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31: 名前:サスライ☆01/16(日) 00 29 15 第二章 マオ 筆者が聞いた話に、とある都市伝説がある。 独り暮らしの男の話で、ある日家具が毎日微妙にズレているのを発見した。 そこで男は部屋にカメラを付けて外出したようだ。 帰ってきた男がカメラを見ると、押し入れから一人の女が出てきて、部屋を物色。暫くするとまた押し入れに戻ったらしい。映像はそのまま変わらず、女は押し入れから出ていない事になる。 と、この様に押し入れとは人が隠れるには実は最適の場所であり、人とは案外他者が居る事には鈍感だ。 だからこそ、何を考えているのか解らない他者が居る時、他者とは主観的には人の範疇を超えて恐怖になるのだと思う。 メイはマオを取り敢えず自分の部屋の押し入れに入れた。 何時メイの家族が来ても良い様に気配を殺している。バレるかバレないかではメイは安心出来た。 チクチクと、時計の針の音が何にも邪魔されずに響く。メイが部屋で宿題を始めて2時間程経った、真後ろの押し入れからは何も無い。 「いや、何か話してよ。怖いんだけど」 「…………」 あれからマオはここに至るまで終始無言だ。特に害は無いから放っているが、シャワーよろしく後ろからチクチクと視線を感じ、不安を感じて落ち着かない。 32: 名前:サスライ☆01/21(金) 01 00 03 次の日の朝。太陽が昇りつつも冷たい風が肌に触り夜の名残を残す午前6時の事だ。 やや大きめのホテル近くの河川敷に、杭が打ち込まれていた。長さは1メートル程で、木製。所々から繊維がはみ出している。 その繊維は、全てクレーターを描いていた。 杭の大分遠くに男が立って居る。ジュウザがメイに言っていたハンプティだ。 格好はジーンズにシャツと見ているだけで生肉程度なら保存出来そうな位寒そうな格好だ。 しかし、ハンプティは寒そうな表情はせずに、熱意のある真剣な眼差しで杭を睨んでいた。 身体中からSASUKEよろしく白い湯気が出て暑苦しい。 彼の手はゴツゴツしていて強そうだ。が、それだけで道具は持っていない、尚、彼はジュウザの様に特別な力がある訳でも無い。 しかし、彼は己の『銃』を構えて、咆哮と同時に『弾丸』を放った。 「覇ァ!」 汗が一気に飛び散ると同時、その向こう側の杭では繊維や幹が千切れて飛び散った。 これが無敵の銃の使い手ハンプティの銃の一つ、『マグナム』の稽古訓練である。 33: 名前:サスライ☆02/10(木) 18 09 39 訓練を1キロ程離れた石橋の上から見る人影が二つ。 一つはコートを着て、少し引いた表情のメイで、もう一つはローブを着てフードを深被りしているが明らかに表情を崩していないマオだった。 メイの直感が告げている。どうしよう頼っちゃいけないタイプだと。 「クックック。でも、君は頼らなきゃいけないだろう、結局気まずいままだったじゃないか」 ずっと話題も無くて此処に来るまで何も話さず、マオの考えている事がまるで分からず不安ばかりが溜まって疲れるだけだった。 そうしてハンプティに話しかけようとしても、苦手なタイプっぽくて今一歩が踏み出せない。 だからずっと二人で此処に居た。しかしマオの考えている事は分からないので、気まずさはドンドン増していく。 そんな時に意外な所から助け船が来た。 「んーで、お前等何やってんの?ファンなのか、追い掛けか、ストーカーか?言っとくがサインは後にしてくれ」 男の声だ、野太くも無くて爽やかでも無い。しかし心の底に染みる様な声だった、まるで歌手の声だ。ハードロックの。 その声は1キロ離れた所から聞こえる、そこにはTシャツGパンの寒い姿しか無かった。 特別大声と言う訳では無い、しかしこの距離で何故か届いていたのだった。 34: 名前:サスライ☆02/10(木) 18 34 30 一瞬唖然とするメイだったが、直ぐに落ち着く。別に驚いていない訳では無い。 しかし自分に害が無いと思ったからどうでも良い事に彼女の脳内では解釈されていた。 肺に空気を、脳に台詞を貯めて一気に放出する。 「違い!ます!よー!」 「あー、そんな叫ばなくても聞こえるっての。 しかし俺のサインがいらないとは、お前は悪いヤツだな」 小指で耳をほじくるハンプティのはじめの台詞を聞いて深く後悔し、後半は無視する。だからメイは返答をする事が出来なくなってしまった。 そして次に声を放ったのはマオだ。 「……貴様、何者だ?」 「なんだいお前はサイン欲しいのか。お前は良いヤツだな」 「……はぐらかす気か」 フードから覗くつり目で一人ハンプティを睨み付け、そして一人で納得する。 端から見たら只の中二病にしか見えない。年齢を考えると実際その通りかも知れないが。 彼女の年齢になると選択肢が急に増える。だから全てに手を付けられず、しかし未知を克服する為に分かった気でいる。 「何だかよく分からないけど、もう俺ホテル戻って良いかな?腹減ったんだけど」 尤も、当人からしたらこの程度の認識しか無いが。 35: 名前:サスライ☆02/14(月) 10 24 24 ホテルの食堂、ここの朝食はセルフサービスになっていて、所謂バイキングだ。そしてハンプティはドンブリにチャンポンで山盛りにした食材をガツガツ食べる。 コーヒーをチビチビ飲みながら、その様子を胸焼けがする気持ちで二人は見ていた。 ゲップを一つすると、ハンプティは二人に向かう。既にドンブリ一杯の食材はイリュージョンよろしく消えていた。 「んで、どこまで話したっけ?」 「えーとですね、ジュウザが……って聞いて下さいよ!」 「前置きトロトロしてる方が悪いんだよ旅人の胃袋舐めんなバーカ」 途切れない口に合わせて、素早くハンプティは新しいメニューに取り掛かっていた。サラダバーが全滅する。 席に戻るとまたガツガツ食べ出して話を聞こうとしない。そしてマオはデザートコーナーで軽めの食材を取りに行っていた。 そんな中で取り残されているメイは果たして自分が取り残されいるのか焦っているのか解らないが、取り敢えず浮いているのは魂で理解した。 理解した途端にスクッと立ち上がると、ハンプティと同じ様にドンブリにチャンポンで盛ると席に戻りヤケ喰いする。 そしてリバースしそうになる。メイは魂で感じる、やっぱコイツ(ハンプティ)苦手だと。 「クックック。まるで無理に面白い事を言おうとして滑るKY君だな」 ササヤキの声は無視して、リバースを飲み込んだ。 36: 名前:サスライ☆02/17(木) 14 55 46 ホテルのロビーにて、3人はソファーを使ってテーブル越しに向かい合っていた。 「やっぱホテルのロビーは落ち着くな。よく止まり木に使わせて貰った物だ。 んで、ソイツからお前を守れってジュウザから言われた訳だ」 「ハイ、お願いします」 メイがそう言うと、ハンプティはジィとマオの目を見た。それと比べて、彼女の隣に座るメイの目を見る。 すると、彼は鼻息一つ飛ばして苦笑いを浮かべ、方眉を下げた。 「……ふぅん、成る程。ジュウザらしい。 メイ、お前は嘘をついてるな」 「え、嘘?いや、私は……」 その時、ホテルの従業員がハンプティの肩を叩いて、語りかけた。するとハンプティはこの何かの前触れの様な台詞を作る。 「うん?すまんな、ちょっと待っててくれるか。 誰か俺に用があるらしい」 こうしてソファーに残るはメイとマオの2人。その『3人目』、ササヤキが相変わらず囁く。 「クックック、死亡フラグ乙。だね」 死亡フラグ?と、思う。ホラー映画等フィクションの世界において誰かが死ぬ前触れの行動の事だが、このフィクションの制限された世界において何か知る者は非常に少ない。 「クックック、そうさ、そしてこのままフラグに沿うと死ぬのは案外君かなあ。性格的な意味で」 君の悪い事言わないでくれ。そう思うメイ、そしてマオに近付く怪しい影があり、それが何を及ぼすかは、まだ誰も知らなかった…… うわぁ、フラグっぽく終わらせようとしたら酷い事になってやんの。 40: 名前:サスライ☆02/21(月) 20 39 34 ハンプティがホテルの奥に行ったその少し後だ、相変わらずメイの相手では無言のままマオは紙カップのコーヒーに口を移そうとした。 その時だ、コーヒーの水面に映った物に対し、彼女は大きく目を開く。そしてコーヒーを思い切り投げ捨て、メイを隣から突き飛ばした。メイは勿論床に叩き付けられる。 「ぐひい。な、何すんの痛いじゃないの!」 悲鳴を上げたメイが、頭を擦りながら頭を持ち上げて見た一番目は、真っ赤な光景。 マオのローブの腕のが破れて、肉の一部が爆ぜて、そして血の噴水を作り上げていた。 しかし光景をポカンと眺めているのは刹那。 「クックック。今度こそ、死んじゃうんじゃ無いかなあ」 ササヤキの声が直接頭に響いたお陰で考える時間は無拍子に限りなく近く、マオの怪我をしていない方の腕を引っ張った。 ハンプティは居ない。マオはその内自分を殺すかも知れない。でもマオは一晩一緒に居ても何もしなかった。 そうじゃ無くても、あの時確かに自分はジュウザからマオを庇った。自分が彼女を護る事に何の不思議があろうか。 そう自分に言い聞かせながらメイは走る。それと同時に、『人影』もそこを移動した。 41: 名前:サスライ☆02/22(火) 02 10 00 ハンプティを初めて見た橋の下、そこで二人は羽を休めていた。ローブを破って包帯変わりにしたマオはゼエゼエと顔を赤く苦しみながらも意識を保つ。 「それで、何なの?あれは」 「……駄目」 「駄目?何が駄目って言うの」 初めてのメイに対しての言葉は意味が解らなかった。しかし、ササヤキは一方で薄気味悪く何時も通りに笑う。つまり、メイは心の何処かではマオが喋らない理由を知っていた。 「駄目。メイは関係無い、知っちゃいけない。 ……メイは、私みたくなっちゃいけない」 つまりこう言う事だ。メイは只の一般市民なのだから、問題に巻き込んではいけない。 関係無いまま、迷惑のかからないようにしようとした。 だからこそ、メイは怒る。胸ぐらを掴んで、下唇を少し噛んで青筋を浮かべた。 「ふざけるな、何が関係無いだ。アンタは私が居なかったら死んでいたのかも知れないんだぞ。 私が居なかったら、今のアンタは居ないんだ。 それでも私は関係無いのかよ!」 無茶苦茶に自分勝手で穴ぼこだらけ、力も入れすぎた理屈だ。しかし、言わないと収まりがつかなかった。 だって、こうして自分の人生を低く考えるのは、死ぬ気で人生を護ってくれた他人の想いを否定している事だから。 42: 名前:サスライ☆02/23(水) 08 19 30 話は、マオがジュウザと出くわす少し前に遡る。その時マオは、ある任務を受けていた。とは言うもの、具体的な内容は伝えられておらず、取り敢えず『隣国が潜り込ませておいたスパイに会え』との事。 それが、あのジュウザの革靴の染みになった警官だ。ジュウザはそれを知っていたらしく、会話中に乱入して蹴り飛ばし、そこにメイがやって来たと言う事だ。 「それとこれと、どう言う関係があるの?」 マオは溜め息を煙草よろしく吹き出すと、額を人差し指で二回小突いて目を上に向ける。特別な意味は無い。 「……メイは、『暗殺課』って知ってる?」 「うん、知ってる。都市伝説で」 暗殺課。警察の秘密裏に存在するらしい課で特に都合の悪い事を隠す為の組織。メイの国で一時期ブームになったが一週間でブームは去る。 何故なら、根も葉も無い話という結論になったから。 「……実はね、あれ、実在するんだよ」 話を聞くとキョトンとした、今ならそれ位信じても良いが、今まで白と言われていた物を急に黒と言われたのだから。 「根も葉も無いと結論付けたのは誰だろう? 何で一時期ブームになった存在がまた掘り返されていないのだろう。 ……何故、君の国はフィクションの抑制をしているのだろう。 上に都合の悪い言論はみんな『有害』だからに他ならないからじゃないかな?」 