約 1,198,822 件
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/776.html
――――Interlude/4 The white and snow will cover over the town. 空にある雲は重く、抱え込んだものを今にも手放しそう。濡れた綿菓子、いつ街を白く染めるのか。 しかし町中が雪に覆われたとすれば、自分には保護色ということになるのだろうか? つまらぬ考えを弄び、白い騎士は笑う。 「アーチャー、七体目か。あれもまた手ごわそうな奴だったな」 戦いを覗いたのは僅かな間なれど、アーチャーの強さの程は感じ取れる。恐らく総合力では自分を超えるだろう。しかし悲観することはない。あの強さは利用できよう。 最も警戒すべきはセイバー。結論はやはり変わらない。対抗するため、主に共同戦線を薦めた判断に間違いはない。 アサシンを除く敵の強さは掌握、全て出揃ったこれより先は、戦全体の絵図を如何に描くかの勝負となろう。その点においては右に出る者なしとの自負がある。 「如何に強力な英霊といっても屠る自信はある……が、切れるカードは多い方がいい。集めた手札、どれを使い、どれを残すか」 白の騎士は親指を舐める。己が目指す道を拓く、その叡智を求めて。彼の本懐は―― 1:かつての失いし無念、愛の成就を 2:罪せめて滅ぼし、主の願いを かつての悔悟は消えない。忘れることはない。 彼を主と慕い、彼のために刃を捧げた騎士よ。彼から花嫁を奪った男。激しく憎んだこともあった。その首を切り落としてやろうと思ったこともあった。 けれど最後には許したのだ。彼の忠節は消えず、常に誠実であろうとし続けたのだと理解して。 ああ、なのに、どうして。どうして、あの男の傷を癒してやれなかったのか――。どうして……己は水を掌中より零したのか――! 「贖罪にはならぬのかもしれぬ。だがな、魔貌の騎士よ、我が一部よ。ここに誓おう、必ずや勝利を得んことを。……それが――生涯を槍で築いた私なりの誠意であり、贖いだ」 彼は決意する。天地に賭けて誓う。 さあ、いずれ出会うべき敵たちよ。刮目するがいい。彼の槍の味を、その恐ろしさを知るがいい。彼の手から逃れる術などありはしない。ゆえに心に刻め、勝利の栄光を得るには一つ、彼に打ち勝つのみなのだと。 ――――Interlude out
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/693.html
Fate/Another Servant HeavensFeel 2 第三十七話ミニ劇場最終回 一同「「「カンパーーイ!! おつかれさまー!」」」 弓兵「ゴクゴクゴクゴクゴク……ぷっはぁあ! 実に酒がウマイわいガハハハ!」 闘士「いやぁ終わった……ついにASが終わったのだな! めでたいことだ」 剣士「バクバクガツガツバクバク! ゴクゴクゴクゴク! うまいおかわり!」 綾香「あ、すみません給仕さん、わたしにもジュースのおかわりをお願いします」 沙条「なんじゃ綾香よ、こういう宴席ぐらいハメを外してもよかろうて。真面目な娘じゃのぅ」 綾香「いいえお爺様。こんな危険地帯で酔うと何をされるか分かったものじゃないので遠慮します」 魔術「ボクもお願いできますか? せっかくですので日本の緑茶を」 ソフ「ひっく。おいキャスター、そこの未成年の娘はともかくキミも飲まないつもりかね?」 魔術「ええ。一応これでも敬虔な信仰の徒なので酒はなるべく控えているんですよ」 ソフ「やかますぃ~マスラーめいれいらぁ黙ってのめ~(グイグイ!」 魔術「ウボァ!?(ごっきゅごっきゅ!」 遠坂「いやはや我が邸がこれほど賑やかなのは久方振りだ。君達も本日は自由に寛ぎ楽しんで欲しい」 アイ「仇敵の施しを受けるつもりはないのだけれども今日だけは貴方の顔に泥を塗るのは控えておきましょう」 牧師「命拾いしたな魔術師。本来なら異端として処断するところだが今回は空気を読んでやる」 間桐「遠坂邸で打ち上げってのが気に入らないけどこの際我慢するか。 確かにめでたい席だ、ウチで開催して妖怪爺の面は見ながら酒は飲みたくない」 弓兵「ちゅーか、あの洋館は宴会に似つかわしい空気しとらんぞ。あの洋館で宴会なぞ陰気臭くなるわい」 騎兵「おいホスト、食い物は合格だがファラオに出せる美酒はきちんと取り揃えておるのだろうな?」 遠坂「勿論だ、こういう日の為にずっと寝かせて置いたとっておきワインがある。折角のめでたい宴席だそれも空けてしまおう」 狂戦「おーおー秘蔵の酒を開けるとはやるじゃねぇか小童! おれにも飲ませな! 久しぶりの酒の味が堪能できるぜ」 雨生「バーサーカーは理性なかったから味なんて認識出来なかったもんね」 槍兵「刺身はいずこに? お、あったあった(ひょいパクッ」 アイ「さ、魚を生で食べるなんて……アハトの仰った通りやはりニホンジンは野蛮人なのですね」 ソフ「いやぁたしかに気持ちわるい食文化れはあるが、れも意外とアジは悪くなかったぞ?」 剣士「好き嫌いはだめだぜルゼリウフ。サシミも結構うまいじゃん」 アイ「そもそもホムンクルスの私に食事は必要ありません」 剣士「うわっ、それ人生をとんでもなく損してるぞ?! うまいメシが食えないなんて兵の士気にも関わるじゃないか」 騎兵「おいしかしよくよく見るとこの宴席にはプロローグや途中で死んだ雑魚どもがいるではないか」 牧師「貴様はこんなところで何をしてるのかねトマスタァくん? 部外者は立ち入り禁止だった筈だが?」 トマ「………そこの小娘の爺や志士やら僧兵やらが参加してるんなら自分にだって打ち上げに参加する権利くらいあってもいいじゃないか(ボソボソ」 魔術「いやはやまさか完結するとは当時は思ってませんでしたよねぇ」 剣士「オレも絶対頓挫すると思ってた!」 綾香「2008年の9月に予告編みたいなものを投下して、本編を投下したのが10月。 だけど実際は何話分かの書き貯めしてたから執筆開始は6月頃ね。 ………びっくり。丸三年の長距離マラソンをきちんと完走しちゃったわ」 槍兵「ついにやり遂げたんでござるな(しんみり」 騎兵「俺様のルートを作っておけばこの三分の一の量で終わらせられただろうに。 ふん、ファラオの扱いが悪い天罰だ天罰!」 狂戦「つーかよぉ、うpろだとして使ってた斧にまだFateAS第一話目のテキストが残ってンぞ……」 雨生「それ本当バーサーカー? わおっ斧ってば長持ち過ぎるでしょ」 牧師「本当に残ってるな……なつかしいものだ。 連載開始当時はせいぜい多くて二十人程度に読ませる為に書いていたつもりだったのだが。 まとめサイトのカウンター見るとROM専入れたら少なくとも五十人くらいは見てたなこれは……。 その隠密性の高さを見込んで聖堂教会の斥候やらないか?」 代行「異端と殺し合いしたりスパイしたりするだけの簡単なお仕事さ! 我々と青春の血の汗を流してみないか?」 闘士「随分と血生臭い青春があったものだ…」 遠坂「それにしてもセカンドオーナーとして無事に?第二次聖杯戦争が終わって良かったよ」 間桐「あまり無事に、とは言えないと思うがねえ」 雨生「正直なトコ無事じゃないよな? 幕府軍と維新軍の斥候は全滅で後で騒ぎになるだろうし」 間桐「職務怠慢だろ遠坂、それでよくもまあ土地管理者なんて息巻いてられるもんだね」 遠坂「派手な無差別破壊と無差別殺人をやらかしてくれた君達が言うな! 君らの後始末にどれだけ私が手を焼かされたと思っている!?」 アイ「それを黙ってこなすのが管理者の役目ではなくって? アインツベルン家は聖杯儀式で出した損失を我々の懐から補填していてよ」 ソフ「そういえば彼女の生家アインツベルンの財力は途方のなかったのだったね」 弓兵「うぬぅ・・・なんという金銭格差じゃい…!」 剣士「ルゼリウフの実家ってすっげー金持ちなんだな。アスフォルトの家くらい持ってそうだ」 綾香「ちょ、ちょっと待ってよセイバー。アストルフォはどれだけ富豪だったの?」 剣士「ん~? アイツんち下手するとシャルル王より金持ちっぽかったぞ? オリヴィエ達が言うにはアストルフォは他のパラディンを凌駕する圧倒的財力とよくわかんねえけど各地の諸侯へのこねくしょん?を見出されてドゥーズペールの一角を担ってるんだってさ。オレたちの遠征の軍費はアストルフォが出してだぞ?」 闘士「く、国の軍費を一貴族が持ってただって…? どれだけ大富豪なのだ……」 綾香「呆れた…アストルフォが他の面々よりも弱っちぃのに十二騎士の一人でいられたわけよね……お金の力って凄いね」 間桐「で、なんでアンタらがいるわけ?」 教授「私が居ては不都合なのかね? これでも出番の回数はダントツだが。むしろ君達より多いくらいだ」 弟子「そうです酷いです! ある意味先生が一番の被害者なんですよ! だって言うのになんて言い草ですか!」 アイ「それは基本的に貴方に原因があるんじゃなくて?」 弟子「あれ? そうでしたっけ?」 槍兵「くぬぅ、下手をすると序盤で脱落してしまった拙者よりも出番がありそうなのが、くやしい…!(ビクビクッ!」 弟子「で、出たぁあ! 久方振りの敏感侍ネタがキターー!」 槍兵「あ、いや、あの……解説はやめて欲しかったり。 さり気なくやった冗談に真面目に反応されるとこっ恥ずかしいでござるからな……(ぽりぽり」 騎兵「してなんのようだ貴様? この前俺様の出番を散々カットしてくれた無礼、まさか忘れたと思うてか」 教授「待ちたまえ。君の出番をカットしたのは君のマスターだろう」 騎兵「…………………そういえば(じーーー」 牧師「…………………スタタタ!(牧師は華麗に逃げ出した」 騎兵「あ!! こら逃げるな牧師ッ!」 教授「まあ私はただお祝いの言葉を言いに来ただけだ。 これでも君らの顛末を最初から最後まで見守ってきたのだからね」 弟子「先生ってば普段ずっと嫌々言ってるのにすごく律儀だと思いません?」 槍兵「なるほどのう。これがつんでれってやつでござるか」 闘士「ほうほう、これがツンデレというヤツなのか? 奥が深いな」 弓兵「しかしワシ的にゃキレイなネーチャンならともかく野郎のツンデレは嬉しくもなんともないわなあ(鼻糞ホジホジ」 剣士「これツンデレなのか? なあオードは!? オードはツンデレなのか!?」 綾香「オードさんのどこにツンの要素があったのよ?? 二十四時間デレデレじゃないあの人。 ツンってセイバーを指先でツンツンするくらいしか思い浮かばな──」 剣士「ぐはっ! イイ、それスゴクイイぞアヤカ!(鼻血) オードオレだ結婚してくれーーー!」 弟子「だけど長かったですね、全三十七話ですか」 教授「AS本編のテキスト容量1,83MB超え(V&F sideを除く) ミニ劇場と鯖講座を合わせて480KB。 諸君、よぉく見ておくといい。これをマジ吉という!」 狂戦「単純計算しても一レス内にビッチリ文字書いて一スレ分の容量か。 しかもそれが本編じゃねえってどういうことなンだよ……本編だと四スレ分は使ってる計算になンのな」 教授「自分でもビックリだね。α版程度のつもりで書いてたのに」 魔術「α版!? まさかβ版があるとでも言うんですか!?」 間桐「じょ、冗談じゃねえぞ?! 死ね!」 教授「いや落ち着きたまえ、まだ書いてもいないし確定でもないんだが。 エクストラ、ゼロ、コンマテ2・3が出ていくつか聖杯戦争についての新情報も出たことだしちゃんと原作設定との整合性を合わせて、初期の頃のヘッタクソな文章を修正して、 全体的に不要で冗長な部分を丸々カットして、必要な部分継ぎ足して、完成度を高めたいなぁという希望はあったりする。 連載停止したならともかくまさかの完結を果たしちゃったからなぁアッハッハッハ。 まあとは言っても燃え尽きちゃったから暫らくその予定はないが、機会と時間があればやるかも程度の与太話さ」 闘士「ゴール出来た故の欲か」 遠坂「まあ確かに初期の頃の文章は今読み直すと我ながら読み難いと思ったな。 書いてる当時はそうでもなかったのだが……読者にこんなの読ませてたのか?(ガクブル」 牧師「書き方が分かってない感が物凄い。処女作で群像劇風な難易度の高いもの選択するからそうなる」 弟子「だって全員の活躍を平等に書きたかったんだもん……。 貴方達には分かるまい! 本編裏での活躍が尽くカットされてたランサー兄貴の悲しみが! ヘラクレスVSクーフーリンとか小次キャスVSヘラクレスとかすごく見たかったのにッ、キンニクぶる~んぶるん!」 教授「そういう画面に映らない舞台裏も見たいんだよコノヤロー!なコンセプトもあったからな。 一つの物語内で主人公を設定すると主人公を軸に話が進めざる得なくなるしね」 綾香「でも主人公は設定した方が絶対書くのは楽よね」 弟子「…………ハイ仰る通りでございます(しみじみ」 剣士「次はオレ主役な!」 騎兵「つまらぬ寝言を。人気を考えよ、俺様がぶっちぎりではないか」 闘士「ハリウッド的にはアクション物なら筋肉が一番らしいぞ?」 教授「僕鯖スレでみなでペルセウスを作り始めて一度挫折し、皆鯖スレが立ち上げられ、それ以降多くの笑いと怒りと情熱と嘆きと知恵と速度によって産み落とされた数々の皆鯖。 そしてその内の七騎を登場させて生まれた物語がこのFateASだ。 AS内の時間では一月程度の短いものだが、現実では三年もの時間が経過した。 三年といえば親戚に中学生や高校生がいる者ならその子が卒業しちゃったくらいの長い時間だ。 そんな長く貴重な時間の一部をわざわざ割いてこの物語の終わりまで付き合ってくれた事をとても嬉しく思う。 ましてや物語など書いたこともないド素人の処女作だ。文章も構成も読み易いとも言い難いものだった筈である。 しかし諸君は最後までそんな物語の顛末に興味を抱き、応援し、読み続けてくれた。 一同を代表して読者に感謝を述べたい。ありがとう、そしておつかれさま」 弟子「ありがとう、そしてありがとう!」 剣士「なあせっかくだしアンタが最後のタイトルコールやってくれよ。ある意味影の功労者だしさ!」 弟子「今ローランさんが良いこと言いました! 見直しましたよ俺!」 教授「私がか? ああわかった、ではやらせて貰おうか」 教授「────命を賭けるに値する願い。賭けた命の見返りを求める戦い。 それが聖杯戦争。 そしてその闘争は希望であり同時に絶望でもある。 椅子は初めからただ一つ。最強を証明した者だけに与えられるただ一つの癒し。 踏み潰してきた多くの祈りと生命。その果てに辿り着いた結末は──────。 FateAS第三十七話。14日目『聖杯降りし最初で最後の聖夜』其の参。 長き時を経て第二次聖杯戦争ついに決着。 そして、Fate/Another Servant Heavens Feel 2 完結────!!」
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/985.html
タケル「神性スキルあるんだろ?私の神殺スキルの餌食だな。あと、切り札のランク的にも私の勝ち」 ポイヤ「バーカ。ステータスはほぼ互角だろ?切り札なんて簡単には出させネーっつの。それに宝具は俺のほうが手軽に使えるしな」 タケル「……やるか?」 ポイヤ「かかってこいや?」 ☆ ☆ ☆ ポイヤン「つまるところ、俺はアイヌの英雄の総合体ってわけだな。 アイヌの民にとって、俺はイコール英雄であり、他の英雄なんざいらなかった。 アイヌの英雄という概念そのものってわけだ」 ヤマタケ「私の名前を知っているか、『内陸の小さな者』? 日本武尊、つまり日本という国で最強というわけだ。 英雄の代名詞だかなんだか知らないが、日本国の英雄である以上、私よりは格下だな」 ポイヤン「……ああ、いいぜ。つまり喧嘩売ってんな、テメェ。買ってやるよ?」 ヤマタケ「喧嘩?おいおい冗談は止めてくれ。お前ごときが、私と喧嘩? ……どうやら、格の違いを教えてやる必要があるらしい」 琉球「えぇっと、えいゆーえいゆー…うわーん、いないー!?」 本土&蝦夷「お前に足りない物は、それは!! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ そして何よりも!!広さが足りない!!!!」 ☆ ☆ ☆ ポンヤ「スケェェェェェェェェイス!」 山竹「マイナー英雄はパロディもマイナーか」 ※ヒント:憑き神 ☆ ☆ ☆ ヤマタケ「確固たる逸話ももたず、あっちにフラフラこっちにフラフラ。 落ち着きのなさだけは一流だな。ああ、その点に関しては素直に負けを認めるよ。 で、だ。 曲がりなりにも平和な日本、つまり私の領域で、お前は何をしでかして英雄になる気だ?」 ポイヤン「ああ?バッカじゃねーの、お前? 日本で何をしでかすか?おいおい、テメェの脳内はいつまでも島国の中で止まってんのな。 俺は日本海を泳いでわたる。で、大陸へ行って戦争地域に殴り込みよ」 ヤマタケ「やれやれ、バカはこれだから。 日本人が世界レベルでコトをしでかせば、そのツケは日本国に回ってくるだろう? やはり、ここで殺しとくか」 ポイヤン「あ?いいぜ?殺せるもんなら殺してみろよ」 舜天「・・・あ、士郎さん。お茶のお代わり、いいですか?」 士郎「あいよ~」 ☆ ☆ ☆ ヤマタケ「で、心読んだのか過去未来を見たのかどっちなんだ? 全く、お前は本当にわかりにくい英雄だな。もう少し分かりやすくならないか? まぁ、お前の単純な頭じゃ、簡潔にまとめるなんてムリなんだろうな。このチビ」 ポイヤ「てめぇの逸話だって似たようなもんじゃねーか。古事記と日本書紀で大分ちげーぞ? だいたい、チビとかいうなや。まだ身長体重決まってねーだろ。このオカマ野郎」 舜天「二人とも、喧嘩は止めてお茶でも飲みましょうよ」 ヤマタケ「断る。こんな奴と一緒に茶が飲めるか」 舜天「とっておきの漬物も用意してありますよ」 ヤマタケ「ポイヤウンペ、早く来い。茶が冷める。…ふぅ、やはり漬物は美味い」 ポイヤ「変わり身はえーよ」 ☆ ☆ ☆ ヤマタケ 「ほう。未来が読めるとは器用なことだ。 その割に君は、妹を溺死させたり、引きずって白骨化させたりと、物事を深く考えていないようだが。 もしかして、バカなのか?だったら宝の持ち腐れだな」 ポイヤン 「うるせーよ。何も考えてないのはおまえも一緒じゃねえか。 そんなんだから、父親にいいように利用されんだよ」 ヤマタケ 「・・・父上を悪く言うなら許さんぞ」 ポイヤン 「なんだおまえ、バカかと思ったらファザコンかよ」 ヤマタケ 「黙れシスコン。やはり貴様には天誅を下す必要があるようだ。 龍の力で溺れ死ね」(『天群雲』解放) ポイヤン 「お、喧嘩か?上等だコラ、受けてやるよ! ・・・起きろおまえら、神を食うのは久しぶりだろ?」(『憑神顕す神威の刀』解放) 士郎 「喧嘩はやめろー!家が壊れるー!」 ☆ ☆ ☆ ポイヤン「ネタ出まくりだな。うん、俺は人気者だ」 ヤマタケ「いや、ここまでのネタはあくまで、お前につっかかる私がいるからこそだ。 つまり、真の人気者は私だろう」 ポイヤン「は?俺が製作されるまで、オカマネタくらいでしか出番なかったクセに何言ってんの?」 ヤマタケ「ふふ、私がいなければ何一つネタがなかったであろう貴様が、何をほざいている?」 ポイヤン「ああ、つまり―――ぶっ殺していいんだな、オカマ野郎っ!」 ヤマタケ「殺せるものならな―――暴走チビスケ!」 熊太郎「クマー(真の人気者は私ですよね)」 ☆ ☆ ☆ ヤマタケ「バカな。コレが大英雄なわけがない。 全ランクを1つずつ…いや、2つずつ落とすべきだな」 ポイヤン「ぅおおおおおい!?落としすぎだろ明らかに!デフレってレベルじゃねーぞ! あと、“コレ”とか言うなや!」 ヤマタケ「わかった。ではこうしよう。 お前のステータスを動かさない代わりに、私のステータスを全2ランク上昇」 ポイヤン「今度は限界突破インフレンラガン!?お前、俺に勝ちたいだけだろ!?」 ヤマタケ「全く…反対意見を出すなら代案を出せ、このド低脳」 ポイヤン「反対意見じゃねぇ、常識的意見だ。もしくはツッコミ。 …ん、そうだな。俺を大英雄と英断してオールBでGO」 ヤマタケ「知名度的にも、それはないな」 ポイヤン「お前の提案よりはマシだろ、数億倍」 ヤマタケ「億はない。せいぜい数百倍だ」 ポイヤン「トンデモな提案だって自覚はあったんだな…」 ☆ ☆ ☆ ヤマタケ「大体貴様はな!」 ポイヤン「そういうテメーこそ!」 ハーロット「またやってる……この二人の仲の悪さは手に負えないレベルね」 聶隠娘「わらわも同感です。黙ってればいい殿方なのですが」 壱与「でも、 129から見ても、この人達のお婿さんになるのは遠慮したいですね」 ヤマタケ&ポイヤン「「え……?」」 ハーロット「あら壱与ちゃん、その心は?」 壱与「だって武尊さんは、荒れた海を鎮めるために奥さんが身投げしちゃってますし」 鈴鹿御前「天叢雲なら使い方次第で荒れた海を沈静化させられると思うんだけど」 エウロペ「ポンヤウンペくんなんて一緒に連れてきた少女を溺死させちゃってるんだよね」 スキュラ「息継ぎなしで泳ぎきるのは凄いですけど女の子の事を全然考えてません」 ジャンヌ「ボクはそれよりその娘の遺体を放棄したのが許せないよ」 ヤマタケ&ポイヤン「「ううっ……」」 ブリュン「性格も問題ありですわ」 セラスミス「日本武尊は父親のイエスマンで」 プテ「ポンヤウンペは乱暴者」 ハーロット「どっちも将来を共に歩む相手としては不安が残るわねぇ~」 聖マル「背も低いしね」 ヤマタケ&ポイヤン「「背は関係ないだろ!!このデカおん(バキッ!グシャッ!)」」 聖マル「何か言ったかしら?(ニッコリ)」 ヤマタケ&ポイヤン「「ナンデモアリマセン……」」 聖マル「あの二人は黙らせたから話を続けるわよ。今度は二人の恥ずかしい話ね」 メリー「わたし、いくら綺麗でも日本武尊の女装はどうかなあと思うよ」 セドナ「やっぱり股間のイチモツは小さいのかしら?」 冬将軍「ポイヤンペなんて全裸にされて敵の女性達に逆レイプよ」 鉄扇公主「そこをニシマク姫に助けられるなんてなんかヘタレっぽいわ」 ハーロット「並の女の子達すら満足させられない坊やなら、我相手だと瞬殺確定ね」 壱与「わ、ハーロットさん大胆」 九尾「コーン(少なくとも二人とも女性を満足させられる男じゃなさそう)」 全員『異議なし!』 ヤマタケ&ポイヤン「「チクショウー!どいつもこいつも言いたい放題言いやがってーー!!」」 ☆ ☆ ☆ ペルセウス「私のハルペーは一応鎌だ」 ヤマタケ「しかしお前は既に作っただろう」 ポイヤン「ちなみに日本武尊は(お)カマだ」 ヤマタケ「やかましいぞ豆粒」 ☆ ☆ ☆ (「実際に戦ったらどっちが勝つ?」という話になって、「開幕天群雲で詰む」という意見に対して) ポイヤン「いやいや、開幕でいきなり宝具使用はねーだろ、JK」 ヤマタケ「確かにな。普通ならやらん、普通なら。そう、普通なら」 ポイヤン「・・・えらく『普通なら』って部分強調するんだな。なんだよ、何が言いたいんだよ」 ヤマタケ「蝦夷の蛮族相手に自重する必要もあるまい。速攻で消すから、監督役は後処理ヨロ」 ポイヤン「・・・まぁ、確かに?俺も侵略に来たクソ相手になったら、瞬殺したくなるけどな?そこは自重しろよ」 ヤマタケ「仮に私が自重した場合、どうなると思う?」 ポイヤン「そりゃお前、俺が宝具使って速攻勝利だろ、当然」 ヤマタケ「おーい、坂上。こいつを一緒に殺ろう」 タムラマロ「征夷の英雄として、お供しましょう。我が民族至上の神子よ」 ポイヤン「・・・二人がかりとかズリぃだろ、てめぇら!!くそ、アイヌの英雄俺しかいねぇし!?」 ヤマタケ「蝦夷ごときに英雄なんぞいらん」 タムラマロ「上に同じ」 ポイヤン「いや、いるからな!?アイヌラックルとかサマイクルとか、あとオキクルミとか!!なんで作られてねーんだよ!」 ヤマタケ「蝦夷の英雄ごときに魅力などありはしないからな」 タムラマロ「上に同じ」 ポイヤン「ちょ、タンマ!待て、落ち着け!宝具使おうとすんな、野蛮人どもが!」 ヤマタケ「蝦夷の蛮族ごときに、野蛮扱いされたくない」 タムラマロ「上に同じ」 ポイヤン「くそ、てめぇら覚えてろ!」 日本武尊とポイヤウンペのトラぶる道中記
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/73.html
