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マシマロより続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― §かなた でも、ちょっとだけ棘が残ったんだ。 その棘は最初は小さな物だったけど、あたしの中でだんだんおっきくなっていった。 『お父さんがいなくてかわいそう』 ひろ君はそういった。 それはあたしとかママとかお母さんがかわいそうだっていったんだと思う。 けれど、この頃あたしは逆のことを考える。 『お父さんがかわいそう』 お父さんはママのことが本当に好きで結婚したんだと思う。それで、あたしが産まれたんだ。そう、あたしはお父さんとママの子どもだ。 ママはお父さんと離婚した。だから、ママとお父さんはもう他人だ。それはいい。本当はよくないけど、とりあえずいい。 でも、じゃあ、あたしは? お父さんは、大好きだった妻をなくしただけじゃなく、娘も奪われたってことになるんじゃないかって思った。そう、たとえママとお父さんが離婚しても、あたしはお父さんの子どもだ。 お母さんの子どもじゃなくって。 それに気がついたとき、力が抜けて道ばたに座りこみそうになった。あたしとお母さんは血が繋がってない。あたしはお母さんの子どもじゃないんだ。 ママはお母さんのために家事をしてあげてる。広い家を隅々まで掃除して、毎日栄養を考えて献立をたてて、疲れて帰ってくるお母さんを優しく出迎えてあげてる。 でも、あたしはお母さんのためになにかできるわけじゃない。 お母さんが必死に働いて稼いできたお金で育ててもらって、宿題みてもらったり、遊びに連れていってもらったりしてるだけだ。 あたしは――お母さんにとってなんなんだろう? そしてお父さんにとっては? そう考えると、そわそわしてなにも手がつかなくなった。そのことばかりが頭の中でぐるぐるして、いてもたってもいられなくなる。 いっそ直接お母さんに聞いてみようか。 そうも思うのだけれど、お父さんの話を持ちだしたときのママたちの反応を思い浮かべると、切りだせなかった。 リビングでゲームしながらだらだらとボケとツッコミをしてる二人をみて、この空気を壊したくないと思った。 だから、一人で決意した。 お父さんに会いにいってみよう。 会いにいってどうなるかはわからない。なにを聞きたいのかもわからない。けれど他になにをすればいいのか思いつかなかった。 とにかく会いにいって話をしたら、なにかの整理ができるかもしれない。そう思った。 ママのPCにこっそりログインする。パスワードがわからなくて困ったけれど、“tsundere”とか“mikosan”とか色々試してみて“meganekkogekilove”で通った。 やっぱりママは人として色々とアレだ。お母さんの気持ちがちょっとだけわかった。 “あんたもなんでそんなパスわかるのよ!”お母さんの幻が突っ込んできたけど、それを振り払って捜し物を続ける。 アドレス帳を開いてみていくと、やっぱりみつかった。 あたしの昔の名字。もう随分昔に忘れた名前。同じ名前の男の人。 更新データのタイムスタンプは一年前。これならちゃんと最新の住所だ。 自分の部屋に戻って検索する。松土駅にいくには、糖武線で北千寿までいって、常盤線に乗り換えればいいらしい。 お母さんに内緒でよくママと秋葉まではいくから、糖武線急行から日々谷線への乗り換えで北千寿の駅には何度も降りたことがある。 大丈夫、一人でいける。 地図をプリントアウトして、松土駅からお父さんの家までの道のりをチェックした。 ケータイもノートパソコンももっていけない。いまどきのモバイルにはなんでもGPSがついてて、もし位置情報の検索をしたら、あたしがお父さんに会いにいったってわかってしまう。 ママたちに心配させたくなかった。 決行の日曜日がやってきた。 「ママ、お母さん、あたしでかけるね。さきちゃん家で宿題一緒にやるんだ」 リビングでのほほんとしてたママたちに声をかけると、二人とも「はーい」といって玄関まで見送りにきてくれた。 泉家のルールでは、誰かがでかけるときにはみんなで玄関まで見送りにいかないといけない。 ルールは他にも“ゲームは一日三時間まで”とか“毎月第一日曜は必ず三人で過ごす”とか“チョココロネはごはんじゃなくておやつ”とか色々あって、もし破るとお母さんに“ゆーざいはんけつ”されちゃうので大変だ。 「宿題は自分でやらないとだめだよ。友達にみせてもらうだけじゃ自分のためにならないんだからねー」 靴を履いてるあたしにママがそう声をかけると、 「あ、あんたがいうな、あんたがーー!! どんだけ私の宿題みにきたと思ってるんだ!」 ってお母さんが突っ込んだ。 「やだなーかがみ。子どもの前で親の威厳つぶすようなこといわないでよね。ってか本当に気づいてなかったの? あんなの、かがみと一緒にいたくてわざとやってなかったに決まってるじゃん」 「え……あ……そ、そうだったんだ……」 途端に顔を赤くするお母さんをみて、ママはくふくふと笑いながらいった。 「もー。ホントかがみんは三十八になっても可愛いなー」 「ゴ、ゴチソウサマデス……」 ほっとくとどこまでも婦婦漫才をしてそうだったので、そういってドアを開けてでていった。 「晩ご飯までには帰ってくるんだよ~」 「車に気をつけなよ!」 ママたちに手を振りかえしながら、あたしは駅に向かって歩いていった。 本当にママとお母さんは仲がいい。 ――あたしが不安になるほどに。 緑色のラインが入った電車に揺られて、ごとごとと進む。粗川の河川敷では野球をやってる人たちがいて、高く打ち上げられた白いボールが青い空に消えていくのがみえた。 この胸に渦巻く不安も、一緒に空に消えていってしまえばいいのに。そんな風に思った。 彩瀬、亀在、金街。吾立区から褐飾区を通り、江渡川を渡る。 そうすると、途端に東京の街並から、埼玉に似た郊外の景色にかわる。 千葉県松土市。お父さんが今住んでいる街だ。 こぢんまりとした、二階建ての一軒家だった。小さな前庭にはプランターが置かれていて、色とりどりの花が咲いていた。 何度も表札をみて、間違いがないか確認する。 どうしよう、どうしよう。決心がつかないでしばらくうろうろと歩き回った。 でもここまで来ておいて、引き返すわけにはいかない。どうせあたしはあの呼び鈴を押すんだ。だったら今押してしまえばいい。 そう思って震える指で呼び鈴を押した。 ――ドアを開けたのは知らない女の人だった。 「あら、どこの子?」 清楚な感じの人だった。 この家に住み慣れていて、自分がここにいることになんの疑問も抱いてない。そんな 雰囲気をもっていた。 その女の人はお腹が膨らんでいて―― あ、赤ちゃん、そこにいるんだ。 そう思ったとき、目の前の光景の意味がわかって――あたしは逃げ出した。 「あ、ちょっと! あなたもしかして…」 よびかける声を無視して走り続ける。 次々と涙が目尻にふくれあがっていって、ポロポロと零れ落ちていく。 あたし馬鹿だ。お父さんだって、いつまでもあたしたちのことを引きずってるわけにはいかなかったんだ。 お父さんには、もうお父さんの人生があるんだ。あたしは、もうよその子なんだ。 心臓が張り裂けそうにばくばくと音をたてている。 息が上がって、呼吸が苦しくなる。 もう走れなくなって、立ち止まった。 はーっはーっと荒い息を整えて、気持ちを落ち着かせようとする。 ぐしぐしと涙を袖で拭って、自分に話しかけた。 これでよかったんだ。お父さんはお父さんで、幸せな家庭を作ってるんだってわかって。 あたしはもう、ママとお母さんの子どもなんだ。そこから考え始めればいいんだ。 そう思ったら少し気が楽になった。こうなることを望んでいたんじゃないか。今のお父さんの暮らしを知って、気持ちの整理をつけることを。 落ち着いたところで、周りを見回す余裕ができた。 知らない家、知らない通り、知らない街。 それに気づいて、背筋が凍りつく。 ――あたし、どっちからきたんだろう。 空が、重くのしかかってくるように感じた。 §こなた 「かなた、遅いなー……」 わたしは野菜をざく切りにしながら、窓の外を眺めてつぶやいた。 そろそろ陽も暮れかける頃だ。 最近あの子は料理の手伝いを積極的にしてくれていた。この時間まで戻らないのは珍しい。 なんだか悪い予感がした。 この頃あの子は少しおかしかったから。 それでもわたしたちを避けている風でもなく、むしろ必要以上にかがみに甘えている様子だったから、それほど気にはしていなかった。 もう少し長引くようだったら手助けが必要かな。そう思っていた矢先、今日はなにかふっきれたような様子だったから安心していたのだけれど。 「かなた、まだ戻らないのかしらね?」 かがみが声をかけてくる。 ぐったりした様子でテーブルに突っ伏しながら、上目遣いでわたしを見上げてる。 久しぶりに二人で濃密な時間を長いこと過ごしてしまった。 