ブーム直後、小さな雑誌。特にゴシップ誌等がかなり本屋から消えたのを思い出し、少し背筋に冷たいモノが走った。 43: 名前:サスライ☆02/23(水) 16 47 00 そしてマオが言うには、あの時の警官は動ける状態に無かった。と、言う事は同僚に回収されたと考えられる。 警官は、理由を根掘り穴掘り問われてマオがこの国に居る事を知られた為に、暗殺課が動いたと言う推理だ。 現に、コーヒーの水面に銃の様な物を構えた暗殺者を見たと言う。 メイは頷きながらも人差し指を顎に当てながら、どこか腑に落ちないと考えを展開し、整理して、出力する。 「じゃあさ、なんで先ずハンプティが連れていかれたんだろう。なんで、はじめに私が狙われたんだろう?」 マオは答えられなかった。自分の世界にばかり捕らわれているから考えもしなかったからだ。 結局、世界を知った気になってもこの程度と言う事だ。 その時だ、マオの背筋に電流が走る。それは、長年を危険な世界で生きてきた中で身体にインプットされた経験値。勘と呼ぶモノだ。 彼女はメイを押し倒し、両者地面に伏せると、橋を支える柱の一部が砕けた。さっきでメイの顔があった部分だ。 マオが殺気を放って見たその先に攻撃の主が居た。その事実は彼女を仰天させる。 追ってきているのは暗殺課では無くて、彼女の同僚の工作員だったから。 44: 名前:サスライ☆02/25(金) 04 05 56 マオは、直ぐに隠し持っていたナイフで格闘の構えを取った。身体を半身にして、片手のナイフをフェンシングの様に前に向けて、もう片手を槍よろしくその後ろ延長に掌を広げて置くスタンダードな構えだ。 何故かは後で考えれば良い。重要なのは、目の前の人間が自分等を狙っている事だ。 格闘する時、相手が何を考えているかも重要だが、身体の向きや視線等何処に意識が向かっているかで狙いが解る。 狙いは抜け出した工作員のマオでは無くて、関係無い一般市民のメイと言う事だ。 「……何でか解らないけど、行くよ」 相手との距離は大分離れている。ナイフと拳銃ではかなり分が悪いが、それでも拳銃の射程外だ。 ならば、距離を詰めれば逆に自分のみを狙ってくる。もしも無視してメイに向かえば、その時点で後ろからナイフの一撃必殺の危険に晒される事になる。 考えられるのは二つだ。 自分を殺してメイをゆっくり探し出して殺すか、自分の生死問わずメイを殺す事を優先する。 今、考えられるのは後者だ。拳銃があるから早期決着が望めるし、ナイフでは拳銃に勝てない余裕もある。 だから、マオは勝てると確信した。 45: 名前:サスライ☆02/25(金) 04 36 25 「……メイ、跳び箱は得意?」 「まあ、得意だけどその『作戦』、一瞬でも間違ったら死ぬよね」 「……余計は 後で考える!」 マオが駆けた、その際のナイフの煌めきが合わさって全体像はまるで電光だ。 相手は拳銃を足に向けてきた。足を失えば、接近しなければ威力を出せないナイフは無効化される。つまり、マオの生死問わずメイを真っ先に殺す作戦だ。 だからマオは、半身にした際の前足に力を込めて、バックステップを踏んだ。こうすれば、狙いはズレる。 そして次の瞬間、後ろから大声を上げながらメイが突っ込んでくる。 「うわああああ!」 やはりメイは、護る為に囮役を買ってくれた。殺しの標的はあくまでメイだ、だからこそ、一瞬メイに意識が向く。 マオはバックステップの反動を使い、腰を深く落とすと同時にナイフを持つ手を弓よろしく引いた。 メイは深く落とした腰で馬跳びをした、同時に腰の上から飛び蹴りを放つ。 だが悲しいかな所詮素人の蹴り、あっさりかわされる。 だからこそ、マオはナイフを持つ手を引いていた。引いて、もう片手の指でナイフの刃の側面を掴む。 投げナイフの構えだ。 そして、馬跳びの腰を深く落とした反動で現れた身体のバネを利用して、今度は天に昇る火の様に思い切り跳躍した。 メイが石よろしく影になっているお陰で、その動きは相手には見えない。 その、『電光石火』の流れで狙うは勿論急所の額だった。 46: 名前:サスライ☆02/25(金) 18 11 32 ナイフを投げ出そうとするその時マオに電流走る。電流の正体はナイフを投げる腕の、奇襲によって作られた傷によって起こる痛覚による物だ。 一瞬マオは、顔を強張らせる。そして直ぐ様元に戻り、行動を再び展開し、ナイフを投げた。 だが、相手がメイに意識を向けてくれているのは一瞬だ。だから、銃はマオに向けられる。 この時マオが思ったのは一瞬故に些細な事。 『何故、銃で腕が爆ぜる程の傷が出来たのか』と言う、後で考えれば良い学術的好奇心より湧く思考だ。 ナイフが放たれると同時、既に引き金は引かれていた。しかし、これでマオがやられてもナイフは回避不能だ。 その筈だが、そうは成らなかった。ナイフは引き金が引かれると同時に砕け散ったから。 キョトンとしたが、銃の形状を見て納得する。ラッパの様に広がった銃口に、異様に肥大化した銃身。それは、そもそも拳銃では無かった。 超小型の、音響装置だ。メガホンみたいな物と考えれば良い。 マオが居た組織でごく一部に渡される暗殺武器『蝙蝠七型』。物質に合った波長で超音波を発する事で、物質を爆発させる(銃で言うハンマーの部分が調整部分になっていて、これを親指で回す事で波長を変えられる)。ガラスが音で割れるのと同じ原理だ。 超音波だから聞こえないし、銃弾も残らない。 それで、相手はナイフの煌めきが見えた瞬間波長を対人体から対金属に変えて音波を放った。 マオに代わりのナイフは無い。所謂『チェックメイト』だ。 47: 名前:サスライ☆02/25(金) 18 39 48 マオは、悔しかった。 訳の解らないまま死ぬのも悔しい、結局何も出来ないのも悔しい。そして、初めて出来た友達をそうして喪うのが悔しい。 「……畜生」 ギリリと下唇を噛んで泣きそうな目をした時に、チラリとメイを見る。その表情にゾッとした。 彼女は、笑っていたから。 「クックック……」 そんな、薄気味悪く『メイ』が笑い、『メイ』は信じられないスピードで相手に向かって駆けた。 人間と思えない初速のタックルの肩は腹に入り、相手を1メートル程吹き飛ばす。 吹き飛ばされ、しかし地面に着地した相手は超音波をメイに向かって放つが、メイは不気味にケタケタ笑いながら横向きヘッドバッキングでそれをかわした。 確かに、超音波は目に見えないし音だが、結局は銃口の面積以上の波長を飛ばせない。理論値からズレて音波が散らばったら、ダメージにはならないからだ。 「クックック、ケキャキャキャキャ、アハハハハハハ!」 メイがヘッドバッキングしつつ再び駆ける。だが、相手は冷静だった。 「アキャ……」 銃口を上に向けて注意を上半身に振り、右足でローキック。そして左足でハイキック。脳が揺さぶられ、崩れ落ちる。 今度こそ終わったと感じた時だ。相手の意識が突然切れて、今度は相手が崩れ落ちた。 48: 名前:サスライ☆02/27(日) 21 21 55 相手の意識を奪い、マオ達の窮地を救った犯人が、橋の上で決めポーズを取っていた。ポーズは読者の好きな様に。そして犯人は叫ぶ。 「天が呼ばない、地も呼んでくれない。人が呼んで無くても俺は来る!」 トウと一声上げて橋から飛び降り、マオの前に立った。マオは涙目で言う。 「ハンプティ、遅いよ……」 「よく、頑張ったな。もう大丈夫だ」 ハンプティは微笑みながらマオの頭を大きな手で撫でた。そして、続ける。 「ヒーローは後から来るものなんだぜ」 「言い訳になってないよお……」 マオが表情を崩して泣き出した。今まで似た状況は何度もあったが、彼女は初めて感情を露にした。 ジュウザを初めとする想いに触れて、成長し出した心がハンプティの優しさが切っ掛けで漏れたからだ。 一通り泣いた後で、マオがハンプティに聞く。 「そう言えば、どうやってコイツの意識をあの距離から奪ったの?」 すると相変わらずの隠す所も無いシマムラファッションで言った。 「顎を狙ったんだ。顎に衝撃を与えれば脳が揺れて意識を落とす事が出来る。ボクシングとかでアッパーが入った時のKOパターンな」 「あ、うん。それは分かったけど『橋の上』から『素手』でどうやって」 キョトンと目を点にして首を傾げるマオに、歯を見せて豪快に笑い、ハンプティは答えにならない事を言った。 「俺には、『精霊』が付いているからだな」 故にマオは、頬を膨らませた。呑気な光景だが、色々と問題を抱えているからこそ呑気に誰かに頼らずにはいられなかった。 49: 名前:サスライ☆03/04(金) 23 38 32 ハンプティは取り敢えず、マオを一方的に質問攻めにした。それで段々飽きてきたのか、冷静さを取り戻しつつあった。 「ふうん、暗殺課ね。成る程大体繋がった、全くジュウザも面倒な物押し付けるな」 「……どう言う事なの?」 それに対し珍しくハンプティが相槌を打つと、連れて行かれた後の事を話し出そうとする。その時、意識を取り戻したメイの声が上がった。 「うわっ、何時の間にかハンプティが居る!」 「お前なあ、空気読めよ」 「え、何で私意識を取り戻した途端に怒られてるの?」 「……今回はどっちかと言えばメイが悪い」 「理不尽な四面楚歌なんだけど!?」 荒れるメイに特に触れず、勝手に落ち着くのも待たずに話を進めると勢いに負けて勝手に落ち着いた。 ハンプティの話を起承転結で纏めると以下の通りだ。 (起)連れて行かれると警官が居た。 (承)理由無く、いきなり殺されそうになった。 (転)窓をユパ様よろしく突き破ってダイレクト脱出 (結)ヤバそうなメイとマオを見付けたので援護する。 これを相関図の様に纏めるとこうなる。尚、ハンプティは警官に狙われる心当たりは無い物とする。 メイ(一般人)は隣国の暗殺者(相手)に狙われている。 ハンプティ(旅人)は暗殺課(存在は極秘)に狙われている。 ジュウザが懲らしめた警官は隣国のスパイである。この警官からマオ(工作員)の情報が漏れたと思われる。 マオはここで思った事が一つあった。実は自分だけ狙われていない。 しかし、実は『この計画』はマオが集中して狙われる筈だった。只、ボタンを少し掛け間違えただけに過ぎないのだ。本人はまだ気付いていないが。 50: 名前:サスライ☆03/08(火) 02 01 44 今何が起こっているのか、今度こそハンプティが言いかけた時、彼の目付きが変わる。穏から険へ。 そして、橋の上に向かって手を振った。すると、掌から『目に見えない何か』が飛び出して、橋の上の影に衝突。クワンと、オタマとフライパンの底の相性よろしく音が響いた。 そこに居たのは黒い警察服の巨漢の男で、表情はまるで鉄の様。故に何処か冷徹な軍人にも見えた。 メイが驚いていると、直ぐにマオと一緒に、被害が出ない様に橋の下に隠れる。アレこそが暗殺課なのだから。 「ふむ、音は立てなかった筈なのだが、何故解ったのかな?」 「精霊が教えてくれる。テメエのネクラな風なんてあっさり読めんのさ」 「宗教かね。下らんな、そんな物古臭い思想を引き摺った弱者を利用する詭弁に過ぎんでは無いかな」 「へっ、そう言う宗教感を人に植え付けたのは、お前等警察がしっかりしてないからだろ」 そう言ってお互いに戦闘体勢を取った。暗殺課は構えを見られない様に日光を背にして、ハンプティはローブをマントの様に羽織って腕を見せなくしている。 それは西部劇の早打ちのシーンにとても良く似ていた。 「……あ、謎の答えはお前等で勝手に考えておいて」 「ええっ酷い!」 緊張感ぶち壊し。マオちゃん大ショック。 風来坊いろは唄 続き2