いつもと同じアインツベルンの森、いつもと同じ様に野宿していたライダーの サーヴァント金太郎はいつもと同じ様に目を覚まし、なんだか目の前がぼやけている ので目ヤニを拭おうと右手で顔をこすった。 「・・・ん?」 顔の前で手を振るが目と右手が10センチ以上離れてしまっている。 よく見ると右手は手甲に覆われていた。否、右手だけではない。 金太郎の全身が鎧に包まれ、顔にはフルフェイスのヘルメットがかぶせられていた。 前がよく見えない理由はこのヘルメットだったのかと、いやそれよりもこの格好は一体。 「な、なんじゃあこりゃー!」 金太郎の絶叫が森に響き渡る。目が覚めたら変身ヒーローになっていただなんて事実 誰だって取り合えず驚くしかない。 「ふふふ、気に入ってくれたかしら?」 「そ、その声はオイラのマスター、アインツベルンの現在当主イリヤスフィールこと イリヤちゃん!」 声の方に振り返るとイリヤがいた。ピンクのナース服に身を包んだイリヤがいた。 読者の皆様の中には金太郎のマスターはイリヤというのにしっくりこない人もいるかも 知れないが、今回はそういう設定だと納得してくださいお願いします。 「イリヤちゃんがやったのか、で、一体何だよこれ」 「金太郎、いいえライダー、貴方このままでいいの?」 「何のことだ?」 「単刀直入に聞くわよ、貴方エンキドゥに勝てる?孫悟空に勝てる?」 「う、うー」 「勝てないわよね、正面からでも相撲でももちろん搦め手で戦っても。喧嘩だけが 取り柄の貴方がそんなんじゃマスターである私も心配だったのよ。 で、この鎧と言うわけっす」 辛辣に、悲しげに、楽しげに、ブルマに、実にイリヤらしく彼女は犯行の動機を 語りかける。寝ている自分にヒーロー鎧を着せたのは悪戯ではない事は分かり。 金太郎は納得すると共に新たな疑問が湧き上がる。 「えいれーがこんなの装備して強くなれんのか?」 「なれないわよ、普通はね。でも貴方の場合は別、私の計算が確かなら別人の様に 強くなるわよ。いいえ、今日からライダーは別人になるの。ライダー、貴方の真名は?」 「え、えーと真名というのは本名ってやつだよな。オイラは坂田金時だけど、 ってゆうかこれ召還された時に一回いったじゃんイリヤちゃん」 「そう、貴方の真名は坂田金時。じゃあその体は何?鉞かついで熊にまたがるその姿 はどう見ても金太郎と名乗っていた少年時代じゃない。金太郎の外見と坂田金時の 真名、どっちが貴方の全盛期を意味するのかしら?」 「オイラそれは言われるまで気づかなかったなあ」 「そこに気づいた私がセラ達に徹夜させて作ったのがこの鎧、源頼光が坂田金時に 与えた具足のレプリカにアインツベルンの技術の粋を詰め込んで見た目がちょっとだけ 変わっちゃったこれを着れば貴方は今日から外見も真名も坂田金時に一致、 知名度補正が正しくかかりステータスバリバリ上昇する事間違いなし!」 「そうか!これでオイラ最強か!」 「ええ、これで最強よライダー!」 「ウオオオオオー!オイラは、いや俺は坂田金時だー!」 森にヒーロースーツの金太郎の絶叫が響き渡る。 「今日から俺は坂田金時だ!!」 「今日から貴方は坂田金時よ!!」 戦隊ポーズと共にもう一度自らの真名を叫ぶ金太郎。 「今日から俺は坂田金時だっ!!!」 「そう、貴方は坂田っ金時!」 「俺はっ、坂田っ、きんっ、ときっ」 「貴方はっさかたーきんときー!これで今日から大活躍よ!」 「「バンザーイバンザーイ!」」 その日の晩、プテサンとセットで本スレの出稼ぎに行っていた熊太郎が帰ってきた時、 金太郎は内面まで完全に坂田金時に変貌してしまっていた。 「クマー(ただいま帰りましたよご主人)」 「ああ、いつも出稼ぎありがとうな猪鼻嶽大王熊。鍋出きてるから食えよ」 「・・・クマ?(・・・誰?)」 「誰って、見れば分かるだろ俺は坂田金時、ライダーだよ」 「クマ~(違う、間違いなく金太郎さんだけどこんなの金太郎さんじゃない。 というかこのヒーロースーツは一体)」 「おかえり熊太郎」 「クマ(あ、イリヤさん。大変です、ご主人が)」 「戸惑うのは分かるわ。ホフッホフッ。でも慣れなさい、これが彼の本当の姿なのよ。 大根きらーい、熊太郎にあげる」 「これからもよろしくな猪鼻嶽大王熊」 「クマーン(こんなのご主人じゃないです。穏やか過ぎます)」 おしまい ふと、だれも金太郎の事を坂田金時として認識してないなーと思い書いてみました。
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/297.html
大気が振動する。群れを成して飛び交うは白熱した鉄の塊。 此は戦場。 血涙垂らして泣き叫ぶ、戦人の声は自身にすら聞こえはしない。 其は戦争。 血が血を上塗り、青く澄んだ海は墜堕した鉄塊から滲んだ血に埋まり染まっていく。 「……」 風のざわめきが戦場の上空で囁いている。 現実に励む下々の者たちには無論それは聞こえない。 では、彼らには『それ』を止めることはできないのだろうか? 「……」 神の鉄槌が、下されようとしていた。 「……枯柳ィ!貴様、何を躊躇しておる!」 年配の男性が、海に浮かんだ巨大な戦艦の、外の光景がよく見えるブリッジで罵声を上げる。 そして、幾度となく続く爆発と閃光に目を細めながらギリギリと歯を噛み締める。 「―――枯柳大佐、ご決断を!もう持ちません!」 接近するミサイルをセンサーで必死に探知しながらも、周囲の乗員が枯柳と呼ばれた男を促す。 艦のすぐ近くでミサイルが迎撃され爆風で海が揺れる。 「しかし……」 「奴等とてこの作戦は理解しておるよ!だからこそ命懸けであの機体の相手をしてくれておるんだ!」 遠視モニターに、赤黒く立ち上る光を纏った機体が、自分達の友軍を次々と蹴散らすのが枯柳の目に入った。 「オー・パーツ・マシン……あれが一機でも我等の手中にあれば……おのれ!邪教徒めらが!」 年配の男が吐き捨てるように叫び、立ち上がる。 「撃て!枯柳!連中の戦力はここにいるので全部……衛星レーザー砲を撃ち込んで終わりだ!全てな!」 枯柳は遥か青空を見上げ、その先にあるはずの史上最悪の被害を地球にもたらすであろう兵器を想像する。 「……ハルト、リナジー、明都、クラウン、ジェイシス……許せよ……!」 一拍置き、拳を固く握って言い放つ。 「衛星砲起動!目標、あの黒いポリゴリアンに!発射後、直ちに放射能除去装置を起動するぞ!」 「ヤー!」 乗員たちの了承点呼を聞き遂げ、頭を抱え込む枯柳に、年配の男が座り込んで声を掛ける。 「それでいいのだ……我等の神、―――に懺悔と、忠誠を」 「……懺悔と、忠誠を」 「懺悔と、忠誠を」 枯柳と乗員たちも復唱する。 「……な、な……大佐、准将!衛星砲のシステムがアクセスを拒否しています!」 「何だとぉ!?」 ようやくほっと一息つけた年配の男、准将は叫んで咳き込む。 枯柳も冷や汗を流して周囲をセンサーで見回そうとする。 『……いい面の皮だな、狗ども』 センサーに目をやった瞬間、モニターに目深のフードを被った男の顔が移る。 「誰だ!?」 ざわめく周囲を余所に、枯柳が叫ぶ。 『そうだな……かわいいかわいいダゴンちゃんとでもよんでもらおうかな?今後ともよろしく……ククク』 道化た口調で言う男に、准将がハッとしたように呟く。 「そうか……貴様、邪教徒だな!オーパーツでシステムに介入を……!?」 『御名答……こちらにとっては貴様等が邪教の徒だがな。衛星のレーザーは我々が有効に使わせてもらう』 「……まさか、統一国の首都を?」 青ざめた顔で呟く乗員の一人の声にダゴンは反応する。 『心配するな。そんな矮小な事には使わん。我等は貴様等の神―――』 ダゴンがそこまで言った時だった。 艦が、揺れた。モニターの画面が乱れ、音声も途絶える。 ガタガタと、何かに怯えるように揺れている。 それはダゴンの方も同じようだ。 『―――リフォン、サラマンダー、どうやらこいつらは隠し玉を持っていたらしい。気をつけろ』 小声で囁く声が聞こえ、回線が切れる。 (これは……?) 枯柳は准将を見遣るが、彼も全く覚えがないようだ。 センサーではなく、肉眼でふと外を見れば、海も、大地も、空中を飛んでいる機動歩兵ですらも震えている。 戦闘が中断され、誰もが困惑して動きを止めた。 数秒の間だったが。 全員が正気に帰って異常事態に対応しようとした瞬間、しかしてさらなる異常が起きた。 周囲が夜になったのだ。 完全に太陽が消え、暗い空には星も見えない。 「―――違う、あれは空じゃない」 誰かが呟き、その一瞬後にはそれが証明された。 太陽を覆っていた、巨大な剣が振り下ろされたのだ。 その場にいたものは全員死に、剣が起こした衝撃は津波を地震を噴火を生み、地球の表面を舐め尽して削り砕いた。 死者は二兆人。当時の人口の、おおよそ90パーセントを、人類は一日で失った。 第一話『クレイジー。Every day』 「……ちっ、また御伽噺のテープか」 廃墟の家屋でヘッドホンを付けて座り込んでいた男は、テープにそれ以上音声データがないことを確かめてヘッドホンを外した。 「『歴史の憶測的真実』……数十年前に大ヒットしたとは言え後の時代から見りゃ古くてつまらんもんだな」 既に5本目になるラベルが剥がれたテープを大きなバックにしまい、開かなかったので蹴り壊した箪笥を一瞥して家を出た。 まだ調べていない家がないかどうか見渡して確認し、ロケット花火のようなものを打ち上げる。 強風と土埃に目を顰めながらも、懐から懐中時計のようなものを取り出す。 「この街に来てもう六日強……あと数時間で見つけないとな……」 備えられたスイッチを素早く五回押すと、丸く小さい懐中時計の表示部分が時刻からセンサーのような画面に変わる。 「喰い付いてきたな……距離は……300……280……早いな……それに建物が倒壊する音がしない」 ならば飛空型か、と呟いて空を見上げる。 だがそこには白んだ夜空と月しか見えない。 「……」 表示された距離はすでに彼の50m以内に『獲物』が接近していることを示している。 微かに地鳴りが男の耳に届いた。 「……地下か!」 叫ぶと同時にその場から飛びのいた瞬間、今までいた場所をドリルのような回転する物体が貫通しながら地上に飛び出した。 「ギャオオオオオオ」 「もぐら……いやミミズか?でかい……」 呟いた男の蚊の泣くような小声に空を見上げていた土竜ミミズはぎょろり、と四つある目玉を動かし、男を睨みつけて這いよりはじめた。 「……もう一度潜って襲う知恵はないようだが……耳は存外に良いようだな。だがこれもハズレだ」 尖った鼻の先にある薄く横に切れた口から涎を垂らしながら、十二本の巨触腕を蚯蚓型の細長い体から生やした怪物が接近するのを見て。 それでも男は余裕を感じさせる口調ですこし残念そうに呟くと、踵を返して走り出した。 「―――ぐるああああ」 咆哮しながら追いかける怪物だったが、その触腕が伸びる前に男は、先程出てきた家の脇に停めてあったバイクに跨って走り始めた。 「―――ぎぎぎぎぎぎ」 歯軋りのような音を立てながらも、わしゃわしゃと触腕をはためかせながら怪物はバイクを追撃し始めた。 (あの怪物は獣型だろうな……神獣型なら死体でもこっそりコレクターに横流せたんだが……) そんなことを思いながら、先程の音を聞きつけて活発に活動し始めた人型の怪物共を強固なバイクで撥ね飛ばしながら男は走る。 「ウレシイ……」「カングルナ……」「ハリーハリーハリーハリー……」などと意味の通らない言葉をあげながら倒れていく怪物。 嫌悪感を覚えながらも、人間とほぼ同じ姿、だが所々腐っていたり他の生物の物と思しき器官を持つ怪物を轢き倒す。 追ってくる土竜ミミズを振り向くと、倒れた人間型に飛びついて噛み付き、地面に潜り始めている。 「食事はマイホームで、か……いい夫になれそうだな」 だが数秒で地面に上がってきて、咥えていた人間型を投棄すると、周囲に倒れている人間型を触腕で叩き潰し、ミンチにし始めた。 「納豆は嫌いなようだ」 嘲笑を洩らし、カーブを曲がりながらクラクションを鳴らす。 慌てて逃げ出した残りの人間型も潰そうとしていた土竜ミミズはけたたましい音響に振り向き、先程新鮮そうだとみた獲物を追い始めた。 獲物の距離は400m弱。 バイクを追い、這いずりながらカーブを曲がる怪物。 そして―――。 突如、その頭を巨大な手が掴んだ。 「づ……!?」 驚きと取れる奇声を上げながら、土竜ミミズは掴まれた腕の先を見た。 ―――機械的な印象を与える、頭部を除く上半身は赤、下半身は金色に病的なまでに塗りつくされたロボットがいた。 起動音を上げながら、ロボットは土竜ミミズの頭を掴んだまま走り出す。 一瞬で向かいの廃墟ビルに到達し、土竜ミミズをビルに押し込んだ。 「ぎイッ」 怪物は身体を鉄材で傷つけられながら、悲鳴を上げて倒れ掛かる。 堪らず触腕を振りかざすが、目標は直撃を避ける為にブースターを吹かして宙に逃れ、腰から取り外した極大口径のショットガンを放つ。 全身を撃ち抜かれ、しかし土竜ミミズは触腕を宙に伸ばす。 「!」 不意を打たれて触腕に捕らえられたロボットは、胸部を展開させて簡易加速砲を放とうとする。 だが、弾体を加速させるための電圧を流す一瞬前に地面に投げられ、俯けに叩きつけられる。 「くそっ……!加速砲がイカれたか、不味いな……」 ロボットのコクピット内で、先程バイクに乗って走っていた男がシステムの異常を示す警報を聞きながら吐き捨てるように言う。 「出来れば距離を取って仕留めたかったが……」 愚痴っている間にも土竜ミミズは迫る。薄い口を盛大に開けながら、巨大な機体を噛み砕かんとにじり寄る。 「……」 ロボットが右手に長い刃物、ナイフというよりむしろ錐に近い形状の武器を取り出す。 さらに、左腕ががこん、と音を立てて大きく開き、杭打ち器のような機構を露出させる。 「ぐぐるぎぎゃあああああああああああ!!!」 勝ち鬨のような土竜ミミズの声を聞き、背部モニターで十分接近していることを確認し―――。 男は機体前面の姿勢制御バーニアに火を噴かせた。 そのまま勢いに任せて機体を反転させて、目の前に現れた仰天した土竜ミミズの表情を目にしながら―――。 その目に、右手に構えた錐を突きたてた。 「――――――――――――!」 もはや声にもならない音響をあげる土竜ミミズ。 だが男はそれに構わず、土竜ミミズの顔の横に付いた目の、反対側の目から錐が飛び出すまで差し込み、そして自分の側に引き抜いた。 顔の前面にあったもう二つの目も当然錐によって潰され、土竜ミミズは顔面から夥しい緑色の血液を飛び散らせながらもんどりうつ。 「加速砲は一度も使えなかったな……貴様のおかげで。それに頭部に大奇形脳もない……ただの獣か」 憎憎しげに呟き、男はロボットの左腕を突き上げて杭打ち器を怪物の細長い身体に叩き込む。 しかしそれから飛び出したのは杭ではなく、ロボットのサイズにしてもなお極太の注射針だった。 何らかの液体が怪物に注入され、暴れていた土竜ミミズは動きを止めた。 触腕もだらりと垂れ下がり、土竜ミミズはバタリと地に巨体を落とした。 「……ジジイの発明は役に立つが、どうもケレンが過ぎるな」 左腕の機構を仕舞い、完全に活動を停止した土竜ミミズの細長い身体に繋がる首を念のために踏み千切って切断する。 首を右腕に抱え、身体を右腕で引き摺って、数百m離れた、白いシーツを被せられた巨大な檻の位置まで運ぶ。 一旦土竜ミミズの体を離し、シーツを取り外せば、そこには土竜ミミズと同じような、巨大な怪物の死体が数体重ねて納められていた。 「……えーと、こいつで8体だな。ノルマは6体……加速砲を修理するほどのボーナスはもらえ……ないか」 溜息をつきながら、土竜ミミズの体を檻に放り込む。 首の方も入れようと思ったが、思い直して怪物の死臭に寄せられて少し遠くで屯っていた、野犬の群れに放り投げてやった。 檻に手を出せずに焦れていた野犬たちは、極上の大きな餌に喰らいつき、一心不乱に貪り始めた。 「よしよし……これでお前らも次来るときには怪物だ。共食いせずにできるだけ増えろよ」 不穏当なことを言いながら、コクピットの中の男は懐中時計で時間を確認してから携帯を取り出し、十六桁の番号を押す。 『……はい、こちら人類府異形畜生撲殲滅科、期間契約部でございます。どのようなご用件でしょうか?』 「えー、A級アルバイトの今守……今守 拳です。バークラック街での巨大異形殺戮、定刻どおりに終了しました」 業務的に淡々と聞く声に、同じく淡々とした声で返す。 『ああ……拳君かい』 突然相手がくだけた口調になる。 「7日ぶりですかね、オペレーターさん」 『グレイプだよ……八年くらい知り合ってるんだから名前ぐらい覚えてくれ』 嘆く相手の声を聞きながら、檻をロボットの背部に接続し、もと来た場所に飛んで帰る準備を始める拳。 『では、いつも通り報酬は現物を見てからで。ああーーー源五郎卯官がなんか言ってたな……忘れた。帰ってきてから聞くといいよ』 投げやりな言葉を最後に、相手の側から通話は切られた。 拳は携帯を仕舞い、接続作業を完了した。 「源五郎のおっさん……仕事の斡旋か、ヤケ酒の付き合いか……一応話は聞いてみるか」 呟くと、頭部モニターに土竜ミミズの血痕が残っているのをみて憂鬱な表情を浮かべる。 「加速砲を壊した上に機体も汚しちまったか……簡単に血が落ちれば良いが」 クリーニング代がかからないことを祈りながら、拳はロボット、ポリゴリアンの長距離飛行ユニット、機翼を広げてその場を飛び去った。 後にはシンと静まった街と、緑の血痕、怪物の首を貪る野犬の群れだけが残った。 腹を膨らませた一匹の犬が他の犬を置いて一足先にその場を離れる。 その瞳にはうっすらと緑が滲んでいた。 神仰崩壊ポリゴリアン・SSに戻る
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/273.html
そこは暗く、寒い空気の漂う場所だった。 清潔さを保とうとしている為か、消毒薬の臭いが充満しており、最初はその臭いを吸うだけで気分は悪くなる一方だった。 だが数日間過ごす内にその臭いにも慣れた。嫌なのは自分にその臭いが自分に染み付いているのではないかという事だ。 私は、そこで待っていなければならない。 「儀式」が始まるまでそこに待っていなければならいない。 私のすぐ横には明日着なければならないドレスがある、白でコーディネートされたそれは美しいものであったが、私には自分の人生の終点がどのようなものか嫌でも教えてくる。 明日そのドレスは真っ赤に染まる、純白なそれは赤い液体に染まり、そして黒く変色していく… それを思い描くたびに私は酷くここから逃げ出したい思いに駆られるが、それは出来ない、そしてしてはいけないことなのだろう。 そんな中、ある男の事を思い出す。 数日前、荒野で行き倒れていたのを見つけて。 つい見捨てられず村民達に頼んで村に連れて帰ってもらったのだけれど。 外見はどっちかというカッコイイ方だろうか、筋肉の付き方が綺麗でちょっと寝ている時は見とれてしまっていたぐらいだ。 だが、一度起きて話してみるとそんな印象はどこいくのか… 一つ例を挙げてみよう、男はとりあえず私の部屋で寝かせているのだが その寝てるのが私の部屋だと言うのに、それにまったく疑問を持っていないようだし、私が何処で寝ているのかも気にしない。 そもそも、男はそういう事には鈍い人間のようだ。 むしろ、気づかないのだろうか、毎回、ここは君の部屋らしいけど君は何処で寝ているんだ?と聞かれたらと思って頑張って考えた言い訳があるのだけれど結局、それを使う事態には至らなかった。 無頓着、無神経とでも言うべきなんだろう。 でも、そんな男と話しているのは面白かった。 何気ない会話ばかりだったがもう先の少ない私にとっては今の状況を忘れさせてくれる何よりもの楽しみだった。 そしてそんな男は今日、去っていった。 良かったと思う。これ以上この村と関わらない方が良い。 何より、明日には私はこの村からいなくなってしまうのだ。 今日、無理にも出発してもらうつもりでいたので彼から出ていくと言ってくれた事はなんとも幸運だった。 この村の秘密を知れば、決して無事には村から出して貰えないだろう。 それは村が存続し続けれる理由であり、村人が何をしても守りたいものでもある。 だから秘密を知ればいくら私が庇っても村人は男に容赦をしないだろう。 狂気と正気はまったく違うようで実の所、コインの裏と表のようなものでしかない。 正気に見える人間なんてものはきっかけさえあればすぐ狂気的な面を出してしまう。 そんな事を思っていると右目が痛みだした…この右目が無くなってからどれぐらいたっただろうか……。 これもその狂気の一つが成したものだ、外から来た人であるあの人までそのようなもの巻き込みたくなかった。 だから――――これでいいんだ。 そんなことを考えていた時、戸が開く音が聞こえた。 村人だろうか?そう思って私は奥を戸の方を覗き込んだ。 入ってきたのは体格からして男だろう。 「どうしたんですか?」 と声をかける。 でも、声をかけた後に気づいた、そこに居たのは村人などではなく… 「どうしたんですか?」 その声を聞いた時、俺は失敗したと思った。 外見が倉庫な上に外から頑丈にロックされていた為、中に人などいるわけが無いと油断したのが仇になった。 「え、なんでクーガさんが…。」 彼女…ミムは驚いている。 いきなりな事であった為、自分も思考がまとまらない。 時間を稼ぐには… 「それよりなんで君がここに?」 そう返すと彼女は叫びだすように―― 「質問に質問で返さないでください!なんでクーガさんがここにいるんですか?さっ き村を出てったじゃないですか…なん―――」 俺は大声をあげる彼女の口を慌てて塞いだ。 彼女の口からふがふがと音がするが構わずに力づくで押しこめる。 「とりあえず落ち着いてくれ、話すから…。」 その後も少し暴れていたが、少し待つと落ち着いたようだったので手を離した。 彼女が暴れた際に蹴られた大事な所が痛い。 彼女は軽く呼吸しなおして 「じゃあ、もう一度聞きます、なんでクーガさんがここにいるんですか?村を出て行った筈ですけど…。」 最早、隠すのは無理だろう、ならば素直に聞くべきか…。 「この村の隠しているものが気になってね。」 彼女の顔が強張る。だがすぐに表情を戻して 「隠しているものですか?ここは普通の村ですよ、とにかく普通の村なんですから裏なんてものは――」 「いや、この村は普通の村じゃない…国に非公認に立てられたものだ。国が存在を知らない村だ。俗には『名無し』と呼ばれている。」 「な、なにを…。」 「別に珍しい話じゃない、今の王国が抱えてる大きな問題の一つだ、オロチ事件以降国は都市の防衛をさらに強化せざるおえなくなった。」 俺は語った。 オロチ事件、四大大陸の一つを統治するイングラ王国に突然、舞い降りた厄災。 十魔獄と呼ばれる、最強の妖魔の一体オロチが王国の都市の一つを壊滅させてしまった。 多くの鋼機が防衛に回ったにかかわらず、ろくな抵抗も出来ず全滅。 この事件はかつてあったリヴァイアサン事件を彷彿とさせ、上位妖魔がついに王国へ の攻撃を始めたという事実に国中は驚愕し恐怖した。 だが、この事件はオロチの変死という意外な形でこの事件は解決することになる。 だが重要なのはその死ではなく、その事件が国に与えた影響だ。 この事件を機に王国は首都と主要都市の防衛をさらに強化する政策を取る事になる。 だがその傍らで犠牲になる者もいた、そう主要都市の防衛を強化したが為の小さな村や町の防衛まで手が回らなくなったのだ。 とはいえ、新たな襲撃への備え全体に戦力を分散させて全ての都市が壊滅させれては元も子もない、苦渋の選択といえるものであった。 もちろん、防衛対象に入る都市を拡大し、居住量を増やす等の処置を取っていたのだがたかだか十二の都市では総人口3億を超えるそれを許容できるわけも無く都市から追い出されて行き場を失った人は路頭に迷う事になる。 そうした人間達が生きる為に集まり新たに一つの集落を作る。これがこのような村の誕生の経緯である。 そのような経緯で出来た為に国に認識されていない村、また国の治外に出ようとしている村が多く作られている。 これらの保護と取り締まり等の解決策は未だ取られておらず、国の抱える大きな問題になっている。 だが、今までの例からみてそのような村は長持ちしない、1年を待たず滅びてしまう事もざらだ。 なぜならばその村は妖魔に対する防衛手段を持たないからだ。 だがこの村の発展具合はどうか、少なくとも5年…いや7年は持っている。 この倉庫に来る前に調べたが防衛手段らしき手段を持っていないにも関らわずにだ。 「つまりだ、この村がこんなに繁栄している事はおかしいんだ……いったい裏に何がある。」 「え………それは、その…。」 ミムは口を開けては閉じてを繰り返している。 これでは話が進まない、ならばと俺はミムを押しのけた。 そもそもなんで俺がここに来たのか…目的のモノを見る為だ。 昨日の朝に見た神輿、必死にミムが俺から隠そうとしていたもの…それを― 「あ、だ、駄目、見ないで…お願い、見ないで!」 ミムは必死にそれを見せないように自分を神輿から自分を遠ざけようとする。 だがここまで来てはもはや自分は退くことなど出来はしない。 「ごめんな…。」 せめてのお詫びとしてその言葉を彼女に言って俺はその神輿のようなモノを見た。 外見上はただの神輿である、人を乗せれるようなサイズではあるが特別な装飾があるわけでもなく何の変哲も無いものに見える。 ん、中央にある台座のようなものに黒い斑点のような…いや、いや、いや、いや、いや、いや、これは―― 「これは血か…」 シャドウミラージュ・SSに戻る next back