そのときのかがみの様子を思い出すと、ほこほこと顔がほころぶ。 けれど、かなたのことを考えると、そんな幸福感も暗い不安感に塗りつぶされていってしまうのだ。 「遅いよね……電話してみようか」 「そうね、って私がするわよ」 包丁をおいて手を洗おうとするわたしを押しとどめて、かがみはかなたのケータイに電話をかけた。 かなたの部屋から、あの子の着メロが流れてきた。 思わず、もっていた包丁を取り落としてしまった。 ――悪い予感が、当たった気がした。 「こなた! あの子、さきちゃん家どころか、誰の家にもお邪魔してないって!」 かがみがパニック寸前という感じで叫ぶ。 わたしも引きずられてしまいそうになるけど、どっちかが冷静じゃないといけないと思うから、ぐっと自制する。 考える、考える。あの子がなんでわたしたちに嘘をついたのか。 あの子は簡単に人を騙そうとする子じゃない。親バカといわれようとも、それは断言できる。 あの子はまっすぐに育ってくれた。それは、ひとえにかがみがあの子のことも愛してくれたから。凜と立ってあの子に範を示してくれたからだ。 ――あの子が嘘をつくとしたら、それはきっと、誰かのことを思ってだ。 そう考えたとき、答えがわかったきがした。 「かがみ、――君に電話してみるね。あの子、お父さんに会いにいったのかも」 かがみは外にあの子を探しにいってくれた。ありがたい。かがみにだけはこんな所をみせたくはなかった。 震える指で番号を呼び出して、通話ボタンを押す。呼び出し音がすごく長く感じた。 『……こなた?』 懐かしい声が聞こえてくる。ベッドの中でわたしにたくさん愛をささやいた声。 でも、ときめくことはなかった。今もかがみの声を聞いたときに感じる、あの感情は浮かんでこなかった。ただ懐かしいだけだった。 ――わたしは、なんて薄情な女だろう。そう自嘲する。 ぎこちない挨拶を交わしたあと、事情を話した。 彼は慌てた様子で『ちょっと待って』というと電話を保留にした。 奥さんと、話しているのだろう。 しばらくして電話にでた彼がいった。 『……小学校高学年くらいの女の子が、訪ねてきたらしい』 ――かなた。 どんな思いであの子は彼の元に会いにいったのだろう。奥さんがでたとき、あの子のなかでどんな感情が吹き荒れたことだろう。 そう思うと、自然と涙が溢れてきた。 彼は『俺も捜すよ』っていってくれたけど、断った。昔の妻子に未練があるような態度をみせたら、今妊娠中の奥さんはどれだけ不安に思うだろう。 そういったら、彼もそれに気づいたらしく、悲しそうに『わかった』っていった。 本当に優しい人だと思う。あの人には幸せになって欲しかった。 §かがみ つかさに事情を話すと、自分の家のことみたいに心配してくれた。 もしかしたらすぐ帰ってくるかもしれないから、家で待機しててほしい。そういうと快く引き受けてくれた。 妹の優しさにずっと頼ってきたのは、本当は私のほうなのかもしれない。そんなことを考える。 ゆいさんが運転をひきうけてくれた。私もこなたも冷静に運転できる自信がなかったから、ありがたかった。 「松土署の知り合いに連絡しといたよ。捜索願いじゃないから、普通の巡回くらいしかしてもらえないと思うけど……」 ゆいさんがいってくれた。 車中では次々と悪い考えが浮かんできて離れなかった。 犯罪に巻き込まれてるのかもしれない。事故にあったかもしれない。寂しくてないてるかもしれない。寒くて凍えてるかもしれない。 でも思いはいつも一つのところに戻ってくる。 「どうして、私たちに相談してくれなかったんだろう……」 爪を噛みながらつぶやく。呻くような声がでてきた。 「私…私、そんなに信用されてなかったのかな……あの子に……」 できる限りの愛情を注いできたつもりだった。 最初はこなたの子どもだから愛してあげないといけないって思った。でも、すぐにそんな思いはどこかにいってしまった。気づけば他でもないあの子のことが大好きになっていた。 「ちがうよ……ちがうよかがみ。あの子は、多分お父さんの話をしたときのわたしたちの反応みて、聞けないって思っちゃったんだよ……」 こなたは私の手をさすりながらいってくれる。 「かがみも知ってるでしょ……あの子はそういう子。人の痛みも喜びも、まるで自分のことみたいに引き受けて、一緒に泣いたり笑ったりする子だよ……」 そうだ、こなたのいうとおりだ。私もあの子のことを信じてあげないといけない。 だから私はこなたにいった。 「……本当、そういう周りの感情に敏感ですぐ気を遣うとこ、あんたそっくりだわ」 そういうと、こなたは答えて、 「ふふ、それでいて、辛いのに気丈に振る舞って心配かけさせまいとするところなんて、かがみそっくりだよね」 っていってくれた。 「強く……強くならなきゃね……わたしたち、いままでよりずっと……」 どちらからともなく手を握り合って、誓う。あの子のために、自分たちのためにも。 松土につき、二人でわかれて捜し始めた。 ゆいさんは松土署にいって、なにか通報が届いてないかを聞きにいってくれた。 コンビニ、ファミレス、公園、ファストフード店。 あの子がいそうなところをしらみつぶしにあたる。店員にかなたの服装をいって、こんな子がこなかったかと問いかける。こういうときケータイは便利だ。どんな店がどこにあるかわかるし、GPSで現在地も掴める。 だからこそケータイをもってないあの子のことが心配だった。 普段はケータイを開けばすぐに場所がわかるから、つい地理を頭にいれることを怠ってしまうのだ。 いない。どこにもいない。 そもそも松土にいないかもしれない。 途中の駅で寄り道して、そこで事故にあってるのかも。倖手で降りてどこかに隠れてるのかも。 でも一番確率が高いのが松土で迷子になっていることだ。それ以外の、あまり想像したくないことは、今は考えても仕方がないと思った。 「ああ、なんか12時くらいに、女の子が泣きながらおにぎり買っていったっすよ」 あるコンビニの店員がそういったとき、信じられない思いで問い返してしまった。店員は同じことを繰りかえす。 ――みつけた。 慌てて手近なものを買って、礼をいって飛びだしていった。 あの店員は、小学生の女の子が深夜12時にコンビニで泣いていて、なにも思うところがなかったのだろうか。 ちらと心の片隅で思ったけれど、今はそんなことを考えている場合じゃない。 ――かなた。この近くに、どこかにあの子がいる。 見つけなくては、捜さなくては。 抱きしめてあげなくては。 空はもう、白みはじめていた。 §かなた さむい、ねむい、お腹すいた。 道を捜しているうちに、なんだか全部どうでもよくなってきた。 空も真っ暗になって、今が何時かもわからない。 あたし、なんでこんなところを歩いてるんだろう。 昨日まではあの家で、ママとお母さんと一緒に笑ってたのに。 ママに会いたい。お母さんに会いたい。 そう思うとまた泣けてきて仕方がなかった。 これは多分罰なんだ。あたしは思う。 嘘をついてでかけたことへの罰。ママに隠し事をした罰。――お母さんを、疑った罰。 あまりにもお腹がすいたから、コンビニでおにぎりを買って公園で食べた。 お腹はふくれたけど、気持ちは満たされなかった。 寒かったから、コートを身体にまきつけて、ベンチで丸まった。 夜の公園は青暗い闇に閉ざされていて、うかびあがる滑り台やジャングルジムが、見知らぬ怪物みたいにみえる。 いつしかあたしは眠りにおちていた。 ――夢のなかで、だれかが呼んだ気がした。 それは懐かしくて暖かくて、今すごく聞きたい声。 薄く目を開けると、夜はもう白みはじめていて、地平線のビルの向こうがほのかに赤みがかっている。 吐く息が白く湯気になっていて、その寒さに身震いする。 また、声が聞こえる。あたしのことを呼ぶ声。 駆け寄ってくる跫音が聞こえる。 ふりむくと、青い夜の名残の中、赤い朝焼けを背負い、紫の女のひとが立っていた。 お母さんだった。 お母さんが、信じられないような顔をして、はーはーと息を荒げながらあたしをみつめてる。 あたしも信じられなかった。でも、どこからどうみてもお母さんだった。 こんな地の果てみたいな街までどうやって飛んできたんだろう。どうやって、あたしをみつけてくれたんだろう。 「かなた……」 「お母さ…」 「かなたあああぁぁぁぁぁーー!!」 嬉しくて抱きつこうとしたけれど、それより早くお母さんの方があたしに抱きついてきた。 信じられないことに、お母さんはあたしの身体に取り縋って、わんわんと泣き出した。 「しんぱ…心配したんだからね……うぇ……もう、ばか、ばかぁ…」 あのお母さんが。 裁判官として国を背負って立つお母さんが。一喝しただけで沢山の大人の人を怖がらせるお母さんが。いつも背筋を伸ばして、あたしが悪いことをすると怒るお母さんが。 「もう……もう……私に黙っていなくなったりしないで!!」 子どもが駄々をこねるみたいないいかたで、あたしに懇願する。 