」 「おにいさん……ぶじなのね……?」 「あぁ、お前のおかげで助かったぜ」 「むきゅーーーん! おにいさぶぎゅうぅぅぅっ!!?」 希望に輝いたぱちゅりーの顔が、突如苦痛にゆがんだ。 山のようなドスまりさがニヤニヤしながら、ぱちゅりーの小さな体にのしかかっていたのだった。 「やめろ!! ぱちゅりーを放せ!!」 「ぶぎゅっ、ぶぎええ!!! ごぼっごぼっ!!!」 「ゆ゙ーっゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!! にんげんはうごいちゃだめだよおおお!! うごいたらぱちゅりーをつぶしちゃうよおおおお!?」 ドスまりさは少しずつ少しずつ、弄るようにぱちゅりーを潰してゆく。 「ぶぎゅゔゔゔゔっ!!」 「わかった! 動かないから……頼む!! そいつは助けてやってくれ!! 頼むっ!!」 男は懇願したが、ドスまりさは無言だった。 「この山が欲しけりゃくれてやる!! タケノコでもなんでも好きなだけ掘りゃあいい!! だから…!!」 ドスまりさが身を引いた。 「ぱちゅりー!!」 男はよろめきながら、ぱちゅりーのもとへ駆けつけた。 「ぱちゅりー!! しっかりしろ!!」 「おに…い……げぼぉぉ!」 「死ぬな! お前まで死んだら…」 「む…ぎゅ…」 ほんの少し動かしただけで、ぱちゅりーは咳きこんで中身をぶちまけた。 もう長くないことは明らかだった。 男は泣いた。 ゆっくりのために泣くなんて、つい最近まで考えられなかった。 「ごめんなさ…ぱちぇのぶんまで…ゆっくり……ごぶっ! ぎゅぶぅっ!」 「ぱちゅりー…!」 「む…ぎゅ…」 「おまえ…いいやつだったよ…いいゆっくりだった…」 「…………」 「れいむも、チビも、本当にいいゆっくりだった…」 「…………」 「おまえらなら、次は人間にだって生まれ変われるかもな」 「きゅ…?」 「人間でもいい、ゆっくりのままでもいい。もし生まれ変わって、俺のこと覚えててくれたら…」 「む…きゅ…」 「みんなを連れて、もう一度俺のところに来てくれ」 「…っ!? む…きゅぅぅぅぅぅん…!!」 ぱちゅりーの目から、とめどなく涙があふれた。 「ぱちぇ、きっと…え゙ほっえ゙ほっ…にんげんさんにうまれかわるわ! おにいさんと…ごぽっ…おともだちに…なるわ! きっと…!」 「そうだ、人間に生まれてこい…! 友達でも何にでもなってやる…!」 「むきゅぅぅん…おにいさん…ぱちぇって…よんでほしいの…」 「ぱちぇ…」 ぱちゅりーはもう一度、男に「ぱちぇ」の呼称を許した。 そしてニッコリと微笑んだ。 生クリームの中に満ちているのは、初めて男と出会ったあの日…。 思い出だけではない。 あのときの想いもまた、よみがえった。 *(第4話) 前回はこのあたりで裏切られた上に、『メスブタ饅頭』とまで罵られたものだったが、 ……ぱちゅりーは死ぬけど、今度は人間さんに生まれたい。 ……また、おにいさんと逢うために。 来世の約束をつむぐため、ぱちゅりーは薄れゆく意識を必死に保ちながらたずねた。 「おにいさん……こんどはぱちぇを……およめさんにしてくれる?」 「友達以上、恋人未満な」 ぱちゅりーは一瞬微妙な顔になったが… 「むきゅきゅっ…それでいいわ…ありがとぅ…………おにいさん…もういちど…ぱちぇって…………………………」 ………………その先は、永遠に閉ざされてしまった。 ぱちゅりーの体から、最後の生クリームが飛び散った。 呆然と上を見上げると、タイミングをはかってぱちゅりーにトドメを刺したドスまりさが、ニタニタ笑いながら男を見下ろしていた。 そして潰れたぱちゅりーを踏みにじるように、太った下あごを揺らした。 「お゙お゙お゙お゙お゙……お゙あ゙あ゙あ゙あ゙……っ!!」 男は紫色の帽子に顔を押しつけてむせび泣いた。 そんな姿に、ゆっくりたちは潮のように嘲笑を浴びせた。 