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74: 名前:サスライ☆05/03(火) 12 31 55 3人はテクテクと道路を歩いていた、全員共通の話題が無いので気まずく、何か話さなくてはとメイだけは必死に模索するが他は気まずいとは思っていない。 あれ、コレって食堂の時と同じじゃね?否、人は変わろう変わろうと三歩進んで二歩下がる。きっと一歩は変わってる。 「クックック、下がる過程あったっけ」 ササヤキが何か言っているが、ササヤキの事だしきっと自分を惑わす何かだろう。誰だってそう思う筈、だからメイもそう思う。 そう言うわけで、最近のこの通路に関するゴシップネタでも披露しよう。だから口を開いたその時、コンマ一秒の差で口を開くのが早かったのはマオだった。 「そう言えば、何かホラーな話題が欲しいね。ハンプティ」 「うん、そうだなあ。じゃあ通路に関するホラーでも話すか」 取られた。メイは内心苦虫を噛み潰すのを通り過ぎて胃袋を潰された顔になる。しかし内心だから顔には現れない。 ならば、その土俵で戦ってやろうと考えるが、このフィクションの制限された世界でマトモなホラーの話題なんてある筈も無くて無情。 くそうコイツ苦手だ。メイが内心思うと、ササヤキが返す。 「クックック。ループしてるねえ」 75: 名前:サスライ☆05/04(水) 10 17 02 ハンプティが腕を組みながら天を向き少し眉を潜めると、天からナニか振ってきたのか目を見開く。そして二人に向いて口を開いた。 「んじゃ、トンカラトンの話でもしようか」 「覚え辛い名前」 「……変な名前」 名前について怪談で言ったらキリが無い。おかしな名前、素朴な名前、それ等の内容のギャップ差も怪談の楽しさの一つだから。 故にハンプティは、俺もそう思うと苦笑い飛ばして話はじめた。 「トンカラトンってのは、正式名は良く解らないけど、台詞からついた名前でな。こう言う感じに人気の無い道路を歩いていると現れるのさ」 静岡県の遺跡には『トンカラリン』と言う物があるが、実は関係は不明。 「全身包帯グルグル巻きであ」 「何だと、それは大怪我じゃないか。早く病院に行かなくちゃ」 何故かメイが食い付くが、メイなので無視する。と、言うかもしかしてコイツウザキャラじゃね。 「んで、日本刀背にして手を離して自転車をこいでいてなあ」 「何だと、それでは比重が大変ではないか」 今度はマオが反応する。もう何なのコイツ等、話をグだらせたいのか。思いながらもハンプティは話を続ける。 「トンカラトンって言いながら迫って来たと思ったら、『トンカラトンと言え』と言う。 んで、言わないと斬られる。斬られたらトンカラトンになる」 じゃあ刀を避ければ良いじゃないかと案が出たが、ハンプティはニヤリと笑って目の前に迫って来る人影を見た。 「きっと、もの凄え達人なんだろうさ。な、そうだろジュウザ」 目の前には、眼帯にスーツ。そして日本刀。妖怪と言われても違和感無いナニかを纏った男がそこに居た。 76: 名前:サスライ☆05/04(水) 19 34 02 ジュウザは、左膝を立てて座る。そして右側に刀を置いて溜め息一つ吐いた。崩れた体制は彼が行うからこそ逆に一つの遊びになって印象派の絵画の様な安定感を醸し出していた。 『居合』の構えだ。余談だが一般に知られる立って膝を少し折り、腰で溜めるのは『立合』と言われている。だが、総じて『居合道』なので間違ってはいない。 そんな仕草に飲まれずにいられたのはこの中で二人。一人はササヤキ、もう一人はハンプティだ。 「やれやれ、物騒だな。俺は紳士的にいきたいんだがな」 「クックック、好き放題殴る蹴るをしてるのが言う台詞じゃ無いねえ」 ササヤキは言うが、ハンプティは敢えて無視して只、『良いからメイのトコに帰れ。実は他人とも会話出来る事をバラされたく無かったらな』と言う。 すると常人では、ササヤキが違和感に手を加えるので気付かないササヤキ独特のパルス侵入の『流れ』が消えるのを確認した。 「……その様子だと、俺の活動に気付いているようだ」 ジュウザがそう判断したには三つの理由があった。一つはスパイもしくは工作員が殺された事。もう一つは、その犯人は自然にジュウザが浮かんできて、ならば敵対の可能性があり実際に居合の体勢を取っても動じない事。 以上の事を総じて下調べをしている可能性は高く、またマオが近くに居る等情報を得易い環境にあるの三つだ。 だからこそ、ジュウザは精神的に一気に踏み込んだ。 「……さて、貴様等は俺に協力するか。敵対するか。どちらかな」 77: 名前:サスライ☆05/05(木) 18 40 54 番外編 イラスト☆コーナー はいどうもやって来たね。この小説のアイドル、ササヤキだよ。 さて、このコーナーは読者様にイメージを固めて貰う為に筆者のキャラ絵を載せていくよ。でもコレ、僕って永遠に出ないよね。何これ、馬鹿なの死ぬの。 と、グダグダじゃいかないね。サクサクやらなきゃね、時代はスピードを求めている。 じゃ、今回はメイン3人。ハンプティ、メイ、マオだね。てゆうか、これ載せたら殆ど載せるキャラ無いよね。 では、実はハンプティ意外ロクにイメージ作らないで十分で考えた超適当イメージスタート。 http //b2.upup.be/FgYuTC2aNp それじゃ、本日はこれにて。また会おう諸君、クックック。 78: 名前:サスライ☆05/09(月) 16 54 48 ハッと飲まれてた意識を戻したメイが言う。 「勝手に話進めてるけどそれって難しくないかな」 「……ほう?」 ジュウザは二流ホラーの殺られ役程度なら睨むだけで殺せそうなドス黒い視線を向けた。 マオを睨む様を見るのも怖かったが、実際睨まれると内臓が収縮する様な感触を覚えてしまい、実際隣でマオが納得した顔でメイを見ていた。 それでも脳内麻薬を射ち、収縮した肺を無理矢理膨らませて機械的に声帯を震わせて平静を装う。 「アンタにとって、隣国反対派も賛成派もどっちも敵だ。基準が解らないんじゃどう動けば良いか解らない」 「……ふむ、成る程。 それは申し訳ない」 ジュウザは姿勢を正座にすると、礼を一つ。この時は僅かに隙が生まれ、ハンプティはそれに気付いてない訳では無かった。 しかし、敢えて手を出さなかった。そんな、歪な信頼関係があってかジュウザは静かに目を閉じて、口を開いた。 「……俺にとって、敵は『民主主義を謳(ウタ)う独裁者』だ。 『全ての平等』を謳い、国民を平等に管理する為に独裁を行う隣国。 『安全』を謳い、何もかもを規制して都合の悪い真実を隠すこの国。 結局みんな『独裁』だ。自分の作った物しか認めない。だから俺が、正義に則り正そうと言うのだ!」 79: 名前:サスライ☆05/09(月) 18 33 37 ジュウザがマオに出会ったのは、第三勢力の活動の最中の事だ。隣国派の警察が居ると聞いて暗殺しに行ったら第三勢力からマオが来るとの連絡を受けた。 この純粋無垢な少女にこの世を見せてやろうと暗殺課が動くのを予想して、ハンプティに預ける。自分は第三勢力の活動に戻った。 そして、暗殺課がやられたとの知らせを受け、同時に工作員が一人捕まったと知り、前生かしておいたスパイと同時に暗殺した。ハンプティ達をおびき寄せる為に。 以上が、ジュウザの活動だ。これで番外編も作れそうだけど、デロデロになりそうなので止めておこうそうしよう。 兎に角、ハンプティ達にこれ等を伝えたジュウザは無言で居合の体勢に戻る。それは再び選択させると言う意味だ。 メイは、一旦整理してある矛盾に行き着いた。それは敵対の肯定でもある。 目の前の『トンカラトン』の実力を知っているだけに彼女は悩むが、そこに声が入った。ササヤキの声だ。 「嘘は言わない方が良い。自分の態度も信じられない人間が、人を信じられる筈無いから」 「……そうだね、有り難う。やっぱアンタは私じゃ無い。アンタが私だったら、誘導なんて面倒な手段は使わないから」 脳内で作られた鼻で笑う音を聞くと、温かい微笑む。そして次の瞬間には凛とした態度でジュウザに挑んだ。 「アンタは矛盾しているよ。アンタだって、『民主主義』を謳って『殺人』を正当化しているじゃないか。 そうやって死の恐怖で人を縛り続けるのは独裁者のやり方だ」 80: 名前:サスライ☆05/11(水) 14 26 08 ヨーロッパのとある独裁者と呼ばれた男は、『女性は適応力がある。特に若い女性は蝋の様に柔軟だ』と言った。 ジュウザもそう思う。故に、マオを(ついでにメイも)現実に晒した。そして自分と同じ思想に行き着くと思っていた。何故なら、自分は自然にこの性格と言う型に適応していたからだ。 だが、結果は違ってしまった。何故と思う。実はジュウザがその性格になるには、発狂を通り越した更なる修羅場を潜る必要があるのだが、それに気付くのは何時の話なのだろうか。 只、ジュウザはジュウザ成りの正義に従っていた。 実は隣国に対してテロを行い、それを基に隣国を脅そうと言う反隣国の集団を斬った。 反省せず、牢屋から脱獄した後にこの国に対して報復してやろうと壁越しに会話していた二人も斬った。 彼にとっての正義は斬る事で安定していた。殺られる前に殺らなければ生きられない世界で過ごしてきた故に。 しかし目の前の女は、それを否定している。正義を否定すると言う事はもう一つの反する正義があると言う事で、則ち悪と認識した。 気付けば無表情のまま感情が高ぶり黄金の刃が鞘から放たれていて、メイに吸い寄せられていた。 81: 名前:サスライ☆05/13(金) 12 32 14 金属音がした。刃に対して硬質化した拳を突き出し、衝撃波で軸をずらして刀身を殴って食い止めた音だ。 ハンプティはジュウザとそれなりの付き合いだ、怒りも尤もと思う。 今までの苦しみを全て否定されたのだから。 でもハンプティは『正義の味方』だ。だから『悪』を見過ごす訳にはいかなかった。 「……ハンプティ」 やはりジュウザの表現からは何も読めない。しかし、呼吸や体温の流れがどこか乱れていて様々な感情が混ざっているのが解る。 「ジュウザ。 お前がどんな御大層な理由 (御大層な理由と書いてハンプティ・ダンプティと読む。ハンプティ・ダンプティとは、どんな権力者でも一度壊れたら直せない物の意。卵で比喩されるケースが多く、卵の殻の様に薄っぺらな物とも言える) があっても、ガキに手出しして良い理由には成らねえよ。それを押し通したいなら、この俺を倒していけ!」 ジュウザの腹に前蹴りを食らわせた。それこそフィクションの如く派手に身体が吹き飛び、コンクリートが破壊される。フィクション禁止のこの国では取り締まらなければいけないかも知れない。 ハンプティの身体は怒りによって開放されていた。開放はエロい意味じゃ無い。身体の流れを操作する事による開放だ。 食物をATP(エネルギー)に全て変換するエネルギーを8時間とするならば、原子力発電所並のエネルギーが発生(計算筆者)。その時間を早める。 更には人体のゲノムに含まれる未解読部分(ジャンク遺伝子)を開放。 他にもセロトニン等の神経伝達物質、BCAA等の筋肉エネルギーを早く合成する等の事で、まるで神話の英雄の如くの姿になっていた。 82: 名前:サスライ☆05/14(土) 16 44 58 ジュウザは、人を外れた能力を持っている。しかし、自身を人間だと思っている。 人は弱い。だから群れる。そして群れの本当の怖さは、強くなる事じゃなくて、弱さを克服する事だ。 独りだとどうしても『本当にこれで良いのか。失敗したら大変なんじゃないか』やら責任が付きまとう。しかし、他の人間がやっているなら自分もやって良いと免罪符を作れる。 それは、数が多ければ強くなり、故に上は自分がやらないから酷い指令を出せるし、下は責任は上が取る上、周りもやっているから正しいと思えてくる。 ジュウザは、今まで斬ってきた全ての人間と命日と性格を覚えている。殺した人間の人生と想いを背負わなければ、失礼に感じるからだ。 しかし、斬り過ぎた。沢山の人間の想いが彼の中で重なり、収集がつかなくなった。だからこそ、自分はそれを組織化して司令塔になる事で発狂を逃れている。 尤も、それは殺人の正統性を促している事に繋がるが。 しかし能力的には有利になる。独りの想いよりも、沢山の想いの方が強い。 