お母さんに会えたら聞きたいってことがいっぱいあった。 あたしは本当にお母さんの子どもでいいの? とか、本当はあたしが邪魔っけだったりしない? とか、ママとあたしどっちが好きなの? とか。 でもそんなことは全部どうでもよくなった。もう聞く必要なんてなかった。 あたしはなんて馬鹿なんだろう。答えなんて、最初からわかってたのに。なんで信じられなかったんだろう。 「ごめ…ごめんなさい……ごめんなさぁい……うあぁぁ……」 胸がいっぱいになって、次から次へと涙がでてきてとまらなかった。 二人でずっと抱き合ったまま、わんわんと泣いた。 お母さんからは、もうお母さんの匂いはしなかった。 あたしとママとお母さんの――同じ家の、同じ匂いがした。 §エピローグ ママも少し後にきてくれた。 ママもすごいぼろぼろになってたけど、ちっちゃい身体であたしとお母さんを二人とも抱きしめてくれた。 そのあと三人で警察署に向かった。そこでゆいおばさんが待ってくれているらしい。 あたしは色んな人に迷惑かけちゃったんだ。そう思うと情けなかった。 そのとき、ママが突然変なことをいいだした。 「かなた、肩車しよう!」 あたしは慌てて返事する。 「ええぇぇっ! なにいうのママ! あたしもう5年生だよ? ママと身長そんな変わんないよ?」 「いいからいいから、しよう!」 ママがそんな風にスイッチが入っちゃったときは、なにをいっても無駄だって知ってた。 お母さんも苦笑しながら、「乗ってあげなさいよ」っていう。 だからあたしは、ひざまづいているママにまたがった。 首とか背中とか、すごいちっちゃいなって思う。ママがこんなにちっちゃかったなんて、知らなかった。 「ふんぬらばー!」 ママはそういって、顔を真っ赤にして立ち上がった。 「……だ、だいじょうぶ?」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。まだかなたひとりくらいなら支えられるよ」 ママは笑いながらそういった。 「それよりかなた、なにがみえる?」 いわれて周りを見回した。 赤い赤い朝焼けが世界中を覆っていて、違う国にきたみたいだった。いままでみたことがない高い視界でみると、なんだか色々なものが違ってみえた。 素直にそういうと、ママはあたしにこういった。 「かなた、あなたが今みてる世界は、わたしもかがみもみたことがない世界なんだよ」 そっか、今みてる視界は、お母さんが飛び上がっても届かないくらいに高いんだ。 そう思ってると、ママが続けてこういった。 「あなたはね、わたしたちが辿りつけないところにいって、わたしたちが知らない景色をみることができるんだよ。 全然知らない言葉を喋る友達と、聞いた事もない国で過ごすことになるかもね。人生なんて、ほんとなにがあるかわかんないもんだよ。 ……でもね、かなた。あなたがわたしたちの元を飛び立って、遥か彼方に行ったとしても──たとえあなたがわたしたちのことを忘れたとしても──わたしたち三人は、ずっとずっと、家族だよ」 そのときママがいったこと。あたしにはまだちょっとわからないことがあった。 ママたちがいけないのにあたしがいけるところなんて、思いつかなかった。 ママたちが知らないことなんて想像がつかなかった。 ママたちのことを忘れることなんて絶対ないのにって思った。 でも凄く大切なことをいってると思ったから、忘れないように何度も何度も頭のなかで繰りかえした。 そうしてるうちに、ママはプルプルと震えだしたかと思うと、 「ごめ、もう、げんかーーーい!」 といってしゃがみ込んでしまった。 「あわわわ、だ、だからいったのにぃ~!」 そういってあたしがママからおりると、お母さんもあわてて駆け寄ってきて、ママの腰に手を当てた。 「ふひ~、や、やっぱわたしももう歳なのかな~。いや違う、かなたが太ったんだ! なんたってかがみの子どもだからね!」 「ほー、そりゃどういう意味だ?」 じとーっとした目でママをみつめるお母さん。 またやってる。 おかしくて、声をたてて笑った。 やっぱりママとお母さんは、世界一仲がいい。 あたしはそんな二人に両手を差し出した。 「はいっ」 あたしがそういうと、二人は嬉しそうに微笑んで、あたしの手を握ってくれた。 ――訂正。あたしたち三人は世界一仲がいい。 左手はママ、右手はお母さん。 三人で手を繋いで。 あたしたちは、世界一幸せな家族だ。 (了) コメントフォーム 名前 コメント 読んでて泣けてきた 最高です -- FOAF (2012-06-27 20 18 44) 二次創作で泣いたのは初めてでした。 子供を虐待する馬鹿親に読ませてやりたい。 -- 名無しさん (2010-03-06 06 39 32) 読んでて自然に涙が出ちゃいました… 読むの4回目なのに初めて読むような感覚になりますね 作者さんありがとうございました! そして5つ下に自分も激しく同意です! -- 名無しさん (2009-11-27 08 07 01) 4つ下に激しく同意 そして この作品を公開してくださり、ありがとう -- 白夜 (2009-11-25 00 21 30) ↓すいません 前作よんできました 弁護士じゃないんですね m(__)m -- オビ下チェックは基本 (2009-10-20 16 55 18) GJ!!!!!! メチャクチャよかったです!!! かがみの職業、弁護士じゃね?ってのも どうでもよくなるぐらいGJ!!! 心が暖まりました!…あれ…変だな………景色が滲んでみえる…… -- オビ下チェックは基本 (2009-10-20 12 54 49) ↓激しく同意! -- 鏡ちゃん (2009-09-27 11 27 19) らきすたという枠を越えて、これは百合というか同性愛問題の作品として評価されるべき -- 名無しさん (2009-05-21 12 11 36) GJだよ! -- (=ω=・)b (2009-03-28 06 07 58) 家族の素早さを作者はよく分かってくれているな。とにかくGJ!! -- 名無しさん (2008-09-22 00 47 12) この題材から生まれる問題をちゃんと解決した上でのGODEND 暖かかったです -- 名無しさん (2008-08-11 20 22 01) さっきから目から汗が出てきて止まらなんで 水分補給に逝って来るわ -- 名無しさん (2008-08-01 21 58 15) 作者GJ 誰か映画化してくれ -- 名無しさん (2008-08-01 02 42 27) 読んだのはこれが2回目だけど・・・! なるべく堪えてたつもりだけど・・・! やっぱり1回目読んだときと同様に涙が頬を・・・w 名作です!!GJ! -- 名無しさん (2008-07-10 22 47 54) 不覚にもホロッときた・・・ -- 名無しさん (2008-07-09 08 12 31) 暖かい…すごく暖かいよ…こなた、かがみ、そしてかなたちゃんいつまでもお幸せに… -- 名無しさん (2008-07-08 00 33 12) この家族には、幸せになってもらいたい。 -- 名無しさん (2008-07-06 23 32 04) 家族愛とは何か···わかったような気がする。こなたの旦那さんいい人過ぎて泣ける -- 名無しさん (2008-04-30 07 03 52) 言いたい事は2つ。GJ。そして、素晴らしい感動をありがとう。 -- 名無しさん (2008-04-30 06 44 36) とにかく素晴らしかった!GJです!欲を言うならまだこの三人を読んでいたい、 ということですかねw -- 名無しさん (2008-04-03 22 24 48) あ~‥‥成る程。一番最初に思ったことが、それでした。かがみとこなたが好き合っているのがすごく分かって、かなたの気持ちもよく分かって‥すごかったです!こういう作品をまた、書いてくださいね?? -- フウリ (2008-03-27 01 36 55) 16-187氏の作品、幾つか読ませていただいてますが―― どれも素晴らしすぎます! 次を読むのが楽しみです! -- 名無しさん (2008-03-23 15 37 12) 脳内で鮮明に映像化された -- 名無しさん (2008-03-21 20 07 18) あれ、目頭が熱いや・・・ -- 名無しさん (2008-03-20 01 42 14) これは良作すぎる‥(;ω;) -- 名無しさん (2008-03-09 01 49 49) こなたが男と寝たのかと思うと… -- 名無しさん (2008-03-08 23 18 23) あれ…?景色が滲んできたよ… -- 名無しさん (2008-02-11 23 41 49) 何度も読み返しました -- 名無しさん (2008-01-20 21 45 19) もうだめだ。涙腺崩壊。ありがとう -- 名無しさん (2007-12-27 01 45 25) これ映画化していいよ。 