「ゆ゙ーっゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!!」 「いいきみだわ!」 「いなかものらしいさいごね!!」 「にんげんとなかよくするぱちゅりーとはゆっくりできないよ!!」 「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!」 「このじじぃないてるよ?」 「こんなぱちゅりーといっしょにいたなんて、じじぃはばかなの!? しぬの!? なまくりーむふぇちなの!?」 「きっとふぇちなんだよ!! ゆっくりしね!!」 「さっさとしね!!」 「「「「「「「「ゆっくりしねえ!!!!!」」」」」」」」 「ぱちぇ…」 男の耳にはなにも届いていなかった。 男は震える手で、顔についた生クリームの飛沫をこすって、口に入れた。 「マズ…」 それは、ものすごくマズかった。 マズくてマズくて、まるでパサパサしていて、賞味期限が切れて1年も経ったメレンゲのようだった。 男は嬉しさに震えた。 つまり、ぱちゅりーは幸せのまま、逝ったのだ…………。 不意に男が立ちあがった。 群れのゆっくりはビクッと震え、一瞬だけ押し黙った。 ズバアァァァァァムッ!! 「ゆぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!??」 油断してノコノコ近くに寄ってきて悪態をついていたゆっくりまりさに、男のジャーマン・スープレックスが炸裂した! よほどの衝撃だったらしい。 脳天から地面に叩き落とされたまりさは、平べったく変形したまま、泡を噴いてピクピク痙攣していた。 男は腹筋の力だけで、音もなく体勢を戻した。 ブシャッ! ぷしゅうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ… 地面にめりこんだ圧力で、まりさのあにゃるから餡子が噴水のように噴き上がった。 ガングロぱちゅりーが叫んだ。 「むきゅう!! みんなきをつけて! このにんげんはぎゃくたいおにいさんよ!」 「違う、虐待じゃない」 「むきゅ?」 「俺は……虐殺お兄さんだ!!!! ヒャッハァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!!」 (中編)?へ
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「ゆっくりしていってね!!!」 うだるような暑さの中、縁側でボーっとしていた俺の近くでそんな声が聞こえてきた。 「ん?」 暑さでまいっている体を無理矢理動かして、声の下方向を向くと、そこにはゆっくり一家の姿が有った。 「なんだ。ゆっくりか。どうしたんだ?」 「ゆっくりしてたらここについたんだよ!!!」 「おにーさん!! ここはいまからまりさたちがあそぶから、おじさんはじゃましないでね!!!」 「はいはい」 生憎熱くてそんな気は起きない。 しかも俺に虐待の趣味はない。 「ゆっくり~~~♪ していってね~~~♪」 「ゆ~~♪ っくり~~~していってね~~~~♪」 「「「ゆ~~!! おか~しゃんたちすぎょ~~い!!!!」」」 こんな暑い中、良くそんなにはしゃいでられるなぁ。 「ゆゆ!! おに~さん!! それはなぁに?」 一匹の赤ちゃん魔理沙が、俺の足元までやってくると興味津々なご様子で尋ねてきた。 「これは、桶に水を張ってるんだよ。こうすると涼しいんだよ」 それでも熱くなっていた。 ……ぬるいな……。 「ゆゆ!! おにーーさん!! これもれいむたちがあそぶよ!! だからどいてね!!」 「そうだよ!! あかちゃんたちがあついあついしてるからすずしくさせるんだよ!!!」 ……、いや涼しくって言ってもなぁ。 「お前等が水の中に入ったら解けちまうだろ?」 「はぁ? おにーさんばかなの? れいむたちがとけるわけないよ?」 