鞘に刀を納めて、今まで斬った人間ならどうすると言った事を考えながら居合の構えで集中する。 一人の人間から複数の人間の気を出す。これがジュウザの『一騎当千』と言う名の奥義だ。 目の前には百戦錬磨の英雄。「差し詰めこれは一人の英雄対千人の凡兵だろうか」と、ジュウザの想いの内の誰かが言って、想いの内の誰かは笑った。 相変わらず司令塔は無表情だが 83: 名前:サスライ☆05/15(日) 20 09 48 聞こえるとも、あの声援を。感じるとも、あの大群を。ハンプティはジュウザが刀に一点集中させた想いを感じていた。 誰だって経験はある筈だ、集会やら人混みやら面接やらで感じるあの圧迫感。身体の内側まで押し潰されそうで、緊張で本来の力を出せなくなるあの圧迫感だ。 それでもハンプティは、逃げる気は無かった。只、近くにあった建物に凄い勢いで駆けていき、文字通り壁を走る。 勝てないかも知れない。だけど、逃げてはいけない。真のヒーローは仲間を見捨てない。 そんな一種のルールによって己を追い詰める責任感が、人を強くする。 ビルの3階程の高さまで走ると、足と腕に跳ねる為に力を込めた。 どれだけ強くなれるかは、護る者の人数では無くて、どれだけ護る想いが強いか。つまり、どれだけ自分に正直に自分を追い詰められるか。 ハンプティの目付きが何時もの飄々然とした物では無くて、善も悪も内包し、それでも突き進む漢(オトコ)の目付きになった。 力を全て一撃に注ぎ込んでいるから、流れを読んで遠距離の声を聞く能力は聞こえない。それでも、ジュウザの声が聞こえる。 「皆、ちっぽけな俺に力を貸してくれ」 だが、ハンプティは少し記憶の隅に留めておく程度で、壁を跳ねた。コンクリに手形と足形がクッキリと付く。 「必殺……弾丸キック!」 位置エネルギーを利用した只の飛び蹴り。今までの格闘技と比べると随分粗末な物だった。だけど、何故か一番威圧感がある。 本当は、ヒーローには力も技も必要無い。どんな強敵にも怯まない鋼の魂があれば良い。故に、想いが詰まったキックは一番ヒーローらしかった。 84: 名前:サスライ☆05/16(月) 22 29 24 迫り来るハンプティに対して、抜刀した。刀からは鉄骨程度なら余裕で斬る強力なエネルギー波が放たれる。その瞬間、ハンプティは吼えた。 「WOOOOOOOOOOOOOOOO!」 なんと、気合でエネルギー波を跳ね返した。 何故なら、放たれたエネルギー波はどんなに強かろうが気力が形になっただけの存在に過ぎないから無機物は楽に斬れるが、魂の籠った肉体は簡単に斬れない。 だけど、ジュウザは勝つと思っている。何故ならジュウザは能力で肉体強化もしている。 そして刀の方が足より長い。同じ肉体強化を用いるなら、リーチが長い方が勝つ。 居合独特の、抜刀のバネを利用した素早く両手に持ち代え立ち上がる動きをして、上段から立ち上がるバネを利用して足狙いで刀を振り降ろした。この間、刹那にも満たない。 しかし、ハンプティは振り降ろされる刃に合わせ、ジュウザの一歩手前で踵を下ろす。踵が下りた先は地面。その反動を利用してもう片足を円状に回し、刀の峰に足を乗っけた。 乗っけたと同時に地面についた足を同じ動きで高く上げ、そのまま踵落としを食らわせた。 後頭部へ衝撃。地面に顔面を叩き付けられ、ジュウザは意識を落とした。地面だけに。 85: 名前:サスライ☆05/18(水) 16 20 28 普通なら植物人間になってもおかしくない一撃だったと言うのに、一時間程でジュウザは意識を取り戻す。メイは、ある意味ハンプティと同じ人種なのだと思った。 だとしたら、やはりジュウザもハンプティと同様に食堂で大量に食事をしたりコイツと一緒に食事すると、またあの惨劇が繰り返されるのか。 いや、それよりも二人居るのが恐ろしい。もしこの二人に挟まれて食事したとなると……。 ここまで豊かに想像した辺りで声がかかった。 「……多分それは無い」 「いや、解らないよササヤキ。もしかしたら、もしかするかも知れない」 「いや、ササヤキって誰」 声をかけたのはマオだった。つまりマオが自分の考えている事を読んで考察を放出したと言う事になる。さてはエスパーか、新手のスタンドか、念能力者か。(自分でもよく解らない単語。恐らくササヤキの知識) 「いや、声に出しているし」 「……それに俺は奴の三分の二程度しか食べない」 メイ一生の不覚。まさかジュウザにも聞こえていたとは。て言うか、三分の二でも十分多くね? 「何で俺はギャグパートになると地味になるかな」 「存在自体がギャグだからじゃないかなクックック……」 そして隅でぼやくハンプティが居た 86: 名前:サスライ☆05/21(土) 02 34 03 「……それで、どうする」 先ずはジュウザの第一声から始まった。どうするとは、ジュウザを捕らえてその先どうするかと言う意味だ。 しかし、空気を読まずにメイは私的に気になっていた事を優先させようとしていた。故にそうなり第二声はメイの言葉になった。 「ねえジュウザ、私は本当に殺しがしたかった訳じゃないと信じるよ。でも、もっと別のやり方だってあった筈だよ」 ジュウザはふんと鼻を鳴らす。彼は鼻で笑っている事を形だけでも行おうとしていた。これから作る場面に必要なパーツだからだ。 「……貴様は何も解っちゃいない。相手が強く出ない限り、人はいくらでも乱暴に振る舞えるんだ。また、相手との関わりが希薄な程酷くなれる」 例として外交がある。軍事力が自分より弱くて聞き分けが良い国が隣にあったとしたら、脅迫に近い外交を申し込んで来るだろう。 この国と隣国の関係が正にそれだ。そして隣国の機嫌を取るために税として大金を吸い取られるのが、この国の国民だ。これで面白いのは、隣国はその『援助金』をこの国を脅す為の武器やらスパイやらの費用に使っている事だ。 では国民は黙っていないだろうと考える人もあるがそうでも無い。制限されたフィクションや管理されたマスメディアによって、人々にその驚異は伝わらないからだ。 そこまで一通り伝えた後に、何時もの無表情でジュウザは言う。 「そして今、国は変革を迎えようとしている。隣国反対派(タカ派)と隣国派(ハト派)が上で争っているのを止めようと、管理しようと、一番上の人間は何を考えたか……」 口だけで笑う。目は笑っていない。でも、笑うしか無い状況の事実だから笑う。 「この国に住んでる隣国の人間に警察以上の権力を持たせて、『差別者』を取り締まると言うのだ」 87: 名前:サスライ☆05/21(土) 02 55 54 隣国のモットーは『全てを平等に』。尤も、それに他の国の人間が混ざっているかは別の話。 「……そこまで付け上がった人間が、そこまで戻れない所まで来た人間が人の話を聞くものか。ならば、暴力以外の何に訴えろと言うのだ。 始めからやる気の無い奴に何を言っても無駄だと言う事位解るだろう!」 何時までもジュウザはブレ無い。ところが、どこか脱力感を覚えると、彼は囁きかけてきた。 「……それで、どうする」 ジュウザを倒したと言う事はそのやり方を否定したと言う事だ。だから同じ手段を使う事は矛盾に近い。 もし、人口の三分の二程の大規模な暴動が起きれば事は単純に終わるだろう。だが、メイにそこまでの力があるだろうか。いや、無いと自己判断兼自虐。 自分の事を誰も解っていないと感じるのは、他人の事を解っていないからだ。そんな人間が今から出来る事は何だろう。 ハンプティ、ジュウザ、コイツ等の様に超人的な腕力も能力もカリスマも自分に無い。それでも、この国の人間を動かすのはこの国の人間では無いといけない。 詰んだ。何て自分は矮小なのだろう。そう感じた時に、朧気な記憶だったので忘れかけていたある事を思い出した。 そうだ、まだ手はあるかも知れない。 「ササヤキ、アンタにこの国の未来を頼みたいんだ」 88: 名前:サスライ☆05/21(土) 21 52 22 昔々、それこそ電気の概念も無かった昔。ある植物人間が居た。その植物人間は、ある医者が必死に成る程大切な人だった。そんな必死に応えたかどうかは解らない、でも、植物人間は意志を以て起き上がった。その事実だけはあった。 意志の正体は特殊な鞭毛で宙をプロペラの様に飛ぶ微生物の集合体。それが化学物質のやり取りをして、あたかも脳の役目をしていた。思考とは、化学物質のやり取りに過ぎない。 しかし『ソレ』に取って、自分の正体はどうでも良かった。この『取り憑いた』人間の存在意義こそが現在の自分の存在意義だから。知識は取り憑いた物体を媒体にしているが故にだ。 ソレは精一杯、本人を振る舞った。医者も気付いて居ないので上手くいっている様に感じたが、医者は最期にこう言う。 「ありがとう、こんな老いぼれになるまで嘘を付き続けてくれて」 ソレは驚く顔を見せたが、医者は笑みを浮かべて頭を撫でて続ける。 「……目の前に自分の存在意義も何も知らずに困っている『人間』が居た。 だったら、真っ当に暮らせる様に『治療』するのが医者じゃないか」 そんなと返すが、医者は既に息を引き取っていた。以来、ソレは心に興味を持つ傾向を見せ、狂気にも近い強い意志に惹かれる様になっていた。 一つ前はサーパと言う人間の死体に憑いていた。そして今、ソレはササヤキと呼ばれメイと言う人間に憑いている。 89: 名前:サスライ☆05/23(月) 20 49 29 ササヤキは、意識の無い者や意志の薄い者なら身体を乗っ取る事が出来る。工作員に襲われたメイを守ろうとした時がそうだった。ある人はこれを悪霊とも呼んで、ある人は神の言葉と呼んでいた。 今回、ササヤキに任せるのはそれを利用した情報操作だ。人は何故か必死に叫ぶ個人には耳を貸さない癖に、テレビの話は企業がやっているからだと信用する。だから簡単に操られる。企業も上に操られている縦社会に過ぎないのに。 しかし、それを逆手に取ればどうだろう。つまりササヤキに重要な人物を操ってもらい人を煽ろうと言うのだ。 当のササヤキは少し驚く、自分がメイの外に介入出来る事は言っていない。そう伝えると、メイは微笑んで言う。 「だって、知識は共有してんだからそりゃ解るって」 それでもササヤキは納得しなかった。同じ知識を共有しようにも何を考えていると言う流動的な物は捉えられない。 そして、自分が他人へ干渉するのは『行けるかも』と言う感情から起こった物だし、知識が更新されたとしてササヤキ自身の知識と混ざってしまう。 「難しく考えているなあ、前の私みたいだ。アンタが必死に『私』を守ろうとした知識は自分の名前が複数の名前の中で呼ばれたみたく反応しちゃうもんさ。 何より、私はそんなアンタが好きだ。だから何を知って、何を考えているかついつい分析しちゃう」 90: 名前:サスライ☆05/23(月) 21 14 08 ササヤキは一旦目を見開いて(目は無いけど)、微笑み返した(口も無いけど)。だってメイがあの時の医者と同じ顔をしているから。気恥ずかしい気持ちになりながら、脳内だけで会話する。 メイ、ありがとう。(私に)(僕に)(俺に)居場所をくれて。君は思っていた以上に立派な人だったよ。 ううん、そうでも無いよ。寧ろ居場所を与えられたのは私。だって、アンタが居なければ私は今の私じゃ無かったから。 クックック、じゃあお互い様だね。……さて、そろそろ行くとするよ。旅人は唯流れるのみさ。 そうでも無いよ。流れない物もあるさ。 ……クックック。そうかなあ。 何をと返そうとした時、頭から何かスウと抜ける感覚を味わう。微生物であるササヤキ本体が抜けたからだ。どこか知識に妙に広い空白を感じたが、心は満ち足りていた。 空に向かって手を振ってみせる。知識が切り離された今ササヤキの方が、どれ程メイとの約束を覚えているかは解らない。 だから計画も成功するとは限らない。でも、メイは忘れないと信じている。 「……想いは、流れない」 ポツリと言って、言葉は風に流れた。丁度、ササヤキの本体に向かって。 さて、一方で取り残されたマオは頭上に色とりどりのクエスチョンマークを浮かべている。既に事情を知っているハンプティ、そして心を感じ取れるので事情を察知できたジュウザ。 お互い、どうやって話を切り出そうか悩み、ササヤキを大いに恨んでいた。 91: 名前:サスライ☆05/23(月) 21 30 48 それから数ヶ月後。 風が吹く。その風は何処から来たのか、聞いても答える者は無いが、荒野を道行く男女の男の方の顔に新聞紙を張り付かせるには十分だった。 「ウビャラッパ!」 「……」 「おいおい、マオ、せめて突っ込み位入れてくれよ」 「……うわー、変なうめき声」 監督を小馬鹿にした様な棒読みをマオは言うと、男の方(ハンプティ)にくっ付いていた新聞紙を取ってやった。 苦しそうに顔を真っ赤にしたハンプティをよそ目に新聞を見る、そこにはついこないだまで滞在していた国の事が書いてあった。 「……あの国、まだデモが続いているらしいね」 「ああ、ササヤキが頑張ったからなあ」 あの後、メイの作戦は成功した。突然国の上の何人かが、テレビや新聞で狂った様に内密にしていた案を暴露しだした。そして、それを行う時には決まって『クックック』と妙な笑いを浮かべる物だった。 ジュウザは暫くして姿を消していた。未だに消息は掴めていないが、つまり過激なやり方からは手を引いたと言う事でもある。 「……メイ、元気かなあ」 「さあ、どうだろうなあ。まあ、何はともあれ俺達は俺達に今出来る事をするしかない。そうだろう?」 「そうだね、じゃあ……」 「飯にすっか!」 二人は別ベクトルの種類で、しかし同じ意味で笑いながら弁当箱を荒野に広げた。 †††風来坊いろは唄:完†††