家族とは何なのかハッキリ解る。 -- 名無しさん (2007-12-17 02 09 04) 太ったんじゃなくて、今まで以上に家族の重みが増したと考えると幸せになれた。 -- eida (2007-11-10 16 24 56) すごく良かったです…感動しました -- 名無しさん (2007-11-09 01 59 58) 殿堂入り決定!! -- nipul (2007-11-02 11 51 19) いい話だ…そして38なのに今と変わらないかがみとこなたしか思い浮かばない… -- 名無しさん (2007-11-02 02 43 17) これは良作過ぎて……いい意味で言葉が出てこない 超GJ!! -- 名無しさん (2007-10-31 20 29 22) 純粋に泣ける。 人生で一番泣けた。 -- 名無しさん (2007-10-30 20 45 49) ( ;∀;) イイハナシダナー 感動をありがとう!! -- 名無しさん (2007-10-30 01 21 47) べっべつに感動してるわけじゃないんだからねっ!(;ω;) -- 名無しさん (2007-10-29 22 19 06) 無数に分かれた未来の中で生まれるドラマがあり、 そうしてラストに心に灯を点すような物語は魔法のようだと思いました。 いつまでもこの子達が幸せでありますように、と思う優しさを感じました。 -- 名無しさん (2007-10-29 02 22 56)
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はるかかなた【登録タグ は 小説 山田佳江 本】 ハルカカナタ 著者:山田佳江 本紹介 サンプル コメント 名前 コメント
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この項目は未承認です カオス(CHAOS)について カオスとは、かなたのそらに隣接する別次元の宇宙です。 カオスには以下のような特性があります。 カオスは「無」で構成されている。 カオスは無そのもので、無限の中で広がり続けているようです。 ただし無の中にも、「有」するものはあります。 それが“世界”です。 さらにカオスと平衡した異次元、かなたのそらの存在も忘れてはなりません。 世界は無と侵略者に抵抗するための防御幕を張っている。 強力な防御幕で、これを封印結界(シール)と呼びます。 シールは無から自己を防御するため、非常に強力な結界となっています。 通常の存在は通り抜ける事は愚か、触れる事も叶いません。 マスターでさえ、それを行うことは困難といえるでしょう。 「無」では存在し続ける事が困難 カオスは無そのものです。 故に「無」の中で存在しようとするならば、相応のエネルギーが必要となります。 実際にはそれは不可能なのですが、しかし例外が存在します。 それは「世界」と「神」、「結界」の三種類になります。 世界は「ガルド・クラスタ」と呼ばれる結晶体で、創造する事が可能です。 この際、サーキュレーション(循環)を用いた永久機関により、シールを作り出します。 シールは無から身を護る唯一の存在です。 神は即ち、世界を作った者や、それと等価以上の存在を指します。 そもそもにおいて我々とは次元の違う神には、常にシールの幕が張り巡らされています。 結界は「シール」の事をさします。 シールさえ張られていれば、カオス内での行動は可能です。 以上がカオスの基本設定となります。
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所属 他己紹介 きーちゃん、食べたい -- ねこかなた (2013-12-11 22 11 22) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ergkaraoke/pages/13.html
こんな感じであったら便利かなーっと いらなかったら削除yr とりあえず一例を KOTOKO KOTOKO 曲名 原作 ブランド DAM JOY DAM曲番 JOY曲番 Imaginary affair こなたよりかなたまで F C FC01 × ○ 947017
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26 :名無しさん@ピンキー :2007/08/19(日) 00 52 17 ID v911SeCs 「かがみ~遊ぼうよ~もう勉強疲れたよ~」 「頑張った奴だけが言っていい台詞だぞ、それは。あんたは人の写してばっかでしょうが」 「みんなも疲れてるって~。ねぇつかさ?」 「ん~…ちょっと喉は渇いてきたかなぁ」 「かがみぃ、可愛い妹もお疲れモードだよ~?みゆきさんはどーう?」 「ガス抜きは確かに必要だと思いますよ、根をつめても逆効果になりますし」 「みんなこう言ってるじゃーん、3対1でかがみの負けー」 「んぐぐ……っとにもう、二人とも甘いんだから。麦茶でいいわね!?遊びじゃなくて休憩だからね!」 ねこだいすき 77 :名無しさん@ピンキー :2007/08/19(日) 10 36 02 ID c5PDTDtO SS職人 こなた:住人に乗せられ、徐々に家庭の内情を暴露しているのに気づいていない そうじろう:本職のほうで行き詰まると気分転換に書きにくる みゆき:もっぱら非エロ路線。一度だけガチエロに挑戦したが、えらく濃密な作品になり以後自重 絵師 ひより:匿名なので自重しないw 住人 かがみ:初代スレからの古参、感想やネタ振りで参加する熱心な住人 つかさ:感想を書きたいが、スレの流れが早すぎていつもタイミングを逃す ひかげ:ここでおなかいっぱいにすれば散財が減るかなと考え、お姉ちゃん(ひなた)に必死で勧めている パティ:ローカルルールの「801禁止」が、内心悔しくてしかたがないw ゆい:ダンナがいなくてさびしーんだよー、少しぐらいいいじゃんかよー 78 :名無しさん@ピンキー :2007/08/19(日) 10 46 48 ID z0Lvhf9R ≫77 そうじろうは住人に「プロデビューしろ」とか言われてるんだなw 131 :名無しさん@ピンキー :2007/08/19(日) 22 39 23 ID gd9p0aeP らき☆すた最終回「風流」 高校卒業後、こなたは隠遁したと言って、全ての就職話を断っていた。 そして、ある秋雨の降る日、自転車に乗った少女が庭先に立つ。 かがみ「来てくれるんでしょうね。頼むよ……つかさも待ってる」 数日後、JR秋葉原駅前――― さあさあ 銭まくど 銭まくど! 銭まくさかい風流せい 仕事忘れて風流せい かぶき者泉こなた様のかぶきおさめや! 一無庵ちょころね斎と名を変えてこの秋葉原とはおさらばじゃ―――っ! 二度とないこの日を風流せんかい そーれ! ゆたか「こなたお姉ちゃんといると、毎日が風流みたい」 ゆい「変なコだよね」 ゆたか「そうなの、変な人なの。でも大好き!」 以後、平成の世を駆け抜けた希代の快活少女泉こなたは、柊家で捨扶持を与えられ 嘯月吟歌(しょうげつぎんか)愛するゆたかと共に悠々の歳月を送り、 柊家に移ってからは二度とかぶくことはなかったという。 没年は平成三十一年(2019)六月四日とあるから、アニメ最終回以降十二年も生きたことになる。 完 139 :泉こなたのゲームの話をしよう :2007/08/19(日) 23 46 35 ID 3FbLZDG2 その1 こ:「かがみん、ロ○サガとかやったことある?」 か:「あ~、やったことあるわよ。3とかで、本編そっちのけで、トレード やり続けたり、サラを主人公にして、コマンダーバトルでやってたのにラスボス戦で サラが抜けちゃってコマンダーバトルが出来なくてラスボス倒せずに泣く泣くやり直したり。 あと、2も結構やったな~。1は敵の多さに断念して、リメイク版でやったけどね。」 こ:「2でさ、今使えるクラスの仲間を皇帝にして、陣形だけ手に入れたらル○ン高原 送りにするのはデフォだよね~。」 か:「あ~!やったやった!あとは初盤でシティシーフのイベントを何回も 起こしてお金貯めたりとかね。」 こ:「それでさ、2で『触手』って攻撃あるじゃん。」 か:「あったわね。確か異様に攻撃力あったような・・・・」 こ:「そうそう。だからさ、エロゲーとかでさ、触手ものとかがあっても、ロマ○ガ2のトラウマで イマイチ、こういうシチュエーションに燃え(萌え)ないんだよね・・・・・」 か:「あ~・・・まあ、解らなくもないわね・・・・」 140 :泉こなたのゲームの話をしよう :2007/08/19(日) 23 47 07 ID 3FbLZDG2 その2 か:「あんたは、パズルゲームとかもやるの?」 こ:「うん、ぷよ○よとかは割りとやるよ~。『通』が一番好きでやりこんでたんだけど、 『通モード』ならノーコンでクリアもしたことあるよ~」 か:「うわっ!