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/637.html
──────Sabers & Fighters Side────── 突然その魔力が現れたことに気付いた。 綾香は思わずそちらの方角へと首を向ける。 なんだろう?と思う暇など無かった。 なにせ物凄いスピードで強大な魔力が自分たちの方へと向かってくるのだ。 接近するに従って綾香の令呪が反応を増す。 その時点でようやく魔力の正体を悟った。この気配は間違いない。 「サーヴァント!?」 すばやく周囲を見渡す。 此処は深山の中心地からは外れているがそれでも居住地帯のド真ん中だ。 あまり戦闘に適した場所とは言えない。 「アヤカ北の方だ!海があるぞ!」 どうするべきか悩んでいるとまだ霊体状態のセイバーが最適な戦場を示してくれた。 「でかしたわセイバー!」 お礼と共に身体に魔術を掛けて一気に走り出す。 常人では有り得ぬ物凄い速度で疾走を始めた綾香。 目指すは海。誰もいない戦場に適した場所へと敵を誘導する。 走る速度をもっともっと上げる。 脚の回転数が上がり肺から酸素が抜けていく。 背後の気配はぐんぐん迫ってきているのが肌で判った。 それなりの距離があった筈なのに敵はもう自分たちに追いつきそうである。 「はぁはあはぁ!いきなり当たりを引く事になるとは、思わなかったわ!」 「いいことじゃんか!」 息を切らしながら愚痴る綾香とは対照的にセイバーはどこか嬉しそうだった。 「どこが?!」 「オレ達を追って来てるのはファイターだ。あいつ身体がデカイから遠目からでも直ぐわかるぜ」 なるほどセイバーが喜ぶわけだ。 今自分たちを追って来ているのがよりにもよってファイターとは。 「うわ………出来れば今のところ一番遭いたくなかった相手じゃないのよ!」 後ろを振り返って確認していないがセイバーがそういうのだからまず間違いないだろう。 「ちなみに一番遭いたかった奴は?」 「ライダー!!」 セイバーのつまらない問いに火を吹かんばかりの勢いで怨敵の名を上げる。 今度遭ったら絶対にぶっ飛ばしてやるつもりだ。 「おお!さすがアヤカだ!いい気合だなっ」 そんなマスターの様子に嬉々としているセイバー。 「そういう貴方も大丈夫なんでしょうね!?相手はファイターよ!?」 「問題無し!今夜こそはファイターをぶちのめしてやるぜ! 何より聖剣の真髄を見せるに相応しい猛者だしな」 セイバーはいつもの調子で自信満々の即答をする。 この男本当に怖いものなしである。 「なら結構よ。セイバー背後の様子は!?」 「あいつら君の走るスピードに合わせてるぞ。これならこのまま海へ行ける」 敵もこちらの誘導に乗ってくれる気なのだろうか。返事する騎士はまだ霊体のままだった。 少しでも綾香の負担を減らす為に海へ着いてから実体化するつもりなのだろう。 「ところでアヤカ!海に着く前に先に一つ言っておくことがある」 そろそろ息が上がり始めた頃、神妙な調子でセイバーが提言してきた。 「今度はなに!?霊体の貴方達は良いでしょうけど人間は走りながら喋るのって結構大変なのよ!」 酸素不足で苦しいのか割と怖い顔でセイバーの方へ顔を向ける綾香。 般若面にでも見えたのかその形相にうぉおっ!?っと大げさに仰天する騎士。 心なしかセイバーが少し怯えている気がしないでもない。 いや絶対気のせいだそうに決まってる。気のせいじゃないと自分が困る。 「おほん、大事なことなんだ!アヤカはファイターのマスターとは戦うな」 咳払いして仕切り直すと断固とした口調で彼はそう言った。 「……それ、どういう意味で言ってる?」 ランサーに続いてセイバーまで自分を邪魔者扱いするんだったらこちらにも考えがある。 だがセイバーにはそういった思考はどうも無いようだ。 「いやあいつ多分だがアヤカよりも数倍強いぞ?戦ったら負けると思う」 「げ……、戦闘前に物凄く嫌な事聞いちゃったじゃない……なんでそう思うのよ?!」 「いや勘だ」 「勘ってアンタね……とは言ってもセイバーみたいなタイプの勘は変に当たるから迂闊に無視したら酷い目に遭いそうよね……」 ぶつぶつと呟く綾香。 堂々と根拠も無い勘だと断言するセイバーに呆れてはいるがそれでも全く信じていないわけでもなかった。 客観的に分析しても己の実力など高が知れている。 確かに一流の魔術師が相手だったらまず間違いなく彼女は負けるだろう。 頭の良い彼女はその辺りのこともきちんと弁えていた。 「なんか良い手は無いの?セイバーは戦いのプロでしょう?」 セイバーはランサーと違ってあまり頭の切れるタイプには見えないが一応聞くだけ聞いてみる。 すると意外なことにセイバーからまともな返答が返ってきた。 「とりあえずオレから出来るだけ離れないようにしてくれ。 そうしてくれればアヤカがファイターのマスターに攻撃された時にオレが守れるから!」 とどめに今度は絶対に大丈夫だ!と念を押して宣誓までしている。 セイバーもセイバーでアインツベルンを守り切れなかった事がよほど悔しかったのだろう。 宣誓には誠実さすらも窺えた。 「わかったわ。じゃあセイバーのフォローを受けられる位置に常に立って敵マスターにプレッシャー掛けるのがわたしの仕事ね。 そしてセイバーはわたしがそうやっている隙にファイターを倒してしまう。 じゃ作戦はこれでいきましょう!」 「応!さあ海に着いたぜマスター!気合入れろよ!」 潮の匂いがすぐそこまで来ていた。 優しい波の音が耳を撫で。瞳には月光が仄かに照らした黒の海が映った。 最後の30mを走り抜け段差になっている場所から走り幅跳びの様にジャンプをして浜辺に飛び降りる。 華麗に着地そして背後へと振り返った。 「いやはや見事な走りだったよお嬢さん?」 上質な赤いスーツを着た紳士風の男が少女に対して拍手を贈っている。 そして流れるような自然さで挨拶をした。 その表情も立ち振る舞いも余裕に満ちている。 「それはどうも」 賞賛をぶきっちょに返して相手の面相を見た。 髭がまた似合う二枚目な男だな、と綾香はふとそんな事を思った。 荒くなった呼吸を整えながらその紳士風の魔術師をじっくりと観察する。 これと言って隙も見当たらない。 そして肝心の男から感じる魔力は静かながらも力強さを秘めているように思えた。 おかげでセイバーの言うようにあの紳士風のマスターの力量は少女よりも遙かに上である可能性が高くなってしまった。 「さて、もう自己紹介も必要は無いだろう」 そう言うや否や右手の指をパチンと鳴らす。 微かな発光と共に獣皮の外套を纏った戦士が遠坂のすぐ背後に実体を持って出現した。 「ッ!セイバー!!」 綾香も遠坂の行動に合わせて相棒の名を叫ぶ。 つむじ風を纏って綾香の前に出現する純白のマントを纏った騎士。 「なに……?」 なぜか動揺する声が遠坂の口から漏れた。 同じくファイターの眼にも若干困惑した色が窺えた。 そんな二人の様子に綾香たちも僅かに困惑の色を浮かべる。 互いが互いに困惑し合うなんていう奇妙な空気になってしまった。 「戦う前に、一つ良いかねお嬢さん?」 まず遠坂が誰よりも先に口を開く。相手を警戒した重い声音だった。 「なによ?」 目を細め表情を険しくする綾香。 「君は……ランサーのマスターだった筈だが?」 遠坂の冷徹な眼光が少女を射抜く。 だが臆する事無く綾香は凛とした態度で言い返す。 「ランサーは消えたわ。わたしは元ランサーのマスターで現セイバーのマスターよ。なにか文句あって?」 「文句あるのかコノヤロー!」 あまり気持ちの良い話題でも無いためか無愛想に返す主人の後にセイバーも続く。 「なるほどいいや十分だ。だそうだ良かったではないか、なあファイター?」 首を竦めて相手の無礼な態度を完璧に流した遠坂は背後のファイターに同意を求める。 ファイターは直立不動のまま目を瞑り、まるで噛み締めるように同意した。 「そうだな…。ああ、そうだとも。 ランサーの件は非常に残念だがあの猛者の事だ。そこの少女を護って斃れた筈。 きちんと決着を付けられなかったのは残念だが────まだセイバーが残っていてくれる」 「それは同感だ」 壮絶な笑みを浮かべて見詰め合う二人の大英雄。 場の空気が静電気を帯びているかのようにパチパチピリピリし始めている。 大気中のマナがサーヴァントの放つ魔力に共鳴しているのだ。 「アヤカ、予定通りだ。後のフォローはオレがする」 「割と不安だけどとりあえず今はセイバーを信じる事にするわ。貴方の勘の通り相手の方が格上っぽいし」 双方共に目前の敵には聞こえない音量で最後のやり取りする。 「ファイター、予め言っておくが私はこの勝負勝ちにゆくつもりだ」 「了解しているマスター。 マスターがセイバーのマスターを仕留めてしまうまでにセイバーとの勝敗を決する。 私の仕事はそれでよいかな?」 「いい返事だ」 四人が四人それぞれ違った構えを取る。 セイバーは腰に吊るした鞘から聖剣をスラリと抜き放ち、刀身は下段に。 精神を集中させ戦闘用の自我に切り替えた。 ファイターも鞘から名剣を抜き、片手で正眼に構える。 体の力を高め戦闘態勢を作り上げた。 綾香は洋服のポケットから太陽が出ている内に生成した呪術道具を人差し指と中指で挟み、魔術回路を起動させる。 遠坂もスーツの懐から宝石を三つ取り出し右手の指の間に挟みこんだ。 こちらの魔術師も魔術回路と遠坂家の魔道の結晶である魔術刻印を起動させる。 戦う準備は整った。 「ファイターがマスター、そして御三家の一角、遠坂」 遠坂が綾香を真っ直ぐに見詰め名乗りを上げる。 「………セイバーとランサーのマスター、沙条綾香」 綾香もそれに応じてしぶしぶと言った感じは否めないがそれでもきちんと名乗り返す。 礼儀は心得ているらしい綾香の対応に満足そうに微笑を浮かべる遠坂。 そしてついに再戦の火蓋が切って落とされた! 「では、聖杯の担い手を決する為────いざ勝負!!」 まず遠坂が先じて手にした宝石に魔力を篭める。力が発動し光を放つ宝石。 それと同時に遠坂の声に反応したセイバーとファイターが敵へと飛び掛かった。 魔力によって解放される宝石魔術。 照準は綾香。火炎放射の如き炎が一直線に彼女に飛来する。 一番反応が遅れた綾香は迎撃どころか回避動作にすら入れていない。 完璧な棒立ち。かわす手立ても無し。 しかし綾香は脅えない。彼の力量を信頼しているが故に。 旋風を巻き起こして少女と火炎の間に割り込む白い影。 「させるのもか!」 そして大きく振るわれる一閃。 騎士の剣により魔術師の火炎は真っ二つに切り裂かれて消滅した。 「む!?ファイター、セイバーを!」 「任された!!」 どういうわけか無力化された己の魔術を見て警戒を強める魔術師。 遠坂は二個目の宝石を解放してセイバーに、三個目の宝石を上空に投げ少女を狙う。 主の魔術攻撃と連携を取るようにファイターがセイバーへ斬りかかる。 応戦する騎士。剣と剣が鬩ぎ合う。 二個目の宝石魔術はセイバーの強力な対魔力の前に呆気無く霧散した。 だが三個目の宝石は綾香を頭上から狙う巨大なつららだ。 「ゲッ!ヤバい!?ファイターちょっとタイム!」 「タイムは無しだぞセイバー?」 右手に持った聖剣でファイターの名剣を押さえ、左手に持った魔導剣でファイターの胴を薙ぐ。 ファイターがバックステップで剣撃を避けるように誘導すると、その隙に素早く跳躍。 少女を狙う巨大つららを魔導剣で斬りつけた。 魔術を無力化する概念が篭った概念武装”ファレリーナの魔導剣”の力で消滅する三発目の宝石魔術。 「アヤカー!これを使えーー!!」 遠坂の攻撃を全弾防いだのを確認するとセイバーはこう叫んで綾香の前に一振りの剣を放り落とした。 「ちょ!これ!!?」 綾香の眼前に突き立つ不思議な光沢を放つ片手剣。 歴史と年月を積み重ねた物だけが得る事を許される不可思議な存在感があった。 「それは君が使え!!」 戸惑う少女に騎士は励ますように親指を立ててニッと笑った。 「セイバーの分は!?」 「そんなもの今は無用だ!」 地面に着地すると同時にセイバーは今度は遠坂の方へと突進して行った。 「どぉおおりゃーーー!!」 「ファイター出番だぞ」 「御意!」 迫り来る恐ろしい敵に一切怯むことなく冷静に対応をする遠坂。 遠坂もまたファイターを信頼している。故に怯む必要が無いことを識っている 主の命に応じてファイターがセイバーを主人の許へ到達する前に抑えてしまう。 「チッ、流石はファイターじゃないか!」 「あまり舐めて貰っては困るぞセイバー?」 獰猛に笑い合うと再度激しく切り結ぶ二人。 二撃、三撃、四撃、五撃────十撃……二十撃!! 互いに全弾必殺狙いの剛剣。しかしその悉くを跳ね返し合う。 砂浜の砂が二人が衝突の際に発生させる衝撃波で舞う。 優しい小波の音色に激しい鋼の音色が重なる。 遠坂はファイターが騎士を抑え込んでいる間に衝撃波に巻き込まれぬよう距離を開いた。 遠坂の攻撃の手は止まっている。 セイバー達の思惑通り遠坂にプレッシャーを掛ける事に成功していた。 綾香も綾香でちゃんとセイバーから受け取った護符剣を両手で構えている。 魔導剣の形状は幸いにして一般的なナイトソードと同じく細身の片手剣である。 少女の貧弱な腕力でも両手で持てばなんとか振り回せる重量だ。 赤い魔術師が牽制に一発だけ魔術を発動させた。 宝石を媒介に使わない自力の魔術行使。 それを多少ぎこちない動きで剣を振い応戦する綾香。 セイバーの時と同様に切り裂かれて無力化し霧散する魔術。 その様子を横目で確認した騎士はほくそ笑んだ。 これでファイターのマスターに自分のマスターが瞬殺されるという心配はなくなっただろう。 後は何回か今と同じ様に遠坂にプレッシャーを掛けてやればファイターとの勝負は自分達だけで付けられる。 邪魔はさせたくない。正々堂々と勝敗を決してやる。 「ハァッ!!!」 「リャッ!!!」 気合一閃。 お互いの渾身の一刀が敵の首を獲る前に敵の剣に阻まれた。 剣を噛み合わせた格好でぎりぎりと力比べをする二人。 猛る英雄たちの魔力が周囲のマナを共鳴させ紫電を生じさせている。 これで二度目。 今次聖杯戦争における最強の二者の激突はこうして再開を果たした。 膠着状態がしばらく続くと一旦二人は力比べを終え、後方に跳躍し仕切り直しを図った。 足場の悪い砂浜である事など無関係とばかりの俊敏な動きだった。 やはり英霊。人間では手も足も出ない性能を持っている。 「セイバー大丈夫?」 「イエスだ、マイマスター」 少女の言葉に純白の外套を羽織った騎士の背中が力強く応じる。 此処へ来る前にまだまだ余力があると言っていたセイバーの言葉に嘘はないようだ。 一方の遠坂は黙ってセイバーを観察している。 彼の脳裏には宝石で表現されたセイバーの能力値が映し出されている。 やはり思った通りだと彼は表情に出さずに内心で笑った。 セイバーの能力値がアインツベルンの時と比べて若干ながら落ちている。 ───筋A耐B敏B魔D幸A宝A+。 それが今のセイバーのステータスだった。 あの少女がアインツベルンほどの力量を持っているとは流石に思えない。 恐らく出力やスタミナでも以前のセイバーとは差があるいるに違いない。 「マスター」 ファイターが遠坂の方へ視線を向けアイコンタクトを取る。 内容は言わずもがな。本気で戦うという確認だ。 きちんと意図は通じたようで遠坂は何も言わずに首肯する。 彼のマスターは無能ではない。 序盤ならともかくここへきて最強のクラスと謳われるセイバーを前にして出し惜しみなどする訳がない。 様子見も前回でもう済んでいる。後は堂々と相手が隠している力ごと潰してやるだけだ。 マスターの許可に満足そうに笑みを浮かべるとセイバーの方へと向き直った。 「もう準備運動は十分だな?では、今夜こそは本気で貴殿の相手しよう────」 「へえ?前回のは手加減してたって言うのか?冗談きついぜファイター!」 使い手より魔力を送り込まれ唸りを上げる『尖輪猟犬』。 力強くそして獰猛に、見る者を威嚇する怪音を掻き鳴らしながら刀身が猛回転する。 同じくしてセイバーが構える『絶世の名剣』が月光に濡れ光る。 申し合わせたかの様に全く同じタイミングで疾駆する二つの影。 片や純白の外套を、片や獣皮の外套をはためかせ自らの敵の首を狙いにいく。 先制を獲ったのはセイバーだった。 横の一刀。動作をコンパクトに纏めた鋭い一閃がファイターの胴を襲う。 騎士の攻撃動作に応じた戦士が尖った刀身を縦に構えて防壁と成す。 刃は盾に阻まれ、火花と轟音を散らす二つの鉄塊。 続けて第二撃目を連続して放とうとしていた騎士の首筋に、嫌な汗がだらりと吹き出した。 「────ッ!?」 それは不吉なイメージ。 一瞬で散らされる甘美なまでの死の香り。 その気配を瞬時に嗅ぎ分ける野生の獣じみた第六感がセイバーの首を無意識の内に後方へ、出来るだけ後方へと後退させる。 次の瞬間。セイバーの眼前の空気が…。 パァンと弾けるような快音を炸裂させた。 「……あ?」 ちょっと信じられない光景に一瞬だけ呆然とした。 だが首を後方に反らしながらも騎士の瞳は今起きた出来事をしっかりと捉えていた。 今のはファイターの脚だ。 2mという巨躯を誇るファイターの長くそして大木のような太っい脚が後ろ回し蹴りを放った。 セイバーの攻撃を自分の剣で防御し、後ろ回し蹴りに繋げて来ただけ。 そしてその蹴りの鋭さと破壊力のあまりに空気が炸裂した。 ……今の光景はただそれだけの話。 だがセイバーにとってはただそれだけの話ではとてもじゃないが済まない。 今のは運良く避けられたがもしも首を逸らしていなければ、確実に首根っこをへし折られていたのだから。 「ファイターおまえ──!!」 「ぬぇい!!」 敵の虚を見抜いたファイターは拳を硬く握り締め、体の中心に狙いを定め。 空気を揺るがさんばかりの物凄い気合を吐いて空手になっている左拳で正拳突きを打つ。 どういうわけか鉄でもぶつけ合ったみたいな鋼鉄特有の甲高い音が轟き、 ごえ!?っとセイバーの口から苦悶に満ちた呻きが漏れた。 続いて右足による前蹴りが白い甲冑の真ん中を射抜き、即座に左脚による膝蹴りが鎧の脇腹を撃ち抜き、 とどめに剣を使わない右肘打ちを鳩尾に命中させた。 華麗にして強烈極まる連続攻撃をまともに受けて猛烈に吹き飛ばされる白い身体。 セイバーは短い悲鳴を上げて砂浜を激しく転がり、最終的には地面にめり込まんばかりの勢いで叩き付けられた。 綾香がセイバーの名を叫ぶと同時に濛々と砂埃が辺り一面に舞い上がる。 「なによ、なんなのよあいつ!?」 少女は驚愕の表情でファイターの姿を見た。 紳士風の赤い魔術師は当然の結果と言わんばかりの表情で優雅に腕なぞ組んでいる。 「ぐ……は…」 ダメージが尾を引いているのか吐き出される呼吸が苦しげだ。 恐ろしく的確で流れるような連撃がセイバーを打ちのめしていた。 あれはバーサーカーが扱っていた格闘とは練度がまるで桁違いだった。 言っては悪いが今のファイターの格闘に比べればバーサーカーの格闘など真似事にも等しい。 あれは見様見真似で出来るような動きでは断じてない。 日々弛まぬ鍛錬を繰り返し、長い年月を費やし練り上げた者だけが扱える拳技。これはそういう領域の技だった。 おまけにファイターは攻撃力が恐ろしく高い。 高が素手による攻撃などとは口が裂けても言えない破壊力を秘めているのだ。 まともに急所に喰らおうものならば…十分その場で死ねる───! 砂まみれになりながらもセイバーがゆっくりと立ち上がった。 その表情には怒りがありありと浮かんでいる。 「お、お前……!本当に前回手加減してやがったな……っ!!?」 好敵手に手を抜かれていたという屈辱感がローランの怒りを激しく煽り立てる。 元々激昂しやすい激情家なこともあって早くも怒りが臨界点に達しようとしている。 「それがマスターのあの時点での指示だったからな。 貴殿には今まで私の本来の戦闘スタイルを隠していた非礼を詫びよう」 対してファイターは騎士の表情をなど何処吹く風、馬耳東風のへのかっぱな冷静な態度で流している。 「コノ…!」 そんな目の前の男の態度が気に喰わないのか騎士は猛然と襲い掛かった。 「甘い!直線的すぎる!」 お互いの手にした剣を振るい激しく切り結び合う。 両者一歩も退かない瀑布の叩き付け合い。戦いの熱気がぐんぐん上昇していく。 剣戟と拳撃が飛び交う決闘は留まる所を知らず、目の前の男を倒す為だけに力を奮う。 そして闘いの勢いが増せば増すほどに思わず手と共に口が出てしまう。 「まさか格闘なんぞを使ってくるとは…それではその名剣の銘が泣こう!?貴様それでも剣を誇りとする英霊か!!」 騎士的視点から見ると邪道も良い所な相手の戦闘方法を忌々しそうに物言うセイバー。 そんな騎士の姿をファイターは不敵な表情で笑う。 「フッ、それは違うぞセイバー!私は貴殿たちのような純粋な剣の英霊……いや剣士ではない。 よもや忘れたのか純白の騎士よ?私は………”闘士”なのだぞ?」 そう言ってファイターはぐっと力を溜めて、一気に解放する。 「─────剣だけが私の武器ではない!!」 右手の古剣を正眼に左手は拳を硬く握り、体位は斜にした構えを取る。 右の剣でセイバーへ牽制を仕掛け、そして間髪入れずに鉄をもひん曲げる蹴足をお見舞いする。 またしても軽快な破裂音。追加で左拳の砲弾も発射すると当然のように破裂音が轟く。 「チッ!」 セイバーは敵の牽制攻撃をいなしながら格闘に対処する。 悪態をつきながらの割には川の流れのような流麗な回避動作だった。 片手バク転を繰り返して敵との距離を離すとしゃがみ込む姿勢で動きを止めた。 ファイターとセイバーの距離は20mばかりである。 「大体私ばかりを責めるのはお門違いではないのかセイバー?」 巨躯の英雄がゆっくりと騎士の許へ足を進める。 「なんだと?」 「そういう君こそ………前回の戦いでは本気を出していないだろう」 ファイターはどこか責めるような、あるいは拗ねる様な口調で真意を問うた。 彼とて前回の戦いがセイバーの本気だったとは思っていない。 「………………」 何も答えないセイバー。まるで今の発言を肯定するかの様な無言。 反論もない無言のセイバーにファイターが近づき。 目を見開く二人、一瞬で動く両者の影。 衝突。ファイターの振り下ろした剣はセイバーがしっかりと防いでいる。 しかし剣攻撃は防げても次に襲い来る攻撃を防ぐことは叶わなかった。 またしても左拳によるダンプカーの如き正拳突きが白き鎧を打ち抜いた。 響く重い鉄音。宙に舞う四肢。 セイバーは肺から空気を強制的に絞り出され、打突を喰らった勢いのまま浅い弧を描いて海に叩き込まれた。 重いものが着水した衝撃で海が水柱を上げる。 その光景をしかと見届けながら。 「あえてもう一度言おうか」 威風堂々とした立ち姿のままファイターは海に沈んだセイバーへと己の剣の先端を突きつける。 「あまり私を舐めて貰っては困るぞ名高き騎士よ」 そして揺ぎ無い闘気を溢れさせてベーオウルフが宣戦布告をした。 「セイバー!!」 主の叫び声に反応するように再度夜の海に水柱が迸った。 「おりゃああああああああああああああぁっっ!!!」 雄叫びと一緒に両手を天に突き上げて問題無しとばかりにセイバーが水の中から出現する。 白騎士の身体から魔力が猛り狂っているのが遠目からでも判る。 