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51: 名前:サスライ☆03/08(火) 21 47 37 二人が動いた。暗殺課の銃弾が、上かつ対象を直視出来ない戦略を以て飛んできた。 それでもハンプティに銃弾は当たらない。それは彼の武器が銃の引き金を引くよりも速い動きで放てる物で、威力が申し分無い物だから。 彼の一撃は、暗殺課の身体に当たり、銃弾の軌道を反らしたからだ。 暗殺課の攻撃のぶつかった箇所には傷跡がしっかりと残っていた。 「威力が、変わったね」 「ああ。この俺様の『無敵銃』は威力が変わるんだ、『マグナム』じゃ駄目だったから『ショットガン』だ。どんなもんじゃい 」 嘲笑一つ、黒と赤の混ざった色が橋から落ちた様に降りた。落ちたと見なさないのは、着地の時も嘲笑しながら銃を構えていて隙が無いから。 逆光の邪魔が入らない分はっきりと見えるのは、『ショットガン』の跡で、それは銃撃と言うよりも、何か鈍い刃物で斬られた鋭利さがあり、そこに赤い液体がベトリと付いていた。 それを掌に付けた暗殺課は、ニヤリと笑った。 「成る程、君の武器の正体が解ったよ。成る程、君には本当に精霊が付いているのかも知れない。いやはや愉快だ。 『無敵銃』、つまり敵の居ない銃。しかし銃を携帯している以上敵意を消す事なんて不可能だ、ならば何か」 先程の冷徹な顔が豹変とも呼べる程の一変した顔で、玩具を与えられた子供の様に弾む声で語る。 「超高速の拳から放たれる『風』。それが『無敵銃』の正体だよ。 恐らく、『マグナム』は風を含み易い掌底。『ショットガン』はピンポイントの握り拳では無いかな?」 ハンプティは語らない。肯定だから、せめてもの彼なりの意地だ。 52: 名前:サスライ☆03/22(火) 18 49 01 暗殺課が嬉々して手を振ると、パキンとガラスが割れる様な音がして、ハンプティの足元の石が砕けて、そこには小さなクレーターが出来る。 「私は驚かなかったよ。何故なら、ソレを私も出来るからだ」 「ふーん、『サイボーグ』か……」 ソコを当てると何故か暗殺課の笑みは深く、より薄気味悪くなった。 『マグナム』では金属音がして跳ね返されるのは体内に装甲を仕込んであるから。また、それはどの様な素材か解らないので、マオが奪った『蝙蝠七型』で後ろから奇襲を仕掛けるのも不可能だ。 「私以外にサイボーグが居るのは驚いたが、そこまでだ。最新型の私には勝てないよ」 「ヘーソウナノカー」 ハンプティは面倒臭く、ダルい相槌を打つと更に暗殺課は舌を動かした。 「私には過去のあらゆる基本的なサイボーグの構造がインプットされており、相手をサーチする事で亜種を含むどの様な型式にも対応出来る!」 「ヘーソウナノカー」 暗殺課の目が赤く光り、光はハンプティを包んで、ハンプティの構造を解析した。そこから得られたのは恐ろしい結論だ。 暗殺課は耳まで青く目から笑みが消える等、表情が一変した。 ハンプティはフウと肩の力を抜くと、光を放つ赤い目を魂の隠った黒い目で睨み付ける。 「成る程、お前がビックリドッキリメカってのは良く解った。 だけどな……」 グッと拳を握り締めて言う。 「ゴチャゴチャうっせえ!」 ハンプティのサーチ結果:無改造(生身) 53: 名前:サスライ☆03/23(水) 10 16 00 例えば、貴方(もしくは貴女)が上官に竹槍を持たされたとしよう。そして空を飛ぶ戦闘機を指差して「アレをソレで撃墜してこい」と言われたら無茶だと思うだろう。何故なら実際に無謀だからだ。 ハンプティが今やっているのは正に『ソレ』だ。相手は外見こそヒトなれど、その実像は兵器が服を着て歩いているだけだ。しかし兵器を使うのは人間で、故に脳は生身だ。 だから暗殺課は戸惑っていた。前例が無い。彼は戦車もロボットも相手にして来たが、自分がサイボーグと知りながら殴りにかかる人間には会った事が無い。 さて、先程の竹槍の例だが、実はある伝説がある。ベトナム戦争の話だ。 戦闘機の弾が切れたからと手元の竹槍を取りハッチを開けた状態で突撃し、すれ違いの瞬間、敵戦闘機のハッチに飛び掛かりガラスを突き破って本当に撃墜したと言う伝説だ。 「WOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」 バーンと冗談にも近い様なドラ音。車が人を跳ねた様な音がする。 そこにあるのは、ハンプティの拳によって2メートル程吹き飛ぶ暗殺課が居た。それは人間サイズの金属の塊の筈なのに。 解せない面持ちで地面に叩き付けられる暗殺課に向かって、ハンプティは一言吐き捨てる。 「人間舐めんな」 54: 名前:サスライ☆03/23(水) 11 01 02 古代に発達したアニミズムと言う思想がある。万物には精霊が宿り、それが世界を作ると言う、後の神道に繋がる考えだ。 ハンプティの技はその精霊を『流れ』に例えている。この世は様々な流れが組み合わさり方向性を持つと言う考えで、古代の人は思想を深める過程で体内の循環系等の『流れ』に行き着いた。 それを操作しリミッターを外して人間の持つ力を最大まで引き出す。反動は循環させて副作用を極限まで抑える。そんな技だ。 また、大気の流れ(振動)のズレを察知して遠くの声を聴いたり、声を超音波状に凝縮して遠くに声を行き届ける事も応用がある。 暗殺課は顔を引き締め、空気の弾を放ったが、食らわない。避けられた訳でも無い。大気の流れを読まれて、拳で撃ち落とされていた。 更に顔を引き締め、暗殺課の全身が文字通り開いた。大量の小型ミサイルが顔を出して、煙で軌跡を描いて放たれる。 命中を確認して爆発音の後、煙が上がる。表情を少し緩めた暗殺課は、その瞬間に目を見開いた。目の前にポケットに手を突っ込んでニカリと笑うハンプティが、二本の足で立っている。 剛体(特殊な引き締めや訓練で身体を堅くする技法。古流空手等に見られる)で受け止めた後、筋肉を振動させて衝撃を受け流し、血流を操作して残った力を受け流していた。 暗殺課は舌を回らせる。 「嘘だ、人間がミサイルに勝てる訳が無い。絶対何か仕込んでいるだろう。もしくは、実は人間じゃ無いだろ!」 「いや、俺は人間だ」 暗殺課は再び空気弾を放つ程のスピードのパンチを放つが、技その物が型に嵌められた上に流れを読む見切りの達人はそれを軽く避けて、ポケットに手を突っ込んだまま顔面に足でカウンターを叩き込んだ。 「面倒くせえなあ。自分の常識でしか理解しようとしない人間は。 良いか?夢もロマンも無くしたポンコツ野郎……」 右上段蹴りから右正拳と、かなりデタラメな繋ぎをして、吹き飛ばし石橋の柱に叩き付け言う。 「ヒーローってのは無敵なんだよ!」 55: 名前:サスライ☆03/23(水) 17 11 17 叩き付けられ起き上がった暗殺課は再びサーチアイを使った。衝撃の為か点滅している。 「やっぱり……生身……オカシイ。誤作動としか……あれ?」 ふと彼は周りを見た。ハンプティが居る。ローブの一部を破って包帯代わりにしているマオが居て、隣に庇う様にメイが居て、そして悶絶しているメイを狙った工作員。 「まさか、貴様は何の関係もないのか?」 「やーっと、気付いたかポンコツ」 言い捨てられた途端に暗殺課はブランと手を下に落として顎を上に向けて、高笑いし出した。 「なんだ、只の『勘違い』だったのか。アハ、アハハハハハハハハハ!」 笑う。天に向かって、虚空に向かって、感情の行く当ても無くして只笑う。目は笑っていない、しかし人間としての彼は笑う事しか出来ない。 今まで無敵の身体で、蟻を潰す様に任務をこなしてきた彼には大失敗の経験が無い。もしかしたら、失敗だったのかも知れない任務も力でねじ伏せて来た。 だから、現在の様に自分にとってどうしようも無い失敗に対するストレスが激しいのだ。 突然笑い止む。そして不気味に笑った顔をマオに向けた。目を文字通り光らせるそれはまるで、亡霊にも見える。 「任務、果タサナクチャ」 憑き物よろしく両腕広げてマオに襲い掛かる。 56: 名前:サスライ☆03/23(水) 17 45 41 「んなっ、待ちやがれ!」 ハンプティは暗殺課の背中に向かって『ショットガン』を放つ。しかし、幾ら傷付いても止まろうとしない。 マオ。彼女は何時だって従ってばかりだった。従わなければ、痛い事をされるから。 だから何も考えていなくて、突然自由を与えられて戸惑い、メイの様な『普通の同世代の女の子』と何を喋れば良いか解らなかった。 ハンプティに会ってから彼女は変わった。ハンプティの様な自由な生き方が羨ましく、そうなりたいと言う気持ちが出来上がっていた。 それは流されている訳でも従っている訳でも無い。だって強制はされていないのだから。 「雄々々々々々々々!」 叫び、無我夢中で庇うメイを押し退け、今度こそ何の力も無い人間が兵器に立ち向かう。 先ず右腕による薙ぎ払いがあった。それを予想し、しゃがむ事で回避。次に下段突きが地面に向かって放たれる。それを突きと同時に上に持ち上がる右腕にしがみつき、回避。 だが、暗殺課は相変わらず笑っている。その三日月型の口がめくれ上がり、内側から小型のガトリング銃が伸びてきた。 「終ワリダ」 人は、強い者に憧れて強くなる。それは弱い自分に打ち勝つ為かも知れない、強さへの憧れかも知れない。取り敢えず、マオにとってのハンプティがそうだった様に、その情景を人は『ヒーロー』と呼ぶ。 「覇!」 マオが駆けた。飛び出して来たガトリングの銃身を掴み、右腕を蹴り空中ブランコの様な曲芸を見せて素早い回避を見せた。そして、蝙蝠七型を『ショットガン』で傷つき血の出ている少なくとも生身の箇所に照射した。 暗殺課の腕が爆ぜて、バランスを崩す。体勢を持ち直そうとするが、現れた影にムンズと髪を掴まれた。 「何、逃げてんだよ。そんな馬鹿にゃー…… (威力が)ロケットパーンチ!」 暗殺課はぶっ飛び、川に落ちた。水しぶきが舞って、虹を作った。 58: 名前:サスライ☆03/26(土) 03 33 30 ポカンと口を開くメイは、状況に着いて来れていなかった。何故なら謎解きの時点で立ち止まり、今何をやるべきかが見えていなかったから。 守ろうとしたマオは、何時の間にか自立している。結局自分の立場は何なのだろうと思った。 