凄いじゃない!あんた本当にゲームなら何でも出来るのね・・・。連鎖とか どれくらい出来るの?」 こ:「ん~、調子が良ければ10連鎖くらい?」 か:「へぇ~、やるじゃない。どうやって連鎖組んでるの?階段積み?」 こ:「いや~・・・こうね、適当に、かつ、程よく色が固まるように右端に・・・・」 か:「って!単なるフィーリング連鎖じゃないの!」 141 :泉こなたのゲームの話をしよう :2007/08/19(日) 23 47 43 ID 3FbLZDG2 その3 こ:「MOT○ER2で、昔のデータを久しぶりやって『カッコイイモノ』と 『すきなこんだて』を見てみると当時何が好きだったのか解って小学校の卒業文集を 見てる気分になるよね~。」 か:「そうね~。私は昔のデータでも『すきなこんだて』はアイスクリームだったけど・・・。」 こ:「なんか、かがみんらしいね。それでさ、そのデータに『すきなこんだて』に『う○こ』 とか入れてあってさ、今思うと凄いくだらないのに、小さいころはこんなことで 爆笑してたんだろうなぁ・・・なんて思っちゃって、ちょっと自己嫌悪になっちゃったんだけどね・・・・。」 か:「それはたぶん、あんたぐらいだけだと思うわ・・・・」 142 :泉こなたのゲームの話をしよう :2007/08/19(日) 23 48 29 ID 3FbLZDG2 その4 SFC版「風来のシレン(フェイの最終問題)」をプレイ中のこなた。 地下一階 剛剣マンジカブラを拾った。 (おおっ、これはしょっぱなから幸先がいいなぁ・・・・) 地下三階 風魔の盾を拾った。 (初盤から最強セット・・・うまく行けばクリアできるかも・・・) その後も・・・ 妖剣かまいたちを拾った。 ドラゴンキラーを拾った。 地雷ナバリの盾を拾った。 山彦の盾を拾った。 ドラゴンシールドを拾った。 皮の盾を拾った。 (おおっ!使える装備ばかり!こりゃ~今回ツイてるな~) 地下三十階 持ち物 剛剣マンジカブラE 風魔の盾E 妖剣かまいたち ドラゴンキラー 地雷ナバリの盾 山彦の盾 ドラゴンシールド 皮の盾 (なんでこう、合成できる武器が沢山あるときに限って合成の壷が出てこないかな~!?) (ちなみに、こなたはそのあと36階にてニシキーンの攻撃によりあっさりと撃沈しました。) おしまい 193 :ぶーわ@小ネタ :2007/08/20(月) 07 18 13 ID Z5cTwESp 「いくよっ、コナタロス」 「待ってましたぁっ! ……変身っ!」 『Otaku Form』 「私っ、参上っ! 私は最初っから、クライマックスだよぉっ!!」 「私の嘘を安っぽく解釈しないでよねっ」 「こ、こんな時に何を……」 「私の嘘は、嘘のための嘘なんだから……でも、私が泳げるのは、嘘じゃない」 「えっ?」 「いっ、いいからボタン押しなさいよっ! ア、アンタのためじゃないんだからねっ!」 『Tundere Form』 「アンタ……私に釣られてみる?」 「化ける? 化ける……」 「ちょwまww それらめぇっ」 「泣けるよっ!」 びょーん 「変身っ」 『Balsamico Form』 「私の強さに、貴方が泣いたっ。涙は、これで拭いてねっ」 「……変身」 『Ten-nen Form』 「倒してもよろしいでしょうか? 答えはまったく聞いておりません。ばーん☆」 「こいつ頭おかしいんじゃねぇのかっ!?」 「最後いきますよ? いいですか?」 「だ、駄目だっ!」 「答えは聞いておりません」 195 :ぶーわ@小ネタおまけ(ネタバレ注意) :2007/08/20(月) 09 18 25 ID Z5cTwESp 「降臨、満を持して……うちの刃ん前に、平伏しぃ」 「ちょw何で入れんのさっ」 「教養の差、っちうやっちゃで~」 「へ? か、かがみっ。どういう意味?」 「アンタがヴァカってこと!」 「知ってるッスか? そういうのを諦めが悪いって言うんスよ」 「うん……最後までクライマックスって事だよねっ!」 196 :名無しさん@ピンキー :2007/08/20(月) 09 23 43 ID rbmcaeAo こなた「もうやってらんなーい」 かがみ「あんた明日から期末テストでしょうが、忘れたの?」 こなた「そんなの最初っから覚えてねえ。さっきはへこんだが、こっちの戦い(ゲーム)のほうが面白そうだぜ」 こなた「ていうか、私はこういうの(ゲーム)がやりたくて来たんだよ。テストなんて関係ねえ!」 かがみ「…はぁ…馬鹿か…」 こなた「言っとくが俺は、最初からクライマックスだぜ!」 197 :ぶーわ@小ネタ :2007/08/20(月) 09 32 48 ID Z5cTwESp 「泣けるよっ!」 「私に釣られてみる?」 「答えは聞いてませんけど」 「あぁーもう、こうなったらヤケクソでクライマックスだよっ!!」 198 :名無しさん@ピンキー :2007/08/20(月) 09 35 16 ID 8JwXou3d それは私がゲームの合間にトイレに行くために下に降りた時のことだった。 パチン!・・・パチン! 父・そうじろうの書斎から何かを切り離す音が聞こえた。多分プラモをつくっているのだろう。 ガンプラかな?ってか現実逃避か? それからしばらくして・・・ 夕飯を作るために下に降りた時、甲高い音が鳴っていた。 キュイイイイイン! モーター音?プラモ作ってるんじゃなかったの?! 少し気になったので書斎を覗くことにした。 「おとうさん、何して・・・うおっ!」 おとうさんの手には全長160ミリくらいの車の模型―――10年位前に大ブームになった「ミニ四駆」のボディが握られていた。 まー、私も小学校低学年の時にクラスの男子と一緒になってやっていたけどさ・・・ 「こなたか・・・いや、ちょっと懐かしくなってさ」 と、照れくさそうにおとうさんが言ってるが、アンタ、私の手伝ってただけじゃん! でも・・・確かに懐かしい。 「うん、懐かしいね~それってマグナムだよね?」 「ああ、サイクロンマグナムだ。ちゃんとレブチューンにしてあるぞ。」 「こだわってるね~で、小説の方はどう?」 「なあ、こなたよ・・・その事については黙っとくわけにはいかないか?口をつぐむわけにはいかないか?」 進んでないみたいだ。だからやっているのだろう・・・・ご丁寧にシャーシを缶に固定して慣らしまでしている。 それはそうと、夕飯を作らなくては! 「じゃあ、夕飯作るから、あまり夢中になりすぎないようにね~」 「ああ・・・」 ここまでしかできなかった・・・誰か続きたの・・・・ム・・・(ガクッ) 199 :名無しさん@ピンキー :2007/08/20(月) 09 36 53 ID m1l3EENc こなた「お前の望みを言え。どんな願いも叶えてやろー」 みなみ「わ、わたしの望みは……む、胸が(ごにょごにょ)」 こなた「待ってましたー!」 神SS書き降臨 こなた「契約完了っ(くぱっ)」 陵太郎「イマジンは”胸を大きくしたい”っていう望みを”胸を揉みまくる”って解釈して…」 272 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 02 52 36 ID HYUPOxlT ……誰も言ってないみたいなんで、とりあえず俺だけでも。 そうじろうさん誕生日おめでとう(既に翌日になってるけど)。 273 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 03 10 05 ID 468jj8Fs ≫272は間違いなくこなた本人 そう君おめでとう 275 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 05 17 19 ID Po6MZBZB ≫273 そういうあなたはかなたさん そうじろう叔父さんおめでとうございます 276 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 06 27 24 ID IgjbfaH/ ≫275 そんなあなたはゆい姉さん? 泉先生おめでとうございます 277 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 07 41 13 ID dX9oxWwW ≫276 そんなあなたは担当さん? 兄がお世話になってます。 そうじろう兄さん、おめでとう。 ……こなたちゃんはもう仕方ないとしても、くれぐれもゆたかには変な趣味を吹き込まないでね? 280 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 07 54 54 ID 3nPLbDEG ≫277 そんなあなたはゆたかちゃんのお父さんですか? こなちゃんのお父さん。お誕生日おめでとうございます。 