その発せられる魔力は度重なる侮辱、もやは神に祈っても許さんと主張しているかのようだった。 己のサーヴァントのそんな状態に綾香は少し冷静になれと指示を出そうとしたが思わず口を噤んでしまった。 「いいだろう上等だファイター、その挑戦状しかと受け取った」 何故ならセイバーは怒り狂ってなどいなかったのだ。 その表情は怒りとは逆に喜ばしそうに笑みを浮かべている。 「────オレも本気でやろう」 セイバーは右手の聖剣はだらりと下げたまま、空いている左手で濡れて張り付いた金色の髪の毛を掻き揚げながら笑う。 フランスを代表する大英雄にとうとう火が点く。 「それはありがたい。私も本気の貴殿を討ち破らぬとマスターに顔向けできぬからな」 セイバーと同様にファイターも指をコキコキ鳴らしながら笑っていた。 いくら争いを好まぬ性格とはいえどベーオウルフにも純度の高い戦士の血が流れている。 生前には好敵手と呼べる存在が居なかったこともあってか、この度の競い合いは彼にとっても胸が鳴るものがあった。 「ランサーとの尋常な勝負が流れてしまったからな。正直、本気で戦える相手が居なくて困ってた」 「その事については私も残念だ」 二人ともランサーと刃を交えた者同士だ。 白黒つかずに終わったという胸に積もった悔恨の念は消えていない。 「そうだ、そう言えばお嬢さんもう一つ訊ねたいのだが。君のランサーの真名は本多忠勝で当っているかね?」 すると遠坂がそんな英雄二人の会話に割って入るように綾香にランサーについての質問をしていた。 普通ならこんな質問など馬鹿げているのだがその当人がもういない以上は時効と言えよう。 「………ええ、そうよ。あれが日本最強とも謳われた侍の実力よ。 その気になれば貴方のファイターだって倒せたんだから」 表情こそ崩してはいないが少女はどことなく自慢気な口調でその質問に答えている。 「やはりそうか。なるほど、あれが蜻蛉切の能力か。 まともに攻撃を受けてもいないのにファイターがボロボロにされる筈だ」 綾香の硬い表情とは真逆に腑に落ちたとばかりにすっきりとした表情を見せる紳士。 「おいファイター知っているか?ランサーの奴、実はとんでもない切り札を隠し持ってやがったんだぜ?」 「だろうな。私と最初に戦った時ランサーは必殺を覚悟で何かを仕掛けようとしていた。 速度のある奇策──飛び道具系統の業が可能性が高いと予測していたが……決着を付けられなかったのが益々惜しい」 「貴様はまだマシさ。オレなんか決闘の約束までしてたんだ」 セイバーの口調は心底残念そうだった。 同じようにファイターの表情も。 「……お互い、これ以上不完全燃焼の不満を溜めたくないからな」 「同感だ」 その台詞を皮切りに今までのゆったりとした空気が一気に変化した。 二体のサーヴァントの間に熱が生じているような錯覚さえ覚えてしまう。 「負けてお前のマスターにどやされても知らないぜ?」 「はっはっは、そうだな精々そうならないように気を付けよう」 だがそれでも二人の表情は変わらない。 セイバーもファイターも同格以上の相手と競い合える誉れを純粋に喜んでいるのだ。 「セイバー」 「ファイター」 二人の主達が下僕の名を呼ぶ。 その声に応じて騎士と闘士がそれぞれ違う構えを取った。 張り詰めてゆく場の空気。 上がっていく緊張感のあまり吐き気すらしてきそうだ。 大きく呼吸。そして申し合わせたように二人同時に動き出した。 「───最強と謂われるセイバーのサーヴァントを捻じ伏せて見せろファイター!!」 「───ファイターに貴方の剣の真髄を魅せつけてやって!!」 マスターが己の剣達に号令を下す。 「了解────!!!」 「応よ────!!!」 それぞれの命令と同時に飛び出す漢たち。 二人のマスターの動体視力では何が起きたのか視認出来なかった。 砂が爆散した。海水が爆裂した。そして浜が激しく振動した。 これが二人の理解の全てだった。 別にどうということはない。 二人の英雄が主の命令と同時に大地を蹴り、刃を衝突させあっただけなのだから。 海水も砂も二人が地を蹴った時に弾けたものでしかなく。 今起きている浜での局地的地震もサーヴァントの激突で生じたものに過ぎない。 大英雄の格まで上り詰めた英霊同士の闘いとは即ちそういう戦いなのだ───! 短く息を吐いて手首のスナップを利かせて斬りつける。 風切り音と犬が唸るような不気味な怪音と軽快な金属音が忙しなく飛び交う。 攻防に巻き込まれてきりきり舞になる周辺物。 ファイターが名剣を突き刺しに来る。 「…!?」 マスター達にはまるで霧のようにセイバーが掻き消えた風に視えた。 刹那ファイターの背後に姿を現わす騎士。 ファイターの刺突を紙一重でかわし敵の横を抜け背後に回ったのだ。 「貰った!!」 高速の攻防。 脳天から尾骨まで真っ直ぐに聖剣を落とす。 「少々気が早いぞ!」 あっさりと受け止められる必殺の一撃。 ファイターはセイバーの姿をロストした瞬間に足を反転させ背後に対する行動を開始していた。 彼はセイバーの様な生まれ付いての第六感を持ち合わせていない。 だがその代わりに膨大な鍛錬と戦闘経験で得た戦闘論理を武器として具えている。 一手先行く論理か、その場で浮かび上がる閃きか。 二人の戦いはそういう戦いでもあった。 轟々と周りの物を弾き切りながら二人は闘う。 足を動かし、跳び、転がり、外套を羽ばたかせて目まぐるしく移動する。 その様はまるで台風だ。 場所をじりじり変更しながら周囲に被害を出す。 剣の舞が終わらない。 休むこと無い剣舞が流れ続ける。 剣の音が鳴り止まない。高低様々な音域が絶えず響いている。 英雄の迸らせる気合と雄叫びと魔力が綾香達の素肌をビリビリと振るわせる。 セイバーとファイターが仕切り直して距離を開いた。 綾香も遠坂も手は出さない。否、手が出せない。 下手な介入をすれば二人の強烈極まりない闘争心に中てられて敵の前で致命的な隙を曝しかねない。 マスターの身体から抜けていく魔力も前回よりずっと激しい。 だから二人は戦いの行方を黙して見守る。 これが神代の決闘。 前回の戦闘も凄まじかったにも拘らずまるで前回とは比べ物にならない迫力だった。 まさに災害と災害の激突。 力と魔力と技の応酬は人間の理解の範疇をゆうに超えている。 また水柱が上がった。セイバーが跳び蹴りを喰らったのだ。 今度は砂煙が舞い上がった。ファイターが斬撃に耐え切れずに浜に突っ込んだのだ。 「なんのまだまだーーッ!!」 セイバーがモーセの如く海を切り裂きながら敵へと疾走する。 「やはり想像以上の手応え……それでこそセイバーだ!!」 ファイターも砂を撒き散らして海辺へと疾駆する。 互いの右手の愛剣が敵を斬り裂けと強く煌めく。 隙を探し仕掛けるタイミングを計り合う。それでも申し合わせたように同時に振り上げる腕。 大地を踏み込む。親指に収束する力、そして強く強く蹴り。 足先に全体重を乗せて。 最高の一太刀を繰り出す───!! ズンッと地が揺れる。 身体を押すような衝撃波が荒れ狂う。 綾香がこの揺れと衝撃波に足を取られて尻餅をついた。 直後海水の飛沫と砂と泥が周囲に拡散する。 散弾銃のように撒き散らされた物が綾香の身体にベチャベチャと降りかかった。 遠坂は瞬時に障壁を張ったらしく被害は無いようだ。 こんな時でも身なりを気にする紳士然としたこの男も中々大した玉である。 「ぺっぺっ!!ちょっとあんた達激しすぎよ!!」 しかし決闘者達にはそんな少女の文句なぞ耳にも入っていない。 彼らの中を占めるのは湧き上がる喜び。荒らぶる闘志。 より激しく、もっと力強く、必殺に値する攻撃に届くまで手を動かし続ける。 敵の攻撃を捌く。連撃も捌く。攻撃を避ける。防御する。 両者の戦況は完全に拮抗していた。 騎士も闘士もなかなか攻撃を喰らわない。 敵の攻撃とは防ぐもの。己は攻撃を避けて敵には攻撃を当てる。 これこそが戦いの基本にして奥義だ。 しかし両者のレベルが拮抗すればするほどそう簡単にはいかなくなる。 閃きと共にセイバーの相手の虚を突いた攻撃を繰り出す。 見事にファイターを捉えた。 うっ!っと短い呻きを上げて表情を曇らせる。 浅く裂ける肉。血の飛沫が飛び散った。 とどめに繋げる攻撃を騎士が放とうとしている。 だが生じたその隙を庇う様に闘士は剣を振るうのは止めない。 思わぬ体勢からの反撃にセイバーはとどめを撃つのをキャンセルして闘士の反撃をガッチリ抑え込んだ。 瞬間、闘王が笑みを浮かべていた。 勝利への道筋が彼の目には映っていた。 反撃を防御した際に生じたのだろう。 セイバーの顔の守りががら空きになっていた。 唸りを上げる強靭な右足。天を突かんばかりのハイキックが騎士を襲う。 セイバーの首が跳ね上がる。顎を蹴られた。 「ぐあ!しまっ────!!?」 脳味噌がシェイクされ肉体の命令系統が混乱する。 体の力が抜けて一瞬だけ膝が落ちる。 焦る心と共に敵の姿を確認してぎょっとするセイバー。 ファイターが武器を左手に持ち替えて右拳を握っていた。 左でも強烈極まりない正拳突きなのに利き手の大砲を喰らおうものなら負傷は間逃れない。 だが攻撃を避けられもしない。 「この状況で貴殿がどうするか、魅せて貰うぞセイバーーーーーッッ!!!!」 全体重を乗せ真っ直ぐ放たれる右の大砲。ご丁寧に体や腕の捻りまで加えている。 拳法家が観たら溜息を洩らすであろう美しい正拳突きだった。 「こうするに、決まってるだろうーーー!!」 セイバーはファイターの拳が自分の間合い内に侵入してくるまで微動にしない。 そして間合いに入ると同時に正拳には目もくれず逆に攻撃に転じた。 聖剣が斜めに斬り降ろされる。 騎士の狙いは相撃ち狙いのカウンター。 回避出来ないのなら五分の状況に持ち込むまでだ! 交差する剣と拳。 歪な音と凹む白銀の甲冑。 風切り音と斑な赤色に染まる獣皮の外套。 セイバーのカウンターは成功した。 内臓を潰しかねない尋常ではない衝撃が鎧を貫き騎士の腹部から背中を通り抜けていく。 口内から血液を吐いて空中に放り出される白の鎧姿。 傷口を押さえて思わず膝を屈する外套姿。 かつて受けた事が無い位の見事な切れ味を誇る刀傷が闘士の厚く硬い腹部に作られていた。 傷の痛みに顔を顰めながら、それでも二人は内心で口元を歪ませていた。 かつてこれほどの敵に出会ったことが無い。 己には親友はいたが流石に敵としてここまで殺し合った事などない! 己には好敵手はいなかったが自分とここまで戦える者など見たことがない! これほどの胆力を誇る勇者を知らない。 これほどの技を誇る勇者を知らない。 あの魔法庭園で、あの魔窟で、死闘の末に倒したあの竜種とは違う、別種の強さ。 ──────もはや間違いない。 奴が。 奴こそが。 我が最強の敵だ───────!!! セイバーがむくりと立ち上がる。それから口から微かに零れている血を親指で拭う。 「無論、まだまだいけるのであろうな?」 応じるように膝を立たすファイター。手に付いた血痕を服の裾で拭う。 「当然。そういう貴殿こそどうなのだ?」 言葉など必要ないと。 剣を構えてそれに応える騎士。 緊迫した空気に息を呑むマスター。 またしても掻き消える二人。風の様に地を駆ける。 六閃すると共に俊敏に足場を変更して相手の背後へと廻り込もうとする。 だが双方相手の思惑を予測し、決して背後に廻り込ませない。 ステップインしない牽制の乱れ突き。まるで矢の如き点の攻撃。 しかしそんな攻撃ではどちらも意にも介さず簡単にあしらってしまう。 時には勘で行動し、戦局を有利に変えようと努力する。 激突はなお加速していく。 突き出されるそれは獲物に飛び掛る肉食獣の牙。 緩急をつけたファイターの躍動感溢れる剣と拳を自在に駆使した連続攻撃。 猛回転する尖った剣に貫かれて白銀の鎧の一部が欠け落ちる。 お返しにとセイバーが雷光の速さで三連突きを穿つ。 世界に名を轟かす切れ味を誇る聖なる名剣が非常に丈夫な筈の獣皮外套を容易く切り裂いていく。 距離を開け。また詰め刃を叩き込み、そしてまた距離を開ける。 着地と同時に踏み足に全力で力を込めた。 水飛沫だけがその場に残り再び二人の姿が消失する。 あまりにも動きが速く遠坂達の眼では追いつけない。 今度は地ではなく空高くに飛び上がっていた。 宙で躍り掛かりながら相手の急所目掛けて剣を突き刺す。 一瞬で終わる剣刃の攻防。だが交換した攻撃は五を超える。 視線を交差し、真横をすり抜けていく体。 そして互いに背を向けた格好で地に降り立った。 両者共に無事。損傷は無し。 「貴様のような強者とあいまみえる事が出来るとは、騎士として喜ばしい限りだぞ」 「私も貴殿のような強者と競い合う機会がまさかあるとはな。久しぶりに胸が高鳴っているよ」 相手を讃えながらくるりと反転する。 正面から向き合う両者。互いの雄姿を視界に納める。 純白の外套が砂埃で薄汚れ欠け砕けた白き鎧と、切り破れて襤褸布になりかけている獣皮の外套と衣装。 打撲痕や出血も所々に見受けられる。 二人は少しずづ少しずつだが確実に損耗と消耗を重ねていた。 しかし二人はそのことをまるで気にした様子が無い。 むしろまるで全然消耗していないと言い出さんばかりの元気さである。 二者の距離は10m前後。 「ではこういうのはどうかな?」 ファイターがフェンシングのような構えを取った。 尖った名剣の刀身は相変わらずぎゅるぎゅると激しく回り続けている。 「また得意の格闘か?」 軽口を叩きながらセイバーも突き主体の剣の構えを取る。 騎士と闘士は摺り足でじりじりと間合いを詰めていく。 徐々に狭まってゆく距離。近づくにつれて集中力が増していく。 「───覇ッ!!」 小さく息を吐いてファイターが先制で仕掛けた。 全身の筋力を一点に集中し一気に爆発させた踏み込み。 ファイターの後追うように残像が出現する程のハイスピード。 その速度にさらに腕の力を加えた突きを上乗せする。 空気を捻じり巻き込みながらおぞましい速度を以って尖剣が敵の胸元へと吸い込まれていく。 「ヤアッ!!」 後の先を取るセイバーの迎撃。敵の狙いは自分の心臓だ。 同じ様にこちらも敵の心臓を抉りに聖剣を突き出す。 攻撃の型は同じくして刺突。反応に速度はほぼ同じ。 剣と剣が交差するその瞬間───。 尖輪猟犬 「ネイリング──────!!!!!」 ベーオウルフは己の名剣の真名を解き放った! 宝具の力で彼の肉体が騎士の眼前から完全に消滅する。 「な……にぃ!?」 突然の敵の消失に驚愕する。 そして標的を見失ったセイバーの刃が虚しく空を切った。 ついた勢いに流され足も前方に流れていく。 流されながらも即座にセイバーは首を巡らせ周囲を確認する。 騎士の視界の端に映る立派な体躯。 ファイターはセイバーの左後方に姿を出現させていた。 しかしそれ以上に奇妙な違和感がセイバーを襲った。 ”さっきと何かが違う……?” そんな疑問を抱いたと同時に違和感の正体に気が付いた。 ファイターの装備する武器が変わっている。 それは柄の長い真っ赤な長剣。 それを奴は両の手で構えていた。 足に付いた勢いを何とか殺してファイターの方へと振り返るセイバー。 「……巨人の大刀剣」 ファイターがボソリと呟く。 一気に騎士の目前にまで詰め寄り。そしてセイバーの頭上に跳躍した。 「跳躍斬りか!?」 相手が出そうとしている技の種類を即座に見破る。 セイバーは応戦するために剣を振ろうとして。 「………あ、れ…?」 何故か地面が引っ繰り返って見えた。 心なしか足元の感触も無い。あれれ?地面はいずこに?そしてなぜ月が見えるのだろう? 「ギャァァアア!嘘!!?アンタなんでそこで足滑らすわけーーー!!!?」 綾香の悲痛な絶叫が辺りに響き渡る。 「その隙貰った───!!!」 魔剣は天高く構え、体は海老のように反らせた姿勢。 握力、手首、上腕、肩、背筋、腰、それら全ての筋肉を弓の弦の如く極限まで引き絞る。 引き伸ばされた力は解放の瞬間を今か今かと待ちわびている。 弦からついに指が放された。 驚異的な瞬発性で振り下ろされる一撃。 重力に乗って体重に乗って力に乗って。 それは加速し魔風と化して音を超える! まさに神速のギロチンの如し。 全てを断ち切るファイターの剛剣。 その全てを篭めて放たれる全身全霊の会心の一刀がセイバーを襲う───!! 「ぬうおわおおおおおおお!!」 だがセイバーとてやすやす死ぬわけにはいかない。 右手に握った聖剣に己の命運を託す。 すっ転びながらも雄叫び上げて敵の一刀が振り下ろされるより速く大地を片手剣で激しく叩いた。 推進力を得た体はその場から僅かとは言え離れていく。 その後強引に体を捻じり地面に腕が着いた瞬間さらにゴロゴロと転がり出来るだけ遠くに逃げる。 セイバーの視覚では何が起きたのか確認出来なかったが、彼の耳朶には物凄い轟音が大地越しに直撃していた。 ファイターが何かをしたのは確実だった。 セイバーは一通りの距離が開いたのを体感で確認すると素早く立ち上がった。 「うぇ………?!」 そしてその風景に呆然とした。 無様に地面を転げ回るセイバーに何故か追い討ちが無かったのは、それはファイターが今もまだ残心しているからだ。 それはいい。 だが問題はそのファイターの目の前にあるものだ。 地面がパックリと大きく切り裂かれている。おまけに穴が深い。 まるで巨人が巨大な大剣で地面を斬り付けでもしたかのような巨大な痕跡だった。 それ位の破壊力がないと地面はああはならないだろう。 今のファイターの攻撃をまともに応戦していたらどうなっていたことか。 セイバーの背中を冷たい汗が流れる。 「これが……ファイターの必殺技か……っ!」 プルプルと身体を奮わせ戦慄と羨望を篭めた瞳でファイターを見詰めた。 ”ランサーに続いて奴までもが必殺技の使い手だというのか!?” 「いや、そんな上等なものではない」 しかしファイターは謙遜なのか事実なのかセイバーの言葉を否定してゆっくりと立ち上がった。 「嘘付け!そんな破壊力のある通常攻撃なんかあってたまるか!」 がびーん!という効果音がすこぶる似合いそうな顔でセイバーが噛み付く。 対照的にファイターは酷く落ち着いた表情をしている。 「別に嘘ではない。ただ私の全力全開の一発を見舞っただけだ。 むしろセイバー、私は君の運の良さに驚くぞ? よく今のを避けようとしたものだ。 あのまま応戦してくれていればそのまま剛力で圧し潰せていたというのに」 「ちょっとセイバー!ファイターの攻撃力はA+ランクなんだから気をつけてよ!」 内心冷や冷やの綾香がファイターから得た情報を元に助言を飛ばしてくる。 「もしかして……いまのは想像以上にヤバかった…?」 少々引き攣った表情をした騎士がそのヤバくしてくれた当人に訊く。 「さあ?君がそう思うのならそうなのだろうな」 ファイターは問いに対して不敵な笑みを口元に浮かべて応えた。 「フッ…………見たか!これぞ大天使様の御加護の力だっ!!」 「嘘付け!!アンタ突然スッ転んだだけじゃない!」 十字を切って祈るセイバーに瞬時に突っ込みを入れる綾香。 だがそんなご尤もな突っ込みにもローランはたじろかない。 「そう、それこそが天の御意思。オレを何があっても回避させる為にしたことに違いない!」 「もう好きにしなさい……」 これぞ『天使の加護』の力だと高らかに笑うローラン。 逆に頭を抱えている綾香。 しかし真偽はともかくとしてファイターの様子ではその幸運のおかげで彼が助かったのは真実のようだ。 気を取り直して聖剣を上段に構え直す。 「…………」 ”でもまあ何にせよ今のはなるたけ出させない方がいいな” 表情を引き締めてファイターと向かい合う。 冬の冷たい潮風が吹いていた。 ファイターも赤い魔剣を両手で中段に構える。 綾香はハラハラとセイバーを見守っている。 セイバーの表情にどうしても一抹の不安を覚えてしまう。 何故か嫌な予感がしてしまうのだ。 しかし少女のそんな胸騒ぎの正体を見極める暇など与えられず事態は進行する。 「……いざ!くらえぇぇえファイターー!!」 怒号を上げて突撃するセイバー。 まるで愚直な突進。フェイントも無ければ、緩急をつけるというテクニックもない。 形容するならまさに敵に向かって突っ込むだけというのがピッタリくる。 そして無様な突進をしたかと思えば今度はなんといきなりバレリーナの様にクルクルと回転し始めた。 「は……?」 目の前の謎の展開に綾香の開いた口が塞がらない。 異様な状況に遠坂どころか相対するファイターさえも目を丸くしていた。 「超ぉぉぉ必っっ殺ぅ!!!セイバァアァァァァーエクストリームハリケーーーンッ!!!」 キュピーン!なんて効果音と共に高らかに必殺技名を宣言した。 「お願いだからちょっとは空気読めーーー!!」 嫌な予感大的中。しかし想像以上の内容に頭抱えて悲鳴を上げる少女。 仕舞いにはうえーんと泣き出さんばかりの勢いである。 そんな少女の嘆きを無視してそれでも騎士は我が道をゆく。 ああ素晴らしきかな漢の道。ついてこれるものならついて来い。 しかしハリケーンとはよく言ったもので猛回転しながらも手にした刃の切っ先はしっかり外側を向いていた。 ──回転剣舞。 といえば聞こえは段違いに良くなるが、実際の見た目はそんな格好良いものでは全然ない。 どちらかといえばこれは電動丸鋸やチェーンソーの類である。 ブオオオオっと風を巻き上げ剣の竜巻に飛び込む石や木や葉をバラバラに切り刻んでいる。 「ハハッ!私の尖剣に対する意趣返しか!面白い受けて立つぞセイバー!!」 竜巻剣の標的となってるファイターは怯むどころか突然珍妙な行動を取った敵を愉快そうに笑った。 そして一旦構えていた魔剣を名剣に装備し直しこちらも刀身を大回転させる。 目には目を。竜巻剣にはドリル剣を。 ファイターは身動きせずじっと竜巻モドキの到達を待ち受けている。 「いや面白くは無いだろう!カッコイイと言えよっっ!」 「全然良くないわよ馬鹿っ!!鏡見なさいよ鏡!!」 なじる相手がそれぞれ違うという奇妙な文句の言い合いが飛び交う中。 二つの回転剣がついに接触した。 瞬時に爆竹のような激しい火花が散る。 「ぬ?!」 「くぉ!?」 二人の表情に僅かな緊張が走る。 意外にもセイバーのソレは見た目のマヌケさの割には威力が高いらしい。 そしてお互いの前進が止まった。 だが二振りの名剣の回転はまだまだ止まらない。 バチバチと火花を散らし続ける。しかしそれ以上に音が凄まじい。 暴力じみた鋼の騒音が静かな夜の浜辺を侵食している。 耳を塞ぎたくなる音の乱打。時間と共に失速する騎士の回転。 するとセイバーはあえて自ら回転を止めるつもりで大地を強く踏み締め、最後の一回転を渾身の力で叩き込む。 遠心力で猛烈な勢いを伴った強打にセイバーとファイター剣先が明後日の方角へ逸れる。 「ふん!」 互いに生じたその隙にセイバーが高くジャンプした。 二瞬遅れでファイターの剣が何もいなくなった空間を薙いだ。 闘士の標的は既に宙高くに舞っている。 そしてセイバーは前宙するように今度は縦の回転を始めた。 「続いて必殺第二弾だ!」 またまた必殺技宣言をし、さらにまたもや猛回転を始めた騎士。 まさしく紛うことなき人間電動鋸。 この超回転でついた勢いを上乗せして会心の唐竹割りを放てばきっと凄まじい破壊力が望めるだろう。 「獲ったりファイターの首級~!」 「ほう、しかしセイバー、それには一つ大きな問題点が有るぞ?」 頭上を見上げながらのほほんと勇士は言う。 それもそのはずなにせ彼の心眼は既にこの手の攻撃の対処法を知っているのだ。 だが騎士の耳には届いていないようで、そのままファイターの頭上に落ちていく。 いつの間に持ち替えたのか闘士は名剣ではなく魔剣を両手持ちしていた。 それはさながらバットを構えるスラッガーのようだ。 あまつさえ足まで振り子している。 これぞ彼の有名なスポーツの英雄が使ったとされる振り子打法なり。 「セイバァァァァーダイナミッ───おうふ!?!」 カキーンと特大ホームランされるアホの子。 うわああああああ~~~っ!と遠ざかりながらエコーするマヌケな絶叫。 特大アーチを描いて沖まで飛んでいき、そしてドボンとこれまた見事な水柱を上げて海中に沈んだ。 ファイターはそのマヌケな風景を最後まで見届けて。 「その攻撃は側面の攻撃に対する防御が薄い。今みたいな事になるから多用は注意すべきだぞ?」 などと人差し指を立ててデッドエンドを迎えた者を正しい道へと指南する猫や虎の某先生たちのような物言いでアドバイスした。 まあ今のは魔剣の腹の部分で打ったのでダメージは大してあるまい。 