そこまで考えた所で一つの事を思い出す。『マオは本来自分を殺す可能性があるからジュウザはハンプティを当てた』と言うことだ。 しかし、それはハンプティにホテルで否定された。ハッとする。ジュウザは『色々面倒な事が起こるから』と言っていなかったか。 と、言うことはジュウザは自分がこの工作員に狙われる事を知っていたのか。そこで謎の枝が伸びる。 では、何故一般人であるメイを狙うのかと。 そこで思い至ったのがジュウザの台詞『コイツラは戦争したがっている』だ。しかし、マオに『何が狙い』だと聞いた。と、言うことはマオは 『戦争の切っ掛けを作る役割を持っているが、その内容は聞かされていない』と、考えても良いと思う。 その切っ掛けとは、一般人の殺害では無いか。市民が殺されたとなれば国として動かざるを得ない。 だが、それは穴だらけの推理だ。何故なら、マオとメイが出会ったのは全くの偶然で、尚且つマオの必要性が無い。 そこで悩んでいる時に、脳内から聞き慣れたササヤキの笑い声がした。 「クックック……。 悩んでいる、悩んでいるねえ。しかしこう言うのも考えられるよね? あの警察が実は……」 60: 名前:サスライ☆03/28(月) 16 13 15 「……って事なんだけど、どうだろ?」 「成る程、確かに自然だわ。それならマオに『接触しろ』の命令を与えれば何とかなる」 ササヤキの論を聞いて、メイは納得した。勿論これは推測に過ぎない、しかし事実の裏付けが生々しかった。 元々伏せている目だが、メイは更に伏せる。顎に指を当てながら。 「クックック、流石に疑問に感じて来たね。 本当にササヤキとは自分なのかと」 「ああ、だってアンタは私の知らない事を少しだけ知っていたし、頭の使い方も狂気とはまた別の物だ」 瞬間、メイの脳裏にほくそ笑みを浮かべる自分の顔が浮かび上がった。これはササヤキの見せる像だろう、故に自分ではない。 少し自我を強く持った。すると像が霧散して、霧が自分の中に僅かに吸収されてササヤキの知識が入ってきた。 ササヤキの知識は断片的な物しか無く、そこに繋がりは無い。つまりササヤキ本人も自分自身がよく解っていないのだろう。 意外に、人格が見せる狂気の様な物は見当たらなかった。変わりに見付かったのは誰かを守ろうとする強い意志の記憶。朧気だが。 そして最後には一つの名前が出てきた。それがササヤキの本名かは解らない、何故ならササヤキの知識内にもそれに関する知識の繋ぎ目が見付からなかったから。 その名前を、『サーパ』と言った。 61: 名前:サスライ☆04/05(火) 03 19 40 †††第二章・完††† 62: 名前:サスライ☆04/09(土) 17 11 42 第三章 メイ あれから、工作員はハンプティが暗殺課を説得と言う名の脅迫をして身柄預かりと言う事に。暗殺課その物は『存在しない筈の課』と言う事なので、ハンプティは、殴ろうがカツアゲしようが傘泥棒しようが罪にはならなかった。 そしてマオは、少しだけ人と接する様になった。 「ちょ、陸ガン地上ダッシュ早すぎでしょ!」 「……玄人気取りでシャアザク使う方が悪い。三倍使って特攻とか無いわあ」 今はハンプティの持っていた携帯ゲームでメイと遊ぶ程の仲だ。只、当のハンプティはと言えば渋い気を放っていた。 マオの身柄はハンプティが預かる事になり、メイは頻繁に通う様になった。その為、ハンプティの部屋は大所帯になっていたのだ。 しかも女二人に男一人と、一見羨ましい状況に見えるが、異性に対して女性は本能的に線引きをしているので話に入る事が出来なくて渋い気を放ちながら新聞を読む位しか出来ない。 「クックック……頑張れよ」 ふと、ハンプティにメイの声が響いた。しかし肝心のメイは携帯ゲームにふけっている。そこで彼は一つの結論を下して小声で呟く。 「『サーパ』か、今はメイに憑いてるのか」 「さあ、私にはよく解らないよ。まあどうでも良いんだけどさ」 「そうだな、じゃあ昔話もよそうか。それよりも今回の件、やっぱりジュウザにやられたって言う警察さ……」 お互いに一息置いて、少し思考を手繰り、やはり同じ結論に至る。 「隣国に亡命する気だったヤツだよな」 「あ、君もそう思った?クックック……」 新聞には、どうでも良い罪で、かなり小さく、その警察が有罪と出ていた。 63: 名前:サスライ☆04/09(土) 17 42 25 マオが殺されれば国際問題になり、戦争の引き金になる。マオがどの様な人物だったかなんて幾らでも作れるのだから。 もしも警察が『マオを殺せ』と指令を受けていたとしよう。行うには自分の身柄が保証される必要がある。 そこで隣国が破格の条件で亡命されれば『マオが殺された』と言う問題は国に擦り付けられる。 ハンプティは元気なマオに目線を少しだけよこすと、彼女は少しだけ反応し、しかしゲームに意識を戻した。 「あー、もー!ライフル連射利きすぎ、量産機だろお前」 「……量産機だからこそ、無駄が無いのさ。くらえジムキック!」 マオは、何だかんだ言いつつ実戦を積んだ兵士の様な物だ。それが果たして平和ボケした警察にやられるだろうか、いや、無い。 そして警察を返り討ちにしたマオは逃げようとするが、暗殺課に掴まり秘密裏に処分。 『自国民は殺され、隣国民は殺された』の事実は隠される筈だったが、マオの後をつけていた工作員によって公開。 その後隣国と自国による外圧内圧から戦争に発展。これが隣国の描いていた計画と、二人は仮定した。 そして、警察殺しが成されなかった為に殺しのターゲットをメイに変更。そして暗殺課は『隣国の工作員』を秘密裏に処理する筈だったが…… 「馬鹿なヤツだったなあ、アイツ」 「クックック。 まあ、マオと君が並んでいたら、ねえ……」 暗殺課の冷酷なドヤ顔を思いだし、薄ら苦笑いを浮かべた。 65: 名前:サスライ☆04/09(土) 18 22 27 「そう言えば、マオは何時まで此処に居るの?」 ゲームも脳細胞が焼き切れる位にトランス状態を越えて冷却された状態。一段落ついた状態で、メイは何気無く問うた。 するとマオは目をやや反らす。自分でもよく解らないからだ、そこでハンプティに聞いてみれば今度はジュウザに聞かなきゃ解らないとの事。 そこまで不確かに言って、『しかし』を付ける。 「まあ、そんなモン形式に過ぎねえや。そんな約束された覚えもねーし、守る義務も無い」 随分薄情な話だ。抑制力として働いていたハンプティが居なくなればこの国はどうなると言うのか。 「クックック、たかが旅人に頼らなければ支えられない国は、国としてどうかな」 ササヤキに言われて、メイは言葉を返せなくなる。新聞から意識を外し、ハンプティはメイとマオを広い視野で二人同時に見ると、語る。 「ま、この先のマオは新しい故郷を見付けるまで俺と一緒に旅ってトコかな」 「んなっ!」 途端にマオの顔が赤くなって、ハンプティに食らい付きそうになる。するとハンプティは『じゃあ止めるか?』とニタリ笑い、マオは『いや、そうじゃなくて、その……』と、モジモジと身を縮こませた。 「あーあ、マオに先越されちゃったね」 余計なお世話だこの野郎。メイはササヤキを心の中でぶん殴った。 66: 名前:サスライ☆04/16(土) 12 59 28 渋味を通り越した、いぶし銀を通り越した、何かの境地とかの心境のハンプティは、実はジュウザの事が気になっていた。 勿論惚れ要素とかそう言うBL的な物では一切無い。これをウザいと思うなら負けだと思う。 さて、ジュウザはマオをメイに差し出した後にあっさり引き上げたが、何故ハンプティに預ける必要があったのか。人が物を任せる時は、成すべき事がある時と相場が決まっている。 ジュウザは一体何を成そうとしていたのか? マオの話ではマオが警察(スパイ)に会ったとき急に痛みが走り塀に叩き付けられた。その後、かすかに逃げる警察が見えたとの事。 メイの話では警察は靴底の染みにされた事から話は繋がる。繋がるが、『起点』が無い。 一体何を以てジュウザは警察とマオを敵と見なしたのか。いや、そもそも何故偶々立ち寄っただけのハンプティを『居る』と知っていたのか。 詰まる所、ジュウザは今、『何者』なのかが全く掴めない状態だ。 「あいつは昔からよく分からねー性格だからなあ」 呟くと、一つの記事が目に入る。隣国にこの国がついつい無償で財布を開いてしまう話、その記事の下にとある集まり(何の集まりかは載っていない)が、皆殺しされたと小さく載っていた。 全員、鋭い刃物の様な物で斬られていたらしい。 67: 名前:サスライ☆04/22(金) 01 16 57 この記事に関しておかしい所がある。大事件だと言うのに大して取り上げられていない事、何の集団か取り上げられていない事。 更にこの事件の凶器は刃物だ。顔をグシャグシャに潰さない限り身元が解る可能性は高い。 となれば、『口封じ』の可能性がある。新聞に上から何らかの修正が入っている。これは、フィクションを制限出来るならば十分可能だ。 フィクション制限は基準が曖昧だ。だからこそ、気に入らなければ如何様にも制限出来る。 と言う事は、この集団は公になれば『上』にとって何らかの損があると言う事だ。 そして『皆殺し』と言う事は、その集団に対して敵対しているモノがある可能性が高い。 「……やれやれ、また疲れる事になりそーだ」 ハンプティは新聞から目を放して首を鳴らして腕を伸ばした。 それを聞いて、さっきまで某ロボットアクションゲーム(この国ではR18)をしていた二人は、ハンプティを同じ表情でポカンと見た。二つ並ぶと中々シュールだ。 「ハンプティが……」 「……『疲れ』た!?」 「よーし、お前等そこに並べブン殴る」 68: 名前:サスライ☆04/22(金) 01 36 21 推理の結果を二人に話すと今度は対称的な顔をした。解と悩だ。マオはすんなり理解出来たら、メイは納得がいかないらしく頭を捻って眉間に皺を寄せた。 「う~ん、何となく解るけどフィクションの制限とは関係無いんじゃない?」 「いや大有り」 新聞を片手でクルリと丸め、もう片手でポンと叩く。 「フィクションって、何だと思う?」 「え、そりゃ創作じゃないの?」 「ふうん、本当にそう思うか?」 ハンプティは、かなり真剣な目で言った。その眼力は冷やした針金が身体の芯まで突き刺さり貫通する様な感覚を与え、思わず自分に疑問を持つ。 「え、違うの?」 「いや、本当だ」 「よし歯を喰い縛れブン殴る」 怨み増し々々で、脳天をメイにポコンと殴られた後、説明を続けた。 「でだ、創作が何で制限されるんだろうな。高が脳ミソで作った事で現実じゃねーよな」 「それは、悪影響のある物が『出版物』として出回る可能性があるからだよ」 そこら辺はスンナリ通る。学校で習ったから。 「そうだよな。 つまり、それがまかり通るならば、『悪影響のある出版物』と『上』が『判断』したなら幾らでも処分が可能って事だなあ」 だから、ハンプティはこれを『上』が関与した記事だと感じた。 そしてメイは、どこか薄気味悪い感触を与えられた。 69: 名前:サスライ☆04/24(日) 14 34 17 ハンプティに向かって、今まで黙っていたマオは言う。 「……ねえ、暗殺課の人に連絡取れるかな」 「取れるけど何で」 「……なあに今新聞をちょこっと読んで考えたんだけど、もしかしてその新聞の集まりって、隣国関係者の集まりなんじゃないかって」 マオの考えはこうだ。ジュウザはマオと警察の邪魔をした。マオと警察の共通点は『隣国関係者』と言う事だ。 だとすればジュウザは隣国への敵対組織に所属している可能性が高く、暗殺課ならばその集まりが何かを知る可能性が高い。 数秒ハンプティは考えたが、茶色の革製の財布から硬貨を取り出すと指で弾いて空中で掴む。 「成る程ね、まあ、やるだけやってみるか」 この国に公衆電話は少ない。何故なら、小学生に至るまで殆どが携帯電話を持っているからだ。フィクションを取り締まる法令はある癖に携帯は取り締まらないのはおかしな話だ。 