つバルサミコ酢 284 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 10 44 47 ID 3VQkNoyp ≫280 そんなあなたはつかさね? こなたのお父さん、お誕生日おめでとうございます。 新作に期待しています。執筆頑張ってください。 285 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 10 50 03 ID ud+MQY7d ≫284 そんなあなたはかがみさんですね? 泉さんのお父様 お誕生日おめでとう御座います いつも泉さんにはお世話になっています これからも泉さんのお友達として、よろしくお願いします 286 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 11 03 37 ID wUFHTICa ≫285 そんなあなたはみゆきさんだよね? いやぁ、こんな年にもなって恥ずかしいけどねぇ、お父さん誕生日おめでとう けどもう私にぺたぺたひっついてくるのやめて欲しいな ちょ、だからと言ってゆーちゃんに手をだしたらゆい姉さんにやられちゃうよ? あ、それとお母さんはどんな祝い方してくれたの? 287 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 12 05 43 ID +QpwKIoP ≫286 そんなあなたはこなたお姉ちゃんだよね? おじさん、お誕生日おめでとうございます ご迷惑をおかけするかもしれませんが、あと二年間よろしくお願いします 288 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 12 22 50 ID kjEO5SBs いやぁ、みんなありがとう。 この年になるとな、さすがに年取っても嬉しくないよなーとか思ってたんだが、 やっぱりこうやって祝ってもらえると、なんていうか、恥ずかしいもんだな。うん。 まあ、あれだ。正直言うと、年齢のことだけじゃないんだけどな。 ほら、俺の誕生日って、かなたの命日に近いだろ?(※) だから、俺の誕生日が近づくってことより、かなたの命日が近づくってほうが重くってな、 正直、あんまり来てほしいもんじゃなかったんだよ。 今じゃ、あいつとの思い出を笑って話せるようになったけど、それでもやっぱり……な。 実はな、昨日、かなたが夢に出てきてな。叱られたんだよ。 ……ん?ああいや、こなたの育て方については置いといてだな(汗) いつまでも思ってくれるのは嬉しいけれど、もう少し自分の幸せも考えろ、ってさ。 今でも十分幸せにやってるつもりなんだが、って言ったら、再婚しないのか、って言われてな。 こなたも手がかからないぐらい大きくなったし、今さら再婚するのもなんだしなあ。 それに……俺の嫁さんはやっぱりかなただけだ、って思うしな。 いや、未練じゃないぞ。かなたの事は、今じゃいい思い出だって思ってる。 失ったことを悲しむんじゃなくて、短い間でも一緒に居られたことを喜ぼう……ってな。 あ、そこ、笑うなよ。真剣なんだぞ俺。 商売柄、マジになると台詞がクサくなってしまうんだって。 あー……まあ、なんか長くなったから、無理矢理まとめるけどさ。 なんだかんだ言って、俺は楽しくやってるよ、って言ったら、かなたのやつ、いい顔で笑ってたよ。 人間なんて長生きしたって百年だ。それぐらい、待っててくれるってさ。 今度は双子で生まれようか、とか言ってな。 ……あれ、俺なんで誕生日に死ぬ話してんだ? まあいいか、門松は冥土の旅の一里塚、っていうしな。 え、なんで門松なのかって?……ああ、ありがとうみゆきちゃん。説明よろしく。 とにかく、みんなありがとう!今日は無礼講だ、じゃんじゃん食べて飲んでってくれ! ……こら、こなた、だからって酒に手を伸ばすんじゃないっw (※)独自設定スマソorz 293 :みゆき :2007/08/21(火) 13 29 04 ID ud+MQY7d ≫288 門松は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし 禅僧一休宗純和尚の歌ですね あ、ちなみに一里塚というのは 江戸時代、全国の諸街道で、一里、つまり約四キロごとに設けた里程標のことです 一休和尚は、正月に猫も杓子もおめでたいおめでたいと この世の無常を知らずにはしゃぎ回る、その愚かさというものを知らしめようと 自ら墓場へと赴き髑髏を拾い、竹の先に括り付け 元日より家々の門口にそれを差し出して 「このとおり、このとおり、ご用心ご用心」と触れ回られたといいます。 これは、元旦というのはお目出度いものではあるが それも「白骨」への道中であるという悲しき事実 そのことを改めて、自分の不都合な実相を見つめずに 酔って浮かれ「忘年」することなく 日々与えられた業を果たしていきなさいという意味が込められています。 ……あ、すみません門松の意味でしたよね 話がずれてしまって申し訳ありません ここで言う門松は、髑髏を括りつけた竹のことで 世の真を改め見るための目印のことを指しています あ、それから、この時の一休和尚の心を博多聖福寺の仙崖和(ry 294 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 14 24 40 ID kjEO5SBs ……み、みゆきちゃん、ありがとう。もういいよ(苦笑) 誕生日との繋がりがわかりにくいから、ちょっと補足しとくな。 昔は「数え年」だったから、実際の誕生日にかかわらず、みんなまとめて元旦に年を取ったんだ。 つまり、門松の立つ元旦というのは、誕生日でもあったわけさ。 元の意味はみゆきちゃんの言うとおりなんだけど、 年を一つ取る=冥土が近くなる、って意味もあるわけなんだよな。 冥土には、かなたがいるんだよなぁ…… ……冥土のかなた……メイドの、かなた………… 295 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 14 34 24 ID +QpwKIoP ちょっと、お父さんストーップ! みんなのいる前で妄想始めないでよ… …でも私ってお母さんの生き写しみたいなんだよね? ってことは私がメイド服着ればお母さんがメイド服着てるように見えるのかな? 305 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 18 45 59 ID 468jj8Fs 「それにしてもほんと仲良かったんだね、お父さんとお母さんは。 喧嘩とかはしなかったの?」 「ん?そりゃあ喧嘩位したことあるさ。 その中でも、そうだな……ひとつだけいまだに印象に残ってて後悔してることがあるな」 「へぇ……意外だな~。どんな事だったの?」 「俺たちが中学に上がった頃だったかな。 小学生の時はかなたは俺のことを『そうちゃん』って呼んでたんだ。 でもな、やっぱり思春期にもなってくるとちゃん付けは恥ずかしくってなぁ」 「お~、お父さんにも人並みの羞恥心が」 「失礼だなぁ、こなた。お父さんはこう見えて結構繊細なんだぞ。 それでな、俺はかなたに『ガキじゃないんだしちゃんづけは止めてくれ、じゃないと絶交だぞ!』 なんて言っちゃったんだよな。 大声で泣くわけじゃなくて、じっと我慢するように俯いて肩を震わせてたかなたの姿が 今でも思い出せるよ……」 「そうなんだ……」 「ああ、あのとき妙な意地を張らなければ…… かなたは俺のことを『そうちゃん♪』と王道幼馴染的呼称を続けてくれてたはずなのになぁってな…… ああ!昔の頃の俺の馬鹿!!」 「あなたは本当に最低の屑だ」 309 :名無しさん@ピンキー :2007/08/21(火) 19 54 13 ID kjEO5SBs ≫295 「さすがはお父さんの娘、察しがいいな~」 そう言いながら、お父さんが取り出してきたのは、一着のメイド服。 茶色を基調としたシックな色合いが、『さすが、コスプレ用とは一味違う!』って感じ。 「これはな、かなたが英国風カフェでバイトしてた時の制服なんだ」 「お母さん、そんなことしてたんだ……って、メイド喫茶じゃないの?」 「あの頃はメイド喫茶なんてなかったって。この服だって、きちんとした仕立ての本物だぞ?」 「うわぁ……確かにこれ、ものすごくいい生地だよ」 いつの間に来たのか、つかさが裏地を確かめながらつぶやいてる。 さすが、第二志望が服飾学科なだけはあるね。ちょっと見直した(けど、なんかくやしい)。 「……どうだ、こなた。着てみないか?」 いかにも『目いっぱいタイミング見計いました』って感じで、お父さんが言った。 「ちょ、こんなところで娘にコスプレさせますか、おとーさん」 「いいじゃないかー、誕生日のプレゼントだと思って、頼むよこなた~」 思いっきりの、猫なで声。……てか、万年筆だけじゃご不満ですか? 庭に出した大きなテーブルの向こう側、集まってくれたみんなが、ニヨニヨしながらこちらを見てる。 あのー、なぜに私たちは、こんなところで親子漫才をやってるのでしょーか? 「う~ん……」 まあ、メイド服なら、コスプレ喫茶で何度も着たことがあるし、着こなしもそれなりに自信はあっちゃったりするんだけど。 ……ただ、この服が入ってた箱が……その…… 『呪いのメイド服』 って、どゆことですかー!? 「いや、それは"のろい"じゃなくて"まじない"って読むんだよ」 「確かに、漢字は同じよね」 ふむ、という顔をして、かがみ。 「泉さんには、とってもお似合いそうですね」 「お姉ちゃん、着てみてよー」 みゆきさんとゆーちゃんが、ツープラトンで後押し。……うぅっ、『歩く萌え要素』が、ダブルでおねだりですか。 若干スレ違いなロールプレイになってしまったんで、 無理矢理SS路線に戻してみたけど、続きが出てこないorz 投げっぱなしなSSはダメだってわかってるんだけど……