「ぷぷぷ!! おにーさんはばかなんだね!! だからこんなところでぼーっとしてるんだね!!!」 何言ってんだ? もしかして今まで川や湖に言った事がないのか? 「お前等は知らないのかもしれないけどゆっくりはかわやm……」 「うるさいよ!! れいむとまりさがだいじょうぶっていってるんだよ!!」 「そうだよ!! このみずはぬるいから、さっさとあたらしみずをくんできてね!!!」 「「「ばかにゃおにーしゃん!! はやくちてね!!!」」」 ……。 どうなっても知らないぞ。 ―― 「ほら、汲んできてやったぞ!」 「ゆ!! おそいよ!! やっぱりおにーさんはがかなんだね!!!」 「そうだね!! もっとてきぱきとうごいてね!!!」 ぶつくさ文句を言いながら、桶の周りに赤ちゃんを集める母親達。 「ゆっくりはいってね」 「ゆっくりはいりゅよ!!!」 ザッブゥ~~ン 景気の良い音を出して、岡ちゃんゆっくり達が中へ飛び込んでいく。 「ゆ~~~♪ つめたくてきもちい~よ♪」 「しあわせ~~~~♪」 何とも気持ち良さそうな表情を見せてくる赤ちゃん達。 「ゆゆ!! よかったね!! おにーさん!! どこにとけてるあかちゃんがいるの?」 「やっぱりばかだね!! まりさたちのほうがあたまがいいみたいだね!!!」 得意げな顔を俺に向けてくる母親。 仕方がないから、このまま様子を見届けてやろう。 「ゆ!! こうするともっときもちい~よ!! ぴゅ~~~♪」 「ゆっゆ!! ちゅべた~い!!」 「おか~しゃん!! こっちにもやっちぇね!!!」 「ぴゅ~~♪」 「ゆっゆ♪」 水を口に含んで、赤ちゃん達にかけ始めたのはお母さん魔理沙だった。 「ゆっゆ!! おに~さんはばかだね~~♪」 そして、そんな事を言いながらずっと俺を見続けているのはお母さん霊夢。 まさしく、下等なモノを見下すような表情で俺の事を見ている。 ―― 「ゆ~~~♪ ゆ~~~♪」 「ゆっゆ~~~~♪」 それから十分ほど経っただろうか? 相変わらず赤ちゃん達は元気に桶の中ではしゃぎ回っている。 「ぴゅ~~~♪」 そして、水をかけ続けるお母さん魔理沙と。 「ゆっゆ~~~♪ あかちゃんはれいむたちみたいにりこ~だね~~~♪」 俺から視線を外したが、未だに勝ち誇ったような表情をしているお母さん霊夢。 いずれも楽しそうな表情の親子がそこに居た。 「……!! ゆ? ゆゆ!!!」 最初に表情を変えたのは赤ちゃん達だった。 「おか~~しゃん!! なにかへんじゃよ!!」 「からじゃがへんだよ!!!」 「ゆ? きっとおみずがあったまってきたんだね!! さっさとばかなおにーさんにかえさせるから、いっかいあがってね!!!」 俺に、と言う事は聞き流すとして、やはりこの危機に気付いていないお母さん魔理沙は、赤ちゃん達に上がってこいと命じた。 「ゆ!! あぎゃりゅよ!! ……ゆ~~~、ゆ゛!!!」 「? あああああ!!!!! あがじゃんがーーー!! どーーーじでーーー!!!」 水から上がり、桶の縁に体を乗せた瞬間、柔らかくなった体が破れ、どろどろと餡子が流れ出していく。 「ゆーー!! おがーーしゃーーん!!!!」 見れば、あっちでもこっちでも赤ちゃんは餡子を流しながら絶命していく。 残っているのは、その様子に驚いて桶の中に戻った数匹だけだ。 「ゆーーー!! どうじでーーー!! れいむのあがじゃんたじがーーー!!!」 「なんでーー!! さっきまでゆっくりしてたのにーーー!!!!」 先ほどの表情とは打って変わって、顔を真っ赤にして泣き叫んでいる母親達。 その目線の先には残った赤ちゃん。 「そのままうごかないでね!! ゆっくりそこにいてね!!!」 「うごいたらだめだよ!! いまおかーさんたちがゆくりかんがえるからね!!!」 「ゆーー!! わぎゃっだーーー!!!」 「ここでゆっぎゅりじでるーー!!!」 桶に赤ちゃんを入れたまま、うんうん言いながら考え続けている。 でも、そろそろ時間切れだろう。 