そう思いながらホテルに付いてる公衆電話に硬貨を入れて、無理矢理聞き出した番号に電話した。 「マオの仮説が正しけりゃ、この新聞で殺されたのは隣国へ友好的な人間って事になる」 しかし、それは電話の結果NOになる。 70: 名前:サスライ☆04/26(火) 09 40 35 暗殺課の男は、普段は良い役職なのか最初はかなり偉そうな態度で電話に応答したが、ハンプティだと解ると梅干しの様に態度も口も縮こまってしまった。 要件だけ伝えろと低い腰で言われたので、伝えたら寧ろ新聞で殺された集団は反隣国派だと言う。 最近調子付いている隣国への対策を練るための集会を狙われたとの事だ。 益々解らなくなったので、ジュウザの存在を伝えると意外な答えが帰ってきた。僅かながら、知っているらしい。 この国の政界は、隣国派と反隣国派に分かれていて、その両方を過激かつ秘密裏な手段で妨害する連中が居るらしい。 暗殺課もその行方を追う為に活動費が増え活発化し、今回ハンプティを襲ったのはその情報もあっての事。 「成る程なあ、つまり隣国派と反隣国派。更に第三勢力の三竦みの状態な訳だ」 「そうなのですが……ふむ、どうした。何、少し席を外しても宜しいでしょうか?」 「うん、良いけどどうした」 「少し目を放した隙に、捕らえた工作員と捕らえたスパイが……」 窓の外をカラスが飛んだ。おまけに道路を黒猫が横切り、ついでに通行人の履いてた下駄の鼻緒が切れる。そんな不吉のトリプルコンボで、放たれたのはやはり不吉な言葉だった。 「殺されました。鋭い刃物で斬られていたそうです」 71: 名前:サスライ☆04/27(水) 09 20 19 ハンプティは電話を少し外して、これからコンビニ行かないか宜しく軽い口調で重い事実を告げた。 メイは動揺を隠したくても隠せなくて、自分だけ驚いているのが馬鹿みたいにも思える。でも、人が死んだ。ある時には確かに自分の人生に関わっていた人間が死んだ。 今、世界中で戦争が起きている。今、新聞で人が死んでいる。今、道路の電光掲示板が交通事故死亡者を一人追加している。 それは当たり前の事で、一々動揺していなかった。決して死に慣れている訳では無い。 死と言う事実が単なる情報として軽く扱われている事に麻痺しているだけだ。まるで雷の原理を説明出来る癖に天災としての恐怖に敬意を祓わない様に。 故に、彼女はその『未知の存在』を受け止めず恐れとしてはね除けるしか無かった。 ワカっていたのにどうすれば良いか解らない。思うと、ササヤキが口を挟む。 「クックック。それは本当に解っていたのかな。いや、ないだろうね。 君は何時だって何も感じて知ろうとしない、少なくとも記憶ではそうなっている。 だから、君は誰も自分を解ってくれないと勘違いしているんだ。知ろうとしていないなら中身が何も無いに決まっているじゃないか。 それなのに『私を解って』なんて何様だい」 72: 名前:サスライ☆04/29(金) 02 10 40 しかしジュウザの事を何も解らないのに、犯人と決めつけるのは何事かと思う。 「クックック。 でも、インパクトを抜きにしてもジュウザ以外に犯人だと考えられるかい」 グルグルと考え、様々なパターンの枝を生やしてみる。しかし、どうしても途中で詰む事に気付いた。 そして自分自身認めつつある。人を疑うなんて前の自分なら何も思わなかったのに、此処に居る総ての人を信じたいと言う想いが自己嫌悪を催していた。 人を信じれなくなったら、人間は終わりだから。 「クックック。それでもジュウザを確保して損は無い、彼は言い訳はしない人間だろう」 ササヤキに言われ、メイ自身そう思う。確かに罪を犯した疑いをかけられるのはあるだろう。だが、本人に直に関わって事実と判断し、納得して固まった人格に疑いは無い。 百聞は一見に如かず。百見は一納得に如かずだ。 それに、まだジュウザが犯人と決まった訳じゃ無い。確保する事で彼は無実と証明出来るかも知れない。兎に角、動かない事には始まらない。故に、先ずは口を動かして、始めた。 「ねえ、取り敢えず現場に言ってみようよ。痕跡からジュウザの居場所が解るかも知れないから」 73: 名前:サスライ☆05/02(月) 14 54 14 ハンプティは革のマントを羽織って、カウボーイハットを被る。何してんのと聞けば、身だしなみと答えてメイには彼のセンスがよく解らなかった。 しかし隣でマオは「格好良い」と目を光らせる。これは、もしかするとおかしいのは自分ではないか。そんな不安が大魔王の陰謀の様に渦巻き目をゴシゴシ擦って再確認。 途端メイはガックリと肩を落として顔を覆った。やっぱりこんなのおかしいよ、何で人同士は解り合う事が出来ない。 しかし解り合えない事に何が問題がある。そうだ、ある。解り合えないから人は争いを生むのだ。 ならば自分は争いを生まざるを得ない。因果とは逆らうべき物では無いのだから。そう言うわけで両手を大きく広げてハンプティに飛びかかった。 「うきょー、覚悟!」 「!?」 ペチンと叩き落とされる。床に顔を埋め、何だコイツと侮蔑の目で見られる事にどこか間違いを感じていた。 「くそう何がおかしい」 「主に君の思考回路が」 ササヤキに突っ込みを入れられて納得する。こうしてメイはまた一つ成長したのだった。 風来坊いろは唄 続き3
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【Tags Ginsaku Rin tI I】 Original Music title いろは唄 English music title Iroha Song Romaji music title Iroha Uta Music Lyrics written, Voice edited by 銀サク (Ginsaku) Music arranged by 銀サク (Ginsaku) Singer(s) 鏡音リン (Kagamine Rin) Click here for the original Japanese Lyrics English Lyrics (translated by animeyay): If it is what you wish, I shall willingly let you leash me with a lace, a rope, or a chain, as though I m an obedient dog. Or, acting like a kitty, I shall affectionately please you and make you happy with my fingers, feet, and lips. It does not matter which one of us fell for the other first. Flowers, albeit fragrant, will eventually scatter. In our world, who can remain perpetual? I wish to know, more and more, all the way to the core. Today, crossing the remote mountains of vainglory, lest we experience superficial dreams or intoxication. Let me become tinged with your color, although it will eventually fade, no matter how fragrant. If you should command me to bloom in winter like the camellia flowers, I shall gladly bare my skin to the snow and frost, just for you. Or, if you have an urge to see a noble rose on the brink of scattering, I shall readily wrap my neck and hair with fragrance, and then slowly wither away. Even if your scent has permeated the marrows of my bones, it still will not be sufficient for me. Flowers, albeit fragrant, will eventually scatter. In our world, who can remain perpetual? I wish to know, more and more, all the way to the core. Today, crossing the remote mountains of vainglory, lest we experience superficial dreams or intoxication. Let me transform myself, just for you. Flowers, albeit fragrant, will eventually scatter. In our world, who can remain perpetual? I wish to know, more and more, all the way to the core. Today, crossing the remote mountains of vainglory, lest we experience superficial dreams or intoxication. Let me fall into the abyss together with you, whilst fragrant, even if all the way to the bottom. Romaji lyrics (transliterated by animeyay): anata ga nozomu no naraba inu no you ni juujun ni himo ni nawa ni kusari ni shibararete agemashou aruiwa koneko no you ni aikurushiku anata o yubi de ashi de kuchibiru de yorokobasete agemashou dochira ga saki ni oboreta da to ka sonna koto dou de mo ii no iroha nihoheto chirinuru o waga yo dare zo tsune naran shiritai no motto motto fukaku made ui no okuyama kyou koete asaki yume miji yoi mo sezu somarimashou anata no iroha nihoheto chirinuru o tatoeba tsubaki no you in fuyu ni sake to iu nara yuki ni shimo ni karada o sarashite ikimashou aruiwa kedakai bara no chirigiwa ga mitai nara kubi ni kami ni kaori o matowasete ikimashou hone no zui made somatte mo mada sore dake ja monotarinai no iroha nihoheto chirinuru o waga yo dare zo tsune naran shiritai no motto motto fukaku made ui no okuyama kyou koete asaki yume miji yoi mo sezu kawarimashou anata no tame ni iroha nihoheto chirinuru o waga yo dare zo tsune naran shiritai no motto motto fukaku made ui no okuyama kyou koete asaki yume miji yoi mo sezu ochimashou anata to iroha nihoheto doko made mo []