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夢皆(むかい) 叶太(かなた) 性別 男 誕生日 8月9日 甲子園をめざす高校1年生。 登場作品 〈ドリームスラッガーKANATA?〉
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空見 彼方(そらみ かなた) 種別 人名 初出 世界大会編 解説 性別:男/年齢:十代後半 六条 遊一の幼馴染。 『世界』のアルカナクロス。 関連リンク アルカナクロス
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私が彼女の前にいる。彼女はもう冷たく重い石の下で土に温かく包まれているだろう。 科学的な見解はそんなモノだ。至極当然。そして土に帰す。 けれど、私は何故かココに来る度、『天国』なんてものの存在を信じてしまう。 どうしてだろう。 私にそんな感情があったなんて知らなかった。 ――――As far as I am here. 学校なんて観察の為の潜伏場所としてしか考えてなかった。 人間とのツナガリなんて、連絡網――新しく知るべく情報の伝達の為だと思ってた。 作る笑いなんて簡単。 それは私に与えられた任務の為に与えられたスキルとも言うべきモノだから。 私も今日は人が登校する時間帯に普通の学生のように現れて、トモダチと接触し、共に登校する。 出掛けに長門有希の家の呼び鈴を鳴らしたけれどいなかった。 相変わらず彼女は気配が読めない。行動も。 たまには一緒に横に歩いてみたいとも思うけれども叶わないのかしら。 「…子?ねぇ涼子?聞いてる?」 「へっ?」 我に戻る。どうやら長門有希のコトで意識がトんでたみたい。 インターフェースとしてこれは直さないと…… 「あ、ゴメン。なんだっけ?」 「もー、たまーにあるよね。ソレ」 「え、ああうん。ちょっと考え事するとそうなるのよ」 頬を掻きながら笑って誤魔化す。 「涼子の両親は今日も来れないの?」 両親?来る?今日…?何かあったっけ。 脳内で情報を結合させてリンクさせる。 ああ、そういや今日は――――参観日だった。 その間1秒掛からず。 「うん…、やっぱり忙しいみたいで」 こういうしか無い。両親なんていないのだから。 私は宇宙に存在する情報統合思念体に生み出された生命体だから。 「んーそっかぁ。涼子の両親はどんなのか見てみたいんだけどねー にしてもさ、涼子の両親毎回忙しくて来れないんだよね?それって酷くない?」 「そうなんだよね。でもさ、それでお父さんやお母さんの仕事に支障出たら私が後ろめたくなっちゃうから…」 「そっかぁ、親思いなんだねぇ」 私の生み出された時の性格によっては『来て欲しくない』とか単純な拒絶もあるだろうけれど、これが適切だと判断した。 凡々たる会話、昨日のドラマの話とか今日の英Ⅰの宿題の話をしてると、体感時間としては早く学校に着いた。 「ご馳走様でした」 参観日は5~7時間目の全授業。 最近はパートとかやってる母親が多く、それを考慮して3時間全てを参観日に宛ててるそうだ。 「あれ?涼子。何処行くの?」 一緒に教室でご飯食べてたトモダチの1人が問い掛けて来る。 「ああ、岡部先生が親に渡す為のプリント取りに来てくれ、って言われて」 「んじゃ、私も手伝おうか? もう食べ終わっちゃったし」 別の1人がデザートの梨を食べ終えて立ち上がる。 「いいわよ、そんな量無いみたいだし」 「ん、そっかぁ。まぁ多かったら携帯にコールしてよ?」 「うん、わかった」 そう言って教室を去った。 1階の職員室のある廊下に下り着くと、ちらほらと知らない大人がいた。 首に特別な許可証とかを下げて無いから参観しに来た親だろう。 私は表情を変えること無く、人の良さそうな顔をして職員室に向かった。 「お、朝倉。ちょっと待ってくれ」 岡部先生はちょうど弁当を食べ終えていた。狙ったんだけどね。 机の棚が鉄の擦れる音を鳴らして開く。 中には『参観した親は、生徒の名前の横にチェックをお願いします』と書かれて、出席表を書かれていた紙を表紙に束であった。 「ん、コレだ」 そう言って、一番下の紙に書かれてる内容を確認してから私に渡して来た。 「頼んどいてなんだけどな、いつも悪いな」 「いえ、私の仕事ですから」 そう言ってニコッと笑った。 つられて岡部先生も口を閉じた侭笑う。 「それじゃ、それを後ろのロッカーの上に置いといてくれな」 「はい、解りました」 そう言って、職員室を出る前に1度頭を下げて退室しようと廊下の方を向いた。 ドンッ! 「「きゃっ!」」 2つの小さい悲鳴が上がった。 振り向いて歩き始めたら、誰かにぶつかったみたい。 ぶつかった拍子に上に放り出されたプリントが上から舞い落ちる。 「いたた…あ、ごめんなさい…」 白いワンピースを着た女性はプリントを拾い始める。 「いいですよ。これくらいなら私がやりますから」 そう言って止めようともしたのだが、女性は頑なにプリントを拾う。 「いや、いいのよ。私が悪いんだし……」 まぁそれだけ言うなら拾って貰おう。そう思い、私もプリントを拾った。 「はい、これで全部かしら…」 周囲に紙が落ちてないことを確認して私達は立ち上がった。 「本当にごめんなさいね。はい、これ」 そう言って彼女が集めたプリントを手渡された。 その時に初めて顔を見た。…あれ? 「泉…さん?」 泉―こなた、だと思った。けど彼女は今日は制服を着て登校している。 コスプレ?いや、私の知り得る情報でこんなコスプレは存在しない筈…。 「え?…ああ、私はその泉の母親で。泉かなたといいます」 ……母、親…? 嘘だっ!とでも言いたいくらい…失礼だが背は高く無いし…寧ろ姉妹と言われた方がよく納得出来る… よく見ると泉さんと比べると目は穏やかで、所謂アホ毛が無い。優しそうな人だ。 「あ、そうでしたか。ありがとうございます。あ、これ貴女のです…よね?」 少し驚いたがすぐに状態を戻し、深くお辞儀して、こちらからも彼女のであろう白い帽子を手渡した。 「あ、そういや落としてたのね。ありがとう」 笑顔で応えてくれた。 「こんなことになっちゃって悪いんだけど、1ついいかしら?」 首を傾げて可愛らしく頼んで来た。 まぁ断るワケにもいかない。 「なんですか?」 「1年5組の教室って何処かしら?」 何故、と聞かれたら参観日だから、としか返せないしそりゃ当然来てる理由もそうだろうしね。 「それなら私のクラスですけど」 「あらそう♪それじゃあ…案内してくれるかしら?」 道案内人が都合よくいて良かったのか、嬉しそうだ。 「いいですよ」 「ありがとう♪」 淡々とした会話だった。 彼女は私の横を歩いていた。 身長は私と同じくらいだろうか。 「あなた、お名前は?」 「朝倉涼子です」 「あ、あなたが5組の委員長さんね」 「ええ、そうです」 「こなたは、学校ではどうなのかしら?」 よくある質問だ、と思った。 実際に聞かれたコトは無いけれど。 「とても元気で、クラスを盛り上げてくれる子ですよ」 嘘はついてない。それで実行委員とかしてくれる高良さんを内面で怒らせたこともあるけど… 「んーと…それじゃ、マイナスな方はない?」 「マイナス、ですか」 「そう。良いトコロだけ見てる親もいるけど、自分の子供のダメなトコロも見ないとダメだと思うのよねー」 親の鑑だと思えた。 最近テレビでもよく報道されてたりするけど、人間の恥ずべき行為だと思ってたから。 私はまぁスパッと言わせて貰った。 「授業中は8割方寝てますね。小テストとかもよく睡眠で潰してます。 その割には定期考査取ってるので驚いてますが」 つっけんどんにトモダチに図星なトコロを言うように言った。 「もー、だからあれ程夜中に起きるのは止めときなさい、って言ってるのに…お説教ね」 溜め息を吐いて、腕を組む。 「あ、ここです」 着いた。 