おまけにちゃんと加減もしてあるからお馬鹿さぁんがマヌケな死に方をする心配もせずに済む。 なぜそんな面倒な事をするのか。それにはちゃんとした理由がある。 あくまでファイターにはれっきとした狙いが別にあるのだ。 さてセイバーを追うかと行動しようとした時。 「ファイターチャンスだ!陸に上がる前にセイバーを水中戦で仕留めろ!」 海中に落ちたセイバーを見て遠坂が即座に指示を出す。 理由は簡単だ。水中戦ならばまずベーオウルフの独壇場である。 彼が生前打倒した怪物の中に沼の中に棲む水魔やその眷属というのが存在した。 勇者は彼女たちと水中戦を行ない、そして最終的にこれを仕留める事に成功した。 その特性はサーヴァントになってからも活きている。 それほどに遠坂が召還したサーヴァントは水中での戦闘を得意としているのだ。 当然ファイターのマスターである遠坂もそのことを十二分に承知している。 だからこそこれほど素早く的確な指示が出せるのだ。 まさに司令塔の役割に相応しい良い仕事である。 「了解。今のはそのつもりで喰らわせた一発だ」 反応の早いマスターの命令にニヤリと答えてファイターは霊体化した。 霊体化すると物質界からの干渉を殆ど受けない分、移動速度が上がる。 一気にセイバーが沈んだ辺りまで飛ぶ。そしてその直上で実体化し自分も海中へと潜っていった。 ───────Interlude Masters Side─────── サーヴァント達が居なくなった浜辺にはマスターのみが残された。 「……ハァ、あんの馬鹿ちん……なんでアイツは昔っからああのよ……。 ランサー貴方ちょっとだけバトンを渡す相手の選択肢間違えたかもしんないわよ…」 なんともやり切れない虚脱感というか悲哀感にさえなまれながらもそれでも綾香は気丈に踏ん張っていた。 色んな意味でちょっとだけ泣きそうだけどでも頑張る。 彼女の目の前にはまだ遠坂が残っている。 隙を見せるわけにはいかない相手なのだ。 セイバーから預かった魔導剣をしっかりと両手で握る。 この概念武装のおかげで圧倒的な戦力差にも関わらず守りだけなら何とか対抗出来る力を得ている。 それから令呪にも一応意識を集中させておく。もしもの場合は即座に使わなければならない。 そのため予め心の準備をしておく必要がある。気付かれないようにそっと深呼吸をした。 一方の遠坂は無言で沙条綾香の様子を観察している。 暫らく相手の出方を観察し相手からは攻めて来ないと判断するとそっと内ポケットに手を差し込んだ。 そして優雅な動作でスーツのポケットから小さな立方体の小箱を取り出す。 小箱の中に入っていたのは美しい翠色をした大粒の宝石が填め込まれた綺麗な指輪だった。 クリムゾンダンサー 「紹介しよう。これが私の礼装『灼光炎舞』だ」 右手の中指に礼装と名乗る指輪を装着しながら少女に見せ付けるように手をかざす。 物凄く綺麗な指輪だった。 女性なら誰しも溜息をつき、喉から手が出るほどに欲しいと思う一品ではないだろうか? そういう綾香も例に漏れずついごくりと喉を鳴らす。 そして自身から出てきた欲望の音にハッと意識を引き戻された。 「……って違うぞわたし!宝石に見惚れてる場合じゃないわ」 頭を振って邪な念を脳内から追い払う。煩悩退散煩悩退散。 「残念だがこれはあげられないのだがね」 そんな少女の姿に皮肉な面持ちで笑みを浮かべる紳士。 「別にいらないわよっ!」 くわっと眼力と一緒に全力でNOと言ってやる。 明らかに自分を馬鹿にしてるのがわかる。 「おやそうかね?もし私に勝てれば好きに持って行くといいと言おうとしたのだが」 だが遠坂は少しだけ意外そうな顔をしてそんな言葉を口にした。 恐らくこれは冗談でもなんでもない、本気でそんなことを思っている口振りだ。 まあ尤も、自分が負ける訳がないという自信もあるのだろうが、 それ以上に遠坂は貴重品を身に着けた者が死ぬとどうなるかということをちゃんと理解しているからこそなのだろう。 「余計にいらないわ。人様の遺品を掻っ攫うほど落ちぶれちゃいないつもりだもの」 だからこそ綾香もきっぱりと否定する。 彼の物は彼の家族が引き取るべき遺品だからだ。断じて他者が勝手に手を付けていい物ではない。 この戦いで己も祖父を失ったからこそ尚更そう思う。 もしお爺様の遺品をどこの馬とも知れない人間が持っていくとしたら、それは断じて許せる所行ではない。 きっと彼の家族もそう思うはずだ。 「なるほど。良く躾が行き届いている。君を教育した者の度量が窺えるな」 遠坂は少女の凛とした態度に少しだけ表情を緩ませた。 芯も強い。躾もちゃんと行き届いている。相手にとって不足はないと赤い魔術師は思った。 「おだてても手は抜かないわよ?」 勝ち気に宣言して両足を肩幅に開いて魔導剣を構える。 遠坂が仕掛けてこようとする気配を感じ取ったのだ。 「ではそろそろ始めようかお嬢さん………Anfang」 中指だけを伸ばした右手で綾香を指差して、ドイツ語で呪文を詠唱した。 魔術回路が活動を始める。 緑石の指輪から三つの拳大の大きさの火の玉が出現した。 くるくると指輪の上で円を描き浮遊するようにゆっくりと回る炎。 「一曲目、闘争のワルツ!!」 ドイツ語で唱えられた呪文と一緒に魔力を礼装に叩き込んで魔術を発射する。 直進する軌道の玉が一つ。弧を描く軌道の玉が二つ。 綾香の正面、頭上、そして左翼から火球が襲い掛かってくる。 一番最初に自分の許に到達した火炎球を手にした剣で切り伏せる。 そして左翼から飛来する火球へあえて自分から突っ込み一閃。 二つの火炎を立て続けに消滅させた。 同時に頭上から最後の火球が落ちてくる。 所詮付け焼刃にすぎない綾香の剣術の腕前では迎撃は間に合わない。 だから綾香は無理に迎撃はせずに頭から砂浜に飛び込んで回避する選択肢を選ぶ。 「くぅ!!」 波でやや湿った砂で折角の洋服が汚れるのを内心舌打ちしながら最後の火の玉をやり過ごした。 「第二曲、絶望のタンゴ」 だが遠坂が間髪入れずに第二射を放ってきた。しかも今度は火球の数が五つだ。 たった一つの火の玉でも十二分に人間を焼殺して余りあるだけの威力を誇る業火。 そんなものが三つから一気に五つとは……あの礼装は火弾の数を自在に操れるのだろうか。 五つの火炎が螺旋を描いて綾香の許へと殺到する。 必死に応戦する少女。だが遠坂は手を休めない。 「第三曲、憎悪のフラメンコ!!」 次はジグザグの軌道を描いて七つの炎が綾香を攻め立てる。 ダンスの名に冠しているだけあってか攻撃軌道がそれに関連した動きになっていた。 ぶんぶんと魔術を無力化する剣を振るう。 消される炎。迎撃が間に合わない場合は足を使って回避する。 何度か無様に浜を転げまわったせいで綾香の体は砂まみれの泥まみれだ。 勿論綾香の方も何も攻撃しなかったわけではない。 既に何発か呪詛を篭めた使い捨ての魔術道具を使いはした。 だが遠坂には何の効果も与えはしなかった。 魔術師としてのレベルに差が有りすぎて相手にならないのだ。 あまつさえ。 「ウィッチクラフトにしては随分微妙な効力だな。もう少し勉強したまえ?」 などと相手に術の出来栄えを鼻で哂われる始末だ。 「第八曲目───死のベリーダンス!!」 そうして次は波打つ業火の波が押し寄せてくる。 死に物狂いでこれもなんとか捌く。 しかし綾香はもう肩で息をしている状態だった。気力・体力・魔力の消耗が激しい。 彼女は上等な概念武装を装備しているからこそ格上の魔術師を相手にまだもっているようなものでそれにも限界はある。 防御が相手の手数に次第に追いつかなくなって来ているのだ。 マズイ拙い不味いマズいまずい!!! このままではじわじわと嬲り殺しにされてしまう。 綾香の中で次第に焦燥感が募っていく。 令呪を使うべきか否か。 決断を迫る時が来たのかもしれない。 「さてと、私はどうしたものかな」 遠坂はそんな綾香の胸中などまるでお構いなしに顎に手を当て考え込んでいる。 そうして所々服が焦げて砂だらけ塵まみれというかなり酷い身形になった少女を改めて見遣った。 彼女の攻撃の手はいつの間にか止まっており、今は肩で息をしている状態である。 このまま力押しで攻めればあの少女は倒せるだろう。 元々地力に差がある者同士だ。 セイバーが持っていた概念武装の恩恵で己の業に対抗していたがそれももう限界が来ている。 概念武装の力に少女が追いついていない。 サーヴァントへの魔力供給が原因で全力の魔術攻撃が出せない状態とは言え、 現状の威力でもあと二三発ほど『灼光炎舞』で突いてやれば張りぼての城塞は呆気なく倒壊することになるだろう。 だからこそ男は考える。このまま少女を仕留めていいものかどうかを。 沖の方ではセイバーとファイターが闘っている音が聞こえてくる。 暗い夜間の上に距離が離れている為現在どちらが有利かまでは確認出来ないが十中八九ファイターが有利だろう。 ファイターに任せるか、自分で敵マスターを仕留めるか。 ファイターのことを考えるなら任せるべきだろう。 だが遠坂はファイターの為に戦っているのではない。 あくまで遠坂家の悲願成就の為にこの聖杯戦争を闘っているのだ。 その事実を再度確認するとやはり自分の手で勝利を取るべきだなと判断して……少女の表情を見て再考し直した。 このまま押せば確実に勝てはするだろう。 だが下手に追い詰めると令呪を使われる可能性が否定できない。 いやむしろマスターならば追い詰めれば追い詰めるほど令呪を使う可能性が遙かに高まるのが道理だ。 そうなると自分までもファイターを令呪でここに呼ぶ必要性が生じてしまう。 ”勝利は大事だがそれは旨くないな……” 戦術的勝利は欲しいが戦略的勝利に比べれば圧倒的に価値が下がる。 自分は聖杯戦争を勝ち抜いて悲願に至るという戦略的勝利が欲しいのであって、 一人二人のサーヴァントやマスターに勝つという戦術的勝利が欲しいわけではない。 水中戦で勝率の高いファイターに暫らく任せて後からマスターを倒す方が賢明かもしれない。 とりあえずもうしばし様子を見るのがいい。 遠坂は最終的にそう判断すると、 「少しだけ時間をやろうファイター。 自らの手だけでセイバーと決着を付けられるか付けられないかは君次第だ」 小さく呟きながらファイターへ念話を送ると戦闘の構えを解いた。 お互いもう少し成り行きを見守ろうではないか。 敵の突然の謎な行動に不審そうにこちらの様子を窺ってくるセイバーのマスター。 そんな少女の顔を遠坂はさも可笑しそうに胸中で笑った。 ───────Interlude Masters Side out─────── ──────V&F Side────── 助けろ!ウェイバー教授!第十六回 V「尺足りない事がこんなにも恐ろしいことだったとは…」 F「一度ならず二度までも尺が足りなくなるなんて…!」 槍「天狗じゃ天狗の仕業でござる!」 F「前回のどうなってしまうのか!?がまさかこうなってしまうなんて…予定外にも限度がありますよ先生ぃ」 V「ファイターのパンチが火を噴いたではないか」 F「それは予定内じゃないですか」 V「ならばセイバーエクストリームハリケーンは?」 F「すみませんそれは予定外です!」 V「さて、本気のセイバーとファイターの戦いを見た感想はどうだランサー?」 槍「拙者は本当にこんな連中と刃を交えていたんで御座るか……?」 F「そっくりさんと言うことは無いと思いますよ?」 V「勝てそうか?」 槍「や、ぶっちゃけ無理で御座るなぁ」 F「うわ!?即答しましたよこの人」 V「珍しくやけに弱気だな?」 槍「あくまで真っ向勝負でなら、という条件の話でござるよ。 仮に戦えばあっちは拙者の足をまず殺しに来るのでござろうから。 見切りと直感を最大限に活用してもこっちは連中に一撃でも喰らってしまえば足が止まってしまう」 F「忠勝さんってヒョロいですもんね!」 槍「人を捕まえてもやしっ子みたいに言うなで御座るよ!」 V「まあランサーはある種耐久性の代わりに俊敏性を得ている部分があるからな。 連中のプレッシャーを受けながら全ての攻撃を回避し続けるのはさぞ難易度が高い事だろう」 槍「ふん、拙者は頭を使って戦いそして勝つからいいんでござる」 F「あ、先生忠勝さんがいじけましたよ?」 槍「いじけてなどない!」 V「さてとでは今回は一つ真面目な解説でもしてみようか」 F「わーわーわー!パチパチパチ」 槍「また珍しい……」 V「まずファイタークラスの解説だ。 このクラスはASのエクストラクラスとして登場したクラスで戦士系のクラスな訳だが。 ファイターが言うように剣だけが武器ではない。というよりも剣士や槍兵のように武装の決まりが特に無い。 戦斧でも鉄鎚でも曲刀でも鞭でもブーメランでも石ころでも武器なら何でも扱う。 そしてそれ以上に何らかの強力な格闘の技能を有しているのが特徴でもあり、同時に該当条件でもある」 F「武器が無くなってもまだ十分戦えるクラスという訳ですね!うおおお!武器などいらん俺が武器だー!!」 V「煩いぞフラット。ちなみにASのファイタークラスにはクラススキルはない」 槍「対魔力なども保有してないのでござるか?」 V「無いな」 F「なんでまた…?」 V「同じくエクストラクラスであるアヴァンジャーがどうもこれといったスキルを持ってないようだからだ。 もしかしたらエクストラクラスは通常ではない特別クラス故にクラススキルは無い可能性が否定できなかった…」 F「くっ、イスカンダルさnがエクストラクラスとして出てさえいれば…!」 V「しかしまあもし仮にクラススキルをつけるとしたらアサシンの気配遮断の様に該当条件である格闘スキルだろうな」 V「次は概念武装の解説をしようか」 F「今回二つほど出ましたね、遠坂さんの魔術礼装とローランさんの魔導剣」 V「正直ファレリーナの魔導剣がここまで物語上の役に立つとは思ってもいなかった……どう転ぶかわからんものだな」 槍「初めはキャスターの防戦最強の為だけのアイテムだった筈でござるのになぁ」 V「まさかルーキー魔術師の綾香がベテラン魔術師の遠坂とまともに魔術戦を繰り広げる日が来ようとは。 ………プロット段階ではこんな展開なかったんだぞ?」 F「意外なものが意外な形で役に立つ。そんな話の典型ですよね!」 V「ファレリーナの魔導剣は宝具で言うところの利器型の概念武装だ。 宝石のように力を発動させる度に魔力を込める必要もなければ、特定の呪文や詠唱も必要ない」 槍「かなり便利な魔道具でござるな」 V「それはそうだ。なんと言っても中世の”元魔法使い”が作った”元魔法”の剣たる概念武装なんだぞ? 我々現代の魔術師が作り出す概念武装よりも遙かに優れているのは当然の話だ」 F「先生!ちなみにこの概念武装の正確な効果の方はどんな感じになってるんですか?」 V「この魔導剣は刀身で魔術の効力を中和してから切り裂いて無効化している。というのが正確な働きだ」 槍「つまり斬りつけないと魔術は無効化できない、と?」 V「そういうことだな。 一応刀身に触れた時点で中和はしているから魔術の力自体は落ちてはいるがそれでも切り裂いた方がいいだろう」 F「それだと子供や女の子じゃ扱うのが結構大変そうですねぇ、片手剣とは言えどそれでも鉄の塊ですし」 V「まあその辺りは腕力に相談するしかなかろうな」 V「次は遠坂の魔術礼装である灼光炎舞だ、ルビはクリムゾンダンサー」 F「赤い踊り子ですか。ところで先生、灼光炎舞って社交円舞の駄洒落ですよね?」 V「さてなんのことやら?」 F「駄洒落ですよね!?ルビもダンサーですし!技の名称も社交ダンスですし!」 V「さてなんのことやら?私には君が何を言ってるのかさっぱり理解できないな」 槍「………」 V「この礼装の能力は指輪より火珠を作り出し自在に操るというものだ。 当然使用する魔力量次第で火球の大きさも変動するぞ」 F「……あのぅそれだけですか?」 V「ああそうだ、この礼装の基本能力はそれだけだ。 遠坂はこれに呪文詠唱を加える事で本本中に見せた複数の攻撃パターンを編み出した。 ちなみに火炎弾の操作方法には術者によるマニュアルと設定した動作を自動で行なうオートの二種類があったりする」 F「あれなんか俺途端にこの礼装が凄く聞こえてきましたよ?」 槍「なあ教授殿?……なんか聞いた感じでは実は結構高性能なのでは御座らんか?」 V「実はも何も最初から結構高性能なのだが?この手の礼装は性能がシンプル故に術者次第で如何様にも強くなるんだ」 F「その言い方だとまるで遠坂さんが優秀で有能で強いみたいじゃないですか!」 V「まるでもなにも普通に優秀で強いんだ!才能なら遠坂家歴代当主の設定の都合で時臣より上なんだぞ!?」 F「えー?」 V「え-?じゃない!前に言ったことあっただろう!」 F「もう皆覚えてませんよそんな大昔の話なんて」 V「くっ!あまりに事実過ぎて何も言い返せない……」 F「じゃあ次はローランさんの必殺技ですね!」 V「……あれもやるのか?」 槍「……あれもやらないといかんでござるか?」 F「差別反対!あれも立派な必殺技じゃないですか!セイバーエクストリームハリケーンって名前もあるじゃないですか!」 V「名称なんぞどうでもいいわ!あんなものセイバーが即席で考えて即席で付けた名前もいい所だろう! あんなものを必殺技扱いしなきゃならない自分が酷く情けないぞ」 槍「………セイバーのやつ、ファイターとの決戦の最中にふざけているのでござろうか…?」 V「いや当人は物っっ凄~く真面目にやってるようだぞ。表情を見れば判る。だからこそ余計に違和感があるのだが」 槍「あれで……真剣…?」 V「そういう奴なんだ。そもそもお前らが蜻蛉墜しや巨人の大刀剣なんてものを魅せるからあのバカが感化されたんだろう。 元を正せばランサー、君の責任ではないのか?決闘したよしみだろう止めてきたまえよ」 槍「む、無理でござるよ。正直セイバーになんと申せば良いのやら」 F「でもなんか結構強そうでしたよ?」 槍「それは……確かに」 V「腹立たしい事だが攻撃力自体は生意気にも割と優れているな。 あと何気に一応攻防一体になっている部分も私の神経を逆撫でする」 槍「すさまじい物言いでござるな教授殿」 V「私はあんなものは必殺技とは認めん!」 F「そんなぁ!」 槍「教授殿最後にファイターのアレが残っているでござるぞ」 F「ベーオウルフさんの巨人の大刀剣ですね! 忠勝さんに次ぐちゃんとした必殺技ですよ必殺技!カックイー!!」 槍「ぬぅぅ!宝具の真名の解放も出来るというのに贅沢な!」 V「いや盛り上がっているところ悪いんだがファイターの巨人の大刀剣は技名が付いてる割には通常攻撃だぞ?」 F「……へ?」 槍「済まぬで御座るがもう一度言ってくれぬか?」 V「だからあれはファイターが言っている通りあくまで通常攻撃だ」 F「嘘だっ!!!」 槍「あんな威力の高い通常攻撃があってたまるかでござる!!サーヴァント舐めるなー!」 V「……ローランと全く同じ反応だな君たち。まあいいとにかくあれはスキルではない通常攻撃扱いだ」 F「ならどうしてあんなに威力が高いんですか!?」 V「それはベーオウルフの筋力がA+だからだ。+属性は瞬間的に数値を倍加する。 ステータスに付加している+属性の詳細が判らないから仕方なく本来の意味で使用する事にした」 槍「つまり、ベーオウルフは一瞬だけ攻撃力が二倍になる?」 V「そういうことだ。そしてその二倍時の攻撃が巨人の大刀剣というわけだ。 つまりアレも一応通常攻撃の類になってしまうわけだ」 F「ちなみに元ネタはなんなんですか?」 V「ベーオウルフが水魔戦で使用した巨人族が作った大剣だ。 そしてその宝具の破壊力を模して編み出された攻撃方法がこの巨人の大刀剣。 そうだな、ヘラクレスのナインライブズ系統の剣技だと思えばいい。 まああちらはれっきとした宝具、こっちは通常攻撃だという違いはあるが」 F「にしてもベーオウルフさんって引き出し多いですねぇ」 V「単独という事情もあって幻想種殺しの大英雄の癖に努力家な男だからな。 才能ではなく努力で上り詰めたエミヤと同属性の英雄だよ彼は」 槍「うむ努力、良い志だ。拙者も見習わなければ!」 V「では今回はここまで、次回だ」 F「闘士VS剣士の後半戦!決闘の行方は?!」
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/621.html
───────────────────────────────Another Servant 3日目 偽りの同盟───────── ──────Riders Side────── ファイターとランサー、それに続くバーサーカーとの戦闘が終わった。 全ての役者が去った後、戦場となった広場は見るも無残な有様となっていた。 「ふん、大番狂わせとはではいかなかったか」 霊体状態のライダーが実に面白くなさ気に鼻を鳴らした。 ファイターのリタイアを愉しみにしていただけに少々面白くない。 だがまあそれも想定内だ。 どこの英雄かはまだ判らないがそれでもファイターはかなりの実力者であるのは間違いない。 何故なら、あの宝具を使った状態のランサーがかなり必死な様子だったから───。 「─────チッ」 不愉快な事を思い出し舌打ちする。 宝具を使っている時のランサーは間違いなく弱くない。 それは誰よりも彼が身に沁みていることだ。 だがだからこそファイターと単純に戦闘をした場合、ラメセスⅡの敗北が必至であろうという事も判る。 「それでもまだ情報が足りんな。これでは奴の力量を測り切れん」 その呟きを最後にライダーは次に取るべき行動を思案する。 ファイターに追撃をかけるか止めるか。 時間にして約一分程度の思案。次に取る行動は速やかに決定した。 「窮鼠猫を噛むというしな。俺様が手を下す必要はなかろう。 それよりもそろそろ宝具を仕込んで置くのも悪くは無いか」 実体化はせずに霊体のままで目的地へと移動を開始する。 目的地は深山の小高い丘。 そこは彼が宝具設置のために見つけておいた場所の一つであった。 ライダーはほどなくして目的地に到着した。 周囲には当然ながら誰も居ない。 誰かが残した魔力や魔術の気配も無い。 「設置するのはやはりこの場所で構わぬな」 大まかに必要な敷地面積を計算してから、ある地点の地面にトンっと指を置く。 そこから8mの先の地点で再び指をトンと置く。 さらにその地点から直角に方向転換しまた8m先の地面に指を置く。 その作業を繰り返すこと計四回。 8m四方の正方形の敷地が出来上がった。 ライダーは満足そうに頷くと正方形の各頂点に触れながら呪文を詠唱し始めた。 「これでよし。それから。 我、王の名において───迷彩し、遮断し、秘蔵し、隠匿せん。結界陣形設置、了───」 ライダーの持つスキル『陣地作成』による結界の布陣も滞りなく完了し、次はいよいよ本命である宝具の設置に入る。 結界の中心に立ち深呼吸を一つする。 両手を広げ体中から魔力を集める。 そうして自身が望む造形を想像し、創造する。 「我が父、ラーよ!!今ここにそなたの息子が威光を示す!その許可を与えたまえ! 高き空にも劣らぬ壮大さを!太陽にも劣らぬ輝きを!その姿を以って父の力を子に貸し与えたまえ!!」 そうしてライダーは眼を見開き天に向かって、父に向かって祈った。 「生命の源である輝かしい陽光を我が力に───!!!!!」 ウシャプティ・オベリスク ────王奉る太陽像────! ほんの一瞬。ほんの一瞬ではあるが………夜の世界だった周辺が昼に変わった。 この眩しいほどの閃光は同時に成功の証でもある。 「………完璧だ……なんと完璧な像か。父もさぞお喜びになってくれる事であろう……」 ライダーはそのあまりの出来の良さに思わず感動してしまった。 見上げる程の壮大さ。後光が差している気がしてくるくらいの輝かしい威厳。 造形も完璧だと言えた。格好良い。美しい。目立ってる。 20%増しくらいには美しくなっている自分がそこに居た。 「…ぁあ………」 そう。だからこそ惜しい。あまりに惜しい! どうしてここには最愛の妻ネフェルタリが居ないのか?? 折角ならばネフェルタリにも見せてやりたいくらいの出来栄えなのだ。 というか是非妻には観て欲しい。 いやいいから見てくれ我妻よ──! ──妻への想いに耽るライダーの視線の先には。 そこには、全長10mを超える規模のラメセス二世の石像が堂々と聳え立っていた───。 ◇ ◇ 「で、どうだったのだライダー?」 何の前置きも主語も無い牧師の不躾な第一声が飛んできた。 