「ゆーーー!! おがーーしゃーーん!!」 「れーみゅのからじゃがとげでるーー!!!」 「どどどどどどうじでーーーーー!!!!!!」 「あああああ!!! まっででね!! いまだすげるよ!!!!!」 桶の中で解けていく赤ちゃん達を救うために、お母さん魔理沙が桶の中へ飛び込んだ。 「ゆっくりこのなかにはいってね!!」 大きな口を開け、中に赤ちゃんを入れる。 「ゆ!! いまそとにでるから……ね?」 ああ、どうやら口の中で解けちゃったらしい。 今頃、口の中には餡子の味が広がっているんだろーな。 「……? まりざーーー!! ど^じだのーー?」 「ゆゆゆ!! あがじゃんが!! まりざのぐちのなかでとげじゃっだーーー!!!」 「ゆゆゆ!!!! どーじでーーー!!!!!」 「わがらないーーーーー!!!!!」 「水の中に入ったからに決まってるだろ」 この様子じゃ、何時まで立っても頭を抱え込んでいそうなので、代わりに説明してやる。 納得するかどうかは別として。 「ゆゆ!! おにーざんはがかだよ!! れーむたちがとげるわけないもん!!!」 「ぞーだよ!! きっどおにーさんがおみずになにがいれたんだよーー!!!」 「ゆゆ!! そんなごとするおにーざんはゆっぐりしねーーーー!!!!」 「まりさたちのあがじゃんに、ひどいことをしたあにーざんはゆっぐりしねーーー!!!」 やっぱり、こいつ等に説明しても無駄だったか。 「それなら、お前等が川に入ってみたらどうだ? それで解けなかったら、おれがした事にしても良いぞ?」 この方法は使いたくなかったが、仕方あるまい。 「ゆ!! ばかなおにーざんだね!! ぞんなこどしなぐでもきまっでるのに!!」 「そうだね!! でも、せっがくだがらまりっさだちがつぎあってあげるよ!!!」 未だ泣き喚く二匹の後を追って近所の川へ、見つけた瞬間に二匹は勢い良く飛び込んでいった。 「ゆ~~~♪ れいむたちはとけてないよ!!」 「そうだよ!! やっぱりおにーさんはうそつきのおおばかものだね!!!」 入った途端にいち早く勝利の表情を浮かべて、再び俺を罵倒し始める。 でも、桶と違い流れの速いこの川では、その時間もあまり残っていなかった。 「? ゆゆ!! れーむのからだがとけてるよ!!」 「!! まりしゃのからだも!! なんで?どーじでーーー!!!!」 「だから初めに言ったじゃないか。解けるぞって」 「「!!!!」」 ここまで来て、漸く二匹は新しい知識を身につけたらしい。 しかし、それを活用する機会はもう無い。 「ゆーーー!! おにーーさんたずけでーーー!!!」 「にんげんはおよげるんでしょ? まりさたちをはやくたすけてーー!!!」 既に半分解け始めている体を酷使し、大声で俺に助けを求めてきた。 「おにーさんはばかだから、およぎかたなんてしりませーーーん!!!」 「!! ぞんなごどないよーーー!! おにーさんはれいむたちがとけることをしっでだよーーー!!!」 「あたまがいいおにーさん!! まりさたちをたすけでーーー!!!!」 もう無理だ。 あの状態ですくい上げても、自重で餡子が溶け出すだろう。 「あああーーー!! れいむのながみがでてるーーー!!!!」 「まりざのながみもーーーー!!!!!」 断末魔を聞くのは忍びないので、俺は静かにその場を後にした。 「「ゆっぐりしたけっかがこれだよーーーー!!!!!」」 家に帰った俺は、好物の鍋焼きうどんをゆっくりパチュリーと一緒に啜った。 「むきゅ!! ばかはしななきゃなおらないのよ!!!」 このSSに感想を付ける
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声優 あ行検索 名前:上田 のりこ よみ:うえだ のりこ 性別:女性 誕生日:12月30日 出身地:神奈川県 血液型:- 所属:賢プロダクション 出演作品 2012 TV - BTOOOM! - アリサ 関連商品 声優 あ行検索