かなたさんに扉を開けて貰うと、1,2人。どこかのお母さんが既に来ていた。 扉が開くと、一斉にこっちを教室内の人が向く。 その中には泉さん――こなた、の方。――もいて。 「のわっ!お母さん!!?」 「えへへ、来ちゃった」 手を小さく振り、無邪気な子供のように振舞う彼女を見てると………やっぱりお母さんとは思えないな。 泉こなたが駆け寄って来る。 「別に来なくていいって言ったのに~」 「えーでも、やっぱり娘の違う姿はみたいから、ね?」 そう言うとこなたは黙り込んでしまった。 そのまま、拗ねて自分の席に座って俯いてしまった。 その後には通称SOS団と呼ばれる涼宮さん――観察対象――を中心とした人達、 キョン、と呼ばれる涼宮さんの彼氏的存在に、柊姉妹。高良さんが来た。 「えーっと、こなたの属するSOS団団長の涼宮ハルヒです」 涼宮さんが礼をする。 「あら、あなたが。こなたから聞いてるわ。リボン、似合ってて可愛いわね」 涼宮さんの頬が紅潮する。 「へっ?……ぁ、ありがとうございます…」 もう1度礼をした。 かなたさんはフフと笑っていた。 「あ、えーと。そのSOS団の団員その1の……キョンです。あだ名ですけど」 「あなたも聞いてるわよ。その彼女とイチャイチャしてるらしいわね」 「……へ?…イチャ…イチャ?」 キョンくんの顔も紅潮していく。 「ばっ!……こなた!!」「おい、こなた!?」 涼宮さんとキョンくんが即座にこなたに詰問すべくかなたさんの元を離れて行った。 私は、陰に逃げるようにその会話を眺めながら出席表と案内の紙をロッカーに置き、トモダチの中に戻った。 ――――― 「かがみちゃんにつかさちゃん、みゆきちゃんも久しぶりね」 「かなたさん大丈夫なんですか?」 かがみが開口一番それを聞く。 「ええ、最近は治ってるみたいに具合が良いのよ」 力こぶを示すように元気良さをアピールする。 「無理はなさらない方がいいですよ?」 「いいのよ別に。それに、こなたの参観なんてしてあげたコト……無かったから」 少し悪気を見せて、床を見て発言する。 「けど……倒れたりしたら…」 「大丈夫大丈夫っ。最近ずっと立ってたりしてたんだけど、結構いけるのよ」 「それならいいですけど……」 「ほらほら、そんな顔しないでっ。みんなが笑ってくれてる方が私も嬉しいし!」 3人は深呼吸した後、いつもの笑顔を取り戻した。 「解りました」 かがみが先に言う。 「ほら、それじゃこなたのトコロに行ってあげて。授業始まっちゃうけど」 「それでは」 みゆきが頭を下げて、3人はこなたの元へ行く。 こなたの前には2人のバカップルがこなたに詰問していたわけであったが。 ――――― チャイムが鳴った。7時間目終了の音だ。 私は7時間目の担当数学の教師に対して敬意を払う挨拶の号令をする。 泉こなたの方を見ると、3時間睡眠を抑えてたからか、持久走でもやり遂げたかのように疲れてる。 1日の授業が終わると、SHRを残すだけとなるので親は皆帰る。かなたさんも教室を出て行った。 「……。…おーし、ホームルーム始めるぞー」 扉を開けて岡部先生が入って来た。 入った始め、泉こなたの方を見てたので多分すれ違いざまに私と同じ感想を思ったのだろう。 後は何事も無くSHRは終わった。敢えて言えば、泉こなたが爆睡してたくらいかしら。 「ねぇ涼子。今日これから暇?」 授業が終わって教科書をカバンに入れていると1人が話し掛けて来た。 「あー…ごめんね、今日はちょっと…」 「んーそっかぁ。んじゃあまた今度ね」 詮索してくれない良いトモダチで助かった。 「うん、また誘ってね。本当にゴメン」 「いいって、忙しいんでしょ?」 そう言って彼女は去った。 一息ついて改めて鞄の中身を確認した後、私は自席を離れ、教室を出た。 忙しい、と言っても何をするわけでもなかった。 何となく、断った。 普段から付き合ってるからたまにはいいだろうと思っただけ。 することと言えば買い物くらい。 あとは宿題くらいか。 別に解らないわけないから困らない。 作る 為に、出来る人間としている為に、やらないといけないからやるだけだ。 食事は別。 人間の要素がある分、こういうトコロは人間と同様になっている。 「今日の献立……何にしようかな」 一人帰り道、そんなこと考えてた。 長門さんも栄養を摂らないと――別に大丈夫だろうけれど――いつもレトルト製品ばっかみたいだから。 近所付き合いとして何ら至極普通だし。 「カボチャ、にしようかな」 橙色の空を見て思った。 時期的には遅いかも知れないけど美味しいし。 よし、そうしよう。 直接私はスーパーによることにした。 「カボチャカボチャ……えーと…どれがいいかしら…」 かごに鞄を入れて持ちながらカボチャを品定めする。 「ついでに肉野菜炒めでもしようかな。味気無いし」 スーパーは目的以外を欲しくなる魅力がある。 たとえインターフェースでもやはり限定と聞くと目がいくし安いと手に取ってしまう。 夕暮れの時間帯、スーパーも掻き入れ時。 店員も忙しくメガホン片手にヒトを呼び掛ける。 広いスーパーの特定箇所に群がる人を見るといつも驚く。 「いつも大変だなぁ。買う人も売る人も」 今日は何の特売品かしら。耳を傾ける。 《本日の特売品!特売品はぁ!牛肉!!全品5%OFF!》 躊躇わずに群集に突っ込んだ。 《完売ぃ!完売となりました!》 相変わらず死闘だな。 普段力仕事をしない女性の何処に力があるんだろうか。 私は5パックの牛バラ肉をかごに入れてふぅ、と息を吐いた。 流れで取り過ぎてしまった。 そんな食べないのに……長門さんは食べてくれるだろうからいいか。 切り替えて、前を見ると、溜め息を吐く長い蒼髪の女性がいた。 アホ毛がない白いワンピースは…… 「かなたさん?」 泉かなたの横にまで歩き、声をかけた。 「はい?……あ、朝倉さんね、お昼ぶり」 近くで見ると尚更元気の無さが伺える。 「どうしました?」 「今さっき特売があったでしょ?買い逃しちゃって…」 彼女は困りながらも笑う。 「牛肉、要ります?」 「え?あ、別にいいわよ」 「取り過ぎたんで、私はいいですよ」 泉かなたは少し悩んで 「それじゃ頂こうかしら、ありがとう♪」 私は3パック渡した。 それでは、と一礼して挨拶して去ろうと思った。 「朝倉さん」 声を掛けられて、出来なかった。 「はい?」 「もし良かったら……ウチで晩ご飯、どう?」 人差し指を伸ばして泉かなたは言った。 「どうせ4人分作るんだし、お礼もしたいし――ね?」 返事に困った。 お礼なんて別に要らないと思うんですが…代わりに買ったわけでも無いのに。 私と会ったのは今日学校が初めてなのにどうしてだろう。 「あ、嫌ならいいんだけどね」 ……これはよくある強制イベントかしら… というかこれで断るのは人間(違うけど)としては駄目よね、 「いや、かなたさんがよろしいのなら……」 「じゃあ決定ね♪」 小さく跳びはねて喜びを表現する。 かごが重かったのか少々バランスを崩してた。 何がそんなに嬉しいのだろう。解らない。 「ご馳走になります」 深く頭を下げた。 「それじゃあ、すぐ来てね」 買い物を終えた後、店前で彼女とは別れた。 人の家にお邪魔するのに無駄な荷物を持って行きたく無かったから。 今は一人帰り道。 「……長門さん、どうしよ」 あそこまで言われると断れなかったから受けたのだけど、長門さんの存在を忘れていた。 カボチャ煮付けて渡すだけなのも…なんかね…。 しっくり来ない。 どうしようか。 うーん…… 悩んでるとマンションの前の道、向かい側から長門さんが歩いて来た。 「あ、長門さん。実は…」 「私は涼宮ハルヒ達と共に夕飯を食べることになった」 長門さんは私の胸元の校章辺りを見ながら暗記した文を読むように言った。 「そ、そう。ならいいんだけど」 取り越し苦労だったようだ。 知り合い――それ以上の繋がりだけど――が孤独に食べてるのはなんか嫌だったから。 「言いたいことがある」 近付いて真っ直ぐに私の眼を見て言って来た。 「何かしら?情報統合思念体から?」 周囲には誰もいないのは解ってる。 「違う、私個人の見解から。」 思わず眼を見開いた。 「? どうかした?」 首を傾げられた。 「い、いや何でもないわ。で、何?」 「深く入らない方がいい」 謎めいた一文だった。 「入らない、って……プールか何か?」 でも秋風も過ぎるこの時期にプールなんて…… 長門さんは首を横に振る。 「いずれ、解る」 そう言って、長門有希はマンションに入って行った。 「あ、明日はカボチャするからねー!」 私は長門さんにそう告げといた。 駆け寄ればいい、と後から思ったけど。 長門さんは私の声に反応して一度振り返り、また前を向いて歩き出した。
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“ギルドマスター” 森のおおかみくん “サブギルドマスター” 大正咲夜 〆八尋. 陸奥かなた☆ 樹美樺 アルビディス