ライダーの方は丁度今、隠匿の結界と宝具『王奉る太陽像』の配置とそれらの最終点検を完了し自陣へと帰還したところである。 「そういう貴様の方はどうなんだ牧師?まさか何の手土産も無いなどとは言うまいな?」 そして、そんな不躾な牧師様以上に尊大な態度で切り返すのがこのファラオ様なのだった。 「いや、残念だがこちらは特にこれと言った出来事は無かった。 二つの町に配置した部下からの報告も特にこれといったものは無い」 「そうか使えん男め。では不出来な貴様の為に一応俺様の方で得た情報を教えておいてやろう」 「なにかあったのか?」 「ああ。まず宝具を設置を今しがた済ませてきた。 それからファイターとランサー、バーサーカーの戦闘を観戦してきたぞ。いや中々の見世物だった」 「ほう?詳しく聞かせて貰おう」 「ふん。己の無能さを噛み締めながらファラオの言葉を聴くがいい。まずはな───」 そうして自分がみてきたものの説明を始めるライダー。 相手を罵倒するがとりあえず協力関係であるというのを忘れないのもこのファラオ様なのであった。 ──────Sabers Side────── オレがマスターの元に戻った時には既に手遅れだった。 ……ああオリヴィエ…氷の眼付きをした女王様がオレの目の前に立ち塞がってるよ……。 ついでに濃い形相をした侍女達もいるよ? うんこれだと顔の濃さ的にもジジョって言うかジョジョだよブラザー? まるでマスターのスタ○ドだぜ! ところでス○ンドやジョジョってなんだ聖杯の知識よ?? 「…………………ぁ~」 「もう一度だけ訊きます。どこに行っていたのですかセイバー?」 真冬の冷気みたいなプレッシャーが女王様から放たれた。 まずいこのままでは幽霊でも凍死しかねん。 「はい夜の散歩です陛下!」 オレはひざまづいて騎士然と答えてみた。 よし完璧!肘の角度も膝の角度も申し分ない王侯貴族が見ても納得の礼だ。 騎士になってからオリヴィエに死ぬほど練習させられた礼だからな。 これでマスターもオレの騎士っぷりにきっと言葉も出ないに違いない。 「マスターを放って置いて散歩ですか。随分と良いご身分ねローラン?」 すると真冬の冷気が南極の極寒に変わってしまった。 ぐわ寒いというより痛い!? うわぁおなるほど、これに比べると真冬の冷気って暖かいんだなぁ。 な、なぜだオリヴィエ!? オレはちゃんとお前の真似して同じ様に答えてみたのに…なにゆえ!!? あ。しまった…そういえばオリヴィエは散歩じゃなくて夜の見回りとか言ってたっけ? う~ん流石に散歩と見回りじゃ大分違うな……失敗したな。 仕方が無いのでオレは無駄な抵抗は止めて正直に答えることにした。 「あー……町に行ってた」 するとなんかマスターの眼つきが死んだ魚のような目になった。 ようするに瞳から光が消えた。 人はそれをヤンデレ眼やレイプ眼と呼んだり呼ばなかったりするらしいが今はどうでもいいことだ。 むしろオレの方がマスターに蹂躙されそうなくらいだからな。 オレにはオードがいるし取り合えず逆蹂躙は反対したい。 とにかくマスターのオレを見る眼つきが尋常じゃないぞ? 「あー…なんかさ、今夜マスターを町に連れて行くのはかなり危険だと思ってだな。だから連れて行かなかったんだ」 「そうですか、それで?」 なあマスターが理由を訊く気配がなさそうなのは気のせいだと思うかティルパン大司教? 仕方が無いのでオレは勝手に理由を話すことにした。 「うん。やっぱり連れて行かなくて正解だったぞ。───あのファイターがバーサーカーに負かされたからな」 さらに温度が下がっていくアインツベルンにセイバーは今夜見た最大のニュースを切り出してみる。 するとそれを聞いた途端アインツベルンは眼を丸くして沈黙してしまった。 かなり珍しいことにあの人形のようなアインツベルンが驚いていた。 「えとだな。バーサーカーがファイターに宝具を使ってさ────」 今夜自分が見たものを出来るだけ詳細に、覚えている限りマスターに伝える。 バーサーカー……というよりバーサーカーの宝具の危険性。 バーサーカーのマスターについて。 ファイターの消耗具合。 ランサーとファイターの戦闘には間に合わなかったため、ランサーについては容姿や自分の受けた印象を中心に伝えた。 「というわけだよマスター。わかってくれた?」 オレは一通りの説明を終えると改めてマスターの顔を窺ってみた。 これで駄目ならもう駄目だ。腹を括るしかない。 「……わかりました。今回の件は大目に見ます。 ですが次からはきちんと私に伝達をしてから行動するように、いいですね?」 しかしオレの説明を一通り聞き終えたマスターは今回の行動を不問としてくれた。 「ハーイ!」 オレは元気よく返事をした。 折角マスターが不問にしてくれたんだから素直に返事をしなくちゃな。 それからオレは今後に備えてマスターに伝えておかなければいけないことを伝えることにした。 「とりあえずこの日はバーサーカーと戦うって決めた時はマスターは陣地で身を守っててくれ」 「それは何故です?」 「ん~一人の方が戦い易いと言うか、とにかくあのバーサーカーの魔剣は危険過ぎだ。 そんな危険な戦場にマスターを連れて行くわけにはいかない。これは絶対だ」 あの敵を相手にするとバーサーカーの相手が手一杯でマスターの守りが薄くなってしまう気がする。 そうなると守りが薄くなったマスターが死ぬ危険性が増えてしまう。 戦場で貴婦人を死なせるなど騎士としての誇りに関わる。 オレはマスターがなんと言ってこようがこれだけは譲る気は無かった。 「──────」 「………」 しばらくお互いの眼をジッと見合う。 無言の時間がしばらく流れた。 この沈黙合戦を先に折れたのはアインツベルンの方だった。 「…………はぁわかりました。対バーサーカーの戦略は貴方に一任します。それでいいのですねローラン?」 そうして我が主は自らの剣に全てを託してくれた。 「ハッ。お任せください我が姫君」 だからオレは再び礼を取り、胸を張って力強くその言葉に応えてみせた。 任せてくれた以上はその信頼に応えるのが騎士の務めだ。 バーサーカーが強敵であるのは間違いないが勝てない相手とも思えない。 作戦を練ってから倒すのも良いかもしれない。 作戦……作戦か…う~ん。 さて。これはどう攻略するのがベストなのかねオリヴィエ? ───彼らフランク騎士の間では作戦は基本的に智将オリヴィエの領分だった。 ──────Berserkers Side────── 草木も眠る時間にその恐怖は現れた。 「もう9人目だぞぅ、よく食べるなバーサーカー。お前ファイターと戦う前も一杯食べてただろう」 やや呆れた声で雨生がバーサーカーに話しかけている。 現在、雨生たちの居るここはとある民家の寝室である。 寝室は既に凄惨な有様になっていた。 父親と見られる男性と息子らしい男の子はバーサーカーによって刺し殺され、 母親や娘と呼ばれていたであろう人たちは雨生の慰み者にされていた。 「ああーもうこいつも外れだよ……でも娘の内臓の質は悪くないなぁ。ぁぁイイなぁこの感触……はぁあ」 そう言いながら切り開いた腹部をかき回してモツの感触を楽しむ。 先刻のファイターとの戦闘で消費した魔力回復は礼装のバックアップのおかげで順調だった。 雨生の持つ魔術礼装は魔術師をバックアップするタイプの礼装で魔術師ならば誰でも一つは所持している魔術品である。 この礼装は抽出した魔力を増幅させ魔術師の魔力として変換すると言う単純なもので、 これを使って雨生は自分とサーヴァントの回復を行っていた。 そのおかげで雨生は四軒程度の民家を襲撃しただけであの瀕死状態から回復することが出来た。 だが逆に言えばこれで四世帯の罪無き家族が雨生によって皆殺しにされたとも言える。 「だからなバーサーカー?人間の腹の中には根源に繋がるような”びゅーてぃふる”な内臓を持つ奴も居ると思うのよ俺は! それを証明することが俺が求めているものっていうの?な判るだろ?」 さっきからずっと雨生は上機嫌に自分の魔道研究の話をバーサーカーにしていた。 当然相槌も無ければ返事も無いがそれでも雨生は気にする事無く話を続ける。 「やっぱわかる?うんうん流石だバーサーカーよく判ってるじゃん!くーるだなバーサーカーは!ハハッ」 雨生は血を見るとハイになる性分だが、都合四軒の押し入り殺人で気分はもはや有頂天状態だった。 「え?『くーる』ってどういう意味かって?そうだなぁ……素晴らしいとか最高とかまあそういう感じの意味だよ。 バーサーカーも使うといい、そしたらもっと最高くーるになるさ!」 雨生は召還してから時折自分なりにバーサーカーとコミュニケーションをとり信頼を深める努力をしていた。 時には話しかけ、時には話しかけられたつもりで会話し信頼を深める。 この戦いでは信頼関係は大事なのである。 まあ多分無意味だろうけどさ。 「さてっと、今日はこの家で寝るか。俺もバーサーカーの魔力も十分回復出来たし、後は飯でも食って寝るか」 雨生組は決まった陣地を持たないマスターだった。 彼らは数日おきに移動を繰り返し、一定の場所に居座らない。 あえて工房を作ると言うメリットを捨て去る事で自分たちの現在の居場所の特定を困難にした。 それは若干型破りな感性を持つ雨生ならではの大胆な作戦であった。 「大体工房作ると居場所がバレる可能性が高くなるしなー。 只でさえマスターはサーヴァントを抱えてるせいで魔力が漏れ易くなってるんだから。 おまけに短期間で作った工房なんてたかが知れてるわけだし」 みんな間抜けだよなあ、お前もそう思うだろバーサーカー?そういえば俺たちってキレ者コンビっぽくねえ? などと笑いながら赤の他人の食料を遠慮なく腹一杯食べる。 そうして食事が終了すると用を足し、布団に入り込む。 血の臭いが充満する寝室最高ー!イヤッホイ! さてと、寝る前にとりあえずこの後の行動はどうするか考えようかなぁ。 えーっと。そうだなぁ赤ん坊バラしたいなぁ……グ~グ~……zzZZ ──────Fighters Side────── 遠坂邸地下。 ファイターの苦しげな呼吸が反響している。 「ぐっ……ぁ、あ!っは、か、あ!」 ランサーとバーサーカーとの戦闘後もうかれこれ数時間が経っていた。 にも係わらずファイターのバーサーカーに付けられた傷は全く癒えてくれない。 何らかの呪いのためかファイターの傷は治癒効果が阻害されてうまく治癒出来ずにいた。 ランサーおよびバーサーカーとの戦闘後。 遠坂と合流したファイターは何とか自陣である遠坂邸に無事帰還する事が出来た。 再度襲撃があるものと覚悟していた二人だったが、終わってみればトラブルにも遭わずに済み胸を撫で下ろすこととなった。 遠坂邸に帰還した後。ファイターは直ぐに地下の魔法陣の中で傷の回復に専念していた。 だが傷の痛みは一向に消えてくれず現在に至っている。 一方遠坂の方は、ファイターを魔法陣へ押し込むと先の二体のサーヴァントとの戦闘についての会議を開いた。 ランサーと特に敗北したバーサーカーとの戦闘についてファイターから詳細な情報を聞き出すと、 自分は調べ物があるからファイターは回復に専念してくれ、と言い残しそのまま自室へと引き篭もってしまった。 それからしばらくして。 「ファイター、大丈夫か?」 かつかつと足音を響かせながら遠坂が地下へと下りて来た。 「トオサ、カ殿か、すまない……まだ痛みが、引かない」 掠れた声で答えるファイターの容態を診ながら遠坂は眉を顰める。 ファイターの傷は帰還時の状態から全く変わっていなかった。 いやひょっとすると若干悪化している可能性もある。 「そう強力で無いとは言え治癒阻害の呪いまで付いているとはな……あのバーサーカーの宝具は典型的な『魔剣』の類だ」 遠坂は顎の髭を指先で扱きながらそんな言葉を口にした。 ───典型的な魔剣の類。 呟かれた言葉には確信的な色が強く篭っている。 遠坂は調べ物があると言って自室に篭っていたがその調べ物の結果がある程度出たのだろう。 「痛っ、これは私の勘ではあるが、遠坂殿のその意見には、同感だな…。 真性の魔剣───魔剣や呪剣や妖刀───の類にはその刃で斬られた者は助からない。 といった類の伝承が数多く残っているがつまりこういうタネなのだろうな。 ……確かに、これは普通の者ではまず助かりそうにはない。 私も……無様──痛っぐ!!」 ファイターの自嘲めいた仕草もすぐに傷の痛みで崩れてしまった。 タフな筈のファイターがここまで苦しむ以上は並の人間ではひとたまりも無いのは確かだろう。 「で、実際のところ症状はどうなんだファイター?」 「端的に言えば、痛みと共に僅かずつだが体力が削がれている。普通の人間ならば……一日保たないと思う」 遠坂はファイターの現状を訊くと顎に手を当てしばらく考え込んだ。 そうしてしばらく考えたのち、合点がいったとばかりにコクリと頷いた。 「なるほどな。やはりあの魔剣の正体はアレか」 「───!?遠坂殿はバーサーカーの魔剣の正体がわかったのか!?」 「ああ。先程まで雨生の足取りを調べていたのだがその際に興味深い事が判った」 「興味深いこと……?」 「先の戦闘で見せた雨生の魔力量は明らかに彼の本来の魔力量を凌駕していた。 となると考えられるのは雨生は町の人間を贄にでもして力を付けたのだろう」 平然とした口調で遠坂は語る。 だがファイターの方はその単語に敏感に反応した。 「贄……?まさか無関係な民を生贄にしたと言うのかバーサーカーのマスターは!!?」 「まあそういうことになる。実際に死体も出ていた──それもいくつかは秘匿しよういう痕跡すら見せずに、だ」 動揺するファイターとは裏腹に遠坂の方は実に落ち着いた素振りだ。 「遠坂殿……貴方はこの土地の管理者ではなかったか?なのにどうしてそんなに落ち着いている?」 「魔術師が一般人を犠牲にするのは外法ではない。なにせ我々は元から外れた者なのだ。 その我々にとっての外法とは神秘を世間に漏らす事、つまり秘匿出来ない場合だ」 「ならなおさらではないのか!?バーサーカーのマスターは秘匿の痕跡すら見せていないのだろう!?」 それでもなお落ち着き払っているマスターの態度についにファイターが吼えた。 あまりにおかしい。 どうして彼はそんな平然とした顔でいられるんだ? 無関係の人間が虐殺されていて魔術の秘匿もされてないというのにどうして。 「そうだな。……いやどちらかと言えば殺しが愉し過ぎて秘匿をし忘れた、の方が近いのか? ──フ、クク。どちらにせよ笑える話だとは思わないかね?」 そこで語る遠坂が怒りらしき感情を見せた事にファイターは気づいた。 明らかに遠坂殿は怒っている。 あまりに静かで察し難いが……眼が全く哂っていない。 「…………遠坂殿…貴殿は……」 「話を戻すぞファイター。で、これはその際に気付いた事なのだが。 死体は男のみが長物らしき物による撲殺体や斬殺体で女の死体には同様の凶器で殺害された形跡が一切無かった」 そこで一旦話を切ると遠坂は、まあ変わりに雨生の仕業だと人目で判る有様だったがな。と目を逸らして呟いた。 「男性のみが、同じ凶器で殺されていた……?」 不可解だ。どうして男のみが? 「ああ。そしてファイターの今の状態と先の戦闘の不可解な状況を照し合せると……出てくる解は一つのみだ」 そうして遠坂は勿体つけるように一拍の間を置いた。 「─────バーサーカーの正体は、魔剣ティルフィングを持つヘイドレクだ」 「ティルフィング──!!?まさかアレがあの男殺の魔剣か!!?」 ───英雄ヘイドレク。 狂戦士の一族の末裔であり、ただの一戦士からいくつもの戦いを経て一国の王にまで上り詰めた狂王。 手にした魔剣ティルフィングを操りいくつもの戦争と決闘を生き残った生粋の狂戦士。 しかしその凶暴な戦士の顔の裏側にはとんでもない知力を持つ賢者としての一面もあった。 その知力の程は知恵の神とも言われるオーディンとの知恵比べに全くの互角だったと謂われている。 それが遠坂が口にした英雄の名だった───。 「恐らくな。ファイターの正体を看破したあの問答もオーディンの正体さえ見破ったヘイドレクならば可能な筈だ。 おまけにヘイドレクは血筋からして狂戦士の血統。バーサーカークラスとも相性は良い筈だ」 「確かに……奴はバーサーカーにしては妙に小技が利いていたが……」 ファイターは敵の正体を踏まえながらバーサーカーとの戦闘を思い返してみる。 狂気に理性を侵されながらも勝つ為に肉体を稼動させられるだけの闘争本能。 あれは血筋から来る奴の特性だったのか。 「では、私がバーサーカーに敗れたのは……」 「一言で言うなれば、宝具との相性が悪過ぎたため、だな。 ……いや、もはや最悪だったとまで言ってもいいか。 こちらの宝具も使わずに戦える相手では……戦っていい敵ではなかった。 今回の敗北は私の指示ミスでもある───すまなかったな、ファイター」 「いや!それについては私の力不足のせいだ!決して遠坂殿の非では───!」 マスターの謝罪に対して異議を唱えようとするファイターをおとなしくさせるため遠坂は説明を続けた。 「あの魔剣はティルフィングの伝承群からも明らかだが男性に対しては異常な特効性を持っている。 これはティルフィングの製作者である黒き小人達がかけた呪いが強力過ぎたせいだろう。 なにしろ小人の言葉通りあの魔剣は抜く度に男が一人必ず死んだ程の威力だ。 女性であったヘイヴォール以外のティルフィングに関わった男は全て例外なく魔剣の呪いで死に絶えている」 そこまで説明すると遠坂殿は首を竦めてやれやれと言うポーズで苦笑していた。 まあ気持ちは判らないでもない。 何しろ魔剣は男に対しては本当に必殺なのだ。 まったくそんなものを相手にしてファイターも良く死ななかったものである。 「ティルフィングの伝承ならば私も知識として知っている。 ……男と戦う限りは圧倒的優位に立てる魔剣か。 なるほどな、私の感じたあの妙な戦い難さとバーサーカーの異常な強さは魔剣の持つ属性のせいだったのか」 「それからおまけにもう一つ。 伝承では魔剣そのものが意思を持っているように書いてある。ファイターどう思う?」 ここまでくると遠坂はもうなんとも言えないという風な顔をしていた。 ファイターも同じ様な顔をする。 「───意思を持つ魔剣。有り得ない話ではないと思うが……」 バーサーカーとの戦いを魔剣の様子を出来るだけ明確に思い出してみる。 あの時自分が感じたことは……。 なぜか剣自体から放たれているように感じた威圧感のような殺気。 まるで剣と戦っているような違和感。 剣の意思で動いていたような攻撃軌道。 「そうか、確かにそうだと考えれば私がバーサーカーとの戦闘中に抱いた感想にも納得がゆく…痛っ!」 気が緩んだのか思い出したようにまた痛みがファイターを襲った。 そうだった。魔剣の正体が判明してもこの傷の問題は解決していないのだった。 ファイターは遠坂の顔を窺う。 対策は?この台詞を眼だけで訊く。 それを見た遠坂は相方の疑問に答えるように口元を少し歪ませ笑みの表情を作って見せた。 「伝承では、ティルフィングで斬られた者はみな次の夜明けを拝むことが出来ない。や、日付が変わるまでもたない、だそうだ。 なら逆を言えば、その呪詛の効力も恐らく夜明け頃か長くて一日程度の時間で消えてくれるはずだ。 元々伝承として明確に残っている呪いではない。 ならその呪詛はあくまで副産物であって絶対的な魔剣の能力であるわけが無い!」 遠坂殿は説明の最後の部分をまるで断定するような口調で言った。 それはあくまで推測の範囲でしかなかったがファイターがその言葉を信じるには十分だった。 マスターがそう言う以上はきっとそうなのだ。 魔術関係の話は自分より遠坂殿の方が造詣が深い。 ならばその推察も絶対正しいはずだ。 「とりあえず夜明けまで。それまで何とか耐えられるかファイター?」 「夜明けまで…後三時間程度か。わかった、何とか耐えてみよう」 ファイターは頷くと心身に気合を入れ直した。 出来る限り耐える方向へと気持ちを切り替えよう。 痛いし苦しくもあるがこれならばまだ昔怪物達に負わせられた損耗の方が酷かった。 ならそれに耐えた自分は十分に耐えられる。 それに遠坂殿の話が当たっていれば夜が明ければ傷の回復も可能になるはずなのだ。 仮に夜が明けても駄目だとしても今度は日付が変われば回復出来るはずなんだ。 自分が耐えられればまだまだチャンスはある。 ──ならば是が非でも耐えるだけだ! 「それにしても……そうかバーサーカーの正体はヘイドレクか」 ファイターがポツリと呟く。 独り言だったため特に返事を期待していた訳では無かったがその呟きを聞いていた遠坂が相槌を打ってくれた。 「相手の真名が判れば特性も弱点も判明したも同然だ。 これで我々も対策も打てる。まだ終わってないぞファイター」 ファイターの真名もバレてしまったが、これで遠坂陣営の条件も五分になった。 「では遠坂殿はもうバーサーカーの詳細を?」 「ああ既に伝承は調べてある。バーサーカーの弱点はな────」 そうここからだ。 確かに我らは敗北したが敗退してはいない。 だったらここから逆転してみせればいいのだ。 バーサーカー対策会議は聞く方も話す方もより真剣さを増していた。 ──────Casters Side────── 「酷い……全軒全て皆殺しですか……」 キャスターの工房『聖霊の家』の一室でクリスチャン・ローゼンクロイツは沈鬱な気分になっていた。 あまりに惨い。そしてあまりにも外道すぎる所業。 このおぞましい凶行にローゼンクロイツは珍しくも怒気を孕んだ視線を遠見の水晶玉に向けていた。 「キャスター……しかしお前も魔術師だろう?これが理解できない事はあるまい?」 キャスターの傍らには机にいくつもの本を広げて座っているソフィアリがいた。 「では逆にマスターに問いますがマスターにはコレが理解できるのですか?」 本当にこの温厚な英霊には珍しく、キャスターは自身のマスターに対しても怒気を孕んだ視線を送った。 「いや、理解できんな。神秘の秘匿を怠るなぞ魔術師としては論外だ。 このような外道には然るべき粛清を与えなければならん」 至極真っ当な魔術師であるソフィアリは一般人の死はどうでもいいとばかりな態度ではあるが、 雨生が神秘の秘匿を怠った事についてだけは憤慨しているらしい。 神秘は秘匿するべし───。 これが魔術師にとってのルールであり唯一の正義である。 その正義に比べれば一般人の命などどうでもいい事なのだ。 よってソフィアリの態度は魔術師からすると当然の態度であった。 むしろ一般人の死に対して憤慨しているローゼンクロイツの態度の方が魔術師から見れば理解不能な姿である。 それが人類の味方である英霊と人との違いなのかは定かではないが……。 「で?キャスターよ、そっちはどうなんだ?」 「……バーサーカーのマスターがこのフユキに来てからの足取りを順に追っています。 結果だけを言うとバーサーカーのマスターは河川を挟んだ両方の町を行き来しているようで、 我々や他のマスターのような特定の場所に潜伏してるようには見えません」 「移動を繰り返すマスターか……現在地を特定するのは意外と厄介かも知れんな」 ソフィアリは敵マスターのその珍妙な行動に眉を顰めた。 もし雨生が工房を構えていればキャスターが簡単に見付けられた筈である。 だがこれで町のどこかにあるであろう魔術師の工房を探し当てればいいという問題ではなくなった。 「まずバーサーカーを召還したのがこのサトウ家ですね。 これは場に残された魔力の残滓から言ってまず間違いありません」 キャスターが魔術で水晶玉の映像を次々に映し変えてソフィアリに状況説明をしている。 「次の日にコンドウ家を初めとする二軒を移動しそこで就寝。 その翌日にはカワグチ家の一家を皆殺しにしてその日の活動は停止してます。 そしてその翌日にカトウ家から始まり、その途中で戦闘を挟んで宝具を使用、令呪を使って戦闘終了、撤退。 それから再び民家を襲い今の段階で判明しているタナカ家を襲撃してそこからさらに移動した模様です。 いま現在のバーサーカーのマスターの所在地は残念ながらまだ判っていません」 そこでキャスターは一旦言葉を切った。 バーサーカーのマスターの行動を説明すればするほどキャスターの不機嫌さが増している。 キャスターたちが行なっているのは雨生とバーサーカーの残した痕跡を追う作業である。 魔術工房を持っていない彼らは魔力の外界との遮断が完璧ではなく、襲撃した民家から魔力が洩れやすくなっていた。 それを追跡する事で雨生たちの現在地、さらには彼らについての情報を手に入れようという魂胆であった。 ──そして今。 彼らは雨生たちが先ほどまで居た痕跡が残っている民家の様子を遠見の魔術を使って調べている最中なのだった。 「召還からたった三日で十軒以上の民家を襲撃か。 ……おまけにその半数近くが隠匿作業をしていない。何を考えているんだこいつは…?」 「知りませんよ」 憮然とした口調で言葉が応酬される。 キャスターもソフィアリも怒りの焦点の違いはあれど雨生の行いに憤慨しているのは間違いなかった。 「ところでマスター。これどう思いますか?」 キャスターの言葉にソフィアリも水晶玉を覗き込む。 「ん?この女の死体か?弄ばれた形跡があるな」 「いえそっちではなくこっちの祖父と父親と青年の方です」 「…む?そう言えばさっきの父親も首を刎ねられて死んでいたな。 いやどちらかといえば力任せに吹っ飛ばしたといった感じだったか?」 「もしかしてとは思いますがこれらはバーサーカーの仕業では無いでしょうか? 鞘込めの剣でも十分な力と速度があれば物は切れますし刺せます。 死体の傷から考えてもちょっとこれはマスターの仕業とは考え難いのですが」 「確かにバーサーカーのマスターは刀剣の類は持っていなかったな。 ん…………それに礼装や魔術を使って殺した痕跡も無いようだ」 そこで二人は一度水晶玉から眼を離して顔を上げた。 「マスター、西洋圏の魔剣に関して記されている書物は?」 「ああちゃんとお前の言った書庫から持ってきたぞ」 そう言ってソフィアリはさっきまで自分が座っていた席の上にある本を指差す。 そこには伝説や伝承について書かれた本がいくつも山積みになっていた。 「その中で持ち主や周囲を破滅させる程に強力な呪いを持った魔剣の類の伝承を探してください」 「ああそれはいいが、お前の方はどうするんだ?」 「もう少し襲撃にあった民家を詳細に調べるつもりです」 ソフィアリはいくつか持ってきた本をパラパラと捲っていく。 一方、キャスターは水晶玉を注意深く覗き込みその場に残された情報を探っている。 「────」 「──────」 しばし無言で作業をする二人。 気になった点や気付いた事を報告しあう時にのみ口を開く。 そうしながら数件目の現場検証を行っている際にキャスターが口を開いた。 「また斬撃を受けたような痕跡がある男の死体ですね……割腹されているのはまたしても母親と娘……」 「バーサーカーに人間を割腹して喜ぶような理性はあるまい?」 「ええ有りません。ですのでもうコレはバーサーカーのマスターによる凶行ではないかと」 「となるとバーサーカーが殺したのは……男だけか…男だけ?……いや待てよ? さっき見た本に確か……………っとこれだ、おいキャスター!もしかしてコレではないのか!?」 ソフィアリはとある魔剣を主軸にした伝承が記された本をキャスターに見せる。 キャスターも水晶玉から目を離しマスターが指し示した部分を見た。 そこ記されていた魔剣の名称は───。 「魔剣ティルフィング……黒き小人により作られたこの魔剣は抜く度に必ず一人の男が死に絶えたという…。 ───マスターほぼ間違いなくこれですね。ボクの持つ他の英霊の知識とも合致します」 「やはりそうか!?ならこの魔剣の持ち主がバーサーカーの正体という訳だ!」 「ええ。そうなると候補者も数人しか居ません。先のファイターとの戦闘の件を合わせて考えると…」 ───そうして彼らはその解答に辿り着いた───。 「───バーサーカーの正体はヘイドレクでまず間違い無いでしょうね」 「だな。ところでさっきバーサーカーのマスターの魔術属性が水である可能性が高いとも言っていたな?」 「はい。それも十中八九当たっていると思います。中でも液体操作を得意としているのではないかと」 それにキャスターが気付いたのは被害者の中に血液を霧にしたり噴水のようにして遊ばれた痕跡がいくつか残っていたためだった。 「後はこの情報をどう利用するか、か?」 「はい。そうなりますね」 「ところでサーヴァントの正体が判ればその弱点も判明するのだろう?こいつの弱点はなんだ?」 「あのマスター……さっきまでその伝承を読んでいたのでは……?」 「私は……お前が本当に判っているかを訊いているだけだ!サーヴァントの分際で口答えするな!」 なぜか突然怒り出すソフィアリ。 そんなマスターの不審な挙動にキャスターはきょとんとしている。 「はぁそうなんですか?えとですね、魔剣ティルフィングの弱点は”女性”ですよ。 あの魔剣は男性に対してはファイター戦で見せたような特効性を持ちますが、 その代わりに相手が女性である場合は著しくその効果が落ちます。 言い換えれば魔剣の持つ必殺性が激減するとでも言うんでしょうか? 伝承でもティルフィングの呪いの犠牲になった女性は一人もいません」 「そういえばヘイドレクの母親である女戦士ヘイヴォールだけは何故か無事だったな……つまりそういうことなのか?」 「はい恐らく。明確な理由までは判りませんが、もしかしたらティルフィング自体の問題なのかもしれませんね。 あの魔剣自体が自我を持つインテリジェンスソードの類だそうですし」 「まさかとは思うがただの男好きなんてオチじゃないだろうな……」 「ボクではそこまでのことは。そしてヘイドレク自身の弱点も伝承からより明らかです」 「暗殺者───つまりアサシンに対して奴は弱い、だろう?」 ソフィアリはキャスターが答えを言う前に得意そうにその答えを口にした。 「クス、ええその通りですマスター」 ヘイドレクの最期は北欧の主神オーディンが放った暗殺者によって幕を閉じている。 これは即ち彼の不得手な事柄を明確に残した記述に他ならない。 サーヴァントの正体を明かされその伝承を紐解かれるという事は、その英雄の全てを晒されるということである。 中には今次のキャスター、クリスチャン・ローゼンクロイツの様に残されている伝承が極端に少ない英雄も居るが、 基本的に英雄は有名になればなるほど残される伝承が増えるものである。 サーヴァントたちが自らの正体を頑なに秘匿しようとする理由がまさにここにあった。 「どういうつもりかは知りませんが今回はバーサーカーのマスターが自身の痕跡をたっぷりと残してくれて助かりましたね。 お蔭様で正体に辿り着くまでの時間が圧倒的に早かった」 「魔剣の正体も調べて正解だったな。これは知らないままでいたら本当に命取りになりかねなかった。 単独で戦うどころの話じゃない、男ではまず奴の宝具には勝てん」 そう吐き捨てるソフィアリは苦い顔をしていた。 無理もあるまい。危うくキャスターの言葉通りの事態になるところだったのだ。 もし魔剣の正体を知るのが遅れていたらもっと面倒なことになっていただろう。 「これでバーサーカーに先手が打てます。自分たちの愚行を悔い改めて貰いましょう」 そんな様子のソフィアリとは正反対でキャスターは本当にやる気満々と言った具合に自分の宝具を取り出している。 「具体的には何をするんだ?」 「やはりバーサーカー以外の全マスターと同盟を組むのが良いと思います。 あの魔剣の能力を話せば同盟を組みたくないと言う者はまず居ないでしょうし。 それにもしアサシンのマスターがいればその者を利用できます」 「なるほどアサシンのサーヴァントならばあのバーサーカーを倒すのは容易と言うことか。 してどうやって同盟を結ぶ?」 ソフィアリは当然とも言える疑問を素直にぶつける。 キャスターの方もさも当然といった感じで答えた。 「他のマスターの召集はボクがやりましょう。 流石に生身で来るマスターは居ないでしょうから使い魔を使って出来る同盟方法を取ります。 その辺はボクに任せてくださいマスター」 「判った。では準備はお前に一任する。手筈が整い次第私に知らせろチェックしてやる。 私としてもバーサーカーのマスターには早めに粛清を下しておきたいところだからな」 キャスターはソフィアリの言葉に頷くとそれから自身の魔道書を開き作戦行動を開始した。 まずは全マスターの所在地を割り出さなければならない。 魔術師の根城探索に一番適した魔術刻印を『世界の書』から探し出す。 その後、彼らの所に同盟の話し合いを求める手紙と必要な使い魔を転送する。 それから彼らにバーサーカーの情報を提供し、バーサーカー退治の協力をさせる。 集合場所は……そうだ襲撃されて空き家にやっている民家で良いだろう。 「いたずらに多くの命を犯したその凶行───後悔させますよバーサーカーとそのマスターよ」 ローゼンクロイツはいつに無く闘志剥き出しの様子で作戦に集中していた──。 ──────Archers Side────── 帰ってきてまず文句。 何をして来たのかという質問に解答してさらに文句。 さらに説明しようとしてついでに文句。 フッハー!勢い余って軽くぶっ殺したいわこの腐れマスターめ! 「じゃからさっきから言っておるだろうが!」 「マスターに無断で独断専行。敵が宝具を使ったのに真名判らない。 しかも弱った敵に追い討ちも掛けない。アーチャーマヌケかお前は!!」 「ワシがマヌケなら貴様は無能じゃこのド阿呆め!」 「な、なんだとぉ貴様ー!!」 いま間桐邸は戦争中だった。 ただし飛び交うのは刃でも矢でも攻撃でもなく口撃だが。 とにかく戦争状態だった。 「だからさっきかが言っとろうが!貴様がおったところでどうにもならんかったわい。 ワシらサーヴァントみたく霊体化して空を飛んだり、何百mも遠くから魔術も使わずに戦場を監視したりは出来んじゃろが!」 「そりゃ出来んが俺の指示も仰がずに勝手に行動した事に文句を言っているんだろうが! 大体お前昼間はどこに居た!?日が暮れてからも戻ってきてないだろ!!?」 「口喧しい海藻類の居る家になど居たくないわ!」 「なんだとこの昆布男がぁぁ!!?大体偵察に行く前に一度家に寄るくらい出来るだろが!」 「貴様その時家におらんかったのだぞ!?」 「思いっきり居たわ!ちゃんと探さなかっただけだろうが! つかお前が!今日はまだダメージがあるから動くなとか言ったんだろが!!」 「とか言いながら貴様今ピンピンしとるではないか!さっさと瀕死にならんか!」 「うわぁぁああもう死ねこの野郎!」 くわーっ!とアーチャーと間桐による口撃の応酬。 弾の代わりに唾と唾が飛び交う。 もうしばし二人は激闘は続いた。 既にお互いの顔は相手の唾でピッカピカである。 「はぁはぁはぁ!じゃあもうええわい。いちいち説明するのも面倒だ」 アーチャーはもう言いとばかりに鼻息荒くそっぽを向いた。 「ふぅふぅふぅ!ふざけるなもう一度ちゃんと最初から説明しろ。とりあえず見てきたもの全部だ」 だが間桐の方は先ほどまでの激怒した表情から打って変わって今度は真剣な表情でアーチャーを見ていた。 「なんじゃ訊く気はあるのか貴様?」 「聖杯戦争では他連中の情報は重要だろ」 「まったく……じゃったら初めから文句を言うんじゃないわ」 「お前のそういう態度が気に入らないんだよ!サーヴァントの癖に!」 「器量の小さいマスターめ。まあいい。 とにかく結論から言えばファイターがバーサーカーにボコボコにされた」 「ファイターのサーヴァント?」 間桐は爺に何度も聖杯戦争について訊かされた自分でさえ聞き慣れないクラスに思わず聞き返す。 「多分エクストラクラスじゃろう。あの場に居た連中がファイターファイターと口を動かしとったし」 「あ?お前口を動かしてたって……それ読唇術とか言うやつか?直接訊いたんじゃないのかよ?」 「当たり前じゃ。普通何百mも離れた戦場の喋り声が聞こえる訳が無いわ。 おまけにその時は強風だって吹いとったしな」 間桐の言葉をアーチャーはきっぱりと否定した。 でも普通何百mも離れた場所に居る人間の唇の動きなんか見える訳も無い。 サーヴァントってデタラメにも程があるぞ。 「オイオイ、どんな視力だよ……」 「視力が良くない者に狙撃を主体とする弓兵が務まるか。 古代の猛者を舐めるんじゃないわ。その気になれば1kmはいけるわい」 アフリカなどの自然の中で暮らす人間は何km先の物も見えるというがアーチャーもそういった連中の一人らしい。 しかも本人はさも当然といった風である。 つまりアーチャーだけが特別と言うわけではないのだろう。 「うわ……古代人ってどいつもこいつもそういう視力かよ!?」 「まあな。ワシらの時代にゃそもそも望遠鏡なんてものもない。 現代とは違い全てが自力だ、っと話が逸れた先に進むぞ。でだな────」 そうしてアーチャーは間桐に自分が見たことを大まかに伝えた。 「───でバーサーカーが宝具を使った……というか剣を鞘から途端にあっという間にやられた、と言うわけだ」 「真名を唱えて発動する宝具じゃなくてある特定の動作で発動するタイプの宝具か」 「じゃろな。そもそもバーサーカーでは喋れんから真名を唱えられん。いやまあ奴は何故か喋っとったがな」 「それはなんて?」 「いや流石に読み取れんかった。バーサーカーの口は動いたり動かなかったりしたからな」 そう言ってアーチャーは残念そうに口を尖らせる。 「口の動きが読めないと流石に読唇術は使えないか」 「そういうことだ。とりあえずバーサーカーについてはこれ以上は判らん」 間桐はあらかた説明を聞き終えると思った疑問を訊いてみた。 「じゃあバーサーカーの方は全部見れたけどランサーの方は良く見てないのか?」 「ああ。ランサーとは入れ替わりになったから最後の方を少ししか見とらん。 じゃから槍が異常に長い、動きがとんでもなく速い程度しか判らんぞ」 「……ならお前、そのランサーとはあまり相性良くないな?」 その言葉にアーチャーは眼を細める。 何故かアーチャーが驚いていた。 それほど間桐に正確な分析能力があったことが意外だったのだろう。 「貴様意外に頭が回るの……。まぁそうじゃなありゃワシが一番苦手なタイプだ。 槍のリーチと足の速さでこちらとの距離をあっという間に詰められる。 そういう手合いは下手なセイバーよりも好きくない相手だ」 自分の特徴とあのランサーの特徴を照し合せて出てきた解答を素直に口にする。 試した事は無いが試すまでも無く結果なんぞ判る。 それも英霊として大事な一つの力だ。 「チッ、ならランサーとは間違ってもバッタリ出会う訳にはいかないな」 「だな。最悪宝具でも使わんと生き残れんかもしれん」 「おいおいそれ本当に最悪だな……。 ただ生き残るだけで宝具使用かよ……大盤振る舞いにも程があるだろ」 「まあとりあえずだマスター。あのバーサーカーの対策は打っといた方が良いと思うぞ?」 「対策って言ってもなあ。簡単に言うが───」 その時、コト。と間桐達の足元に妙な物が落ちた。 ん?と二人揃ってその足元のソレに眼をやる。 なんだろうこれは? それの形を敢えて形容するならば人の手ほどの大きさはあるヤドカリの様な形をしていた。 「あ?」 「む?なんじゃこれ?」 「お前の落し物じゃないのかアーチャー?」 「いいやワシは知らんが?」 「俺のでもないぞ?」 二人がしばらくそのヤドカリらしき物をマジマジと見つめていると、 突然ブルブルとヤドカリが振るえだして貝殻の中身が外に出てきた。 「おわっ!!?なんだよこれ!?」 「なんじゃこいつ?なんか持っとるな……どれどれ……ん?手紙か?」 アーチャーはヤドカリが持っていた物を拾い上げた。 「手紙……だよな?」 「手紙………じゃな?」 再び二人して互いの顔と足元の巨大ヤドカリに視線を交互させる。 「まこうしていても始まらんな。あ~どれどれ」 すると、考えるのに飽きたのかアーチャーは無防備にも手紙をガサガサと開封し始めた。 「うわっ!!ば、馬鹿野郎!敵の罠だったらどうするんだ!!?」 「敵の罠ならもうちょいマシなモンを送りつけると思うがのう?」 そう言いながら平然と手紙を開封し、中身を読み始めた。 「ん~~~おいマスター。これ丁度今のワシらにお誂え向きの手紙のようだぞ?」 「あ?」 妙な事を言い出したアーチャーに間桐も手紙へ眼を通す。 手紙には要約するとこのようなことが書いてあった。 今回聖杯戦争を競い合う事になったマスター諸君。 突然ではあるが私は諸君らと対バーサーカー同盟を結びたいと考えている。 知っている者は知っているだろうが今回召還されたバーサーカーは非常に危険だ。 よって私と同盟を組んでも良いというマスターは××時にココにある○○家まで来てもらいたい。 もっともそのままの姿で現れたいと思うマスターはまず居まいというのは判っている。 よって君たちの所に手紙と一緒に使い魔を送った。それがこちらと通信も取れる使い魔だ。 この使い魔が信用出来なければ自前でこちらと会話出来る使い魔を用意して○○家に来てくれればいい。 それではいい返事を待っている。 「……誰かは知らんが同盟の誘いか。アーチャーこれは罠だと思うか?」 間桐はこの手紙を受けとったマスターなら誰もが思うだろう疑念をアーチャーに尋ねた。 「むむぅ、いや多分罠ではなかろう」 だがアーチャーはその疑念を否定した。 「それは何故だ?」 「ファイターをアッサリ潰して見せたバーサーカーの奴が本気で有り得ん程に強かったからだ。 あの戦闘を見た連中なら同盟は誰でも思うことじゃろ。 実際ワシだって対策の一つに同盟を考えとったし」 「そうなのか?」 アーチャーが他者と同盟を結ぶのを考えていたのがよっぽど意外だったのか間桐は眼を丸くしていた。 「うむ。それに罠なら使い魔ではなくマスター本人を呼ぶ筈だろ。 わざわざ使い魔まで送り付けて話し合いの場を設ける理由が無い。 それに海草マスターもあれ見てたら絶対そう思うわい。 ファイターの奴がセイバークラス並に強ければなおさら───」 「誰が海草マスター……っておいちょっと待てっ!!そのファイターってそんなに強いのか!!?」 さっきのアーチャーの説明では出てこなかった情報に間桐は驚いた。 そしてすぐさまアーチャーに詰め寄ってくる。 「む?ああ言っとらんかったか?ファイターのやつは糞強いぞ?」 「言ってないわアホンダラ!!」 アーチャーに罵声を浴びせる間桐。 アーチャーの説明はその性格通り大雑把過ぎてその部分が見事に抜け落ちていのだった。 「じゃあ今言うたわ。がっはっはっはっは!!」 しかしその当の本人は一切侘びれもせずに笑っていた。 むしろ開き直ってさえいる。 「糞めっ!セイバークラス並の実力のある英雄がアッサリ負けるなんて冗談じゃないぞ!? お前程度のサーヴァントじゃ本気で瞬殺じゃないのか?!」 「うむっ!まず間違いなくやられる!30秒もたん自信があるわい!!ガハハハハ!」 まるで面白い冗談でも聞いたように腕を組んで天井見上げ大笑するアーチャー。 「俺のサーヴァントの癖に自信たっぷりに情けない事言うなこの役立たずめっ!!!」 「がっはっはっは!!いやだってな、どう考えてもあのバーサーカーはおかしいわ」 アーチャーは一通り笑うと突然真面目な顔でふとそんな事を口にした。 「おかしいって何がだよ?」 「バーサーカーの癖に喋るし、変に強いし、妙な動きだし、宝具の魔剣は不気味だしで色々妙なんじゃ」 図太い神経をしているアーチャーが珍しく困ったようなもしくは神妙そうな顔をしていた。 こんな表情をするということはそれほどまでにそのバーサーカーは妙なのだろう。 「………おいアーチャーこの同盟の手紙どうする?」 「受けない手はあるまいマスター?折角だし彼奴ら全員の力を上手く利用するわい」 「判ったじゃあこの場所に使い魔を送るぞ」 そう言ってマスターは奥の部屋へと引っ込んだ。 恐らく使い魔と通信用の魔術品を探しに言ったのだろう。 このヤドカリモドキは安全だとは思うが、敵の使い魔を使わないのは用心としては正解だ。 それより問題なのは同盟を組む際に相手が出してくる条件だろう。 単純な利害の一致で手を組むのか、それとも何らかの理由で利用されるか、はたまた一方的な悪条件を突き付けられるか。 こんな事は生前に敵の策略も含めて何度も経験した。 だから結論は初めから決まっている。 「ま、話を聞くだけでも損はせんわなぁ」 聞くだけ聞いて気に入らなければ知らんふりじゃい、がっはっはー。 ──────V&F Side────── 助けろ!ウェイバー教授!!第七回 F「ヤター!ファイター生き延びたぁぁああ!!」 V「良かったなフラット。それぞれが警戒し合った結果ま、他の奴が殺るだろ。となったのが生存出来た要因だな」 F「でもヘイドレクさんの真名が早くも遠坂陣営とソフィアリ陣営にバレましたね……」 V「だからミス遠坂がSN本編で言ってただろう。頭が働くマスターなら一般人を贄にはしないと。 つまりこういう事態になるから他の者達もくれぐれも注意して行動するように」 F「はーい。ベーオウルフさんも取りあえず(開幕死だけは)無事でしたし、いやぁ良かった良かった!」 V「この両陣営はこの真名の情報をどう使うかがポイントだな」 F「秘密の情報って人にどう使われるか判ったもんじゃないですよねぇ怖いですね本当に」 槍「で、なぜに拙者がこの場所に呼ばれているんでござろうか?」 綾「……なんでわたしも…?」 F「あれ?なぜ本多忠勝さんと沙条綾香さんがここに……?」 V「ああそいつらは選択肢を間違えていれば前話で死んでいた連中だからな。 ランサーのナイス判断で見事助かったが実はランサーはファイターよりも死亡率が高かったんだぞ?」 綾「うぇ!!?」 槍「む………やはりか?」 V「ああ。もしランサーがあの時沙条を連れて撤退せずにファイターと共に応戦していればそのまま敗退していた」 綾「わたしもしかして……倒れたのって結果オーライ?」 V「そうなるな。もし君が倒れていなければそのままバーサーカーと戦闘になり、魔剣で男殺、ランサー逆レイプで死亡だ。 そうなるとサーヴァントを失い一人残された君もまず無事では済むまい?」 F「ベーオウルフさんと違って戦闘続行スキルも高い耐久力も無いですからね忠勝さんって」 綾「へぇわたしって結構らっきーだったんだ」 槍「いやぁ拙者の勘も中々のものだったんでござるなぁハッハッハッ」 V「そしてそこにもう一組ラッキー野郎がいるな」 雨「なんで俺らが?」 狂「そうだそうだ!ふざけんじゃねーぞ!?」 F「真名バレチームですね」 雨「なにがいけないんだよー」 V「行動全部悪いわ馬鹿者! これだけハッキリと弱点が残ってる英雄の情報を洩らすような真似をして。普通なら即殺だぞ?」 F「でもセンセー皆鯖のティルフィングの能力に男殺効果は……おまけに治癒阻害も──ぐはっ!!?」 V「そちらの方が特徴があって面白いので可とします。それに一時そういう案も出てたんだい。 それから魔剣の呪詛はゲイボルグの呪詛みたいなものだと思ってくれ。 呪詛の効力はRPG風に言えば毒状態みたいな感じでちょびっとずつダメージを喰らう」 F「は、はぃふぁかりました。とりはへずティッシュをくらはい……ろうも」 狂「オーディン死ねっ!てめぇが舐めた真似しなければこんな弱点なんか!この無能神!バーカバーカッ!」 V「さて今話で探偵たちが言い当てたようにヘイドレクはアサシンが天敵だ。 Aランク以上の気配遮断を持つアサシンならばASのヘイドレクは容易く倒せるだろう。 というか今だけの話、もし居たら倒せるじゃなくて倒してた。それもあっさりさっくりと!」 F「やったー!ハサン先生無双だーい!!」 V「おほん話を戻そう。皆鯖では特に聶隠娘がASヘイドレクにとって最悪の敵となる」 F「聶隠娘さんはえーっとうわっA+ランクの気配遮断に女性サーヴァント。確かに相性超最悪の組み合わせですね」 V「今回は諸事情でアサシンを使えなかったため居ないが、もし居たら真名がバレた時点で即殺されていた事を忘れるなよ?」 雨「メンドクサイなぁもう…べつに適当でいいじゃん?」 狂「てめえちょっとは頭使えや!本来なら死んでんだよ?!ちゃんと判ってるのかおまえ? つかこの俺のマスターの癖に何でそんなに頭悪いんだよ!?」 雨「そんなことより今日はどの家を襲おうかねぇ。小さい女の子が居る家がいいなぁ」 狂「訊けやオイてめぇ!今しか喋れねんだから今のうちに俺のアドバイスを聞けよっ!!」 V「恐らく雨生は精神汚染スキルを持ってるな……」 F「……絶対持ってるでしょうね。一応設定は第四次聖杯戦争の龍之介さんのご先祖様ですし」 F「ところで先生。ラメセス石像が無駄にでかい……デカイデスヨ……?」 V「流石は目立ちたがり王だな。しかも石像の顔が実物と違う。 本人曰く「なぁに現世で初の建築物だ少々気合を入れただけのこと。これでも手加減はした」だそうだ」 F「うそだ!絶っっ対にこれ通常規格の二、三倍の大きさはありますよ!整形率も!」 V「大きければその分太陽光の当たる面積が大きくなるだろう悪い事ばかりではない。 まあその分色んな要素的にバレ易くなるだろうがな?」 F「それ駄目じゃないですか!」 V「とりあえず今回はここまでだ。では次回」 F「ファラオォォォオ折角ですから俺の銅像も作ってくださいよぅ!」