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【登録タグ tamachang い 初音ミク 曲】 作詞:※諸説あり 作曲:tamachang 編曲:tamachang 唄:初音ミク 曲紹介 tamachang氏のボーカロイド楽曲5作目。 全ての仮名で構成されている手習い歌として知られる「いろは歌」を歌詞にブラスセクションが渋いポップスへと編曲。 「『いろは唄』とは比べないでください。・゚・(ノД`)・゚・。」(投稿者コメントより抜粋)※銀サク氏の「いろは唄」とは表記が異なります。 歌詞 (手習い歌『いろは歌』より) 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん 有為の奥山 けふ越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず (以下繰り返し) コメント えーっ -- 無色ノ娘 (2013-02-18 19 39 42) ちょっと、びっくり; -- アリィヤ (2013-02-18 19 52 16) 名前 コメント
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作詞:(原曲)銀サク(改編)666。 作曲:銀サク 編曲:銀サク 歌:神威がくぽ 翻譯:yanao 伊呂波歌【男性視點ver.】 如果妳能原諒我的話 好想就讓妳無法逃開我般地 用細索 用粗繩 用鎖鏈 束縛住妳讓妳無法動彈 或者是將如幼貓一般 令人憐愛的妳 用手指 用雙足 用嘴唇 讓妳變得狂亂吧 除了妳以外的 存在什麼的 那種東西 怎樣都無所謂了 花朵艷麗終散落 誰人世間能長久 好好感覺吧 直到更深更深的地方 今日攀越高山嶺 醉生夢死不再有 我抓住 妳了喔 IROHANIHOHETOCHIRINURUWO 如果妳那雪白的肌膚 會被寒冷改變色彩的話 那我大概就會 想要詛咒霜雪甚至一切吧 或者是將艷紅的花辦 用溫柔的親吻 讓其散落在 妳的臉上胸上以及背上吧 「如果沒有你的話就活不下去了」 我會讓妳 說出這句話來的 花朵艷麗終散落 誰人世間能長久 好好感覺吧 直到更深更深的地方 今日攀越高山嶺 醉生夢死不再有 我會改變妳的 就看著我吧 花朵艷麗終散落 誰人世間能長久 好想知道啊 妳更深更深的秘密 今日攀越高山嶺 醉生夢死不再有 就讓兩人 一同墮落吧 IROHANIHOHETO 無論到何處 其實早就已經翻好了,只是不知道能不能貼在這…… 如果不行的話可能就得麻煩管理人幫忙刪掉了,我找不到我哪裡可以自行刪掉這頁歌詞--- 囧 很感謝某r桑的糾正 (拜)
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永遠不滅の物語 流転楽土の電影序曲 流転楽土の電影交響 _____ // / \ /__/ / \ / ___ \ \. / / / | .\ \ \ { ./ / | | | ..\ \ | {/ | | .| | | | .\ \ | | | | .-┼ | | ┼―-\ \. | 八_;| |____L ―┴┴‐ | .\ \ | |/ | | 芥苅 芥花ドY \| /\ |// / , Vり ヒツ 人 | | | |/ ///, ' '' 丶 ' ' . |\ | | |. / /\ 込、 丶 ' ィ| |. . .\|,/ | /. ../\ \/7- _ <__ノ|ノ>-} \ _/. / / ‘, \/人 {二二>''´ / ├┘ / / __>ー \ニ>''´ ====// . ノ ̄~゚"''~ ., ┏━━━━━━━━━━━━━━┓ ┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┛ 名:[環いろは] 使い魔:[アルゴル] 所持銘:[ツクモ][防人]┏┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┓┗━━━━━━━━━━━━━━┛ 永遠不滅の物語 札名 枚数 魔導からくり 1 不滅電霊 1 栄光の電子領域 1 オモチャ達の戦場 1 魂求める空蝉 1 電子分岐の文字列 1 星並べ 1 悪魔の歯車 1 岩戸開きの思い出 2 神楽式【荒魂】 1 胸に抱く思い出 2 パニッシュメントコード 1 流転楽土の電影序曲 札名 枚数 魔導からくり 1 不滅電霊 1 電子のマトリョシカ 1 星並べ 1 悪魔の歯車 1 百器大行進 1 有為転返のいろは唄 1 岩戸開きの思い出 2 神楽式【荒魂】 1 胸に抱く思い出 2 パニッシュメントコード 1 訣別の銃咆 1 栄光の電子領域 1 ウワサのウワサ 1 星想ふ夕暮れ 2 魂求める空蝉 1 真実刻む聲 1 流転楽土の電影交響 札名 枚数 魔導からくり 1 星結びの鉄腕 1 不滅電霊 1 不変電霊 1 人理結界・仮床 1 星並べ 1 悪魔の歯車 2 電子秘匿結界 2 有為転返のいろは唄 1 思い出は五つ星 1 電子交差の影歌 1 神楽式【荒魂】 1 栄光の電子領域 1 エレクトリック・ボム 1 電子戯蝶の領域 1 星想ふ夕暮れ 2 魂求める空蝉 1 ※ 作中で使用された札を記述しています。
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アナタガ望ムノナラバ 犬ノヤウニ従順ニ 紐ニ縄ニ鎖ニ 縛ラレテアゲマセウ アルイハ子猫ノヤウニ 愛クルシクアナタヲ 指デ足デ唇デ 喜バセテアゲマセウ どちらが先に 溺れただとか そんなこと どうでもいいの 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん 知りたいの もっともっと深くまで 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず 染まりましょう アナタの いろはにほへと チリヌルヲ 染まったらもう一回絡まるこの末端の刺激 「そうなったらもういっか」からかう言葉堪能してみる わかってるんだけども今日もペースメイクできない 抑えられないなら別々でいいかい?? I said? You said? とは関係ない confuse ですね 抱いて夢中で ド忘れの Who stay? 耳元に吐息の音 触れるたびに高鳴る心臓 ねぇ、例ヘバ椿ノヤウニ 冬ニ咲ケト云フナラ 雪ニ霜ニ身体ヲ 晒シテ生キマショウ それはまるで忠誠誓った戌のようで そっぽ向かれてればだんだんとなるノイローゼ ほどかれた麻絹の色 すべては幻想なのか 浅き夢と(夢と) 骨の髄まで 染まってもまだ それだけじゃ 物足りないの 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん 知りたいの もっともっと深くまで 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず 変わりましょう アナタの為に 嗚呼 夢に惹かれて会いたいなんて 運命に引かれて毎晩泣いて 故に見た触れない関係 恐れてるものはこの今以外 あんた以外もういらない 頭の中本能従った 本当はこうしたかった だけど莫迦だね ねぇ、すぐ抱いて 熱くらいで ペース狂ってる場合かってこと もう限界点の一歩手前 ギリギリの想いと願い 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん 知りたいの もっともっと深くまで 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず 堕ちましょう アナタと いろはにほへと ドコマデモ 嗚呼
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「育児のいろは」へようこそ。 はじめまして。管理人の「ふこたんまま」です。 このサイトは「子育ての全て」が凝縮されたページを目指しています。 初めての子育てに戸惑う毎日。 勉強、仕事・・・。先生や先輩からいろんなやり方を教わっていく中で、自分に合った方法を見つけることができました。 でも初めての子育てって、自分が周囲の人から受けたもの=子育ての常識になっているけど、それってどうなの?と疑問に思うことはありませんか? ネットが一般的になったこの時代に、子どもの年齢に合わせてふってわく疑問を解決するために、あちこちのサイトを一生懸命検索し続けて、あれ?何を調べてたんだっけ???なんてことも。 このサイトを訪れれば解決のヒントが見つかる、そんなお手伝いを管理人「ふこたんまま」の経験からお伝えしていきます。 妊娠~出産 出産~2歳 3歳~小学校入学まで 小学校入学~中学校入学まで
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名前:junjun 通称:junjun よく使われるタグ:もっと評価されるべき 声の特徴:力強い高音と落ち着いた優しい雰囲気の低音。曲によってはBUMP OF CHICKENの藤原基央に似ているとの意見も。 作品の特徴・傾向 ボカロオリジナル曲を中心に歌っている。 基本的に真面目だが、たまにテンションを間違える事がある。 『いろは唄』を歌った際に視聴者から「ルパン三世に声が似てないか?」と言われたことによりつけられた「とっつぁんホイホイ」「あばよ~とっつぁ~ん♪」というタグが気に入ったらしくタグロックをかけた。 『七色のニコニコ動画を歌おー!。by.junjun』でメドレーに初挑戦。真面目な部分とネタを半々の割合で織り交ぜて歌っており、ライオンやニホンノミカタのパートをバ行の腐女子の替え歌歌詞で歌う、星間飛行のパートで別の歌を歌う、終盤のハンマータイムで若干暴走気味になる、などとフリーダムな一面も強調された。 人物・その他の特徴 ネタと真面目な作品のギャップが激しく、滑ったネタ作品についてはマイリスで(一応)謝罪している。 高音部で無茶をして声を張り上げている部分もあり、いろいろと心配されている。 まだまだ少ないながらも固定ファンがおり、今後の活躍が期待される。 動画 公開マイリスト 歌ってみたってやつ 『いろは唄』を力強く歌ってみた。by.junjun すべてが終わってしまう前に歌った。by.junjun 『しねばいいのに』を楽しくうたってみた。by.junjun 七色のニコニコ動画を歌おー!。by.junjun 関連動画(合わせてみた等) 《合唱》いろは唄【男性6人】合わせてみました 【男6人】合唱:いろは唄【合わせてみた】 【合唱】いろは唄【歌い手描いてみた】 【12人合唱】いろは唄【5−56】 【合唱】ごめんなsorry 【合唱】すべてが終わってしまう前に ※歌い手の情報は「歌い手まとめwiki掲載基準」で「掲載可能」としているもののみ掲載して下さい。 編集業務連絡 名前 コメント