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/643.html
Fate/Another Servant HeavensFeel 2 第二十話ミニ劇場 ~クイズサバ(イバル)オネア3~ 前回のあらすじ ヘイドレ「バーカバーカ!」 ローラン「ぷっちーん!」 バーサーカーチーム出番なしw というわけでファイ!(カーン) アン 「では第七問じゃい。菌糸類の神が語尾につける言葉は───」 忠勝 「この問題貰ったでござる!」 ヘイドレ「反応が遅ぇんだ────ブあッ!???」 ベーオ 「顔に蚊が止まっていたぞバーサーカー」 ローラン「ついでに蜂もいた。危ないところだったな!」 忠勝 「~でちゅ。でござる!」 アン 「正解じゃ!」 ヘイドレ「ふ、ふ、ふざけんじゃあねぇぞオイ・・!明らかに蚊どころか蜂に刺されるよりも腫れてんじゃねーかよボケ! そもそも筋肉ゴリラの張り手はともかくとして糞騎士ぃグーとはどういうつもりテメエ!!」 ローラン「でっかい蜂がいたんだ。ドラクエに出そうなくらいのが」 ヘイドレ「どこの世界に人様のツラにいる蜂をグーで追っ払う馬鹿がいんだよお! おいアーチャー!こりゃ妨害じゃねえかよ!いいのかこれは!?」 アン 「ま、アリじゃろ。ワシらはサーヴァント、戦いの為におる存在よ」 綾香 「アリなんだ・・・」 アインツ「急に血生臭くなってきたわ」 ゲドゥ 「頭の勝負ならセイバーかライダーのどちらかが痺れを切らせて暴れるのは目に見えていたからな」 ローゼン「まあそれなら初めからクイズ大会などしなければ良かったのにと思うのですけどね」 ラメセス「他の連中も顔に虻が止まらんか気をつけておくのだな」 ベーオ 「ああ、精々気をつけることにしよう」 綾香 「・・・・。(とは言ってるけどファイターのビンタの方がよっぽど痛そうよね)」 間桐 「・・・・・。(やる気だ)」 ソフィア「・・・・・・。(絶対やるな)」 ヘイドレ「テメエラァ・・・本気で後悔させてやるぜ」 アン 「第八問!遠──」 ヘイドレ「───フン(ピンポーン)」 ベーオ 「な・・・」 ラメセス「にぃ?」 ローゼン「まだ問題も読んでないですよ?!」 アン 「・・・おぬしが押し間違いとは珍しいが、一応ボタン点滅しとるし回答して貰わんといかんルールじゃぞ」 ラメセス「ハッハッハこれで間抜けが一回休みになったというわけか!」 ヘイドレ「灼光炎舞、だ」 アン 「せ、せいかい・・・しとる・・・」 ローゼン「エ?」 ローラン「ハァァアアアァアア!!!?」 忠勝 「ば、馬鹿なありえんでござる!」 ベーオ 「アーチャーちなみに問題文は!!?」 アン 「AS本編の問題じゃった。遠坂刻士の魔術礼装の名称を答えよ。で正解が灼光炎舞・・・」 ラメセス「か、かか仮にも英霊たる身でありながらカンニングとは呆れ返ったわ!」 ヘイドレ「カンニング?カンニングだと?キ、キキ、くっくくっくくく! ああなるほどな、バカファラオサマにはその程度のことにしか見えねえわけか!おい進行次へ行きな」 ラメセス「ハッタリだハッタリに決まっている!直ぐにそのトリックの皮を剥いでくれる!」 アン 「お、おう。第九問!シャ──」 ヘイドレ「バシッ!(ピンポーン)」 ベーオ 「ま、また、だと?」 ローラン「・・・ァ!?(ぶ、ぶん殴る余裕なかった・・・)」 ラメセス「・・・ッ!?(蹴りを入れる暇すらなかった・・・)」 ヘイドレ「四番、闘士のクラス、ファイター」 アン 「なな、な、なんで正解できるんじゃ貴様?! しかも今のは間違えさせる為に出したかなりえげつない引っかけ問題じゃったのだぞ!?」 ラメセス「オイ駄亀ぇ!問題だ出題問題を言え!」 アン 「第九問。シャルル伝説におけるパラディンの一人ルノー・ド・モントバンの愛馬はバヤール、 ですが、そのバヤールの乗り手の宝具は・・・ヘランベルジュです。 さて、FateASにおけるエクストラクラスは何か番号で答えよ。 一番、アングラー。二番、アヴェンジャー。三番、ガーダー。四番ファイター。五番、コマンダー。」 忠勝 「いやいやいやいや無理無理!無理でござるから!ってかなんでござるかこれ!?」 遠坂 「もはや引っかけ問題というレベルですらないなこれは」 ベーオ 「・・・・性悪過ぎる・・」 ローゼン「にも関わらずこんな極悪引っかけでも悠々正解・・・クイズ神・・・誇張抜きのクイズ神がいますね」 ローラン「なあどういうことだよキャスター!?なんであんな真似が出来るんだ!?」 ローゼン「はっはっは、さっぱりわからない」 ローゼン「ガリレオーのバカーーー!それでも天才物理学者かー!それでも福山かー!」 ソフィア「貴様それでも私のサーヴァントか無能!この無能が!低脳がぁ──あばばばばばばばばば?!!?(感電中)」 ローゼン「一つ考えられるとしたらこれは彼のスキル無謬の叡智の力である可能性が高い・・・!」 綾香 「・・・・。(温厚だけど怒る時はきっちり怒る人なんだ)」 雨生 「そうなのバーサーカー?」 ヘイドレ「おう、どうやらあのドルイドはこの中じゃマシな部類に入るようだぜ?」 ローゼン「それはどうも」 雨生 「しかしなんで問題をまともに聞いてないのに回答出来た?」 ヘイドレ「んなもん簡単じゃねーかよ。俺が読んだのは問題文じゃねえ。これまでの問題の出題傾向とジャンル。 それに出題者の性格だ。必要なデータさえ手に入りゃ後は勝手に答えなんざ算出できんだろが」 綾香 「・・・。(簡単に言わないでよ)」 ソフィア「・・・。(できるかアホ)」 遠坂 「・・・。(出来るわけがない)」 間桐 「・・・。(できねーよ)」 アインツ「・・・・。(少し理解できる気がするわ)」←ホムンクルスなので自然から知識を得られる 雨生 「すっげぇ!なあバーサーカー!仲直りだ、仲直りしようぜ!」 ヘイドレ「まあテメエがどうしてもって言うんなら考えてやってもいいゼ?俺もテメェの事は嫌いじゃねえ」 雨生 「ヤッタネ!というわけだド低脳ども!俺のバーサーカーにこてんぱんにやられてしまえ!頑張れバーサーカー!」 ベーオ 「とにかくだ、これがマグレではないということが判明したな」 忠勝 「どうする?このままでは本当にワンサイドゲームで終了でござるぞ?」 ローラン「もはや小金に興味は無い。しかしこのまま手も足も出ずに一方的に敗れるなぞ騎士の誇りが許さん!」 遠坂 「──!!?(小金だと!?)」 ラメセス「ならば同盟しかあるまい忌々しいがな。聖杯戦争において同盟は常套手段だ」 ゲドゥ 「・・・。(そして裏切りも常套手段と分かってて言っているのかこの男?)」 ヘイドレ「くっく無駄無駄。まあハンデだ、次の問題は問題を言い終えるまで待ってやるよ」 ローラン「コノッなめやがって~~!」 アン 「むむ、これは超難問じゃぞ・・・。 第十問!第二回Fate人気投票における黒鍵100本隠し持ってる人の順位を答えよ!」 ベーオ 「わ、分かる訳がない・・・」 ラメセス「そもそもFateキャラじゃないではないかあのシリエルは!」 ヘイドレ「おらおらどうした?折角俺が待っててやってんだからさっさと答えな」 忠勝 「キャスター御主でも判らぬか?(ボソボソ)」 ローゼン「すみません、いえそれ以前にまともな知識量では解答できないレベルの問題ですよこれは(ボソボソ)」 ローラン「たぁ!(ピンポーン)」 ラメセス「あ、馬鹿者!貴様もう少し待って──」 ローラン「44位だ!!」 ラメセス「か、勝手に答えるなキサマーッ!」 アン 「おおおっ!?正解!」 ヘイドレ「ほう?」 ベーオ 「おおお!やるではないかセイバー!」 忠勝 「どうして判ったんでござる!?」 ローゼン「凄い、どうしてこんなマニアックな情報を覚えていたんですか?」 ローラン「いや、勘だ」 ベーオ 「・・・・・」 忠勝 「・・・・・」 ラメセス「・・・・・・」 綾香 「ローランには以後答えさせないようにした方がいいんじゃない?いつか自爆するわよアイツ」 ヘイドレ「だーっはっはっはっは!!くく、くくくはっはっは!勘かよお前!それでよくもまあ当たったもんだな!」 ローゼン「勘・・・・いやもしかするといけるやも?」 ローラン「お前だって勘みたいなもんだろ、お前に出来てオレに出来ない訳がない」 綾香 「ふるふる(違うわよセイバーその人のは勘じゃないから)」 アインツ「ふるふる(貴方と彼は全然違います)」 間桐 「なんだぁ?女たちが同時に首を横に振ってやがるぞ?」 遠坂 「彼女らにしかわからん苦労があるのさ、触れてやるな」 ラメセス「あいつでは戦力にならん!頼りになるのはやはり俺様だけか」 ローラン「なんだと!そういうお前は殆ど役に立ってないじゃないか!」 ラメセス「キキキキサマ!ファラオに向かって役立たずとは無礼千万!極刑死の国行きだ!」 ローラン「なんだやるか!?」 忠勝 「どうするキャスター?このままではジリ貧であるぞ?チームワークも皆無でござるし」 ローゼン「そこで我々が唯一勝機ある作戦を考えました」 ローラン「おおっ!?流石は策謀のサーヴァントだぜ!で?作戦ってなんだ」 ローゼン「はい。まず問題も聞かずにボタンを押し挙句正解出来るヘイドレクに対抗するには、 同じくこちらも問題を聞かずにボタンを押すしかありません」 ベーオ 「しかしそれでは正解出来るはずが無い」 ローゼン「いいえ、幸いにもその状態で正解出来得る可能性がある人物が二人ほどいます」 ラメセス「なるほど。それが俺様のことか。中々見る眼があるな呪術師よ~HAHAHA!」 ローゼン「それはセイバーとランサーです」 ローラン「やっぱり最後はオレか!」 忠勝 「拙者もでござるか?」 ベーオ 「確かにこの二人は頼りになる猛者たちだがその根拠は?」 ラメセス「・・・・・・・なあネフェルタリ、最近皆が俺様を無視するから寂しいよぉ」 雨生 「いいのか枕濡らして不貞寝してる相方ほっといて?」 ゲドゥ 「むしろこのまま永遠に不貞寝してて欲しいくらいだ」 ローゼン「彼らは直感スキルを保有しています。下手に我々が当てずっぽうで答えるよりもずっと正解率は高い」 忠勝 「な、なるほど。確かに選択問題ならいけそうな気がするでござる」 ラメセス「ふーんだふーんだ。勝手にやってればいいさ。俺様は協力しないもん」 ベーオ 「ライダー・・・(というよりは協力出来そうな事が何も無いだけだが。まあ私もなんだが)」 ローゼン「ライダー何を不貞腐れているんですか。貴方には最重要の役割があるんですよ?」 ラメセス「まことか!(にぱーっ)」 ローゼン「ええ。この戦い二人任せでは勝てませんよ。 貴方にはバーサーカーの初期動作が僅かでも遅れるように妨害工作して貰います」 ラメセス「妨害工作だと?なぜ俺様がそのようなせこい真似をせねばならん」 ローゼン「こんな高等テクニック"貴方にしか出来ない"からですよ。"貴方の働きなしではボク達は勝てません"からね」 ラメセス「フハッハッハッハー!そうかそうか!俺様でないとならんわけか! ならば仕方あるまいちゃちゃっとやってくれようか!」 ベーオ 「う、うまい見事にあの暴れ馬をノせた」 ローゼン「ファイター、貴方の方もお願いしますね。 あの方が表立って騒ぎを起こしてくれますからその隙に裏からバーサーカーをノックアウト出来ればしてください」 ベーオ 「そ、そこまでやる必要性はあるのか?」 ローゼン「なら手も足も出せずに一方的に無抵抗のままボロ雑巾のように負けますか?」 ベーオ 「・・・・・・いや負けるにしても一矢くらいは報いねば武人として恥だ」 ローラン「よぉし勝つぞぉ!オレがガンガン点を取って勝つぞぉ!」 ローゼン「しかしそれだけではまだ勝てません。なにせボクらにはまず得点が足りないのですから。 そこで我々の得点を一箇所に集めましょう。 減点問題などの可能性もまだ残っているので得点を保持する役のポイントキーパーを設けましょう」 忠勝 「しかし我々は既にやる事が決まっている訳であるから・・・その役が出来そうなのはキャスターでござるな」 ベーオ 「だな。私もライダーも反則行為による減点対象になる可能性がある」 ローゼン「では僭越ながらポイントはボクがお預かりましょう」 ヘイドレ「なにやらコソコソとセコイ作戦を考えてるようだがもう作戦は纏まったか?」 ラメセス「ふふふ、余裕をかましていられるのも今の内だ。ファラオが予言する! 数分後にはキサマなど地の池地獄に浮いている事だろう!」 ヘイドレ「そりゃ楽しみだぜ」 べーオ 「アーチャー、我々は同盟を組む。よって我らの点数をキャスターに移してくれ」 アン 「ん?まあええじゃろ。単独でやりあっても勝負にならんのは目に見えとるしな。ほれ移動させたぞ確認せい」 ローゼン「ええ確かに・・・ニコリ。 (計画通り!完璧に上手く行った。作戦通りです!)」 ソフィア「・・・!(グッジョブだキャスター!b)」 忠勝 「英霊としての誇りを賭けた戦でござるな」 ローゼン「ええその通り、これは英霊としてのプライドを賭けた戦いです。 (アッハッハ、彼らはもう賞金のことなどすっかり忘れているようですがボクは忘れてませんよ。 一億あれば大量の食糧を手に入れる事が出来ますからね。餓えに苦しむ者達に食べ物を与える事が出来る! 悪く思わないでくださいね、そのためにも骨の髄まで利用させて頂きます!ニヤァ)」 衛宮士郎「・・・あの人たまに悪そうな笑顔を浮かべるんだな・・見なかった事にしよう」 ※裏方なんで通常画面に映らないアングルが見え時がある アン 「さあ微妙な方向性の盛り上がりを見せ始めたところで第十一問じゃ!Fa───」 ローゼン「作戦開始!」 ヘイドレ「無駄だっつってんだろ!──む?!」 ラメセス「殺ったあああ!」 ゲドゥ 「凄いな。妨害工作どころか堂々と一直線に襲い掛かったぞ・・・」 アインツ「その辺りの肝の太さは流石ね」 ラメセス「──いぎゃああああああああああ!!」 ローラン「ああああーライダーが死んだぁああああーー!!」 ベーオ 「ば、バーサーカーの奴!!ま、魔剣を、『囁く凶刃』を抜いているぞ!!?」 忠勝 「よ、予言通りに血の池地獄に浮いたでござる・・・・・・・・・ライダーが」 アン 「というかクイズ大会程度に宝具使うとは本気も本気じゃなおまえら」 雨生 「でも狂化しちゃったら■■■■■ーー!!しか言えないじゃんかバカ!どうするんだよ!」 ヘイドレ「■■■■ーー!イチ番、ア、ナザー、サーヴァン、ト」 遠坂 「ティルフィングと連携とっている・・・」 アン 「正解じゃー!」 ローゼン「審判!アレはいいのですか!?」 アン 「有り、ちゅうかおぬし等だって似た様なもんじゃろが」 綾香 「あ、キャスターが悔しそうに黙っちゃった」 ソフィア「あれだけ堂々と同盟の身内が相手に襲い掛かれば黙るしかないだろう」 ~それから彼らの激闘は続き~ ローラン「1番!」 アン 「不正解」 忠勝 「よ、四番!」 アン 「正解!」 忠勝 「弐番!」 アン 「不正解」 ローラン「3番!」 アン 「不正解!つうかな選択問題じゃないぞい。しかもランサーに関する問題だ」 ヘイドレ「彫刻!」 アン 「正解!」 ローゼン「くっ、また易々と……壁になれる人間がいないだけでここまで差が開くとは。 やはり第十五問目にお腹を空かせて暴走したティルフィングにファイターが食べられてしまったのが痛い! バカファラ王は全く全然アリンコのフンよりも役に立ちませんでしたし!」 ベーオ 「・・・・・みん、な、す、ま、ぬぅ(ガクリ)」 遠坂 「君は暫らく大人しく寝てた方がいいぞ?牛刺しのように喰われたのだから」 ラメセス「ネフェルタリ~俺様体中が痛いよぅ。愛の手当てをぉ~俺様死んでしまうよぉう」 ローゼン「このままでは負けてしまいますよ! (ちょっとおかしいなと思ったんです!劇中以上に策が上手く運んでた時点で!上手く行き過ぎて逆に怖いなって!)」 ローラン「仕方が無いこうなったら奥の手を使うしかないッ!」 ローゼン「何かあるんですか?!」 ローラン「おう!キャスターって空間転移は使えるよな?オレをこの場所に飛ばしてくれ」 ヘイドレ「あん?へっへ。次はどんな出し物を見せてくれんだ?」 ローゼン「わかりました。何をする気なのかは訊きません。行きますよ!"ノレーラ!"」 ローラン「行ってくるぜ!しばらく後を頼んだ!──ブギッ!?(ローランは天井に頭をぶつけた!)」 忠勝 「心得た後は任されよ!」 アン 「ワシは待たんぞ。第二十三問───」 ローランの秘策は間に合うのか?そしてオチはあるのかサバオネア!?次回に続く! ソフィア「────聖杯戦争である以上魔術師たちの激突は不可避である。 当人たちが望む望まぬに関わらず敵の都合で戦禍に巻き込まれる。 騎士を引き連れた少女を狙う騎兵の牙は思わぬところに突き刺さることとなる。 FateAS第二十話、9日目『太陽王』その参。魔術師だって偶には頑張るらしい」 アン 「ばあさんやワシの出番はまだかね?」 間桐 「おじいさんやさっきもう出たでしょ」 ヘイドレ「いやいやてめえらよりも俺らの方が死活問題だろうが!」 雨生 「そうだそうだ只でさえ大人の事情で出番が少ないんだぞ!」 ヘイドレ「大人の事情じゃなくてテメェの事情のせいだろ!」 ローゼン「うるさいですよ貴方たち大人しく待ってなさい!」 狂弓間雨「ヤダヤダヤダ」
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/710.html
バベル外伝? 7話 ~~イリヤの部屋 前アーチャー「腹筋200回、ベンチプレス100回、ふんふんふん!」 イリヤ「アーチャー、何やってるの?」 前アーチャー「ふっ、体を鍛えているのよ。見ろよ、この上腕二等筋」 イリヤ「うわっ……怖いよ」 前アーチャー「ふふふ、今までスマートボーイだった俺は、アイツ等に散々酷い目にあわされてきた。 だが生まれ変わった俺には、彼奴らも一目置いて、泣いて土下座して許しを請うに違いない」 セイバー「………」(ガチャコン) 前アーチャー「ちょっと待て、セイバー!対神砲の薬室に弾丸を装填するのは止めろ!」 セイバー「いえ、僕と腕試しするみたいな口ぶりだったので」 前アーチャー「いきなり銃器に頼るのは止めろ、びっくり人形(フェイスレス)!武器なんか捨てて、かかってこいやー!」 セイバー「………」 前アーチャー「ぐ、ぐあ、アイアンクローとはやるじゃねえか……こんなのすぐに抜け出して、やるぜ」 セイバー「………」 前アーチャー「ぬ、抜け出して……」 セイバー「………」 前アーチャー「………」 イリヤ「エ、エルキドゥさん止めて。アーチャーが泡を吹いて、気絶してるよ!」 ~~翌日、冬木市公園 前アーチャー「ああ、昨日は酷い目にあったぜ。星座運が悪かったに違いない」 ミユ「昨日、何かあったの?」 イリヤ「アーチャーが体を鍛えてセイバーさんに挑んだんだけど、逆に負けちゃって」 クロ「ああ、なるほどね」 前アーチャー「そこ、あっさり納得するんじゃない! 昨日は性能差という名の大きなハンデがあった。だが……」 クロ「うわっ!」 イリヤ「きゃっ!」 前アーチャー「見よ、聖杯の力で八頭身に成長した我が体を。パワフル、マッスル、そしてビューティフォー」 クロ「きもっ!」 前アーチャー「さあ、セイバーよ。真の姿を現した、このスーパーアシュヴァッターマン様に勝てるかな?」 セイバー「すぐに片をつけますよ」 (懐かしいな……こういう感じ) 前アーチャー「ぬぐあ、再びアイアンクローとは……馬鹿め、この俺様に同じ技を使うとは」 セイバー「………」 前アーチャー「くくく、英霊に同じ技は二度も通用……」 セイバー「………」 前アーチャー「………」 イリヤ「エルキドゥさん止めて。またアーチャーが泡を吹いちゃったよ!」 ~~五分後 前アーチャー「くそぅ、やるなセイバー。流石はバベル三鬼神筆頭」 クロ「三鬼神ってなんなのよ……」 前アーチャー「一番強いおまえに挑んだ俺様が馬鹿だったのよ。まずはステップを踏まねばならぬ」 桜「ステップって言うと?」 前アーチャー「他の雑魚どもを倒してから、それから本格的に勝負を挑むべきだったのだ」 ミユ「じゃあ、カードを用意しなくちゃ……」 クロ「アーチャー、手加減は出来ないよ」(バキバキ) 前アーチャー「待て待て待て、誰もお前たちから戦うとは言っていない」 ミユ「なら、どうするの?」 前アーチャー「マトウサクラ、まずはおまえが相手だ!」 桜「私ですか?」 前アーチャー「そうよ、まずは貴様が相手だ。くはは、その人間を超えたおっぱいを揉ませろーい」 後にそのときの様子を被害者であるアシュさん(仮名)はこう語った。 前アーチャー「間桐桜のおっぱいの秘密を知ってるか? あれってあんなにでかいのに形が崩れてたりしないだろう。 若いのもあるが、あの巨大な脂肪の塊の下には、分厚い大胸筋があって、それが彼女の胸を支えているんだ」 前アーチャー「ハードパンチャーっていうのは、その胸の大胸筋がいかに発達しているかで決まると言っても過言では無い。 すなわち、胸の大きさ×スピード×体重=破壊力だ。間桐桜にはその全てが揃っている」 マミ「Satz(志は確に)―――Mein Blut widersteht Invasionen(私の影は剣を振るう)…………!」(打撃) 前アーチャー「たわばっ!」 イリヤ「ひっ! アーチャーがトラックに轢かれた蛙みたいに……」 ~~二時間後、イリヤの部屋 前アーチャー「ふう、川原で死んだ爺さんが、おいでおいでしていたのを見たぜ」 イリヤ「よく元に戻ったね」(汗) 前アーチャー「俺を誰だと思っている。アルティメットセクシャルダークヒーローよ」 イリヤ「よくわからないけど……そうなんだ」 前アーチャー「しかし、俺の周りの女は何でこう蛮族みたいなのしかいないんだ。もっとお淑やかな大和撫子っていうのは居ないのか」 イリヤ「えっと……わ、私じゃ駄目かな」 前アーチャー「ちんちくりんだな。今じゃ、昼は小学生、夜はイタイ魔法少女だ」 イリヤ「ううっ、アーチャー酷いよ」(ガーン) 前アーチャー「ところで、ライダーは?」 イリヤ「ちょっと用事があるんだって。ダンガンのホジュウがどうのこうのって……私はよくわからないけど」 前アーチャー「ほほう、イリヤとこの俺様の二人きりだな」 防音結界発動! イリヤ「えっと、そ、それがどうかした?」 前アーチャー「ならば、イリヤ勝負しろ! 貴様に勝って、最弱の名を返上してくれる」 イリヤ「ええっ!? 私、喧嘩とか出来ないよ」 前アーチャー「問答無用! 負けたら、セクハラさせろー!」 イリヤ「や、やめてよ、アーチャー!」 ライダー「ただいま」(ガチャ) 前アーチャー「……せ……セクハラ……」 ライダー「………」 前アーチャー「お、お早いお帰りで……」 ~~翌日 イリヤ「細切れの挽肉みたいになってたのに……アーチャー、よく生き返れたね」 前アーチャー「地獄巡りをしちまった……針山地獄がきつかったぜ」 ライダー「イリヤ、これを渡しておくわ」 イリヤ「これ、何?」 ライダー「スタンガンよ」 前アーチャー「ほほう。俺をスタンガン如きで止められると……」 ライダー「『猪鼻嶽大王熊(いのはなたけだいおうぐま)』 も食らったら一発よ。慎重に使って」 前アーチャー「おいおいー! どう見ても過剰防衛じゃねーか!」 ライダー「アーチャーは最強の生物を目指してるのよね」 前アーチャー「いや、最強というか……ライダーさんをほんのちょっとだけでも超えられればいいかと……」 ライダー「それなら、この程度のスタンガンくらい耐えないと」 前アーチャー「そんな無茶言うな! 黒焦げになるわ!」 ライダー「ちなみに、私は耐えられるわ」 前アーチャー「ば、馬鹿な」 ライダー「こんなか弱い女に耐えられるのに、大英雄であるあなたが耐えられないなんて」 前アーチャー「ぬおー! 馬鹿にするなよ、この程度の電気ショックくらい屁のかっ……」(バチッ) イリヤ「ライダーさん、アーチャーが息してないんだけど……」 ライダー「多分、昼食を食べる頃には起きてくるわ。それよりイリヤ、折角の休日だし、愛を確かめ合いましょう」